明 細 書
遺伝子導入鳥類作製法
技術分野
[0001] 本発明は、異種蛋白質などの異種蛋白質生産に応用可能な遺伝子導入 (トランス ジェニック)鳥類を、効率的に作製する方法に関する。
背景技術
[0002] 遺伝子組換え技術の発展により、異種蛋白質の大規模な工業生産が可能となった 。しかし組換え生産に多用される大腸菌等の微生物は糖鎖付与能力がなぐまた抗 体 ·酵素のような複数のユニットからなる蛋白質を生産する能力がないため、その応 用範囲は限られている。
[0003] 現在糖鎖を必要とするエリスロポエチンや抗体医薬品などは、動物培養細胞リアク ターによって生産されている力 このような動物細胞による生産法は微生物培養に比 ベコストが高ぐ患者や行政の負担増加が問題となっている。
[0004] こうした欠点を克服した新たな蛋白質生産法として、遺伝子導入動物(トランスジェ ニック動物)の利用が注目を浴びている。トランスジヱニック哺乳類、鳥類が乳汁や血 液、卵中に生産する蛋白質は糖鎖が付与されるうえ、その生産コストは動物培養細 胞リアクターの 1/10〜1/100との試算もある(Nature Biotechnology 19, 18 4 2001)。 なかでも家禽類を使ったトランスジヱニックは、成熟までの期間が短い事 や、飼育面積が少なくて済むとの利点があるため、実用化が嘱望されている。
[0005] このような利点を持つトランスジエニック鳥類を作製するには、レトロウイルスベクタ 一を受精卵の初期胚に感染させる方法が最も有効な手段である。本発明者らは安全 性の高い複製能欠失型ウィルスベクターを用い、鳥類受精卵の初期胚に遺伝子を マイクロインジェクションすることで、体細胞の一部に導入遺伝子を持つトランスジェ- ックキメラ (GOと呼ぶ)を効率的に作製することに成功した (特開 2002— 176880号 公報)。更に放卵直後の胚盤葉期を除くそれ以降の時期にウィルスベクターを導入 することで、宿主による蛋白質発現の抑制(サイレンシングと呼ばれる)が解除され、 高 、発現量が得られることも見出した。このように異種遺伝子の発現に導入時期依存
性があることを明らかにし、この知見を基に高い蛋白質発現量をもつトランスジェ-ッ ク鳥類の作製を可能にしたのは、当該方法が唯一のものである。
[0006] し力しこの方法で得られるトランスジエニック鳥類は、体細胞中に導入遺伝子をモザ イク状にもつキメラである。トランスジエニック鳥類による蛋白質生産を、安定な工業的 手法として実用化するためには、体細胞全体に導入遺伝子を均一にもつ完全体を 生産母体とする必要がある。この完全体を得るには、これまでのところ、生殖細胞に 導入遺伝子をもつトランスジエニック GO (生殖系列トランスジエニックキメラ体)を、別 のトランスジエニック GO (生殖系列トランスジエニックキメラ体)または野生型と交配し、 その子孫から高発現系統を選び出す (世代数に準じて G1〜G2〜G3と呼ばれる)方 法がある。しかし、生殖系列トランスジエニックキメラ体の交配力 完全体が生まれる 率は 3%程度であり、この発現頻度は決して高!、とは言えな!/、。
[0007] Simkissらは、レトロウイルスベクターを感染させた始原生殖細胞(Primordial Ge rm Cell:以下 PGCと略称する)を他の同種初期胚に移植することにより、異種遺伝 子を導入したトランスジエニック-ヮトリを作製した例を報告している(Lorraine Vick , Ying Li and K. ¾imkiss, Transgenic bird from transiormed primo rdial germ cells, Proc. R. Soc. Lond. B (1993) 251, 179— 182)。し力 S imkissらの方法は、導入したプロモーター以下の配列が蛋白発現を構成的に実現 する配列ではない等の理由から、次世代のトランスジエニック鳥類における異種遺伝 子の発現頻度は低い。
[0008] 内藤らは、異なる系統の-ヮトリ間で PGCの移植を行ったところ、その組み合わせ により後代として生まれるドナー (提供種)由来個体の比率が大きく変わることを見出 している。すなわち、ドナーとして白色レグホン種の PGCを横斑プリマスロック種初期 胚に移植したところ、レシピエント(受容種)であるプリマスロック生殖巣で成熟した生 殖細胞は、 80%以上がドナーである白色レグホン由来のものであることが確認されて いる(内藤充 鳥類胚の体外培養と操作法 蛋白質核酸酵素 Vol. 40 No. 14 (1 995) )。
[0009] 特開 2001— 045915〖こは、始原生殖前駆細胞に所望の異種遺伝子を導入し、こ れを鳥類胚に移植して発生、孵化させることを特徴とする方法により得られるトランス
ジェニック鳥類が開示されて 、る。
特許文献 1 :特開 2002— 176880号公報
特許文献 2 :特開 2001— 045915号公報
非特許文献 l :Nature Biotechnology, 19, 184 2001
非特干文献 2: Lorraine Vick, ing Li and K. Simkiss, Transgenic bird from transformed primordial germ cells, Proc. R. Soc. Lond. B "99 3) 251, 179- 182
非特許文献 3 :内藤充、鳥類胚の体外培養と操作法、蛋白質核酸酵素 Vol. 40 N o. 14 (1995)
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0010] トランスジエニック鳥類を、安全で効率のよい蛋白質生産系として応用するには、体 細胞全体に導入遺伝子が入り、導入遺伝子に由来する蛋白質を高発現する効率の よいトランスジェニック鳥類作製法の確立が不可欠である。また、生殖細胞に異種遺 伝子が導入されて 、る生殖系列トランスジエニック鳥の効率的な生産方法を、確立す る必要がある。
課題を解決するための手段
[0011] そこで本発明者は、より効率的に、完全体トランスジエニック鳥類、例えば G1完全 体作製法を確立するため、 PGC移植法の応用を考案した。特に、高濃度 (高タイタ 一)のレトロウイルスベクターを作製することによって、効率よく始原生殖細胞に感染 を行い、それによつてトランスジエニック鳥を効率的に生産出来ること、またレトロウイ ルスによって導入された異種遺伝子が、宿主による蛋白質発現抑制を受けるのを、 回避する方法を見出した。
[0012] これら方法により作製されたトランスジエニック鳥類は、医薬品等に利用可能な蛋白 質の生産に利用できる。
発明の効果
[0013] 本発明の、トランスジエニック鳥類作製法は、効率的に完全な GOトランスジエニック
鳥類を生産し得る。本発明によれば、その子孫、例えば完全な G1トランスジエニック を効率的に、誕生させることができる。
[0014] 本発明の Gl、 G2、 G3〜トランスジエニック鳥類は、体細胞で異種遺伝子に由来す る蛋白質を発現するので、血清、卵白、卵黄力 回収、精製することで、これまで生 産困難であった糖鎖が付与した蛋白質や抗体類の安価な生産系を供給することが できる。
発明を実施するための最良の形態
[0015] 以下に本発明を詳述する。
[0016] 本発明は、第一の鳥受精卵および第二の鳥受精卵を準備し;第一の鳥受精卵の 初期胚から始原生殖細胞 (PGC)を取得し;異種遺伝子を媒介したレトロウイルスべク ターを該始原生殖細胞に感染させて、異種遺伝子を該始原生殖細胞に導入し;該 始原生殖細胞を、第二の鳥受精卵の初期胚に移植し;該第二の鳥受精卵を孵化成 長させる;ことを特徴とするトランスジエニック鳥類の作製法を提供する。
[0017] ここにいう PGCは、鳥類において生殖細胞に分ィ匕する細胞であり、初期胚では PA S染色で強く染められる細胞として最初に認められ、その後血管系の発達に伴って 血流に乗り、生殖巣原基に達して生殖細胞になる。ここにいう受精卵初期胚とは、放 卵直後の胚盤葉期 (ステージ X)力も孵卵後 96時間程度までを指す。
[0018] 本発明で使用する PGCは、鳥受精卵初期胚血液中より取得され、密度勾配遠心 分離法などにより、効率的に濃縮できる。 PGCを取得する第一の鳥受精卵から、放 卵直後を 0時間とすると孵卵開始後 40時間以降 60時間までに、特に 48時間以降 6 0時間までに、 PGCを取得するのが好ましい。ニヮトリを例にとると、白色レグホンのよ うな生殖細胞の増殖速度が速 、種類力 PGCを調製することが好ま U、。 PGCの調 製は、例えば鳥類受精卵の血液を採取することにより実施する。得られた血液を、密 度勾配遠心法によって PGCを濃縮することにより、より効率的にレトロウイルスベクタ ーを該 PGCに感染させて異種遺伝子を該 PGCに導入することができる。
[0019] 上記方法によれば、生殖系列トランスジ ニック鳥類が高率に作製できる。ここで、 生殖細胞に導入遺伝子が入っている、または入っていることが確実な個体を、生殖 系列トランスジエニック鳥類と称する。生殖系列キメラの確認には、精巣、卵巣からゲ
ノムを調製し、 PCR法により導入遺伝子を確認する方法がある。また成鳥から精子を 採取し、 PCR法により確認することができる。より簡便には、蛍光蛋白マーカーを導 入遺伝子に付加することで、蛍光により確認することが可能である。
[0020] 本発明の作製法で、 PGC移植を受けた受精卵初期胚は、その生殖細胞にドナー 由来 PGC力 分ィ匕した生殖細胞とレシピエント本来の生殖細胞がモザイク状になつ た生殖系列トランスジェニックキメラ鳥類として成長し得る。一般的に、一世代目のトラ ンスジエニックキメラ鳥類は、 GOトランスジエニックキメラ鳥類と呼ばれる。また、その 子孫は、 Gl、 G2〜トランスジエニック鳥類と呼ばれる。ここで本発明の作製法を利用 することで、それら子孫において、好ましくは、完全体トランスジェニック鳥類が作製で きる。本明細書にいう完全体トランスジエニック鳥類とは、体細胞の実質的に全部に、 異種遺伝子が導入されている鳥類をいう。本発明の Gl、 G2などの完全体トランスジ エニック鳥類は、異種遺伝子をその体細胞に均等に含有し、その導入遺伝子に由来 する蛋白質を、血中、卵白中あるいは卵黄中に安定に発現することを特徴とする。
[0021] 本発明において PGCは、孵卵処理直後を除くそれ以降の時期に受精卵初期胚か ら取得され、レトロウイルスベクターによって異種遺伝子を導入されることを特徴とす る。蛋白質発現量をより高くするために、 PGCが受精卵初期胚から取得される時期 は、その PGCの由来する鳥類種に特有の最適時間がある。例えば-ヮトリにおいて は PGC取得時期として、孵化処理後 48時間以降 64時間までが好ましぐより好まし くは孵化処理後 40時間以降 60時間まで、さらに好ましくは、孵化処理後 50時間以 降 60時間までである。この異種遺伝子を導入された PGCおよびその製造方法も、本 発明のひとつである。
[0022] 異種遺伝子が導入された PGCを、他の受精卵初期胚に導入すべき時期は、種々 の時期があり得る。具体的には、その時期は、例えば、孵化処理後 12時間以降 96 時間まで、好ましくは孵化処理後 24時間以降 72時間まで、もっとも好ましくは孵化処 理後 48時間以降約 64時間までである。
[0023] 本発明者らは先にゥズラでは孵卵開始後約 48時間後、ニヮトリでは孵卵開始後約 55時間の PGCにレトロウイルスによって導入された異種遺伝子は、宿主による不活 性ィ匕を受けず、蛋白を高発現するトランスジエニック鳥類作製が可能であることを見
出した。本発明においても、これら最適時間に PGCを取得し、レトロウイルスを感染さ せることにより、蛋白発現量の高い生殖系列トランスジヱニック鳥類を作製可能である
[0024] 異種遺伝子を PGCに導入するために、本発明では異種遺伝子を媒介し得るレトロ ウィルスベクターを使用する。レトロウイルスベクターとしては、任意のレトロウイルスべ クタ一が使用できる。例えば VSV—G偽型レトロウイルスベクターであってもよい。好 ましくは、本発明で使用されるレトロウイルスベクターとしては、例えばモロ-一 'ミュー リン ·ロイケミア ·ウィルス (MoMLV)、ェビアン'ロイコシス ·ウィルス (ALV)等に由来 するベクターや、レンチウィルスベクター等が挙げられる。なかでも MoMLVに由来 するものが好ましいが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[0025] 本明細書にいう異種遺伝子を媒介し得るレトロウイルスベクターは、真核細胞にお V、てそのウィルスの RNA遺伝子情報が真核細胞の DNAに組み込まれた場合、真 核細胞にその異種遺伝子が提供されるものをいう。好ましくは、その RNAの塩基配 列が、異種蛋白質をコードする DNAの塩基配列と相補的な部分を有する。
[0026] 安全性を考慮し、異種遺伝子を媒介し得るベクターとして用いられるレトロウイルス は、複製能欠失型であってもよい。複製能欠失型ウィルスとしては、通常ウィルス粒 子の複製に必要な 3種の遺伝子 gag、 pol、 envのうちいずれかまたは全てを欠くこと により、自己複製能を欠失したウィルスが用いられる。鳥類細胞にこのウィルスベクタ 一を効率的に感染させるため、外皮タンパクを人工的に VSV— G (水疱性口内炎ゥ ィルス由来)シユードタイプとしたウィルスベクターが好ましいが、本発明はこのウィル スタイプに限定されるものではな 、。
[0027] レトロウイルスを VSV— Gシユード型とする利点としては、超遠心により濃縮可能で ある点も挙げられる。本ベクターに、 GFPのような蛍光蛋白質発現遺伝子をマーカー として組み込み、培養細胞に感染させることにより感染可能なウィルス濃度を定量す ることができる。本発明に使用するウィルスベクターは、遠心法により高濃度に濃縮さ れたものが効率の点から好ま 、。
[0028] 本発明の作製法では好ましくは、高タイターのレトロウイルスベクターを使用してもよ い。高タイターとは、例えば 1 X 107cfu/ml以上、 1 X 101Qcfu/ml以下、好ましくは
1 X 108cfu/ml以上、 1 X 101Qcfu/ml以下、より好ましくは 1 X 109cfu/ml以上、 1 X 101Q CfuZml以下のタイターであってもよい。高タイターを持つ複製能欠失型レト ロウィルスベクターを PGCに感染させることが、遺伝子を効率よく導入できる点で好ま しい。したがって、本発明は、高タイターのレトロウイルスベクターを PGCに感染させ ることによる、異種遺伝子を媒介した PGCの生産あるいは増加させる方法にも関する
[0029] 高タイターのレトロウイルスベクターを作製するには、高タイターのウィルスパッケ一 ジング細胞の選別が必要である力 そのためには蛍光蛋白マーカーを、フローサイト メーターにより選別する方法によってもよい。また遺伝子組換え技法により、外皮を V SV—Gシユード型等に変えることで、超遠心法による濃縮に耐えるレトロウイルスべク ターの作製が可能になる。一度超遠心で濃縮したウィルス液を、再度超遠心法で濃 縮する方法は、不要蛋白の混入増大の観点からインジェクション法に使用するには 好ましくはないが、 PGCに感染させる手法としては有効である。
[0030] ウィルスタイターの測定は、例えば、以下のように行う。測定の前日に NIH3T3細 胞(アメリカン'タイプ'カルチヤ一'コレクションより入手)を直径 35mmのディッシュに 約 7 X 104細胞植え培養する。蛍光マーカーを付与したウィルスの、約 102から 106倍 に希釈した溶液を各ディッシュに lmlカ卩え、約 48時間後に蛍光顕微鏡により GFPを 発現している細胞の割合(100%を 1とする)を測定し、以下の計算式によりタイター を決定する。
[0031] ウィルスタイター =細胞数 X希釈率 X発現割合
レトロウイルスベクターに異種遺伝子を導入するには、ノ ッケージングシグナル配列 を有するプラスミドを、パッケージング細胞にリポフエクシヨン、エレクト口ポレーシヨン 法等により導入する方法がある。
[0032] 異種遺伝子を媒介したレトロウイルスベクターを、受精卵初期胚に導入するには、リ ポフエクシヨン法、エレクト口ポレーシヨン法や、マイクロインジェクション法によって受 精卵初期胚に感染させる方法がある。好ましくはマイクロインジヱクシヨン法を使用し 得る。
[0033] ここにいう異種遺伝子とは、特定の宿主細胞に対して外来のソース力 起源する遺
伝子、あるいは、同じソースであっても、本来の形態から修飾されている遺伝子を意 味する。よって、宿主細胞中の異種遺伝子は、特定の宿主細胞に対して外来性であ る力、例えば、 DNAシャッフリングの使用によって修飾された遺伝子を含む。該用語 はまた、天然には多重コピーが存在しない天然に存在する遺伝子を含む。なお、本 明細書では、異種 (性)、外来 (性)、外部 (性)遺伝子または蛋白質の語は、相互交 換的〖こ使用されることちある。
[0034] 本発明により鳥類に導入される異種遺伝子は特に限定されないが、レトロウイルス に由来しない遺伝子としては、マーカー遺伝子や、目的蛋白質を発現するための構 造遺伝子、これらの遺伝子発現をコントロールするプロモーター遺伝子、分泌シグナ ル遺伝子等から適宜選ばれる。
[0035] 上記マーカー遺伝子としては、ネオマイシン耐性遺伝子、 |8—ガラクトシダーゼ遺 伝子、蛍光蛋白質例えば GFP (グリーン 'フルォレツセント ·プロテイン)等をコードし た遺伝子が挙げられる。
[0036] 上記目的蛋白質を発現するための構造遺伝子としては特に限定されず、ヒトモノク ローナル抗体、キメラ抗体、 1本鎖化等の修飾を施した人工抗体、エリスロポエチン、 G— CSF、トロンボポェチン、インターフェロンなどの遺伝子産業上有用な抗体、酵 素等をコードした遺伝子などが挙げられる。
[0037] トランスジエニック鳥類に導入する有用蛋白質遺伝子としては、エリスロポエチンの 構成遺伝子のように、発現したタンパクの活性、安定性維持に糖鎖が必要なものや、 抗体遺伝子などが挙げられる。
[0038] また、その他の有用生理活性物質の遺伝子を用いることもできる。特に、卵中での 蓄積がよいことから、ヒ HgGクラスの定常領域をもつ抗体の遺伝子や、ヒト IgGl,ゥズ ラ IgG2, -ヮトリ IgG2やマウス IgG2のサブクラスの定常領域をもつ抗体の遺伝子な ど外来性抗体の構造遺伝子が好まし ヽ。
[0039] また好ましい上記構造遺伝子としては、キメラ抗体の構造遺伝子が挙げられる。キメ ラ抗体とは、 2種以上の異なる遺伝形質から構成される抗体のことをいう。従来マウス ノ、イブリドーマによって作製された医療用抗体は、マウス由来であるためヒト体内に投 与されると免疫系による拒絶反応が引き起こされるという問題があった。この欠点を解
消するため、例えばマウス抗体を組換え手法によって Fc部等をヒト化することにより、 拒絶反応のリスクを大幅に軽減することができる。
[0040] 上記キメラ抗体としては、例えば抗ヒト CD2抗体、抗 CD20受容体抗体、抗 TNF抗 体などが挙げられ、すでに医薬品として上巿されているものもある。
[0041] さらに好ましい上記構造遺伝子としては、 scFv— Fc抗体の構造遺伝子が挙げられ る。医療用の組換え抗体には、この他に低分子抗体と称される一群がある。免疫グロ ブリン IgGには直接抗原と結合する可変領域(Fv : Fragment of variable regeo n)と呼ばれる VH, VLのへテロ二量体力もなるドメインがあり、この Fvドメインは IgG の約 5分の 1の分子量でありながら、単独で充分な抗原結合能を持つ。 VH、 VLドメ イン間を人工的にペプチドリンカ一で結合したものが 1本鎖抗体(scFv: single chai n Fv)と呼ばれる低分子抗体で、 VH, VL単独よりも安定性が向上することが知られ ている。
[0042] Powersら(Powers, D. Bら(2000)J Immunol Method. 251 , 123)は、この s cFvにヒト IgGlに由来する Fc部を融合させることで、血中での安定性が増すことを見 出した。この scFv— Fc抗体は医療用として有用と考えられる力 安価な大量生産シ ステムである大腸菌では生産されな!、。
[0043] 上記プロモーター遺伝子としては、任意のプロモーター、例えば構成的プロモータ 一として RSVプロモーター;部位特異的プロモーター、例えば j8—ァクチンプロモー ター;時期特異的プロモーター、例えばオボアルブミンプロモーターなどが挙げられ る。好ましくは、構成的なプロモーターを使用する。抗体遺伝子が構成的なプロモー ターにより制御されている場合、抗体遺伝子発現が安定してよいので好ましい。より 好ましい構成的なプロモーターとして、 -ヮトリ βァクチンプロモーターが挙げられる。 βァクチンプロモーターで発現制御した場合、 目的タンパクは血中に発現される特 徴がある。
[0044] 一般的なトランスジヱニック動物による蛋白質生産では、乳汁、あるいは卵中に目 的蛋白質を生産させる時、性成熟によって乳汁分泌、あるいは産卵等が開始される までその生産量がどれくらいか見当がつかないとの欠点がある。生物種によっては性 成熟には数年力かる場合もあり、産業的に目的タンパクを計画生産する時の大きな
不安定要素となっている。この点、 j8ァクチンプロモーターで発現制御したトランスジ エニック鳥類においては、幼鳥類の段階で血液中のタンパク発現量を調べる事で、 性成熟後の卵中タンパク発現量を予見的に把握することが可能であり、計画生産に は大きなプラス要因となる。
[0045] 本発明で使用する鳥類としては特に限定されず、例えば-ヮトリ、七面鳥類、カモ、 ダチョウ、ゥズラなど、食肉、採卵目的で家畜化されている家禽鳥類や愛玩用鳥類を 挙げることができる。なかでも-ヮトリやゥズラは入手が容易で、産卵種としても多産で ある点が好ましい。
[0046] 本発明にお 、て、受精卵初期胚を取得するための第一の鳥類と、異種遺伝子が導 入された始原生殖細胞を移植すべき受精卵初期胚の由来となる第二の鳥類とは、同 一種でも異なる種でも可能である。同一種、または同一種かつ同一系統を採用する 場合、同一個体でも異なる個体でも可能である。簡便には、異なる個体を使用する。 また、例えば-ヮトリの PGCをゥズラに移植することも可能である。しかし移植効率の 観点から、同一種間の移植が好ましい。
[0047] 同一種の中では同じ系統間の移植でもよいが、異なる系統間の移植が可能である 。具体的には、第一の鳥受精卵初期胚が取得される鳥の系統と、第二の受精卵初期 胚が取得される鳥の系統が異なってもよい。このとき、第一の鳥受精卵初期胚におけ る生殖細胞の増殖速度と、第二の受精卵初期胚における生殖細胞の増殖速度が異 なる場合がある。好ましくは、第一の受精卵初期胚における生殖細胞の増殖速度の 方が、第二の受精卵初期胚における生殖細胞の増殖速度よりも大きい場合である。 例えば、ニヮトリ白色レグホン由来の PGCにレトロウイルスで異種遺伝子を導入し、二 ヮトリ横斑プリマスロックの受精卵に移植することが可能である。この場合、 PGC提供 系統である白色レグホンのほうが生殖細胞の増殖速度において勝るため、異種遺伝 子を導入された白色レグホンの生殖細胞のほうがプリマスロック体内で優位に生成す るとの点で好ましい。またこの場合、羽毛色によってドナーの子孫を簡便に見分ける 事ができる点が好ま 、。本例のように羽毛色の異なる種間で PGC移植を行なう利 点として、異種遺伝子を導入したドナー PGC由来のトランスジエニック鳥類を、目視 により簡便に選別できる。
[0048] 上記異種遺伝子が導入された初期胚を有する受精卵を通常の家禽飼育法にした 力 て孵化成長させ、トランスジエニック鳥類を生産する。該トランスジエニック鳥類に 、通常の繁殖法、伝統的育種法または遺伝子工学的手法を適用して、その子孫を生 産する。
[0049] GO生殖系列トランスジ ニックキメラ鳥類と非トランスジ ニック鳥類、例えば野生型 鳥類、あるいは GO生殖系列トランスジヱニックキメラ鳥類同士を交配させて誕生する 子孫、例えば二世代目、三世代目は、これらが導入遺伝子を染色体にもつ生殖細胞 から発生した場合、全身の体細胞に導入遺伝子を含有する完全体個体として成長 する。この生殖系列トランスジエニックキメラ個体力も導入遺伝子を受け継ぐ子孫を、 代々 G1〜G2〜G3トランスジエニック鳥類と称する。交配は自然交配でも人工交配 でもよいが、生産を人為的に調整できる観点力も人工交配が好ましい。
[0050] また交配する相手は、ドナー系統、レシピエント系統または別個の第三系統でもよく 、他の種でも受精可能ならば交配できるが、受精効率の点からドナー系統との交配 が好ましい。交配型としては GOトランスジエニックォスと野生型メス、 GOトランスジェ- ックメスと野生型ォス、 GOトランスジエニックのォスとメス等が考えられ、更に子孫とそ の親による戻し交配も可能である。中でも GOォスと野生型メスの交配型は、 1羽の GO ォスに対し、野生型メス 3羽から 10羽を交配させることができるため、効率の点力も好 ましい。
[0051] 本発明による GO生殖系列トランスジヱニックキメラ鳥類を、先に述べたごとく交配さ せることにより、導入遺伝子を子孫に伝播させることができるとともに、全身の体細胞 に導入遺伝子をもつ完全なトランスジエニック鳥類を作製できる。レトロウイルスを受 精卵に直接インジェクションする方法で GOトランスジエニック鳥類を作製した場合、生 殖系列トランスジエニックキメラ体 GOの選別を行う必要があり、更にその交配によって 導入遺伝子をもつトランスジヱニック完全体 G1が誕生する頻度が 3%程度と低いとの 問題があつたが、本発明による PGC移植法では、高い頻度で生殖系列トランスジェ ニック鳥類 GOが得られ、その結果高!、頻度で G1完全体が誕生することが可能であ る。また、第一の受精卵初期胚における生殖細胞の増殖速度の方が、第二の受精卵 初期胚における生殖細胞の増殖速度よりも大きい場合、 GO個体において、導入遺
伝子を有するドナー側の生殖細胞が、レシピエント側の生殖細胞より存在比が高くな るため、結果として G1や G2などの子孫における完全体の割合をより高めることが可 能である。こうして作製した完全体の系統保存には、精子凍結保存法の応用が可能 である。
[0052] 本発明は、このように蛋白質生産に有利な完全体としてのトランスジエニック鳥類作 製法を開示する。また該作製法による遺伝子導入鳥類を開示する。
[0053] このように、安定的に導入遺伝子を伝播するトランスジヱニック鳥類の系統を確立す ることで、蛋白質産生システムとしての品質の安定ィ匕が可能である。更に完全なトラン スジエニック鳥類は、導入遺伝子をもつ体細胞の割合が多いことから、 GOトランスジ エニックキメラ鳥類に比べ、導入遺伝子に由来する組換え蛋白質の産生量が増加す ることが可能である。
[0054] 本発明のタンパク生産法は、上記トランスジエニックキメラ鳥類力 抗体を抽出し、 必要により精製することを特徴とする。上記トランスジエニック鳥類は、 GOであってもよ ぐあるいはその子孫例えば、 Gl、 G2またはそれ以降の世代のトランスジエニック鳥 類子孫であってよい。より詳細には、作製されたトランスジエニックキメラ鳥類の血中 及び Z又は卵中から抗体を回収、精製する抗体の生産法である。抗体の抽出は、硫 安沈殿等による不用蛋白除去、プロテイン A等の吸着カラム、イオン交換カラムや、 限外濾過膜等による分別処理の組み合わせにより行う。
[0055] 本発明の GOトランスジエニックキメラ鳥類において、鳥類に導入される遺伝子として 、これらヒトモノクローナル抗体遺伝子、キメラ抗体遺伝子、 scFv— Fc抗体遺伝子、 1 本鎖化等の修飾を施した人工抗体、エリスロポエチン、 G— CSF、トロンボポェチン、 インターフェロンなどの遺伝子産業上有用な抗体、生理活性蛋白、酵素等をコードし た遺伝子を使用する。従来生産が困難だった抗体などの医薬品を安価に大量生産 することができる。
[0056] 例えば、キメラ抗体遺伝子を導入した GOトランスジエニックキメラ鳥類の場合、血液 中の抗体含有量の例は、好ましくは約 0. 5 μ gZml以上、より好ましくは約 5 μ g/m 1以上である。また、卵白中の抗体含有量の例は、好ましくは約 0. 1 μ gZml以上、よ り好ましくは約 1 μ gZml以上であり、卵黄中の抗体含有量の例は、好ましくは約 0.
1 μ gZml以上、より好ましくは約 1 μ gZml以上である。
[0057] また、 scFv—Fc抗体遺伝子を導入した GOトランスジエニックキメラ鳥類の場合、血 液中の抗体含有量の例は、好ましくは約 20 /z gZml以上、より好ましくは約 2000 gZml以上である。また、卵白中の抗体含有量の例は、好ましくは約 5 μ gZml以上
、より好ましくは約 500 μ gZml以上である。
[0058] さらに、本発明によれば、本発明のトランスジエニック鳥類の作製法によって、畜産 用または愛玩用の鳥類の品種改良も行い得る。
実施例
[0059] 以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例により限定され るものではない。
[0060] (実施例 1)抗 CD2抗体発現ベクターコンストラクトの作製
抗 CD2抗体発現用ベクターコンストラクト pMSCVZG Δ AH、 pMSCV/G A AL 及び pMSCVZG Δ ALIHは、以下のように作製した。
[0061] ヒト抗体(IgM)産生ハイブリドーマ細胞 D253— 15— 6 (アメリカン'タイプ'カルチヤ 一'コレクション HB— 8789)から Quick Prep Micro mRNA Purification Kit (フアルマシア社製)を用いて mRNAを取得し、得られた mRNAから First— Str and cDNA Synthesis Kit (フアルマシア社製)を用いて cDNAライブラリを調製 L† 0 2つのィ匕学合成才ジゴヌクレ才チ 5, - atcctcgagaggccaaagtacagtg - 3 ' ( 下線部は Xhol制限酵素サイ卜)及び 5 ' - cccggatccctaacactctcccctgttgaagct - 3 ' (下線部は BamHI制限酵素サイト)をプライマーとする PCR (94°CZl分→50 °CZl分→72°CZl分 30秒: 25サイクル; Taq DNAポリメラーゼ(パーキンエルマ 一社製) )により上記 cDNAライブラリからヒト抗体 L鎖 κ定常領域 (hC κ )の遺伝子 断片を増幅後、制限酵素 Xhol及び BamHIによって切り出し、プラスミド pBluescrip tllKS ( -) (ストラタジーン社製)の XhoI、 BamHIサイトへ挿入し、プラスミド pBlueZ hC κを作製した。
[0062] 同様にして、 2つの化学合成オリゴヌクレオチド 5 '— aecggccgctacaggtgtccactc cgacatcgtgatgacccagtctcc - 3 ' (下線部は Notl制限酵素サイ卜)及び 5, -cctct cgaggatagaagttattcagcaggcacac - 3 ' (下線部は Xhol制限酵素サイト)をプライ
マーとする PCRにより上記 cDNAライブラリからヒト抗体 L鎖可変領域 (hVL)の遺伝 子断片を増幅後、制限酵素 Notl及び Xholによって切り出し、 pBluescriptllKS ( - )の NotI、 Xholサイトへ挿入し、プラスミド pBlueZhVLを作製した。
[0063] 同様にして、 2つの化学合成オリゴヌクレオチド 5,一 aceies^scgtggccgttggctgc ctcgcaca - 3 ' (下線部は Xhol制限酵素サイ卜)及び 5, - actaagcttacgttgtacagg gtgggtttacc - 3 ' (下線部は Hindm制限酵素サイト)をプライマーとする PCRにより 上記 cDNAライブラリからヒト抗体 H鎖 μ定常領域 (hC μ )の遺伝子断片を増幅後、 制限酵素 Xhol及び Hindmによって切り出し、 pBluescriptllKS (—)の XhoI、 Hin dillサイトへ挿入し、プラスミド pBlueZhC μを作製した。
[0064] 同様にして、 2つの化学合成オリゴヌクレオチド 5 '— aecggccgctacaggtgtccactc cgaggtgcagctggtggagtctgg - 3 ' (下線部は Notl制限酵素サイト)及び 5 ' - cacgc tcgaggtatccgacggggaattctcacagga - 3 ' (下線部は Xhol制限酵素サイト)をプラ イマ一とする PCRにより上記 cDNAライブラリからヒト抗体 H鎖可変領域 (hVH)の遺 伝子断片を増幅後、制限酵素 Notl及び Xholによって切り出し、 pBluescriptllKS ( 一)の NotI、 Xholサイトへ挿入し、プラスミド pBlueZhVHを作製した。
[0065] pBlue/hC κ力 hC κ遺伝子断片を制限酵素 Xhol及び BamHIによって切り出 し、プラスミド pCEP4 (インビトロジェン社製)の XhoI、 BamHIサイトへ挿入し、プラス ミド pCEP4ZhC κを作製した。
[0066] 2つのィ匕学合成オリゴヌクレオチド 5, - cccaagcttgatctccactgggatggtgggggccc tcctcttgctgctg— 3,(下線部は Hindm制限酵素サイト)及び 5, - cccggatcctcag tcaaggcgccttcgcatgaagaggccgatccccagggccaccaccagcagcaagaggagggcccc - 3 ' (下線部は BamHI制限酵素サイト)を 21bpsにわたつて相補的な 3 '末端でァ- ールさせ、 T4 DNAポリメラーゼ (宝酒造社製)を用いた DNA2重鎖合成反応によ つて上皮増殖因子受容体膜貫通領域 (TM)の遺伝子断片を調製した。得られた T M遺伝子断片を制限酵素 Hindm及び BamHIによって処理後、 pBluescriptllKS ( 一)の HindIII、 BamHIサイトに挿入し、プラスミド pBlue/TMを作製した。
[0067] pBlue/hC μ力 hC μ遺伝子断片を制限酵素 Xhol及び Hindmによって切り出 し、 pBlue/TMの XhoI、 Hindlllサイトへ挿入し、プラスミド pBlue/hC μ TMを作
製した。
[0068] pBlue/hC μ TMから一連の hC μ遺伝子及び ΤΜ遺伝子を含む断片を制限酵素
Xhol及び BamHIによって切り出し、 pCEP4の XhoI、 BamHIサイトへ挿入し、プラ スミド pCEP4ZhC μ TMを作製した。
[0069] pCEP4ZhC /z TMを制限酵素 BamHIによって切断し、末端を T4 DNAポリメラ ーゼによって平滑処理後、セルフライゲーシヨンによりプラスミド pCEP4ZhC μ TM
Δ Βを作製した。
[0070] ィ匕学合成才ジゴヌクレ才チ 5, - tgaagacagatggcgccgccacagttcgttt - 3 ' (下 線部は Narl制限酵素サイト)を用いた部位特異的変異導入により pBlueZhVLが保 有する hVLの 3 '末端にアミノ酸暗号の変更を伴わずに制限酵素 Narlサイトを導入し 、プラスミド pBlue/hVLNを作製した。
[0071] 化学合成オリゴヌクレオチド 5, - tggggcggatgcggatcctgaggagacggt - 3 ' (下線 部は BamHI制限酵素サイト)を用いた部位特異的変異導入により pBlueZhVHが 保有する hVHの 3 '末端にアミノ酸暗号の変更を伴わずに制限酵素 BamHIサイトを 導入し、プラスミド PBlue/hVHBを作製した。
[0072] 抗ヒト CD2マウス抗体産生ハイブリドーマ細胞 TS2Z18. 1. 1 (アメリカン 'タイプ' カルチャー.コレクション HB— 195)から Quick Prep Micro mRNA Purifica tion Kitを用いて mRNAを取得し、得られた mRNAから First— Strand cDNA Synthesis Kitを用いて cDNAライブラリを調製した。 2つの化学合成オリゴヌクレオ チド 5 ' - cgcggccgcctcagggaaagtttgaagatg - 3 ' (下線部は Notl制限酵素サイト )及び 5 ' - cggcgccgccacagtccgttttatttccagcttggt - 3 ' (下線部は Narl制限酵 素サイト)をプライマーとする PCRにより上記 cDNAライブラリからマウス抗体 L鎖可変 領域 (mVL)の遺伝子断片を増幅後、制限酵素 Notl及び Narlによって切り出し、 p BlueZhVLNの NotI、 Narlサイトへ挿入してプラスミド pBlueZmVLを作製した。
[0073] 同様にして、 2つのィ 学合成オリゴヌクレオチド 5 , - cgcggccgcgaacacggamccct caccatg- 3 ' (下線部は Notl制限酵素サイ卜)及び 5, - cggatcctgcagagacagtgac cagagt- 3 ' (下線部は BamHI制限酵素サイト)をプライマーとする PCRにより上記 c DNAライブラリからマウス抗体 H鎖可変領域 (mVH)の遺伝子断片を増幅後、制限
酵素 Notl及び BamHIによって切り出し、 pBluescriptllKS (—)の NotI、 BamHIサ イトへ挿入し、プラスミド pBlue/mVHを作製した。
[0074] pBlueZmVLから mVL遺伝子断片を制限酵素 Notl及び Xholによって切り出し、 pCEP4/hC κの NotI、 Xholサイトへ挿入し、プラスミド pCEP4/lgL κを作製した
[0075] pBlueZhVHBから hVH遺伝子断片を制限酵素 Notl及び Xholによって切り出し 、 pCEP4/hC μ ΤΜ Βの NotI、 Xholサイトへ挿入し、プラスミド pCEP4ZhIgH μ ΤΜを作製した。
[0076] pBlueZmVHから mVH遺伝子断片を制限酵素 Notl及び BamHIによって切り出 し、制限酵素 Notl及び BamHIによって処理した pCEP4ZhIgH μ ΤΜのベクター 断片に連結し、プラスミド pCEP4ZlgH /z ΤΜを作製した。
[0077] pMSCVneoは公知文献(Gene Ther. 1994 MAR; 1(2) : 136— 8. )とインタ 一ネットの情報を元に全合成した (東洋紡績社製)。 pMSCVneoから一連のミューリ ン ·ホスホグリセレート'キナーゼ(PGK)プロモーター及び Neor遺伝子を含む断片を 制限酵素 Bglll及び BamHIによって除去し、残ったベクター断片のセルフライゲーシ ヨンによりプラスミド pMSCVを作製した。
[0078] pGREEN LANTERN— 1から GFP遺伝子断片を制限酵素 Notlによって切り出 し、 pZeoSV2 ( + )の Notlサイトに挿入した。 T7プロモーターと同方向に GFP遺伝 子が挿入された構造のプラスミドを pZeoZGFPとした。
[0079] pZeoZGFPから GFP遺伝子断片を制限酵素 EcoRI及び Xholによって切り出し、 制限酵素 EcoRI及び Xholによって処理した pMSCVのベクター断片に連結し、プラ スミド pMSCVZGを作製した。
[0080] ヒト抗体(IgGl)産生ミエローマ細胞 IM— 9 (ジャパニーズ 'コレクション'ォブ 'リサ ーチ'バイオリソーシズ 0024)力ら mRNA isolation Kit (ロッシュ社製)を用いて mRNAを取得し、得られた mRNAから ReverTra Ace (東洋紡社製)を用 、て cD NAライブラリを調製した。 2つの化学合成オリゴヌクレオチド 5, -caagcttcaagggcc cat— 3 ,及び 5 ' - atttacccggagacaggga- 3 'をプライマーとする PCR (95。CZ2 分→52°CZ30秒→74°CZ3分: 30サイクル; Pfu DNAポリメラーゼ(プロメガ社製
) )により上記 cDNAライブラリからヒト抗体 H鎖 γ 1定常領域 (Μ γ 1)の遺伝子断片 を増幅した。さらに、 2つの化学合成オリゴヌクレオチド 5 '— ataggatccgctagcttcaa gggcccatcg— 3 ' (下線部は BamHI制限酵素サイト)及び 5 ' -agcaagctttcatttac ccggagacaggga- 3 ' (下線部は Hindlll制限酵素サイト)をプライマーとする PCR (9 4°C/ 15秒→58°CZ30秒→68°CZ 1分: 30サイクル; KOD— plus - DNAポリメラ ーゼ)により上記 PCR産物力 hC y 1遺伝子断片を増幅後、制限酵素 BamHI及び Hindlllによって切り出し、 pBluescriptIISK ( + )の BamHI、 Hindlllサイトへ挿入 し、プラスミド pBlue/hC y 1を作製した。
[0081] pCEP4/lgH μ ΤΜから mVH遺伝子断片を制限酵素 Hindlll及び BamHIによつ て切り出した。 pBlueZhC y 1から hC y 1遺伝子断片を制限酵素 BamHI及び Hind ΠΙによって切り出した。制限酵素 Hindlllによって処理したプラスミド pETBlue— 2 ( ノバジェン社製)のベクター断片に上記切り出した 2断片を連結し、プラスミド pETBlu eZlgH y lを作製した。
22. pETBlue/lgH γ 1から抗体 Η鎖 γ 1 (IgH γ 1)の遺伝子断片を制限酵素 Hin dillによって切り出し、 pMSCVZGの Hindlllサイトへ挿入した。 GFP遺伝子と同方 向に IgH γ 1遺伝子が挿入された構造のプラスミドを pMSCVZGHとした。
[0082] 2つのィ匕学合成オリゴヌクレオチド 5, - acgcgtcgacgtgcatgcacgctcattg - 3 ' (下 線部は Sail制限酵素サイト)及び 5 ' - acgcgtcgacaacgcagcgactcccg - 3 ' (下線 部は Sail制限酵素サイト)をプライマーとする PCR (94°CZ15秒→50°CZ30秒→6 8°CZl分: 10サイクル; 94°CZ15秒→62°CZ30秒→68°CZl分: 30サイクル)に より pMiwZから Δ Actプロモーター断片を増幅後、制限酵素 Sailによって Δ Actプ 口モーター断片を切り出し、 pETBlue— 2の Sailサイトへ挿入し、プラスミド pETBlue Ζ Δ Actを作製した。
[0083] pETBlueZ Δ Actから Δ Actプロモーター断片を制限酵素 Sailによって切り出し、 pMSCV/GHの Xholサイトへ挿入した。 IgH γ 1遺伝子と同方向に Δ Actプロモー ターが挿入された構造のプラスミドを pMSCVZG Δ AHとした。
[0084] 2つのィ匕学合成才ジゴヌクレ才チ 5, - aatgtcgacatggtgtccacttctcagctc - 3 ' ( 下線部は Sail制限酵素サイト)及び 5, - ttcgtcgacctaacactctcccctgttgaa - 3 ' (
下線部は Sail制限酵素サイト)をプライマーとする PCR (95°C/30秒→50°C/30 秒→74°CZ2分: 10サイクル; 95°CZ30秒→60°CZ30秒→74°CZ2分: 30サイク ル; Pfu DNAポリメラーゼ)により pCEP4Z L κから抗体 L鎖 κ (IgL κ )の遺伝子 断片を増幅後、制限酵素 Sailによって切り出し、 pETBlue— 2の Sailサイトへ挿入し 、プラスミド pETBlue/lgL κを作製した。
[0085] pETBlueZ Δ Actから Δ Actプロモーター断片を制限酵素 Sailによって切り出し、 pMSCVZGの Xholサイトへ挿入した。 GFP遺伝子と同方向に Δ Actプロモーター が挿入された構造のプラスミドを pMSCVZG Δ Aとした。
27. pETBlue/lgL κから IgL κ遺伝子断片を制限酵素 Sailによって切り出し、 pM SCVZG Δ Aの Sailサイトへ挿入した。 Δ Actプロモーターと同方向に IgL κ遺伝子 断片が挿入された構造のプラスミドを pMSCVZG Δ ALとした。
[0086] 2つのィ匕学合成オリゴヌクレオチド 5, - acgcgtcgaccgcccctctccctccccc - 3 ' (下 線部は Sail制限酵素サイト)及び 5, - ccgctcgagattatcatcgtgtttttcaaaggaaaacc acgtc - 3 ' (下線部は Xhol制限酵素サイト)をプライマーとする PCR (94°CZ15秒 →60°C/30秒→68°C/1分: 30サイクル)によりプラスミド pLXIN (クロンテック社製 )から IRES断片を増幅後、制限酵素 Sail及び Xholによって切り出し、 pETBlue— 2 の Sall、 Xholサイトへ挿入し、プラスミド pETBlueZlRESを作製した。
[0087] pETBlueZlRESから IRES断片を制限酵素 Sail及び Xholによって切り出し、 pM SCVZG A AHの Sailサイトへ挿入した。 IgH γ 1遺伝子と同方向に IRESが挿入さ れた構造のプラスミドを pMSCVZG Δ AIHとした。
[0088] pETBlue/lgL κから IgL κ遺伝子断片を制限酵素 Sailによって切り出し、 pMS CV/G Δ AIHの Sailサイトへ挿入した。 Δ Actプロモーターと同方向に IgL κ遺伝 子断片が挿入された構造のプラスミドを pMSCVZG Δ ALIHとした。
[0089] このように作製した複製能欠失型レトロウイルスベクターのベクターコンストラクト PM SCV/G Δ ALIHの構造を図 1に示した。
[0090] (実施例 2)抗 CD2抗体発現レトロウイルスベクターの調製
実施例 1で作製したベクターコンストラクト pMSCV/G A ALIHよりレトウィルスべク ターを調製するため、ノ ッケージング細胞 GP293 (クロンテック社製)を直径 100mm
の培養ディッシュに 5 X 106細胞植え、培養した。培地を新鮮な DMEM (ダルベッコ 変法イーグル培地)に交換し、 p— VSV— Gベクター(クロンテック社製) 8 μ gと pMS CVN AA jS 8 μ gをリポフエクシヨン法により前記 GP293細胞に導入した。 48時間後 、ウィルス粒子を含む培養上清を回収し、 0. 45 m酢酸セルロースフィルター(アド バンテック社製)を通して夾雑物を除去した。得られた溶液にポリプレン (シグマ社製) を 10 μ gZmlとなるように加えウィルス液とした。
[0091] 調製したウィルス液を別に培養した GP293細胞に加え、 48時間培養後 600 μ gZ mlの G418 (GIBCO BRL社製)を含む培養液で植え継ぎ、安定な G418安定形質 転換 GP293株を取得した。
[0092] 得られた安定形質転^ ¾を 80%コンフルェントとなるよう直径 100mmディッシュに 培養し、 16 /z gの pVSV— Gをリポフエクシヨン法で導入した。 48時間後ウィルス粒子 を含む培養上清 12mlを回収した。
[0093] この培養上清を 50, 000 X g、 4°Cで 1. 5時間遠心を行、、ウィルスを沈殿させた。
上清を除き、ウィルス粒子を含む沈殿物に 50 1の 50mM Tris—HCl (pH7. 8)、 130mM NaCl、 ImM EDTA溶液を加え、 4°Cでー晚放置後、よく懸濁してウイ ルス溶液を回収した。このようにして得られた高タイターウィルスベクターは、 108cfu Z mlで toつた。
[0094] ウィルスタイターの測定は、以下のように行った。測定の前日に NIH3T3細胞(ァメ リカン 'タイプ'カルチヤ一'コレクションより入手)を直径 35mmのディッシュに 7 X 104 細胞植え培養した。 102から 106倍に希釈したウィルス溶液を各ディッシュに lmlカロえ 、 48時間後に蛍光顕微鏡により GFPを発現している細胞の割合を測定し、以下の計 算式によりタイターを決定した。
[0095] ウィルスタイター =細胞数 X希釈率 X発現割合 (cfuZml)
[0096] (実施例 3) PGCの調製
-ヮトリの受精卵由来 PGCは、以下のように調製した。
[0097] 孵卵開始後 50時間目(ステージ Xin〜XV)のニヮトリ受精卵 (城山種鶏場産)を横 置きにして、 1分間以上静置した。静置することにより胚が上部に移動するため、この 状態を保って静かに卵を割り、シャーレに移した。
[0098] 卵黄の上部に胚体があることを確認し、血管より 0. 5〜1. Ocm外側を血管に沿つ てハサミで切り取り、ヘラとピンセットですくいあげてリン酸緩衝液(1N塩酸にて pH7 . 4に調製)を満たしたシャーレに移した。この胚体をピンセットでつまみ、リン酸緩衝 液で卵黄を洗 ヽ落とした。洗浄後の胚体を 38°Cに熱したリン酸緩衝液を満たしたシ ヤーレに移し、ピンセットで広げた。
[0099] 実体顕微鏡下に観察しながら、胚体の腹部動脈血管を、切断用針を用いて切断し た。この操作によって流出した血液が胚体に溜まるので、先を細くしたノ スツールピ ペットを使ってこの血液を吸引し、ダルベッコ変法最小必須培地(D— MEM インビ トロジヱン社製)に懸濁した。
[0100] 集めた PGCを含む血液を遠心分離によって培地力 分離し、 300 μ 1の 6. 3%Fic oll400 (シグマ社製)【こ懸淘し、 600 /z lの 160/0Ficoll400【こ重層後、 1500rpmで 3 0分間遠心した。
[0101] 遠心処理により、 Ficollの境界付近に集められた PGCを回収し、ダルベッコ変法最 小必須培地で 3回洗浄後、同培地 lmlに懸濁後遠心濃縮した。
[0102] 実施例 2で調製した抗 CD2抗体発現レトロウイルスベクターを、同量の PGC懸濁液 とともに 37°Cで 4時間インキュベートし、抗 CD2抗体発現のための遺伝子が導入され た PGCを得た。
[0103] (実施例 4) PCR法による PGC中導入遺伝子の確認
実施例 3で調製した抗 CD2抗体発現のための遺伝子が導入された PGCから、キッ ト(東洋紡社製 MagExtractor— genome )を用いて抽出したゲノム DNA50ng を使 、、 PCR法で抗 CD2抗体発現用遺伝子が導入されて 、ることを確認した。
[0104] PCR法には、導入遺伝子に含まれる GFP遺伝子の一部 355bpを増幅可能なブラ イマ一セット:5 ' - CAACACTGGTCACTACCTTCACCTATG— 3, /5,— A CGGATCCATCCTCAATGTTGTGTC— 3,を用いた。内部標準として、 -ヮトリ ゲノムに含まれるオボアルブミン遺伝子の一部 317bpを増幅可能なプライマーセット : 5,— CGCTTTGATAAACTTCCAGGATTCGG— 3, /5,— CATCTAGCT GTCTTGCTTAAGCGTACA 3,を用いた。
[0105] 結果を図 2に示した。
[0106] (実施例 5) -ヮトリ胚へのレトロウイルスベクター感染 PGCのインジェクション 実施例 1とは別のニヮトリ受精卵を用意し、自動転卵装置が内蔵された孵卵器 (昭 和フランキ社製 P— 008型)内で 37. 9°C、湿度 65%環境に置いた時刻を孵卵開始 時刻(0時間)とし、以後 15分毎に 90度転卵しながら孵卵を行なった。
[0107] 孵卵開始後、受精卵の卵殻を 70%エタノールで消毒し、鋭端部を直径 3. 5cmの 円形にダイヤモンドカッター(MINOMO7C710、ミニター社製)で切り取り、胚を露 出させた。胚盤葉を実体顕微鏡で観察しながら、ガラス管 (CD— 1、ォリンパス社製) をマイクロピペット製作器 (PC— 10,オリンノス社製)でカ卩ェし、外径約 20 mとなる よう先端を折って作製した針を刺し、マイクロインジェクター(Transjector5246、エツ ペンドルフ社製)を用いて胚盤下腔の中央に、実施例 3で調製した抗 CD2抗体発現 のための遺伝子が導入された PCG懸濁液を 2 1注入した。この卵殻の切り口まで卵 白を満たした後、卵白を糊としてテフロン (登録商標)膜 (ミリラップ、ミリポア社製)とポ リ塩ィ匕ビ-リデンラップ (サランラップ、旭化成社製)とで蓋をし、 15分毎に 90度転卵 しながら孵卵を行なった。
[0108] 以上の操作を、それぞれ、孵卵後 50時間、 55時間、 60時間の受精卵に対して実 施した結果、インジェクションに最も好ましいのは、 -ヮトリの場合孵卵処理後 55時間 の受精卵であることがわ力つた。
産業上の利用可能性
[0109] 本発明の、トランスジエニック鳥類作製法は、効率的に完全な GOトランスジエニック 鳥類を生産し得る。本発明によれば、その子孫、例えば完全な G1トランスジエニック を効率的に、誕生させることができる。
[0110] 本発明の Gl、 G2、 G3〜トランスジエニック鳥類は、体細胞で異種遺伝子に由来す る蛋白質を発現するので、血清、卵白、卵黄力 回収、精製することで、これまで生 産困難であった糖鎖が付与した蛋白質や抗体類の安価な生産系を供給することが できる。
図面の簡単な説明
[0111] [図 1]抗 CD2抗体発現ベクターコンストラクト pMSCVZG AAH、 pMSCV/G AA L及び pMSCVZG Δ ALIHの構造を示す。 Amp1"はアンピシリン耐性遺伝子を示す
。 Ρ Δ actは j8—ァクチンプロモーター遺伝子を示す。 Ψ +はパッケージングシグナ ル配列を示す。 GFPはグリーン 'フルォレツセント'プロテイン遺伝子を示す。 Lは抗 CD2抗体軽鎖遺伝子を示す。 Hは抗 CD2抗体重鎖遺伝子を示す。 5 'LTR及び 3' LTRはそれぞれ MoMLVのロングターミナルリピート配列を示す。
[図 2]抗 CD2抗体発現遺伝子を、レトロウイルスベクターにより導入した PGCの PCR 結果である。レーン 1は無処理の PGC。レーン 2は抗 CD2発現遺伝子を導入した PG Cを表す。矢印は導入遺伝子を示す。
符号の説明
[0112] 1 レーン 1を示す。
[0113] 2 レーン 2を示す。