明細書
ヒト歯髄細胞の分化誘導方法及び象牙質再生用組成物 技術分野
本発明は、ヒト歯髄細胞から象牙芽細胞への分化誘導方法、象牙質の再生方法、 及び象牙質再生用組成物に関する。より詳細には、本発明は、ヒト歯髄細胞を 1, 2 5 (ジヒ ドロキシ) ビタミン D 3、 デキサメタゾン及ぴ J3—グリセ口ホスフエ 一トの存在下で培養することにより象牙芽細胞に分化させ、 該細胞を担体等と一 緒に培養および Zまたは移植することにより象牙質を再生する方法に関する。 本 発明は上記培養により得られる象牙質再生用組成物に関する。 本発明はさらに、 上記方法により再生された象牙質に関する。 本発明はさらに、 上記方法により分 化誘導された象牙芽細胞もしくは再生された象牙質を用いて歯科患者を治療する 方法に関する。 背景技術
現代社会は高齢化社会であり、 数年後には日本国民人口の約 2 0 %が 6 5歳以 上の高齢者になることが予想されている。 これら高齢者の大多数は、 一部又は全 部の歯牙を喪失しており、 多くの人は可綴式義歯 (いわゆる入れ歯) を使用して いる。 従来の義歯は、 着脱が必要で装着感もよくないなどの実際的問題のみなら ず、 心理的にも老化の象徴といった印象があり、 できれば義歯を使用したくない というのが患者の一般的認識である。 さらに、 全ての歯牙を喪失した場合に、 総 義歯を装着すると、 その咀嚼能力は通常の天然歯牙の約 5分の 1となることが知 られている。 さらに、 脳に対する咀嚼刺激は痴呆防止の効果があり、 咀嚼力の低 下は痴呆の促進になることが明らかになってきている。
歯牙喪失の理由としてう蝕や歯周疾患が挙げられる。 重度のう蝕により歯髄炎 や歯髄壌死を起こした歯牙を温存するための治療としては根管治療が広く行なわ れている。 これはう蝕により感染した歯髄組織を除去し、 人工的な薬剤で充填さ
せる治療法であるが、 根管が複雑な形状をしているために根管内を完全に密閉す ることができず、 根管及ぴ象牙細管內の細菌を完全に除去できていない場合、 二 次感染を起こし再度治療をしなければならなく、 根管治療を行った歯牙の寿命は 短いと言われている。 歯牙を長期間維持するためには歯髄を可及的に温存し、 根 管治療の成功率を上げる必要がある。 これらの問題を解決するためにも天然の象 牙質を再生させれば完全に密閉することができるようになり、 髄腔の穿孔やう蝕 の治療による露髄部を閉鎖させることや、 根管治療での充填材としても利用する ことが可能となる。
天然の象牙質を再生させて治療に使用する方法が提案され、 検討が行なわれて いる。例えば、 S. Gronthosら、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97 (25) : 13625 - 13630 には、 培養ヒト歯髄細胞をハイドロキシァパタイト (以下、 HAp と略す) とリン 酸三カルシウム (以下、 一 TCP と略す) の複合体の粉体に播種した試料をヌー ドマウス皮下へ移植して 6週間後に摘出することが開示されている。 そして、 摘 出後のへマトキシリン /ェォシン染色像から硬組織の形成が確認され、 さらにこ の試料から抽出した R N Aを、 R T— P C Rを用いて評価したところ、 象牙芽細 胞の分化マーカーの mR N Aが発現していること、 すなわち、 得られた硬組織が 象牙質様組織であったことが開示されている。 ただし、 形成された硬組織の量は 非常に少なく、 臨床応用にはより多量の象牙質再生が求められる。
さらに P. Pavasant ら、 Archives of Oral Biology, 2003, 48, .717-722には、 ヒ ト歯髄細胞に 1, 2 5— (ジヒドロキシ) ビタミン D 3と T G F— jSを添加する ことにより、 硬組織形成の指標であるアル力リホスファターゼ活性が上昇するこ とが示されてレ、る。 し力 しな力 Sら、 P. Pavasant ら、 Archives of Oral Biology, 2003, 48, 717-722 におけるアル力リホスファターゼ活性は不十分なもの であり、また、 T G F— i3などのぺプチド性因子は高価で供給性に問題がある上、 速やかに失活するか、 もしくは至適濃度を維持することが困難であり、 実用上満 足できる方法ではない。
発明の開示
本発明は、上記した従来技術の問題点を解消することを解決すべき課題とした。 即ち、 本発明は、 より効率的にヒ ト歯髄細胞から象牙質を形成する象牙芽細胞に 分化させる方法を提供することを解決すべき課題とした。 また、 本発明は、 う蝕 などの歯科疾患への臨床応用に可能なほど多量な象牙質を再生する方法を提供す ることを解決すべき課題とした。 さらに本発明は、 分化誘導された象牙芽細胞又 は再生した象牙質を用いてう蝕などの歯科疾患を治療する方法を提供することを 解決すべき課題とした。
本発明者らは、 上記課題を解決するために鋭意検討した結果、 ヒト歯髄細胞又 はヒ ト歯髄細胞に分化可能な細胞を 1, 2 5 (ジヒドロキシ) ビタミン D 3、 デ キサメタゾン及ぴ j3—グリセ口ホスフェートの存在下で培養することにより、 象 牙質を形成する象牙芽細胞への分化を効率良く行うことができることを実証した。 本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
即ち、 本努明によれば、 分離したヒト歯髄細胞又はヒト歯髄細胞に分化可能な 細胞のうち少なくとも 1種類を 1 , 2 5 (ジヒドロキシ) ビタミン D 3、 デキサ メタゾン及ぴ —グリセ口ホスフェートの存在下で培養することを含む、 分化誘 導された象牙芽細胞の製造方法が提供される。
好ましくは、 細胞を担体上で培養する。
好ましくは、 1, 2 5 (ジヒドロキシ) ビタミン D 3の培地中の濃度は 1 X 1 0一8〜 1 X 1 0— 5 m o 1 / 1であり、デキサメタゾンの培地中の濃度は 1 X 1 0 一9〜 1 X 1 0— 6 m o 1 Z 1であり、 i3—グリセ口ホスフェートの培地中の濃度は 1〜3 O mm o 1 / 1である。
好ましくは、本発明による分化誘導された象牙芽細胞の製造方法は、 (i )分離 したヒト歯髄細胞又はヒト歯髄細胞に分化可能な細胞のうち少なくとも 1種類を 培養する工程、 (ii) 当該細胞を担体に播種して培養する工程、 及び (iii) 当該 細胞を 1, 2 5 (ジヒドロキシ) ビタミン D 3、 デキサメタゾン及び 3—グリセ 口ホスフェートを含む培地中で培養する工程、 を含む。
好ましくは、 担体がセラミック系担体である。
本発明の別の側面によれば、 上記方法により得られる、 分化誘導された象牙芽 細胞が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した分化誘導された象牙芽細胞を含む、 象牙質再生用細胞組成物が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、 上記方法により得られる分化誘導された象 牙芽細胞を培養することを含む、 象牙質の再生方法が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、 上記方法により再生された象牙質が提供さ れる。
本発明のさらに別の側面によれば、 上記方法により得られる分化誘導された象 牙芽細胞、 又は上記方法により再生された象牙質を患者に移植することを含む、 歯科患者の治療方法が提供される。 図面の簡単な説明
図 1は、比較例 1、比較例 2および実施例 1の条件下での細胞数と ALPase活性 およびその経時変化 (7日目、 1 0日目) を示す。
図 2は、比較例 3、比較例 4および比較例 5の条件下での細胞数と ALPase活性 およびその経時変化 (7日目、 1 0日目) を示す。
図 3は、比較例 6、比較例 Ίおよび実施例 2の条件下での細胞数と ALPase活性 およびその経時変化 (7日目、 1 0日目) を示す。
図 4は、 培養ヒト歯髄細胞の移植により得られた組織の HE染色像を示す。 図 5は、 培養ヒ ト歯髄細胞の移植により得られた組織の HE染色像 (分化誘導 ( + ) ) を示す。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明による分化誘導された象牙芽細胞の製造方法は、 ヒト歯髄細胞またはヒ
ト歯髄細胞に分化可能な細胞のうち少なくとも 1種類を 1, 25 (ジヒドロキシ) ビタミン D 3、 デキサメタゾン及ぴ ーグリセ口ホスフェートの存在下で培養す ることを特徴とする。
本発明においてヒト歯髄細胞又はヒト歯髄細胞に分化可能な細胞は、 1 種類の 細胞から成る単一の細胞として培養してもよいし、 2種類以上の細胞からなる細 胞混合物として培養してもよい。
ヒト歯髄細胞又はヒト歯髄細胞に分化可能な細胞は、 ヒトの抜去歯等から採取 することができる。 ヒ ト歯髄細胞は、 例えば About L,他 Experimental cell research, 258, 33-41, 2000 に記載の方法に従って採取することができる。 また、 ヒト歯髄細胞に分ィヒ可能な細胞は、 例えば以下の方法で採取することができる。 埋伏歯を無菌的に取り出し、 Phosphate Buffered Saline (以下 PBSと略す) 溶液 などの適当な保存液で保存する。 歯牙の中の石灰化した部分を取り除き、 メスに て組織を小片にして、 PBS溶液などを用いて組織を洗浄する。 次いで、 コラゲナ ーゼゃディスパーゼを用いて組織を酵素処理することが好ましい。 酵素処理後、 ピぺッティング操作と遠心操作により細胞を回収することができる。
細胞の培養は、 動物細胞の培養に用いる通常の血清入り培地や無血清培地を用 いて、.通常の動物細胞の培養条件 (例えば、 室温から 37°Cの温度; 5%C02インキ ュベータ一内など) の下で行なうことができる。 また、 培地には、 ァスコルビン 酸などの添加剤を加えることも可能である。 培養の形態は特に限定されないが、 例えば、 静置培養で行なうことができる。
1, 25 (ジヒドロキシ) ビタミン D3の添加量は、 培地中に 1 X 10一8〜 1 X 10— 5mo 1ノ 1、 より好ましくは 1 X 10— 7〜: L X l O—6mo 1/ 1であ る。
また、デキサメタゾンの添加量は、培地中に 1 X 10— 9〜1 X 10— 6mo 1 / 1、 より好ましくは 1 X 10一8〜 1 X 10— 7mo lZlである。
更に、/ 3—グリセ口ホスフェートの添カ卩量は、培地中に 1〜3 Ommo 1/1、 より好ましくは 2〜 1 Ommo 1 / 1である。
本発明において、 細胞の培養は担体上で行ってもよいし、 担体無しで培養して もよい。担体としては、象牙質の形成に必要とされる時間を耐久することができ、 かつその後、 速やかに吸収されるものが好ましい。 さらに、 細胞と高い親和性を 有する材料からなる担体を使用することが好ましい。
担体の素材は、 上記特性を満たすものであれば特に限定されないが、 例えば、 セラミック系の材科 (例えば、 ハイドロキシアパタイト (HAp)、 リン酸三カルシ ゥム( ー T C P )、 リン酸四カルシウム)、ポリダリコール酸(P G A)、ポリ (D Lーラクチドーコーダリコシド) (P L GA)、 ポリ乳酸(P L L A)、 ポリ力プロ ラタトンなどの合成高分子材料、 またはコラーゲン、 ゼラチン、 ブイブリンなど の蛋白質材料、あるいはヒアルロン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、象牙、 サンゴなどの天然由来材料を使用することもできる。
P G A、 P L L A、 P L G Aまたはポリ力プロラクトンなどの合成材料を使用 する場合には、 細胞の接着及ぴ増殖性を高めるために、 表面にコラーゲン溶液又 はフイブロネクチン溶液などをコートして使用することもできる。
上記の担体の形態としては、 メッシュ形態、 スポンジ形態、 ゲル形態、 不織布 形態、 粒状形態などが可能である。
担体は細胞を移植しやすい形状に加工したものが好ましく、 板状、 球状の多孔 体あるいは中空で一端が開放されており、 周囲から血管が進入しやすくなってい るものが好ましい。
担体は、目的に適合した形態のものを作製することが好ましい。このためには、 目的とする形態をレジンで作製した後に印象材を用いて型を取得する。 その後、 レジンの型を取り出し、 担体を構成する合成材料を流し込むことによって目的の 形態を再現することができる。
本発明の一実施態様によれば、 本発明の方法は、 以下の 3工程を含むことがで きる。
( i ) 分離したヒト歯髄細胞又はヒト歯髄細胞に分化可能な細胞のうち少なくと も 1種類を培養する工程 (一次培養) ;
(ii) 当該細胞を担体に播種して培養する工程 (二次培養) ;及ぴ
(iii) 当該細胞を 1, 2 5 (ジヒドロキシ) ビタミン D 3、 デキサメタゾン及び —グリセ口ホスフェートを含む培地中で培養する工程 (分化誘導) : 上記の工程 (i)は、 以後の工程において象牙質を再生するのに必要な数の細胞 を得るために行う培養である。 工程(i) における細胞の培養は、動物細胞の培養 に用いる通常の血清入り培地や無血清培地を用いて、 通常の動物細胞の培養条件 (例えば、 室温から 37°Cの温度; 5%C02ィンキュベータ一内など) の下で行なう ことができる。 また、 培地には、 ァスコルビン酸などの添加剤を加えることも可 能である。 培養の形態は特に限定されないが、 例えば、 静置培養で行なうことが できる。また、工程(i)で得られた細胞は、凍結保存しておくことも可能であり、 必要時に解凍して增殖させたものを、 上記工程(ii)以降の操作に使用することも できる。 この手法によれば、 象牙質再生を行う度に細胞を採取する必要がなくな り、 患者の負担を軽減することができる。
上記の工程(ii)は、担体上で細胞を増殖させる工程である。担体に播種した細 胞は、 担体に接着して、 増殖する。 工程 (ii) における細胞の培養も、 動物細胞 の培養に用いる通常の血清入り培地や無血清培地を用いて、 通常の動物細胞の培 養条件 (例えば、 室温から 37°Cの温度; 5%C02インキュベーター内など) の下で 行なうことができる。 培養期間としては、 好ましくは 1〜 3 0日、 さらに好まし くは 5〜2 5日である。
上記の工程 (iii) は、 象牙芽細胞への分化誘導を促進する工程である。 1, 2 5 (ジヒドロキシ) ビタミン D 3、 デキサメタゾン及び j3—グリセ口ホスフエ一 トの使用量は本明細書中上記した通りである。
本発明の方法では、 ヒト歯髄細胞又はヒト歯髄細胞に分化可能な細胞を担体に 播種して、 または必要に応じて播種後培養し、 該培養細胞を担体と一緒に直接患 者に移植しても良い。 あるいはさらに好ましくは、 分離したヒ ト歯髄細胞又はヒ ト歯髄細胞に分化可能な細胞を培養して増殖させた後に担体に播種して、 または 必要に応じて播種後培養し、 次いで該培養細胞を担体と一緒に移植し、 体内で象
牙質を再生させることができる。
あるいはまた、 分離したヒト歯髄細胞若しくはヒト歯髄細胞に分化可能な細胞 を培養して增殖させた後に担体に播種して、 または必要に応じて播種後培養し、 次レ、で該培養細胞を担体と一緒に移植動物に移植し、 該移植動物の体内で象牙質 を再生させることができる。 移植動物の種類は特に限定されないが、 好ましく は哺乳動物であり、例えば、 マウス (ヌードマウスなど)、 ラット (ヌードラット など) などのげつ歯類動物を使用することができる。 移植の部位は特に限定され ず、 例えば、 背部皮下などが挙げられる。
上記した本発明の方法により分化誘導された象牙芽細胞及び本発明の方法によ り再生した象牙質は、う蝕などの歯科疾患を有する患者に移植することによって、 該歯科患者を治療することができる。即ち、象牙質を用いる歯科疾患の治療方法、 例えば、 髄腔の穿孔ゃ露髄部の治療、 根管治療などへの適用も本発明の範囲内の ものである。 歯科患者に移植された後も象牙質の成長を継続させることにより、 象牙質を形成させることができる。
以下の実施例により本努明をさらに具体的に説明するが、 本発明は実施例によ つて限定されるものではない。 実施例
比較例 1 :培養ヒ ト歯髄細胞の細胞数と ALPase活性の測定(添加因子を加えない 条件)
( 1 ) 採取保存
医師によるインフォームドコンセントの得られた患者(29歳女性) の智歯を使 用した。 治療のため抜歯した智歯をタービンで削り、 歯髄を露出させ、 無菌的に 歯髄組織を採取し、 10%抗生剤入り PBS溶液にて保存した。
メスにて歯髄組織を約 2腿の小片にし、 PBS溶液にて 5回洗浄した。
( 2 ) 細胞回収
2mg/mlコラゲナーゼを DMEM培地に溶解した酵素溶液を用いて、 洗浄した組織
を 50分間酵素処理した。得られた組織を 25ml用のピぺットを用いて 10分間ピぺ ッティングした。 25mlの上澄み液を遠心分離して細胞を回収した。得られた細胞 を DMEM培地と Nutrient Mixture F - 12を 1 : 1で混合した (以下 DMEM/F12と略 す) 培地に 15%血清を入れた培地にて 5回洗浄した後、 70 mセルス トレイナー でろ過し、 遠心分離することによつて細胞を回収した。
( 3 ) 静置培養
回収した細胞を 15%血清入り DMEM/F12培地に 100 μ ΐηο1/1の濃度でァスコルビ ン酸を添加して 37°C、 5%C02条件下で培養を行なレ、、 2回継代した細胞をトリプ シン- EDTAにて細胞培養用フラスコから剥離した後、 12ゥヱルプレートに I X 104 個/ well播種をした後、 37°C、 5%C02条件下で静置培養を行なった。
( 4 ) 測定
ALPase活性の測定には ρ- Nitrophenyl phosphate tablets sets (SIGMA社製) を使用した。 細胞播種後、 7日間および 10日間経過したプレートの培養上清を吸 引除去し、 PBS溶液で洗浄した後、パラニトロフエニルリン酸(以下 PNPPと略す) 溶液を各ゥエルに 800 μ 1ずつ添加して、 37°C、 5% C02条件下で 6分間反応させ た。 0. 2Nの NaOH溶液を等量加えて反応を停止させ、 96穴プレートに 200 μ 1添加 し、 マイクロプレートリーダー (TECAN社製 GENios) を用いて 415nmの吸光度を 測定した。
細胞数の測定には Cell Counting Kit- 8 (同仁化学研究所社製) を用いた。 細 胞播種後、 7 日間および 10 日間経過したプレートの培養上淸を吸引除去し、 DMEM/F12培地を各ゥヱルに lmlずつ加え、 Cell Counting Kit- 8溶液を各ゥエル に 100 1ずつ添加して、 37°C、 5%C02条件下で 60分間呈色反応を行なった。 反 応後の試薬溶液を蒸留水で 4倍希釈して、 96穴プレートに 200 z l添加し、 マイ クロプレートリーダー(TECAN社製 GEMos)を用いて 450nmの吸光度を測定した。
( 5 ) 結果
測定した結果を、 図 1 (ind (-)) に示す。
比較例 2 : TGF- /S 1と 1, 2 5 (ジヒドロキシ) ビタミン D 3を添加して培養した ヒト歯髄細胞の細胞数と ALPase活性の測定 (P. Pavasant ら、 Archives of Oral Biology, 2003, 48, 717-722に記載の条件)
なお、 以下の比較例 2においては、 (1 ) 採取保存、 (2 ) 細胞回収、 (4 ) 測定 は、 比較例 1と同じ条件下で行っており、 条件の異なる静置培養と結果について のみ詳述する。
静置培養
回収した細胞を 15%血清入り DMEM/F12培地に 100 μ mol/1の濃度でァスコルビ ン酸を添加して 37°C、 5%C02条件下で培養を行なレ、、 2回継代した細胞をトリプ シン- EDTAにて細胞培養用フラスコから剥離した後、 12ゥエルプレートに 1 X 104 個/ well播種をした。 培養には Ing/mlTGF - )3 1、 10— 8mol/l 1, 2 5 (ジヒドロキ シ) ビタミン D 3を添加した 15%血清入り DMEM/F12培地を用いて 37。C、 5%C02 条件下で静置培養を行なつた。 測定した結果を、 図 1 (TGF+VD) に示す。 比較例 3:培養ヒト歯髄細胞の細胞数と ALPase活性の測定(添加因子を加えない 条件)
( 6 ) 採取保存
医師によるインフォームドコンセントの得られた患者 (24歳女性) の智歯を使 用した。 治療のため抜歯した智歯をタービンで削り、 歯髄を露出させ、 無菌的に 歯髄組織を採取し、 10%抗生剤入り PBS溶液にて保存した。
メスにて歯髄組織を約 2mmの小片にし、 PBS溶液にて 5回洗浄した。
( 7 ) 細胞回収
2mg/mlコラゲナーゼを DMEM培地に溶解した酵素溶液を用いて、 洗浄した組織 を 50分間酵素処理した。得られた組織を 25ml用のピぺットを用いて 10分間ピぺ ッティングした。 25mlの上澄み液を遠心分離して細胞を回収した。得られた細胞
を DMEM培地と Nutrient Mixture F - 12を 1 : 1で混合した (以下 DMEM/F12と略 す) 培地に 15%血清を入れた培地にて 5回洗浄した後、 70 ^ πιセルストレイナー でろ過し、 遠心分離することによって細胞を回収した。
( 8 ) 静置培養
回収した細胞を 15%血清入り DMEM/F12培地に 100 μ πιο1/1の濃度でァスコルビ ン酸を添加して 37°C、 5%C02条件下で培養を行ない、 4 回継代した細胞をトリプ シン- EDTAにて細胞培養用フラスコから剥離した後、 12ゥエルプレートに 1 X 104 個/ well播種をした後、 37°C、 5%C02条件下で静置培養を行なった。
( 9 ) 測定
ALPase活性の測定には p-Nitrophenyl phosphate tablets sets (SIGMA社製) を使用した。 細胞播種後、 7日間および 10日間経過したプレートの培養上清を吸 引除去し、 PBS溶液で洗浄した後、パラ-トロフヱ二ルリン酸(以下 PNPPと略す) 溶液を各ゥエルに 800 β 1ずつ添加して、 37°C、 5%C02条件下で 6分間反応させた。 0. 2Nの NaOH溶液を等量加えて反応を停止させ、 96穴プレートに 200 1添加し、 マイクロプレートリーダー (TECAN社製 GENios) を用いて 415nmの吸光度を測定 した。
細胞数の測定には Cell Counting Kit- 8 (同仁化学研究所社製) を用いた。 細 胞播種後、 7 日間および 10 日間経過したプレートの培養上清を吸引除去し、 DMEM/F12培地を各ゥヱルに lmlずつ加え、 Cell Counting Kit- 8溶液を各ゥエル に ΙΟΟ μ Ιずつ添加して、 37°C、 5%C02条件下で 60分間呈色反応を行なった。 反 応後の試薬溶液を蒸留水で 4倍希釈して、 96穴プレートに 200 添加し、 マイ クロプレートリーダー(TECAN社製 GENios)を用いて 450nmの吸光度を測定した。
( 1 0 ) 結果
測定した結果を、 図 2 (ind (-) ) に示す。 比較例 4 :デキサメタゾンとリン酸ニ水素力リウムなどを添加し、 培養したヒト 歯 髄 細 胞 の 細 胞 数 と ALPase 活性 の 測 定 ( S. Gronthos ら 、
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97 (25) : 13625-13630記載の条件) なお、 以下の比較例 4においては、 (6 ) 採取保存、 (7 ) 細胞回収、 (9 ) 測定 は、 比較例 3と同じ条件下で行っており、 条件の異なる静置培養と結果について のみ詳述する。
静置培養
回収した細胞を 15%血清入り DMEM/F12培地に ΙΟΟ μ πιοΙ八の濃度でァスコルビ ン酸を添加して 37°C、 5%C02条件下で培養を行ない、 4回継代した細胞をトリプ シン- EDTAにて細胞培養用フラスコから剥離した後、 12ゥエルプレートに 1 X 104 個 /well 播種を した。 培養には 100 μ raol/1 ァス コル ビン酸、 10— 8 mol/lDexamethasone 2. 9ramol/ 1 リン酸二水素カリウム、 20mmol/l HEPES ( [2 一 [4一 (2—ヒ ドロキシェチル) 一 1ーピぺラジュル] エタンスルホン酸) を添加 した 15%血清入り DMEM/F12培地を用いて 37°C、 5%C02条件下で静置培養を行な つた。
結果
測定した結果を、 図 2 (Dex+KH2P04) に示す。 比較例 5 : ]3グリセ口リン酸とデキサメタゾンを添加して培養したヒト歯髄細胞 の細胞数と ALPase活性の測定 ( 1, 2 5 (ジヒ ドロキシ) ビタミン D 3のみ添加 しない条件)
なお、 以下の比較例 5においては、 (6 ) 採取保存、 (7 ) 細胞回収、 (9 ) 測定 は、 比較例 3と同じ条件下で行っており、 条件の異なる静置培養と結果について のみ詳述する。
静置培養
回収した細胞を 15%血清入り DMEM/F12培地に 100 /z mol/lの濃度でァスコルビ ン酸を添カ卩して 37°C、 5°/oC02条件下で培養を行ない、 2回継代した細胞をトリプ シン - EDTAにて細胞培養用フラスコから剥離した後、 12ゥエルプレートに 1 X 104 個/ well 播種をした。 培養には lOmmol/1 - Glycerophosphate、 10"8mol/ 1
Dexamethasoneを添加した 15°/o血清入り DMEM/F12培地を用いて 37°C、 5%(¾条 件下で静置培養を行なった。
結果
測定した結果を、 図 2 ( β Gly+Dex) に示す。 比較例 6:培養ヒト歯髄細胞の細胞数と ALPase活性の測定(添加因子を加えない 条件)
( 1 1 ) 採取保存
医師によるインフォームドコンセントの得られた患者(22歳女性) の智歯を使 用した。 治療のため抜歯した智歯をタービンで削り、 歯髄を露出させ、 無菌的に 歯髄組織を採取し、 10%抗生剤入り PBS溶液にて保存した。
メスにて歯髄組織を約 2mmの小片にし、 PBS溶液にて 5回洗浄した。
( 1 2 ) 細胞回収
2mg/mlコラゲナーゼを DMEM培地に溶解した酵素溶液を用いて、 洗浄した組織 を 50分間酵素処理した。得られた組織を 25ml用のピペットを用いて 10分間ピぺ ッティングした。 25mlの上澄み液を遠心分離して細胞を回収した。 得られた細胞 を DMEM培地と Nutrient Mixture F - 12を 1 : 1で混合した (以下 DMEM/F12と略 す) 培地に 15%血清を入れた培地にて 5回洗浄した後、 70 セルス トレイナー でろ過し、 遠心分離することによって細胞を回収した。
( 1 3 ) 静置培養
回収した細胞を 15%血清入り DMEM/F12培地に 100 μ mol/1の濃度でァスコルビ ン酸を添加して 37°C、 5%C02条件下で培養を行なレ、、 2回継代した細胞をトリプ シン- EDTAにて細胞培養用フラスコから剥離した後、 12ゥエルプレートに 1 X 104 個/ well播種をした後、 37°C、 5%C02条件下で静置培養を行なった。
( 1 4 ) 測定
ALPase活性の測定には p-Nitrophenyl phosphate tablets sets (SIGMA社製) を使用した。 細胞播種後、 7日間および 10日間経過したプレートの培養上清を吸
引除去し、 PBS溶液で洗浄した後、パラニトロフ 二ルリン酸(以下 PNPPと略す) 溶液を各ゥヱルに 800 μ 1ずつ添加して、 37°C、 5%C02条件下で 6分間反応させた。 0. 2Nの NaOH溶液を等量加えて反応を停止させ、 96穴プレートに 200 μ 1添加し、 マイクロプレートリーダー (TECAN社製 GEMos) を用いて 415nmの吸光度を測定 した。
細胞数の測定には Cell Counting Kit-8 (同仁化学研究所社製) を用いた。 細 胞播種後、 7 日間および 10 日間経過したプレートの培養上清を吸引除去し、 DMEM/F12培地を各ゥエルに lmlずつ加え、 Cell Counting Kit- 8溶液を各ゥエル に 100 μ ΐずつ添加して、 37°C、 5%C02条件下で 60分間呈色反応を行なった。 反 応後の試薬溶液を蒸留水で 4倍希釈して、 96穴プレートに 200 // 1添加し、 マイ クロプレートリーダー(TECA 社製 GENios)を用いて 450nmの吸光度を測定した。 ( 1 5 ) 結果
測定した結果を、 図 3 (ind (-) ) に示す。 比較例 7 : jSグリセ口リン酸とデキサメタゾンを添加して培養したヒト歯髄細胞 の細胞数と ALPase活性の測定 ( 1, 2 5 (ジヒドロキシ) ビタミン D 3のみ添加 しない条件)
なお、以下の比較例 7においては、 (1 1 )採取保存、 (1 2 )細胞回収、 (1 4 ) 測定は、 比較例 6と同じ条件下で行っており、 条件の異なる静置培養と結果につ いてのみ詳述する。
静置培養
回収した細胞を 15%血清入り DMEM/F12培地に ΙΟΟ μ mol/1の濃度でァスコルビ ン酸を添加して 37°C、 5°/oC02条件下で培養を行ない、 2回継代した細胞をトリプ シン- EDTAにて細胞培養用フラスコから剥離した後、 12ゥヱルプレートに I X 104 個/ well 播種をした。 培養には 10mmol/l ]3 - Glycerophosphate、 10— 8mol/ 1 Dexamethasoneを添加した 15%血清入り DMEM/F12培地を用いて 37°C、 5%C02条 件下で静置培養を行なつた。
結果
測定した結果を、 図 3 ( β Gly+Dex) に示す。 実施例 1:分化誘導因子を添カ卩して培養したヒト歯髄細胞の細胞数と ALPase活性 の測定
なお、 以下の実施例 1においては、 (1 ) 採取保存、 (2 ) 細胞回収、 (4 ) 測定 は、 比較例 1と同じ条件下で行っており、 条件の異なる静置培養と結果について のみ詳述する。
静置培養
回収した細胞を 15%血清入り DMEM/F12培地に 100 μ mol/1の濃度でァスコルビ ン酸を添加して 37°C、 5%C02条件下で培養を行ない、 2回継代した細胞をトリプ シン - EDTAにて細胞培養用フラスコから剥離した後、 12ゥエルプレートに I X 104 個/ well播種をした。培養には 100 mol/1ァスコルビン酸、 10— ol/l 1, 2 5 (ジ ヒ ドロ キシ) ビタ ミ ン D 3、 lOmmol/1 β -Glycerophosphate、 10— 8mol/ 1 Dexamethasoneを添加した 15%血清入り DMEM/F12培地を用いて 37°C、 5%(:02条 件下で静置培養を行なつた。
結果
測定した結果を、 図 1 (VD+ j3 Gly+Dex) に示す。 以上の比較例 1 (添加因子を加えない条件)、比較例 2 (P. Pavasantら、 Archives of Oral Biology, 2003, 48, 717-722に記載の条件)および実施例 1を比較すると、 実施例 1記載の条件の場合、 細胞の分化が進むため細胞の増殖性は低下するが、 歯髄細胞への分化及び象牙質形成能の一指標である ALPase活性は顕著に増加し ている (図 1 )。 実施例 2:分化誘導因子を添加して培養したヒ ト歯髄細胞の細胞数と ALPase活性 の測定
なお、以下の実施例 2においては、 (1 1 )採取保存、 (1 2 )細胞回収、 (1 4 ) 測定は、 比較例 6と同じ条件下で行っており、 条件の異なる静置培養と結果につ いてのみ詳述する。
静置培養
回収した細胞を 15%血清入り DMEM/F12培地に 100 μ mol/1の濃度でァスコルビ ン酸を添加して 37°C、 5%C02条件下で培養を行ない、 2回継代した細胞をトリプ シン- EDTAにて細胞培養用フラスコから剥離した後、 12ゥエルプレートに 1 X 104 個/ well播種をした。培養には 100 μ mol/1ァスコルビン酸、 10"¾ο1/1 1, 2 5 (ジ ヒ ドロ キシ) ビタ ミ ン D3、 10mmol/l β -Glycerophosphate、 10— ol/ 1 Dexamethasoneを添加した 15%血清入り DMEM/F12培地を用いて 37°C、 5%C02条 件下で静置培養を行なった。
結果
測定した結果を、 図 3 (VD+ j3 Gly+Dex) に示す。 以上の比較例 3 (添加因子を加えない条件)、 比較例 4 (S. Gronthos ら、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97 (25) : 13625- 13630に記載の条件) および比較 例 5 ( 1, 2 5 (ジヒドロキシ) ビタミン D 3のみ添加しない条件) を比較する と、比較例 5において歯髄細胞への分化及び象牙質形成能の一指標である ALPase 活性が最も增加している (図 2 )。
更に同様に比較例 6 (添加因子を加えない条件)、 比較例 7 ( 1 , 2 5 (ジヒド 口キシ) ビタミン D 3のみ添加しない条件) および実施例 2を比較すると、 実施 例 2の条件の場合、 歯髄細胞への分化及ぴ象牙質形成能の一指標である ALPase 活性が顕著に増加している (図 3 )。 すなわち、図 2および図 3の結果から明らか に S. Gronthos ら、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97. (25) : 13625-13630に記載 の条件より実施例 2の条件の方が効果があることが分かる。 比較例 8 :象牙芽細胞への分化誘導を促進する工程を含まない移植実験
医師によるインフォームドコンセントの得られた患者 (21歳男性) の智歯を使 用した。 治療のため抜歯した智歯をタービンで削り、 歯髄を露出させ、 無菌的に 歯髄組織を採取し、 10%抗生剤入り PBS溶液にて保存した。
メスにて歯髄組織を約 2mmの小片にし、 PBS溶液にて 5回洗浄した。
2mg/mlコラゲナーゼを DMEM培地に溶解した酵素溶液を用いて、 洗浄した組織 を 50分間酵素処理した。得られた組織を 25ml用のピぺットを用いて 10分間ピぺ ッティングした。 25πι1の上澄み液を遠心分離して細胞を回収した。得られた細胞 を DMEM/F12培地に 15%血清を入れた培地にて 5回洗浄した後、 70 μ mセルス トレ イナ一でろ過し、 遠心分離することによって細胞を回収した。
回収した細胞を 15%血清入り DMEM/F12培地に 100 / mol/1の濃度でァスコルビ ン酸を添加して 37°C、 5%C02条件下で培養を行ない、 1回継代した細胞をトリプ シン- EDTAにて細胞培養用フラスコから剥離した後、 15%血清入り DMEM/F12培地 にて 5. 0 X 106個/ ΙΟΟ μ Ιの細胞懸濁液に調整し、 96穴プレートで ΗΑρ/ - TCP多 孔体 130mg (日本特殊陶業製) に播種した後、 37°C、 5%C02条件下で静置培養を 4. 5時間行なった。
担体に細胞が接着後、 6穴プレートへ移し、 15%血清入り DMEM/F12培地にて 13 日間担体上で増殖させた。
移植動物としては、 ヌードマウス KSNを用いた。 ヌードマウス背部皮膚を切開 し、 細胞を播種した担体を皮下に入れ、 皮膚を縫合した。
移植後 6週にて試料を採取した。 摘出した試料は、 10%ホルマリン溶液にて固 定し、 常法に従ってパラフィンに包埋して連続組織切片を作成した。 その後、 切 片にへマトキシリン-ェォジン染色 (HE染色) を施し、 組織学的に観察した。 移植後 6週で摘出した移植体は生体に吸収されることなく原型を維持していた。 また、 HE染色した組織を観察した結果、 硬組織は形成しているものの、 幼弱で量 も少なかった (図 4 )。 実施例 3 :象牙芽細胞への分化誘導を促進する工程を含む移植実験
医師によるインフォームドコンセントの得られた患者 (21歳男性) の智歯を使 用した。 治療のため抜歯した智歯をタービンで削り、 歯髄を露出させ、 無菌的に 歯髄組織を採取し、 10%抗生剤入り PBS溶液にて保存した。
メスにて歯髄組織を約 2mmの小片にし、 PBS溶液にて 5回洗浄した。
2mg/mlコラゲナーゼを DMEM培地に溶解した酵素溶液を用いて、 洗浄した組織 を 50分間酵素処理した。得られた組織を 25ml用のピぺットを用いて 10分間ピぺ ッティングした。 25mlの上澄み液を遠心分離して細胞を回収した。得られた細胞 を DMEM/F12培地に 15%血清を入れた培地にて 5回洗浄した後、 70 mセルス トレ イナ一でろ過し、 遠心分離することによつて細胞を回収した。
回収した細胞を 15%血清入り DMEM/F12培地に 100 μ mol/1の濃度でァスコルビ ン酸を添加して 37°C、 5%C02条件下で培養を行ない、 1回継代した細胞をトリプ シン- EDTAにて細胞培養用フラスコから剥離した後、 15%血清入り DMEM/F12培地 にて 5. 0 106個/100 1の細胞懸濁液に調整し、 96穴プレートで HAp/ i3 - TCP多 孔体 130mg (日本特殊陶業製) に播種した後、 37°C、 5%C02条件下で静置培養を 4. 5時間行なった。
担体に細胞が接着後、 6穴プレートへ移し、 15%血清入り DMEM/F12培地にて 7 日間担体上で増殖させた。
更に分化誘導因子として 100 μ mol/1ァスコルビン酸、 10— 6mol/lの 1, 2 5 (ジ ヒ ドロ キシ) ビタ ミ ン D 3、 10mmol/l β -Glycerophosphate、 10"8mol/ 1 Dexamethasoneを 15%血清入り DMEM/F12培地に添加した培地にて 6日間培養し、 象牙質再生用組成物を得た。 ' ·
移植動物としては、 ヌードマウス KSNを用いた。 ヌードマウス背部皮膚を切開 し、 上記で得た象牙質再生用組成物を皮下に入れ、 皮膚を鏠合した。
移植後 6週にて試料を採取した。 摘出した試料は、 10%ホルマリン溶液にて固 定し、 常法に従ってパラフィンに包埋して連続組織切片を作成した。 その後、 切 片に HE染色を施し、 組織学的に観察した。
移植後 6週で摘出した移植体は生体に吸収されることなく原型を維持していた。
また、 HE染色した組織を観察した結果、 比較例 8と比較して顕著に象牙質様硬組 織を形成していた (図 5 )。 産業上の利用可能性
本努明の方法を利用して、 培地上で象牙質を形成してから、 あるいは象牙質を 形成するように分化誘導された象牙芽細胞を必要に応じ担体等と共に齒科患者に 移植することにより、 欠損部若しくは根管を充填できるよう象牙質を再生させる ことができる。 この結果、 歯牙を維持することが可能となり二次感染の確率の低 い極めて有効な治療となる。 また、 自らの歯牙を長期間雑持できることから、 患 者の Quality of Life (Q0L) の向上に大きく貢献する。