明 細 書
DNAチップ並びに疾患関連遺伝子の抽出方法
技術分野
[0001] 本発明は、 DNAチップを用いて、対象とする疾患に関連する遺伝子群を抽出する 方法およびこの方法によって抽出された遺伝子群を含む DNAチップに関し、特にパ 一キンソン病の発症に関連する遺伝子群を抽出する方法およびこの方法によって抽 出された遺伝子群を含む DNAチップに関する。
背景技術
[0002] DNAチップとは、ガラスなどの基板上に、多種類の DNA断片'合成オリゴヌクレオ チドを互いに区画しつつ貼り付けたものであり、これを用いることにより、多種類の遺 伝子発現の有無、特定の遺伝子の存在の有無、変異の有無等を一括して調べること が可能である。 DNAチップを用いることにより、ヒト「健常者」から調製した mDNAと、 対象とする疾患を有する者から調製した mRNAとの発現状態を比較することにより、 その疾患に関与すると思われる遺伝子群を検出する技術が知られている。しかしな がら、いわゆる「健常者」が、実際に健常者であるのか否かについては疑問の余地が ある。すなわち、「健常者」の中には、実際に健常者である者の他に、その疾患になり うる形質を有しているものの、未だに健常である者が含まれている。このため、遺伝的 に単一とは言!、難 ヽヒトの遺伝子発現状態を把握することは、個々人の個体差を広く 認めつつ研究を進めなければならないため、データの解析に際して非常な困難を生 じ、確定的な結果を得ることが難しい。このように DNAチップを用いた研究開発は、 飛躍的なスピードで進んで 、るものの、未だに疾患関連遺伝子を特定する方法論に ついては、確定的なものは開発されていない。
[0003] パーキンソン病とは、脳黒質内でのドパミン産生細胞の異常な低下と-ユーロンの 変性を特徴とする脳疾患である。脳の黒質でつくられたドパミンは、線条体に送られ 、アセチルコリンと協働して筋肉に運動の指令を送る。パーキンソン病になると、ドパミ ンをつくる黒質の神経細胞が何らかの原因で障害され、線条体にドパミンを充分に 送ることができなくなり、線条体が正常に機能しなくなって、無動、筋硬直、振戦等の
運動機能障害が生じる。パーキンソン病の原因は十分に解明されてはいないものの 、脱ュビキチン化活性を有するプロテアーゼ、タウ(tau)、シヌクレイン( α— synuclei n)等が関与しているとする報告が見られる(特開 2003— 189883号公報)。
また、農薬のロテノン (Rotenone)は、実験動物にパーキンソン病を発症させること が知られている。本発明者は、この実験動物を用いて、ェゾゥコギ(学名: Acanthop anaxsenticosus harms)の抽出物が、実験的パーキンソン病の予防及び治療に効 果を有することを見出した (特開 2002-284695号公報)。
[0004] 特許文献 1:特開 2003— 189883号公報
特許文献 2:特開 2002-284695号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0005] パーキンソン病に関与する遺伝子の一部は知られているものの、全ての遺伝子群 を把握する技術は開発されていな力つた。本発明は、上記した事情に鑑みてなされ たものであり、その目的は、 DNAチップを用いて、疾患に関連する遺伝子群を抽出 する方法を提供すること (特に、その疾患がパーキンソン病である場合に適用するこ とができる方法を提供すること)、及びその方法により抽出された遺伝子群を備えた D NAチップを提供することである。
課題を解決するための手段、発明の作用、及び発明の効果
[0006] 本発明者は、鋭意努力して検討した結果、 DNAチップを用いることにより、パーキ ンソン病に関与する遺伝子群を抽出する方法を開発することに成功し、更にこの方 法が他の疾患 (例えば、アルツハイマー病、糖尿病 ·動脈硬化などの生活習慣病)に 関与する遺伝子群を抽出するためにも応用できることに思い至り、基本的には本発 明を完成するに至った。すなわち、実験動物として系統が確立されている動物は、遺 伝的にはヒトよりも揃った形質を備えている。さらに、同じ飼育環境下で、これらの実 験動物を飼育することが容易でもある。このため、実験動物を用いて、対象とする疾 患に関与する遺伝子群を効率的に抽出することができれば、その結果はヒトを用いた データよりもはるかに信頼性が高ぐ時間の短縮にもつながり、ヒトへの応用も容易で あると考えられる。
[0007] こうして、第 1の発明に係る遺伝子群の抽出方法は、(A)非ヒトコントロール動物か ら調製したコントロール mRNAと、前記コントロール動物に対象とする疾患を発生さ せた疾患動物カゝら調製した疾患 mRNAとに基づ 、て、 DNAチップを利用して発現 量の比較を行い、疾患 mRNAにおける発現量がコントロール mRNAにおける発現 量よりも多い第 1発現量増加遺伝子群と疾患 mRNAにおける発現量がコントロール mRNAにおける発現量よりも少ない第 1発現量減少遺伝子群とを含む第 1の遺伝子 群を抽出する工程、 (B)前記疾患を治療または予防できる処置を施した制御動物か ら調製した制御 mRNAと、前記コントロール mRNAとに基づいて、 DNAチップを利 用して発現量の比較を行い、制御 mRNAにおける発現量がコントロール mRNAに おける発現量よりも多い第 2発現量増加遺伝子群と制御 mRNAにおける発現量がコ ントロール mRNAにおける発現量よりも少ない第 2発現量減少遺伝子群とを含む第 2 の遺伝子群を抽出する工程、(C)前記第 1の遺伝子群と第 2の遺伝子群とにおいて 、互いに逆の傾向を示す遺伝子群である第 1発現量減少遺伝子群と第 2発現量増加 遺伝子群との間で共通する第 3の遺伝子群、及び第 1発現量増加遺伝子群と第 2発 現量減少遺伝子群との間で共通する第 4の遺伝子群を抽出する工程を備えたことを 特徴とする。
[0008] 「コントロール動物」とは、対象とする疾患を発生する遺伝的素養を持たな 、動物を 意味している。すなわち、コントロール動物を通常に飼育した場合には、対象とする 疾患をほとんど全く発生することなぐライフサイクルを完了する。このような動物として 、実験動物として系統が定まっているものを用いることが好ましい。コントロール動物 としては、抽出された遺伝子群をヒトに適用することを考慮すると、遺伝的にヒトに近 い動物、つまり哺乳動物(サル、ブタ、ィヌ、ネコ、モルモット、ラット、マウスなど)を用 いることが好ましぐ更に比較的系統が固定されている哺乳動物 (ラット、マウスなど) を用いることが好ましい。
「mRNA」とは、ゲノム DNAが転写された産物のうち、タンパク質に翻訳される RN Aを意味している。
[0009] 「対象とする疾患を発生させた」とは、コントロール動物に外部力 何らかの作用を 与える (例えば、(1)低分子化合物、核酸、タンパク質等を投与する、(2)持続的な或
いは単発的な刺激 (例えば、狭い空間内に閉じこめた状態で飼育する、終日に渡つ て暗い状態で飼育する、電気刺激を与えるなど)を加える)ことにより、所定の疾患を 発生させることを意味している。例えば、コントロール動物に、ロテノン (Rotenene,農 薬の一種)を投与することにより、対象とする疾患であるパーキンソン病を発生させる ことができる。また、コントロール動物に、マンガン (重金属)、ベータアミロイド蛋白質 、薬物 (ハロペリドール (ドパミン受容体 2遮断薬)、ノメガー-トロー L アルギニンメチ ルエーテル (一酸化窒素合成阻害剤)を投与すること、または脳虚血手術を行うこと により、アルッノヽイマ一病を発生させることができる。また、コントロール動物に、高脂 肪食を与えることにより、糖尿病 ·高血圧 ·動脈硬化などの生活習慣病を発生させるこ とがでさる。
「基づいて」とは、 mRNAをそのまま叉はそれを増幅後アミノアリル RNAとして DN Aチップに供する場合を含むほかに、 mRNAに基づいて cDNAを調製して、その c DNAを DNAチップに供する場合を含む。
疾患 mRNAには、その疾患の発生の原因または結果として、コントロール mRNA の発現量とは異なるプロフィールを有する遺伝子群が存在しているはずである。この ようにして抽出されたものを第 1の遺伝子群とする。この第 1の遺伝子群には、疾患に よって発現量がコントロールよりも増加した遺伝子群(以下、「第 1発現量増加遺伝子 群」という)と、疾患によって発現量がコントロールよりも減少した遺伝子群(以下、「第 1発現量減少遺伝子群」 、う)との両者が含まれて!/、る。
「DNAチップ」とは、固体 (例えば、シリカ、表面誘導体化ガラス、ポリプロピレン、ま たは活性ィ匕ポリアクリルアミドなど)の表面上に多種類の DNA断片や、複数種類 (例 えば、数十一数万個程度)の既知オリゴヌクレオチドプローブを高密度で固定したマ イクロアレイを意味しており、 DNAマイクロアレイとも称することがある。 DNAチップ上 に標的塩基配列断片 (DNAまたは RNA)を置くと、その標的塩基配列断片は塩基 配列の相補性に従って、 DNAチップ上のプローブにハイブリダィズする。従って、標 的塩基配列断片を予め光学的、電気的、または放射化学的に検出可能なタグで標 識しておくことにより、ハイブリダィズした標的塩基配列断片の有無、または発現量を 分析することができる。 DNAチップを利用して遺伝子群を抽出する方法としては、例
えば競合法を用いることができる力 これに限られるものではない。
[0011] 「前記疾患を治療または予防できる処置を施し」とは、コントロール動物に外部から 何らかの作用を与えることにより、対象とする疾患を治療または予防することを意味し ている。この作用としては、例えば薬物 (低分子化合物、核酸、タンパク質など)を投 与することが例示される力 これには限られない。例えば、ロテノンを投与してパーキ ンソン病を発生させる試験系において、ェゾゥコギからの抽出物である ASHまたは M ASH (後に詳述する)を投与することは、ロテノンによるパーキンソン病を治療または 予防できる処置を施していることになる。また、アルツハイマー病を発生させる試験系 において、ェゾゥコギ、イチヨウ、 DHA (ドコサへキサェン酸)、 L アルギニン(一酸化 窒素の前駆物質)、医薬品 (フルォロキセチン (セロトニン取り込み抑制剤) )等を投与 することは、アルッノ、イマ一病を治療または予防できる処置を施して 、ることになる。 また、生活習慣病を発生させる試験系において、ェゾゥコギ、マイタケ、アロエ、ニン -ク、マメ (イソフラボン)、亜麻仁等を投与することは、生活習慣病を治療または予防 できる処置を施して ヽること〖こなる。
「治療または予防」とは、完全に疾患の発生を押さえる他に、疾患を押さえる作用を 行わない場合に比べて、より軽減する場合 (つまり、コントロール動物に近い状態)を 含む。
[0012] 制御 mRNAには、対象とする疾患を治療または予防するために、コントロール mR NAの発現量とは異なるプロフィールを有する遺伝子群が存在しているはずである。 このようにして抽出されたものを第 2の遺伝子群とする。第 2の遺伝子群には、コント口 ールよりも発現量が増加した遺伝子群 (以下、「第 2発現量増加遺伝子群」 、う)と、 コントロールよりも発現量が減少した遺伝子群 (以下、「第 2発現量減少遺伝子群」と V、う)との両者が含まれて!/、る。
第 1の遺伝子群と第 2の遺伝子群とにおいて、互いに逆の傾向を示すもの、すなわ ち、(ァ)第 1発現量減少遺伝子群と第 2発現量増加遺伝子群の間で共通する遺伝 子群 (第 3の遺伝子群)、或いは (ィ)第 1発現量増加遺伝子群と第 2発現量減少遺伝 子群の間で共通する遺伝子群 (第 4の遺伝子群)には、対象とする疾患に対して、直 接または間接に関与する遺伝子が多く含まれているはずである。そこで、第 3の遺伝
子群または第 4の遺伝子群を精査することにより、対象とする疾患の原因を突き止め 、治療することが可能となり得る。また、未だに疾患を発症していない「健常者」につ いても、第 3の遺伝子群または第 4の遺伝子群の発現状態を確認することにより、そ の疾患となる可能性を評価するためのデータとして用いることができる。
[0013] なお、上記第 3の遺伝子群と第 4の遺伝子群とでは、第 3の遺伝子群を用いることが 好ましい。一般的に、家族性疾患と呼ばれる疾患原因を調査すると、多くの場合に特 定の遺伝子の変異によって、その遺伝子の発現量が減少することで、その疾患が発 生している。つまり、発現量の低下が疾患の原因となることが多いためである。しかし ながら、特定の遺伝子の発現量が増加することによって、所定の疾患に罹患すること もあり得る。そのような場合には、第 4の遺伝子群を用いることが好ましい。
第 1の発明において、(C)の工程は、(A)または (B)の工程の後に行われることが 必要であるが、(A)または(B)の工程については、順序を問われない。このため、全 体としては、 (A) (B) (C)、または (B) (A) (C)の順に工程を実施することができる。 このように本発明によれば、対象とする疾患の発生または制御に係る遺伝子群を抽 出することができる。
[0014] また、第 3の遺伝子群または第 4の遺伝子群に含まれないもの(つまり、第 1の遺伝 子群と第 2の遺伝子群とにおいて、互いに逆の傾向を示すものではないもの)であつ ても、第 1発現量減少遺伝子群あるいは第 2発現量増加遺伝子群として抽出された 遺伝子の中には、対象とする疾患に関与する可能性が高 、ものが含まれて 、ること が考え得る。このため、第 2の発明に係る遺伝子群の抽出方法は、(A)非ヒトコント口 ール動物から調製したコントロール mRNAと、前記コントロール動物に所定の疾患を 発生させた疾患動物から調製した疾患 mRNAとに基づ 、て、 DNAチップを利用し て発現量の比較を行い、疾患 mRNAにおける発現量がコントロール mRNAにおけ る発現量よりも多い第 1発現量増加遺伝子群と疾患 mRNAにおける発現量がコント ロール mRNAにおける発現量よりも少ない第 1発現量減少遺伝子群とを含む第 1の 遺伝子群を抽出する工程、 (B)前記疾患を治療または予防できる処置を施した制御 動物から調製した制御 mRNAと、前記コントロール mRNAとに基づいて、 DNAチッ プを利用して発現量の比較を行 、、制御 mRNAにおける発現量がコントロール mR
NAにおける発現量よりも多い第 2発現量増加遺伝子群と制御 mRNAにおける発現 量がコントロール mRNAにおける発現量よりも少ない第 2発現量減少遺伝子群とを 含む第 2の遺伝子群を抽出する工程、 (D)前記第 1発現量減少遺伝子群と前記第 2 発現量増加遺伝子群とを抽出する工程を備えたことを特徴とする。
[0015] 上記第 1の発明または第 2の発明においては、 mRNAを抽出するために使用する 組織としては、対象とする疾患において、顕著な病変を示す組織を用いることが好ま しい。例えば、パーキンソン病 ·アルッノヽイマ一病のように脳組織中に特異的な病変 を認める場合には、脳あるいは脳の一部 (パーキンソン病の場合には黒質、アルッハ イマ一病の場合には海馬)を用いて mRNAを抽出することが好ましい。
ここで、第 1の発明及び第 2の発明のように、非ヒト動物を用いた場合には、対象と する疾患に関与する遺伝子群を抽出する際に、特異的な病変が生じる組織を用いて mRNAを調製することは比較的容易に行いうる。し力しながら、その結果をヒトに外 挿しようとした場合には、そのような組織 (例えば、脳組織)を採取することが困難とな ることが考えられる。特に、ヒトが生存している場合には、更に困難な事態が想起され る。非ヒト動物力も得られた結果を容易にヒトに外挿できるようにするためには、ヒトに おいて簡単に採取できる血液を用いて、対象とする疾患に関与する遺伝子群を特定 できることが好ましい。こうして、第 3の発明は、第 1の発明または第 2の発明において 、 (1)対象とする疾患によって特異的な病変が生じる組織力 調製された mRNAを 使用して前記 (A)及び (B)の工程を経て、 (C)または (D)の遺伝子群抽出工程を行 い、(2)血液、特に白血球力 調製された mRNAを使用して前記 (A)及び (B)のェ 程を経て、(C)または(D)の遺伝子群抽出工程を行い、前記(1)及び(2)の工程に よって抽出された遺伝子群のうち重複する血液検出可能遺伝子群を抽出する工程を 備えたことを特徴とする。
[0016] 第 3の発明によれば、対象とする疾患に関与する特定の遺伝子群のうち、血液中の mRNAの発現量に反映されるものを抽出することができる。このような遺伝子群を用 いることにより、特異的な病変が生じる組織を摘出するまでもなぐヒトの血液を採取 すれば、対象とする疾患に対する情報 (将来的な予測、疾患のプロフィールなど)を 得ることができる。
現状では、 DNAチップに固定される遺伝子数は、多い方が有効とされている。この ため、数千一数万種類の遺伝子を備えたチップを用いて評価を行うことが多いが、そ のデータ解析を行うことは容易ではない。対象とする疾患について、関与する遺伝子 群が特定された後には、主としてそのような遺伝子群を備えた DNAチップを用いる 方力 データ解析にも経済的にも有利である。このため、第 4の発明に係る対象とす る疾患に関するプロフィールを検出するための DNAチップは、第 1の発明一第 3の 発明に基づいて抽出された遺伝子群を主として含むことを特徴とする。第 1の発明一 第 3の発明によって抽出された遺伝子群 (第 3の遺伝子群、第 4の遺伝子群、第 1発 現量減少遺伝子群、第 2発現量増加遺伝子群、または血液検出可能遺伝子群)は、 対象とする疾患に関与するものであるので、これらの遺伝子群を DNAチップに応用 することにより、その疾患に関するプロフィールを検出することが容易に行える。 「疾患に関するプロフィール」とは、将来的に対象とする疾患に罹患する可能性が あるか否か、現在罹患して!/ヽる疾患の状態 ·タイプ ·将来的な推移などを意味して 、 る。
「主として」とは、 DNAチップに載せられた遺伝子群の大部分力 対象とする疾患 に関与する遺伝子群 (つまり、第 1の発明一第 3の発明によって抽出された遺伝子群 )であることを意味しており、少なくとも DNAチップ上の遺伝子群の 80%以上 (好まし くは 90%以上、更に好ましくは 95%以上)力 そのような遺伝子群力も抽出されたも のであることを意味して 、る。
本発明において、 DNAチップ上に載せる遺伝子群としては、全てを用いてもよい 力 それらの遺伝子群力も選択される 1または 2以上の遺伝子を用いることもできる。 また、 DNAチップに固定する DNAとしては、遺伝子全体を用いる必要はなぐその 遺伝子の一部の塩基配列を用いて、被測定者の組織力ゝら調製された mRNAに基づ く塩基配列とハイブリダィズするものであればよい。
本発明の DNAチップを用いる際に、ヒトを対象とする場合には、被測定者の血液 力も調製された mRNAを用いることが好ましい。このため、特に第 3の発明によって 抽出された遺伝子群 (血液検出可能遺伝子群)を用いることが好ま ヽ。
発明を実施するための最良の形態
[0018] 次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明するが、本発明 の技術的範囲は、下記の実施形態によって限定されるものではなぐその要旨を変 更することなぐ様々に改変して実施することができる。また、本発明の技術的範囲は 、均等の範囲にまで及ぶものである。
<ロテノンによるパーキンソン病の誘導〉
農薬であるロテノン (Rotenone)を投与することにより、ラットにパーキンソン病の病 態を発生できることが知られている。適当な数 (例えば、 3匹以上)のラットに適当用量 (例えば、 2mgZkg以上)のロテノンを一日一回、数週間に渡って腹腔内投与するこ とにより、パーキンソン病を発症させる。ロテノンを投与したときの遺伝子発現パター ンと、コントロール動物の遺伝子発現パターンとを DNAチップを用いて比較する。
[0019] <パーキンソン病を予防する処置 >
ロテノンの投与に際して、予め(例えばロテノン投与前、 2— 4週間前) ASHZMA SHと称するェゾゥコギ抽出物(実施例中にお 、て詳述する)を経口投与しておく。す ると、ロテノンを投与しても、パーキンソン病の発生を予防することができる。
そこで、パーキンソン病を治療または予防できる処置として、 ASHまたは MASHを 投与する。 ASHまたは MASHを投与したときの遺伝子発現パターンと、コントロール 動物の遺伝子発現パターンとを DNAチップを用いて比較する。
[0020] く脳黒質カゝら抽出した mRNAを用いた解析〉
(1)第 1の遺伝子群の抽出
パーキンソン病では、レビュー小体と呼ばれる物質が脳黒質内に確認できる。つま り、パーキンソン病においては、黒質は特異的な病変が生じる組織である。そこで、口 テノンを投与してパーキンソン病を発症したラットの黒質を採取し、このサンプルから 疾患 mRNAを調製する。一方、ロテノンを投与していないラット(コントロール動物)の 黒質からコントロール mRNAを調製する。これら二種類の mRNAを DN Aチップ(多 数、例えば 2万種類以上の遺伝子の有無を検出可能なもの)にかけて、発現量の差 違が認められる第 1の遺伝子群を抽出する。
[0021] ここで、 DNAチップには、例えば競合法を用いることにより、両 mRNAの発現量の 差違を検出することができる。蛍光法を用いる場合には、二種類の蛍光試薬 (赤色ま
たは緑色)のうち、いずれか一方の mRNA (例えば、コントロール mRNA)には一方 側(例えば、緑色)の試薬を結合させ、他方の mRNA (例えば、疾患 mRNA)には他 方側(例えば、赤色)の試薬を結合させる。両 mRNAの所定量を DNAチップに供す ることにより、 mRNAの発現量の差違によって、蛍光色の異なる DNAを同定すること ができる。上記例では、両 mRNAの発現量が同等である場合には黄色の蛍光力 コ ントロール mRNAの発現量が多!、場合には緑色の蛍光力 疾患 mRNAの発現量が 多い場合には赤色の蛍光が認められる。なお、両 mRNAにおいて発現が認められ ない場合には、蛍光がないので黒色となる。
図 1には、この結果を模式的に示した。図中の丸印は、それぞれ異なる DNAを固 定してある位置を示し、丸印内に大文字 (A, B, C, E, H, K)を付したものは、疾患 mRNAの発現量がコントロール mRNAの発現量に比較して減少した遺伝子(第 1発 現量減少遺伝子群)を示している。また、丸印内に小文字 (j, m, n, q, u)を付したも のは、疾患 mRNAの発現量がコントロール mRNAの発現量に比較して増加した遺 伝子 (第 1発現量増加遺伝子群)を示して!/ヽる。
[0022] (2)第 2の遺伝子群の抽出
ェゾゥコギ抽出物を投与したときのラットの黒質を採取し、このサンプルから制御 m RNAを調製する。前述のコントロール mRNAと制御 mRNAとを DNAチップにかけ て、発現量の差違が認められる第 2の遺伝子群を抽出する。上記(1)と同様にして、 DNAチップに、例えば競合法を用いると、両 mRNAの発現量の差違を検出すること ができる。
図 2には、この結果を模式的に示した。図中の丸印は、それぞれ異なる DNAを固 定してある位置を示し、丸印内に大文字 (A, B, C, E, I, K)を付したものは、制御 m RNAの発現量がコントロール mRNAの発現量に比較して増加した遺伝子群 (第 2発 現量増加遺伝子群)を示している。また、丸印内に小文字 (d, g, n, p, r, s, u)を付 したものは、制御 mRNAの発現量がコントロール mRNAの発現量に比較して減少し た遺伝子 (第 2発現量減少遺伝子群)を示して ヽる。
[0023] (3)第 3の遺伝子群または第 4の遺伝子群の抽出
上記(1)と(2)との結果より、両者において互いに逆の傾向を示す遺伝子群のうち
、第 1発現量減少遺伝子群と第 2発現量増加遺伝子群との交わりである第 3の遺伝 子群は、 A, B, C, E, Kである。また、第 1発現量増加遺伝子群と第 2発現量減少遺 伝子群との交わりである第 4の遺伝子群は、 n, uである。
(4)その他の遺伝子群の抽出
また、第 3の遺伝子群には含まれないが、第 1発現量減少遺伝子群に含まれるもの として Hが、第 2発現量増加遺伝子群に含まれるものとして Iがある。
[0024] < DNAチップの作製( 1)脳黒質データ由来 >
図 3には、パーキンソン病に関するプロフィールを検出するための DNAチップの模 式図を示した。この DNAチップには、上記第 3の遺伝子群 (A, B, C, E, K)、第 1発 現量減少遺伝子群 (H)、及び第 2発現量増加遺伝子群 (I)を含む遺伝子の発現を 検出できるように DNAが固定されて 、る。
なお、この場合には、もちろん第 3の遺伝子群 (A, B, C, E, K)のみを固定した D NAチップを作製することもできる。また、第 4の遺伝子群 (n, u)を用いることもできる 。なお、 DNAチップには、ポジティブコントロールとして、適当な遺伝子(例えば、 β ァクチン、 GAPDH、ュビキチン B、リボソ一マルプロテイン S18(Rpsl8)など)を用い ることが好ましい。
[0025] く血液力 抽出した mRNAを用いた解析〉
(1)第 1の遺伝子群の抽出
ロテノンを投与してパーキンソン病を発症したラットの血液を採取し、このサンプル 力も疾患 mRNAを調製する。一方、ロテノンを投与していないラット (コントロール動 物)の血液からコントロール mRNAを調製する。これら二種類の mRNAを DNAチッ プにかけて、発現量の差違が認められる第 1の遺伝子群を抽出する。
図 4には、この結果を模式的に示した。図中の丸印は、それぞれ異なる DNAを固 定してある位置を示し、丸印内に大文字 (A, B, H)を付したものは、疾患 mRNAの 発現量がコントロール mRNAの発現量に比較して減少した遺伝子 (血液中第 1発現 量減少遺伝子群)を示している。また、丸印内に小文字 (j, k, m, n, q, u)を付したも のは、疾患 mRNAの発現量がコントロール mRNAの発現量に比較して増加した遺 伝子 (血液中第 1発現量増加遺伝子群)を示して!/ヽる。
[0026] (2)第 2の遺伝子群の抽出
ェゾゥコギ抽出物等を投与したラットの血液を採取し、このサンプルから制御 mRN Aを調製する。前述のコントロール mRNAと制御 mRNAとを DNAチップにかけて、 発現量の差違が認められる第 2の遺伝子群を抽出する。 DNAチップを利用して両 m RNAの発現量の差違を検出する。
図 5には、この結果を模式的に示した。図中の丸印は、それぞれ異なる DNAを固 定してある位置を示し、丸印内に大文字 (A, B, E, I, K)を付したものは、制御 mR NAの発現量がコントロール mRNAの発現量に比較して増加した遺伝子群(血液中 第 2発現量増加遺伝子群)を示している。また、丸印内に小文字 (s)を付したものは、 制御 mRNAの発現量がコントロール mRNAの発現量に比較して減少した遺伝子群 (血液中第 2発現量減少遺伝子群)を示して 、る。
[0027] (3)第 3の遺伝子群または第 4の遺伝子群の抽出
上記(1)と(2)との結果より、両者において互いに逆の傾向を示す遺伝子群のうち 、血液中第 1発現量減少遺伝子群と血液中第 2発現量増加遺伝子群との交わりであ る第 3の遺伝子群は、 A, Bである。また、第 1発現量増加遺伝子群と第 2発現量減少 遺伝子群との交わりである第 4の遺伝子群は、この例中には存在しない。
(4)その他の遺伝子群の抽出
また、第 3の遺伝子群には含まれないが、血液中第 1発現量減少遺伝子群に含ま れるものとして Hが、血液中第 2発現量増加遺伝子群に含まれるものとして E, I, が ある。
[0028] < DN Aチップの作製(2)血液データ由来 >
図 6には、パーキンソン病に関するプロフィールを検出するための DNAチップの模 式図を示した。この DNAチップには、上記第 3の遺伝子群 (A, B)、血液中第 1発現 量減少遺伝子群 (H)、及び血液中第 2発現量増加遺伝子群 (E, I, K)を含む遺伝 子の発現を検出できるように DNAが固定されて ヽる。
なお、遺伝子数を減少させるために、第 3の遺伝子群 (A, B)のみを用いて DNAチ ップを作製することもできる。
<血液検出可能遺伝子群の抽出 >
上記工程より、黒質カゝら調製された mRNAに基づいて、第 3の遺伝子群 (A, B, C , E, K)、第 1発現量減少遺伝子群 (H)、及び第 2発現量増加遺伝子群 (I)が抽出さ れる。また、血液力 調製された mRNAに基づいて、第 3の遺伝子群 (A, B)、血液 中第 1発現量減少遺伝子群 (H)、及び血液中第 2発現量増加遺伝子群 (E, I, K)が 抽出される。
次に、これらの工程によって抽出された遺伝子群のうち重複する血液検出可能遺 伝子群を抽出する。第 3の遺伝子群のうち重複する遺伝子群は A、 Bであり、第 1発 現量減少遺伝子群のうち重複する遺伝子群は Hであり、第 2発現量増加遺伝子群の うち重複する遺伝子群は E, I, Kである。こうして、血液検出可能遺伝子群が抽出さ れる。なお、実際の DNAチップを作製するに際しては、これらの遺伝子群 (A, B, H , E, I, K)を適当に取捨選択して用いることができる。
実施例
[0029] <実施例 1 >ASHZMASHを経口投与したラットにロテノンによるパーキンソン病 疾患誘導を行なった場合の効果確認試験
試験方法:農薬であるロテノン (Rotenone)を投与することにより、ラットにパーキン ソン病の病態を発生させられることが知られている。本試験では、このロテノンをモデ ル動物作製用に用いた。また、ロテノンによるパーキンソン病を予防するための薬物 として、 ASH (ェゾゥコギを 100%エタノール、 50%エタノール、蒸留水で順次抽出 したエキスを混合した混合エキスであり、商品名リンパザィムとして市販されて 、るも の)、または MASH (ェゾゥコギを炭化するまで蒸焼した後に、抽出物を製造したもの 。特開平 5— 186360号公報に開示の技術に基づいて製造されたものを用いた。)を 用いた。
[0030] ラット A1群:予備飼育し、ゾンデを用いて、 ASH (0.5%)を一日一回、 6週間に渡 つて経口投与した。
ラット A2群:予備飼育し、ゾンデを用いて、 ASH (0.5%)を一日一回、 6週間に渡 つて経口投与した。また、 ASHの投与開始から 2週間して、ロテノン(2.5mgZkg)を 一日一回、 4週間に渡って腹腔内注射した。
ラット B1群:予備飼育し、ゾンデを用いて、 MASH (0.5%)を一日一回、 6週間に
渡って経口投与した。
ラット B2群:予備飼育し、ゾンデを用いて、 MASH (0.5%)を一日一回、 6週間に 渡って経口投与した。また、 MASHの投与開始から 2週間して、ロテノン(2.5mgZk g)を一日一回、 4週間に渡って腹腔内注射した。
ラット C1群(陰性コントロール):予備飼育し、通常に 8週間に渡って飼育した。 ラット C2群(陽性コントロール):予備飼育し、 2週間して、ロテノン(2.5mgZkg)を 一日一回、 4週間に渡って腹腔内注射した。
[0031] 上記 6群(1群当り 7例)の各被験群について、試験開始時点 (0)、試験開始後 1、 4 、 5、 6、 7及び 8週目にポール試験を行なって運動機能を調べた。
ポール試験は、(1)被験ラットを上端部にグリップの付いた 100cmのポールに上向 きに掴ませ、その時点を試験開始時点とし、(2)試験開始時点力もラットが下向きに 方向転換するまでの時間(Timeto turn downward)、及び(3)ラットが下向きに方 向を転換してからポールを降りて地面に達するまでの時間 (Timetoreach the floor )を計測した。
[0032] 試験結果:図 7は、ラットが試験開始時点から下向きに方向転換するまでの時間を 計測した結果を示したグラフである。グラフの縦軸はラットが方向転換に要した秒数 ( Timeto turn downward)を、横軸は飼育日数であって各被験群に投与を開始し てから経過した日数 (週: week)をそれぞれ示して 、る。
図 7において、ラット C1群 (H20)では、試験開始 0週目一 6週目までに渡って、方 向転換までに要した秒数は、ほぼ同等または学習効果による減少傾向を示した。ま た、ラット C2群(H20+Rotenone (3.5mgZkg, ip) )では、試験開始 2週目(口テノ ンの投与開始週)から秒数が増加し、 6週目まで増加し続けた。 6週目では、試験開 始時 (約 8秒)の約 4倍 (約 32秒)まで増加し、パーキンソン病の病態を発症して 、る ことが確認された。
[0033] その他の 4群 (A1群、 A2群、 B1群、 B2群)につ!/、ては、ロテノンの投与を開始した 2週目一 6週目のいずれの期間においても、試験開始 0週目との間に大きな差違は 認められなかった。このことより、 ASH及び MASHのいずれにも、ロテノンが誘導す るパーキンソン病を予防する効果があることが示された。
図 8は、ラットが試験開始時点からポールを降りて地面に達するまでの時間を計測 した結果を示したグラフである。グラフの縦軸はラットが地面に達するまでの秒数 (Ti meto reach the floor)を、横軸は飼育日数であって各被験群に投与を開始してか ら経過した日数(週: week)をそれぞれ示している。図 8において、ラット C1群(H20 )では、試験開始 0週目一 6週目までに渡って、やや増減は認められるものの、全体と して、ほぼ同等の秒数を示した。また、ラット C2群(H20+Rotenone (3.5mgZkg , ip) )では、試験開始 2週目(ロテノンの投与開始週)から徐々に秒数が増加し、 5週 目一 6週目まで顕著に増力!]した。 6週目では、試験開始時 (約 12秒)の約 3倍 (約 35 秒)まで増加し、パーキンソン病の病態を発症して 、ることが確認された。
[0034] その他の 4群 (A1群、 A2群、 B1群、 B2群)につ!/、ては、ロテノンの投与を開始した 2週目一 6週目のいずれの期間においても、試験開始 0週目との間に大きな差違は 認められなかった。このことより、 ASH及び MASHのいずれにも、ロテノンが誘導す るパーキンソン病を予防する効果があることが示された。
なお、投与開始時 (グラフの横軸が 0)におけるポールを降りて地面に達するまでの 秒数の各被験群間の差は統計学上有意な差ではない。このことから、予備飼育の段 階で、個々のラットの運動能力差に力かる各被験群間の運動能力差が生じないよう に予め調整した後試験がなされていることが示される。
[0035] <実施例 2>ASHZMASHを経口投与したラットにロテノンによるパーキンソン病 疾患誘導を行なった場合のカタレプシ一に及ぼす効果確認試験
試験方法:薬物として、 ASH及び MASHを用いた。
実施例 1と同様にして飼育された 6群のラット (A1群, A2群, B1群, B2群, C1群, C2群;各群について、 N = 7)を用意した後、各群について、試験開始時点(0)、試 験開始後 1、 2、 3、 4、 5、 6及び 7週目に力タレプシー(Catalepsy)試験を行なった。 力タレプシー試験は、不動化状態の試験であって、まず被験ラットの両後足が地面 に着いた状態で両前足を箱の上に載せた時点を試験開始時点とし、ラットがその体 姿勢をとり続ける不動状態時間 (秒数)を計測した。
[0036] 試験結果:図 9は、力タレプシー試験の測定結果を示したグラフである。グラフの縦 軸はラットの不動状態時間(Catalepsy)を、横軸は飼育日数であって各被験群に投
与を開始してカゝら経過した日数 (週: week)をそれぞれ示して ヽる。
図 9において、ラット C1群 (H20)では、試験開始 0週目一 7週目までに渡って、不 動状態時間は、ほとんど 0秒に近いままであり、増加または減少は見られな力つた (す なわち、被験ラットは、試験開始後、速やかに前足を箱から離して、通常の四足歩行 の姿勢に戻った)。また、ラット C2群(H20+Rotenone (3.5mgZkg, ip) )では、試 験開始 6週目(ロテノンの投与開始力 4週目)力 秒数が顕著に増加した。 6週目で は、試験開始時の約 0秒力 約 120秒まで増加し、うつ状態を示すことが確認された
[0037] その他の 4群 (A1群、 A2群、 B1群、 B2群)につ!/、ては、ロテノンの投与を開始した 2週目一 6週目のいずれの期間においても、試験開始 0週目との間に差違は認めら れなかった。このことより、 ASH及び MASHのいずれにも、ロテノンが誘導するうつ 状態を予防する効果があることが示された。また、黒質線条体系とうつ行動との関係 が示唆された。
[0038] <実施例 3 > DNAチップを利用した遺伝子発現の確認試験 1
試験方法:ロテノン、またはェゾゥコギ抽出物 (ASH、 MASH)を投与したラットを以 下のように処理した。
ラット A群:予備飼育し、ゾンデを用いて、 ASH (0.5%)を一日一回、 6週間に渡つ て経口投与した。
ラット B群:予備飼育し、ゾンデを用いて、 MASH (0.5%)を一日一回、 6週間に渡 つて経口投与した。
ラット C1群(陰性コントロール):予備飼育し、通常に 8週間に渡って飼育した。
ラット C2群(陽性コントロール):予備飼育し、 2週間して、ロテノン(3.5mg/kg)を 一日一回、 4週間に渡って腹腔内注射した。
これら 4群 (A群、 B群、 C1群、及び C2群。各群について、 N = 7)について、試験 開始から 6週間経過後に、ラットの黒質及び血液を採取した。黒質及び血液サンプル を各群毎に 4叉は 3例づっ混合した後、 mRNAを抽出し、 DNAチップによって発現 遺伝子のプロフィールを検出した。 DNAチップ試験には、競合法を用い、それぞれ( 1) C1群(H20)と C2群(ロテノン投与)、(2) C1群(H20)と A群 (ASH投与)、及び
(3) CI群 (H20)と B群 (MASH投与)の遺伝子発現プロフィールを比較検討した。
[0039] なお、 mRNAの抽出方法及び、 DNAチップの処理方法は、ラット DNA chip (ァ ジレント社製)に添付された説明書に基づいて行った。また、 DNAチップのデータ読 み取りにはマイクロアレイスキャナ(Affymetrix428 scanner: Affymetrix社製)を 使用し、データ解析には、 DNAsis array (日立ソフト社製)を使用した。また、リアル タイム PCR (real time PCR)には、 Bio— Rad iCycler Real time PCR (Bio— RAD社製)を用いた。
[0040] 試験結果:表 1一表 5には、 DNAチップによる遺伝子発現プロフィールの解析結果 を示した。
[表 1]
[0041] [表 3]
Accession Number name
low density lipoprotein B
apoptosis - stimulating protein of p53
apolipoprotein-A Π
proteasome 26b subunit
epidermal growth factor-response factor 2
ミミ > 00 CD ubiquinol cytochrome c reductase complex core protein 2
(*2) 0
(*3)
(*4)
(*5)
[表 5]
(*1 ) Accession Number name
CB548232 low density lipoprotein B ASH>1
AW917505 apoptosis - stimulating protein of p53 ASH>1
S79794.1 apolipoprotein-A Π ASH>1
AA858879 proteasome 26S subunit ASH>1
CB547818 epidermal growth factor-response factor 2 ASH>1
AW140729 ubiquinol cytochrome c reductase complex core protein 2 ASH>1
NM一 017237 ubiquitin carboxy-terminal hydrolase L1 ASHく 1
NM_012839 cytochrome c, somatic ASH<1
NM 133306 oxidised low density lipoprotein receptor 1 ASHく 1
(*2) Accession Number name
CB545203 ubiquitin specific protease MASH>1
BF544360 ubiquitin specific processing protease MASH>1
BF553594 NADH - ubiquinone oxidoreductase B9 subunit MASH>1
CB605935 ubiquitin— associated protein NAG20 MASH>1
CB546608 latent transforming growth facto「beta binding protein 4L MASH>1
All 45977 neuronal specific transcription factor DAT1 MASH>1
21363316 ubiquitin - protein ligase UBE3B MASH>1
BQ782530 platelet derived growth factor, B polypeptide MASH>1
AW140729 ubiquinol cytochrome c reductase complex core protein 2 MASH>1
NM 012839 cytochrome c, somatic MASHく 1
[0043] 表 1には、(1) C1群 (H20)と C2群(ロテノン投与)、及び(2) C1群 (H20)と八群( ASH投与)の結果をまとめたデータを示した。表 1中の記号のうち、「R< 1」はロテノ ンを投与してパーキンソン病を発生させたときにコントロールと比較して発現量が減 少したもの(第 1発現量減少遺伝子群)を、「R> 1」はロテノンを投与してパーキンソ ン病を発生させたときにコントロールと比較して発現量が増加したもの(第 1発現量増 加遺伝子群)をそれぞれ意味している。「ASH≥1.5」、「ASH≥1.2」または「ASH > 1」は、 ASHを投与したときにコントロールと比較して発現量が増加したもの(第 2発 現量増加遺伝子群)のうち、増加量によって区画したもの(1.5倍以上、 1.2倍以上、 または 1倍より大)を意味している。
なお、一般には、コントロール群 (本実施例では、 H20)の発現量に対して、処置群 (本実施例では、 ASHまたは MASH)の発現量が 2倍以上のものからリアルタイム P CR解析を行うことが多い。また、 DNAチップに関する研究者の中には、発現量の差 違が 2倍以下の場合には、信頼に足りるデータではないとみなす者もいる。しかしな がら、本発明者は、 DNAチップ全体の情報を効率的に有用な形にする目的で、コン トロール群よりも少しだけ高 、発現量を示した遺伝子も見のがしたくな 、と考え、 R< 1または ASH > 1等を含めている。そして、 UCCR (処置群において、 1より大である 1S 1.5以下)のリアルタイム PCRの結果を見ると、今回の DNAチップ解析での UCC Rの発現量上昇が正確であることを示す一例となって 、ることから、本発明者の上記 目的が達成されていると考える。
[0044] また、「ASHく 1」、「ASH≤0.8」または「ASH≤0.6」は、 ASHを投与したときにコ ントロールと比較して発現量が減少したもの(第 2発現量減少遺伝子群)のうち、減少 量によって区画したもの(1倍より小、 0.8倍以下、または 0.6倍以下)を意味している 。また、表 1において、左側 3列は、ロテノン投与によって発現量が減少したもの(第 1 発現量減少遺伝子群)と、 ASH投与によって発現量が増加したもの(第 2発現量増 加遺伝子群)との交わりである第 3の遺伝子群の数を意味しており、右側 3列は、ロテ ノン投与によって発現量が増加したもの(第 1発現量増加遺伝子群)と、 ASH投与に よって発現量が減少したもの(第 2発現量減少遺伝子群)との交わりである第 4の遺伝 子群の数を意味している。また、表 1中の「一致」と示した行(3行分)は、黒質と血液と
のデータが一致したもの(血液検出可能遺伝子群)を意味している。更に、「一致か つ PD関連」と示した行 (最下行)は、現在公表されているパーキンソン病(PD)に関 連する遺伝子について、今回の試験結果のうち「一致」中のものと同じものを示して いる。第 3の遺伝子群または第 4の遺伝子群の一部には、現在知られている PD関連 遺伝子が含まれていることから、本実施形態の方法が有効に疾患関連遺伝子群を抽 出できることを示している。
[0045] 表 2には、(1) C1群(H20)と C2群(ロテノン投与)、及び(3) C1群(H20)と 群( MASH投与)の結果をまとめたデータを示した。表 2中の記号は、上記表 1中の記号 の意味と同様である。
表 1中の第 3列、第 4列、表 2中の第 2列一第 4列の「一致かつ PD関連」には、それ ぞれ 6個、 3個、 2個、 9個、及び 1個の遺伝子が認められた。表 3には、表 1及び表 2 中の「一致かつ PD関連」として示した( * 1)一( * 5)の遺伝子名を示した。これらの 遺伝子については、ァクセシヨンナンバー(Accession Number)に基づいて、塩基配 列等を確認することができる。
[0046] 表 4には、(1)ロテノン投与によって発現量が減少したもの (Rく 1,第 1発現量減少 遺伝子群)と ASH投与によって発現量が増加したもの (ASH> 1,第 2発現量増加 遺伝子群)との交わりである第 3の遺伝子群、及びロテノン投与によって発現量が増 カロしたもの (R> 1,第 1発現量増加遺伝子群)と ASH投与によって発現量が減少し たもの (第 2発現量減少遺伝子群)との交わりである第 4の遺伝子群 (表 1における第 3列と第 4列との合計)と、(2)ロテノン投与によって発現量が減少したもの (Rく 1,第 1発現量減少遺伝子群)と MASH投与によって発現量が増加したもの(MASH > 1 ,第 2発現量増加遺伝子群)との交わりである第 3の遺伝子群、及びロテノン投与によ つて発現量が増加したもの (R> 1,第 1発現量増加遺伝子群)と MASH投与によつ て発現量が減少したもの(第 2発現量減少遺伝子群)との交わりである第 4の遺伝子 群 (表 2における第 3列と第 4列との合計)とを示した。
表 5には、表 4の最下行に示した「一致かつ PD関連」に属する遺伝子名をァクセシ ヨンコードと共に示した。
なお、表中において、「unknown」と記載された遺伝子は、現段階において、名前
も機能も同定されていない遺伝子であり、 EST (expressed sequence tag)の中から D NAチップ用に使用された遺伝子を示している。つまり、「unknown」は、未知の物質 であるものの、パーキンソン病の発症に関連して 、る可能性が高 、ものであることが 予想できるものである。但し、未だクローユングされていないので、名前が存在せず、 機能も不明である。しかし、別の方向からこの結果を見ると、パーキンソン病関連新規 機能物質をクローユングする優先順位叉はクローユング候補を示していると考えられ る。そして、これらの unknownは、今後のパーキンソン病の治療のターゲット遺伝子 となる可能 ¾を秘めて 、る。
なお、 ESTとは、 cDNAライブラリーからランダムに選んだクローンの 5'末端 (あるい は 3'末端)から数百塩基の配列を決定したものをデータベースに登録したものであり 、遺伝子解析の過程において、断片的な cDNAしカゝ保持していない場合に、 ESTを PCR用プライマーとして利用して全長を得ることができる。
[0047] <実施例 4 >DNAチップとリアルタイム PCRとを用いた黒質中 UCCRの発現量比 較試験
試験方法:薬物として、ロテノン、 ASH、及び MASHを用いた。実施例 1と同様に 6 群 (Al, A2, Bl, B2, CI, C2)を用意し、試験開始から 6週間後に、各群のラット黒 質中のュビキノールチトクローム Cレダクターゼ複合体コア蛋白 2 (
Ubiquinol— cytochromeし reductase complex core protein 2。 下、「UCCR」と ヽつ) mRNA量を DN Aチップとリアルタイム PCRとで比較した。 UCCRは、実施例 3の結 果を示した表 1または表 2中にお 、て、( * 1)または( * 4)の遺伝子群に含まれて!/ヽ る。
[0048] 試験結果:図 10には、上記 6群中のラット黒質内に発現された UCCR mRNA量 を DNAチップ (マイクロアレイ)及びリアルタイム PCRで測定したときの結果を棒ダラ フで示した。
図より明らかなように、黒質 UCCR mRNAの発現量は、 C1群(H20)を 100%と したときに、 C2群(H20 +ロテノン)では減少し、 A1群(ASH)及び B1群(MASH) で増加していた。この結果は、実施例 3で示した表 1及び表 2と一致している。また、 UCCR mRNA発現量は、 A2群(ASH +ロテノン)及び B2群(MASH +ロテノン)
においては、それぞれ A1群及び B1群よりも多く増加することが判った。 また、 6群のいずれにおいても、 UCCR mRNA発現量は、 DNAチップ及びリア ルタイム PCRの両者で良好な一致を示していることから、本発明者の試験系が精度 良く行われて ヽることが示された。
[0049] <実施例 5 > DNAチップを利用した遺伝子発現の確認試験 2
試験方法:ロテノン、セサミン、またはェゾゥコギ抽出物 (ASH、 MASH)を投与し たルイス(Lewis)ラットを以下のように処理した。
ラット A群:予備飼育し、ゾンデを用いて、 ASH (5%)を一日一回、 6週間に渡って 経口投与した。
ラット B群:予備飼育し、ゾンデを用いて、セサミン(30mgZkg)を一日一回、 6週間 に渡って経口投与した。
ラット C群:予備飼育し、ゾンデを用いて、 ASH (0.5%)を一日一回、 6週間に渡つ て経口投与した。
ラット D群:予備飼育し、ゾンデを用いて、 MASH (0.5%)を一日一回、 6週間に渡 つて経口投与した。
ラット E1群(陰性コントロール):予備飼育し、通常に 8週間に渡って飼育した。 ラット E2群(陽性コントロール):予備飼育し、 2週間して、ロテノン(3.5mgZkg)を 一日一回、 4週間に渡って腹腔内注射した。
これら 6群 (A群、 B群、 C群、 D群、 E1群及び E2群について、試験開始から 6週間 経過後に、ラットの黒質及び血液を採取した。黒質及び血液サンプルを各群毎に 4 叉は 3例づっ混合した後、 mRNAを抽出し、 DNAチップによって発現遺伝子のプロ フィールを検出した。 DNAチップ試験には、競合法を用い、それぞれ(1) E1群 (H2 O)と E2群(ロテノン投与)、(2) E1群 (H20)と A群 (ASH (5%)投与)(3) E1群と B 群(セサミン投与: S30)、(4) E1群と C群 (ASH (0.5%)投与)、及び(5) E1群と D群 (MASH投与)の遺伝子発現プロフィールを比較検討した。
[0050] なお、 mRNAの抽出方法及び、 DNAチップの処理方法は、ラット DNA chip (ァ ジレント社製)に添付された説明書に基づいて行った。また、 DNAチップのデータ読 み取りにはマイクロアレイスキャナ(Affymetrix428 scanner: Affymetrix社製)を
使用し、データ解析には、 DNAsis array (日立ソフト社製)を使用した。また、リアル タイム PCR (real time PCR)には、 Bio— Rad iCycler Real time PCR (Bio— RAD社製)を用いた。
試験結果:表 6 表 11には、 DNAチップによる遺伝子発現プロフィールの解析結 果を示した。
[表 6]
既知遗伝子の( )内の数字は、既存のパーキンソン病関連遗伝子の数を指す
[表 7]
〔
重ね合わせ(ASHは、 Lewis04と Lewis03を合わせた)
00
グループ( I I I ) グループ( I v ) グループ( ν ) グループ( V I ) 嵌知 unknown 既知 unknown 既知 unknown
ST τ 知 u know 遺 ffi子 function function nT
通伝子 function function
ASH vs S30 13 8 21 3 0 3 16 39 40 1 1 51
ASH vs MASH 14 5 19 0 0 0 囊腳謹墨 0 2 41 14 55
§s〔」 9
グループ ( I )
グループ ( I )
表 6には、全群の結果をまとめたデータを示した。表 6中、「Lewis04」及び「Lewis 3」は、それぞれ試験を行った時期と一群当りの個体数 (N)が異なることを示してい
る。すなわち、「Lewis04」と記載した A群、 B群 (及び、対応する E1群、 E2群)につ いては、 2004年に 5匹 Z群を用いた試験の結果を、「Lewis03」と記載した C群、 D 群 (及び、対応する E1群、 E2群)については、 2003年に 6匹 Z群を用いた試験の結 果をそれぞれ示した。
本実施例の解析では、個々の遺伝子発現について、ノ ックグラウンドデータを引く という標準化の操作を行った。表中の記号のうち、グループ (I)一グループ (VI)の意 味は次の通りである。
グループ (I)は、黒質において、各評価物質 X(ASH (5%又は 0.5%)、 S30、また は MASH (0.5%) )を投与したときにコントロールと比較して発現量が 1.3以上に上 昇し (第 2発現量増加遺伝子群)、かつロテノンを投与してパーキンソン病を発生させ たときにコントロールと比較して発現量が 1Z1.3 ( = 0.769)以下に減少したもの(第 1発現量減少遺伝子群)にお 、て重複した第 3の遺伝子群を意味する。
グループ (Π)は、黒質において、各評価物質 Xを投与したときにコントロールと比較 して発現量が 1Z1.3 ( = 0.769)以下に減少したもの(第 2発現量減少遺伝子群)、 かつロテノンを投与してパーキンソン病を発生させたときにコントロールと比較して発 現量が 1.3以上に増加したもの(第 1発現量増加遺伝子群)において重複した第 4の 遺伝子群を意味する。
グループ (ΠΙ)は、グループ (I)のなかで、血液において、ロテノンを投与してパーキ ンソン病を発生させたときにコントロールと比較して発現量が 1Z1.3 ( = 0.769)以下 に減少した血液検出可能遺伝子群を意味する。
グループ (IV)は、グループ(Π)のなかで、血液において、ロテノンを投与してパー キンソン病を発生させたときにコントロールと比較して発現量が 1.3以上に増加した血 液検出可能遺伝子群を意味する。
グループ (V)は、グループ (I)のなかで、血液において、各評価物質 Xを投与したと きにコントロールと比較して発現量が 1.3以上に増加した血液検出可能遺伝子群を 意味する。
また、グループ (VI)は、グループ (Π)のなかで、各評価物質 Xを投与したときにコン トロールと比較して発現量が 1Z1.3 ( = 0.769)以下に減少した血液検出可能遺伝
子群を意味する。
[0058] 本実施例では、(A)バックグラウンドデータを考慮したデータの標準化操作に加え 、(B)遺伝子のカットオフライン (コントロールと比較して、発現量が増加、または減少 )を 1.3以上、または 1Z1.3 ( = 0.769)以下とした。このため、抽出される遺伝子数 は減少したものの、その信頼度は向上し、更にリアルタイム PCRによる確認作業後の 再現性が高められている。
表 7には、上記グループ(III)一グループ(VI)において、評価物質 Xとして、 ASH ( 5%、及び 0.5%)、及びセサミン (S30)を投与したときに、両物質投与群で共に抽出 された遺伝子数 (上段)、または ASH及び MASHを投与したときに、両物質投与群 で共に抽出された遺伝子数 (下段)を示した。
[0059] また、表 8—表 11には、表 6において、評価物質 X(ASH (5%)、 S30、 ASH (0.5 %)、及び MASH (0.5%) )を投与したときに、グループ (I)一グループ (VI)として抽 出された既知遺伝子のうち、パーキンソン病関連遺伝子 (表中、 ( )内に示す数字) をまとめた。具体的には、表 8には ASH (5%)投与群での遺伝子を、表 9には S30に おける遺伝子を、表 11には ASH (0.5%)を、表 12には MASH (0.5%)をそれぞれ 示した。なお、これらの遺伝子については、ァクセシヨンナンバー(AccessionNumber) に基づ!/、て、塩基配列等を確認することができる。
各遺伝子として、現在知られている PD関連遺伝子が含まれていることから、本実施 形態の方法が有効に疾患関連遺伝子群を抽出できることを示している。
[0060] なお、表中において、「unknown function」と記載された遺伝子数は、現段階に おいて、名前も機能も同定されていない遺伝子である。つまり、「unknown functio njは、未知の物質であるものの、パーキンソン病の発症に関連している可能性が高 いものであることが予想できるものである。但し、未だクローニングされていないので、 名前が存在せず、機能も不明である。しかし、別の方向からこの結果を見ると、パー キンソン病関連新規機能物質をクローユングする優先順位叉はクローユング候補を 示していると考えられる。そして、これらの「unknown function」は、今後のパーキ ンソン病の治療のターゲット遺伝子となる可能性を秘めている。
[0061] 実施例 3では、黒質力 抽出した遺伝子と血液力 抽出した遺伝子との間で一致し
た遺伝子を評価した。本実施例においても、そのようにするのが良いと考えられた。し かし、その方法を用いると、本実施例のデータでは、数個の遺伝子し力抽出されなか つた。そこで、黒質力も抽出した遺伝子(実施例 3と同じ方法。上記グループ (I)及び グループ (II)に相当する。)の状況を血液から抽出した遺伝子で確認することが出来 れば良いと考えた。具体的には、グループ (III)では、グループ (I)で抽出された遺伝 子のうち、血液で同じ動きをする R≤lZl.3の遺伝子数、グループ (IV)では、ダル ープ (Π)で抽出された遺伝子のうち、血液で同じ動きをする R≥ 1.3の遺伝子数を示 した。これは、ロテノンという農薬が動物 (ヒトも含む)の体内に入り、脳の神経機能を 障害する効果をグループ (III)及びグループ (IV)の遺伝子を用いて末梢から容易に 評価する (言 、換えると、どれだけ農薬の影響を受けて 、るのかを評価する)ことが可 能であることを意味して 、る。
[0062] グループ (V)では、グループ (I)で抽出された遺伝子のうち、血液で同じ動きをする X≥ 1.3の遺伝子数、グループ (VI)では、グループ (Π)で抽出された遺伝子のうち、 血液で同じ動きをする X≤lZl.3の遺伝子数を示した。これは、 Xという生薬 (ェゾゥ コギ (ASH)、セサミン(S)、及び修治加工ェゾゥコギ(MASH) )の抗パーキンソン病 効果をグループ (V)及びグループ (VI)で抽出された遺伝子を用いて末梢カゝら容易 に評価することが可能であることを示して 、る。
つまり、グループ(ΠΙ)—グループ (VI)の遺伝子の変動を観察することにより、その ヒトの PDの発症度合 ヽとその生薬 (機能性食品や医薬品)の効果の度合!/ヽを末梢血 力 評価できることを意味して 、る。
本方法によれば、実施例 3では抽出されなカゝつた遺伝子も評価対象となり得るため 、より的確な環境中の農薬暴露での脳機能の状況を把握できる。また、この方法では 、その状況を改善あるいは予防できる機能性食品が判明することが、まさにテーラー メイド機能性食品であることを意味して 、る。
[0063] くまとめ〉
本実施例によれば、非ヒトコントロール動物であるラットを用いて、パーキンソン病を 発生させる処置(ロテノン投与)、またはパーキンソン病の発生を押さえる処置 (ェゾゥ コギ抽出物の投与)を行ったときの遺伝子発現プロフィールを DNAチップにより検出
し、コントロール群と比べて増加または減少して ヽる遺伝子群を適宜選択すること〖こ よって、パーキンソン病に関連する遺伝子群を抽出できた。
この方法は、その他の疾患 (例えば、アルッノ、イマ一病、生活習慣病等)に応用す ることが可能である。
また、この方法によって、抽出された疾患関連遺伝子群を DNAチップに適用する ことで、対象とする疾患に対する個々人のデータを容易に採取することができる。 図面の簡単な説明
[図 1]コントロール群とパーキンソン病群とにおいて、 DNAチップを用いて、黒質内の 遺伝子発現プロフィールを比較したときの結果を示す模式図である。
[図 2]コントロール群とェゾゥコギ抽出物投与群とにおいて、 DNAチップを用いて、黒 質内の遺伝子発現プロフィールを比較したときの結果を示す模式図である。
[図 3]黒質における遺伝子発現プロフィールに関するデータ力 得られたパーキンソ ン病関連遺伝子群をまとめた DNAチップの模式図である。
[図 4]コントロール群とパーキンソン病群とにおいて、 DNAチップを用いて、血液中で の遺伝子発現プロフィールを比較したときの結果を示す模式図である。
[図 5]コントロール群とェゾゥコギ抽出物投与群とにおいて、 DNAチップを用いて、血 液中での遺伝子発現プロフィールを比較したときの結果を示す模式図である。
[図 6]血液中における遺伝子発現プロフィールに関するデータ力 得られたパーキン ソン病関連遺伝子群をまとめた DNAチップの模式図である。
圆 7]ロテノンによるパーキンソン病疾患誘導を行った場合の運動機能障害に対する ェゾゥコギ抽出物の効果を示すグラフである。
圆 8]ロテノンによるパーキンソン病疾患誘導を行った場合の運動機能障害に対する ェゾゥコギ抽出物の効果を示すグラフである。
[図 9]ロテノンによるパーキンソン病疾患誘導を行った場合のうつ行動に対するェゾゥ コギ抽出物の効果を示すグラフである。
[図 10]UCCR mRNA量を DNAチップ及びリアルタイム PCRで測定したときの結果 を示すグラフである。