関節リウマチ治療薬のスクリーニング法
技術分野
[0001] 本発明は、関節リウマチ治療薬のスクリーニング法に関する。
背景技術
[0002] 関節リウマチ(Rheumatoid arthritis, RA)は滑膜組織に病変の主座を持ち、関節の 発赤、腫脹、熱感、疼痛、運動制限、及び破壊をもたらす原因不明の慢性炎症性疾 患である。 RAの滑膜組織では、インターロイキン- 1 (interleukin- 1、 IL- 1)、インター口 ィキン- 6 (IL-6)、インターロイキン- 8 (IL-8)、インターロイキン- 12 (IL- 12)、インター口 ィキン- 15 (IL-15)、インターロイキン- 18 (IL-18)、腫瘍壊死因子 oc (tumor necrosis factor- 、 TNF- )などの炎症性サイト力イン、一酸化窒素 (nitric oxideゝ NO)、プロスタグランジン(prostaglandins PGs)などの過剰産生が知られている(非 特許文献 1)。また、滑膜組織を構成する免疫担当細胞は CD40/CD40リガンド系、 ICAM-1 (intercellular
adhesion molecule— 1) / LFA 1 (leukocyte adhesion molecule— 1)糸などの糸田胞表 ΐϋ 分子を介して相互に活性ィヒしあい、炎症反応の遷延に関与すると考えられている(非 特許文献 2)。近年、モノクローナル抗体、可溶性受容体などを用い、 IL-1、 IL-6や TNF- aを標的とした治療法が開発されその有効性が注目を集めて 、る(非特許文 献 3)。また、滑膜組織を構成する滑膜線維芽様細胞や B細胞などの免疫担当細胞 の IL- 1、 TNF- α、リポ多糖(Lipopolysaccharide, LPS)、 CD40/CD40リガンド系に対 する応答性を抑制することが治療標的と考えられている (非特許文献 3)。しかし、従 来の治療標的分子を機序とする治療法では完全寛解導入には至らない患者群が存 在する (非特許文献 4)。従って、既存の報告とは異なる新しい治療標的分子の同定 が望まれている。
配列番号 1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む 173729塩基の配列 力 SGenBankァクセッション番号 AC012236に開示されている。配列番号 13で表される 配列を含む配列が、特許文献 1 (268塩基)、特許文献 2 (8114塩基)、及び GenBank
ァクセッション番号 AC012236 (173729塩基)に開示されて!、る。
[0003] 非特許文献 1:「ザ'ジャーナル'ォブ'ェクスメンタル'メディシン(The Journal of Experimental Medicine)」、(米国)、 1991年、第 173卷、 p.569- 574
非特許文献 2 :「ザ'ジャーナル'ォブ 'リューマトロジー(The Journal of Rheumatology )」、(カナダ)、 2002年、第 29卷、 p.875-882
非特許文献 3:「カレント 'ファーマシューティカル 'バイオテクノロジー(Current
Pharmaceutical Biotechnology)」、(米国)、 2000年、第 1卷、 p.217- 233
非特許文献 4 :「ネイチヤー'レビューズ 'ィムノロジー(Nature Reviews Immunology)」
、(英国)、 2002年、第 2卷、 p.364-371
特許文献 1:国際公開第 01Z75067号パンフレット
特許文献 2 :国際公開第 01Z57182号パンフレット
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0004] 本発明は関節リウマチの改善及び Z又は治療に有用な物質のスクリーニング方法 及び新たな作用機序に基づく関節リウマチ治療用医薬組成物を提供することを課題 とする。
課題を解決するための手段
[0005] 「配列番号 3で表されるアミノ酸配列」力 なるポリペプチドを「RA3タンパク質」、「配 列番号 3で表されるアミノ酸配列又は配列番号 3で表されるアミノ酸配列において 1 一 10個のアミノ酸が欠失、置換、及び Z若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、か つ発現抑制により LPS、 TNF- a、 IL-1 β及び Ζ若しくは CD40に対する応答性を抑 制するポリペプチド」を「RA3機能的等価改変体」と称する。また、「配列番号 3で表さ れるアミノ酸配列との同一性が 90%以上であるアミノ酸配列からなり、かつ発現抑制 により LPS、 TNF- a、 IL-1 β及び Z若しくは CD40に対する応答性を抑制するポリべ プチド」を「RA3相同ポリペプチド」と称する。 RA3タンパク質、 RA3機能的等価改変体 及び RA3相同ポリペプチドを総称して「本明細書のポリペプチド」と称する。
[0006] 本発明者らは、鋭意研究を行なった結果、ヒト RA患者滑膜組織にぉ ヽて発現量が 亢進している遺伝子 RA3の全長配列を決定した (参考例 1、参考例 4)。 RA3の発現を
特異的に抑制する siRNAの作製に成功した (実施例 1、実施例 2)。更に、 RA患者由 来滑膜線維芽様細胞で RA3の発現を抑制すると、その応答性の抑制が関節リウマチ 治療標的であると知られている LPS、 TNF- α及び IL-1 βの応答性が抑制されること を見出した (実施例 3)。また、 RA3遺伝子が免疫担当細胞である Β細胞及び Β細胞株 において特異的に発現していることを見出し (実施例 4、実施例 5)、 Β細胞株で RA3 の発現を抑制するとその応答性の抑制が関節リウマチ治療標的であると知られてい る CD40の応答性が抑制されることを明らかにした (実施例 6)。これらの知見から、 RA3の発現を抑制することにより関節リウマチ治療効果が得られることがわ力つた。加 えて、 RA3遺伝子プロモーターを取得し、 RA3の発現を制御する物質 (すなわち関節 リウマチ治療薬)をスクリーニングする方法を確立して提供した (実施例 7、実施例 8) 。 RA3を抑制する物質を有効成分とする新たな関節リウマチ治療薬を提供し、本発明 を完成させた。
すなわち、本発明は、
[1]試験物質が、(1)配列番号 3で表されるアミノ酸配列力 なるポリペプチド、 (2) 配列番号 3で表されるアミノ酸配列又は配列番号 3で表されるアミノ酸配列において 1一 10個のアミノ酸が欠失、置換、及び Ζ若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、 かつ発現抑制により LPS、 TNF- a、 IL-1 β及び Ζ若しくは CD40に対する応答性を抑 制するポリペプチド、又は(3)配列番号 3で表されるアミノ酸配列との同一性が 90% 以上であるアミノ酸配列からなり、かつ発現抑制により LPS、 TNF- a、 IL-1 β及び Z 若しくは CD40に対する応答性を抑制するポリペプチド
を抑制するか否かを分析する工程を含む、関節リウマチ治療薬のスクリーニング方法
[2]抑制が発現抑制である、 [1]に記載のスクリーニング方法、
[3]配列番号 1で表される塩基配列若しくは配列番号 1で表される塩基配列におい て 1一 10個の塩基が欠失、置換、及び Z若しくは挿入された塩基配列を含み、かつ
[1]に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーター活性を有する ポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された細胞と試験物質とを接触させ る工程、及び
プロモーター活性を分析する工程を含む、 [1]又は [2]に記載のスクリーニング方法
[4]前記分析工程で選択された試験物質が、関節リウマチ治療活性を有するか否か を確認する工程を更に含む、 [1]一 [3]のいずれか 1つに記載のスクリーニング方法
[5]配列番号 1で表される塩基配列力 なるポリヌクレオチド、
[6] (1) [1]に記載のポリペプチド、
(2) (i) [1]に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は (ii)配列番号 1で 表される塩基配列若しくは配列番号 1で表される塩基配列において 1一 10個の塩基 が欠失、置換、及び Z若しくは挿入された塩基配列を含み、かつ [1]に記載のポリべ プチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーター活性を有するポリヌクレオチド、あ るいは
(3) (i) [1]に記載のポリペプチドを発現している細胞、又は (ii)配列番号 1で表され る塩基配列若しくは配列番号 1で表される塩基配列において 1一 10個の塩基が欠失
、置換、及び Z若しくは挿入された塩基配列を含み、かつ [1]に記載のポリペプチド をコードするポリヌクレオチドのプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含む発 現ベクターで形質転換された細胞 を含む関節リウマチ治療薬スクリーニングツール、
[7] (1) [1]に記載のポリペプチド、
(2) (i) [1]に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は (ii)配列番号 1で 表される塩基配列若しくは配列番号 1で表される塩基配列において 1一 10個の塩基 が欠失、置換、及び Z若しくは挿入された塩基配列を含み、かつ [1]に記載のポリべ プチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーター活性を有するポリヌクレオチド、あ るいは
(3) (i) [1]に記載のポリペプチドを発現している細胞、又は (ii)配列番号 1で表され る塩基配列若しくは配列番号 1で表される塩基配列において 1一 10個の塩基が欠失
、置換、及び Z若しくは挿入された塩基配列を含み、かつ [1]に記載のポリペプチド をコードするポリヌクレオチドのプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含む発
現ベクターで形質転換された細胞
の関節リウマチ治療薬スクリーニングのための使用、
[8] [ 1 ]に記載の分析工程、及び製剤化工程を含む、関節リウマチ治療用医薬組成 物の製造方法、
[9] [ 1 ]一 [4]のいずれか 1つに記載のスクリーニング方法で得ることができる物質を 有効成分とする、関節リウマチ治療用医薬組成物、
[ 10] [ 1]に記載のポリペプチドを抑制する物質を有効成分とする、関節リウマチ治療 用医薬組成物、
[ 11 ] [ 1]に記載のポリペプチドを抑制する物質を、関節リウマチの治療が必要な対 象に有効量で投与することを含む、関節リウマチ治療方法、
[ 12] [ 1]に記載のポリペプチドを抑制する物質の、関節リウマチ治療用医薬組成物 製造のための使用、
[ 13]配列番号 2に記載の塩基配列の NAに続く 19一 21塩基力 なる、配列番号 2 で表される塩基配列力 なるポリヌクレオチドに特異的な塩基配列に基づいて設計さ れる siRNA、
[ 14]二重鎖 RNA部分力 配列番号 13で表される塩基配列、又はそのセンス鎖の 3 ' 末端が 1若しくは 2塩基欠失した塩基配列カゝらなる siRNA、
[ 15] [ 13]又は [ 14]に記載の siRNAを有効成分とする、関節リウマチ治療用医薬組 成物
に関する。
[0008] 本明細書において「発現抑制により LPS、 TNF- α、 IL- 1 j8及び Z若しくは CD40に 対する応答性を抑制する」とは、検討対象ポリペプチドの発現を抑制した所定の細胞 集団にぉ 、て、検討対象ポリペプチドの発現を抑制して 、な 、細胞集団に比べ、 LPS, TNF- a、 IL-1 β及び Z若しくは CD40の刺激応答性が減少及び Z又は抑制す ることを意味する。
[0009] 検討対象ポリペプチド発現抑制により前記刺激応答性が減少及び Z又は抑制する か否かは、例えば、次のようにして確認することができる。検討対象ポリペプチドの発 現を抑制した細胞又は抑制していない細胞を、 LPS, TNF- Q;及びZ若しくはIL-l β
で未刺激又は刺激する。前記細胞の抽出液、又は、培養上清を調整し、 LPS, TNF- a及び Z若しくは IL-1 β刺激応答性の反応 (例えば IL-8発現量)を測定することによ り検討対象ポリペプチドがその発現抑制により LPS、 TNF-ひ及び Z若しくは IL-1 j8に 対する応答性を抑制する力否かを確認することができる。刺激応答性の反応として IL-8発現量を測定する場合は、リアルタイム PCRや ELISA法など公知の方法によって その発現量を測定することができる。検討対象ポリペプチドの発現を抑制して 、な ヽ 細胞を LPS、 TNF- α及び Z若しくは IL-1 18刺激した場合に誘導される IL-8発現量に 対し、検討対象ポリペプチドの発現を抑制した細胞を LPS、 TNF- a及び Z若しくは IL-1 β刺激した場合に誘導される IL-8発現量が減少及び Ζ又は抑制されている場 合、検討対象ポリペプチドの発現抑制により LPS、 TNF- a及び Z若しくは IL-1 βに 対する応答性が抑制されたと判断することができる。好ましくは、実施例 3に記載の方 法で確認することができる。好ましくは、所定の細胞集団における LPS、 TNF- a及び Z若しくは IL-1 j8刺激応答性の減少は、この集団における LPS、 TNF- α及び Z若し くは IL-1 18刺激の抑制力 少なくとも約 10%、好ましくは少なくとも 20%、より好ましくは 少なくとも 40%、更に好ましくは少なくとも約 50%である。
また、検討対象ポリペプチド発現抑制により前記刺激応答性が減少及び Z又は抑 制する力否かは次のようにして確認することができる。検討対象ポリペプチドの発現 を抑制した細胞又は抑制して 、な 、細胞を、抗 CD40抗体で未刺激又は刺激する。 前記細胞の抽出液、又は、培養上清を調整し、 CD40応答性の反応 (例えば NF- κ B の活性化)を測定することにより検討対象ポリペプチドがその発現抑制により CD40に 対する応答性を抑制する力否かを確認することができる。刺激応答性の反応として NF- κ Bの活性ィ匕を測定する場合は、 NF- κ B応答性のレポーター遺伝子を利用す るなど公知の方法によってその活性ィ匕を測定することができる。検討対象ポリべプチ ドの発現を抑制していない細胞を抗 CD40抗体で刺激した場合に誘導される NF- κ B の活性化に対し、検討対象ポリペプチドの発現を抑制した細胞を抗 CD40抗体で刺 激した場合に誘導される NF- κ Bの活性ィ匕が減少及び Z又は抑制されている場合、 検討対象ポリペプチドの発現抑制により CD40応答性が抑制されたと判断することが できる。好ましくは、実施例 6に記載の方法で確認することができる。好ましくは、所定
の細胞集団における CD40応答性の減少は、この集団における抗 CD40抗体刺激の 抑制が、少なくとも約 10%、好ましくは少なくとも 20%、より好ましくは少なくとも 40%、更 に好ましくは少なくとも約 50%である。
[0011] 「本明細書のポリペプチドを抑制する物質」としては「本明細書のポリペプチドの発 現を抑制する物質」と「本明細書のポリペプチドの機能を抑制する物質」を含むが、「 本明細書のポリペプチドの発現を抑制する物質」がより好ましい。また、「関節リウマ チ治療用医薬組成物」としては、「本明細書のポリペプチドの発現を抑制する物質」 及び Z又は「本明細書のポリペプチドの機能を抑制する物質」を有効成分とする関 節リウマチ治療用医薬組成物が好ましぐ「本明細書のポリペプチドの発現を抑制す る物質」を有効成分とする関節リウマチ治療用医薬組成物がより好ましい。
[0012] 本明細書において、「siRNA」とは、小分子量干渉 RNA (small
interfering RNA)を意味する。 siRNAは、二重鎖の RNA部分と、好ましくはセンス鎖及 びアンチセンス鎖の 3,末端のオーバーハングとからなり、 RNA干渉(RNAi;RNA interference)と呼ばれる配列特異的な遺伝子発現抑制を誘導する(Fire, A.等, Nature, 391, 806-811, 1998)。本発明の siRNAとしては、配列番号 18で表される塩基 配列からなるセンス鎖と、配列番号 19で表される塩基配列からなるアンチセンス鎖と 力 なる siRNAがより好まし!/、。
[0013] 本明細書における「関節リウマチ治療薬」には、関節リウマチである患者の治療のた めに使用する薬剤と、関節リウマチ傾向にある対象に予防的に使用する薬剤との両 方が含まれる。
[0014] 本願優先日後に公開された WO2004/009626 (2004.1.29公開)には、 RA3タンパク 質及び該タンパク質をコードするポリヌクレオチドが記載されているが、本願優先日 前に、 RA3タンパク質及び該タンパク質をコードするポリヌクレオチドは知られていな い。
配列番号 1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと同一の配列は知られてい ない。一方、該配列 (1822塩基)を含む 173729塩基の配列(GenBankァクセッション番 号 AC012236)は知られている力 AC012236の機能は知られておらず、ましてや AC012236やその一部が RA3タンパク質をコードするポリヌクレオチドのプロモーター
活性を有することは知られて 、な力つた。本発明の配列番号 1で表される塩基配列か らなるポリヌクレオチドは、 AC012236に開示のない、 RA3タンパク質をコードするポリ ヌクレオチドのプロモーター活性を有するという有利な効果を有するものである。 配列番号 13 (21塩基)で表される配列と同一の配列は知られていない。一方、配列 番号 13で表される配列を含む配列は、 WO01/75067 (268塩基)、 WO01/57182 (8114 塩基)、 GenBankァクセッション番号 AC012236 (173729塩基)及び本願優先日後に公 開された WO2004/009626 (306塩基)に記載されているが、これらの配列又はその一 部が RA3に対し siRNAとして機能することは知られていなかった。
発明の効果
[0015] 本発明のプロモーターは、本明細書のポリペプチドの発現を抑制する物質 (すなわ ち関節リウマチ治療薬)のスクリーニングに有用である。
本発明のスクリーニング方法によれば、関節リウマチの治療薬として有用な物質を 得ることができる。本発明のスクリーニング方法で得られた物質は、本明細書のポリべ プチドを抑制することにより IL-1 β、 TNF- a、 LPS,及び Z又は CD40応答性を抑制 するという全く新たな作用機序に基づく関節リウマチ治療剤として有用である。
また、本発明の siRNAは、本発明の関節リウマチ治療用医薬組成物の有効成分とし て有用である。
図面の簡単な説明
[0016] [図 1]293T細胞での RA3タンパク質発現を示した図面である。
[図 2]RA滑膜組織サンプル、 OA滑膜組織サンプルにおける RA3遺伝子の発現を比 較した結果を示すグラフである。図の縦軸は、 RA3遺伝子転写の相対的度合いを示 す。
[図 3]各種 siRNAを導入した RA患者由来滑膜繊維芽様細胞での RA3遺伝子の相対 的な発現度を示すグラフである。図の縦軸は RA遺伝子転写の相対度(%)を示す。 記号「siRNA(CTRL)」はコントロール siRNAを意味し、記号「siRNA (RA3)jは RA3特異 的な siRNAを意味する。
[図 4]各種 siRNAを導入した RA患者由来滑膜繊維芽様細胞での、 LPSある 、は TNF- aあるいは IL-1 βで発現誘導される IL-8遺伝子の相対的な発現度を示すグラフであ
る。図の縦軸は IL-8遺伝子転写誘導度(%)を示す。記号「siRNA (CTRL)」はコント口 ール siRNAを意味し、記号「siRNA(RA3)」は RA3特異的な siRNAを意味し、記号「(-)」 は未刺激を意味する。
[図 5]各種血球細胞種での RA3遺伝子の発現を比較した結果を示すグラフである。図 の縦軸は相対的な RA3遺伝子転写度合い(%)を示す。レーン 1一 9は、それぞれ、 単球、単核細胞、活性化単核細胞、非活性化 CD4+、活性化 CD4+、非活性化 CD8+ 、活性化 CD8+、非活性化 CD19+、活性化 CD19+を意味する。
[図 6]前立腺癌細胞株 PC- 3, Tリンパ腫細胞株 Jurkat, Bリンパ腫細胞株 SKW6.4, NAMALWAでの RA3遺伝子の発現を比較した結果を示すグラフである。縦軸は RA3 遺伝子転写の相対度を示す。記号「JK」及び「Nm」は、それぞれ、 Tリンパ腫細胞株 Jurkat及び細胞株 NAMALWAを意味する。
[図 7]各種 siRNAを同導入した SKW6.4細胞での抗 CD40抗体刺激時の NF- κ Βレポ 一ターの応答性を示すグラフである。図の縦軸は NF- κ Βレポーター活性相対度を 示す。記号「siRNA(CTRL)」はコントロール siRNAを意味し、記号「siRNA (RA3)」は RA3特異的な siRNAを意味する。記号「CD40(-)」は抗 CD40抗体未刺激を意味し、記 号「CD40(+)」は抗 CD40抗体刺激を意味する。
[図 8]RA3を内在的に発現して ヽな ヽ PC-3細胞株での RA3遺伝子プロモーター活性 を示すグラフである。縦軸はルシフェラーゼ活性を示して 、る。
[図 9]RA3を内在的に発現している NAMALWA細胞株での RA3遺伝子プロモーター 活性を示すグラフである。縦軸はルシフェラーゼ活性を示して 、る。
[図 10]RA3過剰発現による NF- κ B応答性レポーター活性を示すグラフである。図の 縦軸は NF- κ Bレポーター活性相対度を示す。
発明を実施するための最良の形態
以下に本発明について詳細に説明する。本明細書における遺伝子操作技術は特 に断りのない限り「Molecular CloningJ Sambrook, Jら、 Cold Spring
Harbor Laboratory Press, 1989年等の公知技術に従って実施可能であり、タンパク 質操作技術は特に断りのない限り「タンパク実験プロトコール」(秀潤社、 1997年)等 の公知技術に従って実施可能である。
[0018] <本発明のポリヌクレオチド >
本発明のポリヌクレオチドには、配列番号 1で表される塩基配列からなるポリヌクレ ォチドが含まれる。本発明者らは、配列番号 1で表される塩基配列からなるポリヌクレ ォチドは、 RA3遺伝子 (配列番号 3で表されるアミノ酸配列力 なるポリペプチドをコ ードするポリヌクレオチド)のプロモーター活性を示すことを見出した(実施例 8)。
[0019] 本発明者らは、 RA3遺伝子の発現量がヒト RA患者滑膜組織において亢進している こと (参考例 4)、該遺伝子が免疫担当細胞である B細胞及び B細胞株において特異 的に発現していることを見出している(実施例 4、実施例 5)。更に、 RA患者由来滑膜 線維芽様細胞で RA3の発現を抑制すると、その応答性の抑制が治療標的であると知 られて ヽる LPS、 TNF- a及び IL-1 βの応答性が抑制されること(実施例 3)、 RA3遺伝 子が、 Β細胞株で RA3の発現を抑制するとその応答性の抑制が治療標的であると知 られて 、る CD40の応答性が抑制されることを明らかにして 、る(実施例 6)。これらの 知見から、 RA3の発現を抑制することにより関節リウマチ治療効果が得られることを見 出している。従って、 RA3遺伝子プロモーター活性を示す本発明のポリヌクレオチドを 用いることにより、 RA3の発現を抑制する物質 (すなわち関節リウマチ治療薬)をスクリ 一-ングする方法の構築が可能である。
[0020] 本発明のポリヌクレオチドは、本明細書に開示された配列情報に基づいて一般的遺 伝子工学的手法により容易に製造し取得することが出来る。
本発明のポリヌクレオチドは、例えば次のように得ることができる力 この方法に限ら ~f公知の操作「Molecular CloningJ [¾ambrook, Jら、 Cold bpnng Harbor Laboratory Press, 1989年、等]でも得ることができる。
[0021] 例えば、(l) PCRを用いた方法、(2)常法の遺伝子工学的手法 (すなわち cDNAライ ブラリーで形質転換した形質転換株から所望のアミノ酸を含む形質転換株を選択す る方法)を用いる方法、又は(3)化学合成法などを挙げることができる。各製造方法 については、 WO01/34785に記載されているのと同様に実施できる。
[0022] PCRを用いた方法では、例えば、 WO01/34785の「発明の実施の形態」 1)タンパク 質遺伝子の製造方法 a)第 1製造法に記載された手順により、本明細書記載のポリヌ クレオチドを製造することができる。該記載において、「本発明のタンパク質を産生す
る能力を有するヒト細胞あるいは組織」とは、例えば、ヒト滑膜細胞、ヒト B細胞、又は、 ヒト B細胞株を挙げることができる。ヒト滑膜細胞、ヒト B細胞、又は、ヒト B細胞株から mRNAを抽出する。次いで、この mRNAをランダムプライマー又はオリゴ dTプライマー の存在下で、逆転写酵素反応を行い、第一鎖 cDNAを合成することが出来る。得られ た第一鎖 cDNAを用い、 目的遺伝子の一部の領域をはさんだ 2種類のプライマーを 用いてポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)に供し、本発明のポリヌクレオチド又はその一部 を得ることができる。より具体的には、例えば参考例 1に記載の方法により本発明のポ リヌクレオチドを製造することが出来る。
[0023] 常法の遺伝子工学的手法を用いる方法では、例えば、 WO01/34785の「発明の実 施の形態」 1)タンパク質遺伝子の製造方法 b)第 2製造法に記載された手順により、本 発明のポリヌクレオチドを製造することができる。
化学合成法を用いた方法では、例えば、 WO01/34785の「発明の実施の形態」 1)タ ンパク質遺伝子の製造方法 c)第 3製造法、 d)第 4製造法に記載された方法によって、 本発明のポリヌクレオチドを製造することができる。
[0024] く本発明のスクリーニングツール及びスクリーニングのための使用 >
本発明には、
( 1) (i)本明細書のポリペプチド、すなわち RA3、 RA3機能的等価改変体 (配列番号 3 で表されるアミノ酸配列あるいは配列番号 3で表されるアミノ酸配列において、 1一 10 個 (好ましくは 1一 7個、より好ましくは 1一 5個、更に好ましくは 1一 3個)のアミノ酸が欠 失、置換、及び Z若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、かつ発現抑制により LPS、 TNF- a、 IL-1 β及び Ζ若しくは CD40に対する応答性を抑制するポリペプチド)並び に Ζ又は RA3相同ポリペプチド (配列番号 3で表されるアミノ酸配列との同一性が 90 %以上 (好ましくは 95%以上、更に好ましくは 98%以上)であるアミノ酸配列力もなり 、かつ発現抑制により LPS、 TNF- a、 IL-1 β及び Z若しくは CD40に対する応答性を 抑制するポリペプチド)(以下、本発明のポリペプチド型スクリーニングツールと称する )、
(ii)本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は
配列番号 1で表される塩基配列若しくは配列番号 1で表される塩基配列において 1一
10個の塩基が欠失、置換、及び Z若しくは挿入された塩基配列を含み、かつ本明 細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーター活性を有するポリヌク レオチド(以下、本発明のポリヌクレオチド型スクリーニングツールと称する)、あるい は
(iii)本明細書のポリペプチドを発現して 、る細胞、又は
配列番号 1で表される塩基配列若しくは配列番号 1で表される塩基配列において 1一 10個の塩基が欠失、置換、及び Z若しくは挿入された塩基配列を含み、かつ本明 細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーター活性を有するポリヌク レオチドを含む発現ベクターで形質転換された細胞 (以下、本発明の細胞型スクリー ユングツールと称する)
力もなる関節リウマチ治療薬スクリーニングツール、
(2) (i)本発明のポリペプチド型スクリーニングツール、
(ii)本発明のポリヌクレオチド型スクリーニングツール、又は
(iii)本発明の細胞型スクリーニングツール
の関節リウマチ治療薬スクリーニングのための使用
が含まれる。
[0025] 本明細書において、「スクリーニングツール」とは、スクリーニングの為に用いる物( 具体的には、スクリーニングの為に用いるポリペプチド、ポリヌクレオチド又は細胞)を いう。「関節リウマチ治療薬スクリーニングツール」とは、関節リウマチ治療薬をスクリー ユングするために、本発明のスクリーニング方法において、試験化合物を接触させる 対象となる細胞、ポリヌクレオチド又はポリペプチドである。当該ポリペプチド、ポリヌク レオチド又は細胞の、関節リウマチ治療薬スクリーニングのための使用も本発明に含 まれる。
[0026] RA3機能的等価改変体及び RA3相同ポリペプチドの起源はヒトに限定されない。
RA3機能的等価改変体及び RA3相同ポリペプチドであれば、例えば、配列番号 3で 表されるアミノ酸配列のヒトにおける変異体が含まれるだけでなぐ前述の (i)本発明 のポリペプチド型スクリーニングツールのいずれかに該当する限り、ヒト以外の他の脊 椎動物(例えばマウス、ラット、ゥサギ、ゥマ、ヒッジ、ィヌ、サル、ネコ、クマ、ブタ、 -ヮ
トリなど)由来のものも含まれる。更には、前述の (i)本発明のポリペプチド型スクリー ユングツールのいずれかに該当する限り、天然ポリペプチドに限定されず、配列番号
3で表されるアミノ酸配列を元にして遺伝子工学的に人為的に改変したポリペプチド も含まれる。
[0027] なお、本明細書における前記「同一性」とは、 BLASTパッケージ [sgi32bit版,パージ ヨン 2.0.12;National Center for
Biotechnology Information(NCBI)より入手]の bl2seqプログラム (Tatiana
A . Tatus ova , Thomas
L.Madden.FEMS Microbiol丄 ett., 174,247- 250,1999)を用いて得られた値を意味する
。なお、パラメーターでは、ペアワイズアラインメントパラメータ一として、
「プログラム名」として「blastp」を、
「Gap挿入 Cost値」を「0」で、
「Gap伸長 Cost値」を「0」で、
「Matrix」として「BLOSUM62」を、
それぞれ使用する。
[0028] 本発明の細胞型スクリーニングツールである本明細書のポリペプチドを発現して ヽ る細胞は、本明細書のポリペプチドを天然に発現して 、る細胞及び本明細書のポリ ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された細胞を 含む力 本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで 形質転換され本明細書のポリペプチドを発現して 、る細胞がより好まし 、。
[0029] 本発明のポリペプチド型スクリーニングツールとしては RA3、本発明のポリヌクレオ チド型スクリーニングツールとしては RA3をコードするポリヌクレオチド及び Z又は本 発明のポリヌクレオチド、本発明の細胞型スクリーニングツールとしては RA3を発現し ている細胞及び Z又は本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換さ れ RA3遺伝子のプロモーター活性を示す細胞がより好ま ヽ。本発明のポリヌクレオ チドを含む発現ベクターで形質転換する細胞としては、本発明のポリペプチドを天然 に発現して 、る細胞が好ま 、。
[0030] <本発明のスクリーニング方法 >
本発明のスクリーニング方法は、本明細書のポリペプチドを抑制する力否かを分析 (すなわち、検出又は測定)する工程を含む、関節リウマチ治療薬のスクリーニング方 法である。本明細書のポリペプチドの「抑制」には、本明細書のポリペプチドの「発現 抑制」及び「機能抑制」の両方が含まれる力 「発現抑制」がより好ましい。
本明細書における「スクリーニング」とは、多数の試験物質の中から目的の活性を有 する物質を篩い分けること、及び、或る試験物質について、その物質が目的の性質 を有する物質である力否かを検出すること (すなわち、篩い分けること)の両方を含む
[0031] (1)本明細書のポリペプチドの発現を抑制するか否かを分析する工程
本明細書のポリペプチドをコードする mRNA、又は、本明細書のポリペプチドの発現 を抑制する力否力を分析する工程を実施することにより、関節リウマチ治療薬のスクリ 一-ングが可能である。具体的には、組織、細胞における本明細書のポリペプチド又 は該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、 RA3又は RA3をコードするポ リヌクレオチド)の発現量の変化を分析する工程を実施することによってスクリーニン グすることができる。
[0032] 本明細書のポリペプチドをコードする mRNA、又は、本明細書のポリペプチドが、特 定の細胞にぉ 、て産生される力否かを決定するために、多様な核酸技術及び免疫 学的技術を使用することができる。
例えば、本明細書のポリペプチドを発現している任意のヒト細胞を用い、試験物質 の存在下若しくは非存在下で培養した後、細胞の抽出物を調製し、次いで、抽出物 を分析することにより、前記試験物質が本明細書のポリペプチドの mRNA又はタンパ ク質の発現を減少若しくは抑制する力否かを分析することができる。すなわち、本明 細書のポリペプチドを減少若しくは抑制する試験物質は、前記試験物質を含むサン プルに存在する本明細書のポリペプチド(例えば RA3)の mRNA並びにタンパク質の 量を減少させるので、公知の分析方法、例えば、ノーザンブロット又は ELISA法 [例え ば、本明細書のポリペプチド (例えば RA3)を認識する抗体をプレート等の固相に吸 着させた後、そこに試験物質を含むサンプルを加え、次いで、先の抗体とは抗原ェピ トープが異なる本明細書のポリペプチドを認識する抗体を加えて、後者の抗体の固
相への結合度合 ヽを分析する(Methods
in Enzymology, 118, 742-766, 1986) ]等で同定することができる。より具体的には、 実施例 2に記載した方法で、本明細書のポリペプチドの発現抑制を分析することがで きる。
[0033] 本発明のスクリーニング方法は、例えば、本明細書のポリペプチド (例えば RA3)を 発現して!/ヽる細胞 (好ましくはヒト細胞)を、試験物質の存在下若しくは非存在下で培 養する工程、並びに、試験物質存在下で培養した前記細胞における本明細書のポリ ペプチド(例えば RA3)の mRNA又はタンパク質の量力 試験物質非存在下で培養し た前記細胞における量と比較して減少したカゝ否カゝを分析する工程を含む。
[0034] 別の方法としては、プロモーター活性の阻害は下流の遺伝子の転写の抑制を生じ る一般的事象に基づき、本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド (例え ば RA3遺伝子)のプロモーター領域を含む発現ベクターで形質転換された細胞と試 験物質とを接触させる工程、及びプロモーター領域のプロモーター活性を検出する 工程を実施する方法が挙げられる。より具体的には、前記プロモーター領域を、レポ 一ター遺伝子 (例えば、ルシフェラーゼ遺伝子)上流に連結した作動可能なベクター を作製し、外因的に導入した宿主細胞を利用し、試験物質の存在下若しくは非存在 下におけるレポーター活性 (例えば、ルシフェラーゼ活性)を分析する工程を実施す ることにより、前記試験物質がレポーター遺伝子の発現を減少又は抑制する力否か を分析することができる。レポーター遺伝子の発現は、プロモーター領域により制御さ れる遺伝子 (すなわち、本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)の発現 を示しており、本明細書のポリペプチドの発現に置き換えて考えられる。
[0035] 前記ベクターとしては、例えば、 RA3の開始コドン ATGの上流域をレポーター遺伝 子上流に連結した組み換え DNAであって、し力も、一過的な複製、あるいは、宿主染 色体への挿入を可能とするベクターを用いることができる。こうして外因的に得られた 宿主細胞を試験物質の存在下又は非存在下で培養した後、細胞の抽出物を調製し 、次いで、抽出物を分析することにより、前記試験物質が本明細書のポリペプチドを コードするポリヌクレオチド (例えば RA3遺伝子)のプロモーター活性を減少又は抑制 する力否かを決定することができる。本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレ
ォチド (例えば RA3遺伝子)のプロモーター活性を減少又は抑制する試験物質は、前 記試験物質を含むサンプルに存在するレポーター活性の量を減少させるので、それ を指標として同定することができる。
より具体的には、実施例 8に記載した方法で、本明細書のポリペプチド (例えば RA3 )の発現抑制を分析することができる。
[0036] 本発明のスクリーニング方法は、例えば、本明細書のポリペプチドをコードするポリ ヌクレオチド(例えば RA3遺伝子)のプロモーター領域の下流にレポーター遺伝子を 連結したベクターで形質転換した細胞を、試験物質の存在下又は非存在下で培養 する工程、並びに、試験物質存在下で培養した前記細胞におけるレポーター活性が 、試験物質非存在下で培養した前記細胞と比較して減少したか否かを分析する工程 を含む。
[0037] 本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーター領域としては、 RA3遺伝子上流配列のうち RA3プロモーター活性を示す塩基配列カゝらなるポリヌクレ ォチドを用いることができ、好ましくは配列番号 1で表される塩基配列若しくは配列番 号 1で表される塩基配列において 1一 10個の塩基が欠失、置換、及び Z若しくは挿 入された塩基配列を含み、かつ本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド のプロモーター活性を有するポリヌクレオチド、更に好ましくは配列番号 1で表される 塩基配列からなるポリヌクレオチド (すなわち本発明のポリヌクレオチド)を用いること ができる。
[0038] (2)本明細書のポリペプチドの機能を抑制するか否力を分析する工程
本発明のスクリーニング方法には、本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレ ォチド及び NF- κ B応答性のレポーター遺伝子(例えば NF- κ B応答性ホタルルシフ エラーゼレポーター遺伝子)により形質転換された細胞を試験物質の存在下又は非 存在下で培養する工程、並びに、試験物質存在下で培養した前記細胞におけるレ ポーター活性が、試験物質非存在下で培養した前記細胞と比較して減少したカゝ否か を分析する工程を含むことを特徴とするスクリーニング方法が含まれる。
[0039] 本発明者らは、 RA3を過剰発現することにより NF- κ Βレポーター活性が誘導される ことを見出した (実施例 9)。従って、本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオ
チド及び NF- κ Β応答性のレポーター遺伝子により形質転換された細胞を用い、 NF- κ Βレポーター活性を RA3の機能の指標として、 RA3の機能を抑制する物質 (すなわ ち関節リウマチ治療薬)をスクリーニングすることができる。例えば、実施例 9に記載の 方法に試験物質を添加して試験することにより、試験物質が本明細書のポリペプチド の機能を抑制するか否力を分析することができ、 RA3の機能を抑制する物質 (すなわ ち関節リウマチ治療薬)をスクリーニングすることができる。
[0040] 前記項目(1)の本明細書のポリペプチドの発現を抑制する力否かを分析する工程 、又は、前記項目(2)の本明細書のポリペプチドの機能を抑制する力否力を分析す る工程を含む本発明のスクリーニング方法でスクリーニングすることのできる試験物質 は、特に限定されるものではないが、例えば、ケミカルファイルに登録されている種々 の公知化合物(ペプチドを含む)、コンビナトリアル'ケミストリー技術 (Tetrahedron, 51 , 8135-8137, 1995)によって得られた化合物群、あるいは、ファージ 'ディスプレイ 法 (J.
Mol. Biol , 222, 301-310, 1991)などを応用して作製されたランダム.ペプチド群を用 いることができる。また、微生物の培養上清、植物若しくは海洋生物由来の天然成分 、又は動物組織抽出物などもスクリーニングの試験物質として用いることができる。更 には、本発明のスクリーニング方法により選択された化合物 (ペプチドを含む)を、化 学的又は生物学的に修飾した化合物(ペプチドを含む)を用いることができる。
[0041] 本発明のスクリーニング方法では、本明細書のポリペプチドを抑制する力否かを分 祈し、本明細書のポリペプチドを抑制する試験物質を選択した後、選択された試験 物質が、関節リウマチ治療活性を有することを確認する工程を更に含むことが好まし い。関節リウマチ治療活性を有することを確認する工程としては、公知の評価方法、 例えば、以下のような抗炎症作用を分析する方法を実施する工程が挙げられる。
[0042] 抗炎症作用は、小動物での関節リウマチ実験モデルに試験物質を投与して「炎症 の改善」を分析することによって確認することができる。
小動物としては、例えば、マウス、ラットなどを使用することができ、関節リウマチ実 験モデルとしては、 II型コラーゲン誘発関節炎モデル、アジュバント誘発関節炎モデ ルなどが利用可能である [「関節炎モデル」(2000年)日本医学館 監修 京極方久
] o
「炎症」とは、物理的、化学的、又は生物学的な要因による損傷や刺激に対する生 体の免疫反応の結果生ずる現象であり、多くの場合、炎症組織における痛み、熱感 、発赤、腫脹を引き起こし、さらに炎症組織の機能抑制又は機能喪失を生ずることも ある。
「改善」とは、治療的効果が示されることを意味し、例えば、小動物での関節リウマ チ動物モデルに前記試験物質を投与又は摂取させることにより、病的な症状を緩和 若しくは消失させる力 又はその症状の悪ィ匕を抑制することを意味する。「病的な症 状」とは炎症反応と関連する症状、障害又は検出可能な生体内の変化を意味し、限 定するものではないが、腫脹、関節変形等の炎症反応に伴う症状、 CRP (C-reaCtive protein ;C反応性タンパク質)、炎症性サイト力イン、抗 DNA抗体の検査値の急激な 増加等の炎症反応の指標が挙げられる。「炎症の改善」とは、前記試験物質を小動 物での関節リウマチ実験モデルに投与又は摂取させた結果、炎症反応を緩和若しく は消失させる力、又はその炎症反応の悪ィ匕を抑制する作用を意味する。例えば、前 記試験物質を II型コラーゲン誘発関節炎モデルマウスに投与した後、該マウスにお ける四肢の腫脹の程度、後肢のフットパッドの厚さ、炎症性サイト力イン値、 II型コラー ゲンに対する抗体価等を経時的に測定することにより、「炎症の改善」を評価すること ができる。
[0043] また、前記試験物質の「炎症の改善」効果の確認は、上記のような小動物での実験 動物モデルを使用する方法の他、市販の様々な検査薬を使用して行うこともできる。 例えば、そのような検査薬としては、抗核抗体検査試薬、抗 DNA抗体検査試薬、慢 性リウマチ検査試薬、抗甲状腺抗体検査試薬、自己抗体陽性血清等の自己免疫疾 患検査試薬、 CPR(C反応性タンパク質)定量用試薬、サイト力イン測定試薬等が挙 げられる [「膠原病'リウマチ診断」(2000年)メジカルビユー社 監修 鎌谷直之」。
[0044] <本発明の関節リウマチ治療用医薬組成物、及びその製造法 >
く本発明のスクリーニング方法〉に記載の方法による分析工程、及び製剤化工程 を含む、関節リウマチ治療用医薬組成物の製造方法も本発明に含まれる。また、本 明細書のポリペプチドを抑制する物質の関節リウマチ治療用医薬組成物製造のため
の使用も本発明に含まれる。
本発明の医薬組成物の有効成分は、本明細書のポリペプチドを抑制する物質であ る限り、特に限定されるものではない。これらは、例えば、本発明のスクリーニング方 法と同様の工程で、本明細書のポリペプチドを抑制する物質を選択することにより得 ることができる。そのような物質としては、例えば、 siRNA、タンパク質 (抗体又は抗体 断片を含む)、ペプチド、又はそれ以外の化合物が挙げられる。
[0045] 本発明の医薬組成物の有効成分として例示される siRNAは、二重鎖の RNA部分と、 好ましくはセンス鎖及びアンチセンス鎖の 3,末端のオーバーハングと力もなり、 RNAi を誘導する。 RNAiは進化的に保存された現象で、 RNaselllエンドヌクレアーゼによつ て生じる 21— 23塩基の siRNAを介して起こる(Genes
Dev. 15, 485-490, 2001)。その 21— 23塩基の siRNA間には、効果に差はあるものの いずれも RNAi効果を示す。また、 3'側のオーバーハングはそれぞれ 1又は 2塩基の 任意の核酸 (リボ核酸又はデォキシリボ核酸)であるが、 2塩基が好ましぐ標的に相 補した塩基が好ま ヽが、相補して 、な ヽものでも充分な RNAi効果が認められる( EMBO.
J., 20, 6877-7888, 2001; Genes Dev., 15, 188-200, 2001)。また、オーバーハングが な!ヽ siRNAも RNAi効果を示す。
なお、前記塩基数 (21— 23塩基)は、オーバーハングを含むセンス鎖又はアンチセ ンス鎖の各々の塩基数である。また、センス鎖及びアンチセンス鎖は、同じ塩基数で あることもできるし、異なる塩基数であることもできるが、同じ塩基数であることが好まし い。
[0046] siRNAの 3'側オーバーハングを構成するリボ核酸としては、例えば、 U (ゥリジン)、 A
(アデノシン)、 G (グアノシン)、又は C (シチジン)を用いることができ、 3,側のオーバ 一ハングを構成するデォキシリボ核酸としては、例えば、 dT (チミジン)、 dA (デォキシ アデノシン)、 dG (デォキシグアノシン)、又は dC (デォキシシチジン)を用いることがで きる。
[0047] 本発明の医薬組成物の有効成分として用いることのできる、本発明の siRNAには、 本明細書のポリペプチドの発現を特異的に抑制することのできる siRNA (以下、本明
細書のポリペプチド特異的な siRNAと称する)が含まれる。
[0048] 本明細書のポリペプチド特異的な siRNAは、本明細書のポリペプチドの一つである RA3に特異的な DNA塩基配列 (好ましくは 21塩基一 23塩基力 なる塩基配列)に基 づ 、て設計され、本明細書のポリペプチドの発現を特異的に抑制することのできる siRNAである限り、特に限定されるものではなぐ常法 (例えば、 J.
Am. Chem. Soc, 120, 11820—11821, 1998;及び Methods, 23, 206-217, 2001)により 製造することができる。より具体的には、本明細書のポリペプチドに特異的な DNA塩 基配列は、例えば、以下の手順により選択することができる。すなわち、 RA3の開始コ ドン力 50塩基以上下流の最初の NAを見つける(転写因子の結合部位を避けるため )。 NAに続く 19一 21の塩基配列を記録し、 NAを含む 21— 23塩基の GCコンテントを計 算し、 50%前後であることを確認する。 GCコンテントが 30%以下や 70%以上である場 合、あるいは、 50%前後であっても複数の候補が必要な場合には、更に下流の NAを 選択し、同様にして GCコンテントを計算する。得られた塩基配列候補について、デー タベース検索を実施し、本明細書のポリペプチドに特異的であることを確認する。 Nは 、 A、 T、 G、又は Cの何れであってもよぐ実施例 1で作製した siRNAの場合のように C であることが好ましい。
[0049] なお、本明細書のポリペプチドに特異的であるか否かは、例えば、 National
し enter for Biotechnology Information(Nし BI)の BLA¾ i,(Basic local alignment search tool; J. Mol. Biol, 215, 403-410, 1990)サーチで本明細書のポリペプチドとは完全 に一致する力 他には完全に一致する配列が存在しないことにより確認することがで きる。
siRNAを設計するための DNA塩基配列が得られると、その配列に基づ!/、て siRNAを 設計することができる。例えば、二重鎖 RNA部分が、得られた DNA塩基配列をそのま ま RNA配列に変換した RNA塩基配列からなる、 siRNAを設計することができる。なお、 本明細書において、 DNA塩基配列を RNA塩基配列に変換するとは、 DNA塩基配列 における dTを Uに変換し、それ以外の塩基、すなわち、 dA、 dG、及び dCを、それぞれ 、 A、 G、及び Cに変換することを意味する。
[0050] RA3特異的な塩基配列としては、例えば、配列番号 12で表される塩基配列を挙げ
ることがでさる。
配列番号 12で表される塩基配列に基づいて設計される、本発明の RA3特異的な siRNAとしては、例えば、二重鎖 RNA部分力 配列番号 13で表される塩基配列、又は そのセンス鎖の 3'末端が 1若しくは 2塩基欠失した塩基配列からなる siRNAを挙げるこ とがでさる。
[0051] これらの本発明の RA3特異的な siRNAには、例えば、センス鎖及び Z又はアンチセ ンス鎖の 3'末端に、それぞれ独立して、 1又は 2塩基の任意の核酸 [例えば、リボ核 酸 (U、 A、 G、若しくは C等)又はデォキシリボ核酸 (dT、 dA、 dG、若しくは dC等)]が付 加されたオーバーハングを有する siRNA、並びにオーバーハングを有しな!/、siRNAが 含まれる。なお、センス鎖及びアンチセンス鎖 (オーバーハングを有する場合には、 それを含む)は、同じ塩基数であることもできるし、異なる塩基数であることもできるが 、同じ塩基数であることが好ましい。
前記オーバーハングとしては、センス鎖及び Z又はアンチセンス鎖の 3 '末端に、そ れぞれ独立して、 1又は 2塩基の任意の核酸が付加されたオーバーハングが好ま ヽ
[0052] 本発明の RA3特異的な siRNAとしては、配列番号 18で表される塩基配列力 なるセ ンス鎖と、配列番号 19で表される塩基配列力 なるアンチセンス鎖と力 なる siRNAが 特に好ま 、。配列番号 18で表される塩基配列からなるセンス鎖及び配列番号 19で 表される塩基配列力もなるアンチセンス鎖は、それぞれ、第 1番目一第 19番目の塩 基からなる二重鎖を形成し、第 20番目及び第 21番目の塩基が 3'側オーバーハング を形成する。
[0053] 本発明の医薬糸且成物の有効成分としては、例えば、アンチセンスポリヌクレオチド( DNA及び RNAを含む)を用いることができる。
アンチセンスポリヌクレオチドを設計及び作製する方法は、周知であり (J. Am. Chem. So , 103: 3185-3191, 1981)、まず、例えば、 NCBIの BLASTサーチで本明細 書のポリペプチド特異的な配列 (例えば、配列番号 12で表される塩基配列)を選択し 、それに対するアンチセンスポリヌクレオチドを、本発明の医薬組成物の有効成分と して用いることができる。
[0054] 本発明の医薬組成物は、前記有効成分のタイプに応じて、非経口経路 (例えば、 皮下経路、静脈内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、経皮経路、又は頰内経路)を介 して投与することができる。あるいは、又は同時に、経口経路によって投与することも できる。投薬量は、レシピエントの年齢、健常度、及び体重、同時処置される種類 (も しあれば)、処置の頻度、並びに所望される効果の性質に依存する。各成分の有効 な量の至適な範囲の決定は、当業者の範囲内である。典型的な投薬量は 0.1— 100mg/kg体重であり、好ましい投薬量は、 0.1— 10mg/kg体重であり、最も好ましい投 薬量は、 0.1— lmg/kg体重である。薬理学的に活性な薬剤に加えて、本発明の組成 物は、薬学的に受容可能な適切なキャリアーを含むことができ、これには、作用の部 位に到達するために薬学的に使用可能な、調製物への活性な化合物のプロセシン グを容易にする賦形剤及び Z又は補助剤を含む。
[0055] 非経口投与のために適切な処方物は、水溶性形態の活性化合物(例えば、水溶 性の塩)の水溶液を含む。更に、適切な油性の注入懸濁液としての活性ィ匕化合物の 懸濁液が投与可能である。適切な親油性溶媒又はべヒクルは、脂肪油又は合成の 脂肪酸エステルを含む。水溶性注入懸濁液は、懸濁液の粘度を増加する物質を含 むことができる。必要に応じて懸濁液は安定剤を含むことができる。リボソームも、細 胞への送達のために、薬剤をカプセルィ匕するために使用することができる。本発明に 従う全身投与についての薬学的組成物は、腸投与、非経口投与、又は局所投与に ついて処方することができる。実際、処方物の全ての 3つのタイプは、有効成分の全 身性投与を達成するために同時に使用することができる。
[0056] 経口投与のための適切な処方物は、堅質又は軟質ゼラチンカプセル、丸剤、錠剤 、エリキシル、懸濁液、シロップ、又は吸入薬、及びそれらの制御された放出形態を 含む。本発明の医薬組成物は、単独で、又は組み合わせで、あるいは、他の治療剤 又は診断剤と組み合わせて使用することができる。特に好まし 、実施形態にぉ 、て、 本発明の医薬組成物は、一般的に受容されている医療の実施に従って、これらの状 態について典型的に処方される他の化合物とともに投与することができる。
[0057] <本発明の治療方法 >
本明細書のポリペプチドを抑制する物質を投与することを含む、関節リウマチ治療
方法も本発明に含まれる。このような治療としては、前記本発明の関節リウマチ治療 用医薬組成物を投与する治療や、以下の遺伝子治療を挙げることができる。
[0058] <遺伝子治療 >
関節リウマチの治療において、 RA3発現の調節因子をコードする遺伝子発現単位( 例えば、配列番号 12で表される塩基配列に対するアンチセンス分子又は siRNA分子 )を、処置される被験体に導入することにより、遺伝子治療をすることができる。このよ うな調節因子は、細胞又は特定の標的細胞で、構成的に継続的に産生させることも できるし、あるいは、誘導性とすることもできる。
[0059] 具体的には、前記アンチセンス分子、又は siRNA分子 (例えば、配列番号 18で表さ れる塩基配列からなるセンス鎖と配列番号 19で表される塩基配列力 なるアンチセン ス鎖とからなる siRNA)を作製するための方法は、当該分野において周知である (J. Am. Chem. Soc, 103: 3185-3191, 1981)。
配列番号 12で表される塩基配列に対するアンチセンス分子を含む組み換え DNAを 作製する方法は、当該分野において周知であり(「Molecular
し loning A Laboratory ManualJ , Cold Spring Harbor Laboratory, NY, 1989等 J、好ま しい組み換え DNAにおいて、配列番号 12で表される塩基配列は、発現制御配列及 び Z又はベクター配列に作動可能に連結することができる。前記ベクターは、配列番 号 12で表される塩基配列を含む組み換え DNAの複製、あるいは、宿主染色体への 挿入を少なくとも可能とし、遺伝子治療に用いることができる。
更に、本発明では、配列番号 12で表される塩基配列に対するアンチセンスを含む 組み換え DNAを外因的に導入した宿主細胞を提供し、これも遺伝子治療に用いるこ とができる。宿主細胞は、任意のヒト細胞に限る。本発明の組み換え DNAでの適切な 宿主細胞の形質転換は、周知の方法によって達成される。
実施例
[0060] 以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明は実施例によって限定されるもの ではない。なお、特に断りがない場合は、公知の方法(例えば、「Molecular Cloning A Laboratory ManualJ Cold bpnng Haroor Laboratory,
NY, 1989等の遺伝子操作実験マニュアル)や試薬等に添付の指示書に従った。
[0061] 《参考例 1:全長オープンリーディングフレーム(open reading frame, ORF)のクロー- ングとタンパク質発現プラスミドの構築》
配列番号 4及び配列番号 5、ヒト脾臓由来 cDNA(Human spleen 5, -stretch plus cDNA;インビトロジェン社)、及び DNAポリメラーゼ(Pyrobest (商標) DNA polymerase ;宝酒造社)を用いて、 94°C2分の後、 98°C10秒、 60°C30秒、 72°C1分 30秒 のサイクルを 20回、続いて 72°C3分の PCR反応を行った。この PCR産物をフエノールク ロロホルム処理し、エタノール沈殿処理し、精製水に溶解した。これらの DNAを
Hindlll-Xholで二重切断した。発現ベクター pcDNA3.1-CFLの Hindlll-Xhol部位に揷 入し、 CFL- RA3と名付けた。 pcDNA3.1- CFLは、 pcDNA3.1(+) (インビトロジェン社)の Xhol-Xbal部位に配列番号 6及び配列番号 7からなる 2重鎖オリゴ DNAを挿入したプ ラスミドであり、本プラスミドにより、 目的タンパク質に FLAGタグが付加されて発現され る。前記各プラスミドの配列をジデォキシターミネータ一法により、 ABI3700
DNAシークェンサ一(アプライドバイォシステムズ社)を用いて解読したところ、配列 番号 2で表される配列が得られ、全長 ORF配列を決定した。該遺伝子を RA3と名付け た。推定アミノ酸配列を配列番号 3に示した。配列番号 2で表される RA3の ORFは 101 アミノ酸力もなる新規タンパク質をコードして ヽた。
[0062] 《参考例 2 :動物細胞株での発現》
参考例 1にお 、て作製した発現プラスミドを、トランスフエクシヨン試薬 (リボフエタトァ ミン;ギブコ社)を用いて、添付指示書に従い 293T細胞 (インビトロジェン社)に導入し た。プラスミド導入後 12-16時間で培地を無血清に置換した後、更に 48-60時間培養 を継続し、細胞を回収した。回収した細胞に 50mmol/L
Tris pH7.5, 0.25mol/L NaCl, 10%グリセロール, 1%トリトン (Triton) X— 100, lmmol/L EDTA, lmmol/L
EGTA, lmmol/Lフエ-ルメチルスルホ -ルフルオライド (PMSF) (シグマ社)から成る 溶液を加えて溶解し、エツペンドルフチューブ遠心機(トミー精工社)にて 15000回転 15分遠心後の上清を回収した。この導入細胞ライゼート中に目的タンパク質が存在 することを C末端に付カ卩した FLAGタグに対する抗体 (マウス抗 FLAGモノクローナル 抗体 M2 ;シグマ社)を用いたウェスタンブロッテイングで確認した。すなわち、上記ラ
ィゼートを SDS/4%— 20%
アクリルアミドゲル (第一化学薬品社)に電気泳動 (還元条件)後、ブロッテイング装置 を用いてポリフッ化ビ-リデン PVDF膜 (ミリポア社)に転写した。転写後の PVDF膜にブ ロックエース(大日本製薬社)を添加してブロッキングした後、ピオチンィ匕マウス抗 FLAGモノクローナル抗体、西洋わさびパーォキシダーゼ標識ストレプトアビジン (ァ マシャムフアルマシア社)を順次反応させた。反応後、 ECLウェスタンブロッテイング 検出システム(アマシャムフアルマシア社)を用いて目的蛋白の発現を確認した。 RA3 はプロリン残基の含有率が高いため、電気泳動上の移動度が低く予想分子量( ll.OkDa)よりも大きな分子量で観察された(図 1)。
[0063] 《参考例 3 :滑膜組織サンプル、滑膜線維芽様細胞サンプルの取得》
ヒト関節リウマチ (RA)患者、ヒト変形性関節炎 (OA)患者力も滑膜生検により滑膜組 織、滑膜線維芽様細胞を得た。滑膜組織の調製は Harigai Mらの文献 (J Rheumatol. 1999
May;26(5): 1035-43)に、滑膜線維芽様細胞の調製は Zhang HGらの文献 (Arthritis Rheum. 2000 May;43(5): 1094-105)に従った。 Gl、 G6はヒト RA患者各 2名の滑膜組 織を混合したサンプルであり、各種病理所見スコア一は、表層細胞重層化について は Gl:1.5、 G6:0、リンパ濾胞形成については Gl:2.5、 G6:0、血管新生については Gl:2.0、 G6:0.5であった。 G7はヒト OA患者 2名の滑膜組織を混合したサンプルである 。病理所見スコア一は Harigai Mら, Clin
Immunol Immunopathol. 1993 Oct;69(l):83- 91.に基づくものであり、滑膜組織の炎症 の程度を反映して 、る。病理所見スコア一が高 、G1は炎症の程度が G6よりも大き ヽ サンプルである。
滑膜線維芽様細胞サンプルは、ヒト RA患者 2名力ゝらの滑膜線維芽様細胞を混合し たサンプルである。
[0064] 《参考例 4: RA滑膜組織における RA3遺伝子の発現上昇》
ABI PRISM 7900HTシークェンスディテクシヨンシステム (Sequence
Detection System) (PEバイオシステムズ社)(以降 Prism7900とする)によるリアルタイム PCRを PCR検出定量試薬キット SYBR Green
PCR Master Mix (PEバイオシステムズ社)を用いてキット添付の指示書に従って行い 、滑膜組織における RA3遺伝子の発現量を定量的に測定した。以下に詳細を述べる 。 ABI7900による測定に用いたプライマーは、配列番号 2に表した配列情報から Primer
Express (PEバイオシステムズ社)により設計した。 RA3遺伝子のプライマーは配列番 号 8及び配列番号 9、補正用内部標準とする G3PDH遺伝子のプライマーは配列番号 10及び配列番号 11である。
[0065] RA滑膜組織 (G1及び G6サンプル)、 OA滑膜組織 (G7サンプル)カゝら RNA抽出用試 薬 ISOGEN (-ツボンジーン社)を用いて全 RNA (total
RNA)抽出を行った。抽出は、試薬添付のプロトコールに従った。抽出方法の詳細を 以下に記載する。 lOOmgの凍結組織に対し、 lmLの ISOGENをカ卩え、ホモジナイズ'、 後、 5分静置した。 0.2mLのクロ口ホルム(関東ィ匕学社)を加え、攪拌後 3分静置した。 12000 X gで 4°Cにて 15分の遠心分離を行った。上清を回収し、 0.5mLの 2-イソプロパ ノール(関東ィ匕学社)をカ卩え、 10分静置した。 12000 X gで 4°Cにて 10分の遠心分離を 行った。上清を除いた後、 70%エタノールを lmLカ卩えた。 7500 X gで 4°Cにて 5分の遠 心分離を行った。風乾後、 50 L水に溶解した。
[0066] 抽出した全 RNAは、 DNase処理キット(RNeasy Mini kit, RNase- Free
DNase Set ;共にキアゲン社)を用い、カラム上で DNase処理を行った。キット添付のプ ロトコールに従って処理を行った。詳細を以下に記載する。全 RNA溶液に水をカロえ、 100 しとした。次に、 350 Lのキットに含まれるバッファー RLTを加え攪拌した。次に 250 Lのエタノールを加え攪拌後、キットに含まれるカラム(RNeasy
mini spin column)に加えた。 8000 X gにて 15秒遠心した。 350 μ Lのキットに含まれる バッファー RW1をカ卩え、 8000 X gにて 15秒遠心した。更に、 10 Lの DNaselストック溶 液及び 70 Lのキットに含まれるバッファー RDDをカ卩え、室温で 15分静置した。 350 Lのバッファー RW1をカ卩え、 8000 X gにて 15秒遠心した。 350 Lのバッファー RW1を 加え、 8000 X gにて 15秒遠心した。 500 Lのキットに含まれるバッファー RPEをカロえ、 8000 X gにて 15秒遠心した。 500 Lのバッファー RPEをカ卩え、 15000 X gにて 1分遠心 した。 30 L水を加え、 8000 X gにて 1分遠心し、全 RNA溶液を得た。
[0067] 全 RNAを铸型とした逆転写反応により、 cDNAを作成した。全 RNA(1 μ g)を 10 μしの ランダムへキサマー (lOOng/ μ L) (アマシャムフアルマシアバイオテク社)と混合し、最 終量が 48 Lとなるように水を加えた。 70°Cで 10分処理後、氷上に置いた。次に 32 Lの RT反応混合液 [5 X First-Strand
Buffer(250mmol/L Tris— HC1 pH8.3, 375mmol/L KC1, 15mmol/L MgCl ),10mmol/L
2
DTT, 0.5mmol/L dNTP, Superscript II RNase H reverse transcriptase (800 units) (以上全て GIBCO BRL社)]を加えた。混合後、 25°C15分、 42°C50分、 70°C15 分の処理を行った。
[0068] 作成した cDNAを铸型として、以下の実験を進めた。 目的遺伝子の各測定サンプル 間での相対的発現量を算出するための標準曲線を作成する铸型として、ヒトゲノム D NA(human
genomic DNA)(クロンテック社)の希釈系列、あるいは各測定サンプルの混合液の希 釈系列を用いた。また、サンプル中の cDNA濃度の差を補正するため、補正用内部 標準として G3PDH遺伝子について同様の定量解析を行い、 G3PDH遺伝子の発現量 を基に補正して、 RA3遺伝子の発現量を算出した。リアルタイム PCRは 95°C10分の後 、 95°C15秒、 59°C1分のサイクルを 45回実施した。
RA滑膜組織サンプル G1及び G6では、 OA滑膜組織サンプル G7に比して、 RA3遺 伝子の発現量が有意に亢進していることが明ら力となった。また、 RA滑膜組織のうち 炎症程度の大き 、G1サンプルは炎症程度の小さ!/、G6サンプルに比して、 RA3遺伝 子の発現量が有意に亢進しており、 RAの病理所見スコア一に連動して RA3遺伝子の 発現量が亢進して 、ること、すなわち RAの炎症症状の重篤性と RA3遺伝子の発現量 の亢進が相関することを見出した (図 2)。
[0069] 《実施例 1: RA3特異的な siRNAの作製》
RA3をコードする配列番号 2で表される塩基配列の内、配列番号 12で表される塩基 配列からなる DNAに対応する siRNAとして、二重鎖 RNA部分が配列番号 13で表され る RA3特異的な siRNAを作製し (ダーマコンリサーチ社)、使用した。
NCBIの BLASTサーチ(BLASTパッケージ [Tru64 64bit版,バージョン
2.2.2 ; National Center for Biotechnology Information (NCBI)より入手]の blastallプロ
グラム (Reference:
Altschul, Stephen F., Thomas L. Madden, Alejandro A. Schaffer Jinghui Zhang, Zheng Zhang, Webb Miller, and David J. Lipman (1997),「Gapped BLAST and PSI— BLAST: a new generation of protein database search programsj , Nucleic Acids Res. 25:3389-3402.)の結果、配列番号 12は、配列番号 2に特異的な配列であること が示された。
非特異的な siRNAの影響を検討する対照実験のために、哺乳類細胞に存在しない 二本鎖 RNAのコントロール siRNA (Luciferase
GL2 Duplex;ダーマコンリサーチ社)を入手した。
[0070] 《実施例 2: RA3特異的な siRNAの RA患者由来滑膜線維芽様細胞への導入による RA3特異的な発現抑制》
参考例 3で調製した RA患者由来滑膜線維芽様細胞を 10%熱不活ィ匕胎児ゥシ血清 (FBS ;JRHバイオサイエンス社)を添カ卩した RPMト 1640培地(インビトロジェン社)で培 養して維持した。
トランスフエクシヨン実験は、以下の手順で実施した。
トランスフ クシヨンの前日に、細胞培養用 12穴プレート (イワキ)に、 RA患者由来滑 膜線維芽様細胞を 1穴当たり 15000細胞播いた。トランスフエクシヨン当日に、血清無 添カ卩培地 OPTI-MEM (インビトロジェン社)で細胞を洗浄した後、 OPTI-MEM 400 /z Lをカ卩えた。実施例 1で作製した各 siRNAを、トランスフエクシヨン試薬 (ォリゴフ ェクタミン;インビトロジェン社)を用いて、添付指示書に従い、導入した。導入した siRNAは、コントローノレ siRNA(Luciferase
GL2 Duplex),又は RA3特異的な siRNAであった。
導入から 4時間経過後に、細胞培養液上清を取り除き、 10%熱不活化胎児ゥシ血 清(FBS ;JRHバイオサイエンス社)を添カ卩した RPMト 1640培地(インビトロジェン社)を 新たにカ卩えた。トランスフエクシヨンは、各サンプルに対して独立に 3穴を用いて行な つた o
[0071] 前記各 siRNAを導入して力 48時間経過後に細胞を回収し、巿販キット (RNeasy Micro Kit; QUIAGEN, #74004)を使用し RNAを単離した。上記参考例 4で示したよう
に、全 RNAを铸型とした逆転写反応により、 cDNAを作製後、上記参考例 4で示したリ アルタイム PCRの条件にて測定し、 G3PDH遺伝子の発現量を基に補正して、 RA3遺 伝子の発現量を算出した。コントロール siRNAを導入したサンプルの RA3遺伝子の発 現量を 100とした場合、 RA3特異的な siRNAを導入したサンプルの RA3遺伝子の発現 量は 20以下であったことから、実施例 1で作製した RA3特異的な siRNAが RA3遺伝子 発現を抑制することを確認した(図 3)。
[0072] 《実施例 3 : RA患者由来滑膜線維芽様細胞での RA3発現抑制による LPS、 TNF- α、 IL-Ι 応答性の抑制》
RA患者由来滑膜線維芽様細胞において LPS、 TNF- a、又は IL-1 βによって発現 亢進することが知られている IL-8遺伝子を LPS、 TNF- a、 IL-1 β応答性の指標として 用いた(Koch
A.E. et al J.lmmunol. (1991) 147 :2187-2195)。 ABI7900による測定に用いた IL- 8遺 伝子のプライマーは配列番号 14及び配列番号 15である。
[0073] 実施例 2で行った siRNA導入実験にお ヽて、導入カゝら 48時間後に、それぞれ、独 立の 3穴の細胞に対して、未刺激 (none)、最終濃度 1 μ g/mL
LPS (シグマ社)、最終濃度 lOng/mLヒト組み換え体 TNF- α (R&Dシステム社)、又 は最終濃度 lOng/mLヒト組み換え体 IL-1 β (R&Dシステム社)をカ卩えて 6時間後に、 細胞を回収し、巿販キット (RNeasy Micro Kit ;キアゲン社 #74004)を使用し RNAを単 離した。上記参考例 4と同様に、全 RNAを铸型とした逆転写反応により cDNAを作製 後、上記参考例 4で示したリアルタイム PCRの条件にて測定し、 G3PDH遺伝子の発 現量を基に補正して、 IL-8遺伝子の発現量を算出した(図 4)。
[0074] コントロール siRNAを導入したサンプルの未刺激(none)の IL-8遺伝子の発現量を 100とした場合、コントロール siRNAを導入したサンプルの LPS、 TNF- a又は IL-1 β刺 激したサンプルではいずれも 1000以上の亢進が認められた。一方、 RA3特異的な siRNAを導入したサンプルでは LPS、 TNF- a、又は IL-1 β刺激したサンプルでの IL- 8遺伝子の発現量は、コントロール siRNAを導入したサンプルの LPS、 TNF- α又は IL-1 β刺激したサンプルでの IL-8遺伝子の発現量の各 20%以下に抑制されていた 。この知見により、 RA患者由来滑膜線維芽様細胞での RA3特異的な発現抑制は、
LPS及び TNF- a及び IL-1 βの応答性を抑制することがわ力つた。すなわち、 RA病変 の主座である滑膜組織を構成する線維芽様細胞における LPS、 TNF-ひ、又は、 IL-1 βの応答性はそれぞれ単独でも治療標的と考えられているが(Curr Pharm
Biotechnol. 2000 1:217-233)、 LPS及び TNF- α及び IL-1 βの応答性を同時に抑制 することができる RA3発現抑制の機序は新規な治療標的であることを明らかにした。
[0075] 《実施例 4: Β細胞での RA3遺伝子の発現》
巿販パネル (Human Blood Fractions MTC Panel;クローンテック社)付属の cDNA ( 単球、単核細胞、活性化単核細胞、非活性化 CD4+、活性化 CD4+、非活性化 CD8+ 、活性化 CD8+、非活性化 CD19+、活性化 CD19+由来 cDNA)を使用し、上記参考例 4で示したリアルタイム PCRの条件にて測定し、 G3PDH遺伝子の発現量を基に補正 して、 RA3遺伝子の発現量を算出した。 RA3遺伝子の発現は各種血球細胞種の中で 、 CD19+である B細胞での発現が顕著であることが明ら力となった(図 5)。 CD19+であ る B細胞は、 RA病変の主座である滑膜組織を構成する免疫担当細胞であるので (He K. et al J.Rheumatol (2001) 28: 2168- 2175)、 RA3は RAに関与することがわかった。
[0076] 《実施例 5: B細胞株での RA3遺伝子の発現》
前立腺癌由来 PC- 3細胞株、 Tリンパ fijurkat細胞株、 Bリンパ腫 SKW6.4細胞株、 B リンパ腫 NAMALWA細胞株(すべてアメリカンタイプカルチャーコレクション (ATCC) より入手)は、 10%熱不活化胎児ゥシ血清 (FBS ;JRHバイオサイエンス社)を添加した RPMI-1640培地に培養して維持した。細胞回収後、巿販キット (RNeasy Micro Kit; QUIAGEN, #74004)を使用し RNAを単離した。上記参考例 4と同様に、全 RNAを铸 型とした逆転写反応により、 cDNAを作成後、上記参考例 4で示したリアルタイム PCR の条件にて測定し、 G3PDH遺伝子の発現量を基に補正して、 RA3遺伝子の発現量 を算出した。 RA3遺伝子は PC-3細胞株では発現が認められな力つた力 B細胞株 SKW6.4及び B細胞株 NAMALWAでの発現が顕著であることが明ら力となった (図 6)。
[0077] 《実施例 6: B細胞株 SKW6.4での RA3発現抑制による CD40応答性の抑制》
SKW6.4細胞は、 10%熱不活化胎児ゥシ血清(FBS ;JRHバイオサイエンス社)を添カロ した RPMト 1640培地 (インビトロジェン社)で培養して維持した。
トランスフエクシヨン実験は、以下の手順で実施した。
siRNA導入はヌクレオフエクタ一(Nucleofector) (Amaxa
Biosystems)を用いて電気気孔法により行った。トランスフエクシヨン当日に、 2000000 個の SKW6.4細胞を 100 μ Lの市販の試薬(Cell Line
Nucleofector Kit V試薬;和光純薬)に懸濁した。 (1)実施例 1で作製したコントロール siRNA又は RA3特異的な siRNA、(2) NF- κ Β応答性ホタルルシフェラーゼレポーター 遺伝子 pNF- kappaB- Luc Vector (BDバイオサイエンス社)、及び(3)内部標準用ゥミ シィタケルシフェラーゼレポーター遺伝子 phRL- TK
Vector (プロメガ社)と前記細胞懸濁液とを混合後、添付指示書に従いプログラム T-23を使用して導入した。トランスフエクシヨン後、 lmLの培地(10%熱不活ィ匕胎児ゥ シ血清(FBS ;JRHバイオサイエンス社)を添カ卩した RPMI- 1640培地(インビトロジェン 社))をカ卩えて COインキュベータ一にて静置した。トランスフエクシヨンの 48時間後、
2
細胞に終濃度 1 μ g/mLの抗 CD40ポリクローナル抗体(R&D
Systems, #AF632)を未添カ卩又は添カ卩し、更に 24時間保温後、細胞を回収しルシフエ ラーゼ活性を測定した。
[0078] ルシフェラーゼ活性の測定は、市販のキット(Dua卜 Luciferase
Reporter Assay System; Promega, #E1960)を使用して測定した。回収した細胞を添 付の細胞溶解液 100 Lにて抽出し、その抽出液 20 Lをカルチャープレート
(CulturPlate)— 96
(Packard)に移し、ホタルルシフェラーゼ及びゥミシィタケルシフェラーゼ活性を添付 の試薬を用いて順次測定した。検出はマイクロライトルミノメーター (MICROLITE LUMINOMETER; DYNATECH LABORATORIES, ML3000)にて行った。 NF- κ Β応 答性ホタルルシフェラーゼレポーター活性値はゥミシィタケルシフェラーゼ活性値で 除して標準化した。
[0079] コントロール siRNAを導入し、抗 CD40ポリクローナル抗体未添カ卩のサンプルの NF- κ B応答性ホタルルシフェラーゼレポーター活性値を 1とした場合、抗 CD40ポリクロー ナル抗体添カ卩によって、 NF- κ B応答性ホタルルシフェラーゼレポーター活性値は 3 以上の CD40応答性を示す力 RA3特異的な siRNAを導入したサンプルでは、抗 CD40ポリクローナル抗体添カ卩による NF- κ B応答性ホタルルシフェラーゼレポーター
活性値は約 1.5で、 CD40応答性が抑制されることがわ力つた (図 7)。 NF- κ Βの活性 化が指標となる CD40応答性は、 RA病変の主座である滑膜組織を構成する免疫担当 細胞である Β細胞の機能に必須であることから(Kyburz
D. et al J.Immunol. 1999 163:3116-3122)、 B細胞での RA3発現抑制の機序は RAの 新規な治療標的であることを明らかにした。
[0080] 《実施例 7: RA3遺伝子プロモーターのクローユングとノレシフェラーゼレポータープラ スミドの作製》
以下のようにして RA3遺伝子上流配列を取得した。配列番号 16及び配列番号 17、ヒ トゲノム DNA (Human
genomic DNA;クロンテック社)、並びに DNAポリメラーゼ(Pyrobest (商標) DNA polymerase ;宝酒造社)を用いて、 94°C2分の後、 98°C10秒、 60°C30秒、 72°C3分のサ イタルを 35回、続いて 72°C6分の PCR反応を行った。この PCR産物をフエノールクロ口 ホルム処理後、エタノール沈殿処理し、精製水に溶解した。これらの DNAを、 pGL3-Basicホタルルシフェラーゼレポーターベクター(プロメガ社)を Smal (宝酒造社 )で消化した部位に挿入した。挿入された配列を、ジデォキシターミネータ一法により 、 ABI3700
DNAシークェンサ一(アプライドバイォシステムズ社)を用いて解読したところ、配列 番号 1で表される配列であることが確認され、 pGL3B/RA3 1.8Kと名付けた。
[0081] 《実施例 8: RA3遺伝子の内在性発現程度と相関する RA3遺伝子プロモーターの活 性》
実施例 2で示したように、 RA3を内在的に発現していない細胞として、ヒト前立腺癌 由来細胞株 PC-3、RA3を内在的に発現している細胞としてヒト Bリンパ腫細胞株 NAMALWAを、 10%熱不活化胎児ゥシ血清(FBS ;JRHバイオサイエンス社)を添カロし た RPMI-1640培地に培養して維持した。
トランスフエクシヨン実験は、以下の手順で実施した。
PC-3細胞への遺伝子導入は、市販の試薬 (FuGENE
6 Transfection Reagent ;ロシュダイァグノスティックス社)を用いて行った。トランスフエ クシヨン前日に、 PC-3細胞を 1穴あたり 5000細胞になるようカルチャープレート
(CulturPlate)- 96 (パッカード社)に撒いた。トランスフエクシヨン当日に、(1)コントロー ルホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子 pGL3-Basic又は pGL3B/RA3 1.8kbホタル ルシフェラーゼレポーター遺伝子、及び(2)内部標準用ゥミシィタケルシフェラーゼレ ポーター遺伝子 (phRL-TK Vector,プロメガ社)を混合し、添付指示書に従って、巿 販の試薬 (FuGENE 6 Transfection Reagent)と混合した後、 PC-3細胞培養上清に添 加し、 48時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。
[0082] NAMALWA細胞への遺伝子導入はヌクレオフエクタ一(Nucleofector) (Amaxa
Biosystems)を用いて電気気孔法により行った。トランスフエクシヨン当日に 200000個 の NAMALWA細胞を 100 μ Lの市販の試薬(Cell Line
Nucleofector Kit V試薬;和光純薬)に懸濁後、(1)コントロールホタルルシフェラーゼ レポーター遺伝子 pGL3- Basic又は pGL3B/RA3 1.8kbホタルルシフェラーゼレポータ 一遺伝子、及び(2)内部標準用ゥミシィタケルシフェラーゼレポーター遺伝子 phRL-TK Vector (プロメガ社)を混合し、添付指示書に従って、プログラム G- 16を使 用して遺伝子導入を行った。導入後、 ImLの培地(10%熱不活ィ匕胎児ゥシ血清 (FBS ; JRHバイオサイエンス社)を添カ卩した RPMト 1640培地(インビトロジェン社) )を加えて 37°C、 5% COインキュベータ一にて静置した。 48時間後、細胞を回収しルシフェラー
2
ゼ活性を測定した。
[0083] ルシフェラーゼ活性の測定は、市販の試薬 (Dual-Luciferase Reporter Assay
system; Promega,
#E1960)を使用して測定した。回収した細胞を添付の細胞溶解液 100 Lにて抽出し 、その抽出液 20 μ Lをカルチャープレート (CulturPlate)-96
(パッカード社)に移し、ホタルルシフェラーゼ及びゥミシィタケルシフェラーゼ活性を 添付の試薬を用いて順次測定した。検出はマイクロライトルミノメーター (MICROLITE LUMINOMETER; DYNATECH LABORATORIES, ML3000)にて行った。ホタルルシ フェラーゼレポーター活性値はゥミシィタケルシフェラーゼ活性値で除して標準化し た。
[0084] RA3を内在的に発現していない PC-3細胞では、コントロール pGL3-Basicのホタル ルシフェラーゼ活性値を 1とした場合、 pGL3-B/RA3
1.8Kのホタルルシフェラーゼ活性値は約 0.1と強 、遺伝子プロモーター活性が認めら れないのに対して、 RA3を内在的に発現している NAMALWA細胞での pGL3-B/RA3 1.8Kのホタルルシフェラーゼ活性値は、コントロール pGL3-Basicの値を 1とした場合 の約 4倍の値を示し、強い遺伝子プロモータ活性を示した (図 8及び図 9)。 RA3遺伝子 上流配列である配列番号 1で示した塩基配列は、 RA3の発現を調節するプロモータ 一活性を有しており、配列番号 1で表される塩基配列を用いることにより、 RA3の発現 を抑制する物質をスクリーニングできることがわ力つた。
[0085] 《実施例 9: RA3過剰発現による NF- κ Β活性化の誘導》
ヒト前立腺癌由来細胞株 PC-3を、 10%熱不活ィ匕胎児ゥシ血清 (FBS ;JRHバイオサ ィエンス社)を添カ卩した RPMI-1640培地に培養して維持した。
PC-3細胞への遺伝子導入は市販の試薬 (FuGENE
6 Transfection Reagent ;ロシュダイァグノスティックス社)を用いて行った。トランスフエ クシヨン前日に、 PC-3細胞を 1穴あたり 5000細胞になるようカルチャープレート (CulturPlate)-96 (Packard)に撒いた。トランスフエクシヨン当日に、実施例 1で示した コントロールベクター pCDNA3.1-CFL、又は、 CFL-RA3発現ベクターと、 NF- kB応答 '性ホタノレノレシフェラーゼレポーター遺伝子 pNF— kappaB— Luc Vector (BD Biosciences )、及び内部標準用ゥミシィタケルシフェラーゼレポーター遺伝子 phRL-TK
Vector (プロメガ社)を混合後、添付指示書に従って、市販の試薬 (FuGENE 6 Transfection Reagent)と混合した後、 PC- 3細胞培養上清に添カ卩し、 24時間後のルシ フェラーゼ活性を測定した。
[0086] ルシフェラーゼ活性の測定は、市販のキット(Dua卜 Luciferase
Reporter Assay System; Promega, #E1960)を使用して測定した。回収した細胞を添 付の細胞溶解液 lOOuLにて抽出し、その抽出液 20uLをカルチャープレート
(CulturPlate)— 96
(パッカード社)に移し、ホタルルシフェラーゼ及びゥミシィタケルシフェラーゼ活性を 添付の試薬を用いて順次測定した。検出はマイクロライトルミノメーター (MICROLITE LUMINOMETER; DYNATECH LABORATORIES, ML3000)にて行った。ホタルルシ フェラーゼレポーター活性値はゥミシィタケルシフェラーゼ活性値で除して標準化し
た。
[0087] RA3過剰発現によって NF- κ Β応答性のレポーター活性が誘導されることを見出し た (図 10)。
種々の炎症性サイト力イン、炎症メディエーターの産生を亢進する NF- κ Βは、 RA の滑膜組織での炎症反応の機序と考えられて ヽる (Kumar
S. et al Curr Opin Pharmacol 2001 1 :307-313)。 RA3をコードするポリヌクレオチド及 び NF- κ B応答性のレポーター遺伝子により形質転換された細胞を用いる本実施例 の方法により、 RA3の機能を抑制する物質 (すなわち関節リウマチ治療薬)をスクリー ニングできることがわかった。
産業上の利用可能性
[0088] 本発明は、関節リウマチ治療薬のスクリーニングの用途に適用することができる。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は 本発明の範囲に含まれる。
配列表フリーテキスト
[0089] 以下の配列表の数字見出し < 223 >には、「Artificial Sequenceの説明を記載す る。具体的には、配列表の配列番号 18の配列で表される塩基配列は、人工的に合 成した siRNAのセンス鎖である。配列表の配列番号 19の配列で表される塩基配列は 、人工的に合成した siRNAのアンチセンス鎖である。配列番号 4一 7、 16— 17の配列 で表される塩基配列は、人工的に合成したプライマー配列である。