明 細 書
FALSの臨床悪性度の判定方法
技術分野
[0001] 本発明は、 NEDL1およびその関連因子と、 SOD1変異体との相互作用に基づぐ FALSの判定方法、或いは治療薬 (方法)に関する。
背景技術
[0002] 筋萎縮性側索硬化症 (ALS)は、脊椎、運動皮質、脳幹の運動ニューロンの変性、脱 落により筋萎縮を生じる、予後不良の神経変性疾患である。現在、家族性の
ALS(familial lateral sclerosis :以下、 FALSという)は、 ALS全体の 5— 10%の頻度で認め られる力 その一部の家系で原因遺伝子が、 CU/Znスーパーォキシドジスムターゼ (SOD1)遺伝子であることが判明しており、 FALS全体の約 20%が SOD1遺伝子変異を 原因としている。 SOD1は、好気性代謝の過程で細胞内に生じる活性酵素の一種で あり、スーパーォキシドを不活性ィ匕する。近年、変異型 SOD1 (以下、 SOD1変異体と Vヽぅ)が細胞内で凝集体を形成し、細胞毒性を発揮すると!ヽぅ凝集体仮説が FALSの 病因として最も有力なものとされつつある(非特許文献 1)。
[0003] 本発明者らは、以前予後良好な神経芽腫と予後不良な神経芽腫との比較におい て、予後良好な神経芽腫で発現が増強されている NEDL1と命名した新規な HECT型 ュビキチンライゲースを見出した (特許文献 1)。さらに、 NEDL1は SOD1変異体をュビ キチンィ匕することも見出した。
[0004] SOD1変異体の細胞内情報伝達経路については、不明な部分が多いが SOD1変異 体のみと結合し、正常 SOD1 (野生型 SOD1)とは結合しない蛋白因子として、小胞体ト ランスロコン成分である TRAP δ (translocon— associated protein complex)が報告され て ヽる (非特許文献 2、非特許文献 3)。
[0005] このように FALSの原因遺伝子である SOD1変異体とその関連分子との間の相互作 用については、解明されつつあるが、 FALSの病理発生については、前記凝集体仮 説が正 、としてもそのメカニズムの全容の解明には程遠 、現状である。
特許文献 1:国際公開 WO 03/018842パンフレット
非特許文献 1 :中野亮一、細胞工学、第 20卷、第 11号、 1508-1512、 2001 非特許文献 2 : Ryen D. Fons, et al, The Journak of Cell Biology, Vol. 160, No. 4,
2003 (529-539)
非特許文献 3 : Kunst C.B., et al, Nat. Genet. 15, 91-94 (1997)
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0006] SOD1変異体とその関連分子との間の相互作用における NEDL1の役割について明 らかにし、 FALSの発症メカニズムの凝集体仮説を検証する。その過程において、各 種分子間の結合、相互作用を評価すると、 FALSの治療'診断につながる知見が得ら れる可能性がある。
[0007] 本発明は、 SOD1変異体とその関連分子との結合、相互作用(NEDL1が介在するか 、または介在しない)を遺伝子または蛋白レベルで解明することを 1つの目的とする。 さら〖こ、本発明は、そこで得られた知見を臨床に応用すること、すなわち FALSの新た な治療剤 (方法)、診断薬 (方法)を提供することを別の目的とする。
課題を解決するための手段
[0008] 本発明者らは、 NEDL1力TRAP δとが結合し、さらにこれらは SOD1変異体と複合体 を形成して、該複合体における結合強度は FALSの臨床悪性度とほぼ比例することを 見出した。さらに、同様に NEDL1が Dishevelll (以下、 Dvllという)と結合し、さらにこれ らは SOD1変異体と複合体を形成して、該複合体における結合強度は FALSの臨床 悪性度とほぼ比例することを見出した。また、 NEDL1と SOD1変異体との相互作用も FALSの臨床悪性度とほぼ比例することを見出した。
[0009] 特定的には、 FALS患者由来の被検体から SOD1変異体を単離し、該 SOD1変異体 と TRAP Sとの結合能を評価することを特徴とする、 FALSの臨床悪性度の判定方法 が提供される。
[0010] また、 FALS患者由来の被検体力も SOD1変異体を単離し、該 SOD1変異体と
NEDL1および Dvllとの結合能を評価することを特徴とする、 FALSの臨床悪性度の判 定方法も提供される。
[0011] また、 FALS患者由来の被検体力も SOD1変異体を単離し、該 SOD1変異体と
NEDLlとの結合能を評価することを特徴とする、 FALSの臨床悪性度の判定方法も提 供される。
[0012] 要するに、本発明は FALSの臨床悪性度の判定における NEDL1またはその基質の 使用を提供する。具体的には、その判定において、単離 SOD1変異体を用いることを 特徴とする。ここで、好ましくは前記基質は、 TRAP δまたは Dvllである。
[0013] くわえて、 SOD変異体と NEDL1および Zまたはその基質との相互作用における阻 害剤が提供される。
[0014] 好ましくは、前記基質が TRAP δまたは Dvllである。
[0015] また、神経細胞にお!/、て、候補薬剤が SOD変異体と NEDL1および Zまたはその基 質との相互作用における阻害剤であるカゝ否かを決定することを特徴とする、 FALSの 治療において有用な薬剤をスクリーニングする方法も提供される。
発明の効果
[0016] 本発明に従えば、 FALSの原因遺伝子である SOD1変異体とその関連分子 (TRAP
δ、 Dvll等)との間に NEDLlが介在して、複合体が形成されることが明ら力となり、 FALSの発症メカニズムとしての凝集体説が確かめられた。さら〖こ、このような複合体 における SOD1変異体と前記分子との結合能 (NEDL1を介する力 介さないかして)が FALSの臨床悪性度に関連しているので、該結合能を評価することによって、 FALSの 臨床悪性度を判定することができる。
[0017] また、上記の凝集体の形成を阻止することができれば、 FALSの治療に繋がる。した がって、本発明に従えば、 FALSの治療に有用であろう、 SOD変異体と NEDL1および Zまたはその基質との相互作用における阻害剤が見出される。
図面の簡単な説明
[0018] [図 1]図 1は、ヒト NEDLl(hNEDLl)とマウス NEDLl(mNEDLl)との間の保存的アミノ酸 配列のァライメントを示す図である。図中、右欄番号は、イニシエータ一であるメチォ ニンからの塩基数を表す。 C2ドメイン、 WWドメインおよび HECTドメインがそれぞれ 示されている。
[図 2]NEDL1と TRAP- δとの結合を示す免疫プロットした電気泳動図(免疫ブロット図 )である。
[図 3]NEDL1と内因性 TRAP- δとの結合を示す免疫プロットした電気泳動図である。
[図 4]NEDL1と SOD1変異体との結合を示す免疫プロット図である。
[図 5]NEDL1の野生型 SOD1および SOD1変異体に対するュビキチンィ匕を示す免疫ブ ロット図である。
[図 6]NEDL1の存在下、 SOD1変異体および野生型 SOD1の分解の経時変化を示す 免疫ブロット図である。
[図 7]S0D1変異体と外因性 TRAP δとの結合を示す免疫プロット図である。
[図 8]NEDL1と Dvllとの結合を示す免疫プロット図である。
[図 9]NEDL1の Dvllに対するュビキチン化を示す免疫プロット図である。
[図 10]NEDL1の存在下、 Dvllの分解の経時変化を示す免疫プロット図である。
[図 11]NEDL1の存在下、 SOD1変異体と Dvllとの結合を示す免疫プロット図である。
[図 12]FALS病理発生における SOD1変異体とその関連分子との間の相互作用の模 式図を示す。
発明を実施するための最良の形態
[0019] 以下、本発明について、好適な実施の形態を参照して、詳細に説明する。
[0020] 本発明に係る NEDL1遺伝子は、全長 6200塩基 (コード領域 4755塩基)を有する遺 伝子であり、その塩基配列を配列表の配列番号 2に示す。該遺伝子がコードする NEDL1タンパク質は、 1585個のアミノ酸からなり、その全長を配列表の配列番号 1に 示す。なお、前記塩基配列およびアミノ酸配列は、 GeneBank (
http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)に受理番号 AB048365として登録されて!、る。
[0021] 図 1にヒト NEDLl(hNEDLl)とマウス NEDLl(mNEDLl)のァライメント(ホモロジ一解析 )を示す。 NEDL-1タンパク質は、 HECT型ュビキチンリガーゼの特徴である以下のド メインを有することが分かる。すなわち、(1)N末端に C2ドメイン (カルシウム依存的に 膜脂質に結合する)、(2)中央部に WWドメイン (プロリンリッチ領域との結合に関与)、 (3)C末端領域に HECTドメイン (ュビキチン結合酵素 E2の結合部位)である。
[0022] NEDL1の基質を同定するために、本発明者らは、前記 WWドメイン(757-1114位) を用いて、 yeast two hybridスクリーニングを行った。その結果、 1つの基質として TRAP Sが見出された。
[0023] TRAP δは、小胞体膜を横切るタンパク質のトランスロケーションに関連する因子で ある、トランスロコン(translocon- associated protein)複合体の構成タンパク質の 1つの サブユニットである。 TRAP Sが野生型 SODとは結合しないが、 SOD1変異体と結合す ることは既に報告されている(Kunst C.B.ら、前掲)。そこで、本発明者らは、 NEDL1 、 TRAP S、および SODl間の相互作用を調べた。具体的には、 COS7細胞をこれらの 発現構築物で共トランスフエタトし、免疫プロットおよび免疫沈降アツセィによって、解 祈した。
[0024] NEDL1と TRAP δとの結合
上記の解析の結果、図 2、 3に示すように、 NEDL1は、内因性および外因性の TRAP δと結合していることが確認される。この結合は、 yeast two-hybridスクリーニングでも 前記 WWドメインを介していることが確認される。し力し、 TRAP Sは、 NEDL1によって ュビキチン化されない。
[0025] NEDL1 SOD1 の結合
上記の解析の結果、図 4に示すように、 NEDL1は、 SOD1変異体と結合する力 野生 型 SOD1とは結合しないことが確認される。また、 NEDL1と様々な SOD1変異体との結 合能は、 SOD1変異体が単離された FALS患者の臨床悪性度とほぼ比例することが分 かる。
[0026] くわえて、 NEDL1が SOD1変異体をュビキチン化することが確認され(図 5)、そのュ ビキチンィ匕の程度は、 SOD1変異体が単離された FALS患者の臨床悪性度とほぼ比 例することが分かる。
[0027] NEDL1の存在下、 SOD1変異体の分解の経時変化を示したもの力 図 6であるが、 ここでも臨床悪性度に比例して、 SOD1変異体が分解していることが分かる。
[0028] これらの結果から、 SOD1変異体のュビキチンィ匕を経由する分解には、 NEDL1が介 在し、臨床悪性度に比例して、分解が進行することが示される。
[0029] TRAP Sと SOD1との結合
上記の解析の結果、図 7に示すように、外因性 TRAP Sは、 SOD1変異体と結合する 力 野生型 SOD1とは結合しないことが確認される。また、 NEDL1の場合と同様に、 TRAP Sと様々な SOD1変異体との結合能は、 SOD1変異体が単離された FALS患者
の臨床悪性度とほぼ比例することが分かる。
[0030] 以上の結果および他の研究結果を総合して、 FALSの病理発生における NEDL1の 役割として、(l)NEDLlは、単独でまたは TRAP δと共に SODl変異体をュビキチンィ匕 する (2)NEDL1と TRAP Sは、 SOD1変異体と凝集体を形成し、これがゴルジ装置の断 片化を誘起、ニューロンのアポトーシスをもたらす (3)凝集体の形成は、 NEDL1および Zまたは TRAP δの機能不全を引き起こし、それが運動-ユーロン死に結びつく疾患 となる (4)NEDL1ZTRAP- δ ZSODl変異体の凝集体は、その正常な機能が運動-ュ 一ロンの生存に重要である分子シャペロンのような因子を取り込み、不活性化する、 などであろう。
[0031] 次いで、ュビキチンィ匕依存性蛋白分解時の NEDL1の基質を同定するために、本発 明者らは、 NEDL1の WWドメインを含む別のドメイン(382-1448位)を用いて、 yeast two hybridスクリーニングを行った。その結果、 Dvllが基質として同定された。
[0032] ヒト DV11は、 670個のアミノ酸力もなるタンパク質で、以下のドメインを有する。すなわ ち、(1)カノ-カル Wnt/TCFシグナリングに必要とされる DIXドメイン、(2)PDZドメイン( Stbm、 CKI結合の標的)、(3)DEPドメイン (PCPシグナリング中の膜局在化に関与)で ある (D.J. Sussman et al, Dev. Biol. 166, 73—86 (1994); A. Wodarz et al, Cell Dev. Biol. 14, 59-88 (1998); M. Boutros et al., Cell, 94, 109-118 (1998》であり、 DEPドメ インと NEDL1の WWドメインが結合するものと考えられる。
[0033] TRAP δの場合と同様に、 NEDL1、 DV11および SODl間の相互作用を調べた。具体 的には、 COS7細胞をこれらの発現構築物で共トランスフエタトし、免疫プロットおよび 免疫沈降アツセィによって、解析した。
[0034] NEDL1と Dyllとの結合
上記の解析の結果、図 8に示すように、 NEDL1は、 Dvllと結合していることが確認さ れる。また、 NEDL1は、 Dvllをュビキチン化することが確認され、(図 9)さらに NEDL1 の存在下、 Dvllの分解の経時変化を示したものが図 10である。
[0035] Dyllと SOD1との結合
上記の解析の結果、図 11に示すように、 Dvllは、 SOD1と NEDL1の存在下結合する ことが確認される。また、 Dvllと様々な SOD1変異体との結合能は、 SOD1変異体が単
離された FALS患者の臨床悪性度とほぼ比例することが分かる。
[0036] ALS患者の運動-ユーロンで細胞骨格異常が報告されており、 NEDL1介在 Dvll分 解に対する前記の SOD1変異体の影響が運動-ユーロン死に関与していることは可 能である(Luo, Z.G. et al., Neuron 35, 489-505(2002))。
[0037] H
神経細胞 E3ュビキチンリガーゼである NEDL1は、 TRAP Sと結合 (相互作用)するが 、 Dvllとも結合し、これをュビキチン化して分解する。 NEDL1は、このように SOD1変異 体、 DV11、 TRAP δと複合体を形成するので、特にュビキチン介在の分解を逃れた SOD1変異体と巨大な凝集体を形成する。標的タンパク質 (基質)である DV1ほたは TRAP Sの活性に影響を与える NEDL1の機能は、 SOD1変異体によって調節される。 これら個々の相互作用がすべて、 FALSの病理発生に関係しているようである。したが つて、前記複合体もしくは巨大凝集体形成の分子メカニズムの解明は、 ALSにおける 運動-ユーロン死を説明し、ひいては ALSに対する新たな治療薬 ·治療方法の展望 を開くことになる。図 12に、本発明において得られた知見に基づぐ FALS病理発生に おける SOD1変異体とその関連分子との間の相互作用の模式図を示す。
[0038] FAし Sの'治瘠剤および'治療方法
上記のような考察に基づいて、本発明によれば、 SOD1変異体と NEDL1および Zま たはその基質との相互作用における阻害剤の開発が提供される。阻害剤としての候 補薬剤は、核酸、タンパク質、低分子化合物 (化学合成または天然由来)、タンパク 質以外の高分子化合物などである。
[0039] このような阻害剤のスクリーニング方法としては、 Two-Hybrid System (例えば、 uyuns, J. し ell, 1993, 75, 791—803; uolemis, E. A., し urrent Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sions, Inc.) 1996, Ch. 20.0- 20.1)が挙げられる。また、免疫学 的手法で、阻害剤のスクリーニング法を実施することもできる。具体的には、細胞 (神 経細胞)内で SOD1変異体 (特に、臨床悪性度の高いもの)と NEDL1および Zまたは その基質を発現させ、一定時間候補薬剤と共に培養した後、細胞を粉砕して細胞溶 解液を調製する。一方の分子に対する抗体で免疫沈降させ、沈殿中に含まれる他方 の分子 (それ以外)を免疫学的手法 (免疫プロット等)で検出な!ヽし、定量することで、
候補薬剤の各分子の相互作用に及ぼす影響を検出できる。ここで、上記培養系に適 当なァゴ-ストと候補薬剤とを同時に添加して、上記アツセィを行い、候補薬剤を含 まない細胞からの免疫沈降物と比較することで阻害剤のスクリーニングが可能である
[0040] 上記のスクリーニング方法で同定された SOD1変異体と NEDL1および Zまたはその 基質における阻害剤であるタンパク質等は、 FALSを患う患者またはその可能性のあ る患者に経口的に、または非経口的に投与する。この目的で、そのタンパク質を薬学 的組成物として調製する。これは、有効量の該結合阻害を薬学的に許容される担体 、もしくは希釈剤と混合して、適当な剤形とする。投与に適した剤形は、錠剤、丸剤、 散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、カプセル剤、坐剤、注射剤等である。
実施例
[0041] (方法)
(ヒト NEDL1 cDNAのクロー-ング)
ヒト NEDL1 cDNAのクローユングについては、国際公開 WO 03/018842パンフレット (PCT/JP02/08524)に詳述してある力 本発明では、以下のようにして、実施した。す なわち、フォワード 'プライマー(5,- GGTTTTTAGGCCTGGCCGCC- 3,、配列番号 3 )およびリバース ·プライマー(5, - CAATGAGGTACATGCCAATCC- 3,、配列番号 4 )を使用し、ヒト胎児脳(Stratagene社製)をテンプレートとして、 NEDLlcDNA (ヒト神経 芽細胞種からの cDNAライブラリー)の 5'部分を増幅した。全長ヒト NEDL1 cDNAは、 PCR増幅断片 (ヌクレオチド 1位 (翻訳開始部位)一 68位)と KIAA0322 cDNA ( (財)か ずさ DNA研究所、 T.Nagase氏より寄贈)と融合させて、作成した。
[0042] (細胞培養およびトランスフエクシヨン)
細胞は、 10%熱不活性化ゥシ胎児血清(FBS、 Life Technologies, Inc.)、ペニシリン (100IU/ml)、ストレプトマイシン (100 μ g/ml)を添カ卩した RPMI1640培地で増殖した。 COS7および Neuro2a細胞は、 10%熱不活性化ゥシ胎児血清とペニシリン (100IU/ml) Zストレプトマイシン (100 μ g/ml)を添カ卩したダルベッコ変法イーグル培地 (Dulbecco' s modified Eagle medium: DMEM)に維持した。細胞は、空気中水飽和 5%炭酸ガス雰 囲気下、 37°Cで培養し。各発現プラスミドの共トランスンスフエクシヨンは、製造者の指
示書に従い、リポフエクトァミン (LipofectAMINE、 Life Technologies, Inc.社製)を用い て実施した。ある種の実験では、トランスフエタトした細胞を MG-132を用いて、終濃度 40 μ Μで 30分間処理した。
[0043] (Yeast Two-Hybrid screening)
スクリーニングは、ヒト胎児脳(1次スクリーニング)およびヒト成人脳(2次スクリーニン グ)から得られた cDNAライブラリーを用いる、 Gal4- based matchmaker two-hybrid system (し lonetech社製) 使用し飞実行し 7こ。 Saccharomyces cereviciaeし G丄 945糸田 胞を pAS2- 1- NEDL1- 1 (757- 1114位、 1次スクリーニング)または pAS2- 1- NEDL1- 2 ( 382-1448位、 2次スクリーニング)で形質転換した。これらの発現ベクターは共に LacZ の転写のみを活性ィ匕しな ヽ。形質転換体をさらに前記 cDNAライブラリーで形質転換 した。 LacZ陽性コロニーを選択した。これら陽性コロニーからプラスミド DNAを抽出し て、その核酸配列を決定した。
[0044] (インビトロュビキチンィ匕アツセィ)
インビトロュビキチンィ匕アツセィは、以下のように実施した。().5 /^の精製03丁融合 蛋白、 0.25 μ g酵母 El(Boston Biochem社製)、 E2sを発現する E. coliからの粗細胞溶 解物 1 μ 1および 10 μ gゥシ Ub(Sigma社製)を 250 mM Tris— HCl(pH7.6)、 1.2 M NaCl、 50 mM ATP、 10 mM MgCl、および 30 mMジチオスレィトール中でインキュベートし
2
た。 30°Cで 2時間後、 SDSサンプルバッファを添カ卩して、反応を停止した。試料を SDS-PAGEで分析し、メンブランに移し、抗ュビキチンモノクローナル抗体 (Medial Biological Laboratories社製)で免疫プロットした。
[0045] (発現構築物)
へマグルチニンタグおよび (His6)タグされたュビキチンの哺乳動物用発現プラスミド は、 D. Bohmann氏より寄贈された。全長 NEDL1 cDNAを哺乳動物用発現プラスミド pEFl/His (Invitrogen社製)または pIRESpuro2 (Clontech社製)に導入した。野生型ま たは変異型の SOD1をコードする cDNAを FLAGもしくは Mycェピトープタグ配列の力 ルボキシ末端に接合し、 pIRESpuro2にサブクロニーングした。同様に、 FLAGもしくは Mycェピトープタグを TRAP δのカルボキシ末端に接合した。さらに、 FLAGもしくは Mycェピトープタグを Dvllのァミノ末端に接合した。コード配列は、自動 DNA塩基配
列決定によって確認した。
[0046] (免疫沈降およびウェスタンプロット分析)
ゥサギで NEDL1オリゴぺペチド (460- 482位)と TRAP δオリゴペプチド (93- 126位)に 対して、それぞれ抗 NEDL1抗体と抗 TRAP δ抗体を作成した。免疫沈降実験では、 COS7細胞または Neuro2a細胞を様々な組合わせで、発現プラスミドを用いて共トラス フエタトした。 48時間後、プロテアーゼ阻害剤カクテル (Sigma社製)を追加した TNEバ ッファ (10 mM Tris-HCl pH7.8、 150 mM NaCl、 1% NP— 40、 1 mM EDTA、 1 mM PMSF)中で細胞溶解した。全細胞溶解物を抗 NEDL1抗体、抗 FLAG抗体 (M2、 Sigma 社製)または抗 Myc抗体 (9B11、 Cell Signaling Technology社製)を用いて、免疫沈降さ せた。免疫複合体を GTP結合タンパク質セファロースビーズ上で回収し、 Laemmliサ ンプルバッファ中で沸騰させて溶出し、 SDSポリアミドゲルで電気泳動し、エレクトロブ ロットによりポリビ-リデンジフルオリドメンブラン (Immobilon、 Millipore社製)に移した 。ュビキチン化実験では、細胞溶解を RIPAバッファ (10 mM Tris-HCl pH7.4、 150 mM NaCl、 1% NP- 40、 0.1%デォキシコール酸ナトリウム、 0.1% SDS、 1 mM EDTA)中 で実施し、その後強力な超音波処理を行った。メンブレンを第 1抗体でプローブし、そ れカらホースラティシュぺノレォキシダーゼ (Jackson Immuno Research
Laboratories/ southern Biotechnology Associates, Inc.製)で標識し 7こ二次饥体とと ¾ にインキュベートした。免疫反応性のバンドを ECL増強化学発光法 (Amersham Pharmacia Biotech社)によって検出した。タンパク質分解実験では、 Neuro2細胞を所 定の発現プラスミドでトランスフエタトした。トランスフエクシヨンの 48時間後、細胞をシ クロへキシミド (Sigma社製)の 50 μ g/ml濃度で所定時間処理した。その後、全細胞溶 解物の等量 (50 μ g)をウェスタンブロットにかけ、続いて Intelligent Quantifier software(Bio Image社製)を用いて、定量した。
[0047] (実施例 1) NEDL1と TRAP Sとの結合
COS7細胞を図 2に示した発現プラスミド(NEDL1および FLAG- TRAP δ )で共トラン スフ タトした。全細胞溶解物を抗 FLAG抗体 (第 1パネル)または抗 NEDL1抗体 (第 2 パネル)で免疫沈降 (IP)させた。免疫沈降物を図に示した抗体を用いて免疫プロット (IB)した。全細胞溶解物を各タンパク質の発現レベルについて、免疫プロット解析し
た (第 3パネル、第 4パネル)。検出は、ホースラデイシュペルォキシダーゼ共役された 二次抗体を用いて行った。 COS7細胞を xpress-NEDLl発現プラスミドでトランスフエク トし、同様の実験を行った(図 3)。これらの結果から、 NEDL1と TRAP Sとの結合力外 因性 TRAP δについて確認された。
[0048] (実施例 2) NEDL1と SOD1変異体との結合
NEDL1および FLAGタグ SOD1変異体または野生型 SOD1を過剰発現する COS7細 胞からの全細胞溶解物を抗 FLAG抗体 (第 1パネル)または抗 NEDL1抗体 (第 2パネ ル)を用いて、免疫沈降させ、それから抗 NEDL1抗体または抗 FLAG抗体を用いて、 免疫プロットした。 NEDL1または FLAGタグ SOD1変異体の発現を抗 NEDL1抗体(第 3 パネル)または抗 FLAG抗体 (第 4パネル)を用いて、それぞれ解析した(図 4)。発症 後、急速な臨床経過を迪り、患者が 1.5年以内に死亡する SOD1変異体 (C6F、 A4V) は、 NEDL1と強く結合していることが分かる(図 4、レーン 3、 4)。一方、発症後緩徐な 臨床経過を示す、 SOD1変異体(L126S、 H46R、 D90A)は、ほとんど NEDL1と結合を していないことが分かる(図 4、レーン 11一 13)。発症後特異な神経症状を示す変異で ある、 SOD1変異体(G93A)は、 NEDL1と中程度の結合をしていることが分かる。また 、野生型 SOD1と NEDL1は結合しな 、(共沈しな!ヽ)ことも分かる(レーン 2)。
[0049] (実施例 3) TRAP Sと SOD1変異体との結合
COS7細胞を FLAGタグ TRAP δおよび Mycタグ SOD1変異体または Mycタグ野生型 SOD1をコードする発現プラスミドで一過的に共トランスフエタトした。全細胞溶解物を 抗 Myc抗体 (第 1パネル)または抗 FLAG抗体 (第 2パネル)を用いて、免疫沈降させ、 それから抗 FLAG抗体または抗 Myc抗体を用いて、免疫プロットした(図 7)。 FLAGタ グ TRAP δまたは Mycタグ SOD1変異体の発現を抗 FLAG抗体 (第 3パネル)または抗 Myc抗体 (第 4パネル)を用いて、それぞれ解析した。発症後、急速な臨床経過を迪り 、患者力 1.5年以内に死亡する SOD1変異体 (A4V)は、 TRAP δと強く結合していること が分かる(図 7、レーン 4)。一方、発症後緩徐な臨床経過を示す、 SOD1変異体( H46R)は、ほとんど TRAP Sと結合をしていないことが分かる(レーン 6)。また、野生型 SOD1と TRAP δは結合しな 、(共沈しな!、)ことも分かる(レーン 3)。
[0050] (実施例 4) NEDL1依存性ュビキチンィ匕
NEDL1は、 SOD1変異体を SOD1のタイプに依存する様式でュビキチン化した。 COS7細胞を図 5に示した発現プラスミドを用いて、一過的に共トランスフエタトした。ト ランスフエタトした C0S7細胞力ゝらの全細胞溶解物を抗 Myc抗体で免疫沈降させて、 抗ュビキチン抗体を用いて免疫プロットした (上部パネル)。ュビキチンィ匕の程度は、 ほぼ FALSの臨床重症度 (A4V〉G93A〉H46R)に比例した。全細胞溶解物を抗 NEDL1 抗体で免疫プロットし、トランスフエタトした NEDL1の発現を確認した(下部パネル)。 図中、矢印は、ュビキチンィ匕されていない SOD1の位置を示し、左側に分子量マーカ 一の位置を示してある。
[0051] (実施例 5) NEDL1の存在下、または不在下の野生型 SOD1および SOD1変異体の 半減期
シクロへキシジンを添加後(終濃度 50 μ g/ml)、図 6に示したような異なる時点で回 収した、空ベクターまたは NEDL1発現プラスミドでトランスフエタトした Neuro2a細胞の 溶解物を抗 FLAG抗体で免疫プロットして、 SOD1蛋白レベルを分析した。 SOD1変異 体は、野生型 SODはり迅速に分解された。 NEDL1は、野生型 SOD1の分解に影響を 及ぼさなかった。 SOD1変異体タンパク質の分解は、促進され、 NEDL1の存在下、 SOD1変異体タンパク質の半減期は、ほぼ FALSの重症度 (A4V〉G93A〉H46R)に比例 して減少してゆくことが分かる。
[0052] (実施例 6) NEDL1と Dvllとの結合
COS7細胞中、 Mycタグ Dvllを NEDL1とともに過剰発現させた。全細胞溶解物を抗 NEDL1抗体で免疫沈降させ、続いて抗 Myc抗体を用いて免疫プロットした(図 8の上 部パネル)。 Mycタグ Dvllの発現レベルを抗 Myc抗体を用いて、免疫ブロットし解析し た(下部パネル)
[0053] (実施例 7) Dvllの NEDL1依存性ュビキチン化
NEDL1は、 COS7細胞中 Dvllをュビキチン化した。 COS7細胞を図 9に示した発現プ ラスミドを用いて、一過的に共トランスフエタトした。トランスフエタトした COS7細胞から の全細胞溶解物を抗 Myc抗体で免疫沈降させて、抗ュビキチン抗体を用いて免疫 ブロットした(上部パネル)。全細胞溶解物を抗 xpress-NEDLl抗体(中段パネル)また は抗 Myc抗体(下段パネル)で免疫プロットし、トランスフエタトした NEDL1または
Myc- Dvllの発現を確認した。
[0054] (実施例 8) NEDL1による Dvllの分解
Neuro2a細胞を FLAGタグ Dvll用の発現プラスミドを用いて、 NEDL1発現プラスミド の存在下、または不在のもとでトランスフエタトした。トランスフエタト細胞をシクロへキ シジン添加後(終濃度 50 μ g/ml)、図 10に示したような異なる時点で回収した。
Neuro2a細胞溶解物を抗 FLAG抗体で免疫プロットして、 Dvll蛋白レベルを分析した 。 NEDL1の存在下、 FLAG- Dvllの半減期は、顕著に減少した。
[0055] (実施例 9) Dvllと SOD1変異体との結合
COS7細胞を図 11に示した発現プラスミドで一過的に共トランスフエタトした。全細胞 溶解物を抗 Myc抗体で、免疫沈降させ、それから抗 FLAG抗体または抗 Myc抗体を 用いて、免疫プロットした。 NEDL1の存在下、 Dvllと SOD1変異体との結合が強まって いることが分かる(図 11、レーン 4)。結合能は、ほぼ FALSの重症度 (A4V〉G93A〉 H46R)に比例して減少してゆくことも分かる。
産業上の利用可能性
[0056] 以上説明したように、本発明は、 NEDL1と SOD1変異体との結合能、或いは NEDL1 存在下、または非存在下での NEDL1関連因子と SOD1変異体との結合能を評価する ことによって、前記 SOD1変異体が単離された FALS患者の臨床悪性度の判定を可能 にし、 FALSの診断に役に立つ。