新規のリフォ一ルディング方法およびその方法によって得られたタンパク質
技 術 分 野 明
本発明は、 新規のリフォールデイング方法に関する。 さらに本発明は、 本発明 のリフォールデイング方法によって得られたタンパク質に関する。 本発明のリフ オールデイング方法によって得られるタンパク質は、 高純度、 かつ高度に均質で 書
あるという特徴を有する。 そのため、 本発明はまた、 本発明のリフォールディン グ方法によって得られたタンパク質の結晶を提供する。
さらに本発明は、 本発明のリフォ一ルディング方法を適用することによって得 られる受容体夕ンパク質のリガンド結合フラグメントを固相上に固定化すること により調製される受容体チップ、 受容体力ラムおよびリガンド除去材料、 ならび にこのようなリガンド除去材料を含有する治療用材料に関する。
具体的には、 例えば、 本発明において、 受容体フラグメントとして使用するス 力ベンジャー受容体のリガンド認識部位に関係する領域を細胞内で封入体として 発現させた後、 本発明のリフォールディング方法を用いてリフォールディングし、 その後、 リフォールディングしたタンパク質を固相上に固定化して作製された受 容体チップが提供される。 例えば、 スカベンジャー受容体の細胞外領域、 または Cタイプレクチン様領域 (CTLDとも略記する) を封入体として細胞内で発現 させた後、 本発明のリフォールデイング方法を適用し、 リフォールデイングした タンパク質を固相上に固定化することによって、 酸化 LDL、 ァセチル LDL、 サクシニル LDL、 およびマロンジアルデヒド LDL、 糖化 LDLなどの変性 L DL (Low Den s i t y L i p o p r o t e i n) 異常細胞並びに細菌 を検出するための、 高感度な受容体チップを提供することができる。
また、 本発明のリフォールデイング方法を用いて調製されたスカベンジャ一受 容体の細胞外領域、 または C T L Dは、 高純度かつ均質であるため、 標的リガン ド以外の物質に対する非特異的結合が少ない。 従って、 そのようなス力べンジャ 一受容体の細胞外領域、 または C T L Dを用いることによって、 血液中の変性 L D L以外の成分に対して影響を与えることなく、 血中の変性 L D Lを除去する方 法および治療用材料が提供される。
さらに、 本発明のリフォ一ルディング方法によって調製されたタンパク質を用 いた結晶も提供される。 背 景 技 術 所望のタンパク質を大量に調製するための方法として、 タンパク質の組換え発 現法が周知である。 組換え発現によって、 天然の供給源からの大量調製が困難で あるタンパク質についても、 大量に調製することが可能となった。
例えば、 細胞表面に存在する受容体は、 その受容体に対応するリガンドと特異 的に結合し、 種々のシグナルを細胞内に伝達するタンパク質であり、 細胞あたり の発現量が少ないため、 天然の供給源から大量に調製することが困難であるが、 組換え発現法を用いれば大量に調製することが可能である。
細胞表面に存在する受容体は多様であり、 その対応するリガンドも異なること から、 特定のリガンドの検出および/または定量を行うために、 そのリガンドに 特異的に結合する受容体を大量に調製して用いることは有用である。 大量に調製 した受容体または受容体フラグメントを固相に固定化して、 異常細胞または疾患 の診断マーカーをリガンドとする受容体チップを作製することにより、 細胞集団 中の異常細胞の存在の検出、 または、 疾患の診断のための有用なツールを提供で きることが、 予想される。 例えば、 生体内に蓄積した変性 L D Lやアポト一シス 細胞や老化赤血球などの異常細胞、 並びに生体内に侵入した細菌等を認識して結
合する能力のある複数の受容体の存在が発見されている。 このような受容体の中 には、 認識する対象 (リガンド) の認識に必要な領域が予想されているものも多 レ^ これらの受容体そのもの、 あるいは認識に必要な領域のみを利用すれば、 リ ガンドである変性 L D L、 アポトーシス細胞などの異常な細胞、 細菌を簡便に検 出できる可能性がある。
また、 受容体とその対応するリガンドとの結合が特異的であることから、 大量 発現した受容体またはそのリガンド結合性フラグメントを固相に固定ィヒし、 リガ ンドを除去する材料を提供することが可能である。 例えば、 変性 L D Lに対する 受容体を用いて、 血中の変性 L D Lを除去することにより、 変性 L D L動態異常 に起因する動脈硬化症、 高脂血症などの疾患を治療することが可能である。 従つ て、 本発明は、 変性 L D Lリガンド除去材料を含有する治療用材料をも提供する。 タンパク質を組換え発現するために用いる種々の宿主細胞およびベクターが周 知である。 組換え発現の宿主細胞としては、 細菌細胞、 動物細胞、 植物細胞、 真 菌細胞などが挙げられる。 なかでも、 大腸菌のような細菌細胞は、 その増殖速度 が速く、 かつ操作が比較的簡便であり、 かつ調製コストが安いため、 宿主細胞と して広く利用されており、 特に工業的規模での生産に適している。 しかし、 大腸 菌において外来遺伝子を高発現した場合には、 産物タンパク質が不溶性物質とし て細胞内に封入体として蓄積される場合が多い。 この封入体は、 不溶性であり、 かつ封入体タンパク質の立体構造は天然の状態のタンパク質の立体構造とは異な るため、 可溶化およびリフォールディングを必要とする。
ところが、 従来のリフォールデイング方法は、 例えば、 受容体を樹脂に吸着さ せた後、 吸着させた樹脂を変性剤を含有する緩衝溶液と接触させ、 次いで変性剤 の濃度を漸次低下させた緩衝溶液と接触させる (特開 2 0 0 3 - 1 6 9 6 9 3 ) というように、 いずれも煩雑な方法であった。 さらに、 固相に固定化された状態 でリフォールディングした場合は、 リフォールディング後に固相からの溶出や切 り出しなどの工程を経る必要があり、 煩雑さを増すと共に収率が低下するなどの
問題があった。 さらに、 界面活性剤を用いる従来のリフォールデイング方法 (特 開 2002— 306163) では、 使用した界面活性剤をリフォールデイングし たタンパク質から除去することが困難であるという問題も生じる。 そのため、 従 来法では、 可溶化およびリフォールディング工程において使用する物質がリフォ —ルディングしたタンパク質中に混入することによる純度の低下、 および不完全 にリフォールディングされたタンパク質の存在による不均一さが問題となってい る。
この純度の低下および不均一さは、 天然のタンパク質と比較した場合のリフォ
質の比活性の低さとして検出することができる。 実際 に、 従来法では、 リフォ一ルディングしたタンパク質が必ずしも 100 %の比活 性を示すことはない (Daughe r t y, D. L. ら、 (1998) J. B i o 1. C h em. 273、 33961〜 33971 ; Sund a r i, C. S. ら、, (1999) FEB S, Le t t. 、 443、 215〜 219 ;および M a c h i d aら (2000) FEB S, Le t t. 、 486、 131〜 135) 。 例えば、 受容体のリガンド結合フラグメントをリフォ一ルディングし、 リガン ド検出のための受容体チップとして利用する場合、 従来のリフォールディング方 法を用いると高純度かつ均質なリフォールディングタンパク質の調製ができない ため、 定性的検出および定量的検出における感度の低下を生じる。 また、 受容体 のリガンド結合フラグメントをリフォ一ルディングし、 例えば、 血中に存在する リガンドの除去のための材料として利用する際に、 リフォールデイングしたタン パク質の純度および均質性が低い場合には、 血中の他の因子との相互作用によつ て、 目的とするリガンド以外の物質を除去することとなる。
従って、 従来法と比較して、 より高純度かつ均質なタンパク質を得るためのリ フォールデイング方法、 特に、 封入体からリフォールデイングしたタンパク質を 調製するための方法が望まれる。
発 明 の 開 示
(発明が解決しょうとする課題)
本発明の目的は、 変性タンパク質から、 高純度かつ均質な適正に折り畳まれた タンパク質を調製するリフォ一ルディング方法を提供することにある。 また、 本 発明のさらなる目的は、 本発明のリフォールディング方法を用いることによって 、 高純度かつ均質な適正に折り畳まれたタンパク質を提供することにある。 本発明はさらに、 封入体タンパク質から、 高純度かつ均質な適正に折り畳まれ たタンパク質を調製し、 そのタンパク質を固相上に固定化することによって受容 体チップを作製することを目的とする。 また、 本発明のきらなる目的は、 そのよ うなチップを用いた、 検出キットおよび検出方法を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、 ス力べンジャ一受容体を用いた受容体チップを作製 し、 変性 L D L、 異常細胞並びに細菌の検出方法を提供し、 また、 好適には方向 性を有した状態 (リガンド結合部位が外側に位置するように) で固相上に固定化 可能な可溶性のリガンド認識領域を大量に調製し、 そのリガンド認識特性を活か したセンサ一部位を構築し、 これを利用して変性 L D Lやアポトーシス細胞ゃ老 化赤血球などの異常細胞、 並びに生体内に侵入した細菌等を検出する方法および 検出用キットを提供することである。
また、 本発明のさらなる目的は、 血中の変性 L D L、 異常細胞並びに細菌を除 去するための、 スカベンジャー受容体を用いたリガンド除去材料を提供すること 、 およびそのような材料を用いた、 血中の変性 L D L、 異常細胞並びに細菌を除 去する方法および材料を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、 従来法のリフォールディング法によって調製された タンパク質と比較して、 より高純度であり、 かつ均質なタンパク質を提供するこ とにある。 さらに、 そのようなタンパク質を提供することによって、 ワクチン組
成物のような治療用組成物の製造に適した夕ンパク質の製造を可能とすることも
、 本発明の目的の 1つである。
(課題を解決するための手段)
本発明は、 アルギニン、 還元型ダル夕チオン、 酸化型ダルタチオンを含有する リフォールディング緩衝液中に、 変性したタンパク質を滴下する工程を用いるこ とによって、 上記課題を解決した。 本発明はまた、 リフォールデイングされる夕 ンパク質として、 LOX— 1のリガンド結合性フラグメントを用いることによつ て、 血中の変性 LDL、 異常細胞並びに細菌を除去するための方法および材料を 提供するという上記課題を解決した。
従って、 本発明は以下を提供する。
1. 変性したタンパク質をリフォールデイングする方法であって、 以下の工程: a) アルギニン、 還元型ダルタチオン、 酸化型ダルタチオンを含有するリフォー ルディング緩衝液中に、 変性したタンパク質を滴下する工程、
を包含する方法。
2. 前記変性タンパク質およびリフオールデイング緩衝液のいずれもが、 界面活 性剤を含有しない、 項目 1に記載の方法。
3. 前記滴下が、 10〜300 ^ 1Z分の速度で行われる、 項目 1に記載の方法 4. 前記滴下が、 20〜30 1 Z分の速度で行われる、 項目 3に記載の方法。
5. 前記リフォールデイング緩衝液の pHが 7. 5〜9. 5の範囲である、 項目 1に記載の方法。
6. 前記リフォールデイング緩衝液の pHが 8. 0〜8. 5の範囲である、 項目 5に記載の方法。
7. 前記リフォールデイング緩衝液が Tr i s— HC 1を含有する、 項目 1に記 載の方法。
8. 前記 Tr i s— HC 1の濃度が 5〜2 OmMである、 項目 7に記載の方法。
9. 前記アルギニンの濃度が 100mM〜60 OmMである、 項目 1に記載の方 法。
10. 前記アルギニンの濃度が 30 OmM〜40 OmMである、 項目 9に記載の 方法。 '
11. 前記還元型ダル夕チオンと酸化型ダルタチオンとの比が、 1 : 5〜; L : 1 0の間である、 項目 1に記載の方法。
12. 前記還元型ダルタチオンの濃度が 1〜2 OmMであり、 前記酸化型ダル夕 チオンの濃度が 0. 2〜2mMである、 項目 11に記載の方法。
13. 前記滴下する変性タンパク質溶液とリフォールデイング緩衝液との容量の 比が、 1 : 50〜 1 : 100である、 項目 1に記載の方法。
14. 前記滴下する変性タンパク質溶液の滴下後のリフォールデイング緩衝液中 でのタンパク質濃度が、 5〜250 ^ ノ111 である、 項目 1に記載の方法。 .
15. 前記滴下する変性タンパク質溶液の滴下後のリフォールデイング緩衝液中 でのタンパク質濃度が、 20〜250 gZmLである、 項目 14に記載の方法
16. 前記変性タンパク質が、 変性剤、 熱、 または照射によって変性されたタン パク質である、 項目 1に記載の方法。
17. 前記変性タンパク質が、 細菌で発現した封入体タンパク質を、 SH保護試 薬および変性剤を含有する可溶ィヒ緩衝液を用いて可溶化することによって得られ る変性タンパク質である、 項目 16に記載の方法。
18. 前記可溶化の際のタンパク質の濃度が、 l〜5mgZmLである、 項目 1 7に記載の方法。
19. 前記可溶化の際のタンパク質の濃度が、 2. 0〜3. OmgZmLである 、 項目 17に記載の方法。
20. 前記可溶化緩衝液の pHが 7. 0〜9. 0である、 項目 17に記載の方法
2 1 . 前記可溶化緩衝液が、 1 0 O mMの T r i s -H C 1緩衝液である、 項目 2 0に記載の方法。
2 2 . 前記 S H保護試薬がジチオトレイト一ルである、 項目 2 0に記載の方法。 2 3 . 前記ジチオトレイト一ルの濃度が 5〜2 0 O mMである、 項目 2 2に記載 の方法。
2 4. 前記ジチオトレイトールの濃度が 5 0〜1 0 O mMである、 項目 2 3に記 載の方法。
2 5 . 前記滴下工程の後に、 溶液を攪拌する工程を包含する、 項目 1に記載の方 法。
2 6 . 前記攪拌工程が、 1 0〜4 8時間行われる、 項目 2 5に記載の方法。 ' 2 7 . 前記攪拌工程が、 1 0〜 1 4時間行われる、 項目 2 6に記載の方法。
2 8 . 項目 1 7に記載の方法によって得られる、 リフォールデイングされたタン パク質。
2 9 . 前記封入体タンパク質が細菌細胞で組換え発現された、 受容体タンパク質 のリガンド結合フラグメントである、 項目 2 8に記載のリフォ一ルディングされ たタンパク質。
3 0 . 前記受容体が、 以下の受容体からなる群から選択される、 項目 2 9に記載 のリフォールデイングされたタンパク質:
スカベンジャ一受容体、 インスリン受容体ファミリーに属する受容体、 EGF受 容体ファミリーに属する受容体、 PDGF受容体ファミリーに属する受容体、 VEGF受 容体ファミリーに属する受容体、 FGF受容体ファミリーに属する受容体、 NGF受容 体ファミリーの増殖因子受容体、 TGF- ;8スーパ一ファミリーに属する受容体、 To 11-1 ike受容体ファミリ一に属する受容体、 LDL受容体関連タンパク質ファミリ —に属する受容体、 および Gタンパク質共役型受容体ファミリーに属する受容体
31. 前記受容体が、 スカベンジャー受容体の LOX— 1である、 項目 30に記 載のリフォ一ルディングされた夕ンパク質。
32. 98%以上の純度である、 項目 31に記載のリフォールデイングされた夕 ンパク質。
33. 2. 5オングストロームの分解能を与える X線回折像を与える単結晶を与 える純度を有する、 項目 31に記載のリフォールデイングされたタンパク質。 34. 固相固定化部位が付加されている、 項目 31に記載のリフォ一ルディング されたタンパク質。
35. 前記固相固定化部位がピオチンまたはタグ配列である、 項目 34に記載の リフォールデイングされたタンパク質。
36. 前記タグ配列が、 以下からなる群から選択されるタグ配列である、 項目 3
5に記載のリフォールディングタンパク質:
H i sタグ、 GSTタグ、 my cタグ、 セルロース結合ドメインタグ、 セル口 ース結合ペプチドタグ、 カルモジュリン結合ペプチドタグ、 Sタンパク質結合べ プチドタグ、 T 7タグまたはこれらの組み合わせ。
37. 項目 34に記載の固相固定化部位を介して固相に固定化されたリフォール デイングタンパク質を含有する、 受容体チップ。
38. 表面プラズモン共鳴、 水晶発振子マイクロバランス、 または質量分析計に よる検出に適合する、 項目 37に記載の受容体チップ。
39. 項目 38に記載の受容体チップを用いる、 変性 LDL、 異常細胞または細 菌の検出方法。
40. 項目 38に記載の受容体チップを含む、 検出用キット。
41. 項目 34に記載の固相固定化部位を介して固相に固定化されたリフォ一ル デイングタンパク質を含有する、 リガンド除去材料。
42. 項目 41に記載のリガンド除去材料を含有する、 血中のリガンドを除去す るためのリガンド除去材料。
4 3 . 項目 4 1に記載のリガンド除去材料を含有する、 変性 L D L動態異常に起 因する動脈硬化症を処置するための治療用材料。
4 4. 項目 4 1に記載のリガンド除去材料を含有する、 変性 L D L動態異常に起 因する高脂血症を処置するための治療用材料。
4 5 . a = 6 . 2 nm、 b = 6 . 9 nm、 および c = 7 . 9 nmの単位格子定数 を有する、 P 2ェ 2 2丄斜方晶形である L O X— 1リガンド結合フラグメントの 結晶形態。
4 6 . 項目 3 1に記載のリフォールデイングされたタンパク質を含む、 動脈硬化 を予防または処置するための、 薬学的組成物。
さらに、 本発明は、 所望のリガンドに特異的に結合する受容体タンパク質のリ ガンド結合フラグメントを高純度かつ均質な状態で調製し、 そのフラグメントを 固相に結合することによって、 その所望のリガンドを高感度で検出する受容体チ ップを提供する。 本発明はまた、 そのような受容体チップを用いて、 その所望の リガンドを検出する方法を提供する。
本発明は、 所望のリガンドに特異的に結合する受容体夕ンパク質のリガンド結 合フラグメントを高純度かつ均質な状態で調製し、 そのフラグメントを固相に結 合することによって、 その所望のリガンドを特異的に除去するためのリガンド除 去材料を提供する。 本発明はまた、 その所望のリガンドを血中から除去する方法 であって、 以下の工程を包含する方法を提供する:
( 1 ) 被検^の血液を得る工程;および
( 2 ) 該血液を、 血中の所望のリガンドとリガンド除去材料が特異的に結合する 条件下で、 リガンド除去材料と接触させる工程。
1つの局面において、 上記方法で処理された血液は、 被検体に戻される。 さらに、 本発明においては、 試料中の細菌および/またはウィルスなどの病原 体を除去するための方法であって、 以下の工程を包含する方法が提供される: ( 1 ) 病原体を除去するための試料を得る工程;および
( 2 ) 該試料を、 試料中の病原体とリガンド除去材料が特異的に結合する条件下 で、 リガンド除去材料と接触させる工程。
1つの局面において、 上記方法で処理された試料は、 被検体に注入される。 さらに本発明は、 受容体のリガンド認識に関係する領域を細胞内で発現させて 得た組換えタンパク質を用いることを特徴とする分子間相互作用解析法による変 性 L D L、 異常細胞または細菌の検出方法を提供する。
また本発明は、 受容体のリガンド認識に関係する領域をピオチン化タンパク質 として細胞内で発現させた後、 発現させたピオチン化タンパク質をアビジンまた はストレプトアビジンを介して方向性を保って固相上に固定化し、 当該固定化タ ンパク質を用いることを特徴とする分子間相互作用解析法によるリガンドの検出 方法を提供する。
また本発明は、 受容体のリガンド認識に関係する領域をタグ化タンパク質とし て細胞内で発現させた後、 発現させたタグ化タンパク質をそのタグと特異的に結 合する因子を介して方向性を保って固相上に固定化し、 当該固定化タンパク質を 用いることを特徴とする分子間相互作用解析法によるリガンドの検出方法を提供 する。
本発明はさらに、 大腸菌内に蓄積した受容体の細胞外領域またはリガンド認識 領域を正しい立体構造にリフォ一ルディングして再構成して得た再構成タンパク 質を用いることを特徴とする分子間相互作用解析法による変性 L D L、 異常細胞 または細菌の'検出方法を提供する。
また本発明は、 大腸菌内に蓄積した受容体のピオチン化細胞外領域またはピオ チン化リガンド認識領域を正しい立体構造にリフォ一ルディングして再構成した 後、 再構成したピオチン化タンパク質をアビジンまたはストレプトアビジンを介 して方向性を保って固相上に固定化し、 当該固定化タンパク質を用いることを特 徴とする分子間相互作用解析法による変性 L D L、 異常細胞または細菌の検出方 法を提供する。
また本発明は、 大腸菌内に蓄積した受容体のタグ化細胞外領域または夕グ化リ ガンド認識領域を正しい立体構造にリフォールディングして再構成した後、 再構 成した夕グイ匕タンパク質をタグと特異的に結合する因子を介して方向性を保って 固相上に固定化し、 当該固定化タンパク質を用いることを特徴とする分子間相互 作用解析法による変性 L D L、 異常細胞または細菌の検出方法を提供する。
本発明はまた、 大腸菌内に凝集体として蓄積した受容体の細胞外領域またはリ ガンド認識領域を変性剤により構造を解きほぐした後、 正しい立体構造にリフォ 一ルディングしたタンパク質を含む変性 L D L、 異常細胞または細菌の検出用キ ットを提供する。
本発明はまた、 種々の疾患 (例えば、 動脈硬化) を処置するためのワクチン組 成物を製造するためのタンパク質を提供する。 例えば、 動脈硬化を処置するため のワクチン組成物は、 例えば、 変性 L D Lのようなリポタンパク質、 Tol卜 l ike 受容体ファミリーに属する受容体、 および L O X— 1のようなスカベンジャー受 容体のような夕ンパク質を含み得る。
(発明の効果)
本発明によって、 新規のリフォールデイング方法、 およびその方法によって得 られたタンパク質が提供される。 本発明のリフォールデイング方法によって、 高 純度かつ均質なリフォールディングタンパク質を得ることが可能となる。
さらに、 本発明のリフォールデイング方法を用いることによって、 所望のリガ ンドに対する高感度の受容体チップセンサーもまた提供される。
また、 本発明のリフォールデイング方法を用いることによって、 従来法のリフ オールデイング法によって調製されたタンパク質と比較して、 より高純度であり、 かつ均質なタンパク質を調製することが可能となる。 そのため、 本発明のリフォ —ルディング方法によって、 ワクチン組成物のような治療用組成物の製造に適し たタンパク質の製造が可能となる。
図 面 の 簡 単 な 説 明 図 1は、 本発明のリフォールデイング方法で得たタンパク質が、 従来法の環状 糖質サイクロアミロースによるリフォールディング方法よりも分子量の幅が狭く 、 従ってより高い純度で精製されていることを示す。 図 2は、 本発明のリフォールディング方法によって得たタンパク質が従来法の 環状糖質サイクロアミロースによりリフォールディング方法よりも夾雑物が少な く高純度に精製されていることを示す。 図 3は、 本発明のリフォールディング方法によって得たタンパク質が単一の分 子種としてリフォ一ルディングしているのに対して、 従来法で得たタンパク質は 、 不完全なリフォ一ルディングタンパク質が混在していることが示される。 図 4は、 本発明のリフォールディング方法によって得たタンパク質には不完全 なリフォールディングタンパク質の混在が無いことを示す。 図 5は、 本発明のリフォールディング方法を用いてリフォールディングされた LOX- 1 CTLDが酸化 LDLおよびァセチル化 LDLに対して天然の LO X- 1と同程度の親和性を有することが示す。 図 6は、 L O X— 1の細胞外ドメイン全長を本発明のリフォールディング方法 でリフォールデイングした結果得られたタンパク質が、 細胞表層にある L O X— 1の存在様式と同様に 2量体であることを示す。 図中、 i8Me (+) は、 βメル カプトエタノールを添加したことを示す。 /3Me (—) は、 /3メルカプトェ夕ノ
ールを添加しなかったことを示す。 図 7は、 センサーチップに apoBlOO抗体を介して固定したァセチル化 LDLに対し て、 二量体構造を形成した L0X-1細胞外ドメイン全長、 単量体として存在するリ ガンド結合ドメイン CTLDをそれぞれ相互作用させた実験の結果を示す。 ァセチル 化 LDL認識には、 リガンド結合ドメインが二量体構造を取ることが必要であるこ とが示された。
発 明 の 詳 細 な 説 明
以下、 本発明を説明する。 本明細書の全体にわたり、 単数形の冠詞 (例えば、 英語の場合は 「a」 、 「a n」 、 「 t h e」 など、 独語の場合の 「e i n」 、 「d e r」 、 「d a s」 、 「d i e」 などおよびその格変化形、 仏語の場合の 「u n」 、 「u n e」 、 「 1 e」 、 「 1 a」 など、 スペイン語における 「u n」 、 「u n a」 、 「e 1」 、 「1 a」 など、 他の言語における対応する冠詞、 形容詞 など) は、 特に言及しない限り、 その複数形の概念をも含むことが理解されるべ きである。 また、 本明細書において使用される用語は、 特に言及しない限り、 当 該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
本明細書において使用される用語 「受容体」 とは、 1個以上のリガンドと可逆 的、 かつ特異的に複合体化する 1個以上の結合ドメインを備える生物学的な構造 であって、 ここで、 この複合体化は生物学的な構造を有する。 受容体は、 完全に 細胞の外部 (細胞外の受容体) 、 細胞膜の中 (しかし、 受容体の部分を細胞外部 の環境および細胞質ゾルに向けている) 、 または完全に細胞の中 (細胞内の受容 体) に存在し得る。 これらはまた、 細胞と独立的に機能し得る。 細胞膜中の受容
体は、 細胞を、 その境界の外部の空間と連絡 (例えば、 シグナル伝達) させ、 そ して細胞の内側および外側への分子およびイオンの輸送において機能させること を可能とする。 本明細書において使用する場合、 受容体は、 受容体全長であって も、 受容体のフラグメントであってもよい。
受容体フラグメントを用いる場合には、 受容体夕ンパク質のリガンド認識に関 係する部位を用いる。 受容体タンパク質のリガンド認識に関係する部位は、 以下 のように同定することができる。 ホモロジ一やドメイン検索により相同性や機能 上の類似点の高いタンパク質の構造からリガンド認識領域を推定することができ る。 例えば、 同一のリガンドに特異的に結合する、 異なる受容体分子のアミノ酸 配列を B L A S Tのデフォルトパラメータを用いて算出した場合、 5 0 %以上、 好ましくは 5 5 %以上、 より好ましくは 6 0 %以上、 さらに好ましくは 6 5 %以 上の相同性を示す領域が、 リガンド認識領域として推定される。
さらに欠損変異やアミノ酸置換などを導入した変異受容体をコードする遺伝子 を動物細胞などに一過性発現させ、 その機能に必須の領域を決定することも、 当 業者は容易になし得る。
本明細書において使用される用語 「リガンド」 とは、 特異的な受容体または受 容体のファミリーに対する結合パートナ一である。 リガンドは、 受容体に対する 内因性のリガンドであるか、 またはその代わりに、 薬剤、 薬剤候補、 もしくは薬 理学的手段のような受容体に対する合成リガンドであり得る。
本明細書において使用される用語 「タンパク質」 「ポリペプチド」 、 「オリゴ ペプチド」 および 「ペプチド」 は、 本明細書において同じ意味で使用され、 任意 の長さのアミノ酸のポリマーをいう。 このポリマーは、 直鎖であっても分岐して いてもよく、 環状であってもよい。 アミノ酸は、 天然のものであっても非天然の ものであってもよく、 改変されたアミノ酸であってもよい。 この用語はまた、 複 数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされ得る。 この用語はまた、 天然ま たは人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。 そのような改変としては、
例えば、 ジスルフイド結合形成、 グリコシル化、 脂質化、 ァセチル化、 リン酸化 または任意の他の操作もしくは改変 (例えば、 標識成分との結合体化) 。 この定 義にはまた、 例えば、 アミノ酸の 1または 2以上のアナログを含むポリペプチド (例えば、 非天然のアミノ酸などを含む) 、 ペプチド様化合物 (例えば、 ぺプト ィド) および当該分野において公知の他の改変が包含される。
本明細書において使用される用語 「ポリヌクレオチド」 、 「オリゴヌクレオチ ド」 および 「核酸」 は、 本明細書において同じ意味で使用され、 任意の長さのヌ クレオチドのポリマ一をいう。 この用語はまた、 「誘導体オリゴヌクレオチド」 または 「誘導体ポリヌクレオチド」 を含む。 「誘導体オリゴヌクレオチド」 また は 「誘導体ポリヌクレオチド」 とは、 ヌクレオチドの誘導体を含むか、 またはヌ クレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチ ドをいい、 互換的に使用される。 そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的に は、 例えば、 2' —0—メチル一リポヌクレオチド、 オリゴヌクレオチド中のリ ン酸ジエステル結合がホスホロチォエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレ ォチド、 オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合が N 3' -P 5' ホスホ 口アミデート結合に変換された誘導体ォリゴヌクレオチド、 オリゴヌクレオチド 中のリボースとリン酸ジエステル結合とがべプチド核酸結合に変換された誘導体 ォリゴヌクレオチド、 オリゴヌクレオチド中のゥラシルが C - 5プロピニルゥラ シルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、 オリゴヌクレオチド中のゥラシル が C— 5チアゾールゥラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、 オリゴヌ クレオチド中のシトシンが C一 5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴ ヌクレオチド、 オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン 、phenoxa z i ne— mod i f i e d c y t o s i ne) で置換され た誘導体オリゴヌクレオチド、 DN A中のリポースが 2, 一 O—プロピルリボー スで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびォリゴヌクレオチド中のリポ一 スが 2 ' —メトキシェトキシリポースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドな
どが例示される。 他にそうではないと示されなければ、 特定の核酸配列はまた、 明示的に示された配列と同様に、 その保存的に改変された改変体 (例えば、 縮重 コドン置換体) および相補配列を包含することが企図される。 具体的には、 縮重 コドン置換体は、 1またはそれ以上の選択された (または、 すべての) コドンの 3番目の位置が混合塩基および/またはデォキシィノシン残基で置換された配列 を作成することにより達成され得る (Ba t z e rら、 Nuc l e i c Ac i d Re s. 19 : 5081 (1991) ; Oh t s ukaら、 J. B i o l. Ch em. 260 : 2605-2608 (1985) ; Ro s s o l i n iら、 Mo 1. Ce l l . P r ob e s 8 : 91— 98 (1994) ) 。 用語 「核 酸」 はまた、 本明細書において、 遺伝子、 cDNA、 mRNA、 オリゴヌクレオ チド、 およびポリヌクレオチドと互換可能に使用される。 特定の核酸配列はまた、 「スプライス改変体」 を包含する。 同様に、 核酸によりコードされた特定のタン パク質は、 その核酸のスプライス改変体によりコードされる任意のタンパク質を 暗黙に包含する。 その名が示唆するように 「スプライス改変体」 は、 遺伝子のォ
る。 転写後、 最初の核酸転写物は、 異な る (別の) 核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプラ イスされ得る。 スプライス改変体の産生機構は変化するが、 ェキソンのオルタナ ティブスプライシングを含む。 読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリ ペプチドもまた、 この定義に包含される。 スプライシング反応の任意の産物 (組 換え形態のスプライス産物を含む) がこの定義に含まれる。
本明細書において 「遺伝子」 とは、 遺伝形質を規定する因子をいう。 通常染色 体上に一定の順序に配列している。 タンパク質の一次構造を規定する遺伝子を構 造遺伝子といい、 その発現を左右する調節遺伝子という。 本明細書では、 「遺伝 子」 は、 「ポリヌクレオチド」 、 「オリゴヌクレオチド」 および 「核酸」 ならび に/あるいは 「タンパク質」 「ポリペプチド」 、 「オリゴペプチド」 および 「ぺ プチド」 をさすことがある。 本明細書において遺伝子の 「相同性」 とは、 2以上
の遺伝子配列の、 互いに対する同一性の程度をいう。 従って、 ある 2つの遺伝子 の相同性が高いほど、 それらの配列の同一性または類似性は高い。 2種類の遺伝 子が相同性を有するか否かは、 配列の直接の比較、 または核酸の場合ストリンジ ェントな条件下でのハイブリダイゼーシヨン法によつて調べられ得る。 2つの遺 伝子配列を直接比較する場合、 その遺伝子配列間で D N A配列が、 代表的には少 なくとも 5 0 %同一である場合、 好ましくは少なくとも 7 0 %同一である場合、 より好ましくは少なくとも 8 0 %、 9 0 %、 9 5 %、 9 6 %、 9 7 %、 9 8 %ま たは 9 9 %同一である場合、 それらの遺伝子は相同性を有する。
本明細書では塩基配列の同一性の比較および相同性の算出は、 配列分析用ツー ルである B L A S Tを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。
本明細書において遺伝子、 ポリヌクレオチド、 ポリペプチドなどの 「発現」 と は、 その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、 別の形態になることをい う。 好ましくは、 遺伝子、 ポリヌクレオチドなどが、 転写および翻訳されて、 ポ リぺプチドの形態になることをいうが、 転写されて m R N Aが作製されることも また発現の一態様であり得る。 より好ましくは、 そのようなポリペプチドの形態 は、 翻訳後プロセシングを受けたものであり得る。
本明細書において、 「アミノ酸」 は、 天然のものでも非天然のものでもよい。 「誘導体アミノ酸」 または 「アミノ酸アナログ」 とは、 天然に存在するアミノ酸 とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。 そのような誘導 体アミノ酸お'よびアミノ酸アナログは、 当該分野において周知である。 用語 「天 然のアミノ酸」 とは、 天然のアミノ酸の L一異性体を意味する。 天然のアミノ酸 は、 グリシン、 ァラニン、 パリン、 ロイシン、 イソロイシン、 セリン、 メチォ二 ン、 トレオニン、 フエ二ルァラニン、 チロシン、 トリブトファン、 システィン、 プロリン、 ヒスチジン、 ァスパラギン酸、 ァスパラギン、 グルタミン酸、 ダル夕 ミン、 ァ—カルポキシグルタミン酸、 アルギニン、 オル二チン、 およびリジンで ある。 特に示されない限り、 本明細書でいう全てのアミノ酸は L体である。 用語
「非天然アミノ酸」 とは、 タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を 意味する。 非天然アミノ酸の例として、 ノルロイシン、 パラーニトロフエニルァ ラニン、 ホモフエ二ルァラニン、 パラーフルオロフェニルァラニン、 3—ァミノ — 2—ベンジルプロピオン酸、 ホモアルギニンの D体または L体および D—フエ 二ルァラニンが挙げられる。 「アミノ酸アナログ」 とは、 アミノ酸ではないが、 アミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。 アミノ酸アナログと しては、 例えば、 ェチォニン、 力ナパニン、 2—メチルグルタミンなどが挙げら れる。 アミノ酸模倣物とは、 アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有す るが、 天然に存在するアミノ酸と同様な様式で機能する化合物をいう。
アミノ酸は、 その一般に公知の 3文字記号か、 または IUPAC— IUB B i oc hemi c a l Nomenc l a t u r e Co mm i s s i o nによ り推奨される 1文字記号のいずれかにより、 本明細書中で言及され得る。 ヌクレ ォチドも同様に、 一般に受け入れられた 1文字コードにより言及され得る。
本明細書中において、 「対応する」 アミノ酸とは、 あるタンパク質分子または ポリペプチド分子において、 比較の基準となるタンパク質またはポリペプチドに おける所定のアミノ酸と同様の作用を有するか、 または有することが予測される アミノ酸をいい、 特に酵素分子にあっては、 活性部位中の同様の位置に存在し触 媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。
本明細書において 「ヌクレオチド」 は、 天然のものでも非天然のものでもよい。 「誘導体ヌクレオチド」 または 「ヌクレオチドアナログ」 とは、 天然に存在する ヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。 そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、 当該分野におい て周知である。 そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例 としては、 ホスホロチォエート、 ホスホルアミデート、 メチルホスホネート、 キ ラルメチルホスホネート、 2—〇一メチルリボヌクレオチド、 ペプチド一核酸 (PNA) が含まれるが、 これらに限定されない。
本明細書において、 「フラグメント」 とは、 全長のポリペプチドまたはポリヌ クレオチド (長さが n) に対して、 l〜n— 1までの配列長さを有するポリぺプ チドまたはポリヌクレオチドをいう。 フラグメントの長さは、 その目的に応じて、 適宜変更することができ、 例えば、 その長さの下限としては、 ポリペプチドの場 合、 3、 4、 5、 6、 7、 8、 9、 10、 15, 20、 25、 30、 40、 50 およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、 ここの具体的に列挙していない整数で表 される長さ (例えば、 11など) もまた、 下限として適切であり得る。 また、 ポ リヌクレオチドの場合、 5、 6、 7、 8、 9、 10、 15, 20、 25、 30、 40、 50、 75、 100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、 ここの具 体的に列挙していない整数で表される長さ (例えば、 11など) もまた、 下限と して適切であり得る。 本明細書において使用する場合、 好ましくは、 受容体 「フ ラグメント」 は、 全長受容体が特異的に結合し得るリガンドに特異的に結合する。 レクチン様酸化 LDL受容体の好ましいフラグメントは、 C一タイプレクチン様 領域 (CTLD) を含むフラグメントである。
本発明のポリペプチドを製造する方法としては、 例えば、 そのポリペプチドを 産生する原核生物である細菌を培養し、 細菌中に組換え受容体タンパク質を封入 体として蓄積させ、 その宿主細菌を破壊することによって、 そのポリペプチドを 得る方法が挙げられる。
大腸菌内で夕ンパク質をピオチン化するためのピオチン化モチーフのアミノ酸 配列としてば:
GGAPAPAAGGAGAGKAGEGE I PAPLAGTVSK I LVKE GDTVKAGQTVLVLEAMKMETE I N A P TD GK VE K VL VK ERDAVQGGQGL I K I GDLEL」 (配列番号 5) が挙げられる。 アミ ノ酸配列 「GLND I FEAQK I EWHEJ (配列番号 6) もまたピオチン化 モチーフとして利用可能である。 これら配列において、 実際にピオチン化を受け
る K (リジン) 残基以外に変異を導入しても、 ピオチン化活性に大きな影響はな いので、 リジン残基以外を置換した配列もまた、 ピオチン化モチーフとして使用 することができる。 また、 実際にピオチン化を受ける Κを含んだ 「KI G, KI, K I A, K I E, K I GDP (配列番号 7) , KLWS I (配列番号 8) , KL G, KVG」 などを C末側に付加することによるピオチン化も可能である。
また、 エンドプロティナーゼである F a c t o r Xaの認識配列 「I EGR」
(配列番号 9) ゃェンテロキナーゼの認識配列 「DDDDK」 (配列番号 10) などをこれらピオチン化モチーフと発現される外来タンパク質との間に挿入し、 F a c t o rX aまたはェンテロキナーゼによる切断により外来タンパク質を精 製することも可能である。 例えば、 CTLDを発現する場合、 これらピオチン化 モチーフと CTLDとの間にアミノ酸配列 「I EGR」 を挿入し、 CTLDのみ の精製をすることも可能である。
「形質転換体」 とは、 宿主細胞を形質転換することによって作製された細胞な どの生命体の全部または一部をいう。 形質転換体としては、 原核細胞が例示され る。 形質転換体は、 その対象に依存して、 形質転換細胞、 形質転換組織、 形質転 換宿主などともいわれ、 本明細書においてそれらの形態をすベて包含するが、 特 定の文脈において特定の形態を指し得る。
形質転換体を得るための宿主細菌細胞は、 生理活性を保持するポリぺプチドを 発現するものであれば、 特に限定されず、 従来から遺伝子操作において利用され る各種の宿主'細菌細胞を用いることができる。 原核細胞としては、 ェシエリヒア 属、 セラチア属、 バチルス属、 ブレビバクテリウム属、 コリネパクテリゥム属、 ミクロバクテリウム属、 シユードモナス属等に属する原核細胞、 例えば、 Es c he r i c h i a c o l i XL 1— B l u e、 E s c he r i c h i a c o l i XL2-B l u e, Es che r i c h i a c o l i DHl、 E s c h e r i c i a c o l i MC 1000, E s c he r i c h i a c o
1 i KY3276 E s che r i c h i a c o l i W1485> Es c
he r i c h i a c o l i JM109、 E s che r i c h i a c o l i
HB 1 0 1, E s c he r i c h i a c o l i No. 49 、 E s c h e r i c h i a c o l i W3110> E s che r i ch i a c o 1 i NY
49、 E s c h e r i c h i a c o l i BL 21 (DE 3) 、 E s c h e r i c h i a c o l i BL 21 (DE 3) pLy s S、 E s c h e r i c h i a c o 1 i HMS 174 (DE3) , E s c he r i c h i a c o l i
HMS 1 7 4 (DE 3) p L y s S> S e r r a t i a f i c a r i a、 S e r r a t i a f on t i c o l a、 S e r r a t i a 1 i q u e f a c i e n s、 S e r r a t i a ma r c e s c en s, Ba c i l l u s s u b t i 1 i s 、 Ba c i l l u s amy l o l i que f a c i e n s、 B r e v i b a c t e r i um a mmm on i agene s, B r e v i b a c t e r i um i mm a r i oph i l um ATCC 14068 B r e v i b a c t e r i um s ac c a r o l y t i c umAT C C 140 6 6、 Co ry ne b a c t e r i um g l u t ami c um AT C C 13 0 32、 Co r y n e b a c t e r i um g l u t ami c um AT C C 1 4 067、 Co r y n e b a c t e r i um g l u t ami c um ATCC 1 3869、 C o r y n e ba c t e r i um ac e t o ac i doph i l um ATCC
138 7 0 M i c r ob a c t e r i um a mm o n i a p i 1 um A
TCC 1 5 354、 P s eudomona s s p. D— 011 0などが例示さ れる。
本発明において得られた細胞に由来するポリペプチドは、 天然型のポリべプチ ドと実質的に同一の作用を有する限り、 アミノ酸配列中の 1以上のアミノ酸が置 換、 付加および/または欠失していてもよく、 糖鎖が置換、 付加および/または 欠失していてもよい。
あるアミノ酸は、 相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、 例えば、 リガンド分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換さ
れ得る。 あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、 タンパク質の相互作用 能力および性質である。 従って、 特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、 またはその DN Aコード配列のレベルにおいて行われ得、 置換後もなお、 もとの 性質を維持するタンパク質が生じ得る。 従って、 生物学的有用性の明らかな損失 なしに、 種々の改変が、 本明細書において開示されたペプチドまたはこのべプチ ドをコードする対応する DNAにおいて行われ得る。
上記のような改変を設計する際に、 アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。 夕 ンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の 重要性は、 一般に当該分野で認められている (Ky t e. Jおよび Doo 1 i t t i e, R. F. J. Mo 1. B i o l . 157 (1) : 105— 132, 1 982) 。 アミノ酸の疎水的性質は、 生成したタンパク質の二次構造に寄与し、 次いでそのタンパク質と他の分子 (例えば、 酵素、 基質、 受容体、 DNA、 抗体、 抗原など) との相互作用を規定する。 各アミノ酸は、 それらの疎水性および電荷 の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。 それらは:イソロイシン (+4. 5) ;バリン (+4. 2) ;ロイシン (+3. 8) ;フエ二ルァラニン (+2.
8) ;システィン/シスチン (+2. 5) ;メチォニン (+ 1. 9) ;ァラニン (+ 1. 8) ;グリシン (- 0. 4) ;スレオニン (一 0. 7) ;セリン (一 0.
8) ; トリブトファン (—0. 9) ;チロシン (一 1. 3) ;プロリン (—1. 6) ; ヒスチジン (一 3. 2) ;グルタミン酸 (—3. 5) ;グルタミン (—3. 5) ;ァスパラギン酸 (—3. 5) ;ァスパラギン (一3. 5) ; リジン (一 3.
9) ;およびアルギニン (—4. 5) ) である。
あるアミノ酸を、 同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、 そ して依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質 (例えば、 リガンド結合 能において等価なタンパク質) を生じさせ得ることが当該分野で周知である。 こ のようなアミノ酸置換において、 疎水性指数が ±2以内であることが好ましく、 土 1以内であることがより好ましく、 および ±0. 5以内であることがさらによ
り好ましい。 疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当 該分野において理解される。 米国特許第 4、 554、 101号に記載されるよう に、 以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン (+3。
0) ; リジン (+3. 0) ;ァスパラギン酸 (+3. 0± 1) ;グルタミン酸 (+3. 0± 1) ;セリン (+0. 3) ;ァスパラギン (+0. 2) ;グルタミ ン (+0. 2) ;グリシン (0) ;スレオニン (― 0. 4) ;プロリン (一0. 5± 1) ;ァラニン (一0. 5) ;ヒスチジン (一0. 5) ;システィン (一 1, 0) ;メチォニン (一 1. 3) ;バリン (一 1. 5) ; ロイシン (一1. 8) ; イソロイシン (一1. 8) ;チロシン (一2. 3) ;フエ二ルァラニン (一 2. 5) ;およびトリブトファン (一 3. 4) 。 アミノ酸が同様の親水性指数を有し かつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解さ れる。 このようなアミノ酸置換において、 親水性指数が ±2以内であることが好 ましく、 ± 1以内であることがより好ましく、 および ±0. 5以内であることが さらにより好ましい。
本発明において、 「保存的置換」 とは、 アミノ酸置換において、 元のアミノ酸 と置換されるアミノ酸との親水性指数または および疎水性指数が上記のように 類似している置換をいう。 保存的置換の例は、 当業者に周知であり、 例えば、 次 の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびァスパ ラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびァスパラギン;ならびに バリン、 ロイシン、 およびイソロイシン、 などが挙げられるがこれらに限定され ない。
本明細書において、 「改変体」 とは、 もとのポリペプチドまたはポリヌクレオ チドなどの物質に対して、 一部が変更されているものをいう。 そのような改変体 としては、 置換改変体、 付加改変体、 欠失改変体、 短縮 ( t r u n c a t e d) 改変体、 対立遺伝子変異体などが挙げられる。 対立遺伝子 (a l l e l e) とは、 同一遺伝子座に属し、 互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。 従って、
「対立遺伝子変異体」 とは、 ある遺伝子に対して、 対立遺伝子の関係にある改変 体をいう。 「種相同体またはホモログ (homo 1 og) 」 とは、 ある種の中で、 ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、 相同性 (好ましくは、 60%以上の相同性、 より好ましくは、 80%以上、 85%以上、 90%以上、 95%以上の相同性) を有するものをいう。 そのような種相同体を取得する方法 は、 本明細書の記載から明らかである。 「オルソログ (o r t ho 1 og) 」 と は、 オルソロガス遺伝子 (o r t ho l ogou s gen e) ともいい、 二つ の遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。 例えば、 多重遺 伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、 ヒトとマウスのひ ヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが, ヒトの αヘモグロビン遺伝子と /3へ モグロピン遺伝子はパラログ (遺伝子重複で生じた遺伝子) である。 オルソログ は、 分子系統樹の推定に有用であることから、 オルソログもまた、 本発明におい て有用であり得る。
「保存的 (に改変された) 改変体」 は、 アミノ酸配列および核酸配列の両方に 適用される。 特定の核酸配列に関して、 保存的に改変された改変体とは、 同一の または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、 核酸がアミノ酸配 列をコードしない場合には、 本質的に同一な配列をいう。 遺伝コードの縮重のた め、 多数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。 例えば、 コドン GCA、 GCC、 GCG、 および GCUはすべて、 アミノ酸ァラニンをコ ードする。 したがって、 ァラニンがコドンにより特定される全ての位置で、 その コドンは、 コードされたポリペプチドを変更することなく、 記載された対応する コドンの任意のものに変更され得る。 このような核酸の変動は、 保存的に改変さ れた変異の 1つの種である 「サイレント改変 (変異) 」 である。 ポリペプチドを コードする本明細書中のすべての核酸配列はまた、 その核酸の可能なすべてのサ ィレント変異を記載する。 当該分野において、 核酸中の各コドン (通常メチォ二 ンのための唯一のコドンである AUG、 および通常トリプトファンのための唯一
のコドンである T G Gを除く) が、 機能的に同一な分子を産生するために改変さ れ得ることが理解される。 したがって、 ポリペプチドをコードする核酸の各サイ レント変異は、 記載された各配列において暗黙に含まれる。 好ましくは、 そのよ うな改変は、 ポリぺプチドの高次構造に多大な影響を与えるアミノ酸であるシス ティンの置換を回避するようになされ得る。
本明細書中において、 機能的に等価なポリペプチドを作製するために、 ァミノ 酸の置換のほかに、 アミノ酸の付加、 欠失、 または修飾もまた行うことができる。 アミノ酸の置換とは、 もとのペプチドを 1つ以上、 例えば、 1〜1 0個、 好まし くは 1〜5個、 より好ましくは 1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。 アミ ノ酸の付加とは、 もとのペプチド鎖に 1つ以上、 例えば、 1〜1 0個、 好ましく は 1〜5個、 より好ましくは 1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。 ァミノ 酸の欠失とは、 もとのペプチドから 1つ以上、 例えば、 1〜1 0個、 好ましくは ;!〜 5個、 より好ましくは 1〜3個のアミノ酸を欠失させることをいう。 ァミノ 酸修飾は、 アミド化、 力ルポキシル化、 硫酸化、 ハロゲン化、 アルキル化、 ダリ コシル化、 リン酸化、 水酸化、 ァシルイヒ (例えば、 ァセチル化) などを含むが、 これらに限定されない。 置換、 または付加されるアミノ酸は、 天然のアミノ酸で- あってもよく、 非天然のアミノ酸、 またはアミノ酸アナログでもよい。 天然のァ ミノ酸が好ましい。
このような核酸は、 周知の P C R法により得ることができ、 化学的に合成する こともできる。 これらの方法に、 例えば、 部位特異的変位誘発法、 ハイブリダィ ゼーション法などを組み合わせてもよい。
本明細書において、 ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの 「置換、 付加また は欠失」 とは、 もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、 それぞれ アミノ酸もしくはその代替物、 またはヌクレオチドもしくはその代替物が、 置き 換わること、 付け加わることまたは取り除かれることをいう。 このような置換、 付加または欠失の技術は、 当該分野において周知であり、 そのような技術の例と
しては、 部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。 置換、 付加または欠失は、
1つ以上であれば任意の数でよく、 そのような数は、 その置換、 付加または欠失 を有する改変体において目的とする機能 (例えば、 癌マーカ一、 神経疾患マーカ 一など) が保持される限り、 多くすることができる。 例えば、 そのような数は、 1または数個であり得、 そして好ましくは、 全体の長さの 20%以内、 10%以 内、 または 100個以下、 50個以下、 25個以下などであり得る。
高分子構造 (例えば、 ポリペプチド構造) は種々のレベルの構成に関して記述 され得る。 この構成の一般的な議論については、 例えば、 A 1 b e r t sら、 M o 1 e c u 1 a r B i o l ogy o f t he Ce l l (第 3版、 199 4) 、 ならびに、 Can t o rおよび S c h imme 1、 B i ophy s i c a 1 Ch emi s t ry Pa r t I : T h e Con f o rma t i on o f B i o l o i c a l Ma c r omo l e c u l e s (1980) を参 照。 「一次構造」 とは、 特定のペプチドのアミノ酸配列をいう。 「二次構造」 と は、 ポリペプチド内の局所的に配置された三次元構造をいう。 これらの構造はド メインとして一般に公知である。 ドメインは、 ポリペプチドの緻密単位を形成し、 そして代表的には 50〜350アミノ酸長であるそのポリペプチドの部分である。 代表的なドメインは、 βシート (/3ストランドなど) およびひ一へリックスのス トレツチ (s t r e t ch) のような、 部分から作られる。 「三次構造」 とは、 ポリペプチドモノマーの完全な三次元構造をいう。 「四次構造」 とは、 独立した 三次単位の非共有的会合により形成される三次元構造をいう。 異方性に関する用 語は、 エネルギー分野において知られる用語と同様に使用される。
本発明において利用され得る一般的な分子生物学的手法としては、 Au s ub e l F. A. ら編 (1988) 、 Cu r r en t P r o t oc o l s i n Mo l e c u l a r B i o l ogy、 Wi l e y、 New Yo r k、 NY; S amb r ook Jら (1987) Mo l e cu l a r C l o n i n g : A Labo r a t o ry Manu a l, 2nd Ed。 , Co l
d Sp r i ng Ha r bo r Labo r a t o ry P r e s s, Co l d Sp r i ng H a r b o r , NYなどを参酌して当業者であれば容易に実 施をすることができる。
本明細書において遺伝子について言及する場合、 「ベクター」 とは、 目的のポ リヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるものをいう。 その ようなベクターとしては、 細菌宿主細胞において自律複製が可能である、 本発明 のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例 示される。
「発現べクタ一」 は、 構造遺伝子およびその発現を調節するプロモーターに加 えて種々の調節エレメントが宿主の細胞中で作動し得る状態で連結されている核 酸配列をいう。 調節エレメントは、 好ましくは、 ターミネータ一および、 選択マ 一力一を含み得る。 発現べクタ一のタイプおよび使用される調節エレメントの種 類が、 宿主細菌細胞に応じて変わり得ることは、 当業者に周知の事項である。
「組換えべクタ一」 とは、 目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入 させることができるベクタ一をいう。 そのようなベクターとしては、 原核宿主細 胞において自立複製が可能で、 本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置に プロモーターを含有しているものが例示される。
原核細胞に対する 「組換えベクター」 としては、 pBTr p 2、 pBTac l、 p BT a c 2 (いずれも Ro c he Mo l e cu l a r B i ochemi c a 1 sより TfJ販) 、 pKK233— 2 (Ph a rma c i a) 、 p S E 280 (I nv i t r ogen) , p GEMEX- 1 (P r ome ga) 、 pQE- 8 (Q I AG EN) 、 pKYP 10 (特開昭 58— 110600) 、 pKYP 20 0 (Ag r i c. B i o l. Ch em. , 48, 669 (1984) ) 、 pLS Al (Ag r i c. B i o l. Ch em. , 53, 277 (1989) ) 、 pG EL 1 (P r oc. Na t l. Ac ad. Sc i. USA, 82, 4306 (1 985) ) 、 pB l u e s c r i p t I I SK+ (S t r a t a g e n e) ,
pB l ue s c r i p t I I SK (―) (S t r a t agene) , pTr s 30 (FERM BP— 5407) 、 pT r s 32 (FERM BP— 540 8) 、 pGHA2 (FERM BP— 400) 、 pGKA2 (FERM B—6 798) 、 pTe rm2 (特開平 3— 22979、 US 4686191, US 4 939094、 US 5160735) 、 p EG400 [J. B a c t e r i o 1. , 172, 2392 (1990) ] 、 pGEX (Ph a rmac i a) , p ETシステム (Novage n) 、 pSup ex、 pUB 110、 pTP 5、 p C 194、 p T r x F u s (I nv i t r ogen) , pMAL- c 2 (New Eng l and B i o l a b s) 、 pUC 19 [Ge n e, 33, 103 (1985) ] , p STV28 (宝酒造) 、 pUC 118 (宝酒造) 、 pPAl
(特開昭 63— 233798) 、 P i np o i n t Xa (P r ome g a社 製) 、 PAN, PAC (a v i d i t y社製) などが例示される。
本明細書において用いられる 「プロモーター」 とは、 遺伝子の転写の開始部位 を決定し、 またその頻度を直接的に調節する DNA上の領域をいい、 RNAポリ メラーゼが結合して転写を始める塩基配列である。 推定プロモーター領域は、 構造遺伝子ごとに変動するが、 通常構造遺伝子の上流にあるが、 これらに限定 されず、 構造遺伝子の下流にもあり得る。
本明細書において使用される 「固相」 とは、 抗体のような分子が固定され得る 支持体をいう。 固相の形状は、 平面状、 球状、 またはその他の形状であってもよ い。 また、 本発明の固相は、 ゲル状であってもよい。 本発明において表面プラズ モン共鳴の原理を用いて検出する場合、 固相は、 金、 銀またはアルミニウムを含 む金属薄膜を片面に持つガラス基板の基材であることが好ましい。 本発明におい て水晶発振子マイクロバランスの原理を用いて検出する場合は、 周波数変換素子 (例えば水晶発振子、 表面弾性波素子) を固相として用い、 直接受容体を結合さ せる。 水晶板の片面はシリコーンで被覆し、 もう一方の面は金電極を施したもの を固相として用いる。
本明細書において使用される 「基板」 とは平面状の固相であって、 本発明のチ ップまたはアレイが構築される材料 (好ましくは固体) をいう。 したがって、 基 板は固相の概念に包含される。 基板の材料としては、 共有結合かまたは非共有結 合のいずれかで、 本発明において使用される生体分子に結合する特性を有するか またはそのような特性を有するように誘導体化され得る、 任意の固体材料が挙げ られる。
固相および基板として使用するためのそのような材料としては、 固体表面を形 成し得る任意の材料が使用され得るが、 例えば、 ガラス、 シリカ、 シリコーン、 セラミック、 二酸化珪素、 プラスチック、 金属 (合金も含まれる) 、 天然および 合成のポリマー (例えば、 ポリスチレン、 セルロース、 キトサン、 デキストラン、 およびナイロン) 以下が挙げられるがそれらに限定されない。 基板は、 複数の異 なる材料の層から形成されていてもよい。 例えば、 ガラス、 石英ガラス、 アルミ ナ、 サファイア、 フォルステライト、 炭化珪素、 酸化珪素、 窒化珪素などの無機 絶縁材料を使用できる。 また、 ポリエチレン、 エチレン、 ポリプロピレン、 ポリ イソプチレン、 ポリエチレンテレフ夕レート、 不飽和ポリエステル、 含フッ素樹 脂、 ポリ塩化ビエル、 ポリ塩化ビニリデン、 ポリ酢酸ビニル、 ポリビニルアルコ ール、 ポリビニルァセタール、 アクリル樹脂、 ポリアクリロニトリル、 ポリスチ レン、 ァセタール樹脂、 ポリカーボネート、 ポリアミド、 フエノール樹脂、 ユリ ァ樹脂、 エポキシ樹脂、 メラミン樹脂、 スチレン ·アクリロニトリル共重合体、 アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、 シリコーン樹脂、 ポリフエニレ ンオキサイド、 ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。 本発明におい てはまた、 ナイロン膜、 ニトロセルロース膜、 P V D F膜など、 ブロッテイング に使用される膜を用いることもできる。 高密度のものを解析する場合は、 ガラス など硬度のあるものを材料として使用することが好ましい。 基板として好ましい 材質は、 測定機器などの種々のパラメ一夕によって変動し、 当業者は、 上述のよ うな種々の材料から適切なものを適宜選択することができる。
本明細書において 「チップ」 または 「マイクロチップ」 は、 互換可能に用いら れ、 多様の機能をもち、 システムの一部となる超小型集積回路をいう。 本明細書 において、 ピオチン化受容体を固定化した固相を、 受容体チップおよび/または 受容体マイクロチップと呼ぶ。
本明細書において 「アレイ」 とは、 1以上 (例えば、 1 0 0 0以上) の受容体 が整列されて配置されたパターンまたはパターンを有する基板 (例えば、 チッ プ) そのものをいう。 アレイの中で、 小さな基板 (例えば、 1 0 X 1 0 mm上な ど) 上にパターン化されているものはマイクロアレイというが、 本明細書では、 マイクロアレイとアレイとは互換可能に使用される。 従って、 上述の基板より大 きなものにパターン化されたものでもマイクロアレイと呼ぶことがある。 例えば、 アレイはそれ自身固相表面または膜に固定されている所望の受容体のセッ卜で構 成される。 アレイは好ましくは同一のまたは異なる受容体を少なくとも 1 0 2個、 より好ましくは少なくとも 1 0 3個、 およびさらに好ましくは少なくとも 1 0 4 個、 さらにより好ましくは少なくとも 1 0 5個を含む。 これらの受容体は、 好ま しくは表面が 1 2 5 X 8 0 mm、 より好ましくは 1 0 X 1 0 mm上に配置される。 形式としては、 9 6ウェルマイク口夕イタ一プレート、 3 8 4ウェルマイクロタ イタ一プレートなどのマイクロ夕イタ一プレートの大きさのものから、 スライド グラス程度の大きさのものが企図される。 固定される受容体は、 1種類であって も複数種類であってもよい。 そのような種類の数は、 1個〜スポット数までの任 意の数であり得る。 例えば、 約 1 0種類、 約 1 0 0種類、 約 5 0 0種類、 約 1 0 0 0種類の受容体が固定され得る。
基板のような固相表面または膜には、 上述のように任意の数の生体分子 (例え ば、 受容体) が配置され得るが、 通常、 基板 1つあたり、 1 0 8個の生体分子ま で、 他の実施形態において 1 0 7個の生体分子まで、 1 0 6個の生体分子まで、 1 0 5個の生体分子まで、 1 0 4個の生体分子まで、 1 0 3個の生体分子まで、 ま たは 1 0 2個の生体分子までの個の生体分子が配置され得るが、 1 0 8個の生体
分子を超える生体分子が配置されていてもよい。 これらの場合において、 基板の 大きさはより小さいことが好ましい。 特に、 生体分子である受容体のスポットの 大きさは、 単一の生体分子のサイズと同じ小さくあり得る (これは、 1— 2 nm の桁であり得る) 。 最小限の基板の面積は、 いくつかの場合において基板上の生 体分子の数によって決定される。 本発明では、 細胞と特異的に結合する因子は、 通常、 0 . 0 l mm〜l 0 mmのスポット状に共有結合あるいは物理的相互作用 によって配列固定されている。
アレイ上には、 生体分子の 「スポット」 が配置され得る。 本明細書において
「スポット」 とは、 生体分子の一定の集合をいう。 本明細書において 「スポッテ イング」 とは、 ある生体分子のスポットをある基板または固相に作製することを いう。 スポッティングはどのような方法でも行うことができ、 例えば、 ピぺッテ イングなどによって達成され得、 あるいは自動装置で行うこともでき、 そのよう な方法は当該分野において周知である。 本明細書において、 生体分子は、 受容体、 受容体のフラグメント、 または受容体の改変体である。
本明細書において使用される用語 「アドレス」 とは、 基板上のユニークな位置 をいい、 他のユニークな位置から弁別可能であり得るものをいう。 アドレスは、 そのァドレスを伴うスポットとの関連づけに適切であり、 そしてすベての各々の ァドレスにおける存在物が他のアドレスにおける存在物から識別され得る (例え ば、 光学的) 、 任意の形状を採り得る。 アドレスを定める形は、 例えば、 円状、 楕円状、 正方形、 長方形であり得るか、 または不規則な形であり得る。 したがつ て、 「アドレス」 は、 抽象的な概念を示し、 「スポット」 は具体的な概念を示す ために使用され得るが、 両者を区別する必要がない場合、 本明細書においては、
「アドレス」 と 「スポット」 とは互換的に使用され得る。
各々のアドレスを定める大きさは、 とりわけ、 その基板の大きさ、 特定の基板 上のアドレスの数、 分析物の量および/または利用可能な試薬、 微粒子の大きさ およびそのアレイが使用される任意の方法のために必要な解像度の程度に依存す
る。 大きさは、 例えば、 1一 2 nmから数 cmの範囲であり得るが、 そのアレイ の適用に一致した任意の大きさが可能である。
アドレスを定める空間配置および形状は、 そのマイクロアレイが使用される特 定の適用に適合するように設計される。 アドレスは、 密に配置され得、 広汎に分 散され得るか、 または特定の型の分析物に適切な所望のパターンへとサブグルー プ化され得る。
マイクロアレイについては、 秀潤社編、 細胞工学別冊 「DNAマイクロアレイ と最新 PC R法」 、 M. F. Temp 1 i n, e t a 1. , P r o t e i n mi c r o a r r ay t e c hno l ogy, D r ug D i s c ove r y Tod ay, 7 (15) , 815— 822 (2002) に広く概説され ている。
マイクロアレイから得られるデータは膨大であることから、 クローンとスポッ トとの対応の管理、 データ解析などを行うためのデータ解析ソフトウェアが重要 である。 そのようなソフトウェアとしては、 各種検出システムに付属のソフトゥ エアが利用可能である (E rmo l ae v a 〇ら (1998) Na t. Ge n e t . 20 : 19— 23) 。 また、 データベースのフォ一マツトとしては、 例え ば、 A f f yme t r i xが提唱している GAT C (gene t i c an a l y s i s t e c h n o l ogy c on s o r t i um) と呼ばれる形式が挙 げられる。
微細加工については 、 例えば、 Camp b e 1 1 , S. A . (1996) . T h e S c i e nc e and E n g i n e e r i n g o f M i c r o e
1 e c t r o n i c F a b r i c a t i o n , O x f o r d Un i v e r s i t y P r e s s ; Z a u t , P. V. (1 9 9 6) . M i c r om i c r o a r r ay F a b r i c a t i o n : a P r a c t i c a 1 Gu i de t o S emi c on d u c t o r P r o c e s s i ng , S emi c o n d u c t o r S e r v i c e s ; M a d o u, M J. (1 997) . Fund
amen t a l s o f Mi c r o f ab r i c a t i on, CRC1 5 P r e s s ; Ra i -Choudhu r y, P. (1997) . Handboo k o f Mi c r o l i t og r ap y, Mi c r omac i n i ng, & Mi c r o f ab r i c a t i o n : M i c r o 1 i t hog r aphy ¾ どに記載されており、 これらは本明細書において関連する部分が参考として援用 される。
マイクロアレイの作製には、 マイクロコンタクトプリンティング法、 光リソグ ラフィ一法などの種々の方法を用いることが可能であるが、 望ましくは、 アル力 ンチオール単分子膜のマイク口パターン化表面を利用する方法である。 この場合、 まず、 片面に金薄膜を蒸着したガラス基板に、 メチル基、 フルォロメチル基のよ うな疎水性官能基をもつアルカンチオールの単分子膜を形成させる。 この単分子 膜に、 直径数^ mから 1mm程度の多数の光透過性スポットを配列させたフォ卜 マスクを重ね、 紫外線を照射する。 これによつて、 照射部のアルカンチオールを スポット状に分解除去することができる。 スポット内に導入された反応性官能基 を使ってストレプトアビジン、 アビジンなどのピオチンと特異的に結合するタン パク質を固定化するか、 またはタグと特異的に結合する因子を固定化する。 最後 に受容体タンパク質のピオチン化部位またはタグ部分を介して受容体タンパク質 を固定化することにより、 化学的処理を経ずに穏やかな条件下で方向性を保った 状態での、 受容体タンパク質の固定化が完了する。 例えば、 力ルポキシル基含有 スポットの場合には、 カルボキシル基を N—ヒドロキシスクシンイミドを用いて 活性エステルに変換し、 アビジンやストレプトアビジンなどを固定化させた後、 微量の生体分子含有溶液を各スポットに滴下することで、 固定化を行うことがで きる。 スポット周囲に形成させた疎水性の単分子膜は、 溶液の拡散を抑えるため に有効である。 スポット周囲のバックグラウンド領域と分析物との非特異的な相 互作用を抑えるため、 ゥシ血清アルブミンのような不活性タンパク質、 ポリェチ レンダリコールのような親水性高分子でプロッキングを行う。
D N Aマイクロアレイ、 プロテインチップなどを使つた分析技術の進歩を見て も明らかなように、 マイクロアレイは、 一枚の基板上で多数の検体に対してハイ スループット分析が可能であるため、 きわめて有効な分析手段である。 本発明は 、 このようなマイクロアレイの考え方を、 多種類の生体分子一細胞間相互作用を 迅速に計測するために応用する。 この場合、 きわめて多くの検体を同時に分析し たり、 分析に必要な生体分子および細胞の量をできる限り少なくするためには、 マイクロアレイの集積化が重要である。 しかし一方で、 マイクロアレイ上の細胞 に関する情報を取得する場合、 ある程度以上の細胞数からなる集団を対象とした 測定を行わない限り、 誤差の大きいデータしか得ることができない。 このような 観点から、 マイクロアレイを構成する各スポットの大きさは、 少なくとも数十〜 数千個程度の細胞が相互作用することのできる大きさであることが望ましく、 例 えば、 円形のスポットの場合、 その直径はおおよそ数 mから l mm程度である マイクロアレイの作製には、 マイクロコンタクトプリンティング法、 光リソグ ラフィ一法などの種々の方法を用いることが可能であるが、 望ましくは、 アル力 ンチオール単分子膜のマイクロパターン化表面を利用する方法である。
本明細書において使用される用語 「生体分子」 とは、 生体に関連する分子をい う。 本明細書において 「生体」 とは、 生物学的な有機体をいい、 動物、 植物、 菌 類、 ウィルスなどを含むがそれらに限定されない。 生体分子は、 生体から抽出さ れる分子を包含するが、 それに限定されず、 生体に影響を与え得る分子であれば 生体分子の定義に入る。 そのような生体分子には、 タンパク質、 ポリペプチド、 オリゴペプチド、 ペプチド、 ポリヌクレオチド、 オリゴヌクレオチド、 ヌクレオ チド、 核酸 (例えば、 c D NA、 ゲノム D NAのような D NA、 mR NAのよう な R NAを含む) 、 ポリサッカリド、 オリゴサッカリド、 脂質、 低分子 (例えば、 ホルモン、 リガンド、 情報伝達物質、 有機低分子、 コンビナトリアルライブラリ 化合物など) 、 これらの複合分子などが包含されるがそれらに限定されない。 本
明細書において好ましい生体分子は、 受容体および受容体フラグメント、 ならび にそれらのリガンドである。
本明細書において使用される場合、 「ピオチンと特異的に結合する因子」 とは、 ピオチンと特異的に結合し得る任意の因子をいう。 ピオチンと特異的に結合する 因子とピオチンとの結合は、 可逆的であっても、 不可逆的であってもよい。 ピオ チンと特異的に結合する因子としては、 アビジン、 およびストレプトアビジン、 ならびにこれらの改変体が挙げられるが、 これらに限定されない。
本明細書において使用される場合、 「タグと特異的に結合する因子」 とは、 タ グと特異的に結合し得る任意の因子をいう。 タグと特異的に結合する因子とタグ との結合は、 可逆的であっても、 不可逆的であってもよい。 タグと特異的に結合 する因子は、 タグの種類に応じて異なり、 当該分野において周知である。 例えば、 ダルタチオン S - トランスフェラ一ゼをタグとする場合、 タグと特異的に結合す る因子は、 例えば、 ダルタチオンである; my cタンパク質をタグとする場合、 タグと特異的に結合する因子は、 例えば、 抗 m y c抗体である; 6残基の連続す るヒスチジン残基をタグとする場合、 タグと特異的に結合する因子は、 例えば、 ニッケルキレートカラムである;配列番号 1 1のような、 セルロース結合ドメィ ンタグを用いる場合、 タグと特異的に結合する因子は、 例えば、 セルロースであ る;配列番号 1 2のような、 カルモジュリン結合ペプチドタグを用いる場合、 夕 グと特異的に結合する因子は、 例えば、 カルモジュリンである;配列番号 1 3の ような、 Sタンパク質結合ペプチドタグを用いる場合、 タグと特異的に結合する 因子は、 例えば、 Sタンパク質である;配列番号 1 4のような、 T 7タグを用い る場合、 タグと特異的に結合する因子は、 例えば、 抗 T 7抗体である。
表面プラズモン共鳴 (S P R) は、 金属表面に生じた表面プラズモン (弾性 波) と、 全反射した電磁波によって発生するエバネッセント波 (光波) との間で 起こる相互作用である。 プラズモン波とエバネッセン卜波の波数と波動べクトル が近似的に一致する条件を与える光の入射角 Θにおいて共鳴が起こり、 エバネッ
セント波が表面プラズモンの励起に使われるため反射光強度が低下する。 表面プ ラズモン共鳴を得るためには、 高屈折率媒体からなるプリズムを配置し (K r e t s c h m a n n配置) 、 レーザー光および L E D光を入射する方法がとられる。 ここで、 プリズムとは反対側の金属表面に接触する媒体の誘電率の変化によって、 プラズモン波の波数が変化する。 すなわち、 金属表面上に物質が接近することに よって、 表面プラズモン共鳴を与える光の入射角がシフトする。 このことを利用 して、 金属表面の物質による被覆をセンシングすることが可能となる。 この測定 法は、 表面鉛直方向の分解能に優れており (0 . l n mのオーダー) 、 表面に存 在する物質量を n g〜p c m2のオーダーでリアルタイムに観測することが 可能である。 また、 水媒体中で測定できることもタンパク質のような生体分子の 挙動を調べる上で大きな利点である。 これを利用した測定装置が生体分子間相互 作用測定装置として開発され、 タンパク質および D NAなどの相互作用の分析に 応用されている。
水晶発振子マイクロバランスは、 周波数変換素子の電極上に化学的に結合対の 一方を結合 ·固定化し、 その周波数変換素子を水中に浸漬し、 その結合対と対応 する結合対との特異的に結合により生じる質量変化に伴う周波数変換素子の周波 数変化を測定して、 結合の有無を検出するものである (例えば、 特開平 6— 9 4 5 9 1 ) 。 この周波数変換素子としては、 例えば水晶発振子、 表面弾性波素子 ( S AW) などが挙げられる。
本発明の受容体チップはまた、 質量分析計のための質量分析チップとしても使 用され得る。 一般的に、 質量分光測定による分析は、 レーザービームを含む、 レ 一ザ一などの高エネルギー源を用いた少量のサンプルの気化およびイオン化を伴 つている。 物質はレーザービームによって、 質量分析チップ先端の表面からガス あるいは気相に気化され、 このプロセス中に、 個々の分子の一部は陽子を取り込 んで、 イオン化される。 これら正の電荷にイオン化された分子は、 次に、 短い高 圧電界で加速され、 高真空度チェンパーに導かれ (ドリフト) 、 その先で、 感度
の高い検出装置の表面に衝突する。 飛行時間はイオン化された分子の質量の関数 であるから、 イオン化と衝突との間に経過する時間は、 その分子の質量の判定に 用いることができ、 その分子質量は、 次に特定の質量の既知の分子が存在してい るかどうかの判定に用いることができる (飛行時間質量分光測定 (TOF) ) 。 また、 イオン化されたサンプルに含まれる特定の質量 Z電荷数 (mZZ) のィォ ンだけが安定な振動状態になることを利用して、 直流成分と高周波の交流成分の 電圧を加えることにより、 特定の質量 Z電荷数 (m/Z) を有するイオンのみを 通過させる質量フィルターを用いて (必要であれば、 フラグメントイオンを生成 させて) 、 サンプル (またはサンプルのフラグメントイオン) の質量 電荷数 (m/Z) を検出することもできる (タンデム質量分析法) 。
気相イオンの生成方法としては、 粒子のサンプルへの衝撃から得られる脱着/ イオン化法などがある。 この方法には、 高速原子衝撃法 (FAB—揮発性マトリ クスに懸濁したサンプルに中性粒子 (neu t r a l) を衝撃する) 、 二次ィォ ン質量分析法 (S IMS— keV—次イオンが表面に衝撃して二次イオンを発生 する) 、 液体 S IMS (LS IMS一一次種がイオンであることを除いて F AB と同様) 、 プラズマ脱着質量分析法 (Me V—次イオンを用いることを除いて S IMSと同様) 、 大量クラスタ衝撃法 (MC I—大きいクラス夕の一次イオンを 用いて S IMSと同様) 、 レーザ脱着 Zイオン化法 (LD I—レーザ光を用いて、 表面から種を脱着 Zイオン化する) 、 マトリクス補助型レーザ脱着 Zイオン化法 (MALD I—脱着およびイオン化の事象を補助することができるマトリクスか ら種を脱着 Zイオン化することを除いて LD Iと同様) などがある。 代表的な質 量分析法としては、 レーザ一脱着/イオン化、 飛行時間質量分光測定 (TOF) を用いる方法が挙げられる。
質量分析計において、 受容体のような親和性結合を行う分子を結合した質量分 析チップを用いる測定方法は、 例えば以下のように、 特表平 9一 501489に 開示される:
受容体を固定化した質量分析チップ面を、 前記分析対象物分子 (例えば、 リガン ドを含む混合物) の源にさらし、 前記分析対象物分子が結合するようにするステ ップと;前記分析対象物分子が結合している質量分析チップ先端を、 飛行時間質 量分光測定器の一方の端に置き、 真空および電場を与えて分光測定器内に加速電 位を作るステップと;前記先端より前記分析対象物分子のイオンを脱着させるた めに、 分光測定器内の、 誘導された質量分析チップ先端面に結合している分析対 象物の少なくとも一部分を、 1つあるいはそれ以上のレーザーパルスを用いて、 打つステップと;前記質量分光測定器内で、 飛行時間によってイオンの質量を検 出するステップと; このように検出された質量を表示するステップとから成る、 方法。 この方法において、 質量分析チップに結合した分子 (例えば、 受容体に特 異的に結合するリガンド) のイオンの質量を検出することができる。
上記の方法において、 レーザー脱着ノイオン化、 飛行時間質量分光測定法によ り、 分析対象物分子の質量を測定することが可能であり、 この方法においては、 分析対象物の脱着およびイオン化を容易にするために、 前記分析対象物と一緒に エネルギー吸収物質 (例えば、 シナピン酸、 シンナムアミド、 シンナミル臭化物、 2 , 5—ジヒドロキシ安息香酸、 および α—シァノー 4—ヒドロキシケィ皮酸) を用いることができる。
質量分析計において、 受容体のような親和性結合を行う分子を固定化した質量 分析チップを用いるさらなる測定方法は、 特表平 1 1— 5 1 2 5 1 8に開示され る。 この開示される方法においては、 一般にヒドロゲル、 およびさらに詳細には、 カルポキシメチル化デキストランなどの多糖のヒドロゲルを有する支持体表面に 受容体のような親和性結合分子をチップに固定化し、 その分析物 (例えば、 リガ ンド) をその支持体と接触させた後、 親和性結合分子に結合した分析物の有無お よびその質量等について解析する。
本明細書において使用する受容体としては、 レクチン様酸化 L D L受容体 (L Ο Χ - 1 ) を含むスカベンジャー受容体、 インスリン受容体ファミリ一に属する
受容体、 EGF受容体ファミリーに属する受容体、 PDGF受容伴ファミリーに属する 受容体、 VEGF受容体ファミリーに属する受容体、 FGF受容体ファミリーに属する 受容体、 NGF受容体ファミリーなどの増殖因子受容体、 ならびに、 TGF- スーパ —ファミリー受容体、 ToU- like 受容体ファミリーの受容体、 LDL受容体関連夕 ンパク質ファミリ一の受容体、 および G夕ンパク質共役型受容体ファミリ一の受 容体が挙げられるが、 これらに限定されない。 好ましい受容体は、 LDL受容体関 連タンパク質ファミリ一の受容体に属する L〇X— 1である。
本明細書において、 「LOX— 1」 とは、 レクチン様酸化 LDL受容体— 1の 略称をさし、 ス力べンジャ一受容体の一種である L D L受容体関連タンパク質フ ァミリ一の受容体を指す。 LOX— 1は、 非常に誘導のかかりやすい遺伝子であ り、 動脈硬化を促進するような高血圧、 高脂血症、 糖尿病などの条件下で発現が 誘導される。 また、 酸化 LDLが LOX— 1を介して血管内皮細胞に働くと、 活 性酸素の産生や、 それに伴う NO放出の低下が引き起こされる。 また細胞接着分 子ゃケモカインの発現も誘導され、 いわゆる内皮機能不全の状態が引き起こされ るといわれている。 ヒト LOX— 1 (hLOX- 1) の細胞外領域の塩基配列お よびアミノ酸配列を配列表の配列番号 1および 2に、 hLOX— 1の CTLDの 塩基配列およびアミノ酸配列を配列表の配列番号 3および 4に、 それぞれ示す。 本明細書において、 「LDL」 とは、 低密度リポタンパク質をいい、 動脈硬化 の促進因子である血清タンパク質の一種をいう。 血清中に約 300mg/dl含まれ、 コレステロールを約 50%含み、 アポ Bとよばれるタンパク質を 20%含む。
本明細書において、 封入体として発現された受容体タンパク質のリフォールデ イングは、 アルギニン、 還元型ダル夕チオン、 酸化型ダル夕チオンを含有するリ フォールデイング緩衝液中に、 変性したタンパク質を滴下することによって、 行 われる。 好ましくは、 変性タンパク質およびリフオールデイング緩衝液のいずれ もが、 界面活性剤を含有しない。
本明細書においてタンパク質に関して使用する場合、 用語 「変性」 とは、 タン
パク質の一次構造は変化せずに、 高次構造のみが破壌され、 天然での状態と物性 が変化することをいう。
本明細書において使用する場合、 用語 「変性剤」 とは、 タンパク質の変性を起 こす薬剤をいう。 変性剤としては、 グァニジン塩酸塩、 尿素、 ジォキサン、 アル コール、 エチレングリコールなどが挙げられるが、 これらに限定されない。 グァ 二ジン塩酸塩を用いる濃度は、 好ましくは、 4〜8 M、 より好ましくは、 6 Mで ある。
本明細書において使用する場合、 用語 「リフォールデイング」 とは、 変性した タンパク質から、 もとの立体構造、 生物活性などを回復したタンパク質を得るこ とをいう。 受容体タンパク質のリガンド結合フラグメントの場合、 その生物活性 とは、 例えば、 リガンド結合活性である。
本明細書において使用する場合、 用語 「封入体」 とは、 大腸菌のような細菌に おいて外来遺伝子を大量に組換え発現する場合に生成される、 タンパク質が不溶 性物質として細胞内に蓄積した構造体をいう。
本明細書において使用する場合、 封入体の 「可溶化」 とは、 変性剤を用いて、 不溶性の封入体を変性して、 水溶液に溶解した形態を生じさせることをいう。 本明細書において使用する場合、 用語 「S H保護試薬」 とは、 タンパク質内の チオール基 (S H基) が、 S H基と反応性の物質と反応することを妨げる試薬を いう。 S H保護試薬としては、 ジチオトレイ ] ル、 3—メルカプトエタノール、 ダルタチオンが挙げられるが、 これらに限定されない。
本明細書において、 封入体として発現された受容体タンパク質のリフォ一ルデ イングを、 アルギニン、 還元型ダル夕チオン、 酸化型ダル夕チオンを含有するリ フォールディング緩衝液中に、 変性したタンパク質を滴下することによって行う 場合、 好ましくは、 この滴下速度は、 1 0〜3 0 1 分の速度であり、 より 好ましくは、 2 0〜 3 0 1 /分の速度である。 リフォールディング緩衝液の ρ Ηは、 好ましくは、 7 . 5〜9 . 5の範囲であり、 より好ましくは、 8。 0〜8。
5の範囲であるが、 リフォールデイングするタンパク質の性質に応じて、 適切な pHを変化させることは、 当該分野において周知である。 1つの実施形態におい て、 このリフォールデイング緩衝液は、 Tr i s— HC 1を含有し、 好ましくは、 この Tr i s -HC 1の濃度は 5〜10 OmMである。
リフォールデイング緩衝液中に含まれるアルギニンの濃度は、 好ましくは 10
0mM〜60 OmMであり、 より好ましくは、 300 mM〜 400 mMである。 本発明のリフォールデイング方法において、 好ましくは、 還元型ダルタチオン と酸化型グルタチオンとの比は、 1 : 5〜1 : 12、 より好ましくは、 1 : 5〜 1 : 10、 最も好ましくは、 1 : 5である。 さらに好ましくは、 還元型ダルタチ オンの濃度は 1〜2 OmMであり、 酸化型ダル夕チオンの濃度は 0. 2〜2mM である。
本発明のリフォールディング方法において、 滴下する変性タンパク質溶液とリ フォールデイング緩衝液との容量の比は、 好ましくは、 1 : 50〜1 : 100で ある。 また、 好ましくは、 滴下する変性タンパク質溶液の滴下後のリフォールデ イング緩衝液中でのタンパク質濃度は、 5〜500 g/mLであり、 より好ま しくは、 5〜250 gZmLであり、 なお好ましくは、 20〜250 gZm Lである。
本発明のリフォールデイング方法に用いられる変性タンパク質は、 変性剤、 熱 、 または紫外線照射、 放射線照射のいずれかによつて変性されたタンパク質であ るが、 好ましくは、 変性剤によって変性されたタンパク質である。
本発明のリフォールディング方法に用いられる変性タンパク質は、 好ましくは 、 細菌で発現した封入体タンパク質を、 SH保護試薬および変性剤を含有する可 溶化緩衝液を用いて可溶化することによって得られる変性タンパク質である。 好 ましくは、 変性タンパク質を得るための可溶化は、 l〜5mgZmLの濃度の夕 ンパク質を用いて行われる。 より好ましくは、 変性タンパク質を得るための可溶 化は、 2. 0〜3. Omg/mLの濃度のタンパク質を用いて行われる。 また、 -
好ましくは、 可溶化緩衝液の pHは 7. 0〜9. 0であり、 1つの局面において 、 可溶化緩衝液は、 5〜 10 OmMの T r i s -HC 1緩衝液である。
本発明において、 好ましくは、 SH保護試薬はジチオトレイトールであり、 さ らに好ましくは、 ジチオトレイトールの濃度は 5〜20 OmMであり、 なおより 好ましくは、 ジチオトレイトールの濃度は 50〜10 OmMである。
本発明のリフォ一ルディング方法においては、 好ましくは、 変性タンパク質溶 液をリフォールディング緩衝液に滴下した後に、 溶液を攪拌する工程が行われる 。 より好ましくは、 この攪拌工程は、 10〜48時間行われ、 なおより好ましく は、 この攪拌工程は、 10〜14時間行われる。 この攪拌は、 4°C〜室温で行う ことができるが、 好ましくは、 4 °Cで行われる。
本発明のリフォールディング方法を用いることによって、 従来のリフォールデ ィング方法を用いて調製された夕ンパク質よりも高純度かつ均質な夕ンパク質を 得ることができる。 例えば、 本発明のリフォールデイング方法を用いることによ つて、 90%以上、 91%以上、 92%以上、 93%以上、 94%以上、 95% 以上、 96 %以上、 97%以上、 98%以上、 99 %以上の純度のタンパク質が 得られる。 また、 本発明のリフォールデイング方法を用いることによって得られ たタンパク質を質量分析法によって分析した場合、 MSスぺクトルによる mZz の幅が、 70以下、 60以下、 50以下、 40以下、 30以下、 20以下の純度 のタンパク質を得ることができる。
また、 本発明のリフォールディング方法を用いることによって得られたタンパ ク質を用いて、 4. 0オングストロームの分解能を与える X線回折像を与える単 結晶、 3. 5オングストロームの分解能を与える X線回折像を与える単結晶、 3 . 2オングストロームの分解能を与える X線回折像を与える単結晶、 3。 0オン ダストロームの分解能を与える X線回折像を与える単結晶、 2. 8オングスト口 ームの分解能を与える X線回折像を与える単結晶、 2. 5オングストロームの分 解能を与える X線回折像を与える単結晶、 が得られる。
本明細書において 「予防」 (p r o p h y l a x i sまたは p r e v e n t i o n) とは、 ある疾患または障害について、 そのような状態が引き起こされる前 に、 そのような状態が起こらないように処置することをいう。
本明細書において 「治療」 とは、 ある疾患または障害について、 そのような状 態になった場合に、 そのような疾患または障害の悪化を防止、 好ましくは、 現状 維持、 より好ましくは、 軽減、 さらに好ましくは消長させることをいう。
本明細書において使用する場合、 「ワクチン」 とは、 疾患に対する免疫学的予 防を提供する薬剤をいう。 そのような免疫学的予防は、 体液性免疫であっても、 細胞性免疫であってもよい。 ワクチン組成物は、 例えば、 疾患に関連した免疫応 答を惹起する抗原を含み得る。 ワクチン組成物に含まれる抗原としては、 タンパ ク質、 ペプチド、 核酸、 ヌクレオチド、 ヌクレオシド、 アミノ酸、 糖類などが挙 げられるが、 これらに限定されない。 本発明において、 ワクチンに含まれる好ま しい抗原は、 タンパク質抗原であり、 より好ましくは、 本発明の方法によってリ フォールディングされたタンパク質である。
本発明のワクチンにおいて治療され得る疾患としては、 動脈硬化、 癌、 および 感染症が挙げられるが、 これらに限定されない。 本明細書において使用される場合、 「キット」 とは、 複数の容器、 および製造 業者の指示書を含み、 そして各々の容器が、 本発明の薬学的組成物、 その他の薬 剤、 およびキャリアを含む製品をいう。
本明細書において使用される場合、 「被検体」 とは、 本発明の薬学的組成物が 投与される対象であり、 ヒト、 マウス、 ゥシ、 ニヮトリなどの動物が挙げられる が、 これらに限定されない。
本明細書において 「薬学的に受容可能なキャリア」 は、 医薬または動物薬のよ うな農薬を製造するときに使用される物質であり、 有効成分に有害な影響を与え ないものをいう。 そのような薬学的に受容可能なキャリアとしては、 例えば、 以
下が挙げられるがそれらに限定されない:抗酸化剤、 保存剤、 着色料、 風味料、 および希釈剤、 乳化剤、 懸濁化剤、 溶媒、 フィラー、 増量剤、 緩衝剤、 送達ビヒ クル、 賦形剤および/または薬学的アジュパント。
本発明の処置方法において使用される薬剤の種類および量は、 本発明の方法に よって得られた情報 (例えば、 疾患に関する情報) を元に、 使用目的、 対象疾患 (種類、 重篤度など) 、 患者の年齢、 体重、 性別、 既往歴、 投与される被検体の 部位の形態または種類などを考慮して、 当業者が容易に決定することができる。 本発明のモニタリング方法を被検体 (または患者) に対して施す頻度もまた、 使 用目的、 対象疾患 (種類、 重篤度など) 、 患者の年齢、 体重、 性別、 既往歴、 お よび治療経過などを考慮して、 当業者が容易に決定することができる。 疾患状態 をモニタリングする頻度としては、 例えば、 毎日—数ケ月に 1回 (例えば、 1週 間に 1回— 1ヶ月に 1回) のモニタリングが挙げられる。 1週間— 1ヶ月に 1回 のモニタリングを、 経過を見ながら施すことが好ましい。
必要に応じて、 本発明の治療では、 2種類以上の薬剤が使用され得る。 2種類 以上の薬剤を使用する場合、 類似の性質または由来の物質を使用してもよく、 異 なる性質または由来の薬剤を使用してもよい。 このような 2種類以上の薬剤を投 与する方法のための疾患レベルに関する情報も、 本発明の方法によって入手する ことができる。 本明細書において 「候補化合物」 とは、 目的とする疾患または障害を処置する ために使用され得る化合物の候補をいう。 したがって、 ある化合物は、 目的とす る疾患または障害について効果があると予測される場合は、 候補化合物と呼ばれ 得る。
本明細書において 「化合物種」 とは、 ある化合物の集合において、 特定の目的 とする活性を有するなど、 所望の性質を有する 1種の化合物についていう。 例え ば、 L O X— 1の活性を調節する化合物の集合において、 L O X— 1の活性を調
節する化合物が特定される場合、 そのような化合物は、 化合物種と称され得る。 本明細書では、 単に化合物とも称される。
本明細書において 「ライブラリー」 とは、 スクリーニングをするための化合物 などの一定の集合をいう。 ライブラリ一は、 同様の性質を有する化合物の集合で あっても、 ランダムな化合物の集合であってもよい。 好ましくは、 同様の性質を 有すると予測される化合物の集合が使用されるが、 それに限定されない。
(薬学的組成物)
本発明のリフォールデイングされたタンパク質は、 動脈硬化の処置、 予防、 診 断または予後のための薬学的組成物の成分としても使用することが可能である。 本明細書において薬剤の 「有効量」 とは、 その薬剤が目的とする薬効が発揮す ることができる量をいう。 本明細書において、 そのような有効量のうち、 最小の 濃度を最小有効量ということがある。 そのような最小有効量は、 当該分野におい て周知であり、 通常、 薬剤の最小有効量は当業者によって決定されているか、 ま たは当業者は適宜決定することができる。 そのような有効量の決定には、 実際の 投与のほか、 動物モデルなどを用いることも可能である。 本発明はまた、 このよ うな有効量を決定する際に有用である。
本明細書において 「薬学的に受容可能なキャリア」 は、 医薬または動物薬のよ うな農薬を製造するときに使用される物質であり、 有効成分に有害な影響を与え ないものをいう。 そのような薬学的に受容可能なキャリアとしては、 例えば、 以 下が挙げられるがそれらに限定されない:抗酸化剤、 保存剤、 着色料、 風味料、 および希釈剤、 乳化剤、 懸濁化剤、 溶媒、 フィラー、 増量剤、 緩衝剤、 送達ビヒ クル、 賦形剤および/または農学的もしくは薬学的アジュパント。
本発明の処置方法において使用される薬剤の種類および量は、 本発明の方法に よって得られた情報 (例えば、 疾患に関する情報) を元に、 使用目的、 対象疾患 (種類、 重篤度など) 、 患者の年齢、 体重、 性別、 既往歴、 投与される被検体の
部位の形態または種類などを考慮して、 当業者が容易に決定することができる。 本発明のモニタリング方法を被検体 (または患者) に対して施す頻度もまた、 使 用目的、 対象疾患 (種類、 重篤度など) 、 患者の年齢、 体重、 性別、 既往歴、 お よび治療経過などを考慮して、 当業者が容易に決定することができる。 疾患状態 をモニタリングする頻度としては、 例えば、 毎日一数ケ月に 1回 (例えば、 1週 間に 1回一 1ヶ月に 1回) のモニタリングが挙げられる。 1週間ー1ヶ月に 1回 のモニタリングを、 経過を見ながら施すことが好ましい。
本明細書において 「指示書」 は、 本発明の治療方法などを医師、 患者など投与 を行う人に対して記載したものである。 この指示書は、 本発明の医薬などを例え ば、 放射線治療直後または直前 (例えば、 2 4時間以内など) に投与することを 指示する文言が記載されている。 この指示書は、 本発明が実施される国の監督官 庁 (例えば、 日本であれば厚生労働省、 米国であれば食品医薬品局 (F DA) な ど) が規定した様式に従って作成され、 その監督官庁により承認を受けた旨が明 記される。 指示書は、 いわゆる添付文書 (p a c k a g e i n s e r t ) であ り、 通常は紙媒体で提供されるが、 それに限定されず、 例えば、 電子媒体 (例え ば、 インターネットで提供されるホームページ、 電子メール) のような形態でも 提供され得る。
必要に応じて、 本発明の治療では、 2種類以上の薬剤が使用され得る。 2種類 以上の薬剤を使用する場合、 類似の性質または由来の物質を使用してもよく、 異 なる性質または由来の薬剤を使用してもよい。 このような 2種類以上の薬剤を投 与する方法のための疾患レベルに関する情報も、 本発明の方法によって入手する ことができる。 以下に実施例等により本発明を詳しく説明するが、 本発明はこれらに限定され るものではない。
実施例
(実施例 1 )
(ヒスチジンタグ化 LOX— 1 CTLDタンパク質封入体の発現、 可溶化、 およびリフォ一ルディング)
(1) LOX- 1 CTLDタンパク質を発現した大腸菌の培養
以下の配列を有するヒト LOX— 1 CTLD (143-273) を Nov a g e n社製ヒスチジンタグ融合タンパク質発現べクタ一 pET 28 aのマルチク ローニングサイト (Nd e l—Xh o l) に組み込んだものを大腸菌 B L 2 1 (DE3) に導入し大量発現を行なった:
PCPQDWI WHGENCYLFS SGSFNWEKSQEKCLSLDAK LLK I NSTADLDF I QQA I S YS S F P FWMGL S RRNP SYP WLWEDGSPLMPHLFRVRGAVSQTYP SGTCAY I QRGA VYAENC I LAAF S I CQKKANLRAQ (配列番号 4) 。
LOX— 1発現ベクターで形質転換を行った大腸菌は 50 ^ gZm 1のカナマ イシンを含む M 9最小培地 8 Lにて 37 °Cで培養を行い、 660 nmの OD値が 0. 5になったところで I PTGを終濃度 ImMになるように加えてさらに 3 7°Cで 4時間培養を続け、 3, 50 OXgで 30分間遠心を行なって菌体を回収 した。
(2) LOX- 1 CTLDタンパク質の不溶性封入体の回収
回収した菌体を、 菌体 1 gあたり 5 m 1の溶解緩衝液 ( 50 mM T r i s/ HC 1 (pH8. 0) , 400 mM KC 1 , 0. 1 %T r i t o nX- 1 0 0) で懸濁し、 Comp 1 e t eM i n iプロテア一ゼインヒビター (ロシュ社 製、 菌体 l gあたり 0. 5夕ブレット使用) を加えて、 4°Cにてァストラソン社 製超音波破砕機を用いて菌体を破碎し、 遠心 (1 0, 0 0 0 X g, 30分, °C) にてペレットを回収した。 得られたペレットを溶解緩衝液で再懸濁、 超音
波処理、 遠心操作を 2回繰り返してよく洗浄し、 不溶性封入体として回収し、 次 の可溶化操作を行なうまで一 80 °Cで保存した。
(3) LOX- 1 CTLDタンパク質の可溶化、 リフォールデイング操作 不溶性封入体を、 30mg (LOX- 1 CTLDタンパク質量として) を 1 Om 1の可溶化緩衝液 (10 OmM Tr i s/HC l (pH8. 0) 、 6M グァニジン塩酸塩、 5mM DTT) に懸濁し (タンパク質終濃度 3m g/m 1) 、 遠心して沈殿を除去し、 室温にて 4時間静置した。
その後、 DTTを終濃度 50mMになるよう加え、 1Lのリフォールディン グ緩衝液 (1 OmM T r i s/HC 1 (pH8. 5) 、 40 OmM アルギニ ン、 5mM 還元型ダルタチオン、 0. 5mM 酸化型ダルタチオン) に攪拌し ながら F PLC送液ポンプを使用して 20— 3 O lZmi nの速度で 4°Cでゆ つくり滴下した。 滴下終了後、 終濃度 0. ImMになるよう PMSFを加え、 さ らに 4 で 12時間攪拌し、 タンパク質のリフォールデイングを行なった。
(4) リフォールデイングした L〇X— 1 CTLDタンパク質の回収、 精製 リフォールデイングしたタンパク質溶液 1 Lについて、 0. 45 mメンブ レンフィルターで沈殿を除き、 10Lの透析緩衝液 (25mM Tr i s/HC 1 (pH7. 5) , 5 OmM NaC 1) に 4°Cで 24時間透析し、 緩衝液を交 換してさらに 24 時間透析し、 変性剤、 アルギニン、 ダルタチオンを除去した。 透析した溶液は 0. 45 メンブレンフィル夕一で沈殿を除き、 N i—キレー ティングセファロースカラム (フアルマシア社製) に通し、 タンパク質をカラム に吸着させた。 その後カラム平衡化緩衝液 (50 mM T r i s/HC 1 (pH 7. 5) , 10 OmM NaC 1 , 10 mMイミダゾール) でカラムを洗浄し、 イミダゾ一ル濃度を 50 OmMまで直線的勾配で上昇させてタンパク質を溶出さ せた。 溶出させたタンパク質溶液はセントリコンー 10 (ミリポア社製) で 2m 1まで濃縮し、 lmgタンパク質あたり 10切断単位の牛スロンビンプロテア一 ゼを加えて 4°Cで 5時間反応させてヒスチジンタグを切断し、 その後ベンザミジ
ンセファロ一スカラム (フアルマシア社製) に通してスロンピンを除去し、 終濃 度 0. ImM になるよう PMSFを加えてプロテアーゼ反応を停止させた。 夕 ンパク質溶液は次にゲル濾過カラム平衡化緩衝液 (1 OmM Tr i s/HC 1 (pH7. 5) , NaC 1 50 mM) で平衡化した S u p e r d e x 75ゲル 濾過カラム (フアルマシア社製) に供し、 正しい分子量のフラクションを分取し た。
(実施例 2)
(ヒスチジン夕グイ匕 LOX—1細胞外ドメイン封入体の発現、 可溶化、 および リフォールデイング)
( 1 ) L0X-1細胞外ドメインタンパク質を発現した大腸菌の培養 ヒト LOX— 1細胞外ドメイン (61— 273) (配列番号 2) を No vag e n社製ヒスチジンタグ融合タンパク質発現べクタ一 pET 28 aのマルチクロ —ニングサイト (Nde l—Xho l) に組み込んだものを大腸菌 B L 21 (D E 3) に導入し大量発現を行なった。 以降の培養に関しては LOX— 1 CTL Dと同様に行なった。
(2) L 0 X— 1細胞外ドメインタンパク質の不溶性封入体の回収
不溶性封入体の回収に関しては LOX— 1 CTLDと同様に行なった。
(3) LOX— 1細胞外ドメインタンパク質の可溶化、 リフォールデイング操 作
可溶化、 リフォールデイング操作に関しては LOX— 1 CTLDと同様に行 なった。
(4) リフォールデイングした L O X— 1細胞外ドメインタンパク質の回収、 精製
リフォールデイングした LOX— 1細胞外ドメインタンパク質の回収、 精製に 関しては、 透析緩衝液の組成を 25 mM Tr i s/HC 1 (pH7. 5) ,
10 OmM N a C 1に、 ゲル濾過力ラム平衡化緩衝液の組成を 10 mM T r i s/HC 1 (pH7. 5) , NaC 1 40 OmMに、 さらに N i—キレーテ ィングセファロースカラムから溶出させた夕ンパク質溶液を濃縮する際に終濃度 40 OmMになるように NaC 1を加えてから行なうことを除いては、 LOX— 1 CTLDと同様に行なった。
(実施例 3 )
(hLOX- 1のピオチン化細胞外領域封入体、 並びにピオチン化 CTLD封 入体の発現、 可溶化、 およびリフォールデイング)
(1) ピオチン化ポリペプチドと hLOX— 1の細胞外領域、 もしくは CTL
Dとの融合夕ンパク質発現系の構築
hLOX— 1の細胞外領域、 もしくは CTLDをコードする DNA断片は PC R法による常法により調製した。 それらの両端には、 5' 側に Nr'u l、 3' 側 に Ec oRVの制限酵素サイトを付加した。 PCR産物を抽出後、 両制限酵素に より処理した後、 クローニング用ベクタ一である pBSに挿入し、 遺伝子配列に 誤りがないか DN.Aシ一クーエンサ一により確認した。 hLOX— 1の細胞外領 域の塩基配列およびアミノ酸配列を配列表の配列番号 1および 2に、 hLOX— 1の C T L Dの塩基配列およびアミノ酸配列を配列表の配列番号 3および 4に、 それぞれ示す。 配列を確認した当該タンパク質をコードした遺伝子を、 制限酵素 により切り出し、 大腸菌内においてピオチン化を受けることが知られているポリ ペプチドをコードしているプラスミドベクタ一 P i nP o i n t Xa (P r o me g a社製) の上記制限酵素サイトに挿入した。 次いで、 発現宿主である大腸 菌 J Ml 09に形質転換した後、 正しく目的遺伝子を取り込んだ形質転換体を選 抜した。
(2) ピオチン化タンパク質の誘導方法
目的プラスミドにより形質転換された大腸菌 JM109のコロニーを最終濃度
でで 10 O gZmlのアンピシリン、 並びに 2 Mのピオチンを含む LB培地 5mlに接種し、 37 °Cでー晚撹拝しながら培養した。 続いて、 この培養液を最 終濃度で 10 O gZmlのアンピシリン、 並びに 2 Mのピオチンを含む 50 1111の1^8培地に1 : 100 (容量比) の割合で接種し、 1時間培養した後、 最 終濃度で 10 O Mになるように I PTGを添加し、 目的融合タンパク質の発現 を誘導し、 さらに 4時間撹拝しながら培養した。
(3) ピオチン化細胞外領域、 ピオチン化 CTLDの検出と発現状態の確認 上記誘導処理後の培養液 100 1を 1. 5mlの遠心チューブに入れ、 15 ,
000 r pmで数分間遠心し、 菌体を回収した。 回収した菌体を超音波処理にて 破砕後、 20, 000 gで 30分間遠心して得られた上清 (可溶性面分) と沈殿 (不溶性面分) をそれぞれ S D Sサンプルバッファーに懸濁し、 95 °Cで 4分間 処理した。 次いで、 12%の SDS— PAGEにてタンパク質を分離した後、 二 トロセルロース膜に電気的に転写した。
転写後のニトロセルロース膜は、 ポンソ一 Sによる染色で、 タンパク質バンド の位置を確認した後、 TBS—Twe en (20mMTr i s、 15 OmM N aC l、 pH7. 6、 0. 1 %Twe e n 20) 中にて室温で穏やかに 60分間 攪拌した。 次に、 ストレプトアビジン標識アルカリフォスファターゼ中にて室温 で 30分間反応させた。 続いて、 反応後のニトロセルロース膜を TBS— Twe e e nにて洗浄した後、 アルカリフォスファタ一ゼの基質である NBTZBC I P溶液を添加し、 ピオチン化タンパク質のバンドが検出されるまで室温で反応さ せた。 その結果、 不溶性画分には、 ピオチン化細胞外領域、 およびピオチン化 C TLDの分子量に相当する位置にピオチン化タンパク質の顕著なバンドが検出さ れた。
(4) LOX- 1 CTLDタンパク質の可溶化、 リフォールデイング操作 不溶性封入体を、 30mg (LOX- 1 CTLDタンパク質量として) を 1
Om 1の可溶化緩衝液 (10 OmM T r i s/HC 1 (pH8. 0) , 6M
グァニジン塩酸塩, 5mM DTT) に懸濁し (タンパク質終濃度 3mgZm 1) 、 遠心して沈殿を除去し、 室温にて 4時間静置した。
その後、 DTTを終濃度 50mMになるよう加え、 1 Lのリフォールディン グ緩衝液 (l OmM T r i sZHC l (pH8. 5) 、 40 OmM アルギニ ン、 5mM 還元型ダル夕チオン、 0. 5mM 酸化型ダルタチオン) に攪拌し ながら F PLC送液ポンプを使用して 20 - 3 0 1/mi nの速度で 4°Cでゆ つくり滴下した。 滴下終了後、 終濃度 0. ImMになるよう PMSFを加え、 さ らに 4°Cで 12時間攪拌し、 タンパク質のリフォールデイングを行なった。
(5) リフォールデイングしたピオチン化タンパク質の回収、 精製
リフォールデイングしたタンパク質溶液 1 Lについて、 0. 45 mメンブ レンフィルターで沈殿を除き、 10Lの透析緩衝液 (25mM Tr i s/HC 1 (pH7. 5) , 5 OmM NaC l) に 4°Cで 24時間透析し、 緩衝液を交 換してさらに 24 時間透析し、 変性剤、 アルギニン、 ダル夕チオンを除去した。 透析した溶液は 0. 45 mメンブレンフィルターで沈殿を除いた。 タンパク質 溶液をセントリコン— 10 (ミリポア社製) で 2mlまで濃縮した。 タンパク質 溶液は次にゲル濾過カラム平衡化緩衝液 ( 10 mM T r i s/HC 1 (pH 7. 5) , NaC 1 5 OmM) で平衡化した S u p e r d e x 75ゲル濾過力 ラム (フアルマシア社製) に供し、 正しい分子量のフラクションを分取した。
(参考例 1 ')
本発明と比較検討する対象として、 従来法である、 環状糖質サイクロアミロー スと界面活性剤を用いるリフォールディング方法によってリフォールディングし たタンパク質を、 以下のとおり調製した。
(1) ピオチン化細胞外領域、 ピオチン化 CTLDの可溶性タンパク質への再 構成
封入体を最終濃度 40 mMの D TTを含む 6 Mのグァニジン塩酸塩溶液で室温
にて 1時間処理し、 間違った構造を完全に解きほぐした。 続いて、 70倍容量の 界面活性剤溶液 (0. 1%CTABもしくは SB3— 14、 最終濃度で 2mMの DL-c y s t i neを含む PBS (―) 溶液) を添加し、 室温で 1時間反応さ せた後、 反応液 24mlを取り出し、 3 %CA溶液 6mlを加えさらに 1時間室 温で反応させた。
この溶液を 20, 000 gで 10分間遠心し、 得られた上清 (可溶性画分) を リフォ一ルディング溶液とした。 リフォールディングされたタンパク質の存在を 確認したところ、 80%以上が可溶性面分に回収されていることが確認され、 効 率的にリフォールディングされていることが示された。
リフォ一ルドされたビォチン化細胞外領域、 ピオチン化 C T L Dをストレプト アビジンビーズ上に固定化し、 リガンドの一つであるァセチル化 L D Lを蛍光標 識した D i I AcLDLの結合を確認したところ、 リフォールデイングしたピオ チン化細胞外領域、 もしくはピオチン化 C T L D領域を固定化したビーズ上に蛍 光が観察され、 どちらもリガンド結合能を回復していることが示された。
(実施例 4)
(リフォールデイングしたタンパク質のゲルろ過による純度検定)
(1) ゲルろ過による純度検定
微量精製用 HP LC (SMARTシステム、 Pha rmac i a社製) を用い て、 Sup e r o s e l 2 (Pha rmac i a社製) ゲルろ過カラムにより分 子量および純度の検定を行った。 20mMリン酸緩衝液 (pH7. 5) 、 400 mM NaC 1で平衡化した S u p e r o s e 12カラムに同じ緩衝液に溶解し た LOX— 1細胞外ドメインをアプライし、 流速 20 L/分での溶出パターン を 280 nmの UV吸収によってモニターした。
本発明のリフォールディング方法を用い実施例 1で調製したヒスチジン夕グ化 LOX- 1 CTLDタンパク質から、 実施例 1 (4) に記載した手順でタグを
取り除いたタンパク質の純度をゲルろ過によって確認したところ、 従来法の環状 糖質サイクロアミロースを用いるリフォールディング方法によって調製したタン パク質よりも分子量の幅が狭かった。 この結果は、 本発明のリフォールデイング 方法が従来法よりも高い純度のタンパク質を調製する方法であることを示してい る (図 1) 。
ゲルろ過による純度検定の結果と S D S— P A G Eでの純度検定の結果 (デー 夕示さず) を考慮すると、 本発明のリフォールデイング方法によって調製した夕 ンパク質の純度が約 99%以上であることを示す。
(2) 質量分析法による純度検定
上記 (1) と同様に、 ヒスチジンタグ化 LOX— 1 CTLDタンパク質から タグを取り除いたタンパク質を、 0. 1% TFA (トリフルォロ酢酸) 溶液に 溶解し、 0. 1TF Aを含む 30%ァセトニトリル溶液中に溶解させたシナピン 酸溶液を添加して混合した。 その溶解した試料に対して、 MALD I— T〇F質 量分析装置 (Voy age r E l i t e, Pe r s pe c t i ve B i o s y s t ems社製) による分析を行った。
リフォールディングした LOX— 1の CTLDの質量分析によるタンパク質純 度の検定結果。 本発明のリフォールデイング方法によって得た、 タグを除去した ヒスチジンタグ化 LOX— 1 CTLDタンパク質は、 約 50の m/z比 (質量 /荷電) という狭い幅の質量分析スペクトルを与えた。 この狭い幅の結果は、 従 来法の環状糖質サイクロアミロースを用いるリフォ一ルディング方法よりも夾雑 物が少なく高純度に精製されていることを示す (図 2) 。
(3) NMR分析法による純度検定
実施例 1で得られたタンパク質からタグを除去し、 0. ImMの濃度になるよ うに 20mMの Tr i s HC 1緩衝液 (pH 7. 0) 、 5 OmM NaC lに 可溶化し、 600MHz NMR分光器により1 H— 15N HSQC (H e t e r onuc l e a r S i ng l e Quan t um Cohe r enc e c
o r r e l a t i on s p e c t r o s c opy) 2次元相関スぺクトリレの根 ij 定を、 25°Cで行った。
本発明のリフォ一ルディング方法によつて調製したタンパク質は、 1 H— 15 N HSQC 2次元相関スぺクトル上にてタンパク質の主鎖に由来する1 Hシグナ ルが 7 ppmから 11 ρ pmの広い範囲に分布しているのに対し、 シクロアミロ ースを利用してリフォールデイングしたタンパク質では、 7 ppm〜8. 5 p p mの狭い範囲で、 お互いのシグナルが重なるように分布しており、 かつ個々のシ グナルの線幅が適正にリフォールディングされたタンパク質よりも広かった。 主鎖 1 Hシグナル分布の以上の結果から、 本発明のリフォ一ルディング方法で リフォールデイングしたタンパク質は、 適切なタンパク質構造を形成しているこ とが理解できる。 これに対して、 従来法 (シクロアミ口一ス法) を用いたリフォ —ルディングでは、 不完全にリフォールディングされた構造を有するタンパク質 が混入していることが理解できる。
(実施例 5)
(リフォールデイングした夕ンパク質の結晶化)
タンパク質を結晶化するためには、 非常に高純度のタンパク質を調製する必要 があることは周知である。 本発明のリフォールディング方法を用いて調製された タンパク質が、 結晶化が可能な程度の純度を有することを、 実証した。
試料として CTLDを用いた。 CTLDの結晶化は、 I Lの 8mg/mLの CTLD溶液 (タンパク質を溶解する緩衝液として、 1 OmM Tr i s— HC 1、 pH7. 5、 5 OmM NaC l、 1 OmM酢酸亜鉛を用いた) に対して、 l Lの 0. 1Mクェン酸緩衝液 (pH3. 0〜4. 0) を添加し、 この溶液を 0. 1M クェン酸緩衝液 (pH'3. 0〜4. 0) に対して、 2〜4日間蒸気拡 散することによって、 得られた。
得られた結晶は、 a = 6. 2nm、 b = 6. 9 nm、 および c = 7。 9 nmの
単位格子定数を有する、 PSiSiSi斜方晶形であった。 また、 この結晶から、 約 2. 5オングストロームの分解能を持つ X線回折像が得られた (図 4) 。
以上の結果が示すように、 本発明のリフォールディング方法で得られた L OX 一 1 CTLDは結晶化が可能な程度の高純度であった。
(実施例 6)
(リフォールディングしたタンパク質の機能測定)
本発明のリフォールディング方法によってリフォールディングした、 ヒスチジ ンタグ化タンパク質およびビォチン夕グイ匕夕ンパク質の各々について、 リガンド 結合能を確認した。
( 1 ) リフォールディングしたヒスチジンタグ化タンパク質のリガンド結合能 の確認
リフォ一ルディングに成功したヒスチジン夕グ化細胞外領域、 もしくはヒスチ ジンタグ化 C T L Dを変性 L D Lなどを検出するセンサーとして使用する目的で、 表面プラズモン共鳴により検出が可能な機器のセンサ一部位へ各ヒスチジンタグ 化タンパク質を固定化し、 実際のリガンドの結合を検討した。 表面プラズモン共 鳴装置としては、 B I Ac o r e杜製の B I Ac o r eを使用した。
(1. 1) 実施例 1で調製した、 リフォールデイングしたヒスチジン化細胞外 領域を B I ACOREのセンサーチップ上に、 リガンド認識に関わる部分が外側 を向くように固定化した。 具体的には、 NTAセンサーチップ (B IAc o r e 社製) 表面を、 0. 35M EDTAを含む PBS (リン酸緩衝化生理食塩水) で洗浄後、 500 M N i C 12をインジェクトして、 センサーチップ上に夕 ンパク質を固定化した。 このチップ上に、 実施例 1で調製したヒスチジンタグ化 CTLDを固定化した。 なお、 固定化量は、 1000RU以下になるように、 ィ ンジェクトするタンパク質量を調整した。
(1. 2) 変性 LDLとして、 ァセチル化 LDLおよび酸化 LDLを以下のよ
うに調製した。
酸化 LDLの調製:精製した LDLおよび硫酸銅の濃度がそれぞれ 3mg/m Lおよび 75 Mとなる様に調製した溶液を C02インキュベータ一内で 20時 間インキュベートした。 ついで EDTAを含有する 0. 15Mの塩化ナトリウム 溶液にて透析し、 酸化 LDLを得た。
ァセチル化 L D Lの調製:精製した L D Lに対して最終濃度が 50 %になるよ うに酢酸ナトリウム溶液を加え、 0°Cに冷却した。 このとき全量を lmLにした。 氷上で攪拌しながら無水酢酸 1 を 10分間隔で 5回加えさらに 30分間冷却 攪拌を続け反応を完結させた。
(1. 3) 受容体チップに対する各種 LDLの結合を、 以下のとおりに検出し た。 流速 2 分で、 LDLおよび変性 LDL (ァセチル化 L D Lおよび酸 化 LDL) を 2分間インジェクトして、 センサーグラムの変化を記録した。 表面 プラズモン共鳴の原理を利用した機器の場合、 リガンドの結合をレゾナンスュニ ット: RUの増加を示すセンサーグラムの変化として検出することになる。 その 後、 1M NaC 1 ?83緩衝液 ( 117. 4) を 30秒間インジェクトし、 結合した LDLを剥離することによって、 センサーチップを再生した。 このサイ クルを 5回繰り返し、 センサ一チップのベースラインおよびセンサーグラムの応 答レベルが再現性よく安定していることを確認したうえで、 センサーグラムの変 化から、 結合定数および結合量を算出した。
その結果、 本発明のリフォールデイング方法を用いてリフォールディングされ たヒスチジンタグ化 LOX— 1 CTLDは、 酸化 LDLおよびァセチル化 LD Lに対して、 天然の LOX—1と同程度の親和性を有することが確認された (図 5) 。 なお、 リフォ一ルディングされた LOX— 1 CTLDは、 LDLに対し て、 変性 LDLの場合よりも 2桁低い結合能を示した (データ示さず) 。
(2) リフォールデイングしたピオチンタグ化タンパク質のリガンド結合能の 確認
リフォールデイングに成功したピオチンタグ化細胞外領域、 もしくはピオチン タグ化 C T L Dを変性 L D Lなどを検出するセンサーとして使用する目的で、 表 面プラズモン共鳴により検出が可能な機器のセンサー部位へ各ピオチンタグ化夕 ンパク質を固定ィヒし、 実際のリガンドの結合を検討した。 表面プラズモン共鳴装 置としては、 B I Ac o r e杜製の B I Ac o r eを使用した。
(2. 1) 実施例 3で調製した、 リフォールデイングしたピオチン化細胞外領 域を B I ACOREのセンサ一チップ上に、 リガンド認識に関わる部分が外側を 向くように固定化した。 具体的には、 センサーチップ S A (B I Ac o r e社 製) 表面を、 固定化緩衝液 (1 OmM Tr i s— HC 1 pH7. 5、 50m M NaC 1) で平衡ィ匕した後、 固定化緩衝液中に調製した 7 O gZmLのビ ォチン化 LOX— 1タンパク質を、 1 0 LZ分でインジェクトした。 50 L のピオチン化 LOX_ 1をインジェクトした時点で、 約 3000RUを与える量 の夕ンパク質が固定化されたことを確認して、 夕ンパク質の固定化を終了した。 その後、 固定化緩衝液を 20 分で流して、 チップに結合しなかったタンパ ク質を洗浄して取り除いた。 600分間の洗浄を行っても、 RU値の低下は、 5 %以下であった。 このセンサーチップを用いて、 上記 (1. 2) および (1. 3) と同様にして、 LDLおよび変性 LDLの結合について試験した。
その結果、 ピオチン化 CTLDの場合も、 酸化 LDLおよびァセチル化 LDL に対して、 天然の LOX— 1と同程度の親和性を有することが確認された。
(実施例 7 )
(リフォールデイングしたタンパク質は二量体を形成する)
天然の LOX— 1タンパク質は、 二量体を形成する。 そこで、 本発明のリフォ —ルディング方法によってリフォールディングした LOX— 1が二量体を形成す るか否かについて、 ゲルろ過、 PAGE, および質量分析を用いて確認した。 こ の実施例では、 実施例 2の方法に従って得た細胞外ドメイン全長 (61— 27
3) にヒスチジンタグを付けて発現した後リフォールデイングを行い、 その後に、 ヒスチジンタグを除いた夕ンパク質を使用した。
(1) ゲルろ過による純度検定
微量精製用 HP LC (SMARTシステム、 Pha rma c i a社製) を用い て、 Sup e r o s e l 2 (Pha rmac i a社製) ゲルろ過カラムにより、 分子量および純度の検定を行った。 20mMリン酸緩衝液 (pH7. 5) 、 40 OmM NaC 1で平衡ィ匕した Sup e r o s e 12カラムに、 平衡化に使用し た緩衝液と同一の緩衝液に溶解した、 実施例 2で調製したヒスチジンタグ化 LO X— 1細胞外ドメインをアプライし、 流速 20 LZ分での溶出パターンを 28 0 nmの UV吸収によってモニタ一した。
(2) 質量分析による純度検定
0. 1 % TFA (トリフルォロ酢酸) 溶液に溶解した実施例 1で調製したヒ スチジンタグ化 LOX— 1細胞外ドメインに、 0. 1 TFAを含む 30%ァセト 二トリル溶液中に溶解させたシナピン酸溶液を混合した。 その溶解した試料に対 して、 MALD I— TOF質量分析装置 (Voy a g e r E l i t e, Pe r s p e c t i v e B i o s y s t ems社製) による分析を行った。
(3) 還元および非還元条件下での SDS— PAGE
本発明のリフォールディング方法によって得られた L〇X_ 1タンパク質に 2 0% /3 _メルカプトエタノールを含む試料緩衝液 (25 OmM Tr i s H C l、 pH6. 8、 8 % SDS、 20% スクロース、 0. 02% ブロモフ ェノールブルー (BPB) ) を加え、 100 で 5分間煮沸した試料を、 還元状 態の試料とした。 一方、 上記の試料緩衝液から j3—メルカプトエタノールを除い た試料緩衝液を加えて、 30分間室温において反応させた試料を、 非還元状態の 試料とした。 各々の試料を、 15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動後、 クマシ 一ブリリアントブルー (CBB) を用いて染色した。
(化学架橋実験) '
リフォ一ルディング方法によって得られた LOX— 1タンパク質溶液 (300 H g/mL, 5 OmM HEPES pH7. 5、 10 OmM N a C 3m M EDTA) に対して、 化学架橋剤 BS 3 (P i e r c e社製) を、 0. 2、 0. 4、 0. 8、 1. 6、 3. 2 mMとなるように添加し、 室温で 30分間架橋 反応を行った。 反応後すぐに、 SDS— PAGE用の試料緩衝液 (25 OmM T r i s HC 1、 pH6. 8、 8 % SDS、 20% スクロース、 0. 0 2 % ブロモフエノールブル一 (BPB) 、 20% )3—メルカプトエタノー ル) を添加して、 100°Cで 5分間過熱し、 15%ポリアクリルアミドゲル電気 泳動を行った後、 CBB染色して、 添加した化学架橋の量に依存して増加する 2 量体タンパク質の変化量を観測した。
(二量体実験のまとめ) '
以上の実験の結果、 L〇X— 1の細胞外ドメイン全長を本発明のリフォ一ルデ ィング方法でリフォールディングした結果得られたタンパク質が、 細胞表層にあ る LOX— 1の存在様式と同様に 2量体であることが示された (図 6) 。
(実施例 8)
(蛍光サンドイツチ法による変性 L D Lの検出)
実施例 3で調製したピオチン化タグを N末端に付けた LOX— 1を、 ストレブ トァビジンでコートされたマイクロプレート (バイオコ一卜 (登録商標) 、 BD B i o s c i e c e社) 上に、 ピオチンを介して固定化する。 不要な血液凝固 を避けるためにへパリンを含んだ試験管に採血を行って (へパリン採血) 得られ たヒト血漿から遠心分離によって得られた L D L分画を分注して、 4 °Cで 1時間 放置する。 その後、 0. 05%の Twe e n 20— TBS (N a C 1 140m M、 KC 1 2. 7mM、 25mM Tr i sHC l、 pH 7. 5 pH7. 4) で 3回洗浄した後、 ピオチン化した LOX— 1に対して、 ストレブトァビジ ン化された量子ドット (登録商標) (Qdo t (登録商標) 525、 住商バイオ
サイエンス株式会社) で蛍光標識した L OX— 1を加えて 1時間放置後、 0. 0 5 %の Twe e n— 20 TBSで 3回洗浄する。 その後、 ゥエルからの 525 nmの蛍光を観測して、 蛍光強度に基づいて、 血液中に存在する結合した LDL の量を算出する。
(実施例 9)
(蛍光磁器トラップ法による変性 L D Lの検出)
実施例 3で調製したピオチン化タグを N末端に付けた LOX_ 1を、 ストレブ トァビジンでコートされた磁器ビーズ (Dy n a b e a d s M— 280 スト レプトアビジン、 株式会社ベリタス) 上に結合させる。 へパリン採血で得られた ヒト血漿から遠心分離によって得られた LDL分画を 100 Lに対して、 磁器 ビーズと結合した LOX— 1タンパク質を 10 L添加して、 1時間 4°Cで放置 する。 磁器ビーズを磁石で固定化し、 0. 05%の Twe en20—TBS (N a C 1 140mM、 KC 1 2. 7mM、 25mM Tr i sHC l、 pH 7. 5 pH7. 4) で 3回洗浄した後、 ピオチン化した L OX— 1に対して、 ストレプトアビジン化された量子ドット (登録商標) (Qdo t (登録商標) 5 25、 住商バイオサイエンス株式会社) で蛍光標識した LOX— 1を加えて 1時 間放置後、 再度 0. 05%の Twe en— 20 TBSで 3回洗浄する。 洗浄後 の磁器ビーズからの 525 nmの蛍光を観測して、 蛍光強度に基づいて、 血液中 に存在する結合した L D Lの量を算出する。
(実施例 10)
(表面プラズモン共鳴法 (SPR) による LOX— 1蛋白質のリガンド結合ァ ッセィ)
LOX- 1のリガンドであるァセチル化 LDLを LDL抗体で S PRチップ上 に固定化し、 そこに LOX— 1タンパク質を流し、 それにより生じる S PRシグ
ナルを観測することで LOX— 1のァセチル化 L D Lに対する結合活性を調べた 。 S P R測定装置には B i a c o r e社製 B i a c o r e 2000システムを用 いた。
ャギ抗 Ap oB抗体 (Ro c k 1 and社製) を B i a c o r e社製 CM3チ ップにァミンカップリング法を用いて固定化し、 そこにァセチル化 LDL (Mo l e c u l a r p r ob e s社) を添加して抗体に結合させた。 CM 3チップ へのァセチル化 LDLの結合量は 3, 000 Re s p on s e Un i t程度 になるよう添加量を調節した。 その後、 測定用緩衝液 (1 OmM He p e s、 pH7. 5、 15 OmM NaC l) でチップを平衡化し、 同じ緩衝液に懸濁し た LOX— 1細胞外ドメインおよび LOX— 1 CTLD (蛋白質濃度は 10 n M〜20 Μ) を流速 20 1 /m i nで加え、 S P Rシグナルを観測した。 得 られたデ一夕を基に B I Ae V a 1 u a t i o nソフ卜ウェア (B i a c o r e 社) を用いて反応速度定数を算出した。
センサ一グラムの結果と、 算出された K aおよび Kdの値を図 7に記載する。
LOX- 1細胞外ドメインのァセチル化 L D Lに対する結合定数は、 天然の L OX— 1の場合とほぼ同程度であることから、 本発明のリフォールディング方法 によってリフォールディング方法されたタンパク質は、 天然のタンパク質と実質 的に同一の構造を有すると考えられる。
CTLDをセンサー上に固定化した場合、 CTLDとァセチル化 LDLとの結 合が観察された。 この結合能は、 LOX— 1とァセチル化 LDLとの結合の場合 と同程度であった。 逆に、 ァセチル化 LDLを固定化した場合には、 CTLDと ァセチル化 LDLとの結合が観察されなかった。 この結果から、 以下のことが理 解できる。
LOX— 1細胞外ドメインは溶液中では、 S S結合で結ばれた二量体構造をと るが、 CTLD単独では溶液中で単量体として存在している。
従って、 LOX— 1の CTLDをセンサ一上に固定化した場合に、 CTLDと ァセチル化 L D Lとの結合が観察されたのは、 センサ一上で C T L Dが周密化す ることにより、 CTLDが、 LOX—1細胞外ドメインと同様に二量体を形成し たことが理由であると考えられる。 これに対して、 溶液中では CTLDは単量体 として存在するため、 ァセチル化 LDLに結合しなかったものと考えられる。 従 つて、 これらの結果から、 ァセチルイヒ LDLへの結合には CTLDが二量体ィ匕す ることが必須であるといえる。 細胞外領域全長は SS結合により安定なホモ二量体を形成しており、 ァセチル 化 LDLに対する結合活性を示すが、 その結合活性は、 細胞上に存在する LOX 一 1よりも低い。 一方、 既に説明したように、 CTLDのァセチル化 LDLへの 結合には、 CTLDの二量体化が必須であるが、 その結合活性は、 ただ単に CT LDが二量体化するだけでは十分ではなく、 ただ単に二量体化した C T L Dの結 合能は、 細胞上に存在する LOX— 1の結合能に比べて、 4桁程度低い。 これら のことから細胞上では L OX— 1細胞外ドメインどうしがさらに会合して共同的 にァセチル化 L D Lに結合するものと考えられる。 実際に細胞上で L〇X— 1は 最低 4分子からなる (二量体 X2) 会合体を形成していることがわかっている。 従って、 これらの実験結果から、 血液中の酸化 LDL含量測定、 酸化 LDLの 血液からの除去、 ワクチン利用などの応答を想定した場合、 単量体としての CT LDは、 ァセチル化 LDLに対する結合能を有さないため、 使用することができ ないこと、 および、 今回のリフォ一ルディングで得られる二量体構造が最低の単 位として必要であることが示される。
しかしながら、 溶液中では単量体である CTLDであっても、 または、 細胞上
に存在する L O X— 1よりも低い結合能を示す L O X— 1の細胞外領域全長 であっても、 S P Rセンサーのような基盤に周密化状態で固定化することによつ て、 天然の L O X— 1と同等の結合能を示す。
(発明の効果)
本発明のリフォールディング方法によって、 高純度かつ均質なリフォールディ ングタンパク質を得ることが可能となった。 また、 本発明のリフォールデイング 方法によって得られたタンパク質を用いることによって、 高感度の受容体チップ の作製が可能となる。 また、 本発明のリフォールデイング方法によって得られた 夕ンパク質を用いることによって、 非特異的結合を従来よりも低減したリガンド 除去材料を提供することが可能となる。 以上のように、 本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、 本発明は、 この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。 本発明は、 特 許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。 当業者は、 本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、 本発明の記載および 技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。 本明 細書において引用した特許、 特許出願および文献は、 その内容自体が具体的に本 明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用 されるべきであることが理解される。