明 細 書
内燃機関の吸入空気量制御装置
技術分野
[0001] 本発明は、複数の気筒にそれぞれ吸入される吸入空気量を制御する内燃機関の 吸入空気量制御装置に関する。
背景技術
[0002] 従来、内燃機関の吸入空気量制御装置として、例えば特許文献 1に記載されたも のが知られている。この内燃機関は、 4気筒タイプのものであり、気筒毎に設けられ、 各気筒の吸気弁の閉弁タイミングを開弁タイミングに対して変化させる電磁式動弁機 構と、スロットル弁機構などを備えている。この吸入空気量制御装置では、以下のよう に、アイドル回転数を制御するために、電磁式動弁機構を介して吸気弁の閉弁タイミ ングが制御され、それにより、吸入空気量が制御される。具体的には、 目標回転数に 応じて、フィードフォワード制御用の目標吸入空気量が算出され、全気筒の吸気弁の 閉弁時間の平均値と各気筒の閉弁時間との偏差の絶対値における最大値が、算出 される。さらに、この偏差の絶対値の最大値に応じて、フィードバック制御用のゲイン が算出され、このゲインに応じて、フィードバック制御用の目標吸入空気量が算出さ れるとともに、これらのフィードバック制御用およびフィードフォワード制御用の 2つの 目標吸入空気量などに応じて、吸気弁の閉弁タイミングが算出され、それに応じて吸 気弁の閉弁タイミングが制御される。以上のように、吸気弁の閉弁タイミングが制御さ れることにより、吸気弁の閉弁時間の気筒間の差異に起因して吸入空気量が気筒間 で異なることによる、アイドル回転数の変動が抑制される。
[0003] 上記従来の吸入空気量制御装置によれば、全気筒の吸気弁の閉弁時間の平均値 と各気筒の閉弁時間との偏差の絶対値における最大値に応じて、フィードバック制御 用の目標吸入空気量が算出されるとともに、吸気弁の閉弁タイミングとして最終的に 1つの値しか算出されず、その 1つの値により全気筒の吸気弁を制御するものに過ぎ ないので、気筒間の吸入空気量のばらつきを適切に補正することができないという問 題がある。そのため、アイドル回転数制御のような極低負荷の運転域での回転数制
御では、回転変動を抑制可能ではあるものの、通常の運転負荷域では、気筒間の吸 入空気量のばらつきに起因して、トルク変動および回転変動が発生するとともに、燃 焼状態が悪化し、その結果、運転性および排気ガス特性が悪化してしまう。この問題 は、特に高負荷域やリーン運転時 (EGR導入時)に顕著となる。
[0004] 本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、気筒間の吸入空気量のば らっきを適切に補正でき、それにより、高負荷域を含む通常の運転負荷域でも、運転 性および排気ガス特性をいずれも向上させることができる内燃機関の吸入空気量制 御装置を提供することを目的とする。
[0005] 特許文献 1 :特開 2001—140661号公報(第 5 6頁、図 6— 18)
発明の開示
[0006] この目的を達成するために、本発明は、分岐点から複数に分岐する吸気通路(吸 気管 8)を介して複数の気筒(第 1一第 4気筒 # 1一 # 4)にそれぞれ吸入される吸入 空気量を、吸気量可変装置(吸気カム間位相可変機構 80)により互いに独立して制 御する内燃機関 3の吸入空気量制御装置 1であって、吸気通路の分岐点よりも上流 側における吸入空気量を表す吸入空気量パラメータ (TH通過吸入空気量 Gth、吸 気管内絶対圧 PBA)を検出する吸入空気量パラメータ検出手段(エアフローセンサ 2 1、吸気管内絶対圧センサ 24)と、吸気通路を含む吸気系をモデル化したモデル [式 (43) ]に基づき、検出された吸入空気量パラメータに応じて、複数の気筒間の吸入 空気量のばらつきを表すばらつきパラメータ(吸気量ばらつき係数 Φ # ί)を気筒毎に 算出するばらつきパラメータ算出手段 (ECU2、適応オブザーバ 240)と、気筒毎に 算出されたばらつきパラメータに応じて、複数の気筒に吸入される吸入空気量を補 正するための補正量(目標吸気カム間位相 Θ SSi # i_cmd)を気筒毎に算出する補 正量算出手段 (ECU2、 目標吸気カム間位相コントローラ 261、ステップ 81)と、気筒 毎に算出された補正量に応じて、吸気量可変装置を制御する制御手段 (ECU2、第 3SPASコントローラ 262、ステップ 75)と、を備えることを特徴とする内燃機関 3の吸 入空気量制御装置 1を提供する。
[0007] この内燃機関の吸入空気量制御装置の構成によれば、吸気通路を含む内燃機関 の吸気系をモデル化したモデルに基づき、検出された吸入空気量パラメータに応じ
て、複数の気筒間の吸入空気量のばらつきを表すばらつきパラメータが気筒毎に算 出され、このばらつきパラメータに応じて、複数の気筒に吸入される吸入空気量を補 正するための補正量が気筒毎に算出され、この補正量に応じて、吸気量可変装置が 制御される。以上のように、複数の気筒間の吸入空気量のばらつきを表すばらつきパ ラメ一タカ 内燃機関の吸気系をモデル化したモデルに基づいて算出されるので、こ のモデルを適切に設定することにより、ばらつきパラメータを、複数の気筒間の吸入 空気量のばらつきを適切に表すものとして算出することができる。さらに、そのように 算出されたばらつきパラメータに応じて、複数の気筒における吸入空気量の補正量 が算出されることにより、気筒間の吸入空気量のばらつきを適切に補正し、吸収する こと力 Sできる。それにより、高負荷域を含む通常の運転負荷域でも、トルク変動および 回転変動の発生を回避できるとともに、安定した燃焼状態を確保することができ、そ の結果、運転性および排気ガス特性をいずれも向上させることができる。
[0008] 好ましくは、前記モデルは、吸入空気量パラメータの推定値 (TH通過吸入空気量 の推定値 Gth— est)と、複数の気筒に吸入される吸入空気量の挙動をそれぞれ模 擬化した複数の模擬値 Gcyl— OS # iとの関係を定義したモデルであり、前記ばらつ きパラメータは、モデルのモデルパラメータとして設定され、前記ばらつきパラメータ 算出手段は、複数の模擬値を生成する模擬値生成手段 (ECU2、適応オブザーバ 2 30)と、吸入空気量パラメータの推定値をモデルに基づいて推定する推定手段 (EC U2、適応オブザーバ 230)と、吸入空気量パラメータの推定値が検出された吸入空 気量パラメータに一致するように、検出された吸入空気量パラメータおよび生成され た複数の模擬値に応じて、ばらつきパラメータを同定する同定手段 (ECU2、適応ォ ブザーバ 230)と、を有する。
[0009] この好ましい態様の構成によれば、ばらつきパラメータ算出手段において、模擬値 生成手段により、複数の模擬値が生成され、推定手段により、吸入空気量パラメータ の推定値が、この推定値と複数の気筒に吸入される吸入空気量の挙動をそれぞれ 模擬化した複数の模擬値との関係を定義したモデルに基づいて推定され、同定手段 により、吸入空気量パラメータの推定値が検出された吸入空気量パラメータに一致す るように、吸入空気量パラメータおよび生成された複数の模擬値に応じて、ばらつき
パラメータが同定される。以上のように、吸入空気量パラメータの推定値が検出され た吸入空気量パラメータに一致するように、モデルパラメータであるばらつきパラメ一 タが同定されるので、ばらつきパラメータを、複数の気筒に吸入される吸入空気量の 実際の挙動、すなわち気筒間の吸入空気量のばらつきが反映された値として、同定 すること力 Sできる。したがって、そのように同定されたばらつきパラメータに応じて、吸 入空気量の補正量が算出されるので、気筒間の吸入空気量のばらつきを適切かつ 精度よく補正することができる。また、例えば、同定手段としてオンボード同定器を用 レ、ることにより、吸入空気量の補正量を、リアルタイムで同定されたばらつきパラメータ に基づいて算出することができる。それにより、吸入空気量パラメータ検出手段にお ける応答ばらつきおよび経年変化などによって、制御対象としての吸気系の動特性 が変化したときでも、従来と異なり、吸気系の動特性の変化をモデルに反映させなが ら、複数の気筒間の吸入空気量のばらつきを補正し、吸収することができる。その結 果、安定余裕が大きぐロバスト性の高い吸入空気量制御を実現することができ、運 転性および排気ガス特性をさらに向上させることができる。
[0010] 好ましくは、前記補正量算出手段は、応答指定型制御アルゴリズム [式(52) , (53) ]により、ばらつきパラメータ(吸気量ばらつき係数 Φ # i)に応じて補正量(目標吸気 カム間位相 Θ ssi # i— cmd)を算出する。
[0011] この好ましい態様の構成によれば、補正量が、応答指定型制御アルゴリズムにより 、ばらつきパラメータに応じて算出されるので、気筒間の吸入空気量のばらつきを、 振動的およびオーバーシュート的な挙動を回避しながら迅速かつ安定した状態で吸 収することができ、それにより、運転性および排気ガス特性をより一層、向上させるこ とができる。
[0012] 好ましくは、前記吸気量可変装置は、複数の気筒の各々の吸気弁 6を駆動するた めの吸気カム(副吸気カム 44)および吸気カムシャフト(副吸気カムシャフト 42)の間 の位相を変更する吸気カム位相可変機構(吸気カム間位相可変機構 80)で構成さ れている。
[0013] この好ましい態様の構成によれば、吸気量可変装置が、吸気カムおよび吸気カム シャフトの間の位相を変更する吸気カム位相可変機構で構成されてレ、るので、例え
ば、吸気弁の弁体をソレノイドの電磁力で駆動するタイプの吸気量可変装置を用い た場合と比べて、簡易な構成により、気筒間の吸入空気量のばらつきを補正する吸 入空気量制御を実現することができる。
[0014] 好ましくは、前記吸気カム位相可変機構は、油圧の供給により駆動される油圧駆動 式の吸気カム位相可変機構で構成されており、制御手段は、油圧駆動式の吸気カム 位相可変機構に供給される油圧 Psdを制御する。
[0015] この好ましい態様の構成によれば、吸気カム位相可変機構が、油圧の供給により駆 動される油圧駆動式のもので構成されているので、吸気量可変装置として、例えば、 吸気弁の弁体をソレノイドの電磁力で駆動するタイプのものを用いた場合と比べて、 より高負荷域でも吸気弁を確実に開閉することができ、消費電力を低減できるととも に、吸気弁の動作音を低減することができる。
図面の簡単な説明
[0016] [図 1]本発明の一実施形態に係る吸入空気量制御装置が適用された内燃機関の概 略構成を示す図である。
[図 2]内燃機関の可変式吸気弁駆動装置および可変式排気弁駆動装置の概略構成 を示す図である。
[図 3]吸入空気量制御装置の概略構成を示す図である。
[図 4]燃料気化冷却装置の概略構成を示す図である。
[図 5]可変式吸気弁駆動装置および可変式排気弁駆動装置の概略構成を平面的に 示す模式図である。
[図 6]可変式吸気弁駆動装置の吸気弁駆動機構の概略構成を示す図である。
[図 7]主吸気力ム位相可変機構の概略構成を示す図である。
[図 8]副吸気力ム位相可変機構の概略構成を示す図である。
[図 9]副吸気力ム位相可変機構の変形例の概略構成を示す図である。
[図 10]吸気力ム間位相可変機構の概略構成を示す図である。
[図 11]主吸気カムおよび副吸気カムのカムプロフィールを説明するための図である。
[図 12A]副吸気カム位相 Θ mSi=0degの場合の吸気弁駆動機構の動作状態を示す 図ある。
[図 12B]副吸気カム位相 Θ msi= 0degの場合の吸気弁の動作を説明するためのバ ルブリフト曲線などを示す図である。
[図 13A]副吸気カム位相 Θ mSi= 90degの場合の吸気弁駆動機構の動作状態を示 す図である。
[図 13B]副吸気カム位相 Θ msi= 90degの場合の吸気弁の動作を説明するためのバ ルブリフト曲線などを示す図である。
[図 14A]副吸気カム位相 Θ msi= 120degの場合の吸気弁駆動機構の動作状態を示 す図である。
[図 14B]副吸気カム位相 Θ msi= 120degの場合の吸気弁の動作を説明するための バルブリフト曲線などを示す図である。
[図 15A]副吸気カム位相 Θ msi= 180degの場合の吸気弁駆動機構の動作状態を示 す図である。
[図 15B]副吸気カム位相 Θ msi= 180degの場合の吸気弁の動作を説明するための バルブリフト曲線などを示す図である。
[図 16]副吸気カム位相 Θ msiを 120degから 180degに変化させた場合における吸気 弁の動作を説明するためのバルブリフト量およびバルブタイミングの変化を示す図で ある。
[図 17]主排気カムおよび副排気カムのカムプロフィールを説明するための図である。 園 18]副排気カム位相 Θ mSe = 0degの場合における排気弁の動作を説明するため のバルブリフト曲線などを示す図である。
園 19]副排気カム位相 Θ mSe =45degの場合における排気弁の動作を説明するた めのバルブリフト曲線などを示す図である。
園 20]副排気カム位相 Θ mse = 90degの場合における排気弁の動作を説明するた めのバルブリフト曲線などを示す図である。
園 21]副排気カム位相 Θ mse = 150degの場合における排気弁の動作を説明するた めのバルブリフト曲線などを示す図である。
園 22]吸入空気量制御装置における、スロットル弁機構、副吸気カム位相可変機構 および吸気カム間位相可変機構を制御するための構成を示すブロック図である。
園 23]副吸気カム位相コントローラの概略構成を示すブロック図である。
園 24]気筒吸入空気量 Gcylの算出式と、第 1SPASコントローラにおける状態予測 器の予測アルゴリズムの数式を示す図である。
[図 25]第 1SPASコントローラにおけるオンボード同定器の同定アルゴリズムの数式を 示す図である。
[図 26]第 1SPASコントローラにおけるスライディングモードコントローラのスライディン グモード制御アルゴリズムの数式を示す図である。
園 27]図 26の式(19)の導出方法を説明するための数式を示す図である。
園 28]スライディングモード制御アルゴリズムを説明するための位相平面および切換 直線を示す図である。
園 29]スライディングモードコントローラにおいて、切換関数設定パラメータ Ssを変化 させた場合における追従誤差 Esの収束挙動の一例を示す図である。
園 30]第 2SPASコントローラの概略構成を示すブロック図である。
園 31]第 2SPASコントローラにおける状態予測器の予測アルゴリズムの数式を示す 図である。
[図 32]第 2SPASコントローラにおけるオンボード同定器の同定アルゴリズムの数式を 示す図である。
[図 33]第 2SPASコントローラにおけるスライディングモードコントローラのスライディン グモード制御アルゴリズムの数式を示す図である。
園 34]エアフローセンサにより検出される吸気の脈動を示す図である。
園 35]吸気カム間位相コントローラの適応オブザーバにおける吸気量ばらつき係数 φ # 1— # 4の算出アルゴリズムを説明するための模式図である。
園 36]吸気カム間位相コントローラの適応オブザーバにおける吸気量ばらつき係数 φ # 1— # 4の算出アルゴリズムの数式を示す図である。
[図 37]適応オブザーバの構成を示すブロック図である。
園 38]適応オブザーバの信号発生器から出力される模擬値 Gcyl_OS # l # 4を 示す図である。
園 39]吸気カム間位相コントローラにおける、差分器による偏差 Ε Φ # 2— # 4の算出
式、および吸気ばらつきコントローラによる目標吸気カム間位相 Θ ssi # i— cmdの算 出アルゴリズムの数式を示す図である。
[図 40]吸気ばらつきコントローラの構成を示すブロック図である。
園 41]副排気カム位相コントローラの構成を示すブロック図である。
[図 42]副排気カム位相コントローラの制御アルゴリズムの数式を示す図である。
[図 43]エンジン制御処理の主要な制御内容を示すフローチャートである。
[図 44]燃料制御処理を示すフローチャートである。
[図 45]要求駆動トノレク TRQ_engの算出に用いるマップの一例を示す図である。
[図 46]気筒吸入空気量 Gcylおよび目標吸入空気量 Gcyl_cmdの算出処理を示す フローチャートである。
[図 47]目標吸入空気量の基本値 Gcyl_cmd_baseの算出に用いるマップの一例を 示す図である。
園 48]空燃比補正係数 Kgcyl—afの算出に用いるテーブルの一例を示す図である。
[図 49]主燃料噴射率 Rt— Preの算出に用いるテーブルの一例を示す図である。
[図 50]過給圧制御処理を示すフローチャートである。
[図 51]ウェストゲート弁への制御入力の基本値 Dut—wg— baseの算出に用いるテ 一ブルの一例を示す図である。
園 52]目標過給圧 Pc— cmdの算出に用いるテーブルの一例を示す図である。
[図 53]吸気弁制御処理を示すフローチャートである。
[図 54]図 53の続きを示すフローチャートである。
園 55]目標副吸気カム位相の触媒暖機用値 Θ msi— cwの算出に用いるテーブルの 一例を示す図である。
[図 56]目標主吸気カム位相の通常運転値 Θ mi_drvの算出に用いるテーブルの一 例を示す図である。
[図 57]目標副吸気カム位相の基本値 Θ msi_baseの算出に用いるマップの一例を 示す図である。
園 58]排気弁制御処理を示すフローチャートである。
[図 59]図 58の続きを示すフローチャートである。
[図 60]目標副排気カム位相の触媒暖機用値 Θ mse— astの算出に用いるテープノレ の一例を示す図である。
[図 61]目標主排気カム位相の通常運転値 Θ me— drvの算出に用いるテーブルの一 例を示す図である。
[図 62]スロットル弁制御処理を示すフローチャートである。
[図 63]目標開度の触媒暖機用値 THcmd_astの算出に用いるテーブルの一例を示 す図である。
[図 64]目標開度の通常運転値 THcmd_drvの算出に用いるマップの一例を示す図 である。
[図 65]目標開度の故障用値 THcmd_fsの算出に用いるマップの一例を示す図であ る。
[図 66]吸入空気量制御装置によるエンジン始動および触媒暖機制御の動作例を示 すタイミングチャートである。
[図 67]吸入空気量制御装置によるエンジン制御の動作例を示す図である。
[図 68]吸入空気量制御装置の変形例の概略構成を示すブロック図である。
発明を実施するための最良の形態
[0017] 以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る内燃機関の吸入空気量制 御装置(以下、単に「制御装置」という)について説明する。図 1および図 2は、本実施 形態の制御装置 1が適用された内燃機関 (以下「エンジン」という) 3の概略構成を示 し、図 3は、制御装置 1の概略構成を示している。図 3に示すように、制御装置 1は、 E CU2を備えており、この ECU2は、エンジン 3の運転状態に応じて、後述するように、 吸入空気量を制御するための吸気弁制御処理などを含む各種の制御処理を実行す る。
[0018] このエンジン 3は、図示しない車両に搭載された直歹 1J4気筒型ガソリンエンジンであ り、第 1一第 4の 4つの気筒 # 1一 # 4 (複数の気筒)を備えてレ、る(図 5参照)。また、 エンジン 3では、気筒毎に、主燃料噴射弁 4および点火プラグ 5が設けられており(い ずれも 1つのみ図示)、これらの主燃料噴射弁 4および点火プラグ 5はいずれも、シリ ンダヘッド 3aに取り付けられている。各主燃料噴射弁 4は、 ECU2に接続されており
、 ECU2からの制御入力によって、その燃料噴射量および燃料噴射タイミングが制御 され、それにより、燃料を対応する気筒の燃焼室内に直接噴射する。
[0019] また、各点火プラグ 5も ECU2に接続されており、 ECU2から点火時期に応じたタイ ミングで高電圧が加えられることで放電し、それにより、燃焼室内の混合気を燃焼さ せる。
[0020] さらに、エンジン 3は、気筒毎に設けられ、吸気ポートおよび排気ポートをそれぞれ 開閉する吸気弁 6および排気弁 7と、吸気弁 6を開閉駆動すると同時にそのバルブタ イミングおよびバルブリフト量を変更する可変式吸気弁駆動装置 40と、排気弁 7を開 閉駆動すると同時にそのバルブタイミングおよびバルブリフト量を変更する可変式排 気弁駆動装置 90などを備えている。これらの可変式吸気駆動装置 40および可変式 排気弁駆動装置 90の詳細については、後述する。また、吸気弁 6および排気弁 7は それぞれ、バルブスプリング 6a, 7aにより閉弁方向に付勢されている。
[0021] 一方、エンジン 3のクランクシャフト 3bには、マグネットロータ 20aが取り付けられて いる。このマグネットロータ 20aは、 MREピックアップ 20bとともに、クランク角センサ 2 0を構成している。クランク角センサ 20は、クランクシャフト 3bの回転に伴い、いずれも パルス信号である CRK信号および TDC信号を ECU2に出力する。
[0022] CRK信号は、所定のクランク角(例えば 30deg)毎に 1パルスが出力される。 ECU2 は、この CRK信号に応じ、エンジン 3の回転数(以下「エンジン回転数」という) NEを 算出する。また、 TDC信号は、各気筒のピストン 3cが吸気行程の TDC位置よりも若 干、手前の所定のクランク角位置にあることを表す信号であり、所定クランク角(本実 施形態の例では 180deg)毎に 1パルスが出力される。
[0023] また、エンジン 3の吸気管 8 (吸気通路)には、上流側から順に、ターボチャージャ装 置 10、インタークーラ 11、燃料気化冷却装置 12およびスロットル弁機構 16などが設 けられている。
[0024] ターボチャージャ装置 10は、吸気管 8の途中のコンプレッサハウジング内に収容さ れたコンプレッサブレード 10aと、排気管 9の途中のタービンハウジング内に収容され たタービンブレード 10bと、 2つのブレード 10a, 10bを一体に連結する軸 10cと、ゥェ ストゲート弁 10dなどを備えている。
[0025] このターボチャージャ装置 10では、排気管 9内の排気ガスによってタービンブレー ド 10bが回転駆動されると、これと一体のコンプレッサブレード 10aも同時に回転する ことにより、吸気管 8内の吸入空気が加圧される。すなわち、過給動作が実行される。
[0026] また、上記ウェストゲート弁 10dは、排気管 9のタービンブレード 10bをバイパスする バイパス排気通路 9aを開閉するものであり、 ECU2に接続された電磁制御弁で構成 されている(図 3参照)。このウェストゲート弁 10dは、 ECU2からの制御入力 Dut_w gに応じて開度が変化することにより、バイパス排気通路 9aを流れる排気ガスの流量 、言い換えればタービンブレード 10bを駆動する排気ガスの流量を変化させる。これ により、ターボチャージャ装置 10による過給圧 Pcが制御される。
[0027] 一方、吸気管 8のコンプレッサブレード 10aよりも上流側に、エアフローセンサ 21 ( 吸入空気量パラメータ検出手段)が設けられている。このエアフローセンサ 21は、熱 線式エアフローメータで構成されており、吸入空気量パラメータとしての、後述するス ロットル弁 17を通過する吸入空気量 (以下「TH通過吸入空気量」とレ、う) Gthを表す 検出信号を ECU2に出力する。
[0028] また、インタークーラ 11は、水冷式のものであり、その内部を吸気が通過する際、タ ーボチャージャ装置 10での過給動作 (加圧動作)によって温度が上昇した吸気を冷 却する。
[0029] さらに、吸気管 8のインタークーラ 11と燃料気化冷却装置 12との間に、過給圧セン サ 22が設けられている。この過給圧センサ 22は、半導体圧力センサなどで構成され 、ターボチャージャ装置 10により加圧された吸気管 8内の吸気圧、すなわち過給圧 P c (絶対圧)を表す検出信号を ECU2に出力する。
[0030] 一方、燃料気化冷却装置 12は、燃料を気化し、混合気を生成すると同時に、その 際に吸気の温度を低下させるものであり、図 4に示すように、吸気管 8の途中に設けら れたハウジング 13と、このハウジング 13内に互いに平行にかつ所定間隔を存する状 態で収容された多数の親油膜板 14 (6枚のみ図示)と、副燃料噴射弁 15などを備え ている。
[0031] この副燃料噴射弁 15は、 ECU2に接続されており、 ECU2からの制御入力により、 その燃料噴射量および燃料噴射タイミングが制御され、それにより、燃料を多数の親
油膜板 14に向かって噴射する。なお、後述するように、 ECU2により、この副燃料噴 射弁 15および主燃料噴射弁 4の双方から噴射すべき総燃料噴射量 TOUTが、ェン ジン 3の運転状態に応じて決定されるとともに、この総燃料噴射量 TOUTに占める、 主燃料噴射弁 4からの燃料噴射量の割合 (後述する主燃料噴射率 Rt_Pre)、およ び副燃料噴射弁 15からの燃料噴射量の割合が、エンジン 3の運転状態に応じて決 定される。また、親油膜板 14の表面には、燃料に対して親和性を有する親油膜が形 成されている。
[0032] 以上の構成により、この燃料気化冷却装置 12では、副燃料噴射弁 15から噴射され た燃料は、各親油膜板 14の表面でその親油性により薄膜化された後、吸気の熱によ つて気化する。それにより、混合気が生成されるとともに、その際の気化熱によって吸 気が冷却される。この燃料気化冷却装置 12による冷却効果により、充填効率を高め ること力 Sできるとともに、エンジン 3のノッキングの発生限界を拡大することができる。例 えば、エンジン 3の高負荷運転時、ノッキングが発生し始める限界の点火時期を、所 定クランク角(例えば 2deg)分、進角側に拡大することができ、それにより、燃焼効率 を向上させることができる。
[0033] また、前述したスロットル弁機構 16は、スロットル弁 17およびこれを開閉駆動する T Hァクチユエータ 18などを備えている。スロットル弁 17は、吸気管 8の途中に回動自 在に設けられており、当該回動に伴う開度の変化により TH通過吸入空気量 Gthを 変化させる。 THァクチユエータ 18は、 ECU2に接続されたモータにギヤ機構(レヽず れも図示せず)を組み合わせたものであり、 ECU2からの後述する制御入力 DUTY —thによって制御されることにより、スロットル弁 17の開度を変化させる。
[0034] また、スロットル弁 17には、これを開弁方向および閉弁方向にそれぞれ付勢する 2 つのばね(いずれも図示せず)が取り付けられており、これら 2つのばねの付勢力によ り、スロットル弁 17は、制御入力 DUTY_thが THァクチユエータ 18に入力されてい ないときには、所定の初期開度 TH_defに保持される。この初期開度 TH_defは、 全閉状態に近くかつエンジン 3の始動に必要な吸入空気量を確保できる値 (例えば 7 ° )に設定されている。
[0035] さらに、吸気管 8のスロットル弁 17の近傍には、例えばポテンショメータなどで構成
されたスロットル弁開度センサ 23が設けられてレ、る。このスロットル弁開度センサ 23 は、スロットル弁 17の実際の開度(以下「スロットノレ弁開度」という) THを表す検出信 号を ECU2に出力する。
[0036] また、吸気管 8のスロットル弁 17よりも下流側の部分は、サージタンク 8aになってお り、このサージタンク 8aに、吸気管内絶対圧センサ 24 (吸入空気量パラメータ検出手 段)が設けられている。この吸気管内絶対圧センサ 24は、例えば半導体圧力センサ などで構成され、吸入空気量パラメータとしての吸気管 8内の絶対圧(以下「吸気管 内絶対圧」という) PBAを表す検出信号を ECU2に出力する。さらに、吸気管 8のサ ージタンク 8aよりも下流側は、インテークマ二ホールド 8bになっており(図 22参照)、 このインテークマ二ホールド 8bは、 4つに分岐し、 4つの気筒 # 1一 # 4にそれぞれ連 通している。
[0037] 一方、排気管 9のタービンブレード 10bよりも下流側には、上流側から順に、第 1お よび第 2触媒装置 19a, 19bが設けられており、これらの触媒装置 19a, 19bにより、 排気ガス中の N〇x、 HCおよび COなどが浄化される。
[0038] これらの第 1および第 2触媒装置 19a, 19bの間に、酸素濃度センサ(以下「02セン サ」という) 26が設けられている。この〇2センサ 26は、ジルコニァおよび白金電極な どで構成され、第 1触媒装置 19aの下流側の排気ガス中の酸素濃度に基づく検出信 号を ECU2に出力する。
[0039] また、排気管 9のタービンブレード 10bと第 1触媒装置 19の間に、 LAFセンサ 25が 設けられている。この LAFセンサ 25は、 02センサ 26と同様のセンサとリニアライザな どの検出回路とを組み合わせることによって構成されており、リッチ領域からリーン領 域までの広範囲な空燃比の領域において排気ガス中の酸素濃度をリニアに検出して 、その酸素濃度に比例する検出信号を ECU2に出力する。 ECU2は、これらの LAF センサ 25および〇2センサ 26の検出信号に基づき、空燃比制御を実行する。
[0040] 次に、前述した可変式吸気弁駆動装置 40について説明する。図 2、図 5および図 6 に示すように、この可変式吸気弁駆動装置 40は、吸気弁駆動用の主吸気カムシャフ ト 41および副吸気カムシャフト 42と、気筒毎に設けられ、主 ·副吸気カムシャフト 41, 42の回転に伴って吸気弁 6を開閉駆動する吸気弁駆動機構 50 (1つのみ図示)と、
主吸気カム位相可変機構 60と、副吸気カム位相可変機構 70と、 3つの吸気カム間 位相可変機構 80などを備えている。
[0041] 主吸気カムシャフト 41は、シリンダヘッド 3aに回転自在に取り付けられ、気筒の配 列方向に沿って延びている。主吸気カムシャフト 41は、気筒毎に設けられた主吸気 カム 43と、一端部に設けられたスプロケット 47と、第 1気筒 # 1用の主吸気カム 43とス プロケット 47の間に設けられた主ギヤ 45と、を備えている。これらの主吸気カム 43、 主ギヤ 45およびスプロケット 47はいずれも、主吸気カムシャフト 41に同軸かつ一体 に回転するように取り付けられている。スプロケット 47は、タイミングチェーン 48を介し て、クランクシャフト 3bに連結されており、それにより、主吸気カムシャフト 41は、クラン クシャフト 3bが 2回転する毎に、図 6の時計回り(矢印 Y1で示す方向)に 1回転する。
[0042] また、主吸気カム位相可変機構 60は、主吸気カムシャフト 41のスプロケット 47側端 部に設けられている。この主吸気カム位相可変機構 60は、主吸気カムシャフト 41の スプロケット 47に対する相対的な位相、すなわち主吸気カムシャフト 41のクランタシャ フト 3bに対する相対的な位相(以下「主吸気カム位相」とレ、う) Θ miを無段階に進角 側または遅角側に変更するものであり、その詳細については後述する。
[0043] さらに、主吸気カムシャフト 41のスプロケット 47と反対側の端部には、主吸気カム角 センサ 27が設けられている。この主吸気カム角センサ 27は、クランク角センサ 20と同 様に、マグネットロータおよび MREピックアップで構成されており、主吸気カムシャフ ト 41の回転に伴い、パルス信号である主吸気カム信号を所定のカム角(例えば ldeg )毎に ECU2に出力する。 ECU2は、この主吸気カム信号および CRK信号に基づき 、上記主吸気カム位相 Θ miを算出(検出)する。
[0044] 一方、副吸気カムシャフト 42も、主吸気カムシャフト 41と同様にシリンダヘッド 3aに 回転自在に支持され、主吸気カムシャフト 41に平行に延びている。副吸気カムシャフ ト 42は、気筒毎に設けられた副吸気カム 44と、上記主ギヤ 45と同歯数でかつ同径の 副ギヤ 46とを有しており、副ギヤ 46は、副吸気カムシャフト 42と同軸に一体に回転 するようになつている。
[0045] 主ギヤ 45および副ギヤ 46はいずれも、図示しない押圧スプリングにより常に互いに 嚙み合うように押圧されているとともに、図示しないバックラッシュ補償機構により、バ
ックラッシュが発生しないように構成されている。両ギヤ 45, 46の嚙み合いにより、副 吸気カムシャフト 42は、主吸気カムシャフト 41の上記時計回りの回転に伴い、同じ回 転数で図 6の反時計回り(矢印 Y2で示す方向)に回転する。
[0046] また、副吸気カム位相可変機構 70は、副吸気カムシャフト 42のタイミングチェーン 4 8側端部に設けられており、副吸気カムシャフト 42の主吸気カムシャフト 41に対する 相対的な位相、言い換えれば第 1気筒 # 1用の副吸気カム 44の主吸気カム 43に対 する相対的な位相(以下「副吸気カム位相」という) Θ msiを無段階に変更する。この 副吸気カム位相可変機構 70の詳細については後述する。
[0047] さらに、副吸気カムシャフト 42の副吸気カム位相可変機構 70と反対側の端部には 、副吸気カム角センサ 28が設けられている。この副吸気カム角センサ 28も、主吸気 カム角センサ 27と同様に、マグネットロータおよび MREピックアップで構成されてお り、副吸気カムシャフト 42の回転に伴レ、、パルス信号である副吸気カム信号を所定の カム角(例えば ldeg)毎に ECU2に出力する。 ECU2は、この副吸気カム信号、主吸 気カム信号および CRK信号に基づき、上記副吸気カム位相 Θ msiを算出する。
[0048] また、 4つの副吸気カム 44において、第 1気筒 # 1用の副吸気カム 44は、副吸気力 ムシャフト 42と同軸に一体に回転するように取り付けられ、それ以外の第 2—第 4気 筒 # 2— # 4用の副吸気カム 44の各々は、前記吸気カム間位相可変機構 80を介し て副吸気カムシャフト 42に連結されている。これらの吸気カム間位相可変機構 80 (吸 気量可変装置、吸気カム位相可変機構)は、第 2—第 4気筒 # 2— # 4用の副吸気力 ム 44の第 1気筒 # 1用の副吸気カム 44に対する相対的な位相(以下「吸気カム間位 相」という) Θ ssi # iを、互い独立して無段階に変更するものであり、その詳細につい ては後述する。なお、吸気カム間位相 Θ ssi # iにおける記号 # iは気筒番号を表すも のであり、 # i= # 2 # 4に設定されている。この点は、以下の説明においても同様 である。
[0049] さらに、 ECU2には、 3つの # 2— # 4副吸気カム角センサ 29 31が電気的に接 続されている(図 3参照)。これらの # 2— # 4副吸気カム角センサ 29 31はそれぞ れ、第 2 第 4気筒 # 2 # 4用の副吸気カム 44の回転に伴レ、、パルス信号である # 2— # 4副吸気カム信号を所定のカム角(例えば ldeg)毎に ECU2に出力する。 E
CU2は、これらの # 2— # 4副吸気カム信号、副吸気カム信号、主吸気カム信号およ び CRK信号に基づき、上記吸気カム間位相 Θ ssi # iを算出する。
[0050] 一方、吸気弁駆動機構 50は、主 ·副吸気カム 43, 44と、吸気弁 6を開閉する吸気 ロッカアーム 51と、吸気ロッカアーム 51を支持するリンク機構 52などで構成されてい る。これらの主'副吸気カム 43, 44のカムプロフィールについては後述する。
[0051] リンク機構 52は、 4節リンクタイプのものであり、吸気弁 6とほぼ平行に延びる第 1リ ンク 53と、互いに平行に上下に設けられた 2つの第 2リンク 54, 54と、ノ ィァススプリ ング 55と、リターンスプリング 56などを備えている。この第 1リンク 53には、その下端 部に吸気ロッカアーム 51の中央部がピン 51cを介して回動自在に取り付けられてお り、上端部に回転自在のローラ 53aが設けられている。
[0052] 吸気ロッカアーム 51には、主吸気カム 43側の端部に回転自在のローラ 51aが設け られ、吸気弁 6側の端部にアジャストボルト 51bが取り付けられている。このアジャスト ボルト 5 lbの下縁と吸気弁 6の上縁との間のバルブクリアランスは、後述するような所 定値に設定されている。また、ノくィァススプリング 55は、その一端部が吸気口ッカァ一 ム 51に取り付けられ、他端部が第 1リンク 53に取り付けられている。このバイアススプ リング 55の付勢力により、吸気ロッカアーム 51は、図 6の時計回りに付勢されており、 それにより、ローラ 51aを介して主吸気カム 43に常に当接している。
[0053] 以上の構成により、主吸気カム 43が図 6の時計回りに回転すると、吸気口ッカァ一 ム 51は、ローラ 51aが主吸気カム 43のカム面上を転動することにより、主吸気カム 43 のカムプロフィールに応じて、ピン 51cを回動支点として時計回り '反時計回りに回動 する。この吸気ロッカアーム 51の回動により、アジャストボルト 51bが上下方向に往復 動し、吸気弁 6を開閉させる。
[0054] また、各第 2リンク 54は、その一端部がピン 54aを介してシリンダヘッド 3aに回動自 在に連結され、他端部が第 1リンク 53の所定部位にピン 54bを介して回動自在に連 結されている。さらに、リターンスプリング 56では、その一端部が上側の第 2リンク 54 に取り付けられ、他端部がシリンダヘッド 3aに取り付けられている。このリターンスプリ ング 56の付勢力により、上側の第 2リンク 54は、図 6の反時計回りに付勢されており、 それにより、第 1リンク 53は、ローラ 53aを介して副吸気カム 44に常に当接している。
[0055] 以上の構成により、副吸気カム 44が図 6の反時計回りに回転すると、第 1リンク 53は 、ローラ 53aが副吸気カム 44のカム面上を転動することにより、副吸気カム 44のカム プロフィールに応じ、上下方向に移動する。それにより、吸気ロッカアーム 51の回動 支点であるピン 51cが、最下位置(図 6に示す位置)と最上位置(図 15Aに示す位置 )との間で上下方向に移動する。これに伴い、吸気ロッカアーム 51が上述したように 回動する際、アジャストボルト 5 lbの往復動の位置が変化する。
[0056] また、主吸気カム 43のカム山の高さは、副吸気カム 44よりも高くなつており、主吸気 カム 43と副吸気カム 44とのカム山の高さの比は、アジャストボルト 51bからローラ 51a の中心までの距離と、アジャストボルト 51bからピン 51cの中心までの距離との比に等 しい値に設定されている。すなわち、主 ·副吸気カム 43, 44により吸気ロッカアーム 5 1が駆動された際、主吸気カム 43のカム山によるアジャストボルト 51bの上下方向の 変動量と、副吸気カム 44のカム山によるアジャストボルト 51bの上下方向の変動量が 互いに同じになるように設定されてレ、る。
[0057] 次に、前述した主吸気カム位相可変機構 60について説明する。この主吸気カム位 相可変機構 60は、図 7に示すように、ハウジング 61、 3枚羽根式のベーン 62、油圧 ポンプ 63および電磁弁機構 64などを備えている。
[0058] このハウジング 61は、前述したスプロケット 47と一体に構成されており、互いに等間 隔に形成された 3つの隔壁 61aを備えている。ベーン 62は、主吸気カムシャフト 41の スプロケット 47側の端部に同軸に取り付けられ、主吸気カムシャフト 41から外方に放 射状に延びているとともに、ハウジング 61内に回転可能に収容されている。また、ノ、 ウジング 61では、隔壁 61aとべーン 62との間に、 3つの進角室 65および 3つの遅角 室 66が形成されている。
[0059] 油圧ポンプ 63は、クランクシャフト 3bに連結された機械式のものであり、クランタシャ フト 3bが回転すると、それに伴って、エンジン 3のオイルパン 3dに蓄えられた潤滑用 のオイルを、油路 67cを介して吸い込むとともに、これを昇圧した状態で、油路 67cを 介して電磁弁機構 64に供給する。
[0060] 電磁弁機構 64は、スプール弁機構 64aおよびソレノイド 64bを組み合わせたもので あり、進角油路 67aおよび遅角油路 67bを介して、進角室 65および遅角室 66にそれ
ぞれ接続されているとともに、油圧ポンプ 63から供給された油圧を、進角油圧 Padお よび遅角油圧 Prtとして、進角室 65および遅角室 66にそれぞれ出力する。電磁弁機 構 64のソレノイド 64bは、 ECU2に電気的に接続されており、 ECU2からの制御入力 DUTY_miが入力された際、スプール弁機構 64aのスプール弁体を、制御入力 D UTY_miに応じて所定の移動範囲内で移動させることにより、進角油圧 Padおよび 遅角油圧 Prtをレ、ずれも変化させる。
[0061] 以上の主吸気カム位相可変機構 60では、油圧ポンプ 63の動作中、電磁弁機構 6 4が制御入力 DUTY_miに応じて作動することにより、進角油圧 Padが進角室 65に 、遅角油圧 Prtが遅角室 66にそれぞれ供給され、それにより、ベーン 62とハウジング 64との間の相対的な位相が進角側または遅角側に変更される。その結果、前述した 主吸気カム位相 Θ miが所定範囲(例えばカム角 45deg 60deg分の範囲)で無段 階に進角側または遅角側に変更される。なお、この主吸気カム位相可変機構 60には 、図示しないロック機構が設けられており、このロック機構により、油圧ポンプ 63から の供給油圧が低いときには、主吸気カム位相可変機構 60の動作がロックされる。す なわち、主吸気カム位相可変機構 60による主吸気カム位相 Θ miの変更が禁止され 、主吸気カム位相 Θ miがアイドル運転やエンジン始動に適した値にロックされる。
[0062] 次に、前述した副吸気カム位相可変機構 70について説明する。図 8に示すように、 この副吸気カム位相可変機構 70は、ハウジング 71、 1枚のベーン 72、油圧ピストン 機構 73およびモータ 74などを備えてレ、る。
[0063] このハウジング 71は、副吸気カムシャフト 42の上記ギヤ 46と一体に構成されており 、その内部に断面扇形のベーン室 75が形成されている。ベーン 72は、副吸気力ムシ ャフト 42のタイミングチェーン 48側の端部に同軸に取り付けられ、副吸気カムシャフト 42から外方に延びているとともに、ベーン室 75に回転可能に収容されている。この ベーン 72により、ベーン室 75は第 1および第 2ベーン室 75a, 75bに仕切られている
[0064] また、ベーン 72に、リターンスプリング 72aの一端部が取り付けられており、このリタ ーンスプリング 72の他端部は、ハウジング 71に取り付けられている。このリターンスプ リング 72aにより、ベーン 72は、図 8の反時計回りの方向、すなわち第 1ベーン室 75a
の容積を小さくする方向に付勢されてレ、る。
[0065] 一方、油圧ピストン機構 73は、シリンダ 73aおよびピストン 73bを備えている。このシ リンダ 73aの内部空間は、油路 76を介して第 1ベーン室 75aに連通しており、これら のシリンダ 73aの内部空間、油路 76内および第 1ベーン室 75a内には、作動油が充 填されている。また、第 2ベーン室 75bは、大気側に連通している。
[0066] また、ピストン 73bには、ラック 77が取り付けられており、これと嚙み合うピニオン 78 がモータ 74の回転軸に同軸に取り付けられている。モータ 74は、 ECU2に電気的に 接続されており、 ECU2からの制御入力 DUTY_msiが入力されると、ピニオン 78を 回転駆動し、それにより、ラック 77を介してピストン 73bをシリンダ 73a内で摺動させる 。それにより、第 1ベーン室 75a内の油圧 Psdが変化し、このように変化する油圧 Psd とリターンスプリング 72aの付勢力とのバランスにより、ベーン 72が時計回りまたは反 時計回りに回転する。その結果、副吸気カム位相 Θ msiが、所定範囲(後述するカム 角 180deg分の範囲)で進角側または遅角側に無段階に変更される。
[0067] 以上のように、この副吸気カム位相可変機構 70では、前述した主吸気カム位相可 変機構 60の油圧ポンプ 63および電磁弁機構 64に代えて、油圧ピストン機構 73およ びモータ 74を用いることによって、副吸気カム位相 Θ msiを変化させている。これは、 副吸気カム位相可変機構 70が各気筒への吸入空気量の調整に用いられるため、主 吸気カム位相可変機構 60よりも高い応答性が要求されることによる。したがって、畐 IJ 吸気カム位相可変機構 70において、高い応答性が必要でない場合 (例えば、後述 する吸気弁 6のバルブタイミング制御において、遅閉じ制御および早閉じ制御の一方 のみを実行すればよい場合)には、油圧ピストン機構 73およびモータ 74に代えて、 主吸気カム位相可変機構 60と同様に、油圧ポンプ 63および電磁弁機構 64を用い てもよい。
[0068] なお、図 9に示すように、副吸気カム位相可変機構 70において、ベーン 72を同図 の時計回りの方向に付勢するリターンスプリング 72bを設け、このリターンスプリング 7 2bの付勢力をリターンスプリング 72aと同じ値に設定するとともに、同図に示すベーン 72の中立位置を、副吸気カム位相 Θ msiが最も高頻度に制御される値に相当する 位置に設定してもよい。このようにすれば、副吸気カム位相可変機構 70の動作中、
ベーン 72が中立位置に保持される時間がより長くなることで、モータ 74の動作停止 時間をより長く確保でき、それにより消費電力を低減できる。
[0069] 次に、前述した吸気カム間位相可変機構 80について説明する。なお、 3つの吸気 カム間位相可変機構 80は、互いに同様に構成されているので、以下、第 2気筒 # 2 用の副吸気カム 44の吸気カム間位相 Θ ssi # 2を変更する吸気カム間位相可変機構 80を例にとって説明する。この吸気カム間位相可変機構 80は、吸入空気量の気筒 間の定常的なばらつきを調整するためのものであり、高い応答性が必要とされないも のであるので、前述した主吸気カム位相可変機構 60と一部を除いて同様に構成され ている。すなわち、吸気カム間位相可変機構 80は、図 10に示すように、ハウジング 8 1、ベーン 82、油圧ポンプ 83および電磁弁機構 84などを備えている。
[0070] このハウジング 81は、第 2気筒 # 2用の副吸気カム 44と一体に構成されており、 1 つの隔壁 81aを備えている。ベーン 82は、副吸気カムシャフト 42の途中に同軸に取 り付けられ、ハウジング 81内に回転可能に収容されている。また、ハウジング 81では 、隔壁 81aとべーン 82との間に、進角室 85および遅角室 86が形成されている。
[0071] 油圧ポンプ 83は、前述した油圧ポンプ 63と同様に、クランクシャフト 3bに連結され た機械式のものであり、クランクシャフト 3bが回転すると、それに伴って、エンジン 3の オイルパン 3dに蓄えられた潤滑用のオイルを、油路 87cを介して吸い込むとともに、 これを昇圧した状態で、油路 87cを介して電磁弁機構 84に供給する。
[0072] 電磁弁機構 84は、前述した電磁弁機構 64と同様に、スプール弁機構 84aおよびソ レノイド 84bを組み合わせたものであり、進角油路 87aおよび遅角油路 87bを介して、 進角室 85および遅角室 86にそれぞれ接続されてレ、るとともに、油圧ポンプ 83から供 給された油圧を、進角油圧 Padおよび遅角油圧 Prtとして、進角室 85および遅角室 8 6にそれぞれ出力する。電磁弁機構 84のソレノイド 84bは、 ECU2に電気的に接続さ れており、 ECU2からの制御入力 DUTY_ssi # 2が入力された際、スプール弁機構 84aのスプール弁体を、制御入力 DUTY_ssi # 2に応じて所定の移動範囲内で移 動させることにより、進角油圧 Padおよび遅角油圧 Prtをいずれも変化させる。
[0073] 以上の吸気カム間位相可変機構 80では、油圧ポンプ 83の動作中、電磁弁機構 8 4が制御入力 DUTY ssi # 2に応じて作動することにより、進角油圧 Padが進角室 8
5に、遅角油圧 Prtが遅角室 86にそれぞれ供給され、それにより、ベーン 82とハウジ ング 84との間の相対的な位相、すなわち副吸気カムシャフト 42と副吸気カム 44との 間の相対的な位相が、進角側または遅角側に変更される。その結果、前述した吸気 カム間位相 Θ ssi # 2が所定範囲(例えばカム角 30deg分の範囲)で無段階に進角側 または遅角側に変更される。なお、この吸気カム間位相可変機構 80には、図示しな レ、ロック機構が設けられており、このロック機構により、油圧ポンプ 83からの供給油圧 が低いときには、吸気カム間位相可変機構 80の動作がロックされる。すなわち、吸気 カム間位相可変機構 80による吸気カム間位相 Θ ssi # 2の変更が禁止され、吸気力 ム間位相 θ ssi # 2がその時点の制御目標値(後述する値 0)にロックされる。
[0074] なお、圧縮着火式内燃機関のように、各気筒の内部 EGR量や吸入空気量などを 高い応答性でかつ高精度に制御する必要がある場合には、吸気カム間位相可変機 構 80を、副吸気カム位相可変機構 70と同様に構成してもよい。
[0075] 次に、以上のように構成された可変式吸気弁駆動装置 40の動作について説明す る。なお、以下の説明では、主 ·副吸気カム 43, 44として、第 1気筒 # 1用のものを例 にとつて説明する。図 11は、主'副吸気カム 43, 44のカムプロフィールを説明するた めのものであり、副吸気カム位相可変機構 70により副吸気カム位相 Θ msi = 0degに 設定されているときの動作状態、すなわち副吸気カム 44と主吸気カム 43との間に位 相差がないときの動作状態を示している。
[0076] 図中の 1点鎖線で示す曲線は、主吸気カム 43が回転したときの、これと吸気ロッカ アーム 51との当接点、すなわちローラ 51aの変動量およびその変動タイミングを表し ており、図中の破線で示す曲線は、副吸気カム 44が回転したときの第 1リンク 53すな わちピン 51cの変動量およびその変動タイミングを表している。この点は、以下の図 1 2B 図 16におレ、ても同様である。
[0077] さらに、図 11に 2点鎖線で示す曲線は、比較のために、オット一サイクルで運転さ れる一般的なエンジン、すなわち膨張比と圧縮比が同じになるように運転されるェン ジンの吸気カム(以下「オット一吸気カム」という)によるアジャストボルト 5 lbの変動量 および変動タイミングを表すものである。この曲線にバルブクリアランスを加味したも の力 オット一吸気カムによる吸気弁のバルブリフト曲線に相当するので、以下の説
明では、この曲線を適宜、バルブリフト曲線という。
[0078] 同図に示すように、主吸気カム 43は、オット一吸気カムと比べて、リフト開始タイミン グすなわち開弁タイミングが同じで、リフト終了タイミングすなわち閉弁タイミングが圧 縮行程のより遅レ、タイミングとなる、いわゆる遅閉じカムとして構成されているとともに 、最大バルブリフト量となる状態が所定範囲(例えばカム角 150deg分)で継続する力 ムプロフィールを有している。なお、以下の説明においては、吸気弁 6がオット一吸気 カムよりも遅レ、タイミングおよび早いタイミングで閉弁される状態をそれぞれ、吸気弁 6 の「遅閉じ」または「早閉じ」とレ、う。
[0079] さらに、副吸気カム 44は、主吸気カム 43と比べて、開弁タイミングがより早くなるとと もに、最大バルブリフト量となる状態が上記所定範囲(例えばカム角 150deg分)で継 続するカムプロフィールを有してレ、る。
[0080] 以上のカムプロフィールを有する主.副吸気カム 43, 44により、吸気弁 6を実際に 駆動した場合の動作について、図 12A—図 16を参照しながら説明する。図 12A、 1 2Bは、副吸気カム位相 Θ msi=Odegのときの動作例を示している。なお、図 12Bの 実線で示す曲線は、アジャストボルト 5 lbの実際の変動量およびその変動タイミング を示すものであり、前述したように、これにバルブクリアランスを加味したもの力 吸気 弁 6の実際のバルブリフト量およびバルブタイミングを示すバルブリフト曲線に相当す る。したがって、以下の説明では、この曲線を、適宜、吸気弁 6のバルブリフト曲線と レ、い、アジャストボルト 5 lbの変動量およびその変動タイミングを、吸気弁 6のバルブ リフト量およびバルブタイミングという。この点は図 13B—図 16においても同様である
[0081] 図 12Aに示すように、副吸気カム位相 Θ msi = Odegのときには、主吸気カム 43が そのカム山が高い部位で吸気ロッカアーム 51に当接している期間中、副吸気カム 44 がそのカム山が高い部位で第 1リンク 53に当接する状態となる。すなわち、主吸気力 ム 43による開弁動作中、吸気ロッカアーム 51の回動支点が最下位置に保持される。 その結果、図 12Bに示すように、吸気弁 6のバルブリフト量およびバルブタイミングは 、オット一吸気カムと比べて、開弁タイミングが同じで閉弁タイミングがより遅くなり、遅 閉じカムで吸気弁 6を駆動してレ、る状態となる。
[0082] 図 13A—図 15Bはそれぞれ、副吸気カム位相可変機構 70により副吸気カム位相 Θ msi力 S90deg、 120degおよび 180degに設定されている場合の動作例を示してい る。言い換えば、副吸気カムシャフト 42の位相を主吸気カムシャフト 41に対してカム 角 90deg分、 120deg分および 180deg分、進角側にずらした場合の動作例を示し ている。また、図 16は、副吸気カム位相 0 msiを 120degから 180degに変化させた 際の動作例を示している。
[0083] 図 13Aに示すように、 e msi = 90degのときには、主吸気カム 43がそのカム山が高 い部位で吸気ロッカアーム 51に当接している期間の後半側で、副吸気カム 44は、力 ム山の高い部位ではなく低い部位で第 1リンク 53に当接する状態となる。その結果、 図 13Bに示すように、吸気弁 6の閉弁タイミングすなわち主吸気カム 43による開弁動 作の終了タイミングが、 0 msi = Odegのときよりも早くなり、前述したオット一吸気カム と同じバルブタイミングとなる。
[0084] また、 Θ msiが 90degより大きいとき、例えば図 14Aに示す Θ msi= 120degのとき には、主吸気カム 43がそのカム山が高い部位で吸気ロッカアーム 51に当接している 期間中、副吸気カム 44がカム山の高い部位で第 1リンク 53に当接する時間が上記 Θ msi= 90degのときよりも短くなる。その結果、図 14Bに示すように、吸気弁 6の閉弁 タイミングが、上述した Θ msi= 90degのときよりもさらに早くなり、オット一吸気カムと 比べて、開弁タイミングが同じで閉弁タイミングがより早くなり、早閉じカムで吸気弁 6 を駆動している状態となる。
[0085] さらに、図 16に示すように、副吸気カム位相 Θ msiを上記 120deg力ら 180degに 変化させると、主吸気カム 43がそのカム山が高い部位で吸気ロッカアーム 51に当接 している期間中、副吸気カム 44がカム山の高い部位で第 1リンク 53に当接する時間 が漸減し、その結果、吸気弁 6の閉弁タイミングが次第に早くなるとともに、吸気弁 6 のバルブリフト量もその最大値力、ら漸減する。このように、吸気弁 6のバルブリフト量が その最大値よりも小さくなるように、副吸気カム位相可変機構 70によって副吸気カム 位相 Θ msiを設定した場合、燃焼室内に流れ込む吸入空気の流速を上昇させること ができ、筒内流動をより大きくすることができる。それにより、燃焼効率を向上させるこ とができる。
[0086] そして、最終的に、 Θ msi= 180degとなったときには、図 15Aに示すように、主吸 気カム 43がそのカム山が高い部位で吸気ロッカアーム 51に当接している期間中、副 吸気カム 44は、カム山の低い部位で第 1リンク 53に当接する状態となり、その結果、 図 15Bに示すように、アジャストボルト 51bの変動量は、極めて小さい状態になるとと もに、その最大値がバルブクリアランスよりも若干、小さい値になる。その結果、 Θ msi = 180degのときには、アジャストボルト 51bにより吸気弁 6が駆動されない状態にな ることで、吸気弁 6は閉弁状態に保持される。
[0087] なお、以上の可変式吸気弁駆動装置 40では、副吸気カム位相 Θ msi = 90degのと きに、吸気弁 6のバルブリフト曲線がオット一吸気カムの場合と同じになるように構成 されている力 吸気弁 6のバルブリフト曲線がオット一吸気カムと同じになる副吸気力 ム位相 Θ msiの値は、主'副吸気カム 43, 44のカムプロフィールを変更することにより 、適宜に変更可能である。
[0088] 次に、可変式排気弁駆動装置 90について説明する。この可変式排気弁駆動装置
90は、前述した可変式吸気弁駆動装置 40と実質的に同様に構成されており、排気 弁駆動用の主排気カムシャフト 91および副排気カムシャフト 92と、気筒毎に設けられ 、主'副排気カムシャフト 91, 92の回転に伴って排気弁 7を開閉駆動する排気弁駆 動機構 100 (図 2に 1つのみ図示)と、主排気カム位相可変機構 110と、副排気カム 位相可変機構 120と、 3つの排気力ム間位相可変機構 130などを備えてレ、る。
[0089] 主排気カムシャフト 91は、気筒毎に設けられた主排気カム 93と、一体に取り付けら れた主ギヤ 95と、一端部に設けられたスプロケット 97とを備えている。このスプロケッ ト 97は、主排気カムシャフト 41のスプロケット 47と同様に、前述したタイミングチヱ一 ン 48を介して、クランクシャフト 3bに連結されている。それにより、主排気カムシャフト 91は、クランクシャフト 3bが 2回転する毎に 1回転する。
[0090] また、主排気カム位相可変機構 110は、主排気カムシャフト 91のスプロケット 97に 対する相対的な位相、すなわち主排気カムシャフト 91のクランクシャフト 3bに対する 相対的な位相(以下「主排気カム位相」という) Θ meを無段階に進角側または遅角側 に変更するものである。この主排気カム位相可変機構 110は、具体的には、前述した 主吸気カム位相可変機構 60と同様に構成されているので、その説明はここでは省略
する。
[0091] さらに、主排気カムシャフト 91のスプロケット 97と反対側の端部には、主排気カム角 センサ 32が設けられている。この主排気カム角センサ 32は、主吸気カム角センサ 27 と同様に、マグネットロータおよび MREピックアップで構成されており、主排気力ムシ ャフト 91の回転に伴レ、、パルス信号である主排気カム信号を所定のカム角(例えば 1 deg)毎に ECU2に出力する。 ECU2は、この主排気カム信号および CRK信号に基 づき、上記主排気カム位相 Θ meを算出する。
[0092] 一方、副排気カムシャフト 92は、気筒毎に設けられた副排気カム 94と、上記主ギヤ 95と同歯数の畐 IJギヤ 96とを有してレヽる。これらの主'副ギヤ 95, 96はレヽずれも、前述 した主'副ギヤ 45, 46と同様に、図示しない押圧スプリングにより常に嚙み合うように 押圧されているとともに、図示しなレ、バックラッシュ補償機構により、バックラッシュ力 S 発生しないように構成されている。両ギヤ 95, 96の嚙み合いにより、副排気カムシャ フト 92は、主排気カムシャフト 91の回転に伴い、同じ回転数で反対回りに回転する。
[0093] また、副排気カム位相可変機構 120は、副排気カムシャフト 92のギヤ 96に対する 相対的な位相、すなわち副排気カムシャフト 92の主排気カムシャフト 91に対する相 対的な(以下「副排気カム位相」という) S mseを無段階に変更するものである。この 副排気カム位相可変機構 120は、具体的には、前述した副吸気カム位相可変機構 7 0と同様に構成されているので、その説明はここでは省略する。
[0094] 一方、副排気カムシャフト 92の副排気カム位相可変機構 120と反対側の端部には 、副排気カム角センサ 33が設けられている。この副排気カム角センサ 33は、主排気 カム角センサ 32と同様に、マグネットロータおよび MREピックアップで構成されてお り、副排気カムシャフト 92の回転に伴い、パルス信号である副排気カム信号を所定の カム角(例えば ldeg)毎に ECU2に出力する。 ECU2は、この副排気カム信号、主排 気カム信号および CRK信号に基づき、上記副排気カム位相 Θ mseを算出する。
[0095] さらに、第 1気筒 # 1用の副排気カム 94は、副排気カムシャフト 92に同軸かつ一体 に回転するように取り付けられており、これ以外の第 2—第 4気筒 # 2 # 4用の副排 気カム 94の各々は、前記排気カム間位相可変機構 130を介して副排気カムシャフト 92に連結されている。これらの排気カム間位相可変機構 130は、第 2—第 4気筒 # 2
一 # 4用の副排気カム 94の、第 1気筒 # 1用の副排気カム 94に対する相対的な位 相(以下「排気カム間位相」という) Θ sse # 2— # 4を、互レ、独立して無段階に変更す るものであり、具体的には、前述した吸気カム間位相可変機構 80と同様に構成され ているので、その説明はここでは省略する。
[0096] また、図示しないが、 ECU2には、前述した # 2— # 4副吸気カム角センサ 29 31 と同様の # 2 # 4副排気カム角センサが電気的に接続されており、これらの # 2 # 4副排気カム角センサはそれぞれ、第 2 第 4気筒 # 2 # 4用の副排気カム 94の 回転に伴い、パルス信号である # 2— # 4副排気カム信号を所定のカム角(例えば 1 deg)毎に ECU2に出力する。 ECU2は、これらの # 2— # 4副排気カム信号、副排 気カム信号、主排気カム信号および CRK信号に基づき、上記排気カム間位相 Θ sse # 2— # 4を算出する。
[0097] 一方、排気弁駆動機構 100は、吸気弁駆動機構 50と同様に構成されており、主- 副排気カム 93 , 94と、排気弁 7を開閉する排気口ッカアーム 101と、排気口ッカァ一 ム 101を支持するリンク機構 102などで構成されている。主'副排気カム 93 , 94はそ れぞれ、主'副吸気カム 43 , 44と同様のカムプロフィールを有している。また、排気口 ッカアーム 101およびリンク機構 102はそれぞれ、前述した吸気ロッカアーム 51およ びリンク機構 52と同様に構成されているので、その詳細な説明は省略するが、排気 ロッカアーム 101の主排気カム 93と反対側の端部には、前述したアジャストボルト 51 bと同様のアジャストボルト 101bが取り付けられている。また、排気口ッカアーム 101 は、第 1リンク 103により回動自在に支持されている。
[0098] 次に、以上のように構成された可変式排気弁駆動装置 90の動作について説明す る。なお、以下の説明では、主'副排気カム 93 , 94として、第 1気筒 # 1用のものを例 にとつて説明する。図 1 7は、主'副排気カム 93 , 94のカムプロフィールを説明するた めのものであり、副排気カム位相可変機構 120により副排気カム位相 Θ mse = 0deg に設定されてレ、る場合の動作例を示してレ、る。
[0099] 図中の 1点鎖線で示す曲線は、主排気カム 93が回転したときの、これと排気口ッカ アーム 101との当接点の変動量およびその変動タイミングを表しており、図中の破線 で示す曲線は、副排気カム 94が回転したときの第 1リンク 103の変動量およびその変
動タイミングを表している。この点は、以下の図 18—図 21においても同様である。
[0100] さらに、同図に 2点鎖線で示す曲線は、比較のために、オット一サイクルで運転され る一般的なエンジンの排気カム(以下「オット一排気カム」という)によるアジャストボル ト 101bの変動量およびその変動タイミングを表している。この曲線にバルブクリアラン スをカ卩味したもの力 オット一排気カムによる排気弁のバルブリフト曲線に相当するの で、以下の説明では、この曲線を適宜、バルブリフト曲線という。
[0101] 同図に示すように、主排気カム 93は、オット一排気カムと比べて、その閉弁タイミン グが同じで、開弁タイミングが膨張行程のより早レ、タイミングで開弁される、いわゆる 早開けカムとして構成されているとともに、最大バルブリフト量となる状態が所定範囲 (例えばカム角 90deg分)で継続するカムプロフィールを有している。なお、以下の説 明におレ、ては、排気弁 7がオット一排気カムよりも遅レ、タイミングおよび早レ、タイミング で開弁される状態をそれぞれ、排気弁 7の「遅開け」および「早開け」という。
[0102] さらに、副排気カム 94は、主排気カム 93と比べて、開弁時間がより長ぐかつ最大 バルブリフト量となる状態がより長い所定範囲(例えばカム角 150deg分)で継続する カムプロフィールを有してレ、る。
[0103] 以上のカムプロフィールを有する主.副排気カム 93, 94により、排気弁 7を実際に 駆動した場合の動作について、図 18—図 21を参照しながら説明する。図 18は、畐 IJ 排気カム位相 Θ mse = Odegのときの動作例を示している。なお、同図の実線で示す 曲線は、アジャストボルト 101bの実際の変動量およびその変動タイミングを示すもの であり、前述したように、排気弁 7のバルブリフト曲線に実質的に相当するものである 。したがって、以下の説明では、この曲線を、適宜、排気弁 7のバルブリフト曲線とレヽ レ、、アジャストボルト 101bの実際の変動量およびその変動タイミングを、排気弁 7の バルブリフト量およびバルブタイミングという。この点は図 19一図 21においても同様 である。
[0104] 副排気カム位相 Θ mse = Odegのときには、主排気カム 93がそのカム山の高い部 位で排気口ッカアーム 101に当接している期間中、副排気カム 94がそのカム山の低 い部位で第 1リンク 103に当接する状態となる。その結果、図 18に示すように、アジャ ストボルト 101bの変動量が極めて小さい状態になり、その最大値がバルブクリアラン
スよりも若干、小さレ、値になる。したがって、 e mse = 0degのときには、アジャストボル ト 101bにより排気弁 7が駆動されない状態になることで、排気弁 7は閉弁状態に保持 される。
[0105] 図 19一図 21はそれぞれ、副排気カム位相可変機構 120により副排気カム位相 Θ mseが 45deg、 90degおよび 150degに設定されている場合の動作例を示している。 言い換えれば、副排気カムシャフト 92の位相を主排気カムシャフト 91に対してカム角 45deg分、 90deg分および 150deg分、進角側にずらした場合の動作例を示してい る。
[0106] 前述した排気弁駆動機構 100の構成により、副排気カム位相 Θ mseが大きくなるほ ど、すなわち副排気カムシャフト 92の位相を主排気カムシャフト 91に対して進角させ るほど、主排気カム 93がそのカム山の高い部位で排気口ッカアーム 101に当接して いる期間中、副排気カム 94がそのカム山の高い部位で第 1リンク 103に当接する時 間が長くなる。その結果、図 19一図 21に示すように、 Θ mseが大きくなるほど、排気 弁 7の開弁タイミングが早くなる。
[0107] 具体的には、図 19に示す Θ mse = 45degの場合には、オット一排気カムと比べて 、その閉弁タイミングが同じで開弁タイミングがより遅くなり、遅開けカムで排気弁 7を 駆動する状態となる。また、図 20に示す Θ mse = 90deg ( = Θ mseott)の場合には 、排気弁 7のバルブタイミングは、オット一排気カムによるバルブタイミングと同じにな る。さらに、 Θ mse力 S90degよりも大きレヽ場合、 ί到え ί 図 21に示す Θ mse = 150deg の場合には、オット一排気カムと比べて、その閉弁タイミングが同じで開弁タイミング 力 り早くなり、早開けカムで排気弁 7を駆動する状態となる。なお、図示しないけれ ども、 0 mse = O 60degの範囲では、 Θ mseの増大に伴レ、、排気弁 7のバルブリフ ト量も増大するように構成されてレ、る。
[0108] 一方、図 3に示すように、 ECU2には、吸気管内温度センサ 34、アクセル開度セン サ 35およびイダニッシヨン'スィッチ(以下「IG ' SW」という) 36が接続されている。こ の吸気管内温度センサ 34は、吸気管 8内の空気温度 TBを表す検出信号を ECU2 に出力し、アクセル開度センサ 35は、車両の図示しないアクセルペダルの踏み込み 量 (以下「アクセル開度」という) APを表す検出信号を ECU2に出力する。さらに、 IG
•SW36は、イグニッションキー(図示せず)操作により ON/OFFされるとともに、そ の ON/OFF状態を表す信号を ECU2に出力する。
[0109] 次に、 ECU2について説明する。この ECU2は、 I/Oインターフェース、 CPU、 R AMおよび ROMなどからなるマイクロコンピュータで構成されており、前述した各種 のセンサ 20 35および IG' SW36の検出信号に応じて、エンジン 3の運転状態を判 別するとともに、 ROMに予め記憶された制御プログラムや RAMに記憶されたデータ などに従って、後述する各種の制御処理を実行する。
[0110] なお、本実施形態では、 ECU2により、ばらつきパラメータ算出手段、補正量算出 手段、制御手段、模擬値生成手段、推定手段および同定手段が構成されている。
[0111] 図 22に示すように、制御装置 1は、 DUTY_th算出部 200、 Gcyl算出部 210、副 吸気カム位相コントローラ 220および吸気カム間位相コントローラ 230を備えており、 これらはいずれも、具体的には ECU2により構成されている。この DUTY_th算出 部 200では、後述するように、スロットル弁開度 THの目標値である目標開度 TH—c mdが、 目標吸入空気量 Gcyl— cmdに応じて算出され、さらに、この目標開度 TH— cmdに応じて、スロットノレ弁機構 16への制御入力 DUTY— thが算出される。
[0112] Gcyl算出部 210では、図 24に示す式(1)により、気筒内に吸入されたと推定される 気筒吸入空気量 Gcylが算出される。この式(1)において、 VBは吸気管内体積を、 R は所定の気体定数を、 TBは吸気管内の温度をそれぞれ表している。また、記号 nは 離散化した時間を表し、記号 (n), (n— 1)などが付いた各離散データ(時系列データ )は、所定周期(例えば TDC信号の入力同期や一定値など)でサンプリングされたデ ータであることを示している。なお、記号 (n)付きのデータは今回値であることを、記 号 (n-1)付きのデータは前回値であることをそれぞれ示している。この点は、以下の 本明細書中の他の離散データにおいても同様である。さらに、本明細書中の説明で は、離散データであることを表す記号 (n), (n— 1)などを適宜、省略する。
[0113] また、副吸気カム位相コントローラ 220は、上記 Gcyl算出部 210で算出された気筒 吸入空気量 Gcylなどに応じて、副吸気カム位相可変機構 70への制御入力 DUTY _msiを算出するものであり、その詳細については後述する。
[0114] さらに、吸気カム間位相コントローラ 230は、気筒間の吸入空気量のばらつきを補
正するために、後述するように、 3つの吸気カム間位相可変機構 80への制御入力 D UTY— ssi # 2— # 4をそれぞれ算出する。この吸気カム間位相コントローラ 230の 詳細については、後述する。
[0115] 次に、副吸気カム位相コントローラ 220について説明すると、この副吸気カム位相コ ントローラ 220は、図 23に示すように、 目標副吸気カム位相 e msi_cmdを算出する 第 1SPASコントローラ 221と、制御入力 DUTY_msiを算出する第 2SPASコント口 ーラ 225とを備えている。
[0116] この第 1SPASコントローラ 221は、以下に述べる適応予測型応答指定制御(
Self-tuning Prediction Pole Assignment Control)ァノレゴリズムにより、気筒吸入空気 量 Gcyl、 目標吸入空気量 Gcyl_cmdおよび要求駆動トノレク TRQ_engに応じて、 目標副吸気カム位相 Θ msi_cmdを算出するものであり、状態予測器 222、オンボ ード同定器 223およびスライディングモードコントローラ 224で構成されている。
[0117] まず、状態予測器 222について説明する。この状態予測器 222は、以下に述べる 予測アルゴリズムにより、気筒吸入空気量 Gcylの予測値である予測吸入空気量 Pre _Gcylを予測(算出)するものである。
[0118] まず、副吸気カム位相 Θ msiおよび気筒吸入空気量 Gcylをそれぞれ入力および 出力とする制御対象を、離散時間系モデルである ARXモデル(auto-regressive model with exogeneous input:外咅 |5入力を持つ目己回' J帚モアノレ)としてモデノレイ匕する と、図 24に示す式(2)が得られる。同式(2)において、 dは制御対象の特性によって 決まるむだ時間を表している。また、 al, a2, blはモデルパラメータを表しており、ォ ンボード同定器 223により、後述するように逐次同定される。
[0119] 次に、同式 (2)を離散時間 [d-1]分、未来側にシフトさせると、図 24の式(3)が得 られる。さらに、マトリクス A、 Bを、モデルパラメータ al , a2, blを用いて図 24に示す 式 (4) , (5)のように定義するとともに、同式(3)における左辺の未来値 [Gcyl (n + d -2) , Gcyl (n + d— 3) ]を消去するために、上式(3)の漸化式を繰り返し用いることに よって式(3)を変形すると、図 24に示す式(6)が得られる。
[0120] この式(6)を用いることで、予測吸入空気量 Pre_Gcylを算出することは可能であ るけれども、モデル次数の不足や制御対象の非線形特性などに起因して、予測吸入
空気量 Pre— Gcylに定常偏差およびモデルィヒ誤差が生じる可能性がある。
[0121] これを回避するために、本実施形態の状態予測器 222では、式(6)に代えて、図 2 4に示す式(7)により、予測吸入空気量 Pre_Gcylを算出する。この式(7)は、式 (6) の右辺に、定常偏差およびモデルィヒ誤差を補償するための補償パラメータ γ 1を加 入したものである。
[0122] 次に、オンボード同定器 223について説明する。このオンボード同定器 223は、以 下に述べる逐次型同定アルゴリズムにより、前述した予測吸入空気量 Pre_Gcylと 気筒吸入空気量 Gcylとの偏差である同定誤差 ideが最小となるように(すなわち、予 測吸入空気量 Pre_Gcylが気筒吸入空気量 Gcylに一致するように)、前述した式( 7)におけるモデルパラメータの行列成分ひ 1 , ひ 2, j3 jおよび補償パラメータ γ 1の ベクトル Θ sを同定するものである。
[0123] 具体的には、図 25に示す式(8) (13)により、ベクトル 0 s (n)を算出する。このべ タトル Θ s (n)は、その転置行列が同図の式(12)のように定義される。また、式(8)に おいて、 KPs (n)はゲイン係数のベクトルを表しており、このゲイン係数 KPs (n)は、 式(9)により算出される。この式(9)の Ps (n)は、式(10)で定義される d+ 2次の正方 行列であり、 ζ s (n)は、その転置行列が式(13)のように定義されるベクトルである。 さらに、式 (8)の同定誤差 ide (n)は、式(11)により算出される。
[0124] 以上のような同定アルゴリズムでは、式(10)の重みパラメータえ 1、 え 2の設定によ り、以下の 4つの同定アルゴリズムのうちの 1つが選択される。
すなわち、
1 = 1 , え 2 = 0 ;固定ゲインァノレゴリズム
1 = 1 , 1 2 = 1 ;最小 2乗法アルゴリズム
1 = 1 , 1 2 = λ ;漸減ゲインアルゴリズム
λ 1 = λ , 1 2 = 1 ;重み付き最小 2乗法アルゴリズム
ただし、 λは、 0く λく 1に設定される所定値。
なお、本実施形態では、同定精度およびべクトノレ Θ sの最適値への収束速度をい ずれも最適に確保するために、重み付き最小 2乗法アルゴリズムが採用されている。
[0125] 次に、スライディングモードコントローラ(以下「SLDコントローラ」という) 224につい
て説明する。この SLDコントローラ 224は、スライディングモード制御アルゴリズムに 基づいて、気筒吸入空気量 Gcylが目標吸入空気量 Gcyl— cmdに収束し、かつ副 吸気カム位相 Θ msiが基本値 Θ msi— baseに拘束されるように、 目標副吸気カム位 相 Θ msi_cmdを算出するものであり、以下、このスライディングモード制御アルゴリ ズムについて説明する。
[0126] まず、このスライディングモード制御アルゴリズムでは、制御対象モデルとして、図 2 6に示す式(14)を用いる。この式(14)は、前述した図 24の式(6)を離散時間「1」分 、未来側にシフトさせたものである。
[0127] この式(14)に示す制御対象モデルを用いた場合、切換関数 σ sは以下のように設 定される。すなわち、図 26の式(15)に示すように、追従誤差 Esを気筒吸入空気量 G cylと目標吸入空気量 Gcyl_cmdの偏差として定義すると、切換関数 σ sは、図 26 の式(16)に示すように、追従誤差 Esの時系列データ (離散データ)の線形関数とし て設定される。なお、式(16)に示す Ssは、切換関数設定パラメータを表している。
[0128] スライディングモード制御アルゴリズムでは、本実施形態のように切換関数 σ sが 2 つの状態変数 [Es (n), Es (n— 1) ]で構成されている場合、図 28に示すように、 2つ の状態変数で構成される位相空間は、これらをそれぞれ縦軸および横軸とする 2次 元の位相平面となり、この位相平面上において、 σ 3 = 0を満たす 2つの状態変数の 値の組み合わせは、数式 [Es (n) =_Ss 'Es (n-l) ]で表される切換直線と呼ばれる 直線上に載ることになる。
[0129] この数式 [Es (n) =_Ss ' Es (n— 1) ]は、入力のなレ、一次遅れ系を表しているので、 切換関数設定パラメータ Ssを、例えば一 1く Ssく 1に設定するとともに、この一次遅 れ系を安定化させると、 2つの状態変数 [Es (n), Es (n— 1) ]の組み合わせは、時間 の経過とともに、値 0となる平衡点に収束することになる。すなわち、このように追従誤 差 Esを値 0に収束させることで、気筒吸入空気量 Gcylを目標吸入空気量 Gcyl_cm dに収束させること力できる。なお、 2つの状態変数 [Es (n), Es (n_l) ]が切換直線 に漸近するまでの間を到達モードといい、これらが平衡点にスライディングする挙動 をスライディングモードとレ、う。
[0130] この場合、切換関数設定パラメータ Ssを正の値に設定すると、数式 [Es (n) =-Ss -
Es (n— 1) ]で表される一次遅れ系は振動安定系となるため、状態変数 [Es (n), Es ( n— 1) ]の収束挙動として好ましくない。したがって、本実施形態では、切換関数設定 パラメータ Ssを図 26の式(17)に示すように設定する。このように切換関数設定パラメ ータ Ssを設定した場合、図 29に示すように、切換関数設定パラメータ Ssの絶対値が 小さレ、ほど、追従誤差 Esの値 0への収束速度、すなわち気筒吸入空気量 Gcylの目 標吸入空気量 Gcyl_cmdへの収束速度が速くなる。以上のように、スライディングモ ード制御では、切換関数設定パラメータ Ssにより、気筒吸入空気量 Gcylの目標吸入 空気量 Gcyl_cmdへの収束挙動および収束速度を、任意に指定することができる。
[0131] また、これらの状態変数 [Es (n), Es (n— 1) ]の組み合わせを切換直線上に載せる ための制御入力 Uspas (n) [ = Θ msi_cmd (n) ]は、図 26の式(18)に示すように、 等価制御入力 Ueq (n)、到達則入力 Urch (n)およびバルブ制御入力 Uvt (n)の総 和として定義される。
[0132] この等価制御入力 Ueq (n)は、 [Es (n) , Es (n_l) ]の組み合わせを切換直線上に 拘束しておくためのものであり、具体的には、図 26に示す式(19)のように定義される 。この式(19)は、以下のように導出される。すなわち、図 27に示す式(22)を、前述し た式(16)に基づいて変形すると、図 27に示す式(23)が得られ、次に、この式(23) を漸化式を繰り返し用いることにより変形すると、図 27に示す式(24)が得られる。さ らに、この式(24)において、副吸気カム位相 Θ msiの項をまとめて変形すると、図 27 に示す式(25)が得られる。次いで、この式(25)において、左辺の副吸気カム位相 Θ msi (n)を等価制御入力 Ueq (n)に置き換えると同時に、前述した Pre— Gcyl (n) ^ Gcyl (n + d— 1 )の関係に基づき、右辺の気筒吸入空気量の未来値 Gcyl (n + d— 1)などを、予測値 Pre_Gcylに置き換えることにより、上記式(19)が導出される。
[0133] また、到達則入力 Urch (n)は、外乱やモデル化誤差などにより、 [Es (n), Es (n— 1) ]の組み合わせが切換直線上から外れた際に、これらを切換直線上に収束させる ためのものであり、具体的には、図 26に示す式(20)のように定義される。
[0134] さらに、バルブ制御入力 Uvt (n)は、副吸気カム位相 Θ msiをその基本値 Θ msi_ baseに拘束するためのフィードフォワード入力であり、具体的には、図 26の式(21) に示すように、基本値 Θ msi baseに等しい値として定義される。なお、この基本値
Θ msi— baseは、後述するように、要求駆動トルク TRQ— engに応じて算出される。
[0135] 以上のように、この第 1SPASコントローラ 221では、状態予測器 222において、補 償パラメータ γ 1を加えた状態予測アルゴリズムにより、予測吸入空気量 Pre— Gcyl が算出されるとともに、この補償パラメータ γ 1がオンボード同定器 223により逐次同 定されるので、前述した定常偏差およびモデル化誤差を補償しながら、予測吸入空 気量 Pre_Gcylを精度よく算出することができる。
[0136] また、 SLDコントローラ 224においては、到達則入力 Urchおよび等価制御入力 Ue qにより、追従誤差 Esを値 0に収束させることができる。すなわち、気筒吸入空気量 G cylを目標吸入空気量 Gcyl_cmdに収束させることができると同時に、その収束挙 動および収束速度を、切換関数設定パラメータ Ssの設定により任意に指定すること 力 Sできる。したがって、気筒吸入空気量 Gcylの目標吸入空気量 Gcyl_cmdへの収 束速度を、制御対象(副吸気カム位相可変機構 70などを含む吸気系)の特性に応じ た適切な値に設定することができ、それにより、制御性を向上させることができる。
[0137] これに加えて、バルブ制御入力 Uvtにより、副吸気カム位相 Θ msiをその基本値 Θ msi— baseに拘束することができると同時に、 等価制御入力 Ueqに補償パラメータ γ 1が含まれていることにより、このバルブ制御入力 Uvtの影響を補償しながら、気筒 吸入空気量 Gcylを目標吸入空気量 Gcyl— cmdに適切に収束させることができる。
[0138] 次に、前述した第 2SPASコントローラ 225について説明する。この第 2SPASコント ローラ 225は、一部を除いて前述した第 1 SPASコントローラ 221と同様の制御アルゴ リズムにより、副吸気カム位相 Θ msiおよび目標副吸気カム位相 Θ msi— cmdに応じ て、制御入力 DUTY— msiを算出するものであり、図 30に示すように、状態予測器 2 26、オンボード同定器 227およびスライディングモードコントローラ 228で構成されて いる。
[0139] この状態予測器 226は、前述した状態予測器 222と同様の予測アルゴリズムにより 、副吸気カム位相 Θ msiの予測値である予測副吸気カム位相 Pre_ Θ msiを予測( 算出)するものである。
[0140] 具体的には、制御対象モデルとして、図 31に示す式(26)を用いる。同式(26)に おいて、 dxは制御対象の特性によって決まるむだ時間を表しており、 al ' , a2 ' , bl '
はモデルパラメータを表している。また、記号 mは離散化した時間を表し、記号 (m) などの付レ、た各離散データは、前述した記号 (n)付きの離散データよりも短レ、所定周 期でサンプリングされたデータであることを示している。この点は、以下の本明細書中 の他の離散データにおいても同様であり、また、本明細書中の説明では、離散デー タであることを表す記号 (m)などを適宜、省略する。なお、上記のように、式(26)に おける各離散データのサンプリング周期が、前述した式 (2)における各離散データよ りも短い周期に設定されている理由は、第 2SPASコントローラ 225による、副吸気力 ム位相 Θ msiの目標副吸気カム位相 Θ msi_cmdへの収束速度力 第 1 SPASコン トローラ 221による、気筒吸入空気量 Gcylの目標吸入空気量 Gcyl_cmdへの収束 速度よりも遅いと、制御性の低下を招くので、これを回避し、良好な制御性を確保す るためである。
[0141] マトリクス A' , B 'を、モデルパラメータ al ', a2 ', bl 'を用いて図 31に示す式(27) , (28)のように定義するとともに、式 (26)を前述した状態予測器 222の場合と同様 に変形することにより、図 31に示す式(29)が導出される。この式(29)において、 γ, は、前述した補償パラメータ γと同様の、定常偏差およびモデル化誤差を補償する ための補償パラメータである。
[0142] また、オンボード同定器 227も、前述したオンボード同定器 223と同様の逐次型同 定アルゴリズムにより、予測副吸気カム位相 Pre— Θ msiと副吸気カム位相 Θ msiとの 偏差である同定誤差 ide 'が最小となるように (すなわち、予測副吸気カム位相 Pre_ Θ msiが副吸気カム位相 Θ msiに一致するように)、上記式(29)におけるモデルパラ メータの行列成分 α ΐ ' , α 2 ' , iS j 'および補償パラメータ γ 1 'のべクトノレ Θ s 'を同 定するものである。
[0143] 具体的には、図 32に示す式(30)— (35)により、ベクトル Θ s,(m)を算出する。こ れらの式(30)—(35)は、前述した式(8) (13)と同様に構成されているので、その 説明は省略する。
[0144] 次に、スライディングモードコントローラ(以下「SLDコントローラ」という) 228につい て説明する。この SLDコントローラ 228は、スライディングモード制御アルゴリズムに 基づいて、副吸気カム位相 Θ msiが目標副吸気カム位相 Θ msi cmdに収束するよ
うに、制御入力 DUTY— msiを算出するものである。
[0145] 具体的には、図 33の式(36)—(41)に示すアルゴリズムにより、制御入力 DUTY —msiが算出される。すなわち、同図の式(36)に示すように、追従誤差 Es'を、副吸 気カム位相 Θ msiと目標副吸気カム位相 Θ msi_cmdとの偏差として定義すると、切 換関数 a s 'および切換関数設定パラメータ Ss 'はそれぞれ、同図の式(37) (38)に 示すように定義される。また、制御入力 DUTY_msiは、同図の式(39)に示すように 、等価制御入力 Ueq'および到達則入力 Urch'の総和として定義され、等価制御入 力 Ueq'および到達則入力 Urch'はそれぞれ、同図の式(40) , (41)に示すように 定義される。式(39)に示すように、この SLDコントローラ 228では、副吸気カム位相 Θ msiを目標副吸気カム位相 Θ msi_cmdに収束するように制御すればよいので、 前述したバルブ制御入力 Uvtが、制御入力 DUTY_msiの入力成分力、ら省略され ている。
[0146] 以上のように、この第 2SPASコントローラ 225でも、状態予測器 226において、補 償パラメータ γ 1,をカ卩えた状態予測アルゴリズムにより予測副吸気カム位相 Pre— Θ msiが算出されるとともに、この補償パラメータ γ 1 'がオンボード同定器 227により逐 次同定されるので、定常偏差およびモデル化誤差を補償しながら、予測副吸気カム 位相 Pre— Θ msiを精度よく算出することができる。
[0147] また、 SLDコントローラ 227においては、到達則入力 Urch'および等価制御入力 U eq'により、副吸気カム位相 Θ msiを目標副吸気カム位相 Θ msi— cmdに収束させる ことができると同時に、その収束挙動および収束速度を、切換関数設定パラメータ Ss 'の設定により任意に指定することができる。したがって、副吸気カム位相 Θ msiの目 標副吸気カム位相 Θ msi_cmdへの収束速度を、制御対象(副吸気カム位相可変 機構 70などを含む系)の特性に応じた適切な値に設定することができ、それにより、 制御性を向上させることができる。
[0148] なお、以上の 2つの切換関数設定パラメータ Ss, Ss'において、これらを _l < Ssく Ss 'く 0の関係が成立する値に設定すると、第 2SPASコントローラ 225による制御の 速応性を、第 1SPASコントローラ 221による制御よりも高めることができ、副吸気カム 位相コントローラ 220の制御性、すなわち気筒吸入空気量 Gcylの目標吸入空気量
Gcyl— cmdへの収束性を向上させることができる。
[0149] 次に、吸気カム間位相コントローラ 230について説明する。図 34に示すように、ェ アフロ一センサ 21により TH通過吸入空気量 Gthを検出した場合、各気筒の吸気挙 動に起因して吸気の脈動も検出される。この吸気の脈動は、気筒間に吸入空気量の ばらつきが生じた場合には、同図に示すように、不規則なものとなる。なお、同図は、 第 4気筒 # 4における TH通過吸入空気量 Gthが他の気筒よりも少なレ、例を示してレ、 る。
[0150] この吸気カム間位相コントローラ 230は、上記のような気筒間の吸入空気量のばら つきを推定し、それを補正するための、 3つの吸気カム間位相可変機構 80への制御 入力 DUTY_ssi # 2 # 4をそれぞれ算出するものであり、適応オブザーバ 240、 3 つの差分器 250および吸気ばらつきコントローラ 260などで構成されている(図 22参 照)。この吸気カム間位相コントローラ 230では、以下に述べるアルゴリズムにより、適 応オブザーバ 240において、 4つの吸気量ばらつき係数 Φ # 1— # 4が気筒毎に算 出され、 3つの差分器 250において、 3つの偏差 ΕΦ # 2— # 4がそれぞれ算出され 、さらに、吸気ばらつきコントローラ 260において、 3つの制御入力 DUTY— ssi # 2 一 # 4がそれぞれ算出される。
[0151] 次に、上記適応オブザーバ 240のアルゴリズムについて説明する。まず、図 35に示 すように、エンジン 3の吸気系を、 4つの模擬値 Gcyl— OS # 1— Gcyl— OS # 4およ び 4つの吸気量ばらつき係数 Φ # 1— Φ # 4で表される系として見なす。これらの模 擬値 Gcyl— OS # i (i= l— 4)は、吸入空気の吸気開始タイミングおよび吸気挙動を 気筒毎に模擬化した値であり、吸気量ばらつき係数 Φ # i (i= l— 4)は、気筒間の吸 入空気量のばらつきおよび吸気挙動の変動分を表す値である。この系を離散時間系 モデルとしてモデル化すると、図 36に示す式 (42)が得られる。
[0152] 同式 (42)において、記号 kは離散化した時間を表しており、記号 (k)付きの各離散 データは、 TDC信号が発生する毎にサンプリングされたデータであることを示してい る(なお、離散データを、 CRK信号が発生する毎にサンプリングしたデータとしてもよ レ、)。また、 d'は、吸気管 8内を流れる空気がエアフローセンサ 21から各気筒に到達 するまでのむだ時間を表しており、本実施形態では、所定の一定値に予め設定され
る。なお、むだ時間 d'をエンジン 3の運転状態(エンジン回転数 NEなど)に応じて設 定してもよい。
[0153] 本実施形態の適応オブザーバ 240では、上記式 (42)の左辺を TH通過吸入空気 量の推定値 Gth_est (k)に置き換えた式、すなわち図 36の式(43)がモデルとして 用いられ、模擬値 Gcyl_〇S # iが、後述するように信号発生器 241により生成される とともに、式 (43)のモデルパラメータとしての吸気量ばらつき係数 Φ # iのベクトル φ (k) ヽ推定値 Gth_est (k)を TH通過吸入空気量 Gth (W )に一致させるように 、図 36の式 (44)一(50)に示す逐次型最小 2乗法アルゴリズムにより、同定される。
[0154] このべクトノレ φ (k)は、その転置行列が同図の式(49)のように定義される。また、式
(44)において、 KR (k)はゲイン係数のベクトルを表しており、このゲイン係数 KR (k) は、式 (45)により算出される。この式 (45)の R (k)は、式 (48)で定義される 4次の正 方行列であり、 ζ ' (k)は、その転置行列が式(50)のように定義されるベクトルである 。さらに、式 (44)の ide' (k)は、同定誤差を表しており、この同定誤差 ide' (k)は、式 (46) , (47)により算出される。
[0155] 以上のように、この適応オブザーバ 240では、上記式(44)一(50)に示す逐次型 最小 2乗法アルゴリズムにより、吸気量ばらつき係数 Φ # iのべクトノレ φ (k)が同定さ れる。それにより、エンジン 3の運転状態が急変することなどに伴う吸気挙動のノイズ 的な変動成分を、吸気量ばらつき係数 Φ # iから除去(フィルタリング)することができ 、ばらつきパラメータとしての吸気量ばらつき係数 Φ # iを、気筒間の吸入空気量の ばらつきを実質的に示す値として算出することができる。
[0156] 以上の適応オブザーバ 240の構成は、図 37のブロック図に示すものとなる。すなわ ち、同図に示すように、この適応オブザーバ 240では、信号発生器 241により、模擬 値 Gcyl_OS # iのべクトノレ ζ , (k)が生成される。より具体的には、この信号発生器 2 41では、図 38に示すように、模擬値 Gcyl_OS # iは、互いの和が常に値 1になるよ うに、三角波や台形波などを交互に組み合わせたような信号値として生成される。さ らに、乗算器 242において、この模擬値のベクトル ζ ' (k)に、遅延素子 243で遅延さ れた吸気量ばらつき係数のベクトル Φ (k— 1)を乗算した値として、 TH通過吸入空気 量の推定値 Gth est (k)が生成される。そして、差分器 244により、遅延素子 245で
遅延された TH通過吸入空気量 Gth(k— d')と、推定値 Gth— est(k)との偏差として 、同定誤差 ide' (k)が生成される。
[0157] また、論理演算器 246により、模擬値のベクトル ζ ' (k)に基づいて、ゲイン係数の ベクトル KR(k)が生成され、乗算器 247において、同定誤差 ide' (k)とゲイン係数の ベクトル KR(k)の積 [ide' (k) 'KR(k)]が生成される。次に、加算器 248により、積 [i de' (k) 'KR(k)]と、遅延素子 243で遅延された吸気量ばらつき係数のベクトノレ φ ( k一 1)との和として、吸気量ばらつき係数のベクトノレ φ (k)が生成される。
[0158] 以上のように、適応オブザーバ 240において、 4つの吸気量ばらつき係数 Φ # 1—
#4が算出され、前述した 3つの差分器 250では、これらの吸気量ばらつき係数 Φ # 1一 #4に基づき、図 39の式(51)により 3つの偏差 ΕΦ# 2— #4がそれぞれ算出さ れる。なお、本実施形態では、適応オブザーバ 240により、ばらつきパラメータ算出 手段、模擬値生成手段、推定手段および同定手段が構成されている。
[0159] 次に、前述した吸気ばらつきコントローラ 260について説明する。図 40に示すよう に、吸気ばらつきコントローラ 260は、 目標吸気カム間位相コントローラ 261 (補正量 算出手段)および第 3SPASコントローラ 262 (制御手段)を備えている。この目標吸 気カム間位相コントローラ 261は、気筒間の ΤΗ通過吸入空気量 Gthのばらつきを補 正するために目標吸気カム間位相 Θ ssi#i— cmd (補正量)を算出するものである。
[0160] 具体的には、 目標吸気カム間位相 Θ ssi#i— cmdは、 3つの偏差 ΕΦ #2— #4に 基づいて、図 39の式(52), (53)に示す応答指定型制御アルゴリズム (スライディン グモード制御アルゴリズムまたはバックステッピング制御アルゴリズム)により算出され る。なお、式(52)の σ ' (k)は切換関数を示している。 目標吸気カム間位相コント口 ーラ 261では、この応答指定型制御アルゴリズムにより、 ΕΦ #i(#i = 2 4)が値 0 になるように、 目標吸気カム間位相 Θ SSi#i_cmd(#i = 2 4)が算出される。言い 換えれば、第 1気筒 #1の吸気量ばらつき係数 Φ #1に、他の 3つの気筒の吸気量 ばらつき係数 Φ #2— #4がー致するように、 目標吸気カム間位相 Θ ssi#i_cmdが 算出される。
[0161] また、第 3SPASコントローラ 262では、吸気カム間位相 Θ ssi#iが上記のように算 出された目標吸気カム間位相 Θ ssi#i cmdに収束するように、吸気カム間位相可
変機構 80への制御入力 DUTY— ssi # iが算出される。この制御入力 DUTY— ssi # iは、具体的には、前述した第 2SPASコントローラ 225における制御アルゴリズムと 同じアルゴリズムにより算出されるので、その説明は省略する。
[0162] 以上のように、吸気カム間位相コントローラ 230では、 目標吸気カム間位相 Θ ssi # i _cmdが、第 1気筒 # 1の吸気量ばらつき係数 Φ # 1に他の 3つの気筒の吸気量ば らつき係数 Φ # 2— # 4がー致するように、算出され、さらに、吸気カム間位相 Θ ssi # iが目標吸気カム間位相 Θ ssi # i_cmdに収束するように、制御入力 DUTY_ssi # iが算出される。すなわち、第 2 第 4気筒 # 2 # 4の吸入空気量が第 1気筒 # 1 の吸入空気量と一致するように制御され、その結果、気筒間の吸入空気量のばらつ きを補正することができる。
[0163] なお、図 34に示すように、吸気管内絶対圧センサ 24で吸気管内絶対圧 PBAを検 出した場合でも、吸気の脈動を検出することができるので、以上の式 (42) (53)に おいて、「Gth」で表されるパラメータを「PBA」で表されるパラメータに置き換えたァ ルゴリズムと、吸気管内絶対圧センサ 24で検出された吸気管内絶対圧 PBAとを用い ることにより、気筒間の吸入空気量のばらつきを補正するための吸気カム間位相コン トローラ 230を構成することができる。
[0164] 図 41に示すように、制御装置 1は、副排気カム位相コントローラ 280をさらに備えて いる。この副排気カム位相コントローラ 280は、後述する触媒暖機制御において、副 排気カム位相可変機構 120への制御入力 DUTY— mseを算出するものであり、 目 標副排気カム位相コントローラ 281および第 4SPASコントローラ 282を備えている。
[0165] この目標副排気カム位相コントローラ 281では、エンジン回転数 NEおよび目標回 転数 NE_cmdに基づいて、 目標副排気カム位相 Θ mse_cmdが算出される。具体 的には、 目標副排気カム位相 Θ mse_cmdは、図 42の式(54) (56)に示す制御 アルゴリズムにより算出される。同図の式(54)において、 Θ mse_astは、後述するよ うに、テーブル検索により設定される目標副排気カム位相の触媒暖機用値であり、 d Θ mseは、式(55) , (56)の応答指定型制御アルゴリズム(スライディングモード制御 アルゴリズムまたはバックステッピング制御アルゴリズム)により算出される補正量を示 している。この式(55)において、 Kastr, Kastaはそれぞれ、フィードバックゲインを
示しており、 σ asttt,式(56)のように定義される切換関数を示している。また、式(5 6)において、 Sastは、 _l < Sastく 0の範囲の値に設定される切換関数設定パラメ ータであり、また、 NE— cmdは所定の一定値(例えば 1800rpm)に設定される目標 回転数である。
[0166] また、第 4SPASコントローラ 282では、副排気カム位相 Θ mseが上記のように算出 された目標副排気カム位相 Θ mse_cmdに収束するように、副排気カム位相可変機 構 120への制御入力 DUTY_ Θ mseが算出される。この制御入力 DUTY_ Θ mse は、具体的には、前述した第 2SPASコントローラ 225における制御アルゴリズムと同 じアルゴリズムにより算出されるので、その説明は省略する。
[0167] 以上のように、この副排気カム位相コントローラ 280では、エンジン回転数 NEおよ び目標回転数 NE_cmdに基づいて、 目標副排気カム位相 Θ mse_cmdが算出さ れ、この目標副排気カム位相 Θ mse_cmdに副排気カム位相 Θ mseが収束するよう に、排気カム位相可変機構 120への制御入力 DUTY— Θ mseが算出される。その 結果、エンジン回転数 NEを目標回転数 NE— cmdに精度よく制御することができる。
[0168] 以下、図 43を参照しながら、 ECU2により実行されるエンジン制御処理について説 明する。同図は、エンジン制御処理の主要な制御内容を示しており、このプログラム では、まず、ステップ 1 (図では「S1」と略す。以下同じ)において、燃料制御処理を実 行する。この燃料制御処理は、エンジン 3の運転状態に応じて、要求駆動トルク TRQ — eng、主燃料噴射率 Rt— Pre、気筒吸入空気量 Gcyl、 目標吸入空気量 Gcyl— c mdおよび燃料噴射量 TOUT— main, TOUT— subなどを算出するものであり、そ の具体的な内容は後述する。
[0169] 次いで、ステップ 2で、過給圧制御処理を実行する。この過給圧制御処理は、ェン ジン 3の運転状態に応じて、ウェストゲート弁 10dへの制御入力 Dut_wgを算出する ものであり、その具体的な内容は後述する。
[0170] 次に、ステップ 3で、吸気弁制御処理を実行する。この吸気弁制御処理は、ェンジ ン 3の運転状態に応じて、前述した各種の制御入力 DUTY_mi、 DUTY_msiおよ び DUTY_ssi # 2 # 4を算出するものであり、その具体的な内容は後述する。
[0171] 次いで、ステップ 4で、排気弁制御処理を実行する。この排気弁制御処理は、ェン
ジン 3の運転状態に応じて、前述した各種の制御入力 DUTY— me、 DUTY— mse および DUTY— sse # 2— # 4をそれぞれ算出するものであり、その具体的な内容は 後述する。
[0172] 次に、ステップ 5で、スロットル弁制御処理を実行する。このスロットル弁制御処理は 、エンジン 3の運転状態に応じて、前述した制御入力 DUTY_thを算出するもので あり、その具体的な内容は後述する。
[0173] 次いで、ステップ 6で、点火時期制御処理を実行した後、本プログラムを終了する。
この点火時期制御処理は、その詳細な説明は省略するが、エンジン 3の運転状態に 応じて、点火プラグ 5による混合気の点火時期 Θ igを算出するものである。より具体的 には、点火時期 Θ igは、エンジン 3の始動制御中は通常のアイドル運転用値 Θ igidl e (図 66参照)よりも進角側の値に設定され、始動後の触媒暖機制御中はアイドル運 転用値 Θ igidleよりも遅角側の値に設定される。すなわち、点火時期のリタード制御 が実行される。さらに、通常運転中は、エンジン 3の運転状態に応じて設定される。
[0174] 次に、図 44を参照しながら、上記ステップ 1の燃料制御処理について説明する。同 図に示すように、このプログラムでは、まず、ステップ 10において、吸排気弁故障フラ グ F— VLVNGまたはスロットル弁故障フラグ F— THNG力 S「 1」であるか否かを判別 する。この吸排気弁故障フラグ F— VLVNGは、可変式吸気弁駆動装置 40または可 変式排気弁駆動装置 90が故障しているときには「1」に、双方が正常であるときには「 0」にそれぞれ設定されるものである。また、スロットル弁故障フラグ F— THNGは、ス ロットル弁機構 16が故障しているときには「1」に、正常であるときには「0」にそれぞれ 設定されるものである。
[0175] ステップ 10の判別結果が NOで、可変式吸気弁駆動装置 40、可変式排気弁駆動 装置 90およびスロットル弁機構 16がいずれも正常であるときには、ステップ 11に進 み、要求駆動トルク TRQ_engを、エンジン回転数 NEおよびアクセル開度 APに応 じて、図 45に示すマップを検索することにより算出する。
[0176] 図中のアクセル開度 APの所定値 AP 1 3は、 AP 1 > AP 2 > AP3の関係が成立 するように設定されているとともに、所定値 APIは、アクセル開度 APの最大値すなわ ち最大踏み込み量に設定されている。同図に示すように、このマップでは、要求駆動
トルク TRQ— engは、 NE≤NER2 (所定値)の範囲では、エンジン回転数 NEが高い ほど、またアクセル開度 APが大きいほど、より大きな値に設定されている。これは、ェ ンジン 3の負荷が大きいほど、要求されるエンジントルクが大きくなることによる。なお 、 AP=AP1の場合、 NER1 (所定値)く NE≤NER2の範囲では、要求駆動トルク T RQ_engは、その最大値に設定される。さらに、 NER2< NEの範囲では、要求駆 動トルク TRQ_engは、アクセル開度 APが大きいほど、より大きな値に設定されてい ると同時に、エンジン回転数 NEが高いほど、より小さな値に設定されている。これは 、エンジン回転数 NEに対するエンジントルクの出力特性に起因する。
[0177] ステップ 11に続くステップ 12では、ステップ 11で算出した要求駆動トルク TRQ_e ngが、所定の成層燃焼運転しきい値 TRQ_discよりも小さいか否かを判別する。な お、成層燃焼運転とは、主燃料噴射弁 4による気筒内への燃料噴射を圧縮行程中に 行うことにより混合気を成層燃焼させる運転を表している。
[0178] このステップ 12の判別結果が YESで、エンジン 3を成層燃焼運転すべきときには、 ステップ 13に進み、成層燃焼運転用の目標空燃比 KCMD— discを、要求駆動トル ク TRQ— engに応じて、図示しないテーブルを検索することにより算出する。なお、こ のテーブルでは、成層燃焼運転用の目標空燃比 KCMD— discは、所定の極リーン 域の値(例えば A/F = 30— 40)に設定されてレ、る。
[0179] 次に、ステップ 14に進み、 目標空燃比 KCMDを成層燃焼運転用の目標空燃比 K CMD— discに設定した後、ステップ 15で、主燃料噴射率 Rt— Preを所定の最大値 Rtmax (100%)に設定する。これにより、後述するように、副燃料噴射弁 15による燃 料噴射が停止される。ステップ 16に進み、気筒吸入空気量 Gcylおよび目標吸入空 気量 Gcyl_cmdを算出する。
[0180] これらの気筒吸入空気量 Gcylおよび目標吸入空気量 Gcyl_cmdは、具体的には 、図 46に示すプログラムにより算出される。すなわち、まず、同図のステップ 30で、前 述した式(1)により、気筒吸入空気量 Gcylを算出する。
[0181] 次いで、ステップ 31で、 目標吸入空気量の基本値 Gcyl_cmd_baseを、エンジン 回転数 NEおよび要求駆動トルク TRQ_engに応じて、図 47に示すマップを検索す ることにより算出する。なお、このマップにおける要求駆動トルクの所定値 TRQ_eng
1一 3は、 TRQ— engl >TRQ— eng2 >TRQ— eng3の関係が成立するように設定 されている。同図に示すように、 目標吸入空気量の基本値 Gcyl— cmd— baseは、ェ ンジン回転数 NEが高いほど、または要求駆動トルク TRQ— engが大きいほど、より 大きな値に設定されている。これは、エンジン 3の負荷が大きいほど、より大きなェン ジン出力が要求されることで、より多くの吸入空気量が要求されることによる。
[0182] 次に、ステップ 32で、空燃比補正係数 Kgcyl_afを、 目標空燃比 KCMDに応じて 、図 48に示すテーブルを検索することにより算出する。このテーブルでは、空燃比補 正係数 Kgcyl_afは、 目標空燃比 KCMDがリッチ側であるほど、より小さい値に設 定されている。これは、混合気の空燃比がよりリッチ側に制御されるほど、必要な吸入 空気量がより小さくなることによる。なお、同図の値 KCMDSTは、理論空燃比に相 当する値である。
[0183] 次いで、ステップ 33に進み、 目標吸入空気量の基本値および空燃比補正係数の 積(Kgcyl—af 'Gcyl— cmd— base)を、 目標吸入空気量 Gcyl— cmdとして設定し た後、本プログラムを終了する。
[0184] 図 44に戻り、以上のようにステップ 16を実行した後、ステップ 17に進み、燃料噴射 制御処理を実行する。この燃料噴射制御処理では、具体的には、以下のように、主 · 副燃料噴射弁 4, 15への制御入力が算出される。
[0185] まず、主燃料噴射弁 4の燃料噴射量である主燃料噴射量 TOUT— main、および 副燃料噴射弁 15の燃料噴射量である副燃料噴射量 TOUT— subを算出する。すな わち、エンジン 3の運転状態および前述した目標空燃比 KCMDに基づいて、最終 的な気筒毎の総燃料噴射量 TOUTを気筒毎に算出し、次いで、下式(57), (58)に より、主 ·副燃料噴射量 TOUT_main, TOUT_subをそれぞれ算出する。
TOUT_main= [TOUT- Rt_Pre] / 100 …… (57)
TOUT.sub = [TOUT- (100-Rt_Pre) ]/l00 …… (58)
この式(58)を参照すると、 Rt_Pre = Rtmax (100%)のときには、 T〇UT_sub = 0となり、副燃料噴射弁 15による燃料噴射が停止されることが判る。
[0186] 次いで、算出された主 ·副燃料噴射量 TOUT_main, TOUT_subに応じて、図 示しないテーブルを検索することにより、主'副燃料噴射弁 4, 15への制御入力を算
出する。以上のようにステップ 17を実行した後、本プログラムを終了する。
[0187] 一方、ステップ 12の判別結果が NOのときには、エンジン 3を成層燃焼運転ではな ぐ均一燃焼運転のうちの予混合リーン運転すべきであるとして、ステップ 18に進み、 予混合リーン運転用の目標空燃比 KCMD_leanを、要求駆動トノレク TRQ_engに 応じて、図示しないテーブルを検索することにより算出する。なお、このテーブルでは 、予混合リーン運転用の目標空燃比 KCMD_leanは、所定のリーン域の値 (例えば A/F= 18 21)に設定されている。
[0188] 次いで、ステップ 19に進み、 目標空燃比 KCMDを予混合リーン運転用の目標空 燃比 KCMD_leanに設定した後、ステップ 20において、主燃料噴射率 Rt_Preを 、要求駆動トルク TRQ_engに応じて、図 49に示すテーブルを検索することにより算 出する。なお、同図を含む以下のテーブルおよびマップにおいて、要求駆動トルク T RQ_engの各種の所定値 TRQ_idle、 TRQ_disc、 TRQottおよび TRQ1— TR Q4はそれぞれ、 TRQ— idle < TRQ— disc < TRQ 1 < TRQott < TRQ2< TRQ3 く TRQ4の関係が成立する値に設定されている。また、 TRQ— idleは、所定のアイド ル運転用値を表している。
[0189] 同図に示すように、このテーブルでは、主燃料噴射率 Rt— Preは、 TRQ 1 < TRQ — engく TRQ4の範囲では、要求駆動トルク TRQ— engが大きいほど、より小さい値 に設定されている。これは、以下の理由による。すなわち、要求駆動トルク TRQ— en gが大きいほど、過給圧 Pcが高くなるように制御されることで、吸入空気の温度が上 昇するため、ノッキングが発生しやすくなる。したがって、このようなノッキングを回避 するために、副燃料噴射弁 15の燃料噴射量 TOUT— subを増大させることで、前述 した燃料気化冷却装置 12による吸入空気の冷却効果を高める必要があるので、主 燃料噴射率 Rt_Preが上記のように設定されてレ、る。
[0190] また、このテーブルでは、主燃料噴射率 Rt_Preは、要求駆動トルク TRQ_engが 所定値 TRQ4以上の範囲では、所定の最小値 Rtmin (10%)に設定され、所定値 T RQ1以下の範囲では、前述した最大値 Rtmaxに設定されている。
[0191] このステップ 20の実行後は、前述したステップ 16, 17を実行した後、本プログラム を終了する。
[0192] 一方、ステップ 10の判別結果が YESで、可変式吸気弁駆動装置 40、可変式排気 弁駆動装置 90およびスロットル弁機構 16のいずれかが故障しているときには、ステツ プ 21に進み、要求駆動トルク TRQ— engを所定の故障時用値 TRQ— f sに設定する 。この後、ステップ 22に進み、主燃料噴射率 Rt_Preを前述した最大値 Rtmaxに設 定する。次いで、前述したように、ステップ 16, 17を実行した後、本プログラムを終了 する。
[0193] 次に、図 50を参照しながら、前述した過給圧制御処理について説明する。同図に 示すように、このプログラムでは、まず、ステップ 40において、前述した吸排気弁故障 フラグ F_VLVNGまたはスロットル弁故障フラグ F_THNGが「1」であるか否かを判 別する。
[0194] この判別結果が N〇で、可変式吸気弁駆動装置 40、可変式排気弁駆動装置 90お よびスロットル弁機構 16がいずれも正常であるときには、ステップ 41に進み、ェンジ ン始動フラグ F— ENGSTART力 S「1」であるか否かを判別する。このエンジン始動フ ラグ F— ENGSTARTは、図示しない判定処理において、エンジン回転数 NEおよ び IG' SW36の出力状態に応じて、エンジン始動制御中すなわちクランキング中であ るか否かを判定することにより設定されるものであり、具体的には、エンジン始動制御 中であるときには「1」に、それ以外のときには「0」にそれぞれ設定される。
[0195] このステップ 41の判別結果が YESで、エンジン始動制御中であるときには、ステツ プ 43に進み、ウェストゲート弁 10dへの制御入力 Dut— wgを、所定の全開値 Dut— wgmaxに設定した後、本プログラムを終了する。これにより、ウェストゲート弁 10dが 全開状態に制御され、ターボチャージャ装置 10による過給動作が実質的に停止され る。
[0196] 一方、ステップ 41の判別結果が NOで、エンジン始動制御中でないときには、ステ ップ 42に進み、エンジンの始動終了直後からの経過時間で表される触媒暖機制御 の実行時間 Teatが所定値 Tcatlmt (例えば、 30sec)より小さいか否かを判別する。 この触媒暖機制御は、エンジン始動後に触媒装置 19a, 19b内の触媒を急速に活性 化させるためのものである。
[0197] このステップ 42の判別結果が YESで、 Teatく Tcatlmtのときには、ステップ 44に
進み、アクセル開度 APが所定値 APREFより小さいか否かを判別する。この所定値 APREFは、アクセルペダルが踏まれていないことを判定するためのものであり、ァク セルペダルが踏まれていないことを判定可能な値 (例えば 1° )に設定されている。
[0198] このステップ 44の判別結果が YESで、アクセルペダルが踏まれていなレ、ときには、 触媒暖機制御を実行すべきであるとして、ステップ 45に進み、上記ステップ 43と同様 に、ウェストゲート弁 10dへの制御入力 Dut_wgを、前述した全開値 Dut_wgmax に設定した後、本プログラムを終了する。
[0199] 一方、ステップ 42またはステップ 44の判別結果が NOのとき、すなわち、エンジン 始動制御中でなくかつ Tcat≥Tcatlmtであるとき、またはアクセルペダルが踏まれ ているときには、ステップ 46に進み、制御入力 Dut_wgの基本値 Dut_wg_bsを、 要求駆動トルク TRQ_engに応じて、図 51に示すテーブルを検索することにより算 出する。
[0200] 同図に示すように、このテーブルでは、基本値 Dut— wg— bsは、 TRQ1く TRQ— engく TRQ2の範囲では、要求駆動トルク TRQ— engが大きいほど、より小さい値に 設定されている。これは、要求駆動トルク TRQ— engが大きいほど、過給による充填 効率の上昇を目的として過給圧 Pcをより高める必要があるからである。また、基本値 Dut— wg— bsは、 TRQ2≤TRQ— eng≤TRQ3の範囲では、所定値に設定されて おり、これは、エンジン 3の負荷が高負荷域にあるのに応じて、過給効果を最大限に 得るためである。さらに、基本値 Dut— wg— bsは、 TRQ3く TRQ— engの範囲では 、要求駆動トルク TRQ— engが大きいほど、より小さい値に設定されており、これは、 ノッキングの発生を回避するためである。
[0201] 次いで、ステップ 47で、 目標過給圧 Pc_cmdを、要求駆動トルク TRQ_engに応 じて、図 52に示すテーブルを検索することにより算出する。同図に示すように、このテ 一ブルでは、 目標過給圧 Pc_cmdは、 TRQ_idleく TRQ_engく TRQ2の範囲 では、要求駆動トルク TRQ_engが大きいほど、より大きい値に設定されている。これ は、上述したように、過給による充填効率をより高めるためである。また、 目標過給圧 Pc_cmdは、 TRQ2≤TRQ_eng≤TRQ3の範囲では、所定の全閉値 Dut_wg minに設定されており、これは、上述したように過給効果を最大限に得るためである。
さらに、 目標過給圧 Pc— cmdは、 TRQ3く TRQ— engく TRQ4の範囲では、要求 駆動トルク TRQ— engが大きいほど、より小さい値に設定されており、これは、ノツキ ングの発生を回避するためである。なお、同図における Patmは大気圧を示しており 、この点は以下においても同様である。
[0202] 次に、ステップ 48に進み、下式(59)に示す I一 P制御アルゴリズムにより、制御入力 Dut_wgを算出した後、本プログラムを終了する。これにより、過給圧 Pcが目標過給 圧 Pc_cmdに収束するように、フィードバック制御される。
Dut_wg=Dut_wg_Ds + Kpwg'Pc + Kiwg'∑ Pc- Pc_cma) (59) ここで、 Kpwgは P項ゲインを、 Kiwgは I項ゲインをそれぞれ表している。
[0203] 一方、ステップ 40の判別結果が YESで、可変式吸気弁駆動装置 40、可変式排気 弁駆動装置 90およびスロットル弁機構 16のいずれかが故障しているときには、ステツ プ 49に進み、前述したステップ 43, 45と同様に、ウェストゲート弁 10dへの制御入力 Dut— wgを、全開値 Dut— wgmaxに設定した後、本プログラムを終了する。
[0204] 次に、図 53, 54を参照しながら、前述したステップ 3の吸気弁制御処理について説 明する。同図に示すように、このプログラムでは、まず、ステップ 60で、前述した吸排 気弁故障フラグ F— VLVNGが「1」であるか否かを判別し、この判別結果が NOで、 可変式吸気弁駆動装置 40および可変式排気弁駆動装置 90がいずれも正常である ときには、ステップ 61に進み、前述したエンジン始動フラグ F— ENGSTARTが「1」 であるか否かを判別する。
[0205] この判別結果が YESで、エンジン始動制御中であるときには、ステップ 62に進み、 主吸気カム位相 Θ miの目標値である目標主吸気カム位相 Θ mi— cmdを所定のアイ ドル用値 Θ mi_idleに設定する。
[0206] 次いで、ステップ 63に進み、 目標副吸気カム位相 e msi_cmdを所定の始動用値
Θ msi_stに設定する。この始動用値 Θ msi_stは、吸気弁 6の遅閉じ用の所定値と して設定されている。この後、ステップ 64に進み、 目標吸気カム間位相 Θ ssi # i_c md ( # i= # 2— # 4)をレ、ずれも値 0に設定する。
[0207] 次に、図 54のステップ 65に進み、主吸気カム位相可変機構 60への制御入力 DU TY miを、 目標主吸気カム位相 Θ mi cmdに応じて、図示しないテーブルを検索
することにより算出する。この後、ステップ 66で、副吸気カム位相可変機構 70への制 御入力 DUTY— msiを、 目標副吸気カム位相 S msi— cmdに応じて、図示しないテ 一ブルを検索することにより算出する。なお、このステップ 66において、後述するステ ップ 75と同様の手法により、制御入力 DUTY_msiを算出してもよい。
[0208] 次いで、ステップ 67で、吸気カム間位相可変機構 80への制御入力 DUTY_ssi # iを、 目標吸気カム間位相 Θ ssi # i_cmdに応じて、図示しないテーブルを検索する ことにより算出した後、本プログラムを終了する。
[0209] 図 53に戻り、ステップ 61の判別結果が N〇で、エンジン始動制御中でないときには 、ステップ 68に進み、前述した触媒暖機制御の実行時間 Teatが所定値 Tcatlmはり 小さいか否かを判別する。この判別結果が YESであるときには、ステップ 69に進み、 アクセル開度 APが所定値 APREFより小さいか否かを判別する。
[0210] このステップ 69の判別結果が YESで、アクセルペダルが踏まれていなレ、ときには、 触媒暖機制御を実行すべきであるとして、ステップ 70に進み、 目標主吸気カム位相 Θ mi— cmdを前述した所定のアイドル用値 Θ mi— idleに設定する。
[0211] 次いで、ステップ 71に進み、 目標副吸気カム位相の触媒暖機用値 Θ msi— cwを、 前述した触媒暖機制御の実行時間 Teatに応じて、図 55に示すテーブルを検索する ことにより算出する。同図における値 e msiottは、吸気弁 6のバルブタイミングがォッ トー吸気カムと同じになる副吸気カム位相 Θ msiのオット一位相値(=カム角 90deg) を示しており、この点は以下の説明においても同様である。
[0212] 次に、ステップ 72で、 目標副吸気カム位相 Θ msi— cmdを上記触媒暖機用値 Θ m si— cwに設定した後、ステップ 73で、上記ステップ 64と同様に、 目標吸気カム間位 相 Θ ssi # i_cmd ( # i= # 2 # 4)をレ、ずれも値 0に設定する。
[0213] 次いで、図 54のステップ 74に進み、主吸気カム位相可変機構 60への制御入力 D UTY_miを、 目標主吸気カム位相 Θ mi_cmdおよび主吸気カム位相 Θ miに応じ て、算出する。この制御入力 DUTY_miは、前述した第 2SPASコントローラ 225に よる制御アルゴリズムと同じアルゴリズムにより算出される。
[0214] 次いで、ステップ 75で、第 2SPASコントローラ 225の制御アルゴリズムにより、副吸 気カム位相可変機構 70への制御入力 DUTY msiを算出する。すなわち、前述し
た式(29)の予測アルゴリズム、式(30)—(35)の同定アルゴリズム、および式(36) 一(41)のスライディングモード制御アルゴリズムをそれぞれ適用することにより、制御 入力 DUTY_msiを算出する。
[0215] 次に、ステップ 76で、第 3SPASコントローラ 262の制御アルゴリズムにより、ステツ プ 73で算出した目標吸気カム間位相 Θ ssi # i_cmdおよび吸気カム間位相 Θ ssi # iに応じて、吸気カム間位相可変機構 80への制御入力 DUTY_ssi # i ( # i= # 2 # 4)を算出した後、本プログラムを終了する。なお、この制御入力 DUTY_ssi # iは 、前述したように、第 2SPASコントローラ 225の制御アルゴリズム、すなわち上記制 御入力 DUTY_msiの算出に用いる制御アルゴリズムと同じアルゴリズムにより算出 される。
[0216] 図 53に戻り、ステップ 68またはステップ 69の判別結果が N〇のとき、すなわち、ェ ンジン始動制御中でなくかつ Tcat≥Tcatlmtであるとき、またはアクセルペダルが踏 まれているときには、ステップ 77に進み、 目標主吸気カム位相の通常運転値 Θ mi— drvを、要求駆動トルク TRQ— engおよびエンジン回転数 NEに応じて、図 56に示す マップを検索することにより算出する。
[0217] 同図において、エンジン回転数 NEの所定値 NE1— NE3はそれぞれ、 NE1 >NE 2 >NE3の関係が成立するように設定されており、この点は、以下においても同様で ある。このマップでは、通常運転値 Θ mi— drvは、要求駆動トルク TRQ— engが大き レ、ほど、またはエンジン回転数 NEが高いほど、より進角側の値に設定されている。こ れは、エンジン負荷が高いほど、主吸気カム位相 Θ miを進角させ、吸気弁 6の開閉 タイミングを進角させることにより、エンジン出力を適切に確保するためである。
[0218] 次に、ステップ 78で、 目標主吸気カム位相 Θ mi_cmdを上記通常運転値 Θ mi_ drvに設定した後、ステップ 79に進み、前述した副吸気カム位相の基本値 Θ msi_b aseを、要求駆動トルク TRQ_engに応じて、図 57に示すテーブルを検索することに より算出する。
[0219] 同図に示すように、このテーブルにおいて、基本値 Θ msi_baseは、 TRQ_eng く TRQ_discの範囲、すなわちエンジン 3の成層燃焼運転域では、遅閉じ側の一定 値に設定されている。これは、成層燃焼運転を実行するような低負荷域での燃焼状
態を安定させるためである。また、基本値 Θ msi— baseは、 TRQ_disc≤TRQ_en g≤TRQottの範囲では、基本値 Θ msi— baseは、要求駆動トルク TRQ— engが大 きいほど、遅閉じ度合いが小さくなるように設定されている。これは、要求駆動トルク T RQ_engが大きいほど、吸気弁 6の遅閉じ度合いに起因するインテークマ二ホール ド内への燃料の吹き戻し量がより大きくなるので、それを回避するためである。また、 TRQ_eng =TRQottのときには、基本値 Θ msi_baseがオット一位相値 Θ msiott に設定されている。
[0220] さらに、基本値 Θ msi_baseは、 TRQottく TRQ_engく TRQ2の範囲では、要 求駆動トルク TRQ_engが大きいほど、早閉じ度合いが大きくなるように設定されて おり、これは、高膨張比サイクル運転によって燃焼効率を高めるためである。
[0221] また、 TRQ2≤TRQ_engく TRQ4の範囲では、基本値 Θ msi_baseは、要求駆 動トルク TRQ_engが大きいほど、吸気弁 6の早閉じ度合いが小さくなるように設定さ れている。これは、以下の理由による。すなわち、 TRQ2≤TRQ— engく TRQ4のよ うな高負荷域では、後述するように、ノッキングの発生を回避するために過給動作が 制限されるので、そのような過給動作の制限により充填効率が低下した状態で、吸気 弁 6の早閉じ度合いを大きい状態に制御すると、発生トルクの低下を招いてしまう。し たがって、このような発生トルクの低下を補償するために、要求駆動トルク TRQ— en gが大きいほど、吸気弁 6の早閉じ度合いが小さくなるように設定されている。
[0222] ステップ 79に続くステップ 80では、前述した第 1 SPASコントローラ 221の制御アル ゴリズムにより目標副吸気カム位相 Θ msi— cmdを算出する。すなわち、前述した式( 7)の予測アルゴリズム、式(8)—(13)の同定アルゴリズム、および式(15)—(21)の スライディングモード制御アルゴリズムを適用することにより、 目標副吸気カム位相 Θ msi― cmd"¾r算出する。
[0223] 次いで、ステップ 81で、前述した吸気カム間位相コントローラ 230の制御アルゴリズ ムにより、 目標吸気カム間位相0 3 # 1_0:111(1 ( # 1= # 2 # 4)を算出する。すなわ ち、式 (44)一(50)の同定アルゴリズムにより、吸気量ばらつき係数 Φ # 1— Φ # 4が 同定され、式(51)により、これらの吸気量ばらつき係数 Φ # 2 Φ # 4と吸気量ばら つき係数 Φ # 1との偏差 Ε Φ # 2— Ε Φ # 4が算出され、式 (52), (53)の応答指定
型制御アルゴリズムにより、これらの偏差 Ε Φ # 2— # 4が値 0に収束するように、 目標 吸気カム間位相 Θ ssi # i— cmdが算出される。次に、前述したように図 54のステップ 74— 76を実行した後、本プログラムを終了する。
[0224] 図 53に戻り、ステップ 60の判別結果が YESで、可変式吸気弁駆動装置 40または 可変式排気弁駆動装置 90が故障しているときには、ステップ 82に進み、 目標主吸気 カム位相 Θ mi_cmdを所定のアイドル用値 Θ mi_idleに設定した後、ステップ 83に 進み、 目標副吸気カム位相 Θ msi_cmdを所定の故障用値 Θ msi_fsに設定する。
[0225] 次いで、ステップ 84に進み、前述したステップ 64, 73と同様に、 目標吸気カム間位 相 Θ ssi # i_cmd ( # i= # 2 # 4)をレ、ずれも値 0に設定する。この後、前述したよ うに、図 54のステップ 65— 67を実行した後、本プログラムを終了する。
[0226] 次に、図 58, 59を参照しながら、前述したステップ 4の排気弁制御処理について説 明する。同図に示すように、このプログラムでは、まず、ステップ 90で、前述した吸排 気弁故障フラグ F— VLVNGが「1」であるか否かを判別し、この判別結果が NOで、 可変式吸気弁駆動装置 40および可変式排気弁駆動装置 90がいずれも正常である ときには、ステップ 91に進み、前述したエンジン始動フラグ F— ENGSTARTが「1」 であるか否かを判別する。
[0227] この判別結果が YESで、エンジン始動制御中であるときには、ステップ 92に進み、 主排気カム位相 Θ meの目標値である目標主排気カム位相 Θ me— cmdを所定のァ イドル用値 Θ me— idleに設定する。
[0228] 次いで、ステップ 93に進み、 目標副排気カム位相 6 mse— cmdを所定の始動用値
Θ mse— stに設定する。この始動用値 Θ mse— stは、排気弁 7の遅開け用の所定値 として設定されている。この後、ステップ 94に進み、 目標排気カム間位相 Θ sse # i_ cmd ( # i= # 2 # 4)をレ、ずれも値 0に設定する。
[0229] 次に、図 59のステップ 95に進み、主排気カム位相可変機構 110への制御入力 DU TY_meを、 目標主排気カム位相 e me_cmdに応じて、図示しないテーブルを検 索することにより算出する。この後、ステップ 96で、副排気カム位相可変機構 120へ の制御入力 DUTY_mseを、 目標副排気カム位相 Θ mse_cmdに応じて、図示し ないテーブルを検索することにより算出する。なお、このステップ 96において、後述
するステップ 106と同様の手法により、制御入力 DUTY— mseを算出してもよい。
[0230] 次いで、ステップ 97で、排気カム間位相可変機構 130への制御入力 DUTY— sse
# iを、 目標排気カム間位相 Θ sse # i—cmdに応じて、図示しないテーブルを検索す ることにより算出した後、本プログラムを終了する。
[0231] 図 58に戻り、ステップ 91の判別結果が N〇で、エンジン始動制御中でないときには 、ステップ 98に進み、前述した触媒暖機制御の実行時間 Teatが所定値 Tcatlmはり 小さいか否かを判別する。この判別結果が YESのときには、ステップ 99に進み、ァク セル開度 APが所定値 APREFより小さいか否かを判別する。
[0232] この判別結果が YESで、アクセルペダルが踏まれてレ、ないときには、触媒暖機制 御を実行すべきであるとして、ステップ 100に進み、 目標主排気カム位相 Θ me_cm dを前述した所定のアイドル用値 Θ me_idleに設定する。
[0233] 次いで、ステップ 101に進み、前述した触媒暖機制御の実行時間 Teatに応じて、 図 60に示すテーブルを検索することにより、 目標副排気カム位相の触媒暖機用値 Θ mse— astを算出する。同図において、 Θ mseottは、排気弁 7のバルブタイミングが 、オット一排気カムによるものと同じになる副排気カム位相 Θ mseのオット一位相値( = 90deg)を示している。同図に示すように、触媒暖機用値 Θ mse— astは、触媒暖 機制御の実行時間 Teatが所定値 Tcatrefに達するまでの間は遅開け側の値に設定 され、それ以降は早開け側の値に設定される。このように早開け側の値に設定される 理由は、膨張行程の途中で排気弁 7を開弁することにより、高温の排気ガスを触媒装 置 19a, 19bに供給し、それにより、触媒装置 19a, 19b内の触媒の早期活性化を図 るためである。
[0234] ステップ 101に続くステップ 102では、 目標副排気カム位相の補正量 d Θ mseを、 前述した式(55) , (56)の応答指定型制御アルゴリズムにより算出する。
[0235] 次に、ステップ 103に進み、上記ステップ 101, 102で算出した Θ mse_ast,d Θ m seを用い、前述した式(54)により目標副排気カム位相 Θ mse_cmdを算出する。
[0236] 次いで、ステップ 104で、ステップ 94と同様に、 目標排気カム間位相 Θ sse # i_c 111(1 ( # 1= # 2—# 4)をぃずれも値0に設定した後、図 59のステップ 105に進み、主 排気カム位相可変機構 110への制御入力 DUTY meを、 目標主排気カム位相 Θ
me— cmdおよび主排気カム位相 Θ meに応じて、算出する。この制御入力 DUTY— meは、前述した第 2SPASコントローラ 225の制御アルゴリズムと同じアルゴリズムに より算出される。
[0237] 次に、ステップ 106で、第 4SPASコントローラ 282の制御アルゴリズムにより、畐 lj排 気カム位相可変機構 120への制御入力 DUTY_mseを算出する。すなわち、前述 したように、第 2SPASコントローラ 225の制御アルゴリズムと同じアルゴリズムにより、 制御入力 DUTY_mseを算出する。
[0238] 次いで、ステップ 107に進み、 目標排気カム間位相 e sse # i_cmdおよび排気力 ム間位相 Θ sse # iに応じて、排気カム間位相可変機構 130への制御入力 DUTY_ sse # i ( # i= # 2— # 4)を算出した後、本プログラムを終了する。なお、この制御入 力 DUTY_sse # iは、上記制御入力 DUTY_mseの算出に用いる制御アルゴリズ ムと同じアルゴリズムにより算出される。
[0239] 図 58に戻り、ステップ 98またはステップ 99の判別結果が NOのとき、すなわち、ェ ンジン始動制御中でなくかつ Tcat≥Tcatlmtであるとき、またはアクセルペダルが踏 まれているときには、ステップ 108に進み、 目標主排気カム位相の通常運転値 Θ me — drvを、要求駆動トルク TRQ— engおよびエンジン回転数 NEに応じて、図 61に示 すマップを検索することにより算出する。
[0240] 同図に示すように、このマップでは、通常運転値 Θ me— drvは、要求駆動トルク TR Q— engが大きいほど、またはエンジン回転数 NEが高いほど、より進角側の値に設 定されている。これは、エンジン負荷が高いほど、主排気カム位相 Θ meを進角させ、 排気弁 7の開閉タイミングを進角させることにより、排気の掃気効率を高め、エンジン 出力を適切に確保するためである。
[0241] 次に、ステップ 109で、 目標主排気カム位相 Θ me_cmdを上記通常運転値 Θ me _drvに設定した後、ステップ 110に進み、 目標副排気カム位相 Θ mse_cmdを、所 定値 Θ mse_baseに設定する。この所定値 Θ mse_baseは、排気弁 7のバルブタイ ミングがオット一排気カムと同じになるような値(90deg)に設定されている。
[0242] ステップ 110に続くステップ 111では、要求駆動トルク TRQ_engおよびエンジン 回転数 NEに応じて、図示しないマップを検索することにより、 目標排気カム間位相
0 6 # 1—0111(1 ( # 1= # 2—# 4)を算出する。このマップでは、 目標排気カム間位 相 Θ SSe # i— cmdは、排気系の脈動効果による掃気効率の気筒間のばらつきを補 償するような値に設定されている。次に、図 59のステップ 105— 107を前述したように 実行した後、本プログラムを終了する。
[0243] 図 58に戻り、ステップ 90の判別結果が YESで、可変式吸気弁駆動装置 40または 可変式排気弁駆動装置 90が故障しているときには、ステップ 112に進み、 目標主排 気カム位相 Θ me_cmdを前述した所定のアイドル用値 Θ me_idleに設定した後、 ステップ 113に進み、 目標副排気カム位相 Θ mse_cmdを所定の故障用値 Θ mse _fsに設定する。この所定の故障用値 Θ mse_fsは、排気弁 7のバルブタイミングが オット一排気カムと同じになるような値(90deg)に設定されている。
[0244] 次いで、ステップ 114に進み、前述したステップ 94, 104と同様に、 目標排気カム 間位相 Θ sse # i_cmd ( # i= # 2— # 4)をレ、ずれも値 0に設定する。この後、前述 したように、図 59のステップ 95— 97を実行した後、本プログラムを終了する。
[0245] 次に、図 62を参照しながら、前述したステップ 5のスロットル弁制御処理について説 明する。同図に示すように、このプログラムでは、まず、ステップ 120で、前述した吸 排気弁故障フラグ F— VLVNGが「1」であるか否かを判別し、この判別結果が NOで 、可変式吸気弁駆動装置 40および可変式排気弁駆動装置 90がレ、ずれも正常であ るときには、ステップ 121に進み、前述したエンジン始動フラグ F— ENGSTARTが「 1」であるか否かを判別する。
[0246] この判別結果が YESで、エンジン始動制御中であるときには、ステップ 122に進み 、 目標開度 TH— cmdを所定の始動用値 THcmd— stに設定する。この所定の始動 用値 THcmd_stは、後述するアイドル用値 THcmd_idleよりも若干、大きい値に 設定されている。次いで、ステップ 123に進み、スロットノレ弁機構 16への制御入力 D UTY_thを算出した後、本プログラムを終了する。この制御入力 DUTY_thは、具 体的には、 目標開度 TH_cmdに応じて、図示しないテーブルを検索することにより 算出される。
[0247] 一方、ステップ 121の判別結果が NOで、エンジン始動制御中でないときには、ステ ップ 124に進み、前述した触媒暖機制御の実行時間 Teatが所定値 Tcatlmはり小さ
いか否かを判別する。この判別結果が YESのときには、ステップ 125に進み、ァクセ ル開度 APが所定値 APREFより小さいか否かを判別する。
[0248] このステップ 125の判別結果が YESで、アクセルペダルが踏まれてレ、なレ、ときには
、触媒暖機制御を実行すべきであるとして、ステップ 126に進み、 目標開度の触媒暖 機用値 THcmd_astを、前述した触媒暖機制御の実行時間 Teatに応じて、図 63に 示すテーブルを検索することにより算出する。
[0249] 図中の値 THcmd_idleは、アイドル運転のときに用いられるアイドル用値を示して いる。同図に示すように、このテーブルでは、触媒暖機用値 THcmd_astは、実行 時間 Teatが所定値 Tcatlに達するまでの間は、実行時間 Teatが短いほど、より大き い値に設定され、実行時間 Teatが所定値 Tcatlに達した後は、アイドル用値 THcm d_idleに設定されている。
[0250] 次いで、ステップ 127に進み、 目標開度 TH_cmdを上記触媒暖機用値 THcmd
— astに設定し、次に、前述したようにステップ 123を実行した後、本プログラムを終 了する。
[0251] 一方、ステップ 124またはステップ 125の判別結果が NOのとき、すなわちエンジン 始動制御中でなくかつ Tcat≥Tcatlmtであるとき、またはアクセルペダルが踏まれ ているときには、ステップ 128に進み、 目標開度の通常運転値 THcmd— drvを、要 求駆動トルク TRQ— engおよびエンジン回転数 NEに応じて、図 64に示すマップを 検索することにより算出する。
[0252] 同図に示すように、このマップでは、通常運転値 THcmd— drvは、要求駆動トルク TRQ— engが大きいほど、またはエンジン回転数 NEが高いほど、より大きい値に設 定されている。これは、エンジン 3の負荷が高いほど、より大きなエンジン出力を確保 するために、より多量の吸入空気が必要とされることによる。
[0253] 次に、ステップ 129で、 目標開度 TH_cmdを上記通常運転値 THcmd_drvに設 定し、次いで、前述したように、ステップ 123を実行した後、本プログラムを終了する。
[0254] 一方、ステップ 120の判別結果が YESで、可変式吸気弁駆動装置 40または可変 式排気弁駆動装置 90が故障しているときには、ステップ 130に進み、 目標開度の故 障用値 THcmd fsを、アクセル開度 APおよびエンジン回転数 NEに応じて、図 65
に示すマップを検索することにより算出する。同図に示すように、このマップでは、故 障用値 THcmd— fsは、アクセル開度 APが大きいほど、またはエンジン回転数 NE が高いほど、より大きい値に設定されている。これは、上記通常運転値 THcmd— dr vの算出で説明した内容と同じ理由による。
[0255] 次いで、ステップ 131に進み、 目標開度 TH_cmdを上記故障用値 THcmd_fsに 設定し、次に、前述したように、ステップ 123を実行した後、本プログラムを終了する。
[0256] なお、以上の制御処理により、各種の制御入力 DUTY_mi, DUTY_msi, DU TY_ssi # i, DUTY_me, DUTY_mse, DUTY_sse # i, DUTY_thは、算 出結果に応じたデューティ比のパルス信号、電流信号および電圧信号のレ、ずれか 1 つに設定される。
[0257] 以上のようなエンジン制御を実行した際の動作について、図 66を参照しながら、ェ ンジン始動および触媒暖機制御中の動作を中心に説明する。
[0258] 同図に示すように、エンジン始動制御中(tO— tl)は、 目標副吸気カム位相 Θ msi — cmdが、所定の始動用値 Θ msi— stに設定される(ステップ 63)ことで、副吸気力 ム位相 Θ msiが遅閉じ側の値に制御されると同時に、 目標開度 TH— cmdが所定の 始動用値 THcmd— stに設定される(ステップ 122)ことで、スロットル弁開度 THが半 開状態に制御される。それにより、気筒吸入空気量 Gcylは、エンジン始動可能な程 度の小さい値に制御される。このように、始動の際、スロットル弁 17の絞りのみでは制 御不能な気筒吸入空気量 Gcylを、過不足なくエンジン始動可能な値まで抑制するこ とができるので、それに応じて燃料噴射量を低減できる。その結果、排気ガスボリユー ムを低減することができ、始動制御中の未燃成分の総排出量を低減することができる
[0259] また、 目標副排気カム位相 Θ mse_cmdが所定の始動用値 Θ mse_stに設定さ れる(ステップ 93)ことで、副排気カム位相 Θ mseが遅開け側に制御され、それにより 、燃焼ガスが気筒内により長く保持されることで、排気ガス中の未燃 HCを低減するこ とができる。さらに、 目標空燃比 KCMDが理論空燃比に相当する値 KCMDSTより も若干、リッチ側の値に制御され、かつ点火時期 Θ igが通常のアイドル運転用値 Θ ig idleよりも進角側の値に制御されることにより、混合気の着火性を向上させることがで
きる。
[0260] 以上のエンジン始動制御により、エンジン 3が完全始動(完爆)すると(時刻 tl)、触 媒暖機制御が実行される。具体的には、 目標副吸気カム位相 Θ msi— cmdが触媒 暖機用値 Θ msi_cwに設定される (ステップ 72)ことにより、副吸気カム位相 Θ msiは 、遅閉じ側の値からオット一位相値 e msiottに近づくように制御される。それにより、 吸気弁 6の遅閉じ度合いが減少することにより、気筒吸入空気量 Gcylが増大するよう に制御され、それにより、排気ガスボリュームが増大する。また、 目標副排気カム位相 Θ mse_cmdが、触媒暖機用値 Θ mse_astと補正量 d Θ mseの和に設定される(ス テツプ 103)ことにより、副排気カム位相 Θ mseは、遅開け側から早開け側に変化す るように制御されることにより、圧縮行程中の高温の排気ガスが排出される。これに加 えて、点火時期 Θ igが所定値 d Θ ig分、リタードされることにより、排気ガス温度が高 められる。以上により、触媒装置 19a, 19b内の触媒を早期に活性化することができる
[0261] また、 目標空燃比 KCMDがリーン側の値に制御されることにより、未燃 HCを低減 すること力 Sできる。さらに、エンジン回転数 NEは、 目標回転数 NE— cmdになるように 制御される。
[0262] さらに、触媒暖機制御の終了以降(時刻 t2以降)は、要求駆動トルク TRQ— engな どの運転状態に応じ、前述したプログラムに基づレ、て通常運転制御が実行される。
[0263] 次に、通常運転制御中の動作について、図 67を参照しながら、下記の(L1)一(L6 )の要求駆動トルク TRQ— engの範囲毎に説明する。
[0264] (L 1 ) TRQ— idle≤ TRQ— eng < TRQ— discの範囲
この範囲では、前述した基本値 Θ msi_baseの設定により、副吸気カム位相 Θ msi が遅閉じ側のほぼ一定の値に制御される。また、スロットル弁 17により吸入空気量が 絞られないことで、吸気管内絶対圧 PBAは、大気圧 Patmよりも若干低いほぼ一定 値に制御される。さらに、気筒吸入空気量 Gcylがほぼ一定値に制御される。また、主 燃料噴射率 Rt_Preが最大値 Rtmaxに設定され、 目標空燃比 KCMDが前述した 極リーン域の値に設定されるとともに、成層燃焼運転が実行される。
[0265] (L2) TRQ disc≤TRQ eng≤TRQlの範囲
この範囲では、前述した基本値 Θ msi_baseの設定により、副吸気カム位相 Θ msi は、上記 (L1)の範囲のときの値よりもかなり遅閉じ側の値に制御されるとともに、要求 駆動トルク TRQ— engが大きいほど、遅閉じ度合いがより小さくなるように制御される 。また、気筒吸入空気量 Gcylは、上記(L1)の範囲のときの値よりも小さい値に制御 されるとともに、要求駆動トルク TRQ_engが大きいほど、より大きい値になるように制 御される。さらに、 目標空燃比 KCMDは、上記 (L1)の範囲の値よりもリッチ側の前 述したリーン域の値を保持するように制御され、吸気管内絶対圧 PBAおよび主燃料 噴射率 Rt_Preはいずれも、上記(L1)の範囲での値を保持するように制御される。
[0266] (L3) TRQ 1く TRQ_eng≤ TRQottの範囲
この範囲では、前述した基本値 Θ msi_baseの設定により、副吸気カム位相 Θ msi は、上記(L2)の範囲と同様の傾向に制御される。特に、 TRQ_eng=TRQottのと きには、副吸気カム位相 Θ msiは、オット一位相値 Θ msiottになるように制御される。 すなわち、エンジン 3はオット一サイクルで運転される。また、 目標空燃比 KCMDお よび気筒吸入空気量 Gcylも、上記 (L2)の範囲と同様の傾向に制御される。さらに、 この範囲では、ターボチャージャ装置 10による過給動作が実行され、それにより、吸 気管内絶対圧 PBAは、要求駆動トルク TRQ— engが大きいほど、より高い値になる ように制御される。また、主燃料噴射率 Rt— Preは、要求駆動トルク TRQ— engが大 きいほど、より小さい値になるように制御される。すなわち、要求駆動トルク TRQ— en gが大きいほど、副燃料噴射弁 15の燃料噴射量 TOUT— subがより大きい値になる ように制御される。これは、燃料気化冷却装置 12による吸入空気の冷却効果を得る ためである。
[0267] (L4) TRQottく TRQ_eng < TRQ2の範囲
この範囲では、副吸気カム位相 Θ msiは、要求駆動トノレク TRQ_engが大きいほど 、より早閉じ度合いが大きくなるように制御される。これは、前述したように、高膨張比 サイクル運転によって燃焼効率を高めるためである。また、気筒吸入空気量 Gcyl、 目 標空燃比 KCMD、主燃料噴射率 Rt_Preおよび吸気管内絶対圧 PBAは、上記 (L 3)の範囲と同様の傾向を示すように制御される。特に、吸気管内絶対圧 PBAは、上 記と同様に、要求駆動トルク TRQ_engが大きいほど、より高い値になるように制御さ
れている。これは、副吸気カム位相 Θ msiが早閉じ側に制御されると、発生トルクの低 下を招いてしまうので、その補償を目的として過給により充填効率を高め、発生トルク を増大させるためである。
[0268] (L5)TRQ2≤TRQ_engく TRQ4の範囲
この範囲では、副吸気カム位相 Θ msiは、要求駆動トノレク TRQ_engが大きいほど 、より早閉じ度合いが小さくなるように制御され、その結果、有効圧縮体積が増大する 。これは、前述したように、過給動作の制限により充填効率が低下した状態で、吸気 弁 6の早閉じ度合いを大きい状態に制御すると、発生トルクの低下を招いてしまうの で、上記のように副吸気カム位相 Θ msiを制御することにより、発生トルクの低下を補 償するためである。
[0269] また、吸気管内絶対圧 PBAは、 TRQ2≤TRQ_eng≤TRQ3の範囲では、一定 値を維持するように制御され、 TRQ3く TRQ_engく TRQ4の範囲では、要求駆動 トルク TRQ— engが大きいほど、より低い値になるように制御される。さらに、主燃料 噴射率 Rt— Preは、上記(L3)の範囲と同様に、要求駆動トルク TRQ— engが大き レ、ほど、より小さい値になるように制御される。以上のように、この(L5)の範囲では、 要求駆動トルク TRQ— engが大きいほど、ターボチャージャ装置 10による過給動作 が制限されると同時に、燃料気化冷却装置 12による冷却効果が上昇するように制御 されることにより、点火時期のリタード制御を行うことなぐノッキングの発生を回避する こと力 Sできる。なお、従来のターボチャージャ装置付きのエンジンの場合、この(L5) の範囲では、点火時期のリタード制御を実行しないと、ノッキングが発生してしまう。
[0270] (L6)TRQ4≤TRQ— engの範囲
この範囲では、極高負荷域であることにより、上述したターボチャージャ装置 10によ る過給動作の制限、および燃料気化冷却装置 12による冷却効果では、ノッキングの 発生を回避できないので、点火時期のリタード制御が実行される。すなわち、 目標空 燃比 KCMDは、要求駆動トノレク TRQ_engが大きいほど、リッチ側になるように制御 される。これと同時に、副吸気カム位相 Θ msiは、オット一位相値 Θ msiottになるよう に制御され、気筒吸入空気量 Gcylはほぼ一定になるように制御され、主燃料噴射率 Rt Preは最小値 Rtminに制御され、吸気管内絶対圧 PBAは、ほぼ一定値を維持
するように制御される。
[0271] 以上のように、本実施形態の制御装置 1によれば、吸気カム間位相コントローラ 23 0では、適応オブザーバ 240により、吸気量ばらつき係数 Φ #iが算出され、 目標吸 気カム間位相コントローラ 261により、この吸気量ばらつき係数 Φ #iに応じて、 目標 吸気カム間位相 Θ ssi#i_cmdが算出され、第 3SPASコントローラ 262により、 目標 吸気カム間位相 Θ ssi#i_cmdに応じて、制御入力 DUTY_ssi#iが算出される。 この適応オブザーバ 240では、 TH通過吸入空気量の推定値 Gth_estと模擬値 Gc yl_〇S #iの関係を定義した式(42)のモデルに基づき、推定値 Gth_estが TH通 過吸入空気量 Gthに一致するように、モデルパラメータとしての吸気量ばらつき係数 Φ #iが、逐次型最小 2乗法によりリアルタイムに同定される。これにより、エンジン 3の 運転状態が急変することなどに伴う吸気挙動のノイズ的な変動成分を、吸気量ばら つき係数 Φ #iから除去(フィルタリング)することができ、吸気量ばらつき係数 Φ #iを 、気筒間の空燃比のばらつきを実質的に示す値として算出することができるとともに、 エアフローセンサ 21の応答ばらつきおよび経年変化などによって、制御対象として の吸気系の動特性が変化したときでも、吸気系の動特性の変化をモデルに反映させ ながら、吸気量ばらつき係数 Φ #iを算出することができる。
[0272] したがって、そのような吸気量ばらつき係数 Φ #iに応じて算出した制御入力 DUT Y— ssi#2— #4で、吸気カム間位相可変機構 80を制御することにより、気筒間の吸 入空気量のばらつきを適切に補正し、吸収することができる。その結果、安定余裕が 大きぐロバスト性の高い吸入空気量制御を実現することができ、高負荷域を含む通 常の運転負荷域でも、トルク変動および回転変動の発生を回避できるとともに、安定 した燃焼状態を確保することができ、その結果、運転性および排気ガス特性をいず れも向上させることができる。
[0273] また、 目標吸気カム間位相コントローラ 261では、式(52), (53)の応答指定型制 御アルゴリズムにより、偏差 ΕΦ #i(#i=2— 4)が値 0になるように、 目標吸気カム間 位相 Θ ssi#i_cmd(#i = 2 4)が算出されるので、振動的およびオーバーシユー ト的な挙動を回避しながら迅速かつ安定した状態で、第 1気筒 # 1の吸気量ばらつき 係数 Φ #1に、他の 3つの気筒の吸気量ばらつき係数 Φ #2— #4を一致させること
ができる。すなわち、気筒間の吸入空気量のばらつきを、振動的およびオーバーシュ ート的な挙動を回避しながら迅速かつ安定した状態で吸収することができる。それに より、運転性および排気ガス特性をより一層、向上させることができる。
[0274] さらに、吸入空気量のばらつきを制御するデバイスとして、副吸気カムシャフト 42と 副吸気力ム 44の間の位相を変更する油圧駆動式の吸気カム間位相可変機構 80を 用いているので、例えば、吸気弁 6の弁体をソレノイドの電磁力で駆動するタイプのも のを用いた場合と比べて、より高負荷域でも吸気弁 6を確実に開閉することができ、 消費電力を低減できるとともに、吸気弁 6の動作音を低減することができる。
[0275] なお、副吸気カム位相可変機構 70において、高い応答性が要求されない場合 (例 えば、前述した吸気弁制御処理において、吸気弁 6を遅閉じ側または早閉じ側の一 方にのみ制御すればよい場合)には、油圧ピストン機構 73およびモータ 74に代えて 、主吸気カム位相可変機構 60と同様に、油圧ポンプ 63および電磁弁機構 64を用い てもよレ、。その場合には、制御装置 1を、図 68に示すように構成すればよい。
[0276] 同図に示すように、この制御装置 1では、実施形態における DUTY— th算出部 20 0および副吸気カム位相コントローラ 220に代えて、 DUTY— msi算出部 300および スロットル弁開度コントローラ 301が設けられている。この DUTY— msi算出部 300で は、要求駆動トルク TRQ— engに応じて、テーブルを検索することにより、 目標副吸 気カム位相 Θ msi— cmdを算出した後、この算出した目標副吸気カム位相 Θ msi— c mdに応じて、テーブルを検索することにより、制御入力 DUTY— msiが算出される。 また、スロットル弁開度コントローラ 301では、気筒吸入空気量 Gcylおよび目標吸入 空気量 Gcyl— cmdに応じて、前述した第 1SPASコントローラ 221と同じ制御アルゴ リズムにより、 目標開度 TH_cmdを算出した後、この算出した目標開度 TH_cmd に応じて、第 2SPASコントローラ 225と同じ制御アルゴリズムにより、制御入力 DUT Y_thが算出される。以上のように構成した場合、副吸気カム位相可変機構 70の応 答性が低いときでも、その影響を回避しながら、副吸気カム位相 Θ msiを適切に制御 すること力 Sできる。
[0277] また、実施形態は、吸入空気量パラメータとして TH通過吸入空気量 Gthを、吸入 空気量パラメータ検出手段としてエアフローセンサ 21を用いた例である力 S、吸入空
気量パラメータおよびその検出手段はこれに限らず、吸入空気量を表すパラメータ およびそれを検出できるものであればよい。例えば、前述したように、吸入空気量パ ラメータとして吸気管内絶対圧 PBAを、その検出手段として吸気管内絶対圧センサ 2 4を用レ、、式(42) (53)において、「Gth」で表されるパラメータを「PBA」で表され るパラメータに置き換えたアルゴリズムを用いれてもよい。
[0278] さらに、実施形態は、吸気量可変装置として副吸気カム 44の副吸気カムシャフト 42 に対する位相を変更する吸気カム間位相可変機構 80を用いた例であるが、吸気量 可変装置はこれに限らず、気筒内に吸入される吸入空気量を変更可能なものであれ ばよレ、。例えば、吸気量可変装置として、吸気弁 6の弁体をソレノイドの電磁力で駆 動する電磁式動弁機構を用いてもょレ、。
[0279] また、本発明の吸入空気量制御装置は、実施形態の車両用の内燃機関に限らず、 船舶用などの各種の内燃機関に適用可能である。
産業上の利用の可能性
[0280] 以上のように、本発明の内燃機関の吸入空気量制御装置は、気筒間の吸入空気 量のばらつきを適切に補正し、それにより、高負荷域を含む通常の運転負荷域でも、 運転性および排気ガス特性をいずれも向上させる吸入空気量制御装置として、車両 用の内燃機関を含む各種の内燃機関に用いることができる。