明 細 書
核酸分子を使用 した情報処理方法
技術分野 '
本発明は、 DNA コ ン ピ ュータに関する。
背景技術 '
生体分子が持つ性質を利用する非常にユニーク な試みと し て、 DNA コ ンピュータが知 られている。 DNA コ ン ピュータ と は、 DNA の配列上に入力値や計算プロ グラムなどを人為的に 組み込んでやり 、 その DNA分子に対して様々 な反応、 たと え ば DNA修飾酵素や制限酵素などの酵素反応や核酸同士のハイ プリ ッ ド形成反応な どを う ま く 組み合わせる こ と によって計 算を実行する ものである。
DNA コ ン ピュータの歴史は、 1994年に Adlemanカ DNAを使 用 した実験系で数学的な問題を解く こ とが可能である と実証 し 7こ こ と によ り 台ま つ に (dleman LM、 Molecular computation ot solutions to combinatorial oroblems. 、 Science 、
( USA) 、 1994 年、 266(5187)卷、 ρ·1021-4)。 こ の研究で Adleman は、 有向ハ ミ ル ト ン経路問題とい う数学的な問題を DNA 分子な どを使用 した実験系で解いたのである。 またその 翌年には、 Lipton が DNA コ ン ピュータを使用 した充足可能 性問題の解法を報告 した (Lipton RJ、 DNA solution of hard computational problems.、 " Science 、 ( USA) 、 1995 年、 268(5210)卷、 p.542-5)。 DNA コ ン ピュ ータ の計算アルゴ リ ズ ムはその後にも多く の種類のものが考案され、 単一 DNA分子 上 で の 伸 長反応 を利 用 し た技術 (Sakamoto K, Gouzu H,
Komiya K, Kiga D, Yokoyama S, Yokomori T, Hagiya M、 Molecular computation by DNA hairpin formation. 、
"Science" 、 (USA) 、 2000 年、 288(5469)卷、 p.1223-6、 akamoto K, Kiga D, Komiya K, Gouzu H, Yokoyama S, Ikeda S, Sugiyama H, Hagiya M、 State transitions by molecules.、
" Biosystems" 、 1999 年、 52(1-3)巻、 p.81-91)や一本鎖 DNA 分子上のヘア ピン構造を利用 した も の (akamoto K, Kiga D, Komiya K, Gouzu H, Yokoyama S, Ikeda S, Sugiyama H, Hagiya M、 State transitions by molecules.、 Biosystems" 、 1999 年、 52(1 -3)巻、 p.81-91 )、 DNA をメ モ リ ーと して利用 し 固相上で適切な解を探し出す技術や (Liu Q, Wang L, Frutos AG, Condon AE, Corn RM, Smith LM
DNA computing on surfaces.、 Nature" 、 (英) 、 2000 年、 403(6766)卷、 p.175-9、 ang L, Hall JG, Lu M, Liu Q, Smith LM
A DNA computing readout operation based on structure- specific cleavage.、 Nat Biotechnol" 、 (英) 、 2001 年、 19(11)卷、 p.1053-9) プラス ミ ドへの 2 本鎖 DNA の揷入 ' 切 出 しを利用する方法な ど多様な方法が考え られている。 また、 その他でも DNAではな く RNA を使用 した分子コ ンピュータや
( Faulhammer D, Cukras AR, Lipton RJ, Landweber LF
Molecular computation: RNA solutions to chess problems.、
" Proc Natl Acad Sci " 、 ( USA J 、 2000 年、 97(4)卷、 p.1385-9) 、 DNA の 自 己組織化によ るナノ構造を利用 した技 術 (Mao C, LaBean TH, Relf JH, Seeman NC 、 Logical
computation using algorithmic self-assembly of DNA triple- crossover molecules. 、 " Nature " ( 英 ) 、 2000 年 、 407(6803)卷、 p.493-6)な ども報告されてお り 、 DNA コ ン ビ ュ ータが包括する範囲は広が り つつある といえる。
Adlema の研究を始めとする従来の多く の DNA コ ン ビユ ー タ技術は、 特定配列の DNA分子な どを入力データ と して扱い、 その後の生物化学的な操作ステ ッ プのプロ ト コルでプロ ダラ ムを規定している。 最近ではロボッ ト を使用 した各種反応の 自動化技術に よ る大規模計算実現の研究も行なわれている (特開 2 0 0 2 — 3 1 8 9 9 2 号公報、 特開 2 0 0 2 — 1 8 1 8 1 3 号公報、 Morimoto N, Kiyohara H, Sugimura N, Karaki S, Nakajima T, Makino T, Nishida N, Suyama A、 Automated processing system for gene expression profiling based on DNA computing technologies. 、 Eighth International Meeting on DNA Based Computers 、 ( Japan) 、 2002 年、 Hokkaido University、 Suyama A、 Programmable DNA computer with application to mathematical and biological problems. 、 " Eighth International Meeting on DNA Based Computers" 、 ( Japan) 、 2002 年、 Hokkaido University) D これとは異なる方向性と して、 自律的に動作する分子コ ン ビ ユ ータ も研究されている。 これはプロ グラムを進める上で反 応液に対して外から操作を加える必要がな く 、 入力データお よび計算プロ グラムを DNA分子と して反応液中に与える と、 一定条件下で自律的に動作して計算結果を出力する も のであ り 、 チューリ ングマシンをモデルに開発された分子コ ン ビュ
ータ技術力 S発表さ れた (Benenson Y, Paz-Elizur T, Adar R, Keinan E, Livneh Z, Shapiro E Programmable and autonomous computing machine made of biomolecules. " Nature "
(英) 、 2001 年、 414(6862)卷、 p.430-4)。 自律的に稼動す る分子コ ン ビュータ は 、 生体細胞内な ど従来の ンピュータ では不可能であつた環境で計算を実行するポテンシャルを有 する こ と力 ら注目 を集めている。
これら DNA ン ピュータ研究の 的は、 主に大規模な並列 計算を実現する とい う こ と にある すなわち 試験管の中に は非常に多数の DNA分子が存在可能であ り その DNA分子一 つ一つに計算の初期値や計算プロ グラム 自身等をあ らカゝじめ 組み込んでおき 、 それら DNA分子の集合体に対して一斉に計 算のプロ セス と なる化学反応を行な う こ と によつて、 非常に 多岐にわたる初期値ない し計算プ グラムによる計算を一度 に並列して行な う こ と ができ る とい う アイ丁ァである。 この よ う に、 DNA ン ピュ ータ の系が持つ特長である並列性を利 用 して並列計算などの数学的計算を効率的に行な う 系を開発 する 目的で研究が行なわれてきた
生体反応を数学的目的で応用する研究は そのユニーク な 発想とポテンシャノレから広く 関心を集める ちのの 、 具体的な 応用技術と なる と研究は未発達であ り 、 その将来性は未知数 である とい う のが現状である。 特に ¾ 1 よる従来型の コ ン ピュータの処理能力は年々拡大してお り れと比べて 分子コ ン ビュ タが処理能力や正確性などの面で上回る こ と は非常に困難である と考え られる 従来型の ン ピュ ータ と
は異なる、 分子コ ン ピュータの有用性を発揮でき る適応分野 が開拓される こ と が望まれる。 その よ う な中で、 最近では
DNA コ ン ピュータを遺伝子の発現解析や SNPs 解析に役立て よ う と す る 研究の動 き が 出 て い る (Nishida N, Wakui M, Tokunaga K, Suyama A、 Hignly specific and quantitative gene expression profiling based on DNA computing.、 Genome Informatics" 、 2001 年、 (12)卷、 p.259-260、 Mills AP Jr、 Gene expression profiling diagnosis through DNA molecular computation.、 " Trends Biotechnol" 、 2002 年、 20(4)卷ヽ p.137-40) れは生体分子を直接入力データ と して扱える 分子 ンピュ タ特有の性質を生かした応用分野と して有望 である しかしなが ら生体の解析に応用可能な分子コ ンピュ 一タ と して従来提案されてきたものは自律的に稼動する の ではな < 、 その応用範囲も限られていた。
核酸分子が含有する情報にアクセスする手段と して核酸 士のノヽィブリ ダィゼーシ ョ ン反応が利用されるがヽ 一 /ス情報 にァクセ スする とその部位に核酸同士の安定なハィプリ V ド、 が形成される こ とからそのままでは再びア ク セスできな < な る。 しかしなが ら、 核酸が含有する情報を利用 した分子 ン ピュ一タ を構成する際には繰り 返し連鎖的に情報にァクセス でき る - と が望ま しい。 そのためには、 ひと たび二本鎖と な つてァクセス不能と なった核酸分子上の情報を、 再ぴァクセ ス可能にするプ口セスが必要と なる。 従来の多く の DNA ン ピュ一タは、 熱を加えて核酸を変性させる こ と によ り このプ πセスを実現している。 しかしこの方法では外部からの温度
コ ン ト ロールが必須と な り 、 自律型分子コ ンピュータは実現 しない。 自律型分子コ ンピュータ を実現するためには、 二本' 鎖の核酸に閉 じ込め られた情報を、 酵素な どの分子反応など を活用する こ と で再ぴアクセス可能とする こ とが鍵と なる。 Shapiro ら の分子コ ン ピ ュ ータ (Y. Benenson et al、 DNA molecule provides a computing machine with both data and fuel、
" Proc. Natl. Acad. Sci." 、 2003 年ヽ 100巻、 p.2191-6)はヽ 制限酵素の切断で二本鎖 DNAから一本鎮 DNAの切断面を露出 させる こ と によ り 、 自律型分子 ンピュータの実現を成功さ せた例がある。
発明の開示
上記のよ う な状況に鑑み、 本発明はヽ 自律的に稼働する こ とができ る核酸分子を使用 した情報処理方法おょぴ該方法に よって演算を行 う ための分子コ ンピュ タ を提供する こ と を 目的とする。
上記のよ う な状況に鑑み、 本発明はヽ 自律的に稼働する こ とができ る核酸分子を使用 した情報処理方法および該方法に よって演算を行う ための分子コ ンピュ一タを提供する こ と を 目的とする。
課題を解決するための手段
上記の課題は、 た と えば以下の方法によ り 実現される。 す なわち、 本発明は、 分子の化学反応によ り 、 引数を受け取り 戻り 値を返す関数による演算を行う情報処理方法であって、
( a ) 分解可能な第 1 の一本鎖核酸に対応付けて定義され た第 1 の符号化核酸を引数と して入力 し 、
( b ) 前記引数に基づき、 演算用核酸の化学反応に対応付 けて定義された関数による演算を行い、
( c ) 第 2 の一本鎖核酸に対応付けて定義された第 2 の符 号化核酸を戻り値と して得る こ と、
を特徴とする情報処理方法を提供する。
図面の簡単な説明
図 1 は、 レ ト ロ .ウ ィ ルス のゲノ ム複製サイ ク ルの模式図を 示す。
図 2は、 本発明の方法の基本的な処理を示す処理フローを 示す。
図 3 は、 本発明の方法の基本的な処理を示す処理フ ローを 示す。
図 4 A〜 4C は、 分子コ ン ピュータに使用する反応の模式図 を示す。
図 5 A、 5 B は、 本発明の情報処理方法の概念図を示す。 図 6A〜 6Eは、 各種基本関数の模式図を示す。
図 7A〜 7C は、 遺伝子のコ ー ド化と論理演算による遺伝子 解析方法の模式図を示す。
図 8 A〜 8 C は、 ニューラ ル ■ ネ ッ ト ワーク による遺伝子解 析方法の概略を示す。
図 9 A、 9B は、 FRET による検出のための演算用核酸を示 す。
図 1 0 は、 高温反応条件における RN A依存 DN A ポリ メ ラ ーゼ活性の測定結果を示す。
図 1 1 は、 高温反応条件における DNA依存 RNA ポリ メ ラ
ゼ活性の測定結果を示す。
図 12 は、 高温反応条件における DN A依存 DN A ポ V メ ラ
―ゼ活性の測定結果を示す。
図 13 は、 本発明の方法において使用 した TGTP-P 1 プラィ マ一の概略図を示す。
図 14 は、 TGTP-P1 プライマーを使用 した伸長の活性と特 異性を示す電気泳動写真である。
図 15 は、 TGTP 遺伝子の発現を検出するための遺伝子の 一ド化関数の概略図を示す。
図 16 は、 TGTP 遺伝子の発現を検出するための関数によ る演算の出力結果を示す。
図 17 は、 TGTP 遺伝子の発現を検出するための関数によ る演算の出力結果を示す。
図 18 は、 複数の RN A分子にまたがる経路の逆転写反応に 使用 した符号化核酸の概略図を示す。
図 19 は、 複数の RN A分子にまたがる経路の逆転写反応の 反応産物の電気泳動写真を示す。
図 20 は、 論理演算反応のための演算用核酸の概略図を示 す
図 21 は、 論理演算反応の結果を示す。
図 22 は、 TGTP 遺伝子のセ ンス鎖 RNA を増幅するための
Amplify関数に使用する演算用核酸を示す。
図 23 は、 TGTP 遺伝子のセンス鎖 RNA を増幅するための Amplify関数による演算結果の電気泳動写真を示す。
図 24 は、 関数を多層に重ねた場合の反応の一例を示す。
図 25 は、 反応産物中の Code[4,5,6]RNAの検出結果を示す。 図 26 は、 反応産物中の Code[3,2]RNA の検出結果を示す。 発明を実施するための最良の形態
上記の課題を解決すべく 鋭意研究を行った結果、 以下の思 想に基づいて本発明を完成する に至った。
RNA ゲノ ム を有する ゥイ ノレス の一種である レ ト 口 ウイノレス は、 宿主細胞内にてゲノ ム複製を行な う こ とが知られている (図 1 )。 RNA ゲノ ムの複製は、 逆転写酵素の RNA 依存 DNA ポ リ メ ラーゼ活性によ り RNA を cDNA へと逆転写する こ と によ つて開始する。 これは細胞内の tRNA がゲノ ム上の primer binding site (PBS)に特異的に結合してプライマーと して働 く こ と によって開始される。 こ こから逆転写反応が開始され、 一度ゲノ ムの 3 '末端まで cDNA が合成された後、 さ らにゲノ ム 5'末端への鎖の転移と それに続く 逆転写反応が行なわれ る。 その結果、 全長ゲノ ムの第 1 鎖 cDNA が形成される (Mak et a 1. Primer tRNAs for reverse transcription. J Virol 1997 Nov;71 (ll) :8087_95)。 开$成された DNA-RNAハイプリ ッ ドの う ち の RNA 鎖は逆転写酵素の RNaseH 活性によ り 除去さ れる。 残された一本鎖 DNAは、 さ ら に DNA依存 DNAポリ メ ラ ーゼ活性によ り 二本鎖 DNA と な り 、 これがゲノ ムに組み込ま れてプロモータ部位からゲノ ム配列が転写される。 その結果、 も と のゲノ ム と 同一の配列を有するゲノ ム RNAが生成される。 なお、 細胞内に存在する long terminal repeat (LTR) レ 卜 口 ト ラ ンス ポゾ ンな ども同等の機構によ り 配列を複製する こ とが知られてお り 、 2 本鎖 DNA 上の配列を 1 本鎖 RNAへと転
写した後、 再び逆転写および DNA2 本鎖化がなされて複製さ れ (Wi lhe lm Reverse transcription of retroviruses and LTR retrotransposons. Cell Mol Life Sci 2001 Aug ;58 (9): 1246-62)。
上記レ ト ロ ウ イ ルス のゲノ ム複製は、 4 つの特徴的な反応 によ り 構成されている。 第 1 は、 RNA 依存 DNA ポ リ メ ラーゼ 活性によ る逆転写反応である。 第 2 は、 DNA 依存 DNA ポ リ メ ラーゼ活性によ る DNA2 本鎖化反応である。 第 3 は、 DNA 依 存 RNAポ リ メ ラーゼ活性に よ る転写反応である。 また、 逆転 写反応お よ び DNA2 本鎖化反応の際に、 RNaseH 活性に よ り
DNA-RNA ハイ ブ リ ッ ドの RNA 鎖が除去される こ と も完全長ゲ ノ ムを複製する上で重要な役割を有する。 この 4種の反応の 組み合わせによ り 、 ゲノ ム増幅は実現している このよ う な 一連のシステムを一種の ンピュ一タ と捉える と 、 レ 卜 口 ゥ イ ノレスは 、 宿主細胞と い ノヽ一 ウェア内における上目己 4種 の反応活性を活用 して、 白 らのゲノ + ム RNA と い う 入力に対し て、 複製された同一配列の RNA を返すと い う プ グラ ムを実 行している と 見なすこ と ができ る
また、 上記 4つの反応を巧みに組み合わせる と によ り 、 レ ト ロ ゥイ ノレス の 自 己ゲノ ム複製プロ ダラ ム と は異なつたプ ロ グラ ムを実行させる こ と も可能である と 考 られる。 そこ で、 本発明は、 これら 4つの反応によ って構成される分子コ ンピュー ·> - タ の設計を試みた で設計した分子コ ン ビュ ' ~ タ は、 RNA 依存 DNA ポ リ メ ラ一ゼ活性、 DNA 依存 DNA ポ リ メ ラーゼ活性、 DNA 依存 RNA ポ リ メ ラーゼ活性および RNaseH
活性を |PJ時に実現する反応液をハ一 ドウエア と して使用する。
―、、
この中に入力了ータ と しての RNA サンプルを与え、 RNA 分子 を引数 よび戻 り値とする 「関数 J による演算を行う。 本発 明では 、 のノヽ 一 ドウ ア中で動作する基本的な関数と して、 いく つかの例を定義した。 さ らに 、 これらの関数を適宜糸且み 合わせる と によ り 、 プロ ダラムを構成する こ と が可能と な
、虫
り 、 伝子発現解析な どにも応用でき る。 このよ う な分子コ ンピュ一タは 、 導入するプログラムによ り 異なる効果を示す こ と がでさ る o したがつて、 プ グラム可能な汎用分子コン ピュ一タである といえる。
また レ 卜 ウィルスのゲノ ム増幅システムは逆転写反応 一
活性ヽ DNA 本鎖化反応活性、 転写反応活性および RNaseH 活性よ り 構成されるがヽ この機構を自律的な分子コ ンビユー タに応用するにあた り 最も特徴的な反応と して、 転写反応活 性と RNaseH 活性を挙げる こ とができ る。 レ ト ロ ウイルス型 の分子コ ンビュ ' ~~タでは 、 二本鎖 DNA分子から一本鎖 RNA を 精製する転写反応活性と 、 DNA-RNA ハイプリ ッ ド力、ら RNA 鎖 のみを取り 除いて一本鎖 DNA を残す RNaseH 活性と が、 分子 ンピュータ を自律型に稼動させるための鍵と なる。
上述の思想からヽ 本発明は、 DNA 依存 DNA ポリ メ ラーゼ活 性 、 RNA依存 DNA ポ V メ ラーゼ活性および DNA依存 RNA ポリ メ ラーゼ活性などのポ V メ ラーゼ活性および RNas eH 活性等 を有する酵素による分子の化学反応を利用 して、 自律的な反
J心の実行を実現し 、 引数を受け取り 戻 り値を返す関数による 演算を行 う 情報処理方法を開発 した。
·>- こで、 Γ自律的 J な反 J¾、と は、 分子の化学反 J¾、を行 う 際 に、 外部から核酸の分離、 製等の操作を行わずに反応産物 る こ とができ る こ と を JW、味する。 すなわち、 外部からの 操作を必要とせずに 、 入力 した引数に対する戻 り 値を出力す る関数の演算が可能である ·>- と をい う。
また、 本明細書において使用する 「核酸 J と は 、 c D N A、 ゲノ ム D N A 、 合成 D N A ヽ m R N A、 全 R N A 、 h n R N
Aおよび合成 R N Aを含む全ての D N Aお び R N A ヽ 並び にぺプチ ド、核酸、 モルホ リ ノ核酸 、 メ チルフ ォ ス フ ォネ一ト 核酸およぴ S -才リ :ゴ核酸な どの .人工合成核酸を含む また、 本明細書に レ、て 「核酸」 ヽ 「核酸分子」 および 厂分子 」 と は交換可能に使用され得る
本明細書において使用される 「塩基配列 J わよび Γ配列」 の語は共に 、 特定の核酸を 成する塩基の並びを示す ので ある。
以下、 図面を参照しなが ら発明の実施形態を説明する
発明の好ま しい態様に従う と 、 核酸を使用 した情報処理 方法が提供される。 本発明は、 核酸分子を用いて計算を実施 する こ と によ り 、 了一タの処理や 、■*· /一、子解析を白律的に実行 可能な方法を開示する た、 核酸分子によ り 丁一タやプ口 グラムを表現し 、 そのプ口 グラムで定義された演算を分子反 応に置き換えて 自律的な反応の実行を実現する
まず最初にヽ 本発明の情報処理方法の開発に当た り 、 実行 する演算の内容を分子の化学反応と して実行可能なデ一タ形 式に変更 して < 。 体的には 、 分子の化学反応によ る演算
を実 ¾aする前にヽ 情報を、 予め分子を特定の符号に結びつけ た符号化核酸に変換する そ して 、 その変換規則を使用 して 演算における変数 よび疋数な どのデータを符号化核酸に変 換しておく 。 次いでヽ れらの符号化核酸による演算処理を 行い、 符号化核酸によ る出力を得る。 得られた符号化核酸を、 予め結びつけた情報に変換する と によ り 、 演算が実行され 本発明の第 1 の態様の方法について、 基本的な処理を図 2 および 3 の処理フ ローに従って説明する。
図 2および 3 は、 引数を受け取り 戻り値を返す関数による 演算を行う情報処理の工程を示す。
(S1) 引数 11 の入力を行う 工程である 具体的には、 分 解可能な一本鎖核酸 21 に対応付けて定義された符号化核酸 を引数と して入力する。
(S2) 関数 12 によ る演算を行う工程である。 具体的には、 引数 21 ί;こ基づき、 演算用核酸の化学反応 22 に対応付けて定 義された関数 12 によ る演算を行う。 「演算用核酸」 は、 入 力 した一本鎖核酸 21 等と反応 し、 所定の反応を経て特定の 反応産物が産生される よ う に設計された種々 の核酸である すなわち 、 関数と しての化学反応を進行させるために必要な 配列を有する核酸であ り 、 たと えば、 ブラィマーおょぴプ Π モータ と して作用する。 演算用核酸は複数であっても よ く ヽ
1 つの関数による演算を行 う ために複数の演算用核酸を使用 する こ と ができ る。
(S3) 数の戻り値 13 を得る工程である 。 具体的にはヽ
一本鎖核酸 2 3 に対応付けて定義された符号化核酸 1 3 を得る こ とである。
こ こで、 上記 「対応づけて定義された」 と は、 核酸の化学 反応における操作が、 情報処理上のどのよ う な操作に該当 し ているかを表している。 すなわち、 情報処理上の符号化核酸 (引数) 1 1 が、 化学反応に使用 される分解可能な一本鎖核 酸 2 2 に該当 し、 情報処理上の関数 1 2 によ る演算が、 化学反 応における演算用核酸および分解可能な一本鎖核酸などによ る化学反応 22 に該当 し、 情報処理上の戻り 値 1 3 が、 化学反 応の反応産物である一本鎖核酸 2 3 に、 それぞれ該当する こ と を表している。
また、 ( S 1 ) における引数の入力は、 必ずしも分解可能な 一本鎖核酸 2 1 に対応づけて定義された符号化核酸を引数と する必要はなく 、 分解可能な一本鎖核酸そのものを直接引数 と して入力する こ と もでき る。 この場合、 分解可能な一本鎖 核酸自体による演算処理を行い、 符号化核酸によ る出力を得 る。 さ らに、 (S 3 ) において得られる関数の戻り 値は、 第 2 の一本鎖核酸 2 3 に対応付けて定義された符号化核酸 1 3 を得 るだけでなく 、 第 2 の一本鎖核酸を直接戻り 値と して得ても よい。 ただし、 情報処理方法と して関数によ る演算を行う場 合、 引数または戻り 値のいずれか一方は、 予め分子を特定の 符号に結びつけた符号化核酸である。
本発明に使用する化学反応の例を図 4Aに示す。
本発明の方法は、 「入力」 を分解可能な一本鎮核酸 (た と えば、 RNA 分子) に よ り 与える。 情報処理上の 「引数の入
力」 は、 分解可能な一本鎖核酸を反応液に添加する こ と に対 応する。 以下、 分解可能な一本鎖核酸と して RNA を使用 した 場合を例に説明する。
入力 した RNA 分子に対する演算用核酸 (図 4A に示したプ ライマー) が存在する と、 逆転写反応が引き起こ されて入力 が読み取 られる。 こ こで、 逆転写反応に よ って形成された DNA-RNAハイプリ ッ ドの RNA鎖は、 RNaseH活性によって分解 される こ と となる。 この RNaseH によ る分解は、 従来の情報 処理における入力情報の消去に該当する。
従来の DNA 分子を使用 した情報処理方法では、 入力 した DNA を読み取った後、 入力 した DNA が分解されずに反応系に 残ったままであった。 したがって、 その後の反応において該 DNA が不要な場合は、 該 DNA を除去するために分離操作など の煩雑な操作が必要であった。 このよ う な分離操作には、 外 部からの一連の操作が必要であ り 、 自律的に稼働させる こ と は困難であった。 た と えば、 分離操作を自動処理する には、 ロボッ ト による分離操作等が必要であった。 しかし、 分解可 能な核酸分子を使用する こ と によ り 、 たと えば RNA分子であ れば、 RNaseH の酵素活性によ り 容易に入力 した RNA 分子の みを消去する こ とができ、 反応系において自律的に反応を実 行でき る。 本発明では、 分解可能な一本鎮核酸と して RNA分 子を使用 したが、 その他の分解可能な核酸分子を使用する こ と もでき る。
本明細書において、 「分解可能」 と は、 所定の反応によ り 「分解可能な一本鎮核酸」 のみが分解され、 その他の核酸は
分解されないこ と をい う。 特に、 演算用核酸が分解されない よ う な条件下で 「分解可能な一本鎖核酸」 のみが選択的に分 解される こ と を意味する。 たと えば、 「演算用核酸」 と して DNA を使用 した場合、 RNA は、 RNaseH によって選択的に分解 される こ とから 「分解可能」 である といえる。 また、 「演算 用核酸」 が RNAである場合に純粋な DNA分解酵素を用いる と、 DNA のみを選択的に分解する こ とができ、 このよ う な条件下 においては DNAが 「分解可能」 な核酸とい う こ と になる。 す なわち、 「分解可能」 と は相対的な概念といえる。
「分解可能」 な核酸のその他の例 と して、 演算用分子が DNA である場合における ゥ ラ シル含有 DNA ( A RACHITT for our toolbox, Nature Biotechnology, Apr 11 2001 Volume 19 Number 4 pp 314 - 315、 DNA shuffling method for generating hi hly recomb ined genes and evolved enzymes, Nature Biotechnology, Apr i 1 2001 Volume 19 Number 4 pp 354 - 359) 、 および演算用分子力 S Peptide Nucleic Acidで ある場合における DNAや RNAな どが挙げられるが、 これらに 限定される ものではない。
また、 本発明の方法において、 引数と して入力する核酸は、 一本鎖の核酸である。 核酸によ る情報処理方法では、 核酸配 列上の情報にアクセスするためにハイ プリ ダイゼーショ ン反 応を利用 している。 したがって、 入力に 2本鎖 DNA を使用す る従来の技術では、 該 2本鎖 DNA に演算用核酸な どをハイブ リ ダイズさせるために、 2 本鎖 DNA を一本鎖にする反応が必 要である。 しかし、 このよ う な反応は、 通常温度の制御が必
要であ り 、 外部から一連の操作を行わなければな らなかつた このため 、 上記分離操作と 同様にヽ 自律的に反応を実行させ る こ とが困難であつた。
またヽ 核酸が分解可能でない場合 、 ハイ ブリ ダイズした核 酸が二本鎖を形成したまま となるため、 一本鎖にするために 温度制御等が必要と なる。
しかし 、 本発明の方法では、 分解可能な一本鎖核酸を使用 するため 、 該核酸は 、 ハイブリ ツ ド、を形成した後に分解され
Ό o したがって、 自律的な演算が可能と なる 。 すなわち 、 定温度のままでも演算用核酸の化学反応を行 う こ とが可能で あ り 、 S律的な分解反応が実行される。 たと えば、 以下の実 施例に いて検討した とお り 、 50 °Cの一定温度において自律 的な反応を行う こ と ができ る。
一方 RNA と して入力 した情報は . 、 RNa s e H によつて分解さ れて消去される と共に、 よ り 安定な核酸分子 (た と えば DNA 分子) に逆転写される こ と によ り ヽ よ り 安定な状態で記 保存する こ と もでき る。 た、 された一本鎖 DNAは 、 さ ら に別の RNA に対するプライマーと して働く 、 すなわちヽ 演算 用核酸と して繰り 返し機能する こ と もでき る 。 したがつて、 該 DNA から さ ら に伸長反応が進行する こ と も考え られる (図 4B )。 本明細書において、 図 4 B のよ う に配列 aのプライマ ー が 1 つ以上の RNA鎖上を逆転写する こ と によって生じた配列 を 「配列 aで開始した RNA上の経路」 と呼ぶ。 得られた一本 鎖 DNAは、 さ らに該一本鎖 DNAに相補的なプライマ ー (これ も演算用核酸の一つである) の存在のも とで二本鎖 DNA と な
る。 この二本鎖 DNAか ら転写された RNA分子を、 関数によ る 演算の出力 と して得る こ と ができ る (図 4A)。
T7 RNA ポ リ メ ラ ーゼな どの転写酵素の転写活性が誘導さ れる ためには、 プロモータ部位が 2本鎖 DNAである必要があ る こ と 力 S 知 ら れ て い る (Milligan et al. Oligoribonucleotide synthesis using T7 RNA polymerase and synthetic DNA templates. Nucleic Acids Res 1987 Nov 11 ; 15 (21) :8783- 98)。 本発明では、 こ の性質を利用 して 出力を コ ン ト ロ ールする (図 4C)。 た と えば、 演算用核酸と して使用するプライ マー上にプロモータ配列をあ らか じめ組 み込んでおき、 該核酸が一本鎖 DNAのままではプロモータ配 列か ら RNA の転写が生 じないが、 二本鎖になった と き にプロ モータ配列が酵素に認識され、 転写活性の起点と して機能す る こ と を利用する。
本発明の情報処理方法は、 RNA によ る入力を受け付け、 各 種反応が生 じた結果と して RNA に よ る 出力を返す一連のシス テム全体が 1 つの コ ンポーネン ト と なっている。 上述 した と お り 、 このよ う なコ ンポーネン ト を、 RNA に よ る 「引数」 を 受け取 り RNA に よ る 「戻 り 値」 を返す 「関数」 と 呼ぶ (図 5A)。
本発明の情報処理方法では、 戻 り 値を一本鎖核酸と して得 ているため、 この戻 り 値に再アク セスする こ と も容易である。 また、 各関数は引数および戻 り 値が同 じ分子 (共に分解可能 な核酸分子である RNA) である こ と か ら、 ある関数の戻 り 値 が他の関数の引数と なる こ と が可能である。 すなわち、 ある
関数によ って得られた戻 り 値を さ らなる関数の引 と して使 用 し 、 さ らなる戻 り 値を得る こ と ができ る 。 またヽ 1 つの関
· 数に ける 引数は一つ と は限られず、 複数の引数を と る と も可能である。 この と き、 複数の関数の戻 り 値を引数と して、 さ ら なる戻 り 値を得る関数を定義する こ と もでき る のよ
·>- う な関数を複数組み合わせて、 所定の戻 り 値を得る と ちで 含、 関数、 引数および戻 り 値の組合せによ り 記述されたプ グラ ムに従って複数の関数によ る演算を行 う こ と によ り 該 プ口 グラ ムの計算結果を戻 り 値と して導出する こ と でさ る。
また 、 上記一連のシステム全体を分子コ ンピュ一タ である とする と 、 所望の関数によ る演算を行 う ための演算用核酸 、 適切な反応液おょぴ適切な酵素で構成される反 J心液は 、 の 関数によ る演算を実現する ための コ ンビュータの Γ ノヽ 一 ド、ク ェァ J に該当する。 DNA (も し く は RNA)プライ マ一な どの演 算用核酸によ って 「プロ グラ ム」 が定義され、 実際に引 き起 こ される反応が決定さ れる こ と と な る (図 5 B ) 。 本発明の情 報処理方法を使用する こ と によ り 、 RNA によ る入力を受けて ノヽ 一 ウェア と しての反応液中で反応を行い、 結果を RNA に よ り 出力する こ と が可能な分子コ ンピュー -タ実現される (図
5 Β ) 。
(各種基本関数の設計)
次に 、 上述 した関数によ る演算の具体例を以下に示す。
発明の情報処理方法で実現される 関数は、 演算用核酸に よ って定義される 。 演算用核酸は 、 た と えば、 一本鎖核酸に 対 してプライマ一 と して作用する配列 、 プ口モータ配列およ
び任意の核酸のプライマーと して作用する配列から選択され る一以上の配列を有するプライマーである こ とが好ま しい。 分解可能な核酸分子と して RNA分子を引数とする場合、 本発 明による関数の演算には、 この一本鎖 RNA にプライ ミ ングし て DNA の伸長反応を引き起して第 1 鎖 cDNA を形成させる第 1 プライマー(P1) と、 第 1 鎖 cDNA にハイプリ ダイ ズする第 2 プライマー(P2)と の 2種類の演算用核酸が必要である。 これ らのプライマー上のいずれかの位置にプロモータ配列を組み 込むこ と によ り 、 そのプライマーが二本鎖 DNA と なった と き に転写活性が誘起される。 その結果、 特定の RNAが出力され る。 上記関数の例と して、 プロモータ配列を配置する際の位 置および向きによ り 、 たと えば以下に示す 4通り の関数が考 え られる (図 6A, B, C, D) 。 また、 引数を と らない関数も考 え られる (図 6E)。 その他、 当業者であれば、 上記関数に基 づいて種々 の関数を定義する こ と が可能であろ う。
以下、 上記 5 つの関数について詳細に解説する。
基本関数 A : Path (a -〉 b) => X
配列 a よ り始ま り 配列 b を通過する RNA上の経路が存在す る場合に、 指定した配列 X の RNA を返す関数である。
P1 は、 5'末端方向のプロモータ配列と、 その下流に X の 逆相補鎖配列と、 その 3'末端に a の相補鎖配列と を有する プライマーであ り 、 プライマー P2 の塩基配列は、 b である (図 6A) 。 こ の よ う に設計した P 1、 P2 を含む反応液中に配 列 a を有する RNA 分子が存在する と、 P 1 から逆転写反応が 起こ る。 この反応の際に、 図 4B に示したよ う に複数の RNA
分子上を迪る反応が生じても よい。 具体的には、 プライマー よ り 逆転写反応が起こった際に生成された一本鎖 cDNA の 3, 末端が他の RNA と結合してプライマーと して働き、 再び逆転 写反応が開始する場合が含まれる。 この と き、 逆転写反応が 迪つた塩基配列 (図 4B の場合 a→b→ c→ d)を、 特に 「配列 a よ り 開始した RNA 上の経路」 と呼ぶこ と とする。 またその 経路を構成する RNA分子上の配列(この場合 a→ b, b→ c及び c→ d)を 「経路素子」 と呼ぶ。
次に、 P 1 からの逆転写反応によって形成された一本鎖 DNA 上に配列 B と相補的な配列が存在する と、 プライマー P2 力 S 結合して第 2 鎖 DNA の合成が開始される。 これによ り 、 P 1 上のプロモータ配列が二本鎖化されて転写が誘発されて、 プ 口モータの下流に配置された配列 Xの RNA分子が出力される。 すなわち、 本反応は、 配列 a よ り 開始した RNA上の経路が配 列 b を通過する場合に配列 X の RNA を返す関数となる。
基本関数 B : Path (a-# b [; b' ; b" … ]) => X 配列 a よ り 始ま り 配列 b で終結する RNA上の経路が存在す る場合に、 指定した配列 X の RNA を返す関数である。 なお、 終結条件は、 「 b も し く は b,、 b ' '…」 のよ う に、 並列的に 拡張する こ と もでき る。
P1 は、 a の相補鎖配列を有するプライマーであ り 、 P2 は、 5 '末端方向のプロモータ配列と、 その下流に配列 X と、 その 3'末端側に配列 b と を有するプライマーである (図 6B) 。 ここに配列 a を有する RNA 分子が入力される と、 そこ力、ら RNA 上の経路に沿って逆転写反応が起こ る。 その経路が配列
b の相補鎖で終結した場合、 その末端の配列は P2 の配列 B と結合してプライマーと して機能し、 その結果二本鎖と なつ たプロモータ配列の下流に配置された配列 Xが転写される。 なお、 P2 上には、 プライマーが結合する配列が b、 b,、 b" …とい う よ う に複数配置されていても よい。 この場合は、 経 路の終結条件が b、 b'、 b"… と並列的に拡張される。 また、 この関数では P2 その ものは伸長反応を起こす必要がない。 したがって、 P2 の 3 '末端に特殊な修飾や塩基配列を付加 し てお く こ と もでき る。
基本関数 C : Amplify (a -# b [-- add5 P] [_-add3 Q]) 配列 a よ り 始ま り 配列 b で終結する RNA上の経路が存在す る場合に、 その配列の RNA を増幅する関数である。 また、 増 幅配列の 3'末端または 5'末端に、 任意の配列 P または Q が 付加された RNA を増幅するする こ と もでき る。
P1 は、 a の相補鎖配列を有するプライマーであ り 、 P2 は、 3 '末端方向のプロモータ配列と、 3 '末端の配列 b とから構成 される (図 6D ) 。 こ こ に配列 a に相補的な配列を有する RNA 分子が入力される と 、 RNA 上の経路に沿って逆転写反応が起 こ る。 こ の経路が b の相補鎖配列で終結した場合、 その末端 配列が P2 の配列 b と結合してプライマーと して機能し、 そ の結果二本鎖と なったプロモータ配列の下流に配置された a から b までの経路の相補鎖 (も と の入力 RNA と 同一の鎖) の 配列を有する RNAが転写される。 さ らにこの関数の戻り 値は 再帰して同一関数の引数と なるため、 ループを形成して遺伝 子配列の増幅を引き起こす。 また、' 必要に応じて Pl、 P2 各
プライマーに配列 P、 および Q の相補鎖配列を組み込むこ と によ り 、 出力される RNA 分子の 5 ' 末端または 3 ' 末端に任 意の配列 P または Q を付加する こ とができ る。
基本関数 D : RevAraplif y (a _> b [-- add5 P] [-- add3 Q])
配列 a よ り 始ま り 配列 b を通過する RNA上の経路が存在す る場合に、 その逆相捕鎖配列の RNAを増幅する。 また、 増幅 配列の 3,末端または 5'末端に、 任意の配列 P, Q を付加する こ と もでき る。
P 1 は、 3 '末端方向のプロモータ配列と、 3 '末端の配列 a相 補鎖とから構成され、 P2 は、 配列 b を有する (図 6D) 。 こ こに配列 a を有する RNA が入力される と、 RNA上の経路に沿 つて逆転写される。 さ らにその経路が配列 b の相補鎖配列を 通過する と、 P2 が該配列に結合 してプライマーと して機能 し、 DNA2 本鎖化反応を誘起する。 その結果、 P1 上のプロモ ータ配列も二本鎖 DNA とな り 、 配列 a から b までの経路配列
(も と の入力 RNA の逆相補鎖配列) の RNA を転写する。 なお、 出力された逆相補鎖 RNA には、 さ らに P2 が結合して逆転写 反応が行わる。 転写された DNA には、 P 1 が結合して DNA 二 本鎖化反応が生じ、 再び同一の RNAが出力される。 この反応 は、 本関数を実装するプライマ ー P 1 および P2 の役割が入れ 替わる こ と によ り 、 も とのプライ マーが逆相補鎖 RNAを引数 とする基本関数 C: Amplify (b -# a)と して機能する と表現 する こ と もでき る。 この関数も、 基本関数 C と同様に、 出力 される RNA 分子の 5 ' 末端または 3 ' 末端に任意の配列 P ま
たは Q を力 Bえる こ とができ る。
基本関数 E : Output () RNA X
引数を必要とせず、 常に配列 Xの RNA を出力する。
基本関数 Eは、 引数と しての RNA分子を必要とせず、 常に 配列 Xの RNA を転写する よ う に設計してある。 こ の関数は、 プロモータ配列と その下流に続く 配列 X からなる二本鎖の
DNA分子によって実現される。
(基本関数の組み合わせによ るプロ グラム構築)
上記基本関数を組み合わせる こ と によ り 、 高次な関数を構 築する こ と こ と ができ る。 さ らに、 上記関数、 引数および戻 り値を組み合わせてプロ グラムを構築する こ と こ と もでき る。 し力 し、 図 5 に示したよ う なプロ グラムを化学反応によ り 実 行する際に、 特に演算用核酸の設計に注意する必要がある。 上記基本関数 A、 B、 Cおよび D は、 最初に逆転写反応を引き 起こす演算用核酸をプライマ ー P1 と し、 続く DNA 二本鎖化 反応を引 き起こす演算用核酸をプライマ ー P2 と して分類し ている。 しかし、 関数の実体と して反応液中に加えられるプ ライマーは、 基本関数 A と B とでは同等であ り 、 また C と D と で同等であ る。 た と えば、 基本関数 A : Path (a -〉 b) => X を実装するプライマ ー ' ペアは、 プライマ ー P2 が第 1 プライ マーと して機能して しま えば、 基本関数 B: path (b 一 # a) => X と して働く 。 あるいは、 プライマ ー P1 が第 1、 第 2 プライマーと して機能すれば、 path (a -〉 a) => X な る出力を与える こ と も考え られる。
あるいは、 プライマーがダイマ ーを形成する こ とでプロモ
きお
ータ配列が二本鎖と な り ヽ つた戻り 値を返して しま う 可能 性も考え られる。 さ らに複数の関数を単一の反応液中にて同 時に実行する場合、 相互作用を起こ し るプライマーの組み 合わせは、 関数の種類に応じて増大しヽ 副反応の可能性がさ らに広がる。 副反応の影纏を受けずに 、 狙った関数反応を効 果的に実行するプロ グラムを実装するために、 プロ グラムを 組む際に副反応が発生し難いと考える関数の組み合わせを使 用する こ とや、 反応に用いるプライマ の配列を特に注意し て設計する こ と などといつた配慮が特に鱼要 [、'ある。
た と えば、 演算用核酸と して 、 正規直交化配列を含む核酸 を使用する こ とができ る Γ正規直交化配列」 における 「正 規」 の語は、 複数の配列にねいて熱的性質の正規性を維持す る こ と、 即ち、 融解温度が一定の範囲内で揃ってレヽる こ と を
- 示す。 熱的性質の正規性を維持する と によって、 た と えば 多く の配列を纏めて使用 して反応を行つ こ と が有利に実行さ れる。 「正規直交化配列」 における 厂直交化」 の語は、 配列 に直交性を持たせる こ とであ り 、 1 つの直交化配列群に含ま れる全ての配列は、 夫々独立して反応する、 すなわち、 1 つ の正規直交化配列群に含まれる配列は 、 所望の組み合わせ以 外の配列間および自 己配列内において反応が生じ難いか、 ま たは反応が生じない。 言い換えれば 、 1 つの直交化配列群に 含まれる配列は、 配列間でのク ロスノヽィブリ ダイゼーショ ン や、 自 己配列内での望まないハィ プ V ダィゼーショ ンが従来 よ り も生じ難いか、 生じない。
上記 の よ う な 正規直交化配列 は 、 H . Y s h i da a n
Suy ama, "Solution to 3 - SAT by breadth firs search , DIMACS Vol.54 9一 20 ( 2000)およぴ特願 2003— 108126 に詳糸田力 S 記載されている。 これらの文献に記載の方法を使用 して正規 直交化配列を設計する こ と ができ る。 簡単には、 予め無作為 に塩基配列を複数作出する こ と と、 それらの融解温度の平均 値を求める こ と と、 その平均値の ± t °Cで制限される閾値を 基に候補配列を得る こ と と、 独立して反応する配列であるか 否かを指標に得られた候補配列から正規直交化配列群を得る こ と を具備する方法によって作製する こ と ができ る。
正規直交化配列である核酸群は、 そこに含まれる夫々 の塩 基配列または核酸の融解温度がほぼ均一であ り 、 互いにク ロ スハイプリ ダイゼーショ ンを起こ し難く 、 その自 己二次構造 が安定ではない。 正規直交化配列は、 たと えば、 以下の実施 例にコー ド配列と して示す核酸にも使用する こ と ができ る。
また、 本発明の符号化核酸も、 上記正規直交化配列である こ と が好ま しい。 しカゝ し、 た と えば、 細胞か ら精製 した総 RNA などを直接第 1 の符号化核酸と して使用する こ と もでき る。 すなわち、 予め結びつけた情報を符号化核酸に変換して 演算を行う のではな く 、 得られた核酸 (た と えば、 総 RNA の よ う な、 符号化されていない分解可能な核酸など) 自体を情 報と して、 そのまま符号化核酸と して使用する こ と もでき る。 たと えば、 以下に示した遺伝子発現解析において本発明の方 法を使用する場合な どである。 また、 演算によって得られる 第 2 の符号化核酸にさ らなる演算を適用 して、 符号化してい ない一本鎖核酸を戻 り 値と して直接得る こ と もでき る。 この
核酸は、 raRNA であっても よい し、 タ ンパク 質に結合するァ プタマー核酸であっても よい。 さ らに、 特定の遺伝子 mRNA にハイプリ ダイ ズするアンチセ ンス RNAであってもよい。 た と えば、 以下に示した細胞内分子コ ン ビユ ーティ ングにおい て本発明の方法を使用する場合などである。
このよ う な場合、 入力に使用 した RNA は、 たと えば以下に 示したよ う に、 ー且上記正規直交化配列を有する符号化核酸 に変換してから、 さ らなる反応を行う こ と が好ま しい。
(遺伝子発現解析プロ グラム)
以下に、 上記基本関数の組み合わせによ るプロ グラムの一 例と して、 遺伝子発現解析に応用 した例について記述する。
(遺伝子のコ ー ド化)
DNA マイ ク ロア レイ等による遺伝子解析において、 ハイブ リ ッ ド形成を的確にコ ン ト ロ ールする こ と を 目的と して、 特 定の遺伝子を対応するジップ · コ ー ドまたは内部コ ー ドに置 き換え る 技術力 s開発 さ れてい る (Gerry et al. Universal DNA mi croarr ay method for multiplex detection of lo abundance point mutations. J Mol Biol 1999 Sep 17; 292 (2) : 251-62 s Nishida et al. Highly specific and quantitative gene expression profiling based on DNA computing. Genome Informatics 2001 (12) 259-260 、 Whar am et al. Specific detection of DNA and RNA targets using a novel sotherma丄 nucleic acid amplification assay based on the formation of a three-way junction structure. Nucleic Acids Res 2001 Ju 1; 29 (11): E54-4)
本プロ グラムでは、 基本関数 A ( path (a -〉 b) => X ) を使用する (図 7A) 。 ターゲッ ト遺伝子の RNA を特異的に 認識するプライマー ■ ペア配列と して、 配列 a および配列 b を使用する。 これらの配列を演算用核酸の 3'末端に組み込 む。 また、 出力される RNAの配列 X と して、 対応させたいコ ー ド配列をプロモータ の下流に組み込んでプライマーを設計 する。 このよ う なプライマー · ペアを使用する こ と によ り 、 ターゲッ ト遺伝子 RNA を入力する と対応する コー ド配列 RNA に変換される関数を作成する こ とが可能である。 また、 基本 関数 C (Amplify) や基本関数 D (RevAmplify) を使用する こ と によ り 、 ターゲッ ト遺伝子の部分配列の 5'末端または 3' 末端にラベルのための配列を付加する こ と も可能である。
本プロ グラムを使用する こ と によ り 、 遺伝子のコー ド化が 自律的な反応条件で実現される。 たと えば、 DNA マイ ク ロア レイ等によ る遺伝子検出に応用する こ と もでき る。 さ らに、 コー ド配列 RNA を他の関数による演算プロ グラムの入力と し て使用 して、 た と えば遺伝子発現解析プロ グラムを構築する こ と もでき る。
(各遺伝子の経路素子への変換と論理演算によ る遺伝子発 現解析)
こ こでは、 各遺伝子を経路の素子にコー ド化する こ と によ り 遺伝子発現解析を行う方法について説明する。 図 7B に、 遺伝子 A と遺伝子 B とが存在する場合に遺伝子 X を返すプロ グラム例を示す。
本プロ グラムは、 遺伝子 Aおよび B の ' RNA をコー ド配列へ
変換する関数と、 経路を認識して遺伝子 X を返す関数よ り な る。 すなわち、 遺伝子 RNA をコー ド化 し、 該コー ド化配列に よる演算を行な う。 第一に、 基本関数 Aを使用 して、 遺伝子 A が存在する場合にコー ド配列 Code [2, 1]を返すとい う コー ド化関数を考える。 こ こ で、 Code [2, 1]は、 各々 5,末端から 3'末端に向かって コー ド配列 Code [2]、 Code [l]が並んだ配 列を有する。 同様に、 遺伝子 B が存在する場合に Code [3]、 Code [2]を並べた配列を有する Code [3, 2]を返す関数を加え る。 なお、 Code [l]、 [2]および [3]は、 任意の配列であって よい。 しかし、 反応液の条件でミ ス ' プライ ミ ングな どを起 こ しにく く 、 プライ ミ ング効率が均一な配列を有する こ とが 好ま しい。 すなわち、 上述した正規直交化配列である こ とが 好ま しい。
上記関数を組み合わせる こ と によ り 、 遺伝子 Aが存在する 場合にのみ経路素子 Code[l]→Code [2]が形成され、 遺伝子 B が存在する場合にのみ経路素子 Code [2]→ Code [3]が形成さ れる。 したがって、 遺伝子 A と遺伝子 Bの両方が存在 してい る場合に限 り 、 Code [1]よ り 始ま り Code [3]で終結する と い う RNA上の経路が形成される (図 7B) 。 こ こで、 基本関数 B (も しく は基本関数 A) を使用 して、 該経路が存在する場合 に RNA Xを返す関数をさ らに加える。 その結果、 両遺伝子が 存在する場合に限り 遺伝子 Xを返すプロ グラムが実現する。
本方法の本質は、 各遺伝子を、 コー ド配列によって構成さ れた仮想的な経路 (この場合 1→ 2→ 3 なる経路) を構成する 各経路素子 (1→ 2 および 2→ 3) に変換し、 その経路の存在
を検出する こ と によって遺伝子の解析を行 う こ とでめる 経 路の規模や対応付けを行な う遺伝子の種類を増加させれば、 よ り 複雑な演算を行 う こ と ができ る (図 7C) あるいは、 出力される配列 Xの RNA をさ らに別の経路への入力とする こ と によ り 、 経路を多重に重ねる こ と もでき る。
(ニューラル · ネ ッ ト ワーク による遺伝子発現解析) 論理演算によ る遺伝子発現解析では、 あ らかじめ遺伝子の 発現パターンが既知である必要がある。 また、 基本的に遺伝 子の有無のみを解析する ものであ り 、 濃度の情報を評価でき ない。 こ こでは、 未知の遺伝子発現パターンについて遺伝子 の濃度情報をも評価する こ とができ る方法と してヽ 本発明の 情報処理方法を使用 して構築 したニューラル 'ネ ッ ト ワーク の例を示す。
遺伝子の発現解析において、 DNA コ ンビユ ータによって構 成された -ユ ーラル 'ネ ッ ト ワーク を応用するァィデァは以 目 IJにもあった (Mills Gene expression profiling diagnosis through DNA molecular computation. Trends Biotechnol 2002 Apr ; 20 (4) : 137-40)。 し力 し、 従来のアイデアは、 中間 層を持たない一層の単純パーセプ ト 口 ンのモデルであ り 、 複 雑な解析は原理的に困難であった。 さ らに、 複数ステ ップの 操作が必要と した。 一方、 本発明の情報処理方法を使用する こ と によ り 、 複雑な解析を実行し う る多層パーセプ ト ロ ンを 自律的に稼動する反応系にて実現する こ と ができ る (図 8A)。 遺伝子の解析を行な う ために、 まず遺伝子のコー ド化を行 な う 。 コ ー ド化関数に よ り RNA A が存在す る 場合 に 、
Code [a 1, ST]が出力される よ う にする。 これは経路 ST→al に 対応付け られる。 RNA B, C, D についても同様のコー ド化関数 を設定し、 各々経路 ST→ a2, a3, a4 へと置き換える よ う にす る。 これら のコー ド化関数によ り 、 各遺伝子 RNA の存在に応 じてニューラル 'ネ ッ ト ワークへの入力が行なわれる。 パ一 セプ ト ロ ンの中間層を結ぶ経路ユニ ッ ト : al→bl, al→b2, al→b3, … , b4→ c4 および cl→ X, cl→Y, c2→ X, ··· , c4 → Y は、 全て基本関数 E : Output () を使用 して、 対応する RNA を出力させる こ と によ り形成する こ と ができ る。 さ らに . 基本関数 B を使用 して、 経路 ST→Xの存在に応じて X を返す 関数( path ( ST - # X ) X )および経路 ST→Yの存在に応じ て y を返す関数( Path ( ST -# Y ) y )を導入したプロ グラ ムを構築する。 その結果、 入力 RNA に応 じて出力 X と yの割 合が変化するェユ ーラル ·ネッ ト ワーク が形成される (図 8A) , 入力層、 中間層および出力層の数は、 適宜変更する こ とがで き る。 さ ら に、 各 RNA 経路ユニ ッ ト の強度は、 対応する Output ()関数の濃度を調整する こ と によって制御する こ とが でき る。
図 8B に示す方法を使用する こ と によ り 、 ニューラル ·ネ ッ ト ワーク に対する学習プロセスが実行でき る。 具体的には、 第一に、 入力および中間層を結ぶ経路に係る関数と ST ブラ イマ一と を含む反応液に、 入力 と してサンプル A 群および B 群の RNA を与えて、 ST プライマーの伸長反応を実行させる, 各反応液中では、 与え られた入力 RNAおよび中間層経路の状 況に応じて、 ST よ り 開始し X または Y で終結する各経路が
逆転写されて、 対応する cDNA が合成される (①)。 こ こで、 得られた S Tプライマー伸長産物の末端配列が Xの と き と、 Y の と き に分けて経路の解析を行な う 。 A, B 群における各中 間経路ユニ ッ ト (a l→b l, a l→b 2 , … )の濃度比較を行な う (②)。 この作業は、 たと えば、 複合する経路を含んだサンプ ルを使用 して、 リ アルタイ ム P C R法や DNAマイ ク ロア レイ法 などによって行な う こ とが想定される。 この結果をも と に、 望ま しい経路が増強される よ う Ou tpu t ( )関数の濃度を調製 する (③)。 たと えば、 A 群を出力 X に、 B 群を出力 y に対応 付けたい場合には、 A群サンプル- X終結経路および B群サン プル- Y 終結経路と、 A 群サンプル- Y 終結経路および B 群サ ンプル -X : 終結経路と の比較を行ない、 前者に特 的な経路 ュニッ 卜 を増加 して後者に特異的な経路を減少させる。 の サイ クル ①→®→③を繰り 返すこ と によ り 、 学習させる こ と ができる
こ の分子コ ンピュータ の二ユーラノレ 'ネ ッ 卜 ヮ ク に よ る m izs 発現解析技術を利用 して、 新規な遺伝子診断技術を実 現する こ と もでき る (図 8 C)。 た と えば、 上 §己 R応を行 う た めに必要な演算用核酸を含む反応液を準備する。 次いで、 反 応液に 床サンプルよ り得られた RNA を添加して反応を進行 させる 所定の遺伝子が所定の組合せで発現している場合に 所定の出力が得られる よ う にプロ グラムを構築しておけばヽ 遺伝子が どのよ う なパターンおよび発現量で発現しているの か容易に解析する こ とができ る。
( 数の拡張)
本発明に使用する関数は、 上記 5つの関数に限定されない。 種 - 々 の演算用核酸を使用 して 、 多様な関数を定義する とが でき る。
た と えば、 上記基本関数は 全て、 P 1 が逆転写反応を引 き起こ し 、 そこで形成された c DNA に P 2 がハイプリ ダィ ズす る とい う構造と しているが、 P 2 を RNA に対するプラィマ と して機能させる こ と もでき る 。 この と き、 伸長反応に従つ て P 2 の 3 '末端配列が変化している。 この変化は、 3,末端配 列の変化につれて関数の内容が変化している と と らえられる この よ う な変化を利用する こ と によ り 、 関数の概念を拡張す る こ とができ る。 その他にも ハー ドウエアの反応液中で以 下に例示する よ う な化学反応を実現する こ と によ り 、 5 つの 基本関数以外にもプロ グラムに利用可能な関数の定義を拡張 する こ と が可能であろ う。
また、 コ ンピュータ と してプロ グラムの結果を返すために は 、 一 mの関数反応の結果得られた出力を検出する必要があ る -t RL基本関数は、 全て RNA を戻り 値とするため、 基本関 数のみで構成されたプログラムの最終出力も RNA分子と なる。 この出力 RNAは、 分子生物学的手法によ り 精製する こ と が可 能である 。 また R T -P C R やノ ザン . プロ ッ ト、 DNA マィ ク
Πア レイ等な どの技術を使えば出力 RNAを検出する こ と 可 能である 。 しかし、 本発明の分子コ ンピュータの特長は 自 律的コ ンピューティ ングが可能である点であ り 、 結果の検出 までのステ ツプを単一反応液内にて同時に行なえればよ り 効 果的である。 したがって、 コンピューティ ング反応液内で出
力された RNA分子を直接検出する こ とが望ま しい。 た と えば、 RNA 分子 を 直接検 出 の た め に 、 Fluorescence Resonance Energy Transfer (FRET)技術を応用する こ と 力 Sできる。 FRET 技術は、 蛍光を外部から検出 して情報を取り 出すこ とが可能 であ り 、 非常に有用である。 蛍光標識した DNAプローブを用 いる こ と によ り 、 FRET 技術を リ アルタイ ム PCR 法などにも 応 用 し た 例 力 S あ る (Didenko, DNA probes using iluorescence resonance energy transfer (FRET) : designs and applications. Bio techniques 2001 Nov;31 (5): 1106-16, 1118, 1120-1)。 たと えば、 図 9A に示す FRET プローブを使 用すれば、 蛍光出力関数と して分子コ ンピュータ の出力に応 用 Βί 能 で あ る 。 Adjacent hybridization probes お よ ぴ Molecular beacon probe は、 特定のターゲッ ト配歹【J力 S存在 する場合に蛍光を返す特性を有するため、 そのまま分子コ ン ピュータの出力検出関数と して利用するこ と ができ るであろ う (図 9A-a, b;)。 また、 Hairpin probe は、 DNA 伸長反応に よ り プライ マーが二本鎖化 した際に蛍光を発する こ と か ら (図 9A- c)、 基本関数 A のプライマー PI も しく は基本関数 B のプライマー P2 の代替と してこの構造のプライ マーを使用 する こ と によ り 、 該当する経路が存在する場合にのみ蛍光を 返す関数を構成する こ とが可能である。
これらの蛍光出力関数を用いれば、 出力の検出までを単一 ステ ップで行な う こ とが可能な遺伝子診断プロ グラムな ども 設計する こ とができ る。 たと えば、 図 8C について、 ニュー ラル ·ネ ッ ト ワーク によ る遺伝子発現解析の結果は、 X およ
び y の濃度を比較する こ と によ り 行なわれるが、 X および y の各々 を認識する蛍光プローブを異なる蛍光色素を用いて形 成する こ と によ り 出力の検出が可能と なる。 あるいは、 「経 路 ST→ Xが存在すれば X を返す関数」 などの変わり にへアビ ン .プローブを使用 した蛍光出力関数 「経路 ST→X が存在す れば蛍光を返す関数」 などを構築する こ と も考えられる。 最 終の出力ごと に異なる蛍光を割 り 当てれば、 その蛍光強度を 比較する こ と によって出力の検出が可能と なる。
その他の反応と して、 た と えば Wharam らカ 2001年に発表 した 3- way junction (3WJ)構造を利用 したプライ マーを使 用 しても よい (図 9B)。 これは、 ターゲッ ト配列が存在する 場合に、 指定した配列の RNAを発現する とい う プライマーで ある。 DNA依存 DNA ポリ メ ラーゼ活性と DNA依存 RNA ポリ メ ラーゼ活性が存在すれば反応が実現する こ と から、 本発明の 情報処理方法に応用する こ と もできる。 特に、 遺伝子のコー ド化反応な どに使用する こ とができ る。
また、 関数の拡張の例と して、 ある関数によ り 出力された RNA を関数によ る演算に使用する こ と もでき る。 たと えば、 各関数によ り 出力される RNA分子自体もプライマーと して機 能する こ とができ るので、 これ自体を関数による演算の演算 用核酸と して機能させる こ と もでき る。
さ らに、 リ ボザィ ムを分子コ ンピュータの素子と して利用 な 开 究 も あ る (Wickiser e t a 1. Oligonucleotide Sensitive Hammerhead Ribozyraes As Logic Gates. Eighth International Meeting on DNA Based Computers, 2002
June 10-13; Hokkaido University, Japan) 0 ジ ボザィ ム は、 酵素活性を有する RNA分子 と して知 られている。 こ の よ う な リ ポザィ ムを使用すれば、 関数の出力 と して生成された RNA 分子 自体が リ ボザィ ム と して働き、 その出力 RNA が直接新た な関数機能を発揮する こ と ができ る。 本発明の情報処理方法 に使用する関数と して、 こ のよ う な リ ボザィ ムを使用する こ と も でき る。
以上に例示 した基本関数以外の反応を本分子コ ン ピュータ のハー ドウェア中で実行する こ と によ り 、 コ ン ピュータ の機 能が さ ら に拡張されるであろ う 。
上述 したよ う に、 レ ト ロ ウイ ルス がゲノ ム増幅に用いる反 応活性と して重要な RNA 依存 DNA ポ リ メ ラーゼ活性、 DNA 依 存 DNA ポ リ メ ラーゼ活性、 DNA 依存 RNA ポ リ メ ラーゼ活性お よび RNas eH 活性の 4 種の反応を組み合わせて、 自律的に稼 動するプロ グラ ム可能な分子コ ン ピュータ を実現する こ と カ でき る。
具体的には、 上記情報処理方法によ って演算を行 う ための 分子コ ン ピュータ と して、 所望の関数によ る演算を行 う ため の演算用核酸と 、 適切な反応液と 、 適切な酵素と を含む容器 から なる こ と を特徴とする分子コ ン ピュータ が提供される。 分子コ ン ピュータ上でプロ グラ ムを構成する要素 と なる 関数 と して、 便宜上 5 つの基本関数を定義 したが、 よ り 一般化す る と 、 プロ グラ ム と して分子コ ン ピュータ のハー ドウ ェア中 に加え られる のは 3 種類のオ リ ゴ核酸、 即ち 5,方向に配置 されたプロモータ を含む核酸と 、 3'方向に配置されたプロモ
ータ を含む核酸と、 プロモータ配列を含まない核酸である。 これらのオリ ゴ核酸が含まれる反応系に対して RNAによ る入 力を与える と、 オリ ゴ核酸の伸長反応が適宜進行し、 ある点 でプロモータ配列が二本鎖 D NA と なる と その下流の配列が RNA と して返される とい う シス テ ムである と もいえる。
一方、 分子コ ン ピュータ に使用する容器と しては、 た と え ば核酸の反応において通常使用 されるサンプルチューブ、 試 験管、 微細流路を使用する こ とができ る。 また、 使用する容 器は、 単一の容器であればよいが、 複数の容器を使用 しても よい。
また、 容器と して、 細胞または組織などを使用すれば、 生 体細胞内において遺伝子の発現量およびパターンを自律的に 検出 し、 その結果に応じて所望の遺伝子の転写を制御する こ と もでき る。 したがって、 生体細胞内で RNAの出力をコ ン ト ロールする こ と が可能であ り 、 新たな細胞コ ン ト ロール機序 を実現する こ と ができ るであろ う。 た と えば、 特定の発現パ ター ンをもつ細胞のみで特定の遺伝子を発現させる こ とが可 能であ り 、 癌細胞な どターゲッ ト と した細胞のみで細胞を正 常化させるための遺伝子を発現させる にこ と もできる。 こ の よ う な技術は、 遺伝子治療などの技術に応用可能である。
また、 本発明の情報処理方法によ り 情報処理を行う ために、 必要な演算用核酸をキッ ト と して提供する こ と もでき る。 該 キッ ト には、 所望の関数による演算を行う ための演算用核酸 が含まれる。 演算用核酸と しては、 第 1 の一本鎖核酸に対し てプライマーと して作用する配列、 プロモータ配列および任
意の核酸のプライマーと して作用する配列から選択される一 以上の配列を有する核酸が含まれる こ とが好ま しい。
また、 該キッ トには、 演算用核酸だけでな く 、 適切な反応 液と、 適切な酵素とが含まれていても よい。 適切な反応液と しては、 た と えば、 合成反応、 増幅反応、 逆転写反応、 転写 反応および分解反応に適したバッファーであ り 、 適切な酵素 は、 たと えば、 DNA 依存 DNA ポ リ メ ラーゼ活性を有する酵素、 RNA 依存 DNA ポ リ メ ラーゼ活性を有する酵素、 DNA 依存 RNA ポリ メ ラーゼ活性を有する酵素および RNa s e Hである。
上記キッ トは、 たと えば上記 (遺伝子発現プロ グラム) の 節に記載したよ う な遺伝子発現解析のためのキッ トであれば、 コー ド化に必要な演算用核酸、 DNA 依存 DNA ポリ メ ラーゼ活 性を有する酵素、 RNA 依存 DNA ポリ メ ラーゼ活性を有する酵 素、 DNA 依存 RNA ポ リ メ ラ ーゼ活性を有する酵素お よび RNa s e H , 並び に適切 な反応 ί夜 と し て 40mM Tr i s— HC 1 (pH 8. 0 )、 50 mM NaC l、 8 mM M gC lい 5 mM DTT を含む。 上記酵素は、 予め反応液に添加されていても よい。 該キッ トは、 た と えば 50 °Cにて全ての酵素を含むバッフ ァー液に RNAサンプルを添 加し、 よ く 混ぜた後に、 50 °Cでイ ンキュベー ト して使用すれ ばよい。 た と えば、 試験管 1 本あた り 酵素バッフ ァーを 3 μ 1 添加 して反応液の総液量を 25 μ 1 と し、 反応時間は 30 分 である。
また、 プロ グラムの実行に必要な反応はレ ト ロ ウィルスや レ ト ロ ト ラ ンス ポゾ ンが生体細胞内にて実際に行なっている 反応と本質的に同一である こ と から、 本シス テ ムによ る分子
コ ン ピュータが生体細胞内にて実現する可能性もある こ の 細胞内分子 コ ン ビュ 一テ ィ ングが実現する と、 た と えば生体 細胞内での遺伝子発現解析プロ グラム と蛍光出力関数と の組 み合わせによ り 、 生きた細胞内の遺伝子発現パターンを外部 から非破壊的にモニターする技術にも応用でき る。
あるいは、 細胞の活動を ン ト ロールする遺伝子の RNAを 出力する こ と によ り 、 逾伝子パター ンに応じて細胞の活動を コ ン ト ローノレするプ口 グラムを実現する こ と もでき る。 たと えば、 癌な どの疾患マーカ一遺伝子を入力 とする と 、 問 題のある細胞内のみで導入 した特定遺伝子を発現させ
とい
·>- つた遺伝子治療を実現する と もでき る。
(発明の効果)
本発明の情報処理方法を使用する こ と によ り 、 プ グラム
· - 可能な自律型分子コ ン ビユ ータ を作製する こ とがでさ る のよ う なコ ン ピュータは、 同一ハー ドウエアを用いて異なる プロ グラムを実行でき る汎用性を有する。 特に、 今後必要性 がますます拡大する と考え られる遺伝子の機能解析 する 研究開発や遺伝子診断などの用用途途にに応応用用すするる ここ ととがができ る。
論理演算によ る遺伝子発現解析またはニ ュ ー ラ ル ·ネ ッ 卜 ワーク によ る遺伝子発現解析を実行するプロ グラムを蛍光出 力関数と組み合わせる こ と に よ り 、 遺伝子の計測 ·解析ねよ び結果の出力を全て自律的に行な う こ とが可能と なる。 また 上記ニ ュ ー ラ ル 'ネ ッ ト ワーク によ る方法を使用すれば、 遺 伝子の発現パターンと フエノ タイ プと の関係が明 らかでない 場合でも、 原理的に遺伝子発瑰解析が可能である。 さ らに、
遺伝子発現の濃度情報も評価する こ と もでき る。
(実施例)
(材料と方法)
(機器および試薬)
2 本鎖 DNA 分子は、 ゲル電気泳動を行った後、 Agilent 2100 bioanalyzer (Agilent Technologies) に よ っ て検出 し た。 ま た、 本方法の実施 に使用 し た試薬は、 DNA 500 LabChip ( R) kits または DNA 7500 LabChip ( R) kits である。 リ アルタ イ ム PCR は、 LightCyclerTM ク イ ッ ク シス テ ム 330 (口 ッシュ ·ダイ ァグノ スティ ッ ク ス株式会社)を使用 して行 な っ た 。 該 PCR の た め の 試薬 は 、 同 社 よ り 購入 し た LightCycler" FastStart DNA Master SYBR ( R) Green I を 使用 した。 試薬の調整および機械の操作方法については、 生 産者のプロ ト コルに準じて行なった。
(遺伝子特異的配列の設計)
TGTP 遺伝子および Vitronectin 遺伝子を特異的に認識す るプライマーは、 三島隆らが開発 した特異的プライマー設計 プロ グラム (大規模遺伝子発現計測のためのプローブ及びプ ライマー配列設計法に関する研究、 東京大学大学院理学系研 究科修士論文 2001 年度)およびプライマー設計ソ フ ト ゥェ ァ と して公開 されている Primer 3 (Rozen and Skaletsky、 Primer 3 on tne WWW for general users and for biologist programmers. Methods Mol Biol 2000 ; 132 : 365— 86)などを使 用 して設計し、 作製したプライマーから適当なものを選んで 使用 した。. 使用 した TGTP 遺伝子および Vitronectin 遺伝子
2
41 に特異的な配列を以下にま と める。 (なお、 カ ツ コ内の数字 は、 TGTP, Vitronectin 両遺伝子 RNA 分子上のプライマーの 位置を表す。 また S はセ ンス鎖配列、 A はア ンチセ ンス鎖配 列である こ と を示す。
TGTP特異的プライマー配列
配列名一 -配列
TGTP-S1 5 CAGATATATATGGTCCCACC -3' (1302,
A) (配列番号 1)
TGTP-S2 5 ACTTACTATCGCATGGCTTA -3' (1201,
S) (配列番号 2)
TGTP-AF 5 CAGGATTTGAACATGTCTGTGGAT -3' (1051,
S) (配列番号 3)
TGTP-AR 5 GCTTGTCTTCTAAGGACTCATCATTG - 3' (1119,
A) (配列番号 4)
TGTP-PS 5 GGGGATGAATTTCTACTTTG - 3' (582,
S) (配列番号 5)
TGTP-PE 5 AGAGTGAACACTGATTGGAA -3' (1364,
A) (配列番号 6)
Vi tronect i n特異的プライマー配列
配列名 - - 配列
Vitronect i n- PI 5 ' - TTTGTCTCCAGAGAAGAAAT 一 3,
(1313, A) (配列番号 7)
Vitronectin - P2 5 ' 一 GCT AGGAACCTACAACAACT - 3
(1236, S) (配列番号 8)
Vitronectin - PS 5' 一 GTACCCCAAACTTATCCAAG 一 3 (570
2
42
A) (配列番号 9)
Vitronectin - PE 5 ' - GTAGGGAGGATTCACAGAGT -3'
(1367, S) (配列番号 10)
必要に応 じて、 これらの配列の 5'末端にプロモータ配列 およぴコー ド配列な どを追加したも のをプライマ ー DNA と し て使用 した。 なお、 原則と して 30 塩基長未満のプライマ ー DNA の合成は、 プロ リ ゴ ■ ジヤ ノヽ。ン株式会社に E@sy Oligos ( R) と して委託合成 した。 それ以上の長さ のプライマ ーは、 HPLC 精製品も しく は PAGE 精製品 と して株式会社サヮディ 一 · テク ノ ロジ一に合成依頼した。
(コー ド配列の設計)
本実施例では、 人為的に作成された 「コー ド配列」 を含む オリ ゴ DNA を使用 した。 こ こで、 コー ド配列と は、 nearest - neighbor 法 に よ る 算 (SantaLucia A unified view o I polymer, dumbbell, and oligonucleotide DNA nearest— neighbor thermodynamics. Proc Natl Acad Sci U S A 1998 Feb 17 ;95 (4) : 1460-5)によ り 2本鎖 DNAの融解温度が均一に 揃え られている こ と、 安定した二次構造やミ スハイブリ ッ ド の形成を起こ しにく いよ う に計算されている こ と等の特徴を 有す る よ う に設計 さ れた 同一塩基長 の配列 の組を 指す (Yoshida e t a 1 Solution t o 3 - SAT by breadth first search. DIMA CS Series in Discre te Ma them a tics and Theoretical Computer Science, 2000 54: 9—22, American Mathematical Society)。 こ こ では、 以下に示す 5 つの 25塩 基長の配列を使用 した。
配列名 -- • --配列
Code [1] 一 TGAAGTCACCACAACACACAGTACA 一 3 (配列番 号 11)
Code [2] GACAAACACCCCGAATACAAACAGC
号 12)
Code [3] AGTATCGAAGCGTGTGTCTGAAGAT
号 13)
Code [4] CAAAAGAGTTAGGATGGGAGCTGGA
号 14)
Code [5] 一 TCGATATGGGTGGTACATGAGAGGT
号 15)
Code [6] CTCCGCTCCTCTATTCATTCCCTAG - 35 (配列番 号 16)
(コ ンビ 一ティ ング反応に使用 したプライマー配列) コ ンビュ ティ ング反応には、 遺伝子特異的配列およびコ ー ド配列、 T7 プロモータ配列な どを組み合わせた特殊なォ リ ゴ DNAを使用 した。 それらの名称、 構造および配列を以下 に列挙する。 ( 「構造」 の項目で、 [ ]は遺伝子特異的配列の 配列名、 く >はコー ド配列配列名、 {T7}は T7 プロモータ配列 を表す。 Tg は 6 塩基長の配列 5,-GGGAGA- 3'、 Tc は 9 塩基長 の配列 5'_ATAGGGAGA- 3'のこ とである。 またこれらの頭に、a, が付いている ものは逆相補鎖配列を示す。 S はその他の配列 名称 : TGTP-P1
構造 : 5-S-a {T7} -S- [TGTP-S1] -3 '
配 列 5' - CTGAGGTTATCTTGGTCTGGGGAGA
TCTCCCTATAGTGAGTCGTATTA CTGAGGTTATCTTGGTCTGGGG AGA CAGATATATATGGTCCCACC - 3' (配歹 U番号 17)
名称 : TGTP-T21
構造 : 5, -a<Code[l] >-Tg-a<Code [2] >-a {T7} - [TGTP-S1] -3' 配 列 : 5 ' - TGTACTGTGTGTTGTGGTGACTTCA TCTCCC GCTGTTTGTATTCGGGGTGTTTGTC TCTCCCTATAGTG AGTCGTATTA CAGATATATATGGTCCCACC -3' (配列番号 18)
名称 : Vitronectin - T32
構造 : 5, - aく Code [2] >-Tg-aく Code [3]〉 - a {T7} - [Vitronectin- PI] - 3,
配 列 : 5' - GCTGTTTGTATTCGGGGTGTTTGTC TCTCCC ATCTTCAGACACACGCTTCGATACT TCTCCCTATAGTG AGTCGTATTA TTTGTCTCCAGAGAAGAAAT -3' (配歹 U番号 19)
名称 : aT21
構造 : 5' _Tc - <Code [2] > - aTg -く Code [1]〉- 3,
配列 : 5 ' - ATAGGGAGA GACAAACACCCCGAATACAAACAGC GGGAGA TGAAGTCACCACAACACACAGTACA -3' (配歹 (J番号 20)
コ メ ン ト : TGTP- T21 プラ イ マーの 5,末端側 と相補的な配列。 名称 : aT32
構造 : 5' _Tc -く Code [3]〉 - aTg -く Code [2] >- 3'
配歹【】 : 55 - ATAGGGAGA AGTATCGAAGCGTGTGTCTGAAGAT GGGAGA GACAAACACCCCGAATACAAACAGC - 3 ' (配歹 U番号 21 )
コ メ ン ト : Vitronectin— T 32 プラ イマーの 5'末端供 j とネ目補白勺 な配列。
名称 : TGTP-PT
構造 : 5, - " GATGCA" - {T7} - [TGTP - PS] - 3,
配 列 : 5 ' -GATGCA TAATACGACTCACTATAGGGAGA GGGGATGAATTTCTACTTTG-3' (配歹 U番号 22)
コ メ ン ト : TGTP 遺伝子をィ ンビ ト 口 合成する 際に使用 した プライ マー。 3'末端の 20 塩基は合成 した TGTP の RNA分子の 5,末端と 同一の配列である。
名称 : Vitronectin- PT
構造 : 5, - " GATGCA" - {T7} - [ V i tron e c t i n - PS ] - 3,
配 列 : 5' - GATGCA TAATACGACTCACTATAGGGAGA
GTACCCCAAACTTATCCAAG -3' (配列番号 23)
コ メ ン ト : Vitronectin 遺伝子をイ ン ビ ト 口合成する際に使 用 し た プ ラ イ マ ー 。 3' 末 端 の 20 塩 基 は 合 成 し た Vitronectin の RNA分子の 5,末端と 同一の配列である。
名称 : 20/aCode [1]
配列 : 5, - TGTACTGTGTGTTGTGGTGA - 3' (配歹 U番号 24) コ メ ン ト : Code [1] 配列の 5'末端側 20 塩基配列で、 コ ンビ ユ ーティ ング反応液中での Ttn値が 48°C程度 と なっている。 名称 : aC3-T45
構 造 : 5, - a<Code [5] >-aTg-a<Code [ 4] > -a { T7 } -T g- <Code [3] > - 3'
配 歹 IJ : 5 ' - ACCTCTCATGTACCACCCATATCGA TCTCCC TCCAGCTCCCATCCTAACTCTTTTG TCTCCCTATAGTGAGTCGTATTA GGGAGA AGTATCGAAGCGTGTGTCTGAAGAT -3 ' (配列番号 25) 名称 : aT45
構造 : 5, - Tc -く Code [4」〉 - aTg - <Code [5J〉-3
配歹 [J : 5 ' - ATAGGGAGA CAAAAGAGTTAGGATGGGAGCTGGA GGGAGA TCGATATGGGTGGTACATGAGAGGT -3' (配列番号 26)
コ メ ン ト : aC3- T45 の 5'末端側と相補的な配列。
名称 : aC3-T465
構造 : 5' - a<Code [5] >- aTg-a<Code [6] >-aTg-a<Code [4] >- a {T7} - Tg -く Code [3] >- 3,
配 歹 IJ : 5 ' - ACCTCTCATGTACCACCCATATCGA TCTCCC CTAGGGAATGAATAGAGGAGCGGAG TCTCCC TCCAGCTCCCATCCTAACTCTTTTG TCTCCCTATAGTGAGTCGTATTA GGGAGA AGTATCGAAGCGTGTGTCTGAAGAT -3' (配歹 [J番号 27) 名称 : aT465
構 造 : 5' - Tc -く Code [4] > - aTg - <Code [6]〉 - aTg -く Code [5]〉 - 3,
配列 : 5' - ATAGGGAGA CAAAAGAGTTAGGATGGGAGCTGGA GGGAGA CTCCGCTCCTCTATTCATTCCCTAG GGGAGA TCGATATGGGTGGTACATGAGAGGT - 3' (配歹 !j番号 28)
コ メ ン ト : aC3- T465 の 5 '末端側と相補的な配列。
( RNAサンプルの調整)
コ ン ビ ユ ーテ ィ ング反応に使用 した TGTP 遺伝子および Vitronectin 遺伝子の RNA 分子、 並びに Code [2, l]および Code [3, 2] RNA 分子は、 イ ンビ ト ロ転写法によって調整した
TGTP 遺伝子および Vitronectin 遺伝子は、 以下の手順で 調製した。 BALB/c マウスに、 C57/BL10 マウス由来脾臓細胞 を移植する こ と によ り 移植片対宿主反応(GVHR)を誘発する。 C57/BL10 マ ウス 由来脾臓細胞は、 東京大学医学部の徳永勝
士教授ら よ り 譲り 受けた。 次いで、 移植後 2 日 目 の肝臓から total RNA を精製する。 なお、 このサンプルと 同等のものが TGTP 遺伝子および Vitronectin 遺伝子の RNA を含むこ と は 半定量リ アルタイ ム PCR 法によ り 確認されている (Wakui et al. 2001)。 次いで、 Total RNA をテ ンプ レー ト と して逆転 写反応を行い、 TGTP 遺伝子お よび Vitronectin 遺伝子の cDNA を作成した。 逆転写反応のプライマーと して、 TGTP 遺 伝子 に つ レヽ て ¾ TGTP-PE を 、 Vitronectin 遺伝子 で fま Vitronectin-PE を使用 した。 逆転写反応の反応液は、 50mM Tris-HCl (pH 8.3) 、 4mM DDT、 lOmM MgClい lOOraM KC1、 0.5mM dNTPs、 800nM の各プ ラ イ マーおよび 0.3 Units/ μ 1 の AMV Reverse Transcriptase XL (タカラバイオ株式会社) を使用 し、 これに total RNAを力 Bえて反応を行った。 なお、 反応は、 ホ ッ ト ' ス ター ト法で行なった。 具体的には、 酵素 を除く 反応液 9.5 μ 1 を 65°Cで 5 分間イ ンキ ュベー ト した後、 50°Cにて酵素を含む 3 μ 1 の溶液を加えた。 酵素を添加後、 50 °C で 60 分 間 イ ン キ ュ ベ ー ト し た 後 に 0.5 μ 1 の Ribonuclease H (2U/1; I n v i tro gen)を添カロ し、 37°Cで 20分 間反応した。 次いで、 得られた cDNA をテ ンプ レー ト と して PCR反応を個別に行なった。 TGTP については TGTP- PEおよび TGTP-PT を、 Vitronectin 【こつレヽて fま Vitronectin-PEおよび Vnct-PT を各々 プライマー ■ ペア と して添加 して反応を行つ た。 ここで、 TGTP-PT および Vitronectin— PT プライマーは、 遺伝子特異的配列の TGTP - PS およぴ Vitronectin- PS の 5'末 端に、 それぞれ 6 塩基長のク ラ ンプ配列(5'- GATGCA- 3' (配
列番号 26) )および 23 塩基長の T7 プロ モータ配列 (5'- TAATACGACTCACTATAGGGAG A-3' (配列番号 27) )を付力 [I した オリ ゴ DNA である。 PCR 反応には TaKaRa Ex Taq" (タカ ラ バイ オ株式会社)を使用 した。 操作は、 添付のプロ ト コ ル (Cool Start法)に準じて行なった。 簡単には、 25 μ 1 の反応 バ ッ フ ァ一中に 0. 8 /z lM の各プライマー DNA と、 0. 2mM の各 dNTP、 40 U/ml の酵素と、 1 μ 1 の cDNA サンプルと を力 Bえて 調整した溶液を、 94°C _30 秒、 60°C _90 秒、 72°C - 60 秒を 31 サイ クル繰り 返した後、 さ らに 72°Cで 10 分間反応させた。 なお、 この反応によ り 、 TGTP については 831 塩基の 2 本鎖 DNA 力 S得ら;^、 Vitronectin につレヽては 846 塩基の 2 本鎖 DNA が得られる もの と期待されるが、 実際に得られた PCR 産 物を電気泳動によ り 検出 したと ころ、 期待される塩基長のシ グナルが各 々 シ ン グル ■ バ ン ドで碓認、 さ れた (data not shown)。
上記 PCR 反応によ り 得られた T7 プロモータ配列を含有す る TGTP、 Vitronectin両遺伝子の 2本鎖 DNAを使用 したィ ン ビ ト 口転写を各々行ない、 両遺伝子の RNA分子を作成した。 反応は各遺伝子について 100 1 の反応液を 4 つの試験管に 分けて行なレヽ、 各々 につレヽて、 40mM Tris-HCl (pH8. 0) s 8mM MgCl2、 2mM Spermidine- (HC1) 3 25mM NaCl、 5mM DDT、 0. 4mM NTPs よ り な る 反 応 バ ッ フ ァ ー に 500U/ml T7 RNA Polymerase (Invitrogen)および 1 μ 1 の 2本鎖 DNAテ ンプレ ー ト を加えた。 37°Cで 1 時間イ ンキュベー ト した後に 1U/ μ 1 の Deoxyribonuclease I ^ Amp lirication wade ;
Invitrogen)を 2.5 μ 1 添力 tlし、 さ らに 37°Cで 15 分間イ ンキ ュペー ト した。 得られた反応物はエタ ノ ール沈殿法によ り 精 製した。 なおエタ ノ ール沈殿の際には Pellet Paint (R) Co- Precipitant (Novagen)を用い、 製品に添付の使用説明に添 つて実験操作を行なった。 得られた沈殿物は DEPC 処理水に 溶解したものを _20°Cで保存して使用 した。
Code[2, l]および Code [3, 2] RNA 分子は、 合成委託したォ リ ゴ DNA の TGTP-T21 およぴ Vitronect in-T32 を用いてィ ン ビ ト ロ合成 した。 各々 について、 オリ ゴ DNA の 3 '末端に相 補的な 20 塩基長のプライマー と を PCR 反応液に混入し、 94°Cで 5 分イ ンキュベー ト した後に 80°Cにて酵素を含むバ ッフ ァーを投与、 その後 60°Cで 5 分、 72°Cで 60 分間ィ ンキ ュペー ト した。 こ こで得られた T7 プロモータ配列を含む二 本鎖 DNAを使用 したイ ンビ ト ロ転写反応によ り コー ド RNA を 生成した。 なお、 転写反応、 Deoxyribonuclease I 処理およ び エ タ ノ ー ル 沈 殿 法 の 方 法 は 、 TGTP 遺 伝 子 お よ び Vitronectin遺伝子の場合と 同様である。
(コンピューティ ング反応)
DNA プライマーによ る各種関数反応を実現する コ ンビユ ー ティ ング反応は、 単一バッファー内に RNA依存 DNAポリ メ ラ ーゼ活性を有する酵素、 DNA 依存 DNA'ポリ メ ラーゼ活性を有 する酵素および DNA依存 RNAポリ メ ラーゼ活性を有する酵素 を共存させ、 同時に活性を持たせる こ と によ り 実現される も のである。 反応液の組成は 40mM Tris-HCl (pH 8.0)、 50mM NaCl、 8mM MgClい 5mM DTT および 0.3 U/ μ 1 AMV Reverse
Transcriptase XL (タカラノ ィォ株式会社)、 0.04 ]/ μ 1 Ex Taq™ (タ カ ラバイ オ株式会社)、 3.2 U/ μ 1 Thermo T7 RNA Polymerase (T0Y0B0)よ り 成る。 こ の反応液に適宜、 DNA プ ライマーおよび RNAテンプレー ト を添加する。 なお、 特に断 り がない限り 、 DNA プライマーは各々最終濃度 1 nM で添加し ている。 本反応はホッ ト ' スター ト法で行ない、 酵素を除い た反応液を 65°Cで 5 分間イ ンキュベー ト した。 続いて 50°C にて全ての酵素を含むバッ フ ァ ー液を添加し、 よ く 混ぜた後 に、 50°Cでイ ンキュベー ト した。 なお特に断り がない限り 、 試験管 1 本あた り 添加 した酵素バッフ ァ一は 3 μ 1 であ り 、 反応液の総液量を 25 μ 1 と し、 反応時間は 30 分である。 反 応後速やかに、 転写酵素等の活性を失わせる 目的で、 85°Cで 10分間ィ ンキュベー ト した。
(コ ンビユ ーティ ン反応後の RNA産物の検出)
コ ンピューティ ング反応後の RNA 生成物は、 DNA を酵素で 分解した後に逆転写 -PCR を行な う こ と で検出 した。
DNA の酵素分解に先立ち、 DNA に結合する こ と で酵素分解 を妨げる と考え られる Taqポリ メ ラーゼな どの酵素類を除去 する 目的でカラムによる精製を行なった。 コ ンビユ ーティ ン グ反応液に DEPC 処理水を加えて液量を 50 μΐ と したサンプ ル を 、 分 画 分子 量 100, 000 の カ ラ ム MICR0C0N ΥΜ - 100 (Millipore)にのせて、 4°C , 12000rcf で 10 分間遠心した。 カ ラ ム を通過 した溶液を回収 し、 さ ら に、 MICR0C0N YM-10 (Millipore, 分画分子量 10, 000)にのせて 4°C , 12000RCF で 50 分間遠心 した後、 カ ラムを新しい試験管に逆さ に乗せて
4°C , 12000RCF で 10 分間遠心 し、 カ ラムの上部に残った濃 縮液を回収 した。
DNA の分解 は、 20mM Tris-HCl (pH 8.4) 、 2mM MgClい 50mM KC1 お よ び 0. 1U/ μ 1 D eoxy r ib onu c 1 ea s e I (Amplification Grade; Invitrogen)に上で回収さ れたサン プルを各々 1 // 1 添加 した 10 μ 1 の反応液中で、 室温で 15 分 間反応させる こ と によ り行なった。 反応後、 25mM の EDTA を 1 μ 1力 [Iえた後に 65°Cで 10分間イ ンキュベー ト した。
逆転写反応は 50mM Tris-HCl (pH 8.3) 、 4mM DDT、 lOraM MgClい lOOmM KC1、 0.5mM dNTPs お よび 0.3 Units/ μ 1 の AMV Reverse Transcriptase XL (タカ ラ ノ ィ ォ株式会社) よ り なる溶液に、 最終濃度 600nM のプライマー DNA と上で得ら れた DNase I 反応物を 1 t 1 加えた、 試験管 1本あた り 12.5 μ 1 の反応液中で行なった。 なお反応はホッ ト ' ス ター ト法 で行ない、 酵素を除いた組成物よ り なる溶液を 65°Cで 5 分 間イ ンキ ュベー ト した後に、 バ ッ フ ァーに酵素を加えた溶液 を加えた 3 Z 1 の溶液を 50°Cにて添加した。 その後 50°Cで 1 時間反応させたのち、 94°Cで 10分間ィ ンキ ュベー ト した。
得られた cDNA はリ アルタイ ム PCR 法によ り 定量分析した。 生産者のプロ ト コルに添って調整した 20 / 1 の反応液に逆転 写反応産物を Ι μ ΐ加えて、 94°Cで 10分間イ ンキュベー ト し た後に PCR 反応を実行した。 PCR 反応は、 コー ド配列および 300 塩基長未満の遺伝子配列を増幅する際には 94°C- 3 秒, 60°C -10 秒, 72°C -5 秒のサイ クルを 40 回操り 返すものと し、 300 塩基長以上の遺伝子配列については 94°C- 25 秒, 60°C-
10 秒, 72°C -25 秒のサイ クルを 40 回繰り 返すものと した。 なお、 濃度の定量解析の際には、 最終濃度が 0. 1ηΜ、 0.03nM、 0. OlnM と なる よ う に調整した一本鎖 DNA を同時に反応させ、 PCR 增幅曲線を機械に付属のソ フ ト ウ アを用いて比較する こ と によ り 行なった。 また、 PCR 増幅産物をゲル電気泳動に て検出する際には、 PCR 反応を適当な時点で停止 し、 その増 幅 途 中 の 産 物 を Agilent 2100 bioanalyzer (Agilent Technologies)を用いて検出、 解析した。
(コ ンビユ ーティ ン反応の中間 DNA産物の検出)
コ ンビユ ーティ ング反応の進行を確認するため、' 反応液中 にて生成される一本鎖および二本鎖 DNA よ り なる中間産物の 検出を行なった。
逆転写反応によ り 生成される一本鎖も しく は二本鎖 DNAの 検出の際には、 サンプルを精製後に PCR反応で増幅する こ と によ り 行なった。 コ ンビユ ーティ ング反応液に DEPC 処理水 を力 Π えて液量 を 50 1 と した サ ン プルを、 分画分子量 100, 000 のカ ラ ム MICR0C0N YM-100 (Mi 11 ipore)にのせて、 4°C, 12000rcf で 10 分間遠心 した。 カラムを通過 した溶液 を回収 し、 さ ら に、 MICR0C0N YM-100 (Millipore, 分画分 子量 10, 000)にのせて 4°C, 12000RCF で 50 分間遠心 した後、 カラムを新しい試験管に逆さに乗せて 4°C, 12000RCF で 10 分間遠心 し、 カ ラ ムの上部に残った濃縮液を回収した。 こ こ で得られた液に対 して、 適当なプライ マーおよび Ex Taq(R) (タカ ラバイオ株式会社)をバッフ ァ一に添加 した反応液中で PCR 反応を行ない、 一本鎖 DNA の増幅を行なった。 増幅は
cool start 法で行ない、 94°C - 30 秒, 60°C -60 秒, 72。C - 60 秒のサイ クル 31 回の後に、 さ らに 72°Cで 10 分間イ ンキュ ベー ト した。 得られた増幅産物はゲル電気泳動によ り 検出 し た。
DNA 二本鎖反応によ り形成される二本鎖 DNA の検出の際に ま、 Agilent 2100 b ioanalyzer (Agilent Technologies)【こ よるゲル電気泳 ftを行なつた。 一本鎖 DNA の塩基; ¾および濃 度の計測は、 装置のプ口 卜 3ノレに準じて行なった。
(ハー ドゥエァの開発 )
レ 卜 ロ ウィルスのゲノ ム増幅システムにおける反応を模し た分子コ ンピュ一タ を実際に試験管内にて実現するために、 第一に分子コ ンピュ一タの実現に必要と なる化学反応を全て 実現する反応液の条件検討を行なつた。 この反応液は 、 分子 コ ンビュータを構成するハ一ドゥユア と なる重要なものであ る。
こ こで用いるノ、一ドウエ アは、 DNA 依存 DNA ポリ メ ラーゼ 活性、 RNA依存 DNA ポリ メ ラーゼ活性および DNA依存 RNA ポ リ メ ラーゼ活性と、 さ らに RNaseH 活性と が、 一定温度に保 たれた単一試験管内にて同時に実現する必要がある。 同様な 反 応 液 は 核 酸 増 幅 技 術 で あ る 3SR (Guatelli et al. Isothermal, in vitro amplification o i nuc丄 eic acids by a multienzyme reaction modeled after retroviral replication. Proc Natl Acad Sci U S A 1990 0ct ;87 (19) : 7797)において実現されていたので、 この反応条
件に沿って実験を行なった。 しかしなが ら 3SRやこれに類似 する技術での反応条件は 37°Cから 42°Cとい う 、 PCR 反応に おけるァニーリ ング温度な どと比較する と低い温度設定と な つてお り 、 実際にこの条件で実験した と ころ、 逆転写反応お よび DNA 二本鎖化反応に用いるプライマー DNA の特異性を確 保する こ と が困難であ り 、 特にターゲッ トが存在しないプラ イマ一がダイマーを形成しやすいほか、 非特異的な反応が期 待 さ れる反応を抑制する こ と が明 ら か と な っ た (data not s no wn)。
本分子コ ンピュータではプライマー DNA によ り プロ グラム を入力するため、 このよ う な性質はハー ドウェア と しては不 適当である こ とから、 プライ ミ ングの特異性を上げるために 反応温度を高く 設定する こ と を考えた。 3SR では酵素と して AMV 逆転写酵素、 T7 RNA ポリ メ ラーゼおよび RNaseH 用いる が、 T7 RNA ポリ メ ラーゼと RNaseH は反応温度を高く 設定す る と活性を失う。 そのため、 高い反応温度条件下で DNA依存 RNA ポ リ メ ラ ーゼ活性 を示す酵素 と して Thermo T7 RNA Polymerase (TT7; T0Y0B0)を、 また RNaseH 活性を示す酵素 と して Thermus therraoph i 1 u s RibonucleaseH ( Tth RNaseH; T0Y0B0)を用いて検討を行なった。 酵素が活性を持つ と確認 されている反応温度は、 AMV 逆転写酵素が 65°C以下、 TT7 は 50°C以下、 RNase Hは 90°C以下であった。 いずれも低温 度では 37°C程度まで活性が確認されてお り 、 こ こではよ り 高温での反応条件が望まれたこ と か ら、 反応条件の検討は 50°C以上にて行なった。
50°Cか ら 62°Cの各反応温度において、 耐熱性酵素を使用 した反応条件下で各反応活性のア ツセィ を行なった と こ ろ、 RNA依存 DNA ポ リ メ ラー活性は 50°C〜 58°Cではほぼ一定 して いる が (図 10)、 DNA 依存 RNA ポ リ メ ラ一活性は 50°Cよ り 温 度が上が る に従って急激に活性が低下する こ と が明 らかと な り (図 11)、 反応温度を 50°C以上に設定する のは困難である と考え られた。 さ ら に DNA依存 DNAポ リ メ ラーゼ活性も温度 に応 じて低下するが、 これは Taq DNA ポ リ メ ラーゼを添加す る こ と に よ り 改善さ れる こ と が実験的に示 された (図 12)。 と こ ろで、 AMV 逆転写酵素は、 一本鎖の RNA 鎖あるいは DNA 鎖を铸型 と した DNA ポリ メ ラーゼ活性をもつほか、 DNA- RNA ハイ プ リ ッ ドカ ら RNA鎖を除去する RNas e H活性も有する こ と カ 失卩 られてお り (Baltimore et al. 1972, Charapoux et al 1984, Verma 1977)、 さ ら に Taq DNA ポ リ メ ラーゼはェキソ ヌ ク レァ一ゼ活性を持つこ と が知 られている。 これら の酵素 を用いる際には RNaseH は特に無 く て も反応が進行する こ と が、 実験的にも明 らかと なつた (.data not shown;
以上の検討結果を も と に、 ノヽ 一 ドウ エア と しては AMV逆転 写酵素わ よぴ TT7 RNA ポリ メ ラ一ゼ、 Taq DNA ポ Vメ ラーゼ によ り 構成される反応液を用い 、 50°Cの一定温度に保たれた 反応条件においてコ ンビ >·
ユ ーテ ィ ング反応を行な Ό もの と し た。
(プラ イ マー伸長反応の特異性評価)
コ ンピューテ ィ ング反応では、 RNA および DNA を鑤型 と し たプライ マー伸長反応によ ってデータ の入力や演算な どを行
な う。 そのためプライ ミ ングの特異性が確保されている こ と は非常に重要である。 こ こでは、 移植片対宿主反応 (GVHR) が引き起こ される際に遺伝子発現が上昇する こ と が知 られて い る TGTP/Mg21 遺伝子 (以下、 TGTP 遺伝子 と表記)お よび Vitronectin 遺伝子について、 イ ンビ ト ロ合成した両遺伝子 断片をターゲッ ト と して、 特異的に設計されたプライマーの 逆転写反応におけるプライマー伸長反応の活性おょぴ特異性 を評価する実験を行なった。
TGTP-P1 は、 TGTP 遺伝子を特異的な配歹 IJ TGTP-P1 を 3'末 端に持のプライマーである。 このプライマーの伸長活性およ び特異性を評価するために、 このプライマーと TGTP 遺伝子 と を混和 して 15, 30 および 45 分間のコンビユーティ ング反 応を実行し、 さ らにそこで形成されたプライマー伸長産物を PCR反応で増幅(図 13_ (a) )した際の反応生成物をゲル電気泳 動で確認したと ころ、 期待される 842bp の位置にバン ドが確 認された(図 14, レーン 1〜3)。 同様な実験を、 TGTP 遺伝子 の変わり に Vitronectin 遺伝子を用いて行なった と ころ (図 13- (b) )、 ノ ン ドは確認されなかった。 なお、 PCR 反応によ る増幅の際には、 伸長させたプライマーと、 铸型と して加え た両 RNA 分子の 5'末端を含むプライ マー (TGTP-PT および Vitronectin— PT)と をプライマー · ペア と してカロ免た(A)。 こ の た め、 ミ ス · プラ イ ミ ングに よ り 伸長 して精製 さ れた cDNA も この方法で検出 される と考え られる。 この結果から、 プ ラ イ マ ー TGTP-P1 は、 少 な く と も TGTP 遺伝子お よ び Vitronectin遺伝子の中においては、 TGTP遺伝子上のターゲ
ッ ト部位に特異的に結合して伸長反応を引き起こすこ とが確 認された。
同等な実験を Vitronectin遺伝子 RNAに特異的なプライマ 一 で あ る Vitronectin -PI を用 い て行 な っ た と こ ろ 、 Vitroenctin 遺伝子が存在す る 場合に の み、 期待 さ れ る 792bp にピーク が認め られた(レーン 7〜 12)。 これよ り 、 こ のプライマーもターゲッ ト部位と のみ特異的にプライ ミ ング を起こすこ とが確認される。 ただし一部にス メ ァ状のシグナ ルも確認される こ と から、 若干非特異的な反応も起きている もの と考えられる。
以上の結果よ り 、 TGTP-P1 および Vitronectin-Pl プライ マーは、 本ハー ドウェア中で特異的プライマーと して利用で き る こ と が確認された。 また、 同等な実験を 37°Cの反応条 件で行なった際には、 プライ マー 'ダイ マーと考え られるパ ン ドゃ非特異的な ス メ ァが強 く 検出 さ れていた こ と か ら (data not shown) , こ こで開発 した 50°Cの反応条件がよ り 適当である こ とが改めて示された。
(コー ド化関数の実行)
コー ド化関数と は、 特定の RNA分子が存在する場合に対応 する コ ー ド RNA を生成する ものである。 遺伝子発現解析プロ グラムを実現する際に、 まず重要となるのがこの コ ー ド化関 数の実行である。 こ こでは TGTP 遺伝子おょぴ Vitronectin 遺伝子 RNA に対する コー ド化関数を設計し、 それを使用 した 実験を行なった。
TGTP コ ー ド化関数の構造を図 2- 5A に示す。 これは基本関
数 A (図 6A 参照)を元 と して、 引数と して TGTP 遺伝子上の 配列の aTGTP-Sl (TGTP - SI の相補鎖配歹 lj )お よび TGTP - S2 を、 戻 り 値 と して Code [2, 1]配列を設定 した も の と な っ てい る ( Path ( aTGTP-Sl 〉 TGTP-S2) => Code [2, 1] ;)。 すなわち、 第 1 鎖 cDNA 合成に関わる プライ マー(PI)は配列 TGTP- S1 の ほか T7 プロ モータ配列お よびコ ー ド配列を含み、 第 2 鎖 cDNA 合成に関与するプライ マー(P2)は配列 TGTP- S2 よ り な る。 TGTP 遺伝子 RNA が存在する と P 1 が逆転写反応を起こ し、 さ ら に S2 によ る第 2 鎖合成反応が起き て T7 プロモータ配列 力 S二本鎖 DNA と なる こ と に よ り Code [2, 1 ]酉己歹 lj RNA (Code [2] と Code [ 1]配列 と が Tg 配列を挟んで並んだも の) が転写さ れる も の と期待さ れる。 なお、 T7 転写酵素の転写開始点は プロモータ配列中にあ り 、 出力 される コー ド RNA の 5 '末端 には Tg 配列 (5'_GGGAGA- 3,)が常に付加 される と 考え られる。 また、 P 1 の 5 '末端の配列が一本鎮 DNA の状態だと 、 出力 さ れた コー ド RNA が未反応の P1 と結合 して DNA-RNA ハィ ブリ ッ ドを形成 し RNas eH 活性によ り 分解されて しま う 可能性が 考え られ、 また実際に P1 を一本鎖のままで反応させる と 出 力 RNA カ 検出 さ れな力 つ た こ と 力 ら (data not shown)、 PI の 5,末端配列(コー ド配列の相補鎖部分お ょぴプロ モータ配 列の一部)に相捕的なオ リ ゴ DNA をあ らか じめハイ プリ ダィ ズさせて二本鎖 DNA と してお く と が効果的である と 考え ら れた。
こ こで示 した TGTP 遺伝子コ ー ド化関数を実行するため、 P1 と して TGTP— T21 および aT21 オ リ ゴ DNA のハイ プ リ ッ ド
を、 P2 と して TGTP- S2 を用いてコ ンビユーティ ング反応液 中で実行し、 出力されたコー ド配列 Code [2, 1]の RNA を定量 する実験を行なった(図 16)。 コー ド配列 RNA は、 コ ンビュ 一ティ ング反応産物を DNasel 処理した後に逆転写反応、 リ アルタイ ム PCR 反応する こ とで検出 した。 TGTP を投与した 場合(白丸)にはコー ド配列 RNA の増加が確認されるのに対し、 TGTP が存在 しない場合(斜線丸)では時間を追っても変化が 見られなかった。 なお、 検出反応での DNasel 処理が不十分 だと P 1 上のコー ド配列が検出されて しま う 可能性も考えら れたため逆転写反応時に酵素を添加しない実験も行なったが (白四角および黒四角)、 その場合はほとんどコー ド配列は検 出されず、 バック グラ ウン ドは十分に低いといえる。 以上よ り 、 TGTP 遺伝子コ ー ド化関数が本コ ンビュ ティ ング反応 液中で確かに活性を有する こ とが確認された。 なお、 コー ド 配列 RNA は反応時間 40 分程度をピーク と してその後は徐々 に減少 しているが、 その理由 と しては時間の経過に伴って RNA 合成反応活性が低下し、 RNA 分解反応がこれを上回って しま う こ とが考えられる。 こ こで入力 した TGTP 遺伝子 RNA の濃度は 0. 17nM であ り 、 またこの定量結果をも と にコ ンビ ユーティ ング反応液中のコー ド配列 RNA産物濃度を計算する と、 反応時間 36分産物で 1. 58nM となった。 同等な実験を複 数回行なったと ころ (data not shown)、 30 分力、ら 60 分のコ ンピューティ ング反応で、 コー ド配列 RNA の出力は TGTP 遺 伝子の一倍から数十倍程度得られた。
さ らにコ一ド化関数の反応特異性を評価する実験を行なつ
た。 TGTP 遺伝子コー ド化関数に対して、 TGTP 遺伝子 RNA、 Vitronectin 遺伝子 RNA およびネガテ ィ ブ ·コ ン ト ローノレと して同量の水(N. C. )を加えて 30 分間コ ンピューティ ング反 応を実行し、 その産物と して得られたコ ー ド配列 RNAの濃度 を測定した(図 17C)。 この結果と しては TGTP 遺伝子サンプ ルが与えられた時のみコー ド配列の出力が得られる こ と が期 待されるが、 こ こでは Vitronectin遺伝子を投与した場合で も コー ド配列のシグナルが認め られた。 また、 同様な実験を Vitronectin 遺伝子コー ド化関数についても行なったと ころ、 こち らでも特異性は認め られなかった(図 17D;)。
(複数 RNA分子にまたがる経路の逆転写反応と演算反応) 本分子コ ンピュータ上で論理演算や -ユ ーラル .ネ ッ ト ヮ ーク によ る遺伝子発現解析プロ グラムなどを実行する際には、 複数の RNA分子で構成される経路を逆転写する反応が必須と なる。 複数の RNAで構成される経路の逆転写反応と は、 プラ イマ一が第 i の RNA分子にプライ ミ ングして逆転写反応を起 こ し、 そこで形成された cDNA の 3,末端がさ ら に第 2 の RNA 分子にプライ ミ ングする、 とい う プロセスであ り 、 この実行 には RNaseH 活性によ る第 1 の RNA 分子の除去が重要と なる。
こ こ で は 、 図 18 に示す よ う に イ ン ビ ト ロ 合成 し た Code[2, l]および Code [3, 2] RNA 分子、 および Code[l]配歹 IJ と相補的な 20/aCode[l]プライマーを用いる こ とで、 2 つの RNA 分子にまた力 Sる Code [1]→ Code [2] →Code[3]なる RNA 上の経路を逆転写する反応の評価を行なった。 コ ンビユ ーテ ィ ング反応液に 20/aCode [1]プライマーと RNA サンプルを投
与して 0分、 15分および 30分間反応させ、 形成された cDNA 産物を PCR 増幅 してゲル電気泳動にて確認 した と こ ろ、 Code [2, 1]および Code [3, 2] RNA分子を投与して 15分以上反 応させた場合に、 期待される cDNA の形成が確認された (図 19)。
複数の RNA分子上をたどる逆転写反応が実現する こ と が碓 認されたこ とから、 この経路を引数とする関数と して基本関 数 B よ り 「Path ( Code [1] -# Code [3] ) => Code[4,5]」 な る関数を構築 した (図 20)。 この関数は、 TGTP 遺伝子を引 数と して Code [2, 1]を返す関数、 および Vitronectin 遺伝子 を引数と して Code [3, 2]を返す関数と組み合わせる こ と によ り 、 TGTP 遺伝子と Vitronectin 遺伝子が共に存在する場合 に の み Code [4, 5] を 返 す 、 「 TGTP Λ Vitronectin → code [4, 5]」 なる論理演算プロ グラ ムが実現する こ と が期待 された(図 7 参照)。 こ こでは図 19 の実験で使用 した RNA サ ンプルを用いて、 Code[2, l]および Code [3, 2] RNA 分子が共 に存在する場合にのみ Code[l]で開始し Code [3]で終結する 経路が実現されて Code [4, 5] RNA分子を返す反応を評価する 実験を行な っ た。 関数には、 P 1 に図 19 の実験 と 同様に 20/aCode [1]を、 P2 には aC3— T45 と aT45 と をノ、イブリ タ、、ィ ズさせたものを使用 した。 その結果、 Code [2, 1]、 Code [3, 2] RNA 分子を両方投与した場合においても Code [4, 5]の有意な 発現は認め られなかっ た (図 21)。 コー ド配列 RNA 分子と 20/aCode [1]プライ マーの代わ り に Co de [ 3 ]の相補鎖配列ォ リ ゴ DNA を 直接投入す る 実験 を 別 途行 な っ た と こ ろ
Code [4, 5]の宪現カ S言忍め られたこ と 力、 ら (data not shown)、 反応効率や特異性に問題があったもの と考え られる。
(セ ンス鎖 RNA増幅関数の実行)
基本関数 C: Amplify (a - # b) を用いて、 TGTP 遺伝子の 配列を増幅する関数を設計し、 実験によ り 反応の確認を行な
TGTP-PT は TGTP 遺伝子 RNA をイ ン ビ ト ロ合成した際に使用 したプライマーである ためこのプライ マーの 3'末端に配置 された配列 TGTP- PS は TGTP 遺伝子 RNA の 5'末端と 同一であ り 、 さ らにその 5 '末端側に T7 プロモータ配列を含む。 また、 TGTP-AR プライマーは、 イ ン ビ ト ロ合成 TGTP 遺伝子 RNA の 538 塩基よ り 始まる 26 塩基長の部分の逆相補鎖配列よ り な る。 これら TGTP- PTおよび TGTP- AR両プライマーを組み合わ せる と 「 Amplify (aTGTP-AR _# TGTP - PS)」 なる、 TGTP 遺伝 子を引数とする遺伝子増幅関数が構成され、 これに TGTP 遺 伝子 RNAが渡される と配列 TGTP- PSおよび TGTP- ARで囲まれ た部分のセ ンス鎖 RNA 配列が増幅される と期待された (図 22) 0
この TGTP 遺伝子セ ンス鎖 RNA 増幅関数に対して、 イ ンビ ト ロ合成した TGTP 遺伝子あるいは Vitronectin 遺伝子を与 えた場合と 同量の水を与えた場合(N. )について 0, 15およ び 30 分のコ ン ピ ューティ ング反応を実行し、 その RNA 産物 を検出する実験を行なった。 検出は、 コ ンピューティ ング反 応産物を DNasel 処理する こ とでプライマー DNA や反応中間 体 DNA を除去した後に、 TGTP-AR プライマーを使用 した逆転
写反応とそれに続く TGTP-AR, TGTP- PT 両プライマーを使用 した PCR反応で増幅し、 ゲル電気泳動する こ と によ り 行なつ た(図 23, レー ン M:マーカー)。 こ の方法によ り 、 TGTP - AR および TGTP- PT の非特異的な反応によ り 生成された RNA分子 も検出される と考えられた。 TGTP 遺伝子 RNA の増幅産物が 存在する場合はこの RT- PCR によ り 5Θ2 塩基長の二本鎖 DNA が検出される と期待されるが、 そのバン ドは反応時間に従つ て増加してお り 、 A の反応でターゲッ ト と した RNA 分子が増 幅されている こ と が確認された(レー ン 1〜 3)。 ただしポジ ティ ブ .コ ン ト ロ ーノレ (レー ン P)と比較する と 592bp のパン ドの下にスメ ァ状のシグナルが検出されている こ とから、 若 干ではあるが非特異的な反応も起きている可能性もある。 ま た Vitronectin遺伝子 RNA を加えた場合や(図 23 レー ン 4〜 6)、 等量の水のみを与えた場合(N. ; 図 23 レーン 7〜9)に ついては、 全く シグナルが検出されていない。 lOObp 未満に 見られるス メ ァ状のシグナルは PCR反応時にサンプルの変わ り に等量の水を加えた場合(レー ン N)にも認め られている こ と から、 PCR 反応において形成されたプライマー 'ダイ マー である と考えられる。
考察
レ ト ロ ウィルスのゲノ ム増幅反応を模した分子コ ンビユ ー タを in _ro の反応系で実装する 目的で研究を行なった。 こ の分子コ ン ピュータ のハー ド ウ ェア と しては、 DNA 依存 DNA ポリ メ ラーゼ活性、 RNA 依存 DNA ポリ メ ラーゼ活性およ び DNA 依存 RNA ポリ メ ラーゼ活性と、 さ らに RNaseH 活性と
が共存する こ と が必要であ り 、 さ らに正確にコ ンピュ一ティ ング反応が実行されるために各反応について特異性が十分に 確保されている こ と が必須と なった。 こではその条件を満 たす反応条件を新規に開発し、 これをノヽ一ドウエア と して採 用 して実験を行なつた。
このハー ドクェァを用いて遺伝子コ一ド化反応を行なつた と ころ、 単一 ^ ■in曰n.度条件下で 30〜40 分程度とい う短時間反応 させる こ とでヽ 確かにコー ド配列 RNAの生成が確認され /こ これは非常に簡便な遺伝子コー ド化技術と して遺伝子発現計 測への活用が考え bれるほか、 遺伝子発現解析な どさ らに高 次な分子コ ンピュ 1 ~タのプロ グラムへの入力 と して利用でき る と考え られた 。 TGTP 遺伝子および V i t ro n e c t i n 遺伝子の コー ド化関数で使用 した第一プライマ一 (P 1 )の遺伝子特異的 配列部位は、 いずれも図 2 - 4でプライ マ一伸長の特異性を確 認したものである こ と力ゝら、 そのプラィ ミ ングのターグッ ト 特異性に問題がある と は考えにく い。 さ らに Amp l i f y関数で もターゲッ ト特異性に問題は見られなかつた。 遺伝子コー ド 化反応について十分な特異性が得られない理由 と しては、 プ ライマー .ダイマーの形成や遺伝子 RNA と の非特異的な反応 が影響している可能性が高いと考えられる。 こ こで使用 した コー ド化関数は、 プロモータ部位が二本鎖化される と ターゲ ッ ト遺伝子を認識した場合と 同一のコー ド配列 RNA を出力 し て しま う ため、 何らかの非特異的反応によ り P 1 上のプロモ ータ配列が二本鎖化される と 、 本来の出力 と 区別でき ない RNA を誤って転写して しま う 可能性が内在するのである。
そ で、 両コー ド化関数のプライ マーおよび遺伝子 RNAが 形成するハイ ブ リ ッ ドの構造および安定性を計算 した と こ ろ 両コ ド化関数の P 1 について、 プロモータ P 2 および遺伝子
RNA が P 1 のプロモータ配列 と 安定なハイ ブ リ ッ ド、を形成 し た り 、 遺伝子 RNA断片が非特異的プライ マー と して機能 した り する可能性が示された (d a t a n o t s h o wnノ。 コー ド、化関数で 用いるプライ マーは、 ターゲッ ト特異的配列に T 7 プ口 モ一 タ配列を加えた長い一本鎖 D NA部分が含まれるため非特異的 なハィ プ リ ッ ドが起こ り やすい '上に、 プラ イ マー - .ダイ マ一 な どの形成によ り プモータ配列が二本鎖化される と誤つてコ 一 ド配列 RNA を出力 して しま う ため、 配列の設計には特に注 意を払 う 必要がある と考え られる。 さ ら に、 こ こで報告 した レ 卜 π ウ ィ ルス型分子コ ン ビュータ に用いる 関数は添加され るォ V ゴ DNA で定義される も ので、 同一反応液中に複数のプ ラィ マ一を添加する こ と に よ り 原理的に複数の関数を同時に 実行する こ と が可能と なる。 これによ り 遺伝子の 現解祈な どよ り 複雑なプロ グラ ムが実現 し う る力 S、 同一反応液中に多 数の関数を共存させる と反応液中に力 [1えるオ リ ゴ DNA の種類 もそれに応 じて増大 し、 非特異的な反応の問題はさ ら に大き く な る 。 そのため、 高度なプロ グラ ムを構築する には適切 な核酸の配列設計する技術の開発が望ま しい。 た と えば 、 上 述 した正規直交化配列 とする こ と が好ま しい。
本研究に よ り 、 レ ト ロ ウィルス型分子コ ン ビュ一タ を実装 する ために必要 と なる反応が in vi tro にて実現 し う る こ と が示された。 さ ら に、 本研究でタ ーゲッ ト と した T GTP 、 /—
子おょぴ Vitronectin遺伝子は、 移植手術後に移植片対宿主 反応(GVHR)の遺伝子診断を行な う ためのマーカー遺伝子と し て利用が期待される ものである。 今回はこれらの遺伝子を引 数とする コー ド化関数と、 その出力を受け取って演算関数を 実行する関数で構成される遺伝子発現解析プロ グラムを設計 し、 さ らに この反応の一部が確かに実行される こ とが実験的 に示された。 この分子コンピュータのシステムを用いる こ と によ り 、 単一試験管内で一定温度条件下での反応を実行させ る操作を行な う だけで、 試験管内の各分子が 自律的に複数遺 伝子の発現パターンを解析してその結果を出力する技術が確 立される と期待され、 簡便で正確な遺伝子診断技術と しての 応用が期待される。 さ らに捋来的には、 生体細胞内にて同様 の分子コ ン ピュータ 'システムを実行するための研究へと発 展する こ と も期待され、 本研究成果によ り 分子コ ンピュータ 研究に新たな方向性が示されたといえる。
(複数の関数の多層化)
本分子コ ンピュータでは、 ある関数の戻り 値を他の関数の 引数とする こ とが考えられる。 こ こでは、 Vitronectin 遺伝 子が存在する場合に Code [3, 2]配列 RNA を出力するコー ド化 関数と、 その関数の戻り値が存在する場合に Code [4, 6, 5]配 列 RNAを出力する関数と によ り 構成されるプロ グラムが、 単 一のコンビユーティ ング反応液中にて動作する こ と を確認す る実験を行なった。 こ こでの反応の概略を図 24 に示す。 本 実験では、 このプロ グラムに対する入力と して Vitronectin 遺伝子をカロえた場合 (Vitronectin +) と 、 Vitronectin 遺
伝子はカロえずに同量の水のみを力 tlえた場合 (Vitronectin - ) と についてコ ン ピューティ ング反応を実行し、 結果と して 得られた RNA 産物を検出 した。 検出は、 Code [4, 6, 5]配列を、 Code [4] , Code [5]に対するプライマーペアを用いた リ アルタ ィ ム PCR 法によ り行なった。 その結果を図 25 に示す。 RNA 産物検出時において、 逆転写反応時に通常濃度の酵素を添加 したサンプル ( RT+;白棒) と、 酵素は添加しなかったサンプ ル ( RT一;黒棒) と に分けて実験 した と こ ろ、 Vitronectin
RNA を入力 と して与えた場合では RT+のサンプルは RT-と比 較 し て 非 常 に 高 い レ ベ ル で 出 力 が 検 出 さ れ た が
(Vitronectin +) 、 入力を与えな力、つた場合には RT+と RT— と で は ほ と ん ど 出 力 の レ ベ ル に 変 化 は な カゝ っ た
( Vitronectin 一) 。 こ こ で RT -サンプノレ よ り 得られた出力 は実験上のノ ック グラ ウ ン ドであ り 、 RT+と RT-と における 検出結果の差が出力 と して得られた RNA分子の量を反映する もの と考えられる。 また、 上の反応産物について、 図 24 に 示すプロ グラムの中間産物である Code[3, 2]RNA についても 同様に検出反応を行なった と ころ、 Vitronectin を与えた と きに確かに Code [3, 2]の濃度も上昇している こ と が確かめ ら れた (図 26, 白棒: RNA +,黒棒: RNA- ) 。
以上の結果から、 図 24 に示した 2 種類の関数よ り なるプ ロ グラムは確かに実行され、 複数の関数を単一のコ ン ビユ ー ティ ン反応液中にて組み合わせて実行する こ と が可能である こ と が示された。 関数を多層に重ねる こ と によ り複雑なプロ グラムが実現する こ と も考え られる こ と力ゝら、 このよ う に関
数の戻 り 値が実際に他の関数の引数と なる こ と は重要である。