明細 j イネ-コチアナミンシンターゼ遺伝子プロモーター、 およびその利用 技術分野
本願発明は、 植物に外来遺伝子を導入して根で特異的に発現させるプロモータ 一に関する。 さらに詳しくは、 イネのニコチアナミンシンターゼ 1遺伝子 (NASI) 及びイネのニコチアナミンシンターゼ 2遺伝子(NAS2) のプロモーター領域、 もし くはその一部を用いて根で特異的に外来遺伝子を発現させる方法に関する。 景技術
根は植物を支える役割のほかに、 水や養分などの吸収と輸送、 植物ホルモンの 合成、 あるいは養分を蓄積する役割などを担っている。 また、 根は線虫や病原菌 からの被害や、 冠水、 乾燥、 栄養欠乏、 栄養過剰などのス トレスを受ける部位で もある。
このため植物の根において適切な遺伝子を発現させることで、 線虫抵抗性、 耐 病性、 耐冠水、 耐乾燥の植物、 あるいは特定の栄養素が欠乏した土壌、 過剰な土 壌などでも生育可能な植物 作出できる可能性がある。 また、 カドミウムなどの 有害物質を効率的に吸収できる植物を作出することで、 土壌浄化に利用すること も出来る。 あるいは、 根菜類の栄養改変や、 医薬品や生分解性プラスチックなど の原料の生産など、 根において外来遺伝子を発現させることによる応用範囲は広 く、 有用性は高い。
一般に、 植物ではその活性が強いことから、 カリフラワーモザイクウィルス(Ca MV)の 35Sプロモーターがよく利用されており、 実際、 除草剤耐' I"生植物やウィルス 抵抗性植物の作出に用いられている。
しかしながら、 35Sプロモータ一は、 強力であるが糸且織特異性がなく、 必ずしも
最適な形質転¾¾物の作出に適しているとは限らない。 例えば、 不必要な部位で の発現によつて成長異常などをきたしたり、 発現強度が高すぎることによってジ ーンサイレンシング等の好ましくない形質が現れたりすることがある。 また、 組 換え作物の作出に際しては、 必要のない形質を持ち込まないことが望まれており、 目的遺伝子を必要な組織以外においても発現させてしまうプロモーターでは植物 体への適用に際する用途が大きく制限されたものとなる。
このような問題の解決手段として、 特定の組織、 とりわけ根組織に特異的に目 的の遺伝子を制御するプロモーターを用いることが望ましい。 植物の主に根で発 現するとされている遺伝子はいくつか知られているが (非特許文献 1〜13、 24〜2 8参照) 、 植物の根で特異的に遺伝子癸現を制御するプロモータ一は従来技術に おいてはまだ種類が少なく (特許文献 1〜3および非特許文献 14~16、 29、 30参 照) 、 しかもその特異性は低いのが現状である。
また、 ニコチアナミンシンターゼ遺伝子はイネで、 NASI, 2, 3 がとられており、 他にも、 大麦、 トマト、 シロイヌナズナなどの植物から単離されている (非特許 文献 17〜21参照) 。 ニコチアナミンシンターゼ遺伝子は、 鉄のキレート剤となる ムギネ酸の生合成経路で重要な酵素であるニコチアナミンシンターゼをコ一ドし ている。
ニコチアナミンシンターゼ遺伝子の発現部位についてはいくつか調べられてお り、 たとえば、 ォォムギの NASI は鉄欠乏にした大麦の根で発現をしており、 葉や、 鉄欠乏でない植物体の根では発現していないことがノザンハイブリダィゼーショ ンによって解析されている (非特許文献 4参照) 。 また、 イネの NASIは鉄欠乏に した植物体の根や黄化葉で強く発現しており、 鉄欠乏でない植物体の根でも弱く 発現していることがノザンハイブリダィゼーシヨンによつて確かめられている
(非特許文献 18参照) 。
ニコチアナミンシンターゼ遺伝子のプロモーター解析については、 ォォムギの N AS1プロモーター領域のデリーションシリーズを GUSにつないで、 タバコに形質転
換した実験が行われている。 この場合 GUSは葉では低レベルに恒常的に発現してお り、 根では鉄欠乏にすると強い発現が見られることがわかった (非特許文献 22参 照) 。 また、 シロイヌナズナの NAS3プロモーター領域のデリーシヨンシリーズを GUSにつないで、 タバコの培養細胞に一過的に導入した実験では、 エチレン応答性 領域の存在が示されている(非特許文献 2 3参照)。
しかし現在までのところ、 イネのニコチアナミンシンターゼ 2遺伝子に関して は、 その発現パターンやプロモーター解析に関する知見は知られていない。
一般的に、 同じ遺伝子ファミ リーに属する遺伝子 (例えば、 NAS (ニコチアナミ ンシンターゼ) 遺伝子フアミリーに属する NASIと NAS2と NAS3など)であっても、 それぞれが異なる発現パターンを示すことが多い。 また、 同じ遺伝子ファミリー に属する、 異なる植物種由来の遺伝子同士 (例えば、 シロイヌナズナの NASIとィ ネの NASIとォォムギの NASIなど)は、 それぞれが異なる発現パターンを示すこと が多い。 つまり当業者であっても、 他の植物種の NASファミリーのプロモーター解 析から、 イネの NAS2 のプロモーターの性質を推測することは、 通常困難と言える c また、 非特許文献 1によると、 イネの RCc2遺伝子はノザン解析によって根に特 異的発現をすることがわかったが、 RCc2遺伝子の上流域をプロモーターとして使 用した場合は、 外来遺伝子を根の分裂域以外、 および葉の維管束で発現させるこ とがわかった。 この例のように、 ノザン解析などで、 根特異的発現をする遺伝子 を取得しても、 外来遺伝子根特異的に発現させるプロモータ一部位を取得するの は当業者であっても容易ではない。
〔特許文献 1〕 米国特許出願公開第 2001/0016954号明細書
〔特許文献 2〕 米国特許第 6271437号明細書
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〔非特許文献 2 9〕 Miao, G. H. , Hirel,B., Marsolier, M. C. , Ridge, R. W. および Verma, D. P.著、 「Aramonia - regulated expression of a soybean gene encoding c ytosolic glutamine synthetase in transgenic Lotus corniculatusj 、 The Pla nt Cell, Vol. 3、 No. 1、 p. 11-22、 1991年
〔非特許文献 3 0〕 Bogusz, D., Llewellyn, D. , Craig, S. , Dennis, E. S. , App
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本発明の目的は、 植物の根で特異的に遺伝子の発現を制御するのに有用なプロ モーター、 該プロモーターを含有する発現ベクター、 該発現ベクターを含む形質 転換植物もしくは植物体、 およびその作製方法を提供することにある。
本発明者らはイネの根から、 根で特異的に発現をするニコチアナミンシンター ゼ 1 (nicotianamine syntase 1 ; NASI)遺伝子、 及びニコチアナミンシンターゼ 2 (nicotianamine syntase 2; NAS2)遺伝子の 5 '上流域を単離し、 この上流域の DNA を解析し、 鋭意検討を重ねた結果、 ニコチアナミンシンターゼ 1遺伝子、 及ぴニ コチアナミンシンターゼ 2遺伝子のプ口モータ一機能を有する DNA配列を特定する ことに成功し、 本発明を完成するに至った。 本発明者らによって単離されたプロ モーターを利用することによって、 実際に外来遺伝子を根特異的に発現させるこ とが可能である。
すなわち、 本発明は、 以下の 〔1〕 〜 〔1 5〕 に関する。
〔1〕 下記の (a ) 、 ( b ) または (c ) の DNAを含むプロモーター。
( a ) 配列番号: 1または 3に記載の塩基配列からなる DNA
( b ) 配列番号: 1または 3に記載の塩基配列において 1もしくは複数の塩 基が欠失、 置換もしくは付加された塩基配列からなり、 かつプロモー ター機能を有する DNA
( c ) 配列番号: 1または 3に記載の塩基配列からなる DNAとストリンジェン トな条件下にハイブリダィズし、 かつプロモーター機能を有する DNA 本発明は、 より詳しくは、 以下に関する。
〔l b〕 上記 (a ) 、 ( b ) または (c ) の DNAを含む、 プロモーターとして
使用するための DNA、 または
〔l c〕 上記 ( a ) 、 ( b ) または (c ) の DNAのプロモーターとしての使用 c 〔2〕 〔1〕 に記載のプロモーターの下流に、 外来遺伝子および植物ターミネ 一ターが機能的に連結した構造を有する DNA。
〔3〕 〔1〕 に記載のプロモーターを含むベクター。
〔4〕 〔1〕 に記載のプロモーターの下流に外来遺伝子挿入部位および植物タ ーミネーターを含む、 〔3〕 記載のベクター。
〔5〕 〔2〕 に記載の DNAを含むベクター。
〔6〕 〔1〕 に記載のプロモーター、 〔2〕 に記載の DNA、 または 〔3〕 〜
〔5〕 のいずれかに記載のベクターを含む、 形質転換細胞。
〔7〕 微生物である、 〔6〕 に記載の形質転換細胞。
〔8〕 植物細胞である、 〔6〕 に記載の形質転換細胞。
〔9〕 〔8〕 に記載の細胞を含む、 形質転換植物体。
〔1 0〕 〔9〕 に記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、 形質転 換植物体。
〔1 1〕 〔 9〕 または 〔 1 0〕 に記載の形質転換植物体の繁殖材料。
〔1 2〕 〔9〕 または 〔1 0〕 に記載の形質転換植物体の作製方法であって、 〔1〕 に記載のプロモーター、 〔2〕 に記載の DNA、 または 〔3〕 〜 〔5〕 のいずれかに記載のベクターを植物細胞へ導入し、 該植物細胞か ら植物体を再生させる工程を含む方法。
〔1 3〕 植物の根において外来遺伝子を発現させる方法であって、 〔2〕 に記 載の DNA、 または 〔4〕 もしくは 〔5〕 に記載のベクターを該植物の細胞 へ導入する工程を含む方法。
〔1 4〕 被験化合物について、 〔1〕 に記載の DNAのプロモーター活性を調節す るか否かを評価する方法であって、
( a ) 〔1〕 に記載の DNAとレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を
有する DNAを含む細胞または細胞抽出液と、 被験化合物を接触させる 工程、 .
( b ) 該レポータ一遺伝子の発現レベルを測定する工程、
を含み、 被験化合物が該レポ一タ一遺伝子の発現レベルを変化させた場 合に、 被験化合物が 〔1〕 に記載の DNAのプロモーター活性を調節すると 判定される方法。
〔1 5〕 以下の工程 (a ) および (b ) を含む、 〔1〕 に記載の DNAのプロモー ター活性を調節する化合物のスクリ一二ング方法。
( a ) 〔1 4〕 に記載の評価方法により、 被験化合物について、 〔1〕 に 記載の DNAのプロモーター活性を調節するか否かを評価する工程
( b ) 被験化合物から、 該 DNAのプロモーター活性を調節すると評価された 化合物を選択する工程
以下、.本発明を詳細に説明する。 本発明者らは、 イネの様々な部位からそれぞ れ cDNAライブラリーを作成した。 根から作成した cDNAライブラリーから 3334個の クローンを単離、 根以外の組織から作成した cDNAライブラリーからは 8875個のク 口一ンを単離して塩基配列を決定した。
根由来のライブラリーに 9回出現し、 根以外の組織由来のライブラリーには一 度も出現しなかったクローンを選択し、 GenBank/EMBLデータベースを元に BLASTプ ログラムを用いて塩基配列のホモロジ一検索を行ったところ、 このクローンが二 コチアナミンシンターゼ 2遺伝子に由来していることが判明した。 同様に根由来 のライブラリーに 2回出現し、 根以外の組織由来のライブラリーには一度も出現 しなかったクローンはニコチアナミンシンターゼ 1遺伝子に由来していることが 判明した。 ニコチアナミンシンターゼ 1遺伝子、 及び-コチアナミンシンターゼ 2遺伝子の 5'上流域を単離し、 上流側から段階的に欠損させた断片と GFP遺伝子を 連結させたキメラ遺伝子構築物をイネ、 およびシロイヌナズナ植物体に導入する ことで、 ュコチアナミンシンターゼ 1遺伝子 (GenBankァクセッション番号: AB04
6401) 及び二コチアナミンシンターゼ 2遺伝子 (GenBankァクセッション番号: AB 046401) からプロモ ター領域を単離することに成功したものである。
本発明はまず、 ニコチアナミンシンターゼ 1遺伝子プロモーター、 及びニコチ アナミンシンターゼ 2遺伝子プロモーター(DNA)を提供する。 本発明のプロモータ 一は、 下流の遺伝子を根特異的に発現させることが可能であり、 極めて有用であ る。 本発明者らによつて単離されたニコチアナミンシンターゼ 1遺伝子プロモー タ一 DNAの塩基配列を配列番号: 3に、 ニコチアナミンシンターゼ 2遺伝子プ口モ 一ター DNAの塩基配列を配列番号: 1に示す。
本発明は、 より具体的には、 下記の (a ) 〜 (c ) のいずれかの DNAを含むプロ モーター (プロモーター活性を有する DMA) を提供する。
( a ) 配列番号: 1または 3で示される塩基配列からなる DNA
( b ) 配列番号: 1または 3で示される塩基配列において 1もしくは複数の塩基 が欠失、 置換もしくは付加された塩基配列からなり、 かつプロモーター機 能 (活性) を有する DNA
( c ) 配列番号: 1または 3で示される塩基配列からなる DNAとストリンジヱント な条件下にハイブリダィズし、 かつプロモータ一機能 (活性) を有する DNA 本発明の 「プロモーター」 とは、 DNAを鍀型とした mRNAの合成 (転写) の開始に 必要な特定塩基配列を含む DNAを意味し、 自然界に存在する DNAの他、 組換えなど の人工的な改変操作により作成された DNAを含む。 また、 本発明のプロモーターは、 植物細胞において発現誘導型プロモーターであることが好ましい。
本発明者らは、 本発明のプロモーターを得るために、 イネのニコチアナミンシ ンターゼ 1遺伝子の上流に存在するゲノム配列から、 配列番号: 3に示す 1191bp の配列を含む断片を、 イネのニコチアナミンシンターゼ 2遺伝子の上流に存在す るゲノム配列から、 配列番号: 2に示す 2123bpの配列を含む断片を PCRにより取 得した。 この断片の下流に、 植物体において遺伝子発現を容易にモニターするこ とが可能なレポーター遺伝子として、 緑色蛍光タンパク質 (GFP) 遺伝子を連結し
たキメラ遺伝子構築物を作成し、 ァグロパクテリゥムを介してイネ、 およびシロ ィヌナズナの植物体へ導入したところ、 GFP遺伝子の発現がニコチアナミンシンタ ーゼ 1ではイネの根で特異的に観察され、 ニコチアナミンシンターゼ 2ではイネ, およびシロイヌナズナの根の表皮で主に観察された。
さらに、 この断片を上流側から段階的に欠損させ、 それぞれの断片と GFP遺伝子 を連結させたキメラ遺伝子構築物をイネ、 およぴシロイヌナズナ植物体に導入し て解析を行ったところ、 ニコチアナミンシンターゼ 2では根における発現の誘導 には少なくとも 310bpからなる断片 (配列表の配列番号: 2の 1814番目から 2123 番目までの配列からなる断片/配列番号: 1 ) で十分機能することを突き止めた c ニコチアナミンシンターゼ 2 (Nas2)遺伝子プロモーターの塩基配列を配列番 号: 1に、 ニコチアナミンシンターゼ l (Nasl)遺伝子プロモーターの塩基配列を 配列番号: 3に記載する。 また、 配列番号: 4にはニコチアナミンシンターゼ 2 遺伝子プロモーターのシス領域の配列を示す。
すなわち本発明は、 配列番号: 1または 3に記載の塩基配列からなる D退、 もし くは該 DNAを含むプロモーター活性を有する DNAを提供する。
本発明のプロモーターは、 配列番号: 1または 3の塩基配列からなる DNAだけで なく、 配列番号: 1または 3の塩基配列において 1もしくは複数の塩基が欠失、 置換もしくは付カ卩された塩基配列からなり、 かつ植物プロモーターとして作用す る能力を有する DNA、 または、 配列番号: 1または 3の塩基配列において、 その 3 ,末端に翻訳効率を上げる塩基配列などを付カ卩したものや、 プロモーター活性を失 うことなく、 その 5,末端を欠失したものを含む。
上記 DNAを調製するために、 当業者によりょく知られた方法としては、 ハイプリ ダイゼーシヨン技術 (Southern, EM. , J Mol Biol, 1975, 98, 503. ) やポリメラ ーゼ連鎖反応 (PCR) 技術 (Saiki, RK. et al., Science, 1985, 230, 1350.、 Sa iki, RK. et al., Science, 1988, 239, 487. ) の他に、 例えば、 該 DNAに対し、 s ite- directed mutagenesis法 (Kramer, W. & Fritz, HJ. , Methods Enzymol, 198
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本努明において欠失、 置換等の変異が導入される塩基の数は、 変異を導入され た DNAがプロモーター活性を有する限り、 特に制限されないが、 通常、 20塩基対以 内、 好ましくは 10塩基対以内、 より好ましくは 5塩基対以内、 最も好ましくは 3塩 基対以内である。
さらに、 本発明の植物プロモーターは、 配列番号: 1または 3の塩基配列から なる DNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、 かつ植物プロモーター として作用する能力を有する DNAを含む。 ここで、 ストリンジ工ントな条件とは、 特に制限されるものではないが、 例えば 42°C、 2 X SSC (300mM NaCl、 30mMクェン 酸) 、 0. 1%SDSの条件であり、 好ましくは 50°C、 2 X SSC、 0. 1%SDSの条件であ り、 さらに好ましくは、 65°C、 0. 1 X SSCおよび 0. 1%SDSの条件である。 これらの 条件において、 温度を上げる程に高い相同性を有する DNAが効率的に得られること が期待できる。 ハイブリダィゼーシヨンのストリンジエンシーに影響する要素と しては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、 当業者であればこれら要素を適 宜選択することで同様のストリンジエンシーを実現することが可能である。
さらに本発明は、 本発明のプロモーターの下流に、 外来遺伝子およびターミネ 一ターが機能的に連結した構造を有する DNAを提供する。 本発明において外来遺伝 子とは、 特に制限されず、 所望の遺伝子を用いることができる。
また、 本発明のターミネータ一とは、 通常、 植物由来ターミネータ一 (植物タ ーミネーター) を言い、 本発明の植物組識特異的な発現を制御するプロモーター 領域に隣接して配置される DNA配列であり、 例えば、 カリフラワーモザイクウィル ス由来のターミネータ一、 あるいはノパリン合成酵素遺伝子由来のターミネータ 一等を例示することができるが、 ターミネータ一としての機能を有するものであ れば、 これらに特に制限されない。
本発明において 「機能的に連結」 とは、 プロモーターの下流の外来遺伝子がプ 口モーターからの転写を受けるように該プロモーターと結合している状態、 ある
4 いは、 ターミネータ一によって外来遺伝子の発現が終結するように外来遺伝子が ターミネータ一と結合した状態を指す。 プロモーター、 外来遺伝子およびターミ ネーターを 「機能的に連結」 させることは、 当業者においては一般的な遺伝子ェ 学技術を用いて、 簡便に行い得ることである。
また、 本発明のプロモーターの一例としては、 上記 (a ) 〜 (c ) のいずれか に記載の DNAからなるプロモーター活性を有する DNAを挙げることができる。 プロ モーター活性は、 当業者においては公知の方法 (例えば、 後述のレポーター遺伝 子を用いて該遺伝子の発現を指標に測定する方法) によって適宜、 評価すること ができる。
さらに本発明は、 上記本発明のプロモーターを含むベクター、 本発明のプロモ 一ターの下流に遺伝子挿入部位およびターミネーターを含むベクター、 並びに、 本発明の上記 DNAを含むベクターを提供する。
本発明のベクターは、 通常、 本発明のプロモーターを植物細胞内で複製可能な ベクターに挿入したものである。 この複製可能なベクターとしては、 公知の種々 のベクターを用いることができる。 例えば、 pUC誘導体などの大腸菌で増幅可能な ベクター、 PPZP2H- lacなどの大腸菌とァグロバタテリゥムの双方で増幅可能なシ ャトルべクタ一などが挙げられる。 また、 植物ウィルス、 例えば、 カリフラワー モザイクウィルスを利用することもできる。 当業者においては、 植物細胞内で複 製可能なベクターを、 各々の宿主細胞に応じて適宜選択することができる。 なお、 本発明のプロモーターをべクタ一に挿入する方法は、 通常の遺伝子をベクターに 挿入する常法に従う。
また本発明は、 本発明のプロモ^-ター、 本発明の DNA、 または本発明のベクター を含む形質転換細胞を提供する。
本発明の細胞は、 特に制限されるものではないが、 好ましくは微生物細胞ある いは植物細胞である。
本発明の形質転換植物細胞は、 本発明の DNAもしくはベクターを宿主細胞に導入
し、 形質転換させた植物細胞である。 宿主細胞としては、 例えば葉、 根、 茎、 花 および種子中の胚盤等の植物細胞、 カルス、 懸濁培養細胞等が挙げられる。 細胞 の由来する植物種としては、 特に制限されるも.のではないが、 例えば、 シロイヌ ナズナ、 タバコ、 ペチュニア、 コムギ、 イネ、 トウモロコシ、 ダイズ、 ナタネ、 ダイコン、 テンサイ、 カボチヤ、 キユウリ、 トマト、 ヮタなどが挙げられる。 尚、 本発明における好ましい例として、 イネあるいはシロイヌナズナを挙げることが できる。
また本発明は、 本発明のプロモーター、 本発明の DNAまたはベクターを植物細胞 へ導入し、 該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む、 形質転換体の作製方 法に関する。
本発明の DNAもしくはベクターを宿主植物細胞中に導入するために、 さまざまな 手法を用いることができる。 これらの手法には、 形質転換因子としてァグロバタ テリゥム · ッ ^フ了 ノエ、ノス Agrobacterium tu facien ) ^ lVi 、 ァグロバクテ リウム ' リゾゲネス (Agrobacterium rhizogenes) を用いた T- DNAによる植物細胞 の形質転換、 プロトプラストへの直接導入 (インジェクション法、 エレクトロボレ ーシヨン法など)、 パーティクルガン法などや、 その他の公知の方法が含まれる。 プロトプラストへの直接導入では、 通常、 特別に必要とされるベクターはない c 例えば、 PUC誘導体のような単純なプラスミ ドを用いることができる。 目的の遺伝 子を植物細胞に導入する方法によっては、 他の DNA配列が必要になることもある。 例えば Tiまたは Riプラスミドを植物細胞の形質転換に用いる場合には、 Tiおよび R iプラスミ ドの T-DNA領域の少なくとも右端の配列、 大抵は両側の端の配列を、 導 入されるべき遺伝子の隣接領域となるように接続しなければならない。
ァグロパクテリゥム属菌を形質転換に用いる場合には、 導入すべき遺伝子を、 特別のプラスミ ド、 すなわち中間ベクターまたはバイナリーベクターの中にクロ 一ユングする必要がある。 中間ベクターはァグロパクテリゥム属菌の中では複製 されない。 中間ベクターは、 ヘルパープラスミ ドあるいはエレクト口ポレーショ
6 ンによってァグロバクテリウム属菌の中に移行される。 中間ベクターは、 T- DNAの 配列と相同な領域をもっため、 相同的組換えによって、 ァグロバクテリウム属菌 の Tiまたは Riプラスミ ド中に取り込まれる。 宿主として使われるァグロパクテリ ゥム属菌には、 vir領域が含まれている必要がある。 通常 Tiまたは ^プラスミ ドに vir領域が含まれており、 その働きにより、 T - DNAを植物細胞に移行させること力 S できる。
一方、 バイナリーベクターはァグロバクテリウム属菌の中で複製、 維持され得 るので、 ヘルパープラスミ ドあるいはエレクトロポレーシヨン法あるいは凍結溶 解法によってァグロパクテリゥム属菌中に取り込まれると、 宿主の vir領域の働き によって、 バイナリーベクター上の T - DNAを植物細胞に移行させることができる。 なお、 このようにして得られた中間ベクターまたはバイナリーベクター、 およ びこれを含む大腸菌ゃァグロパクテリゥム属菌等の微生物も本発明の対象である ( また、 本発明の DNAもしくはベクターの導入によって形質転換された植物細胞を 効率的に選択するために、 上記ベクターは、 適当な選抜マーカー遺伝子を含む、 もしくは選抜マーカー遺伝子を含むプラスミ ドベクタ一とともに植物細胞へ導入 することが好ましい。 この目的に使用される選抜マーカー遺伝子は、 例えば、 抗 生物質ハイグロマイシン耐性であるハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ 遺伝子、 カナマイシンまたはゲンタ.マイシン耐性であるネオマイシンホスホトラ ンスフェラーゼ、 および除草剤ホスフィノスリシン耐性であるァセチルトランス フェラーゼ遺伝子等を挙げることができる。
上記ベクターを導入した植物細胞は、 導入した選抜マーカーに応じた選抜用薬 剤を含む選抜用培地に置床し培養する。 これにより、 形質転換された植物細胞を 得ることができる。
本発明の形質転換植物体とは、 本発明の形質転^ 物細胞から再生された形質 転換植物体である。 形質転換された植物細胞から個体を再生する方法は植物細胞 の種類により異なるが、 例えばイネでは Fujimuraら (Fujimuraら(1995), PlantTi
ssue Culture Lett. , vol. 2 :p74- ) の方法、 トウモロコシでは、 Shillitoら (Shi llitoら(1989), Bio/Technology, vol. 7 :p581 -) の方法、 ジャガイモでは、 Visse rら (Visserら(1989) , Theor. Appl. Genet. , vol. 78 :p589_) の方法、 シロイヌ ナズナでは Akamaらの方法 (Akamaら(1992) , Plant Cell Rep. , vol. 12 :p7- ) が挙 げられる。 これらの方法により作出された形質転換植物体またはその繁殖材料
(例えば種子、 果実、 塊茎、 切穂、 塊根、 株、 カルス、 プロトプラストなど) 力 ら得た形質転換植物体も本発明の対象である。 ー且、 染色体内に本発明のプロモ 一ター (DNA)が導入された形質転換植物体が得られれば、 該植物体から有性生殖ま たは無性生殖により子孫を得ることが可能である。 また、 該植物体やその子孫あ るいはクローンから繁殖材料を得て、 それらを基に該植物体を量産することも可 能である。
本発明の植物体を作製する方法の好ましい態様においては、 本発明の DNAまたは ベタターを宿主細胞に導入して形質転換植物細胞を得て、 該形質転換植物細胞か ら形質転換植物体を再生し、 得られた形質転換植物体から植物種子を得て、 該植 物種子から植物体を生産する工程を含む。
形質転換植物体から植物種子を得る工程とは、 例えば、 形質転換植物体を発根 培地から採取し、 水を含んだ土を入れたポットに移植し、 一定温度下で生育させ て、 花を形成させ、 最終的に種子を形成させる工程をいう。 また、 種子から植物 体を生産する工程とは、 例えば、 形質転 ^¾物体上で形成された種子が成熟した ところで、 単離して、 水を含んだ土に播種し、 一定温度、 照度下で生育させるこ とにより、 植物体を生産する工程をいう。
本発明の植物プロモーターは、 例えば、 以下のようにして作製し、 利用するこ とができる。 なお、 実験手法に関しては、 特に記載のない限り、 「クローユング とシークェンス」 (渡辺格監修、 杉浦昌弘編集、 農村文化社 (1989年) ) や、 「Molecular Cloning (Sambrookら (1989), Cold spring Harbor Laboratory Pres s) J などの実験書に従う。
本発明の DNAには、 天然あるいは単離 ·精製されたゲノム DNA、 および化学合成 D NAが含まれる。 ゲノム DMの調製は、 当業者にとって常套手段を利用して行うこと が可能である。
本発明の DNAは、 目的とする植物、 例えば、 イネの組織よりゲノム DNAを抽出し 精製し、 得られた DNAを铸型として PCRによって単離することができる。
本発明における、 配列番号: 1または 3に記載の塩基配列からなる DNA、 および これとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、 かつ根特異的発現を示す プロモーターを単離するためには、 例えば、 配列番号: 1または 3に記載の塩基 配列からなる DNA上の配列であつて、 本発明のプロモーターを增幅するためのプラ イマ一対を用いることができる。 このプライマー対を用いて、 植物のゲノム DNAを 铸型として PCRを行い、 その後、 得られた増幅 DNA断片をプローブとして用いて、 同じ植物のゲノムライブラリーをスクリーニングすることができる。 そのような プライマー対の例として、 正方向プライマー (naslF12s; 5,- TGGCCGcgggtgacacg gtgttactc -3' (配列番号: 5 ) ) と、 逆方向プライマー (NAS2Rx; 5' - ggtctaga ctgtgaagctttgtcgcggt -3' (配列番号: 6 ) ) との組合せ、 あるいは正方向プラ マー (NAS2 Fs; 5 tggccgcggagagcaggacaacaactc —3 (目 G歹 (J番号: 7 ) ) と、 逆方向プライマー (NAS2Rx; 5,- ggtctagactgtgaagctttgtcgcggt -3' (配列番 号: 6 ) ) との組合せが挙げられる。
PCRは、 市販のキットおよび装置の製造者の指針に基づいて行う力、 当業者に周 知の手法で行い得る。 遺伝子ライブラリーの作製法、 および遺伝子のクローニン グ法なども当業者に周知である。 例えば、 「クローニングとシークェンス」 (渡 辺格監修、 杉浦昌弘編集、 農村文化社 (1989年) ) や、 「MoleCulaf Cloning (S ambrookら(1989) , Cold Spring Harbor Laboratory Press) 」 などの実験書を参 照のこと。 得られた遺伝子の塩基配列は、 当該分野で公知のヌクレオチド配列解 析法または市販されている自動シーケンサーを利用して決定し得る。 PCR技術ゃハ ィブリダイゼーション技術によって単離し得る、 配列番号: 1または 3に記載の
塩基配列からなる DNAとハイブリダィズする DMAもまた、 本発明の DMに含まれる。 上記のようなスクリーニングによって単離および同定されたプロモーター (す なわち、 配列番号: 1または 3に示されるプロモーター、 およびホモログ) が根 特異的遺伝子発現誘導性を示すことは、 以下のようにして解析することが可能で ある。
上記の配列を、 例えば、 GFPなどのレポーター遺伝子の上流に連結し、 PPZP2H- 1 acなどのベクターに組み込む。 レポーター遺伝子としては、 GFP遺伝子の他にクロ ラムフエ二コール ァセチルトランスフェラーゼ (CAT) 遺伝子や、 ルシフェラー ゼ (LUC) 遺伝子、 ベータ グルクロニダーゼ (GUS) 遺伝子なども利用が可能で ある。
上記のようにして作成されたキメラ遺伝子構築物は、 例えば、 ァグロパクテリ ゥムを介してシロイヌナズナなどの植物に導入してその機能を解析することが可 能である。 pPZP2H - lacをベクターとして用いた場合は、 キメラ遺伝子を含む組換 えプラスミドを、 例えば、 ァグロバタテリゥム ·ツメブァシエンスの EHA101株に 凍結溶解法を用いて導入し、 得られた形質転換菌を、 例えば、 減圧浸潤法 (島本 功ら監修、 「モデル植物の実験プロトコール」 (植物細胞工学別冊、 植物細胞ェ 学シリーズ 4 ) 秀潤社 1996年 4月発行) によりシロイヌナズナなどの植物体に感 染させる。 感染処理した植物より得られた種子を、 ハイグロマイシンなど用いた ベクターに適した薬剤を含む培地に播種し、 得られた薬剤耐性個体を用いて GFP遺 伝子の発現について解析する。 蛍光顕微鏡で観察することにより、 GFPの蛍光が根 で特異的に検出されることが期待される。
本発明のプロモーターまたはそれを含む発現ベクターは、 以下のようにして利 用することが可能である。 本発明のプロモーターの下流に目的の遺伝子、 例えば、 養分のトランスポーター遺伝子を連結したキメラ遺伝子を、 例えば、 pPZP2H- lac に挿入し発現ベクターを構築する。 このベクターをァグロパクテリゥムを介して イネなどの植物体に導入する。 得られた形質転換植物においては、 本発明のプロ
モーターの働きにより根において養分のトランスポーター遺伝子が特異的に発現 し、 養分を効率的に取り込むことができるようになることが期待される。 この場 合、 35Sプロモーターのように不要な糸且織においても発現することがないため、 他 の好ましくない形質が現れないことが期待される。
本発明のプロモーターで制御可能な遺伝子 (外来遺伝子) としては、 上記のト ランスポータ一遺伝子に限定されなレ、。 根において特異的に発現させることに意 義のあるあらゆる遺伝子に応用が可能である。
また、 本発明のプロモーターに他の発現制御配列を連結して本発明のプロモー ターの機能を改変することが可能である。 このような発現制御配列としては、 ェ ンハンサー配列ゃリプレッサー配列、 インスレーター配列などが挙げられる。 例 えば薬剤に応答して抑制が解除されるリプレッサ一配列を本発明のプロモーター と連結したキメラプロモーターを作成し、 その下流に目的の遺伝子を連結した構 築物を植物に導入すると、 得られた形質転換体では、 薬剤が存在しない条件下で は目的遺伝子の発現が抑制されているが、 薬剤を投与することによって抑制が解 除され、 目的遺伝子が根で発現するようになることが期待される。
なお、 本発明における植物細胞の形質転換方法としては、 上記のァグロバクテ リゥムを介した方法の他に、 プロトプラストに電気パルス処理してプラスミ ドを 植物細胞へ導入するエレクト口ポレーシヨン法や、 小細胞、 細胞、 リソソームな どとプロトプラストとの融合法、 マイクロインジェクション法、 ポリエチレング リコール法、 あるいは、 パーティクルガン法などの方法が挙げられる。
また、 植物ウィルスをベクターとして利用することによって、 目的遺伝子を植 物体に導入することができる。 利用可能な植物ウィルスとしては、 例えば、 カリ フラワーモザイクウィルスが挙げられる。 すなわち、 まず、 ウィルスゲノムを大 腸菌由来のベクターなどに挿入して組換え体を調製した後、 ウィルスのゲノム中 に、 これらの目的遺伝子を挿入する。 このようにして修飾されたウィルスゲノム を制限酵素によつて該組換え体から切り出し、 植物体に接種することによって、
これらの目的遺伝子を植物体に導入することができる (Hohnら (1982) 、 Molecul ar Biology of Plant Tumors (Academic Press、 New York) pp549、 米国特許第 4, 407, 956号) 。
また本発明は、 植物の根において外来遺伝子を発現させる方法を提供する。 本 方法の好ましい態様においては、 本発明のプロモーターの下流に外来遺伝子およ び植物ターミネ一ターが機能的に連結した構造を有する DNAを、 植物へ導入するェ 程を含む方法である。 本方法においては、 該 DNAを、 植物細胞へ導入し、 該細胞を 植物へ再生させることによつても行うことができる。 該 DNAの植物もしくは植物細 胞への導入は、 上述の方法によって実施することができる。
さらに本発明は、 被験化合物について、 本癸明のプロモーター活性を有する DNA (例えば、 配列番号: 1または 3に記載の塩基配列からなる DNA) のプロモーター 活性を調節するか否かを評価する方法を提供する。 この評価方法は、 本発明のプ 口モーターの活性を.有する DNAのプロモーター活性を調節する化合物のスクリー二 ング方法に利用することができる。
本発明の評価方法に用いられる被検化合物としては、 特に制限はなく、 例えば、 天然化合物、 有機化合物、 無機化合物、 タンパク質、 ペプチド等の単一化合物、 並びに、 化合物ライブラリー、 遺伝子ライブラリーの発現産物、 細胞抽出物、 細 胞培養上清、 発酵微生物産生物、 海洋生物抽出物、 植物抽出物、 原核細胞抽出物、 真核単細胞抽出物もしくは動物細胞抽出物等を挙げることができる。
この方法においては、 まず、 本発明のプロモーター活性を有する DNAとレポ一タ 一遺伝子とが機能的に結合した構造を有する DNAを含む細胞または細胞抽出液と、 被験化合物を接触させる。
本発明において、 「機能的に結合した」 とは、 本発明のプロモーター活性を有 する DNAに転写因子が結合することにより、 レポーター遺伝子の発現が誘導される ように、 本発明のプロモーター活性を有する DNAとレポーター遺伝子とが結合して いることをいう。 本方法における 「本発明のプロモーター活性を有する DNAとレポ
一ター遺伝子とが機能的に結合した構造を有する DNAを含む細胞」 として、 例えば、 上記 DNAを含むベクタ.一を導入した細胞を挙げることができる。 該ベクターは、 当 業者に周知の方法により作製することができる。 ベクターの細胞への導入は、 一 般的な方法、 例えば、 リン酸カルシウム沈殿法、 電気パルス穿孔法、 リボフヱク タミン法、 マイクロインジェクション法等によって実施することができる。
また、 「本発明のプロモーター活性を有する DNAとレポーター遺伝子とが機能的 に結合した構造を有する DNAを含む細胞」 には、 染色体に該 DNAが挿入された細胞 も含まれる。 染色体への DNAの挿入は、 当業者に一般的に用いられる方法、 例えば、 相同組み換えを利用した遺伝子導入法により行うことができる。
本方法における 「本発明のプロモーター活性を有する DNAとレポーター遺伝子と が機能的に結合した構造を有する DNAを含む細胞抽出液」 とは、 例えば、 市販の試 験管内転写翻訳キットに含まれる細胞抽出液に、 本発明のプロモーター活性を有 する DNAとレポーター遺伝子とが機能的に結合した構造を有する DNAを添加したも のを挙げることができる。
本方法における 「接触」 は、 本発明のプロモーター活性を有する DNAとレポータ 一遺伝子とが機能的に結合した構造を有する DNAを含む細胞の培養液に被験化合物 を添加する、 または該 DNAを含む上記の市販された細胞抽出液に被験化合物を添加 することにより行うことができる。 被験化合物がタンパク質の場合には、 例えば、 該タンパク質をコードする DNAを含むベクターを、 該細胞へ導入する、 または該べ クターを該細胞抽出液に添加することで行うことも可能である。
本方法においては、 次いで、 該レポーター遺伝子の発現レベルを測定する。 レ ポーター遺伝子の発現レベルは、 当業者においては、 該レポーター遺伝子の種類 を考慮して、 測定することができる。
本方法においては、 被験化合物の非存在下において測定した場合と比較して、 被験化合物がレポーター遺伝子の発現レベルを変化させた場合に、 被験化合物が 本発明の DNAのプ口モータ一活性を調節したと判定される。
さらに、 本発明においては、 上記評価方法を利用して、 複数の被験化合物につ いて、 本発明の DMの.プロモーター活性を調節するか否かを評価し、 プロモーター 活性を調節する化合物を選択することにより、 効率的にプロモーター活性を調節 する化合物をスクリーニングすることができる。 該スクリーニング方法によって 取得される化合物は、 遺伝子の根特異的な発現を制御することが可能であり、 非 常に有用である。 図面の簡単な説明
図 1は、 配列番号: 1または 3に示したニコチアナミンシンターゼ遺伝子のプ 口モーター部分を切り出し、 pblue- sGFP (S65T)- NOS SKに含まれる緑色蛍光タンパ ク (GFP) 遺伝子の上流に連結することによつて構築したプラスミドの遺伝子地図 と、 そのプラスミドからプロモーター: GFP:ターミネータ一のひとつながりを切 り出し、 植物用バイナリーベクターである pPZP2H - lacのマルチクローニングサイ トに揷入することによつて構築したプラスミドの遺伝子地図を示した図である。 図 2 (A) は、 本実施例の DNA断片を上流 (5,側) から削った DNA断片のシリー ズを作製しそれぞれをベクターに連結した図である。 図 2 ( B ) は、 カリフラヮ 一モザィクウイノレス 35Sプロモーターのミニマムプロモーターに本実施例の DNA断 片の一部を連結した図である。
図 3は、 シロイヌナズナにおける本発明のプロモーターによる遺伝子の発現結 果を検証する写真である。 (1 ) ニコチアナミンシンターゼ 1遺伝子プロモータ 一、 および (2 ) ニコチアナミンシンターゼ 2遺伝子プロモーターで GFP遺伝子を 発現させた形質転換シロイヌナズナの根を蛍光顕微鏡によつて撮影した蛍光像で ある。 ニコチアナミンシンターゼ 1遺伝子プロモーターでは特に光っている部位 は観察されないが、 ニコチアナミンシンターゼ 2遺伝子プロモーターでは主に根 毛の出る表皮細胞が光っている。 図 4は、 イネにおける本発明のプロモーターによる遺伝子の発現結果を検証す
る写真である。 (1 ) ニコチアナミンシンターゼ 1遺伝子プロモーター、 および ( 2 ) ニコチアナミンシンターゼ 2遺伝子プロモーターで GFP遺伝子を発現させた 形質転換イネの根を蛍光顕微鏡によって撮影した蛍光像である。 (3 ) ニコチア ナミンシンターゼ 1遺伝子プ口モータ一で GFP遺伝子を発現させた形質転換ィネの 全体像を左側の写真は通常光下で、 右側の写真は青色光下で撮影したものを示す。 主に根でのみ蛍光が観察され、 葉では蛍光が観察されない。
発明を実施するための最良の形態
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、 本発明はこれら実施例 に制限されるものではない。 なお、 ゲノム DNAの調製、 mRNAの調製、 DNAの切断、 連結、 大腸菌の形質転換、 遺伝子の塩基配列決定等一般の遺伝子組換えに必要な 方法は、 特に記載のない限り、 各操作に使用する市販の試薬、 機器装置等に添付 されている説明書や、 実験書 (例えば rMolecular Cloning (Sambrookら(1989) , Cold Spring Harbor Laboratory Press 」 ) ίこ基本白勺 (こ従つ 7こ。
〔実施例 1〕 根特異的発現をする遺伝子の探索
( a ) cDNAライブラリーの作成
イネの様々な部位からそれぞれ cDNAライブラリ一を作成した。 ライブラリ一の ィ乍 (Okubo et al. Large scale cDNA sequencing for analysis of quant ita tive and qualitative aspects of gene expression, nature genetics 2'· 173—1 79 (1992) ) に基本的に従って行った。 根から作成した cDNAライブラリーから 33 34個のクローンを単離、 根以外の組織から作成した cDNAライブラリーからは 8875 個のクローンを単離して塩基配列を決定した。 塩基配列の決定には、 PCR product Pre- Sequencing Kit (USB)と DYEnamic ET Dye Terminator Cycle Seuencing Kit for MegaBACE (amaersham pharraacia biotech)で反応を行レヽ、 MegaBACElOOOを 用いて行った。
それらのクローンを塩基配列によるクラスタリングにより、 グループ分けをし、 根由来のライブラリ一に 9個のクローンが出現し、 根以外の組織由来のライブラ リ一には 1個のクローンも含まれていなかったグループと、 根由来のライブラリ 一に 2個のクローンが出現し、 根以外の糸且織由来のライブラリ一には 1個のク口 ーンも含まれていなかったグループとを選択した。
これらのグループの塩基配列を GenBank/E BLデータベースを元に BLASTプログラ ムを用いてホモロジ一検索を行ったところ、 これらのグループがニコチアナミン シンターゼ 1遺伝子、 およびニコチアナミンシンターゼ 2遺伝子に由来している ことが判明した。
〔実施例 2〕 ニコチアナミンシンターゼ遺伝子のプロモーター領域の単離 公知のイネニコチアナミンシンターゼ遺伝子の配列 (ァクセッション番号: AB0 46401) に基づいて 3種類のプライマー ( (NAS2RX; 5, - ggtctagactgtgaagctttgt cgcggt -3, (配列番号: 6 ) 、 NASI F12s; 5' - TGGCCGcgggtgacacggtgttactc -3, (配列番号: 5 ) および NAS2 Fs; 5' - tggccgcggagagcaggacaacaactc -3, (配列 番号: 7 ) ) を合成した。 NASI F12sと NAS2 Fsは、 正方向プライマーであり、 5 ' 末端側に制限酵素 SacII部位 (ccgcgg) を有する。 NAS2Rxは、 逆方向プライマーで あり、 5 '末端側に制限酵素 Xbal部位 (tctaga) を有する。 NASI F12sと NAS2Rxの プライマ一対を用いると、 ニコチアナミンシンターゼ 1遺伝子の翻訳開始点より 上流 1191bpが増幅される。 また、 NAS2 Fsと NAS2Rxのプライマー対を用いると、 ニコチアナミンシンターゼ 2遺伝子の翻訳開始点より上流 2124bPが増幅される。 常法に従って、 イネ (品種; 3本晴) のゲノム DNAを調製した。 上記のプライマ 一対を用い、 この DNAを铸型として PCRを行い、 増幅 DNA断片を得た。 増幅された DN Aを、 制限酵素による切断と、 あるいは常法に従って塩基配列決定により目的の部 位が増幅されたことを確認した。
〔実施例 3〕 ニコチアナミンシンターゼ遺伝子のプロモーター領域活性検定用 ベクターの作成
まず、 ベクター pBluescript SK (Stratagene)に、 植物体内で強い蛍光を発する 緑色蛍光タンパク質の変異型 sGFP (S65T) (丹羽康夫:植物細胞工学シリーズ 4、 モデル植物の実験プロトコール、 ppll7- 121、 秀潤社、 1996) と Nosターミネータ 一を組み込んだプラスミドである pblue- sGFP (S65T) - NOS SK (丹羽康夫博士 静岡 県立大学大学院より分与) に、 PCRによって得られた DNA断片を組み込んだプラス ミドを作成した (図 1 ) 。 さらにこのプラスミドを Saclと Kpnlで切断し、 バイナ リーベクターである ΡΡΖΡ2Η- lac (矢野昌裕博士農業生物資源、研究所より分与) (Fuse et al. (2001) Plant Biotechnology 18 (3) : 219— 222) のマルチクロー二 ングサイトにプロモータ一領域- GFP- Nosターミネータ一のひとつながりの配列を 挿入することで、 プロモーター領域の活性を検定するための植物形質転換用バイ ナリーベクターを完成させた (図 D 。
〔実施例 4〕 植物への遺伝子導入
作成したベクターは凍結解凍法によりァグロバタテリゥム ·ッメファシエンス 菌 EHA101に導入した。 凍結解凍法とは凍結した EHA101のコンビテントセルにプラ スミド溶液を加え、 3 7 °Cで 5分間保温する方法のことをいう。 目的のベクター が導入された菌株を用いてシロイヌナズナ (品種: Columbia) とイネ (品種: 日 本晴) に遺伝子を導入した。
シロイヌナズナヘの導入は、 「減圧浸潤法による形質転換 (荒木崇) 」 (植物 細胞工学シリーズ 4、 モデル植物の実験プロトコール、 ppl09- 113、 秀潤社、 199 6) に記載の方法に基本的に従って行った。 ただし、 記載されている減圧の過程は 省いて行った。
イネへの導入は、 イネのカルス化と植物体の再生に関して、 「イネのカルス形 成と植物体再生 (西村哲、 島本功) 」 (植物細胞工学シリーズ 15、 新版モデル植
物の実験プロトコール、 pp78- 81、 秀潤社、 2001) を参考に、 ァグロパクテリゥム による形質転換は、 「ァグロパクテリゥムによる方法 (横井修二、 鳥山欽哉) 」 (植物細胞工学シリーズ 15、 新版モデル植物の実験プロトコール、 PP78- 81、 秀 潤社、 2001) を参考にして行った。
〔実施例 5〕 植物体で発現した GFPの観察
GFPの発現はシャーレにいれた寒天培地上で育てた植物体を、 直接蛍光顕微鏡で 観察することができる。 蛍光顕微鏡は IX- FLA (ォリンパス) で、 U -画 IBAフィルタ 一を用いて観察を行った。 シロイヌナズナにおける蛍光像を図 3に、 イネにおけ る蛍光像を図 4に示した。
〔実施例 6〕 プロモーター領域の絞込み
プロモーターの活性領域を絞り込むために、 図 2の (A) に示したようにプロモ ータ一領域を上流側から段階的に欠損させたシリーズを作成した。 ニコチアナミ ンシンターゼ 1遺伝子のプロモーター領域の場合には、 逆方向プライマーは 5 '末 端側に制限酵素 Xbal部位 (tctaga) を有する NAS2Rxを用レ、、 正方向プライマーは 5 '末端側に制限酵素 SacII部位 (ccgcgg) を有するプライマー (NASI F031s ; 5,- TGGCCGcgggagtgaccatacgcgag -3, (配列番号: 8 ) 、 NASI F014s; 5' - TGGCCGCGgctataagtatcccctttacag -3' (配列番号: 9 ) ) をそれぞれ用いて、 二 コチアナミンシンターゼ 1遺伝子の翻訳開始点より上流 314、 143塩基の断片を作 成した。
同様にニコチアナミンシンターゼ 2遺伝子のプロモーター領域の場合には、 逆 方向プライマーは 5 '末端側に制限酵素 Xbal部位 (tctaga) を有する NAS2Rxを用い、 正方向プライマーは 5 '末端側に制限酵素 SacII部位 (ccgcgg) を有するプライマ 一 (NAS2 F15s; 5' - tggccgcggccatctgatctagtagcagc-3' (酉己列番号: 1 0 ) 、 NA S2 FlOs; 5' - TGGCCGCggagtcactacattatggagta-3' (配列番号: 1 1 ) 、 NAS2 F05
s; 5, - tggccgcggatcaaactactgtaaaagg - 3, (酉己歹 U番号: 1 2 ) ヽ NAS2 F03s; 5, - tggccgcggaaaatgtcgtcctcttcaac -3, (配歹 (j番号: 1 3 ) 、 NAS2 F026s; 5'― tgg ccgcggcctcattgggtatgcacgca - 3 (配歹 U番"^ : 1 4 ) 、 NAS2 F016s; ΰ - tggccgc ggcaattctcctgctatatattg -3' (配列番号: 1 5 ) 、 NAS2 F021s; 5'一 TGGCCGCGgc ataatgcgttccacattctt -3' (配列番号: 1 6 ) ) をそれぞれ用いて、 ニコチアナ ミンシンターゼ 2遺伝子の翻訳開始点より上流 1530、 1015、 549、 310、 256、 207 塩基の断片を作成した。
これらの DNA断片と GFP遺伝子を連結させたキメラ遺伝子構築物 (図 2の Aの②、 ③、 ⑤、 ⑥、 ⑦、 ⑧、 ⑨、 ⑩) をシロイヌナズナの植物体に導入した。
その結果、 ②、 ③を導入したイネとシロイヌナズナでは光っている部位は観察 されなかった。 このことから、 878塩基からなる断片 (配列表の配列番号: 3の 1 番目から 878番目までの配列からなる断片) の一部、 または全部がイネの根で特 異的な発現をするプロモーターのシス領域として必須であることを突き止めた。 また、 ⑤、 ⑥、 ⑦、 ⑧を導入したイネとシロイヌナズナでは④と同様に主に根の 表皮細胞が特異的に光っているのが観察され、 ⑨、 ⑩を導入したイネとシロイヌ ナズナでは光っている部位は観察されなかった。 このことから、 55塩基からなる 断片 (配列表の配列番号: 2の 1814番目から 1868番目までの配列からなる断 片) の一部、 または全部がイネとシロイヌナズナの根の表皮で発現をするプロモ 一ターのシス領域として必須であることを突き止めた。
〔実施例 7〕 根特異的発現の機能獲得実験
単離したプロモータ一領域が所与の遺伝子発現制御をもたらすのに十分である ことを確かめるために、 力リフラワーモザイクウィルスの 35S最小プロモーター の上流に、 配列表の配列番号: 2の 1815番目から 1964番目までの配列からなる 150塩基の断片を連結したキメラ遺伝子構築物 (図 2の Bの⑧) を作成した。
キメラ遺伝子構築物の作成方法を以下に記す。 公知の CaMV35Sプロモーターの配
歹 IJ (ァクセッション番号: U28417) に基づいて一対のプライマー (35sFxss2; 5' - gctctagatacgtactagtcgcaagacccttcctctatat -3 (酉 S列番号: 1 7 ) および 35s Rb ; 5, - cgggatcctctccaaatgaaatgaacttcc -3' (配列番号: 1 8 ) ) を合成し、 4 7塩基の最小プロモーターを単離した。
35sFxss2は、 正方向プライマーであり、 5 '末端側に制限酵素 Xbal、 SnaBI、 お よび Spel部位を有する。 35sRbは、 逆方向プライマーであり、 5 '末端側に制限酵 素 BamHI部位を有する。 pblue- sGFP (S65T) - NOS SKに、 PCRによって得られた DNA断 片を Xbalと BamHIで切断して組み込みキメラ遺伝子構築物⑪を作成した (図 2 - B) ζ 次に公知のイネニコチアナミンシンターゼ 2遺伝子の配列 (ァクセッション番 号: AB046401) に基づいて一対のプライマー (NAS2F150x; 5' - tggtctagaaaatgtc gtcctcttcaac -3' (酉己列番号 : 1 9 ) および NAS2R150s ; 5' - tggactagtcaaagattg gctaaaagcgtag -3' (配列番号: 2 0 ) ) を合成した。 NAS2F150xは、 正方向プラ イマ一であり、 5 '末端側に制限酵素 Xbal部位を有する。 NAS2R150Sは、 逆方向プ ライマーであり、 5 '末端側に制限酵素 Spel部位を有する。 このプライマー対を用 いると、 配列表の配列番号: 2の 1815番目から 1964番目までの配列からなる 15 Obpの断片力 SPCRによって増幅される。
キメラ遺伝子構築物⑪に PCRによつて得られた DNA断片を Xbalと Spelで切断して 組み込みキメラ遺伝子構築物⑫を作成した (図 2 -B) 。
実施例 3と同様にして、 これらのキメラ遺伝子構築物⑪、 ⑫を pPZP2H - lacに組 みこみ、 バイナリーベクターとしてからイネとシロイヌナズナに導入したところ、 ⑪を導入したイネとシロイヌナズナでは全く光っている部位が見つからなかった のに対し、 ⑫を導入したイネとシロイヌナズナでは④、 ⑤、 ⑥、 ⑦、 ⑧の場合と 同様に根の表皮細胞が特異的に光つているのが観察されたことカ ら、 単離したプ 口モータ一が所与の遺伝子発現制御をもたらすのに機能的に十分であることが裏 付けられた。
産業上の利用の可能性
本発明により、 植物の根で特異的に遺伝子の発現を制御するのに有用なプロモ 一ターとして機能する DNA、 該プロモーターを含む発現ベクター、 該発現ベクター を導入した形質転換細胞および形質転換植物体、 更には該プロモーターの制御下 にある遺伝子の発現量を調節する方法が提供される。
形質転 «物体において、 本宪明のプロモーターを機能させることにより、 根 に目的遺伝子を発現させることができる。 目的遺伝子としては、 あらゆる遺伝子 の選択が可能である。
根の表皮は外部の環境と直接接する部位であり、 例えば外部より水や養分の吸 収をする部位であり、 あるいは外部に物質を放出する部位であり、 あるいは病原 菌ゃ病害虫からの攻撃を受ける部位であることから、 作物の改変にあたって重要 な役割を果たすと考えられる。
例えば本発明のプロモーターの制御下で養分のトランスポータ一遺伝子を発現、 あるいは抑制することで、 養分吸収を増やす、 あるいは減らすことができる可能 性がある。 また、 例えばァレロパシー成分を放出させることで他の植物の成長を 抑制したり、 あるいは、 耐虫性、 耐病性遺伝子などを発現することで、 線虫抵抗 性、 耐病性などの性質を得たりすることができる可能性がある。
また、 単子葉植物であるイネから単離したプロモーターだが、 双子葉植物であ るシロイヌナズナでも活性が確認されたことから、 幅広レ、植物種において利用可 能である可能性が高い。
更に、 該プロモーターの制御下にある目的遺伝子の発現量を調節する方法によ つて、 目的遺伝子の産物であるタンパク質やその働きによって細胞内で生じる物 質を効率的に生産させることができ、 この生産には、 形質転換細胞あるいはその 細胞からなる毛状根など組織の培養物、 あるいは形質転換植物体の栽培収穫物が 利用可能となる。
加えて、 本発明のプロモーターに他の発現制御配列、 例えば、 薬剤に応答して
抑制が解除されるリプレッサー配列などを連結することにより、 薬剤に応答し、 かつ特定の様式で遺伝子発現を誘導するプロモーターの構築が可能になる。