明 細 書 新規テトラヒドロキノリン誘導体 技術分野
本発明は、 前立腺に対して過剰な作用を示さず、 かつ、 骨組織、 骨格筋組織に 特に強いアンドロゲン受容体ァゴニスト作用を示すテトラヒドロキノリン誘導体 またはその塩およびそれらを含有する医薬に関する。 背景技術
アンドロゲンは C19ステロイドの総称であり、 男性の正常な性分化と発育、 思 春期における男性化、 睾丸における初期の造精機能の活性化及び男性機能の維持 に重要な性ホルモンである。アンドロゲンはその約 90%が精巣ライディッヒ細胞 から、 残り 10 %は副腎から、 主にテストステロンとして産生され、 血中へ分泌さ れる。 テストステロンは標的細胞に取り込まれ、 5 α-リダクタ一ゼにより生物学 的活性の強いジヒドロテストステロン (D H T) に変換され、 テストステロンと ともに男性の二次性徴発現 (皮脂腺の増殖、 ざ瘡、 体毛の発生、 声変り、 顎鬚の 発生) や外性器 (陰茎、 睾丸)、 副性器 (前立腺、 精嚢腺) の発育、 性的衝動と勃 起の発現などに重要な役割を演じている。
一方、 これらの主作用以外に、 蛋白同化作用 (骨格筋、 骨量の増大、 赤血球産 生亢進作用など)、ゴナドトロピン分泌抑制作用などの生殖器系以外の作用を有し、 アンドロゲン標的細胞は外 ·副性器組織に存在する他、脳、下垂体、筋組織、骨、 腎臓など多岐に分布している (N Engl J Med 334, 707-714, 1996)。
これらの役割に加えて、 アンドロゲンは抗炎症作用を示すことが報告され、 炎 症性細胞の増殖抑制や IL- 6等のサイトカイン産生を抑制することにより、関節炎 や自己免疫疾患を緩和することが今日明らかにされつつある (Ann Rheum Di s 55, 811-815, 1996)。
全てのアンドロゲン作用は標的細胞の核内に存在する分子量約 1 0万のアンド ロゲン受容体 (Androgen Receptor, 以下 A Rという)を介して発現する。 A Rは
1988年に Chang及び Lubahnらによりその遺伝子がクローニングされ、 エストロ ゲン、 プロゲステロン、 ミネラルコルチコイド及びダルココルチコイド受容体と 構造が類似し、 一群の核内ステロイド受容体ファミリーを形成することが明らか にされた (Sc ience 240, 324-326、 327-330、 1988)。 脂溶性に富むアンドロゲン は標的細胞膜を受動拡散により通過し、 A Rのホルモン結合領域に特異的かつ高 親和性に結合して二量体を形成し、 特定遺伝子の上流に存在するアンドロゲン応 答性 DNA領域 (Androgen Response Element: ARE) に結合する。 そして、 標的遺 伝子の転写が開始され、 mRNAの発現が起こり、 アンドロゲン作用を司る機能蛋白 質が産生されて作用が発現する (Trend in Endocr inol ogy and Metabol i sm 9, 317-324, 1998)。 この機構において、 A Rに結合し、 天然リガンドであるテスト ステロン等と同様の作用を発現させる化合物はァゴニストと定義づけられる。
A Rァゴニストとして、 テストステロンエステル及びその他の誘導体などのァ ンドロゲンステロイド製剤が、 骨粗鬆症、 消耗性疾患、 男子性腺機能低下症など の治療に現在用いられている。
しかし、 上記ステロイド製剤は、 肝機能障害、 胃腸障害などのステロイド製剤 特有の副作用の他に、 男性患者特に高年齢者へ投与する場合には前立腺に対して 過剰に作用するためにアンドロゲン依存性腫瘍(前立腺癌など)、前立腺肥大の発 症や症状悪化を促す恐れがあり、 また、 女性患者へ投与する場合には声帯の変化 (男性様の嗄声発現)、体躯部の多毛症、禿頭症、 ざ瘡などの男性化作用が大きな 問題であった。
従って、 性腺機能低下症の治療には、 前立腺に対して過剰な作用を示さず、 副 作用が少ない非ステロイド性 A Rァゴニス卜が望まれ、 研究開発が進められてい るが、 世界的に認知された化合物は未だ創製されていない。
また骨粗鬆症、 消耗性疾患を適応疾患とした場合には、 骨組織、 骨格筋組織に 対して特に強い A Rァゴニスト作用を示すものが望まれているが、 このような化 合物は未だ創製されていない。 発明の開示
本発明は、 このような A Rを介する疾患の治療および治療研究を鑑みてなされ
たものであり、 本発明の目的は、 アンドロゲンステロイド製剤などに見られる前 立腺に対する過剰な作用を示さず、 また、 骨組織、 骨格筋組織に対して特に強い
A Rァゴニスト作用を示す非ステロイド性の新規化合物およびその塩を提供する こと、 さらにこれらを有効成分とする医薬を提供することにある。
本発明者らは、 これらの課題を解決するため鋭意研究を行った結果、 テトラヒ ドロキノリン誘導体の中で、 特定の下記式 (I ) 化合物 (以下、 「本発明化合物」 という) が、 前'立腺に対して過剰作用せず、 また、 骨組織、 骨格筋組織に対して 特に強い ARァゴニスト作用を示す化合物であることを見出し、 本発明を完成す るに至った。
すなわち、 本発明の 1態様によると、 式 (I )
(I)
(上記式 (I ) に示される番号 1〜1 0は、 iが 1の場合であり、 iが 0の場合 は、 番号 3の位置がないので、 番号 4〜1 0を 3〜9として位置を示し、 以下の 説明に用いる)。
式中、 R1はニトロ基またはシァノ基を表し、
iは 0または 1を表し、
Xは炭素数 1〜 6のアルキル基及び炭素数 3 ~ 7のシクロアルキル基からなる群 から選択される置換基で置換されていてもよい炭素数 1〜 5のアルキレン基を表 し、
Yは _ N R3C O—、 一 N R3 S 02—、 — N R3C ONH—または—N R3C S NH— (式中、 R3は水素原子、 炭素数 1〜 6のアルキル基、 炭素数?〜 7のシクロアル キル基または炭素数 7〜 9のァラルキル基を表す) を表し、
R2は独立した 1〜 3個の R4で置換されていてもよいフエニル基若しくは独立し
P2003/009815
た 1〜3個の R4'で置換されていてもよいへテロアリール基
[式中、 R4及び R4'は、 各々独立して、 フッ素原子で置換されていてもよい炭素 数 1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、 シァノ基、 — A— R5A {式中、
Aは、 一CO—、 一 CO?—、 一 CONR6—、 一 O—、 一 OCO—、 一 NR — NR6C〇一、 一 NR6S02—、 — NR6CONH―、 一 NR6C S NH—または— NR6COO—を表し(式中、 Rsは独立して前記 R3と同じ意味を表す)、 R5Aは、 水素原子、 フッ素原子で置換されていてもよい炭素数 1〜 6のアルキル基または 炭素数 3〜7のシクロアルキル基を表す } または—B—(CH2)n— R5B {式中、 Bは単結合、 一CO—、 一 C〇2—、 一 CONR6'—、 一 O—、 一OCO—、 一 N R6'—、 一 NR6' CO—、 一 NR6' S〇2—、 一 NR6' C〇NH—、 _NR6' CS NH—または一 NR6' COO—を表し(式中、 R6'は独立して前記 R3と同じ意味 を表す)、 nは 1または 2の整数を表す、 R5Bは、 フッ素原子で置換されていても よい炭素数 1〜 6のアルキル基、 炭素数 3〜 7のシクロアルキル基、 ハロゲン原 子、 水酸基、 シァノ基、 炭素数 1〜5のアルコキシ基または—NR7' R8' (式中、 R7'および R8'はそれぞれ独立して前記 R3と同じ意味を表す)を表す }を表す]、 または一 C≡C一 R9 {式中、 R9は水素原子、 フッ素原子で置換されていてもよ い炭素数 1〜6のアルキル基、 炭素数 3〜 7のシクロアルキル基、 R1Qで置換さ れていてもよいァリール基 (式中、 R1Gはフッ素原子で置換されていてもよい炭 素数 1〜 6のアルキル基またはハロゲン原子を表す) を表す }
で示されるテトラヒドロキノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩、 そ れらを有効成分として含有する医薬およびァンドロゲン受容体ァゴニストに関す る。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明化合物 (実施例 1化合物) 及び DHTの前立腺重量に及ぼす効 果の比較を示すグラフである。
図 2は、 本発明化合物 (実施例 1化合物) 及び DHTの大腿骨骨密度に及ぼす 効果の比較を示すグラフである。
図 3は、 本発明化合物 (実施例 1化合物) 及び DHTの肛門挙筋重量に及ぼす
効果の比較を示すグラフである。
図 4は、 本発明化合物 (実施例 8および 23) 及び DHTの前立腺重量に及ぼ す効果の比較を示すグラフである。
図 5は、 本発明化合物'(実施例 8および 23) 及び DHTの大腿骨骨密度に及 ぼす効果の比較を示すグラフである。
図 6は、 本発明化合物 (実施例 8および 23) 及び DHTの肛門挙筋重量に及 ぼす効果の比較を示すグラフである。
図 7は、 本発明化合物 (実施例 16) の前立腺重量に及ぼす効果を示すグラフ である。
図 8は、 本発明化合物 (実施例 16) の大腿骨骨密度に及ぼす効果を示すダラ フである。
図 9は、 本発明化合物 (実施例 16) の肛門挙筋重量に及ぼす効果を示すダラ フである。 発明を実施するための最良の形態
本発明の他の態様によると、 一般式 (I) において、 R1がニトロ基またはシァ ノ基であり、 iが 0であり、 Xが— C (CH3) 2— CH2—であり、 Yがー NH CO—または一 NHCONH—であり、 R2が独立した 1〜 3個の R4で置換され ていてもよいフエニル基若しくは独立した 1〜 3個の R4'で置換されていてもよ いへテロァリール基
[式中、 ; 4及び R4'は、 各々独立して、 フッ素原子で置換されていてもよい炭 素数 1〜6のアルキル基、 ハロゲン原子、 —A— R5A {式中、 Aは、 一 CO—、 ー〇一、 一OCO—、 一 NR6—、 一 NR6CO—または一 NR6CONH—を表し (式中、 R6は、 水素原子またはメチル基を表す)、 R5Aは、 水素原子、 フッ素原 子で置換されていてもよい炭素数 1〜 6のアルキル基または炭素数 3〜 7のシク 口アルキル基を表す } または— B—(CH2)n— R5B {式中、 Bは—CO—、 一 O 一、 一 OCO—、 一NR6'—、 一 NR6' CO—または一 NR6' CONH—を表し (式中、 R6'は、 水素原子またはメチル基を表す)、 nは 1または 2の整数を表 す、 R5Bは、 フッ素原子で置換されていてもよい炭素数 1〜6のアルキル基、 炭
素数 3〜 7のシクロアルキル基または炭素数 1〜 5のアルコキシ基を表す } を表 す]である、テトラヒドロキノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を提 供する。
本発明の他の態様によると、 一般式 (I) において、 R1がニトロ基またはシァ ノ基であり、 iが 0であり、 Xがー C (CH3) 2— CH2—であり、 Yが—NH CO—であり、 R2が独立した 1〜 3個の R4で置換されていてもよいフエニル基 若しくは独立した 1〜 3個の R4'で置換されていてもよいへテロアリール基
[式中、 R4及び R4'は、 各々独立して、 フッ素原子で置換されていてもよい炭素 数 1〜 6のアルキル基、 ハロゲン原子、 — A— R5A {式中、 Aは、 一 CO—、 一 〇一、 一〇CO—、 —NH—、 一 NHCO—または一NHCONH—を表し、 R5 Aは、 水素原子、 フッ素原子で置換されていてもよい炭素数 1〜6のアルキル基 または炭素数 3〜 7のシクロアルキル基を表す } または一 B— (CH2) n-R5B {式中、 Bは一C〇—、 一〇一、 一 OCO—、 一 NH—、 一NHCO—または一 NHCONH—を表し、 nは 1または 2の整数を表し、 R5Bは、 フッ素原子で置 換されていてもよい炭素数 1〜6のアルキル基、 炭素数 3〜 7のシクロアルキル 基または炭素数 1〜 5のアルコキシ基を表す }を表す]である、テトラヒドロキノ リン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を提供する。
本発明の他の態様によると、 一般式 (I) において、 R1がニトロ基またはシァ ノ基であり、 iが 0であり、 Xが— C (CH3) 2— CH2—であり、 Yがー NH CO—であり、 R2が独立した 1〜3個の R4'で置換されていてもよいへテロア リール基 {式中、 R4'がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数 1〜6のアル キル基、 ハロゲン原子、 一 A— R5A (式中、 Aは— O—または一 NHCO—を表 し、 R5Aは、 水素原子またはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数 1〜6の アルキル基を表す) または—B— CH2— R5B (式中、 Bは— O—または— NHC 〇—を表し、 R5Bは、 フッ素原子で置換されていてもよい炭素数 1〜6のアルキ ル基または炭素数 1〜 5のアルコキシ基を表す) を表す } である、 テトラヒドロ キノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を提供する。
本発明の他の態様によると、 一般式(I) において、 R1がニトロ基またはシァ ノ基であり、 iが 0であり、 Xが— C (CH3) 2_CH2—であり、 Yが— NH
CO—であり、 R 2が 4位に置換基 R4を有するフエニル基若しくは 4位に置換基 R4'を有する 6員へテロァリール基 [式中、 R4及び R4'は、 各々独立して、 ハロ ゲン原子、 一 0— R5Aまたは一 NHCO— R5A (式中, R5Aは、 水素原子または フッ素原子で置換されていてもよい炭素数 1〜 6のアルキル基を表す) である] である、 テトラヒドロキノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を提供 する。
本発明の他の態様によると、 一般式 ( I) において、 R1がニトロ基またはシァ ノ基であり、 iが 0であり、 Xが— C (CH3) 2— CH2—であり、 Yがー NH CO—であり、 R 2が 4位に置換基 R4を有するフエニル基若しくは 4位に置換基 R4'を有する 6員へテロァリール基 中、 R4及び R4'は、 各々独立して、 一 N HCO— R5A (式中, R5Aは、 水素原子またはフッ素原子で置換されていてもよ い炭素数 1〜6のアルキル基を表す)である]である、テトラヒドロキノリン誘導 体またはその薬理学的に許容される塩を提供する。
本発明の他の態様によると、 一般式 ( I) において、 R1がニトロ基またはシァ ノ基であり、 iが 0であり、 Xがー C (CH3) 2_CH2—であり、 Yが—NH C〇—であり、 R2がー C≡C一 R9 {式中、 R9はフッ素原子で置換されていて もよい炭素数 1〜 6のアルキル基または R 1 Qで置換されていてもよいァリール 基 (式中、 R1 Qはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数 1〜 6のアルキル基 またはハロゲン原子を表す) を表す } である、 テトラヒドロキノリン誘導体また はその薬理学的に許容される塩を提供する。
本発明の他の態様によると、 一般式 (I) において、 R1がニトロ基またはシァ ノ基であり、 iが 0であり、 Xがー C (CH3) 2— CH2—であり、 Yがー NH CO—であり、 R2がー C≡C一 R9 (式中、 R 9がフッ素原子で置換されていて もよい炭素数 1〜 6のアルキル基またはフエニル基である) である、 テトラヒド 口キノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を提供する。
本発明化合物の式 (I) における置換基について説明する。
「炭素数 1〜6のアルキル基」 の具体例としては、 メチル基、 ェチル基、 n— プロピル基、 イソプロピル基、 n—ブチル基、 ィソブチル基、 t e r t—ブチル 基、 s e c—ブチル基、 n—ペンチル基、 t e r t—ァミル基、 3—メチルプチ
ル基、 ネオペンチル基、 n—へキシル基、 3 , 3—ジメチルブチル基および 2— ェチルブチル基などの直鎖または分枝鎖状のアルキル基があげられる。
「炭素数 3 ~ 7のシクロアルキル基」 の具体例としては、 シクロプロピル基、 シクロブチル基、 シクロペンチル基、 シクロへキシル基およびシクロへプチル基 などがあげられる。
「炭素数 1〜 5のアルキレン基」の具体例としては、メチレン基、エチレン基、 プロピレン基、 テトラメチレン基およびペンタメチレン基などがあげられる。
「炭素数 7〜 9のァラルキル基」 の具体例としては、 ベンジル基、 フエネチル 基、 フエニルプロピル基などがあげられる。
「ヘテロァリール基」 の具体例としては、 2—ピリジル基、 3—ピリジル基、 4一ピリジル基、 2—ピラジニル基、 2—ピロリル基、 2—インドリル基、 2— フリル基、 3—フリル基、 2—チェニル基、 3—チェニル基、 2—ピロ一ル基お よび 3—ピロ一ル基などがあげられる。 「6員へテロアリール基」の具体例として は、 2—ピリジル基、 3—ピリジル基、 4一ピリジル基、 2—ビラジニル基など があげられる。
「フッ素原子で置換されていても良い炭素数 1〜 6のアルキル基」 のフッ素原 子置換アルキル基の具体例としては、 ジフルォロメチル基、 トリフルォロメチル 基、 2 , 2 , 2—トリフルォロェチル基およびテトラフルォロェチル基などがあ げられる。
「ハロゲン原子」 の具体例としては、 フッ素原子、 塩素原子、 臭素原子および ヨウ素原子などがあげられる。
「炭素数 1〜 5のアルコキシ基」の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、 n—プロポキシ基、 イソプロポキシ基、 n—ブトキシ基、 イソブトキシ基、 t e r t 一ブトキシ基、 s e c—ブトキシ基、 n—べシチルォキシ基、 t e r t—ァ ミルォキシ基、 3—メチルブトキシ基およびネオペンチルォキシ基などの直鎖ま たは分枝鎖状のアルコキシ基があげられる。
「ァリール基」 の具体例としては、 フエニル基、 ナフチル基 (1一ナフチル基 および 2—ナフチル基) などがあげられる。
式(I )の化合物において、好ましい態様としては、以下のものがあげられる。
R1は、 シァノ基が好ましく、 iが 1の場合は 9位 (iが 0の場合 8位) に置 換されることが好ましい。
iは 0が好ましい。
Xの定義において、 炭素数 1〜 5のアルキレン基に置換されていてもよい置換 基の数は 1〜3個が好ましく、 また、 置換基の好ましい例は、 メチル基、 ェチル 基があげられる。 Xの好ましい例は、 一 C (CH3) 2— CH2—があげられる。
Yは一 NHCO—、 一 NHS02—または一 NHCONH—が好ましく、 一 NH CO—または一 NHCONH—がより好ましく、一 NHCO—がさらに好ましい。
R2の定義において、 独立した 1〜 3個の R4で置換されていてもよいフエニル 基は、より好ましくは、独立した 1〜2個の R4で置換されていてもよいフエニル 基であり、 さらに好ましくは、 Yとの結合位置を 1位として番号付けをした場合 の 4位に置換基 R4を有するフエニル基である。
ここで、 置換基 R4の好ましい例は、ハロゲン原子、 フッ素原子で置換されて いてもよい炭素数 1〜6のアルキル基または— A— R5A {式中、 Aは— CO—、 ー0—、 一 OCO—、 — NR6—、 _NR6CO—または一 NR6CONH—(式中、 R6は水素原子またはメチル基が好ましい) を表し、 R5Aは水素原子、 フッ素原子 で置換されていてもよい炭素数 1〜 6のアルキル基または炭素数 3〜 7のシクロ アルキル基を表す }または一 B—(CH2)n— R5B {式中、 Bは— CO—、 一 O—、 一 OCO—、 一 NR6'—、 -NR6' CO—または一 NR6' CONH- (式中、 R6' は、水素原子またはメチル基が好ましい)を表し、 nは 1または 2の整数を表す、 R5Bは、 フッ素原子で置換されていてもよい炭素数 1〜6のアルキル基、 炭素数 3〜 7のシクロアルキル基または炭素数 1〜 5のアルコキシ基を表す } があげら れる。
R において、 「フッ素原子で置換されていてもよい炭素数 1〜6のアルキル 基」 の例としては、 例えば、 メチル基、 トリフルォロメチル基があげられる。
「一 A— R5A」 の例としては以下のものがあげられる。
一 O— R5A (式中、 R5Aは、 好ましくは水素原子またはフッ素原子で置換され ていてもよい炭素数 1〜6のアルキル基である) は、 例えば、 一〇Me、 -OE t、 一〇P rn、 -OP r \ —〇Bun、 一〇CHF2、 一〇CF3、 一〇CH2
CF3があげられる。
一 CO— R5Aは、 例えば、 —CO— (Ci— Ceアルキル基) (例えば、 — C〇 Me) があげられる。
一〇CO— R5Aは、 例えば、 — OC〇一 (C^— C6アルキル基) (例えば、 ― OCOMe) があげられる。
— NR6— R5Aは、 好ましくは、 — NH— R5Aであり、 その例としては、 一 NH 2、 一 NMe2があげられる。
— NR6CO— R5Aは、好ましくは、—NHCO— R5Aであり、その例としては、 — NHCOH、 -NHCO- ((:丄— C6アルキル基) (例えば、 一 NHCOMe があげられる) があげられる。
一 NR6CONH— R5Aは、 好ましくは、 —NHCONH— R5Aであり、 その 例としては、 一 NHCONH— (C^— C6アルキル基) (例えば、 — NHCON HMeがあげられる) があげられる。
「一 B— (CH2)n— R5B」 の例としては、 一〇一(CH2)n— (Ci— Cgアルコ キシ基) (式中、 nは 1または 2の整数を表す) (例えば、 一〇CH2OMe、 - OCH2CH2OMe) があげられる。
置換基 R4のより好ましい例は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数 1〜 6のアルキル基、 ハロゲン原子、 または一 A— R5A {式中、 Aは、 — CO—、 一 O—、 一〇C〇一、 一 NH—、 一NHCO—または一 NHCONH—を表し、 R5 Aは、 水素原子、 フッ素原子で置換されていてもよい炭素数 1〜6のアルキル基 または炭素数 3〜 7のシクロアルキル基を表す } であり、 さらに好ましくは、 ハロゲン原子、 —0— R5Aまたは—NHCO— R5A (式中, R5Aは、 水素原子ま たはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数 1〜 6のアルキル基を表す) であ り、 さらにより好ましくは、 一 NHCO— R5A (式中, R5Aは、 水素原子または フッ素原子で置換されていてもよい炭素数 1〜6のアルキル基を表す) であり、 特には、 一 NHC〇H、 -NHCO- (Ci— Ceアルキル基) である。
R2の定義において、 独立した 1〜3個の R4'で置換されていてもよいへテロ ァリール基 (ピリジル基およびフリル基が好ましい) は、 より好ましくは、 独立 した 1〜2個の R4'で置換されていてもよいへテロアリール基であり、 R2が 6
員へテロァリール (ピリジル基が好ましい) である場合、 さらに好ましくは、 Y との結合位置を 1位として番号付けをした場合の 4位に置換基 R4'を有するへテ ロアリール基である。
ここで、 置換基 R4'の好ましい例は、 上記置換基 R4の好ましい例と同様であ である。
R2の定義において、 一 C≡C一 R9の置換基 R9は、 好ましくは、 フッ素原子 で置換されていてもよい炭素数 1〜 6のアルキル基または R 1 Qで置換されてい てもよぃァリール基 (式中、 R1Qはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数 1 〜 6のアルキル基またはハロゲン原子を表す) であり、 より好ましくは、 フッ素 原子で置換されていてもよい炭素数 1〜 6のアルキル基またはフエニル基であり、 その例としては、 メチル基、 ェチル基、 n—プロピル基、 n—ブチル基、 n—ぺ ンチル基、 n—へキシル基、 フエニル基があげられる。
本発明化合物の好ましい化合物は以下のものである。
N— [2 - (8—シァノー 2, 3, 3 a, 4, 5, 9 b—へキサヒドロー 1 一 シクロペン夕 [c] キノリン— 4一ィル) 一 2—メチループ口ピル] ー4一トリ フルォロメトキシベンズアミド
N— [2— (8—シァノー 2, 3, 3 a, 4, 5, 9 b—へキサヒドロ— 1 /_ シクロペン夕 [c]キノリン一 4一ィル) 一 2—メチループ口ピル] ー4一 (2, 2, 2—トリフルォロエトキシ) 一べンズアミド
T — [2— (8—シァノー 2, 3, 3 a, 4, 5, 9 b—へキサヒドロー 1 J— シクロペン夕 [c] キノリン一 4—ィル) —2—メチルプロピル] —4—ホルミ ルァミノべンズアミド
6—ァセトアミドー N一 [2— (8—シァノー 2, 3, 3 a, 4, 5, 9 b—へ キサヒドロ一 1 a—シクロペン夕 [c] キノリン一 4一ィル) 一 2—メチループ 口ピル] 一ニコチンアミド
式 (I) で表される本発明の化合物において不斉炭素が存在する場合には、 そ のラセミ体、 ジァステレオ異性体および個々の光学異性体のいずれも本発明に包 含されるものであり、 また幾何異性体が存在する場合には(E)体、 (Z)体およ びその混合物のいずれも本発明に包含されるものである。
式 (I) で表される本発明化合物のテトラヒドロキノリン環は 3つの不斉炭素 をもつのでジァステレオ異性体が存在するが、 その相対配置としては、 iが 0の 場合は、 (3 aR*, 45*, 9 b S*), iが 1の場合は、 (4 a ?*, 5 5*, 1 0 b S*) のものが好ましい。
本発明化合物の好ましい異性体は以下のものである。
(3 aR*, 4 S*, 9 b 5*) —N— [2— (8—シァノー 2, 3, 3 a, 4, 5, 9 b—へキサヒドロー 1 ーシクロペン夕 [c] キノリン一 4—ィル) ー2 一メチル一プロピル] 一 4一トリフルォロメトキシベンズアミド (実施例 1の化 合物)
(3 aR*, 4 S*, 9 b 5*) — N— [2— (8—シァノー 2, 3, 3 a, 4, 5, 9 b—へキサヒドロー 1 /—シクロペン夕 [c] キノリン一 4—ィル) 一 2 ーメチループ口ピル] -4- (2, 2, 2—トリフルォロエトキシ) —ベンズァ ミド (実施例 8の化合物)
(3 aR*, 45*, 9 b S*) —N— [2— (8—シァノー 2, 3, 3 a, 4, 5, 9 b—へキサヒドロー 1 //—シクロペン夕 [c] キノリン一 4一ィル) 一 2 一メチルプロピル] 一 4一ホルミルァミノべンズアミド (実施例 1 6の化合物) (3 aR*, 4 S 9 b S*) — 6—ァセトアミドー TV— [2— (8—シァノー 2, 3, 3 a, 4, 5, 9 b—へキサヒドロ一 1 //ーシクロペンタ [c] キノリ ン— 4一ィル) 一 2—メチループ口ピル] 一ニコチンアミド (実施例 23の化合 物) 式 (I) で表される本発明の化合物の塩としては、 薬理学的に許容されるもの であれば特に制限されず、 例えば、 フッ素酸塩、 塩酸塩、 臭化水素酸塩、 ヨウ化 水素酸塩などのハロゲン化水素酸塩、 硝酸塩、 過塩素酸塩、 硫酸塩、 リン酸塩、 炭酸塩などの無機酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルォロメ夕ンスルホン酸塩、 エタンスルホン酸塩などの低級アルキルスルホン酸塩、 ベンゼンスルホン酸塩、 p—トルエンスルホン酸塩などのァリールスルホン酸塩、 酢酸塩、 フマル酸塩、 コハク酸塩、 クェン酸塩、 酒石酸塩、 シユウ酸塩、 マレイン酸塩などのカルボン 酸塩、 グリシン塩、 ァラニン塩、 グルタミン酸塩、 ァスパラギン酸塩などのアミ
ノ酸塩、 ナトリウム塩、 カリウム塩などのアルカリ金属塩などがあげられる。 本発明化合物の溶媒和物も本発明に包含されるものであり、 溶媒和物としてはァ セトン、 2—ブ夕ノール、 2—プロパノ一ル、 エタノール、 酢酸ェチル、 テトラ ヒドロフラン、 ジェチルエーテルなどとの溶媒和物があげられる。
本発明のテトラヒドロキノりン誘導体は、 以下に示す方法により製造すること ができる。
[製造法 1 ]
(式中、 すべての記号は前記と同じである。)
式 (I ) で示される本発明化合物は、 以下の工程 1および 2の反応により製造す ることができる。
(工程 1 ) 本工程では、 式 (a )、 ( b ) および (c ) で示される化合物を、 酸存 在下または非存在下、 不活性溶媒中反応させることにより式 (I I ) で示される 化合物を製造することができる。
式 (a )、 (b) および (c ) で示される化合物は市販の試薬としてまたはそれ から通常の化学反応により容易に誘導することにより入手できる。
本反応を具体的に説明すると、 酸は有機酸、 無機酸いずれも好ましく、 たとえば 酢酸、 トリフルォロ酢酸、 P—トルエンスルホン酸、 塩酸、 硫酸、 四塩化スズ、 四塩化チタン、 三フッ化ホウ素ジェチルエーテル錯体、 ジェチルアルミニウムク 口リド、 ェチルアルミニウムジクロリドなどが用いられる。 酸は式 (a ) で示さ れる化合物に対し触媒量〜 1 0当量用いるのが好ましい。 反応溶媒としては本反
応を著しく阻害しない溶媒であればとくに限定されないが、 ジクロロメタン、 ク ロロホルム、 1, 2—ジクロロェタン、 へキサン、 ベンゼン、 トルエン、 ジォキ サン、 テトラヒドロフラン、 ァセトニトリル、 メタノール、 エタノール、 水また はこれらの混合溶媒などが好ましい。 反応温度は一 2 0〜1 0 0°Cが好ましく、 反応時間は 5分〜 48時間が好ましい。
(工程 2) 本工程では、 式 (I I.) で示される化合物を、 触媒存在下接触還元す ることにより式 ( I) で示される化合物を製造することができる。
本反応を具体的に説明すると、 触媒としてはたとえば、 5 %パラジウム炭素、 1 0 %パラジウム炭素、 3 0%パラジウム炭素、 酸化白金およびウィルキンソン触 媒などがあげられる。 触媒の量としては式 ( I I) で示される化合物の重量の 1 Z10〜等量用いるのが好ましく、 水素圧は 1〜 5気圧が好ましい。 反応溶媒と しては本反応を著しく阻害しない溶媒であればとくに限定されないが、 メタノー ル、 エタノール、 酢酸ェチルまたはテトラヒドロフランなどが好ましい。 反応温 度は 25〜7 0°Cが好ましく、 反応時間は 3 0分〜 72時間が好ましい。
[製造法 2]
(式中、 すべての記号は前記と同じであり、 B o cは t e r t—ブトキシカルポ 二ル基を表し、 Dはハロゲン化カルボ二ル基を表す。)
式 (I a) で示される本発明化合物は、 製造法 1以外に、 以下の工程 1および 2の反応により製造することができる。
(工程 1 )本工程では、製造法 1の工程 1と同様の方法により製造できる、式( I
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I I a ) で示される化合物を酸で処理して脱保護することにより式 (I I I b ) で示される化合物を製造することができる。
本反応を具体的に説明すると、 酸は有機酸、 無機酸いずれも好ましく、 たとえば 酢酸、 トリフルォロ酢酸、 p—トルエンスルホン酸、 塩酸、 硫酸などがあげられ る。 酸は式 ( I l i a ) で示される化合物に対し 1〜5 0当量用いるのが好まし い。 反応溶媒としては本反応を著しく阻害しない溶媒であればとくに限定されな いが、 ジクロロメタン、 クロ口ホルム、 1, 2—ジクロロェタン、 へキサン、 ベ ンゼン、 トルエン、 ジォキサン、 テ卜ラヒドロフラン、 ァセトニトリル、 メタノ —ル、 エタノール、 水またはこれらの混合溶媒などが好ましい。 反応温度は 0〜 1 0 O tが好ましく、 反応時間は 3 0分〜 2 4時間が好ましい。
(工程 2 ) 本工程では、 式 (I I I b) で示される化合物と式 (d )、 ( e ) また は (f ) で示される化合物を、 塩基存在下または非存在下無溶媒または不活性溶 媒中で反応させ、 アミド結合を形成させることにより式 (l a ) で示される化合 物を製造することができる。
Dの 「ハロゲン化カルポニル基」 の具体例としては、 クロ口カルボニル基およ びプロモカルポニル基などがあげられる。
アミド結合を形成させる反応は公知であり、 酸八ライドまたは酸無水物を用い る方法や縮合剤などを用いる方法があげられる。
これらの反応を具体的に説明すると、 酸ハライドまたは酸無水物を用いる方法 は、 式 (d ) または (e ) で示される化合物と式 (I I I b) で示される化合物 とを塩基存在下または非存在下、 無溶媒または不活性溶媒中で反応させてアミド 化する方法である。 塩基は三級ァミンが好ましく、 たとえばトリェチルァミンお よびピリジンなどがあげられる。式(d ) または(e )で示される化合物は式(I I I b ) で示される化合物に対して 1〜 1 0当量用いるのが好ましい。 塩基は酸 ハライドまたは酸無水物に対し 1当量〜大過剰量用いるのが好ましい。 反応溶媒 としては、 本反応を著しく阻害しない溶媒であればとくに限定されないが、 N, N—ジメチルホルムアミド、 ジクロロメタン、 クロ口ホルム、 1, 2—ジクロロ ェタン、 1 , 1 , 2 , 2—テトラクロロェタン、 トルエンおよびピリジンなどが 好ましい。 反応温度は 0〜 8 0 °Cが好ましく、 反応時間は 3 0分〜 2 4時間が好
ましい。
縮合剤を用いる方法は、 式 (I I I b) で示される化合物と式 (f) で示され る化合物とを、 2—クロ口— 1, 3—ジメチルイミダゾリニゥムクロライド、 ジ シク口へキシルカルポジィミドまたは 1—ェチル— 3— ( 3—ジメチルアミノブ 口ピル) カルポジイミドなどの縮合剤を用いて、 塩基存在下または非存在下無溶 媒または不活性溶媒中で反応させる方法である。 縮合剤は、 式 (f) で示される 化合物に対して 1〜 2当量用いるのが好ましい。 塩基は三級ァミンが好ましく、 たとえば 4ーメチルモルホリン、 トリェチルァミンおよびピリジンなどがあげら れる。 塩基は式 (f) で示される化合物に対して 1当量〜大過剰量用いるのが好 ましい。 反応溶媒は、 本反応を著しく阻害しない溶媒であればとくに限定されな いが、 N, N—ジメチルホルムアミド、 ジメチルスルホキシド、 テトラヒドロフ ラン、 ジォキサン、 ジクロロメタン、 クロ口ホルムおよび 1, 2—ジクロ口エタ ンなどが好ましい。 反応温度は 0〜150°Cが好ましく、 反応時間は 1〜48時 間が好ましい。
[製造法 3 ]
(式中、 すべての記号は前記と同じであり、 Y1は— NR3S〇2—、 -NR3CO NH—または— NR3CSNH—を表し、 Gはクロロスルホニル基、イソシアナト 基またはイソチオシアナト基を表す。)
式 (l b) で示される本発明化合物は、 製造法 1以外に、 以下の反応により製 造することができる。
本反応では、 式 (I I I b) で示される化合物と式 (g) で示される化合物を、 塩基存在下または非存在下無溶媒または不活性溶媒中で反応させることにより式 (l b) で示される化合物を製造することができる。
本反応を具体的に説明すると、 塩基は三級ァミンが好ましく、 たとえばトリエ チルァミン、 ピリジンなどがあげられる。 式 (g ) で示される化合物は式 ( I I I b )で示される化合物に対して 1〜1 0当量用いるのが好ましい。塩基は式(g ) で示される化合物に対し 1当量〜大過剰量使用するのが好ましい。 反応溶媒とし ては本反応を著しく阻害しない溶媒であればとくに限定されないが、 N, N—ジ メチルホルムアミド、ジクロロメタン、クロ口ホルム、 1, 2—ジクロロエタン、 1 , 1 , 2, 2—テトラクロロェタン、 トルエン、 テトラヒドロフランなどが好 ましい。 反応温度は 0〜8 0 °Cが好ましく、 反応時間は 3 0分〜 1 2時間が好ま しい。
前述した製法で製造される本発明化合物は遊離化合物、 その塩、 その水和物も しくはエタノール和物などの各種溶媒和物または結晶多形の物質として単離精製 される。 本発明化合物の薬理学的に許容される塩は常法の塩形成反応により製造 することができる。 単離精製は抽出分別、 結晶化、 各種分画クロマトグラフィー などの化学操作を適用して行われる。 また光学異性体は適当な原料化合物を選択 することにより、 またはラセミ化合物のラセミ分割法により立体化学的に純粋な 異性体に導くことができる。
本発明のテトラヒドロキノリン誘導体またはその塩は、 優れた A Rァゴニスト 作用を有しており、 それらを有効成分として用いて医薬または A Rァゴニストと することができ、 種々の AR関連疾患の予防および治療に広く適用することがで きる。
A Rァゴニスト作用により以下の疾患の治癒が期待できる。
蛋白同化作用により治癒が期待できる疾患としては、 たとえば、 骨組織に強い 作用を示すことから、 原発性骨粗鬆症 (老人性、 閉経後、 若年性骨粗鬆症) 及び 続発性骨粗鬆症 (甲状腺機能亢進症、 クッシング症候群 (ステロイド投与による もの)、 末端肥大症、 性腺機能低下、 骨形成不全症、低ホスファターゼ症若しくは 糖尿病に由来する骨粗鬆症または不動性骨粗鬆症) などがあげられ、 筋組織に強 い作用を示すことから、 手術後、 悪性腫瘍、 外傷、 慢性腎疾患、 熱傷、 A I D S 等に由来する消耗性疾患などがあげられ、 赤血球産生亢進作用を示すことから、 造血機能障害及びその関連疾患、 例えば、 再生不良性貧血、 溶血性貧血、 鎌状赤
血球性貧血、 特発性血小板減少性紫斑病、 骨髄線維症、 腎性貧血などがあげられ る。
また、 性作用により治癒が期待できる疾患としては、 たとえば、 男子性腺機能 低下症、 男子性機能障害(インポテンス、 造精機能障害による男性不妊症)、 性分 化異常症(男性半陰陽)、 男性思春期遅発症、女性性器癌(癌に伴う疼痛を包含す る)、 乳癌、 乳腺症、 子宮内膜症および女性性機能障害などがあげられる。
本発明の医薬は、 これらの AR関連疾患に対して広く適用することができ、 ま た、 ここに例示されていない疾患に対しても、 A Rの機能調節が現在または将来 必要とされる場合であれば、 本発明の医薬を適用することができる。
本発明の医薬は、 経口または非経口により投与することができ、 全身投与型で あっても局所投与型であってもよい。
また、 剤型も特に制限されず、 投与経路に応じて適宜選択することができる。 例えば、 錠剤、 カプセル剤、 糖衣錠、 顆粒剤、 細粒剤、 吸入剤、 座剤、 液剤、 シ 口ップ、 ドライシロップ、 懸濁剤、 乳剤、 ローション、 軟膏、 貼付剤、 スプレー 剤、 ゲル剤、 点鼻剤、 点眼剤、 注射剤などがあげられる。
これらの製剤は、 有機または無機の固体または液体の賦形剤、 補助物質、 安定 化剤、 浸潤剤、 乳化剤、 緩衝剤、 その他薬理学的に許容される各種添加剤を配合 し、 製造することができる。
本発明の医薬のヒ卜への投与量は、治療または予防の目的、患者の性別、体重、 年齢、 健康状態、 疾患の種類や程度、 剤型、 投与経路、 投与期間などの種々の条 件により適宜決定する。 本発明のテトラヒドロキノリン誘導体の 1日当たりの投 与量として概ね 0 . 0 1〜1 0 O m gZ k gの範囲である。
なお、 丰発明の医薬は、 家畜、 愛玩動物、 飼育下または野生動物などの温血動 物におけるアンドロゲン受容体を介する疾患の治療に使用しても良い。 この場合 の剤型および投与量はヒトに対する剤型および投与量を参考にして決定すること ができる。
実施例
以下に実施例をあげて本発明化合物および製造法をさらに詳しく説明するが、 本発明はこれらの記載によって限定的に解釈されるものではない。
なお、 'H— NMRスペクトルは、 テトラメチルシラン (TMS) を内部標準と し、 JNM— EX270型スペクトルメーター (270MHz、 日本電子 (株) 製) で測定し、 δ値は p pmで示した。
また、 以下の構造式および表において、 Meはメチル基、 E tはェチル基、 P rはプロピル基、 Buはブチル基、 He Xはへキシル基を表す。
[実施例 1] (3 aR*, 45*, 9 b 5*) 一 N— [2— (8—シァノ— 2, 3, 3 a, 4, 5, 9 b—へキサヒドロー 1/ /—シクロペン夕 [c] キノリン一 4一 ィル) 一 2—メチループ口ピル] 一 4一トリフルォロメトキシベンズアミドの製
(便宜上、 化学構造式においては絶対配置は省略する。 以下の化学構造式におい ても同様。)
(1) (3 aR*, 4 S*, 9 b 5*) 一 [2— (8—シァノ一3 a, 4, 5, 9 b ーテトラヒドロー 1 —シクロペン夕 [c] キノリン一4—ィル) 一 2—メチル 一プロピル] 力ルバミン酸 tert-ブチルエステル
4—ァミノべンゾニトリル 50.0g、 シクロペン夕ジェン 41.8mLおよび 2, 2 - ジメチルー 3—ォキソプロピル力ルバミン酸 tert-ブチルエステル 85. Og をァ セトニトリル lOOOmLに溶解し、 トリフルォロ酢酸 3.2mLを 0 °Cで加えた。室温で 一晩撹拌した後、 析出した結晶を濾取することにより標題化合物 50.4gを得た。 物性値を以下に示す。
'H-NMRCCDClj) (5値 : 0.99(3H, s), 1.01(3H, s), 1.35(9H, s), 2.21-2.30 (IH, m), 2.45-2.55 (IH, m), 2.81-2.92 (2H, m), 3.27(1H, brs), 3.38-3. 2 (IH, in), 3.98(1H, d, J=7.9Hz),4.69(lH, brs), 5.74-5.76 (IH, m), 5.85-5.88(1H, m), 6.64(1H, d, J=7.9Hz), 7.17(1H, d, J=7.9Hz), 7.19(1H, s).
(2) (3 aR*, 4 S*, 9 b 5*) 一 [2 - (8—シァノー 2, 3, 3 a, 4, 5, 9 b—へキサヒドロー 1 J—シクロペン夕 [c] キノリン一 4一ィル) - 2 一メチル一プロピル] 力ルバミン酸 tert-ブチルエステル
( 1 ) で得た化合物 10. Ogを酢酸ェチル 750mLに溶解し、 酸化白金 lOOmgを加え て、 水素雰囲気下、 室温で 1時間攪拌した。 酸化白金を濾去した後、 溶媒を減圧 下留去し、 標題化合物 10.4gを得た。 物性値を以下に示す。
'H-NMRCCDClg) d : 0.97(3H, s), 0.99(3H, s), 1.37(9H, s), 1.43-1.69 (5H, m), 1.81-1.98(2H, m), 2.37(1H, q, J=7.9, 12.5Hz), 2.90(1H, dd, J=5.3, 14.2Hz), 3.24-3.34 (3H, m), 4.68(1H, brs), 6.53(1H, d, J=8.6Hz), 7.19 (IH, dd, J=1.7, 8.6Hz), 7.32(1H, d, J=1.7Hz).
(3) (3 &R*, 4 S*, 9 b 5*) —4一 (2 -アミノー 1, 1一ジメチルーェ チル) 一 2, 3, 3 a, 4, 5, 9 b—へキサヒドロ— 1 /—シクロペンタ [c] キノリン— 8—力ルポ二トリル
(2) で得た化合物 3. Ogをテトラヒドロフラン lOmLに溶解し、 4N塩酸ージォ キサン溶液 10mLを加えた。 5 0°Cで 2時間撹拌した後、 2N水酸化ナトリウム水 溶液および酢 ェチルを加えた。 酢酸ェチル層を飽和食塩水および水で洗浄し、 無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧下留去し、標題化合物 1.5gを得 た。 物性値を以下に示す。
δ値 : 0.93(3H, s), 1.03(3H, s), 1. 4-1.73(4H, m), 1.81-1.91 (2H, m), 2.27-2.32 (1H, in), 2.72(1H, dd, J=12.5, 33.0Hz), 3.25(1H, t, J=5.9Hz), 3.44(1H, d, J=2.3Hz), 6.44(1H, d, J=8.6Hz), 7.00(1H, brs), 7.15(1H, dd, J=1.7, 8.4Hz) , 7.29(1H, s).
(4) (3 aR*, 4 S*, 9 b 5*) 一 N— [2— (8—シァノー 2, 3, 3 a, 4, 5, 9 b—へキサヒドロー 1 iJ—シクロペン夕 [c] キノリン一 4—ィル) 一 2—メチル—プロピル] 一 4—トリフルォロメトキシベンズアミド
(3) で得た化合物 3.6g、 4一トリフルォロメトキシ安息香酸 2.8gを N、 N— ジメチルホルムアミド lOOmLに溶解し、 4一メチルモルホリン 3. ½L、 N—ヒド ロキシベンゾトリァゾ一ル 2.4gおよび 1ーェチルー 3一 ( 3—ジメチルァミノプ 口ピル)カルポジイミド塩酸塩 3.4gを加えた。室温で 2時間撹拌した後、水およ び酢酸ェチルを加えた。 酢酸ェチル層を水で洗浄した後、 無水硫酸マグネシウム で乾燥し、 溶媒を減圧下留去した。 残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ 一 (溶出溶媒 へキサン:酢酸ェチル = 3 : 1) で精製し、 標題化合物 3.2gを得 た。 物性値を以下に示す。
NMR(CDC13) (5: 1.08(3H, s), 1.11(3H, s), 1.52-1.74(5H, m), 1.85-1.99 (1H, m), 2.42(1H, q, J=7.6Hz), 3.19-3.27 (2H, m), 3.33(1H, d, J-2.3Hz), 3.74(1H, dd, J=7.3, 14.2Hz), 6.37(1H, brs), 6.62(1H, d, J=8.6Hz), 7.21-7.33 (4H, m),
7.77(2H, d, J=8.9Hz) .
以下、 実施例 1と同様にして実施例 2〜 29に示す化合物を製造した。 えられ た化合物の物性値を表 1に示す。
T拏 f/X3d
f/X3d l-OTClO/tOOZ ΟΛ\
II
/I3d tOTfIO/1-ΟΟί OAV
[実施例 30] (3 &R*, 45*, 9 b 5*) - 1 - [2- (8—シァノー 2, 3, 3 a, 4, 5, 9 b—へキサヒドロー シクロペン夕 [c] キノリン一 4一 ル) 一 2— チループ口ピル] —3— (3, 4—ジクロロフエニル) ゥレアの
実施例 1の(3)で得た化合物 50.0mgを N、 N—ジメチルホルムアミド 2mLに溶 解し、 イソシアン酸 3, 4—ジクロロフェニル 52mgを加えた。 室温で 1時間撹 拌した後、 水および酢酸ェチルを加えた。 酢酸ェチル層を水で洗浄した後、 無水 硫酸マグネシウムで乾燥し、 溶媒を減圧下留去した。 残留物をシリカゲルカラム クロマトグラフィー (溶出溶媒 へキサン:酢酸ェチル =4: 1〜1 : 1) で精 製し、 標題化合物 72mgを得た。 物性値を以下に示す。
'H-NMRCCDCla) <5: 1.00(3H, s), 1.13 (3H, s), 1. 3-1.67 (6H, m), 2.38(1H, d, J=7.6Hz), 3.11-3.23 (2H, m), 3.37(1H, dd, J=6.3, 13.9Hz), 3.38(1H, s), 4.56(1H, s), 5.52(1H, t, J=6.3Hz), 6.51(1H, d, J=8.6Hz), 7.06(1H, dd, J=2.0, 8.4Hz) , 7.14(1H, d, J=2.3Hz), 7.17(1H, d, J=2.3Hz), 7.25(1H, s), 7.29(1H, d, J=2.0Hz), 7.52(1H, d, J=2.3Hz).
以下、 実施例 30と同様にして実施例 3 1〜33に示す化合物を製造した。 え られた化合物の物性値を表 2に示す。
表 2
次に、 本発明化合物の有用性を下記の試験例により説明するが、 本発明はこれ らの記載によって限定的に解釈されるものではない。
[試験例 1 ] ラットアンドロゲン受容体 (ラット A R) に対する競合的結合試験 ラット A R画分の調製: 11週齢の雄性 SDラットを精巣摘出後、 3日目に前立腺 を摘出、 氷冷した ET緩衝液 (lOmM Tris, ImM EDTA, 5mM DTT, lOmMモリブデン酸ナ トリウム, pH7. 4) 中に回収した。 前立腺を細切し、 ET緩衝液を加え、 ホモジナ ィザーを用いてホモジナイズした。 このホモジネートを 100,000 X g、 60分、 4 で超遠心分離した上清をラット AR画分 (以下 AR Fという) とした。
結合試験: ¾-テストステロン (以下 ¾-Tという) を ΕΤ緩衝液で希釈調製し、
ジヒドロテストステロン (DHT) は ¾- T (2. 5nM) の最高濃度の 400倍濃度 (最終 濃度 I M) となるように調製した。 ¾- T調製液を、 DHT添加、 無添加および各 濃度の試験化合物を添加した 1. 5mlチューブに加え、さらに 200 gAR Fを加え て最終容量を 100 1とした。 4°Cで 2時間ィンキュベート後、 0. 05%デキストラン T70— 1. 0活性炭素溶液 300 1を加えて、氷中でさらに 15分間インキュベートし て未結合の 3 H- Tを吸着除去した。 4 :、 2, 500rpm, 5分間遠心分離後、 その上清 275 lを液体シンチレーシヨンバイアルに採り、 クリアゾル 2mlを加え撹拌、 静 置後、 液体シンチレ一ションカウンターで ¾放射活性を測定した。
相対的結合阻害率の算出:以下の式から本発明化合物の結合阻害率 (%) を算 出し、 その濃度一結合阻害曲線のプロビット(probi t)解析により 50%阻害濃度 (IC50) を算出した。
結合阻害率(%) = 100 X [l- (a-c) / (b-c) ]
a:本発明化合物添加サンプルの放射活性 (¾-T+化合物)
b:本発明化合物無添加サンプルの放射活性 (¾- Tのみ:総結合量) c: DHT添加サンプルの放射活性 (¾- T+DHT:非特異的結合量)
抗アンドロゲン剤であるビカルタミドの結合阻害率を 100とした相対的結合阻 害率 (RBArRelat ive Binding Af f ini ty)は以下の式より求めた(Endocrinology 138, 863-870, 1997)。
RBA=100 X (ビカルタミドの IC5fl) / (本発明化合物の IC50)
上記より求めた本発明化合物の RBAを表 3に示す。
表 3
この結果、 本発明化合物は非常に強い結合阻害活性を示した。
[試験例 2 ]精巣摘出 (0RX) ラットでの前立腺、 大腿骨骨密度及び肛門挙筋に対 する効果
12週齢雄 SDラットを精巣摘出後、 翌日より実施例 1の化合物 (30mg/kg) およ び D HT (10 mg/kg) を 1日 1回週 5日で 4週間連続皮下投与した。 実施例化合 物および D H Tはジメチルスルホキシドに溶解後、ォリ一ブ油で 1 0倍希釈して、 各濃度の溶液を調製し試験に用いた。 O R X対照群には、 ジメチルスルホキシド をォリーブ油で 1 0倍希釈したものを試験に用いた。 精巣摘出せず、 開腹手術し て閉じたものを偽手術対照群として用いた。 最終投与日の翌日に、 腹側前立腺お よび肛門挙筋の湿重量の測定と右大腿骨骨密度の D E XA法 (二重エネルギー X 線吸収法)による測定を行い、実施例 1の化合物の in vivoでの効果を評価した。 結果を表 4及び図 1〜 3に示す。
表 4
Mean士 SD *<0.05, **p Q.01 on Dunne tt's -test. 実施例 1の化合物は有意な大腿骨骨密度、 肛門挙筋重量の増加効果を示した。 このとき、 前立腺重量は偽手術対照群の約 74%であった。
一方 DHTは、 10mg/kgで有意な大腿骨骨密度増加及び有意な肛門挙筋重量の 増加が認められたが、 前立腺重量は偽手術対照群の約 175%に腫脹した。
これらの結果から実施例 1め化合物は、 前立腺に対しては天然アンドロゲンに 見られるような過剰作用を示さないこと、 また、 特に骨組織及び筋肉組織に強い 増殖作用を示す化合物であることが明らかとなつた。
[試験例 3]精巣摘出 (0RX) ラットでの前立腺、 大腿骨骨密度及び肛門挙筋に対 する効果
12 週齢雄 SD ラットを精巣摘出後、 翌日より実施例 8および 23の化合物 (30mg/kg) および DHT (lOmg/kg) を 1日 1回週 5日で 4週間連続皮下投与し た。 実施例化合物および DHTはジメチルスルホキシドに溶解後、 ォリーブ油で 10倍希釈して、 各濃度の溶液を調製し試験に用いた。 ORX対照群には、 ジメ チルスルホキシドをォリ一ブ油で 10倍希釈したものを試験に用いた。 精巣摘出 せず、 開腹手術して閉じたものを偽手術対照群として用いた。 最終投与日の翌日 に、腹側前立腺および肛門挙筋の湿重量の測定と右大腿骨骨密度の DEXA法 (二 重エネルギー X線吸収法) による測定を行い、 実施例 8および 23の化合物の in vivoでの効果を評価した。
結果を表 5及び図 4〜 6に示す。
表 5
Mean土 SD * <0.05, **Κ0.01 on Dunnett's /-test. 実施例 8の化合物は有意な大腿骨骨密度、 肛門挙筋重量の増加効果を示した。 このとき、 前立腺重量は偽手術対照群の約 50%であった。 また、 実施例 2 3の化 合物も有意な大腿骨骨密度、 肛門挙筋重量の増加効果を示した。 このとき、 前立 腺重量は偽手術対照群の約 90%であった。
一方 DHTは、 10mg/kgで有意な大腿骨骨密度増加及び有意な肛門挙筋重量の 増加が認められたが、 前立腺重量は偽手術対照群の約 130%に腫脹した。
これらの結果から実施例 8および 23の化合物は、 前立腺に対しては天然アン ドロゲンに見られるような過剰作用を示さないこと、 また、 特に骨組織及び筋肉 組織に強い増殖作用を示す化合物であることが明らかとなった。
[試験例 4] 精巣摘出 (ORX) ラットでの経口投与による前立腺、 大腿骨骨密 度および肛門挙筋に対する効果
12週齢雄性 SD系ラットを精巣摘出し、 翌日より実施例 16の化合物 (30 mg/5ml/kg) を 1日 2回週 7日で 4週間連続経口投与した。 試験化合物 は 0. 5%メチルセルロース溶液を溶媒として懸濁し、 試験に用いた。 ORX対 照群には、 0. 5%メチルセルロース溶液 (5mlZkg) を投与した。 精巣摘 出せず、 開腹手術して閉じたものを偽手術対照群として用いた。 最終投与日の翌 日に、 腹側前立腺および JC門挙筋の湿重量の測定と右大腿骨骨密度の D E X A法 (二重エネルギー X線吸収法)による測定を行い、実施例 16の化合物の i n v i voでの効果を評価した。 結果を表 6及び図 7〜 9に示す。
表 6
Mean土 SD * 0.05, **/<0.01 on Dunnett's /-test. 実施例 16の化合物は〇 R Xラッ卜の大腿骨骨密度、 及び肛門挙筋重量を有意 に増加させ、 偽手術対照群と同等まで回復させた。 一方、 実施例 16の化合物を 投与したラットの前立腺重量は偽手術対照群の約 90%を示した。
これらの結果から実施例 16の化合物は、 経口投与において前立腺に対しては 過剰作用を示さず、 また、 特に骨組織及び筋肉組織に強い増殖作用を示すことが わかった。
現在研究開発されている非ステロイド性 ARァゴニストは、 経口投与した場合 体内吸収が悪く、 静脈または筋肉注射剤として適用されているが、 注射剤として 適用される場合、 苦痛や通院などにより患者に負担をきたすため、 実施例 16の 化合物は、 患者に負担なく経口投与できる点で優れている。 以下に本発明化合物の製剤例を示すが、 処方はこれらに限定されるものではな い。
[製剤例 1] 錠剤
下記の処方にしたがつて、 1錠あたり有効成分 2 m gを含有する錠剤を調製し た。
実施例 1の化合物 2mg
澱粉 48mg
乳糖 30 m g
結晶セルロース 15mg
メチルセルロース 3mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
全量 10 Omg
[製剤例 2] カプセル剤
下記の処方にしたがって、 1錠あたり有効成分 2mgを含有する 10 Omgの 混合成分をカプセルに充填してカプセル剤を調製した。
実施例 1の化合物 2mg
澱粉 38mg
乳糖 5 Omg
結晶セルロース 8mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
0 Omg 産業上の利用可能性
本発明のテトラヒドロキノリン誘導体およびそれを有効成分とする医薬は、 ァ ンドロゲンステロイド製剤に見られる前立腺に対する過剰な作用を示さず、 AR ァゴニスト作用を示すことができる。 また、 骨組織、 骨格筋組織に特に強い AR ァゴニスト作用を示すことができる。 従って、 本発明化合物は、 種々の ARァゴ ニスト作用が有効と考えられる疾患の予防および治療を行うことができ、 性腺機 能低下症の予防、 治療においては、 前立腺に対する作用が適度であり、 また副作 用がより少ないものとして適用でき、 また骨粗鬆症、 消耗性疾患の予防、 治療に おいては、 骨組織、 骨格筋組織などの標的組織に対して強い作用が期待できる。