明細書 新規脂肪族化合物、 合成方法、 利用方法 技術分野
本発明は、新規脂肪族化合物、 これを含有する医薬、並びに P PART及び α (P PAR : Peroxisome pro丄 iterator— activated receptor へノレ才5 シソーム 増殖因子応答性受容体) の作動または脂質代謝病 (高脂血症 (高コレステロール 症等)など)、循環器系疾患(動脈硬化症など)、糖尿病(特に、 2型糖尿病(NIDDM) ) の予防若しくは治療におけるこれらの使用に関する。
背景技術
コレステロールなどの脂質代謝や吸収に関与する酵素群を含む細胞内小器官の ペルォキジソームの研究にぉレ、て、 ペルォキシソーム増殖因子によつて活性化さ れる受容体 PPARa、 σ (あるいは jS)、 γ力 核内受容体として発見された。 PPARひ、 ひ、 γは、 特異的な糸且織分布をしており、 その機能についても解明 されてきている。
P P AR γは脂肪組織において高度に発現し、 脂肪細胞分化及び脂肪産生を促 すことにより、 糖質や脂質の恒常性に関与していると考えられている。 PPAR γ作動薬は、 血糖降下、 高 TG (トリアシルグリセロール) 血症改善、 コレステロ ール低減などの作用を示すことから、 糖尿病薬、 抗動脈硬化薬、 脂質代謝改善薬 としての可能性が指摘されている (' 98 Diabetologia 41, p.257)。
インスリン抵抗性糖尿病薬として開発されたチアゾリジンジオン (TZD)誘導体 は、 P PAR γを活性化することによって、 インスリン抵抗性を改善し、 血糖を 低下させると考えられている('99 Cell. 100 p. 1863)。 し力 し、 TZDは、 強い副 作用を引き起こす問題点がある。 即ち、 トログリタゾン (ノスカール) について は、 肝障害が報告され、 発売が中止になり、 また、 ピオグリタゾン (ァクトス) については、 心不全の死亡例が報告されている。
また、 糖尿病、 特に 2型糖尿病の惹起原因として、 高血糖だけでなく血中遊離 脂肪酸及び中性脂肪の役割も近年重要視されるようになっている。 したがって、
糖尿病薬として、 血糖を低下させるだけでなく、 脂質レベルを低下させるものが 望まれている。
P PARaは、 肝臓に主に分布し、 脂質レベルの調節に関与しているといわれ ている。 P PARaを介して、 肝では血清トリグリセリ ドを分解するリポタンパ タリパーゼの誘導とリパーゼ抑制因子アポ cmの抑制と、 おもに小腸ではリパー ゼ活性化因子アポ cnの誘導がおこり、 また血中では遊離脂肪酸の細胞内への取 込みのために肝臓、 筋肉、 脂肪、 小腸などの各組織に特異的な脂肪酸輸送タンパ クと結合タンパクが誘導されると考えられている( '98 /· B. C.)0 さらに、 いず れの,組織内でもミ トコンドリアの 酸化系が亢進し、 とくに肝臓ではぺ ォキシ ソームでの酸ィ匕系が著しく亢進する。 これらの協同的な作用により全身で脂肪の 利用系が活性ィヒし、 エネルギー消費が盛んになることで、 血中のトリグリセリ ド を低下させると予想されている。 抗高脂血症薬のフィブレート系薬物は P PAR ctを介して作用するといわれている。 し力、し、 フイブレート系薬物も副作用の問 題があり、 脂肪肝をきたした肝障害を引き起こすことが知られている。
このように P PARy及びひに作動するものは、 糖尿病薬、 抗動脈硬化薬、 脂 質代謝改善薬、 抗高脂血症薬として期待されるが、 一方、 TZDゃフイブレート 系薬剤に見られるように、 P PARy、 ひ作動活性が強いものであっても副作用 が強くでる場合がある。
従って、 P P A R γ及びひの作動性を指標にし、 かつ上記病気の治療薬として 適切であるものを探索する必要がある。
発明の開示
本発明者らは、 上記の点に鑑み、 鋭意研究を行った結果、 下記一般式 Iで示さ れる化合物若しくはその立体異性体を新たに発見し、 この化合物 (以下、 その立 体異性体を含めて 「本発明化合物」 という) 、 in vitro で P PAR γ受容体 及び P PAR α受容体作動性を有し、 さらに、 in vivo で、 血糖値を降下させる だけでなく、 トリグリセリ ドレベルなどの脂質レベルも降下させることを見出し た。 本発明はこの知見に基づくものであり、 その目的は新規な脂肪族化合物、 そ の製造方法及び医薬を提供する事にある。
(式中、
Rは、 置換されてもよい CH3CnH (2n_2m)— (nは 1 6から 22の間のいず れかの整数であり、 mは不飽和数を表し、 2から 7の間のいずれかの整数である) を表し、 1は 0から 10の間のいずれかの整数であり、 RAは水素若しくは炭素 数 1〜10の直鎖でも分枝鎖でもよいアルキル基である) で表される脂肪族化合 物若しくはその立体異性体、 またはそれらの製薬学的に許容される塩に関する。
(上記式 (I) における Rの定義の CH3CnH (2n_2m)—の不飽和結合の位置に 関しては、 アミ ド結合 NHCOの〃 C"の位置を 1とし、 隣の炭素に順番に 2, 3 , 4…と番号をつけて位置を示し、 以下の説明に用いる。)
図面の簡単な説明
図 1は、 KK— Ayマウスの血糖値に及ぼす作用を示すグラフである。 ** : ビ ヒクル群に対し危険率 p < 1 %で有意に抑制を示す。
図 2は、 KK— Ayマウスの血中トリグリセリ ドレベルに及ぼす作用を示すダラ フである。 * * : ビヒクル群に対し危険率 pく 1 %で有意に抑制を示す。
図 3は、 KK一 Ayマウスの白色脂肪量の体重に対する割合に及ぼす作用を示す グラフである。 * : ビヒクル群に対し危険率 p< 5%で有意に抑制を示す。
図 4は、 Z D Fラットの血糖値に及ぼす作用を示すグラフである。
図 5は、 Z D Fラットの血中トリグリセリ ドレベルに及ぼす作用を示すグラフで める。
図 6は、 ZDFラットの血中総コレステロールレベルに及ぼす作用を示すグラフ である。 * : ビヒクル群に対し危険率 p< 5%で有意に抑制を示す。
図 7は、 d bZd bマウスの血糖値に及ぼす作用を示すグラフである。 ** : ビ ヒクル群に対し危険率 P < 1 %で有意に抑制を示す。
図 8は、 d bZd bマウスの血中トリグリセリ ドレベルに及ぼす作用を示すダラ
フである。 * : ビヒクル群に対し危険率 p< 5%で有意に抑制を示す。
図 9は、 d b/d bマウスの血中総コレステロールレベルに及ぼす作用を示すグ ラフである。 * : ビヒクル群に対し危険率 p< 5%で有意に抑制を示す。
図 1 0は、 d b/d bマウスの血中遊離脂肪酸レベルに及ぼす作用を示すグラフ である。 * * : ビヒクル群に対し危険率 p < 1 %で有意に抑制を示す。
図 1 1は、 被験化合物による PPARy受容体作動活性の増強が、 転写因子 SRC 1、 TIF 2あるいは TRAP 220のいずれの活性の増強を介して生じるかを示すグラフで ある。
発明を実施するための最良の形態
前記式 Iにおける置換基について説明する。
「炭素数 1から 1 0の直鎖でも分枝鎖でもよいアルキル基」の具体例としては、 メチル基、 ェチル基、 n—プロピル基、 イソプロピル基、 —ブチル基、 イソブ チル基、 t e r ί_ブチル基、 s e c一ブチル基、 ペンチル基、 t e r t— アミル基、 3 _メチルブチル基、 ネオペンチル基、、 —へキシル基、 ーへプチ ノレ基、 —ォクチル、 —ノニル基、 —デシル基などのアルキル基があげられ る。
「置換されてもよい CH3CnH (2n_2m)―」 とは、 任意の置換基を有する CH 3CnH (2n一 2m)—を意味する。
任意の置換基の例としては、 水酸基、 ハロゲン原子、 炭素数 1から 1 0の直鎖 でも分枝鎖でもよいアルキル基、 炭素数 3から 7のシクロアルキル基、 ァリール 基があげられる。
Rの置換基について以下に説明する。
「炭素数 3から 7のシクロアルキノレ基」 の具体例としては、 シクロプロピル基、 シク口ブチル基、 シク口ペンチル基、 シク口へキシル基およぴシク口へプチル基 などがあげられる。
「ァリール基」 の具体例としては、 フエニル基などがあげられる。
「炭素数 1から 1 0の直鎖でも分枝鎖でもよいアルキル基」 の具体例は、 上記 の通りである。
本発明の一般式 Iの化合物に関して、 好ましい態様としては、 以下のものがあ
げられる。
1は、 好ましくは、 1から 3の間のいずれかの整数であり、 さらに好ましくは 、 1である。
nは、 好ましくは、 1 6から 2 0の間のいずれかめ整数である。
mは、 好ましくは、 3から 6の整数であり、 さらに好ましくは、 5または 6で ある。
本発明は、 前記一般式 Iにおいて、 Rが、 C H 3 C n H (2 n— 2 m)— ( nは 1 6 から 2 0の間のいずれかの整数であり、 mは不飽和数を表し、 3から 6の整数で ある) であり、 1が 1から 3の間のいずれかの整数であり、 RAは式 Iの記号の 字義と同一である、 脂肪族化合物若しくはその立体異性体、 またはそれらの製薬 学的に許容される塩を提供する。
Rの好ましい例は、 ドコサへキサェン酸 (n = 2 0、 m= 6 ) やエイコサペン タエン酸 (n = 1 8、 m= 5 )、 リノレン酸 (n = 1 6、 m= 3 ) に由来するもの であるが、 これに限定されない。
Rの任意の置換基は、 式 I化合物の溶解度に影響を与えないものが好ましい。 置換基がアルキルの場合は、 分子量が小さいもの、 例えば、 炭素数 1〜4のアル キル基が好ましく、 さらに好ましくは、 メチル基である。
また、 好ましい置換位置は、 アミ ド結合に近接しない位置であり、 例えば、 位 置 3〜2 3、 さらに好ましくは位置 3〜 2 0である。
置換基を有する Rの好ましい例は、置換基 0Hを有する誘導体の場合、 ドコサへ キサェン酸 (DHA) の水酸化誘導体又はエイコサペンタエン酸 (EPA) の水酸化誘 導体由来があげられるが、 ドコサへキサェン酸(DHA) の水酸化誘導体由来がより 好ましレ、。 水酸化誘導体の立体配置は (R) 配置でも (S ) 配置でも構わないが、 ( S ) 配置であることが好ましい。 ドコサへキサェン酸 (DHA) の水酸化誘導体と して最も好ましいのは 4 (S) - OH - DHA、 10 (S) - OH - DHA、 11 (S) - OH - DHA、 14 (S) - OH - DHA、 8 (S) - OH - DHA, および 17 (S) - OH - DHA であるが、 これに限定されない。
本発明は、 前記一般式 Iの化合物が下記の式である化合物を提供する。
(式中 RAは式 Iの記号の字義と同一であり、 1は 1〜3のいずれかの整数であ る。)
本発明の一般式 I及び I Aの化合物において、 好ましい態様は以下のものがあ げられる。
RAは、 水素が好ましいが、 RAがアルキル基の場合は、 好ましくは炭素数 1〜 6であり、 さらに好ましくは炭素数 1〜4である。
本発明化合物の好ましい化合物には以下の化合物、 その光学異性体またはそれ らの製薬学的に許容される塩があげられる。
本発明における立体異性体とは、 (R)、 (S )及びラセミ体のいずれの光学異性、 並びにシス、トランス及びその混合物のいずれの幾何異性を含むことを意味する。 幾何異性では、 シスが好ましい。
また、 本発明におけるその製薬学的に許容される塩とは、 例えば硫酸、 塩酸、 リン酸などの鉱酸との塩、 酢酸、 シユウ酸、 乳酸、 酒石酸、 フマル酸、 マレイン 酸、 メタンスルホン酸、 ベンゼンスルホン酸などの有機酸との塩などがあげられ る。 この中で塩酸塩、 クェン酸塩、 マレイン酸塩などの塩が好ましい。
本発明化合物は、以下の実施例に示すように、 P P A R γ及びひ作動性を有し、 特に、 P P A R γ活性はドコサへキサェン酸 (D HA) の 2倍の活性を有する。
従って、 本発明は、 P P A R T に作動する医薬及び P P A Rひに作動する医薬 を提供する。
ここで、 P P A R γに作動する医薬とは、 脂肪細胞などの細胞の核内受容体で ある P P A R γが関与する種々の疾患を予防、 治療する医薬をいう。 例えば、 糖 尿病薬、 抗動脈硬化薬、 脂質代謝改善薬があげられる。 P P A Rひに作動する医 薬とは、 細胞の核内受容体である P P A R αが関与する種々の疾患を予防、 治療 する医薬をいう。 例えば、 抗脂血症薬があげられる。
本発明化合物は、 以下の実施例に示すように、 糖尿病モデルにおいてピオダリ タゾンに見られるような体重増加の副作用を有さず、 血糖値を下げ、 血中トリグ リセリ ドなどの脂質レベ^/を下げることができる。
従って、本発明化合物は、脂質代謝病(肥満、高脂血症など)、循環器系疾患(動 脈硬化症など)、 糖尿病 (特に、 2型糖尿病 (NIDDM) ) 及びその合併症 (ニューロ パシー、 網膜症、 糸球体硬化症および心臓血管障害など) の予防若しくは治療に 優れている。
ここで、 循環器系疾患とは、 高コレステロールによって、 血液およびリンパの 循環状態が障害され、 組織や細胞に障害をおこしている疾患をいう。 例としては 、 動脈硬化性疾患、 血栓性疾患があげられる。
ここで、 脂質代 tr病とは、 脂質の代謝障害によって生じる疾患をいい、 例えば 、 肥満、 高脂血症などがある。 高脂血症とは、 血清コレステロールおよび、 ない しはトリグリセリ ド値が増加した病態をいい、 例えば、 高コレステロール症や高 中性脂質症があげられる。
本発明に於ける各化合物は経口または非経口 (注射剤、 外用剤、 坐剤など) で 投与することができる。 その投与量は約 0· 0001〜約 lg I kg体重/日を 1 日 1回 又は数回の範囲が好適であるが、 この投与量は疾患の種類、 患者の年齢、 体重、 症状により適宜増減することができる。
本発明の化合物を医薬として用いるためには、 固体組成物、 液体組成物および その他の組成物のいずれの形態でもよく、必要に応じて最適のものが選択される。 医薬組成物は、 本発明の化合物を常用の賦形剤、 増量剤、 結合剤、 崩壊剤、 pH調 節剤、 溶解剤、 などを添加し、 常用の製剤技術によって、 錠剤、 丸剤、 カプセル
剤、 顆粒剤、 粉剤、 液剤、 乳剤、 懸濁剤、 注射剤などに調製することができる。 賦形剤、 増量剤としては、 例えば、 乳糖、 ステアリン酸マグネシウム、 デンプン、 タルク、 ゼラチン、 寒天、 ぺクチン、 アラビアゴム、 ォリーブ油、 ゴマ油、 力力 ォバター、 エチレングリコ'ールなどやその他常用されるものをあげることができ る。
製剤の酸化を防止するためには、 酸化防止剤 (トコフエロール等) を添加した り、 シクロデキストリン等の包接剤で包接したり、 ゼラチン等の皮膜でカプセル 化することができる。
更に、 前記化合物を、 乳化剤として、 リン脂質あるいは非イオン界面活个生剤を 用いて、 〇ZW型ェマルジヨン製剤 (〇ZW型乳剤) として特開平 6 - 2 9 8 6 4 2に記載のように調製することができる。 乳化剤は、 単独あるいは 2種以上組 み合わせて使用でき、 添加量は、 適宜でよいが、 0 . 0 0 1〜1 0 % (W/V) , 好ましくは 0 . 0 1〜5 % (W/V) である。
リン脂質としては、 大豆由来リン脂質、 卵黄由来リン脂質、 リゾレシチン、 フ ォスファチジルコリン(レシチン)、 フォスファチジルセリンなどの単独あるいは 組み合わせが使用可能である。 非界面活性剤としては、 分子量 5 0 0〜1 5 0 0 0のポリオキシエチレン一ポリオキシプロピレンブロック共重合体 (例えば、 プ ルロニック F— 6 8 )、分子量1 0 0 0〜 1 0 0 0 0のポリアルキレングリコール、 分子量 1 0 0 0〜 2 0 0 0 0のポリオキシアルキレン共重合体、 硬化ヒマシ油ポ リオキシアルキレン誘導体、 ヒマシ油ポリオキシアルキレン誘導体、 グリセリン 脂肪酸エステル、 ポリグリセリン脂肪酸エステル、 ソルビタン脂肪酸エステル、 ポリオキシエチレンヒマシ油、 硬化ヒマシ油、 ポリオキシエチレンアルキルエー テル、 ショ糖脂肪酸エステルなどの単独あるいは組み合わせが好適に用いられる がこれに限定されない。
また、 本発明化合物は以下のように製造することができる。
(式中、 1は 0 から 10の間のいずれかの整数であり、 R Aは水素若しくは炭素 数 1〜10の直鎖でも分枝鎖でもよいアルキル基である) と、
式 I I I化合物: R— C02_R' [R' は水素または炭素数 1〜4のアルキル 基 (例えば、 メチル基、 ェチル基、 プロピル基、 ブチル基) を示し、 Rは、 置換 されてもよい CH3CnH (2n— 2m)— (nは 16から 22の間のいずれかの整数 であり、 mは不飽和数を表し、 2から 7の間のいずれかの整数である) を表す] で示される化合物とを出発原料として、 アミ ド化方法によって製造することがで さる。
出発原料の式 I Iのァミンは、 常法に従って合成することができる。
出発原料の式 I I Iのカルボン酸またはエステルは、 常法に従って合成するこ とができる。 エステルの場合は、 対応するカルボン酸またはその塩から通常のェ ステル形成反応によって製造することができる。 上記対応するカルボン酸または その塩は、 合成品でも天然品でもよい。 経済性の点では合成品の方がよいが、 天 然品の方が毒性がより少ない点で好ましい。 天然品は、 例えば、 魚類の鰓、 頭部 、 筋肉内、 眼窩油などから分離、 精製したものがあげられる。
式 I I Iのカルボン酸またはエステルが置換基を有するものも、 天然品でも合 成品でもよい。
合成で置換基を導入する方法は、 当業者に通常用いられる方法、 例えば、 式 I I Iのカルボン酸またはエステルに、 置換または付加反応によって置換基を導入 する方法があげられる。
置換基がアルキル基の場合は、 CH3CnH (2n_2m) COOHにアルキルィヒ剤を 用いて導入することができる。
また、 置換基が 0H基の場合は、 天然由来の DHAを水酸化し、 これを HPLCなど によって分画することにより合成してもよく、 特に制限はない。 例えば、 ニジマ ス鰓細胞や上皮細胞、 哺乳動物血小板、 あるいは RBL- 1などのヒト白血球由来株
化細胞懸濁液に 10〜200mMの DHAを基質として加え、 10〜37°Cにて 1〜50分間反 応させて得ることもできる。 反応液を酸性 (ギ酸、 酢酸、 トリクロ口酢酸などに より) にすることによって反応を停止し、各 0H誘導体を有機溶媒(クロ口ホルム、 メタノール、 酢酸ェチル、 ァセトニトリルなど) を用いて抽出した後、 展開溶媒 (クロ口ホルム、 メタノール、 酢酸ェチル、 ァセトニトリル、 水、 トリフルォロ 酢酸など) によって HPLC:、 あるいは薄層クロマトグラフィーなどの方法によって 分画することができるが、 これらの方法に限定されるものではない。 また、 各 0H 誘導体は部位特異的な酵素を用いた選択的な合成法によって調製することもでき る。 なお、 4 (S) - OH - DHA、 10 (S) - OH - DHA, 11 (S) - OH— DHA, 14 (S) - OH - DHA, 8 (S) - OH - DHA, および 17 (S) - OH - DHAについては、 和光純 薬工業より市販されており、 入手することが可能である。
出発原料を合成によって得る場合には、 式 I Iのァミンまたは式 I I Iのカル ボン酸またはエステルは、 分離してもよく、 または溶媒に溶解したまま用いるこ ともできる。
アミ ド化方法は、 限定されるものではないが、 一般的に混合酸無水物法で合成 できる。 ここでは下記方法をあげる。
( 1 ) W e i n r e b方法
式 I Iのァミンとトリアノレキルアルミニウム、 特に (C H 3) 3 A 1 との反応物 に、 式 I I Iのエステルを反応させることにより、 本発明化合物は製造すること ができる。 その反応を以下のスキームを用いて詳細に説明する。
II
A
上記第 1工程の化合物 Aの生成反応は、 式 I Iのァミン (好ましくは、 塩酸塩な どの酸付加塩) と(CH
3)
3A1 とを反応させることによって行う。 この反応は、 芳香 族炭化水素溶媒 (例えば、 トルエン、 キシレン、 ベンゼン) 中、 冷却下で行うこ とが好ましい。
このとき、 式 I Iのァミンの 1当量に対し、 (CH3)3A1は、 0.5〜5.0当量である ことが好ましい。
上記第 2工程は、 第 1工程で得られた化合物 Aに、 式 I I Iのエステルを反応 させることによって行う。 この反応は、 芳香族炭化水素溶媒 (例えば、 トルエン、 キシレン、 ベンゼン) 中、 加熱下で行うことが好ましい。 反応温度は、 40〜70°C が好ましい。 反応温度は、 生成物が分解しやすいので、 約 70°Cを超えないことが 好ましい。 反応時間は、 1〜5時間が好ましい。
このとき、 ィ匕合物 Aの 1当量に対し式 I I Iのエステルは 5〜20当量であるこ とが好ましい。
(2) (COC 1 ) 2を用いる方法
式 I I Iのカルボン酸: R— CO— OH [Rは、 置換されてもよい CH3CnH (2n_2m) - (nは 16から 22の間のいずれかの整数であり、 mは不飽和数を 表し、 2から 7の間のいずれかの整数である) を表す]で示される化合物と (CO C 1 ) 2との反応によって生じる酸塩ィ匕物に、
式 I Iのァミン
(式中、 1は 0から 10の間のいずれかの整数であり、 R Aは水素若しくは炭素 数:!〜 10の直鎖でも分枝鎖でもよいアルキル基である)
を反応させることによっても本発明化合物を得ることができる。
上記第 1工程:式 I I Iのカルボン酸と (COC 1 ) 2との反応による酸塩化 物の生成反応は、 炭化水素溶媒 (例えば、 ジクロロメタン、 クロ口ホルム) ある
いは芳香族炭化水素溶媒 (例えば、 トルエン、 キシレン、 ベンゼン) 中、 冷却下 でおこなうことが好ましい。
このとき、式 I I Iのカルボン酸: R— C O— OHの 1当量に対し、 (C O C 1 ) 2は、 1 〜 5当量であることが好ましレ、。
上記第 2工程:第 1工程で得られた酸塩化物と式 I Iのァミンとの反応は、 芳 香族炭化水素溶媒 (例えば、 トルエン、 キシレン、 ベンゼン) 中でおこなうこと が好ましい。 反応温度は、 — 5〜 5 °Cが好ましい。 反応温度は、 生成物が分解し やすいので、 約 5 °Cを超えないことが好ましい。 反応時間は、 0 . 5 〜 5時間が 好ましい。
このとき、 酸塩化物の 1当量に対し、 式 I Iのァミンは、 1 〜 5当量であるこ とが好ましい。
レ、ずれの製法でも反応終了後、 必要に応じて、 常法 (ろ過、 溶媒抽出、 再結晶 、 再沈殿又はクロマトグラフィーなど) に従って、 本発明の化合物を単離、 精製 することができる。
また、 立体異性体は、 適当な原料を選択することにより、 または立体異性体の 混合物の場合にはク口マトグラフィー若しくはラセミ分割法により、 立体化学的 に純粋な異性体を得ることができる。
実施例
以下、 実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、 これは本発明の技術範 囲を限定するものではない。
(実施例 1) (4Z, 7Z, 1QZ, 13Z, 16Z, 19Z) — N— [ (フリル一 2—ィル) メチル] ドコサへキサェンアミ ドの合成方法
15% Me3Alの n-へキサン溶液 12ml とモレキュラーシーブ (MS4A) で乾燥させ た 17ml トルエンと混合し、 これに 1, 5ml (16. 8画 ol)フルフリルアミンを加え、 冷 却浴上で 20分間撹拌した。室温に戻した後、 7ml乾燥トルエン中 6. 0g (16. 8mmol) ドコサへキサェン酸(DHA) ェチルエステルを 4分間で滴下し、 70°C湯浴上で撹拌 した。 次に、 氷浴上で 9°Cに冷却した後、 0. 67M HC1 29mlを約 4分間で滴下し、 水浴上で 10分間撹拌したものを分液した。水層を酢酸ェチルで抽出(20ml X I回) し、 それを有機層と合わせたものを飽和食塩水 20mlで洗浄し、 Na2S04で乾燥させ、
40°C水浴上で減圧濃縮した。 最後に、 濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフ ィー (シリカ 70g、 へキサン-酢酸ェチル 9:1 →2:1 (V:V)) することによって 精製し、 I R及び NMRによって、 下記化合物であることを確認した。
IRvHAX(neat)cm-1:1643. ¾-NMR (300NHz, CDC13)
δ :0.97 (3Η, t, J=7.4Hz) , 2.03-2.13 (2H, m), 2.26 (2H, t, J=7.4Hz) ,
2.39-2.46 (2H, m) , 2.79-2.91 (10H, m) , 4.44 (2H, d, J=5.5Hz) , 5.27- 5.46 (12H, m), 5.83 (1H, s) , 6.22 (1H, ra), 6.32 (1H, m), 7.35 (1H, m) . MS
m/z: 407 (M+), 81(100%).
HRMS計算値 C27H37N02(M+) :407.2824. 実測値: 407.2798
(実施例 2) P PAR y作動性試験
被験物質として実施例 1化合物を用い、 陽性対照として、 抗糖尿病作用が知ら れているドコサへキサェン酸 (DHA) のェチルエステル体及び P PAR γのリ ガンドであることが知られている 15デォキシー Δ12' 1 4— PGJ2 (1 5—デォキ シ一 Δ12' 14—プロスタグランジン J2) (Bio Mol 製)を用いた。
培地 (DMEM [G I BCO (株) ] + 1 0 %活性炭処理非動化ゥシ血清 [Whittecker (株) ]) で培養した培養株化上皮細胞 C0S-1に C a P04 共沈殿法 を用いて、 GAL4 (酵母転写ァクチべ一ター) -P PAR γ融合タンパク質発現プ ラスミ ド (エフェクタープラスミ ド)、 と併せてレポータープラスミ ド 17M2CAT ( GAし 4応答配列 +チミジンキナーゼ (TK) プロモーター + クロラムフエニコ ールァセチノレトランスフェラーゼ cDNA) を導入した後、上記培養培地に被験物質 を添加し 24時間後 に、以下のようにクロラムフエニコールァセチルトランスフ エラーゼ (CAT) アツセィ (' 97 Science 277, p. 1827) に処し、 CAT活性を測定 した。
二用いる細胞懸濁液量の決定
細胞懸濁液 6 ^ 1、 Zバッファー [MgS04 · 7H20 236 mg、 KC1 750 mg、 Na2HP04 · 7H20 16. 1 g、 NaH2P04 · 1H20 5. 5 g / 1 (全て和光純薬製) ] 105 μ 1、 及びォ ノレトニトロフエ二ルガラタ トシド(0NPG) [シグマ (株) ] 3 mg / ml 21 μ 1 を 混合し、 37°Cにて 30分間インキュベートした後 1 M Na2C03 60 μ 1 によって 反応を停止した。 0NPGから i3—ガラクトシダーゼ発現量依存的に加水分角军によつ て生じるニトロフヱニル基を 420 nra の波長にて吸光度を測定した。 細胞懸濁液 不含の陰性対照を盲検とした際、 下記の式によって全酵素単位を算出した。
全酵素単位 = A420 X 1, 000 /反応時間 *
注 * 30分間反応させた場合には 0. 5
C ATアツセィ
上記で決定した 4 0酵素単位の細胞懸濁液と、 0. 5 M Tris CI ( pH 8. 0)とを併 せて 140 μ 1 とし、 エツペンドルフチューブに入れ氷上に安置した。 別のエツ ペンドルフチューブに、基質溶液として、滅菌ミリキュー水 30 と 3 mg / ml のァセチル Co A [シグマ (株) ] 30 μ 1とを混合し、 氷上にて冷却した。 この 基質溶液に "C -クロラムフエ二コール [CFA 270、 アマシャム (株) ] 3 μ 1 を加えたものを、 上記細胞懸濁液と混合して 37°Cにて 1〜2時間反応した。 その 後、 酢酸ェチル 300 μ 1 を加えボルテックスし、 クロラムフエ二コールを抽出 した。 12, 000 rpm、 常温にて 5分間遠心分離して、 上層をエツペンドルフチュ ープに移し、真空ポンプで酢酸ェチルを揮発した。シリカゲル製薄層板 ( 1. 05735. Kieselgel 60 F 254 Merk)にスポットした後、 クロ口ホルム:メタノーノレ (96 : 4) にて展開した。
薄層板上の未反応 14C - クロラムフエ二コール部分と 1_または 3-ァセチルイ匕 クロラムフエ二コール部分を剥離し、 レディソルブ [ Beckmann (株) ] 4 ml に懸濁してシンチレーシヨンカウンター L - 2100 [ Beckmann (株) ]を用いて "C 放射活性を計測した。
ァセチル化率を下記式によって算出し、 CAT活性とした。
ァセチル化率( CAT活性) =ァセチルイヒ '4Cクロラムフエ二コール (DPM) ÷ [ァ セチルイ匕 MC クロラムフエ二コール (DPM) + 未反応 14C クロラムフエ二コール
(DPM) ]
被験物質の P PAR γ作動性は、 陰性対照群 (試験物質無添加) の CAT活性を 100%とした場合の、 相対的 CAT 活性を算出する事で評価した ('00 J.B.C 275 P33201; ' 90 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, p.9995; '94 J. B. C. 269, p.32700; '95 ibid. p. 5858)。
実験の結果、 実施例 1化合物は 3 micro M濃度にて 564± 107%と有意に P P A 転写活性を上昇させた。 これは、 陽性対照として用いた 15デォキシー Δ 12' 14一 PG J2の約半分ほどの作動性であった。
また、 DHAのエステル体の P PAR γ転写活性は 200%前後であった。
従って、 実施例 1化合物は、 DHA のエステル体より約 2倍の P PAR γ転写活 性を有することがわかった。
(実施例 3) P PAR α作動性試験
被験物質として、 実施例 1化合物及び陽性対照として、 PPARctのリガンド であることが知られている 8(S)-HETE ([S— (E, Z, Z, Z) ]_8—ヒドロキシ —5, 9, 1 1, 14—エイコサテトラェン酸) (Cayman Chemical (株) 製)を用 いた。
培地 (DMEM [G I B CO (株) ] + 1 0 %活性炭処理非動化ゥシ血清 [Whittecker (株) ]) で培養した培養株化上皮細胞 C0S-1に C a P 04 共沈殿法 を用いて、 GAL 4 (酵母転写ァクチべ一ター) - P PARo:融合タンパク質発現プ ラスミド (エフェクタープラスミ ド)、 と併せてレポータープラスミ ド 17M2CAT ( GAL 4応答配列 + TKプロモーター +クロラムフエニコールァセチルトランス フェラーゼ cDNA) を導入した後、 上記培養培地に被験物質を添加し 24時間後に、 実施例 2と同様にして、クロラムフエニコールァセチルトランスフェラーゼ(CAT) アツセィに処し、 CAT活性を測定した。 P PAR α作動性は、 陰性対照群 (試験 物質無添加)の CAT活性を 100%とした場合の、相対的 CAT活性を算出する事で P PARa作動性を評価した (' 00 J. B. C 275 p33201;' 90 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, p.9995; '94 J. B. C. 269, p.32700; '95 ibid. p. 5858)。
実験の結果、 実施例 1化合物は 3111:1 0 ¾^濃度にて353±67%と有意に PPAR α 転写活性を上昇させた。 これは、 陽性対照として用いた 8(S)-HETEの約半分ほど
の作動性であった。
(実施例 4) NIDDMモデル動物に対する作用 1
三協 (株) より購入した遺伝的 NIDDMマウス KK- Ay/Tajcl ( 6週齢、 雄、 体重 約 3 0 g、 1群 6匹) を用いて、 体重 (B. W. gain) , 白色脂肪量の体重に対する 割合(WAT/B. W. )、血糖値(B. G. )、血中トリグリセリ ド(TG)、血中遊離脂肪酸(FFA)、 血中総コレステロール (血中のエステル型コレステロール量と血中の遊離型コレ ステロール量とをたしたもの、以下の実験例も同じ) (TC) レベルに及ぼす本発明 化合物の作用を検討した。
陰性対照群としてビヒクルの 5%ァラビアゴム溶液 5 m 1 / k gを用レ、、 陽性 対照群として、武田薬品(株)から購入したピオグリタゾンを乳鉢で粉砕して、 5% ァラビアゴム溶液にボルテックスミキサ一でよく撹拌したものをピオグリタゾン 成分として 100mg/kgを用い、各々強制経口経路にて 1日 1回、 1 5ョ間反復投与 した。 被験化合物として実施例 1化合物を用い、 これを 5%アラビアゴム溶液に ボルテックスミキサーと超音波でよく撹拌し、 懸濁液としたものを 3mg/kg (低用 量群)、 30mg/kg (中用量群)、 300mg/kg (高用量群) 強制経口経路にて 1 日 1回、 1 5日間反復投与した。
次にシリンジを用いて腹大動脈を採血し、 5 0 μ 1 E D T Aと混合した。 その 血液を 9 0 0 r p m、 2 0分遠心した後できた上層を血漿画分とした。 一方で、 採血した腹大動脈血を 4 °Cに 1 2時間放置して凝固させた後、 3, 0 0 0 r p m、 1 5分間遠心した後できた上層を血清画分とした。 血漿画分及び血清画分それぞ れを分離後、 血漿画分にて血糖値レベルを酵素法 (G L U— D H法) (Banauch D, et al ; J. Clin. Chem. Biochem., Vol. 13, p. 101-107, 1975) で、 血清画分 にて、血中トリグリセリ ドレベルを酵素法(遊離グリセ口ール消去法) (Tamaoku K, et al ; Chem. Pharm. Bull. , Vol. 30, p. 2492-2497, 1982)で、 血中遊離脂肪酸 を酵素法 (Sugo S, et al ; Clin. Chem. , Vol. 36, p. 163, 1990) で、 血中総コ レステロールレベルを酵素法 (Richmond W; Clin. Chem. , Vol. 19, p. 1350-1356, 1973) で測定した。 白色脂肪量は、 睾丸の周りを測定した (以下の実験例も同じ)。 この結果、 実施例 1化合物が血糖値 (B. G. )、 血中トリグリセリ ド (TG ) を、 改善する傾向が観察された (図 1, 2)。 また陽性対照群として用いたピオグリタゾ
ンは体重を増加させる副作用を有するが、 一方、 実施例 1化合物は体重増加を抑 制しながら、 有意に白色脂肪重量の体重に対する割合 (WAT/B. W. ) を減少させる ことが確認された (図 3)。
(実施例 5) NIDDMモデル動物に対する作用 2
三協 (株) より購入した遺伝的 NIDDMラット Zucker diabetic fatty rat ( Z D Fラット) (9週齢、雄、体重約 4 0 0 g、 1群 6匹)を用いて、体重(B. W. gain) , 白色脂肪量の体重に対する割合 (WAT/B. W. )、 血糖値 (B. G. )、 血中トリグリセリ ド (TG)、 血中遊離脂肪酸 (FFA)、 血中総コレステロール (TC) レベルに及ぼす本 発明化合物の作用を検討した。
陰性対照群としてビヒクルの 5%ァラビアゴム溶液 2 m 1 k gを用い、 陽性 対照群として、武田薬品(株)力 ら購入したピオグリタゾンを乳鉢で粉砕して、 5% ァラビアゴム溶液にボルテックスミキサ一でよく撹拌したもの 30mg/kgを用い、 各々強制経口経路にて 1日 1回、 7日間反復投与した。 被験化合物として実施例 1化合物を用い、 これを 5%アラビアゴム溶液にボルテックスミキサーと超音波 でよく撹拌し、 懸濁液としたものを 10mg/kg (低用量群)、 30mg/kg (中用量群)、 100mg/kg (高用量群) 強制経口経路にて 1日 1回、 7日間反復投与した。
次にシリンジを用いて腹大動脈を採血し、 チトラール (山之内製薬 (株) 製) と混合した。 その血液を 9 0 0 r p m、 2 0分遠心した後できた上層を血漿画分 とした。 一方で、 採血した腹大動脈血を 4 °Cに 1 2時間放置して凝固させた後、 3, 0 0 0 r p m、 1 5分間遠心した後できた上層を血清画分とした。 血漿画分 及び血清画分それぞれを分離後、 血漿画分にて血糖値レベルを酵素法 (G L U— D H法) (Banauch D, et al; J. Clin. Chem. Biochem. , Vol. 13, p. 101-107, 1975) で、 血清画分にて、 血中トリグリセリ ドレベルを酵素法 (遊離グリセ口ール消去 法) (Tamaoku K, et al ; Chem. Pharm. Bull. , Vol. 30, p. 2492-2497, 1982) で、血中遊離脂肪酸を酵素法(Sugo S, et al ; Clin. Chem. , Vol. 36, p. 163, 1990) で、 血中総コレステロールレベルを酵素法 (Richmond W; Clin. Chem. , Vol. 19, p. 1350-1356, 1973) で測定した。
この結果、 実施例 1化合物が血糖値 (B. G. )、 血中トリグリセリ ド (TG) を改善 する傾向が観察され、 また血中総コレステロール (TC) を有意に減少させること
が確認された (図 4, 5, 6)。
(実施例 6) NIDDMモデル動物に対する作用 3
三協 (株) より購入した遺伝的 NIDDMマウス db/dbマウス (8週齢、 雄、 体重 約 3 0 g、 1群 6匹) を用いて、 体重 (B. W. gain) , 白色脂肪量の体重に対する 割合(WAT/B. W. )、血糖値(B. G. )、血中トリグリセリ ド(TG)、血中遊離脂肪酸(FFA)、 血中総コレステロール (TC) レベルに及ぼす本発明化合物の作用を検討した。 陰性対照群としてビヒクルの 5%ァラビアゴム溶液 5 m 1 Z k gを用レ、、 陽性 対照群として、武田薬品(株)から購入したピオグリタゾンを乳鉢で粉砕して、 5% ァラビアゴム溶液にボルテックスミキサ一でよく撹拌したものを 100mg/kg 強制 経口経路にて 1日 1回、 2 8日間反復投与した。 被験化合物として、 実施例 1化 合物を用い、 これを 5%アラビアゴム溶液にボルテックスミキサーと超音波でよ く撹拌し、 懸濁液としたものを 30mg/kg (低用量群)、 100mg/kg (中用量群)、 300mg/kg (高用量群) 強制経口経路にて 1 日 1回、 2 8日間反復投与した。
次にシリンジを用いて腹大動脈を採血し、 5 0 μ 1 E D T Aと混合した。 その 血液を 9 0 0 r p m、 2 0分遠心した後できた上層を血漿画分とした。 一方で、 採血した腹大動脈血を 4 °Cに 1 2時間放置して凝固させた後、 3, 0 0 0 r p m、 1 5分間遠心した後できた上層を血清画分とした。 血漿画分及び血清画分それぞ れを分離後、 血漿画分にて血糖値レベルを酵素法 (G L U— D H法) (Banauch D, et al ; J. Clin. Chem. Biochem., Vol. 13, p. 101-107, 1975) で、 血清画分 にて、血中トリグリセリ ドレベルを酵素法(遊離グリセ口ール消去法) (Tamaoku K, et al ; Chem. Pharm. Bull. , Vol. 30, p. 2492-2497, 1982)で、 血中遊離脂肪酸 を酵素法 (Sugo S, et al ; Clin. Chem. , Vol. 36, p. 163, 1990) で、 血中総コ レステロールレベルを酵素法 (Richmond W; Clin. Chem. , Vol. 19, p. 1350-1356, 1973) で測定した。
この結果、 実施例 1化合物が血糖値 (B. G. )、 血中トリグリセリ ド (TG)、 血中 遊離脂肪酸 (FFA)、 血中総コレステロール (TC) を濃度依存的に有意に減少させ ることが確認された (図 7, 8, 9, 10)。 また陽性対照群として用いたピオグリタ ゾンは過剰な体重増加を誘発したが、 実施例 1化合物にその作用は認められなか つた。
(実施例 7) 正常ラットへの影響
本発明化合物の安全性を確認するために、 SDラット (10週齢、 雄、 体重約 4 00 g、 1群 6匹) に実施例 1化合物を用い一般で行われる経口経路単回投与の 毒性試験での最大用量である 2g/kgを経口経路で単回投与し、 毒性の有無の検討 を行った。 ラットは、 投与後正常に增重し、 投与 1週間後の剖検でも組織に特に 異常は認められなかった。 従って、 本発明化合物は、 毒性がないことが確認され た。
(実施例 8) 正常ラットの血糖値に及ぼす影響
三協 (株) より購入した SDラット (6週齢、 雄、 体重約 200 g、 1群 6匹) を用いて、 本発明化合物の血糖値 (B. G.) に及ぼす作用を検討した。
対照としてビヒクルの 5 %ァラビアゴム溶液 2 m 1 k gを、 強制経口経路に て 1日 1回、 14日間反復投与した。 被験化合物として実施例 1化合物を用い、 5 %ァラビアゴム溶液にボルテックスミキサーと超音波でよく撹拌し、 懸濁液と したものを 30mgZk g (低用量群)、 10 Omg/k g (中用量群)、 300 mg/k g (高用量群) 強制経口経路にて 1日 1回、 14日間反復投与した。 最終投薬完了後、 12時間絶食させたのち、 へパリンをくぐらせたシリンジを 用いて腹大動脈を採血し、 チトラールを分注したチューブに移した。 900 r p m、 20分遠心した後できた上層を血漿画分として、 血糖値レベルを酵素法 (G LU— DH法) (Banauch D, et al; J. Clin. Chem. Biochem., Vol. 13, p. 101 - 107, 1975) で測定した。
この結果、 実施例 1化合物が、 血糖値 (B. G.) に及ぼす影響は認められなか つた。
実測値土 S E
(実施例 9) フルクトース負荷高トリグリセリ ド (TG) ラットに及ぼす影響 三協 (株) より購入した SD系ラット (6週齢、 雄、 体重約 200 g、 1群 6 匹) を用い、 フルクトースによって誘発される高 TG血症を、 本発明化合物がど のように抑制するかを検討した。
陰性対照群として 5 %ァラビアゴム溶液を 2 m 1 k g、 陽性対照群として、 S I GMA (株) から購入したべザフイブレートを 5 %ァラビアゴム溶液にボル テックスミキサーでよく撹拌したものを 10 Omgベザフィブレート/ k g、 各々強制経口経路にて 1日 1回、 6日間反復投与した。 被験化合物として、 実施 例 1化合物を用い、 これを 5 %ァラビアゴム溶液にボルテックスミキサ一と超音 波でよく撹拌し、懸濁液としたものを 3 OmgZk g (低用量群)、 10 Omg/ k g (中用量群)、 30 Omg/k g (高用量群) 強制経口経路にて 1日 1回、 6 日間反復投与した。
上記投薬中 6日間、 25%フルクトース (半井ィ匕学) 含有水溶液をラッ卜に自 由に摂取させた。
最終投薬完了後、 12時間絶食させたのち、腹大動脈血を採血した。血液を 4°C に 12時間放置して凝固させた後、 3, 000 r pm、 15分間遠心分離した後 得られた血清について、 トリグリセライド Gテストヮコー (和光純薬工業 (株) 製) を用いて血中トリグリセリ ド (TG) を測定した。
この結果、 実施例 1化合物は、 血中 TGを濃度依存的に減少させる傾向が確認 された。
表 2
実測値土 S E ; p < 5 %で有意
(実施例 10) トリ トン誘発高トリグリセリ ド ( TG)血症ラットに及ぼす影響 三協 (株) より購入した SD系ラット (6週齢、 1群 6匹) を用い、 トリ トン
によって誘発される高 TG血症を、 本発明化合物がどのように抑制するかを検討 した。
T r i t o n WR 1 3 3 9 (半井化学) を生理食塩水に溶解してトリ トン溶液 を調製した。 トリ トンによる高 TG血症の誘発は、 トリ トン溶液を 200 mg / niL / kgで尾静脈注射することによっておこなった。
陰性対照群として 5%ァラビアゴム溶液を 2 m 1 Z k g、陽性対照として SIGMA 社より購入したニコチン酸を 5%ァラビアゴム溶液にボルテックスミキサ一でよ く撹拌したものを 100 mg ニコチン酸/ kg、 各々強制経口経路でトリ トン注射の 直後に単回投与した。 被験化合物として、 実施例 1 化合物を用い、 これを 5%ァ ラビアゴム溶液にボルテックスミキサーと超音波でよく撹拌し、 懸濁液としたも のを用いた。 トリ トン注射の前 1 4日間 1 日 1回、 本願化合物 300 mg / kg強制 経口経路にて、 反復投与し、 トリ トンを注射した直後にも、 再度本化合物を投与 した。
最終投薬後、 8時間絶食させたのち、腹大動脈血を採血した。血液を 4°Cに 12 時間放置して凝固させた後、 3,000 rpm、 15分間遠心分離して得られた血清に ついて、血中トリグリセリ ド (TG)、血中リン脂質 ( PL)、血中遊離脂肪酸 ( FFA)、 及び血中総コレステロール ( TC)を測定した。 トリグリセリ ド測定は酵素法 (遊 離グリセロール消去法、 Tamaoku K et al. , Chem Pharm Bull 30 : 2492 - 2497, 1982)、 リン脂質測定は酵素法 ( Takayama M et al., Clin Chim Acta 79 : 93 - 98, 1977)、 遊離脂肪酸測定は酵素法 ( Sugo S et al. , Clin Chem 36 : 163, 1990)、 及び総コレステロール測定は酵素法 ( Richmond W, Clin Chem 19 : 1350 - 1356, 1973)にしたがって行った。
その結果、 実施例 1化合物は血中 TG、 血中 PL、 血中 TCを抑制する事が分か つた。 トリ トン誘発髙トリグリセリ ドの血中 TG を抑制したことから、 実施例 1 化合物の作用にはリポプロテインリパーゼ活性が関与している可能性が示唆され た (Biochem. J. 1976, 156 (3): 539-543)。
表 3
化合物 1力 Sトリ トン誘発高トリグリセリ ド血症ラットに及ぼす作用
*; p<5% **; ρ<1%
(実施例 11) PPAR y活性ィ匕に関与するコアクチベータ一の検討
本化合物による PPAR γ活性化に関与するコアクチベータ一の検索をマンマリ アンツーハイブリッド法によって実施した (' 00 J. B. C. 275, p. 333201) o 培地(Opti MEM (Gibco (株) )で培養した培養株化上皮細胞 C0S-1に l ipofectin 法を用いて、 GAL4 (酵母由来 D N Aバインディングドメイン) - SRC- 1融合タンパ ク質発現プラスミ ド(エフェクタープラスミ ド)、 GAL4-TIF2 融合タンパク質発現 プラスミ ド又は GAL4- TRAP220融合タンパク質発現プラスミ ドのいずれか 1つと、 VP16 (ヘルぺスゥィルス由来ァクチべィティングドメイン) -PPAR y融合タンパク 質発現プラスミ ド及びレポータープラスミ ド 17M2- Luc (GAL4 応答配列 + /3 - globin プロモーター +ルシフェラーゼ cDNA) とを併せて導入した後、 上記培養 培地に被験物質を添カ卩した。 16 時間後にルシフェラーゼ(Luc)アツセィに処し、 ルシフェラーゼァッセィキット (Promega社製) を用いて Luc活性を測定した。 被験物質として実施例 1 化合物及ぴィンスリン抵抗性改善剤であるピオグリ タゾン (武田薬品)、 トログリタゾン (三共製薬) を用いた。
各被験物質についての転写活性化強度を実験群の Luc活性の対照群 (薬剤無添 加) の Luc活性に対する割合で評価した。 その結果を図 1 1に示す。
実験の結果、 実施例 1化合物は 10 μ Μ濃度にて SRC 1ツーハイプリッド、 或 いは TRAP 220ツーハイブリッドにて PPAR T /活性を増強した。 一方、 ピオグリタ ゾン、 或いはトログリタゾンはいずれも、 SRC 1ツーハイブリッド、 TIF 2ツー ハイブリッド或いは TRAP 220 ツーハイブリッドにて明らかな活性を示さなかつ た。従って、実施例 1化合物は SRC 1或いは TRAP 220をリクルートしながら PPAR
γ活性化を示すが、 この作用機作は既存のィンスリン抵抗性改善剤と異なってい ると考えられた。
産業上の利用可能性
本発明化合物は、 P PARy及び α作動性を有し、 特に、 PPARy活性はド コサへキサェン酸 (DHA) の 2倍の活性を有する。 また、 本発明化合物は、 糖 尿病モデルにおいて体重増加の副作用を有さず、 血糖値をさげ、 血中トリグリセ リ ドなどの脂質レベルをさげることができる。 従って、 本発明化合物は、 脂質代 謝病(高脂血症(高コレステロール症等) など)、循環器系疾患(動脈硬化症など)、 糖尿病 (特に、 2型糖尿病 (NIDDM)) の予防若しくは治療に優れている。