明 細 書 ビール混濁乳酸菌の検出用ポリヌクレオチドプローブおよび プライマー並びにビール混濁乳酸菌の検出法 発明の背景
発明の分野
本発明は、 ビ一ルを混濁させて、 その品質に影響を与える乳酸菌の検出手段に 関する。 本発明はまた、 ビールを混濁させる乳酸菌に特異的なタンパク質および それをコードするポリヌクレオチドに関する。
背景技術
ビールは、 炭素源が限定されており、アルコールや炭酸ガスを含有し、低 pH、 嫌 気状態にあることに加えて、 イソフムロン等、 ホップ由来の抗菌活性を持つ物質 を含むことから、 微生物による汚染を受けにくく、 また微生物が増殖しにくい飲 料である。 しかし、 ある種のラクトバチルス属 (Lactobacillus) あるいはぺディ ォコヅカス属 (Pediococcus) 乳酸菌は、 これらの条件下でもビールに混入した場 合には、増殖してビールを混濁させ、 その品質に多大な影響を与えることが知られ ている。 これらの乳酸菌としてはラクトバチルス ブレビス (L.brevis) 、 ぺデ ィォコヅカス ダムノサス (P.damnosus) 、 ラクトバチルス リンドネリ (L. li ndneri) 等が代表的なものであるが、これら以外の乳酸菌も確認されている。 しか し、 ラクトバチルス ブレビス、 ぺディォコヅカス . ダムノサスでしばしば見出 されることであるが、 同じ種に属する乳酸菌でも、 ビールにおいて増殖し、 ビ一 ルを混濁させる乳酸菌株 (以下 「ビール混濁乳酸菌」 という) と、 そうでない乳 酸菌株 (以下 「ビール非混濁乳酸菌」 という) が存在することが知られており、単 に属を判定しただけでは必ずしもビール混濁乳酸菌であると一義的に判断するこ とはできない。
このビールの品質に影響を与える乳酸菌の検出、 判定方法については従来から 検討されており、 その代表的な方法として、 乳酸菌から D N Aを抽出して、 ビ一 ル混濁乳酸菌の特定の遺伝子 (以下 「マーカー」 と呼ぶ) の存在をサザンハイブ
リダィゼーシヨン反応等によって確認する方法がある。 特に近年ではオリゴヌク レオチドをプライマ一として P C R (ポリメラ一ゼ連鎖反応) 法を行い、 D NA 配列を増幅させることにより、 乳酸菌を判定する方法が用いられている (特開平 6 - 1 4 1 8 9 9号等) 。 この方法は判定に必要とされる菌体量が微量であるこ と、 操作が簡便であること、 短時間で結果がわかるという利点がある。
この方法でビールを混濁させる乳酸菌を判定しょうとする場合、 その成否はマ 一力一およびそれより作製されたプライマ一配列に最も大きく左右される。 すな わち、 マーカーおよびそれより作製されたブラィマー配列を保持するビール混濁 乳酸菌の検出は容易に行えるが、当該配列を保持しないビール混濁乳酸菌が存在し た場合はこれを検出することができない。 逆に、 当該配列を含むビール非混濁乳 酸菌が存在した場合、 これをビール混濁乳酸菌として誤って検出することになる。 従来のビール混濁乳酸菌の P C Rによる判定方法は、 1 6 S リポゾ一マル R N A遺伝子をマ一カーとして、 これをもとにプライマ一を作製することにより、 上記の問題を解決しょうとしてきた。 1 6 S リボゾ一マル R N A遺伝子は細菌 の生命維持に必須の遺伝子であり、 保存性が高いが、 その一部に可変領域と呼ば れる生物種によって D N A配列が異なる領域を有する。 この可変領域は生物種の 分類や進化の系統解析に広く利用されており、 乳酸菌の場合もこの遺伝子をマー カーとして利用すれば、 前述のラクトバチルス ブレビス、 ぺディォコヅカス ダムノサス、 ラクトバチルス リンドネリ等を検出および判別することが出来る。 しかし、 この方法には 2つの問題点があった。 その一つはプライマ一の D N A 配列がビール混濁性と直接関係しない遺伝子に関わるものであるので、 この部位 に何らかの変異を持つビール混濁乳酸菌が存在した場合これを検出することが出 来ない可能性が高いことである。 1 6 S リボゾ一マル R N A遺伝子の可変領域 は変異が起き易い領域と考えられるが、 P C Rプライマーの短い領域内に変異を 持つビール混濁乳酸菌が生じた場合、 これを検出できないことが考えられる。 もう一つの問題点は、 前述したように、 ラクトバチルス プレビス、 ぺディォ コッカス ダムノサスではしばしば同じ種に属する乳酸菌であってもビ一ル混濁 乳酸菌とビール非混濁乳酸菌が存在することから、 本質的に生物種の判別法であ るこの手法によってこれらの乳酸菌につきビール混濁乳酸菌とビール非混濁乳酸
菌を判別することはできないことである。
以上のことから、 1 6 S リボゾ一マル R N A遺伝子より正確にビール混濁乳 酸菌を検出できるマ一カー遺伝子が求められてきた。
1 6 S リボゾ一マル R NA遺伝子より正確にビール混濁乳酸菌を検出できる マ一力一として、 もっとも望ましいものとして、 まずビール混濁能力を付与しう る原因遺伝子そのものが挙げられる。 また、 次に好ましいマーカ一としては、 ビ —ル混濁能力を付与しうる原因遺伝子の物理的に近傍に存在していることが明ら かな塩基配列が挙げられる。
ビール混濁乳酸菌が、 混濁能力を獲得するのに重要と思われる遺伝子について はこれまでにいくつかの報告がある。 例えば、 乳酸菌を徐々にホップ濃度の高い 培地に馴化し、 高濃度ホップで耐性になつた乳酸菌中で増加が認められたブラス ミ ドより、 ビール混濁乳酸菌判定用プローブを作製する方法 (特許第 3 0 5 7 5 5 2号) が報告されている。
しかしながら、 この方法は乳酸菌を強制的にホップに耐性化するという処理を しているため、 かならずしもビール混濁乳酸菌とビール非混濁乳酸菌の本来の違 いを反映していないという問題点があった。
ビール混濁乳酸菌に特異的な遺伝子取得については、 ラクトバチルス プレビ スからの取得例として、 ホヅプ耐性遺伝子として取得された; h o r Aや (ジャー ナル ォプ ザ アメリカン ソサイエティ一 ォブ ブル一イング ケミスト リ一 5 5卷 1 3 7— 1 4 0頁、 1 9 9 7年) 、 マンガン取りこみに関連す る遺伝子と考えられている h i t A (Federation of European Microbiological Societies and Netherlands Society for Microbiology第 6回乳酸菌シンポジ ゥム要旨集 1999年 9月) の報告がある。 これらは、 ラクトバチルス プレビスにお いてビール混濁乳酸菌判定マ一カーとして一応の有効性を有すると思われるが、 後述実施例に示すように、 h o r Aはラクトバチルス ブレビスにおいて高率で ビール非混濁乳酸菌をビール混濁乳酸菌と判定してしまうこと、 および両遺伝子 ともにぺディォコッカス ダムノサスにおいてはビ一ル混濁乳酸菌判定能力を持 ち得ないことから、 これらに比べ、 より広い範囲且つ混濁能との相関性が髙ぃビ 一ル裩濁乳酸菌検出用マーカーが求められていた。
発明の概要
本発明は、 ビール混濁乳酸菌をより正確に判別する方法、 並びにその方法を実 施するためのプロ一ブ、 プライマ一、 プライマーペア、 および抗体の提供をその 目的とする。
本発明はまた、 ビール混濁能を有する乳酸菌に特異的なタンパク質、 そのタン パク質の製造法、 そのタンパク質をコードするポリヌクレオチド、 そのポリヌク レオチドを担持してなるぺク夕一、 並びにそのべクタ一により形質転換された宿 主を提供することをその目的とする。
本発明者らは今般、 ビール混濁乳酸菌に広く見出される特異的な遺伝子を含む 領域 (配列番号 7 9 ) を取得することに成功した (実施例 1 ) 。 本発明者らはま た、 この遺伝子に基づいて作製したプライマーを用いて P C R法によるビール混 濁乳酸菌の判定を行ったところ、 極めて高い頻度でビール混濁乳酸菌の判別が可 能であることを見出した (実施例 2 ) 。
本発日 によるビール混濁乳酸菌の検出用ポリヌクレオチドプローブは、 配列番 号 1のヌクレオチド配列またはその相補配列にハイブリダィズする少なくとも 1 5個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含んでなるものである。
本発明によるビール混濁乳酸菌の検出法は、 本発明によるポリヌクレオチドプ ローブを、 試料中のポリヌクレオチドとハイブリダィズさせ、 次いでハイブリダ ィゼ一シヨン複合体を検出する工程を含んでなる方法である。
本発明による核酸増幅反応によるビール混濁乳酸菌の検出に用いられるポリヌ クレオチドプライマ一は、 配列番号 1のヌクレオチド配列またはその相補配列に ハイブリダィズする少なくとも 1 5個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列 を含んでなるものである。
本発明によるプライマ一ペアは、 二種類の本発明によるプライマ一からなり、 ビール混濁乳酸菌に特異的なゲノム配列を核酸増幅法により増幅できるものであ る。
本発明によるビール混濁乳酸菌の検出法は、 本発明によるプライマーペアを用 いて核酸増幅反応により試料中のポリヌクレオチドを增幅させ、 次いで増幅され たポリヌクレオチドを検出する工程を含んでなる方法である。
本発明によるタンパク質は、 配列番号 3に記載のアミノ酸配列、 配列番号 5に 記載のァミノ酸配列、 または配列番号 7に記載のァミノ酸配列を含んでなるもの である。
本発明によるタンパク質はまた、 後述のポリヌクレオチドを担持してなる組換 えべクタ一を含んでなる宿主を培養し、 培養物から該ポリヌクレオチドの発現産 物たるタンパク質を採取する工程により得ることができる、 タンパク質である。 本発明によるポリヌクレオチドは、 配列番号 3に記載のアミノ酸配列、 配列番 号 5に記載のァミノ酸配列、 または配列番号 7に記載のァミノ酸配列をコードす るものである。
本発明による組換えべクタ一は、 本発明によるポリヌクレオチドを担持してな るものである。
本発明による形質転換された宿主は、 本発明による組換えべクタ一を含んでな るものである。
本発明によるタンパク質の製造法は、 本発明によるポリヌクレオチドを担持し てなる組換えベクターを含んでなる宿主を培養し、 培養物から該ポリヌクレオチ ドの発現産物たるタンパク質を採取する工程を含んでなるものである。
本発明による抗体は、 本発明によるタンパク質に対するものである。
本発明によるビール混濁乳酸菌の検出法は、 本発明による抗体を試料と反応さ せ、 抗原抗体反応を検出する工程を含んでなるものである。 図面の簡単な説明
図 1は、 ビール混濁乳酸菌に特異的な遺伝子領域 (配列番号 7 9 ) におけるォ —プンリーディングフレームの位置と制限部位を示した図である。 発明の具体的説明
ポリヌクレオチドプローブ
実施例 1において示されるように、 本発明者らはビール混濁乳酸菌に特異的な 遺伝子領域 (配列番号 7 9 ) を取得することに成功した。 得られた領域には、 ォ —プンリーディングフレーム (O R F ) が 1 0箇所存在する (それぞれ O R F 1
〜〇R F 1 0とする;図 1参照) 。 特に O R F 1〜 3の遺伝子は一つのオペロン を形成し、 0 R F 1はグルコシルトランスフェラ一ゼあるいはドリコールリン酸 マンノ一スシンセ夕ーゼの遺伝子、 O R F 3はティコ酸ガラクトシルトランスフ ヱラーゼの遺伝子と考えられる。 従って、 このオペロンは細胞壁の糖鎖合成に関 与するものであると考えられる。 ビール混濁乳酸菌において細胞表層に特定の糖 鎖が存在していることは、 これまでに安井ら (F E M S マイクロバイオロジー レ夕一ズ 1 3 3卷 1 8 1— 1 8 6頁、 1 9 9 5年) や土屋ら (ジャーナル ォブ ザ アメリカン ソサイエティー ォブ ブル一イング ケミストリー 5 8卷 8 9— 9 3頁、 2 0 0 0年) によって報告されている。 また、 後記 実施例において示されるようにこれら遺伝子をマーカーとして用いて検定を行な つたところ混濁能との間に極めて高い相関性が得られた。 従って、 少なくともこ れら 3つの遺伝子は、 細胞表層の糖鎖合成に関与しビール中でのビール混濁乳酸 菌の増殖能に寄与している、 換言すれば混濁能に係る原因遺伝子の少なくとも一 部である、 可能性が高い。 従ってこのオペロン領域は混濁能判定の為のマーカー として有用であり、 この領域中のヌクレオチド配列に基づく本発明によるポリヌ クレオチドプロ一ブは、 ビール混濁乳酸菌の検出に用いることができる。
本発明者らは更に、 オペロン領域の両側につきどの領域まで混濁判定用マーカ 一として使用し得るか詳細に解析を行なつたところ下記のような結果が得られた (実施例 2参照) 。
① 0 R F 1 ~ 4、 8の領域をマーカ一として利用する場合には、 ラクトバチル ス プレビス、 ぺディォコッカス ダムノサス等の乳酸菌において極めて髙ぃ頻 度でビール混濁乳酸菌 Zビール非混濁乳酸菌を識別できる。
② O R F 9、 1 0の領域をマーカ一として利用する場合には、 ラクトバチルス ブレビスについて極めて高い頻度でビール混濁乳酸菌 ビール非混濁乳酸菌を 識別できるが、 ぺディォコヅカス ダムノサスの判定には有効ではない。
③ O R F 5、 6、 7の領域は、 少なくとも調べた範囲でビール混濁乳酸菌 Zビ —ル非混濁乳酸菌の識別には使えない (但し、 O R F 7は乳酸菌の種判定に使用 し得る可能性がある) 。
従って本発明によるプロ一プは、 好ましくは、 配列番号 1のヌクレオチド配列
またはその相補配列の連続する少なくとも 15個のヌクレオチドからなるプロ一 ブであることができる。
本発明によるポリヌクレオチドプロ一ブは、 好ましくは、 連続する少なくとも 15個のヌクレオチドが配列番号 1の 2818位から 8056位の配列またはそ の相補配列 (0RF 1〜4、 8にわたる配列、 図 1参照) の連続する少なくとも 15個のヌクレオチドからなるプローブ、 更に好ましくは、 連続する少なくとも 15個のヌクレオチドが配列番号 1の 4202位から 7513位の配列またはそ の相補配列 (ORF 1〜3にわたる配列、 図 1参照) の連続する少なくとも 15 個のヌクレオチドからなるプロ一プ、 最も好ましくは、 連続する少なくとも 15 個のヌクレオチドが、 配列番号 2 (ORF 1)、 配列番号 4 (ORF 2)、 また は配列番号 6 (ORF 3) のヌクレオチド配列あるいはその相補配列の連続する 少なくとも 15個のヌクレオチドからなるプローブ、 であることができる。
配列番号 2 (ORF 1)、 配列番号 4 (ORF2) 、 配列番号 6 (ORF3) のいずれかの連続する少なくとも 15個のヌクレオチドからなるプローブは、 同 じ 0 R F配列を有するがその並び方が異なっているビール混濁乳酸菌株が存在し たとしても、 ビール混濁乳酸菌を問題なく検出できる点で有利である。
本発明によるプロ一プには、 配列番号 1のヌクレオチド配列またはその相補配 列の連続する 15個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列に対して少なくと も 70%、 好ましくは少なくとも 80%、 より好ましくは少なくとも 90%、 最 も好ましくは少なくとも 95 %、 の同一性を有し、 かつビール混濁乳酸菌に特異 的なゲノム配列にハイプリダイズするヌクレオチド配列からなるものも含まれる。
「ビール混濁乳酸菌に特異的なゲノム配列」 としては、 配列番号 1のヌクレオ チド配列およびその部分配列、 配列番号 2のヌクレオチド配列およびその部分配 列、 配列番号 4のヌクレオチド配列およびその部分配列、 並びに配列番号 6のヌ クレオチド配列およびその部分配列が挙げられる。
本発明において 「ハイブリダィズする」 とは、 ストリンジェントな条件下で標 的ヌクレオチド配列にハイプリダイズし、 標的ヌクレオチド以外のヌクレオチド にはハイブリダィズしないことを意味する。 ストリンジェントな条件は、 プロ一 ブ配列 (あるいは後述するプライマー配列) とその相補鎖との二重鎖の Tm
(°C) および必要な塩濃度などに依存して決定でき、 プローブとなる配列を選択 した後にそれに応じたストリンジヱントな条件を設定することは当業者に周知の 技術である (例えば、 J. Sambrook, E. F. Frisch, T. Maniatis; Molecular CI oning 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory(1989)等参照) 。 例えば 1 5 個のヌクレオチドからなるプロ一ブをそのプローブにとってのストリンジェント な条件 (ヌクレオチド配列によって決定される T mよりわずかに低い温度、 およ び適切な塩濃度) 下で使用してハイブリダィゼ一シヨンを行なえば、 このヌクレ ォチド配列に相補的な配列に特異的にハイプリダイズし、 このヌクレオチドに相 補的ではない配列にはハイブリダィズしないことになる。
本発明において 「ポリヌクレオチドプローブ」 とは、 サザンハイブリダィゼ一 シヨン、ノザンハイブリダイゼーシヨン、 コロ二一ハイプリダイゼーション等の核 酸の検出手段に使用されるものをいう。
本発明において 「ポリヌクレオチド」 とは D N A、 R NA、 および P NA (pe ptide nucleic acid) を含む意味で用いられる。
本発明によるポリヌクレオチドプローブの長さは、 少なくとも 1 5個のヌクレ ォチド、 より好ましくは、 少なくとも 2 0個のヌクレオチドからなる。
本発明によるポリヌクレオチドプローブは、 例えばホスフアイト · トリエステ ル法 (Hunkapiller,M. et al. , Nature, 310, 105, 1984) 等の通常の方法に準じて、 核酸の化学合成を行うことにより調製してもよいし、 後述する実施例に準じてラ クトバチルス ブレビスに属するビール混濁乳酸菌の全 D N Aを取得し、 本明細 書に開示されるヌクレオチド配列に基づいて目的のヌクレオチド配列を含む D N A断片を P C R法等で適宜取得してもよい。
ポリヌクレオチドプローブを用いたビール混濁乳酸菌の検出法
プローブを用いた検出法においては、 本発明によるポリヌクレオチドプローブ を核酸試料とハイブリダィズさせ、 ハイプリダイゼ一シヨン複合体、 すなわちヌ クレオチドニ本鎖、 を検出することにより行うことができる。 本発明による検出 法においてハイプリダイゼ一シヨン複合体の存在はビール混濁乳酸菌の存在を示 す。
プローブを用いた検出法において 「ハイブリダィズする I とは、 前述のポリヌ
クレオチドプロープの項で述べた通りである。
プローブを用いた検出法においては、 プロ一ブを標識して用いることができる。 標識としては例えば、 放射能活性 (例えば、 3 2 P、 1 4 c、 および3 5 s) 、 蛍光
(例えば、 F I T C、 ユーロピウム) 、 化学発色のような酵素反応 (例えば、 ぺ ルォキシダ一ゼ、 アルカリフォスファターゼ) 等を利用した標識が挙げられる。 ハイブリダイゼ一ション複合体の検出は、 サザンハイブリダイゼーシヨン、コロ 二一ハイブリダィゼーシヨン等の周知の技術を用いて実施できる (例えば、 J. S ambrook, E. F. Frisch, T. Maniatis:Molecular Cloning 2nd edition, Cold S pring Harbor Laboratory (1989)参照) 。
試験対象の試料は、 ビール混濁乳酸菌が含まれることが疑われる試料であるこ とができ、 具体的には、 ビールの微生物検査にて検出された細菌コロニーが挙げ られる。
プライマ一およびプライマ一ペア
本発明によるプライマーおよびプライマ一ペアは、 それそれ、 ビール混濁乳酸 菌に特異的なゲノム配列とハイプリダイズすることができる。 従って、 本発明に よるプライマ一ペアは、 P C R法等の核酸増幅法によるビール混濁乳酸菌の検出 に用いることができる。
本発明によるプライマーは、 好ましくは、 配列番号 1のヌクレオチド配列また はその相補配列の連続する少なくとも 1 5個のヌクレオチドからなるプライマ一 であることができる。
本発明において 「プライマー」 とは P C R法等の核酸増幅法に使用されるヌク レオチド配列をいう。
本発明において 「プライマーペア」 とは P C R法等の核酸増幅法に使用される 一対のプライマーをいう。
本発明によるプライマ一は、 少なくとも 1 5個のヌクレオチド (好ましくは 1 5〜3 0個のヌクレオチド) 、 好ましくは少なくとも 2 0個のヌクレオチド (よ り好ましくは 2 0〜3 0個のヌクレオチド) からなることができる。
本発明によるプライマーペアはビール混濁乳酸菌に特異的なゲノム配列を P C R法等の核酸増幅法により増幅できるように選択することができる。 核酸増幅法
は周知であり、 核酸増幅法におけるプライマーペアの選択は当業者に自明であろ う。 例えば、 PCR法においては、 二つのプライマーの一方がビール混濁乳酸菌 に特異的な二本鎖 DN Aの一方の鎖に対合し、 他方のプライマ一が二本鎖 DN A のもう一方の鎖に対合し、 かつ一方のプライマーにより伸長された伸長鎖にもう 一方のブラィマーが対合するようにブラィマ一を選択できる。
具体的には、 一方のプライマーが配列番号 1のヌクレオチド配列の連続する少 なくとも 15個のヌクレオチドからなり、 他方のプライマ一が配列番号 1のヌク レオチド配列の相補配列の連続する少なくとも 15個のヌクレオチドからなるよ うにプライマ一を選択することができる。 また、 特に 0RF1、 2、 3、 4、 お よび 8の領域がビール混濁乳酸菌に特異的であると考えられるので、 これらの領' 域を増幅できるようにプライマ一を設計することができる (実施例 2および 3参 照) 。
本発明によるプライマーペアはまた、 好ましくは一方のプライマーが配列番号 1の 2818位から 8056位のヌクレオチド配列 (ORF 1〜4、 8にわたる 配列) の連続する少なくとも 15個のヌクレオチドからなり、 他方のプライマ一 が配列番号 1の 2818位から 8056位のヌクレオチド配列の相補配列の連続 する少なくとも 15個のヌクレオチドからなるプライマーペア、 より好ましくは 一方のプライマ一が配列番号 1の 4202位から 7513位のヌクレオチド配列 (ORF 1~3にわたる配列) の連続する少なくとも 15個のヌクレオチドから なり、 他方のプライマ一が配列番号 1の 4202位から 7513位のヌクレオチ ド配列の相補配列の連続する少なくとも 15個のヌクレオチドからなるプライマ 一ペア、 最も好ましくは、 一方のプライマ一が配列番号 2、 配列番号 4、 または 配列番号 6のヌクレオチド配列の連続する少なくとも 15個のヌクレオチドから なり、 他方のプライマーが配列番号 2、 配列番号 4、 または配列番号 6のヌクレ ォチド配列の相補配列の連続する少なくとも 15個のヌクレオチドからなるブラ イマ一ペア、 であることができる。
配列番号 2 (ORF l) 、 配列番号 4 (ORF 2) 、 配列番号 6 (ORF 3) の 、ずれか一つの配列またはその部分配列を増幅するようなプライマーペアは、 同じ 0 R F配列を有するがその並び方が異なつているビール混濁乳酸菌株が存在
したとしても、 ビール混濁乳酸菌を問題なく検出できる点で有利である。
本発明によるプライマ一には、 配列番号 1のヌクレオチド配列またはその相補 配列の連続する 1 5個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列に対して少なく とも 7 0 %、 好ましくは少なくとも 8 0 %、 より好ましくは少なくとも 9 0 %、 最も好ましくは少なくとも 9 5 %、 の同一性を有し、 かつビール混濁乳酸菌に特 異的なゲノム配列にハイブリダィズするヌクレオチド配列からなるものも含まれ る ο
本発明によるプライマーは、 本明細書に開示したヌクレオチド配列に基づき、 例えばホスフアイト · トリエステル法 (mmkapiller,M. et al . , Nature, 310, 10 5, 1984) 等の通常の方法に準じて、 化学合成できる。 プライマーの調製は、 例え ば 「バイオ実験イラストレイテッド 3 本当にふえる P C R」 (中山 広樹著、 秀潤社)に従って実施できる。
プライマ一ペアを用いたビール混濁乳酸菌の検出法
プライマ一ペアを用いた検出法において 「ハイブリダィズする」 とは、 前述の ポリヌクレオチドプローブの項で述べた通りである。
プライマ一ペアを用いたビール混濁乳酸菌の検出は、 後記実施例に開示してい るように、 試料より D NAを取得し、 これを錶型: D N Aとして本発明によるプラ イマ一を用いて常法に従い P C R反応を行い、 ビール混濁乳酸菌に特異的な D N A断片の増幅の有無を検出すればよい。 P C R技術自体は周知であり (例えば、 「バイオ実験イラストレイテッド 3 本当にふえる P C R」 等を参照) 、 当業 者であれば使用するプライマ一に応じて適宜本発明による方法を実施できる。 本 発明によるプライマ一ペアを用いた検出法において、 増幅産物の存在はビール混 濁乳酸菌の存在を示す。
試験対象の試料は、 ビール混濁乳酸菌が含まれることが疑われる試料であるこ とができ、 具体的には、 ビールの微生物検査にて検出された細菌コロニーが挙げ られる。
ビール混濁乳酸菌に特異的な夕ンパク質およびそれをコードするポリヌクレオ チド
本発明によるタンパク質はビール混濁乳酸菌において特異的に発現されている
ため、 ビール混濁乳酸菌の存在の指標となる。 従って、 本発明によるタンパク質 は、 例えば、 後述する本発明による抗体の作製に有用である。
本発明によるタンパク質には、 1以上の改変を有し、 かつグルコシルトランス フェラ一ゼまたはドリコ一ルリン酸マンノースシンセ夕一ゼ活性を有する配列番 号 3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、 および 1以上の改変を有し、 か つティコ酸ガラクトシルトランスフヱラ一ゼ活性を有する配列番号 7に記載のァ ミノ酸配列からなるタンパク質が含まれる。
本明細書において 「改変」 とは置換、 欠失、 付加、 および挿入を意味する。 改 変の数は、 例えば 1〜数個、 より具体的には 1〜6個であることができる。 改変 が複数個存在する場合、 導入された改変の種類は同一でも異なっていてもよい。 また、 本発明によるタンパク質は、 本発明によるポリヌクレオチドを担持して なる組換えベクターを含んでなる宿主を培養して該ポリヌクレオチドの発現産物 たるタンパク質を採取する工程により得ることができるものとして、 特定し得る。 本発明によるポリヌクレオチドは、 ビール混濁乳酸菌に特異的なタンパク質を コードするものであり、 後述の本発明によるタンパク質を遺伝子組換え技術によ つて生産するのに有用である。
本発明によるポリヌクレオチドは、 化学合成 D N Aおよび天然由来 D N A (染 色体由来、 プラスミ ド由来) であることができる。
本発明によるポリヌクレオチドの取得方法のうち、 配列番号 2、 4、 および 6 のヌクレオチド配列を有する D NAを取得する場合には、 例えば、 後記実施例に 準じてラクトバチルス ブレビスに属するビール混濁乳酸菌の全 D N Aを取得し、 本明細書に開示されるヌクレオチド配列に基づき目的のヌクレオチド配列を含む D N A断片が得られるように適宜プライマ一を作成し、 P C R法で D NA断片を 増幅することにより取得してもよいし、 あるいはホスフアイ ト · トリエステル法 (Hunkapiller5M. et al., Nature, 310, 105, 1984) 等の通常の方法に準じて、 核 酸の化学合成を行うことにより調製することもできる。 本明細書に開示されるァ ミノ酸配列にもとづき、 配列番号 2、 4、 および 6の塩基配列と縮重関係にある ヌクレオチド配列を有する D N Aは、 核酸の化学合成により得ることができる。 得られた D N Aの配列は、 Maxam Gilbert法 (例えば、 Maxam,A.M亂 Gilbert,
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74, 560, 1977等に記載される)や Sanger法 (例えば Sanger, F. & A.ILCoulson, J.Mol.BioL, 94, 441, 1975、 Sanger, , & Mcklen and A.R.Coulson., Proc. atl. Acad. Sci. USA, 74, 5463, 1977等に記載される) に準じて解析することにより確認することができる。
組換えベクターおよぴ形質転換体
本発明による組換えべクタ一は、 宿主内で複製可能であり、 検出可能なマーカ —遺伝子をもつベクターに、 本発明によるポリヌクレオチドを通常の遺伝子工学 的手法を用いて組込むことにより構築することができる。
本発明による組換えべクタ一は憒用されているベクタ一構築の手法に従って製 造することができる。 具体的には、 微生物である大腸菌を宿主とする場合には、 例えば、 プラスミ ド pUC 119 (宝酒造 (株) 製) やファージミ ド pB lue s cr ipt l l (ストラ夕ジーン社製) 等を用いることができる。 酵母を宿主 とする場合には、 プラスミ ド PYES2 (インビトロジェン社製) を用いること ができる。 哺乳類動物細胞を宿主とする場合は、 pRC/RSV、 pRC/CM
V (インビトロジェン社製) 等のプラスミ ド、 EBウィルスプラスミ ド Prep
4、 pCEP4 (インビトロジヱン社製) 等のウィルス由来の自律複製起点を含 むべクタ—を用いることができる。 昆虫細胞を宿主とする場合は、 バキュロウィ ルス等の昆虫ウィルスを用いることができる。 バキュロウィルス等のウィルスに
D N Aを組込む場合には、 使用しょうとするウィルスのゲノムと相同な塩基配列 を含有するトランスファーベクタ一を用いることができる。 このようなトランス ファーべクタ一としては、 クロ一ンテック社から市販されている pB a c PAK
8、 pAcUW31などのプラスミ ドをあげることができる。 本発明によるポリ ヌクレオチドをトランスファ一ベクタ一に挿入し、 トランスファーベクターとゥ ィルスゲノムとを同時に宿主に導入すると、 トランスファ一ベクタ一とウィルス ゲノムとの間で相同組換えが起こり、 本発明によるポリヌクレオチドがゲノム上 に組み込まれたゥィルスを得ることができる。
• 本発明によるタンパク質を宿主で発現させることができるベクタ一は、 本発明 によるポリヌクレオチドと、 宿主で作動可能な制御配列 (例えば、 プロモーター 配列および夕一ミネ一夕一配列) とを作動可能に連結させ、 これをベクターに組
み込むことにより構築することができる。
本明細書において 「作動可能に連結する」 とは、 本発明によるポリヌクレオチ ドが導入される宿主において制御配列のコントロール下で発現するように、 制御 配列と本発明によるポリヌクレオチドを結合させることを意味する。 通常は、 プ 口モーターを遺伝子の上流に、 夕一ミネ—夕一を遺伝子の下流に、 それそれ連結 することができる。
使用できるプロモーターは、 形質転換する宿主内でプロモー夕一活性を示すも のであれば特に制限はなく、 例えば、 宿主細胞が動物細胞や分裂酵母である場合 は、 例えば、 アデノウイルス (Ad) の初期もしくは後期プロモーター、 ラウス 肉腫ウィルス (RSV) プロモ一夕一、 サイトメガロウィルス (CMV) プロモ 一夕一、 シミアンウィルス (SV40) の初期もしくは後期プロモー夕一、 マウ ス乳頭腫ウィルス (MMTV) プロモ一夕一、 単純へルぺスウィルス (HSV) のチミジンキナーゼ (tk)遺伝子プロモー夕一等をあげることができ、 宿主が 出芽酵母である場合は ADH 1、 GAL 1プロモ一夕一などをあげることができ、 宿主が昆虫細胞である場合はバキュロウィルスのポリへドロンプロモ一夕一やシ ョウジヨウバエのメタロチォネィンプロモーターであることができる。
宿主において機能するプロモーターをあらかじめ保有するべクタ一を使用する 場合は、 ベクタ一保有のプロモー夕一と本発明によるポリヌクレオチドとを作動 可能に連結することができる。
例えば、 プラスミ ド pRCy/RSV, pRC/CMV等は、 動物細胞で作動可 能なプロモーターの下流にクローニング部位が設けられており、 クローニング部 位に本発明によるポリヌクレオチドを挿入し、 動物細胞へ導入すれば、 本発明に よるタンパク質を発現させることができる。 これらのプラスミ ドにはあらかじめ SV40の自律複製起点 (o r i) が組み込まれているため、 ori (—) の S V40ゲノムで形質転換された培養細胞、 例えば COS細胞等に該プラスミドを 導入すると、 細胞内でプラスミ ドのコピー数が非常に増大し、 結果として該プラ スミ ドに組み込まれた本発明によるポリヌクレオチドを大量発現させることもで きる。 また、 酵母用プラスミド pYES2は GAL1プロモーターを有しており、 このプラスミ ドまたはその誘導体の GAL 1プロモー夕一の下流に本発明による
D N Aを挿入すれば、 本発明によるタンパク質を例えば I NV S c 1 (インビト ロジェン社製) 等の出芽酵母内で大量発現させることが可能なベクタ一を構築で ぎる。
本発明による組換えベクターは、 形質転換体を選択するためのマ一カー遺伝子 が更に連結されていてもよい。
本発明による組換えべクタ一は更に、 本発明によるポリヌクレオチドの 5 ' 側 または 3 ' 側に他のタンパク質またはその一部のアミノ酸配列をコードするポリ ヌクレオチドを直接あるいは特定のプロテア一ゼに特異的な切断部位に対応する アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを介して、 ィンフレームで連結され ていてもよい。 他のタンパク質またはその一部のアミノ酸配列は、 その N末端に 分泌の為のシグナルぺプチド有していてもよく、 この場合は 5 ' 側への連結が好 ましい。
本発明による組換えベクターを宿主へ導入する方法は、 形質転換される宿主に 応じて通常用いられる方法に従うことができる。
例えば、 大腸菌を宿主とする場合は、 Molecular Cloning, J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor (1989)等に記載される塩化カルシウム法やエレクトロポレ ーシヨン法を用いることができる。 酵母菌を宿主とする場合は、 例えばリチウム 法に基づく Yeast transformation kit (インビトロジヱン社製)などを用いてべク 夕一を導入することができる。 哺乳類動物細胞や昆虫細胞等を宿主とする場合は、 例えば、 リン酸カルシゥム法、 D E A Eデキストラン法、 エレクト口ポレーショ ン法、 またはリポフエクシヨン法を用いることができる。 ウィルスをべクタ一に 用いる場合は、 上述のような一般的な遺伝子導入法によりウィルスゲノムを宿主 に導入できるほか、 ウイルスゲノムを含有するゥィルス粒子を宿主へ感染させる ことによつてもウィルスゲノムを宿主に導入することができる。
形質転換体の選抜は、 導入された本発明による組換えベクターが有するマ一力 一遺伝子の性質に応じた方法を用いればよい。
例えば、 マーカ一遺伝子が細胞致死活性を示す薬剤に対する耐性遺伝子である 場合には、 この藥剤を添加した培地を用いて本発明による組換えベクターを導入 した細胞を培養すればよい。 薬剤耐性遺伝子と選抜薬剤との組み合わせとしては、
例えば、 ネオマイシン耐性遺伝子とネオマイシン、 ハイグロマイシン耐性遺伝子 とハイグロマイシン、 ブラストサイジン S耐性遗伝子とブラストサイジン Sが挙 げられる。 また、 マーカ一遺伝子が、 宿主の栄養要求性を相補する遺伝子である 場合には、 この栄養素を含まない最少培地を用いて本発明による組換えベクター を導入した細胞を培養すればよい。 本発明による遺伝子が宿主の染色体に導入さ れてなる形質転換体を取得するには、 例えば、 本発明による組換えベクターを制 限酵素等で消化することにより直鎖状にした後、 これを前述の方法で宿主へ導入 して該細胞を通常数週間培養し、 導入された検出マ一カーを指標にして目的とす る形質転換細胞を選抜すればよい。 例えば、 上記のような選択薬剤に対する耐性 遺伝子をマーカー遺伝子として持つ本発明による組換えべク夕 を前述の方法で 宿主に導入し、 選択薬剤を添加した培地で数週間以上を継代培養し、 コロニー状 に生き残った選択薬剤耐性クローンをピぺッ卜で吸い上げ純化することにより、 本発明による遺伝子が宿主の染色体に導入されてなる形質転換体を取得すること ができる。 このような形質転換体は、 凍結保存が可能であり、 必要に応じて起眠 させて使用することできるので、 一過性の遺伝子導入株と比較して形質転換体作 製の手間を省くことができ、 形質転換細胞の性能を一定に保つこともできる点で 有利である。
本発明によるタンパク質は、 本発明による形質転換された宿主を培養し、 培養 物から本発明によるタンパク質を採取することにより製造できる。
宿主におけるプロセシング等により N末端およひゾまたは C末端が 1または複 数個欠損したタンパク質も、 本発明による抗体を得るための抗原として十分利用 できる。 また、 本発明による組換えベクターが、 組換えべクタ一および宿主の項 で述べたように、 本発明による遺伝子の 5 ' 側または 3, 側に他のタンパク質ま たはその一部のアミノ酸配列をコードする D N Aを直接あるいは特定のプロテア ーゼに特異的な切断部位に対応するァミノ酸配列をコードする D N Aを介して、 ィンフレームで連結されている場合には、 本発明によるタンパク質は他の夕ンノ ク質またはその一部との融合タンパク質の形で発現されるが、 これも本発明によ るタンパク質に含まれるものとする。
宿主が微生物である場合、 この微生物の通常の培養に使用される炭素源、 窒素
源、 有機塩類、 および無機塩類等を適宜含む各種の培地を用いて培養できる。 培 養は、 微生物の通常の培養方法に準じて行うことができ、 例えば、 固体培養、 液 体培養 (攪拌培養 (試験管振とう式培養、 往復式振とう培養、 ジャ一フアーメン ター (Jar Fermenter)培養等) 、 静置培養 (タンク培養等) を含む) により培養 できる。 培養温度は、 微生物が生育する範囲で適宜変更でき、 例えば、 約 15°C 〜約 40 °Cの培養温度、 pH約 6〜; pH約 8の培地で培養するとよい。 培養時間 は、 培養条件に従って決定できるが、 通常は約 1日〜約 5日間であることができ る。
宿主が動物細胞である場合、 この動物細胞の通常の培養に使用される培地を用 いて培養できる。 例えば、 10 v/v%となるよ-う FB Sを添加した DMEM培 地等の培地を用いて、 37° 5 vZv%C02存在下にて、 培地を数日ごとに交 換しながら培養することができる。 細胞がコンフルェントになるまで増殖したら、 0. 25 w/v%程度のトリブシン PB S溶液を用いて個々の細胞に分散させ、 数倍に希釈して新しい培養容器に播種し培養を続け、 目的とする量まで細胞が増 殖したら細胞を集める。 このように継代培養を行なうことにより培養スケールを 任意のサイズまで拡大できる。
宿主が昆虫細胞の場合も同様に、 例えば、 10 vZv%FBSおよび 2w/v %Yeastlateを含む Grace's medimn等の昆虫細胞用培地を用いて 25°C〜35 °Cで 継代培養することにより得ることができる。 ただし、 Sf 21細胞などの培養容 器からはがれやすい細胞の場合は、 トリプシン液ではなくピぺッティングにより 細胞を分散させ継代を行なうのが好ましい。 また、 Baculovinis等のウィルスべク 夕一を含む形質転換細胞の場合は、 細胞質効果により細胞が死滅する前、 例えば 培養開始から 72時間目までに培養を終了することが好ましい。
培養の後、 公知の単離、 精製手段を用いて、 本発明によるタンパク質を精製 - 単離することができる。 例えば、 本発明によるタンパク質の精製は、 それが細胞 内に産生される場合は、 例えば、 培養終了後、 細胞を遠心分離等で集め、 細胞を 通常のバッファ一、 例えば、 20mM HEPES pH7, 1 mM EDTA, ImM DTT, 0. 5mM PMS Fからなるバッファ一等に懸濁した後、 ポ リ トロン、 超音波、 ダウンスホモジナイザー等を用いて細胞を破砕し、 破砕液を
数万 x gで数十分から 1時間程度超遠心分離し、 上清画分を回収することにより、 本発明によるタンパク質を含む画分を得ることができる。
また、 本発明によるタンパク質を培地中に分泌生産させる場合には、 培養終了 後遠心分離により上清画分として本発明によるタンパク質を含む画分を得ること ができる。 これら上清画分を、 塩析法、 溶媒沈殿法、 透析法、 限外ろ過法、 ゲル 電気泳動法、 あるいはイオン交換クロマトグラフィー、 ゲルろ過クロマトグラフ ィー、 逆相クロマトグラフィー、 ァフィ二ティクロマトグラフィー等の精製手段 を適宜組み合わせることにより、 精製された本発明夕ンパク質を回収することが できる。
抗体および抗体を用いたビール混濁乳酸菌の検出法
本発明による抗体はビール混濁乳酸菌に特異的な夕ンパク質を認識することが できる。 従って、 本発明による抗体は抗体抗原反応によるビール混濁乳酸菌の検 出に用いることができる。
本発明による抗体は、 ポリクローナル抗体、 モノクローナル抗体の両方を含む。 抗体の作製技術は周知であり、 従って、 本発明によるポリクローナル抗体であれ、 モノクローナル抗体であれ、 本発明によるタンパク質を免疫原として用い、 当業 者であればそれぞれの常法に従い容易に調製することができる。
例えば、 本発明による抗体は、 本発明によるタンパク質を抗原として、 .ゥサギ、 マウス、 ラヅト、 ャギ、 ヒヅジ、 ニヮトリ、 ハムスター、 ゥマ、 モルモットなど 一般に抗体を作らせるために利用される哺乳動物、 鳥類などにアジュバンドなど とともに投与し、 これらの動物より抗血清を取得してそのまま或は必要に応じ後 述のように分画 ·精製を行ないポリクローナル抗体を取得することができる。 モ ノクローナル抗体の場合は、 例えば前記哺乳動物としてマウスを用い、 免疫され たマウスの脾臓を摘出しこの脾臓より調製したリンパ球とマウスミエローマ (例 えば、 p 3 X 6 3 6 . 5 . 3 A T C C N o . C R L— 1 5 8 0 ) をポリエ チレングリコール 1 5 0 0 (ペリンガー社) を用いて細胞融合を行い、 この融合 細胞から限界希釈法により陽性株のスクリ一二ングを行なうことにより、 目的と する抗体を産生するハイプリ ドーマを得ることができる ( Milstein & G. Koh ler5 Nature, Vol.256,p495(1975)参照) 。 更に、 抗体を発現しているハイプリド
—マ細胞から抗体遺伝子、 またはその一部の遺伝子をクロ一ニングすることによ り、 遺伝子工学的に発現させた抗体分子を得ることもできる。
この様にして得られた抗体を含む材料即ち、 抗血清あるいはハイプリド一マ等 の培養上清から抗体を精製する方法としては、 一般にタンパク質の精製に用いる 工程 (プロテイン Aァフィ二ティ一クロマトグラフィー、 プロテイン Gァフィ二 ティ一クロマトグラフィー、 A v i dゲルクロマトグラフィー、 抗ィムノグロブ リン固定化ゲルクロマトグラフィ一などのァフィニティークロマトグラフィー、 陽イオン交換クロマトグラフィー、 陰イオン交換クロマトグラフィー、 レクチン ァフィ二ティークロマトグラフィー、 色素吸着クロマトグラフィー、 疎水相互ク 口マトグラフィー、 ゲル濾過クロマトグラフィー、 逆相クロマトグラフィー、 ノ、 ィ ドロキシルァパタイトクロマトグラフィ一、 フルォロアパタイ トクロマトグラ フィ一、 金属キレーティングクロマトグラフィー、 等電点クロマトグラフィ一、 分取電気泳動法、 および等電点電気泳動法など) の一つ以上を組み合わせた方法 がある。 また、 これらの方法以外にも、 本発明にかかるタンパク質を化学的に結 合させたゲル担体あるいは膜を調製し、 抗体を含む材料をこれに添加することに より、 目的の抗体を吸着させ、 これを適当な条件にて溶離、 回収する方法、 即ち 抗原ァフィ二ティ精製を利用することもできる。
抗体抗原反応の検出は周知の方法に従ってでき、 例えば、 次のようにして実施 できる。 標的乳酸菌体を 4 OmM T r i s - H C 1 ( p H 7 . 5 ) , 1 mM E D T A、 1 5 O mM N a C 1溶液に懸濁したのち、 十分量のガラスビーズとと もに、 数分間激しく攪拌しすることにより、 菌体を完全に破砕する。 最終濃度が 0 . 1 %となるよう S D Sを添加して再び攪拌し、 これを遠心分離して上清画分 を回収する。 該抗体あるいは該抗体由来の F a b ' フラグメントに西洋ヮサビ · ペルォキシダーゼ等の標識酵素、 蛍光物質, ピオチン、 アイソトープ等を結合さ せたものを用意する。 該標識抗体を標的乳酸菌体抽出液と混和して、 抗原に抗体 を十分吸着させたのち、 過剰な標識抗体を洗浄除去したものに、 抗体を標識した 酵素の活性等を測定することにより、 ビール混濁乳酸菌を検出することが出来る。 このような検出方法はェンザィム · リンクト ·ィムノソルベント ·ァヅセィ (E L I S A ) 法、 ウエスタンプロット解析法、 ラジオィムノアヅセィ法等数多く知
られており、 詳細な手順は Antibodies, A laboratory Manual ,Ed Harlow and D avid Lane, Cold Spring Harbor Laboratory 1988等を参考にすることができる。 実 施 例
以下に本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれらに限定されるもので はない。
実施例 1 : ビール混濁乳酸菌遺伝子の取得
ラクトバチルス ブレビスの混濁乳酸菌 3株および非混濁乳酸菌 2株を MRS 培地 (Oxo id社) 100mlで定常期まで静置培養し、 集菌後、 Douglasらの 方法 (Applied and Environmental Microbiology, 46 :549-552(1983))でそれそれ の菌体より全 DNAを取得した。 DNAの最終濃度を約10~20mg/mlに 調整し、 この DNA 2 mlを錶型 DN Aとし、 ランダム ポリモルフィヅク D NA PCR (RAPD PGR) (Nucleic Acid Research 22:6531-6535(199 0)) を行なった。 即ち、 ランダムな 10 me rの合成 DNAである遺伝子マツ ビング用プライマ一、 Operon 10 -me r Kit s 〈0peron社製〉 の うち、 Kit AAから AZまでの 540種をプライマ一とする P CRを行った。 プライ マ一は 2 OmMのものを 2ml使用し、 反応液全容量を 50ml に調製した。 P CR反応試薬には宝酒造社の Takara Ex Taq kitを用い、反応機器は Perkin El mer社の Gene Amp PCR System9600を用いた。 反応プログラムは 94°C 1分、 3 6°C 1分、 72°C 2分の 45サイクルとした。 反応終了後の反応液を 1%の ァガロースゲルで電気泳動し、 ェチジゥムブ口マイド溶液で染色して、 増幅され たバンドを解析し、 前記 540種のプライマーのうちでビール混濁乳酸菌特異的 遺伝子を認識するプライマー、 即ち、 ビール混濁乳酸菌 3種の錡型 DNAより共 通の大きさのバンドを生じさせ、 ビール非混濁乳酸菌 2種よりは同じ大きさのバ ンドを生じせしめないようなプライマーを選抜した。 こうして 1次選抜されたプ ライマーをさらに、 ビ一ル混濁乳酸菌 12株、 ビール非混濁乳酸菌 8株より抽出 した DNAを鎵型 DNAとして用いて同様に P CRを行い、 ビール混濁乳酸菌に 特異的なバンドを生じせしめるプライマーを更に絞り込んだ。
最終的に選抜されたプライマーの塩基配列は以下の通りであった。
OPAT 07 55 -ACTGCGACCA-35 (配列番号 8)
OPAR 12 53 -GGATCGTCGG-35 (配列番号 9 )
OPAX 05 53 -AGTGCACACC-3' (配列番号 10 )
次に上記の PCRによって生じたビール混濁乳酸菌特異的なバンドをァガロー スゲルより切り出し、東洋紡績社の Mag Extractor PCR and Gel Glean upを用いて 回収後、 Invitogen社の pCRIIべク夕一にクローニングした。
クローニングされたビール混濁乳酸菌特異的なバンドの塩基配列を決定したと ころ、 御互いに共通の配列が認められた。 3つの異なるプライマーによって増幅 された領域が、 実は染色体上では 1つの領域であつたことが確認された。
そこで、 ラクトバチルス プレビスの混濁乳酸菌、 L 50株より Douglasらの方 法(Applied and Environmental Microbiology, 46:549- 552(1983 ))を用いて全 D NAを調製し、この DNAを制限酵素 Mbo Iで部分消化して、 15から 20 kb の断片を回収し、 コスミ ドぺクタ一 p JB 8にライゲ一シヨンしたものを大腸菌 DH1に形質転換して、 ゲノムライブラリーを完成させた。 上記の OPAT07pr imerにより増幅されたバンドをプローブとして、 このゲノムライブラリ一のスク リ一ニングを行うことにより、 図 1に示した制限酵素地図を持つ DNAフラグメ ントを取得した。 この塩基配列を決定した (配列番号 79) 。 ORF 1〜10の 配列番号 79のヌクレオチド配列中の位置は下記の通りである。
0 R F 1 : 4406位から 5353位
0 R F 2 : 5363位から 7297位
0 R F 3 : 7313位から 7717位
ORF4 : 8260位から 7766位
ORF 5 : 8778位から 9056位
ORF 6 : 8546:位から 8755位
ORF 7 : 9496位から 9867位
ORF 8 : 3939位から 3022位
ORF 9 : 918位から 2204位
ORF 10: 723位から 205位
前記塩基配列中に認められた ORFにっき、 GENBANK等の D N A配列デ
—夕ベースとの比較を行ない機能推定を行なった。 結果は以下の通りであった。 ORF 1 : 3 1 5個のアミノ酸 (配列番号 3) からなり、 Bacillus subtilisのド リコ一ルマンノースシンセ夕一ゼに類似する推定 38. 5 kD aのタンパク質に 対して 6 9 %の相同性を有することから、 グルコシルトランスフェラ一ゼあるい はドリコールリン酸マンノースシンセ夕ーゼの機能を持つタンパク質をコ一ドす ると考えられる。
ORF 2 : 644個のアミノ酸 (配列番号 5) からなり、 データベースとの比較 からは相同性を有するタンパク質は存在しなかった。
ORF 3 : 1 34個のアミノ酸 (配列番号 7) からなり、 Listeria monocytogen es(Dgt c A、 ティコ酸グリコシル化タンパク質に対して 63%の相同性を有す ることから、 ティコ酸ガラクトシルトランスフェラーゼの機能を持つタンパク質 をコードすると考えられる。
ORF 4 : 1 76個のアミノ酸からなり、 Lactococcus lactisの t r a Aに対し て 86%の相同性を有することから、 ニッキング酵素の機能を有するタンパク質 をコードすると考えられる。
ORF 5 : 6 9個のアミノ酸からなり、 Lactococcus lactisのプラスミ ド pMR C O 1 (Molecular Micro Biology, 4:1029- 1038(1998)) の推定タンパク質 ORF 0004に対して 76%の相同性を有する。
ORF 6 : 92個のアミノ酸からなり、 Lactococcus lactisのプラスミ ド pMR CO 1 (Molecular Micro Biology, 4:1029-1038(1998)) の推定タンパク質 ORF 0003に対して 77%の相同性を有する。
ORF 7 : 1 23個のアミノ酸からなり、 Caulobacter crescentusの I S 298 が持つ Or f Aに対して 62%の相同性を有することから、 トランズポザーゼの 機能を持つタンパク質をコードすると考えられる。
ORF 8 : 305個のアミノ酸からなり、 Leuconostoc lactisの I S 1070が 持つ推定トランスポザ一ゼに対して 96 %の相同性を有することから、 トランズ ポザーゼの機能を持つタンパク質をコードすると考えられる。
ORF9: 428個のアミノ酸からなり、 データベースとの比較からは相同性を有 するタンパク質は存在しなかった。
OR F 10: 172個のアミノ酸からなり、 Lactococcus lactisの y x c Bに対 して 49%の相同性を有することから、 転写調節因子の機能を持つタンパク質を コードすると考えられる。
これらのうち ORF l、 2、 および 3は 1つのオペロン内にあることから、 こ れら 3個の 0 R Fは何らかの糖鎖の合成に関係しているものであると考えられる。 実施例 2 : P C Rによるビール混濁乳酸菌の判定
図 1に開示した各 0 R Fより、 以下のプライマ一を設計した。
OR F 1— 1 5, -GTCAGCGTGCCGACATCCTG-35 (配 番号 1 1 )
ORF 1 -2 5' -TGTATTCACCAATCACCCCG-35 (配列番号 12 )
ORF 2— 1 5, -GCCCCGACTTGACCATTTGT-35 (配列番号 13 ) .
ORF 2 -2 5' -TTAGCGGGTGAGCAGCGAGC-35 (配列番号 14 )
ORF 3 - 1 5, -ACAGCCTTGCGCTACCTGAT-35 (配列番号 15 )
ORF 3 -2 5, -TTCACAATCAGCGGCGAACC-3 ' (配列番号 16 )
ORF 4 - 1 5, -TGAGTTTTAGTAATATTAGT-35 (配列番号 17 )
ORF4-2 5, -AGCCAAGCTTGATGCCGGCA-35 (配列番号 18 )
ORF 5 - 1 5, -AAAGTAACTTAGAAAAACAA-35 (配列番号 19 )
0RF 5 - 2 55 -ATGATCTACGGACTTTACCT-35 (配列番号 20 )
ORF 6 - 1 5' -TCAATATGAAAAACTAGTCGAGCAG-35 (配列番号 21 )
0RF 6 -2 5' -TTATGGACGTTAACATAGTCAGCA-3 ' (配列番号 22 )
0RF 7 - 1 5, -GGAAGATGCTCAGTGGGACCGAATC-35 (配列番号 23 )
ORF 7 -2 5, -GCCTTTTGATGCGCTCGAACGAT-3' (配列番号 24 )
0RF 8 - 1 5, -TCACAGAAAGATTAAGTCGGCAACA-35 (配列番号 25 )
ORF 8 -2 5' -TCTAATTCTTTGGCGCTAACCGTC-35 (配列番号 26 )
0 R F 9— 1 5' -AATTGAAAGTAAGTTGCGAAAGAAA-35 (配列番号 27 )
ORF 9-2 5, -GGCGAACCGTGAACAAATAG-35 (配列番号 28 )
ORF 10- 1 5' -TACAATTAGTAAGACAACAGGGATT-35 (配列番号 29 )
0RF 10-2 5, -TCAGGCAATTCTTGTTCATC-3' (配列番号 30 )
表 1、 2、 および 3にそれぞれ示したラクトバチルス ブレビス、 ぺディォコ ッカス ダムノサス、 および正確な分類学上の種が不明な乳酸菌の単一種を培養
し、 Douglasらの方法 (Applied and Environmental Microbiology, 46:549-552(1 983))で全 DNAを取得した。 これらの DNA約 O.lmgを鎵型 DNAとし、 上記の 各 0 R Fに対するプライマ一を用いて、 P C Rを行つた。 反応試薬は宝酒造社の T akara Ex Taq を、反応機器は Peridn Elmer社の Gene Amp PCR System9600を用い た。 反応プログラムは 94°C 30秒、 60°C 30秒、 72 °C 1分の 25サ ィクルとした。 反応後の反応液を 1. 5%ァガロースゲルで電気泳動し、 ビール 混濁乳酸菌特異的バンドの有無を検定した。 また本発明以前にビール混濁乳酸菌 判定のマ一カー遺伝子として報告されていた]! i t Aおよび h o r A遺伝子より プライマ一を合成し、 同様の実験を行い、 結果を比較した。 結果は表 1、 2、 お よび 3に示される通りであった。
表 1 ラクトバチルス ブレビスの混濁菌判定試験 菌株 ビール ORFl-1,2 0RF2-132 0RF3-1.2 0 1,2 0RF5-1.2 0RF6-1,2 0RF7-1.2 0RF8-1,2 0RF9-1,2 ORF10-1, hitA-1,2 horA-L,2 混 、濁能 primer primer primer primer primer primer primer primer primer 2 primer primer primer
L42 一 ― 一 ― + + + - 一 - - +
L52 一 一 + + + - - 一 - +
L57 一 一 一 ― - + + + 一 - - - +
L62 一 ― + + + - - - - +
L107 一 一 ― + + - - - ― - +
H10 一 - 一 + - - - - +
H14 一 一 ― 一 ― + - - - - +
L37 + + + + + + + + + + + + +
L38 + + + + + + + + + + + + +
L40 + . + + + + + + + + + + + +
L41 + + + + + + + + + + 十 τ T T 十 + + + + + + + + 十
L45 + + + + + + + + + + + +
L46 + + + + + + + + 4- + + + +
L48 + + + + + + + + + + +
L49 + + + + + + + + + + + + +
L50 + + + + + + + + + + + +
L53 + + + + + + + + + + +
L58 + + + + + + +
表 2 ぺディォコヅカス ダムノサス混濁菌判定試験 囷株 ビール ORFl-1,2 0RF2-1.2 0RF3- 2 0RF4-1.2 0RF5-1.2 0RF6-L2 0RF7-1 2 O V/ΛΓ 1 )£ ΙΙΙΙΐ U_ j 4- Α-1 9
primer primer primer primer tinnier DI ϋΐϋ η yτL»ι il rUnacrX>
ώ
ever primer primer priaer
B27 _
T +
TB6 一 + + τ τ
TB23 T 十 +
TB25 _
+ ± τ.
TB30 _
+ + 4- Τ
B2 4 T. + + + + + + τ Τ
B3 τ + + + + + τ J Τ.
B4 τ + + + + + + + 4. τ 4- T
B11 + + + + + J τ. 4 T. Τ Τ
B13 + + + + + 4. τ T
B15 + + + + + + 一 + + +
B16 + + + + + + + + + + + +
B20 + + + + + + + + + + +
B22 + + + + + + + + + + +
B23 + + + + + + + + + +
TB2 + + + + + + + + + +
PD1 + + + + + + + + + + +
PD2 + 十 + + + + + +
表 3 生物種不明乳酸菌の混濁菌判定試験 ビール ORFl-1,2 0RF2-1,2 0RF3-1,2 0RF4-1.2 0RF5-1,2 0RF6-L2 0RF7-1 2 0RF8-1 2 n Fin-i 11 L * Li V ΙΙirΟΓ»ΑA-1 混濁能 primer primer primer primer primer primer primer ΏΠΠ16Γ
4 - ― _ + +
5 ― 一 一 _ + +
6 - _ ― 一 一 + +
7 - + + + + + + + + +
9 一 _ 一 + +
10 一 _ _ 一 + +
12 - - - ― - + + - _ 一 _ 一 _
15 + +
19 + +
8 + + + + + + + +
11 + +
16 + + + + + +
21 + + + + + + + + + +
22 + + + + + + + + +
23 + + + + + +
その結果、 各表に示すように、 O R F l、 2、 および 3からなるオペロンをマ —カーとして利用した場合、 ラクトバチルス ブレビス、 ぺディォコッカス ダ ムノサスのいずれにおいても、 極めて高い頻度でビール混濁乳酸菌の識別が可能 であった。 さらに分類学上の種が不明の単一種乳酸菌においても、 やや頻度が低 くなるものの、 多くのビール混濁乳酸菌を識別できることが示された。
次に、 このオペロン領域の両隣に存在している O R F 4および O R F 8をマ一 カーとして利用した場合、 オペロン内の遺伝子と全く同様の頻度でビール混濁乳 酸菌の識別が可能であった。
一方、 h o r A遺伝子をマーカ一として利用した場合は、 供試したラクトバチ ルス ブレビス、 ぺディォコッカス ダムノサスのすベての株でバンドが検出さ れる一方、 分類学上の種が不明な単一種乳酸菌では全くバンドが検出されなかつ た。
また、 h i t A遺伝子をマーカ一として利用した場合は、 ラクトバチルス プ レビスでは 0 R F 1、 2、 3、 4、 および 8と全く同様の頻度でビール混濁乳酸 菌の識別が可能であつたが、 ぺディォコヅカス ダムノサスのすベての株でバン ドが検出され、 分類学上の種が不明な単一種乳酸菌では全くバンドが検出されな かった。
以上の結果から、 本発明によって開示された O R F 1、 2、 3、 4、 および 8 の遺伝子が、 これまでに報告されている遺伝子よりも、 ビール混濁乳酸菌のマ一 カーとして優れていることが明らかとなった。
さらに、 01 11の9ぉょび1 0をマーカーとして利用した場合もラクトバチル ス ブレビスにかぎれば極めて高い頻度でビール混濁乳酸菌の識別が可能であつ た。 0 R F 5、 6、 および 7をマ一力一として利用した場合はビール混濁乳酸菌 の識別はできなかった。
実施例 3 : ビール混濁乳酸菌に対する特異性が高い領域に関する他のプライマ一 およびプローブ用オリゴヌクレオチドの作製
ビール混濁乳酸菌に対する特異性が特に高い O R F 1、 2、 3、 4、 および 8 の領域の塩基配列をもとにプライマーペアを設計した。 必要であればプライマ一 設計用ソフト (ί列えば O L I G O primer analysis software ver.6.0 : Nation
al Biosciences, Inc. 製) 等を利用してプライマ一ペアを設計してもよい。 化学合成によりオリゴヌクレオチドを調製し、 得られたブラィマ一ペアを P C ϋ法に用いる。 各 OR F領域に関する P CRプライマ一ペアとハイブリダィズの 条件は以下の通りである。 なお、 これらのオリゴヌクレオチドは、 単独ではプロ ーブとして使用できる。
( 1 ) ORF 1に係る P CRプライマ一
5' -TTACTGGCCGTTGAAG-3' (配列番号 3 1)
5' -TGAGCTTGCCGATGT-3' (配列番号 3 2 )
P CRの反応条件は 94 °C 3 0秒、 5 0 °C 3 0秒、 72 °C 1分の 25サ ィクルとする。
55 -GATGCCGACCTCCAAGATGA-35 (配列番号 3 3)
5, -CATGCCCACCGCCAGTAG-3' (配列番号 34)
P C Rの反応条件は 9 4 °C 3 0秒、 6 0 °C 3 0秒、 7 2 °C 1分の 2 5サ ィクルとする。
5' -CCGACTTCCGCCTGATG-35 (配列番号 3 5 )
5' -GGTGAGCTTGCCGATGTATT-3' (配列番号 3 6 )
P C Rの反応条件は 9 4 °C 3 0秒、 6 0 °C 3 0秒、 7 2 °C 1分の 2 5サ ィクルとする。
5' -CGCGCA AACCGTCCTC-3' (配列番号 3 7 )
5' -AGCTTGCCGATGTATTCACC-3' (配列番号 3 8)
P CRの反応条件は 9 4°C 3 0秒、 6 0°C 3 0秒、 7 2 °C 1分の 2 5サ ィクルとする。
5, - TCGCCGGCATGAGTGAAGTCGTGAA-35 (配列番号 3 9)
5' - CGGCGCAATCGTTAGGCTGGTGAT-35 (配列番号 4 0)
P CRの反応条件は 9 4°C 3 0秒、 6 5°C 3 0秒、 7 2 °C 1分の 2 5サ ィクルとする。
( 2 ) ORF 2に係る P CRプライマ一
5' - GCGCTGTTGGTGGTAG-3' (配列番号 4 1 )
5, - CTGGGCTGCTTGATG-35 (配列番号 42)
P CRの反応条件は 94°C 3 0秒、 5 0°C 3 0秒、 7 2 °C 1分の 2 5サ ィクルとする。
55 - TTACTGGCGATGCTGA-35 (配列番号 4 3 )
55 - CTTGGGGATGGTTTTC-3' (配列番号 44)
P CRの反応条件は 94°C 3 0秒、 5 0°C 3 0秒、 7 2 °C 1分の 2 5サ ィクルとする。
53 -GTCGCCGTTTGCCATC-35 (配列番号 4 5 )
5, -CGGTTGGGGATGGTTT-35 (配列番号 4 6 )
P CRの反応条件は 94°C 3 0秒、 5 5°C 3 0秒、 7 2 °C 1分の 2 5サ ィクルとする。
5, -TCGTGGCCTTCGGTTTCTTT-3 ' (配列番号 47)
5' -CGCTTGGGGATGGTTTTCA-35 (配列番号 48)
P C Rの反応条件は 94 °C 3 0秒、 6 5 °C 30秒、 7 2 °C 1分め 2 5サ ィクルとする。
5' -CATCCGGTTGTGGGTAGTGAAGTTA-35 (配列番号 4 9 )
5, -GTGGCAAGGTTAGTGAGGGTGAC-35 (配列番号 5 0)
P C Rの反応条件は 94 °C 3 0秒、 6 5 °C 3 0秒、 7 2 °C 1分の 2 5サ ィクルとする。
(3) ORF 3に係る P CRプライマ一
5' -GCCTTGCGCTACCTG-3' (配列番号 5 1 )
55 -GTGTCCGCCAGCAGT-3' (配列番号 5 2 )
P CRの反応条件は 94°C 3 0秒、 5 0°C 30秒、 7 2 °C 1分の 2 5サ ィクルとする。
5' -TCTTCGGCCT6ACTCACCTC-3 ' (配列番号 5 3 )
55 -GCACGATGACGACGACCTG-3' (配列番号 5 4)
P CRの反応条件は 94°C 3 0秒、 6 0 °C 30秒、 7 2 °C 1分の 2 5サ ィクルとする。
5, -CTGGCG ATGCCGTGGTTCTG-3' (配列番号 5 5 )
5' -CCGTGTCCGCCAGCAGTGA-3' (配列番号 5 6)
P CRの反応条件は 9 4°C 3 0秒、 6 5°C 3 0秒、 7 2 °C 1分の 2 5サ ィクルとする。
5, -CGTTGCGCTACCTGATTGTTGGAG -3' (配列番号 5 7)
55 -CATAATTGAGCACGATGACGACGAC-35 (配列番号 5 8 )
P CRの反応条件は 94。C 3 0秒、 6 5°C 3 0秒、 7 2 °C 1分の 2 5サ ィクルとする。
(4) ORF 4に係る P CRプライマー
5' -TGAATGGGCGAGTGAT-35 (配列番号 5 9 )
5' -GGCAGCCAAATCGTG-33 (配列番号 6 0 )
P CRの反応条件は 94°C 3 0秒、 5 0°C 3 0秒、 7 2 °C 1分の 2 5サ ィクルとする。
5' -GCCAGTGCCGCTTAT-35 (配列番号 6 1 )
5' -TTCTTTCTGTTCGGATTCAC-35 (配列番号 6 2 )
P CRの反応条件は 94°C 3 0秒、 5 0°C 3 0秒、 7 2°C 1分の 2 5サ ィクルとする。
55 -GTGAATCCGAACAGAAAGAA-35 (配列番号 6 3)
5' -ACAGCCAGCGAATGC-3' (配列番号 64 )
P の反応条件は 94°C 3 0秒、 5 0 °C 3 0秒、 72 °C 1分の 2 5サ ィクルとする。
5 ' -GATAAGGAAGGTCGCCACTA-3 ' (配列番号 6 5 )
5' -GCAGCCAAATCGT6ATG-3' (配列番号 6 6)
P CRの反応条件は 94°C 3 0秒、 5 5°C 3 0秒、 7 2 °C 1分の 2 5サ ィクルとする。
5' -AAAGGACGAAGTGCGATTGCCAGTG-35 (配列番号 6 7 )
5' -CGTTCATCACAGCCAGCGAATGC-3 ' (配列番号 6 8)
P CRの反応条件は 94°C 3 0秒、 6 5。C 3 0秒、 7 2 °C 1分の 2 5サ ィクルとする。
(5 ) ORF 8に係る P CRプライマ一
55 -GCGACGGTCTCTGTT-3' (配列番号 6 9)
5' -GTTTCTTACCCGATTGC-3' (配列番号 70)
P CRの反応条件は 94°C 30秒、 50°C 30秒、 72°C 1分の 25サ ィクルとする。
5' -CGACGGTCTCTGTTGAA-3' (配列番号 7 1)
5, -CCACTAACTTGCCTCACAAT-3 ' (配列番号 72)
P CRの反応条件は 94°C 30秒、 50°C 30秒、 72 °C 1分の 25サ ィクルとする。
5, -GCTATCGCT6TCTTTTTGAA-3 ' (配列番号 73)
55 -AATTTTTCGCTCCTTTGGT-35 (配列番号 74)
P C Rの反応条件は 94°C 30秒、 60 °C 30秒、 72 °C 1分の 25サ ィクルとする。
5, -TGGCAGACGTCAAGTATTTGTTCAC-35 (配列番号 75)
5, -TCAATTTTTCGCTCCTTTGGTATGA-3 ' (配列番号 76)
P CRの反応条件は 94°C 30秒、 65°C 30秒、 72°C 1分の 25サ ィクルとする。
5' -GAAATTCATCAAGTCACGCCCTAT-3' (配列番号 77)
5, -TCTCAATTTTTCGGTCCTTTGGTAT-3 ' (配列番号 78)
P C Rの反応条件は 94°C 30秒、 65 °C 30秒、 72 °C 1分の 25サ ィクルとする。