明 細 書
時間等化方法及び装置 技術分野
本発明は時間等化方法及び装置に関し、特にメタリック回線を使用して超高速デー タ伝送を行う際に用いられるモデムなどに用いられる時間等化方法及び装置に関す るものである。 背景技術
一般に、 電話回線、 専用回線、 及び構内メタリック回線等を使用しデータを伝送す るためにモデムが使用されるようになっているが、 近年、 モデムの処理は高速化が強 く求められている。
このようなモデムが使用される分野として、 例えば、 電力線搬送通信がある。 この 電力線搬送通信においては、 家電機器が出す、 例えばインバータ機器などによるラン ダムな雑音 (白色雑音) が極めて多く含まれており、 高速のデータ通信の実用化を阻 んでいる。
このような雑音への対策として、 最近では、 DMT (Discrete MutiTone)方式や O F DM (Orthogonal Frequency Division Multiplexing) 方式;^提案 れてレヽる。 こ の DMT方式や O F DM方式はマルチキャリア (多チャネル) 変調方式を採用してお り、 雑音が多いキャリア帯域は使わず避けて通るという技術であるが、 マルチキヤリ ァを用いているため、 図 1 2 ( 1 ) に示すように送信側において各チャネルの信号が 同時に送信されたとしても、 途中の伝送回線において、 同図 (2 ) に示すように群遅 延が生ずる結果、 受信側では同図 (3 ) に示すように、 時間軸で各チャネルの到達時 間が異なったものとなっている。 このため、 受信側では、 時間軸上でチャネル間の干 渉が発生してしまう。
すなわち、 図 1 3に示すように、 DMT方式や O F DM方式では、 低速の矩形波を 送信しているため、 矩形波の安定した部分では同図 (2 ) に示すように正常な送信信 号 (トーン) が得られるが、 矩形波が変化する部分においては、 同図 (1 ) 及び (3 ) に示すように、個々のチャネルの不要帯域が関数 s i n x _ xで減衰する波形となる。
このように、群遅延が発生した回線特性下では個々のチャネルの信号が相互に時間 軸で干渉する形となり、回線特性が平坦な部分のみチャネル間干渉が免れることとな る。
一方、 送信側で、 干渉部分に相当する時間 (すなわち矩形波の変化する部分に相当 する時間) を、 図 1 3に示すようにガードタイム G Tとしてマスクすればチャネル間 干渉から回避可能となる力 このガードタイム G T分だけデータ伝送が出来ないこと となり、 高速伝送を困難にしてしまう。
従って、 このような回線群遅延の問題を解決するための時間軸上での各チャネル間 の等化が必要である。
一方、 同じ機器でも電源の〇N/〇F F状態により、 静的特性は大きく異なる。 例 えば、 テレビなどのスイッチング電源を用いた家電機器では、 図 1 4 ( 1 ) に示すよ うに電圧が一定値以下であるか以上であるかにより 2つの伝達関数 A (又は C ) と B (又は D) が 1 2 0 H z (使用周波数が 6 0 H zの場合) 毎に交互にスイッチングさ れることになる。 すなわち、 1秒間に 2 4 0回伝達関数が切り替わることになる。 このように、 伝達関数が変化すると、 同図 (2 ) に示すように周波数特性 (振幅ノ 位相) が伝達関数 A, Cを示す実線と伝達関数 B , Dを示す点線とに分かれてしまレ、、 互いに大きく異なってしまう。 このような位相特性の変動は時間軸上での変動をも含 むものである。
従って、 電力線搬送通信に用いられるモデムなどにおいては、 伝送回線に対する高 速の追従性能が要求されることから、上記のように時間軸上の高速等化だけでなく、 周波数軸上の等化も必要であるが、時間軸上の等化を行えば周波数軸上の等化にも寄 与することになる。
図 1 5は、上記のような時間軸上の等化と周波数軸上の等化を実現する従来技術を 示したものであり、 時間等化部 1とガードタイム除去部 2と F F T (高速フーリエ変 換) 演算による DMT分配部 3と周波数等化部 (F E Q) 4と判定部 (D E C ) 5と 符号変換部 6とを直列接続した構成となっている。
この構成において、 時間等化部 1は、 受信信号に対して時間軸上の等化を行い、 こ の後、 送信側で付加したガードタイムをガードタイム除去部 2で除去し、 さらに DM T分配部 3において F F T変換する。 この後、 周波数等化部 4でキャリアの振幅及び
位相の等化を行い、 判定部 5で符号の判定を行った後、 符号変換部 6でナチュラル (N) Zグレイコード (G) 変換、 パラレル (P ) Zシリアル (S ) 変換、 及びデス クランブル (D S C R) などの符号変換を行って受信データ R Dを得るようにしてい る。
このような従来技術においては、時間等化部 1において時間軸上の引込を実施する ためには、 特別なトレーニング信号が必要であり、 このトレーニング信号は長い時間 が必要であると共に、 このトレーニングに伴う複雑な処理を必要としていた。
すなわち、 1 : nのマルチポイントでは、 上記のように 1 2 0 H z単位で変動する 回線特性に関しては高速の追従能力が要求されるため、各々のポイントに長いトレー ユング時間を与えることはできず、 処理も簡単であることが必要となる。
従って、 本発明は、 短いトレーニング時間で受信信号の回線群遅延を時間等化する 方法及ぴ装置を提供することを目的とする。 発明の開示
上記の目的を達成するため、 本発明に係る時間等化方法は、 フレームまたはサブフ レーム単位で振幅変調された受信信号のパワースぺク トラムからタイミング位相情 報を抽出する第 1ステップと、 このタイミング位相情報により該受信信号のタイミン グ位相同期を行う第 2ステップとを備えたことを特徴としている。
すなわち、 それぞれ異なったチャネルで同時送信された周波数信号は、 回線の群遅 延特性により、 図 1 ( 1 ) に示すようにそれぞれ異なった時間に受信する。
そして本発明では、 同図 (2 ) に示すタイミング位相制御を行うことにより、 同図 ( 1 ) に示すそれぞれ異なった時間に到達した信号波形を回線の群遅延特性に合わせ て時間等化を行い、 同図 (3 ) に示すように信号到達時間を揃えている。
これを 1つのチャネルにおける波形に着目して見ると、 図 2 ( 1 ) に示すように、 本発明によるタイミング位相の等化を行う前には、サンプル点に対して本来の受信点 がずれていることがわかる。 この状態ではチャネル間において相互に干渉を起こすこ とになる。
本発明では、 すべてのチャネルにおいて、 同図 (2 ) に示すようにタイミング位相 の等化を行った後は、 受信点とサンプル点とがー致し、 チャネル間干渉が無くなり、
図 1 2及び図 1 3に示した問題点が解消されるので、 高速伝送が可能となる。
ここで、 フレーム単位で振幅変調する場合には、 図 3 ( 1 ) に示すマスタフレーム であるフレーム毎に同図 (2 ) に示すように送信キャリアにゼロ点を含む 2つの基準 点 R 1 , R 2を挿入し、 この 2つの基準点信号 R 1, R 2のみでタイミング位相同期を 行うことができる。
また、 サブフレーム単位で振幅変調する場合には、 図 4 ( 1 ) に示すマスタフレー ムであるフレーム間において変調単位であるサブフレームについて振幅変調を行う ことができる。
従って、 フレーム単位の場合もサブフレーム単位の場合も、 振幅変調された受信信 号のパワースペク トラムからタイミング位相情報を抽出し、 これに基づいて受信信号 のタイミング位相同期を行うので、 このタイミング位相情報を抽出するまでの時間は 短くて済み、 長いトレーニング信号を必要としない。
なお、 上記の第 2ステップの後に F F T変換を行う力、、 又はその前後で F F T変換 を分割して行うことができる。 後者の場合には、 演算量が半減した状態で時間等化が 行えるメリットがある。
さらに、 該第 2ステップの後段で、 該受信信号からキャリアの振幅情報及び位相情 報を抽出してタイミング位相並びにキヤリァの振幅及び位相の引込を行うことによ り周波数等化を実行することができ、 図 1 4の問題点が解消される。
また、 上記の第 1ステップは、 該パワースぺク トラムのべクトル信号を生成するス テツプと、 該べク トル信号に別のべク トル信号を積算して回転させるステップと、 該 回転させたベタ トル信号の符号判定を行うステップと、該符号判定の結果を積分して 該タイミング位相情報として出力するステップと、該積分した値をべク トル変換して 該別のべク トル信号としてフィードバックするステップと、 で構成することができる。 すなわち、 タイミング位相情報のみを取り出す演算を行っており、 他のパラメータ を必要としていないので、 演算量が少なく、 以つて高速でタイミング位相の引込を行 うことができる。
さらに、 上記の符号判定を行うステップが、 該符号判定の結果を、 演算処理毎に半 減させれば、 より一層高速のタイミング位相引込が可能となる。
なお、 受信信号のパワースぺク トラムのべク トル信号を生成するステップと、 該べ
ク トル信号に別のべク トル信号を乗算して回転させるステップと、該回転させたべク トル信号の符号判定を行うステップと、該符号判定の結果を積分して該タイミング位 相情報として出力するステップと、該積分した値をべク トル変換して該別のべク トル 信号としてフィードバックするステップと、 を備えたことを特徴とする位相引込方法 も本発明として実現される。
上記の本発明に係る時間等化方法を実現する装置は、 フレーム単位またはサブフレ ーム単位で振幅変調された受信信号のパワースぺク トラムからタイミング位相情報 を抽出する第 1手段と、該タイミング位相情報により該受信信号のタイミング位相同 期を行う第 2手段と、 を備えたことを特徴としている。
上記の第 1手段の該振幅変調は、該フレーム単位でゼロ点を含む 2つの基準点を用 いることができる。
さらに、 上記の第 2手段の後段に F F T変換する手段を設ける力、 または該第 2手 段の前後に、 F F T変換する手段を分割して設けることができる。
さらに、 該第 2手段の後段で、 該受信信号からキャリアの振幅情報及び位相情報を 抽出してタイミング位相並びにキヤリァの振幅及び位相の引込を行う第 3手段をさ らに設けることができる。
また、 該第 1手段は、 該パワースぺク トラムのべク トル信号を生成する手段と、 該 ベタトル信号に別のベタ トル信号を乗算して回転させる手段と、該回転させたベタ ト ル信号の符号判定を行う手段と、該符号判定の結果を積分して該タイミング位相情報 として出力するステップと、該積分した値をべク トル変換して該別のべクトル信号と してフィードバックする手段と、 を含むことをができる。
さらに、 該符号判定を行う手段は、 該符号判定の結果を、 演算処理毎に半減させて もよい。
さらに本発明では、受信信号のパワースぺク トラムのべク トル信号を生成する手段 と、 該べク トル信号に別のべク トル信号を乗算して回転させる手段と、 該回転させた べクトル信号の符号判定を行う手段と、該符号判定の結果を積分して該タイミング位 相情報として出力する手段と、該積分した値をべク トル変換して該別のベタ トル信号 としてフィードバックする手段と、 を備えたことを特徴とする位相引込装置が実現さ れる。
図面の簡単な説明
図 1は、 本発明に係る時間等化方法及び装置の原理を説明するための図である。 図 2は、本発明に係る時間等化方法及び装置のタイミング位相等化を 1つのチヤネ ルに着目して示した波形図である。
図 3は、本発明に係る時間等化方法及び装置に用いる振幅変調のための基準点伝送 を示したタイムチャート図である。
図 4は、本発明に係る時間等化方法及び装置に用いるサブフレーム単位の振幅変調 を説明するための波形図である。
図 5は、本発明に係る時間等化方法及び装置を用いたモデムの実施例を示すプロッ ク図である。
図 6は、本発明に係る時間等化方法及び装置の受信系統における特に時間等化部の 具体例を示したプロック図である。
図 7は、 図 6に示したタイミング位相制御部の実施例を示した回路図である。
図 8は、 図 6に示したサブフレーム抽出部におけるパワースぺク トラムのベタ トル 信号を求める過程を示した説明図である。
図 9は、 図 6に示したタイミング位相情報 ( Θ ) 抽出部の実施例を示した回路図で ある。
図 1 0は、 図 9に示した符号判定部の変形動作例を示したグラフ図である。
図 1 1は、本発明に係る時間等化方法及び装置の変形例を示したプロック図である。 図 1 2は、 従来からの回線群遅延の問題点を説明するための波形図である。
図 1 3は、 信号点変化時のチャネル間干渉を説明するための波形図である。
図 1 4は、 電源の O NZO F F状態などにより伝達関数が変化した場合の周波数特 性の変化を示す波形図である。
図 1 5は、 従来の時間等化系統を示したブロック図である。
符号の説明
1 時間等化部 2 ガードタイム除去部
3, 3a, 3b DMT分配部 (F F T) 4 周波数等化部 (F E Q)
5 判定部 (D E C ) 6, 11 符号変換部
7 タイミング位相制御部 8 サブフレーム抽出部
9 マスタフレーム抽出部 10 モデム
12 信号点発生部 13 DMT多重部 (I FFT)
14 振幅変調部 15 D/A変換部
16 口一パスフィルタ (LPF)
17 バンドパスフィルタ (BPF) 18 AZD変換部
19 DMTマスタフレーム同期部
71 遅延回路 72 乗算回路
73 加算回路 74 係数変換回路
81 90° 区間抽出部 82 パワー計算部 (PWR)
83 タイミング位相情報 ( Θ ) 抽出部
83a 乗算回路 83b 符号判定部
83c 加算回路 83d 遅延回路
83e べク トル信号生成部
図中、 同一符号は同一又は相当部分を示す。 発明を実施するための最良の形態
図 5は、本発明に係る時間等化方法及び装置を用いたモデムの実施例を示したもの である。
このモデム 10において、 送信系統は、 符号変換部 1 1と信号点発生部 1 2と DM T多重部 (I FFT) 13と振幅変調部 14と DZA変換部 15とローパスフィルタ (LPF) 1 6とがこの順に直列接続された構成となっている。
また、 受信系統においては、 バンドパスフィルタ (BPF) 1 7と八ノ0変換部1 8と時間等化部 1とガードタイム除去部 2と DMT分配部 (FFT) 3と周波数等化 部 (FEQ) 4と判定部 (DEC) 5と符号変換部 6とがこの順に直列接続された構 成となっており、 この受信系統の各部には、 DMTマスタフレーム同期部 1 9からマ スタフレーム信号が与えられるようになっている。
まず、 送信系統における動作に関しては、 送信信号 SDを、 符号変換部 1 1におい てスクランブル処理 (SCR) とシリアル (S) パラレル (P) 変換とグレイ (G)
ノナチュラル (N) コード変換と和文演算とを行う。 そして信号点発生部 1 2におい て図 2に示したようなナイキスト間隔 (12 kB) のサンプル点を有する送信信号と して出力される。
信号点発生部 12からの出力信号は DMT多重部 1 3において、 逆 FFT (I FF T) 演算により、 図 3 (1) に示すマスタフレーム間で同図 (2) に示すような送信 信号に多重される。
この多重信号は振幅変調部 14において、 同図 (3) (及び後述する図 8 (1) 及 び (2) ) に示すように各サブフレーム内にガードタイムが付加されると共に、 図 3 (4) に示すように振幅変調を行うためのゼロ点を含む 2つの基準点 R 1, 1¾2が13 MT多重信号 (各 DMT信号は 16シンボル =チャネルの DMT信号から成る。 ) に 付加される。
一方の基準点 R 1は (1 + j 0) 、 他方の基準点 R 2は (0+ j 0) であり、 両者 を用いて振幅変調していることを意味し、 これからタイミング位相情報を抽出すると 共に、前者の基準点 R 1 ( 1サブフレーム分)を用いてキヤリァの振幅及び位相を抽出 する。 従って、 2つのサブフレームで時間等化と周波数等化が実現できるので、 長い トレーニング信号は不要となる。
そして、 この振幅変調部 14の出力信号は、 DZA変換部 1 5でアナログ信号に変 換され、 ローパスフィルタ 16において例えば電力搬送波の周波数帯域 (10〜45 0 kHz) を含む低周波帯域のみの信号を抽出して送信線路に送り出す。
次に受信系統の動作に関しては、受信線路から受信した受信信号はバンドバスフィ ルタ 1 7によって所定の周波数帯域成分(電力搬送モデムの場合は 10〜450 kH z) のみを抽出し、 AZD変換部 18においてデジタノレ信号に変換する。
この後、 受信信号は時間等化部 1に送られる。 この時間等化部 1の実施例が図 6に 示されており、 この実施例では、 AZD変換部 18からの受信信号を入力するタイミ ング位相制御部 7と、該受信信号からタイミング位相情報 Θを抽出してタイミング位 相制御部 7に与えるサブフレーム抽出部 8とで構成されている。
サブフレーム抽出部 8は、 さらに、 90° 区間抽出部 8 1とパワー演算部(PWR) 82と Θ抽出部 83とで構成されている。 なお、 マスタフレーム抽出部 9は受信信号 からマスタフレームを抽出して図 5に示した DMTマスタフレーム同期部 1 9へ与
え、 各種の同期信号として用いるようにしている。
また、 図 6に示したタイミング位相制御部 7は、 図 7に示す如く、 受信信号をサン プル点間隔毎に遅延させる遅延回路 71と、 この遅延回路 7 1からの出力信号に対し て係数 C l〜Cnを掛ける乗算回路 72と、 この乗算回路 72の出力信号を加算する 加算回路 73と、 サブフレーム抽出部 8からのタイミング位相情報 0を上記の係数 C 1〜C nに変換するための例えばテーブルで構成された変換部 74とで構成された 公知 (例えば特開平 10— 224271号) のトランスバーサルフィルタを用いるこ とができる。
このような時間等化部 1の動作を、 図 8〜図 10を参照して以下に説明する。 まず、 サブフレーム抽出部 8における 90° 区間抽出部 8 1では、 図 8 (1) 及び ( 2 ) に示すように 2つのサブフレームにおいて挿入された基準点 R 1及び R 2を同 図 (3) に示すように変調率 100%の振幅変調を受けた状態で受信したとき、 2つ のサブフレームで 360° とすると、 この中で同図(4)〜(7) に示すように 90° 間隔で 90° 区間を切り出してパワー演算部 82に与える。
パワー演算部 82では、 同図 (4) の場合は、 基準点 R 1のみにおける 90° の区 間でパワー演算を行うのでその積算平均値は "1" であり、 同図 (5) に示すように 90° シフ トさせた場合も同様である。 さらに 90° シフトさせた同図 (6) の場合 には、基準点 R 1と基準点 R 2とが半分ずつになるので、 その積算平均値は "0. 5" となり、 これをさらに 90° シフトすると、 同図 (7) に示すように全て基準点 R 2 の中でのパワー演算した積算平均値であるので "0" となる。
そして、 このパワー演算部 82の演算結果はスカラーであるので、 べク トル化する ため、 隣接した積算平均値同士を加算する。 この結果、 同図 (4) 及び (5) のパヮ 一積算平均値をベク トル化すると同図右側に示す如く (1 + j 1) となる。 同様にし て、 同図 (5) 及び (6) の場合には (1 + j 0. 5) であり、 同図 (6) および (7) の場合には (0. 5+j 0) として出力されることになる。
このようにパワー演算を続けると、 図示の如く、 原点 Oに対してべク トル信号とし て回転することになり、 この時の中心点 Oと点 (0+j 0) とを結ぶ線 Lが基準線で あり、 これに対する角度 θ ' が図 9に示す 0抽出部 83にベク トル信号として送られ る。 受信信号は基準線 Lに合うようにタイミング位相制御を受ける。
このように、 時間軸の異なる受信信号のパワーを計算し、 積分することにより、 受 信信号の時間位相 (基準点位相) が求まり、 これに基づいて時間等化を行えば、 DM T多重信号には 1 6チャネル分の D MT信号が各サブフレームに多重されているの で、 各チャネルの到達時間は図 1 ( 3 )に示すように一致することになる。
0抽出部 8 3は、乗算回路 8 3 aと符号判定部 8 3 bと加算回路 8 3 cと遅延回路 8 3 dとべク トル信号生成部 8 3 eとで構成され、 まず、 乗算部 8 3 aにおいてこの べク トル信号 Θ ' と、 べク トル信号生成部 8 3 eで生成された半径 = 1 . 0の位相情 報を有する別のべク トル信号と乗算する。
すると、 べク トル信号 θ ' は Δ Θだけ位相回転を受け、 乗算回路 8 3 aは、 この信 号から虚数成分のみを抽出して符号判定部 8 3 bに送る。
符号判定部 8 3 bでは、 この虚数信号の符号が +であれば [ F F F F ] を出力し、 符号が一であれば [ 0 0 0 1 ] を判定結果として出力して加算部 8 3 bに与える。 カロ 算回路 8 3 cにおいては、遅延回路 8 3 dを介して前回サンプリングした位相情報と 加算され、 新しい位相情報を与える。
加算回路 8 3 cと遅延回路 8 3 dとで積分回路を構成しているので、 この積分値 0 がべク トル信号生成部 8 3 eに送られると、 このべク トル信号生成部 8 3 eでは、 c o s / s i n変換を行ってスカラー入力 Θをべク トルに出力 Θに変換し、 半径 = 1 . 0の Θ情報を乗算回路 8 3 aに与える。
このような動作を次のベタ トル信号 θ ' が入力されるまでに、 複数回繰り返すこと により、 ベク トル信号 θ ' の複素共役値 0 ( Θ ' の修正量に相当) をタイミング位相 情報として遅延回路 8 3 dから出力することができる。
なお、 この動作は、 図 8に示す基準点 R 1と R 2の 2つのサブフレーム区間で行わ れ、 べク トル信号 0 ' が抽出部 8 3に与えられる度にタイミング位相情 0が出され ることになり、 充分このタイミング位相情報を引込むことができる。 従って、 長いト レーニング信号を必要とすることはない。
また、 図 9に示した符号判定部 8 3 bの実施例では、 常に +か一かによつて一定の 判定結果を出力しているが、 この判定結果を変化させることにより、 より高速に引込 を行うことができる。
すなわち、 べク トル信号生成部 8 3 eのべクトル信号 Θが最初、 図 8に示した基準
線 Lの点 (0+ j 0) を点 (一0. 5 + j 0. 5) に移して 135° 回転させること によって対応させた基準ベク トル R (1 + j 0) であるので、 図 10 (1) に示すよ うに基準ベクトル R (1 + j 0) に対して Θがー致した状態であり、 このとき、 乗算 回路 83 aに入って来るべクトル信号 Θ ' に対しては乗算回路 83 aで回転されない ので、 符号判定部 83 bの入力信号は Θ ' のままであり、 同図 (2) に示すように、 この Θ ' は +である。
そこで、 符号判定部 83 bでは、 同図 (3) に示すように、 Θを 90° だけ—方向 (時計方向) に回転させる判定結果を出力するので、 同図 (4) に示すようにべク ト ル信号 θ ' を 90° —方向に回転させ、 基準点 Rに近づける。
この状態ではまだ、 ベタ トル信号 6 ' は +状態であるので、 同図 (5) に示すよう に、 さらに 45° だけ一方向に θ ' を回転させることにより、 同図 (6) に示すよう に、 べク トノレ θ ' は今度は一になる。
そこで、 今度は同図 (7) に示すように、 +方向に 22. 5° 回転させれば、 同図 (8) に示すように、 ベク トル信号 0 ' はより基準点 Rに近づくことになる。
このように、 ±90° →±45° →±22. 5° →± 1 1. 25° →…というよう に判定角度を半減させて行ければ、 より高速のタイミング位相引込を実現することが できる。
図 10の例ではタイミング位相情報 Θ 90° —45° +22. 5° + 1 1. 2 5° +…という積算値が得られることになる。
この場合、 Θ抽出部 83を DS P (Digital Signal Processor) で構成したとする と、 ± 180° の角度に対して DS Pの取り得る値は通常 ± 2. 0であるので、 符号 判定部 83 bで出力される値は、 「2」 の補数表示で以下に示す通りとなる。
+ 2 0 + 180° [7 F F F]
+ 1 0 + 90° [4000]
+ 0 5 + 45° [2000]
0 0 0° [0000]
0 一 90° [C 000]
2 0 - 180° [8000]
このようにして求められたタイミング位相情報 0は、 図 6に示すタイミング位相制
御部 7に与えられる。 このタイミング位相制御部 7では、 図 7に示す如く、 タイミン グ位相情報 Θを変換部 7 4において係数 C 1〜C nに変換して乗算回路 7 2に与え る。 この乗算回路 7 2は遅延回路 7 1からの各サンプリング出力に対して係数 C 1〜 C nを乗算する。
そして、 この乗算部 7 2の乗算結果を加算部 7 3で加算することにより時間等化信 号が得られる。 なお、 このタイミング位相制御部 7は上述の如く公知の構成により、 タイミング位相情報 Θに基づいて時間等化信号を出力することが可能である。
この後、 図 6に示すように、 タイミング位相制御部 7からの時間等化信号はガード タイム除去部 2と D MT分配部 3と周波数等化部 4と判定部 5と符号変換部 6に送 られるが、 これらの動作は図 1 5に示したものと同様である。 また、 周波数等化部 4 では、 図 3 ( 2 ) に示した基準点 R 1のみを用いて周波数等化を実行する。
図 1 1は、 図 6に示した本発明の実施例の変形例を示している。 図 6の実施例では、 タイミング位相制御部 7からの時間等化信号をガードタイム除去部 2を介して D M T分配部 3で F F T演算を行っているが、 図 1 1の変形例では、 この F F T演算を 2 つに分割し、 タイミング位相制御部 7の前段に DMT分配部 3 aを設けて第 1の F F T演算を行い、 後段に DMT分配部 3 bを設けて第 2の F F T演算を行う。
これにより、 DMT分配部 3 aで一旦 F F T処理をしているためサンプリング周波 数が低くなり、 タイミング位相制御部 7での演算処理が高速化できるという効果があ る。 なお、 この場合にはガードタイム除去部 2を DMT分配部 3 aの前段に設けるこ とが好ましい。
なお、 上記の説明において、 ガードタイムが付加されているが、 本発明の時間等化 により、 このガードタイム期間は図 1 3のような例に比べて大幅に短縮でき、 高速化 の妨げにはならない。
以上説明したように、 本発明に係る時間等化方法及び装置によれば、 フレーム単位 またはサブフレーム単位で振幅変調された受信信号のパワースぺク トラムからタイ ミング位相情報を抽出し、 このタイミング位相情報により受信信号のタイミング位相 同期を行うように構成したので、長いトレーニング期間を必要とせずに時間等化を実 現することができる。
また、 パワースぺク トラムのべク トル信号を生成し、 このべク トル信号に別のベタ
トル信号を積算して回転させ、 この回転させたべク トル信号の符号判定を行ってその 結果を積分し、 タイミング位相信号として出力すると共に、 積分した値をべク トル変 換して該別のベク トル信号とフィードバックすることにより、 より高速に位相引込を 実現することが可能となる。