明細書
ヘルぺスウィルスプロテアーゼの検出用基質及びその製法 〔発明の属する技術分野〕
本発明はへルぺスウィルスプロテアーゼの検出用基質及びその製造方法に関す る
〔発明の背景、 従来の技術〕 亜科からなる DN Aウィルスである。 アルファヘルぺスウィルスとしては単純へ ルぺスウィルス (HSV) 1型および 2型、 および帯状疱疹ウィルス (VZV) があり、 ベ一タヘルぺスウィルスとしてはヒトサイ トメガロウィルス (HCMV ) 、 ヒトヘルぺスウィルス 6 (HHV— 6) およびヒトヘルぺスウィルス 7 (H H V - 7 ) があり、 そしてガンマへルぺスウィルスとしては E Bウィルス (EB V) およびヒトヘルぺスウィルス 8 (HHV- 8) があり、 合計で 8種類のウイ ルスがヒトに感染するヒトヘルぺスウィルスとして報告されている。
ヒトヘルぺスウィルスは、 様々な病態の原因ウィルスである。 多くのヒトヘル ぺスウィルスは不顕性感染ののちに様々な刺激によつて再活性化されるために、 重篤な疾患を引き起こしうる遍在する日和見病原体となっている。 臓器移植患者 やエイズ患者のように免疫不全の状態にあるヒトには HCMVに起因する肺炎、 網膜炎が多発する。 また HCMVは先天的に感染した幼児において深刻な感染疾 病を引き起こしうる。 VZVは多くの深刻な疾病即ち水痘、 帯状疱疹、 およびへ ルぺス後神経痛を引き起こすことが知られている。 HSV— 1は三叉神経節に潜 伏感染し、 後に再活性化され角膜炎、 口唇ヘルぺスを引き起こす。 HSV— 2は 、 通常、 性的接触によって獲得され、 生殖器ヘルぺスを引き起こす。 HHV— 8 はエイズに頻発するカポジ肉腫の原因ウイルスである。
抗ヘルぺスウィルス剤としては、 ウィルス遺伝子複製過程の選択的な阻害作用 を利用する核酸系抗ウィルス剤 (例としてガンシクロビル、 ァシクロビル) が用 いられているが、 現状では次第にこれら核酸系抗ウィルス剤に対する耐性を示す ウィルス株が出現してきており、 これら核酸系抗ウィルス剤に代わる非核酸系抗 ウィルス剤の開発が望まれている。 そのような非核酸系抗ヘルぺスウィルス剤と
して有力な候補はプロテア一ゼ阻害剤である。
ヘルぺスウィルス科の全てのウィルスは複製に必須であるセリンプロテア一ゼ をコードしており (Holwerda (1997) Ant iviral Res. 35, 1-21を参照) 。 ヘル ぺスウィルスがコードするプロテア一ゼのタンパク質分解活性がウィルスカプシ ドの成熟において必須の役割を演じているので、 プロテアーゼ阻害剤は感染性ゥ ィルス粒子の形成を阻害し、 それによつて抗ウィルス作用を発現するとされる。 ヘルぺスウィルスがコ一ドするプロテアーゼは、 これまで知られている宿主細胞 由来のセリンプロテア一ゼとは異なる活性中心を持つウィルス固有のセリンプロ テアーゼであり、 8種のヒトヘルぺスウィルスの全てで極めてよく保存されてい るため、 抗ウィルス剤の標的として注目されている。
ヘルぺスウィルスプロテア一ゼはウィルスカプシドのァッセンプリ一蛋白質と の融合ポリべプチド鎖として翻訳される。 これまでヘルぺスウィルスプロテア一 ゼの主要な役割はこの前駆体ポリべプチド鎖の切断にあると考えられてきた。 抗ヘルぺスウィルス剤としてのへルぺスウィルスプロテアーゼ阻害剤の開発の ためには適切な活性測定法の使用が必須である。 既に、 幾つかのヘルぺスウィル ス由来のプロテアーゼの製造方法および活性測定法が報告されており (特開平 9 - 2 9 9 0 7 9号明細書、 特開平 1 0— 2 0 3 9 6 7号明細書、 特表平 1 0— 5 0 3 6 4号明細書)、 この前駆体蛋白質中に見いだされた特異的切断配列を利用 した基質が用いられてきた。 しかしながら、 それらの活性測定法は十分な反応速 度を示しておらず、 プロテアーゼ活性阻害物質の効率的な評価を困難にしていた o
また、 これまでの技術は全て、 ヘルぺスウィルスがコードするプロテア一ゼの 主要な基質は前駆体ポリべプチド鎖それ自身であるという知見に基づき発展して きたものである。 既に試験管内において抗ヘルぺスウィルス作用を示すプロテア
—ゼ活性阻害物質が報告されている (特開平 1 0— 2 0 3 9 6 7号明細書、 特開 平 1 1一 7 1 2 8 3号明細書) 。 しかしながら、 生体内において優れた抗ヘルべ スウィルス作用を示すプロテアーゼ活性阻害物質は未だ報告がない。
前駆体ポリぺプチド鎖以外にヘルぺスウィルスプロテアーゼの主要な基質とな りうる蛋白質が提供されれば、 これまでと異なる機構に基づいた新たな抗ヘルべ
スウィルス剤の開発方法が示唆され、 ひいては生体内において優れた抗ヘルぺス ウィルス作用を示すプロテアーゼ活性阻害物質の開発に役立つことが期待できる
〔発明が解決しょうとする課題〕
本発明はへルぺスウィルスプロテアーゼの重要な新規内因性基質及びその製造 方法を提供するものである。 , 〔課題を解決するための手段〕
ヘルぺスウィルスプロテア一ゼの新規内因性基質とは、 分子内にプロテア一ゼ 切断可能配列を含むことが最低の必要条件ではあるが、 それだけでは抗ヘルぺス ウィルス剤の開発に寄与するために有用な新規内因性基質の条件を満たすとは限 らない。 従って、 分子内にプロテア一ゼ切断可能配列を含み、 実際にヘルぺスゥ ィルスプロテア一ゼにより特異的に切断され得る分子であり、 さらにそのウィル ス感染課程においてもその基質が特異的に切断され得る分子である場合に、 有用 な新規内因性基質といえる。
詳しくは、 ヘルぺスウィルスプロテア一ゼの重要な新規内因性基質とは、 ( 1 ) ヒトヘルぺスウィルス感染細胞中においておよび (2 ) ヘルぺスウィルスプロ テア一ゼを強制的に発現させた培養細胞中において切断され、 かつ (3 ) 分子内 にプロテアーゼ切断可能配列を含む蛋白質分子であり、 (4 ) インビトロにおけ るへルぺスウィルスプロテアーゼ消化実験において特異的切断を受ける分子であ 本発明者らは、 上記課題を解決すべく、 ヘルぺスウィルスプロテア一ゼの新 規内因性基質を同定するための研究を鋭意進めた結果、 p 1 8 0蛋白質がヘルべ スウィルスプロテアーゼによって感染後期において特異的に分解され、 ヘルぺス ウィルスプロテア一ゼの重要な新規内因性基質であることを見出し、 本発明を完 成するに至った。
本発明のへルぺスウィルスプロテアーゼの新規内因性基質は宿主動物細胞蛋白 質であることを特徴とし、 従来知られていたへルぺスウィルス自身のゲノム D N Aにコードされている前駆体ポリぺプチド鎖とは全く異なったタイプの新規な基 質である。 そしてさらにこの同定された新規内因性基質をコードする D NAを組
み込んだプラスミ ドを構築し、 組換え型蛋白質を生成させ、 この新規内因性基質 由来である組換え型基質蛋白質を製造する方法を完成させた。
本発明において、 ヒト p 1 8 0蛋白質を実質的に含んでなるペプチド鎖とは 、 ヒト p 1 8 0蛋白質領域に相当するアミノ酸配列を付加させたペプチド鎖、 又 はへルぺスウィルスプロテアーゼの新規内因性基質としての活性作用に影響を与 えない範囲で天然のヒト p 1 8 0蛋白質領域中にアミノ酸残基の変換、 欠損、 揷 入を有するペプチド鎖を意味する。 これらのアミノ酸配列の改変は、 配列番号 5 のァミノ酸配列をコードする塩基配列、 具体的には配列番号 6の D N A塩基配列 を基に P C R法等を利用して改変するアミノ酸配列をコ一ドする D N A塩基配列 への改変を行うことで、 対応する改変べプチド鎖に翻訳 ·調製を行うことができ る。
本発明のへルぺスウィルスプロテアーゼの新規内因性基質は宿主動物細胞由 来の蛋白質であるので、 従来のへルぺスウィルスプロテアーゼの主要な基質とし て同定されていたウィルス D NAにコ一ドされた前駆体ポリべプチド鎖とは全く 異なる機構に基づく新規な抗ヘルぺスウィルス剤の開発の可能性を示唆する。 〔発明の実施の態様〕
本発明で提供されるへルぺスウィルスプロテアーゼの新規内因性基質であるヒ ト P i 8 0蛋白質は、 配列番号 1— 3で示されるヘルぺスウィルスプロテア一ゼ 切断可能配列を含む蛋白質である。
また、 本発明はヒト p 1 8 0蛋白質領域を実質的に含んでなるペプチド鎖をコ ―ドする D N A断片を発現ベクターに挿入連結してなる組み換え型ヒト p 1 8 0 蛋白質発現べクタ一を提供する。
また、 本発明は、 ヘルぺスウィルスプロテア一ゼの切断可能配列を含んだヒト P 1 8 0蛋白質のヘルぺスウィルスプロテアーゼの切断可能配列を実質的に含ん でなるぺプチド鎖をコードする D NA断片を、 発現ベクターに揷入連結してなる 組み換え型ヒト p 1 8 0蛋白質発現基質を提供する。
さらに、 本発明は前記組み換え型ヒト p 1 8 0蛋白質発現ベクターで形質転換 した微生物を培養生産し、 組み換え型ヒト p 1 8 0蛋白質を採取することからな る組み換え型ヒト p 1 8 0蛋白質を製造する方法を提供する。
さらには、 本発明は前記組み換え型ヒト p 1 8 0融合蛋白質発現ベクターで形 質転換した微生物を培養生産し、 菌体内に可溶性蛋白質として産生する組み換え 型ヒ ト p 1 8 0融合蛋白質を採取することからなる組み換え型ヒト p 1 8 0蛋白 質を製造する方法を提供する。
本発明によって提供されるへルぺスウィルスプロテア一ゼの新規内因性基質で あるヒト P 1 8 0蛋白質をコードする DNAはラングレ一 (Langley R et al., (1998) DNA Cell Biol., 17, 449-460) 他によって報告された HEMP 3 7、 H US AX 5 5, ES I 8 7 0中の相当する遺伝子断片を連結させたものと実質的 に同じ塩基配列を含んでいる。 ヒト p 1 8 0蛋白質には、 反復配列の反複数の異 なるイソフォームが知られており、 配列番号 6で示した遺伝子配列は 24回反復 の新規な配列である。 本発明で用いられる遺伝子は上記の p 1 8 0遺伝子のほか 、 それと同等の機能を有する程度に修飾 (自然あるいは人為的に塩基の脱落、 揷 入されたものを含む) されたものであってもよい。 また融合蛋白質として発現さ せるように、 ヒト p 1 8 0遺伝子を適当な遺伝子と連結させたものであってもよ い。 ヒト p 1 8 0遺伝子と連結させるその他の遺伝子としては、 グル夕チオン一 S— トランスフヱラ一ゼ (分子量約 2 6, 0 0 0、 以下、 GSTという) 遺伝子 、 ベ一夕ガラク トシダ一ゼ遺伝子、 H I S— TAG遺伝子などが挙げられる。 本発明で提供されるへルぺスウィルスプロテア一ゼの新規内因性基質であるヒ ト P 1 8 0蛋白質をコードする DNAは、 例えばヒト胎児肺繊維芽細胞 (MRC 一 5細胞) の c D N Aを铸型として P C R法によりクローニングすることが可能 である。 ヒト p 1 8 0蛋白質の全長あるいはヘルぺスウィルスプロテア一ゼの切 断可能配列を含んだァミノ酸配列をコードする DNAを組み込んだプラスミ ドを 得ることができる。 ここで、 ヒト p 1 8 0蛋白質領域を実質的に含んでなるぺプ チド鎖をコードする DNA断片は反復配列 (配列番号 5中のセリン 1 5 9からィ ソロイシン 6 1 0で示される) を包含し不安定なため、 pTr c 9 9 A、 pKK - 2 2 3— 3のような形質転換菌において低コピー数でより安定なベクタ一^ ^揷 入して保存することがより望ましい。
PCRによるヒ p 1 8 0蛋白質をコードする cDNAのクローニング方法を 以下に詳しく説明する。
組換え型 P 1 80をコ一ドする DNAを含んでなるプラスミ ドベクターの構築 及び該プラスミ ドベクタ一を導入した形質転換微生物の調製:
先ず、 MR C— 5細胞の一本鎖 c DN Aを鐯型として、 p i 80蛋白質をコ一 ドする DNAを P CR法により増幅するが、 p 1 80蛋白質をコードする DN A の全長を同時に増幅させるのは難しいため、 N末端領域、 反復配列領域、 C末端 領域に分けて増幅させる。 MRC— 5細胞はウィルスの増殖実験などに広く用い られる汎用培養細胞である。 一本鎖 c D N Aの調製は公知のどのような方法でも 可能である。 増幅の際、 反復領域の 5' 及び 3' 末端はそれぞれ N末端領域の 3 ' 末端、 C末端領域の 5' 末端と重複ざせるようにし、 得られた DN A断片を制 限酵素による切断ののち連結結合させることができる。 その際、 好ましくは N末 端領域については 5, 側の非翻訳領域に制限酵素 B amH I切断部位を、 反復配 列領域については 3' 側に制限酵素 B amH I切断部位を、 C末端領域について は 5 ' 側に制限酵素 B amH I切断部位及び 3 ' 側の非翻訳領域に制限酵素 E c oR I切断部位を導入する。 即ち、 既に解明されている p 1 80遺伝子の塩基配 列を参照して、 これらの人為的な塩基配列を付加したプライマーを合成し、 それ を用いて PCR法による増幅を行う。 p 1 80蛋白質をコードする DNAの配列 番号 6中の塩基配列 47 1には制限酵素 E c 0 R I切断部位が存在するので、 N 末端領域、 反復配列領域をべクタ ^クローニングする際利用できる。 即ち、 P CR法により増幅で得られた N末端領域の DNA断片を制限酵素 E c oR Iと B amH Iで消化して、 適当なベクタ一へクローニングできる。 例えば pUC 1 1 8、 pUC 1 9などの汎用べクタ一が利用できる。 Ta qDNAポリメラ一ゼを 使用した P CR法により得られた DN Aの場合は T Aクローユング法でも可能で 、 その場合は TAクロ一ユング用べクタ一が (例えば pGEM-Teasy vector (プロ メガ社製) など) 利用できる。 同様に反復配列領域については制限酵素 E c oR I、 B amH Iで切断し、 C末端領域については制限酵素 E c o R Iと B a mH Iで消化してクローニングできる。 これらのプラスミ ドを、 一旦大腸菌 XL 1— b 1 u e株に導入して形質転換する。 この組換え菌を培養して、 大量に調製し、 破菌して、 プラスミ ド pUC— 1 80Ni:、 pUC— 1 80Rp、 pUC- 1 8 0 C tを単離 ·分取する。 p 1 80蛋白質をコードする DNAの配列番号 6中の
塩基配列 1 829には制限酵素 Mr o I切断部位が存在するので、 反復配列領域 と C末端領域の連結結合に利用できる。 即ちこれらを連結結合させるために、 p UC- 1 8 ON tを制限酵素 E c oR Iと Sc a l、 pUC— 1 80Rp、 を制 限酵素 Eじ 0尺 1と1^1" 0 1、 11〇ー 1 80〇 1を制限酵素 M r o Iと S c a Iで切断して得られる DNA断片を相互に連結させ、 ヒト p 1 80蛋白質の全長 をコ一ドする DNAを含むプラスミ ド pUC— 1 80 f を得ることができる。 上記したようにヒト P 1 80蛋白質領域を実質的に含んでなるペプチド鎖をコ —ドする DN A断片は反復配列を包含し不安定なため、 pTr c 99A、 KK — 223 _ 3のような形質転換菌において低コピー数でより安定なベクターへ揷 入して保存することがより望ましい。 このために pUC— 1 80 f プラスミ ドを 制限酵素 B amH Iと S p e Iで消化し、 約 3. 8 k b pの DN A断片を得て、 低コピー数でより安定なベクターの制限酵素 B amH Iと S p e Iの間に挿入連 結することが可能である。 このような例として実施例 3で説明する p T S X— 1 80 f を例示できる。 このプラスミ ドを、 宿主細胞 (例えば大腸菌 XL 1 -b 1 u e株) に導入して形質転換し、 マ一カー遺伝子 Amp rを利用して、 アンピシ リン耐性を示す形質転換株を選別し、 さらに p 1 80遺伝子をプローブとしたコ ロニ一ハイブリダィゼ一シヨン法により選択し、 ヒト p 1 80蛋白質の全長をコ 一ドする c DNAを含むプラスミ ドを導入した形質転換微生物を得ることができ る。
ヒト P 1 80蛋白質の cDNA配列の分析から、 反復配列領域内での反復数が 54回、 26回、 1 4回の少なくとも 3種類の分子種が存在することが分かって いる (Langley R et al (1998) DNA Cell Biol. を参照) 。 配列番号 6で示した ものは、 反復数が 24回の分子種であり、 新規な配列である。 反復数が 1 4回の 分子種についても同様に上記の方法でクローニング可能である。 反復数が 54回 の分子種も上記の方法でクローニング可能であるが、 その際は铸型として MR C 一 5細胞のゲノム DNAを用いた方がより望ましい。 細胞のゲノム DNAの調製 は公知のどのような方法でも可能である。
組換え P 1 80蛋白質遺伝子を有する組換えプラスミ ドの調製:
ヒト P 1 80蛋白質の全長あるいはヘルぺスウィルスプロテア一ゼの切断可能
配列を含んだァミノ酸配列をコードする D N Aを蛋白質発現用プラスミ ドにサブ クロ一ニングして組換え型ヒト p 1 8 0蛋白質を発現する発現用プラスミ ドを構 築できる。 組換え型ヒト p 1 8 0蛋白質遺伝子としては、 ヒト p 1 8 0蛋白質遺 伝子の一部分あるレ、は全長、 またはそれらを他の遺伝子と連結させた融合型組換 え P 1 8 0蛋白質遺伝子を使用できる。 ヒト p 1 8 0蛋白質遺伝子と連結させる 遺伝子としては、 G S T遺伝子、 /3—ガラクトシダ一ゼ遺伝子、 マルトース結合 蛋白質遺伝子、 (H I S ) 6 夕グ遺伝子、 m y c夕グ遺伝子など融合蛋白質発現 に汎用されるどのような遺伝子であっても使用できる。 その際、 誘導可能なプロ モータの制御下に融合ヒト p 1 8 0蛋白質をコードする翻訳域を形成させること により、 宿主細胞中で組換え型ヒト p 1 8 0蛋白質の生産を誘導させることが望 ましい。 そのような誘導可能なプロモ一夕の例として、 t a c、 l a c又は t r p一プロモー夕が挙げられるが他の類似のどのようなプロモーターであつてもよ レ、。 真核細胞用発現プロモーターの例としては C MVプロモータ一, S Rアルフ ァ一プロモーター、 E F 1プロモータ一などが挙げられる。
組換え P 1 8 0蛋白質変異体の作成:
ヒト P 1 8 0蛋白質はへルぺスウィルスプロテアーゼ切断可能配列を含んでお り、 H C MVの場合には 3力所 (配列番号 1、 2、 3 ) 含まれている。 これらの 切断可能配列を人口的に改変した組換え P 1 8 0蛋白質変異体を作成し、 ヘルべ スウィルスプロテアーゼによる切断に必要な配列を特定することが可能である。 組換え P 1 8 0蛋白質変異体の作成はヒト p 1 8 0蛋白質の全長あるいはヘルべ スウィルスプロテア一ゼの切断可能配列を含んだ遺伝子配列をコードするプラス ミ ドを用いて、 例えば切断可能配列中のパリンをァラニンに改変して作成できる 。 プラスミ ド上の特定塩基の置換は公知の技術で可能である。
組換え P 1 8 0蛋白質の宿主細胞における発現:
宿主細胞としては、 ベクタ一に組み込まれた複製オリジンやプロモーターが働 く真核細胞あるいは大腸菌などの原核細胞を使用することができる。
真核細胞における発現の場合、 S V 4 0の複製オリジンやプロモーターを使用 する場合には、 T抗原を発現している細胞 (例えば 2 9 3 T細胞、 C O S細胞が 例示できる) が適している。 発現ベクターを真核細胞に導入するには、 リン酸力
ルシゥ厶法、 D E A E—デキストラン法、 リボソーム法、 エレクトロボレ一ショ ン法等の公知のどのような方法でも可能である (例えば実験医学別冊 「遺伝子ェ 学ハンドブック」 、 羊土社、 1 9 9 1、 参照) 。 あるいは、 一本鎖ファージを調 製した後、 これを用いてトランスフエクシヨンを行い遺伝子を動物細胞に導入す ることも可能である。 (Yokoyama-Kobayashi and Kato, Biochem. Biophys. Res. Co誦 un. 192 : 935-939 (1993)) 。
原核細胞における発現は融合蛋白質発現用プラスミ ドを用いて、 宿主細胞を形 質転換した形質転換微生物を (例えば大腸菌 X L 1 - b 1 υ e株が使用できる) マーカ一遺伝子 Am p rを利用して、 アンピシリ ン耐性を示す形質転換株を選別 したのち、 さらにヒト p 1 8 0蛋白質の C末端領域をコ一ドする遺伝子をプロ一 ブとしたコロニーハイプリダイゼ一ジョン法あるいはヒト p 1 8 0蛋白質の C末 端領域に対する抗体を用いたウェスタンプロテツング法により選択可能である。 使用する抗体は組換え型ヒト P 1 8 0蛋白質を免疫原として常法により作成可能 こ"ある。
組換え菌による融合蛋白質の培養生産と培養物からの組換え型基質は、 例えば 、 以下の手順で行うことができる。
組換え型 G S T融合 p 1 8 0蛋白質の調製:
組換え型ヒト P 1 8 0蛋白質を融合蛋白質として発現する発現用プラスミ ドを 保有する組換え菌を、 アンピシリンを添加した 1 Lの L B培地を用いて、 5 L容 三角フラスコ中で 2 8 °C、 6時間振とう培養する。 次いで、 培養菌液の濁度 6 0 0 n mにおける吸光度が 0 . 5を越えた時点で、 G S T—組換え型 G S T融合 p 1 8 0蛋白質の発現を誘導するため、 培地にイソプロピル一 ^一 D—チォガラク トピラノシド (IPTG) を終濃度 0 . 2 mMとなる量添加する。 さらに 2 8で、 4 時間振とう培養を行い、 得られる培養液を遠心分離して集菌する。 集菌した菌体 はグル夕チオンセファロース 4 Bカラム平衡化緩液 (50 mM Tri s- HC1, 150 mM N aCl, 1 mM EDTA, pH 8. 0、 以降、 緩衝液 Aと称する) 中に懸濁し、 超音波によつ て菌体を破砕する。 その後、 遠心分離によって、 不溶性画分を分離し、 可溶性蛋 白質を含有する上清を得る。 この上清中に可溶性蛋白質として溶解している組換 え型 G S T融合 p 1 8 0蛋白質のみを以下の手段で精製できる。
先ず、 分取される上清を、 緩衝液 Aで平衡化されたグル夕チオンセファロース 4 Bカラムに負荷し、 上清に溶解している GST融合 p 1 8 0蛋白質をカラムに 特異的に吸着させる。 カラムをバッファ一液 Aにより洗浄し、 未吸着分を洗い出 す。 その後、 2 OmM還元型グル夕チオンを添加したバッファー液 Aによって、 カラムに吸着していた GST融合 p 1 8 0蛋白質を溶出させる。 溶出させた GS T融合 p 1 8 0蛋白質は緩衝液 B (50 mM Tris-HCl, 150 mM NaCL 1 mM EDTA, pH 7.4) に対して透析し、 セントリコン 3 0などの市販の限外濾過膜 (Amicon社 製) により濃縮できる。
インビトロにおけるヘルぺスウィルスプロテアーゼ消化実験:
( 1 ) 基質蛋白質の調製
ィンビトロにおけるヘルぺスウィルスプロテアーゼ消化実験に用いる基質蛋白 質としては、 ヒト由来培養細胞から特異抗体を利用してァフィ二ティ一精製した 天然型基質、 ヒト由来培養細胞において発現させた組換え型基質を特異抗体を利 用してァフィ二ティ一精製した組換え型基質、 または p 1 8 0蛋白質全配列のう ちからへルぺスウィルスプロテアーゼの切断認識配列を含む部分を融合蛋白質と して発現させた組換え型基質蛋白質を用いることができる。 天然型基質をァフィ 二ティ一精製するさいには、 免疫沈降法およびァフィ二ティ一カラムを用いた精 製法のいずれでも良く、 使用する抗体は組換え型ヒト P 1 8 0蛋白質を免疫原と して作成可能である。
(2) 精製した (あるいは部分精製した) 組換え型 GST融合 p 1 8 0蛋白質 を以下に示す手順でィンビトロにおけるヘルぺスウィルスプロテア一ゼ消化実験 に用いることができる。 プロテアーゼ活性測定用バッファーに、 該組換え基質を 0. 3〃 g及び該組換え型プロテアーゼをそれぞれ 0. 0 1— 0. 0 3〃 g添加 し、 3 0° Cまたは 4° Cで 4時間インキュベーションした後、 S.DS— PAG E用 2 Xサンプルバッファーを添加することで反応を停止させる。 その反応液を SDS— PAGE分析、 ウェスタンブロッ小後に、 特異的抗体を用いて免疫染色 を行う。
〔実施例〕
本発明によって提供されるへルぺスウィルスプロテア一ゼの新規内因性基質で
ある天然型ヒト p 1 80蛋白質は、 ヘルぺスウィルスプロテア一ゼを発現させた 培養細胞中において分解され得る。 以下、 実施例で説明する。
実施例 1
ヘルぺスウィルスプロテアーゼを発現させた 293 T細胞中における天然型 p 1 80蛋白質の分解:
ヘルぺスウィルスプロテア一ゼの培養細胞における発現方法は公知であるが ( Liu et al (1991) J.Virol. 65, 5149 - 5156, Welch et al (1991) ProNASUSA 88 , 10792-10796, Sardana (1994) 269, 14337-14340) 、 以下の例では HCMVの UL 80遺伝子にコードされるプロテア一ゼを、 真核細胞用蛋白発現用プラスミ ド P c DNA 4にサブクローニングして用いた。
具体的にはサイトメガロウィルス (AD 1 69株) の感染した細胞から Hi r t法に従ってウィルス DNAを抽出した(Robert, L , et al. , J. gen. Virol., 64, 373-389 (1983))。 二つのオリゴヌクレオ夕イドをプライマ一とし、 抽出し たウィルス DNAを铸型として PCRをおこなうことで、 UL 80プロテアーゼ をコードする DNAを得た。 これをベクター p c DNA 4 (Invitrogen社製) の B amH Iと Xb a I部位間にクローニングして、 (H I S) 6 タグ付加された UL 80プロテア一ゼの真核細胞用蛋白質発現プラスミ ド pC— UL 80を構築 した。 UL 80プロテアーゼをコードする DNAの塩基配列についてはデォキシ ヌクレオチド法により塩基配列を決定し、 既に報告されている文献記載の塩基配 列と相違ないことを確認した (Chee et al (1990) Curr. Top. Microbiol. Immunol .154, 125-169) 。 この発現プラスミ ドを 293 T細胞にトランスフエクシヨン することにより、 293 T細胞内に UL 80プロテア一ゼを発現させた。 トラン スフヱクシヨン後 30時間後に各々細胞を洗浄、 回収し、 SDS— PAGE, ゥ エスタンプロッティング分析に供した。 (H I S) 6 タグ抗体 (Qu i a g e n 社より購入) を用いて免疫染色し UL 80プロテア一ゼの発現を確認し (図 2) 、 同時に p 1 8 0蛋白質のゥヱスタンプロッティング分析を行った。 図 2に示し たように、 UL 80プロテアーゼが発現された場合には (レーン 1 ) 天然型 p 1 8 0蛋白質が分解され、 より分子量の小さい蛋白質 (矢印) が検出されるが、 U L 80プロテアーゼが発現されていない場合には天然型 p 1 80蛋白質は分解さ
れなかった (レーン 2) 。 この結果より、 HCMVプロテアーゼを発現させた 2 93 T細胞中での天然型 p 1 80蛋白質の分解が確認された。
実施例 2
ヒト P 1 80蛋白質をコードする DNAを含んでなるプラスミ ドベクターの構 築:
ヒト P 1 80蛋白質をコ一ドする DNAを含んでなるプラスミ ドベクタ一の構 築について以下に例示して詳細に説明する。
(1) PCR法による増幅及びべクタ一への挿入:
先ず、 MRC— 5細胞 (大日本製薬より購入) の一本鎖 cDN Aを錶型として 、 P 1 80蛋白質を PCR法により増幅した。 1st strand cDNAの調製は 1st st rand cDNA synthesis kit for RT-PC (ベ一リンガ一社製) を用い、 これを鐯型 として LA Taqポリメラ一ゼ (宝酒造社製) を用いて PCR法による増幅を行った 。 ヒト p 1 80蛋白質の全長を同時に増幅させるのは難しいため、 N末端領域 ( pl80Nt) 、 反復配列領域 (pl80Rp) 、 C末端領域 (pl80Ct) に分けて増幅させた (図 1参照) 。 即ち、 メチォニン 1〜ァスパラギン 1 58の N末端領域、 セリン 1 59〜イソロイシン 6 1 0の反復配列領域、 アルギニン 6 1 1〜終止コドン T G Aまでの C末端領域べプチド鎖をコードする D N Aを含む領域を P C R法によ りそれぞれ増幅した。 その際、 N末端領域については 5' 側の非翻訳領域に制限 酵素 BamH I切断部位を、 反復配列領域については 3 ' 側に制限酵素 BamH I切断部位を、 C末端領域については 5' 側に制限酵素 B a mH I切断部位を付 加したプライマ一を合成して PC R法による増幅を行った。 用いたプライマ一は 以下のとおりである。
p l 80Nt用プライマ一 5' -TGGATCCGAAAGCAAGCC AGGATG- 3' 及び 5' -ATCGGCACCTCCTTGGGAGCAG T- 3,
p l 80Rp用プライマ一 5' -CAGGATCCAGCCCCCAAT GTGAC - 3 ' 及び 5' -CTGGATCCCTCGTGGCCTGGTTC AAGGCATC- 3'
P 1 80 C t用プライマー 5' -CTGGATCCTGTCCGAGAA
IS
GGCTGGTGTCATTC-3' 及び 5' -GCTCAGACAGAGGT GC C CTC CTT- 3'
1 80蛋白質の塩基配列 471には制限酵素 E c oR I切断部位が存在する ので、 N末端領域、 反復配列領域をベクターへクローニングする際に利用した。 即ち、 増幅された N末端領域の DN A断片を制限酵素 E c oR Iと B amH I で消化後、 低融点ァガ口一ス電気泳動で、 約 550 bpの断片を分離し、 フエノ ール抽出によりその断片を回収した。 回収した DNA断片を、 あらかじめ制限酵 素 E c oR Iと BamH Iで消化し低融点ァガロース電気泳動で分離回収した p UC 1 1 8ベクタ一の E c oR Iと BamH Iの間に挿入連結し、 pUC— 1 8 ΟΝΐを得た。 同様に増幅した反復配列領域の DNA断片を制限酵素 E c 0 R Iと B amH Iで消化後、 低融点ァガロース電気泳動で、 約 1 450 b pの断片 を分離し、 回収した。 回収した反復配列領域を含む DN A断片を、 pUC 1 1 8 の E c oR Iと BamH Iの間に揷入連結し、 pUC— 1 80 R pを得た。 C末 端領域については低融点ァガロース電気泳動で、 約 2200 bpの断片を分離回 収し、 TAクローニング法を利用して pGEM— Te a s yベクター (プロメガ 社製) へ挿入連結した。 このプラスミ ドを、 制限酵素 E c oR Iと B amH Iで 消化した。 これを pUC 1 9の E c oR Iと B amH Iの間に揷入連結し、 pU C- 1 80 C tを作成した。 pUC— 1 80 C tの Ec oR I切断部位の 5 ' 側 には PGEM— Te a s yベクタ一由来の Sp e I切断部位が含まれている (図 1参照) 。
(2) 全長 c DNAをコードするプラスミ ドベクタ一の構築:
これらのプラスミ ドを、 一旦大腸菌 XL I -b 1 u e株に導入して形質転換し 、 この組換え菌を培養して、 大量に調製し、 破菌して、 プラスミ ド pUC— 1 8 ONt, pUC- 1 80 Rp, pUC- 1 80 C tを単離 ·分取した。 これらを 連結結合させるために、 pUC— 1 8 ON tを制限酵素 E c oR Iと S e a lで 切断して得られる約 1 950 b pの DNA断片約 200 n g, pUC- 1 80 R Pを制限酵素 E c o R Iと Mr o Iで切断して得られる約 1 350 b pの DNA 断片約 3 O O ngおよび pUC— 1 80 C tを制限酵素 Mr o Iと S c a Iで切 断して得られる約 3. 7 kb pの DNA断片約 200 n gの 3種を相互に連結さ
せた。 ラィゲ一ションには r ap i d l i ga t i on キッド (ベ一リンガ —社製) を用いた。 このプラスミ ドを、 大腸菌 XL I -b 1 u e株に導入して形 質転換し、 マーカー遺伝子 Amp rを利用して、 アンピシリン耐性を示す形質転 換株を選別し、 さらに p 1 80遺伝子をプローブとしたコロニーハイブリダィゼ ーシヨン法により選択した。 この組換え菌を培養して、 大量に調製し、 単離 .分 ¾し、 ヒト p 1 80蛋白質の全長をコ一ドする c DNAを含むプラスミ ド pUC - 1 8 0 f を得た (図 1参照) 。
ヒト 1 80蛋白質の cDN A配列の分析から、 反復配列領域内での反復数が 5 4回、 26回、 1 4回の少なくとも 3種類の分子種が存在することが分かってい る (Langley R et al 1998 DNA Cell Biol.を参照) 。 配列番号 5で示した配列 は反復数が 24回のものである。
(3) pTSX- 1の作成:
ヒト P 1 80蛋白質領域を実質的に含んでなるペプチド鎖をコードする DNA 断片は配列番号 6中の 590 - 1 302で示される反復配列を包含するため、 形 質転換菌でより安定でコピー数の少ないベクタ一へ挿入する必要があった。 この ために、 汎用 PKK 233— 2ベクタ一の誘導体である pTr c 99 Aに制限酵 素 S p e Iで切断される部位を有するベクターを以下のように作成した。
Tr c 9 9 A (Pharmacia-Biotech社製) を制限酵素 P s t Iと制限酵素 H i nd I I Iで消化し、 低融点ァガロース電気泳動で分離回収した。 制限酵素 S P e X h 0 No t Iで切断される部位を有する合成オリゴ DNAを作成 し (5' -GACTAGTCTCGAGCGGCCGCA-3' 及び 5' -AGCTTGCGGCCGCTCGAGACTAGTCTGCA-3' ) 、 Tr c 99 Aのクロ一ニングサイト制限酵素 P s t Iと制限酵素 H i nd
I I Iの間に挿入連結し、 制限酵素 S p e Xho No t Iで切断される 部位を有するクロ一ニングサイトを新たに追加挿入し、 p T S Xと命名した。
(4) pTSX- 1 80 f の構築および該プラスミ ドベクターを導入した形質 転換微生物の調製:
先の pUC— 1 80 f プラスミ ドを制限酵素 B amH Iと S p e Iで消化し、 約 3. 8 kb pの DNA断片を得て、 p T S X— 1の制限酵素 B a mH Iと S p e Iの間に挿入連結し、 pTSX— 1 80 f を構築した。 このプラスミ ドを、 大
腸菌 XL 1 -b 1 u e株に導入して形質転換し、 マーカー遺伝子 Amp rを利用 して、 アンピシリン耐性を示す形質転換株を選別し、 さらに p 1 80遺伝子をプ ローブとしたコロニーハイブリダイゼ一ション法により選択した。 このうちの一 つについて E. c 01 i XL 1— b 1 u e · p TSX_ 1 80 f と識別のため の呼称を付した。 この形質転換株を日本国〒 305 - 8566茨城県つくば巿東 1丁目 1番 3号所在の経済産業省産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所に 寄託して平成 12年 1月 7日に受領した受託番号 FERM P— 17694を得た。
実施例 3 DNA配列決定:
クローニングしたヒト p 1 80蛋白質の cDN A配列決定はジデォキシ法に準 じ、 dye terminator cycle sequencing ready reaction kit FS (アプライドノ ィォシステム社製) を用いて行った。 塩基の帰属は、 2本鎮 DNAの両鎖におけ る分析結果から確認し、 複数のプライマーを用いてさらに結果を確認した。 配列 決定は複数のクローンについて行った。 分析の結果、 配列番号 6で示されるヒト P 1 80蛋白質の c DN Aが得られたことが確認された。
実施例 4 組換え型 p 1 80蛋白質の大腸菌における発現:
pTSX- 1は pTr c 99 Aと同様に t r cプロモータ一および転写終了シ グナルを含み、 原核細胞における発現ベクターを構成している。 したがって、 p 丁3∑_ 1にヒト 1 80蛋白質の cDNAを挿入した pTSX— 1 80 f は原 核細胞において組換え型ヒト p 1 80蛋白質を発現誘導可能であるので、 この組 換え型ヒト p 1 80蛋白質の発現を以下の方法で確認した。 pTSX— 1 80 ί を保有する組換え菌を、 アンピシリンを添加した 2 mLの LB培地を用いて 37 °C、 1 6時間振とう培養した。 この培養菌液を LB培地を用いて 1 0倍に希釈し 、 28 °Cで 2時間培養したところで、 組換え型 p 1 80蛋白質の発現を誘導する ため、 培地にイソプロピル一^一 D—チォガラクトビラノシド (IPTG) を終濃度 0. 5mMとなる量添加した。 さらに 28°C、 4時間振とう培養を行い、 得られ る培養液を遠心分離して集菌し、 SDS— PAGE用のサンプル溶解液に溶かし 、 SDS— PAGE分析に供した。 図 3に示される様に分子量 1 35 kDa付近 に I PTG誘導依存的に蛋白質が検出さた。 ウェスタンブロット、 家兎抗 p 1 8 0抗体による免疫染色の結果から組換え型 pl800蛋白質の発現が確認された。
実施例 5 組換え p 1 80蛋白質の真核細胞における発現:
(1) 組換え p 1 80蛋白質の真核細胞発現べクタ一の構築
プラスミ ド pTSX— 1 80 f を制限酵素 B amH Iおよび制限酵素 Xh o I で消化して得られる 3. 8 kbpのDNA断片を、 市販の真核細胞発現べクタ一 P cDNA4のクロ一ニングサイト BamH I - X h o I部位の間に揷入連結し て、 真核細胞における p 1 80蛋白質発現ベクタープラスミ ド p c DNA- 1 8 0 f を作成した。 p 1 80蛋白質をコードする遺伝子が正方向に挿入されていれ ば p c DNA4の CMVプロモーターの制御下で 6 xH I Sタグの付加されたヒ p 1 80蛋白質をコードする翻訳域が形成されている。 p 1 80蛋白質発現べ クタ一プラスミ ド p cDNA— 1 80 f を用いて XL 1—b 1 u eを形質転換し 、 単一コロニーを複数個得て、 2mLの LB培地を用いて 37° C、 1 6時間振 とう培養後、 菌体からプラスミ ドを抽出した。 これらのプラスミ ド約 500 n g を制限酵素 H i n d I I Iで消化し, 0. 7 %ァガロース電気泳動にかけ、 2. 3 kbpの断片を生じるプラスミ ド pTSX— 1 80 f 由来の断片が正方向に揷 入されているクローンを選択した。 この組換え菌を培養して、 大量に調製し、 ァ ルカリ法によりプラスミ ドを抽出し、 Qiagen tip (キアゲン社製) を用いてトラ ンスフエクシヨン用のプラスミ ドを単離 '分取した。
(2) 組換え p 1 80蛋白質の真核細胞における発現:
29 3 T細胞および CH〇細胞へトランスフヱクシヨンすることにより組換 ぇ型ヒト 1 80蛋白質を培養細胞において産生させた。 293 T細胞および CHO細胞は 1 0 %ゥシ胎児血清を含むダルべッコ改変イーグル(DMEM)培地中 、 5%C02 存在下、 37° Cで培養した。 0. 7〜0. 8 X 1 05 個の細胞 を 6穴プレート (ヌンク社、 穴の直径 3 cm) に植え、 5%C02 存在下、 3 7° Cで 20〜22時間培養した。 新鮮培地に交換した細胞に (1) で得たプ ラスミ ド l ugと Fug en e試薬 (ベ一リンガ一社製) 3 u Lを含む DME MO. lmLを添加し、 5%C02 存在下、 37° Cで 30時間培養した。 細 胞を洗净、 回収し、 SDS— P AGE後に家兎抗 p 1 80抗体を用いてウェス タンプロッティングを行い、 p 1 80蛋白質の 293 T細胞中および CHO細胞 での組み換え型 p 1 80蛋白質の発現を確認した。
実施例 6 HCMVの UL 8 0プロテア一ゼを発現させた 2 9 3 T細胞中にお ける組み換え型 P 1 8 0蛋白質の分解:
実施例 5と同様にヒト p 1 8 0蛋白質発現ベクタープラスミ ド p cDNA— 1 8 0 f を 2 9 3 T細胞および CHO細胞へトランスフヱクションすることにより 組換え型ヒト P 1 8 0蛋白質を培養細胞において産生させた。 その際、 HCMV の UL 8 0遺伝子にコ一ドされるプロテア一ゼの発現プラスミ ド p C— U.L 8 0 を同時トランスフヱクションすることにより、 UL 8 0プロテア一ゼと組換え型 ヒト P 1 8 0蛋白質を共発現させ、 組換え型ヒト p 1 8 0蛋白質が UL 8 0プロ テア一ゼにより分解されるかどうかを調べた。 6穴プレート中で 8 0 %集密的に なるまで培養させた 29 3 T細胞および CHO細胞を新鮮培地に交換した後、 p c DNA - 1 8 0 f 0. 8 u g、 p C— UL 8 0 1 u g、 F u g e n e試薬 3 u Lを含む DMEMO. 1 m lを添加し、 5 %C〇2存在下、 3 7° Cで 3 0時間 培養した。 トランスフ クシヨンの 3 0時間後各々細胞を洗浄、 回収し、 SDS -PAGE, ウェスタンブロッテイング分析に供した。 UL 8 0プロテアーゼの 発現は (H I S) 6 タグ抗体により、 組み換え型 p 1 8 0蛋白質は家兎抗 p 1 8 0抗体により検出した。 図 4に 2 9 3 T細胞の例を示した。 組換え型 p 1 8 0蛋 白質のみを発現させた場合、 組換え型 P 1 8 0蛋白質は矢印に示した位置に過剰 に発現されているが (レーン 2) 、 組換え型 p 1 8 0蛋白質と UL 8 0プロテア —ゼ共発現させるとレーン 1のように組換え型 P 1 80蛋白質が分解され、 より 分子量の小さい蛋白質が検出されるようになった。 図 5 (レーン 1、 レーン 2) には CHO細胞の例を示したが、 2 9 3 T細胞の場合と同様に UL 8 0プロテア ーゼ共発現させとレーン 1のように組換え型 P 1 8 0蛋白質が分解された。 これ らにより組換え型 P 1 8 0蛋白質も UL 8 0プロテア一ゼにより分解されること があきらかとなった。
実施例 7 組換え p 1 8 0蛋白質変異体の真核細胞における発現および UL 8 0プロテア一ゼ基質としての効果:
ヒト P 1 8 0蛋白質はへルぺスウィルスプロテアーゼ切断可能配列を含んでお り、 HCMVの場合には配列番号 5中に 3力所 (6 9 9— 7 0 2、 8 0 5 - 8 0 9、 9 9 0 - 9 0 3 ) 含まれている。 これらの切断可能配列を人工的に改変した
組換え p 1 8 0蛋白質変異体を作成し、 UL 8 0プロテアーゼにたいする基質と しての効果を以下のように調べた。
プラスミ ド p c DNA— 1 8 0 f を s i t e— d i r e c t e d mu t a g e n e s i s キット (stratagene社製) を用いて、 ヘルぺスウィルスプロテア ーゼの切断可能配列に変異 (L 6 9 9 P、 V 8 0 5 A、 V 9 9 0 A) を加えた発 現ベクター p c DNA- 1 8 Omを作成した。 即ち、 配列番号 5中の 6 9 9番の ロイシン (L) をプロリン (P) に、 8 0 5番のバリン (V) をァラニンに、 9 9 0番のバリン (V) をァラニン (A) に変異させた。 このべクタ一 p c DNA ― 1 8 0 mによって発現される組換え p 1 8 0蛋白質変異体と、 UL 8 0プロテ ァーゼを実施例 6と同様の方法で CHO細胞中に発現させ、 組換え p 1 8 0蛋白 質変異体を家兎抗 p 1 8 0抗体により検出した。
UL 8 0プロテア—ゼが発現されない場合、 組換え型 p 1 8 0蛋白質変異体は 矢印に示した位置に過剰に発現されている (図 5、 レーン 2) 、 UL 8 0プロテ ァ一ゼが発現されると野生型組換え型 p 1 8 0蛋白質は分解され、 より分子量の 小さい蛋白質が検出されるようになるが (レーン 1 ) 、 組換え型 p 1 8 0蛋白質 変異体の場合は分解がおこらず (図 5、 レーン 3) 、 UL 8 0プロテアーゼによ る分解はこれらの切断可能配列依存的であることが示された。 即ち、 ヒト p 1 8 0蛋白質中のアミノ酸配列 6 9 9— 7 0 2、 8 0 5— 8 0 9、 9 9 0— 9 0 3が UL 8 0プロテアーゼによる切断に必要であることが明らかでる。
実施例 8 組換え型 GST融合 p 1 8 0蛋白質の作成:
( 1 ) GSTをコ一ドする遺伝子とヒト p 1 8 0蛋白質のヘルぺスウィルスプ 口テアーゼの切断可能配列を含んだ遺伝子を有する組み換えプラスミ ド pGEX - 1 8 0 s u bの作製およびそれを保有する組換え菌の作成:
上記ヒト p 1 8 0蛋白質の C末端領域をコードする遺伝子を含むプラスミ ド p U C - 1 8 0 C tをプライマ— '- aggatcctgagggaggtgaataaggagctg - 3'及び 5 ' -GCTCAGACAGAGGTGCCCTCCTT-3' ) を用いて P C R法により増幅し、 B amH I と No t I Iで消化後、 低融点ァガロース電気泳動で、 約 1. 4 kb pの断片を分 離し、 ヒト p 1 8 0蛋白質のヘルぺスウィルスプロテアーゼの切断可能配列を含 んだ遺伝子 DNA断片を得た。 次いでプラスミ ド p GEX— 5 X— 3を制限酵素
BamH Iと Notl Iで消化し、 先に得た 1.4kbpの DNA断片を揷入、 連結し、 組み 換えプラスミ ドを得た。 このプラスミ ドを、 大腸菌 XL 1— blue株に導入して形質 転換し、 マーカー遺伝子 Amprを利用して、 アンピシリン耐性を示す形質転換株を 選別し、 さらに pUC -180Ct 遺伝子をプローブとしたコロニーハイブリダィゼー シヨン法により選択した。 このうちの一^ 3について E.coli XL 1 -blue - pGEX- 180subと識別のための呼称を付した。 この形質転換株を日本国〒 305-8566茨城県 つくぱ市東 1丁目 1番 3号所在の経済産業省産業技術総合研究所生命工学工業技 術研究所に寄託して平成 12年 1月 7日に受領した受託番号 PERM P-17693を得た。
(2) 組換え型 GST融合 p 1 80蛋白質の調製:
上記組換え型ヒト P 1 80蛋白質を融合蛋白質として発現する発現用プラスミ ド PGEX— 1 80 subを保有する組換え菌を、 アンピシリンを添加した 1 Lの LB培地を用いて、 5 L容三角フラスコ中で 28°C、 6時間振とう培養した。 次 いで、 培養菌液の濁度 600 milにおける吸光度が 0. 5を越えた時点で、 GST 一組換え型 GST融合 p 1 80蛋白質の発現を誘導するため、 培地にイソプロピ ルー^ー D—チォガラクトピラノシド (IPTG) を終濃度 0. 3 mMとなる量添加 した。 さらに 28° (、 4時間振とう培養を行い、 得られる培養液を遠心分離して 集菌した。 集菌した菌体は、 グルタチオンセファロ一ス 4 Bカラム平衡化緩液 ( 5 OmM Tr i s - HC 1、 1 5 OmM NaC l、 ImM EDTA、 pH 8. 0、 以降、 緩衝液 Aと称する) 中に懸濁し、 超音波によって菌体を破砕した 。 その後、 遠心分離によって、 不溶性画分を分離し、 可溶性蛋白質を含有する上 清を得て、 緩衝液 Aで平衡化されたグル夕チオンセファロ一ス 4 Bカラムに負荷 し、 上清に溶解している GST融合 p 1 80蛋白質をカラムに特異的に吸着させ た。 カラムを、 ノ ッファー液 Aにより洗浄し、 未吸着分を洗い出す。 その後、 2 0 mM還元型グル夕チオンを添加したバッファ一液 Aによって、 カラムに吸着し ていた GST融合 p 1 80蛋白質を溶出させた。 溶出させた GST融合 p 1 80 蛋白質は緩衝液 B (5 OmM Tr i s— HC 1、 1 5 OmM NaC l、 lm M EDTA、 pH7. 4) に対して透析し、 限外濾過膜 (Amicon社製) により 濃縮した。 図 6に培養 I PTG誘導後の大腸菌の菌体 (レーン 1)、 可溶性蛋白 質を含有する上清 (レーン 2) 及び溶出させた GST融合 p 1 80蛋白質 (レー
ン 3) の SDS— PAGE分析における CBB染色の結果を示した。 この条件で GST融合 p 1 80蛋白質は他の菌体成分から効率良く分離できることが確認で きた。
実施例 9 ィンビトロにおける GST融合 p 1 80蛋白質の消化実験:
( 1 ) UL 8 0プロテアーゼの精製:
インビトロにおけるヘルスウィルスプロテア一ゼ消化実験に用いるプロテア一 ゼは、 培養細胞内で生産された HCMVプロテアーゼを精製して使用した。 また その精製には公知の技術であるペン夕 H i s TAG配列を利用して N i—NT A カラム (quiagen社製) によるァフィ二ティ一精製を行った。
1 5 cm培養シャーレに 80%集密的になった 293 T細胞の培地を新鮮培地 に交換し、 5%C02存在下、 37° Cで 20〜22時間培養した。 新鮮培地に 交換した細胞に P C— UL 80プラスミ ド 1 51^ と 1{ §: 6 11 6試薬 (ベ一リ ンガ一社製) 30 uLを含む DMEMlmLを添加し、 5%C02存在下、 37 ° Cで 30時間培養した。 細胞を PBSにより洗浄し、 溶解液 (1 トリ トン X 1 00、 1 0 mMイミダゾ一ル、 ぺプス夕チン 1 u g/mL、 ロイぺプチン 5 u gZmL、 NaC l 0. 3 M、 50 mMトリス H C 1 p H 7. 4 ) を加え水 上に 30分静置後、 1 000 O xgで 30分遠心し、 可溶性蛋白質を含有する上 清を得た。 上清に溶解している UL 80蛋白質を N i—NTAカラムに特異的に 吸着させた。 カラムを、 バッファー液 A (2 OmMィミダゾ一ル、 Na C 1 0. 3M、 50mMトリスHC l pH 7. 4 ) により洗浄し、 未吸着分を洗い 出した後、 20 OmMイミダゾールを添加したバッファー液 Aによって、 カラム に吸着していた UL 80蛋白質を溶出させた。 溶出させた UL 80蛋白質は緩衝 液 B (5 OmMトリス—HC 1、 1 50 mM NaC l、 1 mM EDTA, p H7. 4) に対して透析し、 限外濾過膜 (アミコン社製) により濃縮し、 終濃度 50 %となるようにグリセロールを加えて— 20° Cで保存した。 この UL 80 プロテア一ゼを以下に示す手順でインビト口における GST融合 p 1 80蛋白質 の消化実験に用いた。
(2) インビト口における GST融合 p 1 80蛋白質の消化実験:
プロテア—ゼ活性測定用バッファ一に、 該組換え基質を 0. 3 zgZ40 uL
及び該組換え型プロテアーゼを 1 O uL添加し、 4° Cで 1 6時間インキュべ一 ションした後、 2 Xサンプルバッファーを添加することで反応を停止させた。 そ の反応液を SDS— PAGE分析、 ウエスタンプロツ ト後に、 家兎抗 p 1 80抗 体を用いて免疫染色を行った。 図 7に示す通り、 HCMVプロテア一ゼを加える ことにより GST融合 p 1 80蛋白質組換え基質の分解が確認された。
本発明で提供されるへルぺスウィルスプロテア一ゼの新規内因性基質であるヒ ト P 1 80蛋白質は、 実施例 1 0で説明するようにヒトヘルぺスウィルス感染細 胞中で感染後期において分解され、 ヘルぺスウィルスを感染後期に進まないよう に阻害する薬剤 (例えばホスホノ酢酸を用いる) で処理することによってその分 解が抑制された。
実施例 1 0 インビト口における GST融合 p 1 80蛋白質の消化実験 I I
(1) 大腸菌内で生産した UL 80プロテアーゼの精製
大腸菌内で生産した HCMVプロテアーゼを用いてインビト口における消化 実験を行った。 実施例 1で用いた (H I S) 6 タグ付加された UL 80プロテ ァ一ゼをコードする DNA断片を実施例 2— 3で作成した大腸菌用蛋白発現プ ラスミ ド pTSX= lにサブクロ一ユングして (H I S) 6 夕グ付 U L 80プ 口テア一ゼ発現プラスミ ド pTSX— UL 80を構築した。 またその精製には 公知の技術である P e n t a H i s TAG配列を利用して TAL ONカラム
(clontech社製) によるァフィニィティ精製を以下のように行った。
HCMVプロテア一ゼを発現する発現用プラスミ ド pTSX— UL 80を保有 する組換え菌を、 アンピシリンを添加した 0. 4Lの LB培地を用いて、 2L 容三角フラスコ中で 38°Cで振とう培養した。 次いで、 培養菌液の濁度 600 nmにおける吸光度が 0. 5を越えた時点で、 HCMVプロテアーゼの発現を 誘導するため、 培地にイソプロピル一^一 D—チォガラクトピラノシド ( I P TG) を終濃度 0. 2mMとなる量添加した。 さらに 37°C、 3時間振とう培 養を行い、 得られる培養液を遠心分離して集菌した。
集菌した菌体は、 可溶化用緩衝液 A (2 OmM Tr i s— HC 1、 300 mM NaC l、 1 OmM 2 -ME. ぺプス夕チン 1 g/mL. p H 8 • 0、 1 OmM イミダゾ一ル) 中に懸濁し、 超音波によって菌体を破砕した
。 その後、 遠心分離によって、 不溶性画分を分離し、 可溶性蛋白質を含有する 上清を得た。 上清に溶解している UL 80蛋白質を可溶化用緩衝液 Aに平衡化 した TALONカラムに特異的に吸着させた。 カラムを、 洗浄用緩衝液 B (2 OmM イミダゾ一ル、 NaC l 0. 3M、 50mM Tr i sHC l p H 8. 0、 1 OmM 2—ME) により洗浄し、 未吸着分を洗い出した後、 2 0 OmMィミダゾールを添加した可溶化用緩衝液 Aによって、 カラムに吸着し ていた UL 80蛋白質を溶出させた。 溶出させた UL 80蛋白質は活性測定用 緩衝液 C (PBS、 ImM DDT、 1 mM EDTA、 1 0%グリセ口一ル ) に対して透析し、 限外濾過膜 (Amicon社製) により濃縮した。 この UL 80 プロテア一ゼを以下に示す手順でインビト口における GST融合 p 1 80蛋白 質の消化実験に用い 。
(2) インビト口における GST融合 p 1 80蛋白質の消化実験
プロテアーゼ活性測定用緩衝液じに、 該組換え基質を 1. 0 / g/30 L 及び該組換え型プロテア一ゼを 3. 5〃L添加し、 30 °Cでインキュべ一ショ ンした後、 サンプルバッファーを添加することで反応を停止させた。 その反応 液を SDS— PAGEした後、 抗 p 1 80抗体を用いてウエスタンブロッ 卜を 行った。 実施例 9と同様に、 HCMVプロテアーゼを加えることにより GST 融合 P 1 80蛋白質組換え基質の分解が確認された。 この反応の至適 pHは中 性付近 (PH7. 5) で、 各種プロテア一ゼ阻害剤 (アンチパイン、 キモス夕 チン、 ロイぺプチン、 ァプロチニン、 ぺプス夕チン、 べス夕チン、 Έ— 64、 PMSFを含む) の添加によって阻害は観察されなかった。 古典的セリンプロ テア一ゼ阻害剤であるァプロチニン、 P MS Fによって阻害されにくいという 特徴は、 ヘルぺスウィルスプロテアーゼのこれまで報告されてきた特性と一致 するものである。 更に、 活性測定用緩衝液中のグリセロール量を変化させて消 化実験を行った。 GST融合 p 1 80蛋白質組換え基質の分解産物は抗 p 1 8
0抗体により染色されたバンドをデンシトメ一ターにより定量した。 反応液中 のグリセロール量を 40 %まで増加させると分解産物量は 1 0%グリセロール の場合に比べて約 2. 7倍に増加した (表 1) 。 この結果から、 ヘルぺスウイ ルスプ πテア一ゼを用いてアッセンブリープロティン前駆体中の認識配列を利
用したペプチド性基質の消化を行ったこれまでの報告 (参考文献、 Antiviral Chemistry & Chemotherapy, 2000, 11:1-22, Waxman L and Darke PL ) と同 様に、 p 1 8 0蛋白質組換え基質の UL 8 0プロテア一ゼによる試験管内の分 解も抗カオトロピック効果のある薬剤により昂進することが明らかとなつた。 〔表 1〕
P 1 8 0蛋白組換え基質の UL 8 0プロテアーゼによる分解 産物とグリセ口一ル濃度の関係
分解産物
グリセロール (%) 反応産物量 (面積) :比
0 5 6 2 3 0 7 6
1 0 73 79 1 0 0
2 0 1 44 7 0 1 9 6
3 0 1 8 2 7 0 2 2 8
4 0 2 0 64 0 2 8 0
実施例 1 1
( 1 ) ヒトヘルぺスウィルス感染細胞中におけるヒト p 1 8 0蛋白質の分解: ヒトヘルぺスウィルスとして HCMV (AD169株) を使用した場合の実施例を 示す。 宿主細胞としては HCMVの許容細胞であるヒト胎児肺繊維芽細胞 (MRC - 5)を用いた。 6ゥエルの培養ディッシュに培養された培養後 3か目の 8 0 %集密 的になったヒト胎児肺繊維芽細胞の培養液を除いたあと、 HCMV (AD169株) を MO I (感染多重度) 1一 3プラーク形成能 Z細胞 (p ί u/c e 1 1 ) の範 囲で 3 7 °C 1時間の条件で接種した。 ウィルスを含まない液で全く同様の処理を 施した対照細胞を同時に作成した。 5 %FCSを含んだ培養培地を加えて 3 7°C 、 5 %C02 インキュベーターで培養した。 培養後 2、 4、 6日目に各々細胞を 洗浄、 回収し、 SDS— PAGE、 ウエスタンブロッテッング分析に供した。 各 種の特異抗体を用いて免疫染色した結果を図 7に示した。 ウィルス接種細胞にお いてのみ p 1 8 0蛋白質が接種後 4日から 6日に分解が認められた (図 8参照) 。 接種後 4日から 6日という時期から判断して p 1 8 0蛋白質の発現低下は感染
後期におこったことが推察されたので、 H C M V感染を感染後期まで進まないよ うに阻害する薬剤ホスホノ酢酸 0 . I mMで処理すると、 p 1 8 0蛋白質の分解 は抑制された。
( 2 ) 蛍光抗体法による観察:
さらに同様にウィルス接種細胞、 ウィルス非接種対照細胞を作成し、 H C MV 後期抗原である g H抗原に対する抗体 (A B I社製) と、 p 1 8 0蛋白質に対す る抗体を使用して蛍光抗体法を用いて共焦点蛍光顕微鏡によって観察した。 感染 後期のマーカーである g H抗原が陽性になった細胞では、 p 1 8 0蛋白質抗原が 消失していた。 これらよりヒト p 1 8 0蛋白質は H C MV感染細胞中で感染後期 において分解されることが明らかとなった。 .
以上よりヒト p 1 8 0蛋白質は ( 1 ) ヒトヘルぺスウィルス感染細胞中、 およ び (2 ) ヘルぺスウィルスプロテアーゼを強制的に発現させた培養細胞中におい て切断され、 (3 ) 分子内にプロテアーゼ切断可能配列を含み、 (4 ) インビト 口におけるヘルぺスウィルスプロテア一ゼ消化実験において切断を受ける分子で あることがあきらかである。
〔発明の効果〕
ヘルぺスウィルスプロテア一ゼがアッセンブリー蛋白質 (前駆体蛋白質) 以外 の蛋白質に作用することは全く知られておらず、 アツセンブリ一蛋白質以外の基 質が存在するとは予想されていなかった。 本発明により内因性基質であることが 明らかになった P 1 8 0蛋白質とアッセンプリ一蛋白質とは細胞内における局在 などの違いがあるので、 ヘルぺスゥィルスプロテアーゼの感染における役割とし て新たな作用機序が想定される。 このことはへルぺスウィルスプロテア一ゼの阻 害剤の開発において非常に重要であり、 新たな方向性を示唆する。 つまり、 この ような従来予想もされていなかったヘルぺスウィルスプロテアーゼの新規な重要 な内因性基質が同定されたことにより、 予想されていたものとは異なる機構にも とずく新たな抗ヘルぺスウィルス剤の開発を導くものである。
抗ヘルぺスウィルス剤としてのへルぺスウィルスプロテア一ゼ阻害剤の開発の ためには適切な活性測定法の使用が必須であるが、 これまでの前駆体蛋白質中の 切断配列を利用した基質を使用した活性測定法では十分な反応速度を示さず、 プ
口テア一ゼ活性阻害物質の効率的な評価を困難にしてきた現状がある。 ヒト p 1 8 0蛋白質に存在する切断配列を利用することにより、 より効率的な活性測定法 を考案することが可能であり、 ひいては抗ヘルぺスゥィルス剤の開発を強力に推 進する可能性がある。 また、 組み換えヒト p 1 8 0蛋白質は大腸菌において容易 に可溶性蛋白質として回収できるので組み換えヒト 1 8 0蛋白質基質として使用 することも可能となる。
またヒト p 1 8 0蛋白質がヒトヘルぺスウィルス感染細胞中で、 感染後期に特 異的に分解されることを利用して新しいヒトヘルぺスウィルスの検出方法を考案 することが可能である。
〔図面の簡単な説明〕
図 1はヒト P 1 8 0蛋白質の全長をコードする c DNAを N末端領域 (pUC- pi 80Nt) 反復配列領域(pUC- pl80Np)及び C末端領域 (pUC-pl80Ct) に分けて増幅し てべクタ—へ挿入することからなるプラスミ ド pUC— 1 8 0 ίの構築工程、 及 び pUC— 1 8 0 f と pTSX— 1 とを制限酵素で処理し pUC— 1 8 0 f を p TSX- 1に連結挿入することからなる pTSX— 1 8 0 f の構築工程を示す。 図 2はヒトサイトメガロウィルスの UL 8 0プロテア一ゼを発現ざせた 2 9 3 T細胞中における天然型 p 1 8 0蛋白質の分解結果を示す。
図 3は組換え型 p 1 8 0蛋白質の大腸菌における発現を SDS— PAGE分析 においる C B B染色によって示す。
図 4はヒトサイトメガロウィルスの UL 8 0プロテアーゼを発現ざせた 2 9 3 T細胞中における組換え型 p 1 8 0蛋白質の分解結果を示す。
図 5はヒトサイトメガロウィルスの UL 8 0プロテアーゼを発現ざせた CHO 細胞中における組換え型 P 1 8 0蛋白質の分解 (レーン 1 ) 及び組換え型 p 1 8 0蛋白質変異体の非分解 (レーン 3) の各結果を示す。
図 6は大腸菌で発現した GST融合組換え p 1 8 0蛋白質の精製結果を、 培養 I PTG誘導後の大腸菌の菌体 (レーン 1 ) 、 可溶性蛋白質を含有する上澄み ( レーン 2) 及び溶出させた GST融合 p 1 8 0蛋白質 (レーン 3) の SDS— P A G E分析における C B B染色によつて示す。
図 7はヒトサイトメガロウィルスプロテアーゼの添加による GST融合 p 1 8
0蛋白質組換え基質のィンビトロにおける分解結果を示す。
図 8はヒトヘルぺスウィルス感染細胞中におけるヒト p 1 8 0蛋白質の分解が ウィルス接種細胞においてのみ且つ感染後期において進行する結果を示す。