明 細 書 電気特性評価装置 技術分野
本発明は、 極微小領域における電子物性を測定する電気特性評価装置に関する ものである。 背景技術
従来、 極微小領域における電子物性を測定する方法としては、 配線を用いて極 微小領域とマクロな電極、 ないし測定プローブとを電気的に接続する方法が知ら れていた。
例えば、 サ一フェス · サイエンス、 第 3 8 6号 ( 1 9 9 7年) 1 6 1頁〜 1 6 5頁 〔 S u r f a c e S c i e n c e 3 86 ( 1 9 9 7 ) P P. 1 6 1 - 1 6 5〕 にその例が記載されている。 この方法では、 マスクを用いた蒸着により、 mオーダ一幅の金属配線が電気特性を測定すベき極微小領域に向けて形成され ている。
また、 ネーチヤ一、 第 39 3号 ( 1 99 8年) 4 9頁〜 52頁 〔 N a t u r e
393 ( 1 9 9 8 ) P P. 4 9— 5 2〕 には、 力一ボン ·ナノチューブの特性 を、 配線接続により測定した例が報告されている。 この方法では、 予め配線が形 成された基板上にカーボン ·ナノチューブを付着させることで、 カーボン · ナノ チューブを配線に接続し、 その電気特性を測定している。
一方、 先端の鋭利な金属探針を極微小領域に直接接触させることで、 電気特性 を測定しょうとする方法も報告されている。 例えば、 走査型トンネル顕微鏡法を 用いた方法が、 応用物理、 第 6 7巻、 第 1 2号 ( 1 99 8年) 1 36 1頁〜 1 3 6 9頁に記載されている。
また、 特開平 1 0— 5 60 4 5には、 サブ m領域に形成された電子素子の特 性を測定する方法が記載されている。 これらの方法では、 探針 *試料間にトンネ ル電流が流れるまで探針を試料に接近させることで極微小領域における両者の接
触をはかろうとしている。 また、 探針 '試料間の接触抵抗を低減するため、 トン ネル電流検出後、 トンネル電流をサ一ボ信号とする探針位置のフィードバック制 御を止め、 さらに探針 ·試料間の距離を強制的に縮めてから電気特性測定を行う 方法についても述べられている。 発明の開示
しかしながら、 上記した従来の配線を形成する方法では、 最先端の半導体加工 技術を用いても、 配線幅と間隔は 0 . 1 mより小さく出来ず、 n mスケールの サィズの構造には対応できない。
また、 配線と測定すべき構造物との電気的接続を単に付着によって行うため、 配線 ·試料間の接触抵抗が高くなる問題がある。 例えば、 前記力一ボン . ナノチ ユーブの測定では、 接触抵抗が 1 Μ Ω程度と見精もられている。 量子化コンダク タンスが現れるような構造部の抵抗値は高々数 k Ωのオーダ一であり、 これを測 定する場合、 従来法では、 測定すべき抵抗よりも接触抵抗の方が高いという問題 があつた。
さらに、 予め配線が形成されている場合、 任意の構造、 大きさの試料に対応で きないという問題もある。 試料に対して後から配線を形成すれば、 試料に合わせ た配線の形成が可能ではあるが、 配線形成時に試料に損傷を与え、 正しい測定を 行えなくなる可能性が極めて高くなる。
一方、 上述した鋭利な探針を用いる方法では、 探針 ·試料間にトンネル電流が 流れるまで探針を試料に接近させた状態で電気特性測定を行う。 この場合、 接触 抵抗は 1 Μ Ωから 1 程度であり、 半導体試料を測定する場合でさえも、 非常 に高い接触抵抗が測定の信頼性や精度を下げてしまう。 このため従来法では、 さ らに探針を試料に一定距離接近させて、 接触抵抗の低減を図っていた。
しかし、 この場合、 探針位置のフィードバック制御は行われないので、 試料の 温度ドリフ トなどにより、 測定中に、 探針♦試料間の位置関係、 特に距離が変化 してしまう可能性があった。 トンネル電流が探針 ·試料間に流れるような領域 ( トンネル領域) では、 探針 ·試料間の距離が 1 A変化すると、 接触抵抗が 1桁変 化してしまう。 従って、 電気特性測定中に探針位置のフィードバック制御を行わ
T 00/08776 ない場合、 探針 '試料間の位置関係は保証されないので、 測定結果に含まれる接 触抵抗の絶対値も分からないし、 一定であることさえも保証されないという問題 があった。
本発明は、 上記状況に鑑みて、 低接触抵抗で極微小領域に複数の金属探針を接 触させることができる電気特性評価装置を提供することを目的とする。
本発明では、 探針位置を原子間力顕微鏡法により制御することで、 探針 .試料 間の接触を図るようにした。 このため、 電気特性測定中も探針位置の制御ができ る。 探針 ·試料間の接触抵抗を低減するためには、 探針 ·試料間に働く原子間力 が斥力となるような領域で探針位置の制御を行うようにした。
また、 本発明では、 極微小領域への複数の探針のアプローチを可能にするため 、 力ンチレバーの自由端部にこの自由端部よりも先端の飛び出した金属探針を有 するカンチレバーを作製し、 用いるようにした。 これにより、 金属探針先端同士 が接触しない範囲で複数の金属探針同士を接近させることができる、 すなわち、 従来の走査型トンネル顕微鏡法による方法と同等の極微小領域への探針のァプロ ーチを可能にした。 金属探針をカンチレバーの自由端部に形成するため、 本発明 では、 収束ィォンビームによる切断 ·接着技術を用いるようにした。
これにより、 先端の曲率半径が数十 n m、 長さが数十 m程度の金属探針を力 ンチレバーの自由端部に移植するようにした。 各探針の位置を独立に制御できる ようにするため、 本発明では、 カンチレバーの変位を検出する手段として、 カン チレバーに形成された抵抗体の抵抗値変化を検出するようにした。
また、 別の方法として、 カンチレバーに形成された圧電体の圧電効果を検出す るようにした。 これを可能にするため、 本発明によるカンチレバーには、 抵抗体 ないし圧電体に加え、 カンチレバーの変位検出用の 2つの電極と、 試料の電気特 性測定用の 1つの電極が形成されている。 図面の簡単な説明
第 1図は、 従来型力ンチレバーを用いた場合の模式図である。
第 2図は、 従来の力ンチレバーを用いた測定方法を示す図である。
第 3図は、 本発明の第 1実施例を示す力ンチレバーの模式図である。
第 4図は、 本発明による複数の探針を接近させた場合の模式図である。
第 5図は、 本発明の第 1実施例を示すカンチレバー基板の製造工程 (その 1 ) を示す図である。
第 6図は、 本発明の第 1実施例を示すカンチレバー基板の製造工程 (その 2 ) を示す図である。
第 7図は、 本発明の第 1実施例を示すカンチレバー基板の製造工程 (その 3 ) を示す図である。
第 8図は、 本発明の第 1実施例を示す力ンチレバー基板への金属探針の先端部 の移植手順の一例を示す図である。
第 9図は、 本発明の第 2実施例を示す力ンチレバーを搭載した電気特性測定装 置のシステム概略図である。
第 1 0図は、 本発明の電気特性測定装置のシステムの主要部である探針移動機 構部を拡大した模式図である。
第 1 1図は、 本発明の第 3実施例を示す探針 ·試料間距離と、 探針 .試料間の 接触抵抗の関係を模式的に示す図である。
第 1 2図は、 本発明の第 3実施例を示す探針 ·試料間距離と探針 ·試料間に働 く力の関係図である。
第 1 3図は、 本発明を用いたナノ トランジスタ動作特性測定の模式図である。 第 1 4図は、 本発明の第 4実施例を示すカンチレバーの模式図である。
第 1 5図は、 本発明の第 5実施例を示すカンチレバーの作製工程図である。 第 1 6'図は、 本発明のカンチレバーの使用態様を示す図である。 発明を実施するための最良の形態
本発明では、 自由端部に金属探針が設置された力ンチレバーを複数本搭載した 装置により、 極微小領域における電気特性を測定する。 金属探針の先端がカンチ レバー自由端部よりも飛び出した力ンチレバ一を用いることで、 走査型トンネル 顕微鏡法と同等の最小探針間距離 ( 1 0 n mレベル) を実現する。
さらに、 探針位置の制御を原子間力顕微鏡法により行うことで、 電気特性測定 中の探針位置の制御を可能にし、 電気特性測定中の温度ドリフ トによる探針♦試
料間の位置ずれを無く した。 さらに、. 探針 ·試料間の接触抵抗を低減するため、 本発明では、 探針位置の 御を、 探針 ·試料間に働く原子間力が斥力領域となる ようにする。 これにより、 極微小領域へ複数本の探針を低接触抵抗で接触させ、 極微小領域の電気特性を精度良く測定する。
第 3図は本発明の第 1実施例を示すカンチレバーの模式図であり、 第 3図 ( a ) はカンチレバーの下面図 (試料側から見た図) を示す。 なお、 このカンチレバ 一の製造工程の詳細は、 第 5図〜第 8図を用いて後述する。
カンチレバー下面には抵抗体の抵抗値測定用電極 1, 2が形成されており、 コ ンタク トホール電極 3, 4を介して抵抗部 5 〔第 3図 ( a ) では抵抗の記号で表 示〕 に接続されている。 これにより、 カンチレバー 6の撓みによる抵抗部 5の抵 抗値の変化を検出する。 さらに、 このカンチレバー 6上には、 カンチレバー 6の 自由端部に到る電極 7が形成されており、 その先端に金属探針 8が設置されてい る。 その先端はカンチレバー 6の自由端部よりも飛び出している。 このため、 複 数の探針同士を接近させても、 金属探針同士が接触する前に、 カンチレバーの自 由端部同士が接触することは無い。
すなわち、 金属探針先端部の曲率半径の許す範囲内で金属探針同士を接近させ ることができる。 これが、 先端の鋭利な金属探針をプローブとして用いる走査型 トンネル顕微鏡法と同等の最小探針間隔を実現できる理由である。 なお、 図には 示されていないが、 電極 1, 2, 7はマクロな測定系に接続されている。
第 4図は 4つの探針 1 4, 1 5, 1 6, 1 7をお互いに接近させた場合の模式 図であり、 図中、 円内は金属探針先端部 1 4 ' , 1 5' , 1 6 ' , 1 7 ' を拡大 したものである。 各カンチレバー 1 8, 1 9, 20 , 2 1が最小探針間隔を決定 しているのではなく、 金属探針先端部 1 4 ' , 1 5 ' , 1 6 ' , 1 7 ' の曲率半 径がそれを決定していることが分かる。
従って、 本発明では、 先端の曲率半径の小さい、 例えば、 1 O nmの先端曲率 半径を持った金属探針を搭載したカンチレバーを用いれば、 1 O nmレベルの最 小探針間隔を実現できることになる。
第 1 6図は先端の曲率半径 1 0 n mの 2つの探針 6 1、 62が最小探針間隔で 試料表面 63に接触している状態を示している。
参考のため、 半径 1 0 n mの円をその円周部が探針 6 1, 6 2先端部に一致す るように示した。 各探針 6 1 , 6 2は、 それぞれ試料表面 6 3と A点, B点で接 触している。
本発明では、 試料の電気特性評価を目的としているので、 この試料表面 6 3上 に接触している部分同士の間隔 (第 1 6図の A— B間距離) を探針間隔と呼ぶ。 測定では、 探針 6 1 , 6 2を、 探針間隔がトンネル電流が流れる程度にまで互い に接近させることが出来る。
すなわち、 探針同士を 1 n m程度にまで近づけることが出来る。 ただし、 1 n mの距離にあるのは探針先端同士ではないので、 A— B間距離、 すなわち最小探 針間隔は 2 1 n mとなる。 以上は、 探針先端の形状を完全な球で仮定した場合で あるが、 例えば、 図中に破線で示す形状の探針 (曲率半径 1 0 n m ) を用いれば 、 より小さい最小探針間隔を実現できることが分かる。
これに対して、 第 1図 ( a ) に示すように、 従来型のカンチレバーでは、 選択 ェツチングにより探針 2 2が力ンチレバ一 2 3の自由端付近に形成されていた。 このため、 ビラミ ッ ド型の探針 2 2先端同士の最近接距離はビラミッ ドの大きさ に依存していた。 一般的なカンチレバーの場合、 ピラミッ ド型探針の底辺の長さ は 5 0 m程度であり、 2探針間の最近接距離は 1 0 0 / m以上となる。 このた め、 従来型のカンチレバ一を用いただけでは、 ナノスケール領域の電気特性評価 は出来なかった。
また、 従来型力ンチレバーでは、 ビラミツ ド型探針部は、 エツチングに対して 異方性を示すシリコンなどの半導体ないし絶緣体で形成されており、 金属ではな い。 すなわち、 探針 ·試料間の接触抵抗に加え、 探針自身の抵抗も測定結果に含 まれてしまうため、 試料の電気伝導測定には適していなかった。
これを避けるため、 従来型カンチレバ一を用いて電気特性測定 (ただし、 一探 針測定) を行うためには、 カンチレバ一下面全体に金属を蒸着し、 ビラミツ ド型 探針部を金属化するという方法がとられていた。
ただ、 この場合、 カンチレバーの撓み検出のために、 その上に電極を必要とす るカンチレバー、 すなわち、 カンチレバーに形成された抵抗体の抵抗変化ゃ圧電 体の電位変化を検出する自己変位検出型力ンチレバーでは、 蒸着により電極同士
、 ないし、 電極 *探針間がショートしてしまう。
その対策として、 金属を蒸着して探針を金属化する場合、 第 1図 ( b ) に示す ような、 光てこ方式と呼ばれる変位検出方式の力ンチレバーが用いられていた。 この方法では、 半導体レーザ一 24により力ンチレバー 2 5の上面にレーザー光 2 6を照射し、 反射光 2 7を検出器 2 8でとらえていた。
すなわち、 カンチレバ一 2 5が撓むとレーザ一光 26の反射角 が変化するた め、 検出器 28に入射する反射光 2 7の強度が変化する。 その変化を検出して力 ンチレバ一 25の撓みを検出するものである。 この方法では、 第 1図 ( b) に示 すように、 カンチレバー 25下面に金属の蒸着膜 2 9を形成することができる。 しかし、 この方法では、 各カンチレバーに対して、 半導体レーザーと検出器が それぞれ必要であり、 しかも各カンチレバ一、 半導体レーザー、 検出器の位置関 係が常に一定に保たれている必要がある。 このため、 従来、 カンチレバー、 半導 体レーザー、 検出器の位置関係を固定し、 試料位置を変化させることで、 探針 - 試料間の相対位置を変化させていた (一探針測定) 。
し力、し、 試料を移動させるだけでは、 試料に対して複数のカンチレバーの位置 を自由に設定することが出来ない。 すなわち、 複数の探針を必要とする電気特性 評価には適用できないことになる。
以上のような理由から、 極微小領域の電気特性測定を複数の探針を用いて行う 本発明では、 第 3図に示すような、 カンチレバーを用いる。
第 3図 ( b) は第 3図 (a ) の A— A断面図である。 コンタク トホール電極 3 を介して、 抵抗値測定用電極 1 と抵抗部 5が接続されている。 この抵抗部 5は、 例えば、 n型のシリコン基板 1 1にボ口ンを不純物として打ち込むことで P型の 領域を形成することで作製できる。 P型の基板に対して、 燐などを打ち込み、 n 型の領域を形成しても良い。
この抵抗部 5の形成方法については、 プロシ一ディングス ·ォブ ' トランスド ユーザーズ ( 1 9 9 1年) 4 4 8頁〜 45 1頁 (P r o c e e d i n g s o f
T r a n s d u c e r s '9 1 ( I EEE, e w Y o r k, 1 9 9 1 )
P. 44 8 - 4 5 1 ) に詳しく述べられている。 力ンチレバー 6が撩むことによ
る、 すなわち、 抵抗部 5力く撓むことによる抵抗値の変化を検出して、 カンチレバ 一の撓み量を知るのである。 この抵抗部 5は、 探針に接続する電極等と絶緣膜 9 により電気的に絶縁されている。 また、 カンチレバー 6は、 酸化膜 1 2を介して 、 支持基板 1 0により支えられている。
第 3図 ( c ) は第 3図 (a ) の B— B断面図である。 電気測定用電極 7の先端 部に金属探針 8が導電性の部材 1 3により接着されている。 金属探針 8および電 極 7は、 絶縁膜 9により抵抗部 5等と絶縁されている。
第 3図 (d ) は第 3図 (b ) 及び第 3図 ( c ) の C一 C断面図である。 抵抗部 5の両端がコンタク トホール電極 3, 4と接続している。 第 3図 ( c ) から明ら かなように、 本発明によるカンチレバー 6は、 カンチレバー 6の先端に金属探針 8を有し、 その金属探針 8の先端は力ンチレバ一自由端部よりも飛び出している 第 5図〜第 7図は本発明の第 1実施例を示す力ンチレバー棊板 (探針付着前の カンチレバー) の製造工程図であり、 これらの図において、 左側は断面図、 右側 は上面図を示している。
基板として、 酸化膜 ( 1 m) が挟まれた ( 1 0 0 ) 面 SO I (S i l i c o n On I n s u l a t o r ) ウェハ 3 0 〔つまり、 上から S i層、 酸化膜、 基板〕 を用いる 〔第 5図 (a ) 参照〕 。 まず、 その SO I ウェハ 30にイオン打 ち込みを行うためにマスク 3 1を基板上に形成する 〔第 5図 ( b ) 参照〕 。 次い で、 イオン打ち込みを行い、 イオン拡散領域 32を形成する 〔第 5図 ( c ) 参照 〕 。 次に、 マスク 3 1を除去し 〔第 5図 ( d ) 参照〕 、 次いで絶縁膜 3 3を形成 する [第 5図 ( e ) 参照〕 。 続いて、 コンタク トホール 3 5 (電極) を形成する ためのマスク 3 4を形成する 〔第 5図 ( f ) 参照〕 。
次に、 ェツチングにより絶緣膜 3 3に穴 3 6を開ける 〔第 6図 ( a ) 参照〕 。 次に、 コンタク トホール電極 3 7を形成し 〔第 6図 ( b ) 参照〗 、 次いで、 マス ク 34を除去する 〔第 6図 ( c ) 参照) 。 次に、 電極形成用のマスク 3 8を形成 し 〔第 6図 (d ) 参照〕 、 次いで、 電極 3 9を形成する 〔第 6'図 ( e ) 参照〕 。 その後、 マスク 3 8を除去する 〔第 6図 ( f ) 参照〕 。
次に、 カンチレバーとなる部分以外の S i層をエッチングするためのマスク 4
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0を形成し 〔第 7図 ( a ) 参照〕 、 次に、 絶縁膜 3 3および S 0 Iウェハ 3 0の S i層をエッチングする 〔第 7図 ( b ) 参照〕 。 次に、 マスク 4 0を除去して、 S O I ウェハ 3 0の酸化 層上にカンチレバーが形成される 〔第 7図 ( c ) 参照 〕 。 次に、 カンチレバー上面 (図では下側の面) にマスク 4 1を形成し 〔第 7図 ( d ) 参照〕 、 次に、 S 0 I ウェハ 3 0の基板をェツチングする 〔第 7図 ( e ) 参照〕 。 最後に S 0 I ウェハ 3 0の酸化膜とマスク 4 1を除去して力ンチレバ一 基板が完成する (第 7図 ( f ) 参照〕 。
本発明によれば、 このようにして完成したカンチレバー基板に、 金属探針を移 植する。 すなわち、 電解研磨した金属探針の先端部を収束イオンビームを用いて 切り出し、 カンチレバー基板の自由端部に移植する。
第 8図は本発明の第 1実施例を示す力ンチレバー基板への金属探針の先端部の 移植手順の一例を示す。
( 1 ) まず、 第 8図 ( a ) に示すように、 収束イオンビーム装置の試料ステ一 ジ 6 ϋ上の探針ホルダ 5 ϋに電解研磨により先端をとがらせた金属探針 5 1力、 また、 カンチレバ一ホルダ 5 2に、 前述の製造方法により形成したカンチレバ一 基板 5 3が取り付けられている。 なお、 第 8図 ( a ) には収束イオンビーム装置 の試料ステージ 6 0しか図示していないが、 このような状態で金属探針 5 1と力 ンチレバ一基板 5 3を、 収束イオンビーム装置の試料室にセッ トする。
( 2 ) 次に、 第 8図 ( b ) に示すように、 この収束イオンビーム装置には、 探 針搬送用の先端の鋭利なプローブ 5 4が組み込まれている。 このプローブ 5 4を 金属探針先端部に接触させる。
( 3 ) 次に、 第 8図 ( c ) に示すように、 収束イオンビーム 5 5をプローブ 5 4 ·金属探針 5 1の接触領域に照射すると同時に、 反応性ガス 5 6、 例えばへキ サカルボニルタングステン 〔W ( C O ) b 〕 を試料室に導入する。 これにより、 前記接触領域に接着部材 5 7 (例えばタングステン) が成長し、 プローブ 5 4と 金属探針 5 1が接着される。
( 4 ) 続いて、 第 8図 (d ) に示すように、 収束イオンビーム 5 5により、 金 属探針を切断する。 このとき、 切断は、 探針 5 1 とプローブ 5 4を接着した部分 より探針 5 1の根元側で行う。
( 5 ) 次に、 第 8図 ( e ) に示すように、 このようにして切り出した金属探針 先端 5 8をカンチレバー基板 5 3上に、 プローブ 5 4を移動させて搬送する。
( 6 ) その後、 第 8図 ( f ) に示すように、 反応性ガス 5 9を導入しながら収 束イオンビーム 5 5を金属探針先端部 5 8の根元に照射して、 金属探針先端部 5 8をカンチレバー基板 5 3上に接着する。 このとき、 反応性ガス 5 9は導電性材 が形成されるような種類の物を選んでおく。 例えば、 へキサカルボ二ルタングス テンを用いればタングステンが成長することは前述の通りである。 これにより、 カンチレバー基板 5 3上の電極と金属探針 5 8間の機械的接着と同時に、 電気的 な接続が図られる。
( 8 ) 次に、 第 8図 ( g ) に示すように、 収束イオンビーム 5 5により、 プロ ーブ 5 4を金属探針先端 5 8から切り離す。
( 9 ) 最後に、 第 8図 (h ) に示すように、 本発明によるカンチレバーを作製 することができる。
上記したように、 第 5図〜第 8図に示す方法により、 第 1実施例による第 3図 に示す力ンチレバ一を作製することができる。
次に、 本発明の第 2実施例について説明する。
ここでは、 第 1実施例で述べた力ンチレバーを搭載した電気特性測定装置全体 について説明する。
第 9図に本発明の第 2実施例を示す力ンチレバーを搭載した電気特性測定装置 のシステム概略図を示す。
本発明によるカンチレバーを搭載した探針移動機構 1 0 0力、 超高真空システ ム 1 0 1内に設置されている。 本超高真空システム 1 0 1は、 除振台 1 0 2、 真 空ボンブ 1 0 3、 カンチレバー交換機構 1 0 4 , 1 0 5、 試料交換機構 1 0 6、 力ンチレバー *試料導入室 1 0 7からなる。
探針移動機構 1 0 0は、 真空外より電気的に制御システム 1 ϋ 8により制御さ れる。 また、 本システムには、 カンチレバーの位置確認用に走査型電子顕微鏡 ( S Ε ) 1 0 9が搭載されており、 S Ε Μ制御系 1 1 0により操作される。
本発明の主要部 (探針移動機構) 1 ϋ 0は大気中でも動作可能である力 試料 の汚染防止と S Ε Μ使用のため、 本実施例では、 超高真空システムを採用してい
る。 従って、 カンチレバーの顕微手段として光学顕微鏡を用いる場合は、 大気中 にシステムを設置しても良い。
第 1 0図に本発明の電気特性測定装置のシステムの主要部である探針移動機構 部を拡大した模式図を示す。
本実施例では簡単のため、 2本の力ンチレバ一を搭載したシステムで説明する 。 各カンチレバー (探針) 1 1 1, 1 12は、 それぞれ 3軸に移動可能な粗動機 構 1 13, 1 1 4と微動機構 1 15, 1 1 6からなる移動機構上に、 カンチレバ 一ホルダ 1 26, 127を介して設置されている。 これによりカンチレバ一 1 1 1 , 1 1 2先端の金属探針の位置を 0. 1 nm以下の精度で制御することができ る。
実験の効率を上げるため、 粗動機構 1 1 3, 1 1 4としてストローク数 mm程 度、 精度 1 m程度のもの、 微動機構 1 1 5, 1 1 6として、 ス トロ一ク数〃 m 、 精度 0 1 nm程度のものを採用することが望ましい。 これらの探針移動機 構に加え、 試料 1 17および試料ホルダ 1 1 8力、 ゴム 1 19により除振された ステージ 1 20上に載っている。 これにより、 ステージ 1 20の振動レベルを原 子レベル以下に抑えることができる。
さらにこれらのシステムは、 XYステージ 1 2 1上に設置されており、 探針 - 試料が一体となって S EMの対物レンズ 1 22に対して移動可能となっている。 この XYステージ 1 2 1の移動距離は主に測定すべき試料サイズに依存する力 概ね 10 mm程度のス トロークを有していることが望ましい。 測定では、 S EM 観察により、 各探針 (カンチレバー) 1 1 1 , 1 1 2を試料 1 1 7表面上の所望 の場所に移動させる。
すなわち、 探針位置制御系 1 23, 1 24より駆動信号 CX、 CY、 CZを各 粗動機構 1 1 3, 1 1 4に、 F X、 F Y、 F Zを各微動機構 1 1 5, 1 16に送 ることにより行う。 各カンチレバ一 1 1 1 , 1 1 2からは抵抗体の抵抗値 Rが探 針位置制御系 1 23, 1 24に送られており、 探針 ·試料間の接触状況をモニタ することができる。
具体的には、 S ΕΜ像で位置を確認しながら、 まず試料 1 1 7に平行 (Χ、 Υ ) 方向に各探針 1 1 1, 1 1 2を移動させ、 次に各探針 1 1 1 , 1 1 2を試料 1
1 7 (Z方向) に探針 ·試料間に原子間力が働くまで接近させる。 この際、 SE Mの分解能は、 高々 1 0 nmであるから、 原子レベルで探針位置を所望の X Y面 内の位置にセッ 卜するためには、 原子間力顕微鏡法を用いて各探針で試料表面上 を走査し、 得られた画像から探針位置を割り出し、 微動機構 1 1 5> 1 16によ り探針 1 1 1 , 1 1 2の位置決めを行うことになる。 探針位置決定後、 電気特性 測定系 1 25より、 各探針 1 1 1, 1 12及び試料 1 1 7にバイアス電圧 V, 、 V2 、 V sが印加されるとともに、 電流し 、 I 2 、 I sが測定される。
これにより、 極微小領域における電気特性測定が可能になる。 図中点線内が第 9図に示す装置概略図の高真空システム 1 0 1内に設置されており、 探針位置制 御系 1 23 > 1 24および電気特性測定系 1 25力、 制御システム 1 08内に設 置されている。
次に、 本発明の第 3実施例について説明する。
ここでは、 本発明による力ンチレバーを用いた測定方法について述べる。 従来、 走査型トンネル顕微鏡法を用いた方法では、 第 2図 (a ) に示すように、 まず、 各探針 20 1, 202と試料 203間に予め設定したトンネル電流 I t , 、 I t z が流れるように、 トンネル電流制御系 204, 205および探針移動機 構 206, 207により各探針 20 1, 202の位置を制御する。 このとき、 ス イ ッチ 208, 209は閉、 スィ ッチ 2 1 0は開となっている。
続いて、 試料の電気特性を測定する際には、 スィ ッチ 208, 209を開、 ス イ ッチ 2 1 0を閉にする。 すなわち、 第 2図 (b ) に示す閉ループを形成する。 ここで、 R, 、 は、 トンネル電流 I t , 、 I t 2 、 トンネル電圧 V , 、 V 2 で決まる探針 ·試料間の接触抵抗値である。
例えば、 バイアス電圧 I V、 トンネル電流 1 n Aで探針位置を保持した場合、 接触抵抗は 1 となる。 電圧を小さく ( 1 0m V) 、 電流を大きく ( Ι Ο ηΑ ) しても、 接触抵抗は 1 ΜΩの程度であり、 トン ル顕微鏡法により探針位置を 制御する限り、 これより小さい接触抵抗を実現することは困難であつた。
これに対して、 測定すべき試料の抵抗は、 例えば、 量子化コンダクタンスが現 れるような系であっても数 k Ω程度の抵抗であるから、 測定すべき抵抗値よりも
2桁以上も大きい接触抵抗が測定系に含まれているという状況であった。 また、
測定時はトンネル電流による探針の位置制御を行わないので、 探針位置が一定に 保たれているという保証もなかった。
第 1 1図は探針♦試料間距離と、 探針 ·試料間の接触抵抗の関係を模式的に示 す。 従来法 (STM) では、 トンネル電流の流れる領域 (トンネル領域) に探針 位置を保持していたため、 接触抵抗を 1 ΜΩ〜1 Gi2程度にしか設定出来なかつ た。
これに対して、 探針 ·試料間に働くカを検知して動作させる原子間力顕微鏡法 (AF ) では、 探針 *試料間距離を任意に (第 1 1図に示す全領域で) 設定で きるので、 数 Ω程の低接触抵抗も実現可能となる。 これが、 本発明で原子間カ顕 微鏡法による探針位置制御を採用した理由である。
第 12図は探針 ·試料間距離と探針 ·試料間に働く力の関係図である。 第 1 1 図に示す低接触抵抗を実現するためには、 探針 ·試料間距離を 0. l nm程度に 保つ必要がある。 従って、 探針 ·試料間に働く原子間力が斥力となるような領域 で探針 ·試料間距離を制御する必要があることが分かる。 斥力の大きさは、 探針 と試料の材質、 コンタク ト領域の大きさに依存するが、 概ね 1 nN〜l Nの大 きさである。
第 1 3図を用いて本発明を用いたナノ トランジスタの測定例を説明する。
第 13図 ( a ) では、 3本の力ンチレバ一を用いて、 原子細線 2 1 1 , 2 1 2 , 2 13および島状構造 2 1 4からなるナノ トランジスタの特性を測定する例が 示されている。 各カンチレバ一 2 1 5 , 2 1 B, 2 17の自由端に設置された金 属探針 2 1 8, 2 19, 220は、 それぞれ原子細線 2 1 1, 2 12, 2 1 3 ( ソース 2 1 1, ドレイ ン 2 1 3 , ゲー ト 2 1 2 ) に接触している。
本発明によるカンチレバーを用いることにより、 このように、 10 nm領域に 形成されたナノ トランジスタの構成要素 (ソース 2 1 1 , ドレイ ン 2 1 3, ゲー ト 2 12 ) に、 金属探針 2 1 8, 2 1 9, 220を低接触抵抗で接触させること ができる。 この状態で、 ソース ' ドレイ ン間電流のゲート電圧依存性を測定した 結果を第 1 3図 ( b) に示す。
第 13図 ( b ) では島状構造 2 1 4にトラップされた電子の数 n (図中では N
=nで表示) に依存して、 電流 ·電圧特性の曲線がシフ 卜していく様子が測定さ
れている。 ここで、 図中点線は、 島状構造 2 1 4にトラップされた電子の数が一 定の場合の電流♦電圧特性を示している。
従来、 配線接続等によりマクロな測定系に接続して特性測定を行う必要があつ た。 このような測定を本発明により簡単に、 かつ精度良く行うことができる。 次に、 本発明の第 4実施例について説明する。
第 1 4図は本発明の第 4実施例を示す力ンチレバーの模式図である。
第 1 4図 (a ) は力ンチレバーの下面 (試料側の面) の模式図である。 第 1実 施例で説明した力ンチレバー同様、 本力ンチレバー 3 0 4上には、 3つの電極 3 0 1 , 3 0 2, 3 0 3が形成されている。 カンチレバー 3 0 4の自由端には、 金 属探針 3 0 5が設置されている。 金属探針 3 0 5の先端はカンチレバー 3 0 4の 自由端よりも飛び出している。 なお、 3 0 9 , 3 1 0はコンタク トホール電極で ある。
第 1 4図 ( b ) は第 1 4図 ( a ) の A— A断面図である。 力ンチレバ一 3 0 4 に圧電体 3 0 6および、 それを挟む形で電極 3 0 7 , 3 0 8が形成されている。 カンチレバー 3 0 4が撓むことによって、 すなわち、 圧電体 3 0 6が撓むことに よって誘起された電圧を電極 3 0 7 , 3 0 8を用いて検出するものである。
また、 電極 3 0 7はコンタク トホール電極 3 0 9を介して電極 3 0 1と、 電極 3 0 8はコンタク トホール電極 3 1 0を介して電極 3 0 2と 〔第 1 4図 ( d ) 、 C一 C断面図参照〕 接続されている。 電気特性測定用の電極 3 0 3は、 これらの 電極とは絶縁膜 3 1 1により電気的に絶緣されている 〔第 1 4図 ( c ) 、 B -B 断面図参照〕 。
このような圧電効果を用いた撩み検出方式そのものは従来から知られていた 〔 例えば、 レビュー ·ォブ ' サイェンティフィ ック · ィ ンスツルメ ンッ、 第 6 7巻 ( 1 9 9 6年) 3 8 9 6頁〜 3 9 0 3頁 (R e v. S c i . I n s t r um. 6 7 ( 1 9 9 6 ) P P. 3 8 9 6— 3 9 0 3〕 力、 本発明による特徴点は、 力ンチ レバ一目由端に設置された金属探針の先端が、 力ンチレバー自由端よりも飛び出 して設置されていること、 圧電効果検出用の電極に加え、 電気特性測定用の電極 が力ンチレバ一上に形成されていることにある。
これにより、 第 1〜3実施例で述べたように、 極微小領域での電気特性評価が
可能になるのである。
次に、 本発明の第 5実施例について説明する。
ここでは、 力ンチレバー先端に金属探針を設置する別の実施例について説明す る。 第 1実施例では、 収束イオンビームを用いて金属探針を切断 '接着する方法 を説明したが、 本実施例では、 金属の選択成長の原理を用いて、 カンチレバーの 自由端に金属探針を形成する。 本発明では、 金属探針先端がカンチレバーの自由 端より飛び出していることが重要であるから、 金属探針の選択成長の向きを制御 する必要がある。
第 1 5図は本発明の第 5実施例を示す力ンチレバーの作製工程図である。 まず、 カンチレバー 3 1 2上の金属電極 3 1 3に選択成長の種となる銀粒子 3 1 4が蒸着されている。 マスクを用いた蒸着により、 粒径 1 m程度の粒子 を蒸着することができる。 このカンチレバー 3 1 2をィォゥガス流中に第 1 5図 ( a ) に示した向きで設置し、 ヒ一ター 3 1 5により、 温度を 3 0 0 °C程度に保 つ。 ィォゥガスをキヤビラリ一チューブ 3 1 6により、 銀粒子 3 1 に一次元的 に照射することで、 銀粒子 3 1 4を一種結晶として、 第 1 5図 ( b ) に示すよう に、 ィォゥガス流の间きに硫化銀結晶 (A g 2 S ) 3 1 7を成長させることがで きる。 これにより、 硫化銀による金属探針を製作することができる。
このほか、 金属ハロゲン化物を水蒸気流中で加熱還元して、 金属ひげ結晶を成 長させることにより、 カンチレバー先端に探針を設けることもできる。 この場合 重要なことは、 金属探針の先端が力ンチレバーの自由端よりも飛び出しているこ とであり、 そのために、 種結晶の位置および方位を制御する必要がある。 例えば 、 ハロゲン化物として塩化銅 (C u C 1 ) を用いる場合、 〔 1 0 0〕 方向に成長 するので、 種結晶を 〔 1 0 0〕 方向が金属探針の成長するべき方向に一致するよ うに設置する必要がある。 この点、 前記硫化銀結晶を用いる方法では、 ィォゥガ スの流れの向きを調整すれば良いので、 選択成長の向きの制御が行レ、易いという 利点がある。
なお、 本発明は上記実施例に限定されるものではなく、 本発明の趣旨に基づい て種々の変形が可能であり、 これらを本発明の範囲から排除するものではない。 以上、 詳細に説明したように、 本発明によれば、 低接触抵抗で極微小領域に複
数の探針を接触させることができるため、 n mスケールの構造の電気特性評価を 配線接続などの方法を用いることなく、 高精度で測定することが出来る。 産業上の利用可能性
以上のように、 本発明にかかる電気特性評価装置は、 特に、 ナノスケール領域 への複数本の探針の低接触抵抗での接触 (ナノコンタク ト) を実現し、 ナノ構造 の電気特性を直接、 しかも高精度で行うことができ、 絶緑物基板上に形成された 任意形状のナノ構造の電気的特性の測定に適している。