JPWO2021065946A1 - 成形用樹脂組成物及び成形体 - Google Patents
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Abstract
Description
また、特許文献2には、後塩素化塩化ビニル系樹脂等の塩化ビニル系樹脂に対して、ガラス転移温度が0℃以下のゴム系衝撃吸収材、特定の極性基の含有率が0.1〜50質量%、酸価が30〜80mgKOH/g、密度が895〜960kg/m3である変性オレフィンワックスを含有する樹脂組成物からなる成形体が開示されている。
以下に本発明を詳述する。
本発明の成形用樹脂組成物は、パルスNMRを用いて100℃でSolid Echo法で測定し、1Hのスピン−スピン緩和の自由誘導減衰曲線を、最小二乗法により緩和時間が短い順にA100成分、B100成分及びC100成分の3成分に由来する3つの曲線に波形分離して得た、C100成分の成分比[C100成分/(A100成分+B100成分+C100成分)]が30%以下である。
上記C100成分の成分比が上記範囲であることにより、成形品の加工性、ムラ防止性を向上させて、表面平滑性が高い成形品を製造することができる。また、成形品使用時の亀裂の発生を防止することができる。更に、成形機のフォーミングチューブへの付着物を防止することができる。
上記C100成分の成分比は、0.01%以上であることが好ましく、0.05%以上であることがより好ましく、25%以下であることが好ましく、23%以下であることがより好ましい。
また、上記A100成分は、パルスNMR測定における緩和時間の短い成分であり、分子運動性が低く、硬い成分を意味する。一方、C100成分は、パルスNMRにおける緩和時間の長い成分であり、分子運動性が高く、柔らかい成分を意味する。B100成分は、A100成分とC100成分との間の緩和時間を有し、分子運動性もA100成分とC100成分との間となる。
なお、上記成形用樹脂組成物中のA100成分、B100成分及びC100成分の成分比は、塩素化塩化ビニル系樹脂の構成、塩素化塩化ビニル系樹脂と塩化ビニル系樹脂との割合、溶融添加剤の割合、溶融添加剤の構成、溶融添加剤の原料物質の特性等を適宜設定することで調整することができる。
上記A100成分の成分比に対する上記C100成分の成分比(C100成分の成分比/A100成分の成分比)は、0.0001以上であることが好ましく、0.6以下であることが好ましい。
1.2≦[塩素化塩化ビニル系樹脂中の構成単位(a)の割合/成形用樹脂組成物中のC100成分の成分比]≦200
上記比率は、100以下であることがより好ましい。
本発明の成形用樹脂組成物は、塩素化塩化ビニル系樹脂を含有する。
上記塩素化塩化ビニル系樹脂は、下記式(a)〜(c)に示す構成単位(a)〜(c)を有し、下記構成単位(a)、(b)及び(c)の合計モル数に対して、構成単位(a)の割合が5モル%以上、構成単位(b)の割合が40モル%以下、構成単位(c)の割合が55モル%以下であることが好ましい。このような塩素化塩化ビニル系樹脂は、溶融混練時に均一なゲル化特性を示し、表面にムラの少ない成形品を得ることができる。
また、上記構成単位(a)、(b)及び(c)の合計モル数に対して、構成単位(b)の割合は5.0モル%以上であることが好ましく、15.0モル%以上であることがより好ましく、30.0モル%以下がより好ましく、25.0モル%以下であることが更に好ましい。
更に、上記構成単位(a)、(b)及び(c)の合計モル数に対して、構成単位(c)の割合は5.0モル%以上であることが好ましく、25.0モル%以上であることがより好ましく、55.0モル%以下であることがより好ましく、40.0モル%以下であることが更に好ましい。
一方で、本発明では、構成単位(a)、(b)及び(c)のモル比を上述の範囲内とすることで、塩素化塩化ビニル系樹脂の均一性が高くなり、溶融混練時に良好なゲル化特性を発揮することができる。
上記B100成分の成分比が上記範囲であることにより、成形品の加工性、ムラ防止性を向上させて、表面平滑性が高い成形品を製造することができる。また、成形品使用時の亀裂の発生を防止することができる。
上記B100成分の成分比は、5%以上であることがより好ましく、15%以下であることがより好ましい。
上記A100成分の緩和時間は、0.001ms以上であることが好ましく、0.020ms以下であることが好ましい。
1.0≦[構成単位(a)の割合/B100成分の成分比]≦20.0
上記付加塩素化量を3.3質量%以上とすることで、成形品としての耐熱性が充分なものとなり、15.3質量%以下とすることで、成形性が向上する。
上記付加塩素化量は、6.3質量%以上であることがより好ましく、12.3質量%以下であることがより好ましい。
なお、塩化ビニル系樹脂の塩素含有量は通常56.7質量%であるが、上記付加塩素化量は、塩化ビニル系樹脂に対する塩素の導入割合を意味するものであり、JIS K 7229に記載の方法により測定することができる。
0.1≦(付加塩素化量/B100成分の成分比)≦5.0
上記重合度を上述の範囲内とすることで、成形時の流動性と成形品の強度を両立することができる。
また、上記塩素化塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量は、1000以上、100万以下であることが好ましく、1万以上、50万以下であることがより好ましい。なお、上記重量平均分子量はポリスチレン換算の重量平均分子量であり、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。上記重量平均分子量を測定する際に用いるカラムとしては、例えば、Shodex LF−804(昭和電工社製)等が挙げられる。
また、上記B100成分の成分比は、塩化ビニル系樹脂を塩素化する際の圧力、温度、塩素濃度、過酸化水素濃度、塩素消費速度、攪拌条件等の条件を変更することで調整することができる。
上記α−オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。
上記ビニルエステル類としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
上記ビニルエーテル類としては、ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステル類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート、フェニルメタクリレート等が挙げられる。
上記芳香族ビニル類としては、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
上記ハロゲン化ビニル類としては、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等が挙げられる。
上記N−置換マレイミド類としては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
上記エチレン共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート−一酸化炭素共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等が挙げられる。
また、紫外光線等の光エネルギーを使用する場合、高温、高圧の条件下での紫外線、及びLED照射等の光エネルギー照射が可能な装置が必要である。光塩素化の場合の塩素化反応温度は、40〜80℃が好ましい。また、光塩素化の場合の光エネルギーの照射強度(W)と原料PVC及び水の合計量(kg)との比は、0.001〜6(W/kg)とすることが好ましく、照射する光の波長は280〜420nmであることが好ましい。
上記比が0.009以上であることにより、反応器内の気相部の塩素を液相部に充分に取り込むことができ、上記比が0.143以下であると液相部に取り込んだ塩素が気相部に再放出されにくくなるため、均一に塩素化することが可能となる。
なお、上記ボルテックス体積は、攪拌の際に気液界面に発生する渦の体積を意味する。
上記ボルテックス体積は、例えば、熱流体・粉体解析ソフト「R−FLOW」(アールフロー社製)を用いて算出することができる。
具体的には、攪拌翼の中心と攪拌時の気相部と液相部との界面との距離に基づいて算出することができる。なお、攪拌時には、攪拌動力である攪拌翼により液中には圧力が生じ、液相部はプラス圧、気相部はマイナス圧となる。このため、気相部と液相部との界面は、プラス圧とマイナス圧との境界部分として確認することができる。
なお、攪拌時の攪拌翼の回転数は、10〜500rpmであることが好ましく、容器の容量は0.01m3〜100m3であることが好ましい。
本発明の成形用樹脂組成物は、溶融添加剤を含有する。
上記溶融添加剤を含有することで、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げることができ、得られる成形品の表面平滑性を向上させることができる。
上記溶液NMRは、具体的には、溶融添加剤を130℃でo−ジクロロベンゼン−d4(オルトジクロロベンゼン−d4)に溶解させる。特に、不溶解物が存在する場合はフィルター等で除去する必要がある。溶解物は、400MHzの1H NMRを用いて130℃で測定することが出来る。
また、上記9.5〜10ppmの範囲に観察されるピークAは、アルデヒド基に基づくピークであり、上記ピークAの面積とは、9.5〜10ppmの積分値を意味する。
また、上記0.6〜1.0ppmの範囲に観察されるピークBは、末端メチル基に基づくピークであり、上記ピークBの面積とは、0.6〜1.0ppmの積分値を意味する。
まずは、既存公知による方法を用いて、ポリエチレン、又は/及び、ポリオレフィンを作製する。上記方法としては、低圧法(チーグラー法、メタロセン触媒法)及び中圧法(フィリップス法、スタンダード法)などが挙げられる。具体的には、チーグラー・ナッタ触媒であるトリエチルアルミニウム―四塩化チタン固体複合物を触媒、パラフィンやナフテンまたは低級脂肪族炭化水素などを溶剤とし、エチレンを常圧または数気圧程度の圧力を掛けながら溶媒中に吹き込み、60〜100℃程度の溶液温度下で重合する。得られたスラリー状重合物は、その後水で洗浄して溶剤を分離回収し、乾燥させて得られる。
酸化過程は撹拌タンク反応器内で実施されることが好ましい。
上記酸化過程では、酸素又は酸素含有ガスを反応器内に散布し、精製したポリエチレン又は/及びポリオレフィンを反応器に満たし加熱する。加熱温度は、130〜170℃が好ましく、140〜160℃がより好ましい。
その後、酸素又は酸素含有ガスをポリエチレン又は/及びポリオレフィンの合計1kg当たり毎分0.5〜1.5リットルの酸素流量で反応器に投入する。反応器内の圧力は出口側の制御弁を経由して好ましくは0.5〜1.0MPaに調節される。初期誘導期後、酸化が始まり熱を発生するため、反応器は内部の冷却コイルまたは外部ジャケットによって冷却することが好ましい。
反応中の温度は、130〜170℃に維持することが好ましく、140〜160℃に維持することが更に好ましい。
予め、試料を1時間ごとに取り出し、上記溶液NMRを用いてピークBの面積/ピークAの面積を測定し、検量線を作成する。
所望の面積比となる時間に到達したら、気体の流れを止め、反応器に通風して大気圧にする。
なお、上記重量平均分子量はJIS−K−7367−1(粘度法)に準じた方法で測定することができる。
上記融点は、例えば、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。
上記密度は、例えば、JIS K 7112に準拠した方法により測定することができる。
上記結晶化度は、例えば、X線回折法により測定することができる。上記範囲内とすることで、優れた連続生産性が得られ、高い表面平滑性を有し、成形不良を抑制でき、使用時に亀裂が発生し難く、耐衝撃性にも優れた成形体を製造することが可能となる。
上記軟化点は、例えば、JIS K 2207に準拠した方法により測定することができる。
また、構成単位(2)の割合が0.001モル%以上であることが好ましく、1モル%以下であることがより好ましい。また、49モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。
更に、構成単位(3)の割合が0.001モル%以上であることが好ましく、0.01モル%以上であることがより好ましい。また、1モル%以下であることが好ましく、0.7モル%以下であることがより好ましい。
なお、上記構成単位(1)〜(3)の割合は、例えば、NMRを用いた分子構造解析により測定することができる。
なお、上記重量平均分子量はJIS−K−7367−1(粘度法)に準じた方法で測定することができる。
また、本発明の成形用樹脂組成物において、上記塩素化塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量に対する、上記溶融添加剤の重量平均分子量の比[溶融添加剤の重量平均分子量/塩素化塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量]は、0.01以上、0.55以下であることが好ましい。更に、上記重量平均分子量の比は、0.02以上、0.50以下であることがより好ましく、0.05以上、0.30以下であることが更に好ましい。上記範囲内とすることで、優れた連続生産性が得られ、高い表面平滑性を有し、成形不良を抑制でき、使用時に亀裂が発生し難く、耐衝撃性にも優れた成形体を製造することが可能となる。
また、上記式(2)に示す構成単位において、Xはアルキル基、ハロゲン基、カルボキシル基、水酸基、アセチル基、アクリロイル基、シアノ基、アクリルアミド基、フェニル基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種を表す。なかでも、Xは水酸基、カルボキシル基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、上記エーテル基は、アルキル基が片側に連結した構造である。
上記融点は、例えば、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。
上記密度は、例えば、JIS K 7112に準拠した方法により測定することができる。
本発明の成形用樹脂組成物は、必要に応じて、熱安定剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、顔料などの添加剤が添加されていてもよい。
上記有機錫系安定剤としては、例えば、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等が挙げられる。
上記鉛系安定剤としては、ステアリン酸鉛、二塩基性亜りん酸鉛、三塩基性硫酸鉛等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記耐熱向上剤としては特に限定されず、例えばα−メチルスチレン系、N−フェニルマレイミド系樹脂等が挙げられる。
上記光安定剤としては特に限定されず、例えば、ヒンダードアミン系等の光安定剤等が挙げられる。
上記充填剤としては特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
上記混合する方法としては、特に限定されず、例えば、ホットブレンドによる方法、コールドブレンドによる方法等が挙げられる。
上記算術平均波長(Zλa)は、例えば、3D形状測定機(キーエンス社製、VR−3100)を用いて測定することができる。
内容積300Lのグラスライニング製反応容器に、脱イオン水130kgと平均重合度1000の塩化ビニル樹脂50kgを投入し、攪拌して塩化ビニル樹脂を水中に分散させ水懸濁状態にした。次いで、反応容器中を減圧して酸素を除去(酸素量100ppm)した後、攪拌によって気液界面に発生するボルテックス体積が2.2Lとなるように攪拌しながら塩素分圧が0.04MPaになるように塩素(酸素含有量50ppm)を導入した。3時間経過後、昇温開始し、高圧水銀灯を用いて波長365nmの紫外線を照射強度350Wで照射し塩素化反応を開始した。
その後、塩素化温度を70℃、塩素分圧を0.04MPaに保ち、平均塩素消費速度が0.02kg/PVC−kg・5minになるように調整し、付加塩素化量が10.6質量%に達した時点で、高圧水銀灯での紫外線の照射と塩素ガスの供給を停止し、塩素化を終了した。
次いで、窒素ガスを通気して、未反応塩素を除去し、水で洗浄し、脱水した後、乾燥して、粉末状の塩素化塩化ビニル系樹脂(付加塩素化量10.6質量%)を得た。
内容積300Lのグラスライニング製反応容器に、脱イオン水130kgと平均重合度700の塩化ビニル樹脂50kgを投入し、攪拌して塩化ビニル樹脂を水中に分散させ水懸濁状態にした。次いで、反応容器中を減圧して酸素を除去(酸素量100ppm)した後、攪拌によって気液界面に発生するボルテックス体積が2.2Lとなるように攪拌しながら塩素分圧が0.04MPaになるように塩素(酸素含有量50ppm)を導入した。3時間経過後、昇温開始し、高圧水銀灯を用いて波長365nmの紫外線を照射強度350Wで照射し塩素化反応を開始した。
その後、塩素化温度を70℃、塩素分圧を0.04MPaに保ち、平均塩素消費速度が0.02kg/PVC−kg・5minになるように調整し、付加塩素化量が10.6質量%に達した時点で、高圧水銀灯での紫外線の照射と塩素ガスの供給を停止し、塩素化を終了した。
次いで、窒素ガスを通気して、未反応塩素を除去し、水で洗浄し、脱水した後、乾燥して、粉末状の塩素化塩化ビニル系樹脂(付加塩素化量10.6質量%)を得た。
内容積300Lのグラスライニング製反応容器に、脱イオン水130kgと平均重合度1000の塩化ビニル樹脂50kgを投入し、攪拌して塩化ビニル樹脂を水中に分散させ水懸濁状態にした。次いで、反応容器中を減圧して酸素を除去(酸素量100ppm)した後、攪拌によって気液界面に発生するボルテックス体積が2.2Lとなるように攪拌しながら塩素分圧が0.04MPaになるように塩素(酸素含有量50ppm)を導入した。3時間経過後、昇温開始し、高圧水銀灯を用いて波長365nmの紫外線を照射強度350Wで照射し塩素化反応を開始した。
その後、塩素化温度を70℃、塩素分圧を0.04MPaに保ち、平均塩素消費速度が0.02kg/PVC−kg・5minになるように調整し、付加塩素化量が5.3質量%に達した時点で、高圧水銀灯での紫外線の照射と塩素ガスの供給を停止し、塩素化を終了した。
次いで、窒素ガスを通気して、未反応塩素を除去し、水で洗浄し、脱水した後、乾燥して、粉末状の塩素化塩化ビニル系樹脂(付加塩素化量5.3質量%)を得た。
(1)付加塩素化量の測定
得られた塩素化塩化ビニル系樹脂について、JIS K 7229に準拠して付加塩素化量を測定した。
得られた塩素化塩化ビニル系樹脂について、R.A.Komoroski,R.G.Parker,J.P.Shocker,Macromolecules,1985,18,1257−1265に記載のNMR測定方法に準拠して分子構造解析を行い、構成単位(a)〜(c)の含有量を測定した。
NMR測定条件は以下の通りである。
装置:FT−NMRJEOLJNM−AL−300
測定核:13C(プロトン完全デカップリング)
パルス幅:90°
PD:2.4sec
溶媒:o−ジクロロベンゼン:重水素化ベンゼン(C5D5)=3:1
試料濃度:約20%
温度:110℃
基準物質:ベンゼンの中央のシグナルを128ppmとした
積算回数:20000回
サンプルをTHFに溶解し、孔径0.2μmのフィルターでろ過後、日本分光社製のGPCユニット(ポンプユニット:PU−4180、検出器ユニット:RI−4030、カラムオーブン:CO−4065)を用い、SHODEX社製カラムLF−804(2連結)を使用して、重量平均分子量を測定した。なお、上記測定は、測定流量0.7ml/min、オーブン温度40℃の条件で行い、サンプルを溶出分離させ、標準ポリスチレン換算で作成した検量線ベースを用いて重量平均分子量を求めた。
23Lの温度計、圧力計、撹拌機、ガス導入管、ガス排気管を備える小型重合器に5kgの原料ポリエチレンを投入し溶融させ、内温が145℃に達した後、撹拌機を250回転/minに設定し、1.0L/minで空気を溶融物中に導入した。なお、原料ポリエチレンとしては、ハイワックス800P(三井化学社製、分子量8000、密度970kg/m3、結晶化度84%、融点127℃、軟化点140℃)を用いた。
重合器内の圧力はガス排気管側の制御弁を経由して、0.69MPaに調節した。空気を導入しながら、反応温度を145℃、撹拌速度を250回転/min、圧力を0.69MPaに維持し、5時間後に反応を終了して、溶融添加剤X1を得た。なお、ポリエチレンの結晶化度は、X線回折法を用いて測定した。
ポリエチレンとして、ハイワックス800Pに代えて、ハイワックス720P(三井化学社製、分子量7200、密度920g/m3、結晶化度60%、融点113℃、軟化点118℃)を用いたこと以外は、溶融添加剤X1と同様に溶融添加剤Y1を得た。
(1)1H NMRスペクトル
得られた溶融添加剤を、Bruker分光計AV400型を使用して130℃でo−ジクロロベンゼン−d4に溶解させ、溶液NMRを用いて、130℃の条件で400MHzの1H NMRスペクトルを測定し、9.5〜10ppmの範囲に観察されるピークAの面積に対する0.6〜1.0ppmの範囲に観察されるピークBの面積比を測定した。
得られた溶融添加剤ついて、示差走査熱量測定(DSC)装置(TA Instruments Waters社製、DSC Q20)を用い、昇温速度3℃/min、20℃〜200℃の温度範囲、窒素雰囲気下で測定を実施した。
NMRスペクトルにより、構成単位(1)〜(3)の割合を測定した。
なお、式(2)中、Xは水酸基、カルボキシル基及びエーテル基(アルキル基が連結)のうちの少なくとも1種であった。
JIS−K−7367−1(粘度法)に準じた方法で重量平均分子量を測定した。
表1に記載の分子構造、重量平均分子量(Mw)、融点となるように調整することで、溶融添加剤X2〜X3を得た。なお、原料となるポリエチレンとしては、以下のものを用いた。
溶融添加剤X2:ポリエチレン(分子量:900、密度:950kg/m3、結晶化度:90%、融点:116℃、軟化点:121℃)
溶融添加剤X3:ポリエチレン(分子量:2000、密度:970kg/m3、結晶化度:87%、融点:122℃、軟化点:130℃)
表1に記載の分子構造、重量平均分子量(Mw)、融点となるように調整することで、溶融添加剤Y2〜Y3を得た。なお、原料となるポリエチレンとしては、以下のものを用いた。
溶融添加剤Y2:ポリエチレン(分子量:4000、密度:930kg/m3、結晶化度:70%、融点:113℃、軟化点:118℃)
溶融添加剤Y3:ポリエチレン(分子量:3000、密度:930kg/m3、結晶化度:65%、融点:109℃、軟化点:114℃)
塩素化塩化ビニル系樹脂A100質量部に対して、熱安定剤としては有機錫系安定剤(日東化成社製、TVS#1380)2.0質量部、無機物としては酸化チタン(ベネター社製、R−TC30)4.0質量部、溶融添加剤X3.0質量部をスーパーミキサーで均一に混合し、成形用樹脂組成物を得た。
塩素化塩化ビニル系樹脂の種別、溶融添加剤の種別、添加量を表1に示すものとした以外は実施例1と同様にして成形用樹脂組成物を得た。
溶融添加剤Y1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして成形用樹脂組成物を得た。
溶融添加剤の種別、添加量を表1に示すものとした以外は実施例1と同様にして成形用樹脂組成物を得た。
実施例、比較例で得られた成形用樹脂組成物について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
(1)パルスNMR測定
得られた粉末状の成形用樹脂組成物を、パルスNMR装置の測定範囲内に入るように直径10mmのガラス製のサンプル管(BRUKER社製、品番1824511、10mm径、長さ180mm、フラットボトム)に導入した。サンプル管をパルスNMR装置(BRUKER社製「the minispec mq20」)に設置し、100℃(20分保持後)において、以下の条件でSolid Echo法での測定を行い、1Hのスピン−スピン緩和の自由誘導減衰曲線を得た。
<Solid Echo法>
Scans:128times
Recycle Delay:1sec
Acquisition scale:1.0ms
100℃で得られた自由誘導減衰曲線の0.5msまでを、A100成分、B100成分及びC100成分の3成分に由来する3つの曲線に波形分離した。波形分離は、ガウシアン型とエクスポーネンシャル型の両方を用いて、フィッティングさせることで行った。それぞれの測定で得られた3成分に由来する曲線から、各成分の比率を求めた。
なお、BRUKER社製の解析ソフトウェア「TD−NMRA(Version4.3 Rev0.8)」を用い製品マニュアルに従って、A100成分はガウシアン型、B100成分及びC100成分はエクスポーネンシャル型でフィッティングを行った。
A100成分、B100成分、C100成分は、パルスNMR測定における緩和時間の短い順に定義された成分であり、個々の緩和時間の値は特に限定されるものではない。
(押出成形体の作製)
得られた成形用樹脂組成物を、シングル65mm押出機(池貝社製「FS−65mm」)に供給し、樹脂温度190℃〜200℃、押出量20〜25kg/hrで厚さ2mm、幅20mmの平板状成形体を作製した。
成形開始から15分後に得られた成形体の表面について、3D形状測定機(キーエンス社製、VR−3100)を用いて算術平均波長(Zλa)を測定した。
「(2)表面平滑性」において、成形開始から5時間後にフォーミングチューブへの付着物の有無を目視にて確認した。付着物が無いものを「○」、付着物が認められるものを「×」とした。
なお、フォーミングチューブとは、押出機の先端に固定された治具であり、成形体の形状を整えるものである。押出成形時に成形品表面の付着物がフォーミングチューブに付着すると、成形体の形状を整えることができず、成形不良の原因となる。
更に、成形開始から、5時間後に得られた成形体の表面の算術平均波長(Zλa)を同様にして測定し、15分後と5時間後の変化が±10%以内のものを「○」、それ以上に変化したものを「×」として評価した。
得られた成形体を切削し、JIS K 7111−1:2012に準拠した試験片(幅10mm×長さ90mm×厚み3mm×ノッチ深さ1mm)を得た。この試験片について、上島製作所社製「U−F IMPACT TESTER SEPT.1972」を用いて、温度23℃で衝撃値を測定した。繰り返し4回測定を行い、得られた衝撃値を試験片の厚みで除した値の平均値を成形体のシャルピー衝撃値とし、以下の基準で評価した。
○:シャルピー衝撃値が5KJ/m2以上
×:シャルピー衝撃値が5KJ/m2未満
得られた成形体を長さ150mmに切削して試験片を得た。この試験片については、島津製作所社製「SHIMADZU AUTOGRARH AGS」を用いて温度23℃で亀裂性を測定した。試験片の中央に荷重をかける3点曲げ冶具を用いて、降下速度3mm/minで20mm降下させ荷重をかけた状態で降下10分間保持し発生した亀裂有無を目視で確認し、以下の基準で評価した。
成形体の粒子中の絡み合いが高くなることで溶融が優れて破壊至るまでの塑性変形が大きいと延性が生じる。塑性変形が小さい場合は脆性が生じ亀裂部分が確認される。なお、表には、亀裂が発生するまでの時間を記載した。
○:亀裂なし
×:亀裂あり
Claims (3)
- 塩素化塩化ビニル系樹脂及び溶融添加剤を含有する成形用樹脂組成物であって、
パルスNMRを用いて100℃でSolid Echo法で測定し、1Hのスピン−スピン緩和の自由誘導減衰曲線を、最小二乗法により緩和時間が短い順にA100成分、B100成分及びC100成分の3成分に由来する3つの曲線に波形分離して得た、C100成分の成分比[C100成分/(A100成分+B100成分+C100成分)]が30%以下である、成形用樹脂組成物。 - 溶融添加剤は、溶液NMRを用いて1H NMRスペクトルを測定した際に、9.5〜10ppmの範囲に観察されるピークAの面積に対する0.6〜1.0ppmの範囲に観察されるピークBの面積比(ピークBの面積/ピークAの面積)が1〜1000である、請求項1に記載の成形用樹脂組成物。
- 請求項1〜2のいずれかに記載の成形用樹脂組成物から成形されてなる、成形体。
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