JP7041264B2 - 塩素化塩化ビニル系樹脂 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、特定の製造方法により得られた塩素化塩化ビニル系樹脂が開示されており、このような樹脂は、加熱成形時の初期着色が少なく、また、熱安定性に優れることが開示されている。
以下に本発明を詳述する。
上記A/Bのピーク平均が上記範囲内であることで、成形品のムラ防止性を向上させることができるとともに、成形品の光沢性に優れたものとすることができる。
上記ピーク平均は、好ましい下限が0.80、より好ましい下限が1.30、好ましい上限が1.80、より好ましい上限が1.70である。
具体的には、粉末状の塩素化塩化ビニル系樹脂について、真空プレス機を用いて厚さ0.5mmのシート状に成型して得られたシートを、ミクロトームを用いて切断し、得られた断面に対して、顕微ラマン分光分析装置を用いてイメージングラマン測定を行う。得られたイメージングラマンスペクトルにおいて、直線近似によるベースライン補正を行い、600~650cm-1の範囲に観察されるピーク強度Bと、660~700cm-1の範囲に観察されるピーク強度Aとを測定し、A/Bを算出し、20000点のピーク強度についての平均を算出することで測定することができる。
なお、上記ピーク強度Bに対するピーク強度Aの比(A/B)の標準偏差は、例えば、上記イメージングラマン測定において得られたピーク強度比に基づいて算出することができる。また、粉末状の塩素化塩化ビニル系樹脂の粒子50個について、顕微ラマン分光分析装置を用いてラマンスペクトルを測定し、得られたラマンスペクトルにおいて、直線近似によるベースライン補正を行い、上記ピーク強度Bと上記ピーク強度Aとを測定し、A/B及び平均値に基づいて算出することもできる。
上記A/Bの標準偏差は、好ましい下限が0.105、より好ましい下限が0.110、好ましい上限が0.190、より好ましい上限が0.180である。
具体的には、塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法の違いにより、2921cm-1に観察されるCH2のCH伸縮に由来するピークの強度及び2977cm-1に観察されるピークの強度に変化が見られた。当該ピークを詳細に解析することで、より詳細に塩素化塩化ビニル系樹脂の構造の違いを分析することができる。
また、光塩素化された塩素化塩化ビニル系樹脂では、1600~1700cm-1に二重結合由来と思われるピークが存在することを見出し、加熱等により劣化した塩素化塩化ビニル系樹脂では1131cm-1及び1510cm-1に共役二重結合由来と思われるピークが新たに生成することを見出した。
0.820≦[A/Bのピーク平均]+[A/Bの標準偏差]1/2≦2.400 (1)
上記範囲内であることで、成形品のムラ防止性を向上させることができるとともに、成形品の光沢性に優れたものとすることができる。
上記範囲のより好ましい下限は1.250、より好ましい上限は2.200である。
また、上記構成単位(a)、(b)及び(c)の合計モル数に対して、構成単位(b)の割合が5.0モル%以上であることが好ましく、15.0モル%以上であることがより好ましく、40.0モル%以下であることが好ましく、30.0モル%以下であることがより好ましく、25.0モル%以下であることが更に好ましい。
更に、上記構成単位(a)、(b)及び(c)の合計モル数に対して、構成単位(c)の割合が5.0モル%以上であることが好ましく、25.0モル%以上であることがより好ましく、55.0モル%以下であることが好ましく、40.0モル%以下であることがより好ましい。
一方で、本発明では、構成単位(a)、(b)及び(c)のモル比を上述の範囲内とすることで、塩素化塩化ビニル系樹脂の均一性が高くなり、溶融混練時に良好なゲル化特性を発揮することができる。
上記他の構成単位の含有量は、塩素化塩化ビニル系樹脂中、0質量%以上であることが好ましく、10質量%未満であることが好ましい。
0.005≦X/(A/Bのピーク平均)≦16.000
上記範囲内であることで、成形品のムラ防止性を向上させることができるとともに、成形品の光沢性に優れたものとすることができる。
上記範囲のより好ましい下限は0.125、より好ましい上限は0.910である。
上記付加塩素化量を3.3質量%以上とすることで、成形品としての耐熱性が充分なものとなり、15.3質量%以下とすることで、成形性が向上する。
上記付加塩素化量は、5.3質量%以上であることがより好ましく、8.2質量%以上であることが更に好ましく、12.3質量%以下であることがより好ましく、11.2質量%以下であることが更に好ましい。
なお、塩化ビニル系樹脂の塩素含有量は通常56.8質量%であるが、上記付加塩素化量は、塩化ビニル系樹脂に対する塩素の導入割合を意味するものであり、JIS K 7229に記載の方法により測定することができる。
上記平均重合度を上述の範囲内とすることで、射出時の流動性と成型品の強度を両立することができる。
200≦平均重合度/[A/Bのピーク平均]≦4000
上記範囲内であることで、成形品のムラ防止性を向上させることができるとともに、成形品の光沢性に優れたものとすることができる。
上記範囲のより好ましい下限は500、より好ましい上限は1315である。
0.08<Log[標準偏差×平均重合度/(構成単位(a)の割合)]<1.02
上記関係を満たすことで、成形品のムラ防止性を向上させることができるとともに、成形加工時の連続性安静に優れたものとすることができる。
上記範囲のより好ましい下限は0.10、より好ましい上限は0.90である。
なお、上記規定は10を底とする常用対数を意味する。
上記塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単独重合体のほか、塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーと塩化ビニルモノマーとの共重合体、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト共重合したグラフト共重合体等を用いることができる。これら重合体は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
また、上記塩化ビニル系樹脂が塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーと塩化ビニルモノマーとの共重合体、又は、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト共重合したグラフト共重合体である場合、上記塩化ビニル系樹脂における塩化ビニルモノマーに由来する成分の含有量は90質量%以上であることが好ましい。また、100質量%以下であることが好ましい。
上記α-オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられ、上記ビニルエステル類としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられ、上記ビニルエーテル類としては、ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等が挙げられる。
また、上記(メタ)アクリル酸エステル類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート、フェニルメタクリレート等が挙げられ、上記芳香族ビニル類としては、スチレン、α-メチルスチレン等が挙げられる。
更に、上記ハロゲン化ビニル類としては、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等が挙げられ、上記N-置換マレイミド類としては、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
なかでも、エチレン、酢酸ビニルが好ましい。
上記塩化ビニル系樹脂の重合方法は、特に限定されず、従来公知の水懸濁重合、塊状重合、溶液重合、乳化重合等を用いることができる。
また、上記ピーク強度Bに対するピーク強度Aの比(A/B)のピーク平均、及び、A/Bの標準偏差は、塩化ビニル系樹脂を塩素化する際の圧力、温度、塩素濃度、過酸化水素濃度、塩素消費速度、攪拌条件、光エネルギーの照射強度、光の波長等の条件を変更することで調整することができる。
また、紫外光線等の光エネルギーを使用する場合、高温、高圧の条件下での紫外線照射等の光エネルギー照射が可能な装置が必要である。光塩素化の場合の塩素化反応温度は、40~80℃が好ましい。また、光塩素化の場合の光エネルギーの照射強度(W)と原料PVC及び水の合計量(kg)との比は、0.001~6(W/kg)とすることが好ましく、照射する光の波長は280~420nmであることが好ましい。
上記光塩素化することで、得られる成形品の光沢性をより向上させることができる。
上記過酸化水素を添加する場合、塩素化速度が向上するため、加熱温度を比較的低くすることができる。例えば、65~110℃の範囲であってよい。
上記方法で塩素化を行うことにより、塩素化状態の不均一性が少なく、熱安定性の優れたCPVCを得ることができる。
上記比が0.009(L/kg)以上であることにより、反応器内の気相部の塩素を液相部に充分に取り込むことができ、上記比が0.143(L/kg)以下であると液相部に取り込んだ塩素が気相部に再放出されにくくなるため、均一に塩素化することが可能となる。
なお、上記ボルテックス体積は、攪拌の際に気液界面に発生する渦の体積を意味する。
上記ボルテックス体積は、例えば、熱流体・粉体解析ソフト「R-FLOW」(アールフロー社製)を用いて算出することができる。
具体的には、攪拌翼の中心と攪拌時の気相部と液相部との界面との距離に基づいて算出することができる。なお、攪拌時には、攪拌動力である攪拌翼により液中には圧力が生じ、液相部はプラス圧、気相部はマイナス圧となる。このため、気相部と液相部との界面は、プラス圧とマイナス圧との境界部分として確認することができる。
なお、攪拌時の攪拌翼の回転数は、10~500rpmであることが好ましく、容器の容量は0.01m3~100m3であることが好ましい。
更に、上記攪拌条件に加えて、原料PVC及び水の合計質量(kg)と反応器の体積(単位:L)との比が0.710~0.950(kg/L)となる条件とすることが好ましい。
上記比が0.710(kg/L)以上であることにより、原料PVCへの塩素拡散の過促進を抑制することができ、上記比が0.950(kg/L)以下であることにより、反応器内の気相部の塩素を液相部に充分に取り込むことができるため、良好な塩素化度分布を有する塩素化塩化ビニル系樹脂とすることができる。
また、攪拌時における液面から攪拌翼までの距離と液面高さとの比(液面から攪拌翼までの距離/液面高さ)が0.05~0.70(m/m)となるように攪拌翼の高さを調整することが好ましい。なお、上記液面高さとは、反応容器に原料を投入した際の反応容器底部から原料液面までの距離を意味する。また、上記液面から攪拌翼までの距離とは、液面から攪拌翼最上部までの距離を意味する。
更に、攪拌翼径と反応容器径との比(攪拌翼径/反応容器径)が0.3(m/m)以上であることが好ましく、0.9(m/m)以下であることが好ましい。
本発明の塩素化塩化ビニル系樹脂を含有する成形用樹脂組成物もまた本発明の1つである。
上記有機錫系安定剤としては、例えば、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等が挙げられる。
上記鉛系安定剤としては、ステアリン酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、三塩基性硫酸鉛等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記内部滑剤としては特に限定されず、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記耐熱向上剤としては特に限定されず、例えば、α-メチルスチレン系、N-フェニルマレイミド系樹脂等が挙げられる。
上記光安定剤としては特に限定されず、例えば、ヒンダードアミン系等の光安定剤等が挙げられる。
上記充填剤としては特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
上記Sdrは、例えば、3D形状測定機(キーエンス社製、VR-3100)を用いて測定することができる。
また、本発明の成形体は、外表面のろ波うねり中心線平均(WcA)が、5.0μm以下であることが好ましい。これにより、表面のムラが少なく、肉厚変動の小さい成形体となる。本発明では、表面粗さに加えて、ろ波うねり中心線平均が小さいことで、パイプ等に使用する場合、流水との摩擦が減少し流速を上げることができる。
なお、表面粗さ(Rmax)は、JIS B 0601に準拠した方法、ろ波うねり中心線平均(WcA)は、JIS B 0610に準拠した方法で測定することができる。
内容積300Lのグラスライニング製反応容器に、イオン交換水155kgと平均重合度1000の塩化ビニル樹脂70kgを投入し、攪拌して塩化ビニル樹脂を水中に分散させ水懸濁状態にした後、反応容器内を加熱して水懸濁液を70℃に昇温した。次いで、反応容器中を減圧して酸素を除去(酸素量100ppm)した後、攪拌によって気液界面に発生するボルテックス体積が2.3Lとなるように攪拌翼により攪拌しながら塩素分圧が0.04MPaになるように塩素(酸素含有量50ppm)を導入した。その後、高圧水銀灯を用いて波長365nmの紫外線を照射強度160Wで照射し塩素化反応を開始した。この際、液面から攪拌翼までの距離と液面高さとの比(液面から攪拌翼までの距離/液面高さ)が0.107となるように攪拌翼の高さを調整した。また、攪拌翼径と反応容器径との比(攪拌翼径/反応容器径)は0.54(m/m)であった。
その後、塩素化温度を70℃、塩素分圧を0.04MPaに保ち、平均塩素消費速度が0.02kg/PVC-kg・5minになるように調整し、付加塩素化量が10.6質量%に到達した時点で、高圧水銀灯での紫外線の照射と塩素ガスの供給を停止し、塩素化を終了した。
次いで、窒素ガスを通気して、未反応塩素を除去し、得られた塩素化塩化ビニル系樹脂スラリーを水酸化ナトリウムで中和し、水で洗浄し、脱水した後、乾燥して、光塩素化された粉末状の塩素化塩化ビニル系樹脂(付加塩素化量が10.6質量%)を得た。
反応容器の体積、塩化ビニル樹脂の平均重合度、投入量、イオン交換水の量、攪拌時のボルテックス体積、液面から攪拌翼までの距離/液面高さ、平均塩素消費速度を表1及び2の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして塩素化塩化ビニル系樹脂を得た。
内容積300Lのグラスライニング製反応容器に、イオン交換水130kgと平均重合度1000の塩化ビニル樹脂50kgを投入し、攪拌して塩化ビニル樹脂を水中に分散させ水懸濁状態にした後、反応容器内を加熱して水懸濁液を140℃に昇温した。次いで、反応容器中を減圧して酸素を除去(酸素量100ppm)した後、攪拌によって気液界面に発生するボルテックス体積が34.5Lとなるように攪拌翼により攪拌しながら塩素分圧が0.40MPaになるように塩素(酸素含有量50ppm)を導入して熱塩素化を開始した。この際、液面から攪拌翼までの距離と液面高さとの比(液面から攪拌翼までの距離/液面高さ)が0.950となるように攪拌翼の高さを調整した。また、攪拌翼径と反応容器径との比(攪拌翼径/反応容器径)は0.54(m/m)であった。
その後、塩素化温度を140℃、塩素分圧を0.40MPaに保ち、付加塩素化量が4.3質量%に到達した後、200ppmの過酸化水素水を、塩化ビニル樹脂に対して過酸化水素として50ppm/Hrとなるように添加開始し、平均塩素消費速度が0.04kg/PVC-kg・5minになるように調整した。その後、付加塩素化量が15.7質量%に達した時点で、過酸化水素水と塩素ガスの供給を停止し、塩素化を終了した。
次いで、窒素ガスを通気して、未反応塩素を除去し、得られた塩素化塩化ビニル系樹脂スラリーを水酸化ナトリウムで中和し、水で洗浄し、脱水した後、乾燥して、熱塩素化された粉末状の塩素化塩化ビニル系樹脂(付加塩素化量が15.7質量%)を得た。
反応温度、攪拌時のボルテックス体積、液面から攪拌翼までの距離/液面高さ、平均塩素消費速度を表2の通りに変更した以外は、比較例1と同様にして塩素化塩化ビニル系樹脂を得た。
塩化ビニル樹脂の投入量、イオン交換水の量、反応温度、攪拌時のボルテックス体積、液面から攪拌翼までの距離/液面高さ、平均塩素消費速度を表2の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして塩素化塩化ビニル系樹脂を得た。
実施例、参考例、比較例で得られた塩素化塩化ビニル系樹脂について、以下の評価を行った。結果を表1及び2に示した。
得られた塩素化塩化ビニル系樹脂について、JIS K 7229に準拠して付加塩素化量を測定した。
得られた塩素化塩化ビニル系樹脂について、R.A.Komoroski,R.G.Parker,J.P.Shocker,Macromolecules,1985,18,1257-1265に記載のNMR測定方法に準拠して分子構造解析を行い、構成単位(a)~(c)の含有量を測定した。
NMR測定条件は以下の通りである。
装置:FT-NMRJEOLJNM-AL-300
測定核:13C(プロトン完全デカップリング)
パルス幅:90°
PD:2.4sec
溶媒:o-ジクロロベンゼン:重水素化ベンゼン(C5D5)=3:1
試料濃度:約20%
温度:110℃
基準物質:ベンゼンの中央のシグナルを128ppmとした
積算回数:20000回
(3-1)イメージングラマン測定
得られた粉末状の塩素化塩化ビニル系樹脂について、真空プレス機(名機製作所社製、MHPC-VF)を用いてシート状に成型して、厚さ0.5mmの樹脂シートを作製した。なお、加圧の際には、真空プレス機を180℃に設定し、粉末状の塩素化塩化ビニル系樹脂をセットし、1分間かけて排気した。このとき、加熱時に酸素に触れていると酸化反応や脱塩酸反応が起こるため、大気圧から10hPaまで30秒以内に排気される必要がある。その後、プレス圧力3MPa、昇圧時間30秒、保圧時間1分間の条件で成型を行い、速やかに大気圧まで降圧し、冷却することで樹脂シートを作製した。
その後、得られた樹脂シートをミクロトームを用いて切断して得られた断面について、顕微ラマン分光装置(ナノフォトン社製、RAMANtouch)を用いてラマンスペクトルを測定した。
なお、ラマンスペクトルの測定においては、対物レンズ20倍、励起波長532nmの条件で、400μm×100μmの領域に対して、x方向は1μm、y方向は2μmの間隔でスペクトル測定を行って樹脂シートの断面20000点に対してラマンスペクトルを得た。
得られたラマンスペクトルにおいて、400cm-1~850cm-1をベースラインとして直線近似によるベースライン補正を行い、600~650cm-1の範囲に観察されるピーク強度B、及び、660~700cm-1の範囲に観察されるピーク強度Aを測定した。その後、ピーク強度Bに対するピーク強度Aの比(A/B)を算出し、A/Bのピーク平均を算出した。
得られた塩素化塩化ビニル系樹脂について、顕微ラマン分光装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、Almega XR)を用いてラマンスペクトルを測定した。なお、ラマンスペクトルの測定においては、得られた粉末状の塩素化塩化ビニル系樹脂について、任意に採取した50個の粒子に対して、波長532nmのレーザーを用いて、露光時間1秒、スキャン回数32回により行った。粒子そのものに対して、ラマン分光分析を行うことで、粒子表面のピーク強度が得られる。また、ラマンシフトの波数は金属シリコンのピークを520.5cm-1として校正した。
得られたラマンスペクトルに対して、515cm-1~950cm-1をベースラインとして直線近似によるベースライン補正を行い、600~650cm-1の範囲に観察されるピーク強度B(主として641cm-1)、及び、660~700cm-1の範囲に観察されるピーク強度A(主として697cm-1)を測定した。その後、ピーク強度Bに対するピーク強度Aの比(A/B)を算出し、50個の粒子のA/Bのピーク平均及びA/Bの標準偏差を算出した。
(塩素化塩化ビニル系樹脂組成物の作製)
得られた塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、耐衝撃改質剤5.5質量部を添加した。更に、熱安定剤1.5質量部を添加して混合した。なお、耐衝撃改質剤としては、カネエースB-564(カネカ社製、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体)を用いた。また、熱安定剤としては、TVS#1380(日東化成社製、有機錫系安定剤)を用いた。
更に、ポリエチレン系滑剤(三井化学社製、Hiwax220MP)2.0質量部、脂肪酸エステル系滑剤(エメリーオレオケミカルズジャパン社製、LOXIOL G-32)0.3質量部を添加した。その後、スーパーミキサーで均一に混合して、塩素化塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
得られた塩素化塩化ビニル系樹脂組成物を、直径50mmの2軸異方向コニカル押出機(長田製作所社製、SLM-50)に供給し、樹脂温度205℃、背圧130kg/cm2、押出量40kg/hrで厚さ2mm、幅80mmのシート状成形体を作製した。
得られた成形体の表面について、3D形状測定機(キーエンス社製、VR-3100)を用いてSdr値を測定した。表1及び2に示す各Sdr値は、5点の測定領域に関する平均値である。
なお、Sdrは、測定領域の面積に対して、測定領域の表面積がどの程度増大しているかを割合で表したものであり、完全に平坦な面のSdrは0となる。Sdrが低い成形体は平面性に優れたものとなり、例えば、配管等のパイプ状成形体として用いた場合、流水時の静音性に優れたものとなる。
得られた成形体の表面状態を目視で確認し、以下の基準で評価した。
〇:ヤケ(変色)が確認されなかった。
×:ヤケ(変色)が確認された。
得られた成形体の表面形状を目視及び触診することにより確認し、以下の基準で評価した。
〇:目視及び触診により表面の凹凸が確認できなかった。
△:目視により表面の凹凸は確認できないが、触診により表面の凹凸を確認できた。
×:目視により表面の凹凸を確認できた。
得られた塩素化塩化ビニル系樹脂組成物を、直径50mmの2軸異方向コニカル押出機(長田製作所社製、SLM-50)に供給し、樹脂温度205℃、背圧130kg/cm2、押出量40kg/hrで厚さ2mm、幅80mmのシート状成形体を作製した。成形開始から得られた成形体にヤケ(変色)が発生するまでの時間を測定し、連続生産性を評価した。
なお、成形体にヤケ(変色)が発生するまでの時間が長い場合、金型表面の汚染が生じにくく、長時間に渡って同様の作業を繰り返して製品を生産する連続生産性に優れたものであるといえる。
「(4)界面の展開面積比(Sdr)」において得られた成形体の表面について、3D形状測定機(キーエンス社製、VR-3100)を用いて、JIS B 0633-2001に定義された算術表面粗さ(Sa)を測定した。
「(4)界面の展開面積比(Sdr)」において得られた成形品について、光沢系(日本電色工業社製、PG-1M)を用い、JIS Z8741の光学条件に基づいて、入射角60℃の条件で光沢度を測定し、以下の基準で評価した。
〇:光沢度3.5以上
△:光沢度2.5以上、3.5未満
×:光沢度2.5未満
Claims (3)
- ラマン分光法によるイメージングラマン測定において、600~650cm-1の範囲に観察されるピーク強度Bに対する、660~700cm-1の範囲に観察されるピーク強度Aの比(A/B)のピーク平均が0.50~2.00であり、かつ、ラマン分光法によるラマン測定において、ピーク強度Bに対するピーク強度Aの比(A/B)の標準偏差が0.100~0.200であり、
下記式(a)~(c)に示す構成単位(a)~(c)を有し、
前記構成単位(a)、(b)及び(c)の合計モル数に対して、前記構成単位(b)の割合が15.0モル%以上25.0モル%以下、前記構成単位(c)の割合が25.0モル%以上40.0モル%以下であり、
付加塩素化量が3.3質量%以上13.1質量%以下である、塩素化塩化ビニル系樹脂。
- 請求項1記載の塩素化塩化ビニル系樹脂を含有する、成形用樹脂組成物。
- 請求項2記載の成形用樹脂組成物から成形された、成形体。
Applications Claiming Priority (3)
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