本発明は、液化天然ガスを気化するLNG気化器で生じるLNG冷熱を利用する冷水供給システムに関する。
地球温暖化問題はますます深刻度を増しており、二酸化炭素(CO2)排出係数が大きい石炭や石油から排出係数が小さい天然ガスへの燃料シフトが始まっており、多くの液化天然ガス(LNG)サテライト基地が建設されている。LNGサテライト基地では大量のLNG冷熱が発生する。
LNG冷熱は極めて有用であるにも拘わらず、その有効活用はほとんど行われておらず、海水や温水で気化されて捨てられている。
また、近年、消費者の食品に対する安全・安心への志向が高まり、これに応えるように人工環境において植物を生産する植物工場に関する技術革新が著しく、植物工場をLNG冷熱で冷房することが行われている。
太陽光利用型植物工場は、従来のハウス栽培の延長線上にあり、栽培植物はサラダ菜、リーフレタス等の葉菜類の他、トマト、イチゴ等の果采類である。この方式は平面に限られるので広大な用地を必要とする。また、日射の有無や外気温の変化で室内環境が左右されるので冷熱需要の変化が激しく、夏季の冷房と冬季の暖房に多大なエネルギーを必要とする。
完全制御型植物工場の栽培植物は葉菜類に限られるが、天候や場所に左右されず、多層型の栽培が可能で狭い土地で大量生産することができる。しかし、建屋・冷房装置・栽培装置(照明装置を含む)の建設コストが高く、年間を通して必要となる照明用電力および冷暖房用電力の消費量が非常に大きくなる。このように植物工場では電力コストが大きいことが問題であり、液化天然ガスを気化するLNG気化器で生じるLNG冷熱を植物工場において冷房に利用することが行われている。
特許文献1には、液化天然ガスを気化させるべく液化天然ガスと第1中間媒体とを熱交換させるLNG気化器と、第1中間媒体と第2中間媒体とを熱交換させる第1熱交換器と、第2中間媒体と植物工場内の空気とを熱交換させる第2熱交換器と、を備えたLNG冷熱を利用する植物工場システムが開示されている。
特許文献2には、栽培植物を栽培する温室内を空調する植物工場における空調システムにおいて、蓄冷熱槽内の水を夜間電力で冷却して蓄冷し、その蓄冷熱槽内の冷水を充填式空調機に導入し、充填式空調機で温室内の局所空間から吸引した空気と熱交換して冷気を局所空間に供給するランニングコストを低減できる植物工場における空調システムが開示されている。
特許文献3には、二酸化炭素の発生源となる産業プラントと、液化天然ガスを貯蔵するLNG基地と、植物を生産する植物工場と、産業プラントで発生した二酸化炭素を液化天然ガスを用いてドライアイスとするドライアイス製造設備とを備え、植物工場は、ドライアイス製造設備が製造したドライアイスを植物への二酸化炭素施用の供給源および冷房用の冷熱源として用いる空調システムが記載されている。
実用新案登録第3209642号
特開2000−93010号公報
特開2011−250759号公報
LNG冷熱の供給能力(冷凍能力)は、例えば発電量の増減に応じて天然ガス(NG)の消費量が変化するので、一日を通して変化する。LNGを利用する施設の冷熱需要(冷房負荷またはプロセス等の冷却負荷)も一日を通して変化する。この冷凍能力と冷熱需要の変化動向は一致しないので、LNG冷熱を無駄なく有効に利用することが困難であった。
特許文献1に記載されたシステムでは、一日を通しての天然ガスの消費量の変化に応じて液化天然ガスの気化量が変化することによるLNG気化器における冷凍能力の変化動向と、植物工場における冷熱需要の変化動向との差異のために植物工場を適切に冷房できない不具合が生じる。従って、植物工場における冷熱需要がLNG気化器における冷凍能力を超えない規模の植物工場しか建設することができない。
特許文献2に記載された装置では、冷水を貯留する蓄冷熱槽内の水を夜間電力で冷却して蓄冷し、その蓄冷熱槽内の冷水を昼間に充填式空調機に導入して空気を冷やし、冷気を温室内に供給するものであるので、夜間の電力使用料は必要である。また、夜間電力の利用だけでは冷凍機および蓄熱槽の容量が大きくなる。
特許文献3に記載されたシステムでは、産業プラントで発生した二酸化炭素をLNG基地から供給される液化天然ガスを用いてドライアイスにし、このドライアイスを植物工場で炭酸ガスにして植物に与えているので、産業プラントで発生した排ガスから二酸化炭素を分離してドライアイスにするドライアイス製造設備が必要になる。
本発明の目的は、産業設備に天然ガスを供給するLNGサテライト基地と冷水利用施設との間に、LNGサテライト基地で生じたLNG冷熱を蓄熱する蓄熱槽を備え、一日を通してのLNG気化器における冷凍能力の変化動向と冷水利用施設における冷熱需要の変化動向との差異に拘わらず、LNG冷熱のみによって冷水利用施設で利用するLNG冷熱で冷却された冷水を提供可能なLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システムを提供することである。
本発明は、液化天然ガスが気化するときに生じるLNG冷熱を熱交換するLNG気化器によって産業設備で使用される天然ガスを生成するLNGサテライト基地と、前記LNGサテライト基地に近接して配置され、前記LNG冷熱で冷却された冷水を利用する冷水利用部が設けられた冷水利用施設と、前記LNG気化器と前記冷水利用施設との間に設けられ、前記LNG冷熱を蓄熱する蓄熱槽と、前記LNG気化器における冷凍能力が前記冷水利用施設における冷熱需要を超えるとき、前記冷凍能力が前記冷熱需要を越える余剰冷熱分の前記LNG冷熱を前記蓄熱槽に蓄熱し、前記冷水利用施設における冷熱需要が前記冷凍能力を超えるとき、前記冷凍能力が前記冷熱需要に対して不足する不足冷熱を前記蓄熱槽から前記冷水利用部に前記低温冷水で供給するように制御する制御装置と、を備えたLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システムである。
前記LNG気化器が、液化天然ガスが気化するときに生じるLNG冷熱を前記液化天然ガスと冷水との間で直接熱交換して前記冷水を低温冷水とする冷水式LNG気化器である場合、前記蓄熱槽は、前記低温冷水を貯留する冷水蓄熱槽であり、前記冷水式LNG気化器から前記低温冷水を前記冷水蓄熱槽に供給し、前記冷水蓄熱槽から前記冷水を前記冷水式LNG気化器に戻す第1冷水循環回路と、前記冷水蓄熱槽から前記LNG冷熱で冷却された冷水を前記冷水利用部に供給し前記LNG冷熱を放出させて高温冷水とし、前記高温冷水を前記冷水蓄熱槽に戻す第2冷水循環回路と、を備える。
前記LNG気化器が、液化天然ガスが気化するときに生じるLNG冷熱を前記液化天然ガスと不凍熱媒体との間で熱交換するLNG気化器であり、熱交換器に前記不凍熱媒体を循環させて前記不凍熱媒体と冷水との間で前記LNG冷熱を熱交換して前記冷水を低温冷水にする第1不凍熱媒体循環回路を備える場合、前記蓄熱槽は、前記低温冷水を貯留する冷水蓄熱槽であり、前記熱交換器から前記低温冷水を前記冷水蓄熱槽に供給し、前記冷水蓄熱槽から前記冷水を前記熱交換器に戻す第3冷水循環回路と、前記冷水蓄熱槽から前記LNG冷熱で冷却された前記冷水を前記冷水利用部に供給し前記LNG冷熱を放出させて高温冷水とし、前記高温冷水を前記冷水蓄熱槽に戻す第4冷水循環回路と、を備える。
前記LNG気化器が、液化天然ガスが気化するときに生じるLNG冷熱を不凍熱媒体に熱交換するLNG気化器であり、前記蓄熱槽が、熱交換コイルが配置された製氷部が形成された氷蓄熱槽である場合、前記LNG気化器と前記熱交換コイルとの間で前記不凍熱媒体を循環させ、前記LNG冷熱を前記氷蓄熱槽の前記製氷部に貯留された冷水に放出して氷結させる第2不凍熱媒体循環回路と、前記氷蓄熱槽から前記LNG冷熱で冷却された前記冷水を前記冷水利用部に供給し、前記LNG冷熱を放出させて高温冷水とし、前記高温冷水を前記氷蓄熱槽に戻す第5冷水循環回路と、を備える。
本発明のLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システムは、LNGサテライト基地におけるLNG冷熱の供給能力である冷凍能力が冷水利用施設における冷熱需要を超えるとき、冷凍能力が冷熱需要を越える余剰冷熱分のLNG冷熱を蓄熱槽に貯留し、冷熱水利用施設における冷熱需要がLNGサテライト基地の冷凍能力を超えるとき、冷凍能力が冷熱需要に対して不足する不足冷熱分のLNG冷熱を蓄熱槽に蓄熱された低温冷水で冷水利用施設に供給する。これにより、一日を通してのLNGサテライト基地における冷凍能力の変化動向と冷水利用施設における冷熱需要の変化動向との差異に拘わらず、LNG冷熱のみによって冷水利用施設で利用する冷熱を賄うことができ、LNG冷熱を最大限活用でき、省エネ効果が大きい。また、冷水利用施設のランニングコストも低減することができる。
冷凍能力が冷熱需要に対して不足する不足冷熱分のLNG冷熱を蓄熱槽に貯留されたLNG冷熱から冷水利用施設に供給するので、冷水利用施設の冷熱需要の最大量が、冷水利用施設における冷熱需要がLNGサテライト基地における冷凍能力を超えるときの冷凍能力に限定される必要がなくなり、冷水利用施設を大型化することができる。
通常、施設の冷房には、冷凍機、冷却塔が必要であり、冷却塔で膨大な量の用水(冷却塔補給水)が冷却のために使用されて大気に放出されるが、本発明では冷凍機、冷却塔が不要であり、LNGサテライト基地で生じたLNG冷熱を蓄熱して最大限活用するので、水資源の節約効果が大きい。
第1実施形態に係るLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システムの全体構成を示すブロック図である。
冷水式LNG気化器における冷凍能力と完全制御型植物工場の冷房負荷とを一日の時刻別に示す図である。
)温度成層式冷水蓄熱装置を示す図である。
第2実施形態に係るLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システムの全体構成を示すブロック図である。
冷水式LNG気化器における冷凍能力と太陽光利用型植物工場の冷房負荷とを一日の時刻別に示す図である。
第3実施形態に係るLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システムの全体構成を示すブロック図である。図である。
第4実施形態に係るLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システムの全体構成を示すブロック図である。
第4実施形態における氷蓄熱槽を示す図である。
1.第1実施形態の構成
第1実施形態に係るLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システム1aは、図1に示すように、液化天然ガス(LNG)を気化する冷水式LNG気化器11を備えたLNGサテライト基地10と、冷水式LNG気化器11で気化された天然ガス(NG)を燃焼させて利用する産業設備としてのGTCC(ガスタービンコンバインドサイクル)発電プラント20と、LNGサテライト基地10とGTCC発電プラント20とに近接して配置された冷水利用施設としての完全制御型の植物工場30と、冷水式LNG気化器11と植物工場30との間に設けられ、低温冷水を貯留する冷水蓄熱槽40と、冷水式LNG気化器11から低温冷水を冷水蓄熱槽40に供給し、冷水蓄熱槽40から冷水を冷水式LNG気化器11に戻す第1冷水循環回路50と、冷水蓄熱槽40からLNG冷熱で冷却された冷水を冷水利用部に供給しLNG冷熱を放出させて高温冷水とし、高温冷水を冷水蓄熱槽40に戻す第2冷水循環回路60と、を備える。
LNGサテライト基地10は、産業設備であるGTCC発電プラント20の近傍に設けられ、港湾からLNGタンクローリーで運搬された液化天然ガスを貯留するLNGタンク12と、LNGタンク12から供給された液化天然ガスを12〜30℃の冷水で気化させて天然ガスとする冷水式LNG気化器11を備える。これにより、LNGサテライト基地10は、液化天然ガスが気化するときに生じるLNG冷熱を液化天然ガスと冷水との間で直接熱交換して冷水を低温冷水とする冷水式LNG気化器11によってGTCC発電プラント20で使用される天然ガスを生成する。冷水式LNG気化器11としては、例えば、特許第4422977号公報に記載されている低温液化ガス気化装置を用いる。この低温液化ガス気化装置は、株式会社神戸製鋼所によってKOBELCO冷水式LNG気化器の型式KSHとして販売されている。
GTCC発電プラント20は公知であり、冷水式LNG気化器11から供給された天然ガスの燃焼によって作動されるガスタービン発電装置と、このガスタービンから排出された排気ガスから排熱回収ボイラで熱回収して生成した蒸気で作動される復水タービン発電装置とから構成されている。GTCC発電プラント20には冷却装置21が設けられ、復水タービン発電装置から排出された蒸気は冷却装置21の凝縮部22で復水され、排熱回収ボイラに戻される。冷却装置21は、凝縮部22と冷却塔23との間で冷却水を循環させる循環回路24を備えている。なお、冷却装置21は、冷却水に代えて海水を使用し、海からポンプで海水を汲み上げて凝縮部22に供給し、蒸気を復水させた後に海に放出するようにしてもよい。
冷水利用施設である完全制御型の植物工場30は、LNGサテライト基地10およびGTCC発電プラント20に近接して配置され、照明によって明期と暗期を作り、電力、炭酸ガス、水、肥料などを自動的に供給されて植物を人工的に栽培する。植物工場30には、冷房用冷水コイル31とファンを備えた冷房室内機が設けられ、冷房利用施設の冷水利用部である冷房用冷水コイル31には、冷水蓄熱槽40との間で冷水が第2冷水循環回路60によって循環され、LNG冷熱で冷却された冷水を利用して植物工場30を冷房する。
LNGサテライト基地10と植物工場30との間には、低温冷水を貯留する冷水蓄熱槽40が設けられている。冷水蓄熱槽40は、低温冷水(例えば8℃)を貯留する低温部43と高温冷水(例えば20℃)を貯留する高温部44が形成されている。冷水蓄熱槽としては、特許第3578973号公報に記載されているような上側に高温部が形成され下側に低温部が形成される公知の温度成層式冷水蓄熱槽、あるいは公知の多槽(連結完全混合槽)式蓄熱槽を用いる。
第1冷水循環回路50は、LNGサテライト基地10の冷水式LNG気化器11の冷水流出口を冷水蓄熱槽40の下側に形成される低温部43に管路51で接続し、冷水蓄熱槽40の上側に形成される高温部44を冷水式LNG気化器11の冷水流入口に管路52で接続する。管路52には三方弁53および定流量ポンプ54が上流側から順次介在され、三方弁53の2個の流入口に冷水蓄熱槽40の高温部44および低温部43がそれぞれ接続されている。
管路52には、定流量ポンプ54と冷水式LNG気化器11との間にバックアップ用熱交換器70が設けられ、冷水蓄熱槽40から冷水式LNG気化器11に戻る冷水がバックアップ用熱交換器70によって昇温されるようになっている。これにより、冷水式LNG気化器11に戻る冷水の温度が冷水式LNG気化器11において液化天然ガスを冷水が氷結することなく気化させるために必要な温度より低い場合、冷水の温度をバックアップして昇温させることができる。
GTCC発電プラント20の冷却装置21の循環回路24の凝縮部22と冷却塔23との中間部分とバックアップ用熱交換器70との間で、凝縮部22で蒸気と熱交換して昇温した冷却水が循環され、冷水式LNG気化器11に戻る冷水をバックアップして昇温させる。
管路52にはバックアップ用熱交換器70と冷水式LNG気化器11との間に三方弁71が介在され、三方弁71の流入口と流出口が管路52に接続されている。管路52には定流量ポンプ54とバックアップ用熱交換器70との間で戻り管路72の一端が接続され、戻り管路72の他端は三方弁71の他の流入口に接続されている。三方弁71を調整することによりバックアップ用熱交換器70を通る冷水の流量とバックアップ用熱交換器70を通らない冷水の流量とを調整し、冷水式LNG気化器11に戻る冷水の温度を調整する。
第2冷水循環回路60は、冷水蓄熱槽40の低温部43を冷房用冷水コイル31の入口に管路61で接続し、冷房用冷水コイル31の出口を冷水蓄熱槽40の高温部44に管路62で接続する。管路61には三方弁63および可変流量ポンプ64が上流側から順次介在され、三方弁63の2個の流入口に冷水蓄熱槽40の低温部43および高温部44がそれぞれ接続されている。管路62には二方弁65が介在されている。
80は排ガス供給装置で、GTCC発電プラント20において天然ガスの燃焼によって生じた100℃以上の排ガスを排ガス冷却装置81で冷却して植物工場30に供給し炭酸ガスを補給する。排ガス冷却装置81は、可変流量ポンプ64が吐出したLNG冷熱で冷却された冷水の一部を二方弁82で流量制御して循環させ、排ガスと熱交換させて高温冷水にして冷水蓄熱槽40の高温部44に戻すように構成されている。
制御装置90は、冷水式LNG気化器11から流出する低温冷水の温度が一定の低温、例えば8℃になるように第1冷水循環回路50を制御する。制御装置90は、定流量ポンプ54で一定流量の冷水を第1冷水循環回路50循環させ、冷水式LNG気化器11から流出した低温冷水の温度T1を計測し、温度T1が例えば8℃となるように三方弁53を制御して冷水蓄熱槽40から流出する高温冷水と低温冷水との混合割合を調整して、冷水式LNG気化器11に流入する冷水の温度を制御する。これにより、冷水式LNG気化器11における一日を通しての冷凍能力の変化に拘わらず、冷水式LNG気化器11から流出する低温冷水の温度T1を一定(8℃)に維持できる。冷水式LNG気化器11における冷凍能力が安定状態で、冷水蓄熱槽40に貯留されている低温冷水および高温冷水の温度が、例えば8℃と20℃である場合、冷水式LNG気化器11に流入する冷水の温度は例えば15℃になる。
制御装置90は、植物工場30の室内温度が要求温度(例えば25℃)になり、冷房用冷水コイル31から冷水蓄熱槽40に戻されるLNG冷熱を放出した高温冷水の温度が例えば20℃となるように第2冷水循環回路60を制御する。制御装置90は、植物工場30内の温度T2を計測し、温度T2が例えば25℃となるように、冷水蓄熱槽40から可変流量ポンプ64で吸い出されて冷房用冷水コイル31を通って冷水蓄熱槽40の高温部44に戻される冷水の流量を二方弁65で制御する。冷水蓄熱槽40に貯留されている低温冷水および高温冷水の温度が、例えば8℃と20℃である場合、冷房用冷水コイル31から冷水蓄熱槽40に戻されるLNG冷熱を放出した高温冷水の温度を20℃とするためには、三方弁63を制御して冷水蓄熱槽40から流出する高温冷水と低温冷水との混合割合を調整し、冷房用冷水コイル31に流入するLNG冷熱で冷却された冷水の温度を例えば10℃に調整する。これにより、植物工場30の冷房負荷(冷熱需要)が日射の有無や外気温度によって一日を通して変化するにも拘わらず、植物工場30の室内温度を要求温度に維持できる。
このようにして、制御装置90は、冷水式LNG気化器11における冷凍能力が植物工場30における冷熱需要を超えるとき、冷凍能力が冷熱需要を越える余剰冷熱分の低温冷水を冷水蓄熱槽40に貯留し、植物工場30における冷熱需要が冷水式LNG気化器11における冷凍能力を超えるとき、冷凍能力が冷熱需要に対して不足する不足冷熱を冷水蓄熱槽40に貯留された低温冷水で植物工場30の冷房用冷水コイル31に供給するように第1冷水循環回路50および第2冷水循環回路60を制御する。
2.第1実施形態の作動および効果
第1冷水循環回路50の定流量ポンプ54が駆動されることにより、冷水蓄熱槽40から高温冷水と低温冷水が三方弁53で制御される割合で汲出されて混合された冷水が冷水式LNG気化器11に戻される。冷水式LNG気化器11は、液化天然ガスと冷水との間でLNG冷熱を直接熱交換して天然ガスを生成してGTCC発電プラント20に送出するとともに、LNG冷熱を有する低温冷水を冷水蓄熱槽40の低温部43に供給する。このとき、冷水式LNG気化器11から流出した低温冷水の温度T1が計測され、温度T1が、冷水式LNG気化器11における一日を通しての冷凍能力の変化に拘わらず、一定の低温となるように三方弁53で制御される。LNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システム1aの安定運転状態において、冷水式LNG気化器11に流入する冷水の温度は約15℃となる。
第2冷水循環回路60の可変流量ポンプ64が駆動されることにより、冷水蓄熱槽40から低温冷水(8℃)と高温冷水(20℃)が三方弁63で制御される割合で汲出されて混合され、LNG冷熱で冷却された冷水(10℃)が生成される。LNG冷熱で冷却された冷水は冷房用冷水コイル31に送られLNG冷熱を放出して植物工場30の室内温度を要求温度(25℃)に制御し、二方弁65を介して冷水蓄熱槽40の高温部44に戻される。このとき、植物工場30内の温度T2が要求温度となるように、冷水の流量が二方弁65で制御される。可変流量ポンプはLNG冷熱で冷却された冷水の流量を確保する吐出量となるように制御される。冷水蓄熱槽40から冷房用冷水コイル31に供給されるLNG冷熱で冷却された冷水の温度を10℃とするために、三方弁63を制御して冷水蓄熱槽40から汲出される低温冷水と高温冷水の割合を調整する。
植物工場30が完全制御型の場合、光源の点灯で照明して明期をつくり、消灯して暗期をつくる。図2に示すように、0時から9時および17時から24時の明期では点灯する光源の発熱を冷却するために冷房が必要であるので、冷熱需要が発生する。しかし、9時から17時の暗期は消灯するので照明による冷熱需要が生じない。天然ガスの使用量は夜間より日中の方が多くなるので、LNGサテライト基地10の冷水式LNG気化器11による液化天然ガスの気化量は天然ガスの使用量に連動して増加し、冷水式LNG気化器11における冷凍能力は、0時から24時の間で図2に示すように変動する。
制御装置90は、0時から24時の間、定流量ポンプ54を作動させて冷水式LNG気化器11の冷凍能力に応じて生じる冷熱を有する低温冷水を冷水蓄熱槽40の低温部43に送出し、0時から9時の間および17時から24時の間は可変流量ポンプ64を作動させて冷水蓄熱槽40からLNG冷熱で冷却された冷水を冷房用冷水コイル31に植物工場30における冷熱需要に応じた流量で供給し、冷房用冷水コイル31でLNG冷熱を放出した高温冷水を冷水蓄熱槽40の高温部44に戻す。
このようにして、制御装置90は、冷水式LNG気化器11における冷凍能力が植物工場30における冷熱需要を超える9時から17時の間は、冷凍能力が冷熱需要を越える余剰冷熱分のLNG冷熱を有する低温冷水を冷水蓄熱槽40の低温部43に貯留し、植物工場30における冷熱需要が冷水式LNG気化器11の冷凍能力を超える0時から9時の間および17時から24時の間は、冷凍能力が冷熱需要に対して不足する不足冷熱を冷水蓄熱槽40の低温部43に貯留された低温冷水で植物工場30の冷房用冷水コイル31に供給する。
冷凍能力と冷熱需要のバランスが予想より崩れ、冷水式LNG気化器11で熱交換する冷水の温度を高くする必要がある場合、三方弁71を必要度合いに応じた開度で開いて冷水式LNG気化器11に戻る冷水の一部をバックアップ用熱交換器70で加温する。これにより、GTCC発電プラント20の冷却装置21の循環回路24から供給される約20℃の冷却水または海水によって冷水が加熱され、冷水式LNG気化器11に供給する冷水の温度を高めることができる。冷却水または海水は約15℃に冷やされて循環回路24に戻る。
GTCC発電プラント20において、ガスタービンを駆動し排熱回収ボイラを加熱した後に排出される排ガスを必要に応じて植物工場30に炭酸ガスとして補給する。排ガス供給装置80は、放出される100℃以上の排ガスを排ガス冷却装置81によって約20℃に冷却して植物工場30に供給する。排ガス冷却装置81には、冷水蓄熱槽40の低温部43から低温冷水が供給され、排ガスと熱交換して約20℃に昇温され、冷水蓄熱槽40の高温部44に戻される。これにより、冷水式LNG気化器11で液化天然ガスがLNG冷熱を放出して生成された天然ガスが産業設備で燃焼した後に排出される排ガスをLNG冷熱によって冷却して植物工場に炭酸ガスとして補給することができる。
GTCC発電プラント20での天然ガス(NG)の消費量は、発電量に応じて変化するので、冷水式LNG気化器11におけるLNG冷熱の供給能力(冷凍能力)は一日を通して変化する。植物工場30の冷房負荷(冷熱需要)は日射の有無や外気温度によって一日を通して変化する。これにより、一日を通しての冷水式LNG気化器11における冷凍能力の変化動向と植物工場30における冷熱需要の変化動向に差異が生じる。第1実施形態によれば、このような一日を通しての冷水式LNG気化器11における冷凍能力の変化動向と植物工場30における冷熱需要の変化動向の差異に拘わらず、冷水式LNG気化器11で生じる冷熱を有する低温冷水のみによって植物工場30を冷房することができ、冷熱を無駄なく利用でき省エネ効果が大きい。
第1実施形態では、冷水式LNG気化器11を用いているので、冷水式LNG気化器11で生じるLNG冷熱を有する低温冷水を冷水蓄熱槽40の低温部43に直接流入させて貯蓄した後に、植物工場30の冷房用冷水コイル31にLNG冷熱で冷却された冷水として供給することができる。これにより、簡素な構成でLNG冷熱で冷却された冷水を植物工場30の冷房に効率よく使用することができる。
さらに、冷水蓄熱槽40を温度成層式冷水蓄熱槽41とすれば、冷水蓄熱槽40をLNGサテライト基地10と植物工場30との間で地上に設置しても、高い蓄熱効率でLNG冷熱を有する低温冷水を貯留することができる。さらに、冷水蓄熱槽40を収納する例えば地下二重スラブ空間を設けなくてよいので、植物工場30を低コストで建設することができ、LNG冷熱を蓄熱して利用する植物生産システム建設のイニシャルコストを低減することができる。
温度成層式冷水蓄熱槽41は、図3に示すように、タンク42の内部に例えば8℃の低温冷水を貯留する低温部43が下側に形成され、例えば20℃の高温冷水を貯留する高温部44が上側に形成されている。タンク42の一方側には、上端が天面と密接し、下端が底面から僅かに離脱した壁45aで囲まれた低温冷水路45が形成され、他方側には、下端が底面と密接し、上端が天面から僅かに離脱した壁46aで囲まれた高温冷水路46が形成されている。低温冷水路45には低温冷水が高温部44の上面と同位に充填されており、高温冷水路46には高温部44の高温冷水が底面まで充填されている。タンク42の天面にはベント47が設けられている。低温冷水路45および高温冷水路46には、三方弁63の2個の流入口が接続され、さらに、三方弁53の2個の流入口が接続されている。低温冷水路45の下部に冷水式LNG気化器11が管路51で接続され、高温冷水路46の上部に冷房用冷水コイル31の出口が管路62で接続されている。
実施形態1では、冷水式LNG気化器11における冷凍能力が植物工場30における冷熱需要に対して不足する不足冷熱を冷水蓄熱槽40からLNG冷熱で冷却された冷水として植物工場30に供給するので、植物工場30の冷熱需要の最大量が、植物工場30における冷熱需要が冷水式LNG気化器11における冷凍能力を超えるときの冷凍能力の大きさに限定される必要がなくなり、植物工場30を大型化することができる。
3.第2実施形態の構成
第2実施形態に係るLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システム1bは、産業設備を淡水化プラント25とし、植物工場30を太陽熱利用型とし、植物工場に暖房用温水コイル86を設けた点以外は第1実施形態と同じであるので、相違点について説明し、第1実施形態と同じ構成要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。
第2実施形態では、図4に示すように、産業設備として淡水化プラント、例えば公知の多段フラッシュ法淡水化プラント25を用いる。多段フラッシュ法淡水化プラント25は、エゼクタを高速で流れる蒸気によって生成した負圧で蒸発器を減圧し、加熱器で蒸気によって加熱された海水を負圧の蒸発器で沸騰蒸発させて発生した水蒸気を凝縮して淡水を生産する。エゼクタを通過した蒸気は、冷却装置26の凝縮部27で海水と熱交換して復水され、排熱回収ボイラに戻される。冷却装置26は、海水をポンプで海から汲み上げ、凝縮部27を経由して海に戻す循環回路28を備えている。淡水化プラント25は、冷水式LNG気化器11から供給された天然ガスの燃焼によって作動されるガスタービンによって駆動されるガスタービン発電装置と並設されるケースが多く、エゼクタを高速で流れる蒸気は、ガスタービンから排出された排気ガスから排熱回収ボイラで熱回収して生成した蒸気を用いる。
淡水化プラント25に設けられた冷却装置26の凝縮部27と植物工場30に設けられた暖房用温水コイル86との間にヒートポンプ85が設けられている。ヒートポンプ85は、凝縮部27で昇温した海水の一部から熱を吸収し、暖房用温水コイル86を循環する熱媒体に温熱を供給し、植物工場30の室内を必要に応じて暖房する。
4.第2実施形態の作動および効果
植物工場30が太陽光利用型の場合、植物工場30における冷熱需要は日射の有無や外気温度に従って変動し、外気温度は夜明けから日没の間に上昇する。従って、太陽光利用型の植物工場30における冷熱需要は、図5に示すように時刻によって変動し、0時から8時までの間および18時から24時までの間は0であり、8時から18時の間に急増する。冷水式LNG気化器11の冷凍能力の変動は、完全制御型の植物工場30の場合と同じである。
制御装置90は、0時から24時の間、定流量ポンプ54を作動させて冷水式LNG気化器11における冷凍能力に応じて生じる冷熱を有する低温冷水を冷水蓄熱槽40の低温部43に送出し、8時から18時の間は可変流量ポンプ64を作動させて冷水蓄熱槽40からLNG冷熱で冷却された冷水を冷房用冷水コイル31に植物工場30における冷熱需要に応じた流量で供給し、冷房用冷水コイル31でLNG冷熱を放出した高温冷水を冷水蓄熱槽40の高温部44に戻す。
このようにして、制御装置90は、冷水式LNG気化器11における冷凍能力が太陽光利用型の植物工場30における冷熱需要を超える0時から8時の間および18時から24時の間は、冷凍能力が冷熱需要を越える余剰冷熱分のLNG冷熱を有する低温冷水を冷水蓄熱槽40の低温部43に貯留し、植物工場30における冷熱需要が冷水式LNG気化器11における冷凍能力を超える8時から18時の間は、冷凍能力が冷熱需要に対して不足する不足冷熱を冷水蓄熱槽40の低温部43から低温冷水で植物工場30の冷房用冷水コイル31に供給するように第1冷水循環回路50および第2冷水循環回路60を制御する。
太陽光利用型の植物工場30を暖房する場合は、ヒートポンプ85を起動する。これにより、約20℃の海水が冷却装置26の循環回路28からヒートポンプ85に供給され、熱媒体と熱交換して温熱を放出した後、温度が約15℃になって循環回路28に戻される。ヒートポンプ85で温熱を得て約50℃に加熱された熱媒体は植物工場30の暖房用温水コイル86に供給されて温熱を放出した後、温度が約45℃に低下してヒートポンプ85に戻される。
第1実施形態と第2実施形態において、産業設備としてのGTCC発電プラント20と淡水化プラント25とを入れ替えても良い。入れ替えた場合でも、産業設備に設けられた凝縮部22、27は、冷却水または海水で冷却されることになる。
第2実施形態は第1実施形態と同様の効果を奏する。さらに、冷水式LNG気化器11で生成された天然ガスが燃焼して排出される排ガスによって排熱回収ボイラで生成された蒸気を水に凝縮させる産業設備の凝縮部27を冷却する冷却水または海水からヒートポンプ85で熱を吸収し、植物工場30に設けられた暖房用温水コイル86で放出して植物工場30の室内を必要に応じて暖房するので、植物工場30のランニングコストを低減することができる。
5.第3実施形態の構成
第3実施形態にかかるLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システム1cは、図6に示すように、液化天然ガスを気化させる気化器が、LNG冷熱を液化天然ガスと不凍熱媒体との間で熱交換するLNG気化器15であり、LNG気化器15と冷水蓄熱槽40との間に熱交換器16を設けた点以外は第1実施形態と同じであるので、相違点について説明し、第1実施形態と同じ構成要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。
LNGサテライト基地10は、LNGタンク12から供給された液化天然ガスを不凍熱媒体で気化させて天然ガスとするLNG気化器15を備える。LNG気化器15と冷水蓄熱槽40との間には熱交換器16が設けられ、LNG気化器15と熱交換器16とは不凍熱媒体が循環する第1不凍熱媒体循環回路75で接続されている。
第1不凍熱媒体循環回路75には、LNG気化器15の熱媒体出口側と熱交換器16の熱媒体入口側との間に定流量ポンプ79が介在され、一定流量の不凍熱媒体を第1不凍熱媒体循環回路75を循環させる。これにより、LNG気化器15で液化天然ガスの気化で生じるLNG冷熱によって例えば−5℃に低下された不凍熱媒体は熱交換器16に供給され、冷水蓄熱槽40から熱交換器16に戻った冷水と熱交換して温度が例えば2℃に上昇される。熱交換器16で不凍熱媒体と熱交換して温度が例えば4℃に低下した低温冷水は冷水蓄熱槽40の低温部43に供給される。
第3実施形態の第3冷水循環回路55は、第1実施形態の第1冷水循環回路50が冷水式LNG気化器11と冷水蓄熱槽40との間に設けられているのに対し、熱交換器16と冷水蓄熱槽40との間に設けられている。第3冷水循環回路55には、定流量ポンプ54と熱交換器16の冷水入口側との間にバックアップ用熱交換器70および三方弁71が上流側から順次介在され、定流量ポンプ54とバックアップ用熱交換器70との間に戻り管路72の一端が接続されている。戻り管路72の他端は三方弁71の他の流入口に接続されている。なお、バックアップ用熱交換器70、三方弁71および戻り管路72は、第3冷水循環回路55に設けることなく、第1不凍熱媒体循環回路75の熱交換器16の熱媒体出口側とLNG気化器15の熱媒体入口側との間に設けてもよい。
6.第3実施形態の作動および効果
制御装置90は、熱交換器16から流出する低温冷水の温度が一定の低温、例えば4℃になるように第3冷水循環回路55を制御する。制御装置90は、定流量ポンプ54で一定流量の冷水を第3冷水循環回路55循環させ、熱交換器16から流出した低温冷水の温度T1を計測し、温度T1が例えば4℃となるように三方弁53を制御して冷水蓄熱槽40から流出する高温冷水と低温冷水との混合割合を調整して、熱交換器16に流入する冷水の温度を制御する。これにより、LNG気化器15における一日を通しての冷凍能力の変化に拘わらず、LNG気化器15からLNG冷熱を移転された熱交換器16から流出する低温冷水の温度T1を一定(4℃)に維持できる。LNG気化器15における冷凍能力が安定状態で、冷水蓄熱槽40に貯留されている低温冷水および高温冷水の温度が、例えば4℃と18℃である場合、熱交換器16に流入する冷水の温度は例えば11℃になる。
制御装置90は、植物工場30の室内温度が要求温度(例えば25℃)になり、冷房用冷水コイル31から冷水蓄熱槽40に戻されるLNG冷熱を放出した高温冷水の温度が例えば18℃となるように第4冷水循環回路66を制御する。制御装置90は、植物工場30内の温度T2を計測し、温度T2が例えば25℃となるように、冷水蓄熱槽40から可変流量ポンプ64で吸い出されて冷房用冷水コイル31を通って冷水蓄熱槽40の高温部44に戻される冷水の流量を二方弁65で制御する。冷水蓄熱槽40に貯留されている低温冷水および高温冷水の温度が、例えば4℃と18℃である場合、冷房用冷水コイル31から冷水蓄熱槽40に戻されるLNG冷熱を放出した高温冷水の温度を18℃とするためには、三方弁63を制御して冷水蓄熱槽40から流出する高温冷水と低温冷水との混合割合を調整し、冷房用冷水コイル31に流入するLNG冷熱で冷却された冷水の温度を例えば6℃に調整する。これにより、植物工場30の冷房負荷(冷熱需要)が日射の有無や外気温度によって一日を通して変化するにも拘わらず、植物工場30の室内温度を要求温度に維持できる。
このようにして、制御装置90は、LNG気化器15における冷凍能力が植物工場30における冷熱需要を超えるとき、冷凍能力が冷熱需要を越える余剰冷熱分の低温冷水を冷水蓄熱槽40に貯留し、植物工場30における冷熱需要がLNG気化器15における冷凍能力を超えるとき、冷凍能力が冷熱需要に対して不足する不足冷熱を冷水蓄熱槽40に貯留された低温冷水で植物工場30の冷房用冷水コイル31に供給するように第3冷水循環回路55および第4冷水循環回路66を制御する。
LNG気化器15と冷水蓄熱槽40との間に熱交換器16を介在させたことにより、LNG気化器15で不凍熱交換媒体を使用することが可能となり、熱交換器16で氷結することなくLNG冷熱を不凍熱媒体と例えば11℃の冷水との間で熱交換して冷水を4℃の低温冷水にすることができ、低温冷水と高温冷水の温度差を第1実施形態における12℃から14℃に広げることができる。冷水蓄熱槽40は、低温部43に貯留される低温冷水と高温部44に貯留される高温冷水の温度差を大きくすることにより、蓄熱する冷熱量が同じであれば体積を小さくすることができる。さらに、低温冷水の温度を4℃と低くできるので、冷水利用施設での冷房のエネルギー効率を高くすることができる。
第3実施形態において、第2実施形態のように産業設備を淡水化プラント25とし、植物工場30を太陽熱利用型とし、植物工場30に暖房用温水コイル86を設けてもよい。第3実施形態にかかるLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システム1cのその他の構成、作用および効果は、第1実施形態のものと同様であるので説明を省略する。
7.第4実施形態の構成
第4実施形態にかかるLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システム1dは、図7に示すように、冷水式LNG気化器11を、LNG冷熱を液化天然ガスと不凍熱媒体との間で熱交換するLNG気化器15とし、冷水蓄熱槽40を氷蓄熱槽91とし、第1冷水循環回路を第2不凍熱媒体循環回路76とした点以外は第1実施形態と同じであるので、相違点について説明し、第1実施形態と同じ構成要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。第5冷水循環回路67は第3実施形態の第4冷水循環回路66と同じである。
LNGサテライト基地10は、液化天然ガスを不凍熱媒体で気化させて天然ガスとする冷水式LNG気化器11を備える。LNG気化器15と氷蓄熱槽91との間には、不凍熱媒体が定流量ポンプ79によって循環される第2不凍熱媒体循環回路76が設けられている。第2不凍熱媒体循環回路76には、LNG気化器15内で液化天然ガスと不凍熱媒体との間で熱交換させて不凍熱媒体を例えば−20℃に冷却する熱交換コイルと、氷蓄熱槽91内で不凍熱媒体と製氷部97の冷水との間で熱交換させて製氷部97の冷水を氷結させ、不凍熱媒体を例えば−13℃に昇温させる熱交換コイル77が設けられている。
氷蓄熱槽91は、図8に示すように、タンク92の内部に例えば4℃の低温冷水を貯留する低温部93が下端部に形成され、例えば18℃の高温冷水を貯留する高温部94が上端部に形成されている。タンク92の上下方向中央部には製氷部97が形成され、製氷部97に第2不凍熱媒体循環回路76の熱交換コイル77が配置されている。タンク92の一方側には、上端が天面と密接し、下端が底面から僅かに離脱した壁95aで囲まれた低温冷水路95が形成され、他方側には、下端が底面と密接し、上端が天面から僅かに離脱した壁96aで囲まれた高温冷水路96が形成されている。低温冷水路95には低温冷水が高温部94の上面と同位に充填されており、高温冷水路96には高温部94の高温冷水が底面まで充填されている。タンク92の天面にはベント98が設けられている。低温冷水路95に第5冷水循環回路67の管路61が接続され、管路61に三方弁63および可変流量ポンプ64が上流側から順次介在されている。三方弁63の他の流入口には高温冷水路96が接続されている。高温冷水路96に接続された管路62には植物工場30内の冷房用冷水コイル31の出口が二方弁65を介して接続されている。
第2不凍熱媒体循環回路76には、熱交換コイル77の熱媒体出口側とLNG気化器15の熱媒体入口側との間にバックアップ用熱交換器70および三方弁71が上流側から順次介在され、熱交換コイル77の熱媒体出口側とバックアップ用熱交換器70との間に戻り管路72の一端が接続されている。戻り管路72の他端は三方弁71の他の流入口に接続されている。第2不凍熱媒体循環回路76には、LNG気化器15の熱媒体出口側と熱交換コイル77の熱媒体入口側との間に定流量ポンプ79が介在されている。
7.第4実施形態の作動
第2不凍熱媒体循環回路76の定流量ポンプ79が駆動されることにより、熱交換コイル77で製氷し、例えば−13℃に昇温した不凍熱媒体がLNG気化器15に戻される。LNG気化器15は、液化天然ガスと不凍熱媒体との間でLNG冷熱を熱交換して天然ガスを生成してGTCC発電プラント20に送出するとともに、LNG冷熱を有する不凍熱媒体を製氷部97の熱交換コイル77に供給する。
これにより、LNG気化器15における冷凍能力が安定状態で、冷水蓄熱槽40に貯留されている低温冷水および高温冷水の温度が、例えば4℃と18℃である場合、LNG気化器15に流入する不凍熱媒体の温度は例えば−13℃になる。
そして、制御装置90は、LNG気化器15における冷凍能力が植物工場30における冷熱需要を超えるとき、冷凍能力が冷熱需要を越える余剰冷熱分のLNG冷熱によって製氷部97の冷水を氷結させ、植物工場30における冷熱需要がLNG気化器15における冷凍能力を超えるとき、冷凍能力が冷熱需要に対して不足する不足冷熱を製氷部97での解凍で補充するように第2不凍熱媒体循環回路76および第5冷水循環回路67を制御する。
LNG気化器15と氷蓄熱槽91との間で不凍熱媒体を循環させるようにしたことにより、LNG冷熱を氷結の潜熱(融解熱80Kcal/Kg)で大量に蓄熱することができるので、蓄熱量が同じである場合、蓄熱槽の容積を大幅に縮小することができる。さらに、低温冷水の温度を4℃と低くできるので、冷水利用施設での冷房のエネルギー効率を高くすることができる。
第4実施形態において、第2実施形態のように産業設備を淡水化プラント25とし、植物工場30を太陽熱利用型とし、植物工場30に暖房用温水コイル86を設けてもよい。第4実施形態にかかるLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システム1dのその他の構成、作用および効果は、第1実施形態あるいは第3実施形態のものと同様であるので説明を省略する。
上記実施形態では、冷水利用施設を完全制御型または太陽光利用型の植物工場としたが、これに限定されるものではない。冷水利用施設をデータセンター又はスパコン解析センターとする場合、本冷水供給システムは、冷房用およびCPU冷却用にLNG冷熱で冷却された冷水を供給し、産業設備であるGTCC発電プラントに隣接する。冷水利用施設を電力多消費型精密環境工場(例えば半導体工場)とする場合、本冷水供給システムは、冷房用およびプロセス冷却用にLNG冷熱で冷却された冷水を供給し、LNGサテライト基地と自家発電システムで構成されるエナジーセンターの一部にする。冷水利用施設を大規模空港施設とする場合、本冷水供給システムは、施設の冷房用にLNG冷熱で冷却された冷水を供給し、LNGサテライト基地と自家発電システムで構成されるエナジーセンターの一部にする。冷水利用施設を市街化再開発地域とする場合、本冷水供給システムは、地域冷房用にLNG冷熱で冷却された冷水を供給し、LNGサテライト基地と自家発電システムで構成されるエナジーセンターの一部にする。冷水利用施設を冷蔵倉庫または醸造工場など低温室内環境を必要とする施設とする場合、本冷水供給システムは、施設の冷房用にLNG冷熱で冷却された冷水を供給し、産業設備であるGTCC発電プラントに隣接して設ける。
1a〜1d:LNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システム、10:LNGサテライト基地、11:冷水式LNG気化器、12:LNGタンク、15:LNG気化器、16熱交換器、20:ガスタービンコンバインドサイクル発電プラント(産業設備)、25:淡水化プラント(産業設備)、21,26:冷却装置、22,27:凝縮部、23:冷却塔、24,28:循環回路、30:植物工場、31:冷房用冷水コイル、40:冷水蓄熱槽、41:温度成層式冷水蓄熱槽、43:低温部、44:高温部、50:第1冷水循環回路、53,63:三方弁、54:定流量ポンプ、55:第3冷水循環回路、60:第2冷水循環回路、64:可変流量ポンプ、65,82:二方弁、66:第4冷水循環回路、67:第5冷水循環回路、70:バックアップ用熱交換器、71:三方弁、72:戻り管路、75:第1不凍熱媒体循環回路、76:第2不凍熱媒体循環回路、79:定流量ポンプ、80:排ガス供給装置、81:排ガス冷却装置、85:ヒートポンプ、86:暖房用温水コイル、90:制御装置、91:氷蓄熱槽、93:低温部、94:高温部、97:製氷部。
本発明は、液化天然ガスを気化するLNG気化器で生じるLNG冷熱を利用する冷水供給システムに関する。
地球温暖化問題はますます深刻度を増しており、二酸化炭素(CO2)排出係数が大きい石炭や石油から排出係数が小さい天然ガスへの燃料シフトが始まっており、多くの液化天然ガス(LNG)サテライト基地が建設されている。LNGサテライト基地では大量のLNG冷熱が発生する。
LNG冷熱は極めて有用であるにも拘わらず、その有効活用はほとんど行われておらず、海水や温水で気化されて捨てられている。
また、近年、消費者の食品に対する安全・安心への志向が高まり、これに応えるように人工環境において植物を生産する植物工場に関する技術革新が著しく、植物工場をLNG冷熱で冷房することが行われている。
太陽光利用型植物工場は、従来のハウス栽培の延長線上にあり、栽培植物はサラダ菜、リーフレタス等の葉菜類の他、トマト、イチゴ等の果采類である。この方式は平面に限られるので広大な用地を必要とする。また、日射の有無や外気温の変化で室内環境が左右されるので冷熱需要の変化が激しく、夏季の冷房と冬季の暖房に多大なエネルギーを必要とする。
完全制御型植物工場の栽培植物は葉菜類に限られるが、天候や場所に左右されず、多層型の栽培が可能で狭い土地で大量生産することができる。しかし、建屋・冷房装置・栽培装置(照明装置を含む)の建設コストが高く、年間を通して必要となる照明用電力および冷暖房用電力の消費量が非常に大きくなる。このように植物工場では電力コストが大きいことが問題であり、液化天然ガスを気化するLNG気化器で生じるLNG冷熱を植物工場において冷房に利用することが行われている。
特許文献1には、液化天然ガスを気化させるべく液化天然ガスと第1中間媒体とを熱交換させるLNG気化器と、第1中間媒体と第2中間媒体とを熱交換させる第1熱交換器と、第2中間媒体と植物工場内の空気とを熱交換させる第2熱交換器と、を備えたLNG冷熱を利用する植物工場システムが開示されている。
特許文献2には、栽培植物を栽培する温室内を空調する植物工場における空調システムにおいて、蓄冷熱槽内の水を夜間電力で冷却して蓄冷し、その蓄冷熱槽内の冷水を充填式空調機に導入し、充填式空調機で温室内の局所空間から吸引した空気と熱交換して冷気を局所空間に供給するランニングコストを低減できる植物工場における空調システムが開示されている。
特許文献3には、二酸化炭素の発生源となる産業プラントと、液化天然ガスを貯蔵するLNG基地と、植物を生産する植物工場と、産業プラントで発生した二酸化炭素を液化天然ガスを用いてドライアイスとするドライアイス製造設備とを備え、植物工場は、ドライアイス製造設備が製造したドライアイスを植物への二酸化炭素施用の供給源および冷房用の冷熱源として用いる空調システムが記載されている。
実用新案登録第3209642号
特開2000−93010号公報
特開2011−250759号公報
LNG冷熱の供給能力(冷凍能力)は、例えば発電量の増減に応じて天然ガス(NG)の消費量が変化するので、一日を通して変化する。LNGを利用する施設の冷熱需要(冷房負荷またはプロセス等の冷却負荷)も一日を通して変化する。この冷凍能力と冷熱需要の変化動向は一致しないので、LNG冷熱を無駄なく有効に利用することが困難であった。
特許文献1に記載されたシステムでは、一日を通しての天然ガスの消費量の変化に応じて液化天然ガスの気化量が変化することによるLNG気化器における冷凍能力の変化動向と、植物工場における冷熱需要の変化動向との差異のために植物工場を適切に冷房できない不具合が生じる。従って、植物工場における冷熱需要がLNG気化器における冷凍能力を超えない規模の植物工場しか建設することができない。
特許文献2に記載された装置では、冷水を貯留する蓄冷熱槽内の水を夜間電力で冷却して蓄冷し、その蓄冷熱槽内の冷水を昼間に充填式空調機に導入して空気を冷やし、冷気を温室内に供給するものであるので、夜間の電力使用料は必要である。また、夜間電力の利用だけでは冷凍機および蓄熱槽の容量が大きくなる。
特許文献3に記載されたシステムでは、産業プラントで発生した二酸化炭素をLNG基地から供給される液化天然ガスを用いてドライアイスにし、このドライアイスを植物工場で炭酸ガスにして植物に与えているので、産業プラントで発生した排ガスから二酸化炭素を分離してドライアイスにするドライアイス製造設備が必要になる。
本発明の目的は、産業設備に天然ガスを供給するLNGサテライト基地と冷水利用施設との間に、LNGサテライト基地で生じたLNG冷熱を蓄熱する温度成層式冷水蓄熱槽を備え、一日を通してのLNG気化器における冷凍能力の変化動向と冷水利用施設における冷熱需要の変化動向との差異に拘わらず、LNG冷熱のみによって冷水利用施設で利用するLNG冷熱で冷却された冷水を提供可能なLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システムを提供することである。
課題を解決するための第1の手段は、液化天然ガスが気化するときに生じるLNG冷熱を前記液化天然ガスと冷水との間で直接熱交換して前記冷水を低温冷水とする冷水式LNG気化器によって産業設備で使用される天然ガスを生成するLNGサテライト基地と、前記LNGサテライト基地に近接して配置され、前記LNG冷熱で冷却された前記低温冷水を利用する冷水利用部が設けられた冷水利用施設と、前記冷水式LNG気化器と前記冷水利用施設との間に設けられ、前記冷水式LNG気化器から供給される前記低温冷水を貯留する低温部と前記冷水利用部から戻される高温冷水を貯留する高温部が形成される温度成層式冷水蓄熱槽と、前記温度成層式冷水蓄熱槽を前記冷水式LNG気化器の冷水流入口に接続する管路に第1三方弁および定流量ポンプが順次介在され、前記第1三方弁の2個の流入口が前記温度成層式冷水蓄熱槽の前記高温部と前記低温部にそれぞれ接続されて前記冷水を前記冷水式LNG気化器に戻し、前記冷水式LNG気化器から前記低温冷水を前記温度成層式冷水蓄熱槽の前記低温部に供給する第1冷水循環回路と、前記温度成層式冷水蓄熱槽と前記冷水利用部の入口との間に第2三方弁および可変流量ポンプが順次介在され、前記第2三方弁の2個の流入口が前記温度成層式冷水蓄熱槽の前記低温部および前記高温部にそれぞれ接続され、前記第2三方弁によって混合割合を調整された前記低温冷水と前記高温冷水とを前記冷水利用部に供給し前記LNG冷熱を放出させて前記高温冷水とし、流量を制御する二方弁を介して前記高温冷水を前記冷水利用部の出口から前記温度成層式冷水蓄熱槽の前記高温部に戻す第2冷水循環回路と、前記産業設備に設けられた凝縮部を冷却水または海水で冷却する冷却装置と、前記管路に前記定流量ポンプと前記冷水式LNG気化器との間に設けられ、前記凝縮部で熱交換して昇温した前記冷却水または海水の一部が供給されて、前記冷水式LNG気化器に戻る前記冷水をバックアップして昇温するバックアップ用熱交換器と、前記定流量ポンプで一定流量の前記冷水を前記第1冷水循環回路に循環させ、前記第1三方弁を制御して前記温度成層式冷水蓄熱槽から流出する前記高温冷水と前記低温冷水との混合割合を調整して、前記冷水式LNG気化器から流出して前記温度成層式冷水蓄熱槽の前記低温部に供給される前記低温冷水の温度を制御し、前記第2三方弁を制御して前記温度成層式冷水蓄熱槽から前記可変流量ポンプで汲出される前記高温冷水と前記低温冷水との混合割合を調整するとともに、前記冷水利用部を通って前記高温部に戻される前記高温冷水の流量を前記二方弁で制御して、前記冷水利用部から前記温度成層式冷水蓄熱槽の前記高温部に戻される前記高温冷水の温度を制御し、前記冷水式LNG気化器における冷凍能力が前記冷水利用施設における冷熱需要を超えるとき、前記冷凍能力が前記冷熱需要を越える余剰冷熱分の前記低温冷水を前記温度成層式冷水蓄熱槽に貯留し、前記冷水利用施設における冷熱需要が前記冷水式LNG気化器における冷凍能力を超えるとき、前記冷凍能力が前記冷熱需要に対して不足する不足冷熱を前記温度成層式冷水蓄熱槽に貯留された前記低温冷水で前記冷水利用部に供給するように前記第1冷水循環回路および前記第2冷水循環回路を制御する制御装置と、を備えたLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システムである。
課題を解決するための第2の手段は、液化天然ガスが気化するときに生じるLNG冷熱を前記液化天然ガスと不凍熱媒体との間で熱交換するLNG気化器によって産業設備で使用される天然ガスを生成するLNGサテライト基地と、前記LNGサテライト基地に近接して配置され、前記LNG冷熱で冷却された低温冷水を利用する冷水利用部が設けられた冷水利用施設と、前記LNG気化器と前記冷水利用施設との間に設けられ、前記低温冷水を貯留する低温部と前記冷水利用部から戻される高温冷水を貯留する高温部が形成される温度成層式冷水蓄熱槽と、前記LNG気化器と前記温度成層式冷水蓄熱槽との間に設けられた熱交換器と、前記LNG気化器と前記熱交換器との間で前記不凍熱媒体を循環させ、前記LNG気化器で生じたLNG冷熱を前記熱交換器で前記不凍熱媒体と冷水とで熱交換して前記低温冷水とし、前記LNG冷熱を放出した前記不凍熱媒体を前記LNG気化器に戻す第1不凍熱媒体循環回路と、前記温度成層式冷水蓄熱槽を前記熱交換器の冷水入口に接続する管路に第1三方弁および定流量ポンプが順次介在され、前記第1三方弁の2個の流入口が前記温度成層式冷水蓄熱槽の前記高温部と前記低温部にそれぞれ接続されて前記冷水を前記熱交換器に戻し、前記熱交換器から前記低温冷水を前記温度成層式冷水蓄熱槽の前記低温部に供給する第3冷水循環回路と、前記温度成層式冷水蓄熱槽と前記冷水利用部の入口との間に第2三方弁および可変流量ポンプが順次介在され、前記第2三方弁の2個の流入口が前記温度成層式冷水蓄熱槽の前記低温部および前記高温部にそれぞれ接続され、前記第2三方弁によって混合割合を調整された前記低温冷水と前記高温冷水とを前記冷水利用部に供給し前記LNG冷熱を放出させて前記高温冷水とし、流量を制御する二方弁を介して前記高温冷水を前記冷水利用部の出口から前記温度成層式冷水蓄熱槽の前記高温部に戻す第4冷水循環回路と、前記産業設備に設けられた凝縮部を冷却水または海水で冷却する冷却装置と、前記管路に前記定流量ポンプと前記熱交換器との間に設けられ、前記凝縮部で熱交換して昇温した前記冷却水または海水の一部が供給されて、前記熱交換器に戻る前記冷水をバックアップして昇温するバックアップ用熱交換器と、前記定流量ポンプで一定流量の前記冷水を前記第3冷水循環回路に循環させ、前記第1三方弁を制御して前記温度成層式冷水蓄熱槽から流出する前記高温冷水と前記低温冷水との混合割合を調整して、前記熱交換器から流出して前記温度成層式冷水蓄熱槽の前記低温部に供給される前記低温冷水の温度を制御し、前記第2三方弁を制御して前記温度成層式冷水蓄熱槽から前記可変流量ポンプで汲出される前記高温冷水と前記低温冷水との混合割合を調整するとともに、前記冷水利用部を通って前記高温部に戻される前記高温冷水の流量を前記二方弁で制御して、前記冷水利用部から前記温度成層式冷水蓄熱槽の前記高温部に戻される前記高温冷水の温度を制御し、前記LNG気化器における冷凍能力が前記冷水利用施設における冷熱需要を超えるとき、前記冷凍能力が前記冷熱需要を越える余剰冷熱分の前記低温冷水を前記温度成層式冷水蓄熱槽に貯留し、前記冷水利用施設における冷熱需要が前記LNG気化器における冷凍能力を超えるとき、前記冷凍能力が前記冷熱需要に対して不足する不足冷熱を前記温度成層式冷水蓄熱槽に貯留された前記低温冷水で前記冷水利用部に供給するように前記第3冷水循環回路および第4冷水循環回路を制御する制御装置と、を備えLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システムである。
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本発明のLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システムは、LNGサテライト基地におけるLNG冷熱の供給能力である冷凍能力が冷水利用施設における冷熱需要を超えるとき、冷凍能力が冷熱需要を越える余剰冷熱分のLNG冷熱を温度成層式冷水蓄熱槽に貯留し、冷熱水利用施設における冷熱需要がLNGサテライト基地の冷凍能力を超えるとき、冷凍能力が冷熱需要に対して不足する不足冷熱分のLNG冷熱を温度成層式冷水蓄熱槽に蓄熱された低温冷水で冷水利用施設に供給する。これにより、一日を通してのLNGサテライト基地における冷凍能力の変化動向と冷水利用施設における冷熱需要の変化動向との差異に拘わらず、LNG冷熱のみによって冷水利用施設で利用する冷熱を賄うことができ、LNG冷熱を最大限活用でき、省エネ効果が大きい。また、冷水利用施設のランニングコストも低減することができる。
さらに、第1の手段では、定流量ポンプで一定流量の冷水を第1冷水循環回路に循環させ、第1三方弁を制御して温度成層式冷水蓄熱槽から流出する高温冷水と低温冷水との混合割合を調整することによって、冷水式LNG気化器から流出して温度成層式冷水蓄熱槽の低温部に供給される低温冷水の温度を制御することができる。そして、第2三方弁を制御して温度成層式冷水蓄熱槽から可変流量ポンプで汲出される高温冷水と低温冷水との混合割合を調整するとともに、冷水利用部を通って高温部に戻される高温冷水の流量を二方弁で制御することによって、冷水利用部から温度成層式冷水蓄熱槽の高温部に戻される高温冷水の温度を制御することができる。さらに、冷水式LNG気化器に戻る冷水をバックアップして昇温するバックアップ用熱交換器が設けられているので、冷水の温度が冷水式LNG気化器において液化天然ガスを冷水が氷結することなく気化させるために必要な温度より低い場合、冷水の温度をバックアップして昇温させることができる。
第2の手段では、定流量ポンプで一定流量の冷水を第3冷水循環回路に循環させ、第1三方弁を制御して温度成層式冷水蓄熱槽から流出する高温冷水と低温冷水との混合割合を調整することによって、熱交換器から流出して温度成層式冷水蓄熱槽の低温部に供給される低温冷水の温度を制御することができる。そして、第2三方弁を制御して温度成層式冷水蓄熱槽から可変流量ポンプで汲出される高温冷水と低温冷水との混合割合を調整するとともに、冷水利用部を通って高温部に戻される高温冷水の流量を二方弁で制御することによって、冷水利用部から温度成層式冷水蓄熱槽の高温部に戻される高温冷水の温度を制御することができる。さらに、熱交換器に戻る冷水をバックアップして昇温するバックアップ用熱交換器が設けられているので、熱交換器で冷水が氷結しないように冷水の温度をバックアップして昇温させることができる。
冷凍能力が冷熱需要に対して不足する不足冷熱分のLNG冷熱を温度成層式冷水蓄熱槽に貯留されたLNG冷熱から冷水利用施設に供給するので、冷水利用施設の冷熱需要の最大量が、冷水利用施設における冷熱需要がLNGサテライト基地における冷凍能力を超えるときの冷凍能力に限定される必要がなくなり、冷水利用施設を大型化することができる。
通常、施設の冷房には、冷凍機、冷却塔が必要であり、冷却塔で膨大な量の用水(冷却塔補給水)が冷却のために使用されて大気に放出されるが、本発明では冷凍機、冷却塔が不要であり、LNGサテライト基地で生じたLNG冷熱を蓄熱して最大限活用するので、水資源の節約効果が大きい。
第1実施形態に係るLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システムの全体構成を示すブロック図である。
冷水式気化器における冷凍能力と完全制御型植物工場の冷房負荷とを一日の時刻別に示す図である。
)温度成層式冷水蓄熱装置を示す図である。
第2実施形態に係るLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システムの全体構成を示すブロック図である。
冷水式気化器における冷凍能力と太陽光利用型植物工場の冷房負荷とを一日の時刻別に示す図である。
第3実施形態に係るLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システムの全体構成を示すブロック図である。図である。
参考例に係るLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システムの全体構成を示すブロック図である。
参考例における氷蓄熱槽を示す図である。
1.第1実施形態の構成
第1実施形態に係るLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システム1aは、図1に示すように、液化天然ガス(LNG)を気化する冷水式LNG気化器11を備えたLNGサテライト基地10と、冷水式LNG気化器11で気化された天然ガス(NG)を燃焼させて利用する産業設備としてのGTCC(ガスタービンコンバインドサイクル)発電プラント20と、LNGサテライト基地10とGTCC発電プラント20とに近接して配置された冷水利用施設としての完全制御型の植物工場30と、冷水式LNG気化器11と植物工場30との間に設けられ、低温冷水を貯留する冷水蓄熱槽40と、冷水式LNG気化器11から低温冷水を冷水蓄熱槽40に供給し、冷水蓄熱槽40から冷水を冷水式LNG気化器11に戻す第1冷水循環回路50と、冷水蓄熱槽40からLNG冷熱で冷却された冷水を冷水利用部に供給しLNG冷熱を放出させて高温冷水とし、高温冷水を冷水蓄熱槽40に戻す第2冷水循環回路60と、を備える。
LNGサテライト基地10は、産業設備であるGTCC発電プラント20の近傍に設けられ、港湾からLNGタンクローリーで運搬された液化天然ガスを貯留するLNGタンク12と、LNGタンク12から供給された液化天然ガスを12〜30℃の冷水で気化させて天然ガスとする冷水式気化器11を備える。これにより、LNGサテライト基地10は、液化天然ガスが気化するときに生じるLNG冷熱を液化天然ガスと冷水との間で直接熱交換して冷水を低温冷水とする冷水式LNG気化器11によってGTCC発電プラント20で使用される天然ガスを生成する。冷水式気化器11としては、例えば、特許第4422977号公報に記載されている低温液化ガス気化装置を用いる。この低温液化ガス気化装置は、株式会社神戸製鋼所によってKOBELCO冷水式LNG気化器の型式KSHとして販売されている。
GTCC発電プラント20は公知であり、冷水式LNG気化器11から供給された天然ガスの燃焼によって作動されるガスタービン発電装置と、このガスタービンから排出された排気ガスから排熱回収ボイラで熱回収して生成した蒸気で作動される復水タービン発電装置とから構成されている。GTCC発電プラント20には冷却装置21が設けられ、復水タービン発電装置から排出された蒸気は冷却装置21の凝縮部22で復水され、排熱回収ボイラに戻される。冷却装置21は、凝縮部22と冷却塔23との間で冷却水を循環させる循環回路24を備えている。なお、冷却装置21は、冷却水に代えて海水を使用し、海からポンプで海水を汲み上げて凝縮部22に供給し、蒸気を復水させた後に海に放出するようにしてもよい。
冷水利用施設である完全制御型の植物工場30は、LNGサテライト基地10およびGTCC発電プラント20に近接して配置され、照明によって明期と暗期を作り、電力、炭酸ガス、水、肥料などを自動的に供給されて植物を人工的に栽培する。植物工場30には、冷房用冷水コイル31とファンを備えた冷房室内機が設けられ、冷房利用施設の冷水利用部である冷房用冷水コイル31には、冷水蓄熱槽40との間で冷水が第2冷水循環回路60によって循環され、LNG冷熱で冷却された冷水を利用して植物工場30を冷房する。
LNGサテライト基地10と植物工場30との間には、低温冷水を貯留する冷水蓄熱槽40が設けられている。冷水蓄熱槽40は、低温冷水(例えば8℃)を貯留する低温部43と高温冷水(例えば20℃)を貯留する高温部44が形成されている。冷水蓄熱槽としては、特許第3578973号公報に記載されているような上側に高温部が形成され下側に低温部が形成される公知の温度成層式冷水蓄熱槽を用いる。
第1冷水循環回路50は、LNGサテライト基地10の冷水式LNG気化器11の冷水流出口を冷水蓄熱槽40の下側に形成される低温部43に管路51で接続し、冷水蓄熱槽40の上側に形成される高温部44を冷水式LNG気化器11の冷水流入口に管路52で接続する。管路52には第1三方弁53および定流量ポンプ54が上流側から順次介在され、第1三方弁53の2個の流入口に冷水蓄熱槽40の高温部44および低温部43がそれぞれ接続されている。
管路52には、定流量ポンプ54と冷水式LNG気化器11との間にバックアップ用熱交換器70が設けられ、冷水蓄熱槽40から冷水式LNG気化器11に戻る冷水がバックアップ用熱交換器70によって昇温されるようになっている。これにより、冷水式LNG気化器11に戻る冷水の温度が冷水式LNG気化器11において液化天然ガスを冷水が氷結することなく気化させるために必要な温度より低い場合、冷水の温度をバックアップして昇温させることができる。
ガスタービンコンバインドサイクル発電プラント20の冷却装置21の循環回路24の凝縮部22と冷却塔23との中間部分とバックアップ用熱交換器70との間で、凝縮部22で蒸気と熱交換して昇温した冷却水が循環され、冷水式LNG気化器11に戻る冷水をバックアップして昇温させる。
管路52にはバックアップ用熱交換器70と冷水式LNG気化器11との間に三方弁71が介在され、三方弁71の流入口と流出口が管路52に接続されている。管路52には定流量ポンプ54とバックアップ用熱交換器70との間で戻り管路72の一端が接続され、戻り管路72の他端は三方弁71の他の流入口に接続されている。三方弁71を調整することによりバックアップ用熱交換器70を通る冷水の流量とバックアップ用熱交換器70を通らない冷水の流量とを調整し、冷水式LNG気化器11に戻る冷水の温度を調整する。
第2冷水循環回路60は、冷水蓄熱槽40の低温部43を冷房用冷水コイル31の入口に管路61で接続し、冷房用冷水コイル31の出口を冷水蓄熱槽40の高温部44に管路62で接続する。管路61には第2三方弁63および可変流量ポンプ64が上流側から順次介在され、第2三方弁63の2個の流入口に冷水蓄熱槽40の低温部43および高温部44がそれぞれ接続されている。管路62には二方弁65が介在されている。
80は排ガス供給装置で、ガスタービンコンバインドサイクル発電プラント20において天然ガスの燃焼によって生じた100℃以上の排ガスを排ガス冷却装置81で冷却して植物工場30に供給し炭酸ガスを補給する。排ガス冷却装置81は、可変流量ポンプ64が吐出したLNG冷熱で冷却された冷水の一部を二方弁82で流量制御して循環させ、排ガスと熱交換させて高温冷水にして冷水蓄熱槽40の高温部44に戻すように構成されている。
制御装置90は、冷水式LNG気化器11から流出する低温冷水の温度が一定の低温、例えば8℃になるように第1冷水循環回路50を制御する。制御装置90は、定流量ポンプ54で一定流量の冷水を第1冷水循環回路50に循環させ、冷水式LNG気化器11から流出した低温冷水の温度T1を計測し、温度T1が例えば8℃となるように第1三方弁53を制御して冷水蓄熱槽40から流出する高温冷水と低温冷水との混合割合を調整して、冷水式LNG気化器11に流入する冷水の温度を制御する。これにより、LNG気化器11における一日を通しての冷凍能力の変化に拘わらず、冷水式LNG気化器11から流出する低温冷水の温度T1を一定(8℃)に維持できる。LNG気化器11における冷凍能力が安定状態で、冷水蓄熱槽40に貯留されている低温冷水および高温冷水の温度が、例えば8℃と20℃である場合、LNG気化器11に流入する冷水の温度は例えば15℃になる。
制御装置90は、植物工場30の室内温度が要求温度(例えば25℃)になり、冷房用冷水コイル31から冷水蓄熱槽40に戻されるLNG冷熱を放出した高温冷水の温度が例えば20℃となるように第2冷水循環回路60を制御する。制御装置90は、植物工場30内の温度T2を計測し、温度T2が例えば25℃となるように、冷水蓄熱槽40から可変流量ポンプ64で吸い出されて冷房用冷水コイル31を通って冷水蓄熱槽40の高温部44に戻される冷水の流量を二方弁65で制御する。冷水蓄熱槽40に貯留されている低温冷水および高温冷水の温度が、例えば8℃と20℃である場合、冷房用冷水コイル31から冷水蓄熱槽40に戻されるLNG冷熱を放出した高温冷水の温度を20℃とするためには、第2三方弁63を制御して冷水蓄熱槽40から流出する高温冷水と低温冷水との混合割合を調整し、冷房用冷水コイル31に流入するLNG冷熱で冷却された冷水の温度を例えば10℃に調整する。これにより、植物工場30の冷房負荷(冷熱需要)が日射の有無や外気温度によって一日を通して変化するにも拘わらず、植物工場30の室内温度を要求温度に維持できる。
このようにして、制御装置90は、冷水式LNG気化器11における冷凍能力が植物工場30における冷熱需要を超えるとき、冷凍能力が冷熱需要を越える余剰冷熱分の低温冷水を冷水蓄熱槽40に貯留し、植物工場30における冷熱需要が冷水式LNG気化器11における冷凍能力を超えるとき、冷凍能力が冷熱需要に対して不足する不足冷熱を冷水蓄熱槽40に貯留された低温冷水で植物工場30の冷房用冷水コイル31に供給するように第1冷水循環回路50および第2冷水循環回路60を制御する。
2.第1実施形態の作動および効果
第1冷水循環回路50の定流量ポンプ54が駆動されることにより、冷水蓄熱槽40から高温冷水と低温冷水が第1三方弁53で制御される割合で汲出されて混合された冷水が冷水式LNG気化器11に戻される。冷水式LNG気化器11は、液化天然ガスと冷水との間でLNG冷熱を直接熱交換して天然ガスを生成してGTCC発電プラント20に送出するとともに、LNG冷熱を有する低温冷水を冷水蓄熱槽40の低温部43に供給する。このとき、冷水式LNG気化器11から流出した低温冷水の温度T1が計測され、温度T1が、冷水式LNG気化器11における一日を通しての冷凍能力の変化に拘わらず、一定の低温となるように第1三方弁53で制御される。LNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システム1aの安定運転状態において、冷水式LNG気化器11に流入する冷水の温度は約15℃となる。
第2冷水循環回路60の可変流量ポンプ64が駆動されることにより、冷水蓄熱槽40から低温冷水(8℃)と高温冷水(20℃)が第2三方弁63で制御される割合で汲出されて混合され、LNG冷熱で冷却された冷水(10℃)が生成される。LNG冷熱で冷却された冷水は冷房用冷水コイル31に送られLNG冷熱を放出して植物工場30の室内温度を要求温度(25℃)に制御し、二方弁65を介して冷水蓄熱槽40の高温部44に戻される。このとき、植物工場30内の温度T2が要求温度となるように、冷水の流量が二方弁65で制御される。可変流量ポンプはLNG冷熱で冷却された冷水の流量を確保する吐出量となるように制御される。冷水蓄熱槽40から冷房用冷水コイル31に供給されるLNG冷熱で冷却された冷水の温度を10℃とするために、第2三方弁63を制御して冷水蓄熱槽40から汲出される低温冷水と高温冷水の割合を調整する。
植物工場30が完全制御型の場合、光源の点灯で照明して明期をつくり、消灯して暗期をつくる。図2に示すように、0時から9時および17時から24時の明期では点灯する光源の発熱を冷却するために冷房が必要であるので、冷熱需要が発生する。しかし、9時から17時の暗期は消灯するので照明による冷熱需要が生じない。天然ガスの使用量は夜間より日中の方が多くなるので、LNGサテライト基地10の冷水式NG気化器11による液化天然ガスの気化量は天然ガスの使用量に連動して増加し、冷水式NG気化器11における冷凍能力は、0時から24時の間で図2に示すように変動する。
制御装置90は、0時から24時の間、定流量ポンプ54を作動させて冷水式LNG気化器11の冷凍能力に応じて生じる冷熱を有する低温冷水を冷水蓄熱槽40の低温部43に送出し、0時から9時の間および17時から24時の間は可変流量ポンプ64を作動させて冷水蓄熱槽40からLNG冷熱で冷却された冷水を冷房用冷水コイル31に植物工場30における冷熱需要に応じた流量で供給し、冷房用冷水コイル31でLNG冷熱を放出した高温冷水を冷水蓄熱槽40の高温部44に戻す。
このようにして、制御装置90は、冷水式LNG気化器11における冷凍能力が植物工場30における冷熱需要を超える9時から17時の間は、冷凍能力が冷熱需要を越える余剰冷熱分のLNG冷熱を有する低温冷水を冷水蓄熱槽40の低温部43に貯留し、植物工場30における冷熱需要が冷水式LNG気化器11の冷凍能力を超える0時から9時の間および17時から24時の間は、冷凍能力が冷熱需要に対して不足する不足冷熱を冷水蓄熱槽40の低温部43に貯留された低温冷水で植物工場30の冷房用冷水コイル31に供給する。
冷凍能力と冷熱需要のバランスが予想より崩れ、冷水式LNG気化器11で熱交換する冷水の温度を高くする必要がある場合、三方弁71を必要度合いに応じた開度で開いて冷水式LNG気化器11に戻る冷水の一部をバックアップ用熱交換器70で加温する。これにより、ガスタービンコンバインドサイクル発電プラント20の冷却装置21の循環回路24から供給される約20℃の冷却水または海水によって冷水が加熱され、冷水式LNG気化器11に供給する冷水の温度を高めることができる。冷却水または海水は約15℃に冷やされて循環回路24に戻る。
ガスタービンコンバインドサイクル発電プラント20において、ガスタービンを駆動し排熱回収ボイラを加熱した後に排出される排ガスを必要に応じて植物工場30に炭酸ガスとして補給する。排ガス供給装置80は、放出される100℃以上の排ガスを排ガス冷却装置81によって約20℃に冷却して植物工場30に供給する。排ガス冷却装置81には、冷水蓄熱槽40の低温部43から低温冷水が供給され、排ガスと熱交換して約20℃に昇温され、冷水蓄熱槽40の高温部44に戻される。これにより、LNG気化器11で液化天然ガスがLNG冷熱を放出して生成された天然ガスが産業設備で燃焼した後に排出される排ガスをLNG冷熱によって冷却して植物工場に炭酸ガスとして補給することができる。
GTCC発電プラント20での天然ガス(NG)の消費量は、発電量に応じて変化するので、冷水式LNG気化器11におけるLNG冷熱の供給能力(冷凍能力)は一日を通して変化する。植物工場30の冷房負荷(冷熱需要)は日射の有無や外気温度によって一日を通して変化する。これにより、一日を通してのLNG気化器11における冷凍能力の変化動向と植物工場30における冷熱需要の変化動向に差異が生じる。第1実施形態によれば、このような一日を通してのLNG気化器11における冷凍能力の変化動向と植物工場30における冷熱需要の変化動向の差異に拘わらず、LNG気化器11で生じる冷熱を有する低温冷水のみによって植物工場30を冷房することができ、冷熱を無駄なく利用でき省エネ効果が大きい。
第1実施形態では、冷水式LNG気化器11を用いているので、冷水式LNG気化器11で生じるLNG冷熱を有する低温冷水を冷水蓄熱層30の低温部43に直接流入させて貯蓄した後に、植物工場30の冷房用冷水コイル31にLNG冷熱で冷却された冷水として供給することができる。これにより、簡素な構成でLNG冷熱で冷却された冷水を植物工場30の冷房に効率よく使用することができる。
さらに、冷水蓄熱槽40を温度成層式冷水蓄熱槽41とすれば、冷水蓄熱槽40をLNGサテライト基地10と植物工場30との間で地上に設置しても、高い蓄熱効率でLNG冷熱を有する低温冷水を貯留することができる。さらに、冷水蓄熱槽40を収納する例えば地下二重スラブ空間を設けなくてよいので、植物工場30を低コストで建設することができ、LNG冷熱を蓄熱して利用する植物生産システム建設のイニシャルコストを低減することができる。
温度成層式冷水蓄熱槽41は、図3に示すように、タンク42の内部に例えば8℃の低温冷水を貯留する低温部43が下側に形成され、例えば20℃の高温冷水を貯留する高温部44が上側に形成されている。タンク42の一方側には、上端が天面と密接し、下端が底面から僅かに離脱した壁45aで囲まれた低温冷水路45が形成され、他方側には、下端が底面と密接し、上端が天面から僅かに離脱した壁46aで囲まれた高温冷水路46が形成されている。低温冷水路45には低温冷水が高温部44の上面と同位に充填されており、高温冷水路46には高温部44の高温冷水が底面まで充填されている。タンク42の天面にはベント47が設けられている。低温冷水路45および高温冷水路46には、第2三方弁63の2個の流入口が接続され、さらに、第1三方弁53の2個の流入口が接続されている。低温冷水路45の下部に冷水式LNG気化器11が管路51で接続され、高温冷水路46の上部に冷房用冷水コイル31の出口が管路62で接続されている。
実施形態1では、冷水式LNG気化器11における冷凍能力が植物工場30における冷熱需要に対して不足する不足冷熱を冷水蓄熱槽40からLNG冷熱で冷却された冷水として植物工場40に供給するので、植物工場30の冷熱需要の最大量が、植物工場30における冷熱需要がLNG気化器11における冷凍能力を超えるときの冷凍能力の大きさに限定される必要がなくなり、植物工場30を大型化することができる。
3.第2実施形態の構成
第2実施形態に係るLNG冷熱を蓄熱して利用する植物生産システム1bは、産業設備を淡水化プラント25とし、植物工場30を太陽熱利用型とし、植物工場に暖房用温水コイル86を設けた点以外は第1実施形態と同じであるので、相違点について説明し、第1実施形態と同じ構成要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。
第2実施形態では、図4に示すように、産業設備として淡水化プラント、例えば公知の多段フラッシュ法淡水化プラント25を用いる。多段フラッシュ法淡水化プラント25は、エゼクタを高速で流れる蒸気によって生成した負圧で蒸発器を減圧し、加熱器で蒸気によって加熱された海水を負圧の蒸発器で沸騰蒸発させて発生した水蒸気を凝縮して淡水を生産する。エゼクタを通過した蒸気は、冷却装置26の凝縮部27で海水と熱交換して復水され、排熱回収ボイラに戻される。冷却装置26は、海水をポンプで海から汲み上げ、凝縮部27を経由して海に戻す循環回路28を備えている。淡水化プラント25は、冷水式LNG気化器11から供給された天然ガスの燃焼によって作動されるガスタービンによって駆動されるガスタービン発電装置と並設されるケースが多く、エゼクタを高速で流れる蒸気は、ガスタービンから排出された排気ガスから排熱回収ボイラで熱回収して生成した蒸気を用いる。
淡水化プラント25に設けられた冷却装置26の凝縮部27と植物工場30に設けられた暖房用温水コイル86との間にヒートポンプ85が設けられている。ヒートポンプ85は、凝縮部27で昇温した海水の一部から熱を吸収し、暖房用温水コイル86を循環する熱媒体に温熱を供給し、植物工場30の室内を必要に応じて暖房する。
4.第2実施形態の作動および効果
植物工場30が太陽光利用型の場合、植物工場30における冷熱需要は日射の有無や外気温度に従って変動し、外気温度は夜明けから日没の間に上昇する。従って、太陽光利用型の植物工場30における冷熱需要は、図5に示すように時刻によって変動し、0時から8時までの間および18時から24時までの間は0であり、8時から18時の間に急増する。冷水式NG気化器11の冷凍能力の変動は、完全制御型の植物工場30の場合と同じである。
制御装置90は、0時から24時の間、定流量ポンプ54を作動させて冷水式LNG気化器11における冷凍能力に応じて生じる冷熱を有する低温冷水を冷水蓄熱槽40の低温部43に送出し、8時から18時の間は可変流量ポンプ64を作動させて冷水蓄熱槽40からLNG冷熱で冷却された冷水を冷房用冷水コイル31に植物工場30における冷熱需要に応じた流量で供給し、冷房用冷水コイル31でLNG冷熱を放出した高温冷水を冷水蓄熱槽40の高温部44に戻す。
このようにして、制御装置90は、冷水式LNG気化器11における冷凍能力が太陽光利用型の植物工場30における冷熱需要を超える0時から8時の間および18時から24時の間は、冷凍能力が冷熱需要を越える余剰冷熱分のLNG冷熱を有する低温冷水を冷水蓄熱槽40の低温部43に貯留し、植物工場30における冷熱需要が冷水式LNG気化器11における冷凍能力を超える8時から18時の間は、冷凍能力が冷熱需要に対して不足する不足冷熱を冷水蓄熱槽40の低温部43から低温冷水で植物工場30の冷房用冷水コイル31に供給するように第1冷水循環回路50および第2冷水循環回路60を制御する。
太陽光利用型の植物工場30を暖房する場合は、ヒートポンプ85を起動する。これにより、約20℃の海水が冷却装置26の循環回路28からヒートポンプ85に供給され、熱媒体と熱交換して温熱を放出した後、温度が約15℃になって循環回路28に戻される。ヒートポンプ85で温熱を得て約50℃に加熱された熱媒体は植物工場30の暖房用温水コイル86に供給されて温熱を放出した後、温度が約45℃に低下してヒートポンプ85に戻される。
第1実施形態と第2実施形態において、産業設備としてのガスタービンコンバインドサイクル発電プラント20と淡水化プラント25とを入れ替えても良い。入れ替えた場合でも、産業設備に設けられた凝縮部22、25は、冷却水または海水で冷却されることになる。
第2実施形態は第1実施形態と同様の効果を奏する。さらに、冷水式LNG気化器11で生成された天然ガスが燃焼して排出される排ガスによって排熱回収ボイラで生成された蒸気を水に凝縮させる産業設備の凝縮部27を冷却する冷却水または海水からヒートポンプ85で熱を吸収し、植物工場30に設けられた暖房用温水コイル86で放出して植物工場30の室内を必要に応じて暖房するので、植物工場30のランニングコストを低減することができる。
5.第3実施形態の構成
第3実施形態にかかるLNG冷熱を蓄熱して利用する植物生産システム1cは、図6に示すように、液化天然ガスを気化させる気化器が、LNG冷熱を液化天然ガスと不凍熱媒体との間で熱交換するLNG気化器15であり、LNG気化器15と冷水蓄熱槽40との間に熱交換器16を設けた点以外は第1実施形態と同じであるので、相違点について説明し、第1実施形態と同じ構成要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。
LNGサテライト基地10は、LNGタンク12から供給された液化天然ガスを不凍熱媒体で気化させて天然ガスとするLNG気化器15を備える。LNG気化器15と冷水蓄熱槽40との間には熱交換器16が設けられ、LNG気化器15と熱交換器16とは不凍熱媒体が循環する第1不凍熱媒体循環回路75で接続されている。
第1不凍熱媒体循環回路75には、LNG気化器15の熱媒体出口側と熱交換器16の熱媒体入口側との間に定流量ポンプ79が介在され、一定流量の不凍熱媒体を第1不凍熱媒体循環回路75を循環させる。これにより、LNG気化器15で液化天然ガスの気化で生じるLNG冷熱によって例えば−5℃に低下された不凍熱媒体は熱交換器16に供給され、冷水蓄熱槽40から熱交換器16に戻った冷水と熱交換して温度が例えば2℃に上昇される。熱交換器15で不凍熱媒体と熱交換して温度が例えば4℃に低下した低温冷水は冷水蓄熱槽40の低温部43に供給される。
第3実施形態の第3冷水循環回路55は、第1実施形態の第1冷水循環回路50が冷水式LNG気化器11と冷水蓄熱槽40との間に設けられているのに対し、熱交換器16と冷水蓄熱槽40との間に設けられている。第三冷水循環回路55には、定流量ポンプ54と熱交換器16の冷水入口側との間にバックアップ用熱交換器70および三方弁71が上流側から順次介在され、定流量ポンプ54とバックアップ用熱交換器70との間に戻り管路72の一端が接続されている。戻り管路72の他端は三方弁71の他の流入口に接続されている。なお、バックアップ用熱交換器70、三方弁71および戻り管路72は、第3冷水循環回路55に設けることなく、第1不凍熱媒体循環回路75の熱交換器16の熱媒体出口側とLNG気化器15の熱媒体入口側との間に設けてもよい。
6.第3実施形態の作動および効果
制御装置90は、熱交換器16から流出する低温冷水の温度が一定の低温、例えば4℃になるように第3冷水循環回路55を制御する。制御装置90は、定流量ポンプ54で一定流量の冷水を第3冷水循環回路55循環させ、熱交換器16から流出した低温冷水の温度T1を計測し、温度T1が例えば4℃となるように第1三方弁53を制御して冷水蓄熱槽40から流出する高温冷水と低温冷水との混合割合を調整して、熱交換器16に流入する冷水の温度を制御する。これにより、LNG気化器15における一日を通しての冷凍能力の変化に拘わらず、LNG気化器15からLNG冷熱を移転された熱交換器16から流出する低温冷水の温度T1を一定(4℃)に維持できる。LNG気化器15における冷凍能力が安定状態で、冷水蓄熱槽40に貯留されている低温冷水および高温冷水の温度が、例えば4℃と18℃である場合、熱交換器16に流入する冷水の温度は例えば11℃になる。
制御装置90は、植物工場30の室内温度が要求温度(例えば25℃)になり、冷房用冷水コイル31から冷水蓄熱槽40に戻されるLNG冷熱を放出した高温冷水の温度が例えば18℃となるように第4冷水循環回路66を制御する。制御装置90は、植物工場30内の温度T2を計測し、温度T2が例えば25℃となるように、冷水蓄熱槽40から可変流量ポンプ64で吸い出されて冷房用冷水コイル31を通って冷水蓄熱槽40の高温部44に戻される冷水の流量を二方弁65で制御する。冷水蓄熱槽40に貯留されている低温冷水および高温冷水の温度が、例えば4℃と18℃である場合、冷房用冷水コイル31から冷水蓄熱槽40に戻されるLNG冷熱を放出した高温冷水の温度を18℃とするためには、第2三方弁63を制御して冷水蓄熱槽40から流出する高温冷水と低温冷水との混合割合を調整し、冷房用冷水コイル31に流入するLNG冷熱で冷却された冷水の温度を例えば6℃に調整する。これにより、植物工場30の冷房負荷(冷熱需要)が日射の有無や外気温度によって一日を通して変化するにも拘わらず、植物工場30の室内温度を要求温度に維持できる。
このようにして、制御装置90は、LNG気化器15における冷凍能力が植物工場30における冷熱需要を超えるとき、冷凍能力が冷熱需要を越える余剰冷熱分の低温冷水を冷水蓄熱槽40に貯留し、植物工場30における冷熱需要がLNG気化器15における冷凍能力を超えるとき、冷凍能力が冷熱需要に対して不足する不足冷熱を冷水蓄熱槽40に貯留された低温冷水で植物工場30の冷房用冷水コイル31に供給するように第3冷水循環回路55および第4冷水循環回路66を制御する。
LNG気化器15と冷水蓄熱槽40との間に熱交換器16を介在させたことにより、LNG気化器15で不凍熱交換媒体を使用することが可能となり、熱交換器16で氷結することなくLNG冷熱を不凍熱媒体と例えば11℃の冷水との間で熱交換して冷水を4℃の低温冷水にすることができ、低温冷水と高温冷水の温度差を第1実施形態における12℃から14℃に広げることができる。冷水蓄熱槽40は、低温部43に貯留される低温冷水と高温部44に貯留される高温冷水の温度差を大きくすることにより、蓄熱する冷熱量が同じであれば体積を小さくすることができる。さらに、低温冷水の温度を4℃と低くできるので、冷水利用施設での冷房のエネルギー効率を高くすることができる。
第3実施形態において、第2実施形態のように産業設備を淡水化プラント25とし、植物工場30を太陽熱利用型とし、植物工場30に暖房用温水コイル86を設けてもよい。第3実施形態にかかるLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システム1cのその他の構成、作用および効果は、第1実施形態のものと同様であるので説明を省略する。
7.参考例の構成
参考例にかかるLNG冷熱を蓄熱して利用する植物生産システム1dは、図7に示すように、冷水式LNG気化器11を、LNG冷熱を液化天然ガスと不凍熱媒体との間で熱交換するLNG気化器15とし、冷水蓄熱槽40を氷蓄熱槽91とし、第1冷水循環回路を第2不凍熱媒体循環回路76とした点以外は第1実施形態と同じであるので、相違点について説明し、第1実施形態と同じ構成要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。第5冷水循環回路67は第3実施形態の第4冷水循環回路66と同じである。
LNGサテライト基地10は、液化天然ガスを不凍熱媒体で気化させて天然ガスとするLNG気化器11を備える。LNG気化器15と氷蓄熱槽42との間には、不凍熱媒体が定流量ポンプ79によって循環される第2不凍熱媒体循環回路76が設けられている。第2不凍熱媒体循環回路76には、LNG気化器15内で液化天然ガスと不凍熱媒体との間で熱交換させて不凍熱媒体を例えば−20℃に冷却する熱交換コイルと、氷蓄熱槽41内で不凍熱媒体と製氷部97の冷水との間で熱交換させて製氷部97の冷水を氷結させ、不凍熱媒体を例えば−13℃に昇温させる熱交換コイル77が設けられている。
氷蓄熱槽91は、図8に示すように、タンク92の内部に例えば4℃の低温冷水を貯留する低温部93が下端部に形成され、例えば18℃の高温冷水を貯留する高温部94が上端部に形成されている。タンク92の上下方向中央部には製氷部97が形成され、製氷部97に第2不凍熱媒体循環回路76の熱交換コイル77が配置されている。タンク92の一方側には、上端が天面と密接し、下端が底面から僅かに離脱した壁95aで囲まれた低温冷水路95が形成され、他方側には、下端が底面と密接し、上端が天面から僅かに離脱した壁96aで囲まれた高温冷水路96が形成されている。低温冷水路95には低温冷水が高温部94の上面と同位に充填されており、高温冷水路94には高温部94の高温冷水が底面まで充填されている。タンク92の天面にはベント98が設けられている。低温冷水路95に第5冷水循環回路67の管路61が接続され、管路61に第2三方弁63および可変流量ポンプ64が上流側から順次介在されている。第2三方弁63の他の流入口には高温冷水路96が接続されている。高温冷水路96に接続された管路62には植物工場30内の冷房用冷水コイル31の出口が二方弁65を介して接続されている。
第2不凍熱媒体循環回路76には、熱交換コイル77の熱媒体出口側とLNG気化器15の熱媒体入口側との間にバックアップ用熱交換器70および三方弁71が上流側から順次介在され、熱交換コイル77の熱媒体出口側とバックアップ用熱交換器70との間に戻り管路72の一端が接続されている。戻り管路72の他端は三方弁71の他の流入口に接続されている。第2不凍熱媒体循環回路76には、LNG気化器15の熱媒体出口側と熱交換コイル77の熱媒体入口側との間に定流量ポンプ79が介在されている。
8.参考例の作動
第2不凍熱媒体循環回路76の定流量ポンプ79が駆動されることにより、熱交換コイル77で製氷し、例えば−13℃に昇温した不凍熱媒体がLNG気化器15に戻される。LNG気化器15は、液化天然ガスと不凍熱媒体との間でLNG冷熱を熱交換して天然ガスを生成してGTCC発電プラント20に送出するとともに、LNG冷熱を有する不凍熱媒体を製氷部97の熱交換コイル77に供給する。
これにより、LNG気化器15における冷凍能力が安定状態で、冷水蓄熱槽40に貯留されている低温冷水および高温冷水の温度が、例えば4℃と18℃である場合、LNG気化器15に流入する不凍熱媒体の温度は例えば−13℃になる。
そして、制御装置90は、LNG気化器15における冷凍能力が植物工場30における冷熱需要を超えるとき、冷凍能力が冷熱需要を越える余剰冷熱分のLNG冷熱によって製氷部97の冷水を氷結させ、植物工場30における冷熱需要がLNG気化器15における冷凍能力を超えるとき、冷凍能力が冷熱需要に対して不足する不足冷熱を氷結部97での解凍で補充するように第2不凍熱媒体循環回路76および第5冷水循環回路67を制御する。
LNG気化器15と氷蓄熱槽91との間で不凍熱媒体を循環させるようにしたことにより、LNG冷熱を氷結の潜熱(融解熱80Kcal/Kg)で大量に蓄熱することができるので、蓄熱量が同じである場合、蓄熱槽の容積を大幅に縮小することができる。さらに、低温冷水の温度を4℃と低くできるので、冷水利用施設での冷房のエネルギー効率を高くすることができる。
参考例において、第2実施形態のように産業設備を淡水化プラント25とし、植物工場30を太陽熱利用型とし、植物工場30に暖房用温水コイル86を設けてもよい。参考例にかかるLNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システム1dのその他の構成、作用および効果は、第1実施形態あるいは第3実施形態のものと同様であるので説明を省略する。
上記実施形態では、冷水利用施設を完全制御型または太陽光利用型の植物工場としたが、これに限定されるものではない。冷水利用施設をデータセンター又はスパコン解析センターとする場合、本冷水供給システムは、冷房用およびCPU冷却用にLNG冷熱で冷却された冷水を供給し、産業設備であるGTCC発電プラントに隣接する。冷水利用施設を電力多消費型精密環境工場(例えば半導体工場)とする場合、本冷水供給システムは、冷房用およびプロセス冷却用にLNG冷熱で冷却された冷水を供給し、LNGサテライト基地と自家発電システムで構成されるエナジーセンターの一部にする。冷水利用施設を大規模空港施設とする場合、本冷水供給システムは、施設の冷房用にLNG冷熱で冷却された冷水を供給し、LNGサテライト基地と自家発電システムで構成されるエナジーセンターの一部にする。冷水利用施設を市街化再開発地域とする場合、本冷水供給システムは、地域冷房用にLNG冷熱で冷却された冷水を供給し、LNGサテライト基地と自家発電システムで構成されるエナジーセンターの一部にする。冷水利用施設を冷蔵倉庫または醸造工場など低温室内環境を必要とする施設とする場合、本冷水供給システムは、施設の冷房用にLNG冷熱で冷却された冷水を供給し、産業設備であるGTCC発電プラントに隣接して設ける。
1a〜1d:LNG冷熱を蓄熱して利用する冷水供給システム、10:LNGサテライト基地、11:冷水式LNG気化器、12:LNGタンク、15:LNG気化器、16熱交換器、20:ガスタービンコンバインドサイクル発電プラント(産業設備)、25:淡水化プラント(産業設備)、21,26:冷却装置、22,27:凝縮部、23:冷却塔、24,28:循環回路、30:植物工場、31:冷房用冷水コイル、40:冷水蓄熱槽、41:温度成層式冷水蓄熱槽、43:低温部、44:高温部、50:第1冷水循環回路、53:第1三方弁,63:第2三方弁、54:定流量ポンプ、55:第3冷水循環回路、60:第2冷水循環回路、64:可変流量ポンプ、65,82:二方弁、66:第4冷水循環回路、67:第5冷水循環回路、70:バックアップ用熱交換器、71:三方弁、72:戻り管路、75:第1不凍熱媒体循環回路、76:第2不凍熱媒体循環回路、79:定流量ポンプ、80:排ガス供給装置、81:排ガス冷却装置、85:ヒートポンプ、86:暖房用温水コイル、90:制御装置、91:氷蓄熱槽、93:低温部、94:高温部、97:製氷部。