JPWO2021045129A1 - エンジン用ピストン - Google Patents

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    • F02F3/00Pistons 
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    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
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Abstract

エンジン用ピストン(25)の一対のピストンスカート部(27)の少なくともいずれかは、その周方向の両端部に凹部(29)を有し、その外周面(28)は摺動面(28a)と凹部(29)を形成する段差面(29a)および対向面(29b)を有する。摺動面(28a)は、シリンダ孔(17a)の内壁面(15f)との間に油膜を形成する。段差面(29a)は、摺動面(28a)に接続されて、摺動面(28a)とシリンダ孔(17a)の内壁面(15f)との間の油膜を切ることができる深さで形成される段差を構成する。対向面(29b)は、段差面(29a)に接続されて、シリンダ孔(17a)の内壁面(15f)に対向する。これにより、一対のピストンスカート部(27)の変形時の摺動抵抗を低減できるようにしつつ、一対のピストンスカート部(27)の外周面(28)の周方向の長さおよび確保する油膜の面積の設計自由度を高めることができる。

Description

本発明は、一対のピストンスカート部を有するエンジン用ピストンに関する。
エンジン用ピストンは、エンジンのシリンダ部の内部に形成されたシリンダ孔に収容される。エンジン用ピストンは、シリンダ孔を往復移動可能に設けられる。エンジン用ピストンは、往復移動する際にシリンダ孔の内壁面から圧力を受ける一対のピストンスカート部を有する。シリンダ孔の内壁面およびシリンダ孔の内壁面に対向する一対のピストンスカート部の外周面は、エンジンオイルで潤滑される。
エンジン用ピストンは、往復移動の高速化のため、一対のピストンスカート部の軽量化が求められている。また、エンジン用ピストンは、摺動抵抗を低減することが求められている。そこで、特許文献1は、一対のピストンスカート部の一方の周方向の長さを他方の周方向の長さより短くしている。これにより、ピストンスカート部とシリンダ孔の内壁面との間の油膜の面積を減少させて、摩擦を低減している。また、特許文献1は、周方向の長さが短いピストンスカート部の曲率半径を、周方向の長さが長いピストンスカート部の曲率半径より小さくしている。これにより、一対のピストンスカート部がエンジンの運転時の高温状況下で変形しても、周方向の長さが長く剛性が比較的小さいピストンスカート部の角度θの位置の隙間よりも、周方向の長さが短く剛性が比較的大きいピストンスカート部の角度θの位置の隙間を大きく確保して、摺動抵抗を低減している。
特開2002−317691号公報
特許文献1は、変形時のピストンスカート部の両端部とシリンダ内壁面との隙間を確保するために、(A)一対のピストンスカート部の一方の周方向の長さよりも他方の周方向の長さを長くしている。しかし、ピストンスカート部の周方向の長さを長くすると、シリンダ孔の内壁面と一対のピストンスカート部の外周面の間に形成される油膜の面積が大きくなり、摺動抵抗が大きくなる。そこで、特許文献1は、摺動抵抗を抑制するために、(B)周方向の長さが短いピストンスカート部の曲率半径を小さくしている。しかし、シリンダ孔の内壁面とピストンスカート部の間に形成される油膜の面積が運転条件などの変化により変化しやすくなる。運転条件などが変化しても油膜の面積を確保しようとすると、ピストンスカート部の外周面の周方向の長さを短くできない。つまり、運転条件などが変化しても油膜の面積を確保しようとすると、ピストンスカート部の外周面の周方向の長さを長くせざるを得ない。このように、変形時の摺動抵抗を低減できるように、ピストンスカート部の外周面の周方向の長さおよび確保する油膜の面積の設計を行う必要があるが、特許文献1で提案されている(A)および(B)の手段では、油膜の面積が運転条件などで変化してしまうため、ピストンスカート部の外周面の周方向の長さや油膜の面積の設計自由度が低い。
本発明は、一対のピストンスカート部の変形時の摺動抵抗を低減できるようにしつつ、一対のピストンスカート部の外周面の周方向の長さおよび確保する油膜の面積の設計自由度を高めることができる、一対のピストンスカート部を有するエンジン用ピストンを提供することを目的とする。
本願発明者らは、一対のピストンスカート部の変形時の摺動抵抗を低減しつつ、一対のピストンスカート部の外周面の周方向の長さおよび確保する油膜の面積の設計自由度を高めることができる構成について検討した。特許文献1では、一対のピストンスカート部の外周面およびシリンダ孔の内壁面は、エンジンオイルで潤滑される。つまり、一対のピストンスカート部の外周面とシリンダ孔の内壁面との間に形成された隙間に、エンジンオイルが進入する。そして、一対のピストンスカート部の外周面とシリンダ孔の内壁面との間に形成された隙間には、エンジンオイルにより油膜が形成される。そのため、一対のピストンスカート部がシリンダ軸線方向に往復移動するときに、一対のピストンスカート部の外周面とシリンダ孔の内壁面との間の隙間に形成された油膜により、一対のピストンスカート部に摺動抵抗が発生する。一対のピストンスカート部の外周面の周方向の長さが短くなると、一対のピストンスカート部に生じる油膜による摺動抵抗が小さくなる。一方、一対のピストンスカート部は、シリンダ軸線方向に往復移動するときに、シリンダ孔の内壁面と接触することにより、シリンダ孔の内壁面から荷重を受ける。一対のピストンスカート部は、シリンダ孔の内壁面から受ける荷重に対して変形することが好ましい。一対のピストンスカート部の外周面の周方向の長さが短くなると、一対のピストンスカート部の剛性が大きくなり、一対のピストンスカート部が変形しにくくなる。そこで、一対のピストンスカート部の剛性を小さくするために、一対のピストンスカート部の外周面の周方向の長さを長くすることが考えられる。しかしながら、一対のピストンスカート部の外周面の周方向の長さを長くすると、一対のピストンスカート部に生じる油膜による摺動抵抗が大きくなってしまう。つまり、一対のピストンスカート部の剛性を調整するためには、一対のピストンスカート部の外周面の周方向の長さの設計自由度を高めることが求められる。このように、一対のピストンスカート部の摺動抵抗を低減するためには、一対のピストンスカート部の外周面の周方向の長さをおよび確保する油膜の面積の設計自由度を高めることが考えられる。
特許文献1の曲率半径の異なる一対のピストンスカート部は、複数の曲率を有する曲面で構成されている。特許文献1の一対のピストンスカート部は、ピストンスカート部が複数の曲率を有する曲面であるため、隙間の大きさ、エンジンオイルの粘性、エンジンオイルの温度、ピストンの往復移動の速さといった運転条件などで油膜の面積が変化してしまう。特許文献1の一対のピストンスカート部について、外周面の周方向の長さと油膜面積の関係を決めることは難しい。そこで、本願発明者らは、一対のピストンスカート部の両端部に、段差のある凹部を形成し、その段差をピストンスカート部の外周面とシリンダ孔の内壁面との間の油膜を切ることができる段差とすれば、油膜が切れる位置が決まり、油膜の面積が運転条件などで変化しにくいことがわかった。もともとピストンスカート部の外周面とシリンダ孔の内壁面との間に隙間がある。そのため、外周面に段差を有する凹部を形成することで、その段差がわずかな段差であっても、凹部に存在するエンジンオイルに対する表面張力よりもエンジンオイル自体の重力が大きくなり、その段差でピストンスカート部の外周面とシリンダ孔の内壁面との間の油膜を切ることができる。そして、一対のピストンスカート部の剛性の調整するために、一対のピストンスカート部の外周面の周方向の長さを長くしたり、短くしたりしても、凹部の周方向の長さを調整することで、シリンダ孔の内壁面との間に油膜を形成する、外周面の凹部を除いた面である摺動面の周方向の長さを自由に設計できる。これにより、本願発明者らは、一対のピストンスカート部の外周面の周方向の長さを要求される剛性に対応して自由に設計できると共に、確保する油膜の面積を自由に設計することができることがわかった。つまり、一対のピストンスカート部の両端部に段差のある凹部を形成し、その段差をピストンスカート部の外周面とシリンダ孔の内壁面との間の油膜を切ることができる段差とすれば、変形時の摺動抵抗を低減しつつ、一対のピストンスカート部の外周面の周方向の長さをおよび確保する油膜の面積の設計自由度を高めることができることを見出した。しかも、一対のピストンスカート部の両端部に段差のある凹部を形成することで、一対のピストンスカート部の両端部にシリンダ孔の内壁面との間の隙間も確保できる。また、本願発明者らは、その段差を、ピストンスカート部の外周面とシリンダ孔の内壁面との間の油膜を切る程度のわずかな段差とすれば、段差に、応力集中によるクラックが発生しないことを見出した。
(1)本発明のエンジン用ピストンは、エンジンのシリンダ部の内部に形成された円柱状のシリンダ孔に配置され、前記シリンダ孔をその軸線であるシリンダ軸線方向に往復移動可能に設けられるとともに、前記シリンダ部の内部に形成される燃焼室の一部を構成するピストンヘッド部と、(a)前記ピストンヘッド部に接続されて前記シリンダ軸線方向に往復移動可能に設けられ、かつ、前記シリンダ軸線方向に見たときの形状が前記シリンダ孔の内壁面に沿った円弧状である第1ピストンスカート部であって、前記第1ピストンスカート部の外周面と前記シリンダ孔の前記内壁面との間にエンジンオイルが進入可能な隙間が形成される前記第1ピストンスカート部、および、(b)前記ピストンヘッド部に接続されて前記シリンダ軸線方向に往復移動可能に設けられ、かつ、前記シリンダ軸線方向に見たときの形状が前記シリンダ孔の前記内壁面に沿った円弧状である第2ピストンスカート部であって、前記第2ピストンスカート部の外周面と前記シリンダ孔の前記内壁面との間にエンジンオイルが進入可能な隙間が形成される前記第2ピストンスカート部を含む一対のピストンスカート部と、前記ピストンヘッド部および前記一対のピストンスカート部の周方向の両端部に接続され、且つ、前記ピストンヘッド部および前記一対のピストンスカート部の前記シリンダ軸線方向の往復移動を前記エンジンが有するクランク軸の回転力として伝達するコンロッドが、ピストンピンを介して揺動可能に接続された一対のリブ部と、を備えるエンジン用ピストンであって、前記第1ピストンスカート部または前記第2ピストンスカート部の少なくともいずれかは、前記第1ピストンスカート部または前記第2ピストンスカート部の少なくともいずれかの周方向の両端部において、前記シリンダ軸線に直交する前記シリンダ孔の径方向において前記シリンダ軸線に向かって凹むように設けられた凹部を有し、前記凹部を有する前記第1ピストンスカート部または前記第2ピストンスカート部の少なくともいずれかの外周面は、前記シリンダ孔の前記内壁面との間に進入したエンジンオイルにより、前記シリンダ孔の前記内壁面との間に油膜を形成する摺動面と、前記凹部を形成する2つの面であって、(i)前記摺動面に接続されて前記シリンダ孔の径方向および前記シリンダ軸線方向に沿って配置され、前記シリンダ孔の径方向において、前記摺動面と前記シリンダ孔の前記内壁面との間の油膜を切ることができる深さで形成される段差を構成する段差面、および、(ii)前記段差面に接続されて前記シリンダ孔の周方向および前記シリンダ軸線方向に沿って配置され、前記シリンダ孔の前記内壁面に対向する対向面と、を含むことを特徴とする。
この構成によると、第1ピストンスカート部または第2ピストンスカート部の少なくともいずれかは、第1ピストンスカート部または第2ピストンスカート部の少なくともいずれかの周方向の両端部に設けられる凹部を有する。凹部は、シリンダ軸線に直交するシリンダ孔の径方向において、シリンダ軸線に向かって凹むように設けられる。つまり、凹部は、第1ピストンスカート部または第2ピストンスカート部の摺動面より凹むように設けられる。また、第1ピストンスカート部または第2ピストンスカート部の少なくともいずれかの外周面は、摺動面と、段差面および対向面と、を有する。摺動面は、シリンダ孔の内壁面との間に進入したエンジンオイルにより、シリンダ孔の内壁面との間に油膜を形成する。段差面および対向面は、凹部を形成する。段差面は、摺動面に接続されてシリンダ孔の径方向およびシリンダ軸線方向に沿って配置され、シリンダ孔の径方向に摺動面とシリンダ孔の内壁面との間の油膜を切ることができる深さで形成される段差を構成する。対向面は、段差面に接続されてシリンダ孔の周方向およびシリンダ軸線方向に沿って配置され、シリンダ孔の内壁面に対向する。そのため、対向面は、シリンダ孔の内壁面との間で油膜を形成しない。一対のピストンスカート部がシリンダ軸線方向に往復移動する際に、凹部には、シリンダ孔の内壁面との間に油膜が形成されない。つまり、凹部空間にエンジンオイルが満たされた状態を保持不能に形成される。凹部空間は、凹部の段差面および対向面とシリンダ孔の内壁面との間に形成される空間である。
凹部の段差面が構成する段差は、シリンダ孔の内壁面と第1ピストンスカート部または第2ピストンスカート部の少なくともいずれかの摺動面との間の油膜を切ることができる段差である。もともと、一対のピストンスカート部の摺動面とシリンダ孔の内壁面との間には隙間がある。そのため、外周面に段差を構成する凹部を形成することで、その段差がわずかな段差であっても、凹部に存在するエンジンオイルに対する表面張力よりもエンジンオイル自体の重力が大きくなり、一対のピストンスカート部の摺動面とシリンダ孔の内壁面との間の油膜を切ることができる。このため、シリンダ孔の内壁面と第1ピストンスカート部または第2ピストンスカート部の少なくともいずれかの外周面との間の油膜が切れる位置が決まる。第1ピストンスカート部または第2ピストンスカート部の少なくともいずれかの外周面の摺動面とシリンダ孔の内壁面の油膜が、段差面で切れるため、油膜の面積が運転条件などで変化しにくい。第1ピストンスカート部または第2ピストンスカート部の少なくともいずれかの剛性を調整するために、第1ピストンスカート部または第2ピストンスカート部の少なくともいずれかの外周面の周方向の長さを長くしたり、短くしたりしても、凹部の対向面の周方向の長さを調整することで、摺動面の周方向の長さを自由に設計できる。これにより、一対のピストンスカート部の外周面の周方向の長さを要求される剛性に対応して自由に設計できると共に、確保する油膜の面積を自由に設計することができる。つまり、一対のピストンスカート部の両端部に段差のある凹部を形成し、その段差が一対のピストンスカート部の摺動面の油膜を切るため、変形時の摺動抵抗を低減しつつ、一対のピストンスカート部の外周面の周方向の長さおよび確保する油膜の面積の設計自由度を高めることができる。しかも、一対のピストンスカート部の両端部に段差のある凹部を形成することで、一対のピストンスカート部の両端部にシリンダ孔の内壁面との間の隙間も確保できる。また、その段差を、シリンダ孔の内壁面と一対のピストンスカート部の摺動面との間の油膜を切る程度のわずかな段差とすれば、段差に、応力集中によるクラックが発生しない。
このように本発明の一対のピストンスカート部を有するエンジン用ピストンは、一対のピストンスカート部の変形時の摺動抵抗を低減できるようにしつつ、一対のピストンスカート部の外周面の周方向の長さおよび確保する油膜の面積の設計自由度を高めることができる。
(2)本発明の1つの観点によると、本発明のエンジン用ピストンは、上記(1)の構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。
前記凹部は、前記第1ピストンスカート部の周方向の両端部、前記第2ピストンスカート部の周方向の両端部、または、前記第1ピストンスカート部の周方向の両端部および前記第2ピストンスカート部の周方向の両端部に設けられる。
この構成によると、本発明のエンジン用ピストンは、一対のピストンスカート部に設けられる凹部の配置を変更することができる。一対のピストンスカート部に設けられる凹部の配置を変更することにより、一対のピストンスカート部のエンジンオイルの油膜による摺動抵抗を調整することができる。一対のピストンスカート部に設けられる凹部の配置を変更することにより、一対のピストンスカート部の変形時の摺動抵抗を低減できるようにしつつ、一対のピストンスカート部の外周面の周方向の長さおよび確保する油膜の面積の設計自由度を高めることができる。
(3)本発明の1つの観点によると、本発明のエンジン用ピストンは、上記(1)または(2)の構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。
前記一対のリブ部が、前記第1ピストンスカート部の内周面の周方向の一方の端部である第1ピストンスカート第1端部に接続されると共に、前記第2ピストンスカート部の内周面の周方向の一方の端部である第2ピストンスカート第1端部に接続される第1リブ部と、前記第1ピストンスカート部の内周面の周方向の他方の端部である第1ピストンスカート第2端部に接続されると共に、前記第2ピストンスカート部の内周面の周方向の他方の端部である第2ピストンスカート第2端部に接続される第2リブ部と、を含み、前記凹部は、前記凹部を通る前記径方向に見たときに、前記第1ピストンスカート第1端部、前記第2ピストンスカート第1端部、前記第1ピストンスカート第2端部、または、前記第2ピストンスカート第2端部の少なくともいずれかに重なるように設けられる。
この構成によると、一対のリブ部が、第1リブ部および第2リブ部を有する。第1リブ部は、第1ピストンスカート部の内周面の周方向の一方の端部である第1ピストンスカート第1端部に接続される。また、第1リブ部は、第2ピストンスカート部の内周面の周方向の一方の端部である第2ピストンスカート第1端部に接続される。第2リブ部は、シリンダ軸線方向に見て、第1ピストンスカート部の内周面の周方向の他方の端部である第1ピストンスカート第2端部に接続される。また、第2リブ部は、第2ピストンスカート部の内周面の周方向の他方の端部である第2ピストンスカート第2端部に接続される。ここで、第1ピストンスカート部および第2ピストンスカート部において、第1リブ部および第2リブ部と接続される部分の剛性が比較的大きくなる。一方、凹部は、凹部を通るシリンダ孔の径方向に見たときに、第1ピストンスカート第1端部、第2ピストンスカート第1端部、第1ピストンスカート第2端部、または、第2ピストンスカート第2端部の少なくともいずれかに重なるように設けられる。つまり、第1ピストンスカート部および第2ピストンスカート部において、剛性が比較的大きい第1ピストンスカート第1端部、第2ピストンスカート第1端部、第1ピストンスカート第2端部、または、第2ピストンスカート第2端部の少なくともいずれかに凹部が設けられる。これにより、剛性が比較的大きい第1ピストンスカート第1端部、第2ピストンスカート第1端部、第1ピストンスカート第2端部、または、第2ピストンスカート第2端部の少なくともいずれかと径方向に並ぶ位置において、ピストンスカート部とシリンダ孔の内壁面との間に油膜を形成しない大きい隙間を確保できる。つまり、一対のピストンスカート部において、剛性が比較的大きく比較的変形しにくい第1ピストンスカート第1端部、第2ピストンスカート第1端部、第1ピストンスカート第2端部、または、第2ピストンスカート第2端部の少なくともいずれかと径方向に並ぶ位置に凹部を設けることで、ピストンスカート部とシリンダ孔の内壁面との間に油膜を形成しない大きい隙間も確保して、シリンダ孔の内壁面から荷重を受けにくくすることができる。
(4)本発明の1つの観点によると、本発明のエンジン用ピストンは、上記(1)〜(3)のいずれかの構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。
前記ピストンヘッド部、前記一対のピストンスカート部および前記一対のリブ部が鋳造または鍛造で成形され、かつ、前記凹部の前記段差面および前記対向面が除去加工されていない面である。
この構成によると、ピストンヘッド部、一対のピストンスカート部および一対のリブ部が鋳造または鍛造で成形される。また、凹部の段差面および対向面が除去加工されていない面である。除去加工とは、旋盤加工、フライス加工、研磨加工等の加工方法によって加工することを意味する。除去加工は、材料を削って加工することを意味する。これにより、一対のピストンスカート部における凹部の成形が容易になる。また、凹部の周方向の長さを調整して、摺動面の周方向の長さを設計しやすくなる。
(5)本発明の1つの観点によると、本発明のエンジン用ピストンは、上記(1)〜(4)のいずれかの構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。
前記凹部の前記段差面および前記対向面が除去加工で成形される。
この構成によると、凹部の段差面および対向面が除去加工で成形される。これにより、一対のピストンスカート部における凹部の成形が容易になる。これにより、凹部の周方向の長さを調整して、摺動面の周方向の長さを設計しやすくなる。
(6)本発明の1つの観点によると、本発明のエンジン用ピストンは、上記(1)〜(5)のいずれかの構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。
前記クランク軸は、その中心軸が前記シリンダ軸線を通らない位置に配置されていることを特徴とする。
この構成によると、エンジン用ピストンが配置されるエンジンは、その中心軸がシリンダ軸線を通らない位置に配置されるクランク軸を有する、いわゆるオフセットクランク式のエンジンである。オフセットクランク式エンジンでは、クランク軸の上死点のタイミングとピストンの上死点のタイミングが一致しない。そのため、圧縮行程と膨張行程の行程時間に差をつけることができ、早めに膨張させたり、点火後にピストンが上死点にいる時間を長くしたりすることができる。また、オフセットクランク式ではないエンジンは、その中心軸がシリンダ軸線を通る位置に配置されるクランク軸を有するエンジンである。オフセットクランク式のエンジンでは、オフセットクランク式ではないエンジンと比較して、膨張行程で一対のピストンスカート部に作用する荷重が低減する。オフセットクランク式のエンジン10では、膨張行程で一対のピストンスカート部27に作用する荷重が低減したとしても、剛性設計の観点から、一対のピストンスカート部27の外周面28の周方向の長さを小さくできないことがある。このような場合であっても、凹部の配置や凹部29の対向面の周方向の長さを調整することにより、一対のピストンスカート部の外周面の周方向の長さおよび確保する油膜の面積を設計することができる。
[用語の定義]
本発明および本明細書において、「エンジン用ピストン」が適用されるエンジンは、4ストロークエンジンを含む。また、本発明および本明細書において、「エンジン用ピストン」が適用されるエンジンは、2ストロークエンジンを含む。本発明および本明細書において、「エンジン用ピストン」が適用されるエンジンは、ガソリンエンジンを含む。また、本発明および本明細書において、「エンジン用ピストン」が適用されるエンジンは、ディーゼルエンジンを含む。「エンジン用ピストン」が適用されるエンジンは、その中心軸がシリンダ軸線を通らない位置に配置されるクランク軸を有する、いわゆるオフセットクランク式のエンジンを含む。また、「エンジン用ピストン」が適用されるエンジンは、その中心軸がシリンダ軸線を通る位置に配置されるクランク軸を有するエンジンを含む。本発明および本明細書において、「エンジン用ピストン」が適用されるエンジンは、ウェットサンプ式のエンジンを含む。本発明および本明細書において、「エンジン用ピストン」が適用されるエンジンは、ドライサンプ式のエンジンを含む。本発明および本明細書において、「エンジン用ピストン」が適用されるエンジンは、水冷式エンジンおよび空冷式エンジンを含む。本発明および本明細書において、「エンジン用ピストン」が適用されるエンジンは、単気筒エンジンおよび多気筒エンジンを含む。また、本発明のエンジン用ピストンを有するエンジンを鞍乗型車両に適用してよい。本発明が適用される鞍乗型車両には、自動二輪車、三輪車、四輪バギー(ATV:All Terrain Vehicle(全地形型車両))、水上バイク、スノーモービル等が含まれる。また、本発明のエンジン用ピストンを有するエンジンを、鞍乗型車両以外の車両に適用してよい。例えば、本発明のエンジン用ピストンを有するエンジンを、四輪車両または船舶に適用してよい。
本発明および本明細書において、「エンジン用ピストン」は、金属、または、金属および樹脂の複合材料で形成される。また、「エンジン用ピストン」は、ピストンヘッド部と、一対のピストンスカート部と、一対のリブ部が、一体成形されてもよいし、別体として成形した後に合わせて成形されてもよい。「エンジン用ピストン」は、鋳造または鍛造により製造される工程を含んでもよいし、3Dプリンタで製造される工程を含んでもよいし、機械加工で製造される工程を含んでもよい。
本発明および本明細書において、「シリンダ軸線方向」とは、シリンダ孔の軸線の方向である。シリンダ孔の軸線は、シリンダ軸線であって、シリンダ孔の中心を通る直線である。シリンダ軸線は、シリンダ孔が存在する領域だけに存在する線分ではなく、無限に延びる直線である。シリンダ軸線方向は、ピストンヘッド部および一対のピストンスカート部がシリンダ孔を往復移動する方向に沿った方向である。本発明および本明細書において、「シリンダ孔の径方向」とは、シリンダ孔の軸線に直交する方向である。本発明および本明細書において、「シリンダ孔の径方向における、段差の深さ」とは、段差面を通り、シリンダ軸線に直交する直線における、段差面の外周端を通りシリンダ軸線を中心とする円の交点と、段差面の内周端を通りシリンダ軸線を中心とする円の交点との間の長さである。
本発明および本明細書において、「一対のピストンスカート部」とは、第1ピストンスカート部および第2ピストンスカート部である。第1ピストンスカート部の周方向の長さと、第2ピストンスカート部の周方向の長さは、同じであっても、異なっていてもよい。第1ピストンスカート部の周方向の長さが、第2ピストンスカート部の周方向の長さより長くてもよいし、短くてもよい。第1ピストンスカート部のシリンダ軸線方向の長さと、第2ピストンスカート部のシリンダ軸線方向の長さは、同じであっても、異なっていてもよい。第1ピストンスカート部のシリンダ軸線方向の長さが、第2ピストンスカート部のシリンダ軸線方向の長さより長くてもよいし、短くてもよい。
本発明および本明細書において、「一対のリブ部」とは、第1リブ部および第2リブ部である。第1リブ部および第2リブ部は、ピストンピンの軸線方向における第1リブ部の内周面とピストンピンとの交点と、第2リブ部の内周面とピストンピンとの交点との間の距離が、ピストンピンの軸線方向における第1ピストンスカート部の内周面の長さと同じであっても、異なっていてもよいように構成される。なお、第1リブ部の内周面とは、第1リブ部の第2リブ部と向かい合う面である。第1リブ部および第2リブ部は、ピストンピンの軸線方向における第1リブ部の内周面とピストンピンとの交点と、第2リブ部の内周面とピストンピンとの交点との間の距離と、第2リブ部とピストンピンの軸線との交点との間の距離が、ピストンピンの軸線方向における第1ピストンスカート部の内周面の長さより長くてもよいし、短くてもよいように構成される。第1リブ部および第2リブ部は、ピストンピンの軸線方向における第1リブ部の内周面とピストンピンとの交点と、第2リブ部の内周面とピストンピンとの交点との間の距離が、ピストンピンの軸線方向における第2ピストンスカート部の内周面の長さと同じであっても、異なっていてもよいように構成される。第1リブ部および第2リブ部は、ピストンピンの軸線方向における第1リブ部の内周面とピストンピンとの交点と、第2リブ部の内周面とピストンピンとの交点との間の距離が、ピストンピンの軸線方向における第2ピストンスカート部の内周面の長さより長くてもよいし、短くてもよいように構成される。第1リブ部のシリンダ軸線方向の長さと、第2リブ部のシリンダ軸線方向の長さは、同じであっても、異なっていてもよい。第1リブ部のシリンダ軸線方向の長さが、第2リブ部のシリンダ軸線方向の長さより長くてもよいし、短くてもよい。
本発明および本明細書において、「第1ピストンスカート部の摺動面」とは、シリンダ孔の内壁面と対向し、シリンダ孔の内壁面との間に油膜を形成する第1ピストンスカート部の面である。摺動面は、シリンダ孔の内壁面に沿った形状で構成される。摺動面は、1つの曲率で構成されて良い。例えば、摺動面は、シリンダ孔の内壁面に平行になるように構成されてもよい。また、摺動面は、異なる複数の曲率を有するように構成されてよい。例えば、摺動面は、周方向の両端部が周方向の中央部よりも曲率が大きい円弧になるように構成されていてもよい。「第1ピストンスカート部の摺動面とシリンダ孔の内壁面との間の油膜」とは、第1ピストンスカート部の摺動面とシリンダ孔の内壁面との間の隙間にエンジンオイルが満たされた状態が、一対のピストンスカート部がシリンダ軸線方向に往復移動する間にわたって保持されるように構成されていることを意味する。第1ピストンスカート部の摺動面とシリンダ孔の内壁面との間にエンジンオイルが満たされた状態とは、第1ピストンスカート部の摺動面の少なくとも周方向両端とシリンダ孔の内壁面との間の隙間にエンジンオイルが満たされた状態である。第1ピストンスカート部の摺動面とシリンダ孔の内壁面との間の隙間にエンジンオイルが満たされた状態には、第1ピストンスカート部の摺動面全体とシリンダ孔の内壁面との間の隙間にエンジンオイルが満たされた状態が含まれる。「第1ピストンスカート部の摺動面」は、第1ピストンスカート部の摺動面の周方向の端部以外の箇所に径方向に凹んだ凹みを有していてもよい。第1ピストンスカート部の摺動面の周方向の端部以外の箇所の凹みとは、具体的には、エンジンオイルが満たされる凹みであってもよく、エンジンオイルが満たされない凹みであってもよい。摺動面とシリンダ孔の内壁面との間の隙間にエンジンオイルが満たされた状態には、第1ピストンスカート部の摺動面の周方向の端部以外の箇所の凹みを有する摺動面全体とシリンダ孔の内壁面との間の隙間にエンジンオイルが満たされた状態が含まれる。また、第1ピストンスカート部の摺動面とシリンダ孔の内壁面との間の隙間にエンジンオイルが満たされた状態には、第1ピストンスカート部の摺動面の少なくとも周方向両端とシリンダ孔の内壁面との間の隙間にエンジンオイルが満たされかつ第1ピストンスカート部の摺動面とシリンダ孔の内壁面との間の一部の空間がエンジンオイルによって満たされていない状態も含まれる。第1ピストンスカート部の摺動面とシリンダ孔の内壁面との間の一部の空間は、例えば、エンジンオイルに含まれる気泡や、エンジンオイルで満たされない凹みである。「第2ピストンスカート部の摺動面」も、「第1ピストンスカート部の摺動面」と同様である。「第2ピストンスカート部の摺動面とシリンダ孔の内壁面との間の油膜」も、「第1ピストンスカート部の摺動面とシリンダ孔の内壁面との間の油膜」と同様である。
本発明および本明細書において「第1ピストンスカート部の摺動面の周方向の長さ」とは、シリンダ軸線方向に見た時の、第1ピストンスカート部の摺動面の周方向の長さである。本発明でいう周方向は、シリンダ軸線を中心とした円周方向を意味する。「第1ピストンスカート部の外周面の周方向の長さ」とは、シリンダ軸線方向に見た時の、第1ピストンスカート部の摺動面の周方向の長さと凹部の周方向の長さの合計である。つまり、「第1ピストンスカート部の外周面の周方向の長さ」とは、シリンダ軸線方向に見た時の、第1ピストンスカート部の摺動面から凹部の分だけ延長した円弧の周方向の長さである。「第2ピストンスカート部の摺動面」も、「第1ピストンスカート部の摺動面」と同様である。「第2ピストンスカート部の外周面の周方向の長さ」も、「第1ピストンスカート部の外周面の周方向の長さ」と同様である。
本発明および本明細書において「段差面」とは、摺動面に接続されて、摺動面とシリンダ孔の内壁面との間の油膜を切ることができる深さで形成される段差を構成する面である。段差面と摺動面の接続部分は、シリンダ軸線方向に見て、径方向に張り出した頂点を有する角部で形成される。または、段差面と摺動面の接続部分は、シリンダ軸線方向に見て、径方向に張り出した頂点を有さない湾曲部で形成される。段差面は、シリンダ孔の径方向およびシリンダ軸線方向に沿って配置される。段差面は、シリンダ孔の径方向と平行である。または、段差面は、シリンダ孔の径方向に対して傾斜している。つまり、段差面は、シリンダ軸線方向に見て、シリンダ軸線を通るシリンダ孔の径方向の直線に対して、−45度以上〜45度以下の角度の範囲内で交差する面である。段差面は、シリンダ軸線方向と平行である。または、段差面は、シリンダ軸線方向に対して傾斜している。つまり、段差面は、シリンダ孔の径方向に見て、シリンダ軸線に対して、−45度以上〜45度以下の角度の範囲内で交差する面である。段差面は、平面である。または、段差面は、曲面である。または、段差面は、曲面および平面である。本発明および明細書において「対向面」とは、段差面に接続されて、シリンダ孔の内壁面と対向する面である。段差面と対向面の接続部分は、シリンダ軸線方向に見て、径方向に凹んだ頂点を有する角部で形成される。または、段差面と対向面の接続部分は、シリンダ軸線方向に見て、径方向に凹んだ頂点を有さない湾曲部で形成される。対向面は、シリンダ孔の周方向およびシリンダ軸線方向に沿って配置される。対向面は、シリンダ孔の周方向と平行である。または、対向面は、シリンダ孔の周方向に対して傾斜している。つまり、対向面は、シリンダ軸線方向に見て、シリンダ孔の周方向に対して、−45度以上〜45度以下角度の範囲内で交差する面である。対向面は、シリンダ軸線方向と平行である。または、対向面は、シリンダ軸線方向に対して傾斜している。つまり、対向面は、シリンダ孔の周方向に見て、シリンダ軸線に対して、−45度以上〜45度以下の角度の範囲内で交差する面である。対向面は、曲面である。または、対向面は、平面である。または、対向面は、平面および曲面である。対向面は、シリンダ孔の内壁面との間で油膜を形成しない。本発明および本明細書において、「対向面が、シリンダ孔の内壁面との間で油膜を形成しない」とは、一対のピストンスカート部がシリンダ軸線方向に往復移動する間にわたって、対向面の全てがシリンダ孔の内壁面との間で油膜を形成しないことを意味する。つまり、本発明および本明細書において、「対向面が、シリンダ孔の内壁面との間で油膜を形成しない」とは、一対のピストンスカート部がシリンダ軸線方向に往復移動する間に、瞬間的に対向面がシリンダ孔の内壁面との間で油膜を形成することを含んでよい。また、本発明および本明細書において、「対向面が、シリンダ孔の内壁面との間で油膜を形成しない」とは、一対のピストンスカート部がシリンダ軸線方向に往復移動する間に、対向面の一部においてシリンダ孔の内壁面との間で油膜を形成することを含んでよい。これにより、凹部は、ピストンスカート部がシリンダ軸線方向に往復移動する際に、凹部の段差面および対向面とシリンダ孔の内壁面との間に形成される凹部空間にエンジンオイルが満たされた状態を保持不能に形成される。つまり、凹部は、ピストンスカート部がシリンダ軸線方向に往復移動する間にわたって、凹部空間がエンジンオイルによって満たされた状態が保持されないように形成される。つまり、本発明および本明細書において、「対向面が、シリンダ孔の内壁面との間で油膜を形成しない」とは、一対のピストンスカート部がシリンダ軸線方向に往復移動する間にわたって、凹部空間がエンジンオイルによって満たされた状態が保持されないことを意味する。なお、より詳細には、凹部空間は、凹部の段差面および対向面と、凹部の対向面に対向するシリンダ孔の内壁面との間に形成される空間である。
ここで、凹部が「凹部空間にエンジンオイルが満たされた状態を保持不能に形成される」とは、凹部空間が例えば以下の状態であるように凹部が形成されることを含む。1つ目の状態は、一対のピストンスカート部がシリンダ軸線方向に往復移動する間に、凹部空間の少なくとも一部がエンジンオイルによって瞬間的に満たされる状態である。例えば一対のピストンスカート部がシリンダ軸線方向に往復移動する間に、シリンダ孔の内壁面に付着したエンジンオイルの一部が瞬間的に凹部空間へ流れ込むことがある。この場合、凹部空間にエンジンオイルが瞬間的に満たされる状態になる。このような状態が発生しても、凹部空間内のエンジンオイルの全部または一部は、直ちに凹部空間外へ排出される。2つ目の状態は、凹部の表面にエンジンオイルが付着し、かつ、凹部の段差面および/または対向面に付着したエンジンオイルから分離したエンジンオイルがシリンダ孔の内壁面に付着した状態が、一対のピストンスカート部がシリンダ軸線方向に往復移動する間にわたって保持される状態である。3つ目の状態は、一対のピストンスカート部がシリンダ軸線方向に往復移動する間にわたって凹部空間にエンジンオイルがほぼ存在しない状態である。凹部空間内にエンジンオイルがほぼ存在しない状態とは、凹部の段差面および対向面にエンジンオイルが薄く付着し、かつ、シリンダ孔の内壁面にエンジンオイルが薄く付着することを含む。
本発明および本明細書において「除去加工」とは、旋盤加工、フライス加工、研磨加工等の加工方法によって、材料を削って加工することを意味する。
本発明および本明細書において、ある部品の端部とは、部品の端とその近傍部とを合わせた部分を意味する。
本発明および本明細書において、A方向に沿った方向とは、A方向と平行な方向に限らない。A方向に沿った方向とは、A方向に対して±45°の範囲で傾斜している方向を含む。ある直線がA方向に沿うという場合にも、この定義は適用される。なお、A方向は、特定の方向を指すものではない。A方向を、鉛直方向、上下方向、前後方向または左右方向に置き換えることができる。
本発明および本明細書において、A、B、またはCの少なくともいずれかとは、A、B、C、AとB、BとC、AとC、または、AとBとCのいずれかである。
本発明において、含む(including)、有する(comprising)、備える(having)およびこれらの派生語は、列挙されたアイテムおよびその等価物に加えて追加的アイテムをも包含することが意図されて用いられている。取り付けられた(mounted)、接続された(connected)および結合された(coupled)という用語は、広義に用いられている。具体的には、直接的な取付、接続および結合だけでなく、間接的な取付、接続および結合も含む。さらに、接続された(connected)および結合された(coupled)は、物理的または機械的な接続/結合に限られない。それらは、直接的なまたは間接的な電気的接続/結合も含む。
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術および本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、理想化されたまたは過度に形式的な意味で解釈されることはない。
本明細書において、「好ましい」という用語は非排他的なものである。「好ましい」は、「好ましいがこれに限定されるものではない」ということを意味する。本明細書において、「好ましい」と記載された構成は、少なくとも、上記(1)の構成により得られる上記効果を奏する。また、本明細書において、「してもよい」という用語は非排他的なものである。「してもよい」は、「してもよいがこれに限定されるものではない」という意味である。本明細書において、「してもよい」と記載された構成は、少なくとも、上記(1)の構成により得られる上記効果を奏する。
特許請求の範囲において、ある構成要素の数を明確に特定しておらず、英語に翻訳された場合に単数で表示される場合、本発明は、この構成要素を、複数有していてもよい。また本発明は、この構成要素を1つだけ有していてもよい。
本発明では、上述した他の観点による構成を互いに組み合わせることを制限しない。
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記載されたまたは図面に図示された構成要素の構成および配置の詳細に制限されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態でも可能であり、様々な変更を加えた実施形態でも可能である。また、本発明は、後述する変形例を適宜組み合わせて実施することができる。
本発明のエンジン用ピストンは、一対のピストンスカート部の変形時の摺動抵抗の低減できるようにしつつ、一対のピストンスカート部の外周面の周方向の長さおよび確保する油膜の面積の設計自由度を高めることができる。
第1実施形態に係るエンジン用ピストンを模式的に示す図である。 第1実施形態に係るエンジン用ピストンをシリンダ軸線方向に見た模式的な断面図である。 第1実施形態に係るエンジン用ピストンの一対のピストンスカート部とシリンダ孔の内壁面との間のエンジンオイルの状態を模式的に示す断面図である。 第1実施形態に係るエンジン用ピストンの凹部を拡大してシリンダ軸線方向に見た模式図である。 第1実施形態に係るエンジン用ピストンをシリンダ孔の径方向に見た模式図である。 第2実施形態に係るエンジン用ピストンをシリンダ軸線方向に見た模式的な断面図である。 第3実施形態に係るエンジン用ピストンの凹部を拡大してシリンダ軸線方向に見た模式図である。 第6実施形態に係るエンジン用ピストンを備えるエンジンをシリンダ孔の径方向に見た模式図である。
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図5を参照しつつ説明する。図1は、第1実施形態に係るエンジン用ピストンをシリンダ軸線に直交するシリンダ孔の径方向に見た断面図および第1実施形態に係るエンジン用ピストンをシリンダ軸線方向に見た断面図である。図1に示すように、エンジン用ピストン25は、ピストンヘッド部26と、一対のピストンスカート部27と、リブ部31とを備える。エンジン用ピストン25は、エンジン10のシリンダ部15の内部に配置される。
ピストンヘッド部26は、エンジン10のシリンダ部15の内部に形成されたシリンダ孔17aに配置される。シリンダ孔17aは、円柱状である。ピストンヘッド部26は、シリンダ孔17aをその軸線の方向であるシリンダ軸線15X方向に往復移動可能に設けられる。ピストンヘッド部26は、エンジン10のシリンダ部15の内部に形成される燃焼室15aの一部を構成する。燃焼室15aは、シリンダ孔17aの軸線15X(以下、シリンダ軸線15Xと称する)の方向を中心とする略半球面で構成される。ピストンヘッド部26は、シリンダ孔17aをシリンダ軸線15X方向に往復移動可能に設けられる。つまり、エンジン用ピストン25は、シリンダ孔17aをシリンダ軸線15X方向に往復移動可能に設けられる。第1実施形態のエンジン用ピストン25は、例えば自動二輪車のエンジンに適用される。第1実施形態のエンジン用ピストン25は、車両の上下方向に対して、ピストンヘッド部26が上、一対のピストンスカート部27が下になるように配置される。また、第1実施形態のエンジン用ピストン25は、シリンダ軸線15X方向が車両の上下方向と平行、または、車両の上下方向に対して−90度以上90度以下範囲で傾斜するように、エンジン10に配置される。
ピストンヘッド部26は、円柱状に設けられる。ピストンヘッド部26は、その軸線X25の方向(以下、ピストン軸線25X方向と称する。)がシリンダ軸線15X方向に沿って、配置される。詳細には、ピストンヘッド部26は、ピストン軸線25Xがシリンダ軸線15X方向とほぼ一致するように、配置される。エンジン用ピストン25がシリンダ軸線15X方向に往復移動する際、ピストンヘッド部26が、シリンダ孔17a内でシリンダ軸線15Xに直交する径方向に若干移動する。ピストンヘッド部26は、その外周面がシリンダ孔17aの内壁面15fと対向するように、配置される。ピストンヘッド部26の外周面には、1つまたは複数の環状溝(図示せず)が形成される。ピストンヘッド部26の環状溝には、円環状のコンプレッションリング(図示せず)および/または円環状のオイルリング(図示せず)が設けられる。コンプレッションリングおよびオイルリングは、シリンダ孔17aの内壁面15fに接触するように構成される。コンプレッションリングおよびオイルリングは、エンジン用ピストン25のシリンダ軸線15X方向の往復移動に伴い、シリンダ孔17aの内壁面15fをスライド可能に構成される。コンプレッションリングおよびオイルリングは、シリンダ孔17a内のエンジンオイルが燃焼室15aに進入するのを防ぐ。燃焼室15aの一部は、シリンダ軸線15X方向の最も上の位置にある面であるピストンヘッド部26の上面によって形成される。なお、エンジン用ピストン25単体の構成についての以下の説明においては、ピストンヘッド部26は、ピストン軸線25Xがシリンダ軸線15X方向と一致するようにエンジン用ピストン25を配置している場合を前提として説明している。つまり、エンジン用ピストン25単体の構成についての以下の説明においては、シリンダ軸線15Xは、ピストン軸線25Xに置き換えることができる。
一対のピストンスカート部27は、第1ピストンスカート部27Aおよび第2ピストンスカート部27Bを含む。第1ピストンスカート部27Aおよび第2ピストンスカート部27Bは、ピストンヘッド部26に接続される。詳細には、第1ピストンスカート部27Aおよび第2ピストンスカート部27Bは、その上端部が、ピストンヘッド部26の下面に接続される。第1ピストンスカート部27Aおよび第2ピストンスカート部27Bは、ピストンヘッド部26の下面に、互いに離れて配置される。つまり、シリンダ軸線15X方向に見て、第1ピストンスカート部27Aの位置と第2ピストンスカート部27Bの位置は異なる。第1ピストンスカート部27Aおよび第2ピストンスカート部27Bは、シリンダ軸線15X方向に往復移動可能に設けられる。第1ピストンスカート部27Aおよび第2ピストンスカート部27Bは、シリンダ軸線15X方向に見たときの形状がシリンダ孔17aの内壁面15fに沿った円弧状である。詳細には、シリンダ軸線15X方向に見て、第1ピストンスカート部27Aおよび第2ピストンスカート部27Bの形状は、シリンダ軸線15Xを中心とする円弧形状である。シリンダ軸線15Xを中心とする円弧形状の第1ピストンスカート部27Aの中心角は、シリンダ軸線15Xを中心とする円弧形状の第2ピストンスカート部27Bの中心角と同一である。第1ピストンスカート部27Aは、その周方向の両端が、シリンダ軸線15Xに直交するシリンダ孔17aの径方向に見たときに、シリンダ軸線15Xに沿った直線形状になるように形成されていてもよいし、形成されていなくてもよい。第2ピストンスカート部27Bは、その周方向の両端が、シリンダ軸線15Xに直交するシリンダ孔17aの径方向に見たときに、シリンダ軸線15Xに沿った直線形状になるように形成されていてもよいし、形成されていなくてもよい。なお、クランク軸47は、クランク軸47の軸線Lc方向(以下、クランク軸線Lc方向と称する)がシリンダ軸線15Xを通るように配置されてもよいし、クランク軸線Lcがシリンダ軸線15Xを通らないように配置されてもよい。第1ピストンスカート部27Aの外周面28Aと、シリンダ孔17aの内壁面15fとの間には、エンジンオイルLOが進入可能な略円弧状の隙間CLが形成される。第2ピストンスカート部27Bの外周面28Bと、シリンダ孔17aの内壁面15fとの間にエンジンオイルLOが進入可能な略円弧状の隙間CLが形成される。隙間CLは、シリンダ軸線15X方向に見て、円弧状の微小な隙間である。
例えばポンプ(図示せず)により加圧されたエンジンオイルLOが、シリンダ孔17aの内壁面15fおよびエンジン用ピストン25のピストンヘッド部26の下面に向かって、噴射される。ポンプは、エンジンの駆動力により駆動されるものであってもよいし、電動により駆動されるものであってもよい。噴射されたエンジンオイルLOは、内壁面15fに付着する。エンジン用ピストン25のピストンヘッド部26、第1ピストンスカート部27Aおよび第2ピストンスカート部27Bは、シリンダ軸線15X方向に往復移動する。エンジン用ピストン25の往復移動により、第1ピストンスカート部27Aの外周面28Aとシリンダ孔17aの内壁面15fとの間の隙間CLには、内壁面15fに付着したエンジンオイルLOが進入する。同様に、エンジン用ピストン25の往復移動により、第2ピストンスカート部27Bの外周面28Bと内壁面15fとの間の隙間CLには、内壁面15fに付着したエンジンオイルLOが進入する。このように、外周面28A、外周面28B、および内壁面15fが、エンジンオイルLOによって潤滑される。
一対のリブ部31は、ピストンヘッド部26および一対のピストンスカート部27の周方向の両端部に接続される。一対のリブ部31の上端部はピストンヘッド部26の下面に接続される。一対のリブ部31は、第1リブ部31Aおよび第2リブ部31Bである。より詳細には、第1リブ部31Aは、第1ボス部32Aを有する。第2リブ部31Bは、第2ボス部32Bを有する。第1ボス部32Aおよび第2ボス部32Bは、シリンダ軸線15Xに直交するシリンダ孔17aの径方向に見たときに、第1ボス部32A、シリンダ軸線15X、第2ボス部32Bの順に並ぶように設けられる。第1ボス部32Aは、第1リブ部31Aの中央部に設けられる。また、第2ボス部32Bは、第2リブ部31Aの周方向の中央部に設けられる。第1ボス部32Aにはピストンピン45が挿入可能な円柱状のピン孔33が形成される。第2ボス部32Bにはピストンピン45が挿入可能な円柱状のピン孔33が形成されている。第1ボス部32Aのピン孔33の軸および第2ボス部32Bのピン孔33は、それぞれの軸が、一致するように、第1ボス部32Aおよび第2ボス部32Bに形成される。各ピン孔33の軸線は、クランク軸線Lc方向と平行である。各ピン孔33の軸線は、クランク軸線Lc方向と平行でなくてもよい。第1ボス部32Aのピン孔33および第2ボス部32Bのピン孔33には、ピストンピン45が挿入される。ピストンピン45は、例えば金属製または金属および樹脂の複合材製であり、円筒状または円柱状に形成される。一対のリブ部31は、ピストンピン45を介して、コンロッド46が揺動可能に接続される。コンロッド46は、ピストンヘッド部26および一対のピストンスカート部27のシリンダ軸線15X方向の往復移動を、クランク軸47の回転力として伝達する。クランク軸47は、エンジン10に含まれる。より詳細には、ピストンピン45は、コンロッド46の上端部に設けられた円柱状の孔に挿入され、コンロッド46を支持する。つまり、ピストンピン45が、コンロッド46の孔、第1ボス部32Aのピン孔33および第2ボス部32Bのピン孔33に挿入される。そのため、コンロッド46は、ピストンピン45の軸線回りに、第1リブ部31Aのピン孔33および第2リブ部31Bのピン孔33に対して揺動可能に接続される。つまり、第1リブ部31Aおよび第2リブ部31Bは、ピストンピン45を介してコンロッド46に揺動可能に接続される。コンロッド46は、クランク軸47に回転可能に設けられる。より詳細には、コンロッド46の下端部がクランク軸47に含まれる偏心軸48(図8参照)に接続され、偏心軸48の中心軸回りに揺動可能に接続される。偏心軸48の中心軸は、クランク軸47の中心軸からずれている。偏心軸48は、クランク軸47の中心軸回りに回転する。つまり、コンロッド46の下端部は、クランク軸47の中心軸回りに回転可能にクランク軸47に接続されている。偏心軸48に接続されたコンロッド46の下端部がクランク軸47の中心軸回りに回転すると、コンロッド46は、偏心軸48の中心軸回りに揺動しつつ、シリンダ軸線15X方向に往復移動する。そして、コンロッド46の上端部に接続されたエンジン用ピストン25は、シリンダ軸線15X方向に往復移動する。
図2の(1)〜(3)に示すように、一対のピストンスカート部27である第1ピストンスカート部27Aおよび第2ピストンスカート部27Bの形状は同一であってよい。図2の(4)に示すように、第1ピストンスカート部27Aおよび第2ピストンスカート部27Bの形状は異なっていてもよい。つまり、第1ピストンスカート部27Aの周方向の長さと、第2ピストンスカート部27Bの周方向の長さは、同じであっても、異なっていてもよい。第1ピストンスカート部27Aの周方向の長さが、第2ピストンスカート部27Bの周方向の長さより長くてもよいし、短くてもよい。また、図示しないが、シリンダ軸線15X方向において、第1ピストンスカート部27Aの長さと第2ピストンスカート部27Bの長さは同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1ピストンスカート部27Aのシリンダ軸線15X方向の長さが、第2ピストンスカート部27Bのシリンダ軸線15X方向の長さより長くてもよいし、短くてもよい。
図2(1)および(4)に示すように、第1リブ部31Aおよび第2リブ部31Bは、直線状に形成されていてもよい。または、図2(2)に示すように、第1リブ部31Aおよび第2リブ部31Bは、その中央部が、シリンダ軸線15Xに向かって凹むように形成されていてもよい。または、図2(3)に示すように、第1リブ部31Aおよび第2リブ部31Bは、その中央部が、シリンダ軸線15Xから離れるように形成されていてもよい。詳細には、図2の(1)に示すように、第1リブ部31Aおよび第2リブ部31Bは、ピストンピン45の軸線Lp方向における第1リブ部31Aの内周面とピストンピン45との交点と、第2リブ部31Bの内周面とピストンピン45との交点との間の距離が、ピストンピン45の軸線Lp方向における第1ピストンスカート部27Aの内周面の長さと同じになるように構成される。また、図2の(2)〜(4)に示すように、第1リブ部31Aおよび第2リブ部31Bは、ピストンピン45の軸線Lp方向における第1リブ部31Aの内周面とピストンピン45との交点と、第2リブ部31Bの内周面とピストンピン45との交点との間の距離が、ピストンピン45の軸線Lp方向における第1ピストンスカート部27Aの内周面の長さと異なるように構成される。例えば、図2(2)に示すように、第1リブ部31Aおよび第2リブ部31Bは、ピストンピン45の軸線Lp方向における第1リブ部31Aの内周面とピストンピン45との交点と、第2リブ部31Bの内周面とピストンピンとの交点との間の距離が、ピストンピン45の軸線Lp方向における第1ピストンスカート部27Aの内周面の長さより長くなるように構成される。また、例えば、図2(3)および(4)に示すように、第1リブ部31Aおよび第2リブ部31Bは、ピストンピン45の軸線Lp方向における第1リブ部31Aの内周面とピストンピン45との交点と、第2リブ部31Bの内周面とピストンピンとの交点との間の距離が、ピストンピン45の軸線Lp方向における第1ピストンスカート部27Aの内周面の長さより短いように構成される。
図2の(1)に示すように、第1リブ部31Aおよび第2リブ部31Bは、ピストンピン45の軸線Lp方向における第1リブ部31Aの内周面とピストンピン45との交点と、第2リブ部31Bの内周面とピストンピン45との交点との間の距離が、ピストンピン45の軸線Lp方向における第2ピストンスカート部27Bの内周面の長さと同じになるように構成される。また、図2の(2)〜(4)に示すように、第1リブ部31Aおよび第2リブ部31Bは、ピストンピン45の軸線Lp方向における第1リブ部31Aの内周面とピストンピン45との交点と、第2リブ部31Bの内周面とピストンピン45との交点との間の距離が、ピストンピン45の軸線Lp方向における第2ピストンスカート部27Bの内周面の長さと異なるように構成される。例えば、図2の(2)および(4)に示すように、第1リブ部31Aおよび第2リブ部31Bは、ピストンピン45の軸線Lp方向における第1リブ部31Aの内周面とピストンピン45との交点と、第2リブ部31Bの内周面とピストンピン45との交点との間の距離が、ピストンピン45の軸線Lp方向における第2ピストンスカート部27Bの内周面の長さより長くなるように構成される。また、例えば、図2の(3)に示すように、第1リブ部31Aおよび第2リブ部31Bは、ピストンピン45の軸線Lp方向における第1リブ部31Aの内周面とピストンピン45との交点と、第2リブ部31Bの内周面とピストンピン45との交点との間の距離が、ピストンピン45の軸線Lp方向における第2ピストンスカート部27Bの内周面の長さより短いように構成される。
図1に示すように、第1ピストンスカート部27Aまたは第2ピストンスカート部27Bの少なくともいずれかは、凹部29を有する。なお、図1〜図8では、凹部29を見やすいサイズで記載しているが、凹部29のサイズは、本発明の請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。凹部29は、第1ピストンスカート部27Aの外周面28Aまたは第2ピストンスカート部27Bの少なくともいずれかの周方向の両端部に設けられる。図1では、凹部29は、第1ピストンスカート部27Aの外周面28Aの周方向の両端部、および、第2ピストンスカート部27Bの外周面28Bの周方向の両端部に設けられている。詳細には、第1ピストンスカート部27Aは、その周方向の両端部に、凹部29A1、29A2を有する。第2ピストンスカート部27Bは、その周方向の両端部に、凹部29B1、29B2を有する。
凹部29を有する第1ピストンスカート部27Aまたは第2ピストンスカート部27Bの少なくともいずれかの外周面28(28A、28B)は、摺動面28aと、凹部29を形成する2つの面である段差面29aおよび対向面29bとを含む。摺動面28aは、シリンダ孔17aの内壁面15fに沿った形状で構成される。摺動面28aは、1つの曲率で構成されて良い。例えば、摺動面28aは、シリンダ孔17aの内壁面15fに平行になるように構成されてもよい。また、摺動面28aは、異なる複数の曲率を有するように構成されてよい。例えば、摺動面28aは、周方向の両端部が周方向の中央部よりも曲率が大きい円弧になるように構成されていてもよい。隙間CLは、摺動面28aとシリンダ孔17aの内壁面15fとの間の隙間を含む。摺動面28aは、シリンダ孔17aの内壁面15fとの間に進入したエンジンオイルLOにより、シリンダ孔17aの内壁面15fとの間に油膜を形成する。つまり、一対のピストンスカート部27の少なくともいずれかの摺動面28aとシリンダ孔17aの内壁面15fとの間の隙間CLにエンジンオイルLOが満たされた状態が、一対のピストンスカート部27がシリンダ軸線15X方向に往復移動する間にわたって保持されるように構成されている。
凹部29は、シリンダ軸線15Xに直交するシリンダ孔17aの径方向においてシリンダ軸線15Xに向かって凹むように設けられる。つまり、凹部29の対向面29bからシリンダ軸線15Xまでのシリンダ孔17aの径方向の長さは、第1ピストンスカート部27Aの摺動面28aからシリンダ軸線15Xまでのシリンダ孔17aの径方向の長さより短い。段差面29aは、摺動面28aに接続される。段差面29aは、シリンダ孔17aの径方向およびシリンダ軸線15X方向に沿って配置される。段差面29aは、シリンダ孔17aの径方向において、摺動面28aとシリンダ孔17aの内壁面15fとの間の油膜を切ることができる深さで形成される段差を構成する。対向面29bは、段差面29aに接続される。対向面29bは、シリンダ孔17aの周方向およびシリンダ軸線15X方向に沿って配置され、シリンダ孔17aの内壁面15fに対向する。隙間CLは、段差面29aおよび対向面29bとシリンダ孔17aの内壁面15fとの間の隙間を含む。そのため、対向面29bは、シリンダ孔17aの内壁面15fとの間に油膜を形成しない。詳細には、シリンダ軸線15X方向において、各凹部29A1、29A2の長さは、第1ピストンスカート部27Aの摺動面28aの長さと同一である。シリンダ軸線15X方向において、各凹部29B1、29B2の長さは、第2ピストンスカート部27Bの摺動面28aの長さと同一である。第1ピストンスカート部27Aの下端面において凹部29A1、29A2はシリンダ孔17aに連通している。第2ピストンスカート部27Bの下端面において凹部29B1、29B2はシリンダ孔17aに連通している。
図3に基づいて、一対のピストンスカート部27とシリンダ孔17aの内壁面15fとの間のエンジンオイルLOの状態について説明する。なお、図3における凹部29は、図1の各凹部29A1、29A2、29B1、29B2に相当し、それぞれの説明を省略する。図3の示すように、摺動面28aとシリンダ孔17aの内壁面15fとの間には油膜が形成される。凹部29の段差面29aは、シリンダ孔17aの内壁面15fと摺動面28aとの間に形成される油膜を切る。このため、凹部29の対向面29bは、シリンダ孔17aの内壁面15fとの間で油膜を形成しない。従って、一対のピストンスカート部27がシリンダ軸線15X方向に往復移動する間にわたって、対向面29bの全てがシリンダ孔17aの内壁面15fとの間で油膜を形成しない。なお、一対のピストンスカート部27がシリンダ軸線15X方向に往復移動する間に、瞬間的に対向面29bがシリンダ孔17aの内壁面15fとの間で油膜を形成してもよい。また、一対のピストンスカート部27がシリンダ軸線15X方向に往復移動する間に、対向面29bの一部においてシリンダ孔17aの内壁面15fとの間で油膜を形成することを含んでよい。つまり、凹部29は、一対のピストンスカート部27がシリンダ軸線15X方向に往復移動する際に、凹部空間SPにエンジンオイルLOが満たされた状態を保持不能に形成される。凹部空間SPは、凹部29の段差面29aおよび対向面29bとシリンダ孔17aの内壁面15fとの間に形成される空間である。
ここで、凹部空間SPの構成について、図3に基づいて詳細に説明する。図3の一点鎖線に示すように、凹部29の段差面29aのシリンダ孔17aの径方向の外周端、かつ、シリンダ孔17aの径方向に平行な平面を第1仮想平面PL1と仮定する。図3の一点鎖線に示すように、凹部29の対向面29bの周方向の外周端を通り、かつ、第1仮想平面PL1と平行な平面を第2仮想平面PL2と仮定する。ピストンヘッド部26の下面を含み、かつ、シリンダ軸線15Xに直交する平面を第3仮想平面(図示せず)と仮定する。凹部29の下端を通り、かつ、シリンダ軸線15Xに直交する平面を第4仮想平面(図示せず)と仮定する。第1仮想平面PL1、第2仮想平面PL2、第3仮想平面、第4仮想平面、段差面29a、対向面29b、および内壁面15fによって囲まれた空間が凹部空間SPである。凹部空間SPの形状はシリンダ軸線15X方向に長い柱状である。凹部空間SPのシリンダ軸線15X方向の長さは、一対のピストンスカート部27のシリンダ軸線15X方向の長さと同じである。
凹部29が「凹部空間SPにエンジンオイルLOが満たされた状態を保持不能に形成される」とは、凹部空間SPが、例えば以下の状態であるように凹部29が形成されることを含む。1つ目の状態は、一対のピストンスカート部27がシリンダ軸線15X方向に往復移動する間に、凹部空間SPの少なくとも一部がエンジンオイルLOによって瞬間的に満たされる状態である。例えば一対のピストンスカート部27がシリンダ軸線15X方向に往復移動する間に、シリンダ孔17aの内壁面15fに付着したエンジンオイルLOの一部が瞬間的に凹部空間SPへ流れ込むことがある。この場合、凹部空間SPがエンジンオイルLOによって瞬間的に満たされることがある。このような状態が発生しても、図3(1)の楕円又は丸の形状で示されるように、凹部空間SP内のエンジンオイルLOは、重力により、直ちに凹部空間SPより下方へ排出される。そして、凹部29の段差面29aおよび対向面29bにエンジンオイルLOが付着し、かつ、凹部29の段差面29aおよび対向面29bに付着したエンジンオイルLOから分離したエンジンオイルLOがシリンダ孔17aの内壁面15fに付着した状態になる。2つめの状態は、図3(2)に示すように、凹部29の段差面29aおよび/または対向面29bにエンジンオイルLOが付着し、かつ、凹部29の段差面29aおよび対向面29bに付着したエンジンオイルLOから分離したエンジンオイルLOがシリンダ孔17aの内壁面15fに付着した状態が、一対のピストンスカート部27がシリンダ軸線15X方向に往復移動する間にわたって保持される状態である。3つめの状態は、図3(3)に示すように、凹部空間SP内にエンジンオイルLOがほぼ存在しない状態である。なお、凹部空間SP内にエンジンオイルLOがほぼ存在しない状態とは、凹部29の段差面29aおよび対向面29bにエンジンオイルLOが薄く付着し、かつ、シリンダ孔17aの内壁面15fにエンジンオイルLOが薄く付着することを含む。
凹部29は、段差面29aおよび対向面29bで形成される。段差面29aは、シリンダ孔17aの径方向およびシリンダ軸線15X方向に沿って配置される。段差面29aは、平面、曲面、または、曲面および平面である。段差面29aは、シリンダ軸線15X方向に見て、シリンダ軸線15Xを通るシリンダ孔17aの径方向の直線に対して、−45度以上〜45度以下の角度の範囲内で交差する面である。図4の(1)〜(3)に示すように、段差面29aは、シリンダ孔17aの径方向と平行である。または、図4の(4)〜(5)に示すように、段差面29aは、シリンダ孔17aの径方向に対して傾斜している。図4の(1)〜(6)に示すように、段差面29aと摺動面28aの接続部分は、シリンダ軸線15X方向に見て、径方向に張り出した頂点を有する角部で形成される。または、図4の(7)に示すように、段差面29aと摺動面28aの接続部分は、シリンダ軸線15X方向に見て、径方向に張り出した頂点を有さない湾曲部で形成される。
段差面29aは、段差面29aを通るシリンダ孔17aの径方向に見て、シリンダ軸線15Xに対して、−45度以上〜45度以下の角度の範囲内で交差する面である。図5の(1)に示すように、段差面29aを通るシリンダ孔17aの径方向に見て、段差面29aは、シリンダ軸線15X方向と平行である。または、図5の(2)および(3)に示すように、段差面29aを通るシリンダ孔17aの径方向に見て、段差面29aは、シリンダ軸線15X方向に対して傾斜している。そのため、図5の(2)に示すように、対向面29bは、対向面29bを通るシリンダ孔17aの径方向に見て、その上端の長さが下端の長さより長い。図5の(3)に示すように、対向面29bは、対向面29bを通るシリンダ孔17aの径方向に見て、その上端の長さが下端の長さより短い。
対向面29bは、シリンダ孔17aの周方向およびシリンダ軸線15X方向に沿って配置される。対向面29bは、平面、曲面、または、曲面および平面である。対向面29bは、シリンダ軸線15X方向に見て、シリンダ孔17aの周方向に対して、−45度以上〜45度以下の角度の範囲内で交差する面である。図4の(1)、(4)および(5)に示すように、対向面29bは、シリンダ孔17aの周方向と平行である。または、図4の(2)および(3)に示すように、対向面29bは、シリンダ孔17aの周方向に対して傾斜している。図4の(1)〜(5)および(7)に示すように、段差面29aと対向面29bの接続部分は、シリンダ軸線15X方向に見て、径方向に凹んだ頂点を有する角部で形成される。または、図4の(6)に示すように、段差面29aと対向面29bの接続部分は、シリンダ軸線15X方向に見て、径方向に凹んだ頂点を有さない湾曲部で形成される。
対向面29bは、シリンダ孔17aの周方向に見て、シリンダ軸線15Xに対して、−45度以上〜45度以下の角度の範囲内で交差する面である。図5の(4)に示すように、対向面29bは、シリンダ軸線15X方向と平行である。または、図5の(5)および(6)に示すように、対向面29bは、シリンダ軸線15X方向に対して傾斜している。
なお、一対のピストンスカート部27の少なくともいずれかの両端部に設けられる複数の凹部29は、図4に示すいずれか1つの構成であってもよいし、図4に示すいずれか2つの構成の組み合わせであってもよい。図5では、一対のピストンスカート部27の少なくともいずれかの両端部に設けられる複数の凹部29が、シリンダ軸線15Xに対して対称になるよう構成されている。しかしながら、一対のピストンスカート部27の少なくともいずれかの両端部に設けられる複数の凹部29が、シリンダ軸線15Xに対して対称に構成されず、図5のいずれか2つを組み合わせて構成されてもよい。
第1実施形態のエンジン用ピストン25は、以下の効果を有する。
第1ピストンスカート部27Aまたは第2ピストンスカート部27Bの少なくともいずれかは、第1ピストンスカート部27Aまたは第2ピストンスカート部27Bの少なくともいずれかの外周面28A、28Bの周方向の少両端部に設けられる凹部29を有する。凹部29は、シリンダ軸線15Xに直交するシリンダ孔17aの径方向において、シリンダ軸線15Xに向かって凹むように設けられる。つまり、凹部29は、第1ピストンスカート部27Aまたは第2ピストンスカート部27Bの摺動面28aより凹むように設けられる。また、第1ピストンスカート部27Aまたは第2ピストンスカート部27Bの少なくともいずれかの外周面28(28A、28B)は、摺動面28aと、段差面29aおよび対向面29bと、を有する。摺動面28aは、シリンダ孔17aの内壁面15fとの間に進入したエンジンオイルLOにより、シリンダ孔17aの内壁面15fとの間に油膜を形成する。段差面29aおよび対向面29bは、凹部29を形成する。段差面29aは、摺動面28aに接続されてシリンダ孔17aの径方向およびシリンダ軸線15X方向に沿って配置され、シリンダ孔17aの径方向に摺動面28aとシリンダ孔17aの内壁面15fとの間の油膜を切ることができる深さで形成される段差を構成する。対向面29bは、段差面29aに接続されてシリンダ孔17aの周方向およびシリンダ軸線15X方向に沿って配置され、シリンダ孔17aの内壁面15fに対向する。対向面29bは、シリンダ孔17aの内壁面15fとの間で油膜を形成しない。一対のピストンスカート部27がシリンダ軸線15X方向に往復移動する際に、凹部29には、シリンダ孔17aの内壁面15fとの間に油膜が形成されない。
凹部29の段差面29aが構成する段差は、シリンダ孔17aの内壁面15fと第1ピストンスカート部27Aまたは第2ピストンスカート部27Bの少なくともいずれかの摺動面28aとの間の油膜を切ることができる段差である。もともと一対のピストンスカート部27の摺動面28aとシリンダ孔17aの内壁面15fとの間には隙間CLがある。そのため、外周面28に段差を構成する凹部29を形成することで、その段差がわずかな段差であっても、凹部29に存在するエンジンオイルLOに対する表面張力よりもエンジンオイルLO自体の重力が大きくなり、一対のピストンスカート部27の摺動面28aとシリンダ孔17aの内壁面15fとの間の油膜を切ることができる。このため、シリンダ孔17aの内壁面15fと第1ピストンスカート部27Aまたは第2ピストンスカート部27Bの少なくともいずれかの外周面28との間の油膜が切れる位置が決まる。第1ピストンスカート部27Aまたは第2ピストンスカート部27Bの少なくともいずれかの外周面28の摺動面28aとシリンダ孔17aの内壁面15fの油膜が、段差面29aで切れるため、油膜の面積が運転条件などで変化しにくい。第1ピストンスカート部27Aまたは第2ピストンスカート部27Bの少なくともいずれかの剛性を調整するために、第1ピストンスカート部27Aまたは第2ピストンスカート部27Bの少なくともいずれかの外周面28の周方向の長さを長くしたり、短くしたりしても、凹部29の対向面29bの周方向の長さを調整することで、摺動面28aの周方向の長さを自由に設計できる。これにより、一対のピストンスカート部27の外周面28の周方向の長さを要求される剛性に対応して自由に設計できると共に、確保する油膜の面積を自由に設計することができる。つまり、一対のピストンスカート部27の両端部に段差のある凹部29を形成し、その段差が一対のピストンスカート部27の摺動面28aの油膜を切るため、変形時の摺動抵抗を低減しつつ、一対のピストンスカート部27の外周面28の周方向の長さおよび確保する油膜の面積の設計自由度を高めることができる。しかも、一対のピストンスカート部27の両端部に段差のある凹部を形成することで、一対のピストンスカート部の両端部にシリンダ孔の内壁面との間の隙間も確保できる。また、その段差を、シリンダ孔17aの内壁面15fと一対のピストンスカート部27の摺動面28aとの間の油膜を切る程度のわずかな段差とすれば、段差に、応力集中によるクラックが発生しない。
このように第1実施形態の一対のピストンスカート部27を有するエンジン用ピストン25は、一対のピストンスカート部27の変形時の摺動抵抗を低減できるようにしつつ、一対のピストンスカート部27の外周面28の周方向の長さおよび確保する油膜の面積の設計自由度を高めることができる。
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態のエンジン用ピストン25について、図6を参照しつつ説明する。第2実施形態のエンジン用ピストン25は、第1実施形態の構成に加えて、以下の構成を備える。
凹部29は、第1ピストンスカート部27Aの周方向の両端部および第2ピストンスカート部27Bの周方向の両端部に設けられる。つまり、第1ピストンスカート部27Aは、その周方向の両端部に、凹部29A1、29A2を有する。第2ピストンスカート部27Bは、その周方向の両端部に、凹部29B1、29B2を有する。
または、凹部29は、第1ピストンスカート部27Aの周方向の両端部に設けられる。つまり、第1ピストンスカート部27Aは、その周方向の両端部に、凹部29A1、29A2を有する。そして、第2ピストンスカート部27Bには、凹部29B1、29B2が設けられていない。
または、凹部29は、第2ピストンスカート部27Bの周方向の両端部に設けられる。つまり、第2ピストンスカート部27Bは、その周方向の両端部に、凹部29B1、29B2を有する。そして、第1ピストンスカート部27Aには、凹部29A1、29A2が設けられていない。
第2実施形態のエンジン用ピストン25は、第1実施形態のエンジン用ピストン25の効果に加えて、以下の効果を奏する。
エンジン用ピストン25は、一対のピストンスカート部27に設けられる凹部29の配置を変更することができる。一対のピストンスカート部27に設けられる凹部29の配置を変更することにより、一対のピストンスカート部27のエンジンオイルLOの油膜による摺動抵抗を調整することができる。一対のピストンスカート部27に設けられる凹部29の配置を変更することにより、一対のピストンスカート部27の変形時の摺動抵抗を低減できるようにしつつ、一対のピストンスカート部27の外周面28の周方向の長さおよび確保する油膜の面積の設計自由度を高めることができる。
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態のエンジン用ピストン25について、図6および図7を参照しつつ説明する。第3実施形態のエンジン用ピストン25は、第1実施形態または第2実施形態の構成に加えて、以下の構成を備える。
図6に示すように、一対のリブ部31は、第1リブ部31Aおよび第2リブ部31Bである。第1リブ部31Aの一方の端部は、第1ピストンスカート部27Aの内周部の周方向の一方の端部である第1ピストンスカート第1端部27A1に接続される。第1リブ部31Aの他方の端部は、第2ピストンスカート部27Bの内周部の周方向の一方の端部である第2ピストンスカート第1端部27B1に接続される。第2リブ部31Bの一方の端部は、第1ピストンスカート部27Aの内周部の周方向の他方の端部である第1ピストンスカート第2端部27A2に接続される。第2リブ部31Bの他方の端部は、第2ピストンスカート部27Bの内周部の周方向の他方の端部である第2ピストンスカート第2端部27B2に接続される。
図7の(1)に示すように、凹部29A1は、凹部29A1を通るシリンダ孔17aの径方向D1に見たときに、第1ピストンスカート第1端部27A1と重なる。図示しないが、凹部29A2も同様に、凹部29A2を通るシリンダ孔17aの径方向に見たときに、第1ピストンスカート第2端部27A2と重なる。図示しないが、凹部29B1も同様に、凹部29B1を通るシリンダ孔17aの径方向に見たときに、第2ピストンスカート第1端部27B1と重なる。図示しないが、凹部29B2も同様に、凹部29B2を通るシリンダ孔17aの径方向に見たときに、第2ピストンスカート第2端部27B2と重なる。
なお、エンジン用ピストン25において、凹部29A1、29A2、29B1、29B2の少なくともいずれかが、凹部29A1、29A2、29B1、29B2を通る径方向に見たときに、第1ピストンスカート第1端部27A1、第2ピストンスカート第1端部27B1、第1ピストンスカート第2端部27A2、第2ピストンスカート第2端部27B2に重なるように、設けられていればよい。
また、図7の(2)に示すように、第1実施形態または第2実施形態のエンジン用ピストン25は、凹部29A1が、凹部29A1を通るシリンダ孔17aの径方向D1に見たときに、第1ピストンスカート第1端部27A1と重ならないように構成されていてもよい。図示しないが、凹部29A2も同様に、凹部29A2を通るシリンダ孔17aの径方向D2に見たときに、第1ピストンスカート第2端部27A2と重ならなくてもよい。図示しないが、凹部29B1も同様に、凹部29B1を通るシリンダ孔17aの径方向D3に見たときに、第2ピストンスカート第1端部27B1と重ならなくてもよい。図示しないが、凹部29B2も同様に、凹部29B2を通るシリンダ孔17aの径方向D4に見たときに、第2ピストンスカート第2端部27B2と重ならなくてもよい。
第3実施形態のエンジン用ピストン25は、第1実施形態または第2実施形態のエンジン用ピストン25の効果に加えて、以下の効果を奏する。
第3実施形態のエンジン用ピストン25は、一対のリブ部31が、第1リブ部31Aおよび第2リブ部31Bを有する。第1リブ部31Aの一方の端部は、第1ピストンスカート部27Aの第1ピストンスカート第1端部27A1に接続されている。第1リブ部31Aの他方の端部は、第2ピストンスカート部27Bの第2ピストンスカート第1端部27B1に接続されている。第2リブ部31Bの一方の端部は、第1ピストンスカート部27Aの第1ピストンスカート第2端部27A2に接続されている。第2リブ部31Bの他方の端部は、第2ピストンスカート部27Bの第2ピストンスカート第2端部27B2に接続されている。ここで、第1ピストンスカート部27Aおよび第2ピストンスカート部27Bにおいて、第1リブ部31Aおよび第2リブ部31Bと接続される部分の剛性が比較的大きくなる。換言すると、第1ピストンスカート第1端部27A1、第2ピストンスカート第1端部27B1、第1ピストンスカート第2端部27A2、および第2ピストンスカート第2端部27B2の剛性が比較的大きくなる。
一方、凹部29A1は、凹部29A1を通る径方向D1に見たときに、第1リブ部31Aの第1ピストンスカート第1端部27A1に接続される部分と重なる。凹部29A2は、凹部29A2を通る径方向D2に見たときに、第2リブ部31Bの第1ピストンスカート第2端部27A2に接続される部分と重なる。凹部29B1は、凹部29B1を通る径方向D3に見たときに、第1リブ部31Aの第2ピストンスカート第1端部27B1に接続される部分と重なる。凹部29B2は、凹部29B2を通る径方向D4に見たときに、第2リブ部31Bの第2ピストンスカート第2端部27B2に接続される部分と重なる。あるいは、エンジン用ピストン25において、凹部29A1、29A2、29B1、29B2の少なくともいずれかが、凹部29A1、29A2、29B1、29B2を通る径方向に見たときに、第1ピストンスカート第1端部27A1、第2ピストンスカート第1端部27B1、第1ピストンスカート第2端部27A2、第2ピストンスカート第2端部27B2に重なる。つまり、第1ピストンスカート部27Aおよび第2ピストンスカート部27Bにおいて、剛性が比較的大きい第1ピストンスカート第1端部27A1、第2ピストンスカート第1端部27B1、第1ピストンスカート第2端部27A2、および第2ピストンスカート第2端部27B2の少なくともいずれかに凹部29A1、29A2、29B1、29B2が設けられる。これにより、剛性が比較的大きい第1ピストンスカート第1端部27A1、第2ピストンスカート第1端部27B1、第1ピストンスカート第2端部27A2、および第2ピストンスカート第2端部27B2と径方向に並ぶ位置において、一対のピストンスカート部27とシリンダボディ17の内壁面15fとの間に油膜を形成しない大きい隙間を確保できる。つまり、第1ピストンスカート部27Aおよび第2ピストンスカート部27Bにおいて、剛性が比較的大きい第1ピストンスカート第1端部27A1、第2ピストンスカート第1端部27B1、第1ピストンスカート第2端部27A2、および第2ピストンスカート第2端部27B2の少なくともいずれかと径方向に並ぶ位置に凹部29を設けることで、一対のピストンスカート部27とシリンダ孔17aの内壁面15fとの間に油膜を形成しない大きい隙間CLも確保して、シリンダボディ17の内壁面15fから荷重を受けないようにすることができる。
<第4実施形態>
以下、本発明の第4実施形態のエンジン用ピストン25について、説明する。第4実施形態のエンジン用ピストン25は、第1実施形態〜第3実施形態のいずれかの構成に加えて、以下の構成を備える。
エンジン用ピストン25は、例えば金属製または金属および樹脂の複合材製である。ピストンヘッド部26と、一対のピストンスカート部27と、一対のリブ部31は、例えば一体成形されるか、それぞれ別体成形された後に合わせて成形される。
エンジン用ピストン25は、鋳造または鍛造により製造される。鋳造または鍛造の工程の後に、第1ピストンスカート部27Aの外周面28Aおよび第2ピストンスカート部27Bの外周面28Bの摺動面28aが除去加工で成形されてもよい。摺動面28aは、除去加工されていない面でもよい。凹部29の段差面29aおよび対向面29bは除去加工されていない。即ち、凹部29の段差面29aおよび対向面29bは除去加工されていない面である。ここで除去加工されていない面とは、旋盤加工、フライス加工、および研磨加工等によって削られていない面のことである。
第4実施形態のエンジン用ピストン25は、第1実施形態〜第3実施形態のいずれかのエンジン用ピストン25の効果に加えて、以下の効果を奏する。
第4実施形態のエンジン用ピストン25は、ピストンヘッド部26、一対のピストンスカート部27および一対のリブ部31を含む。つまり、ピストンヘッド部26、一対のピストンスカート部27および一対のリブ部31が、金属製である。エンジン用ピストン25が、鋳造または鍛造で成形される。つまり、ピストンヘッド部26、一対のピストンスカート部27および一対のリブ部31が、鋳造または鍛造で成形される。凹部29の段差面および対向面が、除去加工されていない面である。これにより、一対のピストンスカート部27における凹部29の成形が容易になる。また、凹部29の周方向の長さを調整して、摺動面28aの周方向の長さを設計しやすくなる。
<第5実施形態>
以下、本発明の第5実施形態のエンジン用ピストン25について、説明する。第5実施形態のエンジン用ピストン25は、第1実施形態〜第3実施形態のいずれかの構成に加えて、以下の構成を備える。
エンジン用ピストン25は、例えば金属製または金属および樹脂の複合材製である。ピストンヘッド部26と、一対のピストンスカート部27と、一対のリブ部31は、例えば一体成形されるか、それぞれ別体成形された後に合わせて成形される。。
エンジン用ピストン25は、例えば鋳造または鍛造により製造される。なお、エンジン用ピストン25は、例えば3Dプリンタで製造されてもよいし、機械加工で製造されてもよい。鋳造または鍛造等の工程の後に、第1ピストンスカート部27Aの外周面28Aおよび第2ピストンスカート部27Bの外周面28Bの摺動面28aが除去加工によって成形されてもよい。摺動面28aは、除去加工されていない面でもよい。鋳造または鍛造の工程の後に、凹部29の段差面29aおよび対向面29bは除去加工で成形される。
第5実施形態のエンジン用ピストン25は、第1実施形態〜第3実施形態のいずれかのエンジン用ピストン25の効果に加えて、以下の効果を奏する。
第5実施形態のエンジン用ピストン25は金属製である。エンジン用ピストン25は、ピストンヘッド部26、一対のピストンスカート部27および一対のリブ部31を含む。つまり、ピストンヘッド部26、一対のピストンスカート部27および一対のリブ部31が、金属製である。エンジン用ピストン25が、鋳造または鍛造で成形される。つまり、ピストンヘッド部26、一対のピストンスカート部27および一対のリブ部31が、鋳造または鍛造で成形される。また、凹部29の段差面29aおよび対向面29bが除去加工で成形される。これにより、一対のピストンスカート部27における凹部29の成形が容易になる。これにより、凹部29の周方向の長さを調整して、摺動面28aの周方向の長さを設計しやすくなる。
<第6実施形態>
以下、本発明の第6実施形態のエンジン用ピストン25について、図8を参照しつつ説明する。第6実施形態のエンジン用ピストン25は、第1実施形態〜第5実施形態のいずれかの構成に加えて、以下の構成を備える。ここで、エンジン10の一例として、自動二輪車に適用される4ストローク式エンジンについて説明する。4ストローク式エンジンは、気筒ごとに、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程(膨張行程)、および排気行程を繰り返すエンジンである。以下の説明における左右方向、上下方向、および前後方向はいずれも、エンジン10が搭載される自動二輪車を基準とした方向である。但し、これらの方向は、少なくとも1つの前輪および少なくとも1つの後輪を有する自動二輪車が水平な地面に配置された場合の方向とする。つまり、本実施形態の具体例の説明において、前後方向、左右方向、上下方向とは、それぞれ、自動二輪車1に乗車したライダーから見た車両の前後方向、車両の左右方向、車両の上下方向のことである。また、本願の各図中の矢印F、矢印B、矢印U、矢印D、矢印L、矢印Rは、それぞれ、前方向、後方向、上方向、下方向、左方向、右方向を表している。
図8に示すように、エンジン10は、クランクケース部16、シリンダ部15、エンジン用ピストン25、コンロッド46、およびクランク軸47を有する。
シリンダ部15は、シリンダボディ17、シリンダヘッド18、および、ヘッドカバー19を有する。シリンダ部15は、シリンダボディ17、シリンダヘッド18、および、ヘッドカバー19の順に連結されて構成される。具体例1のシリンダ部15は、金属製である。つまり、シリンダボディ17、シリンダヘッド18、および、ヘッドカバー19は金属製である。シリンダボディ17およびシリンダヘッド18は、本発明のシリンダ部15に相当する。シリンダ軸線15X方向は、上下方向に沿った方向である。例えば、エンジン10は、シリンダ軸線15X方向が上下方向に沿った方向となるように自動二輪車に設けられる。
クランクケース部16は、シリンダ部15のシリンダボディ17に連結されて構成される。クランクケース部16は、クランク軸47およびコンロッド46を収容する。クランクケース部16の内部空間の下部にはエンジンオイルLOが貯留される。クランク軸47は、クランクケース部16に回転可能に設けられる。図8の(1)に示すように、オフセットクランク式でないエンジン10において、クランク軸47は、クランク軸線Lcがシリンダ軸線15Xを通る位置に配置される。図8の(2)に示すように、第6実施形態のエンジン用ピストン25が配置されるオフセットクランク式のエンジン10において、クランク軸47は、クランク軸線Lcがシリンダ軸線15Xを通らない位置に配置される。なお、第1〜5実施形態のエンジン用ピストン25が配置されるエンジン10は、図8の(1)に示すオフセットクランク式でないエンジン10と、図8の(2)に示すオフセットクランク式のエンジン10を含む。
エンジン10は、吸気バルブ35、排気バルブ36、吸気通路部38、および、排気通路部39を有する。シリンダヘッド18には、燃焼室15aと後述するシリンダヘッド吸気通路部15dとを連通させる吸気口15bが設けられる。シリンダヘッド18には、燃焼室15aと後述するシリンダヘッド排気通路部15eとを連通させる排気口15cが設けられる。シリンダヘッド18は、吸気口15bに接続されるシリンダヘッド吸気通路部15dを有する。シリンダヘッド18は、排気口15cに接続されるシリンダヘッド排気通路部15eを有する吸気バルブ35は、吸気口15bおよびシリンダヘッド吸気通路部15dに、その軸線が上下方向に沿いつつ後方向に向かうように、配置される。吸気バルブ35は、その軸線に沿って往復移動することにより、吸気口15bを開閉する。吸気バルブ35は、吸気口15bを開閉することにより、燃焼室15aとシリンダヘッド吸気通路部15dとを連通および遮断させる。排気バルブ36は、排気口15cおよびシリンダヘッド排気通路部15eに、その軸線が上下方向に沿いつつ前方向に向かうように、配置される。排気バルブ36は、その軸線に沿って往復移動することにより、排気口15cを開閉する。排気バルブ36は、排気口15cを開閉することにより、燃焼室15aとシリンダヘッド排気通路部15eとを連通および遮断させる。吸気通路部38は、シリンダヘッド吸気通路部15dに接続される。排気通路部39は、シリンダヘッド排気通路部15eに接続される。吸気通路部38の内部には、スロットルバルブ(図示せず)が配置される。
吸気バルブ35とクランク軸47は連動機構(図示せず)を介して互いに連動されている。同様に、排気バルブ36とクランク軸47は連動機構(図示せず)を介して互いに連動されている。
燃料噴射装置(図示せず)は、シリンダヘッド吸気通路部15dまたは吸気通路部38に配置され、燃焼行程において燃料噴射動作を行う。燃料噴射動作が実行されると、燃料噴射装置は、燃料を噴射する。吸気行程において、シリンダヘッド吸気通路部15dおよび吸気通路部38は、空気および燃料を含む混合気を燃焼室15a内に導入する。図示を省略した点火装置は、燃焼室15aに配置され、燃焼行程において点火動作を行う。点火動作が実行されると、点火装置は、燃焼室15a内の混合気に点火する。圧縮行程において、エンジン用ピストン25は、燃焼室15a内の混合気に圧縮する。排気行程において、シリンダヘッド排気通路部15eおよび排気通路部39は、燃焼した排ガスを燃焼室15aの外に排出する。
燃料噴射装置は、燃料噴射動作を繰り返し実行する。点火装置は、点火動作を繰り返し実行する。即ち、エンジン10は、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、および排気行程を繰り返す。その結果、エンジン10の各気筒において、エンジン用ピストン25が、シリンダ孔17aをシリンダ軸線15Xに沿って往復移動する。そして、コンロッド46は、エンジン用ピストン25の往復移動を、ピストンピン45を介してクランク軸47の回転力として伝達する。クランク軸47の回転により、エンジン10が動力を発生する。エンジン10の動力は、変速機(図示せず)を介して自動二輪車の駆動輪である後輪に伝達される。なお、クランク軸47はスタータモータ(図示せず)に接続されていてもよい。スタータモータは、クランク軸47を回転させる。クランク軸47の回転力は、コンロッド46によりエンジン用ピストン25に伝達され、エンジン用ピストン25がシリンダ軸線15Xに沿って往復移動する。
エンジン用ピストン25は、シリンダ孔17aの径方向に僅かに移動しながら、シリンダ孔17aをシリンダ軸線15X方向に往復移動する。第1ピストンスカート部27Aおよび第2ピストンスカート部27Bがシリンダ軸線15X方向に往復移動する際、第1ピストンスカート部27Aの摺動面28aが内壁面15f、および/または、第2ピストンスカート部27Bの摺動面28aが内壁面15fに接触する。例えば圧縮行程および排気行程において、第1ピストンスカート部27Aがシリンダ軸線15X方向に往復移動する際、第1ピストンスカート部27Aの摺動面28aが内壁面15fに接触する。また、例えば吸気行程および燃焼行程において、第2ピストンスカート部27Bがシリンダ軸線15Xの方向に往復移動する際、第2ピストンスカート部27Bの摺動面28aが内壁面15fに接触する。
第6実施形態のエンジン用ピストン25は、第1実施形態〜第5実施形態のいずれかのエンジン用ピストン25の効果に加えて、以下の効果を奏する。
第6実施形態のエンジン用ピストン25が配置されるエンジン10は、その中心軸Lcがシリンダ軸線15Xを通らない位置に配置されるクランク軸47を有する、いわゆるオフセットクランク式のエンジン10である。オフセットクランク式エンジンでは、クランク軸47の上死点のタイミングとピストンの上死点のタイミングが一致しない。そのため、圧縮行程と膨張行程の行程時間に差をつけることができ、早めに膨張させたり、点火後にピストンが上死点にいる時間を長くしたりすることができる。また、オフセットクランク式ではないエンジン10は、その中心軸Lcがシリンダ軸線15Xを通る位置に配置されるクランク軸47を有するエンジン10である。オフセットクランク式のエンジン10では、オフセットクランク式ではないエンジン10と比較して、膨張行程で一対のピストンスカート部27に作用する荷重が低減する。オフセットクランク式のエンジン10では、膨張行程で一対のピストンスカート部27に作用する荷重が低減したとしても、剛性設計の観点から、一対のピストンスカート部27の外周面28の周方向の長さを小さくできないことがある。このような場合であっても、凹部29の配置や凹部29の対向面の周方向の長さを調整することにより、一対のピストンスカート部27の外周面28の周方向の長さおよび確保する油膜の面積を設計することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態よびその具体例に限られるものではなく、請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
10:エンジン、15:シリンダ部、15a:燃焼室、15f:内壁面、15X:シリンダ軸線、17a:シリンダ孔、25:エンジン用ピストン、26:ピストンヘッド部、27:一対のピストンスカート部、27A:第1ピストンスカート部、27A1:第1ピストンスカート第1端部、27A2:第1ピストンスカート第2端部、27B:第2ピストンスカート部、27B1:第2ピストンスカート第1端部、27B2:第2ピストンスカート第2端部、28、28A、28B:外周面、29、29A1、29A2、29B1、29B2:凹部、29a:段差面、29b:対向面、31:一対のリブ部、31A:第1リブ部、31B:第2リブ部、46:コンロッド、47:クランク軸、CL:隙間、LO:エンジンオイル

Claims (6)

  1. エンジンのシリンダ部の内部に形成された円柱状のシリンダ孔に配置され、前記シリンダ孔をその軸線であるシリンダ軸線方向に往復移動可能に設けられるとともに、前記シリンダ部の内部に形成される燃焼室の一部を構成するピストンヘッド部と、
    (a)前記ピストンヘッド部に接続されて前記シリンダ軸線方向に往復移動可能に設けられ、かつ、前記シリンダ軸線方向に見たときの形状が前記シリンダ孔の内壁面に沿った円弧状である第1ピストンスカート部であって、前記第1ピストンスカート部の外周面と前記シリンダ孔の前記内壁面との間にエンジンオイルが進入可能な隙間が形成される前記第1ピストンスカート部、および、(b)前記ピストンヘッド部に接続されて前記シリンダ軸線方向に往復移動可能に設けられ、かつ、前記シリンダ軸線方向に見たときの形状が前記シリンダ孔の前記内壁面に沿った円弧状である第2ピストンスカート部であって、前記第2ピストンスカート部の外周面と前記シリンダ孔の前記内壁面との間にエンジンオイルが進入可能な隙間が形成される前記第2ピストンスカート部を含む一対のピストンスカート部と、
    前記ピストンヘッド部および前記一対のピストンスカート部の周方向の両端部に接続され、且つ、前記ピストンヘッド部および前記一対のピストンスカート部の前記シリンダ軸線方向の往復移動を前記エンジンが有するクランク軸の回転として伝達するコンロッドが、ピストンピンを介して揺動可能に接続された一対のリブ部と、
    を備えるエンジン用ピストンであって、
    前記第1ピストンスカート部または前記第2ピストンスカート部の少なくともいずれかは、
    前記第1ピストンスカート部または前記第2ピストンスカート部の少なくともいずれかの周方向の両端部において、前記シリンダ軸線に直交する前記シリンダ孔の径方向において前記シリンダ軸線に向かって凹むように設けられた凹部を有し、
    前記凹部を有する前記第1ピストンスカート部または前記第2ピストンスカート部の少なくともいずれかの外周面は、
    前記シリンダ孔の前記内壁面との間に進入したエンジンオイルにより、前記シリンダ孔の前記内壁面との間に油膜を形成する摺動面と、
    前記凹部を形成する2つの面であって、(i)前記摺動面に接続されて前記シリンダ孔の径方向および前記シリンダ軸線方向に沿って配置され、前記シリンダ孔の径方向において、前記摺動面と前記シリンダ孔の前記内壁面との間の油膜を切ることができる深さで形成される段差を構成する段差面、および、(ii)前記段差面に接続されて前記シリンダ孔の周方向および前記シリンダ軸線方向に沿って配置され、前記シリンダ孔の前記内壁面に対向する対向面と、を含むことを特徴とするエンジン用ピストン。
  2. 前記凹部は、
    前記第1ピストンスカート部の周方向の両端部、
    前記第2ピストンスカート部の周方向の両端部、または、
    前記第1ピストンスカート部の周方向の両端部および前記第2ピストンスカート部の周方向の両端部
    に設けられることを特徴とする請求項1に記載のエンジン用ピストン。
  3. 前記一対のリブ部が、
    前記第1ピストンスカート部の内周面の周方向の一方の端部である第1ピストンスカート第1端部に接続されると共に、前記第2ピストンスカート部の内周面の周方向の一方の端部である第2ピストンスカート第1端部に接続される第1リブ部と、
    前記第1ピストンスカート部の内周面の周方向の他方の端部である第1ピストンスカート第2端部に接続されると共に、前記第2ピストンスカート部の内周面の周方向の他方の端部である第2ピストンスカート第2端部に接続される第2リブ部と、を含み、
    前記凹部は、前記凹部を通る前記径方向に見たときに、前記第1ピストンスカート第1端部、前記第2ピストンスカート第1端部、前記第1ピストンスカート第2端部、または、前記第2ピストンスカート第2端部の少なくともいずれかに重なるように設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のエンジン用ピストン。
  4. 前記ピストンヘッド部、前記一対のピストンスカート部および前記一対のリブ部が鋳造または鍛造で成形され、かつ、前記凹部の前記段差面および前記対向面が除去加工されていない面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のエンジン用ピストン。
  5. 前記凹部の前記段差面および前記対向面が除去加工で成形されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のエンジン用ピストン。
  6. 前記クランク軸は、その中心軸が前記シリンダ軸線を通らない位置に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のエンジン用ピストン。
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