JPWO2020195009A1 - ホットスタンプ成形体 - Google Patents

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Abstract

このホットスタンプ成形体は、所定の化学組成を有し、旧オーステナイト粒の平均結晶粒径が10μm以下であり、体心構造を持つ結晶粒における平均結晶方位差が5°以上である粒界のうち、<011>方向を回転軸として回転角が57°〜63°となる粒界の長さと、回転角が49°〜56°となる粒界の長さと、回転角が4°〜12°となる粒界の長さと、回転角が64°〜72°となる粒界の長さとの合計の長さに対して、回転角が4°〜12°となる粒界の長さの割合が15%以上である。

Description

本発明は、強度が必要とされる自動車、構造物の構造部材および補強部材等に好適に使用されるホットスタンプ成形体に関する。
本願は、2019年3月25日に、日本に出願された特願2019−057145号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年、環境保護及び省資源化の観点から自動車車体の軽量化が求められている。そのため、自動車部材への高強度鋼板の適用が加速している。しかし、鋼板の高強度化に伴い成形性は劣化するので、高強度鋼板においては、複雑な形状の部材への成形性が課題となる。
このような課題を解決するため、鋼板をオーステナイト域の高温まで加熱した後にプレス成形を実施するホットスタンプの適用が進められている。ホットスタンプは、プレス加工と同時に、金型内において焼入れ処理を実施するので、鋼板のC量に応じた強度を得ることができ、自動車部材への成形と強度確保とを両立する技術として注目されている。
ホットスタンプ時のプレス焼入れにより製造された従来のホットスタンプ成形体は、板厚方向の全域が硬質組織(主にマルテンサイト)で形成されているために、変形能に乏しい。自動車部材においてさらに優れた耐衝突特性を得るためには、衝撃エネルギーの吸収能を高める必要があり、衝突時の変形モードを考慮すると、変形能の中でも特に曲げ性を高めることが必要である。
特許文献1では、Mn含有量またはCr、Mo、Cu、Niの少なくとも1種とMnとの合計の含有量を制御することにより、マルテンサイトの結晶粒径を微細化させて、高強度でありながら、耐衝突特性を高める技術が開示されている。
特許文献2では、合金元素の選択により、旧オーステナイト粒の平均結晶粒径を細粒化させて、耐衝突特性を高める技術が開示されている。
日本国特開2010−070806号公報 日本国特開2014−015638号公報
Acta Materialia、58(2010)、6393−6403
本発明は、従来技術の課題に鑑み、一般的なホットスタンプ成形体に所望される特性である高い硬度を有した上で、曲げ性に優れたホットスタンプ成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決する方法について鋭意検討した。
マルテンサイトを主体とするホットスタンプ成形体において曲げ性を向上させるためには、マルテンサイト中の転位の移動を促進させて、変形能を高めればよい。マルテンサイトは結晶粒が微細化されているため、粒界面積が大きく、粒内を移動した転位は粒界でせき止められるため、変形能が低くなることが特徴である。そこで、本発明者らは、粒界面積が大きくても、転位の移動を促進させるための方法について検討した。その結果、本発明者らは、マルテンサイトに含まれる4種類の粒界のうち、最も低角度である粒界の割合を増加させることにより、結晶粒間の転位の移動を容易にすることができ、ホットスタンプ成形体の曲げ性が向上することを見出した。具体的には、本発明者らは、マルテンサイト等の体心構造を持つ結晶粒における平均結晶方位差が5°以上である粒界のうち<011>方向を回転軸として回転角が57°〜63°となる粒界の長さと、回転角が49°〜56°となる粒界の長さと、回転角が4°〜12°となる粒界の長さと、回転角が64°〜72°となる粒界の長さとの合計の長さに対して、回転角が4°〜12°となる粒界の長さの割合を15%以上に制御することで、ホットスタンプ成形体の曲げ性が向上することを見出した。
そこで本発明者らは、<011>方向を回転軸として回転角が4°〜12°となる粒界の長さの割合を増加させる方法について検討した。その結果、本発明者らは、鋼板に3.0質量%以上のNiを含有させ、マルテンサイト変態前のオーステナイトの平均結晶粒径を10μm以下に制御にすることにより、マルテンサイト等の体心構造を持つ結晶粒における平均結晶方位差が5°以上である粒界のうち、<011>方向を回転軸として回転角が57°〜63°となる粒界の長さと、回転角が49°〜56°となる粒界の長さと、回転角が4°〜12°となる粒界の長さと、回転角が64°〜72°となる粒界の長さとの合計の長さに対して、回転角が4°〜12°となる粒界の長さの割合を15%以上に制御できることを見出した。
Niはオーステナイト中に固溶することにより、オーステナイトの変形能を向上させる効果を持つ。オーステナイトからマルテンサイトへと変態する際には、結晶構造の変化により、オーステナイトには変態に伴う応力が負荷されるため、この応力を緩和するために有利な結晶粒界が生成する。回転角が大きい粒界である程、応力緩和の効果が大きいため、通常は、<011>方向を回転軸として回転角が64°〜72°となる、最も高角度である粒界が優先的に生成する。本発明者らは、Niを含有させることによりオーステナイトの変形能を向上させることで、マルテンサイト変態に伴う応力の発生を緩和することができることを見出した。その結果、従来技術では生成が困難であった、<011>方向を回転軸として回転角が4°〜12°となる粒界を増加できることを見出した。また、詳細は後述するが、本発明者らは、ホットスタンプ用鋼板において亜粒界の生成割合を増加させ、且つホットスタンプ時の加熱工程において急速で加熱することにより、旧オーステナイト粒の平均結晶粒径を10μm以下に制御することができることを見出した。その結果、本発明者らは、オーステナイトの粒界面積が増加するため、結晶粒間の変形(ずれ)が容易になり、マルテンサイト変態に伴って発生する応力を緩和する効果を高めることができることを見出した。
本発明者らは、旧オーステナイト粒を細粒化する方法について検討した。鋼板にNiを3.0質量%以上含有させることにより、オーステナイト中の転位の移動が容易になるため、オーステナイト粒は粗大化し易くなる。そのため、Ni含有鋼において、微細な旧オーステナイト粒を得るためには、オーステナイトへの変態温度を高温化させることにより、変態の開始を遅延させることが有効である。オーステナイトへの変態温度を高温化させるためには、炭素濃度が低い粒界をオーステナイトの逆変態サイトとして活用することが有効である。
発明者らは、ホットスタンプ用鋼板において、炭素濃度が低い粒界を生成させて微細な旧オーステナイト粒を得る方法について検討した。その結果、本発明者らは、Niを含有させた鋼板を所定の条件で熱間圧延することによって、グラニュラーベイナイトと呼ばれる金属組織を生成させることが可能であること、並びに、このグラニュラーベイナイトには大傾角粒界と亜粒界とが含まれ、大傾角粒界には高濃度の炭素が濃化していることおよび亜粒界では炭素の偏析が抑制されることを見出した。
大傾角粒界と亜粒界とを含むグラニュラーベイナイトは、次の2つの段階を経て生成する金属組織である。第1段階では、オーステナイトからベイニティックフェライトへの変態が起こる。第2段階では、ベイニティックフェライト間の粒界が回復して亜粒界となり、グラニュラーベイナイトとなる。
第一段階として、熱間圧延工程において、800℃以上の温度で熱間圧延を終了し、500℃以上、770℃以下の温度域で巻取る。所望量のグラニュラーベイナイトを得るためには、変態前のオーステナイトの再結晶率、すなわち転位密度を制御することが重要である。オーステナイトの再結晶が促進され過ぎると、オーステナイト中の転位密度が減少してしまい、所望量のグラニュラーベイナイトを得ることができない。一方、再結晶が不十分であっても、オーステナイト中の転位密度が増加し過ぎて、グラニュラーベイナイトへの変態が起こらなくなる。本発明者らが鋭意検討した結果、本発明者らは、熱間圧延終了温度が800℃以上であれば、オーステナイトの再結晶が適度に促進され、結果として、グラニュラーベイナイトへの変態が起こりやすい転位密度に制御できることを見出した。次に、500℃以上、770℃以下の温度域で巻取ることにより、オーステナイトからベイニティックフェライトへと変態させる。
第二段階として、巻取り中の熱延鋼板の650℃から400℃までの温度域における平均冷却速度を50℃/s以下に制御する。650℃から400℃までの温度域で50℃/s以下の平均冷却速度で冷却することにより、ベイニティックフェライト間の粒界が回復して亜粒界が形成されることで、グラニュラーベイナイトを得ることができる。これにより、熱間圧延工程において、グラニュラーベイナイトを生成させることができる。一方、上記温度域における平均冷却速度が50℃/sを超えると、粒界が回復して亜粒界を形成できない。巻取り中の冷却において、初期のベイニティックフェライトは、平均結晶方位差が5°以上である粒界を持つが、Feが拡散可能な温度域で平均冷却速度が50℃/s以下の緩冷却を行うことにより、ベイニティックフェライトの粒界近傍において転位の回復が起こり、平均結晶方位差が0.4°以上、3.0°以下となる亜粒界が生成される。
転位の回復が起こる際、鋼中のCは、亜粒界よりも周囲の大傾角粒界へと拡散するため、亜粒界における炭素の偏析を低減させることが可能である。Niを3.0質量%以上含有させることにより、転位の移動度が上昇して転位の回復が促進されて、亜粒界の生成量が増加するため、平均結晶方位差が0.4°以上、3.0°以下の粒界の長さと平均結晶方位差が3.0°超の粒界の長さの合計に対して、平均結晶方位差が0.4°以上、3.0°以下の粒界の長さの割合が60%以上となり、ホットスタンプ加熱時にオーステナイトの逆変態サイトの数を増加させることができ、旧オーステナイト粒の細粒化に寄与する。
本発明は上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は以下の通りである。
[1]本発明の一態様に係るホットスタンプ成形体は、化学組成が、質量%で、
C:0.15%以上、0.70%未満、
Si:0.010%以上、0.50%未満、
Mn:0.010%以上、3.00%未満、
sol.Al:0.0002%以上、3.000%以下、
Ni:3.0%以上、15.0%未満、
P:0.100%以下、
S:0.1000%以下、
N:0.0100%以下、
Nb:0%以上、0.150%以下、
Ti:0%以上、0.150%以下、
Mo:0%以上、1.000%以下、
Cr:0%以上、1.000%以下、
B:0%以上、0.0100%以下、
V:0%以上、1.0000%以下、
Cu:0%以上、1.0000%以下、
Sn:0%以上、1.000%以下、
W:0%以上、1.000%以下、
Ca:0%以上、0.010%以下、および
REM:0%以上、0.300%以下を含有し、
残部がFe及び不純物からなり、
旧オーステナイト粒の平均結晶粒径が10μm以下であり、
体心構造を持つ結晶粒における平均結晶方位差が5°以上である粒界のうち、<011>方向を回転軸として回転角が57°〜63°となる粒界の長さと、回転角が49°〜56°となる粒界の長さと、回転角が4°〜12°となる粒界の長さと、回転角が64°〜72°となる粒界の長さとの合計の長さに対して、前記回転角が4°〜12°となる粒界の長さの割合が15%以上であることを特徴とする。
[2]上記[1]に記載のホットスタンプ成形体は、前記化学組成が、質量%で、
Nb:0.010%以上、0.150%以下、
Ti:0.010%以上、0.150%以下、
Mo:0.005%以上、1.000%以下、
Cr:0.005%以上、1.000%以下、
B:0.0005%以上、0.0100%以下、
V:0.0005%以上、1.0000%以下、
Cu:0.0010%以上、1.0000%以下、
Sn:0.001%以上、1.000%以下、
W:0.001%以上、1.000%以下、
Ca:0.001%以上、0.010%以下、および
REM:0.001%以上、0.300%以下
からなる群のうち1種又は2種以上を含有してもよい。
[3]上記[1]または[2]に記載のホットスタンプ成形体は、表面にめっき層を備えてもよい。
[4]上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載のホットスタンプ成形体は、一部に軟化領域を有してもよい。
本発明に係る上記態様によれば、高硬度であり、且つ曲げ性に優れたホットスタンプ成形体を提供することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は本実施形態に開示の構成のみに制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。以下に記載する数値限定範囲には、下限値および上限値がその範囲に含まれる。「超」、「未満」と示す数値には、その値が数値範囲に含まれない。化学組成についての%は全て質量%を示す。まず、本実施形態に係るホットスタンプ成形体の化学組成の限定理由について説明する。
本実施形態に係るホットスタンプ成形体は、化学組成が、質量%で、C:0.15%以上、0.70%未満、Si:0.010%以上、0.50%未満、Mn:0.010%以上、3.00%未満、sol.Al:0.0002%以上、3.000%以下、Ni:3.0%以上、15.0%未満、P:0.100%以下、S:0.1000%以下、N:0.0100%以下、並びに、残部:Fe及び不純物を含む。以下、各元素について詳細に説明する。
「C:0.15%以上、0.70%未満」
Cは、ホットスタンプ成形体において、自動車部材等に所望される硬度を得るために重要な元素である。C含有量が0.15%未満では、マルテンサイトが軟らかく、所望の硬度を得ることが困難である。そのため、C含有量は0.15%以上とする。C含有量は、好ましくは0.30%以上である。一方、C含有量が0.70%以上では、鋼中に粗大な炭化物が生成し、ホットスタンプ成形体の靭性が低下するので、C含有量は0.70%未満とする。C含有量は、好ましくは0.50%以下である。
「Si:0.010%以上、0.50%未満」
Siは、ホットスタンプ成形体の変形能を高めて靭性の向上に寄与する元素である。Si含有量が0.010%未満では変形能が乏しく、ホットスタンプ成形体の靭性が劣化する。そのため、Si含有量は0.010%以上とする。Si含有量を0.50%以上としても上記効果が飽和するため、Si含有量は0.50%未満とする。
「Mn:0.010%以上、3.00%未満」
Mnは、固溶強化によってホットスタンプ成形体の硬度の向上に寄与する元素である。Mn含有量が0.010%未満では固溶強化能が乏しく、マルテンサイトが軟らかくなり、自動車部材等に所望される硬度を得ることが困難となる。そのため、Mn含有量は0.010%以上とする。Mn含有量は、好ましくは0.70%以上である。一方、Mn含有量を3.00%以上とすると、マルテンサイトが脆くなりホットスタンプ成形体の靭性が損なわれるため、Mn含有量は3.00%未満とする。
「sol.Al:0.0002%以上、3.000%以下」
Alは、溶鋼を脱酸して鋼を健全化する(鋼にブローホールなどの欠陥が生じることを抑制する)作用を有する元素である。sol.Al含有量が0.0002%未満では、脱酸が十分でないので、sol.Al含有量は0.0002%以上とする。sol.Al含有量は、好ましくは0.001%以上である。一方、sol.Al含有量を3.000%超とすると、粗大な酸化物が生成してホットスタンプ成形体の靭性が損なわれるため、sol.Al含有量は3.000%以下とする。
なお、本実施形態においてsol.Alとは、酸可溶性Alを意味し、固溶状態で鋼中に存在する固溶Alのことを示す。
「Ni:3.0%以上、15.0%未満」
Niは、旧オーステナイト粒を細粒化する効果を持つ元素であるとともに、熱間圧延工程において所望量のグラニュラーベイナイトを得るために必要な元素でもある。Ni含有量が3.0%未満では上記効果が得られないので、Ni含有量は3.0%以上とする。低温での衝撃エネルギーの吸収能を更に高めるために、Ni含有量は、5.0%以上が好ましい。一方、Ni含有量が15.0%以上であると、マルテンサイトが脆くなりホットスタンプ成形体の靭性が損なわれるため、Ni含有量は15.0%未満とする。Ni含有量は、好ましくは12.0%未満である。
「P:0.100%以下」
Pは、粒界に偏析し、粒界の強度を低減する元素である。P含有量が0.100%を超えると、粒界の強度が著しく低下し、ホットスタンプ成形体の曲げ性が低下するので、P含有量は0.100%以下とする。P含有量は、好ましくは0.050%以下である。P含有量の下限は特に限定しないが、0.0001%未満に低減すると、脱Pコストが大幅に上昇し、経済的に好ましくないため、実用鋼板上、0.0001%が実質的な下限である。
「S:0.1000%以下」
Sは、鋼中に介在物を形成する元素である。S含有量が0.1000%を超えると、鋼中に介在物が生成してホットスタンプ成形体の曲げ性が低下するので、S含有量は0.1000%以下とする。S含有量は、好ましくは0.0050%以下である。S含有量の下限は特に限定しないが、0.0015%未満に低減すると、脱Sコストが大幅に上昇し、経済的に好ましくないため、実用鋼板上、0.0015%が実質的な下限である。
「N:0.0100%以下」
Nは、不純物元素であり、窒化物を形成してホットスタンプ成形体の曲げ性を低下させる元素である。N含有量が0.0100%を超えると、鋼中に粗大な窒化物が生成し、ホットスタンプ成形体の曲げ性が著しく低下するので、N含有量は0.0100%以下とする。N含有量は、好ましくは0.0075%以下である。N含有量の下限は特に限定しないが、0.0001%未満に低減すると、脱Nコストが大幅に上昇し、経済的に好ましくないため、実用鋼板上、0.0001%が実質的な下限である。
本実施形態に係るホットスタンプ成形体の化学組成の残部は、Fe及び不純物である。不純物としては、鋼原料もしくはスクラップからおよび/または製鋼過程で不可避的に混入し、本実施形態に係るホットスタンプ成形体の特性を阻害しない範囲で許容される元素が例示される。
本実施形態に係るホットスタンプ成形体は、任意元素として、以下の元素を含有してもよい。以下の任意元素を含有しない場合の含有量は0%である。
「Nb:0%以上、0.150%以下」
Nbは、固溶強化によってホットスタンプ成形体の硬度の向上に寄与する元素であるため、必要に応じて含有させても良い。Nbを含有させる場合、0.010%未満ではNb含有による十分な効果が得られないので、0.010%以上含有させることが好ましい。Nb含有量は、より好ましくは0.035%以上である。一方、Nb含有量を0.150%超としても上記効果は飽和するので、Nb含有量は0.150%以下とする。Nb含有量は、好ましくは0.120%以下である。
「Ti:0%以上、0.150%以下」
Tiは、固溶強化によりホットスタンプ成形体の硬度の向上に寄与する元素であるため、必要に応じて含有させても良い。Tiを含有させる場合、0.010%未満ではTi含有による十分な効果が得られないので、Ti含有量は0.010%以上とすることが好ましい。Ti含有量は、より好ましくは0.020%以上である。一方、Ti含有量を0.150%超としても上記効果は飽和するので、Ti含有量は0.150%以下とする。Ti含有量は、好ましくは0.120%以下である。
「Mo:0%以上、1.000%以下」
Moは、固溶強化によりホットスタンプ成形体の硬度の向上に寄与する元素であるため、必要に応じて含有させても良い。Moを含有させる場合、0.005%未満ではMo含有による十分な効果が得られないので、Mo含有量は0.005%以上とすることが好ましい。Mo含有量は、より好ましくは0.010%以上である。一方、Mo含有量を1.000%超としても上記効果は飽和するため、Mo含有量は1.000%以下とする。Mo含有量は、好ましくは0.800%以下である。
「Cr:0%以上、1.000%以下」
Crは、固溶強化によりホットスタンプ成形体の硬度の向上に寄与する元素であるため、必要に応じて含有させても良い。Crを含有させる場合、Cr含有量が0.005%未満ではCr含有による十分な効果が得られないので、Cr含有量は0.005%以上とすることが好ましい。Cr含有量は、より好ましくは0.010%以上である。一方、Cr含有量を1.000%超としても上記効果は飽和するため、Cr含有量は1.000%以下とする。Cr含有量は、好ましくは0.800%以下である。
「B:0%以上、0.0100%以下」
Bは、粒界に偏析して粒界の強度を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させても良い。Bを含有させる場合、B含有量が0.0005%未満ではB含有による十分な効果が得られないので、B含有量は0.0005%以上とすることが好ましい。B含有量は、より好ましくは0.0010%以上である。一方、B含有量を0.0100%超としても上記効果は飽和するため、B含有量は0.0100%以下とする。B含有量は、好ましくは0.0075%以下である。
「V:0%以上、1.0000%以下」
Vは、固溶強化によりホットスタンプ成形体の硬度の向上に寄与する元素であるため、必要に応じて含有させても良い。Vを含有させる場合、V含有量が0.0005%未満では、V含有による十分な効果が得られないので、V含有量は0.0005%以上とすることが好ましい。V含有量は、より好ましくは0.0100%以上である。一方、V含有量を1.0000%超としても上記効果は飽和するため、V含有量は1.0000%以下とする。V含有量は、好ましくは0.8000%以下である。
「Cu:0%以上、1.0000%以下」
Cuは、固溶強化によりホットスタンプ成形体の硬度の向上に寄与する元素であるため、必要に応じて含有させても良い。Cuを含有させる場合、Cu含有量が0.0010%未満ではCu含有による十分な効果が得られないので、Cu含有量は0.0010%以上とすることが好ましい。Cu含有量は、より好ましくは0.0100%以上である。一方、Cu含有量を1.0000%超としても上記効果は飽和するため、Cu含有量は1.0000%以下とする。Cu含有量は、好ましくは0.8000%以下である。
「Sn:0%以上、1.000%以下」
Snは、溶鋼を脱酸して鋼を健全化する作用を持つ元素であるため、1.000%を上限として含有させてもよい。上記効果を確実に発揮させるためには、Sn含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
「W:0%以上、1.000%以下」
Wは、溶鋼を脱酸して鋼を健全化する作用を持つ元素であるため、1.000%を上限として含有させてもよい。上記効果を確実に発揮させるためには、W含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
「Ca:0%以上、0.010%以下」
Caは、溶鋼を脱酸して鋼を健全化する作用を持つ元素であるため、0.010%を上限として含有させてもよい。上記効果を確実に発揮させるためには、Ca含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
「REM:0%以上、0.300%以下」
REMは、溶鋼を脱酸して鋼を健全化する作用を持つ元素であるため、0.300%を上限として含有させてもよい。上記効果を確実に発揮させるためには、REM含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
なお、本実施形態においてREMは、Sc、Yおよびランタノイドからなる合計17元素の総称であり、REMの含有量は上記元素の合計量を意味する。REMは、ミッシュメタルにより含有させる場合が多いが、LaおよびCeの他にランタノイド系列の元素を複合で含有させる場合がある。LaおよびCeの他にランタノイド系列の元素を複合で含有させる場合であっても、本実施形態に係るホットスタンプ成形体は、その効果を発揮することができる。また、金属LaやCeなどの金属REMを含有させても、本実施形態に係るホットスタンプ成形体は、その効果を発揮することができる。
上述したホットスタンプ成形体の化学組成は、一般的な分析方法によって測定すればよい。例えば、ICP−AES(Inductively Coupled Plasma−Atomic Emission Spectrometry)を用いて測定すればよい。なお、CおよびSは燃焼−赤外線吸収法を用い、Nは不活性ガス融解−熱伝導度法を用いて測定すればよい。sol.Alは、試料を酸で加熱分解した後の溶解液を用いてICP−AESによって測定すればよい。ホットスタンプ成形体が表面にめっき層を備える場合は、機械研削により表面のめっき層を除去してから、化学組成の分析を行えばよい。
次に、本実施形態に係るホットスタンプ成形体およびこれに適用されるホットスタンプ用鋼板の金属組織について説明する。まず、本実施形態に係るホットスタンプ成形体に適用されるホットスタンプ用鋼板の金属組織について説明する。
[ホットスタンプ用鋼板]
「平均結晶方位差が5°以上の結晶粒界で囲まれた結晶粒の内部に、平均結晶方位差が0.4°以上、3.0°以下である亜結晶粒(グラニュラーベイナイト)を面積率で10%以上含む」
ホットスタンプ用鋼板は、グラニュラーベイナイト(平均結晶方位差が5°以上の結晶粒界で囲まれた結晶粒の内部に存在する、平均結晶方位差が0.4°以上、3.0°以下である亜結晶粒)を面積率で10%以上含む必要がある。熱間圧延工程で生成したグラニュラーベイナイトは、(必要に応じて冷間圧延および)所定の熱処理工程を経てオーステナイトへと変態し、最終的に、ホットスタンプ成形体において所望の金属組織を得ることができる。本発明者らが鋭意研究した結果、グラニュラーベイナイトが面積率で10%未満であると、ホットスタンプ成形体において所望の金属組織が得られないことを知見した。そのため、本実施形態に係るホットスタンプ成形体に適用されるホットスタンプ用鋼板では、グラニュラーベイナイトの面積率を10%以上とする。好ましくは、面積率で15%以上、20%以上、25%以上、30%以上である。上限は特に限定されないが、グラニュラーベイナイトの面積率は95%未満としてもよい。
金属組織の残部は特に限定されないが、通常は、フェライト、上部ベイナイト、下部ベイナイト、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、残留オーステナイトの他、鉄系炭化物および合金炭化物の1種または2種以上である。本実施形態に係るホットスタンプ成形体に適用されるホットスタンプ用鋼板では、これらの金属組織が5%超、90%以下含まれていてもよい。
次に、グラニュラーベイナイトの面積率の測定方法について説明する。
ホットスタンプ用鋼板の端面から50mm以上離れた位置から、表面に垂直な断面(板厚断面)が観察できるようにサンプルを切り出す。サンプルは、測定装置にもよるが、圧延方向に10mm程度観察できる大きさとする。切り出したサンプルについて、板厚1/2位置を、0.2μmの測定間隔でEBSD解析して結晶方位情報を得る。ここで、EBSD解析は、サーマル電界放射型走査電子顕微鏡(JEOL製JSM−7001F)とEBSD検出器(TSL製DVC5型検出器)とで構成された装置を用いて、200〜300点/秒の解析速度で実施する。
グラニュラーベイナイトの面積率は、例えば、EBSD解析装置に付属のソフトウェア「OIM Analysis(登録商標)」に搭載された「Grain Average
Misorientation」機能を用いれば、簡便に算出することが可能である。この機能では、体心構造を持つ結晶粒について、隣接する測定点間の方位差を算出した後、結晶粒内の全ての測定点について平均値を求めることが可能である。得られた結晶方位情報に対して、平均結晶方位差が5°以上の粒界で囲まれた領域を結晶粒と定義し、「Grain Average Misorientation」機能により、結晶粒内の平均結晶方位差が0.4°以上、3.0°以下である領域(亜粒界)の面積率を算出することで、グラニュラーベイナイトの面積率を得ることができる。
「平均結晶方位差が0.4°以上、3.0°以下である粒界の長さおよび平均結晶方位差が3.0°超の粒界の長さの合計の長さに対する、前記平均結晶方位差が0.4°以上、3.0°以下の前記粒界の長さの割合が60%以上」
本実施形態に係るホットスタンプ成形体に適用されるホットスタンプ用鋼板では、平均結晶方位差が0.4°以上、3.0°以下である粒界の長さおよび平均結晶方位差が3.0°超の粒界の長さの合計の長さに対して、平均結晶方位差が0.4°以上、3.0°以下の粒界の長さの割合が60%以上である。平均結晶方位差が0.4°以上、3.0°以下である粒界の長さおよび平均結晶方位差が3.0°超の粒界の長さの合計の長さに対して、平均結晶方位差が0.4°以上、3.0°以下の粒界の長さの割合が60%未満であると、ホットスタンプ成形体において所望の金属組織が得られない。上記粒界の長さの割合は、好ましくは、70%以上、または80%以上である。上限は特に限定されないが、95%未満としてもよい。
次に、平均結晶方位差が0.4°以上、3.0°以下である粒界の長さおよび平均結晶方位差が3.0°超の粒界の長さの合計の長さに対する、平均結晶方位差が0.4°以上、3.0°以下の粒界の長さの割合の測定方法について説明する。
まず、ホットスタンプ用鋼板の端面から50mm以上離れた位置から、表面に垂直な断面(板厚断面)が観察できるようにサンプルを切り出す。サンプルは、測定装置にもよるが、圧延方向に10mm程度観察できる大きさとする。切り出したサンプルの断面を#600から#1500の炭化珪素ペーパーを使用して研磨した後、粒度1〜6μmのダイヤモンドパウダーをアルコール等の希釈液および純水に分散させた液体を使用して鏡面に仕上げる。次に、室温においてアルカリ性溶液を含まないコロイダルシリカを用いて8分間研磨し、サンプルの表層に導入されたひずみを除去する。サンプル断面の長手方向の任意の位置において、長さ50μm、鋼板の表面から深さ50μmまでの領域を、0.1μmの測定間隔で電子後方散乱回折法により測定して結晶方位情報を得る。測定には、サーマル電界放射型走査電子顕微鏡(JEOL製JSM−7001F)とEBSD検出器(TSL製DVC5型検出器)とで構成された装置を用いる。この際、装置内の真空度は9.6×10−5Pa以下、加速電圧は15kV、照射電流レベルは13、電子線の照射時間は0.01秒/点とする。得られた結晶方位情報をEBSD解析装置に付属のソフトウェア「OIM Analysis(登録商標)」に搭載された「Image Quality」機能を用いて、平均結晶方位差が0.4°以上、3.0°以下の粒界の長さと、平均結晶方位差が3.0°超の粒界の長さの合計の長さに対する、平均結晶方位差が0.4°以上、3.0°以下の粒界の長さの割合を算出する。この機能では、体心構造を持つ結晶粒の粒界について、任意の回転角を持つ粒界の合計の長さを算出することができる。測定領域に含まれる全ての結晶粒について、これらの粒界の合計の長さを算出し、平均結晶方位差が0.4°以上、3.0°以下の粒界の長さおよび平均結晶方位差が3.0°超の粒界の長さの合計の長さに対する、平均結晶方位差が0.4°以上、3.0°以下の粒界の長さの割合を算出する。
また、本実施形態に係るホットスタンプ成形体に適用するホットスタンプ用鋼板の板厚は特に限定しないが、車体軽量化等の観点から、0.5〜3.5mmとすることが好ましい。
次に、本実施形態に係るホットスタンプ成形体の金属組織について説明する。
「旧オーステナイト粒の平均結晶粒径:10μm以下」
マルテンサイト変態前のオーステナイトの平均結晶粒径を10μm以下とすると、マルテンサイト変態後において、マルテンサイト等の体心構造を持つ結晶粒における平均結晶方位差が5°以上である粒界のうち、<011>方向を回転軸として回転角が57°〜63°となる粒界の長さと、回転角が49°〜56°となる粒界の長さと、回転角が4°〜12°となる粒界の長さと、回転角が64°〜72°となる粒界の長さとの合計の長さに対して、回転角が4°〜12°となる粒界の長さの割合を15%以上に制御することができる。その結果、ホットスタンプ成形体の曲げ性を向上することができる。そのため、本実施形態に係るホットスタンプ成形体では、旧オーステナイト粒の平均結晶粒径を10μm以下とする。旧オーステナイト粒の平均結晶粒径は、好ましくは8μm以下である。下限は特に限定しないが、通常の実操業上で実現できる旧オーステナイト粒の平均結晶粒径は2μm以上であるため、旧オーステナイト粒の平均結晶粒径の下限は2μmとしてもよい。
「体心構造を持つ結晶粒における平均結晶方位差が5°以上である粒界のうち、<011>方向を回転軸として回転角が57°〜63°となる粒界の長さと、回転角が49°〜56°となる粒界の長さと、回転角が4°〜12°となる粒界の長さと、回転角が64°〜72°となる粒界の長さとの合計の長さに対して、回転角が4°〜12°となる粒界の長さの割合が15%以上」
体心構造を持つ結晶粒における平均結晶方位差が5°以上である粒界のうち、<011>方向を回転軸として回転角が57°〜63°となる粒界の長さと、回転角が49°〜56°となる粒界の長さと、回転角が4°〜12°となる粒界の長さと、回転角が64°〜72°となる粒界の長さとの合計の長さに対して、回転角が4°〜12°となる粒界の長さの割合が15%未満であると、ホットスタンプ成形体の曲げ性を向上することができない。そのため、本実施形態に係るホットスタンプ成形体では、体心構造を持つ結晶粒における平均結晶方位差が5°以上である粒界のうち、<011>方向を回転軸として回転角が57°〜63°となる粒界の長さと、回転角が49°〜56°となる粒界の長さと、回転角が4°〜12°となる粒界の長さと、回転角が64°〜72°となる粒界の長さとの合計の長さに対して、回転角が4°〜12°となる粒界の長さの割合を15%以上とする。回転角が4°〜12°となる粒界の長さの割合は、20%以上とすることが好ましい。回転角が4°〜12°となる粒界の長さの割合の上限は、粒界強化による強度確保の観点から50%としてもよい。
本実施形態に係るホットスタンプ成形体の金属組織は、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、上部ベイナイト、下部ベイナイトのように体心構造を持つ結晶粒が主体であればよい。体心構造とは、結晶構造が体心立方構造、体心正方構造等のものを総称した用語である。なお、結晶粒が「主体である」とは、金属組織においてその結晶粒が面積率で80%以上であることをいう。残部組織は、20%以下のパーライト、フェライトの1種または2種以上である。
次に、旧オーステナイト粒の平均結晶粒径の測定方法について説明する。ホットスタンプ成形体の端面から50mm以上離れた位置(この位置から採取できない場合は、端部を除いた任意の位置)から、表面に垂直な断面(板厚断面)が観察できるようにサンプルを切り出す。サンプルは、測定装置にもよるが、圧延方向に10mm程度観察できる大きさとする。切り出したサンプルについて、板厚1/2位置を、0.1μmの測定間隔でEBSD解析して結晶方位情報を得る。ここでEBSD解析は、サーマル電界放射型走査電子顕微鏡(JEOL製JSM−7001F)とEBSD検出器(TSL製DVC5型検出器)とで構成された装置を用い、200〜300点/秒の解析速度で実施する。得られた結晶方位情報を用いて、一般的な旧オーステナイト粒と変態後の体心構造を持つ結晶粒との結晶方位関係から、旧オーステナイト粒の結晶方位を計算し、旧オーステナイト粒の平均結晶粒径を算出すればよい。旧オーステナイト粒の結晶方位を計算する方法は特に限定しないが、例えば、非特許文献1に記載の方法で旧オーステナイト粒の結晶方位マップを作成し、作成した結晶方位マップから、切片法により旧オーステナイト粒の平均結晶粒径を算出すればよい。
体心構造を持つ結晶粒における平均結晶方位差が5°以上である粒界のうち、<011>方向を回転軸として回転角が57°〜63°となる粒界の長さと、回転角が49°〜56°となる粒界の長さと、回転角が4°〜12°となる粒界の長さと、回転角が64°〜72°となる粒界の長さとの合計の長さに対して、回転角が4°〜12°となる粒界の長さの割合は以下の方法により得る。
ホットスタンプ成形体の端面から50mm以上離れた位置(この位置から採取できない場合は、端部を除いた任意の位置)から、表面に垂直な断面(板厚断面)が観察できるようにサンプルを切り出す。サンプルは、測定装置にもよるが、圧延方向に10mm程度観察できる長さとする。切り出したサンプルについて、板厚1/2位置を、0.1μmの測定間隔でEBSD解析して結晶方位情報を得る。ここでEBSD解析は、サーマル電界放射型走査電子顕微鏡(JEOL製JSM−7001F)とEBSD検出器(TSL製DVC5型検出器)とで構成された装置を用い、200〜300点/秒の解析速度で実施する。
次に、得られた結晶方位情報に対して、体心構造を持つ結晶粒における平均結晶方位差が5°以上である粒界のうち、<011>方向を回転軸として回転角が57°〜63°となる粒界の長さと、回転角が49°〜56°となる粒界の長さと、回転角が4°〜12°となる粒界の長さと、回転角が64°〜72°となる粒界の長さを算出し、それぞれの粒界の長さを合計した値に対して、回転角が4°〜12°となる粒界の長さの割合を算出する。これにより、体心構造を持つ結晶粒における平均結晶方位差が5°以上である粒界のうち、<011>方向を回転軸として回転角が57°〜63°となる粒界の長さと、回転角が49°〜56°となる粒界の長さと、回転角が4°〜12°となる粒界の長さと、回転角が64°〜72°となる粒界の長さの合計に対して、回転角が4°〜12°となる粒界の長さの割合を得る。
上記の結晶粒界の長さは、例えば、EBSD解析装置に付属のソフトウェア「OIM Analysis(登録商標)」に搭載された「Inverse Pole Figure Map」および「Axis Angle」機能を用いれば、簡便に算出することが可能である。これらの機能では、体心構造を持つ結晶粒の粒界について、任意の方向を回転軸として、特定の回転角を指定することにより、当該粒界の合計の長さを算出することができる。測定領域に含まれる全ての結晶粒について上記解析を実施し、<011>方向を回転軸として、前述の4種類の粒界の長さを算出すればよい。
「めっき層」
本実施形態では、ホットスタンプ成形体の表面に、耐食性の向上等を目的として、めっき層が形成されていてもよい。めっき層は、電気めっき層及び溶融めっき層のいずれでもよい。電気めっき層は、例えば、電気亜鉛めっき層、電気Zn−Ni合金めっき層等を含む。溶融めっき層は、例えば、溶融亜鉛めっき層、合金化溶融亜鉛めっき層、溶融アルミニウムめっき層、溶融Zn−Al合金めっき層、溶融Zn−Al−Mg合金めっき層、溶融Zn−Al−Mg−Si合金めっき層等を含む。めっき層の付着量は、特に制限されず一般的な付着量でよい。
「軟化領域」
本実施形態に係るホットスタンプ成形体は、一部に軟化領域が形成されていてもよい。軟化領域では溶接性が向上する。例えば、ホットスタンプ成形体の端部を軟化した後にスポット溶接を行えば、軟化した端部とその端部のうちのスポット溶接部との強度差を小さくすることができるため、両者の界面からの破壊を抑制することができる。また、例えば、自動車の高強度部材にホットスタンプ成形体を適用する場合、高強度部材の一部に軟化領域を設けることで、衝突時における当該高強度部材の破壊、変形モードを制御することができる。軟化領域を形成させるためには、例えば、ホットスタンプ用鋼板をホットスタンプ成形体に成形した後に、レーザー照射により、ホットスタンプ成形体の一部の強度を低下させればよい。なお、レーザー照射は軟化手段である熱処理の一例であり、軟化手段は特に限定されない。他の手段として、例えば、ホットスタンプ成形体の一部を焼き戻すことにより、軟化領域を形成してもよい。
次に、本実施形態に係るホットスタンプ成形体を得るための好適な製造方法について説明する。
本実施形態に係るホットスタンプ成形体に適用するホットスタンプ用鋼板の製造方法では、上述の化学組成を有する鋼片を熱間圧延に供し、800℃以上の温度で熱間圧延を終了し、500℃以上、770℃以下の温度で巻取り、巻取り中の熱延鋼板の650℃から400℃までの温度域における平均冷却速度を50℃/s以下とすることが好ましい。
熱間圧延に供する鋼片(鋼材)は、常法で製造した鋼片であればよく、例えば、連続鋳造スラブ、薄スラブキャスターなどの一般的な方法で製造した鋼片であればよい。
「熱間圧延終了温度を800℃以上とする」
所望の量のグラニュラーベイナイトを得るためには、変態前のオーステナイトの再結晶率、すなわち転位密度を制御することが効果的である。オーステナイトの再結晶が促進され過ぎると、オーステナイト中の転位密度が減少してしまい、所望量のグラニュラーベイナイトを得ることができない。一方、再結晶が不十分であっても、オーステナイト中の転位密度が増加し過ぎて、グラニュラーベイナイトへの変態が起こらなくなる。本発明者らが鋭意検討した結果、本発明者らは、熱間圧延終了温度が800℃以上であれば、オーステナイトの再結晶が適度に進み、結果として、グラニュラーベイナイトへの変態が起こりやすい転位密度に制御できることを見出した。熱間圧延終了温度が800℃未満では、オーステナイトの再結晶が起こらず、所望量のグラニュラーベイナイトを得ることができない場合がある。そのため、熱間圧延終了温度は800℃以上とすることが好ましい。好ましくは820℃以上である。また、本実施形態で規定する化学組成を有する鋼では、再結晶が過促進されることは考え難いため、熱間圧延終了温度の上限は特に規定しないが、通常は1050℃である。
「500℃以上、770℃以下の温度で巻取り、巻取り中の熱延鋼板の650℃から400℃までの温度域における平均冷却速度を50℃/s以下とする」
巻取りは500℃以上、770℃以下で開始し、巻取り中の熱延鋼板の650℃から400℃までの温度域における平均冷却速度を50℃/s以下に制御することが好ましい。770℃超の温度で巻取りを開始すると、オーステナイトからベイニティックフェライトへの変態が起こらない場合があるため、巻取り温度は770℃以下とすることが好ましい。巻取り温度が500℃ではグラニュラーベイナイトの生成が起こらない場合がある。そのため、巻取り温度は500℃以上とすることが好ましい。
巻取り中の熱延鋼板の650℃から400℃までの温度域を50℃/s以下の平均冷却速度で冷却することが好ましい。650℃から400℃までの温度域で上述した平均冷却速度で冷却することにより、Ni含有の効果によりベイニティックフェライト間の粒界が回復して亜粒界が形成され、所望量のグラニュラーベイナイトを得ることができる。すなわち、熱間圧延工程において、所望量のグラニュラーベイナイトを生成させることができる。一方、上記温度範囲における平均冷却速度が50℃/sを超えると、ベイニティックフェライト間の粒界が回復して亜粒界を形成できない場合がある。そのため、上記温度範囲における平均冷却速度は50℃/s以下とすることが好ましい。亜粒界の形成を促進させるためには冷却速度は遅い程好ましいため、上記温度範囲における平均冷却速度は30℃/s以下、20℃/s以下とすることが好ましい。上記温度範囲における平均冷却速度の下限は特に限定しないが、通常の実操業上、下限は0.1℃/sである。なお、巻取り中の平均冷却速度は、高温測定用赤外線放射温度計を用いて、巻取り中の熱延コイルの長手方向の中央部の温度を測定して算出する。
熱間圧延工程で巻取った熱延鋼板を巻戻して酸洗し、更に冷間圧延を施してもよい。酸洗で熱延鋼板表面の酸化物を除去して冷間圧延に供することで、引張強度の向上、化成処理性の向上、めっき性の向上等を図ることができる。なお、酸洗は、一回でもよいし、複数回に分けて行ってもよい。冷間圧延は、通常の累積圧下率、例えば、累積圧下率30〜90%で行う冷間圧延とすればよいが、この累積圧下率に限定されない。熱延鋼板及び冷延鋼板には、熱間圧延及び冷間圧延されたままのもの以外にも、熱延鋼板又は冷延鋼板に通常の条件で再結晶焼鈍を施した鋼板や、通常の条件で調質圧延を施した鋼板も含まれる。
表面にめっきを付与する場合、めっきの条件は特に限定されず、通常の条件でよい。熱延鋼板、冷延鋼板、又は冷延鋼板に再結晶焼鈍及び/又は調質圧延を施した鋼板に、必要に応じ、通常のめっき条件でめっきを施すとよい。例えば、めっきとしては、電気めっき及び溶融めっきが挙げられ、電気めっきとしては、電気亜鉛めっき、電気Zn−Ni合金めっき、溶融めっきとしては、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、溶融アルミニウムめっき、溶融Zn−Al合金めっき、溶融Zn−Al−Mg合金めっき、溶融Zn−Al−Mg−Si合金めっき等が挙げられる。
以上の製造方法により、本実施形態に係るホットスタンプ成形体に適用するホットスタンプ用鋼板を得る。
「100℃/s以上、200℃/s未満の平均加熱速度で800℃以上の保持温度まで加熱した後、保持し、加熱開始から成形までの経過時間が240秒以下になるようにホットスタンプを施し、400℃以下の温度域まで冷却する」
本実施形態に係るホットスタンプ成形体の製造方法では、上述したホットスタンプ用鋼板を、平均加熱速度100℃/s以上、200℃/s未満で800℃以上の温度まで加熱した後、保持し、加熱開始から成形までの経過時間が240秒以下になるようにホットスタンプを施した後、400℃以下の温度域まで冷却することが好ましい。保持温度を800℃以上とすることで、熱間圧延工程で生成したグラニュラーベイナイトからオーステナイトへの変態を十分に促進でき、マルテンサイトの結晶粒界を好ましい形態に制御することができる。そのため、保持温度は800℃以上にすることが好ましい。
保持時間は、加熱開始から成形開始までの経過時間が所定の範囲内になるように設定すればよい。ホットスタンプ後のホットスタンプ成形体は400℃以下の温度域まで金型にて冷却することが好ましい。400℃以下の温度域で冷却を停止させると、マルテンサイトの結晶粒界を好ましい形態に制御することができる。800℃以上までの平均加熱速度が100℃/s以上、200℃/s未満、および加熱開始から成形までの経過時間を240秒以下とすることで、旧オーステナイト粒の平均結晶粒径を10μm以下とすることができ、結果として、体心構造を持つ結晶粒における平均結晶方位差が5°以上である粒界のうち、<011>方向を回転軸として回転角が57°〜63°となる粒界の長さと、回転角が49°〜56°となる粒界の長さと、回転角が4°〜12°となる粒界の長さと、回転角が64°〜72°となる粒界の長さとの合計の長さに対して、回転角が4°〜12°となる粒界の長さの割合を15%以上とすることができる。そのため、800℃以上までの平均加熱速度を100℃/s以上、200℃/s未満とし、加熱開始から成形までの経過時間を240秒以下とすることが好ましい。
「150℃以上、650℃以下で焼き戻す」
強度の調整並びに延性脆性遷移温度および低温靭性の向上を目的として、室温まで冷却したホットスタンプ成形体に150℃〜650℃の範囲で焼戻し処理を施してもよい。この場合、例えば、ホットスタンプ成形体の一部のみを焼き戻してもよい。これにより、ホットスタンプ成形体の一部に軟化領域を形成することができ、ホットスタンプ成形体の部位に応じた強度や靭性等の特性を制御することができる。例えば、ホットスタンプ成形体を自動車の高強度部材に適用する場合、高強度部材の一部のみを焼き戻して軟化することにより、衝突時における当該高強度部材の破壊、変形モードを制御することができる。
次に、本発明の実施例について説明する。なお、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
表1〜3に示す化学組成の溶鋼を鋳造して製造した鋼片に、表4〜6に示す条件で熱間圧延し、また必要に応じて、冷間圧延および/またはめっきを施し、表4〜6に示すホットスタンプ用鋼板を得た。また、該ホットスタンプ用鋼板を表7〜9に示す条件で熱処理を施してホットスタンプを行い、また必要に応じて表9に記載の温度に加熱して焼戻す、またはホットスタンプ成形体の一部分をレーザー照射して焼戻すことで軟化領域を形成し、表7〜9に示すホットスタンプ成形体を得た。なお、表6および表9中の「Al」は溶融アルミニウムめっきを示し、「GA」は合金化溶融亜鉛めっきを示し、「電気亜鉛」は電気亜鉛めっきを示す。熱間圧延における巻取り中の冷却速度は、高温測定用赤外線放射温度計を用いて巻取り中の熱延コイルの長手方向の中央部の温度を測定して算出した。
Figure 2020195009
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ホットスタンプ用鋼板について、グラニュラーベイナイト(平均結晶方位差が5°以上の結晶粒界で囲まれた結晶粒の内部の、平均結晶方位差が0.4°以上、3.0°以下である亜結晶粒)の面積率および平均結晶方位差が0.4°以上、3.0°以下である粒界の長さおよび平均結晶方位差が3.0°超である粒界の長さの合計の長さに対する、平均結晶方位差が0.4°以上、3.0°以下である粒界の長さの割合は、上述の方法により得た。
ホットスタンプ成形体について、旧オーステナイト粒の平均結晶粒径および体心構造を持つ結晶粒における平均結晶方位差が5°以上である粒界のうち、<011>方向を回転軸として回転角が57°〜63°となる粒界の長さと、回転角が49°〜56°となる粒界の長さと、回転角が4°〜12°となる粒界の長さと、回転角が64°〜72°となる粒界の長さとの合計の長さに対する、回転角が4°〜12°となる粒界の長さの割合は、上述の方法により得た。
「ビッカース硬さ」
ホットスタンプ成形体のビッカース硬さは、以下の方法により得た。まず、ホットスタンプ成形体の端面から50mm以上離れた任意の位置から表面に垂直な断面(板厚断面)が観察できるようにサンプルを切り出した。サンプルは、測定装置にもよるが、圧延方向に10mm観察できる大きさとした。サンプルの断面を#600から#1500の炭化珪素ペーパーを使用して研磨した後、粒度1〜6μmのダイヤモンドパウダーをアルコール等の希釈液および純水に分散させた液体を使用して鏡面に仕上げた。鏡面に仕上げた断面に対し、板厚1/4位置においてマイクロビッカース硬さ試験機を用いて、板面と平行な方向(圧延方向)に、荷重1kgfで、圧痕の3倍以上の間隔で硬さを測定した。合計で20点測定し、その平均値を当該ホットスタンプ成形体のビッカース硬さとした。ビッカース硬さが450Hv以上である場合を硬度に優れるとして合格と判定し、450Hv未満である場合を硬度に劣るとして不合格と判定した。
「曲げ性」
ホットスタンプ成形体の曲げ性は、ドイツ自動車工業会で規定されたVDA基準(VDA238−100)に基づいて、以下の方法により評価した。本実施例では、曲げ試験で得られる最大荷重時の変位をVDA基準で角度に変換し、最大曲げ角度(°)を求めた。
試験片寸法:60mm(圧延方向)×60mm(板幅方向に平行な方向)、又は、30mm(圧延方向)×60mm(板幅方向に平行な方向)
試験片板厚:1.0mm(表裏面を同量ずつ研削)
曲げ稜線:板幅方向に平行な方向
試験方法:ロール支持、ポンチ押し込み
ロール径:φ30mm
ポンチ形状:先端R=0.4mm
ロール間距離:2.0×板厚(mm)+0.5mm
押し込み速度:20mm/min
試験機:SHIMADZU AUTOGRAPH 20kN
上述の方法により得られたビッカース硬さと最大曲げ角度との積が25000Hv・°以上である場合を、曲げ性に優れるとして合格と判定し、25000Hv・°未満である場合を曲げ性に劣るとして不合格と判定した。
表7〜9にホットスタンプ成形体の金属組織および機械特性を示す。なお、表7〜9を見ると、化学組成および金属組織が本発明の範囲内であるホットスタンプ成形体は、高硬度であり、且つ曲げ性に優れることが分かる。
一方、化学組成および金属組織のうちいずれか1つ以上が本発明を外れるホットスタンプ成形体は、ビッカース硬さおよび曲げ性の1つ以上が劣ることが分かる。
本発明に係る上記態様によれば、高硬度であり、且つ曲げ性に優れたホットスタンプ成形体を提供することができる。

Claims (4)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C:0.15%以上、0.70%未満、
    Si:0.010%以上、0.50%未満、
    Mn:0.010%以上、3.00%未満、
    sol.Al:0.0002%以上、3.000%以下、
    Ni:3.0%以上、15.0%未満、
    P:0.100%以下、
    S:0.1000%以下、
    N:0.0100%以下、
    Nb:0%以上、0.150%以下、
    Ti:0%以上、0.150%以下、
    Mo:0%以上、1.000%以下、
    Cr:0%以上、1.000%以下、
    B:0%以上、0.0100%以下、
    V:0%以上、1.0000%以下、
    Cu:0%以上、1.0000%以下、
    Sn:0%以上、1.000%以下、
    W:0%以上、1.000%以下、
    Ca:0%以上、0.010%以下、および
    REM:0%以上、0.300%以下を含有し、
    残部がFe及び不純物からなり、
    旧オーステナイト粒の平均結晶粒径が10μm以下であり、
    体心構造を持つ結晶粒における平均結晶方位差が5°以上である粒界のうち、<011>方向を回転軸として回転角が57°〜63°となる粒界の長さと、回転角が49°〜56°となる粒界の長さと、回転角が4°〜12°となる粒界の長さと、回転角が64°〜72°となる粒界の長さとの合計の長さに対して、前記回転角が4°〜12°となる粒界の長さの割合が15%以上であることを特徴とするホットスタンプ成形体。
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    Nb:0.010%以上、0.150%以下、
    Ti:0.010%以上、0.150%以下、
    Mo:0.005%以上、1.000%以下、
    Cr:0.005%以上、1.000%以下、
    B:0.0005%以上、0.0100%以下、
    V:0.0005%以上、1.0000%以下、
    Cu:0.0010%以上、1.0000%以下、
    Sn:0.001%以上、1.000%以下、
    W:0.001%以上、1.000%以下、
    Ca:0.001%以上、0.010%以下、および
    REM:0.001%以上、0.300%以下
    からなる群のうち1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載のホットスタンプ成形体。
  3. 表面にめっき層を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のホットスタンプ成形体。
  4. 一部に軟化領域を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のホットスタンプ成形体。
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