JPWO2020129956A1 - 熱中症予防装置、熱中症予防システム、熱中症予防方法およびプログラム - Google Patents

熱中症予防装置、熱中症予防システム、熱中症予防方法およびプログラム Download PDF

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Abstract

熱中症予防装置は、生体における耳介の温度である耳介温度を計測する耳介温度センサと、耳介温度に基づき、生体の熱中症発症の可能性を判断する制御装置と、制御装置の判断結果に基づき、熱中症発症の可能性があることを報知する報知手段とを備え、制御装置は、計測された耳介温度と、予め設定された耳介温度に対する閾値とを比較し、比較結果に基づき、熱中症発症の可能性があるか否かを判断する比較部と、判断の結果の基づき、報知手段の動作を制御する動作制御部とを有する。

Description

本発明は、生体の状態を予測し、熱中症を予防する熱中症予防装置、熱中症予防システム、熱中症予防方法およびプログラムに関する。
従来、生体における熱中症を予防するための熱中症予防システムおよび装置が提案されている。例えば、特許文献1には、熱中症に関係の深い脳温に近似することが知られている耳穴温度を計測し、計測結果に基づいて熱中症を発症する可能性を判断する熱中症予防システムが開示されている。このシステムでは、耳栓状に形成された温度センサを生体に装着することにより、耳穴温度を測定している。
特開2012−179213号公報
ところで、熱中症は主に、運動中あるいは作業中に発症することが多い。そのため、熱中症を予防するためには、運動中あるいは作業中の耳穴温度を計測する必要がある。しかしながら、特許文献1に記載のシステムでは、耳栓状に形成された温度センサを装着するため、運動中あるいは作業中における耳穴温度の計測が、生体にとって非常に煩わしいという課題があった。
本発明は、上記従来の技術における課題に鑑みてなされたものであって、生体が意識することなく、簡単かつ確実に熱中症を予防することができる熱中症予防装置、熱中症予防システム、熱中症予防方法およびプログラムを提供することを目的とする。
本発明に係る熱中症予防装置は、生体における耳介の温度である耳介温度を計測する耳介温度センサと、前記耳介温度に基づき、前記生体の熱中症発症の可能性を判断する制御装置と、前記制御装置の判断結果に基づき、前記熱中症発症の可能性があることを報知する報知手段とを備え、前記制御装置は、計測された前記耳介温度と、予め設定された前記耳介温度に対する熱中症に関する閾値とを比較し、比較結果に基づき、前記熱中症発症の可能性があるか否かを判断する比較部と、前記判断の結果に基づき、前記報知手段の動作を制御する動作制御部とを有するものである。
本発明に係る熱中症予防装置は、生体における耳介の温度である耳介温度を計測する耳介温度センサと、前記耳介温度に基づき、前記生体の熱中症発症の可能性を判断する制御装置と、前記制御装置の判断結果をサーバに送信する通信手段とを備え、前記制御装置は、計測された前記耳介温度と、予め設定された前記耳介温度に対する熱中症に関する閾値とを比較し、比較結果に基づき、前記熱中症発症の可能性があるか否かを判断する比較部を有するものである。
また、本発明に係る熱中症予防システムは、装着型端末と、前記装着型端末と通信を行うサーバと、前記サーバと通信を行う管理装置とを備えた熱中症予防システムであって、前記装着型端末は、生体における耳介の温度である耳介温度を計測する耳介温度センサと、前記生体の熱中症発症の可能性があることを報知する報知手段とを有し、前記サーバは、前記装着型端末で計測された前記耳介温度と、予め設定された前記耳介温度に対する閾値とを比較し、比較結果に基づき、前記熱中症発症の可能性があるか否かを判断する演算装置を有し、前記管理装置は、前記サーバによる判断結果を記憶する記憶部と、前記判断結果を表示する表示手段とを有するものである。
本発明に係る熱中症予防システムは、装着型端末と通信を行うサーバと、前記サーバと通信を行う管理装置とを備えた熱中症予防システムであって、前記サーバは、前記装着型端末で計測された生体における耳介の温度である耳介温度と、予め設定された前記耳介温度に対する閾値とを比較し、比較結果に基づき、前記熱中症発症の可能性があるか否かを判断する演算装置を有し、前記管理装置は、前記サーバによる判断結果を記憶する記憶部と、前記判断結果を表示する表示手段とを有するものである。
また、本発明に係る熱中症予防方法は、生体における耳介の温度である耳介温度を計測する工程と、計測された前記耳介温度と、予め設定された前記耳介温度に対する熱中症に関する閾値とを比較する工程と、前記比較の結果に基づき、報知手段の動作を制御する工程とを有するものである。
また、本発明に係るプログラムは、生体における耳介の温度である耳介温度を計測する耳介温度センサと、熱中症発症の可能性があることを報知する報知手段とを備えた装着型端末のコンピュータを、計測された前記耳介温度と、予め設定された前記耳介温度に対する熱中症に関する閾値とを比較し、比較結果に基づき、前記熱中症発症の可能性があるか否かを判断する比較部、前記判断の結果に基づき、前記報知手段の動作を制御する動作制御部として機能させるものである。
以上のように、本発明によれば、計測された耳介温度に基づき、生体に熱中症が発症する可能性が判断される。これにより、生体が意識することなく、簡単かつ確実に熱中症を予防することができる。
実施の形態1に係る熱中症予防装置の構成の一例を示すブロック図である。 図1の制御装置の構成の一例を示す機能ブロック図である。 図2の制御装置の構成の一例を示すハードウェア構成図である。 図2の制御装置の構成の他の例を示すハードウェア構成図である。 安静時から運動終了時までの耳穴温度と耳介温度との相関関係の一例を示すグラフである。 図5の安静時における耳穴温度と耳介温度との相関関係の一例を示すグラフである。 図5のウォーミングアップ時における耳穴温度と耳介温度との相関関係の一例を示すグラフである。 図5の60%運動負荷時における耳穴温度と耳介温度との相関関係の第1の例を示すグラフである。 図8と異なる生体の60%運動負荷時における耳穴温度と耳介温度との相関関係の第2の例を示すグラフである。 図8および図9とさらに異なる生体の60%運動負荷時における耳穴温度と耳介温度との相関関係の第3の例を示すグラフである。 図8〜図10とさらに異なる生体の60%高運動負荷時における耳穴温度と耳介温度との相関関係の第4の例を示すグラフである。 生体の他の部位における温度の時間変化の一例を示すグラフである。 実施の形態1に係る熱中症予防装置を環境温度上昇下で使用した場合の、各センサで得られる計測結果の挙動を推定したグラフである。 実施の形態2に係る熱中症予防装置の構成の一例を示すブロック図である。 図14の制御装置の構成の一例を示す機能ブロック図である。 耳介を冷却した場合の耳介温度と耳穴温度との関係について説明するためのグラフである。 実施の形態3に係る熱中症予防システムの構成の一例を示すブロック図である。
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1に係る熱中症予防装置について説明する。熱中症予防装置は、生体に装着されるものであり、温湿度センサによる検出結果に基づき、生体の状態を予測する。特に、本実施の形態1において、熱中症予防装置は、生体の耳介温度に基づき、熱中症を発症する可能性を予測する。
[熱中症予防装置1の構成]
図1は、本実施の形態1に係る熱中症予防装置1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、熱中症予防装置1は、制御装置10および耳介温湿度センサ11を備えている。また、熱中症予防装置1は、任意の構成として、環境温湿度センサ12、加速度センサ13および報知手段14を備えている。
耳介温湿度センサ11は、生体における耳介の温度および湿度を計測する。本実施の形態1において、耳介温湿度センサ11は、耳介のうちの耳垂(耳たぶ)における温度を耳介温度として計測する。なお、計測箇所は、これに限られず、耳介であればどこでもよい。ただし、耳殻および耳垂などの、クリップ等の簡易な構成でセンサを容易に装着でき、かつ、汗腺を有さない部位が好ましい。
耳介温湿度センサ11は、耳介に装着できる構成であればどのような構成で取り付けてもよい。耳介温湿度センサ11の取り付ける好適な形状の一例として、耳垂を挟むクリップ形状、あるいは、耳殻の外縁に沿って耳介全体を覆うカバー形状が挙げられる。この場合、クリップおよびカバーは、軽量で、かつ、耳介温湿度センサ11の周囲が外気温の影響を受けにくい素材および形状で形成されると、測定精度の向上が期待でき、好ましい。軽量で、外気温の影響を受けにくい素材の一例として、発泡シリコンが挙げられる。また、熱中症予防装置1は、どのように生体に取り付けられてもよいが、例えば、帽子、ヘルメット、ヘッドバンドまたは眼鏡等に装着されてもよい。
環境温湿度センサ12は、外気の温度および湿度を計測する。本実施の形態1において、熱中症予防装置1に環境温湿度センサ12が設けられた場合、環境温湿度センサ12は、使用者の環境中の温度を環境温度として計測する。この場合、熱中症予防装置1は、環境温湿度センサ12で計測された環境温度と、耳介温湿度センサ11で計測された耳介温度とを、後述する熱中症の発症の判定に用いてもよい。
また、熱中症予防装置1は、耳介温湿度センサ11による耳介温度と、環境温湿度センサ12による環境温度とが同一の値で推移しているとき、使用者が熱中症予防装置1を外していると推定することができる。このような場合、熱中症予防装置1は、後述する熱中症予防システムにより、使用者に対して熱中症予防装置1の装着を促すことができる。
加速度センサ13は、例えば、X方向、Y方向およびZ方向のように互いに垂直となる3つの軸方向それぞれの生体の加速度を計測する。本実施の形態1において、熱中症予防装置1に加速度センサ13が設けられた場合、加速度センサ13は、使用者の状態を推定するために用いられる。具体的には、熱中症予防装置1は、加速度センサ13で計測された加速度に基づき、使用者が動いているのか、あるいは、倒れたのかを推定することができる。なお、加速度センサ13で計測される3つの軸方向の合力は、使用者が何らかの動きをしていると推測できる指標であるので、以下では、活動量と定義する。
また、熱中症予防装置1は、加速度センサ13で計測された加速度が完全に安定しているとき、使用者が熱中症予防装置1を外していると推定することができる。このような場合、熱中症予防装置1は、後述する熱中症予防システムにより、使用者に対して熱中症予防装置1の装着を促すことができる。
制御装置10は、耳介温湿度センサ11、環境温湿度センサ12および加速度センサ13で計測された各種センサ情報を、予め設定されたタイミングで取得し、取得したセンサ情報に基づき、熱中症を発症する可能性を判断する。そして、制御装置10は、判断結果に基づき、報知手段14を制御する。
図2は、図1の制御装置10の構成の一例を示す機能ブロック図である。図2に示すように、制御装置10は、情報取得部15、比較部16、動作制御部17および記憶部18を備えている。制御装置10は、マイクロコンピュータなどの演算装置上でソフトウェアを実行することにより各種機能が実現され、もしくは各種機能を実現する回路デバイスなどのハードウェア等で構成されている。
情報取得部15は、耳介温湿度センサ11で計測された耳介温度を、予め設定されたタイミングで取得する。取得した耳介温度は、比較部16に供給されるとともに、記憶部18に供給されて記憶される。比較部16は、情報取得部15で取得した耳介温度と、記憶部18に記憶された閾値とを比較し、熱中症を発症する可能性を判断する。この閾値は、熱中症を発症する可能性があるか否かを判断するためのものであり、予め実験等により決定される。
動作制御部17は、比較部16での判断結果に基づき、報知手段14を動作させるように制御する。記憶部18は、例えばフラッシュメモリで構成され、各種の情報を記憶する。記憶部18は、比較部16で用いられる閾値を記憶する。また、記憶部18は、情報取得部15で取得された耳介温度を記憶するとともに、比較部16による判断結果を示す情報を記憶する。
図3は、図2の制御装置10の構成の一例を示すハードウェア構成図である。制御装置10の各種機能がハードウェアで実行される場合、図2の制御装置10は、図3に示すように、処理回路71で構成される。図2の制御装置10において、情報取得部15、比較部16、動作制御部17および記憶部18の各機能は、処理回路71により実現される。
各機能がハードウェアで実行される場合、処理回路71は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。制御装置10は、情報取得部15、比較部16、動作制御部17および記憶部18の各部の機能それぞれを処理回路71で実現してもよいし、各部の機能を1つの処理回路71で実現してもよい。
図4は、図2の制御装置10の構成の他の例を示すハードウェア構成図である。制御装置10の各種機能がソフトウェアで実行される場合、図2の制御装置10は、図4に示すように、プロセッサ72およびメモリ73で構成される。制御装置10において、情報取得部15、比較部16、動作制御部17および記憶部18の各機能は、プロセッサ72およびメモリ73により実現される。
各機能がソフトウェアで実行される場合、制御装置10において、情報取得部15、比較部16、動作制御部17および記憶部18の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアは、プログラムとして記述され、メモリ73に格納される。プロセッサ72は、メモリ73に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。
メモリ73として、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable and Programmable ROM)およびEEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)等の不揮発性または揮発性の半導体メモリ等が用いられる。また、メモリ73として、例えば、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、CD(Compact Disc)、MD(Mini Disc)およびDVD(Digital Versatile Disc)等の着脱可能な記録媒体が用いられてもよい。
図1の報知手段14は、制御装置10による判断結果に基づき、熱中症を発症する可能性があることを報知する。報知手段14として、例えばLEDまたはスピーカ等が用いられる。報知手段14がLEDである場合には、判断結果が点灯、点滅または消灯等で表示される。報知手段14がスピーカである場合には、判断結果が音声で報知される。
[熱中症の発症と耳介温度との関係]
まず、熱中症の発症と耳介温度との関係について説明する。一般に、熱中症は、生体の深部体温である脳温が上昇することによって発症することが知られている。また、脳温は、耳穴温度と高い相関を有することが知られており、耳穴温度を計測することで、脳温に近似することができる。
ところで、耳穴温度を計測する場合には、鼓膜体温計等の温湿度センサを耳穴に挿入する等して耳穴温度を計測する必要があるが、このような温湿度センサを装着した状態で運動あるいは作業を行うことは、使用者にとって非常に煩わしい。また、耳穴に温湿度センサを挿入することが耳穴を塞ぐことにもなるため、特殊な構成をとらなければ、外部の音が聞こえにくくなるという問題もある。そのため、運動中あるいは作業中に耳穴温度を計測して熱中症を発症する可能性を判断するのは、困難である。
そこで、本発明者は、耳穴温度に代えて脳温と高い相関を有し、かつ、温湿度センサを簡便に装着できる部位が存在しないか検討した。そして、検討の結果、本発明者は、耳介温度が脳温と高い相関を有することを見出した。
図5は、暑熱環境(WBGT(Wet-Bulb Globe Temperature)31℃)を再現した室内における、安静時から運動終了時までの耳穴温度と耳介温度との相関関係の一例を示すグラフである。図5に示す例において、縦軸は耳穴温度を示し、横軸は耳介温度を示す。この例では、耳穴温度を生体の左耳で計測し、耳介温度を左耳の耳垂前部で計測している。図5に示す例は、運動を開始し、運動負荷を上昇させた後、運動を終了するまでの一連の状態における耳穴温度と耳介温度との相関関係を示す。図5に示すように、安静時から運動終了時までの全体では、脳温として近似できる耳穴温度と耳介温度との間に相関がある部位と、相関がない部位とが存在しており、耳穴温度と耳介温度との間に高い相関があるか否かを判断することは困難である。
図6は、図5の安静時における耳穴温度と耳介温度との相関関係の一例を示すグラフである。図6の例は、前記暑熱環境を再現した室内に、生体が5分間安静状態で置かれた場合を示す。図7は、図5のウォーミングアップ時における耳穴温度と耳介温度との相関関係の一例を示すグラフである。図7の例は、室内で運動を開始し、軽度の運動負荷状態にある場合を示す。図8は、図5の60%運動負荷時における耳穴温度と耳介温度との相関関係の第1の例を示すグラフである。図8の例は、運動負荷が60%となる運動を行っている場合を示す。図6〜図8に示す例において、縦軸は耳穴温度を示し、横軸は耳介温度を示す。
図5に対して図6〜図8に示す例では、生体が暑熱環境を再現した室内で安静にしているときから、60%運動負荷の状態となるまでは、耳穴温度が上昇するに従って耳介温度も上昇傾向にある。そして、図8に示す60%運動負荷時においては、耳穴温度と耳介温度との上昇率に1:1の高い相関があることがわかる。
図9は、図8と異なる生体での図8と同様の60%運動負荷時における耳穴温度と耳介温度との相関関係の第2の例を示すグラフである。図10は、図8および図9とさらに異なる生体での60%運動負荷時における耳穴温度と耳介温度との相関関係の第3の例を示すグラフである。図11は、図8〜図10とさらに異なる生体での、60%運動負荷時における耳穴温度と耳介温度との相関関係の第4の例を示すグラフである。図8〜図11は、それぞれ異なる生体について、運動負荷を60%とした場合における耳穴温度と耳介温度との相関関係を示している。図9〜図11に示す例において、縦軸は耳介温度を示し、横軸は耳穴温度を示す。また、図9〜図11には、参考として、傾き約1となる近似直線を挿入している。
図8〜図11に示すように、60%運動負荷時においては、いずれも耳穴温度が上昇するに従って耳介温度も1:1の割合で上昇しており、個人によらず、耳穴温度と耳介温度との間に高い相関があることがわかる。
このように、図5〜図11に示す結果から、耳介温度と耳穴温度との間には、安静時において相関がなく、運動時に相関を有していることがわかる。特に、運動負荷が60%となる運動負荷時には、耳介温度と耳穴温度との間により高い相関があることがわかる。
次に、耳介温度に対する比較例として、生体の他の部位における温度と耳穴温度との関係について説明する。図12は、生体の他の部位における温度の、高温環境下の同一生体における、安静時から運動開始、60%運動負荷を継続、および運動終了までについての時間変化の一例を示すグラフである。この例は、耳介温度および耳穴温度と、耳介および耳穴以外の他の部位として、比較的脳温に近いとされる、鼻先の温度、頬部の温度および前額部の温度との比較を示す。図12において、縦軸は各部位の温度を示し、横軸は安静時から運動終了時までの時間を示す。
図12に示すように、鼻先、頬部および前額部の温度は、運動開始から、60%運動負荷が継続された状態においてもほとんど変化しない。一方、耳介の温度は、耳穴温度に比例して上昇する。このように、運動負荷時においては、脳温と高い相関を示す耳穴温度が上昇するとき、耳介の温度は耳穴の温度を適正に反映して上昇するが、耳介以外の脳温に比較的近い部位とされる鼻先、頬部、前額部の温度は、正確に耳穴の温度を反映するとはいえないことが理解できる。
このことから、運動負荷時における耳穴温度と最も相関性が高いのは、耳介温度であることが明らかである。これは、生体の部位の中でも、耳介は汗腺が少ないため、汗による温度調整の影響が少なく、耳穴温度を正確に反映しているためであると、発明者は推定している。
以上のように、発明者が新たに発見した知見から、運動時における耳介温度は、耳穴温度と高い相関を有しているため、耳介温度を計測することにより、脳温の状態をほぼ正確に判断することができる。また、耳介は、耳穴と異なり、センサを装着することも容易である。そこで、本実施の形態1に係る熱中症予防装置1は、耳介温度の計測結果に基づいて熱中症を発症する可能性を判断し、熱中症を予防する熱中症予防処理を行う。
[熱中症予防処理]
熱中症予防装置1による熱中症予防処理について、図2を参照しながら説明する。まず、制御装置10の情報取得部15は、耳介温湿度センサ11によって計測された耳介温度を、予め設定されたタイミングで取得する。情報取得部15は、取得した耳介温度を比較部16に供給するとともに、記憶部18に記憶させる。
比較部16は、耳介温度に対して設定された閾値を記憶部18から読み出し、情報取得部15から供給された耳介温度と、記憶部18から読み出した閾値とを比較し、耳介温度が閾値を超えているか否かを判断する。
耳介温度が閾値を超えている場合、比較部16は、生体が熱中症を発症する可能性があると判断する。一方、耳介温度が閾値以下である場合、比較部16は、熱中症を発症する可能性が低いと判断する。そして、比較部16は、判断結果を動作制御部17に供給するとともに、記憶部18に記憶させる。
動作制御部17は、比較部16による判断結果が熱中症を発症する可能性が高いと判断したことを示す場合に報知手段14を制御し、熱中症を発症する可能性があることを示す報知を報知手段14に行わせる。これにより、熱中症発症の可能性が使用者に対して報知される。
ここで、閾値の設定手法について説明する。熱中症において問題となるのは、脳温の上昇に伴う各種器官へのダメージである。通常、発汗等で放熱することにより、脳温は維持される。しかしながら、高すぎる環境温度等の様々な原因で放熱が適切に行われなくなると、脳温は上昇するといわれている。また、人体を構成するたんぱく質が不可逆の凝固温度となるのは、42℃付近であることが知られている。さらに、熱中症になれば、活動量の低下を招き、症状が悪化して意識を失えば、動くことができなくなる。このような周知の事象等から、暑熱環境下で活動する使用者が熱中症予防装置1を使用すると、耳介温湿度センサ11、環境温湿度センサ12および加速度センサ13による計測結果は図13に示すような挙動を示す、と本発明者は推定している。
図13は、本実施の形態1に係る熱中症予防装置1を環境温度上昇下で使用した場合の、各センサで得られる計測結果の挙動を推定したグラフである。なお、図13に示す例では、耳介温度として耳垂の温度を計測した場合を例にとって説明する。
図13に示す安全域は、環境温度が耳垂温度より低い領域である。風邪等、体の異常がない限り、耳垂温度は、平常時体温(36.5℃)より低い。使用者は通常の活動が可能であるので、加速度センサ13の3軸の合力である活動量は高い状態となる。この状態は、自ら産生する熱も正常に放熱でき、耳垂温度は維持された状態である。
図13に示す熱中症リスク出現域は、環境温度が上昇し、安定していた耳垂温度も上昇に転じた状態から、耳垂温度が平常時体温(36.5℃)と同程度に上昇するまでの領域である。本発明者による実験では、この領域において脳の熱放散が必要となるためか、耳垂への循環血液量が増加していた。また、この領域は、熱による疲労を使用者が感じはじめる領域であり、活動量に低下がみられる領域である。
図13に示す熱中症リスク中度域以降は、周知の事象等から推定される領域である。熱中症リスク中度域は、環境温度が更に上昇し、上昇していた耳垂温度が平常時体温(36.5℃)を超えた時点から、環境温度が耳垂温度を超えるまでの領域である。この領域では、環境温度が耳垂温度に近づくため、放熱が難しく、使用者が活動等を行っていた場合、発汗等の放熱限界を迎えると推定される。これにより、熱疲労感が更に進み、活動量は大きく減少すると推定される。
熱中症リスク中度域を過ぎると、熱中症リスク高度域が現れると推定される。熱中症リスク高度域は、環境温度が耳垂温度を超えた時点から、耳垂温度がたんぱく質の不可逆性凝固温度である42℃に到達するまでの領域である。この領域では、耳垂による熱放散が不可となり、発汗等でも脳温を冷却する事が難しい。熱中症リスク高度域では、使用者の活動がほとんどできなくなり、場合によっては、使用者は倒れて動けなくなる。環境温度の低い場所への搬送や、外部からの脳冷却を積極的に行わなければ生命の危険がある。たんぱく質の変性温度が42℃であるため、体温がこの温度を超える際は、生命の危険や重篤な後遺症を残す可能性が高い。
このようなことから、本実施の形態1では、耳垂温度(耳介温度)に対する閾値は、熱中症リスク出現領域内に収まる温度とするのが好ましい。そのため、閾値は、例えば、耳垂温度が平常時体温(36.5℃)近くまで上昇する温度に設定されてもよい。または、閾値は、耳垂温度の上昇率に対して設定されてもよいし、活動量と耳垂温度との組み合わせに対して設定されてもよい。なお、閾値の設定は、上記の例に限られず、例えば、熱中症について蓄積されたデータをAI(Artificial Intelligence)等で解析し、解析結果から最も効果的な値を選択することで行われるようにしてもよい。
さらに、熱中症は、多くの原因が絡み合うことで発生する。そこで、熱中症発症の可能性を判断する際の閾値は、熱中症に関連すると推定される様々なパラメータを用いて得られる数値に対して設定されてもよい。具体的には、例えば、実際に作業している人の周辺環境温度、耳垂温度、湿度、気圧、労働時間(運度時間または動作時間でもよい)、作業時間、活動量、性別、年齢および個人差等が、熱中症に関連するパラメータとして設定される。
熱中症に関連するパラメータが設定されると、各パラメータの値に対して、熱中症との関連の大きさを示す熱中症指数が設定される。熱中症指数は、例えば、パラメータの値を複数に区分した場合に、区分毎に異なる数値となるように設定される。このようにして、各パラメータが数値化された場合に、各パラメータの熱中症指数が合計される。そして、合計した熱中症指数に対して閾値が設定される。
ここで、設定された複数のパラメータは、パラメータ毎に熱中症との関連の深さが異なる。したがって、複数の様々なパラメータに対して熱中症指数を設定する場合には、熱中症との関連の深さに応じて、パラメータ毎に重み付けが行われる。
例えば、パラメータとしての耳垂温度は、脳温を求める際に用いられるが、脳温は、熱中症と最も関連が深いとされている。したがって、耳垂温度には、最も重い重みが与えられる。また、熱中症を発症する可能性は、環境温度が高温になるに従って増大するため、環境温度には、相応の重さの重みが与えられる。同様に、熱中症を発症する可能性は、湿度が高くなるに従って増大するため、湿度にも、相応の重さの重みが与えられる。さらに、熱中症に対する耐性は、男女差などの性差によって異なるため、性別毎に異なる熱中症指数が与えられる。
上述した環境温度、耳垂温度、湿度および性別をパラメータとして設定した場合の、各パラメータと熱中症指数との関係は、表1に示すようになる。この場合の熱中症指数は、発明者が暑熱環境を再現した室内における、安静時から運動終了時までの実験結果から重み付けを考慮して適切であると推定した値の一例である。なお、表1に示すパラメータの種類および熱中症指数は、一例であり、これに限られない。
Figure 2020129956
なお、熱中症に関連すると推定されるパラメータは、上述した例に限られず、さらに増やしてもよいし、減らしてもよい。また、各パラメータに対する熱中症指数は、多くのデータが蓄積されることにより、最適な値となるように適宜修正されてもよい。
本実施の形態1において、熱中症予防装置1の制御装置10は、各種センサ等で計測されたセンサ情報に基づき、パラメータ毎の熱中症指数を導出する。熱中症指数を導出する際には、表1に示すパラメータの値と熱中症指数との対応関係を示すテーブル等を記憶部18に記憶しておき、センサ情報に基づきテーブルを参照してもよいし、予め設定された演算式等を用いてもよい。
制御装置10は、各パラメータの熱中症指数を合計し、合計した熱中症指数に基づき、熱中症発症の可能性を判断する。例えば、制御装置10は、熱中症指数の合計が36以上であれば「危険」であると判断し、30以上35以下であれば「作業(運動、あるいは、動作)中止を推奨」と判断する。また、制御装置10は、熱中症指数の合計が25以上29以下であれば「厳重監視(警告)」であると判断し、21以上24以下であれば「監視が必要」であると判断する。制御装置10は、熱中症指数の合計が15以上20以下であれば「注意が必要」であると判断し、12以上14以下であれば「対策準備が必要」であると判断する。制御装置10は、熱中症指数の合計が8以上11以下であれば「安全」であると判断し、7以下であれば「問題なし」であると判断する。このように、制御装置10は、熱中症指数に応じて熱中症発症の可能性を判断し、それに応じた対応を行うようにすればよい。
なお、当日から数日前の温度、湿度および気圧等の環境データと、数年間の計測場所の環境統計データと、労働時間(運動時間または動作時間でもよい)、作業時間および活動量等を考慮した累積暑熱ストレスデータとを、現在の状態へ加味して熱中症の予測データとして活用してもよい。
このように、熱中症に関連すると推定される様々なデータを利用することで、熱中症発症の可能性をより正確に判断することができる。
以上のように、本実施の形態1に係る熱中症予防装置1では、耳介温湿度センサ11で計測された生体の耳介温度、あるいは、その他、環境温度等の複合的要因に基づき、熱中症を発症する可能性があるか否かが判断される。そして、熱中症を発症する可能性があると判断された場合には、判断結果が生体に報知される。本実施の形態1では、脳温と相関がある耳介温度を計測するため、簡単かつ確実に熱中症発症の可能性を判断して熱中症を予防することができる。また、本実施の形態1では、耳介の温度を計測するため、耳穴の温度を計測する場合と異なり、生体が意識することなく、運動中あるいは作業中に温度を計測することができる。
本実施の形態1において、耳介温湿度センサ11は、生体における耳介の一部である耳垂の温度を計測する。耳垂の温度は、脳温との相関が高いため、耳垂の温度を計測することにより、熱中症発症の可能性をより確実に判断することができる。
実施の形態2.
本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態2は、熱中症を発症する可能性がある場合に生体を冷却する点で、実施の形態1と相違する。なお、以下の説明において、実施の形態1と共通する部分には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
[熱中症予防装置1の構成]
図14は、本実施の形態2に係る熱中症予防装置1の構成の一例を示すブロック図である。図14に示すように、熱中症予防装置1は、制御装置10、耳介温湿度センサ11、環境温湿度センサ12、加速度センサ13、報知手段14および冷却手段21を備えている。冷却手段21は、生体の耳介の周囲に設けられ、耳介を冷却する。冷却手段21としては、例えばファンあるいはペルチェ素子等の電気的に動作して冷却するものを用いてもよいし、冷却ジェルといった物理的に周囲を冷却するものを用いてもよい。
制御装置10は、実施の形態1と同様に、各種センサ情報に基づき、熱中症を発症する可能性を判断する。そして、制御装置10は、判断結果に基づき、報知手段14および冷却手段21を制御する。
図15は、図14の制御装置10の構成の一例を示す機能ブロック図である。図15に示すように、制御装置10は、実施の形態1と同様に、情報取得部15、比較部16、動作制御部17および記憶部18を備えている。本実施の形態2において、動作制御部17は、比較部16によって熱中症を発症する可能性があると判断された場合に、報知手段14および冷却手段21を動作させるように制御する。
[耳介の冷却]
耳介の冷却について説明する。上述したように、熱中症は、脳温が上昇することにより発症する。そのため、耳介温度を計測した結果、熱中症を発症する可能性があると判断された場合には、熱中症を抑制するために脳温を低下させる必要がある。
ここで、耳介温度が脳温と相関が高いということは、耳介温度を計測することによって脳温の状態を判断できるということであり、脳温の変化に応じて耳介温度も変化するということである。すなわち、熱中症を発症して脳温が上昇している場合には、耳介を冷却して耳介温度を低下させることにより、脳温を低下させることができる。
図16は、耳介を冷却した場合の耳介温度と耳穴温度との関係について説明するためのグラフである。図16に示すように、耳介の冷却が開始されると、耳介温度の低下に伴い、耳穴温度が徐々に低下する。上述したように、耳穴温度は脳温と相関があるため、耳穴温度が低下することは、脳温が低下することに近似することができる。したがって、耳介を冷却して耳介温度を低下させることにより、脳温を低下させることができ、熱中症発症の可能性を抑制することができる。
そこで、本実施の形態2に係る熱中症予防装置1は、熱中症を発症する可能性があると判断された場合に、耳介を冷却して脳温を低下させる。
[熱中症予防処理]
熱中症予防装置1による熱中症予防処理について、図15を参照しながら説明する。まず、制御装置10の情報取得部15は、耳介温湿度センサ11によって計測された耳介温度を、予め設定されたタイミングで取得する。情報取得部15は、取得した耳介温度を比較部16に供給するとともに、記憶部18に記憶させる。
比較部16は、耳介温度に対して設定された閾値を記憶部18から読み出し、情報取得部15から供給された耳介温度と、記憶部18から読み出した閾値とを比較し、耳介温度が閾値を超えているか否かを判断する。
耳介温度が閾値を超えている場合、比較部16は、生体が熱中症を発症する可能性があると判断する。一方、耳介温度が閾値以下である場合、比較部16は、熱中症を発症する可能性が低いと判断する。そして、比較部16は、判断結果を動作制御部17に供給するとともに、記憶部18に記憶させる。
動作制御部17は、比較部16による判断結果が熱中症を発症する可能性が高いと判断したことを示す場合に報知手段14を制御し、熱中症を発症する可能性があることを示す報知を報知手段14に行わせる。これにより、熱中症発症の可能性が使用者に対して報知される。
また、動作制御部17は、比較部16による判断結果が熱中症を発症する可能性が高いと判断したことを示す場合に、耳介を冷却するように冷却手段21を制御する。これにより、熱中症発症の可能性があるとされた使用者の脳温が低下し、熱中症を発症する可能性を低下させることができる。
以上のように、本実施の形態2に係る熱中症予防装置1では、熱中症発症の可能性があると判断された場合に、冷却手段21によって耳介の周囲を冷却する。これにより、脳温が低下するため、生体に対する熱中症の発症を抑制することができる。
なお、熱中症予防処理において、生体が熱中症を発症する可能性があると判断された場合の処置は、耳介の冷却に限られない。例えば、使用者に飲水の処置を行うように通知したり、作業の中断、冷所への移動、送風、または身体各部の冷却などを通知したりしてもよい。このような通知の内容に応じた処置を使用者が実行することによっても、脳温が低下するため、生体に対する熱中症の発症を抑制することができる。
実施の形態3.
本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態3は、熱中症予防装置1をシステム化する点で、実施の形態1および2と相違する。なお、以下の説明において、実施の形態1および2と共通する部分には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
[熱中症予防システム100の構成]
図17は、本実施の形態3に係る熱中症予防システム100の構成の一例を示すブロック図である。図17に示すように、熱中症予防システム100は、装着型端末30、サーバ40、管理装置50および表示装置60で構成され、装着型端末30、サーバ40、管理装置50および表示装置60がインターネット等のネットワーク200に接続されている。装着型端末30は、ネットワーク200に対して無線で接続されている。サーバ40、管理装置50および表示装置60は、ネットワーク200に対して有線または無線で接続されている。
(装着型端末30)
図17の装着型端末30は、ネットワーク200と通信を行う通信手段を制御装置10に備える以外、図14に記載の熱中症予防装置1と同じ構成である。なお、本実施の形態3において、装着型端末30の制御装置10および報知手段14は、例えば、工事現場の作業員のヘルメットに装着される小型デバイスとして構成されてもよい。この場合、制御装置10および報知手段14を含むヘルメットの小型デバイスは、工事現場の作業員の耳垂を挟むクリップ形状などに形成された耳介温湿度センサ11と、有線または無線で接続される。また、装着型端末30の制御装置10および報知手段14における耳介温湿度センサ11以外の機能は、例えば、工事現場の作業員が所持するスマートフォンまたはウェアラブル端末などの携帯端末に実装されるプログラムによって実現されてもよい。
通信手段は、ネットワーク200を介して接続されたサーバ40および管理装置50との通信を、予め決められたプロトコルに従って行う。通信手段は、各種センサから供給されたセンサ情報をサーバ40および管理装置50に転送する。また、通信手段は、ネットワーク200から供給された熱中症についての判断結果を受信し、受信した判断結果を制御装置10に供給する。
制御装置10は、耳介温湿度センサ11、環境温湿度センサ12および加速度センサ13で計測された各種センサ情報を、予め設定されたタイミングで取得し、取得したセンサ情報を通信手段に供給する。また、制御装置10は、通信手段を介してサーバ40から受け取った熱中症についての判断結果に基づき、報知手段14および冷却手段21を制御する。
制御装置10の情報取得部15は、耳介温湿度センサ11で計測された耳介温度を、予め設定されたタイミングで取得する。取得した耳介温度は、通信手段に供給されるとともに、記憶部18に供給されて記憶される。また、情報取得部15は、熱中症についての判断結果を、通信手段を介してサーバ40から受け取り、動作制御部17に供給する。
制御装置10の動作制御部17は、情報取得部15から受け取った判断結果に基づき、報知手段14および冷却手段21を動作させるように制御する。
(サーバ40)
図17のサーバ40は、計測された生体の状態に基づき、熱中症を発症する可能性があるか否かを判断するものであり、通信手段、演算装置および記憶部を備えている。
サーバ40の通信手段は、ネットワーク200を介して接続された装着型端末30、管理装置50および表示装置60との通信を、予め決められたプロトコルに従って行う。サーバ40の通信手段は、ネットワーク200を介して装着型端末30から送信されたセンサ情報を受信し、受信したセンサ情報をサーバ40の演算装置に供給する。また、サーバ40の通信手段は、サーバ40の演算装置で判断された熱中症についての判断結果を装着型端末30、管理装置50および表示装置60に転送する。
サーバ40の演算装置は、サーバ40の通信手段を介して装着型端末30から受信したセンサ情報に含まれる耳介温度と、サーバ40の記憶部に記憶された耳介温度に対する閾値とを比較し、熱中症を発症する可能性を判断する。サーバ40の演算装置は、判断結果を示す情報を、サーバ40の通信手段に供給するとともに、サーバ40の記憶部に記憶する。
サーバ40の記憶部は、例えばフラッシュメモリで構成され、各種の情報を記憶する。サーバ40の記憶部は、サーバ40の演算装置で用いられる閾値を記憶する。また、サーバ40の記憶部は、サーバ40の通信手段で受信した耳介温度を含むセンサ情報を記憶するとともに、サーバ40の演算装置による判断結果を示す情報を記憶する。
(管理装置50)
図17の管理装置50は、生体の状態を管理するものであり、通信手段、制御装置、表示手段、操作手段および記憶部を備えている。管理装置50は、例えば、工事現場の管理センターなどに設置される装置であり、現場監督が作業員の熱中症予防を管理するために用いられる。
管理装置50の通信手段は、ネットワーク200を介して接続された装着型端末30およびサーバ40との通信を、予め決められたプロトコルに従って行う。管理装置50の通信手段は、ネットワーク200を介してサーバ40の演算装置で判断された熱中症についての判断結果を受信し、受信した判断結果を管理装置50の制御装置に供給する。また、管理装置50の通信手段は、ネットワーク200を介して装着型端末30から送信されたセンサ情報を受信し、受信したセンサ情報を管理装置50の制御装置に供給する。さらに、管理装置50の通信手段は、管理装置50の制御装置からの指令を受け取り、ネットワーク200を介して装着型端末30に送信する。
管理装置50の制御装置は、管理装置50の通信手段を介して装着型端末30から受信したセンサ情報、ならびに、サーバ40から受信した熱中症についての判断結果を管理装置50の記憶部に記憶する。また、管理装置50の制御装置は、受信したこれらの各種情報を管理装置50の表示手段に表示させる。さらに、管理装置50の制御装置は、管理者が管理装置50の操作手段を操作することによって入力された操作信号に基づき、装着型端末30に対する指令を生成する。生成された当該指令は、管理装置50の通信手段を介して装着型端末30に送信される。
管理装置50の表示手段は、周知のディスプレイ等によって構成され、熱中症についての判断結果等を表示する。
管理装置50の操作手段は、この管理装置50を操作するために用いられる周知の各種のキー等が設けられ、各キー等に対する操作に応じた操作信号を出力する。
管理装置50の記憶部は、管理装置50の通信手段で受信した耳介温度を含むセンサ情報を記憶するとともに、サーバ40から受信した熱中症についての判断結果を示す情報を記憶する。
(表示装置60)
図17の表示装置60は、周知の表示手段で構成され、サーバ40によって処理された熱中症発症の可能性についての判断結果を表示する。表示装置60は、例えば、工事現場の作業員が所持するスマートフォンまたはウェアラブル端末といった携帯端末などの装置であってもよい。
[熱中症予防処理]
熱中症予防システム100による熱中症予防処理について、図17を参照して説明する。まず、装着型端末30において、制御装置10の情報取得部15は、耳介温湿度センサ11によって計測されたセンサ情報としての耳介温度を、予め設定されたタイミングで取得する。情報取得部15は、取得した耳介温度を装着型端末30の通信手段に供給するとともに、記憶部18に記憶させる。装着型端末30の通信手段は、受け取った耳介温度を、ネットワーク200を介してサーバ40および管理装置50に送信する。
次に、サーバ40において、サーバ40の通信手段は、ネットワーク200を介して装着型端末30から耳介温度を受信する。サーバ40の通信手段は、受信した耳介温度をサーバ40の演算装置に供給するとともに、サーバ40の記憶部に記憶させる。
サーバ40の演算装置は、耳介温度に対して設定された閾値をサーバ40の記憶部から読み出し、サーバ40の通信手段から供給された耳介温度と、サーバ40の記憶部から読み出した閾値とを比較し、耳介温度が閾値を超えているか否かを判断する。耳介温度が閾値を超えている場合、サーバ40の演算装置は、生体が熱中症を発症する可能性があると判断する。一方、耳介温度が閾値以下である場合、サーバ40の演算装置は、熱中症を発症する可能性が低いと判断する。そして、サーバ40の演算装置は、判断結果をサーバ40の通信手段に供給するとともに、サーバ40の記憶部に記憶させる。
サーバ40の通信手段は、受け取った熱中症についての判断結果を示す情報を、ネットワーク200を介して装着型端末30、管理装置50および表示装置60に送信する。
装着型端末30において、装着型端末30の通信手段は、ネットワーク200を介してサーバ40から熱中症についての判断結果を示す情報を受信する。装着型端末30の通信手段は、受信した判断結果を示す情報を動作制御部17に供給するとともに、記憶部18に記憶させる。
動作制御部17は、受け取った判断結果が熱中症を発症する可能性が高いと判断したことを示す場合に報知手段14を制御し、熱中症を発症する可能性があることを示す報知を報知手段14に行わせる。これにより、熱中症発症の可能性が使用者に対して報知される。また、このとき、動作制御部17は、生体の耳介の周囲を冷却するように、冷却手段21を制御する。これにより、脳温を低下させて熱中症の発症が抑制される。
一方、管理装置50において、管理装置50の通信手段は、装着型端末30から送信された耳介温度を受信する。また、管理装置50の通信手段は、サーバ40から送信された熱中症についての判断結果を示す情報を受信する。管理装置50の通信手段は、受信したこれらの各種情報を管理装置50の制御装置に供給する。
管理装置50の制御装置は、受け取った各種情報を管理装置50の記憶部に記憶させるとともに、必要な情報を管理装置50の表示手段に表示させる。例えば、生体が熱中症を発生する可能性があると判断された判断結果を示す情報を受け取った場合、管理装置50の制御装置は、当該情報に対応する生体の情報を管理装置50の表示手段に表示させる。
また、表示装置60は、ネットワーク200を介してサーバ40から熱中症についての判断結果を示す情報を受信し、表示手段に表示する。
これにより、管理者は、管理装置50の表示手段に表示された生体に対して、管理装置50の操作手段を用いて休憩させるなどの操作を入力する。この場合、管理装置50の制御装置は、入力された操作に基づき指令を生成し、管理装置50の通信手段に供給する。
管理装置50の通信手段は、受け取った指令を、ネットワーク200を介して装着型端末30に送信する。これにより、指令を受け取った装着型端末30では、指令に応じた報知を行うことができる。
以上のように、本実施の形態3に係る熱中症予防システム100では、実施の形態1と同様に、簡単かつ確実に熱中症発症の可能性を判断して熱中症を予防することができる。また、本実施の形態3では、管理装置50により生体の状態が管理されるため、生体の状態に応じて指令を送ることにより、生体に対して熱中症の発症を抑制するための適切な対応をとらせることができる。
なお、本実施の形態3において、熱中症発症の可能性の判断は、サーバ40で行われるように説明したが、これに限られず、装着型端末30で行われてもよい。具体的には、装着型端末30は、耳介温湿度センサ11を用いて耳介温度を計測し、計測した耳介温度と閾値とを比較し、熱中症発症の可能性を判断する。そして、装着型端末30は、判断結果を示す情報を、ネットワーク200を介してサーバ40に送信する。サーバ40は、熱中症発症の可能性の判断結果を示す情報を受信すると、受信した判断結果を示す情報を、ネットワーク200を介して装着型端末30、管理装置50および表示装置60に送信する。以下、上述した例と同様に処理が行われる。このように、熱中症発症の可能性の判断が装着型端末30で行われた場合でも、簡単かつ確実に熱中症発症の可能性を判断して熱中症を予防することができる。
1 熱中症予防装置、10 制御装置、11 耳介温湿度センサ、12 環境温湿度センサ、13 加速度センサ、14 報知手段、15 情報取得部、16 比較部、17 動作制御部、18 記憶部、21 冷却手段、30 装着型端末、40 サーバ、50 管理装置、60 表示装置、71 処理回路、72 プロセッサ、73 メモリ、100 熱中症予防システム、200 ネットワーク。

Claims (10)

  1. 生体における耳介の温度である耳介温度を計測する耳介温度センサと、
    前記耳介温度に基づき、前記生体の熱中症発症の可能性を判断する制御装置と、
    前記制御装置の判断結果に基づき、前記熱中症発症の可能性があることを報知する報知手段と
    を備え、
    前記制御装置は、
    計測された前記耳介温度と、予め設定された前記耳介温度に対する熱中症に関する閾値とを比較し、比較結果に基づき、前記熱中症発症の可能性があるか否かを判断する比較部と、
    前記判断の結果に基づき、前記報知手段の動作を制御する動作制御部と
    を有する熱中症予防装置。
  2. 生体における耳介の温度である耳介温度を計測する耳介温度センサと、
    前記耳介温度に基づき、前記生体の熱中症発症の可能性を判断する制御装置と、
    前記制御装置の判断結果をサーバに送信する通信手段と
    を備え、
    前記制御装置は、
    計測された前記耳介温度と、予め設定された前記耳介温度に対する熱中症に関する閾値とを比較し、比較結果に基づき、前記熱中症発症の可能性があるか否かを判断する比較部を有する熱中症予防装置。
  3. 前記耳介温度センサは、
    前記生体における耳垂の温度を計測する請求項1または2に記載の熱中症予防装置。
  4. 前記比較部は、
    前記耳介温度が前記閾値を超えている場合に、前記熱中症発症の可能性があると判断する請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱中症予防装置。
  5. 前記耳介の周囲を冷却する冷却手段をさらに備え、
    前記制御装置は、
    前記熱中症発症の可能性があると判断した場合に、前記耳介の周囲を冷却するように、前記冷却手段を制御する請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱中症予防装置。
  6. 前記閾値は、
    周辺環境温度、耳垂温度、湿度、気圧、労働時間、作業時間、活動量、性別または年齢のいずれかを含むパラメータに基づいて設定される請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱中症予防装置。
  7. 装着型端末と、前記装着型端末と通信を行うサーバと、前記サーバと通信を行う管理装置とを備えた熱中症予防システムであって、
    前記装着型端末は、
    生体における耳介の温度である耳介温度を計測する耳介温度センサと、
    前記生体の熱中症発症の可能性があることを報知する報知手段と
    を有し、
    前記サーバは、
    前記装着型端末で計測された前記耳介温度と、予め設定された前記耳介温度に対する閾値とを比較し、比較結果に基づき、前記熱中症発症の可能性があるか否かを判断する演算装置を有し、
    前記管理装置は、
    前記サーバによる判断結果を記憶する記憶部と、
    前記判断結果を表示する表示手段と
    を有する熱中症予防システム。
  8. 装着型端末と通信を行うサーバと、前記サーバと通信を行う管理装置とを備えた熱中症予防システムであって、
    前記サーバは、
    前記装着型端末で計測された生体における耳介の温度である耳介温度と、予め設定された前記耳介温度に対する閾値とを比較し、比較結果に基づき、前記熱中症発症の可能性があるか否かを判断する演算装置を有し、
    前記管理装置は、
    前記サーバによる判断結果を記憶する記憶部と、
    前記判断結果を表示する表示手段と
    を有する熱中症予防システム。
  9. 生体における耳介の温度である耳介温度を計測する工程と、
    計測された前記耳介温度と、予め設定された前記耳介温度に対する熱中症に関する閾値とを比較する工程と、
    前記比較の結果に基づき、報知手段の動作を制御する工程と
    を有する熱中症予防方法。
  10. 生体における耳介の温度である耳介温度を計測する耳介温度センサと、熱中症発症の可能性があることを報知する報知手段とを備えた装着型端末のコンピュータを、
    計測された前記耳介温度と、予め設定された前記耳介温度に対する熱中症に関する閾値とを比較し、比較結果に基づき、前記熱中症発症の可能性があるか否かを判断する比較部、
    前記判断の結果に基づき、前記報知手段の動作を制御する動作制御部
    として機能させる装着型端末のプログラム。
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