JPWO2020090357A1 - O結合型糖ペプチドの製造方法 - Google Patents

O結合型糖ペプチドの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 O結合型糖ペプチド・糖アミノ酸を工業的規模で簡便かつ収率よく製造する方法を提供すること。【解決手段】 ホエイプロテインから下記式1で表されるO結合型糖鎖を含む糖ペプチド・糖アミノ酸を製造する方法であって、次のA〜E工程を含むO結合型糖ペプチド・糖アミノ酸の製造方法。A ホエイプロテインからプロテオースペプトン画分を抽出する工程、B 前記抽出物をプロテアーゼ酵素によって分解する工程、C 前記分解物を水溶性有機溶媒に添加してO結合型糖ペプチド・糖アミノ酸を沈殿させる工程、D 沈殿させたO結合型糖ペプチド・糖アミノ酸の濃縮工程E 濃縮工程で得た濃縮物を順相カラム及び/又は逆相カラムにより精製する工程。【選択図】 図1

Description

本発明は、ホエイプロテインからO結合型糖ペプチド・糖アミノ酸を製造する方法に関する。O結合型糖ペプチド・糖アミノ酸とは、O結合型糖ペプチドまたはO結合型糖アミノ酸をいう。
近年、生体分子として、糖鎖が注目されている。生体内で、糖鎖は複合糖質として糖タンパク質、糖脂質、遊離糖鎖等で存在しており、細胞間や生体分子の認識、シグナル伝達において非常に重要な役割を果たしている。糖タンパク質の糖鎖は大きくN結合型糖鎖とO結合型糖鎖に分類される。N結合型糖鎖は、タンパク質のコンセンサス配列(NXS/T)のアスパラギンの側鎖に結合し、その糖鎖構造はハイマンノース型、複合型、混合型のタイプが存在するが、すべてのタイプの糖鎖は同じ共通のコア構造と呼ばれる5糖ユニットが最小単位として存在している。
一方、O結合型糖鎖は、タンパク質のセリン、スレオニンの側鎖に結合するが、N結合型糖鎖と比較すると結合部位のコンセンサス配列が存在せず、糖鎖もムチン型のコア1型、コア2型、コア3型、コア4型等の様々な種類が存在し、糖鎖構造も共通ユニットが存在しない。その為、糖ペプチド解析において、O結合型糖ペプチドは、糖鎖結合部位同定及び糖鎖構造同定の点でN結合型糖ペプチドよりも困難である。
N結合型糖鎖及びN結合型糖ペプチド・糖アミノ酸に関しては、天然物から大量に調製する報告がある。例えば、N結合型糖鎖は鶏の卵黄から複合型糖鎖を有するシアリルオリゴ糖ペプチドを調製する手法が開発されており(非特許文献1)、また、安価な大豆粉由来の大豆アグルチニンからハイマンノース型糖鎖を取り出す手法も開発されている(非特許文献2)。さらに、牛由来フェツインから3本鎖の複合型糖鎖を取り出したり(非特許文献3)、鶏のオボアルブミンから混合型糖鎖を取り出したりする手法も開発されている(非特許文献4)。
しかしながら、O結合型糖鎖並びに糖ペプチドは、天然物から大量に調製する手法は報告されていない。現在、O結合型糖鎖を持つ試料としてよく利用されているのは、牛顎下腺ムチン(BSM)や豚胃ムチン(PSM)、牛フェツイン、ウシ由来κカゼイン、ヒト初乳IgAであるが、これらは糖鎖構造が多様で不均一に存在しており、かつタンパク質上の糖鎖結合部位も複数存在している為、均一な糖ペプチド・糖アミノ酸を調製する原料として不向きである。また、上記のタンパク質は、非常に希少かつ分離精製に手間がかかる為、大量に調製する原料としては不向きである。ウシ由来κカゼイングリコマクロペプチドについては、報告例があるが、ホエイからの精製工程の収率は約0.12%と低く、収量も107〜4μgと微量である(非特許文献5)。κカゼイングリコマクロペプチドは、κカゼインがレンネット(キモシン)によって、切断された64残基の糖ペプチドで、O結合型糖鎖が7か所に結合し、リン酸化部位が3か所ある。そして、O結合型糖鎖も不均一に存在している為に、上記で分離した物も単一な化合物ではなく、いくつかのアイソフォームの混合物である(非特許文献6)。
特開平9−110896号公報
Seko A, Koketsu M, Nishizono M, et al. Biochim. Biophys. Acta, 1335, 23−32, 1997 Lis H, and Sharon N, J. Biol. Chem., 253, 3468−3476, 1978 Giddens JP, Lomino JV, Amin MN, and Wang LX, J. Biol. Chem., 291, 9356−9370, 2016 Li T, Tong X, Yang Q, Giddens JP, Wang LX, J. Biol. Chem., 291, 16508−16518, 2016 Nakano T, Silva−Hernandez ER, Ikawa N, Ozimek L, Biotechnol Prog., 18, 409−412, 2002 Brody EP, Br J Nutr., 84, S39−S46, 2000 Girardet JM, Linden G, J Dairy Res., 63, 333−350, 1996 Kjeldsen F, Haselmann KF, Budnik BA, Soresen ES, Zubarev RA, Anal Chem., 75, 2355−2361, 2003
発明が解決しようとする課題は、O結合型糖鎖を持つ糖ペプチド・糖アミノ酸を簡便かつ大量に製造する方法を提供する事にある。
本発明者は、O結合型糖ペプチド・糖アミノ酸を製造する事は、コスト面、工程の煩雑さから非常に困難であるが、ホエイプロテインを原料として、O結合型糖ペプチド・糖アミノ酸を製造する方法により、上記課題を解決できる事を見出し、本発明を完成するに到った。
詳細には、本発明者は、原材料として安価に大量に入手可能なホエイプロテインに着目した。そして、ホエイプロテインから調製したプロテオースペプトン画分から、主な3つのタンパク質の1つであるPP−3(ラクトフォリン)を分離精製することなく、ラクトフォリン由来のO結合型糖ペプチドを調製できる方法を見出した。ラクトフォリンは、非特許文献8からリン酸基が5か所、N結合型糖鎖が1か所、O結合型糖鎖が3か所に結合していることが分かっている(図1)。O結合型糖ペプチドを調製して解析した結果、2ヶ所のO結合型糖鎖は、ジシアリルコア1型の糖鎖が均一に結合していることを初めて見出した。更に、もう1ヶ所のO結合型糖鎖は、複数の糖鎖が結合しているが、それらのO結合型糖ペプチドを分離精製できること、その結果、コア1型、ジシアリルコア1型、コア2型、シアリルコア2型と、ポリラクトサミン構造を持つコア2型、ポリラクトサミン構造を持つシアリルコア2型の糖ペプチドを調製できることを見出した。以上により、上記課題を解決して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
<1>
ホエイプロテインから下記式1で表されるO結合型糖鎖を含む糖ペプチド・糖アミノ酸を製造する方法であって、次のA〜E工程を含むO結合型糖ペプチド・糖アミノ酸の製造方法。
A ホエイプロテインからプロテオースペプトン画分を抽出する工程、
B 前記抽出物をプロテアーゼ酵素によって分解する工程、
C 前記分解物を水溶性有機溶媒に添加してO結合型糖ペプチド・糖アミノ酸を沈殿させる工程、
D 沈殿させたO結合型糖ペプチド・糖アミノ酸の濃縮工程
E 濃縮工程で得た濃縮物を順相カラム及び/又は逆相カラムにより精製する工程
式1:
Figure 2020090357
(式中、Xは、糖又は糖鎖。Yは、糖又は糖鎖)
<2> 前記ホエイプロテインが、ホエイを粉末化したホエイパウダー、ホエイプロテインを濃縮したホエイプロテインコンセントレイト(WPC)、ホエイプロテインアイソレイト(WPI)である<1>に記載の製造方法。
<3> 前記プロテアーゼ酵素が、トリプシンである<1>に記載の製造方法。
<4> 前記水溶性有機溶媒が、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリルから選択される少なくとも1種類を含有する<1>に記載の製造方法。
<5> 前記濃縮工程が、前記沈殿物をセファロース樹脂へ保持し、有機溶媒を含む水溶液で洗浄し、溶出させる事によって、O結合型糖ペプチド・糖アミノ酸を濃縮する工程である<1>に記載の製造方法。
<6> 前記順相カラムがアミド基で表面を修飾された化学結合型シリカを充填されたカラムである<1>に記載の製造方法。
<7> 前記逆相カラムがオクタデシルシリル基で表面を修飾された化学結合型シリカを充填されたカラムである<1>に記載の製造方法。
<8> 前記O結合型糖鎖が下記式2〜7で表されるO結合型糖鎖である、<1>〜<7>のいずれかに記載の製造方法。
式2:
NeuAcα2-3Galβ1-3(NeuAcα2-6)GalNAcα1-Ser/Thr
式3:
Galβ1-3(Galβ1-4GlcNAcβ1-6)GalNAcα1-Ser/Thr
式4:
Galβ1-3GalNAcα1-Ser/Thr
式5:
NeuAcα2-3Galβ1-3(Galβ1-4GlcNAcβ1-6)GalNAcα1-Ser/Thr
式6:
Galβ1-3(Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAcβ1-6)GalNAcα1-Ser/Thr
式7:
NeuAcα2-3Galβ1-3(Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAcβ1-6)GalNAcα1-Ser/Thr
<9> 前記O結合型糖ペプチドが下記式8〜19で表されるO結合型糖ペプチドである、<1>〜<7>のいずれかに記載の製造方法。
式8:
Figure 2020090357
式9:
Figure 2020090357
式10:
Figure 2020090357
式11:
Figure 2020090357
式12:
Figure 2020090357
式13:
Figure 2020090357
式14:
Figure 2020090357
式15:
Figure 2020090357
式16:
Figure 2020090357
式17:
Figure 2020090357
式18:
Figure 2020090357
式19:
Figure 2020090357
本発明の方法により、O結合型糖ペプチド・糖アミノ酸を簡便に製造する事ができる。また、このO結合型糖ペプチド・糖アミノ酸を利用して、質量分析計を用いたO結合型糖ペプチド・糖アミノ酸の解析手法の開発が可能となる。さらに、このO結合型糖ペプチド・糖アミノ酸を利用して、新規の糖鎖化合物の創製が可能となり、このO結合型糖ペプチド・糖アミノ酸を標的とした新規の糖鎖認識タンパク質の探索も可能となる。
今回、同定されたラクトフォリン中の糖ペプチド配列 LC−MS分析による同定された糖ペプチドのLC−MSプロファイルとO結合型糖ペプチドのMSスペクトル LC−MS分析による同定された糖ペプチドのN結合型糖ペプチドのMSスペクトル プロテオースペプトン由来の糖ペプチドの高効率液体クロマトグラフィー(HPLC)プロファイル(上段:1段目のAmideカラムのプロファイル、中段:フラクション19の2段目のODSカラムのプロファイル、下段:フラクション24の2段目のODSカラムのプロファイル) 分離したO結合型糖ペプチドのMSスペクトル(上段:2段目のODSカラムのプロファイルのフラクション23、下段:2段目のODSカラムのプロファイルのフラクション15) 分離したO結合型糖ペプチドフラクションのMALDI−TOFMSスペクトル 分離したVESTVAT(7aa)、にNeuAcα2−3Galβ1−3(NeuAcα2−6)GalNAcが結合したO結合型糖ペプチドのNMRスペクトル 分離したIASGEPTSTPT(11aa)にNeuAcα2−3Galβ1−3(NeuAcα2−6)GalNAcが結合したO結合型糖ペプチドのNMRスペクトル 今回、同定されたκカゼイングリコマクロペプチド中の糖ペプチド配列
以下、本発明を実施する為の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施する事ができる。
本発明のO結合型糖ペプチド・糖アミノ酸を製造する方法は、次のA〜E工程を含む。
A ホエイプロテインからプロテオースペプトン画分を抽出する工程、
B 前記抽出物をプロテアーゼ酵素によって分解する工程、
C 前記分解物を水溶性有機溶媒に添加してO結合型糖ペプチド・糖アミノ酸を沈殿させる工程、
D 沈殿させたO結合型糖ペプチド・糖アミノ酸の濃縮工程
E 濃縮工程で得た濃縮物を順相カラム及び/又は逆相カラムにより精製する工程
本発明のO結合型糖ペプチドは、下記式1で表されるセリン(Ser)、スレオニン(Thr)残基の側鎖に結合するO結合型糖鎖構造を持つ。
式1:
Figure 2020090357
(式中、Xは、糖又は糖鎖。Yは、糖又は糖鎖)
(1)O結合型糖鎖
本発明においてO結合型糖鎖とは、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)残基の側鎖にGalNAcを介して結合している糖鎖である。このO結合型糖鎖は、粘液中に産生される糖タンパク質であるムチン上に豊富に存在する為、「ムチン型糖鎖」とも呼ばれる。このO結合型糖鎖は、表1に示すようなコア1〜コア4の一般的な4種類のコア構造と、その他にコア5〜コア8の4種類のコア構造が存在する。
また、ジシアリルコア1型は、シアリダーゼを反応させる事によって、コア1型に変換でき、また、ガラクトシダーゼを反応させる事によって、Tn抗原に変換できる。さらに、糖転移酵素を用いる事によって、他のコア構造へ変換でき、糖鎖伸長も可能である。その他の糖鎖に関しても、同様に糖加水分解酵素と糖転移酵素によって、他のコア構造へ変換可能である。
表1: ムチン型糖鎖のタイプ
Figure 2020090357
A ホエイプロテインからプロテオースペプトン画分を抽出する工程
(2)ホエイプロテイン
ホエイプロテインとは、牛乳からチーズやカゼインを製造する際の副産物である、スイートホエイと酸ホエイ中のタンパク質を示す。ホエイ中のタンパク質は、β−ラクトグロブリン、α−ラクトアルブミン、免疫グロブリン、ウシ血清アルブミン、ラクトフェリン、ラクトパーオキシダーゼ、プロテオースペプトン等からなっている。
ホエイ中には、乳糖、ミネラル及びビタミンが大量に混在している為、それらを分離し、タンパク質を回収・粉末化した物がホエイプロテインコンセントレイト(WPC)として調製されている。また、イオン交換樹脂等を用いて、脂肪や乳糖をほとんど除去した90%以上のタンパク質含量の物をホエイプロテインアイソレイト(WPI)として調製されている。現在、これらの原料は、飼料やサプリメントとして安価に大量に購入可能である。本発明では、ホエイプロテインとは、ホエイパウダー、ホエイプロテインコンセントレイト(WPC)、ホエイプロテインアイソレイト(WPI)を含むプロテオースペプトン画分を持つホエイ由来のタンパク質の総称を示す。
(3)プロテオースペプトン
プロテオースペプトン(PP)は、脱脂乳を95℃で20分間加熱し、pH4.6に調製したときに沈殿しない耐熱性のタンパク質である。ここでは、脱脂乳、脱脂粉乳以外のホエイパウダー、ホエイプロテインコンセントレイト(WPC)、ホエイプロテインアイソレイト(WPI)から調製したプロテオースペプトン画分も含める。この画分は、主に3つのタンパク質PP−3,5,8からなり、PP−5,8はカゼインの分解物であり、PP−3はラクトフォリンである(非特許文献7)。このラクトフォリンは、ホエイプロテインから簡便に調製できる事を特許文献1から報告されている。ラクトフォリンは、非特許文献8からリン酸基が5か所、N結合型糖鎖が1か所、O結合型糖鎖が3か所に結合している134アミノ酸残基からなるタンパク質である事が分かっている。
(3−1)抽出方法
ホエイプロテインに50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.4)などの酸性水溶液を抽出溶媒として加え、80℃〜100℃で5分〜30分加熱後、上澄み液を取り出す。
B 前記抽出物をプロテアーゼ酵素によって分解する工程
(4)プロテアーゼ酵素
プロテアーゼは、ペプチドやタンパク質のペプチド結合を加水分解する酵素である。
本発明で用いるプロテアーゼ酵素は、好ましくは、基質特異性の高い酵素として、トリプシン、リシルエンドペプチダーゼ、エンドプロテイナーゼGluC、サーモリシンであるが、ペプチドの断片化の用途に合わせて基質特異性の低い酵素であるキモトリプシン、ペプシンや、アクチナーゼやプロナーゼ等の複数の酵素の混合物も使用できる。
C 前記分解物を水溶性有機溶媒に添加してO結合型糖ペプチド・糖アミノ酸を沈殿させる工程、
水溶性溶媒としては、アセトン、エタノール、メタノール、アセトニトリルなどがある。
D 沈殿させたO結合型糖ペプチド・糖アミノ酸の濃縮工程
(5)濃縮工程
糖ペプチドは、糖鎖が多数の水酸基を持っている為、親水性を示す。この性質を利用した濃縮方法が親水性相互作用抽出である。一般的には、セファロースやアガロース、セルロースといった親水性の担体に対して有機溶媒が多い極性の低い溶液中(ブタノール:エタノール:水=4:4:1、80%アセトニトリル水溶液)で糖ペプチド・糖アミノ酸等の糖鎖化合物を吸着させ、担体を十分に極性の低い溶液で洗浄した後に、有機溶媒が少ない極性の高い溶液(エタノール:水=1:1、50%アセトニトリル水溶液)で吸着した糖ペプチド・糖アミノ酸等の糖鎖化合物を溶出させて、濃縮する手法である。
また、シアル酸等の酸性を示す糖ペプチド・糖アミノ酸の場合は、ジエチルアミノエチル(DEAE)セファロース等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法を用いて、分離・濃縮する事が出来る。
E 濃縮工程で得た濃縮物を順相カラム及び/又は逆相カラムにより精製する工程
糖ペプチドは、糖鎖部分が示す親水性とペプチド部分が示す疎水性の両方の性質を持った化合物であるため、逆相カラムを用いたHPLCは、糖鎖を持つ糖ペプチドと糖鎖を持たないペプチドの混合物を、親水性の糖ペプチドを疎水性のペプチドよりも早めに溶出する事によって、分離する事が可能である。
また、順相カラムを用いたHPLCでも、糖鎖を持つ糖ペプチドと糖鎖を持たないペプチド間の分離も可能で、こちらは糖ペプチドの方がペプチド鎖よりも後に溶出する事によって分離が可能である。特に、順相カラムを用いたHPLCは、糖鎖の僅かな親水性の違いが逆相カラムよりも効果的に影響される為、同じペプチド鎖を持ち、異なる糖鎖を持つ糖ペプチドを分離する場合に有効である。しかしながら、順相カラムのHPLCは、塩の影響を受けやすい為、カラム許容量が試料の塩含有率に反映してしまうので、大量に分離したい場合は、脱塩効果が高い逆相カラムが優れている。
よって、非常に複雑な糖ペプチド混合物を分離するには、逆相カラムと順相カラムを用いた精製工程を効果的に行う事によって、糖ペプチドとペプチド間の分離並びに糖ペプチド間の分離に可能になる。
以下に本発明の実施例を挙けるが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1> ホエイプロテインコンセントレイト(WPC)からO結合型糖ペプチドを同定する方法
ホエイプロテインコンセントレイト(WPC 20g、ボディウィング社製)を50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.4)200mlに溶かし、オイルバスを用いて100度で30分間、加熱しながら攪拌させる。反応液を遠心(10,000g、10分間)する事によって、上清液を分離し、取り出す。その後、上清液を透析チューブ(分画分子量:15kDa)の純水による膜透析を行い、減圧濃縮し、凍結乾燥する事によって、プロテオースペプトン画分が3g(電気泳動によるPP3の換算量:約200mg)入手する事が出来た。
次に、このプロテオースペプトン画分(1g)を50mM炭酸水素アンモニウム水溶液(10ml)に溶かし、TPCK処理トリプシン(PIERCE社製、2mg)を加え、37℃で24時間、反応した。その後、C18シリカゲル(WAKO社製)の簡易カラムを用いて反応液を濾過し、その濾液(約10ml)を氷冷しているアセトン(90ml)に加え、糖ペプチド混合物を沈殿させた。この溶液を遠心(10,000g、10分間)する事によって、上清液を除去し、沈殿画分(50mg)を入手した。
これを水に溶かした後に、Zorbax Extend−C18 1.0×150mm カラム(Agilent社製)を繋げたThermoScientific製LC−ESI MS装置(Ultimate3000+VelosPro)を用いてpositiveモードでMS測定、MS/MS測定を行った。溶出条件は流速:50μl/minで、A液:20mM ギ酸アンモニウム、B液:0.1%ギ酸水溶液、C液:アセトニトリルの3液を使用した系で、0−5min:A100%,5−20min:C0−25%,B100−75%,20−30min:C80%B20%,30−50min:A100%を1測定のメソッドとした。
ラクトフォリンの配列(図1)を基にLC−MSプロファイルを網羅的に解析した結果、O結合型糖ペプチド断片は、ペプチド鎖ILNKPEDETHLEAQPTDASAQF(22aa)にNeuAcα2−3Galβ1−3(NeuAcα2−6)GalNAcが結合した分子量3401のイオンが3価として、m/z:1134.5で検出された。
また、ペプチド鎖QPQSQNPK(8aa)にNeuAcα2−3Galβ1−3(NeuAcα2−6)GalNAcが結合した分子量1874のイオンが2価として、m/z:937.4で検出された。
さらに、ペプチド鎖LGSEETTEHTPSDASTTEGK(20aa)にGalβ1−3GalNAc,Galβ1−3(Galβ1−4GlcNAcβ1−6)GalNAc,NeuAcα2−3Galβ1−3(NeuAcα2−6)GalNAc,NeuAcα2−3Galβ1−3(Galβ1−4GlcNAcβ1−6)GalNAcが結合した分子量2441,2806,3023,3097のイオンが3価として、m/z:814.8,936.4,1008.8,1033.5で検出された。
また、N結合型糖ペプチドはペプチド鎖NAT(3aa)にNeuAc1Hex5HexNAc4,NeuAc1Hex4HexNAc5,NeuAc1Hex3HexNAc6,NeuAc1Hex5HexNAc4dHex1,NeuAc1Hex4HexNAc5dHex1,NeuAc1Hex3HexNAc6dHex1,NeuAc1Hex7HexNAc6,NeuAc1Hex7HexNAc6dHex1,NeuAc1Hex6HexNAc7dHex1が結合した分子量2218,2259,2300,2364,2405,2446,2583,2729,2770のイオンが2価として、m/z:1110.0,1130.5,1151.0,1183.0,1203.5,1224.0,1292.5,1365.6,1386.0で検出された(図2,3)。
これらは、すべてMS/MS測定を行い、ペプチド鎖配列及び結合部位を同定している。従って、プロテオースペプトン画分からTPCK処理トリプシンで反応させる事によって、N結合型糖鎖が1か所、O結合型糖鎖が3か所に結合しているラクトフォリンの糖ペプチドをそれぞれ断片化する事が出来、その構造も同定できた(図1)。
<実施例2> ホエイプロテインコンセントレイト(WPC)から調製したプロテオースペプトンからO結合型糖ペプチドを調製する方法
前記の糖ペプチドの沈殿画分(1mg)を水200μlに溶かし、ブタノール:エタノール:水=4:2:1の溶液で十分に洗浄したセファロース4B樹脂(sigma−aldrich社製、2ml)の中に加え、ブタノール(1.6ml)とエタノール(0.4ml)を加え、室温で2時間、攪拌した。この樹脂をブタノール:エタノール:水=4:2:1の溶液で十分に洗浄した後にエタノール:水=1:1の溶液で溶出する事によって、糖ペプチド画分を入手し、減圧濃縮を行った。
この糖ペプチド画分を80%アセトニトリル溶液に懸濁させ、順相カラムInertSustain Amide 4.6x250mmカラム(GL Sciences社製)を用いたHPLCシステムにて分離した。分離条件は流速1.0ml/minで、A液:20mM ギ酸アンモニウム、B液:アセトニトリルの2液を使用した物で、0−5min:B75%,5−25min:B75−60%,25−27min:B60−20%,27−33min:B20%,33−40min:B75%を使用した。各フラクションを1分間隔で分取した。
質量分析計を用いて、それぞれのフラクションを測定した結果、フラクション19に分子量3402のペプチド鎖ILNKPEDETHLEAQPTDASAQF+NeuAcα2−3Galβ1−3(NeuAcα2−6)GalNAcが検出され、フラクション24に分子量1874のペプチド鎖QPQSQNPK+NeuAcα2−3Galβ1−3(NeuAcα2−6)GalNAcが検出された(図4の上段)。
しかしながら、このフラクションはまだ他の化合物が混入しているので、このフラクションをそれぞれ逆相カラムInertsilODS−3 4.6x250mmカラム(GL Sciences社製)を用いたHPLCシステムにて分離した(図4の中段、下段)。分離条件は流速1.0ml/minで、A液:20mM ギ酸アンモニウム、B液:アセトニトリルの2液を使用した物で、0−5min:B0%,5−30min:B0−25%,30−37min:B100%,37−45min:B0%を使用した。各フラクションを1分間隔で分取した。
質量分析計を用いて、それぞれのフラクションを測定した結果、フラクション23に分子量3402のペプチド鎖ILNKPEDETHLEAQPTDASAQF+NeuAcα2−3Galβ1−3(NeuAcα2−6)GalNAcが検出され、フラクション15に分子量1874のペプチド鎖QPQSQNPK+NeuAcα2−3Galβ1−3(NeuAcα2−6)GalNAcが検出された(図5)。その結果、糖ペプチドの混合物の中からセリン残基にジシアリルコア1型糖鎖が結合したO結合型糖ペプチドと、スレオニン残基にジシアリルコア1型糖鎖が結合したO結合型糖ペプチドが入手できた。
<実施例3> ホエイプロテインアイソレイト(WPI)から調製したプロテオースペプトンからO結合型糖ペプチドを調製する方法
ホエイプロテインアイソレイト(WPI, 20g、TOFCO社製)を50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.4)200mlに溶かし、オイルバスを用いて100℃で30分間、加熱しながら攪拌させる。反応液を遠心(10,000g、10分間)する事によって、上清液を取り出す。その後、上清液を透析チューブ(分画分子量:15kDa)の純水による膜透析を行い、減圧濃縮し、凍結乾燥する事によって、プロテオースペプトン画分が3.5g(電気泳動によるPP3の換算量:約250mg)入手する事が出来た。
次に、このプロテオースペプトン画分(1.2g)を50mM炭酸水素アンモニウム水溶液(10ml)に溶かし、TPCK処理トリプシン(PIERCE社製、2mg)を加え、37℃で24時間、反応した。この糖ペプチド混合物は、上記で示したWPCから調製した物と同じ断片化を示し、糖ペプチドの含有量もほぼ同じであるが、脂質分がほとんどない。よって、その後の処理で行っていたC18シリカゲル(WAKO社製)の簡易カラムとアセトン沈殿が省く事が可能である。また、WPCよりも重量当たりのラクトフォリン回収量も若干多い。
<実施例4> ホエイプロテインアイソレイト(WPI)から調製したプロテオースペプトンからジシアリルコア1型並びにコア1型、コア2型とポリラクトサミン構造を持つコア2型O結合型糖ペプチドを調製する方法
上記で調製したTPCK処理トリプシンで消化した糖ペプチド混合物(プロテオースペプトン500mg分)を逆相カラムInertsilODS−3 10x250mmカラム(GL Sciences社製)を用いたHPLCシステムにて分離した。分離条件は流速4.7ml/minで、A液:20mM ギ酸アンモニウム、B液:アセトニトリルの2液を使用した物で、0−5min:B0%,5−30min:B0−25%,30−37min:B100%,37−45min:B0%を使用した。各フラクションを1分間隔で分取した。
フラクション14,15,16,23の部分に糖ペプチドが出てくるので、そのフラクションを回収した。フラクション23は、再度、ODS−3カラムを用いて分取し、純度を高めた。回収された糖ペプチドは、分子量3402のペプチド鎖ILNKPEDETHLEAQPTDASAQF+NeuAcα2−3Galβ1−3(NeuAcα2−6)GalNAcの糖ペプチドであり、収量は約1.7mg(660nmol)であった。
次に、フラクション14、フラクション15とフラクション16は、それぞれ別に順相カラムInertSustain Amide 10x250mmカラム(GL Sciences社製)を用いたHPLCシステムにて分離した。分離条件は流速4.7ml/minで、A液:20mM ギ酸アンモニウム、B液:アセトニトリルの2液を使用した物で、0−5min:B75%,5−25min:B75−60%,25−27min:B60−20%,27−33min:B20%,33−40min:B75%を使用した。各フラクションを1分間隔で分取した。
フラクション20、21、22,23の部分に糖ペプチドが出てくるので、そのフラクションを回収した。より純度を高める為、回収したフラクションを再度、InertSustain Amide 10x250mmカラムを用いて分取した。その結果、ポリラクトサミン構造を持つコア2型の糖鎖を持つ糖ペプチドを含む8種類の糖ペプチドが分取できた。
これらの試料をMALDI−TOFMSで測定した結果、図6で示されるように、分子量1874のペプチド鎖QPQSQNPK+NeuAcα2−3Galβ1−3(NeuAcα2−6)GalNAcは、逆相フラクション14、順相フラクション22に回収できており、収量は約324μg(180nmol)であった。
また、分子量2444のペプチド鎖LGSEETTEHTPSDASTTEGK+Galβ1−3GalNAcは、逆相フラクション15、順相フラクション20に回収できており、若干他のペプチド鎖と糖ペプチドが混入しているが、約360μg(150nmol)が得られた。
また、分子量3026のペプチド鎖LGSEETTEHTPSDASTTEGK+NeuAcα2−3Galβ1−3(NeuAcα2−6)GalNAcは、逆相フラクション14、順相フラクション20に回収できており、若干他のペプチド鎖が混入しているが、約480μg(160nmol)が得られた。
さらに、分子量3099のペプチド鎖LGSEETTEHTPSDASTTEGK+NeuAcα2−3Galβ1−3(Galβ1−4GlcNAcβ1−6)GalNAcは、逆相フラクション15、順相フラクション21に回収できており、若干他の糖ペプチド鎖が混入しているが、約465μg(150nmol)が得られた。
そして、分子量2808のペプチド鎖LGSEETTEHTPSDASTTEGK+Galβ1−3(Galβ1−4GlcNAcβ1−6)GalNAcは、逆相フラクション15、順相フラクション22に回収できており、純度が高く、約250μg(90nmol)が得られた。
さらにまた、分子量3462のペプチド鎖LGSEETTEHTPSDASTTEGK+NeuAcα2−3Galβ1−3(Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4GlcNAcβ1−6)GalNAcは、逆相フラクション16、順相フラクション22に回収できており、若干他のペプチド鎖と糖ペプチドが混入しているが、約70μg(20nmol)が得られた。
そして、分子量3175のペプチド鎖LGSEETTEHTPSDASTTEGK+Galβ1−3(Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4GlcNAcβ1−6)GalNAcは、逆相フラクション16、順相フラクション23に回収できており、若干他のペプチド鎖と糖ペプチドが混入しているが、約95μg(30nmol)が得られた。
よって、原料ホエイプロテイン3gから合計約3.7mgのO結合型糖ペプチドを調製できた。重量換算の収率は約0.12%である。いくつかの糖ペプチドフラクションは他の糖ペプチドが混在しているが、ジシアリルコア1型糖ペプチド、コア2型糖ペプチドとポリラクトサミン構造を持つコア2型糖ペプチドは、純度の高いO結合型糖ペプチドとして調製できた。
<実施例5> ホエイプロテインアイソレイト(WPI)から調製したプロテオースペプトンをサーモリシン消化してO結合型糖ペプチドを調製する方法
ホエイプロテインアイソレイト(WPI, 20g、TOFCO社製)を50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.4)200mlに溶かし、オイルバスを用いて100℃で30分間、加熱しながら攪拌させる。反応液を遠心(10,000g、10分間)する事によって、上清液を取り出す。その後、上清液を透析チューブ(分画分子量:15kDa)の純水による膜透析を行い、アセトン中に透析した溶液を加えて、80%アセトン溶液にし、静置する事によって、タンパク質を沈殿させた。この沈殿画分を遠心処理(5,000g、10分間)によって分離し、50℃で減圧しながら乾燥させる事によって、プロテオースペプトン画分が3.5g入手する事が出来た。
次に、このプロテオースペプトン画分(1.2g)を50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)+5mM塩化カルシウム溶液(10ml)に溶かし、サーモリシン(MERCK社製、2mg)を加え、37℃で24時間、反応した。
次にサーモリシンで消化した糖ペプチド混合物(プロテオースペプトン780mg分)を逆相カラムInertsilODS−3 10x250mmカラム(GL Sciences社製)を用いたHPLCシステムにて分離した。分離条件は流速4.7ml/minで、A液:20mM ギ酸アンモニウム、B液:アセトニトリルの2液を使用した物で、0−5min:B0%,5−30min:B0−25%,30−37min:B100%,37−45min:B0%を使用した。各フラクションを1分間隔で分取した。
次に、糖ペプチドが存在するフラクションをそれぞれ別に順相カラムInertSustain Amide 10x250mmカラム(GL Sciences社製)を用いたHPLCシステムにて分離した。分離条件は流速4.7ml/minで、A液:20mM ギ酸アンモニウム、B液:アセトニトリルの2液を使用した物で、0−5min:B75%,5−25min:B75−60%,25−27min:B60−20%,27−33min:B20%,33−40min:B75%を使用した。各フラクションを1分間隔で分取した。
さらに、糖ペプチドが存在するフラクションをそれぞれ別に逆相カラムInertsilODS−3 10x250mmカラム(GL Sciences社製)を用いたHPLCシステムにて分離した。分離条件は流速4.7ml/minで、A液:20mM ギ酸アンモニウム、B液:アセトニトリルの2液を使用した物で、0−5min:B0%,5−30min:B0−25%,30−37min:B100%,37−45min:B0%を使用した。各フラクションを1分間隔で分取した。
このサーモリシンで消化した糖ペプチド混合物をHPLCで分離する事によって、ラクトフォリン由来のペプチド鎖LGSEETTEHTPSDASTTEGK(20aa)にGalβ1−3GalNAc,Galβ1−3(Galβ1−4GlcNAcβ1−6)GalNAc,NeuAcα2−3Galβ1−3(NeuAcα2−6)GalNAc,NeuAcα2−3Galβ1−3(Galβ1−4GlcNAcβ1−6)GalNAcが結合した糖ペプチドが効率よく回収できた。また、κカゼイングリコマクロペプチド由来(図8)のペプチド鎖IASGEPTSTPT(11aa)、VESTVAT(7aa)、VQVTST(6aa)にNeuAcα2−3Galβ1−3(NeuAcα2−6)GalNAcが結合した糖ペプチドが入手できた。特に、IASGEPTSTPT(11aa)、VESTVAT(7aa)はホエイプロテインアイソレイト20グラムから約15mgと約5mgと大量に入手できた。これらのNMRスペクトル(図7)から、この糖ペプチドが高純度かつ大量に得られている事が分かった。
本発明は、O結合型糖ペプチド・糖アミノ酸をホエイプロテインより簡便かつ収率よく製造する方法を提供する事ができる。また、調製したO結合型糖ペプチド・糖アミノ酸を原料として用いる事によって、糖タンパク質を合成する事も可能である。さらに、調製したO結合型糖ペプチド・糖アミノ酸を基質とした新規の糖鎖認識タンパク質・酵素の探索や機能解析などに適用でき、医薬品業界等においても利用可能である。

Claims (9)

  1. ホエイプロテインから下記式1で表されるO結合型糖鎖を含む糖ペプチド・糖アミノ酸を製造する方法であって、次のA〜E工程を含むO結合型糖ペプチド・糖アミノ酸の製造方法。
    A ホエイプロテインからプロテオースペプトン画分を抽出する工程、
    B 前記抽出物をプロテアーゼ酵素によって分解する工程、
    C 前記分解物を水溶性有機溶媒に添加してO結合型糖ペプチド・糖アミノ酸を沈殿させる工程、
    D 沈殿させたO結合型糖ペプチド・糖アミノ酸の濃縮工程
    E 濃縮工程で得た濃縮物を順相カラム及び/又は逆相カラムにより精製する工程
    式1:
    Figure 2020090357
    (式中、Xは、糖又は糖鎖。Yは、糖又は糖鎖)
  2. 前記ホエイプロテインが、ホエイを粉末化したホエイパウダー、ホエイプロテインを濃縮したホエイプロテインコンセントレイト(WPC)、ホエイプロテインアイソレイト(WPI)である請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記プロテアーゼ酵素が、トリプシンである請求項1に記載の製造方法。
  4. 前記水溶性有機溶媒が、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリルから選択される少なくとも1種類を含有する請求項1に記載の製造方法。
  5. 前記濃縮工程が、前記沈殿物をセファロース樹脂へ保持し、有機溶媒を含む水溶液で洗浄し、溶出させる事によって、O結合型糖ペプチド・糖アミノ酸を濃縮する工程である請求項1に記載の製造方法。
  6. 前記順相カラムがアミド基で表面を修飾された化学結合型シリカを充填されたカラムである請求項1に記載の製造方法。
  7. 前記逆相カラムがオクタデシルシリル基で表面を修飾された化学結合型シリカを充填されたカラムである請求項1に記載の製造方法。
  8. 前記O結合型糖鎖が下記式2〜7で表されるO結合型糖鎖である、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
    式2:
    NeuAcα2-3Galβ1-3(NeuAcα2-6)GalNAcα1-Ser/Thr
    式3:
    Galβ1-3(Galβ1-4GlcNAcβ1-6)GalNAcα1-Ser/Thr
    式4:
    Galβ1-3GalNAcα1-Ser/Thr
    式5:
    NeuAcα2-3Galβ1-3(Galβ1-4GlcNAcβ1-6)GalNAcα1-Ser/Thr
    式6:
    Galβ1-3(Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAcβ1-6)GalNAcα1-Ser/Thr
    式7:
    NeuAcα2-3Galβ1-3(Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAcβ1-6)GalNAcα1-Ser/Thr
  9. 前記O結合型糖ペプチドが下記式8〜19で表されるO結合型糖ペプチドである、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
    式8:
    Figure 2020090357
    式9:
    Figure 2020090357
    式10:
    Figure 2020090357
    式11:
    Figure 2020090357
    式12:
    Figure 2020090357
    式13:
    Figure 2020090357
    式14:
    Figure 2020090357
    式15:
    Figure 2020090357
    式16:
    Figure 2020090357
    式17:
    Figure 2020090357
    式18:
    Figure 2020090357
    式19:
    Figure 2020090357
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