JPWO2020080494A1 - クリティカル期の腎障害を判定するためのマーカー - Google Patents

クリティカル期の腎障害を判定するためのマーカー Download PDF

Info

Publication number
JPWO2020080494A1
JPWO2020080494A1 JP2020553316A JP2020553316A JPWO2020080494A1 JP WO2020080494 A1 JPWO2020080494 A1 JP WO2020080494A1 JP 2020553316 A JP2020553316 A JP 2020553316A JP 2020553316 A JP2020553316 A JP 2020553316A JP WO2020080494 A1 JPWO2020080494 A1 JP WO2020080494A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
serine
amount
blood
index value
renal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2020553316A
Other languages
English (en)
Inventor
真史 三田
真史 三田
隆志 和田
隆志 和田
賢吾 古市
賢吾 古市
宣彦 坂井
宣彦 坂井
恭宜 岩田
恭宜 岩田
信治 北島
信治 北島
祐介 中出
祐介 中出
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kanazawa University NUC
Original Assignee
Kanazawa University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kanazawa University NUC filed Critical Kanazawa University NUC
Publication of JPWO2020080494A1 publication Critical patent/JPWO2020080494A1/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/48Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/48Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
    • G01N33/50Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
    • G01N33/68Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving proteins, peptides or amino acids
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/48Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
    • G01N33/50Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
    • G01N33/70Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving creatine or creatinine

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Urology & Nephrology (AREA)
  • Hematology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Food Science & Technology (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)

Abstract

本発明は、血液中D−セリン量、またはD−セリン量及びL−セリン量に基づく指標値により、クリティカル期の腎障害を判定するためのマーカー、並びに当該マーカーを用いた手術・集中治療におけるクリティカル期の腎障害を決定するための分析方法、及び手術・集中治療におけるクリティカル期の腎障害を判定するための分析システムを提供する。

Description

本発明は、手術・集中治療におけるクリティカル期の腎障害を判定するためのマーカー、手術・集中治療におけるクリティカル期の腎障害を決定するための分析方法、及び手術・集中治療におけるクリティカル期の腎障害を判定するための分析システムに関する。
手術や集中治療医療の目的は、人体を構成する各臓器システムの重症機能不全に対して高度の医療技術を駆使してそれらを回復あるいは安定化させ、生命維持を図ることである。一方、腎臓の生体内における役割は、老廃物の排出、血圧の調節、体液量・イオン調整機能により体内の恒常性を維持することであり、手術や集中治療における腎疾患の合併は他の臓器不全を惹起・増幅する。手術や集中治療のクリティカル期の不安定な循環動態を呈する重篤な多臓器不全や敗血症において急激に腎機能が低下する状態を急性腎障害(AKI)といい、AKIを合併すれば死亡率が有意に上昇することが報告されている。医療の進歩とともに、これまではハイリスクであり侵襲的な治療の適応とされなかった超高齢者等の症例に対し、手術や集中治療が提供されるようになったこともクリティカル期のAKIが増加している一因となっている。集中治療室(ICU)コホートでは、40〜60%の症例にAKIが発症していることが検証されている。AKIは腎臓に生じた病態ではあるが、多臓器不全や敗血症といった全身性疾患の中での役割が注目されており、腎臓専門医以外が診療にあたることが多いという特徴もある。
AKIは、より早期に診断を行い治療介入することで予後を改善する必要があると認識され、RIFLE分類やAKIN診断基準、KDIGO診断基準が提唱されている。これらの分類や基準において採用されている血清クレアチニンは早期AKIにおける上昇感度が低いことが知られている。また、血清クレアチニンは筋肉量の影響を強く受けるため、超高齢者に多い羸痩や長期臥床の患者では特に不安定であり、特異的な診断マーカーとはいえないため(非特許文献1)、感度・特異度の異なる複数のバイオマーカーによる早期診断が望まれており、NGALやL−FABPが実用化されている。
従来、哺乳類の生体内には存在しないと考えられていたD-アミノ酸が、様々な組織に存在し生理機能を担うことが明らかにされてきている。また、ヒト血液中のD−アミノ酸のうち、D−セリン、D−アラニン、D−プロリン、D−グルタミン酸、D−アスパラギン酸の量が、血清クレアチニンの量と相関し、腎臓病の診断マーカーになり得ることが示されている(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。さらに、D−セリン、D−スレオニン、D−アラニン、D−アスパラギン、D−アロ−スレオニン、D−グルタミン、D−プロリン及びD−フェニルアラニンからなるグループから選択される1種類又は2種類以上のアミノ酸が、腎臓病の病態指標値とすることについて開示されている(特許文献1)。なお、マウス血液中のD−セリンが、虚血再灌流処理により上昇すること、及びマウス尿中のD−セリンが、虚血再灌流処理により減少することが示された(特許文献2、非特許文献6)。これらの文献は、マウスを対象とした急性腎障害モデルとして虚血再灌流処理を行っているものの、この処理で腎障害を受けたマウスはいずれも腎機能が回復することなく死亡することから、ヒトにおいて腎機能の可逆性があるAKIの病態を正確に反映するモデルではない。また、慢性腎臓病の予後予測について、血液中アミノ酸の光学異性体を識別した分析が行われている(非特許文献7)が、ヒトのAKIについて血液中のアミノ酸光学異性体を分析し、バイオマーカーを見出したという例はない。
国際公開第2013/140785号 国際公開第2015/087985号
Slocum, J. L.ら、Transl Res. 159 :277 (2012) KDIGO 2012 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease, Kidney International Supplements 1 (2013) Fukushima,T.ら、Biol. Pharm. Bull. 18: 1130(1995) Nagata.Y Viva Origino Vol.18(No.2) (1990)第15回学術講演会講演要旨集 Ishidaら、北里医学 23:51〜62 (1993) Sasabe J.ら、PLOS ONE (2014) vol. 9, Issue 1, e86504 Kimura T. ら、Scientific Reports 6:26137 DOI:10.1038/srep26137
血清クレアチニン等の既存の急性腎障害の診断マーカーに代わるか、又は補完するクリティカル期の腎障害の診断マーカーの提供を目的とする。
本発明者らは、集中治療室で加療中の患者における、クリティカル期の腎障害の診断に利用可能なバイオマーカーについて探索したところ、驚くべきことに血液中のD−セリン量又は血液中のD−セリン及びL−セリン量から求めた指標が、血清クレアチニンと極めて高い相関を示すことを見出した。これにより、血液中のD−セリン量又は血液中のD−セリン及びL−セリン量から求めた指標が、クリティカル期の腎障害の診断マーカーとなることを見出し、本発明に至った。したがって、本発明は以下の発明に関する:
[1] 血液中D−セリン量、またはD−セリン量及びL−セリン量に基づく指標値により、クリティカル期の腎障害を判定するためのマーカー。
[2] D−セリン量及びL−セリン量に基づく指標値が、比又は百分率である、項目1に記載のマーカー。
[3] 手術・集中治療を受ける患者において、クリティカル期の腎障害を判定する、項目1または2に記載のマーカー。
[4] 手術・集中治療を受ける患者が、脱水症、ネフローゼ症候群、糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎、血圧低下からなる群から選ばれ状態にある、項目1に記載のマーカー。
[5] 手術・集中治療を受ける患者における血液分析方法であって、
血液中のD−セリン量、又はD−セリン量及びL−セリン量を測定する工程、
D−セリン量、又はD−セリン量及びL−セリン量に基づく指標値と、クリティカル期の腎障害とを関連付ける工程
を含む血液分析方法。
[6] D−セリン量及びL−セリン量に基づく指標値が、比又は百分率である、項目5に記載の血液分析方法。
[7] 手術・集中治療を受ける患者が、脱水症、ネフローゼ症候群、糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎、血圧低下からなる群から選ばれ状態にある、項目5又は6に記載の血液分析方法。
[8] さらに腎機能マーカーとの組み合わせにより、クリティカル期の病期又は病態を特定するための、項目5〜7のいずれか一項に記載の血液分析方法。
[9] 前記腎機能マーカーが、尿中NGAL、血液中NGAL、尿中IL−18、尿中KIM−1、尿中L−FABP、血液中クレアチニン、尿中クレアチニン、血液中シスタチンC、尿蛋白、尿中アルブミン、尿中β2−MG、尿中α1−MG、尿中NAG、eGFR(クレアチニン、シスタチンC)、血液中尿素窒素からなる群から選ばれる少なくとも1のマーカーである、項目8に記載の血液分析方法。
[10] 手術・集中治療を受ける患者におけるクリティカル期の腎障害を診断し、そして治療する方法であって、 血液中のD−セリン量、又はD−セリン量及びL−セリン量を測定する工程、
D−セリン量、又はD−セリン量及びL−セリン量に基づく指標値からクリティカル期の腎障害を判断する工程、 クリティカル期の腎障害を患う患者に対して治療介入を行う工程、
を含む、前記方法。
[11] 前記治療介入が、生活習慣改善、食事指導、有効循環血液量や血圧の維持、腎機能代替療法、血圧管理、血糖値管理、免疫管理及び脂質管理からなる群から選ばれる少なくとも1である、項目10に記載の方法。
[12]前記治療介入として、利尿剤、髄質液、等張性晶質液、輸液、昇圧薬、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、交感神経遮断薬、SGLT2阻害薬、スルホニル尿素薬、チアゾリジン薬、ビグアナイド薬、α―グルコシダーゼ阻害薬、グリニド薬、インスリン製剤、NRF2活性化剤、免疫抑制剤、スタチン系薬剤、フィブラート系薬剤、貧血治療薬、エリスロポエチン製剤、HIF−1阻害剤、鉄剤、電解質調整薬、カルシウム受容体作動薬、リン吸着剤、尿毒素吸着剤、DPP4阻害薬、EPA製剤、ニコチン酸誘導体、コレステロールトランスポーター阻害剤、およびPCSK9阻害剤からなる群から選ばれる少なくとも1の薬剤を前記対象に投与することを含む、項目10又は11に記載の方法。
[13] 記憶部と、分析測定部と、データ処理部と、病態情報出力部とを含む、手術・集中治療を受ける患者におけるクリティカル期の腎障害を決定させるための血液分析システムであって、
前記記憶部は、クリティカル期の腎障害を判定するための閾値を記憶し、
前記分析測定部は、前記血液中のD−セリン量、又はD−セリン量及びL−セリン量を分離し定量し、
前記データ処理部は、前記入院患者のD−セリン量、又はD−セリン量及びL−セリン量に基づく指標値を、記憶部に記憶された前記閾値と比較し、クリティカル期の腎障害を判定し、
前記病態情報出力部はクリティカル期の腎障害ついての情報を出力する、血液分析システム。
[14] D−セリン量及びL−セリン量に基づく指標値が、比又は百分率である、項目13に記載の血液分析システム。
[15] 手術・集中治療を受ける患者が、脱水症、ネフローゼ症候群、糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎、血圧低下からなる群から選ばれ状態にある、項目13又は14に記載の血液分析システム。
[16] 入力部、出力部、データ処理部、記憶部とを含む情報処理装置にクリティカル期の腎障害を決定させるプログラムであって以下の:
入力部から入力された指標値の算出式、及び指標値の閾値を記憶部に記憶させ、
入力部から入力されたD−セリン、又はD−セリン及びL−セリンの血液中の量を記憶部に記憶させ、
データ処理部に、記憶されたD,L−セリンの血液中量及び指標値の算出式を読み出し、指標値を算出させて記憶部に記憶させ、
データ処理部に、記憶された指標値と、指標値の閾値を読み出し、指標値と閾値とを比較し、クリティカル期の腎障害の有無を出力部に出力させる
ことを前記情報処理装置に実行させるための指令を含む、前記プログラム。
本発明により、クリティカル期の腎障害を判定することができる。
図1Aは、血液中D‐セリン/L−セリン比と、血清クレアチニンとの相関を示す散布図であり、図1Bは、血液中D‐セリン/L−セリン比と、血清クレアチニンから求めた推算糸球体濾過量(eGFR)との相関を示す散布図である。 図2Aは、血液中D‐セリン量と、血清クレアチニンとの相関を示す散布図であり、図2Bは、血液中D‐セリン量と、血清クレアチニンから求めた推算糸球体濾過量(eGFR)との相関を示す散布図である。 図3は、本発明の試料分析システムの構成図を示す。 図4は、本発明のプログラムによる糸球体濾過量を決定するための動作の例を示すフローチャートである。
本発明は、血液中D−セリン量、またはD−セリン量及びL−セリン量に基づく指標値によりクリティカル期の腎障害を判定するためのマーカーに関し、また入院患者や手術・集中治療時における血液分析方法、クリティカル期の腎障害ついての情報を出力する血液分析システム、及びその作動プログラムに関する。
クリティカル期の腎障害とは、急激な腎機能低下に対して腎機能代替療法や血圧管理、薬剤による介入により尿毒症等の症状をコントロールすることにより生命予後を改善できる状態をいう。クリティカル期の腎障害は、手術や集中治療における腎障害ということもでき、また多臓器不全や敗血症に合併する腎障害ということもできる。
集中治療室(ICU)に入院する患者は、心臓疾患(心不全、不整脈、弁疾患、冠動脈疾患、大動脈疾患等)、消化器疾患(食道癌、膵癌、肝癌等)、脳疾患(脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血、痙攣、癲癇、脳腫瘍、脳動脈瘤等)、頸椎疾患、腎移植、肺炎、敗血症等、急激な脱水や血圧低下をともない、腎障害が生じると更なる他の臓器不全を惹起及び/又は増幅する。このように、集中治療における急性腎障害(AKI)は、単一の臓器障害として発症しても、多臓器不全を合併しうるし、また多臓器不全の一分症としても生じうる。
クリティカル期の腎障害の多くは、KDIGOガイドラインにより、尿量の低下及び血清クレアチニンの上昇により診断されている。具体的には、下記の表に従い急性腎臓病(AKI)の分類がされている。
Figure 2020080494

一方で、血清クレアチニンは、筋肉のクレアチンリン酸の代謝産物であり、その量は筋肉量に依存していることが知られている。血清クレアチニンは、産生と排泄が定常状態ではない急性腎障害の発症時には、鋭敏に精確な腎機能変化を反映せず、障害の早期には増加しないことが指摘されている。また、これまで様々な治療介入試験が失敗に終わっている原因の一因として、血清クレアチニン基準によるAKI診断の精度不足によることが推察されている。
本発明の血液中D−セリン量、またはD−セリン量及びL−セリン量に基づく指標値は、集中治療を受ける患者の血清クレアチニンと高い相関を有していた。このことは、これらの指標値が、クリティカル期の腎障害を判定するためのマーカーとなることを示す。通常、健常者では血液中のD−セリン量は、セリンラセマーゼやD−アミノ酸オキシダーゼ等の酵素による代謝システム(合成、分解)により厳密に制御されている一方で、腎臓の糸球体濾過や再吸収能力が変化した場合に変動することが知られており、血清クレアチニンとは異なった機構でより鋭敏なマーカーとなりうる。クリティカル期の腎障害は、腎臓専門医が対処する場合が少ない中で、早期の適切な介入が生命予後に大きな影響を与えるため、感度が高く変動機構が異なる複数のマーカーを用いたパネル化による診断は有用である。
急性腎障害の原因は、腎前性、腎性、及び腎後性の原因に大別される。腎前性の原因とは、全身性の疾患により、腎臓への血流が低下することにより引き起こされる場合のことをいい、脱水、ショック、熱傷、大量出血、血圧低下、うっ血性心不全、肝硬変、腎動脈狭窄症等により生じうる。腎性の原因とは、腎臓自体に原因がある場合をいい、腎臓での血流障害、糸球体疾患、尿細管・間質疾患が挙げられる。腎臓での血流障害を引き起こす疾患として、両側腎梗塞、腎動脈血栓、播種性血管内凝固症候群、血栓性血小板減少性紫斑病、溶血性尿毒症症候群等が挙げられる。糸球体疾患としては、ネフローゼ症候群、急性糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎、ループス腎炎(全身性エリテマトーデス)、ANCA関連血管炎、結節性多発性動脈炎等が挙げられる。これらの原因のいずれもが、クリティカル期の腎障害を引き起こす要因となりうるが、特に腎前性、例えば脱水症状、血圧低下、出血、心不全による虚血や、腎性、例えばネフローゼ症候群、急性糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎、ループス腎炎が、クリティカル期の腎障害の主要因となりうる。
本発明で用いられる指標値は、血液中D−セリン量自体を用いてもよいし、又はD−セリン量及びL−セリン量に基づく指標値を用いてもよい。D−セリン量及びL−セリン量に基づく指標値とは、一例として、D−セリン量とL−セリン量の比(D−Ser/L−Ser又はL−Ser/D−Ser)、D−セリン量の百分率(D−Ser/(D−Ser+L−Ser)×100等を用いることができるが、クリティカル期の腎障害を判定できる限りにおいて、任意の定数又は年齢、体重、性別、BMI、eGFR等の任意の変数を加算、減算、積算、及び/又は除算してもよい。指標値として、アミノ酸の光学異性体との量比を用いた場合、試料の量や体積による補正が不要になるという利点がある。
本発明の指標値を、予め設定しておいた閾値と比較することで、クリティカル期の腎障害を判定することができる。さらに数段階の閾値をもちいることで、病期を決定することもできる。閾値は、大規模調査を行えば適宜設定することができる。また、血清クレアチニン又は推算糸球体濾過量について現在用いられている基準に対応させることで設定することもできる。より感度よくクリティカル期の腎障害を判定する観点からは、D−セリン量、又はD−セリン量及びL−セリン量に基づく指標値について大規模調査を実施することが好ましい。
本発明により、クリティカル期の腎障害を判定する対象は、任意の対象であってよいが、クリティカル期の腎障害を判定する観点から、手術・集中治療を受ける患者が好ましい。集中治療を受ける患者としては、病棟で重篤な症状を表した患者、救急患者のうち継続的な状態管理が必要な患者、手術後に高度な状態管理が必要な患者等が挙げられる。血液試料は、手術前、術中、及び術後の任意のタイミングで取得されうる。経時的に血液試料を取得してもよい。
本発明の別の態様では、手術・集中治療における血液分析方法であって、
血液中のD−セリン量、又はD−セリン量及びL−セリン量を測定する工程、
D−セリン量、又はD−セリン量及びL−セリン量に基づく指標値と、クリティカル期の腎障害とを関連付ける工程
を含む血液分析方法に関する。
本発明における分析方法は、医師が診断を行うための予備的データの提供を行うことができ、診断の予備的方法ということもできる。このような予備的データを用いて医師が急性腎障害を診断することができるが、かかる分析方法は、医師ではない医療補助者等により行われてもよいし、分析機関等が行うこともできる。したがって、本発明の分析方法は、診断の予備的方法と言うこともできる。この分析方法は、指標値と、クリティカル期の腎障害の病態とを関連づける工程をさらに含んでいてもよい。このような分析方法は、分析会社や分析技術者により行われて、腎障害の病態と関連づけられた結果が提供されてもよい。より好ましくは、入院患者、特に手術・集中治療を受ける患者において、経時的に分析される。
本発明のさらなる態様では、本発明のマーカーを、さらに腎機能マーカーとの組み合わせることにより、クリティカル期の病期又は病態を特定することができる。組み合わせに用いる腎機能マーカーは、既知又は開発中のマーカーであってよく、一例として、尿中NGAL、血液中NGAL、尿中IL−18、尿中KIM−1、尿中L−FABP、血液中クレアチニン、尿中クレアチニン、血液中シスタチンC、尿蛋白、尿中アルブミン、尿中β2−MG、尿中α1−MG、尿中NAG、eGFR(クレアチニン、シスタチンC)、血液中尿素窒素からなる群から選ばれる少なくとも1のマーカーを用いることができる。複数のマーカーを用いることにより、腎障害開始期、腎障害拡大期、腎障害持続期、及び腎障害修復期を適切に判定することが可能になる。
指標値と、クリティカル期の腎障害とを関連付ける工程は、D−セリン量、又はD−セリン量及びL−セリン量に基づく指標値についての閾値と、算出された指標値とを比較し、閾値を超えた場合に、クリティカル期の腎障害を伴うと決定することができる。
本発明において血液中のアミノ酸量は、それぞれ光学異性体を分離して測定されるアミノ酸の量であり、特定の血液量中のアミノ酸量のことを指してもよく、濃度で表されてもよい。血液中のアミノ酸量は、採取された血液において、遠心分離、沈降分離、あるいは分析のための前処理が行われた試料における量として測定される。したがって、血液中のアミノ酸量は、採取された全血、血清、血漿等の血液に由来する血液試料における量として測定されうる。一例として、HPLCを用いた分析の場合、所定量の血液に含まれる特定の光学異性体のアミノ酸は、クロマトグラムで表され、ピークの高さ・面積・形状について標準品との比較やキャリブレーションによる解析によって定量されうる。また、酵素法では、標準品の検量線を用いた定量解析により、アミノ酸濃度を算出可能である。
D−セリン及びL−セリン量は、任意の方法によって測定することができ、例えばキラルカラムクロマトグラフィーや、酵素法を用いた測定、さらにはアミノ酸の光学異性体を識別するモノクローナル抗体を用いる免疫学的手法によって定量することができる。本発明における試料中のD−セリン及びL−セリン量の測定は、当業者に周知ないかなる方法を用いて実施しても構わない。例えば、クロマトグラフィー法や酵素法(Y. Nagata et al., Clinical Science, 73 (1987), 105. Analytical Biochemistry, 150 (1985), 238., A. D'Aniello et al., Comparative Biochemistry and Physiology Part B, 66 (1980), 319. Journal of Neurochemistry, 29 (1977), 1053., A. Berneman et al., Journal of Microbial & Biochemical Technology, 2 (2010), 139., W. G. Gutheil et al., Analytical Biochemistry, 287 (2000), 196., G. Molla et al., Methods in Molecular Biology, 794 (2012), 273., T. Ito et al., Analytical Biochemistry, 371 (2007), 167. 等)、抗体法(T. Ohgusu et al., Analytical Biochemistry, 357 (2006), 15.,等 )、ガスクロマトグラフィー(GC)(H. Hasegawa et al., Journal of Mass Spectrometry, 46 (2011), 502., M. C. Waldhier et al., Analytical and Bioanalytical Chemistry, 394 (2009), 695., A. Hashimoto, T. Nishikawa et al., FEBS Letters, 296 (1992), 33., H. Bruckner and A. Schieber, Biomedical Chromatography, 15 (2001), 166. , M. Junge et al., Chirality, 19 (2007), 228., M. C. Waldhier et al., Journal of Chromatography A, 1218 (2011), 4537. 等)、キャピラリー電気泳動法(CE)(H. Miao et al., Analytical Chemistry, 77 (2005), 7190., D. L. Kirschner et al., Analytical Chemistry, 79 (2007), 736., F. Kitagawa, K. Otsuka, Journal of Chromatography B, 879 (2011), 3078., G. Thorsen and J. Bergquist, Journal of Chromatography B, 745 (2000), 389. 等)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(N. Nimura and T. Kinoshita, Journal of Chromatography, 352 (1986), 169., A. Hashimoto et al., Journal of Chromatography, 582 (1992), 41., H. Bruckner et al., Journal of Chromatography A, 666 (1994), 259., N. Nimura et al., Analytical Biochemistry, 315 (2003), 262., C. Muller et al., Journal of Chromatography A, 1324 (2014), 109., S. Einarsson et al., Analytical Chemistry, 59 (1987), 1191., E. Okuma and H. Abe, Journal of Chromatography B, 660 (1994), 243., Y. Gogami et al., Journal of Chromatography B, 879 (2011), 3259., Y. Nagata et al., Journal of Chromatography, 575 (1992), 147., S. A. Fuchs et al., Clinical Chemistry, 54 (2008), 1443., D. Gordes et al., Amino Acids, 40 (2011), 553., D. Jin et al., Analytical Biochemistry, 269 (1999), 124., J. Z. Min et al., Journal of Chromatography B, 879 (2011), 3220., T. Sakamoto et al., Analytical and Bioanalytical Chemistry, 408 (2016), 517., W. F. Visser et al., Journal of Chromatography A, 1218 (2011), 7130., Y. Xing et al., Analytical and Bioanalytical Chemistry, 408 (2016), 141., K. Imai et al., Biomedical Chromatography, 9 (1995), 106., T. Fukushima et al., Biomedical Chromatography, 9 (1995), 10., R. J. Reischl et al., Journal of Chromatography A, 1218 (2011), 8379., R. J. Reischl and W. Lindner, Journal of Chromatography A, 1269 (2012), 262., S. Karakawa et al., Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis, 115 (2015), 123., 等)がある。
本発明における光学異性体の分離分析系は、複数の分離分析を組み合わせてもよい。より具体的に、光学異性体を有する成分を含む試料を、移動相としての第一の液体と共に、固定相としての第一のカラム充填剤に通じて、前記試料の前記成分を分離するステップ、前記試料の前記成分の各々をマルチループユニットにおいて個別に保持するステップ、前記マルチループユニットにおいて個別に保持された前記試料の前記成分の各々を、移動相としての第二の液体と共に、固定相としての光学活性中心を有する第二のカラム充填剤に流路を通じて供給し、前記試料の成分の各々に含まれる前記光学異性体を分割するステップ、及び前記試料の成分の各々に含まれる前記光学異性体を検出するステップを含むことを特徴とする光学異性体の分析方法を用いることにより、試料中のD-/L-アミノ酸量を測定することができる(特許第4291628号)。HPLC分析では、予めo−フタルアルデヒド(OPA)や4−フルオロ−7−ニトロ−2,1,3−ベンゾキサジアゾール(NBD−F)のような蛍光試薬でD−及びL−アミノ酸を誘導体化したり、N−tert−ブチルオキシカルボニル−L−システイン(Boc−L−Cys)等を用いてジアステレオマー化する場合がある(浜瀬健司及び財津潔、分析化学、53巻、677−690(2004))。代替的には、アミノ酸の光学異性体を識別するモノクローナル抗体、例えばD−セリン、L−セリン等に特異的に結合するモノクローナル抗体を用いる免疫学的手法によってD−アミノ酸を測定することができる。また、D体及びL体の合計量を指標とする場合、D体及びL体を分離して分析する必要はなく、D体及びL体を区別せずにアミノ酸を分析することもできる。その場合も酵素法、抗体法、GC、CE、HPLCで分離及び定量することができる。
図2は、本発明の試料分析システムの構成図である。図2に示す本発明の試料分析システム10は、本発明の分析方法及び検査方法を実施することができるように構成される。このような試料分析システム10は、記憶部11と、入力部12、分析測定部13と、データ処理部14と、出力部15とを含んでおり、血液試料を分析し、クリティカル期の腎障害についての情報を出力することができる。より具体的に、本発明の試料分析システム10において、
記憶部11は、入力部12から入力されたクリティカル期の腎障害を判別するための指標値の閾値を記憶し、
分析測定部13は、血液中のD−セリン量、又はD−セリン量及びL−セリン量を分離定量し、
データ処理部14は、血液中のD−セリン量、又はD−セリン量及びL−セリン量に基づき指標値を算出し、
データ処理部14は、記憶部11に記憶された閾値と比較することにより、クリティカル期の腎障害の情報を判別し、
出力部15がクリティカル期の腎障害ついての情報を出力する、血液分析システムに関する。
記憶部11は、RAM、ROM、フラッシュメモリ等のメモリ装置、ハードディスクドライブ等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。記憶部は、分析測定部で測定したデータ、入力部から入力されたデータ及び指示、データ処理部で行った演算処理結果等の他、情報処理装置の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース等を記憶する。コンピュータプログラムは、例えばCD−ROM、DVD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体や、インターネットを介してインストールされてもよい。コンピュータプログラムは、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部にインストールされる。
入力部12は、インターフェイス等であり、キーボード、マウス等の操作部も含む。これにより、入力部は、分析測定部13で測定したデータ、データ処理部14で行う演算処理の指示等を入力することができる。また、入力部12は、例えば分析測定部13が外部にある場合は、操作部とは別に、測定したデータ等をネットワークや記憶媒体を介して入力することができるインターフェイス部を含んでもよい。
分析測定部13は、血液試料におけるアミノ酸のD体及びL体の量の測定工程を行う。したがって、分析測定部13は、アミノ酸のD体及びL体の分離及び測定を可能にする構成を有する。アミノ酸は、1つずつ分析されてもよいが、一部又は全ての種類のアミノ酸についてまとめて分析することができる。分析測定部13は、以下のものに限定されることを意図するものではないが、例えば試料導入部、光学分割カラム、検出部を備えた高速液体クロマトグラフィーシステムであってもよい。分析測定部13は、試料分析システムとは別に構成されていてもよく、測定したデータ等をネットワークや記憶媒体を用いて入力部12を介して入力してもよい。本発明の分析測定部13は、さらにサンプル取得部を備えてよく、サンプル取得部から、経時的にサンプルが取得され、取得されたサンプルが分析測定部に供されうる。
データ処理部14は、記憶部に記憶しているプログラムに従って、分析測定部13で測定され記憶部11に記憶されたデータに対して、各種の演算処理を実行する。演算処理は、データ処理部に含まれるプロセッサ又はCPUによりおこなわれる。このプロセッサ又はCPUは、分析測定部13、入力部12、記憶部11、及び出力部15を制御する機能モジュールを含み、各種の制御を行うことができる。これらの各部は、それぞれ独立した集積回路、マイクロプロセッサ、ファームウェア等で構成されてもよい。データ処理部14は、D−セリン量、又はD−セリン量及びL−セリン量に基づく指標値を計算式にしたがって算出し、記憶部に記憶された指標値の閾値と比較し、クリティカル期の腎障害を判定する。
出力部15は、データ処理部で演算処理を行った結果であるクリティカル期の腎障害の有無を出力するように構成さる。出力部15は、演算処理の結果を直接表示する液晶ディスプレイ等の表示装置、プリンタ等の出力手段であってもよいし、外部記憶装置への出力又はネットワークを介して出力するためのインターフェイス部であってもよい。
本発明のさらに別の態様では、上述の血液分析システムや情報処理装置を作動するプログラムに関する。図3は、プログラムにクリティカル期の腎障害の有無や程度を出力するための動作の例を示すフローチャートである。具体的に、本発明のプログラムは、入力部、出力部、データ処理部、記憶部とを含む情報処理装置に糸球体濾過量を決定させるプログラムである。本発明のプログラムは、以下の:
入力部から入力された指標値の算出式、及び指標値の閾値を記憶部に記憶させ、
入力部から入力されたD−セリン、又はD−セリン及びL−セリンの血液中の量を記憶部に記憶させ、
データ処理部に、記憶されたD,L−セリンの血液中の量及び指標値の算出式を読み出し、指標値を算出させて記憶部に記憶させ、
データ処理部に、記憶された指標値と、指標値の閾値を読み出し、指標値と閾値とを比較し、クリティカル期の腎障害の有無や程度を出力部に出力させる
ことを前記情報処理装置に実行させるための指令を含む。本発明のプログラムは、記憶媒体に格納されてもよいし、インターネット又はLAN等の電気通信回線を介して提供されてもよい。
情報処理装置が、分析測定部を備える場合、入力部からD−セリン量の値を入力させる代わりに、分析測定部が、血液試料から当該値を測定し記憶部に記憶させることを情報処理装置に実行させるための指令を含んでもよい。
本発明により、対象が、クリティカル期の腎障害を患っていることが明らかになった場合、バイオマーカーのモニタリングにより、治療方針の決定や治療効果の判定を行うことができる。以下のものに限定されるものではないが、クリティカル期の腎障害の発症を判定された場合には、有効循環血液量と血圧を維持するように治療介入される。また、腎毒性を有する薬物を投与していた場合には、薬物投与の中止がなされうる。有効循環血液量や血圧を維持するため、利尿剤、髄質液、等張性晶質液、輸液、昇圧薬(ノルアドレナリン、シネフィリン、フェニレフリン、メトキサミン、メフェンテルミン等)の投与がされてもよい。さらに、治療介入として、生活習慣改善、食事指導、血圧管理、貧血管理、電解質管理、尿毒素管理、血糖値管理、免疫管理、脂質管理のために指導されるか又は投薬による治療が行われうる。生活習慣改善としては、禁煙及びBMI値の25未満への減量等が推奨される。食事指導としては、減塩及びタンパク質制限が行われる。血圧管理としては、130/80mmHg以下となるように、管理され、場合により高血圧治療薬が投与されうる。高血圧治療薬としては、利尿薬(サイアザイド系利尿薬、例えばトリクロルメチアジド、ベンチルヒドロクロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、サイアザイド系類似利尿薬、例えばメチクラン、インダバミド、トリバミド、メフルシド、ループ利尿薬、例えばフロセミド、カリウム保持性利尿薬・アルドステロン拮抗薬、例えばトリアムテレン、スピロノラクトン、エプレレノン等)、カルシウム拮抗薬(ジヒドロピリジン系、例えばニフェジピン、アムロジピン、エホニジピン、シルニジピン、ニカルジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニルバジピン、バルニジピン、フェロジピン、ベニジピン、マニジピン、アゼルニジピン、アラニジピン、ベンゾチアゼピン系、ジルチアゼム等)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(カプトプリル、エナラプリル、アセラプリル、デラプリル、シラザプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、イミダプリル、テモカプリル、キナプリル、トランドラプリル、ベリンドプリルエルブミン等)、アンジオテンシン受容体拮抗薬(アンジオテンシンII受容体拮抗薬、例えばロサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、オルメサルタン、イルベサルタン、アジルサルタン等)、交感神経遮断薬(β遮断薬、例えばアテノロール、ビソプロロール、ベタキソロール、メトプロロール、アセプトロール、セリプロロール、プロプラノロール、ナドロール、カルテオロール、ピンドロール、ニプラジロール、アモスラロール、アロチノロール、カルベジロール、ラベタロール、ベバントロール、ウラピジル、テラゾシン、ブラゾシン、ドキサゾシン、ブナゾシン等)等が用いられうる。貧血治療薬としてはエリスロポエチン製剤、鉄剤、HIF−1阻害剤等が用いられる。電解質調整薬としてカルシウム受容体作動薬(シナカルセト、エテルカルセチド等)、リン吸着剤が用いられる。尿毒素吸着剤として活性炭等が用いられる。血糖値は、Hba1c6.9%未満になるように管理され、場合により血糖降下薬が投与される。血糖降下薬として、SGLT2阻害薬(イプラグリフロジン、ダパグリフロジン、ルセオグリフロジン、トホグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン等)、DPP4阻害薬(シタグリプチンリン酸、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、アログリプチン、リナグリプチン、テネリグリプチン、トレラグリプチン、アナグリプチン、オマリグリプチン等)、スルホニル尿素薬(トルブタミド、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、グリクロピラミド、グリベンクラミド、グリクラジド、グリメピリド等)、チアゾリジン薬(ピオグリタゾン等)、ビグアナイド薬(メトホルミン、ブホルミン等)、α―グルコシダーゼ阻害薬(アカルボース、ボグリボース、ミグリトール等)、グリニド薬(ナテグリニド、ミチグリニド、レパグリニド等)インスリン製剤、NRF2活性化剤(バルドキソロンメチル等)等が用いられる。免疫管理としては、免疫抑制剤(ステロイド類、タクロリムス、抗CD20抗体、シクロヘキサミド、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)等)が用いられる。脂質管理では、LDL−C120mg/dL未満となるよう管理され、場合により脂質異常症治療薬、例えばスタチン系薬剤(ロスバスタチン、ピタバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン等)、フィブラート系薬剤(クロフィブラート、ベザフィブラート、フェノフィブラート、クリノフィブラート等)、ニコチン酸誘導体(ニコチン酸トコレロール、ニコモール、ニセリトロール等)、コレステロールトランスポーター阻害剤(エゼチミブ等)、PCSK9阻害剤(エボロクマブ等)EPA製剤等が用いられる。いずれの薬剤も剤形は単剤でも合剤でもよい。
腎機能の低下が著しく生命予後に危険が及ぶ場合は、腹膜透析、血液透析、持続的血液濾過透析、血液アフェレーシス(血漿交換、血漿吸着等)や腎移植のような腎代替療法が施される。
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
材料及び方法
材料
アミノ酸の標準品及びHPLC級のアセトニトリルはナカライテスク(京都)から購入された。HPLC級のメタノール、トリフルオロ酢酸、ホウ酸等は和光純薬(大阪)から購入された。水はMill−QグラジエントA10システムを用いて精製された。
被験者集合
2013年〜2017年に、金沢大学病院に入院し、急性腎臓病(AKI)を患い集中治療を受けた患者において、血液試料を取得した。免疫抑制剤及び抗生物質での治療を受けた患者を除いた。表2は、急性腎臓病患者の臨床情報は下記の通りである。すべての患者について、ベースライン時及びAKI時の血清クレアチニン、尿たんぱく、尿潜血、糖尿病の有無を検査した。また、下記のD−アミノ酸の測定法に沿って、血液中D−Ser濃度及びD−Ser/L−Ser比を測定した。すべての患者は、AKI時の治療介入により、生命予後は良好であった。
Figure 2020080494
血液中D−アミノ酸の測定
サンプル調製
ヒト血漿からのサンプル調製を、下記のとおり行った:
20倍体積のメタノールを血漿に添加し、完全に混合した。遠心後、メタノールホモジネートから得られた上清の10μLを褐色チューブに移し、減圧乾燥させた。残渣に、20μLの200mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)及び5μLの蛍光標識試薬(無水MeCN中に40mMの4−フルオロ―7−ニトロ−2,1,3−ベンゾオキサジアゾール(NBD−F))を添加し、次いで60℃で2分加熱した。75μLの0.1%TFA水溶液(v/v)を加えて反応を止め、そして2μLの反応混合液を2次元HPLCに供した。
2次元HPLCによるアミノ酸光学異性体の定量
アミノ酸光学異性体を、以下の2次元HPLCシステムを用いて定量した。アミノ酸のNBD誘導体を、逆相カラム(KSAA RP、1.0mmi.d.×400mm;株式会社資生堂)を用い移動相(5〜35%MeCN、0〜20%THF、及び0.05%TFA)で分離、溶出した。カラム温度は45℃、移動相の流速は25μL/分に設定した。分離したアミノ酸の画分を、マルチループバルブを用いて分取し、連続的にキラルカラム(KSAACSP−001S,1.5mmi.d.×250mm;資生堂)で光学分割した。移動相として、アミノ酸の保持に応じて、クエン酸(0〜10mM)又はギ酸(0〜4%)含むMeOH−MeCNの混合用液を用いた。NBD−アミノ酸は470nmの励起光を用い、530nmで蛍光検出した。NBD−アミノ酸の保持時間は、アミノ酸光学異性体の標準品により同定し、検量線により定量した。
AKI時の血清クレアチニンと、D−セリン/L−セリン比とを散布図にプロットし、相関係数を求めたところ、R=0.941であった(図1A)。また、AKI時の血清クレアチニンから求めた推算糸球体濾過量と、D−セリン/L−セリン比とを散布図にプロットし、相関係数を求めたところ、R=0.924であった(図1B)。また、AKI時の血清クレアチニンと、D−セリン量と散布図にプロットし、相関係数を求めたところR=0.87であった(図2A)。AKI時の血清クレアチニンから求めた推算糸球体濾過量と、D−セリン量とを散布図にプロットし、相関係数を求めたところ、R=0.872であった(図2B)。これらの結果から、クリティカル期において腎障害のマーカーである血清クレアチニンと同様に、血液中D−セリン/L−セリン比及びD−セリン量をマーカーとして使用できる。

Claims (13)

  1. 血液中D−セリン量、またはD−セリン量及びL−セリン量に基づく指標値により、クリティカル期の腎障害を判定するためのマーカー。
  2. D−セリン量及びL−セリン量に基づく指標値が、比又は百分率である、請求項1に記載のマーカー。
  3. 手術・集中治療を受ける患者において、クリティカル期の腎障害を判定する、請求項1または2に記載のマーカー。
  4. 手術・集中治療を受ける患者が、脱水症、ネフローゼ症候群、糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎、血圧低下からなる群から選ばれ状態にある、請求項1に記載のマーカー。
  5. 手術・集中治療を受ける患者における血液分析方法であって、
    血液中のD−セリン量、又はD−セリン量及びL−セリン量を測定する工程、
    D−セリン量、又はD−セリン量及びL−セリン量に基づく指標値と、クリティカル期の腎障害とを関連付ける工程
    を含む血液分析方法。
  6. D−セリン量及びL−セリン量に基づく指標値が、比又は百分率である、請求項5に記載の血液分析方法。
  7. 手術・集中治療を受ける患者が、脱水症、ネフローゼ症候群、糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎、血圧低下からなる群から選ばれ状態にある、請求項5又は6に記載の血液分析方法。
  8. さらに腎機能マーカーとの組み合わせにより、クリティカル期の病期又は病態を特定するための、請求項5〜7のいずれか一項に記載の血液分析方法。
  9. 前記腎機能マーカーが、尿中NGAL、血液中NGAL、尿中IL−18、尿中KIM−1、尿中L−FABP、血液中クレアチニン、尿中クレアチニン、血液中シスタチンC、尿蛋白、尿中アルブミン、尿中β2−MG、尿中α1−MG、尿中NAG、eGFR(クレアチニン、シスタチンC)、血液中尿素窒素からなる群から選ばれる少なくとも1のマーカーである、請求項8に記載の血液分析方法。
  10. 記憶部と、分析測定部と、データ処理部と、病態情報出力部とを含む、手術・集中治療を受ける患者におけるクリティカル期の腎障害の判定のための血液分析システムであって、
    前記記憶部は、クリティカル期の腎障害を判定するための閾値を記憶し、
    前記分析測定部は、前記血液中のD−セリン量、又はD−セリン量及びL−セリン量を分離し定量し、
    前記データ処理部は、前記患者のD−セリン量、又はD−セリン量及びL−セリン量に基づく指標値を、記憶部に記憶された前記閾値と比較し、クリティカル期の腎障害を判定し、
    前記病態情報出力部はクリティカル期の腎障害ついての情報を出力する、血液分析システム。
  11. D−セリン量及びL−セリン量に基づく指標値が、比又は百分率である、請求項10に記載の血液分析システム。
  12. 手術・集中治療を受ける患者が、脱水症、ネフローゼ症候群、糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎、血圧低下からなる群から選ばれ状態にある、請求項10又は11に記載の血液分析システム。
  13. 入力部、出力部、データ処理部、記憶部とを含む情報処理装置にクリティカル期の腎障害を決定させるプログラムであって以下の:
    入力部から入力された指標値の算出式、及び指標値の閾値を記憶部に記憶させ、
    入力部から入力されたD−セリン、又はD−セリン及びL−セリンの血液中の量を記憶部に記憶させ、
    データ処理部に、記憶されたD,L−セリンの血液中の量及び指標値の算出式を読み出し、指標値を算出させて記憶部に記憶させ、
    データ処理部に、記憶された指標値と、指標値の閾値を読み出し、指標値と閾値とを比較し、クリティカル期の腎障害の有無を出力部に出力させる
    ことを前記情報処理装置に実行させるための指令を含む、前記プログラム。
JP2020553316A 2018-10-17 2019-10-17 クリティカル期の腎障害を判定するためのマーカー Pending JPWO2020080494A1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018196249 2018-10-17
JP2018196249 2018-10-17
PCT/JP2019/040983 WO2020080494A1 (ja) 2018-10-17 2019-10-17 クリティカル期の腎障害を判定するためのマーカー

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPWO2020080494A1 true JPWO2020080494A1 (ja) 2021-09-09

Family

ID=70283876

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020553316A Pending JPWO2020080494A1 (ja) 2018-10-17 2019-10-17 クリティカル期の腎障害を判定するためのマーカー

Country Status (3)

Country Link
JP (1) JPWO2020080494A1 (ja)
TW (1) TW202107085A (ja)
WO (1) WO2020080494A1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
RU2744765C1 (ru) * 2020-06-02 2021-03-15 Федеральное государственное бюджетное образовательное учреждение высшего образования «Национальный исследовательский Мордовский государственный университет им. Н.П. Огарёва» Способ прогнозирования острого почечного повреждения у пациентов с экстренной урологической и хирургической патологией

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2015087985A1 (ja) * 2013-12-11 2015-06-18 株式会社資生堂 腎不全の早期診断マーカー

Also Published As

Publication number Publication date
TW202107085A (zh) 2021-02-16
WO2020080494A1 (ja) 2020-04-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Fan et al. Serum indoxyl sulfate predicts adverse cardiovascular events in patients with chronic kidney disease
JP7123329B2 (ja) 腎臓病の予後予測方法及びシステム
Hung et al. Amino acids and wound healing in people with limb-threatening diabetic foot ulcers
US20180252730A1 (en) Disease-state biomarker for renal disease
Thornalley Measurement of protein glycation, glycated peptides, and glycation free adducts
JP6993654B2 (ja) 腎機能を推定する方法及びシステム
WO2020196436A1 (ja) 腎病態の評価を補助する方法、腎病態の評価システム及び腎病態の評価プログラム
JPWO2020080494A1 (ja) クリティカル期の腎障害を判定するためのマーカー
WO2020196437A1 (ja) 腎病態の評価を補助する方法、腎病態の評価システム及び腎病態の評価プログラム
JPWO2020080488A1 (ja) クリティカル期の腎障害を判定するためのマーカー
JPWO2020080482A1 (ja) 血液中のシスタチンc量に基づく腎機能検査結果の妥当性を検定する方法
JP7471581B2 (ja) 腎臓病の病態バイオマーカー
JPWO2020080491A1 (ja) 血液中のクレアチニン量に基づく腎機能検査結果の妥当性を検定する方法
JP6868878B2 (ja) 糸球体濾過能力の決定方法
WO2014111443A1 (en) Prediction of kidney disease progression using homoarginine as a biomarker

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20221014

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230919

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20240312