JPWO2020071524A1 - 発現自動制御コロニーアッセイ法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、コロニー形成後に自動的に発現誘導し、発現後には自動的に発現の停止が可能なコロニーアッセイ法であり、抗体などのターゲットを認識する機能的なタンパク質の発現スクリーニングをより簡便かつ確実に実行できる「発現自動制御コロニーアッセイ法」を提供するものであって、微生物固形栄養培地中にはグルコースも発現誘導剤も添加せず、微生物の播種液中に、グルコースと共に糖類又はIPTGなどの発現誘導剤を最適な範囲で添加することを特徴とする。また、タンパク質のN端にアルカリフォスファターゼ(AP)を融合させた発現ライブラリーを用いることで、さらに検出工程の迅速化、簡便化を図ることができる。

Description

本発明は、ターゲットを認識する機能的なタンパク質の発現スクリーニングに適した改良コロニーアッセイ法であって、コロニー形成後に自動的に発現誘導し、発現後には自動的に発現の停止が可能な「発現自動制御コロニーアッセイ法」に関する。
モノクローナル抗体は、抗原に対して高い親和性・特異性を持ち、研究・診断・医薬にとって欠かせない極めて重要なタンパク質であり、高精度な測定、高感度な診断、多様な疾患に対応する医薬にとって、より高い親和性・特異性を持つモノクローナル抗体が求められている。また、抗原に対する親和性・特異性が高いだけではなく、抗原の機能を阻害する中和抗体等の機能を持つモノクローナル抗体のニーズも増大している。
このような研究・医薬品の開発のスピードに合わせて、目的の抗原に対して望む性質を持つモノクローナル抗体を迅速に樹立することが求められており、従来のハイブリドーマを用いた抗体作製法では、このニーズ・スピードに対応できない。それに代わるものとして、組換え技術を用いた抗体作製法が重要になってきている。
組換え抗体は分子生物学的手法を用いてエンジニアリング可能であり、例えば、種々のエフェクター分子やタグとの融合、抗体ドラッグ複合体、多重認識抗体の作製や抗体のヒト化、また、抗体遺伝子に変異を導入し、抗原に対する特異性・親和性を向上するアフィニティー・マチュレイション技術により、有用化が増大する。
組換え抗体樹立法では、抗体遺伝子ライブラリーを作製・発現させ、抗原に対する結合性を指標にスクリーニングすることによって、モノクローナル抗体を樹立する。組換え抗体のうち、単鎖抗体(scFv)が小さく、取り扱いが比較的容易で、スクリーニングによく使われている。scFvの形状で樹立し、組換え技術を用いることで適宜IgGに変更可能である。
従来のハイブリドーマ法と比較して大きなライブラリーを取り扱うことができ、様々な条件でのスクリーニングが可能で、エンジニアリング技術により機能付加が容易であることなどに加え、より短期間でモノクローナル抗体の樹立が可能となった。
組換え技術を用いた主な抗体樹立法としては、大きくわけてディスプレイ法とコロニーアッセイ法がある。前者は、ディスプレイした抗体断片と遺伝子とを対応させた巨大ライブラリーを、抗原に対してパニングし、抗原に結合性を持つ抗体断片を選抜する手法であり、典型的なファージディスプレイ法では巨大なライブラリー(109〜1011)が取り扱え、かつ人工ライブラリーも取り扱える利点がある。しかしながら、抗体と比較して巨大なファージに由来するバックグラウンドが非常に高く、スクリーニング中に抗原-抗体結合を直接見ていないため、取れてくるクローンに偽陽性が多い。そのため、パニングを繰り返すだけでは有用なモノクローナル抗体の樹立が困難である。
また、本質的な問題点として、抗体断片が大腸菌の生育に大きな負担であることが挙げられる。つまり、大腸菌の生育にとって毒性のない抗体断片を発現しているクローンは成長が良いため、パニングを繰り返すうちに、抗原への結合性ではなく、大腸菌の成長しやすさにより選択が行われるため、抗原特異性の高いクローンが濃縮(選択と増幅)されるよりも、大腸菌にとって毒性のないクローンが選択的に増殖し、ドミナント集団となってしまうことが、しばしば起こりえる。
ファージディスプレイ法では、陽性クローンを選択・増幅しようとパニングを繰り返すが、その間に大腸菌が何世代も経ることにより、上記のような目的としないクローンが非常に選択・増幅されやすいという致命的な欠点がある。ファージディスプレイ法では、パニングを繰り返さないと陽性クローンを濃縮できないので、これは避けえない問題となっている。
同様の問題点は、リボソームディスプレイ法や酵母を用いるツーハイブリッド法の他、さらに大きなライブラリーが扱えるmRNAディスプレイ法(非特許文献1)、特に広くタンパク質の「人工進化」、創薬などに応用されているインビトロウイルス法においても存在する。
したがって、これらディスプレイ法は、大きな期待を持たれてきているが、その実用化・応用は期待の大きさほど進んでいない。
組換え技術を用いた抗体樹立法の他の手法として、コロニーアッセイ(コロニーリフトアッセイ)法が広く知られている。
コロニーアッセイ(コロニーリフトアッセイ)法は、(図1)に示すように、抗体遺伝子ライブラリーを大腸菌、酵母などで発現させてコロニーを形成させ、抗原結合性のいいクローンを選抜する手法である(非特許文献3,4)。形質転換大腸菌を培地表面のフィルター上に高密度に播種し、十分に生育させて大腸菌コロニーを生成させた後に、当該フィルターを外し、標的抗原を吸着させた膜の上に重ね合わせた状態で、発現誘導剤が含まれる選択培地表面に移動させる。なお、初期のコロニーリフトアッセイでは、栄養培地表面上に形成されたコロニーをニトロセルロース膜に写し、当該膜を標的抗原吸着と重ね合わせる工程を採用していた。その初期の手法と区別するため、当該手法を単に「コロニーアッセイ」ともいうこともある。しかし、コロニー形成フィルターを外して移動するリフト工程は依然として有しているので、ここでは、両者をあわせて「コロニーリフトアッセイ」という呼称を用いる。
コロニーリフトアッセイ法では、抗原結合性を持つ抗体断片を生産するコロニーを同定し、そのコロニーから抗体遺伝子を単離し、モノクローナル抗体を樹立するスクリーニング方法であり、直接抗原抗体反応を見ながらスクリーニングを行うので、偽陽性がないという利点を有している。また、ディスプレイ法ほど巨大ではないが、ハイブリドーマ法と比較して格段に大きなライブラリー(106〜107程度)を扱うことができる。
一方で、煩雑な長時間操作が必要であること、抗体が発現しない事や発現がとても低くなる事が度々あること、操作の煩雑さによるコンタミの発生、操作中に大腸菌が死滅してしまうこと、そのために遺伝子の回収ができなくなるなどの事態が起きうる事等の問題点がある。本手法の可能性を示した論文があるが、広く応用されていない。これらの問題は、発現のタイミング設定(大腸菌の成長状態が重要)が難しいことに起因していると考えられる。このコロニーリフトアッセイ法に免疫化学発光標識系を組み合わせて感度を高め、重鎖CDR3結合特異性決定基を用いて作成したVHライブラリーと軽鎖CDR3結合特異性決定基を用いて作成したVLライブラリーとを組み合わせてFabタンパク質のスクリーニングに適用する技術(特許文献1)が提案されている。
Dreherらは、このコロニーリフトアッセイを改良し、フィルター上に抗体断片を発現するコロニーを形成させることでコロニーリフトを不要にするFilter-sandwichアッセイを開発した。プレート上に用意した親水性フィルターの上に、大腸菌を播種し、コロニーを形成させる。このコロニーを形成したフィルターを発現誘導剤入りのプレート上に設置した抗原をコートした膜上に置く。大腸菌が産生する抗体断片が、抗原結合性を持っている場合、メンブレン上の抗原と結合することを検出することにより、ポジティブクローンを同定する。この方法により、困難で失敗の多いコロニーリフトという作業を行うことなく、アッセイが可能となった(非特許文献4など)。
また、Kumadaらは、コロニーフィルターの移動を省略するために、フィルター表面ではなく寒天培地表面に直接コロニーを形成させてしまう方法を報告している(非特許文献5など)。具体的には、形質転換大腸菌を、発現誘導剤を含んだ寒天選択培地表面で発現させて、コロニーを形成させる。寒天表面のコロニーの上に、標的抗原を吸着させた膜を直接、又は親水性膜を介して被せ、コロニーから分泌されてくる抗体と反応させる。ブロットした膜上の抗原との結合特性をパーオキシダーゼ内包抗体結合リポソームなどで検出し、検出されたスポットとコロニーとを対応させて、寒天表面上の陽性コロニーを採取する。培養時に発現誘導剤を最初から含ませているので、コロニーを移動させるなどの煩雑な工程がない利点はあるが、発現誘導剤の存在で大腸菌の生育が阻害される上、分泌抗体を膜にブロットしている間中大腸菌全体がメンブレンで覆われてしまうので、大腸菌の生育環境が好気的環境から嫌気的環境へと変化させられる点も生育の悪化を招く。大腸菌の成長阻害は、スクリーニング時間が長くなるばかりでなく、その間にプロモーターや、発現物に変異が入る確率が高まり、望みの抗体が取得できない可能性が高まるため、ライブラリーの発現スクリーニング用技術には適さないといえる。しかも本法では遺伝子の回収は行われていない。
また、上記ハイブリドーマ法の一種である捕獲用の抗体試薬でコーティングしたマイクロタイタープレートを用いるアッセイ法「CellSpotTMアッセイ法」の高親和性を有するヒトFabフラグメント高発現ハイブリドーマ株を得るための改良技術が開発され、抗体ライブラリーを分泌する組換え細菌に適用することが提案されている(特許文献2)。具体的には、最上層の大腸菌コロニー形成用のプラスチック膜に明確にわかる穴を設けたプラスチック膜上の大腸菌ミクロコロニーからの分泌抗体を、寒天培地層の上に設置した捕獲抗体コート膜に結合させることで、「CellSpotTMアッセイ法」による検出工程が適用できることが示されている。しかし、ミクロコロニーまでに増殖させる工程についての説明はない。
本発明者らは、偽陽性の少ないコロニーリフトアッセイの利点を残しつつ、コンタミの原因や大腸菌のストレスとなり発現阻害を引き起こす原因ともなるリフト工程を不要とすることで、簡便かつ迅速に高活性の抗体を再現性良くスクリーニングできる新たなコロニーアッセイを開発すべく鋭意研究を重ね、発現誘導剤の濃度勾配を持つアガープレートを用いる解決法を見出し、「One-Step Colony Assay」法と命名した(特許文献4)。
具体的には、選択培地中の発現誘導剤の量を変えて層状のアガープレートを形成させることにより、形質転換細胞が十分に生育するまでは発現誘導剤には接触せず、十分に生育してコロニーを形成する頃に拡散作用で培地表面に徐々に到達してきた発現誘導剤と接触し、抗体産生を開始させる。その結果、発現の良い成長過程のコロニーでのアッセイが可能になり、より効率的に、高親和性・高選択性の抗体が樹立可能になった。また、菌の生育にとって負担の大きい抗体の生産が、菌が十分に成熟した段階で始まるため、発現誘導剤の最終濃度を高く設定し発現量を多くすることができるので、結合活性が高い抗体であるが発現量の少ないクローンや、反対に高発現のため発現の負担に耐えられず死滅する可能性のあるクローンも多数拾うメリットもある。
本発明者らの「One-Step Colony Assay」法により、簡便かつ迅速に高活性抗体のスクリーニングが可能となり、実際に高親和性・高選択性の抗体樹立に成功している。
しかしながら、この方法の欠点の1つは、発現誘導剤の正確な濃度調整が難しい点である。対象となる形質転換細胞ライブラリー毎にコロニーの生育状況はそれぞれ異なるため、特に、新しい形質転換細胞に適用する場合など、最適な発現開始時期のタイミングの設定にかかわる発現誘導剤の濃度勾配をあらかじめ決定することは難しい。
また、2つ目の欠点として、抗原抗体反応による検出時期の設定が難しく、検出時の手際の良さが求められる点である。この方法では時間経過と共に発現誘導剤の作用が強くなるため、検出結果を待つ間にも引き続き活発な抗体産生が起こり、特に発現強度が高いクローンの中には発現の負担に耐えられず死滅する可能性がある。その場合、有用なクローンが採取できないことになりかねないため、コロニーの生育状態を目視で確認しながら最適な検出時期を設定し、できるだけ速やかに検出し、目指す陽性クローンを取得する必要がある。
さらに、他の欠点として、発現誘導剤に出会う前の成長過程のコロニーで抗体発現を起こす、いわゆる「リーク発現」の問題が解決されていない。プレーティング直後やコロニー形成初期は、大腸菌は脆弱で、抗体の「リーク発現」があるとその負担から増殖しなかったり、コロニー形成に長時間を要することもある。このような場合、例え優れた抗原認識性(特異性及び親和性)を持つ抗体を発現するクローンでも、スクリーニングで選抜できず、実質的に有効なライブラリーサイズの減少につながる。
また、本発明者らは、発現誘導時期及び強度をより確実に制御するための方法として「Single-step colony assay」法も開発した(非特許文献7)。アガープレート、抗原コート膜、親水性フィルターを重ね、フィルター上に抗体遺伝子ライブラリーを含む形質転換大腸菌を撒き、コロニーサイズが最適になったところで、発現誘導剤をスプレーにて噴霧し、抗体の発現を誘導するという手法である。
しかし、この手法はコロニーの生育状態を常に観察し続ける必要があるため、一般的な手法とはいえない。しかも、この手法でも「リーク発現」の問題は解決されていない。
したがって、簡便かつ迅速に高活性抗体をスクリーニング可能な「One-Step Colony Assay」法において、「リーク発現」の問題を解決し、また最適な発現開始時期及び検出時期の設定をより簡便で自動化が可能となるように、さらに改良されたコロニーアッセイ法を提供することが、本発明の課題である。
特許第4782700号公報 特表2009−544014号公報 特開2013−233096号公報 特開2017−73995号公報
Keefe AD.et al, Nature. 2001 Apr 5;410(6829):715-8. J.D.Marks,et al.,J.Mol.Biol.,222,581-597(1991) Martin L. Dreher, et al., J.Immunol.Methods, 139(1991) 197-205 Giovannoni et al., Nucleic Acids Research 2001,Vol.29, No.5 e27 Y.Kumada,et al.,Biochem.Engineering J.,29(2006)98-102 M.Kato and Y.Hanyu, Journal of Immunological Methods, 2013 396,15-22 M.Kato and Y.Hanyu, Journal of Biotechnology, 2017 255, 1-8 L. Marschall, et al., Appl Microbiol Biotechnol (2017) 101:501-512
本発明の課題は、最適な発現開始時期及び検出時期の設定がより簡便で自動化が可能で「リーク発現」が抑制された「発現自動制御コロニーアッセイ法」と呼べる改良コロニーアッセイ法を提供することにある。
本発明者らは、最適な発現誘導時期及び検出時期の設定がコロニーの生育状態を目視することなく、自動的に行え、しかもリーク発現が抑制されるコロニーアッセイ法を提供するための手法を鋭意研究した。その結果、そのためには、自動的に発現の誘導を開始させるだけではなく、発現の抑制及び発現誘導の停止の自動的に行うことが必要であることに思い至った。そして、従来の各種改良コロニーアッセイ法のように、培地成分中に発現誘導剤を添加する、という発想を捨て、培地成分は通常の栄養培地(LB培地など)のままに設定した寒天培地として、抗体遺伝子ライブラリーを含む形質転換大腸菌を播種する際の播種液の方を工夫することを思いついた。具体的には、形質転換大腸菌の培地成分側はグルコースも糖類などの発現誘導剤も一切添加せず、播種用の播種液中にグルコースと共にラクトースなどの発現誘導剤を添加することで菌の生育と抗体発現を制御する方法により、従来のコロニーアッセイ法の手順をほとんど変更することなく、より簡便かつ確実に抗体スクリーニングを行うことに思い至った(図3)。つまり、本発明者らは、従来形質転換大腸菌による組換えタンパク質のタンク培養を用いた大量生産技術で採用されているカタボライト抑制の原理をコロニーアッセイ法による抗体スクリーニングの系にはじめて適用してみたことになる。
ラクトースオペロンなど糖代謝系プロモーター制御下の遺伝子発現系では、プロモーターからの転写は、ラクトースなどプロモーター活性化因子だけでなく、cAMP依存性転写制御タンパク質(cAMP dependent transcriptional activator protein: CAP)によっても制御されており、グルコースはcAMP合成を阻害する。そのため、グルコース存在下では細胞内のcAMP濃度は低く保たれ、ラクトースなどのプロモーター活性化因子が存在しても、転写は抑制される(カタボライト抑制)。
本発明では、グルコースを培地ではなく希釈剤中に配合したことにより、菌をフィルター上に播種すると直ちにグルコースのみの消費が起こり、大腸菌の速やかな生育が始まる一方で、従来の課題であった「リーク発現」の発生は起こらない。グルコースがほぼ完全に消費されると、ラクトースなどによるプロモーター活性化に依存した抗体発現誘導が始まるが、それと同時にラクトース自体も大腸菌によって栄養素として徐々に消費され、培地からの補充はないから、結果としてその発現誘導は一過性となる。
発現誘導剤のうちで糖アナログのIPTG(イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(Isopropyl β-D-1-thiogalactopyranoside))の場合は、糖のように細胞内で代謝されることはないが、アセチル化によりプロモーターへの結合能を失うことが知られている(非特許文献8)。したがって、IPTGを用いる場合も、培地からの補充がなければ、時間とともに実効濃度が減少し発現誘導が一過性となる点では糖類と同様である。
この抗体の一過性発現は、本発明者らが当初意図したことではないが、結果的に抗体スクリーニングにおける抗体検出系では非常に有効に働いた。抗体産生系の場合とは異なり抗体検出系において必要な発現抗体量は極めて少量ですむため一過性発現で十分であり、かつ検出後には抗体発現量がすみやかに減少することにより、コロニー生育への悪影響が限定的なものとなり、抗体産生能を有するほぼすべてのクローンを対象としたアッセイが可能となった。
このように、本発明では播種液のみにグルコースという発現阻害剤及びIPTGやラクトースなどの発現誘導剤を添加したことで、リーク発現を抑えることができ、かつ発現誘導剤の一過性発現が達成できたことにより、発現の良い成長過程のコロニーでのアッセイが可能になり、抗体産生能を有するすべてのクローンに対するアッセイが可能になった。そのため、より効率的に、高親和性・高選択性の抗体が樹立可能になった。
また、本発明では、アルカリフォスファターゼ(AP)をN末端に融合させた抗体発現ライブラリーを用いて、陽性クローンの同定とクローニングを同時に行う検出手法を開発したことで、より簡便かつ迅速に目的の抗体を取得することが可能となった。
本発明者らは、「発現自動制御コロニーアッセイ法」に係る本発明に先立ち、上述の「One-Step Colony Assay」法(特許文献4)及び「Single-step colony assay」法(特許文献7)を開発してきた。これらの技術は全て、遺伝子ライブラリーで形質転換した微生物をコロニーとして目的タンパク質を産生する陽性クローンを同定すると同時に直接抗体を単離する技術であるといえる。そして、今回新たに開発したアルカリフォスファターゼ(AP)をN末端に融合させた抗体発現ライブラリーを用いた陽性クローンの同定手法は、これらいずれの技術に対しても適用できる。したがって、本発明者らはこれら全ての技術を総称して「抗体ダイレクトクローニング法(DC)」と命名した。
すなわち、「抗体ダイレクトクローニング法(DC)」というとき、「One-Step Colony Assay」法、「Single-step colony assay」法、及び「発現自動制御コロニーアッセイ法」並びにこれらの方法においてAP融合抗体発現ライブラリーを用いた検出手法を用いた方法の全てを指す。
すなわち本発明は、以下の通りである。
〔1〕 ターゲットを認識する機能的なタンパク質の発現自動制御コロニーアッセイ法であって、
(1)(a)グルコース及び発現誘導剤を含まない微生物用固形栄養培地の上面に(b)前記タンパク質が認識するターゲットを吸着もしくは被覆した膜を載置し、さらにその上面に(c)コロニー形成用フィルターを載置する工程、
(2)(c)の表面に前記タンパク質の遺伝子ライブラリーで形質転換した微生物を播種する工程、
(3)コロニーフィルター上で形成された各コロニーから発現、分泌してきた抗体を抗原膜状の標的抗原と結合させる工程、
(4)抗原膜上の標的抗原との結合活性を標識スポットとして検出する工程、及び
(5)抗原膜上の標識スポットとコロニーフィルター上のコロニーとを重ね合わせて、ポジティブクローンを選択する工程、
を含み、
ここで、工程(2)における微生物を播種する際の播種液が、(i)グルコース、及び(ii)発現誘導剤、を含有することを特徴とする、方法。
〔2〕 播種液に含有される(ii)の発現誘導剤が、ラクトース、アラビノース、ラムノース又はIPTGであることを特徴とする、前記〔1〕に記載の方法。
〔2〕は、以下のように記載することもできる。
〔2’〕 工程(2)の遺伝子ライブラリー中の遺伝子がlacプロモーター制御下にあるとき、発現誘導剤はラクトース又はIPTGであり、当該遺伝子がアラビノースプロモーター制御下にあるとき、発現誘導剤はアラビノースであって、当該遺伝子がラムノースプロモーター制御下にあるとき、発現誘導剤はラムノースであることを特徴とする、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕 工程(2)で微生物を播種する際の播種液が、
(i)濃度0.02〜0.2%のグルコース、及び
(ii)濃度0.05〜0.2%のラクトース、アラビノースもしくはラムノース、又は0.05〜0.5mMのITPG、
を含有することを特徴とする、前記〔2〕に記載の方法。
〔4〕 工程(2)におけるタンパク質の遺伝子ライブラリーが、タンパク質のN-端にアルカリフォスファターゼ(AP)を融合したタンパク質の遺伝子ライブラリーであり、
工程(4)における標識スポットが、APの発色反応に基づく標識スポットである、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
また、このAP融合タンパク質発現ライブラリーを用いて、AP発色反応を用いた検出方法を用いるAP発現スクリーニング法は、本発明に係る「発現自動制御コロニーアッセイ法」のみならず、従来のコロニーアッセイ法も含め、ダイレクトクローニング法(DC)一般に適用できる技術なので、以下のように記載することもできる。
〔4’〕
ターゲットを認識する機能的なタンパク質をスクリーニングするためのダイレクトクローニング法(DC)であって、
(1)(a)微生物用固形栄養培地の上面に(b)前記タンパク質が認識するターゲットを吸着もしくは被覆した膜を載置し、さらにその上面に(c)コロニー形成用フィルターを載置する工程、
(2)(c)のコロニー形成用フィルター表面に前記タンパク質のN-端にAPを融合した遺伝子ライブラリーで形質転換した微生物を播種する工程、
(3)コロニーフィルター上で形成された各コロニーから発現、分泌してきた抗体を抗原膜状の標的抗原と結合させる工程、
(4)抗原膜上にAP発色基質を添加して得たAP発色反応による標識スポットを検出する工程、及び
(5)抗原膜上の標識スポットとコロニーフィルター上のコロニーとを重ね合わせて、ポジティブクローンを選択する工程、
を含む、方法。
〔5〕 ターゲットを認識する機能的なタンパク質が抗体であり、当該タンパク質が認識するターゲットが抗原またはそのエピトープとなるペプチドもしくは糖鎖であって、ターゲットとの認識反応工程が抗原抗体反応工程である前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕 前記抗体が一本鎖抗体(scFv)又はFab抗体である前記〔5〕に記載の方法。
〔7〕 形質転換微生物が形質転換大腸菌である、前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の方法。
〔8〕 ターゲットを認識する機能的なタンパク質の発現自動制御コロニーアッセイ法において、当該タンパク質の遺伝子ライブラリーで形質転換した微生物をコロニー形成用フィルター上に播種するための播種液であって、下記(i)及び(ii)を含有する播種液;
(i)グルコース、及び
(ii)発現誘導剤。
〔9〕 (ii)の発現誘導剤が、ラクトース、アラビノース、ラムノース又はIPTGであることを特徴とする、前記〔8〕に記載の播種液。
〔9〕は、以下のように記載することもできる。
〔9’〕形質転換微生物が含有する遺伝子ライブラリー中の遺伝子がlacプロモーター制御下にあるとき、発現誘導剤はラクトース又はIPTGであり、当該遺伝子がアラビノースプロモーター制御下にあるとき、発現誘導剤はアラビノースであって、当該遺伝子がラムノースプロモーター制御下にあるとき、発現誘導剤はラムノースであることを特徴とする、前記〔8〕に記載の播種液。
本発明のコロニーアッセイ法は、最適な発現開始時期及び検出時期の設定がより簡便なため、自動的に発現開始および停止が可能になり、大腸菌のコロニー形成状態をモニターする必要もなく、途中で作業を行う必要がない。
また、コロニー形成前のリーク発現を避けることができるため、抗体産生能を有するすべての大腸菌がコロニーを形成できる。その際、最大効率での発現誘導が可能なので、アッセイの感度があがり、多くの陽性クローンを同定可能となり、しかも、アッセイ中の大腸菌死滅や大腸菌からの抗体遺伝子の変異・欠失を回避することができるため、大きい良質なライブラリーを用いてアッセイ可能となった。そのため、より効率的に、高親和性で特異性の高い抗体を樹立できるようになった。
さらに、アルカリフォスファターゼ(AP)をN末端に融合させた抗体発現ライブラリーを用いた陽性クローンの同定手法を開発したことにより、より簡便かつ迅速に目的抗体を取得できるようになった。
従来法1:コロニーリフトアッセイ法 従来法2:「One-Step Colony Assay」法 本発明の「発現自動制御コロニーアッセイ」法の手順 AP融合タンパク質を利用した改良法の手順 二次抗体検出による従来検出法 AP発色を利用した改良検出法 AP融合scFv発現ベクターの構造 抗体ライブラリーを用いて検出された陽性クローン 抗体ライブラリーからスクリーニングされた陽性クローンのキャラクテリゼーション:配列 図中、下線部はリンカーを示す。リンカーよりN端側(上流部)はVH、リンカーよりC端側(下流部)はVLである。 抗体ライブラリーからスクリーニングされた陽性クローンのキャラクテリゼーション:ELISA AP融合抗体ライブラリーを用いて検出された陽性クローン AP融合抗体ライブラリーからスクリーニングされた陽性クローンのキャラクテリゼーション:配列 図中、下線部はリンカーを示す。リンカーよりN端側(上流部)はVH、リンカーよりC端側(下流部)はVLである。 AP融合抗体ライブラリーからスクリーニングされた陽性クローンのキャラクテリゼーション:ELISA
1.「発現自動制御コロニーアッセイ法」について
本発明の改良されたコロニーアッセイ法は、「発現制御コロニーアッセイ」法、又は「発現自動制御コロニーアッセイ」法とも称する。「発現自動制御コロニーアッセイ」法は、基本的には、従来から広く用いられているコロニーアッセイ法に準じた手法でもあるため、従来法との相違点を中心に以下説明する。
なお、本発明のスクリーニングの対象となるタンパク質、ペプチドライブラリーとしては、形質転換細胞により発現可能なタンパク質、ペプチドであればどのようなタンパク質、ペプチドであってよい。以下の説明では、主として抗体(scFv)ライブラリーについて述べるが、本発明は、抗体(scFv)ライブラリーに限定されるものではない。
(1−1)従来のコロニーアッセイ法
(1−1−1)従来のコロニーリフトアッセイの手順(非特許文献2,3)(図1)。
従来のコロニーリフトアッセイは、例えば、非特許文献2,3に記載のように、典型的には以下の手順で行われる。
(1)抗体(scFv)ライブラリーを形質転換した大腸菌、酵母などを用意する工程、
(2)生育用栄養培地表面に親水性フィルターを敷き、形質転換した大腸菌、酵母を高密度に播種し、十分に生育させてコロニーを生成させる工程、
なお、当初のコロニーリフトアッセイ(特許文献1)では、栄養培地表面に直接形質転換大腸菌、酵母を播種し生育させるため、ニトロセルロース膜などにコロニーを写し取る工程がさらに必要となる。また、抗原膜表面の抗原との反応は写し取った膜表面のコロニーが分泌する抗体であるため、ポジティブクローン選択時には標識スポットを反転させる必要がある。
(3)標的抗原を吸着又はコートした抗原膜(membrane)を用意する工程、
(4)コロニーを形成させた当該フィルターを外し、抗原膜の上に重ね合わせた状態で、発現誘導剤含有選択培地表面に移動させる工程、
(5)発現誘導剤含有選択培地での培養後、発現誘導剤の作用により各コロニーで発現、分泌してきた抗体を膜上の標的抗原と結合させる工程、
(6) コロニーを形成させた当該フィルターを外し、培地上で保存する工程、
(7)抗原膜上の標的抗原との結合活性を標識スポットなどとして検出する工程、
(8)抗原膜上の標識スポットとコロニーフィルター上のコロニーを重ね合わせて、ポジティブクローンを選択する手法。
(1−1−2)ワンステップ・コロニーアッセイ(One-Step Colony Assay)の手順(図2)
ワンステップ・コロニーアッセイ法は、本発明者らが従来のコロニーリフトアッセイの改良法として開発した方法(特許文献4)であり、コンタミの原因となるリフト工程が不要となり、簡便かつ迅速な高活性抗体のスクリーニングを可能とした。
(1)抗体(scFv)ライブラリーを形質転換した大腸菌、酵母などを用意する工程、
(2)標的抗原を吸着又はコートした抗原膜を用意する工程、
(3)発現誘導剤(IPTGなど)の濃度勾配を設けて含有する栄養培地を用意する工程、
(4)(3)の発現誘導剤含有栄養培地表面に(2)の抗原膜を載置し、さらにその上に設けたコロニーフィルター上に(1)の形質転換した大腸菌、酵母を高密度に播種する工程、
(5)コロニーフィルター上で形成された各コロニーから発現、分泌してきた抗体を抗原膜上の標的抗原と結合させる工程、
(6)抗原膜上の標的抗原との結合活性を標識スポットなどとして検出する工程、
(7)抗原膜上の標識スポットとコロニーフィルター上のコロニーとを重ね合わせて、ポジティブクローンを選択する手法。
このように、ワンステップ・コロニーアッセイ(One-Step Colony Assay)は、(図2)に示すとおりであり、以前のコロニーリフトアッセイ法(図1)とは、コロニーリフト工程(4)(5)が省略できた点を相違点としている。つまり、コロニーリフト工程を省略するために、生育用の栄養培地中に含有させる発現誘導剤(IPTGなど)に適切な濃度勾配を設けた点が主要な特徴である。
したがって、標的抗原コート膜の作製法、当該抗原膜による標識スポットの検出方法など、抗体検出のアッセイ工程は、以前のコロニーリフトアッセイ(非特許文献2,3、特許文献1など)やファージディスプレイ、ハイブリッド法などで用いられていた手法は全て転用することができる。また、これらのアッセイ法のために調製された抗体ライブラリーに対してもそのまま適用することができる。
(1−2)本発明の発現制御コロニーアッセイの手順(図3)
本発明の発現制御コロニーアッセイは、フィルター上に播種するための抗体(scFv)ライブラリーを形質転換した大腸菌、酵母などの播種液の調製、具体的には、従来の播種液中に、発現阻害剤として作用するグルコースと共に、ラクトース、IPTGなどの発現誘導剤を最適の濃度範囲でいずれも微量添加して、当該播種液中の形質転換大腸菌を培地表面のフィルター上に播種する点に特徴を有する発明である。そのため、他の手順は、前記ワンステップ・コロニーアッセイとほぼ同様の手順で行う。すなわち、(図3)に示す以下の手順で行う。
(1)抗体(scFv)ライブラリーを形質転換した大腸菌、酵母などを用意する工程、
(2)グルコース及び発現誘導剤を特定の配合比率で含有する播種液を用意する工程、
(3)標的抗原を吸着又はコートした抗原膜を用意する工程、
(4)通常の栄養固形培地(LB培地など)を用意する工程、
(5)(3)の栄養培地表面に(2)の抗原膜を載置し、さらにその上にコロニーフィルターを設け、(2)の播種液中に懸濁した(1)の形質転換した大腸菌、酵母を、コロニーフィルター上に高密度に播種する工程、
(6)コロニーフィルター上で形成された各コロニーから発現、分泌してきた抗体を抗原膜上の標的抗原と結合させる工程、
(7)抗原膜上の標的抗原との結合活性を標識スポットなどとして検出する工程、
(8)抗原膜上の標識スポットとコロニーフィルター上のコロニーとを重ね合わせて、ポジティブクローンを選択する手法。
したがって、本発明においては、播種液の調製方法以外の各工程で用いる抗体(scFv)ライブラリーの調製方法、標的抗原コート膜の作製法、当該抗原膜による標識スポットの検出方法、コロニー保存法、陽性クローン同定法、などの有用抗体産生クローンの取得に至る一連の工程は、全て前記(1−1−2)に示したワンステップ・コロニーアッセイ法の手順を準用できる。
(1−3)本発明の改良型発現制御コロニーアッセイの手順(図4)
本発明の改良型発現制御コロニーアッセイは、基本的な手順は前記(1−2)に示した各工程に従って行うものであるが、上記工程(1)の抗体(scFv)ライブラリーとして、抗体(scFv)のN端にアルカリフォスファターゼ(AP)を融合させた、AP融合抗体(scFv)ライブラリーを用いる。なお、APをscFvとの融合タンパク質にするには、Harperらの手法(K. Harper, et al. Journal of Virological Methods 63 (1997) 237-242)に準じた手法により作製できる。K. HarperらはAPをscFvのC末端側に融合させたが、我々は、APをscFvのN末端側に融合させた。AP遺伝子配列は、アクセッション番号EG10727として入手できる。153番目のアミノ酸残基AspをGlyに置換し、330番目のアミノ酸残基AspをAsnに置換した改変型AP遺伝子を用いてもよい(特許第3560972号、WO2015056659A1)。
AP融合抗体(scFv)ライブラリーを用いることで、上記工程(7)における抗原膜上の標的抗原との結合活性を、APの発色反応により直接的に検出することが可能となった。具体的な手順は、(図4)に示す通りであり、従来の二次抗体を用いる検出方法との検出工程の違いを、図5及び図6として示す。
2.本発明の対象タンパク質及びそのライブラリーの作製
(2−1)本発明の対象タンパク質
本発明のスクリーニングの対象タンパク質は、「ターゲットを認識する機能的なタンパク質」すなわち、「結合活性に優れたタンパク質」である。典型的には抗体であるため、本明細書では主として「抗体」について説明するが、抗体に限られることはない。ターゲットに対する結合活性を有するタンパク質であれば、その結合活性を利用して「抗体」について説明する以下の方法を適用して、結合活性に優れたタンパク質を取得することができる。「抗体」の認識する結合対象となる「標的抗原」は、どのような「抗原」であってもよいが、典型的には、レセプター、チャネル等の膜タンパク質やリガンドなどの生理活性タンパク質、毒素、病原性細菌などである。
ここで、本発明で「抗体」というとき、IgG、もしくは1つ以上のドメインが欠失した抗体の他に、主に大腸菌で発現可能な抗体フラグメントを指し、一本鎖抗体(scFv)、Fab、Fv、Fab’、F(ab’)2などが好ましく、特にscFvが好ましい。ヒトなど哺乳類由来の配列を有する抗体が好ましいが、それには限られない。
また、「抗体」以外の「結合活性に優れたタンパク質」としては、DNA結合タンパク質、ペプチド、proteinAなどが含まれる。
(2−2)形質転換宿主の種類及び形質転換方法
コロニー形成性であって、かつカタボライト抑制が有効な微生物であれば、どのような細菌、酵母であっても、宿主として用いることができる。具体的には、E.Coli (大腸菌)、B.megaterium などBacillus属細菌、Brevibacillus属などの細菌類、他の細菌、又はSaccharomyces cerevisiaeの他、Pichia属、Candida属の酵母、特に大腸菌が好ましい。
なお、カタボライト抑制機構は多くの微生物が有しており、生育環境にグルコースとそれ以外の炭素源として糖類が存在する場合、グルコースを優先的に代謝する。そのため、タンパク質発現の誘導剤が糖類の場合、グルコースが存在する間は発現が抑制され、グルコース代謝後に、誘導剤の糖類の代謝が始まり、発現が遅れて起こる。
宿主の形質転換方法、及び各々の宿主に適した発現ベクターは、当業者には既知である。
形質転換法としては、塩化カルシウムを用いた化学的形質転換法やエレクトロポレーション法など適宜の方法を選択できる。
ただし、本発明で用いられる発現ベクターとしては、カタボライト抑制機構が働く転写機構である糖類代謝系プロモーター制御下の転写機構などを有している必要がある。好ましい発現ベクターとしては、大腸菌の場合、pETベクター、pGEXベクターなどが挙げられる。
(2−3)ライブラリーの作製方法
以下、本発明のスクリーニングの対象タンパク質として親和性及び特異性が高い抗体をスクリーニングするための抗体ライブラリー、そのうちでも典型的な抗体ライブラリーであるscFvライブラリー作製法について詳細に述べるが、本発明のライブラリーとしては、scFvライブラリーには限られない。他の「結合活性に優れたタンパク質」のスクリーニング用ライブラリーについても同様に作製できる。また、ライブラリーを形質転換する宿主細胞としても大腸菌には限られない。
(2−3−1)免疫動物からの抗体遺伝子の採取
抗体遺伝子の採取原としては、マウス、ラット、ウサギ、などのげっ歯類、サルなどの霊長類の他、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ラクダ、ラマなどの大型哺乳類が好ましく、これらの脾臓、抹消血単核球細胞(PBMC)、リンパ球、B細胞などを用いることができる。
本実施例では、ラット、ウサギの脾臓、又はウサギのPBMCを用いたがこれらに限るものではない。
(2−3−2)scFvライブラリーの作製法
scFvライブラリーを作製するためには、抗体重鎖遺伝子由来VH遺伝子と、軽鎖遺伝子由来のVL遺伝子を調製した後に、適当なリンカーを介して連結し、発現用ベクターに組み込む。scFvライブラリーの作製に当たっては、VHおよびVL遺伝子に変異、欠失、シフトがおこらないようにベクターに組み込む事が大事である。さらに、遺伝子中に大きな多様性(抗原認識部:CDR部)を持っている部分があるので、その多様性を維持しつつ、これによって作製が阻害されないように、scFvライブラリーを作製する必要がある。そのために従来用いられていた手法としては、主として以下の2つの方法がある。
(a) Two-step cloning:VHとVLをそれぞれPCR法により増幅させ、ベクターに先ずVLを挿入して大腸菌で増やしVL libraryを作製し、次にVHをこのベクターに挿入し、scFvライブラリーを作成する方法。
(b) One-step cloning(VH-VL assembly):VHとVLをそれぞれPCR法により増幅させた後に連結し、その連結物をベクターに組み込み、scFvライブラリーを作成する方法。特に、VH及びVL遺伝子の連結法として、VHのC端側、およびVLのN端にリンカー領域を付加し、そのリンカー部分の重なり合いを利用するオーバーラップPCR反応(SOE-PCR:Splicing by overlap extension-PCR)によりVH,VLを連結する方法が広く用いられている。
通常のファージディスプレイ法や従来のコロニーアッセイ法では、scFv発現ベクターの構築の際に、簡便で迅速な(b)の方法を採用することが多いが、遺伝子変異が入りやすいなどの欠点がある。本発明者らは、最近(b)の改良方法に相当する「λエキソヌクレアーゼ法」(非特許文献6、特許文献3)を、ファージディスプレイ用のscFvライブラリー構築法として開発した。「λエキソヌクレアーゼ法」では、SOE-PCRを用いずに、λエキソヌクレアーゼと、λエキソヌクレアーゼの非特異的反応を防止するために3’及び5’末端近傍がS化されたプライマーとを用いる。
本発明の発現自動制御コロニーアッセイ法でのscFvライブラリーの構築においては、従来のSOE-PCRを用いる(b)の「One-step cloning」など他の抗体ライブラリー構築法も適用できるが、(a)の「Two-step cloning法」、又は本発明者らの開発した「λエキソヌクレアーゼ法」を採用することが特に好ましい。
(2−3−3)「Two-step cloning法」について
本発明の発現自動制御コロニーアッセイ法で採用することが特に好ましい方法の1つである「Two-step cloning法」の手順について、以下簡単に説明する。
<VLライブラリー作製>
PCRで増幅し、精製したVLライブラリーとベクターはNheI及びNotIで各37℃2時間以上充分切断し、精製した後、VLライブラリーとベクターのLigationを行った。その後、Ligation溶液で、遺伝子を安定的に保存できる、DH5α competent cell(日本ジーン社)を形質転換し、アンピシリン含有のLB agar培地に播種し、Colonyを形成させ、VLベクターライブラリーを作製した。
<scFvライブラリー作製>
上記で得られたVLベクターライブラリーはプラスミドを精製した後、PCRで増幅したVHライブラリーとVLベクターライブラリーは、NcoI及びKpnIで各37℃2時間以上の充分な時間をかけて切断し、VHライブラリーとVLベクターライブラリーのLigationを行った。Ligation溶液で、BL21(DE3) competent cell(日本ジーン社)を形質転換し、アンピシリン含有のLB agar培地に播種し、Colonyを形成させ、scFvライブラリー発現ベクターを作製した。
<AP−scFv用VLライブラリー作製>
PCRで増幅し、精製したVLライブラリーとベクターはNheI及びNotIで各37℃2時間以上充分切断し、精製した後、VLライブラリーとAP遺伝子が挿入されたベクターのLigationを行った。その後、Ligation溶液で、遺伝子を安定的に保存できる、DH5α competent cell(日本ジーン社)を形質転換し、アンピシリン含有のLB agar培地に播種し、Colonyを形成させ、VLベクターライブラリーを作製した。
<AP−scFvライブラリー作製>
上記で得られたVLベクターライブラリーはプラスミドを精製した後、PCRで増幅したVHライブラリーとVLベクターライブラリーは、NcoI及びXhoIで各37℃2時間以上の充分な時間をかけて切断し、VHライブラリーとVLベクターライブラリーのLigationを行った。Ligation溶液で、BL21(DE3) competent cell(日本ジーン社)を形質転換し、アンピシリン含有のLB agar培地に播種し、Colonyを形成させ、AP-scFvライブラリー発現ベクターを作製した。その構造を図7に示す。
(2−3−3)λエキソヌクレアーゼ法
本発明者らが、最近開発したλエキソヌクレアーゼを用いたscFvライブラリーの構築方法(非特許文献6、特許文献3)も本発明のscFvライブラリーの構築に極めて適している。
当該構築法は、(非特許文献6、特許文献3)に記載の通りであるが、具体的には、以下の手順で行う。
(1)VH遺伝子、VL遺伝子をPCRにより増幅する際に片方のC端側及び他方のN端側のプライマーにリンカー配列を付加し、さらに5’末端にリン酸を付加する。
(2)得られた2種類のDNA断片のそれぞれのリン酸化5 ’末端をλエキソヌクレアーゼで消化し、リンカー部分を一本鎖化させて、VHとVLを連結させた後、Bst DNAポリメラーゼにより3’方向に残っている相補鎖をはがしつつ、新たな相補鎖を合成させて(鎖置換合成)、リンカーで繋がれたVHとVLの完全な二本鎖を製造する。
(3)この二本鎖をベクターに挿入し、scFvライブラリーとして使用する。
当該手法では、λエキソヌクレアーゼがS化(Phosphorothioate)DNAを消化できないという性質を利用して、非リン酸化プライマーの5’末端をS化する事により、λエキソヌクレアーゼの非特異的な(非リン酸化5’末端)への反応を防止できる。またリン酸化プライマーの3’末端に近傍をS化する事により、λエキソヌクレアーゼが消化するDNAの長さを制御できるようになり、多様性の大きいCDR領域が一本鎖化する事を避ける事ができ、バックグラウンド反応を激減させる事ができるという、優れた利点を有する。
したがって、従来のSOE-PCRを用いる「One-step cloning」における、遺伝子の欠失・挿入・置換・シフトが起こりやすい、及び均一なPCR反応が阻害されることがあるなどの欠点が解消されており、本発明のscFvライブラリーの構築にも極めて適している。
本実施例では、実際に、当該「λエキソヌクレアーゼ法」を用いてscFvライブラリーを構築し、本発明の「発現自動制御コロニーアッセイ法」を実施しており、「One-Step Colony Assay」法(特許文献4)の場合と同様に、「Two-step cloning法」で構築したscFvライブラリーを用いた場合と同様の好成績を示した。
この「λエキソヌクレアーゼ法」は、AP−scFvライブラリーの作製に適用することもでき、全く同様の手順で実施できる。
3.本発明で用いる播種液及び形質転換大腸菌の播種
(3−1)本発明で用いる発現誘導剤
本発明で発現誘導剤というとき、典型的にはラクトース、アラビノース、ラムノースなどの糖類及びアロラクトース・アナログのITPGなど糖アナログを指す。ラクトース及びIPTGはlacプロモーター、アラビノースはアラビノースプロモーター、ラムノースはラムノースプロモーター制御下の外来遺伝子を含む発現ベクター中の転写を活性化することで、遺伝子発現を増大させる。
タンパク質高発現のためにT7プロモーター(L8-UV5-lacプロモーター)の支配下にT7RNAポリメラーゼを配したpETシステム(T7発現系)は良く用いられている。アラビノースで誘導可能なプロモーター(araBADプロモーター)の支配下にT7RNAポリメラーゼを配したシステム(BL21-AI)もタンパク質高発現用に用いられており、グルコースにより抑制され、アラビノースで厳密に制御できるため、本発明の発現ベクターとしても有用である。
ラムノースの場合は、ラムノースで誘導可能なプロモーター(rhaPBADプロモーター)の発現システムもタンパク質高発現用に用いられており、グルコースにより抑制され、ラムノースで厳密に制御できるため、本発明の発現ベクターとしても有用である。
以下のITPG実施態様では、lacプロモーターを有するT7プロモーター(L8-UV5-lacプロモーター)制御下のscFv発現ベクターによりscFv発現を誘導する場合について主として説明する。
(3−2)播種液の調製
従来のコロニーアッセイ法では、形質転換大腸菌をシート上に播種するための播種液としては、一般的な栄養培地(例えばLB培地)をそのまま、又は適宜希釈して用いていたが、本発明においては、当該播種液として、当該栄養培地含有播種液中に、発現阻害剤として作用するグルコースと共にラクトース、IPTGなどの発現誘導剤を必要最低限の量でかつ最適な割合で添加して調製する。発現誘導剤としては、用いる発現系に応じて、ラクトース、アラビノース、ラムノースなどの糖類、及びアロラクトース・アナログのITPGなどを単独で又は併用して用いることができる。
具体的には、発現阻害剤としてのグルコースは、播種液中の濃度で0.02〜0.2%、好ましくは0.05〜0.15%である。発現誘導剤としてのラクトース、アラビノース、ラムノースなどの糖類の播種液中の濃度は0.05〜0.2%、好ましくは0.07〜0.13%であり、アロラクトース・アナログのITPGの場合、播種液中の濃度は0.05〜0.5mM、好ましくは0.07〜0.15mMである。
これら発現阻害剤及び発現誘導剤を、栄養培地溶液(LB培地、TB培地、2×YT培地などもしくはその含有溶液又はPBS)に対して上記濃度になるように加えた播種液を作製し、播種するための形質転換大腸菌含有培養液を、O.D.値が少なくとも0.1以上、0.1以上、好ましくは0.2〜0.3になるまで培養し、104倍程度に希釈する。
(3−3)コロニー形成用フィルター
フィルターの材質は、従来各種コロニーアッセイ法と同様である。例えば、ポリビニリデンフルオライド、厚みは30〜250μm、孔径は0.22μmもしくは0.45μmが望ましい。コロニーフィルターは抗原膜の上部に隙間が無いように配置する。
(3−4)寒天培地の調製
本発明で用いる寒天培地は、従来のコロニーリフトアッセイで用いられた寒天培地と同様に作製すればよいが、用いる栄養培地としてはグルコースフリーであって、かつ発現誘導剤が含まれていない培地を選択する必要がある。
例えば、グルコースも発現誘導剤も含まれていないLB培地プレートは以下のように作成する。
三角フラスコ等に超純水1Lを入れ、栄養成分(10gのTryptonと5gのYeast Extract)、塩化ナトリウム(5g)、Agar(15g)を加え、アルミフォイル等でフタをして、オートクレーブ(121℃で20分間)をかけ、滅菌と同時に栄養成分やAgarを溶解させる。オートクレーブ後、50℃近くまで温度が下がってきたら、抗生物質を加える。水平な場所で10 cm sterile Petri dishに、厚みが5mmほどになるよう注ぐ。冷えて固まったらフタをして逆さまにする。すぐに使用しない場合は、プラスチックボックスなどに入れて4℃にて保存する。
(3−5)播種する大腸菌濃度と播種のタイミング
本発明の発現自動制御コロニーアッセイ法では、約1000個のscFv発現ベクターを含んだ大腸菌を上記(3−2)のように調整した播種液と共にコロニー形成用フィルター上に播種する。
また、播種のタイミングについては、「One-Step Colony Assay」法(特許文献4)で検討したと同様に、O.D.値が低い対数増殖のごく初期の大腸菌、具体的には、600nmのO.D.が0.1〜0.4、好ましくは0.15〜0.3、より好ましくは0.2〜0.25の範囲内の大腸菌を用いることでスクリーニング効率を高めることができる。一般に、大腸菌を寒天培地に播種する場合、対数増殖期(600nmのO.D. が0.5〜1.0程度)の状態の大腸菌が用いられることからみると、極めて早いタイミングで播種することが有効である。
4.標的抗原との結合性を利用した検出法及びクローンの樹立
本発明における標的抗原への結合性を利用した検出工程及びクローンの樹立工程は、従来のコロニーアッセイ法と変わらない。従来のコロニーアッセイ法で用いられていた方法はすべて適用できる。
(4−1)本発明の標的抗原膜の作製
本発明の標的抗原となるのは、レセプター、チャネル等の膜タンパク質やリガンドなどの生理活性タンパク質、毒素、病原性細菌などである。
本実施例ではモデル標的抗原として、human IgGを用いて実験を行ったが、これら抗原に限られるものでないことは当然である。
標的抗原は、そのままで用いてもよいが、例えば既知のペプチドエピトープもしくは糖鎖エピトープを有する場合は、当該エピトープのみを用いても良い。
標的抗原膜は、ニトロセルロースまたはポリビニリデンフルオライド、孔径は0.22μmもしくは0.45μmが望ましい。
例えば、前記標的抗原をPBSで100μg/mLに希釈し、そこに膜を浸し、室温で2時間抗原を膜にコートする。その後、PBSで3回洗浄しLB agarプレートに隙間が無いよう配置する。
(4−2)二次抗体を用いる検出方法(従来法)(図5)
二次抗体を用いる検出方法は、コロニー形成・発現誘導の後、コロニーが形成されたフィルターを保存用培地上に移し、標的抗原膜を分離する。分離した標的抗原膜にHRP標識検出抗体を加え、標的抗原膜に捕捉されたscFvに付加されているタグと結合させる。4回洗浄し結合しなかったHRP標識検出抗体を洗い流し、HRP発光基質を添加する。基質との反応による発光をCCDカメラで撮影し、画像処理後、スポット画像を印刷しコロニーを重ね合わせて陽性クローンを同定する。複数枚アッセイを行った場合は、基質添加からスポット画像の印刷を枚数毎に実施する。
(4−3)AP発色を利用した検出法(改良法)(図6)
AP-scFvのAP発色を利用した検出法は、コロニー形成・発現誘導の後、コロニーが形成されたフィルターを保存用培地上に移し、標的抗原膜を分離する。分離した標的抗原膜にAP発色基質(例えば、pNPP、BCIP/NBTなど)を添加し、発色スポットが現れたら基質を洗浄し発色を停止する。スポットが現れた標的抗原膜上にコロニーを重ね合わせ、陽性クローンを同定する。複数枚アッセイを行った場合でも、発色反応は1度に実施する。
(4−4)陽性クローンの取得法
陽性クローンの取得法は、従来のコロニーアッセイ法と同様であり、例えば、コロニー形成後にコロニーフィルターと抗原膜を分離する前に、2枚の膜に目印の穴を開ける。抗原膜を検出後、抗原膜の上部に目印を合わせて重ねることで、陽性クローンの同定を行い、コロニーをピックアップする。
(4−5)本法によるクローンの樹立
樹立したクローンの反応性の評価方法は常法に従う。
本実施例では、ピックアップした陽性クローンは、液体培地で OD600が0.6に達するまで培養し、IPTGを添加し、一晩scFvの発現誘導を行い、大腸菌を回収した。回収した大腸菌を超音波破砕し、破砕上清をELISAに用いることで、樹立したクローンから得られたscFvの反応性を評価した。その結果、本発明者らの開発した「One-Step Colony Assay」法(特許文献4)も含め、従来のコロニーアッセイ法と比較し、高率で陽性クローンが得られ、しかもきわめて高い活性のクローンを取得することに成功した。
さらに、AP発色を利用した改良型検出法を用いた場合は、検出過程に2次抗体を用いることなく直接検出するので、検出操作が簡便化されてアッセイ時間が短縮化(1/15以下)され、しかもシグナルが鮮明なため、2次抗体由来のバックグラウンドや偽陽性が低減した。その結果、迅速かつ正確に新規モノクローナル抗体を樹立することが可能となった。
また、2次抗体を用いない他のメリットとして、AP-scFvを診断等で重要なサンドイッチELISA用の検出抗体としてすぐに利用可能な点が挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
本発明におけるその他の用語や概念は、当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものであり、本発明を実施するために使用する技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。また、各種の分析などは、使用した分析機器又は試薬、キットの取り扱い説明書、カタログなどに記載の方法を準用して行った。
なお、本明細書中に引用した技術文献、特許公報及び特許出願明細書中の記載内容は、本発明の記載内容として参照されるものとする。
(実施例1)scFvライブラリーの調整
(1−1)ラットへの免疫
本実施例では、免疫動物種として良く用いられるラットを、1つの抗原に対して3匹使用した。初めに結核死菌が含まれたadjuvantと共に抗原を免疫し、次に結核死菌が含まれなadjuvantと共に抗原の免疫を行いた。2回免疫を行うことで、充分免疫反応を促した。
具体的には、human IgGをFREUND Complete ADJUVANT(シグマ社)と混合し、Wistarラット(雌)の腹腔に抗原100μg/匹となるよう投与し、一次免疫を2週間行った。続いて、抗原とFREUND Incomplete ADJUVANT(シグマ社)を混合し、一次免疫と同様に二次免疫を行った。最後の免疫から2週間後にラットの腹腔に抗原100μgを投与しブーストした。
(1−2)脾臓の摘出
免疫が終了したラットより、脾臓を摘出後、RNAlater(ライフテクノロジー社)で処理し、RNAを安定化した。
(1−3)VH(抗体重鎖可変領域)及びVL(抗体軽鎖可変領域)の増幅
抗体遺伝子を増幅して得るための鋳型となるcDNAを合成するために、RNA精製キットを用いてtotal RNAを精製し、ランダムヘキサマーとオリゴdTのプライマーを使用して、cDNAの全長を合成し、抗体遺伝子増幅のための鋳型とした。具体的には、RNAlaterで処理した脾臓より、RNeasy(キアゲン社)を用いてTotal RNAを精製し、トランスクリプターファーストストランドcDNA合成キット(ロシュ社)を用いて、cDNAを合成した。
本実施例では、PCRを用いたVL、VH遺伝子増幅には、PCRエラーを防ぎ、scFvの正確な構造を維持するために、正確性の高いPolymeraseであるKOD-FX polymerase(東洋紡社)を使用した。
合成したcDNAを鋳型にラットのVH遺伝子及びVL遺伝子増幅用のプライマーセットを用い、KOD-FX polymerase(東洋紡社)によって、94℃ 2min, (98℃ 10sec, 58℃ 30sec 68℃ 1min)×5, (98℃ 10sec, 63℃ 30sec 68℃ 1min)×5, (98℃ 10sec, 68℃ 1.5min)×20, 68℃ 7minの条件で、PCRを行い、VH遺伝子及びVL遺伝子を増幅した。増幅した各遺伝子は1.5%アガロースゲルで電気泳動し、増幅を確認した。
本実施例で用いた各遺伝子のプライマーセットは、以前に公表されているVH遺伝子及びVL遺伝子のプライマーセット(Jorg Burmester, Andreas Pluckthun., Antibody Engineering Volume 1: 19-39, Springer)の塩基配列を元に、 VHセンスプライマーにはNcoI、VHアンチセンスプライマーにはKpnI、VLセンスプライマーにはNheI、VLアンチセンスプライマーにはNotIを加えたプライマーを合成してプライマーセットとして使用した。各プライマーは抗体遺伝子の多様性を確保するために、いくつかの位置で縮重している。
用いたプライマー配列は以下の通りである。
VHセンスプライマー
VH S1 ATGCCCATGGGAKTRMAGCTTCAGGAGTC (配列番号1)
VH S2 ATGCCCATGGGAGGTBCAGCTBCAGCAGTC (配列番号2)
VH S3 ATGCCCATGGCAGGTGCAGCTGAAGSARTC (配列番号3)
VH S4 ATGCCCATGGGAGGTCCARCTGCAACARTC (配列番号4)
VH S5 ATGCCCATGGCAGGTYCAGCTBCAGCARTC (配列番号5)
VH S6 ATGCCCATGGCAGGTYVARCTGCAGCARTC (配列番号6)
VH S7 ATGCCCATGGCAGGTCCACGTGAAGCARTC (配列番号7)
VH S8 ATGCCCATGGGAGGTGAASSTGGTGGARTC (配列番号8)
VH S9 ATGCCCATGGGAVGTGAWGSTGGTGGAGTC (配列番号9)
VH S10 ATGCCCATGGGAGGTGCAGSTGGTGGARTC (配列番号10)
VH S11 ATGCCCATGGGAKGTGCAMCTGGTGGARTC (配列番号11)
VH S12 ATGCCCATGGGAGGTGAAGCTGATGGARTC (配列番号12)
VH S13 ATGCCCATGGGAGGTGCARCTTGTTGARTC (配列番号13)
VH S14 ATGCCCATGGGARGTRAAGCTTCTCGARTC (配列番号14)
VH S15 ATGCCCATGGGAAGTGAARSTTGAGGARTC (配列番号15)
VH S16 ATGCCCATGGCAGGTTACTCTRAAASARTC (配列番号16)
VH S17 ATGCCCATGGCAGGTCCAACTVCAGCARCC (配列番号17)
VH S18 ATGCCCATGGGATGTGAACTTGGAASARTC (配列番号18)
VH S19 ATGCCCATGGGAGGTGAAGGTCATCGARTC (配列番号19)
VHアンチセンスプライマー
VH AS1 ATGCGGTACCCGAGGAAACGGTGACCGTGGT (配列番号20)
VH AS2 ATGCGGTACCCGAGGAGACTGTGAGAGTGGT (配列番号21)
VH AS3 ATGCGGTACCCGCAGAGACAGTGACCAGAGT (配列番号22)
VH AS4 ATGCGGTACCCGAGGAGACGGTGACTGAGGT (配列番号23)
VLセンスプライマー
VL Sκ1 ATGCGCTAGCGAYATCCAGCTGACTCAGC (配列番号24)
VL Sκ2 ATGCGCTAGCGAYATTGTTCTCWCCCAGTC (配列番号25)
VL Sκ3 ATGCGCTAGCGAYATTGTGMTMACTCAGTC (配列番号26)
VL Sκ4 ATGCGCTAGCGAYATTGTGYTRACACAGTC (配列番号27)
VL Sκ5 ATGCGCTAGCGAYATTGTRATGACMCAGTC (配列番号28)
VL Sκ6 ATGCGCTAGCGAYATTMAGATRAMCCAGTC (配列番号29)
VL Sκ7 ATGCGCTAGCGAYAYYCAGATGAYDCAGTC (配列番号30)
VL Sκ8 ATGCGCTAGCGAYATYCAGATGACACAGAC (配列番号31)
VL Sκ9 ATGCGCTAGCGAYATTGTTCTCAWCCAGTC (配列番号32)
VL Sκ10 ATGCGCTAGCGAYATTGWGCTSACCCAATC (配列番号33)
VL Sκ11 ATGCGCTAGCGAYATTSTRATGACCCARTC (配列番号34)
VL Sκ12 ATGCGCTAGCGAYRTTKTGATGACCCARAC (配列番号35)
VL Sκ13 ATGCGCTAGCGAYATTGTGATGACBCAGKC (配列番号36)
VL Sκ14 ATGCGCTAGCGAYATTGTGATAACYCAGGA (配列番号37)
VL Sκ15 ATGCGCTAGCGAYATTGTGATGACCCAGWT (配列番号38)
VL Sκ16 ATGCGCTAGCGAYATTGTGATGACACAACC (配列番号39)
VL Sκ17 ATGCGCTAGCGAYATTTTGCTGACTCAGTC (配列番号40)
VL Sλ ATGCGCTAGCGATGCTGTTGTGACTCAGGAATC (配列番号41)
VLアンチセンスプライマー
VL ASκ1 ATGCGCGGCCGCTACGTTTKATTTCCAGCTTGG (配列番号42)
VL ASκ2 ATGCGCGGCCGCTACGTTTTATTTCCAACTTTG (配列番号43)
VL ASκ3 ATGCGCGGCCGCTACGTTTVAGCTCCAGCTTGG (配列番号44)
VL ASλ ATGCGCGGCCGCTACCTAGGACAGTCAGTTTGG (配列番号45)
(1−4)VH遺伝子ライブラリー及びVL遺伝子ライブラリーの調製
human IgGで免疫したラットの脾臓由来RNAから(1−3)で調製された合成cDNAを鋳型として前記VH遺伝子プライマーセット(配列番号1〜23)及びVL遺伝子プライマーセット(配列番号24〜45)を用いて増幅された抗human IgG抗体のVH遺伝子ライブラリーと同VL遺伝子ライブラリーのそれぞれのプールを作製した。
(1−5)scFvライブラリー発現ベクターの構築
予め、NcoI-KpnI-Linker-NheI-NotI-Hisタグを組込んだpelBシグナル配列を持つpET-22b(+)(ノバジェン社)を用意し、(1−4)においてPCRで増幅した抗human IgG抗体のVL遺伝子ライブラリーをNheIとNotIで切断し、上記、pET-22b(+)に組込みVL遺伝子ベクターライブラリーを作製した。作製した各VL遺伝子ベクターでDH5α competent cell(日本ジーン社)を形質転換し、アンピシリン含有のLB agar培地に播種し、Colonyを形成させた。Colonyは全て回収、混合し、プラスミド精製キット(キアゲン社)にて、VL遺伝子ベクターを精製した。なお、上記Linkerとしては、既知の「GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号46)」リンカーが用いられている。
次いで、作製したVL遺伝子ベクターライブラリーと、PCRで増幅したVH遺伝子ライブラリーとをNcoIとKpnIで切断し、VL遺伝子ベクターにVH遺伝子を組込み、scFvライブラリー発現ベクターを構築した。
pET-22b(+)以外にも、アラビノースプロモーターを持つベクターやラムノースプロモーター、T5プロモーターを持つベクターに対しても同様にNcoI-KpnI-Linker-NheI-NotI-Hisタグを組込んだベクターを用意し、VL遺伝子ベクターライブラリーとVH遺伝子ライブラリーを組込み、scFvライブラリー発現ベクターを構築した。
(実施例2)発現制御コロニーアッセイによる陽性クローンの樹立
(2−1) プレート上のコロニー形成
実施例(1−5)で作製したscFvライブラリー発現ベクターを用いて、BL21(DE3) competent cell(日本ジーン社)を形質転換し、回復培地(SOC)でOD600が0.2に達した培養液を発現阻害剤と発現誘導剤を含むLB培地を用いて、104倍希釈し、播種液を作製した。播種液中には、発現阻害剤としてグルコースを0.05%、発現誘導剤としてIPTGを0.1mMの濃度となるように加えた。LB agarプレート上に、免疫に用いたhuman IgGを PBSで100μg/mLに希釈し、室温で2h抗原をコートした抗原膜、さらにその上にコロニー形成用親水性多孔質フィルター(コロニーフィルター)を重ね、当該播種液に分散させた抗体遺伝子で形質転換された大腸菌(200μl)を当該コロニーフィルター上に播種した。その後、30℃で一晩保温し、コロニーを形成させた。フィルター上にコロニーが形成されているコロニーフィルターをLB agarプレートに移し4℃保存した。本方法では手間のかかる発現誘導剤の濃度勾配の作製は不要で、通常の分子生物学的実験で用いるアガープレートを使えるので、素早く簡単に作製することができる。
(2−2) 陽性クローンの検出
コロニーフィルターを除いた下層の抗原膜をPBSで2回洗浄し、HRP標識抗His抗体(ロシュ社)を2% skim milk/PBSで5000倍希釈し、室温で1時間反応させた。0.05% Tween-PBSで5回洗浄、PBSで3回洗浄し、HRP発光基質(メルク社)で6mLを加え、室温で発光反応を行い、発光検出器(ケミステージ, 倉敷紡績社)にて、陽性クローンを発光スポットとして検出した。(図4)に検出スポットを示す。上記播種液に発現誘導剤が含まれないときは、スポットが認められなかった。
(2−3) 陽性クローンの同定
(2−2)のスポットを検出した抗原膜上に、(2−1)で4℃保存したコロニーフィルターを重ね合わせ、スポット上に重なったコロニーを陽性クローンとして同定した。
(実施例3)樹立クローンの解析
(3−1) 樹立クローンの遺伝子配列決定
実施例2(2−3)で同定した抗human IgG scFv陽性クローンは、個別にアンピシリン含有のLB培地により培養し、DNA Mini prep kit(キアゲン社)によって、クローン中のプラスミドDNAを精製した。精製したプラスミドDNAの遺伝子配列をシークエンスにより遺伝子配列を解析し、scFvの構造を確認した。その結果、全てのクローンで設計通りの構造が確認された。(図5)にはクローンのうち、最もシグナルの強かったクローンの配列を示す。(図5)は、抗human IgG scFv配列(Rat scFv(human IgG):配列番号47)である。
(3−2) 樹立クローンのELISAによる活性測定
本実施例では、(実施例2)で得られたscFvの活性をELISAにより確認した。10個の陽性クローンの抗原特異性及び親和性を測定した。各陽性クローンはアンピシリン含有の10mL LB培地、37℃で OD600が0.6に達するまで培養し、0.5mMのIPTGを添加し、26℃一晩発現誘導する。培養後、大腸菌を遠心により集菌し、菌塊に0.5 mL プロテアーゼインヒビター(ロシュ社)/PBSを加え、懸濁し、大腸菌を超音波破砕する。破砕溶液を20000g 30分間遠心し、上清を回収する。
抗原に用いたhuman IgGを10μg/mLとなるようコーティングバッファー(Na2CO3、 NaHCO3、 pH9.6)で調整し、96ウェルマイクロタイタープレートに100μL/ウェルで分注後、4℃で一晩コーティングする。コーティング溶液を廃棄し、0.05% Tween/PBSで1回洗浄し、Blocking reagent(ロシュダイアグノスティック社)を250μL/ウェルで分注し、室温で2時間ブロッキングする。ブロッキング溶液を廃棄、0.05% Tween-PBSで1回洗浄し、超音波破砕した上清はPBSを用いて、100μL/ウェルで分注後、室温で2時間、反応を行う。反応溶液を廃棄し、0.05% Tween-PBSで3回、PBSで2回洗浄し、HRP標識高His抗体を1%BSA/PBSで5000倍希釈し、100μL/ウェルで分注後、室温で1時間、抗体反応を行う。抗体反応溶液を廃棄し、0.05% Tween-PBSで5回洗浄し、HRP発色基質(SIGMAFAST OPD tablets、シグマ社)を100μL/ウェルで分注し、室温で発色させ、マイクロプレートリーダー(バイオラッド社)を使用し、波長450nm吸光度を測定した。結果を(図6)に示す。
抗原であるhumanIgGに対する結合性とバックグラウンドの反応も見るため、BSAに対する結合性を測定した。scFvの入っていない空の発現ベクターを持つ大腸菌からの上清をネガティブコントロール(NC)として用いた。10個の陽性クローンはすべて抗原特異的に結合反応を示し、本スクリーニング法により、抗原特異的なscFvを樹立することが可能であることが示された。
(実施例4)発現自動制御コロニーアッセイを行うための最適条件
(2−1)において、播種液中の発現阻害剤と発現誘導剤の濃度、すなわちグルコース濃度とIPTG濃度を種々変えて同量の大腸菌を蒔き、発現自動制御コロニーアッセイを行った。1プレート当たりのコロニー数と陽性数をカウントした(表1)。
Figure 2020071524
(実施例1)で構築した、抗human IgG scFvライブラリーを用いて、本発明の発現自動制御 colony assayを実施した。発現阻害剤であるグルコースの濃度及び、発現誘導剤であるIPTGの濃度を種々変え、コロニー形成数、陽性数、及び陽性率を比較した(表1)。
(条件1)は播種液として培地のみを用いた場合であり、(条件2)は、グルコースのみを加えた場合であるが、(条件1)と比べて若干ではあるがコロニー数が増加していた。コロニー数の増加は、大腸菌生育に阻害効果があるscFvクローンを持つ大腸菌において、コロニー形成時のscFvのリーク発現が抑えられてコロニー形成が可能になったクローンが存在することを意味する。コロニー数が多い方が、ライブラリーに規模が大きくなるので、アッセイとしては優れているため、グルコースを加えることのみで、コロニー数を増やすことができたのは、思わぬ効果であった。
播種液中に添加する発現誘導剤であるIPTGの濃度を一定(0.1mM)にし、発現阻害剤であるグルコースの濃度を0%から0.1%に増加させた場合(表1にて、条件3→4→6→7→9の変化に対応)、コロニー数は増加する。一方、陽性数は、発現誘導剤であるIPTGが存在していても、グルコースが高濃度の場合は激減してしまった(表1にて、条件9)。また、発現阻害剤であるグルコースの濃度を一定(0.05%)にし、発現誘導剤であるIPTGの濃度を0.07mMから0.2mMに増加させた場合(表1にて、条件2→5→6→8→10の変化に対応)、scFvの発現がより誘導され、陽性数が増加していく。しかしながら、IPTGが高濃度になるとコロニー数及び陽性数の激減が起こった(表1にて、条件10)。グルコース濃度が0.05%、IPTG濃度が0.1mMの時(表1にて、条件6)に、最も多くのコロニーが出現し、また最も多くの陽性クローンが観察された。
グルコースはscFvの発現を阻害し、大腸菌生育・コロニー形成には有利に作用すると思われるが、グルコースの濃度が至適範囲を超え、高くなりすぎると(表1にて、条件7や9)とIPTGによる発現誘導がかからなくなり、陽性数が激減すると思われる。反対に、IPTGの濃度が高くなりすぎると(表1にて、条件8や10)、コロニー形成の初期におけるグルコースによるscFvの発現阻害が効かず、大腸菌生育・コロニー形成が阻害されることで、コロニー数及び陽性数の激減が起こると思われる。最も多くのコロニーが出現し、また最も多くの陽性クローンが観察された、(表1にて、条件6)が発現誘導剤であるIPTGの濃度と発現阻害剤であるグルコースの濃度のバランスの取れた至適条件と考えられる。
本発明者らが以前に開発したOne-Step Colony Assayの結果(特許文献4)では、従来のFilter-sandwichコロニーアッセイよりも優れているが、コロニー数が1052、陽性コロニーが4つ観測され、陽性率は0.4%であった。
本発明では、発現負荷のストレスに弱いコロニー形成初期の大腸菌でのリーク発現を確実に阻害できるので、発現ベクターを持っている大腸菌でも活発に増殖し、コロニーを形成するため、コロニー数はOne-step Colony Assay(特許文献4)での1052個を超えて、約1200個(表1、条件5,6,7)も形成された。コロニー数が多いことは、それだけ多様なクローンを測定できることになり、より良い抗体をスクリーニングできる確率が高まることを意味する。
本発明における(表1)での陽性率は、(条件3〜8)のいずれも従来コロニーアッセイと比較して、陽性率が少なくとも約2倍以上と飛躍的に向上した。これらの結果から、播種液にグルコースとIPTGを加える、本発明の発現自動制御 colony assayは、従来法と比較して、コロニー状態のモニターが不要になり、工程が省略されて手順が簡便になるだけでなく、陽性クローンの取得においても優れていることが実証された。特に、グルコース濃度及びIPTG濃度を最適化することにより、さらに陽性率を3.5倍以上も上昇させることができる(条件6)ことが実証された。
また、本発明では、準備・予備実験は不要で、大腸菌を播種したのちは自動的に発現誘導がかかるので、コロニーの成長の度合いをモニターする必要も、発現誘導の作業も必要ない。本発明で、1つの抗体ライブラリーのスクリーニングで陽性クローンの同定までに要する時間は約1日程度である。
発現阻害剤であるグルコースを加えることによって、コロニー数が増加した。これは、大腸菌生育に阻害効果を持つscFvクローンを持つ大腸菌において、コロニー形成時のscFvのリーク発現が抑えられることによって、コロニー形成が可能になったためと思われる。
発現自動制御 colony assayにより、コロニーサイズを逐次モニターし、最適タイミングでも発現誘導開始を行わなくとも、制御した発現が可能になった。上記、コロニー数が増加したことにより(陽性率は同じでも)、陽性クローン数が増えることになり、発現自動制御 colony assayはより優れたアッセイ法といえる。実際には、思わぬことに、陽性率も大きく上昇していた。これは、最適なタイミングで発現誘導が行われたので、発現の効率が上がったことと、上記コロニー数が増えたことの2点によると考えられる。後者に関しては、大腸菌生育・コロニー形成にとって生育阻害効果のあるscFvをリーク発現しているクローンは、陽性である可能性が高いことから、陽性率が上がったのではないかと推察される。経験的には、抗原特異性を持つscFv発現(陽性クローン)は、大腸菌に生育阻害効果を持つ場合が多く、スクリーニング中やスクリーニング後に、細胞が死滅し、クローンが失われてしまうことが多い。本法により、このような陽性クローンがスクリーニング中に失われることなく、陽性クローンとして取得可能になったという思わぬ効果があった。
(実施例5)様々な発現誘導剤・発現系を用いた発現自動制御コロニーアッセイ
(実施例2)とは、異なる発現誘導剤・発現系を用いて、発現自動制御コロニーアッセイを行った。そこでの最適条件を調べた。pET-22b(+)に抗体ライブラリーを挿入し、上記IPTGとは異なる発現誘導剤として、ラクトースを用いた場合のコロニー形成数、陽性クローン数を調べた。この場合、発現阻害剤はグルコース、発現誘導剤はラクトースとなる。
播種液中の発現阻害剤と発現誘導剤の濃度、すなわちグルコース濃度とラクトース濃度を種々変えて同量の大腸菌を播き、発現自動制御コロニーアッセイを行った。1プレート当たりのコロニー数と陽性数をカウントした。
これらの結果を、下記(表2)に示す。これらの結果から、異なる発現誘導剤でも本発明の発現制御コロニーアッセイが可能であることが示された。
Figure 2020071524
(実施例1)で構築した、抗human IgG scFvライブラリーをpET-22b(+)ベクターに入れ、発現ベクターライブラリーを作製し、これを用いて、本発明の発現自動制御 colony assayを実施した。発現阻害剤であるグルコースの濃度及び、発現誘導剤であるラクトースの濃度を種々変え、コロニー形成数、陽性数、及び陽性率を比較した(表2)。発現誘導剤としてラクトースを用いた系では、グルコース濃度が0.05%、ラクトース濃度が0.1%の時に、最も多くのコロニーが出現し、また最も多くの陽性クローンが観察された。異なる発現誘導剤を用いた系においても、発現自動制御 colony assayが有効であることが示された。
同じ発現ベクターを用いた従来のOne-Step Colony Assay(特許文献4)の場合の陽性率、0.4%と比較して、本実施例での陽性率は約2倍と飛躍的に向上し、グルコース濃度及びラクトース濃度を最適化することにより、さらに陽性率を3倍以上も上昇させることができることが実証された(表2)。
これらの結果からも、本発明の発現自動制御 colony assayは従来法と比較して、コロニー状態のモニターが不要になり、工程が省略されて手順が簡便になるだけでなく、陽性クローンの取得においても優れていることが実証された。
さらに、上記したT7発現系でIPTG又はラクトースを発現誘導剤として用いる組合せに代えて、他の、カタボライト抑制が有効な発現系を用いた場合の実験系においても、本発明の発現自動制御コロニーアッセイを実施できることを確認した。
具体的には、Lacプロモーターを組み込んだラクトースプロモーター系、rhaPBADプロモーターを組み込んだラムノースプロモーター系、araBADプロモーターを組み込んだアラビノースプロモーター系の発現ベクターで形質転換した大腸菌を用意し、播種液に、発現阻害剤のグルコースと共に、発現誘導剤としてラクトース、ラムノースもしくはアラビノースを加える以外は、実施例2又は5と同様の手順でスクリーニングを行った。
その結果、IPTGやラクトースを用いるT7発現系の場合と同様の成績(コロニー数、陽性数、陽性率)が示されることが確認できた(data not shown)。
加えて、ホストの大腸菌として、(実施例2)で用いたBL21DE3以外にも、JM109やXL-1Blueを用いて(実施例2)と同様の実験を行ったところ、同様の成績が見られた(data not shown)。
これらの結果から、カタボライト抑制が有効な発現系とそれに対応する糖類の発現誘導剤を用いた場合でも、本発明の発現自動制御コロニーアッセイが有効であることが示された。
(実施例6)陽性クローンからの抗体遺伝子取得の効率
(実施例1)で構築した、抗human IgG scFvライブラリーを用いて、本発明の発現自動制御 colony assay、 発現誘導剤濃度を高くした発現自動制御 colony assay、及び従来コロニーアッセイ法をそれぞれ実施し、その結果から得られたそれぞれの陽性クローンについて、抗原結合性、遺伝子の構造を調べ、比較した(表3)。
発現自動制御コロニーアッセイ法の場合、大腸菌ライブラリーを発現阻害剤としてグルコースを0.05%、発現誘導剤としてIPTGを0.1mMの濃度となるような溶液に分散させ、プレートに蒔いた。高IPTG濃度の条件時、すなわち発現誘導過剰の時は、大腸菌ライブラリーを発現阻害剤としてグルコースを0.05%、発現誘導剤としてIPTGを0.2mMの濃度となるような溶液に分散させ、プレートに蒔いた。発現誘導剤としてラクトースを用いた場合は、大腸菌ライブラリーを発現阻害剤としてグルコースを0.05%、ラクトースを0.1%の濃度となるような溶液に分散させ、プレートに蒔いた。過剰発現誘導の条件時は、大腸菌ライブラリーを発現阻害剤としてグルコースを0.05%、ラクトースを0.2%の濃度となるような溶液に分散させ、プレートに蒔いた。
Filter-sandwich Assay (非特許文献4)、One-step Colony Assay(特許文献4)、Single-step Colony Assay(非特許文献7)の各方法を用いて、陽性クローンを取得し、以下のように解析した。
それぞれのコロニーアッセイ方法を用いて、陽性クローンを同定し、その中から無作為に136クローンを培養し、(3−2)の方法に従って、ELISAによりクローンの産生する抗体の抗原結合活性を測定した。同時に、その136クローンのコロニーを用いて、コロニーPCR法によりscFv、VH及びVLを増幅し 、その後アガロースゲル電気泳動した。泳動パターンより、136クローンそれぞれから増幅されたscFv遺伝子、VH遺伝子及びVL遺伝子の分子量を計測し、本来の分子量(scFv遺伝子は750bp、VH遺伝子は400bp、VL遺伝子は350bp)を持っているかどうかを確認した。scFvの増幅には、プライマーpelB-F及びM13-Rを、VHの増幅には、プライマーpelB-F及びVH-Linker-Rを用い、VLの増幅には、プライマーVL-Linker-F及びM13-Rを用いた。コロニーPCRは、ラットのVH遺伝子及びVL遺伝子増幅用のプライマーセットを用い、EmeraldAmP PCR Master Mix(タカラバイオ社)によって、94℃ 2min, (98℃ 10sec, 58℃ 30sec 68℃ 1min)×5, (98℃ 10sec, 63℃ 30sec 68℃ 1min)×5, (98℃ 10sec, 68℃ 1.5min)×20, 68℃ 7minの条件で、PCRを行い、scFv遺伝子、VH遺伝子及びVL遺伝子を増幅した。増幅した各遺伝子は1.5%アガロースゲルで電気泳動し、増幅を確認した。
結果を(表3)に示す。最適なグルコース濃度及びラムノース濃度を用いた発現自動制御コロニーアッセイ法のばあい、すべてのクローンでscFv、VH及びVLが本来の分子量(scFv遺伝子は750bp、VH遺伝子は400bp、VL遺伝子は350bp)を持っていることを確認した。
Figure 2020071524
最適条件で行った本発明の発現自動制御 colony assayでは、得られたすべてのクローンは、抗原結合性をもつscFvを生産し、そのscFvは完全な構造を持っていることが、示された。一方、Filter-sandwich AssayとSingle-step Colony Assay、2つの従来コロニーアッセイでは、分離された陽性クローンは、136クローンのうち、10〜13クローンにおいて、VH遺伝子の脱落がおこり、機能的なscFvが生産されていないことが分かった。発現誘導に工夫を加えたOne-step Colony Assayにおいては、従来コロニーアッセイより改善はみられるものの4クローンにVH遺伝子の脱落がみられた。また、本発明の発現自動制御 colony assayにおいても、発現誘導剤濃度が最適濃度の2倍となると、上記のようなVH遺伝子の脱落が起こっているクローンが136クローン中、5〜6クローン見られるようになったことから、播種液中の発現誘導剤濃度の調製も重要であることが確認できた。
本発明の発現自動制御 colony assayを用いることにより、完全な構造を持つscFVが100%の確率で取得可能であることが示された。
これらの結果から、本発明の発現自動制御 colony assayは従来法と比較して、コロニー状態のモニターが不要になり、工程が省略されて手順が簡便になるだけでなく、陽性クローンの取得においても、歩留まりが格段に向上し、従来法よりも優れていることが実証された(表3)。本方法が、操作の簡便性だけではなく、遺伝子構造を失うことなく、すなわち偽陽性をゼロに、抗体遺伝子を同定できる性能を持つことは思わぬ効果であった。
(実施例7)scFvライブラリーの調整
(7−1)ウサギへの免疫
本実施例では、免疫動物種として良く用いられるウサギを使用した。初めに結核死菌が含まれたadjuvantと共に抗原を免疫し、次に結核死菌が含まれなadjuvantと共に抗原の免疫を行いた。5回免疫を行うことで、充分免疫反応を促した。
具体的には、human IgGをFREUND Complete ADJUVANT(シグマ社)と混合し、日本白色種ウサギ(雌)の皮下に抗原200μg/匹となるよう投与し、一次免疫を行った。2週間毎に、抗原とFREUND Incomplete ADJUVANT(シグマ社)を混合し、一次免疫と同様に二次免疫を行った。最後の免疫から2週間後にウサギの静脈に抗原100μgを投与しブーストした。
(7−2)脾臓及び末梢血単核球(PBMC)の摘出
免疫が終了したウサギより、末梢血を採血し、脾臓を摘出した。末梢血から、末梢血単核球(PBMC)を精製した。脾臓とPBMCをRNAlater(ライフテクノロジー社)で処理し、RNAを安定化した。
(7−3)VH(抗体重鎖可変領域)及びVL(抗体軽鎖可変領域)の増幅
抗体遺伝子を増幅して得るための鋳型となるcDNAを合成するために、RNA精製キットを用いてtotal RNAを精製し、ランダムヘキサマーとオリゴdTのプライマーを使用して、cDNAの全長を合成し、抗体遺伝子増幅のための鋳型とした。具体的には、RNAlaterで処理した脾臓及びPBMCより、RNeasy(キアゲン社)を用いてTotal RNAを精製し、トランスクリプターファーストストランドcDNA合成キット(ロシュ社)を用いて、cDNAを合成した。
本実施例では、PCRを用いたVL、VH遺伝子増幅には、PCRエラーを防ぎ、scFvの正確な構造を維持するために、正確性の高いPolymeraseであるKOD-FX polymerase(東洋紡社)を使用した。
合成したcDNAを鋳型にラットのVH遺伝子及びVL遺伝子増幅用のプライマーセットを用い、KOD-FX polymerase(東洋紡社)によって、94℃ 2min, (98℃ 10sec, 58℃ 30sec 68℃ 1min)×5, (98℃ 10sec, 63℃ 30sec 68℃ 1min)×5, (98℃ 10sec, 68℃ 1.5min)×20, 68℃ 7minの条件で、PCRを行い、VH遺伝子及びVL遺伝子を増幅した。増幅した各遺伝子は1.5%アガロースゲルで電気泳動し、増幅を確認した。
本実施例で用いた各遺伝子のプライマーセットは、以前に公表されているVH遺伝子及びVL遺伝子のプライマーセット(Rudiger Ridder and Hermann Gram, Antibody Engineering Volume 1: 115-137, Springer)の塩基配列を元に、 VHセンスプライマーにはNcoI、VHアンチセンスプライマーにはXhoI、VLセンスプライマーにはNheI、VLアンチセンスプライマーにはNotIを加えたプライマーを合成してプライマーセットとして使用した。各プライマーは抗体遺伝子の多様性を確保するために、いくつかの位置で縮重している。
用いたプライマー配列は以下の通りである。
VHセンスプライマー
VH S1 ATGCCCATGGCAGTCGGTGGAGGAGTCCRGG (配列番号48)
VH S2 ATGCCCATGGCAGTCGGTGAAGGAGTCCGAG (配列番号49)
VH S3 ATGCCCATGGCAGTCGYTGGAGGAGTCCGGG (配列番号50)
VH S4 ATGCCCATGGCAGSAGCAGCTGGWGGAGTCCGG (配列番号51)
VHアンチセンスプライマー
VH AS1 ATGCCTCGAGGACTGAYGGAGCCTTAGGTTGC (配列番号52)
VLセンスプライマー
VL Sκ1 ATGCGCTAGCGTGMTGACCCAGACTCCA (配列番号53)
VL Sκ2 ATGCGCTAGCGATMTGACCCAGACTCCA (配列番号54)
VLアンチセンスプライマー
VL ASκ1 ATGCGCGGCCGCTTTGACGACCACCTCGGTCCC (配列番号55)
VL ASκ2 ATGCGCGGCCGCTAGGATCTCCAGCTCGGTCCC (配列番号56)
(7−4)VH遺伝子ライブラリー及びVL遺伝子ライブラリーの調製
human IgGで免疫したウサギの脾臓及びPBMC由来RNAから(7−3)で調製された合成cDNAを鋳型として前記VH遺伝子プライマーセット(配列番号48〜52)及びVL遺伝子プライマーセット(配列番号53〜56)を用いて増幅された抗human IgG抗体のVH遺伝子ライブラリーと同VL遺伝子ライブラリーのそれぞれのプールを作製した。
(7−5)AP-scFvライブラリー発現ベクターの構築
予め、NcoI-XhoI-Linker-NheI-NotI-Hisタグを組込んだpelBシグナル配列を持つpET-22b(+)(ノバジェン社)を用意し、NcoI上流に、アルカリフォスファターゼ(AP、配列番号57)を挿入したベクターを作製した。
(1−4)においてPCRで増幅した抗human IgG抗体のVL遺伝子ライブラリーをNheIとNotIで切断し、上記、pET-22b(+)に組込みVL遺伝子ベクターライブラリーを作製した。作製した各VL遺伝子ベクターでDH5α competent cell(日本ジーン社)を形質転換し、アンピシリン含有のLB agar培地に播種し、Colonyを形成させた。Colonyは全て回収、混合し、プラスミド精製キット(キアゲン社)にて、VL遺伝子ベクターを精製した。なお、上記Linkerとしては、既知の「GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号46)」リンカーが用いられている。
次いで、作製したVL遺伝子ベクターライブラリーと、PCRで増幅したVH遺伝子ライブラリーとをNcoIとXhoIで切断し、VL遺伝子ベクターにVH遺伝子を組込み、AP-scFvライブラリー発現ベクターを構築した。
pET-22b(+)以外にも、アラビノースプロモーターを持つベクターやラムノースプロモーター、T5プロモーターを持つベクターに対しても同様にAP-NcoI-XhoI-Linker-NheI-NotI-Hisタグを組込んだベクターを用意し、VL遺伝子ベクターライブラリーとVH遺伝子ライブラリーを組込み、scFvライブラリー発現ベクターを構築した。
(実施例8)発現制御コロニーアッセイによる陽性クローンの樹立
(8−1) プレート上のコロニー形成
実施例(7−5)で作製したAP-scFvライブラリー発現ベクターを用いて、BL21(DE3) competent cell(日本ジーン社)を形質転換し、回復培地(SOC)でOD600が0.2に達した培養液を発現阻害剤と発現誘導剤を含むLB培地を用いて、104倍希釈し、播種液を作製した。播種液中には、発現阻害剤としてグルコースを0.05%、発現誘導剤としてIPTGを0.1mMの濃度となるように加えた。LB agarプレート上に、免疫に用いたhuman IgGを PBSで100μg/mLに希釈し、室温で2h抗原をコートした抗原膜、さらにその上にコロニー形成用親水性多孔質フィルター(コロニーフィルター)を重ね、当該播種液に分散させた抗体遺伝子で形質転換された大腸菌(200μl)を当該コロニーフィルター上に播種した。その後、30℃で一晩保温し、コロニーを形成させた。フィルター上にコロニーが形成されているコロニーフィルターをLB agarプレートに移し4℃保存した。本方法では手間のかかる発現誘導剤の濃度勾配の作製は不要で、通常の分子生物学的実験で用いるアガープレートを使えるので、素早く簡単に作製することができる。
(8−2) 陽性クローンの検出
コロニーフィルターを除いた下層の抗原膜をPBSで2回洗浄し、AP発色基質液(Sigma-fast BCIP-NBT)に浸し、陽性クローンを発色スポットとして検出した。(図11)に検出スポットを示す。上記播種液に発現誘導剤が含まれないときは、スポットが認められなかった。
(8−3) 陽性クローンの同定
(8−2)のスポットを検出した抗原膜上に、(8−1)で4℃保存したコロニーフィルターを重ね合わせ、スポット上に重なったコロニーを陽性クローンとして同定した。
(実施例9)樹立クローンの解析
(9−1) 樹立クローンの遺伝子配列決定
実施例8(8−3)で同定した抗human IgG scFv陽性クローンは、個別にアンピシリン含有のLB培地により培養し、DNA Mini prep kit(キアゲン社)によって、クローン中のプラスミドDNAを精製した。精製したプラスミドDNAの遺伝子配列をシークエンスにより遺伝子配列を解析し、scFvの構造を確認した。その結果、全てのクローンで設計通りの構造が確認された。(図12)にはクローンのうち、最もシグナルの強かったクローンの配列を示す。(図4)は、抗human IgG scFv配列(配列番号58)である。
(9−2) 樹立クローンのELISAによる活性測定
本実施例では、(実施例2)で得られたscFvの活性をELISAにより確認した。24個の陽性クローンの抗原特異性及び親和性を測定した。各陽性クローンはアンピシリン含有の10mL LB培地、37℃で OD600が0.6に達するまで培養し、0.5mMのIPTGを添加し、26℃一晩発現誘導する。培養後、大腸菌を遠心により集菌し、菌塊に0.5 mL プロテアーゼインヒビター(ロシュ社)/PBSを加え、懸濁し、大腸菌を超音波破砕する。破砕溶液を20000g 30分間遠心し、上清を回収する。
抗原に用いたhuman IgGを10μg/mLとなるようコーティングバッファー(Na2CO3、 NaHCO3、 pH9.6)で調整し、96ウェルマイクロタイタープレートに100μL/ウェルで分注後、4℃で一晩コーティングする。コーティング溶液を廃棄し、0.05% Tween/PBSで1回洗浄し、Blocking reagent(ロシュダイアグノスティック社)を250μL/ウェルで分注し、室温で2時間ブロッキングする。ブロッキング溶液を廃棄、0.05% Tween-PBSで1回洗浄し、超音波破砕した上清はPBSを用いて、100μL/ウェルで分注後、室温で2時間、反応を行う。反応溶液を廃棄し、0.05% Tween-PBSで3回、PBSで2回洗浄し、AP発色基質(SIGMAFAST pNPP tablets、シグマ社)を100μL/ウェルで分注し、室温で発色させ、マイクロプレートリーダー(バイオラッド社)を使用し、波長405nm吸光度を測定した。結果を(図13)に示す。
抗原であるhuman IgGに対する結合性とバックグラウンドの反応も見るため、BSAに対する結合性を測定した。scFvの入っていない空の発現ベクターを持つ大腸菌からの上清をネガティブコントロール(NC)として用いた。10個の陽性クローンはすべて抗原特異的に結合反応を示し、本スクリーニング法により、抗原特異的なscFvを樹立することが可能であることが示された。
さらに、既知の高活性型改変AP(Asp153→Gly153、Asp330→Asn330;特許第3560972号)を用いても、同様に実験を行い、同様に良好な抗体の樹立に成功した(data not shown)。
(実施例10)2種類の検出方法の比較
scFvとAP-scFvの場合、それぞれに(実施例8及び9)の手順に従い、発現自動制御コロニーアッセイ法によるモノクローナル抗体樹立を行い、その成績を比較した(表4)。
具体的には、ヒトIgGで免疫したウサギから、末梢血を採取し末梢血単核球細胞(PBMC)を分離し、抗体遺伝子ライブラリーを作製した。同じ抗体遺伝子ライブラリーから、scFvライブラリーとAP-scFVライブラリーを作製し、それぞれライブラリーを90mmディッシュ10枚に播種し、scFvは(実施例2)と同様の手順で、AP-scFvは(実施例8)と同様の手順で陽性クローンの同定を行った。それぞれの陽性クローンを同定後、培養し、発現ベクターを精製し、抗体遺伝子(scFv)を解析した。同定した陽性クローンでは、ごくまれに培養により、抗体遺伝子に変異やデリーションが入ることがある。完全な遺伝子配列が回収できた割合を求めた。ディッシュ10枚に要する検出作業時間、ディッシュ1枚当たりの平均コロニー数、平均陽性数、平均完全遺伝子回収クローン数を表1に示す。Ap-scFVの方が、陽性率が3倍以上多く、最終的な抗体遺伝子回収率も優れていた。
Figure 2020071524
抗原コート膜の回収から、検出までに要する時間は、AP-scFvの形で発現することにより、1/15以下になった。scFvの場合は、2次抗体を用いて発光反応でデータを取り込み、そのデータのディジタル処理が必要であるので長時間を要する。発光反応は高感度だが、反応が一瞬なので、検出が難しいため多くのメンブレンを同時に処理することはできなかった。メンブレンの交換は、スピード・精度にとってボトルネックとなっていた。発光検出の場合は、メンブレンからの発光を冷却CCDで取り込んで、データ処理し、それを紙に打ち出して、実際のコロニーとの同定を行う。AP-scFvの場合は、発色反応を用いることで、多数メンブレンの同時処理が可能となり、メンブレン間の検出感度誤差がなくなった。発色の場合は、メンブレン自身を発色剤液の中に入れて発色させるため、発光よりも、一度に多くのメンブレンを処理可能である。コロニーの同定も発色させたメンブレンをそのまま重ねるだけでいいので、コロニーと標識スポットを正確に重ね合わせられることから容易になり、sensitivity が上昇し、background が減少し、S/Nの改善により、positive数が増加した。
また、陽性クローンの同定時に、発色メンブレンとコロニーを直接比較することによる同定が可能となった。scFvの時には、光学レンズによる発光データを取り込んだ後、データ処理をしていた。この方法では、どうしても周辺部で光学収差が発生してしまう(特に微弱光を効率的に取り込むため、F値の小さなレンズの仕様が必須となっており、収差が発生しやすい)。このため、yield up し、scFvのメンブレン周辺部で発生していた拾い間違いが皆無になった。
AP-scFVの場合は、wash、抗体反応、データ取り込み等不要となり、検出操作が簡便化されたおかげで、検出に要する時間が1/15以下に短縮された。このおかげで、抗体遺伝子に変異が乗ることがなくなった。(抗体遺伝子はホスト大腸菌にとって負担なので、少しでもリーク発現があると、負荷を減らすように、発現阻害が起きることがある)。このため、この検出方法を用いたことで、同定された陽性クローンのすべてから抗体遺伝子を回収できた。
(実施例11)2種類の誘導方法の比較
異なる誘導方法にて、DCを行い、モノクローナル抗体樹立を行い、その成績を比較した(表5)。ヒトIgGで免疫したウサギから、末梢血を採取し末梢血単核球細胞(PBMC)を分離し、抗体遺伝子ライブラリーを作製した。抗体遺伝子ライブラリーから、AP-scFVライブラリーを作製し、それぞれライブラリーを90mmディッシュ10枚に播種し、2種類の誘導方法(Sprayと自動誘導)を用いて、コロニーアッセイを行った。陽性クローンを同定後、培養し、発現ベクターを精製し、抗体遺伝子(scFv)を解析した。同定した陽性クローンでは、ごくまれに培養により、抗体遺伝子に変異やデリーションが入ることがある。完全な遺伝子配列が回収できた割合を求めた。ディッシュ1枚当たりの平均コロニー数、平均陽性数、平均完全遺伝子回収クローン数を(表5)に示す。発現自動誘導の方が、陽性率が3倍以上多く、最終的な陽性の遺伝子回収率も優れていた。
Figure 2020071524

Claims (9)

  1. ターゲットを認識する機能的なタンパク質の発現自動制御コロニーアッセイ法であって、
    (1)(a)グルコース及び発現誘導剤を含まない微生物用固形栄養培地の上面に(b)前記タンパク質が認識するターゲットを吸着もしくは被覆した膜を載置し、さらにその上面に(c)コロニー形成用フィルターを載置する工程、
    (2)(c)の表面に前記タンパク質の遺伝子ライブラリーで形質転換した微生物を播種する工程、
    (3)コロニーフィルター上で形成された各コロニーから発現、分泌してきた抗体を抗原膜状の標的抗原と結合させる工程、
    (4)抗原膜上の標的抗原との結合活性を標識スポットとして検出する工程、
    (5)抗原膜上の標識スポットとコロニーフィルター上のコロニーとを重ね合わせて、ポジティブクローンを選択する工程、
    を含み、
    ここで、工程(2)における微生物を播種する際の播種液が、(i)グルコース、及び(ii)発現誘導剤、を含有することを特徴とする、方法。
  2. 播種液に含有される(ii)の発現誘導剤が、ラクトース、アラビノース、ラムノース又はIPTGであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 工程(2)で微生物を播種する際の播種液が、
    (i)濃度0.02〜0.2%のグルコース、及び
    (ii)濃度0.05〜0.2%のラクトース、アラビノースもしくはラムノース、又は0.05〜0.5mMのITPG、
    を含有することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
  4. 工程(2)におけるタンパク質の遺伝子ライブラリーが、タンパク質のN-端にアルカリフォスファターゼ(AP)を融合したタンパク質の遺伝子ライブラリーであり、
    工程(4)における標識スポットが、APの発色反応に基づく標識スポットである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. ターゲットを認識する機能的なタンパク質が抗体であり、当該タンパク質が認識するターゲットが抗原またはそのエピトープとなるペプチドもしくは糖鎖であって、ターゲットとの認識反応工程が抗原抗体反応工程である請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記抗体が一本鎖抗体(scFv)又はFab抗体である請求項5に記載の方法。
  7. 形質転換微生物が形質転換大腸菌である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. ターゲットを認識する機能的なタンパク質の発現自動制御コロニーアッセイ法において、当該タンパク質の遺伝子ライブラリーで形質転換した微生物をコロニー形成用フィルター上に播種するための播種液であって、下記(i)及び(ii)を含有する播種液;
    (i)グルコース、及び
    (ii)発現誘導剤。
  9. (ii)の発現誘導剤が、ラクトース、アラビノース、ラムノース又はIPTGであることを特徴とする、請求項8に記載の播種液。
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