JPWO2020009232A1 - 脂肪酸含有油脂を分解する新規微生物 - Google Patents

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Abstract

本開示は、油脂分解能のある新たな微生物を提供する。一つの実施形態では、微生物は、ブルクホルデリア科である。一つの実施形態では、微生物は、ブルクホルデリア属である。一つの実施形態では、微生物は、ブルクホルデリア アルボリス(Burkholderia arboris)またはBurkholderia cepacia complexなどである。一つの実施形態では、本開示の微生物は、トランス脂肪酸を資化する能力を有する。一つの実施形態では、本開示の微生物は、トランス脂肪酸を分解する能力を有する。一つの実施形態では、本開示の微生物は、トランス脂肪酸含有油脂を分解する能力を有する。一つの実施形態では、本開示の微生物は、トランス脂肪酸含有油脂を資化する能力を有する。

Description

本開示は、油脂および/または脂肪酸分解能力を有する微生物およびその使用に関する。より特定すると、トランス脂肪酸含有油脂を分解する新規微生物に関する。
食品工場や油脂工場の排水には多量の油分が含まれる。この油分は、活性汚泥による処理能力の低下、沈降性の低下による固液分離不全、膜分離活性汚泥法(MBR)における膜のファウリング、嫌気消化におけるメタン発酵阻害など、様々な生物処理機能の低下を引き起こす。そのため、油分高含有排水の生物処理の前段として、例えば加圧浮上分離装置などにより油分を除去することが行われている。また、外食産業の厨房排水も油分を多く含むため、油分を除くためのグリーストラップが設置されている。加圧浮上分離装置もグリーストラップのどちらも、悪臭や害虫の発生源であること、分離した油の回収・運搬と産業廃棄物処理にかかるコスト、管理や清掃等にかかる労苦やコストなどの問題を抱えている。このような問題を解決する手段として、微生物による油分解技術が検討され、関連する微生物製剤も複数、市販されているが、設定可能な滞留時間内で望まれるレベルまで、油分濃度を微生物分解により下げるのは極めて困難である。そのため、現状では、加圧浮上分離装置や従来のグリーストラップが用いられていることがほとんどである。
また、生ゴミの発酵処理においても、油分が多い場合は、発酵阻害や消滅型処理機における排水中への油の高含有などの問題がある。また、加圧浮上分離装置やグリーストラップにより分離回収した油性汚泥は産業廃棄物となるため、その処理には大きなコストがかかる。そこで、これらの油分を微生物で分解することが検討されているが、やはり上述の排水処理と同様に、微生物の分解能力に限界があるのが実情である。
微生物による油分除去では、以上のように分解速度が問題になるが、特に冬場の低温による活性低下が、微生物の適用を困難にしている場合が多い。特に冬場の低温では、微生物による油脂の分解速度は極めて遅く、特定の微生物により排水処理や廃棄物処理を行うことは不可能であると考えられている。
Journal of Bioscience and Biotechnology,Vol.107,No.4 401-408,2009
本発明者らは、鋭意研究した結果、トランス脂肪酸含有油脂を分解する新規微生物であるブルクホルデリア菌(科)に属する微生物を見出した。この微生物は、15℃程度の低温でも効率的に油脂および/または脂肪酸を分解できる局面も見出された。本開示は、本開示の微生物の応用、例えば油処理等にも関する。
本開示は、油脂分解能力を有する新たな微生物およびこの微生物を用いた油脂および/または脂肪酸分解方法を提供する。
したがって、本開示は以下を提供する。
(項目1)
トランス脂肪酸含有油脂を資化する能力を有する、ブルクホルデリア科細菌。
(項目2)
トランス脂肪酸を資化する能力を有する、ブルクホルデリア科細菌。
(項目3)
トランス脂肪酸を分解する能力を有する、ブルクホルデリア科細菌。
(項目4)
トランス脂肪酸含有油脂を分解する能力を有する、ブルクホルデリア科細菌。
(項目5)
15℃において油脂を分解する能力を有する、ブルクホルデリア科細菌。
(項目6)
前記資化または分解する能力が15℃において保持される、項目1〜4のいずれか一項に記載のブルクホルデリア科細菌。
(項目7)
ブルクホルデリア属の細菌である、項目1〜6のいずれか一項に記載の菌。
(項目8)
ブルクホルデリア アルボリス(Burkholderia arboris)、ブルクホルデリア アンビファリア(Burkholderia ambifaria)、またはBurkholderia cepacia complexに属する微生物である、項目1〜7のいずれか一項に記載の菌。
(項目9)
ブルクホルデリア属細菌KH−1株(受託番号NITE BP−02731で特定される菌株)、KH−1AL1株(受領番号NITE ABP−02977で特定される菌株)、KH−1AL2株(受領番号NITE ABP−02978で特定される菌株)もしくはKH−1AL3株(受領番号NITE ABP−02979で特定される菌株)であるか、またはその誘導株であって該誘導株は、項目1〜7のいずれか一項または複数に記載の細菌の特徴を有する、項目1〜8のいずれか一項に記載の細菌。
(項目10)
項目1〜9のいずれか一項に記載の細菌を含む、油分解剤。
(項目11)
さらなる油処理成分を含む、項目10に記載の油分解剤。
(項目12)
項目1〜9のいずれか一項に記載の細菌もしくは項目10に記載の油分解剤と、さらなる油処理成分とを備える、油分解のためのキット。
(項目13)
項目1〜9のいずれか一項に記載の細菌、または項目10もしくは11に記載の油分解剤を処理対象に作用させることを包含する、油分解除去方法。
(項目14)
前記処理対象はトランス脂肪酸またはトランス脂肪酸含有油脂を含む、項目13に記載の方法。
本開示において、上記1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供されうることが意図される。本開示のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
本開示の微生物およびこれを含む組成物は、トランス脂肪酸および同脂肪酸含有油脂を分解し得るという点で、特に食品工場などから出される排水等に代表される油脂含有対象の処理が可能となり、広範囲の油脂濃度に対応可能であり、また、従来より低い温度で使用可能であり得るので、油脂による環境汚染の浄化、生ごみ処理、コンポスト化処理、排水処理などの廃棄物処理および堆肥化など広範な状況に適用可能である。
本開示は分解が難しい油脂、すなわち油種の問題も解決することができる。本開示の微生物およびこれを含む組成物は、油脂の水素化工程で生じるトランス脂肪酸とその含有油脂を分解し得るものであり、特にそのような脂肪酸含有油脂を多く含むマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングなどの、従来微生物で処理できなかったものでも処理し得るという効果を奏する。特に本開示は、排水処理や廃棄物処理の主役微生物となる細菌として実用レベルで利用可能な、トランス脂肪酸分解を達成する効果を提供する。また、本開示の微生物およびこれを含む組成物は、低温での油脂や脂肪酸の分解を可能とし得る。
Burkholderia arboris KH−1株のキャノーラ油添加培地上での15℃で5日間培養の結果を示す。 KH−1およびBioRemove3200(BR3200)(Novozymes、デンマーク)のエライジン酸分解活性の比較を示す。28℃、130rpmで24時間培養を行った。(A)TLCによって培養液中の脂肪酸を解析した写真である。左列はKH−1であり、右列はBR3200である。(B)ノルマルヘキサン値相当の油分を、油分測定試薬キットにより測定した結果である。左はBR3200であり、右はKH−1である。エラーバーは標準偏差を示す。 KH−1のエライジン酸含有油脂(トリエライジン)分解活性を示す。28℃、130rpmで5日間培養を行った。TLCによって培養液中のグリセリドおよび脂肪酸を解析した写真である。左列はTBS緩衝液、右列はKH−1の結果である。 KH−1の培養上清のエライジン酸含有油脂(トリエライジン)分解活性を示す。28℃、130rpmで24時間インキュベートを行った。TLCによって溶液中のグリセリドおよび脂肪酸を解析した写真である。左はTBS緩衝液、右はKH−1の結果である。 実排水を使用したKH−1とBioRemove3200(BR3200)との油脂分解能の比較を示す。28℃で培養し、24時間および48時間後にサンプルを採取した。(A)TLCによって排水中の残存油分を解析した写真(左は培養開始後24時間であり、右は培養開始後48時間である)である。それぞれの列は、左から、微生物添加なし、BR3200添加、KH−1添加の結果を示す。(B)ノルマルヘキサン値相当の油分を、油分測定試薬キットにより測定した結果である。左から、それぞれ、微生物添加なし、BR3200添加、KH−1添加の結果を示す。 15℃培養における(5L容積ファーメンター、250rpm、200ml/minの空気還流下、pH7.0)KH−1によるキャノーラ油の分解を示す。ノルマルヘキサン値相当の油分を、油分測定試薬キットにより測定した結果である。左から、それぞれ、培養開始後0時間、24時間、48時間、72時間の結果を示す。縦軸は0時間の測定値を100%としたときの割合を標準偏差とともに示す。 15℃培養における(5L容積ファーメンター、250rpm、200ml/minの空気還流下、pH7.0)KH−1によるキャノーラ油の分解を示す。培養開始後0時間、24時間、48時間および72時間における全脂肪酸(トリグリセリド中の脂肪酸と遊離脂肪酸との合計)をガスクロマトグラフィーにより定量した結果である。エラーバーは標準偏差を示す。 15℃培養におけるKH−1株のエライジン酸またはトリエライジンの資化能を示す。エライジン酸またはトリエライジンを唯一の炭素源とする培地において15℃で5日間培養した結果である。左から、KH−1添加エライジン酸培地、微生物添加なしエライジン酸培地、KH−1添加トリエライジン培地、微生物添加なしトリエライジン培地の写真である。 28℃培養におけるKH−1の油脂(キャノーラ油)分解能を示す。薄層クロマトグラフィー(TLC)によって培養液中の残存油分を解析した写真である。それぞれの列は、左から、培養開始時、培養開始後24時間、48時間の結果を示す。 28℃培養におけるKH−1の油脂分解能を示す。培養開始後0時間、24時間および48時間における全脂肪酸(トリグリセリド中の脂肪酸と遊離脂肪酸との合計)をガスクロマトグラフィーにより定量した結果である。エラーバーは標準偏差を示す。 28℃培養におけるKH−1の油脂分解能を示す。ノルマルヘキサン値相当の油分を、油分測定試薬キットにより測定した結果である。左から、それぞれ、培養開始後0時間、24時間、48時間の結果を示す。縦軸は0時間の測定値を100%としたときの割合を標準偏差とともに示す。 KH−1と洗剤との比較を示す。油汚れのついた換気扇フィルターを、KH−1の培養上清、油用洗剤、一般洗剤に漬け置き洗いをした写真である。左は処理を行う前を示す。中央列および右列は、それぞれ、上段:KH−1処理(中央列30分、右列1時間)、中段:油用洗剤処理(中央列2時間、右列4時間)、および下段:一般洗剤処理(中央列2時間、右列4時間)。 KH−1およびBioRemove3200(BR3200)(Novozymes、デンマーク)のパルミテライジン酸およびバクセン酸分解活性の比較を示す。15℃で48時間または72時間培養を行った後、TLCによって培養液中の脂肪酸を解析した写真である。パネルは、左から、パルミテライジン酸48時間培養、バクセン酸48時間培養、パルミテライジン酸72時間培養、およびバクセン酸72時間培養である。各パネルにおいて、左は陰性対照(BS)であり、中央はBR3200であり、右はKH−1である。 KH−1およびBioRemove3200(BR3200)(Novozymes、デンマーク)のパルミテライジン酸およびバクセン酸分解活性の比較を示す。28℃で24時間培養を行った後、TLCによって培養液中の脂肪酸を解析した写真である。左のパネルはパルミテライジン酸培養、右のパネルはバクセン酸培養である。各パネルにおいて、左は陰性対照(BS)であり、中央はBR3200であり、右はKH−1である。 15℃培養におけるKH−1AL1によるキャノーラ油の分解を示す。培養開始後0時間、24時間、48時間、72時間および96時間における結果を示す。左は、TLCによって培養液中の残存油分を解析した写真である。右上は、全脂肪酸(トリグリセリド中の脂肪酸と遊離脂肪酸との合計)をガスクロマトグラフィーにより定量した結果であり、縦軸に全脂肪酸濃度を示す(エラーバーは標準偏差を示す)。右下は、ノルマルヘキサン値相当の油分を、油分測定試薬キットにより測定した結果であり、縦軸は0時間時点の測定値を100%とした場合の残留油分の割合を示す(エラーバーは標準偏差を示す)。 15℃培養におけるKH−1AL2によるキャノーラ油の分解を示す。培養開始後0時間、24時間、48時間、72時間および96時間における結果を示す。左は、TLCによって培養液中の残存油分を解析した写真である。右上は、全脂肪酸(トリグリセリド中の脂肪酸と遊離脂肪酸との合計)をガスクロマトグラフィーにより定量した結果であり、縦軸に全脂肪酸濃度を示す(エラーバーは標準偏差を示す)。右下は、ノルマルヘキサン値相当の油分を、油分測定試薬キットにより測定した結果であり、縦軸は0時間時点の測定値を100%とした場合の残留油分の割合を示す(エラーバーは標準偏差を示す)。 15℃培養におけるKH−1AL3によるキャノーラ油の分解を示す。培養開始後0時間、24時間、48時間、72時間および96時間における結果を示す。左は、TLCによって培養液中の残存油分を解析した写真である。右上は、全脂肪酸(トリグリセリド中の脂肪酸と遊離脂肪酸との合計)をガスクロマトグラフィーにより定量した結果であり、縦軸に全脂肪酸濃度を示す(エラーバーは標準偏差を示す)。右下は、ノルマルヘキサン値相当の油分を、油分測定試薬キットにより測定した結果であり、縦軸は0時間時点の測定値を100%とした場合の残留油分の割合を示す(エラーバーは標準偏差を示す)。 28℃培養におけるKH−1、KH−1AL1、KH−1AL2およびKH−1AL3の培養上清によるトリエライジンの分解をTLCによって解析した写真である。左から、それぞれ、無菌区(対照)、KH−1、KH−1AL1、KH−1AL3およびKH−1AL2の結果を示す。 28℃培養におけるKH−1、KH−1AL1、KH−1AL2およびKH−1AL3によるエライジン酸の資化および分解を示す。左は、TLCによって培養液中の残存エライジン酸を解析した写真である。右は、ノルマルヘキサン値相当の油分を、油分測定試薬キットにより測定した結果であり、縦軸に残存油分濃度(mg/L)を示す。左から、それぞれ、無菌区(対照)、KH−1、KH−1AL1、KH−1AL3およびKH−1AL2の結果を示す(エラーバーは標準偏差を示す)。 15℃培養におけるKH−1、KH−1AL1、KH−1AL2およびKH−1AL3によるエライジン酸の資化および分解を示す。左は、TLCによって培養液中の残存エライジン酸を解析した写真である。右は、ノルマルヘキサン値相当の油分を、油分測定試薬キットにより測定した結果であり、縦軸に残存油分濃度(mg/L)を示す。左から、それぞれ、無菌区(対照)、KH−1、KH−1AL1、KH−1AL2およびKH−1AL3の結果を示す(エラーバーは標準偏差を示す)。
以下、本開示を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
(定義等)
本明細書において「リパーゼ」とは、エステラーゼの一種であり、中性脂肪(グリセロールエステル)を加水分解して、脂肪酸とグリセロールに分解する反応を可逆的に触媒する酵素をいう。例えば、リパーゼとして、酵素番号(EC番号)でEC3.1.1.3に分類される、トリグリセロールリパーゼが挙げられる。
本明細書において、「油脂」とは、オイル状の物質を指し、油脂には、ヒドロキシル基を含有する化合物と脂肪酸とが脱水縮合して形成されるエステル基含有化合物が含まれる。代表的には、このヒドロキシル基を含有する化合物はグリセリンであるが、その他にも、ポリグリセリンなどが挙げられる。本技術分野において通常使用される意味と同様に、本明細書において、グリセリンと脂肪酸とが脱水縮合して形成されるエステル基含有化合物を「グリセリド」と呼ぶ。このヒドロキシル基を含有する化合物が複数のヒドロキシル基を有する場合、そのヒドロキシル基のうちの少なくとも1つが脂肪酸と脱水縮合してエステルを形成していれば、本明細書におけるエステル基含有化合物に該当する。
油脂は、例えば、外食産業の厨房排水や、食品工場の排水などに含まれ、固液分離によりこれを除く処理設備であるグリーストラップや加圧浮上分離装置は、悪臭や害虫の発生源であること、分離した油の回収や運搬、清掃等のメンテナンスにかかる労苦やコスト、凝集剤のコストなどを考慮すると、グリーストラップ内や工場排水処理設備内の油を消滅させるために本開示の微生物または組成物は用いられる。
本開示は、本開示の油脂分解細菌を含むグリーストラップ用および工場排水用微生物製剤を提供する。特に工場排水に適用すれば、加圧浮上分離装置の稼働率の低減や代替まで可能である。食品工場排水にはトランス脂肪酸が含まれ、これが最終的に取り除かれないことが多く、汚れの残留として問題となることがあるが、本開示の微生物はこれらも解決し得る。また、外食産業の厨房排水は通常1g/L以上、高いときは10g/L以上もの高濃度の油脂を含んでいるだけでなく、多くのグリーストラップ内の排水の滞留時間は10分程度と極めて短いが、本開示の微生物はこのような環境でも用いることができる。
油脂は生ごみや畜産廃棄物、排水処理場からの汚泥などにも多く含まれる。その中にはトランス脂肪酸を含むものも少なくない。このような固形廃棄物の処理には微生物が利用されることも多いが、含有油分が多いと処理が困難になったり、油分が残存してしまったりする。本開示の微生物または組成物は、そのような廃棄物中の油分の分解処理にも適用可能である。
本明細書において、「脂肪酸」とは、2〜100の炭素原子を有し、少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物である。代表的には、脂肪酸における炭素鎖は直鎖であるが、分枝鎖であってもよいし、環を含んでもよい。代表的には、脂肪酸は、カルボキシル基を一つ含むが、複数のカルボキシル基を含んでもよい。脂肪酸における炭素鎖はC=Cの二重結合を含んでもよく、「トランス脂肪酸」は、本技術分野において通常使用される意味で使用され、トランス型の二重結合を有する不飽和脂肪酸を意味する。本明細書において、「トランス脂肪酸含有油脂」とは、トランス脂肪酸とヒドロキシル基を含有する化合物とが脱水縮合して形成される化合物を指す。トランス脂肪酸には、エライジン酸、バクセン酸などが包含されるが、本明細書中で言及する場合、トランス脂肪酸の種類に特に制限はない。トランス脂肪酸含有油脂中に存在するトランス脂肪酸の比率は、特に限定されない。二重結合の「トランス型」および「シス型」は、本技術分野において通常使用される意味で使用され、二重結合を形成した2つの炭素原子に4つの置換基(R、R、RおよびR)が結合した以下の構造


において、RおよびRまたはRおよびRが水素以外の基であり、残りの2個の置換基が水素原子である場合をシス型とよび、RおよびRまたはRおよびRが水素以外の基であり、残りの2個の置換基が水素原子である場合をトランス型と呼ぶ。トランス脂肪酸は、天然には共役リノール酸やバクセン酸として微量に存在し、例えば、反芻動物の脂肪分に比較的多く含まれている。トランス脂肪酸は、不飽和脂肪酸から飽和脂肪酸を製造するための水素化工程、および不飽和脂肪酸を多く含む植物油の精製の際に生じ得る。そのため、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングなどには、トランス脂肪酸が比較的多く含まれ得る。
本明細書において、「ノルマルヘキサン(n−Hex)値」とは、ノルマルヘキサンにより抽出される不揮発性物質の量であり、水中の油分(油脂、その加水分解産物など)の量を示す指標を指す。n−Hex値は、例えば、JIS K 0102に従って求めることができる。また、ポリニッパム抽出物質測定による簡易測定試薬キットなどを用いて求めることもできる。
本明細書において、「資化」とは、栄養源として利用することをいい、資化の対象となった物質(例えば油脂)は、結果として消失することになる。
本明細書において、「分解」とは、油脂および/または脂肪酸について用いる場合、対象となった油脂および/または脂肪酸がそれより小さな分子になることをいい、例えば、グリセロールと(遊離)脂肪酸に分かれることをいい、脂肪酸がより炭素数の少ない脂肪酸に変換されることや、二酸化炭素や水にまで変換されることも分解とよぶ。
本明細書において、「トランス脂肪酸含有油脂を資化する能力」とは、トランス脂肪酸含有油脂を資化する活性を指す。本明細書において、「トランス脂肪酸含有油脂を資化する」は、本技術分野において通常使用される意味で使用され、微生物がトランス脂肪酸含有油脂を炭素源などの栄養源として取り込むことを意味する。「資化」する場合、グリセロールと遊離脂肪酸とに加水分解することのほか、他の物質の一部に変化することも含まれる。トランス脂肪酸含有油脂を資化する能力は、以下の試験で測定し、同定することができる。
・トランス脂肪酸含有油脂を唯一の炭素源として含む培地で増殖可能であるかどうかを確認する試験。
・トランス脂肪酸含有油脂を唯一の炭素源として含む培地でコロニーを形成するかどうかを確認する試験。
・増殖に伴い培養上清中のノルマルヘキサン値の減少を測定する試験。
・増殖に伴い培養上清中の全脂肪酸(油脂中の脂肪酸と遊離脂肪酸との和)を、メチルエステルに変換後、その総量をガスクロマトグラフィーで測定する試験。
・増殖に伴い培養上清中の油脂および遊離脂肪酸の量を薄層クロマトグラフィーで測定する試験。
個々のより詳細な測定方法は、本明細書に提供されており、また、当業者であれば、任意のその他の機器・条件を使用してこれらの測定を実施することができる。
本明細書において、「トランス脂肪酸含有油脂を分解する能力」とは、トランス脂肪酸含有油脂を、グリセロールと遊離脂肪酸とに加水分解する活性を指す。トランス脂肪酸含有油脂を分解する能力は、以下の試験で測定し、同定することができる。
・トランス脂肪酸含有油脂を資化する能力があるかどうかを確認する試験。
・培養上清中の油脂および遊離脂肪酸の量を薄層クロマトグラフィーで測定する試験。
・トランス脂肪酸含有油脂を炭素源として与えて培養し、培養上清中のノルマルヘキサン値の減少量を測定する試験。
・培養上清中の遊離脂肪酸の濃度をガスクロマトグラフィーで測定する試験。
・培養上清中の遊離脂肪酸の濃度をGC−MSで測定する試験。
・培養上清中の遊離脂肪酸の濃度をHPLCで測定する試験。
・トランス脂肪酸含有油脂を含む寒天培地上で形成されるコロニーの周辺に、クリアゾーンが観察されるかどうかを確認する試験。
・トランス脂肪酸含有油脂を主たる有機物(例えば、全有機物中の70重量%以上)として含む検水を作成し、生化学的酸素要求量(BOD)を測定する試験。
個々のより詳細な測定方法は、本明細書に提供されており、また、当業者であれば、任意のその他の機器・条件を使用してこれらの測定を実施することができる。
本明細書において、「トランス脂肪酸を資化する能力」とは、トランス脂肪酸を、資化する能力を指す。トランス脂肪酸を資化する能力は、以下の試験で測定し、同定することができる。
・トランス脂肪酸を唯一の炭素源として含む培地で増殖可能であるかどうかを確認する試験。
・トランス脂肪酸を唯一の炭素源として含む培地でコロニーを形成するかどうかを確認する試験。
・増殖に伴い培養上清中のノルマルヘキサン値の減少を測定する試験。
・増殖に伴い培養上清中のトランス脂肪酸の濃度をガスクロマトグラフィーで測定する試験。
・増殖に伴い培養上清中のトランス脂肪酸の濃度をHPLCで測定する試験。
・増殖に伴い培養上清中のトランス脂肪酸の量を薄層クロマトグラフィーで測定する試験。
個々のより詳細な測定方法は、本明細書に提供されており、また、当業者であれば、任意のその他の機器・条件を使用してこれらの測定を実施することができる。
本明細書において、「トランス脂肪酸を分解する能力」とは、トランス脂肪酸を、分解する能力を指す。トランス脂肪酸を分解する能力は、以下の試験で測定し、同定することができる。
・トランス脂肪酸を資化する能力があるかどうかを確認する試験。
・培養上清中のトランス脂肪酸の量を薄層クロマトグラフィーで測定する試験。
・トランス脂肪酸を炭素源として与えて培養し、上清中のノルマルヘキサン値の減少を測定する試験。
・培養上清中のトランス脂肪酸の濃度をガスクロマトグラフィーで測定する試験。
・培養上清中のトランス脂肪酸の濃度をGC−MSで測定する試験。
・培養上清中のトランス脂肪酸の濃度をHPLCで測定する試験。
・トランス脂肪酸を含む寒天培地上で形成されるコロニーの周辺に、クリアゾーンが観察されるかどうかを確認する試験。
・トランス脂肪酸を主たる有機物(例えば、全有機物中の70重量%以上)として含む検水を作成し、生化学的酸素要求量(BOD)を測定する試験。
個々のより詳細な測定方法は、本明細書に提供されており、また、当業者であれば、任意のその他の機器・条件を使用してこれらの測定を実施することができる。
本明細書において、「15℃において油脂を分解する能力」とは、低温において油脂を、グリセロールと遊離脂肪酸とに加水分解する活性を指す。15℃において油脂を分解する能力は、以下の試験で測定し、同定することができる。次のいずれかの試験で分解能力が示されればよく、必ずしも全ての試験で分解が認められなければいけないものではない。
・15℃で油脂を資化する能力があるかどうかを確認する試験。
・15℃で油脂を含む寒天培地上で形成されるコロニーの周辺に、クリアゾーンが観察されるかどうかを確認する試験。
・油脂を炭素源として与えて15℃で培養し、培養上清中のノルマルヘキサン値の減少量を測定する試験。
・油脂を炭素源として与えて15℃で培養し、培養上清中の油脂および遊離脂肪酸の量の時間変化を薄層クロマトグラフィーで測定する試験。油脂の量が時間の経過とともに減少すれば分解能力がある。あるいは、遊離脂肪酸の量がいったん増えれば、分解する能力があると言える。
・油脂を炭素源として与えて15℃で培養し、培養上清中の遊離脂肪酸の濃度をガスクロマトグラフィー、GC−MS、HPLC等の機器分析により測定する試験。遊離脂肪酸の濃度がいったん増えれば、分解する能力があると言える。
・油脂を主たる有機物(例えば、全有機物中の70重量%以上)として含む検水を作成し、生化学的酸素要求量(BOD)を測定する試験。
個々のより詳細な測定方法は、本明細書に提供されており、また、当業者であれば、任意のその他の機器・条件を使用してこれらの測定を実施することができる。
本明細書において、「油処理成分」とは、油脂および/または脂肪酸の資化および分解を補助する成分を意味する。具体的には、バイオサーファクタントなどの、油脂および/または脂肪酸の分散化を促進する成分、油脂を脂肪酸とグリセロールとに分解する成分のほか、脂肪酸を分解するもの、グリセロールを分解するもののほか、油を吸着して処理の対象物から除去するものなどを包含する。一局面では、油処理成分には、本開示の微生物が産生するバイオサーファクタントが含まれてもよい。
本明細書において「油分解剤」とは、本開示の微生物を有効成分とする、油脂および/または脂肪酸の分解が可能な製剤を指す。本開示において、油分解剤は、油処理成分と併用して使用されてもよい。この場合の油分解剤と油処理成分との併用使用のタイミングは、同時に使用しても、いずれか片方を先に使用することにしてもよい。さらに、油分解剤には、使用する細菌株または細菌株由来のリパーゼの活性を高める成分(例えば炭素源、窒素源)、界面活性剤、乾燥保護剤、細菌を長期間維持するための成分、防腐剤、賦形剤、強化剤、酸化防止剤等を更に含有させてもよい。
本明細書で使用される「誘導株」、「類似株」または「変異株」は、好ましくは、限定を意図するものではないが、対象となる微生物のDNAに実質的に相同な領域を含む遺伝子(例えば、16S rDNA)を含み、このような株は、種々の実施形態において、当該分野で公知のコンピュータ相同性プログラムによってアラインメントを行って元となる株の全ゲノムの配列と比較した際、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%同一である全ゲノム配列を有する。これは、遺伝子の変異、置換、欠失および/または付加によって改変された微生物であり、その誘導株がなお元の微生物の生物学的機能を、必ずしも同じ度合いでなくてもよいが示す微生物を意味する。例えば、遺伝子の変異は、任意の公知の変異剤、UV、プラズマなどを使用して導入することができる。一つの実施形態では、「誘導株」、「類似株」または「変異株」は、元の株と同じ属および/または種である株である。例えば、本明細書において記載されあるいは当該分野で公知の適切で利用可能なin vitroアッセイによって、このような微生物の生物学的機能を調べることが可能である。
本明細書において遺伝子の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいい、一般に「相同性」を有するとは、同一性または類似性の程度が高いことをいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。本明細書において遺伝子または塩基配列の「類似性」は、2以上の遺伝子配列の、互いに対する類似性の程度をいい、同一性の他配列の類似の程度が高いことをいう。「類似性」は、同一性に加え、類似の塩基についても計算に入れた数値であり、ここで類似の塩基とは、混合塩基(例えば、R=A+G、M=A+C、W=A+T、S=C+G、Y=C+T、K=G+T、H=A+T+C、B=G+T+C、D=G+A+T、V=A+C+G、N=A+C+G+T)において、一部が一致する場合をいう。
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された1文字コードにより言及され得る。本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。同一性の検索は例えば、NCBIのBLAST2.7.1(2017.10.19発行)を用いて行うことができる。本明細書における「同一性」の値は通常は上記BLASTを用い、デフォルトの条件でアラインした際の値をいう。ただし、パラメータの変更により、より高い値が出る場合は、最も高い値を同一性の値とする。複数の領域で同一性が評価される場合はそのうちの最も高い値を同一性の値とする。「類似性」は、同一性に加え、類似のアミノ酸についても計算に入れた数値である。
本開示の一実施形態において同一性等の数値である「70%以上」は、例えば、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、または100%以上であってもよく、それら起点となる数値のいずれか2つの値の範囲内であってもよい。上記「同一性」は、2つもしくは複数間のアミノ酸または塩基配列において相同なアミノ酸または塩基数の割合を、上述したような公知の方法に従って算定される。具体的に説明すると、割合を算定する前には、比較するアミノ酸または塩基配列群のアミノ酸または塩基配列を整列させ、同一アミノ酸または塩基の割合を最大にするために必要である場合はアミノ酸または塩基配列の一部に間隙を導入する。整列のための方法、割合の算定方法、比較方法、およびそれらに関連するコンピュータプログラムは、当該分野で従来からよく知られている(例えば、上述したBLAST等)。本明細書において「同一性」および「類似性」は、特に断りのない限りNCBIのBLASTによって測定された値で表すことができる。BLASTでアミノ酸または塩基配列を比較するときのアルゴリズムには、Blastpをデフォルト設定で使用できる。測定結果はPositivesまたはIdentitiesとして数値化される。この場合、「同一性」に代えて「類似性」という場合は、本明細書に記載される「類似」する「アミン酸」または「塩基」の定義に該当するものも考慮した数値である。
本明細書において「生物学的機能」とは、ある微生物について言及するとき、その微生物が有し得る特定の機能をいい、これには、例えば、油脂の分解(例えば、トランス脂肪酸含有油脂の分解)等を挙げることができるがそれらに限定されない。本開示においては、例えば、トランス脂肪酸含有油脂の分解のほか、シス脂肪酸含有油脂の分解、シス脂肪酸の分解、飽和脂肪酸含有油脂の分解、飽和脂肪酸の分解などを挙げることができるがそれらに限定されない。本明細書において、生物学的機能は、対応する「生物学的活性」によって発揮され得る。本明細書において「生物学的活性」とは、ある微生物が、ある環境において有し得る活性のことをいい、種々の機能(例えば、トランス脂肪酸含有油脂の分解活性)を発揮する活性が包含される。このような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測定することができる。従って、「活性」は、応答に影響する(すなわち、いくらかの曝露または刺激に応答する測定可能な影響を有する)、種々の測定可能な指標をいい、例えば、本開示の微生物のいくつかの刺激後または事象後の上流または下流のタンパク質の量あるいは他の類似の機能の尺度も含まれ得る。
本明細書で使用されるとき、試料中の分析物の「量」は、一般には、試料の体積中で検出し得る分析物の質量を反映する絶対値を指す。しかし、量は、別の分析物量と比較した相対量も企図する。例えば、試料中の分析物の量は、試料中に通常存在する分析物の対照レベルまたは正常レベルより大きい量であってもよい。
用語「約」は、示された値プラスまたはマイナス10%を指す。
本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、本開示の微生物を含む組成物、追加的な成分、緩衝液、説明書など)が提供されるユニットをいう。安定性等のため、混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、微生物を含む組成物、追加的な成分)などをどのように使用するか、あるいは、どのように処理すべきかを記載する指示書または説明書を備えていることが有利である。本明細書においてキットが使用される場合、キットには、通常、本開示の微生物や組成物等の使い方などを記載した指示書などが含まれる。
本明細書において「指示書」は、本開示を使用する方法を使用者に対する説明を記載したものである。この指示書は、本開示の使用方法を指示する文言が記載されている。この指示書は、必要な場合は、本開示が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省または農林水産省等、米国であれば食品医薬品局(FDA)、農務省(USDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、紙媒体で提供され得るが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような形態でも提供され得る。
(好ましい実施形態)
以下に本開示の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本開示のよりよい理解のために提供されるものであり、本開示の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本開示の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本開示の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができることが理解される。
(油脂分解性微生物)
一つの局面において、本開示は、油脂分解能のある新たな微生物を提供する。特に、本開示の微生物は、トランス脂肪酸含有油脂を資化する能力、トランス脂肪酸を資化する能力、トランス脂肪酸を分解する能力、トランス脂肪酸含有油脂を分解する能力、および/または15℃において油脂および/または脂肪酸を資化および/または分解する能力という1つ以上の特徴を有するものである。
一つの実施形態では、本開示の微生物は、ブルクホルデリア(Burkholderiaceae)科の細菌である。一つの実施形態では、本開示の微生物は、ブルクホルデリア(Burkholderia)属の細菌である。ブルクホルデリア属はグラム陰性の非芽胞形成好気性の極鞭毛を持つ桿菌であり、ブルクホルデリア科の基準属である。一つの実施形態では、本開示の微生物は、ブルクホルデリア アルボリス(Burkholderia arboris)、ブルクホルデリア アンビファリア(Burkholderia ambifaria)またはブルクホルデリア セパシア(Burkholderia cepacia)であり、好ましくは、ブルクホルデリア アルボリスまたはブルクホルデリア アンビファリアである。一つの実施形態では、本開示の微生物は、Burkholderia cepacia complexに属する微生物である。Burkholderia cepacia complexとは、遺伝子的に非常に近いBurkholderia属の微生物の分類であり、ambifaria、anthina、arboris、cenocepacia、cepacia、contaminans、diffusa、dolosa、lata、latens、metallica、multivorans、pseudomultivorans、puraquae、pyrrocinia、seminalis、stabilis、stagnalis、territorii、ubonensis、およびvietnamiensisが含まれる(Martina Pら、Int J Syst Evol Microbiol. 2018 Jan;68(1):14-20.)。別の実施形態では、本開示のブルクホルデリア細菌は、metallica、seminalis、anthina、ambifaria、diffusa、ubonensis、multivorans、latens、cenocepacia、vietnamiensis、pyrrocinia、stabilis、glumae、gladioli、plantarii、oklahomensis、thailandensis、mallei、pseudomalleiまたはphytofirmansであってもよい。本発明者は、16SリボゾームDNAの塩基配列の決定及び系統解析によって、新たな微生物(KH−1)をブルクホルデリア アルボリスと同定し、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターにこれを寄託し、2018年6月4日に受領され、2018年6月12日に受託証が発行された。受領番号はNITE ABP−02731である。また、ブルクホルデリア属の細菌(KH−1AL1、KH−1AL2およびKH−1AL3)をさらに同定し、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターにこれらを寄託し、2019年6月28日に受領された。受領番号はそれぞれ、NITE ABP−02977、NITE ABP−02978、およびNITE ABP−02979である。一つの実施形態では、本開示の微生物は、ブルクホルデリア菌KH−1株(受託番号:NITE BP−02731/受領番号NITE ABP−02731で特定される菌株)、KH−1AL1株(受領番号NITE ABP−02977で特定される菌株)、KH−1AL2株(受領番号NITE ABP−02978で特定される菌株)もしくはKH−1AL3株(受領番号NITE ABP−02979で特定される菌株)であるか、またはその誘導株である。
一つの実施形態では、本開示の微生物は、ブルクホルデリア菌KH−1株(受託番号NITE BP−02731/受領番号NITE ABP−02731で特定される菌株)、KH−1AL1株(受領番号NITE ABP−02977で特定される菌株)、KH−1AL2株(受領番号NITE ABP−02978で特定される菌株)もしくはKH−1AL3株(受領番号NITE ABP−02979で特定される菌株)の誘導株である。ここで、誘導株とは、ブルクホルデリア菌KH−1株、KH−1AL1株、KH−1AL2株もしくはKH−1AL3株を元として得られた株であることは必要とせず、これらのブルクホルデリア菌株の生物学的機能を、必ずしも同じ度合いでなくてもよいが示す微生物を指す。一つの実施形態では、本開示の誘導株である微生物は、ブルクホルデリア菌KH−1株、KH−1AL1株、KH−1AL2株もしくはKH−1AL3株と同様に、低温(例えば、25℃以下、20℃以下、15℃以下、10℃以下、5℃以下など)において油脂(例えば、トランス脂肪酸含有油脂)を資化(分解)する能力、およびトランス脂肪酸を資化(分解)する能力からなる群から選択される生物学的機能を示すが、その生物学的機能の程度はKH−1株、KH−1AL1株、KH−1AL2株もしくはKH−1AL3株と異なっていてもよい。一つの実施形態では、本開示の誘導株である微生物は、ブルクホルデリア(Burkholderiaceae)科の細菌であり、より具体的には、ブルクホルデリア(Burkholderia)属の細菌であり、さらに具体的には、ブルクホルデリア アルボリス(Burkholderia arboris)、ブルクホルデリア アンビファリア(Burkholderia ambifaria)、またはBurkholderia cepacia complexに属する微生物である。
本開示の微生物(KH−1株、KH−1AL1株、KH−1AL2株もしくはKH−1AL3株の誘導株を含む)は、油脂を唯一の炭素源として含み、pHを6〜8に調整した無機塩寒天培地上で単離可能であり得る。また、一つの実施形態では、本開示の微生物(KH−1株、KH−1AL1株、KH−1AL2株もしくはKH−1AL3株の誘導株を含む)は、寒天培地上に生じたコロニー周辺にクリアゾーン(ハロー)が形成されるのを確認することで判別可能であり得る。
一つの実施形態では、本開示の微生物(KH−1株、KH−1AL1株、KH−1AL2株もしくはKH−1AL3株の誘導株を含む)は、トランス脂肪酸またはトランス脂肪酸含有油脂を資化する能力を有する。一つの実施形態では、本開示の微生物(KH−1株、KH−1AL1株、KH−1AL2株もしくはKH−1AL3株の誘導株を含む)は、トランス脂肪酸を分解する能力を有する。一つの実施形態では、本開示の微生物(KH−1株、KH−1AL1株、KH−1AL2株もしくはKH−1AL3株の誘導株を含む)は、トランス脂肪酸含有油脂を分解する能力を有する。
一つの実施形態では、本開示の微生物(KH−1株、KH−1AL1株、KH−1AL2株もしくはKH−1AL3株の誘導株を含む)は、15℃において油脂および/または脂肪酸を分解する能力を有する。一つの実施形態では、本開示の微生物(KH−1株、KH−1AL1株、KH−1AL2株もしくはKH−1AL3株の誘導株を含む)は、トランス脂肪酸またはトランス脂肪酸を含有する油脂を、資化または分解する能力が15℃において保持される。
一つの実施形態では、本開示の微生物(KH−1株、KH−1AL1株、KH−1AL2株もしくはKH−1AL3株の誘導株を含む)は、油脂や脂肪酸を含む培地中で培養すると、バイオサーファクタントを分泌し得る。
一つの実施形態では、本開示の微生物(KH−1株、KH−1AL1株、KH−1AL2株もしくはKH−1AL3株の誘導株を含む)は、10g/Lのキャノーラオイルを含む無機塩培地に、最終濃度がOD660=0.03または0.02となるような密度で微生物を植菌し、200ml/minの空気還流下、pH7.0、15℃で培養したときに、24または48時間後の上清におけるノルマルヘキサン値相当の油分が、9g/L未満、8g/L未満、7g/L未満、6g/L未満、5g/L未満、4g/L未満、3g/L未満、2g/L未満、1g/L未満、0.7g/L未満、0.5g/L未満、0.2g/L未満、0.1g/L未満、0.07g/L未満、0.05g/L未満、0.02g/L未満、または0.01g/L未満となる油脂分解能を有する。特に、本開示の微生物(KH−1株の誘導株を含む)は、この条件で判定した場合にOD660=0.02の密度で植菌し48時間培養した場合に約6g/L未満までノルマルヘキサン値相当の油分を低下させる油脂分解能を有することが好ましく、OD660=0.03の密度で植菌し24時間培養した場合に6g/L未満までノルマルヘキサン値相当の油分を低下させる油脂分解能を有することが特に好ましく、このような低温油脂分解能を有する微生物は本開示の種々の用途において有益に使用することができる。
一つの実施形態では、本開示の微生物(KH−1株、KH−1AL1株、KH−1AL2株もしくはKH−1AL3株の誘導株を含む)は、トランス脂肪酸(例えば、エライジン酸、パルミテライジン酸、バクセン酸)含有油脂を含むpH7.0かつ15℃または28℃の培地中で、トランス脂肪酸含有油脂を資化および/または分解する油脂分解能を有し得る。
一つの実施形態では、本開示の微生物(KH−1株、KH−1AL1株、KH−1AL2株もしくはKH−1AL3株の誘導株を含む)は、Triton X−100およびエライジン酸をそれぞれ0.25重量%および0.2重量%の濃度で含む無機塩培地に終濃度OD660=0.08となるような密度で微生物を植菌し、pH7.0、15℃で培養したときに72時間後の上清におけるエライジン酸濃度が、重量%において0.15%未満、0.12%未満、0.1%未満、0.09%未満、0.08%未満、0.07%未満、0.06%未満、0.05%未満、0.04%未満、0.03%未満、0.02%未満、0.015%未満、0.01%未満、0.007%未満、0.005%未満、0.002%未満、0.001%未満、0.0007%未満、0.0005%未満、0.0002%未満、または0.0001%未満となるトランス脂肪酸分解能を有する。本開示の微生物(KH−1株、KH−1AL1株、KH−1AL2株もしくはKH−1AL3株の誘導株を含む)は、この条件で判定した場合に0.15%未満、0.12%未満、0.1%未満、または0.05%未満、特に、0.12%未満まで上清におけるエライジン酸濃度を低下させる能力を有することが好ましく、このようなトランス脂肪酸分解能を有する微生物は本開示の種々の用途において有益に使用することができる。
一つの実施形態では、本開示の微生物(KH−1株、KH−1AL1株、KH−1AL2株もしくはKH−1AL3株の誘導株を含む)は、Triton X−100およびエライジン酸をそれぞれ0.25重量%および0.2重量%の濃度で含む無機塩培地に終濃度OD660=0.04となるような密度で微生物を植菌し、pH7.0、28℃で培養したときに24時間後の上清におけるエライジン酸濃度が、重量%において0.15%未満、0.12%未満、0.1%未満、0.09%未満、0.08%未満、0.07%未満、0.06%未満、0.05%未満、0.04%未満、0.03%未満、0.02%未満、0.015%未満、0.01%未満、0.007%未満、0.005%未満、0.002%未満、0.001%未満、0.0007%未満、0.0005%未満、0.0002%未満、または0.0001%未満となるトランス脂肪酸分解能を有する。本開示の微生物(KH−1株、KH−1AL1株、KH−1AL2株もしくはKH−1AL3株の誘導株を含む)は、この条件で判定した場合に0.15%未満、0.12%未満、0.1%未満、0.05%未満、0.02%未満または0.01%未満、特に、0.1%未満まで上清におけるエライジン酸濃度を低下させる能力を有することが好ましく、このようなトランス脂肪酸分解能を有する微生物は本開示の種々の用途において有益に使用することができる。
一つの実施形態では、本開示の微生物(KH−1株、KH−1AL1株、KH−1AL2株もしくはKH−1AL3株の誘導株を含む)は、10g/Lのキャノーラオイルを含む無機塩培地に、最終濃度がOD660=0.03となるような密度で微生物を植菌し、200ml/minの空気還流下、pH7.0、15℃および28℃でそれぞれ培養したときに、15℃培養における24時間後の上清におけるノルマルヘキサン値相当の油分が、28℃培養における24時間後の上清におけるノルマルヘキサン値相当の油分と比較して1000%以下、800%以下、600%以下、400%以下、200%以下、150%以下、100%以下、80%以下、60%以下、40%以下、20%以下、10%以下または5%以下となる油脂分解能を有する。本開示の微生物(KH−1株の誘導株を含む)は、この条件で判定した場合に、28℃培養に比べて15℃培養における油脂残存率が、800%以下、700%以下、600%以下、500%以下、400%以下、特に、700%以下である油脂分解能を有することが好ましく、このような低温油脂分解能を有する微生物は本開示の種々の用途において有益に使用することができる。
一つの実施形態では、本開示の微生物(KH−1株、KH−1AL1株、KH−1AL2株もしくはKH−1AL3株の誘導株を含む)は、10g/Lのキャノーラオイルを含む無機塩培地に、最終濃度がOD660=0.03となるような密度で微生物を植菌し、200ml/minの空気還流下、pH7.0、15℃および28℃でそれぞれ培養を開始したときに、28℃培養に比べて15℃培養における全脂肪酸分解速度が、1000%以上、800%以上、600%以上、400%以上、200%以上、150%以上、100%以上、80%以上、60%以上、50%以上、40%以上、30%以上、20%以上、10%以上または5%以上となる油脂分解能を有する。本開示の微生物(KH−1株の誘導株を含む)は、この条件で判定した場合に、28℃培養に比べて15℃培養における全脂肪酸分解速度が、50%以上、40%以上、30%以上、20%以上または10%以上、特に、30%以上である油脂分解能を有することが好ましく、このような低温油脂分解能を有する微生物は本開示の種々の用途において有益に使用することができる。
一つの実施形態では、微生物の油脂および脂肪酸の分解・資化能力は、培地中に残存する油脂に含まれる脂肪酸および分解により生じた遊離脂肪酸をガスクロマトグラフィーで定量することにより評価できる。具体的な定量手順を示すと、まず、培養上清1mLを塩酸により酸性にし、2mLのクロロホルムを加える。2分間攪拌後遠心し、クロロホルム層1mLを別容器に移して溶媒を蒸発させて濃縮する。メタノリシス溶液(メタノール:硫酸=17:3)を2mL加えて100℃で2時間加熱し、油脂および遊離脂肪酸をメチルエステル化させる。その後、クロロホルム2mL、純水1mLを加えて攪拌の後、クロロホルム層をガスクロマトグラフィーで分析し、全脂肪酸のメチルエステルを定量する。
一つの実施形態では、微生物の油脂および脂肪酸の分解・資化能力は、培地中に残存する油脂および分解生成物である脂肪酸を薄層クロマトグラフィー(TLC)で分析することにより評価できる。具体的な手順を示すと、まず、培養上清に等量のクロロホルムを加えることによって、油脂を抽出する。この抽出物5μlを、クロロホルム、アセトンおよびメタノールを、体積比でそれぞれ96:4:1の比率で含む展開溶媒を使用し、シリカゲルコートプレート上に展開する。プレートをモリブデン酸n水和物により処理し、油脂および/または脂肪酸を発色させる。
一つの実施形態では、微生物の油脂および脂肪酸の分解・資化能力は、それぞれを唯一の炭素源とする培地での増殖能を調べることで評価できる。
一つの実施形態では、本開示の微生物(KH−1株、KH−1AL1株、KH−1AL2株もしくはKH−1AL3株の誘導株を含む)は、リパーゼを分泌する能力があってもよいし、リパーゼを分泌する能力がなくてもよい。
一つの実施形態では、本開示の微生物(KH−1株、KH−1AL1株、KH−1AL2株もしくはKH−1AL3株の誘導株を含む)は、弱酸性条件(例えば、pH約5.5〜6.0)において増殖・油脂分解可能であり得る。
一つの実施形態では、微生物の増殖能力は、菌体の光学密度として660nmの吸光度(濁度)(OD660)を測定する方法や、コロニーフォーミングユニット(CFU)を測定する方法などで調べることができる。後者では、寒天培地上に培養液の原液および希釈液を一定量塗り拡げ、静置培養により形成されたコロニーを計数する。
一つの実施形態では、本開示の微生物はリパーゼを分泌し得る。微生物のリパーゼ分泌能力については、微生物培養液の遠心分離によって得られる培養上清のリパーゼ活性を測定することにより評価することができる。リパーゼ活性は、パルミチン酸と4−ニトロフェノールとのエステルである4−ニトロフェニルパルミテート(4−NPP)を基質として用いて酵素反応を行い、エステルの加水分解により生じた4−ニトロフェノールの量を410nmの吸光度を測定することによって決定できる。まず、4−NPP(18.9mg)を3%(v/v)トリトンX−100(12ml)に加え、70℃で溶解して基質溶液とする。基質溶液1mL、イオン交換水0.9mLおよび150mM GTA緩衝液(150mM 3,3−ジメチルグルタル酸、150mM Trisおよび150mM 2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールにNaOHまたはHClを加えてpH7に調製)1mLをセルに入れ、28℃で5分間保温する。これに培養上清を0.1mL添加して、攪拌しながら410nmの値を測定する。
当業者は、上記の測定法を適当に使用してKH−1株、KH−1AL1株、KH−1AL2株もしくはKH−1AL3株の誘導株を試験して、上記の生物学的機能(およびその程度)を有する誘導株を取得することができる。
(微生物を含む組成物)
一つの局面において、本開示は、本開示の微生物を含む組成物を提供する。一つの局面において、本開示は、本開示の微生物の培養上清を含む組成物を提供する。本開示の微生物は、任意の適当な方法により培養することで製造することができる。一つの実施形態では、組成物は油分解剤である。一つの実施形態では、組成物は脂肪酸分解剤である。本開示の脂肪酸分解剤によって処理することで、脂肪酸に含まれる炭素数よりも少ない炭素を含む化合物が生成され得る。一つの実施形態では、組成物はトランス脂肪酸分解剤である。
(適用対象)
一つの実施形態では、本開示の油分解剤を適用する油脂として、例えば、植物性油脂(綿実油、菜種油、大豆油、トウモロコシ油、オリーブ油、サフラワー油、米油、ごま油、パーム油、ヤシ油、落花生油等)、動物性油脂(ラード、牛脂、乳脂肪等)、魚油、これらの油脂の加工品(マーガリン、ショートニング、バター等)、絶縁油、潤滑油などが挙げられるが、これらに限定されない。油脂は、エマルジョンの形態で存在していてもよいし、遊離の状態で存在していてもよい。
具体的な実施形態としては、本開示の油分解剤を適用する油脂として、トランス脂肪酸を含む油脂が挙げられ、そのような油脂としては、水素添加して製造される油脂などの加工品(マーガリン、ショートニング、バター等)が挙げられるがこれに限定されない。水素を添加することで不飽和脂肪酸の二重結合の数が減り、飽和脂肪酸の割合が増えるが、これによって、トランス脂肪酸が生成する場合がある。水素添加によって製造されるマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングや、それらを原材料に使ったパン、ケーキ、ドーナツなどの洋菓子、揚げ物などにトランス脂肪酸が含まれるとされる。植物や魚からとった油を精製する工程で、好ましくない臭いを取り除くために高温で処理を行う。この際に、油に含まれているシス型の不飽和脂肪酸からトランス脂肪酸ができるため、サラダ油などの精製した植物油にも微量のトランス脂肪酸が含まれるとされる。
本開示の油分解剤または脂肪酸分解剤を適用する対象は、特に制限されず、例えば、産業排水、家庭排水、産業廃棄物、家庭廃棄物(生ゴミなど)、畜産廃棄物、養殖場(およびその排水)、畜舎(およびその排水)、と殺場(およびその排水)、油脂により汚染された土壌、油脂により汚染された水(海、池、川、動物用飲用水など)、動物の体表、水槽(養殖用、鑑賞用など)、任意の油脂汚染製品(食器、機械部品など)、厨房等に設置されるグリーストラップ、ファットバーグ、排水管、変圧器などから漏れた絶縁油や劣化した絶縁油などが挙げられるが、これらに限定されない。これらのうちの任意の対象には、トランス脂肪酸含有油脂および/またはトランス脂肪酸が含まれる場合があり、本開示の油分解剤または脂肪酸分解剤を好適に適用し得る。「グリーストラップ」とは、排水中の油を分離し、収集するための装置であり、典型的には3槽から構成される。第1槽はバスケットを備え、食材片や残飯などを捕捉する。第2槽では油水が分離される。油と分離した排水は第3槽に送られ、沈降性のゴミなどが除去される。飲食店や病院、ホテル等の業務用厨房にはグリーストラップの設置が義務づけられている。グリーストラップに適用する際は、別に分解処理槽を設けてもよいが、油脂分解剤や微生物を直接グリーストラップに投入してグリーストラップ内で分解処理することもできる。
本開示の微生物は、低温での処理の効率が高いことから、低温処理が望ましい実施形態があり得る。例えば、産業排水、家庭排水、産業廃棄物、家庭廃棄物(生ゴミなど)、油脂により汚染された土壌、油脂により汚染された水(海、池、川、動物用飲用水など)などの、20℃未満(例えば、15℃)での処理が想定される例は、本開示によって処理される対象として好ましい一例である。
具体的には、製剤などを投入ないし添加したり、または本開示の微生物を固定化した担体などを排水経路や排水貯留槽、グリーストラップ内等に設置したりする。グリーストラップ外に、別途、専用の分解処理槽を設けることにしてもよい。
一つの実施形態では、排水としては、飲食店、病院、ホテル等の排水、家庭排水、食品加工工場、油脂加工工場等から排出される産業排水などが挙げられるが、これらに限定されない。
(使用形態)
本開示の微生物または組成物の形態としては、例えば、液体状態、固体状態などが挙げられる。液体状態の微生物または組成物としては、微生物の培養液、培養液から微生物を遠心分離などにより集菌した後、水や緩衝液或いは培養液などに再度分散させたものなどが例示される。固体状態の微生物または組成物としては、遠心分離やプレス圧縮等により脱水したもの、固体と液体の中間のようなペースト状態・マヨネーズ状態のもの、乾燥(例えば、減圧乾燥、凍結乾燥)した乾燥体などが例示される。固体の形状として、例えば、粉末、顆粒、錠剤などが挙げられる。また、組成物は、微生物または培養上清が担体に固定された状態で提供されてもよい。
一つの実施形態において、本開示の微生物または組成物は、約1×10細胞/mL、約1×10細胞/mL、約1×10細胞/mL、約1×10細胞/mL、約1×10細胞/mL、約1×10細胞/mL、約1×10細胞/mLまたは約10細胞/mLの密度となるように液体に添加され得る。
(適用環境)
本開示の微生物または組成物は、任意の好適な環境下で使用できる。
一つの実施形態において、本開示の微生物または組成物は、0〜100℃、5〜70℃、10〜50℃未満、15〜40℃、20〜35℃、70℃未満、60℃未満、50℃未満、40℃未満、30℃未満、25℃未満、20℃未満、15℃未満、10℃未満、5℃未満、0℃未満、約70℃、約60℃、約50℃、約40℃、約30℃、約25℃、約15℃、約10℃、約5℃または約0℃の環境で使用され得る。
一つの実施形態において、本開示の微生物または組成物は、pH3〜13、pH4〜12、pH5〜11、pH6〜10、pH7〜9、pH5.5〜8.5、約pH3、約pH4、約pH5、約pH6、約pH7、約pH8、約pH9、約pH10、約pH11、約pH12または約pH13の環境で使用され得る。
一つの実施形態において、本開示の微生物または組成物は、0.05mg/L以上、0.1mg/L以上、0.5mg/L以上、または1mg/L以上の溶存酸素濃度(DO)の環境で使用され得る。
一つの実施形態において、本開示の微生物または組成物は、100〜40000mg/L、200〜30000mg/L、300〜30000mg/Lのノルマルヘキサン値の排水中で使用され得る。汚泥のスラリーや生ごみ処理などの固形廃棄物(水を含んでもよい)では、より高濃度に油脂が存在する場合があるが、一つの実施形態において、本開示の微生物または組成物は、このような固形廃棄物に対しても有用に適用され得る。
一つの実施形態において、本開示の微生物または組成物は、50重量%以上、20重量%以上、10重量%以上、7重量%以上、5重量%以上、2重量%以上、1重量%以上、0.7重量%以上、0.5重量%以上、0.2重量%以上、0.1重量%以上、0.07重量%以上、0.05重量%以上、0.02重量%以上、0.01重量%以上、0.007重量%以上、0.005重量%以上、0.002重量%以上または0.001重量%以上のトランス脂肪酸を含む対象に添加され得る。
一つの実施形態において、本開示の微生物または組成物は、含まれる油脂の中のトランス脂肪酸(遊離の脂肪酸と、エステル基含有化合物における脂肪酸との合計)が占める割合が50重量%以上、20重量%以上、10重量%以上、7重量%以上、5重量%以上、2重量%以上、1重量%以上、0.7重量%以上、0.5重量%以上、0.2重量%以上、0.1重量%以上、0.07重量%以上、0.05重量%以上、0.02重量%以上、0.01重量%以上、0.007重量%以上、0.005重量%以上、0.002重量%以上または0.001重量%以上である対象に添加され得る。
一つの実施形態において、本開示の微生物または組成物を添加する対象には、窒素が微生物に利用可能な形態、好ましくはアンモニウム塩、硝酸塩、硫酸塩、又は有機窒素化合物、より好ましくは硫酸アンモニウム、尿素、アミノ酸、又はペプトン、トリプトン、カザミノ酸などのペプチドを含む形態で存在していてもよい。存在する窒素の量は、C/N=2〜50の範囲(ここでのCはn−Hex由来のみの炭素を指す)であり得、好ましくはC/N=2〜30、より好ましくはC/N=2〜20の範囲であり得る。ただし、C/Nとは、排水中に含まれるn−Hex由来炭素原子と窒素原子の重量比である。一つの実施形態において、これらの範囲となるように窒素をさらに添加してもよい。
一つの実施形態において、本開示の微生物または組成物を添加する対象には、リン(P)が微生物が利用可能な形態、好ましくはリン酸塩又は核酸、より好ましくはリン酸塩の形態で存在していてもよい。存在するリンの量は、窒素に対してN/P=1〜20となる量であり得る。ただし、N/Pとは、排水中に含まれる窒素原子とリン原子の重量比である。一つの実施形態において、これらの範囲となるようにリンをさらに添加してもよい。
一つの実施形態において、本開示の微生物または組成物は、塩、界面活性剤、光、電流、撹拌操作、ばっ気操作、またはこれらの任意の組み合わせが存在する条件で使用されてもよい。
一つの実施形態において、本開示の微生物または組成物は、本開示の微生物を殺傷し、生育を抑制する物質(塩素、抗生物質など)を除去した後で適用してもよい。
一つの実施形態において、本開示の微生物または組成物は、微生物を固定できる担体とともに使用されてもよい。このような担体を使用することでウォッシュアウトを効果的に避けられ得る。担体の材質としては、微生物を固定できるものであれば特に制限なく、例えば、炭素繊維(PAN系、ピッチ系、フェノール樹脂系等)、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレングリコール樹脂、アクリル樹脂、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、デキストリン、セラミックス、シリコン、金属、木炭、活性炭、鉱物(ゼオライト、珪藻土等)、これらの複合体などが挙げられる。微生物の固定化率及び微生物の作用効率を高めるために、多孔質又は繊維状の担体を用いることが好ましい。また、ゲル状担体に微生物を包含させてもよい。担体の形状は、例えば、立方体状、直方体状、円柱状、球状、円板状、シート状、膜状などが挙げられる。微生物の固定化技術については、例えば、「微生物固定化法による排水処理(須藤隆一編著、産業用水調査会)」や「微生物固定化法による水処理―担体固定化法包括固定化法 生物活性炭法(新しい水処理シリーズ(1))(望月 和博、堀 克敏、立本英機(著)、株式会社エヌ・ティー・エス)」などを参照のこと。
(追加成分)
一つの実施形態において、本開示の微生物または組成物は、追加の成分と組み合わされて使用してもよい。一つの実施形態において、追加の成分は、組成物に添加されていてもよいし、微生物または組成物とは別個に使用されてもよく、別個に使用される場合には、キットとして提供されてもよい。
一つの実施形態において、追加の成分として、使用する微生物の活性を高める成分(例えば炭素源、窒素源)、界面活性剤、乾燥保護剤、微生物を長期間維持するための成分、防腐剤、賦形剤、強化剤、酸化防止剤、他の微生物が挙げられるが、これらに限定されず任意の好適な成分を使用することができる。
一つの実施形態において、他の微生物として、油脂分解能力を有する微生物、リパーゼを生産する微生物、脂肪酸および/またはグリセロール(油脂のリパーゼによる分解産物である)を分解(資化)する微生物、タンパク質、アミノ酸、核酸、または多糖類(例えば、セルロース)を分解(資化)する微生物などが挙げられる。他の微生物は、本開示の微生物と共生可能であることが好ましい。
リパーゼを生産する微生物としては、真性細菌、酵母、糸状真菌類などが挙げられ、好ましくは真性細菌及び酵母、より好ましくはグラム陽性細菌、プロテオバクテリアである。真性細菌としては、例えば、バチルス(Bacillus)属細菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属細菌、ブルクホルデリア(Burkholderia)属細菌、アシネトバクター(Acinetobacter)属細菌、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌、アルカリゲネス(Alcaligenes)属細菌、ロドバクター(Rhodobacter)属細菌、ラルストニア(Ralstonia)属細菌、アシドボラックス(Acidovorax)属細菌、セラチア(Serratia)属細菌、フラボバクテリウム(Flavobacterium)属細菌等を用いることができる。プロテオバクテリアとしては、例えば、アルファバクテリア、ベータバクテリア、ガンマバクテリアを用いることができる。
グリセロールを分解(資化)する微生物としては、例えば、真性細菌、酵母、糸状真菌類を用いることができる。好ましくは、カンジダ属酵母を用いる。カンジダ属酵母の具体例はカンジダ シリンドラセアSL1B2株である(受託番号NITE P−714で独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託されている)。当該菌株はグリセロール資化能に優れることに加え、ブルクホルデリア アルボリスと共生可能であるという特性を備える。従って、カンジダ シリンドラセアSL1B2株を組み合わせて使用することは、ブルクホルデリア アルボリスを使用する態様において特に好ましい。グリセロールを分解(資化)する微生物を併用することで、グリセロールの蓄積による油脂分解速度の低下が防止され、一層効率的な油脂分解が達成可能となり得る。
脂肪酸を分解(資化)する微生物としては、真性細菌、酵母、糸状真菌類などが挙げられ、好ましくは真性細菌及び酵母、より好ましくは酵母である。酵母としては、ヤロウィア(Yarrowia)属酵母、クリプトコッカス(Cryptococcus)属酵母、トリコスポロン(Trichosporon)属酵母、及びハンゼヌラ(Hansenula)属酵母が挙げられる。
(微生物を使用する方法)
一つの局面において、本開示は、本開示の微生物または組成物を処理対象に作用させることを包含する、油脂および/または脂肪酸分解除去方法を提供する。この処理対象は、トランス脂肪酸またはトランス脂肪酸含有油脂を含んでいてもよい。処理対象は、本開示の微生物または組成物を適用することができる任意の本明細書に記載の処理対象であり得る。本開示の油脂および/または脂肪酸分解除去方法は、本開示の微生物または組成物を適用することができる任意の本明細書に記載の環境において実施することができる。本開示の油脂および/または脂肪酸分解除去方法では、本開示の微生物または組成物と組み合わせて使用され得る任意の本明細書に記載の追加成分を使用することができる。
一つの実施形態において、本開示の油脂および/または脂肪酸分解除去方法は、本開示の微生物または組成物を油脂分解槽に投入する工程を含み、投入は、連続的であっても、逐次的であってもよい。油脂分解槽のHRT(水理学的滞留時間)は、通常12時間以上、好ましくは18時間以上、より好ましくは20時間以上、更に好ましくは24時間以上である。n−Hexが10000mg/Lを超える排水について、80%以上のn−Hex値の低減を期待する場合は、HRTを通常18時間以上、好ましくは20時間以上、より好ましくは24時間以上であり得る。n−Hex値が3000mg/L以下の排水について、80%以上のn−Hex値の低減を期待する場合は、HRTを通常8時間以上、好ましくは12時間以上、より好ましくは18時間以上であり得る。
油脂分解槽の微生物濃度は排水中の油脂および/または脂肪酸濃度に依存する場合があり、油脂および/または脂肪酸濃度が高いほど菌体濃度が高く維持され得る。油脂分解槽が発泡する場合は、対策として、HRTを短くする、シャワリング、消泡剤添加などの消泡操作を行うことができる。ただし、消泡剤は微生物の生育を阻害し得るので、添加量は当該事項を考慮して設定することが望ましい。
油脂分解槽からの流出水のn−Hex値は、流入水のn−Hex値が300mg/L程度以下の低濃度排水の場合、好ましくは60mg/L以下、より好ましくは30mg/L以下である。流入水のn−Hex値が3000mg/L程度の中濃度排水の場合、好ましくは600mg/L以下、より好ましくは300mg/L以下、更に好ましくは150mg/L以下、最も好ましくは30mg/L以下である。流入水のn−Hex値が10000mg/L程度の高濃度排水の場合、好ましくは1000mg/L以下、より好ましくは500mg/L以下、更に好ましくは100mg/L以下、最も好ましくは30mg/L以下である。流入水のn−Hex値が30000mg/L程度以上の高濃度排水の場合、好ましくは3000mg/L以下、より好ましくは1000mg/L以下、更に好ましくは300mg/L以下である。
一つの実施形態において、本開示の方法により、油脂および/または脂肪酸含有排水のn−Hex値を、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上低下させることができる。その結果、多くの排水において、油脂分解槽からの流出水のn−Hex値を、多くの自治体で下水道への放流基準値となっている30mg/L未満に下げることも可能である。この基準値を達成すると、n−Hex値だけに着目すれば、後段の活性汚泥処理などの本処理すら不要となり得る。
油脂分解槽からの流出水中において、投入した微生物の量が増加している必要はない。流出水中の投入した微生物の量は、投入した量に対して、好ましくは0.01倍以上、より好ましくは0.1倍以上、更に好ましくは0.5倍以上、最も好ましくは1倍以上である。
本開示の油脂および/または脂肪酸分解除去方法は、上記工程以外にも追加の工程を含むことができる。そのような工程としては、例えば、油脂分解槽からの流出水の全部又は一部を再度油脂分解槽に戻す工程などが挙げられる。しかしながら、本開示の方法では、このような返送処理を行わなくても十分な油脂および/または脂肪酸分解効果が得られるので、油脂分解槽からの流出水の全部又は一部を再度油脂分解槽に戻すことは必須ではない。
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Savli,H., Karadenizli,A., Kolayli,F., Gundes,S., Ozbek,U., Vahaboglu,H. 2003. Expression stability of six housekeeping genes:A proposal for resistance gene quantification studies of Pseudomonas aeruginosa by real-time quantitative RT-PCR. J.Med.Microbiol. 52:403-408.、Marie-Ange Teste, Manon Duquenne, Jean M Francois and Jean-Luc Parrou 2009. Validation of reference genes for quantitative expression analysis by real-time RT-PCR in Saccharomyces cerevisiae. BMC Molecular Biology 10:99、石井誠治、奥村弘、松原チヨ、二宮扶実、吉岡浩、2004年、「熱感応性ポリマーを用いた水中油分の簡易測定方法」Vol 46、No.12、「用水と排水」などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
(注記)
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値」の「範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上、本開示を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したのではない。従って、本開示の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
以下に実施例を記載する。必要な場合、以下の実施例で用いる生物の取り扱いは、必要な場合、名古屋大学や監督官庁およびカルタヘナ法において規定される基準を遵守した。試薬類は具体的には実施例中に記載した製品を使用したが、他メーカー(Sigma−Aldrich、富士フイルム、和光純薬、ナカライ、R&D Systems、USCN Life Science INC、関東化学、フナコシ、東京化成、Merck等)の同等品でも代用可能である。
(実施例1:トランス脂肪酸含有油脂を資化・分解し得る微生物の同定)
油脂含有排水が流出する食品工場近傍の河川から試料を採取し、そこから微生物を分離した。分離した微生物について、低温環境下(15℃)で培養可能かどうかを調べるために、キャノーラ油を唯一の炭素源として含む寒天培地上に各微生物を画線植菌して、15℃で5日間培養した。その結果、油脂を栄養源とする低温で培養可能な微生物が見出された。
また、各微生物の低温(15℃)における油脂分解能を調べた。各微生物のコロニーを、10g/Lのキャノーラ油を唯一の炭素源として含む20mLの無機塩培地に、爪楊枝を使って植菌し、100mL三角フラスコ中で培養した。その結果、低温で油脂を分解、資化して増殖する微生物が見出された。
次に、各微生物のトランス脂肪酸の分解・資化能を調べた。唯一の炭素源としてエライジン酸を0.2%の終濃度で添加した2mLの無機塩培地に、終濃度OD660=0.04となるように各微生物を植菌した。15mLのハーモニー遠沈管(エルエムエス、東京)中、28℃、130rpmで24時間培養を行った。その結果、トランス脂肪酸であるエライジン酸を分解、資化して増殖可能な微生物が見出された。
これらの試験により、分離したある微生物株は、油脂を栄養源とする低温環境下で培養可能であり、低温で油脂を資化(分解)することができ、トランス脂肪酸を分解・資化することが見出され、この株をKH−1と命名した。
KH−1をさらに特徴付けるために16S rDNAの遺伝子配列解析を行った。その結果、KH−1はBurkholderia arborisであると同定された。また、以前に分離された同種細菌株とRAST(Rapid Annotation using Subsystem Technology、http://rast.nmpdr.org)により全ゲノム配列解析を比較した結果、ゲノムサイズに違いがあり、数十か所に欠損・挿入を伴う変異が認められた。また、CLC Genomics server 9.0を使用したSNPs/INDELs解析からも数百か所にバリアントが検出され、以上の結果からKH−1は、Burkholderia arborisの新規株であることが判明した。
ここでは、KH−1に注目して解析を行ったが、同様の試験により油脂および/または脂肪酸分解能を調べることによって他の株の油脂および/または脂肪酸分解能も特定することができる。
Burkholderia arboris KH−1株を、キャノーラ油(日清キャノーラ油、日清オイリオ、東京)を唯一の炭素源として含む寒天培地上に画線植菌して、15℃で5日間培養した。その結果を図1に示す。
KH−1株は良好に増殖したため、KH−1株は油脂存在環境下での生存に適していると考えられる。
(実施例2:他の微生物とのトランス脂肪酸を含む油脂の分解能比較)
トランス脂肪酸分解活性
KH−1がトランス脂肪酸であるエライジン酸(オレイン酸のトランス体)を分解する活性をBioRemove3200(BR3200)(Novozymes、デンマーク)と比較した(図2)。
2.5%Triton X−100(Sigma−Aldrich)溶液に2%エライジン酸を溶解して、ストック溶液を作製した。エライジン酸は常温で固体であるため、4mlのストック溶液を65℃で加熱して、40mlの無機塩培地(NaHPO 3.5g/L、KHPO 2.0g/L、(NHSO 4.0g/L、MgCl・6HO 0.34g/L、FeSO・7HO 2.8mg/L、MnSO・5HO 2.4mg/L、CoCl・6HO 2.4mg/L、CaCl・2HO 1.7mg/L、CuCl・2HO 0.2mg/L、ZnSO・7HO 0.3mg/L、およびNaMoO 0.25mg/L)に添加した後、オートクレーブにかけた。Triton X−100及びエライジン酸の終濃度は、それぞれ0.25%と0.2%であった。LB培地にて一晩培養したKH−1をPBS培地で2回洗浄した後、MX−100 微量高速遠心機(トミー精工、東京)を用いて濃縮し、終濃度OD660=0.04(HITACHI U-2810分光光度計(日立製作所、東京))となるように上記培地に植菌した。BR3200は、基剤と共に1gを計り取り100mlの蒸留水に懸濁した後、30分間攪拌を行い、KH−1と初期接種濃度が同じとなるように植菌した(各菌の終濃度を4x10細胞/mlに統一した)。28℃、130rpmで24時間培養を行った。サンプルはTLC(図2A)および油分測定試薬キット(共立理化学研究所、東京)(ポリニッパム抽出物質測定法による測定試薬キット)(図2B)を使用して解析した。その結果、KH−1は0.2%のエライジン酸を24時間で殆ど完全に分解・資化することが見出された(少なくとも200mg/L(0.02%)以下の濃度に低減した)。他方、BR3200では、エライジン酸が残留した。
(実施例3:トランス脂肪酸含有油脂の分解能比較)
微生物のトランス脂肪酸含有油脂分解能
終濃度0.1%となるようにトリエライジンを添加したTBS緩衝液(20mM Tris、150mM NaCl、pH7.0)に、HITACHI U-2810分光光度計(日立製作所、東京)を使用して、菌体光学密度による最終濃度がOD660=0.04となるようにKH−1株を植菌した。これをファルコンチューブ(130rpm、28℃)で培養し、5日後にサンプルを採取した。サンプルはTLC(シリカゲルプレートにアプライし、クロロホルム:アセトン:メタノール(96:4:2)溶液で展開後、モリブトリン酸n水和物(60mlエタノール中2.4g))で可視化した(図3A)。対照として、TBS緩衝液のみを添加した場合のデータも示す。
この結果から、KH−1はトランス脂肪酸含有油脂を分解・資化し、さらにトランス脂肪酸も分解・資化する能力を有することが確認された。
微生物培養上清のトランス脂肪酸含有油脂分解能
同様に、1.5mLマイクロチューブ(ワトソン、東京)に、上記のKH−1株培養上清(推定リパーゼ濃度;50u/ml)、またはTBS緩衝液(pH7.0)の1mLと、0.05mLのトリエライジンストック溶液(2%トリエライジン、5%トリトンX−100水溶液)とを添加し、トリエライジンの終濃度が0.1%となるように反応溶液を調製した。これを130rpm、28℃で24時間インキュベートすることでサンプルを得た。サンプルを等量のクロロホルムで抽出し、5μlをTLCに供した。サンプルはTLC(シリカゲルプレートにアプライし、クロロホルム:アセトン:メタノール(96:4:2)溶液で展開後、モリブトリン酸n水和物(60mlエタノール中2.4g)で可視化した(図3B)。
この結果から、KH−1の上清を使用しても、トランス脂肪酸含有油脂(トリエライジン)をトランス脂肪酸(エライジン酸)に分解することが可能であることが確認された。
実排水を使用して、KH−1とBR3200との油脂分解能を比較した(図4)。
水素添加油脂を使用している食品工場からのトランス脂肪酸含有油脂を多く含む廃水サンプルに無機塩培地相当の窒素分(硫酸アンモニウム)とリンを添加して培養した。KH−1はLB培地にて培養し、PBS培地で2回洗浄した後、1×10細胞/mlで植菌し、BR3200はメーカー推奨濃度の10倍である1×10細胞/mlで植菌した。28℃で培養し、24時間および48時間後にサンプルを採取した。サンプルはTLC(シリカゲルプレートにアプライし、クロロホルム:アセトン:メタノール(96:4:1)溶液で展開後、モリブトリン酸n水和物で可視化)(図4A)および油分測定試薬キット(ノルマルヘキサン抽出相当、上記)(図4B)を使用して解析した。BR3200は過剰量でも分解の進行が遅かったのに対し、KH−1は優れた分解能力を示した。
(実施例4:15℃におけるKH−1株の油脂分解能力)
Burkholderia arboris KH−1を、10g/Lのキャノーラ油(日清キャノーラ油、日清オイリオ)を含む3Lの無機塩培地(上記組成)に、HITACHI U-2810分光光度計(日立製作所、東京)を使用して、菌体光学密度による最終濃度がOD660=0.03となるように植菌した。これを5L容積ファーメンター(250rpm、200ml/minの空気還流下、pH7.0、15℃)で培養し、経時的にサンプリングを行った。サンプリングした培養液から、遠心分離により菌体を除去した。この上清におけるノルマルヘキサン値相当の油分を、油分測定試薬キット(ノルマルヘキサン抽出、上記)により測定した(図5A)。
全脂肪酸(トリグリセリド中の脂肪酸と遊離脂肪酸との総量)をガスクロマトグラフィーにより定量した(図5B)。具体的には、培養上清3mlを塩酸により酸性にし、倍量の酢酸エチルを添加した。5分間攪拌後遠心分離し、酢酸エチル層1mlを耐有機溶媒チューブに移し完全に蒸発させた。メタノール:硫酸=17:3で混合したメタノリシス溶液を4ml添加し、100℃で2時間加熱することにより、全脂肪酸をメチルエステル化した。クロロホルム:純水=1:1の割合で混合した溶液を添加して十分攪拌した後、クロロホルム層と0.5%オクタン酸メチル(内部標準)を1:1で混合し、FID検出器を搭載したガスクロマトグラフィー(GC-17A(島津製作所、京都))により解析した。
これらの結果から、KH−1は低温でも高い油脂分解・資化能力を有することが確認された。
(実施例4A:15℃におけるKH−1株のトランス脂肪酸およびその含有油脂の資化能)
エライジン酸またはトリエライジンを唯一の炭素源とする培地においてKH−1株を培養することでKH−1株の資化能を評価した。
エライジン酸またはトリエライジンのストック溶液(2.5%トリトンX−100水溶液)を添加して、エライジン酸またはトリエライジンの終濃度が0.1%となるように調製した無機塩培地(上記組成、pH7)2mLに、HITACHI U-2810分光光度計(日立製作所、東京)を使用して、菌体光学密度による最終濃度がOD660=0.08となるようにKH−1株を植菌した。
これを15℃で5日間培養し、微生物の増殖を観察した。エライジン酸およびトリエライジン添加培地におけるそれぞれの結果を図5Cに示す。対照として微生物を添加しなかった場合の結果も示す。
KH−1株を植菌した試料では、培地が濁っていることが観察され、このことから、KH−1株は、15℃でもエライジン酸またはトリエライジンを唯一の炭素源とする環境下で増殖可能であり、これらの化合物を資化する能力があることが示された。
(実施例5:28℃におけるKH−1株の油脂分解能力)
上記と同様に、28℃培養におけるKH−1の油脂分解能についても同様に評価した(図6)。
薄層クロマトグラフィー(TLC)によって培養液中の残存油分を解析した(図6A)。具体的には、サンプル上清3mlに等量の酢酸エチルを加えて、5分間攪拌した。酢酸エチル層を分離し完全に溶媒を蒸発させた後、クロロホルム300μLに溶解した。この混合物3μlをシリカゲルプレートにアプライし、クロロホルム:アセトン(96:4)溶液で展開した。展開後、4%(w/v)12モリブド(IV)リン酸エタノール溶液を噴霧し、110℃で12分加熱することで油脂と遊離脂肪酸を可視化し、培地中に残存する油脂及びその分解産物である脂肪酸量を比較した。微生物が分泌したリパーゼによりトリグリセリドが分解された結果、加水分解産物である遊離脂肪酸が検出された(24h)。この脂肪酸も、時間が経過するにつれ分解された。KH−1は48hで遊離脂肪酸を完全に消失させた。
実施例4と同様に、28℃においても全脂肪酸(トリグリセリド中の脂肪酸と遊離脂肪酸との総量)をガスクロマトグラフィーにより定量した(図6B)。実施例4と同様に、28℃においても油分測定試薬キットで残留油脂を測定した(図6C)。
KH−1は28℃においても良好な油脂分解能を保持していた。
(実施例6:種々のトランス脂肪酸の分解能)
KH−1がトランス脂肪酸であるパルミテライジン酸(16:1)およびバクセン酸(18:1)を分解する活性をBioRemove3200(BR3200)(Novozymes、デンマーク)と比較した。
KH−1およびBR3200を、それぞれ、パルミテライジン酸またはバクセン酸の終濃度が0.2%かつTriton X100の終濃度が0.25%となるように調製した無機塩培地(上記組成、pH7)5mLに、HITACHI U-2810分光光度計(日立製作所、東京)を使用して、菌体光学密度による最終濃度がOD660=0.05となるようにKH−1を植菌し、OD660=0.05に相当する約5×10CFU/gとなるようにBR3200を植菌した。これを130rpmで振盪しながら15℃で48時間または72時間、あるいは28℃で24時間培養した後、それぞれの株の培養上清を取得した。微生物を使用しなかった対照試料も用意した。
その後、薄層クロマトグラフィー(TLC)によって培養液中の残存油分を解析した。具体的には、サンプルの2分の1の量のクロロホルムで脂肪酸を抽出し、抽出液6μlをシリカゲルプレートにアプライし、クロロホルム:アセトン:メタノール(96:4:2)溶液で展開した。展開後、実施例5と同様に12モリブド(IV)リン酸エタノール溶液で脂肪酸を可視化し、培地中に残存する脂肪酸量を比較した(図8、9)。
KH−1は、28℃では24時間以内に、15℃では72時間以内に、パルミテライジン酸およびバクセン酸を完全に分解可能であった。他方、BR3200には、これら脂肪酸の分解能力はなかった。このように、本開示の微生物は、種々のトランス脂肪酸を分解可能であり得る。
(実施例7:KH−1株と洗剤との比較)
油汚れのついた換気扇フィルターを、KH−1の培養上清(培養条件:1%キャノーラオイル添加無機塩培地(上記組成)、初期濃度OD660=0.01になるよう接種、28℃、24時間培養。培養後、遠心分離して菌体を除去した上清を使用した)、油用洗剤(天然酵素洗剤ニコエコ台所用(ニコエコ、長野)説明書に従って143倍に水で希釈)、一般洗剤(ファミリー(登録商標)(花王、東京)、説明書に従い、666倍に希釈)に室温(25℃)で漬け置き洗いした(図7)。一般洗剤と油用洗剤では4時間の浸漬洗浄でも油汚れを完全に落とすことはできなかったが、KH−1は1時間の浸漬洗浄で新品のようにフィルターは真っ白になった。
(実施例8:別種株の取得)
油脂含有排水が流出する食品工場近傍の河川から試料を採取し、そこから微生物を分離した。分離した微生物について、低温環境下(15℃)でトランス脂肪酸またはトランス脂肪酸含有油脂を分解可能か調べた。その結果、低温でトランス脂肪酸およびトランス脂肪酸含有油脂を分解することができる微生物が見出された。これらの微生物株を、それぞれ、KH−1AL1、KH−1AL2、およびKH−1AL3と命名した。
KH−1AL1、KH−1AL2、およびKH−1AL3をさらに特徴付けるために16S rDNAの遺伝子配列解析を行った。
KH−1AL1は、16rDNAの部分塩基配列がBurkholderia ambifariaに相同率100%で一致したため、Burkholderia ambifariaと同定された。
KH−1AL2は、16rDNAの部分塩基配列がBurkholderia contaminansに相同率99.9%で一致し、分子系統樹上ではB. seminalis、B. territorii、B. cepacia(それぞれ、16rDNAの部分塩基配列における相同性は99.7%、99.7%、99.8%)と同じ群に分類された。その結果、KH−1AL2は、Burkholderia cepacia complexの細菌であると同定された。
KH−1AL3は、16rDNAの部分塩基配列がBurkholderia contaminansに相同率99.9%で一致し、分子系統樹上ではB. seminalis、B. territorii、B. cepacia(それぞれ、16rDNAの部分塩基配列における相同性は99.7%、99.7%、99.8%)と同じ群に分類された。その結果、KH−1AL3は、Burkholderia cepacia complexの細菌であると同定された。
Burkholderia cepacia complexとは、遺伝子的に非常に近いBurkholderia属の微生物の分類であり、ambifaria、anthina、arboris、cenocepacia、cepacia、contaminans、diffusa、dolosa、lata、latens、metallica、multivorans、pseudomultivorans、puraquae、pyrrocinia、seminalis、stabilis、stagnalis、territorii、ubonensis、およびvietnamiensisが含まれる(Martina Pら、Int J Syst Evol Microbiol. 2018 Jan;68(1):14-20.)。
分析の結果、Burkholderia cepacia complexに属する種々の細菌が、高い油脂および/または脂肪酸分解能力を示したため、Burkholderia cepacia complexに属する細菌は、特に有用に利用できると期待される。
(実施例9:15℃におけるさらなる3株の油脂分解能力)
KH−1AL1、KH−1AL2、およびKH−1AL3を、それぞれ、LB培地で前培養した後、PBS中での25℃、3000g、10分間の遠心分離を2回繰り返し、洗浄して、それぞれの菌株のサンプルを調製した。
これら3種の菌株サンプルを、1%のキャノーラ油(日清キャノーラ油、日清オイリオ)を含むpH7の無機塩培地(上記組成)に、HITACHI U-2810分光光度計(日立製作所、東京)を使用して、菌体光学密度による最終濃度がOD660=0.02となるように植菌した。これを15℃で96時間培養し、経時的にサンプリングを行った。サンプリングした培養液から、遠心分離により菌体を除去した。これら3種の菌株の各上清について、薄層クロマトグラフィー(TLC)による培養液中の残存油分の解析、全脂肪酸(トリグリセリド中の脂肪酸と遊離脂肪酸との総量)のガスクロマトグラフィーによる定量、およびノルマルヘキサン値相当の油分の油分測定試薬キットによる測定を、上記実施例と同様の手順に従って実施した。
結果を図10〜12に示す。これらの結果から、KH−1AL1、KH−1AL2、およびKH−1AL3は低温でも油脂を効率よく分解・資化できることが確認された。
(実施例10A:培養上清によるトランス脂肪酸含有油脂の28℃分解能の株間比較)
KH−1、KH−1AL1、KH−1AL2、およびKH−1AL3を、それぞれ、トリエライジンの終濃度が0.2%となるように調製した無機塩培地(上記組成、pH7)に、HITACHI U-2810分光光度計(日立製作所、東京)を使用して、菌体光学密度による最終濃度がOD660=0.08となるように植菌した。これを28℃で6日間培養した後、それぞれの株の培養上清を取得した。微生物を使用しなかった対照試料も用意した。
それぞれの株から取得した培養上清を孔径0.45μmの酢酸セルロースメンブレンフィルター(ADVANTEC、東京)でろ過後、トリエライジンおよびTriton X100を終濃度がそれぞれ0.4%および0.5%となるように添加し、130rpmで振盪しながら37℃で24時間インキュベートした。
その後、薄層クロマトグラフィー(TLC)によって培養液中の残存油分を解析した。具体的には、サンプルの2分の1の量のクロロホルムで油脂および遊離脂肪酸を抽出し、抽出液5μlをシリカゲルプレートにアプライし、クロロホルム:アセトン:メタノール(96:4:2)溶液で展開した。展開後、実施例5と同様に12モリブド(IV)リン酸エタノール溶液で油脂と遊離脂肪酸を可視化し、培地中に残存する油脂及びその分解産物である脂肪酸量を比較した(図13)。
その結果、KH−1、KH−1AL1、KH−1AL2、およびKH−1AL3の培養上清は、トランス脂肪酸含有油脂を効率よく分解できることが確認された。この結果は、これらの株によってリパーゼが分泌されたためであると考えることができ、これらの微生物自体であっても、その培養上清であってもトランス脂肪酸含有油脂の分解に有用に使用され得ることが示唆された。
(実施例10B:28℃におけるトランス脂肪酸の資化・分解能の株間比較)
KH−1、KH−1AL1、KH−1AL2、およびKH−1AL3を、それぞれ、エライジン酸の終濃度が0.2%かつTriton X100の終濃度が0.25%となるように調製した無機塩培地(上記組成、pH7)に、HITACHI U-2810分光光度計(日立製作所、東京)を使用して、菌体光学密度による最終濃度がOD660=0.04となるように植菌した。これを130rpmで振盪しながら28℃で20時間培養した後、それぞれの株の培養上清を取得した。微生物を使用しなかった対照試料も用意した。
その後、薄層クロマトグラフィー(TLC)によって培養液中の残存油分を解析した。具体的には、サンプルの2分の1の量のクロロホルムで脂肪酸を抽出し、抽出液5μlをシリカゲルプレートにアプライし、クロロホルム:アセトン:メタノール(96:4:2)溶液で展開した。展開後、実施例5と同様に12モリブド(IV)リン酸エタノール溶液で遊離脂肪酸を可視化し、培地中に残存する脂肪酸量を比較した(図14左)。また、実施例4と同様の手順でノルマルヘキサン値相当の残留油分を、油分測定試薬キットにより測定した(図14右)。
その結果、KH−1、KH−1AL1、KH−1AL2、およびKH−1AL3は、トランス脂肪酸を効率よく分解できることが確認され、これらの株がいずれもトランス脂肪酸を含む油の除去に有用であることが示唆された。実施例10Aの結果と併せて考えると、これら微生物によってトランス脂肪酸含有油脂(例えば、トリエライジン)が完全に分解され得ると予測される。
(実施例10C:15℃におけるトランス脂肪酸の資化・分解能の株間比較)
KH−1、KH−1AL1、KH−1AL2、およびKH−1AL3を、それぞれ、エライジン酸の終濃度が0.2%かつTriton X100の終濃度が0.25%となるように調製した無機塩培地(上記組成、pH7)に、HITACHI U-2810分光光度計(日立製作所、東京)を使用して、菌体光学密度による最終濃度がOD660=0.08となるように植菌した。これを130rpmで振盪しながら15℃で72時間培養した後、それぞれの株の培養上清を取得した。微生物を使用しなかった対照試料も用意した。
その後、薄層クロマトグラフィー(TLC)によって培養液中の残存油分を解析した。具体的には、サンプルの2分の1の量のクロロホルムで遊離脂肪酸を抽出し、抽出液5μlをシリカゲルプレートにアプライし、クロロホルム:アセトン:メタノール(96:4:2)溶液で展開した。展開後、実施例5と同様に12モリブド(IV)リン酸エタノール溶液で遊離脂肪酸を可視化し、培地中に残存する脂肪酸量を比較した(図15左)。また、実施例4と同様の手順でノルマルヘキサン値相当の残留油分を、油分測定試薬キットにより測定した(図15右)。
その結果、KH−1、KH−1AL1、KH−1AL2、およびKH−1AL3は、トランス脂肪酸を効率よく分解できることが確認され、これらの株がいずれもトランス脂肪酸を含む油の除去に有用であることが示唆された。実施例10Aの結果と併せて考えると、これら微生物によってトランス脂肪酸含有油脂(例えば、トリエライジン)が完全に分解され得ると予測される。
(実施例11:生ゴミ処理への適用)
消滅型生ゴミ処理機にKH−1を1.2×10細胞/mLとなるように植菌し、30℃で24時間処理した。生ゴミ処理機から出る排水中のノルマルヘキサン値を測定した。KH−1を投入しない対照例(3.26g/L)と比較して有意差のあるノルマルヘキサン値の低減(2.22g/L)が認められた。ここで、消滅型生ゴミ処理機中の生ゴミは、レストランの厨房から出た生ゴミから骨および貝殻を除いたものであった。消滅型生ゴミ処理機の生ごみ処理能力は20kg/日であり、注水・排水量は38.4L/日であった。
(実施例12:装置内での使用)
10mL/Lのキャノーラ油を含む無機塩培地でKH−1を2×1010細胞/mLまで培養し、培養原液とする。これを10倍希釈して微生物製剤(2×10細胞/mL)とする。これを自動増幅投入装置の微生物保存タンク中に冷蔵保存し、種菌とする。この種菌を、同装置の培養増幅槽中の無機塩培地中に、毎日1/100量ずつ自動植菌し、微生物数が100倍、すなわち微生物製剤と同じ細胞濃度になるまで培養する。これを油分解処理槽の排水量の1/1000投入することで、油処理水中の分解菌の微生物濃度を2×10細胞/mLとし、24時間、トランス脂肪酸含有油脂を多く含む排水を排出する食品工場からの排水を分解処理する。この時の季節は冬で、処理中の水温は12〜17℃の間で変動する。
その結果、微生物を投入しない対照例と比較して顕著なノルマルヘキサン値の低減が観察される。
(実施例13:他の実施形態)
グリーストラップに木炭、各種プラスチック、セラミックス片などの担体を投入し、適量(例えば、1×10細胞/mL)のKH−1を毎日、食堂の操業終了後に自動投入する。毎日、操業開始直前に採水し、ノルマルヘキサン値を分析する。1週間後には、KH−1を投入しない対照例と比較して顕著なノルマルヘキサン値の低下が認められる他、グリーストラップ自体の見た目も、油の付着や浮遊が減るなどの効果が認められる。
(注記)
以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本開示は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願及び他の文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本開示は、油脂分解能を有する微生物およびこれを含む組成物を提供し、このような微生物または組成物を使用することで、油脂を多く含む食品工場排水などによる環境負荷を低減させることができる。
KH−1株(NITE BP−02731)
KH−1AL1株(NITE ABP−02977)
KH−1AL2株(NITE ABP−02978)
KH−1AL3株(NITE ABP−02979)
一つの実施形態では、本開示の微生物は、ブルクホルデリア(Burkholderiaceae)科の細菌である。一つの実施形態では、本開示の微生物は、ブルクホルデリア(Burkholderia)属の細菌である。ブルクホルデリア属はグラム陰性の非芽胞形成好気性の極鞭毛を持つ桿菌であり、ブルクホルデリア科の基準属である。一つの実施形態では、本開示の微生物は、ブルクホルデリア アルボリス(Burkholderia arboris)、ブルクホルデリア アンビファリア(Burkholderia ambifaria)またはブルクホルデリア セパシア(Burkholderia cepacia)であり、好ましくは、ブルクホルデリア アルボリスまたはブルクホルデリア アンビファリアである。一つの実施形態では、本開示の微生物は、Burkholderia cepacia complexに属する微生物である。Burkholderia cepacia complexとは、遺伝子的に非常に近いBurkholderia属の微生物の分類であり、ambifaria、anthina、arboris、cenocepacia、cepacia、contaminans、diffusa、dolosa、lata、latens、metallica、multivorans、pseudomultivorans、puraquae、pyrrocinia、seminalis、stabilis、stagnalis、territorii、ubonensis、およびvietnamiensisが含まれる(Martina Pら、Int J Syst Evol Microbiol. 2018 Jan;68(1):14-20.)。別の実施形態では、本開示のブルクホルデリア細菌は、metallica、seminalis、anthina、ambifaria、diffusa、ubonensis、multivorans、latens、cenocepacia、vietnamiensis、pyrrocinia、stabilis、glumae、gladioli、plantarii、oklahomensis、thailandensis、mallei、pseudomalleiまたはphytofirmansであってもよい。本発明者は、16SリボゾームDNAの塩基配列の決定及び系統解析によって、新たな微生物(KH−1)をブルクホルデリア アルボリスと同定し、ブダペスト条約に基づく国際寄託として独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターにこれを寄託し、2018年6月4日に受領され、2018年6月12日に受託証が発行された。受領番号はNITE ABP−02731である。また、ブルクホルデリア属の細菌(KH−1AL1、KH−1AL2およびKH−1AL3)をさらに同定し、ブダペスト条約に基づく国際寄託として独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターにこれらを寄託し、2019年6月2日に受領された。受領番号はそれぞれ、NITE ABP−02977、NITE ABP−02978、およびNITE ABP−02979である。また、KH−1AL1、KH−1AL2およびKH−1AL3についての受託証が2019年7月8日に発行され、それぞれの受託番号としてNITE BP−02977(受領番号NITE ABP−02977)、NITE BP−02978(受領番号NITE ABP−02978)、およびNITE BP−02979(受領番号NITE ABP−02979)が付された。一つの実施形態では、本開示の微生物は、ブルクホルデリア菌KH−1株(受託番号:NITE BP−02731/受領番号NITE ABP−02731で特定される菌株)、KH−1AL1株(受領番号NITE ABP−02977で特定される菌株)、KH−1AL2株(受領番号NITE ABP−02978で特定される菌株)もしくはKH−1AL3株(受領番号NITE ABP−02979で特定される菌株)であるか、またはその誘導株である。

Claims (14)

  1. トランス脂肪酸含有油脂を資化する能力を有する、ブルクホルデリア科細菌。
  2. トランス脂肪酸を資化する能力を有する、ブルクホルデリア科細菌。
  3. トランス脂肪酸を分解する能力を有する、ブルクホルデリア科細菌。
  4. トランス脂肪酸含有油脂を分解する能力を有する、ブルクホルデリア科細菌。
  5. 15℃において油脂を分解する能力を有する、ブルクホルデリア科細菌。
  6. 前記資化または分解する能力が15℃において保持される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のブルクホルデリア科細菌。
  7. ブルクホルデリア属の細菌である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の菌。
  8. ブルクホルデリア アルボリス(Burkholderia arboris)、ブルクホルデリア アンビファリア(Burkholderia ambifaria)、またはBurkholderia cepacia complexに属する微生物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の菌。
  9. ブルクホルデリア属細菌KH−1株(受託番号NITE BP−02731で特定される菌株)、KH−1AL1株(受領番号NITE ABP−02977で特定される菌株)、KH−1AL2株(受領番号NITE ABP−02978で特定される菌株)もしくはKH−1AL3株(受領番号NITE ABP−02979で特定される菌株)であるか、またはその誘導株であって該誘導株は、請求項1〜7のいずれか一項または複数に記載の細菌の特徴を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の細菌。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の細菌を含む、油分解剤。
  11. さらなる油処理成分を含む、請求項10に記載の油分解剤。
  12. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の細菌もしくは請求項10に記載の油分解剤と、さらなる油処理成分とを備える、油分解のためのキット。
  13. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の細菌、または請求項10もしくは11に記載の油分解剤を処理対象に作用させることを包含する、油分解除去方法。
  14. 前記処理対象はトランス脂肪酸またはトランス脂肪酸含有油脂を含む、請求項13に記載の方法。
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