JPWO2019216378A1 - 演算装置、検知装置、演算方法、及び、コンピュータプログラム - Google Patents

演算装置、検知装置、演算方法、及び、コンピュータプログラム Download PDF

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    • A61B5/346Analysis of electrocardiograms
    • A61B5/349Detecting specific parameters of the electrocardiograph cycle

Abstract

演算装置(1)は心電信号の隣接するR波の間隔のデータであるRRIデータを補正する演算装置であって、時系列に得られたRRIデータのうちの、ノイズを有するRRIデータを含む補正対象範囲を検出し、補正対象範囲のRRIデータをDAE(denoising autoencoder)に入力することによって、補正対象範囲のRRIデータを補正する。

Description

本開示は、演算装置、検知装置、演算方法、及び、コンピュータプログラムに関する。本出願は、2018年5月9日出願の日本出願第2018−090592号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用する。
心電図上の隣接するR波の間隔(RRI:R-R Interval)は自律神経活動と関係があることが知られている。RRIのばらつきは心拍変動(HRV:heart rate variability)と呼ばれ、一般的に、HRVが大きいほど内部又は外部からの刺激に対する反応性が高く、HRVが小さいほど反応性が低い。
この特徴を利用して、HRV解析を用いた様々なヘルスモニタリング技術が開発されている。たとえば、てんかん性発作の予兆の検知(特開2015−112423号公報)や無呼吸状態の検出(特開2016−214491号公報)などのヘルスモニタリング技術が知られている。
特開2015−112423号公報 特開2016−214491号公報
HRV解析を用いたヘルスモニタリング技術においては、R波の正確な検出が前提となる。そのため、R波が正確に検出されないと、HRV解析の精度が低下するという課題がある。HRV解析の精度の低下は、ヘルスモニタリングの性能の低下につながる。
R波の検出の信頼性を低下させる要因の一つとして、R波の誤検出や検出漏れが挙げられる。また、R波の検出の信頼性を低下させる要因の他の例として、健常者でも起こりうる一般的な不整脈である期外収縮(PVC:Premature Ventricular Contraction)が挙げられる。PVCが発生するとRRIにアーチファクトが混入するためである。
ある実施の形態に従うと、演算装置は、心電信号の隣接するR波の間隔のデータであるRRIデータを補正する演算装置であって、時系列に得られたRRIデータのうちの、ノイズを有するRRIデータを含む補正対象範囲を検出し、補正対象範囲のRRIデータをDAE(denoising autoencoder)に入力することによって、補正対象範囲のRRIデータを補正する。
他の実施の形態に従うと、検知装置は上記演算装置を搭載し、補正対象範囲のRRIデータを含んだ時系列に得られたRRIデータに基づいて特定の生体情報を検知する。
他の実施の形態に従うと、演算方法は、心電信号の隣接するR波の間隔のデータであるRRIデータを補正する演算方法であって、時系列に得られたRRIデータのうちの、ノイズを有するRRIデータを含む補正対象範囲を検出するステップと、補正対象範囲のRRIデータをDAEに入力することによって、補正対象範囲のRRIデータを補正するステップと、を備える。
他の実施の形態に従うと、コンピュータプログラムは、コンピュータを心電信号の隣接するR波の間隔のデータであるRRIデータを補正する演算装置として機能させるプログラムであって、コンピュータに、時系列に得られたRRIデータのうちの、ノイズを有するRRIデータを含む補正対象範囲を検出するステップと、補正対象範囲のRRIデータをDAEに入力することによって、補正対象範囲のRRIデータを補正するステップと、を実行させる。
更なる詳細は、後述の実施形態として説明される。
図1は、実施の形態にかかる検知装置の構成の概略を示す図である。 図2の(a)は、心電信号の一例を示す図であり、(b)は、(a)の心電信号に対応するR波データを示す図である。 図3は、図1の検知装置に含まれる演算装置の構成の一例を示すブロック図である。 図4は、PVCが生じたときの心電信号の例を示す図である。 図5は、人工的なPVCアーチファクトを混入させたRRIデータから算出されたSDNNを表した図である。 図6は、人工的なPVCアーチファクトを混入させたRRIデータから算出されたLF/HFを表した図である。 図7Aは、2つのHRV指標変数(変数1、変数2)と2つの主成分(第1主成分、第2主成分)との関係を示す図である。図7Bは、2つのHRV指標変数及び2つの主成分とT2統計量との関係を説明するための図である。 図8Aは、Hankel行列を示す式(1)を表した図である。図8Bは図9に示されたモデルの構築を具体的に説明するための図である。図8CはDAEの構成の概略、及び、DAEに入出力されるデータの概要を表した図である。 図9は、演算装置の処理部がMSPC−SSAを用いてPVCアーチファクトの検出に用いるモデルを構築するアルゴリズムの一例を示したフローチャートである。 図10は、演算装置の処理部がMSPC−SSAを用いてリアルタイムでPVCアーチファクトを検出するアルゴリズムを示したフローチャートである。 図11は、演算装置の処理部がDAE−RMを用いてRRIデータからPVCアーチファクトを除去する補正アルゴリズムを示したフローチャートである。 図12は、発明者らが検証に用いた被験者A〜Rの属性を示した図である。 図13Aは、被験者Mから得られたRRIデータを示す図である。図13Bは、図13Aの被験者Mから得られたRRIデータから算出されたmeanNNである。図13Cは、図13Aの被験者Mから得られたRRIデータから算出されたSDNNである。 図14Aは、図13Aの被験者Mから得られたRRIデータから算出されたTotal Powerである。図14Bは、図13Aの被験者Mから得られたRRIデータから算出されたRMSSDである。図14Cは、図13Aの被験者Mから得られたRRIデータから算出されたNN50である。 図15Aは、図13Aの被験者Mから得られたRRIデータから算出されたLFである。図15Bは、図13Aの被験者Mから得られたRRIデータから算出されたHFである。図15Cは、図13Aの被験者Mから得られたRRIデータから算出されたLF/HFである。 図16Aは、発明者らの検証において、活性化関数がシグモイド関数であるDAEを適用したときの結果を示した図である。図16Bは、発明者らの検証において、活性化関数がReLUであるDAEを適用したときの結果を示した図である。 図17Aは、発明者らの検証において、中間層の活性化関数がReLUであるDAEを適用し、入力変数の数を6とした場合の結果を示した図である。図17Bは、発明者らの検証において、中間層の活性化関数がReLUであるDAEを適用し、入力変数の数を8とした場合の結果を示した図である。 図18Aは、発明者らの検証において、DAE、PLS、及び、LW−PLSそれぞれを適用して補正後のRRIデータを示した図である。図18Bは、発明者らの検証において、図18AのRRIデータから得られたmeanNNを示した図である。図18Cは、発明者らの検証において、図18AのRRIデータから得られたSDNNを示した図である。 図19Aは、発明者らの検証において、図18AのRRIデータから得られたTotal Poweを示した図である。図19Bは、発明者らの検証において、図18AのRRIデータから得られたRMSSDを示した図である。図19Cは、発明者らの検証において、図18AのRRIデータから得られたNN50を示した図である。 図20Aは、発明者らの検証において、図18AのRRIデータから得られたLFを示した図である。図20Bは、発明者らの検証において、図18AのRRIデータから得られたHFを示した図である。図20Cは、発明者らの検証において、図18AのRRIデータから得られたLF/HFを示した図である。 図21Aは、発明者らの検証において、ReLUDAE、typicalDAE、PLS、及び、LW−PLSそれぞれを適用して補正後のRRIデータを示した図である。図21Bは、発明者らの検証において、図21Aの補正後のRRIデータから得られたmeanNNを示した図である。図21Cは、発明者らの検証において、図21Aの補正後のRRIデータから得られたSDNNを示した図である。 図22Aは、発明者らの検証において、図21Aの補正後のRRIデータから得られたTotal Powerを示した図である。図22Bは、発明者らの検証において、図21Aの補正後のRRIデータから得られたRMSSDを示した図である。図22Cは、発明者らの検証において、図21Aの補正後のRRIデータから得られたNN50を示した図である。 図23Aは、発明者らの検証において、図21Aの補正後のRRIデータから得られたLFを示した図である。図23Bは、発明者らの検証において、図21Aの補正後のRRIデータから得られたHFを示した図である。図23Cは、発明者らの検証において、図21Aの補正後のRRIデータから得られたLF/HFを示した図である。 図24は、PAC(Premature Atrial Contraction)の発生した心電波形の一例を示した図である。 図25は、PAC人工アーチファクトを加えたRRIデータの一例を示した図である。 図26Aは、オリジナルのRRIデータ、人工アーチファクトを加えたRRIデータ、及び、DAE−RMによる補正後のRRIデータを示した図である。図26Bは、発明者らの検証において、図26AのRRIデータから得られたmeanNNを示した図である。図26Cは、発明者らの検証において、図26AのRRIデータから得られたSDNNを示した図である。 図27Aは、発明者らの検証において、図26AのRRIデータから得られたTotal Poweを示した図である。図27Bは、発明者らの検証において、図26AのRRIデータから得られたRMSSDを示した図である。図27Cは、発明者らの検証において、図26AのRRIデータから得られたNN50を示した図である。 図28Aは、発明者らの検証において、図26AのRRIデータから得られたLFを示した図である。図28Bは、発明者らの検証において、図26AのRRIデータから得られたHFを示した図である。図28Cは、発明者らの検証において、図26AのRRIデータから得られたLF/HFを示した図である。
[1.演算装置、検知装置、演算方法、及び、コンピュータプログラムの概要]
(1)本実施の形態に含まれる演算装置は、心電信号の隣接するR波の間隔のデータであるRRIデータを補正する演算装置であって、時系列に得られたRRIデータのうちの、ノイズを有するRRIデータを含む補正対象範囲を検出し、補正対象範囲のRRIデータをDAE(denoising autoencoder)に入力することによって、補正対象範囲のRRIデータを補正する。ノイズ(アーチファクト)は、例えば、期外収縮(PVC:Premature Ventricular Contraction)、及び、R波の検知の欠落、である。
RRIデータのばらつきは心拍変動(HRV:heart rate variability)、HRV解析は様々なヘルスモニタリング技術に利用されている。そのため、ノイズを有するRRIデータを含む補正対象範囲のRRIデータを補正することによって、HRV解析の精度を向上させることができる。その結果、HRV解析を利用したヘルスモニタリング技術の性能を向上させることができる。
(2)好ましくは、検出することは、ノイズがPVCによるものであるRRIデータを含む補正対象範囲を検出することを含む。この場合、PVCによるノイズを含むRRIデータの範囲が補正対象範囲とされて補正されるため、測定されたRRIデータからPVCによるノイズを排したRRIデータが得られる。その結果、補正後のRRIデータのHRV解析の精度が向上する。
(3)好ましくは、DAEの活性化関数はReLU(Rectified Linear Unit)である。発明者らによる実施によって、RRIデータがPVCによるノイズを含む場合、活性化関数がReLUであるDAEをRRIデータに対して適用した方が、他の活性化関数を適用した場合よりも、補正後のRRIデータがPVCによるノイズがないRRIデータに対する追従度合が高いことが検証されている。つまり、RRIデータがPVCによるノイズを含む場合には活性化関数はReLUとした方が補正の精度が高い。したがって、補正後のRRIデータのHRV解析の精度をより向上させることができる。
(4)好ましくは、検出することは、ノイズがR波の検知が欠落していることに起因するものであるRRIデータを含む補正対象範囲を検出することを含む。この場合、R波の検知の欠落によるノイズを含むRRIデータの範囲が補正対象範囲とされて補正されるため、測定されたRRIデータからこのノイズを排したRRIデータが得られる。その結果、補正後のRRIデータのHRV解析の精度が向上する。
(5)好ましくは、DAEの活性化関数はシグモイド関数である。発明者らによる実施によって、RRIデータがR波の検知の欠落によるノイズを含む場合、活性化関数がシグモイド関数であるDAEをRRIデータに対して適用した方が、他の活性化関数を適用した場合よりも、補正後のRRIデータがR波の検知の欠落によるノイズがないRRIデータに対する追従度合が高いことが検証されている。つまり、RRIデータがR波の検知の欠落によるノイズを含む場合には活性化関数はシグモイド関数とした方が補正の精度が高い。したがって、補正後のRRIデータのHRV解析の精度をより向上させることができる。
(6)好ましくは、演算装置は、補正対象範囲のRRIデータを補正する際に、検出された補正対象範囲が、ノイズがPVCによるものであるRRIデータを含む補正対象範囲か、ノイズがR波の検知が欠落していることに起因するものであるRRIデータを含む補正対象範囲か、によって、DAEの活性化関数を、ReLUとシグモイド関数とで切り替える。これにより、RRIデータに含まれるノイズに応じて最適な補正を行うことができる。
(7)好ましくは、補正対象範囲のRRIデータを補正する際にDAEに入力するRRIデータの数は、補正対象範囲に含まれるRRIデータの数に一致する。補正対象範囲に含まれるRRIデータの数は、たとえば、ノイズがPVCによるものであって、そのノイズが連続する2拍に現れる場合、その2拍と前後1拍ずつの、計4拍である。これにより、補正対象範囲を不必要に大きくすることなく、必要な範囲の補正を可能にする。
(8)好ましくは、検出することは、ノイズがPACによるものであるRRIデータを含む補正対象範囲を検出することを含む。この場合、PACによるノイズを含むRRIデータの範囲が補正対象範囲とされて補正されるため、測定されたRRIデータからPACによるノイズを排したRRIデータが得られる。その結果、補正後のRRIデータのHRV解析の精度が向上する。
(9)本実施の形態に含まれる検知装置は(1)〜(7)のいずれか1つに記載の演算装置を搭載し、補正対象範囲のRRIデータを含んだ時系列に得られたRRIデータに基づいて特定の生体状態を検知する。特定の生体状態は、たとえば、てんかん性発作の予兆や、無呼吸状態や、居眠り状態、などである。(1)〜(7)のいずれか1つに記載の演算装置を搭載していることで、この検知装置は、(1)〜(7)に記載の演算装置と同様の効果を奏する。つまり、HRV解析を利用した上記のような生体状態の検知精度を向上させることができる。
(10)本実施の形態に含まれる演算方法は、(1)〜(7)のいずれか1つに記載の演算装置において実行される演算方法である。そのため、この演算方法は、(1)〜(7)に記載の演算装置と同様の効果を奏する。
(11)本実施の形態に含まれるコンピュータプログラムは、コンピュータを(1)〜(7)に記載の演算装置として機能させるプログラムである。そのため、このコンピュータプログラムは、(1)〜(7)に記載の演算装置と同様の効果を奏する。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な、非一時的な記憶媒体に格納される。
[2.演算装置、検知装置、演算方法、及び、コンピュータプログラムの例]
[第1の実施の形態]
<検知装置の構成>
図1は、本実施の形態にかかる検知装置の構成の概略を示す図である。図を参照して、検知装置100は、演算装置1と心拍計測器2とを含む。本実施の形態にかかる検知装置は、被験者の心拍に基づいて特定の生体状態を検知する検知装置である。特定の生体状態は、たとえば、てんかん性発作の予兆や、無呼吸状態や、居眠り状態、などである。
演算装置1と心拍計測器2とは通信可能であって、一例として無線通信する。無線通信は、たとえば、Bluetooth(登録商標)などの短距離無線通信、インターネットを介した通信、などである。
<心拍計測器>
心拍計測器2は、被験者Pの身体に取り付けられ、被験者Pの心拍を計測するための小型軽量なウェアラブルデバイスである。心拍計測器2には、被験者Pの体表に取り付けられる複数(図1では3つ)の電極21が接続されている。3つの電極21は、たとえばプラス電極、マイナス電極、及び、接地電極である。
図2の(a)は、心電信号の一例を示す図である。図2の(a)の縦軸は電位、横軸は時間を示している。電極21を用いて心拍を計測すると、図2の(a)に示すようなP〜T波からなる電位変化が周期的に現れる。単位周期の電位変化の中で最も電位の高いピークをR波といい、R波のタイミングで心臓が拍動する。心拍計測器2は、R波を示すR波データを演算装置1に送信する。
図2の(b)は、図2の(a)の心電信号に対応するR波データを示す。図3に示すように、R波データは、心電信号におけるR波に対応する期間(信号強度Iが所定の強度閾値Ithを超える期間)が「1」に設定され、それ以外の期間が「0」に設定された矩形パルス列を表すデータである。
<演算装置>
演算装置1は、心拍計測器2から送信されるR波データに基づいててんかん性発作の兆候などの特定の生体状態を検知する検知装置として機能するとともに、後述のRRIを補正する補正装置としても機能する。演算装置1は、たとえば、スマートフォンやパーソナルコンピュータなどの通信端末である。
図3は、演算装置1の構成の一例を示すブロック図である。図を参照して、演算装置1は、専用のマイクロコンピュータなどからなる処理部10を含む。また、演算装置1はメモリ12を有し、メモリ12には、処理部10で演算を行うためのプログラム121が記憶されている。
演算装置1は、心拍計測器2と通信する通信部13を有する。通信部13は、たとえば、心拍計測器2から送信されたR波を示す無線信号を受信し、受信した無線信号からR波を示すデータを生成して処理部10に入力する。通信部13は、R波を示すデータを記録した記録媒体にアクセスし、記録媒体からデータを読み出す読み出し装置であってもよい。データを取得することは、通信によってデータを受信すること、及び、記録媒体からデータを読み出すこと、を含む。
<PVCのHRV解析への影響について>
R波データより、R波の間隔を示すRRI変数の時系列データであるRRIデータが得られる。RRIデータにはアーチファクト(ノイズ)が混入することがある。RRIデータに混入するアーチファクトの原因は、R波の検出漏れ、及び、不整脈である期外収縮(PVC:Premature Ventricular Contraction)の発生が挙げられ、第1の実施の形態では、PVCによるアーチファクト(以下、PVCアーチファクト)の混入について、検出及び補正を行うものとする。
HRV解析に用いられる指標(以下、HRV指標)は、時間領域指標及び周波数領域指標を含む。時間領域指標は、下の5指標を含む。時間領域指標は、RRIデータから直接算出される。
1)meanNN:RRIの平均値
2)SDNN:RRIの標準偏差
3)Total Power:RRIの分散
4)RMSSD:隣接するRRIの差の2乗平均平方根
5)NN50:隣接するRRIの差が50msを超えた回数
周波数領域指標は、下の3指標を含む。周波数領域指標は、RRIデータのパワースペクトル密度(PSD:Power Spectrum Density)から算出される。なお、RRIデータは等間隔にサンプリングされていないため、PSDを得るためにサンプリングする必要がある。PSDはリサンプリング後のRRIデータより自己回帰(AR:Auto Regression)モデル又はFourier変換を用いて算出される
1)LF:PSDの低周波(0.04〜0.15Hz)のパワー
2)HF:PSDの高周波(0.15〜0.40Hz)のパワー
3)LF/HF:HFに対するLFの比
図4は、PVCが生じたときの心電信号の例を示す図である。図の縦軸は電位、横軸は時間を示している。図4と図2の(a)(PVCが生じていないときの心電信号)とを比較すると、PVCが生じていないときには概ね等間隔であったRRIに、PVCが生じたことによって大きな変動が生じていることがわかる。
RRIに大きな変動が生じると、RRIから算出される各HRV指標も影響を受ける。図5及び図6は、人工的なPVCアーチファクトを混入させたRRIデータから算出された、上記HRV指標のうちのSDNNとLF/HFと表した図である。図の横軸は時間経過、縦軸はHRV指標の値を示している。図中のタイミングtは、PVCアーチファクトを混入させたタイミングを示している。図中の点線及び実線は、それぞれ、PVCアーチファクトを混入させていない元のRRIデータから算出されたHRV指標、及び、PVC−RRIから算出されたHRV指標を示している。
図5及び図6に示された算出結果より、PVCアーチファクトを混入させた直後から各HRV指標に変化が生じていることがわかる。そのため、PVCアーチファクトが混入することによって変化したHRV指標をHRV解析に用いると、解析精度を低下させる可能性がある。
<演算装置の処理部の機能構成>
本実施の形態において、演算装置1の処理部10は、計測結果から得られたRRIデータに混入されているPVCアーチファクトを検出する。そして、検出したPVCアーチファクトの影響をRRIデータから排除したRRIデータとなるように、計測結果から得られたRRIデータを補正する。処理部10は、補正したRRIデータを所定の生体状態の検知に用いる。
上記の処理を実行するために、処理部10は、メモリ12からプログラム121を読み出して実行することで実現される機能として、RRI算出部101、検出部102、補正部103、及び、検知部104を含む。
RRI算出部101は、通信部13から入力されたR波データに基づいてRRIデータを生成する。RRI算出部101は、図2の(b)に示されたようなR波データから、時間的に隣り合う2つの矩形パルスの立下り時刻の時間間隔をRRI変数として算出し、算出した当該RRI変数を時系列に並べることにより、RRIデータを生成する。
検出部102は、RRIデータへのアーチファクト(ノイズ)の混入を検出する。RRIデータへのアーチファクトの混入が検出されると、補正部103は、RRIデータからアーチファクトの影響を排する補正を行う。検知手法、及び、補正手法については後述する。
検知部104は、補正後のRRIデータから所定の生体状態を検出する。検知部104での検出方法は、公知の検知方法であってよい。たとえば、所定の生体状態がてんかん性発作の予兆である場合、特開2015−112423号公報に記載の方法を採用することができる。またたとえば、所定の生体状態が無呼吸状態である場合、特開2016−214491号公報に記載の方法を採用することができる。
処理部10は、検知部104が特定の生体状態を検知すると、特定の生体状態が検知されたことを示す信号を通信部13に入力するとともに、予め規定された送信先にその信号を出力するように指示する。予め規定された送信先は、演算装置1に接続された図示しないディスプレイやスピーカなどであって、処理部10は、それらで特定の生体状態が検知されたことを報知してもよい。またたとえば、予め規定された送信先は、被験者Pに対応付けて記憶されている所定のアドレスであって、被験者Pに対応付けられた通信端末に特定の生体状態が検知されたことを報知してもよい。
<PVCアーチファクトの検出手法>
検出部102におけるPVCアーチファクトの検出手法には、MSPC−SSAが用られる。MSPC−SSAは、異常検知手法の特異スペクトル解析(SSA:Singular Spectrum Analysis)に、多変量の異常検知手法の多変量統計的プロセス管理(MSPC:Multivariate Statistical Process Control)で用いられる監視指標を導入した手法である。
MSPCでは、特徴抽出に主成分分析(PCA:Principal Component Analysis)を用いる。PCAはデータの次元を削減するための手法であり、複数の変数の線型結合によって主成分と呼ばれる新たな変数を作りだす。
図7Aは、2つのHRV指標変数(変数1、変数2)と2つの主成分(第1主成分、第2主成分)との関係を示す図であり、図7Bは、2つのHRV指標変数及び2つの主成分とT2統計量との関係を説明するための図である。HRV指標変数としては、上記のHRV指標の中から2つを選択すればよい。たとえばmeanNNとLFとを選択することができる。
PCAでは、HRV指標データを表す空間における一方向を第1主成分とし、その第1主成分と直交する空間の一方向を第2主成分に設定する。この手順を繰り返すことにより複数の主成分が設定される。ここで、第1主成分は、主成分得点の分散が最大となる方向に設定される。なお、「主成分得点」とは、主成分軸上の座標、すなわち、主成分が張る空間へHRV指標データを射影して得られる値である。場合、第1主成分及び第2主成分へHRV指標データを射影して得られる値が主成分得点となる。
PCAを用いると、図7Aに示された管理限界CL1を設定することができる。しかしながら、多次元空間においてこの管理限界CL1からの逸脱を判断することは容易ではない。そこで、本実施の形態にかかるPVCアーチファクトの検出手法では、Hotelling’sT2統計量とQ統計量とを用いる、MSPCを採用する。
Hotelling’sT2統計量は主成分で張られる部分空間でのサンプルと原点とのMahalanobis距離であって、主成分分析により得られる主成分得点から算出される。Hotelling’sT2統計量は、主成分で張られる部分空間での異常検知に用いられる。Hotelling’sT2統計量では、原点からの距離が各主成分方向に対して規格化されるため、図7Aに示された管理限界CL1を、図7Bに示すような真円状の管理限界CL2に変形することができる。
Q統計量は、サンプルと主成分で張られる部分空間との2乗距離であって、主成分分析により得られる主成分得点から算出される。Q統計量は、主成分で張られる部分空間の直交補空間での異常検知に用いられる。
MSPCでは、Hotelling’sT2統計量とQ統計量とを同時に監視し、いずれか一方でも管理限界を超えた場合に異常と判定する。つまり、Hotelling’sT2統計量及びQ統計量の管理限界は、RRI列に異常値が含まれるか否かの判定の閾値として用られる。
SSAは、単変量の時系列データからHankel行列を作成し、特異値分解によって抽出された特徴を用いて異常検知を行う手法である。RRI時系列データx={x1、x2、…、xT}に対し、Hankel行列は図8Aの式(1)で示される。RRI時系列データxの各要素はRRIデータであって、添え字は測定順を示す。Tは測定されたRRIデータの総数を示す。
Hankel行列の各行yi(i=1,…n)を部分RRI列とする。mは、部分RRI列を構成するRRI時系列データ数であり、m<Tである。MSPC−SSAでは、部分RRI列yiをサンプルとみなして、部分RRI列yiに異常値が含まれるか否かの判定に用いる閾値としてのHotelling’sT2統計量及びQ統計量それぞれの管理限界T2 ̄及びQ ̄を決定する。
図9は、検出部102がMSPC−SSAを用いてPVCアーチファクトの検出に用いるモデルを構築するアルゴリズムの一例を示したフローチャートである。図9のフローチャートにおいて、nはモデル構築に用いるRRI列の総数を表し、変数Iが処理中のRRI列の番号を表す。
図8Bは、図9に示されたモデルの構築を具体的に説明するための図である。図8Bでは、各枠がRRI時系列データを示しており、左から右の順に時系列に配列されている。ここでは、部分RRI列を構成するRRI時系列データ数mが4(m=4)である例が示されている。実線の枠が部分RRI列を構成するRRIデータを表し、点線の枠が部分RRI列を構成していないRRIデータを表している。
図9を参照して、はじめに、変数Iを1インクリメントし(ステップS101)、図8Aの式(1)に示されるHankel行列の、I番目のRRI列を作成する(ステップS103)。ステップS101、S103は、モデル構築に用いるRRI列の総数nに達するまで(ステップS105でNO)、繰り返し実行される(ステップS106)。
図8Bの例では、ステップS101、S103が繰り返されることによって、1番目のRRI列としてx1〜x4からなるRRI列、2番目のRRI列してx2〜x5、…n番目のRRI列してx(m−3)〜xmからなるRRI列が作成される。
モデル構築に用いるRRI列の総数n分、Hankel行列の列を作成すると(ステップS105でYES)、1番目〜n番目までのすべての列を1つの行列にまとめ(ステップS107)、平均0、分散1となるように標準化することで、Hankel行列Xが作成される(ステップS109)。
ステップS109で得られたHankel行列Xについて特異値分解を実行して主成分と左特異ベクトルとを算出することによって(ステップS111)、Hotelling’sT2統計量およびQ統計量それぞれの管理限界T2 ̄(閾値α1)及びQ ̄(閾値β1)を決定する(ステップS113)。
MSPC−SSAでは、図9のフローチャートによって構築されるモデル(以下、正常モデル)の部分RRI列yiごとに、Hotelling’sT2統計量(値α)又はQ統計量(値β)の少なくとも一方が管理限界(閾値α1,β1)を超過するか否かによって、正常、異常、つまり、PVCアーチファクトの有無が判定される。部分RRI列yiが異常と判定された場合、部分RRI列yiに含まれる要素のいずれかにPVCアーチファクトが含まれていると考えられる。すなわち、連続した複数の部分RRI列が値α,βの少なくとも一方が管理限界(閾値α1,β1)を超過した場合、それらに共通して含まれる要素にPVCアーチファクトが含まれていると考えられる。
図8Bを用いて、PVCアーチファクトが含まれている範囲の特定方法を説明する。単発性のPVCは、RRIデータ2拍の値に影響を及ぼす。図8Bでは、ハッチングが付された枠がPVCアーチファクトの影響を受けたRRI時系列データを示しており、具体的に、RRIデータx4およびx5がPVCアーチファクトの影響を受けた例を示している。
図8Aの例では、正常モデルは、各部分RRI列は規定数(図8Aの例では4個)の連続するRRI時系列データからなり、1番目〜n番目まで、部分RRI列ごとに先頭のRRI時系列データが1個ずつ、時系列に沿ってずれて構成されている。そのため、PVCアーチファクトの影響を受けたRRIデータx4およびx5の少なくとも一方は、1番目〜5番目までの部分RRI列に出現している。
すなわち、連続するm−1個(図8Aでは2番目〜4番目)の部分RRI列に、PVCの影響を受けた2拍が含まれる。そこで、本実施の形態にかかるPVCアーチファクトの検出手法では、部分RRI列がm−1個連続して異常と判定された場合に、PVCアーチファクトを検出したと判定される。
また、上記のm−1個の部分RRI列の前後の部分RRI列(図8Aでは1番目及び5番目)には、PVCアーチファクトが1拍のみ含まれる。この前後2つの部分RRI列も異常と判定されると、最大m+1個の部分RRI列(図8Aでは1番目〜5番目)が連続で異常と判定される。
MSPC−SSAでは、値α,βの少なくとも一方が管理限界を連続して超過した部分RRI列の数τの閾値τ1を予め規定しておき、数τが閾値τ1以上であった場合には、対象の部分RRI列にPVCアーチファクトが含まれていると判定する。閾値τ1は、部分RRI列の長さm、つまり、Hankel行列の列数mに依存する。
異常と判定された最後の部分RRI列をyj={xj,…,xj+m−1}とすると、部分RRI列の値α,βがm+1個連続で管理限界を超過すれば、PVCアーチファクトの1拍目はx^j−1となる。m−1連続で管理限界を超過すれば、PVCアーチファクトの1拍目はx^jとなる。つまり、この2拍のいずれかがPVCアーチファクトの1拍目と一致する。そこで、MSPC−SSAでは、x^j−1及びx^jがPVCアーチファクトを含むと判定する。
図10は、検出部102がMSPC−SSAを用いてリアルタイムでPVCアーチファクトを検出するアルゴリズムを示したフローチャートである。図10のアルゴリズムにおいて、PVC検出モデルは図9の処理によってすでに作成されているものとする。変数tは、RRIデータが取得された番号を表し、RRIデータの測定数の最大値をMAXとする。RRIデータx_tは、t番目のRRIデータを示し、部分RRI列y_tは、第1要素がx_tであるm次元部分RRI列を示す。
図10を参照して、はじめに、カウンタτ及び変数tを初期化する(ステップS201)。次に、新たにt番目のRRIを計測し、FIFO(First In First Out)方式にしたがってRRIデータとしてバッファに記録する(ステップS203)。
次に、バッファから、先に計測されたRRIデータx_(t−m+1)からRRIデータx_(t−1)までを読み出し、新たに得られたRRIデータx_tを加えて、RRIデータx_tを最終要素とする部分RRI列y_m+1を作成する(ステップS205)。そして、部分RRI列y_m+1のHotelling’sT2統計量(値α)とQ統計量(値β)とを算出する(ステップS207)。
値α,βの少なくとも一方でも管理限界(閾値α1,β1)を超過していた場合(ステップS209でYES)、部分RRI列y_m+1はPVCアーチファクトを含む可能性がある。そこで、この場合カウンタτを1インクリメントする(ステップS211)。
値α,βのいずれもが管理限界(閾値α1,β1)を超過していない場合には(ステップS209でNO)、部分RRI列y_m+1にはPVCアーチファクトが含まれていない可能性が高い。この場合、カウンタτが閾値τ1に達していたら(ステップS215でYES)、部分RRI列y_mまで閾値τ1に相当する数、PVCアーチファクトを含む可能性がある部分RRI列が連続し、部分RRI列y_m+1でPVCアーチファクトを含む可能性がなくなっている。つまり、図8Bの例では、閾値τ1が5であり、部分RRI列y_m+1は部分RRI列y6に相当する。従って、この場合、RRIデータx_(t−m)とRRIデータx_(t−m+1)とがPVCアーチファクトを含むと判定する(ステップS217)。
なお、カウンタτが閾値τ1未満である場合(ステップS215でNO)、PVCアーチファクトを含むと判定されるまで、値α,βの少なくとも一方が管理限界(閾値α1,β1)を超過した部分RRI列が連続していない。つまり、PVCアーチファクトは含まれていない。そのため、この場合、カウンタτを初期化する(ステップS219)。
その後、次のRRIデータを計測するために変数tをインクリメントし(ステップS213)、変数tが最大値MAXに達するまで(ステップS221でNO)、以上の処理を繰り返することによって、PVCアーチファクトを検出する。変数tが測定数の最大値MAXに達すると(ステップS221でYES)、一連の処理を終了する。
<RRIの補正手法>
補正部103におけるRRIデータの補正手法には、SAE(sparse autoencoder)と、ノイズ除去を目的とするニューラルネットであるDAE(denoising autoencoder)とが組み合わせて用いられる。AE(autoencoder)はニューラルネットを用いた次元圧縮手法、特徴抽出手法である。AEは出力を入力とできるだけ等しくするため、入力と出力との再構築誤差を最も小さくするように学習を行う。
このとき、中間層と出力層とにおいて活性化関数を恒等写像とすると、AEは代表的な次元圧縮手法である主成分分析(PCA:Principal Component Analysis)と一致する。次元圧縮された特徴を得るため、隠れ層のユニット数は入力変数の数よりも小さくするべきであるが、正則化項を導入することで隠れ層のユニット数を入力変数の数より大きくすることができる。この手法をSAEと呼ぶ。
DAEはAEと同じ構造を持つニューラルネットであるが、学習時の入力にノイズを加え、ノイズを加える前の入力と同様の出力を得るよう学習を行う。ノイズを加えて学習を行うことから、DAEはノイズ除去能力を有すると考えられる。
DAEによってPVCアーチファクトを除去するため、AEの学習時に入力層及び出力層に渡すデータは(ノイズを含まない)RRIデータであって、さらに、入力層にPVCに起因するノイズを渡す。これにより、PVCアーチファクトを除去するために用いるDAEは、入力されたRRIデータからPVCに起因するノイズを除去して、PVCに起因するノイズを含まないRRIデータを出力するように学習されたものとなる。DAEによってノイズを除去する補正手法をDAE−RM(DAE-based RRI modication)と呼ぶ。
DAEによってRRIデータに含まれるPVCアーチファクトを除去する際に、DAEに補正対象とするRRIデータを入力する。DAEに入力するRRIデータは、時系列に連続するRRIデータのうちの補正対象範囲である。補正対象範囲は、上記の検出手法によって検出されたPVCアーチファクトによって変化したRRIデータと、その前後の予め設定した補正幅分のRRIデータと、である。すなわち、図10に示されたアルゴリズムに従ってPVCアーチファクトを検出することは、補正対象範囲を検出することである。
図8Cは、DAEの構成の概略、及び、DAEに入出力されるデータの概要を表した図である。図8Cを参照して、DAEは、データx1,x2,…xnが入力されると、中間層と出力層とにおいて入力データに対して活性化関数を適用して出力変数x1^,x2^,…xn^を出力する。DAEは上記のように学習済であるため、入力変数x1,x2,…xnにPVCに起因するノイズが含まれる場合に、そのノイズが除去された出力変数x1^,x2^,…xn^を出力する。
入力変数x1,x2,…xnの数は、RRIデータ列のうち、少なくともPVCに起因するノイズが含まれるRRIデータである。好ましくは、ノイズが含まれるRRIデータの前後規定数のRRIデータをさらに含む。DAEで補正を行うためにPVCアーチファクトによって変化した拍前後のRRIデータが必要なためである。これらのDAEに入力するRRIデータ列を、RRIデータ列のうちの補正対象範囲とする。図8Bの例の場合、ノイズが含まれるRRIデータはデータx4,x5の2拍であり、その前後1拍ずつを加えたデータx3〜x6を補正対象範囲としている。このとき、図8Cに示されたように、データx3〜x6がDAEに入力され、補正の対象となる。
図11は、補正部103がDAE−RMを用いてRRIデータからPVCアーチファクトを除去する補正アルゴリズムを示したフローチャートである。この補正の前提として、DAEは上記の学習済であるものとする。変数tは、RRIデータが取得された番号を表し、最大値をMAXとする。RRIデータx_tは、t番目のRRIデータを示し、yは補正を行う範囲のRRIデータ、y_meanはyの各成分の平均を示している。TはPVCアーチファクトによって変化したRRIデータの数を表しておりT=2のときはPVCは単発性である。PはDAEによる補正幅を表すパラメータである。T拍(たとえば2拍)の前後P拍(たとえば前後1拍)をDAEによって補正する。
図11を参照して、はじめに、変数tを初期化する(ステップS301)。次に、新たにt番目のRRIを計測し、FIFO方式にしたがってRRIデータとしてバッファに記録する(ステップS303)。新たにRRIが計測されると、検出部102において図10の検出処理が実行され、PVCアーチファクトの有無が判定される。
検出部102での図10のアルゴリズムに従う処理の結果、RRIデータにPVCアーチファクトが混入していることが検出された場合(ステップS305でYES)、その後、t+1番目からt+T+P−1番目までのRRIデータの計測を待機する(ステップS307)。計測が終了し、これらRRIデータがFIFO方式にしたがってバッファに記憶されると、バッファから、計測されたRRIデータx_(t−P)からRRIデータx_(t−1)までを読み出し、(T+2P)次元の部分RRI列yを作成する(ステップS309)。これにより、PVCアーチファクトを含むと判定されたT拍、及び、その前後P拍の補正範囲が部分RRI列yとして作成される。
ステップS309で得られた部分RRI列yの平均値y_meanを算出し、平均値y_meanからの差分を用いて部分RRI列yを中心化する(ステップS311)。ステップS311で中心化した部分RRI列yをDAEに入力し、出力である部分RRI列y^を得る(ステップS313)。これにより、中心化された部分RRI列yからPVCアーチファクトの影響が取り除かれる。その後、得られた部分RRI列y^にステップS311で得られた平均値y_meanを加えて元の大きさの部分RRI列y^に復元する(ステップS315)。
ステップS309で得られた元の部分RRI列yの総和と、ステップS315で補正された部分RRI列y^の総和との差を、部分RRI列yの最後の要素に加える(ステップS317)。これにより、補正前後でこの範囲の経過時間の総和が一致する。
以降、部分RRI列yを補正後の部分RRI列y^とし(ステップS319)、次のRRIデータを計測するために変数tをインクリメントする(ステップS321)。また、ステップS303で計測されたRRIデータにPVCアーチファクトが混入していることが検出されなかった場合も(ステップS305でNO)、次のRRIデータを計測するために変数tをインクリメントする(ステップS321)。そして、変数tが最大値MAXに達するまで(ステップS323でNO)、以上の処理を繰り返することによって、RRIデータからPVCアーチファクトを排するように、RRIデータを補正する。変数tが測定数の最大値MAXに達すると(ステップS323でYES)、一連の処理を終了する。
[実施例1]
発明者らは、PVCアーチファクトを加えた実際のRRIデータに対してMSPC−SSA及びDAE−RMを適用し、その結果から、PVCアーチファクトの混入に対するDAE−RMによる補正の効果を評価した。図12は、被験者A〜Rの属性を示した図である。図に示された被験者A〜Rは、26歳から45歳までの5人の男性(平均33.8歳、標準偏差7.7)と、20歳から50歳までの13名の女性(平均35.8歳、標準準偏差7.7)とで構成され、その全員が不整脈でないと診断されている。
被験者A〜Rから計測されたRRIデータのいくつかには明らかなアーチファクトが含まれており、これらのアーチファクトは評価の妨げとなるため除去した。明らかなアーチファクトを除去した被験者A〜Rから部分RRI列yが166個作成され、部分RRI列yの合計時間は375時間となった。本実施例では、これら部分RRI列yに対してランダムな位置に人工的なPVCアーチファクトを加え、MSPC−SSAで異常と検出された範囲に対してDAE−RMを適用した。
なお、MSPC−SSAのモデル構築には被験者Aから得られた部分RRI列yを用いた。MSPC−SSAのパラメータは被験者E,Fから得られた部分RRI列yを用いて決定した結果、部分RRI列の長さm、つまり、Hankel行列の列数mはm=6となった。管理限界は正常モデル構築データの99%が正常と判定されるように設定し、主成分数は、累積寄与率が90%を超えるように設定した。
SSAの性能評価指標として、感度(SEN:sensitivity)及び誤検出率(FPrate:false positive rate)を用いた。指標SENはRRIデータに加えた人工的なPVCアーチファクトのうち、MSPC−SSAによって検出されたPVCの割合を表す。指標FPrateは単位時間(1時間)あたりの誤検出の回数、つまりMSPC−SSAがPVCアーチファクトを含まない部分RRI列yにPVCアーチファクトが含まれると判定した回数を表す。
次に、DAEの学習には被験者Bから得られた部分RRI列yを用いた。中間層と出力層との活性化関数にはそれぞれ、シグモイド関数と恒等写像とを用いた。DAEのパラメータは被験者C,Dから得られた部分RRI列yを用いて決定し、DAEによって補正する要素の数が4、中間層のユニット数が20、最大試行回数が2000となった。つまり、図11のフローチャートに示された補正処理においてT=2、P=1となった。また、パラメータ決定時にL2正則化項を用いてスパース性を導入した。そのため、ユニットを結合するほぼすべての重みが0となっている。
検証には、被験者G〜Rから得られたすべての部分RRI列yを用いた。なお、PVC−RRIデータの作成及び補正は、加えたPVCアーチファクトの位置に補正性能が依存することを防ぐため、5回の試行を行ってその平均値を結果とした。被験者M〜Rの部分RRI列yにPVCアーチファクトを加え、MSPC−SSAを適用した結果は、
SEN:94.9%
FPrate:1.20[times/hour]
であった。
図13Aは、被験者Mから得られたRRIデータを示す図であって、実線が計測されたRRIデータ(オリジナルRRI)、荒い点線がPVCアーチファクトが加えられたRRI(PVC−RRI)、及び細かい点線がDAE−RMでPVC−RRIを補正した補正後のRRI(補正後RRI)を示している。図13B、図13C)、図14A〜図14C、及び、図15A〜図15Cは、図13Aの被験者Mから得られたRRIデータから算出された各HRV指標である。図13BはmeanNN、図13CはSDNN、図14AはTotal Power、図14BはRMSSD、図14CはNN50、図15AはLF、図15BはHF、及び、図15CはLF/HFを示している。各図において、実線がオリジナルRRIから算出されたHRV指標、荒い点線がPVC−RRIから算出されたHRV指標、及び、細かい点線が補正後RRIから算出されたHRV指標、を示している。
これら図において、細かい点線は概ね実線に重なり、視認可能な程度の目立った乖離がない。つまり、補正後RRI(図13A)、及び、補正後RRIから算出されたHRV指標(図13B,C、図14A〜14C、及び、図15A〜15C)は、いずれも、オリジナルRRI、又は、オリジナルRRIから算出されたHRV指標に高精度で追従していることがわかる。
なお、追従度合の指標としてオリジナルRRIとPVC−RRIとの平方平均二乗誤差(RMSE:root mean squared error)に対する補正後RRIの改善率I1、及び、各HRV指標(meanNN、SDNN、Total Power、RMSSD、NN50、LF、HF、LF/HF)における改善率I2〜I9は下のようになった。
I1=72.4%
I2=57.3%
I3=85.2%
I4=86.4%
I5=91.2%
I6=60.9%
I7=61.6%
I8=71.7%
I9=76.3%
以上の第1の実施例に示された検証結果から、DAE−RMによってRRIデータよりPVCアーチファクトの影響は高精度で排除できることが検証された。この結果、DAE−RMによって、PVCがHRV解析に与える影響を軽減できていることが検証された。
[実施例2]
次に、発明者らは、図12に示された被験者M〜RのRRIデータに対して、活性化関数がシグモイド関数であるDAEと、ReLU(Rectified Linear Unit)であるDAEと、のそれぞれを適用し、補正に適用するDAEの中間層の活性化関数の効果を評価した。図16Aは活性化関数がシグモイド関数であるDAEを適用したときの結果、図16Bは活性化関数がReLUであるDAEを適用したときの結果を示している。
なお、本検証では、補正後RRIのオリジナルRRIに対する追従度合によって評価し、追従度合の指標として、オリジナルRRIと補正後RRIとの平方平均二乗誤差(RMSE:root mean squared error)を用いた。RMSEが小さいほど追従度合が高い、つまり、補正精度が高いことを意味している。図16A,Bにおいて、縦軸はRMSEの減少率を表し、横軸はDAEの中間層のノード数を表している。本検証において、DAEへの入力変数の数は4としている。
図16A,Bの比較より、中間層の活性化関数にReLUを用いたとき(図16B)の方が、シグモイド関数を用いたとき(図16A)よりも、中間層のノード数に関わらず全体的にRMSEが小さい。これより、PVCアーチファクトの影響を排する補正を行う場合には、DAEの活性化関数には図16Bに示されたシグモイド関数よりもReLUを用いる方が補正精度が向上することが検証された。
[実施例3]
次に、発明者らは、図12に示された被験者M〜RのRRIデータに対してDAEを適用して補正する際の、DAEへの入力変数の効果を評価した。第3の実施例では、中間層の活性化関数がReLUであるDAEを適用し、図17Aが入力変数の数を6とした場合、図17Bが入力変数の数を8とした場合の結果を示している。これら図においても、縦軸はRMSEの減少率を表し、横軸はDAEの中間層のノード数を表している。
図16B、図17A,Bの比較より、入力変数が少ないほど(図16B)、多い場合よりも(図17A,B)、中間層のノード数に関わらず全体的にRMSEが小さい。これより、DAEの入力変数は小さい方が補正精度が向上することが検証された。つまり、RRIデータのうちの補正対象範囲としてDAEに入力するRRIデータ数が少ないほど補正精度が向上することが検証された。
[第2の実施の形態]
なお、第1の実施の形態では、補正部103が補正手法としてDAEを用いたDAE−RMを採用するものとしているが、補正手法はDAE−RMのみに限定されない。補正手法として他の回帰手法を用いてもよい。DAE以外の他の回帰手法としては、たとえば、PLS(partial least squares)や、LW−PLS(locally weighted PLS)が挙げられる。
PLSは広く使われている線形回帰手法であって、たとえば、Paul Geladi and Bruce R. Kowalski. Partial leastsquares regression: a tutorial. Analytica Chimica Acta, Vol. 185, pp. 1 - 17, 1986.に開示されている。この手法を用いると、入力変数より少ない潜在変数を用いることで多重共線性の問題を回避できる。
LW−PLSはPLSを拡張した手法であって、たとえば、Sanghong Kim, et al. Development of soft-sensorusing locally weighted pls with adaptive similarity measure. Chemometrics and Intelligent Laboratory Systems, Vol. 124, pp. 43 - 49, 2013. に開示されている。この手法では、すでに得られているデータセットのサンプルとクエリの類似度とを重みとして、クエリにおける入出力関係を最もよく表現するサンプルを用いて局所的なPLSモデルを構築する。
[実施例4]
発明者らは、図12に示された被験者M〜RのRRIデータのうちの補正対象範囲のRRIデータに対してDAE、PLS、及び、LW−PLSをそれぞれ適用して補正を行い、補正後のRRIデータ、及び、補正後のRRIデータから得られたHRV指標を比較することによって、補正手法を評価した。
図18A,B,Cは、それぞれ、DAE、PLS、及び、LW−PLSをそれぞれ適用して補正した後のRRIデータ、meanNN,SDNNを示している。図19A,B,Cは、それぞれ、Total Powe、RMSSD、NN50を示している。図20A,B,Cは、それぞれ、LF、HF、LF/HFを示している。これら図においても、縦軸はRMSEの減少率を表し、横軸は用いた手法を表している。
図18A〜図20Cより、DAE、PLS、及び、LW−PLSのいずれも、補正手法として用いてRRIデータが補正されていることが示されている。しかしながら、これらを比較すると、いずれの指標においてもDAEのRMSEが最も小さい。つまり、いずれの手法であっても補正可能であり、特に、DAEが補正に適していることが検証された。
[第3の実施の形態]
以上の実施の形態では、RRIデータに混入するアーチファクト(ノイズ)がPVCアーチファクトである場合について説明した。RRIデータに混入し得る他のアーチファクトとして、R波の検出漏れが挙げられる。この場合、RRIデータの値は通常の値の2倍程度の大きさになる。そのため、この場合、検出部102は、通常のRRIデータの値の2倍程度の値を閾値として設定しておき、当該閾値を超えるRRIデータがあった場合にR波の検出漏れによるアーチファクト(以下、R波抜けアーチファクト)が混入していると検出することができる。検出部102は、上記閾値を超えるRRIデータを検出対象範囲のRRIデータとする。
RRIデータに混入しているアーチファクトがR波抜けアーチファクトである場合も、第1の実施の形態と同様に、補正部103は、検出対象範囲のRRIデータをDAEに入力し、出力である補正後のRRIデータを得る。したがって、RRIデータに混入するアーチファクト(ノイズ)がPVCアーチファクトである場合のみに限定されず、たとえばR波抜けアーチファクトなど他の要因によるアーチファクトであっても、同様の補正手法を用いて補正し、そのアーチファクトの影響を排したRRIデータを得ることができる。
なお、この場合、DAEによってR波抜けアーチファクトを除去するため、AEの学習時に入力するデータはRRIデータであって、加えるノイズをR波抜けに起因するノイズとする。これにより、R波抜けアーチファクトを除去するために用いるDAEは、入力されたRRIデータからR波抜けに起因するノイズを除去して、R波抜けに起因するノイズを含まないRRIデータを出力するように学習されたものである。
[実施例5]
発明者らは、図12に示された被験者M〜RのRRIデータからR波を1拍分を検出できなかったと仮定したテスト用のRRIデータを生成し、このテスト用のRRIデータに対して活性化関数がReLUであるDAE(ReLUDAE)、活性化関数がシグモイド関数であるDAE(typicalDAE)、PLS、及び、LW−PLSをそれぞれ適用して補正を行い、補正後のRRIデータ、及び、補正後のRRIデータから得られたHRV指標を比較することによって、アーチファクトがR波抜けアーチファクトである場合の補正の効果を評価した。
図21A,B,Cは、それぞれ、ReLUDAE、typicalDAE、PLS、及び、LW−PLSをそれぞれ適用して補正した後のRRIデータ、meanNN,SDNNを示している。図22A,B,Cは、それぞれ、Total Power、RMSSD、NN50を示している。図23A,B,Cは、それぞれ、LF、HF、LF/HFを示している。これらの図においても、縦軸はRMSEの減少率を表し、横軸は用いた手法を表している。
図21A〜図23Cより、ReLUDAE以外の他の補正手法については、いずれも、RRIデータが補正されていることが示されている。一方で、ReLUDAEについては補正の効果が見られない。そこで、R波抜けアーチファクトに関しては、ReLUDAEよりもtypicalDAE、つまり、活性化関数としてシグモイド関数を用いたDAEが補正に適していることが検証された。また、DAE以外の手法も補正の効果があるものの、特に、DAEが補正に適していることが検証された。
[第4の実施の形態]
第1の実施の形態および第3の実施の形態より、演算装置1では、RRI列に含まれたアーチファクトがPVCアーチファクトかR波抜けアーチファクトかによって、補正に用いるDAEを、ReLUDAEとtypicalDAEとに切り替えてもよい。
図4に示したように、PVCアーチファクトは隣接するR波の間に混入するため、PVCアーチファクトが混入した場合には測定されるRRIが通常のRRIよりも小さくなる。一方、R波抜けアーチファクトはR波が1つ以上欠損しているため、R波抜けアーチファクトが混入した場合には測定されるRRIが通常のRRIよりも大きくなる。
そこで、第4の実施の形態において、検出部102は、図3に示された判別部105を含む。判別部105はPVCアーチファクトとR波抜けアーチファクトとの境界となるRRIの値を閾値として予め記憶しておき、計測されたRRIと比較することによって、検出されたアーチファクトがPVCアーチファクトかR波抜けアーチファクトか、アーチファクトの種別を判別する。
また、第4の実施の形態において、補正部103は、図3に示されたように、ReLUDAE(31)とtypicalDAE(32)と予め用意しておき、検出部102での判別されたアーチファクトの種別に応じてReLUDAEとtypicalDAEとを切り替える。
これにより、検出されたアーチファクトに応じて最適な補正手法を採用することになるため、高精度でアーチファクトの影響を排した補正後のRRIデータを得ることができる。その結果、複数種別のアーチファクトが含まれる場合にも、HRV解析の精度を向上させることができる。
[第5の実施の形態]
R波の検出の信頼性を低下させる要因はPVCに限定されない。R波の検出の信頼性を低下させる要因の他の例として、上室性期外収縮(PAC:Premature Atrial Contraction)がある。PACは、洞結節の興奮に先立って心房などの上室と呼ばれる箇所で興奮が起こる期外収縮の一種である。PACもPVCと同様に健常者にも起こりうる不整脈の一種である。PACが生じた場合においてもRRIにアーチファクトが混入するため、R波の検出の信頼性を低下させる要因となる。
[実施例6]
発明者らは、PACアーチファクトについても、PVCアーチファクトと同様に補正の効果を評価した。図24に示されるように、PACが発生したの心電波形は、PACが生じた前のRRIのみが変化していることがわかる。この特徴を反映するため、発明者らは、RRIデータの1拍をランダムに選択してRRIの値を減少させて検証に用いた。またPACによるP波がT波の後に生じる場合のみを仮定し、この仮定を満たすようRRIの値を減少させたものを検証に用いた。具体的には、心電波形に、図25に示すようなPACアーチファクトを加えて用いた。PACアーチファクトの大きさLは、RRIが健常なQT間隔より短くなることのない範囲でランダムな値を設定した。また、心電波形において、連続でPACが生じることはないと仮定した。
補正に用いるニューラルネットワークの中間層をシグモイド関数とし、中間層のユニットの数は8とした。また、中間層の活性化関数をReLU、出力層の活性化関数を恒等写像とした。また、オートエンコーダ(AE)によるPACの検出には、8拍分の心電波形を用いた。また、補正するRRIの要素数であるDAEのパラメータ数を4、中間層のユニットであるDAEのパラメータ数を2とした。なお、AEは、次元圧縮や特徴抽出のためのニューラルネットである。
図26B〜図28Cには、26Aに示された、オリジナルのRRIデータ、人工アーチファクトを加えたRRIデータ、及び、DAE−RMによる補正後のRRIデータそれぞれから得られた各指標が示されている。図26B〜図28Cに示された各指標に対して、AEによる異常検出を適用し、オリジナルのRRIデータとDAE−RMによる補正後のRRIデータ、及び、オリジナルのRRIデータから得られた各指標と、DAE−RMによる補正後のRRIデータから得られた各指標とを比較した。
その結果、オリジナルのRRIデータと補正後のRRIデータの改善率は27.4%であった。また、meanNNで0.1%、SDNNで24.8%、Total Powerで22.7%、RSMMDで70.8%、NN50で34.0%、LFで22.7%、HFで28.2%、LF/HFで30.0%であった。つまり、補正後RRI、及び、補正後RRIから算出されたHRV指標は、いずれも、オリジナルRRI、又は、オリジナルRRIから算出されたHRV指標に高精度で追従していることがわかる。
この結果より、PACアーチファクトについてもPVCアーチファクトと同様にDAE−RMによってRRIデータより高精度で排除できることが検証された。従って、DAE−RMによって、PACがHRV解析に与える影響もPVCと同様に軽減できていることが検証された。
[3.付記]
なお、本実施の形態の他の局面に従うと、次のような演算装置が含まれる。すなわち、(1)ある実施の形態に従うと、演算装置は、心電信号の隣接するR波の間隔のデータであるRRIデータを補正する演算装置であって、時系列に得られたRRIデータのうちの、ノイズを有するRRIデータを含む補正対象範囲を検出し、補正対象範囲のRRIデータを補正する。
(2)前記補正することは、前記補正対象範囲のRRIデータをPLS(partial least squares)に入力することによって、前記補正対象範囲のRRIデータを補正することを含む、(1)に記載の演算装置。
(3)前記検出することは、ノイズがPVCによるものであるRRIデータを含む前記補正対象範囲を検出すること、ノイズがPACによるものであるRRIデータを含む前記補正対象範囲を検出すること、及び、ノイズがR波の検知が欠落していることに起因するものであるRRIデータを含む前記補正対象範囲を検出すること、のうちの少なくとも一つを含む、(1)又は(2)に記載の演算装置。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
1 演算装置
2 心拍計測器
10 処理部
12 メモリ
13 通信部
21 電極
31 ReLUDAE
32 typicalDAE
100 検知装置
101 RRI算出部
102 検出部
103 補正部
104 検知部
105 判別部
121 プログラム

Claims (11)

  1. 心電信号の隣接するR波の間隔のデータであるRRIデータを補正する演算装置であって、
    時系列に得られた前記RRIデータのうちの、ノイズを有するRRIデータを含む補正対象範囲を検出し、
    前記補正対象範囲のRRIデータをDAE(denoising autoencoder)に入力することによって、前記補正対象範囲のRRIデータを補正する
    演算装置。
  2. 前記検出することは、ノイズが期外収縮(PVC:Premature Ventricular Contraction)によるものであるRRIデータを含む前記補正対象範囲を検出することを含む
    請求項1に記載の演算装置。
  3. 前記DAEの活性化関数はReLU(Rectified Linear Unit)である
    請求項2に記載の演算装置。
  4. 前記検出することは、ノイズがR波の検知が欠落していることに起因するものであるRRIデータを含む前記補正対象範囲を検出することを含む
    請求項1に記載の演算装置。
  5. 前記DAEの活性化関数はシグモイド関数である
    請求項4に記載の演算装置。
  6. 前記補正対象範囲のRRIデータを補正する際に、検出された前記補正対象範囲が、ノイズがPVCによるものであるRRIデータを含む補正対象範囲か、ノイズがR波の検知が欠落していることに起因するものであるRRIデータを含む補正対象範囲か、によって、前記DAEの活性化関数を、ReLUとシグモイド関数とで切り替える
    請求項1に記載の演算装置。
  7. 前記補正対象範囲のRRIデータを補正する際にDAEに入力するRRIデータの数は、前記補正対象範囲に含まれるRRIデータの数に一致する
    請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の演算装置。
  8. 前記検出することは、ノイズが上室性期外収縮(PAC:Premature Atrial Contraction)によるものであるRRIデータを含む前記補正対象範囲を検出することを含む
    請求項1に記載の演算装置。
  9. 請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の演算装置を搭載し、
    前記補正対象範囲のRRIデータを含んだ時系列に得られた前記RRIデータに基づいて特定の生体状態を検知する
    検知装置。
  10. 心電信号の隣接するR波の間隔のデータであるRRIデータを補正する演算方法であって、
    時系列に得られた前記RRIデータのうちの、ノイズを有するRRIデータを含む補正対象範囲を検出するステップと、
    前記補正対象範囲のRRIデータをDAEに入力することによって、前記補正対象範囲のRRIデータを補正するステップと、を備える
    演算方法。
  11. コンピュータを心電信号の隣接するR波の間隔のデータであるRRIデータを補正する演算装置として機能させるプログラムであって、
    前記コンピュータに、
    時系列に得られた前記RRIデータのうちの、ノイズを有するRRIデータを含む補正対象範囲を検出するステップと、
    前記補正対象範囲のRRIデータをDAEに入力することによって、前記補正対象範囲のRRIデータを補正するステップと、を実行させる
    コンピュータプログラム。
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