JPWO2019187664A1 - 排ガス処理方法 - Google Patents
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Abstract
塩素オキソ酸と、アルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物との処理剤組合せを用いて排ガス水銀を減じる排ガス処理方法。
Description
本発明は、排ガス処理方法に関する。より詳細には、排ガス中に含まれる水銀を処理する方法に関する。
各種の廃棄物は、一般的に焼却処分される。廃棄物の焼却後に発生するガスは、有害物質を含んでいることがあり、大気放出は環境保全や公害防止などの観点で望ましくない。よって、焼却処分に際しては、環境負荷低減を図るべく、排ガス処理が一般に行われる。
排ガス処理の対象、すなわち、排ガス中から除去または低減が求められる対象物質としては、煤塵、酸性ガス、窒素ガス、ダイオキシン類、水銀などがある。なかでも、水銀は、毒性が高く、体内に摂取されると様々な健康被害を引き起こし得る。
本願発明者は、水銀除去のための従前の排ガス処理では、克服すべき課題が依然あることに気付き、そのための対策を取る必要性を見出した。具体的には以下の課題があることを本願発明者は見出した。
毒性が高い水銀は、排ガス中から高い除去率でもって除去されることが望ましいが、より高い水銀除去は、必ずしも達成し易いものではない。特に焼却処理後に発生するガスでは、より高い除去率で水銀を除去することが決して容易ではない。
本発明はかかる事情に鑑みて為されたものである。即ち、本発明の主たる目的は、排ガス中からより高い除去率でもって水銀を除去する排ガス技術を提供することである。
本願発明者は、従来技術の延長線上で対応するのではなく、新たな方向で対処することによって上記課題の解決を試みた。その結果、上記主たる目的が達成された排ガス処理方法の発明に至った。
本発明では、排ガスが水銀を含んだガスであるところ、塩素オキソ酸と、アルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物との処理剤組合せを用いて排ガス水銀を減じる処理方法が提供される。
本発明の排ガス処理方法は、排ガス中の水銀をより効果的に減じることができる。つまり、「塩素オキソ酸と、アルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物との処理剤組合せ」を用いることで、排ガスをより高い水銀除去率で処理できる。
以下、本発明に係る排ガス処理方法を詳細に説明する。図面を参照して説明している箇所があるものの、図示される内容は、あくまでも本発明の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎない。
本明細書で直接的または間接的に用いる「処理」といった用語は、対象となるガス中の含有成分を減じるためにガスに施す処理を意味し、特にガスの水銀成分量を減じるために施す処理を意味している。
本発明の処理方法は、水銀含有の排ガスの処理法であって、水銀処理剤(以下では「Hg処理剤」とも称する)に特徴を有する。具体的には、本発明の処理方法では、排ガスが水銀を少なくとも含むところ、“塩素オキソ酸”と“アルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物”との処理剤組合せを用いて排ガス中の水銀を減じる。
本明細書において用いる「排ガス」とは、広義には、環境負荷の低減を図る必要があるガスのことを指しており、狭義には、一般廃棄物、産業廃棄物および下水物などを含む各種の廃棄物の処理に伴って排出されるガスのことを指している。端的な例でいえば、ごみ焼却処理、リサイクル処理または下水処理などに伴って発生するガスである。
本発明の処理は、あくまでも排ガス中の水銀含量を減じるためのものであり、処理に付される排ガスが水銀(Hg)を少なくとも含んでいる。ここでいう水銀は、一般的に周期表で第6周期第12族に分類されるものである。水銀は、処理される排ガス中でどのような形態で存在するものであってもよい。例えば排ガス中の水銀(Hg)は原子状Hg(Hg0)、水銀イオン(Hg2 2+および/またはHg2+)、無機Hgならびに有機Hgから成る群から選択される少なくとも1つの形態を有していてよい。
ある好適な態様では、排ガスが廃棄物の焼却処理、リサイクル処理または下水処理に伴って発生する高温ガスであるところ、水銀が揮発金属として排ガス中に存在し得る。つまり、排ガス中の水銀は水銀蒸気であり得る。これは、処理に付される排ガスが、その含有成分として金属水銀蒸気を有し得ることを意味している。
本発明の排ガス処理方法では、塩素オキソ酸と、アルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物との処理剤組合せを用いる。つまり、排ガスのHg処理剤として「塩素オキソ酸とアルカリ金属・アルカリ土類金属塩化物との処理剤組合せ」を用い、それを排ガスと接触させる。このような処理剤組合せを用いることによって、排ガス中の水銀をより効果的に減じることができる。特に、塩素オキソ酸と、アルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物との処理剤組合せを用いると、所望の水銀除去率、好ましくはより高い水銀除去率で排ガスを処理できる。
ここで、以下の事項に鑑みると、本発明の方法では、好ましくは、処理済のガス中で非所望な残存オキソ酸の可能性を減じることができる。例えば水銀含有の排ガスを塩素オキソ酸のみの処理剤で処理する場合を想定すると、処理後のガスに残存する処理剤が、大気汚染物質の要因となってしまう懸念がある。具体的には、より高い水銀除去率を達成すべく過剰の塩素オキソ酸を排ガスに用いると、処理済みのガス中に塩素オキソ酸が残存する可能性が高くなり、かかる残存分の塩素オキソ酸が分解などを経ることで処理済みガスの塩素濃度が非所望に増してしまう、といった虞がある。この点、本発明の排ガス処理方法では、好ましくは、塩素オキソ酸は単独で用いる場合よりも少ない量で済み、そうでありながらも排ガス中の水銀含量を所望に減じることができる。従って、より少ない塩素オキソ酸の量でもって排ガスを好適に処理でき、非所望な残存オキソ酸の可能性を減じることが可能となり得る。
Hg処理剤として「塩素オキソ酸と、アルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物との処理剤組合せ」が用いられることによって、排ガスの水銀除去率は、40%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上(例えば95%以上)となる。ここでいう「水銀除去率」とは、排ガス中の水銀含量が処理によって除かれた割合(百分率)を示している。例えば「水銀除去率」は、排ガス中の水銀濃度(μg/m3)の低減割合から導出されるものであってよい(例えば、水銀除去率100%は排ガス中の水銀が全て除去されたことを意味する)。これにつき、本発明における具体的な水銀除去率は、湿式吸収―還元気化原子光分析法に基づいて測定された値を特に指しており、例えばJIS K 0222(3)連続測定法に準拠した測定法で得られた値を指している(例示すれば、処理前後において日本インスツルメンツ製のHg測定デバイス(型式「EMP−2とWLE−8との組合せ」、「DM−6B」または「MS−1A」)を用いて測定された水銀濃度から算出される値に基づく)。
ある好適な態様では、排ガスを湿式処理に付しており、その湿式処理に処理剤組合せを用いる。これは、排ガスのHg処理剤を液体形態で用いることを意味している。つまり、本発明の排ガス処理方法では「塩素オキソ酸と、アルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物との処理剤組合せ」を液体形態で好ましくは用いる。処理すべき排ガスと、液体形態の「塩素オキソ酸と“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”との処理剤組合せ」とを互いに接触させることによって、接触後に得られるガスでは水銀含量が減じられる。あくまでも1つの例示にすぎないが、そのような接触を経ることで、排ガスに含まれていた水銀の少なくとも一部が液体形態のHg処理剤へと吸収または吸着され、排ガス中から水銀が減じられることになる。
好ましくは、排ガスに接触させるHg処理剤を水溶液として用いる。つまり、本発明の排ガス処理方法でいう「処理剤組合せ」は、塩素オキソ酸と“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”とが共存する水溶液(以下では「Hg処理水溶液」とも称する)として用い、かかる水溶液と排ガスとを互いに接触させる。Hg処理水溶液は、塩素オキソ酸と、アルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物と、水との組合せから少なくとも成る。Hg処理水溶液は、水に対して塩素オキソ酸および“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”を加えることによって調製できる(例えば、塩素オキソ酸および“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”自体は、それぞれ市販のものを用いることができる)。あくまでも例示にすぎないが、塩素オキソ酸水溶液に対してアルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物を加えることによってHg処理水溶液を調製してよく、あるいは、アルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物の水溶液に対して塩素オキソ酸を加えることによってHg処理水溶液を調製してもよい。また、あらかじめアルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物を一定濃度で含有する塩素オキソ酸水溶液に水を添加して、各濃度を調整してもよい。
さらには、塩素オキソ酸および“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”の双方が水溶液の形態を有してよく、それぞれの水溶液からHg処理水溶液を調製してもよい。つまり、塩素オキソ酸水溶液と、アルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物の水溶液とを互いに合わせることでHg処理水溶液を調製してもよい。具体的には、塩素オキソ酸水溶液に対してアルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物の水溶液を加えることによってHg処理水溶液を調製してよく、あるいは、アルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物の水溶液に対して塩素オキソ酸水溶液を加えることによって、Hg処理水溶液を調製してもよい。このような説明から分かるように、本発明において「塩素オキソ酸と、アルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物とが共存する水溶液」といった用語は、塩素オキソ酸および“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”が水中で電離やそれに伴う反応などを経り得る可能性があるところ、それら塩素オキソ酸および“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”がそれぞれ水に溶解させられた状態に当初あったことを少なくとも意味している。なお、このような水溶液に関して本明細書で用いる「水」は、特に制限はなく例えば純水、超純水もしくは脱イオン水等の精製水または水道水などであってよい。
本発明において「塩素オキソ酸」は、塩素を含むオキソ酸のことを指している。例えば、塩素オキソ酸は、次亜塩素酸および亜塩素酸から成る群から選択される少なくとも1つの塩として用いてよい。つまり、排ガスのHg処理剤(すなわち、「塩素オキソ酸とアルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物との処理剤組合せ」)における塩素オキソ酸が、次亜塩素酸および/または亜塩素酸の塩の形態で供されてよい。あくまでも例示にすぎないが、水にそのような塩および“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”を加えることによって、Hg処理剤を調製してもよい。あるいは、塩形態の塩素オキソ酸を水に溶かしてオキソ酸水溶液を一旦得ることを通じてHg処理剤の調製を行ってもよい。
ある好適な態様では、塩素オキソ酸の塩として次亜塩素酸塩を用いる。つまり、塩素オキソ酸が次亜塩素酸であり、その塩を水に溶かすことを通じてHg処理剤を調製してよい。特定の理論に拘束されるわけではないが、酸化力がより強い次亜塩素酸の使用では、金属水銀(たとえば、気化状態の水銀金属)が酸化されることを通じて水銀錯体の形成が促進されることになる。かかる水銀錯体は水中でより安定に存在し得るので、水銀は水溶液形態の処理剤に吸収され易くなり排ガス中から水銀がより除去され易くなる。このような水により吸収されやすい“水銀錯体”は、特定の理論に拘束されるわけではないが、特に塩化物の塩化物イオンに起因してもたらされる水銀クロロ錯塩(又は水銀クロロ錯イオン)であることが好ましい。
次亜塩素酸塩は、特に制限するわけではないが、例えば次亜塩素酸ナトリウムであってよい。つまり、次亜塩素酸ソーダをHg処理剤の次亜塩素酸塩として用いてよい。次亜塩素酸ナトリウムは、水溶液がアルカリ性を呈するので、排ガス中に含まれ得る塩化水素(HCl)や硫黄酸化物(SOx)の酸性成分の除去に付加的に寄与し得る点で好ましい。つまり、次亜塩素酸ナトリウムを用いると、排ガス中に含まれる得る水銀以外の酸性成分物質(塩化水素や硫黄酸化物など)を中和反応を通じて付加的に除去することが可能となり得る。
本発明におけるアルカリ金属の塩化物としては、塩化カリウム、塩化ナトリウムおよび塩化リチウム等から成る群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属塩化物を挙げることができる。一方、本発明におけるアルカリ土類金属の塩化物としては、塩化ベリリウム、塩化マグネシウムおよび塩化カルシウム等のから成る群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属塩化物を挙げることができる。さらにいえば、本発明にて塩素オキソ酸と組み合わせられるものは、例えば塩化コバルトおよび/または塩化亜鉛等の金属の塩化物等であってもよい。これらのうち、塩化ナトリウム、塩化カルシウムおよび/または塩化マグネシウムが好ましくは用いられる。つまり、塩素オキソ酸との組合せには、塩化ナトリウム、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムから成る群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
上記でも触れたが、本発明におけるHg処理水溶液は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”を添加して調製してよいし、あるいは、“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”の水溶液に次亜塩素酸ナトリウムを添加して調製してもよい。更には、塩素オキソ酸水溶液に対して“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”の水溶液を加えること、あるいは、“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”の水溶液に対して塩素オキソ酸水溶液を加えることによって、Hg処理水溶液の調製を行ってもよい。
本発明の処理方法でHg処理剤に用いる塩素オキソ酸は、排ガス中の水銀のモル数(物質量)に対して、100〜3000倍、100倍〜2000倍、200倍〜1500倍、250倍〜1300倍、300倍〜1200倍、さらにいえば300倍〜1100倍などのモル数(物質量)となる量として用いてよい。ここでいう「排ガス中の水銀のモル数」とは、Hg除去処理に付される前の処理対象ガスに含まれる水銀モル数のことを意味している。ある好適な態様でいえば、排ガス中の水銀のモル数(物質量)に対して350倍〜650倍、400倍〜600倍または450倍〜550倍のモル数(物質量)となるように、あるいは、排ガス中の水銀のモル数(物質量)に対して700倍〜1100倍、800倍〜1100倍または900倍〜1100倍のモル数(物質量)となるように、塩素オキソ酸を用いてよい。なお、上記の「水銀モル数に対する塩素オキソ酸のモル数」は、排ガス中の単位時間当りの水銀含有量(モル数/h)に対する塩素オキソ酸の単位時間当りの添加量(モル数/h)の比から求められるところ、前者は上記言及したJIS K 0222(3)に準拠して測定される排ガス中の水銀濃度と下記言及する排ガス流量との積から導出することができ、後者は例えば塩素オキソ酸を水溶液で用いる場合にその仕込み比(濃度など)に基づき導出することができ、あるいは、JIS K 0400−33:1999に準拠した測定から得ることができる。
本発明では、塩素オキソ酸は単独で用いるのではなく、“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”との併用で用いる。これにつき、塩素オキソ酸の単独使用よりも、“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”との併用の方が、より高い水銀除去率を達成することができる。つまり、塩素オキソ酸の単独使用よりも、より向上した水銀除去率を達成できる。より具体的には、“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”と併用すると、塩素オキソ酸の単独使用よりも、好ましくは35%以上高くなった水銀除去率(例えば35〜90%以上高くなった水銀除去率)、より好ましくは40%以上高くなった水銀除去率(例えば、塩素オキソ酸の単独使用よりも40〜80%以上高くなった水銀除去率)、さらに好ましくは45%以上高くなった水銀除去率(例えば、塩素オキソ酸の単独使用よりも45〜70%以上高くなった水銀除去率や45〜60%以上高くなった水銀除去率)となり得る。さらにいえば、塩素オキソ酸の単独使用よりも100%以上高くなった水銀除去率(例えば、塩素オキソ酸の単独使用よりも100〜350%以上高くなった水銀除去率)や200%以上高くなった水銀除去率(例えば、塩素オキソ酸の単独使用よりも200〜350%以上高くなった水銀除去率)など相当効率良く水銀を除去できる。このような事項に鑑みれば、塩素オキソ酸は“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”との併用でより効果的に高い水銀除去率を達成することができ、塩素オキソ酸の使用量は少なくてすむ。つまり、このような観点から本発明における塩素オキソ酸の“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”との併用は多量又は過剰の塩素オキソ酸の使用防止又は使用回避につながり得る。
本発明ではHg処理剤に用いるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物の量は多くなくてよい。例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物の水溶液として用いる場合、そのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物の濃度(すなわち、NaCl含量)は比較的低いものであってよい。具体的には、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物の水溶液の濃度は、0.1g/L〜20g/L、さらにいえば、0.5g/L〜15g/L、0.5g/L〜13g/Lまたは0.7g/L〜13g/Lなどであってよい。ある好適な態様では、Hg処理剤に用いるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物の水溶液の濃度が0.8g/L〜15g/L、1g/L〜15g/L、0.5g/L〜5g/L、0.5g/L〜1.5g/Lまたは0.8g/L〜1.2g/Lとなるようなものであってよく、あるいは、5g/L〜15g/L、6g/L〜14g/L、7g/L〜13g/L、8g/L〜13g/Lまたは9g/L〜13g/Lなどであってもよい。本発明では、このようにアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物の水溶液の濃度が低い場合であっても、高い水銀除去率(例えば90%以上の高い水銀除去率)を達成することが可能である。なお、ここでの「アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物の水溶液の濃度」は、例えばその仕込み比(水に対してどれだけ添加されたものかの割合)から求められる濃度であり、あるいは、JIS K 0400−33:1999に準拠した測定や硝酸銀測定法等から得られる濃度である。
本発明の排ガス処理方法において、対象となる排ガスは、その温度および/またはpHなどは特に制限されない。つまり、排ガスは、Hg処理のために、加熱処理および冷却処理などを必要とせず、同様にしてpHを変更するための添加剤をHg処理のために加えなくてもよい。処理対象となる排ガスは、焼却処理などに始まり、その焼却後に逐次的に他の各種処理に付されることが多い。これにつき、本発明では、Hg処理のためのみを目的とした加熱および/または冷却などは特に必要とされず、また、Hg処理のためのみを目的したpH調整も特に必要とされない。
本発明の排ガス処理方法は、種々の態様で具現化され得る。
(吸収塔利用の態様)
かかる態様は、吸収塔を利用して水銀含有の排ガスを処理する態様である。吸収塔は、いわゆる吸収操作を行う装置である。本発明では、そのような装置において「塩素オキソ酸と“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”との処理剤組合せ」を吸収剤として用い、排ガス中の水銀を減じる。
かかる態様は、吸収塔を利用して水銀含有の排ガスを処理する態様である。吸収塔は、いわゆる吸収操作を行う装置である。本発明では、そのような装置において「塩素オキソ酸と“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”との処理剤組合せ」を吸収剤として用い、排ガス中の水銀を減じる。
塩素オキソ酸および“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”は、吸収塔に対していずれのポイントから注入してもよい。例えば、塩素オキソ酸は、熱などによる自然分解に鑑みて、吸収塔および/または循環ラインの入り口側に注入してよい。
吸収塔を利用する場合、Hg処理剤は水溶液として用いてもよい。つまり、本発明の排ガス処理方法では「塩素オキソ酸と、アルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物との処理剤組合せ」を塩素オキソ酸と、アルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物とが共存する水溶液(すなわち、Hg処理水溶液)として用い、吸収塔にてHg処理水溶液と排ガスとを互いに接触させてよい。
吸収塔では、Hg処理水溶液および排ガスのどちらの相を分散させてもよい。つまり、排ガスの連続相中にHg処理水溶液を薄膜や液滴の形態で分散させてもよく、あるいは、排ガスを気泡状にHg処理水溶液中に分散させてもよい。
前者の“液分散型”の吸収塔の場合、すなわち、Hg処理水溶液を塔内で分散させる場合、吸収装置は、例えば、充填塔、スプレー塔または濡れ壁塔の形態を有していてよい。充填塔は、塔内部に充填物が詰められた装置であるところ、排ガスとHg処理水溶液との接触面積を増大させることができ、より効率的な吸収操作を行うことができる。スプレー塔は、塔内部にてHg処理水溶液を液滴噴霧する塔であり、同様に排ガスとHg処理水溶液との接触面積を増大させることができる。スプレー塔を用いる態様では、接触面積の増大が図られるとともに、排ガス中の集塵などを併せて除去する効果も奏され得る。濡れ壁塔では、塔内の壁(好ましくは垂直な壁)に沿ってHg処理水溶液を流下させ、その流下外側の空間に排ガスを流してよい。かかる濡れ壁塔を用いると、熱交換が比較的容易であるので、排ガスをより効果的に加熱・冷却などに付すことができる。
後者の“ガス分散型”の吸収塔の場合、すなわち、排ガスをHg処理水溶液中に分散させる場合、吸収装置は、例えば、棚段塔の形態を有していてよい。かかる棚段塔は、塔内部にて上下方向に所定の間隔を空けて棚段を設けており、その棚段でもって排ガスとHg処理水溶液との接触を行わせる。棚段塔は、いわゆる多孔板塔または泡鐘塔などであってよい。
“液分散型”または“ガス分散型”のいずれにおいても、気-液の供給形態は、”向流”となるものでよく、あるいは、“並流”となるものでもよい。あくまでも例示にすぎないが、スプレー塔を例にとると塔底側から排ガスの供給を行う一方、塔頂側からHg処理水溶液の液滴噴霧を行ってよい。
ある好適な態様では、Hg処理水溶液を塔循環液として用いる。つまり、排ガス処理を吸収塔で行うところ、「塩素オキソ酸と“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”との処理剤組合せ」を吸収塔の循環液の形態として用いる。かかる循環液は塔内で排ガスと接触することになるので、水銀除去がなされる。換言すれば、塔内に供給された排ガス中の水銀の少なくとも一部(好ましくは、その殆ど)は“処理剤組合せ”を含む循環液に吸収されるので、塔外へと出されるガスは、水銀含量が減じられた(好ましくは水銀が規制基準を満たすほどに除去された)ものとなる。
塩素オキソ酸を含んで成る循環液に対してアルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物を加えることによって、Hg処理水溶液を塔循環液として調製してもよい。より具体的にいえば、塩素オキソ酸の水溶液を含んで成る循環水溶液(特に、オキソ酸を含むものの、必要とされる又は新たに必要な“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”は未だ含まれていない塔循環液)に対して“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”を加えて循環液を得てよい。例えば、塩素オキソ酸水溶液が循環される循環ラインに対して“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”またはその水溶液を加えてもよい。上述したように本発明におけるHg処理剤では塩素オキソ酸に対する“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”の割合は少なくてよく、その点でこれらの共存状態を容易に得ることができる。
例えばスプレー塔を例にとると、塔底側から排ガスを供給する一方、塔頂側からHg処理水溶液を液滴噴霧してよく、噴霧後のHg処理水溶液を循環液として回収して再度の液滴噴霧に使用してよい。循環液のpHは、特に制限されるわけではないが、pH2以上であってよく、好ましくはpH3以上である。例えば、pH2〜pH7(pH7含まず)程度、好ましくはpH3〜pH7(pH7含まず)程度であってよい(このような酸性域のpH値は、排ガス中に含まれ得るHClやSOxなどの酸性成分に起因するものであってよい)。
本発明のある好適な態様では、吸収装置は充填塔となっている。つまり、塔内の充填物を通じて排ガスとHg処理水溶液との気液接触を行う。充填物は、規則充填物であってよいし、あるいは、不規則充填物であってよい。つまり、充填物を規則的に積み重ねるのに適した充填物を用いてもよいし、あるいは、不規則に積み重ねるのに適した充填物を用いてもよい。具体的な“規則充填物”としては、例えば網目構造の充填物を挙げることができる。一方、具体的な“不規則充填物”としては、リング型(ラシヒリング、レッシングリング、スパイラルリング、クロスパーティションリング、ポールリングなど)、サドル型(ベルサドル、インターロックサドル)、その他のタイプの充填物(マクマホンパッキング、キャノンパッキング、ディクソンパッキング、テラレット、スプレーパック、パナパック、インターパック、グッドローパッキング、ステッドマンパッキング、へリクス、木格子)を挙げることができる。そのような規則充填物・不規則充填物は、金属製、プラスチック製またはセラミック製であってよい。
本発明では、吸収装置は充填塔でありながらも、スプレー塔の要素を備えていてよい。つまり、吸収装置が、充填物を備えているところ、塔頂側からHg処理水溶液を液滴噴霧し、噴霧後のHg処理水溶液を循環液として回収して再度の液滴噴霧に使用してよい。このような吸収装置は、排ガスとHg処理水溶液との気液接触をより促進させることができ、より高い水銀除去率を達成し易くなる。なお、本発明において吸収塔が利用される場合、液として吸収塔から取り出されるHg含有廃液は、残塩素オキソ酸の分解処理後に吸着剤を用いて水銀除去でき、より好適な排ガス処理が実現され得る。
(水銀廃棄物起因の排ガス処理態様)
かかる態様は、特に水銀廃棄物に起因して発生するガスに対して処理を施す態様である。「水銀廃棄物に起因して発生するガス」は、廃棄処理のみならず、例えば有価物の回収などを目的に行うリサイクル処理などに際して発生するガスであってもよい。
かかる態様は、特に水銀廃棄物に起因して発生するガスに対して処理を施す態様である。「水銀廃棄物に起因して発生するガス」は、廃棄処理のみならず、例えば有価物の回収などを目的に行うリサイクル処理などに際して発生するガスであってもよい。
ある例を挙げると、水銀廃棄物に関する各種規制(あくまでも例示にすぎないが「水銀に関する水俣条約」に関する規制など)の対象となり得るガスを本発明の方法で処理する。
ここでいう「水銀廃棄物」は、広義には、水銀をどのような形態であれ少なくとも含有するものを指しており、狭義には、一般に廃棄または排出などされた「水銀含有の有体物」を意味している。制限するわけではないが、具体的な水銀廃棄物としては、水銀使用製品廃棄物(例示すると、電池、蛍光灯、及び医療用計測機器類等)、水銀汚染物(例示すると、下水処理物などの水銀含有汚泥、燃え殻、及びばいじん等)、ならびに、廃金属水銀(例:廃試試薬、及びポロシメーターに使用された水銀等)などを挙げることができる。
水銀廃棄物が水銀含有汚泥である場合を例示にとると、例えば図1に示すようなプロセス・フローで水銀含有汚泥が処理され得る(図示するフローでは、参照番号10において水銀含有の排ガスが本発明に従って処理される)。Hg処理剤、すなわち、「塩素オキソ酸と、アルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物との処理剤組合せ」は、各種処理に付される排ガスが大気放出される前に使用される。図示するように、水銀含有汚泥処理において相対的に下流側でHg処理剤を使用してよい。このように処理することによって、水銀廃棄物に関する規制を満たしたガスを好適に大気放出することができる。なお、水銀含有汚泥としては、例えば、廃棄物焼却場から発生する汚泥(残渣、スラッジ、活性炭、煤塵など)、水銀使用設備(例えば、水銀使用製品の製造設備)、または下水処理施設で発生する汚泥などがある。このような汚泥に起因した処理は、発電所(例えば火力発電所)等における排ガス処理とは、ガス含有成分の種類および/または含有濃度などの点で通常異なるものと当業者には認識され得る。
以上、本発明の各種態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく、特許請求の範囲に規定される発明の範囲から逸脱することなく種々の態様が当業者によって具現化され得ると理解されよう。
例えば、上記では、塩素オキソ酸が“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”と組み合わされたHg処理剤の使用を中心に説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されない。例えば、塩素オキソ酸がアルカリ金属とアルカリ土類金属との双方の塩化物に対して組み合わされたものをHg処理剤として使用してもよく、同様の効果が奏され得る。
本発明における「塩素オキソ酸と、アルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物との処理剤組合せ」の効果を確かめるべく、以下の実証試験を行った。
● Run1、3〜5、7および8
(1)排ガスの水銀除去装置
・吸収塔(充填物有りのスプレー塔)
充填物:規則充填物
塩化ビニル製の125A(HT-PVC管)×約500mmH(充填高さ)
・循環液槽
塩化ビニル製の600A(VU管)×約450mmH(高さ)、液面:350mmH(液量:約100L)
・ブロワー
テラル製のリングブロワーVFZ301A
・塔出入口
塩化ビニル製の65Aダクト配管
(1)排ガスの水銀除去装置
・吸収塔(充填物有りのスプレー塔)
充填物:規則充填物
塩化ビニル製の125A(HT-PVC管)×約500mmH(充填高さ)
・循環液槽
塩化ビニル製の600A(VU管)×約450mmH(高さ)、液面:350mmH(液量:約100L)
・ブロワー
テラル製のリングブロワーVFZ301A
・塔出入口
塩化ビニル製の65Aダクト配管
(2)装置の運転条件
・排ガス通量
1 m3/min(JIS Z 8762-1〜4に準拠して測定)
・循環流量
5 L/min(JIS Z 8762-1〜4に準拠して測定)
・塩素オキソ酸
次亜塩素酸ソーダ(有効塩素濃度 12.5%以上、NaCl濃度4%以下)。表1中の「排ガス中の水銀物質量(Hg 1mol)に対する塩素オキソ酸の物質量(mol)」は、上記「発明を実施するための形態」で説明した手法で算出。
・アルカリ金属・アルカリ土類金属の塩化物
塩事業センター製の塩化ナトリウム。表1中の「水溶液濃度(g/L)」は、循環液の水に対する塩化ナトリウムの仕込み比から算出。
(3)排ガス
廃棄物焼却の排ガス(特に、下水処理後に得られる水銀含有汚泥の焼却処理に伴って発生するガス:水銀蒸気を含んだ排ガス)
(4)Hg測定デバイス
日本インスツルメンツ製のHg測定デバイス(型式DM−6B、MS−1Aならびに「EMP−2およびWLE−8」)
吸収塔の循環液の形態として、上記の塩素オキソ酸とアルカリ金属・アルカリ土類金属の塩化物との組合せから成るHg処理剤を用いた(より具体的には、塩素オキソ酸の水溶液を含んで成る循環水溶液に対してアルカリ金属・アルカリ土類金属の塩化物を加えて得られた循環液を塔内でスプレー噴霧した)。
・排ガス通量
1 m3/min(JIS Z 8762-1〜4に準拠して測定)
・循環流量
5 L/min(JIS Z 8762-1〜4に準拠して測定)
・塩素オキソ酸
次亜塩素酸ソーダ(有効塩素濃度 12.5%以上、NaCl濃度4%以下)。表1中の「排ガス中の水銀物質量(Hg 1mol)に対する塩素オキソ酸の物質量(mol)」は、上記「発明を実施するための形態」で説明した手法で算出。
・アルカリ金属・アルカリ土類金属の塩化物
塩事業センター製の塩化ナトリウム。表1中の「水溶液濃度(g/L)」は、循環液の水に対する塩化ナトリウムの仕込み比から算出。
(3)排ガス
廃棄物焼却の排ガス(特に、下水処理後に得られる水銀含有汚泥の焼却処理に伴って発生するガス:水銀蒸気を含んだ排ガス)
(4)Hg測定デバイス
日本インスツルメンツ製のHg測定デバイス(型式DM−6B、MS−1Aならびに「EMP−2およびWLE−8」)
吸収塔の循環液の形態として、上記の塩素オキソ酸とアルカリ金属・アルカリ土類金属の塩化物との組合せから成るHg処理剤を用いた(より具体的には、塩素オキソ酸の水溶液を含んで成る循環水溶液に対してアルカリ金属・アルカリ土類金属の塩化物を加えて得られた循環液を塔内でスプレー噴霧した)。
● Run2および6
(1)排ガスの水銀除去装置
・吸収塔(充填物有りのスプレー塔)
セイコー化工機製のTRS-HS25、550mmφ×550mmH(充填高さ)
充填物:規則充填物
・循環液槽
塩化ビニル製の600A(VU管)×約450mmH(高さ)、液面:350mmH(液量:約100L)
・ブロワー
テラル製のリングブロワーVFZ901A
・塔入口
塩化ビニル製の100A管
・塔出口
塩化ビニル製の200A管(末端を100A管にして大気放出)
(1)排ガスの水銀除去装置
・吸収塔(充填物有りのスプレー塔)
セイコー化工機製のTRS-HS25、550mmφ×550mmH(充填高さ)
充填物:規則充填物
・循環液槽
塩化ビニル製の600A(VU管)×約450mmH(高さ)、液面:350mmH(液量:約100L)
・ブロワー
テラル製のリングブロワーVFZ901A
・塔入口
塩化ビニル製の100A管
・塔出口
塩化ビニル製の200A管(末端を100A管にして大気放出)
(2)装置の運転条件
・排ガス通量
10 m3/min(JIS Z 8762-1〜4に準拠して測定)
・循環流量
50 L/min(JIS Z 8762-1〜4に準拠して測定)
・塩素オキソ酸
次亜塩素酸ソーダ(有効塩素濃度 12.5%以上、NaCl濃度4%以下)。表1中の「排ガス中の水銀物質量(Hg 1mol)に対する塩素オキソ酸の物質量(mol)」は、上記「発明を実施するための形態」で説明した手法で算出。
・アルカリ金属・アルカリ土類金属の塩化物
塩事業センター製の塩化ナトリウム。表1中の「水溶液濃度(g/L)」は、循環液の水に対する塩化ナトリウムの仕込み比から算出。
(3)排ガス
廃棄物焼却の排ガス(特に、下水処理後に得られる水銀含有汚泥の焼却処理に伴って発生するガス:水銀蒸気を含んだ排ガス)
(4)Hg測定デバイス
日本インスツルメンツ製のHg測定デバイス(型式「EMP−2およびWLE8」)
吸収塔の循環液の形態として、上記の塩素オキソ酸とアルカリ金属・アルカリ土類金属の塩化物との組合せから成るHg処理剤を用いた(より具体的には、塩素オキソ酸の水溶液を含んで成る循環水溶液に対してアルカリ金属・アルカリ土類金属の塩化物を加えて得られた循環液を塔内でスプレー噴霧した)。
・排ガス通量
10 m3/min(JIS Z 8762-1〜4に準拠して測定)
・循環流量
50 L/min(JIS Z 8762-1〜4に準拠して測定)
・塩素オキソ酸
次亜塩素酸ソーダ(有効塩素濃度 12.5%以上、NaCl濃度4%以下)。表1中の「排ガス中の水銀物質量(Hg 1mol)に対する塩素オキソ酸の物質量(mol)」は、上記「発明を実施するための形態」で説明した手法で算出。
・アルカリ金属・アルカリ土類金属の塩化物
塩事業センター製の塩化ナトリウム。表1中の「水溶液濃度(g/L)」は、循環液の水に対する塩化ナトリウムの仕込み比から算出。
(3)排ガス
廃棄物焼却の排ガス(特に、下水処理後に得られる水銀含有汚泥の焼却処理に伴って発生するガス:水銀蒸気を含んだ排ガス)
(4)Hg測定デバイス
日本インスツルメンツ製のHg測定デバイス(型式「EMP−2およびWLE8」)
吸収塔の循環液の形態として、上記の塩素オキソ酸とアルカリ金属・アルカリ土類金属の塩化物との組合せから成るHg処理剤を用いた(より具体的には、塩素オキソ酸の水溶液を含んで成る循環水溶液に対してアルカリ金属・アルカリ土類金属の塩化物を加えて得られた循環液を塔内でスプレー噴霧した)。
表1の結果から以下のことを把握することができた。
塩素オキソ酸とアルカリ金属・アルカリ土類金属の塩化物との処理剤組合せを用いることで、排ガス中の水銀をより高い水銀除去率で処理できる。
特に、塩素オキソ酸の濃度が排ガス中の水銀のモル濃度に対して200倍〜1500倍であり、“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”の水溶液の濃度が0.5〜15g/Lである条件の処理剤組合せにおいてより高い水銀除去率を達成しやすい。
塩素オキソ酸の単独使用よりも“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”との併用の方が、より高い水銀除去率を達成することができる。より具体的には、塩素オキソ酸が同一量条件となるRun1とRun2または3とを比べると、“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”との併用は、塩素オキソ酸の単独使用よりも約50%高い水銀除去率を達成することができる。また、塩素オキソ酸が同一量条件となるRun4とRun5との比較では、“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”との併用は、塩素オキソ酸の単独使用よりも約300%高い水銀除去率を達成することができる。換言すれば、本発明の方法は、高い水銀除去率を達成しつつもより少ない量の塩素オキソ酸でもって排ガス処理でき、非所望の残存オキソ酸の可能性を回避できる。
塩素オキソ酸とアルカリ金属・アルカリ土類金属の塩化物との処理剤組合せを用いることで、排ガス中の水銀をより高い水銀除去率で処理できる。
特に、塩素オキソ酸の濃度が排ガス中の水銀のモル濃度に対して200倍〜1500倍であり、“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”の水溶液の濃度が0.5〜15g/Lである条件の処理剤組合せにおいてより高い水銀除去率を達成しやすい。
塩素オキソ酸の単独使用よりも“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”との併用の方が、より高い水銀除去率を達成することができる。より具体的には、塩素オキソ酸が同一量条件となるRun1とRun2または3とを比べると、“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”との併用は、塩素オキソ酸の単独使用よりも約50%高い水銀除去率を達成することができる。また、塩素オキソ酸が同一量条件となるRun4とRun5との比較では、“アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物”との併用は、塩素オキソ酸の単独使用よりも約300%高い水銀除去率を達成することができる。換言すれば、本発明の方法は、高い水銀除去率を達成しつつもより少ない量の塩素オキソ酸でもって排ガス処理でき、非所望の残存オキソ酸の可能性を回避できる。
本発明の処理方法は、各種の排ガス処理に利用することができる。特に、有害な水銀を含んだ排ガスを処理するために本発明を好適に利用できる。
例えば、一般廃棄物、産業廃棄物および下水物などを含む廃棄物の処理またはそれに関連するリサイクル処理などに伴って排出されるガスには金属水銀蒸気が含まれる。本発明は、より高い水銀除去率を塩素オキソ酸の過剰使用を回避しつつ達成できるので、環境負荷低減の点から求められる排ガス処理基準をより好適に満たしやすい。
本出願は、日本国特許出願第2018−67442号(出願日:2018年3月30日、発明の名称:「排ガス処理方法」)に基づくパリ条約上の優先権を主張する。当該出願に開示された内容は全て、この引用により、本明細書に含まれるものとする。
10 本発明に従って実施される排ガス処理部
Claims (14)
- 排ガスの処理方法であって、
前記排ガスが水銀を含んでおり、塩素オキソ酸と、アルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物との処理剤組合せを用いて該排ガス中の該水銀を減じる、排ガス処理方法。 - 前記排ガスを湿式処理に付しており、該湿式処理に前記処理剤組合せを用いる、請求項1に記載の排ガス処理法。
- 前記処理剤組合せを前記塩素オキソ酸と前記アルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物とが共存する水溶液として用い、該水溶液と前記排ガスとを互いに接触させる、請求項1または2に記載の排ガス処理方法。
- 前記塩素オキソ酸が、次亜塩素酸および亜塩素酸から成る群から選択される少なくとも1つの塩として用いられる、請求項1〜3のいずれかに記載の排ガス処理方法。
- 前記塩素オキソ酸の前記塩が、次亜塩素酸塩である、請求項4に記載の排ガス処理方法。
- 前記次亜塩素酸塩が次亜塩素酸ナトリウムである、請求項5に記載の排ガス処理方法。
- 前記アルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物が、塩化ナトリウム、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムから成る群から選択される少なくとも1つである、請求項1〜6のいずれかに記載の排ガス処理方法。
- 前記処理剤組合せにおける前記塩素オキソ酸の物質量が、前記排ガス中の前記水銀の物質量の100倍〜2000倍となっている、請求項1〜6のいずれかに記載の排ガス処理方法。
- 前記アルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物を水溶液の形態で供し、該水溶液における該塩化物の濃度が0.5〜15g/Lである、請求項1〜8のいずれかに記載の排ガス処理方法。
- 前記排ガスの処理を吸収塔で行い、前記処理剤組合せを該吸収塔の循環液の形態で用いる、請求項1〜9のいずれかに記載の排ガス処理方法。
- 前記塩素オキソ酸の水溶液を含んで成る循環水溶液に対して前記アルカリ金属の塩化物又はアルカリ土類金属の塩化物を加えて前記循環液を得る、請求項10に記載の排ガス処理方法。
- 前記排ガスが、水銀廃棄物の処理に伴って排出されるガスである、請求項1〜11のいずれかに記載の排ガス処理方法。
- 前記水銀廃棄物が、水銀含有汚泥である、請求項12に記載の排ガス処理方法。
- 前記排ガス中の前記水銀が水銀蒸気である、請求項1〜13のいずれかに記載の排ガス処理方法。
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