メタノールのカルボニル化による酢酸の製造プロセスでは、種々の要因、例えば、外部からプロセス内に導入される成分等に起因して、プロセス流中に酸素が混入する。例えば、一酸化炭素やメタノールは、化石燃料(石炭、石油等)、天然ガス等の炭素源(炭素類や炭化水素類)の酸素や空気による部分酸化、例えば、スチームメタンリファーミング(steam methane reforming,SMR)、オートサーマルリフォーミング(autothermal reforming,ATR)、パーシャルオキシデーション(partial oxidation,POX)等の部分酸化により生成したシンガス(CO、H2、CO2、微量O2)を精製して得られる。酸素による部分酸化はもちろんのこと、SMRでも、炭素源やスチーム中には酸素が含まれている。そのため、原料一酸化炭素及び原料メタノールの反応器への導入や、ヨウ化水素をヨウ化メチルに変換して除去するため、脱水塔や処理槽等のプロセスユニットへのメタノールの供給又は添加により、プロセス中に微量の酸素が混入する。
また、プロセス内の水分量を調整するため、プロセスに水が供給されたり、プロセスで水が使用される。例えば、反応工程には水が仕込まれ、脱低沸塔(スプリッターカラム)からの第1のオーバーヘッドを、脱アルデヒド塔で蒸留して第2のオーバーヘッドを生成させ、この第2のオーバーヘッドの抽出(水抽出器や水抽出蒸留塔等)には、水が利用される。さらに、脱水塔や処理槽等のプロセスユニットでは、ヨウ化水素を除去するため、アルカリ金属水酸化物の水溶液を使用する場合がある。これらの水にも微量に酸素が溶解しており、これらの水の使用により、プロセス流中に酸素が混入する。
さらに、カルボニル化による酢酸製造プロセスにおいて、反応槽から製品塔に至る間には、各槽やホールドタンク、ポンプ、計器類(液面計、圧力計等)等の機器が配置されており、計器類にプロセス流(酢酸流等)が逆流して液化するのを防止したり、反応槽の攪拌軸からの一酸化炭素漏洩防止のため、高圧シール部等に窒素ガスがパージされる場合がある。この計器類への窒素ガスのパージに伴ってプロセス内に窒素ガスが仕込まれることになり、攪拌軸のシール部への圧封では、窒素ガスの一部がシール部を通して反応槽に洩れ込む場合がある。このような窒素ガスにも微量の酸素が含まれている。
このようにして、さまざまな要因で混入した酸素が、プロセス内のヨウ化水素やヨウ化メチルと反応すると、酸化反応(2HI+1/2O2→I2+H2O;2CH3I+1/2O2→CH3OCH3+I2等)により、ヨウ素I2が遊離する。そして、生成したヨウ素I2がプロセスユニット及び/又はラインの器壁に付着又は固着すると、付着部が選択的又は局所的に腐食され、孔を生成する孔食、点腐を生じさせることを見いだした。
また、通常、ヨウ化水素(HI)は、雰囲気の水分濃度5質量%以下では、水と同じ挙動を示し、脱低沸塔、脱水塔、脱高沸塔、製品塔の塔頂に濃縮される。一方、ヨウ素(I2)はヨウ化水素よりも高沸点であるため、プロセスユニットの高沸留分(例えば、脱低沸塔のサイドカット流、脱水塔の缶出流、製品塔のサイドカット流)とともに流出し、製品酢酸にまでヨウ素が混入して、製品中のヨウ素濃度を増加させたり、茶褐色から赤褐色のヨウ素特有の着色が起きる場合があることも見いだした。なお、製品酢酸中にヨウ素が混入すると、酢酸ビニル等の酢酸誘導体の製造において、触媒活性を阻害する。そのため、一般的に、製品酢酸中のヨウ素濃度は10質量ppb以下という極めて低濃度に管理する必要がある。
さらに、上述のように、脱水塔等のプロセスユニットにメタノールやアルカリ金属水酸化物(水酸化カリウム等)を添加し、微量のヨウ化水素を、ヨウ化メチルやヨウ化アルカリ(KI等)として除去する場合がある。このような方法でも、ヨウ化水素及び/又はヨウ化メチルからヨウ素が生成すると、ヨウ素の除去が不可能となる。脱水塔等のプロセスユニットよりも下流側のプロセスでは、ヨウ化水素濃度が少なくなるものの、ヨウ素が混入したプロセス流が還元雰囲気下に曝されると、逆反応によりヨウ化水素が生成する。そのため、プロセスユニット及び/又はラインの器壁を低級金属材(例えば、低級材質SUS、ハステロイC材質等)で形成すると、ヨウ素による局部腐食ではなく、ヨウ化水素HIによる均一的な腐食が生じる場合がある。
また、上述のようにしてさまざまな要因で混入した酸素が、メタノール源(例えば、メタノール、酢酸メチル、ジメチルエーテル)やプロセス内のメタノールと反応すると、酸化反応(CH3OH+1/2O2→HCHO+H2O)によりホルムアルデヒドが生成し、生成したホルムアルデヒドはさらに酸素と反応すると、酸化反応(HCHO+1/2O2→HCOOH)が進行してギ酸が生成すると推測される。製品酢酸中のギ酸濃度が高くなると、製品酢酸中の酢酸純度が低下し、製品の品質が低下する。
本発明では、このような課題を解決するため、プロセス流中の酸素濃度及び/又はギ酸濃度をコントロールする。なお、メタノールのカルボニル化プロセス(反応系)は、通常、加圧系であるため、原料及び各仕込ラインの酸素濃度を制御することにより、プロセス流中の酸素濃度を調整できる。例えば、一酸化炭素中の酸素濃度は、一酸化炭素製造プロセスを適正に運転することにより制御可能であり、例えば、一酸化炭素原料(石炭や天然ガス、重油、アスファルト等)に対する酸素仕込量、及び/又は水蒸気仕込量を制御して酸素により完全に部分酸化することにより制御してもよく、精製後の一酸化炭素中の酸素濃度を測定し、この測定値に基づいて使用の可否を判断してもよく、測定値に基づいて、一酸化炭素製造プロセスをフィードバック制御して一酸化炭素中の酸素濃度をコントロールしてもよく、上記測定値に基づいて、不活性ガスの導入により一酸化炭素中の酸素濃度をコントロールしてもよい。
メタノールについても、溶存酸素濃度を測定し、この測定値に基づいて使用の可否を判断してもよく、測定値に基づいて、加熱等により溶存酸素濃度を制御してもよい。また、プロセス(反応系等)に仕込む水、水溶液(アルカリ水溶液(アルカリ金属水酸化物の水溶液)や次亜燐酸ナトリウム水溶液)についても溶存酸素濃度を測定し、この測定値に基づいて使用の可否を判断してもよく、測定値に基づいて、加熱等により溶存酸素濃度を制御した水又は水溶液(例えば、煮沸等により酸素濃度が低減した水又は水溶液)を使用してもよい。
さらに、プロセス内に仕込まれる気体や液体についても、上述の方法と同様にして酸素濃度を測定し、この測定値に基づいて、プロセス流の酸素濃度を制御又は管理できる。
さらには、プロセス流中への窒素ガスのパージ量を必要最小限の量とする方法、パージガスを、一酸化炭素ガスのパージや他の不活性ガスのパージへ切り替える方法等を利用して、プロセス流中の酸素濃度をコントロールしてもよい。
なお、気体又は気相中の酸素濃度計としては、種々の酸素濃度計、例えば、防爆形プロセス用磁気圧力式酸素分析計(商品名「MPA-51d/p」、株式会社堀場製作所製)、分離型ジルコニア式酸素濃度計(商品名「ZR402G」、「ZR22G」、横河電機株式会社製)、近赤外線を使用したレーザ式ガス分析計(商品名「SITRANS SL」シーメンス社製)等が利用できる。
液体又は液相中の酸素濃度計(溶存酸素センサ)としては、東亜ディーケーケー株式会社製の「DO」、「OC」、「ODM」、「OBM」型、飯島電子工業株式会社製の「DO計」、水及び溶剤(メタノール)中の溶存酸素濃度も測定可能なメトラー社製の酸素濃度計、ガス中の酸素濃度を測定する横河電機株式会社製の「OX型」等が利用できる。
なお、東亜ディーケーケー株式会社製の「OC64型」の7561L機種等は、液中酸素の検出下限界が0.1μg/Lであり、例えば、酸素濃度の測定下限界は、比重1の液体中では、(0.1/1000000)g/1000g=0.1ppbとなり、比重2の液体中では、0.05ppbが検出限界となる。また、横河電機株式会社製の「OX400」はガス中の酸素濃度の測定下限界が0.01volppm(10ppb)である。なお、酸素濃度が測定限界値未満の試料(気相又は液相)については、慣用の方法(例えば、酸素を吸着剤に選択的に吸着させる方法、酸素富化膜等の選択透過膜により酸素を選択的に透過させる方法、軽質成分と重質成分とに分離する蒸留方法、抽出方法等)を利用して気相又は液相から酸素が濃縮された濃縮成分を生成させ、この濃縮成分の酸素濃度を測定し、この測定値を試料中の酸素濃度に換算してもよい。
気体(又は気相)、及び液体(又は液相)の酸素濃度は、プロセスユニット又はプロセスラインに設置した酸素濃度計(酸素センサー)の検出又は測定値をモニタリングして連続的に監視してもよく、プロセスユニット又はプロセスラインからサンプリングして、定期的に分析することにより監視してもよい。また、酸素濃度計(酸素センサー)の検出又は測定値と、上限基準値(閾値)とを比較し、検出又は測定値が閾値に達したとき、酸素濃度の低い流体(気体又は液体)を自動的にプロセス流に導入又は酸素濃度の低い流体へ切り替えて、酸素濃度を制御してもよい。さらに、過度に酸素濃度が低下したとき(下限基準値としての閾値に達したとき)、酸素源をプロセス流中に導入してもよい。
なお、減圧系のプロセスでは、運転圧力を保持するために気密に保ちつつ、不活性ガスを導入しながら目的の圧力に制御した後、運転を開始すると共に、真空ポンプからの排ガス中の酸素濃度を測定することにより、減圧系のプロセス流の酸素濃度を管理してもよい。
このようにして酸素濃度を制御することにより、ヨウ素及び/又はギ酸の副生を抑制でき、ヨウ素による局部腐食、製品酢酸中の全ヨウ素濃度及び/又はギ酸濃度の増加と製品酢酸の着色という問題を解消できる有用なプロセス条件を提供できる。また、本発明は、製品酢酸中のヨウ素濃度を10質量ppb以下、ギ酸濃度を50質量ppm以下という極めて低濃度に管理する上でも非常に有用である。さらには、ジルコニウム等の高級な耐食性金属では、還元性条件でも、酸化性条件でも広範囲で完全耐食性を示すことが知られている。しかし、このような高級な耐食性金属でも、強い酸化性条件では腐食される場合がある。そのため、プロセスユニット及び/又はラインの材質選定によっては、ある程度の高濃度の酸素領域までは耐食性を示しても、酸素濃度によっては腐食が生じる場合がある。本発明では、このような腐食も抑制できる。
これらのことから明らかなように、本発明は、メタノールのカルボニル化による酢酸の製造方法において、いずれのプロセスユニット(工程)及びラインにも適用できる。すなわち、本発明におけるプロセス中の気相及び液相は、メタノールのカルボニル化による酢酸の製造方法におけるすべてのプロセスユニット(工程)及びプロセスラインのうちの少なくとも1つのプロセス流における気相及び液相である。
本発明では、ヨウ素及び/又はギ酸の副生を抑制するため、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、及びギ酸から選択された少なくとも1種を含むプロセス流(例えば、プロセスの気相)に適用できる。さらに、プロセス流(例えば、プロセスの気相)は、後述するように、プロセスユニット及び/又はプロセスラインに応じて、酢酸、酢酸メチル、メタノール、水、アセトアルデヒド、当該アセトアルデヒドに由来する副生物、及びジアルキルエーテルからなる群より選択された少なくとも1種を含んでいてもよい。上記副生物は、炭素数2以上のヨウ化アルキル、炭素数4以上のアルカナール、炭素数3以上のアルカンカルボン酸、アルカン類、及びケトン類からなる群より選択された少なくとも1種を含んでいてもよく、ジアルキルエーテルが少なくともジメチルエーテルを含んでいてもよい。
本発明の方法では、酢酸の製造プロセス(プロセスユニット及びプロセスラインから選択された少なくとも1つのプロセス流)において、下記(a)プロセスの気相中の酸素濃度及び(b)プロセスの液相中の酸素濃度から選択された少なくとも1つの酸素濃度を制御すればよい。
(a)上記プロセスの気相(上記プロセスのうちの少なくとも1つのプロセスにおける気相、特に好ましくは全ての気相)中の酸素濃度は、7体積%未満に制御すればよく、6.5体積%以下(例えば、6体積%以下)、好ましくは5.5体積%以下であってもよく、通常、5体積%以下(例えば、3体積%以下)、好ましくは1体積%以下(例えば、0.5体積%以下)、さらに好ましくは0.1体積%以下(例えば、0.01体積%以下)、特に0.001体積%(10体積ppm)以下(例えば、0.0001体積%(1体積ppm)以下)に制御してもよい。
上記気相中の酸素濃度の下限値は特に制限されず、例えば、1体積ppt以上(例えば、100体積ppt以上)、好ましくは1体積ppb以上(例えば、100体積ppb以上)であってもよく、ゼロ(0)又は測定限界値以下であってもよい。
(b)上記プロセスの液相(上記プロセスのうちの少なくとも1つのプロセスにおける液相、特に好ましくは全ての液相)中の酸素濃度は、7×10-5g/g未満に制御すればよく、2×10-5g/g以下(例えば、1×10-5g/g以下)、好ましくは0.5×10-5g/g以下(例えば、0.1×10-5g/g以下)、さらに好ましくは0.05×10-5g/g以下(例えば、0.01×10-5g/g以下)、特に0.001×10-5g/g以下(例えば、0.0001×10-5g/g以下)に制御してもよい。
また、上記液相中の酸素濃度の下限値も特に制限されず、例えば、0.1×10-9g/g以上であってもよく、ゼロ(0)又は測定限界値以下であってもよい。なお、加圧状態のプロセス液、高温のプロセス液等の液相では、サンプリングの困難性及び酸素の気化等に起因して、酸素濃度(又は酸素溶解濃度)を正確に測定できない場合がある。このような場合、温度及び/又は圧力を変化させた複数の条件下でのプロセス液中の酸素濃度を測定し、実際のプロセスの温度及び圧力でのプロセス液中の酸素濃度を推定値(実験に基づく推定値)として求めてもよく、アスペン+(プラス)(Aspen Technology, Inc.社製)を用いて、プロセス液の酸素濃度を計算してもよい。
上記プロセス流(気相及び液相)の酸素濃度が高くなると、プロセス流にヨウ素及び/又はギ酸が生成しやすくなる。従って、上記(a)及び(b)において酸素濃度を制御する対象である気相又は液相が含まれるプロセスは、ヨウ化水素、ヨウ化メチル、メタノール、又はホルムアルデヒドが存在しやすいプロセスであることが好ましく、(1)反応工程、(A)分離工程に含まれる各工程((2)蒸発工程、(3)脱低沸工程)、(4)精製セクションに含まれる各工程((5)脱水工程、(6)脱高沸工程、(7)精留工程)、脱低沸脱水工程、(9)分離セクションに含まれる各工程((10)分液工程、(11)第1のアセトアルデヒド分離工程、(12)抽出工程、(13)第2のアセトアルデヒド分離工程、(14)アルカン分離工程)、及び(15)オフガス処理セクションに含まれる各工程((16)高圧吸収工程、(17)低圧吸収工程、(18)放散工程)からなる群より選択される1以上の工程における気相及び/又は液相であることが好ましい。中でも、ヨウ化水素、ヨウ化メチル、メタノール、又はホルムアルデヒドがより存在しやすい観点から、(1)反応工程(例えば、反応混合液、反応器内の気相)、(2)蒸発工程(特に、揮発相)、(3)脱低沸工程(特に、スプリッターカラムの塔頂)、脱低沸脱水工程、(10)分液工程(特に、上相、下相)、(16)高圧吸収工程、(17)低圧吸収工程からなる群より選択される1以上の工程における気相及び/又は液相がより好ましく、(1)反応工程(例えば、反応混合液、反応器内の気相)、(2)蒸発工程(特に、揮発相)、及び(3)脱低沸工程(特に、スプリッターカラムの塔頂)からなる群より選択される1以上の工程における気相及び/又は液相が特に好ましい。
なお、酸素濃度は低いほど好ましいものの、酸素濃度が低すぎると、雰囲気の還元性が強すぎて、プロセスユニット及び/又はラインの腐食速度が上昇する場合がある。そのため、上記プロセス流(気相及び液相)中の酸素濃度を制御するため、酸素含有ガス、酸素含有化合物、及び酸素発生剤からなる群より選択された少なくとも1種の酸素源をプロセス中に導入し、上記プロセス流において、気相及び/又は液相の酸素濃度を制御してもよい。
酸素含有ガスとしては、例えば、空気等が例示でき、酸素含有化合物としては、例えば、オゾン等が例示でき、酸素発生剤としては、過酢酸、過酸化水素等が挙げられる。これらの酸素源は単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
さらに、気相としての気体流及び液相としての液体流から選択されたプロセス流中の酸素濃度は、ヨウ化水素及びヨウ化メチルの総量1モルに対して、例えば、0.25モル以下(例えば、0.2モル以下)、好ましくは0.1モル以下(例えば、0.05モル以下)、さらに好ましくは0.01モル以下(例えば、1×10-3モル以下)、特に1×10-4モル以下(例えば、1×10-5モル以下)程度であってもよく、1×10-6モル以下(例えば、1×10-7モル以下)であってもよい。
さらに、プロセスユニット及びプロセスラインから選択された少なくとも1つのプロセス流において、気相、及び液相(例えば、気相)での一酸化炭素に対する酸素の割合(O2/CO)は、7体積%以下(例えば、5体積%以下)、例えば、2体積%以下(例えば、1体積%以下)、好ましくは0.5体積%以下(例えば、0.1体積%以下)、さらに好ましくは0.01体積%以下(例えば、0.001体積%以下)、特に0.0001体積%以下(例えば、0.00001体積%以下)であってもよい。
上記プロセス流において、液相での酸素濃度は低い場合が多く、一酸化炭素に対する酸素の割合(O2/CO)は大きく変動する場合がある。液相での一酸化炭素100質量部に対する酸素の質量割合(O2/CO)は、例えば、1000質量部以下(10倍以下)(例えば、500質量部以下)であってもよく、250質量部以下(例えば、100質量部以下)、好ましくは75質量部以下(例えば、50質量部以下)、さらに好ましくは20質量部以下(例えば、10質量部以下)であってもよく、5質量部以下(例えば、1質量部以下)、好ましくは0.1質量部以下(例えば、0.01質量部以下)、さらに好ましくは0.001質量部以下(例えば、0.0001質量部以下)、特に0.00005質量部以下(例えば、0.00001質量部以下)であってもよい。
なお、後述のように、平均分子量(加重平均分子量)を利用して、上記各成分の体積%と質量部とを相互に算出又は換算してもよい。
また、本発明の方法では、酢酸の製造プロセス(プロセスユニット及びプロセスラインから選択された少なくとも1つのプロセス流)において、プロセスの液相中のギ酸濃度を500質量ppm以下に制御すればよい。上記プロセスの液相(上記プロセスのうちの少なくとも1つのプロセスにおける液相、特に好ましくは全ての液相)中のギ酸濃度は、好ましくは400質量ppm以下、より好ましくは300質量ppm以下、さらに好ましくは200質量ppm以下、特に100質量ppm以下、さらに50質量ppm以下、30質量ppm以下に制御してもよい。
上記液相中のギ酸濃度の下限値も特に制限されず、例えば0.1質量ppm以上(例えば1質量ppm以上)、好ましくは3質量ppm以上(例えば5質量ppm以上)、より好ましくは10質量ppm以上、さらに好ましくは15質量ppm以上、特に20質量ppm以上であってもよく、ゼロ(0)又は測定限界値以下であってもよい。
上記液相中のギ酸濃度が高くなると、製品酢酸にギ酸が混入しやすくなる。従って、ギ酸濃度を制御する対象である液相が含まれるプロセスは、メタノール又はホルムアルデヒドが存在しやすいプロセスであることが好ましく、(1)反応工程、(A)分離工程に含まれる各工程((2)蒸発工程、(3)脱低沸工程)、(4)精製セクションに含まれる各工程((5)脱水工程、(6)脱高沸工程、(7)精留工程)、(9)分離セクションに含まれる各工程((10)分液工程、(11)第1のアセトアルデヒド分離工程、(12)抽出工程、(13)第2のアセトアルデヒド分離工程、(14)アルカン分離工程)、及び(15)オフガス処理セクションに含まれる各工程((16)高圧吸収工程、(17)低圧吸収工程、(18)放散工程)からなる群より選択される1以上の工程における気相及び/又は液相であることが好ましい。中でも、メタノール又はホルムアルデヒドがより存在しやすい観点から、(1)反応工程(例えば、反応混合液)、(2)蒸発工程(特に、揮発相)、(3)脱低沸工程(特に、スプリッターカラムの塔頂)、(10)分液工程(特に、上相、下相)、(16)高圧吸収工程、及び(17)低圧吸収工程からなる群より選択される1以上の工程における気相及び/又は液相がより好ましく、(1)反応工程(例えば、反応混合液)、(2)蒸発工程(特に、揮発相)、及び(3)脱低沸工程(特に、スプリッターカラムの塔頂)からなる群より選択される1以上の工程における気相及び/又は液相が特に好ましい。
なお、上記(a)及び(b)において酸素濃度を制御する対象である気相又は液相が含まれるプロセスと、上記ギ酸濃度を制御する対象である液相が含まれるプロセスは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
以下、必要により添付図面を参照しつつ、本発明をより詳細に説明する。なお、各工程と、各工程での主要な装置又はユニットには共通の符号を付す場合がある。
図1〜図4に示す酢酸の連続製造プロセスは、(1)メタノールのカルボニル化反応を行うための反応工程(反応系)と;(A)上記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物から、1以上の蒸発槽及び/又は蒸留塔を用いて、触媒を含む流れと、酢酸に富む酢酸流と、上記酢酸流よりも低沸成分に富む流れとを分離する分離工程[具体的には、(2)上記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を揮発相(2A)と触媒を含む流れ(低揮発相)(2B)とに分離する蒸発工程(フラッシュ蒸発工程又はフラッシュ工程)と;(3)上記揮発相(2A)を蒸留して、低沸成分(例えば、ヨウ化メチル及びアセトアルデヒドから選択された少なくとも1種の低沸成分)に富む流れ(第1のオーバーヘッド)(3A)と、酢酸に富む酢酸流(第1の酢酸流、粗酢酸流)(3B)と、缶出液体流(高沸点成分)(3C)とに分離する脱低沸工程(第1の蒸留工程)とを含んでおり;さらに、(4)上記酢酸流(3B)から精製酢酸を得るための精製セクション又は精製工程群((5)〜(8)の工程);(9)上記第1のオーバーヘッド(3A)から少なくともアセトアルデヒドを分離するための分離セクション又は分離工程群((10)〜(14)の工程);(15)プロセスからのオフガスを吸収溶媒で吸収処理して、一酸化炭素に富むストリームと、酢酸、ヨウ化メチル、酢酸メチルに富むストリームとに分離するためのオフガス処理セクション又はオフガス処理工程群((16)〜(18)の工程)を含んでいる。
なお、本発明の方法において、(3)脱低沸工程は(4)精製セクションにおける後述の(5)脱水工程の機能も備えた工程、すなわちこれらの工程を組み合わせた1の工程(脱低沸脱水工程)であってもよい。また、本発明の方法は、(A)分離工程として、(2)蒸発工程と(3)脱低沸工程を組み合わせた1の工程(蒸発脱低沸工程)を含んでいてもよい。よって、上記蒸発脱低沸工程は、後述の(5)脱水工程の機能も備えた工程(蒸発脱低沸脱水工程)であってもよい。すなわち、蒸発脱低沸工程は、上記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物から上記触媒を含む流れと、上記低沸成分に富む流れと、酢酸に富む第1の酢酸流とに分離する工程である。また、脱低沸脱水工程は、上記蒸発工程で得られた揮発相を蒸留して、上記低沸成分に富む流れと、酢酸に富む酢酸流とに分離する工程である。脱低沸脱水工程及び蒸発脱低沸脱水工程で得られる酢酸に富む酢酸流は、後述の(5)脱水工程から得られる第2の酢酸流に相当する。従って、(A)分離工程により得られる上記酢酸に富む酢酸流は、第1の酢酸流であってもよいし、第2の酢酸流であってもよい。
また、(1)反応工程は反応器、(2)蒸発工程は蒸発槽(フラッシャー又は触媒分離塔)、(3)脱低沸工程は脱低沸塔(第1の蒸留塔又はスプリッターカラム)においてそれぞれ行われる。従って、図1〜図4に示す酢酸の製造装置は、反応器、蒸発槽、及び脱低沸塔を含む。なお、蒸発脱低沸工程を含む場合、当該工程は1つの槽又は塔(蒸発脱低沸槽(塔))において(2)蒸発工程と(3)脱低沸工程の両方が行われる。また、(3)脱低沸工程が脱低沸脱水工程である場合、当該工程は1つの塔(脱低沸脱水塔)において脱低沸と(5)脱水工程に相当する脱水の両方が行われる。
なお、本発明では、上記(1)及び(A)の工程に加えて、上記(4)、(9)、及び(15)からなる群より選択された少なくとも1つのセクションを含んでいてもよい。例えば、(15)オフガス処理セクションは必ずしも必要ではなく、また、(15)オフガス処理セクションでは、必ずしも、全てのユニット又はラインからのオフガスを処理する必要はなく、少なくとも1つのプロセスユニット又はラインからのオフガスを処理してもよい。また、上記特定の酸素濃度を有する上記プロセスの気相は、プロセス中におけるすべての気相のうちの少なくとも1つのプロセス(プロセスユニット及び/又はライン)における気相を意味する。また、気相を形成するガスは、系外に排出するか否かに拘わらず、プロセスからのオフガスであり、上記オフガス処理工程に供される「オフガス」、プロセス中におけるすべてのプロセスユニット及び/又はプロセスラインのうち少なくとも1つからの「オフガス」であってもよい。以下に各工程について詳細に説明する。
(1)反応工程
(1)反応工程では、カルボニル化触媒系と水とを含む反応媒体中に、供給ライン2からのメタノールと供給ライン4からの一酸化炭素とを連続的に反応器(1)に供給してメタノールをカルボニル化し、酢酸を生成する。ライン4からの一酸化炭素は、触媒活性を高めるために供給されるライン6からの水素と合流し、混合ガス7として反応器(1)に供給している。さらに、メタノールは、反応器(1)に供給されるとともに、ライン3を経て、(5)脱水工程の蒸留塔(5)に添加されている。ライン5の一酸化炭素は、蒸発槽(2)からの低揮発相(缶出からの触媒液)のリサイクルライン21と合流して触媒の沈降を抑制し、合流した触媒液はライン22を通じて反応器(1)にリサイクルしている。
また、(10)分液工程のデカンタS2内で分液した上相38の一部(酢酸、ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水に富む上相の一部)41と、下相39の一部(又は第1の部分)(ヨウ化メチル、酢酸メチルに富む下相の一部)40も反応器(1)にリサイクルしてもよい。下相39の一部(又は第2の部分)40は後述の(14)アルカン分離工程(蒸留によるアルカン分離工程)に供してもよい。また、(5)第2の蒸留工程の蒸留塔(5)からの第2のオーバーヘッド51の凝縮液の一部(酢酸に富む凝縮液の一部)54も低揮発相(2B)(ライン21)と合流させて反応器(1)にリサイクルしてもよい。
メタノールは、新鮮なメタノールを直接又は間接的に反応器(1)へ供給してもよく、後続の各種工程から留出するメタノール又はその誘導体をリサイクルして反応器に供給してもよい。このような原料メタノールとしては、予め酸素を除去したメタノールを用いるのが好ましい。また、一酸化炭素は、純粋なガスとして使用してもよく、不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、二酸化炭素等)で希釈して使用してもよい。また、必要であれば、後続の工程から得られる一酸化炭素を含む排ガス成分を反応器にリサイクルしてもよい。このような一酸化炭素又は排ガス成分としても、予め酸素を除去した一酸化炭素又は排ガスを用いるのが好ましい。
なお、以下の表中、O2は酸素、H2は水素、COは一酸化炭素、CO2は二酸化炭素、CH4はメタン、N2は窒素、ADはアセトアルデヒド、MeOHはメタノール、MeIはヨウ化メチル、MAは酢酸メチル、H2Oは水、AcOHは酢酸、HIはヨウ化水素、LiIはヨウ化リチウム、FrOHはギ酸、PrOHはプロピオン酸、DMEはジメチルエーテル、AcAは無水酢酸、(CH3)2C=Oはアセトン、EtOHはエタノール、EAは酢酸エチル、EtIはヨウ化エチル、TOIは全有機ヨウ素化合物、HexIはヨウ化ヘキシルを示す(以下、同じ)。また、HIの濃度はヨウ素イオンとしての濃度を示す。金属については、元素記号で示す。
また、表中には、参考までにストリームの平均分子量を記載する場合があるが、この平均分子量は、ストリームに含まれる各成分の分子量と各成分の含有割合とに基づいて算出した加重平均値である。なお、気相混合物の平均分子量(加重平均分子量)をAとし、任意の成分の分子量をBとしたとき、任意の成分の質量%又は体積%に基づいて、任意の成分の体積%又は質量%を算出できる。例えば、酸素濃度について例示すると、気相混合物の平均分子量A=62.2(加重平均分子量)、酸素の体積%Dの測定値が7.0体積%であるとき、酸素の分子量B=32に基づいて、酸素の質量%Cは、例えば、次式:(C(×100)×A)/B=D(×100)により、(C×62.2)/32=7、酸素の質量%C=3.6質量%と算出できる。このように、気相混合物については、上記算出式に基づいて、各成分の質量%及び体積%を算出できる。そのため、以下の表では、質量%だけを記載する。
なお、酸素以外の気体成分の濃度が検出限界値未満の試料(気相及び液相)については、上記酸素濃度と同様にして濃縮成分を生成させ、この濃縮成分の気体成分の濃度を測定し、この測定値を試料中の気体成分の濃度に換算してもよい。
また、任意の成分濃度が検出限界値未満(例えば、金属成分については0.1ppb未満、有機物については1ppm未満)の試料(気相及び液相)についても、上記任意の成分が濃縮された濃縮成分を生成させて任意の成分の濃度を測定し、試料中の濃度に換算してもよい。また、成分濃度が測定不能な試料については、蒸留計算と蒸発に伴う飛沫同伴量とに基づいて任意の成分の濃度を推定してもよい。例えば、蒸発操作や蒸留塔の操作での飛沫同伴量は、隣接する段において、高い段での濃度は低い段での濃度の1〜20質量%程度に相当し、1段上の液体の金属濃度は、1段下の金属濃度の1〜20質量%程度となることから、このような推定値に基づいて、金属濃度を算出してもよい。
なお、蒸留塔等のプロセスユニットへ不活性ガス(窒素ガス(N2)等)を仕込んでユニット内の圧力を調整したり、圧力計、温度計、液面検出器等の計測機器へ不活性ガス(窒素ガス等)をパージして計測機器への有機物蒸気の混入を防止する場合等、プロセス内に不活性ガスを導入する場合がある。また、窒素ガスに代えて一酸化炭素ガスCO等の不活性ガスを導入する場合もある。さらに、水、アルカリ金属化合物、メタノール源等をプロセスユニット及びラインに導入する場合がある。このような場合、プロセスユニット及びラインでの組成を示す下記表において、不活性ガス等の導入成分とその導入量に対応して、導入成分の濃度、例えば、ガス(窒素ガス、一酸化炭素等の不活性ガス等)の組成が大幅に増加又は変動する。
原料メタノール(ライン2)の組成(単位:質量%)は、例えば、以下の通りであってもよい。
原料一酸化炭素(ライン4、5)の組成(単位:質量%)は、例えば、以下の通りであってもよい。
上記混合ガス(ライン7)の組成は、例えば、上記原料一酸化炭素(ライン4、5)の組成と同様であってもよい。また、上記混合ガス(ライン7)の組成は、上記原料一酸化炭素(ライン4、5)の成分割合と、水素(ライン6)の成分割合とを加重平均した成分割合を有していてもよい。
カルボニル化触媒系は、通常、金属触媒(コバルト触媒、ロジウム触媒、イリジウム触媒等)と、触媒安定化剤若しくは反応促進剤、及び/又は、助触媒とを含んでいる。金属触媒は単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。好ましい金属触媒は、ロジウム触媒及びイリジウム触媒(特に、ロジウム触媒)である。
金属触媒は、金属単体、金属酸化物(複合酸化物を含む)、水酸化物、ヨウ化物、カルボン酸塩(酢酸塩等)、無機酸塩(硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等)、錯体等の形態でも使用できる。金属触媒は液相(反応液)中で可溶な形態(錯体等の形態)で使用するのが好ましい。ロジウム触媒としては、ロジウムヨウ素錯体(例えば、RhI3、[RhI2(CO)4]-、[Rh(CO)2I2]-等)、ロジウムカルボニル錯体等が好ましい。
触媒安定化剤又は反応促進剤としては、反応液中でヨウ素イオンを発生可能なイオン性ヨウ化金属、例えば、ヨウ化アルカリ金属(ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等)が挙げられ、中でもヨウ化リチウムが好ましい。触媒安定化剤又は反応促進剤は、ヨウ化リチウム等の他、遷移金属(下記表に示されるように、反応系内に存在する金属又は腐食金属を含む)、例えば、周期表第6族元素(モリブデン、クロム、タングステン等)、周期表第7族元素(マンガン、レニウム等)、周期表第8族元素(鉄、ルテニウム、オスミウム等)、周期表第9族元素(コバルト、ロジウム、イリジウム等)、周期表第10族元素(ニッケル等)、周期表第11族元素(銅等)、周期表第12族元素(カドミウム、亜鉛等)、周期表第13族元素(ガリウム、インジウム等)等の金属化合物(金属ヨウ化物、錯体等)も含む。これらの触媒安定化剤又は促進剤は、金属触媒の種類に応じて、単独で又は二種以上を組み合わせて使用でき、イリジウム触媒系ではヨウ化アルカリ金属は必ずしも必要ではない。触媒安定化剤又は反応促進剤としては、ルテニウム、インジウム、オスミウムが好ましく利用される。上記助触媒としては、ヨウ化メチルが利用される。
好ましいカルボニル化触媒系は、ロジウム触媒とヨウ化メチル助触媒、より好ましくは、ロジウム触媒と、触媒安定剤としてのヨウ化金属(ヨウ化リチウム)及びヨウ化メチル助触媒とで構成できる。なお、上記反応器には、カルボニル化触媒系を含む触媒混合物(触媒液)及び水を供給してもよい。このような触媒混合物及び水からは、加熱又は煮沸等により予め酸素を除去しておくのが好ましい。
反応器中の一酸化炭素分圧は、例えば、2〜30気圧、好ましくは4〜15気圧程度であってもよい。上記カルボニル化反応では、一酸化炭素と水との反応により、水素が発生する。この水素は触媒活性を高める。そのため、上記反応器には、必要により水素を供給してもよい。また、後続の工程で排出された気体成分(水素、一酸化炭素等を含む)を、必要により精製して反応器にリサイクルすることにより、水素を供給してもよい。このような水素としても酸素濃度の低い水素を利用するのが好ましい。反応系の水素分圧は、絶対圧力で、例えば、0.5〜250kPa(例えば、1〜200kPa)、好ましくは5〜150kPa、さらに好ましくは10〜100kPa(例えば、10〜50kPa)程度であってもよい。
カルボニル化反応温度は、例えば、150〜250℃、好ましくは160〜230℃、より好ましくは170〜220℃程度であってもよい。反応圧力(全反応器圧)は、副生成物の分圧を含めて、例えば、15〜40気圧程度であってもよい。反応系での酢酸の空時収量は、例えば、5〜50mol/Lh、好ましくは8〜40mol/Lh、より好ましくは10〜30mol/Lh程度であってもよい。
反応器内では、反応成分と金属触媒成分とを含む液相反応系と、一酸化炭素及び反応により生成した水素、メタン、二酸化炭素、並びに気化した低沸成分(ヨウ化メチル、生成した酢酸、酢酸メチル等)等で構成された気相系とが平衡状態を形成しており、メタノールのカルボニル化反応が進行する。
液相中の金属触媒の濃度は、例えば、反応器内の液相全体に対して100〜5000質量ppm、好ましくは200〜3000質量ppm、より好ましくは300〜2000質量ppm、特に500〜1500質量ppm程度である。触媒安定化剤又は反応促進剤の濃度は、反応器内の液相全体に対して、例えば、1〜25質量%、好ましくは2〜22質量%、より好ましくは3〜20質量%程度である。さらに、反応系でのヨウ化物イオンの濃度は、例えば、0.05〜2.5モル/リットル、好ましくは0.25〜1.5モル/リットルであってもよい。ヨウ化メチルの濃度は、反応器内の液相全体に対して、例えば、1〜30質量%、好ましくは5〜25質量%、より好ましくは6〜20質量%(例えば、8〜18質量%)程度である。
反応混合物(反応粗液、反応媒体)は、通常、生成した酢酸、生成した酢酸と原料メタノールとの反応により生成した酢酸メチル、及び水を含んでいる。酢酸は溶媒としても機能する。また、反応混合物は、通常、未反応の原料メタノールも含んでいる。酢酸メチルの含有割合は、反応混合物全体の0.1〜30質量%、好ましくは0.3〜20質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%(例えば、0.5〜6質量%)程度の割合であってもよい。反応混合物中の水濃度は、低濃度であってもよく、反応混合物全体に対して、例えば、0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは0.8〜5質量%(例えば、1〜3質量%)程度であり、1〜10質量%(例えば、2〜5質量%)程度であってもよい。
なお、反応混合物中には、アセトアルデヒド、アセトアルデヒドに由来の副生成物等の種々の副反応生成物も含まれている。なお、本発明では、(9)分離セクションによりアセトアルデヒドを有効に除去できるため、連続反応であっても、反応器のアセトアルデヒドの濃度を低減でき、アセトアルデヒド由来の副生成物の生成も著しく抑制できる。反応器の反応混合物中のアセトアルデヒド濃度は、例えば、1500質量ppm以下、例えば、10〜1000質量ppm、好ましくは50〜500質量ppm、より好ましくは100〜400質量ppm程度であってもよい。
アセトアルデヒドに由来の副生成物(アセトアルデヒドからの誘導体)としては、例えば、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド等のアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;これらのアルドール縮合生成物;ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ペンチル、ヨウ化ヘキシル等のヨウ化C2-12アルキル等も生成する。また、ギ酸、炭素数3以上のカルボン酸(プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、さらには炭素数9以上の高級脂肪酸等の直鎖状又は分岐鎖状カルボン酸、例えば、C3-12アルカンカルボン酸等);アルキルアルコール(エタノール、ブチルアルコール、2−エチルブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、さらには炭素数9以上のアルキルアルコール、例えば、C3-12アルキルアルコール等);炭素数2以上の炭化水素類(例えば、C2-12アルカン)等が挙げられる。さらに、液相系では、メタノール又はこれらのアルキルアルコールと酢酸又は上記カルボン酸とのエステル(酢酸エチル等);ジメチルエーテル等のジアルキルエーテル等も副生する。これらの副生物の濃度は、液相系も含めプロセス全体に亘り、0.1質量ppb〜100質量ppm(例えば0.5質量ppb〜50質量ppm)、好ましくは1質量ppb〜10質量ppm(例えば、2質量ppb〜1質量ppm)程度であってもよい。そのため、以下の各工程でのこれらの副生物の濃度については記載を省略する場合がある。
ヨウ化ヘキシル等の炭素数2以上のヨウ化アルキルの濃度は、例えば、0.1質量ppb〜1質量ppm(例えば0.5〜500質量ppb)、好ましくは1質量〜100質量ppb程度であってもよい。プロピオン酸等のアルカンカルボン酸の濃度は、例えば、0.1〜500質量ppm(例えば、1〜500質量ppm)、好ましくは3〜100質量ppm程度であってもよい。
ジメチルエーテル(DME)の濃度は、0.5質量%以下(例えば、0.1〜1000質量ppm)、好ましくは1〜500質量ppm(例えば、2〜300質量ppm)、さらに好ましくは3〜200質量ppm(例えば、5〜100質量ppm)程度であってもよい。
さらには、3−ヒドロキシアルカナール(3−ヒドロキシブタナール等)も副生する。反応混合物中の3−ヒドロキシアルカナールの含有量は、100質量ppm以下(例えば、0.1質量ppb〜100質量ppm)、好ましくは0.5質量ppb〜50質量ppm程度であってもよい。これらの副生成物は、アセトアルデヒド濃度の2〜3乗に比例して副生する場合が多い。
また、アセトアルデヒド及びアセトアルデヒド由来の副生物(例えば、アルデヒド類、ケトン類、アルドール縮合生成物等)は、過マンガン酸還元性物質(PRC類)を形成する。そのため、反応混合物から副生物の主たる成分であるアセトアルデヒドを分離して除去し、有用な成分(例えば、ヨウ化メチル等)は、プロセス流から回収して有効に利用するのが好ましい。なお、ヨウ化メチルを含め、ヨウ化C2-12アルキル等もPRC類に属するが、本明細書では、ヨウ化メチルはPRC類には含めない。
なお、反応混合物には、腐食により生成した金属、例えば、鉄、ニッケル、クロム、モリブデン、コバルト、ジルコニウム等も含まれている。これらの腐食金属の含有量は、それぞれ、2000質量ppm以下(例えば、1〜1000質量ppm)程度であってもよい。腐食金属の総含有量は、10000質量ppm以下(例えば、5〜5000質量ppm)程度であってもよい。なお、反応混合物よりも下流側の液体流は、腐食金属を上記と同様の割合で含んでいてもよい。そのため、以下の各工程での液体流中の腐食金属の濃度については記載を省略する。
上述のように、反応混合物には、酢酸、酢酸よりも沸点の低い低沸成分又は低沸不純物(ヨウ化メチル、酢酸メチル、水、アセトアルデヒド等)、及び酢酸よりも沸点の高い高沸成分又は高沸不純物[金属触媒成分(ロジウム触媒等)、触媒安定剤としてのヨウ化リチウム、プロピオン酸等のC3-12アルカンカルボン酸等]等が含まれる。そのため、酢酸の製造プロセスでは、反応混合物から不純物を除去し、精製酢酸を製造する。
なお、メタノールカルボニル化反応は、発熱を伴う発熱反応系であるため、除熱した凝縮成分のリサイクル、除熱ユニット又は冷却ユニット(ジャケット等)等により反応温度をコントロールしてもよい。また、反応熱の一部を除熱するため、反応器からの蒸気成分(ベントガス)を、コンデンサや熱変換器等により冷却し、液体成分と気体成分とに分離し、液体成分及び/又は気体成分を反応器にリサイクルしてもよい。
反応器(1)からの気相(ライン8)は、コンデンサで冷却して凝縮され、凝縮液10と比較的多くの一酸化炭素を含む非凝縮ガス9とに分離され、凝縮液10は反応器(1)へ戻され、非凝縮ガス9は気液分離ポット又はバッファタンクS1へ導入され、このタンクからの非凝縮ガス(一酸化炭素及びヨウ化メチルに富むオフガス)11は、(15)オフガス処理セクション(例えば、高圧吸収塔(16))で処理される。なお、通常、一酸化炭素を含む少なくとも一部の非凝縮ガス(オフガス)11は、(15)オフガス処理工程で処理され、一部の非凝縮ガス(オフガス)は、ライン172より蒸発槽(2)に導入し(フラッシャーの液相又は揮発相(ガス)中に導入し)、蒸発槽(2)での触媒を安定化(金属触媒(ロジウム触媒等)の析出を防止)するために利用できる。
反応器の気相(気相部又は気体流)混合物(ライン8)の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
なお、気相混合物の平均分子量(加重平均分子量)をAとし、任意の成分の分子量をBとしたとき、任意の成分の質量%又は体積%に基づいて、任意の成分の体積%又は質量%を算出できる。例えば、酸素濃度について例示すると、気相混合物の平均分子量A=62.2、酸素の体積%Dの測定値が7.0体積%であるとき、酸素の分子量B=32に基づいて、酸素の質量%Cは、例えば、次式:(C(×100)×A)/B=D(×100)により、(C×62.2)/32=7、酸素の質量%C=3.6質量%と算出できる。このように、気相混合物については、上記算出式に基づいて、各成分の質量%及び体積%を算出できる。そのため、以下の表では、質量%だけを記載する。
コンデンサによる凝縮液10の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
コンデンサからの非凝縮ガス9の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
なお、タンクS1からの非凝縮ガス(オフガス)11の組成は、コンデンサからの非凝縮ガス9の組成と同様であってもよい。
反応器(1)からの反応混合物はライン12を経て蒸発槽(2)に導入又は供給し、反応混合物12をフラッシュ蒸発させ、生成酢酸、ヨウ化メチル、アセトアルデヒド、酢酸メチル、水等を含む揮発相(2A)と、ロジウム触媒及びヨウ化リチウムを含む低揮発相(2B)とに分離される。
反応混合物12の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
(2)蒸発工程
(2)蒸発工程では、上述のように、反応混合物が、揮発相(2A)と、低揮発相(2B)とに分離され、低揮発相又は触媒液(2B)は、リサイクルライン21を通じて、(1)反応工程の反応器(1)にリサイクルされる。
低揮発相(2B)(ライン21)の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
なお、低揮発相(2B)には、腐食により生成した金属、例えば、鉄、ニッケル、クロム、モリブデン、コバルト、ジルコニウム、亜鉛、銅等も含まれている。これらの腐食金属の含有量は、それぞれ、2000質量ppm以下(例えば、1〜1000質量ppm)程度であってもよい。
さらに、低揮発相(2B)のリサイクルライン21には、(5)第2の蒸留工程の蒸留塔(脱水塔)(5)からの第2のオーバーヘッド51の凝縮液の一部(酢酸に富む凝縮液の一部)54が合流し、(1)反応工程の反応器(1)にリサイクルしている。
なお、凝縮液54の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
以下に特に記載がない限り、プロセス流中のすべての凝縮液中の鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)の濃度は、上記表の範囲内であってもよい。
蒸発槽(2)からの少なくとも一部の揮発相(2A)は、供給ライン23を通じて、(3)脱低沸工程の蒸留塔(スプリッターカラム)(3)に供給される。蒸発槽(2)からの一部の揮発相24は第1及び第2のコンデンサで順次に冷却・凝縮され、凝縮液26、28と、非凝縮ガス(オフガス)25、30とに分離され、凝縮液26、28はホールドタンクT1及びリサイクルライン27を経て反応器(1)にリサイクルされることにより、反応器(1)の反応混合物を冷却している。
ホールドタンクT1の気相29は第2のコンデンサで冷却され、このコンデンサからの非凝縮ガス(オフガス)30は、(15)オフガス処理セクションにおける低圧吸収塔(17)に供給されている。なお、後述する(15)オフガス処理セクションからの非凝縮ガス192も第1のコンデンサと第2のコンデンサとの間に供給され、第2のコンデンサで冷却して凝縮されている。また、ホールドタンクT1には、(15)オフガス処理セクションからの凝縮液(ヨウ化メチルに富む凝縮液)193も供給されている。
なお、上述のように、(15)オフガス処理セクションにおける高圧吸収塔(16)からの塔頂ストリーム171の一部172が蒸発槽(2)に導入されている。
フラッシュ蒸発では、反応混合物を加熱して減圧する恒温フラッシュ、反応混合物を加熱することなく減圧する断熱フラッシュ、若しくはこれらのフラッシュ条件を組み合わせたフラッシュ等により、反応混合物から蒸気成分(揮発相)と液体成分(低揮発相)とに分離してもよい。フラッシュ蒸発は、例えば、温度100〜250℃(例えば、120〜230℃)、好ましくは150〜220℃(例えば、160〜210℃)、より好ましくは170〜200℃程度で行ってもよい。圧力(絶対圧力)は、0.03〜1MPa(例えば、0.05〜1MPa)、好ましくは0.07〜0.7MPa、より好ましくは0.1〜0.5MPa(例えば、0.15〜0.4MPa)程度であってもよい。また、低揮発相(2B)の温度は、例えば、80〜200℃(例えば、90〜180℃)、好ましくは100〜170℃(例えば、120〜160℃)、より好ましくは130〜160℃程度であってもよい。なお、このような比較的高温(及び高圧)条件下では、ヨウ化水素が生成しやすく、酸素濃度によってはヨウ素が生成しやすい。本発明では、ヨウ化水素が生成しても、ヨウ素の生成を有効に抑制できる。
揮発相(2A)(ライン23、24)の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
第1のコンデンサによる凝縮液26の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
ホールドタンクT1から反応器(1)へリサイクルされる凝縮液(リサイクルライン)27の組成は、第1のコンデンサによる凝縮液26の組成と同様であってもよい。また、上記凝縮液27の組成割合は、第1のコンデンサによる凝縮液26の組成割合と第2のコンデンサによる凝縮液28の組成割合とを加重平均した割合であってもよい。
第1のコンデンサによる非凝縮ガス(オフガス)25の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
第2のコンデンサによる凝縮液28の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
第2のコンデンサによる非凝縮ガス30の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
なお、蒸発槽(2)としては、単一のフラッシャーを用いてもよく、複数のフラッシャーを用いてもよい。また、一部の揮発相(2A)をコンデンサで凝縮して、凝縮液を反応工程(反応器(1))にリサイクルしてもよい。また、一部の揮発相(2A)を反応器(1)にリサイクルすることなく、すべての揮発相(2A)を(3)脱低沸工程のスプリッターカラム(3)に供給してもよい。
また、必要であれば、低揮発相(2B)から、単一又は複数の工程で触媒成分(金属触媒成分)を分離し、(1)反応工程にリサイクルして再利用してもよい。
(3)脱低沸工程及びスプリッターカラム(3)では、上記揮発相(2A)(ライン23)を、塔頂又は塔の上段部から留出ライン31を通じて留出する第1のオーバーヘッド(塔頂ガス、低沸点成分)(3A)と、ライン42を通じてサイドカットされ、主に酢酸を含む粗酢酸流又はサイドカット粗酢酸流(3B)と、塔底又は塔の下段部から缶出ライン45を通じて流出する缶出液体流(高沸点成分)(3C)とに分離している。
なお、図示しないが、スプリッターカラム(3)には、脱高沸塔(6)の第3のオーバーヘッド(6A)(ライン61)の成分66、(15)オフガス処理工程における高圧吸収塔(16)からの塔頂ストリーム171の一部172、(15)オフガス処理工程における低圧吸収塔(17)からの底部酢酸ストリーム184がリサイクルされている。
第1のオーバーヘッド(3A)は、ヨウ化メチル、水、酢酸メチルを含むとともに、アセトアルデヒド、一酸化炭素も含んでおり、アセトアルデヒド等の不純物を分離するための(9)分離セクション及び(15)オフガス処理セクションに供給される。
さらに、粗酢酸流(3B)(ライン42)は、主に酢酸を含み、ヨウ化メチル、酢酸メチル、水等も含んでおり、粗酢酸流42の一部43は、スプリッターカラム(3)に戻してもよく、粗酢酸流42の残部44は、脱水、高沸点成分等を除去するため(4)精製セクションで精製され、高純度の製品酢酸が得られる。
さらには、缶出液体流(3C)(ライン45)は、通常、少なくとも水及び酢酸を含んでおり、さらにプロピオン酸等を含んでいる場合が多い。缶出液体流(3C)の一部は、スプリッターカラム(3)の下部に戻されている。なお、缶出液体流45には、飛沫同伴により金属触媒成分(ヨウ化リチウム)が混入している場合があるため、缶出液体流45は、蒸発槽(2)にリサイクルしている。
第1のオーバーヘッド(3A)は、少なくとも過マンガン酸還元性物質(PRC類)及びヨウ化メチルを含んでおり、PRC類は、少なくとも副生したアセトアルデヒドを含んでいる。さらに、第1のオーバーヘッド(3A)は、通常、酢酸メチルを含んでおり、さらに、酢酸、メタノール、水、ジメチルエーテル、アセトアルデヒド由来の副生成物(クロトンアルデヒド、ブチルアルデヒド等のアルデヒド類、ヨウ化C2-12アルキル、C3-12アルカンカルボン酸等のアセトアルデヒドからの誘導体、C2-12アルカン等)等を含んでいる場合が多い。
第1のオーバーヘッド(3A)(ライン31)の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
酢酸流(3B)(ライン42)の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
なお、精製セクションに供給される粗酢酸流44の組成は、粗酢酸流(3B)(ライン42)の組成と同様であってもよい。
さらに、(4)精製セクションへの粗酢酸流(3B)の流量と、スプリッターカラム(3)へのリサイクル流量との質量割合は、前者/後者=100/1〜2/1(例えば、25/1〜5/1)、好ましくは15/1〜7/1(例えば、10/1〜8/1)程度であってもよい。
缶出液体流(3C)(ライン45)の組成は、例えば、下記の通りであってもよい。
なお、スプリッターカラム(3)としては、棚段塔、充填塔等が利用できる。液体流(3C)は、排出してもよく、液体流(3C)の一部又は全部は、スプリッターカラム(3)に戻してもよく、反応器(1)にリサイクルしてもよい。
(4)精製セクション
粗酢酸流(3B)(ライン44)は、低沸点不純物、高沸点不純物、イオン性ヨウ素化合物等の不純物を含んでいる。これらの不純物を分離除去して精製するため、粗酢酸流(3B)は、(4)精製セクションへ供給される。この(4)精製セクションは、(5)粗酢酸流から主に水分を除去するための脱水工程(第2の蒸留工程)、(6)粗酢酸流から高沸成分を除去するための脱高沸工程(第3の蒸留工程)、(7)粗酢酸流からさらに不純物を除去するための精留工程(第4の蒸留工程)、(8)粗酢酸流からヨウ素化合物を分離するイオン交換処理工程等を含んでいてもよい。なお、(5)脱水工程、(6)脱高沸工程、(7)精留工程、及び(8)イオン交換処理工程の順序は特に制限されず、例えば、(8)イオン交換処理工程の後、(5)脱水工程、(6)脱高沸工程、(7)精留工程を行ってもよく、(5)脱水工程、(6)脱高沸工程の後で、(8)イオン交換処理工程を行い、(7)精留工程を行ってもよく、(5)脱水工程、(6)脱高沸工程、(7)精留工程の後、(8)イオン交換処理工程を行ってもよい。(4)精製セクションは、上記(5)〜(8)の工程のうち少なくとも(5)脱水工程を含んでいる場合が多く、(7)精留工程は必ずしも必要ではない。なお、(5)脱水工程は脱水蒸留塔(第2の蒸留塔)、(6)脱高沸工程は高沸蒸留塔(第3の蒸留塔)、(7)精留工程は精製蒸留塔(精留塔)においてそれぞれ行われる。また、(3)脱低沸工程が脱低沸脱水工程である場合、(4)精製セクションにおける(5)脱水工程を含む必要はない。
(5)脱水工程
(5)脱水工程では、脱水蒸留塔(5)で粗酢酸流(3B)(ライン44)を蒸留し、塔頂又は塔の上段部から留出ライン51を通じて留出し、水分に富む第2のオーバーヘッド(5A)と、塔底又は塔の下段部から缶出ライン56を通じて流出し、酢酸に富む缶出酢酸流(第2の酢酸流)(5B)とに分離され、缶出酢酸流(5B)の一部は、加熱ユニットで加熱して、脱水蒸留塔(5)に戻しつつ、缶出酢酸流(5B)の残部を脱高沸塔(6)に供給している。
また、第2のオーバーヘッド(5A)はコンデンサで冷却してホールドタンクT2に案内され、凝縮液52の一部53を脱水蒸留塔(5)に還流し、凝縮液の他の部分をライン54を通じて上記低揮発相(2B)と合流させて反応器(1)にリサイクルしている。また、ホールドタンクT2の気相(非凝縮ガス(オフガス))55は一酸化炭素に富んでおり、(15)オフガス処理セクションに供給されている。
第2のオーバーヘッド(5A)(ライン51)の組成は、例えば、下記の通りであってもよい。
なお、第2のオーバーヘッド(5A)の凝縮液(ホールドタンクT2の凝縮液)52、53の組成は、第2のオーバーヘッド(5A)の組成と同様であってもよい。また、凝縮液52、53の組成割合は、第2のオーバーヘッド(5A)の組成割合から、ホールドタンクT2の気相(非凝縮ガス)55の組成割合を減算した割合であってもよい。
ホールドタンクT2の気相(非凝縮ガス)55の組成は、例えば、以下のようであってもよい。
なお、上述のように、脱水蒸留塔(5)の圧力調整、計測機器への有機物の付着防止のため、窒素ガス等の不活性ガス等を導入する場合、下記表での不活性ガス(窒素ガス等)の組成は大幅に増加する。
缶出酢酸流(5B)(ライン56)の組成は、例えば、以下のようであってもよい。
なお、(5)脱水工程では、粗酢酸流44に含まれるヨウ化水素をヨウ化メチルに変換して第2のオーバーヘッド(5A)(ライン51)として留出させるため、脱水蒸留塔(5)の1又は複数の箇所に、メタノール3を添加してもよい。さらに、(5)脱水工程からの缶出酢酸流56に水酸化カリウム水溶液57を合流させて、缶出酢酸流56のヨウ化水素と反応させ、ヨウ化水素をヨウ化カリウムとして除去してもよい。水酸化カリウムで処理された缶出酢酸流58は、(6)脱高沸工程で蒸留され、主に高沸点成分を分離して除去してもよい。
なお、ヨウ化水素を除去するためには、メタノール源、例えば、メタノール、酢酸メチル、及びジメチルエーテルからなる群より選択された少なくとも1種の成分を脱水蒸留塔に添加してもよい。また、水酸化カリウムに限らず、アルカリ金属成分、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属酢酸塩等を使用してもよい。
なお、メタノール3の組成は、上述のものと同様である。
水酸化カリウム水溶液57の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
缶出酢酸流58の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
なお、(5)脱水工程は単一の工程で形成してもよく、缶出流(5B)を1又は複数の後続の工程で蒸留する複数の工程で形成してもよい。例えば、缶出流(5B)の一部は、脱水蒸留塔(5)に戻しつつ、缶出流(5B)の残部を、後続の脱水蒸留塔(5)に供給してもよい。脱水蒸留塔(5)としては、棚段塔、充填塔等が利用できる。
(6)脱高沸工程
上記缶出酢酸流(5B)は低沸点成分が除去され、酢酸の純度が大きく改善されているものの、未だプロピオン酸等の高沸点成分を含んでいる。そのため、高沸点成分を除去するため、缶出酢酸流(ライン56又はライン58)を(6)脱高沸工程に供している。すなわち、(6)脱高沸工程では、脱高沸塔(高沸蒸留塔)(6)において缶出酢酸流(5B)を蒸留し、塔頂又は塔の上段部から留出し、酢酸に富む第3のオーバーヘッド(6A)(ライン61)と、塔の中間部よりも上部でサイドカットされ、酢酸に富む酢酸流(第3の酢酸流)(6B)(ライン67)と、塔底又は塔の下段部から流出し、酢酸を含む高沸点成分に富む缶出流(6C)(ライン68)とに分離されている。
また、サイドカット酢酸流(6B)(ライン67)は、不純物を除去するため、(7)精留工程でさらに精製され、(7)精留工程からのサイドカット酢酸流(第4の酢酸流)(7B)は、(8)イオン交換処理工程に供給されている。なお、サイドカット酢酸流(7B)(ライン75)の一部は、ライン76を通じて、脱水蒸留塔(5)の缶出流(5B)と合流している。
第3のオーバーヘッド(6A)はコンデンサで冷却して凝縮され、ホールドタンクT3に貯留された凝縮液62の第1の部分を、還流ライン63を通じて脱高沸塔(6)の上部に還流し、凝縮液62の第2の部分を、ライン64を通じて、脱水蒸留塔(5)にリサイクルしている。さらに、凝縮液62の第3の部分を、ライン65及びライン66を通じて、(15)オフガス処理セクションの(18)放散工程及び(2)蒸発工程にそれぞれ供給している。ホールドタンクT3の非凝縮ガスは、反応器(1)又は蒸発槽(2)に供給してもよい。
さらに、酢酸を含む缶出流(6C)(ライン68)の一部は、脱高沸塔(6)に戻され、缶出流(6C)(ライン68)の残部は、ライン69を通じて、焼却処理ユニット(図示せず)に供給されている。
第3のオーバーヘッド(6A)の組成は、例えば、以下のようであってもよい。
なお、還流液(ライン62、63)並びに凝縮液(ライン64、65)の組成割合は、第3のオーバーヘッド(6A)の組成割合から、コンデンサで凝縮されなかったガス及びホールドタンクT3からの非凝縮ガスの成分割合を減算した割合であってもよい。
サイドカット酢酸流(6B)(ライン67)の組成は、例えば、以下のようであってもよい。
缶出流(6C)(ライン68)の組成は、例えば、以下のようであってもよい。
なお、脱高沸工程(6)も単一又は複数の工程で形成してもよい。例えば、缶出流(6C)の一部を、脱高沸塔(6)に戻しつつ、缶出流(6C)の残部を後続の脱高沸塔(6)に供給してもよい。また、1又は複数の脱高沸工程(特に、最終の脱高沸工程)からの缶出流(6C)は廃液として排出してもよい。脱高沸塔(6)としては、棚段塔、充填塔等が利用できる。
(7)精留工程
(7)精留工程では、精留塔(7)において(6)脱高沸工程からの酢酸流(6B)(ライン67)を、塔頂又は塔の上段部から留出ライン71を通じて留出し、低沸成分に富む第4のオーバーヘッド(7A)と、流出ライン75を通じてサイドカットされた精製酢酸(7B)と、塔底又は塔の下段部から缶出ライン77を通じて流出し、高沸点成分を含む缶出流(7C)とに分離される。
第4のオーバーヘッド(7A)はライン71のコンデンサで冷却されて凝縮され、コンデンサからの凝縮液の一部を、ライン72を通じて、精留塔(7)に還流するとともに、凝縮液の残部をライン73を通じて焼却ユニット(図示せず)に供給し、非凝縮ガス(オフガス)はライン74を通じて焼却ユニット(図示せず)に供給している。なお、非凝縮ガス(オフガス)は、反応器にリサイクルしてもよい。
缶出流(7C)の第1の部分は、脱高沸塔(6)からの第3のオーバーヘッド(6A)(ライン61)の一部により、ライン80のリボイラー(熱交換器)で蒸気加熱され、精留塔(7)にリサイクルされている。すなわち、第3のオーバーヘッド(6A)の一部の熱エネルギーを缶出流(7C)の第1の部分に与え、(7)精製工程の加熱源としている。
また、缶出流(7C)の第2の部分は、ライン78のリボイラー(加熱器)で加熱され、蒸気として精留塔(7)にリサイクルされている。
なお、ライン80のリボイラー(熱交換器)で冷却された第3のオーバーヘッド(6A)の一部はホールドタンクT4に貯留され、ライン79を通じて、缶出流(7C)の残部とともに、脱高沸塔(6)にもリサイクルされ、高沸点成分を除去している。
一方、サイドカットされた精製酢酸(7B)(ライン75)はコンデンサ又は冷却器で冷却され、ライン81を通じて、(8)イオン交換処理工程に供給され、処理された精製酢酸は、製品タンクT5に貯留できる。
第4のオーバーヘッド(7A)(ライン71)の組成は、例えば、以下の通りである。
凝縮液72、73の組成は、例えば、第4のオーバーヘッド(7A)(ライン71)と同様であってもよい。また、凝縮液72、73の組成は、第4のオーバーヘッド(7A)(ライン71)の組成割合から、オフガス74の組成割合を減算した割合であってもよい。
オフガス74の組成は、例えば、以下の通りである。
なお、上述のように、精留塔(7)の圧力調整、計測機器の保護のため、不活性ガス(窒素ガス、一酸化炭素ガス塔)をパージすると、導入した不活性ガスの導入量に応じて、下記表中の窒素濃度塔が大きく増加する。
サイドカット精製酢酸(7B)(ライン75)の組成は、例えば、以下の通りである。
なお、サイドカットされた精製酢酸(7B)をコンデンサで冷却しても、非凝縮ガスは殆ど発生しないようである。例えば、精製酢酸(7B)を冷却しても、非凝縮ガスの容積割合は、全流体の1質量%以下(例えば0.1質量%以下)である。そのため、コンデンサからの精製酢酸(ライン81)は、温度だけが異なり(例えば、17〜60℃)、上記精製酢酸(7B)と同様の組成を有している。
缶出流(7C)(ライン77、78、79)の組成は、例えば、Li、Rhを除き、サイドカット精製酢酸(7B)(ライン75)と同様である。Li、Rhの濃度は、例えば、以下の通りである。なお、精留塔(7)内に酸素が混入すると、サイドカット精製酢酸(7B)(ライン75)が着色するとともに、この缶出流(7C)がより着色する。
(8)イオン交換処理工程
(8)イオン交換処理工程では、(7)精留工程からの酢酸流(7B)からヨウ素化合物を分離するため、酢酸流(7B)は冷却されてイオン交換槽(8)で処理され、精製酢酸流(第5の酢酸流)(8A)を生成し、この精製酢酸流(8A)はライン82を通じて製品タンクT5に収容されている。
イオン交換槽(8)で処理された酢酸流82の酸素濃度及び他の成分の組成は、例えば、イオン交換で除去される成分を除き、サイドカット精製酢酸(7B)(ライン75)と同様であってもよい。
なお、イオン交換槽(8)のイオン交換体には、ヨウ素化合物を除去又は吸着可能なイオン交換体(ゼオライト、活性炭、イオン交換樹脂等)、特に、カチオン交換樹脂が使用できる。カチオン交換樹脂は、弱酸性カチオン交換樹脂であってもよいが、強酸性カチオン交換樹脂、例えば、マクロレティキュラー型イオン交換樹脂等が好ましい。イオン交換体の少なくとも一部の活性部位(スルホン基、カルボキシル基、フェノール性水酸基、ホスホン基等のカチオン性基等)は、金属(銀(Ag)、水銀(Hg)、及び/又は銅(Cu)等)で置換又は交換されていてもよい(又は金属担持イオン交換体であってもよい)。例えば、イオン交換体の活性部位の10〜80モル%、好ましくは25〜75モル%、さらに好ましくは30〜70モル%程度は、金属(銀等)で置換又は交換された金属担持イオン交換体であってもよい。
イオン交換体(銀担持イオン交換樹脂等)は、通常、イオン交換塔又は処理ユニット内に収容又は充填され、酢酸流を、上記イオン交換体に接触(好ましくは通液)させることにより、ヨウ素化合物を除去できる。必要に応じて、酢酸流を連続的又は段階的に昇温して、上記イオン交換樹脂と接触(又は通液)させると、イオン交換体から上記金属が流出するのを防止しつつ、ヨウ素化合物を効率よく除去できる。イオン交換塔としては、少なくともイオン交換体(金属担持イオン交換体等)を内部に充填した充填塔、イオン交換体の床(例えば、粒状の形態のイオン交換体で形成された床)(ガードベッド)等を備えた塔が挙げられる。イオン交換塔は、上記イオン交換体に加え、他のイオン交換体(カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂、ノニオン交換樹脂等)を内部に備えていてもよい。また、上記イオン交換体を備えた塔と、他のイオン交換体を備えた塔とで酢酸流をイオン交換処理してもよい。例えば、アニオン交換樹脂塔に対して、金属担持イオン交換樹脂を含むイオン交換塔を下流側又は上流側に配置した処理ユニットを利用してもよい。前者の例の詳細は、例えば、国際公開WO02/062740号公報等を参照できる。
イオン交換処理の温度は、例えば、18〜100℃、好ましくは30〜70℃、より好ましくは40〜60℃程度であってもよい。酢酸流の通液速度は、例えば、ガードベッドを利用する除去塔において、3〜15床容積/h、好ましくは5〜12床容積/h、より好ましくは6〜10床容積/h程度であってもよい。
なお、(4)精製セクションは、上記(5)脱水工程、(6)脱高沸工程、(7)精留工程、及び(8)イオン交換処理工程からなる群より選択された少なくとも1つの工程を備えていてもよく、通常、少なくとも(5)脱水工程及び(6)脱高沸工程を備えている場合が多い。また、(8)イオン交換処理工程は、(4)精製セクションの任意の工程、例えば、上記(5)脱水工程及び/又は(6)脱高沸工程の後で行ってもよく、(6)脱高沸工程と(7)精留工程との間で行ってもよい。
(9)分離セクション
上述のように、脱低沸工程(3)からの第1のオーバーヘッド(3A)は、PRC類、ヨウ化メチル、酢酸メチル等の不純物及び有用成分を含んでいる。そのため、(9)分離セクションでは、第1のオーバーヘッド(3A)から少なくともアセトアルデヒドが分離される。特に、(9)分離セクションでは、第1のオーバーヘッド(3A)は、アセトアルデヒドに富むストリームと、有用なヨウ化メチルに富むストリームとに分離される。
(9)分離セクションは、(10)第1のオーバーヘッド(3A)を凝縮して二相に分液する工程(分液工程)、(11)分液した上相及び/又は下相からアセトアルデヒド及びヨウ化メチルに富む第5のオーバーヘッドを生成する工程(第1のアルデヒド分離工程又は第5の蒸留工程)、(12)第5のオーバーヘッドからアセトアルデヒドを抽出し、アセトアルデヒドに富む抽出液と、ヨウ化メチルに富むラフィネートとに分離する工程(抽出工程又は第6の蒸留工程)、(13)上記抽出液及び/又はラフィネートからアルデヒドを分離する工程(第2のアルデヒド分離工程又は第7の蒸留工程)、及び(14)分液した上相及び/又は下相からアルカン類を分離する工程(アルカン分離工程又は第8の蒸留工程)を含んでいてもよい。
(10)分液工程
(10)分液工程では、第1のオーバーヘッド(3A)(ライン31)を、コンデンサで冷却して凝縮し、ヨウ化メチルに富み、水等を含む凝縮液32をデカンタS2で水相38と有機相39との二相に分液している。一部の凝縮液(上相)は還流ライン41でスプリッターカラム(3)に還流するとともに、デカンタS2内で分液した上相(アセトアルデヒドに富む水相又は軽質相)38の少なくとも一部と、下相(ヨウ化メチルに富む有機相又は重質相)39の少なくとも一部とを、それぞれライン41、40を通じて、反応器(1)にリサイクルしている。
また、デカンタS2内で分液したヨウ化メチルに富む下相の少なくとも一部は、供給ライン111、112を経て、アセトアルデヒド及びヨウ化メチルに富む第5のオーバーヘッドを生成する第5の蒸留塔(11)に供給される。なお、デカンタS2からのヨウ化メチルに富む下相には、第5の蒸留塔(11)からの底部流(11B)(ライン123)の一部(分岐流)124が合流し、反応器(1)にリサイクルしている。
コンデンサで凝縮しなかった非凝縮ガス(オフガス)33は、ヨウ化メチルに富み、一酸化炭素等を含んでおり、デカンタS2内の非凝縮ガスとともに、上記オフガスと同様に、ライン34、35、37を通じて、(15)オフガス処理セクションで処理される。なお、非凝縮ガス(オフガス)は、ライン34のコンデンサでさらに冷却して凝縮され、凝縮液は、ライン36を通じて、供給ライン111からの下相39と合流し、非凝縮ガスは、ライン35を通じて、デカンタS3に供給され、このデカンタS3内で化した凝縮液は、供給ライン112からの下相39と合流し、デカンタS3内の非凝縮ガスは、ライン37を通じて、(15)オフガス処理セクションで処理している。
凝縮液32の組成は、例えば、第1のオーバーヘッド(3A)(ライン31)と同様であってもよい。また、凝縮液32の組成割合は、第1のオーバーヘッド(3A)の組成割合から、コンデンサで凝縮しなかった非凝縮ガス(オフガス)33の組成割合を減算した割合であってもよい。
デカンタS2の上相38の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
反応器(1)及びスプリッターカラム(3)へのライン41での上相の組成も、例えば、デカンタS2の上相38と同様であってもよい。
デカンタS2の下相39の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
コンデンサからの非凝縮ガス(オフガス)(ライン33)の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
非凝縮ガスのライン34の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
非凝縮ガスのライン35の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
凝縮液のライン36の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
デカンタS3からの非凝縮ガスのライン37の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
下相の供給ライン111の組成は、例えば、デカンタS2の下相39の組成と同様であってもよい。
供給ライン112の組成は、例えば、デカンタS2の下相39の組成と同様であってもよい。また、供給ライン112の組成割合は、下相の供給ライン111の組成割合と凝縮液のライン36の組成割合とが加重平均された割合であってもよい。
なお、デカンタS2からの上相と下相との抜き取り流量の割合(質量比)は、例えば、上相/下相=0.1/1〜10/1(例えば、0.3/1〜3/1)、好ましくは0.5/1〜2/1(例えば、0.7/1〜1.5/1)程度であってもよい。また、上相のスプリッターカラム(3)への還流量と反応器(1)へのリサイクル量との流量の割合(質量比)は、前者/後者=2/1〜1000/1(例えば5/1〜200/1)、好ましくは10/1〜100/1(例えば、15/1〜50/1)程度であってもよい。
なお、第1のオーバーヘッド(3A)は、凝縮してデカンタS2内で分液することなく、(11)第1のアルデヒド分離工程を行う第1の脱アルデヒド塔(11)に供給してもよく、アセトアルデヒドに富む上相と、ヨウ化メチルに富む下相とに分液し、上相及び下相のうち少なくとも一方の相を第1の脱アルデヒド(11)及び/又は反応器(1)に与えてもよい。また、反応器(1)には、上相の一部をリサイクルしているが、下相をリサイクルしてもよい。また、第1の脱アルデヒド塔(11)には、下相に代えて上相を供給してもよい。
第1のオーバーヘッド(3A)を、冷却温度が順次低下した複数のコンデンサで順次に冷却して、温度が順次に低下した凝縮液を生成させると、第1段目のコンデンサで凝縮したプロセス液(凝縮液)よりも、後段のコンデンサによる凝縮液中には、アセトアルデヒドが高濃度に存在する。そのため、アセトアルデヒドが高濃度に濃縮された濃縮液を(11)第1のアルデヒド分離工程に供し、アセトアルデヒドを分離してもよい。
(11)第1のアルデヒド分離工程
(1)分液工程(10)のデカンタS2からのライン112の凝縮液(ヨウ化メチルに富み、酢酸メチル等を含む下相39の少なくとも一部112)は、加熱ユニットで加熱されてホールドタンクS4で保持され、気液分離又は脱ガス処理が行われ、このホールドタンクS4の凝縮混合液(ヨウ化メチルに富み、酢酸メチル等を含む)はライン114を通じて、第5の蒸留塔(11)で蒸留され、アセトアルデヒド及びヨウ化メチルに富む第5のオーバーヘッド(11A)を生成させる。具体的には、この例では、(11)第1のアルデヒド分離工程では、(10)分液工程で分液し、供給ライン112、114を経て供給される下相を蒸留し、第5の蒸留塔(11)の塔頂又は上部から留出ライン(ライン115)を通じて留出する第5のオーバーヘッド(11A)と、缶出ライン123を通じて流出する底部流(11B)とに分離している。ホールドタンクS4の気相は、ヨウ化メチル等を含んでおり、ライン113を通じて、上記(10)分液工程のデカンタS2の非凝縮ガスと合流して、コンデンサで冷却して凝縮している。
底部流(11B)123は、酢酸、水等を含んでおり、底部流(11B)の第1の部分は第5の蒸留塔(11)にリサイクルされ、底部流(11B)の第2の部分(又は残部)はライン124を通じて、デカンタS2からのヨウ化メチルに富む下相と合流し、反応器(1)へリサイクルされている。
一方、第5のオーバーヘッド(11A)(ライン115)は、アセトアルデヒド及びヨウ化メチルに富んでおり、コンデンサで冷却して凝縮され、凝縮液はライン117、119を通じてホールドタンクT6に貯留され、ヨウ化メチル等を含む非凝縮ガスはライン116、118を通じて、上記(10)分液工程のデカンタS2の非凝縮ガスと合流して、コンデンサで冷却して凝縮している。また、ホールドタンクT6の凝縮液の一部はライン120、121を経て第5の蒸留塔(11)に還流され、凝縮液の残部は、ライン122のコンデンサで冷却され、ライン125を経て(12)抽出工程の水抽出蒸留塔(12)に供給されている。
デカンタS4の凝縮液(ライン114)の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
なお、デカンタS4の凝縮液(ライン114)の組成は、非凝縮ガスの成分濃度及びDMEの濃度を除き、上記デカンタS2の下相39の組成又は供給ライン112の組成と同様であってもよい。そのため、下表には、非凝縮ガスの成分濃度及びDMEの濃度を示す。
デカンタS4の非凝縮ガス(ライン113)の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
第5のオーバーヘッド(11A)(ライン115)の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
第5のオーバーヘッド(ライン115)のコンデンサによる凝縮液(ライン120、121、122)の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
なお、凝縮液(ライン120、121、122)の組成は、非凝縮ガスの成分濃度を除き、第5のオーバーヘッド(11A)(ライン115)の組成と同様であってもよい。そのため、下表には、非凝縮ガスの成分の濃度を示す。
第5のオーバーヘッド(ライン115)のコンデンサによる非凝縮ガス(ライン118)の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
なお、上述のように、蒸留塔の圧力コントロール、凝縮性ガスからの液面計、圧力計、温度計等の保護のため、不活性ガス(窒素ガス、一酸化炭素ガス)等をパージする場合がある。このような成分の導入により、ライン115、116、118での非凝縮ガスのガス組成は大きく変化するとともに、他の成分濃度も、導入された不活性ガスで希釈され、大きく変化する。
第5の蒸留塔(11)の底部流(11B)(ライン123、124)の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
なお、(11)第1のアルデヒド分離工程では、(10)分液工程で凝縮した凝縮液を蒸留して、アセトアルデヒド及びヨウ化メチルに富む第5のオーバーヘッド(11A)を生成させればよく、上相を蒸留してもよく、下相を蒸留してもよく、上相及び下相の凝縮混合液を蒸留してもよい。第5の蒸留塔(11)としては、棚段塔、充填塔等が利用できる。
(12)抽出工程
(12)抽出工程の水抽出蒸留塔(第6の蒸留塔)(12)では、第5のオーバーヘッド(11A)(コンデンサで冷却した凝縮液)からアセトアルデヒドを抽出し、アセトアルデヒドに富む抽出液と、ヨウ化メチルに富むラフィネートとに分離する。具体的には、水抽出蒸留塔(12)には、供給ライン125からの凝縮液と、下部の供給ライン126からの抽剤(水)とが供給される。水抽出蒸留塔(12)では、第5のオーバーヘッド(11A)は、水抽出蒸留塔(12)の塔頂又は上部の留出ライン131からの水抽出液(アセトアルデヒドを抽出した抽出液)(12A)と、缶出ライン132からのヨウ化メチルに富むラフィネート(12B)とに分離される。ラフィネート(12B)(ライン132)は廃液として廃棄されるか又は反応器(1)へリサイクルされ、水抽出液(12A)(ライン131)は、さらに(13)第2のアルデヒド分離工程に供給されている。
供給ライン126からの抽剤(水)の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
水抽出液(12A)(ライン131)の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
ラフィネート(12B)(ライン132)の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
水抽出蒸留では、凝縮混合液を水抽出蒸留塔に供給するとともに、水抽出蒸留塔の上部から抽剤(水)を供給し、塔頂又は上部からのヨウ化メチルに富むラフィネートと、缶出からの水抽出液(アセトアルデヒドを抽出した抽出液)とに分離してもよい。水抽出蒸留塔(12)としては、棚段塔、充填塔等が利用できる。
なお、(12)抽出工程では、水抽出蒸留塔(12)に代えて、抽出ユニット(抽出器)を利用してもよい。この抽出ユニットでは、単一又は複数の抽出器を備えてもよい。抽出器としては、例えば、ミキサーとセトラーとの組み合わせ、スタティックミキサーとデカンタとの組み合わせ、RDC(rotated disk contactor)、Karr塔、スプレー塔、充填塔、多孔板塔、邪魔板塔、脈動塔等を用いることができる。抽出器(抽出塔)は、水と混合して抽出でき分液可能な単回(シングルステージ)抽出装置であってもよく、このシングルステージ抽出装置をカスケード式に配置してもよい。例えば、複数の抽出器(理論段1の抽出器)を用いて順次に抽出する多段(マルチステージ)抽出装置であってもよい。また、複数の抽出器を1つの装置内に配置したマルチステージ抽出装置であってもよく、例えば、多段(マルチステージ)抽出装置と等価な理論段(多段抽出に対応する理論段)を有する単一の抽出装置であってもよい。また、抽出は回分式、連続式のいずれの方式で行ってもよく、並流抽出、向流抽出のいずれであってもよい。
さらに、少なくとも一部のラフィネート(12B)を反応器(1)にリサイクルし、少なくとも一部の水抽出液を後続の(13)第2のアルデヒド分離工程に供給してもよい。
(13)第2のアルデヒド分離工程
(13)第2のアルデヒド分離工程(第7の蒸留工程)において、第7の蒸留塔(13)では、アセトアルデヒドに富む水抽出液(12A)(ライン131)を蒸留し、(11)第1のアルデヒド分離工程と同様に、塔頂又は上部から留出ライン141を通じて留出する第6のオーバーヘッド(13A)と、缶出ライン146を通じて流出する底部流(13B)とに分離している。
底部流(13B)(ライン146)は、水等を含んでおり、底部流(13B)の第1の部分は、第7の蒸留塔(13)にリサイクルされ、底部流(13B)の第2の部分(又は残部)はライン146を通じて焼却炉に供給され焼却されている。
第6のオーバーヘッド(13A)は、アセトアルデヒドに富んでおり、留出ライン141のコンデンサで冷却して凝縮され、ホールドタンクT7に貯留された凝縮液の一部は還流ライン143を経て第7の蒸留塔(13)に還流され、凝縮液の残部はライン144を通じて焼却ユニットで焼却されている。また、コンデンサで凝縮しなかった非凝縮ガスは、ライン145を通じて上記(10)分液工程のデカンタS2の非凝縮ガスと合流し、コンデンサで冷却して凝縮している。
第6のオーバーヘッド(13A)(ライン141)の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
コンデンサの凝縮液143、144の組成は、非凝縮ガスの成分濃度を除き、第6のオーバーヘッド(13A)(ライン141)の組成と同様であってもよい。そのため、下表には、コンデンサの非凝縮ガスの成分の濃度を示す。
コンデンサの非凝縮ガス145の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
なお、上述のように、不活性ガスのパージ量により、非凝縮ガス145の組成は大きく変化する。
底部流(13B)(ライン146)の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
なお、(13)第2のアルデヒド分離工程では、水抽出液(12A)(ライン131)の少なくとも一部に代えて、ヨウ化メチルに富むラフィネート(12B)(ライン132)の少なくとも一部を蒸留してもよく、少なくとも一部の水抽出液(12A)(ライン131)及び少なくとも一部のラフィネート(12B)(ライン132)を蒸留し、アセトアルデヒドを含むオーバーヘッド(13A)を生成させてもよい。第7の蒸留塔(13)としては、棚段塔、充填塔等が利用できる。
(14)アルカン分離工程
(14)アルカン分離工程において、脱アルカン塔(第8の蒸留塔)(14)では、上記(10)分液工程で分液した上相の一部41及び/又は下相の一部40からアルカン類を分離する。具体的には、この例では、下相の一部40は、(14)アルカン分離工程で蒸留され、脱アルカン塔(14)の塔頂又は上部から留出ライン151を通じて留出する第7のオーバーヘッド(14A)と、缶出ライン152を通じて流出する底部流(14B)とに分離して
いる。
アルカン類を含む底部流(14B)の一部は加熱され脱アルカン塔14)にリサイクルされ、底部流(14B)の残部は焼却炉ユニットに供給され焼却されている。
一方、第7のオーバーヘッド(14A)は、アセトアルデヒド及びヨウ化メチルを含んでおり、留出ライン151のコンデンサで冷却して凝縮され、タンクT8に貯留された凝縮液の一部は脱アルカン塔(14)に還流され、凝縮液の残部は、反応器(1)にリサイクルされている。また、非凝縮ガスは、ライン113を通じて、上記(10)分液工程のデカンタS2の非凝縮ガスと合流して、コンデンサで冷却して凝縮している。
第7のオーバーヘッド(14A)(ライン151)の組成は、例えば、上記デカンタS2の下相39の組成と同様であってもよい。
底部流(14B)(ライン152)の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
なお、脱アルカン塔(14)としては、棚段塔、充填塔等が利用できる。
(9)分離セクションは、上記(10)〜(14)の工程のうち、少なくとも(10)分液工程、(11)第1のアルデヒド分離工程、(12)抽出工程、及び(13)第2のアルデヒド分離工程を備えている場合が多い。
(15)オフガス処理セクション
上記プロセスから発生するオフガスにも、一酸化炭素、ヨウ化メチル等の有用な成分が含まれている。そのため、(15)オフガス処理セクションでオフガスを吸収溶媒で吸収処理し、有用成分を回収するのが好ましい。(15)オフガス処理セクションは、例えば、(16)高圧でオフガスを吸収溶媒に吸収させる工程(高圧吸収工程又は第1の吸収工程)、(17)低圧でオフガスを吸収溶媒に吸収させる工程(低圧吸収工程又は第2の吸収工程)、(18)上記(16)高圧吸収工程及び(17)低圧吸収工程で吸収されたガス成分を放散する工程(放散工程)を含んでいてもよい。
上記吸収溶媒としては、例えば、酢酸系溶媒、メタノール系溶媒が使用できる。例えば吸収溶媒として酢酸を用いた場合、(15)オフガス処理セクションでは、オフガスを吸収溶媒で吸収処理して、一酸化炭素に富む流れと、酢酸に富む流れとに分離することができる。酢酸系溶媒の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
メタノール系溶媒の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
なお、メタノール系溶媒からは、ヨウ化メチル(MeI)、酢酸メチル(MA)、酢酸(AcOH)、ヨウ化水素(HI)、ギ酸(FrOH)、プロピオン酸(PrOH)、無水酢酸(AcA)、リチウム(Li)、ロジウム(Rh)は検出されない場合が多い。
(16)高圧吸収工程
(15)オフガス処理セクションにおいて、反応器(1)からの非凝縮ガス(一酸化炭素及びヨウ化メチルに富むオフガス)11は、(16)高圧吸収工程における高圧吸収塔(16)で吸収溶媒としての酢酸197と接触してスクラビングし、一酸化炭素に富む塔頂ストリーム(ガス流)171と、ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水に富む底部(下部酢酸ストリーム)174とに分離している。塔頂ストリーム171の一部172は、蒸発槽(2)に供給され、塔頂ストリーム171の残部173は、ボイラーに供給して、プロセスの熱源として利用され、またはフレアースタックやベントスタックにて大気排出される。塔頂ストリーム171の残部173は、焼却又は回収してもよい。底部174は放散塔(18)に供給される。
塔頂ストリーム171の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
底部酢酸ストリーム174の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
(17)低圧吸収工程
(3)脱低沸工程のコンデンサで凝縮しなかった非凝縮ガス(デカンタS2内の非液化成分)37と、蒸発槽(2)からの非凝縮ガス(酢酸、ヨウ化メチル、及び酢酸メチルに富むオフガス)30とは、互いに合流して混合物(又は混合ガス)176として、(17)低圧吸収工程における低圧吸収塔(17)で吸収溶媒としての酢酸196と接触してスクラビングし、一酸化炭素、二酸化炭素、及び窒素に富む塔頂ストリーム181と、酢酸、ヨウ化メチル、及び酢酸メチルに富む底部酢酸ストリーム182とに分離している。塔頂ストリーム181は高圧吸収塔(16)の塔頂ストリーム171と合流し、混合ガス173としてボイラーに供給して、プロセスの熱源として利用され、底部酢酸ストリーム182の一部184は高圧吸収塔(16)の底部174の一部と合流して蒸発槽(2)に供給され、底部酢酸ストリーム182の残部183は高圧吸収塔(16)の底部175と合流し、混合酢酸ストリーム185として放散塔(18)に供給されている。
混合物(又は混合ガス)176の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
塔頂ストリーム(ライン181)の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
底部酢酸ストリーム(ライン182)の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
(18)放散工程
(18)放散工程の放散塔(ストリッピング塔)(18)では、混合酢酸ストリーム185を蒸留してストリッピングし、ヨウ化メチル及び酢酸に富む塔頂ストリーム(酢酸メチル、アセトアルデヒド等も含む)191と、酢酸、酢酸メチル、及び水に富む底部酢酸ストリーム194とに分離している。底部酢酸ストリーム194の第1の部分を加熱ユニットで加熱して放散塔(18)の下部に戻している。また、底部酢酸ストリーム194の第2の部分(又は残部)は、脱高沸塔(6)の第3のオーバーヘッド61の凝縮液の一部(酢酸に富み、ホールドタンクT3に貯留された凝縮液の一部)65と合流して混合され、この混合液195の一部197を、高圧吸収塔(16)の上部にリサイクルし、混合液
195の残部196を低圧吸収塔(17)の上部にリサイクルしている。
塔頂ストリーム191は、コンデンサで冷却して凝縮され、非凝縮ガス(ヨウ化メチル及び一酸化炭素に富み、二酸化炭素、メタン、酢酸エチル、アセトアルデヒド等も含むストリーム)192は、分液工程(10)のデカンタS2の非凝縮ガスもしくは蒸発槽(2)からの揮発相24の非凝縮ガスと合流して、コンデンサで冷却して凝縮している。塔頂ストリーム191の凝縮液(ヨウ化メチル、酢酸、及び酢酸メチルに富み、水、アセトアルデヒド等も含むストリーム)193は、蒸発槽(2)からの揮発相24の凝縮液26、28を貯留するホールドタンクT1に供給されている。このホールドタンクT1を介して、凝縮液193は反応器(1)にリサイクルされている。凝縮液193は反応器(1)に直接的にリサイクルしてもよい。
混合酢酸ストリーム185の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
塔頂ストリーム191の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
底部酢酸ストリーム194の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
混合液195の一部197、196の組成は、例えば、底部酢酸ストリーム194の組成と同様であってもよい。
塔頂ストリーム191の非凝縮ガス192の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
塔頂ストリーム191の凝縮液193の組成は、例えば、以下の通りであってもよい。
(15)オフガス処理セクションは、上記(16)〜(18)の工程のうち(16)高圧吸収工程及び(17)低圧吸収工程から選択された少なくとも1つの吸収工程を備えている場合が多い。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
腐食試験では、以下のテストピースを用いた。
[テストピース]
Zr:ジルコニウム、ATIジャパン株式会社製
HB2:小田鋼機株式会社製、ハステロイB2(ニッケル基合金)
HC276:小田鋼機株式会社製、ハステロイC(ニッケル基合金)
SUS316:小田鋼機株式会社製、ステンレス鋼。
以下の腐食に関する試験項目について評価した。
[テストピースの腐食速度]
腐食試験後のテストピースの質量を測定し、腐食速度を計算した。すなわち、腐食に伴うテストピースの質量減を測定し、一年間あたりのテストピースの腐食速度(厚みの減肉量)をmmに換算して単位「mm/Y」として腐食量(腐食速度)を評価した。
[部分腐食の有無]
テストピースの部分腐食の有無を目視で調べた。なお「部分腐食」は、ビード腐食、孔食、点食を含む。
[着色度]
JIS規格に従って、混合液のAPHA(ハーゼン色数)を測定した。APHAの数値が大きいほど、着色度が大きいことを意味する。
[液相及び気相の組成(成分割合)]
比較例及び実施例並びに表に示す組成(成分割合)は、有機物及び水の濃度についてはガスクロマトグラフィで測定し、ヨウ化リチウム(LiI)濃度は原子吸光分析で測定した。また、ヨウ化水素(HI)濃度は、全ヨウ素イオン(I-)濃度からヨウ化物塩由来のヨウ素イオン濃度を減じることにより算出した。また、各液相及び気相の成分の総量は不純物及び微量成分も含め100%であるが、分析値の誤差及び有効数字(又は桁数の数字)への切り上げ又は切り捨てにより、総量が100%とならない場合がある。
なお、ヨウ化メチルを除く非凝縮ガス成分(水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、窒素、酸素)の濃度に関し、1質量%未満及び1体積%未満の成分の濃度は、有効数字2桁目まで四捨五入で計算し、1質量%以上及び1体積%以上の成分の濃度は、小数点以下1桁目を四捨五入した。
比較例1〜14及び実施例1〜22
比較例1
ジルコニウムZr製オートクレーブ(容積500ml)に、MeI 39g、水 6.3g、HI 0.003g、MA 8.4g、酢酸 207g、PA 0.03g、LiI 46gを入れ、テストピース(サイズ:36mm×25mm×2.5mm)をオートクレーブ内にセットして蓋を閉め、オートクレーブ内の液を窒素ガスでバブリングして液中に溶解している酸素を置換した後、DME 0.003g、AD 0.06gを仕込んだ。窒素ガスでオートクレーブの圧力を大気圧から1MPaまで昇圧した後、大気圧まで減圧する操作を3回実施し;さらに、混合ガス(93体積%CO、7体積%O2)で1MPaまで昇圧した後、大気圧まで減圧する操作を3回実施した後;混合ガス(93体積%CO、7体積%O2)を4MPaまで注入した後徐々に放圧し、放圧ガスを酸素濃度計[ガルバニ式酸素濃度計(株式会社テクネ計測製「モデル1000RS」)]で測定して酸素が7体積%となっていることを確認した。その後、1MPaまで放圧後、オイルバスでオートクレーブを190℃に加熱し、加熱後の定常圧力を2.8MPaに維持した。定常条件で100時間経過後、室温まで冷却後、オートクレーブのノズルから混合液をサンプリングして組成分析し、着色度(APHA)を測定した。また、オートクレーブ内を窒素置換後に開放してテストピースを取り出して質量を測定し、腐食速度を計算した。
なお、気相での酸素濃度が7体積%、全圧1MPa中の液相の酸素溶解濃度をアスペン+(プラス)(Aspen Technology, Inc.社製)で計算したところ、7.0×10-5g/gであった。
比較例2〜11
仕込組成と、圧力、加熱温度を変更した以外は、比較例1と同様の方法にて、腐食テストを実施した。
比較例12
仕込組成と、仕込ガス組成(93体積%N2、7体積%O2)、圧力、加熱温度を変更した以外は、比較例1と同様の方法にて腐食テストを実施した。
比較例13
図1に示す酢酸の連続製造プロセスにおいて、メタノールと一酸化炭素(酸素濃度10質量%(9体積%)の一酸化炭素)とを、カルボニル化反応器で連続的に反応させ、上記反応器からの反応混合物をフラッシャーに連続的に供給し、フラッシュ蒸発により、低揮発相(ロジウム触媒、ヨウ化リチウム、酢酸、酢酸メチル、ヨウ化メチル、水、及びヨウ化水素を少なくとも含む缶出成分)と、揮発相(ガス状成分の液化物の液温140℃)とに分離し、この揮発相を脱低沸塔に供給した。
揮発相は、ヨウ化メチル(MeI)26.8質量%、酢酸メチル(MA)4.5質量%、水(H2O)2.0質量%、ヨウ化水素(HI)500質量ppm、アセトアルデヒド(AD)600質量ppm、酢酸62.8質量%、水素0.0070質量%(70質量ppm)、一酸化炭素2質量%、二酸化炭素0.060質量%(600質量ppm)、メタン0.070質量%(700質量ppm)、窒素0.070質量%(700質量ppm)、及び酸素並びにその他の微量成分(合計100質量%)を含んでいた。
また、脱低沸塔の缶出液の差圧式液面計の圧力センサー部分に、酢酸蒸気、液が侵入して上記液面計が誤作動するのを防止するため、上記差圧式液面計の気相側に、脱低沸塔への揮発相の仕込質量100質量部に対して、空気9質量部をパージした。
揮発相100質量部を脱低沸塔(実段数:20段、仕込段:下から2段)に供給し、ゲージ圧150kPa、塔底温度143℃、塔頂温度115℃、軽質相還流比12で蒸留し、オーバーヘッドをコンデンサで冷却して凝縮液と非凝縮ガスとを生成させ、凝縮液(温度40℃)をデカンタで分液し、水相(軽質相)1.3質量部及び有機相(重質相)30質量部を反応器にリサイクルした。また、コンデンサからは非凝縮ガス(オフガス流)13質量部を抜き取った。
なお、脱低沸塔の塔頂組成(オーバーヘッドの組成)は、ヨウ化メチル(MeI)43.2質量%、酢酸メチル(MA)7.5質量%、水(H2O)21.1質量%、ヨウ化水素(HI)100質量ppm、酢酸5.9質量%、水素0.010質量%(100質量ppm)、一酸化炭素4質量%、二酸化炭素0.10質量%(1000質量ppm)、メタン0.11質量%(1100質量ppm)、窒素12質量%、酸素6質量(7体積%)、その他の微量成分(合計100質量%)であり;コンデンサからの非凝縮ガス(オフガス流)の組成は、ヨウ化メチル(MeI)3.6質量%、酢酸メチル(MA)0.2質量%、水(H2O)200質量ppm、ヨウ化水素(HI)(測定せず)、酢酸200質量ppm、水素0.040質量%(400質量ppm)、一酸化炭素17質量%、二酸化炭素0.50質量%、メタン0.50質量%、窒素53質量%、酸素25質量%(23体積%)、その他の微量成分(合計100質量%)であった。また、コンデンサの水相(軽質相)の組成は、ヨウ化メチル(MeI)3.3質量%、酢酸メチル(MA)6.6質量%、水(H2O)73.0質量%、ヨウ化水素(HI)100質量ppm、酢酸17.0質量%、酸素0.0080質量%(80質量ppm)、その他の微量成分(合計100質量%)であり;有機相(重質相)の組成は、ヨウ化メチル(MeI)86質量%、酢酸メチル(MA)11.1質量%、水(H2O)0.5質量%、ヨウ化水素(HI)100質量ppm、酢酸2.0質量%、酸素0.0090質量%(90質量ppm)、その他の微量成分(合計100質量%)であった。
脱低沸塔のサイドカット流62.8質量部を脱水塔に供給して脱水精製した。上記サイドカット流の組成は、ヨウ化メチル(MeI)2.4質量%、酢酸メチル(MA)1.6質量%、水(H2O)1.3質量%、ヨウ化水素(HI)45質量ppm、酢酸94.6質量、酸素0.0090質量%(90質量pm)、その他の微量成分(合計100質量%)であった。フィード(揮発相)の残りを缶出流として、反応器にリサイクルした。なお、揮発相、水相(軽質相)及び有機相(重質相)、オフガス流、サイドカット流、及び缶出流等の流体の「質量部」は単位時間(1時間)当たりの流量を示す(以下、同じ)。
このような連続反応プロセスにおいて、脱低沸塔への仕込段(下から2段、温度140℃)、及び塔頂部(下から19段)に、上記テストピースを入れて、500時間保持して腐食テストを行い、テスト前後のテストピースの質量を測定し、腐食量を求めた。
また、脱低沸塔からの粗酢酸(サイドカット流)のAPHAを測定した。
比較例14
図1に示す酢酸の連続製造プロセスにおいて、メタノールと一酸化炭素(酸素濃度10質量ppm)とをカルボニル化反応器で連続的に反応させ、比較例13と同様にして、蒸発槽からの揮発相を脱低沸塔で蒸留し、脱低沸塔のサイドカット流100質量部を脱水塔に供給して脱水精製した。なお、脱水塔の缶出液の差圧式液面計の圧力センサー部分に、酢酸蒸気、液が侵入して上記液面計が誤作動するのを防止するため、上記差圧式液面計の気相側に、サイドカット流の仕込質量100質量に対して、空気11質量部をパージした。
脱水塔(実段数:50段、仕込段と塔頂蒸気抜き取り段との段間隔:実段で15段)では、塔頂ゲージ圧200kPa、塔底温度161℃、塔頂温度150℃、還流比0.5(還流量/留出量)で蒸留した。
なお、脱水塔の塔頂からオーバーヘッド60質量部を抜き取った。オーバーヘッドの組成は、ヨウ化メチル(MeI)6.3質量%、酢酸メチル(MA)4.1質量%、水(H2O)3.3質量%、ヨウ化水素(HI)10質量ppm、水素0質量ppm、一酸化炭素0.00010質量%(1.0質量ppm)、二酸化炭素0質量ppm、メタン0質量ppm、窒素14質量%、酸素4質量%(7体積%)、及びその他の微量成分を含み、残りは酢酸であった。
脱水塔からのオーバーヘッドをコンデンサで冷却後、還流タンクにホールドし、タンク内の凝縮液の一部32質量部を留出させ、反応器にリサイクルした。また、還流比0.5で、脱水塔に凝縮液の一部16質量部を還流させた。凝縮液の組成は、ヨウ化メチル(MeI)7.7質量%、酢酸メチル(MA)5.0質量%、水(H2O)4.1質量%、ヨウ化水素(HI)9質量ppm、酸素0.0070質量%(70質量ppm)、及びその他の微量成分を含み、残りは酢酸であった。コンデンサからは非凝縮ガス11質量部を抜き取った。非凝縮ガスの組成は、酸素22質量%(20体積%)、窒素78質量%(70体積%)であり、他の成分は無視できる量であった。
脱水精製後の粗酢酸を脱水塔からの缶出流として抜き取った。缶出流(粗酢酸)の組成は、ヨウ化メチル(MeI)6質量ppb、水(H2O)0.05質量%、ヨウ化水素(HI)4質量ppb、酢酸メチル(MA)6質量ppm、及びその他の微量成分(酸素を含む)を含み、残りは酢酸であった。なお、仕込液、オーバーヘッド(留出液)、オフガス流、及び缶出流等の流体の「質量部」は単位時間(1時間)当たりの流量を示す(以下、同じ)。
このような連続反応プロセスにおいて、脱水塔の缶出の下から2段(空気パージラインの上段)及び塔頂部(下から50段)に、上記テストピースを入れて、500時間保持して腐食テストを行い、テスト前後のテストピースの質量を測定し、腐食量を求めた。
また、脱水塔への仕込液(脱低沸塔のサイドカット流)と、脱水塔からの缶出流(粗酢酸)のAPHAを測定した。
実施例1〜10
仕込ガス組成(酸素を0.010体積%の濃度で含み、残りが一酸化炭素である混合ガス)、圧力、加熱温度を変更した以外は、比較例1〜10と同様の方法にてそれぞれ腐食テストを実施した。
実施例11
仕込ガス組成(95体積%CO、5体積%O2)、圧力、加熱温度を変更した以外は、比較例12と同様の方法にて腐食テストを実施した。なお、気相での酸素濃度は1体積%であり、全圧140kPa中の液相の酸素溶解濃度をアスペン+(プラス)(Aspen Technology, Inc.社製)で計算したところ、4.0×10-6g/gであった。
実施例12
仕込ガス組成(99体積%CO、1体積%O2)、圧力、加熱温度を変更した以外は、比較例12と同様の方法にて腐食テストを実施した。
実施例13
仕込ガス組成(酸素を0.00010体積%(1.0体積ppm)の濃度で含み、残りが一酸化炭素である混合ガス)、圧力、加熱温度を変更した以外は、比較例12と同様の方法にて腐食テストを実施した。ただし、放圧ガス中の酸素濃度が1.0体積ppmとなるまでに、さらに、混合ガス(酸素を0.00010体積%の濃度で含み、残りが一酸化炭素である混合ガス)による1MPaG加圧、大気圧放圧を4回繰り返した。すなわち、結果的に計7回の1MPaG加圧及び大気圧放圧を繰り返した後、最後に4MPaまで張り込んだ後放圧し、放圧ガスを酸素濃度計で測定して酸素が1.0体積ppmとなっていることを確認した後、比較例12と同様の腐食テストを実施した。
実施例14
仕込ガス組成(酸素を0.10体積%の濃度で含み、残りが窒素である混合ガス)、圧力、加熱温度を変更した以外は、比較例12と同様の方法にて腐食テストを実施した。
実施例15
仕込ガス組成(酸素を0.010体積%の濃度で含み、残りが窒素である混合ガス)、圧力、加熱温度を変更した以外は、比較例12と同様の方法にて腐食テストを実施した。
実施例16
仕込ガス組成(酸素を0.0010体積%の濃度で含み、残りが窒素である混合ガス)、圧力、加熱温度を変更した以外は、比較例12と同様の方法にて腐食テストを実施した。ただし、放圧ガス中の酸素濃度が0.0010体積%となるまでに、さらに、混合ガス(酸素を0.0010体積%の濃度で含み、残りが窒素である混合ガス)による1MPaG加圧、大気圧放圧を3回繰り返した。すなわち、結果的に計6回の大気圧放圧、1MPaG加圧を繰り返した後、最後に4MPaまで張り込んだ後放圧し、放圧ガスを酸素濃度計で測定して酸素が0.0010体積%となっていることを確認後、比較例12と同様の腐食テストを実施した。
実施例17
仕込ガス組成(2体積%H2、15体積%CO2、7体積%CH4、8体積%N2、0.010体積%O2、残りが一酸化炭素COである混合ガス)、圧力、加熱温度を変更した以外は、比較例12と同様の方法にて腐食テストを実施した。
実施例18
仕込ガス組成(酸素を0.00010体積%(1.0体積ppm)の濃度で含み、残りが一酸化炭素である混合ガス)、圧力、加熱温度を変更した以外は、比較例11と同様の方法にて腐食テストを実施した。ただし、放圧ガス中の酸素濃度が1.0体積ppmとなるまでに、さらに、混合ガス(酸素を0.00010体積%の濃度で含み、残りが一酸化炭素である混合ガス)による1MPaG加圧、大気圧放圧を4回繰り返した。すなわち、結果的に計7回の大気圧放圧、1MPaG加圧を繰り返した後、最後に4MPaまで張り込んだ後放圧し、放圧ガスを酸素濃度計で測定して酸素が1.0体積ppmとなっていることを確認後、比較例11と同様の腐食テストを実施した。
実施例19
仕込ガス組成(酸素を0.000010体積%(0.10体積ppm)の濃度で含み、残りが一酸化炭素である混合ガス)、圧力、加熱温度を変更した以外は、比較例11と同様の方法にて腐食テストを実施した。ただし、放圧ガス中の酸素濃度が0.10体積ppmとなるまでに、さらに、混合ガス(酸素を0.000010体積%)の濃度で含み、残りが一酸化炭素である混合ガス)による1MPaG加圧、大気圧放圧を4回繰り返した。すなわち、結果的に計7回の大気圧放圧、1MPaG加圧を繰り返した後、最後に4MPaまで張り込んだ後放圧し、放圧ガスを酸素濃度計で測定して酸素が0.10体積ppmとなっていることを確認後、比較例11と同様の腐食テストを実施した。
実施例20
カルボニル化反応器への一酸化炭素中の酸素濃度を調整し、蒸発槽からの揮発相の酸素濃度を3質量%から0.1質量%に変更した以外は、比較例13と同様にして腐食試験を行った。なお、一酸化炭素中の酸素濃度を低下させたことに伴って、脱低沸塔へ供給する揮発相の組成が変化し、揮発相は、ヨウ化メチル(MeI)27.6質量%、酢酸メチル(MA)4.6質量、水(H2O)2.0質量%、ヨウ化水素(HI)450質量ppm、酢酸64.6質量%、水素0.0070質量(70質量ppm)、一酸化炭素0.60質量%(6000質量ppm)、二酸化炭素0.070質量%(700質量ppm)、メタン0.070質量%(700質量ppm)、窒素0.070質量%(700質量ppm)、酸素0.30質量%(0.60体積%)、及びその他の微量成分(合計100質量%)を含んでいた。また、脱低沸塔の塔頂組成(オーバーヘッドの組成)は、ヨウ化メチル(MeI)54.2質量%、酢酸メチル(MA)9.4質量%、水(H2O)26.5質量%、ヨウ化水素(HI)100質量ppm、酢酸7.3質量%、水素0.010質量%(100質量ppm)、一酸化炭素1質量%、二酸化炭素0.14質量%(1400質量ppm)、メタン0.15質量%(1500質量ppm)、窒素0.15質量%(1500質量ppm)、酸素0.20質量%(2000質量ppm)(0.30体積%)、及びその他の微量成分(合計100質量%)であった。また、塔頂オーバーヘッドを冷却するコンデンサからは非凝縮ガス(オフガス流)1.4質量部が抜き取られ、非凝縮ガスの組成は、ヨウ化メチル(MeI)35質量%、酢酸メチル(MA)2.0質量%、水(H2O)1000質量ppm、ヨウ化水素(HI)(測定せず)、酢酸700質量ppm、水素0.50質量%(5000質量ppm)、一酸化炭素41質量%、二酸化炭素5質量%、メタン5質量%、窒素5質量%、酸素6質量%(6体積%)、及びその他の微量成分(合計100質量%)であった。なお、オーバーヘッドの凝縮液をデカンタで分液し、水相(軽質相)1.4質量部、及び有機相(重質相)30質量部を反応器にリサイクルし、脱低沸塔からの缶出流3質量部を反応器にリサイクルし、フィード(揮発相)の残りを脱低沸塔からサイドカット流として抜き取った。これらのプロセス流(水相、有機相、及びサイドカット流)の組成は、ほぼ比較例13と同等であった。
実施例21
脱水塔の缶出液の差圧式液面計の気相側に、脱低沸塔のサイドカット流の仕込量100質量部に対して、酸素6質量%含有窒素1質量をパージした以外は、比較例14と同様にして腐食試験を行った。
なお、脱水塔の塔頂からオーバーヘッド50質量部を抜き取った。オーバーヘッドの組成は、ヨウ化メチル(MeI)7.5質量、酢酸メチル(MA)4.9質量%、水(H2O)4.0質量%、ヨウ化水素(HI)10質量pm、水素0質量ppm、一酸化炭素0.00010質量%(1.0質量ppm)、二酸化炭素0質量ppm、メタン0質量ppm、窒素2質量%、酸素0.40質量%(0.90体積%)、及びその他の微量成分を含み、残りは酢酸であった。
脱水塔からのオーバーヘッドをコンデンサで冷却後、還流タンクにホールドし、タンク内の凝縮液の一部32質量部を留出させ、反応器にリサイクルした。また、還流比0.5で、脱水塔に凝縮液の一部16質量部を還流させた。凝縮液の組成は、ヨウ化メチル(MeI)7.7質量%、酢酸メチル(MA)5.0質量%、水(H2O)4.1質量%、ヨウ化水素(HI)9質量ppm、酸素0.00020質量%(2.0質量ppm)、及びその他の微量成分を含み、残りは酢酸であった。コンデンサからは非凝縮ガス1質量部を抜き取った。非凝縮ガスの組成は、酸素7質量%(6体積%)、窒素93質量%(94体積%)であり、他の成分は無視できる量であった。脱水塔からの缶出流(粗酢酸)の組成は、ヨウ化メチル(MeI)4質量ppb、水(H2O)0.05質量%、ヨウ化水素(HI)5質量ppb、酢酸メチル(MA)5質量ppm、及びその他の微量成分(酸素を含む)を含み、残りは酢酸であった。
実施例22
図1に示す酢酸の連続製造プロセスにおいて、メタノールと一酸化炭素(酸素濃度2質量%(2体積%)の一酸化炭素)とをカルボニル化反応器で連続的に反応させ、反応器からの反応混合物を蒸発槽に連続的に供給し、フラッシュ蒸発により、低揮発相(ロジウム触媒、ヨウ化リチウム、酢酸、酢酸メチル、ヨウ化メチル、水、及びヨウ化水素を少なくとも含む缶出成分)と、揮発相(ガス状成分の液化物の液温140℃)とに分離した。また、揮発相は、ヨウ化メチル(MeI)27.1質量%、酢酸メチル(MA)4.5質量%、水(H2O)2.0質量%、ヨウ化水素(HI)500質量ppm、酢酸63.5質量%、水素0.0070質量%(70質量ppm)、一酸化炭素2質量%、二酸化炭素0.060質量%(600質量ppm)、メタン0.070質量%(700質量ppm)、窒素0.070質量%(700質量ppm)、酸素0.30質量%(0.70体積%)、及びその他の微量成分(合計100質量%)を含んでいた。
揮発相100質量部を脱水塔(実段数:20段、仕込段:下から2段)に供給し、ゲージ圧150kPa、塔底温度143℃、塔頂温度115℃、軽質相還流比12で蒸留し、オーバーヘッドをコンデンサで冷却し、凝縮液(温度40℃)をデカンタで分液し、水相(軽質相)1.3質量部及び有機相(重質相)30質量部を反応器にリサイクルした。また、コンデンサからは非凝縮ガス(オフガス流)4.1質量部を抜き取った。なお、脱低沸塔の塔頂組成(オーバーヘッドの組成)は、ヨウ化メチル(MeI)52.4質量%、酢酸メチル(MA)9.1質量%、水(H2O)25.6質量%、ヨウ化水素(HI)100質量ppm、酢酸7.1質量%、水素0.010質量%(100質量ppm)、一酸化炭素5質量%、二酸化炭素0.12質量%(1200質量ppm)、メタン0.14質量%(1400質量ppm)、窒素0.14質量%(1400質量ppm)、酸素0.50質量%(0.70体積%)、及びその他の微量成分(合計100質量%)であり;コンデンサからの非凝縮ガス(オフガス流)の組成は、ヨウ化メチル(MeI)15質量%、酢酸メチル(MA)1質量%、水(HfO)200質量ppm、ヨウ化水素(HI)(測定せず)、酢酸200質量ppm、水素0.20質量%(2000質量ppm)、一酸化炭素71質量%、二酸化炭素2質量%、メタン2質量%、窒素2質量%、酸素6質量%(6体積%)、及びその他の微量成分(合計100質量%)であった。また、水相(軽質相)の組成は、ヨウ化メチル(MeI)3.3質量%、酢酸メチル(MA)6.6質量%、水(H2O)73.0質量%、ヨウ化水素(HI)100質量ppm、酢酸17.0質量%、酸素0.0014質量%(14質量ppm)、及びその他の微量成分(合計100質量%)であり;有機相(重質相)の組成は、ヨウ化メチル(MeI)86質量%、酢酸メチル(MA)11.4質量%、水(H2O)0.6質量%、ヨウ化水素(HI)100質量ppm、酢酸1.9質量%、酸素0.0016質量%(16質量ppm)、及びその他の微量成分(合計100質量%)であった。
脱低沸塔のサイドカット流62.8質量部を脱水塔に供給して脱水精製した。上記サイドカット流の組成は、ヨウ化メチル(MeI)2.4質量%、酢酸メチル(MA)1.6質量%、水(H2O)1.3質量%、ヨウ化水素(HI)48質量ppm、酢酸94.6質量%、酸素0.0010質量%(10質量ppm)、及びその他の微量成分(合計100質量%)であった。フィード(揮発相)の残りを缶出流として、反応器にリサイクルした。
このような連続反応プロセスにおいて、脱低沸塔への仕込段(下から2段、温度140℃)、及び塔頂部(下から19段)に、上記テストピースを入れて、500時間保持して腐食テストを行い、テスト前後のテストピースの質量を測定し、腐食量を求めた。
また、脱低沸塔からの粗酢酸(サイドカット流)のAPHAを測定した。
表62〜66に、組成(成分割合)および腐食テストの結果を示す。なお、表62には比較例1〜12の液相の組成、表63には実施例1〜19の液相の組成、表64には比較例1〜12及び実施例1〜19のガス相の組成を示し、表65及び表66には腐食テストの結果を示している。表62〜表64において、「wt%」は質量%、「vol%」は体積%、「MeI」はヨウ化メチル、「HI」はヨウ化水素、「MA」は酢酸メチル、「MeOH」はメタノール、「Ac」は酢酸、「AD」はアセトアルデヒド、「PA」はプロピオン酸、「LiI」はヨウ化リチウム、「FrOH」はギ酸を示す。
気相の酸素濃度1〜7体積%での比較例及び実施例では、腐食テスト後の酸素濃度が0〜2体積%程度減少していたが、気相の酸素濃度が1体積%未満の例では、腐食テスト後の酸素濃度は2〜10体積%程度減少していた。
なお、低沸点であるDMEの濃度測定が困難であるため、DMEの濃度については、仕込み時のDME計算濃度とした。
液仕込み後に、液中酸素を窒素ガスでバブリングして置換する際、窒素気相に同伴して系外に混合液の成分が排出するため、特にヨウ化メチル濃度において、仕込組成と実験後の組成とは差異が生じる。
なお、比較例8、9、実施例8、9を除き、全ての比較例及び実施例を通し、実験終了後の液中には、ガスクロマトブラフィーにより、DMEのピークが確認され、面積%から算出したDME濃度は10〜1000質量ppm程度であった。
上記表62〜66に示す結果から、以下のことが分かる。
一酸化炭素は、還元反応:CO+1/2O2→CO2により含有酸素濃度を低減させ、いわゆる還元性雰囲気とするが、酸素濃度が高濃度となると、還元性雰囲気とならないケースがある。液組成を変更した比較例1〜11と実施例1〜11をそれぞれ比較すると、比較例の酸素濃度7体積%条件では、Crを含まず、酸化性雰囲気下に弱いテストピースHB2の腐食速度が増加し、ギ酸濃度も増加した。また、比較例11と実施例18及び19のSUS316材質では、比較例の方が若干腐食速度が低下する傾向が見られた。この理由は、一般的な傾向であるSUSがもっている特徴の一つで、還元性が高すぎる場合は、かえって腐食速度が増加する傾向となる性質によるものと考える。このように、条件によっては、プロセス中に多少の酸素が存在する方が、腐食性が低下する場合があることを確認した。
また、比較例において、テストピースHB2等では、反応:2HI+1/2O2→I2+H2O等によって発生するヨウ素の影響と見られる孔食や点食も多く見られた。Crを含むテストピースSUS316及びHC276は、酸素濃度があまり高くない領域では多少の腐食速度増加は見られるものの、極端な悪化には至らなかった。
さらに、腐食テスト後の溶液のAPHAは、テスト前のAPHAと比べ、明らかに悪化しており、色もヨウ素特有の茶褐色〜赤褐色に変化し、ヨウ素発生による着色が生じたものと考えられる。APHAは500まで表示したが、酸素濃度が高く、高い濃度でヨウ素I2が生成した試験例では、透明性が殆ど無くなり、APHAでは表現できない程度まで着色した。このことは、酸素濃度の高いプロセスフローでは、次工程にヨウ素が流出することを示しており、次工程での腐食の促進や、製品へのヨウ素分混入による着色や全ヨウ素濃度の増加につながる。
比較例12は、窒素雰囲気下での実験であるが、一酸化炭素と異なり酸素濃度の低減反応がないため、実施例6と比較して、テストピース(特にテストピースHB2)では大幅な腐食速度の増加となった。また、ギ酸濃度も増加した。
実施例11は、酸素濃度を、比較例12の半分の濃度1体積%に低減させた。腐食テストや着色、並びにギ酸濃度は、まだ酸素による影響はあるものの、比較例と比べるとかなり改善しており、許容できない酸素濃度ではない。
実施例12は、酸素濃度を、比較例12の1/4の濃度0.5体積%に低減させた。腐食テストや着色、並びにギ酸濃度は、まだ酸素による影響はあるものの、比較例と比べるとかなり改善しており、許容できない酸素濃度ではない。
実施例13は、測定できうる限り、酸素濃度を低下させたケースであるが、実施例6の酸素濃度0.01体積%とほぼ同等の結果となり、酸素濃度がある程度低減すれば、その影響はなくなり、同等の挙動を示すことが分かる。
なお、実施例18及び19は、比較例11と比べてテストピースSUS316の腐食速度が若干増加した。SUS316は、高い還元性雰囲気となると、腐食速度が増加する傾向を示す場合があり、本条件のような酸素が殆ど無い条件では腐食が促進するものと考えられる。この傾向は、さらに低い酸素濃度の方が顕著に見られると考えられるため、一酸化炭素存在下における還元条件において、特にステンレス(SUS)系材質においては酸素濃度を限りなくゼロ(例えば、1体積ppt、1体積ppb等)とするのは得策ではないと思われる。ただし、このような腐食の程度は、全く使用できないというレベルではなかった。なお、このような条件では、ヨウ素分が殆どない不純物濃度レベルであり、かつ酸素濃度が極めて低い条件であったため、着色が殆どない製品酢酸が得られる。
実施例14は、窒素ガス雰囲気下で酸素濃度を0.1体積%に低減したケースである。実施例14では、実施例11よりはテストピースHB2の腐食が抑えられ、腐食は多少進み着色するものの、許容できない酸素濃度ではない。なお、ギ酸濃度は顕著に低減した。
実施例15及び16は、窒素ガス雰囲気下で酸素濃度をさらに低減させたケースである。実施例13含め、実施例15及び16では、一酸化炭素雰囲気下とさほどかわらない腐食状態であり、酸素濃度が減少すると、一酸化炭素雰囲気下と同程度の腐食速度、着色となった。なお、ギ酸濃度は顕著に低減した。
実施例17は仕込ガスを変えた実験である。実施例6と比較し、仕込ガスを変えても一酸化炭素ガスが十分存在し、酸素濃度が同じであれば、同程度の腐食速度、APHAとなることがわかる。
比較例13と実施例20との対比から、反応器への一酸化炭素中の酸素濃度が高いと、テストピース、特に酸素に弱いテストピースHB2の腐食が進み、サイドカット液の着色(APHA)も大きくなっている。また、塔頂での酸素濃度がかなり高くなっている影響で、比較例13において、第1の蒸留塔の塔頂部に配置したテストピースHB2は、仕込段に配置したテストピースHB2に比べ、温度が低いにもかかわらず、腐食速度が大きい。通常、酸素濃度が低い場合、テストピースHB2は良好な耐食性を示すため、実施例20のように、全体的に酸素濃度が高い条件よりも酸素濃度が低い条件では小さな腐食速度を示す一方、温度の高い仕込段での腐食速度の方が、温度の低い塔頂部での腐食速度より速くなる。
比較例14と実施例21とでは、仕込組成が違うものの、上記比較例13及び実施例20と同様の傾向を示した。
なお、一般的には、Zr>HB2>HC>SUSの順で価格が低下する。
このことを考慮すると、材質の肉厚、更新頻度等により影響されるものの、腐食速度に基づいて、以下のような目安で、材質を選定することができる。
腐食速度0.05mm/Y以下:使用に適している
腐食速度0.05mm/Y超0.1mm/Y以下:使用可能なレベル
腐食速度0.1mm/Y超0.2mm/Y以下:条件によっては使用可能
腐食速度0.2mm/Y超:使用には適さない