JPWO2019142604A1 - 信号処理装置、信号処理システム、信号処理方法、信号処理プログラムおよび記録媒体 - Google Patents

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Abstract

適切な音響処理を選択する。信号処理装置は、複数の試験音を重畳して出力する音響信号出力部と、前記複数の試験音から特定の定位感を有する試験音を選択することを受聴者に促す制御部と、前記受聴者による選択結果を取得する受信部と、入力信号に対して、前記選択結果に対応する音響信号処理を施す音響信号処理部と、を備えている。

Description

本発明は、入力信号に施す音響処理を選択することができる信号処理技術に関する。
本願は、2018年1月19日に、日本に出願された特願2018−007452に優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年、テレビ局から送出される放送波上に、モノラル信号およびステレオ信号に加え、5.1ch信号などのサラウンド信号も送出することが可能になり、家庭でも受聴者を取り囲むような音場を再現できるようになっている。5.1ch信号とは、中央正面に置かれたセンタスピーカ、当該センタスピーカに対して左右対称に配置された左右スピーカ、受聴者の背面側に配置された左右スピーカ、および低音用スピーカの合計6個のスピーカを統合的に駆動する信号である。適切に製作された5.1ch信号を、適切に配置された5.1ch再生用スピーカシステムにより再生すると、あたかも受聴者の周囲に音源が再現されているような表現が可能となる。
さらに、近年では、22.2chシステムが提案されている。これは、従来配置されていなかった高さ方向にもスピーカを配置するもので、具体的には上層(トップ層)9個、受聴者の耳の高さの中層(ミドル層)10個、低層(ボトム層)3個の合計22個のスピーカと、2個の低音用スピーカとを用いるものである。この22.2chシステムのスピーカを適切に再生すると、高さ方向を含め、受聴者を取り囲む全周の音場が再現される。
これらの方法のみならず、複数のスピーカを用いるマルチチャンネル音響の様々な方式が提案されている。しかしながら、これらマルチチャンネル音響に関して規定されている推奨スピーカ配置は、必ずしも現実の受聴者の住環境になじむものではない。特に、22.2ch方式で推奨されているような、上層にもスピーカが取り付けられたスピーカ配置を実現することは困難である。
そこで、音声に音響信号処理を施し、適切な音響特性が反映された音声を、ヘッドホンを介して再生することにより、仮想的に推奨スピーカ位置に音像定位させる技術(バイノーラル再生技術)が提案されている。また、音声に音響信号処理を施し、適切な音響特性が範囲された音声を推奨スピーカ位置とは異なる位置に置かれたスピーカを用いて再生することにより、仮想的に推奨スピーカ位置に音像定位させる技術(トランスオーラル再生技術)なども提案されている。なお、音響特性とは、実空間上の特定の位置から受聴者の左右の耳までの音声の伝達特性を意味する。これらの技術では、例えば、伝達特性を測定し、頭部伝達関数として用いる。
耳介形状などによって生じる音の変化を伝達関数として表現した頭部伝達関数を用いることにより、音像定位したと受聴者が知覚する方向を操作することができる。しかしながら、受聴者の耳介形状などは個人差が大きく、結果的に耳介形状などによって生じる音の変化を表現した頭部伝達関数も個人差が大きい。すなわち、受聴者によって最適な頭部伝達関数は異なり、他人の頭部伝達関数を用いても必ずしも他人と同様の方向に音像定位したと知覚することができない。
このような課題に対し、複数の頭部伝達関数の中から受聴者に最適な頭部伝達関数を決定するための技術が提案されている(特許文献1)。特許文献1に記載の技術では、互いに異なる頭部伝達関数が反映された複数の音声を1つずつ受聴者に受聴させ、受聴者は、受聴した音声が音像定位した方向を指し示すことによって、受聴者に最適な頭部伝達関数が決定される。
特開2017−41766号公報(2017年2月13日公開)
しかしながら、本発明者らの独自の知見によれば、従来技術では適切な音響信号処理を選択することは困難である。
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、入力信号に施す音響信号処理をより適切に選択することができる信号処理技術を提供することを主たる目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る信号処理装置は、複数の試験音を重畳して出力する出力部と、前記複数の試験音から特定の定位感を有する試験音を選択することを受聴者に促す選択処理部と、前記受聴者による選択結果を取得する取得部と、入力信号に対して、前記選択結果に対応する音響処理を施す音響信号処理部と、を備えている。
本発明の一態様に係る信号処理方法は、信号処理装置が、複数の試験音を重畳して出力する出力工程と、前記信号処理装置が、前記複数の試験音から特定の定位感を有する試験音を選択することを受聴者に促す選択処理工程と、前記信号処理装置が、前記受聴者による選択結果を取得する取得工程と、前記信号処理装置が、入力信号に対して、前記選択結果に対応する音響処理を施す音響処理工程と、を包含する。
本発明の一態様によれば、入力信号に施す音響処理をより適切に選択することができる。
本発明の実施形態1に係る信号処理システムの一構成例を示すブロック図である。 本発明の実施形態1における音響試験中の受聴者と定位位置との関係を説明するための図である。 本発明の実施形態1における音響試験中の表示画面の一例を示す図である。 本発明の実施形態2に係る信号処理システムの一構成例を示すブロック図である。 本発明の実施形態3に係る信号処理システムの一構成例を示すブロック図である。
<実施形態1>
以下、本発明の一実施形態(実施形態1)に係る信号処理装置20、信号処理システム1および信号処理装置の制御方法について、図1および図2に基づいて説明する。
〔信号処理システム1〕
図1は、本実施形態に係る信号処理システム1の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る信号処理システム1は、音響信号再生部10、信号処理装置(音像定位処理特性決定装置)20、1以上のヘッドホン(出音装置)30、テレビ(表示装置)40およびリモコン50を備えている。ヘッドホン30は、複数の試験音、および、音響信号処理が施された音響信号(入力信号)を出音するものであれば公知のものを挙げることができるため、説明を省略する。テレビ40およびリモコン50もヘッドホン30と同様に公知のものを挙げることができるため、説明を省略する。
なお、上述の例では、信号処理システム1は、テレビ40およびリモコン50を備えているが、本実施形態ではこれに限定されない。本実施形態では、受聴者に対して試験音を出力する部材、および、受聴者の操作入力を受け付け、当該操作入力を信号処理装置20に出力する部材を信号処理システム1が備えていればよい。例えば、信号処理システム1は、テレビ40およびリモコン50の代わりに、テレビ40とリモコン50との機能の両方を備えたスマートフォン51(図示せず)を備えていてもよい。また、信号処理システム1は、テレビ40を備えていなくてもよい。
以下に、音響信号再生部10および信号処理装置20の詳細について説明する。
[音響信号再生部10]
音響信号再生部10は、信号処理装置20の信号入力部201に対して信号(入力信号)を出力する。入力信号としては、例えば、モノラル信号、2chのステレオ信号、および3ch以上のサラウンド信号を挙げることができ、3ch以上のサラウンド信号であることが好ましい。3ch以上のサラウンド信号としては、例えば、5.1ch、7.1chおよび22.2chなどの信号が挙げられる。入力信号の形式としては、ディジタル信号の形式およびアナログ信号の形式を挙げることができ、信号処理装置20の処理が軽減されるため、ディジタル信号の形式であることが好ましい。音響信号再生部10は、HDMI(登録商標)を経由して信号を出力することが好ましい。音響信号再生部10がHDMI(登録商標)を経由して信号を出力することで、音声信号と映像信号とを略同時に信号入力部201に出力できる。
[信号処理装置20]
信号処理装置20は、音声信号および映像信号などの入力信号を処理する。図1に示すように、信号処理装置20は、信号入力部201、試験信号再生部202、音響信号処理部203、音響特性保持部204、音響信号出力部(出力部)205、制御部(選択処理部)210、受信部(取得部)214、映像信号処理部231および信号出力部232を備えている。
(信号入力部201)
信号入力部201は、音響信号再生部10から入力された信号(入力信号)を、音響信号処理部203および映像信号処理部231に出力する。
例えば、一態様において、信号入力部201には、音響信号再生部10からHDMI(登録商標)を経由して入力信号が入力され、信号入力部201は、入力信号に含まれる音響信号と映像信号とを分離して、音響信号を音響信号処理部203に出力し、映像信号を映像信号処理部231に出力する。
また、信号入力部201は、信号入力部201に入力される複数の信号から、信号処理装置20の処理対象となる入力信号を選択する信号切り替え機能を備えていてもよい。この場合、信号入力部201は、例えば、制御部210からの指示に基づいて入力信号を切り替えてもよい。また、信号入力部201は、アナログ信号である入力信号をディジタル信号に変換する機能を備えていてもよい。
(試験信号再生部202)
試験信号再生部202は、内部または外部の記憶部に複数の試験信号を保持しており、制御部210から指示された試験信号を再生する。試験信号再生部202は、再生した試験信号を信号入力部201に出力する。
(音響信号処理部203)
音響信号処理部203は、信号入力部201から入力された音響信号を処理する。具体的には、音響信号処理部203は、信号入力部201から入力された音響信号(入力信号)に対して、音響特性保持部204から提供された音響特性(音像定位処理の特性)を反映させる(畳み込む)処理を行う。一態様において、音響信号処理部203には、音響特性保持部204からインパルス応答の形で音響特性が入力され、音響信号処理部203は、信号入力部201から入力された入力信号に、当該インパルス応答を畳み込む。また、他の一態様において、音響信号処理部203には、音響特性保持部204からIIRフィルタのパラメータの形で音響特性が入力され、音響特性保持部204は、入力信号に当該IIR(無限インパルス応答)フィルタのパラメータを反映させてもよい。
具体的には、音響信号処理部203は、音響特性保持部204から提供された複数の音響特性を、それぞれ別の畳み込み器にセットする。音響信号処理部203は、信号入力部201から入力された複数の試験信号について、それぞれ別の畳み込み器において、互いに異なる音響信号を畳み込む。音響信号処理部203は、複数の音響特性がそれぞれ畳み込まれた複数の音響信号を音響信号出力部205に出力する。
(音響特性保持部204)
音響特性保持部204は、内部または外部の記憶部に複数の音響特性を保持しており、制御部210から指示された音響特性を、音響信号処理部203に提供する。音響特性保持部204は、例えば、複数の音響特性を、インパルス応答、IIRフィルタのパラメータ等の形式で提供する。
本実施形態において、音響特性保持部204が提供する音響特性は、HRTF(頭部伝達関数)である。音響特性保持部204は、上述の複数の頭部伝達関数以外に、音響補正に用いる音響特性をさらに提供していてもよい。
(音響信号出力部205)
音響信号出力部205は、互いに異なる音響特性が反映された複数の試験音を重畳して出力する。一例として、音響信号出力部205は、互いに異なる頭部伝達関数が音響信号に反映された複数の試験音を重畳して出力する。
ここで、音響信号出力部205は、当該複数の音響信号をディジタル信号からアナログ信号に変換し、ヘッドホン30を介して複数の試験音を受聴者に出力する。また、音響信号出力部205は、音響信号に対してダウンミックス処理および音量調整処理などの各種処理をさらに行ったうえで信号出力部232に音響信号を出力してもよい。
(制御部210)
制御部210は、信号処理装置20の各部を統括的に制御する。一態様において、制御部210は、試験信号再生部202に、互いに異なる複数の試験信号を再生させるとともに、音響特性保持部204に、互いに異なる複数の音響特性を提供させ、音響信号処理部203に、上記複数の試験信号に対し、それぞれ異なる音響特性を反映させた音響信号を生成させる。また、制御部210は、映像信号処理部231に、上記複数の試験音から、特定の定位感を有する試験音を受聴者に選択させるための画面を生成させる。
(受信部214)
受信部214は、受聴者による試験音の選択結果を取得(受信)する。
(映像信号処理部231)
映像信号処理部231は、信号入力部201から入力された映像信号を処理する。具体的には、映像信号処理部231は、映像信号に、ユーザインタフェース画像を重畳するような処理を行ったり、映像信号の大きさを変更する処理を行ったりする。
また、映像信号処理部231は、制御部210からの指示に基づき、複数の試験音から、特定の定位感を有する試験音を受聴者に選択させるための画面を生成する。映像信号処理部231は、処理または生成した映像信号を信号出力部232に出力する。
(信号出力部232)
信号出力部232は、映像信号処理部231から入力された映像信号と、音響信号出力部205から入力された音響信号とを組み合わせ、HDMI(登録商標)信号としてテレビ40などの信号処理装置20の外部に出力する。当該HDMI(登録商標)信号を受信したテレビ40は当該信号に基づく映像を表示し、当該信号に基づく音声を出力する。
〔信号処理システム1の動作〕
以下に、信号処理システム1による一連の動作について説明する。
まず、受信部214は、リモコン50を介して受聴者から音響試験を行う指示を受信する。これに応じて、制御部210は、信号入力部201が、音響信号再生部10から入力される入力信号ではなく、試験信号再生部202から入力される試験信号を処理するように制御する。また、制御部210は、映像信号処理部231に対して、信号入力部201から入力される映像信号上に、音響試験に必要な表示を重畳するよう制御する。
次に、制御部210は、試験信号再生部202に対し、複数の試験音声を再生して音響信号処理部203に出力させるとともに、音響特性保持部204に対し、複数の音響特性を音響信号処理部203に対して提供させる。そして、制御部210は、音響信号処理部203に、複数の試験音声に対してそれぞれ異なる音響特性を反映させ、音響信号出力部205に出力させる。
音響信号出力部205は、音響信号処理部203から出力された複数の音響信号に、出力形態に応じてダウンミックス処理および音量調整処理などの各種処理を施してヘッドホン30または信号出力部232に出力する。具体的には、音響信号出力部205は、音響信号をヘッドホン30に対して出力する場合は、音響信号に2チャンネル信号をダウンミックスして出力する。
〔信号処理システム1による音響試験〕
[音響試験の流れ]
以下に、信号処理システム1による音響試験(信号処理方法)の流れを説明する。
まず、信号処理装置20の受信部214は、リモコン50を介して受聴者から音響試験を行う指示を受信する。これにより、信号処理装置20は試験モードになる。試験モードになった信号処理装置20は、テレビ40を介して受聴者にとって識別しやすい試験音を選択させるように指示する。受信部214は、リモコン50を介して受聴者が選択した好みの試験音の情報を受信する。受信部214から好みの試験音の情報を取得した制御部210は、音響試験を開始する。受聴者が選択する好みの試験音については後述する。
(第1段階の試験)
信号処理装置20は、第1段階の試験として、複数の音響特性がそれぞれ畳み込まれた複数の試験音を受聴者に重畳して出力する。信号処理装置20の音響信号処理部203は、音響特性保持部204に保持されている複数の音響特性全てを複数回に分けて音響信号に畳み込むことで複数の試験音を生成する。信号処理装置20の音響信号出力部205は、ヘッドホン30を介して複数の試験音を受聴者に重畳して出力する。例えば、音響特性保持部204に20種の音響特性が保持されているとする。この場合、音響信号出力部205は、1回の試験で4種の試験音を受聴者に重畳して出力する(出力工程)。これにより、5回の試験で音響特性保持部204に保持された20種の音響特性全てが畳み込まれた試験音を受聴者に聞かせることができる。
ここで、複数の試験音を受聴者に重畳して出力するとは、複数の試験音を略同時に再生することを意味する。すなわち、2つの試験音があった場合、これらを略同時に再生開始することを意味する。仮に2つの試験音の長さが異なる場合、音声の長さが短い試験音を繰り返すか、音声の長さが長い試験音を短い試験音に合わせるように短くすればよい。また、断続的に発音する試験音の場合、必ずしも略同時に試験音を再生しなくてもよく、少なくとも一部が重畳して出力されればよい。
制御部210は、上述の複数の試験音から特定の定位感を有する試験音を選択することを受聴者に促す(選択処理工程)。一態様において、制御部210は、上述の複数の試験音から、頭外に定位している試験音を選択することを受聴者に促す。他の一態様において、制御部210は、上述の複数の試験音から、頭外における所定方向(例えば、後方)に定位している試験音を選択することを受聴者に促す。他の一態様において、制御部210は、同一の試験音が複数の定位位置に定位している状態において、上述の複数の試験音から、同一の試験音間における定位位置の関係(例えば、試験音間における定位位置の偏り、または、試験音間における定位位置の間隔)に応じて試験音を選択することを受聴者に促す。
受聴者は、例えば、リモコン50の1以上のボタンのいずれかを押すことで特定の定位感を有する試験音を選択し、選択した試験音を受信部214に送信する。受信部214は、受聴者による選択結果を受信(取得)する(取得工程)。音響信号処理部203は、音響信号処理部203に入力された音響信号(入力信号)に対して、当該選択結果に対応する音響信号処理を施す(音響処理工程)。これにより、受聴者にとって好適な音像定位処理の特性を容易に決定することができる。なお、音像定位していない場合、受聴者は、ヘッドホンまたは頭部付近から試験音が聞こえるように感じたり、頭部付近と頭外との両方から試験音が聞こえるように感じたりする。
以下では、音響特性保持部204に保持されている20種の音響特性をそれぞれ音響特性1、2、3・・・20と記載し、受聴者に出力する試験音を試験音1、2、3・・・と記載する。音響信号出力部205は、ヘッドホン30を介して、音響特性1〜20のいずれかが反映された複数の試験音1、2、3・・・を複数回に分けて受聴者に出力する。
例えば、1回目の試験において受聴者が選択した試験音が、音響特性2が反映された試験音2および音響特性4が反映された試験音4だった場合、制御部210は、試験音2および4を好適な試験音の候補として記録する。
次に、2回目の試験において受聴者が選択した試験音が、音響特性5が反映された試験音5であった場合、制御部210は、試験音5を好適な試験音の候補に加える。
同様に、信号処理装置20は音響試験を続ける。受聴者がいずれの試験音も頭外定位していると感じることができなかった場合は、音響信号出力部205は、ヘッドホン30を介して、別の4種の音響特性が反映された4種の試験音のセットを受聴者に重畳して出力する。5回目の試験が終わった時点で好適な試験音が試験音2、4、5および13だった場合、制御部210は、好適な音響特性の候補を、20種の音響特性のうち、音響特性2、4、5および13の4種に決定する。
(第2段階の試験)
次に、第2段階の試験では、信号処理装置20は、第1段階の試験で受聴者に合う可能性の高い好適な音響特性の候補の中から、より好適な音響特性を含む試験音の選択を受聴者に促し、受信部214は受聴者の選択結果を受け付けることができる。その結果、受聴者にとってより好適な音響特性を容易に決定することができる。
以下、第2段階の試験について具体的に説明する。音響信号出力部205は、上述と同様に、4種の音響特性が反映された4種の試験音を、ヘッドホン30を介して受聴者に重畳して出力する。制御部210は、特定の定位位置(例えば、後方)により正確に定位した試験音の選択を受聴者に促し、受信部214は受聴者の選択結果を受け付ける。例えば、第1段階の試験で好適な試験音が試験音2、4、5および13であったとする。この場合、音響信号出力部205は、試験音2、4、5および13を受聴者に重畳して出力し、制御部210は、これらの試験音のうち、特定の定位位置により正確に定位した試験音の選択を受聴者に促し、受信部214は受聴者の選択結果を受け付ける。制御部210は、選択された試験音における音響特性をより好適な音響特性に決定する。
(第3段階の試験)
第2段階の試験を行った後により好適な音響特性に決定された音響特性が複数ある場合は、信号処理装置20は、第3段階の試験を実施してもよい。第3段階の試験では、各音響特性を反映させる試験音を交換して、試験を行う。
例えば、第2段階の試験を行った後に好適な音響特性の候補が音響特性2および音響特性4だったとする。この場合、音響信号出力部205は、第3段階の試験として、まず、音響特性2が反映された試験音1’および音響特性4が反映された試験音4’を受聴者に重畳して出力する。受聴者が試験音1’を選択した場合、制御部210は試験音1’に反映されている音響特性2に1点を与える。音響信号出力部205は、各音響特性が反映された試験音を受聴者に全て聞かせるまで、反映される音響特性を変えた試験音を受聴者に出力する。制御部210は、音響特性の点数を比較し、最も点数が高い音響特性を最適な音響特性に決定する。
このように、試験音に反映させる音響特性を変えて音響試験を実施することで、音響特性における頭部伝達関数と試験音との相性による音の聞こえ方の効果の多寡を軽減し、より高精度に好適な音響特性を決定することができる。
なお、上述の例では、第3段階の試験において初めて試験音に反映させる音響特性を変えて音響試験を実施しているが、本実施形態ではこれに限定されない。本実施形態では、第2段階の試験において試験音に反映させる音響特性を変えて音響試験を実施してもよい。
(信号処理システム1の音響試験による効果)
上述の信号処理システム1による音響試験によれば、従来の音響試験に比べて、以下の好適な効果を奏する。
従来から、複数の頭部伝達関数などの音響特性の中から特定の音響特性を受聴者に選択させる音響試験自体は存在する。しかしながら、特許文献1のような従来の音響試験では、受聴者は、音像定位した方向を指し示す必要があり、受聴者に時間および負担をかけさせてしまう。また、音響特性が受聴者に合っていなかったり、受聴者が定位という概念および頭内定位と頭外定位との違いを感覚的に十分に理解していなかったりする場合がある。この場合、受聴者にとって、音像定位した方向を正確に指し示すことは困難である。また、受聴者が音像定位したことを知覚して指し示した方向を検出する機能を有する大がかりな装置を準備する必要があるため、コストが高くなってしまう。また、特許文献1のような従来の音響試験では、複数の頭部伝達関数などの音響特性が反映された複数の試験音を1つずつ受聴者に聞かせている。このように、時間をおいて複数の試験音を複数回に分けて1つずつ受聴者に聞かせた場合、受聴者は、いずれの試験音も一長一短あるように感じてしまい、好ましい音響特性が反映された試験音を選択するのが困難になってしまう。特に、試験音に受聴者と合う音響特性が複数含まれている場合、受聴者にとって当該音響特性の中からより好ましい音響特性を選択することはより困難である。
これに対し、本実施形態に係る信号処理システム1による音響試験は、受聴者に、複数の音響特性が反映された複数の試験音を重畳して出力するため、いずれの音響特性が好ましいかを受聴者に容易に選択させることができる。また、信号処理システム1による音響試験は、複数の試験音のうち、いずれの試験音が特定の定位感を有するかを受聴者に選択させるだけでよい。例えば、本実施形態に係る信号処理システム1による音響試験において、受聴者の後方に音像定位するように試験音が出力され、受聴者が後方に音像定位したと感じた場合、受聴者は、単に後ろから聞こえた試験音を選択すればよい。そのため、音像定位したことを確かめることに慣れていない受聴者でも容易に回答させることができる。その結果、本実施形態に係る信号処理システム1による音響試験によれば、特許文献1に記載されているような従来の音響試験に比べて、受聴者にとって好適な音響特性を容易に決定することができる。
(変形例1)
なお、上述の例では、音響信号出力部205は、音響特性1〜20が適宜反映された試験音1、2、3・・・を出力しているが、本実施形態ではこれに限定されない。本実施形態では、音響信号出力部205は、予めどの番号の音響特性がどの試験音に反映させるかが決定された、複数の試験音を出力してもよい。
例えば、音響信号処理部203は、音響特性1〜20をそれぞれ前から順に試験音1、2、3・・・に反映することで複数の試験音を生成してもよい。そして、第1段階の1回目の試験において、音響信号出力部205は、音響特性1が反映された試験音1、音響特性2が反映された試験音2、音響特性3が反映された試験音3および音響特性4が反映された試験音4を重畳して出力する。同様に、音響信号出力部205は、2回目の試験において、音響特性5が反映された試験音5、音響特性6が反映された試験音6、音響特性7が反映された試験音7および音響特性8が反映された試験音8を重畳して出力する。以後同様に、音響信号出力部205は、音響特性保持部204に保持されている20種のうちの残りの音響特性の前から4種が順に反映された複数の試験音を出力する。このように、音響信号処理部203が、予めどの番号の音響特性がどの試験音に反映させるかを決定しており、音響信号出力部205が複数の試験音を出力することで、複数の試験音の生成速度を早めながら当該複数の試験音を出力することができる。その結果、より短時間で音響試験を完了させることができる。
(変形例2)
上述の例では、音響信号出力部205は、受聴者の頭外に定位する試験音のうち、受聴者の頭外に定位する試験音の定位位置が全て同じ位置となるように複数の試験音を重畳して出力しているが本実施形態ではこれに限定されない。
本実施形態では、音響信号出力部205は、頭外定位する試験音を複数含み、頭外定位する試験音の定位位置が異なるように複数の試験音を重畳して出力してもよい。換言すれば、制御部210は、音像定位する試験音の定位位置のそれぞれが、異なる定位位置となるように当該複数の試験音の定位位置を設定してもよい。
この場合、制御部210は、音像定位する試験音の定位位置のそれぞれを、複数個所に定位するように設定することが好ましく、受聴者にとって知覚的に均等な複数個所に定位するように設定することがより好ましい。換言すれば、特定の定位感を有する試験音は、複数個所に定位している試験音であることが好ましく、受聴者にとって知覚的に均等な複数個所に定位している試験音であることがより好ましい。これにより、受聴者にとって好適な音像定位処理の特性をより容易に決定することができる。なお、試験音が、受聴者にとって知覚的に均等な複数個所に定位している一例として、例えば、試験音が定位する定位位置のそれぞれと、受聴者との角度が均等であることが挙げられる。
なお、音響信号出力部205は、上述の第1段階の試験から第3段階の試験のうち、いずれの段階の試験からでも定位位置が異なるように複数の試験音を重畳して出力してもよい。ただし、音響信号出力部205は、第1段階の試験において受聴者によって選択された試験音が複数ある場合、第2段落以降の試験において、選択された複数の試験音の定位位置がそれぞれ異なるように、当該選択された複数の試験音を出力することが好ましい。
第1段階の試験では、そもそも受聴者の頭外に定位しない試験音が多数含まれている可能性が高いため、定位位置が異なるように複数の試験音を出力してもコストの割に十分な効果が得られない可能性が高い。これに対し、第2段落以降の試験のように、複数の試験音が受聴者の頭外に定位する試験音に絞られており、当該試験音の定位位置を異ならせるように試験音を出力することで、第1段階の試験において試験音の定位位置を異ならせるよりもコストを減らすことができる。また、定位位置を異ならせることによる好適な効果を十分に得ることができる。定位位置を異ならせることによる好適な効果については、以下に具体例を用いて説明する。
例えば、第2段階の試験を行った後に好適な音響特性の候補が音響特性2および音響特性4であり、音響信号処理部203が、音響特性2が反映された試験音2’および音響特性4が反映された試験音4’を新たに生成したとする。この場合、制御部210は、試験音2’が定位する定位位置を受聴者の左上および左下に設定し、試験音4’が定位する定位位置を受聴者の右上および右下に設定する。音響信号出力部205は、定位位置が受聴者の左上および左下となる試験音2’と、定位位置が受聴者の右上および右下となる試験音4’とを重畳して出力する。
制御部210は、左側に定位した試験音と右側に定位した試験音とのうち、より自然に聞こえた試験音の選択を受聴者に促し、受信部214は受聴者から選択結果を受け付ける。ここで、より自然に聞こえるとは、各試験音における上下の定位位置のバランスがよいことを意味する。このように、音響信号出力部205が、同一の試験音が複数の定位位置に定位するように複数の試験音を重畳して出力する音響試験を行い、受聴者は、同一の試験音における定位位置のバランスがよい試験音を選択することで、制御部210は、より精度高く好適な音響効果を判別することができる。
また、受信部214が、左側に定位した試験音と右側に定位した試験音とがどちらも自然に聞こえたように受聴者から回答を受け付けたとする。この場合、制御部210は、上と下とに定位した試験音が、高さ方向に開いて聞こえたのは右側に定位した試験音と左側に定位した試験音とのいずれであるかを受聴者に選択させてもよい。これにより、より好適な音響特性をより高精度に決定することができる。
なお、上述の例では、音響信号出力部205は、好適な試験音が左側の上下と右側の上下との計4か所に定位するように複数の好適な試験音を重畳して出力しているが、本実施形態ではこれに限定されない。例えば、好適な音響特性の候補が4つある場合、音響信号出力部205は、受聴者の前後左右側の上下それぞれに好適な音響特性が反映された複数の試験音が定位するように、当該複数の試験音を重畳して出力してもよい。好適な音響特性の数が限定されていれば、音響信号出力部205が計8か所の定位位置に定位する複数の試験音を重畳して出力しても、上述の構成と同様に、より好適な音響特性を受聴者に高精度に選択させることができる。
(試験音)
試験音は、音響特性が畳み込まれた音声であって、受聴者に出力される音声であり、音響信号処理部203によって生成される。複数の試験音は、音響特性における頭部伝達関数の違いが試験音ごとに明確になる音であることが好ましい。具体的には、複数の試験音は、頭部伝達関数の違いが表れやすい帯域の周波数成分が広く分布している音であることが好ましい。より具体的には、複数の試験音は、人間の聴覚で、上昇角知覚に用いられている周波数帯域である3.8kHz〜16kHzに周波数成分が広く分布している音であることが好ましい。
また、試験音は、複数の試験音を受聴者に重畳して出力しても、受聴者が識別できる音声であることが好ましい。ここで、識別のしやすさは受聴者の経験および趣向により異なるため、受聴者それぞれにとって識別しやすいように複数の試験音の中から受聴者が選択できるようになっていることが好ましい。
具体的には、複数の試験音は、受聴者にとって識別しやすい試験音である、音色、音階、音列パターンおよび定位位置の少なくとも1つが互いに異なっていることが好ましい。この場合、受信部214は、受聴者による音色、音階、音列パターンまたは定位位置の入力を検出し、検出した入力に対応する試験音を、特定の定位感を有する試験音として選択された選択結果として取得する。これにより、音色、音階、音列パターンまたは定位位置によって試験音を容易に識別することができる。
制御部210は、複数の音色の音、複数の音階の音、複数の音列パターンの音または複数の定位位置の音のいずれかを複数の試験音の選択を受聴者に促す。受信部214は、受聴者による音色、音階、音列パターンまたは定位位置の入力を検出し、検出した入力に対応する試験音を選択結果として取得する。より具体的には、制御部210は、映像信号処理部231に、信号出力部232がテレビ40に試験音の候補を表示させる指示を出す。そして、制御部210は、受聴者に、テレビ40に映し出される試験音の候補の中から、自分に合った試験音の選択を受聴者に促し、受信部214は受聴者の選択結果を受け付ける。具体的には、受信部214は、複数の音色の音、複数の音階の音および複数の音列パターンの音および複数の定位位置の音のうち、受聴者が選択した試験音の情報を、リモコン50を介して受け付ける。
複数の音色の音としては、具体的には、動物の鳴き声を挙げることができる。この場合、音響信号処理部203は、例えば、試験音1:犬の鳴き声、試験音2:猫の鳴き声、試験音3:馬の鳴き声および試験音4:豚の鳴き声を生成する。また、音響信号処理部203は、試験音1:烏、試験音2:雉、試験音3:雀および試験音4:鶏を生成してもよい。
複数の音階の音としては、例えば、複数の単音を挙げることができる。この場合、音響信号処理部203は、例えば、試験音1:ド、試験音2:レ、試験音3:ミおよび試験音4:ファを生成する。
複数の音列パターンの音としては、複数のリズムの音および複数のパターンの音を挙げることができる。複数のリズムの音について、より具体的には、基準となる特定のリズムの音、および、それに対して、数回おきに異なるリズムとなる音の組み合わせを挙げることができる。この場合、音響信号処理部203は、例えば、試験音1:基準となる特定のリズムの音、試験音2:2拍子おきに基準となるリズムに対して異なるリズムとなる音、試験音3:3拍子おきに基準となるリズムに対して異なるリズムとなる音、および、試験音4:4拍子おきに基準となるリズムに対して異なるリズムとなる音を生成する。
複数の定位位置の音としては、実施形態1の変形例2について記載したため、説明を省略する。
上述のように、試験音を、複数の音色の音、複数の音階の音および複数の音列パターンの音など、幅広い周波数成分を持つ音のうちから選択可能にすることで、これらの試験音の中でも、特に受聴者にとって識別しやすい試験音の選択を促すことができる。これにより、例えば、鳥の鳴き声に精通している受聴者であれば、受聴者に鳥の鳴き声を試験音に選択させることで、定位位置に定位した試験音を受聴者により容易かつ高精度に選択させやすくなる。また、受聴者に適した試験音を受聴者に聞かせることにより、複数の試験音に反映された音響特性の効果を受聴者に確認させやすくすることができる。その結果、音響試験の試験結果の精度を高くし、かつ、音響試験中の受聴者の集中力を維持することができる。また、受聴者は、定位位置に定位した試験音を受聴者により容易に選択できるようになるため、音響試験の試験時間を短縮することができる。
(定位位置)
定位位置とは、制御部210によって設定され、試験音が定位すると期待される頭外の期待位置である。すなわち、定位位置とは、仮想的にスピーカ配置される位置であり、当該定位位置の方向から試験音が出力されたと受聴者が知覚すると期待される期待位置である。ここで、頭部伝達関数などの音響特性が受聴者に合うものであれば、受聴者が音像定位したと知覚する位置は期待位置と一致する。音響信号出力部205が、制御部210の定位位置の設定情報に基づき、上述の複数の試験音を異なる位置に定位させるようにヘッドホン30を介して複数の試験音を重畳して出力すると、受聴者に合う好適な試験音のみが定位位置に定位する。また、受聴者に合わない試験音は定位位置以外の位置に定位するか、定位位置があいまいになる。
例えば、制御部210が、複数の音響特性が反映された複数の試験音のうちの少なくとも1つの試験音が受聴者の後方に定位するように設定し、音響信号出力部205が、ヘッドホン30を介して当該試験音を受聴者に重畳して出力したとする。この場合、受聴者は、当該受聴者に合う音響特性が反映された試験音に関しては後ろから聞くことになる。また、受聴者は、当該受聴者に合わない音響特性の試験音に関しては後方以外の位置である、頭内、または頭部周辺などのあいまいな位置から聞くことになる。このように、上述の構成によれば、頭部伝達関数などの音響特性が当該受聴者に合う試験音のみ定位位置の方向から受聴者に聞かせることができるため、音響特性が当該受聴者に合う試験音と合わない試験音とを、受聴者に容易に識別させることができる。
ここで、特許文献1に記載されているような従来の音響試験では音像定位した方向を受聴者に答えさせるものであったため、音像定位した位置があいまいであると受聴者にとって回答するのが困難になる。その結果、受聴者に負担をかけてしまう。これに対し、信号処理システム1による音響試験では、定位位置に定位した試験音のみを受聴者に回答させるため、受聴者の負担を軽減できる。なお、受聴者がヘッドホン30を介して試験音を聞く場合、頭内に定位することが一般的であるが、試験音に反映された音響特性が受聴者にとって概ね好適である場合、試験音は頭外に定位するので識別しやすい。
以下に、図2を用いて好適な定位位置について説明する。図2は、本実施形態に係る信号処理システム1による音響試験における、受聴者100と定位位置101〜108との関係を示す図である。音響信号出力部205は、受聴者100よりも後方に定位する試験音、すなわち、図2においては、定位位置101〜108のうち、定位位置104〜106の少なくとも1つに定位する試験音を含む複数の試験音を重畳して出力することが好ましい。換言すれば、制御部210は、定位位置を、定位位置104〜106の少なくとも1つに設定することが好ましい。さらに換言すれば、特定の定位感を有する試験音は、受聴者の頭部後方に定位している試験音であることが好ましい。
音響信号出力部205が、受聴者100の耳と前後方向において同じ位置、例えば、図2における定位位置103および107の少なくとも1つに定位する試験音を出力した場合、受聴者100は、制御部210が設定した定位位置と異なる位置に音像定位したと誤判定しやすい。これは、人間は左右に耳が配置されているためである。また、音響信号出力部205が、受聴者100に対して前方の位置、例えば、図2における定位位置101、102および108が定位位置となる試験音を出力した場合、受聴者100は視覚の影響を受けやすい。これに対し、音響信号出力部205が、受聴者100に対して後方の位置、例えば、図2における定位位置104〜106に定位する試験音を出力した場合、受聴者100に、視覚の影響なく、純粋に頭部伝達関数などの音響特性の影響により後方に音像定位したものと知覚させることができる。このように、特定の定位感を有する試験音が受聴者の頭部後方に定位している試験音であることで、受聴者にとって好適な音像定位処理の特性をより容易に決定することができる。
(音響試験の具体例)
以下に、音響試験の具体例について、図3を用いて説明する。図3は、実施形態1における音響試験中のテレビ40に表示される表示画面41の一例を示す図である。音響試験は、例えば、以下の(1)〜(4)のように行うことができる。
(1)受聴者が試験音として複数の動物の鳴き声を選択した場合、音響信号処理部203は、それぞれ異なる音響特性が畳み込まれた試験音1:犬の鳴き声、試験音2:猫の鳴き声、試験音3:馬の鳴き声および試験音4:豚の鳴き声を生成する。音響信号出力部205は、受聴者の後方に定位する試験音を含む複数の試験音を受聴者に重畳して出力する。制御部210は、受聴者の後方から聞こえた動物の鳴き声の選択を促す。例えば、制御部210は、複数の試験音から特定の定位感を有する試験音を選択することを受聴者に促す画像をテレビ40に表示させる。より具体的には、制御部210は、図3に示すように、受聴者の後方から聞こえた動物の鳴き声はどの動物の鳴き声であるかという質問42、および、質問42に対する回答の選択肢43をテレビ40の表示画面41に表示させることで、受聴者の後方から聞こえた動物の鳴き声の選択を促す。受信部214は、受聴者の選択結果(選択肢43)を受け付ける。信号処理装置20は、音響特性保持部204に保持された複数の種類の音響特性全てが畳み込まれた試験音を受聴者に聞かせるまで上述の音響試験を繰り返す。
(2)受聴者が試験音として複数の動物の鳴き声、なかでも複数の鳥の鳴き声を選択した場合、音響信号処理部203は、それぞれ異なる音響特性が畳み込まれた試験音1:烏の鳴き声、試験音2:雉の鳴き声、試験音3:雀の鳴き声および試験音4:鶏の鳴き声を生成する。音響信号出力部205は、受聴者の後方に定位する試験音を含む複数の試験音を受聴者に重畳して出力する。制御部210は、受聴者の後方から聞こえた鳥の鳴き声がいずれの鳥の鳴き声であるかについての選択を(1)の音響試験と同様に受聴者に促す。受信部214は、受聴者の選択結果を受け付ける。信号処理装置20は、(1)の音響試験と同様に音響試験を繰り返す。
(3)受聴者が試験音として複数の音階の音を選択した場合、音響信号処理部203は、それぞれ異なる音響特性が畳み込まれた試験音1:ド、試験音2:レ、試験音3:ミおよび試験音4:ファを生成する。音響信号出力部205は、受聴者の後方に定位する試験音を含む複数の試験音を受聴者に重畳して出力する。制御部210は、受聴者の後方から聞こえた音階の音がいずれの音階の音であるかについての選択を(1)および(2)の音響試験と同様に受聴者に促す。受信部214は、受聴者の選択結果を受け付ける。信号処理装置20は、(1)および(2)の音響試験と同様に音響試験を繰り返す。なお、制御部210は、複数の音階の音が後ろから聞こえた場合、和音に聞こえるように設定してもよい。また、音響信号出力部205が、ヘッドホン30を介して試験音として楽器の試験音を受聴者に聞かせる場合は、広範囲に周波数成分が分布している音声であることが好ましい。
(4)受聴者が試験音として複数の音列パターンの音を選択した場合、まず、音響信号出力部205が、ヘッドホン30を介して、予め基準となる一定のリズムの音を受聴者に提示させる。その後、音響信号処理部203は、それぞれ異なる音響特性が畳み込まれた試験音1:基準となるリズムの音、試験音2:2拍子おきに基準となるリズムに対して異なるリズムとなる音、試験音3:3拍子おきに基準となるリズムに対して異なるリズムとなる音、および、試験音4:4拍子おきに基準となるリズムに対して異なるリズムとなる音を生成する。音響信号出力部205は、受聴者の後方に定位する試験音を含む複数の試験音を受聴者に重畳して出力する。制御部210は、受聴者の後方から聞こえた音は何拍子の音であるかについての選択を(1)〜(3)の試験と同様に受聴者に促す。受信部214は、受聴者の選択結果を受け付ける。信号処理装置20は、(1)〜(3)の音響試験と同様に音響試験を繰り返す。
<実施形態2>
上述の信号処理システム1では、信号処理装置20は、受聴者に好適な音響特性を選択させている。ただし、実施形態2に係る信号処理システム2の信号処理装置21のように、受聴者に好適な試験音を選択させることに加え、音響特性における頭部伝達関数のパラメータを調整する機能を備えていてもよい。
以下、実施形態2に係る信号処理システム2について図4を参照して説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
〔信号処理システム2〕
図4は、実施形態2に係る信号処理システム2の要部構成を示すブロック図である。図4に示すように、信号処理システム2は、信号処理装置20の代わりに、信号処理装置21を備えている。この点以外は、信号処理システム2は、信号処理システム1と同様の構成である。
[信号処理装置21]
信号処理装置21は、制御部210の代わりに制御部211を備え、音響信号出力部205の代わりに、音響信号出力部206を備えている。これらの点以外は、信号処理装置21は、信号処理装置20と同様の構成である。
(制御部211)
制御部211は、制御部210の機能に加え、音響特性に含まれる頭部伝達関数のパラメータを調整して複数の音響特性を算出する。制御部211は、音響信号出力部206から出力される複数の試験音の定位位置の高さが、調整前の試験音の定位位置の高さとそれぞれ異なる高さとなるように、頭部伝達関数のパタメータを調整することが好ましい。ここでいう頭部伝達関数のパラメータとしては、例えば、特定の周波数帯域にあるピーク、ノッチの高さおよび幅などのパラメータが挙げられる。この場合、制御部211は、例えば、定位位置の高さが調整前の定位位置の高さよりも高い高さ、および低い高さとなるように、上述のパラメータを調整することが好ましい。頭部伝達関数における特定の周波数帯域にあるピーク、ノッチの高さおよび幅は、耳介形状に依存し、受聴者により異なり、これに応じて、定位位置の高さも異なる。そのため、音響信号出力部206が、定位位置の高さが異なる高さとなるように複数の試験音を出力し、制御部211が特定の定位感を有する試験音の選択を受聴者に促し、受信部214が受聴者から選択結果を受け付けることを繰り返すことで、より好適な頭部伝達関数に調整することができる。より具体的には、音響信号出力部206が、定位位置の高さが高い定位位置の試験音と、低い定位位置の試験音とを重畳して出力するように、制御部211が上述のパラメータを調整し、受聴者の回答に応じて好適な頭部伝達関数のパラメータの範囲を調整することを繰り返すことで、好適な頭部伝達関数の範囲を絞り込むことができる。
(音響信号出力部206)
音響信号出力部206は、制御部211によって算出された複数の音響特性がそれぞれ反映された複数の試験音を、ヘッドホン30を介して受聴者に重畳して出力する。例えば、上述したように、音響信号出力部206は、受聴者の頭外定位する試験音の定位位置の高さが異なるように複数の試験音を重畳して出力することが好ましい。
〔信号処理システム2による音響試験〕
以下に、信号処理システム2による音響試験の流れを説明する。
信号処理システム2の信号処理装置21における制御部211は、少なくとも1つの音響特性の頭部伝達関数を調整し、当該頭部伝達関数から複数の頭部伝達関数を生成する。制御部211は、音響特性保持部204に、調整された複数の頭部伝達関数を出力する。音響特性保持部204は、複数の頭部伝達関数を含むインパルス応答を音響信号処理部203に出力する。音響信号処理部203は、当該複数の頭部伝達関数を畳み込んだ音響信号を試験音に反映し、音響信号が畳み込まれた複数の試験音を音響信号出力部206に出力する。音響信号出力部206は、ヘッドホン30を介して当該音響信号が反映された複数の試験音を受聴者に重畳して出力する。
制御部211は、調整された複数の頭部伝達関数が反映された複数の試験音の中から、定位位置により近い位置から聞こえた試験音の選択を受聴者に促し、受信部214は、受聴者の選択結果を受け付ける。この場合、制御部211は、所定の定位位置に近い位置から聞こえた試験音を受聴者に選択させる際に、例えば、目の高さと同じ高さから聞こえた試験音がいずれの試験音であるかを受聴者に選択させることが好ましい。これにより、受聴者が、具体的な定位位置がイメージしやすくなり、より選択しやすくなる。このように、特定の定位感を有する試験音を、特定の高さに定位している試験音とすることで、受聴者にとって好適な音像定位処理の特性をより容易に決定することができる。
例えば、実施形態1に記載の第3段階の試験が終わった時点で最も好適な試験音が実施形態1に記載の試験音2であったとする。この場合、制御部211は、試験音2に反映された音響特性2が音響特性2’および音響特性2’’となるように頭部伝達関数を調整する。音響信号出力部206は、音響特性2’が反映された試験音2’および音響特性2’’が反映された試験音2’’を、ヘッドホン30を介して受聴者に重畳して出力する。制御部211は、試験音2’および試験音のうち、定位位置により近い位置から聞こえた試験音の選択を受聴者に促す。受信部214は、受聴者の選択結果を受け付ける。
例えば、受聴者が定位位置に近い位置から聞こえた試験音として試験音2’を選択したとする。この場合、制御部211は、試験音2’に反映された音響特性2’の頭部伝達関数のパラメータを、複数の試験音の定位位置の高さが、それぞれ、調整前の定位位置の高さよりも高い高さである音響特性2’−1、および低い高さである音響特性2’−2となるように調整する。音響信号処理部203は、音響特性2’−1が反映された試験音2’−1、および、音響特性2’−2が反映された試験音2’−2を生成する。音響信号出力部206は、試験音2’−1および試験音2’−2を重畳して出力する。制御部211は、試験音2’−1および試験音2’−2のうち、定位位置により近い位置から聞こえた試験音の選択を受聴者に促す。受信部214は、受聴者の選択結果を受け付ける。
このように、信号処理装置21は、頭部伝達関数が調整された複数の音響特性が反映された複数の試験音を受聴者に重畳して出力し、定位位置に近い位置から聞こえた試験音を受聴者に選択させることを繰り返す。これにより、実施形態1と同様に、受聴者は、複数の頭部伝達関数を略同時に評価することができるため、いずれの頭部伝達関数がより好ましいかを容易かつ素早く把握することができる。また、上述のように、頭部伝達関数を調整し、いずれの頭部伝達関数が好ましいかを測る音響試験を複数回実施することにより、受聴者にとって最適なパラメータの頭部伝達関数に調整することができる。
なお、上述の例では、信号処理システム2は、第3段階の試験が終わった後に頭部伝達関数を調整する音響試験を行っているが、本実施形態では、いつでも頭部伝達関数を調整する音響試験を行ってもよい。例えば、信号処理システム2は、実施形態1における第1段階の試験の代わりに、実施形態1における音響特性1〜20の中からいずれか1つの音響特性を選択し、当該音響特性の頭部伝達関数を調整することにより、音響試験を実施してもよい。また、実施形態1における第1段階の試験が終わった時点で好ましい試験音が試験音2および4であった場合、信号処理システム2は、試験音2における音響特性2を調整することにより、音響試験を実施してもよい。この場合においても、少なくとも試験音2に反映された音響特性2よりも受聴者にとって好適な音響特性を決定することができる。ただし、信号処理システム2は、例えば、実施形態1における第1〜第3段階の試験のうち、少なくとも第1段階の試験を実施して好適な頭部伝達関数に絞った上で、頭部伝達関数を調整する実施形態2の音響試験を実施することが好ましい。これにより、制御部211による頭部伝達関数のパラメータの調整回数を減らして、より効率的かつより高精度に受聴者にとって好適な音響特性を決定することができる。
<実施形態3>
上述の信号処理システム1では、信号処理装置20は、音響信号出力部205からヘッドホン30を介して受聴者に試験音を出力している。ただし、実施形態3に係る信号処理システム3の信号処理装置22のように、空間逆フィルタ処理を行って、音響信号出力部207からスピーカ31を介して受聴者に試験音を出力してもよい。
以下、実施形態3に係る信号処理システム3について図5を参照して説明する。なお、説明の便宜上、上述の実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
〔信号処理システム3〕
図5は、実施形態2に係る信号処理システム2の要部構成を示すブロック図である。図5に示すように、実施形態3に係る信号処理システム3は、信号処理装置20および1以上のヘッドホン30の代わりに、信号処理装置22および複数のスピーカ31を備えている。これらの点以外は、信号処理システム3は、信号処理システム1と同様の構成である。スピーカ31は、公知のものを挙げることができるため、説明を省略する。信号処理装置22を含む信号処理システム3は、スピーカの実在しない定位位置に音像定位させる技術(トランスオーラル再生技術)を実現するものである。
[信号処理装置22]
信号処理装置22は、制御部210の代わりに、制御部212を備えている。これらの点以外は、信号処理装置22は、信号処理装置20と同様の構成である。
(音響信号処理部203)
音響信号処理部203は、試験音に対して、予め定められた頭部伝達関数と、想定される複数の床面の反射率それぞれに応じた空間逆フィルタとを反映させる。予め定められた頭部伝達関数は、特定の定位感を試験音に与えられるものとする。受聴者は、空間逆フィルタが適切なものであったときに、試験音が特定の定位感を有すると認識することができる。制御部212は、音響信号処理部203に、想定される複数の床面の反射率それぞれに応じた複数の種類の空間逆フィルタのそれぞれを反映させた複数の試験音を生成させる。
ここで、空間逆フィルタは、設置された空間の影響を受けやすい。例えば、床面による反射の影響を受け、所望の定位位置に音像定位させることができない虞がある。床面を反射して受聴者に伝わる試験音の経路は受聴者およびスピーカ31の位置をメジャーなどで測定することにより想定することができる。そのため、制御部212は、床面を反射して受聴者に伝わる試験音の到達時間を算出することはできるが、床面の反射率を測定することができない。床面の反射率を測定するには、無響室および残響室において測定する必要があり、一般的な環境下で測定を実施することは困難である。また、床面の反射率は、床の表面仕上げの状態、すなわち、素材および滑らかさ、じゅうたん敷きであるか否か、ならびに、じゅうたん敷きである場合の毛足の深さなどにより大きく異なる。このように、床面の反射率を測定することは容易ではなく、単に、想定される空間逆フィルタを用いただけでは、所望の位置に定位させることができない虞がある。
これに対し、本実施形態に係る信号処理装置22は、制御部212により、複数種類の空間逆フィルタから、受聴者の選択に応じて適切な空間逆フィルタを選択することができる。これにより、床面の反射率が測定できない場合でも、所望の位置に音像定位させることができる。
(制御部212)
制御部212は、制御部210の機能に加え、以下の機能を有している。制御部212は、複数の空間逆フィルタ208を介して出力された試験音のうち、特定の定位感を有する試験音の選択を受聴者に促す。例えば、一態様において、制御部212は、頭外に定位する試験音の選択を受聴者に促す。また、他の一態様において、制御部212は、頭外における所定方向(例えば、後方)に定位する試験音の選択を受聴者に促す。また、他の一態様において、制御部212は、頭外における所定方向(例えば、後方)に定位する試験音の選択を受聴者に促す。他の一態様において、制御部210は、同一の試験音が複数の定位位置に定位している状態において、上述の複数の試験音から、同一の試験音間における定位位置の関係(例えば、試験音間における定位位置の偏り、または、試験音間における定位位置の間隔)に応じた試験音の選択を受聴者に促す。
そして、受信部214は受聴者の選択結果を受け付ける。これにより、制御部212は、複数の空間逆フィルタがそれぞれ反映された試験音のうち、特定の定位感を有する試験音を受聴者に選択させることで、実際の床面の反射率に近い反射率に絞り込むことができる。その結果、制御部212は、複数の空間逆フィルタのうち、実際の床面の反射率に近い反射率に応じた空間逆フィルタを選択し、音響信号処理部203に、選択した空間逆フィルタによって入力信号を処理するように制御することができる。
一態様において、音響信号処理部203は、想定される床面の反射率の候補それぞれに応じた空間逆フィルタを備えており、制御部212は、これらの中から、好適な空間逆フィルタを選択する。例えば、実施形態1に記載の第3段階の試験が終わった時点で最も好適な試験音が実施形態1に記載の試験音2であり、想定される床面の反射率が反射率Aであったとする。この場合、制御部212は、反射率Aのパラメータを調整し、反射率Aよりも高い反射率A’および反射率Aよりも低い反射率A’’を算出する。そして、制御部212は、音響信号処理部203に、当該音響信号処理部203に入力された音響信号に対して、反射率A’に応じた空間逆フィルタおよび反射率A’’に応じた空間逆フィルタを適用させる。制御部212は、いずれの空間逆フィルタを介した試験音が定位位置に定位したかについての選択を受聴者に促し、受信部214は受聴者の選択結果を受け付ける。制御部212は、受信部214から取得した受聴者の選択結果に基づき、好適な空間逆フィルタを選択する。このように、制御部212は、反射率を調整し、これらのうちのいずれの反射率に応じた空間逆フィルタが好ましいかについての選択を受聴者に促すことを繰り返す。これにより、床面の反射率を測定することなく、想定される床面の反射率の範囲を絞り込むことができる。その結果、実際の床面の反射率に近い反射率に応じたより好適な空間逆フィルタに絞り込むことができる。
〔ソフトウェアによる実現例〕
信号処理システム1〜3における信号処理装置20〜22の制御ブロック(特に音響信号処理部203、音響信号出力部205〜207、制御部210〜212および受信部214)は、集積回路(ICチップ)などに形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
後者の場合、信号処理装置20〜22は、各機能を実現するソフトウェアである信号処理プログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば少なくとも1つのプロセッサ(制御装置)を備えていると共に、上記信号処理プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な少なくとも1つの記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記信号処理プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)などの他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記信号処理プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記信号処理プログラムは、該信号処理プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波など)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記信号処理プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る信号処理装置20〜22は、複数の試験音を重畳して出力する出力部(音響信号出力部205〜207)と、前記複数の試験音から特定の定位感を有する試験音を選択することを受聴者に促す選択処理部(制御部210〜212)と、前記受聴者による選択結果を取得する取得部(受信部214)と、入力信号に対して、前記選択結果に対応する音響信号処理を施す音響信号処理部203と、を備えている。
上記の構成によれば、受聴者にとって好適な音像定位処理の特性を容易に決定することができる。
本発明の態様2に係る信号処理装置では、上記態様1において、前記特定の定位感を有する試験音は、頭部後方に定位している試験音であってもよい。
上記の構成によれば、受聴者にとって好適な音像定位処理の特性をより容易に決定することができる。
本発明の態様3に係る信号処理装置では、上記態様1において、前記特定の定位感を有する試験音は、頭外に定位している試験音であってもよい。
上記の構成によれば、受聴者にとって好適な音像定位処理の特性をより容易に決定することができる。
本発明の態様4に係る信号処理装置では、上記態様1において、前記特定の定位感を有する試験音は、特定の高さに定位している試験音であってもよい。
上記の構成によれば、受聴者にとって好適な音像定位処理の特性をより容易に決定することができる。
本発明の態様5に係る信号処理装置では、上記態様1において、前記特定の定位感を有する試験音は、複数個所に定位している試験音であってもよい。
上記の構成によれば、受聴者にとって好適な音像定位処理の特性をより容易に決定することができる。
本発明の態様6に係る信号処理装置では、上記態様1〜5のいずれか1つにおいて、前記出力部が第一の複数の試験音を重畳して出力し、前記選択処理部が前記第一の複数の試験音から第一の定位感を有する試験音を選択することを受聴者に促し、前記取得部が前記受聴者による第一の選択結果を取得し、前記出力部が前記第一の選択結果に応じた第二の複数の試験音を重畳して出力し、前記選択処理部が前記第二の複数の試験音から第二の定位感を有する試験音を選択することを受聴者に促し、前記取得部が前記受聴者による第二の選択結果を取得し、前記音響信号処理部が前記入力信号に対して、前記第二の選択結果に対応する音響信号処理を施してもよい。
上記の構成によれば、受聴者にとってより好適な音像定位処理の特性を容易に決定することができる。
本発明の態様7に係る信号処理装置では、上記態様1〜6のいずれか1つにおいて、前記音響信号処理部は、前記入力信号に対して、前記選択結果に対応する頭部伝達関数を畳み込んでもよい。
上記の構成によれば、頭部伝達関数などの音像定位処理の特性と試験音との相性による音の聞こえ方の効果の多寡を軽減し、より高精度に好適な音像定位処理の特性を決定することができる。
本発明の態様8に係る信号処理装置では、上記態様1〜6のいずれか1つにおいて、前記音響信号処理部は、前記入力信号に対して、前記選択結果に対応する空間逆フィルタを適用してもよい。
上記の構成によれば、信号処理装置は、出音装置(ヘッドホン)を用いなくても、出音装置を用いた場合と同様に、スピーカの実在しない定位位置に音像定位させる技術(トランスオーラル技術)を実現できる。
本発明の態様9に係る信号処理装置では、上記態様1〜8のいずれか1つにおいて、前記複数の試験音は、音色、音階、音列パターンおよび定位位置のうちの少なくとも1つが互いに異なっており、前記取得部は、前記受聴者による音色、音階、音列パターンまたは定位位置の入力を検出し、検出した入力に対応する試験音を前記選択結果として取得してもよい。
上記の構成によれば、音色、音階、音列パターンまたは定位位置によって試験音を容易に識別することができる。
本発明の態様10に係る信号処理システム(1〜3)は、上記態様1〜9のいずれか1つの信号処理装置と、前記複数の試験音、および、前記音響信号処理が施された前記入力信号を出音する出音装置(ヘッドホン30)と、表示装置(テレビ40)とを備え、前記選択処理部は、前記複数の試験音から特定の定位感を有する試験音を選択することを受聴者に促す画像を前記表示装置に表示させる。
上記の構成によれば、本発明の一態様に係る信号処理装置と同様の効果を奏する。
本発明の態様11に係る信号処理方法は、信号処理装置が、複数の試験音を重畳して出力する出力工程と、前記信号処理装置が、前記複数の試験音から特定の定位感を有する試験音を選択することを受聴者に促す選択処理工程と、前記信号処理装置が、前記受聴者による選択結果を取得する取得工程と、前記信号処理装置が、入力信号に対して、前記選択結果に対応する音響信号処理を施す音響処理工程と、を包含する。
上記の構成によれば、本発明の一態様に係る信号処理装置と同様の効果を奏する。
本発明の各態様に係る信号処理装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記信号処理装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより上記信号処理装置をコンピュータにて実現させる信号処理装置の信号処理プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。

Claims (13)

  1. 複数の試験音を重畳して出力する出力部と、
    前記複数の試験音から特定の定位感を有する試験音を選択することを受聴者に促す選択処理部と、
    前記受聴者による選択結果を取得する取得部と、
    入力信号に対して、前記選択結果に対応する音響信号処理を施す音響信号処理部と、を備えていることを特徴とする信号処理装置。
  2. 前記特定の定位感を有する試験音は、頭部後方に定位している試験音であることを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  3. 前記特定の定位感を有する試験音は、頭外に定位している試験音であることを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  4. 前記特定の定位感を有する試験音は、特定の高さに定位している試験音であることを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  5. 前記特定の定位感を有する試験音は、複数個所に定位している試験音であることを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  6. 前記出力部が第一の複数の試験音を重畳して出力し、
    前記選択処理部が前記第一の複数の試験音から第一の定位感を有する試験音を選択することを受聴者に促し、
    前記取得部が前記受聴者による第一の選択結果を取得し、
    前記出力部が前記第一の選択結果に応じた第二の複数の試験音を重畳して出力し、
    前記選択処理部が前記第二の複数の試験音から第二の定位感を有する試験音を選択することを受聴者に促し、
    前記取得部が前記受聴者による第二の選択結果を取得し、
    前記音響信号処理部が前記入力信号に対して、前記第二の選択結果に対応する音響信号処理を施すことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の信号処理装置。
  7. 前記音響信号処理部は、前記入力信号に対して、前記選択結果に対応する頭部伝達関数を畳み込むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の信号処理装置。
  8. 前記音響信号処理部は、前記入力信号に対して、前記選択結果に対応する空間逆フィルタを適用することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の信号処理装置。
  9. 前記複数の試験音は、音色、音階、音列パターンおよび定位位置のうちの少なくとも1つが互いに異なっており、
    前記取得部は、前記受聴者による音色、音階、音列パターンまたは定位位置の入力を検出し、検出した入力に対応する試験音を前記選択結果として取得することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の信号処理装置。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の信号処理装置と、
    前記複数の試験音、および、前記音響信号処理が施された前記入力信号を出音する出音装置と、
    表示装置とを備え、
    前記選択処理部は、前記複数の試験音から特定の定位感を有する試験音を選択することを受聴者に促す画像を前記表示装置に表示させることを特徴とする信号処理システム。
  11. 信号処理装置が、複数の試験音を重畳して出力する出力工程と、
    前記信号処理装置が、前記複数の試験音から特定の定位感を有する試験音を選択することを受聴者に促す選択処理工程と、
    前記信号処理装置が、前記受聴者による選択結果を取得する取得工程と、
    前記信号処理装置が、入力信号に対して、前記選択結果に対応する音響信号処理を施す音響処理工程と、を包含することを特徴とする信号処理方法。
  12. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の信号処理装置としてコンピュータを機能させるための信号処理プログラムであって、前記出力部、前記選択処理部、前記取得部および前記音響信号処理部として前記コンピュータを機能させるための信号処理プログラム。
  13. 請求項12に記載の信号処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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