JPWO2019131392A1 - 磁界印加バイアス膜ならびにこれを用いた磁気検出素子および磁気検出装置 - Google Patents

磁界印加バイアス膜ならびにこれを用いた磁気検出素子および磁気検出装置 Download PDF

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Abstract

強磁場耐性を有する磁界印加バイアス膜11は、永久磁石層3と永久磁石層3に積層された反強磁性層4とを有する交換結合膜10を備え、反強磁性層4は、白金族元素およびNiからなる群から選ばれる一種または二種以上の元素XならびにMnおよびCrを含有するX(Cr−Mn)層を備え、X(Cr−Mn)層は、永久磁石層3に相対的に近位な第1領域R1と、永久磁石層3から相対的に遠位な第2領域R2とを有し、第1領域R1におけるMnの含有量は、第2領域R2におけるMnの含有量よりも高い。

Description

本発明は磁界印加バイアス膜ならびにこれを用いた磁気検出素子および磁気検出装置に関する。
固定磁性層およびフリー磁性層を含む磁気抵抗効果膜を有する磁気検出部を備える磁気検出素子を用いた磁気検出装置(磁気センサ)は、外部磁場が印加されていない状態においてフリー磁性層の磁化の向きが揃っていることが、測定精度を高める観点から好ましい。このため、外部磁場が印加されていない状態においてフリー磁性層の磁化の向きを揃えることを目的として、磁気検出素子は、磁気検出部の周囲に永久磁石層を備えるハードバイアス膜が配置される場合がある(特許文献1、特許文献2参照。)。
特開2005−183614号公報 特開2016−130686号公報
ハードバイアス膜は、硬磁性材料からなる永久磁石層を着磁することにより任意の方向に磁化した状態を維持できるため、フリー磁性層の磁化の向きを容易に揃えることができる。すなわち、ハードバイアス膜はフリー磁性層の磁化の向きを揃える機能(バイアス機能)を容易に実現しうる。しかしながら、外部磁場の強度が特に高く、永久磁石層の保磁力Hcを超えた磁界が印加されると、印加された磁界の向きに着磁してしまい、ハードバイアス膜はバイアス機能を喪失してしまう。近時、磁気検出装置は大出力モータなど強磁場発生源の近傍に配置される場合があるため、ハードバイアス膜として機能しうる磁界印加バイアス膜には、強磁場が印加される環境であってもバイアス機能を維持できること、すなわち、強磁場耐性に有することが求められている。
本発明は、強磁場耐性を有する磁界印加バイアス膜、ならびにこれを用いた磁気検出素子および磁気検出装置を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために提供される本発明は、一態様において、永久磁石層と前記永久磁石層に積層された反強磁性層とを有する交換結合膜を備えた磁界印加バイアス膜であって、前記反強磁性層は、白金族元素およびNiからなる群から選ばれる一種または二種以上の元素XならびにMnおよびCrを含有するX(Cr−Mn)層を備え、前記X(Cr−Mn)層は、前記永久磁石層に相対的に近位な第1領域と、前記永久磁石層から相対的に遠位な第2領域とを有し、前記第1領域におけるMnの含有量は、前記第2領域におけるMnの含有量よりも高いことを特徴とする磁界印加バイアス膜である。
図1は、本発明に係る磁界印加バイアス膜の磁化曲線のヒステリシスループを説明する図である。通常、永久磁石層からなるハードバイアス膜のM−H曲線(磁化曲線)が作るヒステリシスループは、図1の破線で示される曲線のように、H軸とM軸との交点(磁界H=0A/m、磁化M=0A/m)を中心として対称な形状となる。そして、ヒステリシスループのH軸切片が保磁力Hc0となる。この保磁力Hc0が大きいほど、ハードバイアス膜のバイアス機能が高いことになる。
本発明に係る磁界印加バイアス膜のヒステリシスループは、図1の実線に示されるように、永久磁石層に反強磁性層が積層された構造を有するため、永久磁石層に対して交換結合磁界Hexが作用する。このため、ヒステリシスループは交換結合磁界Hexの大きさに応じてH軸に沿ってシフトした形状となる。それゆえ、外部磁場が印加されていない状態であっても強い残留磁化M0が生じ、優れたバイアス機能を発揮することができる。
また、永久磁石層に反強磁性層が積層された構造を有することにより、磁界印加バイアス膜の保磁力Hcは、永久磁石層単独の保磁力Hc0よりも大きくなる。このため、強磁場環境に置かれても、永久磁石層が所定の方向以外に着磁して磁界印加バイアス膜がバイアス機能を喪失してしまう可能性が低減されている。すなわち、本発明に係る磁界印加バイアス膜は、強磁場耐性を有する。
上記の磁界印加バイアス膜において、前記第1領域が前記強磁性層に接していてもよい。
上記の磁界印加バイアス膜において、前記第1領域は、Mnの含有量のCrの含有量に対する比であるMn/Cr比が0.3以上の部分を有していてもよい。この場合において、前記第1領域は、前記Mn/Cr比が1以上である部分を有することが好ましい。
上記の磁界印加バイアス膜の具体的な一態様として、前記反強磁性層は、PtCr層と、前記PtCr層よりも前記永久磁石層に近位なXMn層(ただし、Xは白金族元素およびNiからなる群から選ばれる一種または二種以上の元素)とが積層されてなるものであってもよい。
上記の磁界印加バイアス膜の具体例として、前記反強磁性層は、PtCr層とPtMn層とがこの順番で前記PtMn層が前記強磁性層に近位になるように積層されてなるものであってもよい。この場合において、前記PtMn層よりも前記強磁性層に近位にさらにIrMn層が積層されてもよい。この構成において上記のXMn層はPtMn層とIrMn層とからなる。
本発明は、他の一態様として、永久磁石層と前記永久磁石層に積層された反強磁性層とを有する交換結合膜を備えた磁界印加バイアス膜であって、前記反強磁性層は、XCr層(ただし、Xは白金族元素およびNiからなる群から選ばれる一種または二種以上の元素)とXMn層(ただし、Xは白金族元素およびNiからなる群から選ばれる一種または二種以上の元素であって、Xと同じでも異なっていてもよい)とが交互に積層された三層以上の交互積層構造を有することを特徴とする磁界印加バイアス膜を提供する。
上記の印加バイアス膜において、前記XがPtであり、前記XがPtまたはIrであってもよい。
前記反強磁性層は、XCr層とXMn層とからなるユニットが複数積層されたユニット積層部を有していてもよい。この場合において、前記ユニット積層部における、前記XCr層および前記XMn層は、それぞれ同じ膜厚であり、前記XCr層の膜厚が、前記XMn層の膜厚よりも大きくてもよい。このとき、前記XCr層の膜厚と前記XMn層の膜厚との比が、5:1〜100:1であることが好ましい場合がある。
本発明は、別の一態様として、固定磁性層およびフリー磁性層を含む磁気抵抗効果膜を有する磁気検出部と、上記の磁界印加バイアス膜とを備える磁気検出素子であって、前記磁界印加バイアス膜は、前記フリー磁性層に外部磁場が印加されていない状態での前記フリー磁性層の磁化の向きを揃えるように、前記磁気検出部の周囲に配置される、磁気検出素子を提供する。
本発明は、また別の一態様として、上記の磁気検出素子を備えていることを特徴とする磁気検出装置を提供する。かかる磁気検出装置は、上記の磁気検出素子を同一基板上に複数備えており、複数の前記磁気検出素子には、前記固定磁性層の固定磁化方向が異なるものが含まれていてもよい。
本発明によれば、強磁場耐性に優れる磁界印加バイアス膜が提供される。したがって、本発明の磁界印加バイアス膜を用いれば、強磁場環境に置かれても安定な磁気検出装置とすることが可能である。
本発明に係る磁界印加バイアス膜の磁化曲線のヒステリシスループを説明する図である。 本発明の第1の実施形態に係る磁気検出素子の構成を示す説明図であって、(a)Z1−Z2方向からみた図、および(b)Y1−Y2方向からみた図である。 デプスプロファイルの一例である。 図3のデプスプロファイルの一部を拡大したプロファイルである。 図4に基づき求めたMnの含有量に対するCrの含有量の比(Mn/Cr比)を、図4と横軸の範囲を等しくして示したグラフである。 本発明の第1の実施形態の変形例に係る磁気検出素子の構成を示す説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る磁気検出素子の構成を示す説明図であって、(a)Z1−Z2方向からみた図、および(b)Y1−Y2方向からみた図である。 本発明の第2の実施形態の変形例に係る磁気検出素子の構成を示す説明図であって、(a)Z1−Z2方向からみた図、および(b)Y1−Y2方向からみた図である。 本発明の第1の実施形態に係る磁気センサ30の回路ブロック図である。 磁気センサ30に使用される磁気検出素子11を示す平面図である。 本発明の第2の実施形態に係る磁気センサ31の回路ブロック図である。
<第1の実施形態に係る磁気検出素子>
図2は、本発明の第1の実施形態に係る磁気検出素子の構造を概念的に示す説明図である。
本実施形態に係る磁気検出素子11は、図1のY1−Y2方向に沿った感度軸を有する磁気抵抗効果膜を備える磁気検出部13と、磁気検出部13に対してその周囲、具体的には、磁気検出部13の感度軸に直交するX1−X2方向X2側に位置する磁界印加バイアス膜12Aと、磁気検出部13に対してX1−X2方向X1側に位置する磁界印加バイアス膜12Bとを有する。磁気抵抗効果膜は固定磁性層とフリー磁性層とを有する限り、その種類は限定されない。磁気抵抗効果膜は、巨大磁気抵抗効果膜(GMR膜)であってもよいし、トンネル磁気抵抗効果膜(TMR膜)であってもよい。他の実施形態においても同様である。
磁界印加バイアス膜12A、12Bは、Z1−Z2方向Z1側からZ1−Z2方向Z2側に向けて、下地層1、シード層2、永久磁石層3、反強磁性層4および保護層5が積層された構造を有する。永久磁石層3と反強磁性層4とが交換結合膜10を構成する。
永久磁石層3は、いわゆる硬磁性材料から構成されていればよく、80CoPt(Co80at%Pt20at%)などが例示される。永久磁石層3は保磁力Hcが軟磁性材料よりも高く、保磁力Hcを超える外部磁場が印加されると着磁して、外部磁場の印加が終了しても、所定の強さの残留磁化M0を生じる。この残留磁化M0が磁気抵抗効果膜のフリー磁性層に作用して、フリー磁性層の磁化の向きを揃えることができる。永久磁石層3は、反強磁性層4と交換結合することにより、交換結合磁界Hexが生じるのみならず、永久磁石層3の保磁力Hcが、永久磁石層3を構成する材料の層の単独での保磁力Hc0よりも高くなる。したがって、永久磁石層3は、外部磁場が強い環境下にあってもその磁場によって着磁されにくい。したがって、本実施形態に係る磁界印加バイアス膜12A、12Bは強磁場耐性に優れる。
本実施形態に係る磁界印加バイアス膜12A、12Bの反強磁性層4は、永久磁石層3に近位な側からPtMn層4AおよびPtCr層4Bが積層されてなる。これら各層は、例えばスパッタ工程やCVD工程で成膜される。なお、磁界印加バイアス膜12A、12BのPtMn層4Aなど合金層を成膜する際には、合金を形成する複数種類の金属(PtMn層4Aの場合にはPtおよびMn)を同時に供給してもよいし、合金を形成する複数種類の金属を交互に供給してもよい。前者の具体例として合金を形成する複数種類の金属の同時スパッタが挙げられ、後者の具体例として異なる種類の金属膜の交互積層が挙げられる。合金を形成する複数種類の金属の同時供給が交互供給よりも交換結合磁界Hexを高めることにとって好ましい場合がある。
反強磁性層4は、成膜後、アニール処理されることにより規則化し、永久磁石層3と交換結合して、永久磁石層3に交換結合磁界Hexが発生するとともに、永久磁石層3の保磁力Hcが、永久磁石層3単独での保磁力Hc0よりも高くなる。なお、上記のアニール処理により反強磁性層4を構成する各層の原子は相互拡散する。
本実施形態に係る交換結合膜10が備える反強磁性層4は、白金族元素およびNiからなる群から選ばれる一種または二種以上の元素XならびにMnおよびCrを含有するX(Cr−Mn)層を有する。図2に示される積層構造から得られる反強磁性層4は、元素XがPtであるから、Pt(Cr−Mn)層となる。このPt(Cr−Mn)層は、永久磁石層3に相対的に近位な第1領域と、永久磁石層3から相対的に遠位な第2領域とを有し、第1領域におけるMnの含有量は、第2領域におけるMnの含有量よりも高い。このような構造を有するPt(Cr−Mn)層は、積層されたPtMn層4AおよびPtCr層4Bがアニール処理を受けることにより形成される。スパッタリングしながら表面分析を行うことにより、構成元素の深さ方向の含有量分布(デプスプロファイル)を得ることができる。
図3は、本実施形態に係る交換結合膜10と同様の構成を備える交換結合膜10を含む膜のデプスプロファイルの一例である。この膜における交換結合膜は、固定磁性層と反強磁性層とからなる。図3に示されるデプスプロファイルは、以下の構成を備えた膜に対して、15kOeの磁場中において350℃で20時間アニール処理した膜から得られたものである。()内の数値は膜厚(Å)を示す。
基板/下地層:NiFeCr(40)/非磁性材料層:[Cu(40)/Ru(20)]/固定磁性層:Co40at%Fe60at%(20)/反強磁性層[IrMn層:Ir22at%Mn78at%(10)/PtMn層:Pt50at%Mn50at%(16)/PtCr層:Pt51at%Cr49at%(300)]/保護層:Ta(100)
図3のデプスプロファイルは、具体的には、保護層側からアルゴンスパッタリングしながらオージェ電子分光装置により表面分析を行うことによって得られた、深さ方向におけるPt,Ir,CrおよびMnの含有量分布からなる。アルゴンによるスパッタ速度はSiO換算で求め、1.1nm/分であった。
図4は、図3の一部を拡大したものである。図3および図4のいずれについても、固定磁性層および非磁性材料層の深さ位置を確認するために、Co(固定磁性層の構成元素の1つ)の含有量分布およびRu(非磁性材料層の反強磁性層側を構成する元素)の含有量分布についてもデプスプロファイルに含めてある。
図3に示されるように、反強磁性層の厚さは30nm程度であって、白金族元素およびNiからなる群から選ばれる一種または二種以上の元素XとしてのPtおよびIrとMnおよびCrとを含有するX(Cr−Mn)層を備え、具体的には(Pt−Ir)(Cr−Mn)層からなるものである。そして、X(Cr−Mn)層((Pt−Ir)(Cr−Mn)層)は、固定磁性層に相対的に近位な第1領域R1と、固定磁性層から相対的に遠位な第2領域R2とを有し、および第1領域R1におけるMnの含有量は、第2領域R2におけるMnの含有量よりも高い。このような構造は、XCrからなる層およびXMnからなる層などを適宜積層して多層積層体を形成し、この多層積層体に対して上記のようなアニール処理を行うことにより得ることができる。
図5は、デプスプロファイルにより求められた各深さのMnの含有量およびCrの含有量に基づき算出された、Mnの含有量のCrの含有量に対する比(Mn/Cr比)を、図4と横軸の範囲を等しくして示したグラフである。図5に示される結果に基づき、本明細書において、Mn/Cr比が0.1となる深さを第1領域R1と第2領域R2との境界とする。すなわち、反強磁性層において、固定磁性層に近位な領域でMn/Cr比が0.1以上の領域を第1領域R1と定義し、反強磁性層における第1領域以外の領域を第2領域と定義する。この定義に基づくと、図3に示されるデプスプロファイルにおいて第1領域R1と第2領域R2との境界は深さ44.5nm程度に位置する。
Mn/Cr比が大きいことは交換結合磁界Hexの大きさに影響を与えるのみならず、Mn/Cr比が大きいほど、Hex/Hcの値が正の値で絶対値が大きくなりやすい。具体的には、第1領域R1は、Mn/Cr比が0.3以上の部分を有することが好ましく、Mn/Cr比が0.7以上の部分を有することがより好ましく、Mn/Cr比が1以上の部分を有することが特に好ましい。
このように第1領域R1にMnを相対的に多く含有するため、本実施形態に係る磁界印加バイアス膜12A、12Bは高い交換結合磁界Hexを発生させることができる。一方、第2領域R2においてMnの含有量が低く、相対的にCrの含有量が高いため、反強磁性層4は、高いブロッキング温度Tbを有する。このため、本実施形態に係る磁界印加バイアス膜12A、12Bは高温環境に置かれてもバイアス機能が喪失しにくい。
下地層1および保護層5は例えばタンタル(Ta)から構成される。シード層2は、Crなどから構成されていればよい。
上記の本実施形態に係る磁界印加バイアス膜12A、12Bの反強磁性層4では、PtMn層4Aが永久磁石層3に接するように積層され、このPtMn層4AにPtCr層4Bが積層されたが、PtMn層4Aは、XMn層(ただし、Xは白金族元素およびNiからなる群から選ばれる一種または二種以上の元素)の具体的な一例である。すなわち、磁界印加バイアス膜12A、12Bは、XMn層が単層構造であってXがPtである場合である。XはPt以外の元素であってもよいし、XMn層は複数の層が積層されてなるものであってもよい。そのようなXMn層の具体例として、XMn層がIrMn層からなる場合や、永久磁石層3に近位な側から、IrMn層およびPtMn層がこの順番で積層される場合が挙げられる。また別の具体例として、永久磁石層3に近位な側から、PtMn層、IrMn層およびPtMn層がこの順番で積層される場合が挙げられる。
上記の本実施形態に係る磁界印加バイアス膜12A、12Bでは、永久磁石層3に反強磁性層4が積層される構造を有しているが、積層順番が逆であって、反強磁性層4に永久磁石層3が積層される構造を有していてもよい。
上記の本実施形態に係る磁気検出素子11では、2つの磁界印加バイアス膜12A、12Bは、感度軸方向(Y1−Y2方向)と直交するX1−X2方向に並んで配置され、これらの永久磁石層3の着磁方向はいずれも、X1−X2方向に揃っている。このため、磁気検出部13の感度軸方向(Y1−Y2方向)と直交するようにバイアス印加軸の方向が位置する。特許文献2にも記載されるように、磁気検出素子11における磁気検出部13と2つの磁界印加バイアス膜12A、12Bとの相対位置や、2つの磁界印加バイアス膜12A、12Bの永久磁石層3の着磁方向を調整することにより、バイアス印加軸を任意の方向に設定することができる。
こうした配置によりバイアス印加軸を設定する具体例として、図6(a)に示されるように、2つの磁界印加バイアス膜12A、12Bの着磁方向はいずれもX1−X2方向X1側を向いているが、磁気検出部13のX1−X2方向X2側に位置する一方の磁界印加バイアス膜12AをY1−Y2方向Y1側に配置し、磁気検出部13のX1−X2方向X1側に位置する他方の磁界印加バイアス膜12BをY1−Y2方向Y2側に配置することにより、バイアス印加方向を、X1−X2方向X2側の向きからY1−Y2方向Y2側へと傾けることができる。
あるいは、図6(b)に示されるように、2つの磁界印加バイアス膜12A、12Bはいずれも磁気検出部13に対してX1−X2方向に並んで配置され、しかも2つの磁界印加バイアス膜12A、12Bの着磁方向はいずれもX1−X2方向X1側を向いているが、それぞれの磁界印加バイアス膜12A、12Bの形状を調整して、磁気検出部13のX1−X2方向X2側に位置する一方の磁界印加バイアス膜12AについてはY1−Y2方向Y2側に寄るほど磁気検出部13に近づくように配置し、磁気検出部13のX1−X2方向X1側に位置する他方の磁界印加バイアス膜12BについてはY1−Y2方向Y1側に寄るほど磁気検出部13に近づくように配置することにより、バイアス印加方向を、X1−X2方向X2側の向きからY1−Y2方向Y1側へと傾けることができる。
<第2の実施形態に係る磁気検出素子>
図7は、本発明の第2の実施形態に係る磁気検出素子の構造を概念的に示す説明図である。本実施形態では、図2に示す磁気検出素子11と機能が同じ層に同じ符号を付して、説明を省略する。
第2の実施形態に係る磁気検出素子111は、図7のY1−Y2方向に沿った感度軸を有する磁気検出部13と、磁気検出部13に対して感度軸に直交するX1−X2方向X2側に位置する磁界印加バイアス膜121Aと、磁気検出部13に対してX1−X2方向X1側に位置する磁界印加バイアス膜121Bとを有する。
磁界印加バイアス膜121A、121Bは、永久磁石層3と反強磁性層41とが交換結合膜101を構成するなど、第1の実施形態に係る磁気検出素子11の磁界印加バイアス膜12A、12Bと共通の基本構造を有するが、反強磁性層41の構造が異なっている。
磁界印加バイアス膜121A、121Bの反強磁性層41は、XCr層41AとXMn層41Bとが交互に三層積層された交互積層構造(ただし、XおよびXはそれぞれ白金族元素およびNiからなる群から選ばれる一種または二種以上の元素であり、XとXとは同じでも異なっていてもよい)である。これら各層は、例えばスパッタ工程やCVD工程で成膜される。反強磁性層4は、成膜後、アニール処理されることにより規則化し、永久磁石層3と交換結合して、永久磁石層3に交換結合磁界Hexが発生するとともに、永久磁石層3の保磁力Hcが、永久磁石層3単独での保磁力Hc0よりも高くなる。
図7には、XCr層41AとXMn層41Bとが三層以上積層された交互積層構造の一態様として、XCr層41A/XMn層41B/XCr層41Aの三層構造であってXCr層41Aが永久磁石層3に接する反強磁性層41を示した。しかし、XCr層41AとXMn層41Bとを入れ替えた、XMn層41B/XCr層41A/XMn層41Bの三層構造としてもよい。この三層構造の場合、XMn層41Bが永久磁石層3に接する。反強磁性層41に係る層数が4以上である場合の形態については、後述する。
Cr層41Aが永久磁石層3に最近位である場合には、保護層5側のXCr層41Aの膜厚D1を、永久磁石層3に接するXCr層41Aの膜厚D3よりも大きくすることが、交換結合磁界Hexを高くする観点から好ましい。また、反強磁性層41のXCr層41Aの膜厚D1は、XMn層41Bの膜厚D2よりも大きいことが好ましい。膜厚D1と膜厚D2の比(D1:D2)は、5:1〜100:1がより好ましく、10:1〜50:1がさらに好ましい。膜厚D1と膜厚D3の比(D1:D3)は、5:1〜100:1がより好ましく、10:1〜50:1がさらに好ましい。
なお、XMn層41Bが永久磁石層3に最近位であるXMn層41B/XCr層41A/XMn層41Bの三層構造の場合には、永久磁石層3に最近位なXMn層41Bの膜厚D1と保護層5側のXMn層41Bの膜厚D2とを等しくしてもよい。
交換結合磁界Hexを高くする観点から、XCr層41AのXはPtが好ましく、XMn層41BのXは、PtまたはIrが好ましく、Ptがより好ましい。XCr層41AをPtCr層とする場合には、PtCr100at%−X(Xは45at%以上62at%以下)であることが好ましく、X Cr100at%−X(Xは50at%以上57at%以下)であることがより好ましい。同様の観点から、XMn層41Bは、PtMn層が好ましい。
図8に本発明の第2の実施形態の変形例に係る磁気検出素子112の膜構成を示す説明図が示されている。本例では、図7に示す磁気検出素子111と機能が等しい層に同じ符号を付して、説明を省略する。磁気検出素子112においては、永久磁石層3と反強磁性層42とが交換結合膜101Aを構成する。
図8に示す磁気検出素子112が図7の磁気検出素子111と相違している点は、反強磁性層42に係る層数が4以上であり、XCr層41AとXMn層41B(図7参照)とからなるユニットが複数積層されたユニット積層部を有する点である。図8では、XCr層41A1とXMn層41B1とからなるユニット積層部U1からXCr層41AnとXMn層41Bnとからなるユニット4Unまで、n層積層されたユニット積層部4U1〜4Unを有している(nは2以上の整数)。
ユニット積層部4U1〜4Unにおける、XCr層4A1、・・・XCr層41Anは、それぞれ同じ膜厚D1であり、XMn層4B1、・・・XMn層41Bnも、それぞれ同じ膜厚D2である。同じ構成のユニット積層部4U1〜4Unを積層し、得られた積層体をアニール処理することにより、交換結合膜101Aの永久磁石層3に高い交換結合磁界Hexおよび高い保磁力Hcを発生させること、ならびに反強磁性層42の高温安定性を高めることが実現される。
なお、図8の反強磁性層42は、ユニット積層部41U1〜41UnとXCr層41Aとからなり、XCr層41Aが永久磁石層3に接しているが、ユニット積層部41U1〜41Unのみからなるものであってもよい。ユニット積層部41U1〜41Unのみからなる積層体から形成された反強磁性層42は、XMn層41Bnが永久磁石層3に接する。
ユニット積層部41U1〜41Unの積層数は、反強磁性層42、膜厚D1および膜厚D2の大きさに応じて、設定することができる。例えば、膜厚D1が5〜15Å、膜厚D1が30〜40Åの場合、高温環境における交換結合磁界Hexを高くするために、積層数は、3〜15が好ましく、5〜12がより好ましい。
<第1の実施形態に係る磁気センサ>
続いて、第1の実施形態に係る磁気センサについて説明する。図9に、図2に示す磁気検出素子11を組み合わせた磁気センサ(磁気検出装置)30が示されている。図9では、感度軸方向S(図9では黒矢印にて示されている。)が異なる磁気検出素子11を、それぞれ11Xa,11Xb,11Ya,11Ybの異なる符号を付して区別している。磁気センサ30では、複数の磁気検出素子11Xa,11Xb,11Ya,11Ybが同一基板上に設けられている。
図9に示す磁気センサ30は、フルブリッジ回路32Xおよびフルブリッジ回路32Yを有している。フルブリッジ回路32Xは、2つの磁気検出素子11Xaと2つの磁気検出素子11Xbとを備えており、フルブリッジ回路32Yは、2つの磁気検出素子11Yaと2つの磁気検出素子11Ybとを備えている。磁気検出素子11Xa,11Xb,11Ya,11Ybはいずれも、図9に示した磁気検出素子11であって磁界印加バイアス膜12A,12Bを備えている。これらを特に区別しない場合、以下適宜、磁気検出素子11と記す。
フルブリッジ回路32Xとフルブリッジ回路32Yとは、検出磁場方向を異ならせるために、図9中に黒矢印で示した感度軸方向Sが異なる磁気検出素子11を用いたものであって、磁場を検出する機構は同じである。そこで、以下では、フルブリッジ回路32Xを用いて磁場を検出する機構を説明する。
図9では白抜き矢印にて示されるように、磁気検出素子11Xa,11Xbはバイアス印加方向BがいずれもBYa−BYb方向BYa側を向いている。これは、磁気検出素子11Xa,11Xbが次のように構成されているためである。すなわち、磁気検出素子11Xa,11Xbのそれぞれが備える2つの磁界印加バイアス膜12A,12Bの永久磁石層3は、いずれもBYa−BYb方向BYa側の向きに着磁され、磁気検出素子11Xa,11Xbのそれぞれについて、磁界印加バイアス膜12A,磁気検出部13および磁界印加バイアス膜12BがBYa−BYb方向に並ぶように配置されている。一方、磁気検出素子11Ya,11Ybはバイアス印加方向BがいずれもBXa−BXb方向BXa側を向いている。これは、磁気検出素子11Ya,11Ybが次のように構成されているためである。すなわち、磁気検出素子11Ya,11Ybのそれぞれが備える2つの磁界印加バイアス膜12A,12Bの永久磁石層3は、いずれもBXa−BXb方向BXa側の向きに着磁され、磁気検出素子11Ya,11Ybのそれぞれについて、磁界印加バイアス膜12A,磁気検出部13および磁界印加バイアス膜12BがBXa−BXb方向に並ぶように配置されている。
フルブリッジ回路32Xは、第1の直列部32Xaと第2の直列部32Xbが並列に接続されて構成されている。第1の直列部32Xaは、磁気検出素子11Xaと磁気検出素子11Xbとが直列に接続されて構成され、第2の直列部32Xbは、磁気検出素子11Xbと磁気検出素子11Xaとが直列に接続されて構成されている。
第1の直列部32Xaを構成する磁気検出素子11Xaと、第2の直列部32Xbを構成する磁気検出素子11Xbに共通の電源端子33に、電源電圧Vddが与えられる。第1の直列部32Xaを構成する磁気検出素子11Xbと、第2の直列部32Xbを構成する磁気検出素子11Xaに共通の接地端子34が接地電位GNDに設定されている。
フルブリッジ回路32Xを構成する第1の直列部32Xaの中点35Xaの出力電位(OutX1)と、第2の直列部32Xbの中点35Xbの出力電位(OutX2)との差動出力(OutX1)−(OutX2)がX方向の検知出力(検知出力電圧)VXsとして得られる。
フルブリッジ回路32Yも、フルブリッジ回路32Xと同様に作用することで、第1の直列部32Yaの中点35Yaの出力電位(OutY1)と、第2の直列部32Ybの中点35Ybの出力電位(OutY2)との差動出力(OutY1)―(OutY2)がY方向の検知出力(検知出力電圧)VYsとして得られる。
図9に黒矢印で示すように、フルブリッジ回路32Xを構成する磁気検出素子11Xaおよび磁気検出素子11Xbの感度軸方向Sと、フルブリッジ回路32Yを構成する磁気検出素子11Yaおよび各磁気検出素子11Ybの感度軸方向Sとは互いに直交している。
図9に示す磁気センサ30では、磁気検出素子11のフリー磁性層は、外部磁場Hが印加されていない状態では、バイアス印加方向Bに沿った方向に磁化された状態にある。外部磁場Hが印加されると、それぞれの磁気検出素子11のフリー磁性層の磁化の向きが外部磁場Hの方向に倣うように変化する。このとき、永久磁石層3の固定磁化方向(感度軸方向S)と、フリー磁性層の磁化方向との、ベクトルの関係で抵抗値が変化する。
例えば、外部磁場Hが図9に示す方向に作用したとすると、フルブリッジ回路32Xを構成する磁気検出素子11Xaでは感度軸方向Sと外部磁場Hの方向が一致するため電気抵抗値は小さくなり、一方、磁気検出素子11Xbでは感度軸方向と外部磁場Hの方向が反対向きであるため電気抵抗値は大きくなる。この電気抵抗値の変化により、検知出力電圧VXs=(OutX1)−(OutX2)が極大となる。外部磁場Hが紙面に対して右向き(BXa−BXb方向BXb側の向き)に変化するにしたがって、検知出力電圧VXsが低くなっていく。そして、外部磁場Hが図9の紙面に対して上向き(BYa−BYb方向BYa側の向き)または下向き(BYa−BYb方向BYb側の向き)になると、検知出力電圧VXsがゼロになる。
一方、フルブリッジ回路32Yでは、外部磁場Hが図9に示すように紙面に対して左向き(BXa−BXb方向BXa側の向き)のときは、全ての磁気検出素子11で、フリー磁性層の磁化の向き(バイアス印加方向Bに倣った向きとなっている)が、感度軸方向S(固定磁化方向)に対して直交するため、磁気検出素子11Yaおよび磁気検出素子11Xbの電気抵抗値は同じである。したがって、検知出力電圧VYsはゼロである。図9において外部磁場Hが紙面に対して下向き(BYa−BYb方向BYb側の向き)に作用すると、フルブリッジ回路32Yの検知出力電圧VYs=(OutY1)―(OutY2)が極大となり、外部磁場Hが紙面に対して上向き(BYa−BYb方向BYa側の向き)に変化するにしたがって、検知出力電圧VYsが低くなっていく。
このように、外部磁場Hの方向が変化すると、それに伴いフルブリッジ回路32Xおよびフルブリッジ回路32Yの検知出力電圧VXsおよびVYsも変動する。したがって、フルブリッジ回路32Xおよびフルブリッジ回路32Yから得られる検知出力電圧VXsおよびVYsに基づいて、検知対象の移動方向や移動量(相対位置)を検知することができる。
図9には、X方向と、X方向に直交するY方向の磁場を検出可能に構成された磁気センサ30を示した。しかし、X方向またはY方向の磁場のみを検出するフルブリッジ回路32Xまたはフルブリッジ回路32Yのみを備えた構成としてもよい。
図10に、磁気検出素子11Xaと磁気検出素子11Xbの平面構造が示されている。図9と図10は、BXa−BXb方向がX方向である。図10(A)(B)に、磁気検出素子11Xa,11Xbの固定磁化方向Pが矢印で示されている。磁気検出素子11Xaと磁気検出素子11Xbでは、固定磁化方向PがX方向であり、互いに逆向きである。この固定磁化方向Pは感度軸方向Sに等しい向きである。
図10に示すように、磁気検出素子11Xaおよび磁気検出素子11Xbの磁気検出部13は、ストライプ形状の素子部102を有している。各素子部102は複数の金属層(合金層)が積層されて巨大磁気抵抗効果(GMR)膜が構成されている。素子部102の長手方向がBYa−BYb方向に向けられている。素子部102は複数本が平行に配置されており、隣り合う素子部102の図示右端部(BYa−BYb方向BYa側の端部)が導電部103aを介して接続され、隣り合う素子部102の図示左端部(BYa−BYb方向BYa側の端部)が導電部103bを介して接続されている。素子部102の図示右端部(BYa−BYb方向BYa側の端部)と図示左端部(BYa−BYb方向BYa側の端部)では、導電部103a,103bが互い違いに接続されており、素子部102はいわゆるミアンダ形状に連結されている。磁気検出素子11Xa,11Xbの、図示右下部の導電部103aは接続端子104aと一体化され、図示左上部の導電部103bは接続端子104bと一体化されている。
なお、図9および図10に示す磁気センサ30では、磁気検出部13を構成する磁気抵抗効果膜をトンネル磁気抵抗効果(TMR)膜に置き換えることが可能である。
<第2の実施形態に係る磁気センサ>
図11は、本発明の第2の実施形態に係る磁気センサの構成を概念的に示す説明図である。本実施形態では、図9に示す磁気センサ30と機能が同じ層に同じ符号を付して、説明を省略する。
図11に示される磁気センサ31は、感度軸方向Sおよびバイアス印加方向Bが図9に示される磁気センサ30と異なる。磁気センサ31では、磁気検出素子11Xaおよび磁気検出素子11Xbの感度軸方向SはいずれもBXa−BXb方向BXa側を向いている。磁気検出素子11Xaのバイアス印加方向BはBXa−BXb方向BXa側の向きからBYa−BYb方向BYa側に傾いた向きとなっている。これは、図6(a)に示されるように、磁界印加バイアス膜12Aおよび磁界印加バイアス膜12Bの磁気検出部13に対する相対位置を、着磁方向(BXa−BXb方向)に対して直交する方向(BYa−BYb方向)で互いに逆向きに配置しているためである。一方、磁気検出素子11Xbのバイアス印加方向BはBXa−BXb方向BXa側の向きからBYa−BYb方向BYb側に傾いた向きとなっている。これは、磁気検出素子11Xbにおける磁界印加バイアス膜12Aおよび磁界印加バイアス膜12Bの磁気検出部13に対する相対位置を、磁気検出素子11Xbの場合とは反対向きに設定することにより実現されている。
同様に、磁気検出素子11Yaおよび磁気検出素子11Ybの感度軸方向SはいずれもBYa−BYb方向BYa側を向いているが、磁気検出素子11Yaのバイアス印加方向Bと磁気検出素子11Ybのバイアス印加方向Bとは、それぞれの磁界印加バイアス膜12Aおよび磁界印加バイアス膜12Bの磁気検出部13に対する相対位置を異ならせることにより、異なった向きに設定されている。
このように、磁気検出素子11Xaおよび磁気検出素子11Xbの感度軸方向Sを揃え、磁気検出素子11Yaおよび磁気検出素子11Ybの感度軸方向Sを揃えることにより、磁気センサ31を製造する際の磁場中製膜の回数が少なくなるため、磁気センサ31のオフセット特性を高めやすくなる。
なお本例では、図6(a)に示される構成を用いて磁気センサ31のバイアス印加方向Bを設定したが、磁界印加バイアス膜12Aおよび磁界印加バイアス膜12Bの磁気検出部13に対する相対位置を図6(b)に示されるように調整することにより、磁気センサ31のバイアス印加方向Bを設定してもよい。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。例えば、上記の交換結合膜では、PtMn層4Aが永久磁石層3に接している、すなわち、積層された永久磁石層3の上に直接的にPtMn層4Aが積層されているが、PtMn層4Aと永久磁石層3との間にMnを含有する他の層(Mn層およびIrMn層が例示される。)が積層されてもよい。また、上記の実施形態では、反強磁性層4,41,42よりも永久磁石層3が下地層1に近位に位置するように積層されているが、永久磁石層3よりも反強磁性層4,41,42が下地層1に近位に位置するように積層されてもよい(実施例1参照)。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
(実施例1)
以下の膜構成を備えた磁界印加バイアス膜12Aを製造した。以下の実施例および比較例では()内の数値は膜厚(Å)を示す。磁界印加バイアス膜12Aを350℃で20時間アニール処理し、永久磁石層3と反強磁性層4との間に交換結合を生じさせた。
基板/下地層1:Ta(40)/シード層2:Cr(40)/永久磁石層3:Co80at%Pt20at%(30)/反強磁性層4:[PtMn層4A:Pt50at%Mn50at%(20)/PtCr層4B:Pt50at%Cr50at%(280)]/保護層6:Ta(40)
(比較例1)
図2に示される磁界印加バイアス膜12Aにおいて、反強磁性層4を積層せず、バイアス機能が永久磁石層3によってのみ発揮される磁界印加バイアス膜を製造した。
VSM(振動試料型磁力計)を用いて、実施例1および比較例1に係る磁界印加バイアス膜12Aの磁化曲線を測定し、得られたヒステリシスループから、交換結合磁界Hex(単位:Oe)および保磁力Hc(単位:Oe)を求めた。実施例1については、アニール前の状態においても、同様の測定を行った。結果を表1に示す。
表1に示されるように、アニール処理を行うことにより、永久磁石層3に交換結合磁界Hexが生じるだけでなく、比較例1の場合、すなわち、永久磁石層3のみによる保磁力Hc0よりも高い保磁力Hcが生じることが確認された。
実施例1係る磁界印加バイアス膜12Aについて、環境温度を変化させながら磁化曲線を測定し、交換結合磁界Hexの強さを測定した。この結果に基づき、ブロッキング温度Tb(単位:℃)、交換結合磁界Hexの強さが室温時の1/2になる温度Th(単位:℃)、および測定温度が300℃の場合の交換結合磁界Hexの強さの室温時の強さに対する比(300℃/室温)Rを求めた。その結果、ブロッキング温度Tbは500℃であり、Thは410℃であり、Rは0.81であった。これらの結果から、実施例1に係る磁界印加バイアス膜12Aは、ブロッキング温度Tbが500℃であってリフロー工程の想定温度である300℃よりも十分に高いことが確認された。このため、300℃においても室温時の80%程度またはそれ以上の交換結合磁界Hexを維持することができた。したがって、本発明に係る磁界印加バイアス膜は、高温環境に置かれてもバイアス機能が喪失しにくく、かつ強磁場耐性を有する。
Hex 交換結合磁界
Hc、Hc0 保磁力
M0 残留磁化
11,11Xa,11Xb,11Ya,11Yb,111,112 磁気検出素子
12A,12B,121A,121B,122A,122B 磁界印加バイアス膜
13 磁気検出部
1 下地層
2 シード層
3 永久磁石層
4,41,42 反強磁性層
4A PtMn層
4B PtCr層
41A,41A1,41An XCr層
41B,41B1,41Bn XMn層
4U1,4Un ユニット積層部
5 保護層
10,101,101A 交換結合膜
R1 第1領域
R2 第2領域
D1,D3 XCr層41Aの膜厚
D2 XMn層41Bの膜厚
30,31 磁気センサ(磁気検出装置)
32X,32Y フルブリッジ回路
33 電源端子
Vdd 電源電圧
34 接地端子
GND 接地電位
32Xa フルブリッジ回路32Xの第1の直列部
35Xa 第1の直列部32Xaの中点
OutX1 第1の直列部32Xaの中点35Xaの出力電位
32Xb フルブリッジ回路32Xの第2の直列部
35Xb 第2の直列部32Xbの中点
OutX2 第2の直列部32Xbの中点35Xbの出力電位
VXs X方向の検知出力(検知出力電圧)
32Ya フルブリッジ回路32Yの第1の直列部
35Ya 第1の直列部32Yaの中点
OutY1 第1の直列部32Yaの中点35Yaの出力電位
32Yb フルブリッジ回路32Y第2の直列部
35Yb 第2の直列部32Ybの中点
OutY2 第2の直列部32Ybの中点35Ybの出力電位
VYs Y方向の検知出力(検知出力電圧)
H 外部磁場
S 感度軸方向
B バイアス印加方向
102 素子部
103a,103b 導電部
104a,104b 接続端子

Claims (15)

  1. 永久磁石層と前記永久磁石層に積層された反強磁性層とを有する交換結合膜を備えた磁界印加バイアス膜であって、
    前記反強磁性層は、白金族元素およびNiからなる群から選ばれる一種または二種以上の元素XならびにMnおよびCrを含有するX(Cr−Mn)層を備え、
    前記X(Cr−Mn)層は、前記永久磁石層に相対的に近位な第1領域と、前記永久磁石層から相対的に遠位な第2領域とを有し、
    前記第1領域におけるMnの含有量は、前記第2領域におけるMnの含有量よりも高いこと
    を特徴とする磁界印加バイアス膜。
  2. 前記第1領域が前記永久磁石層に接している、請求項1に記載の交換結合膜。
  3. 前記第1領域は、Mnの含有量のCrの含有量に対する比であるMn/Cr比が0.3以上の部分を有する、請求項1または請求項2に記載の磁界印加バイアス膜。
  4. 前記第1領域は、前記Mn/Cr比が1以上である部分を有する、請求項3に記載の磁界印加バイアス膜。
  5. 前記反強磁性層は、PtCr層と、前記PtCr層よりも前記永久磁石層に近位なXMn層(ただし、Xは白金族元素およびNiからなる群から選ばれる一種または二種以上の元素)とが積層されてなる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の磁界印加バイアス膜。
  6. 前記反強磁性層は、PtCr層とPtMn層とがこの順番で前記PtMn層が前記永久磁石層に近位になるように積層されてなる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の磁界印加バイアス膜。
  7. 前記PtMn層よりも前記永久磁石層に近位にさらにIrMn層が積層された、請求項6に記載の磁界印加バイアス膜。
  8. 永久磁石層と前記永久磁石層に積層された反強磁性層とを有する交換結合膜を備えた磁界印加バイアス膜であって、
    前記反強磁性層は、XCr層(ただし、Xは白金族元素およびNiからなる群から選ばれる一種または二種以上の元素)とXMn層(ただし、Xは白金族元素およびNiからなる群から選ばれる一種または二種以上の元素であって、Xと同じでも異なっていてもよい)とが交互に積層された三層以上の交互積層構造を有することを特徴とする磁界印加バイアス膜。
  9. 前記XがPtであり、前記XがPtまたはIrである、請求項8に記載の磁界印加バイアス膜。
  10. 前記反強磁性層は、XCr層とXMn層とからなるユニットが複数積層されたユニット積層部を有する、請求項9または請求項10に記載の磁界印加バイアス膜。
  11. 前記ユニット積層部における、前記XCr層および前記XMn層は、それぞれ同じ膜厚であり、前記XCr層の膜厚が、前記XMn層の膜厚よりも大きい、請求項10に記載の磁界印加バイアス膜。
  12. 前記XCr層の膜厚と前記XMn層の膜厚との比が、5:1〜100:1である、請求項11に記載の磁界印加バイアス膜。
  13. 固定磁性層およびフリー磁性層を含む磁気抵抗効果膜を有する磁気検出部と、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の磁界印加バイアス膜とを備える磁気検出素子であって、
    前記磁界印加バイアス膜は、前記フリー磁性層に外部磁場が印加されていない状態での前記フリー磁性層の磁化の向きを揃えるように、前記磁気検出部の周囲に配置される、磁気検出素子。
  14. 請求項13に記載の磁気検出素子を備えていることを特徴とする磁気検出装置。
  15. 同一基板上に請求項13に記載の磁気検出素子を複数備えており、
    複数の前記磁気検出素子には、前記固定磁性層の固定磁化方向が異なるものが含まれる請求項14に記載の磁気検出装置。
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