JPWO2019123633A1 - 音響計測システム及びパラメータ生成装置 - Google Patents
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Abstract
Description
なお、音の伝播特性とは、インパルス応答、伝達関数、伝播時間、距離減衰などの総称である。
実施の形態1.
図1は、本実施の形態によるパラメータ生成装置の適用例としてのエレベータシステムを示す構成図である。
パラメータ生成装置は、乗車カゴ1の上に搭載した音センサ2とコンピュータ3と計測対象4の近傍に設けた発音体5とにより構成される。乗車カゴ1はエレベータの乗車カゴであり、音センサ2はマイクロホンからなる。コンピュータ3は、USB端子とLAN端子を備え、USB端子には音センサ2が図示しないオーディオインタフェース回路を介して接続されている。LAN端子には、コンピュータ3によって制御される機器が接続されている。パラメータ生成装置は、例えば、図示のようなエレベータシステムに対する異常音診断装置のパラメータを生成する。
推定部7は、試験信号に含まれる単位信号の時間と強度の関係に基づいて、発音体5から音センサ2までの間の音の伝播特性を推定する機能を有している。模擬音合成部8は、音源データベース9に格納されている音源を用いて異常音の合成模擬音を生成する機能を有している。シミュレーション部10は、模擬音合成部8で生成された合成模擬音に基づいてパラメータを決定する機能を有している。パラメータ記憶部11は、シミュレーション部10で決定されたパラメータの記憶部である。
図5は、音響計測システムの動作を示すフローチャートである。
先ず測定部6は、発音体5に対して試験信号を送出し、発音体5から試験音を発生させる(ステップST1)。次に、音センサ2は、エレベータの乗車カゴ1を最下階と最上階との間で往復運転させた場合(ステップST2)の試験音を受音し(ステップST3)、これが測定部6に送られる。音センサ2で受音された試験音は測定部6から推定部7に送出され、推定部7では、伝播特性を推定し(ステップST4)、その推定結果である伝播特性を出力する(ステップST5)。
推定部7は、先ず、受音波形を時間周波数分析し、時間軸(フレームt)と周波数軸(周波数ビンf)に関する強度分布S(t,f)を求める(ステップST11)。時間周波数分析は、受音波形を互いにオーバーラップするフレームに分割し、各フレームに対し、FFT(高速フーリエ変換)により、周波数ビン毎の強度を求めることで行う。図7において、周期71は単位信号周期を示し、スペクトログラム72は測定信号のスペクトログラムを示している。また、特定周波数帯域73は、各フレームの全周波数のうち、信号強度を求めるための特定の周波数帯域である。
最後に、推定部7は検出したピークを結ぶピーク値包絡線75(図7参照)を異常音の強度として抽出し(ステップST15)、ピーク値包絡線75の信号を推定した伝播特性として出力する(ステップST16)。
ここで、本実施の形態で生成するパラメータとは、次のようなものである。
異常音診断装置は、機器が正常状態にあるときの作動音と、機器が異常状態にあるときの作動音に対して、それぞれ、機器の作動音が正常であること、あるいは、機器の作動音が異常であることを判定する装置である。このような異常音診断装置では、正常と異常を判定するためのパラメータとして、例えば、閾値を有している。
異常音診断装置以外にも、例えば、劣化音診断装置、異常個所推定装置、劣化個所推定装置においても、それぞれ、劣化音を診断し、異常個所、劣化個所を推定するためのパラメータを装置内に有している。これらのパラメータはそれぞれの装置にとって最適となるよう調整されることが必要である。そこで、本実施の形態では、これらのパラメータを設計及び調整するために合成模擬音を用いる。なお、異常音や劣化音のサンプルは、実際には、機器の故障頻度が少なく取得が困難であることが多いため、合成模擬音を用いる必要がある。
シミュレーション部10は、検出率及び誤検出率に影響を与えるパラメータとして、例えば、異常音診断装置が参照する閾値を調整する。異常音診断装置は、診断運転時の作動音を分析し、異常度を取得した後、異常度を閾値と比較し、異常の有無を判定する。従って、閾値は、異常音診断装置の性能である検出率と誤検出率を決定づける重要なパラメータである。
いま、閾値を表すベクトルをθ、異常度を表すベクトルをA、両者のベクトルの要素を指すインデックスをk(k=0,1,2,…,K、Kは次元数)とすると、シミュレーション部10は、あるkに対してA[k]>Θ[k]が成立つならば異常と判定し、そうでなければ、正常と判定する(下式参照)。
ここで、異常度ベクトルAは、次式のように計算される。
A=(Y−μ)/σ
また、Yは診断対象の作動音を分析して得られる特徴量ベクトル、μはその平均ベクトル、σは標準偏差ベクトルである。μとσは、正常時の作動音N個を分析して得られる特徴量(特徴ベクトル)X1,X2,…,XN(Nは正常時の作動音の個数)の平均と標準偏差である。
閾値θ[k]の最適値を決める一つの方法として、制限値93の下で、見逃し率91が最小となるように決めることができ、この場合、図中の点θ*[k]が最適値となる。
例えば、パラメータ生成装置を異常個所推定装置に適用した場合、異常箇所推定装置で推定すべき音源位置としては、例えば、エレベータにおける、乗車カゴ、ピット、カウンターウエイト、頂部などである。ここで、音源位置は異常音が発生している機器の昇降路内の設置位置、すなわち昇降路底面からの高さを意味する。異常個所推定装置は、音源位置推定パラメータを参照することにより音源位置を推定する。そこで、シミュレーション部10は、音源位置の推定に影響を与えるパラメータとして、異常個所推定装置が参照する音源位置推定パラメータであるニューラルネットワークの荷重とバイアスを最適化する。
その一例としては、異常個所推定装置は、診断時の作動音を分析して得られる異常度ベクトルから、エレベータのカゴ位置に対応する異常度の変化曲線である異常度曲線を求め、この異常度曲線をニューラルネットワークに入力し、音源位置の推定スコア「カゴ」、「ピット」、「カウンターウエイト」、「頂部」のスコアを得て、最大のスコアを有する識別結果を音源位置の推定結果として出力する。このニューラルネットワークの音源位置推定パラメータは、荷重とバイアスとからなり、音源位置が既知の合成模擬音を教師データとして用いて学習されたものである。
受音信号は、発音体から発した試験信号成分の他に、機器騒音(正常動作音)や外部騒音を騒音として含んでいる。特に、衝撃性の騒音は、その周波数成分が時間的に集中するため、ピークとして誤検出される可能性が高い。そこで、実施の形態2では、衝撃性の騒音による伝播特性推定に与える影響を除去するようにした音響計測システムを説明する。音響計測システム及びパラメータ生成装置としての図面上の構成は図2に示した構成と同様であるため、図2を用いて説明する。
図11は、実施の形態2における単位信号の配列を示す説明図である。図示のように、単位信号周期111で単位信号112の配列が推定部7で取得される。推定部7はこのような単位信号配列に対して時間集約処理を行う。図12は推定部7の動作を示すフローチャートである。
d(fc)=fc/(Fs/2)*Tw
ここで、Fsはサンプリング周波数、Twは単位信号の時間長(周期と一致)である。また、時間シフト量d(fc)をフレーム数(離散値)に換算したフレームシフト数nd(fc)は次式で計算される。
nd(fc)=int(d(fc)/fp+0.5)
ここで、fpはフレーム間隔(フレーム周期)、int(*)は引数*に対する整数化関数、0.5は整数化に伴う打切り誤差を削減するための数である。
従って、時間軸をシフトした強度分布S’(t,f=fc)は、次式で計算される。
S’(t,f=fc)=S(t+nd(fc),f=fc)
元の単位信号の時間周波数分布(図11に示す単位信号配列)は、図13に示される斜めの縞として表され、時間軸シフト後の時間集約信号は、図13中の縦の縞として表される。すなわち、単位信号周期131の単位信号132を時間軸シフトすることで、時間集約信号(シフト後単位信号)133が求められる。ここで、左向きの矢印はそれぞれの周波数における元の単位信号に対する時間シフト量(時間シフト量は、それぞれの周波数をfcとすると上述の計算されたnd(fc)に対応)を示す。
最後に、推定部7は、検出したピークを結ぶピーク値包絡線を抽出し(ステップST36)、時間シフトによる時刻の遅れを補正して(ステップST37)、推定した伝播特性として、出力する(ステップST38)。
このように、図14Aと図14Bを比較すると、周波数に依存する時間シフトの結果、推定される伝播特性において、衝撃性の外乱の影響が除去されることが分かる。
多重度1の単位信号配列を用いる実施の形態1、2では、ピーク値包絡線を構成するピークの間隔は、単位信号の周期となる。伝播特性の時刻に対する変化が速い場合、単位信号の周期よりも時間的に短い周期で伝播特性を計測する必要がある。そこで、実施の形態3として、伝播特性の時刻に対する変化が速い場合でも、伝播特性を良好に計測することができるようにした音響計測システムを説明する。なお、本実施の形態では、説明の煩雑さを避けるため、単位信号配列の多重度を2とした場合を説明するが、多重度が3以上、例えば8といった値でも適用可能である。音響計測システム及びパラメータ生成装置としての図面上の構成は図2に示した構成と同様であるため、図2を用いて説明する。
図15は、実施の形態3における単位信号の配列を示す説明図である。図示のように、多重度2の単位信号周期151で単位信号152の配列が推定部7で取得される。すなわち、単位信号周期151中に単位信号152が2個多重されている単位信号配列となっている。推定部7はこのような単位信号配列に対して時間集約処理を行う。図16は推定部7の動作を示すフローチャートである。ここでは多重度をmとしている。
時間シフト量d(fc)は、全周波数帯域をm分割し、fcが属するm分割帯域のインデックスixを求め、ixに応じて、次式のように計算する。
bw=(Fs/2)/m
ix=int(fc/bw)
d(fc)=(fc−bw*ix)/(Fs/2)*Tw
ここで、mは多重度、bwはm分割した帯域の帯域幅、ixはfcが属する帯域のインデックス、Fsはサンプリング周波数、Twは単位信号の時間長(周期と一致)である。
nd(fc)=int(d(fc)/fp+0.5)
ここで、fpはフレーム間隔(フレーム周期)、int(*)は引数*に対する整数化関数、0.5は整数化に伴う打切り誤差を削減するための数である。
従って、時間軸をシフトした強度分布S’(t,f=fc)は、次式で計算される。
S’(t,f=fc)=S(t+nd(fc),f=fc)
元の単位信号の時間周波数分布(図15に示す単位信号配列)は、図17に示される斜めの縞として表され、時間軸シフト後の時間集約信号は、図17中の縦の縞として表される。すなわち、多重度2の単位信号周期171の単位信号172を時間軸シフトすることで、多重度2の時間集約信号(シフト後単位信号)173が求められる。ここで、左向きの矢印はそれぞれの周波数における元の単位信号に対する時間シフト量(時間シフト量は、それぞれの周波数をfcとすると上述の計算されたnd(fc)に対応)を示す。
最後に、推定部7は、検出したピークを結ぶピーク値包絡線を抽出し(ステップST46)、時間シフトによる時刻の遅れを補正して(ステップST47)、推定した伝播特性として、出力する(ステップST48)。
また、上記各実施の形態では、発音体5を移動しない側(固定側)、音センサ2を移動する側(移動側)に設ける例を説明したが、これに限定されるものではなく、発音体5を移動側、音センサ2を固定側に設置する装置でも同様に適用可能である。例えば、交差点における車両事故音の監視装置では、交差点の信号柱に音センサ2を設置し、事故車両音を監視する構成であるが、これに対しても同様に適用可能である。
さらに、上記各実施の形態では、エレベータシステムへの適用例を説明したが、これ以外にも、プラントにおける移動体の音把握、移動ロボットによる音把握、車両やエスカレータ等の移動体を含む機器の音把握の構成に対しても同様に適用可能である。
Claims (7)
- 計測対象に設けた発音体と、
受音点に設けた受音体と、
各時刻で一つの周波数成分を有し、当該周波数成分の中心周波数が時間と共に変化する単位信号を時間軸上に配列した試験信号を前記発音体から前記受音体までの間を伝播させ、前記受音体で得られる試験信号を取得する測定部と、
前記試験信号に含まれる単位信号の時間と強度の関係に基づいて、前記発音体から前記受音体までの間の音の伝播特性を推定する推定部とを備えたことを特徴とする音響計測システム。 - 前記推定部は、前記単位信号を、当該単位信号の強度が同一時刻になるよう、周波数毎に時間軸をシフトさせた上で前記伝播特性を求めることを特徴とする請求項1記載の音響計測システム。
- 前記測定部は、前記試験信号として、それぞれタイミングをずらした複数の単位信号を時間軸上で多重した単位信号配列を用いることを特徴とする請求項1記載の音響計測システム。
- 前記推定部は、前記多重した単位信号配列の多重度に応じて周波数を分割し、分割毎に、前記単位信号の強度が同一時刻になるよう周波数毎に時間軸をシフトさせた上で前記伝播特性を求めることを特徴とする請求項3記載の音響計測システム。
- 前記単位信号を、時間引き延ばしパルス(TSP:Time Stretched Pulse)信号としたことを特徴とする請求項1記載の音響計測システム。
- 請求項1〜5のうちのいずれかに記載の音響計測システムを用い、
前記推定された伝播特性を用いて、前記計測対象が正常状態か異常状態かを判定するためのパラメータを生成することを特徴とするパラメータ生成装置。 - 前記推定部で推定された伝播特性を用いて合成模擬音を生成する模擬音合成部と、
前記合成模擬音を用いて前記パラメータを決定するシミュレーション部とを備えたことを特徴とする請求項6記載のパラメータ生成装置。
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