JPWO2019111427A1 - 切片封入用デバイスおよびその製造方法と用途 - Google Patents

切片封入用デバイスおよびその製造方法と用途 Download PDF

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Abstract

本発明の切片封入用デバイスは、有機高分子材料からなるフィルム状のベース層と、有機高分子材料からなるフィルム状のカバー層を有する。ベース層の一方の主面は、粘着性を有し、切片を配置するための配置面である。カバー層の一方の主面は、ベース層の配置面に配置された切片を覆いかつ配置面に貼り付くためのカバー面である。前記配置面およびカバー面のうち、少なくとも一方が、互いに隣り合って並んだ複数の切片を包含する広さを持っており、他方が、前記の互いに隣り合って並んだ複数の切片を個別に密封しかつ個別に該密封を解除するように、前記一方に対して着脱可能な構造を有する。

Description

本発明は、組織試料から薄く順次スライスされた切片を密封し標本とするための切片封入用デバイスに関する。また、本発明は、前記切片封入用デバイスの製造方法、および、該切片封入用デバイスを用いて作成された標本中の多数の切片の配列中から病変部分(腫瘍細胞など)を含んだ切片を特定する方法に関する。
組織形態学や病理学の分野では長い間、組織標本をパラフィンなどに包埋して組織試料とし、ミクロトーム(薄切装置)を用いてこれを数μmにスライスした切片をガラススライドに貼り付け、化学的に染色、薄いカバーガラスで封入剤と共に密封、顕微鏡で観察(検鏡)、保存するという手法が取られてきた。
病理診断業務においては、通常、最も基本的な組織の染色方法であるヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)を施し、まず形態学的な観察で診断の絞り込みを行い、必要に応じて特殊染色、免疫染色、蛍光 in situ ハイブリダイゼーションや次世代遺伝子シークエンス(NGS)などの遺伝子解析といった追加検査を逐次オーダーし、確定診断を下すというフローを取る。これには、余分な検査を行わないという医療経済的な理由だけでなく、将来の検査や研究に必要な組織を可能な限り保存するために、徒に切片をブロックから切り取らないようにするという目的もある。
このとき、追加薄切された切片に、検査対象となる細胞(腫瘍細胞など)が含まれているか否かは検査結果に大きな影響を与える。例えば、初めのHE染色標本に腫瘍細胞があり、この腫瘍の診断を確定するために追加染色をしたものの追加薄切された切片に同じ腫瘍細胞が含まれていなかった場合、その追加検査自体が無駄になる、もしくは偽陰性として誤った診断を下してしまう可能性がある。実際には、染色を施していない(未染)切片に腫瘍細胞が含まれているか否かの直接的な確認は難しいので、対象の未染切片(1枚、もしくは複数)に対してz軸方向で上下関係にある切片にHE染色を施し、検鏡して間接的に判断する。
しかし、追加の薄切切片のスライスの際には、ミクロトームと組織試料の調節のため試料の余剰な削り取りがやむを得ず、追加薄切の度に試料が損耗される。特に生検のような1mm以下のサイズにもなるような小組織の場合には、追加薄切の際に腫瘍細胞が思いがけず全て削り取られてしまう可能性が高い。現状この問題に対しては、初めの薄切の際に予め余分に切片を薄切し、染色や検査を施さずに取り置きし(未染スライド)、追加オーダーの際に染色するという手法が現在では用いられている。ただし、未染スライドの組織は空気の酸化ストレスや紫外線ストレスに曝されやすく、時間が経つほど免疫染色や遺伝子解析での精度が逓減するため、すぐに使用されなければ廃棄されることが多い。例えば、ミクロトームによって組織試料から切片を連続的に切り出し、1枚の長い粘着テープに順次切片を貼り付け、テープを巻き取ることによって切片を保存する装置が開示されている(特許文献1)。しかし、該装置はテープに接着した切片を密封しておらず、空気に曝露されたままという問題が解決されていない。
このような組織の保存や利用方法に関する問題は、現代の最先端の研究や医療のネックとなる可能性がある。近年、実臨床においては、初期の抗癌治療に対して抵抗性となった患者に対し、数年以上過去の組織を再度解析してオーダーメイド治療を検討する症例が増えている。臨床研究においては、生存解析や治療効果判定などの予後解析は重要な指標の一つであるが、そのためには研究対象の数年から十数年の予後データが必要となる。そのため数年以上過去の病理標本を参照し、新たな手法や技術を用いて組織を再度解析することは多い。現在の手法では、過去の組織の保存や利用方法に上記のような課題があり、解析の際にエラーや誤ったデータの取得につながる可能性が高い。
特表2001−502430号公報
本発明が解決しようとする課題は、組織ブロックなどの組織試料の切片を効率的に利用し、試料に含まれる腫瘍細胞などの病変部分などのタンパク質や遺伝子を保存し、必要な際に容易に用いることができるように、前記試料の切片の保存を可能にすることである。従って、本発明は、前記試料の切片封入用デバイス、前記切片封入用デバイスを用いた切片封入標本の製造方法および病変部分を含んだ切片を特定する方法を提供することを目的とする。
本発明の主たる構成は、次のとおりである。
[1]有機高分子材料からなるフィルム状のベース層を有し、該ベース層の一方の主面は、粘着性を有し、かつ、切片を配置するための配置面であり、
有機高分子材料からなるフィルム状のカバー層を有し、該カバー層の一方の主面は、前記ベース層の配置面に配置された前記切片を覆い、かつ、前記配置面に貼り付くための、カバー面であり、
前記ベース層の配置面および前記カバー層のカバー面のうちの少なくとも一方が、互いに隣り合って並んだ複数の切片を包含する広さを持っており、
前記ベース層の配置面および前記カバー層のカバー面のうちの他方が、前記の互いに隣り合って並んだ複数の切片を個別に密封しかつ個別に該密封を解除するように、前記一方に対して着脱可能な構造を有する、
切片封入用デバイス。
[2]前記ベース層の一方の主面は、粘着性を有し、かつ、複数の切片を間隔をおいて配置するための配置面であり、
前記カバー層は、前記配置面上に配置された複数の切片のそれぞれの周囲を個別に取り囲む複数のフレーム部と、各フレーム部によって囲まれた各切片をそれぞれに覆う蓋部とを有し、
各フレーム部同士は互いにつながっており、
各蓋部は、各フレーム部によって囲まれた各切片を覆って密封し、各切片から離れるように、各フレーム部に対して着脱可能または可動である、
前記[1]に記載の切片封入用デバイス。
[3]前記カバー層のフレーム部と蓋部が、同じ1枚のフィルム中に含まれた互いに異なる部分であり、各フレーム部に囲まれた部分が各蓋部であり、
各蓋部の外周のうちの一部または全部が各フレーム部から切断され、それにより、各蓋部は、各フレーム部に対して着脱可能または可動である、
前記[2]に記載の切片封入用デバイス。
[4]フレーム部と蓋部とが、部分的に互いにつながっており、該つながっている部分は分断可能であり、該つながっている部分を分断することにより、各蓋部は、各フレーム部に対して着脱可能である、前記[3]に記載の切片封入用デバイス。
[5]各蓋部の外周形状が、線対称の形状および点対称の形状ではない、前記[3]または[4]に記載の切片封入用デバイス。
[6]当該切片封入用デバイスが所定長さと所定幅とを持った帯状であり、前記ベース層および前記カバー層も、それぞれ前記の所定長さと所定幅とを持った帯状であり、
前記ベース層は、自体の配置面の長手方向に前記複数の切片が所定の間隔をおいて所定数だけ一列に配置されるように、予め決定された帯幅と長さとを有する、
前記[2]〜[5]のいずれかに記載の切片封入用デバイス。
[7]前記ベース層の配置面および前記カバー層のカバー面のうちの、少なくとも前記カバー層のカバー面が、互いに隣り合って並んだ複数の切片を包含する広さを持っており、
前記ベース層の配置面が、前記の互いに隣り合って並んだ複数の切片を個別に密封しかつ個別に該密封を解除するように、前記カバー層のカバー面に対して着脱可能な構造を有する、
前記[1]に記載の切片封入用デバイス。
[8]前記ベース層の配置面が、1つの切片を配置する広さを持っており、かつ、
1つのカバー層のカバー面が、複数のベース層の各配置面が互いに隣り合って貼り付く広さを持っており、
前記ベース層の配置面と前記カバー層のカバー面とによって、複数の切片が、互いに隣り合って並んだ状態で、ベース層とカバー層との間に個別に密封され、かつ個別に該密封を解除される、
前記[7]に記載の切片封入用デバイス。
[9]前記ベース層が、下層側の支持体層と、上層側の粘着材層とを有してなる積層体であって、粘着材層の表面が配置面となっている、前記[1]〜[8]のいずれかに記載の切片封入用デバイス。
[10]ベース層とカバー層のうちの少なくとも一方が、密封された切片を外部から観察し得るように透明である、前記[1]〜[8]のいずれかに記載の切片封入用デバイス。
[11]前記複数の切片が、もとの組織試料から順次スライスされることによって得られる連続切片である、前記[1]〜[10]のいずれかに記載の切片封入用デバイス。
[12]前記[1]〜[11]のいずれかに記載の切片封入用デバイスを1以上用い、該切片封入用デバイスのベース層の配置面に、組織試料をスライスしてなる切片を配置する、切片配置工程と、
前記切片封入用デバイスのカバー層によって、前記ベース層の配置面に配置された切片を覆って密封し、前記組織試料をスライスしてなる複数の切片が、互いに間隔をおいてスライスの順番に配置された切片封入標本を得る、密封工程とを有する、
切片封入標本の製造方法。
[13]前記[2]〜[6]のいずれかに記載の切片封入用デバイスを1以上用い、該切片封入用デバイスのベース層の配置面に、組織試料をスライスしてなる複数の切片を、互いに間隔をおいてスライスの順番に配置する、切片配置工程と、
前記切片封入用デバイスのカバー層のフレーム部によって、前記ベース層の配置面に配置された各切片のそれぞれの周囲を個別に取り囲み、かつ、該カバー層の蓋部によって、各切片をそれぞれに覆い密封する、密封工程とを有する、
前記[12]に記載の切片封入標本の製造方法。
[14]さらに染色工程を有し、該染色工程は、
切片配置工程中に、または、切片配置工程の後であって密封工程の前に、または、密封工程の後で、
スライスの順番に沿った所定の数の切片の組ごとに、各組中の最初の切片に対して、切片中に病変部分が含まれているか否かを検査するための染色を行う工程である、
前記[12]または[13]に記載の切片封入標本の製造方法。
[15]前記切片配置工程において、前記切片封入用デバイスを複数用い、複数の切片を複数の切片封入用デバイスにわたってスライスの順番に配置し、
前記染色工程において、各切片封入用デバイス中の複数の切片のうちの先頭の切片に対して前記染色を行う、
前記[14]に記載の切片封入標本の製造方法。
[16]前記[14]または[15]に記載の切片封入標本の製造方法によって製造された1以上の切片封入標本を用い、
前記染色された切片に病変部分が含まれているか否かをスライスの順番に沿って判定し、
該染色により切片中に病変部分が含まれていることを示す最初の切片と、該染色により切片中に病変部分が含まれていることを示す最後の切片との間に位置する全ての切片を、病変部分を含んだ切片であると特定する、
病変部分を含んだ切片を特定する方法。
[17]前記[15]に記載の切片封入標本の製造方法によって製造された複数の切片封入標本を用い、
前記染色された切片に病変部分が含まれているか否かをスライスの順番に沿って判定し、
該染色により切片中に病変部分が含まれていることを示す切片を含んだ切片封入標本のうち、該染色により切片中に病変部分が含まれていることを示す最後の切片を含んだ切片封入標本以外の切片封入標本に含まれた全ての切片を、病変部分を含んだ切片であると特定する、
前記[16]に記載の病変部分を含んだ切片を特定する方法。
本発明の切片封入用デバイスは、粘着面を備えた有機高分子材料製のベース層と、該粘着面を覆う有機高分子材料製のカバー層との組み合わせを有する。当該切片封入用デバイスの特徴は、次の(i)および(ii)の構成を有する点にある。
(i)前記ベース層の配置面および前記カバー層のカバー面のうちの少なくとも一方が、互いに隣り合って並んだ複数の切片を包含する広さを持っている。
(ii)前記ベース層の配置面および前記カバー層のカバー面のうちの他方が、前記の互いに隣り合って並んだ複数の切片を個別に密封しかつ個別に該密封を解除するように、前記一方に対して着脱可能な構造を有するベース層とカバー層とによって、複数の切片を個別に密封し得、かつ、個別に該密封を解除し得る構造を有する。
前記(i)の構成によって、複数の切片を隣り合った状態で並べることができ、組織試料をスライスしてなる複数の切片を、スライスの順番に配置することも可能になる。そして前記(ii)の構成によって、複数の切片は、個別に密封され得、かつ、個別に該密封を解除され得る。これにより、任意の切片を標本化の後に、詳細な分析に供することも可能になる。
前記(ii)の構成における「複数の切片を個別に密封し得、かつ、個別に該密封を解除し得る構造」とは、詳細な態様は後述するが、ベース層とカバー層のうちの少なくとも一方が、隣り合った状態で配置された複数の切片に対して、個別に蓋をするように他方と協働して挟み込む構造である。
前記(i)および(ii)の構成を有する当該切片封入用デバイスの態様として、典型的には2つの態様が挙げられる。第1の態様では、少なくともベース層が広い1枚のシート(帯状でもよい)であり、これとは逆に、第2の態様では、少なくともカバー層が広い1枚のシート(帯状でもよい)である。
第1の態様の構成例では、カバー層の作製の際に、開口部が所定の間隔で位置するように該開口部の内側部分を切り抜き、開口部を取り巻く周囲部分(残部)をフレーム部として用い、また、開口部から除去された切抜き部分を蓋部として用いている。パラフィンに包埋された腫瘍細胞を含む組織から連続切片を作製し、ベース層の粘着面上に並べ、それらをカバー層によって覆い、全ての各切片を蓋部で覆い密封することよって、連続切片がスライスの順番に並んだ標本が得られる。切片の染色に際しては、切片数枚ごとに蓋部を剥離し、各フレーム部の開口部内で切片にHE染色を施し、封入剤と共に蓋部で密封することができる(図12)。第2の態様の構成例では、上記の連続切片を、個別にベース層の粘着面上に載置し、カバー層によって覆い、各切片を密封することよって、連続切片がスライスの順番に並んだ標本が得られる。切片の染色に際しては、カバー層によって覆う前の切片が載置されたベース層またはカバー層から剥離した切片が載置されたベース層を直接HE染色液に浸漬し、封入剤と共にカバー層に密封することができる。これら染色された複数の切片を検鏡することで、染色した切片間に並べられた未染色の切片に腫瘍細胞が含まれているか否か、また未染色の切片内のどこに腫瘍細胞が存在しているかを確認することができる。また、腫瘍細胞が含まれていると想定される未染色の切片は、フレーム部ごとに個別にHE染色以外の別の染色を施すことによってさらに別の臨床検査や、直接組織を削り取るもしくはパンチなどで部分的に切り抜くことで容易に核酸を採取してNGSなどの遺伝子検査などに用いたりすることができる。ベース層およびカバー層の両方に透明度の高いものを用いれば、ガラススライドとほぼ同様の分解能での検鏡が可能であり、組織学的診断も可能である。
切片封入標本を作製する際に、組織試料から連続的にスライスした切片を、従来のガラスではなく、有機高分子材料製のベース層とカバー層との間に層状に挟み込み、スライスの順番に連続的に密封することによって、切片全体の管理および長期保存が容易になる。
また、連続切片のうち所定の間隔を置いた特定の切片をHE染色に供することによって、連続切片に含まれる組織全体の情報を間接的に予測することが可能となり、かつ未染色の切片に対して容易にアクセスできるため、目的の切片に対して必要な試験を迅速に行うことが可能となる。
図1は、本発明の切片封入用デバイスの第1の態様の一例を示す図である。図1(a)は、当該切片封入用デバイスの上面(カバー層の上面)を示す図であり、図1(b)は、図1(a)のX1−X1断面矢視図である。 図2は、本発明の切片封入用デバイスの第1の態様の他の例を示す図である。図2(a)、(b)は、図1(b)と同様に、当該切片封入用デバイスを切断した場合の断面を示す図である。図2(c)〜(e)は、当該切片封入用デバイスの他の態様例における上面を示す図である。 図3は、本発明の切片封入用デバイスの第1の態様を用い、ベース層の配置面(粘着面)上に5枚の連続切片を順番に配置した状態、および、それらを覆うためのカバー層の一例を示す写真図である。以下、図4〜図13では、本発明の切片封入用デバイスの第1の態様を用いている。 図4は、連続切片を配置面上に配置し、カバー層で覆った状態を示す図である。各蓋部は着脱可能である。図4(c)では、説明のために、ベース層の配置面からスライスの厚さ分だけ突き出した切片に対して、カバー層が柔軟に屈曲して追従しているように描いているが、逆にベース層が柔軟に屈曲して追従してもよく、カバー層とベース層が共に柔軟に屈曲して切片を挟み込んでいてもよい。 図5は、ベース層の配置面上に5枚の連続切片を順番に配置し、それらをカバー層で覆った状態を示す写真図である。各蓋部は着脱可能である。 図6は、5つの切片封入標本のうち、1つ目の切片封入標本の蓋部を剥離し、フレーム部によって囲まれたウェル状の部分にヘマトキシリン溶液を滴下した状態を示す写真図である。 図7は、染色された切片を封入剤と共に蓋部で密封した状態を示す図である。図7(a)は、先頭の蓋部を取り外した状態を示す上面図であり、図7(b)は、蓋部で切片を覆い、図1(b)と同様に、切片封入用デバイスを切断した場合の断面を示す図である。 図8は、HE染色された切片を封入剤と共に蓋部で密封した状態を示す写真図である。 図9は、HE染色され、切片封入用デバイスに封入剤と共に蓋部で密封された肺組織の切片の顕微鏡像(対物レンズ4倍拡大)を示す写真図である。 図10は、HE染色され、切片封入用デバイスに封入剤と共に蓋部で密封された肺組織の切片の顕微鏡像(対物レンズ20倍拡大)を示す写真図である。 図11は、本発明の切片封入用デバイスの製造方法の一例を示す図であり、帯状を呈する当該切片封入用デバイスを側方(帯幅方向)から見た側面図である。図11(a)は、スライスされた切片が配置面上にスライスの順番に順次配置される工程を示している。図11(b)は、図11(a)の工程によってベース層の配置面上に配置された切片を、カバー層で覆う工程を示す図である。 図12は、腫瘍細胞を含む組織の連続切片が並べられた切片封入用デバイスを示す図である。各切片封入用デバイスの左に振られた各番号は切片に付与される連続番号を示す。各切片封入用デバイスの先頭の切片のみがHE染色に供されている。 図13は、HE染色され、ガラススライド(左上、左下)または切片封入用デバイス(右上、右下)に封入剤と共に蓋部で密封された印環細胞癌を含む胃組織の切片の顕微鏡像を示す写真図である。 図14は、本発明の切片封入用デバイスの第2の態様の一例を示す図であり、かつ、該第2の態様を用い、複数の切片を個別に密封した状態を示す図である。該個別の密封は、ベース層の構造によって、個別に解除され得るようになっている。図14(a)は、当該切片封入用デバイスの下面(カバー層のカバー面)を示す図であり、図14(b)は、図14(a)のX2−X2断面矢視図である。図14(c)は、第2の態様の他の例を示しており、図14(b)と同様の断面を示している。図14(b)、(c)では、説明のために、カバー層のカバー面からスライスの厚さ分だけ突き出した切片に対して、ベース層が柔軟に屈曲して追従しているように描いているが、逆にカバー層が柔軟に屈曲して追従してもよく、ベース層とカバー層が共に柔軟に屈曲して切片を挟み込んでいてもよい。 図15は、ベース層とともに切片を蒸留水に浸漬する工程を示す図である。 図16は、HE染色され、ガラススライド(左)または切片封入用デバイス(右)に封入剤と共に密封された胃組織の切片を示す写真図である。 図17は、HE染色され、ガラススライド(左)または切片封入用デバイス(右)に封入剤と共に密封された皮膚組織の切片を示す写真図である。 図18は、HE染色され、切片封入用デバイスに封入剤と共に密封された胃の印環細胞癌の切片の顕微鏡像(強拡大像(200倍))を示す写真図である。 図19は、HE染色され、切片封入用デバイスに封入剤と共に密封された皮膚のボーエン病の切片の顕微鏡像(中拡大像(100倍))を示す写真図である。 図20は、カバー層とベース層の接着前の状態を示す写真像である。 図21は、カバー層とベース層の接着後の状態を示す写真像である。 図22は、食道の腺癌の6つの連続切片が密封された切片封入用デバイス2枚(第一切片封入用デバイスおよび第二切片封入用デバイス)と13枚目の連続切片のみが密封された切片封入用デバイス1枚(第三切片封入用デバイス)を示す写真図である。各切片封入用デバイスの第一切片はHE染色されている。 図23は、第二切片封入用デバイスの第一切片のデジタル画像を示す図である。アノテーションは食道の腫瘍(腺癌)領域を示す。 図24は、第一切片封入用デバイスの第二から第四切片の免疫染色像を示す写真図である。 図25は、p53抗体で免疫染色された第二切片の顕微鏡像(強拡大像(100倍))を示す写真図である。 図26は、CEA抗体で免疫染色された第三切片の顕微鏡像(強拡大像(100倍))を示す写真図である。 図27は、AE1/AE3抗体で免疫染色された第四切片の顕微鏡像(強拡大像(100倍))を示す写真図である。 図28は、試験チューブ内の未染色切片由来腫瘍(腺癌)領域を示す写真図である。 図29は、未染色切片由来腫瘍(腺癌)領域から抽出されたRNA純度を示すグラフである。
先ず、本発明の切片封入用デバイスの態様を実施例を示す図を参照しながら詳細に説明する。当該切片封入用デバイスは、図1に示すように、有機高分子材料からなるフィルム状のベース層10と、有機高分子材料からなるフィルム状のカバー層20とを有する。ベース層10の一方の主面は、粘着性を有し、かつ、切片を配置するための配置面10aである。カバー層20の一方の主面は、ベース層10の配置面10aに配置された切片を覆い、かつ、配置面10aに貼り付くための、カバー面20aである。当該切片封入用デバイスの特徴は、上記したように、(i)配置面10aおよびカバー面20aのうちの少なくとも一方(図1の例では配置面10a)が、互いに隣り合って並んだ複数の切片を包含する広さを持っており、(ii)配置面10aおよびカバー面20aのうちの他方(図1の例ではカバー面20a)が、前記の互いに隣り合って並んだ複数の切片を個別に密封しかつ個別に該密封を解除するように、前記一方(図1の例では配置面10a)に対して着脱可能な構造を有しているという点にある。
上記したように、前記(i)、(ii)の構成を有する当該切片封入用デバイスの態様として、第1の態様と第2の態様が挙げられる。第1の態様は、少なくともベース層が広い1枚のシート(帯状でもよい)であり、カバー層が、複数の切片に対して個別に蓋をする構造を有する。第2の態様は、第1の態様に対して、ベース層とカバー層の役割が逆になった態様であり、カバー層が広い1枚のシート(帯状でもよい)であり、ベース層が、複数の切片に対して個別に蓋をする構造を有する。以下に、これら第1の態様、第2の態様を詳細に説明する。
〔第1の態様〕
第1の態様では、図1に示すように、ベース層10の一方の主面は、粘着性を有する面であって、かつ、複数の切片を間隔をおいて配置する広さを持った配置面10aである。カバー層20は、ベース層10の配置面10aに貼り付けるためのフィルム状の層である。第1の態様では、カバー層20のカバー面20aが、前記の複数の切片を個別に密封しかつ個別に該密封を解除するように、前記一方に対して着脱可能な構造を有する。
図1に示す例では、カバー層20は、複数のフレーム部21とそれに対応する複数の蓋部22とを有して構成される。複数のフレーム部21同士は互いにつながっている。複数のフレーム部は、図3、図4に示すように、配置面10a上に配置された複数の切片のそれぞれの周囲を個別に取り囲み、配置面10aと一緒になって、各切片のための個別のウェルを構成する。各フレーム部が各切片を取り囲むと、図4(b)に示すように、各フレーム部と配置面とによって構成された各ウェル内の底面(配置面)上に各切片が配置された状態となる。蓋部22は、各フレーム部によって囲まれた各切片をそれぞれに覆うためのフィルム状の部材である。各蓋部は、各フレーム部によって囲まれた各切片およびその周囲の配置面を覆い、配置面と共に各切片を挟み込んで密封する。また、各蓋部は、各フレーム部に対して着脱可能または可動である。これにより、各蓋部は、各切片から離れることが可能であるか、または、先にベース層の配置面にフレーム部を貼り付けた後、別途、各切片を覆うことも可能である。
以上の構成を有する当該切片封入用デバイスを用いることにより、上記した効果を得ることができ、本発明の目的が達成される。以下、当該切片封入用デバイスの各部の構成を説明する。なお、本明細書中において、「封入」とは、「ベース層の一方の主面に配置され、染色された切片を封入剤と共にカバー層によって密封する態様」と、「ベース層の一方の主面に配置された未染色の切片のみをカバー層によって密封する態様」の両者を含むものである。例えば、第一の態様では、「ベース層の一方の主面に配置され、かつ該ベース層に貼り付けられたカバー層のフレーム部によって周囲を取り囲まれた、染色された切片を封入剤と共に該カバー層の蓋部によって密封する態様」と、「ベース層の一方の主面に配置され、かつ該ベース層に貼り付けられたカバー層のフレーム部によって周囲を取り囲まれた、未染色の切片のみを該蓋部によって密封する態様」の両者を含むものである。
以下、第1の態様における、ベース層、カバー層、カバー層のフレーム部、カバー層の蓋部を、詳細に説明する。
(ベース層)
ベース層は、剛性を有する基板であってもよいが、ミクロトームなどのスライス装置によって切片を薄く切断しながら配置面に貼り付けていく操作を好ましく行う点からは、配置部位以外の部分がスライス装置の切断刃の動作の障害にならないよう、湾曲可能な可撓性を有する基板であることが好ましい。このようなベース層としては、有機高分子材料からなるフィルムが挙げられる。また、ベース層は、両主面のうち少なくとも一方の主面が配置面として利用可能であるよう粘着性を有する。このようなベース層としては、層全体がポリウレタンゲルのように自己粘着性を有する材料からなるフィルムであるか、または、図1(b)に示すように、下層側の支持体層11と、上層側の粘着材層12とを有し、該粘着材層12の表面が配置面10aとなっている積層体(積層構造を持ったフィルム状物)であることが好ましい。
ベース層10全体の厚さ(層厚)は、特に限定はされず、材料によっても異なるが、15μm〜200μm程度が例示される。
ベース層10が、可撓性を有する積層体である場合、支持体層11の材料としては、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリテトラフルオロエチレンなどの有機高分子材料が挙げられる。支持体層11の厚さは、特に限定はされず、材料によっても異なるが、10μm〜150μm程度が例示される。
粘着剤層12の材料(即ち、粘着剤)としては、特に限定はされないが、アクリル系粘着剤(例えば、リンテック株式会社製、製品番号3755AD25)、ウレタン系粘着剤などの有機高分子材料からなる粘着剤が好ましいものとして挙げられる。粘着剤層11の厚さは、特に限定はされず、材料によっても異なるが、5μm〜50μm程度が例示される。粘着剤は、感圧性接着剤とも呼ばれる接着剤の一種である。粘着剤層の粘着性は、蓋部を該粘着剤層の表面(配置面)に貼り付けた後、該蓋部を剥がすことが可能な程度の粘着性であることが好ましい。
ベース層が可撓性を有する積層体である場合、市販の粘着テープや粘着シートをベース層として用いることができ、とりわけ、切片保持用の粘着テープや粘着シートが好ましいく利用可能である。本発明における粘着剤層の粘着性は、前記切片保持用の粘着テープや粘着シートの粘着性を参照することができる。
(カバー層)
カバー層20は、1つの切片を配置する広さのカバー面を持った互いに独立した小片であってもよい。そのような小片のカバー層は、ベース層の配置面上に配置された複数の切片の数だけ用いられ、各切片を個別に密封する。また、密封後は、個々のカバー層を個別に剥がすことによって、密封は各切片毎に解除される。
好ましい態様では、図1に示すように、カバー層20は、フレーム部21と蓋部22とを有する。フレーム部21は、ベース層10の配置面10a上に配置された切片(例えば、図4(b)において符号30で示す部分)を取り囲む部材であり、よって、フレーム部に取り囲まれた中央部分は、蓋部を取り除くと開口部(貫通孔)21aとなる。
フレーム部と蓋部は、互いに別個の部材であってもよいが、好ましい態様では、図1(b)に示すように、同じ1枚のフィルム中に含まれた互いに異なる部分であって、各フレーム部に囲まれた部分が各蓋部である。図1に示す態様では、蓋部は、フレーム部が取り囲んだ開口部21aにぴったりはまり込む外形を有する。換言すると、図1に示す態様では、蓋部は、フレーム部が取り囲んだ開口部21aから切り取られた部分である。
図2(a)に例示する態様では、蓋部23の外形は、フレーム部が取り囲んだ開口部の形状よりも小さく、蓋部23の外周面と開口部の内面との間には適度な隙間がある。また、図2(b)に例示する態様では、蓋部24の外周縁部は、フレーム部が取り囲んだ開口部から外側にはみ出しており、フレーム部の上面に乗り上げている。図2(b)の態様では、フレーム部と蓋部とは別個に形成されたフィルム状の部材である。図2(a)、(b)の態様では、蓋部をフレーム部の開口にぴったり嵌め込む操作が不要であると言う点で、枠部から取り外した蓋部によって、切片を覆う作業が容易である。
(カバー層のフレーム部)
フレーム部は、切片を取り囲む部材であるから、可撓性は必須ではないが、湾曲させることによって蓋部の取り外しを容易にするという点からは、ベース層と同様の可撓性を有することが好ましい。フレーム部の材料は、特に限定はされないが、可撓性を有する材料としては、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリテトラフルオロエチレンなどの有機高分子材料が挙げられる。フレーム部の厚さは、特に限定はされないが、後述の切片の厚さや蓋部の厚さを考慮して、100μm〜1000μm程度が好ましい厚さであり、100μm〜300μm程度がより好ましい厚さである。
(カバー層の蓋部)
蓋部は、配置面と切片に密着し好ましく覆うことができるよう、可撓性を有する有機高分子材料からなるフィルムであることが好ましい。蓋部の材料は、特に限定はされないが、可撓性を有する材料としては、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリテトラフルオロエチレンなどの有機高分子材料が挙げられる。蓋部の厚さは、特に限定はされないが、100μm〜1000μm程度が好ましい厚さであり、100μm〜300μm程度がより好ましい厚さである。
上記したように、第1の態様におけるカバー層の好ましい態様では、フレーム部と蓋部とは、同じ1枚のフィルム中に含まれた互いに異なる部分である。この場合、フレーム部と蓋部の材料および厚さは、互いに同じである。また、各蓋部の外周のうちの一部または全部が各フレーム部から切断されていてよく、それにより、各蓋部は各フレーム部に対して着脱可能または可動である。
本発明において、各蓋部が各フレーム部に対して「着脱可能または可動」であるとは、以下に例示するように、各フレーム部に対して完全に分離している状態、完全に分離していないが分離可能な状態、または、各フレーム部に対して一部がつながった状態でドアのような開閉動作が可能な状態を含む。
図2(c)の態様例では、各蓋部の外形と各フレーム部の開口部の形状は、同じ長方形であり、各蓋部と各フレーム部は、長方形の頂点において、切断されず互いにつながっている。
また、図2(d)の態様例では、各蓋部の外形と各フレーム部の開口部の形状は、同じ長方形であり、各蓋部と各フレーム部は、長方形の対向する2辺の中央において、切断されず互いにつながっている。これらの互いにつながった部分は、0.1mm〜0.3mm程度であり、手などによって蓋部を引っ張ることで容易に分断することができ、蓋部をフレーム部から取り外すことができる。
図2(c)、(d)の態様例において、蓋部とフレーム部とが互いにつながった部分の位置や、長さなどは、適宜決定してよく、つながった部分だけがより分断されやすいように薄くするなど、任意の構成をさらに加えてよい。
また、図2(e)の態様例では、各蓋部の外形と各フレーム部の開口部の形状は、同じ長方形であり、各蓋部と各フレーム部は、長方形の1辺全体が切断されず互いにつながっている。この態様により、図2(e)に破線で示すように、つながった1辺をヒンジ部として、蓋部はドアのような開閉動作を行うことができる。
第1の態様におけるフレーム部の開口部(貫通孔部)の形状およびそのサイズは、切片を収容し得るよう、該切片の外形に応じて適宜決定することができる。開口部の基本形状は、特に限定されず、円形や方形(正方形、長方形)などであってもよいが、開口部同士の間にデッドスペースが生じない点からは、方形、とりわけ図1に例示するように、配列方向(隣の開口の方向)に長く延びた長方形が好ましい基本形状である。方形の角部(頂点部分)に丸みを付けたり面取り形状とするといった、基本形状に対する細部の改変は適宜加えてよい。
開口部の基本形状が方形である場合、その1辺の長さは、特に限定はされないが、一般的な試料の切片のサイズを鑑みると、30mm〜50mm程度が汎用的であり、とりわけ40mm〜45mm程度が有用である。
フレーム部の開口部の配置パターン、ピッチ(中心間距離)、開口部同士の間の距離(図1(a)における寸法L1)、開口部からフレーム部の縁部までの距離(図1(a)における寸法L2)などは、開口部のサイズやフレーム部の強度に応じて適宜決定することができる。上記したフレーム部の材料や厚さの場合、開口部同士の中心間距離は、40mm〜60mm程度が好ましく、開口部同士の間に存在するフレーム部の寸法L1は、1mm〜10mm程度が好ましい寸法として例示され、開口部からフレーム部の縁部までの距離L2は、1mm〜5mm程度が好ましい寸法として例示される。
(蓋部の外周形状)
図1に示すように、蓋部の外周形状とフレーム部の開口部の形状が互いに同じである場合、これらの形状が線対称や点対称の形状であると、蓋部を裏向けても、点対称の回転中心について回転させても、蓋部はフレーム部の開口部にはまり込むことができるので、好ましい。
しかしながら、そのような利点が得られるのは、線対称や点対称の形状が正確に線対称や点対称の形状である場合である。製造誤差などによって、同じ蓋部の中でも辺同士の長さや頂部の角度が互いに微量だけ異なっている場合、見た目には線対称や点対称であっても、蓋部を裏向けたり、点対称の回転中心について回転させると、開口部にぴったりと嵌り込まなくなり、嵌り込む姿勢を探すのに手間がかかる場合がある。
そこで、本発明の好ましい態様では、蓋部の外周形状、および、該蓋部が嵌り込む開口部の外周形状を、線対称ではなくかつ点対称ではない基本形状とする。これにより、蓋部が開口部に嵌り込むただ1通りの姿勢が明確になり、蓋部が開口部に嵌り込む姿勢を探す手間が無くなる。このような線対称ではなくかつ点対称ではない基本形状は、特に限定はされないが、例えば、図3に示す蓋部22のように、方形の4つの頂点のうち所定の箇所(図3の例では3か所)だけ面取り形状とする形状や、蓋部の外周縁の不規則な位置に突起部を設ける形状(この場合、開口部には、突起部に対応する位置に突起部が嵌り込む同じ形状の切り欠きが設けられる)などが挙げられる。
〔第2の態様〕
第2の態様では、図14に一例を示すように、少なくともカバー層200のカバー面200aが、互いに隣り合って並んだ複数の切片30を包含する広さを持っている。一方、ベース層100の配置面(粘着面)は、第1の態様におけるカバー層と同様に、複数の切片を個別に密封しかつ個別に該密封を解除するように、カバー層200のカバー面200aに対して着脱可能な構造を有する。第2の態様におけるカバー層は、単純な1枚の広いシートであってよく、好ましい態様では、後述のとおり、所定長さと所定幅とを持った帯状のシートである。一方、第2の態様におけるベース層は、図1(a)のカバー層のようにフレームと中央部分とを有してなる態様、図2(a)〜(e)のカバー層のように、中央部分がフレーム部に対して完全に分離している態様、完全に分離していないが分離可能な態様、または、フレーム部に対して一部がつながった状態でドアのような開閉動作が可能な態様であってもよい。ベース層の個別に着脱可能な構造は、上記したカバー層の構造を参照することができる。
図14の例では、ベース層100は、支持体層110と、粘着材層120とを有し、該粘着材層120の表面が配置面100aとなっている積層体(積層構造を持ったフィルム状物)である。図14(a)の例では、ベース層100は、1つの切片30を配置する広さの配置面100aを持った小片である。ベース層100は、切片の数だけ用いられる。カバー層200のカバー面200aは、複数のベース層100を互いに隣り合って貼り付けることができる広さを持っている。これにより、図14(b)に示すように、複数のベース層の配置面100aと1つのカバー層のカバー面200aとによって、複数の切片が、互いに隣り合って並んだ状態で、ベース層とカバー層との間に個別に密封され、任意のベース層を個別に剥離することで、各切片ごとに密封が解除される。
図14(b)は、ベース層100が単純な小片である場合の態様を示している。これに対して、図14(c)は、ベース層100がフレーム部102と、各フレーム部によって囲まれた中央部101とを有する。フレーム部102は、支持体層112と、粘着材層122とを有し、また、中央部101は、支持体層111と、粘着材層121とを有する。これら、フレーム部102と中央部101は、1枚のシートとして形成された後、切断加工によって区分されてよい。上記したように、フレーム部102と中央部101の関係は、図2(a)〜(e)のカバー層のように、中央部分がフレーム部に対して完全に分離している態様、完全に分離していないが分離可能な態様、または、フレーム部に対して一部がつながった状態でドアのような開閉動作が可能な態様であってもよい。
第2の態様における、ベース層の厚さ、材料、寸法、カバー層の厚さ、材料、寸法は、第1の態様の各部を参照することができる。
〔第1、第2の共通の構成〕
ベース層とカバー層のうち、少なくとも一方、好ましくは両方が、密封された切片を外部から観察し得るように透明であれば、ガラススライドとほぼ同様の分解能での検鏡が可能であり、組織学的診断も可能となるので好ましい。ベース層とカバー層は、互いに同じ外形を有することが好ましい。
当該切片封入用デバイスの外周形状は、任意の形状であってよく、切片は行列状に配置されてもよいが、持ち運びの容易さや顕微鏡下での観察の実用性の点からは、所定長さと所定幅とを持った帯状が好ましい形状である。
当該切片封入用デバイスが帯状である場合、ベース層およびカバー層の外周形状も、それぞれ前記の所定長さと所定幅とを持った帯状となる。この場合、ベース層は、自体の配置面の長手方向に複数の切片が所定の間隔をおいて所定数だけ一列に配置されるように、予め決定された帯幅と長さとを有する。ベース層とカバー層は、互いに同じ外周形状を有することが好ましい。
当該切片封入用デバイスが帯状である場合、帯幅と帯の長さは、切片の外形に応じて適宜決定することができる。帯幅は、20mm〜50mm程度が汎用的であり、とりわけ30mm〜40mm程度が有用である。帯の長さは、ロールに巻き付けることができるような長尺であってもよいが、持ち運びの容易さや顕微鏡下での観察における利便性と、切片を貼り付けるのに十分な開口部のサイズのバランスを取るという点からは、切片が3個〜6個程度、好ましくは4個〜5個程度配置し得る短冊状となる長さが有用である。図1〜図5の例では、切片が5個配置され得る短冊状である。
〔切片〕
本発明の切片封入用デバイスに密封される切片は、特に限定はされないが、組織試料から順次スライスされることによって得られる連続切片であれば、本発明の有用性が特に顕著になる。
図12(a)に例示するように、組織試料30Aは、パラフィン32Aが、組織31Aの周囲を取り巻いたものであってもよい。図12(a)に例示する組織31A中には、病変部分33Aが含まれている。
組織試料に使用される組織としては、特に制限されるわけではないが、哺乳動物(例:ヒト、サル、マウス、ラット、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、ウサギ、ハムスター、モルモット等、好ましくはヒト)の組織(例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆嚢、骨髄、副腎、皮膚、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、脂肪組織、骨格筋など)であってよい。前記組織は、正常組織であっても、病変部分を含む組織であってもよいが、病変部分を含む組織が本発明の切片封入用デバイスに密封される切片の材料に適している。病変部分としては腫瘍性病変、炎症性病変、感染性病変、変性病変などが挙げられる。
組織試料は、本発明の切片封入用デバイスのフレーム部の開口部内やベース層内に収まる外周形状やサイズにトリミングし、固定処理、脱水・脱脂処理、中間剤による置換処理を経てパラフィンに包埋することによって得られる。
固定処理は、具体的には、摘出した臓器の余分な脂肪や血餅などを生理食塩水中で丁寧に取り除き、ろ紙にて水分を充分に拭った後、一辺が5〜20mmの直方体となるように、カミソリにてトリミングを施し、固定液に浸漬することによって実施することができる。固定液としては、ホルマリン液、Bouin(ブアン)液が挙げられるが、ホルマリン液が好ましい。ホルマリン液としては、35〜40%ホルムアルデヒド水溶液を蒸留水または緩衝液で希釈した4%ホルムアルデヒド水溶液を使用する。固定処理は通常、常温で24時間〜48時間行う。また、Bouin液は、ピクリン酸飽和水溶液、35〜40%ホルムアルデヒド水溶液、氷酢酸を各々15:5:1(v/v)混合して用時調製する。Bouin液は、溶血を生じさせるという短所がある一方、組織の収縮が小さく、固定時間が短時間(2〜6時間)であるという点で優れる。
組織の70〜80%は水分であるため、固定処理後の組織は、そのままではパラフィンは組織内に浸透しない。そこで組織の脱水・脱脂処理を行う。脱水・脱脂処理の操作としては、まず、組織内の水をアルコール系列(メタノールまたはエタノール)で完全に除く(脱水)ことによって実施することができる。この際に、脂肪も取り除かれ(脱脂)、パラフィンの融点降下を防止する。エタノールを使用する場合、固定後、70%エタノール中で1晩、99.5%エタノール中で30分x5回、100%エタノール中で30分の順で脱水する。
エタノールはパラフィンに馴染まないため、組織内に浸透したエタノールを一旦キシレンまたはクロロホルム等の中間剤による置換処理を経て、組織に溶けたパラフィンを浸透させる。クロロホルムはキシレンの2倍毒性が高いが、組織への浸透速度が速く、引火性がないなどの点では優れている.具体的には、置換処理は、キシレンを使用する場合、30分置換を2回行うことによって実施することができる。
中間剤による置換処理後、60℃に設定したパラフィン溶融器中で溶融した硬パラフィン(60℃)に組織を30分、4回浸透させる。その後、パラフィン包埋用の枠にパラフィンを流し込み、組織を浸漬して、硬化させる。
以上のようにして、組織試料を得ることができる。
切片の厚さは、特に限定はされないが、3μm〜20μm程度が汎用的であり、とりわけ3μm〜5μm程度が有用である。切片の外周形状やサイズは不定であってよく、上記したフレーム部の開口部内やベース層内に収まる外周形状やサイズが好ましく、従来公知の標本などにおける外形やサイズを参照することができる。
〔本発明の切片封入用デバイスを用いた切片封入標本の製造方法〕
次に、本発明による切片封入標本の製造方法を説明する。
当該切片封入標本の製造方法は、上記で説明した本発明の切片封入用デバイスを1以上用いる。1つの切片封入用デバイスが十分に多数の切片を配置し得るものであれば、用いる切片封入用デバイスは1つでよいが、好ましい態様では、該切片封入用デバイスは帯状であり、1つの切片封入用デバイスに配置し得る切片の数は、3〜6程度である。その場合には、帯状の切片封入用デバイスを、必要数だけ用いればよい。これにより、図12(b)に示すような、複数の短冊状の切片封入標本部分が集合した切片封入標本が得られる。図12(b)は、本発明の切片封入用デバイスの第1態様を用いた場合の図であるが、第2態様を用いた場合の図であると見なすこともできる。
複数の短冊状の切片封入標本部分を形成する場合、それら複数の短冊状の切片封入標本部分を管理し得るよう、各短冊状の切片封入標本部分の先頭端部など所定の部位には、切片の内容や順番を記載しておくことが好ましく、切片の内容や順番が記載されたバーコードやICチップ、ICタグなどが付与されていてもよい。
(切片配置工程と密封工程)
本発明による切片封入標本の製造方法では、本発明の切片封入用デバイスが1以上用いられる。当該切片封入標本の製造方法は、切片配置工程と、密封工程とを有する。切片配置工程では、当該切片封入用デバイスのベース層の配置面に、組織試料をスライスしてなる切片を配置する。また、密封工程では、当該切片封入用デバイスのカバー層によって、ベース層の配置面に配置された切片を覆って密封し、複数の切片が互いに間隔をおいてスライスの順番に配置された切片封入標本を得る。
図11に示す例では、切片封入用デバイスの第1の態様を用いており、図11(a)は切片配置工程の一例を示し、図11(b)は、密封工程の一例を示している。切片配置工程では、図11(a)に例示するように、切片封入用デバイスのベース層10の配置面10aに、組織試料30Aをスライス装置(本体は図示せず)の切断刃50によってスライスしてなる複数の切片30を、互いに間隔をおいてスライスの順番に配置する。このときの切片同士の中心間距離は、上記したカバー層のフレーム部の開口部同士の中心間距離に等しくしておく。これにより、先にベース層の配置面上に切片を配置しておき、後からカバー層で切片を囲み覆うという手順の工程が可能になり、加工の効率が向上する。尚、フレーム部が無い状態において、ベース層の配置面上に切片を、フレーム部の開口部同士の中心間距離に等しくなるように配置する点から、ベース層の配置面(ベース層が透明の場合には、ベース層の裏面でもよい)には、図3の写真図に示すような切片配置のための目印10Pを印刷等によって付与しておくことが好ましい。これにより、スライス装置に対するベース層の位置合わせが容易になり、次の密封工程において、カバー層をベース層に積層したとき、各フレーム部の中央付記に切片を位置させることができる。図3の例では、切片配置のための目印10Pはドットであるが、フレーム部の開口部の形状と同じ形状の線を描く態様や、該開口部の四隅だけを示す線を描く態様、フレーム部に対応する部分に着色する態様など、スライス装置とベース層との位置合わせを補助するための種々の目印を採用することができる。
次に密封工程では、図11(b)に例示するように、切片封入用デバイスのカバー層20のフレーム部21によって、ベース層10の配置面10aに配置された各切片30のそれぞれの周囲を個別に取り囲み、かつ、カバー層20の蓋部22によって、各切片をそれぞれに覆い、図4(c)に示すように、各切片を蓋部22と配置面10aとで挟み込んで密封する。
(染色工程)
当該切片封入標本の製造方法は、切片中に病変部分が含まれているか否かを検査するための染色を行う染色工程を有する。染色工程では、切片を染色する工程を全ての切片に対して施すのではなく、スライスの順番に配置された切片に対して、所定数の切片の間隔をおいた特定の切片に対して施す。
染色工程は、切片封入用デバイスの第1の態様の場合、(i)上記の切片配置工程中に切片を配置しながら実施されてもよいし、(ii)該切片配置工程の後であって密封工程の前に実施されてもよいし、(iii)密封工程の後で、密封された特定の切片に対して蓋部を開いて実施されてもよい。好ましい実施のタイミングは、所定の切片のみに染色を施し、他の切片への染色液などの付着を防ぐ点から、前記(iii)のタイミングである。また、上記染色工程は、切片封入用デバイスの第2の態様の場合、(i)上記の切片配置工程中に切片を配置しながら実施されてもよいし、(ii)該切片配置工程の後であって密封工程の前に実施されてもよいし、(iii)密封工程の後で、密封された特定の切片を再度カバー層からベース層ごと剥離して実施されてもよい。好ましい実施のタイミングは、所定の切片のみに染色を施し、他の切片への染色液などの付着を防ぐ点から、前記(ii)または(iii)のタイミングである。
切片中に病変部分が含まれているか否かを検査するための染色方法は、検出する対象病変部分によって当業者が適宜採用することができるが、最初に選択される染色方法としては、ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)が挙げられる。HE染色によって、細胞核、細胞質、間質、軟骨組織、赤血球など広範囲の染色対象を容易に染色することができ、顕微鏡観察によって組織構造を把握することができる。HE染色は、切片に脱パラフィン処理を施し、ヘマトキシリン染色液、エオジン染色液で順次切片を染色処理し、脱水処理、透徹処理ののち、封入剤と共に蓋部またはカバー層で密封処理することによって行うことができる。
以下、切片封入用デバイスの第1の態様の場合の各処理を記載する。
脱パラフィン処理は、具体的には、脱パラフィン液を切片に滴下し、切片表面全体に行き渡らせた後、脱パラフィン液を吸い取る操作を2〜3回行うことによって実施することができる。脱パラフィン液としては、アルカン系有機溶剤を使用する。アルカン系有機溶剤としては具体的には、ヘプタン、オクタンなどが挙げられる。また市販の脱パラフィン液として、Clear Plus(株式会社ファルマ)を使用することもできる。その他、キシレンも脱パラフィン液として使用し得る。
ヘマトキシリン染色液およびエオジン染色液による染色処理は、具体的には、切片を流水で洗浄し、ヘマトキシリン染色液を切片に滴下して反応させ、再度切片を流水で洗浄し、エオジン染色液を切片に滴下して反応させることによって実施することができる。図6に例示するように、切片封入用デバイスのフレーム部21によって囲まれた配置面10aに配置された切片をヘマトキシリン溶液40で染色する。
脱水処理は、具体的には、アルコール系列(メタノールまたはエタノール)を切片に滴下して、吸い取ることによって実施することができる。
透徹処理は、上記脱パラフィン処理と同様の操作で実施することができる。
密封処理は、具体的には、封入剤を切片に滴下し、蓋部で切片を密封することによって実施することができる。封入剤としては、アルカン系有機溶剤に溶解させたアクリル樹脂を使用する。アルカン系有機溶剤としては具体的には、ヘプタン、オクタンなどが挙げられる。また、アクリル樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチルなどが挙げられる。さらに、市販の封入剤として、PARA mount D(株式会社ファルマ)を使用することもできる。図7(a)および(b)に例示するように、染色された組織31は封入剤41に満たされ、蓋部22によって密封される。染色された切片は、組織31中には、病変部分33が含まれている。また、図8においても、染色された組織31は封入剤41に満たされ、蓋部22によって密封される。
また、切片封入用デバイスの第2の態様の場合の各処理は、脱パラフィン処理、ヘマトキシリン染色液およびエオジン染色液による染色処理、脱水処理および透徹処理については、ベース層と切片が一体の状態で行うことができる。具体的には、一体状態のベース層と切片が浸漬できる程度に任意の容器内を脱パラフィン液、ヘマトキシリン染色液、エオジン染色液、水、またはアルコール等で満たし、その中に所定の時間、回数、浸漬することによって、上記各処理を実施することができる(図15)。密封処理は、染色後の一体状態のベース層と切片を封入剤と共にカバー層で覆い、切片を密封することによって実施することができる。
複数の短冊状の切片封入標本部分を形成する場合(即ち、図12(b)または図22に示すように、切片配置工程において、当該切片封入用デバイスを複数用い、複数の切片を複数の切片封入用デバイスにわたってスライスの順番に配置する場合)、染色工程では、各切片封入用デバイス(各短冊状の切片封入標本部分)におけるそれぞれの複数の切片のうちの先頭の切片に対して染色を行うことが好ましい。これにより、各短冊状の切片封入標本部分がどのような切片を含んでいるかが一目でわかるようになる。
(病変部分を含んだ切片を特定する方法)
次に、本発明による病変部分を含んだ切片を特定する方法(以下、当該特定方法ともいう)を説明する。
当該特定方法は、上記で説明した切片封入標本の製造方法(ただし、該製造方法には染色工程が必須に含まれる)によって製造された1以上の切片封入標本を用いる。図12(a)に示すように、スライス前のもとの組織試料30A中の組織31Aには、病変部分33Aが含まれている。この病変部分33Aは、図12(a)の例では、スライスされることで、第6番の切片から第22番の切片までに含まれているとする。上記で説明した切片封入標本の製造方法によって製造された切片封入標本には、所定の数の切片のうち1つの切片に染色が施されており、好ましい態様では、スライスの順番に沿って、所定の数の切片のうち先頭の切片に染色が施されている。
当該特定方法では、染色された切片に着目し、病変部分が含まれているか否かをスライスの順番に沿って判定する。スライスの順番に沿って判定するとは、スライスの順番と判定とを対応付けることを意味し、判定の順番を限定するものではない。図12(b)の例では、第1番目の切片S1、第7番目の切片S7、第13番目の切片S13、第19番目の切片S19、第25番目の切片S25を判定する。
そして、染色により切片中に病変部分が含まれていることを示す最初の切片(図12(b)の例では、第7番目の切片S17)と、染色により切片中に病変部分が含まれていることを示す最後の切片(図12(b)の例では、第19番目の切片S19)との間に位置する全ての切片を、病変部分を含んだ切片であると特定する。
当該特定方法により、病変部分が含まれている第6番目、第20番目〜第22番目の各切片(S6、S20〜S22)は、対象から外れるが、少ない切片の染色によって、病変部分を含んだ切片の存在範囲を素早く特定することができ、未染色の病変部分を含んだ切片をさらに別の検査に供試することが可能となる。
図12(b)の例では、好ましい態様として、切片封入標本が、短冊状の複数(図の例では5枚)の切片封入標本部分によって構成されている。この場合には、染色により切片中に病変部分が含まれていることを示す切片を含んだ切片封入標本部分(図12(b)の例では、左から2番目、3番目、4番目の切片封入標本部分)のうち、染色により切片中に病変部分が含まれていることを示す最後の切片を含んだ切片封入標本部分(左から4番目の切片封入標本部分)以外の切片封入標本部分(左から2番目、3番目の切片封入標本部分)に含まれた全ての切片を、病変部分を含んだ切片であると特定する。この特定方法では、1つの短冊状の切片封入標本部分を最小単位として、病変部分を含んだ切片だけからなる切片封入標本部分であるか否かを管理することができるので、管理者にとって分かり易く好ましい。
当該特定方法の一実施形態においては、切片封入標本に密封される切片は、腫瘍組織からスライスされた切片であり、染色はHE染色であり、HE染色により染色された切片中で特定される病変部分は腫瘍部分であってよい。その場合、切片中に腫瘍部分が含まれているか否かを判定するための基準は、例えば、細胞の極性の乱れ、細胞核の腫大や変形、クロマチン濃染などを基準として判定することができる。
以下において、実施例により本発明をより具体的に説明するが、この発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 5つのウェルを備える切片封入用デバイスの作製と切片の密封
発明者らは、ウェルを5つ含む切片封入用デバイスを作製した(図2)。支持体層およびカバー層の素材としてポリエチレンテレフタラート、粘着剤層の粘着剤としてアクリル系粘着剤が使われているものを用いた。支持体層の厚さは20μm、粘着剤層の厚さは5μm(ベース層としては25μm)、カバー層の厚さは約100μmであった。また、A4クリアファイルなどにも納まるように、ベース層およびカバー層の大きさは幅30mm、長さ240mmに設定した。カバー層の開口部の大きさは幅24mm、長さ42mmに設定し、開口部間の間隔が均等になるように蓋部を切り取った。
さらに、該切片封入用デバイスに実際に切片の接着が可能か試みた(図3)。未染色の切片が密封された切片封入用デバイスの具体的な作製方法を下記に示す。
1.正常肺のホルマリン固定パラフィン包埋組織ブロックをミクロトームにセットした。なお、ミクロトームは、ロータリー式とスライド式のどちらでもよい。
2.組織試料から厚さ3〜5μmの切片をスライスできるようにミクロトームの刃を調節した後、ベース層を組織試料面に貼り付け、そのまま組織試料をスライスすることによって、切片をベース層に接着した。なお、スライスの際には、ベース層が他の場所に接着してスライスを阻害しないように、ピンセット等で把持した。また、ベース層を組織試料面に貼り付ける際には、下記4.においてベース層にカバー層を接着した際に、カバー層の開口部の位置に切片が位置するように位置取りした。
3.上記2.の操作をさらに4回繰り返し、ベース層に5枚の連続切片を順番に接着した(図3)。
4.気泡が入らないようにベース層にカバー層を貼り付け、さらに蓋部をウェルに貼り付け、切片を密封した(図4、5)。
各切片は、蓋部を外すことでアクセスが可能であった。蓋部が切片の周囲の粘着剤と接着するため、切片は密封されていた。遺伝子検査に用いる場合、このウェルから切片を削り取っても、パンチなどでフィルムごと切片を切り取ることもできる。
実施例2 切片封入用デバイスに密封された切片のHE染色
切片封入用デバイスに密封された切片をウェル内でHE染色が可能か試みた。流水で洗い流す場合以外は、切片封入用デバイスを染色液などに直接浸漬せず、ウェル上に液を0.1〜0.3mL(mLはミリリットル)を滴下することで反応を行った。また、カバー層や粘着剤層の粘着剤と染色液との反応を最小限にするために、切片の脱パラフィン処理と透徹処理の際には、HE染色で一般的に用いられるキシレンでなく、アルカン系有機溶剤であるClear Plus(株式会社ファルマ)を用いた。
具体的な手順を下記に示す。
1.実施例1に従い作製された切片封入用デバイスの1枚目切片の蓋部を剥離した。
2.切片封入用デバイスを30〜45度傾けた状態で、ウェルにClear Plusを0.1〜0.3mL滴下して切片の表面上を流した後、切片に触れないように紙などでClear Plusを吸い取った。この操作を2〜3回繰り返すことで切片の脱パラフィン処理を行った。
3.上記2.の操作をClear Plusに代えて100%エタノールで行った。
4.切片を流水で30秒から1分洗い流した。
5.ウェルにヘマトキシリン溶液を0.1〜0.3mL滴下し、切片と1〜3分反応させた(図6)。
6.切片を流水で30秒から1分洗い流した。
7.ウェルにエオジン溶液を0.1〜0.3mL滴下し、切片と30秒から1分反応させた。
8.切片封入用デバイスを10〜30度傾けた状態で、ウェルに100%エタノールを0.1〜0.3mL滴下し、脱水しつつ流した。
9.上記2.の操作を行うことで切片の透徹処理を行った。
10.アルカン系有機溶剤にアクリル樹脂を溶解した封入剤(PARA mount D(株式会社ファルマ))と共に、蓋部で切片を密封した(図7、8)。
上記のようにして得られた切片封入用デバイス内のHE染色された切片は、対物レンズ4〜20倍拡大での検鏡でも明瞭に観察できた(図9、10)。また、管状腺癌や印環細胞癌を含む5例の胃生検標本を用いて診断性を検討したところ、いずれもの症例も、組織や細胞の染色性、判別性においてガラススライドを用いた場合とほぼ同程度で、ガラススライドと同じ診断を得ることができた(図11)。
実施例3 30症例の組織標本を用いた、切片封入用デバイスに密封された切片のHE染色による診断性の検討
発明者らは、切片封入用デバイスに密封された切片のHE染色による組織診断が可能か、比較的多数の症例の過去標本を用いて検討した。
検討には、胃、食道、大腸、肺、皮膚、子宮頸部を各5症例含んだ、計30症例のホルマリン固定パラフィン包埋組織標本を用いた。この中には、切除方法としては生検、切除生検、外科的切除を、診断としては良性、異型、悪性を含む様々な症例が含まれていた。
組織標本の観察者として病理専門医2名が参加した。観察者は上記30症例のガラススライドを検鏡して診断を記載し、2週間のインターバルを挟んだ後、切片封入用デバイスで作製された同じ30症例の標本を検鏡して診断を記載した。この方法により、ガラススライドによる診断と切片封入用デバイスによる診断の一致率を求めた。
本実施例では、切片封入用デバイスとして、図14(a)、(b)に示した第2の態様を用いた。支持体層およびカバー層の素材としてポリエチレンテレフタラート、粘着剤層の粘着剤としてアクリル系粘着剤が使われているものを用いた。支持体層の厚さは20μm、粘着剤層の厚さは5μm(ベース層としては25μm)、カバー層の厚さは約200μmであった。ベース層とカバー層の大きさは、通常のガラススライドやカバーガラスと概ね同じ大きさに設定し、一つの切片封入用デバイスに一症例分の切片を載置した。具体的には、ベース層の1つあたりの大きさは幅30mm、長さは50mmに設定し、組織ブロックの大きさに合わせて余剰部分を適宜切り取った。また、カバー層の大きさは幅30mm、長さ75mmに設定した。
また、カバー層や粘着剤層と染色液との反応を最小限にするために、切片の脱パラフィンと透徹の際には、HE染色で一般的に用いられるキシレンでなく、飽和脂肪族炭化水素の有機溶剤であるFast Solve(株式会社ファルマ)を用いた。
具体的な手順を下記に示す。
1.ベース層とともに切片をFast Solveに3回から5回手早く浸漬し、脱パラフィンした(以下の各工程の操作もベース層と切片は一体となった状態で行った)。
2.上記1.の操作をFast Solveに代えて100%エタノールで行った。
3.切片を蒸留水に2分から3分浸漬して洗い流した(図15)。
4.切片をヘマトキシリン溶液に5分浸漬した。
5.切片を蒸留水に2分から3分浸漬して洗い流した。
6.切片をエオジン溶液に1分浸漬した。
7.切片を蒸留水に30秒浸漬して洗い流した。
8.上記1.の操作をFast Solveに代えて100%エタノールで行い、脱水した。
9.上記1.の操作を行い、透徹した。
10.ベース層とカバー層間に封入剤と共に切片を挟むことによって、切片を封入した(図16、図17)。
上記のようにして得られた切片封入用デバイス内のHE染色された切片は、対物レンズ4〜40倍拡大での検鏡でも明瞭に観察できた(図18、図19)。
一方の観察者の診断一致数は、一致26例、不一致4例であった。不一致症例を再検討したところ、ガラススライドのHE染色の脱失によるものが1例、臨床的に影響のない軽微な不一致が1例、臨床的に影響を与えうる不一致が2例であった。また診断後に、この観察者に切片封入用デバイスに封入された切片のHE染色について所感を求めたところ、組織の微細なひび割れや切片の厚さなど、切片の質に関して改善の余地はあるが、組織診断は可能であると述べていた。
他方の観察者は、6例を切片封入用デバイスでは診断困難とし、これを除く24症例中の診断一致数は、一致17例、不一致7例であった。診断困難と考えた6例について意見を求めたところ、6例中6例が通常の切片よりも厚く、また3例は組織の微細なひび割れが多数あり、いずれも診断に影響する可能性があると述べていた。不一致症例を再検討したところ、ガラススライドのHE染色の脱失によるものが1例、臨床的に影響のない軽微な不一致が3例、臨床的に影響を与えうる不一致が3例であった。
組織の微細なひび割れにはいくつかの原因が推定された。第一に、組織の微細な組織剥脱によるものではないかと考えられた。線維などの成分の多い結合組織は、細胞成分の多い上皮組織と比して帯電性が低いため、ガラススライド上において接着性や安定性が低く、染色過程で剥脱しやすい。これと同様の現象が、今回切片封入用デバイスでも起こった可能性があった。第二に、薄切時のブロックに対する力学的ストレスによるものではないかと考えられた。ただし今回使用した組織ブロックは、作製から8年程度経過したものがほとんどであり、標本の乾燥や劣化により脆弱性が増加している可能性があった。このことから、比較的最近作製された組織ブロックを用いることで改善できると考えられた。それでも改善されない場合、ミクロトームの改良によって改善できると考えられた。
また、切片が厚くなった原因はこの組織の微細なひび割れや剥脱に対する一時的な改善策として、ベース層に切片を載置する際にブロックを意図的にやや厚くスライスしたためであると考えられた。
以上より、切片封入用デバイスにおいてもガラススライドと同様に組織診断をすることができることが示唆されたと、発明者らは結論づけた。
実施例4 切片封入用デバイスに密封された切片の免疫染色
発明者らは、切片封入用デバイスに密封された切片の免疫染色が可能か検討した。検討には、食道腺癌の過去症例のホルマリン固定パラフィン包埋組織ブロックを用いた。
本実施例では、切片封入用デバイスとして、実施例3と同様に、図14(a)、(b)に示した第2の態様を用いた。支持体層およびカバー層の素材としてポリエチレンテレフタラート、粘着剤層の粘着剤としてアクリル系粘着剤が使われているものを用いた。支持体層の厚さは20μm、粘着剤層の厚さは5μm(ベース層としては25μm)、カバー層の厚さは約200μmであった。ベース層の大きさは、通常のカバーガラスと概ね同じ大きさである幅30mm、長さは50mmに設定し、一つのベース層に一枚の切片を載置した。対してカバー層は、連続切片を6枚載置できるように幅30mm、長さ300mmに設定した(図20、図21)。
ミクロトームを用いて組織ブロックから厚さ4μmの切片を薄切し、切片をベース層に接着し、次にベース層をカバー層上に順に載置することで、6つの連続切片が密封された切片封入用デバイス2枚(第一切片封入用デバイスおよび第二切片封入用デバイス)と13枚目の連続切片のみが密封された切片封入用デバイス1枚(第三切片封入用デバイス)を作製した(図22)。各切片封入用デバイス内の第一切片は、実施例3と同様の方法を用いてHE染色を施した。なお、第三切片封入用デバイスは簡易化のため実施例3と同様の大きさに設定した。各切片封入用デバイスの第一切片を顕微鏡で観察することにより、それらの間にある未染色切片に、腫瘍細胞が含まれているか否か、また含まれているとすればどの位置にあるかを確認することができた(図23)。
この結果に準じ、第一切片封入用デバイスからベース層とともに切片3枚(第一切片封入用デバイスの第二から第四切片)を剥離し、免疫染色を施した。以下に具体的な手順を示す。
1.ベース層とともに切片をFast Solveに3回から5回手早く浸漬し、脱パラフィンした(以下の各工程の操作もベース層と切片は一体となった状態で行った)。
2.上記1.の操作をFast Solveに代えて100%エタノールで行った。
3.切片を蒸留水に2分から3分浸漬して洗い流した。
4.切片を98℃の抗原賦活化溶液(Epitope retrieval solution, 株式会社Leica Biosystems)に40分浸漬した。
5.切片をバッファー液(Bond Wash Solution, 株式会社Leica Biosystems)に2分から3分浸漬して洗い流した。
6.清潔なガラスの平板(今回はガラススライドを用いた)上に、過酸化水素溶液を100μL滴下し、切片側が毛細管現象で溶液に浸るように載置し、30分反応させた。
7.切片をバッファー液に2分から3分浸漬して洗い流した。
8.上記6.と同様の方法で、切片を一次抗体と30分反応させた。なお、第二切片にはp53に対する抗体(株式会社Leica Biosystems)、第三切片にはpancytokeratinに対する抗体(AE1/AE3、株式会社Nichirei Biosciences)、第四切片にはCEAに対する抗体(株式会社Dako)を用いた。
9.切片をバッファー液に2分から3分浸漬して洗い流した。
10.上記6.と同様の方法で、切片を増感液(Mouse LINKER, 株式会社Dako)と15分反応させた。
11.切片をバッファー液に2分から3分浸漬して洗い流した。
12.上記6.と同様の方法で、切片を二次抗体(Bond Polymer Refine Detection, 株式会社Leica Biosystems)と30分反応させた。
13.切片をバッファー液に2分から3分浸漬して洗い流した。
14.切片にジアミノベンジジン溶液(DAB+ Liquid, 株式会社Dako)を滴下して標識した。なお反応時間については、顕微鏡下で確認し、適度に反応が進行した時点で終了とした。
15.切片を蒸留水に2分から3分浸漬して洗い流した。
16.切片をヘマトキシリン溶液に2分浸漬した。
17.切片を蒸留水に30秒浸漬して洗い流した。
18.上記1.の操作をFast Solveに代えて100%エタノールで行い、脱水した。
19.上記1.の操作を行い、透徹した。
20.ベース層とカバー層間に封入剤と共に切片を挟むことによって、切片を封入した。
上記のようにして得られた切片封入用デバイス内の免疫染色された切片は、適切に染色が施されていることが確認できた(図24から図27)。
実施例5 切片封入用デバイスに密封された切片からの核酸抽出
発明者らは、切片封入用デバイスに密封された切片から、遺伝子検査に必要な核酸の抽出が可能か検討した。検討に際しては、実施例4で作製された切片封入用デバイスからベース層とともに未染色切片(各4μm)6枚を剥離して、核酸抽出に供した。
抽出には株式会社Qiagenの研究用試薬RNeasy FFPE kitを用い、そのプロトコールに則した。以下に具体的な手順を示す。
1.ベース層とともに切片をキシレンに3回から5回手早く浸漬し、脱パラフィンした(以下の各工程の操作もベース層と切片は一体となった状態で行った)。
2.上記1.の操作を100%エタノールで行った。
3.切片を乾燥させた。
4.各切片封入用デバイスの第一切片のHE染色の観察から、乾燥した切片内において腫瘍と同定された領域を切り取り、試験チューブに挿入した(図28)。
5.バッファー液をチューブに滴下し、10000回/分で1分間遠心した。
6.プロテアーゼK溶液をチューブに滴下し、56℃で15分、80℃15分反応させた。
7.3分間氷冷し、反応を停止させた。
8.13500回/分で15分遠心した後、上澄み液を抽出した。
9.上澄み液にDNase BoosterとDNase I Stock Solutionを滴下し、室温で15分反応させた。
10.反応液にBuffer RBCと100%エタノールを滴下し、スピンカラムを用いて10000回/分で1分間遠心した。
11.スピンカラムにBuffer RPEを滴下し、10000回/分で1分間遠心した。
12.スピンカラムにBuffer RPEを滴下し、10000回/分で2分間遠心した。
13.スピンカラムの蓋を開けた状態で15000回/分で5分遠心した。
14.スピンカラムにRNase-free Waterを滴下し、15000回/分で1分遠心して、RNA抽出液を得た。
超微量分光計(NanoDrop, 株式会社Thermo Scientific)を用いて得られたRNA抽出液を計測したところ、RNA純度の指標ではA260/A280=1.74、A260/A230=1.79と十分に高かった(図29)。またRNA濃度は18.2ng/μlであり、抽出に使用された切片の厚さや枚数に相応のRNA量が得られた。
組織標本作製の際に、組織試料から連続的にスライスした切片を、従来のガラスではなく、本発明の切片封入用デバイスに連続的に密封することによって、切片全体の管理および長期保存が容易になる。また、連続切片のうち数枚を染色に供することによって、連続切片に含まれる組織全体の情報を間接的に予測することが可能となり、かつ未染色の切片に対して容易にアクセスできるため、目的の切片に対して必要な試験を迅速に行うことが可能となる。
本出願は、日本で出願された特願2017−236504(出願日:2017年12月8日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含される。
10 ベース層
10a 配置面
11 支持体層
12 粘着剤層
20 カバー層
20a カバー面
21 フレーム部
22 蓋部

Claims (17)

  1. 有機高分子材料からなるフィルム状のベース層を有し、該ベース層の一方の主面は、粘着性を有し、かつ、切片を配置するための配置面であり、
    有機高分子材料からなるフィルム状のカバー層を有し、該カバー層の一方の主面は、前記ベース層の配置面に配置された前記切片を覆い、かつ、前記配置面に貼り付くための、カバー面であり、
    前記ベース層の配置面および前記カバー層のカバー面のうちの少なくとも一方が、互いに隣り合って並んだ複数の切片を包含する広さを持っており、
    前記ベース層の配置面および前記カバー層のカバー面のうちの他方が、前記の互いに隣り合って並んだ複数の切片を個別に密封しかつ個別に該密封を解除するように、前記一方に対して着脱可能な構造を有する、
    切片封入用デバイス。
  2. 前記ベース層の一方の主面は、粘着性を有し、かつ、複数の切片を間隔をおいて配置するための配置面であり、
    前記カバー層は、前記配置面上に配置された複数の切片のそれぞれの周囲を個別に取り囲む複数のフレーム部と、各フレーム部によって囲まれた各切片をそれぞれに覆う蓋部とを有し、
    各フレーム部同士は互いにつながっており、
    各蓋部は、各フレーム部によって囲まれた各切片を覆って密封し、各切片から離れるように、各フレーム部に対して着脱可能または可動である、
    請求項1に記載の切片封入用デバイス。
  3. 前記カバー層のフレーム部と蓋部が、同じ1枚のフィルム中に含まれた互いに異なる部分であり、各フレーム部に囲まれた部分が各蓋部であり、
    各蓋部の外周のうちの一部または全部が各フレーム部から切断され、それにより、各蓋部は、各フレーム部に対して着脱可能または可動である、
    請求項2に記載の切片封入用デバイス。
  4. フレーム部と蓋部とが、部分的に互いにつながっており、該つながっている部分は分断可能であり、該つながっている部分を分断することにより、各蓋部は、各フレーム部に対して着脱可能である、請求項3に記載の切片封入用デバイス。
  5. 各蓋部の外周形状が、線対称の形状および点対称の形状ではない、請求項3または4に記載の切片封入用デバイス。
  6. 当該切片封入用デバイスが所定長さと所定幅とを持った帯状であり、前記ベース層および前記カバー層も、それぞれ前記の所定長さと所定幅とを持った帯状であり、
    前記ベース層は、自体の配置面の長手方向に前記複数の切片が所定の間隔をおいて所定数だけ一列に配置されるように、予め決定された帯幅と長さとを有する、
    請求項2〜5のいずれか1項に記載の切片封入用デバイス。
  7. 前記ベース層の配置面および前記カバー層のカバー面のうちの、少なくとも前記カバー層のカバー面が、互いに隣り合って並んだ複数の切片を包含する広さを持っており、
    前記ベース層の配置面が、前記の互いに隣り合って並んだ複数の切片を個別に密封しかつ個別に該密封を解除するように、前記カバー層のカバー面に対して着脱可能な構造を有する、
    請求項1に記載の切片封入用デバイス。
  8. 前記ベース層の配置面が、1つの切片を配置する広さを持っており、かつ、
    1つのカバー層のカバー面が、複数のベース層の各配置面が互いに隣り合って貼り付く広さを持っており、
    前記ベース層の配置面と前記カバー層のカバー面とによって、複数の切片が、互いに隣り合って並んだ状態で、ベース層とカバー層との間に個別に密封され、かつ個別に該密封を解除される、
    請求項7に記載の切片封入用デバイス。
  9. 前記ベース層が、下層側の支持体層と、上層側の粘着材層とを有してなる積層体であって、粘着材層の表面が配置面となっている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の切片封入用デバイス。
  10. ベース層とカバー層のうちの少なくとも一方が、密封された切片を外部から観察し得るように透明である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の切片封入用デバイス。
  11. 前記複数の切片が、もとの組織試料から順次スライスされることによって得られる連続切片である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の切片封入用デバイス。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の切片封入用デバイスを1以上用い、該切片封入用デバイスのベース層の配置面に、組織試料をスライスしてなる切片を配置する、切片配置工程と、
    前記切片封入用デバイスのカバー層によって、前記ベース層の配置面に配置された切片を覆って密封し、前記組織試料をスライスしてなる複数の切片が、互いに間隔をおいてスライスの順番に配置された切片封入標本を得る、密封工程とを有する、
    切片封入標本の製造方法。
  13. 請求項2〜6のいずれか1項に記載の切片封入用デバイスを1以上用い、該切片封入用デバイスのベース層の配置面に、組織試料をスライスしてなる複数の切片を、互いに間隔をおいてスライスの順番に配置する、切片配置工程と、
    前記切片封入用デバイスのカバー層のフレーム部によって、前記ベース層の配置面に配置された各切片のそれぞれの周囲を個別に取り囲み、かつ、該カバー層の蓋部によって、各切片をそれぞれに覆い密封する、密封工程とを有する、
    請求項12に記載の切片封入標本の製造方法。
  14. さらに染色工程を有し、該染色工程は、
    切片配置工程中に、または、切片配置工程の後であって密封工程の前に、または、密封工程の後で、
    スライスの順番に沿った所定の数の切片の組ごとに、各組中の最初の切片に対して、切片中に病変部分が含まれているか否かを検査するための染色を行う工程である、
    請求項12または13に記載の切片封入標本の製造方法。
  15. 前記切片配置工程において、前記切片封入用デバイスを複数用い、複数の切片を複数の切片封入用デバイスにわたってスライスの順番に配置し、
    前記染色工程において、各切片封入用デバイス中の複数の切片のうちの先頭の切片に対して前記染色を行う、
    請求項14に記載の切片封入標本の製造方法。
  16. 請求項14または15に記載の切片封入標本の製造方法によって製造された1以上の切片封入標本を用い、
    前記染色された切片に病変部分が含まれているか否かをスライスの順番に沿って判定し、
    該染色により切片中に病変部分が含まれていることを示す最初の切片と、該染色により切片中に病変部分が含まれていることを示す最後の切片との間に位置する全ての切片を、病変部分を含んだ切片であると特定する、
    病変部分を含んだ切片を特定する方法。
  17. 請求項15に記載の切片封入標本の製造方法によって製造された複数の切片封入標本を用い、
    前記染色された切片に病変部分が含まれているか否かをスライスの順番に沿って判定し、
    該染色により切片中に病変部分が含まれていることを示す切片を含んだ切片封入標本のうち、該染色により切片中に病変部分が含まれていることを示す最後の切片を含んだ切片封入標本以外の切片封入標本に含まれた全ての切片を、病変部分を含んだ切片であると特定する、
    請求項16に記載の病変部分を含んだ切片を特定する方法。
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