JPWO2019073605A1 - スクロール圧縮機 - Google Patents
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Abstract
Description
[スクロール圧縮機1の構成]
図1は、本発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機1の構造を示す概略縦断面図である。スクロール圧縮機1は、冷媒等の流体を吸入して圧縮し、高温高圧の状態にして吐出するものである。図1に示すように、スクロール圧縮機1は、冷媒を圧縮する圧縮機構部2と、圧縮機構部2を駆動する電動機3と、圧縮機構部2及び電動機3を収容する密閉容器21と、を有している。
密閉容器21は、スクロール圧縮機1の外郭を構成するものである。密閉容器21内には、圧縮機構部2、電動機3、及び、主軸15が収容されている。また、密閉容器21の側面には、密閉容器21内と連通する吸入管23が接続されている。また、密閉容器21の上部には、圧縮機構部2によって圧縮された冷媒が吐出される吐出管24が接続されている。さらに、密閉容器21の底部には、潤滑油22が貯留されている。
圧縮機構部2は、吸入管23から密閉容器21内に吸入される流体(例えば冷媒)を圧縮するものである。圧縮機構部2は、密閉容器21に取り付けられたフレーム14に固定された固定スクロール11と、固定スクロール11に対して揺動(すなわち、公転運動)する揺動スクロール12と、を有している。なお、固定スクロール11がフレーム14と固定された例について説明したが、固定スクロール11は、フレーム14とは固定されずに密閉容器21と固定された構成とすることができる。固定スクロール11及び揺動スクロール12は、それぞれの渦巻歯114と、渦巻歯126とが噛み合うように組み合わされている。渦巻歯114と渦巻歯126との間には、冷媒が圧縮される圧縮室が形成される。揺動スクロール12とフレーム14との間には、固定スクロール11に対する揺動スクロール12の自転を規正するオルダムリング13が設けられている。オルダムリング13は、揺動スクロール12の台板部122の下側に配設され、揺動スクロール12の揺動運動中における自転運動を阻止するのに利用される。
固定スクロール11は、揺動スクロール12とともに冷媒を圧縮するものである。固定スクロール11は、揺動スクロール12に対して対向配置されている。固定スクロール11は、平板形状の台板部113と、台板部113から揺動スクロール12側に突出して形成された渦巻歯114と、を有している。なお、渦巻歯114は、本発明の「第1渦巻体」に相当する。
揺動スクロール12は、固定スクロール11とともに冷媒を圧縮するものである。渦巻歯114とともに冷媒を圧縮する渦巻歯126が形成され、固定スクロール11との間に圧縮室を形成する。揺動スクロール12は、固定スクロール11に対して対向配置されている。揺動スクロール12は、平板形状の台板部122と、台板部122から固定スクロール11側に突出して形成された渦巻歯126とを有している。なお、渦巻歯126は、本発明の「第2渦巻体」に相当する。
電動機3は、主軸15を回転させるものである。電動機3は、密閉容器21の内周壁に固定されたステータ19と、ステータ19の内周側に配置されたロータ18と、を有している。ステータ19は、積層鉄心に複数相の巻線を装着して構成されている。ロータ18は、内部に図示省略の永久磁石を有する。また、ロータ18には、揺動スクロール12に電動機3の回転駆動力を伝達する主軸15が固定されている。つまり、ステータ19に通電されると、ロータ18は、主軸15と一体となって回転するように構成されている。電動機3は、例えば、インバータ制御等により、ロータ18の回転数を変更することができる。ロータ18の下部には、第2バランサ17が設けられている。
主軸15は、揺動スクロール12に回転駆動力を伝達するものである。主軸15の上部は、フレーム14に設けられた主軸受143に回転自在に支持されており、主軸15の下部は、副軸受20に回転自在に支持されている。この副軸受20は、サブフレーム28に設けられており、例えばボールベアリング等により構成されている。主軸15の上端部には、偏心軸部151が設けられている。偏心軸部151は、主軸15の中心軸に対して所定の偏心方向に偏心して配置されている。偏心軸部151は、移動部材30の溝部31に摺動自在に挿入されている。さらに、主軸15には、偏心軸部151よりも下側であって、電動機3のロータ18よりも上側に揺動運動のバランスをとる第1バランサ16が設けられている。第1バランサ16及び第2バランサ17は、揺動スクロール12、移動部材30、及び、オルダムリング13による偏心に伴うアンバランスを相殺させ、回転系全体としてのバランスを釣り合わせるために設けられている。また、主軸15の下端には、油溜めの潤滑油22を吸い上げる図示せぬオイルポンプが設けられている。また、主軸15の内部には、主軸15の中心軸方向に沿って図示せぬ油穴が形成されている。主軸15の下端に設けられたオイルポンプによって吸い上げられた潤滑油22は、主軸15に形成された油穴を通って、各摺動部に供給される。なお、可変半径クランク機構5及びスライダバランサ部301との関係については後述する。
ここで、スクロール圧縮機1の動作について説明する。このように構成されたスクロール圧縮機1は、ステータ19に電力が供給されると、ロータ18がトルクを発生し、フレーム14の主軸受143と副軸受20とで支持された主軸15が回転する。主軸15の偏心軸部151によりボス部121が駆動される揺動スクロール12は、オルダムリング13により自転を規制されて揺動運動する。これにより、スクロール圧縮機1は、固定スクロール11の渦巻歯114と揺動スクロール12の渦巻歯126との間で形成された圧縮室の容積を変化させる。揺動スクロール12の揺動運動に伴い吸入管23から密閉容器21内に吸入されたガス冷媒が、固定スクロール11と揺動スクロール12の両渦巻歯間の圧縮室に取り込まれ、圧縮される。その後、圧縮された冷媒は、固定スクロール11に設けられた吐出ポート111から吐出弁25に抗して吐出され、吐出管24から回路へ排出される。
図2は、スライダを用いた一般的な可変半径クランク機構を有するスクロール圧縮機1tの概略縦断面図である。図3は、図2の可変半径クランク機構を示す縦断面図である。図4は、図2の可変半径クランク機構を示す模式平面図である。図1のスクロール圧縮機1と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。ここで、図2及び図3に示すように、可変半径クランク機構5tは、揺動スクロール12tのボス部121t内に配置されている移動部材30t及び主軸15tに設けられている偏心軸部151tなどから構成されるものである。可変半径クランク機構5tは、主軸15tの回転により揺動スクロール12tを揺動運動させるときにその揺動半径を可変とするものである。また、以下の説明において、揺動部品とは、揺動スクロール12及び移動部材30などから構成されるものである。また、渦巻側面の押付力とは、渦巻歯114と渦巻歯126とが押し付け合う力を指し、渦巻側面押付反力とは、渦巻歯114と渦巻歯126とが押し付け合った結果、それぞれに作用する反力を指す。なお、比較例の説明にあたり、実施の形態1のスクロール圧縮機1で説明した各種構成に対応する構成の符号に加えて記号tを付している。これは、実施の形態1に係るスクロール圧縮機1と比較例のスクロール圧縮機1tとを区別するために便宜的に付したものである。
可変半径クランク機構5は、主軸15の回転する力を、主軸の中心からの距離が可変の移動部材30を介して、揺動スクロール12が揺動する力として伝えるものである。可変半径クランク機構5は、主軸15の回転により揺動スクロール12を揺動運動させるときにその揺動半径を定める。可変半径クランク機構5は、主軸15の一端に設けられている。可変半径クランク機構5は、主軸15の中心軸に対して偏心した偏心軸部151と、偏心軸部151が挿入され、揺動スクロール12に設けられた円筒状のボス部121の内周側に回転摺動自在に設けられた移動部材30とから構成されている。
主軸15は、圧縮機構部2側の上端部において、図1及び図5に示すように、円柱形状の基軸部150と、基軸部150の端部から径方向に突出した円盤部155と、円盤部155から基軸部150と反対方向に突出した偏心軸部151と、を有する。偏心軸部151は、図6に示すように、主軸15の一端に設けられ、偏心軸部151の中心軸C2は、主軸15の中心軸C1に対して偏心している。図5〜図8において、偏心軸部151の中心軸C2は、主軸15の中心軸C1に対して、紙面右側に偏心している。また、主軸15は、図5に示すように、円盤部155の周縁部から偏心軸部151と同じ方向に突出した周壁部156を有する。周壁部156は、主軸15の一端に設けられ、主軸15と同一の中心軸C1を有し、図6に示すように、ボス部121の外周面と対向する内周壁を形成する。周壁部156の内部には可変半径クランク機構5が配置されている。また、周壁部156は、円筒形状に形成されており、偏心軸部151が偏心している側とは反対側の壁部の一部に切り欠き部154が形成されている。切り欠き部154は、周方向かつ軸方向に形成されおり、周壁部156の円盤部155側の端部から、円盤部155とは反対側の端部まで切り欠かれている。周壁部156は、主軸15の軸方向の平面視において偏心軸部151が偏心している側の半円部分の壁部を相殺バランス部152と称し、偏心軸部151が偏心している側とは反対側の半円部分の壁部をストッパ部153と称する。換言すれば、主軸15は、図5に示すように、偏心軸部151が偏心している側の半円部分の壁部を構成する相殺バランス部152と、周方向において相殺バランス部152の両端から延設された壁部を構成する一対のストッパ部153と、を有する。ストッパ部153は、主軸15につながっている。ストッパ部153は、主軸15の一端に形成され、可変半径クランク機構5を内部に配置する円筒状の周壁部である。相殺バランス部152は、主軸15の端部に設けられ、後述するスライダバランサ部301に生じる遠心力と逆方向の遠心力を生じる。相殺バランス部152の肉厚は、一対のストッパ部153の肉厚よりも厚く形成されており、ストッパ部153と、相殺バランス部152とは一体に形成されている。そのため、周壁部156は、ストッパ部153の内周壁が、相殺バランス部152の内周壁と比較して凹んでおり、周壁部156の内周壁は、ストッパ部153から相殺バランス部152にかけて段差158が形成されている。相殺バランス部152の両端に位置するストッパ部153のそれぞれの周方向の長さは、等しいことが望ましいが、異なる長さであっても良い。周壁部156は、一対のストッパ部153の間に、切り欠き部154が形成されている。なお、ストッパ部153の外周壁と、相殺バランス部152の外周壁とは面一状に形成されている。
移動部材30は、主軸15の中心からの距離が変化する部材であり、ボス部121と偏心軸部151との間に介在し、揺動スクロール12の揺動半径を定めるものである。移動部材30は、例えばスライダである。移動部材30は、円筒形状の外周面を備え、ボス部121の内周側に回転摺動自在に設けられている。また、移動部材30には、偏心軸部151が一方向に往復摺動自在に挿入される長穴形状の溝部31が形成されている。移動部材30は、平板形状の基板部35上に設けられている。なお、図5では、移動部材30と基板部35とは一体に形成されているが、例えば、移動部材30と基板部35とは別体で形成され、基板部35に形成された円形の開口に移動部材30を挿入してもよい。基板部35は、偏心軸部151の主軸15に対する偏心方向とは反対方向に延設されており、延設方向の端部には非支持スライダバランサ部301aが設けられている。移動部材30内には主軸15の偏心軸部151が挿入され、基板部35は、円盤部155上に配置される。移動部材30、基板部35、非支持スライダバランサ部301aは、主軸15の周壁部156で囲まれた空間に収容される。
非支持スライダバランサ部301aは、錘であり揺動スクロール12及びその他の揺動部品に発生する遠心力をキャンセルするものである。非支持スライダバランサ部301aは、基板部35を介して移動部材30と連結されている。非支持スライダバランサ部301aは、外周壁が円弧形状に形成されていると共に、移動部材30と対向する内壁面部301a1は、平面状に形成されている。非支持スライダバランサ部301aは、主軸15の軸方向の長さが、主軸15の周壁部156の長さよりも短く、周方向の長さが、主軸15の切り欠き部154の長さよりも短い。非支持スライダバランサ部301aが、主軸15の周壁部156で囲まれた空間に収容されると、運転停止時及び低速運転時には、非支持スライダバランサ部301aとストッパ部153との間には間隙が形成されている。なお、非支持スライダバランサ部301a及び基板部35は、本発明の「第1バランスウェイト」に相当する。また、非支持スライダバランサ部301aは、本発明の「ウェイト本体部」に相当する。
半支持スライダバランサ部301bは、錘であり揺動スクロール12及びその他の揺動部品に発生する遠心力をキャンセルするものである。半支持スライダバランサ部301bは、半円弧形状に形成されている。半支持スライダバランサ部301bは、基板部35上に配置される。半支持スライダバランサ部301bは、非支持スライダバランサ部301aと対向する部分の壁部に、水平断面で弓形に切り欠かれた切り欠き部36が形成されている。この弓形の切り欠き部36に、非支持スライダバランサ部301aと弾性部材26とが配置される。切り欠き部36を構成する半支持スライダバランサ部301bの周方向のそれぞれの側面部37は、仮想の同一平面を構成する。主軸15の軸方向において、半支持スライダバランサ部301bの軸方向の長さは、基板部35上に配置された状態で、周壁部156の長さと等しいことが望ましい。半支持スライダバランサ部301bは、ボス部121と非支持スライダバランサ部301aとの間に摺動自在に配置されている。なお、半支持スライダバランサ部301bは、本発明の「第2バランスウェイト」に相当する。
スライダバランサ部301は、周壁部156の内部に配置され、相互の位置が可変である非支持スライダバランサ部301a及び半支持スライダバランサ部301bの2つのバランスウェイトを含む。すなわち、非支持スライダバランサ部301aと、半支持スライダバランサ部301bとはスライダバランサ部301を構成する。スライダバランサ部301は、主軸15の回転によって揺動部品に生じる遠心力に対して逆向きの遠心力を発生させる。また、スライダバランサ部301は、揺動部品に生じる遠心力を上回る遠心力を生じさせる。なお、非支持スライダバランサ部301a及び半支持スライダバランサ部301bは、本発明の「2つのバランスウェイト」に相当し、周壁部156内において、切り欠き部154の方向の、ボス部121の外周側に配置されている。すなわち、非支持スライダバランサ部301a及び半支持スライダバランサ部301bは、周壁部156の内部に配置され、可変半径クランク機構5と対向する位置に配置されている。この2つのバランスウェイトは、揺動スクロール12及びその他の揺動部品に発生する遠心力をキャンセルするものである。そのため、スライダバランサ部301は、渦巻歯114が渦巻歯126に押し付けられるのを抑制するとともに、移動部材30及び偏心軸部151との摩耗を抑制することができる。また、スライダバランサ部301は、主軸受143及び副軸受20の摩耗を抑制することができる。さらに、スライダバランサ部301は、第1バランサ16及び第2バランサ17と比較すると、揺動部品のアンバランス重心に、より近くに位置している。これにより、第1バランサ16及び第2バランサ17の重量を低減することができる。非支持スライダバランサ部301aと半支持スライダバランサ部301bのキャンセル方向のアンバランス量は、揺動部品のアンバランス量を上回る、所謂オーバーキャンセルとなっている。周壁部156の相殺バランス部152は、オーバー分のキャンセル量と釣り合う荷重を発生させる。なお、非支持スライダバランサ部301aと、半支持スライダバランサ部301bとの間には、スライダバランサ部301が変位する機構として、弾性部材26が配置されている。なお、スライダバランサ部301は、本発明の「バランサ」に相当する。
弾性部材26は、主軸15の回転により半支持スライダバランサ部301bに作用する遠心力により生じる荷重を支持する。弾性部材26は、主軸15の回転速度の変化によりスライダバランサ部301が変位する機構である。弾性部材26は、平板形状に形成され、半支持スライダバランサ部301bの側面部37と、非支持スライダバランサ部301aの内壁面部301a1との間に配置される。弾性部材26は、両端側がそれぞれ側面部37と対向し、側面部37と対向する側と反対側において、中央が内壁面部301a1と対向する。弾性部材26は、一般的なばね材の縦弾性係数を前提に、比較的狭い変位量の範囲で作動するように断面二次モーメント、支持スパンが設定された構造となっている。また、弾性部材26の変位量が変動するのは、主軸15の回転数が変化することにより支持キャンセル力が変化する時なので、弾性部材26は、通常の使用では疲労に至るようなことはない。そのため、弾性部材26は、疲労を想定した応力抑制のために特殊な素材を用いるという必要はないが、細部形状を変形時の支持位置の微小移動及びそれに伴うフレッティング等に配慮した形状としておく必要がある。
スクロール圧縮機1は、主軸15の回転速度の変化によって、スライダバランサ部301の遠心力をストッパ部153と可変半径クランク機構5の移動部材30とで支持する割合が変化するものである。スクロール圧縮機1の当該構成について、以下に説明する。図7及び図8は、運転停止時及び低速運転時の半支持スライダバランサ部301b及び弾性部材26を示している。半支持スライダバランサ部301bは、運転停止時及び低速運転時には、弾性部材26によってキャンセル方向に移動することを規制されている。すなわち、主軸15の回転数が閾値未満(例えば、90rpm未満)である場合に、半支持スライダバランサ部301bは、弾性部材26と接している。半支持スライダバランサ部301bに作用するキャンセル方向の遠心力は、弾性部材26を介して非支持スライダバランサ部301aに作用する。このため、主軸15の回転数が閾値未満の低速運転の場合には、半支持スライダバランサ部301bと非支持スライダバランサ部301aは、一体に構成されたオーバーキャンセルスライダと同等の構成となり、揺動部品の遠心力が相殺される。そして、ガス荷重のスライダ角に応じた分力により渦巻側面の押付が行われる。
図13は、本発明の実施の形態2のスクロール圧縮機10のスライダバランサ部302の縦断面を示す模式図である。図14は、図13のスライダバランサ部302のC−C線断面図である。なお、図14では、スライダバランサ部302を説明するために、ボス部121を省略している。図1〜図12のスクロール圧縮機1と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。本発明の実施の形態2のスクロール圧縮機10は、スライダバランサ部302の構造が、実施の形態1のスライダバランサ部301の構造と異なるものである。なお、本発明の実施の形態2のスクロール圧縮機10の主軸15の構造は、実施の形態1のスクロール圧縮機1の構造と同じである。主軸15は、圧縮機構部2側の上端部において円柱形状の基軸部150と、基軸部150の端部から径方向に突出した円盤部155と、円盤部155から基軸部150と反対方向に突出した偏心軸部151と、を有する。偏心軸部151は、図13に示すように、主軸15の一端に設けられ、偏心軸部151の中心軸C2は、主軸15の中心軸C1に対して偏心している。周壁部156は、主軸15の一端に設けられ、主軸15と同一の中心軸C1を有し、図13に示すように、ボス部121の外周面と対向する内周壁を形成する。周壁部156の内部には可変半径クランク機構5が配置されている。また、周壁部156は、円筒形状に形成されており、偏心軸部151が偏心している側とは反対側の壁部の一部に切り欠き部154が形成されている。主軸15の周壁部156は、図5に示すように、偏心軸部151が偏心している側の半円部分の壁部を構成する相殺バランス部152と、周方向において相殺バランス部152の両端から延設された壁部を構成する一対のストッパ部153と、を有する。ストッパ部153は、主軸15につながっている。ストッパ部153は、主軸15の一端に形成され、可変半径クランク機構5を内部に配置する円筒状の周壁部である。相殺バランス部152は、主軸15の端部に設けられ、後述するスライダバランサ部302に生じる遠心力と逆方向の遠心力を生じる。相殺バランス部152の肉厚は、一対のストッパ部153の肉厚よりも厚く形成されており、ストッパ部153と、相殺バランス部152とは一体に形成されている。なお、図13において、線分L1は、主軸15の中心軸と、偏心軸部151の中心軸とを通る仮想の線分である。周壁部156は、仮想の線分L1を境に周壁部156の一方の側をU側と称し、他方の側をD側と称する。なお、図13において紙面上側が、U側の周壁部156であり、紙面下側がD側の周壁部156である。U側の周壁部156と、D側の周壁部156とは、偏心軸部151の中心を通る仮想の線分L1を境に対称の形状である。
移動部材30Aは、主軸15の中心からの距離が変化する部材であり、ボス部121と偏心軸部151との間に介在し、揺動スクロール12の揺動半径を定めるものである。移動部材30Aは、円筒形状の外周面を備え、ボス部121の内周側に回転摺動自在に設けられている。移動部材30Aは、例えば、スライダである。また、移動部材30Aには、偏心軸部151が一方向に往復摺動自在に挿入される長穴形状の溝部31が形成されている。移動部材30Aは、偏心軸部151と組み合わされて可変半径クランク機構5を構成する。移動部材30Aは、スライダバランサ部302と一体化しておらず、一般的なブッシュ様形状の部品である。
図14は、主軸15の回転数が閾値未満である場合のスライダバランサ部302を示している。スライダバランサ部302は、主軸15の回転によって揺動部品に生じる遠心力に対して逆向きの遠心力を発生させる。また、スライダバランサ部302は、揺動部品に生じる遠心力を上回る遠心力を生じさせる。スライダバランサ部302は、移動部材30Aと周壁部156との間の、円盤部155上に配置されている。スライダバランサ部302は、主軸15の中心軸と、偏心軸部151の中心軸とを通る仮想の線分L1の両側おいて対称の形に形成されたスライダバランサ部302cとスライダバランサ部302dとから構成されている。スライダバランサ部302は2つに分割された構造であり、周壁部156のU側に配置されるスライダバランサ部302cと、周壁部156のD側に配置されるスライダバランサ部302dとを有する。スライダバランサ部302は、周壁部156の内部に配置され、相互の位置が可変であるスライダバランサ部302c及びスライダバランサ部302dの2つのバランスウェイトを含む。スライダバランサ部302c及びスライダバランサ部302dは、移動部材30Aを挟んで平面視で対称構造に形成されている。なお、スライダバランサ部302c及びスライダバランサ部302dは、本発明の「2つのバランスウェイト」に相当する。スライダバランサ部302cと、スライダバランサ部302dとは、移動部材30Aと接触せず、移動部材30Aを挟み込むように配置されている。スライダバランサ部302は、平面視で、環状に形成された平板の基板部302aを有し、基板部302a内周側は、移動部材30Aの外周側と対向するように配置されている。基板部302aは、内周縁が移動部材30Aの外径よりも大きく形成されており、基板部302aと移動部材30Aとの間に間隙が形成されている。基板部302aは、偏心軸部151の偏心方向の一部に切り欠き部S3が形成されている。換言すると、スライダバランサ部302cは、内周縁が移動部材30Aの外径よりも大きく形成され、内周側に移動部材30Aが配置される平板かつ円弧状に形成された基板部302a1を有する。また、スライダバランサ部302dは、内周縁が移動部材30Aの外径よりも大きく形成され、内周側に移動部材30Aが配置される平板かつ円弧状に形成された基板部302a2を有する。切り欠き部S3は、スライダバランサ部302cの端部303cと、スライダバランサ部302dの端部303dとの間隙である。スライダバランサ部302cの端部303cと、スライダバランサ部302dの端部303dとの間には、スライダバランサ部302が変位する機構として、弾性部材26Aが配置されている。すなわち、基板部302aは、偏心軸部151の偏心方向の一部に形成された切り欠き部S3に弾性部材26Aを配置している。なお、スライダバランサ部302は、本発明の「バランサ」に相当する。
弾性部材26Aは、主軸15の回転によりウェイト本体部302b1及びウェイト本体部302b2に作用する遠心力により生じる荷重を支持する。弾性部材26Aは、主軸15の回転速度の変化によりスライダバランサ部302が変位する機構である。弾性部材26Aは、ウェイト本体部302b1とは反対側に位置する基板部302a1の端部303cと、ウェイト本体部302b2とは反対側に位置する基板部302a2の端部303dとの間に配置されている。図13及び図14には、弾性部材26Aの具体的な形状を示していないが、弾性部材26Aは圧縮されものであり、弾性部材26Aの変位量は小さく、弾性部材26Aには高い荷重が作用する条件で用いられる。図13及び図14では、弾性部材26Aは、実施の形態1のスクロール圧縮機1に用いられる弾性部材26Aと同様に、変形時の支持反力の位置を明確にしている。弾性部材26Aは、さらばねのような機械要素を所定のばね定数となるように設計して用いればよく、所定の条件を満たす物性値を持つような特定の素材を用いる必要性はない。
スクロール圧縮機10は、主軸15の回転速度の変化によって、スライダバランサ部302の遠心力をストッパ部153と可変半径クランク機構5の移動部材30とで支持する割合が変化するものである。スクロール圧縮機1の当該構成について、以下に説明する。スライダバランサ部302は、主軸15の回転数が、閾値未満の回転数である停止時又は低速運転時、周壁部156の内周壁と接している。このとき、スライダバランサ部302cの外縁部の一点は、周壁部156のU側のストッパ部153と、接点U1で接し、スライダバランサ部302dの外縁部の一点は、周壁部156のD側のストッパ部153と、接点D1で接する。スライダバランサ部302c及びスライダバランサ部302dが、接点U1及び接点D1においてストッパ部153と接することで、スライダバランサ部302の平面位置及び姿勢が決定する。そして、平面視で、基板部302a1と、移動部材30Aとの間には間隙が形成されており、スライダバランサ部302cとストッパ部153との間には、接点U1から切り欠き部154にかけて拡大する間隙S1が形成されている。また、平面視で、平面視で、基板部302a2と、移動部材30Aとの間には間隙が形成されており、スライダバランサ部302dとストッパ部153との間には、接点D1から切り欠き部154にかけて拡大する間隙S2が形成されている。また、スライダバランサ部302cのウェイト本体部302b1と、スライダバランサ部302dのウェイト本体部302b2とは接している。なお、接点U1及び接点D1は、周壁部156の切り欠き部154と相殺バランス部152との間のストッパ部153に位置している。
Claims (11)
- 固定スクロールと、前記固定スクロールに対して揺動する揺動スクロールとを有する圧縮機構部と、
回転する主軸と、
前記主軸の回転する力を、前記主軸の中心からの距離が可変の移動部材を介して、前記揺動スクロールが揺動する力として伝える可変半径クランク機構と、
前記主軸の回転によって揺動部品に生じる遠心力に対して逆向きの遠心力を発生させるバランサと、
を有するスクロール圧縮機において、
前記主軸につながるストッパ部と、
前記主軸の回転速度の変化により前記バランサが変位する機構と、
を有し、
前記主軸の回転速度の変化によって、前記バランサの遠心力を前記ストッパ部と前記可変半径クランク機構の前記移動部材とで支持する割合が変化する、
スクロール圧縮機。 - 前記主軸の回転が低速時は前記バランサの遠心力を前記ストッパ部または前記移動部材のいずれかのみが支持して、前記主軸の回転速度が上昇すると前記バランサの遠心力を前記ストッパ部と前記移動部材とが支持するように変化する、請求項1に記載のスクロール圧縮機。
- 前記バランサは、揺動部品に生じる遠心力を上回る遠心力を生じ、前記主軸は、端部に前記バランサに生じる遠心力と逆方向の遠心力を生じる相殺バランス部を有している請求項1又は2に記載のスクロール圧縮機。
- 前記可変半径クランク機構は、
前記主軸の一端に形成され、前記主軸の中心に対して偏心した偏心軸部と、
前記偏心軸部が挿入され、前記揺動スクロールに設けられた円筒状のボス部の内周側に回転摺動自在に設けられたスライダと、
から構成され、
前記移動部材がスライダである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機。 - 前記ストッパ部は、前記主軸の一端に形成され、前記可変半径クランク機構を内部に配置する円筒状の周壁部である請求項4に記載のスクロール圧縮機。
- 前記バランサは、前記周壁部の内部に配置され、相互の位置が可変である2つのバランスウェイトを含む請求項5に記載のスクロール圧縮機。
- 前記2つのバランスウェイトは、
前記移動部材と連結された第1バランスウェイトと、
前記ボス部と前記第1バランスウェイトとの間に摺動自在に配置された第2バランスウェイトと、を有し、
前記第1バランスウェイトと、前記第2バランスウェイトとの間に、前記バランサが変位する機構として、弾性部材が配置されている請求項6に記載のスクロール圧縮機。 - 前記第1バランスウェイトは、外周壁が円弧形状に形成されていると共に、前記移動部材と対向する内壁面部は平面状に形成されたウェイト本体部を有し、
前記第2バランスウェイトは、半円弧形状に形成されていると共に、前記ウェイト本体部と対向する部分に弓形の切り欠き部が形成されており、
前記弓形の切り欠き部に、前記ウェイト本体部と前記弾性部材とが配置されている請求項7に記載のスクロール圧縮機。 - 前記主軸の回転数が閾値未満である場合に、前記第2バランスウェイトは、前記弾性部材と接し、
前記主軸の回転数が閾値以上である場合に、前記第2バランスウェイトは、前記ストッパ部と接する請求項8に記載のスクロール圧縮機。 - 前記移動部材と前記周壁部との間に前記2つのバランスウェイトを配置し、
前記2つのバランスウェイトは、
内周縁が前記移動部材の外径よりも大きく形成され、内周側に前記移動部材が配置される平板かつ円弧状の基板部と、
前記偏心軸部の偏心方向とは反対側の前記基板部の外周縁に設けられたウェイト本体部と、を有し、前記移動部材を挟んで平面視で対称構造に形成されており、
前記ウェイト本体部とは反対側の前記基板部の端部の間に弾性部材が配置されている請求項6に記載のスクロール圧縮機。 - 前記主軸の回転数が閾値未満である場合に、
前記2つのバランスウェイトの外縁部の一点が、それぞれ前記ストッパ部と接し、
前記基板部と、前記移動部材との間には間隙が形成されており、
前記主軸の回転数が閾値以上である場合に、
前記2つのバランスウェイトの外縁部の一点が、それぞれ前記ストッパ部と接し、
前記基板部が、前記弾性部材を圧縮して、前記移動部材と接している請求項10に記載のスクロール圧縮機。
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