JPWO2019022152A1 - TGF−βシグナルに起因する障害を治療または予防するための医薬およびその応用 - Google Patents

TGF−βシグナルに起因する障害を治療または予防するための医薬およびその応用 Download PDF

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Abstract

ピリミジニルイソオキサゾール誘導体およびピリジルイソオキサゾール誘導体などのp38 MAPキナーゼインヒビター(特にAKP−001)を使用して、角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患の治療または予防するための医薬または方法を提供する。好ましい実施形態では、TGF−βシグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患が、フックス角膜内皮ジストロフィである。

Description

本発明は、アンテドラッグ型p38 MAPキナーゼインヒビターの新規用途に関する。より詳細には、ピリミジニルイソオキサゾール誘導体およびピリジルイソオキサゾール誘導体などのp38 MAPキナーゼインヒビター、例えばAKP−001を使用して、角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患を治療または予防するための技術、方法、ならびにそのための薬剤、ならびにこの技術を応用した角膜内皮細胞の保存技術に関する。
視覚情報は、眼球の最前面の透明な組織である角膜から取り入れられた光が、網膜に達して網膜の神経細胞を興奮させ、発生した電気信号が視神経を経由して大脳の視覚野に伝達することで認識される。良好な視力を得るためには、角膜が透明であることが必要である。角膜の透明性は、角膜内皮細胞のポンプ機能とバリア機能により、含水率が一定に保たれることにより保持される。
ヒトの角膜内皮細胞は、出生時には1平方ミリメートル当たり約3000個の密度で存在しているが、一度障害を受けると再生する能力は極めて限定的である。フックス角膜内皮ジストロフィは、角膜の内側の内皮細胞が異常を来して角膜の浮腫を生じたりする疾患であり、その原因は不明である。フックス角膜内皮ジストロフィでは、コラーゲン等の細胞外マトリクスが角膜の後部にあるデスメ膜の後面の一部分に沈着しグッテー(Corneal guttae)およびデスメ膜の肥厚を生じる。グッテー(Corneal guttae)およびデスメ膜の肥厚はフックス角膜内皮ジストロフィ患者における羞明、霧視の原因であり患者のQOLを著しく損なう。フックス角膜内皮ジストロフィは角膜移植以外に有効な治療法はないとされるが、日本での角膜提供は不足しており、角膜移植の待機患者約2600人に対し、年間に国内で行われている角膜移植件数は1700件程度である。
フックス角膜内皮ジストロフィについては、フックス角膜患者由来の角膜内皮細胞の培養(非特許文献1および3)や不死化の報告(非特許文献2)があるが、細胞外マトリックスの過剰産生を伴うなどの疾患の特徴を維持した、治療薬、進行予防薬のスクリーニングに適切な細胞の報告はないため、その治療薬の開発には限界があり、現在のところ臨床で使用されている治療薬は存在せず角膜移植に頼らざるを得ない。
また特許文献1は、角膜の線維症および/または濁りを治療するためのTGF−β1インヒビターペプチドを開示する。特許文献2はTGF−β1,2,3に結合する抗体を開示する。特許文献3は、角膜内皮障害の治療にNrf2アゴニストまたはアクチベーターが使用され得ること角膜内皮障害の治療にNrf2アゴニストまたはアクチベーターが使用され得ることを開示する。特許文献4は、トランスフォーミング増殖因子TGF−β1(TGF−β1)と結合することができ、かつ、サイトカインとの直接的結合によりTGF−β1の生物活性の強力なインヒビターとなるペプチドを開示する。特許文献5は、BMP−7ポリペプチドを含む瘢痕形成抑制剤を開示する。特許文献6は、TGF−β阻害作用が治療上または予防上有効である疾患として、角膜障害を概括的に記載する。
さらに、角膜内皮の疾患は、小胞体ストレスとも関係している。非特許文献4は、ヒト角膜内皮細胞と小胞体ストレスとの関係に関する基礎研究に関する文献である。特許文献7は、TGF−βインヒビターが、TGF−βに起因する小胞体ストレスに関連する角膜内皮の疾患を治療し得ることを記載する。
特表2013-520405公報 国際公開第2012/167143号 国際公開第2012/009171号 特表2007-525204号公報 特表2006-508169号公報 国際公開第2004/018430号 国際公開第2015/064768
Zaniolo K, et al. Exp Eye Res.;94(1):22-31. 2012 Azizi B, et al. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2;52(13):9291-9297. 2011 Kelliher C. et al. Exp Eye Res Vol.93(6), 880-888, 2011 William L. Corwin et al., Cryobiology:Vol.63,No.1, 46-55 (2011)
本発明者らは、フックス角膜内皮ジストロフィの角膜内皮障害モデルの細胞において、トランスフォーミング増殖因子−β2(TGF−β2)に代表される薬剤を用いることでTGF−βシグナルが障害を生じることを見出し、このような障害に、驚くべきことに、アンテドラッグ型p38 MAPキナーゼインヒビターが有効であることが見いだされた。さらに、このような障害がピリミジニルイソオキサゾール誘導体およびピリジルイソオキサゾール誘導体などのp38 MAPキナーゼインヒビター(例えば、AKP−001)によって治療可能であることを見出し、本発明を完成させた。このような治療効果は、非常に低い濃度でも確認された。また、本発明者らは、ピリミジニルイソオキサゾール誘導体およびピリジルイソオキサゾール誘導体などのp38 MAPキナーゼインヒビター、特にAKP−001は、角膜内皮に対して毒性が非常に低いことを見出した。
加えて、本発明者らは、ピリミジニルイソオキサゾール誘導体およびピリジルイソオキサゾール誘導体などのp38 MAPキナーゼインヒビター(例えば、AKP−001)が、折り畳まれなかったタンパク質によりもたらされる小胞体(ER)関連ストレスを抑制することを見出し、上記p38 MAPキナーゼインヒビターが、小胞体(ER)関連ストレスに起因する角膜内皮の障害等を治療または予防することが可能であることを見出した。
したがって、本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
p38 MAPキナーゼインヒビターを含む、角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患の治療または予防のための組成物であって、該p38 MAPキナーゼインヒビターは、アンテドラッグ型p38 MAPキナーゼインヒビターを含む、組成物。
(項目2)
p38 MAPキナーゼインヒビターを含む、角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患の治療または予防のための組成物であって、該p38 MAPキナーゼインヒビターは、眼アンテドラッグ型p38 MAPキナーゼインヒビターを含む、組成物。
(項目3)
p38 MAPキナーゼインヒビターを含む、角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患の治療または予防のための組成物であって、該p38 MAPキナーゼインヒビターは、以下の式(1)もしくは式(2)で示される化合物、またはその薬学的に許容され得る塩、あるいはそれらの溶媒和物を含み、
該式(1)の化合物は、


(式中、
は水素原子、低級アルキル基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、フェニル低級アルキルアミノ基、アシルアミノ基、ハロゲン原子、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基又は低級アルキルスルフィニル基を表し、
は未置換のアリールもしくはヘテロアリール基、又はハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルキル基、低級アルキレンジオキシ基及びベンジルオキシ基から選ばれる1〜3個の置換基によって置換されたアリールもしくはヘテロアリール基を表し、
は水素原子又は低級アルキル基を表し、
は置換もしくは未置換のフェニル基又は置換もしくは未置換の複素環式基を表し、
Yは−(CH−、−CO−、−CH(CH)−、−O−、−NH−、


を表し、ここで、nは0〜3の整数を表す)で示され、
該式(2)の化合物は、


(式中、
及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、フェニル低級アルキルアミノ基、アシルアミノ基、低級アルキルチオ基又は低級アルキルスルフィニル基を表し、
はナフチル基、場合により低級アルキル基で置換されていてもよいヘテロアリール基又は下記式(A)


の基を表し、ここで、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルコキシ基、ヒドロキシル基、低級アルカノイル基、低級ハロアルカノイル基又はフェニル基を表すか、或いはXとXは一緒になって低級アルキレンジオキシ基を表し、
は水素原子又は低級アルキル基を表し、
は場合によりハロゲン原子、低級アルキル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、ヒドロキシル基、低級アルカノイル基、低級ハロアルカノイル基、低級アルキルチオカルボニル基、低級ハロアルキルチオカルボニル基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基及びニトロ基から選ばれる1〜3個の置換基によって置換されていてもよい、フェニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基又はイソオキサゾリル基を表し、
Yは−(CH−、−CO−、−CH(CH)−、−C(CH−、−O−、−NH−又は


を表し、ここで、nは1〜3の整数を表す、
ただし、R及びRの両方が水素原子を表しそしてRが式(A)の基を表し且つX、X及びXの2つが水素原子を表す場合、X、X及びXの残りの1つは水素原子及びハロゲン原子以外の基を表す)で示される、組成物。
(項目4)
前記症状、障害または疾患は、フックス角膜内皮ジストロフィ、角膜移植後障害、角膜内皮炎、外傷、眼科手術、眼科レーザー手術後の障害、加齢、後部多形性角膜ジストロフィ(PPD)、先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィ(CHED)、特発性角膜内皮障害、およびサイトメガロウイルス角膜内皮炎からなる群より選択される、項目1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
(項目5)
前記症状、障害または疾患は、フックス角膜内皮ジストロフィにおけるものである、項目1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
(項目6)
前記症状、障害または疾患は、角膜内皮細胞における小胞体(ER)関連ストレスに起因するものである、項目1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
(項目7)
前記角膜内皮の症状、障害または疾患は、フックス角膜内皮ジストロフィにおける角膜内皮障害、角膜内皮密度低下、グッテーの形成、デスメ膜の肥厚、角膜厚の肥厚、混濁、角膜上皮障害、角膜実質混濁、羞明、霧視、視力障害、眼痛、流涙、充血、疼痛、水疱性角膜症、眼の不快感、コントラスト低下、グレア、角膜実質の浮腫、角膜上皮びらん、および血管新生のうち小胞体(ER)ストレスに関連する症状、障害または疾患である、請求1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
(項目8)
前記p38 MAPキナーゼインヒビターは、約0.01μM〜約10μMの濃度で前記組成物中に存在する、項目1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
(項目9)
前記p38 MAPキナーゼインヒビターは、以下:


(式中、
は、NまたはCHであり;
は、NH、N−CHまたはOであり;
は、F、ClまたはCHであって、o−、m−、またはp−の位置のいずれかにあり、
は、−CHCHCH、−NHCOCH、−NHCOCHCH、または


であり;
は、それぞれ独立に、H、F、ClまたはCHであって、o−、m−、またはp−の位置のいずれかにあり、n=1または2である)
の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容され得る塩、またはそれらの溶媒和物である、項目1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
(項目10)
前記p38 MAPキナーゼインヒビターは、5−[(2−クロロ−6−フルオロフェニル)アセチルアミノ]−3−(4−フルオロフェニル)−4−(4−ピリミジニル)イソオキサゾール(AKP−001)である、項目1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
(項目11)
前記AKP−001は、約0.03μM〜約3μMの濃度で前記組成物中に存在する、項目10に記載の組成物。
(項目12)
前記組成物が点眼剤であり、前記AKP−001が、約0.03mM〜約3mMで該点眼剤中に存在する、項目10に記載の組成物。
(項目1A)
それを必要とする被験体における角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患を治療または予防する方法であって、該方法は、p38 MAPキナーゼインヒビターの有効量を該被験体に投与する工程を含み、該p38 MAPキナーゼインヒビターは、アンテドラッグ型p38 MAPキナーゼインヒビターを含む、方法。
(項目2A)
それを必要とする被験体における角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患を治療または予防する方法であって、該方法は、p38 MAPキナーゼインヒビターを該被験体に投与する工程を含み、該p38 MAPキナーゼインヒビターは、眼アンテドラッグ型p38 MAPキナーゼインヒビターを含む、方法。
(項目3A)
それを必要とする被験体における角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患を治療または予防する方法であって、該方法は、p38 MAPキナーゼインヒビターを該被験体に投与する工程を含み、該p38 MAPキナーゼインヒビターは、以下の式(1)もしくは式(2)で示される化合物、またはその薬学的に許容され得る塩、あるいはそれらの溶媒和物を含み、
該式(1)の化合物は、

(式中、
は水素原子、低級アルキル基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、フェニル低級アルキルアミノ基、アシルアミノ基、ハロゲン原子、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基又は低級アルキルスルフィニル基を表し、
は未置換のアリールもしくはヘテロアリール基、又はハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルキル基、低級アルキレンジオキシ基及びベンジルオキシ基から選ばれる1〜3個の置換基によって置換されたアリールもしくはヘテロアリール基を表し、
は水素原子又は低級アルキル基を表し、
は置換もしくは未置換のフェニル基又は置換もしくは未置換の複素環式基を表し、
Yは−(CH−、−CO−、−CH(CH)−、−O−、−NH−、

を表し、ここで、nは0〜3の整数を表す)で示され、
該式(2)の化合物は、

(式中、
及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、フェニル低級アルキルアミノ基、アシルアミノ基、低級アルキルチオ基又は低級アルキルスルフィニル基を表し、
はナフチル基、場合により低級アルキル基で置換されていてもよいヘテロアリール基又は下記式(A)

の基を表し、ここで、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルコキシ基、ヒドロキシル基、低級アルカノイル基、低級ハロアルカノイル基又はフェニル基を表すか、或いはXとXは一緒になって低級アルキレンジオキシ基を表し、
は水素原子又は低級アルキル基を表し、
は場合によりハロゲン原子、低級アルキル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、ヒドロキシル基、低級アルカノイル基、低級ハロアルカノイル基、低級アルキルチオカルボニル基、低級ハロアルキルチオカルボニル基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基及びニトロ基から選ばれる1〜3個の置換基によって置換されていてもよい、フェニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基又はイソオキサゾリル基を表し、
Yは−(CH−、−CO−、−CH(CH)−、−C(CH−、−O−、−NH−又は

を表し、ここで、nは1〜3の整数を表す、
ただし、R及びRの両方が水素原子を表しそしてRが式(A)の基を表し且つX、X及びXの2つが水素原子を表す場合、X、X及びXの残りの1つは水素原子及びハロゲン原子以外の基を表す)で示される、方法。
(項目4A)
前記症状、障害または疾患は、フックス角膜内皮ジストロフィ、角膜移植後障害、角膜内皮炎、外傷、眼科手術、眼科レーザー手術後の障害、加齢、後部多形性角膜ジストロフィ(PPD)、先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィ(CHED)、特発性角膜内皮障害、およびサイトメガロウイルス角膜内皮炎からなる群より選択される、項目1A〜3Aのいずれか一項に記載の方法。
(項目5A)
前記症状、障害または疾患は、フックス角膜内皮ジストロフィにおけるものである、項目1A〜4Aのいずれか一項に記載の方法。
(項目6A)
前記症状、障害または疾患は、角膜内皮細胞における小胞体(ER)関連ストレスに起因するものである、項目1A〜5Aのいずれか一項に記載の方法。
(項目7A)
前記角膜内皮の症状、障害または疾患は、フックス角膜内皮ジストロフィにおける角膜内皮障害、角膜内皮密度低下、グッテーの形成、デスメ膜の肥厚、角膜厚の肥厚、混濁、角膜上皮障害、角膜実質混濁、羞明、霧視、視力障害、眼痛、流涙、充血、疼痛、水疱性角膜症、眼の不快感、コントラスト低下、グレア、角膜実質の浮腫、角膜上皮びらん、および血管新生のうち小胞体(ER)ストレスに関連する症状、障害または疾患である、請求1A〜6Aのいずれか一項に記載の方法。
(項目8A)
前記p38 MAPキナーゼインヒビターは、約0.01μM〜約10μMの濃度で投与される、項目1A〜7Aのいずれか一項に記載の方法。
(項目9A)
前記p38 MAPキナーゼインヒビターは、以下:

(式中、
は、NまたはCHであり;
は、NH、N−CHまたはOであり;
は、F、ClまたはCHであって、o−、m−、またはp−の位置のいずれかにあり、
は、−CHCHCH、−NHCOCH、−NHCOCHCH、または

であり;
は、それぞれ独立に、H、F、ClまたはCHであって、o−、m−、またはp−の位置のいずれかにあり、n=1または2である)
の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容され得る塩、またはそれらの溶媒和物である、項目1A〜8Aのいずれか一項に記載の方法。
(項目10A)
前記p38 MAPキナーゼインヒビターは、5−[(2−クロロ−6−フルオロフェニル)アセチルアミノ]−3−(4−フルオロフェニル)−4−(4−ピリミジニル)イソオキサゾール(AKP−001)である、項目1A〜9Aのいずれか一項に記載の方法。
(項目11A)
前記AKP−001は、約0.03μM〜約3μMの濃度で投与される、項目10Aに記載の方法。
(項目12A)
前記AKP−001は点眼剤として投与され、前記AKP−001が、約0.03mM〜約3mMで該点眼剤中に存在する、項目10Aに記載の方法。
(項目1B)
被験体における角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患を治療または予防するための医薬の製造のためのp38 MAPキナーゼインヒビターの使用であって、該p38 MAPキナーゼインヒビターは、アンテドラッグ型p38 MAPキナーゼインヒビターを含む、使用。
(項目2B)
被験体における角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患を治療または予防するための医薬の製造のためのp38 MAPキナーゼインヒビターの使用であって、該p38 MAPキナーゼインヒビターは、眼アンテドラッグ型p38 MAPキナーゼインヒビターを含む、使用。
(項目3B)
被験体における角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患を治療または予防するための医薬の製造のためのp38 MAPキナーゼインヒビターの使用であって、該p38 MAPキナーゼインヒビターは、以下の式(1)もしくは式(2)で示される化合物、またはその薬学的に許容され得る塩、あるいはそれらの溶媒和物を含み、
該式(1)の化合物は、

(式中、
は水素原子、低級アルキル基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、フェニル低級アルキルアミノ基、アシルアミノ基、ハロゲン原子、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基又は低級アルキルスルフィニル基を表し、
は未置換のアリールもしくはヘテロアリール基、又はハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルキル基、低級アルキレンジオキシ基及びベンジルオキシ基から選ばれる1〜3個の置換基によって置換されたアリールもしくはヘテロアリール基を表し、
は水素原子又は低級アルキル基を表し、
は置換もしくは未置換のフェニル基又は置換もしくは未置換の複素環式基を表し、
Yは−(CH−、−CO−、−CH(CH)−、−O−、−NH−、

を表し、ここで、nは0〜3の整数を表す)で示され、
該式(2)の化合物は、

(式中、
及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、フェニル低級アルキルアミノ基、アシルアミノ基、低級アルキルチオ基又は低級アルキルスルフィニル基を表し、
はナフチル基、場合により低級アルキル基で置換されていてもよいヘテロアリール基又は下記式(A)

の基を表し、ここで、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルコキシ基、ヒドロキシル基、低級アルカノイル基、低級ハロアルカノイル基又はフェニル基を表すか、或いはXとXは一緒になって低級アルキレンジオキシ基を表し、
は水素原子又は低級アルキル基を表し、
は場合によりハロゲン原子、低級アルキル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、ヒドロキシル基、低級アルカノイル基、低級ハロアルカノイル基、低級アルキルチオカルボニル基、低級ハロアルキルチオカルボニル基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基及びニトロ基から選ばれる1〜3個の置換基によって置換されていてもよい、フェニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基又はイソオキサゾリル基を表し、
Yは−(CH−、−CO−、−CH(CH)−、−C(CH−、−O−、−NH−又は

を表し、ここで、nは1〜3の整数を表す、
ただし、R及びRの両方が水素原子を表しそしてRが式(A)の基を表し且つX、X及びXの2つが水素原子を表す場合、X、X及びXの残りの1つは水素原子及びハロゲン原子以外の基を表す)で示される、使用。
(項目4B)
前記症状、障害または疾患は、フックス角膜内皮ジストロフィ、角膜移植後障害、角膜内皮炎、外傷、眼科手術、眼科レーザー手術後の障害、加齢、後部多形性角膜ジストロフィ(PPD)、先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィ(CHED)、特発性角膜内皮障害、およびサイトメガロウイルス角膜内皮炎からなる群より選択される、項目1B〜3Bのいずれか一項に記載の使用。
(項目5B)
前記症状、障害または疾患は、フックス角膜内皮ジストロフィにおけるものである、項目1B〜4Bのいずれか一項に記載の使用。
(項目6B)
前記症状、障害または疾患は、角膜内皮細胞における小胞体(ER)関連ストレスに起因するものである、項目1B〜5Bのいずれか一項に記載の使用。
(項目7B)
前記角膜内皮の症状、障害または疾患は、フックス角膜内皮ジストロフィにおける角膜内皮障害、角膜内皮密度低下、グッテーの形成、デスメ膜の肥厚、角膜厚の肥厚、混濁、角膜上皮障害、角膜実質混濁、羞明、霧視、視力障害、眼痛、流涙、充血、疼痛、水疱性角膜症、眼の不快感、コントラスト低下、グレア、角膜実質の浮腫、角膜上皮びらん、および血管新生のうち小胞体(ER)ストレスに関連する症状、障害または疾患である、請求1B〜6Bのいずれか一項に記載の使用。
(項目8B)
前記p38 MAPキナーゼインヒビターは、約0.01μM〜約10μMの濃度で投与される、項目1B〜7Bのいずれか一項に記載の使用。
(項目9B)
前記p38 MAPキナーゼインヒビターは、以下:

(式中、
は、NまたはCHであり;
は、NH、N−CHまたはOであり;
は、F、ClまたはCHであって、o−、m−、またはp−の位置のいずれかにあり、
は、−CHCHCH、−NHCOCH、−NHCOCHCH、または

であり;
は、それぞれ独立に、H、F、ClまたはCHであって、o−、m−、またはp−の位置のいずれかにあり、n=1または2である)
の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容され得る塩、またはそれらの溶媒和物である、項目1B〜8Bのいずれか一項に記載の使用。
(項目10B)
前記p38 MAPキナーゼインヒビターは、5−[(2−クロロ−6−フルオロフェニル)アセチルアミノ]−3−(4−フルオロフェニル)−4−(4−ピリミジニル)イソオキサゾール(AKP−001)である、項目1B〜9Bのいずれか一項に記載の使用。
(項目11B)
前記AKP−001は、約0.03μM〜約3μMの濃度で投与される、項目10Bに記載の使用。
(項目12B)
前記AKP−001は点眼剤として投与され、前記AKP−001が、約0.03mM〜約3mMで該点眼剤中に存在する、項目10Bに記載の使用。
(項目1C)
被験体における角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患を治療または予防するためのアンテドラッグ型p38 MAPキナーゼインヒビター。
(項目2C)
被験体における角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患を治療または予防するための眼アンテドラッグ型p38 MAPキナーゼインヒビター。
(項目3C)
被験体における角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患を治療または予防するためのp38 MAPキナーゼインヒビターであって、該p38 MAPキナーゼインヒビターは、以下の式(1)もしくは式(2)で示される化合物、またはその薬学的に許容され得る塩、あるいはそれらの溶媒和物を含み、
該式(1)の化合物は、

(式中、
は水素原子、低級アルキル基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、フェニル低級アルキルアミノ基、アシルアミノ基、ハロゲン原子、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基又は低級アルキルスルフィニル基を表し、
は未置換のアリールもしくはヘテロアリール基、又はハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルキル基、低級アルキレンジオキシ基及びベンジルオキシ基から選ばれる1〜3個の置換基によって置換されたアリールもしくはヘテロアリール基を表し、
は水素原子又は低級アルキル基を表し、
は置換もしくは未置換のフェニル基又は置換もしくは未置換の複素環式基を表し、
Yは−(CH−、−CO−、−CH(CH)−、−O−、−NH−、

を表し、ここで、nは0〜3の整数を表す)で示され、
該式(2)の化合物は、

(式中、
及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、フェニル低級アルキルアミノ基、アシルアミノ基、低級アルキルチオ基又は低級アルキルスルフィニル基を表し、
はナフチル基、場合により低級アルキル基で置換されていてもよいヘテロアリール基又は下記式(A)

の基を表し、ここで、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルコキシ基、ヒドロキシル基、低級アルカノイル基、低級ハロアルカノイル基又はフェニル基を表すか、或いはXとXは一緒になって低級アルキレンジオキシ基を表し、
は水素原子又は低級アルキル基を表し、
は場合によりハロゲン原子、低級アルキル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、ヒドロキシル基、低級アルカノイル基、低級ハロアルカノイル基、低級アルキルチオカルボニル基、低級ハロアルキルチオカルボニル基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基及びニトロ基から選ばれる1〜3個の置換基によって置換されていてもよい、フェニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基又はイソオキサゾリル基を表し、
Yは−(CH−、−CO−、−CH(CH)−、−C(CH−、−O−、−NH−又は

を表し、ここで、nは1〜3の整数を表す、
ただし、R及びRの両方が水素原子を表しそしてRが式(A)の基を表し且つX、X及びXの2つが水素原子を表す場合、X、X及びXの残りの1つは水素原子及びハロゲン原子以外の基を表す)で示される、p38 MAPキナーゼインヒビター。
(項目4C)
前記症状、障害または疾患は、フックス角膜内皮ジストロフィ、角膜移植後障害、角膜内皮炎、外傷、眼科手術、眼科レーザー手術後の障害、加齢、後部多形性角膜ジストロフィ(PPD)、先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィ(CHED)、特発性角膜内皮障害、およびサイトメガロウイルス角膜内皮炎からなる群より選択される、項目1C〜3Cのいずれか一項に記載のp38 MAPキナーゼインヒビター。
(項目5B)
前記症状、障害または疾患は、フックス角膜内皮ジストロフィにおけるものである、項目1C〜4Cのいずれか一項に記載のp38 MAPキナーゼインヒビター。
(項目6C)
前記症状、障害または疾患は、角膜内皮細胞における小胞体(ER)関連ストレスに起因するものである、項目1C〜5Cのいずれか一項に記載のp38 MAPキナーゼインヒビター。
(項目7C)
前記角膜内皮の症状、障害または疾患は、フックス角膜内皮ジストロフィにおける角膜内皮障害、角膜内皮密度低下、グッテーの形成、デスメ膜の肥厚、角膜厚の肥厚、混濁、角膜上皮障害、角膜実質混濁、羞明、霧視、視力障害、眼痛、流涙、充血、疼痛、水疱性角膜症、眼の不快感、コントラスト低下、グレア、角膜実質の浮腫、角膜上皮びらん、および血管新生のうち小胞体(ER)ストレスに関連する症状、障害または疾患である、請求1C〜6Cのいずれか一項に記載のp38 MAPキナーゼインヒビター。
(項目8C)
前記p38 MAPキナーゼインヒビターは、約0.01μM〜約10μMの濃度で投与される、項目1C〜7Cのいずれか一項に記載のp38 MAPキナーゼインヒビター。
(項目9C)
前記p38 MAPキナーゼインヒビターは、以下:

(式中、
は、NまたはCHであり;
は、NH、N−CHまたはOであり;
は、F、ClまたはCHであって、o−、m−、またはp−の位置のいずれかにあり、
は、−CHCHCH、−NHCOCH、−NHCOCHCH、または

であり;
は、それぞれ独立に、H、F、ClまたはCHであって、o−、m−、またはp−の位置のいずれかにあり、n=1または2である)
の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容され得る塩、またはそれらの溶媒和物である、項目1C〜8Cのいずれか一項に記載のp38 MAPキナーゼインヒビター。
(項目10C)
前記p38 MAPキナーゼインヒビターは、5−[(2−クロロ−6−フルオロフェニル)アセチルアミノ]−3−(4−フルオロフェニル)−4−(4−ピリミジニル)イソオキサゾール(AKP−001)である、項目1C〜9Cのいずれか一項に記載のp38 MAPキナーゼインヒビター。
(項目11C)
前記AKP−001は、約0.03μM〜約3μMの濃度で投与される、項目10Cに記載のp38 MAPキナーゼインヒビター。
(項目12C)
前記AKP−001は点眼剤として投与され、前記AKP−001が、約0.03mM〜約3mMで該点眼剤中に存在する、項目10Cに記載のp38 MAPキナーゼインヒビター。
本発明において、上記1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供されうることが意図される。本発明のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
本発明は、ピリミジニルイソオキサゾール誘導体およびピリジルイソオキサゾール誘導体などのp38 MAPキナーゼインヒビター(例えば、AKP−001)を含む、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルに起因する障害または疾患(例えば、フックス角膜内皮ジストロフィ)を処置または予防しうる医薬を提供する。また、本発明は、上記p38 MAPキナーゼインヒビターを含む、小胞体(ER)関連ストレスに起因する角膜内皮の障害等を処置または予防しうる医薬を提供する。さらに、本発明は、p38 MAPキナーゼインヒビターを含む、角膜内皮細胞の保存のための組成物または角膜内皮細胞の増殖を促進するための組成物を提供する。
図1は、AKP−001でプレトリートメントしたフックス角膜内皮ジストロフィ患者由来の不死化角膜内皮細胞をTGF−β2で刺激した不死化ヒト角膜内皮細胞の位相差顕微鏡写真を示す。 図2は、SB203580でプレトリートメントしたフックス角膜内皮ジストロフィ患者由来の不死化角膜内皮細胞をTGF−β2で刺激した不死化ヒト角膜内皮細胞の位相差顕微鏡写真を示す。 図3は、PH−797804でプレトリートメントしたフックス角膜内皮ジストロフィ患者由来の不死化角膜内皮細胞をTGF−β2で刺激した不死化ヒト角膜内皮細胞の位相差顕微鏡写真を示す。 図4は、VX−702でプレトリートメントしたフックス角膜内皮ジストロフィ患者由来の不死化角膜内皮細胞をTGF−β2で刺激した不死化ヒト角膜内皮細胞の位相差顕微鏡写真を示す。 図5は、カスパーゼ3、PARPおよびGAPDHのウェスタンブロットの結果を示す。左のレーンから、コントロール(TGF−β非添加群)、TGF−β添加群、TGF−β+SB203580添加群、TGF−β+PH−797804添加群、TGF−β+VX−702添加群、TGF−β+AKP−001添加群を示す。 図6は、ヒト角膜内皮細胞におけるAKP−001存在下での細胞生存率のグラフを示す。縦軸は、AKP−001非添加群をコントロール(100%)として、AKP−001の各濃度(0.1μM、0.3μM、1μM、3μM、10μM、30μM、100μM)での細胞生存率(%)を示す。エラーバーは、平均±標準誤差を示す。統計学的有意は、Dunnet−t検定により行った(*はp<0.05を示す。n=5)。 図7は、ヒト角膜内皮細胞におけるAKP−001存在下でのカスパーゼ3/7活性のグラフを示す。縦軸は、AKP−001非添加群をコントロール(100%)として、AKP−001の各濃度(0.1μM、0.3μM、1μM、3μM、10μM、30μM、100μM)でのカスパーゼ3/7活性(%)を示す。エラーバーは、平均±標準誤差を示す。統計学的有意は、Dunnet−t検定により行った(*はp<0.05を示し、**はp<0.01を示す。n=5)。 図8は、AKP−001でプレトリートメントした不死化ヒト角膜内皮細胞をタプシガルギンで刺激して培養した不死化ヒト角膜内皮細胞の位相差顕微鏡を示す。 図9は、AKP−001点眼を10回行った後に、細隙灯顕微鏡(SL−D7、トプコン)により観察された角膜の写真を示す。AKP−001点眼が行われた角膜は透明であり、充血も認めず、前眼部の炎症などを認めなかった。フルオレセインナトリウム試験紙(昭和薬品化工)にて染色して観察したところ、染色される角結膜の上皮障害を認めなかった(右写真)。 図10は、角膜透明性についてスコア化して評価した結果を示す。AKP−001点眼を10回行った前後ともにスコアは全ての角膜で0であり、AKP−001点眼が透明性に影響しなかった。 図11Aは、AKP−001点眼マウスにおいて、Pentacam(登録商標)HR(OCULUS)により角膜厚を計測した代表例を示す。 図11Bは、ビヒクル点眼マウスにおいて、Pentacam(登録商標)HR(OCULUS)により角膜厚を計測した代表例を示す。 図12は、Pentacam(登録商標)HR(OCULUS)により得たシャインプルーフ像の代表例を示す。 図13は、トノベット(登録商標)(エムイーテクニカ)により測定した眼圧、超音波パキメーター(SP−100、トーメーコーポレーション)により測定した中心角膜厚、Pentacam(登録商標)HR(OCULUS)により測定した角膜体積(10mm径)の点眼前後の値のグラフを示す。 図14は、スキャニングスリット型接触式角膜内皮スペキュラーマイクロスコープ(コーナンメディカル)を用いて撮影した角膜内皮の観察像の代表例を示す。 図15は、AKP−001を10回点眼した眼球の角膜内皮の染色像(ZO−1、N−カドヘリン、Na/K−ATPaseおよびアクチン)を示す。 図16は、AKP−001を10回点眼した眼球の角膜内皮の染色像(Annexin VおよびPI)を示す。
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
(定義)
本明細書において、「約」とは、後に続く数値の±10%を意味する。
本明細書において「細胞分裂因子(マイトージェン)活性化タンパク質(MAP)キナーゼ」とは、マイトージェン活性化タンパク質(MAP)をリン酸化する酵素であり、セリン/トレオニンキナーゼのファミリーである。MAPキナーゼは、様々な細胞外刺激に応答して活性化され、細胞表面から核へのシグナル伝達を仲介するタンパク質セリン/スレオニンキナーゼ群である。MAPキナーゼはまた、細胞外シグナル調節性プロテインキナーゼ(extracellular signal-regulated protein kinases)またはERKとも呼ばれ、3キナーゼカスケードの末端酵素である。関係するが区切られたシグナル伝達経路に対する3キナーゼカスケードの反復が、一経路内で逐次的に作用するモジュール多機能シグナル伝達要素としてのMAPキナーゼ経路の概念を生み、この経路ではそれぞれの酵素がリン酸化してそれによりシーケンスの次のメンバーを活性化することが特徴である。このようにして、標準的MAPキナーゼモジュールは3つのプロテインキナーゼからなる。すなわち、あるMAPキナーゼキナーゼ(またはMEKK)があるMAPキナーゼキナーゼ(またはMEK)を活性化し、これが、順に、あるMAPK/ERK酵素を活性化する。MAPK/ERK、JNK(c−junアミノ末端プロテインキナーゼ(またはSAPK)))、およびp38カスケードは、それぞれMEKK、MEKおよびERK、またはMAPキナーゼスーパーファミリーメンバーを含む3つの酵素モジュールからなる。様々な細胞外シグナルはそれらのそれぞれの細胞表面レセプターと連合すると初期事象をトリガーし、次いでこのシグナルが細胞内部に伝達され、そこで適切なカスケードを活性化する。
MAPキナーゼはマイトージェン活性化プロテインキナーゼ(またはERK)スーパーファミリーであって、TXYコンセンサス配列を触媒コアに有する。ERK1/2、p38HOG、およびJNK/SAPKは、平行経路における関係するが別個の末端酵素である。
Sebolt-Leopold et al., Nat.Med.,5(7):810-6 (Jul,1999)は、MAPキナーゼ(MAPK)経路の小分子インヒビターを同定するためのin vitroカスケードアッセイシステムを記載している。グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)−MEK1およびGST−MAPK融合タンパク質を細菌細胞から調製して、これらをこのアッセイシステムにおいてMEK1のMAPKへ、MBP(myelin basic protein(ミエリン塩基性タンパク質))への逐次リン酸化に使用した。MEK1を直接阻害するPD184352[2−(2−クロロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−N−シクロプロピルメトキシ−3,4−ジフルオロ−ベンズアミド]も見出されている。
本明細書において「p38 MAPキナーゼインヒビター(「p38 MAPKインヒビター」ともいう。)」とは、p38に関連するMAPキナーゼのシグナル伝達を阻害する任意の薬剤をいう。したがって、p38 MAPキナーゼインヒビターは、MAPキナーゼファミリーメンバーであるp38−MAPキナーゼを標的とし、低下させる、または阻害する化合物に関する。p38 MAPキナーゼインヒビターは水溶性のものが好ましい。水溶性でなければ、溶媒として身体に適合しにくいものを使用することが必要となりうるからである。水溶性かどうかについては薬局方の溶解度の定義に基づき分類されうる。すなわち、溶質1gまたは1mLを溶かすのに要する溶媒量として、極めて溶けやすい:1mL未満;溶けやすい:1mL以上10mL未満;やや溶けやすい:10mL以上30mL未満;やや溶けにくい:30mL以上100mL未満;溶けにくい:100mL以上1000mL未満;極めて溶けにくい:1000mL以上10000mL未満;ほとんど溶けない:10000mL以上と定義されており、本明細書においても同様に評価する。水溶性とは、水を溶媒としたときに、これらのうち有効量を溶解させるものであれば、任意の溶解性のものを利用することができることが理解される。
p38は哺乳類動物MAPキナーゼスーパーファミリーメンバーであって、ストレス、紫外光、および炎症性サイトカインにより活性化される。触媒コアにTGYコンセンサス配列を有する。
異常調節されたキナーゼは多くの疾患、特に増殖性および炎症性障害における主な病因であるということが次第に認識されている。癌領域において最初に同定される発癌遺伝子の1つは、上皮増殖因子レセプターキナーゼ(EGFR)に対するものであったが、その過剰発現は肺、乳、脳、前立腺、GIおよび卵巣癌と関連している。例えば、MAPキナーゼの構成的活性化は多数の癌細胞系統(膵臓、大腸、肺、卵巣、および腎臓)および様々なヒト器官(腎臓、大腸、および肺)由来の原発腫瘍と関連している(Hoshino et al.,Oncogene,18(3):813-22(Jan.1999))。さらに、p38 MAPキナーゼは、炎症の発症および進行と関連する2つのサイトカイン、TNFαおよびIL−1の産生を調節する。
本明細書において「アンテドラッグ型p38 MAPキナーゼインヒビター」とは、投与部位(例えば眼、角膜内皮等)等の特定の部位においてp38 MAPキナーゼのインヒビターとして有効であるが、体内に入る等、それ以外の場所に移ると速やかに代謝されて不活化または活性が低くなるものをいう。投与部位は種々挙げられるが、経口投与した場合は、消化器官自体(例えば、腸管)なども含まれ、点眼剤の場合は眼が含まれる。
本明細書において「眼アンテドラッグ型p38 MAPキナーゼインヒビター」とは、眼においてp38 MAPキナーゼのインヒビターとして有効であるが、体内に入る等、それ以外の場所に移ると速やかに代謝されて不活化または活性が低くなるものをいう。
本発明において使用されうるp38 MAPキナーゼインヒビターは、国際公開第2006/070927号および国際公開第2008/001930号、Shirota et al., Drug Metab Dispos. 2015 Feb;43(2):217-26、Hasumi et al., Bioorg Med Chem. 2014 Aug 1;22(15):4162-76に記載された化合物が挙げられる。これらの文献に記載されたp38 MAPキナーゼインヒビターは腸管のアンテドラッグ型p38 MAPキナーゼとして記載されている。本発明において、これらのp38 MAPキナーゼインヒビターが眼においてアンテドラッグとして機能し得ることが見出された。
好ましいp38 MAPキナーゼインヒビターとしては、AKP−001(5−[(2−クロロ−6−フルオロフェニル)アセチルアミノ]−3−(4−フルオロフェニル)−4−(4−ピリミジニル)イソオキサゾール)が例示されるがそれに限定されない。
使用される濃度として、0.01nM〜100μM、約0.1nM〜100μM、約0.001〜100μM、約0.01〜75μM、約0.05〜50μM、約1〜10μM、約0.01〜10μM、約0.05〜10μM、約0.075〜10μM、約0.1〜10μM、約0.5〜10μM、約0.75〜10μM、約1.0〜10μM、約1.25〜10μM、約1.5〜10μM、約1.75〜10μM、約2.0〜10μM、約2.5〜10μM、約3.0〜10μM、約4.0〜10μM、約5.0〜10μM、約6.0〜10μM、約7.0〜10μM、約8.0〜10μM、約9.0〜10μM、約0.01〜50μM、約0.05〜5.0μM、約0.075〜5.0μM、約0.1〜5.0μM、約0.5〜5.0μM、約0.75〜5.0μM、約1.0〜5.0μM、約1.25〜5.0μM、約1.5〜5.0μM、約1.75〜5.0μM、約2.0〜5.0μM、約2.5〜5.0μM、約3.0〜5.0μM、約4.0〜5.0μM、約0.01〜3.0μM、約0.05〜3.0μM、約0.075〜3.0μM、約0.1〜3.0μM、約0.5〜3.0μM、約0.75〜3.0μM、約1.0〜3.0μM、約1.25〜3.0μM、約1.5〜3.0μM、約1.75〜3.0μM、約2.0〜3.0μM、約0.01〜1.0μM、約0.05〜1.0μM、約0.075〜1.0μM、約0.1〜1.0μM、約0.5〜1.0μM、約0.75〜1.0μM、約0.09〜35μM、または約0.09〜3.2μMであり、より好ましくは、約0.01〜10μM、約0.1〜3μM、または約0.1〜1.0μMを挙げることができるがこれらに限定されない。
本明細書において「誘導体」または「類似体」とは、そのコア構造が親化合物のそれと同じかまたはよく似ているが、異なる官能基または付加的な官能基などの化学的または物理的修飾を有するような化合物を指す。誘導体または類似体は、親化合物と同一または類似の生物学的活性を有する。
本明細書において、「薬学的に許容され得る塩」とは、比較的非毒性の、本発明の化合物の無機または有機の酸付加塩をいう。これらの塩は、化合物の最終的な単離および精製の間に一時的に、またはその遊離塩基型で精製された化合物を適切な有機もしくは無機の酸と別々に反応させること、およびそのように形成された塩を単離することによって調製することができる。
本発明の化合物の薬学的に許容され得る塩基性塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、プロカイン塩、メグルミン塩、ジエタノールアミン塩またはエチレンジアミン塩等の脂肪族アミン塩;N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ベネタミン塩等のアラルキルアミン塩;ピリジン塩、ピコリン塩、キノリン塩、イソキノリン塩等のヘテロ環芳香族アミン塩;テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩;アルギニン塩、リジン塩等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。
本発明の化合物の薬学的に許容され得る酸性塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、過塩素酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマール酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩等の有機酸塩;メタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等の酸性アミノ酸等が挙げられる。
本明細書において、「溶媒和物」とは、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩の溶媒和物を意味し、例えば有機溶媒との溶媒和物(例えば、アルコール(エタノールなど)和物)、水和物等を包含する。水和物を形成する時は、任意の数の水分子と配位していてもよい。水和物としては、1水和物、2水和物等を挙げることができる。
本明細書において「iFECD」(immobilized Fuchs’ endothelial corneal dystrophy)は、フックス角膜内皮ジストロフィの不死化細胞の略称である。
本明細書において「HCEC」(human corneal endothelial cells)とは、ヒト角膜内皮細胞の略称である。「iHCEC」は、不死化(immobilized)ヒト角膜内皮細胞の略称である。
本明細書において、「プログラム細胞死」とは、あらかじめプログラムされているかのように決まった時期や環境で自発的に細胞が死ぬ現象を指す。プログラム細胞死は、例えば「アポトーシス」を含む意味で使用される。
本明細書において「トランスフォーミング増殖因子−β(トランスフォーミング成長因子−β;略称TGF−βとも表示される)」とは、当該分野で用いられるものと同様の意味で用いられ、様々な硬化性疾患や、関節リウマチ、増殖性硝子体網膜症の病態形成を担い、脱毛に深く関与し、免疫担当細胞の働きを抑制する一方、プロテアーゼの過剰産生を抑制することによって肺組織が分解され肺気腫に陥るのを防ぎ、癌細胞の増殖を抑制するなど、多彩な生物活性を示す分子量25kDのホモダイマー多機能性サイトカインである。「TGF−βシグナル」とは、TGF−βによって媒介されるシグナルであって、TGF−βによって惹起されるものをいう。TGF−βシグナル例えば、TGF−β2によって媒介されるシグナルが含まれ、このほか、TGF−β1、TGF−β3等によって媒介されるシグナルも例示される。TGF−βについて、ヒトでは、TGF−β1〜β3までの相同性約70%の3つのアイソフォームが存在し、その作用は類似している。TGF−βはレセプターに結合できない分子量約300kDの不活性な潜在型として産生され、標的細胞表面やその周囲において活性化されてレセプターに結合できる活性型となり、その作用を発揮する。理論に束縛されることを望まないが、標的細胞におけるTGF−βの作用はSmadという情報伝達を担う一連のタンパク質のリン酸化経路によって伝達されるとされている。まず、活性型TGF−βが標的細胞表面に存在するII型TGF−βレセプターに結合すると、II型レセプター2分子とI型TGF−βレセプター2分子からなるレセプター複合体が形成され、II型レセプターがI型レセプターをリン酸化する。次に、リン酸化I型レセプターは、Smad2またはSmad3をリン酸化すると、リン酸化されたSmad2およびSmad3はSmad4と複合体を形成して核に移行し、標的遺伝子プロモーター領域に存在するCAGA boxと呼ばれる標的配列に結合し、コアクチベーターとともに標的遺伝子の転写発現を誘導するとされている。
トランスフォーミング(形質転換)増殖因子−β(TGF−β)シグナル伝達経路は、その標的遺伝子の調節によって、細胞増殖および分化、増殖停止、プログラム細胞死、ならびに上皮間充織分化転換(EMT;上皮間葉転換ともいう)といったような、多くの細胞活性を調節することができる。TGF−β自体(例えば、TGF−β1、TGF−β2およびTGF−β3)、アクチビンおよび骨形成タンパク質(BMP)が含まれる、TGF−βファミリーのメンバーは、細胞増殖、分化、移動およびプログラム細胞死等の強力な調節剤である。
TGF−βは、Bリンパ球、Tリンパ球および活性化マクロファージを含め、多くの細胞により、および多くの他の細胞型により産生される、約24Kdのタンパク質である。免疫系に対するTGF−βの効果の中には、IL−2レセプター誘導、IL−1誘発性胸腺細胞増殖の阻害、およびIFN−γ誘発性マクロファージ活性化の遮断がある。TGF−βは、様々な病的状態に関与すると考えられており(Border et al.(1992)J.Clin.Invest.90:1)、そして腫瘍抑制物質または腫瘍プロモーターのいずれかとして機能することが十分裏付けられている。
TGF−βは、2つのセリン/スレオニンキナーゼ細胞表面レセプターであるTGF−βRIIおよびALK5によって、そのシグナル伝達を媒介する。TGF−βシグナル伝達は、TGF−βRIIがALK5レセプターをリン酸化するのを可能とする、リガンド誘発性レセプター二量体化で開始される。そのリン酸化は、ALK5キナーゼ活性を活性化して、活性化ALK5は次に、下流エフェクターSmadタンパク質(MADの脊椎動物相同体、または「Mothers against DPP(デカペンタプレジック)」タンパク質)、Smad2または3をリン酸化する。Smad4とのp−Smad2/3複合体は、核に入って、標的遺伝子の転写を活性化する。
Smad3は、SmadのR−Smad(レセプター−活性化Smad)サブグループのメンバーであって、TGF−βレセプターによる転写活性化の直接メディエーターである。TGF−β刺激は、Smad2およびSmad3のリン酸化および活性化をもたらし、これらは、Smad4(脊椎動物における「共通(common)Smad」または「co−Smad」)と複合体を形成し、これが核と共に蓄積して、標的遺伝子の転写を調節する。R−Smadは、細胞質に局在し、そしてTGF−βレセプターによるリガンド誘発性リン酸化で、co−Smadと複合体を形成して、核へと移動し、ここで、それらは、クロマチンおよび協同転写因子と関連のある遺伝子発現を調節する。Smad6およびSmad7は阻害性Smad(「I−Smad」)であり、すなわち、TGF−βにより転写的に誘発されて、TGF−βシグナル伝達のインヒビターとして機能する(Feng et al.(2005)Annu.Rev.Cell.Dev.Biol.21:659)。Smad6/7は、R−Smadのレセプター媒介活性化を妨げることにより、それらの阻害効果を発揮する;それらは、R−Smadの動員およびリン酸化を競合的に妨げる、I型レセプターと関連する。Smad6およびSmad7は、Smad6/7相互作用タンパク質のユビキチン化および分解をもたらす、E3ユビキチンリガーゼを補充することが知られている。
TGF−βシグナル伝達経路は、このほか、BMP−7などによって伝達される経路も存在し、これは、ALK−1/2/3/6を経由し、Smad1/5/8を介して機能が発現されるとされている。TGF−βシグナル伝達経路については、J. Massagu’e, Annu. Rev. Biochem. 1998. 67: 753-91;Vilar JMG, Jansen R, Sander C (2006) PLoS Comput Biol 2(1):e3; Leask, A., Abraham, D. J. FASEB J.18, 816-827 (2004); Coert Margadant & Arnoud Sonnenberg EMBO reports (2010)11, 97-105; Joel Rosenbloom et al., Ann Intern Med. 2010; 152: 159-166等を参照のこと。
本明細書において「トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)に起因する角膜内皮の症状、障害または疾患」とは、角膜内皮細胞におけるTGF−βに誘導される任意の角膜内皮の症状、障害または疾患を指す。本発明では、角膜内皮細胞、例えば、フックス角膜内皮ジストロフィのモデル細胞(例えば、iFECD)を、TGF−β2に曝露したところ、驚くべきことに種々の障害(例えば、プログラム細胞死)が生じた。このような現象は従来よく解明されていなかった現象である。そして、本発明者らは、このTGF−βシグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患をさらに分析したところ、予想外にも、p38 MAPKインヒビターによって、この障害を抑制することができることを見出した。TGF−βシグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患はp38 MAPKのシグナル伝達経路とは異なるものであり、また、使用したp38 MAPKインヒビターはTGF−βのシグナル伝達経路を抑制しているものではないことから、これまでに未解明の疾患・障害の発露の経路およびその治療または予防の態様を見出すことができたといえる。また、通常最適に使用されるp38 MAPKインヒビターの濃度とも異なる濃度でTGF−βシグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患に対する最適な治療または予防効果がみられていることから、本発明は、角膜内皮について新たな治療/予防技術を提供するものと位置付けることができると考えられる。TGF−βシグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患としては、例えば、フックス角膜内皮ジストロフィ、角膜移植後障害、角膜内皮炎、外傷、眼科手術後の障害、眼科レーザー手術後の障害、加齢、後部多形性角膜ジストロフィ(PPD:posterior polymorphous dystrophy)、先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィ(CHED:congenital hereditary endothelial dystrophy)、および特発性角膜内皮障害等において、TGF−βの発現がみられるものを挙げることができるがそれらに限定されない。特にTGF−β2の発現が通常より亢進している角膜内皮細胞または角膜内皮組織では、本発明で見出された障害またはそれに関連する障害が発現または亢進していると考えられることから、そのような角膜内皮細胞または角膜内皮組織がみられる任意の角膜内皮の症状、障害または疾患は、特に本発明の対象として意図される。
本明細書において「小胞体(ER)関連ストレスに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患」とは、小胞体(ER)ストレスに関連するものを指し、例えば、フックス角膜内皮ジストロフィにおける角膜内皮細胞の障害、角膜内皮障害、角膜内皮密度低下、グッテーの形成、デスメ膜の肥厚、角膜厚の肥厚、混濁、角膜上皮障害、角膜実質混濁、羞明、霧視、視力障害、眼痛、流涙、充血、疼痛、水疱性角膜症、眼の不快感、コントラスト低下、グレア、および角膜実質の浮腫、角膜上皮びらん、血管新生等のうち小胞体(ER)ストレスに関連するものを挙げることができるがこれらに限定されない。
好ましい実施形態では、本発明が対象とする症状、障害または疾患は、フックス角膜内皮ジストロフィに関する障害である。フックス角膜内皮ジストロフィに関しては、角膜内皮細胞におけるTGF−β誘導が関与していることが示されており、FECDにおける細胞喪失に関与し得ることも示されている。したがって、TGF−βシグナル伝達経路の阻害は、FECDの有効な治療になり得ることが当然予想される。しかしながら、本発明者らは、予想外にも、p38 MAPKインヒビターが、TGF−βシグナルに起因する障害を抑制できることを見出した。
本発明の医薬は、フックス角膜内皮ジストロフィの中でもひとつの重要な異常または障害の原因となるTGF−β2に誘導される細胞障害等を処置しうることから、フックス角膜内皮ジストロフィの治療または予防に有用であることが理解される。特に、本発明では実施例において、フックス角膜内皮ジストロフィモデルにおいてTGF−β2に誘導される細胞障害あるいはプログラム細胞死を抑制することができたことから本発明は、フックス角膜内皮ジストロフィモデルにおけるTGF−β2に関連する重症患者の治療に使用することができると考えられる。本発明は、フックス角膜内皮ジストロフィにおける角膜内皮細胞の障害や、角膜内皮密度低下、guttaeの形成、デスメ膜の肥厚、角膜厚の肥厚、角膜上皮障害、角膜実質混濁、羞明、霧視、視力障害、眼痛、流涙、充血、疼痛、水疱性角膜症、眼の不快感、コントラスト低下、グレアおよび角膜実質の浮腫などを処置しまたは予防し得る。
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J.et al.(1989).Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001); Ausubel, F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience; Ausubel, F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience; Innis, M. A.(1990).PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press; Ausubel, F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates; Ausubel, F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates; Innis ,M.A. et al.(1995).PCR Strategies, Academic Press; Ausubel, F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Wiley, and annual updates; Sninsky, J.J.et al.(1999).PCR Applications: Protocols for Functional Genomics, Academic Press、Gait, M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; Gait, M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; Eckstein, F.(1991).Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, IRL Press; Adams, R.L. et al.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids, Chapman & Hall; Shabarova, Z. et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids, Weinheim; Blackburn, G.M. et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology, Oxford University Press; Hermanson, G.T.(I996).Bioconjugate Techniques, Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されている。角膜内皮細胞については、Nancy Joyceらの報告{Joyce, 2004 #161} {Joyce, 2003 #7}がよく知られているが、前述のごとく長期培養、継代培養により線維芽細胞様の形質転換を生じ、効率的な培養法の研究が現在も行われている。これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
(好ましい実施形態の説明)
以下に好ましい実施形態の説明を記載するが、この実施形態は本発明の例示であり、本発明の範囲はそのような好ましい実施形態に限定されないことが理解されるべきである。当業者はまた、以下のような好ましい実施例を参考にして、本発明の範囲内にある改変、変更などを容易に行うことができることが理解されるべきである。これらの実施形態について、当業者は適宜、任意の実施形態を組み合わせ得る。
<医薬>
1つの局面において、本発明は、アンテドラッグ型p38 MAPキナーゼインヒビターを含む、角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患の治療または予防のための医薬を提供する。別の局面において、本発明は、眼アンテドラッグ型p38 MAPキナーゼインヒビターを含む、角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患の治療または予防のための医薬を提供する。さらに別の局面において、ピリミジニルイソオキサゾール誘導体およびピリジルイソオキサゾール誘導体などのp38 MAPキナーゼインヒビター(例えば、AKP−001)を含む、角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患の治療または予防のための医薬を提供する。ここで、ピリミジニルイソオキサゾール誘導体およびピリジルイソオキサゾール誘導体は、アンテドラッグ型p38 MAPキナーゼインヒビターの代表例であり、本発明では眼アンテドラッグ型p38 MAPキナーゼインヒビターであり得ることも見いだされた。驚くべきことに、他のp38 MAPキナーゼインヒビター(例えば、SB203580、VX−702およびPH−797804)では、サブμMでは角膜内皮細胞の障害抑制効果が観察されなかったのに対し、本願発明で使用されるピリミジニルイソオキサゾール誘導体およびピリジルイソオキサゾール誘導体などのp38 MAPキナーゼインヒビター(特にAKP−001)は、極めて低い濃度(0.01μM)でも角膜内皮細胞の障害抑制効果が観察されたことから、本願発明で使用されるp38 MAPキナーゼインヒビターは、角膜内皮において非常に高い治療効果を発揮することが明らかになった。また、in vivo投与試験においては、安全性においても優れていることが明らかになった。したがって、本発明のピリミジニルイソオキサゾール誘導体およびピリジルイソオキサゾール誘導体などのp38 MAPキナーゼインヒビター(特にAKP−001)は、治療効果・安全性に優れた医薬として期待される。
1つの実施形態では、角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)に起因する角膜内皮の症状、障害または疾患は、フックス角膜内皮ジストロフィ、角膜移植後障害、角膜内皮炎、外傷、眼科手術後の障害、眼科レーザー手術後の障害、加齢、後部多形性角膜ジストロフィ(PPD:posterior polymorphous dystrophy)、先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィ(CHED:congenital hereditary endothelial dystrophy)、特発性角膜内皮障害、およびサイトメガロウイルス角膜内皮炎からなる群より選択される。
さらに別の局面において、本発明は、ピリミジニルイソオキサゾール誘導体およびピリジルイソオキサゾール誘導体などのp38 MAPキナーゼインヒビター(例えば、AKP−001)を含む、角膜内皮細胞における小胞体(ER)関連ストレスに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患の治療または予防のための医薬を提供する。
1つの実施形態では、角膜内皮細胞における小胞体(ER)関連ストレスに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患は、タンパク質のフォールディングの異常に起因するものであり得る。哺乳動物細胞において、フォールディングしなかったり(unfolded)、ミスフォールディングやタンパク質分解の異常などにより凝集したタンパク質(折りたたみ不全タンパク質、変性タンパク質(unfolded protein)ともいう。)はユビキチン化され、微小管上を移動するダイニンモーターにより中心体付近に蓄積し、アグリソームという封入体を形成することが知られる。一般的にアグリソームは熱ショックやウイルス感染、酸化ストレスなどによって形成される。ヒトでは、パーキンソン病の神経細胞に見られるLewy小体や、アルコール性肝臓疾患の肝臓細胞で見られるMallory小体、筋萎縮性側索硬化症の星状細胞で見られる硝子様小体など、細胞内の封入体が関与する疾患がいくつか知られている。本発明のp38 MAPキナーゼインヒビターは、変性タンパク質の産生に関与しているタプシガルギンなどにより誘導されるフォールディングの異常に起因する小胞体(ER)ストレス抑制し得る。さらに、p38 MAPキナーゼインヒビターは、TGFβに誘導される小胞体(ER)ストレスをも抑制し得る。
1つの実施形態では、角膜内皮細胞における小胞体(ER)関連ストレスに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患は、フックス角膜内皮ジストロフィにおける角膜内皮細胞の障害、角膜内皮障害、角膜内皮密度低下、ならびにこれらにより生じる角膜実質浮腫、角膜上皮浮腫、角膜上皮びらん、角膜実質混濁、および血管新生からなる群より選択される。
別の局面において、本発明は、p38 MAPキナーゼインヒビターを含む、角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルおよび小胞体(ER)関連ストレスに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患の治療または予防のための医薬を提供する。
1つの実施形態では、角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルおよび小胞体(ER)関連ストレスに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患は、フックス角膜内皮ジストロフィにおける角膜内皮細胞の障害、角膜内皮障害、角膜内皮密度低下、ならびにこれらにより生じる角膜実質浮腫、角膜上皮浮腫、角膜上皮びらん、角膜実質混濁、および血管新生からなる群より選択される。
1つの実施形態では、角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルおよび小胞体(ER)関連ストレスに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患は、フックス角膜内皮ジストロフィを含む。
1つの実施形態において、本発明の利用法としては、例えば点眼薬が挙げられるが、これに限定されず、前房内への注射、徐放剤への含浸、結膜下注射、全身投与(内服、静脈注射)などの投与方法も挙げることができる。
好ましい実施形態では、本発明は、p38 MAPキナーゼインヒビターはアンテドラッグ型p38 MAPキナーゼインヒビターを含み、あるいはアンテドラッグ型p38 MAPキナーゼインヒビターであり、別の好ましい実施形態では、本発明は、眼アンテドラッグ型p38 MAPキナーゼインヒビターである。別の実施形態では、本発明において用いられるp38 MAPキナーゼインヒビターは、ピリミジニルイソオキサゾール誘導体およびピリジルイソオキサゾール誘導体のうちp38 MAPを阻害する活性を有する化合物を含み得、ピリミジニルイソオキサゾール誘導体およびピリジルイソオキサゾール誘導体のうちp38 MAPを阻害する活性を有する化合物である。そのような化合物は、以下の式(1)で示される化合物(ピリミジニルイソオキサゾール誘導体)および式(2)で示される化合物(ピリジルイソオキサゾール誘導体)、またはその薬学的に許容され得る塩、あるいはそれらの溶媒和物を含み得るか、あるいは以下の式(1)で示される化合物(ピリミジニルイソオキサゾール誘導体)および式(2)で示される化合物(ピリジルイソオキサゾール誘導体)、またはその薬学的に許容され得る塩、あるいはそれらの溶媒和物であり得る。
(ピリミジニルイソオキサゾール誘導体)
前記式(1)の化合物は、


(式中、
は水素原子、低級アルキル基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、フェニル低級アルキルアミノ基、アシルアミノ基、ハロゲン原子、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基又は低級アルキルスルフィニル基を表し、
は未置換のアリールもしくはヘテロアリール基、又はハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルキル基、低級アルキレンジオキシ基及びベンジルオキシ基から選ばれる1〜3個の置換基によって置換されたアリールもしくはヘテロアリール基を表し、
は水素原子又は低級アルキル基を表し、
は置換もしくは未置換のフェニル基又は置換もしくは未置換の複素環式基を表し、
Yは−(CH−、−CO−、−CH(CH)−、−O−、−NH−、


を表し、ここで、nは0〜3の整数を表す)で示される。
本明細書において、「低級」なる語は、この語が付された基の炭素原子数が6個以下、好ましくは4個以下であることを意味する。
「低級アルキル基」は、直鎖状もしくは分岐鎖状であることができ、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル基等を挙げることができ、中でも、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル及びn−ブチル基が好ましく、「低級アルコキシ基」は、該低級アルキル基によって置換されたオキシ(O)基であり、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、n−ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ基等を挙げることができ、中でも、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ及びn−ブトキシ基が好ましい。
さらに、「ハロゲン原子」には、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子が包含され、特に、フッ素、塩素及び臭素原子が好ましい。
の定義における「低級アルキルアミノ基」は、前記のような低級アルキル基の1個によって置換されたアミノ基を意味し、「ジ低級アルキルアミノ基」は、前記のような低級アルキル基の2個によって置換されたアミノ基を意味する。ここで、ジ低級アルキルアミノ基における2個の低級アルキル基は、同一であってもよく、また、互いに異なっていてもよい。また、「フェニル低級アルキルアミノ基」は、上記低級アルキルアミノ基における低級アルキル部分がさらに1個のフェニル基によって置換されている基を意味する。
の定義における「低級アルキルチオ基」及び「低級アルキルスルフィニル基」は、それぞれ、前記のような低級アルキル基によって置換されたチオ(S)基及びスルフィニル(SO)基を意味する。
の定義における「アシルアミノ基」は、アシル化されたアミノ基を意味し、アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリルなどの低級アルカノイル基やベンゾイルなどのアロイル基等を挙げることができ、中でも、アセチル及びベンゾイル基が好ましい。
の定義における「アリール基」としては、例えば、フェニル、ナフチル基等を挙げることができ、中でも、フェニル基が好ましい。また、Rの定義における「ヘテロアリール基」としては、N、O及びSから選ばれる1〜2個のヘテロ原子を有する5〜6員の場合によりベンゼン環と縮合していてもよいヘテロアリール基が包含され、例えば、ピリジル、キノリル、ピロリル、フリル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル基等を挙げることができ、中でも特に、ピリジル基が好適である。
の定義における「低級ハロアルキル基」は、1個もしくはそれ以上の同一もしくは異なるハロゲン原子によって置換された前記のような低級アルキル基を意味し、例えば、フルオロメチル、トリフルオロメチル、1,2−ジクロロエチル、1−クロロ−2−ブロモエチル、ペンタフルオロエチル、1−クロロ−n−プロピル、2−ブロモ−2−メチルエチル、3−クロロ−n−ペンチル、2−ブロモ−3−クロロ−n−ヘキシル基等を挙げることができ、中でも特に、1〜5個の同一もしくは異なるハロゲン原子によって置換された炭素数が1又は2個の低級アルキル基が好ましい。
の定義における「低級アルキレンジオキシ基」としては、例えば、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、トリメチレンジオキシ基等を挙げることができ、特に、メチレンジオキシ基が好ましい。
の定義における「複素環式基」としては、N、O及びSから選ばれる1〜3個のヘテロ原子を有する飽和もしくは不飽和の5〜7員の場合により縮合環を形成していてもよい複素環式基が包含され、例えば、ピリジル、ピリミジニル、アゼピニル、キノリル、インドリル、キナゾリニル、ピロリル、フリル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、ピロリジニル、イソクロマニル基等を挙げることができ、中でも、チエニル及びイソオキサゾリル基が好ましい。
の定義における「置換もしくは未置換のフェニル基」のフェニル基上の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ニトロ基、低級ハロアルキル基、低級ハロアルキルチオ基、ヒドロキシル基、アミノ基等を挙げることができ、中でも、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ニトロ基、低級ハロアルキル基及び低級ハロアルキルチオ基が好ましく、特に、ハロゲン原子及び低級アルキル基が好適である。また、Rの定義における「置換もしくは未置換の複素環式基」の複素環式基上の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ニトロ基、低級ハロアルキル基、アミノ基等を挙げることができ、特に、ハロゲン原子及び低級アルキル基が好ましい。
本発明において好ましい一群の化合物は、Rが水素原子、アミノ基、低級アルキルアミノ基又はジ低級アルキルアミノ基を表す場合の式(1)の化合物であり、中でも、Rが水素原子を表す場合の式(1)の化合物がより好適である。また、R1の好ましい置換位置はピリミジン環の2位である。
本発明において好ましい別の一群の化合物は、Rがハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基及び低級アルキレンジオキシ基から選ばれる1〜3個の置換基によって置換されたフェニル基を表す場合の式(1)の化合物であり、中でも、Rがハロゲン原子、低級アルキル基及び低級アルキレンジオキシ基から選ばれる1又は2個の置換基によって置換されたフェニル基を表す場合の式(1)の化合物がより好ましく、特に、Rが4−フルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、4−クロロフェニル基、3−メチルフェニル基、2−フルオロ−5−メチルフェニル基、4−フルオロ−3−メチルフェニル基、2−フルオロ−4−メトキシフェニル基又は2,3−メチレンジオキシフェニル基である場合の式(1)の化合物が好適である。
本発明において好ましい更に別の一群の化合物は、Rが水素原子を表す場合の式(1)の化合物である。
本発明において好ましい更に別の一群の化合物は、Rが置換もしくは未置換のフェニル基を表す場合の式(1)の化合物であり、中でも、Rが未置換のフェニル基であるか又はハロゲン原子、低級アルキル基及び低級アルコキシ基から選ばれる1もしくは2個の置換基によって置換されたフェニル基を表す場合の式(1)の化合物がより好ましく、特に、R4が未置換のフェニル基、2−ハロフェニル基、2,6−ジハロフェニル基、2−低級アルキルフェニル基、3−低級アルキルフェニル基、3−低級アルコキシフェニル基又は2,5−ジ低級アルキルフェニル基である場合の式(1)の化合物がより好適である。
本発明において好ましい更に別の一群の化合物は、Yが−CH−を表す場合の式(1)の化合物である。
本発明により提供される前記式(1)の化合物の代表例としては、次のものを挙げることができる。
3−(4−フルオロフェニル)−4−[4−(2−メチルアミノピリミジニル)]−5−(フェニルアセチルアミノ)イソオキサゾール、
5−[(2−クロロフェニル)アセチルアミノ]−3−(4−フルオロフェニル)−4−[4−(2−メチルアミノピリミジニル)]イソオキサゾール、
4−[4−(2−ジメチルアミノピリミジニル)]−3−(4−フルオロフェニル)−5−(フェニルアセチルアミノ)イソオキサゾール、
5−[(2−クロロフェニル)アセチルアミノ]−4−[4−(2−ジメチルアミノピリミジニル)]−3−(4−フルオロフェニル)イソオキサゾール、
4−[4−(2−ベンジルアミノピリミジニル)]−3−(4−フルオロフェニル)−5−(フェニルアセチルアミノ)イソオキサゾール、
4−[4−(2−ベンジルアミノピリミジニル)]−5−[(2−クロロフェニル)アセチルアミノ]−3−(4−フルオロフェニル)イソオキサゾール、
4−[4−(2−アセチルアミノピリミジニル)]−3−(4−フルオロフェニル)−5−(フェニルアセチルアミノ)イソオキサゾール、
4−[4−(2−アセチルアミノピリミジニル)]−5−[(2−クロロフェニル)アセチルアミノ]−3−(4−フルオロフェニル)イソオキサゾール、
4−[4−(2−ベンゾイルアミノピリミジニル)]−3−(4−フルオロフェニル)−5−(フェニルアセチルアミノ)イソオキサゾール、
4−[4−(2−ベンゾイルアミノピリミジニル)]−5−[(2−クロロフェニル)アセチルアミノ]−3−(4−フルオロフェニル)イソオキサゾール、
3−(4−フルオロフェニル)−5−(N−メチル−フェニルアセチルアミノ)−4−(4−ピリミジニル)イソオキサゾール、
3−(4−フルオロフェニル)−5−[(2−クロロフェニル)アセチル−N−メチルアミノ]−4−(4−ピリミジニル)イソオキサゾール、
5−(N−エチル−フェニルアセチルアミノ)−3−(4−フルオロフェニル)−4−(4−ピリミジニル)イソオキサゾール、
5−[(2−クロロフェニル)アセチル−N−エチルアミノ]−3−(4−フルオロフェニル)−4−(4−ピリミジニル)イソオキサゾール、
3−[4−(2−メチルピリジル)]−5−(フェニルアセチルアミノ)−4−(4−ピリミジニル)イソオキサゾール、
5−[(2−クロロフェニル)アセチルアミノ]−3−[4−(2−メチルピリジル)]−4−(4−ピリミジニル)イソオキサゾール、
3−[2−(6−メチルピリジル)]−5−(フェニルアセチルアミノ)−4−(4−ピリミジニル)イソオキサゾール、
5−[(2−クロロフェニル)アセチルアミノ]−3−[2−(6−メチルピリジル)]−4−(4−ピリミジニル)イソオキサゾール、
3−[2−(4−メチルピリジル)]−5−(フェニルアセチルアミノ)−4−(4−ピリミジニル)イソオキサゾール、
5−[(2−クロロフェニル)アセチルアミノ]−3−[2−(4−メチルピリジル)]−4−(4−ピリミジニル)イソオキサゾール、等。
本発明の式(1)の化合物は、また、場合により塩の形態で存在することができ、その塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸との塩;酢酸、蓚酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸との塩等が挙げられ、中でも、製薬学的に許容されうる塩が好ましい。
上記式(1)の化合物は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2006/070927号を参照のこと。
(ピリジルイソオキサゾール誘導体)
前記式(2)の化合物は、


(式中、
及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、フェニル低級アルキルアミノ基、アシルアミノ基、低級アルキルチオ基又は低級アルキルスルフィニル基を表し、
はナフチル基、場合により低級アルキル基で置換されていてもよいヘテロアリール基又は下記式(A)


の基を表し、ここで、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルコキシ基、ヒドロキシル基、低級アルカノイル基、低級ハロアルカノイル基又はフェニル基を表すか、或いはXとXは一緒になって低級アルキレンジオキシ基を表し、
は水素原子又は低級アルキル基を表し、
は場合によりハロゲン原子、低級アルキル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、ヒドロキシル基、低級アルカノイル基、低級ハロアルカノイル基、低級アルキルチオカルボニル基、低級ハロアルキルチオカルボニル基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基及びニトロ基から選ばれる1〜3個の置換基によって置換されていてもよい、フェニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基又はイソオキサゾリル基を表し、
Yは−(CH−、−CO−、−CH(CH)−、−C(CH−、−O−、−NH−又は


を表し、ここで、nは1〜3の整数を表す、
ただし、R及びRの両方が水素原子を表しそしてRが式(A)の基を表し且つX、X及びXの2つが水素原子を表す場合、X、X及びXの残りの1つは水素原子及びハロゲン原子以外の基を表す)で示される。
本明細書において、「低級」なる語は、この語が付された基の炭素原子数が6個以下、好ましくは4個以下であることを意味する。
「低級アルキル基」は、直鎖状もしくは分岐鎖状であることができ、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル基等を挙げることができ、中でも、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル及びn−ブチル基が好ましく、「低級アルコキシ基」は、該低級アルキル基が結合したオキシ(O)基であり、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、n−ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ基等を挙げることができ、中でも、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ及びn−ブトキシ基が好ましい。また、「低級アルカノイル基」は、該低級アルキル基が結合したカルボニル(C=O)基であり、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル基等を挙げることができ、中でも、アセチル及びプロピオニル基が好ましい。
さらに、「ハロゲン原子」及び「ハロ」には、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子が包含され、特に、フッ素、塩素及び臭素原子が好ましい。
の定義における「低級アルキルアミノ基」は、アミノ基(−NH)の水素原子の1つが前記低級アルキル基によって置換されたアミノ基を意味し、また、「ジ低級アルキルアミノ基」は、アミノ基の2個の水素原子が前記低級アルキル基によって置換されたアミノ基を意味する。ここで、ジ低級アルキルアミノ基における2個の低級アルキル基は、同一であってもよく、また、互いに異なっていてもよい。また、Rの定義における「フェニル低級アルキルアミノ基」は、前記低級アルキルアミノ基の低級アルキル部分がフェニル基で置換された基であり、例えば、ベンジルアミノ、2−フェニルエチルアミノ、3−フェニル−n−プロピルアミノ、4−フェニル−n−ブチルアミノ、1−フェニルエチルアミノ、1−(フェニルメチル)エチルアミノ基等を挙げることができ、中でも、ベンジルアミノ及び2−フェニルエチルアミノ基が好ましい。
の定義における「アシルアミノ基」は、アシル化されたアミノ基を意味し、アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリルなどの低級アルカノイル基や、ベンゾイルなどのアロイル基等を挙げることができ、中でも、アセチル及びベンゾイル基が好ましい。
の定義における「低級アルキルチオ基」及び「低級アルキルスルフィニル基」は、それぞれ、前記低級アルキル基が結合したチオ(S)基及びスルフィニル(SO)基を意味する。
の定義における「場合により低級アルキル基で置換されていてもよいヘテロアリール基」は、未置換であるか又は前記低級アルキル基で置換された単環式もしくは多環式のヘテロアリール基を意味し、ここで、該ヘテロアリール基としては、N、O及びSより選ばれるヘテロ原子を環中に1〜3個含有する5〜10員の芳香族基が包含され、具体的には、例えば、フリル、ピロリル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、キノリル、イソキノリル、キナゾリル基等を挙げることができ、中でも、フリル、ピロリル、チエニル及びピリジル基が好ましい。
の定義における下記式


の基において、X、X及びXはベンゼン環のそれぞれ異なるどの位置に置換していてもよく、その結合部位は特に制限されない。
上記式(A)のX、X及びXの定義における「低級ハロアルキル基」は、1個もしくはそれ以上の同一もしくは異なるハロゲン原子によって置換された前記のような低級アルキル基を意味し、例えば、フルオロメチル、トリフルオロメチル、1,2−ジクロロエチル、1−クロロ−2−ブロモエチル、ペンタフルオロエチル、1−クロロ−n−プロピル、2−ブロモ−2−メチルエチル、3−クロロ−n−ペンチル、2−ブロモ−3−クロロ−n−ヘキシル基等を挙げることができ、中でも、1〜5個の同一もしくは異なるハロゲン原子によって置換された炭素数が1又は2個の低級アルキル基が好ましい。
前記式(A)のX、X及びXの定義における「低級ハロアルコキシ基」は、前記低級ハロアルキル基が結合したオキシ(O)基であり、特に、1〜5個の同一もしくは異なるハロゲン原子によって置換された炭素数が1もしくは2個の低級ハロアルコキシ基が好ましい。
式(A)のX、X及びXの定義における「低級ハロアルカノイル基」は、1個もしくはそれ以上のハロゲン原子によって置換された前記低級アルカノイル基を意味し、例えば、フルオロアセチル、クロロアセチル、ブロモアセチル、トリフルオロアセチル、3−フルオロプロピオニル、3−クロロプロピオニル、3−ブロモプロピオニル、4−クロロブチリル基等を挙げることができ、中でも、フルオロアセチル、トリフルオロアセチル、3−フルオロプロピオニル、3−クロロプロピオニル基が好ましい。
式(A)のX、X及びXの定義における「低級アルキレンジオキシ基」としては、例えば、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、トリメチレンジオキシ基等を挙げることができ、中でも、メチレンジオキシ及びエチレンジオキシ基が好ましい。
の定義における「低級ハロアルキル基」、「低級アルカノイル基」及び「低級ハロアルカノイル基」は、それぞれ、前記式(A)のX、X及びXの定義における「低級ハロアルキル基」、「低級アルカノイル基」及び「低級ハロアルカノイル基」におけると同様の基を挙げることができ、また、それぞれにおける好ましい基も同様のものを挙げることができる。
の定義における「低級アルキルチオカルボニル基」は、前記低級アルキル基が結合したチオカルボニル(C=S)基を意味し、例えば、チオアセチル、チオプロピオニル、チオブチリル、チオペンタノイル、チオヘキサノイル基等を挙げることができ、中でも、チオアセチル及びチオプロピオニル基が好ましい。
の定義における「低級ハロアルキルチオカルボニル基」は、1個もしくはそれ以上のハロゲン原子によって置換された前記低級アルキルチオカルボニル基を意味し、例えば、フルオロチオアセチル、クロロチオアセチル、ブロモチオアセチル、トリフルオロチオアセチル、クロロチオプロピオニル、クロロチオブチリル、ブロモチオペンタノイル、フルオロチオヘキサノイル基等を挙げることができ、中でも、フルオロチオアセチル、クロロチオアセチル、ブロモチオアセチル及びトリフルオロチオアセチル基が好ましい。
前記式(2)において、R及びRの両方が水素原子を表しそしてRが式(A)の基を表し且つX、X及びXの2つが水素原子を表す場合、X、X及びXの残りの1つが水素原子又はハロゲン原子を表す場合の化合物は、特開2000−86657号公報に開示されており、本発明の式(2)の化合物から除外される。
本発明において好ましい一群の化合物は、R及びRがそれぞれ独立に水素原子、アミノ基、低級アルキルアミノ基又はジ低級アルキルアミノ基を表す場合の式(2)の化合物であり、中でも、R及びRがともに水素原子を表す場合の式(2)の化合物がより好適である。また、R又はRのいずれか一方が水素原子を表し且つ他方が水素原子以外の基を表す場合の、該水素原子以外の基は、ピリミジン環の2位に置換していることが好ましい。
本発明において好ましい別の一群の化合物は、Rが下記式


の基を表す場合の式(2)の化合物であり、中でも、X、X及びXがそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基又は低級アルコキシ基を表す場合の式(2)の化合物がより好適である。
本発明において好ましい更に別の一群の化合物は、Rが水素原子を表す場合の式(2)の化合物である。
本発明において好ましい更に別の一群の化合物は、Rが場合によりハロゲン原子、低級アルキル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、ヒドロキシル基、低級アルカノイル基、低級ハロアルカノイル基、低級アルキルチオカルボニル基、低級ハロアルキルチオカルボニル基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基及びニトロ基から選ばれる1〜3個の置換基によって置換されていてもよいフェニル基を表す場合の式(2)の化合物であり、中でも、Rが場合によりハロゲン原子及び低級アルキル基から選ばれる1もしくは2個の置換基によって置換されていてもよいフェニル基を表す場合の式(2)の化合物がより好ましく、特に、R5がフェニル基、2−ハロフェニル基、2,6−ジハロフェニル基、2−低級アルキルフェニル基、3−低級アルキルフェニル基又は2,5−ジ低級アルキルフェニル基である場合の式(2)の化合物がより好適である。
本発明において好ましい更に別の一群の化合物は、Yが−CH−又は−(CH−を表す場合の式(2)の化合物である。
本発明において特に好ましい化合物は以下のとおりである。
3−(3−メチルフェニル)−5−(3−フェニルプロピオニルアミノ)−4−(4−ピリジル)イソオキサゾ−ル、
3−(3−メチルフェニル)−5−[(2−メチルフェニル)プロピオニルアミノ]−4−(4−ピリジル)イソオキサゾ−ル、
5−[(3−クロロフェニル)プロピオニルアミノ]−3−(2−フルオロ−5−メチルフェニル)−4−(4−ピリジル)イソオキサゾ−ル、
3−(4−フルオロ−3−メチルフェニル)−5−(フェニルアセチルアミノ)−4−(4−ピリジル)イソオキサゾ−ル、
5−[(2−クロロフェニル)アセチルアミノ]−3−(4−フルオロ−3−メチルフェニル)−4−(4−ピリジル)イソオキサゾ−ル、及び
3−(4−フルオロ−3−メチルフェニル)−5−(3−フェニルプロピオニルアミノ)−4−(4−ピリジル)イソオキサゾ−ル。
また、本発明により提供される前記式(I)の化合物の代表例として、例えば次のものを挙げることができる。
3−(4−フルオロフェニル)−4−[4−(2−メチルアミノピリジル)]−5−フェニルアセチルアミノイソオキサゾ−ル、
3−(4−フルオロフェニル)−4−[4−(2−メチルアミノピリジル)]−5−(3−フェニルプロピオニルアミノ)イソオキサゾ−ル、
4−[4−(2−ベンジルアミノピリジル)]−3−(4−フルオロフェニル)−5−フェニルアセチルアミノイソオキサゾ−ル、
4−[4−(2−ベンジルアミノピリジル)]−3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−フェニルプロピオニルアミノ)イソオキサゾ−ル、
4−[4−(2−アセチルアミノピリジル)]−3−(4−フルオロフェニル)−5−フェニルアセチルアミノイソオキサゾ−ル、
4−[4−(2−アセチルアミノピリジル)]−3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−フェニルプロピオニルアミノ)イソオキサゾ−ル、
4−[4−(2−ベンゾイルアミノピリジル)]−3−(4−フルオロフェニル)−5−フェニルアセチルアミノイソオキサゾ−ル、
4−[4−(2−ベンゾイルアミノピリジル)]−3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−フェニルプロピオニルアミノ)イソオキサゾ−ル、
3−(4−フルオロ−3−メチルフェニル)−5−(N−メチル−フェニルアセチルアミノ)−4−(4−ピリジル)イソオキサゾ−ル、
3−(4−フルオロ−3−メチルフェニル)−5−[N−メチル−(3−フェニルプロピオニル)アミノ]−4−(4−ピリジル)イソオキサゾ−ル、
5−[(2−アミノフェニル)アセチルアミノ]−3−(4−フルオロ−3−メチルフェニル)−4−(4−ピリジル)イソオキサゾ−ル、
3−(4−フルオロ−3−メチルフェニル)−5−[(2−ヒドロキシフェニル)アセチルアミノ]−4−(4−ピリジル)イソオキサゾ−ル、
3,4−ジ(4−ピリジル)−5−フェニルアセチルアミノイソオキサゾ−ル、
3,4−ジ(4−ピリジル)−5−(3−フェニルプロピオニルアミノ)イソオキサゾ−ル、
3−[4−(2−メチルピリジル)]−5−フェニルアセチルアミノ−4−(4−ピリジル)イソオキサゾ−ル、
3−[4−(2−メチルピリジル)]−5−(3−フェニルプロピオニルアミノ)−4−(4−ピリジル)イソオキサゾ−ル等。
本発明の式(2)の化合物は、また、場合により塩の形態で存在することができ、その塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸との塩;酢酸、蓚酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸との塩等が挙げられ、中でも、製薬学的に許容されうる塩が好ましい。
上記式(2)の化合物は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2008/001930号を参照のこと。
本発明の医薬において、上記p38 MAPKインヒビターは、単独で使用されてもよく、組み合わせて使用されてもよい。本発明で使用されるp38 MAPキナーゼインヒビターの濃度は、通常約0.001〜100μM(μmol/l)、好ましくは約0.01〜30μM、より好ましくは約0.03〜10μMであり、2種以上のp38 MAPKインヒビターを組み合わせて使用する場合は適宜変更することができ、他の濃度範囲としては、例えば、通常、0.01nM〜100μM、約0.1nM〜100μM、約0.001〜100μM、約0.01〜75μM、約0.05〜50μM、約1〜10μM、約0.01〜10μM、約0.05〜10μM、約0.075〜10μM、約0.1〜10μM、約0.5〜10μM、約0.75〜10μM、約1.0〜10μM、約1.25〜10μM、約1.5〜10μM、約1.75〜10μM、約2.0〜10μM、約2.5〜10μM、約3.0〜10μM、約4.0〜10μM、約5.0〜10μM、約6.0〜10μM、約7.0〜10μM、約8.0〜10μM、約9.0〜10μM、約0.01〜50μM、約0.05〜5.0μM、約0.075〜5.0μM、約0.1〜5.0μM、約0.5〜5.0μM、約0.75〜5.0μM、約1.0〜5.0μM、約1.25〜5.0μM、約1.5〜5.0μM、約1.75〜5.0μM、約2.0〜5.0μM、約2.5〜5.0μM、約3.0〜5.0μM、約4.0〜5.0μM、約0.01〜3.0μM、約0.05〜3.0μM、約0.075〜3.0μM、約0.1〜3.0μM、約0.5〜3.0μM、約0.75〜3.0μM、約1.0〜3.0μM、約1.25〜3.0μM、約1.5〜3.0μM、約1.75〜3.0μM、約2.0〜3.0μM、約0.01〜1.0μM、約0.05〜1.0μM、約0.075〜1.0μM、約0.1〜1.0μM、約0.5〜1.0μM、約0.75〜1.0μM、約0.09〜35μM、または約0.09〜3.2μMであり、より好ましくは、約0.01〜10μM、約0.1〜3μM、または約0.1〜1.0μMを挙げることができるがこれらに限定されない。
点眼剤として用いられる場合は、涙液などでの希釈も考慮し、毒性にも気を付けながら、上記有効濃度の約1〜10000倍、好ましくは約100〜10000倍、例えば、約1000倍を基準として製剤濃度を決定することができ、これらを上回る濃度を設定することも可能である。例えば、約0.01μM(μmol/l)〜1000mM(mmol/l)、約0.1μM〜100mM、約1μM〜100mM、約10μM〜100mM、あるいは約0.1μM〜30mM、約1μM〜30mM、より好ましくは約1μM〜10mM、約10μM〜10mM、約100μM〜10mM、約10μM〜100mM、約100μM〜100mMであり、約1mM〜10mM、約1mM〜100mMであり得、これらの上限下限は適宜組み合わせて設定されることができ、2種以上の化合物を組み合わせて使用する場合は適宜変更することができる。
好ましい実施形態では、p38 MAPキナーゼインヒビターは、以下:


(式中、
は、NまたはCHであり;
は、NH、N−CHまたはOであり;
は、F、ClまたはCHであって、o−、m−、またはp−の位置のいずれかにあり、
は、−CHCHCH、−NHCOCH、−NHCOCHCH、または


であり;
は、それぞれ独立に、H、F、ClまたはCHであって、o−、m−、またはp−の位置のいずれかにあり、n=1または2である)
の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容され得る塩、またはそれらの溶媒和物である。この実施形態において、当業者は、Hasumi et al., Bioorg Med Chem. 2014 Aug 1;22(15):4162-76に記載される、種々の化合物についてのp38 MAPキナーゼ阻害活性等を参酌して、本発明に使用される化合物を適切に設計することができる。
別の実施形態では、p38 MAPキナーゼインヒビターは、5−[(2−クロロ−6−フルオロフェニル)アセチルアミノ]−3−(4−フルオロフェニル)−4−(4−ピリミジニル)イソオキサゾール(AKP−001)である。使用されるSB203580の濃度としては、通常約0.01μM〜約10μMであり、好ましくは、約0.03μM〜約3μMである。
AKP−001は、炎症性大腸疾患の治療のために、特異的に腸に標的化するように開発されたp38 MAPキナーゼインヒビターであり、AKP−001は、望ましくない全身暴露を回避するために初回通過代謝を介して不活性形態に代謝されるようにデザインされている(Shirota et al., Drug Metab Dispos 43:217-226, February 2015)。また、この文献(Shirota et al., 2015)では、経口投与、静脈内投与等の投与経路による影響について試験されているが、眼に対する影響については試験されていない。そのため、本願明細書において実証されるように、非常に高い有効性で眼疾患を治療することができ、かつ毒性がほとんど観察されなかったことは非常に驚くべきことであった。
さらなる実施形態では、本発明の組成物は点眼剤として提供され、AKP−001が、約0.01mM〜約10mMで存在し、好ましくは、約0.03mM〜約3mMで存在する。
上記p38 MAPキナーゼインヒビター(例えば、AKP−001)は、極めて低い濃度(例えば、サブμM)でも、角膜内皮細胞の細胞障害抑制効果を発揮することが明らかになった。SB203580、VX−702およびPH−797804などのp38 MAPキナーゼインヒビターでは、サブμMで角膜内皮障害の抑制効果が観察されないため、AKP−001において、サブμMで角膜内皮障害の抑制効果が発揮されたのは予想外であった。
1つの実施形態では、本発明の治療または予防するための医薬は、角膜内皮を有する任意の動物、例えば哺乳動物を対象とすることができ、好ましくは霊長類の角膜内皮の治療または予防を目的とする。好ましくは、この治療または予防の対象は、ヒトの角膜内皮である。
別の局面では、本発明は、p38 MAPキナーゼインヒビターの有効量をそれを必要な被験体に投与する工程を含む、角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)に起因する角膜内皮の症状、障害または疾患の治療または予防のための方法を提供する。
本明細書において「被験体」とは、本発明の治療および予防するための医薬または方法の投与(移植)対象を指し、被験体としては、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ヒツジ、サル等)があげられるが、霊長類が好ましく、特にヒトが好ましい。
特定の疾患、障害または状態の治療に有効な本発明の医薬の有効量は、障害または状態の性質によって変動しうるが、当業者は本明細書の記載に基づき標準的臨床技術によって決定可能である。さらに、必要に応じて、in vitroアッセイを使用して、最適投薬量範囲を同定するのを補助することも可能である。配合物に使用しようとする正確な用量はまた、投与経路、および疾患または障害の重大性によっても変動しうるため、担当医の判断および各患者の状況に従って、決定すべきである。しかし、投与量は特に限定されないが、例えば、1回あたり0.001、1、5、10、15、100、または1000mg/kg体重であってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。投与間隔は特に限定されないが、例えば、1、7、14、21、または28日あたりに1または2回投与してもよく、それらいずれか2つの値の範囲あたりに1または2回投与してもよい。投与量、投与回数、投与間隔、投与方法は、患者の年齢や体重、症状、投与形態、対象臓器等により、適宜選択してもよい。例えば、本発明は点眼剤として使用され得る。また、本発明の医薬を前房内に注入することもできる。また治療薬は、治療有効量、または所望の作用を発揮する有効量の有効成分を含むことが好ましい。治療マーカーが、投与後に有意に減少した場合に、治療効果があったと判断してもよい。有効用量は、in vitroまたは動物モデル試験系から得られる用量−反応曲線から推定可能である。
<保存用組成物および保存方法>
別の局面において、本発明は、ピリミジニルイソオキサゾール誘導体およびピリジルイソオキサゾール誘導体などのp38 MAPキナーゼインヒビター(特にAKP−001)を含む、角膜内皮細胞の保存のための組成物を提供する。さらに別の局面において、本発明は、ピリミジニルイソオキサゾール誘導体およびピリジルイソオキサゾール誘導体などのp38 MAPキナーゼインヒビター(特にAKP−001)の有効量を角膜内皮細胞に接触させる工程を含む、角膜内皮細胞を保存するための方法を提供する。好ましい実施形態では、保存は凍結保存である。本発明において用いられるp38 MAPキナーゼインヒビターは、本明細書において説明される任意の形態、例えば、医薬として説明されている実施形態のうち、保存用組成物として適切なものを用いることができると理解される。本明細書において「保存用組成物」とは、ドナーから摘出した角膜片を、レシピエントに移植するまでの期間において保存するため、あるいは増殖前または増殖した角膜内皮細胞を保存するための組成物である。
1つの実施形態では、本発明の保存用組成物は、従来使用される保存剤または保存液に本発明のp38 MAPキナーゼインヒビターを添加して調製され得る。そのような角膜保存液としては、角膜移植時に通常用いられる保存液(強角膜片保存液(Optisol GS:登録商標)、角膜移植用眼球保存液(EPII:登録商標))、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などが挙げられる。
本発明の保存用組成物は、臓器移植などに用いられる角膜の保存用に用いられる。また、本発明の保存用組成物は、角膜内皮細胞を凍結保存するための保存液またはその成分としても用いられる。
凍結保存のために使用される本発明の保存用組成物の別の実施形態では、既存の凍結保存液に本発明のp38 MAPキナーゼインヒビターを含む保存用組成物を添加して使用することもできる。凍結保存液としては、例えば、タカラバイオにより提供されるCELLBANKER(登録商標)シリーズ(CELL BANKER PLUS(カタログ番号:CB021)、CELL BANKER 2(カタログ番号:CB031)、STEM−CELLBANKER(カタログ番号:CB043)など)、KM BANKER(コージンバイオ カタログ番号:KOJ−16092005)、およびFreezing Medium, Animal Component Free, CRYO Defined(Cnt−CRYOとも記載される)(CELLNTEC カタログ番号:CnT−CRYO−50)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに別の実施形態では、使用される凍結保存液はKM BANKERであってもよい。また、当業者であれば、上記凍結保存液の構成成分を適宜変更またはさらなる構成成分を添加し、改変された適切な凍結保存液を使用することができることが理解される。凍結保存のためには、本発明の保存液にグリセロール、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコール、アセトアミド等をさらに添加してもよい。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
以下に、本発明の例を記載する。該当する場合生物試料等の取り扱いは、厚生労働省、文部科学省等において規定される基準を遵守し、該当する場合はヘルシンキ宣言またはその宣言に基づき作成された倫理規定に基づいて行った。研究のための眼の寄贈については、全ての故人ドナーの近親者から同意書を得た。本研究は、エルランゲン大学(ドイツ)、SightLifeTM(Seattle,WA)アイバンクの倫理委員会またはそれに準ずるものの承認を受けた。
(調製例:フックス角膜内皮ジストロフィ患者由来の不死化角膜内皮細胞株(iFECD)および正常角膜内皮細胞の不死化細胞(iHCEC)の作製)
本実施例では、フックス角膜内皮ジストロフィ患者由来および健常者由来の角膜内皮細胞から不死化角膜内皮細胞株(iFECDおよびiHCEC)を作製した。
(培養方法)
シアトルアイバンクから購入した研究用角膜より角膜内皮細胞を基底膜とともに機械的に剥離し、コラゲナーゼを用いて基底膜よりはがして回収後、初代培養を行った。培地はOpti−MEM I Reduced−Serum Medium, Liquid(INVITROGEN カタログ番号:31985−070)に、8%FBS(BIOWEST、カタログ番号:S1820−500)、200mg/ml CaCl・2HO(SIGMA カタログ番号:C7902−500G)、0.08% コンドロイチン硫酸(SIGMA カタログ番号:C9819−5G)、20μg/mlアスコルビン酸(SIGMA カタログ番号:A4544−25G)、50μg/mlゲンタマイシン(INVITROGEN カタログ番号:15710−064)および5ng/ml EGF(INVITROGEN カタログ番号:PHG0311)を加えた3T3フィーダー細胞用の馴化させたものを基本培地として用いた。また、基本培地にSB431542(1μmol/l)およびSB203580(4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルホニルフェニル)−5(4−ピリジル)イミダゾール<4−[4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−1H−イミダゾール−5−イル]ピリジン)(1μmol/l)を添加したもの(「SB203580+SB431542+3T3馴化培地」という)で培養した。
(取得方法)
フックス角膜内皮ジストロフィの臨床診断により水疱性角膜症に至り、角膜内皮移植(デスメ膜内皮角膜移植=DMEK)を実施されたヒト患者3名より文書による同意および倫理員会の承認のもと角膜内皮細胞を得た。DMEKの際に機械的に病的な角膜内細胞と基底膜であるデスメ膜とともに剥離し、角膜保存液であるOptisol−GS(ボシュロム社)に浸漬した。その後、コラゲナーゼ処理を行い酵素的に角膜内皮細胞を回収して、SB203580+SB431542+3T3順か培地により培養した。培養したフックス角膜内皮ジストロフィ患者由来の角膜内皮細胞はSV40ラージT抗原およびhTERT遺伝子をPCRにより増幅して、レンチウイルスベクター(pLenti6.3_V5−TOPO; Life Technologies Inc)に導入した。その後、レンチウイルスベクターを3種類のヘルパープラスミド(pLP1、pLP2、pLP/VSVG; Life Technologies Inc.)とともにトランスフェクション試薬(Fugene HD; Promega Corp., Madison, WI)を用いて293T 細胞 (RCB2202; Riken Bioresource Center, Ibaraki, Japan) に感染させた。48時間の感染後にウイルスを含む培養上清を回収して、5 μg/ml のポリブレンを用いて、培養したフックス角膜内皮ジストロフィ患者由来の角膜内皮細胞の培養液に添加して、SV40ラージT抗原およびhTERT遺伝子を導入した。フックス角膜内皮ジストロフィ患者由来の不死化角膜内皮細胞株(iFECD)の位相差顕微鏡像を確認した。シアトルアイバンクから輸入した研究用角膜より培養した角膜内皮細胞を同様の方法で不死化し、正常角膜内皮細胞の不死化細胞株を作製した(iHCEC)。健常ドナー由来の不死化角膜内皮細胞株(iHCEC)および不死化角膜内皮細胞株(iFECD)の位相差顕微鏡像をみると、iHCECおよびiFECDはいずれも正常の角膜内皮細胞同様に一層の多角形の形態を有する。iHCECおよびiFECDはダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)+10% ウシ胎仔血清(FBS)により維持培養を行った。
(実施例1:AKP−001のiFECDにおける細胞障害抑制効果)
本実施例では、p38 MAPキナーゼインヒビターであるAKP−001のiFECDにおける細胞障害抑制効果を確認し、他のp38 MAPキナーゼインヒビターであるSB203580、VX−702およびPH−797804による細胞障害抑制効果と比較した。
(材料および方法)
培養したフックス角膜内皮ジストロフィ患者由来の不死化角膜内皮細胞(以下、疾患モデル細胞)を培養皿から培地を除去し、事前に37℃に温めておいた1×PBS(−)を添加し、洗浄を行った。この作業を2回繰り返した。再び1×PBS(−)を添加し、37℃(5% CO)で5分インキュベートした。PBS(−)除去後、0.05% Trypsin−EDTA(ナカライテスク、32778−34)を添加し、37℃(5% CO)で5分インキュベートした。その後、培地で懸濁し、1500rpmで3分間遠心することで細胞を回収した。培地はDMEM(ナカライテスク、08456−36)+10%FBS(Biowest、S1820−500)+1%P/S(ナカライテスク、26252−94)を用いた。6ウェルプレートに疾患モデル細胞を1ウェル当たり1.5×10個の割合で播種し、37℃(5% CO)で48時間培養した。培地はDMEM+10%FBS+1%P/Sを用いた。
48時間後、培地を除去し、AKP−001、SB203580(Cayman、13067)、PH−797804(Selleck Chemicals、S2726)、VX−702(Selleck Chemicals、S6005)を終濃度0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10、30μMとなるようにDMEM+2%FBS+1%P/Sに添加し、24時間プレトリートメントとして培養した。24時間後、培地を除去し、100ng/mlのRecombinant Human TGF−β2(R&D systems、RND302−B2−002)とともに、AKP−001、SB203580(Cayman、13067)、PH−797804(Selleck Chemicals、S2726)、またはVX−702(Selleck Chemicals、S6005)を終濃度0.01μM、0.03μM、0.1μM、0.3μM、1μM、3μM、10μM、30μMとなるようにDMEM+2%FBS+1%P/Sに添加し、24時間培養を行った。24時間後、位相差顕微鏡により観察して細胞障害を評価した。コントロールはとしてTGF−βで刺激していない不死化角膜内皮細胞を用いた。
AKP−001は、Hasumi et al., Bioorg Med Chem. 2014 Aug 1;22(15):4162-76に基づいて合成した。
(結果)
結果を図1〜4に示す。フックス角膜内皮ジストロフィ患者由来の不死化角膜内皮細胞をTGF―βにより刺激した場合、顕著に細胞が障害されていることが認められる。AKP−001によりプレトリートメントした場合は、0.01μM〜10μMと非常に広い濃度域で角膜内皮細胞の障害抑制効果が観察された。特に0.1μM、0.3μM、1μM、および3μMの濃度において効果的に角膜内皮細胞の障害が抑制されていることが観察された。
他方、SB203580によりプレトリートメントした場合は、10μMおよび30μMにおいて角膜内皮細胞の障害が抑制されていることが観察された。また、1μMおよび3μMにおいても若干の角膜内皮細胞障害抑制効果が確認された。PH−797804によりプレトリートメントした場合は、1μMおよび3μMにおいて効果的に角膜内皮細胞の障害が抑制されていることが観察された。さらに、VX−702によりプレトリートメントした場合は特に1μMおよび3μMにおいて効果的に角膜内皮細胞の障害が抑制されていることが観察された。
このように、AKP−001以外のp38 MAPKインヒビター(SB203580、VX−702およびPH−797804)では、1μM以上の濃度で細胞障害抑制効果が確認されるのに対し、AKP−001は、サブμMという低濃度でも細胞障害を抑制することができることが示された。
(実施例2:AKP−001のiFECDにおけるカスパーゼ活性抑制効果)
本実施例では、AKP−001のiFECDにおけるカスパーゼ活性抑制効果を確認し、他のp38 MAPキナーゼインヒビターであるSB203580、VX−702およびPH−797804によるカスパーゼ活性抑制効果と比較した。
(材料および方法)
培養した疾患モデル細胞の培養皿から培地を除去し、事前に37℃に温めておいた1×PBS(−)を添加し、洗浄を行った。この作業を2回繰り返した。再び1×PBS(−)を添加し、37℃(5% CO)で5分インキュベートした。PBS(−)除去後、0.05% Trypsin−EDTA(ナカライテスク、32778−34)を添加し、37℃(5% CO)で5分インキュベートした。その後、培地で懸濁し、1500rpmで3分間遠心することで細胞を回収した。培地:DMEM(ナカライテスク、08456−36)+10%FBS(Biowest、S1820−500)+1%P/S(ナカライテスク、26252−94)
6ウェルプレートにフックス角膜内皮ジストロフィ患者由来の不死化角膜内皮細胞を1ウェル当たり1.5×10個の割合で播種し、37℃(5% CO)で48時間培養した。培地はDMEM+10%FBS+1%P/Sを用いた。48時間後、培地を除去し、SB203580(Cayman、13067)、PH−797804(Selleck Chemicals、S2726)、VX−702(Selleck Chemicals、S6005)、AKP−001をすべて終濃度が0.1μMとなるようにDMEM+2%FBS+1%P/Sに添加し、24時間プレトリートメントとして培養した。
24時間後、培地を除去し、100ng/mlの組み換えヒトTGF−β2(R&D systems、RND302−B2−002)とともに、SB203580(Cayman、13067)、PH−797804(Selleck Chemicals、S2726)、VX−702(Selleck Chemicals、S6005)、AKP−001をすべて終濃度が0.1μMとなるようにDMEM+2%FBS+1%P/Sに添加し、24時間培養を行った。24時間後に以下の手順でタンパク質のウェスタンブロットを行い、アポトーシスに対する影響を評価した。
1)タンパク質の回収
浮遊及び死細胞も回収するため、氷上で培地を回収し、細胞を1×PBS(−)で2回洗浄した溶液も回収し、4℃、800g、5分遠心し上清を捨て、沈殿物を得た。洗浄した細胞は、氷上でタンパク質抽出用緩衝液(RIPA;50mM Tris−HCl(pH7.4)、150mM NaCl、1mM EDTA、0.1% SDS、0.5% DOC、1%NP−40)を加えてタンパク質を抽出した。その後、上記浮遊及び死細胞の遠心後の沈殿物も一緒に懸濁して抽出した。回収した液を超音波装置(BIORUPTOR、TOSHO DENKI製)にて冷水中で30秒、3回粉砕後に、4℃、15000rpm、10分遠心し、タンパク質の上清を回収した。
2)ウェスタンブロット法
上記抽出したタンパク質8μgをSDS−PAGEにて分離し、ニトロセルロース膜に転写した。1次抗体は、ウサギ抗カスパーゼ3抗体(Cell Signaling、9662)、ウサギ抗PARP抗体(Cell Signaling、9542)、マウス抗GAPDH抗体(MBL社、M171−3)を用いた。2次抗体はペルオキシダーゼで標識した抗ウサギ抗体、抗マウス抗体(GE Healthcare Biosciences、NA931V,NA934V)を用いた。1次抗体はラビット抗PARP抗体:1000倍希釈、ラビット抗Caspase3抗体:1000倍希釈、マウス抗GAPDH抗体:3000倍希釈し、2次抗体は5000倍希釈した。検出にはChemi Lumi ONE Ultra(ナカライテスク、11644−40)を使用した。検出したバンドの強度は、ルミノ・イメージアナライザーLAS−4000mini(富士フィルム社)及びImageQuantTM software(GE Healthcare社)により解析した。
(結果)
結果を図5に示す。疾患モデル細胞をTGF−βにより刺激した場合、活性型である約17kDaの切断されたカスパーゼ3(約17kDa)が認められた。また、活性型である約89kDaの切断されたPARPも認められた。また、0.1μMのSB203580、PH−797804、VX−702を添加した群においても同様に、切断カスパーゼ3およびPARPの発現を確認した。一方で、0.1μMのAKP−001を添加した群においては、活性型の切断カスパーゼ3およびPARPの活性はほとんど確認されなかった。このように、0.1μMというサブμMでは、SB203580、PH−797804、VX−702においてカスパーゼ活性を抑制することができなかったのに対し、AKP−001においては、0.1μMの濃度でもカスパーゼ活性を抑制することができたことが明らかになった。
(実施例3:AKP−001存在下でのヒト角膜内皮細胞の細胞生存率の確認)
本実施例では、ヒト角膜内皮細胞を用いて、AKP−001存在下での細胞生存率を確認した。
(材料および方法)
研究用ドナー角膜からヒト角膜内皮細胞をデスメ膜とともに剥離して培養した。培地は、OptiMEM−I(invitrogen、31985−088)+8% FBS(Thermo、SH30084.03)+5 ng/mL上皮増殖因子(invitrogen、PHG0311)+20μg/mL L−アスコルビン酸2−リン酸セスキマグネシウム水和物(SIGMA、A8960)+200mg/L 塩化カルシウム二水和物(SIGMA、C7902)+0.08% コンドロイチン硫酸(和光純薬工業株式会社、032−14613)+50μg/mL ゲンタマイシン(invitrogen、15710−064)+1 μM SB431542(WAKO、192−16541)+10 μM SB203580(Cayman、13067)を用いた。事前に培養皿はラミニン−511E8(Nippi、381−07363)によりコーティングしたものを用いた。
培養したヒト角膜内皮細胞をラミニン−511E8コーティングを施した96ウェルプレートに1ウェル当たり1×10個の割合で播種し、37℃(5% CO)でコンフルエントになるまで培養した。培地は、OptiMEM−I(invitrogen、31985−088)+8% FBS(Thermo、SH30084.03)+5 ng/mL 上皮増殖因子(invitrogen、PHG0311)+20μg/mL L−アスコルビン酸2−リン酸セスキマグネシウム水和物(SIGMA、A8960)+200 mg/L 塩化カルシウム二水和物(SIGMA、C7902)+0.08% コンドロイチン硫酸(和光純薬工業株式会社、032−14613)+50μg/mL ゲンタマイシン(invitrogen、15710−064)+1μM SB431542(WAKO、192−16541)+10μM SB203580(Cayman、13067)を用いた。
コンフルエントに達したら、OptiMEM−I(invitrogen、31985−088)+8% FBS(Thermo、SH30084.03)+20μg/mL+200mg/L 塩化カルシウム二水和物(SIGMA、C7902)+0.08% コンドロイチン硫酸(和光純薬工業株式会社、032−14613)+50μg/mL ゲンタマイシン(invitrogen、15710−064)によりさらに1週間培養した。
1週間後、培地を除去し、0.1μM、0.3μM、1μM、3μM、10μM、30μM、100μMとなるようにAKP−001を培地に添加し、24時間培養を行った。培地はOptiMEM−I(invitrogen、31985−088)+8% FBS(Thermo、SH30084.03)+20μg/mL+200mg/L 塩化カルシウム二水和物(SIGMA、C7902)+0.08% コンドロイチン硫酸(和光純薬工業株式会社、032−14613)+50μg/mL ゲンタマイシン(invitrogen、15710−064)を用いた。
24時間後、位相差顕微鏡下で細胞形態を観察した後に、以下の手順で、Cell Titer−Glo Luminescent Cell Viability Assayによる生存細胞率の解析を行った。1ウェル当り50μlになるように培地を捨て、Cell Titer−Glo Luminescent Cell Viability Assay溶液(Promega、G7572)を培地と1:1になるように50μl/ウェル加えた。ここからの作業は遮光で行った。シェイカーを120分−1程度で2分間よく混ぜ、10分間静置した。静置後、Assay plate(Corning、3912、Assay plate 96well、white polystyrene)に50μlを移し、GloMax−Multi Detection System(Promega、E7051)を用いて吸光度を測定した。
(結果)
結果を図6に示す。Cell Titer−Glo Luminescent Cell Viability Assayにより、生存細胞率を測定した結果、0.1μM、0.3μM、1μM、3μM、10μMのAKP−001を添加によっても細胞障害を認めなかった。一方、30μMおよび100μMのAKP−001の添加により有意に細胞数が低下した。このことは、AKP−001は30μM未満の濃度で細胞に対する毒性が低い可能性が示唆された。
(実施例4:AKP−001存在下でのヒト角膜内皮細胞の細胞生存率の確認)
本実施例では、ヒト角膜内皮細胞を用いて、AKP−001存在下でのカスパーゼ活性を確認した。
(材料および方法)
培養したヒト角膜内皮細胞をラミニン−511E8コーティングを施した96ウェルプレートに1ウェル当たり1×10個の割合で播種し、37℃(5% CO)でコンフルエントになるまで培養した。培地は、OptiMEM−I(invitrogen、31985−088)+8% FBS(Thermo、SH30084.03)+5ng/mL 上皮増殖因子(invitrogen、PHG0311)+20μg/mL L−アスコルビン酸2−リン酸セスキマグネシウム水和物(SIGMA、A8960)+200mg/L 塩化カルシウム二水和物(SIGMA、C7902)+0.08% コンドロイチン硫酸(和光純薬工業株式会社、032−14613)+50μg/mL ゲンタマイシン(invitrogen、15710−064)+1 μM SB431542(WAKO、192−16541)+10 μM SB203580(Cayman、13067)を用いた。
コンフルエントに達したら、OptiMEM−I(invitrogen、31985−088)+8% FBS(Thermo、SH30084.03)+20μg/mL+200mg/L 塩化カルシウム二水和物(SIGMA、C7902)+0.08% コンドロイチン硫酸(和光純薬工業株式会社、032−14613)+50μg/mL ゲンタマイシン(invitrogen、15710−064)によりさらに1週間培養した。
1週間後、培地を除去し、0.1μM、0.3μM、1μM、3μM、10μM、30μM、100μMのAKP−001入りの培地を添加し、24時間培養を行った。培地:OptiMEM−I(invitrogen、31985−088)+8% FBS(Thermo、SH30084.03)+20μg/mL+200mg/L 塩化カルシウム二水和物(SIGMA、C7902)+0.08% コンドロイチン硫酸(和光純薬工業株式会社、032−14613)+50μg/mL ゲンタマイシン(invitrogen、15710−064)
24時間後、位相差顕微鏡下で細胞形態を観察した。観察後、以下の手順で、Caspase−Glo 3/7 Assayによりカスパーゼ3/7活性の測定を行った。1ウェル当り50μlになるように培地を捨て、Caspase Glo 3/7 Assay Reagent(Caspase−Glo 3/7 Assay BufferとCaspase−Glo 3/7 Assay Substrateの混合液)(Promega、G8091)溶液を培地と1:1になるように50μl/ウェル加えた。ここからの作業は遮光で行った。シェイカーを120min−1程度で2分間よく混ぜ、室温で40分間静置した。静置後、Assay plate(Corning、3912、Assay plate 96well、white polystyrene)に80μlを移し、GloMax−Multi Detection System(Promega、E7051)を用いて吸光度を測定した。
(結果)
結果を図7に示す。Caspase−Glo 3/7 Assayは、アポトーシス誘導に伴うカスパーゼ3/7の活性を測定することができる。すなわち、カスパーゼ3/7の活性が高いほど、細胞障害が誘導されていることを表す。0.1μM、0.3μM、1μM、3μMのAKP−001を添加した場合は、コントロール群と比較してCaspase 3/7の活性に有意な差は認められなかった。一方で10μ、30μ、100μMのAKP−001を添加すると、コントロール群と比較して有意にカスパーゼ3/7が活性化したこと認めた。このことは、AKP−001は10μM以下の濃度で細胞に障害を生じないことが示唆された。
(実施例5:タプシガルギン(Thapsigargin)により誘導されるERストレスによる細胞障害に対するp38 MAPK阻害剤の抑制効果)
タプシガルギンは、折り畳まれなかったタンパク質(unfolded protein)がもたらし、これにより小胞体(ER)ストレスが生じる。本実施例では、AKP−001添加群におけるタプシガルギンにより誘導される細胞障害の抑制効果を確認した。
(材料および方法)
不死化ヒト角膜内皮細胞(iHCEC)を培養中の培養皿から培地を除去し、事前に37℃に温めておいた1×PBS(−)を添加し、洗浄を行った。この作業を2回繰り返した。再び1×PBS(−)を添加し、37℃(5%CO)で5分インキュベートした。PBS(−)除去後、0.05%Trypsin−EDTA(ナカライテスク、32778−34)を添加し、37℃(5%CO)で5分インキュベートした。その後、培地で懸濁し、1500rpmで3分間遠心することで細胞を回収した。培地は、DMEM(ナカライテスク、08456−36)+10%FBS(Biowest、S1820−500)+1%P/S(ナカライテスク、26252−94)を使用した。12ウェルプレートに不死化ヒト角膜内皮細胞(ロット:iHCEC1−1)を1ウェル当たり8×10個の割合で播種し、DMEM+10%FBS+1%P/Sの培地を使用して37℃(5%CO)で48時間培養した。その後、培地を除去し、各阻害剤を添加し、DMEM+2%FBS+1%P/Sの培地を使用して24時間培養した。その後、培地を除去し、20μMのタプシガルギン(和光、209−17281)およびAKP−001を含む培地(DMEM+2%FBS+1%P/S)を添加し、3時間培養を行った。その後、位相差顕微鏡下で細胞形態及びアポトーシスを観察した。
(結果)
図8に結果を示す。不死化ヒト角膜内皮細胞にAKP−001非存在下で、タプシガルギンにより刺激した場合、顕著に細胞が障害されていることが認められる。他方で、AKP−001でプレトリートメントした場合、角膜内皮細胞の障害が抑制されていることが観察された。このように、AKP−001は、折り畳まれなかったタンパク質によりもたらされる小胞体(ER)関連ストレスを抑制することもできることが明らかになった。
(実施例6:眼刺激試験)
本実施例では、AKP−001のin vivoにおける毒性を確認するために、眼刺激試験を行った。
(材料および方法)
試験開始前に、ウサギの前眼部を観察し、結膜充血、角膜混濁等の異常がないことを確認した。以上の基準を満たしたウサギを試験に使用した。計4匹のウサギを用いて試験を実施した。ウサギの右眼に0.1mMのAKP−001を50μl点眼し、30秒間閉瞼状態で維持した。左眼には、ビヒクルを同様の方法で点眼した。これを30分ごとに計10回行った。
点眼前後に細隙灯顕微鏡(SL−D7、トプコン)を用いて前眼部の観察を行った。角膜上皮障害の有無につき、フルオレセインナトリウム試験紙(昭和薬品化工)を用いて染色した後に、細隙灯顕微鏡により観察した。また、Pentacam(登録商標)HR(OCULUS)を用いて角膜厚、角膜形状、角膜体積を解析した。スキャニングスリット型接触式角膜内皮スペキュラーマイクロスコープ(コーナンメディカル)を用いて角膜内皮の観察を行った。さらに、超音波パキメーター(SP−100、トーメーコーポレーション)により中心角膜厚を測定、トノベット(登録商標)(エムイーテクニカ)により眼圧を測定した。
角膜透明性について以下のGradingにより評価した。
不透明度:混濁の程度(もっとも混濁した領域を読み取る。)
不透明度なし 0
虹彩を明視できる程度の散在からび慢性の不透明化 1
虹彩の細部がわずかにぼやけて見える 2
虹彩の細部が観察できないが、瞳孔の大きさはかろうじて識別できる 3
虹彩が透視できない 4
(結果)
AKP−001点眼を10回行った後に、細隙灯顕微鏡(SL−D7、トプコン)により観察したところ角膜は透明であり、充血も認めず、前眼部の炎症などを認めなかった(図9、左側写真)。フルオレセインナトリウム試験紙(昭和薬品化工)にて染色して観察したところ、染色される角結膜の上皮障害を認めなかった(図9、右側写真)。角膜透明性について評価したところ、AKP−001点眼を10回行った前後ともにスコアは全ての角膜で0であり、AKP−001点眼が透明性に影響しないことを示した(図10)。
図11Aおよび図11Bは、それぞれAKP−001点眼マウスおよびビヒクル点眼マウスにおいて、Pentacam(登録商標)HR(OCULUS)により角膜厚を計測した代表例を示す。AKP−001点眼により角膜の厚みの明らかな変化を認めなかった。図12は、Pentacam(登録商標)HR(OCULUS)により得たシャインプルーフ像の代表例を示す。AKP−001点眼により角膜の形状に明らかな変化を認めなかった。
図13にトノベット(登録商標)(エムイーテクニカ)により測定した眼圧、超音波パキメーター(SP−100、トーメーコーポレーション)により測定した中心角膜厚、Pentacam(登録商標)HR(OCULUS)により測定した角膜体積(10mm径)の点眼前後の値をグラフとして示す。眼圧、中心角膜厚、角膜体積全て、AKP−001の10回の点眼により有意な変化を認めなかった。
図14にスキャニングスリット型接触式角膜内皮スペキュラーマイクロスコープ(コーナンメディカル)を用いて撮影した角膜内皮の観察像の代表例を示す。AKP−001の10回の点眼により明らかな変化を認めなかった。
このように、いずれの試験においても、AKP−001を点眼した角膜に以上は認められず、これらの結果は、AKP−001はin vivoにおいても安全性が高いことを示している。
(実施例7:組織学的解析)
本実施例では、AKP−001のin vivoにおける安全性を確認するために、組織学的解析を行った。
(材料および方法)
ウサギを安楽死させた後に眼球を摘出し組織学的解析を行った。免疫染色法により角膜内皮機能関連マーカーの発現を確認した。強角膜片を0.5%パラホルムアルデヒドにて固定した後に、1%牛血清アルブミンにてブロッキングした。一次抗体として、角膜内皮細胞のバリア機能の指標であるZO−1抗体(Life Technologies)、N−カドヘリン抗体(BD Biosciences)を、ポンプ機能の指標であるNa/K−ATPase抗体(MILLIPORE)を加え、一晩4℃で静置した。その後、Alexa Fluor(登録商標)488−コンジュゲートヤギ抗マウス抗体(Life Technologies)を二次抗体として加えた。また、DAPI(Dojindo)を用いて核染色を行った。細胞形態を見るためにPhalloidin(Life Technologies)を用いてアクチンの染色を行った。染色した強角膜片をスライドガラスに封入し、共焦点蛍光顕微鏡(TCS SPE、Leica)にて観察した。
また、ウサギを安楽死させた後に眼球を摘出し、細胞死を評価するために、強角膜片をAnnexin V(Zymed Laboratories)およびPI(Zymed Laboratories)により染色し、を0.5%パラホルムアルデヒドにて固定し、DAPI(Dojindo)を用いて核染色を行った。染色した強角膜片をスライドガラスに封入し、共焦点蛍光顕微鏡(TCS SPE、Leica)にて観察した。ポジティブコントロールとしてスタウロスポリン(10μM、Merck Millipore)をウサギ眼球の前房内に投与して24時間経過したものを用いた。
(結果)
図15においてAKP−001を10回点眼した眼球の角膜内皮の染色像を示す(上段)。ZO−1、N−カドヘリン、Na/K−ATPaseの細胞膜に沿った発現を認める。アクチン染色により角膜内皮は多角形の敷石上の形態であることが示された。ビヒクルを点眼した眼球の染色パターンと同様であり、この結果はAKP−001点眼の角膜内皮に対する安全性を示している。
AKP−001を10回点眼した眼球、Vehicleを点眼した眼球ともにAnnexin VまたはPIによる染色を認めなかった(図16)。ポジティブコントロールとしてスタウロスポリンを前房内投与したものではAnnexin VまたはPIによる染色を認めた。この結果はAKP−001点眼の角膜内皮に対して細胞死を誘導せず、この結果はAKP−001の安全性が高いことを示している。
(実施例8:製剤例:AKP−001を含有する角膜保存液)
本実施例では、製剤例として、AKP−001を含有する角膜保存液を以下のように製造する。
常法により下に示す保存液を調製する。
AKP−001 有効量(例えば、0.1μM)
Optisol−GS(Bausch−Lomb)適量
全量100mL
(実施例9:点眼剤の調製例)
各濃度の被験物質の組成を以下に示す。
AKP−001 0.1mM
塩化ナトリウム 0.85g
リン酸二水素ナトリウム二水和物 0.1g
(任意に)ベンザルコニウム塩化物 0.005g
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
全量100mL(pH7.0)
濃度は、以下からなる基剤を用いて希釈してもよい。
塩化ナトリウム 0.85g
リン酸二水素ナトリウム二水和物 0.1g
(任意に)ベンザルコニウム塩化物 0.005g
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
全量100mL(pH7.0)
有効成分以外の各成分としては、例えば、日本薬局方またはその等価物に適合した、市販のものを利用することができる。
(実施例10:マウスモデルにおけるin vivo評価)
本実施例では、フックス角膜内皮ジストロフィ(FECD)モデルマウスとして8型コラーゲンの変異を有するマウス(Col8a2Q455K/Q455K)を用いる。
(材料および方法)
点眼試験前の角膜内皮像から、FECDの重症度のグレーディングを行い、同程度の症状を持つ生後20〜24週齢のFECDモデルマウスを用いた。調製したAKP−001点眼液(0.1mM、1mMおよび10mM)を、マウス45匹に対し毎日朝夕の2回、左右の眼に2μlずつ点眼する。コントロールには大塚生食注(大塚製薬株式会社)(生理食塩液)を用いる。点眼期間は3ヶ月としその間、実験担当者はAKP−001点眼液およびコントロール点眼液についてブラインドの状態で実験を行う。
(点眼液の有用性の評価)
点眼試験開始前に、接触式角膜内皮スペキュラー(KSSP slit−scanning wide−field contact specular microscope(Konan medical Inc., Hyogo, Japan))で角膜内皮像を観察し、グレーディングを行う。点眼試験開始後4週間おきに、接触式角膜内皮スペキュラーを用いてマウスの角膜内皮像を観察し、AKP−001点眼液の有用性を評価する。
(期待される結果)
FECDモデルマウスにおける接触式角膜内皮スペキュラーにより観察される角膜内皮細胞密度の減少が、コントロールと比べてAKP−001点眼液を投与した個体では抑制されることが期待される。また、コントロールと比べてAKP−001点眼液を投与した個体では、guttaeの面積の割合が減少することが期待される。
(実施例11:診断および治療例)
フックス角膜内皮ジストロフィおよび類縁の角膜内皮疾患と診断された際に(具体例としては、1)細隙灯顕微鏡検査によるグッテー形成、デスメ膜肥厚、角膜上皮浮腫、角膜実質浮腫の観察、2)スペキュラマイクロスコープによるグッテー像、角膜内皮障害像の観察、3)ペンタカム、OCT、超音波角膜厚測定装置などによる角膜浮腫の観察、4)遺伝子診断により高リスクと判断された場合)使用する。本発明の組成物を、点眼薬、前房内注射、徐放剤を用いた投与、硝子体内注射、結膜下注射として用いて治療することができる。
有効成分以外の各成分としては、例えば、日本薬局方またはその等価物に適合した、市販のものを利用することができる。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本願は日本国特許出願特願2017−144500(2017年7月26日出願)に対して優先権主張を行うものであり、それらの内容全体が本明細書において参照として援用される。
p38 MAPキナーゼインヒビターを含む、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルに起因する角膜内皮障害の治療または予防のための医薬が提供され、特に、フックス角膜内皮ジストロフィの角膜内皮障害を治療または予防するための医薬が提供された。このような技術に基づく製剤等に関連する技術に関与する産業(製薬等)において利用可能な技術が提供される。

Claims (12)

  1. p38 MAPキナーゼインヒビターを含む、角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患の治療または予防のための組成物であって、該p38 MAPキナーゼインヒビターは、アンテドラッグ型p38 MAPキナーゼインヒビターを含む、組成物。
  2. p38 MAPキナーゼインヒビターを含む、角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患の治療または予防のための組成物であって、該p38 MAPキナーゼインヒビターは、眼アンテドラッグ型p38 MAPキナーゼインヒビターを含む、組成物。
  3. p38 MAPキナーゼインヒビターを含む、角膜内皮細胞におけるトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)シグナルに起因する角膜内皮の症状、障害または疾患の治療または予防のための組成物であって、該p38 MAPキナーゼインヒビターは、以下の式(1)もしくは式(2)で示される化合物、またはその薬学的に許容され得る塩、あるいはそれらの溶媒和物を含み、
    該式(1)の化合物は、


    (式中、
    は水素原子、低級アルキル基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、フェニル低級アルキルアミノ基、アシルアミノ基、ハロゲン原子、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基又は低級アルキルスルフィニル基を表し、
    は未置換のアリールもしくはヘテロアリール基、又はハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルキル基、低級アルキレンジオキシ基及びベンジルオキシ基から選ばれる1〜3個の置換基によって置換されたアリールもしくはヘテロアリール基を表し、
    は水素原子又は低級アルキル基を表し、
    は置換もしくは未置換のフェニル基又は置換もしくは未置換の複素環式基を表し、
    Yは−(CH−、−CO−、−CH(CH)−、−O−、−NH−、


    を表し、ここで、nは0〜3の整数を表す)で示され、
    該式(2)の化合物は、


    (式中、
    及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、フェニル低級アルキルアミノ基、アシルアミノ基、低級アルキルチオ基又は低級アルキルスルフィニル基を表し、
    はナフチル基、場合により低級アルキル基で置換されていてもよいヘテロアリール基又は下記式(A)


    の基を表し、ここで、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルコキシ基、ヒドロキシル基、低級アルカノイル基、低級ハロアルカノイル基又はフェニル基を表すか、或いはXとXは一緒になって低級アルキレンジオキシ基を表し、
    は水素原子又は低級アルキル基を表し、
    は場合によりハロゲン原子、低級アルキル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、ヒドロキシル基、低級アルカノイル基、低級ハロアルカノイル基、低級アルキルチオカルボニル基、低級ハロアルキルチオカルボニル基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基及びニトロ基から選ばれる1〜3個の置換基によって置換されていてもよい、フェニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基又はイソオキサゾリル基を表し、
    Yは−(CH−、−CO−、−CH(CH)−、−C(CH−、−O−、−NH−又は


    を表し、ここで、nは1〜3の整数を表す、
    ただし、R及びRの両方が水素原子を表しそしてRが式(A)の基を表し且つX、X及びXの2つが水素原子を表す場合、X、X及びXの残りの1つは水素原子及びハロゲン原子以外の基を表す)で示される、組成物。
  4. 前記症状、障害または疾患は、フックス角膜内皮ジストロフィ、角膜移植後障害、角膜内皮炎、外傷、眼科手術、眼科レーザー手術後の障害、加齢、後部多形性角膜ジストロフィ(PPD)、先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィ(CHED)、特発性角膜内皮障害、およびサイトメガロウイルス角膜内皮炎からなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
  5. 前記症状、障害または疾患は、フックス角膜内皮ジストロフィにおけるものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
  6. 前記症状、障害または疾患は、角膜内皮細胞における小胞体(ER)関連ストレスに起因するものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
  7. 前記角膜内皮の症状、障害または疾患は、フックス角膜内皮ジストロフィにおける角膜内皮障害、角膜内皮密度低下、グッテーの形成、デスメ膜の肥厚、角膜厚の肥厚、混濁、角膜上皮障害、角膜実質混濁、羞明、霧視、視力障害、眼痛、流涙、充血、疼痛、水疱性角膜症、眼の不快感、コントラスト低下、グレア、角膜実質の浮腫、角膜上皮びらん、および血管新生のうち小胞体(ER)ストレスに関連する症状、障害または疾患である、請求1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
  8. 前記p38 MAPキナーゼインヒビターは、約0.01μM〜約10μMの濃度で前記組成物中に存在する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
  9. 前記p38 MAPキナーゼインヒビターは、以下:


    (式中、
    は、NまたはCHであり;
    は、NH、N−CHまたはOであり;
    は、F、ClまたはCHであって、o−、m−、またはp−の位置のいずれかにあり、
    は、−CHCHCH、−NHCOCH、−NHCOCHCH、または


    であり;
    は、それぞれ独立に、H、F、ClまたはCHであって、o−、m−、またはp−の位置のいずれかにあり、n=1または2である)
    の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容され得る塩、またはそれらの溶媒和物である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
  10. 前記p38 MAPキナーゼインヒビターは、5−[(2−クロロ−6−フルオロフェニル)アセチルアミノ]−3−(4−フルオロフェニル)−4−(4−ピリミジニル)イソオキサゾール(AKP−001)である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
  11. 前記AKP−001は、約0.03μM〜約3μMの濃度で前記組成物中に存在する、請求項10に記載の組成物。
  12. 前記組成物が点眼剤であり、前記AKP−001が、約0.03mM〜約3mMで該点眼剤中に存在する、請求項10に記載の組成物。
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