JPWO2018230535A1 - 骨格筋の損傷修復促進剤 - Google Patents

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Abstract

本発明は、(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、(2)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、(3)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、および(4)ヒトオステオポンチンのフラグメントであって、C末端のアミノ酸配列が配列番号1,2または3に示されるアミノ酸配列であるペプチド、から選択される少なくとも一種のペプチドまたはその塩を有効成分として含有する骨格筋の損傷修復促進剤を提供する。

Description

本発明は、骨格筋の損傷修復促進剤に関するものである。
骨格筋は心筋と同様の横紋筋であるが、心筋と異なり内部に筋衛星細胞と呼ばれる前駆細胞が多数存在している。そのため、筋損傷後に筋衛星細胞による組織の修復・再生が行われ、そのほとんどが機能不全なく治癒する。筋線維の断裂が起こると、筋線維の基底膜上にプールされている筋衛星細胞が活性化し、筋損傷部位での増殖および筋芽細胞への分化が起こる。筋芽細胞は互いに融合し、多核の細胞(筋管細胞)となる。損傷した筋線維の間を埋めるようにさらに融合し、筋線維の連続性を得、約1か月程度で成熟した筋線維となる。
骨格筋は、筋衛星細胞が存在するので修復力の高い組織といえるが、加齢に伴い筋衛星細胞の数および質が低下することが知られており、昨今の超高齢化社会においては、筋機能低下は決して稀な病態とは言えない。また、鰓弓由来筋は筋衛星細胞が少ないことが報告されており、頭頚部領域の手術においては、術後の筋機能低下が問題となることも多い。
近年、組織再生に関しては、サイトカインや血管新生因子を用いた新たな治療法の研究が進められている。しかし、従来から研究・治療に用いられているVEGF(vascular endothelial growth factor)、HGF(hepatocyte growth factor)、bFGF(basic fibroblast growth factor)などの増殖因子は、数百個のアミノ酸からなる抽出タンパク質や組み換えタンパク質であり、感染症や副作用の点で想像し得ない問題をはらんでいる。一方、アミノ酸が10個前後結合したペプチドは、種々の増殖因子と比較して抗原性の点から副作用が起こりにくく、安全性が高く、代謝が容易であり、ペプチドのデザインが簡単で高効率な合成法や検定法が確立されているといった利点を有している。
本発明者らは、細胞外基質の一種であるオステオポンチン(OPN)内に存在する7アミノ酸(SVVYGLR:配列番号1)からなるペプチド(以下「SVペプチド」と称する)が、血管新生作用を有していることを明らかにし、その血管新生作用は、血管新生因子の中心的役割を担うVEGFと同等に高いものであることを見出している(特許文献1、非特許文献1、非特許文献2)。また、本発明者らは、SVペプチドが間葉系細胞の増殖促進作用を有すること(特許文献2)、心機能改善能を有すること(特許文献3)、繊維芽細胞のIII型コラーゲン産生を促進すること(特許文献4)を見出している。しかし、SVペプチドが損傷骨格筋の修復を促進することは知られていない。
国際公開WO2003/030925号 国際公開WO2008/026634号 国際公開WO2012/172887号 国際公開WO2016/084935号
Hamada Y, Norihara Y, Okazaki M, Fujitani W, Matsumoto T, Matsuura N and Takahashi J. Angiogenic activity of osteopontin-derived peptide SVVYGLR. Biochem Biophys Res Commun 2003; 310: 153-157. Hamada Y, Yuki K, Okazaki M, Fujitani W, Matsumoto T, Hashida K, Kobashi M, Matsuura N and Takahashi J. Osteopontin-derived peptide SVVYGLR induces angiogenesis in vivo. Dent Mater J 2004; 23: 650-655.
本発明は、骨格筋の損傷修復促進剤を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の各発明を包含する。
[1]以下の(1)〜(4)から選択される少なくとも一種のペプチドまたはその塩を有効成分として含有する骨格筋の損傷修復促進剤:
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(2)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(3)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、および
(4)ヒトオステオポンチンのフラグメントであって、C末端のアミノ酸配列が配列番号1,2または3に示されるアミノ酸配列であるペプチド。
[2]筋衛星細胞の活性化および/または分化を促進する作用を有する前記[1]に記載の修復促進剤。
[3]骨格筋の損傷が、筋断裂、筋委縮または筋変性である前記[1]または[2]に記載の修復促進剤。
[4]骨格筋の損傷部位における瘢痕形成を抑制する作用を有する前記[1]〜[3]のいずれかに記載の修復促進剤。
[5]以下の(1)〜(4)から選択される少なくとも一種のペプチドまたはその塩を有効成分として含有する骨格筋の損傷部位における筋衛星細胞活性化促進剤:
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(2)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(3)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、および
(4)ヒトオステオポンチンのフラグメントであって、C末端のアミノ酸配列が配列番号1,2または3に示されるアミノ酸配列であるペプチド。
[6]以下の(1)〜(4)から選択される少なくとも一種のペプチドまたはその塩を有効成分として含有する骨格筋の損傷部位における筋衛星細胞分化促進剤:
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(2)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(3)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、および
(4)ヒトオステオポンチンのフラグメントであって、C末端のアミノ酸配列が配列番号1,2または3に示されるアミノ酸配列であるペプチド。
[7]以下の(1)〜(4)から選択される少なくとも一種のペプチドまたはその塩を有効成分として含有する骨格筋の損傷部位における瘢痕形成抑制剤:
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(2)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(3)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、および
(4)ヒトオステオポンチンのフラグメントであって、C末端のアミノ酸配列が配列番号1,2または3に示されるアミノ酸配列であるペプチド。
本発明によれば、骨格筋の損傷修復促進剤を提供することができる。本発明の骨格筋の損傷修復促進剤は、骨格筋の損傷部位において筋衛星細胞の活性化および/または分化を促進できるので、外科手術や外傷による筋損傷に対して自然治癒に要する期間より短期間で損傷した骨格筋を修復することができる。
筋損傷モデルラットの咬筋の切断位置を示す図である。 SVペプチドを投与した筋損傷モデルラット(SV群)とPBSを投与した筋損傷モデルラット(PBS群)の摂食行動および体重変化を測定した結果を示す図であり、(A)は摂食効率(咀嚼時間あたりの摂食量)、(B)は体重変化率である。 両側咬筋を切断し、左側咬筋にSVペプチド、右側咬筋にPBSを投与した筋損傷モデルラットを用いて、両側咬筋の筋電図を取得し、術前および術後1週間目における右咬みまたは左咬みの変化を検討した結果を示す図である。 両側咬筋を切断し、左側咬筋にSVペプチド、右側咬筋に何も投与しない筋損傷モデルラットから、術後1週間目に両側の咬筋を採取し、組織切片のHE染色標本を作製して、SV側および非投与(コントロール)側の血管数をカウントした結果を示す図である。 両側咬筋を切断し、左側咬筋にSVペプチド、右側咬筋に何も投与しない筋損傷モデルラットから、術後1週間目に両側の咬筋を採取し、組織切片のHE染色標本を作製して、中心核を有する筋線維数をカウントした結果を示す図であり、(A)はHE染色像、(B)はSV側および非投与(コントロール)側の中心核を有する筋線維数を示すグラフである。 両側咬筋を切断し、左側咬筋にSVペプチド、右側咬筋に何も投与しない筋損傷モデルラットから、術後1週間目に両側の咬筋を採取し、組織切片のシリウスレッド染色標本を作製して、切断面に形成された肉芽組織の面積を計測した結果を示す図であり、(A)はSVペプチド側のシリウスレッド染色像、(B)はコントロール側のシリウスレッド染色像、(C)はSV側および非投与(コントロール)側の肉芽組織の面積を示すグラフである。 両側咬筋を切断し、左側咬筋にSVペプチド、右側咬筋に何も投与しない筋損傷モデルラットから、術後1週間目に両側の咬筋を採取し、組織切片のMyogenin免疫染色標本を作製し、Myogenin陽性核数をカウントした結果を示す図であり、(A)はMyogeninの免疫染色像、(B)はSV側および非投与(コントロール)側のMyogenin陽性核数を示すグラフである。 両側咬筋切断後左側咬筋にSVペプチド、右側咬筋には何も投与していないラット(SV群)および両側咬筋切断後左側咬筋にPBS、右側咬筋には何も投与していないラット(PBS群)の術後1、2、4、6および8週間目の摂食効率(咀嚼時間あたりの摂食量)を示す図である。 両側咬筋切断後左側咬筋にSVペプチド、右側咬筋には何も投与していないラット(SV群)および両側咬筋切断後左側咬筋にPBS、右側咬筋には何も投与していないラット(PBS群)の術後1、2、4、6および8週間目における左側咬筋の筋電図を取得し、バースト積分値の経時変化を示す図である。 両側咬筋切断後左側咬筋にSVペプチド、右側咬筋には何も投与していないラット(SV群)および両側咬筋切断後左側咬筋にPBS、右側咬筋には何も投与していないラット(PBS群)の術後1および8週間目における両側咬筋の筋電図を取得し、右咬みまたは左咬みの変化を検討した結果を示す図である。 両側咬筋切断後左側咬筋にSVペプチド、右側咬筋には何も投与していないラット(SV群)および両側咬筋切断後左側咬筋にPBS、右側咬筋には何も投与していないラット(PBS群)の術後8週間目におけるCT画像を取得し、咬筋切断部を含む咬合平面の高さでの筋横断面積(CSA)を示す図である。 両側咬筋切断後左側咬筋にSVペプチド、右側咬筋には何も投与していないラット(SV群)および両側咬筋切断後左側咬筋にPBS、右側咬筋には何も投与していないラット(PBS群)の術後8週間目におけるCT画像を取得し、%CSA(関心領域における筋CT値を有する面積割合)を示す図であり、(A)がSV群、(B)がPBS群の結果である。 両側咬筋切断後左側咬筋にSVペプチド、右側咬筋には何も投与していないラット(SV群)および両側咬筋切断後左側咬筋にPBS、右側咬筋には何も投与していないラット(PBS群)から、術後8週間目に両側の咬筋を採取し、組織切片のシリウスレッド染色標本を作製して、筋損傷部位における痕跡形成量を評価した結果を示す図であり、(A)はSV群およびPBS群のシリウスレッド染色像、(B)は切断面(図中の破線)の痕跡形成量を、画像解析ソフトを用いて計測した結果である。 両側咬筋切断後左側咬筋にSVペプチド、右側咬筋には何も投与していないラット(SV群)および両側咬筋切断後左側咬筋にPBS、右側咬筋には何も投与していないラット(PBS群)から、術後8週間目に両側の咬筋を採取し、組織切片のシリウスレッド染色標本を作製して、筋線維径を計測した結果を示す図である。 両側咬筋切断後左側咬筋にSVペプチド、右側咬筋には何も投与していないラット(SV群)の筋線維径を計測するためのシリウスレッド染色標本像であり、(A)はSVペプチド投与側(SV側)、(B)は非投与(コントロール)側のシリウスレッド染色標本像である。 ヒト筋衛生細胞およびヒト骨格筋筋芽細胞の細胞増殖能に対するSVペプチドの効果を検討した結果を示す図であり、(A)はヒト筋衛生細胞、(B)はヒト骨格筋筋芽細胞の結果である。 ヒト筋衛生細胞およびヒト骨格筋筋芽細胞の細胞遊走能に対するSVペプチドの効果を検討した結果を示す図であり、(A)はヒト筋衛生細胞、(B)はヒト骨格筋筋芽細胞の結果である。 ヒト骨格筋筋芽細胞の細胞移動能に対するSVペプチドの効果を検討した結果を示す図である。 ヒト骨格筋筋芽細胞をSVペプチドまたは対照物質を含む培地で48時間培養後、免疫蛍光染色によりMyogeninの発現を観察し、Myogenin陽性細胞率を算出した結果を示す図である。 ヒト骨格筋筋芽細胞をSVペプチドまたは対照物質を含む培地で72時間培養後、免疫蛍光染色によりMyogeninの発現を観察し、Myogenin陽性細胞率を算出した結果を示す図である。 両側咬筋切断後左側咬筋にSVペプチド、右側咬筋には何も投与していないラット(SV群)および両側咬筋切断後左側咬筋にPBS、右側咬筋には何も投与していないラット(PBS群)から、術後1週間目に両側の咬筋を採取し、組織切片のHE染色標本を作製して、筋損傷部位における肉芽組織面積を測定し、肉芽組織形成面積比を算出した結果を示す図である。 両側咬筋切断後左側咬筋にSVペプチド、右側咬筋には何も投与していないラット(SV群)および両側咬筋切断後左側咬筋にPBS、右側咬筋には何も投与していないラット(PBS群)から、術後1週間目に両側の咬筋を採取し、組織切片のMyoD免疫染色標本を作製して、MyoD陽性核数を計測し、MyoD陽性比を算出した結果を示す図である。 両側咬筋切断後左側咬筋にSVペプチド、右側咬筋には何も投与していないラット(SV群)および両側咬筋切断後左側咬筋にPBS、右側咬筋には何も投与していないラット(PBS群)から、術後1週間目に両側の咬筋を採取し、組織切片のMyogenin免疫染色標本を作製して、Myogenin陽性核数を計測し、Myogenin陽性比を算出した結果を示す図である。
本発明は、以下の(1)〜(4)から選択される少なくとも一種のペプチドまたはその塩を有効成分として含有する骨格筋の損傷修復促進剤を提供する。
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチド
(2)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるペプチド
(3)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるペプチド
(4)ヒトオステオポンチンのフラグメントであって、C末端のアミノ酸配列が配列番号1,2または3に示されるアミノ酸配列であるペプチド
配列番号1〜3で示されるアミノ酸配列は以下のとおりである。
配列番号1:SVVYGLR
配列番号2:SVVYGL
配列番号3:VVYGLR
本発明者らは、SVVYGLR(配列番号1)の血管新生作用が、SVVYGLR(配列番号1)のC末端のRが欠失したペプチド(配列番号2)およびN末端のSが欠失したペプチド(配列番号3)でも維持されることを確認している。また、本発明者らは、SVVYGLR(配列番号1)の線維芽細胞に対するIII型コラーゲン産生促進作用と同等の作用をC末端にSVVYGLR(配列番号1)を有するオステオポンチンのフラグメントが有することを確認している(特許文献4参照)。それゆえ、上記(1)〜(4)のペプチドは、いずれも骨格筋の損傷修復促進作用を有することが合理的に類推できる。
ヒトオステオポンチンのアミノ酸配列としては、例えば配列番号4で示されるアミノ酸配列が挙げられる。ヒトオステオポンチンにはSVVYGLR(配列番号1)が含まれ、トロンビンは、SVVYGLR(配列番号1)の直後でヒトオステオポンチンを切断することが知られている。例えば配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるヒトオステオポンチンをトロンビンで切断すると、配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるフラグメント、すなわち、ヒトオステオポンチンのフラグメントであって、C末端のアミノ酸配列が配列番号1に示されるアミノ酸配列であるペプチドが生成する。
ヒトオステオポンチンのアミノ酸配列としては、配列番号4で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列、配列番号4で表されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列などが挙げられる。「1〜数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ペプチド作製法により欠失、置換もしくは付加できる程度の数(好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、さらに好ましくは5個、4個、3個、2個、1個)のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されることを意味する。「少なくとも80%同一であるアミノ酸配列」としては、少なくとも85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列が挙げられる。なお、ヒトオステオポンチンと同等の構造および機能を有するタンパク質はヒトオステオポンチンと称することができ、そのアミノ酸配列はヒトオステオポンチンのアミノ酸配列である。
ヒトオステオポンチンのフラグメントの長さは特に限定されないが、総アミノ酸残基数が約170以下であることが好ましく、約150以下であることがより好ましく、約100以下であることがさらに好ましい。さらに、取り扱いの簡便さ、製造効率、抗原性等の副作用の観点から、総アミノ酸残基数が約50以下であることが好ましく、約30残基以下であることがより好ましく、約20残基以下であることがさらに好ましく、約10残基以下であることが特に好ましい。
本発明の骨格筋の損傷修復促進剤の有効成分となるペプチドを構成するアミノ酸は、側鎖が任意の置換基で修飾されたものでもよい。置換基は特に限定されないが、例えば、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基などが挙げられる。好ましくは、トリプトファンまたはフェニルアラニンのベンゼン環が置換基で修飾されていることである。
本発明の骨格筋の損傷修復促進剤の有効成分となるペプチドは、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO)、アミド(−CONH)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。エステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが挙げられる。アミド体としては、アミド、C1−6アルキル基の1つまたは2つで置換されたアミド、フェニル基で置換されたC1−6のアルキル基の1つまたは2つで置換されたアミド、アミド基の窒素原子を含んで5から7員環のアザシクロアルカンを形成するアミド等が挙げられる。本発明のペプチドがC末端以外にカルボキシル基またはカルボキシレートを有している場合、それらの基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のペプチドに含まれる。
さらに、本発明の骨格筋の損傷修復促進剤の有効成分となるペプチドには、N末端のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているものも含まれる。
本発明の骨格筋の損傷修復促進剤の有効成分となるペプチドは塩を形成していてもよく、その塩としては、薬学的に許容される塩が好ましい。薬学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、硫酸、燐酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、リンゴ酸、クエン酸、オレイン酸、パルミチン酸などの酸との塩;ナトリウム、カリウム、カルシウムなどのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属との塩、またはアルミニウムの水酸化物または炭酸塩との塩;トリエチルアミン、ベンジルアミン、ジエタノールアミン、t−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、アルギニンなどとの塩などが挙げられる。
本発明の骨格筋の損傷修復促進剤の有効成分となるペプチドまたはその塩は、公知の一般的なペプチド合成のプロトコールに従って、固相合成法(Fmoc法、Boc法)または液相合成法により製造することができる。また、目的のペプチドをコードするDNAを含有する発現ベクターを導入した形質転換体を用いて製造することができる。また、インビトロ転写・翻訳系を用いる方法により製造することができる。
本発明の骨格筋の損傷修復促進剤により修復が促進される骨格筋の損傷としては、例えば、筋断裂、筋委縮、筋変性等が挙げられる。具体的には、外科手術に伴う筋断裂、骨折・打撲・肉離れ等の外傷に伴う筋断裂、長期閉口状態を要する頭頸部手術後の運動単位減少による廃用性筋萎縮、がん悪液質に伴う筋萎縮、サルコペニアおよび/または加齢に伴う筋萎縮、筋ジストロフィー症等の遺伝性神経筋疾患における進行性筋萎縮、広範囲筋切除を伴う外科手術後の線維化・瘢痕拘縮、口蓋裂等の先天性筋形態異常に対する形成手術後の運動機能不全を伴う瘢痕拘縮、サルコペニアおよび/または加齢に伴う再生能力低下による筋変性などが挙げられる。
本発明の骨格筋の損傷修復促進剤は、長期の安静を要することで生じる廃用性筋萎縮に対して筋再生および修復を促進し、運動機能の早期回復を図ることができるので、非常に有用である。また、筋の形態や機能に異常を有する先天性疾患(口蓋裂等)の機能改善、特に従来の手術・治療のみで筋機能回復が十分に得られない症例の機能改善に有効であると考えられる。また、後天性難治性神経筋疾患(筋ジストロフィー症等)に対しても機能改善、病状改善に有効と考えられる。さらに、加齢やサルコペニアによる筋萎縮および変性の進行を抑止するとともに、ADL(Activities of Daily Living)低下による認知機能異常を予防する観点からも効果が期待される。
本発明の骨格筋の損傷修復促進剤は、骨格筋の損傷部位における瘢痕形成を抑制する作用を有することが確認されている。それゆえ、本発明の骨格筋の損傷修復促進剤は、「骨格筋の損傷部位における瘢痕形成抑制剤」と称することができる。瘢痕形成が抑制される骨格筋の損傷としては、上記例示した筋断裂または筋変性が挙げられる。
骨格筋は多核の筋線維(筋細胞)より構成されており、その筋線維の基底膜上に多数の筋衛星細胞が存在している。筋衛星細胞は通常静止期の状態にあり、筋損傷等で発生するシグナルにより活性化状態となり、細胞増殖および筋芽細胞への分化が起こる。元々、筋衛星細胞は多分化能を有するが、活性化しMyoD遺伝子を発現することで、筋芽細胞への分化が決定付けられる。また同時に下流遺伝子であるMyogenin遺伝子の発現が誘導され、そのMyogenin遺伝子は筋芽細胞の筋管細胞への分化・維持に関わり、成熟した筋細胞が形成される。本発明の骨格筋の損傷修復促進剤は、骨格筋の損傷部位における筋衛星細胞の活性化および/または分化を促進する作用を有するので、「骨格筋の損傷部位における筋衛星細胞活性化促進剤」または「骨格筋の損傷部位における筋衛星細胞分化促進剤」と称することができる。
本発明の骨格筋の損傷修復促進剤は、骨格筋の損傷部位を修復するための医薬として実施することができる。医薬として実施する場合、本発明の骨格筋の損傷修復促進剤に、薬学的に許容される担体または添加剤を適宜配合して製剤化することができる。具体的には錠剤、被覆錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤等の経口剤;注射剤、輸液、坐剤、軟膏、パッチ剤等の非経口剤とすることができる。担体または添加剤の配合割合については、医薬品分野において通常採用されている範囲に基づいて適宜設定すればよい。配合できる担体または添加剤は特に制限されないが、例えば、水、生理食塩水、その他の水性溶媒、水性または油性基剤等の各種担体;賦形剤、結合剤、pH調整剤、崩壊剤、吸収促進剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、香料等の各種添加剤が挙げられる。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。
本発明の骨格筋の損傷修復促進剤は、損傷した骨格筋の周囲の筋肉に直接投与するための注射剤として実施してもよく、損傷した骨格筋の周囲の筋肉に塗布または貼付するための軟膏またはパッチ剤として実施してもよい。また、本発明の骨格筋の損傷修復促進剤は、有効成分であるペプチドをキャリアに結合した形態としてもよい。キャリアとしては、特に限定されるものではなく、人工臓器等に用いられる樹脂、タンパク質等の生体高分子などが挙げられる。なかでも、有効成分であるペプチドを含有する生体吸収性ゲルの形態で実施することが好ましい。
生体吸収性ゲルとしては、例えば公知の生体吸収性ハイドロゲルを好適に用いることができる。具体的には、例えば株式会社メドジェル製の徐放用ハイドロゲル「メドジェル(商品名)」などが挙げられる。この製品は、ゼラチンを架橋して水不溶化させたもので、ゼラチンとの静電的相互作用力などを中心とする分子間相互作用によりペプチドを保持することができる。このようなゼラチンハイドロゲルに有効成分であるペプチドを保持させて生体に適用すると、細胞から分泌されるコラゲナーゼなどの分解酵素によってゼラチンハイドロゲルが分解される。分解とともにペプチドが徐放され、分解物は生体に吸収される。生体吸収性ゲルの形状は特に限定されず、例えば、シート状、ディスク状、チューブ状、粒子状等の種々の形状で実施することができる。生体吸収性ゲルは、骨格筋の損傷部位に塗布または貼付して使用することができる。
本発明の骨格筋の損傷修復促進剤の有効成分であるペプチドまたはその塩は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや他の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
投与量は、損傷部位、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、成人の損傷した骨格筋の周囲の筋肉内に注射する場合、有効成分の1日当たりの投与量は、約0.00001〜100mgであってもよく、約0.00002〜90mgであってもよく、約0.00005〜80mgであってもよく、約0.0001〜50mgであってもよく、約0.01〜30mgであってもよく、約0.1〜20mgであってもよく、約0.1〜10mgであってもよい。
本発明は、さらに以下の発明を包含する。
(a1)哺乳動物に対して、上記(1)〜(4)から選択される少なくとも一種のペプチドまたはその塩を投与することを特徴とする骨格筋の損傷修復促進方法。
(a2)哺乳動物に対して、上記(1)〜(4)から選択される少なくとも一種のペプチドまたはその塩を投与することを特徴とする骨格筋の損傷部位における筋衛星細胞活性化促進方法。
(a3)哺乳動物に対して、上記(1)〜(4)から選択される少なくとも一種のペプチドまたはその塩を投与することを特徴とする骨格筋の損傷部位における筋衛星細胞分化促進方法。
(a4)哺乳動物に対して、上記(1)〜(4)から選択される少なくとも一種のペプチドまたはその塩を投与することを特徴とする骨格筋の損傷部位における瘢痕形成抑制方法。
(b1)骨格筋の損傷修復促進に使用するための、上記(1)〜(4)から選択される少なくとも一種のペプチドまたはその塩。
(b2)骨格筋の損傷部位における筋衛星細胞活性化促進に使用するための、上記(1)〜(4)から選択される少なくとも一種のペプチドまたはその塩。
(b3)骨格筋の損傷部位における筋衛星細胞分化促進に使用するための、上記(1)〜(4)から選択される少なくとも一種のペプチドまたはその塩。
(b4)骨格筋の損傷部位における瘢痕形成抑制に使用するための、上記(1)〜(4)から選択される少なくとも一種のペプチドまたはその塩。
(c1)骨格筋の損傷修復促進剤を製造するための、上記(1)〜(4)から選択される少なくとも一種のペプチドまたはその塩の使用。
(c2)骨格筋の損傷部位における筋衛星細胞活性化促進剤を製造するための、上記(1)〜(4)から選択される少なくとも一種のペプチドまたはその塩の使用。
(c3)骨格筋の損傷部位における筋衛星細胞分化促進剤を製造するための、上記(1)〜(4)から選択される少なくとも一種のペプチドまたはその塩の使用。
(c4)骨格筋の損傷部位における瘢痕形成抑制剤を製造するための、上記(1)〜(4)から選択される少なくとも一種のペプチドまたはその塩の使用。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1:筋損傷モデルラットを用いた修復促進効果の検討(1)〕
1−1 使用ペプチド
被験ペプチドとして、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるペプチド(以下「SVペプチド」と記す)を用いた。SVペプチドは、多種品目固相法自動ペプチド合成装置(PSSM-8; 島津製作所)を用いてFmoc法により合成した。
1−2 筋損傷モデルの作製
Jcl:SD系ラット(10週齢)の両側咬筋を切断した。切断直後にSVペプチド(20ng/ml)1mlを、切断面周囲の複数箇所に筋肉内投与した。切断は外眼角から下顎角を結んだ直線上で、皮膚側の筋膜から深部は下顎枝外側面骨膜に至るまで行い、切断面は電気メスにて凝固止血を行った(図1参照)。
1−3 行動生理学的実験
(1)実験方法
術前、術後1週間目および術後2週間目に、ラットの摂食行動および体重を測定した。具体的には、ラットを縦30cm×横30cm×高さ30cmの透明プラスチックケージに収容し、ラットの活動時間である18時から22時の行動をビデオカメラで記録した。摂食量および咀嚼時間を測定し、咀嚼時間当たりの摂食量(摂食効率)を算出した。この実験には、両側咬筋切断後、両側咬筋にSVペプチドを投与した筋損傷モデル(SV群)と、両側咬筋にPBSを投与した筋損傷モデル(PBS群)を用いた。
(2)結果
結果を図2に示した。(A)は摂食効率、(B)は体重変化率である。(A)および(B)とも術前の測定値を1として表示した。SV群の摂食効率は、術後1週間目には低下したが、2週間目には術前と同等程度に回復した。それに対してPBS群の摂食効率は、術後1週間目に著しく低下し、2週間目には回復傾向が認められたが、SV群より低値であった。体重の変化率については、SV群とPBS群の間に差がなく、両者の摂食量は同程度と考えられた。
1−4 電気生理学的実験
(1)実験方法
この実験には、両側咬筋切断後、左側咬筋にSVペプチド、右側咬筋にPBSを投与したラットを用いた。両側咬筋内に双極針電極を留置し、頭頂部頭蓋骨に固定したコネクターより筋電位信号を観測した。筋電図データは術前および術後1週間目に取得した。摂食時の咬筋筋電図に関しては、咀嚼運動時の裁断相および臼磨相で、異なる筋電図波形を示し、裁断相は電位変化の少ない波形で、臼磨相は電位変化が大きな波形となる。
(2)結果
筋電図データより、右側咬筋(コントロール側)の筋電位を縦軸、左側咬筋(SVペプチド側)の筋電位を横軸に、0.02秒ごとの電位をグラフ上にプロットし、リサージュパターングラフを作成した(図3)。臼磨相において、下顎は片側に偏ったグラインド運動を行うことが知られており、筋電図においても同様に開閉口運動時に片側に振幅の高い波形がみられる。リサージュパターンにて傾き1以上のものを右咬み、1より小さいものを左咬みとし、その割合を計測した結果、術前には右咬み傾向であったが、術後に左咬みの割合が多くなっていた。また左咬み時の左側咬筋の筋電位平均値は術後には低下するものの、右側咬筋より低下率は少なかった。
1−5 組織染色
(1)実験方法
この実験には、両側咬筋切断後、左側咬筋にSVペプチドを投与し、右側咬筋(コントロール)には何も投与しないラットを用いた。術後1週間目にラットを安楽死させ、両側の咬筋を採取した。定法に従い組織切片を作製し、各種染色を施した。HE染色標本にて血管数および修復筋線維である中心核をもった幼若な筋線維数をカウントした。咬筋を冠状断面にて上下中央で分割し、上下2スライスにてそれぞれ5視野でカウントを行った。シリウスレッド染色標本(I型およびIII型コラーゲンを染色)にて、切断面に形成された肉芽組織の領域を、画像解析ソフトを用いて計測した。さらに、筋管細胞のマーカーであるMyogeninの免疫染色を行い、画像解析ソフトを用いてMyogenin陽性細胞をカウントした。
(2)結果
(2-1)血管数
1視野あたりの血管数の結果を図4に示した。血管数は、SVペプチド側がコントロール側より有意に多かった(P<0.05、t検定)。
(2-2)中心核を有する筋線維数
結果を図5に示した。(A)はHE染色像であり、矢印は中心核を有する幼若筋線維を示す。(B)は各群の中心核を有する筋線維数を示すグラフである。中心核を持つ筋線維は、SVペプチド側がコントロール側より有意に多かった(P<0.05、t検定)。
(2-3)切断面に形成された肉芽組織の面積
結果を図6に示した。(A)はSVペプチド側のシリウスレッド染色像、(B)はコントロール側のシリウスレッド染色像、(C)は各群の肉芽組織の面積を示すグラフである。SVペプチド側はコントロール側より肉芽組織の面積が有意に小さかった(P<0.05、t検定)。
(2-4)Myogenin陽性核数
結果を図7に示した。(A)はMyogeninの免疫染色像であり、矢印は濃染された核を持つ筋線維(筋管細胞)を示す。(B)は各群の1視野あたりのMyogenin陽性核数を示すグラフである。Myogenin陽性核数は、SVペプチド側がコントロール側より有意に多かった(P<0.05、t検定)。
以上の結果より、骨格筋の損傷部位の周囲にSVペプチドを投与することにより、損傷部位の修復が顕著に促進されることが明らかになった。この修復促進は、SVペプチドが筋衛星細胞に作用して筋衛星細胞を活性化し、筋衛星細胞の分化が促進されることに起因すると考えられる。
〔実施例2:筋損傷モデルラットを用いた修復促進効果の検討(2)〕
2−1 使用ペプチド
実施例1と同じ合成装置を用いて合成したSVペプチドを使用した。
2−2 筋損傷モデルの作製
実施例1と同様に、Jcl:SD系ラット(10週齢)の両側咬筋を麻酔下で切断した。切断直後にSVペプチド(20ng/ml)1mlまたはPBS1mlを、切断面周囲の複数箇所に筋肉内投与した。切断は外眼角から下顎角を結んだ直線上で、皮膚側の筋膜から深部は下顎枝外側面骨膜に至るまで行い、切断面は電気メスにて凝固止血を行った(図1参照)。実施例2では、両側咬筋切断後左側咬筋にSVペプチド、右側咬筋には何も投与していないラットをSV群、両側咬筋切断後左側咬筋にPBS、右側咬筋には何も投与していないラットをPBS群として実験を行った。
2−3 行動生理学的実験
(1)実験方法
術後1、2、4、6および8週間目に、実施例1と同様に、ラットを縦30cm×横30cm×高さ30cmの透明プラスチックケージに収容し、ラットの活動時間である18時から22時の行動をビデオカメラで記録した。摂食量および咀嚼時間を測定し、咀嚼時間あたりの摂食量(摂食効率)を算出した。
(2)結果
結果を図8に示した。摂食効率は術後1週間目の測定値を1として表示した。PBS群では術後4週間目以降は摂食効率の大きな改善が見られなかったが、SV群では経時的に摂食効率が向上した。術後8週間目においてSV群がPBS群より有意に高値を示した。
2−4 電気生理学的実験
(1)実験方法
実施例1と同様に、両側咬筋内に双極針電極を留置し、頭頂部頭蓋骨に固定したコネクターより筋電位信号を観測した。筋電図データは術後1、2、4、6および8週間目に取得した。
(2)結果
筋活動量の指標としてSV群およびPBS群の左側(投与側)咬筋のバースト積分値を算出し、術後1週間目のバースト積分値を1としてその変化率を図9に示した。4、6および8週間目においてSV群はPBS群より有意に高値を示した。
筋電図データより、右側咬筋(コントロール側:切断のみ)の筋電位を縦軸、左側咬筋(SV側またはPBS側)の筋電位を横軸に、0.02秒ごとの電位をグラフ上にプロットしたリサージュパターングラフを作成し、図10に示した。リサージュパターンにて傾き1以上のものを右咬み、1より小さいものを左咬みとし、その割合を計測した結果、SV群は術後の時間経過に伴い左咬みの割合が多くなっていたが、PBS群ではそのような傾向は認められなかった。
2−5 CT画像解析
(1)実験方法
実験動物用マイクロCT(Rigaku、管電圧:90kV、管電流:160μA、ボクセルサイズ:118μm)を用いて術後8週間目に撮影を行い、得られたDICOMデータより、前鼻棘先端・両側下顎頭上縁を通る平面を基準平面としたMPR像を作製した。咬筋切断部を含む咬合平面の高さでの筋横断面積(CSA)、平均CT値、%CSA(関心領域における筋CT値を有する面積割合)を算出して比較検討した。
(2)結果
CSAの結果を図11に示した。SV群はPBS群と比較して、筋切断部を含む領域でのCSAは有意に高かった。
%CSAの結果を図12に示した。(A)がSV群の結果、(B)がPBS群の結果である。SV群では、SVを投与した左側(SV側)の%CSAが非投与の右側(コントロール側)と比較して有意に高かった。一方、PBS群では左側(PBS側)と右側(コントロール側)の間に差がなかった。
2−6 組織染色
(1)実験方法
術後8週間目にラットを安楽死させ、両側の咬筋を採取した。定法に従い、パラフィン包埋後、筋横断組織切片を作製し、HE染色およびシリウスレッド染色を施した。HE染色により筋損傷部位の再生筋線維の組織学的性状を評価し、シリウスレッド染色により組織の線維化量および筋線維径を計測し、群間で比較検討した。
(2)結果
HE染色標本の観察により、SVペプチドを投与していない筋損傷部位においても横紋構造を有する成熟した筋線維形成が確認された。
図13に筋損傷部位における痕跡形成量を評価した結果を示した。(A)はSV群およびPBS群のシリウスレッド染色像、(B)は切断面(図中の破線)に形成された瘢痕組織の領域を、画像解析ソフトを用いて計測した結果である。SV群のSVペプチド投与側の痕跡形成量は、PBS群のPBS投与側の痕跡形成量より顕著に少なかった。
図14に筋線維径を測定した結果を示し、図15にSV群のシリウスレッド染色の強拡大像を示した。(A)がSVペプチド投与側(SV側)、(B)が非投与側(コントロール側)である。図14、15から明らかなように、SV群のSV側の筋線維径はコントロール側より有意に太く、より成熟した筋線維となっていることがわかった。
以上の結果より、ラット咬筋に加えられた断裂損傷は、自然治癒によりある程度の組織再生修復が認められたが、SVペプチドを投与することで損傷部位の修復が顕著に促進され、摂食効率のより大きな増加がもたらされることが明らかになった。また、SVペプチドを投与することにより、損傷部位の瘢痕形成が抑制され、成熟した筋線維による再生修復が形態学的・組織学的に確認された。
〔実施例3:インビトロにおけるSVペプチドの細胞生物学的検討〕
3−1 使用ペプチド
SVペプチドおよびSVペプチドを構成するアミノ酸をランダムに配列して機能を失わせた非機能性SVペプチド(以下、「ランダムSV」と称する)を、実施例1と同じ合成装置を用いて合成し、使用した。ランダムSVのアミノ酸配列は、GYRVLSV(配列番号6)である。
3−2 細胞
ヒト筋衛生細胞(Human Skeletal Muscle Satellite Cells:HskMSC)を購入し(ScienCell Research Laboratories社)、使用した。培地には、同社製の推奨培地(5%FBS、Skeletal Muscle Cell Growth Supplementおよびpenicillin/streptomycin solutionを含有するSkeletal Muscle Cell Medium)を使用した。
ヒト骨格筋筋芽細胞(Human Skeletal Muscle Myoblasts:HSMM)を購入し(Lonza社)、使用した。培地には、同社製の推奨培地(SingleQuots Kitを添加したSkeletal Muscle Growth Media-2)を使用した。
3−3 細胞増殖能の検討
(1)実験方法
非処理ポリスチレン96穴細胞培養プレート(Falcon)の各ウェルにヒト筋衛生細胞およびヒト骨格筋筋芽細胞を各1.0×10個/mlで播種し、SVペプチド(20ng/ml、SV群)、ランダムSV(20ng/ml、ランダムSV群)またはPBS(PBS群)を培地に添加して37℃、5%CO気層下で培養した。0、12、24、48、72時間後の細胞増殖をPremix WST−1 Cell Proliferation Assay System(Takara Bio, Japan)を用いて測定した。
(2)結果
結果を図16に示した。(A)がヒト筋衛生細胞の結果、(B)がヒト骨格筋筋芽細胞の結果である。ヒト筋衛生細胞では、SVペプチドによる細胞増殖能の活性化は認められなかった。ヒト骨格筋筋芽細胞では、SVペプチド添加後24時間で細胞増殖能が有意に上昇し、その後プラトーに達した。12時間目以降、SV群はPBS群およびランダムSV群より細胞増殖能が有意に高かった。
3−4 細胞遊走能の検討
(1)実験方法
ポアサイズ8μmのポリカーボネートメンブレン(Chemotaxicell:クラボウ)を10μg/mlフィブロネクチン溶液に室温で30分間浸漬し、コーティングを行った。ケモアトラクタントとしてSVペプチド(20ng/ml、SV群)、ランダムSV(20ng/ml、ランダムSV群)またはPBS(PBS群)を添加した培地をチャンバーの下層に加えた。チャンバーの上層には0.1%BSA含有DMEMで2.0×10個/mlに調整したヒト筋衛生細胞およびヒト骨格筋筋芽細胞をそれぞれ播種した。チャンバーを37℃で12時間インキュベートした後、メンブレンの上面の細胞を綿棒で剥がし、メンブレンを10%中性緩衝ホルマリン溶液(和光純薬工業)で固定してヘマトキシリン染色し、メンブレンの下面へ遊走した細胞数を光学顕微鏡で計測した。
(2)結果
結果を図17に示した。(A)がヒト筋衛生細胞の結果、(B)がヒト骨格筋筋芽細胞の結果である。ヒト筋衛生細胞では、SV群はPBS群およびランダムSV群より遊走能が高い傾向を示したが、有意差は認められなかった。ヒト骨格筋筋芽細胞では、SV群はPBS群およびランダムSV群より遊走能が有意に高かった。
3−5 細胞移動能の検討
(1)実験方法
Φ60mmシャーレ(Iwaki)上でヒト筋衛生細胞およびヒト骨格筋筋芽細胞をそれぞれ100%コンフルエント状態まで培養した。細胞を2mm幅で剥離し、SVペプチド(20ng/ml、SV群)、ランダムSV(20ng/ml、ランダムSV群)またはPBS(PBS群)を添加した培地に交換して培養を続けた。12時間毎に位相差顕微鏡デジタルカメラにて撮影し、剥離部分の面積を画像解析ソフトImage J(NIH,USA)を用いて測定した。剥離直後の剥離部分面積を基準として、剥離部分面積の減少率に基づいて細胞移動率を算出した。
(2)結果
ヒト骨格筋筋芽細胞の結果を図18に示した。SV群は、24時間目以降PBS群およびランダムSV群より細胞移動能が高くなり、36および48時間目では、PBS群およびランダムSV群に対して有意差が認められた。SVペプチドはヒト筋衛生細胞の細胞移動能に影響を及ぼさなかった。
3−6 免疫蛍光染色によるMyogeninの発現確認
筋芽細胞が筋管細胞へ分化する際にMyogeninを発現することが知られている。そこで、Myogeninの発現を指標に、SVペプチドがヒト骨格筋筋芽細胞の分化に及ぼす影響を検討した。
(1)実験方法
ヒト骨格筋筋芽細胞をSVペプチド(20ng/ml、SV群)、ランダムSV(20ng/ml、ランダムSV群)またはPBS(PBS群)を添加した培地で48時間または72時間培養した。陽性対照として、筋芽細胞を筋管細胞へ分化させることが知られている2%馬血清含有F−12/DMEM培地(Moira A. Lawson et.al: Cells Tissues Organs 2000;167:130-137)でヒト骨格筋筋芽細胞を培養した(HS群)。48時間または72時間培養後、定法に従い抗ヒトMyogenin抗体を用いて免疫染色を行い、蛍光顕微鏡で観察した。
(2)結果
48時間目の結果を図19に、72時間目の結果を図20に示した。いずれの図においても(A)は蛍光顕微鏡観察像、(B)はMyogenin陽性細胞率である。(A)の左列はDAPI染色(核染色)、右列はMyogenin免疫染色である。培養48時間目(図19)では、SV群のMyogenin陽性細胞率はPBS群およびランダムSV群と比較して有意に高かったが、HS群より有意に低かった。培養72時間目(図20)では、SV群のMyogenin陽性細胞率はPBS群およびランダムSV群と比較して有意に高く、HS群と同等の陽性細胞率が認められた。
以上の結果から、SVペプチドは、ヒト骨格筋筋芽細胞の細胞増殖能、細胞遊走能および細胞移動能を顕著に向上させることが明らかになった。SVペプチドは、ヒト筋衛生細胞に対して直接的な関与はないものの、筋芽細胞に分化した後に機能促進を誘発し、その結果、損傷した筋組織の再生修復を促進すると考えられた。また、ヒト骨格筋筋芽細胞においてMyogeninの発現量が増加したことから、SVペプチドは筋芽細胞から筋管細胞への分化促進に関与していると考えられた。
〔実施例4:インビボにおける骨格筋形成能の検討〕
(1)実験方法
実施例2と同様に、Jcl:SD系ラット(10週齢)の両側咬筋を麻酔下で切断し、切断直後に左側咬筋にSVペプチド(20ng/ml)1mlまたはPBS1mlを投与し、右側咬筋には何も投与していないラットを、それぞれSV群およびPBS群として用いた。術後1週間目にラットを安楽死させ、両側の咬筋を採取した。定法に従い、パラフィン包埋後、筋横断組織切片を作製し、HE染色、抗MyoD抗体を用いた免疫染色および抗Myogenin抗体を用いた免疫染色を施した。抗MyoD抗体として、抗マウスMyoD抗体(abcam)を、抗Myogenin抗体として抗マウスMyogenin抗体(abcam)を使用した。二次抗体には、ビオチン標識抗ウサギIgG抗体(DAKO)を用いた。
(2)結果
HE染色標本を用いて、切断面に形成された肉芽組織の面積を画像解析ソフトImage J(NIH,USA)を用いて解析した。SV群およびPBS群の肉芽組織形成面積比は、それぞれ次式を用いて算出した。
肉芽組織形成面積比=投与側肉芽組織面積(pixel)/非投与側肉芽組織面積(pixel)
結果を図21に示した。SV群では有意な肉芽組織形成の縮小が観察されたが、PBS群では肉芽組織面積は縮小しなかった。
顕微鏡デジタルカメラでMyoD免疫染色標本を撮影し、筋切断部の左右2.5mmを含む筋組織内に存在するMyoD陽性核数を計測した。SV群およびPBS群のMyoD陽性比は、それぞれ次式を用いて算出した。
MyoD陽性比=投与側MyoD陽性核数/非投与側MyoD陽性核数
結果を図22に示した。SV群はPBS群と比較して有意にMyoD陽性細胞が増加していることが示された。
顕微鏡デジタルカメラでMyogenin免疫染色標本を撮影し、筋切断部の左右2.5mmを含む筋組織内に存在するMyogenin陽性核数を計測した。SV群およびPBS群のMyoD陽性比は、それぞれ次式を用いて算出した。
Myogenin陽性比=投与側Myogenin陽性核数/非投与側Myogenin陽性核数
結果を図23に示した。SV群はPBS群と比較して有意にMyogenin陽性細胞が増加していることが示された。
以上の結果より、SVペプチドは、筋損傷部において筋衛星細胞から骨格筋細胞への分化を促進することにより、損傷修復を促進することが確認された。SVペプチド投与側の筋損傷部においてMyoD陽性細胞が増加したことから、SVペプチドが筋損傷部における筋芽細胞の増殖、筋芽細胞の損傷部への遊走を促進させると考えられた。また、Myogenin陽性細胞の増加から、筋損傷後の早い段階で筋芽細胞から筋管細胞への分化を促進していると考えられた。
なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。

Claims (7)

  1. 以下の(1)〜(4)から選択される少なくとも一種のペプチドまたはその塩を有効成分として含有する骨格筋の損傷修復促進剤:
    (1)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
    (2)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
    (3)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、および
    (4)ヒトオステオポンチンのフラグメントであって、C末端のアミノ酸配列が配列番号1,2または3に示されるアミノ酸配列であるペプチド。
  2. 筋衛星細胞の活性化および/または分化を促進する作用を有する請求項1に記載の修復促進剤。
  3. 骨格筋の損傷が、筋断裂、筋委縮または筋変性である請求項1または2に記載の修復促進剤。
  4. 骨格筋の損傷部位における瘢痕形成を抑制する作用を有する請求項1〜3のいずれかに記載の修復促進剤。
  5. 以下の(1)〜(4)から選択される少なくとも一種のペプチドまたはその塩を有効成分として含有する骨格筋の損傷部位における筋衛星細胞活性化促進剤:
    (1)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
    (2)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
    (3)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、および
    (4)ヒトオステオポンチンのフラグメントであって、C末端のアミノ酸配列が配列番号1,2または3に示されるアミノ酸配列であるペプチド。
  6. 以下の(1)〜(4)から選択される少なくとも一種のペプチドまたはその塩を有効成分として含有する骨格筋の損傷部位における筋衛星細胞分化促進剤:
    (1)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
    (2)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
    (3)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、および
    (4)ヒトオステオポンチンのフラグメントであって、C末端のアミノ酸配列が配列番号1,2または3に示されるアミノ酸配列であるペプチド。
  7. 以下の(1)〜(4)から選択される少なくとも一種のペプチドまたはその塩を有効成分として含有する骨格筋の損傷部位における瘢痕形成抑制剤:
    (1)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
    (2)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
    (3)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、および
    (4)ヒトオステオポンチンのフラグメントであって、C末端のアミノ酸配列が配列番号1,2または3に示されるアミノ酸配列であるペプチド。
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