本発明は、誘導加熱装置に関する。
従来の誘導加熱装置では、1つの加熱口の内周側に設けられた第1の加熱コイルと、第1の加熱コイルよりも外周側に設けられた第2の加熱コイルとを備え、第1の加熱コイルおよび第2の加熱コイルに交流電流を供給するインバータ回路は、2つのスイッチング素子が直列接続されたアーム回路を3つ用いて構成されていた(例えば、特許文献1参照)。
3つのアーム回路は、第1のアーム回路、第2のアーム回路、および共通アーム回路であり、第1のアーム回路と共通アーム回路との間に第1の加熱コイルが接続され、第2のアーム回路と共通アーム回路との間に第2の加熱コイルが接続されていた。また、第1の加熱コイルと第2の加熱コイルは、それぞれスイッチの開閉により静電容量を切替え可能な可変容量コンデンサに直列接続され、加熱口に載置される被加熱物が磁性金属か非磁性金属かによって、スイッチの開閉を切替えていた。そして、第1のアーム回路、第2のアーム回路、および共通アーム回路を同じ周波数でスイッチングし、第1の加熱コイルと第2の加熱コイルとに同じ周波数の交流電流を供給して被加熱物を誘導加熱していた。また、被加熱物が非磁性金属からなる場合には、被加熱物が磁性金属からなる場合よりも各アーム回路のスイッチング周波数を高くして第1の加熱コイルと第2の加熱コイルとに供給する交流電流の周波数を高くしていた。被加熱物をより高周波の交番磁束によって誘導加熱すると、表皮効果によって被加熱物に渦電流が流れる表皮深さが浅くなるため、渦電流が流れる経路の電気抵抗が高くなる。この結果、被加熱物が非磁性金属からなる場合であっても効率良く誘導加熱をすることができていた。
しかしながら、特許文献1に記された従来の誘導加熱装置では、非磁性金属からなる被加熱物の底部の内周側に磁性金属を接合して形成した異種材質からなる被加熱物を誘導加熱する場合には、第1の加熱コイル上に磁性金属が位置し、第2の加熱コイル上に非磁性金属が位置するので、被加熱物を効率良く誘導加熱することができなかった。すなわち、従来の誘導加熱装置は、第1の加熱コイルと第2の加熱コイルとに同じ周波数の交流電流を流すので、交流電流を磁性金属の誘導加熱に適した周波数とすると、外周側の非磁性金属の誘導加熱が不十分となり、交流電流を非磁性金属の誘導加熱に適した周波数とすると、内周側の磁性金属の誘導加熱にとっては不必要に高い周波数となるため磁性金属を誘導加熱する効率が低下するという問題点があった。
本発明は、上述のような問題を解決するためになされたもので、第1の加熱コイルと第2の加熱コイルとが共通アーム回路を共用しても、第1の加熱コイルおよび第2の加熱コイルに異なる周波数の交流電流を供給できる誘導加熱装置を提供することを目的とする。
本発明に係る誘導加熱装置は、第1のスイッチング素子、第1のスイッチング素子に直列接続された第2のスイッチング素子、および第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子との間に設けられた出力端を有するアーム回路を複数有し、複数のアーム回路に第1のアーム回路、第2のアーム回路、および共通アーム回路を含むインバータ回路と、第1のアーム回路の出力端と共通アーム回路の出力端との間に電気的に接続された第1の加熱コイルと、第2のアーム回路の出力端と共通アーム回路の出力端との間に電気的に接続された第2の加熱コイルと、を備え、インバータ回路は、第1の加熱コイルに第1の周波数の交流電流を供給する場合に、所定の周波数で共通アーム回路の第1のスイッチング素子をスイッチングし、第2の加熱コイルに第1の周波数とは異なる第2の周波数の交流電流を供給する場合にも、第1の加熱コイルに第1の周波数の交流電流を供給する場合と同じ周波数で共通アーム回路の第1のスイッチング素子をスイッチングする。
本発明に係る誘導加熱装置によれば、第1の加熱コイルと第2の加熱コイルとが共通アーム回路を共用しても、第1の加熱コイルおよび第2の加熱コイルに異なる周波数の交流電流を供給できる。
本発明の実施の形態1における誘導加熱装置を示す斜視図である。
本発明の実施の形態1における加熱コイルを示す平面図である。
本発明の実施の形態1における誘導加熱装置の電気回路の構成を示す回路図である。
本発明の実施の形態1における誘導加熱装置のトッププレート上に単一材質からなる被加熱物および異種材質からなる被加熱物が載置された場合の様子を示す断面図である。
本発明の実施の形態1における誘導加熱装置による単一材質からなる被加熱物を誘導加熱する様子を示す斜視図である。
本発明の実施の形態1における誘導加熱装置による異種材質からなる被加熱物を誘導加熱する様子を示す斜視図である。
本発明の実施の形態1の誘導加熱装置における異種材質からなる被加熱物を誘導加熱する場合の駆動条件の一例を示したものである。
本発明の実施の形態1における誘導加熱装置のインバータ回路を構成する各スイッチング素子のゲート信号とインバータ回路から出力される電圧波形および電流波形を示すタイムチャートである。
本発明の実施の形態2における誘導加熱装置のインバータ回路を構成する各スイッチング素子のゲート信号とインバータ回路から出力される電圧波形および電流波形を示すタイムチャートである。
本発明の実施の形態3における誘導加熱装置のインバータ回路を構成する各スイッチング素子のゲート信号とインバータ回路から出力される電圧波形および電流波形を示すタイムチャートである。
本発明の実施の形態4における誘導加熱装置のインバータ回路を構成する各スイッチング素子のゲート信号とインバータ回路から出力される電圧波形および電流波形を示すタイムチャートである。
本発明の実施の形態5における誘導加熱装置のインバータ回路を構成する各スイッチング素子のゲート信号とインバータ回路から出力される電圧波形および電流波形を示すタイムチャートである。
本発明の実施の形態6における誘導加熱装置で被加熱物を誘導加熱する場合の加熱コイル上に載置された被加熱物の位置を示す平面図である。
本発明の実施の形態7における誘導加熱装置による2つの被加熱物を誘導加熱する様子を示す斜視図である。
実施の形態1.
まず、本発明の実施の形態1における誘導加熱装置の構成を説明する。図1は、本発明の実施の形態1における誘導加熱装置を示す斜視図である。
図1において、誘導加熱装置100は、筐体1と、筐体1の上部に設けられたトッププレート2とにより外郭が構成されている。トッププレート2は、ガラスやセラミックスあるいは樹脂などの絶縁物を有しており、誘導加熱装置100により誘導加熱される鍋やフライパンなどの被加熱物がトッププレート2の絶縁物で構成された領域に載置される。トッププレート2には、被加熱物を載置する位置の目安を示す載置位置3a、3b、3cが表示されている。載置位置3a、3b、3cは、トッププレート2がガラスなどの透明な材質である場合、載置面であるトッププレート2の表面とは反対側の裏面に印刷などにより表示されていてよい。また、載置位置3a、3b、3cは、トッププレート2の裏面側に設けられた発光ダイオードなどの発光素子と導光部材などで構成され、被加熱物を載置する位置がトッププレート2の表面側から視認できるように構成されていてもよい。図1では、載置位置3a、3b、3cが被加熱物を載置する領域を示すように記しているが、載置位置3a、3b、3cは被加熱物を載置する位置の中心を示す点などで表示されていてもよい。誘導加熱装置100は、載置位置3a、3b、3cに載置された被加熱物を誘導加熱するので、載置位置3a、3b、3cをそれぞれ加熱口と呼んでもよい。
誘導加熱装置100は、筐体1の前面側に引き出し可能な開閉扉を有するグリル部4を有している。グリル部4は、直方体状の内部空間を有する加熱庫にヒータなどの加熱手段が設けられている。グリル部4は、例えば、焼き魚などのグリル調理などを行う場合に使用される。なお、グリル部4は必ずしも必要ではなく、誘導加熱装置100は、グリル部4を有さない構成であってもよい。
誘導加熱装置100は、トッププレート2の前方に操作部5a、筐体1の前面に操作部5b、5cを有している。操作部5a、5b、5cは、載置位置3a、3b、3cに載置された被加熱物を誘導加熱する際の加熱開始、加熱停止、あるいは加熱電力の調整や、グリル部4による加熱開始、加熱停止、あるいは加熱電力の調整などに用いられる。操作部5a、5b、5cが設けられる位置は、図1に示す位置に限らず、誘導加熱装置100を使用する使用者が、誘導加熱装置100の操作を行い易い場所であればよい。
トッププレート2の前方には、誘導加熱装置100の状態を表示する表示部6が設けられている。表示部6は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイなどのディスプレイ装置であってよい。表示部6を設ける位置は、誘導加熱装置100の使用者が視認しやすい位置であればよく、トッププレート2の前方に限らず、例えば、筐体1の前面に表示部6を設けてもよい。表示部6には、誘導加熱装置100の動作状況に応じて様々な情報が表示される。例えば、各加熱口に入力される電力や電力の相対的な大小が表示されてもよく、各加熱口に載置された被加熱物の底面の温度が表示されてもよい。また、表示部6をタッチパネル付のディスプレイ装置で構成し、表示部6と操作部とを一体的に形成してもよい。
トッププレート2の後方には排気口7a、7b、7cが設けられている。排気口7a、7b、7cは、誘導加熱装置100内に設けられたグリル部4、電気回路(図示せず)、加熱コイル(図示せず)などで発生した熱や、グリル部4内での調理により発生した油煙などを誘導加熱装置100の外部に排出するための排気口である。図1では、排気口7a、7b、7cをトッププレート2に設けているが、排気口を筐体1に設けてもよい。また、排気口の数は3口に限るものではなく、1口以上であればよい。なお、誘導加熱装置100がグリル部4を有さない場合には、排気口を設けずに、例えば、筐体1の表面から放熱する構成であってもよい。
誘導加熱装置100の内部には、トッププレート2上に載置された鍋などの被加熱物を誘導加熱するための加熱コイルと、加熱コイルに高周波電流を供給するための電気回路とが設けられている。加熱コイルは、トッププレート2に表示された載置位置3a、3b、3cのそれぞれに対向して、トッププレート2の裏面側に設けられている。加熱コイルは、例えば、被覆された導線を渦巻状に巻回して形成してよい。加熱コイルを形成する導線に、銅などの導電率が高い金属からなる細線を被覆した被服細線を複数本撚って形成したリッツ線を用いると、20kHz〜100kHzといった高周波における加熱コイルの電気抵抗の増大を抑制できるのでより好ましい。1つの加熱コイルは、電気回路に接続される端子を2つ有している。すなわち、1つの加熱コイルは両端を有する2端子回路部品である。また、加熱コイルは必要に応じて被加熱物に対向する面とは反対側の面に対向させてフェライトコアなどの磁性体を有していてもよい。
図2は、本発明の実施の形態1における加熱コイルを示す平面図である。図2(a)〜(d)は誘導加熱装置100内に設けられた加熱コイルの一例を示すものであって、本発明の誘導加熱装置100は、図2(a)〜(d)に示した形状以外の加熱コイルが設けられていてもよい。ここでは、図1に示した誘導加熱装置100は、図2(a)〜(d)に示された加熱コイルのいずれかが、トッププレート2の裏面側に載置領域3a、3b、3cに対向して設けられているとして説明する。なお、載置領域3a、3b、3cには、それぞれ形状が異なる加熱コイルが対向して設けられていてよく、例えば、載置領域3aに対向して図2(c)の加熱コイル30cが設けられ、載置領域3bに対向して図2(b)の加熱コイル30bが設けられ、載置領域3cに対向して図2(a)の加熱コイル30aが設けられていてもよい。
図2(a)に示す加熱コイル30aは、導線を巻回してリング状に形成された加熱コイル31と、導線を巻回してリング状に形成され、加熱コイル31に隣接して配置された加熱コイル32とで構成されている。加熱コイル32は、加熱コイル31の周囲に加熱コイル31と離隔して配置されている。加熱コイル31および加熱コイル32はそれぞれ導線の両端に電気回路に接続される端子を有しており、それぞれが個別の加熱コイルとなっている。加熱コイル32は、加熱コイル31を取り囲んで設けられているので、加熱コイル30上に被加熱物が載置されると、加熱コイル31が被加熱物の内周側の領域を誘導加熱し、加熱コイル32が被加熱物の外周側の領域を誘導加熱する。
図2(a)では、加熱コイル31を第1の加熱コイル、加熱コイル32を第2の加熱コイルとしてよい。また、第1の加熱コイルおよび第2の加熱コイルの呼称を入れ替えて、加熱コイル32を第1の加熱コイル、加熱コイル31を第1の加熱コイルとしてもよい。以下では言及を省略するが、本発明において、第1の加熱コイルと第2の加熱コイルとは、呼称を互いに入れ替えてよい。つまり、複数の加熱コイルのうちの1つが第1の加熱コイルであって、複数の加熱コイルのうち第1の加熱コイルを除く加熱コイルのうちの1つが第2の加熱コイルである。第1の加熱コイルおよび第2の加熱コイルは、トッププレート2の裏面側に、トッププレート2の裏面に対向して設けられている。
図2(b)に示す加熱コイル30bは、導線を巻回してそれぞれリング状に形成された加熱コイル31a、加熱コイル31b、および加熱コイル32で構成されている。加熱コイル31aと加熱コイル31bとは隣接して配置され互いに離隔している。また、加熱コイル31bと加熱コイル32とは隣接して配置され互いに離隔している。加熱コイル31a、加熱コイル31b、加熱コイル32はそれぞれが導線の両端に端子を有する個別の加熱コイルであってもよいが、例えば、加熱コイル31aと加熱コイル31bとが連続した導線により形成されて1つの加熱コイルとして機能するようにしてもよい。つまり、第1の加熱コイルを加熱コイル31aと加熱コイル31bとで構成し、第2の加熱コイルを加熱コイル32で構成してもよい。
図2(c)に示す加熱コイル30cは、導線を巻回してそれぞれリング状に形成された加熱コイル31a、加熱コイル31b、加熱コイル32a、加熱コイル32b、加熱コイル32c、および加熱コイル32dで構成されている。図2(b)の場合と同様に、加熱コイル31aおよび加熱コイル31bは、それぞれ個別の加熱コイルであってもよく、加熱コイル31aと加熱コイル31bとで1つの加熱コイルを構成してもよい。加熱コイル32a、加熱コイル32b、加熱コイル32c、および加熱コイル32dもそれぞれ個別の加熱コイルであってもよく、あるいは、例えば、加熱コイル32aと加熱コイル32cとが接続されて1つの加熱コイルを構成し、加熱コイル32bと加熱コイル32dとが接続されてもう1つの加熱コイルを構成していてもよい。つまり、第1の加熱コイルを加熱コイル31aと加熱コイル31bとで構成し、第2の加熱コイルを加熱コイル32aと加熱コイル32cとで構成してもよい。
図2(d)に示す加熱コイル30dは、導線を巻回してそれぞれリング状に形成された加熱コイル31a、加熱コイル32a、加熱コイル32b、加熱コイル32c、加熱コイル32d、加熱コイル32e、加熱コイル32f、加熱コイル32g、および加熱コイル32hで構成されている。図2(c)の場合と同様に、加熱コイル31a〜31hは、それぞれ個別の加熱コイルであってもよく、加熱コイル31a〜31hのうちいくつかの加熱コイルが接続されて1つの加熱コイルを構成してもよい。例えば、第1の加熱コイルを加熱コイル32が構成し、第2の加熱コイルを加熱コイル32aが構成してもよい。また、第1の加熱コイルを加熱コイル31、加熱コイル32a、加熱コイル32b、および加熱コイル32hで構成し、第2の加熱コイルを加熱コイル32c、加熱コイル32d、加熱コイル32e、および加熱コイル32gで構成してもよい。また、リレーや半導体スイッチング素子などの開閉器を用いて、調理目的に合わせて、複数の加熱コイルの接続を組み替えて、そのうちの一組を第1の加熱コイルとし、他の一組を第2の加熱コイルとしてもよい。
図3は、本発明の実施の形態1における誘導加熱装置の電気回路の構成を示す回路図である。図3に示すように、誘導加熱装置100の電気回路8は、インバータ回路81、電源供給部82、チョークコイル83、直流部84、制御回路85を備えている。前述のように電気回路8は、筐体1およびトッププレート2で囲われた誘導加熱装置100の内部に設けられている。
電源供給部82は、電源ヒューズ12、入力コンデンサ13、ダイオードブリッジ14を有している。入力コンデンサ13は、ダイオードブリッジ14の交流側端子に並列に接続されており、入力コンデンサ13に並列に外部電源である交流電源9が接続される。入力コンデンサ13はフィルタとして機能する。交流電源9はいわゆる商用電源である。交流電源9と入力コンデンサ12との間には電源ヒューズ12が設けられ、交流電源9から誘導加熱装置100に過電流が流入するのを防止している。ダイオードブリッジ14は、交流側端子に入力された交流電力を直流電力に整流してダイオードブリッジ14の直流側端子から出力する。電源供給部82は、交流電源9が接続される入出力端に入力電流の電流値を検出して被加熱物の材質を検出する負荷検知部11を設けてもよい。負荷検知部11についてのより詳しい説明は後述する。
図3に示すように、ダイオードブリッジ14の直流側端子にはチョークコイル83を介して直流部84が並列に接続されている。直流部84は、例えば、コンデンサであってよく、直流部84がコンデンサである場合には、チョークコイル83と直流部84を構成するコンデンサとがフィルタを構成してよい。また、直流部84は昇圧チョッパ、降圧チョッパ、あるいは昇降圧チョッパなどのDC/DCコンバータで構成してよく、インバータ回路81に入力される直流電圧の電圧値を変化させる構成としてもよい。さらに、直流部84は交流電源9から入力される交流電力の力率を改善する力率改善コンバータであってもよい。直流部84がコンデンサである場合には、交流電圧を全波整流した周期的に電圧値が変動する脈流の直流電圧がインバータ回路81に入力される。一方、直流部84がDC/DCコンバータである場合には、インバータ回路81には電圧値がほぼ一定の直流電圧が入力される。以下の説明では、インバータ回路81には電圧値が一定の直流電圧が入力されるとして説明するが、インバータ回路81に脈流の直流電圧が入力される場合であっても以下の説明は同様である。
図3に示すように、直流部84にはインバータ回路81が並列に接続されている。インバータ回路81は、互いに並列に接続された第1のアーム回路21、第2のアーム回路27、および共通アーム回路24を有している。各アーム回路は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect-Transistor)などのスイッチング素子を2つ直列接続して構成されており、2つのスイッチング素子の間に出力端が設けられている。
第1のアーム回路21は、直流部84の高電圧側に電気的に接続された第1のスイッチング素子21aと、第1のスイッチング素子21aに直列接続されて直流部84の低電圧側に接続された第2のスイッチング素子21bと、第1のスイッチング素子21aと第2のスイッチング素子21bとの間に設けられた出力端23とを有している。また、第1のスイッチング素子21aと逆並列にダイオード22aが接続され、第2のスイッチング素子21bと逆並列にダイオード22bが接続されている。なお、第1のスイッチング素子21aおよび第2のスイッチング素子21bがMOSFETである場合には、ボディダイオードを有しているので、ダイオード22aおよびダイオード22bは必ずしも必要ではない。第1のスイッチング素子21aのゲート端子には、ゲート信号H1が入力され、第1のスイッチング素子21aはゲート信号H1に基づいてオンとオフとが制御される。同様に、第2のスイッチング素子21bのゲート端子には、ゲート信号L1が入力され、第2のスイッチング素子21bはゲート信号L1に基づいてオンとオフとが制御される。
第2のアーム回路27は、直流部84の高電圧側に電気的に接続された第1のスイッチング素子27aと、第1のスイッチング素子27aに直列接続されて直流部84の低電圧側に接続された第2のスイッチング素子27bと、第1のスイッチング素子27aと第2のスイッチング素子27bとの間に設けられた出力端29とを有している。また、第1のスイッチング素子27aと逆並列にダイオード28aが接続され、第2のスイッチング素子27bと逆並列にダイオード28bが接続されている。第1のスイッチング素子27aのゲート端子には、ゲート信号H7が入力され、第1のスイッチング素子27aはゲート信号H7に基づいてオンとオフとが制御される。同様に、第2のスイッチング素子27bのゲート端子には、ゲート信号L7が入力され、第2のスイッチング素子27bはゲート信号L7に基づいてオンとオフとが制御される。
共通アーム回路24は、直流部84の高電圧側に電気的に接続された第1のスイッチング素子24aと、第1のスイッチング素子24aに直列接続されて直流部84の低電圧側に接続された第2のスイッチング素子24bと、第1のスイッチング素子24aと第2のスイッチング素子24bとの間に設けられた出力端26とを有している。また、第1のスイッチング素子24aと逆並列にダイオード25aが接続され、第2のスイッチング素子24bと逆並列にダイオード25bが接続されている。第1のスイッチング素子24aのゲート端子には、ゲート信号H4が入力され、第1のスイッチング素子24aはゲート信号H4に基づいてオンとオフとが制御される。同様に、第2のスイッチング素子24bのゲート端子には、ゲート信号L4が入力され、第2のスイッチング素子24bはゲート信号L4に基づいてオンとオフとが制御される。
なお、図3では、インバータ回路81が3つのアーム回路を有する構成を示したが、インバータ回路は4つ以上のアーム回路を有し、1つまたは複数のアーム回路を共通アーム回路とする構成であってもよい。また、各アーム回路を構成する各スイッチング素子は、ディスクリートの半導体スイッチング素子で構成してよく、IPM(Intelligent Power Module)のように複数の半導体素子を1つのパッケージ内に内蔵した電力用半導体モジュールで構成してもよい。3つのアーム回路を内蔵した電力用半導体モジュールは、三相交流モータの駆動用インバータ装置に広く用いられているので、このような電力用半導体モジュールを用いることで、誘導加熱装置100のインバータ回路81を低コストで構成することができる。また、各アーム回路は、スイッチング素子にコンデンサと抵抗器とを含むスナバ回路を並列接続して、スイッチング素子に印加されるサージ電圧を抑制する構成としてもよい。
第1のアーム回路21と共通アーム回路24とが第1のフルブリッジ回路を構成し、第2のアーム回路27と共通アーム回路24とが第2のフルブリッジ回路を構成している。第1のアーム回路21の出力端23と共通アーム回路24の出力端26との間に、第1の加熱コイル31が電気的に接続されている。また、第2のアーム回路27の出力端29と共通アーム回路24の出力端26との間に、第2の加熱コイル32が電気的に接続されている。第1の加熱コイル31には第1の可変容量コンデンサ41が直列接続されて、第1のアーム回路21の出力端23と共通アーム回路24の出力端26との間に、第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とからなる第1の共振回路が接続されている。また、第2の加熱コイル32には第2の可変容量コンデンサ45が直列接続されて、第2のアーム回路27の出力端29と共通アーム回路24の出力端26との間に、第2の加熱コイル32と第2の可変容量コンデンサ45とからなる第2の共振回路が接続されている。なお、本発明では、第1の加熱コイル31、第2の加熱コイル32、第1の可変容量コンデンサ41、および第2の可変容量コンデンサ45はインバータ回路81を構成するものではないとして扱っている。
第1の可変容量コンデンサ41は、静電容量を変更することができるコンデンサである。例えば、図3に示すように、第1の可変容量コンデンサ41は、コンデンサ44と開閉器43とを直列接続したものをコンデンサ42に並列接続することで構成することができる。あるいは、コンデンサに開閉器を並列接続したものを別のコンデンサに直列接続して構成してもよい。第1の可変容量コンデンサ41に用いられるコンデンサおよび開閉器の数は任意に設定してよく、直列数や並列数も任意に設定してよい。開閉器は、例えば、リレーであってよく、半導体スイッチング素子であってもよい。第2の可変容量コンデンサ45についても、第1の可変容量コンデンサ41と同様である。第2の可変容量コンデンサ45は、コンデンサ47と開閉器48とを直列接続したものをコンデンサ46に並列接続して構成されている。第1の可変容量コンデンサ41の開閉器44、および第2の可変容量コンデンサ45の開閉器48は、制御回路85からの制御信号により開閉が制御される。
制御回路85は、インバータ回路81の各アーム回路の第1のスイッチング素子21a、24a、27aおよび第2のスイッチング素子21b、24b、27bのスイッチング制御、および、第1の可変容量コンデンサ41の開閉器44および第2の可変容量コンデンサ45の開閉器48の開閉制御を行う制御信号を出力する。図3では、各スイッチング素子のゲート端子と制御回路85とを結ぶ信号線、および、開閉器44、48と制御回路85とを結ぶ信号線を省略して示している。
また、制御回路85は、負荷検知部11と信号線で接続され、負荷検知部11からの信号を受信する。さらに、制御回路85は、操作部5および表示部6に信号線で接続されており、操作部5および表示部6と制御回路85との間で操作信号や表示信号などの信号の送受信を行う。操作部5は、図1で示した操作部5a、5b、5cであって、表示部6は図1で示した表示部6である。また、直流部84がDC/DCコンバータである場合には、制御回路85は、DC/DCコンバータに含まれるスイッチング素子のスイッチング制御を行ってもよい。制御回路85は、アナログ回路やデジタル回路を有する集積回路を用いて構成してもよく、マイコンなどの演算処理装置を用いて構成しもよい。また、必要に応じて各スイッチング素子を駆動するためのゲート駆動回路や保護回路を備えていてもよい。
負荷検知部11は、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32に載置された被加熱物の材質を判別する。被加熱物が鉄などの磁性金属である場合と、アルミや銅などの非磁性体である場合とでは、各加熱コイルの両端で測定したインピーダンスは異なるため、このインピーダンスの違いを利用して、第1の加熱コイル31または第2の加熱コイル32に載置された被加熱物の材質を判別する。インピーダンスとして、抵抗の変化を利用して被加熱物の材質を判別してもよく、インダクタンスの変化を利用して被加熱物の材質を判別してもよい。負荷検知部11を設ける位置は、図3に示す位置に限らず、例えば、第1の加熱コイル31に直列に第1の負荷検知部を設け、第2の加熱コイル32に直列に第2の負荷検知部を設けた構成としてもよい。
図3に示すように、負荷検知部11を誘導加熱装置100の入力端に設けた場合、制御回路85は、第1のアーム回路21、共通アーム回路24を制御し、第1の加熱コイル31にパルス的な電流を供給する。その後、制御回路85は、第2のアーム回路27、共通アーム回路24を制御し、第2の加熱コイル32にパルス的な電流を供給する。そして、このときに負荷検知部11が測定した入力電流の変化に基づいて、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32のインピーダンスの変化を検出し、被加熱物の材質を判別する。図2(a)に示したように、第1の加熱コイル31を取り囲んで第2の加熱コイル32が配置されている場合には、第1の加熱コイル31での判別結果により被加熱物の内周側の材質が判別され、第2の加熱コイル32での判別結果により被加熱物の外周側の材質が判別される。
負荷検知部11は、図3に示すように制御回路85と別体として設けられていてもよいが、制御回路85と一体的に設けられていてもよい。つまり、誘導加熱装置100の入力端に電流検出器や電圧検出器のみが設けられており、検出した電流値や電圧値が制御回路85に入力され、制御回路85の内部で検出した電流値や電圧値を演算して被加熱物の材質を判別してもよい。すなわち、制御回路85は負荷検知部の機能を備えていてもよく、この場合、制御回路85が負荷検知部であるとしてよい。電流検出器や電圧検出器をアーム回路の出力端と加熱コイルとの間に設けて、加熱コイルの電流値や電圧値に基づいて制御回路85が被加熱物の材質を判別する場合も同様に制御回路85が負荷検知部であるとしてよい。
次に、本発明の誘導加熱装置100の動作について説明する。
図4は、本発明の実施の形態1における誘導加熱装置のトッププレート上に単一材質からなる被加熱物および異種材質からなる被加熱物が載置された場合の様子を示す断面図である。図4(a)は、トッププレート2上に単一材質からなる被加熱物110aが載置された場合の断面図であり、図4(b)は、トッププレート2上に異種材質からなる被加熱物110bが載置された場合の断面図である。
本発明において、単一材質からなる被加熱物とは、図4(a)に示すように、被加熱物110aの底部111が、単一材質の金属で構成された被加熱物である。単一材質の金属とは、鉄やフェライト系ステンレスなどの磁性金属や、アルミや銅やオーステナイト系ステンレスなどの非磁性金属のことを言い、単一元素からなる金属という意味ではない。従って、被加熱物110aの底部がステンレスなど単一の合金で構成されている場合、単一材質からなる被加熱物である。
一方、異種材質からなる被加熱物とは、図4(b)に示すように、被加熱物110bの底部111に、底部111とは材質の異なる金属からなる磁性金属部112を接合して構成した被加熱物である。異種材質からなる被加熱物110bは、例えば、アルミや銅などの電気抵抗が小さい非磁性金属で形成した鍋の底面に、誘導加熱され易い鉄やフェライト系ステンレスなどの磁性金属を貼り付けやコーティングなどにより接合して形成される。異種材質からなる被加熱物110bは、被加熱物110bの大部分をアルミで構成することができるため、被加熱物110bのコスト低減、被加熱物110bの重量の軽減、被加熱物110bの熱伝導の向上などの目的で広く用いられている。図4(b)に示すように、異種材質からなる被加熱物110bは、通常、被加熱物110bの底面の内周側に磁性金属部112が設けられているので、加熱口の内周側に配置された第1の加熱コイル31上に磁性金属部112が載置され、加熱口の外周側に配置された第2の加熱コイル32上には非磁性金属からなる底部111が載置される。
図5は、本発明の実施の形態1における誘導加熱装置による単一材質からなる被加熱物を誘導加熱する様子を示す斜視図である。なお、図5では、加熱コイル30とトッププレート2の裏面との間の距離を大きくして示しているが、加熱コイル30は、トッププレート2の裏面と1〜10mm程度の間隔を隔てて、図5に示すよりもトッププレート2の裏面に近接し、載置位置3に対向して配置されている。
図5に示すように、誘導加熱装置100によって誘導加熱される鍋やフライパンなどの被加熱物110aは、トッププレート2に表示された載置位置3上に被加熱物110aの底面が位置するように載置される。被加熱物110aの底面は、全部が載置位置3上に配置されなくてもよいが、被加熱物110aの底面が全く載置位置3上に配置されていない場合には、誘導加熱装置100は、被加熱物が載置されていないと判断して、加熱コイル30に交流電流を供給しない。
図5に示すように、トッププレート2の載置位置3に被加熱物110aを載置し、誘導加熱装置100の使用者が操作部5を操作して、被加熱物110aを誘導加熱する操作を選択すると、制御回路85が、加熱コイル31および加熱コイル32にパルス状の電流を供給するようにインバータ回路81を制御する。
例えば、まず、制御回路85から、インバータ回路81の第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aをオンにするゲート信号H1と第2のスイッチング素子21bをオフにするゲート信号L1と、共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aをオフにするゲート信号H4と第2のスイッチング素子24bをオンにするゲート信号L4とを出力する。これにより第1の加熱コイル31に電流が流れる。そして、制御回路85は、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aをオフにするゲート信号H1と第2のスイッチング素子21bをオンにするゲート信号L1とを出力し、第1の加熱コイル31に流れる電流が停止する。
次に、制御回路85から、インバータ回路81の第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aをオンにするゲート信号H7と第2のスイッチング素子27bをオフにするゲート信号L7と、共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aをオフにするゲート信号H4と第2のスイッチング素子24bをオンにするゲート信号L4とを出力する。これにより第2の加熱コイル32に電流が流れる。そして、制御回路85は、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aをオフにするゲート信号H7と第2のスイッチング素子27bをオンにするゲート信号L7とを出力し、第2の加熱コイル32に流れる電流が停止する。
このとき、負荷検知部11は、第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32とに電流が流れたことによる誘導加熱装置100への入力電流の増加を検出する。なお、負荷検知部が第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32のそれぞれに直列接続されている場合には、負荷検知部は、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32に流れる電流を直接検出する。負荷検知部11は検出した電流に基づいて、第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物110aの材質と、第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物110aの材質とを判別する。
負荷検知部11が、第1の加熱コイル31上の被加熱物110aの材質は鉄などの磁性金属であると判断した場合、制御回路85は、第1の可変容量コンデンサ41の開閉器44を閉じてコンデンサ42とコンデンサ43とを並列に接続する。この結果、第1の可変容量コンデンサ41の静電容量が増加するので、第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とからなる第1の共振回路の共振周波数が低くなる。一方、負荷検知部11が、第1の加熱コイル31上の被加熱物110の材質はアルミや銅などの非磁性金属であると判断した場合、制御回路85は、第1の可変容量コンデンサ41の開閉器44を開いてコンデンサ42からコンデンサ43を切り離す。この結果、第1の可変容量コンデンサ41の静電容量が減少するので、第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とからなる第1の共振回路の共振周波数が高くなる。このように、第1の可変容量コンデンサ41の静電容量は、負荷検知部11が判別した第1の加熱コイル31上の被加熱物の材質に応じて変更される。同様に、第2の可変容量コンデンサ45の静電容量は、負荷検知部11が判別した第2の加熱コイル32上の被加熱物の材質に応じて変更される。
図5では、被加熱物110aは単一材質からなる被加熱物であるので、負荷検知部11は、第1の加熱コイル31上の被加熱物110aの材質と第2の加熱コイル32上の被加熱物110aの材質とは同じであると判断する。従って、インバータ回路81から第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32とには同じ周波数の交流電流が供給される。このためインバータ回路81の第1アーム回路21の第1のスイッチング素子21a、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27a、および共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aは同じ周波数でスイッチングされる。各アーム回路の第2のスイッチング素子についても同じ周波数でスイッチングされる。
なお、被加熱物が単一材質からなる被加熱物である場合でも、後述する被加熱物が異種材質からなる被加熱物である場合の動作により、被加熱物が誘導加熱されることを妨げるものではない。つまり、第1の加熱コイル上の被加熱物の材質と第2の加熱コイル上の被加熱物の材質とが同じであっても、第1の加熱コイル31に流れる電流の周波数と、第2の加熱コイル32に流れる電流の周波数とを異なる周波数にしてもよい。また、インバータ回路が、第1の加熱コイルに供給する交流電流の周波数と、第2の加熱コイルに供給する交流電流の周波数とを異なる周波数にしてもよい。
次に、被加熱物が異種材質からなる被加熱物である場合の動作について説明する。
図6は、本発明の実施の形態1における誘導加熱装置による異種材質からなる被加熱物を誘導加熱する様子を示す斜視図である。図6は、被加熱物110bが異種材質からなる被加熱物である点を除いて図5と同一であるので、同一部分の説明は省略する。
異種材質からなる被加熱物110bは、アルミなどの非磁性金属からなる底部111の内周側に鉄などの磁性金属からなる磁性金属部112が接合されているとして説明するが、異種材質からなる被加熱物は、磁性金属からなる被加熱物の底部の内周側に非磁性金属部が接合されていてもよい。この場合には、内周側の非磁性金属部を誘導加熱する第1の加熱コイル31に、外周側の磁性金属部を誘導加熱する第2の加熱コイル32よりも周波数が高い交流電流を供給してよい。
被加熱物110bが、トッププレート2の載置位置3に載置され、負荷検知部11が被加熱物110bの材質の判別を完了すると、制御回路85により第1の可変容量コンデンサ41の開閉器44および第2の可変容量コンデンサ45の開閉器45の開閉が制御される。負荷検知部11は、第1の加熱コイル31上の被加熱物110bの材質は磁性金属であると判別するので、第1の可変容量コンデンサ41の開閉器44は閉じられる。この結果、第1の可変容量コンデンサ41では、コンデンサ42とコンデンサ43とが並列接続されるので静電容量は大きくなる。一方、負荷検知部11は、第2の加熱コイル32上の被加熱物110bの材質は非磁性金属であると判別するので、第2の可変容量コンデンサ45の開閉器48は開かれる。この結果、第2の可変容量コンデンサ45では、コンデンサ47がコンデンサ46から切り離されるので静電容量は小さくなる。
第1の加熱コイル31上の被加熱物110bの材質が鉄などの磁性金属であり、第2の加熱コイル32上の被加熱物110bの材質がアルミなどの非磁性金属である場合に、第2の加熱コイル32と第2の可変容量コンデンサ45とからなる第2の共振回路の共振周波数f2は、第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とからなる第1の共振回路の共振周波数f1よりも高くなるように設定されている。このような設定は、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32のインダクタンス、第1の可変容量コンデンサ41に含まれるコンデンサ42、43の静電容量、および第2の可変容量コンデンサ45に含まれるコンデンサ46、47の静電容量を適宜選択することにより設定することができる。
一例として、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32のインダクタンスを同一にして、鉄などの磁性金属からなる被加熱物が載置された場合のインダクタンスを300μH、アルミなどの被加熱物が載置された場合のインダクタンスを200μHとする。また、第1の可変容量コンデンサ41のコンデンサ42と第2の可変容量コンデンサ45のコンデンサ46の静電容量を0.024μFとする。さらに、開閉器44に直列接続されたコンデンサ43と開閉器48に直列接続されたコンデンサ47の静電容量を0.14μFとする。以下の説明では、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32のインダクタンスおよび各コンデンサ42、43、46、47の静電容量は、ここで示した値であるとして説明する。
図7は、本発明の実施の形態1の誘導加熱装置における異種材質からなる被加熱物を誘導加熱する場合の駆動条件の一例を示したものである。図7において、誘導加熱される被加熱物は図6に示した被加熱物110bであって、アルミなどの非磁性体からなる被加熱物の底部111に鉄などの磁性体からなる磁性体部112を接合した被加熱物である。負荷検知部11により、第1の加熱コイル31上の被加熱物の材質は磁性体であり、第2の加熱コイル32上の被加熱物の材質は非磁性体と判別されるので、第1の開閉器44の状態は「閉」となり、第2の開閉器48の状態は「開」となる。
この場合、図7に示すように、第1の可変容量コンデンサ41の静電容量は、コンデンサ42の静電容量とコンデンサ43の静電容量との合計となるので0.164μFとなる。従って、第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とからなる第1の共振回路の共振周波数f1は22.7kHzとなる。また、第2の可変容量コンデンサ45の静電容量は、コンデンサ46の静電容量であるから0.024μFとなる。従って、第2の加熱コイル32と第2の可変容量コンデンサ45とからなる第2の共振回路の共振周波数f2は72.6kHzとなる。なお、各直列共振回路の共振周波数fは、各加熱コイルのインダクタンスをL、各可変容量コンデンサの静電容量をCとした場合に、次式で表される。
本発明の誘導加熱装置100は、第1のアーム回路21と共通アーム回路24との間に第1の加熱コイル31を電気的に接続し、第2のアーム回路27と共通アーム回路24との間に第2の加熱コイル32を電気的に接続して構成されるが、第1の加熱コイル31に流れる交流電流の周波数である第1の周波数と、第2の加熱コイル32に流れる交流電流の周波数である第2の周波数とを異なる周波数とすることができる。
図7に示すように、本発明の誘導加熱装置100のインバータ回路81は、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aおよび第2のスイッチング素子21bをそれぞれ、例えば、25kHzでスイッチングし、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aおよび第2のスイッチング素子27bをそれぞれ、例えば、75kHzでスイッチングする。そして、共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aおよび第2のスイッチング素子24bをそれぞれ、例えば、25kHzでスイッチングする。
つまり、第1のアーム回路21のスイッチング周波数と共通アーム回路24のスイッチング周波数とを同じ周波数とし、第2のアーム回路27と共通アーム回路24のスイッチング周波数とを異なる周波数として、第1の加熱コイル31に第1の周波数で流れる交流電流と第2の加熱コイル32に第2の周波数で流れる交流電流とを異なる周波数としている。第2の加熱コイル32に第2の周波数の交流電流が流れる場合にも、インバータ回路81は、第1の加熱コイル31に第1の周波数の交流電流を流す場合と同じ周波数で共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aおよび第2のスイッチング素子24bをスイッチングする。
第1の加熱コイル31に流れる交流電流の周波数である第1の周波数は、主として第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とからなる第1の共振回路の共振周波数f1に依存し、第2の加熱コイル32に流れる交流電流の周波数である第2の周波数は、主として第2の加熱コイル32と第2の可変容量コンデンサ45とからなる第2の共振回路の共振周波数f2に依存する。従って、例えば、第1のアーム回路21、第2のアーム回路27、および共通アーム回路24を全て25kHzでスイッチングさせた場合であっても、図7に示すように、第1の共振回路の共振周波数f1が22.7kHzであって、第2の共振回路の共振周波数f2が72.6kHzである場合には、第1の加熱コイル31には共振周波数22.7kHzに近い25kHzの交流電流が流れ、第2の加熱コイル32には共振周波数72.6kHzに近い周波数の交流電流が流れる。
このような加熱コイルとコンデンサとからなる共振回路の共振周波数をアーム回路のスイッチング周波数の3倍程度にして、スイッチング周波数の3倍程度の周波数の交流電流を加熱コイルに供給することができるのは、当業者にとってよく知られている3倍共振インバータと同様の原理によるものである。つまり、本発明の誘導加熱装置100に3倍共振インバータを適用してもよい。
なお、図7では、第1の共振回路の共振周波数f1が22.7kHzであるが、第1のアーム回路21のスイッチング周波数を25kHzとしており、第2の共振回路の共振周波数f2が72.6kHzであるが、第2のアーム回路27のスイッチング周波数を75kHzとしている。一般に、誘導加熱装置のインバータ回路では、アーム回路を共振回路の共振周波数より高い周波数でスイッチングして、加熱コイルに流れる交流電流の位相がアーム回路のスイッチングより遅れ位相となるようにして、スイッチング損失が増大するのを抑制している。この点は、本発明の誘導加熱装置100であっても同様であり、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32に流れる交流電流が遅れ位相となるように各アーム回路のスイッチング周波数を選択するのが好ましい。
図8は、本発明の実施の形態1における誘導加熱装置のインバータ回路を構成する各スイッチング素子のゲート信号とインバータ回路から出力される電圧波形および電流波形を示すタイムチャートである。図8のタイムチャートは、図7に示す条件とした場合のゲート信号および電圧波形、電流波形である。
図8(a)〜(g)が各スイッチング素子のゲート信号であり、ゲート信号がONとなっている場合にスイッチング素子はオンし、ゲート信号がOFFとなっている場合にスイッチング素子はオフする。各アーム回路の高電圧側の第1のスイッチング素子と低電圧側の第2のスイッチング素子とは、交互にオンオフを繰り返してスイッチングされ、一方のスイッチング素子がオンの場合、他方のスイッチング素子はオフとなる。従って、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子とは同じ周波数でスイッチングされる。なお、実際のゲート信号では、各アーム回路の第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子とが同時にオンとならないように、第1のスイッチング素子のゲート信号と第2のスイッチング素子のゲート信号とが同時にオフとなるデッドタイムを要するが、図8では省略して示している。
図8(a)は第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aのゲート信号H1であり、図8(b)は第1のアーム回路21の第2のスイッチング素子21bのゲート信号L1である。図8(c)は共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aのゲート信号H4であり、図8(d)は共通アーム回路24の第2のスイッチング素子24bのゲート信号L4である。図8(e)は第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのゲート信号H7であり、図8(f)は第2のアーム回路27の第2のスイッチング素子27bのゲート信号L7である。図8(a)〜(f)に示した各ゲート信号は、スイッチング周期に対するオン時間のデューティ比が50%となる場合のゲート信号である。
図8(g)および図8(i)は、共通アーム回路24の出力端26を基準電位とした場合の、第1のアーム回路21の出力端23および第2のアーム回路の出力端29の電位である。直流部22から出力され、各アーム回路に印加される電圧はVoであるとして示している。
図8(h)は、第1のアーム回路21の出力端23から第1の加熱コイル31に向かう向きを正として示した第1の加熱コイル31に流れる交流電流の波形である。図8(j)は、第2のアーム回路27の出力端29から第2の加熱コイル32に向かう向きを正として示した第2の加熱コイル32に流れる交流電流の波形である。図8(h)および図8(j)は、それぞれ電流の最大値を+Io、電流の最小値を−Ioとして示した。なお、図8(h)の第1の加熱コイル31に流れる交流電流と図8(j)の第2の加熱コイル32に流れる交流電流とは、最大値+Ioと最小値−Ioとが同じである必要は無く、第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32とで、電流の最大値および最小値はそれぞれ異なっていてもよい。
第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とからなる第1の共振回路には、第1のアーム回路21と共通アーム回路24とからなる第1のフルブリッジ回路により電圧が印加される。図8(a)および図8(c)に示すように、第1のフルブリッジ回路では、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aのゲート信号H1と共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aのゲート信号H4とは周波数が同じ25kHzであり、位相が180°ずれている。この結果、図8(g)に示すように、第1の共振回路には、+Voと−Voとに交互に変化する矩形波電圧が印加され、図8(h)に示すように、第1の加熱コイル31には25kHzの正弦波状の交流電流が流れる。第1の加熱コイル31には、第1のアーム回路21および共通アーム回路24のスイッチング周波数である25kHzを第1の周波数とする交流電流が流れる。
第2の加熱コイル32と第2の可変容量コンデンサ45とからなる第2の共振回路には、第2のアーム回路27と共通アーム回路24とからなる第2のフルブリッジ回路により電圧が印加される。図8(e)と図8(c)に示すように、第2のフルブリッジ回路では、共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aのゲート信号H4がOFFの期間に第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのゲート信号H7がON、OFF、ONに変化し、共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aのゲート信号H4がONの期間に第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのゲート信号H7がOFF、ON、OFFに変化する。
共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aのスイッチング周波数が25kHzであるのに対し、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのスイッチング周波数は75kHzであり3倍となっている。この結果、図8(i)に示すように、第2の共振回路には、半周期の間に、+Vo、0、+Voとなる電圧波形と、−Vo、0、−Voとなる電圧波形とが交互に印加される。共通アーム回路24のスイッチング周期に対する+Voの期間の割合、0の期間の割合、−Voの期間の割合はいずれも1/3ずつとなっている。そして、図8(j)に示すように、第2の加熱コイル32には75kHzの正弦波状の交流電流が流れる。第2の加熱コイル32には、第2のアーム回路27のスイッチング周波数である75kHzを第2の周波数とする交流電流が流れる。
以上のように、第2のアーム回路27と共通アーム回路24とからなる第2のフルブリッジ回路は、第2のアーム回路27と共通アーム回路24とが異なる周波数でスイッチングされるが、第2の加熱コイル32に共通アーム回路24のスイッチング周波数とは異なる第2の周波数の交流電流を供給することができる。そして、第1のフルブリッジ回路で第1の加熱コイル31に第1の周波数の25kHzの交流電流を供給し、第2のフルブリッジ回路で第2の加熱コイル32に第2の周波数の75kHzの交流電流を供給することができる。
これにより、第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物110bの磁性金属部112だけでなく、非磁性金属からなる被加熱物110bの外周側の底部111をも効率良く誘導加熱することができる。すなわち、第2の加熱コイル32上に載置された非磁性金属からなる被加熱物110bの外周側に内周側よりも高い周波数の交番磁束を鎖交させることで、表皮効果により非磁性金属に渦電流が流れる経路の抵抗を増大させることができるので、非磁性金属からなる被加熱物110bの外周側の底部111を効率良く誘導加熱することができる。この結果、フライパンなどの被加熱物110bの底部の温度分布の均一性を改善することができる。
なお、図8では、インバータ回路81が、第1の加熱コイル31に供給する第1の周波数の交流電流と、第2の加熱コイル32に供給する第2の周波数の交流電流とを同時に供給する場合について説明したが、第1の加熱コイル31に供給する第1の周波数の交流電流と第2の加熱コイル32に供給する第2の周波数の交流電流とは異なる時間に供給してもよい。すなわち、インバータ回路81は、第1の加熱コイル31に第1の周波数である25kHzの交流電流を供給する場合には、第2の加熱コイル32への交流電流の供給を停止し、第2の加熱コイル32に第2の周波数である75kHzの交流電流を供給する場合には、第1の加熱コイル31への交流電流の供給を停止してもよい。そして、第1の加熱コイル31に第1の周波数の交流電流を供給する動作と、第2の加熱コイル32に第2の周波数の交流電流を供給する動作とを交互に繰り返してもよい。
この場合の動作は、例えば、共通アーム回路24を25kHzでスイッチングさせておき、第1の加熱コイル31に25kHzの交流電流を供給する際に、第1のアーム回路21を25kHzでスイッチングし、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのゲート信号H7および第2のスイッチング素子27bのゲート信号L7を両方ともOFFとして第2の加熱コイル32に交流電流が流れないようにしてよい。また、第2の加熱コイル32に75kHzの交流電流を供給する際にも、共通アーム回路24のゲート信号を変更することなく25kHzでスイッチングさせておき、第2のアーム回路27を75kHzでスイッチングし、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aのゲート信号H1および第2のスイッチング素子21bのゲート信号L1を両方ともOFFとして第1の加熱コイル31に交流電流が流れないようにしてよい。
なお、図8では、第1のアーム回路21と共通アーム回路24とを25kHzでスイッチングし、第2のアーム回路27を75kHzでスイッチングする場合について説明したが、第1のアーム回路21を25kHzでスイッチングし、第2のアーム回路27と共通アーム回路24とを75kHzでスイッチングしてもよい。
第1のアーム回路21と共通アーム回路24とを25kHzでスイッチングし、第2のアーム回路27を75kHzでスイッチングする場合には、図8(g)に示すように、第1の共振回路に印加される電圧は、+Voと−Voとを交互に繰り返す矩形波となるので、第1の共振回路に印加される電圧が0となる期間が無く、第1の加熱コイル31への入力電力を最大にすることができる。一方、図8(i)に示すように、第2の共振回路に印加される電圧は、+Vo、−Voの期間に加え、電圧が0となる期間が生じるので、第2の加熱コイル32への入力電力は、第2の共振回路に印加される電圧に0となる期間が無い場合に比べて小さくなる。
これに対し、第1のアーム回路21を25kHzでスイッチングし、第2のアーム回路27と共通アーム回路24とを75kHzでスイッチングする場合には、第2の共振回路に印加される電圧に0となる期間を無くすことができるので、第2の加熱コイル32への入力電力を最大にすることができる。その一方で、第1の共振回路に印加される電圧に0となる期間が生じるので、第1の加熱コイル31への入力電力は、第1の共振回路に印加される電圧に0となる期間が無い場合に比べて小さくなる。
つまり、図6に示したように、非磁性金属の底部111の内周側に磁性金属部112を接合して構成した被加熱物110bを誘導加熱する際に、内周側の磁性金属部112を優先的に誘導加熱したい場合には、第1のアーム回路21と共通アーム回路24とを同じ周波数でスイッチングし、第2のアーム回路27を共通アーム回路24とは異なる周波数でスイッチングすればよい。一方、磁性金属部112よりも外周側の非磁性金属からなる底部111を優先的に誘導加熱したい場合には、第2のアーム回路27と共通アーム回路24とを同じ周波数でスイッチングし、第1のアーム回路21を共通アーム回路24とは異なる周波数でスイッチングすればよい。このような、内周側の磁性金属部112を優先的に誘導加熱するか、外周側の非磁性金属からなる底部111を優先的に誘導加熱するかの切り替えは、例えば、使用者が操作部5を操作した際の操作部5からの信号に基づいて、制御回路85が、各アーム回路のスイッチングを制御して切り替えてもよい。また、誘導加熱装置100の制御回路85が調理メニューに応じて自動的に切り替えてもよい。
以上のように、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱装置100では、第1のアーム回路21、第2のアーム回路27、共通アーム回路24を有するインバータ回路81が、第1の加熱コイル31に第1の周波数の交流電流を供給する場合に、所定の周波数で共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aをスイッチングし、第2の加熱コイル32に第1の周波数とは異なる第2の周波数の交流電流を供給する場合にも、第1の加熱コイル31に第1の周波数の交流電流を供給する場合と同じ周波数で共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aをスイッチングする。このため、第1のアーム回路21、第2のアーム回路27、共通アーム回路24の3つのアーム回路で、1つのアーム回路を共通にした第1のフルブリッジ回路と第2のフルブリッジ回路とを構成しても、第1のフルブリッジ回路に電気的に接続された第1の加熱コイル31と第2のフルブリッジ回路に電気的に接続された第2の加熱コイル32とに、互いに異なる周波数の交流電流を供給することができる。従って、アーム回路の数を増加させることなく異種材質からなる被加熱物の非磁性金属部に磁性金属部よりも高い周波数の交番磁束を鎖交させて誘導加熱することができる。
特許文献1に記された従来の誘導加熱装置では、非磁性金属で構成された被加熱物の底部の内周側に磁性金属部を接合して形成した異種材質からなる被加熱物を誘導加熱する場合、第1のアーム回路、第2のアーム回路、および共通アーム回路は、同じ周波数でスイッチングされて、第1の加熱コイルに流れる交流電流の周波数と第2の加熱コイル流れる交流電流の周波数とは同じであった。
このため、各アーム回路のスイッチング周波数を磁性金属部の誘導加熱に適した周波数(例えば25kHz)とする場合、磁性金属部の外周側の非磁性金属部の表皮効果は小さくなるため、非磁性金属部の抵抗は磁性金属部の抵抗に比べてかなり小さいものとなっていた。そのため、非磁性金属が載置された第2の加熱コイルには過電流が流れやすく、スイッチング素子の定格電流による制限から、第2の加熱コイルに入力する電力を増大させることが困難であった。そのため、異種材質からなる被加熱物の底部の内周側は早く温度上昇するが、外周側は温度上昇が遅くなり、結果として被加熱物底部の温度の均一性が損なわれていた。
また、各アーム回路のスイッチング周波数を非磁性金属部の誘導加熱に適した周波数(例えば75kHz)とする場合、磁性金属部の誘導加熱には過剰なほどに高い周波数で第1のアーム回路と共通アーム回路とをスイッチングするので、スイッチング損失が増大して誘導加熱の効率が低下していた。また、加熱コイルに流れる電流の周波数が高くなるに従い、加熱コイルを構成する導線の抵抗も増大するので誘導加熱の効率が低下していた。
これに対し、本発明の誘導加熱装置100は、被加熱物の内周側の磁性金属部を誘導加熱する第1の加熱コイル31に磁性金属の誘導加熱に適した第1の周波数(例えば25kHz)の交流電流を流し、磁性金属部の外周側の非磁性金属部を誘導加熱する第2の加熱コイル32に非磁性金属の誘導加熱に適した第2の周波数(例えば75kHz)の交流電流を供給する。このため、外周側の非磁性金属部の抵抗を表皮効果により増大させて、非磁性金属部に大きな電力を入力することができる。このため、異種材質からなる被加熱物底部の温度の均一性を改善することができるといった効果が得られる。
また、本発明の誘導加熱装置100は、第1のアーム回路21および共通アーム回路24のスイッチング周波数を第1の周波数とし、第2のアーム回路27のスイッチング周波数を第2の周波数として、第1の加熱コイル31に第1の周波数の交流電流を供給し、第2の加熱コイル32に第2の周波数の交流電流を供給する。このため、インバータ回路81のアーム回路数を増大することなく、第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32とに異なる周波数の交流電流を供給することができるので、インバータ回路81の小型化やコスト低減を図れるといった効果が得られる。
なお、上述のように第2のアーム回路27は、非磁性金属の誘導加熱に適した周波数でスイッチングされる必要があるので、磁性金属の誘導加熱に適した周波数でスイッチングすればよい第1のアーム回路21よりも高い周波数でのスイッチングが要求される。そのため、第1のアーム回路21を構成する第1のスイッチング素子21aと第2のスイッチング素子21bとをシリコン半導体で構成し、第2のアーム回路27を構成する第1のスイッチング素子27aと第2のスイッチング素子27bとをシリコンよりもバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体で構成してよい。これにより、第1のアーム回路21および第2のアーム回路27の両方のスイッチング素子をワイドバンドギャップ半導体で構成するよりもインバータ回路81の低コスト化を図ることができる。なお、ワイドバンドギャップ半導体は、例えば、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、あるいはダイヤモンドであってよい。
また、共通アーム回路24は、第1の加熱コイル31に交流電流を供給する第1のフルブリッジ回路と第2の加熱コイル32に交流電流を供給する第2のフルブリッジ回路とで共通になっているため、第1のアーム回路21および第2のアーム回路27よりも大きな電流が流れる。そのため、共通アーム回路24を構成する第1のスイッチング素子24aおよび第2のスイッチング素子24bには、第1のアーム回路21および第2のアーム回路27よりもオン抵抗が小さいスイッチング素子を用いるのが好ましい。従って、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aおよび第2のスイッチング素子21bはシリコン半導体で構成し、共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aおよび第2のスイッチング素子24bはワイドバンドギャップ半導体で構成するのが好ましい。同様に、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aおよび第2のスイッチング素子27bはシリコン半導体で構成し、共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aおよび第2のスイッチング素子24bはワイドバンドギャップ半導体で構成するのが好ましい。耐電圧を同じにする場合、ワイドバンドギャップ半導体で形成したスイッチング素子の方がシリコン半導体で形成したスイッチング素子よりもオン抵抗を小さくすることができるためである。これにより、全てのアーム回路のスイッチング素子をワイドバンドギャップ半導体で構成するよりもインバータ回路81の低コスト化を図ることができる。
本実施の形態1では、例示として、第1のアーム回路21および共通アーム回路24のスイッチング周波数が25kHzであって、第2のアーム回路27のスイッチング周波数が75kHzである場合について説明した。つまり、第2のアーム回路27のスイッチング周波数は、第1のアーム回路21および共通アーム回路24のスイッチング周波数の3倍(整数倍)である例について説明したが、例えば、第2のアーム回路27のスイッチング周波数が53kHzであって、第1のアーム回路21および共通アーム回路24のスイッチング周波数が25kHzであってもよい。すなわち、第2のアーム回路27のスイッチング周波数は、第1のアーム回路21および共通アーム回路24のスイッチング周波数の整数倍でなくてもよい。また、第1のアーム回路21のスイッチング周波数と共通アーム回路24のスイッチング周波数とが異なる周波数であってもよく、第1のアーム回路21のスイッチング周波数、第2のアーム回路27のスイッチング周波数、および共通アーム回路24のスイッチング周波数はそれぞれ異なっていてよい。また、それぞれの周波数は互いに可聴周波数以上の差があることが好ましい。ここで、可聴周波数とは、およそ20kHzである。それぞれ異なるスイッチング周波数の差が可聴周波数未満の場合には、周波数の差分が干渉音(唸り)となって誘導加熱装置100の使用者に聞こえるため、使用者が不快を感じるためである。
実施の形態2.
図9は、本発明の実施の形態2における誘導加熱装置のインバータ回路を構成する各スイッチング素子のゲート信号とインバータ回路から出力される電圧波形および電流波形を示すタイムチャートである。図9のタイムチャートは、実施の形態1で説明した誘導加熱装置100の状態を示すタイムチャートであり、図8に示したタイムチャートの状態から第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32の入力電力を低減する場合の電力制御方法について示したものである。図9において、図8と同一の記載については同一の内容を意味しており、その説明を省略する。また、本実施の形態2において、誘導加熱装置100の構成などは実施の形態1と同一であり、誘導加熱装置100の構成要素で同一の符号を付して説明したものは実施の形態1と同一である。
図9は図8と同じく、図9(a)〜(f)が各アーム回路のスイッチング素子のゲート信号波形であり、図9(g)〜(j)がインバータ回路81から出力される電圧波形および電流波形である。本実施の形態2では、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32の入力電力をPWM(Pulse Width Modulation)により制御する方法について説明する。
図9(a)および図9(b)に示すように、誘導加熱装置100の制御回路85が、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aのオン時間のデューティ比を25%にする制御信号H1を出力し、第1のアーム回路21の第2のスイッチング素子21bのオン時間のデューティ比を75%にする制御信号L1を出力する。また、図9(e)および図9(f)に示すように、誘導加熱装置100の制御回路85が、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのオン時間のデューティ比を25%にする制御信号H7を出力し、第2のアーム回路27の第2のスイッチング素子27bのオン時間のデューティ比を75%にする制御信号L7を出力する。
ここでは、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aおよび第2のアーム回路27の第2のスイッチング素子27aのオン時間のデューティ比を両方とも25%にする場合について示したが、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aのオン時間のデューティ比と第2のアーム回路27の第2のスイッチング素子27aのオン時間のデューティ比とはそれぞれ独立に制御可能であって、それぞれオン時間のデューティ比が異なっていてよい。第1のアーム回路21および第2のアーム回路27の第2のスイッチング素子27a、27bのゲート信号は、第1のスイッチング素子21a、27aのゲート信号に対応して一義的に決まるので説明を省略する。
図9(c)および図9(d)に示すように、誘導加熱装置100の制御回路85が、共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aのオン時間のデューティ比を50%にする制御信号H4を出力し、共通アーム回路24の第2のスイッチング素子24bのオン時間のデューティ比を50%にする制御信号L4を出力する。
この結果、図9(g)に示すように、第1のアーム回路21の出力端23と共通アーム回路24の出力端26との間に接続された第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とからなる第1の共振回路には、+Vo、0、−Vo、+Voと変化する矩形波電圧が印加される。この矩形波電圧の電圧が+Voの期間は1周期の25%であり、電圧が−Voの期間は1周期の50%であり、電圧が0の期間は1周期の25%である。図9(g)と図8(g)とを比較すると、第1の共振回路に印加される矩形波電圧において、+Voのパルス幅が減少していることが分かる。そして、図9(h)に示すように、第1の加熱コイル31に流れる電流の最大値および最小値の絶対値は、Ioよりも小さくなる。図9(h)と図8(h)とを比較すると、図9(h)の方が第1の加熱コイル31に流れる電流の大きさが小さくなっていることが分かる。また、第1の加熱コイル31に流れる電流の周波数は25kHzであり、図8(h)の状態から変化していない。
第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物に入力されて被加熱物を誘導加熱する電力は、第1の加熱コイル31に流れる電流の2乗に比例する。従って、図9(a)および図9(b)に示すように、第1のアーム回路31の第1のスイッチング素子21aのオン時間のデューティ比を変化させることによって、第1の加熱コイル31に供給される交流電流の電流値を変化させて、第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物に入力される電力を制御することができる。
一方、図9(i)に示すように、第2のアーム回路27の出力端29と共通アーム回路24の出力端26との間に接続された第2の加熱コイル32と第2の可変容量コンデンサ45とからなる第2の共振回路には、+Vo、0、+Vo、0、−Vo、0、−Vo、+Voと変化する矩形波電圧が印加される。この矩形波電圧の電圧が+Voの期間は共通アーム回路24のスイッチング周期の2/12であり、電圧が−Voの期間は共通アーム回路24のスイッチング周期の5/12であり、電圧が0の期間は共通アーム回路24のスイッチング周期の5/12である。図9(i)と図8(i)とを比較すると、第2の共振回路に印加される矩形波電圧において、+Voのパルス幅が半分に減少し、電圧が0の期間と−Voの期間がやや増加している。そして、図9(j)に示すように、第2の加熱コイル32に流れる電流の最大値および最小値の絶対値は、Ioよりも小さくなる。図9(j)と図8(j)とを比較すると、図9(j)の方が第2の加熱コイル32に流れる電流の大きさが小さくなっている。また、第2の加熱コイル32に流れる電流の周波数は75kHzであり、図8(j)の状態から変化していない。
以上のように、図9(e)および図9(f)に示すように、第2のアーム回路32の第1のスイッチング素子27aのオン時間のデューティ比を変化させることによって、第2の加熱コイル32に供給される交流電流の電流値を変化させて、第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物に入力される電力を制御することができる。
そして、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aのオン時間のデューティ比と第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのオン時間のデューティ比をそれぞれ独立に制御することで、第1の加熱コイル31に流れる交流電流の電流値と第2の加熱コイル32に流れる交流電流の電流値とをそれぞれ独立に制御することができる。この結果、第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物と第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物とをそれぞれ独立に制御可能な電力で誘導加熱することができるので、異種材質からなる被加熱物の内周側および外周側の加熱温度をそれぞれ独立して制御することができる。
なお、本実施の形態2では、第1のアーム回路21および第2のアーム回路27をPWMにより制御して、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32に流れる交流電流をそれぞれ独立して制御する方法について説明したが、共通アーム回路24をPWMにより制御して、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32に流れる交流電流を一緒に制御することも可能である。第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32に流れる交流電流を一緒に制御することで、異種材質からなる被加熱物であるフライパンなどの入力電力を一体的に制御できるので、使用者の目的に応じて使い分けることで利便性を高めることができる。第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32に流れる交流電流を独立に制御するのか一緒に制御するのかといったことは、例えば、操作部5を使用者が操作した場合の操作信号に基づいて制御回路85が決定してよい。
なお、本実施の形態2で説明したPWM制御による第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32に流れる交流電流の制御は、第1の加熱コイル31に流れる交流電流の周波数である第1の周波数と、第2のコイル32に流れる交流電流の周波数である第2の周波数とがどのような関係であっても行うことができる。つまり、本実施の形態2では、第1の周波数が25kHzであって、第2の周波数が75kHzである場合について説明したが、例えば、第1の周波数が25kHzであって、第2の周波数が57kHzであるというような、第2の周波数が第1の周波数の整数倍でない場合であってもよい。
実施の形態3.
図10は、本発明の実施の形態3における誘導加熱装置のインバータ回路を構成する各スイッチング素子のゲート信号とインバータ回路から出力される電圧波形および電流波形を示すタイムチャートである。図10のタイムチャートは、実施の形態1で説明した誘導加熱装置100の状態を示すタイムチャートであり、図8に示したタイムチャートの状態から第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32の入力電力を低減する場合の電力制御方法について示したものである。図10において、図8および図9と同一の記載については同一の内容を意味しており、その説明を省略する。また、本実施の形態3において、誘導加熱装置100の構成などは実施の形態1と同一であり、誘導加熱装置100の構成要素で同一の符号を付して説明したものは実施の形態1と同一である。
図10は図8および図9と同じく、図10(a)〜(f)が各アーム回路のスイッチング素子のゲート信号波形であり、図10(g)〜(j)がインバータ回路81から出力される電圧波形および電流波形である。本実施の形態3では、共通アーム回路24と同じ周波数でスイッチングされる第1のアーム回路21を位相差制御し、共通アーム回路24と異なる周波数でスイッチングされる第2のアーム回路27をPWM制御して、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32の入力電力をそれぞれ独立に制御する方法について説明する。
図10(a)に示すように、誘導加熱装置100の制御回路85が、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aのゲート信号がOFFからONに変化するタイミング、すなわち第1のスイッチング素子21aがターンオンするタイミングを90°遅らせたゲート信号H1を出力する。第1のスイッチング素子21aのゲート信号H1のオン時間のデューティ比は、図8の場合と同じく50%である。第1のアーム回路21の第2のスイッチング素子21bのゲート信号L1は、第1のスイッチング素子21aのゲート信号H1に基づいて一義的に決まるので、制御回路85は、第2のスイッチング素子21bのゲート信号L1はOFFからONに変化するタイミング、すなわちターンオフするタイミングを90°らせたゲート信号L1を出力する。第2のスイッチング素子21bのゲート信号L1のデューティ比も、図8の場合と同じく50%である。
図10(c)に示すように、共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aのスイッチング周波数は、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21のスイッチング周波数と同じ25kHzであって、オン時間のデューティ比は50%である。従って、図10(a)のように、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aがターンオンするタイミングを変化させることとは、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aがターンオンするタイミングと共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aがターンオンするタイミングとの間の時間を変化させることである。このような制御を位相差制御と呼ぶ。
図10(a)に示すように、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aがターンオンするタイミングを90°遅らせることで、図10(g)に示すように、第1のアーム回路21の出力端23と共通アーム回路24の出力端26との間に接続された第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とからなる第1の共振回路には、+Vo、0、−Vo、0、+Voと変化する矩形波電圧が印加される。この矩形波電圧の電圧が+Voの期間は1周期の25%であり、電圧が−Voの期間は1周期の25%であり、電圧が0の期間は1周期の50%である。図10(g)と図8(g)とを比較すると、第1の共振回路に印加される矩形波電圧において、+Voのパルス幅および−Voのパルス幅が減少していることが分かる。そして、図10(h)に示すように、第1の加熱コイル31に流れる電流の最大値および最小値の絶対値は、Ioよりも小さくなる。図10(h)と図8(h)とを比較すると、図10(h)の方が第1の加熱コイル31に流れる電流の大きさが小さくなっていることが分かる。また、第1の加熱コイル31に流れる電流の周波数は25kHzであり、図8(h)の状態から変化していない。
従って、図8(a)、(c)が示す状態から図10(a)、(c)が示す状態に制御する、すなわち第1のアーム回路31の第1のスイッチング素子21aがターンオンするタイミングと共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aがターンオンするタイミングとの間の時間を変化させることによって、第1の加熱コイル31に供給される交流電流の電流値を変化させて、第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物に入力される電力を制御することができる。
一方、第2のアーム回路27と共通アーム回路24とからなる第2のフルブリッジ回路の各スイッチング素子の制御については、実施の形態2と同一である。すなわち、共通アーム回路24のスイッチング周波数と異なる周波数でスイッチングされる第2のアーム回路27は、第1のスイッチング素子27aのオン時間のデューティ比を変化させて、第2の加熱コイル32に供給する交流電流の電流値を制御している。
以上のように、本実施の形態3で説明したように、第1のアーム回路21のスイッチング周波数が共通アーム回路24のスイッチング周波数と同一であって、第2のアーム回路27のスイッチング周波数が共通アーム回路24のスイッチング周波数と異なる場合には、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aのゲート信号H1を位相差制御し、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのゲート信号H7をPWM制御することで、第1の加熱コイル31に流れる交流電流の電流値と第2の加熱コイル32に流れる交流電流の電流値とをそれぞれ独立に制御することができる。
同様に、第1のアーム回路21のスイッチング周波数が共通アーム回路24のスイッチング周波数とは異なり、第2のアーム回路27のスイッチング周波数が共通アーム回路24のスイッチング周波数と同一である場合には、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aのゲート信号H1をPWM制御し、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのゲート信号H7を位相差制御することで、第1の加熱コイル31に流れる交流電流の電流値と第2の加熱コイル32に流れる交流電流の電流値とをそれぞれ独立に制御することができる。
なお、本実施の形態3においても、PWM制御を行う側のアーム回路のスイッチング周波数は、共通アーム回路24のスイッチング周波数と無関係であってよく、スイッチング周波数を任意に選択することができる。
実施の形態4.
図11は、本発明の実施の形態4における誘導加熱装置のインバータ回路を構成する各スイッチング素子のゲート信号とインバータ回路から出力される電圧波形および電流波形を示すタイムチャートである。図11のタイムチャートは、実施の形態1で説明した誘導加熱装置100の状態を示すタイムチャートであり、図8に示したタイムチャートの状態から第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32の入力電力を低減する場合の電力制御方法について示したものである。図11において、図8、図9、および図10と同一の記載については同一の内容を意味しており、その説明を省略する。また、本実施の形態4において、誘導加熱装置100の構成などは実施の形態1と同一であり、誘導加熱装置100の構成要素で同一の符号を付して説明したものは実施の形態1と同一である。
図11は図8、図9、および図10と同じく、図11(a)〜(f)が各アーム回路のスイッチング素子のゲート信号波形であり、図11(g)〜(j)がインバータ回路81から出力される電圧波形および電流波形である。本実施の形態4では、共通アーム回路24と同じ周波数でスイッチングされる第1のアーム回路21を位相差制御し、共通アーム回路24と異なる周波数でスイッチングされる第2のアーム回路27も位相差制御して、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32の入力電力をそれぞれ独立に制御する方法について説明する。共通アーム回路24と異なる周波数でスイッチングされる第2のアーム回路27のスイッチング周波数は、第1のアーム回路21および共通アーム回路24のスイッチング周波数の2n+1倍(nは1以上の自然数)である。
図11(a)〜(d)および図11(g)、(h)で示した第1のアーム回路21と共通アーム回路24とからなる第1のフルブリッジ回路から第1の加熱コイル31に供給される交流電流は、実施の形態3で説明したように位相差制御によって電流値が制御される。実施の形態3と動作が同一であるので説明を省略する。
図11(e)に示すように、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのゲート信号H7は、図8(e)のゲート信号H7と比較して分かるように、図8(e)の状態から位相が90°遅れている。図11(c)と図8(c)との比較から分かるように、共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aのゲート信号H4は、図11(c)と図8(c)とで同じであるので、図11(e)は図8(e)の状態から第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aがターンオンするタイミングと共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aがターンオンするタイミングとの間の時間が変化している。この結果、図11(i)と図8(i)との比較から分かるように、第2の加熱コイル32と第2の可変容量コンデンサ45とからなる第2の共振回路に印加される電圧は、+Voと−Voの期間が減少し、電圧が0の期間が増加する。このため、図11(j)に示すように第2の加熱コイル32に流れる交流電流の電流値は、図8(j)の状態から減少する。
実施の形態1の図8(a)で示したように、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのゲート信号H7の位相差が0°の場合には、図8(i)のように第2の共振回路に印加される電圧波形における電圧値の絶対値がVoの期間の割合が4/6である。一方、本実施の形態4のように、共通アーム回路24とスイッチング周波数が異なる第2のアーム回路27の位相差を制御して第2の加熱コイル32に流れる交流電流を低減する場合には、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのゲート信号H7の位相差が180°の場合に第2の加熱コイル32に流れる交流電流が最小になる。この場合、第2の共振回路に印加される電圧波形における電圧値の絶対値がVoの期間の割合は、2/6になる。つまり、本実施の形態4で説明した位相差制御により、第2の加熱コイル32に流れる交流電流の大きさを半分まで減少させることができる。
共通アーム回路24とはスイッチング周波数が異なる第2のアーム回路27を位相差制御して、第2の加熱コイル32に流れる交流電流の電流値を制御する場合、共通アーム回路24のスイッチング周波数と第2のアーム回路27のスイッチング周波数とが近い方が電流値の制御量を大きくすることができる。第2のアーム回路27のスイッチング周波数は、共通アーム回路24のスイッチング周波数の2n+1倍(nは1以上の自然数)である必要があるので、第2のアーム回路27のスイッチング周波数は、共通アーム回路24のスイッチング周波数の3倍が最も好ましい。
以上のように、本実施の形態4に係る誘導加熱装置100は、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aの位相差を制御することで、第1の加熱コイル31に流れる交流電流の電流値を制御することができ、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aの位相差を制御することで、第2の加熱コイル32に流れる交流電流の電流値を制御することができる。また、共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aの位相差を制御する場合には、第1の加熱コイル31に流れる交流電流の電流値と第2の加熱コイル32に流れる交流電流の電流値とを同時に制御することができる。
実施の形態5.
図12は、本発明の実施の形態5における誘導加熱装置のインバータ回路を構成する各スイッチング素子のゲート信号とインバータ回路から出力される電圧波形および電流波形を示すタイムチャートである。図12のタイムチャートは、実施の形態1で説明した誘導加熱装置100の状態を示すタイムチャートであり、図8に示したタイムチャートの状態から第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32の入力電力を低減する場合の電力制御方法について示したものである。図12において、図8、図9、図10および図11と同一の記載については同一の内容を意味しており、その説明を省略する。また、本実施の形態5において、誘導加熱装置100の構成などは実施の形態1と同一であり、誘導加熱装置100の構成要素で同一の符号を付して説明したものは実施の形態1と同一である。
図12は、図8、図9、図10および図11と同じく、図12(a)〜(f)が各アーム回路のスイッチング素子のゲート信号波形であり、図12(g)〜(j)がインバータ回路81から出力される電圧波形および電流波形である。本実施の形態5では、共通アーム回路24と同じ周波数でスイッチングされる第1のアーム回路21を周波数制御し、共通アーム回路24と異なる周波数でスイッチングされる第2のアーム回路27も周波数制御することで、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32の入力電力をそれぞれ独立に制御する方法について説明する。
図12(a)〜(f)に示した各ゲート信号は、図8(a)〜(f)に示した各ゲート信号と比べて、スイッチング周期に対するオン時間のデューティ比が50%となる点は同じであるが、ゲート信号の周波数が高くなるようにゲート信号の周期を変更している。本実施の形態5では、図8(a)〜(f)が周波数変更前の各スイッチング素子のゲート信号であり、図12(a)〜(f)が周波数変更後の各スイッチング素子のゲート信号である。
図8(a)〜(d)に示した第1のアーム回路21および共通アーム回路24の各スイッチング素子のゲート信号の周波数変更前の周波数は25kHzであり、図8(e)、(f)に示した第2のアーム回路27の各スイッチング素子のゲート信号の周波数変更前の周波数は75kHzである。また、図12(a)〜(d)に示した第1のアーム回路21および共通アーム回路24の各スイッチング素子のゲート信号の周波数変更後の周波数は26kHzであり、図12(e)、(f)に示した第2のアーム回路27の各スイッチング素子のゲート信号の周波数変更後の周波数は78kHzである。
図12(g)に示すように、第1のアーム回路21の出力端23と共通アーム回路24の出力端26との間に接続された第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とからなる第1の共振回路には、周波数が26kHzで+Vo、−Voと変化する短形波電圧が印加される。第1の共振回路に印加される電圧の周波数が26kHzとなると、周波数が25kHzであった場合と比べて、第1の共振回路に印加される電圧の周波数が第1の共振回路の共振周波数22.7kHzから遠ざかることになる。この結果、図12(h)に示すように、第1の加熱コイル31に流れる電流の最大値および最小値の絶対値は、Ioよりも小さくなる。図12(h)と図8(h)を比較すると、図12(h)の方が第1の加熱コイル31に流れる電流の大きさが小さくなっていることが分かる。また、第1の加熱コイル31に流れる電流の周波数は26kHzであり、図8(h)の周波数25kHzから変化している。
第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物に入力されて被加熱物を誘導加熱する電力は、第1の加熱コイル31に流れる電流の2乗に比例する。従って、図12(a)〜(d)に示すように、共通アーム回路24と同じ周波数でスイッチングされる第1のアーム回路21の周波数を変化させることによって、第1の加熱コイル31に供給される交流電流の電流値を変化させて、第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物に入力される電力を制御することができる。
同様に、図12(i)に示すように、第2のアーム回路27の出力端29と共通アーム回路24の出力端26との間に接続された第2の加熱コイル32と第2の可変容量コンデンサ45とからなる第2の共振回路には、周波数が78kHzと26kHzに起因した+Vo、0、+Vo、−Vo、0、−Voと変化する矩形波電圧が印加される。第2の共振回路に印加される電圧の周波数が78kHzとなると、周波数が75kHzであった場合と比べて、第2の共振回路に印加される電圧の周波数が第2の共振回路の共振周波数72.6kHzから遠ざかることになる。この結果、図12(j)に示すように、第2の加熱コイル32に流れる電流の最大値および最小値の絶対値は、Ioよりも小さくなる。図12(j)と図8(j)とを比較すると、図12(j)の方が第1の加熱コイル31に流れる電流の大きさが小さくなっていることが分かる。また、第1の加熱コイル31に流れる電流の周波数は78kHzであり、図8(j)の周波数75kHzから変化している。
第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物に入力されて被加熱物を誘導加熱する電力は、第2の加熱コイル32に流れる電流の2乗に比例する。従って、図12(e)〜(f)に示すように、第2のアーム回路27の周波数を変化させることによって、第2の加熱コイル32に供給される交流電流の電流値を変化させて、第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物に入力される電力を制御することができる。
ただし、第1のアーム回路21と同じスイッチング周波数でスイッチングされる共通アーム回路24のスイッチング周波数を変化させると、第2のアーム回路27のスイッチング周波数を変化させない場合であっても、変更された共通アーム回路24のスイッチング周波数によっては、第2の加熱コイル32の電流が変化する場合がある。例えば、共通アーム回路24と同じ周波数でスイッチングされる第1のアーム回路21のスイッチング周波数を25kHzから26kHzに変更し、第2のアーム回路27の周波数を75kHzに維持した場合では、第1の加熱コイル31に流れる電流の大きさは小さくなり、第2の加熱コイル32に流れる電流は小さくなる。一方、共通アーム回路24と同じ周波数でスイッチングされる第1のアーム回路21のスイッチング周波数を25kHzから24kHzに変更し、第2のアーム回路27の周波数を75kHzに維持した場合では、第1の加熱コイル31に流れる電流の大きさは大きくなり、第2の加熱コイル32に流れる電流は大きくなる。また、変更する周波数次第で、第1の加熱コイル31に流れる電流の大きさは大きくなり、第2の加熱コイル32に流れる電流は小さくなる場合や、第1の加熱コイル31に流れる電流の大きさは大きくなり、第2の加熱コイル32に流れる電流は小さくなる場合もある。
したがって、第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32に流れる電流とを制御する場合には、共通アーム回路24と同じ周波数でスイッチングされる第1のアーム回路21の周波数を変化させた後に、第2のアーム回路27の周波数を変化させて制御してもよい。
また、制御回路85は、共通アーム回路24の周波数を変化させた場合の第2の加熱コイル32に流れる電流および電力の増減を予め把握しておき、ある程度の電力を段階的に切り替える場合では、共通アーム回路24と同じ周波数でスイッチングされる第1のアーム回路21の周波数を変化させつつ、第2のアーム回路27の周波数を変化させることで、第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32に流れる電流を同時に制御してもよい。
本実施の形態5では、共振周波数からゲート信号の周波数を遠ざけることで、第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32に流れる電流を小さくなることを説明したが、共振周波数にゲート信号の周波数を近づけることで、第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32に流れる電流を大きくしてもよい。
このように、共通アーム回路24と同じ周波数でスイッチングされる第1のアーム回路21のスイッチング周波数を変化させ、第2のアーム回路27のスイッチング周波数を変化させることで、第1の加熱コイル31に流れる交流電流の電流値と第2の加熱コイル32に流れる交流電流の電流値とをそれぞれ独立に制御することができる。この結果、第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物と第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物とをそれぞれ独立に制御可能な電力で誘導加熱することができるので、異種材質からなる被加熱物の内周側および外周側の加熱温度をそれぞれ独立して制御することができる。
同様に、第1のアーム回路21のスイッチング周波数が共通アーム回路24のスイッチング周波数とは異なり、第2のアーム回路27のスイッチング周波数が共通アーム回路24のスイッチング周波数と同一である場合には、第1のアーム回路21のスイッチング周波数を変化させ、共通アーム回路24と同じ周波数でスイッチングされる第2のアーム回路27のスイッチング周波数を変化させることで、第1の加熱コイル31に流れる交流電流の電流値と第2の加熱コイル32に流れる交流電流の電流値とをそれぞれ独立に制御することができる。
なお、本新実施の形態5においても、異なる周波数でスイッチングされる第1のアーム回路21または第2のアーム回路27のスイッチング周波数は、共通アーム回路24のスイッチング周波数と無関係であってよく、スイッチング周波数を任意に選択することができる。
次に、各スイッチング素子のスイッチング周波数を共振周波数に近づける場合の周波数の制限について説明する。前述したように、一般に、誘導加熱装置のインバータ回路では、アーム回路を共振回路の共振周波数より高い周波数でスイッチングして、加熱コイルに流れる交流電流の位相がアーム回路のスイッチングより遅れ位相となるようにして、スイッチング損失が増大するのを抑制している。誘導加熱している際に、例えば、調理動作として鍋振りをすることで共振回路のインピーダンスが変化し、完全共振の状態や進み位相となる場合がある。この場合、スイッチング素子に流れる電流やサージ電圧が大きくなって各アーム回路のスイッチング素子などが破壊される恐れもある。したがって、ゲート信号の周波数を共振周波数に近づける場合であっても、必ず進み位相にならないように、スイッチング周波数を共振周波数より高い周波数で制御することが好ましい。
その方法として、例えば、制御回路85に予め周波数の閾値と負荷の共振周波数の誤差とを設定しておき、共振周波数とスイッチング周波数との差が、周波数の閾値以上となるようにスイッチング周波数を制御してよい。また、制御回路85は、負荷の共振周波数を常に検知し、共振周波数とスイッチング周波数との差をフィードバックすることでゲート信号の周波数を制御し、常に周波数の閾値以上となるようにスイッチング周波数を制御しても良い。さらに、制御回路85は、インバータ回路81の出力する電圧および電流を検出し、電圧と電流との位相差をフィードバックすることでスイッチング周波数を制御し、常に遅れ位相となるように制御してもよい。また、スイッチング周波数が共振周波数より低い周波数となり、進み位相となった場合には、制御回路85は、保護動作として各スイッチング素子のスイッチングを停止させて、誘導加熱を停止してもよい。
なお、本新実施の形態5では、第1の加熱コイル31の入力電力と第2の加熱コイル32の入力電力との両方を周波数制御により制御する方法について説明したが、第1の加熱コイル31または第2の加熱コイル32の一方の入力電力を実施の形態2または3で示したPWM制御または位相制御により制御し、第1の加熱コイル31または第2の加熱コイル32のうち他方の入力電力を本実施の形態5の周波数制御により制御してもよい。また、PWM制御と周波数制御とを組み合わせて、PWM制御しながら周波数制御を行ってもよい。
実施の形態6.
図13は、本発明の実施の形態6における誘導加熱装置で被加熱物を誘導加熱する場合の加熱コイル上に載置された被加熱物の位置を示す平面図である。図13(a)は、異種材質からなる被加熱物110bの中心が加熱コイル30の中心に一致する状態で被加熱物110bが載置された様子を示す平面図であり、図13(b)は、異種材質からなる被加熱物110bの中心が加熱コイル30の中心からずれた状態で被加熱物110bが載置された様子を示す平面図である。本実施の形態6において、誘導加熱装置100の構成などは実施の形態1と同一であり、誘導加熱装置100の構成要素で同一の符号を付して説明したものは実施の形態1と同一である。本実施の形態6では、実施の形態1の誘導加熱装置100と相違する点について説明する。
本実施の形態6の誘導加熱装置100は、トッププレート2上に載置された被加熱物の材質を判別する負荷検知を定期的に行う。誘導加熱装置100の負荷検知部11は、例えば、数秒に1回といった間隔で、第1の加熱コイル31上および第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物の材質をそれぞれ判別し、判別結果を制御回路85に送信する。制御回路85は、負荷検知部11から定期的に送信された判別結果に基づいて、インバータ回路81の第1のアーム回路21、共通アーム回路24、および第2のアーム回路27のスイッチングを制御し、インバータ回路81は、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32に交流電流を供給する。
負荷検知部11は、図3に示したように誘導加熱装置100に交流電源9が接続される電源供給部82に設けてもよい。しかし、交流電源9から誘導加熱装置100に入力される電流を検出して負荷検知を行う場合、第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物の材質と第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物の材質とを同時に判別することができないので、負荷検知に多くの時間を要し、定期的に負荷検知を行う場合には好ましくない。負荷検知部11は、第1の加熱コイル31と直列接続された電流検出部と第2の加熱コイル32に直列接続された電流検出部とにより、第1の加熱コイル31上の被加熱物と第2の加熱コイル32上の被加熱物とを同時に負荷検知できる構成が好ましい。第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32のそれぞれに電流検出部が直列接続されている場合、負荷検知部11は、被加熱物を誘導加熱している際に各加熱コイルに流れる電流から被加熱物の材質を判別して、判別結果を定期的に制御回路85に送信すればよい。
以下では、負荷検知部11が、第1の加熱コイル31に直列接続された電流検出部と第2の加熱コイル32に直列接続された電流検出部とで検出された各加熱コイルに流れる電流に基づいて被加熱物の材質を判別する場合について説明する。しかし、負荷検知部11の構成はこれに限るものではなく、図3で示したように交流電源9から入力される電流に基づいて被加熱物の材質を判別する構成であってもよい。
図13において、加熱コイル30は、被加熱物110bの底部の内周側を誘導加熱する第1の加熱コイル31と、被加熱物110bの底部の外周側を誘導加熱する第2の加熱コイル32とで構成されている。被加熱物110bは、アルミなどの非磁性金属で形成されたフライパンなどの鍋の底部111に鉄などの磁性金属からなる磁性金属部112を接合して構成されている。
図13(a)に示すように、使用者が、加熱コイル30の中心と被加熱物110bの中心とが一致するように被加熱物110bを加熱コイル30上に載置して、被加熱物の誘導加熱を開始するために誘導加熱装置100の操作部5を操作すると、誘導加熱装置100は、実施の形態1で説明したように第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32にパルス的な電流を流して、第1の加熱コイル31上および第2の加熱コイル32上の被加熱物の材質を判別する。そして、負荷検知部11が判別した結果に基づいて、インバータ回路85は、第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32とに同じまたは異なる周波数の交流電流を供給する。
図13(a)の場合、第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物110bの材質は磁性金属であって、第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物110bの材質も磁性金属であるので、インバータ回路81は、第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32とに同じ周波数の交流電流を供給する。この場合、図3に示す回路図において制御回路85は、第1の可変容量コンデンサ41の開閉器44を閉じてコンデンサ42とコンデンサ43とを並列に接続し、第2の可変容量コンデンサ45の開閉器48を閉じてコンデンサ46とコンデンサ47とを並列に接続する。
各加熱コイルのインダクタンスおよび各コンデンサの静電容量を実施の形態1で例示した値とした場合、図13(a)の状態では、第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とからなる第1の共振回路の共振周波数は22.7kHzとなり、第2の加熱コイル32と第2の可変容量コンデンサ44とからなる第2の共振回路の共振周波数も22.7kHzとなる。従って、インバータ回路81は、第1のアーム回路21、共通アーム回路24、および第2のアーム回路27を25kHzでスイッチングして、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32のそれぞれに25kHzの交流電流を供給する。
そして、負荷検知部11は、第1の加熱コイル31に流れる25kHzの交流電流と第2の加熱コイル32に流れる25kHzの交流電流とをそれぞれ電流検出部で検出して、第1の加熱コイル31上および第2の加熱コイル32上に載置されている被加熱物の材質はそれぞれ磁性金属であると判別する。この判別結果は、被加熱物の誘導加熱開始時に判別した結果なので、誘導加熱装置100は、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32のそれぞれに25kHzの交流電流を供給し続ける。
ここで、図13(b)に示すように、使用者が鍋振りなどを行って、被加熱物110bの中心が加熱コイル30の中心からずれた位置ずれが発生したとする。この場合、第1の加熱コイル31上には被加熱物110bの磁性金属部112が載置されているので、第1の加熱コイル31に流れる交流電流の大きさは変化しない。一方、第2の加熱コイル32上には被加熱物110bの磁性金属部112と磁性金属部112の外周側に設けられた非磁性金属からなる底部111とが載置されるので、第2の加熱コイル32のインダクタンスが減少し、第2の加熱コイル32上の被加熱物の抵抗も減少する。この結果、第2の加熱コイル32に流れる電流が変化するので、負荷検知部11は、第2の加熱コイル32上の負荷が変化したことを検知する。この際、第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物のうち非磁性金属からなる部位の割合が所定量を超えると、負荷検知部11は、第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物の材質は非磁性金属であると判別する。
負荷検知部11は、第1の加熱コイル31上の被加熱物の材質および第2の加熱コイル32上の被加熱物の材質を定期的に判別して制御回路85に送信しているので、制御回路85が第2の加熱コイル32上の被加熱物の材質が磁性金属から非磁性金属に変化したことを認識すると、制御回路85は第2の可変容量コンデンサ45の静電容量を変更する。
すなわち、制御回路85は、第2の可変容量コンデンサ45の開閉器48を開いて、コンデンサ46からコンデンサ47を切り離すので、第2の可変容量コンデンサ45の静電容量は0.024μFとなる。図13(b)に示すように、第2の加熱コイル32上の被加熱物が完全に非磁性金属になるわけではないので、第2の加熱コイル32のインダクタンスは、200μHよりは大きいが300μHより小さくなる。この結果、第2の加熱コイル32と第2の可変容量コンデンサ45とからなる第2の共振回路の共振周波数が高くなる。
そして、制御回路85は、インバータ回路81が第2のアーム回路27を第1のアーム回路21および共通アーム回路24のスイッチング周波数よりも高い周波数でスイッチングするように各アーム回路のスイッチング素子のゲート信号を出力する。この場合の各アーム回路のスイッチング素子のゲート信号は、上記実施の形態1〜4で説明した通りである。これにより、第1の加熱コイル31に第1の周波数の交流電流を供給し、第2の加熱コイル32に第1の周波数より周波数が高い第2の周波数の交流電流を供給して、被加熱物110bの磁性金属部112の外周側の非磁性金属からなる底部111を効率よく誘導加熱することができる。この結果、被加熱物の位置ずれが発生しても被加熱物の底部の温度均一性を改善することができる。
実施の形態7.
図14は、本発明の実施の形態7における誘導加熱装置による2つの被加熱物を誘導加熱する様子を示す斜視図である。図14において、実施の形態1の図5と同じ符号を付けたものは同一または対応する構成を示しており、その説明を省略する。また、本実施の形態7において、誘導加熱装置100の構成などは実施の形態1と同一であり、誘導加熱装置100の構成要素で同一の符号を付して説明したものは実施の形態1と同一である。本実施の形態7は、実施の形態1とは、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32がそれぞれ異なる加熱口に設けられた構成が相違している。
図13に示すように、誘導加熱装置100はトッププレート2に表示された載置位置3aに対向して第1の加熱コイル31が設けられており、載置位置3cに対向して第2の加熱コイル32が設けられている。第1の加熱コイル31には第1の可変容量コンデンサ41が直列接続されて、第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とが第1の共振回路を構成している。第2の加熱コイル32には第2の可変容量コンデンサ45が直列接続されて、第2の加熱コイル32と第2の可変容量コンデンサ45とが第2の共振回路を構成している。
第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32は、実施の形態1の図3の回路図で示したインバータ回路81により交流電流が供給される。すなわち、第1の加熱コイル31は、第1のアーム回路21の出力端23と共通アーム回路24の出力端26との間に電気的に接続されており、第2の加熱コイル32は、第2のアーム回路27の出力端29と共通アーム回路24の出力端26との間に電気的に接続されている。
図14に示すように、第1の加熱コイル31上に第1の加熱コイル31に流れる交流電流により誘導加熱される第1の被加熱物110aが載置され、第2の加熱コイル32上に第2の加熱コイル32に流れる交流電流により誘導加熱される第2の被加熱物110cが載置される。使用者が、誘導加熱装置100の操作部5を操作して、第1の被加熱物110aおよび第2の被加熱物110cを誘導加熱するための操作を行うと、負荷検知部11が、第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物110aの材質および第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物110cの材質を判別する。
負荷検知部11が、第1の加熱コイル31上の被加熱物110aの材質は鉄などの磁性金属であって、第2の加熱コイル32上の被加熱物110cの材質はアルミなどの非磁性金属であると判別した場合、制御回路85は、第1の可変容量コンデンサ41の開閉器44を閉じてコンデンサ42とコンデンサ43とを並列に接続し、第2の可変容量コンデンサ45の開閉器48を開いてコンデンサ46からコンデンサ48を切り離す。そして、実施の形態1で説明したように、第1のアーム回路21と共通アーム回路24とを第1の周波数でスイッチングさせ、第2のアーム回路27を第2の周波数でスイッチングさせる。第1の周波数は、例えば25kHzであってよく、第2の周波数は、例えば75kHzであってよい。この結果、第1の加熱コイル31には25kHzの交流電流が流れ、磁性金属からなる第1の被加熱物110aを25kHzの交番磁束により誘導加熱する。また、第2の加熱コイル32には75kHzの交流電流が流れ、非磁性金属からなる第2の被加熱物110cを75kHzの交番磁束で誘導加熱する。
なお、第1の被加熱物110aと第2の被加熱物110cとが、共に磁性金属である場合や、共に非磁性金属である場合には、第1のアーム回路21、共通アーム回路24、および第2のアーム回路27のスイッチング周波数を同じにして、第1の加熱コイル31に流れる交流電流と第2の加熱コイル32に流れる交流電流とを同じ周波数としてよい。
また、第1の可変容量コンデンサ41および第2の可変容量コンデンサ45は、必ずしも可変容量コンデンサでなくてもよく、静電容量が一定なコンデンサであってもよい。この場合、例えば、第1の加熱コイル31が設けられた加熱口を磁性金属の被加熱物を誘導加熱する加熱口とし、第2の加熱コイル32が設けられた加熱口を非磁性金属の被加熱物を誘導加熱する加熱口とする。そして、第1の加熱コイル31に直列接続されるコンデンサを、第1の可変容量コンデンサ41から開閉器44を除去してコンデンサ42とコンデンサ43とを並列接続して構成し、第2の加熱コイル32に直列接続されるコンデンサを、第2の可変容量コンデンサ45から開閉器48とコンデンサ47とを除去してコンデンサ46のみで構成する。そして、第1のアーム回路21と共通アーム回路24とを第1の周波数でスイッチングさせ、第2のアーム回路27を第2の周波数でスイッチングさせて、第1の加熱コイル31に第1の周波数の交流電流を供給し、第2の加熱コイル32に第2の周波数の交流電流を供給してもよい。
以上、本発明の実施の形態1〜7について説明した。これらの、本発明の実施の形態1〜7で説明した構成は互いに組合せることができる。
11 負荷検知部
21 第1のアーム回路、21a 第1のスイッチング素子、23 出力端
24 共通アーム回路、24a 第1のスイッチング素子、26 出力端
27 第2のアーム回路、21a 第2のスイッチング素子、29 出力端
31 第1の加熱コイル、32 第2の加熱コイル
41 第1の可変容量コンデンサ、45 第2の可変容量コンデンサ
81 インバータ回路
100 誘導加熱装置
本発明は、誘導加熱装置に関する。
従来の誘導加熱装置では、1つの加熱口の内周側に設けられた第1の加熱コイルと、第1の加熱コイルよりも外周側に設けられた第2の加熱コイルとを備え、第1の加熱コイルおよび第2の加熱コイルに交流電流を供給するインバータ回路は、2つのスイッチング素子が直列接続されたアーム回路を3つ用いて構成されていた(例えば、特許文献1参照)。
3つのアーム回路は、第1のアーム回路、第2のアーム回路、および共通アーム回路であり、第1のアーム回路と共通アーム回路との間に第1の加熱コイルが接続され、第2のアーム回路と共通アーム回路との間に第2の加熱コイルが接続されていた。また、第1の加熱コイルと第2の加熱コイルは、それぞれスイッチの開閉により静電容量を切替え可能な可変容量コンデンサに直列接続され、加熱口に載置される被加熱物が磁性金属か非磁性金属かによって、スイッチの開閉を切替えていた。そして、第1のアーム回路、第2のアーム回路、および共通アーム回路を同じ周波数でスイッチングし、第1の加熱コイルと第2の加熱コイルとに同じ周波数の交流電流を供給して被加熱物を誘導加熱していた。また、被加熱物が非磁性金属からなる場合には、被加熱物が磁性金属からなる場合よりも各アーム回路のスイッチング周波数を高くして第1の加熱コイルと第2の加熱コイルとに供給する交流電流の周波数を高くしていた。被加熱物をより高周波の交番磁束によって誘導加熱すると、表皮効果によって被加熱物に渦電流が流れる表皮深さが浅くなるため、渦電流が流れる経路の電気抵抗が高くなる。この結果、被加熱物が非磁性金属からなる場合であっても効率良く誘導加熱をすることができていた。
しかしながら、特許文献1に記された従来の誘導加熱装置では、非磁性金属からなる被加熱物の底部の内周側に磁性金属を接合して形成した異種材質からなる被加熱物を誘導加熱する場合には、第1の加熱コイル上に磁性金属が位置し、第2の加熱コイル上に非磁性金属が位置するので、被加熱物を効率良く誘導加熱することができなかった。すなわち、従来の誘導加熱装置は、第1の加熱コイルと第2の加熱コイルとに同じ周波数の交流電流を流すので、交流電流を磁性金属の誘導加熱に適した周波数とすると、外周側の非磁性金属の誘導加熱が不十分となり、交流電流を非磁性金属の誘導加熱に適した周波数とすると、内周側の磁性金属の誘導加熱にとっては不必要に高い周波数となるため磁性金属を誘導加熱する効率が低下するという問題点があった。
本発明は、上述のような問題を解決するためになされたもので、第1の加熱コイルと第2の加熱コイルとが共通アーム回路を共用しても、第1の加熱コイルおよび第2の加熱コイルに異なる周波数の交流電流を供給できる誘導加熱装置を提供することを目的とする。
本発明に係る誘導加熱装置は、第1のスイッチング素子、第1のスイッチング素子に直列接続された第2のスイッチング素子、および第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子との間に設けられた出力端を有するアーム回路を複数有し、複数のアーム回路に第1のアーム回路、第2のアーム回路、および共通アーム回路を含むインバータ回路と、第1のアーム回路の出力端と共通アーム回路の出力端との間に電気的に接続された第1の加熱コイルと、第2のアーム回路の出力端と共通アーム回路の出力端との間に電気的に接続された第2の加熱コイルと、を備え、インバータ回路は、第1の加熱コイルに第1の周波数の交流電流を供給する場合に、所定の周波数で共通アーム回路の第1のスイッチング素子をスイッチングし、第2の加熱コイルに第1の周波数とは異なる第2の周波数の交流電流を供給する場合にも、第1の加熱コイルに第1の周波数の交流電流を供給する場合と同じ周波数で共通アーム回路の第1のスイッチング素子をスイッチングする。
本発明に係る誘導加熱装置によれば、第1の加熱コイルと第2の加熱コイルとが共通アーム回路を共用しても、第1の加熱コイルおよび第2の加熱コイルに異なる周波数の交流電流を供給できる。
本発明の実施の形態1における誘導加熱装置を示す斜視図である。
本発明の実施の形態1における加熱コイルを示す平面図である。
本発明の実施の形態1における誘導加熱装置の電気回路の構成を示す回路図である。
本発明の実施の形態1における誘導加熱装置のトッププレート上に単一材質からなる被加熱物および異種材質からなる被加熱物が載置された場合の様子を示す断面図である。
本発明の実施の形態1における誘導加熱装置による単一材質からなる被加熱物を誘導加熱する様子を示す斜視図である。
本発明の実施の形態1における誘導加熱装置による異種材質からなる被加熱物を誘導加熱する様子を示す斜視図である。
本発明の実施の形態1の誘導加熱装置における異種材質からなる被加熱物を誘導加熱する場合の駆動条件の一例を示したものである。
本発明の実施の形態1における誘導加熱装置のインバータ回路を構成する各スイッチング素子のゲート信号とインバータ回路から出力される電圧波形および電流波形を示すタイムチャートである。
本発明の実施の形態2における誘導加熱装置のインバータ回路を構成する各スイッチング素子のゲート信号とインバータ回路から出力される電圧波形および電流波形を示すタイムチャートである。
本発明の実施の形態3における誘導加熱装置のインバータ回路を構成する各スイッチング素子のゲート信号とインバータ回路から出力される電圧波形および電流波形を示すタイムチャートである。
本発明の実施の形態4における誘導加熱装置のインバータ回路を構成する各スイッチング素子のゲート信号とインバータ回路から出力される電圧波形および電流波形を示すタイムチャートである。
本発明の実施の形態5における誘導加熱装置のインバータ回路を構成する各スイッチング素子のゲート信号とインバータ回路から出力される電圧波形および電流波形を示すタイムチャートである。
本発明の実施の形態6における誘導加熱装置で被加熱物を誘導加熱する場合の加熱コイル上に載置された被加熱物の位置を示す平面図である。
本発明の実施の形態7における誘導加熱装置による2つの被加熱物を誘導加熱する様子を示す斜視図である。
実施の形態1.
まず、本発明の実施の形態1における誘導加熱装置の構成を説明する。図1は、本発明の実施の形態1における誘導加熱装置を示す斜視図である。
図1において、誘導加熱装置100は、筐体1と、筐体1の上部に設けられたトッププレート2とにより外郭が構成されている。トッププレート2は、ガラスやセラミックスあるいは樹脂などの絶縁物を有しており、誘導加熱装置100により誘導加熱される鍋やフライパンなどの被加熱物がトッププレート2の絶縁物で構成された領域に載置される。トッププレート2には、被加熱物を載置する位置の目安を示す載置位置3a、3b、3cが表示されている。載置位置3a、3b、3cは、トッププレート2がガラスなどの透明な材質である場合、載置面であるトッププレート2の表面とは反対側の裏面に印刷などにより表示されていてよい。また、載置位置3a、3b、3cは、トッププレート2の裏面側に設けられた発光ダイオードなどの発光素子と導光部材などで構成され、被加熱物を載置する位置がトッププレート2の表面側から視認できるように構成されていてもよい。図1では、載置位置3a、3b、3cが被加熱物を載置する領域を示すように記しているが、載置位置3a、3b、3cは被加熱物を載置する位置の中心を示す点などで表示されていてもよい。誘導加熱装置100は、載置位置3a、3b、3cに載置された被加熱物を誘導加熱するので、載置位置3a、3b、3cをそれぞれ加熱口と呼んでもよい。
誘導加熱装置100は、筐体1の前面側に引き出し可能な開閉扉を有するグリル部4を有している。グリル部4は、直方体状の内部空間を有する加熱庫にヒータなどの加熱手段が設けられている。グリル部4は、例えば、焼き魚などのグリル調理などを行う場合に使用される。なお、グリル部4は必ずしも必要ではなく、誘導加熱装置100は、グリル部4を有さない構成であってもよい。
誘導加熱装置100は、トッププレート2の前方に操作部5a、筐体1の前面に操作部5b、5cを有している。操作部5a、5b、5cは、載置位置3a、3b、3cに載置された被加熱物を誘導加熱する際の加熱開始、加熱停止、あるいは加熱電力の調整や、グリル部4による加熱開始、加熱停止、あるいは加熱電力の調整などに用いられる。操作部5a、5b、5cが設けられる位置は、図1に示す位置に限らず、誘導加熱装置100を使用する使用者が、誘導加熱装置100の操作を行い易い場所であればよい。
トッププレート2の前方には、誘導加熱装置100の状態を表示する表示部6が設けられている。表示部6は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイなどのディスプレイ装置であってよい。表示部6を設ける位置は、誘導加熱装置100の使用者が視認しやすい位置であればよく、トッププレート2の前方に限らず、例えば、筐体1の前面に表示部6を設けてもよい。表示部6には、誘導加熱装置100の動作状況に応じて様々な情報が表示される。例えば、各加熱口に入力される電力や電力の相対的な大小が表示されてもよく、各加熱口に載置された被加熱物の底面の温度が表示されてもよい。また、表示部6をタッチパネル付のディスプレイ装置で構成し、表示部6と操作部とを一体的に形成してもよい。
トッププレート2の後方には排気口7a、7b、7cが設けられている。排気口7a、7b、7cは、誘導加熱装置100内に設けられたグリル部4、電気回路(図示せず)、加熱コイル(図示せず)などで発生した熱や、グリル部4内での調理により発生した油煙などを誘導加熱装置100の外部に排出するための排気口である。図1では、排気口7a、7b、7cをトッププレート2に設けているが、排気口を筐体1に設けてもよい。また、排気口の数は3口に限るものではなく、1口以上であればよい。なお、誘導加熱装置100がグリル部4を有さない場合には、排気口を設けずに、例えば、筐体1の表面から放熱する構成であってもよい。
誘導加熱装置100の内部には、トッププレート2上に載置された鍋などの被加熱物を誘導加熱するための加熱コイルと、加熱コイルに高周波電流を供給するための電気回路とが設けられている。加熱コイルは、トッププレート2に表示された載置位置3a、3b、3cのそれぞれに対向して、トッププレート2の裏面側に設けられている。加熱コイルは、例えば、被覆された導線を渦巻状に巻回して形成してよい。加熱コイルを形成する導線に、銅などの導電率が高い金属からなる細線を被覆した被服細線を複数本撚って形成したリッツ線を用いると、20kHz〜100kHzといった高周波における加熱コイルの電気抵抗の増大を抑制できるのでより好ましい。1つの加熱コイルは、電気回路に接続される端子を2つ有している。すなわち、1つの加熱コイルは両端を有する2端子回路部品である。また、加熱コイルは必要に応じて被加熱物に対向する面とは反対側の面に対向させてフェライトコアなどの磁性体を有していてもよい。
図2は、本発明の実施の形態1における加熱コイルを示す平面図である。図2(a)〜(d)は誘導加熱装置100内に設けられた加熱コイルの一例を示すものであって、本発明の誘導加熱装置100は、図2(a)〜(d)に示した形状以外の加熱コイルが設けられていてもよい。ここでは、図1に示した誘導加熱装置100は、図2(a)〜(d)に示された加熱コイルのいずれかが、トッププレート2の裏面側に載置領域3a、3b、3cに対向して設けられているとして説明する。なお、載置領域3a、3b、3cには、それぞれ形状が異なる加熱コイルが対向して設けられていてよく、例えば、載置領域3aに対向して図2(c)の加熱コイル30cが設けられ、載置領域3bに対向して図2(b)の加熱コイル30bが設けられ、載置領域3cに対向して図2(a)の加熱コイル30aが設けられていてもよい。
図2(a)に示す加熱コイル30aは、導線を巻回してリング状に形成された加熱コイル31と、導線を巻回してリング状に形成され、加熱コイル31に隣接して配置された加熱コイル32とで構成されている。加熱コイル32は、加熱コイル31の周囲に加熱コイル31と離隔して配置されている。加熱コイル31および加熱コイル32はそれぞれ導線の両端に電気回路に接続される端子を有しており、それぞれが個別の加熱コイルとなっている。加熱コイル32は、加熱コイル31を取り囲んで設けられているので、加熱コイル30上に被加熱物が載置されると、加熱コイル31が被加熱物の内周側の領域を誘導加熱し、加熱コイル32が被加熱物の外周側の領域を誘導加熱する。
図2(a)では、加熱コイル31を第1の加熱コイル、加熱コイル32を第2の加熱コイルとしてよい。また、第1の加熱コイルおよび第2の加熱コイルの呼称を入れ替えて、加熱コイル32を第1の加熱コイル、加熱コイル31を第2の加熱コイルとしてもよい。以下では言及を省略するが、本発明において、第1の加熱コイルと第2の加熱コイルとは、呼称を互いに入れ替えてよい。つまり、複数の加熱コイルのうちの1つが第1の加熱コイルであって、複数の加熱コイルのうち第1の加熱コイルを除く加熱コイルのうちの1つが第2の加熱コイルである。第1の加熱コイルおよび第2の加熱コイルは、トッププレート2の裏面側に、トッププレート2の裏面に対向して設けられている。
図2(b)に示す加熱コイル30bは、導線を巻回してそれぞれリング状に形成された加熱コイル31a、加熱コイル31b、および加熱コイル32で構成されている。加熱コイル31aと加熱コイル31bとは隣接して配置され互いに離隔している。また、加熱コイル31bと加熱コイル32とは隣接して配置され互いに離隔している。加熱コイル31a、加熱コイル31b、加熱コイル32はそれぞれが導線の両端に端子を有する個別の加熱コイルであってもよいが、例えば、加熱コイル31aと加熱コイル31bとが連続した導線により形成されて1つの加熱コイルとして機能するようにしてもよい。つまり、第1の加熱コイルを加熱コイル31aと加熱コイル31bとで構成し、第2の加熱コイルを加熱コイル32で構成してもよい。
図2(c)に示す加熱コイル30cは、導線を巻回してそれぞれリング状に形成された加熱コイル31a、加熱コイル31b、加熱コイル32a、加熱コイル32b、加熱コイル32c、および加熱コイル32dで構成されている。図2(b)の場合と同様に、加熱コイル31aおよび加熱コイル31bは、それぞれ個別の加熱コイルであってもよく、加熱コイル31aと加熱コイル31bとで1つの加熱コイルを構成してもよい。加熱コイル32a、加熱コイル32b、加熱コイル32c、および加熱コイル32dもそれぞれ個別の加熱コイルであってもよく、あるいは、例えば、加熱コイル32aと加熱コイル32cとが接続されて1つの加熱コイルを構成し、加熱コイル32bと加熱コイル32dとが接続されてもう1つの加熱コイルを構成していてもよい。つまり、第1の加熱コイルを加熱コイル31aと加熱コイル31bとで構成し、第2の加熱コイルを加熱コイル32aと加熱コイル32cとで構成してもよい。
図2(d)に示す加熱コイル30dは、導線を巻回してそれぞれリング状に形成された加熱コイル31a、加熱コイル32a、加熱コイル32b、加熱コイル32c、加熱コイル32d、加熱コイル32e、加熱コイル32f、加熱コイル32g、および加熱コイル32hで構成されている。図2(c)の場合と同様に、加熱コイル31a〜31hは、それぞれ個別の加熱コイルであってもよく、加熱コイル31a〜31hのうちいくつかの加熱コイルが接続されて1つの加熱コイルを構成してもよい。例えば、第1の加熱コイルを加熱コイル32が構成し、第2の加熱コイルを加熱コイル32aが構成してもよい。また、第1の加熱コイルを加熱コイル31、加熱コイル32a、加熱コイル32b、および加熱コイル32hで構成し、第2の加熱コイルを加熱コイル32c、加熱コイル32d、加熱コイル32e、および加熱コイル32gで構成してもよい。また、リレーや半導体スイッチング素子などの開閉器を用いて、調理目的に合わせて、複数の加熱コイルの接続を組み替えて、そのうちの一組を第1の加熱コイルとし、他の一組を第2の加熱コイルとしてもよい。
図3は、本発明の実施の形態1における誘導加熱装置の電気回路の構成を示す回路図である。図3に示すように、誘導加熱装置100の電気回路8は、インバータ回路81、電源供給部82、チョークコイル83、直流部84、制御回路85を備えている。前述のように電気回路8は、筐体1およびトッププレート2で囲われた誘導加熱装置100の内部に設けられている。
電源供給部82は、電源ヒューズ12、入力コンデンサ13、ダイオードブリッジ14を有している。入力コンデンサ13は、ダイオードブリッジ14の交流側端子に並列に接続されており、入力コンデンサ13に並列に外部電源である交流電源9が接続される。入力コンデンサ13はフィルタとして機能する。交流電源9はいわゆる商用電源である。交流電源9と入力コンデンサ13との間には電源ヒューズ12が設けられ、交流電源9から誘導加熱装置100に過電流が流入するのを防止している。ダイオードブリッジ14は、交流側端子に入力された交流電力を直流電力に整流してダイオードブリッジ14の直流側端子から出力する。電源供給部82は、交流電源9が接続される入出力端に入力電流の電流値を検出して被加熱物の材質を検出する負荷検知部11を設けてもよい。負荷検知部11についてのより詳しい説明は後述する。
図3に示すように、ダイオードブリッジ14の直流側端子にはチョークコイル83を介して直流部84が並列に接続されている。直流部84は、例えば、コンデンサであってよく、直流部84がコンデンサである場合には、チョークコイル83と直流部84を構成するコンデンサとがフィルタを構成してよい。また、直流部84は昇圧チョッパ、降圧チョッパ、あるいは昇降圧チョッパなどのDC/DCコンバータで構成してよく、インバータ回路81に入力される直流電圧の電圧値を変化させる構成としてもよい。さらに、直流部84は交流電源9から入力される交流電力の力率を改善する力率改善コンバータであってもよい。直流部84がコンデンサである場合には、交流電圧を全波整流した周期的に電圧値が変動する脈流の直流電圧がインバータ回路81に入力される。一方、直流部84がDC/DCコンバータである場合には、インバータ回路81には電圧値がほぼ一定の直流電圧が入力される。以下の説明では、インバータ回路81には電圧値が一定の直流電圧が入力されるとして説明するが、インバータ回路81に脈流の直流電圧が入力される場合であっても以下の説明は同様である。
図3に示すように、直流部84にはインバータ回路81が並列に接続されている。インバータ回路81は、互いに並列に接続された第1のアーム回路21、第2のアーム回路27、および共通アーム回路24を有している。各アーム回路は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect-Transistor)などのスイッチング素子を2つ直列接続して構成されており、2つのスイッチング素子の間に出力端が設けられている。
第1のアーム回路21は、直流部84の高電圧側に電気的に接続された第1のスイッチング素子21aと、第1のスイッチング素子21aに直列接続されて直流部84の低電圧側に接続された第2のスイッチング素子21bと、第1のスイッチング素子21aと第2のスイッチング素子21bとの間に設けられた出力端23とを有している。また、第1のスイッチング素子21aと逆並列にダイオード22aが接続され、第2のスイッチング素子21bと逆並列にダイオード22bが接続されている。なお、第1のスイッチング素子21aおよび第2のスイッチング素子21bがMOSFETである場合には、ボディダイオードを有しているので、ダイオード22aおよびダイオード22bは必ずしも必要ではない。第1のスイッチング素子21aのゲート端子には、ゲート信号H1が入力され、第1のスイッチング素子21aはゲート信号H1に基づいてオンとオフとが制御される。同様に、第2のスイッチング素子21bのゲート端子には、ゲート信号L1が入力され、第2のスイッチング素子21bはゲート信号L1に基づいてオンとオフとが制御される。
第2のアーム回路27は、直流部84の高電圧側に電気的に接続された第1のスイッチング素子27aと、第1のスイッチング素子27aに直列接続されて直流部84の低電圧側に接続された第2のスイッチング素子27bと、第1のスイッチング素子27aと第2のスイッチング素子27bとの間に設けられた出力端29とを有している。また、第1のスイッチング素子27aと逆並列にダイオード28aが接続され、第2のスイッチング素子27bと逆並列にダイオード28bが接続されている。第1のスイッチング素子27aのゲート端子には、ゲート信号H7が入力され、第1のスイッチング素子27aはゲート信号H7に基づいてオンとオフとが制御される。同様に、第2のスイッチング素子27bのゲート端子には、ゲート信号L7が入力され、第2のスイッチング素子27bはゲート信号L7に基づいてオンとオフとが制御される。
共通アーム回路24は、直流部84の高電圧側に電気的に接続された第1のスイッチング素子24aと、第1のスイッチング素子24aに直列接続されて直流部84の低電圧側に接続された第2のスイッチング素子24bと、第1のスイッチング素子24aと第2のスイッチング素子24bとの間に設けられた出力端26とを有している。また、第1のスイッチング素子24aと逆並列にダイオード25aが接続され、第2のスイッチング素子24bと逆並列にダイオード25bが接続されている。第1のスイッチング素子24aのゲート端子には、ゲート信号H4が入力され、第1のスイッチング素子24aはゲート信号H4に基づいてオンとオフとが制御される。同様に、第2のスイッチング素子24bのゲート端子には、ゲート信号L4が入力され、第2のスイッチング素子24bはゲート信号L4に基づいてオンとオフとが制御される。
なお、図3では、インバータ回路81が3つのアーム回路を有する構成を示したが、インバータ回路は4つ以上のアーム回路を有し、1つまたは複数のアーム回路を共通アーム回路とする構成であってもよい。また、各アーム回路を構成する各スイッチング素子は、ディスクリートの半導体スイッチング素子で構成してよく、IPM(Intelligent Power Module)のように複数の半導体素子を1つのパッケージ内に内蔵した電力用半導体モジュールで構成してもよい。3つのアーム回路を内蔵した電力用半導体モジュールは、三相交流モータの駆動用インバータ装置に広く用いられているので、このような電力用半導体モジュールを用いることで、誘導加熱装置100のインバータ回路81を低コストで構成することができる。また、各アーム回路は、スイッチング素子にコンデンサと抵抗器とを含むスナバ回路を並列接続して、スイッチング素子に印加されるサージ電圧を抑制する構成としてもよい。
第1のアーム回路21と共通アーム回路24とが第1のフルブリッジ回路を構成し、第2のアーム回路27と共通アーム回路24とが第2のフルブリッジ回路を構成している。第1のアーム回路21の出力端23と共通アーム回路24の出力端26との間に、第1の加熱コイル31が電気的に接続されている。また、第2のアーム回路27の出力端29と共通アーム回路24の出力端26との間に、第2の加熱コイル32が電気的に接続されている。第1の加熱コイル31には第1の可変容量コンデンサ41が直列接続されて、第1のアーム回路21の出力端23と共通アーム回路24の出力端26との間に、第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とからなる第1の共振回路が接続されている。また、第2の加熱コイル32には第2の可変容量コンデンサ45が直列接続されて、第2のアーム回路27の出力端29と共通アーム回路24の出力端26との間に、第2の加熱コイル32と第2の可変容量コンデンサ45とからなる第2の共振回路が接続されている。なお、本発明では、第1の加熱コイル31、第2の加熱コイル32、第1の可変容量コンデンサ41、および第2の可変容量コンデンサ45はインバータ回路81を構成するものではないとして扱っている。
第1の可変容量コンデンサ41は、静電容量を変更することができるコンデンサである。例えば、図3に示すように、第1の可変容量コンデンサ41は、コンデンサ43と開閉器44とを直列接続したものをコンデンサ42に並列接続することで構成することができる。あるいは、コンデンサに開閉器を並列接続したものを別のコンデンサに直列接続して構成してもよい。第1の可変容量コンデンサ41に用いられるコンデンサおよび開閉器の数は任意に設定してよく、直列数や並列数も任意に設定してよい。開閉器は、例えば、リレーであってよく、半導体スイッチング素子であってもよい。第2の可変容量コンデンサ45についても、第1の可変容量コンデンサ41と同様である。第2の可変容量コンデンサ45は、コンデンサ47と開閉器48とを直列接続したものをコンデンサ46に並列接続して構成されている。第1の可変容量コンデンサ41の開閉器44、および第2の可変容量コンデンサ45の開閉器48は、制御回路85からの制御信号により開閉が制御される。
制御回路85は、インバータ回路81の各アーム回路の第1のスイッチング素子21a、24a、27aおよび第2のスイッチング素子21b、24b、27bのスイッチング制御、および、第1の可変容量コンデンサ41の開閉器44および第2の可変容量コンデンサ45の開閉器48の開閉制御を行う制御信号を出力する。図3では、各スイッチング素子のゲート端子と制御回路85とを結ぶ信号線、および、開閉器44、48と制御回路85とを結ぶ信号線を省略して示している。
また、制御回路85は、負荷検知部11と信号線で接続され、負荷検知部11からの信号を受信する。さらに、制御回路85は、操作部5および表示部6に信号線で接続されており、操作部5および表示部6と制御回路85との間で操作信号や表示信号などの信号の送受信を行う。操作部5は、図1で示した操作部5a、5b、5cであって、表示部6は図1で示した表示部6である。また、直流部84がDC/DCコンバータである場合には、制御回路85は、DC/DCコンバータに含まれるスイッチング素子のスイッチング制御を行ってもよい。制御回路85は、アナログ回路やデジタル回路を有する集積回路を用いて構成してもよく、マイコンなどの演算処理装置を用いて構成しもよい。また、必要に応じて各スイッチング素子を駆動するためのゲート駆動回路や保護回路を備えていてもよい。
負荷検知部11は、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32に載置された被加熱物の材質を判別する。被加熱物が鉄などの磁性金属である場合と、アルミや銅などの非磁性体である場合とでは、各加熱コイルの両端で測定したインピーダンスは異なるため、このインピーダンスの違いを利用して、第1の加熱コイル31または第2の加熱コイル32に載置された被加熱物の材質を判別する。インピーダンスとして、抵抗の変化を利用して被加熱物の材質を判別してもよく、インダクタンスの変化を利用して被加熱物の材質を判別してもよい。負荷検知部11を設ける位置は、図3に示す位置に限らず、例えば、第1の加熱コイル31に直列に第1の負荷検知部を設け、第2の加熱コイル32に直列に第2の負荷検知部を設けた構成としてもよい。
図3に示すように、負荷検知部11を誘導加熱装置100の入力端に設けた場合、制御回路85は、第1のアーム回路21、共通アーム回路24を制御し、第1の加熱コイル31にパルス的な電流を供給する。その後、制御回路85は、第2のアーム回路27、共通アーム回路24を制御し、第2の加熱コイル32にパルス的な電流を供給する。そして、このときに負荷検知部11が測定した入力電流の変化に基づいて、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32のインピーダンスの変化を検出し、被加熱物の材質を判別する。図2(a)に示したように、第1の加熱コイル31を取り囲んで第2の加熱コイル32が配置されている場合には、第1の加熱コイル31での判別結果により被加熱物の内周側の材質が判別され、第2の加熱コイル32での判別結果により被加熱物の外周側の材質が判別される。
負荷検知部11は、図3に示すように制御回路85と別体として設けられていてもよいが、制御回路85と一体的に設けられていてもよい。つまり、誘導加熱装置100の入力端に電流検出器や電圧検出器のみが設けられており、検出した電流値や電圧値が制御回路85に入力され、制御回路85の内部で検出した電流値や電圧値を演算して被加熱物の材質を判別してもよい。すなわち、制御回路85は負荷検知部の機能を備えていてもよく、この場合、制御回路85が負荷検知部であるとしてよい。電流検出器や電圧検出器をアーム回路の出力端と加熱コイルとの間に設けて、加熱コイルの電流値や電圧値に基づいて制御回路85が被加熱物の材質を判別する場合も同様に制御回路85が負荷検知部であるとしてよい。
次に、本発明の誘導加熱装置100の動作について説明する。
図4は、本発明の実施の形態1における誘導加熱装置のトッププレート上に単一材質からなる被加熱物および異種材質からなる被加熱物が載置された場合の様子を示す断面図である。図4(a)は、トッププレート2上に単一材質からなる被加熱物110aが載置された場合の断面図であり、図4(b)は、トッププレート2上に異種材質からなる被加熱物110bが載置された場合の断面図である。
本発明において、単一材質からなる被加熱物とは、図4(a)に示すように、被加熱物110aの底部111が、単一材質の金属で構成された被加熱物である。単一材質の金属とは、鉄やフェライト系ステンレスなどの磁性金属や、アルミや銅やオーステナイト系ステンレスなどの非磁性金属のことを言い、単一元素からなる金属という意味ではない。従って、被加熱物110aの底部がステンレスなど単一の合金で構成されている場合、単一材質からなる被加熱物である。
一方、異種材質からなる被加熱物とは、図4(b)に示すように、被加熱物110bの底部111に、底部111とは材質の異なる金属からなる磁性金属部112を接合して構成した被加熱物である。異種材質からなる被加熱物110bは、例えば、アルミや銅などの電気抵抗が小さい非磁性金属で形成した鍋の底面に、誘導加熱され易い鉄やフェライト系ステンレスなどの磁性金属を貼り付けやコーティングなどにより接合して形成される。異種材質からなる被加熱物110bは、被加熱物110bの大部分をアルミで構成することができるため、被加熱物110bのコスト低減、被加熱物110bの重量の軽減、被加熱物110bの熱伝導の向上などの目的で広く用いられている。図4(b)に示すように、異種材質からなる被加熱物110bは、通常、被加熱物110bの底面の内周側に磁性金属部112が設けられているので、加熱口の内周側に配置された第1の加熱コイル31上に磁性金属部112が載置され、加熱口の外周側に配置された第2の加熱コイル32上には非磁性金属からなる底部111が載置される。
図5は、本発明の実施の形態1における誘導加熱装置による単一材質からなる被加熱物を誘導加熱する様子を示す斜視図である。なお、図5では、加熱コイル30とトッププレート2の裏面との間の距離を大きくして示しているが、加熱コイル30は、トッププレート2の裏面と1〜10mm程度の間隔を隔てて、図5に示すよりもトッププレート2の裏面に近接し、載置位置3に対向して配置されている。
図5に示すように、誘導加熱装置100によって誘導加熱される鍋やフライパンなどの被加熱物110aは、トッププレート2に表示された載置位置3上に被加熱物110aの底面が位置するように載置される。被加熱物110aの底面は、全部が載置位置3上に配置されなくてもよいが、被加熱物110aの底面が全く載置位置3上に配置されていない場合には、誘導加熱装置100は、被加熱物が載置されていないと判断して、加熱コイル30に交流電流を供給しない。
図5に示すように、トッププレート2の載置位置3に被加熱物110aを載置し、誘導加熱装置100の使用者が操作部5を操作して、被加熱物110aを誘導加熱する操作を選択すると、制御回路85が、加熱コイル31および加熱コイル32にパルス状の電流を供給するようにインバータ回路81を制御する。
例えば、まず、制御回路85から、インバータ回路81の第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aをオンにするゲート信号H1と第2のスイッチング素子21bをオフにするゲート信号L1と、共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aをオフにするゲート信号H4と第2のスイッチング素子24bをオンにするゲート信号L4とを出力する。これにより第1の加熱コイル31に電流が流れる。そして、制御回路85は、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aをオフにするゲート信号H1と第2のスイッチング素子21bをオンにするゲート信号L1とを出力し、第1の加熱コイル31に流れる電流が停止する。
次に、制御回路85から、インバータ回路81の第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aをオンにするゲート信号H7と第2のスイッチング素子27bをオフにするゲート信号L7と、共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aをオフにするゲート信号H4と第2のスイッチング素子24bをオンにするゲート信号L4とを出力する。これにより第2の加熱コイル32に電流が流れる。そして、制御回路85は、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aをオフにするゲート信号H7と第2のスイッチング素子27bをオンにするゲート信号L7とを出力し、第2の加熱コイル32に流れる電流が停止する。
このとき、負荷検知部11は、第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32とに電流が流れたことによる誘導加熱装置100への入力電流の増加を検出する。なお、負荷検知部が第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32のそれぞれに直列接続されている場合には、負荷検知部は、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32に流れる電流を直接検出する。負荷検知部11は検出した電流に基づいて、第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物110aの材質と、第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物110aの材質とを判別する。
負荷検知部11が、第1の加熱コイル31上の被加熱物110aの材質は鉄などの磁性金属であると判断した場合、制御回路85は、第1の可変容量コンデンサ41の開閉器44を閉じてコンデンサ42とコンデンサ43とを並列に接続する。この結果、第1の可変容量コンデンサ41の静電容量が増加するので、第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とからなる第1の共振回路の共振周波数が低くなる。一方、負荷検知部11が、第1の加熱コイル31上の被加熱物110aの材質はアルミや銅などの非磁性金属であると判断した場合、制御回路85は、第1の可変容量コンデンサ41の開閉器44を開いてコンデンサ42からコンデンサ43を切り離す。この結果、第1の可変容量コンデンサ41の静電容量が減少するので、第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とからなる第1の共振回路の共振周波数が高くなる。このように、第1の可変容量コンデンサ41の静電容量は、負荷検知部11が判別した第1の加熱コイル31上の被加熱物の材質に応じて変更される。同様に、第2の可変容量コンデンサ45の静電容量は、負荷検知部11が判別した第2の加熱コイル32上の被加熱物の材質に応じて変更される。
図5では、被加熱物110aは単一材質からなる被加熱物であるので、負荷検知部11は、第1の加熱コイル31上の被加熱物110aの材質と第2の加熱コイル32上の被加熱物110aの材質とは同じであると判断する。従って、インバータ回路81から第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32とには同じ周波数の交流電流が供給される。このためインバータ回路81の第1アーム回路21の第1のスイッチング素子21a、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27a、および共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aは同じ周波数でスイッチングされる。各アーム回路の第2のスイッチング素子についても同じ周波数でスイッチングされる。
なお、被加熱物が単一材質からなる被加熱物である場合でも、後述する被加熱物が異種材質からなる被加熱物である場合の動作により、被加熱物が誘導加熱されることを妨げるものではない。つまり、第1の加熱コイル上の被加熱物の材質と第2の加熱コイル上の被加熱物の材質とが同じであっても、第1の加熱コイル31に流れる電流の周波数と、第2の加熱コイル32に流れる電流の周波数とを異なる周波数にしてもよい。また、インバータ回路が、第1の加熱コイルに供給する交流電流の周波数と、第2の加熱コイルに供給する交流電流の周波数とを異なる周波数にしてもよい。
次に、被加熱物が異種材質からなる被加熱物である場合の動作について説明する。
図6は、本発明の実施の形態1における誘導加熱装置による異種材質からなる被加熱物を誘導加熱する様子を示す斜視図である。図6は、被加熱物110bが異種材質からなる被加熱物である点を除いて図5と同一であるので、同一部分の説明は省略する。
異種材質からなる被加熱物110bは、アルミなどの非磁性金属からなる底部111の内周側に鉄などの磁性金属からなる磁性金属部112が接合されているとして説明するが、異種材質からなる被加熱物は、磁性金属からなる被加熱物の底部の内周側に非磁性金属部が接合されていてもよい。この場合には、内周側の非磁性金属部を誘導加熱する第1の加熱コイル31に、外周側の磁性金属部を誘導加熱する第2の加熱コイル32よりも周波数が高い交流電流を供給してよい。
被加熱物110bが、トッププレート2の載置位置3に載置され、負荷検知部11が被加熱物110bの材質の判別を完了すると、制御回路85により第1の可変容量コンデンサ41の開閉器44および第2の可変容量コンデンサ45の開閉器48の開閉が制御される。負荷検知部11は、第1の加熱コイル31上の被加熱物110bの材質は磁性金属であると判別するので、第1の可変容量コンデンサ41の開閉器44は閉じられる。この結果、第1の可変容量コンデンサ41では、コンデンサ42とコンデンサ43とが並列接続されるので静電容量は大きくなる。一方、負荷検知部11は、第2の加熱コイル32上の被加熱物110bの材質は非磁性金属であると判別するので、第2の可変容量コンデンサ45の開閉器48は開かれる。この結果、第2の可変容量コンデンサ45では、コンデンサ47がコンデンサ46から切り離されるので静電容量は小さくなる。
第1の加熱コイル31上の被加熱物110bの材質が鉄などの磁性金属であり、第2の加熱コイル32上の被加熱物110bの材質がアルミなどの非磁性金属である場合に、第2の加熱コイル32と第2の可変容量コンデンサ45とからなる第2の共振回路の共振周波数f2は、第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とからなる第1の共振回路の共振周波数f1よりも高くなるように設定されている。このような設定は、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32のインダクタンス、第1の可変容量コンデンサ41に含まれるコンデンサ42、43の静電容量、および第2の可変容量コンデンサ45に含まれるコンデンサ46、47の静電容量を適宜選択することにより設定することができる。
一例として、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32のインダクタンスを同一にして、鉄などの磁性金属からなる被加熱物が載置された場合のインダクタンスを300μH、アルミなどの被加熱物が載置された場合のインダクタンスを200μHとする。また、第1の可変容量コンデンサ41のコンデンサ42と第2の可変容量コンデンサ45のコンデンサ46の静電容量を0.024μFとする。さらに、開閉器44に直列接続されたコンデンサ43と開閉器48に直列接続されたコンデンサ47の静電容量を0.14μFとする。以下の説明では、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32のインダクタンスおよび各コンデンサ42、43、46、47の静電容量は、ここで示した値であるとして説明する。
図7は、本発明の実施の形態1の誘導加熱装置における異種材質からなる被加熱物を誘導加熱する場合の駆動条件の一例を示したものである。図7において、誘導加熱される被加熱物は図6に示した被加熱物110bであって、アルミなどの非磁性体からなる被加熱物の底部111に鉄などの磁性体からなる磁性金属部112を接合した被加熱物である。負荷検知部11により、第1の加熱コイル31上の被加熱物の材質は磁性体であり、第2の加熱コイル32上の被加熱物の材質は非磁性体と判別されるので、第1の開閉器44の状態は「閉」となり、第2の開閉器48の状態は「開」となる。
この場合、図7に示すように、第1の可変容量コンデンサ41の静電容量は、コンデンサ42の静電容量とコンデンサ43の静電容量との合計となるので0.164μFとなる。従って、第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とからなる第1の共振回路の共振周波数f1は22.7kHzとなる。また、第2の可変容量コンデンサ45の静電容量は、コンデンサ46の静電容量であるから0.024μFとなる。従って、第2の加熱コイル32と第2の可変容量コンデンサ45とからなる第2の共振回路の共振周波数f2は72.6kHzとなる。なお、各直列共振回路の共振周波数fは、各加熱コイルのインダクタンスをL、各可変容量コンデンサの静電容量をCとした場合に、次式で表される。
本発明の誘導加熱装置100は、第1のアーム回路21と共通アーム回路24との間に第1の加熱コイル31を電気的に接続し、第2のアーム回路27と共通アーム回路24との間に第2の加熱コイル32を電気的に接続して構成されるが、第1の加熱コイル31に流れる交流電流の周波数である第1の周波数と、第2の加熱コイル32に流れる交流電流の周波数である第2の周波数とを異なる周波数とすることができる。
図7に示すように、本発明の誘導加熱装置100のインバータ回路81は、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aおよび第2のスイッチング素子21bをそれぞれ、例えば、25kHzでスイッチングし、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aおよび第2のスイッチング素子27bをそれぞれ、例えば、75kHzでスイッチングする。そして、共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aおよび第2のスイッチング素子24bをそれぞれ、例えば、25kHzでスイッチングする。
つまり、第1のアーム回路21のスイッチング周波数と共通アーム回路24のスイッチング周波数とを同じ周波数とし、第2のアーム回路27と共通アーム回路24のスイッチング周波数とを異なる周波数として、第1の加熱コイル31に第1の周波数で流れる交流電流と第2の加熱コイル32に第2の周波数で流れる交流電流とを異なる周波数としている。第2の加熱コイル32に第2の周波数の交流電流が流れる場合にも、インバータ回路81は、第1の加熱コイル31に第1の周波数の交流電流を流す場合と同じ周波数で共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aおよび第2のスイッチング素子24bをスイッチングする。
第1の加熱コイル31に流れる交流電流の周波数である第1の周波数は、主として第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とからなる第1の共振回路の共振周波数f1に依存し、第2の加熱コイル32に流れる交流電流の周波数である第2の周波数は、主として第2の加熱コイル32と第2の可変容量コンデンサ45とからなる第2の共振回路の共振周波数f2に依存する。従って、例えば、第1のアーム回路21、第2のアーム回路27、および共通アーム回路24を全て25kHzでスイッチングさせた場合であっても、図7に示すように、第1の共振回路の共振周波数f1が22.7kHzであって、第2の共振回路の共振周波数f2が72.6kHzである場合には、第1の加熱コイル31には共振周波数22.7kHzに近い25kHzの交流電流が流れ、第2の加熱コイル32には共振周波数72.6kHzに近い周波数の交流電流が流れる。
このような加熱コイルとコンデンサとからなる共振回路の共振周波数をアーム回路のスイッチング周波数の3倍程度にして、スイッチング周波数の3倍程度の周波数の交流電流を加熱コイルに供給することができるのは、当業者にとってよく知られている3倍共振インバータと同様の原理によるものである。つまり、本発明の誘導加熱装置100に3倍共振インバータを適用してもよい。
なお、図7では、第1の共振回路の共振周波数f1が22.7kHzであるが、第1のアーム回路21のスイッチング周波数を25kHzとしており、第2の共振回路の共振周波数f2が72.6kHzであるが、第2のアーム回路27のスイッチング周波数を75kHzとしている。一般に、誘導加熱装置のインバータ回路では、アーム回路を共振回路の共振周波数より高い周波数でスイッチングして、加熱コイルに流れる交流電流の位相がアーム回路のスイッチングより遅れ位相となるようにして、スイッチング損失が増大するのを抑制している。この点は、本発明の誘導加熱装置100であっても同様であり、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32に流れる交流電流が遅れ位相となるように各アーム回路のスイッチング周波数を選択するのが好ましい。
図8は、本発明の実施の形態1における誘導加熱装置のインバータ回路を構成する各スイッチング素子のゲート信号とインバータ回路から出力される電圧波形および電流波形を示すタイムチャートである。図8のタイムチャートは、図7に示す条件とした場合のゲート信号および電圧波形、電流波形である。
図8(a)〜(g)が各スイッチング素子のゲート信号であり、ゲート信号がONとなっている場合にスイッチング素子はオンし、ゲート信号がOFFとなっている場合にスイッチング素子はオフする。各アーム回路の高電圧側の第1のスイッチング素子と低電圧側の第2のスイッチング素子とは、交互にオンオフを繰り返してスイッチングされ、一方のスイッチング素子がオンの場合、他方のスイッチング素子はオフとなる。従って、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子とは同じ周波数でスイッチングされる。なお、実際のゲート信号では、各アーム回路の第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子とが同時にオンとならないように、第1のスイッチング素子のゲート信号と第2のスイッチング素子のゲート信号とが同時にオフとなるデッドタイムを要するが、図8では省略して示している。
図8(a)は第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aのゲート信号H1であり、図8(b)は第1のアーム回路21の第2のスイッチング素子21bのゲート信号L1である。図8(c)は共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aのゲート信号H4であり、図8(d)は共通アーム回路24の第2のスイッチング素子24bのゲート信号L4である。図8(e)は第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのゲート信号H7であり、図8(f)は第2のアーム回路27の第2のスイッチング素子27bのゲート信号L7である。図8(a)〜(f)に示した各ゲート信号は、スイッチング周期に対するオン時間のデューティ比が50%となる場合のゲート信号である。
図8(g)および図8(i)は、共通アーム回路24の出力端26を基準電位とした場合の、第1のアーム回路21の出力端23および第2のアーム回路の出力端29の電位である。直流部84から出力され、各アーム回路に印加される電圧はVoであるとして示している。
図8(h)は、第1のアーム回路21の出力端23から第1の加熱コイル31に向かう向きを正として示した第1の加熱コイル31に流れる交流電流の波形である。図8(j)は、第2のアーム回路27の出力端29から第2の加熱コイル32に向かう向きを正として示した第2の加熱コイル32に流れる交流電流の波形である。図8(h)および図8(j)は、それぞれ電流の最大値を+Io、電流の最小値を−Ioとして示した。なお、図8(h)の第1の加熱コイル31に流れる交流電流と図8(j)の第2の加熱コイル32に流れる交流電流とは、最大値+Ioと最小値−Ioとが同じである必要は無く、第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32とで、電流の最大値および最小値はそれぞれ異なっていてもよい。
第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とからなる第1の共振回路には、第1のアーム回路21と共通アーム回路24とからなる第1のフルブリッジ回路により電圧が印加される。図8(a)および図8(c)に示すように、第1のフルブリッジ回路では、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aのゲート信号H1と共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aのゲート信号H4とは周波数が同じ25kHzであり、位相が180°ずれている。この結果、図8(g)に示すように、第1の共振回路には、+Voと−Voとに交互に変化する矩形波電圧が印加され、図8(h)に示すように、第1の加熱コイル31には25kHzの正弦波状の交流電流が流れる。第1の加熱コイル31には、第1のアーム回路21および共通アーム回路24のスイッチング周波数である25kHzを第1の周波数とする交流電流が流れる。
第2の加熱コイル32と第2の可変容量コンデンサ45とからなる第2の共振回路には、第2のアーム回路27と共通アーム回路24とからなる第2のフルブリッジ回路により電圧が印加される。図8(e)と図8(c)に示すように、第2のフルブリッジ回路では、共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aのゲート信号H4がOFFの期間に第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのゲート信号H7がON、OFF、ONに変化し、共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aのゲート信号H4がONの期間に第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのゲート信号H7がOFF、ON、OFFに変化する。
共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aのスイッチング周波数が25kHzであるのに対し、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのスイッチング周波数は75kHzであり3倍となっている。この結果、図8(i)に示すように、第2の共振回路には、半周期の間に、+Vo、0、+Voとなる電圧波形と、−Vo、0、−Voとなる電圧波形とが交互に印加される。共通アーム回路24のスイッチング周期に対する+Voの期間の割合、0の期間の割合、−Voの期間の割合はいずれも1/3ずつとなっている。そして、図8(j)に示すように、第2の加熱コイル32には75kHzの正弦波状の交流電流が流れる。第2の加熱コイル32には、第2のアーム回路27のスイッチング周波数である75kHzを第2の周波数とする交流電流が流れる。
以上のように、第2のアーム回路27と共通アーム回路24とからなる第2のフルブリッジ回路は、第2のアーム回路27と共通アーム回路24とが異なる周波数でスイッチングされるが、第2の加熱コイル32に共通アーム回路24のスイッチング周波数とは異なる第2の周波数の交流電流を供給することができる。そして、第1のフルブリッジ回路で第1の加熱コイル31に第1の周波数の25kHzの交流電流を供給し、第2のフルブリッジ回路で第2の加熱コイル32に第2の周波数の75kHzの交流電流を供給することができる。
これにより、第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物110bの磁性金属部112だけでなく、非磁性金属からなる被加熱物110bの外周側の底部111をも効率良く誘導加熱することができる。すなわち、第2の加熱コイル32上に載置された非磁性金属からなる被加熱物110bの外周側に内周側よりも高い周波数の交番磁束を鎖交させることで、表皮効果により非磁性金属に渦電流が流れる経路の抵抗を増大させることができるので、非磁性金属からなる被加熱物110bの外周側の底部111を効率良く誘導加熱することができる。この結果、フライパンなどの被加熱物110bの底部の温度分布の均一性を改善することができる。
なお、図8では、インバータ回路81が、第1の加熱コイル31に供給する第1の周波数の交流電流と、第2の加熱コイル32に供給する第2の周波数の交流電流とを同時に供給する場合について説明したが、第1の加熱コイル31に供給する第1の周波数の交流電流と第2の加熱コイル32に供給する第2の周波数の交流電流とは異なる時間に供給してもよい。すなわち、インバータ回路81は、第1の加熱コイル31に第1の周波数である25kHzの交流電流を供給する場合には、第2の加熱コイル32への交流電流の供給を停止し、第2の加熱コイル32に第2の周波数である75kHzの交流電流を供給する場合には、第1の加熱コイル31への交流電流の供給を停止してもよい。そして、第1の加熱コイル31に第1の周波数の交流電流を供給する動作と、第2の加熱コイル32に第2の周波数の交流電流を供給する動作とを交互に繰り返してもよい。
この場合の動作は、例えば、共通アーム回路24を25kHzでスイッチングさせておき、第1の加熱コイル31に25kHzの交流電流を供給する際に、第1のアーム回路21を25kHzでスイッチングし、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのゲート信号H7および第2のスイッチング素子27bのゲート信号L7を両方ともOFFとして第2の加熱コイル32に交流電流が流れないようにしてよい。また、第2の加熱コイル32に75kHzの交流電流を供給する際にも、共通アーム回路24のゲート信号を変更することなく25kHzでスイッチングさせておき、第2のアーム回路27を75kHzでスイッチングし、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aのゲート信号H1および第2のスイッチング素子21bのゲート信号L1を両方ともOFFとして第1の加熱コイル31に交流電流が流れないようにしてよい。
なお、図8では、第1のアーム回路21と共通アーム回路24とを25kHzでスイッチングし、第2のアーム回路27を75kHzでスイッチングする場合について説明したが、第1のアーム回路21を25kHzでスイッチングし、第2のアーム回路27と共通アーム回路24とを75kHzでスイッチングしてもよい。
第1のアーム回路21と共通アーム回路24とを25kHzでスイッチングし、第2のアーム回路27を75kHzでスイッチングする場合には、図8(g)に示すように、第1の共振回路に印加される電圧は、+Voと−Voとを交互に繰り返す矩形波となるので、第1の共振回路に印加される電圧が0となる期間が無く、第1の加熱コイル31への入力電力を最大にすることができる。一方、図8(i)に示すように、第2の共振回路に印加される電圧は、+Vo、−Voの期間に加え、電圧が0となる期間が生じるので、第2の加熱コイル32への入力電力は、第2の共振回路に印加される電圧に0となる期間が無い場合に比べて小さくなる。
これに対し、第1のアーム回路21を25kHzでスイッチングし、第2のアーム回路27と共通アーム回路24とを75kHzでスイッチングする場合には、第2の共振回路に印加される電圧に0となる期間を無くすことができるので、第2の加熱コイル32への入力電力を最大にすることができる。その一方で、第1の共振回路に印加される電圧に0となる期間が生じるので、第1の加熱コイル31への入力電力は、第1の共振回路に印加される電圧に0となる期間が無い場合に比べて小さくなる。
つまり、図6に示したように、非磁性金属の底部111の内周側に磁性金属部112を接合して構成した被加熱物110bを誘導加熱する際に、内周側の磁性金属部112を優先的に誘導加熱したい場合には、第1のアーム回路21と共通アーム回路24とを同じ周波数でスイッチングし、第2のアーム回路27を共通アーム回路24とは異なる周波数でスイッチングすればよい。一方、磁性金属部112よりも外周側の非磁性金属からなる底部111を優先的に誘導加熱したい場合には、第2のアーム回路27と共通アーム回路24とを同じ周波数でスイッチングし、第1のアーム回路21を共通アーム回路24とは異なる周波数でスイッチングすればよい。このような、内周側の磁性金属部112を優先的に誘導加熱するか、外周側の非磁性金属からなる底部111を優先的に誘導加熱するかの切り替えは、例えば、使用者が操作部5を操作した際の操作部5からの信号に基づいて、制御回路85が、各アーム回路のスイッチングを制御して切り替えてもよい。また、誘導加熱装置100の制御回路85が調理メニューに応じて自動的に切り替えてもよい。
以上のように、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱装置100では、第1のアーム回路21、第2のアーム回路27、共通アーム回路24を有するインバータ回路81が、第1の加熱コイル31に第1の周波数の交流電流を供給する場合に、所定の周波数で共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aをスイッチングし、第2の加熱コイル32に第1の周波数とは異なる第2の周波数の交流電流を供給する場合にも、第1の加熱コイル31に第1の周波数の交流電流を供給する場合と同じ周波数で共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aをスイッチングする。このため、第1のアーム回路21、第2のアーム回路27、共通アーム回路24の3つのアーム回路で、1つのアーム回路を共通にした第1のフルブリッジ回路と第2のフルブリッジ回路とを構成しても、第1のフルブリッジ回路に電気的に接続された第1の加熱コイル31と第2のフルブリッジ回路に電気的に接続された第2の加熱コイル32とに、互いに異なる周波数の交流電流を供給することができる。従って、アーム回路の数を増加させることなく異種材質からなる被加熱物の非磁性金属部に磁性金属部よりも高い周波数の交番磁束を鎖交させて誘導加熱することができる。
特許文献1に記された従来の誘導加熱装置では、非磁性金属で構成された被加熱物の底部の内周側に磁性金属部を接合して形成した異種材質からなる被加熱物を誘導加熱する場合、第1のアーム回路、第2のアーム回路、および共通アーム回路は、同じ周波数でスイッチングされて、第1の加熱コイルに流れる交流電流の周波数と第2の加熱コイル流れる交流電流の周波数とは同じであった。
このため、各アーム回路のスイッチング周波数を磁性金属部の誘導加熱に適した周波数(例えば25kHz)とする場合、磁性金属部の外周側の非磁性金属部の表皮効果は小さくなるため、非磁性金属部の抵抗は磁性金属部の抵抗に比べてかなり小さいものとなっていた。そのため、非磁性金属が載置された第2の加熱コイルには過電流が流れやすく、スイッチング素子の定格電流による制限から、第2の加熱コイルに入力する電力を増大させることが困難であった。そのため、異種材質からなる被加熱物の底部の内周側は早く温度上昇するが、外周側は温度上昇が遅くなり、結果として被加熱物底部の温度の均一性が損なわれていた。
また、各アーム回路のスイッチング周波数を非磁性金属部の誘導加熱に適した周波数(例えば75kHz)とする場合、磁性金属部の誘導加熱には過剰なほどに高い周波数で第1のアーム回路と共通アーム回路とをスイッチングするので、スイッチング損失が増大して誘導加熱の効率が低下していた。また、加熱コイルに流れる電流の周波数が高くなるに従い、加熱コイルを構成する導線の抵抗も増大するので誘導加熱の効率が低下していた。
これに対し、本発明の誘導加熱装置100は、被加熱物の内周側の磁性金属部を誘導加熱する第1の加熱コイル31に磁性金属の誘導加熱に適した第1の周波数(例えば25kHz)の交流電流を流し、磁性金属部の外周側の非磁性金属部を誘導加熱する第2の加熱コイル32に非磁性金属の誘導加熱に適した第2の周波数(例えば75kHz)の交流電流を供給する。このため、外周側の非磁性金属部の抵抗を表皮効果により増大させて、非磁性金属部に大きな電力を入力することができる。このため、異種材質からなる被加熱物底部の温度の均一性を改善することができるといった効果が得られる。
また、本発明の誘導加熱装置100は、第1のアーム回路21および共通アーム回路24のスイッチング周波数を第1の周波数とし、第2のアーム回路27のスイッチング周波数を第2の周波数として、第1の加熱コイル31に第1の周波数の交流電流を供給し、第2の加熱コイル32に第2の周波数の交流電流を供給する。このため、インバータ回路81のアーム回路数を増大することなく、第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32とに異なる周波数の交流電流を供給することができるので、インバータ回路81の小型化やコスト低減を図れるといった効果が得られる。
なお、上述のように第2のアーム回路27は、非磁性金属の誘導加熱に適した周波数でスイッチングされる必要があるので、磁性金属の誘導加熱に適した周波数でスイッチングすればよい第1のアーム回路21よりも高い周波数でのスイッチングが要求される。そのため、第1のアーム回路21を構成する第1のスイッチング素子21aと第2のスイッチング素子21bとをシリコン半導体で構成し、第2のアーム回路27を構成する第1のスイッチング素子27aと第2のスイッチング素子27bとをシリコンよりもバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体で構成してよい。これにより、第1のアーム回路21および第2のアーム回路27の両方のスイッチング素子をワイドバンドギャップ半導体で構成するよりもインバータ回路81の低コスト化を図ることができる。なお、ワイドバンドギャップ半導体は、例えば、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、あるいはダイヤモンドであってよい。
また、共通アーム回路24は、第1の加熱コイル31に交流電流を供給する第1のフルブリッジ回路と第2の加熱コイル32に交流電流を供給する第2のフルブリッジ回路とで共通になっているため、第1のアーム回路21および第2のアーム回路27よりも大きな電流が流れる。そのため、共通アーム回路24を構成する第1のスイッチング素子24aおよび第2のスイッチング素子24bには、第1のアーム回路21および第2のアーム回路27よりもオン抵抗が小さいスイッチング素子を用いるのが好ましい。従って、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aおよび第2のスイッチング素子21bはシリコン半導体で構成し、共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aおよび第2のスイッチング素子24bはワイドバンドギャップ半導体で構成するのが好ましい。同様に、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aおよび第2のスイッチング素子27bはシリコン半導体で構成し、共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aおよび第2のスイッチング素子24bはワイドバンドギャップ半導体で構成するのが好ましい。耐電圧を同じにする場合、ワイドバンドギャップ半導体で形成したスイッチング素子の方がシリコン半導体で形成したスイッチング素子よりもオン抵抗を小さくすることができるためである。これにより、全てのアーム回路のスイッチング素子をワイドバンドギャップ半導体で構成するよりもインバータ回路81の低コスト化を図ることができる。
本実施の形態1では、例示として、第1のアーム回路21および共通アーム回路24のスイッチング周波数が25kHzであって、第2のアーム回路27のスイッチング周波数が75kHzである場合について説明した。つまり、第2のアーム回路27のスイッチング周波数は、第1のアーム回路21および共通アーム回路24のスイッチング周波数の3倍(整数倍)である例について説明したが、例えば、第2のアーム回路27のスイッチング周波数が53kHzであって、第1のアーム回路21および共通アーム回路24のスイッチング周波数が25kHzであってもよい。すなわち、第2のアーム回路27のスイッチング周波数は、第1のアーム回路21および共通アーム回路24のスイッチング周波数の整数倍でなくてもよい。また、第1のアーム回路21のスイッチング周波数と共通アーム回路24のスイッチング周波数とが異なる周波数であってもよく、第1のアーム回路21のスイッチング周波数、第2のアーム回路27のスイッチング周波数、および共通アーム回路24のスイッチング周波数はそれぞれ異なっていてよい。また、それぞれの周波数は互いに可聴周波数以上の差があることが好ましい。ここで、可聴周波数とは、およそ20kHzである。それぞれ異なるスイッチング周波数の差が可聴周波数未満の場合には、周波数の差分が干渉音(唸り)となって誘導加熱装置100の使用者に聞こえるため、使用者が不快を感じるためである。
実施の形態2.
図9は、本発明の実施の形態2における誘導加熱装置のインバータ回路を構成する各スイッチング素子のゲート信号とインバータ回路から出力される電圧波形および電流波形を示すタイムチャートである。図9のタイムチャートは、実施の形態1で説明した誘導加熱装置100の状態を示すタイムチャートであり、図8に示したタイムチャートの状態から第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32の入力電力を低減する場合の電力制御方法について示したものである。図9において、図8と同一の記載については同一の内容を意味しており、その説明を省略する。また、本実施の形態2において、誘導加熱装置100の構成などは実施の形態1と同一であり、誘導加熱装置100の構成要素で同一の符号を付して説明したものは実施の形態1と同一である。
図9は図8と同じく、図9(a)〜(f)が各アーム回路のスイッチング素子のゲート信号波形であり、図9(g)〜(j)がインバータ回路81から出力される電圧波形および電流波形である。本実施の形態2では、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32の入力電力をPWM(Pulse Width Modulation)により制御する方法について説明する。
図9(a)および図9(b)に示すように、誘導加熱装置100の制御回路85が、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aのオン時間のデューティ比を25%にする制御信号H1を出力し、第1のアーム回路21の第2のスイッチング素子21bのオン時間のデューティ比を75%にする制御信号L1を出力する。また、図9(e)および図9(f)に示すように、誘導加熱装置100の制御回路85が、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのオン時間のデューティ比を25%にする制御信号H7を出力し、第2のアーム回路27の第2のスイッチング素子27bのオン時間のデューティ比を75%にする制御信号L7を出力する。
ここでは、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aおよび第2のアーム回路27の第2のスイッチング素子27aのオン時間のデューティ比を両方とも25%にする場合について示したが、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aのオン時間のデューティ比と第2のアーム回路27の第2のスイッチング素子27aのオン時間のデューティ比とはそれぞれ独立に制御可能であって、それぞれオン時間のデューティ比が異なっていてよい。第1のアーム回路21および第2のアーム回路27の第2のスイッチング素子27a、27bのゲート信号は、第1のスイッチング素子21a、27aのゲート信号に対応して一義的に決まるので説明を省略する。
図9(c)および図9(d)に示すように、誘導加熱装置100の制御回路85が、共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aのオン時間のデューティ比を50%にする制御信号H4を出力し、共通アーム回路24の第2のスイッチング素子24bのオン時間のデューティ比を50%にする制御信号L4を出力する。
この結果、図9(g)に示すように、第1のアーム回路21の出力端23と共通アーム回路24の出力端26との間に接続された第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とからなる第1の共振回路には、+Vo、0、−Vo、+Voと変化する矩形波電圧が印加される。この矩形波電圧の電圧が+Voの期間は1周期の25%であり、電圧が−Voの期間は1周期の50%であり、電圧が0の期間は1周期の25%である。図9(g)と図8(g)とを比較すると、第1の共振回路に印加される矩形波電圧において、+Voのパルス幅が減少していることが分かる。そして、図9(h)に示すように、第1の加熱コイル31に流れる電流の最大値および最小値の絶対値は、Ioよりも小さくなる。図9(h)と図8(h)とを比較すると、図9(h)の方が第1の加熱コイル31に流れる電流の大きさが小さくなっていることが分かる。また、第1の加熱コイル31に流れる電流の周波数は25kHzであり、図8(h)の状態から変化していない。
第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物に入力されて被加熱物を誘導加熱する電力は、第1の加熱コイル31に流れる電流の2乗に比例する。従って、図9(a)および図9(b)に示すように、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aのオン時間のデューティ比を変化させることによって、第1の加熱コイル31に供給される交流電流の電流値を変化させて、第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物に入力される電力を制御することができる。
一方、図9(i)に示すように、第2のアーム回路27の出力端29と共通アーム回路24の出力端26との間に接続された第2の加熱コイル32と第2の可変容量コンデンサ45とからなる第2の共振回路には、+Vo、0、+Vo、0、−Vo、0、−Vo、+Voと変化する矩形波電圧が印加される。この矩形波電圧の電圧が+Voの期間は共通アーム回路24のスイッチング周期の2/12であり、電圧が−Voの期間は共通アーム回路24のスイッチング周期の5/12であり、電圧が0の期間は共通アーム回路24のスイッチング周期の5/12である。図9(i)と図8(i)とを比較すると、第2の共振回路に印加される矩形波電圧において、+Voのパルス幅が半分に減少し、電圧が0の期間と−Voの期間がやや増加している。そして、図9(j)に示すように、第2の加熱コイル32に流れる電流の最大値および最小値の絶対値は、Ioよりも小さくなる。図9(j)と図8(j)とを比較すると、図9(j)の方が第2の加熱コイル32に流れる電流の大きさが小さくなっている。また、第2の加熱コイル32に流れる電流の周波数は75kHzであり、図8(j)の状態から変化していない。
以上のように、図9(e)および図9(f)に示すように、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのオン時間のデューティ比を変化させることによって、第2の加熱コイル32に供給される交流電流の電流値を変化させて、第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物に入力される電力を制御することができる。
そして、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aのオン時間のデューティ比と第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのオン時間のデューティ比をそれぞれ独立に制御することで、第1の加熱コイル31に流れる交流電流の電流値と第2の加熱コイル32に流れる交流電流の電流値とをそれぞれ独立に制御することができる。この結果、第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物と第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物とをそれぞれ独立に制御可能な電力で誘導加熱することができるので、異種材質からなる被加熱物の内周側および外周側の加熱温度をそれぞれ独立して制御することができる。
なお、本実施の形態2では、第1のアーム回路21および第2のアーム回路27をPWMにより制御して、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32に流れる交流電流をそれぞれ独立して制御する方法について説明したが、共通アーム回路24をPWMにより制御して、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32に流れる交流電流を一緒に制御することも可能である。第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32に流れる交流電流を一緒に制御することで、異種材質からなる被加熱物であるフライパンなどの入力電力を一体的に制御できるので、使用者の目的に応じて使い分けることで利便性を高めることができる。第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32に流れる交流電流を独立に制御するのか一緒に制御するのかといったことは、例えば、操作部5を使用者が操作した場合の操作信号に基づいて制御回路85が決定してよい。
なお、本実施の形態2で説明したPWM制御による第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32に流れる交流電流の制御は、第1の加熱コイル31に流れる交流電流の周波数である第1の周波数と、第2の加熱コイル32に流れる交流電流の周波数である第2の周波数とがどのような関係であっても行うことができる。つまり、本実施の形態2では、第1の周波数が25kHzであって、第2の周波数が75kHzである場合について説明したが、例えば、第1の周波数が25kHzであって、第2の周波数が57kHzであるというような、第2の周波数が第1の周波数の整数倍でない場合であってもよい。
実施の形態3.
図10は、本発明の実施の形態3における誘導加熱装置のインバータ回路を構成する各スイッチング素子のゲート信号とインバータ回路から出力される電圧波形および電流波形を示すタイムチャートである。図10のタイムチャートは、実施の形態1で説明した誘導加熱装置100の状態を示すタイムチャートであり、図8に示したタイムチャートの状態から第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32の入力電力を低減する場合の電力制御方法について示したものである。図10において、図8および図9と同一の記載については同一の内容を意味しており、その説明を省略する。また、本実施の形態3において、誘導加熱装置100の構成などは実施の形態1と同一であり、誘導加熱装置100の構成要素で同一の符号を付して説明したものは実施の形態1と同一である。
図10は図8および図9と同じく、図10(a)〜(f)が各アーム回路のスイッチング素子のゲート信号波形であり、図10(g)〜(j)がインバータ回路81から出力される電圧波形および電流波形である。本実施の形態3では、共通アーム回路24と同じ周波数でスイッチングされる第1のアーム回路21を位相差制御し、共通アーム回路24と異なる周波数でスイッチングされる第2のアーム回路27をPWM制御して、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32の入力電力をそれぞれ独立に制御する方法について説明する。
図10(a)に示すように、誘導加熱装置100の制御回路85が、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aのゲート信号がOFFからONに変化するタイミング、すなわち第1のスイッチング素子21aがターンオンするタイミングを90°遅らせたゲート信号H1を出力する。第1のスイッチング素子21aのゲート信号H1のオン時間のデューティ比は、図8の場合と同じく50%である。第1のアーム回路21の第2のスイッチング素子21bのゲート信号L1は、第1のスイッチング素子21aのゲート信号H1に基づいて一義的に決まるので、制御回路85は、第2のスイッチング素子21bのゲート信号L1はOFFからONに変化するタイミング、すなわちターンオフするタイミングを90°遅らせたゲート信号L1を出力する。第2のスイッチング素子21bのゲート信号L1のデューティ比も、図8の場合と同じく50%である。
図10(c)に示すように、共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aのスイッチング周波数は、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aのスイッチング周波数と同じ25kHzであって、オン時間のデューティ比は50%である。従って、図10(a)のように、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aがターンオンするタイミングを変化させることとは、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aがターンオンするタイミングと共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aがターンオンするタイミングとの間の時間を変化させることである。このような制御を位相差制御と呼ぶ。
図10(a)に示すように、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aがターンオンするタイミングを90°遅らせることで、図10(g)に示すように、第1のアーム回路21の出力端23と共通アーム回路24の出力端26との間に接続された第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とからなる第1の共振回路には、+Vo、0、−Vo、0、+Voと変化する矩形波電圧が印加される。この矩形波電圧の電圧が+Voの期間は1周期の25%であり、電圧が−Voの期間は1周期の25%であり、電圧が0の期間は1周期の50%である。図10(g)と図8(g)とを比較すると、第1の共振回路に印加される矩形波電圧において、+Voのパルス幅および−Voのパルス幅が減少していることが分かる。そして、図10(h)に示すように、第1の加熱コイル31に流れる電流の最大値および最小値の絶対値は、Ioよりも小さくなる。図10(h)と図8(h)とを比較すると、図10(h)の方が第1の加熱コイル31に流れる電流の大きさが小さくなっていることが分かる。また、第1の加熱コイル31に流れる電流の周波数は25kHzであり、図8(h)の状態から変化していない。
従って、図8(a)、(c)が示す状態から図10(a)、(c)が示す状態に制御する、すなわち第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aがターンオンするタイミングと共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aがターンオンするタイミングとの間の時間を変化させることによって、第1の加熱コイル31に供給される交流電流の電流値を変化させて、第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物に入力される電力を制御することができる。
一方、第2のアーム回路27と共通アーム回路24とからなる第2のフルブリッジ回路の各スイッチング素子の制御については、実施の形態2と同一である。すなわち、共通アーム回路24のスイッチング周波数と異なる周波数でスイッチングされる第2のアーム回路27は、第1のスイッチング素子27aのオン時間のデューティ比を変化させて、第2の加熱コイル32に供給する交流電流の電流値を制御している。
以上のように、本実施の形態3で説明したように、第1のアーム回路21のスイッチング周波数が共通アーム回路24のスイッチング周波数と同一であって、第2のアーム回路27のスイッチング周波数が共通アーム回路24のスイッチング周波数と異なる場合には、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aのゲート信号H1を位相差制御し、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのゲート信号H7をPWM制御することで、第1の加熱コイル31に流れる交流電流の電流値と第2の加熱コイル32に流れる交流電流の電流値とをそれぞれ独立に制御することができる。
同様に、第1のアーム回路21のスイッチング周波数が共通アーム回路24のスイッチング周波数とは異なり、第2のアーム回路27のスイッチング周波数が共通アーム回路24のスイッチング周波数と同一である場合には、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aのゲート信号H1をPWM制御し、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのゲート信号H7を位相差制御することで、第1の加熱コイル31に流れる交流電流の電流値と第2の加熱コイル32に流れる交流電流の電流値とをそれぞれ独立に制御することができる。
なお、本実施の形態3においても、PWM制御を行う側のアーム回路のスイッチング周波数は、共通アーム回路24のスイッチング周波数と無関係であってよく、スイッチング周波数を任意に選択することができる。
実施の形態4.
図11は、本発明の実施の形態4における誘導加熱装置のインバータ回路を構成する各スイッチング素子のゲート信号とインバータ回路から出力される電圧波形および電流波形を示すタイムチャートである。図11のタイムチャートは、実施の形態1で説明した誘導加熱装置100の状態を示すタイムチャートであり、図8に示したタイムチャートの状態から第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32の入力電力を低減する場合の電力制御方法について示したものである。図11において、図8、図9、および図10と同一の記載については同一の内容を意味しており、その説明を省略する。また、本実施の形態4において、誘導加熱装置100の構成などは実施の形態1と同一であり、誘導加熱装置100の構成要素で同一の符号を付して説明したものは実施の形態1と同一である。
図11は図8、図9、および図10と同じく、図11(a)〜(f)が各アーム回路のスイッチング素子のゲート信号波形であり、図11(g)〜(j)がインバータ回路81から出力される電圧波形および電流波形である。本実施の形態4では、共通アーム回路24と同じ周波数でスイッチングされる第1のアーム回路21を位相差制御し、共通アーム回路24と異なる周波数でスイッチングされる第2のアーム回路27も位相差制御して、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32の入力電力をそれぞれ独立に制御する方法について説明する。共通アーム回路24と異なる周波数でスイッチングされる第2のアーム回路27のスイッチング周波数は、第1のアーム回路21および共通アーム回路24のスイッチング周波数の2n+1倍(nは1以上の自然数)である。
図11(a)〜(d)および図11(g)、(h)で示した第1のアーム回路21と共通アーム回路24とからなる第1のフルブリッジ回路から第1の加熱コイル31に供給される交流電流は、実施の形態3で説明したように位相差制御によって電流値が制御される。実施の形態3と動作が同一であるので説明を省略する。
図11(e)に示すように、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのゲート信号H7は、図8(e)のゲート信号H7と比較して分かるように、図8(e)の状態から位相が90°遅れている。図11(c)と図8(c)との比較から分かるように、共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aのゲート信号H4は、図11(c)と図8(c)とで同じであるので、図11(e)は図8(e)の状態から第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aがターンオンするタイミングと共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aがターンオンするタイミングとの間の時間が変化している。この結果、図11(i)と図8(i)との比較から分かるように、第2の加熱コイル32と第2の可変容量コンデンサ45とからなる第2の共振回路に印加される電圧は、+Voと−Voの期間が減少し、電圧が0の期間が増加する。このため、図11(j)に示すように第2の加熱コイル32に流れる交流電流の電流値は、図8(j)の状態から減少する。
実施の形態1の図8(a)で示したように、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのゲート信号H7の位相差が0°の場合には、図8(i)のように第2の共振回路に印加される電圧波形における電圧値の絶対値がVoの期間の割合が4/6である。一方、本実施の形態4のように、共通アーム回路24とスイッチング周波数が異なる第2のアーム回路27の位相差を制御して第2の加熱コイル32に流れる交流電流を低減する場合には、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aのゲート信号H7の位相差が180°の場合に第2の加熱コイル32に流れる交流電流が最小になる。この場合、第2の共振回路に印加される電圧波形における電圧値の絶対値がVoの期間の割合は、2/6になる。つまり、本実施の形態4で説明した位相差制御により、第2の加熱コイル32に流れる交流電流の大きさを半分まで減少させることができる。
共通アーム回路24とはスイッチング周波数が異なる第2のアーム回路27を位相差制御して、第2の加熱コイル32に流れる交流電流の電流値を制御する場合、共通アーム回路24のスイッチング周波数と第2のアーム回路27のスイッチング周波数とが近い方が電流値の制御量を大きくすることができる。第2のアーム回路27のスイッチング周波数は、共通アーム回路24のスイッチング周波数の2n+1倍(nは1以上の自然数)である必要があるので、第2のアーム回路27のスイッチング周波数は、共通アーム回路24のスイッチング周波数の3倍が最も好ましい。
以上のように、本実施の形態4に係る誘導加熱装置100は、第1のアーム回路21の第1のスイッチング素子21aの位相差を制御することで、第1の加熱コイル31に流れる交流電流の電流値を制御することができ、第2のアーム回路27の第1のスイッチング素子27aの位相差を制御することで、第2の加熱コイル32に流れる交流電流の電流値を制御することができる。また、共通アーム回路24の第1のスイッチング素子24aの位相差を制御する場合には、第1の加熱コイル31に流れる交流電流の電流値と第2の加熱コイル32に流れる交流電流の電流値とを同時に制御することができる。
実施の形態5.
図12は、本発明の実施の形態5における誘導加熱装置のインバータ回路を構成する各スイッチング素子のゲート信号とインバータ回路から出力される電圧波形および電流波形を示すタイムチャートである。図12のタイムチャートは、実施の形態1で説明した誘導加熱装置100の状態を示すタイムチャートであり、図8に示したタイムチャートの状態から第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32の入力電力を低減する場合の電力制御方法について示したものである。図12において、図8、図9、図10および図11と同一の記載については同一の内容を意味しており、その説明を省略する。また、本実施の形態5において、誘導加熱装置100の構成などは実施の形態1と同一であり、誘導加熱装置100の構成要素で同一の符号を付して説明したものは実施の形態1と同一である。
図12は、図8、図9、図10および図11と同じく、図12(a)〜(f)が各アーム回路のスイッチング素子のゲート信号波形であり、図12(g)〜(j)がインバータ回路81から出力される電圧波形および電流波形である。本実施の形態5では、共通アーム回路24と同じ周波数でスイッチングされる第1のアーム回路21を周波数制御し、共通アーム回路24と異なる周波数でスイッチングされる第2のアーム回路27も周波数制御することで、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32の入力電力をそれぞれ独立に制御する方法について説明する。
図12(a)〜(f)に示した各ゲート信号は、図8(a)〜(f)に示した各ゲート信号と比べて、スイッチング周期に対するオン時間のデューティ比が50%となる点は同じであるが、ゲート信号の周波数が高くなるようにゲート信号の周期を変更している。本実施の形態5では、図8(a)〜(f)が周波数変更前の各スイッチング素子のゲート信号であり、図12(a)〜(f)が周波数変更後の各スイッチング素子のゲート信号である。
図8(a)〜(d)に示した第1のアーム回路21および共通アーム回路24の各スイッチング素子のゲート信号の周波数変更前の周波数は25kHzであり、図8(e)、(f)に示した第2のアーム回路27の各スイッチング素子のゲート信号の周波数変更前の周波数は75kHzである。また、図12(a)〜(d)に示した第1のアーム回路21および共通アーム回路24の各スイッチング素子のゲート信号の周波数変更後の周波数は26kHzであり、図12(e)、(f)に示した第2のアーム回路27の各スイッチング素子のゲート信号の周波数変更後の周波数は78kHzである。
図12(g)に示すように、第1のアーム回路21の出力端23と共通アーム回路24の出力端26との間に接続された第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とからなる第1の共振回路には、周波数が26kHzで+Vo、−Voと変化する矩形波電圧が印加される。第1の共振回路に印加される電圧の周波数が26kHzとなると、周波数が25kHzであった場合と比べて、第1の共振回路に印加される電圧の周波数が第1の共振回路の共振周波数22.7kHzから遠ざかることになる。この結果、図12(h)に示すように、第1の加熱コイル31に流れる電流の最大値および最小値の絶対値は、Ioよりも小さくなる。図12(h)と図8(h)を比較すると、図12(h)の方が第1の加熱コイル31に流れる電流の大きさが小さくなっていることが分かる。また、第1の加熱コイル31に流れる電流の周波数は26kHzであり、図8(h)の周波数25kHzから変化している。
第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物に入力されて被加熱物を誘導加熱する電力は、第1の加熱コイル31に流れる電流の2乗に比例する。従って、図12(a)〜(d)に示すように、共通アーム回路24と同じ周波数でスイッチングされる第1のアーム回路21の周波数を変化させることによって、第1の加熱コイル31に供給される交流電流の電流値を変化させて、第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物に入力される電力を制御することができる。
同様に、図12(i)に示すように、第2のアーム回路27の出力端29と共通アーム回路24の出力端26との間に接続された第2の加熱コイル32と第2の可変容量コンデンサ45とからなる第2の共振回路には、周波数が78kHzと26kHzに起因した+Vo、0、+Vo、−Vo、0、−Voと変化する矩形波電圧が印加される。第2の共振回路に印加される電圧の周波数が78kHzとなると、周波数が75kHzであった場合と比べて、第2の共振回路に印加される電圧の周波数が第2の共振回路の共振周波数72.6kHzから遠ざかることになる。この結果、図12(j)に示すように、第2の加熱コイル32に流れる電流の最大値および最小値の絶対値は、Ioよりも小さくなる。図12(j)と図8(j)とを比較すると、図12(j)の方が第1の加熱コイル31に流れる電流の大きさが小さくなっていることが分かる。また、第1の加熱コイル31に流れる電流の周波数は78kHzであり、図8(j)の周波数75kHzから変化している。
第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物に入力されて被加熱物を誘導加熱する電力は、第2の加熱コイル32に流れる電流の2乗に比例する。従って、図12(e)〜(f)に示すように、第2のアーム回路27の周波数を変化させることによって、第2の加熱コイル32に供給される交流電流の電流値を変化させて、第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物に入力される電力を制御することができる。
ただし、第1のアーム回路21と同じスイッチング周波数でスイッチングされる共通アーム回路24のスイッチング周波数を変化させると、第2のアーム回路27のスイッチング周波数を変化させない場合であっても、変更された共通アーム回路24のスイッチング周波数によっては、第2の加熱コイル32の電流が変化する場合がある。例えば、共通アーム回路24と同じ周波数でスイッチングされる第1のアーム回路21のスイッチング周波数を25kHzから26kHzに変更し、第2のアーム回路27の周波数を75kHzに維持した場合では、第1の加熱コイル31に流れる電流の大きさは小さくなり、第2の加熱コイル32に流れる電流は小さくなる。一方、共通アーム回路24と同じ周波数でスイッチングされる第1のアーム回路21のスイッチング周波数を25kHzから24kHzに変更し、第2のアーム回路27の周波数を75kHzに維持した場合では、第1の加熱コイル31に流れる電流の大きさは大きくなり、第2の加熱コイル32に流れる電流は大きくなる。また、変更する周波数次第で、第1の加熱コイル31に流れる電流の大きさは大きくなり、第2の加熱コイル32に流れる電流は小さくなる場合や、第1の加熱コイル31に流れる電流の大きさは小さくなり、第2の加熱コイル32に流れる電流は大きくなる場合もある。
したがって、第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32に流れる電流とを制御する場合には、共通アーム回路24と同じ周波数でスイッチングされる第1のアーム回路21の周波数を変化させた後に、第2のアーム回路27の周波数を変化させて制御してもよい。
また、制御回路85は、共通アーム回路24の周波数を変化させた場合の第2の加熱コイル32に流れる電流および電力の増減を予め把握しておき、ある程度の電力を段階的に切り替える場合では、共通アーム回路24と同じ周波数でスイッチングされる第1のアーム回路21の周波数を変化させつつ、第2のアーム回路27の周波数を変化させることで、第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32に流れる電流を同時に制御してもよい。
本実施の形態5では、共振周波数からゲート信号の周波数を遠ざけることで、第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32に流れる電流を小さくなることを説明したが、共振周波数にゲート信号の周波数を近づけることで、第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32に流れる電流を大きくしてもよい。
このように、共通アーム回路24と同じ周波数でスイッチングされる第1のアーム回路21のスイッチング周波数を変化させ、第2のアーム回路27のスイッチング周波数を変化させることで、第1の加熱コイル31に流れる交流電流の電流値と第2の加熱コイル32に流れる交流電流の電流値とをそれぞれ独立に制御することができる。この結果、第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物と第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物とをそれぞれ独立に制御可能な電力で誘導加熱することができるので、異種材質からなる被加熱物の内周側および外周側の加熱温度をそれぞれ独立して制御することができる。
同様に、第1のアーム回路21のスイッチング周波数が共通アーム回路24のスイッチング周波数とは異なり、第2のアーム回路27のスイッチング周波数が共通アーム回路24のスイッチング周波数と同一である場合には、第1のアーム回路21のスイッチング周波数を変化させ、共通アーム回路24と同じ周波数でスイッチングされる第2のアーム回路27のスイッチング周波数を変化させることで、第1の加熱コイル31に流れる交流電流の電流値と第2の加熱コイル32に流れる交流電流の電流値とをそれぞれ独立に制御することができる。
なお、本実施の形態5においても、異なる周波数でスイッチングされる第1のアーム回路21または第2のアーム回路27のスイッチング周波数は、共通アーム回路24のスイッチング周波数と無関係であってよく、スイッチング周波数を任意に選択することができる。
次に、各スイッチング素子のスイッチング周波数を共振周波数に近づける場合の周波数の制御について説明する。前述したように、一般に、誘導加熱装置のインバータ回路では、アーム回路を共振回路の共振周波数より高い周波数でスイッチングして、加熱コイルに流れる交流電流の位相がアーム回路のスイッチングより遅れ位相となるようにして、スイッチング損失が増大するのを抑制している。誘導加熱している際に、例えば、調理動作として鍋振りをすることで共振回路のインピーダンスが変化し、完全共振の状態や進み位相となる場合がある。この場合、スイッチング素子に流れる電流やサージ電圧が大きくなって各アーム回路のスイッチング素子などが破壊される恐れもある。したがって、ゲート信号の周波数を共振周波数に近づける場合であっても、必ず進み位相にならないように、スイッチング周波数を共振周波数より高い周波数で制御することが好ましい。
その方法として、例えば、制御回路85に予め周波数の閾値と負荷の共振周波数の誤差とを設定しておき、共振周波数とスイッチング周波数との差が、周波数の閾値以上となるようにスイッチング周波数を制御してよい。また、制御回路85は、負荷の共振周波数を常に検知し、共振周波数とスイッチング周波数との差をフィードバックすることでゲート信号の周波数を制御し、常に周波数の閾値以上となるようにスイッチング周波数を制御しても良い。さらに、制御回路85は、インバータ回路81の出力する電圧および電流を検出し、電圧と電流との位相差をフィードバックすることでスイッチング周波数を制御し、常に遅れ位相となるように制御してもよい。また、スイッチング周波数が共振周波数より低い周波数となり、進み位相となった場合には、制御回路85は、保護動作として各スイッチング素子のスイッチングを停止させて、誘導加熱を停止してもよい。
なお、本実施の形態5では、第1の加熱コイル31の入力電力と第2の加熱コイル32の入力電力との両方を周波数制御により制御する方法について説明したが、第1の加熱コイル31または第2の加熱コイル32の一方の入力電力を実施の形態2または3で示したPWM制御または位相差制御により制御し、第1の加熱コイル31または第2の加熱コイル32のうち他方の入力電力を本実施の形態5の周波数制御により制御してもよい。また、PWM制御と周波数制御とを組み合わせて、PWM制御しながら周波数制御を行ってもよい。
実施の形態6.
図13は、本発明の実施の形態6における誘導加熱装置で被加熱物を誘導加熱する場合の加熱コイル上に載置された被加熱物の位置を示す平面図である。図13(a)は、異種材質からなる被加熱物110bの中心が加熱コイル30の中心に一致する状態で被加熱物110bが載置された様子を示す平面図であり、図13(b)は、異種材質からなる被加熱物110bの中心が加熱コイル30の中心からずれた状態で被加熱物110bが載置された様子を示す平面図である。本実施の形態6において、誘導加熱装置100の構成などは実施の形態1と同一であり、誘導加熱装置100の構成要素で同一の符号を付して説明したものは実施の形態1と同一である。本実施の形態6では、実施の形態1の誘導加熱装置100と相違する点について説明する。
本実施の形態6の誘導加熱装置100は、トッププレート2上に載置された被加熱物の材質を判別する負荷検知を定期的に行う。誘導加熱装置100の負荷検知部11は、例えば、数秒に1回といった間隔で、第1の加熱コイル31上および第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物の材質をそれぞれ判別し、判別結果を制御回路85に送信する。制御回路85は、負荷検知部11から定期的に送信された判別結果に基づいて、インバータ回路81の第1のアーム回路21、共通アーム回路24、および第2のアーム回路27のスイッチングを制御し、インバータ回路81は、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32に交流電流を供給する。
負荷検知部11は、図3に示したように誘導加熱装置100に交流電源9が接続される電源供給部82に設けてもよい。しかし、交流電源9から誘導加熱装置100に入力される電流を検出して負荷検知を行う場合、第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物の材質と第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物の材質とを同時に判別することができないので、負荷検知に多くの時間を要し、定期的に負荷検知を行う場合には好ましくない。負荷検知部11は、第1の加熱コイル31と直列接続された電流検出部と第2の加熱コイル32に直列接続された電流検出部とにより、第1の加熱コイル31上の被加熱物と第2の加熱コイル32上の被加熱物とを同時に負荷検知できる構成が好ましい。第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32のそれぞれに電流検出部が直列接続されている場合、負荷検知部11は、被加熱物を誘導加熱している際に各加熱コイルに流れる電流から被加熱物の材質を判別して、判別結果を定期的に制御回路85に送信すればよい。
以下では、負荷検知部11が、第1の加熱コイル31に直列接続された電流検出部と第2の加熱コイル32に直列接続された電流検出部とで検出された各加熱コイルに流れる電流に基づいて被加熱物の材質を判別する場合について説明する。しかし、負荷検知部11の構成はこれに限るものではなく、図3で示したように交流電源9から入力される電流に基づいて被加熱物の材質を判別する構成であってもよい。
図13において、加熱コイル30は、被加熱物110bの底部の内周側を誘導加熱する第1の加熱コイル31と、被加熱物110bの底部の外周側を誘導加熱する第2の加熱コイル32とで構成されている。被加熱物110bは、アルミなどの非磁性金属で形成されたフライパンなどの鍋の底部111に鉄などの磁性金属からなる磁性金属部112を接合して構成されている。
図13(a)に示すように、使用者が、加熱コイル30の中心と被加熱物110bの中心とが一致するように被加熱物110bを加熱コイル30上に載置して、被加熱物の誘導加熱を開始するために誘導加熱装置100の操作部5を操作すると、誘導加熱装置100は、実施の形態1で説明したように第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32にパルス的な電流を流して、第1の加熱コイル31上および第2の加熱コイル32上の被加熱物の材質を判別する。そして、負荷検知部11が判別した結果に基づいて、インバータ回路81は、第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32とに同じまたは異なる周波数の交流電流を供給する。
図13(a)の場合、第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物110bの材質は磁性金属であって、第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物110bの材質も磁性金属であるので、インバータ回路81は、第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32とに同じ周波数の交流電流を供給する。この場合、図3に示す回路図において制御回路85は、第1の可変容量コンデンサ41の開閉器44を閉じてコンデンサ42とコンデンサ43とを並列に接続し、第2の可変容量コンデンサ45の開閉器48を閉じてコンデンサ46とコンデンサ47とを並列に接続する。
各加熱コイルのインダクタンスおよび各コンデンサの静電容量を実施の形態1で例示した値とした場合、図13(a)の状態では、第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とからなる第1の共振回路の共振周波数は22.7kHzとなり、第2の加熱コイル32と第2の可変容量コンデンサ45とからなる第2の共振回路の共振周波数も22.7kHzとなる。従って、インバータ回路81は、第1のアーム回路21、共通アーム回路24、および第2のアーム回路27を25kHzでスイッチングして、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32のそれぞれに25kHzの交流電流を供給する。
そして、負荷検知部11は、第1の加熱コイル31に流れる25kHzの交流電流と第2の加熱コイル32に流れる25kHzの交流電流とをそれぞれ電流検出部で検出して、第1の加熱コイル31上および第2の加熱コイル32上に載置されている被加熱物の材質はそれぞれ磁性金属であると判別する。この判別結果は、被加熱物の誘導加熱開始時に判別した結果なので、誘導加熱装置100は、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32のそれぞれに25kHzの交流電流を供給し続ける。
ここで、図13(b)に示すように、使用者が鍋振りなどを行って、被加熱物110bの中心が加熱コイル30の中心からずれた位置ずれが発生したとする。この場合、第1の加熱コイル31上には被加熱物110bの磁性金属部112が載置されているので、第1の加熱コイル31に流れる交流電流の大きさは変化しない。一方、第2の加熱コイル32上には被加熱物110bの磁性金属部112と磁性金属部112の外周側に設けられた非磁性金属からなる底部111とが載置されるので、第2の加熱コイル32のインダクタンスが減少し、第2の加熱コイル32上の被加熱物の抵抗も減少する。この結果、第2の加熱コイル32に流れる電流が変化するので、負荷検知部11は、第2の加熱コイル32上の負荷が変化したことを検知する。この際、第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物のうち非磁性金属からなる部位の割合が所定量を超えると、負荷検知部11は、第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物の材質は非磁性金属であると判別する。
負荷検知部11は、第1の加熱コイル31上の被加熱物の材質および第2の加熱コイル32上の被加熱物の材質を定期的に判別して制御回路85に送信しているので、制御回路85が第2の加熱コイル32上の被加熱物の材質が磁性金属から非磁性金属に変化したことを認識すると、制御回路85は第2の可変容量コンデンサ45の静電容量を変更する。
すなわち、制御回路85は、第2の可変容量コンデンサ45の開閉器48を開いて、コンデンサ46からコンデンサ47を切り離すので、第2の可変容量コンデンサ45の静電容量は0.024μFとなる。図13(b)に示すように、第2の加熱コイル32上の被加熱物が完全に非磁性金属になるわけではないので、第2の加熱コイル32のインダクタンスは、200μHよりは大きいが300μHより小さくなる。この結果、第2の加熱コイル32と第2の可変容量コンデンサ45とからなる第2の共振回路の共振周波数が高くなる。
そして、制御回路85は、インバータ回路81が第2のアーム回路27を第1のアーム回路21および共通アーム回路24のスイッチング周波数よりも高い周波数でスイッチングするように各アーム回路のスイッチング素子のゲート信号を出力する。この場合の各アーム回路のスイッチング素子のゲート信号は、上記実施の形態1〜4で説明した通りである。これにより、第1の加熱コイル31に第1の周波数の交流電流を供給し、第2の加熱コイル32に第1の周波数より周波数が高い第2の周波数の交流電流を供給して、被加熱物110bの磁性金属部112の外周側の非磁性金属からなる底部111を効率よく誘導加熱することができる。この結果、被加熱物の位置ずれが発生しても被加熱物の底部の温度均一性を改善することができる。
実施の形態7.
図14は、本発明の実施の形態7における誘導加熱装置による2つの被加熱物を誘導加熱する様子を示す斜視図である。図14において、実施の形態1の図5と同じ符号を付けたものは同一または対応する構成を示しており、その説明を省略する。また、本実施の形態7において、誘導加熱装置100の構成などは実施の形態1と同一であり、誘導加熱装置100の構成要素で同一の符号を付して説明したものは実施の形態1と同一である。本実施の形態7は、実施の形態1とは、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32がそれぞれ異なる加熱口に設けられた構成が相違している。
図13に示すように、誘導加熱装置100はトッププレート2に表示された載置位置3aに対向して第1の加熱コイル31が設けられており、載置位置3cに対向して第2の加熱コイル32が設けられている。第1の加熱コイル31には第1の可変容量コンデンサ41が直列接続されて、第1の加熱コイル31と第1の可変容量コンデンサ41とが第1の共振回路を構成している。第2の加熱コイル32には第2の可変容量コンデンサ45が直列接続されて、第2の加熱コイル32と第2の可変容量コンデンサ45とが第2の共振回路を構成している。
第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32は、実施の形態1の図3の回路図で示したインバータ回路81により交流電流が供給される。すなわち、第1の加熱コイル31は、第1のアーム回路21の出力端23と共通アーム回路24の出力端26との間に電気的に接続されており、第2の加熱コイル32は、第2のアーム回路27の出力端29と共通アーム回路24の出力端26との間に電気的に接続されている。
図14に示すように、第1の加熱コイル31上に第1の加熱コイル31に流れる交流電流により誘導加熱される第1の被加熱物110aが載置され、第2の加熱コイル32上に第2の加熱コイル32に流れる交流電流により誘導加熱される第2の被加熱物110cが載置される。使用者が、誘導加熱装置100の操作部5を操作して、第1の被加熱物110aおよび第2の被加熱物110cを誘導加熱するための操作を行うと、負荷検知部11が、第1の加熱コイル31上に載置された被加熱物110aの材質および第2の加熱コイル32上に載置された被加熱物110cの材質を判別する。
負荷検知部11が、第1の加熱コイル31上の被加熱物110aの材質は鉄などの磁性金属であって、第2の加熱コイル32上の被加熱物110cの材質はアルミなどの非磁性金属であると判別した場合、制御回路85は、第1の可変容量コンデンサ41の開閉器44を閉じてコンデンサ42とコンデンサ43とを並列に接続し、第2の可変容量コンデンサ45の開閉器48を開いてコンデンサ46からコンデンサ47を切り離す。そして、実施の形態1で説明したように、第1のアーム回路21と共通アーム回路24とを第1の周波数でスイッチングさせ、第2のアーム回路27を第2の周波数でスイッチングさせる。第1の周波数は、例えば25kHzであってよく、第2の周波数は、例えば75kHzであってよい。この結果、第1の加熱コイル31には25kHzの交流電流が流れ、磁性金属からなる第1の被加熱物110aを25kHzの交番磁束により誘導加熱する。また、第2の加熱コイル32には75kHzの交流電流が流れ、非磁性金属からなる第2の被加熱物110cを75kHzの交番磁束で誘導加熱する。
なお、第1の被加熱物110aと第2の被加熱物110cとが、共に磁性金属である場合や、共に非磁性金属である場合には、第1のアーム回路21、共通アーム回路24、および第2のアーム回路27のスイッチング周波数を同じにして、第1の加熱コイル31に流れる交流電流と第2の加熱コイル32に流れる交流電流とを同じ周波数としてよい。
また、第1の可変容量コンデンサ41および第2の可変容量コンデンサ45は、必ずしも可変容量コンデンサでなくてもよく、静電容量が一定なコンデンサであってもよい。この場合、例えば、第1の加熱コイル31が設けられた加熱口を磁性金属の被加熱物を誘導加熱する加熱口とし、第2の加熱コイル32が設けられた加熱口を非磁性金属の被加熱物を誘導加熱する加熱口とする。そして、第1の加熱コイル31に直列接続されるコンデンサを、第1の可変容量コンデンサ41から開閉器44を除去してコンデンサ42とコンデンサ43とを並列接続して構成し、第2の加熱コイル32に直列接続されるコンデンサを、第2の可変容量コンデンサ45から開閉器48とコンデンサ47とを除去してコンデンサ46のみで構成する。そして、第1のアーム回路21と共通アーム回路24とを第1の周波数でスイッチングさせ、第2のアーム回路27を第2の周波数でスイッチングさせて、第1の加熱コイル31に第1の周波数の交流電流を供給し、第2の加熱コイル32に第2の周波数の交流電流を供給してもよい。
以上、本発明の実施の形態1〜7について説明した。これらの、本発明の実施の形態1〜7で説明した構成は互いに組合せることができる。
11 負荷検知部
21 第1のアーム回路、21a 第1のスイッチング素子、23 出力端
24 共通アーム回路、24a 第1のスイッチング素子、26 出力端
27 第2のアーム回路、21a 第2のスイッチング素子、29 出力端
31 第1の加熱コイル、32 第2の加熱コイル
41 第1の可変容量コンデンサ、45 第2の可変容量コンデンサ
81 インバータ回路
100 誘導加熱装置