JPWO2018180080A1 - 絶縁電線 - Google Patents
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Abstract
Description
本出願は、2017年3月31日出願の日本出願第2017−071395号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
特許文献1や特許文献2に記載の絶縁電線によれば、絶縁層の低誘電率化を促進するため、絶縁層の気孔率をさらに高めることは可能である。しかし、気孔率を高くすると、機械的強度が低下し、また、絶縁性、特に長時間加熱後の絶縁破壊強度が低下するという不都合がある。
本開示の絶縁電線は、絶縁性及び機械的強度に優れる。
(1)本発明の一態様に係る絶縁電線は、線状の導体と、上記導体の外周面に被覆される絶縁層とを備える絶縁電線であって、上記絶縁層が、複数の気孔を有する内側気孔層と、上記内側気孔層の外側に配設され、複数の気孔を有する外側気孔層とを備え、上記絶縁層において、上記気孔中の独立気孔率が80体積%以上であり、上記内側気孔層の気孔率が1体積%以上10体積%以下であり、上記外側気孔層の気孔率が25体積%以上50体積%以下である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る絶縁電線及び絶縁電線の製造方法を説明する。
[第一実施形態]
図1の絶縁電線1は、線状の導体2と、導体2の外周面に被覆される絶縁層3とを備える。絶縁層3は、内側気孔層3a、内側気孔層3aの外側に配設される外側気孔層3bとから構成される。内側気孔層3a及び外側気孔層3bは、それぞれ複数の気孔4を有し、絶縁層3における気孔4中の独立気孔率は80体積%以上である。
導体2は、例えば断面が方形状の角線であるが、断面が円形状の丸線や、複数の素線を撚り合わせた撚り線であってもよい。
絶縁層3は、図1に示すように内側気孔層3a及び外側気孔層3bで構成される。
ここで、「気孔の平均径」とは、絶縁層3に含まれる例えば30個の気孔4について、気孔の容積に相当する真球の直径を算出し、平均した値を意味する。気孔4の容積は、絶縁層3の断面を走査型電子顕微鏡で観察することにより求めることができる。また、気孔4の平均径は、上記樹脂組成物の主成分となる材料の種類、絶縁層3の厚さ、中空形成粒子5の材料、焼付条件等により変化させることができる。
ここで、「気孔の短軸が導体表面に対して垂直方向に配向する」とは、気孔の短軸と導体表面に垂直な方向との角度差が20度以下であることをいう。
ここで、「気孔の短径及び長径を含む断面における長径に対する短径の長さの比の平均」とは、絶縁層3に含まれる例えば30個の気孔4について、短径及び長径を含む断面における長径に対する短径の長さの比を算出し、平均した値を意味する。
ここで、「気孔の長径の平均」とは、絶縁層3に含まれる例えば30個の気孔4について、その長径を平均した値を意味する。
次に、絶縁電線1の製造方法について説明する。絶縁電線1の製造方法は、絶縁層3を形成する樹脂組成物、及び熱分解性樹脂を主成分とするコア6と、熱分解温度が熱分解樹脂の熱分解温度より高いシェル7と含む中空形成粒子5を希釈し、中空形成粒子5の含有量の異なるワニスを調製する工程(ワニス調製工程)と、導体2の外周面へのワニスの塗布及び焼付けにより気孔4を含む内側気孔層3aを形成する工程(内側気孔層形成工程)と、内側気孔層3aを形成したワニスよりも中空形成粒子5の含有量の大きいワニスの内側気孔層3aを形成した導体2の外周面への塗布及び焼付けにより気孔4を含む外側気孔層3bを形成する工程(外側気孔層形成工程)とを備える。
ワニス調製工程において、絶縁層3を形成する樹脂組成物及び中空形成粒子5を溶剤で希釈してワニスを調製する。内側気孔層3a及び外側気孔層3bをそれぞれ形成するワニスとして、中空形成粒子5の含有量が異なる複数種類のワニスを調製する。図1に示すように、内側気孔層3a及び外側気孔層3bの気孔率は互いに異なるので、ここでは中空形成粒子5の含有量が異なる内側用及び外側用の2種類のワニスを調製する。なお、内側用及び外側用のワニスは、溶剤で希釈する絶縁層3を形成する樹脂組成物として同種のものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。
樹脂組成物は、主ポリマーと、希釈用溶剤、硬化剤等とを含む組成物である。主ポリマーとしては、特に限定されないが、熱硬化性樹脂を使用する場合、例えばポリビニルホルマール前駆体、熱硬化ポリウレタン前駆体、熱硬化アクリル樹脂前駆体、エポキシ樹脂前駆体、フェノキシ樹脂前駆体、熱硬化ポリエステル前駆体、熱硬化ポリエステルイミド前駆体、熱硬化ポリエステルアミドイミド前駆体、熱硬化ポリアミドイミド前駆体、ポリイミド前駆体等が使用できる。また、主ポリマーとして熱可塑性樹脂を使用する場合、例えばポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、ポリイミド等が使用できる。これらの中でも、ワニスを塗布し易くできると共に絶縁層3の強度及び耐熱性を向上させ易い点において、ポリイミド前駆体及びポリイミドが好ましい。
中空形成粒子5は、図3に示すように、熱分解性樹脂を主成分とするコア6と、熱分解性樹脂より熱分解温度が高いシェル7とを有する。
コア6の主成分に用いる熱分解性樹脂としては、例えば主ポリマーの焼付温度よりも低い温度で熱分解する樹脂粒子が用いられる。主ポリマーの焼付温度は、樹脂の種類に応じて適宜設定されるが、通常200℃以上600℃以下程度である。従って、中空形成粒子5のコア6に用いる熱分解性樹脂の熱分解温度の下限としては200℃が好ましく、上限としては400℃が好ましい。ここで、熱分解温度とは、空気雰囲気下で室温から10℃/分で昇温し、質量減少率が50%となるときの温度を意味する。熱分解温度は、例えば熱重量測定−示差熱分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社の「TG/DTA」)を用いて熱重量を測定することにより測定できる。
ここで、「シェルの平均厚さ」とは、例えば30個の中空形成粒子5について、シェル7の厚さを平均した値を意味する。
内側気孔層形成工程において、ワニス調製工程で調製した内側用ワニスを導体2の外周面に塗布した後、焼付けることで導体2表面に内側気孔層3aを形成する。焼付けの際、内面側用ワニスに含まれる熱分解性樹脂が熱分解し、内側気孔層3a内の熱分解性樹脂が存在していた部分に気孔4が生成される。
外側気孔層形成工程において、内側気孔層3aを形成した導体2のさらに外周面へ、ワニス調製工程で調製した内側用ワニスよりも熱分解性樹脂の含有量の大きい外側用ワニスを塗布した後、焼付けることで、導体2に形成された内側気孔層3aの外側に外側気孔層3bを形成する。焼付けの際、外側用ワニスに含まれる熱分解性樹脂が熱分解し、外側気孔層3b内の熱分解性樹脂が存在していた部分に気孔4が生成される。
絶縁電線1は、絶縁層が気孔を含み、絶縁層3において、気孔中の独立気孔率が上記値以上であるため、気孔の大きさのばらつきが小さい等により、絶縁破壊電圧を高くすることができ、絶縁性に優れる。また、絶縁電線1は、内側気孔層と外側気孔層とを備え、それぞれの気孔率を上記範囲内とすることにより、機械的強度の抑制作用を低減でき、絶縁層全体としての機械的強度に優れる。
図2の絶縁電線1は、線状の導体2と、導体2の外周面に被覆される絶縁層3とを備える。絶縁層3は、内側気孔層3aと、内側気孔層3aの外側に配設される外側気孔層3bと、外側気孔層3bの外側に配設される他の気孔層3cから構成される。内側気孔層3a、外側気孔層3b及び他の気孔層3cは、それぞれ複数の気孔4を有している。絶縁層3における気孔4中の独立気孔率は80体積%以上であり、85体積%以上がより好ましく、90体積%以上がさらに好ましい。気孔4中の独立気孔率の上限としては、例えば100体積%である。
他の気孔層3cに含まれる気孔4中の独立気孔率は、内側気孔層3aに含まれる気孔4の独立気孔率又は外側気孔層3bに含まれる気孔4の独立気孔率と異なっていてもよい。この場合、他の気孔層3cにおいても、気孔4中の独立気孔率が上記範囲内であることが好ましい。
次に、図2の絶縁電線1の製造方法について説明する。図2の絶縁電線1は、例えば図1の第一実施形態の絶縁電線1の製造方法と同様の方法で製造することができる。
他の気孔層形成工程において、外側気孔層3bを形成した導体2のさらに外周面へ、ワニス調製工程で調製した外側用ワニスよりも熱分解性樹脂の含有量の小さい他の気孔層用ワニスを塗布した後、焼付けることで、導体2に形成された外側気孔層3bの外側に他の気孔層3cを形成する。焼付けの際、他の気孔層用ワニスに含まれる熱分解性樹脂が熱分解し、他の気孔層3c内の熱分解性樹脂が存在していた部分に気孔4が生成される。
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
ワニス(A)及びワニス(B)を以下のようにして調製した。
(ワニス(A))
主ポリマーとしてポリイミドを用い、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを用いて、主ポリマーをこの溶剤で希釈した樹脂組成物を調製した。次に、中空形成粒子としてコアがPMMA粒子でシェルがシリコーンの平均粒子径3μmのコアシェル粒子を用い、樹脂組成物に、計算値で絶縁層の気孔率が10体積%となる量を分散させてワニス(A)を調製した。
主ポリマーとしてポリイミドを用い、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを用いて、主ポリマーをこの溶剤で希釈した樹脂組成物を調製した。次に、中空形成粒子としてコアがPMMA粒子でシェルがシリコーンの平均粒子径3μmのコアシェル粒子を用い、樹脂組成物に、計算値で絶縁層の気孔率が30体積%となる量を分散させてワニス(B)を調製した。
表1のNo.1に示す絶縁電線を以下のようにして製造した。竪型塗装設備を用いて、断面2mm×2mmの角形状の導体の外周面に、内側用ワニスとして、ワニス(A)を塗布し、導体と相似形状の開口部を有するダイスと焼付炉中を速度6m/分で通過させ、350℃で1分間焼付を行い、内側気孔層を形成した。次に、内側気孔層の外周面に、外側用ワニスとして、ワニス(B)を塗布し、導体と相似形状の開口部を有するダイスと焼付炉中を速度6m/分で通過させ、350℃で1分間焼付を行い、絶縁被膜を形成した。外側用ワニスの塗布、ダイス通過、焼付を30回繰り返して、外側気孔層を形成し、絶縁電線(No.1)を製造した。
得られたNo.1〜No.3の絶縁電線について、各層の気孔率、気孔中の独立気孔率、絶縁層の誘電率、コロナ放電開始電圧、絶縁破壊電圧、長時間加熱後の絶縁破壊電圧及びプレス後皮膜厚減少率を、下記方法に従い評価した。評価結果を表1に合わせて示す。
形成した各層(内側気孔層、外側気孔層、他の気孔層及び気孔層)を導体から筒状に剥離し、筒状の各層の質量W2を測定した。また、筒状の各層の外形から見かけの体積V1を求め、V1に各層の材質の密度ρ1を乗じて気孔がない場合の質量W1を算出した。これらW1及びW2の値から、下記式により気孔率を算出した。
気孔率=(W1−W2)×100/W1 (体積%)
筒状に剥離して得た各層の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、隣接する気孔との間に絶縁性を有する樹脂組成物を介することにより互いに開口していないもの(独立気孔)と独立気孔以外の気孔とを区別するように二値化して、気孔中の独立気孔率(体積%)を算出した。
No.1〜No.3の絶縁電線について、絶縁層3の誘電率εを測定した。図4は、誘電率の測定方法を説明するための模式図である。図4では、絶縁電線に図1と同じ符号を付している。まず、絶縁電線の表面3カ所に銀ペーストPを塗布すると共に、絶縁電線の一端側の絶縁層3を剥離して導体2を露出させた測定用のサンプルを作製した。ここで、絶縁電線の表面3カ所に塗布した銀ペーストPの絶縁電線長手方向の塗布長さは、長手方向に沿って順に10mm、100mm、10mmとした。長さ10mmで塗布した2カ所の銀ペーストPを接地し、これらの2カ所の銀ペーストの間に塗布した長さ100mmの銀ペーストPと露出させた導体2との間の静電容量をLCRメータMで測定した。測定した静電容量及び絶縁層3の平均厚さから絶縁層3の誘電率εを算出した。なお、誘電率εの測定は、105℃で1時間加熱した後にn=3で実施し、その平均値を求めた。
部分放電試験機(菊水電子工業社の「KPD2050S」)を使用して測定した。2本の絶縁電線の面同士を長さ100mmにわたって隙間が無いように密着させ、2本の導体間に電極を繋いだ。25℃にて、周波数60Hzで昇圧し、100pC以上の部分放電が発生した時の電圧を読み取った。n=5で実施し、その平均値で評価した。
絶縁破壊試験機(FAITH社の「BREAK−DOWN TESTER ”CONTROL UNIT F8150−1”」)を使用して測定した。No.1〜No.3の絶縁電線に幅10mmのアルミ箔を巻き、電極の片方を導体に、もう一方をアルミ箔に接続した。昇圧速度500V/秒で昇圧して、15mA以上の電流が流れたときの電圧を読み取った。n=5で実施し、その平均値で評価した。
No.1〜No.3の絶縁電線を、220℃、空気雰囲気下の恒温室で2000時間保管した後に、上記方法で絶縁破壊電圧を測定した。
No.1〜No.3の絶縁電線を、その長手方向の一部にプレス圧がかかるように、プレス加工機に設置した。所定のプレス圧になるように、プレス圧(MPa)×プレス面積(mm2)で求められる荷重(N)をかけ、荷重が安定してから、10秒間プレスした。プレスした箇所の絶縁層の平均厚さT1と、プレスしていない箇所の絶縁層の平均厚さT2とを測定し、T1及びT2の測定値から(T2−T1)×100/T2(%)の式により、プレス後皮膜厚減少率を算出した。プレス後皮膜厚減少率の測定は、プレス圧を、50MPa、100MPa、200MPaとしてそれぞれ行った。また、絶縁層の平均厚さT1及びT2は、絶縁電線の断面方向において3点測定し、その平均値を用いた。
2 導体
3 絶縁層
3a 内側気孔層
3b 外側気孔層
3c 他の気孔層
4 気孔
5 中空形成粒子
6 コア
7 シェル
M LCRメータ
P 銀ペースト
Claims (7)
- 線状の導体と、上記導体の外周面に被覆される絶縁層とを備える絶縁電線であって、
上記絶縁層が、複数の気孔を有する内側気孔層と、上記内側気孔層の外側に配設され、複数の気孔を有する外側気孔層とを備え、
上記絶縁層において、上記気孔中の独立気孔率が80体積%以上であり、
上記内側気孔層の気孔率が1体積%以上10体積%以下であり、
上記外側気孔層の気孔率が25体積%以上50体積%以下である絶縁電線。 - 上記内側気孔層の平均厚さが3μm以上15μm以下であり、
上記外側気孔層の平均厚さが80μm以上160μm以下である請求項1に記載の絶縁電線。 - 上記絶縁層が、上記外側気孔層の外側にさらに複数の気孔を有する他の気孔層を備え、上記他の気孔層の気孔率が1体積%以上10体積%以下であり、平均厚さが3μm以上10μm以下である請求項1又は請求項2に記載の絶縁電線。
- 上記複数の気孔の周縁部に外殻を備え、上記外殻がコアシェル構造の中空形成粒子のシェルに由来する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の絶縁電線。
- 上記外殻の主成分が、シリコーンである請求項4に記載の絶縁電線。
- 上記複数の気孔が、扁平球体であって、
上記複数の気孔の短径及び長径を含む断面において、長径に対する短径の長さの比の平均が0.95以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の絶縁電線。 - 上記導体と上記絶縁層の間にプライマー層を備える請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の絶縁電線。
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