JPWO2018180080A1 - 絶縁電線 - Google Patents

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Abstract

本発明の一態様に係る絶縁電線は、線状の導体と、上記導体の外周面に被覆される絶縁層とを備える絶縁電線であって、上記絶縁層が、複数の気孔を有する内側気孔層と、上記内側気孔層との外側に配設され、複数の気孔を有する外側気孔層とを備え、上記絶縁層において、上記気孔中の独立気孔率が80体積%以上であり、上記内側気孔層の気孔率が1体積%以上10体積%以下であり、上記外側気孔層の気孔率が25体積%以上50体積%以下である。

Description

本発明は、絶縁電線に関する。
本出願は、2017年3月31日出願の日本出願第2017−071395号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
適用電圧が高い電気機器、例えば高電圧で使用されるモータ等では、電気機器を構成する絶縁電線に高電圧が印加され、その絶縁層表面で部分放電(コロナ放電)が発生し易くなる。コロナ放電の発生により、局部的な温度上昇、オゾンの発生、イオンの発生等が引き起こされると、早期に絶縁破壊を生じ、絶縁電線ひいては電気機器の寿命が短くなる。このため、適用電圧が高い電気機器に使用される絶縁電線には、優れた絶縁性、機械的強度等に加えてコロナ放電開始電圧の向上も求められる。
コロナ放電開始電圧を上げる工夫としては、絶縁層の低誘電率化が有効である。絶縁被膜の低誘電率化を実現するために、塗膜構成樹脂と、塗膜構成樹脂の焼付け温度よりも低い温度で分解する熱分解性樹脂とを含む絶縁ワニスにより加熱硬化膜(絶縁被膜)を形成する絶縁電線が提案されている(特開2012−224714号公報参照)。この絶縁電線は、上記熱分解性樹脂が塗膜構成樹脂の焼付け時に熱分解してその部分が気孔となることを利用して加熱硬化膜内に気孔が形成されており、気孔の形成により絶縁被膜の低誘電率化を実現している。
また、このような気孔を含む絶縁層を備える絶縁電線は、絶縁層の厚さ方向の機械的強度が低下するので、低誘電率化と機械的強度とを両立するため、絶縁層が厚さ方向に区分される3以上の気孔層から構成され、これらの3以上の気孔層の気孔率が段階的に変化する絶縁電線が提案されている(特開2016−91865号公報参照)。
特開2012−224714号公報 特開2016−91865号公報
本発明の一態様に係る絶縁電線は、線状の導体と、上記導体の外周面に被覆される絶縁層とを備える絶縁電線であって、上記絶縁層が、複数の気孔を有する内側気孔層と、上記内側気孔層の外側に配設され、複数の気孔を有する外側気孔層とを備え、上記絶縁層において、上記気孔中の独立気孔率が80体積%以上であり、上記内側気孔層の気孔率が1体積%以上10体積%以下であり、上記外側気孔層の気孔率が25体積%以上50体積%以下である。
本発明の第一実施形態に係る絶縁電線の模式的断面図である。 本発明の第二実施形態に係る絶縁電線の模式的断面図である。 本発明の実施形態に係る絶縁電線の形成に用いるワニスに含まれる中空形成粒子の模式的断面図である。 実施例における誘電率の測定方法を説明するための模式図である。
[本開示が解決しようとする課題]
特許文献1や特許文献2に記載の絶縁電線によれば、絶縁層の低誘電率化を促進するため、絶縁層の気孔率をさらに高めることは可能である。しかし、気孔率を高くすると、機械的強度が低下し、また、絶縁性、特に長時間加熱後の絶縁破壊強度が低下するという不都合がある。
そこで、絶縁性及び機械的強度に優れる絶縁電線を提供することを目的とする。
[本開示の効果]
本開示の絶縁電線は、絶縁性及び機械的強度に優れる。
[本発明の実施形態の説明]
(1)本発明の一態様に係る絶縁電線は、線状の導体と、上記導体の外周面に被覆される絶縁層とを備える絶縁電線であって、上記絶縁層が、複数の気孔を有する内側気孔層と、上記内側気孔層の外側に配設され、複数の気孔を有する外側気孔層とを備え、上記絶縁層において、上記気孔中の独立気孔率が80体積%以上であり、上記内側気孔層の気孔率が1体積%以上10体積%以下であり、上記外側気孔層の気孔率が25体積%以上50体積%以下である。
当該絶縁電線は、絶縁層が気孔を含み、絶縁層において、気孔中の独立気孔率が上記値以上であるため、気孔の大きさのばらつきが小さい等により、長時間加熱後においても絶縁破壊電圧を高くすることができ、絶縁性に優れる。また、当該絶縁電線は、内側気孔層と外側気孔層とを備え、それぞれの気孔率を上記範囲内とすることにより、機械的強度の抑制作用を低減でき、絶縁層全体としての機械的強度に優れる。ここで、「独立気孔率」とは、後述する測定方法により求められる値をいう。また、「気孔率」とは、絶縁層を構成する各層の気孔を含む体積に対する気孔の容積の百分率を意味し、各層についてその外形から算出される見かけの体積V1に各層の材質の密度ρ1を乗じて求められる気孔がない場合の質量W1と、各層の実際の質量W2とから、(W1−W2)×100/W1の式により求められる値である。
(2)上記内側気孔層の平均厚さとしては、3μm以上15μm以下が好ましく、上記外側気孔層の平均厚さとしては、80μm以上160μm以下が好ましい。各層の平均厚さを上記範囲内とすることで、導体を確実に絶縁すると共に、コイル等を形成する際のコイルの体積効率の低下を抑制できる。
(3)上記絶縁層が、上記外側気孔層の外側にさらに複数の気孔を有する他の気孔層を備えるとよく、上記他の気孔層の気孔率としては、1体積%以上10体積%以下が好ましく、上記他の気孔層の平均厚さとしては、3μm以上10μm以下が好ましい。外側気孔層の外側にさらに上記構成を有する他の気孔層を備えることにより、絶縁層全体としての機械的強度を維持しつつ、絶縁電線の耐久性を向上させることができる。
(4)上記複数の気孔の周縁部に外殻を備え、上記外殻がコアシェル構造の中空形成粒子のシェルに由来するとよい。絶縁層の気孔が、コアシェル構造の中空形成粒子のコアの熱分解により形成され、かつ上記気孔の周辺部にシェルが外殻として存在することにより、形成される気孔は大きさ及び形状のばらつきがより小さくなり、また、独立気孔率が向上するため、絶縁性及び機械的強度がより向上する。なお、コアシェル構造とは、粒子のコアを形成する材料とコアの周囲を取り囲むシェルの材料が異なる構造をいう。
(5)上記外殻の主成分が、シリコーンであるとよい。外殻の主成分がシリコーンであれば、外殻に弾性を付与すると共に絶縁性及び耐熱性を向上させ易い。なお、「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば50質量%以上含有される成分である。
(6)上記複数の気孔が、扁平球体であって、上記複数の気孔の短径及び長径を含む断面において、長径に対する短径の長さの比の平均が0.95以下であるとよい。気孔が扁平球体で、気孔の短径及び長径を含む断面において長径に対する短径の長さの比の平均が0.95以下であることによって、導体表面に対して垂直方向に気孔同士が当接し難くなり、絶縁層における独立気孔率を高くすることができる。なお、「扁平球体」とは、重心を通る最大対角線長さを長径、重心を通る最小対角線長さを短径としたとき、短径が長径よりも小さい球体をいう。
(7)上記導体と上記絶縁層の間にプライマー層を備えるとよい。導体と絶縁層との間にプライマー層を形成することで、導体と絶縁層との間の密着性が向上し、その結果、絶縁電線の可撓性や耐摩耗性、耐傷性、耐加工性などの特性を効果的に高めることができる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る絶縁電線及び絶縁電線の製造方法を説明する。
[絶縁電線]
[第一実施形態]
図1の絶縁電線1は、線状の導体2と、導体2の外周面に被覆される絶縁層3とを備える。絶縁層3は、内側気孔層3a、内側気孔層3aの外側に配設される外側気孔層3bとから構成される。内側気孔層3a及び外側気孔層3bは、それぞれ複数の気孔4を有し、絶縁層3における気孔4中の独立気孔率は80体積%以上である。
<導体>
導体2は、例えば断面が方形状の角線であるが、断面が円形状の丸線や、複数の素線を撚り合わせた撚り線であってもよい。
導体2の材質としては、導電率が高くかつ機械的強度が大きい金属が好ましい。このような金属としては、例えば銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、銀、鉄、鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。導体2は、これらの金属を線状に形成した材料や、このような線状の材料にさらに別の金属を被覆した多層構造のもの、例えばニッケル被覆銅線、銀被覆銅線、銅被覆アルミ線、銅被覆鋼線等を用いることができる。
導体2の平均断面積の下限としては、0.01mmが好ましく、0.1mmがより好ましい。導体2の平均断面積の上限としては、20mmが好ましく、10mmがより好ましく5mmがさらに好ましい。導体2の平均断面積が上記下限に満たない場合、導体2に対する絶縁層3の体積が大きくなり、絶縁電線1を用いて形成されるコイル等の体積効率が低くなるおそれがある。導体2の平均断面積が上記上限を超える場合、誘電率を十分に低下させるために絶縁層3を厚く形成しなければならず、絶縁電線1が不必要に大径化するおそれがある。
<絶縁層>
絶縁層3は、図1に示すように内側気孔層3a及び外側気孔層3bで構成される。
内側気孔層3a及び外側気孔層3bは、それぞれ複数の気孔4を含んでいる。内側気孔層3a及び外側気孔層3bのそれぞれにおいて、複数の気孔4は略均一に分布している。
導体の断面が方形状であるいわゆる角線の場合は、絶縁層3の平均厚さを厚くすることが必要となる。内側気孔層3aの平均厚さの下限としては、3μmが好ましく、5μmがより好ましい。内側気孔層3aの平均厚さの上限としては、15μmが好ましく、10μmがより好ましく、8μmがさらに好ましい。導体の断面が円形状の丸線や、複数の素線を撚り合わせた撚り線の場合は、絶縁層3の平均厚さを薄くすることができる。この場合、内側気孔層3aの平均厚さの下限としては、2μmが好ましく、5μmがより好ましい。内側気孔層3aの平均厚さの上限としては、15μmが好ましく、10μmがより好ましく、8μmがさらに好ましい。内側気孔層3aの平均厚さが上記下限未満の場合、機械的強度の維持効果が大きい内側気孔層3aが薄くなり過ぎ、絶縁層3の機械的強度を維持できないおそれがある。内側気孔層3aの平均厚さが上記上限を超える場合、低誘電率化の効果が小さい内側気孔層3aが厚くなり過ぎ、絶縁層3の誘電率が十分に低下しないおそれがある。
導体の断面が方形状であるいわゆる角線の場合は、絶縁層3の平均厚さを厚くすることが必要となる。外側気孔層3bの平均厚さの下限としては、80μmが好ましく、100μmがより好ましい。外側気孔層3bの平均厚さの上限としては、160μmが好ましく、130μmがより好ましい。導体の断面が円形状の丸線や、複数の素線を撚り合わせた撚り線の場合は、絶縁層3の平均厚さを薄くすることができる。この場合、外側気孔層3bの平均厚さの下限としては、10μmが好ましく、20μmがより好ましい。外側気孔層3bの平均厚さの上限としては、160μmが好ましく、130μmがより好ましい。外側気孔層3bの平均厚さが上記下限未満の場合、低誘電率化に寄与する効果が大きい外側気孔層3bが薄くなり過ぎ、絶縁層3の誘電率が十分に低下しないおそれがある。外側気孔層3bの平均厚さが上記上限を超える場合、機械的強度の維持効果が小さい外側気孔層3bが厚くなり過ぎ、絶縁層3の機械的強度を維持できないおそれがある。
絶縁層3の平均厚さは、導体の形状により異なる。導体の断面が円形状の丸線や、複数の素線を撚り合わせた撚り線の場合は、絶縁層3の平均厚さを薄くすることができる。この場合の絶縁層3の下限としては、15μmが好ましく、30μmがより好ましい。絶縁層3の平均厚さの上限としては、300μmが好ましく、200μmがより好ましい。一方、導体の断面が方形状であるいわゆる角線の場合は、絶縁層3の平均厚さを厚くすることが必要となる。この場合の絶縁層3の下限としては、83μmが好ましく、100μmがより好ましい。絶縁層3の平均厚さの上限としては、400μmが好ましく、300μmがより好ましい。絶縁層3の平均厚さが上記下限未満である場合、絶縁層3に破れが生じ、導体2の絶縁が不十分となるおそれがある。絶縁層3の平均厚さが上記上限を超える場合、絶縁電線1を用いて形成されるコイル等の体積効率が低くなるおそれがある。
絶縁層3(内側気孔層3a及び外側気孔層3b)を形成する樹脂組成物の主成分の樹脂としては、特に限定されないが、例えばポリビニルホルマール、熱硬化ポリウレタン、熱硬化アクリル、エポキシ、熱硬化ポリエステル、熱硬化ポリエステルイミド、熱硬化ポリエステルアミドイミド、芳香族ポリアミド、熱硬化ポリアミドイミド、熱硬化ポリイミド等の熱硬化性樹脂や、例えばポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、ポリイミド等の熱可塑性樹脂が使用できる。ここで「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば50質量%以上含有される成分である。なお、内側気孔層3a及び外側気孔層3bを形成する樹脂組成物の主成分の樹脂を同種のものとしてもよいし、異なる種類のものとしてもよい。
内側気孔層3aの気孔率の下限としては、1体積%であり、2体積%がより好ましい。内側気孔層3aの気孔率の上限としては、10体積%であり、8体積%がより好ましい。内側気孔層3aの気孔率が上記下限未満の場合、絶縁層3の誘電率が十分に低下せず、コロナ放電開始電圧を十分に向上できないおそれがある。内側気孔層3aの気孔率が上記上限を超える場合、絶縁層3の十分な機械的強度を確保できないおそれがある。
外側気孔層3bの気孔率の下限としては、25体積%であり、30体積%が好ましい。外側気孔層3bの気孔率の上限としては、50体積%であり、40体積%が好ましく、38体積%がより好ましい。外側気孔層3bの気孔率が上記下限未満の場合、絶縁層3の誘電率が十分に低下せず、コロナ放電開始電圧を十分に向上できないおそれがある。外側気孔層3bの気孔率が上記上限を超える場合、絶縁層3の十分な機械的強度を確保できないおそれがある。
絶縁層3における気孔4中の独立気孔率の下限としては、80体積%であり、85体積%がより好ましく、90体積%がさらに好ましい。気孔4中の独立気孔率の上限としては、例えば100体積%である。気孔4中の独立気孔率が上記下限未満の場合、絶縁電線の絶縁性及び機械的強度が低下する傾向にある。なお、内側気孔層3aに含まれる気孔4の独立気孔率と外側気孔層3bに含まれる気孔4の独立気孔率は異なっていてもよい。この場合、内側気孔層3a及び外側気孔層3bのそれぞれにおいて、気孔4中の独立気孔率は上記範囲内であることが好ましい。
気孔4中の独立気孔率は、絶縁層3を構成する各層の試料の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際、隣接する気孔との間に絶縁性を有する樹脂組成物を介することにより互いに開口していないもの(独立気孔)の全気孔に対する体積%である。独立気孔率(体積%)は、絶縁層の断面のSEM写真において、独立気孔と独立気孔以外の気孔とを区別するように二値化して算出することができる。
気孔4の平均径の下限としては、0.1μmが好ましく、1μmがより好ましい。気孔4の平均径の上限としては、10μmが好ましく、8μmがより好ましい。気孔4の平均径が上記下限未満の場合、絶縁層3中でのコロナ放電の発生を十分に抑制できないおそれがある。気孔4の平均径が上記上限を超える場合、内側気孔層3a及び外側気孔層3bの各層内における気孔4の分布を均一にし難くなり、誘電率の分布に偏りが生じ易くなるおそれがある。なお、内側気孔層3a及び外側気孔層3bごとに含まれる気孔4の平均径が異なっていてもよい。
ここで、「気孔の平均径」とは、絶縁層3に含まれる例えば30個の気孔4について、気孔の容積に相当する真球の直径を算出し、平均した値を意味する。気孔4の容積は、絶縁層3の断面を走査型電子顕微鏡で観察することにより求めることができる。また、気孔4の平均径は、上記樹脂組成物の主成分となる材料の種類、絶縁層3の厚さ、中空形成粒子5の材料、焼付条件等により変化させることができる。
複数の気孔4は、外殻で被覆されている。外殻は図3に示すコアシェル構造の中空形成粒子5のコア6が除去されて中空となったシェル7で構成される。つまり、外殻はコアシェル構造の中空形成粒子5のシェル7に由来する。また、複数の外殻のうち少なくとも一部は、欠損を有している。
複数の気孔4は、扁平球体である。また、導体2表面に対して垂直方向には外力が作用し易いが、気孔4の短軸が上記垂直方向に配向していると、上記垂直方向に気孔同士が当接し難くなるため、独立気孔率を向上させることができる。そのため、短軸が導体2表面と垂直方向に配向している気孔4の割合が大きいほど好ましい。全気孔4の数に対する短軸が導体2表面と垂直方向に配向している気孔4の数の割合の下限としては、60%が好ましく、80%がより好ましい。短軸が導体2表面と垂直方向に配向している気孔4の割合が上記下限未満であると、気孔同士で当接する気孔が増加し、独立気孔率が低くなるおそれがある。
ここで、「気孔の短軸が導体表面に対して垂直方向に配向する」とは、気孔の短軸と導体表面に垂直な方向との角度差が20度以下であることをいう。
気孔4の短径及び長径を含む断面における長径に対する短径の長さの比の平均の下限としては、0.2が好ましく、0.3がより好ましい。上記比の平均の上限としては、0.95が好ましく、0.9がより好ましい。上記比の平均が上記下限未満であると、ワニス焼付時の厚さ方向の収縮量を大きくする必要があるため、絶縁電線1の可撓性が低下するおそれがある。上記比の平均が上記上限を超えると、気孔率を高くする場合に、外力が作用し易い絶縁層3の厚さ方向(導体2表面に対して垂直方向)に気孔同士が当接し易くなり、独立気孔率が低くなるおそれがある。気孔4の短径及び長径は、絶縁層3の断面を走査型電子顕微鏡で観察することにより求めることができる。なお、上記比は、ワニスに含まれる樹脂組成物の焼付時の収縮により中空形成粒子5に加わる圧力を変化させることで調節できる。中空形成粒子5に加わる圧力は、例えば上記樹脂組成物の主成分となる材料の種類、絶縁層3の厚さ、中空形成粒子5の材料、焼付条件等により変化させることができる。
ここで、「気孔の短径及び長径を含む断面における長径に対する短径の長さの比の平均」とは、絶縁層3に含まれる例えば30個の気孔4について、短径及び長径を含む断面における長径に対する短径の長さの比を算出し、平均した値を意味する。
気孔4の長径の平均の下限としては、特に限定されないが、例えば0.1μmが好ましく、1μmがより好ましい。上記長径の平均の上限としては、10μmが好ましく、8μmがより好ましい。上記長径の平均が上記下限未満であると、絶縁層3に所望の気孔率が得られないおそれがある。上記長径の平均が上記上限を超えると、絶縁層3内における気孔4の分布を均一にし難くなり、誘電率の分布に偏りが生じ易くなるおそれがある。
ここで、「気孔の長径の平均」とは、絶縁層3に含まれる例えば30個の気孔4について、その長径を平均した値を意味する。
複数の気孔4の周縁部に存在する複数の外殻は、少なくとも一部が欠損を有する。気孔4及び外殻は、図3に示すような熱分解性樹脂を主成分とするコア6と、熱分解性樹脂より熱分解温度が高いシェル7とを有する中空形成粒子5に由来する。つまり、中空形成粒子5を含むワニスの焼付時にコア6の主成分である熱分解性樹脂が熱分解によりガス化し、シェル7を通過して飛散することにより気孔4及び外殻が形成される。このとき、シェル7における熱分解性樹脂の通過路が欠損として外殻に存在する。この欠損の形状は、シェル7の材質や形状によって変化するが、気孔の外殻による連通防止効果を高める観点から、亀裂、割れ目及び孔が好ましい。
なお、絶縁層3は、欠損のない外殻を含んでいてもよい。コア6の熱分解性樹脂のシェル7外部への流出条件によってはシェル7(外殻)に欠損が形成されない場合もある。また、絶縁層3は、外殻に被覆されない気孔4を含んでいてもよい。
[絶縁電線の製造方法]
次に、絶縁電線1の製造方法について説明する。絶縁電線1の製造方法は、絶縁層3を形成する樹脂組成物、及び熱分解性樹脂を主成分とするコア6と、熱分解温度が熱分解樹脂の熱分解温度より高いシェル7と含む中空形成粒子5を希釈し、中空形成粒子5の含有量の異なるワニスを調製する工程(ワニス調製工程)と、導体2の外周面へのワニスの塗布及び焼付けにより気孔4を含む内側気孔層3aを形成する工程(内側気孔層形成工程)と、内側気孔層3aを形成したワニスよりも中空形成粒子5の含有量の大きいワニスの内側気孔層3aを形成した導体2の外周面への塗布及び焼付けにより気孔4を含む外側気孔層3bを形成する工程(外側気孔層形成工程)とを備える。
<ワニス調製工程>
ワニス調製工程において、絶縁層3を形成する樹脂組成物及び中空形成粒子5を溶剤で希釈してワニスを調製する。内側気孔層3a及び外側気孔層3bをそれぞれ形成するワニスとして、中空形成粒子5の含有量が異なる複数種類のワニスを調製する。図1に示すように、内側気孔層3a及び外側気孔層3bの気孔率は互いに異なるので、ここでは中空形成粒子5の含有量が異なる内側用及び外側用の2種類のワニスを調製する。なお、内側用及び外側用のワニスは、溶剤で希釈する絶縁層3を形成する樹脂組成物として同種のものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。
(樹脂組成物)
樹脂組成物は、主ポリマーと、希釈用溶剤、硬化剤等とを含む組成物である。主ポリマーとしては、特に限定されないが、熱硬化性樹脂を使用する場合、例えばポリビニルホルマール前駆体、熱硬化ポリウレタン前駆体、熱硬化アクリル樹脂前駆体、エポキシ樹脂前駆体、フェノキシ樹脂前駆体、熱硬化ポリエステル前駆体、熱硬化ポリエステルイミド前駆体、熱硬化ポリエステルアミドイミド前駆体、熱硬化ポリアミドイミド前駆体、ポリイミド前駆体等が使用できる。また、主ポリマーとして熱可塑性樹脂を使用する場合、例えばポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、ポリイミド等が使用できる。これらの中でも、ワニスを塗布し易くできると共に絶縁層3の強度及び耐熱性を向上させ易い点において、ポリイミド前駆体及びポリイミドが好ましい。
希釈用溶剤としては、絶縁ワニスに従来より用いられている公知の有機溶剤を用いることができる。具体的には、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサエチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクトンなどの極性有機溶媒をはじめ、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類;ジクロロメタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;クレゾール、クロルフェノールなどのフェノール類;ピリジンなどの第三級アミン類等が挙げられ、これらの有機溶媒はそれぞれ単独であるいは2種以上を混合して用いられる。
また、樹脂組成物に、硬化剤を含有させてもよい。硬化剤としては、チタン系硬化剤、イソシアネート系化合物、ブロックイソシアネート、尿素やメラミン化合物、アミノ樹脂、アセチレン誘導体、メチルテトラヒドロ無水フタル酸などの脂環式酸無水物、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物等が例示される。これらの硬化剤は、使用する樹脂組成物が含有する主ポリマーの種類に応じて、適宜選択される。例えば、ポリアミドイミド系の場合、硬化剤として、イミダゾール、トリエチルアミン等が好ましく用いられる。
なお、チタン系硬化剤としては、テトラプロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラヘキシルチタネート等が例示される。イソシアネート系化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンなどの炭素数5〜18の脂環式イソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらの変性物等が例示される。ブロックイソシアネートとしては、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン−3,3’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート、ベンゾフェノン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート等のイソシアネート基に、ジメチルピラゾール等のブロック剤が付加した化合物などが例示される。メラミン化合物としては、メチル化メラミン、ブチル化メラミン、メチロール化メラミン、ブチロール化メラミン等が例示される。アセチレン誘導体としては、エチニルアニリン、エチニルフタル酸無水物等が例示される。
(中空形成粒子)
中空形成粒子5は、図3に示すように、熱分解性樹脂を主成分とするコア6と、熱分解性樹脂より熱分解温度が高いシェル7とを有する。
(コア)
コア6の主成分に用いる熱分解性樹脂としては、例えば主ポリマーの焼付温度よりも低い温度で熱分解する樹脂粒子が用いられる。主ポリマーの焼付温度は、樹脂の種類に応じて適宜設定されるが、通常200℃以上600℃以下程度である。従って、中空形成粒子5のコア6に用いる熱分解性樹脂の熱分解温度の下限としては200℃が好ましく、上限としては400℃が好ましい。ここで、熱分解温度とは、空気雰囲気下で室温から10℃/分で昇温し、質量減少率が50%となるときの温度を意味する。熱分解温度は、例えば熱重量測定−示差熱分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社の「TG/DTA」)を用いて熱重量を測定することにより測定できる。
中空形成粒子5のコア6に用いる熱分解性樹脂としては、特に限定されないが、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの片方、両方の末端又は一部をアルキル化、(メタ)アクリレート化又はエポキシ化した化合物;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチルなどの炭素数1以上6以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体;ウレタンオリゴマー、ウレタンポリマー、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン(メタ)アクリレートなどの変性(メタ)アクリレートの重合物;ポリ(メタ)アクリル酸;これらの架橋物;ポリスチレン、架橋ポリスチレン等が挙げられる。これらの中でも、主ポリマーの焼付温度で熱分解し易く絶縁層3に気孔4を形成させ易い点において、炭素数1以上6以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体が好ましい。このような(メタ)アクリル酸エステルの重合体として、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)が挙げられる。
コア6の形状は、球状が好ましい。コア6の形状を球状とするために、例えば球状の熱分解性樹脂粒子をコア6として用いるとよい。球状の熱分解性樹脂粒子を用いる場合、樹脂粒子の平均粒子径の下限としては、特に制限はないが、例えば0.1μmが好ましく、0.5μmがより好ましく、1μmがさらに好ましい。樹脂粒子の平均粒子径の上限としては、15μmが好ましく、10μmがより好ましい。樹脂粒子の平均粒子径が上記下限未満であると、樹脂粒子をコア6とする中空形成粒子5が作製し難くなるおそれがある。樹脂粒子の平均粒子径が上記上限を超えると、樹脂粒子をコア6とする中空形成粒子5が大きくなり過ぎるため、絶縁層3内における気孔4の分布が均一になり難くなり、誘電率の分布に偏りが生じ易くなるおそれがある。ここで、樹脂粒子の平均粒子径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した粒度分布において、最も高い体積の含有割合を示す粒径を意味する。
シェル7の主成分として、熱分解性樹脂より熱分解温度が高い材料が用いられる。また、シェル7の主成分として、誘電率が低く、耐熱性が高いものが好ましい。シェル7の主成分として用いられるこのような材料としては、例えばポリスチレン、シリコーン、フッ素樹脂、ポリイミド等の樹脂が挙げられる。これらの中でも、シェル7に弾性を付与すると共に絶縁性及び耐熱性を向上させ易い点において、シリコーンが好ましい。ここで、「フッ素樹脂」とは、高分子鎖の繰り返し単位を構成する炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1つが、フッ素原子又はフッ素原子を有する有機基(以下「フッ素原子含有基」ともいう)で置換されたものをいう。フッ素原子含有基は、直鎖状又は分岐状の有機基中の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されたものであり、例えばフルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、フルオロポリエーテル基等を挙げることができる。なお、絶縁性を損なわない範囲でシェル7に金属が含まれてもよい。
なお、シェル7の主成分の樹脂は、ワニスに含有させる樹脂組成物の主ポリマーと同種のものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。例えばシェル7の主成分の樹脂として、樹脂組成物の主ポリマーと同種のものを用いた場合でも、熱分解性樹脂より熱分解温度が高いので、熱分解性樹脂がガス化してもシェル7の主成分の樹脂は熱分解し難いため、気孔4中の独立気孔率を高くすることができる。このようなワニスで形成された絶縁電線は、電子顕微鏡で観察しても気孔4の外殻の存在を確認できない場合がある。シェル7の主成分の樹脂として樹脂組成物の主ポリマーと異なるものを用いることにより、シェル7を上記樹脂組成物と一体化され難くできるので、樹脂組成物の主ポリマーと同種の樹脂を用いる場合に比べて、気孔4中の独立気孔率は高くなる。
シェル7の平均厚さの下限としては、特に制限はないが、例えば0.01μmが好ましく、0.02μmがより好ましい。シェル7の平均厚さの上限としては、0.5μmが好ましく、0.4μmがより好ましい。シェル7の平均厚さが上記下限未満であると、気孔4中の独立気孔率が低くなるおそれがある。シェル7の平均厚さが上記上限を超えると、気孔4の体積が小さくなり過ぎるため、絶縁層3の気孔率を所定以上に高められないおそれがある。なお、シェル7は、1層で形成されてもよいし、複数の層で形成されてもよい。シェル7が複数の層で形成される場合、複数の層の合計厚さの平均が、上記厚さの範囲内であればよい。
ここで、「シェルの平均厚さ」とは、例えば30個の中空形成粒子5について、シェル7の厚さを平均した値を意味する。
中空形成粒子5のCV値の上限としては、30%が好ましく、20%がより好ましい。中空形成粒子5のCV値が上記上限を超えると、絶縁層3にサイズが異なる複数の気孔4が含まれるようになるため、誘電率の分布に偏りが生じ易くなるおそれがある。なお、中空形成粒子5のCV値の下限としては、特に制限はないが、例えば1%が好ましい。中空形成粒子5のCV値が上記下限未満であると、中空形成粒子5のコストが高くなり過ぎるおそれがある。ここで、「CV値」とは、JIS−Z8825(2013)に規定される変動変数を意味する。
なお、中空形成粒子5は、図3に示すように、コア6を1個の熱分解性樹脂粒子で形成する構成としてもよいし、コア6を複数の熱分解性樹脂粒子で形成し、シェル7の樹脂がこれらの複数の熱分解性樹脂粒子を被覆する構成としてもよい。
また、中空形成粒子5の表面は、図3に示すように凹凸がなく滑らかであってもよいし、凹凸が形成されてもよい。
また、有機溶剤により希釈し、中空形成粒子5を分散させることにより調製したワニスの樹脂固形分濃度の下限としては、15質量%が好ましく、20質量%がより好ましい。ワニスの樹脂固形分濃度の上限としては、50質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。ワニスの樹脂固形分濃度が上記下限未満であると、1回のワニスの塗布で形成できる厚さが小さくなるため、所望の厚さの絶縁層3を形成するためのワニス塗布工程の繰り返し回数が多くなり、ワニス塗布工程の時間が長くなるおそれがある。ワニスの樹脂固形分濃度が上記上限を超えると、ワニスが増粘することにより、ワニスの保存安定性が悪化するおそれがある。
また、ワニスに、中空形成粒子5に加えて、気孔形成のために熱分解性粒子等の気孔形成剤を混合してもよい。また、気孔形成のために、沸点の異なる希釈溶剤を組合せてワニスを調製してもよい。気孔形成剤により形成された気孔や沸点の異なる希釈溶剤の組合せにより形成された気孔は、中空形成粒子5に由来する気孔とは連通し難い。従って、このように外殻に被覆されない気孔を含む場合でも、外殻に被覆される気孔の存在により、気孔4中の独立気孔率を高めることができる。
<内側気孔層形成工程>
内側気孔層形成工程において、ワニス調製工程で調製した内側用ワニスを導体2の外周面に塗布した後、焼付けることで導体2表面に内側気孔層3aを形成する。焼付けの際、内面側用ワニスに含まれる熱分解性樹脂が熱分解し、内側気孔層3a内の熱分解性樹脂が存在していた部分に気孔4が生成される。
内側用ワニスの一度の塗布及び焼付けにより所望の厚さの内側気孔層3aが形成できない場合、導体2表面に形成される内側気孔層3aが所定の厚さとなるまで、内側用ワニスの塗布及び焼付けを繰り返し行う。
<外側気孔層形成工程>
外側気孔層形成工程において、内側気孔層3aを形成した導体2のさらに外周面へ、ワニス調製工程で調製した内側用ワニスよりも熱分解性樹脂の含有量の大きい外側用ワニスを塗布した後、焼付けることで、導体2に形成された内側気孔層3aの外側に外側気孔層3bを形成する。焼付けの際、外側用ワニスに含まれる熱分解性樹脂が熱分解し、外側気孔層3b内の熱分解性樹脂が存在していた部分に気孔4が生成される。
外側用ワニスの一度の塗布及び焼付けにより所望の厚さの外側気孔層3bが形成できない場合、外側気孔層3bが所定の厚さとなるまで、外側用ワニスの塗布及び焼付けを繰り返し行う。
[利点]
絶縁電線1は、絶縁層が気孔を含み、絶縁層3において、気孔中の独立気孔率が上記値以上であるため、気孔の大きさのばらつきが小さい等により、絶縁破壊電圧を高くすることができ、絶縁性に優れる。また、絶縁電線1は、内側気孔層と外側気孔層とを備え、それぞれの気孔率を上記範囲内とすることにより、機械的強度の抑制作用を低減でき、絶縁層全体としての機械的強度に優れる。
[第二実施形態]
図2の絶縁電線1は、線状の導体2と、導体2の外周面に被覆される絶縁層3とを備える。絶縁層3は、内側気孔層3aと、内側気孔層3aの外側に配設される外側気孔層3bと、外側気孔層3bの外側に配設される他の気孔層3cから構成される。内側気孔層3a、外側気孔層3b及び他の気孔層3cは、それぞれ複数の気孔4を有している。絶縁層3における気孔4中の独立気孔率は80体積%以上であり、85体積%以上がより好ましく、90体積%以上がさらに好ましい。気孔4中の独立気孔率の上限としては、例えば100体積%である。
他の気孔層3cに含まれる気孔4中の独立気孔率は、内側気孔層3aに含まれる気孔4の独立気孔率又は外側気孔層3bに含まれる気孔4の独立気孔率と異なっていてもよい。この場合、他の気孔層3cにおいても、気孔4中の独立気孔率が上記範囲内であることが好ましい。
図2の絶縁電線1は、図1の絶縁電線1とは絶縁層3の構成が異なる。図2の絶縁電線1の導体2、内側気孔層3a及び外側気孔層3bは、図1の絶縁電線1の導体2、内側気孔層3a及び外側気孔層3bと同様のものを用いることができるので説明を省略する。
他の気孔層3cの気孔率の下限としては、1体積%が好ましく、3体積%がより好ましい。他の気孔層3cの気孔率の上限としては、10体積%が好ましく、8体積%がより好ましい。他の気孔層3cの気孔率が上記下限未満の場合、絶縁層3の誘電率が十分に低下せず、コロナ放電開始電圧を十分に向上できないおそれがある。他の気孔層3cの気孔率が上記上限を超える場合、絶縁層3の十分な機械的強度を確保できないおそれがある。
他の気孔層3cの平均厚さの下限としては、3μmが好ましく、5μmがより好ましい。他の気孔層3cの平均厚さの上限としては、10μmが好ましく、8μmがより好ましい。他の気孔層3cの平均厚さが上記下限未満の場合、機械的強度の維持効果が大きい他の気孔層3cが薄くなり過ぎ、絶縁層3の機械的強度を維持できないおそれがある。他の気孔層3cの平均厚さが上記上限を超える場合、低誘電率化の効果が小さい他の気孔層3cが厚くなり過ぎ、絶縁層3の誘電率が十分に低下しないおそれがある。
[絶縁電線の製造方法]
次に、図2の絶縁電線1の製造方法について説明する。図2の絶縁電線1は、例えば図1の第一実施形態の絶縁電線1の製造方法と同様の方法で製造することができる。
具体的には、第一実施形態の絶縁電線1の製造方法における外側気孔層形成工程の後に、以下の他の気孔層形成工程を行うことにより、製造することができる。
<他の気孔層形成工程>
他の気孔層形成工程において、外側気孔層3bを形成した導体2のさらに外周面へ、ワニス調製工程で調製した外側用ワニスよりも熱分解性樹脂の含有量の小さい他の気孔層用ワニスを塗布した後、焼付けることで、導体2に形成された外側気孔層3bの外側に他の気孔層3cを形成する。焼付けの際、他の気孔層用ワニスに含まれる熱分解性樹脂が熱分解し、他の気孔層3c内の熱分解性樹脂が存在していた部分に気孔4が生成される。
他の気孔層用ワニスの一度の塗布及び焼付けにより所望の厚さの他の気孔層3cが形成できない場合、他の気孔層3cが所定の厚さとなるまで、他の気孔層用ワニスの塗布及び焼付けを繰り返し行う。所定の厚さの他の気孔層3cを形成することにより、絶縁電線1が得られる。
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
つまり、第一及び第二実施形態においては、絶縁層が2又は3の気孔層で構成される絶縁電線について説明したが、さらに、絶縁層が4層以上の気孔層で構成される絶縁電線としてもよい。絶縁層を構成する気孔層の数をより多くすることで、絶縁層全体の誘電率及び機械的強度をより細かく調整し易くなる。また、厚さ方向で気孔率の異なる気孔層を用いて、絶縁層が1層又は2層の気孔層で構成される絶縁電線としてもよい。
また、上記実施形態では、熱分解性樹脂を用いて気孔を生成させる製造方法について説明したが、熱分解性樹脂の代わりに発泡剤や熱膨張性マイクロカプセルをワニスに混合し、発泡剤や熱膨張性マイクロカプセルにより気孔を形成させる製造方法としてもよい。例えば上記製造方法において、絶縁層を形成する樹脂を溶剤で希釈したものを熱膨張性マイクロカプセルと混合して各気孔層用のワニスを調製し、これらのワニスの導体の外周面への塗布及び焼付けにより絶縁層を形成してもよい。焼付けの際、ワニスに含まれる熱膨張性マイクロカプセルが膨張又は発泡し、熱膨張性マイクロカプセルによって気孔が形成される。
熱膨張性マイクロカプセルは、熱膨張剤からなる芯材(内包物)と、芯材を包む外殻とを有する。熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張剤は、加熱により膨張又は気体を発生するものであればよく、その原理は問わない。熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張剤としては、例えば低沸点液体、化学発泡剤又はこれらの混合物を使用することができる。
低沸点液体としては、例えばブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン等のアルカンや、トリクロロフルオロメタン等のフレオン類などが好適に用いられる。また、化学発泡剤としては、加熱によりNガスを発生するアゾビスイソブチロニトリル等の熱分解性を有する物質が好適に用いられる。
熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張剤の膨張開始温度、つまり低沸点液体の沸点又は化学発泡剤の熱分解温度としては、後述する熱膨張性マイクロカプセルの外殻の軟化温度以上とされる。より詳しくは、熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張剤の膨張開始温度の下限としては、60℃が好ましく、70℃がより好ましい。熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張剤の膨張開始温度の上限としては、200℃が好ましく、150℃がより好ましい。熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張剤の膨張開始温度が上記下限に満たない場合、絶縁電線の製造時、輸送時又は保管時に熱膨張性マイクロカプセルが意図せず膨張してしまうおそれがある。熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張剤の膨張開始温度が上記上限を超える場合、熱膨張性マイクロカプセルを膨張させるために必要なエネルギーコストが過大となるおそれがある。
熱膨張性マイクロカプセルの外殻は、熱膨張剤の膨張時に破断することなく膨張し、発生したガスを包含するマイクロバルーンを形成できる延伸性を有する材質から形成される。熱膨張性マイクロカプセルの外殻を形成する材質としては、通常は、熱可塑性樹脂等の高分子を主成分とする樹脂組成物が用いられる。
熱膨張性マイクロカプセルの外殻の主成分とされる熱可塑性樹脂としては、例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリレート、メタアクリレート、スチレン等の単量体から形成された重合体、あるいは2種以上の単量体から形成された共重合体が好適に用いられる。好ましい熱可塑性樹脂の一例としては、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体が挙げられ、この場合の熱膨張剤の膨張開始温度は、80℃以上150℃以下とされる。
また、上記実施形態では、絶縁層に含まれる気孔が熱分解性樹脂の熱分解によって形成される構成について説明したが、例えば気孔を中空フィラーで形成させた構成としてもよい。気孔を中空フィラーで形成させる場合、例えば絶縁層を形成する樹脂組成物と中空フィラーとを混練し、押出し成形により混練物を導体に被覆することで絶縁電線を製造できる。
中空フィラーにより気孔を形成する場合、中空フィラーの内部の空洞部分が絶縁層に含まれる気孔となる。中空フィラーとしては、例えばシラスバルーン、ガラスバルーン、セラミックバルーン、有機樹脂バルーン等が挙げられる。絶縁電線に可撓性が要求される場合、これらの中で有機樹脂バルーンが好ましい。また、機械的強度が重視される絶縁電線の場合、入手が容易で破損し難いという点からガラスバルーンが好ましい。
また、上記実施形態では、絶縁層に含まれる気孔が熱分解性樹脂の熱分解によって形成される構成について説明したが、例えば相分離法を用いて気孔を形成させた構成としてもよい。相分離法を用いる一例として、絶縁層を形成する樹脂として熱可塑性樹脂を用い、溶剤と均質混合して加熱溶融状態で導体の外周面へ塗布する。そして、水等の非溶解性液体への浸漬又は空気中での冷却により樹脂と溶媒とを相分離させ、溶媒を別の揮発性溶剤で抽出除去することにより気孔が形成される。
また、例えば絶縁電線において、導体と絶縁層との間に内側介在層等のさらなる層が設けられてもよい。内側介在層は、層間の密着性を高めたり絶縁層の低誘電率化を補強するために設けられる層であり、例えば公知の樹脂組成物により形成することができる。
導体と絶縁層との間に内側介在層を設ける場合、内側介在層を形成する樹脂組成物は、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエステル及びフェノキシ樹脂の中の一種又は複数種の樹脂を含むとよい。また、内側介在層を形成する樹脂組成物は、密着向上剤等の添加剤を含んでもよい。このような樹脂組成物によって導体と絶縁層との間に内側介在層を形成することで、導体と絶縁層との間の密着性を向上することが可能であり、その結果、絶縁電線の可撓性や耐摩耗性、耐傷性、耐加工性などの特性を効果的に高めることができる。
また、内側介在層を形成する樹脂組成物は、上記樹脂と共に他の樹脂、例えばエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、メラミン樹脂等を含んでもよい。また、内側介在層を形成する樹脂組成物に含まれる各樹脂として、市販の液状組成物(絶縁ワニス)を使用してもよい。
また、内側介在層を形成する樹脂組成物として、上述した絶縁層の樹脂組成物の主成分として挙げた樹脂と同種のものを主成分として用いてもよい。さらに、内側介在層は、複数の気孔を含んでいてもよい。内側介在層が複数の気孔を含むことにより、内側介在層も絶縁層の誘電率の低下に寄与できる。ただし、この場合、内側介在層の気孔率は絶縁層の気孔率よりも小さい方がより好ましい。また、内側介在層は、複数の層で形成されていてもよく、それらの複数の層の気孔率が互いに異なるものとしてもよい。
また、絶縁電線において、絶縁層の外周面側にさらに絶縁性を有する保護層を積層してもよい。保護層を形成する樹脂組成物としては、上述した絶縁層の樹脂組成物の主成分として挙げた樹脂と同種のものを主成分とするものを用いることができる。保護層は、気孔を含んでいてもよいし、気孔を含んでいなくてもよい。保護層が気孔を含む場合、保護層も絶縁層の誘電率の低下に寄与できる。ただし、この場合、保護層の気孔率は絶縁層の気孔率よりも小さい方がより好ましい。一方、保護層が気孔を含まない場合、絶縁性に優れるので絶縁電線の絶縁性がさらに向上する。また、保護層は、気孔を含む複数の層で形成されていてもよく、それらの複数の層の気孔率が互いに異なるものとしてもよい。
また、絶縁電線において、導体と絶縁層との間にプライマー層等のさらなる層が設けられてもよい。プライマー層は、層間の密着性を高めるために設けられる層であり、例えば公知の樹脂組成物により形成することができる。
導体と絶縁層との間にプライマー層を設ける場合、このプライマー層を形成する樹脂組成物は、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエステル及びフェノキシ樹脂の中の一種又は複数種の樹脂を含むとよい。また、プライマー層を形成する樹脂組成物は、密着向上剤等の添加剤を含んでもよい。このような樹脂組成物によって導体と絶縁層との間にプライマー層を形成することで、導体と絶縁層との間の密着性が向上し、その結果、絶縁電線の可撓性や耐摩耗性、耐傷性、耐加工性などの特性を効果的に高めることができる。
また、プライマー層を形成する樹脂組成物は、上記樹脂と共に他の樹脂、例えばエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、メラミン樹脂等を含んでもよい。また、プライマー層を形成する樹脂組成物に含まれる各樹脂として、市販の液状組成物(絶縁ワニス)を使用してもよい。
プライマー層の平均厚さの下限としては、1μmが好ましく、2μmがより好ましい。プライマー層の平均厚さの上限としては、30μmが好ましく、20μmがより好ましい。プライマー層の平均厚さが上記下限未満であると、導体との十分な密着性を発揮できないおそれがある。プライマー層の平均厚さが上記上限を超えると、絶縁電線が不必要に大径化するおそれがある。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[ワニスの調製]
ワニス(A)及びワニス(B)を以下のようにして調製した。
(ワニス(A))
主ポリマーとしてポリイミドを用い、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを用いて、主ポリマーをこの溶剤で希釈した樹脂組成物を調製した。次に、中空形成粒子としてコアがPMMA粒子でシェルがシリコーンの平均粒子径3μmのコアシェル粒子を用い、樹脂組成物に、計算値で絶縁層の気孔率が10体積%となる量を分散させてワニス(A)を調製した。
(ワニス(B))
主ポリマーとしてポリイミドを用い、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを用いて、主ポリマーをこの溶剤で希釈した樹脂組成物を調製した。次に、中空形成粒子としてコアがPMMA粒子でシェルがシリコーンの平均粒子径3μmのコアシェル粒子を用い、樹脂組成物に、計算値で絶縁層の気孔率が30体積%となる量を分散させてワニス(B)を調製した。
[絶縁電線の製造]
表1のNo.1に示す絶縁電線を以下のようにして製造した。竪型塗装設備を用いて、断面2mm×2mmの角形状の導体の外周面に、内側用ワニスとして、ワニス(A)を塗布し、導体と相似形状の開口部を有するダイスと焼付炉中を速度6m/分で通過させ、350℃で1分間焼付を行い、内側気孔層を形成した。次に、内側気孔層の外周面に、外側用ワニスとして、ワニス(B)を塗布し、導体と相似形状の開口部を有するダイスと焼付炉中を速度6m/分で通過させ、350℃で1分間焼付を行い、絶縁被膜を形成した。外側用ワニスの塗布、ダイス通過、焼付を30回繰り返して、外側気孔層を形成し、絶縁電線(No.1)を製造した。
表1のNo.2に示す絶縁電線を以下のようにして製造した。竪型塗装設備を用いて、断面2mm×2mmの角形状の導体の外周面に、内側用ワニスとして、ワニス(A)を塗布し、導体と相似形状の開口部を有するダイスと焼付炉中を速度6m/分で通過させ、350℃で1分間焼付を行い、内側気孔層を形成した。次に、内側気孔層の外周面に、外側用ワニスとして、ワニス(B)を塗布し、導体と相似形状の開口部を有するダイスと焼付炉中を速度6m/分で通過させ、350℃で1分間焼付を行い、絶縁被膜を形成した。外側用ワニスの塗布、ダイス通過、焼付を28回繰り返して、外側気孔層を形成した。さらに、外側気孔層の外周面に他の気孔層用ワニスとして、ワニス(A)を塗布し、導体と相似形状の開口部を有するダイスと焼付炉中を速度6m/分で通過させ、350℃で1分間焼付を行い、他の気孔層を形成し、絶縁電線(No.2)を製造した。
表1のNo.3に示す絶縁電線を以下のようにして製造した。竪型塗装設備を用いて、断面2mm×2mmの角形状の導体の外周面に、ワニス(B)を塗布し、導体と相似形状の開口部を有するダイスと焼付炉中を速度6m/分で通過させ、350℃で1分間焼付を行い、絶縁被膜を形成した。ワニスの塗布、ダイス通過、焼付を34回繰り返して、気孔層を形成し、絶縁電線(No.3)を製造した。
[評価]
得られたNo.1〜No.3の絶縁電線について、各層の気孔率、気孔中の独立気孔率、絶縁層の誘電率、コロナ放電開始電圧、絶縁破壊電圧、長時間加熱後の絶縁破壊電圧及びプレス後皮膜厚減少率を、下記方法に従い評価した。評価結果を表1に合わせて示す。
(各層の気孔率)
形成した各層(内側気孔層、外側気孔層、他の気孔層及び気孔層)を導体から筒状に剥離し、筒状の各層の質量W2を測定した。また、筒状の各層の外形から見かけの体積V1を求め、V1に各層の材質の密度ρ1を乗じて気孔がない場合の質量W1を算出した。これらW1及びW2の値から、下記式により気孔率を算出した。
気孔率=(W1−W2)×100/W1 (体積%)
(気孔中の独立気孔率)
筒状に剥離して得た各層の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、隣接する気孔との間に絶縁性を有する樹脂組成物を介することにより互いに開口していないもの(独立気孔)と独立気孔以外の気孔とを区別するように二値化して、気孔中の独立気孔率(体積%)を算出した。
(絶縁層の誘電率)
No.1〜No.3の絶縁電線について、絶縁層3の誘電率εを測定した。図4は、誘電率の測定方法を説明するための模式図である。図4では、絶縁電線に図1と同じ符号を付している。まず、絶縁電線の表面3カ所に銀ペーストPを塗布すると共に、絶縁電線の一端側の絶縁層3を剥離して導体2を露出させた測定用のサンプルを作製した。ここで、絶縁電線の表面3カ所に塗布した銀ペーストPの絶縁電線長手方向の塗布長さは、長手方向に沿って順に10mm、100mm、10mmとした。長さ10mmで塗布した2カ所の銀ペーストPを接地し、これらの2カ所の銀ペーストの間に塗布した長さ100mmの銀ペーストPと露出させた導体2との間の静電容量をLCRメータMで測定した。測定した静電容量及び絶縁層3の平均厚さから絶縁層3の誘電率εを算出した。なお、誘電率εの測定は、105℃で1時間加熱した後にn=3で実施し、その平均値を求めた。
(コロナ放電開始電圧)
部分放電試験機(菊水電子工業社の「KPD2050S」)を使用して測定した。2本の絶縁電線の面同士を長さ100mmにわたって隙間が無いように密着させ、2本の導体間に電極を繋いだ。25℃にて、周波数60Hzで昇圧し、100pC以上の部分放電が発生した時の電圧を読み取った。n=5で実施し、その平均値で評価した。
(絶縁破壊電圧)
絶縁破壊試験機(FAITH社の「BREAK−DOWN TESTER ”CONTROL UNIT F8150−1”」)を使用して測定した。No.1〜No.3の絶縁電線に幅10mmのアルミ箔を巻き、電極の片方を導体に、もう一方をアルミ箔に接続した。昇圧速度500V/秒で昇圧して、15mA以上の電流が流れたときの電圧を読み取った。n=5で実施し、その平均値で評価した。
(長時間加熱後の絶縁破壊電圧)
No.1〜No.3の絶縁電線を、220℃、空気雰囲気下の恒温室で2000時間保管した後に、上記方法で絶縁破壊電圧を測定した。
(プレス後皮膜厚減少率)
No.1〜No.3の絶縁電線を、その長手方向の一部にプレス圧がかかるように、プレス加工機に設置した。所定のプレス圧になるように、プレス圧(MPa)×プレス面積(mm)で求められる荷重(N)をかけ、荷重が安定してから、10秒間プレスした。プレスした箇所の絶縁層の平均厚さT1と、プレスしていない箇所の絶縁層の平均厚さT2とを測定し、T1及びT2の測定値から(T2−T1)×100/T2(%)の式により、プレス後皮膜厚減少率を算出した。プレス後皮膜厚減少率の測定は、プレス圧を、50MPa、100MPa、200MPaとしてそれぞれ行った。また、絶縁層の平均厚さT1及びT2は、絶縁電線の断面方向において3点測定し、その平均値を用いた。
Figure 2018180080
表1の結果より、No.1及びNo.2の絶縁電線では、内側気孔層の気孔率は1体積%以上10体積%以下であり、外側気孔層の気孔率は25体積%以上50体積%以下であり、絶縁層における気孔中の独立気孔率は80体積%以上である。No.1及びNo.2の絶縁電線は、長時間加熱後の絶縁破壊電圧が高く、プレス後の皮膜厚減少率が低く抑えられており、絶縁性及び機械的強度に優れていることが分かる。一方、No.3の絶縁電線は、上記層構成を備えておらず、長時間加熱後の絶縁破壊電圧及びプレス後の皮膜厚減少率が悪化していた。
1 絶縁電線
2 導体
3 絶縁層
3a 内側気孔層
3b 外側気孔層
3c 他の気孔層
4 気孔
5 中空形成粒子
6 コア
7 シェル
M LCRメータ
P 銀ペースト

Claims (7)

  1. 線状の導体と、上記導体の外周面に被覆される絶縁層とを備える絶縁電線であって、
    上記絶縁層が、複数の気孔を有する内側気孔層と、上記内側気孔層の外側に配設され、複数の気孔を有する外側気孔層とを備え、
    上記絶縁層において、上記気孔中の独立気孔率が80体積%以上であり、
    上記内側気孔層の気孔率が1体積%以上10体積%以下であり、
    上記外側気孔層の気孔率が25体積%以上50体積%以下である絶縁電線。
  2. 上記内側気孔層の平均厚さが3μm以上15μm以下であり、
    上記外側気孔層の平均厚さが80μm以上160μm以下である請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 上記絶縁層が、上記外側気孔層の外側にさらに複数の気孔を有する他の気孔層を備え、上記他の気孔層の気孔率が1体積%以上10体積%以下であり、平均厚さが3μm以上10μm以下である請求項1又は請求項2に記載の絶縁電線。
  4. 上記複数の気孔の周縁部に外殻を備え、上記外殻がコアシェル構造の中空形成粒子のシェルに由来する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の絶縁電線。
  5. 上記外殻の主成分が、シリコーンである請求項4に記載の絶縁電線。
  6. 上記複数の気孔が、扁平球体であって、
    上記複数の気孔の短径及び長径を含む断面において、長径に対する短径の長さの比の平均が0.95以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の絶縁電線。
  7. 上記導体と上記絶縁層の間にプライマー層を備える請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の絶縁電線。
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