JPWO2018155650A1 - キシラナーゼ変異体、及びバイオマス分解用酵素組成物 - Google Patents

キシラナーゼ変異体、及びバイオマス分解用酵素組成物 Download PDF

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Abstract

本発明は、糸状菌由来のキシラナーゼのアミノ酸配列において、配列番号1のアミノ酸配列での、位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当する位置から選択される一以上のアミノ酸残基が置換されているアミノ酸配列を含み、かつ、キシラナーゼ活性を有する、キシラナーゼ変異体である。

Description

本発明は、新規なキシラナーゼ変異体及びこれを含むバイオマス分解用酵素組成物に関する。
セルロースの糖化には様々な手法があるが、エネルギー使用量が少なく、かつ糖収率の高い酵素糖化法が開発の主流となっている。セルロースは、草本系植物、木本系植物中に多く含まれ、これら植物を総称してセルロース含有バイオマスと呼ぶ。セルロース含有バイオマスは、セルロースに加え、キシラン、アラビナンといったヘミセルロース、及びリグニンを含んでいる。キシランは、β−1,4結合したD-キシロースを主鎖として有しており、この主鎖に対して、O−アセチル、β−アラビノフラノシル、グルクロン酸、フェノール酸が部分的に修飾される場合もある(非特許文献1)。キシラナーゼは、β−1,4結合したキシロース主鎖に作用することで、セルロース含有バイオマスを分解する重要な酵素の1種である。
キシラナーゼは、アミノ酸配列の相同性にて、グリコシドヒドロラーゼ(Glycoside Hydrolase)ファミリー10(GH10)とグリコシドヒドロラーゼファミリー11(GH11)に分類される(非特許文献2)。GH10のキシラナーゼは、一般的に分子量が30kDa以上である。一方、GH11のキシラナーゼは一般的に分子量が20kDa程度と比較的小さいと言われている(非特許文献3)。GH11のキシラナーゼ中には立体構造が解析されているものもあり、酵素の活性部位表面の所定の位置に配置されたグルタミン酸、芳香族アミノ酸、電荷アミノ酸が、酵素活性に重要であることが報告されている(非特許文献4)。
糸状菌は、広い種類のセルロース系バイオマスを分解する微生物として知られている。アクレモニウム・セルロリチカス(Acremonium cellulolyticus:現在は、タラロマイセス・セルロリチカス(Talaromyces cellulolyticus)とも称される)が培養液中に産生するセルラーゼは、セルロース含有バイオマスの分解において、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderna reesei)の産生するセルラーゼよりも高いグルコース収量が得られることが知られている(非特許文献5)。近年、アクレモニウム・セルロリチカス由来の7つのキシラナーゼがクローニングされており、その野生型酵素の機能解析が実施されている(非特許文献6)。Watanabeらの報告においては、7つのキシラナーゼのうち、XylCが、アクレモニウム・セルロリチカスでの発現量が最も少ないものの、最も高いキシラン分解活性を保有することが報告されている。
Coughlan,M.P.ら,Biotechnol.Appl.Biochem.17,259−289(1993) Coutinho,P.M.ら,Recent Advances in Carbohydrate Bioengineering,246,3−12(1999) Beaugrandら,Carbohydr.Res.339,2529−2540(2004) Tariq A.Tahirら、THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,277,46,44035−44043(2002) Fujiiら,Biotechnol.Biofuels.2,24(2009) Watanabeら,AMB Express.4,27.
キシラナーゼは製紙業、食品工業、医薬品工業などの分野で商業利用されており、オリゴ糖製造にも用いられている。しかしながら、通常、キシラナーゼによる加水分解でオリゴ糖を製造すると、キシロトリオースが加水分解されて、キシロビオースと、単糖であるキシロースが生じるため、結果的にオリゴ糖収率が減少するという課題があった。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、糸状菌由来のキシラナーゼのアミノ酸配列において、配列番号1のアミノ酸配列での、位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当する位置から選択される一以上のアミノ酸残基を別のアミノ酸残基に置換することによって、当該キシラナーゼによる加水分解においてキシロトリオースの加水分解を抑制し、オリゴ糖収率を向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下の構成からなる。
[1] 糸状菌由来のキシラナーゼのアミノ酸配列において、配列番号1のアミノ酸配列での、位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当する位置から選択される一以上のアミノ酸残基が別のアミノ酸残基に置換されているアミノ酸配列を含み、かつ、当該アミノ酸残基が置換されていない元のキシラナーゼと比較してキシランからのキシロトリオースの生産性が向上したキシラナーゼ活性を有する、キシラナーゼ変異体。
[2] 配列番号1のアミノ酸配列での位置78に相当する位置のアミノ酸残基がアラニン、グリシン、バリン、ロイシン、又はイソロイシンに置換されているアミノ酸配列を含む、[1]のキシラナーゼ変異体。
[3] 配列番号1のアミノ酸配列での位置80に相当する位置のアミノ酸残基がアラニン、グリシン、ロイシン、又はイソロイシンに置換されているアミノ酸配列を含む、[1]のキシラナーゼ変異体。
[4] 配列番号1のアミノ酸配列での位置117に相当する位置のアミノ酸残基が、セリン、トレオニン、又はアスパラギンに置換されているアミノ酸配列を含む、[1]のキシラナーゼ変異体。
[5] 配列番号1のアミノ酸配列での位置155に相当する位置のアミノ酸残基が、アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、又はイソロイシンに置換されているアミノ酸配列を含む、[1]のキシラナーゼ変異体。
[6] 配列番号1のアミノ酸配列での位置169に相当する位置のアミノ酸残基が、アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、又はイソロイシンに置換されているアミノ酸配列を含む、[1]のキシラナーゼ変異体。
[7] 配列番号1のアミノ酸配列での位置203に相当する位置のアミノ酸残基が、トリプトファン、フェニルアラニン、又はチロシンに置換されているアミノ酸配列を含む、[1]のキシラナーゼ変異体。
[8] 配列番号1のアミノ酸配列での位置78に相当する位置のアミノ酸残基が、アラニンに置換されており、かつ、配列番号1のアミノ酸配列での位置155に相当する位置のアミノ酸残基が、アラニンに置換されているアミノ酸配列を含む、[1]又は[2]又は[5]のいずれかのキシラナーゼ変異体。
[9] 前記元のキシラナーゼが、グリコシドヒドロラーゼファミリー11に属する糸状菌由来のキシラナーゼである、[1]〜[8]のいずれかに記載のキシラナーゼ変異体。
[10] 以下の(a)〜(c)のいずれかのアミノ酸配列を含み、かつキシラナーゼ活性を有する、[1]のキシラナーゼ変異体:
(a)配列番号3〜9、89、及び90で示されるいずれかのアミノ酸配列;
(b)配列番号3〜9、89、及び90で示されるいずれかのアミノ酸配列において、配列番号1のアミノ酸配列での位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当する位置における置換されたアミノ酸は変異せず、該アミノ酸以外のアミノ酸位置において、1から数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列;又は
(c)配列番号3〜9、89、及び90で示されるいずれかのアミノ酸配列において、配列番号1のアミノ酸配列での位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当する位置における置換されたアミノ酸は変異せず、該アミノ酸を除いて、該いずれかのアミノ酸配列と90%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列。
[11] さらに、配列番号1のアミノ酸配列での、位置35、位置44、位置61、位置62、位置63、位置65、位置66、位置101、及び位置102に相当する位置のアミノ酸残基が別のアミノ酸残基に置換されている、[1]〜[10]のいずれかのキシラナーゼ変異体。
[12] 配列番号1のアミノ酸配列での位置35に相当する位置のアミノ酸残基がシステインに、配列番号1のアミノ酸配列での位置44に相当する位置のアミノ酸残基がヒスチジンに、配列番号1のアミノ酸配列での位置61に相当する位置のアミノ酸残基がメチオニンに、配列番号1のアミノ酸配列での位置62に相当する位置のアミノ酸残基がシステインに、配列番号1のアミノ酸配列での位置63に相当する位置のアミノ酸残基がロイシンに、配列番号1のアミノ酸配列での位置65に相当する位置のアミノ酸残基がプロリンに、配列番号1のアミノ酸配列での位置66に相当する位置のアミノ酸残基がグリシンに、配列番号1のアミノ酸配列での位置101に相当する位置のアミノ酸残基がプロリンに、かつ配列番号1のアミノ酸配列での位置102に相当する位置のアミノ酸残基がアスパラギンに、それぞれ置換されている、[11]のキシラナーゼ変異体。
[13] 以下の(d)〜(f)のいずれかのアミノ酸配列を含み、かつキシラナーゼ活性を有する、[12]のキシラナーゼ変異体:
(d)配列番号18〜20で示されるいずれかのアミノ酸配列;
(e)配列番号18〜20で示されるいずれかのアミノ酸配列において、配列番号1のアミノ酸配列での位置35、位置44、位置61、位置62、位置63、位置65、位置66、位置78、位置80、位置101、位置102、及び位置155に相当する位置における置換されたアミノ酸は変異せず、該アミノ酸以外のアミノ酸位置において、1から数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列;又は
(f)配列番号18〜20で示されるいずれかのアミノ酸配列において、配列番号1のアミノ酸配列での位置35、位置44、位置61、位置62、位置63、位置65、位置66、位置78、位置80、位置101、位置102、及び位置155、に相当する位置における置換されたアミノ酸は変異せず、該アミノ酸を除いて、該いずれかのアミノ酸配列と90%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列。
[14] [1]〜[13]のいずれかのキシラナーゼ変異体を含む酵素組成物。
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2017-32346号の開示内容を包含する。
本発明では、キシロトリオースの加水分解を抑制するキシラナーゼ変異体を提供することができる。本発明のキシラナーゼ変異体によるキシランの加水分解では、キシロトリオースの生産量が向上し、キシロースの生産量が減少するため、オリゴ糖収率が向上するという効果を有する。したがって、本発明のキシラナーゼ変異体及び本発明のキシラナーゼ変異体を含む酵素組成物は、セルロース含有バイオマスからのオリゴ糖製造に好適に使用することができる。
配列番号1と配列番号87で示すアミノ酸配列のアライメントの結果を示す。図中に示す78及び80は、配列番号1での位置78及び位置80である。配列番号87において、これらに相当する位置は、それぞれ位置84及び86となる。本発明のキシラナーゼ変異体では、この位置のアミノ酸が置換され得る。
以下に、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(1)キシラナーゼ変異体
本発明において「キシラナーゼ」とは、β−1,4結合したキシロース主鎖に作用することでヘミセルロースを加水分解する活性(キシラナーゼ活性)を有する酵素であり、EC番号3.2.1.8に分類される酵素である。キシラナーゼは、グリコシドヒドロラーゼ(Glycoside Hydrolase)ファミリー10(GH10)とグリコシドヒドロラーゼファミリー11(GH11)の2種に分類され、GH11に分類される酵素は、β−ジェリーロール構造を保有する。「キシラナーゼ活性」の測定は、β−1,4結合したD-キシロースを基質として、好ましくは、試薬として販売されているバーチウッドキシラン(Birchwood xylan)を基質として、使用して行うことができる。基質であるキシランが分解されたか否かは、反応後の反応液に含まれる還元糖量を測定することで確認することができる。還元糖量は、ジニトロサリチル酸法(DNS法)を使用することで測定することができ、Baileyら“Interlaboratory testing of methods for assay of xylanase activity”J.Biotechnol.23,257−270に記載の方法が好ましく使用できる。活性を測定する条件は、前述した方法で、キシラナーゼの活性を測定できれば特に限定はされない。活性測定のための、好ましい温度条件としては20℃〜90℃の範囲、好ましくは、40℃〜75℃の範囲、pHは4〜9の範囲が好ましく、さらに好ましくはpH5〜7、反応時間は、1秒から600分であることが好ましく、最も好ましくは1分から60分である。また活性測定時に基質として使用するキシランは、0.1重量%〜10重量%の範囲が好ましく、最も好ましくは0.5重量%〜2重量%の範囲である。
本発明において「元のキシラナーゼ」とは、本発明のキシラナーゼ変異体において、所定のアミノ酸位置に置換変異を導入する前のアミノ酸配列からなるキシラナーゼをいう。具体的には、糸状菌由来のキシラナーゼにおいて、配列番号1のアミノ酸配列を基準配列としたときに、その基準配列の位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当するいずれかの位置のアミノ酸残が別のアミノ酸残基に置換されていないキシラナーゼをいう。例えば、限定はしないが、糸状菌由来の野生型キシラナーゼが該当する。「野生型キシラナーゼ」とは、キシラナーゼとしての本来の活性を有する酵素をいう。通常、野生型キシラナーゼは、各種生物種のゲノム上に存在する野生型キシラナーゼ遺伝子にコードされたタンパク質が該当する。野生型キシラナーゼの由来生物種は限定しないが、糸状菌由来のグリコシドヒドロラーゼファミリー11に属するものが好ましい。その他に、元のキシラナーゼは、例えば、糸状菌由来の変異型キシラナーゼであってもよい。この場合、本発明のキシラナーゼ変異体は、その変異型キシラナーゼにおいて、前記基準配列の位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当するいずれかの位置のアミノ酸残が別のアミノ酸残基に置換された変異をさらに含むキシラナーゼとなる。
糸状菌とは菌糸を形成する真菌であり、例えば、トリコデルマ属(Trichoderma)、アスペルギルス属(Aspergillus)、セルロモナス属(Cellulomonas)、クロストリジウム属(Clostridium)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、フミコラ属(Humicola)、アクレモニウム属(Acremonium)、イルペックス属(Irpex)、ムコール属(Mucor)、タラロマイセス属(Talaromyces)、テルモマイセス属(Thermomyces)、ペシロマイセス(Paecilomyces)属、などを利用することができるが、これらに限定はされない。例えば、アクレモニウム・セルロリチカス、トリコデルマ・リーゼイ、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、テルモマイセス・ランギノサス(Thermomyces lanuginosus)、ペシロマイセス・バリオッティ(Paecilomyces variotii)、ペシロマイセス・エスピーJ18(Paecilomyces sp.J18)、セルロモナス・フラビゲナ(Cellulomonas flavigena)、セルロモナス・ボゴリエンシス(Cellulomonas bogoriensis)、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)、ストレプトマイセス・エスピーS38(Streptomyces sp.S38)、フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)、タラロマイセス・レイセタヌス(Talaromyces leycettanus)等(これらに限定はされない)由来のキシラナーゼを利用することができる。
また、前記糸状菌に由来し、変異剤あるいは紫外線照射などで変異処理を施して得られた変異株に由来するキシラナーゼも利用することができる。様々な糸状菌由来のキシラナーゼが単離・同定されており、例えばGenBank等の公知のデータベースにその遺伝子情報等が開示されている。例えば、アクレモニウム・セルロリチカスのキシラナーゼはGenBankにAB847990、AB847991、AB847992、AB847993、AB847994、AB847995、AB847996として、トリコデルマ・リーゼイのキシラナーゼはGenBankにAAB29346として、トリコデルマ・ハルジアナムのキシラナーゼはGenBankにACF40831、KM001857として、アスペルギルス・ニガーのキシラナーゼはGenBankにAM270980、AFK10490、AAA99065として、アスペルギルス・カワチのキシラナーゼはGenBankにD38070、AAC60542、BAA07264として、テルモマイセス・ランギノサスのキシラナーゼはGenBankにHM123759、AEH57194、AAB94633として、ペシロマイセス・バリオッティのキシラナーゼはGenBankにAAS31744として、ペシロマイセス・エスピーJ18のキシラナーゼはGenBankにFJ593504、ACS26244として、セルロモナス・フラビゲナのキシラナーゼはGenBankにCAJ57849、ADG73165、AAK15536、AF338352として、ストレプトマイセス・エスピーS38のキシラナーゼはGenBankにCAA67143として、フミコーラ・インソレンスのキシラナーゼはGenBankにCAA53632、AHC72381、AJF98581として登録されている。本発明においてはこれらの遺伝子情報等を利用することができる。
本発明において、グリコシドヒドロラーゼファミリー11に属する「元のキシラナーゼ」は、アクレモニウム属由来又はトリコデルマ属由来であることが好ましく、さらに好ましくは、アクレモニウム・セルロリチカス由来又はトリコデルマ・リーセイ由来である。具体例として、配列番号1又は配列番号87で示されるアミノ酸配列を含むか、当該アミノ酸配列からなるキシラナーゼが挙げられる。
また、本発明において「元のキシラナーゼ」には、キシラナーゼ活性を保持する限り、上記「元のキシラナーゼ」の一部が含まれる。ここで「元のキシラナーゼの一部」とは、元のキシラナーゼ活性の少なくとも40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上を保持する限り、任意の一部の領域が除去されたキシラナーゼの断片からなっていてもよい。例えばこのような断片としては、キシラナーゼよりシグナルペプチドの領域が除去されたものが挙げられる。シグナルペプチドとしては、配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、位置1から位置34までのアミノ酸配列で表わされる領域、配列番号で示されるアミノ酸配列のうち、位置1から位置51までのアミノ酸配列で表わされる領域が挙げられる。配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、シグナルペプチドの配列を除いたアミノ酸配列を配列番号2として示す。また、配列番号87で示されるアミノ酸配列のうち、シグナルペプチドの配列を除いたアミノ酸配列を配列番号88として示す。本発明において好ましくは、「元のキシラナーゼの一部」は、配列番号2、又は配列番号88で示されるアミノ酸配列を含むか、当該アミノ酸配列からなるポリペプチド断片である。
本発明の「キシラナーゼ変異体」は、任意の糸状菌に由来する「元のキシラナーゼ」のアミノ酸配列において、配列番号1のアミノ酸配列での位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当する位置から選択される1又は2以上の位置におけるアミノ酸残基が別のアミノ酸に置換されており、かつキシラナーゼ活性を有するタンパク質を意味する。好ましくは、本発明のキシラナーゼ変異体は、配列番号1のアミノ酸配列での位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、又は位置203に相当する位置のアミノ酸残基の置換を含む。より好ましくは、本発明のキシラナーゼ変異体は、配列番号1のアミノ酸配列での位置78又は位置80に相当する位置のアミノ酸残基の置換を含み、より好ましくは配列番号1のアミノ酸配列での位置78と位置155に相当する2つの位置のアミノ酸残基の置換を含む。
本発明の「キシラナーゼ変異体」は、上記位置にアミノ酸置換を含むことにより、当該アミノ酸残基が置換されていない元のキシラナーゼと比べて、キシランからのキシロトリオース生産量が向上したキシラナーゼ活性を有する。
上記キシラナーゼのアミノ酸配列における、「配列番号1のアミノ酸配列での位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当する位置」にて特定されるアミノ酸位置は、以下の(手順1)〜(手順3)を含む手法にて決定することができる。
(手順1)配列番号1のアミノ酸配列において、開始メチオニンを位置1と定義する。以降のアミノ酸配列については、位置2、3、4...と順次番号付けをし、各位置を定義する。
(手順2)次に、変異を加える対象となる元のキシラナーゼのアミノ酸配列において配列番号1で表されるアミノ酸配列での位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当するアミノ酸位置を決定する。当該相当するアミノ酸位置は、変異を加える対象となる元のキシラナーゼのアミノ酸配列を配列番号1のアミノ酸配列とアミノ酸の同一性や類似性が最大となるように整列させることによって明らかにすることができる。このような操作はアミノ酸配列のアライメントと呼ばれる。アライメントツールとしては、ClustalWに含まれるプログラムGenetyxのParallel Editor(Multiple Allignment)で、デフォルトのパラメータを用いて行う。当業者は異なる長さのアミノ酸配列の間で、アライメントにより、変異を加える対象となる元のキシラナーゼのアミノ酸配列における、配列番号1で表されるアミノ酸配列での位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当するアミノ酸位置を明らかにすることができる。
(手順3)上記アライメント解析で、配列番号1のアミノ酸配列での位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当する箇所を、変異を加える対象となる「キシラナーゼ」のアミノ酸配列における、「配列番号1のアミノ酸配列の位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当する位置」とする。
なお、変異を加える対象となる元のキシラナーゼにおいて、上記「配列番号1でのアミノ酸配列での位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当する位置」以外の位置にアミノ酸の欠失、置換、付加又は挿入などの変異を伴うとき、又は当該元のキシラナーゼの一部である場合には、「配列番号1のアミノ酸配列での位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当する位置」がそれぞれ、当該変異を加える対象となる元のキシラナーゼ又はその一部のN末端からカウントした78番目、80番目、117番目、155番目、169番目、及び203番目ではない場合がある。このような場合においても、上記方法により決定された位置を、「配列番号1のアミノ酸配列での位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当する位置」とする。
変異を加える対象となる元のキシラナーゼにおける当該相当する位置のアミノ酸置換は、別のアミノ酸への置換であればよく、特に限定されないが、それぞれの位置において以下のアミノ酸への置換を含むことが好ましい:
配列番号1のアミノ酸配列での位置78に相当する位置:アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、又はイソロイシン、好ましくはアラニン;
配列番号1のアミノ酸配列での位置80に相当する位置:アラニン、グリシン、ロイシン、又はイソロイシン、好ましくはアラニン;
配列番号1のアミノ酸配列での位置117に相当する位置:セリン、トレオニン、又はアスパラギン、好ましくはアスパラギン;
配列番号1のアミノ酸配列での位置155に相当する位置:アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、又はイソロイシン、好ましくはアラニン;
配列番号1のアミノ酸配列での位置169に相当する位置:アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、又はイソロイシン、好ましくはアラニン;
配列番号1のアミノ酸配列での位置203に相当する位置:トリプトファン、フェニルアラニン、又はチロシン、好ましくはトリプトファン。
一態様において、本発明のキシラナーゼ変異体は、配列番号1でのアミノ酸配列において、位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203から選択される1又は2以上の位置におけるアミノ酸が置換されたアミノ酸配列又はその一部を有し、かつキシラナーゼ活性を有するポリペプチドを含むか、当該ポリペプチドからなる。
また、上記以外の一態様において、本発明のキシラナーゼ変異体は、配列番号87のアミノ酸配列において、配列番号1での位置78及び/又は位置80に相当する位置から選択される1又は2の位置におけるアミノ酸が置換されたアミノ酸配列又はその一部を有し、かつキシラナーゼ活性を有するポリペプチドを含むか、当該ポリペプチドからなる。
「その一部」としては、当該キシラナーゼ変異体のポリペプチドから上記シグナルペプチドの領域が除去されたポリペプチドが挙げられる。このようなキシラナーゼ変異体として、より詳細には、以下のものが含まれる:
配列番号1のアミノ酸配列において、位置78のアスパラギン酸がアラニンに置換された変異を含むキシラナーゼ変異体であり、配列番号3のアミノ酸配列を含むか、当該アミノ酸配列からなる(なお、配列番号3のアミノ酸配列には、上記シグナルペプチドの領域が含まれていない);
配列番号1のアミノ酸配列において、位置80のトレオニンがアラニンに置換された変異を含むキシラナーゼ変異体であり、配列番号4のアミノ酸配列を含むか、当該アミノ酸配列からなる(なお、配列番号4のアミノ酸配列には、上記シグナルペプチドの領域が含まれていない);
配列番号1のアミノ酸配列において、位置117のロイシンがアスパラギンに置換された変異を含むキシラナーゼ変異体であり、配列番号5のアミノ酸配列を含むか、当該アミノ酸配列からなる(なお、配列番号5のアミノ酸配列には、上記シグナルペプチドの領域が含まれていない);
配列番号1のアミノ酸配列において、位置155のアルギニンがアラニンに置換された変異を含むキシラナーゼ変異体であり、配列番号6のアミノ酸配列を含むか、当該アミノ酸配列からなる(なお、配列番号6のアミノ酸配列には、上記シグナルペプチドの領域が含まれていない);
配列番号1のアミノ酸配列において、位置169のグルタミンがアラニンに置換された変異を含むキシラナーゼ変異体であり、配列番号7のアミノ酸配列を含むか、当該アミノ酸配列からなる(なお、配列番号7のアミノ酸配列には、上記シグナルペプチドの領域が含まれていない);
配列番号1のアミノ酸配列において、位置203のアスパラギンがトリプトファンに置換された変異を含むキシラナーゼ変異体であり、配列番号8のアミノ酸配列を含むか、当該アミノ酸配列からなる(なお、配列番号8のアミノ酸配列には、上記シグナルペプチドの領域が含まれていない);
配列番号1のアミノ酸配列において、位置78及び位置155の両方の位置のアミノ酸がいずれもアラニンに置換された変異を含むキシラナーゼ変異体であり、配列番号9のアミノ酸配列を含むか、当該アミノ酸配列からなる(なお、配列番号9のアミノ酸配列には、上記シグナルペプチドの領域が含まれていない)。
配列番号87のアミノ酸配列において、配列番号1のアミノ酸配列での位置78に相当する位置のアスパラギン酸がアラニンに置換された変異を含むキシラナーゼ変異体であり、配列番号89のアミノ酸配列を含むか、当該アミノ酸配列からなる(なお、配列番号89のアミノ酸配列には、上記シグナルペプチドの領域が含まれていない);
配列番号87のアミノ酸配列において、配列番号1アミノ酸配列での位置80に相当する位置のバリンがアラニンに置換された変異を含むキシラナーゼ変異体であり、配列番号90のアミノ酸配列を含むか、当該アミノ酸配列からなる(なお、配列番号90のアミノ酸配列には、上記シグナルペプチドの領域が含まれていない);
本発明のキシラナーゼ変異体又はその一部には、そのアミノ酸配列において、上記の配列番号1のアミノ酸配列での位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当する位置における置換されたアミノ酸(存在する場合)は変異せず、1もしくは数個のアミノ酸の欠失、置換、付加又は挿入を有し、かつキシラナーゼ活性を有するタンパク質も含まれる。ここで「1もしくは数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、10個以内、さらに好ましくは5個以内、特に好ましくは4個以内、あるいは1個又は2個である。また、上記の配列番号1のアミノ酸配列での位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当する位置における置換されたアミノ酸(存在する場合)以外のアミノ酸の置換は、例えば保存的アミノ酸置換であってよい。「保存的アミノ酸置換」とは、電荷、側鎖、極性、芳香族性等の性質が類似するアミノ酸間の置換をいい、例えば、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン、ヒスチジン)を元とは別の塩基性アミノ酸に置換すること、酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)を元とは別の酸性アミノ酸に置換すること、無電荷極性アミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン)を元とは別の無電荷極性アミノ酸に置換すること、無極性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、アラニン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン)を元とは別の無極性アミノ酸に置換すること、分枝鎖アミノ酸(ロイシン、バリン、イソロイシン)を元とは別の分枝鎖アミノ酸に置換すること、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン)を元とは別の芳香族アミノ酸に置換することができる。
本発明のキシラナーゼ変異体又はその一部にはまた、そのアミノ酸配列において、上記の配列番号1のアミノ酸配列での位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当する位置における置換されたアミノ酸(存在する場合)は変異せず、当該置換されたアミノ酸を除く当該キシラナーゼ変異体又はその一部のアミノ酸配列とBLAST((Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information)(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときに、好ましくは90%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含み、より好ましくは、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらに好ましくは前記好ましいアミノ酸同一性、又はより好ましいアミノ酸同一性を有するアミノ酸列からなり、かつキシラナーゼ活性を有するタンパク質も含まれる。また、上記配列番号87の配列番号1のアミノ酸配列での位置78及び/又は位置80に相当する位置における置換されたアミノ酸(存在する場合)は変異せず、当該置換されたアミノ酸を除く当該キシラナーゼ変異体又はその一部のアミノ酸配列とBLAST等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときに、好ましくは90%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含み、より好ましくは91%、より好ましくは92%、より好ましくは93%、より好ましくは94%、より好ましくは95%、より好ましくは96%、より好ましくは97%、より好ましくは98%、より好ましくは99%、より好ましくはそれ以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含み、より好ましくは当該アミノ酸列からなり、かつキシラナーゼ活性を有するタンパク質も含まれる。ここで、「アミノ酸同一性」とは、2つのアミノ酸配列にギャップを導入して、又はギャップを導入しないで整列させた場合の、最適なアライメントにおいて、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する同一アミノ酸及び類似アミノ酸残基の割合(パーセンテージ)を意味する。アミノ酸同一性は、当業者に周知の方法、配列解析ソフトウェア等(例えばBLAST、FASTAなどの公知のアルゴリズム)を使用して求めることができる。
本発明のキシラナーゼ変異体は、N末端及び/又はC末端にさらなるペプチド又はタンパク質が付加されていてもよい。このようなペプチド又はタンパク質としては、例えば、翻訳開始点となるメチオニン、分泌シグナル配列、輸送タンパク質、結合タンパク質、精製用のタグペプチド、異種加水分解酵素、蛍光タンパク質等を含むものが例示できる。こうしたペプチド又はタンパク質に関しては、当業者が目的に応じて、付加する機能を有するペプチド又はタンパク質を選択して、本発明のキシラナーゼ変異体に付加することができる。
本発明のキシラナーゼ変異体は、配列番号1のアミノ酸配列での位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当する位置から選択される1又は2以上の位置におけるアミノ酸置換に加えて、配列番号1のアミノ酸配列での位置35、位置44、位置61、位置62、位置63、位置65、位置66、位置101、位置102に相当する位置から選択される1又は2以上の位置のアミノ酸置換を含んでもよい。これらの位置にアミノ酸置換をさらに含むことにより、キシロトリオースの生産量をさらに高めることができる。好ましくは、配列番号1のアミノ酸配列での位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当する位置から選択される1又は2以上の位置におけるアミノ酸置換に加えて、位置35、位置44、位置61、位置62、位置63、位置65、位置66、位置101及び位置102に相当する位置のアミノ酸残基の置換をさらに含む。
「配列番号1のアミノ酸配列での位置35、位置44、位置61、位置62、位置63、位置65、位置66、位置101、位置102に相当する位置」は、上記「配列番号1のアミノ酸配列での位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当する位置」を決定するための手順1)〜3)に準じた手法にて決定することができ、上記アライメント解析により、上記キシラナーゼのアミノ酸配列において配列番号1で表されるアミノ酸配列での位置35、位置44、位置61、位置62、位置63、位置65、位置66、位置101、位置102に相当するアミノ酸位置を決定することができる。
当該相当する位置おけるアミノ酸置換は、別のアミノ酸への置換であればよく、特に限定されないが、それぞれの位置において以下のアミノ酸への置換を含むことが好ましい: 配列番号1のアミノ酸配列での位置35に相当する位置:システイン;
配列番号1のアミノ酸配列での位置44に相当する位置:ヒスチジン;
配列番号1のアミノ酸配列での位置61に相当する位置:メチオニン;
配列番号1のアミノ酸配列での位置62に相当する位置:システイン;
配列番号1のアミノ酸配列での位置63に相当する位置:ロイシン;
配列番号1のアミノ酸配列での位置65に相当する位置:プロリン;
配列番号1のアミノ酸配列での位置66に相当する位置:グリシン;
配列番号1のアミノ酸配列での位置101に相当する位置:プロリン;
配列番号1のアミノ酸配列での位置102に相当する位置:アスパラギン。
なお、位置101及び位置102に相当する位置のアミノ酸については、真核生物を宿主としてキシラナーゼ変異体を発現する場合、置換されることなく元のアミノ酸のままであってもよい。位置101及び位置102に相当する位置は、真核生物において糖鎖修飾を受けるアミノ酸配列に含まれる場合がある。
一態様において、本発明のキシラナーゼ変異体は、配列番号1のアミノ酸配列において、位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203から選択される1又は2以上の位置におけるアミノ酸が置換されており、かつ位置35、位置44、位置61、位置62、位置63、位置65、位置66、位置101、及び位置102におけるアミノ酸が置換されたアミノ酸配列又はその一部を有し、かつキシラナーゼ活性を有するポリペプチドを含むか、当該ポリペプチドからなる。「その一部」としては、当該キシラナーゼ変異体のポリペプチドから上記シグナルペプチドの領域が除去されたポリペプチドが挙げられる。このようなキシラナーゼ変異体として、より詳細には、以下のものが含まれる:
配列番号1のアミノ酸配列において、位置78のアスパラギン酸がアラニンに置換された変異を含み、かつ位置35のセリンがシステインに置換された変異、位置44のアスパラギンがヒスチジンに置換された変異、位置61のチロシンがメチオニンに置換された変異、位置62のトレオニンがシステインに置換された変異、位置63のアスパラギンがロイシンに置換された変異、位置65のアスパラギン酸がプロリンに置換された変異、位置66のアスパラギンがグリシンに置換された変異、位置101のトレオニンがプロリンに置換された変異、及び位置102のセリンがアスパラギンに置換された変異を含むキシラナーゼ変異体であり、配列番号18のアミノ酸配列を含むか、当該アミノ酸配列からなる(なお、配列番号18のアミノ酸配列には、上記シグナルペプチドの領域が含まれていない);
配列番号1のアミノ酸配列において、位置80のトレオニンがアラニンに置換された変異を含み、かつ位置35のセリンがシステインに置換された変異、位置44のアスパラギンがヒスチジンに置換された変異、位置61のチロシンがメチオニンに置換された変異、位置62のトレオニンがシステインに置換された変異、位置63のアスパラギンがロイシンに置換された変異、位置65のアスパラギン酸がプロリンに置換された変異、位置66のアスパラギンがグリシンに置換された変異、位置101のトレオニンがプロリンに置換された変異、及び位置102のセリンがアスパラギンに置換された変異を含むキシラナーゼ変異体であり、配列番号19のアミノ酸配列を含むか、当該アミノ酸配列からなる(なお、配列番号19のアミノ酸配列には、上記シグナルペプチドの領域が含まれていない);
配列番号1のアミノ酸配列において、位置78及び位置155の両方の位置のアミノ酸がいずれもアラニンに置換された変異を含み、かつ位置35のセリンがシステインに置換、位置44のアスパラギンがヒスチジンに置換、位置61のチロシンがメチオニンに置換、位置62のトレオニンがシステインに置換、位置63のアスパラギンがロイシンに置換、位置65のアスパラギン酸がプロリンに置換、位置66のアスパラギンがグリシンに置換、位置101のトレオニンがプロリンに置換、及び位置102のセリンがアスパラギンに置換を含むキシラナーゼ変異体であり、配列番号20のアミノ酸配列を含むか、当該アミノ酸配列からなる(なお、配列番号20のアミノ酸配列には、上記シグナルペプチドの領域が含まれていない)。
本発明のキシラナーゼ変異体又はその一部には、そのアミノ酸配列において、上記の配列番号1のアミノ酸配列での位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203、ならびに位置35、位置44、位置61、位置62、位置63、位置65、位置66、位置101、位置102に相当する位置における置換されたアミノ酸(存在する場合)は変異せず、1もしくは数個のアミノ酸の欠失、置換、付加又は挿入を有し、かつキシラナーゼ活性を有するタンパク質も含まれる。ここで「1もしくは数個」の範囲は、上記定義の範囲である。また、上記の配列番号1のアミノ酸配列での位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203、ならびに位置35、位置44、位置61、位置62、位置63、位置65、位置66、位置101、位置102に相当する位置における置換されたアミノ酸(存在する場合)以外のアミノ酸の置換は、例えば保存的アミノ酸置換であってよい。「保存的アミノ酸置換」とは、上記定義のとおりである。
本発明のキシラナーゼ変異体又はその一部にはまた、そのアミノ酸配列において、上記の配列番号1のアミノ酸配列での位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203、ならびに位置35、位置44、位置61、位置62、位置63、位置65、位置66、位置101、位置102に相当する位置における置換されたアミノ酸(存在する場合)は変異せず、当該置換されたアミノ酸を除く上記キシラナーゼ変異体又はその一部のアミノ酸配列とBLAST等の配列解析ソフトウェア等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときに、好ましくは90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、より好ましくは91%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは94%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上、より好ましくはそれ以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含み、より好ましくは当該アミノ酸列からなり、かつキシラナーゼ活性を有するタンパク質も含まれる。ここで、「アミノ酸同一性」とは、上述の定義のとおりである。
(2)キシラナーゼ変異体の製造方法
本発明のキシラナーゼ変異体は、例えば前記(1)で述べたキシラナーゼ変異体又はその一部のアミノ酸配列をコードするDNAを調製し、これを発現ベクターに連結し、発現ベクターを宿主に導入し、異種あるいは同種タンパク質として生産し、単離及び精製することで製造することができる。アミノ酸配列をコードするコドン使用頻度は、キシラナーゼが由来とする糸状菌、例えばアクレモニウム・セルロリチカス又はトリコデルマ・リーセイと同じものでもあってもよいし、宿主のコドン使用頻度に合わせて変更してもよい。
上述のキシラナーゼ変異体をコードするDNAの調製方法としては、従来公知の手法を用いることが可能であり、例えば、遺伝子合成により目的のアミノ酸配列をコードするDNAを全合成する方法、あるいは、糸状菌より単離されたキシラナーゼ又はその一部をコードするDNAに対して、部位特異的変異導入法により、上記所定の位置のアミノ酸をコードするDNAが別の所定のアミノ酸をコードするように変異を導入する方法等が挙げられる。DNAの目的部位に変異を起こす部位特異的変異導入法としては、従来の慣用的に用いられているPCR法により行うことができる。すなわち、糸状菌由来の遺伝子を鋳型とし、糸状菌キシラナーゼをコードする公知の塩基配列に基づいて設計された、所定の位置に変異を導入したキシラナーゼクローニング用プライマー対を用いてPCRを行うことによって、所定の位置に変異が導入されたキシラナーゼをコードするDNAを得ることができる。ここで「遺伝子」としては、DNA、ゲノムDNA、cDNA、RNA、mRNA、またそれらより合成されたcDNA、DNA/RNAハイブリッド等より選択されるものを用いることができる。対象とする糸状菌のキシラナーゼをコードする塩基配列が公知でない場合には、他の糸状菌キシラナーゼをコードする公知の塩基配列に基づいて設計されたプライマー対を利用し、対象とする糸状菌の遺伝子を鋳型とし用いることによって、あるいは、他の糸状菌キシラナーゼをコードする公知の塩基配列に基づいて設計されたプローブを利用し、対象とする糸状菌の遺伝子プールをスクリーニングすることによって、対象とする糸状菌由来のキシラナーゼ遺伝子を得ることができ、これを変異導入のための鋳型とし用いることができる。複数の変異を導入する場合には、一の変異が導入されたDNAを鋳型とし、別の所定の位置に変異を導入したキシラナーゼクローニング用プライマー対を用いてPCRを行うことによって、当該別の所定の位置にさらに変異が導入されたキシラナーゼをコードするDNAを得ることができる。鋳型となる遺伝子の調製やPCRは公知の分子生物学的手法(例えば、Green,M.R.and Sambrook,J.,2012,Molecular Cloning:A Laboratory Manual Fourth Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New Yorkに記載の方法)に準じて行うことができる。
本発明のキシラナーゼ変異体をコードするDNAとしては、前記(1)で述べたキシラナーゼ変異体をコードするDNAが含まれる。
例えば、本発明のキシラナーゼをコードするDNAとして、アクレモニウム・セルロリチカスから単離されたキシラナーゼをコードするDNAを利用することができる。また、本発明において、キシラナーゼをコードするDNAは、配列番号67で示される塩基配列を含むDNAか、当該塩基配列からなるDNA、あるいは、配列番号67で示される塩基配列より、シグナルペプチドをコードする領域が除去された配列番号68で示される塩基配列を含むDNAか、又は当該塩基配列からなるDNAを利用することができる。これらのDNAは、アクレモニウム・セルロリチカスより公知の方法に準じてDNAを単離し、アクレモニウム・セルロリチカスのキシラナーゼをコードする塩基配列に基づいて設計されたキシラナーゼクローニング用プライマー対を用いたPCR等の手法によってDNA増幅させることで取得することができる。得られたDNAに対し所定の位置に変異を導入することにより、配列番号1のアミノ酸配列において、位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203から選択される1又は2以上の位置におけるアミノ酸が置換されたアミノ酸配列又はその一部を有し、かつキシラナーゼ活性を有する本発明のキシラナーゼ変異体をコードするDNAを得ることができる。このようなキシラナーゼ変異体コードするDNAとして、より詳細には、以下のDNAを含むか、当該DNAからなるものが挙げられる:
配列番号1のアミノ酸配列において、位置78のアスパラギン酸がアラニンに置換された変異を含むキシラナーゼ変異体をコードするDNAであり、配列番号69の塩基配列を含むか、当該塩基配列からなる(当該DNAは、上記シグナルペプチドのが領域をコードしていない);
配列番号1のアミノ酸配列において、位置80のトレオニンがアラニンに置換された変異を含むキシラナーゼ変異体をコードするDNAであり、配列番号70のが塩基配列を含むか、当該塩基配列からなる(当該DNAは、上記シグナルペプチドの領域をコードしていない);
配列番号1のアミノ酸配列において、位置117のロイシンがアスパラギンに置換された変異を含むキシラナーゼ変異体をコードするDNAであり、配列番号71の塩基配列を含むか、当該塩基配列からなる(当該DNAは、上記シグナルペプチドの領域をコードしていない);
配列番号1のアミノ酸配列において、位置155のアルギニンがアラニンに置換された変異を含むキシラナーゼ変異体をコードするDNAであり、配列番号72の塩基配列を含むか、当該塩基配列からなる(当該DNAは、上記シグナルペプチドの領域をコードしていない);
配列番号1のアミノ酸配列において、位置169のグルタミンがアラニンに置換された変異を含むキシラナーゼ変異体をコードするDNAであり、配列番号73の塩基配列を含むか、当該塩基配列からなる(当該DNAは、上記シグナルペプチドの領域をコードしていない);
配列番号1のアミノ酸配列において、位置203のアスパラギンがトリプトファンに置換された変異を含むキシラナーゼ変異体をコードするDNAであり、配列番号74の塩基配列を含むか、当該塩基配列からなる(当該DNAは、上記シグナルペプチドの領域をコードしていない);
配列番号1のアミノ酸配列において、位置78及び位置155の両方のアミノ酸がいずれもアラニンに置換された変異を含むキシラナーゼ変異体をコードするDNAであり、配列番号75の塩基配列を含むか、当該塩基配列からなる(当該DNAは、上記シグナルペプチドの領域をコードしていない)。
上記に加えて、本発明のキシラナーゼをコードするDNAとして、トリコデルマ・リーセイから単離されたキシラナーゼをコードするDNAを利用することができる。また、本発明において、キシラナーゼをコードするDNAは、配列番号91で示される塩基配列を含むDNAか、当該塩基配列からなるDNA、あるいは、配列番号91で示される塩基配列より、シグナルペプチドをコードする領域が除去された配列番号92で示される塩基配列を含むDNAか、当該塩基配列からなるDNAを利用することができる。これらのDNAは、トリコデルマ・リーセイより公知の方法に準じてDNAを単離し、トリコデルマ・リーセイのキシラナーゼをコードする塩基配列に基づいて設計されたキシラナーゼクローニング用プライマー対を用いたPCR等の手法によってDNA増幅させることで取得することができる。得られたDNAに対し所定の位置に変異を導入することにより、配列番号1のアミノ酸配列において、位置78及び/又は位置80に相当する位置におけるアミノ酸が置換されたアミノ酸配列又はその一部を有し、かつキシラナーゼ活性を有する本発明のキシラナーゼ変異体をコードするDNAを得ることができる。このようなキシラナーゼ変異体コードするDNAとして、より詳細には、以下のDNAを含むか、当該DNAからなるものが挙げられる:
配列番号87のアミノ酸配列において、配列番号1での位置78に相当するアスパラギン酸がアラニンに置換された変異を含むキシラナーゼ変異体をコードするDNAであり、配列番号93の塩基配列を含むか、当該塩基配列からなる(当該DNAは、上記シグナルペプチドの領域をコードしていない);
配列番号87のアミノ酸配列において、配列番号1での位置80に相当するバリンがアラニンに置換された変異を含むキシラナーゼ変異体をコードするDNAであり、配列番号94の塩基配列を含むか、当該塩基配列からなる(当該DNAは、上記シグナルペプチドの領域をコードしていない);
また別の態様において、本発明のキシラナーゼ変異体をコードするDNAは、配列番号1のアミノ酸配列において、前述したアミノ酸位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203から選択される1又は2以上の位置におけるアミノ酸の置換に加えて、位置35、位置44、位置61、位置62、位置63、位置65、位置66、位置101、及び、位置102におけるアミノ酸が置換されたアミノ酸配列又はその一部を有し、かつキシラナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAを含むか、当該DNAからなる。
このようなキシラナーゼ変異体をコードするDNAとしては、以下のものが含まれる: 配列番号1のアミノ酸配列において、位置78のアスパラギン酸がアラニンに置換された変異を含み、かつ位置35のセリンがシステインに置換された変異、位置44のアスパラギンがヒスチジンに置換された変異、位置61のチロシンがメチオニンに置換された変異、位置62のトレオニンがシステインに置換された変異、位置63のアスパラギンがロイシンに置換された変異、位置65のアスパラギン酸がプロリンに置換された変異、位置66のアスパラギンがグリシンに置換された変異、位置101のトレオニンがプロリンに置換された変異、及び位置102のセリンがアスパラギンに置換された変異を含むキシラナーゼ変異体をコードするDNAであり、配列番号84の塩基配列を含むか、当該塩基配列からなる(なお、配列番号84の塩基配列には、上記シグナルペプチドをコードする領域は含まれない);
配列番号1のアミノ酸配列において、
位置80のトレオニンがアラニンに置換された変異を含み、かつ位置35のセリンがシステインに置換された変異、位置44のアスパラギンがヒスチジンに置換された変異、位置61のチロシンがメチオニンに置換された変異、位置62のトレオニンがシステインに置換された変異、位置63のアスパラギンがロイシンに置換された変異、位置65のアスパラギン酸がプロリンに置換された変異、位置66のアスパラギンがグリシンに置換された変異、位置101のトレオニンがプロリンに置換された変異、及び位置102のセリンがアスパラギンに置換された変異を含むキシラナーゼ変異体をコードするDNAであり、配列番号85の塩基配列を含むか、当該塩基配列からなる(なお、配列番号85の塩基配列には、上記シグナルペプチドをコードする領域は含まれない);
配列番号1のアミノ酸配列において、位置78及び位置155の両方のアミノ酸がいずれもアラニンに置換された変異を含み、かつ位置35のセリンがシステインに置換された変異、位置44のアスパラギンがヒスチジンに置換された変異、位置61のチロシンがメチオニンに置換された変異、位置62のトレオニンがシステインに置換された変異、位置63のアスパラギンがロイシンに置換された変異、位置65のアスパラギン酸がプロリンに置換された変異、位置66のアスパラギンがグリシンに置換された変異、位置101のトレオニンがプロリンに置換された変異、及び位置102のセリンがアスパラギンに置換された変異を含むキシラナーゼ変異体をコードするDNAであり、配列番号86の塩基配列を含むか、当該塩基配列からなる(なお、配列番号86の塩基配列には、上記シグナルペプチドをコードする領域は含まれない)。
本発明のキシラナーゼ変異体をコードするDNAには、上記キシラナーゼ変異体又はその一部のアミノ酸配列において、上記の配列番号1のアミノ酸配列での位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203、ならびに位置35、位置44、位置61、位置62、位置63、位置65、位置66、位置101、及び、位置102に相当する位置における置換されたアミノ酸(存在する場合)の変異を生じるものではなく、かつキシラナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする限り、以下の塩基配列を含むか、当該塩基配列からなるDNAも含む:
上記キシラナーゼ変異体をコードするDNAの塩基配列において、1〜複数個の塩基が欠失、置換、付加若しくは挿入された塩基配列。例えば、配列番号1に表される塩基配列において、1〜100個の塩基、好ましくは1〜50個の塩基、より好ましくは1〜10個の塩基が欠失、置換、付加若しくは挿入された塩基配列(なお、当該塩基の置換は、保存的アミノ酸置換を生じる置換であってもよい);
上記キシラナーゼ変異体をコードするDNAの塩基配列と80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは91%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは94%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の塩基同一性を有する塩基配列。塩基配列の比較は公知の手法によって行うことができ、例えば、BLAST等を例えば、デフォルトの設定で用いて実施できる;
上記塩基配列と相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列。「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいい、例えば、2〜6×SSC(1×SSCの組成:0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)及び0.1〜0.5%SDSを含有する溶液中42〜55℃にてハイブリダイズを行い、0.1〜0.2×SSC及び0.1〜0.5%SDSを含有する溶液中55〜65℃にて洗浄を行う条件をいう。
上記のようにして調製したキシラナーゼ変異体をコードするDNAを、制限酵素及びDNAリガーゼを用いて、適切な発現ベクター中のプロモーター下流に連結することにより、当該DNAを含む発現ベクターを製造することができる。
発現ベクターとしては、細菌プラスミド、酵母プラスミド、ファージDNA(ラムダファージなど)、レトロウイルス、バキュロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス等のウイルスDNA、SV40の誘導体など、植物細胞用のベクターとしてのアグロバクテリウムなどが挙げられるが、宿主細胞において複製及び生存可能である限り他のいかなるベクターも用いることができる。例えば、宿主が大腸菌である場合、pUC、pET、pBADなどを例示することができる。また、宿主が酵母である場合、pPink-HC、pPink-LC、pPinkα-HC、pPCIZ、pPCIZα、pPCI6、pPCI6α、pFLD1、pFLD1α、pGAPZ、pGAPZα、pPIC9K、pPIC9、pD912、pD915などが挙げられる。
プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、宿主が大腸菌である場合、lacプロモーター、Trpプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーター等が、酵母である場合、AOX1プロモーター、TEF1プロモーター、ADE2プロモーター、CYC1プロモーター、GAL−L1プロモーター、GAPプロモーターなどが挙げられる。
本発明において用いる宿主細胞としては、大腸菌、バクテリア細胞、酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞、植物細胞、動物細胞などが好ましい。酵母細胞としては、例えば、ピキア属(Pichia)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)などが挙げられる。真菌細胞としては、アスペルギルス属(Aspergillus)、トリコデルマ属などが挙げられる。昆虫細胞としてはSf9など、植物細胞としては双子葉植物など、動物細胞としては、CHO、HeLa、HEK293などが挙げられる。本発明において用いる宿主としては、好ましくは真核微生物であり、さらに好ましくは、酵母細胞、真菌細胞である。酵母細胞、真菌細胞を宿主として用いる場合、酵素生産量が多い、酵素を細胞外に分泌生産できる、及び/又は、酵素の耐熱性を高めることができる、といった利点を有し得る。
形質転換又はトランスフェクションは、リン酸カルシウム法、電気穿孔法などの公知の方法で行うことができる。本発明のキシラナーゼ変異体は、上記のように形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞においてプロモーターの制御下にて発現させ、産生物を回収して得ることができる。発現に際しては、形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞を適切な細胞密度まで増殖又は成長させた後、温度シフト又はイソプロピル−1−チオ-β-D-ガラクトシド(IPTG)添加などの化学的誘発手段によってプロモーターを誘発させ、細胞をさらに一定期間培養する。あるいは、培地中に含まれる糖によってプロモーターを誘発させ、細胞の培養と発現を同時に行うことができる。
目的とするキシラナーゼ変異体が細胞外に排出される場合には、培地から直接に、また細胞内に存在する場合には、超音波破砕や機械的破砕などの物理的手段もしくは細胞溶解剤などの化学的手段によって、細胞を破壊した後にキシラナーゼ変異体を精製する。具体的には、キシラナーゼ変異体は、組換え細胞の培地から、硫酸アンモニウムもしくはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンもしくは陽イオン交換クロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、電気泳動などの技術を組み合わせて、部分的に又は完全に精製することができる。
(3)キシラナーゼ変異体を含むバイオマス分解用酵素組成物
本発明のバイオマス酵素組成物は、少なくとも本発明のキシラナーゼ変異体を、バイオマスを加水分解するための有効成分として含み、バイオマスを分解する用途に使用される酵素組成物である。ここで、バイオマスとは、生物系の植物体のことを指し、草本系植物、木質系植物、藻類、海草類、製糖作物、資源作物、穀物、などが例示される。これらのバイオマスは、いずれも、2糖以上の多糖類を含んでおり、本発明のバイオマス分解用酵素組成物による多糖類の加水分解を行うことができる。特に好ましく使用できるのは、セルロース含有バイオマスである。セルロース含有バイオマスは、セルロース成分を含む生物資源である。具体的には、バガス、スイッチグラス、ネピアグラス、エリアンサス、コーンストーバー、コーンハル、稲藁、麦藁、小麦ふすまなどの草本系バイオマス、あるいは樹木、廃建材などの木質系バイオマス、さらに藻類、海草、など水生環境由来のバイオマスのことを指す。こうしたセルロース系バイオマスには、セルロース及びヘミセルロース(以下、セルロースとヘミセルロースの総称として「セルロース」という。)の他に芳香族高分子であるリグニン等を含有している。
本発明のバイオマス分解用酵素組成物に含まれるキシラナーゼ変異体は、精製されたものであっても、粗精製されたものであっても使用することができる。また、本発明のバイオマス分解用酵素組成物に含まれるキシラナーゼ変異体は、固相に固定化されていても良い。固相としては例えば、ポリアクリルアミドゲル、ポリスチレン樹脂、多孔性ガラス、金属酸化物などが挙げられる(特にこれらに限定されない)。本発明のキシラナーゼ変異体が固相に固定されることによって、連続反復使用が可能となる点において有利である。さらに、上記キシラナーゼ変異体をコードするDNAを用いて形質転換した細胞の処理物も、粗精製されたキシラナーゼ変異体として利用することができる。当該「形質転換した細胞の処理物」には、固相に固定化した形質転換細胞、ならびに形質転換細胞の死菌、破砕物、及びそれらを固相に固定化したものなどが含まれる。
本発明のバイオマス分解用酵素組成物は、本発明のキシラナーゼ変異体のほかに、他の酵素を含んでいてもよい。好ましくは、バイオマス分解に関連する加水分解酵素を含むことが好ましい。このような他の酵素としては、例えばセロビオハイドロラーゼ、エンドグルカナーゼ、β−グルコシダーゼ、β−キシロシダーゼ、マンナナーゼ、マンノシダ−ゼ、グルコアミラーゼ、α−アミラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、などが挙げられる。
これらの他の酵素は、糸状菌等の微生物が産生する酵素であることが好ましい。糸状菌としては、トリコデルマ属、アスペルギルス属、セルロモナス属(Cellulomonas)、クロストリジウム属(Clostridium)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、フミコラ属(Humicola)、アクレモニウム属(Acremonium)、イルペックス属(Irpex)、ムコール属(Mucor)、タラロマイセス属(Talaromyces)、などの微生物を挙げることができる。これら微生物は、培養液中に酵素を産生することから、その培養液を未精製の酵素としてそのまま本発明のキシラナーゼ変異体とあわせて本発明の酵素組成物としてもよいし、また培養液を精製し、製剤化したものを本発明のキシラナーゼ変異体とあわせて本発明の酵素組成物としてもよい。
前記他の酵素を産生するための糸状菌としては、トリコデルマ属由来の糸状菌であることが好ましい。トリコデルマ属のうち、より好ましく用いることができるものは、トリコデルマ・リーセイ由来のセルラーゼ混合物である。トリコデルマ・リーセイ由来のセルラーゼ混合物としては、トリコデルマ・リーセイQM9414(T.reesei QM9414)、トリコデルマ・リーセイQM9123(T.reesei QM9123)、トリコデルマ・リーセイRutC-30(T.reesei Rut-30)、トリコデルマ・リーセイPC3-7(T.reesei PC3-7)、トリコデルマ・リーセイCL-847(T.reesei CL-847)、トリコデルマ・リーセイMCG77(T.reesei MCG77)、トリコデルマ・リーセイMCG80(T.reesei MCG80)、トリコデルマ・ビリデQM9123(T.viride QM9123)に由来するセルラーゼ混合物が挙げられる。また、前記トリコデルマ属に由来し、変異剤あるいは紫外線照射などで変異処理を施し、セルラーゼ生産性が向上した変異株であってもよい。
また、本発明のバイオマス分解用酵素組成物は、プロテアーゼ阻害剤、分散剤、溶解促進剤、安定化剤、緩衝剤、防腐剤など、酵素以外の物質を添加したものであってもよい。
本発明のバイオマス分解用酵素組成物は、バイオマスに添加することで、糖液の製造方法に使用することができる。また、本発明のバイオマス分解用酵素組成物はキシロオリゴ糖、特にキシロトリオースの製造に使用することができる。ここで言う糖液とは、少なくともバイオマスに由来する多糖がより低分子量の糖に加水分解された糖類を含む溶液のことを指す。糖液中の糖成分としては、キシロース、グルコース、セロビオース、キシロビオース、キシロトリオース、キシロテトラオース、キシロペンタオース、マンノース、アラビノース、シュクロース、フルクトースなどが例示できる。本発明のバイオマス分解用酵素組成物は、少なくともキシラナーゼ変異体を含むことから、本酵素組成物を使用して得た糖液には、キシロース、キシロビオース、キシロトリオース、キシロテトラオース、キシロペンタオース、キシロヘキサオースを含むことが多い。糖液の組成は、高速液体クロマトグラフィーなどで分析することができる。糖液の製造で使用するバイオマスは、前述したバイオマスであればいずれであってもよく、好ましくは、バイオマスからの糖収量を上げる目的で前処理したものが使用できる。前処理とは、予めバイオマスを、酸、アルカリ、加圧熱水などを用いて、リグニンやヘミセルロースを部分的に分解しておくことを指す。本発明の糖液の製造方法では、バイオマスにバイオマス分解用酵素組成物を添加し、温度40℃〜100℃、処理pH3〜7、バイオマス濃度0.1〜30%の条件において、1分から240時間反応させることが好ましい。該範囲に設定することにより、本発明のバイオマス分解用酵素組成物の分解効率を最大限発揮することができる。
本発明の糖液の製造方法に使用したバイオマス分解用酵素組成物は、回収し、さらに再利用することができる。回収されたバイオマス分解用酵素組成物中に含まれるキシラナーゼ変異体は、糖液の製造方法に付される前の50%以上、60%以上、70%以上、又は80%以上、好ましくは90%以上の活性を保持し得る。また、これらの値が高いほど酵素回収性が高いと判断される。当該酵素回収性は、バイオマス分解用酵素組成物が、配列番号1のアミノ酸配列において、アミノ酸位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203から選択される1又は2以上の位置におけるアミノ酸の置換に加えて、位置35、位置44、位置61、位置62、位置63、位置65、位置66、位置101、及び、位置102におけるアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を有するキシラナーゼ変異体である場合、特に高い値を示す。バイオマス分解用酵素組成物の回収は以下の手法によって行うことができる。バイオマスにバイオマス分解用酵素組成物を添加し加水分解反応を行った後、加水分解物を固液分離する。固液分離により得られる溶液成分には、前記バイオマス分解用酵素組成物及び糖成分が含まれ、バイオマス分解用酵素組成物と糖成分とは、限外濾過膜を用いた濾過によって分離する。限外濾過膜を用いたバイオマス分解用酵素組成物と糖成分の分離においては、その分画分子量は、単糖、オリゴ糖(2糖〜10糖)を透過でき、バイオマス分解用酵素組成物を阻止できるものであれば限定されない。具体的には分画分子量2,000〜50,000の範囲であればよく、酵素反応に阻害的作用を示す夾雑物質を酵素と分離するという観点から、より好ましくは分画分子量5,000〜50,000の範囲であり、さらに好ましくは分画分子量10,000〜30,000の範囲である。限外濾過膜の素材としては、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PS)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニルデン(PVDF)、再生セルロース、セルロース、セルロースエステル、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリ4フッ化エチレンなどを使用することができるが、PES、PVDFなどの合成高分子を素材とした限外濾過膜を使用することが好ましい。本発明のバイオマス分解用酵素組成物の回収及び/又は再利用において、バイオマス分解用酵素組成物に含まれるキシラナーゼ変異体としては、配列番号1のアミノ酸配列において位置35、位置44、位置62、位置63、位置101、位置102、位置61、位置65、位置66、位置78、及び位置155の11個の位置におけるアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を有するキシラナーゼ変異体が好ましく、配列番号20のアミノ酸配列を有するキシラナーゼ変異体がより好ましい。
本発明の糖液の製造方法で得られた糖液は、グルコース、キシロースなどの単糖成分を含むため、エタノール、乳酸などの原料糖として使用することが可能である。また、本発明の糖液の製造方法で得られた糖液は、キシロオリゴ糖、キシロビオース、キシロトリオースなどを含むため、オリゴ糖として、プレバイオティクス用途に用いることが可能であり、ヒト健康食品、家畜飼料として使用することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
(参考例1)タンパク質濃度の測定
本発明で使用したキシラナーゼ及びキシラナーゼ変異体のタンパク質濃度は、BCA法にて測定した。キシラナーゼ又はキシラナーゼ変異体を含む溶液25μLを200μLのBCA試薬と混合し、37℃で30分反応させることで発色させた。タンパク質濃度は、牛血清アルブミンを標準品として、570nmの吸光度を測定、比色定量することで決定した。
(参考例2)トリコデルマ由来セルラーゼの調製
トリコデルマ由来セルラーゼは以下の方法で調製した。
(参考例3)糖濃度の測定
キシロトリオース、キシロースは、日立高速液体クロマトグラフ LaCh rom Eite(HITACHl)を用いて、キシロトリオース、及びキシロースの標品で作製した検量線をもとに、定量分析した。分析の条件は以下のとおりである。
・カラム:KS802、KS803(Shodex)
・移動相:水
・検出方法:RI
・流速:0.5mL/min
・温度:75℃
[前培養]
コーンスティップリカー5%(w/vol)、グルコース2%(w/vol)、酒石酸アンモニウム0.37%(w/vol)、硫酸アンモニウム0.14%(w/vol)、リン酸二水素カリウム0.2%(w/vol)、塩化カルシウム二水和物0.03%(w/vol)、硫酸マグネシウム七水和物0.03%(w/vol)、塩化亜鉛0.02%(w/vol)、塩化鉄(III)六水和物0.01%(w/vol)、硫酸銅(II)五水和物0.004%(w/vol)、塩化マンガン四水和物0.0008%(w/vol)、ホウ酸0.0006%(w/vol)、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物0.0026%(w/vol)となるよう蒸留水に添加し、100mLを500mLバッフル付き三角フラスコに張り込み、121℃で15分間オートクレーブ滅菌した。放冷後、これとは別にそれぞれ121℃で15分間オートクレーブ滅菌したPE−MとTween80をそれぞれ0.01%(w/vol)添加した。この前培養培地にトリコデルマ・リーセイATCC66589(ATCCより分譲)を1×10個/mLになるように植菌し、28℃、72時間、180rpmで振とう培養し、前培養とした(振とう装置:TAITEC社製 BIO−SHAKER BR−40LF)。
[本培養]
コーンスティップリカー5%(w/vol)、グルコース2%(w/vol)、セルロース(アビセル)10%(w/vol)、酒石酸アンモニウム0.37%(w/vol)、硫酸アンモニウム0.14%(w/vol)、リン酸二水素カリウム0.2%(w/vol)、塩化カルシウム二水和物0.03%(w/vol)、硫酸マグネシウム七水和物0.03%(w/vol)、塩化亜鉛0.02%(w/vol)、塩化鉄(III)六水和物0.01%(w/vol)、硫酸銅(II)五水和物0.004%(w/vol)、塩化マンガン四水和物0.0008%(w/vol)、ホウ酸0.0006%(w/vol)、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物0.0026%(w/vol)となるよう蒸留水に添加し、2.5Lを5L容撹拌ジャー(ABLE社製 DPC−2A)容器に張り込み、121℃で15分間オートクレーブ滅菌した。放冷後、これとは別にそれぞれ121℃で15分間オートクレーブ滅菌したPE−MとTween80をそれぞれ0.1%添加し、あらかじめ前記の方法にて液体培地で前培養したトリコデルマ・リーセイPC3−7を250mL接種した。その後、28℃、87時間、300rpm、通気量1vvmにて培養を行い、遠心分離後、上清を膜濾過(ミリポア社製 ステリカップ−GV 材質:PVDF)した。この前述条件で調製した培養液に対し、βグルコシダーゼ(Novozyme188)をタンパク質重量比として、1/100量添加し、これをトリコデルマ由来セルラーゼとして、以下、実施例に使用した。
(比較例1)アクレモニウム・セルロリチカス(Acremonium cellulolyticus)から単離された野生型キシラナーゼ(配列番号1のアミノ酸配列を有する)のクローニング
配列番号1のアミノ酸配列を有する野生型キシラナーゼをコードするDNAは、アクレモニウム・セルロリチカス(Acremonium cellulolyticus)CF株よりRT−PCRで単離し、pET11a(Novagen)のNdeI部位、BamHI部位に、野生型キシラナーゼよりシグナルペプチド領域を除去したタンパク質をコードする、配列番号68の塩基配列を有するDNAのクローニングを実施した。pET11aのNdeI部位の塩基配列CATATGにおける、“ATG”は、メチオニンコドンとして翻訳開始点として使用し、3’末端にはストップコドン“TAG”を含んでいる。
前記配列番号68の塩基配列を含むpET11aを、BL21(DE3)株(Novagen社)にクローニングした。得られた組換えBL21(DE3)株を、アンピシリンナトリウム100mg/L含むLB培地にて37℃でOD600が0.6になるまで培養し、その後、イソプロピル-β-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)200μMを添加し、配列番号2のアミノ酸配列を有するキシラナーゼの発現誘導を行った。発現誘導は、培地を16℃で20時間保温して行い、その後組換えBL21(DE3)株を4℃、5,000xgにて15分遠心分離を行うことで集菌した。集菌した菌体は、トリス緩衝液pH8(20mM Tris HCl、50mM NaCl)に再懸濁した。菌体を含む緩衝液は、-80℃にて1時間完全に凍結させた後、室温にて融解する操作を合計3回繰り返すことで、菌体中の可溶性タンパク質の緩衝液への抽出を行った。その後、緩衝液を18,000rpmにて、20分、4℃で遠心分離を行い上清と菌体残さに分離した。前記上清はトリス緩衝液(20mM、pH8)で予め平衡化しておいたQ−HPカラム(GE社)に通し、目的のキシラナーゼをカラムに吸着させた後、NaCl濃度勾配により溶出を行った。キシラナーゼ画分として、200〜400mMのNaCl濃度時の溶液を回収した。その後、キシラナーゼ画分は、さらにトリス緩衝液(20mM、pH8、2M NaCl)で透析した後、Butyl HPカラム(GE社)に通じ、キシラナーゼを吸着した。キシラナーゼは、NaCl濃度勾配により溶出し、1M NaClで溶出される画分を回収した。前記画分をさらに、Superdex200 16/60ゲルろ過カラム(GE社)に通じて精製した。得られた精製キシラナーゼは、SDS−PAGEによる不純物の確認を行った。
(実施例1)位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、位置203のいずれか1つの置換を含むキシラナーゼ変異体をコードするDNAの作製と大腸菌による組換え発現
実施例として、位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、位置203のいずれか1つの置換を含むキシラナーゼ変異体をコードするDNAの作製を以下手順にて実施した。
アクレモニウム・セルロリチカスの野生型キシラナーゼのアミノ酸配列(配列番号1)からN末端の34アミノ酸残基からなるシグナルペプチドを除くアミノ酸配列(配列番号2)をコードする塩基配列(配列番号68)を含むpET11aをテンプレート(比較例1)として、表1に記載のプライマー対(Fw:フォワードプライマー、Rv:リバースプライマー)を使用して、インバースPCRを行った。PCRにはPrimeSTAR Max(タカラバイオ株式会社)を用いた。PCR増幅断片を含む反応液を用いてDH5α株(Novagen社)の形質転換を行うことで、所定の位置にアミノ酸置換を有するキシラナーゼ変異体をコードするDNAを作製した。使用したプライマー対を表1(配列番号21〜配列番号32)に示す。また、得られたキシラナーゼ変異体(位置35のアミノ酸を開始点とする)をコードするDNAの塩基配列を配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、に示す(表1)。またそれぞれのキシラナーゼ変異体のアミノ酸配列を、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8に示す。得られたキシラナーゼ変異体をコードするDNAは、BL21(DE3)株へクローニングし、比較例1の手順に準じてキシラナーゼ変異体の発現誘導を行った。その後、組換えBL21(DE3)株を遠心分離にて集菌した。集菌した菌体は、トリス緩衝液pH8(20mM Tris HCl、50mM NaCl)に再懸濁し、凍結融解を3回繰り返し、粗酵素液を抽出した。粗酵素液をHiTrapQカラム(GE社)に充填し、0〜1M NaClでタンパク質を溶出させ、キシラナーゼ活性を示す画分を回収した。回収した画分について、20mM Tris HCl(pH 8.0)に対して透析処理を行った後、RESOURCE Qカラム(GE社)に充填し、0〜0.25M NaClでキシラナーゼ変異体を溶出し、精製した。純度が低い場合、得られた画分を、トリス緩衝液(20mM Tris HCl、50mM NaCl)であらかじめ平衡化したHiPrep 200 p.g.カラム(GE社)に供し、精製酵素を得た。
Figure 2018155650
(実施例2)位置78及び位置155の2つの置換を含むキシラナーゼ変異体をコードするDNAの作製と大腸菌による組換え発現
実施例1にて作製した、位置78に変異を導入したキシラナーゼ変異体(配列番号3)をコードするDNAを含むpET11aに対して、さらに、位置155に変異を導入するプライマー対(配列番号27及び配列番号28)を使用して、位置78と位置155においてそれぞれアラニンへの2つの置換を有するキシラナーゼ変異体をコードするDNA(配列番号75)を作製した。本変異導入に使用したプライマー対は表2に示す2種である。作製したキシラナーゼ変異体をコードするDNAの塩基配列を配列番号9に示す。得られたキシラナーゼ変異体をコードするDNAは実施例1の手順に準じてpET11aにクローニングした。次いで、当該キシラナーゼ変異体をコードするDNAを含むpET11aを用いて、比較例1の手順に準じて、タンパク質の発現及び精製を行い、実施例2のキシラナーゼ変異体(配列番号9)を得た。
Figure 2018155650
(比較例2)位置48、位置112、位置121、位置123、位置128、位置167、位置171、位置212のいずれか1つの置換を含むキシラナーゼ変異体をコードするDNAの作製と大腸菌による組換え発現
比較例として位置48、位置112、位置121、位置123、位置128、位置167、位置171、位置212のいずれか1つの置換を含むキシラナーゼ変異体を作製した。配列番号2で示すキシラナーゼの塩基配列を含むpET11aを鋳型として、表3に記載のプライマー対(Fw:フォワードプライマー、Rv:リバースプライマー)を使用して、PCRを行うことで、各キシラナーゼ変異体をコードするDNAを作製した。PCRにはPrimeSTAR Max(タカラバイオ株式会社)を用いた。使用したプライマー対と得られたキシラナーゼ変異体をコードするDNAの塩基配列を配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、に示す(表3)。またそれぞれのキシラナーゼ変異体のアミノ酸配列を、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、に示す(開始メチオニンを除く)。得られたキシラナーゼ変異体をコードするDNAは実施例1の手順に準じてpET11aにクローニングした。次いで、当該キシラナーゼ変異体をコードするDNAを含むpET11aは、実施例1の手順に準じて、タンパク質の発現及び精製を行い、比較例2の変異体を得た。
Figure 2018155650
(実施例3)位置78の置換、あるいは位置80の置換、あるいは位置78及び位置155の置換、ならびに、位置35、位置44、位置62、位置63、位置101、位置102、位置61、位置65、及び位置66の置換を含むキシラナーゼ変異体をコードするDNAの作製と大腸菌による組換え発現
実施例1、及び実施例2にて作製した、位置78においてアラニンへの置換を有するキシラナーゼ変異体をコードするDNA(配列番号69)を含むpET11、位置80においてアラニンへの置換を有するキシラナーゼ変異体をコードするDNA(配列番号70)を含むpET11、位置78と位置155においてそれぞれアラニンへの2つの置換を有するキシラナーゼ変異体をコードするDNA(配列番号75)を含むpET11に対して、さらに、位置35、位置44、位置62、位置63、位置101、位置102、位置61、位置65、位置66に変異を導入するプライマー対を使用して、各位置に置換を有するキシラナーゼ変異体をコードするDNAを作製した。本変異導入に使用したプライマー対は表4に示す9種である。作製したキシラナーゼ変異体をコードするDNAの塩基配列を配列番号84、配列番号85、配列番号86、に示す。また当該キシラナーゼ変異体のアミノ酸配列を配列番号18、配列番号19、配列番号20に示す。得られたキシラナーゼ変異体をコードするDNAは実施例1の手順に準じてpET11aにクローニングした。次いで、キシラナーゼ変異体をコードするDNAを含むpET11aは、実施例1の手順に準じて、タンパク質の発現及び精製を行い、実施例3のキシラナーゼ変異体(配列番号18、配列番号19、配列番号20)を得た。
Figure 2018155650
Figure 2018155650
Figure 2018155650
(実施例4)実施例1〜3のキシラナーゼ変異体及び比較例1の野生型キシラナーゼ、比較例2のキシラナーゼ変異体による糖液製造1
バーチウッドキシラン(シグマアルドリッチ社)を基質として、オリゴ糖液製造を試みた。キシラナーゼとしては、各種キシラナーゼ変異体(実施例1、実施例2、実施例3)及び野生型キシラナーゼ(比較例1)、キシラナーゼ変異体(比較例2)を使用した。基質を0.5gずつ2mLチューブに秤量し、バイオマスの終濃度が5%(w/w)となるように加水後、希釈塩酸を用いてpH5に調整した。pHを調整した本組成物に、野生型キシラナーゼもしくはキシラナーゼ変異体を乾燥バイオマス1gあたり0.8mg添加し、サーモブロック回転器(日伸理化製 SN−48BN)を用いて24時間反応させた。タンパク質濃度は参考例1に準じて濃度測定を行い調整した。実施例3のキシラナーゼ変異体は50℃で、それ以外のキシラナーゼ変異体については40℃で反応を行った。反応後の上清における糖組成を参考例3に従って分析し、表5にまとめた。
結果、位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、位置203より選択される位置に置換を含むキシラナーゼ変異体は、野生型キシラナーゼと比べて、キシロトリオース濃度が向上し、キシロース濃度が低下した。このことから、当該変異によりキシロトリオースの分解が抑制されていることが明らかとなった。また、位置78、位置155の位置に置換を含み、加えて位置35、位置44、位置62、位置63、位置101、位置102、位置61、位置65、位置66にも置換を含むキシラナーゼ変異体において、特にキシロトリオース濃度が高く、キシロース濃度が低いことが認められた。一方、位置48、位置112、位置121、位置123、位置128、位置167、位置171、位置212より選択される位置に置換を含むキシラナーゼ変異体ではキシロトリオース、キシロースのいずれの糖も生産されなかった。
Figure 2018155650
(実施例5)キシラナーゼ変異体を用いた糖液の製造方法2
サトウキビ搾汁後の残渣であるバガスを原料にして、オリゴ糖液製造を試みた。キシラナーゼとしては、比較例1の野生型キシラナーゼもしくは実施例3の配列番号20のアミノ酸配列を持つキシラナーゼ変異体を使用した。前処理として、バイオマス重量が30%(w/w)となるように1N苛性ソーダ水溶液中で6日間浸漬処理した。前処理物を0.05gずつ2mLチューブに秤量し、バイオマスの終濃度が5%(w/w)となるように加水後、希釈塩酸を用いてpH5に調整した。pHを調整した本組成物に、野生型キシラナーゼもしくはキシラナーゼ変異体を乾燥バイオマス1gあたり0.8mg添加し、サーモブロック回転器(日伸理化製 SN−48BN)を用いて50℃で24時間反応させた。反応後の上清における糖組成を参考例3に従って分析し、表6に示す。野生型キシラナーゼと比較して、キシラナーゼ変異体の方がキシロオリゴ糖であるキシロトリオースを多く得ることができた。
Figure 2018155650
(実施例6)実施例5における反応後のキシラナーゼ残存活性
実施例5にて得られた反応後の上清50μlを、VIVASPIN500(PES、分画分子量10,000)(ザルトリウス社)を用いて限外濾過し、比較例1の野生型キシラナーゼもしくは実施例3のキシラナーゼ変異体を回収した。回収した比較例1の野生型キシラナーゼもしくは実施例3の配列番号20のアミノ酸配列を持つキシラナーゼ変異体と、キシラン分解時の濃度(40mg/l)に希釈した比較例1の野生型キシラナーゼ、実施例3の配列番号20のアミノ酸配列を持つキシラナーゼ変異体のキシラナーゼ活性を測定した。キシラナーゼ活性は、1%のバーチウッドキシラン(シグマアルドリッチ社)を基質として使用して、測定を行った。キシラナーゼによるバーチウッドキシランが加水分解され、生成した還元糖の量は、ジニトロサリチル酸法(DNS)法でキシロースを標品として使用して測定した。回収キシラナーゼもしくは希釈キシラナーゼを反応液の1/10量添加し、50℃において、10分間保温することでバーチウッドキシランの分解を実施した。反応後、還元糖量を測定するためDNS溶液を0.75mL添加することで開始し、5分煮沸することで反応を停止した。反応停止後の反応液は、540nmの吸光度を測定することで還元糖量を測定した。1unitのキシラナーゼ活性は、50℃・1分間において、1μmolのキシロースをバーチウッドキシランより生成するために必要な酵素量と定義しユニット数を算出した。希釈した比較例1の野生型キシラナーゼ、実施例3のキシラナーゼ変異体の活性値をそれぞれ基準(100%)として、回収した比較例1の野生型キシラナーゼ、実施例3のキシラナーゼ変異体の相対的な活性値を残存活性とした。表7に回収後の残存活性を示す。キシラナーゼ変異体ではキシラン分解後も活性が高く残っており、キシラン分解に有意に再利用出来ることが確認できた。
Figure 2018155650
(比較例3)トリコデルマ・リーセイ由来の野生型キシラナーゼ(配列番号88のアミノ酸配列を有する)による糖液製造
トリコデルマ・リーセイ由来の野生型キシラナーゼよりシグナルペプチド領域を除去したタンパク質の塩基配列を有するDNA断片(配列番号92)を合成し、実施例1の手順に準じてpET11aにクローニングした。次いで、当該キシラナーゼ変異体をコードするDNAを含むpET11aを用いて、比較例1の手順に準じて、タンパク質の発現及び精製を行い、野生型キシラナーゼ(配列番号88)を得た。さらに、実施例4の手順に準じて糖液の製造を行い、反応後の上清における糖組成を表8に示す。
(実施例7)トリコデルマ・リーセイ由来のキシラナーゼ変異体(配列番号89、90のアミノ酸配列を有する)による糖液製造
トリコデルマ・リーセイ由来の野生型キシラナーゼ(配列番号87)と配列番号1とでアミノ酸のアライメント操作を実施し、配列番号87の配列番号1の位置78,80に相当する位置を決定した。アライメント操作は、上述の手順1)〜3)に従い、ClustalWに含まれるプログラムGenetyxのParallel Editor(Multiple Allignment)を用い、デフォルトのパラメータを用いて行った。トリコデルマ・リーセイ由来のキシラナーゼ変異体よりシグナルペプチド領域を除去したタンパク質で、位置78においてアスパラギン酸からアラニンへの置換を有するキシラナーゼをコードする配列番号93と、位置80においてバリンからアラニンへの置換を有するキシラナーゼをコードする配列番号94の塩基配列を有するDNA断片を合成し、比較例3と同様にクローニング、タンパクの発現及び精製を行い、キシラナーゼ変異体(配列番号89,90)を得た。置換箇所と置換残基との関係を表9に示す。さらに、実施例4の手順に準じて糖液の製造を行い、反応後の上清における糖組成を表8に示す。野生型キシラナーゼと比較して、キシラナーゼ変異体の方がキシロオリゴ糖であるキシロトリオースを多く得ることができた。
Figure 2018155650
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本発明におけるキシラナーゼ変異体は、キシロトリオースの分解が抑制されておりキシランから高い収率でオリゴ糖を製造することができるため、バイオマスの加水分解及び糖液の製造、オリゴ糖の製造に使用できる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。

Claims (14)

  1. 配列番号1のアミノ酸配列での、位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当する位置から選択される一以上のアミノ酸残基が別のアミノ酸残基に置換されているアミノ酸配列を含み、かつ、当該アミノ酸残基が置換されていない元のキシラナーゼと比較してキシランからのキシロトリオースの生産性が向上したキシラナーゼ活性を有する、糸状菌由来のキシラナーゼ変異体。
  2. 配列番号1のアミノ酸配列での位置78に相当する位置のアミノ酸残基がアラニン、グリシン、バリン、ロイシン、又はイソロイシンに置換されているアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のキシラナーゼ変異体。
  3. 配列番号1のアミノ酸配列での位置80に相当する位置のアミノ酸残基がアラニン、グリシン、ロイシン、又はイソロイシンに置換されているアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のキシラナーゼ変異体。
  4. 配列番号1のアミノ酸配列での位置117に相当する位置のアミノ酸残基が、セリン、トレオニン、又はアスパラギンに置換されているアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のキシラナーゼ変異体。
  5. 配列番号1のアミノ酸配列での位置155に相当する位置のアミノ酸残基が、アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、又はイソロイシンに置換されているアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のキシラナーゼ変異体。
  6. 配列番号1のアミノ酸配列での位置169に相当する位置のアミノ酸残基が、アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、又はイソロイシンに置換されているアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のキシラナーゼ変異体。
  7. 配列番号1のアミノ酸配列での位置203に相当する位置のアミノ酸残基が、トリプトファン、フェニルアラニン、又はチロシンに置換されているアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のキシラナーゼ変異体。
  8. 配列番号1のアミノ酸配列での位置78に相当する位置のアミノ酸残基が、アラニンに置換されており、かつ、配列番号1のアミノ酸配列での位置155に相当する位置のアミノ酸残基が、アラニンに置換されているアミノ酸配列を含む、請求項1、2又は5に記載のキシラナーゼ変異体。
  9. 前記元のキシラナーゼが、グリコシドヒドロラーゼ(Glycoside Hydrolase)ファミリー11に属する糸状菌由来のキシラナーゼである、請求項1〜8のいずれか一項に記載のキシラナーゼ変異体。
  10. 以下の(a)〜(c)のいずれかのアミノ酸配列を含み、かつキシラナーゼ活性を有する、請求項1に記載のキシラナーゼ変異体:
    (a)配列番号3〜9、89、及び90で示されるいずれかのアミノ酸配列;
    (b)配列番号3〜9、89、及び90で示されるいずれかのアミノ酸配列において、配列番号1のアミノ酸配列での位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当する位置における置換されたアミノ酸は変異せず、該アミノ酸以外のアミノ酸位置において、1から数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列;又は
    (c)配列番号3〜9、89、及び90で示されるいずれかのアミノ酸配列において、配列番号1のアミノ酸配列での位置78、位置80、位置117、位置155、位置169、及び位置203に相当する位置における置換されたアミノ酸は変異せず、該アミノ酸を除いて、該いずれかのアミノ酸配列と90%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列。
  11. さらに、配列番号1のアミノ酸配列での位置35、位置44、位置61、位置62、位置63、位置65、位置66、位置101、及び位置102に相当する位置のアミノ酸残基が別のアミノ酸残基に置換されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のキシラナーゼ変異体。
  12. 配列番号1の位置35に相当する位置のアミノ酸残基がシステインに、
    配列番号1の位置44に相当する位置のアミノ酸残基がヒスチジンに、
    配列番号1の位置61に相当する位置のアミノ酸残基がメチオニンに、
    配列番号1の位置62に相当する位置のアミノ酸残基がシステインに、
    配列番号1の位置63に相当する位置のアミノ酸残基がロイシンに、
    配列番号1の位置65に相当する位置のアミノ酸残基がプロリンに、
    配列番号1の位置66に相当する位置のアミノ酸残基がグリシンに、
    配列番号1の位置101に相当する位置のアミノ酸残基がプロリンに、かつ
    配列番号1の位置102に相当する位置のアミノ酸残基がアスパラギンに、
    それぞれ置換されている、請求項11に記載のキシラナーゼ変異体。
  13. 以下の(d)〜(f)のいずれかのアミノ酸配列を含み、かつキシラナーゼ活性を有する、請求項11に記載のキシラナーゼ変異体:
    (d)配列番号18〜20で示されるいずれかのアミノ酸配列;
    (e)配列番号18〜20で示されるいずれかのアミノ酸配列において、配列番号1のアミノ酸配列での位置35、位置44、位置61、位置62、位置63、位置65、位置66、位置78、位置80、位置101、位置102、及び位置155に相当する位置における置換されたアミノ酸は変異せず、該アミノ酸以外のアミノ酸位置において、1から数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列;又は
    (f)配列番号18〜20で示されるいずれかのアミノ酸配列において、配列番号1でのアミノ酸配列での位置35、位置44、位置61、位置62、位置63、位置65、位置66、位置78、位置80、位置101、位置102、及び位置155に相当する位置における置換されたアミノ酸は変異せず、該アミノ酸を除いて、該いずれかのアミノ酸配列と90%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列。
  14. 請求項1〜13のいずれか一項に記載のキシラナーゼ変異体を含む酵素組成物。
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