JPWO2018143477A1 - 双子葉植物のゲノムの改変方法 - Google Patents

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Abstract

双子葉植物ゲノムの標的部位において後代に遺伝させることが可能なDNA変換を誘導できるゲノム改変方法を提供する。双子葉植物細胞に、ガイドRNAと、核酸配列認識モジュールおよび核酸塩基変換酵素を含む融合タンパク質とを植物細胞に導入することを含む方法によって、双子葉植物のゲノムを改変する。ゲノム改変効率が十分であるため、ゲノムが改変された植物細胞から植物体を作製し、植物体から子孫植物を作製し、変異を有する子孫植物を選抜することによって、変異を有する後代の植物を育種することも可能である。

Description

本発明は、双子葉植物のゲノムの改変方法に関する。
ゲノム編集はゲノム改変の効率的で迅速な導入を可能にする新しい技術である。ゲノム編集技術は、多くの種類の生物に適用されてきた。広く使用されているゲノム編集ツールの1つがCRISPR/Cas9(クラスター化された規則的間隔で配置された短鎖パリンドローム反復配列/CRISPR-関連9)システムである。このシステムでは、Cas9酵素(非特許文献1)と、ガイドRNA(gRNA)と呼ばれるRNAを用いる。gRNAは、DNA改変を導入する標的部位のおよそ20bpの塩基配列(標的配列)に対応するRNA配列(crRNAに相当)と、トランス活性化型CRISPR RNA(tracrRNA)に相当するRNA配列とを含む。gRNAとCas9をゲノムDNAと接触させると、gRNAは、ゲノム上の、Cas9活性に必要なプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の直前に位置する標的部位にRNA-DNA塩基対形成を介して特異的に結合し、そこにCas9を動員し、Cas9がゲノムDNAを標的部位で切断する。このシステムにおいて野生型Cas9は、PAM配列の上流に二本鎖切断(DSB)を生じる。DSBにより生じたゲノムDNA切断末端は、誤りを生じやすい非相同末端結合(NHEJ)又は相同組換え型修復(HDR)によって再度連結される。非相同末端結合(NHEJ)による修復を受けた場合、修復部位にDNA挿入又は欠失(挿入欠失;Indel)変異が高頻度に生じることから、非相同末端結合(NHEJ)を使用して標的部位に挿入欠失変異を誘導することができる。他のゲノム編集技術と比較すると、CRISPR/Cas9システムは、構築物設計の容易さとコストの低さなどの利点を有する。しかしCRISPR/Cas9システムでは、野生型Cas9がオフターゲット作用により標的外部位での切断を生じ得るという欠点が知られている。オフターゲット作用を低減するため、2つのヌクレアーゼドメインRuvC及びHNHのいずれかに変異(それぞれD10A又はH840A)を導入して一方のヌクレアーゼ活性を不活化したCas9ニッカーゼ(nCas9)も使用されている。そのようなCas9ニッカーゼは標的部位において二本鎖切断ではなく一本鎖におけるニックを生じ、相同組換え型修復(HDR)により修復されることから、オフターゲット作用を低減することができる。ゲノム編集のためにCRISPR/Cas9システムの野生型Cas9の代わりにCas9ニッカーゼを用いる場合には、1種類のgRNAではなく、近接した標的部位に結合する2種類のgRNAを用いることにより、二本鎖切断を導入する方法が通常採用される(非特許文献2)。これらのCRISPR/Cas9システムの最も大きな限界の1つは変異が主に挿入欠失に限定されることである。ゲノムにおける挿入欠失変異は標的遺伝子の機能的破壊には適しているが、多くのヒト疾患の治療や農業上重要な作物形質の改良のためにはDNA変換(塩基置換)の方が重要である。しかしDNA変換を引き起こす単一塩基編集技術はまだ十分確立していない。例えば植物のゲノム編集に成功裏に利用可能な単一塩基編集技術が確立されれば、作物の育種をさらに加速させることができて有用である。
活性化誘導型シチジンデアミナーゼ(AID)をはじめとするシチジンデアミナーゼ(CDA)はシチジン(C)のウリジン(U)への不可逆的加水分解性脱アミノ化を触媒し、それにより最終的に塩基CからTへの変換を誘導することができる(非特許文献3)。2つのヌクレアーゼドメインRuvC及びHNHの両方にヌクレアーゼ活性を不活化する2つの変異(D10A及びH840A)を有する触媒的に不活性なCas9(dCas9)を、ヤツメウナギ由来CDA1(PmCDA)、ヒト由来CDA(APOBEC1)、又はラット由来CDA(rAPOBEC1)と融合させ(dCas9-CDA)、それをgRNAと共に酵母や哺乳動物細胞中でDNAと接触させることにより、二本鎖DNAを切断することなく、標的部位で塩基を別の塩基に変換(塩基編集)できることが報告されている(非特許文献4及び5)。またCas9ニッカーゼとシチジンデアミナーゼの融合タンパク質を用いてイネでゲノム編集を行ったことも報告されている(非特許文献6)。
しかしゲノム編集により植物に導入したDNA変換を後代に遺伝させることができたという報告はまだほとんどない。DNA変換を後代に遺伝させるためには生殖細胞のゲノムにDNA変換を導入する必要があるが、ゲノム編集を用いた植物生殖細胞のゲノムへのDNA変換の導入は必ずしも成功していない。
Belhaj, K., et al., (2015) V. Curr. Opin Biotech., 32, 76-84 Sanger, J.D. and Joung, J.K., (2014) Nature Biotechnology, Apr; 32(4): 347-355 Muramatsu, M., et. al., (2000) T. Cell 102, 553-563 Nishida, K. et al., (2016) Science 16, 353(6305) Komor, A.C., et al., (2016) Nature, 533(7603): 420-424 J. Li., et al., Molecular Plant, (2016) December 8, pii: S1674-2052(16)30298-2. doi: 10.1016/j.molp.2016.12.001
本発明者らは、ガイドRNAと、核酸配列認識モジュールおよび核酸塩基変換酵素を含む融合タンパク質とを植物細胞に導入することによって、双子葉植物のゲノムを成功裡に改変することができることを見いだした。
本発明は、双子葉植物のための標的特異的なゲノム改変方法に関する。本発明は特に、ゲノム編集技術(例えば、CRISPR(クラスター化された規則的間隔で配置された短鎖パリンドローム反復配列(clustered regularly interspaced short palindromic repeats))-Cas9(CRISPR-associated 9)システム)に基づく、双子葉植物のゲノム上の標的部位にDNA変換を含む変異を導入する方法に関する。本発明の方法では、核酸配列認識モジュール及び核酸塩基変換酵素の複合体(例えば、融合タンパク質)をガイドRNA(gRNA)と共に双子葉植物細胞内に導入することにより、gRNAが特異的に結合するゲノム中の標的部位においてDNA変換を高頻度に誘導することができる。好ましい実施形態では、本発明の方法は、導入したDNA変換の後代への遺伝ももたらすことができる。本発明は、双子葉植物細胞に、ガイドRNA、並びに2つのヌクレアーゼドメインの少なくとも一方のヌクレアーゼ活性を欠損した変異型Cas9タンパク質と核酸塩基変換酵素(例えば、シチジンデアミナーゼ)とを含む融合タンパク質を導入し、ガイドRNAが特異的に結合するゲノム中の標的部位においてDNA変換(例えば、シトシンの他の塩基への置換)を含む変異を誘導することを含む、CRISPR/Cas9システムを用いた双子葉植物ゲノムの改変方法を提供する。
例えば、本発明において、以下の項目が提供される。
[項1] 双子葉植物のゲノムを改変する方法であって、ガイドRNAと、核酸配列認識モジュールおよび核酸塩基変換酵素を含む融合タンパク質とを植物細胞に導入することを含む、方法。
[項2] 前記核酸配列認識モジュールが、Casの少なくとも1つのDNA切断能が失活したCRISPR−Casシステム、ジンクフィンガーモチーフ、TALエフェクター及びPPRモチーフからなる群より選択される、前記項に記載の方法。
[項3] 前記核酸配列認識モジュールが、Casの少なくとも1つのDNA切断能が失活したCRISPR−Casシステムである、前記項のいずれかに記載の方法。
[項4] 前記CRISPR−Casシステムが2つのヌクレアーゼドメインを含み、該2つのヌクレアーゼドメインのいずれか1つが不活化されている、前記項のいずれかに記載の方法。
[項5] 前記核酸塩基変換酵素がデアミナーゼである、前記項のいずれかに記載の方法。
[項6] 前記核酸塩基変換酵素がシチジンデアミナーゼである、前記項のいずれかに記載の方法。
[項7] 前記導入を、前記核酸配列認識モジュールおよび前記核酸塩基変換酵素をコードする核酸構築物を前記細胞内に導入することによって行う、前記項のいずれかに記載の方法。
[項8] 前記核酸構築物が、前記ガイドRNAをさらにコードする、前記項のいずれかに記載の方法。
[項9] 前記核酸配列認識モジュールおよび前記核酸塩基変換酵素をコードする配列が、双子葉植物のコドン使用に最適化されている、前記項のいずれかに記載の方法。
[項10] 前記核酸配列認識モジュールおよび前記核酸塩基変換酵素をコードする配列が、シロイヌナズナのコドン使用に最適化されている、前記項のいずれかに記載の方法。
[項11] 前記ガイドRNAおよび前記核酸配列認識モジュールが、SlDELLAまたはSlETR1遺伝子の配列を標的化する、前記項のいずれかに記載の方法。
[項12] 前記双子葉植物が、ナス科の植物である、前記項のいずれかに記載の方法。
[項13] 前記双子葉植物が、ナス属の植物である、前記項のいずれかに記載の方法。
[項14] 前記双子葉植物が、トマト植物(Solanum lycopersicum)である、前記項のいずれかに記載の方法。
[項15] 前記導入は約23〜約27℃で行われる、前記項のいずれかに記載の方法。
[項16] 前記導入は約25℃で行われる、前記項のいずれかに記載の方法。
[項17] 前記導入した植物細胞を約23〜約27℃で培養することをさらに含む、前記項のいずれかに記載の方法。
[項18] 前記導入した植物細胞を約25℃で培養することをさらに含む、前記項のいずれかに記載の方法。
[項19] 前記項のいずれかに記載の方法により双子葉植物細胞中の植物ゲノムを改変し、DNA変換を含む変異を誘導することと、ゲノムが改変された該植物細胞から植物体を作製することと、該植物体から子孫植物を作製し、前記変異を有する子孫植物を選抜することとを含む、双子葉植物の育種方法。
[項20] 双子葉植物のゲノムを改変するための、核酸配列認識モジュールおよび核酸塩基変換酵素をコードする核酸構築物を含む組成物であって、該核酸配列認識モジュールは、ガイドRNAの存在下でゲノム上の標的配列を認識する、組成物。
[項21] 前記核酸配列認識モジュールが、Casの少なくとも1つのDNA切断能が失活したCRISPR−Casシステム、ジンクフィンガーモチーフ、TALエフェクター及びPPRモチーフからなる群より選択される、前記項に記載の組成物。
[項22] 前記核酸配列認識モジュールが、Casの少なくとも1つのDNA切断能が失活したCRISPR−Casシステムである、前記項のいずれかに記載の組成物。
[項23] 前記CRISPR−Casシステムが2つのヌクレアーゼドメインを含み、該2つのヌクレアーゼドメインのいずれか1つが不活化されている、前記項のいずれかに記載の組成物。
[項24] 前記核酸塩基変換酵素がデアミナーゼである、前記項のいずれかに記載の組成物。
[項25] 前記核酸塩基変換酵素がシチジンデアミナーゼである、前記項のいずれかに記載の組成物。
[項26] 前記核酸構築物が、前記ガイドRNAをさらにコードする、前記項のいずれかに記載の組成物。
[項27] 前記核酸配列認識モジュールおよび前記核酸塩基変換酵素をコードする配列が、双子葉植物のコドン使用に最適化されている、前記項のいずれかに記載の組成物。
[項28] 前記核酸配列認識モジュールおよび前記核酸塩基変換酵素をコードする配列が、シロイヌナズナのコドン使用に最適化されている、前記項のいずれかに記載の組成物。
[項29] 前記ガイドRNAおよび前記核酸配列認識モジュールが、SlDELLAまたはSlETR1遺伝子の配列を標的化する、前記項のいずれかに記載の組成物。
[項30] 前記双子葉植物が、ナス科の植物である、前記項のいずれかに記載の組成物。
[項31] 前記双子葉植物が、ナス属の植物である、前記項のいずれかに記載の組成物。
[項32] 前記双子葉植物が、トマト植物(Solanum lycopersicum)である、前記項のいずれかに記載の組成物。
[項32A] 前記項のいずれかに記載の方法の特徴を備える、前記項のいずれかに記載の組成物。
[項32B] 下記項目[A1]〜[A9]のいずれかに記載の方法の特徴を備える、前記項のいずれかに記載の組成物または方法。
[項33] 前記項のいずれかに記載の方法で生産された植物。
[項34] 前記項のいずれか1項に記載の方法で生産された植物の部分。
[項35] 前記部分は、果実、根、葉、花、種子および茎から選択される、前記項に記載の植物の部分。
[項36] 前記項のいずれかに記載の方法で生産された植物またはその部分を加工した加工品。
例えば、本発明のある態様において、以下の項目が提供される。
[A1]トマト植物細胞に、ガイドRNA、並びに2つのヌクレアーゼドメインRuvC及びHNHの少なくとも一方のヌクレアーゼ活性を欠損した変異型Cas9タンパク質とシチジンデアミナーゼを含む融合タンパク質を導入し、それによりガイドRNAが特異的に結合するゲノム中の標的部位においてDNA変換を含む変異を誘導することを含む、CRISPR/Cas9システムを用いたトマト植物ゲノムの改変方法。
[A2]トマト植物細胞に、前記融合タンパク質をコードする塩基配列を含む発現ユニットを含む核酸構築物を導入し、前記融合タンパク質を発現させることを含む、上記[A1]に記載の方法。
[A3]前記融合タンパク質をコードする塩基配列において、前記変異型Cas9タンパク質をコードする塩基配列及びシチジンデアミナーゼをコードする塩基配列がシロイヌナズナのコドン使用に最適化されている、上記[A2]に記載の方法。
[A4]前記核酸構築物が、ガイドRNAをコードする塩基配列を含む発現ユニットをさらに含む、上記[A2]又は[A3]に記載の方法。
[A5]ガイドRNAをコードする塩基配列が、シロイヌナズナ由来U6プロモーターの制御下に配置されている、上記[A4]に記載の方法。
[A6]前記発現ユニットが配列番号21、25、27、又は40で示される塩基配列からなる、上記[A2]に記載の方法。
[A7]前記核酸構築物がT-DNAである、上記[A2]〜[A6]のいずれかに記載の方法。
[A8]DNA変換がシトシンの置換を含む、上記[A1]〜[A7]のいずれかに記載の方法。
[A9]上記[A1]〜[A8]のいずれかに記載の方法を用いて、DNA変換を含む変異が誘導されたゲノムを有するトマト植物体を作製し、その植物体を用いた交配により子孫植物を作製し、前記変異を有する子孫植物を選抜することを含む、トマト植物の育種方法。
本発明によれば、双子葉植物のゲノム中の標的部位において、高効率に変異を誘導できる。高効率の変異誘導によって、変異を後代に遺伝させることが可能となる。また、本発明は、変異として、とりわけDNA変換(塩基置換)を高頻度に誘導することもできる。
図1はCRISPR/Cas9システムによる変異誘発の標的部位を模式的に示す図である。AはSolyc11g011260(SlDELLA遺伝子)上の標的部位、BはSolyc12g011330(SlETR1遺伝子)上の標的部位を示す。TGGはPAM配列であり、ゲノム中でその直前に位置する20塩基長の配列が標的配列である。なおSlETR1site3の標的配列及び隣接するPAM配列は、図中では相補配列で表されている。 図2はベクター中のgRNA及びCas9又はnCas9-CDA発現ユニットを含むT-DNAの構造を模式的に示す図である。Cas9、nCas9-PmCDA、nCas9-PmCDAopt、及びnCas9-stop-PmCDAのCas9又はnCas9コード配列はPcUbiプロモーターの制御下にあり、転写終結にはエンドウ(Pisum sativum; P. sativum)由来のpea3Aターミネーターを用いた。なお図中のgRNA発現ユニットは便宜上正方向で示しているが、実際のベクター作製の際に逆方向に挿入されることもある。なおnCas9-stop-PmCDAの終止コドン(stop)下流のPmCDAを含む領域(図中、「非機能配列」)は、このベクターでは終止コドンの挿入によりタンパク質発現において機能しなくなっている。 図3はSlDELLAを標的化したnCas9-PmCDAoptが導入されDNA改変が生じたT0及びT1植物の葉の表現型を示す写真である。矢印は野生型(WT)の葉の鋸歯を示す。 図4はDNA改変を保持するT1植物及びF1植物におけるカナマイシン耐性マーカー遺伝子(NPTII)の有無を判定するためのPCR解析の結果を示す写真である。PC: 陽性対照、NC: 陰性対照、WT: 野生型トマト植物。#は親植物を表し、続く番号は個々の子孫植物を表す。#3BC1_6系統は#3系統(T0植物)と野生型植物の間の交配によって得られたF1植物である。#3BC1_6系統以外の子孫植物は全てT1植物である。 図5はSlDELLA又はSlETR1標的化T1植物におけるアミノ酸配列の変化を示す図である。標的配列で生じたDNA変換がアミノ酸置換を引き起こすことを示している。これらのT1植物で認められたアミノ酸置換は、ホモ接合性、ヘテロ接合性、又は両アレル性であった。選択マーカー遺伝子不含であることが示された植物には注記している。右側の列に記載された「-」はDNAの欠失を示し、その後に続く数字は欠失の長さ(bp)を示す。「C」はDNA変換を示し、その直後に続く数字は変換された塩基の数を示す。「WT」は野生型(改変なし)を示す。配列中でDNA変換が生じた塩基は小文字で示している。 図6はトマト(Sl)とシロイヌナズナ(At)のコドン使用頻度を示す。
以下、本発明を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。したがって、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
用語「約」とは、当業者により理解されるものであり、またこの用語が使用されている内容に依存して、ある程度変動するものであることが理解される。当業者には不明瞭なこの用語の使用があり、この用語が使用されている内容が与えられた場合に、当該分野でその用語の意義が特に規定されていない場合は、用語「約」とは、所与の数値の±10%まであるいは有効数字を四捨五入した数値を意味するものとする。
(1.定義および基本技術の説明)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
本発明において「核酸配列認識モジュール」とは、DNA鎖上の特定のヌクレオチド配列(即ち、標的ヌクレオチド配列)を特異的に認識して結合する能力を有する分子又は分子複合体を意味する。核酸配列認識モジュールが標的ヌクレオチド配列に結合することにより、該モジュールに連結された核酸塩基変換酵素が二本鎖DNAの標的化された部位に特異的に作用することを可能にする。
本発明において「核酸塩基変換酵素」とは、DNA塩基のプリン又はピリミジン環上の置換基を他の基又は原子に変換する反応を触媒することにより、DNA鎖を切断することなく、標的のヌクレオチドを他のヌクレオチドに変換し得る酵素を意味する。
本発明において「導入」とは、細胞内に所望の分子を存在させることをいう。細胞内にタンパク質分子を導入する場合、タンパク質分子を細胞内に移行させることに加えて、タンパク質分子をコードする核酸を細胞内に移行させ、細胞内で当該タンパク質を発現させてもよい。
本発明において、二本鎖DNAの「改変」とは、DNA鎖上のあるヌクレオチド(例えば、dC)が、他のヌクレオチド(例えば、dT、dA又はdG)に変換されるか、欠失すること、あるいはDNA鎖上のあるヌクレオチド間にヌクレオチドもしくはヌクレオチド配列が挿入されることを意味する。ここで、改変される二本鎖DNAは特に制限されないが、好ましくはゲノムDNAである。また、二本鎖DNAの「標的化された部位」とは、核酸配列認識モジュールが特異的に認識して結合する「標的ヌクレオチド配列」の全部もしくは一部、又はそれと該標的ヌクレオチド配列の近傍(5’上流及び3’下流のいずれか一方又は両方)を意味し、その範囲は目的に応じて、1塩基〜数百塩基長の間で適宜調節することができる。
以下に本開示の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本開示のよりよい理解のために提供されるものであり、本開示の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参照して、本開示の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本開示の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができることが理解される。
また、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する趣旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
(2.植物)
本発明においては、ゲノムに変異を導入するための方法または組成物の対象として、双子葉植物を用いることができる。本明細書の実施例において、双子葉植物において高効率でゲノムに変異を導入することができたことが実証されている。
双子葉植物は、胚の子葉が2枚(またはそれ以上)ある被子植物である。これに対し、子葉が1枚の被子植物は、単子葉植物と称される。双子葉植物と単子葉植物との間の分別は子葉の数に基づいて提唱されたが、この2群は遺伝的にも異なる系統であると考えられている。形質として、子葉数以外に葉脈の分れ方(脈理)、茎の維管束の配列、花を構成する器官の基本数などにも差異が存在する。双子葉植物では葉脈は羽状(または掌状)に分岐し、さらに支脈が網目状に連絡するいわゆる網状脈を有するのに対し,単子葉植物では葉の基部で分枝したままほぼ平行に走る平行脈となり、支脈間の連絡も単純である。維管束の配列は、一般に双子葉植物では真性中心柱といって、茎の中央部に木部が,周辺部に師管部があって放射状に配列し、形成層によって木部が肥大生長するのに対し、単子葉植物では散在中心柱で、茎の内部に維管束が不規則に散在し、このため肥大生長を行わない。双子葉植物はさらにツツジ科、シソ科、キク科、ナス科などのように花弁が筒状に癒合する合弁花類(後生花被類)とバラ科、マメ科、セリ科などのように癒合しない離弁花類(古生花被類)に大別されることもある。
双子葉植物としては、アムボレラ目、スイレン目、アウストロバイレヤ目、センリョウ目、カネラ目、コショウ目、クスノキ目、モクレン目、ショウブ目、オモダカ目、ヤマノイモ目、タコノキ目、ユリ目、キジカクシ目、ダシポゴン科、ヤシ目、イネ目、ツユクサ目、ショウガ目、マツモ目、キンポウゲ目、アワブキ科、ヤマモガシ目、ツゲ目、ヤマグルマ目、グンネラ目、ハマビシ目、ニシキギ目、キントラノオ目、カタバミ目、マメ目、バラ目、ウリ目、ブナ目、フウロソウ目、フトモモ目、クロッソソマ目、ムクロジ目、フエルテア目、アブラナ目、アオイ目、ブドウ目、ユキノシタ目、ビワモドキ科、ベルベリドプシス目、ビャクダン目、ナデシコ目、ミズキ目、ツツジ目、ガリア目、リンドウ目、シソ目、ナス目、モチノキ目、セリ目、キク目およびマツムシソウ目に属する植物が挙げられるが、これらに限定されない。
ナス目植物としては、モンティニア科、ナガボノウルシ科、セイロンハコベ科、ヒルガオ科、およびナス科植物が挙げられる。
ナス科植物の例としては、ナス属に属する植物(例えば、Solanum aethiopicum、Solanum americanum、Solanum carolinense、Solanum betaceum、トマト(Solanum lycopersicum(Lycopersicon esculentum))、Solanum lyratum、ツノナス(Solanum mammosum)、ナス(Solanum melongena)、Solanum muricatum、Solanum nigrum、Solanum pseudocapsicum、ジャガイモ(Solanum tuberosum)など)、トウガラシ属に属する植物(例えば、トウガラシ(ピーマン、パプリカ)(Capsicum annuum)、Capsicum baccatum、Capsicum cardenasii、Capsicum chinense、Capsicum frutescens、Capsicum pubescensなど)、タバコ属に属する植物(例えば、シュッコンタバコ(Nicotiana alata)、タバコ(Nicotiana spp.)など)、チョウセンアサガオ属に属する植物(例えば、チョウセンアサガオ(Datura metel)、アメリカチョウセンアサガオ(Datura inoxia)、シロバナヨウシュチョウセンアサガオ(Datura stramonium)など)、キダチチョウセンアサガオ属に属する植物、ホオズキ属に属する植物、イガホオズキ属に属する植物、ハダカホオズキ属に属する植物、ペチュニア属に属する植物、ハシリドコロ属に属する植物、ヒヨス属に属する植物、ベラドンナ属に属する植物、マンドラゴラ属に属する植物、クコ属に属する植物、およびカリブラコア属に属する植物が挙げられるが、これらに限定されない。
例えば、ゲノム改変のための方法または組成物の対象となる植物としては、トマト、ナス、ジャガイモ、トウガラシ、ピーマン、タバコなどが挙げられるが、これらに限定されない。双子葉植物離弁花類の植物としては、以下:アオイ目:アオイ科(例えば、おかのり、オクラ、ぜにあおい、とろろあおい、ローゼルなど)、シナノキ科(モロヘイヤなど);スイレン目:スイレン科(はすなど)、ハゴロモモ科(じゅんさい、スイレンなど);スミレ目:ウリ科(ウインターメロン、カンタロープ、きゅうり、くろだねかぼちゃ、ざっしゅかぼちゃ、しろうり、すいか、ズッキーニ、せいようかぼちゃ、つのメロン、とうがん、とかどへちま、にがうり、にほんかぼちゃ、ネットメロン、はやとうり、ひょうたん、へちま、へびうり、ペポかぼちゃ、まくわうり、メロン、ゆうがおなど);セリ目:ウコギ科(うど、たらのきなど)、セリ科(あしたば、イタリアンパセリ、コリアンダー、スープセロリ、スープミント、せり、セロリ、チャービル、ディル、にんじん、パースニップ、パセリ、はまぼうふう、フェンネル、みつばなど);タデ目:タデ科(やなぎたで、あいたで、ルバーブなど);ナデシコ目:アカザ科(おかひじき、テーブルビート、ふだんそう、ほうきぎ、ほうれんそう、まつな、やまほうれんそうなど)、スベリヒユ科(たちすべりひゆなど)、ツルナ科(つるななど)、ツルムラサキ科(つるむらさきなど)、ヒユ科(アマランサス、ひゆなど);バラ目:バラ科(いちご、サラダバーネット、ワイルドストロベリーなど);フウチョウソウ目:アブラナ科(あぶらな、おおさかしろな、かいらん、かぶ、からしな、カリフラワー、キャベツ、クレソン、ケール、コールラビ、コウサイタイ、こしょうそう、こまつな、すぐきな、ターサイ、だいこん、たいさい、だいしんさい、たかな、たにくたかな、チンゲンサイ、のざわな、はくさい、はくらん、はつかだいこん、はまな、プチヴェール、ブロッコリー、みずな、みぶな、めキャベツ、ルタバガ、ルッコラ、わさび、わさびだいこんなど);フウロソウ目:ノウゼンハレン科(きんれんかなど);フトモモ目:ヒシ科(ひしなど);マメ目:マメ科(あずき、アメリカほどいも、いんげんまめ、えんどう、ささげ、しかくまめ、じゅうろくささげ、そらまめ、だいず、たちなたまめ、ちょうまめ、なたまめ、なんてんはぎ、はっしょうまめ、ひよこまめ、ひらまめ、ふじまめ、べにばないんげん、ライマビーン、らっかせい、りょくとうなど);ムクロジ目:ミカン科(さんしょう、ヘンルーダなど)が挙げられるが、これらに限定されない。双子葉植物合弁花類の植物としては、以下:キク目:キク科(アーティチョーク、エンダイブ、オランダせんにち、かきぢしゃ、カモミール、カルドン、カレープラント、きく、きくいも、ごぼう、サルシファイ、サンチュ、しゅんぎく、しょくようたんぽぽ、すいぜんじな、ステビア、たちぢしゃ、チコリ、ちしゃ、つわぶき、トレビス、ふき、やまごぼう、リーフレタス、レタスなど);ゴマノハグサ目:ゴマ科(ごまなど);シソ目:シソ科(アップルミント、ウィンターサボリー、えごま、オレガノ、しそ、スペアミント、セージ、タイム、ちょろぎ、ぬまはっか、パイナップルミント、はっか、バジル、ペパーミント、マジョラム、ラベンダー、レモンタイム、レモンバーム、ローズマリーなど)、ムラサキ科(コンフリーなど);ナス目:ナス科(カラントトマト、ししとうがらし、じゃがいも、しょくようほおずき、しろなす、とうがらし、トマト、なす、ピーマン、ひらなす、ペピーノなど)、ヒルガオ科(さつまいも、ようさいなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明のゲノム改変方法または組成物は、トマト植物を対象としてもよい。本発明のゲノム改変方法または組成物の対象となるトマト植物としては、ソラナム・リコペルシカム(Solanum lycopersicum)、リコペルシコン・セラシフォルメ(Lycopersicon cerasiforme)、リコペルシコン・ピムピネリフォリウム(Lycopersicon pimpinellifolium)、リコペルシコン・チーズマニイ(Lycopersicon cheesmanii)、リコペルシコン・パルビフロルム(Lycopersicon parviflorum)、リコペルシコン・クミエレウスキィ(Lycopersicon chmielewskii)、リコペルシコン・ヒルストゥム(Lycopersicon hirsutum)、リコペルシコン・ペンネリィ(Lycopersicon pennellii)、リコペルシコン・ペルビアヌム(Lycopersicon peruvianum)、リコペルシコン・チレンセ(Lycopersicon chilense)、ソラヌム・リコペルシコイデス(Solanum lycopersicoides)及びソラナムハブロカイテス(Solanum habrochaites)等に属するトマト系統・品種又はそれらの派生株が挙げられるが、これらに限定されない。トマトの一例である野生型トマト品種マイクロトム(Solanum lycopersicum cv. Micro-Tom)(Scott JW, Harbaugh BK (1989) Micro-Tom A miniature dwarf tomato. Florida Agr. Expt. Sta. Circ. 370, p.1-6)は、市販されており、またTomato Genetics Resource Center(TGRC)(米国)からアクセッション番号LA3911の下で入手することもできる。野生型トマト品種マイクロトムは、矮性(約10〜20cm)であり、葉や果実が小さく、従来トマト品種との交雑も可能である。野生型トマト品種マイクロトムについては全ゲノム配列が決定されている(Kobayashi M, et al., (2014)Plant Cell Physiol. 2014 Feb;55(2):445-454)。なお本発明において派生株とは、元の植物と他の植物系統・品種との1回以上の交配を経て又は変異誘発若しくは変異導入を経て得られた子孫植物を指す。
(3.核酸配列認識モジュール)
本発明における核酸配列認識モジュールとしては、例えば、CRISPR-Casシステム(好ましくは、Casの少なくとも1つのDNA切断能が失活したCRISPR-Casシステム(CRISPR-変異Cas))、ジンクフィンガーモチーフ、TALエフェクター及びPPRモチーフ等の他、制限酵素、転写因子、RNAポリメラーゼ等のDNAと特異的に結合し得るタンパク質のDNA結合ドメインを含み、DNA二重鎖切断能を有しないフラグメント等が用いられ得るが、これらに限定されない。好ましくは、CRISPR-変異Cas、ジンクフィンガーモチーフ、TALエフェクター、PPRモチーフ等が挙げられる。DNA二重鎖切断能を有しない核酸配列認識モジュールは、核酸塩基変換酵素などと組み合わせることによって、欠失挿入以外の変異、例えば、塩基置換を導入するのに好適である。
ジンクフィンガーモチーフは、Cys2His2型の異なるジンクフィンガーユニット(1フィンガーが約3塩基を認識する)を3〜6個連結させたものであり、9〜18塩基の標的ヌクレオチド配列を認識することができる。ジンクフィンガーモチーフは、Modular assembly法(Nat Biotechnol (2002) 20: 135-141)、OPEN法(Mol Cell (2008) 31: 294-301)、CoDA法(Nat Methods (2011) 8: 67-69)、大腸菌one-hybrid法(Nat Biotechnol (2008) 26:695-701)等の公知の手法により作製することができる。ジンクフィンガーモチーフの作製の詳細については、特許第4968498号公報などを参照することができる。
TALエフェクターは、約34アミノ酸を単位としたモジュールの繰り返し構造を有しており、1つのモジュールの12および13番目のアミノ酸残基(RVDと呼ばれる)によって、結合安定性と塩基特異性が決定される。各モジュールは独立性が高いので、モジュールを繋ぎ合わせるだけで、標的ヌクレオチド配列に特異的なTALエフェクターを作製することが可能である。TALエフェクターは、オープンリソースを利用した作製方法(REAL法(Curr Protoc Mol Biol (2012) Chapter 12: Unit 12.15)、FLASH法(Nat Biotechnol (2012) 30:460-465)、Golden Gate法(Nucleic Acids Res (2011) 39: e82)等)が確立されており、比較的簡便に標的ヌクレオチド配列に対するTALエフェクターを設計することができる。TALエフェクターの作製の詳細については、特表2013-513389号公報などを参照することができる。
PPRモチーフは、35アミノ酸からなり1つの核酸塩基を認識するPPRモチーフの連続によって、特定のヌクレオチド配列を認識するように構成されており、各モチーフの1、4及びii(-2)番目のアミノ酸のみで標的塩基を認識する。モチーフ構成に依存性はなく、両脇のモチーフからの干渉はないので、TALエフェクター同様、PPRモチーフを繋ぎ合わせるだけで、標的ヌクレオチド配列に特異的なPPRタンパク質を作製することが可能である。PPRモチーフの作製の詳細については、特開2013-128413号公報などを参照することができる。
また、制限酵素、転写因子、RNAポリメラーゼ等のフラグメントを用いる場合、これらのタンパク質のDNA結合ドメインは周知であるので、該ドメインを含み、且つDNA二重鎖切断能を有しない断片を容易に設計し、構築することができる。
本発明においてCRISPR/Cas9システムとは、ゲノムDNAのいずれかの鎖のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の直前に位置する標的配列に対応した標的認識配列を含むガイドRNA(gRNA)とCas9ヌクレアーゼ又はその変異体とを含む複合体を、細胞内のゲノムDNA中の標的部位に結合させることにより、その標的部位への変異(挿入、欠失、又は塩基置換など)の導入を促進するゲノム編集技術をいう。
本発明において、核酸配列認識モジュールとして、Casの少なくとも1つのDNA切断能が失活したCRISPR−Casシステムを用いることができる。Casの少なくとも1つのDNA切断能の失活は、例えば、Cas9ヌクレアーゼの変異体(変異型Cas9タンパク質)を用いることによって実現される。一つの例として、本発明で用いる変異型Cas9タンパク質は、2つのヌクレアーゼドメインRuvC及びHNHの少なくとも一方のヌクレアーゼ活性を欠損した変異型Cas9タンパク質である。Cas9ヌクレアーゼはヌクレアーゼドメインであるRuvCドメイン及びHNHドメインを有する。本発明で用い得る変異型Cas9タンパク質は、RuvCドメイン及びHNHドメインの一方又は両方にヌクレアーゼ活性を不活化する変異を有し得る。RuvCドメイン及びHNHドメインのうち一方のヌクレアーゼ活性を不活化する変異を有する変異型Cas9タンパク質は、DNAの二本鎖を切断することなく一本鎖にニックを入れる(一本鎖のみを切断する)ニッカーゼ活性を有しており、Cas9ニッカーゼ(又はnCas9)と呼ばれている。RuvCドメインのヌクレアーゼ活性を不活化する変異の例としては、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes;S. pyogenes)のII型Cas9をはじめとするCas9におけるD10A変異(Cas9の10位のアスパラギン酸のアラニンへの置換)が挙げられる。HNHドメインのヌクレアーゼ活性を不活化する変異の例としては、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes;S. pyogenes)のII型Cas9をはじめとするCas9におけるH840A変異(Cas9の840位のヒスチジンのアラニンへの置換)が挙げられる。一方、RuvCドメイン及びHNHドメインの両方のヌクレアーゼ活性を不活化する変異を有する変異型Cas9タンパク質(dCas9)は、ヌクレアーゼ活性を有さず、DNAを切断しない。本発明で用いる変異型Cas9タンパク質は通常、DNA切断活性の有無にかかわらず、gRNA結合能を保持している。本発明で用いる変異型Cas9タンパク質は、任意の生物種由来のCas9の変異体であってよく、典型的には細菌由来のCas9の変異体であってよい。由来となる細菌の好ましい例としては、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes;A群溶血性レンサ球菌とも呼ばれる)やストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)が挙げられる。
本発明で用い得る変異型Cas9タンパク質は、例えば、Cas9タンパク質のRuvCドメイン及びHNHドメインの一方又は両方にヌクレアーゼ活性を不活化する変異(アミノ酸の置換、付加、欠失、又は挿入など)を1つ又は2つ以上有し、かつgRNAとの結合能を保持するものであってよい。好ましい一実施形態では、本発明で用いる変異型Cas9タンパク質は、i)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、ii)配列番号6で示されるアミノ酸配列に1又は複数個(典型的には1〜50個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜10個、例えば1〜5個)の変異(アミノ酸の置換、付加、欠失、又は挿入など)を有するアミノ酸配列からなり、RuvCドメイン及びHNHドメインの少なくとも一方のヌクレアーゼ活性が不活化されているタンパク質、又はiii)配列番号6で示されるアミノ酸配列に対して70%以上(例えば、80%以上、90%以上、95%以上、又は99%以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、RuvCドメイン及びHNHドメインの少なくとも一方のヌクレアーゼ活性が不活化されているタンパク質であり得る。RuvCドメインのヌクレアーゼ活性が不活化されているタンパク質は、例えば、配列番号6で示されるアミノ酸配列の10位のアミノ酸に相当するアミノ酸としてアラニンを有する。本発明で用いる変異型Cas9タンパク質は、ニッカーゼ活性及びgRNA結合能の両方、又はgRNA結合能単独を有することが好ましい。なお配列番号6で示されるアミノ酸配列の1373番目〜1379番目は核局在化シグナル(NLS)である。本発明で用いる変異型Cas9タンパク質は核局在化能を有する核局在化シグナルをN末端又はC末端に有していることが好ましい。核局在化シグナルは核局在化能を保持する限り、配列番号6の1373番目〜1379番目のアミノ酸配列に変異を有してもよい。本発明に関して規定する配列同一性は、比較する双方のアミノ酸配列の全長に対する同一性%を意味する。gRNA結合能は、野生型Cas9と結合して複合体を形成することが知られているgRNAと変異型Cas9タンパク質とをgRNAの標的部位を含むゲノムDNAと接触させ、その標的部位に結合したgRNAと変異型Cas9タンパク質が複合体を形成したかどうかを確認することにより、調べることができる。
上記いずれかの核酸配列認識モジュールは、核酸塩基変換酵素との融合タンパク質として提供することもできるし、あるいは、SH3ドメイン、PDZドメイン、GKドメイン、GBドメイン等のタンパク質結合ドメインとそれらの結合パートナーとを、核酸配列認識モジュールと、核酸塩基変換酵素とにそれぞれ融合させ、該ドメインとその結合パートナーとの相互作用を介してタンパク質複合体として提供してもよい。あるいは、核酸配列認識モジュールと、核酸塩基変換酵素とにそれぞれインテイン(intein)を融合させ、各タンパク質合成後のライゲーションにより、両者を連結することもできる。
本発明においてガイドRNA(gRNA)は、CRISPR/Cas9システムにおいて、ゲノムDNA上の標的部位に結合し、Cas9ヌクレアーゼ又はその変異体を標的部位に動員(誘導)するために用いるRNAである。gRNAは、ゲノムDNA中の標的部位と結合する標的認識配列を5'末端側に含むRNA配列(crRNA)と足場機能を有するRNA配列(tracrRNA;trans-activating crRNA)とを有し、crRNAの3'側配列とtracrRNAの5'側配列は互いに相補的な配列を有しており塩基対を形成する。gRNAは、crRNAとtracrRNAが連結された単鎖gRNA(single guide RNA; sgRNA)であってもよいし、別個の一本鎖RNAであるcrRNAとtracrRNAの複合体であってもよい。gRNAが特異的に結合する標的部位は、ゲノムDNAのいずれかの鎖のPAM配列の直前に位置し、そのおよそ20塩基長(通常は17〜24塩基長)の配列を標的配列として設計することができる。gRNAは、そのような標的配列に対応した標的認識配列(RNA配列)を含む。gRNAはゲノムDNA中の標的配列の相補鎖配列とRNA-DNA塩基対形成により結合する。
プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列は、用いるCas9ヌクレアーゼ又はその変異体の由来する生物種やタイプによって異なり、例えば、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes;S. pyogenes)のCas9では5'-NGG-3'(N= A、T、G又はC)である。他に、例えば、Streptococcus thermophilus Cas9は5'-NGGNG-3'又は5'-NNAGAA-3'をPAM配列として認識する。gRNAの設計方法及び作製方法は周知である。例えば市販のgRNAベクターに標的配列を組み込み、発現させることによってgRNAを作製することができる。標的配列は、例えば、市販の又はweb上で公開されているgRNA設計用ソフトウェアを用いて簡便に設計することもできる。gRNA設計用ソフトウェアは、例えばwebサイト:CHOPCHOP(https://chopchop.rc.fas.harvard.edu/index.php)やCRISPRdirect(http://crispr.dbcls.jp/)から利用することができる。
(4.核酸塩基変換酵素)
本発明に用いられる核酸塩基変換酵素は、DNA塩基のプリン又はピリミジン環上の置換基を他の基又は原子に変換する反応をを触媒し得るものであれば特に制限はなく、例えば、アミノ基をカルボニル基に変換する脱アミノ化反応を触媒する、核酸/ヌクレオチドデアミナーゼスーパーファミリーに属するデアミナーゼが挙げられる。好ましくは、シトシン又は5-メチルシトシンをそれぞれウラシル又はチミンに変換し得るシチジンデアミナーゼ、アデニンをヒポキサンチンに変換し得るアデノシンデアミナーゼ、グアニンをキサンチンに変換し得るグアノシンデアミナーゼ等が挙げられる。シチジンデアミナーゼとして、より好ましくは、脊椎動物の獲得免疫においてイムノグロブリン遺伝子に変異を導入する酵素である活性化誘導シチジンデアミナーゼ(以下、AIDともいう)などが挙げられる。
核酸塩基変換酵素の由来は特に制限されないが、例えば、ヤツメウナギ由来のPmCDA1(Petromyzon marinus cytosine deaminase 1)、哺乳動物(例、ヒト、ブタ、ウシ、ウマ、サル等)由来のAID(Activation-induced cytidine deaminase; AICDA)を用いることができる。核酸塩基変換酵素は、由来によって至適温度が異なると考えられ、適切な反応温度下で使用することによって塩基変換効率を最適化することができる。ヤツメウナギ由来のPmCDA1は約23〜27℃において、例えば、約25℃において用いることができる。
本発明では、核酸配列認識モジュールと共にシチジンデアミナーゼを用いることができる。1つの例として、本発明では、変異型Cas9タンパク質とシチジンデアミナーゼを含む融合タンパク質を細胞に導入することができる。シチジンデアミナーゼ(CDA)はデアミナーゼ活性によりシチジンをウリジンに変換し、最終的にDNA中の塩基シトシン(C)のチミン(T)への変換をもたらすことができる。好ましい実施形態では、シチジンデアミナーゼは活性化誘導型シチジンデアミナーゼ(AID)である。本発明で用いるシチジンデアミナーゼは任意の生物種由来のものであってよく、例えば、魚類、哺乳動物、鳥類等の動物に由来するものであってよい。本発明の一実施形態では、シチジンデアミナーゼは、ヤツメウナギ等の魚類、ヒト等の霊長類、ブタ、ウシ、ラクダ等の偶蹄類、ラット等のげっ歯類等に由来するものであってよい。
本発明で用いるシチジンデアミナーゼは、野生型シチジンデアミナーゼであってもよいし、野生型シチジンデアミナーゼのアミノ酸配列に1つ又は2つ以上の変異(アミノ酸の置換、付加、欠失、又は挿入など)を有し、かつシチジンデアミナーゼ活性を保持するタンパク質であってもよい。好ましい一実施形態では、本発明で用いるシチジンデアミナーゼは、i)配列番号9で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、ii)配列番号9で示されるアミノ酸配列に1又は複数個(典型的には1〜50個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜10個、例えば1〜5個)の変異(アミノ酸の置換、付加、欠失、又は挿入など)を有するアミノ酸配列からなり、かつシチジンデアミナーゼ活性を有するタンパク質、又はiii)配列番号9で示されるアミノ酸配列に対して70%以上(例えば、80%以上、90%以上、95%以上、又は99%以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつシチジンデアミナーゼ活性を有するタンパク質であり得る。
本発明で用いる核酸塩基変換酵素には、N末端側及び/又はC末端側に核局在化シグナルが付与されていてもよい。核局在化シグナルは核酸塩基変換酵素に直接連結されていてもよいし、リンカーペプチド等の他のポリペプチドを介して核酸塩基変換酵素に連結されていてもよい。例えば、配列番号30で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質では、シチジンデアミナーゼのC末端に核局在化シグナルが付加されている。本発明では、配列番号30で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質又はそのアミノ酸配列に1又は複数個(典型的には1〜50個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜10個、例えば1〜5個)の変異(アミノ酸の置換、付加、欠失、又は挿入など)を有するアミノ酸配列からなり、かつシチジンデアミナーゼ活性及び核局在化能を有するタンパク質、又はiii)配列番号9で示されるアミノ酸配列に対して70%以上(例えば、80%以上、90%以上、95%以上、又は99%以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつシチジンデアミナーゼ活性及び核局在化能を有するタンパク質を好適に使用することができる。
核酸配列認識モジュールと核酸塩基変換酵素とは、任意の方法により連結して融合タンパク質とすることができる。好ましい実施形態では、核酸配列認識モジュール(例えば、変異型Cas9タンパク質)をN末端側に、核酸塩基変換酵素(例えば、シチジンデアミナーゼ)をC末端側に配置した融合タンパク質を用いることができる。核酸配列認識モジュール(例えば、変異型Cas9タンパク質)と核酸塩基変換酵素(例えば、シチジンデアミナーゼ)とは、リンカーペプチドを介して連結することができる。融合タンパク質の核酸配列認識モジュールと核酸塩基変換酵素(例えば、シチジンデアミナーゼ)との間には核局在化シグナル及び/又はSH3ドメインが含まれていてもよい。融合タンパク質の核酸配列認識モジュールと核酸塩基変換酵素の間にはまた、グリシン−セリンリンカー、及び/又はタグ(3xFlagタグなど)などが含まれていてもよい。核酸配列認識モジュールと核酸塩基変換酵素に、リンカーペプチドやマーカータンパク質等の他のタンパク質がさらに連結された融合タンパク質を用いることもできる。
gRNAが特異的に結合する標的部位は、非翻訳領域内にあっても翻訳領域内にあってもよいが、翻訳領域内であることがより好ましい。標的部位は、任意の標的遺伝子内にあってよく、イントロン又はエキソン内にあってよいが、エキソン内にあることが好ましい。
本発明の方法では、1種のgRNAを使用してもよいし、2種以上のgRNAを使用してもよい。2種以上のgRNAは、2つ以上の標的部位にそれぞれ特異的に結合するgRNAである。
(5.核酸構築物)
本発明の方法では、ゲノム植物細胞への融合タンパク質の導入を、当該融合タンパク質をコードする核酸構築物を植物細胞に導入することによって行うことができる。また、かかる方法に使用するための、融合タンパク質をコードする核酸構築物を含む組成物も本発明において提供される。
「発現ユニット」とは、目的の遺伝子産物(ここではgRNA、又は融合タンパク質をコードするmRNAなど)の発現を誘導可能な核酸断片をいう。典型的には、発現ユニットは、プロモーター、プロモーターの制御下に配置されたコード配列、及びターミネーターをこの順番で含む。プロモーターは構成性プロモーター、一過性プロモーター、組織又は時期特異的プロモーター等であってよい。プロモーターの例としては、特に限定されないが、シロイヌナズナ由来U6プロモーター、PcUbiプロモーター、CaMV 35Sプロモーター等が挙げられる。ターミネーターは、植物細胞で機能する限り特に限定されないが、例えば、pea3Aターミネーター、Oshsp17.3ターミネーター等が挙げられる。
「核酸構築物」は、例えば、自律複製能を有する、プラスミド等のDNAベクターであってもよいし、アグロバクテリウム法で植物ゲノムに組み込むことができるT-DNA等の自律複製能を有しない核酸であってもよい。T-DNAは5'末端のRB配列と3'末端のLB配列に挟まれたDNA断片である。「核酸構築物」は、発現ユニットを1つ又は2つ以上含むことができる。核酸構築物は典型的にはDNA構築物である。
発現ユニットや核酸構築物は、さらなる遺伝子(薬剤耐性遺伝子等の選択マーカー遺伝子やレポーター遺伝子など)やそれを含む発現ユニット、2Aペプチドリンカーコード配列、制限酵素切断部位やマルチクローニングサイト、核局在化シグナル(NLS)、ポリA付加シグナル等の追加のDNA配列を含んでもよい。選択マーカー遺伝子の例として、カナマイシン耐性マーカー遺伝子(NPTII)、ゲンタマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、及びアンピシリン耐性遺伝子等が挙げられる。核酸構築物において、核局在化シグナルは、各タンパク質の前後に組み入れることができ、NLS−核酸配列認識モジュール−NLS−核酸塩基変換酵素−NLSといった配置を取ることができるが、先頭のNLSを含まない、核酸配列認識モジュール−NLS−核酸塩基変換酵素−NLSの配置がより好ましい。理論に拘束されることは望まないが、発現ユニットのサイズが減少することで、タンパク質発現が向上し得る。
本発明では、前記融合タンパク質をコードする塩基配列、又は前記融合タンパク質を構成する1つ以上のタンパク質又はポリペプチド領域をコードする塩基配列が、双子葉植物のコドン使用に最適化、好ましくはトマト又はシロイヌナズナのコドン使用に最適化され得る。「コドン使用に最適化されている」とは、ある植物において使用頻度が低いコドンを、当該植物で使用頻度が高いコドンに置換するように改変した塩基配列をいう。トマトとシロイヌナズナのコドン使用頻度を図6に示す。双子葉植物におけるコドン使用頻度は多くの植物において公知であり、例えばトマトについてはThe Sol Genomics Network (SGN)データベース(https://solgenomics.net/misc/codon_usage/codon_usage.pl)で報告されている。
前記融合タンパク質をコードする塩基配列、又は前記融合タンパク質を構成する1つ以上のタンパク質又はポリペプチド領域をコードする塩基配列は、双子葉植物のコドン使用、ナス科植物のコドン使用、ナス属植物のコドン使用、またはアブラナ科植物のコドン使用などに最適化して用いることができる。前記融合タンパク質をコードする塩基配列、又は前記融合タンパク質を構成する1つ以上のタンパク質又はポリペプチド領域をコードする塩基配列は、例えば、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、セイヨウアブラナ(Brassica napus)、大豆(Glycine max)、トマト(Lycopersicon esculentum)、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)、タバコ(Nicotiana tabacum)等のコドン使用に最適化することができる。この他、前記融合タンパク質をコードする塩基配列、又は前記融合タンパク質を構成する1つ以上のタンパク質又はポリペプチド領域をコードする塩基配列は、本明細書に記載される任意の植物のコドン使用に対して最適化して用いることができる。
好ましい実施形態では、本発明で用いる核酸配列認識モジュールをコードする塩基配列及び/又は核酸塩基変換酵素をコードする塩基配列は、双子葉植物、好ましくはトマト又はシロイヌナズナのコドン使用に最適化されている。シロイヌナズナのコドン使用に最適化された、変異型Cas9タンパク質をコードする塩基配列の例を配列番号5に示す。シロイヌナズナのコドン使用に最適化された、シチジンデアミナーゼをコードする塩基配列の例を配列番号8に示す。シロイヌナズナのコドン使用に最適化された、前記融合タンパク質をコードする塩基配列の例を、配列番号25、27、及び40に示す。またシロイヌナズナのコドン使用に最適化された、シチジンデアミナーゼとC末端側の核局在化シグナルを含むポリペプチドをコードする塩基配列の例を、配列番号29に示す。以上のコドン最適化に加えて、核酸配列認識モジュールをコードする塩基配列と核酸塩基変換酵素をコードする塩基配列との間に含まれ得る任意の塩基配列、例えばリンカーペプチドコード配列やその構成成分が双子葉植物、好ましくはトマト又はシロイヌナズナのコドン使用に最適化されていてもよい。例えば、核酸配列認識モジュールをコードする塩基配列と核酸塩基変換酵素をコードする塩基配列との間に、シロイヌナズナのコドン使用に最適化されたSH3ドメイン(例えば、配列番号25で示される塩基配列の5084番目〜5260番目の配列からなる)が含まれていてもよい。双子葉植物細胞に導入する核酸構築物は、これらの塩基配列を含んでもよい。
本発明において、核酸配列認識モジュールと核酸塩基変換酵素を含む融合タンパク質をコードする塩基配列は、核酸配列認識モジュールをコードする塩基配列を5'末端に、核酸塩基変換酵素をコードする塩基配列を3'末端に含むことが好ましい。核酸配列認識モジュールをコードする塩基配列は、上記の変異型Cas9タンパク質をコードする配列であってよく、例えば配列番号5で示される塩基配列であるか、又は配列番号5で示される塩基配列に対して70%以上(例えば、80%以上、90%以上、95%以上、又は99%以上)の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつRuvCドメイン及びHNHドメインの少なくとも一方のヌクレアーゼ活性が不活化されているタンパク質をコードする塩基配列であり得る。そのタンパク質はニッカーゼ活性及びgRNA結合能の両方、又はgRNA結合能単独を有することが好ましい。そのタンパク質はまた核局在化能を有する核局在化シグナル(例えば配列番号6で示されるアミノ酸配列の1373番目〜1379番目)をN末端又はC末端に有していることが好ましい。配列番号5で示される塩基配列はシロイヌナズナのコドン使用に最適化されている。またシチジンデアミナーゼをコードする塩基配列は、上記のシチジンデアミナーゼをコードする配列であってよく、例えば配列番号7若しくは8で示される塩基配列であるか、又は配列番号7若しくは8で示される塩基配列に対して70%以上(例えば、80%以上、90%以上、95%以上、又は99%以上)の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつシチジンデアミナーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列であり得る。配列番号8で示される塩基配列はシロイヌナズナのコドン使用に最適化されている。
gRNAをコードする塩基配列を含む発現ユニットを含む核酸構築物を導入してgRNAを発現させるか、又はgRNAを直接導入することにより、当該gRNAを双子葉植物細胞に導入することができる。双子葉植物細胞に、gRNAをコードする塩基配列を含む発現ユニットを含む核酸構築物を導入してgRNAを発現させることにより、当該gRNAを双子葉植物細胞に導入することがより好ましい。好ましい一実施形態では、核酸配列認識モジュールと核酸塩基変換酵素を含む融合タンパク質をコードする塩基配列を含む発現ユニットと、gRNAをコードする塩基配列を含む発現ユニットの両方を含む単一の核酸構築物を、トマト植物細胞に導入することができる。
gRNAをコードする塩基配列を含む発現ユニットにおいて、gRNAをコードする塩基配列はシロイヌナズナ由来プロモーターの制御下に配置されることが好ましい。RNAをコードする塩基配列を含む発現ユニットにおいて、gRNAをコードする塩基配列はU6プロモーターの制御下に配置されることも好ましい。そのようなプロモーターの好ましい例は、シロイヌナズナ由来U6プロモーターである。シロイヌナズナ由来U6プロモーターの塩基配列の例を配列番号39に示す。U6プロモーターは配列番号39で示される塩基配列に1又は複数個(好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜10個、例えば1〜5個)の塩基変異(塩基の置換、付加、欠失、及び/又は挿入など)を有する塩基配列からなり、かつプロモーター活性を有する核酸、又は配列番号39で示される塩基配列に対して70%以上(例えば、80%以上、90%以上、95%以上、又は99%以上)の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつプロモーター活性を有する核酸であり得る。
一実施形態では、核酸配列認識モジュールと核酸塩基変換酵素を含む融合タンパク質をコードする塩基配列は、ユビキチンプロモーター、好ましくはPcUbiプロモーターの制御下に配置されることが好ましい。
本発明の核酸構築物は、配列番号21、25、又は27で示される塩基配列を含む、Cas9等を発現可能な発現ユニットを含んでもよい。本発明の核酸構築物は、配列番号22、26、又は28で示されるアミノ酸配列を含む、Cas9及びシチジンデアミナーゼ等を含む融合タンパク質をコードする塩基配列を含んでもよい。
(6.方法)
本発明において、双子葉植物のゲノムを改変する方法であって、ガイドRNAと、核酸配列認識モジュールおよび核酸塩基変換酵素を含む融合タンパク質とを植物細胞に導入することを含む、方法が提供される。導入は、核酸配列認識モジュールおよび核酸塩基変換酵素をコードする核酸構築物を細胞内に導入することによって行うことができる。
上記の核酸構築物、gRNA、又は上記の融合タンパク質をコードするmRNAのような核酸の双子葉植物細胞への導入は、常法により行うことができる。例えば、核酸導入は、アグロバクテリウム媒介形質転換法、ウィスカー法、パーティクルガン法、エレクトロポレーション法、ポリエチレングリコール(PEG)法、マイクロインジェクション法、プロトプラスト融合法等を用いることができる。植物形質転換法の詳細は、田部井豊編、形質転換プロトコール[植物編]、(2012)化学同人」などの一般的な教科書の記載や、Sun, H.J., et al., (2006) A highly efficient transformation protocol for Micro-Tom, a model cultivar of tomato functional genomics. Plant Cell Physiol. 47, 426-431等の文献を参照すればよい。
任意のアグロバクテリウム媒介形質転換法を使用できるが、例えば、アグロバクテリウム媒介形質転換法に適したベクター中のT-DNA中に上記発現ユニットを組み込むことにより作製したベクターを、適当なアグロバクテリウム、例えばアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)にエレクトロポレーション法などにより導入し、得られた組換えアグロバクテリウムを双子葉植物の細胞、カルス、又は子葉切片等に接種して感染させればよい。好適なアグロバクテリウムとしては、限定するものではないが、GV2260、GV3101、C58、C58C1Rif(R)、EHA101、EHA105、AGL1、LBA4404等の株を利用することができる。当該組換えアグロバクテリウムの感染により、上記発現ユニットを含むT-DNAを、双子葉植物細胞のゲノムDNAに組み込ませることができる。
パーティクルガン法やエレクトロポレーション法では、上記発現ユニットを含むベクター等の核酸構築物を直接、双子葉植物細胞内に導入することができる。核酸構築物の導入には、双子葉植物の細胞、カルス、葉や子葉などに由来する組織切片、又はプロトプラストを用いてもよい(Christou P, et al., Bio/technology (1991) 9: 957-962)。例えばパーティクルガン法では、核酸送達装置(例えばPDS-1000(BIO-RAD社)等)を製造業者の説明書に従って使用して、核酸構築物をまぶした金属粒子をこのような試料に打ち込むことにより、植物細胞内に導入させ、形質転換植物細胞を得ることができる。操作条件は、例えば450〜2000psi程度の圧力、4〜12cm程度の距離で行う。
双子葉植物細胞に導入されたgRNAはゲノムDNAの標的部位に結合する。上記の融合タンパク質をコードするmRNAは、双子葉植物細胞内で融合タンパク質に翻訳されてゲノムDNAの標的部位に動員される。gRNA又は上記の融合タンパク質をコードする核酸構築物は、gRNA又は上記の融合タンパク質の発現を誘導し、発現したgRNAはゲノムDNAの標的部位に結合し、発現した上記融合タンパク質はゲノムDNAの標的部位に動員される。
ゲノムDNAの標的部位に結合したgRNAと動員された上記融合タンパク質が複合体を形成すると、上記融合タンパク質はPAM配列の上流の標的部位に変異を誘導する。Cas9ニッカーゼ(nCas9)を使用した場合には、標的部位に挿入欠失とDNA変換(塩基置換)の両方の変異を誘導可能であり、変異、特にDNA変換を高頻度に誘導できる。ヌクレアーゼ活性を完全に不活化したdCas9を使用した場合には、標的部位に主としてDNA変換(塩基置換)を誘導可能である。本発明の方法は、典型的には、標的部位において塩基シトシンの他の塩基(例えば、主としてチミン、又はグアニン)への置換を引き起こすことができる。挿入欠失は、1塩基の挿入又は欠失であってもよいし、連続した2塩基以上の挿入又は欠失であってもよい。標的部位に誘導される変異は、挿入欠失とDNA変換のいずれかであってもよいし、その両方であってもよい。標的部位において、2つ以上の挿入欠失、及び/又は2つ以上のDNA変換が誘導されてもよい。
次いで、上記核酸構築物を導入した双子葉植物細胞や組織切片等を培養し、例えば従来知られている植物組織培養法に従って選択培地で培養し、増殖細胞を再分化培地(適当な濃度の植物ホルモン(オーキシン、サイトカイニン、ジベレリン、アブシジン酸、エチレン、ブラシノライド等)を含む)で培養することにより、核酸構築物が導入され形質転換された植物体を再生することができる。このようにしてゲノム上の標的部位に変異(例えば、シトシンの置換)を有するトランスジェニック植物(T0植物)を作製できる。核酸構築物の導入後の植物細胞又は植物組織を培養する際、植物の生育に好適な温度で培養することができるが、それに加えて、導入したタンパク質の活性を最適化する温度で培養を行うことも可能である。また、導入後の培養時間は、例えば、カルスを用いて導入を行った場合、カルス状態での時間が短いと変異導入が不完全となる可能性が上昇し、一方で長くなりすぎるとゲノムが不安定化して個体を再生しても次世代の種子がとれない、不稔になる個体が生じる場合があり、培養時間の選択によって、後代に遺伝可能な変異導入の効率をさらに最適化することが可能である。例えば、双子葉植物、特にトマトについては、核酸構築物の導入後約2〜4日、好ましくは約3日間カルス状態で培養することができる。
本発明の方法では、双子葉植物ゲノムにおいてDNA変換により標的遺伝子の遺伝子産物の配列を高効率で変更することができる。標的遺伝子がタンパク質コード配列である場合、塩基の置換、例えば塩基シトシンのチミンへの置換により、タンパク質のアミノ酸置換が高頻度で引き起こされる。このようにして双子葉植物のゲノムに挿入欠失やDNA変換などの変異を誘導し、ゲノムを改変することができる。本発明の方法によれば、ゲノム上の標的部位に上記変異が導入された双子葉植物を高効率に作製することができる。
ゲノム上の標的部位に変異が誘導された植物(T0植物)を用いて、交配(自家交配又は他家交配)を行い、種子を採取し、それを育成し、当該変異を有する子孫植物を選抜することにより、当該変異を有する子孫植物を作製することができる。本発明の方法では、植物のゲノム上の標的部位に変異を誘導し、それを子孫植物(T1又はF1世代及びそれ以降;後代とも称する)に遺伝的に継代させることができる。これは、本発明による標的部位への変異導入の効率が、後代に遺伝させるのに十分に高いことによって可能となる。
本発明では、植物生殖細胞ゲノムへの効率的な変異導入に適した核酸構築物及び/又は融合タンパク質を用いることにより、植物の生殖細胞ゲノムにDNA変換その他の変異を導入し、高効率に後代に遺伝させることができる。変異を有する後代の作成は、本明細書に記載される方法により植物細胞中の植物ゲノムを改変し、DNA変換を含む変異を誘導することと、ゲノムが改変された該植物細胞から植物体を作製することと、該植物体から子孫植物を作製し、前記変異を有する子孫植物を選抜することとを含む方法によって行うことができる。
本開示では、本明細書に記載される方法によってゲノム改変され、あるいは生産された植物、その部分およびそれらの組み合わせを提供する。このような植物は、当代植物のほか、その子孫の植物も含む。本開示が提供する植物の部分は、果実、根(例えば、塊根などの根の変形物も含む)、葉、花、種子、穀粒および茎(例えば、根茎、塊茎などの茎の変形物も含む)などあるいはそれら変形物などを含む。本開示はまた、本明細書に記載される方法によってゲノム改変され、あるいは生産された植物、その部分およびそれらの組み合わせを加工した加工品(例えば、バイオエタノールなどの材料、加工食品、ならびに酵素、デンプン、糖などの加工素材などを含む)をも提供する。本明細書において「加工」とはその最広義に解釈され、種々の処理加工のほか、加熱を伴うまたは伴わない調理、塩漬、発酵なども包含することが理解される。
(7.好ましい実施形態)
本発明の好ましい実施形態を例示する。本発明は、ガイドRNAと、核酸配列認識モジュールおよび核酸塩基変換酵素を含む融合タンパク質とを植物細胞に導入することによって、植物のゲノムを改変する方法を提供する。上記植物は、好ましくは双子葉植物、より好ましくは、ナス目植物、好ましくはナス科植物、より好ましくはナス属植物、さらに好ましくはトマト植物である。上記配列認識モジュールは、好ましくは、Casの少なくとも1つのDNA切断能が失活したCRISPR−Casシステム、ジンクフィンガーモチーフ、TALエフェクター及びPPRモチーフからなる群より選択される。Casの少なくとも1つのDNA切断能が失活したCRISPR−Casシステムは、2つのヌクレアーゼドメインを含み、該2つのヌクレアーゼドメインのいずれか1つが不活化されていてもよい。核酸塩基変換酵素は、好ましくはデアミナーゼで、より好ましくはシチジンデアミナーゼである。上記導入は、前記核酸配列認識モジュールおよび前記核酸塩基変換酵素をコードする核酸構築物を前記細胞内に導入することによって行うのが好ましく、より好ましくは、核酸構築物がガイドRNAをさらにコードしており、これらを同時に導入する。核酸構築物またはその中のコード配列は、双子葉植物、例えば、シロイヌナズナのコドン使用に最適化することができる。前記ガイドRNAおよび前記核酸配列認識モジュールの標的としては、特段限定されないが、例えば、SlDELLAまたはSlETR1遺伝子の配列が挙げられる。導入を行った植物細胞または植物細胞を含む組織(例えば、カルス)を、培養することができる。導入処理条件として、例えば、約23〜27℃(例えば、約25℃)で培養することができる。培養条件として、例えば、約23〜27℃(例えば、約25℃)で培養することができ、培養期間として、約2〜4日(例えば、約3日)を採用することができる。上記の特徴のいずれかを備える方法により、植物細胞中の植物ゲノムを改変し、DNA変換を含む変異を誘導し、ゲノムが改変された該植物細胞から植物体を作製し、該植物体から子孫植物を作製し、前記変異を有する子孫植物を選抜することによって、変異を有する後代の植物を作製することが可能である。
本発明において、トマト植物を対象とする場合の好ましい実施形態を以下に例示する。本発明の方法では、トマト植物細胞に、gRNA、並びに2つのヌクレアーゼドメインRuvC及びHNHの少なくとも一方のヌクレアーゼ活性を欠損した変異型Cas9タンパク質とシチジンデアミナーゼを含む融合タンパク質を導入することにより、トマト植物細胞のゲノムDNAとgRNA及びその融合タンパク質との接触を引き起こす。トマト植物細胞への、gRNA及びその融合タンパク質の導入は、任意の方法によって行うことができる。例えば、トマト植物細胞に、変異型Cas9タンパク質とシチジンデアミナーゼを含む融合タンパク質をコードする塩基配列を含む発現ユニットを含む核酸構築物を導入するか、又は変異型Cas9タンパク質とシチジンデアミナーゼを含む融合タンパク質をコードするmRNAを直接導入し、その融合タンパク質を発現させることにより、当該融合タンパク質をトマト植物細胞に導入することができる。トマト植物細胞に、変異型Cas9タンパク質とシチジンデアミナーゼを含む融合タンパク質をコードする塩基配列を含む発現ユニットを含む核酸構築物を導入し、その融合タンパク質を発現させることにより、当該融合タンパク質をトマト植物細胞に導入することがより好ましい。
本発明は、上記方法により、トマト植物のゲノムの標的部位に変異、特にDNA変換を誘導し、そのような変異が誘導されたゲノムを有する植物体(T0植物)を作製し、その植物体を用いた交配により子孫植物を作製し、当該変異を有する子孫植物を選抜することを含む、トマト植物の育種方法も提供する。交配は自家交配であっても他家交配であってもよく、戻し交配であってもよい。この方法では、交配による子孫植物の作製、及び変異を有する子孫植物の選抜をさらに繰り返し行ってもよい。子孫植物の選抜では、変異をホモ接合で有する子孫植物を選抜することが特に好ましい。変異を有する子孫植物の選抜は、ゲノムDNAの標的部位の塩基配列決定によって行うことができる。あるいは、変異を有する子孫植物の選抜は、標的遺伝子への変異導入による表現型の変化に基づいて行ってもよい。本発明の育種方法を用いれば、トマト植物のゲノムの標的部位に導入した変異が子孫植物に遺伝的に安定的に継代されている植物を効率よく作製することができる。したがって、本発明の育種方法は、トマトの新品種の作製にも用いることができる。
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法、ゲノム編集法の一般的手法、バイオインフォマティクス等は、当該分野において公知であり、周知でありまたは慣用される任意のものが使用され得る。本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において 参考として援用される。以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以 下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供し たのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される 。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]T-DNAベクターの作製
CRISPR-Cas9システムに用いるT-DNAベクターを以下のとおり作製した。
シロイヌナズナ(Arabidopsis)のコドン使用に最適化されたCas9コード配列を有するCRISPER/Cas9ベクターpZK_FFCas9及びpUC19_AtU6oligoは、それぞれpCAS9-TPC及びpChimera(Fauser et al., (2014) Plant J., 79, p.348-59)に由来するものであり、遠藤真咲博士から供与を受けた。
Cas9のヌクレアーゼ不活化D10A変異を、PCR及びGibsonアセンブリ法を用いてベクターpZK_FFCas9に導入し、pZK_FFnCas9(D10A)を作製した。pZK_FFnCas9(D10A)の作製には以下のプライマーを用いた。
kn1091_HolCas9D10A_F(5'-CTCTATCGGACTCGcTATCGGAACTAACTCTG-3';配列番号1)
kn1092_HolCas9D10A_R(5'-GAGTTAGTTCCGATAgCGAGTCCGATAGAGTAC-3';配列番号2)
kn1095_HolCas9D10A_F(5'-TGTATGTGCAGCGAATTCGGCGCGCaATGGATAAGAAGTACTCTATCGGACTCGcTATC-3';配列番号3)
kn1083_ApaI-HolCas9_R(5'-CTGGGAGGCCTGGAtCaGGGCCCtCCTCcAACCTTCCTCTTCTTCTTAGG-3';配列番号4)
pZK_FFnCas9(D10A)はD10A変異を有するCas9タンパク質(以下、Cas9(D10A)又はnCas9と称する;配列番号6)をコードする、シロイヌナズナ(Arabidopsis)のコドン使用に最適化されたコード配列(配列番号5)を含む。なおCas9タンパク質は化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes由来である。D10A変異を有するCas9は、ヌクレアーゼ活性を欠損しており、二本鎖切断を生じずに一本鎖のみに「ニック」を入れることができるニッカーゼとして機能する。
次いで、塩基変換酵素であるヤツメウナギ由来の活性化誘導型シチジンデアミナーゼ(PmCDA)(配列番号9)をコードする、ヒトのコドン使用に最適化されたDNA配列(配列番号7)及びシロイヌナズナ(Arabidopsis)のコドン使用に最適化されたDNA配列(PmCDAopt)(配列番号8)を、それぞれ、nCas9のC末端側にシチジンデアミナーゼ(CDA)がリンカーペプチドを介して連結されるように、上記で作製したベクターpZK_FFnCas9(D10A)に挿入して、それぞれベクターpZK_FFnCas9(D10A)-PmCDA及びpZK_FFnCas9(D10A)-PmCDAoptを作製した。
一方、ガイドRNA(gRNA)の標的配列を、gRNA発現ユニットベクターpUC19_AtU6oligo中のAtU6-26プロモーターとキメラgRNA足場の間に、PCR法により挿入した。本実施例では、トマト(Solanum lycopersicum)の果実の発達を制御する2つの内因性トマト遺伝子SlDELLA遺伝子(Solyc11g011260)及びSlETR1遺伝子(Solyc12g011330)を標的遺伝子とし、SlDELLA遺伝子のタンパク質コード配列内、及びSlETR1遺伝子のタンパク質コード配列内の3つの座位(SlETR1site1、SlETR1site2、SlETR1site3)の、いずれかのDNA鎖のTGG配列直前に位置する20塩基長の塩基配列をガイドRNA(gRNA)の標的配列として設計した。それぞれの標的配列のベクターへの挿入に用いたプライマーの配列を後述の表1に示す。
標的配列を挿入したpUC19_AtU6oligoから、gRNA発現ユニットをI-SceI処理で切り出し、ライゲーションによりpZK_FFnCas9(D10A)-PmCDA及びpZK_FFnCas9(D10A)-PmCDAoptに挿入した。gRNA発現ユニットを挿入したpZK_FFnCas9(D10A)-PmCDA及びpZK_FFnCas9(D10A)-PmCDAoptは、gRNAと、nCas9-PmCDA融合タンパク質を発現することができる。生成したnCas9-PmCDA融合タンパク質は、nCas9とPmCDAの複合体を形成し、gRNAによりゲノム中の標的部位へと誘導(標的化)される。
比較のため、PmCDAをコードする配列を含まず、かつnCas9の代わりに野生型Cas9をコードするシロイヌナズナ(Arabidopsis)のコドン使用に最適化されたDNA配列を用いる点以外は同様の構造のベクターを作製した。また、PmCDAを伴わないnCas9を発現させるため、gRNA発現ユニットを挿入したpZK_FFnCas9(D10A)-PmCDA中のPmCDAコード配列のすぐ上流に終止コドンを挿入し、PmCDAの翻訳が阻止されるようにしたベクターも作製した(nCas9-stop-PmCDA)。これらは後述の実施例で、nCas9、及びnCas9へのPmCDAの融合がCRISPRシステムに基づくDNA改変に及ぼす影響を調べるための比較対象として用いた。
また一部のベクターには、2Aペプチドリンカー、すなわち口蹄疫ウイルス2Aペプチドをコードする配列(Ryan et al., (1991) J Gen Virol., 72 (Pt 11):2727-2732)をベクター中の融合遺伝子nCas9-PmCDAoptとNPT IIコード配列の間に挿入した。なおSlETRsite3の標的化には、2Aペプチドリンカーコード配列を挿入したnCas9-PmCDAoptベクター骨格を用いた。
以上のようにして作製した各ベクター中のT-DNAの構造を図2に示す。なおいずれのT-DNAにおいてもgRNA発現ユニットではAtU6プロモーター(シロイヌナズナ(Arabidopsis)U6プロモーター;配列番号39)を、Cas9発現ユニットではユビキチンプロモーター(PcUbiプロモーター)を用いた。NPTII発現ユニットの発現誘導には、CaMV 35Sプロモーターを用いた。
上記のT-DNA中に含まれる、SlDELLA、SlETR1site1、SlETR1site2、又はSlETR1site3を標的とするgRNA発現ユニットの塩基配列をそれぞれ配列番号15〜18に示す。配列番号15〜18で示される塩基配列の1番目〜18番目はI-SecI認識部位、172番目〜559番目はAtU6プロモーター、560番目〜579番目は標的配列、560番目〜655番目はgRNAコード配列である。
上記のT-DNA、すなわちCas9 [PcUbi(P)_Cas9_Pea3A(T)]、nCas9-PmCDA [PcUbi(P)_nCas9-PmCDA_Pea3A(T)]、nCas9-stop-PmCDA [PcUbi(P)_nCas9-stop-PmCDA_Pea3A(T)]、nCas9-PmCDAopt [PcUbi(P)_nCas9-PmCDAopt_Pea3A(T)]、nCas9-PmCDAopt_2A [PcUbi(P)_nCas9-PmCDAopt_2A]中に含まれるCas9/NPTII発現ユニットの塩基配列をそれぞれ配列番号19、21、23、25、及び27に示す。
配列番号19で示される塩基配列の1番目〜917番目はPcUbiプロモーター、932番目〜5047番目はシロイヌナズナコドン最適化Cas9遺伝子、5048番目〜5068番目は核局在化シグナル(NLS)、5069番目〜5071番目は終止コドン、5086番目〜5554番目はPea3Aターミネーター、6865番目〜7699番目はCaMV 35sプロモーター、7712番目〜8509番目はNPTII遺伝子、8516番目〜9613番目はOshsp17.3の3'UTR及びターミネーターである。配列番号19で示される塩基配列中にコードされるCas9-NLSのアミノ酸配列を配列番号20に示す(配列番号20の1番目〜1372番目がCas9、1373番目〜1379番目がNLS)。
配列番号21で示される塩基配列の1番目〜917番目はPcUbiプロモーター、932番目〜5047番目はnCas9遺伝子、5048番目〜5068番目は核局在化シグナル、5078番目〜5098番目は核局在化シグナル(NLS40)、5099番目〜5128番目はグリシン−セリンリンカー、5129番目〜5305番目はSH3ドメイン、5306番目〜5371番目は3xFlagタグ、5078番目〜6001番目はPmCDA遺伝子、6002番目〜6004番目は終止コドン、6014番目〜6482番目はPea3Aターミネーター、7793番目〜8627番目はCaMV 35sプロモーター、8640番目〜9437番目はNPTII遺伝子、9444番目〜10541番目はOshsp17.3の3'UTR及びターミネーターである。配列番号21で示される塩基配列中にコードされるnCas9からPmCDAまでのアミノ酸配列を配列番号22に示す(配列番号22の1番目〜1372番目がnCas9、1483番目〜1695番目がPmCDA)。
配列番号23で示される塩基配列の1番目〜917番目はPcUbiプロモーター、932番目〜5047番目はnCas9遺伝子、5048番目〜5068番目は核局在化シグナル、5078番目〜5238番目はSH3ドメイン、5138番目〜5140番目は終止コドンである。これより下流は終止コドンの挿入により機能を失っているが、5239番目〜5304番目は3xFlagタグ、5311番目〜5943番目はPmCDA遺伝子、5947番目〜6415番目はPea3Aターミネーター、7726番目〜8560番目はCaMV 35sプロモーター、8573番目〜9370番目はNPTII遺伝子、9377番目〜10474番目はOshsp17.3の3'UTR及びターミネーターに相当する。配列番号23で示される塩基配列中にコードされるnCas9を含むアミノ酸配列を配列番号24に示す。
配列番号25で示される塩基配列の1番目〜917番目はPcUbiプロモーター、932番目〜5047番目はnCas9遺伝子、5048番目〜5068番目は核局在化シグナル、5084番目〜5260番目はSH3ドメイン(シロイヌナズナコドン最適化)、5261番目〜5326番目は3xFlagタグ、5333番目〜5959番目はPmCDAOPT遺伝子、5960番目〜5980番目は核局在化シグナル、5992番目〜6460番目はPea3Aターミネーター、7771番目〜8605番目はCaMV 35sプロモーター、8618番目〜9415番目はNPTII遺伝子、9422番目〜10519番目はOshsp17.3の3' UTR及びターミネーターである。配列番号25で示される塩基配列中にコードされるnCas9からPmCDAopt及び核局在化シグナルまでのアミノ酸配列を配列番号26に示す(配列番号26の1番目〜1372番目がnCas9、1468番目〜1685番目がPmCDAopt)。また配列番号25で示される塩基配列の1番目〜6460番目(PcUbiプロモーターからPea3Aターミネーターまで)の塩基配列を配列番号40に示す。
配列番号27で示される塩基配列の1番目〜917番目はPcUbiプロモーター、932番目〜5047番目はnCas9遺伝子、5048番目〜5068番目は核局在化シグナル、5084番目〜5260番目はSH3ドメイン(シロイヌナズナコドン最適化)、5261番目〜5326番目は3xFlagタグ、5333番目〜5959番目はPmCDAOPT遺伝子、5960番目〜5980番目は核局在化シグナル、6001番目〜6060番目は2Aペプチド、6070番目〜6867番目はNPTII遺伝子、6874番目〜7971番目はOshsp17.3の3' UTR及びターミネーターである。配列番号27で示される塩基配列中にコードされるnCas9からNPTIIまでのアミノ酸配列を配列番号28に示す(配列番号28の1番目〜1372番目がnCas9、1468番目〜1676番目がPmCDAopt、1710番目〜1974番目がNPTII)。
また配列番号25及び27に含まれる、PmCDAoptとそれに続く核局在化シグナルコード配列のDNA配列を配列番号29に、それによりコードされる融合ポリペプチド(核局在化シグナルを有するCDA)のアミノ酸配列を配列番号30に示す。
[実施例2]トランスジェニック植物の作製
実施例1で作製したそれぞれのベクター中のT-DNAをアグロバクテリウムGV2260株を用いたアグロバクテリウム媒介形質転換法(Sun et al. (2006) Plant Cell Physiol.・ 47, 426-431)によりトマト(Solanum lycopersicum)植物に導入し、カナマイシン耐性に基づきT-DNAがゲノム内に挿入されたトランスジェニックトマト植物(初代トランスジェニック植物)を選抜し、植物体に再生させた。トマト植物としては品種マイクロトム(Micro-Tom)を使用した。
簡単に説明すると、まず、マイクロトムの種子をMS固形培地上に無菌播種し、25℃、16時間照明の培養室で発芽させた。発芽した子葉をはさみで切断し、実験例1で作製したベクターを保持するアグロバクテリウム菌液に浸漬後、10μMアセトシリンゴン、ゼアチン1.5mg/Lを含むMS固形培地上で3日間培養した。続いて、ゼアチン1.5mg/L、カナマイシン100mg/Lを含むMS固形培地上でカルスを、さらに、ゼアチン1mg/L、カナマイシン100mg/Lを含むMS固形培地上でシュートを誘導した。最後に、カルスから再分化したシュートを切り出し、カナマイシン50mg/Lを含むMS固形培地上で発根させることで植物体を再生させた。
また再生させた植物体(初代植物T0)を栽培し自家交配して自殖種子を得た。この自殖種子(T1)から植物体を生育させ、さらに自家交配して自殖種子(T2)を得、植物体を生育させた。また初代植物T0と野生型マイクロトム植物とを交配し、F1植物を得た。初代植物T0及び子孫植物(T1、T2及びF1)は全て、25℃の一定温度下、200μmolm-2s-1の光条件(明条件16時間/暗条件8時間)で栽培した。
[実施例3]トランスジェニック植物における変異解析
トランスジェニック植物において生じた変異を解析するため、まず、野生型マイクロトム植物及び実施例2で得られたトランスジェニック植物の葉からゲノムDNAを抽出した。得られたゲノムDNAを鋳型として、標的遺伝子特異的プライマーを用いてPCR増幅を行った。用いた標的遺伝子特異的プライマーを表2に示す。
増幅断片をプラスミドpGEM-T Easy(Promega)にサブクローニングし、大腸菌(E. coli)に導入して形質転換し、100μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天プレート上で培養した。LB寒天プレート上で形成されたコロニーについて、標的遺伝子特異的プライマーを用いてサンガー法により、挿入した増幅断片の塩基配列を決定した。
得られたトランスジェニック植物のゲノム中の標的遺伝子では、各系統で、挿入欠失(Indel)とDNA変換(塩基置換)の両方の変異が観察された。そこで、挿入欠失を有するトランスジェニック植物とDNA変換を有するトランスジェニック植物の数を数えた。その結果を表3に示す。また標的配列における変異のパターンを特定した。T0植物で観察された変異のパターンを表4及び5に示す。またT1植物で観察された変異のパターンを表6及び7に示す。
SlDELLAを標的化した初代トランスジェニック植物(T0)では、野生型Cas9は主に挿入欠失を誘導し、DNA変換はわずかに検出されたのみであった(表3)。また、5つのトランスジェニック系統のうち4つ(#2、#21、#26、及び#31)の子孫植物(T1)も挿入欠失を高頻度に有していた(表3、4及び6)。この結果は野生型Cas9はほとんどもっぱら、誤りを生じやすい非相同末端結合(NHEJ)による遺伝性の挿入欠失を誘導することを示している。
対照的に、SlDELLAを標的化したnCas9-PmCDA導入T0トランスジェニック植物では、挿入欠失とDNA変換の両方が誘導され、特にDNA変換がより高頻度に誘導された(表3及び4)。DNA変換は、標的配列内のCからT、又はCからGへのトランジションとして明らかに示された(表4)。さらにT1植物でも挿入欠失とDNA変換の両方の変異が観察され、各変異がT1植物に成功裏に遺伝したことが示された(表3、6)。このことはgRNAとnCas9-PmCDAを用いた塩基編集技術がトマト植物細胞内で機能することを実証している。
一方、SlDELLAを標的化したnCas9-stop-PmCDA導入T0植物では、わずかにDNA改変が観察されたものの、T1植物へのDNA改変の遺伝は観察されなかった(表4及び6)。この結果はニッカーゼ単独ではNHEJ媒介標的化変異誘発やDNA変換を誘導できず、塩基編集にはCDAの機能が必要であることを示している。
またSlDELLAを標的化し、植物(シロイヌナズナ)のコドン使用に最適化したnCas9-PmCDAoptを導入したトランスジェニックTO及びT1植物も挿入欠失及びDNA変換の両方を保持していた(表3、4及び6)。
SlDELLAを標的化したトランスジェニック植物全体で、11のトランスジェニック系統のうち5つ(nCas9-PmCDA導入植物について系統#1及び#9、nCas9-PmCDAopt導入植物について系統#1、#3及び#27)が、DNA変換を有するT1子孫植物を生成した。これはnCas9-PmCDAが遺伝性DNA変換を誘導できることをさらに示している。
さらに、SlDELLAとは異なる標的遺伝子SlETR1を標的化したnCas9-PmCDA又はnCas9-PmCDAopt導入トランスジェニック植物においても、挿入欠失及びDNA変換の両方が観察された(表3、5及び7)。具体的には、SlETR1site1を標的化したnCas9-PmCDAを導入したT1トランスジェニック系統#3、#4、#8、#9、#11、#13、及び#14、SlETR1site2を標的化したnCas9-PmCDAoptを導入したT1トランスジェニック系統#6-1、#6-2、#8-1及び#8-2、並びにSlETR1site3を標的化したCas9-PmCDAoptを導入したT1トランスジェニック系統#3、#8、#11、#25a、#25b、#30、#57及び#72で、挿入欠失及び/又はDNA変換が確認された(表7)。T0植物で観察されたそれらの変異のいくつかはT1植物に遺伝した。SlETR1site1を標的化したnCas9-PmCDAを導入したT1トランスジェニック系統#13、SlETR1site2を標的化したnCas9-PmCDAoptを導入したT1トランスジェニック系統#6-1、#6-2、#8-1及び#8-2、並びにSlETR1site3を標的化したnCas9-PmCDAoptを導入したT1トランスジェニック系統#3、#8、#11、#25a、#25b、#30、#57及び#72で、T0植物からT1植物への挿入欠失及び/又はDNA変換の遺伝が認められた(表5及び表7)。以上の結果は、この塩基編集システムを、SlDELLA以外の遺伝子にも適用できることを示している。
表4〜表7中、パターンの列に記載された「+」、「-」はそれぞれDNAの挿入、欠失を示し、その後に続く数字は挿入欠失の長さ(bp)を示す。「C」はDNA変換を示し、その後に続く数字は変換された塩基の数を示す。配列中でDNA変換が生じた塩基は小文字で示している。「WT」は野生型(改変なし)を示す。
なおSlDELLAを標的化したnCas9-PmCDAoptが導入され、標的配列に12塩基の欠失と2塩基の置換(CACからtAtへの置換)を生じたT1植物(#27_9)及びT2植物(#3_2_4)は、SlDELLA機能欠損アレルを有するトマト変異体proceraとよく似た表現型(鋸歯が減少した小葉など)を示した(図3)。
続いて、安定的にDNA改変を有するトランスジェニック植物のゲノム中に選択マーカー遺伝子が含まれるかどうかを試験した。得られたトランスジェニックT1植物、及びSlDELLAを標的化したnCas9-PmCDA導入T0植物と野生型マイクロトム植物との間の交配により得られたF1植物から抽出したゲノムDNAを鋳型として、カナマイシン耐性マーカー遺伝子(NPTII)増幅用プライマーを用いたPCRを行った。ゲノムDNA抽出の陽性対照として、内因性アクチン遺伝子増幅用プライマーを用いたPCRも行った。用いたプライマーは以下のとおりである。
NPTII増幅用プライマー
NPTII-F: 5'-ATGATTGAACAAGATGGATTGCAC-3' (配列番号35)
NPTII-R: 5'-TCAGAAGAACTCGTCAAGAAGGCG-3' (配列番号36)
内因性アクチン遺伝子増幅用プライマー
Actin-F: 5'-GATGGATCCTCCAATCCAGACACTGTA'-3' (配列番号37)
Actin-R: 5'-GTATTGTGTTGGACTCTGGTGATGGTGT'-3' (配列番号38)
SlDELLAを標的化したCas9、nCas9-PmCDA及びnCas9-PmCDAopt導入トランスジェニックT1植物、並びにF1植物(#3BC1_6)は、遺伝性の挿入欠失及びDNA変換を保持していたが、PCR解析により植物ゲノム中にカナマイシン耐性遺伝子は検出されなかった(図4)。同様に、SlETR1site2及びSlETR1site3を標的化したnCas9-PmCDAopt導入トランスジェニックT1植物は、遺伝性のDNA変換を保持していたが、PCR解析により植物ゲノム中にカナマイシン耐性遺伝子は検出されなかった(図4)。
また、標的配列中のDNA変換をホモ接合性若しくはヘテロ接合性又は両アレル性で有しSlDELLA、SlETR1site1、SlETR1site2又はSlETR1site3を標的化したトランスジェニックT1植物やT2植物が、DNA変換によって引き起こされるアミノ酸置換を有することが示された。例えば、SlDELLAを標的化しnCas9-PmCDAを導入したトランスジェニック系統#1(T1)、及びSlDELLAを標的化しnCas9-PmCDAoptを導入したトランスジェニック系統#1(T2)は、DNA変換による2つのアミノ酸の置換、すなわちPL(プロリン-ロイシン)→LV(ロイシン-バリン)を示した(図5)。このことは本発明で用いる塩基編集技術がアミノ酸配列の置換を誘導できることを示している。また変異を導入した植物の一部の後代においてマーカー遺伝子を排除しつつ、変異を保持できることが示された。
(注記)
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本出願は、日本国特許庁に2017年2月6日に出願された特願2017-019921に対して優先権主張を伴う出願である。その内容はその全体が、具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本発明の方法は標的部位にDNA変換を誘導することができ、トマト植物における部位特異的な遺伝性変異の誘導を促進することができる。農学的に重要な形質の多くが単一ヌクレオチド多型により支配されていることから、本発明の方法は作物の品種改良において有利に用いることができる。
配列番号1〜4:プライマー
配列番号5:シロイヌナズナコドン最適化nCas9-NLSコード配列
配列番号6:nCas9-NLSタンパク質
配列番号7:ヒトコドン最適化PmCDAコード配列
配列番号8:シロイヌナズナコドン最適化PmCDAコード配列
配列番号9:PmCDAタンパク質
配列番号10〜14:プライマー
配列番号15:gRNA発現ユニット(SlDELLA)
配列番号16:gRNA発現ユニット(SlETR1site1
配列番号17:gRNA発現ユニット(SlETR1site2
配列番号18:gRNA発現ユニット(SlETR1site3
配列番号19、21、23、25、27:Cas9/NPTII発現ユニット
配列番号20、22、24、26、28:合成構築物
配列番号29:PmCDAopt-NLSコード配列
配列番号30:PmCDA-NLSタンパク質
配列番号31〜38:プライマー
配列番号39:シロイヌナズナU6プライマー
配列番号40:配列番号25のPcUbi(P)からPea3A(T)までのDNA配列

Claims (35)

  1. 双子葉植物のゲノムを改変する方法であって、
    ガイドRNAと、核酸配列認識モジュールおよび核酸塩基変換酵素を含む融合タンパク質とを植物細胞に導入すること
    を含む、方法。
  2. 前記核酸配列認識モジュールが、Casの少なくとも1つのDNA切断能が失活したCRISPR−Casシステム、ジンクフィンガーモチーフ、TALエフェクター及びPPRモチーフからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記核酸配列認識モジュールが、Casの少なくとも1つのDNA切断能が失活したCRISPR−Casシステムである、請求項2に記載の方法。
  4. 前記CRISPR−Casシステムが2つのヌクレアーゼドメインを含み、該2つのヌクレアーゼドメインのいずれか1つが不活化されている、請求項3に記載の方法。
  5. 前記核酸塩基変換酵素がデアミナーゼである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記核酸塩基変換酵素がシチジンデアミナーゼである、請求項5に記載の方法。
  7. 前記導入を、前記核酸配列認識モジュールおよび前記核酸塩基変換酵素をコードする核酸構築物を前記細胞内に導入することによって行う、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記核酸構築物が、前記ガイドRNAをさらにコードする、請求項6に記載の方法。
  9. 前記核酸配列認識モジュールおよび前記核酸塩基変換酵素をコードする配列が、双子葉植物のコドン使用に最適化されている、請求項6または7に記載の方法。
  10. 前記核酸配列認識モジュールおよび前記核酸塩基変換酵素をコードする配列が、シロイヌナズナのコドン使用に最適化されている、請求項9に記載の方法。
  11. 前記ガイドRNAおよび前記核酸配列認識モジュールが、SlDELLAまたはSlETR1遺伝子の配列を標的化する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記双子葉植物が、ナス科の植物である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記双子葉植物が、ナス属の植物である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記双子葉植物が、トマト植物(Solanum lycopersicum)である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記導入は約23〜約27℃で行われる、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 前記導入は約25℃で行われる、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
  17. 前記導入した植物細胞を約23〜約27℃で培養することをさらに含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 前記導入した植物細胞を約25℃で培養することをさらに含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
  19. 請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法により双子葉植物細胞中の植物ゲノムを改変し、DNA変換を含む変異を誘導することと、
    ゲノムが改変された該植物細胞から植物体を作製することと、
    該植物体から子孫植物を作製し、前記変異を有する子孫植物を選抜することと
    を含む、双子葉植物の育種方法。
  20. 双子葉植物のゲノムを改変するための、核酸配列認識モジュールおよび核酸塩基変換酵素をコードする核酸構築物を含む組成物であって、該核酸配列認識モジュールは、ガイドRNAの存在下でゲノム上の標的配列を認識する、組成物。
  21. 前記核酸配列認識モジュールが、Casの少なくとも1つのDNA切断能が失活したCRISPR−Casシステム、ジンクフィンガーモチーフ、TALエフェクター及びPPRモチーフからなる群より選択される、請求項20に記載の組成物。
  22. 前記核酸配列認識モジュールが、Casの少なくとも1つのDNA切断能が失活したCRISPR−Casシステムである、請求項21に記載の組成物。
  23. 前記CRISPR−Casシステムが2つのヌクレアーゼドメインを含み、該2つのヌクレアーゼドメインのいずれか1つが不活化されている、請求項22に記載の組成物。
  24. 前記核酸塩基変換酵素がデアミナーゼである、請求項20〜23のいずれか1項に記載の組成物。
  25. 前記核酸塩基変換酵素がシチジンデアミナーゼである、請求項24に記載の組成物。
  26. 前記核酸構築物が、前記ガイドRNAをさらにコードする、請求項20〜25のいずれか1項に記載の組成物。
  27. 前記核酸配列認識モジュールおよび前記核酸塩基変換酵素をコードする配列が、双子葉植物のコドン使用に最適化されている、請求項20〜26のいずれか1項に記載の組成物。
  28. 前記核酸配列認識モジュールおよび前記核酸塩基変換酵素をコードする配列が、シロイヌナズナのコドン使用に最適化されている、請求項27に記載の組成物。
  29. 前記ガイドRNAおよび前記核酸配列認識モジュールが、SlDELLAまたはSlETR1遺伝子の配列を標的化する、請求項20〜28のいずれか1項に記載の組成物。
  30. 前記双子葉植物が、ナス科の植物である、請求項20〜29のいずれか1項に記載の組成物。
  31. 前記双子葉植物が、ナス属の植物である、請求項20〜30のいずれか1項に記載の組成物。
  32. 前記双子葉植物が、トマト植物(Solanum lycopersicum)である、請求項20〜31のいずれか1項に記載の組成物。
  33. 請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法で生産された植物。
  34. 請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法で生産された植物の部分。
  35. 前記部分は、果実、根、葉、花、種子および茎から選択される、請求項34に記載の植物の部分。
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