第1の態様では、本発明は、CenH3タンパク質のN末端テールドメインに1つ又は複数のアクティブ変異を含む植物起源のCenH3タンパク質に関する。
一実施形態では、1つ又は複数のアクティブ変異はCenH3モチーフブロック1に存在してもよい。
一実施形態では、1つ又は複数のアクティブ変異は、
a)配列番号1のアミノ酸配列、又は配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントを含むタンパク質、或いは
b)配列番号4のアミノ酸配列を含むタンパク質、或いは
c)配列番号2のアミノ酸配列、又は配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントを含むタンパク質、或いは
d)配列番号5のアミノ酸配列を含むタンパク質
に存在してもよい。
一実施形態では、アクティブ変異は、
a)配列番号1のアミノ酸配列、又は配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントの10位におけるアミノ酸残基、或いは
b)配列番号4のアミノ酸配列の10位におけるアミノ酸残基、或いは
c)配列番号2若しくは配列番号11のアミノ酸配列、又は配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントの9位若しくは10位におけるアミノ酸残基、或いは
d)配列番号5のアミノ酸配列の9位若しくは10位におけるアミノ酸残基
にあってもよい。
好ましい実施形態では、9位又は10位のそれぞれにおいて変異されているアミノ酸は、リシン又はアルギニン又はバリンである。
好ましい実施形態では、9位又は10位のそれぞれにおいて変異されているアミノ酸は、リシン又はアルギニンである。
一実施形態では、9位又は10位のそれぞれにおけるアミノ酸残基は、リシン、アルギニン又はヒスチジン又はバリンを除く任意のアミノ酸に修飾されてもよい。
一実施形態では、9位又は10位のそれぞれにおけるアミノ酸残基は、リシン、アルギニン又はヒスチジンを除く任意のアミノ酸に修飾されてもよい。
好ましい実施形態では、9位又は10位のそれぞれにおけるアミノ酸残基は、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基、より好ましくはグルタミン酸又はアスパラギン酸に修飾されてもよい。
好ましい実施形態では、9位又は10位のそれぞれにおけるアミノ酸残基は、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基、より好ましくはグルタミン酸又はアスパラギン酸残基に修飾されてもよい。
好ましい実施形態では、項目(sub)c)におけるアクティブ変異は、配列番号2のアミノ酸配列、又は配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントの9位におけるアミノ酸残基にある。
更に好ましい実施形態では、項目d)におけるアクティブ変異は、配列番号5のアミノ酸配列の9位におけるアミノ酸残基にある。
更なる態様では、本発明は、配列番号3のアミノ酸配列又は配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントを含み、9位におけるアミノ酸残基が、リシン、アルギニン又はヒスチジンを除く任意のアミノ酸に修飾されている、植物起源のCenH3タンパク質に関する。
配列番号3のアミノ酸配列又はそのバリアントを含む植物起源のタンパク質に関する好ましい実施形態では、9位におけるアミノ酸残基は、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基、より好ましくはグルタミン酸又はアスパラギン酸残基に修飾されている。
一実施形態では、本明細書に教示されている配列番号3のアミノ酸配列又はそのバリアントは、配列番号6又は配列番号9の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされてもよく、配列番号6の核酸配列の25〜27位又は配列番号9の核酸配列の25〜27位における1つ又は複数のヌクレオチドが変異されて、リシン、アルギニン又はヒスチジンを除く任意のアミノ酸、好ましくはグルタミン酸又はアスパラギン酸残基に翻訳するコドンを形成する。
更なる態様では、本発明は、配列番号8のアミノ酸配列を含む植物起源のCenH3タンパク質に関する。
一実施形態では、本明細書に教示されている配列番号8のアミノ酸配列を含む植物起源のCenH3タンパク質は、配列番号7又は配列番号10の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされてもよい。
更なる態様では、植物起源のCenH3タンパク質は、配列番号11のアミノ酸配列又は配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。前記CenH3タンパク質は、配列番号11のアミノ酸配列又は配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するバリアントのアミノ酸配列の9位、12位若しくは22位、又はそれらの組合せにおいてアクティブ変異を含むことが好ましい。
一実施形態では、植物起源のCenH3タンパク質は、配列番号12のアミノ酸配列又は配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。
前記CenH3タンパク質は、配列番号12のアミノ酸配列又は配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するバリアントのアミノ酸配列の9位、16位若しくは26位、又はそれらの組合せにおいてアクティブ変異を含むことが好ましい。
本明細書に定義されている配列番号11若しくは12、又はそれらのバリアントの9位における示したアクティブ変異は、前記アミノ酸残基が、メチオニン、セリン及びトレオニンからなる群から選択されるアミノ酸残基、より好ましくはメチオニンに修飾されている変異であることが好ましい。
本明細書に定義されている配列番号11若しくは12、又はそれらのバリアントの12位及び/若しくは16位における示したアクティブ変異は、前記アミノ酸残基が、メチオニン、セリン及びトレオニンからなる群から選択されるアミノ酸残基、より好ましくはセリンに修飾されている変異であることが好ましい。
本明細書に定義されている配列番号11若しくは12、又はそれらのバリアントの22位及び/若しくは26位における示したアクティブ変異は、前記アミノ酸残基が、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基、より好ましくはロイシンに修飾されている変異であることが好ましい。
一実施形態では、植物起源のCenH3タンパク質は配列番号13のアミノ酸配列を含む。
一実施形態では、植物起源のCenH3タンパク質は配列番号14のアミノ酸配列を含む。
一実施形態では、植物起源のCenH3タンパク質は配列番号15のアミノ酸配列を含む。
一実施形態では、本明細書に教示されている配列番号13のアミノ酸配列を含む植物起源のCenH3タンパク質は、配列番号17又は配列番号21の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされてもよい。
一実施形態では、本明細書に教示されている配列番号14のアミノ酸配列を含む植物起源のCenH3タンパク質は、配列番号18又は配列番号22の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされてもよい。
一実施形態では、本明細書に教示されている配列番号15のアミノ酸配列を含む植物起源のCenH3タンパク質は、配列番号19又は配列番号23の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされてもよい。
一実施形態では、本明細書に教示されているアクティブ変異を有するCenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチドによってコードされる、本明細書に教示されているCenH3タンパク質は、植物の内在性CenH3をコードするポリヌクレオチド及び/又は内在性CenH3タンパク質の非存在下で植物に存在する場合、前記植物が生存することを可能とし、前記植物が野生型植物と交配される場合、いくつかの半数体後代又は異常な倍数性を有する後代の生成を可能とする。
一実施形態では、本明細書に教示されているCenH3タンパク質のいずれか一つの使用により、生成された後代の少なくとも0.1、0.5、1又は5%が、半数体であるか、又は異常な倍数性を有するようになる。
一実施形態では、本明細書に教示されているCenH3タンパク質は、標的化ヌクレオチド交換を使用して又はエンドヌクレアーゼを適用することにより、内在性CenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチドに変異を導入することによって、前記内在性CenH3タンパク質から誘導されてもよい。
好ましい実施形態では、本明細書に教示されているアクティブ変異は点変異である。
更なる態様では、本発明は、本明細書に教示されているCenH3タンパク質のいずれか一つをコードするポリヌクレオチドに関する。
一実施形態では、本明細書に教示されているポリヌクレオチドは、配列番号6若しくは配列番号9の核酸配列、又は配列番号6若しくは配列番号9の核酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそれらのバリアントを含むポリヌクレオチドであって、配列番号6の核酸配列の25〜27位又は配列番号9の核酸配列の25〜27位における1つ又は複数のヌクレオチドが、配列番号2のアミノ酸配列が9位若しくは10位において変更された残基を有するか、又は配列番号3が好ましくは9位において変更された残基を有する植物CenH3タンパク質を、ポリヌクレオチドがコードするように修飾されている、ポリヌクレオチドである。
配列番号6若しくは配列番号9の核酸配列、又はそれらのバリアントを含むポリヌクレオチドに関する好ましい実施形態では、配列番号2のアミノ酸配列は9位において変更された残基を有する。
配列番号6若しくは配列番号9の核酸配列、又はそれらのバリアントを含むポリヌクレオチドに関する実施形態では、変更された残基は、リシン、アルギニン又はヒスチジンを除く任意のアミノ酸に変更されてもよい。
配列番号6若しくは配列番号9の核酸配列、又はそれらのバリアントを含むポリヌクレオチドに関する好ましい実施形態では、変更された残基は、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基、より好ましくはグルタミン酸又はアスパラギン酸残基に変更されてもよい。
更なる態様では、本発明は、配列番号7又は配列番号10の核酸配列を含むポリヌクレオチドに関する。
一実施形態では、本明細書に教示されているポリヌクレオチドは、配列番号16若しくは配列番号20の核酸配列、又は配列番号16若しくは配列番号20の核酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそれらのバリアントを含むポリヌクレオチドであって、配列番号16の核酸配列の25〜27位、46〜48位及び76〜78位又は配列番号20の核酸配列の25〜27位、46〜48位及び76〜78位における1つ又は複数のヌクレオチドが、配列番号11のアミノ酸配列が9位、12位及び/若しくは22位において1つ若しくは複数の変更された残基を有する植物CenH3タンパク質、又は配列番号12のアミノ酸配列が9位、16位及び/若しくは26位において1つ若しくは複数の変更された残基を有する植物CenH3タンパク質を、ポリヌクレオチドがコードするように修飾されている、ポリヌクレオチドである。
配列番号16若しくは配列番号20の核酸配列、又はそれらのバリアントを含むポリヌクレオチドに関する実施形態では、9位における変更された残基は、メチオニン、セリン又はトレオニン、好ましくはメチオニンに変更されてもよく、16位における変更された残基は、メチオニン、セリン又はトレオニン、好ましくはセリンに変更されてもよく、26位における変更された残基は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン、好ましくはロイシンに変更されてもよい。
更なる態様では、本発明は、配列番号17又は配列番号21の核酸配列を含むポリヌクレオチドに関する。
更なる態様では、本発明は、配列番号18又は配列番号22の核酸配列を含むポリヌクレオチドに関する。
更なる態様では、本発明は、配列番号19又は配列番号23の核酸配列を含むポリヌクレオチドに関する。
一実施形態では、本明細書に教示されているポリヌクレオチドのいずれか一つは単離される。
更なる態様では、本発明は、本明細書に教示されているポリヌクレオチドのいずれか一つを含むキメラ遺伝子に関する。
更なる態様では、本発明は、本明細書に教示されているポリヌクレオチド又は本明細書に教示されているキメラ遺伝子のいずれか一つを含むベクターに関する。
更なる態様では、本発明は、本明細書に教示されているポリヌクレオチド、本明細書に教示されているキメラ遺伝子、又は本明細書に教示されているベクターのいずれか一つを含む宿主細胞に関する。
一実施形態では、本明細書に教示されている宿主細胞は、植物細胞、好ましくはトマト植物細胞又はトマトプロトプラスト、好ましくはナス属(Solanum)植物細胞又はナス属プロトプラスト、より好ましくはソラナム・リコペルシカム(Solanum・lycopersicum)植物細胞又はソラナム・リコペルシカムプロトプラストであってもよい。
一実施形態では、本明細書に教示されている宿主細胞は、植物細胞、好ましくはコメ植物細胞又はコメプロトプラスト、好ましくはイネ属(Oryza)植物細胞又はイネ属プロトプラスト、更により好ましくはオリザ・サティバ(Oryza sativa)植物細胞又はオリザ・サティバプロトプラスト、更により好ましくはオリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ(Japonica)植物細胞又はオリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ植物プロトプラストであってもよい。
更なる態様では、本発明は、本明細書に教示されているポリヌクレオチド、本明細書に教示されているキメラ遺伝子、又は本明細書に教示されているベクターのいずれか一つを含む植物に関する。
本明細書に教示されている植物に関する実施形態では、前記植物における内在性CenH3タンパク質は発現されない。
好ましい実施形態では、本明細書に教示されている植物は、ナス属植物、より好ましくはソラナム・リコペルシカム植物であってもよい。
好ましい実施形態では、本明細書に教示されている植物は、イネ属植物、より好ましくはオリザ・サティバ植物、更により好ましくはオリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ植物であってもよい。
一実施形態では、本明細書に教示されている植物は、アクティブ変異を含むCenH3タンパク質をコードする変異ポリヌクレオチドのアレルの2つのコピーを含んでもよい。
更なる態様では、本発明は、本明細書に教示されている植物を作製する方法であって、
a)植物細胞内の内在性CenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチドを修飾して、本明細書に教示されているCenH3タンパク質をコードする変異ポリヌクレオチドを得るステップと、
b)変異ポリヌクレオチドを含む植物細胞を選択するステップと、
c)任意選択で、前記植物細胞から植物を再生するステップと
を含む、方法に関する。
更なる態様では、本発明は、本明細書に教示されている植物を作製する方法であって、
a)植物細胞内の内在性CenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチドを修飾して、CenH3タンパク質のN末端テールドメインにアクティブ変異を有するCenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチドを得るステップと、
b)アクティブ変異を有するCenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む植物細胞を選択するステップと、
c)任意選択で、前記植物細胞から植物を再生するステップと
を含む、方法に関する。
更なる態様では、本発明は、本明細書に教示されている植物を作製する方法であって、
a)植物細胞に、本明細書に教示されているポリヌクレオチド、本明細書に教示されているキメラ遺伝子、又は本明細書に教示されているベクターを形質転換するステップと、
b)本明細書に教示されているポリヌクレオチド、本明細書に教示されているキメラ遺伝子、及び/又は本明細書に教示されているベクターを含む植物細胞を選択するステップと、
c)任意選択で、前記植物細胞から植物を再生するステップと
を含む、方法に関する。
一実施形態では、本明細書に教示されている方法は、
前記植物細胞を修飾して、内在性CenH3タンパク質の発現を阻止するステップ
を更に含んでもよい。
一実施形態では、前記植物細胞内の内在性CenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチドは修飾されて、内在性CenH3タンパク質の発現を阻止する。
更なる態様では、本発明は、半数体植物、異常な倍数性を有する植物又は倍加半数体植物を生成する方法であって、
a)内在性CenH3タンパク質を発現する植物を、本明細書に教示されている植物へ交配するステップであって、本明細書に教示されている植物は、少なくともその生殖部分において及び/又は胚発生の間、内在性CenH3タンパク質を発現しない、ステップと、
b)種子を採取するステップと、
c)前記種子から、少なくとも1つの実生、小植物又は植物を生育させるステップと、
d)半数体実生、小植物若しくは植物;異常な倍数性を有する実生、小植物若しくは植物;又は倍加半数体実生、小植物若しくは植物を選択するステップと
を含む、方法に関する。
更なる態様では、本発明は、倍加半数体植物を生成する方法であって、
上記のステップd)において得られた半数体実生、小植物又は植物を倍加半数体植物に転換するステップ
を含む、方法に関する。
一実施形態では、転換は、コルヒチンによる処理により実施されてもよい。
一実施形態では、内在性CenH3タンパク質を発現する植物は、F1植物であってもよい。
一実施形態では、内在性CenH3タンパク質を発現する植物は、交配の花粉親であってもよい。
一実施形態では、内在性CenH3タンパク質を発現する植物は、交配の胚珠親であってもよい。
一実施形態では、交配は、約24℃〜約30℃の範囲の温度で実施されてもよい。
一実施形態では、本明細書に教示されている方法は、前記植物の全ゲノムを有性交配するステップを含まない。
更なる態様では、本発明は、半数体インデューサー系統を産生するための、本明細書に教示されているポリヌクレオチドのいずれか一つの使用に関する。
更なる態様では、本発明は、CenH3タンパク質のN末端テールドメインに1つ又は複数のアクティブ変異を含む配列番号3のCenH3タンパク質を含むソラナム・リコペルシカム植物又は種子に関する。
本明細書に教示されているソラナム・リコペルシカム植物又は種子に関する一実施形態では、1つ又は複数のアクティブ変異は、CenH3モチーフブロック1にある。
本明細書に教示されているソラナム・リコペルシカム植物又は種子に関する一実施形態では、9位におけるアミノ酸残基は、リシン、アルギニン又はヒスチジンを除く任意のアミノ酸に修飾されてもよい。
本明細書に教示されているソラナム・リコペルシカム植物又は種子に関する好ましい実施形態では、9位におけるアミノ酸残基は、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸、より好ましくはグルタミン酸又はアスパラギン酸残基に修飾されてもよい。
一実施形態では、本明細書に教示されているソラナム・リコペルシカム植物又は種子は、本明細書に教示されているポリヌクレオチドのいずれか1つ、本明細書に教示されているキメラ遺伝子、又は本明細書に教示されているベクターを含んでもよい。
更なる態様では、本発明は、配列番号8のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むソラナム・リコペルシカム植物又は種子に関する。
更なる態様では、本発明は、配列番号7又は配列番号10の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含むソラナム・リコペルシカム植物又は種子に関する。
更なる態様では、本発明は、本明細書に教示されているCenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むソラナム・リコペルシカム植物又は種子に関する。
本明細書に教示されているソラナム・リコペルシカム植物又は種子に関する一実施形態では、内在性CenH3タンパク質は、少なくとも生殖部分において及び/又は胚発生の間、発現されない。
更なる態様では、本発明は、半数体ソラナム・リコペルシカム植物を産生するための、本明細書に教示されているソラナム・リコペルシカム植物の使用に関する。
更なる態様では、本発明は、倍加半数体ソラナム・リコペルシカム植物を産生するための、本明細書に教示されているソラナム・リコペルシカム植物の使用に関する。
更なる態様では、本発明は、CenH3タンパク質のN末端テールドメインに1つ又は複数のアクティブ変異を含む、配列番号12のCenH3タンパク質を含む、オリザ・サティバ、好ましくはオリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ植物又は種子に関する。
本明細書に教示されているオリザ・サティバ、好ましくはオリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ植物又は種子に関する一実施形態では、1つ又は複数のアクティブ変異は、好ましくは9位において、メチオニン、セリン又はトレオニン、好ましくはメチオニンに修飾されてもよい、CenH3モチーフブロック1にある。
本明細書に教示されているオリザ・サティバ、好ましくはオリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ植物又は種子に関する一実施形態では、1つ又は複数のアクティブ変異は、好ましくは16位において、メチオニン、セリン又はトレオニン、好ましくはセリンに修飾されてもよい、CenH3 N末端テールドメインにある。
本明細書に教示されているオリザ・サティバ、好ましくはオリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ植物又は種子に関する一実施形態では、1つ又は複数のアクティブ変異は、好ましくは26位において、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン、好ましくはロイシンに修飾されてもよい、CenH3 N末端テールドメインにある。
一実施形態では、本明細書に教示されているオリザ・サティバ、好ましくはオリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ植物又は種子は、本明細書に教示されているポリヌクレオチドのいずれか1つ、本明細書に教示されているキメラ遺伝子、又は本明細書に教示されているベクターを含んでもよい。
更なる態様では、本発明は、配列番号13、配列番号14又は配列番号15のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、オリザ・サティバ、好ましくはオリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ植物又は種子に関する。
更なる態様では、本発明は、配列番号17又は配列番号21の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む、オリザ・サティバ、好ましくはオリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ植物又は種子に関する。
更なる態様では、本発明は、配列番号18又は配列番号22の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む、オリザ・サティバ、好ましくはオリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ植物又は種子に関する。
更なる態様では、本発明は、配列番号19又は配列番号23の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む、オリザ・サティバ、好ましくはオリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ植物又は種子に関する。
更なる態様では、本発明は、本明細書に教示されているCenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、オリザ・サティバ、好ましくはオリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ植物又は種子に関する。
本明細書に教示されているオリザ・サティバ、好ましくはオリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ植物又は種子に関する一実施形態では、内在性CenH3タンパク質は、少なくとも生殖部分において及び/又は胚発生の間、発現されない。
更なる態様では、本発明は、半数体オリザ・サティバ、好ましくはオリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ植物を産生するための、本明細書に教示されているオリザ・サティバ、好ましくはオリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ植物の使用に関する。
更なる態様では、本発明は、倍加半数体オリザ・サティバ、好ましくはオリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ植物を産生するための、本明細書に教示されているオリザ・サティバ、好ましくはオリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ植物の使用に関する。
更なる態様では、本発明は、半数体又は倍加半数体植物を生成する方法であって、本明細書に教示されている内在性CenH3タンパク質及び植物を発現する植物を同定するステップを含み、本明細書に教示されている植物は、少なくともその生殖部分において及び/又は胚発生の間、内在性CenH3タンパク質を発現しない、方法に関する。
一実施形態では、本明細書に教示されている方法は、前記植物の全ゲノムを有性交配するステップを含まない。
[定義]
本明細書に使用されている場合、「ヒストンH3タンパク質のセントロメア特異的バリアント(「CenH3」タンパク質と略される)」という用語は、キネトコア複合体のメンバーであるタンパク質を指す。CenH3タンパク質は、「CENP−A」タンパク質としても知られている。キネトコア複合体は染色分体に位置し、そこで紡錘糸が細胞分裂の間に付着して姉妹染色分体を引き離す。CenH3タンパク質は、H3ヒストンタンパク質のバリアントであるタンパク質の十分に特徴付けられたクラスに属する。これらのタンパク質は、キネトコアの適切な形成及び機能に必須であり、キネトコアがDNAと会合するのに役立つ。CenH3を欠損している細胞は、染色分体にキネトコアタンパク質を局在化することができず、強力な染色体分離の欠陥を示す(すなわち、欠損CenH3タンパク質を発現する植物由来の全ての染色体は除去又は喪失され、体細胞の倍数性の変化(例えば、2倍体から半数体のような染色体組の数の減少)を引き起こす)。従って、CenH3タンパク質は、倍加半数体産生系におけるそれらの潜在的使用についての集中的な研究の対象となっている。CenH3タンパク質は、可変テールドメイン(「N末端ドメイン」又は「N末端テールドメイン」とも称される)及びループセクションによって連結された3つのアルファヘリックス領域から構成される保存されたヒストンフォールドドメイン(C末端ドメインとも称される)によって特徴付けられる。CenH3ヒストンフォールドドメインは、異なる種由来のCenH3タンパク質間で比較的よく保存されている。ヒストンフォールドドメインは内在性CenH3タンパク質のカルボキシル末端に位置する。ヒストンフォールドドメインとは対照的に、CenH3のN末端テールドメインは、密接に関連した種間でさえも非常に変動しやすい。
本明細書に使用されている場合、「コンセンサス配列」という用語は、配列アラインメントにおける各位置で見出される、ヌクレオチド又はアミノ酸のいずれかの最も頻度の高い残基の計算された順序を指す。コンセンサス配列は、関連配列(例えば、異なる植物から得られたCenH3タンパク質のN−テールドメインの配列)が互いに比較され、類似の配列モチーフが計算される(例えば、モチーフ検索プログラム(例えば、MEME)を使用して)、複数の配列アラインメント(例えば、CenH3配列)の結果を表す。当業者は、「コンセンサス配列」の概念並びに異なる植物(例えば、作物植物)にわたるタンパク質におけるコンセンサス配列を同定するのに適した方法論に十分に精通している。
本明細書に使用されている場合、「半数体インデューサー系統」という用語は、非インデューサー系統と少なくとも1つの一塩基多型において異なる植物系統を指す。雌株又は花粉ドナーのいずれかとして使用される半数体インデューサー系統が交配される場合、半数体インデューサー系統は、半数体インデューサー系統のゲノムの片親ゲノムの除去をもたらす。
「1つ又は複数のアクティブ変異を有するCenH3をコードするポリヌクレオチド」とは、1つ又は複数のアクティブ変異を有するCenH3タンパク質をコードする非内在性又は内在性変異CenH3をコードするポリヌクレオチドを指し、これは、植物の内在性CenH3をコードするポリヌクレオチド及び/又は内在性CenH3タンパク質の非存在下で植物に存在する場合、前記植物が生存することを可能とし、前記植物が野生型植物、好ましくは同じ種の野生型植物と交配される場合、半数体後代又は異常な倍数性を有する後代の生成を可能とする。1つ又は複数のアクティブ変異を有するCenH3をコードするポリヌクレオチドを含む植物は、「修飾植物」と称することができる。野生型植物との交配に際して生成される半数体後代又は異常な倍数性を有する後代のパーセンテージは、例えば、少なくとも0.1、0.5、1、5、10、20%又はそれ以上であることができる。内在性CenH3をコードするポリヌクレオチドから、1つ又は複数のアクティブ変異を有するCenH3をコードするポリヌクレオチドへの移行を引き起こす変異は、本明細書において「アクティブ変異」と称される。CenH3タンパク質の関係におけるアクティブ変異は、中でも、細胞分裂の間の染色体の分離において、低減されたセントロメア負荷、より少ない機能的CenH3タンパク質及び/又は低減された機能性をもたらすことがある。1つ又は複数のアクティブ変異は、当業者に周知のいくつかの方法のいずれかにより、例えば、化学物質若しくは放射線による種子若しくは植物細胞の処理により誘発されるような、ランダム変異誘発、標的化変異誘発、エンドヌクレアーゼの適用により、部分的若しくは完全なタンパク質ドメインの欠失を生じることにより、又は異種配列との融合により、CenH3をコードするポリヌクレオチドに導入することができる。
「1つ又は複数のアクティブ変異を有するCenH3タンパク質」は、1つ又は複数のアクティブ変異を有するCenH3をコードするポリヌクレオチドによりコードされる。内在性CenH3をコードするポリヌクレオチドは、内在性CenH3タンパク質をコードする。
植物は、内在性CenH3をコードするポリヌクレオチドをノックアウトするか、又は不活性化することによって、前記内在性CenH3をコードするポリヌクレオチドを欠如させることができる。或いは、前記内在性CenH3をコードするポリヌクレオチドは、不活性の又は非機能的CenH3タンパク質をコードするように修飾されてもよい。
本明細書に教示されている1つ又は複数のアクティブ変異を有する、CenH3をコードするポリヌクレオチドを含む修飾植物は、花粉親又は胚珠親のいずれかとして、野生型植物へ交配することができる。一実施形態では、1つ又は複数のアクティブ変異を有するCenH3タンパク質は、内在性CenH3タンパク質に対して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20又はそれ以上のアミノ酸の変化を含むことができる。一実施形態では、1つ又は複数のアクティブ変異を有するCenH3をコードするポリヌクレオチドは、内在性CenH3をコードするポリヌクレオチドに対して、好ましくは全長にわたって、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、99.5%の配列同一性を有する。
当業者は、本明細書に教示されている修飾植物が、1つ又は複数のアクティブ変異を含むか否かを容易に確認することができる。例えば、当業者は、そのようなアクティブ変異を提案するために、SIFT(Kumar P、Henikoff S、Ng PC.(2009年)Predicting the effects of coding non−synonymous variants on protein function using the SIFT algorithm.Nat Protoc;4(7);1073〜81頁.doi:10.1038/nprot.2009.86)のような予測ツールを使用することができる。次いで、植物において1つ又は複数のアクティブ変異を行うことができ、前記植物における内在性CenH3タンパク質の発現がノックアウトされるはずである。植物は、野生型植物との交配に際して生成される半数体後代又は異常な倍数性を有する後代のパーセンテージが少なくとも0.1、0.5、1、5、10、20%又はそれ以上である場合に、1つ又は複数のアクティブ変異を含むと考えることができる。
花粉又は胚珠親のいずれかとしての、内在性CenH3をコードするポリヌクレオチドを欠く又は内在性CenH3タンパク質の発現を欠き、1つ又は複数のアクティブ変異を有するCenH3タンパク質を発現する植物と、内在性CenH3タンパク質を発現する植物を交配することは、ある特定のパーセンテージ(例えば、少なくとも0.1、0.5、1、5、10、20%又はそれ以上)の、半数体であるか又は異常な倍数性を示す後代をもたらす。そのような植物は、内在性CenH3タンパク質を発現する親の染色体のみを含み、1つ又は複数のアクティブ変異を有するCenH3タンパク質を発現する植物の染色体を含まない。
交配される2つの植物は、同じ属又は同じ種のものであってもよい。本明細書に教示されている交配方法は、前記植物の全ゲノムを有性交配するステップを含まない。代わりに、1組の染色体が除去されている。
本明細書に使用されている場合、「異常な倍数性」という用語は、細胞が異常な又は正常でない数の組の染色体を含む状況を指す。例えば、通常の数が2である場合、1つの細胞当たり1又は3組の染色体を有する細胞は、異常な倍数性を有する細胞である。本発明において、本明細書に教示されているアクティブ変異CenH3タンパク質及びそれらを使用する方法は、異常な倍数性を有する変異体植物を生成するために、例えば、非変異体植物が2倍体である間に半数体植物を生成するために使用することができる。半数体植物は、ホモ接合系統を作製し、同系交配の必要性を回避するための育種プログラムを促進するために使用することができる。
タンパク質又は遺伝子と組み合わせて本発明の文脈において使用されている場合、「内在性」という用語は、前記タンパク質又は遺伝子が、それらが今もなお含有される植物に由来することを意味する。内在性遺伝子は、植物におけるその正常な遺伝学的状況に存在することが多い。
本明細書に使用されている場合、「片親ゲノムの除去」という用語は、交配後に、交配の方向に関わりなく一方の親の全ての染色体を意味する、全ての遺伝情報を喪失する効果を指す。これは、そのような交配の子孫が、除去されていない親ゲノムの染色体のみを含有するように起こる。除去されるゲノムは、常に半数体インデューサーである親に起源を有する。
「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、本明細書において交換可能に使用されている。
「キメラ遺伝子」(又は組換え遺伝子)とは、通常、ある種において自然界で見られない任意の遺伝子、特に、自然界で互いに関連し合わない核酸配列の1つ又は複数の部分が存在する遺伝子を指す。例えば、プロモーターは、自然界で転写領域の一部若しくは全て、又は別の調節領域とは関連し合わない。「キメラ遺伝子」という用語は、プロモーター又は転写調節配列が、1つ若しくは複数のコード配列又はアンチセンス(センス鎖の逆相補体)若しくは逆位反復配列(センス及びアンチセンス、それによって、転写に際してRNA転写産物が二本鎖RNAを形成する)に作動可能に連結されている、発現構築物を含むと理解される。
「配列同一性」及び「配列類似性」は、グローバル又はローカルアライメントアルゴリズムを使用する2つのペプチド又は2つのヌクレオチド配列のアライメントにより決定することができる。その結果、配列は、それらが(例えばデフォルトパラメータを使用するGAP又はBESTFITプログラムにより最適に整列化された場合に)少なくとも(以下に定義される)ある特定の最小限のパーセンテージの配列同一性を共有する場合に、「実質的に同一」又は「本質的に類似する」と称することができる。GAPは、Needleman及びWunschグローバルアライメントアルゴリズムを使用して、マッチの数を最大にし、ギャップの数を最小としつつ、2つの配列をそれらの長さ全体にわたって整列化する。一般に、ギャップクリエーションペナルティ=50(ヌクレオチド)/8(タンパク質)及びギャップエクステンションペナルティ=3(ヌクレオチド)/2(タンパク質)でGAPデフォルトパラメータが使用される。ヌクレオチドについては、使用されるデフォルトスコアリングマトリックスは、nwsgapdnaであり、タンパク質については、デフォルトスコアリングマトリックスは、Blosum62である(Henikoff及びHenikoff、1992年、PNAS 89、915〜919頁)。配列アライメント及び配列同一性パーセンテージのためのスコアは、Accelrys Inc.、9685 Scranton Road、San Diego、CA 92121−3752 USAから利用可能なGCG Wisconsin Package、バージョン10.3又は(「needle」プログラムを使用する)EmbossWin バージョン2.10.0のようなコンピュータプログラムを使用して決定することができる。或いは、類似性又は同一性パーセントは、FASTA、BLAST等のようなアルゴリズムを使用してデータベースを検索することによって決定することができる。
「宿主細胞」又は「組換え宿主細胞」又は「形質転換細胞」は、特に所望のタンパク質をコードするキメラ遺伝子を含む、少なくとも1つの核酸分子の導入の結果として生じる新しい個別の細胞(又は生物)を指す用語である。宿主細胞は、植物細胞又は細菌細胞であることが好ましい。宿主細胞は、染色体外で(エピソームの)複製する分子として核酸分子若しくはキメラ遺伝子を含有してもよいか、又は宿主細胞の核若しくはプラスチドゲノムに組み込まれた核酸分子若しくはキメラ遺伝子を含むことがより好ましい。
本明細書に使用されている場合、「植物」という用語は、植物細胞、植物組織又は器官、植物プロトプラスト、植物を再生することができる植物細胞組織培養、植物カルス、植物細胞凝集塊、及び植物中で無傷である植物細胞、又は胚、花粉、胚珠、果実(例えば、収穫されたトマト)、花、葉、種子、根、毛根等のような植物の部分を含む。
本明細書に使用されている場合、「倍加半数体植物」という用語は、半数体細胞が染色体倍加を受ける場合に形成される遺伝子型を指す。倍加半数体の人工産生は植物育種において重要である。倍加半数体は、in vivo又はin vitroで産生することができる。半数体胚は、単為生殖、偽受精、又は広範な交配後の染色体除去によってin vivoで産生される。半数体生物から倍加半数体生物を生成するための多種多様なin vitro法が知られている。当業者はこのような方法に精通している。in vitroで倍加半数体を生成するための方法の非限定的な例は、コルヒチンのような染色体倍加剤を用いて、半数体種子から産生された体細胞半数体細胞、半数体胚、半数体種子、又は半数体植物を処理することからなる。本発明において、ホモ接合性倍加半数体植物は、半数体細胞を、コルヒチン、抗微小管除草剤、又は亜酸化窒素のような染色体倍加剤と接触させて、ホモ接合性倍加半数体細胞を作製することによって、半数体細胞から再生することができる。染色体倍加の方法は、例えば、米国特許第5,770,788号;同第7,135,615号、並びに米国特許出願公開第2004/0210959号及び同第2005/0289673号;Antoine−Michard,S.ら、Plant Cell,Tissue Organ Cult.、Cordrecht、オランダ、Kluwer Academic Publishers 48(3):203〜207頁(1997年);Kato,A.、Maize Genetics Cooperation Newsletter 1997年、36〜37頁;及びWan,Y.ら、Trends Genetics 77:889〜892頁(1989年). Wan,Y.ら、Trends Genetics 81:205〜211頁(1991年)に開示されており、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。倍加半数体植物を他の植物へ更に交配して、F1、F2を生成することができるか、又はそれに続く所望の形質を有する植物を生成することができる。従来の同系交配手順は、ほぼ完全なホモ接合性を達成するために6世代を要するが、倍加半数性は1世代でそれを達成する。
本発明の文脈において、「野生型植物」という用語の使用は、変異体CenH3タンパク質又は遺伝子を保有せず(すなわち、本明細書に教示されている1つ又は複数のアクティブ変異を含まない)、機能的CenH3遺伝子及びタンパク質を内在的に発現又は産生する植物を指す。
この文書及びその特許請求の範囲において、動詞「含む」及びその活用形は、その非限定的な意味で使用されて、この単語に続く項目が含まれるが、具体的に言及されない項目が除外されないことを意味する。これは、動詞「から本質的になる」及び「からなる」を包含する。
加えて、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」による要素への言及は、要素のうちの1つ及び1つのみが存在することを文脈が明らかに要求しない限り、要素のうちの1つより多くが存在する可能性を排除しない。よって、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、通常、「少なくとも1つ」を意味する。更に、本明細書において「配列」に言及する場合、一般に、サブユニット(例えば、アミノ酸)のある特定の配列を含む実際の物理的な分子が言及されることが理解される。
[発明の詳細な説明]
本発明者らは、植物における1つ又は複数のアクティブ特異的変異(例えば点変異)を有する非内在性CenH3タンパク質の発現と組み合わせた内在性CenH3の除去又は破壊が、育種のために有用な性質を有する植物をもたらすことを見出した。そのような植物は半数体インデューサー系統として機能することができることが見出された。そのような半数体インデューサー系統が、内在性CenH3タンパク質を有する植物と交配される場合、結果として生じる後代の一部は、半数体インデューサー系統由来の染色体を欠いており、それによって半数体後代又は異常な倍数性(すなわち体細胞における正常でない数の染色体組)を有する後代の産生を可能とする。半数体植物は育種を改善するために有用である。
有糸分裂におけるDNAの等しい分配は、キネトコアと呼ばれる、大きなタンパク質性集合体のセントロメアDNAへの構築を必要とする。キネトコアは、セントロメアに集合して、紡錘体微小管を結合し、細胞分裂の間の正確な染色体分離を促進するマルチサブユニットの複合体である。構成的セントロメア関連ネットワーク(CCAN)と名付けられた16サブユニットの複合体が、セントロメア−キネトコア界面を作り出す。CCANサブユニットであるCenH3は、セントロメアをキネトコアの微小管結合界面と連結するため、キネトコアの構築にとって極めて重要である。CCAN機構におけるCenH3の正確な役割はいまだ完全に理解されていない。CenH3が枯渇しているか、又は不在であるか、又は機能不全である場合、セントロメア及びキネトコアの両方の適切な形成が阻止される。
より詳細には、本発明者らは、驚くべきことに、修飾されたCenH3タンパク質を有する、すなわち、本明細書に教示されているN末端テールドメインに1つ又は複数のアクティブ特異的変異(例えば、点変異)を含む植物が、CenH3タンパク質においてこれらの特定の変異を欠く野生型植物への交配又はそれとの交配の後、半数体子孫を誘導できることを見出した。
任意の数のアクティブ変異(例えば、点変異)は、半数体植物を生成することができるアクティブ変異CenH3タンパク質を生成するためにCenH3タンパク質又はCenH3タンパク質をコードする遺伝子に導入することができると考えられた。しかしながら、このことは、CenH3タンパク質又は遺伝子における全ての変異がアクティブ変異になる、すなわち半数体植物の産生をもたらすとは限らないので、当てはまらない。このことは、CenH3タンパク質又はCenH3タンパク質をコードする遺伝子のN末端テールドメインにおける変異又は変更に特に当てはまる。今まで、植物におけるCenH3タンパク質の全N末端テールの不活性化(例えば、テールスワップを使用する)は、半数体植物を生成する目的で、片親ゲノムの除去を引き起こすために使用されてきた。CenH3タンパク質又はそれをコードするCenH3遺伝子のN末端テールドメインにおける1つのアクティブ特異的変異(例えば、点変異)が、半数体植物を生成するのに十分であるかどうかは知られていなかった。このことは、CenH3タンパク質のN末端テールドメインが、(密接に関連したものでさえ)種間で非常に変動しやすく、N末端テールのどの部分又はどの種類の変異が所望の効果をもたらすか、すなわち半数体植物を生成するかについての指標がなかったためである。全体として、このことは、所与の変異、特にアミノ酸の単一の変化を引き起こす点変異が、所与の植物において何らかの効果を有するかどうか、すなわち、半数体植物の産生をもたらすかどうかを特定及び/又は予測することを困難で、労働集約的で、時間のかかるものにした。
本発明者らは、CenH3タンパク質のN−テールドメインの特定の領域における特定の点変異の導入が半数体植物を生成するのに十分であることを見出した。詳細には、本発明者らは、このような修飾されたCenH3タンパク質を含み、機能的(例えば、内在性)CenH3タンパク質を欠く植物を、半数体インデューサー植物を、内在性CenH3タンパク質を含む植物と交配することによって半数体後代を生成するために1つの親ゲノムの除去を効果的に引き起こすための「半数体インデューサー植物」として使用することができることを見出した。
言い換えれば、本発明者らは、本明細書に教示されているCenH3タンパク質において単一のアミノ酸の変化を引き起こす、本明細書に教示されている1つ又は複数のアクティブ特異的変異(例えば点変異)を単に導入することによって、天然の2倍体植物細胞を半数体細胞に変換するための信頼でき、効率的で、迅速な手段を見出した。本発明の方法は、本明細書に教示されている1つ又は複数のアクティブ特異的変異を組み込むために使用されるCenH3のN−テールドメインにおける領域が、全ての植物にわたって普遍的であるので、多種多様な作物植物に適用可能である。
アクティブ変異を有するCenH3タンパク質
第1の態様では、本発明は、CenH3タンパク質のN末端テールドメインに1つ又は複数のアクティブ変異、例えば、単一のアミノ酸の変化を引き起こす点変異を含む植物起源のCenH3タンパク質に関する。
1つ又は複数のアクティブ変異を有し、内在性CenH3タンパク質の発現を欠く又はその発現が抑制されている、このようなCenH3タンパク質を発現する植物が、内在性CenH3タンパク質又は機能的CenH3タンパク質を発現する野生型植物へ交配された場合、比較的高い頻度で半数体植物(又は異常な倍数性を有する植物)が形成される。本明細書に教示されているN末端テールドメインに1つ又は複数のアクティブ変異を有するCenH3タンパク質は、当業者に公知の様々な手段によって創出することができる。それらの手段には、限定されないが、ランダム変異誘発、単一又は複数のアミノ酸標的化変異誘発、完全又は部分的なタンパク質ドメイン欠失の生成、異種アミノ酸配列との融合等が含まれる。典型的に、このような植物において、内在性CenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、ノックアウトされるか、又は不活性化される。半数体植物は、少なくとも0.1、0.5、1、5、10、20%又はそれ以上のような、正常な頻度を超えて形成される。1つ又は複数のアクティブ変異を有するCenH3タンパク質及びそのバリアントは、例えば、内在性CenH3タンパク質を欠く植物における1つ又は複数のアクティブ変異を有するCenH3タンパク質の組換え発現、トランスジェニック植物を内在性CenH3タンパク質又は機能的CenH3タンパク質を発現する植物へ交配すること、次いで、半数体後代の産生についてスクリーニングすることによって試験することができる。
本明細書に教示されている植物CenH3タンパク質及びそのバリアントは、任意の植物CenH3タンパク質であってもよい。好ましい実施形態では、植物CenH3タンパク質は、ナス科、より好ましくはナス属、更により好ましくはソラナム・リコペルシカム種に属する。
一実施形態では、本明細書に教示されているCenH3タンパク質は、N末端テールドメインにおける植物コンセンサスCenH3モチーフブロック1ドメインに位置する1つ又は複数のアクティブ特異的変異(例えば、単一のアミノ酸の変化を引き起こす点変異)を含んでもよい。本明細書に使用されている場合、「植物CenH3コンセンサスモチーフブロック1ドメインタンパク質配列」という用語は、全ての植物種の間で高度に保存されているCenH3タンパク質のN−テールドメインに位置する配列保存のモジュラーパターン(すなわち、コンセンサス配列)を指す。そのアミノ酸配列は配列番号4に示されている。CenH3遺伝子及びタンパク質のN−テールドメインのアミノ酸配列及び長さの両方における超可変性にも関わらず、保存されたタンパク質配列の7つのストレッチ(「モチーフブロック1〜7」と称される)が、種々の植物のCenH3タンパク質のN末端テールにおいて同定された(Maheshwariら、(2015年)PLOS Genetics、DOI:10.1371/journal.pgen.1004970、1〜20頁)。モチーフブロック1は、ほぼ全ての植物CenH3タンパク質において同定されている。従って、一実施形態では、植物CenH3コンセンサスモチーフブロック1ドメインタンパク質配列(配列番号4)は、植物CenH3 DH−インデューサーモチーフブロック1ドメインタンパク質配列として使用することができる。本明細書に使用されている場合、「植物CenH3 DH−インデューサーモチーフブロック1ドメインタンパク質配列」という用語は、配列番号4のアミノ酸配列に1つ又は複数のアクティブ変異(例えば点変異)を含む、上記に教示されている「植物CenH3コンセンサスモチーフブロック1ドメインタンパク質配列」を指す。植物に存在する場合、1つ又は複数のアクティブ変異を有する植物CenH3 DH−インデューサーモチーフブロック1ドメインタンパク質配列は、前記植物が、野生型植物、好ましくは同じ種の野生型植物と交配される場合、いくつかの半数体後代、又は異常な倍数性を有する後代の生成を可能とする。
一実施形態では、本明細書に教示されているCenH3タンパク質は、植物CenH3コンセンサスタンパク質配列に1つ又は複数のアクティブ特異的変異(例えば、単一のアミノ酸の変化を引き起こす点変異)を含んでもよい。本明細書に使用されている場合、「植物CenH3コンセンサスタンパク質配列」という用語は、全ての植物種の間で高度に保存されているCenH3タンパク質の特定の領域を指し、そのアミノ酸配列は配列番号1に示されている。従って、一実施形態では、植物CenH3コンセンサスタンパク質配列(配列番号1)を、植物CenH3 DH−インデューサータンパク質配列として使用することができる。本明細書に使用されている場合、「植物CenH3 DH−インデューサータンパク質配列」という用語は、配列番号1のアミノ酸配列に1つ又は複数のアクティブ変異(例えば点変異)を含む、上記に教示されている植物CenH3コンセンサスタンパク質配列を指す。植物に存在する場合、1つ又は複数のアクティブ変異を有する植物CenH3 DH−インデューサータンパク質配列は、前記植物が、野生型植物、好ましくは同じ種の野生型植物と交配される場合、半数体後代、又は異常な倍数性を有する後代の生成を可能とする。
一実施形態では、本明細書に教示されているCenH3タンパク質は、ナス科CenH3コンセンサスタンパク質配列に位置する1つ又は複数のアクティブ特異的変異(例えば、単一のアミノ酸の変化を引き起こす点変異)を含んでもよい。本明細書に使用されている場合、「ナス科CenH3コンセンサスタンパク質配列」という用語は、ナス種(例えば、ソラナム・リコペルシカム、タバコ(Nicotiana tabacum)、ニコチアナ・トメントシホルミス(Nicotiana tomentosiformis)、トウガラシ(Capsicum annuum)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)及びソラナム・フルテスケンス(Solanum frutescence))の間で高度に保存されているナス植物科に属する種由来のCenH3タンパク質を指し、そのアミノ酸配列は配列番号2に示されている。従って、一実施形態では、ナス科CenH3コンセンサスタンパク質配列(配列番号2)は、ナス科CenH3 DH−インデューサータンパク質配列として使用することができる。本明細書に使用されている場合、「ナス科CenH3 DH−インデューサータンパク質配列」という用語は、配列番号2のアミノ酸配列に1つ又は複数のアクティブ変異(例えば点変異)を含む、上記に教示されているナス科CenH3コンセンサスタンパク質配列を指す。植物に存在する場合、1つ又は複数のアクティブ変異を有するナス科CenH3 DH−インデューサータンパク質配列は、前記植物が、野生型植物、好ましくは同じ種の野生型植物と交配される場合、半数体後代、又は異常な倍数性を有する後代の生成を可能とする。
一実施形態では、本明細書に教示されているCenH3タンパク質は、ナス科CenH3コンセンサスモチーフブロック1タンパク質配列に位置する1つ又は複数のアクティブ特異的変異(例えば、単一のアミノ酸の変化を引き起こす点変異)を含んでもよい。本明細書に使用されている場合、「ナス科CenH3コンセンサスモチーフブロック1タンパク質配列」という用語は、ナス植物属に属する種由来のCenH3タンパク質のN−テールドメインに位置する配列保存のモジュラーパターン(すなわちコンセンサス配列)を指す。それは、ナス種(例えば、ソラナム・リコペルシカム、タバコ、ニコチアナ・トメントシホルミス、トウガラシ、ジャガイモ及びソラナム・フルテスケンス)の間で高度に保存されており、そのアミノ酸配列は配列番号5として示されている。従って、一実施形態では、ナス科CenH3コンセンサスモチーフブロック1タンパク質配列(配列番号5)は、ナス科CenH3 DH−インデューサーモチーフブロック1タンパク質配列として使用することができる。本明細書に使用されている場合、「ナス科CenH3 DH−インデューサーモチーフブロック1タンパク質配列」という用語は、配列番号5のアミノ酸配列に1つ又は複数のアクティブ変異(例えば点変異)を含む、上記に教示されているナス科CenH3コンセンサスモチーフブロック1タンパク質配列を指す。植物に存在する場合、1つ又は複数のアクティブ変異を有する「ナス科CenH3 DH−インデューサーモチーフブロック1タンパク質配列」は、前記植物が、野生型植物、好ましくは同じ種の野生型植物と交配される場合、いくつかの半数体後代、又は異常な倍数性を有する後代の生成を可能とする。
一実施形態では、本明細書に教示されているCenH3タンパク質は、1つ又は複数のアクティブ変異を含んでもよく、1つ又は複数のアクティブ変異は、
a)配列番号1のアミノ酸配列、又は配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントを含むタンパク質、
b)配列番号4のアミノ酸配列を含むタンパク質、
c)配列番号2のアミノ酸配列、又は配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントを含むタンパク質、或いは
d)配列番号5のアミノ酸配列を含むタンパク質
に存在する。
好ましい実施形態では、本明細書に教示されているCenH3タンパク質は、
a)配列番号1のアミノ酸配列、又は配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントの10位におけるアミノ酸残基におけるアクティブ変異、
b)配列番号4のアミノ酸配列の10位におけるアミノ酸残基におけるアクティブ変異、
c)配列番号2のアミノ酸配列、又は配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントの9位若しくは10位におけるアミノ酸残基におけるアクティブ変異、或いは
d)配列番号5のアミノ酸配列の9位若しくは10位におけるアミノ酸残基におけるアクティブ変異
からなる1つのアクティブ変異を含んでもよい。
好ましい実施形態では、選択肢c)におけるアクティブ変異は、配列番号2のアミノ酸配列、又は配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントの9位におけるアミノ酸残基にある。
更なる好ましい実施形態では、選択肢d)におけるアクティブ変異は、配列番号5のアミノ酸配列の9位におけるアミノ酸残基にある。
一実施形態では、上記に教示されている9位又は10位のそれぞれにおいて変異されているアミノ酸は、リシン又はアルギニンであってもよい。
一実施形態では、上記に教示されている9位又は10位のそれぞれにおけるアミノ酸残基は、リシン、アルギニン又はヒスチジンを除く任意のアミノ酸に修飾されてもよい。
好ましい実施形態では、上記に教示されている9位又は10位のそれぞれにおけるアミノ酸残基は、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基に修飾されてもよい。
更なる好ましい実施形態では、上記に教示されている9位又は10位のそれぞれにおけるアミノ酸残基は、グルタミン酸又はアスパラギン酸残基に修飾されてもよい。そのような修飾は、この位置におけるアミノ酸残基の電荷を(正から負に)変化させ、高度に適した、すなわち半数体又は倍加半数体植物の生成に適したアクティブ変異であることが見出された。
一実施形態では、本明細書に教示されている植物起源のCenH3タンパク質は、9位におけるアミノ酸残基が、リシン、アルギニン又はヒスチジンを除く任意のアミノ酸に修飾されている、配列番号3のアミノ酸配列(すなわちソラナム・リコペルシカムCenH3タンパク質アミノ酸配列)又は配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントを含んでもよい。そのようなタンパク質はまた、本明細書において「ソラナム・リコペルシカムCenH3変異体」としても表示されている。
好ましい実施形態では、9位におけるアミノ酸残基は、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基に修飾されている。
更なる好ましい実施形態では、9位におけるアミノ酸残基は、グルタミン酸又はアスパラギン酸残基から選択されるアミノ酸残基に修飾されている。そのような修飾は、この位置におけるアミノ酸残基の電荷を(正から負に)変化させ、高度に適したアクティブ変異、すなわち半数体又は倍加半数体植物の生成に適したアクティブ変異であることが見出された。
一実施形態では、本明細書に教示されており、9位におけるアミノ酸残基が上記に教示されている異なるアミノ酸に修飾されている、配列番号3のアミノ酸配列又はそのバリアントを含むCenH3タンパク質は、配列番号6の核酸配列の25〜27位又は配列番号9の核酸配列の25〜27位における1つ又は複数のヌクレオチドが変異されて、リシン、アルギニン又はヒスチジンを除く任意のアミノ酸、好ましくはグルタミン酸又はアスパラギン酸残基に翻訳するコドンを形成している、配列番号6又は配列番号9の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされてもよい。
一実施形態では、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5又は配列番号12のアミノ酸配列に対する配列同一性のパーセンテージは、好ましくは、全長にわたっている。アミノ酸配列同一性は、任意の公知の方法によって、例えば、上記に定義されているNeedleman及びWunschアルゴリズム並びにGAPデフォルトパラメータを使用したペアワイズアラインメントによって決定することができる。
一実施形態では、配列番号6、配列番号9、配列番号16又は配列番号20のヌクレオチド配列に対する配列同一性のパーセンテージは、好ましくは、全長にわたっている。ヌクレオチド配列同一性は、任意の公知の方法によって、例えば、上記に定義されているNeedleman及びWunschアルゴリズム並びにGAPデフォルトパラメータを使用したペアワイズアラインメントによって決定することができる。
一実施形態では、本明細書に教示されている植物起源のCenH3タンパク質は、配列番号8のアミノ酸配列を含んでもよい。
本明細書に使用されている場合、「ソラナム・リコペルシカムCenH3_K9Eアミノ酸配列」という用語は、リシンのグルタミン酸塩への修飾を引き起こす、配列番号8の9位におけるアミノ酸残基に単一の点変異を含む変異体ソラナム・リコペルシカムCenH3タンパク質アミノ酸配列を指す。本発明者らは、変異体ソラナム・リコペルシカムCenH3_K9Eアミノ酸配列(配列番号8)が、例えば植物育種プログラムにおいてソラナム・リコペルシカムCenH3_K9E DH−インデューサータンパク質配列としての使用に特に有益であることを見出した。植物に存在する場合、ソラナム・リコペルシカムCenH3_K9E DH−インデューサータンパク質配列は、前記植物が、野生型植物、好ましくは同じ種の野生型植物と交配される場合、従来の方法によって達成される割合より特に高い割合で、半数体後代、又は異常な倍数性を有する後代の生成を可能とすることが見出された。
一実施形態では、ソラナム・リコペルシカムCenH3_K9Eアミノ酸配列(配列番号8)は、植物に存在する場合、及び前記植物が、野生型植物、好ましくは同じ種の野生型植物と交配される場合、生成される後代の少なくとも0.1、0.5、1又は5%は半数体であるか、又は異常な倍数性を有する。
上記に教示されているソラナム・リコペルシカムCenH3_K9E CenH3タンパク質は、配列番号7又は配列番号10の核酸配列によってコードされてもよい。
一実施形態では、本明細書に教示されているCenH3タンパク質は、単子葉植物CenH3コンセンサスタンパク質配列に位置する1つ又は複数のアクティブ特異的変異(例えば、単一のアミノ酸の変化を引き起こす点変異)を含んでもよい。本明細書に使用されている場合、「単子葉植物CenH3コンセンサスタンパク質配列」という用語は、単子葉植物種(例えば、タマネギ(Allium cepa)、ネギ(Allium fistulosum)、ニンニク(Allium sativum)、ニラ(Allium tuberosum)、ホルデウム・ブルボサム(Hordeum bulbosum)、オオムギ(Hordeum vulgare)、ルズラ・ニヴェア(Luzula nivea)、オリザ・サティバ、パニカム・バーゲータム(Panicum virgatum)、サトウキビ(Saccharum officinarum)、アワ(Setaria italic)、モロコシ(Sorghum bicolor)、トウモロコシ(Zea mays))の間で高度に保存されている単子葉植物科に属する種由来のCenH3タンパク質を指し、そのアミノ酸配列は配列番号11に示されている。従って、一実施形態では、単子葉植物CenH3コンセンサスタンパク質配列(配列番号11)は、単子葉植物CenH3 DH−インデューサータンパク質配列として使用することができる。本明細書に使用されている場合、「単子葉植物CenH3 DH−インデューサータンパク質配列」という用語は、配列番号11のアミノ酸配列に1つ又は複数のアクティブ変異(例えば点変異)を含む上記に教示されている単子葉植物CenH3コンセンサスタンパク質配列を指す。植物に存在する場合、1つ又は複数のアクティブ変異を有する単子葉植物CenH3 DH−インデューサータンパク質配列は、前記植物が、野生型植物、好ましくは同じ種の野生型植物と交配される場合、半数体後代、又は異常な倍数性を有する後代の生成を可能とする。
一実施形態では、植物CenH3タンパク質及びそのバリアントは、単子葉植物CenH3タンパク質及びそのバリアント、好ましくは、イネ科(Poaceae)、より好ましくはオリザ属、更により好ましくはオリザ・サティバ種、更により好ましくはオリザ・サティバL.spp.ジャポニカの亜種に属する単子葉植物CenH3タンパク質であってもよい。
一実施形態では、本明細書に教示されているCenH3タンパク質は、
a)配列番号11のアミノ酸配列、又は配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントを含むタンパク質、或いは
b)配列番号4のアミノ酸配列を含むタンパク質
に存在する、1つ又は複数のアクティブ変異を含んでもよい。
好ましい実施形態では、本明細書に教示されているCenH3タンパク質は、
a)配列番号11のアミノ酸配列、又は配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントの9位におけるアミノ酸残基におけるアクティブ変異、
b)配列番号11のアミノ酸配列、又は配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントの12位におけるアミノ酸残基におけるアクティブ変異、
c)配列番号11のアミノ酸配列、又は配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントの22位におけるアミノ酸残基におけるアクティブ変異、或いは
d)配列番号4のアミノ酸配列の9位におけるアミノ酸残基におけるアクティブ変異
からなる1つのアクティブ変異を含んでもよい。
更なる好ましい実施形態では、本明細書に教示されているCenH3タンパク質は、
a)配列番号12のアミノ酸配列、又は配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントの9位におけるアミノ酸残基におけるアクティブ変異、
b)配列番号12のアミノ酸配列、又は配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントの16位におけるアミノ酸残基におけるアクティブ変異、或いは
c)配列番号12のアミノ酸配列、又は配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントの26位におけるアミノ酸残基におけるアクティブ変異
からなる1つのアクティブ変異を含んでもよい。
この実施形態のタンパク質はまた、本明細書において「オリザ・サティバCenH3変異体」としても表示される。
本明細書上記に教示されている配列番号11若しくは配列番号12のアミノ酸配列、又はそれらのバリアントの9位におけるアクティブ変異は、メチオニン、セリン及びトレオニンからなる群から選択されるアミノ酸残基への修飾をもたらすのが好ましく、メチオニンへの修飾をもたらすのがより好ましい。
本明細書上記に教示されている配列番号11のアミノ酸配列の12位又は配列番号12のアミノ酸配列、若しくはそのバリアントの16位におけるアクティブ変異は、メチオニン、セリン及びトレオニンからなる群から選択されるアミノ酸残基への修飾をもたらすのが好ましく、セリンへの修飾をもたらすのがより好ましい。
本明細書上記に教示されている配列番号11のアミノ酸配列の22位又は配列番号12のアミノ酸配列、若しくはそのバリアントの26位におけるアクティブ変異は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基への修飾をもたらすのが好ましく、ロイシンへの修飾をもたらすのがより好ましい。
本明細書に教示されているアクティブ特異的変異を有するCenH3タンパク質は、配列番号13、配列番号14又は配列番号15によって表されるアミノ酸配列を有してもよい。
本明細書に使用されている場合、「オリザ・サティバCenH3_V9Mアミノ酸配列」という用語は、バリンのメチオニンへの修飾を引き起こす、配列番号13の9位におけるアミノ酸残基に単一の点変異を含む変異体オリザ・サティバCenH3タンパク質アミノ酸配列を指す。
本明細書に使用されている場合、「オリザ・サティバCenH3_P16Sアミノ酸配列」という用語は、プロリンのセリンへの修飾を引き起こす、配列番号14の16位におけるアミノ酸残基に単一の点変異を含む変異体オリザ・サティバCenH3タンパク質アミノ酸配列を指す。
本明細書に使用されている場合、「オリザ・サティバCenH3_P26Lアミノ酸配列」という用語は、プロリンのロイシンへの修飾を引き起こす、配列番号14の26位におけるアミノ酸残基に単一の点変異を含む変異体オリザ・サティバCenH3タンパク質アミノ酸配列を指す。
オリザ・サティバCenH3_V9Mアミノ酸配列、オリザ・サティバCenH3_P16Sアミノ酸配列、オリザ・サティバCenH3_P26Lアミノ酸配列は、半数体後代、又は異常な倍数性を有する後代を生成するための、例えば植物育種プログラムにおけるDH−インデューサータンパク質配列としての使用のために特に有益である。
一実施形態では、オリザ・サティバCenH3_V9Mアミノ酸配列(配列番号13)は、植物に存在する場合、及び前記植物が、野生型植物、好ましくは同じ種の野生型植物と交配される場合、生成される後代の少なくとも0.1、0.5、1又は5%は、半数体であるか、又は異常な倍数性を有する。一実施形態では、オリザ・サティバCenH3_P16Sアミノ酸配列(配列番号14)は、植物に存在する場合、及び前記植物が、野生型植物、好ましくは同じ種の野生型植物と交配される場合、生成される後代の少なくとも0.1、0.5、1又は5%は、半数体であるか、又は異常な倍数性を有する。一実施形態では、オリザ・サティバCenH3_P26Lアミノ酸配列(配列番号15)は、植物に存在する場合、及び前記植物が、野生型植物、好ましくは同じ種の野生型植物と交配される場合、生成される後代の少なくとも0.1、0.5、1又は5%は、半数体であるか、又は異常な倍数性を有する。
一実施形態では、上記に教示されている1つ又は複数のアクティブ特異的変異を有するCenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチドによってコードされる、本明細書に教示されているCenH3タンパク質又はそのバリアントは、植物の内在性CenH3をコードするポリヌクレオチド及び/又は内在性CenH3タンパク質の非存在下で植物に存在する場合、前記植物が生存することを可能とし、前記植物が野生型植物と交配される場合、いくつかの半数体後代、又は異常な倍数性を有する後代の生成を可能とする。
一実施形態では、本明細書に教示されているCenH3タンパク質又はそのバリアントのいずれか1つは、標的化ヌクレオチド交換を使用して前記内在性CenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチドに1つ又は複数のアクティブ変異を導入することによって、又は例えばin vitroでエンドヌクレアーゼを適用することによって内在性CenH3タンパク質に由来してもよい。このことは、例えば、標的化ヌクレオチド交換を使用して内在性CenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチド(CenH3遺伝子)の1つ又は両方のアレルにおける1つ又は複数のアクティブ変異を植物細胞(例えば、プロトプラスト)に導入することによって、又はエンドヌクレアーゼを適用することによって非トランスジェニック植物を生成し、次いで植物細胞を植物内で生育させるのに特に有益であることができる。
好ましい実施形態では、本明細書に教示されているCenH3タンパク質又はCenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチド及びそのバリアントにおける1つ又は複数のアクティブ特異的変異は点変異であり、すなわちアミノ酸配列又は核酸配列における特定の位置において単一のアミノ酸の変化を引き起こす。
一実施形態では、CenH3タンパク質は、タンパク質の他の部分、例えばC末端ドメインにおける変異を更に含む。このような更なる変異は、例えば、Karimi−Ashtiyaniら、(2015年)PNAS Vol:112、11211〜11216頁及びKuppuら、PLOS Genetics(2015年)http://dx.doi.org/10.1371/journal.pgen.1005494に記載されており、それらは参照により本明細書に組み込まれる。
アクティブ変異を有するCenH3をコードするポリヌクレオチド、キメラ遺伝子、ベクター及び宿主細胞
更なる態様では、本発明は、上記に教示されているCenH3タンパク質のいずれか1つをコードするCenH3をコードするポリヌクレオチド及びそのバリアントに関する。
特に、上記のCenH3タンパク質のいずれかをコードする、cDNA、ゲノムDNA及びRNA分子のような核酸配列を有するポリヌクレオチド又はそのバリアントが提供される。遺伝コードの縮重に起因して、様々な核酸配列が同じアミノ酸配列をコードすることができる。本発明において、本明細書に教示されているCenH3タンパク質をコードすることができる任意のポリヌクレオチド又はそのバリアントは、「CenH3をコードするポリヌクレオチド」と称される。提供されるポリヌクレオチドは、天然に存在する、人工又は合成の核酸配列を含む。配列はDNA配列として示されるが、RNAが言及される場合、RNA分子の実際の塩基配列は、チミン(T)がウラシル(U)に置換されているという相違以外は同一であると理解される。
本発明は更に、本明細書に教示されているアクティブ変異を有するCenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチドに関する。前記ポリヌクレオチドは、合成、組換え及び/又は単離されたポリヌクレオチドであってもよい。
一実施形態では、本明細書に教示されているCenH3をコードするポリヌクレオチドは、配列番号6若しくは配列番号9の核酸配列、又は配列番号6若しくは配列番号9の核酸配列に対して、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントを含むポリヌクレオチドであってもよく、配列番号6の核酸配列の25〜27位又は配列番号9の核酸配列の25〜27位における1つ又は複数のヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが植物CenH3タンパク質をコードするように修飾されており、配列番号2のアミノ酸配列は9位若しくは10位、好ましくは9位において変更された残基を有するか、又は配列番号3は9位において変更された残基を有する。
一実施形態では、上記に教示されているCenH3をコードするポリヌクレオチドの9位又は10位における残基は、リシン、アルギニン又はヒスチジンを除く任意のアミノ酸に変更されてもよい。好ましい実施形態では、上記に教示されているCenH3をコードするポリヌクレオチドの9位又は10位における残基は、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基に変更されてもよい。
好ましい実施形態では、上記に教示されているCenH3をコードするポリヌクレオチドの9位又は10位における残基は、グルタミン酸又はアスパラギン酸残基から選択されるアミノ酸残基に変更されてもよい。
一実施形態では、本明細書に教示されているCenH3をコードするポリヌクレオチドは、配列番号7又は配列番号10の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであってもよい。
植物又は植物細胞(例えば原形質)に存在する場合、1つ若しくは複数のアクティブ変異又は本明細書に教示されている前記ポリヌクレオチド若しくはそのバリアントによってコードされるタンパク質を含む本明細書に教示されているCenH3をコードするポリヌクレオチド及びそのバリアント(すなわち配列番号6、配列番号7、配列番号9及び配列番号10)は、前記植物又は植物細胞における内在性CenH3タンパク質のCenH3活性の90、80、70、60、50、40、30、20、10%、5%、4%、3%、2%又は1%未満まで内在性CenH3活性を低減又は除去することができる。CenH3活性は、例えば、蛍光のレベルがCenH3活性の尺度である、GFP融合を使用して、染色体の分離の間のセントロメア局在を測定することによってin vitroで測定することができる。或いは、酵母−2−ハイブリッド相互作用を、CenH3タンパク質と相互作用する全ての公知のタンパク質及び/又はセントロメアDNAを使用してin vitroで測定することができる。相互作用が損なわれる場合、CenH3の機能性は損なわれる。
一実施形態では、本発明は、配列番号6若しくは配列番号9の核酸配列、又は配列番号6若しくは配列番号9の核酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCenH3ポリヌクレオチドに関するが、配列番号6の核酸配列の25〜27位又は配列番号9の核酸配列の25〜27位における1つ若しくは複数のヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが植物CenH3タンパク質をコードするように修飾されており、配列番号2又は配列番号3のアミノ酸配列は、本明細書上記に教示されているように9位又は10位、好ましくは9位において変更された残基を有し、その残基は、リシン、アルギニン又はヒスチジンを除く任意のアミノ酸に変更されている。好ましい実施形態では、変更された残基は、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基、好ましくはグルタミン酸又はアスパラギン酸残基に変更されている。
一実施形態では、本明細書上記に教示されているソラナム・リコペルシカムCenH3タンパク質(配列番号3)は、配列番号6又は配列番号9の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされてもよく、配列番号6の核酸配列の25〜27位又は配列番号9の核酸配列の25〜27位における1つ又は複数のヌクレオチドは変異されている。一実施形態では、前記変異は、本明細書に教示されている配列番号3又はそのバリアントの9位における対応するCenH3タンパク質に単一のアミノ酸変化を引き起こす。9位におけるアミノ酸残基は、リシン、アルギニン又はヒスチジンを除く任意のアミノ酸に置換又は変更されてもよい。好ましい実施形態では、9位におけるアミノ酸残基は、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸によって、好ましくはグルタミン酸又はアスパラギン酸残基によって置換されている。
一実施形態では、本発明は、配列番号7又は配列番号10の核酸配列を含み、本明細書に教示されているソラナム・リコペルシカムCenH3_K9Eタンパク質(配列番号8)をコードするCenH3ポリヌクレオチドに関する。
更なる実施形態では、本明細書に教示されているCenH3をコードするポリヌクレオチドは、配列番号16若しくは配列番号20の核酸配列、又は配列番号16若しくは配列番号20の核酸配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、なお更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するそのバリアントを含むポリヌクレオチドであってもよく、配列番号16の核酸配列の25〜27位若しくは46〜48位若しくは76〜78位、又はそれらの組合せ、或いは配列番号20の核酸配列の25〜27位若しくは46〜48位若しくは76〜78位、又はそれらの組合せにおける1つ又は複数のヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが植物CenH3タンパク質をコードするように修飾されており、配列番号11のアミノ酸配列は、好ましくは、ポリヌクレオチドが植物CenH3タンパク質をコードするように、9位、12位及び/又は22位において変更された残基を有し、配列番号12のアミノ酸配列は、9位、16位若しくは26位、又はそれらの組合せにおいて変更された残基を有する。CenH3をコードするポリヌクレオチドの9位における前記変更された残基は、メチオニン、セリン及びトレオニンからなる群から選択されるアミノ酸残基に変更されているのが好ましく、メチオニンに変更されているのがより好ましい。CenH3をコードするポリヌクレオチドの12位又は16位における前記変更された残基は、メチオニン、セリン及びトレオニンからなる群から選択されるアミノ酸残基に変更されているのが好ましく、セリンに変更されているのがより好ましい。CenH3をコードするポリヌクレオチドの22位又は26位における前記変更された残基は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基に変更されているのが好ましく、ロイシンに変更されているのがより好ましい。
本明細書に教示されているCenH3をコードするポリヌクレオチドは、配列番号17若しくは配列番号21の核酸配列を含み、本明細書に教示されているオリザ・サティバCenH3_V9Mタンパク質(配列番号13)をコードするCenH3ポリヌクレオチド;又は配列番号18若しくは配列番号22の核酸配列を含み、本明細書に教示されているオリザ・サティバCenH3_P16Sタンパク質(配列番号14)をコードするCenH3ポリヌクレオチド;又は配列番号19若しくは配列番号23の核酸配列を含み、本明細書に教示されているオリザ・サティバCenH3_P26Lタンパク質(配列番号15)をコードするCenH3ポリヌクレオチドに関するのが好ましい。
一実施形態では、本明細書に教示されているアクティブ変異を有するCenH3をコードするポリヌクレオチドが単離される。本明細書に使用されている場合、「単離されたCenH3をコードするポリヌクレオチド」という用語は、天然の植物配列又はタンパク質、例えば、リボソーム、ポリメラーゼ、多くの他の植物ゲノム配列及びタンパク質を天然に伴う他の細胞成分から実質的に分離されている核酸を指す。この用語は、その天然に存在している環境から除去されている核酸配列を包含し、組換え又はクローニングされた核酸単離物及び化学的に合成された類似体又は異種系によって生物学的に合成された類似体を含む。
更なる態様では、本発明は、上記に教示されているCenH3をコードするポリヌクレオチドのいずれか1つを含むキメラ遺伝子に関する。
更なる態様では、本発明は、上記に教示されているCenH3をコードするポリヌクレオチドのいずれか1つ又は本明細書に教示されているキメラ遺伝子を含むベクターに関する。
更なる態様では、本発明は、上記に教示されているCenH3をコードするポリヌクレオチドのいずれか1つ又は本明細書に教示されているキメラ遺伝子又は本明細書に教示されているベクターを含む宿主細胞に関する。一実施形態では、宿主細胞は、植物細胞、好ましくはトマト植物細胞、又はプロトプラストである。
一実施形態では、上記に教示されているCenH3をコードするポリヌクレオチド及び上記のそのバリアントは、CenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞への移入及び形質転換細胞(複数可)に由来する細胞、組織、器官又は生物のような宿主細胞におけるCenH3タンパク質(複数可)の産生のためのキメラ遺伝子及び/又はベクターを作製するのに特に有益であることができる。植物細胞における本明細書に教示されているCenH3タンパク質(又はそのタンパク質断片若しくはバリアント)の産生のためのベクターは、本明細書において「発現ベクター」と称される。
CenH3タンパク質の発現のための好適な宿主細胞には、原核生物、酵母又は高等真核細胞が含まれる。細菌、真菌、酵母及び哺乳動物細胞宿主と共に使用するのに適したクローニング及び発現ベクターは、例えば、Pouwelsら、Cloning vectors:A Laboratory Manual、Elsevier、N.Y.、(1985年)に記載されている。本明細書に開示されている核酸配列に由来するRNAを使用して本発明のタンパク質を産生するために、無細胞翻訳システムも利用することができる。
好適な原核生物宿主細胞には、グラム陰性及びグラム陽性生物、例えば、大腸菌(Escherichia coli)又は桿菌が含まれる。別の好適な原核生物宿主細胞は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、特にアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)である。
本明細書に教示されているCenH3タンパク質は、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))由来の酵母宿主細胞においても発現することができる。ピキア(Pichia)又はクリベロミセス(Kluyveromyces)のような他の酵母属も利用することができる。
或いは、本明細書に教示されているCenH3タンパク質は、植物細胞、真菌細胞、昆虫細胞及び哺乳動物細胞、任意選択で非ヒト細胞を含む、高等真核生物宿主細胞において発現されてもよい。
一実施形態では、本発明は、本明細書に教示されているCenH3ポリヌクレオチドを含むように修飾されている非ヒト生物に関する。非ヒト生物及び/又は宿主細胞は、例えば、脂質及びウイルスベクターのような送達デバイスの使用、裸のDNA、エレクトロポレーション、化学的方法及び粒子媒介性遺伝子移入を含む、遺伝子移入のための当該技術分野において公知の任意の方法によって修飾されてもよい。有益な実施形態では、非ヒト生物は植物である。
任意の植物細胞は好適な宿主細胞であってもよい。好適な植物細胞には、単子葉植物又は双子葉植物由来のものが含まれる。例えば、植物は、ナス属(トマト属(Lycopersicon)を含む)、タバコ属、トウガラシ属、ペチュニア属及び他の属に属してもよい。以下の宿主種:タバコ(ニコチアナ種、例えば、N.ベンサミアナ(N.benthamiana)、N.プルムバギニフォリア(N.plumbaginifolia)、N.タバクム(N.tabacum)等)、例えば、チェリートマト、セラシフォルム(cerasiforme)変種又はカラントトマト、ピンピネリフォリウム(pimpinellifolium変種)又はツリートマト(タマリロ(S.betaceum)、キフォマンドラ・ベタケア(Cyphomandra betaceae)の同義語)、ジャガイモ(ソラナム・ツベロサム(Solanum tuberosum))、ナス(ソラナム・メロンゲナ(Solanum melongena))、ペピーノ(ソラナム・ムリカツム(Solanum muricatum))、ココナ(ソラナム・セシリフロラム(Solanum sessiliflorum))及びナランジラ(ソラナム・キトエンセ(Solanum quitoense))、ペッパー(トウガラシ(Capsicum annuum)、キダチトウガラシ(Capsicum frutescens)、キイロトウガラシ(Capsicum baccatum))のようなトマト(L.エスキュレンツム(L.esculentum)、ソラナム・リコペルシカムの同義語)のような野菜種、観賞用種(例えば、ニチニチアサガオ(Petunia hybrida)、ペチュニア・アキシラリス(Petunia axillaries)、P.インテグリフォリア(P.integrifolia))、コーヒー(コーヒーノキ(Coffea))を好適に使用することができる。
或いは、植物は、ウリ科(Cucurbitaceae)又はイネ科(Gramineae)のような任意の他の科に属してもよい。好適な宿主植物には、例えば、トウモロコシ/コーン(ゼア(Zea)種)、コムギ(トリティクム(Triticum)種)、オオムギ(例えば、ホルデウム・ウルガレ(Hordeum vulgare))、エンバク(例えば、アベナ・サティバ(Avena sativa))、モロコシ(タカキビ(Sorghum bicolor))、ライムギ(セカレ・ケレアレ(Secale cereale))、ダイズ(グリキーネ種(Glycine spp.)、例えば、G.マックス(G.max))、ワタ(ゴシピウム種(Gossypium species)、例えば、G.ヒルスツム(G.hirsutum)、G.バルバデンセ(G.barbadense))、アブラナ種(Brassica spp.)(例えば、セイヨウアブラナ(B.napus)、カラシナ(B.juncea)、芽キャベツ(B.oleracea)、カブ(B.rapa)等)、ヒマワリ(ヘリアンサス・アヌース(Helianthus annus))、紅花、ヤム、キャッサバ、アルファルファ(ムラサキウマゴヤシ(Medicago sativa))、コメ(オリザ種(Oryza species)、例えば、O.サティバ・インディカ栽培品種群(O.sativa indica cultivar−group)、又はジャポニカ栽培品種群)、飼料草、パールミレット(ペニセツム種(Pennisetum spp.)、例えば、トウジンビエ(P.glaucum))、樹木種(松果体、ポプラ、モミ、プラシテン等)、チャノキ、コーヒーノキ、油やし、ココナッツ、エンドウ、ズッキーニ、マメ(例えば、インゲンマメ種(Phaseolus species))、キュウリ、アーティチョーク、アスパラガス、ブロッコリー、ニンニク、リーク、レタス、タマネギ、ラディッシュ、カブ、芽キャベツ、ニンジン、カリフラワー、チコリ、セロリ、ホウレンソウ、エンダイブ、フェンネル、ビーツ、生果実を含む植物(ブドウ、モモ、プラム、イチゴ、マンゴー、リンゴ、プラム、サクランボ、アプリコット、バナナ、ブラックベリー、ブルーベリー、ミカン、キーウィ、イチジク、レモン、ライム、ネクタリン、ラズベリー、スイカ、オレンジ、グレープフルーツ等)のような野菜種、観賞用種(例えば、バラ、ペチュニア、キク、ユリ、ガーベラ種)、ハーブ(ミント、パセリ、バジル、タイム等)、木質性樹木(woody tree)(例えば、ハコヤナギ、シダレヤナギ、コナラ、ユーカリの種)、繊維種、例えば、麻(アマ(Linum usitatissimum))及び大麻(カンナビス・サティバ(Cannabis sativa))、又はシロイヌナズナのようなモデル生物が含まれる。
好ましい宿主細胞は、「作物植物」又は「栽培植物」、すなわち、ヒトにより栽培され、育種される植物種に由来する。作物植物は、食品若しくは飼料目的(例えば、農作物)のため、又は鑑賞目的(例えば、切り花、芝生のための草の生産等)のために栽培することができる。本明細書に定義されている作物植物には、燃料のための油、プラスチックポリマー、医薬品、コルク、繊維(ワタのような)等のような、非食品製品が収穫される植物も含まれる。
好ましい実施形態では、宿主細胞は任意の植物由来の細胞である。好ましい実施形態では、宿主細胞は、ナス科、より好ましくはナス属、更により好ましくはソラナム・リコペルシカム種に属する。この実施形態では、宿主細胞内に含まれるCenH3ポリヌクレオチドは、本明細書に教示されているソラナム・リコペルシカムCenH3変異体であるのが好ましい。
更なる好ましい実施形態では、宿主細胞は、好ましくは、イネ科、より好ましくはイネ属、更により好ましくはオリザ・サティバ種に属する単子葉植物である。この実施形態では、CenH3ポリヌクレオチドは、宿主細胞内に、本明細書に教示されているオリザ・サティバCenH3変異体を含むことが好ましい。
本明細書に教示されているCenH3タンパク質をコードする核酸配列の宿主細胞のゲノムへの、好ましくは安定な、導入のためのキメラ遺伝子及びベクターの構築は、当該技術分野において一般的に公知である。キメラ遺伝子を生成するために、本明細書に教示されているCenH3タンパク質をコードする核酸配列は、標準的な分子生物学の技術を使用して、宿主細胞における発現に好適なプロモーター配列に作動可能に連結される。CenH3タンパク質をコードする核酸配列が、単純にプロモーター配列の下流のベクターに挿入されるように、プロモーター配列は既にベクターに存在してもよい。次いで、ベクターは、宿主細胞を形質転換するために使用することができ、キメラ遺伝子は、核ゲノム又はプラスチド、ミトコンドリア若しくは葉緑体ゲノムに挿入されて、好適なプロモーターを使用して発現することができる(例えば、Mc Brideら、1995年 Bio/Technology、13、362頁;米国特許第5,693,507号)。一実施形態では、本明細書に教示されているキメラ遺伝子は、本明細書に教示されているCenH3タンパク質をコードする核酸配列に作動可能に連結している、植物細胞又は微生物細胞(例えば、細菌)における発現のための好適なプロモーターであって、任意選択で3’非翻訳核酸配列がその後に続く、プロモーターを含む。細菌はその後、植物の形質転換に使用されてもよい(アグロバクテリウム媒介性の植物形質転換)。
アクティブ変異を有するCenH3ポリペプチドを発現する植物
更なる態様では、本発明は、本明細書に教示されているCenH3ポリペプチドのいずれか1つ又は本明細書に教示されているキメラ遺伝子又は本明細書に教示されているベクターを発現する植物又は植物細胞に関する。
一実施形態では、本明細書に教示されている植物又は植物細胞は任意の植物又は植物細胞であってもよい。好ましい実施形態では、植物又は植物細胞は、ナス科、より好ましくはナス属、更により好ましくはソラナム・リコペルシカム種に属してもよい。前記ソラナム・リコペルシカム植物は、本明細書に教示されているソラナム・リコペルシカムCenH3変異体を含むことが好ましい。
更なる実施形態では、本明細書に教示されている植物又は植物細胞は、任意の植物又は植物細胞であってもよい。好ましい実施形態では、植物又は植物細胞は、イネ科、より好ましくはイネ属、更により好ましくはオリザ・サティバ種、更により好ましくはオリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ亜種に属してもよい単子葉植物である。前記オリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ植物は、本明細書に教示されているオリザ・サティバCenH3変異体を含むことが好ましい。
一実施形態では、本明細書に教示されている植物又は植物細胞は、内在性CenH3タンパク質を発現しないか、又は低減したレベル(例えば、野生型レベルの90、80、70、60、50、40、30、20、10%未満)で発現することが好ましい。例えば、内在性CenH3タンパク質の活性若しくは発現を低減させるか若しくは除去する変異を内在性CenH3タンパク質に作り出すことができるか、又は内在性CenH3タンパク質のノックアウトを作り出すことができる。この場合、遺伝子のノックアウト又は変異のためのヘテロ接合性植物を作り出すことができ、本明細書に教示されているアクティブ変異を有するCenH3タンパク質の発現のための発現ベクターを植物に導入することができる。次いで、変異又はノックアウトのためにホモ接合性であるが、アクティブ変異を有するCenH3タンパク質を含む、ヘテロ接合体由来の後代を選択することができる。
従って、本明細書に教示されている植物又は植物細胞において、前記植物又は植物細胞が顕著に又は本質的に完全に、すなわち、本明細書に教示されているアクティブ変異を有するCenH3タンパク質の補完的発現のない胚の致死性を誘導するのに十分に、内在性CenH3活性を欠くように、一方又は両方の内在性CenH3アレルがノックアウトされるか、又は変異されることが好ましい。2倍体を超える染色体の組を有する植物において、全ての内在性CenH3アレルは、不活性化され、変異されるか、又はノックアウトされてもよい。或いは、内在性CenH3タンパク質の発現は、当該技術分野において公知の任意の方法によって、例えば、内在性CenH3タンパク質の発現を低減させるか、又は除去するsiRNA又はマイクロRNAを導入することによって、サイレンシングされてもよい。理想的には、内在性CenH3タンパク質をサイレンシングさせるが、アクティブ変異を有するCenH3タンパク質をサイレンシングさせない、サイレンシング剤が選択される。
一実施形態では、本明細書に教示されている植物又は植物細胞は、本明細書に教示されているアクティブ変異を含むCenH3タンパク質をコードする変異ポリヌクレオチドのアレルの1つ又は2つのコピーを含んでもよい。一実施形態では、本明細書に教示されている植物又は植物細胞は、本明細書に教示されているアクティブ変異を含むCenH3タンパク質をコードする変異ポリヌクレオチドのアレルの2つのコピーを含むことが好ましい。
一実施形態では、本明細書に教示されているポリヌクレオチドのいずれか1つは、例えば、植物育種に使用するための、半数体インデューサー系統を産生するために使用することができる。
CENH3は、細胞分裂の間に紡錘糸が付着している染色体におけるタンパク質構造であるキネトコア複合体のメンバーである。本発明の範囲を限定することを意図しないが、観察された結果は、野生型より弱く作用し、それによって機能的キネトコア複合体(例えば、有糸分裂において)を生じるが、他の親由来の野生型キネトコア複合体も含有する染色体と比較して減数分裂の間に染色体を比較的不十分に分離するキネトコアタンパク質の生成に少なくとも部分的に起因すると考えられる。これは、変更されたタンパク質が細胞における唯一のアイソフォームである場合、機能的キネトコア複合体を生じるが、変更されたキネトコアを有する親が、野生型キネトコア複合体を有する親と交配される場合、有糸分裂の間に染色体を比較的不十分に分離する。CENH3に加えて、他のキネトコアタンパク質には、例えば、CENPC、MCM21、MIS12、NDC80、及びNUF2が含まれる。
一実施形態では、本明細書に教示されている植物は、セントロメアを破壊する別の組換え変異した第2のキネトコアタンパク質(CENPC、MCM21、MIS12、NDC80、及びNUF2を含むが、これらに限定されない)、並びに/又はCenH3のアレル及び内在性の第2のキネトコアタンパク質遺伝子のうちの少なくとも一方又は両方のコピーが、ノックアウトされているか、その機能を低減させるか若しくは除去するように変異されているか、又はサイレンシングされている植物を更に発現することができる。本発明はまた、本明細書に教示されており、変異した第2のキネトコアタンパク質を更に発現し、内在性の第2のキネトコアタンパク質を発現しない植物を、内在性CenH3タンパク質及び内在性の第2のキネトコアタンパク質を発現する植物へ交配することによって、半数体植物を生成する方法も提供する。
植物の生成のための方法
更なる態様では、本発明は、本明細書上記に教示されている植物又は植物細胞を作製する方法に関する。
一実施形態では、本発明は、標的化変異誘発法(標的化ヌクレオチド交換(TNE)又はオリゴ指定変異誘発(oligo−directed mutagenesis)(ODM)とも称される)を使用して内在性CenH3遺伝子を修飾する方法に関する。標的化変異誘発法には、限定されないが、植物プロトプラストへの、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、Cas9様、Cas9/crRNA/tracrRNA若しくはCas9/gRNA CRISPRシステムを採用するもの、又はCenH3遺伝子に相補的な配列により変異誘発を促進するための、化学修飾されたヌクレオチドを含有する可能性のある変異誘発性のオリゴヌクレオチドを採用する標的化変異誘発(例えば、KeyBase(登録商標)又はTALEN)が含まれる。
或いは、アクティブ変異を有するCenH3タンパク質をコードするCenH3遺伝子を含む植物系統を生成するために、TILLING(どちらも参照により本明細書に組み込まれる、Targeting Induced Local Lesions IN Genomics;McCallumら、2000年、Nat Biotech、18:455頁、及びMcCallumら、2000年、Plant Physiol.、123、439〜442頁)のような変異誘発システムが使用されてもよい。TILLINGは、伝統的な化学的変異誘発(例えば、EMS変異誘発)、その後に続く変異に関するハイスループットスクリーニングを使用する。よって、所望の変異を有するCenH3遺伝子を含む植物、種子及び組織を得ることができる。
本明細書に教示されている方法は、植物種子に変異を起こさせるステップ(例えば、EMS変異誘発)、植物個体又はDNAをプールするステップ、目的の領域のPCR増幅、ヘテロ二本鎖の形成及びハイスループット検出、変異体植物の同定、変異体PCR産物のシーケンシングを含むことができる。そのような修飾植物を生成するために、他の変異誘発及び選択方法を同等に使用することができることは理解される。例えば、種子は、照射されるか、又は化学処理されてもよく、植物は、修飾された表現型に関してスクリーニングされてもよい。
修飾植物は、修飾されていない植物、すなわち、野生型植物から、DNAに存在する変異(複数可)のような分子的方法により、及び修飾された表現型の特徴により識別することができる。修飾植物は、変異に関してホモ接合性又はヘテロ接合性であってもよい。
一実施形態では、本発明は、本明細書上記に教示されている植物又は植物細胞を作製する方法であって、a)植物細胞内の内在性CenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチドを修飾して、CenH3タンパク質(すなわち、本明細書に教示されているアクティブ変異を有するCenH3をコードするポリヌクレオチド)をコードする変異ポリヌクレオチドを得るステップと、b)CenH3タンパク質をコードする変異ポリヌクレオチドを含む植物細胞を選択するステップと、c)任意選択で、前記植物細胞から植物を再生するステップとを含む、方法に関する。
一実施形態では、本発明は、本明細書に教示されている植物を作製する方法であって、a)植物細胞内の内在性植物CenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチドを修飾して、CenH3タンパク質のN末端テールドメインに1つ又は複数のアクティブ変異を有する植物CenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチドを得るステップと、b)1つ又は複数のアクティブ変異を有する植物CenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む植物細胞を選択するステップと、c)任意選択で、前記植物細胞から植物を再生するステップとを含む、方法に関する。
一実施形態では、本発明は、本明細書に教示されている植物を作製する方法であって、a)植物細胞に、本明細書に教示されているCenH3ポリヌクレオチドのいずれか1つ、又は本明細書に教示されているキメラ遺伝子、又は本明細書に教示されているベクターを形質転換するステップと、b)前記CenH3ポリヌクレオチド又はキメラ遺伝子又はベクターを含む植物細胞を選択するステップと、c)任意選択で、前記植物細胞から植物を再生するステップとを含む、方法に関する。
一実施形態では、本明細書に教示されている植物又は植物細胞を作製する方法は、内在性植物CenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチド又は前記植物細胞内の前記ポリヌクレオチドの発現に関与する任意の他の内在性植物ポリヌクレオチドを修飾して、内在性CenH3タンパク質の発現を阻止するステップを更に含んでもよい。
一実施形態では、本明細書に教示されている、CenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチド、好ましくはCenH3タンパク質をコードするキメラ遺伝子は、従来の方法で単一の植物細胞の核ゲノムに安定に挿入することができ、そのようにして形質転換された植物細胞は、従来の方法において使用されて、ある特定の時点におけるある特定の細胞における本明細書に教示されているCenH3タンパク質の存在により、変更された表現型を有する形質転換された植物を産生することができる。これに関して、アグロバクテリウム・ツメファシエンスにおける本明細書に教示されているCenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むT−DNAベクターは、植物細胞を形質転換するために使用することができ、その後、形質転換された植物は、例えば、欧州特許第0116718号、欧州特許第0270822号、PCT公報国際公開第84/02913号及び欧州特許出願公開第0242246号、並びにGouldら、(1991年、Plant Physiol.95、426〜434頁)に記載されている手順を使用して形質転換された植物細胞から再生することができる。アグロバクテリウム媒介性の植物形質転換のためのT−DNAベクターの構築は、当該技術分野において周知である。T−DNAベクターは、欧州特許第0120561号及び欧州特許第0120515号に記載されているバイナリーベクター又は欧州特許第0116718号に記載されている相同組換えによりアグロバクテリウムTiプラスミドに組み込むことのできる共挿入ベクターのいずれかであってもよい。
同様に、形質転換された植物細胞由来の形質転換された植物の選択及び再生は、当該技術分野において周知である。明らかに、異なる種ごとに、更には単一の種の異なる亜種又は栽培品種ごとにも、高頻度で形質転換体が再生されるように特にプロトコールを適合させる。
結果として生じる形質転換された植物は、その後倍加半数体植物となることがある半数体植物を産生するために、従来の植物育種スキームに使用することができる。
本発明はまた、半数体又は倍加半数体植物を生成する方法であって、内在性CenH3タンパク質を発現する植物及び本明細書に教示されている植物を同定するステップであって、本明細書に教示されている植物が、少なくともその生殖部分において及び/又は胚発生の間、内在性CenH3タンパク質の発現を欠く、ステップを含む、方法に関する。内在性CenH3タンパク質を発現する植物は、本明細書に教示されている植物と交配して、半数体植物を生じることができる。
一実施形態では、交配は、植物の全ゲノムを有性交配するステップを含まない。代わりに一組の染色体が除去される。
半数体植物及び/又は倍加半数体植物の生成のための方法
更なる態様では、本発明は、半数体植物、異常な倍数性を有する植物又は倍加半数体植物を生成する方法であって、a)内在性CenH3タンパク質を発現する植物を、本明細書に教示されている植物のいずれか1つへ交配するステップと、b)種子を採取するステップと、c)前記種子から、少なくとも1つの実生、小植物又は植物を生育させるステップと、d)半数体実生、小植物若しくは植物、又は異常な倍数性を有する実生、小植物若しくは植物,又は倍加半数体実生、小植物若しくは植物を選択するステップとを含む方法に関する。
当業者は半数体植物を選択することができる。例示的な技術には、フローサイトメトリー又は特異的なSNPコーリングによるバリデーションが含まれる。
一実施形態では、ステップa)における植物は、少なくともその生殖部分において及び/又は胚発生の間、内在性CenH3タンパク質を発現しない。一実施形態では、内在性CenH3タンパク質を発現する植物はF1植物であってもよい。内在性CenH3タンパク質を発現する植物は交配の花粉親であってもよいか、又は交配の胚珠親であってもよい。
キネトコア複合体に関与する内在性CenH3タンパク質の発現を欠き、本明細書に教示されているアクティブ変異を有するCenH3タンパク質を発現する本明細書に教示されている植物を、野生型植物へ交配することにより、半数体であり、内在性CenH3タンパク質を発現する植物由来の染色体のみを含む少なくともいくつかの後代が生じる。従って、本発明は、目的の植物を、本明細書に教示されているアクティブ変異を有するCenH3タンパク質を発現する植物と交配し、得られた半数体種子を採取することによって、目的の植物由来のその染色体の全てを有する半数体植物の生成を可能とする。
従って、親の遺伝子型に依存しない正確な分子変化により、ゲノムの除去を操作することができる。CenH3タンパク質はいかなる植物種にも見出される。これは、半数体細胞の組織培養及び遠縁交雑のような半数体植物産生のための従来の方法が成功しない種において半数体植物を作製することを可能とする。
本明細書に教示されているアクティブ変異を有するCenH3タンパク質を発現する植物は、雄親又は雌親のいずれかとして交配されてもよい。本明細書に教示されている方法は、親染色体の母系細胞質への移入を可能とする。従って、単一のステップにおいて、所望の遺伝子型を有する細胞質雄性不稔系統を生成することができる。
更なる態様では、本発明は、倍加半数体植物を生成する方法であって、本明細書に教示されているステップd)において得られた半数体実生、小植物又は植物を倍加半数体植物に転換するステップを含む、方法に関する。
一実施形態では、半数体実生、小植物又は植物を倍加半数体植物に転換するステップは、コルヒチンを使用して実施することができる。
更なる態様では、本発明は、倍加半数体植物を生成する方法であって、a)内在性CenH3タンパク質を発現する植物を、本明細書に教示されている修飾植物のいずれか1つと交配するステップと、半数体植物を選択するステップと、前記半数体植物を倍加半数体植物に転換するステップとを含む、方法に関する。
一実施形態では、交配するステップa)は、約24℃〜約30℃の範囲の温度にて実施される。
従って、半数体植物は、一度生成されると、染色体の正確な二本鎖コピーを含む倍加半数体植物の生成に使用することができる。半数体生物から倍加半数体生物を生成するために多種多様な方法が公知である。半数体植物を倍加半数体植物に転換するために、例えば、コルヒチンのような化学物質が適用されてもよい。或いは、倍数体は、胚発生の間又は植物の後期発生段階において自発的に倍加することができる。
一実施形態では、本明細書に教示されている半数体植物、異常な倍数性を有する植物及び/又は倍加半数体植物の生成のための方法は、前記植物の全ゲノムを有性交配するステップを含まない。代わりに、交配の間に1組の染色体が除去される。
F1、F2又は所望の形質を有する次世代の植物を生成するために、倍加半数体植物を他の植物と更に交配してもよい。
トランスジェニック又は変異誘発された遺伝子を保有しない倍加半数体植物を得ることができる。加えて、倍加半数体植物は、ハイブリッドF1から速やかにホモ接合性のF2を創出することができる。
一実施形態では、内在性CenH3タンパク質を発現する植物は、交配の花粉親であってもよい。更なる実施形態では、内在性CenH3タンパク質を発現する植物は、交配の胚珠親であってもよい。
ソラナム・リコペルシカム植物又は種子
更なる態様では、本発明は、配列番号3のCenH3タンパク質配列を含み、CenH3タンパク質のN末端テールドメインに1つ又は複数のアクティブ変異を更に含むソラナム・リコペルシカム植物又は種子に関する。そのような植物は本明細書に教示されているソラナム・リコペルシカムCenH3変異体を含んでもよい。
一実施形態では、1つ又は複数のアクティブ変異は、植物CenH3モチーフブロック1(配列番号4)にある。
好ましい実施形態では、1つ又は複数のアクティブ変異は、本明細書に教示されているコンセンサスナス科CenH3モチーフブロック1(配列番号5)にある。
一実施形態では、アクティブ変異は、本明細書に定義されている配列番号4若しくは配列番号5、又はそれらのバリアントの9位におけるアミノ酸残基にあり、前記アミノ酸残基は、リシン、アルギニン又はヒスチジンを除く任意のアミノ酸に修飾されている。
好ましい実施形態では、アミノ酸残基は、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選択される別のアミノ酸残基に修飾されてもよい。
より好ましい実施形態では、アミノ酸残基は、グルタミン酸又はアスパラギン酸残基から選択される別のアミノ酸残基に修飾されてもよい。
一実施形態では、本明細書に教示されているソラナム・リコペルシカム植物又は種子は、本明細書に教示されているポリヌクレオチドのいずれか1つ又は本明細書に教示されているキメラ遺伝子、又は本明細書に教示されているベクターを含んでもよい。
好ましい実施形態では、本明細書に教示されているソラナム・リコペルシカム植物又は種子は、配列番号8のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。
更に好ましい実施形態では、本明細書に教示されているソラナム・リコペルシカム植物又は種子は、配列番号7又は配列番号10の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含んでもよい。
一実施形態では、本明細書に教示されているソラナム・リコペルシカム植物又は種子は、本明細書に教示されているCenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。
一実施形態では、本明細書に教示されているソラナム・リコペルシカム植物又は種子は、少なくとも生殖部分において及び/又は胚発生の間、内在性CenH3タンパク質を発現しないか、又は機能的内在性CenH3タンパク質を有さない。
本明細書に教示されているソラナム・リコペルシカム植物又は種子において、内在性CenH3タンパク質は、少なくとも生殖部分において及び/又は胚発生の間、発現されない。
一実施形態では、本明細書に教示されているソラナム・リコペルシカム植物又は細胞は、半数体ソラナム・リコペルシカム植物を産生するために使用されてもよい。
更なる実施形態では、本明細書に教示されているソラナム・リコペルシカム植物又は細胞は、倍加半数体ソラナム・リコペルシカム植物を産生するために使用されてもよい。
オリザ・サティバ植物又は種子
更なる態様では、本発明は、配列番号12のCenH3タンパク質配列を含み、CenH3タンパク質のN末端テールドメインに1つ又は複数のアクティブ変異を更に含む、オリザ・サティバ植物又は種子、好ましくはオリザ・サティバL.ssp.ジャポニカに関する。そのような植物は、本明細書に教示されているオリザ・サティバCenH3変異体を含んでもよい。
一実施形態では、1つ又は複数のアクティブ変異は、植物CenH3モチーフブロック1(配列番号4)にある。アクティブ変異は、本明細書に定義されている、配列番号4の9位におけるアミノ酸残基、又は配列番号12若しくはそのバリアントの9位におけるアミノ酸残基にあってもよく、前記アミノ酸残基はバリンを除く任意のアミノ酸に修飾されている。アミノ酸残基は、メチオニン、セリン又はトレオニンからなる群から選択される別のアミノ酸残基、好ましくはメチオニンに修飾されてもよい。
更なる実施形態では、1つ又は複数のアクティブ変異は、本明細書に定義されている配列番号12又はそのバリアントの16位における植物CenH3 N末端テールにあることが好ましく、前記アミノ酸残基はプロリンを除く任意のアミノ酸に修飾されている。アミノ酸残基は、メチオニン、セリン及びトレオニンからなる群から選択される別のアミノ酸残基、より好ましくはセリンに修飾されてもよい。
更なる実施形態では、1つ又は複数のアクティブ変異は、本明細書に定義されている配列番号12又はそのバリアントの26位における植物CenH3 N末端テールにあることが好ましく、前記アミノ酸残基はプロリンを除く任意のアミノ酸に修飾されている。アミノ酸残基は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシンからなる群から選択される別のアミノ酸残基、より好ましくはロイシンに修飾されてもよい。
一実施形態では、本明細書に教示されているオリザ・サティバ植物又は種子は、本明細書に教示されているポリヌクレオチドのいずれか1つ又は本明細書に教示されているキメラ遺伝子、又は本明細書に教示されているベクターを含んでもよい。
好ましい実施形態では、本明細書に教示されているオリザ・サティバ植物又は種子は、配列番号13、配列番号14又は配列番号15のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。
更なる好ましい実施形態では、本明細書に教示されているオリザ・サティバ植物又は種子は、配列番号17、配列番号18又は配列番号19又は配列番号21、配列番号22又は配列番号23の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含んでもよい。
一実施形態では、本明細書に教示されているオリザ・サティバ植物又は種子は、本明細書に教示されているCenH3タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。
一実施形態では、本明細書に教示されているオリザ・サティバ植物又は種子は、少なくとも生殖部分において及び/又は胚発生の間、内在性CenH3タンパク質を発現しないか、又は機能的内在性CenH3タンパク質を有さない。
本明細書に教示されているオリザ・サティバ植物又は種子において、内在性CenH3タンパク質は、少なくとも生殖部分において及び/又は胚発生の間、発現されない。
一実施形態では、本明細書に教示されているオリザ・サティバ植物又は細胞は、半数体オリザ・サティバ植物を産生するために使用されてもよい。
更なる実施形態では、本明細書に教示されているオリザ・サティバ植物又は細胞は、倍加半数体オリザ・サティバ植物を産生するために使用されてもよい。
使用
更なる態様では、本発明は、例えば、植物育種に使用するための半数体インデューサー系統又は植物を産生するための、1つ若しくは複数のアクティブ変異及び/又は1つ若しくは複数のアクティブ変異を有するCenH3をコードするポリヌクレオチド並びにそれらを含むキメラ遺伝子、ベクター及び宿主細胞を含むCenH3タンパク質の使用に関する。
更なる態様では、本発明は、半数体ソラナム・リコペルシカム植物を産生するための、及び/又は倍加半数体ソラナム・リコペルシカム植物を産生するための、本明細書に教示されているソラナム・リコペルシカム植物、小植物又は種子に関する。
更なる態様では、本発明は、半数体オリザ・サティバ植物を産生するための、及び/又は倍加半数体オリザ・サティバ植物を産生するための、本明細書に教示されているオリザ・サティバ植物、小植物又は種子に関する。本発明は、半数体オリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ植物を産生するための、及び/又は倍加半数体オリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ植物を産生するための、本明細書に教示されているオリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ植物、小植物又は種子に関することが好ましい。
配列表
配列番号1:植物CenH3コンセンサスタンパク質配列
配列番号2:コンセンサスナス科CenH3タンパク質配列
配列番号3:ソラナム・リコペルシカムCenH3タンパク質配列(Solyc01g095650.2.1)
配列番号4:植物コンセンサスCenH3モチーフ1ドメインタンパク質配列
配列番号5:コンセンサスナス科CenH3モチーフ1ドメインタンパク質配列
配列番号6:ソラナム・リコペルシカムCenH3コード配列(Solyc01g095650.2.1)
配列番号7:ソラナム・リコペルシカムCenH3_K9Eコード配列
配列番号8:ソラナム・リコペルシカムCenH3_K9Eタンパク質配列
配列番号9:ソラナム・リコペルシカムCenH3ゲノムDNA配列(Solyc01g095650.2.1)
配列番号10:ソラナム・リコペルシカムCenH3_K9EゲノムDNA配列
配列番号11:単子葉植物コンセンサスCenH3タンパク質配列
配列番号12:オリザ・サティバL.ssp.ジャポニカCenH3タンパク質配列(LOC_Os05g41080)
配列番号13:オリザ・サティバL.ssp.ジャポニカCenH3_V9Mタンパク質配列
配列番号14:オリザ・サティバL.ssp.ジャポニカCenH3_P16Sタンパク質配列
配列番号15:オリザ・サティバL.ssp.ジャポニカCenH3_P26Lタンパク質配列
配列番号16:オリザ・サティバL.ssp.ジャポニカCenH3コード配列(LOC_Os05g41080)
配列番号17:オリザ・サティバL.ssp.ジャポニカCenH3_V9Mコード配列
配列番号18:オリザ・サティバL.ssp.ジャポニカCenH3_P16Sコード配列
配列番号19:オリザ・サティバL.ssp.ジャポニカCenH3_P26Lコード配列
配列番号20:オリザ・サティバL.ssp.ジャポニカCenH3ゲノムDNA配列(LOC_Os05g41080)
配列番号21:オリザ・サティバL.ssp.ジャポニカCenH3_V9MゲノムDNA配列
配列番号22:オリザ・サティバL.ssp.ジャポニカCenH3_P16SゲノムDNA配列
配列番号23:オリザ・サティバL.ssp.ジャポニカCenH3_P26LゲノムDNA配列
実施例1:半数体植物の生成
植物材料
3つのトマト栽培品種、すなわち、「MoneyBerg TMV+」、「MicroTom」及び「RZ52201」を使用した。国際公開第2007/037678号及び国際公開第2009/041810号に記載されている方法に従って、トマトRZ52201の変異体集団から、遺伝子CenH3における体細胞非同義変異体、すなわちアミノ酸9位において変異されているCenH3_K9Eを選択した。選択した変異体植物を自家授粉させ、子孫において、変異した遺伝子座についてホモ接合性であった植物を選択した。国際公開第2007/037678号及び国際公開第2009/041810号に記載されている方法に従って、トマトMoneyBerg TMV+の変異体集団から、遺伝子Msi2における体細胞同義変異体、すなわちアミノ酸337位において変異されている(CからT)Msi2_D337Dを選択した。選択した変異体植物を自家授粉させ、子孫において、変異した遺伝子座についてホモ接合性であった植物を選択した。
方法
片親ゲノムの除去及び結果として生じる半数体植物の産生を、いわゆる半数体インデューサー系統と別の非半数体インデューサー系統、例えば、育種系統との間の交配を行うことによって誘発した。高い温度が、一部の場合のみではあるが、片親ゲノムの除去を起こすのに好ましい効果を及ぼす可能性があることが分かっている(Saneiら、PNAS 108.33(2011年);E498〜E505)ため、片親ゲノムの除去のためのトマト系統の交配を、比較的高温(26〜28℃)で実施した。
結果
CenH3_K9E変異体におけるAからGの非同義変異は、リシンからグルタミン酸塩のアミノ酸修飾(配列番号8)をもたらした。Msi2_D337D変異体におけるCからTの同義変異はアミノ酸修飾をもたらさなかった。CenH3_K9E又はMsi2_D337D変異についてホモ接合性である両方の変異体植物を、それぞれ、雌株又は花粉ドナーとして非変異野生型MicroTom植物を使用して比較的高温(26〜28℃)での交配における花粉ドナー及び雌株として使用した。表1は、MicroTom表現型について評価した、作製した全ての交配及び播種した種子の概要を列挙する。
表1に列挙した交配から生じた種子を播種し、植物をそれらのDNA含有量についてフローサイトメトリーによって評価した。フローサイトメトリー分析により、MoneyBergTMV+のような野生型トマト栽培品種と同様に、試験した全ての植物についての正常な2倍体倍数性レベルのみの決定がもたらされた。唯一の例外が見出された;MicroTom(雌株)×CenH3_K9E(雄株)の2014年の交配に関して、1つの子孫植物がフローサイトメトリー分析に基づいて異数性(すなわち、異常な倍数性を有する)であることが見出された。
栽培品種MicroTomは、劣性であることが知られている矮性表現型を有する(Martiら、J Exp Bot、Vol.57、No.9、2037〜2047頁、2006年)。例えばMoneyBerg TMV+又はRZ52201野生型栽培品種への又はそれとのMicroTomの交配後、MoneyBerg TMV+又はRZ52201野生型栽培品種の不確定な非矮性表現型を有する子孫のみを見出す。同じことが、Msi2_D337D同義変異体とMicroTomとの交配について見出され、MicroTom及びMsi2_D337D変異体交配の全ての子孫は、MoneyBerg TMV+親の不確定な非矮性表現型を示した。雄株親又は雌株親としてCenH3_K9E変異体を使用して、合計20個の植物がMicroTom表現型を示すことが見出された。これは、RZ52201親遺伝物質が、生じた子孫の一部ではないことを示し、これは、これらの20個の子孫植物が半数体MicroTom起源であることを示す。後者20個の植物の全ての植物の倍数性は2倍体であることが見出され、トマトにとって例外的な高い出現頻度を有すると記載されている現象である、自発的な倍加が起こったことを示す(Tomato Genetics Cooperative Number 62−2012年12月のレポート)。
片親ゲノムの除去が起こったかどうか、及びどの程度起こったかを決定するために、2015年の交配について合計24の位置(12個のトマト染色体の各々に2つのSNP)について一塩基多型(SNP)アッセイを行った。2014年の交配について、SNPアッセイを合計8つの位置(第2、第7、第9及び第12染色体に1つ、並びに第3及び第6染色体に2つ)で行った。選択した一塩基多型は、MicroTom親の1つの塩基対についてホモ接合性であり、RZ52201親においてMicroTom塩基対以外の全てについてホモ接合性であった。野生型MicroTom栽培品種とRZ52201栽培品種との間の通常の交配は、ヘテロ接合性一塩基多型スコアをもたらす。
しかしながら、片親ゲノムの除去のプロセスが起こった場合、半数体インデューサー系統ゲノムの損失が予想される。一塩基多型試験は、MicroTom表現型も示す20個の子孫植物の各々について、MicroTom親からのホモ接合性塩基対スコアのみのコールをもたらし、RZ52201親のいずれもコールしなかった。一塩基多型スコアに基づいて、CenH3_K9E変異体の完全なゲノムはもはや子孫に存在しないと結論付けた。
従って、CenH3_K9E変異体は、高度に効率的な半数体インデューサー系統として機能すると結論付けることができる。CenH3_K9E変異体を雌株親として使用した交配では、MicroTomの自殖は排除することができる。MicroTomを雌株親として使用した実験では、交配してから2年後にMicroTom表現型を示した子孫の数が非常に少なく(516個の中からわずか6個の種子及び297個の中から13個)、ホモ接合性塩基対のみがスコア付けされたという事実を考慮すると、自殖が起こった可能性は非常に低い。
CenH3_K9E変異体及びRZ52201対照植物の花粉四分子を、異常の発生について調べた。
2つの花から、花粉四分子を見るために、葯を押しつぶした。CenH3_K9E変異体について、2つの花をスコア付けすると、平均2.60±0.25%の微小核が全ての四分子において観察された。図1はこのような微小核の例を示す。RZ52201対照について、微小核を有する花粉四分子を含有する葯が稀に観察された。5つの花をスコア付けすると、平均0.58±0.36パーセントの微小核が全ての四分子において観察された。減数分裂の間の染色体の分離は、対照と比較してCenH3_K9E変異の結果としてずっと高頻度で妨害されると結論付けられる。異常な有糸分裂、例えば微小核の観察は、作物における種間、種内ハイブリダイゼーションにおける染色体除去及び半数体産生の直接的な証拠として使用されることが多い。例えば、異常な有糸分裂並びに異常な減数分裂、例えば微小核は、トウモロコシDH−インデューサー系統の研究において見出された(Qiu、Fazhanら、Current Plant Biology、1(2014年):83〜90頁)。CenH_K9E変異体における減数分裂時の微小核の観察は、有糸分裂の間に同様のプロセスが起こることを示唆している。野生型及びCenH_K9E接合体の融合後の最初の有糸分裂の間の片親ゲノムの除去のプロセスが起こり、これが観察された半数体の誘導をもたらす可能性がある。
実施例2:コメにおける片親ゲノムの除去
植物材料
オリザ・サティバL.ssp.ジャポニカcv.ボラノ(Volano)を使用して、化学的変異誘発によって変異体集団を生成する。この変異体集団から、国際公開第2007/037678号及び国際公開第2009/041810号に記載されている方法に従って、遺伝子CenH3(LOC_Os05g41080;配列番号13、配列番号14及び配列番号15)における3つの体細胞非同義変異体、すなわち、CenH3_V9M、CenH3_P16S及びCenH3_P26Lを選択する。選択した変異体植物を自家授粉させ、子孫において、変異した遺伝子座についてホモ接合性である植物を選択する。変異していないオリザ・サティバL.ssp.ジャポニカ(配列番号12をコードする)cv.ボラノ植物も同様に使用する。
方法
片親ゲノムの除去及び結果として生じる半数体植物の産生を、いわゆる半数体インデューサー系統と別の非半数体インデューサー系統、例えば、変異していないオリザ・サティバL.ssp.ジャポニカcv.ボラノ植物との間の交配を行うことによって誘発する。子孫の倍数性を測定して、それらが2倍体であるか、又は半数体であるかを決定する。半数体子孫植物が2倍体状態に自発的に倍加される可能性を含めるために、列挙された3つのCenH3変異体SNPのいずれかの完全欠損も同様に試験する。自発的に倍加が誘発された半数体植物において、3つの別個のCenH3変異体SNP(配列番号13、配列番号14又は配列番号15)のいずれも存在せず、ヘテロ接合性アレルとしてでさえ存在しない。
結果
CenH3_V9M変異体におけるGからAの非同義変異は、バリンのメチオニンへのアミノ酸修飾をもたらした(配列番号13)。CenH3_P16S変異体におけるCからTへの非同義変異は、プロリンのセリンへのアミノ酸修飾をもたらした(配列番号14)。CenH3_P26L変異体におけるCからTへの非同義変異は、プロリンのロイシンへのアミノ酸修飾をもたらした(配列番号15)。CenH3_V9M、CenH3_P16S又はCenH3_P26L変異についてホモ接合性である3つの変異体植物の各々を、雌株として変異されていない野生型オリザ・サティバL.ssp.ジャポニカcv.ボラノを使用して花粉ドナーとして使用した。表2は、倍数性レベルについて評価される全ての交配及び播種される種子の概要を列挙する。正逆交配は同様の結果を生じることができる。
表1に列挙した交配から生じた種子を播種し、植物をそれらのDNA含有量についてフローサイトメトリーによって評価する。CenH3_V9M、CenH3_P16S又はCenH3_P26L変異体SNPの存在を、フローサイトメトリー分析によって半数体であると決定した植物において試験する。変異体SNPが存在しないことは、変異親遺伝物質が、結果として生じた子孫の一部ではなく、これらの子孫植物が半数体野生型親起源であること、すなわち、CenH3_V9M、CenH3_P16S又はCenH3_P26L変異体の各々が、高度に効率的な半数体インデューサー系統として機能することを示す。