本開示の基礎となった知見.
特許文献1では、電力伝送装置において複数の電力系統間において電力の融通を実現可能な連携装置が開示されている。特許文献1では、前記連携装置はコンバータとインバータを備え、送電するときには前記コンバータにより送電電力を交流から直流に変換し、電力を受け取る電力系統に接続された連携装置に電力を送電する。前記電力を受け取る電力系統の連携装置では、インバータにより所望の周波数に変換することで、前記連携装置が接続される電力系統に最適な周波数の電力を提供できる。また、特許文献2では、特許文献1に対して、電力貯蔵装置を備えた構成が開示されている。
一方、特許文献3では、電力伝送装置において複数の送電装置から複数の受電装置への電力を伝送する方法が開示されている。特許文献3では、前記複数の送電装置から、前記複数の受電装置への電力の伝送は時分割で行う。なお、特許文献3では、電力融通を実現するに当たって、前記送電装置及び受電装置間の制御通信は、無線通信で行うことで実現している。
しかしながら、特許文献1及び特許文献2において、前記連携装置は、インバータとコンバータを備え、且つ、基本的には電力融通を行う系統間の全ての組み合わせに対して個別の電力伝送ケーブルが必要になる。連携装置の構成により、電力伝送ケーブルを減らす方法も記載されているが、いずれにしても多数の電力伝送ケーブルが必要になる。これにより、敷設コストの増加、ケーブルの材料費の増加、さらには、連携装置には、接続される系統の数と同じ数のインバータとコンバータの組を備える必要がある。これらより、ケーブルのコストの増加に加え、連携装置の規模の増大によるコストの増加の恐れがある。
また、特許文献3は、複数の送電装置と受電装置間において時分割で電力を融通することが可能であり、電力伝送ケーブルの本数が少なくてすむという利点がある。しかしながら、時分割で送電することにより、複数系統間での電力の融通を同時に行うことができない。すなわち、受電側に接続された負荷の電力の要求に即座に対応できない恐れがあった。さらには、多数の電力融通を実施する場合には、1つあたりの電力融通に割り振られる時間が短くなるので、パルス的に大きな電力が電力伝送ケーブルに送電される。したがって、送ケーブルの耐電力性が求められ、コストの増加に繋がる恐れがあった。また、電力を受電できない時間帯が生じるので、受電装置に大きな電力のバッファ機能が必要となる恐れがあった。さらには、時分割での電力融通を実現するためには、複数の送電装置及び受電送置間で時間的な同期が必要であり、これを実現するためには非常に精度の高い機器間制御が求められ、システム全体としてコストの増加に繋がる恐れがあった。
前記のように、特許文献1、2はいずれも、多数の電力伝送ケーブルを用いており電力伝送の多重化による電力伝送ケーブルの省線化が実現できない。さらに、連携装置においては、電力伝送ケーブルごとにインバータとコンバータの組が必要になり、連携装置の規模を小さくすることは不可能である。このため、多くの電力系統間での電力融通は困難であった。一方、特許文献3では、電力伝送ケーブルに、複数の電力融通を時分割で行うことにより、電力伝送ケーブルの省線化が図れるが、複数の電力融通を同時に行う伝送システムを提供できない。従って、送電装置及び受電装置の小型・薄型化を図りつつ、電力伝送ケーブルの省線化を実現し、且つ、複数の送電装置から複数の受電装置への電力融通を同時に、より確実に行うことができる電力伝送システムが望まれている。
さらに、前述のように、直流、単相交流、及び多相交流のいずれの電力でも伝送可能である電力伝送システムであって、電力伝送システム内に異なる種類の電源及び/又は負荷が混在していても電力を伝送可能である電力伝送システムを提供することができれば便利である。
以上の考察により、本発明者らは、以下の発明の各態様を想到するに至った。
本開示の一態様に係る電力送信装置によれば、
伝送路を介して少なくとも1つの電力受信装置に電力を送信する電力送信装置であって、
互いに異なる所定の符号系列に基づく変調符号をそれぞれ用いて、複数の位相成分を含む多相交流電力の前記各位相成分の電力を符号変調して符号変調波をそれぞれ生成し、前記伝送路を介して前記符号変調波を前記少なくとも1つの電力受信装置にそれぞれ送信する複数の符号変調器を備える。
本開示の一態様に係る電力受信装置によれば、
互いに異なる所定の符号系列に基づく変調符号を用いて符号変調された電力をそれぞれ含む複数の符号変調波を少なくとも1つの電力送信装置から伝送路を介して受信する電力受信装置であって、
受信した前記複数の符号変調波のうちの1つの符号変調波を符号変調したときに用いた変調符号の符号系列と同じ符号系列に基づく復調符号を用いて前記1つの符号変調波をそれぞれ符号復調し、符号復調された電力を、多相交流電力の複数の位相成分のうちの1つの位相成分の電力としてそれぞれ生成する複数の符号復調器を備える。
本開示によれば、簡単な構成でありながら、多相交流の電源及び/又は負荷を含む電力伝送システムにおいて電力を伝送することができ、電力伝送システム内に異なる種類の電源及び/又は負荷が混在していても電力を伝送することができる。
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
本開示の目的は、簡単な構成でありながら、多相交流の電源及び/又は負荷を含む電力伝送システムにおいて電力を伝送することができ、電力伝送システム内に異なる種類の電源及び/又は負荷が混在していても電力を伝送することができる電力送信装置、電力受信装置、及び電力伝送システムを提供することにある。実施形態1〜3では、その前提として、電力伝送システムの概要について説明する。その後、実施形態4〜6において、課題を解決する電力伝送システムについて説明する。
実施形態1.
図1は実施形態1に係る電力伝送システムの構成を示すブロック図である。図1において、実施形態1に係る電力伝送システムは、発電機1と、符号変調器2と、伝送路3と、符号復調器4と、負荷5と、コントローラ10とを備える。伝送路3は、例えば、2本の電力線を含む有線又は無線の伝送路である。
コントローラ10は、制御回路11及び通信回路12を備える。制御回路11は、通信回路12を介して符号変調器2及び符号復調器4と通信し、それらの動作を制御する。
図1の電力伝送システムにおいて、符号変調器2は電力送信装置として動作し、符号復調器4は電力受信装置として動作する。符号変調器2は、第1の電力を、所定の符号系列に基づく変調符号を用いて符号変調して符号変調波を生成し、符号変調波を、伝送路3を介して符号復調器4に送信する。符号復調器4は、符号変調器2から伝送路3を介して符号変調波を受信し、受信した符号変調波を、符号変調したときに用いた変調符号の符号系列と同じ符号系列に基づく復調符号を用いて符号復調して第2の電力を生成する。第1の電力は、例えば、発電機1で発電された直流電力であり、図1では発電電流I1として示す。符号変調波は、符号変調された交流電力であり、図1では変調電流I2として示す。第2の電力は、例えば、負荷5に供給される直流電力であり、図1では復調電流I3として示す。
図1の電力伝送システムは、さらに、電力測定器1m,5mを備える。電力測定器1mは、第1の電力の電力量を測定する第1の電力測定手段である。すなわち、電力測定器1mは、発電機1の発電量であり、発電機1から符号変調器2へ送られる直流電力の電力量を測定する。電力測定器1mは、発電機1に設けられてもよく、発電機1と符号変調器2との間に設けられてもよい。電力測定器5mは、第2の電力の電力量を測定する第2の電力測定手段である。すなわち、電力測定器5mは、負荷5における電力使用量である、符号復調器4から負荷5へ送られる直流電力の電力量を測定する。電力測定器5mは、負荷5に設けられてもよく、符号復調器4と負荷5との間に設けられてもよい。電力測定器1m,5mによって測定された電力量はコントローラ10に送信される。
コントローラ10は、電力測定器1m,5mから受信した各電力量に基づいて、符号変調器2と符号復調器4の動作を制御する。例えば、コントローラ10は、符号変調器2及び符号復調器4を互いに同期させるための同期信号を含む制御信号を符号変調器2及び符号復調器4に送信し、これにより、正確に同期した電力の符号変調及び符号復調を実現する。
コントローラ10は、1つの符号系列に基づいて、変調符号を符号変調器2に設定し、復調符号を符号復調器4に設定する。符号変調器2において変調に用いるための変調符号の符号系列、並びに、符号復調器4において復調に用いるための復調符号の符号系列は、符号変調器2及び符号復調器4において予め設定されていてもよい。また、例えば、コントローラ10は、上記制御信号において、符号変調器2において変調に用いるための変調符号の符号系列、並びに、符号復調器4において復調に用いるための復調符号の符号系列を送信してもよい。さらに、コントローラ10は、上記制御信号において、符号系列を送信せずに、符号系列の指定情報のみを送信して符号変調器2及び符号復調器4において符号系列を生成してもよい。この場合、対向する符号変調器2と符号復調器4との間で正確に同期して符号変調及び符号復調することができる。
図2は図1の電力伝送システムの変調電流I2の信号波形例を示す波形図である。また、図3は比較例に係る通信システムの変調電流I2の信号波形例を示す波形図である。
図1の符号変調器2は、予め決められた符号系列に基づく変調符号を用いて、発電機1において発電された電力の電流を符号変調する。このとき、図2に示すように、符号変調器2は、「1」と「−1」の符号値に対応する向きに流れる電流からなる、交流の符号変調波を生成する。この符号変調波は、正の電流が流れる期間であっても、負の電流が流れる期間(例えば、図2の期間T01)であっても、電力を伝送可能である。なお、実施形態1では、一例として直流電力を符号変調する例を示すが、後述する実施形態2に示すように交流電力を符号変調してもよい。
例えば通信で使用される比較例に係るデータ伝送システムでは、通常、図3に示すように、「1」と「0」の符号値を用いて符号変調がなされる。しかしながら、図3に示す符号変調波では、変調符号の符号値が「0」のとき(例えば、図3の期間T02)に変調された電流もしくは電圧が0となり、電力が伝送されない時間が生じてしまう。このため、この電力が伝送されない時間の区間により、全体的に電力の伝送効率の低下を招いてしまう恐れがあった。すなわち、通信の場合には、データ等の情報を正確に同期して伝送することが望まれるので、符号復調器で「0」もしくは「1」と正確に判別できればよかったが、電力の伝送では、エネルギーの高効率利用の観点で、この電力が伝送されない時間の区間による電力の損失は許容することができなかった。以上により、図2に示すように、「1」と「−1」の符号値に対応する向きに流れる交流の符号変調波を用いることで、比較例よりも高い伝送効率で電力を伝送できる。
図4(a)〜図4(c)は図1の電力伝送システムにおける例示的な信号波形を示す波形図である。図4(a)は発電電流I1の信号波形を示し、図4(b)は変調電流I2の信号波形を示し、図4(c)は復調電流I3の信号波形を示す。発電機1は直流の発電電流I1を生成する。符号変調器2は、変調符号m0を発電電流I1に乗算することで、交流の変調電流I2を生成する。符号復調器4は、変調符号m0と同一の復調符号d0を変調電流I2に乗算し、これにより、発電機1で発電された直流の電力を復元して負荷5に供給することができる。
なお、図4において、T10は変調符号m0及び復調符号d0の1周期分の期間を示し、以下の図面においても同様である。
図4の信号波形例では、直流の発電電流I1(図4(a))に対して、周波数35kHzを有する変調符号m0を乗算して、符号変調波の変調電流I2(図4(b))を生成した。この場合、変調符号m0の各ビットの時間長は、1/(35kHz)/2=14.2マイクロ秒であった。
変調符号m0及び復調符号d0の各ビットは符号値「1」又は「−1」を有する。ここで、変調符号m0について、符号値「1」は、符号変調器2が入力された電流の向きと同じ向きの電流を出力することを示し、符号値「−1」は、符号変調器2が入力された電流の向きと逆向きの電流を出力することを示す。同様に、復調符号d0について、符号値「1」は、符号復調器4が入力された電流の向きと同じ向きの電流を出力することを示し、符号値「−1」は、符号復調器4が入力された電流の向きと逆向きの電流を出力することを示す。
変調符号m0及び復調符号d0はそれぞれ一例として次式で表される。
m0=[1 −1 1 1 1 −1 −1 −1 1 −1 −1 −1 1 1]
(1)
d0=m0
=[1 −1 1 1 1 −1 −1 −1 1 −1 −1 −1 1 1]
(2)
次いで、変調符号m0によって生成された符号変調波の変調電流I2に対して復調符号d0を乗算する。この乗算は次式により表される。
m0×d0
=[1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1]
(3)
式(3)から明らかなように、元の発電電流I1と同じ直流の復調電流I3(図4(c))が得られることがわかる。
以上説明したように、本実施形態に係る符号変調器2及び符号復調器4を用いることで、正確に同期しかつ電力損失のない直流の電力伝送を実現できる。また、例えば上述の変調符号m0及び復調符号d0を繰り返して使用することにより、より長い時間での電力の伝送を効率よく行うことが可能になる。
さらに、変調符号m0は、その前半の符号部分m0aと、その後半の符号部分m0bとに次式のように分割することができる。
m0a=[1 −1 1 1 1 −1 −1] (4)
m0b=[−1 1 −1 −1 −1 1 1] (5)
ここで、符号部分m0bは、符号部分m0aの各ビットの符号値をそれぞれ符号反転して生成される。すなわち、符号部分m0aのあるビットの符号値が「1」であれば、符号部分m0bの対応するビットの符号値は「−1」である。同様に、符号部分m0aのあるビットの符号値が「−1」であれば、符号部分m0bの対応するビットの符号値は「1」である。
図5は図1の符号変調器2の構成を示すブロック図である。図5において、符号変調器2は、制御回路20と、通信回路21と、符号生成回路22と、符号変調回路23とを備える。通信回路21は、コントローラ10から、同期信号と、符号系列又はその指定情報を含む制御信号とを受信して、制御回路20に出力する。ここで、同期信号は、例えば、変調開始及び変調終了のトリガー信号であってもよく、変調開始時刻及び変調終了時刻の時間情報であってもよい。制御回路20は、上記制御信号に基づいて、符号生成回路22により所定の符号系列に基づく変調符号を生成させて符号変調回路23に出力させるとともに、符号変調回路23の動作開始及び動作終了を制御する。なお、符号変調回路23は、発電機1に接続された入力端子T1,T2と、伝送路3に接続された出力端子T3,T4とを有する。
図6は図1の符号復調器4の構成を示すブロック図である。図6において、符号復調器4は、制御回路30と、通信回路31と、符号生成回路32と、符号復調回路33とを備える。通信回路31は、コントローラ10から、同期信号と、符号系列又はその指定情報を含む制御信号とを受信して、制御回路30に出力する。ここで、同期信号は、例えば、復調開始及び復調終了のトリガー信号であってもよく、復調開始時刻及び復調終了時刻の時間情報であってもよい。制御回路30は、上記制御信号に基づいて、符号生成回路32により所定の符号系列に基づく復調符号を生成させて符号復調回路33に出力させるとともに、符号復調回路33の動作開始及び動作終了を制御する。なお、符号復調回路33は、伝送路3に接続された入力端子T11,T12と、負荷5に接続された出力端子T13,T14とを有する。
なお、図1の電力伝送システムにおいて、コントローラ10から符号変調器2及び符号復調器4への制御信号は、伝送路3とは異なる制御信号回線で伝送されてもよく、伝送路3を用いて符号変調波と所定の多重化方式で多重化して伝送されてもよい。後者の場合において、コントローラ10から符号変調器2及び符号復調器4への通信に使用するケーブルを削減し、コストを低減することができる。
図7は図1の符号変調回路23及び符号復調回路33の構成を示すブロック図である。図7において、符号変調回路23は、ブリッジ形状で接続された4個のスイッチ回路SS1〜SS4を備える。スイッチ回路SS1〜SS4はそれぞれ、例えばMOSトランジスタで構成された方向性スイッチ素子S1〜S4を備える。また、符号復調回路33は、ブリッジ形状で接続された4個のスイッチ回路SS11〜SS14を備える。スイッチ回路SS11〜SS14はそれぞれ、例えばMOSトランジスタで構成された方向性スイッチ素子S11〜S14を備える。
符号生成回路22は、前述のように符号変調器2を変調符号m0に従って動作させるために、制御回路20の制御下で所定の変調符号m1,m2を生成して、符号変調回路23に出力する。符号変調回路23のスイッチ素子S1,S4は変調符号m1に従って制御され、符号変調回路23のスイッチ素子S2,S3は変調符号m2に従って制御される。各変調符号m1,m2は符号値「1」及び「0」を有する。例えば、各スイッチ素子S1〜S4に符号値「1」の信号が入力されるときに各スイッチ素子S1〜S4はオンされ、符号値「0」の信号が入力されるときに各スイッチ素子S1〜S4はオフされる。なお、本明細書において説明するスイッチ素子S1〜S4以外のスイッチ素子についても以下同様に動作する。ここで、各スイッチ素子S1〜S4は以下のように方向性を有する。スイッチ素子S1はオンのときに端子T1から入力される発電電流を端子T3に出力し、スイッチ素子S3はオンのときに端子T1から入力される発電電流を端子T4に出力し、スイッチ素子S2はオンのときに端子T3から入力される変調電流を端子T2に出力し、スイッチ素子S4はオンのときに端子T4から入力される変調電流を端子T2に出力する。
符号生成回路32は、前述のように符号復調器4を復調符号d0に従って動作させるために、制御回路30の制御下で所定の復調符号d1,d2を生成して、符号復調回路33に出力する。符号復調回路33のスイッチ素子S11,S14は復調符号d2に従って制御され、符号復調回路33のスイッチ素子S12,S13は復調符号d1に従って制御される。各復調符号d1,d2は符号値「1」及び「0」を有する。ここで、各スイッチ素子S11〜S14は以下のように方向性を有する。スイッチ素子S11はオンされるときに端子T12から入力される変調電流を端子T13に出力し、スイッチ素子S13はオンされるときに端子T11から入力される変調電流を端子T13に出力し、スイッチ素子S12はオンされるときに端子T14から入力される復調電流を端子T12に出力し、スイッチ素子S14はオンされるときに端子T14から入力される復調電流を端子T11に出力する。
なお、図7の表記においては、符号復調器4のスイッチ素子S11〜S14において電流が流れる方向は、符号変調器2のスイッチ素子S1〜S4において電流が流れる方向と逆向きとなるように記載した。
図8Aは図1の電力伝送システムにおいて直流電力を送電して直流電力を受電する実施例1に係る符号変調器2の変調符号及び符号復調器4の復調符号の一例を示す図である。すなわち、図8Aは、符号変調器2のスイッチ素子S1〜S4に入力される変調符号m1とm2、及び符号復調器4のスイッチ素子S11〜S14に入力される復調符号d1とd2の一例を示す。
図8Aに示すように、変調符号m1と復調符号d1は互いに同一であり、それぞれ符号系列c1aからなる。また、変調符号m2と復調符号d2は互いに同一であり、それぞれ符号系列c1bからなる。また、符号系列c1aのあるビットの符号値が「1」のとき、符号系列c1bの対応するビットの符号値を「0」とし、符号系列c1aのあるビットの符号値が「0」のとき、符号系列c1bの対応するビットの符号値を「1」とするように、符号系列c1a及びc1bを設定する。
従って、図7のスイッチ素子S1〜S4、S11〜S14のうち、符号系列c1aのあるビットの符号値が入力されるスイッチ素子がオンされるときに、符号系列c1bの対応するビットの符号値が入力されるスイッチ素子がオフされる。また、符号系列c1aのあるビットの符号値が入力されるスイッチ素子がオフされるとき、符号系列c1bの対応するビットの符号値が入力されるスイッチ素子がオンされる。
図7の符号変調回路23においては、スイッチ素子S1,S4がオンされるとき、スイッチ素子S2,S3がオフされ、スイッチ素子S1,S4がオフされるとき、スイッチ素子S2,S3がオンされる。これにより、スイッチ素子S1,S4がオンされかつスイッチ素子S2,S3がオフされるとき、伝送路3には正の向きに、すなわち実線矢印の向きに変調電流I2が流れる。一方、スイッチ素子S1,S4がオフされかつスイッチS2,S3がオンされるとき、伝送路3には負の向きに、すなわち点線矢印の向きに変調電流I2が流れる。これにより、図4に示すように、符号変調器2に直流の発電電流I1が入力されたとき、交流に変調した変調電流I2を伝送路3に伝送することができる。
図7の符号復調回路33においては、符号変調回路23と同期して復調符号d1,d2に応答してスイッチ素子S11〜S14がオン又はオフされる。ここで、変調符号m1と同じ復調符号d1によりスイッチ素子S12,S13がオン又はオフされ、変調符号m2と同じ復調符号d2によりスイッチ素子S11,S14がオン又はオフされる。これにより、変調符号m1の符号値が「1」であり、かつ変調符号m2の符号値が「0」であるとき、すなわち伝送路3に正の向きの変調電流I2が流れるときは、復調符号d1の符号値が「1」となり、かつ復調符号d1の符号値が「0」となる。従って、スイッチ素子S13,S12がオンされかつスイッチ素子S11,S14がオフされることにより、符号復調回路33の出力端子T13,T14に正の向きに、すなわち実線矢印の向きに復調電流I3が流れる。また、変調符号m1の符号値が「0」であり、かつ変調符号m2の符号値が「1」であるとき、すなわち伝送路3に負の向きの変調電流I2が流れるときは、復調符号d1の符号値が「0」となり、かつ復調符号d1の符号値が「1」となる。従って、スイッチ素子S11,S14がオンされかつスイッチ素子S12,S13がオフされることにより、この場合も、符号復調回路33の出力端子T13,T14に正の向きに、すなわち実線矢印の向きに復調電流I3が流れる。
以上説明したように、図8Aの変調符号m1,m2及び復調符号d1,d2を用いることにより、等価的に、符号変調器2は式(1)の変調符号m0に従って動作し、符号復調器4は式(2)の復調符号d0に従って動作する。
以上説明したように、図7及び図8Aによれば、符号変調器2に直流の発電電流I1が入力されたとき、符号復調器4から、符号変調器2に入力される発電電流I1と同じ直流の復調電流I3を引き出すことが可能になる。従って、本実施形態1によれば、直流の発電電流I1を交流の変調電流I2に符号変調した後、変調電流I2を伝送路3を介して伝送し、変調電流I2を直流の復調電流I3に復調することができる。
図8Bは図1の電力伝送システムにおいて直流電力を送電して直流電力を受電する実施例2に係る符号変調器2の変調符号及び符号復調器4の復調符号の一例を示す図である。符号系列c1aとc1bに関して、符号値「1」を有するビットの個数と符号値「0」を有するビットの個数が同じ場合には、伝送路3に流れる符号変調された変調電流I2は平均的に直流成分がなく、交流成分のみとなる。しかしながら、符号系列によっては、符号値「1」を有するビットの個数と符号値「0」を有するビットの個数とが互いに異なり、直流成分が生じる場合もある。このような符号系列を用いる場合、当該符号系列と、その各ビットの符号値を反転した符号系列とを連結することにより、符号値「1」を有するビットの個数と符号値「0」を有するビットの個数が同じである変調符号及び復調符号を生成することができる。図8Bの例では、変調符号m1と復調符号d1を、符号系列c1aと符号系列c1bを連結した符号系列[c1a c1b]とし、変調符号m2と復調符号d2を、符号系列c1bと符号系列c1aを連結した符号系列[c1b c1a]にする。これにより、伝送路3に流れる符号変調された変調電流I2の平均値は0になり、変調電流I2は交流成分のみを含む。
なお、発電機1もしくは負荷5は、電池、コンデンサ等の蓄電装置であってもよい。本実施形態の電力伝送システムに蓄電装置を組み込むことにより、電力消費の少ない、あるいは電力消費のない時間帯に発電された電力を有効に活用することができるようになり、全体での電力効率を向上できる。
実施形態2.
実施形態1では、直流の発電電流を符号変調して伝送する電力伝送システムについて説明した。一方、実施形態2では、単相交流の発電電流を符号変調して伝送する電力伝送システムについて説明する。
実施形態2に係る電力伝送システムは、図1の符号変調器2及び符号復調器4に代えて、図10及び図11を参照して後述する符号変調器2A及び符号復調器4Aを備える。他の部分については、実施形態2に係る電力伝送システムは、実施形態1に係る電力伝送システムと同様に構成される。
図9(a)〜図9(c)は実施形態2に係る電力伝送システムにおける例示的な信号波形を示す波形図であり、図9(a)は発電電流I1の信号波形を示し、図9(b)は変調電流I2の信号波形を示し、図9(c)は復調電流I3の信号波形を示す。すなわち、図9は、交流(単相交流)の発電電流I1を符号変調器2Aにより符号変調した後、変調電流I2を伝送路3を介して伝送し、変調電流I2を符号復調器4Aにより符号復調したときの信号波形例である。
発電機1は交流の発電電流I1を生成する。ここで、交流の発電電流I1は、一例として、200マイクロ秒で正と負を周期的に繰り返す、周波数5kHzの矩形波形を有する。このときも、図4に示した直流の発電電流I1を符号変調したときと同様に、符号変調器2Aは、変調符号m0を発電電流I1に乗算することで、交流の変調電流I2を生成する。符号復調器4Aは、変調符号m0と同一の復調符号d0を変調電流I2に乗算し、これにより、発電機1で発電された交流電力を復元して負荷5に供給することができる。
変調符号m0及び復調符号d0の周波数は、発電電流I1の周波数及び復調電流I3の周波数よりも高く設定される。図9の信号波形例では、交流の発電電流I1(図9(a))に対して、周波数35kHzを有する変調符号m0を乗算して、符号変調波の変調電流I2(図9(b))を生成した。この場合、変調符号m0の各ビットの時間長は、1/(35kHz)/2=14.2マイクロ秒であった。
変調符号m0及び復調符号d0の各ビットは符号値「1」又は「−1」を有する。
交流の発電電流I1を伝送する場合、発電電流I1が正の期間(図9(a)の0〜100μ秒の期間)と、発電電流I1が負の期間(図9(a)の100〜200μ秒の期間)とで、符号値「1」又は「−1」は異なる意味を有する。発電電流I1が正の期間において、変調符号m0について、符号値「1」は、符号変調器2Aが入力された電流の向きと同じ向きの電流を出力することを示し、符号値「−1」は、符号変調器2Aが入力された電流の向きと逆向きの電流を出力することを示す。同様に、発電電流I1が正の期間において、復調符号d0について、符号値「1」は、符号復調器4Aが入力された電流の向きと同じ向きの電流を出力することを示し、符号値「−1」は、符号復調器4Aが入力された電流の向きと逆向きの電流を出力することを示す。発電電流I1が負の期間において、変調符号m0について、符号値「1」は、符号変調器2Aが入力された電流の向きと逆向きの電流を出力することを示し、符号値「−1」は、符号変調器2Aが入力された電流の向きと同じ向きの電流を出力することを示す。同様に、発電電流I1が負の期間において、復調符号d0について、符号値「1」は、符号復調器4Aが入力された電流の向きと逆向きの電流を出力することを示し、符号値「−1」は、符号復調器4Aが入力された電流の向きと同じ向きの電流を出力することを示す。
変調符号m0及び復調符号d0はそれぞれ一例として次式で表される。
m0=[1 −1 1 1 1 −1 −1 −1 1 −1 −1 −1 1 1]
(6)
d0=m0
=[1 −1 1 1 1 −1 −1 −1 1 −1 −1 −1 1 1]
(7)
実施形態1に係る符号復調と同様に、変調符号m0によって生成された符号変調波の変調電流I2に対して復調符号d0を乗算する。この乗算は次式により表される。
m0×d0
=[1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1]
(8)
式(8)から明らかなように、元の発電電流I1と同じ交流の復調電流I3(図8(c))が得られることがわかる。
以上説明したように、本実施形態に係る符号変調及び符号復調の方法を用いることで、正確に同期しかつ電力損失のない電力伝送を実現できる。また、前記の変調符号m0及び復調符号d0を繰り返して使用することにより、より長い時間での電力の伝送を効率よく行うことが可能になる。
図10は実施形態2に係る電力伝送システムの符号変調器2Aの一部の構成を示すブロック図である。図10の符号変調器2Aは、図5の符号生成回路22及び符号変調回路23に代えて、符号生成回路22A及び符号変調回路23Aを備える。図10の符号変調器2Aは、図5の符号変調器2と同様に制御回路20及び通信回路21をさらに備えるが、図10では図示の簡単化のためにこれらを省略する。
図10の符号生成回路22A及び符号変調回路23Aは、図7の符号生成回路22及び符号変調回路23と比較して以下の点が異なる。
(1)符号生成回路22Aは、2つの変調符号m1,m2に代えて、4個の変調符号m1〜m4を生成して符号変調回路23Aに出力する。
(2)符号変調回路23Aは、一方向性スイッチ回路SS1〜SS4に代えてそれぞれ、ブリッジ形式で接続された4個の双方向性スイッチ回路SS21〜SS24を備える。
符号生成回路22Aは、前述のように符号変調器2Aを変調符号m0に従って動作させるために、制御回路20の制御下で所定の変調符号m1〜m4を生成して、符号変調回路23Aに出力する。各変調符号m1〜m4は符号値「1」及び「0」を有する。
符号変調回路23Aにおいて、スイッチ回路SS21は、変調符号m1に応答してオンオフされる図7のスイッチ素子S1に加えて、スイッチ素子S1とは逆方向性を有しかつ並列に接続され、変調符号m3に応答してオンオフされるスイッチ素子S21を備える。スイッチ回路SS22は、変調符号m2に応答してオンオフされる図7のスイッチ素子S2に加えて、スイッチ素子S2とは逆方向性を有しかつ並列に接続され、変調符号m4に応答してオンオフされるスイッチ素子S22を備える。スイッチ回路SS23は、変調符号m2に応答してオンオフされる図7のスイッチ素子S3に加えて、スイッチ素子S3とは逆方向性を有しかつ並列に接続され、変調符号m4に応答してオンオフされるスイッチ素子S23を備える。スイッチ回路SS24は、変調符号m1に応答してオンオフされる図7のスイッチ素子S4に加えて、スイッチ素子S4とは逆方向性を有しかつ並列に接続され、変調符号m3に応答してオンオフされるスイッチ素子S24を備える。なお、スイッチ素子S21〜S24はそれぞれ、例えばMOSトランジスタで構成される。符号変調回路23Aは、発電機1に接続された端子T1,T2と、伝送路3に接続された端子T3,T4を有する。符号変調回路23Aには発電機1からの交流電力が入力され、符号変調回路23Aは交流電力を符号変調した後、符号変調された変調波を伝送路3に出力する。
図11は実施形態2に係る電力伝送システムの符号復調器4Aの一部の構成を示すブロック図である。図11の符号復調器4Aは、図6の符号生成回路32及び符号復調回路33に代えて、符号生成回路32A及び符号復調回路33Aを備える。図11の符号復調器4Aは、図5の符号復調器4と同様に制御回路30及び通信回路31をさらに備えるが、図11では図示の簡単化のためにこれらを省略する。
図11の符号生成回路32A及び符号復調回路33Aは、図7の符号生成回路32及び符号復調回路33と比較して以下の点が異なる。
(1)符号生成回路32Aは、2つの復調符号d1,d2に代えて、4個の復調符号d1〜d4を生成して符号復調回路33Aに出力する。
(2)符号復調回路33Aは、一方向性スイッチ回路SS11〜SS14に代えてそれぞれ、ブリッジ形式で接続された4個の双方向性スイッチ回路SS31〜SS34を備える。
符号生成回路32Aは、前述のように符号復調器4Aを復調符号d0に従って動作させるために、制御回路30の制御下で所定の復調符号d1〜d4を生成して、符号復調回路33Aに出力する。各復調符号d1〜d4は符号値「1」及び「0」を有する。
符号復調回路33Aにおいて、スイッチ回路SS31は、復調符号d2に応答してオンオフされる図7のスイッチ素子S11に加えて、スイッチ素子S11とは逆方向性を有しかつ並列に接続され、復調符号d4に応答してオンオフされるスイッチ素子S31を備える。スイッチ回路SS32は、復調符号d1に応答してオンオフされる図7のスイッチ素子S12に加えて、スイッチ素子S12とは逆方向性を有しかつ並列に接続され、復調符号d3に応答してオンオフされるスイッチ素子S32を備える。スイッチ回路SS33は、復調符号d1に応答してオンオフされる図7のスイッチ素子S13に加えて、スイッチ素子S13とは逆方向性を有しかつ並列に接続され、復調符号d3に応答してオンオフされるスイッチ素子S33を備える。スイッチ回路SS34は、復調符号d2に応答してオンオフされる図7のスイッチ素子S14に加えて、スイッチ素子S14とは逆方向性を有しかつ並列に接続され、復調符号d4に応答してオンオフされるスイッチ素子S34を備える。なお、スイッチ素子S31〜S34はそれぞれ、例えばMOSトランジスタで構成される。符号復調回路33Aは、伝送路3に接続された端子T11,T12と、負荷5に接続された端子T13,T14を有する。符号復調回路33Aには伝送路3からの交流の符号変調波が入力され、符号復調回路33Aは符号変調波を交流の復調電力に符号復調した後、負荷5に出力する。
図12Aは実施形態2に係る電力伝送システムにおいて交流電力を送電して交流電力を受電する実施例3に係る符号変調器2Aの変調符号及び符号復調器4Aの復調符号の一例を示す図である。すなわち、図12Aは、符号変調回路23Aの双方向性スイッチ回路SS21〜SS24に入力される変調符号m1〜m4、及び符号復調回路33Aの双方向性スイッチ回路SS31〜SS34に入力される復調符号d1〜d4の一例を示す。
図12Aに示すように、変調符号m1と復調符号d1は互いに同一であり、変調符号m2と復調符号d2は互いに同一である。同様に、変調符号m3と復調符号d3は互いに同一であり、変調符号m4と復調符号d4は互いに同一である。また、直流電力の伝送のときと同様に、符号系列c1aのあるビットの符号値が「1」のとき、符号系列c1bの対応するビットの符号値を「0」とし、符号系列c1aのあるビットの符号値が「0」のとき、符号系列c1bの対応するビットの符号値を「1」とするように、符号系列c1a及びc1bを設定する。
図12Aでは、符号系列c1aと符号系列c1bの時間長を交流の発電電流I1の半周期と一致させる場合を示した。交流の発電電流I1が正の期間(図12Aの例では、各周期の前半の期間)において、変調符号m1,m2はそれぞれ符号系列c1a,c1bからなり、一方、変調符号m3,m4の符号値は常に「0」である。交流の発電電流I1が負の期間(図12Aの例では、各周期の後半の期間)において、変調符号m1,m2の符号値は常に「0」であり、一方、変調符号m3,m4はそれぞれ符号系列c1a,c1bからなる。各周期の前半の期間のビットと各周期の後半の期間のビットとを連結することにより、1周期分の変調符号m1〜m4がそれぞれ生成される。これにより、各周期の前半の期間では、スイッチ素子S1〜S4は変調符号m1,m2に従ってオンオフされ、一方、スイッチ素子S21〜S24は切断されて電流が流れない。また、各周期の後半の期間では、スイッチ素子S1〜S4は切断されて電流が流れず、一方、スイッチ素子S21〜S24は変調符号m3,m4に従ってオンオフされる。変調符号m1〜m4と同様に、1周期分の復調符号d1〜d4もまた、各周期の前半の期間のビットと各周期の後半の期間のビットとを連結することにより生成される。
ここで、符号変調回路23Aの動作について以下説明する。
まず、入力端子T1,T2において正の向きに、すなわち実線矢印A1の向きに発電電流I1が流れる場合の動作について説明する。この場合、変調符号m1の符号値「1」が入力されるスイッチ素子S1,S4がオンされるときに、変調符号m2の符号値「0」が入力されるスイッチ素子S2,S3がオフされる。また、変調符号m1の符号値「0」が入力されるスイッチ素子S1,S4がオフされるとき、変調符号m2の符号値「1」が入力されるスイッチ素子S2,S3がオンされる。これにより、スイッチ素子S1,S4がオンでかつスイッチ素子S2,S3がオフのとき、伝送路3には正の向きに、すなわち実線矢印A1の向きに変調電流I2が流れる。一方、スイッチ素子S1,S4がオフでかつスイッチ素子S2,S3がオンのとき、伝送路3には負の向きに、すなわち点線矢印A2の向きに変調電流I2が流れる。これにより、交流の発電電流I1のうちの正の期間の電流が符号変調回路23Aに入力されているとき、図9(b)に示すように、交流の変調電流I2を伝送路3に伝送することができる。
次に、入力端子T1,T2において負の向きに、すなわち一点鎖線矢印B1の向きに発電電流I1が流れる場合の動作について以下説明する。この場合、変調符号m3の符号値「1」が入力されるスイッチ素子S21,S24がオンされるときに、変調符号m4の符号値「0」が入力されるスイッチ素子S22,S23がオフされる。また、変調符号m3の符号値「0」が入力されるスイッチ素子S21,S24がオフされるとき、変調符号m4の符号値「1」が入力されるスイッチ素子S22,S23がオンされる。これにより、スイッチ素子S21,S24がオンでかつスイッチ素子S22,S23がオフのとき、伝送路3には負の向きに、すなわち一点鎖線矢印B1の向きに変調電流I2が流れる。一方、スイッチ素子S21,S24がオフでかつスイッチ素子S22,S23がオンのとき、伝送路3には正の向きに、すなわち二点鎖線矢印B2の向きに変調電流I2が流れる。これにより、交流の発電電流I1のうちの負の期間の電流が符号変調回路23Aに入力されているとき、図9(b)に示すように、交流の変調電流I2を伝送路3に伝送することができる。
図10を参照して説明したように、符号変調回路23Aは、交流の発電電流I1のうちの正の期間及び負の期間のそれぞれにおいて、図9(b)に示すように、交流の変調電流I2を生成することができる。
次に、図11の符号復調回路33Aの動作について以下説明する。
まず、符号変調回路23Aの入力端子T1,T2において正の向きに、すなわち実線矢印A1の向きに発電電流I1が流れる場合を考える。このとき、符号復調回路33Aの入力端子T11,T12には、伝送路3を介して、正の向き及び負の向きに流れる交流の変調電流I2が入力される。符号復調回路33Aが正しく復調動作を行った場合には、符号復調回路33Aの出力端子T13,T14において正の向きに、すなわち実線矢印C1の向きに復調電流I3が流れることになる。以下、これらの動作について説明する。この場合には、復調符号d3と復調符号d4の符号値はすべて「0」であり、スイッチ素子S31〜S34はすべてオフされる。
まず、符号変調回路23Aの入力端子T1,T2において正の向きに発電電流I1が流れ、かつ、符号復調回路33Aの入力端子T11,T12において正の向きに、すなわち実線矢印C1の向きに流れる変調電流I2が入力された場合の符号復調回路33Aの動作について説明する。この場合、符号系列c1aの符号値は「1」であり、符号系列c1bの符号値は「0」である。従って、復調符号d1の符号値「1」が入力されるスイッチ素子S12,S13はオンされ、復調符号d2の符号値「0」が入力されるスイッチ素子S11,S14はオフされる。従って、出力端子T13,T14には正の向きに、すなわち実線矢印C1の向きに復調電流I3が流れる。
次に、符号変調回路23Aの入力端子T1,T2において正の向きに発電電流I1が流れ、かつ、符号復調回路33Aの入力端子T11,T12において負の向きに、すなわち点線矢印C2の向きに流れる変調電流I2が入力された場合の符号復調回路33Aの動作について説明する。この場合、符号系列c1aの符号値は「0」であり、符号系列c1bの符号値は「1」である。従って、復調符号d1の符号値「0」が入力されるスイッチ素子S12,S13はオフされ、復調符号d2の符号値「1」が入力されるスイッチ素子S11,S14はオンされる。従って、出力端子T13,T14には正の向きに、すなわち実線矢印C1の向きに復調電流I3が流れることになる。これにより、交流の発電電流I1のうちの正の期間の電流が符号変調回路23Aに入力されているとき、符号復調回路33Aにより、図9(c)に示すように、正しく正の極性を有するように復調された復調電流I3を負荷5に出力することができる。
次に、符号変調回路23Aの入力端子T1,T2において負の向きに、すなわち一点鎖線矢印B1の向きに発電電流I1が流れる場合を考える。この場合も、符号復調回路33Aの入力端子T11,T12には、伝送路3を介して、正の向き及び負の向きに流れる交流の変調電流I2が入力される。符号復調回路33Aが正しく復調動作を行った場合には、符号復調回路33Aの出力端子T13,T14において負の向きに、すなわち点線矢印C2の向きに復調電流I3が流れることになる。以下、これらの動作について説明する。この場合には、復調符号d1とd2の符号値はすべて「0」であり、スイッチ素子S11〜S14はすべてオフされる。
まず、符号変調回路23Aの入力端子T1,T2において負の向きに発電電流I1が流れ、かつ、符号復調回路33Aの入力端子T11,T12において負の向きに、すなわち点線矢印C2の向きに流れる変調電流I2が入力された場合の符号復調回路33Aの動作について説明する。この場合、符号系列c1aの符号値は「1」であり、符号系列c1bの符号値は「0」である。従って、復調符号d3の符号値「1」が入力されるスイッチ素子S32,S33がオンされ、復調符号d4の符号値「0」が入力されるスイッチ素子S31,S34はオフされる。従って、出力端子T13,T14には負の向きに、すなわち点線矢印C2の向きに復調電流I3が流れる。
次に、符号変調回路23Aの入力端子T1,T2において負の向きに発電電流I1が流れ、かつ、符号復調回路33Aの入力端子T11,T12において正の向きに、すなわち実線矢印C1の向きに流れる変調電流I2が入力された場合の符号復調回路33Aの動作について説明する。この場合、符号系列c1aの符号値は「0」であり、符号系列c1bの符号値は「1」である。従って、復調符号d3の符号値「0」が入力されるスイッチ素子S32,S33はオフされ、復調符号d4の符号値「1」が入力されるスイッチ素子S31,S34はオンされる。従って、出力端子T13,T14には負の向きに、すなわち点線矢印C2の向きに復調電流I3が流れることになる。これにより、交流の発電電流I1のうちの負の期間の電流が符号変調回路23Aに入力されているとき、符号復調回路33Aにより、図9(c)に示すように、正しく負の極性を有するように復調された復調電流I3を負荷5に出力することができる。
以上説明したように、図12Aの変調符号m1〜m4及び復調符号d1〜d4を用いることにより、等価的に、符号変調器2Aは式(6)の変調符号m0に従って動作し、符号復調器4Aは式(7)の復調符号d0に従って動作する。
以上説明したように、図10、図11、及び図12Aによれば、符号変調器2Aに交流の発電電流I1が入力されたとき、符号復調器4Aから、符号変調器2Aに入力される発電電流I1と同じ交流の復調電流I3を引き出すことが可能になる。従って、本実施形態2によれば、交流の発電電流I1を交流の変調電流I2に符号変調した後、変調電流I2を伝送路3を介して伝送し、変調電流I2を交流の復調電流I3に復調することができる。
図12Bは実施形態2に係る電力伝送システムにおいて直流電力を送電して直流電力を受電する実施例4に係る符号変調器2Aの変調符号及び符号復調器4Aの復調符号の一例を示す図である。ここで、図10の符号変調回路23Aと図11の符号復調回路33Aにおいて、図12Bに示すように、変調符号m3、m4及び復調符号d3、d4の符号値を常に「0」に設定することによりスイッチ素子S21〜S24,S31〜S34をオフにする。これにより、図10の符号変調回路23Aと図11の符号復調回路33Aを、図7の符号変調回路23と符号復調回路33としてそれぞれ動作させることができる。従って、図12Bに示すように、変調符号m1,m2及び復調符号d1,d2を符号系列c1a,c1bから生成することで、図4に示した直流電力伝送を実現することができる。このように、変調符号m1〜m4及び復調符号d1〜d4を変更することで、図10の符号変調回路23Aと図11の符号復調回路33Aを用いて、直流の電力伝送及び交流の電力伝送の両方をサポートすることが可能な優れた電力伝送システムを実現できる。
直流の発電機1は、例えば、太陽光発電装置を含む。交流の発電機1は、例えば、火力、水力、風力、原子力、潮力等のタービン等の回転による発電機を含む。
上述のように、実施形態2に係る電力伝送システムは、互いに同一の変調符号及び復調符号を用いることにより、直流の発電電流I1を変調して伝送し、直流の復調電流I3に復調することができ、さらに、交流の発電電流I1を変調して伝送し、交流の復調電流I3に復調することができる。また、実施形態2に係る電力伝送システムは、変調符号とは異なる復調符号を用いることにより、直流の発電電流I1を変調して伝送し、交流の復調電流I3に復調することができ、さらに、交流の発電電流I1を変調して伝送し、直流の復調電流I3に復調することができる。
図10の符号変調回路23A及び図11の符号復調回路33Aは、双方向性スイッチ回路SS21〜SS24,SS31〜SS34を備えているので、可逆である。すなわち、符号変調回路23Aは、符号復調回路としても動作可能であり、端子T3,T4から入力された変調電流を復調して端子T1,T2から出力する。符号復調回路33Aは、符号変調回路としても動作可能であり、端子T13,T14から入力された発電電流を変調して端子T11,T12から出力する。これにより、符号復調回路33Aを備えた符号復調器から、符号変調回路23Aを備えた符号変調器へ、電力を伝送することができる。
図10〜図11では、双方向性スイッチ回路SS21〜SS34はそれぞれ、互いに逆の向きの電流を流すように並列に接続された各1対のスイッチ素子(S1,S21;S2,S22;S3,S23;S4,S24;S11,S31;S12,S32;S13,S33;S14,S34)により構成された例を示した。代替として、双方向性スイッチ回路SS21〜SS34は、以下の図13A〜図14Dに示すように直列に接続された各1対のスイッチ素子(S41,S51;S42,S52;S43,S53;S44,S54)によっても構成することができる。図13A〜図14Dにおいて、各図において上から下に向かう方向を「正方向」といい、下から上に向かう方向を「負方向」という。
図13Aは実施形態2の変形例に係る電力伝送システムにおいて用いる符号変調回路23Aのための双方向性スイッチ回路SS21Aの構成を示す回路図である。図13Aにおいて、スイッチ回路SS21Aは、図10のスイッチ回路SS21に対応し、
(1)負方向に電流を流すダイオードD1が並列に接続され、変調符号m1に基づいてオンオフするスイッチ素子S41と、
(2)正方向に電流を流すダイオードD11が並列に接続され、変調符号m3に基づいてオンオフするスイッチ素子S51と
が直列に接続されて構成される。
図13Bは実施形態2の変形例に係る電力伝送システムにおいて用いる符号変調回路23Aのための双方向性スイッチ回路SS22Aの構成を示す回路図である。図13Bにおいて、スイッチ回路SS22Aは、図10のスイッチ回路SS22に対応し、
(1)負方向に電流を流すダイオードD2が並列に接続され、変調符号m2に基づいてオンオフするスイッチ素子S42と、
(2)正方向に電流を流すダイオードD12が並列に接続され、変調符号m4に基づいてオンオフするスイッチ素子S52と
が直列に接続されて構成される。
図13Cは実施形態2の変形例に係る電力伝送システムにおいて用いる符号変調回路23Aのための双方向性スイッチ回路SS23Aの構成を示す回路図である。図13Cにおいて、スイッチ回路SS23Aは、図10のスイッチ回路SS23に対応し、
(1)負方向に電流を流すダイオードD3が並列に接続され、変調符号m2に基づいてオンオフするスイッチ素子S43と、
(2)正方向に電流を流すダイオードD13が並列に接続され、変調符号m4に基づいてオンオフするスイッチ素子S53と
が直列に接続されて構成される。
図13Dは実施形態2の変形例に係る電力伝送システムにおいて用いる符号変調回路23Aのための双方向性スイッチ回路SS24Aの構成を示す回路図である。図13Dにおいて、スイッチ回路SS24Aは、図10のスイッチ回路SS24に対応し、
(1)負方向に電流を流すダイオードD4が並列に接続され、変調符号m1に基づいてオンオフするスイッチ素子S44と、
(2)正方向に電流を流すダイオードD14が並列に接続され、変調符号m3に基づいてオンオフするスイッチ素子S54と
が直列に接続されて構成される。
図14Aは実施形態2の変形例に係る電力伝送システムにおいて用いる符号復調回路33Aのための双方向性スイッチ回路SS31Aの構成を示す回路図である。図14Aにおいて、スイッチ回路SS31Aは、図11のスイッチ回路SS31に対応し、
(1)正方向に電流を流すダイオードD31が並列に接続され、復調符号d2に基づいてオンオフするスイッチ素子S61と、
(2)負方向に電流を流すダイオードD21が並列に接続され、復調符号d4に基づいてオンオフするスイッチ素子S71と
が直列に接続されて構成される。
図14Bは実施形態2の変形例に係る電力伝送システムにおいて用いる符号復調回路33Aのための双方向性スイッチ回路SS32Aの構成を示す回路図である。図14Bにおいて、スイッチ回路SS32Aは、図11のスイッチ回路SS32に対応し、
(1)正方向に電流を流すD32が並列に接続され、復調符号d1に基づいてオンオフするスイッチ素子S62と、
(2)負方向に電流を流すダイオードD22が並列に接続され、復調符号d3に基づいてオンオフするスイッチ素子S72と
が直列に接続されて構成される。
図14Cは実施形態2の変形例に係る電力伝送システムにおいて用いる符号復調回路33Aのための双方向性スイッチ回路SS33Aの構成を示す回路図である。図14Cにおいて、スイッチ回路SS33Aは、図11のスイッチ回路SS33に対応し、
(1)正方向に電流を流すダイオードD33が並列に接続され、復調符号d1に基づいてオンオフするスイッチ素子S63と、
(2)負方向に電流を流すダイオードD23が並列に接続され、復調符号d3に基づいてオンオフするスイッチ素子S73と
が直列に接続されて構成される。
図14Dは実施形態2の変形例に係る電力伝送システムにおいて用いる符号復調回路33Aのための双方向性スイッチ回路SS34Aの構成を示す回路図である。図14Dにおいて、スイッチ回路SS34Aは、図11のスイッチ回路SS34に対応し、
(1)正方向に電流を流すダイオードD34が並列に接続され、復調符号d2に基づいてオンオフするスイッチ素子S64と、
(2)負方向に電流を流すダイオードD24が並列に接続され、復調符号d4に基づいてオンオフするスイッチ素子S74と
が直列に接続されて構成される。
図13A〜図14Dにおいて、スイッチ素子S41〜S74は例えばMOSトランジスタで構成され、それぞれ並列にMOSトランジスタの寄生(ボディ)ダイオードD1〜D34を使用することも可能である。図13A〜図14Dの各スイッチ回路SS21A〜SS34Aを、例えばMOSトランジスタのスイッチ素子と1つのダイオードで実現すると、1つの双方向性スイッチ回路SS21A〜SS34Aで2つのMOSトランジスタと2つのダイオードが必要になる。一方、MOSトランジスタには特性の良い逆特性ダイオードが内蔵されたパッケージが普及しており、これを用いれば2つのスイッチ素子で1つの双方向性スイッチ回路SS21A〜SS34Aを構成でき小型化が可能となる。
実施形態3.
実施形態1及び2では、1つの発電機1から1つの負荷5に電力を伝送する電力伝送システムについて説明した。一方、実施形態3では、複数の発電機から複数の負荷に電力を伝送する電力伝送システムについて説明する。
図15は実施形態3に係る電力伝送システムの構成を示すブロック図である。図15において、実施形態3に係る電力伝送システムは、複数の発電機1−1,1−2と、複数の符号変調器2A−1,2A−2と、伝送路3と、複数の符号復調器4A−1,4A−2と、複数の負荷5−1,5−2と、コントローラ10Aとを備える。
コントローラ10Aは、制御回路11及び通信回路12Aを備える。制御回路11は、通信回路12Aを介して符号変調器2A−1,2A−2及び符号復調器4A−1,4A−2と通信し、それらの動作を制御する。
図15の電力伝送システムにおいて、符号変調器2A−1,2A−2は電力送信装置としてそれぞれ動作し、符号復調器4A−1,4A−2は電力受信装置としてそれぞれ動作する。符号変調器2A−1,2A−2のうちの各1つの符号変調器は、第1の電力を、所定の符号系列に基づく変調符号を用いて符号変調して符号変調波を生成し、符号変調波を、伝送路3を介して符号復調器4A−1,4A−2のうちの1つの符号復調器に送信する。符号復調器4A−1,4A−2のうちの各1つの符号復調器は、符号変調器2A−1,2A−2のうちの1つの符号変調器から伝送路3を介して符号変調波を受信し、受信した符号変調波を、符号変調したときに用いた変調符号の符号系列と同じ符号系列に基づく復調符号を用いて符号復調して第2の電力を生成する。第1の電力は、例えば、発電機1−1,1−2で発電された電力であり、図15では発電電流I11,I12として示す。符号変調波は、符号変調された交流電力であり、図15では変調電流I2として示す。第2の電力は、例えば、負荷5−1,5−2に供給される電力であり、図1では復調電流I31,I32として示す。
ここで、図15の符号変調器2A−1,2A−2及び符号復調器4A−1,4A−2は、実施形態2に係る符号変調器2A及び符号復調器4Aと同様に構成され、同様に動作する。
図15の電力伝送システムは、さらに、電力測定器1m−1,1m−2,5m−1,5m−2を備える。電力測定器1m−1,1m−2は、第1の電力の電力量を測定する第1の電力測定手段である。すなわち、電力測定器1m−1,1m−2は、発電機1−1,1−2の発電量であり、発電機1−1,1−2から符号変調器2A−1,2A−2へ送られる電力の電力量を測定する。電力測定器5m−1,5m−2は、第2の電力の電力量を測定する第2の電力測定手段である。すなわち、電力測定器5m−1,5m−2は、負荷5−1,5−2における電力使用量である、符号復調器4A−1,4A−2から負荷5−1,5−2へ送られる電力の電力量を測定する。電力測定器1m−1,1m−2,5m−1,5m−2によって測定された電力量はコントローラ10Aに送信される。
コントローラ10Aは、電力測定器1m−1,1m−2,5m−1,5m−2から受信した各電力量に基づいて、符号変調器2A−1,2A−2及び符号復調器4A−1,4A−2の動作を制御する。例えば、コントローラ10Aは、符号変調器2A−1,2A−2及び符号復調器4A−1,4A−2を互いに同期させるための同期信号を含む制御信号を符号変調器2A−1,2A−2及び符号復調器4A−1,4A−2に送信し、これにより、正確に同期した電力の符号変調及び符号復調を実現する。
コントローラ10Aは、符号変調器2A−1,2A−2のうち、電力を送信すべき符号変調器に対して変調符号の符号系列又はその指定情報を送信する一方、符号復調器4A−1,4A−2のうち、電力を受信すべき符号復調器に対して復調符号の符号系列又はその指定情報を送信する。例えば、符号変調器2A−1から符号復調器4A−1に電力を伝送する場合、コントローラ10Aは、1つの符号系列に基づいて、変調符号を符号変調器2A−1に設定し、復調符号を符号復調器4A−1に設定する。それと同時に符号変調器2A−2から符号復調器4A−2に電力を伝送する場合、コントローラ10Aは、異なるもう1つの符号系列に基づいて、変調符号を符号変調器2A−2に設定し、復調符号を符号復調器4A−2に設定する。複数の符号変調器2A−1,2A−2から複数の符号復調器4A−1,4A−2に同時に電力を伝送する場合、互いに低相関である(例えば、互いに直交する)複数の符号系列を用いてもよい。
これにより、複数の発電機1−1,1−2から複数の負荷5−1,5−2へ電力を伝送することができる。
発電機1−1,1−2で発電された電力を負荷5−1,5−2へ伝送するための符号変調器2A−1,2A−2及び符号復調器4A−1,4A−2の例示的な動作について、以下に説明する。
実施形態3において、発電機1−1及び1−2の出力電力が直流であり、負荷5−1の入力電力が直流であり、負荷5−2への入力電力が交流である場合を示す。すなわち、発電機1−2から負荷5−2への電力伝送が、直流から交流への変換動作となる。
図16Aは図15の電力伝送システムにおいて直流電力を送電して直流電力を受電する実施形態3に係る符号変調器2A−1の変調符号及び符号復調器4A−1の復調符号の一例を示す図である。また、図16Bは図15の電力伝送システムにおいて直流電力を送電して交流電力を受電する実施形態3に係る符号変調器2A−2の変調符号及び符号復調器4A−2の復調符号の一例を示す図である。
図16Aは、符号変調器2A−1の符号変調回路23Aのスイッチ素子S1〜S4,S21〜S24(図10)に入力される変調符号と、符号復調器4A−1の符号復調回路33Aのスイッチ素子S11〜S14,S31〜S34(図11)に入力される復調符号とを示す。ここで、図16Aの変調符号m1a〜m4aは、図10の変調回路23Aの変調符号m1〜m4にそれぞれ対応し、図16Aの復調符号d1a〜d4aは、図11の復調回路33Aの復調符号d1〜d4にそれぞれ対応する。この場合、図12Bを用いて説明した通り、変調符号m3a、m4a及び復調符号d3a、d4aの符号値を常に「0」に設定することによりスイッチ素子S21〜S24,S31〜S34はオフされる。また、変調符号m1a、m2a及び復調符号d1a、d2aは、図12Bを用いて説明した通り、符号系列c1aと符号系列c1bから生成される。
さらに、図16Bは、符号変調器2A−2の符号変調回路23Aのスイッチ素子S1〜S4,S21〜S24(図10)に入力される変調符号と、符号復調器4A−2の符号復調回路33Aのスイッチ素子S11〜S14,S31〜S34(図11)に入力される復調符号とを示す。ここで、図16Bの変調符号m1b〜m4bは、図10の変調回路23Aの変調符号m1〜m4にそれぞれ対応し、図16Bの復調符号d1b〜d4bは、図11の復調回路33Aの復調符号d1〜d4にそれぞれ対応する。この場合、変調符号m3b、m4bの符号値を常に「0」に設定することによりスイッチ素子S21〜S24はオフされる。また、変調符号m1b、m2b及び復調符号d1b〜d4bは、符号系列c2aと符号系列c2bから生成される。電流の符号変調及び符号復調の原理は、実施形態1〜2と同様であるので、ここでは説明は省略する。
以下では、図17を参照して、複数の発電機1−1,1−2から複数の負荷5−1,5−2に電力を伝送する動作について説明する。
図17(a)〜図17(e)は、実施形態3に係る電力伝送システムにおける例示的な信号波形を示す波形図である。図17(a)は発電電流I11の信号波形を示し、図17(b)は発電電流I12の信号波形を示し、図17(c)は変調電流I2の信号波形を示し、図17(d)は復調電流I31の信号波形を示し、図17(e)は復調電流I32の信号波形を示す。
直流の発電電流I11は、符号変調器2A−1により符号変調されて交流の符号変調波になる。同様に、直流の発電電流I12は、符号変調器2A−2により符号変調されて交流の符号変調波になる。符号変調器2A−1により生成された符号変調波と、符号変調器2A−2により生成された符号変調波とは、図17(c)に示すように、互いに合成された変調電流I2として伝送路3を介して伝送される。
上述の通り、符号変調器2A−1及び2A−2は互いに同一の構成を有し、それぞれ図10の符号変調器2Aと同様に構成される。また、符号復調器4A−1と4A−2もまた互いに同一の構成を有し、それぞれ図11の符号復調器4Aと同様に構成される。符号変調器2A−1と2A−2の間の相違点、及び、符号復調器4A−1と4A−2の間の相違点は、互いに異なる符号系列c1a,c1bと符号系列c2a,c2bとを用いていることにある。符号変調器2A−1及び符号復調器4A−1は符号系列c1a,c1bを使用し、符号変調器2A−2及び符号復調器4A−2は符号系列c2a,c2bを使用する。ここで、符号系列c1aとc2aは互いに直交し、従って、符号系列c1bとc2bもまた互いに直交する。ここでは、7段のGold系列を用い、互いに異なるGold系列を符号系列c1a,c2aとして設定した。
符号復調器4A−1,4A−2は、互いに直交した符号系列c1a,c2aを用いることにより、変調電流I2から、対応する符号変調器2A−1,2A−2で生成された電力をそれぞれ復調して取り出すことができる。これにより、図17(d)と図17(e)に示したように、符号変調器2A−1,2A−2に入力された発電電流I11,I12は、符号変調波として伝送された後、対応する符号復調器4A−1,4A−2において復調電流I31,I32として正確に復調されて出力される。これにより、所望の波形(直流又は交流)及び所望の大きさを持った復調電流I31,I32が負荷5−1と5−2にそれぞれ供給される。
以上説明したように、本実施形態によれば、符号変調器2A−1,2A−2と符号復調器4A−1,4A−2を用いることで、1つの伝送路3において多重化された2つの電力伝送を同時に行い、そして、伝送された電力を分離することが可能になる。従って、2つの発電機1−1,1−2から2つの負荷5−1,5−2に所望の大きさの電流を同時に伝送可能な優れた電力伝送システムを実現できる。
なお、符号変調器2A−1と2A−2あるいは符号復調器4A−1と4A−2で瞬時電力を測定し、符号系列と照らし合わせることにより、どの発電機1−1,1−2からどの負荷にどれだけの電力が伝送されたのかを把握することが可能となる。これにより、異なる発電コストを有する複数の異なる発電機1−1,1−2が接続された場合に、送電元の発電機1−1,1−2に応じた電気料金を課すような電力ビジネスの運営を実現できる。あるいは、どの発電機1−1,1−2からどの負荷5−1,5−2に電力を送るかによって送電効率が変わるようなシステムでは、電力伝送の情報を管理して分析することにより、最適な電力供給を実現できる。
以上説明したように、本実施形態によれば、符号変調器2A−1,2A−2及び符号復調器4A−1,4A−2を用いることで、1つ以上の発電機1−1,1−2から1つ以上の負荷5−1,5−2に対して電力を効率よく供給可能な電力伝送システムを提供することが可能になる。
以上の実施形態では、2つの発電機1−1,1−2と2つの負荷5−1,5−2を備えた電力伝送システムを例に挙げて説明したが、本開示はこれに限られるものではない。1つの発電機1−1と2つ以上の負荷5−1,5−2を備えた構成、更には、2つ以上の発電機1−1,1−2と2つ以上の負荷5−1,5−2で構成される電力伝送システムを構成することも可能である。この場合には、多数の電力伝送を1つの伝送路3にまとめて行うことが可能となり、伝送路3の敷設コストの減少、伝送路3の本数削減によるコスト減少等の効果がある。
上述の実施形態の説明では、図15における符号変調器2A−1,2A−2は一例として図10に示した符号変調回路23Aで構成した場合を示したが、これに限られるものではない。例えば、発電機1−1,1−2の出力電力が直流の場合には、符号変調器2A−1,2A−2は図7に示した符号変調回路23を用いて構成してもよい。また、負荷5−1,5−2への入力電力が直流の場合には、符号復調器4A−1,4A−2は図7に示した符号復調回路33を用いて構成してもよい。これらの場合は、符号変調器2A−1,2A−2及び符号復調器4A−1,4A−2の回路構成を簡略化することができるので、部品点数が削減され、コストの削減及び装置の小型化を実現できるという効果がある。
なお、実施形態3では、一例として、直流の出力電力を有する2つの発電機から、直流の入力電力を有する1つの負荷と、交流の入力電力を有する1つの負荷とに電力を伝送する電力伝送システムについて説明したが、これに限られるものではない。電力伝送システムは、直流の出力電力を有する任意個数の発電機と、交流の出力電力を有する任意個数の発電機とから電力供給を受けてもよい。また、電力伝送システムは、直流の入力電力を有する任意個数の負荷と、交流の入力電力を有する任意個数の負荷とに電力を供給してもよい。
自然エネルギーの大半を占める太陽光発電では直流の電力が生成される。その一方で、風力及び地熱発電では交流の電力が生成される。この場合、電力網内に直流と交流の電源が混ざり合うことは望ましくないので、従来の電力伝送システムでは、発電機(電源)及び負荷を直流あるいは交流に揃える必要がある。
これに対して、本実施形態に係る電力伝送システムでは、符号変調及び符号復調を用いることにより、直流の電源から直流の負荷への電力伝送と、直流の電源から交流の負荷への電力伝送と、交流の電源から直流の負荷への電力伝送と、交流の電源から交流の負荷への電力伝送とを、1つの伝送路上で同時に行うことができる。
これにより、実施形態1から3における電力伝送システムにおいて、電力の符号変調及び符号復調を正確に実現する電力伝送に加え、複数の電力伝送を1つの伝送路で多重化して同時に行うことを可能にする優れた電力伝送システムを提供することができる。
実施形態4.
図18は、実施形態4に係る電力伝送システムの構成を示すブロック図である。図18において、実施形態4に係る電力伝送システムは、三相発電機41、符号変調サブシステム42、伝送路43、符号復調サブシステム44、三相負荷45、及びコントローラ10Bを備える。図18の電力伝送システムにおいて、符号変調サブシステム42は電力送信装置として動作し、符号復調サブシステム44は電力受信装置として動作する。
三相発電機41は、互いに120度の位相差を有する第1相〜第3相の位相成分の電力を含む三相交流電力を発生する。図18では、三相発電機41の第1相〜第3相の巻線を発電機41−1〜41−3としてそれぞれ示し、第1相〜第3相の位相成分の電力を発電電流I41〜I43としてそれぞれ示す。
符号変調サブシステム42は、図15の符号変調器2A−1,2A−2と同様に構成された符号変調器2A−1〜2A−3を含む。符号変調器2A−1〜2A−3は、図10の符号変調回路23Aをそれぞれ備え、実施形態2に係る符号復調器と同様にそれぞれ動作する。符号変調器2A−1〜2A−3は、互いに異なる所定の符号系列に基づく変調符号をそれぞれ用いて、三相交流電力の第1相〜第3相の位相成分の電力を符号変調して符号変調波をそれぞれ生成し、伝送路43を介して符号変調波を符号復調サブシステム44にそれぞれ送信する。図18では、符号変調器2A−1〜2A−3によってそれぞれ生成される符号変調波を、変調電流I51〜I53として示す。
伝送路43は、変調電流I51〜I53を互いに重畳した変調電流I61を符号変調サブシステム42から符号復調サブシステム44に伝送する。
符号復調サブシステム44は、図15の符号復調器4A−1,4A−2と同様に構成された符号復調器4A−1〜4A−3を含む。符号復調器4A−1〜4A−3は、図11の符号復調回路33Aをそれぞれ備え、実施形態2に係る符号復調器と同様にそれぞれ動作する。符号復調器4A−1〜4A−3は、受信した符号変調波(すなわち変調電流I51〜I53)のうちの1つの符号変調波を符号変調したときに用いた変調符号の符号系列と同じ符号系列に基づく復調符号を用いて1つの符号変調波をそれぞれ符号復調する。これにより、符号復調器4A−1〜4A−3は、符号復調された電力を、三相交流電力の第1相〜第3相のうちの1つの位相成分の電力としてそれぞれ生成する。図18では、符号復調された電力を、復調電流I71〜I73として示す。
三相負荷45は、符号復調サブシステム44によって生成された三相交流電力によって動作する。三相負荷45は、例えば三相モータである。図18では、三相負荷45の第1相〜第3相の巻線を負荷45−1〜45−3としてそれぞれ示す。
図19は、図18の伝送路43の第1の実施例を示す図である。発電機41−1〜41−3と符号変調器2A−1〜2A−3とは、Y結線により互いに接続されてもよい。符号変調器2A−1〜2A−3によってそれぞれ生成された符号変調波は、2本の電力線43a,43bを含む伝送路43を介して符号復調器4A−1〜4A−3に送信されてもよい。符号復調器4A−1〜4A−3と負荷45−1〜45−3とは、Y結線により互いに接続されてもよい。N1,N2はそれぞれ中性点である。
図20は、図18の伝送路43の第2の実施例を示す図である。符号変調器2A−1〜2A−3によってそれぞれ生成された符号変調波は、3本の電力線43a〜43cと接地線43dとを含む伝送路43(3相4線)を介して符号復調器4A−1〜4A−3に送信されてもよい。
図21は、図18の伝送路43の第3の実施例を示す図である。発電機41−1〜41−3と符号変調器2A−1〜2A−3とは、Δ結線により互いに接続されてもよい。符号変調器2A−1〜2A−3によってそれぞれ生成された符号変調波は、3本の電力線43a〜43cを含む伝送路43を介して符号復調器4A−1〜4A−3に送信されてもよい。符号復調器4A−1〜4A−3と負荷45−1〜45−3とは、Δ結線により互いに接続されてもよい。
発電機41−1〜41−3と符号変調器2A−1〜2A−3とをY結線により互いに接続し、符号復調器4A−1〜4A−3と負荷45−1〜45−3とをΔ結線により互いに接続してもよい。また、発電機41−1〜41−3と符号変調器2A−1〜2A−3とをΔ結線により互いに接続し、符号復調器4A−1〜4A−3と負荷45−1〜45−3とをY結線により互いに接続してもよい。いずれの場合においても、図19の伝送路43、図20の伝送路43、及び図21の伝送路43のいずれを用いてもよい。
図22は、図18のコントローラ10Bの構成を示すブロック図である。コントローラ10Bは、制御回路11B、通信回路12B、及び位相変換器13Ba〜13Bdを備える。
制御回路11Bは、通信回路12Bを介して符号変調サブシステム42の各符号変調器2A−1〜2A−3及び符号復調サブシステム44の各符号復調器4A−1〜4A−3と通信し、それらの動作を制御する。図22では、図示の簡単化のため、変調符号及び復調符号を設定するための構成のみを示す。
コントローラ10Bは、符号変調サブシステム42の各符号変調器2A−1〜2A−3に変調符号の符号系列又はその指定情報を設定し、符号復調サブシステム44の各符号復調器4A−1〜4A−3に復調符号の符号系列又はその指定情報を設定する。コントローラ10Bは、三相交流電力の対応する相を送受信する符号変調器及び符号復調器のペアに対して、同じ符号系列に基づいて変調符号及び復調符号をそれぞれ設定する。コントローラ10Bは、変調符号m11〜m14を符号変調器2A−1に設定し、変調符号m11〜m14と同じ復調符号d11〜d14を符号復調器4A−1に設定する。コントローラ10Bは、変調符号m21〜m24を符号変調器2A−2に設定し、変調符号m21〜m24と同じ復調符号d21〜d24を符号復調器4A−2に設定する。コントローラ10Bは、変調符号m31〜m34を符号変調器2A−3に設定し、変調符号m31〜m34と同じ復調符号d31〜d34を符号復調器4A−3に設定する。変調符号m11〜m14、変調符号m21〜m24、及び変調符号m31〜m34(及び対応する復調符号)は、互いに低相関であり、例えば互いに直交する。
コントローラ10Bは、互いに低相関又は互いに直交する変調符号及び復調符号を生成するために、図22に示すように位相変換器13Ba〜13Bdを用いてもよい。位相変換器13Ba,13Bbは、変調符号m11〜m14の位相を予め決められた移相量だけ変化させることにより、変調符号m21〜m24及び変調符号m31〜m34をそれぞれ生成する。位相変換器13Bc,13Bdは、復調符号d11〜d14の位相を予め決められた移相量だけ変化させることにより、復調符号d21〜d24及び復調符号d31〜d34をそれぞれ生成する。
次に、図23A〜図24Dを参照して、符号変調及び符号復調を用いて三相発電機41の各相の電力を三相負荷の各相の負荷45−1〜45−3へ伝送する方法を説明する。
図23Aは、図18の電力伝送システムにおいて三相交流電力を送電して三相交流電力を受電する実施例7に係る符号変調器2A−1の変調符号及び符号復調器4A−1の復調符号の一例を示す図である。図23Aは、符号変調器2A−1の符号変調回路23Aのスイッチ素子S1〜S4,S21〜S24(図10)に入力される変調符号と、符号復調器4A−1の符号復調回路33Aのスイッチ素子S11〜S14,S31〜S34(図11)に入力される復調符号とを示す。ここで、図23Aの変調符号m11〜m14は、図10の符号変調回路23Aの変調符号m1〜m4にそれぞれ対応し、図23Aの復調符号d11〜d14は、図11の符号復調回路33Aの復調符号d1〜d4にそれぞれ対応する。
図23Bは、図18の電力伝送システムにおいて三相交流電力を送電して三相交流電力を受電する実施例8に係る符号変調器2A−2の変調符号及び符号復調器4A−2の復調符号の一例を示す図である。図23Bは、符号変調器2A−2の符号変調回路23Aのスイッチ素子S1〜S4,S21〜S24(図10)に入力される変調符号と、符号復調器4A−2の符号復調回路33Aのスイッチ素子S11〜S14,S31〜S34(図11)に入力される復調符号とを示す。ここで、図23Bの変調符号m21〜m24は、図10の符号変調回路23Aの変調符号m1〜m4にそれぞれ対応し、図23Bの復調符号d21〜d24は、図11の符号復調回路33Aの復調符号d1〜d4にそれぞれ対応する。
図23Cは、図18の電力伝送システムにおいて三相交流電力を送電して三相交流電力を受電する実施例9に係る符号変調器2A−3の変調符号及び符号復調器4A−3の復調符号の一例を示す図である。図23Cは、符号変調器2A−3の符号変調回路23Aのスイッチ素子S1〜S4,S21〜S24(図10)に入力される変調符号と、符号復調器4A−3の符号復調回路33Aのスイッチ素子S11〜S14,S31〜S34(図11)に入力される復調符号とを示す。ここで、図23Cの変調符号m31〜m34は、図10の符号変調回路23Aの変調符号m1〜m4にそれぞれ対応し、図23Cの復調符号d31〜d34は、図11の符号復調回路33Aの復調符号d1〜d4にそれぞれ対応する。
電流の符号変調及び符号復調の原理は、実施形態2の場合と同様であるので、ここでは説明を省略する。
次に、符号変調器2A−1〜2A−3により符号変調された変調電流I51〜I53を互いに重畳した変調電流I61から、符号復調器4A−1〜4A−3を用いて復調電流I71〜I73を符号復調し、それぞれ所望の負荷45−1〜45−3に伝送するメカニズムを説明する。
上述の通り、符号変調器2A−1〜2A−3は互いに同一の構成を有し、図10の符号変調回路23Aをそれぞれ備える。符号変調器2A−1〜2A−3の相違点は、互いに異なる変調符号m11〜m14、変調符号m21〜m24、そして変調符号m31〜m34を用いていることにある。また、符号復調器4A−1〜4A−3もまた互いに同一の構成を有し、図11の符号復調回路33Aをそれぞれ備える。符号復調器4A−1〜4A−3の相違点は、互いに異なる復調符号d11〜d14、復調符号d21〜d24、そして復調符号d31〜d34を用いていることにある。
符号変調器2A−1の変調符号は、実施形態2に係る電力伝送システムにおいて交流電力を送信して交流電力を受信する実施例3の変調符号(図12A)と同様に設定される。つまり、交流の電流波形の前半部分の電流が正となる時間幅において、変調符号m11と変調符号m12にそれぞれ、符号系列[c3a c3b c3c]と符号系列[c3d c3e c3f]が与えられ、スイッチ素子S1〜S4が制御される。このとき、変調符号m13と変調符号m14は常に0であり、スイッチ素子S21〜S24は切断されて電流が流れない。一方、交流の電流波形の後半部分の電流が負となる時間幅においては、変調符号m11と変調符号m12は常に0であり、スイッチ素子S1〜S4は切断されて電流が流れないが、変調符号m13と変調符号m14にそれぞれ、符号系列[c3a c3b c3c]と符号系列[c3d c3e c3f]が与えられ、スイッチ素子S21〜S24が制御される。
符号変調器2A−2の変調符号は、第2相の発電電流I42が第1相の発電電流I41に対して所定の位相関係を有するように、位相変換器13Baにより符号変調器2A−1の変調符号の位相を予め決められた移相量だけ変化させることによって設定される。本実施例の場合は、三相発電機41の各相の発電電流I41〜I43を符号変調するので、第2相の発電電流I42の位相は第1相の発電電流I41に対して120度進んでいる。従って、図23Bに示すように、符号変調器2A−2のために、符号変調器2A−1の変調符号を120度進めた変調符号を設定した。
同様に、符号変調器2A−3の変調符号は、第3相の発電電流I43が第1相の発電電流I41に対して所定の位相関係を有するように、位相変換器13Bbにより符号変調器2A−1の変調符号の位相を予め決められた移相量だけ変化させることによって設定される。本実施例の場合は、三相発電機41の各相の発電電流I41〜I43を符号変調するので、第3相の発電電流I43の位相は第1相の発電電流I41に対して240度進んでいる。従って、図23Cに示すように、符号変調器2A−3のために、符号変調器2A−1の変調符号を240度進めた変調符号を設定した。
位相変換器13Ba,13Bbを用いて符号変調器2A−1の変調符号から符号変調器2A−2〜2A−2の変調符号を生成することにより、符号変調器2A−1〜2A−3の変調符号を独立に生成する場合よりも小さな負荷で各変調符号を生成することができる。
ここでは、5段のGold系列を用い、符号系列c3a〜c3fに異なるGold系列を与えた。ここで、符号系列c3aと符号系列c3c、及び符号系列c3dと符号系列c3fは直交符号の関係にある。これにより、符号系列c3a〜c3fから構成される変調符号m11〜m14、変調符号m21〜m24、そして変調符号m31〜m34もまた、互いに直交符号の関係となる。
符号復調器4A−1〜4A−3の復調符号もまた、符号変調器2A−1〜2A−3の変調符号と同様に設定される。
これにより、三相交流電力の3つの位相成分の電力をそれぞれ符号変調する3組の変調符号は、互いに直交し、かつ、対応する位相成分に同期している。互いに重畳された3つの符号変調波をそれぞれ符号復調する3組の復調符号は、互いに直交し、かつ、三相交流電力の対応する位相成分に同期している。
図24A〜図24Dは、図18の電力伝送システムにおける例示的な信号波形を示す波形図である。図24A(a)は発電電流I41の信号波形を示し、図24A(b)は発電電流I42の信号波形を示し、図24A(c)は発電電流I43の信号波形を示す。図24B(a)は変調電流I51の信号波形を示し、図24B(b)は変調電流I52の信号波形を示し、図24B(c)は変調電流I53の信号波形を示す。図24Cは重畳された変調電流I61を示す。図24D(a)は復調電流I71の信号波形を示し、図24D(b)は復調電流I72の信号波形を示し、図24D(c)は復調電流I73の信号波形を示す。
ここで、三相発電機41の各相の発電電流I41〜I43は、一例として、200マイクロ秒で正と負を周期的に繰り返す、周波数5kHzの正弦波形を有する。また、第2相の発電電流I42は、第1相の発電電流I41に対して120度進んだ位相を有し、第3相の発電電流I43は、第1相の発電電流I41に対して240度進んだ位相を有する。
図24A〜図24Dに示すように、符号変調器2A−1〜2A−2に入力された発電電流I41〜I43は、対応する符号復調器4A−1〜4A−3で正確に復調され、それぞれの負荷45−1〜45−3に対して所望の大きさを持った復調電流I71〜I73が送られていることがわかる。
以上説明したように、本実施形態によれば、符号変調サブシステム42及び符号復調サブシステム44を用いることで、三相発電機41の各相の発電電流I41〜I43を、1つの伝送路43上に多重して伝送し、そして、各相の復調電流I71〜I73を分離することができる。このように、三相発電機41の各相の電流を三相負荷45に同時に伝送可能な優れた電力伝送システムを実現できる。
本実施形態によれば、簡単な構成でありながら、三相発電機41及び三相負荷45を含む電力伝送システムにおいて電力を送信することができる。
また、本実施形態によれば、符号変調及び符号復調を用いているので、電力伝送システム内に異なる種類の電源及び/又は負荷(例えば、他の単相、三相、又は多相交流の電源及び/又は負荷、直流の電源及び/又は負荷)が混在していても電力を送信することができる。
三相発電機は主に国内及び海外の産業分野で広く用いられている。従来技術では、三相発電機を用いた電気設備へ電力を供給する場合、伝送路として3相4線のケーブル(図20を参照)を用いることが多い。一方、本実施形態によれば、伝送路として単相2線のケーブルを用いることが可能となり、伝送路の敷設コストの減少、伝送路の本数削減によるコスト減少等の効果がある。
本開示によれば、電力伝送システムにおいて、送電元となる発電機及び送電先となる負荷の組み合わせと、伝送する電力量とを能動的に指定した上で、複数の組み合わせの間での電力伝送を1つの伝送路上で同時かつ独立に行うとともに、電力伝送を行う電力変換回路の個数及び電力線の本数を削減することができる。
図18では図示の簡単化のために省略しているが、電力伝送システムは、図1の電力測定器1m,5mと同様に、三相発電機41の全体又は各相の巻線の発電量を測定する電力測定器を備えてもよく、三相負荷45の全体又は各相の巻線の電力使用量を測定する電力測定器を備えてもよい。
コントローラ10Bは、変調符号及び復調符号を生成するために、位相変換器13Ba〜13Bdを用いることに限定されず、互いに低相関又は互いに直交する変調符号及び復調符号を生成できるのであれば、他の任意の方法を用いてもよい。
次に、図25〜図28を参照して、実施形態4の変形例に係る電力伝送システムについて説明する。
図25は、実施形態4の第1の変形例に係る電力伝送システムの構成を示すブロック図である。図25の電力伝送システムの伝送路43は、図19〜図21の伝送路43のように各相の変調電流を互いに重畳して伝送するのではなく、各相の変調電流を個別に伝送する伝送路3−1〜3−3を含む。伝送路3−1は、三相発電機41の第1相の発電電流を符号変調した変調電流を伝送する。伝送路3−2は、三相発電機41の第2相の発電電流を符号変調した変調電流を伝送する。伝送路3−3は、三相発電機41の第3相の発電電流を符号変調した変調電流を伝送する。伝送路3−1〜3−3のそれぞれは、例えば2本の電力線を含む。他の点では、図25の電力伝送システムは、図18の電力伝送システムと同様に構成される。
図25の電力伝送システムによれば、三相発電機41の各相の変調電流を流すために個別の伝送路43−1〜43−3を用いることで、三相負荷45に所望の電流を同時に伝送可能な優れた電力伝送システムを実現することができる。例えば既存の伝送路(例えば、図19〜図21のいずれかの伝送路)を再利用することで、伝送路の敷設コストを削減できるという効果がある。
図26は、実施形態4の第2の変形例に係る電力伝送システムの構成を示すブロック図である。図26の電力伝送システムは、図18の三相負荷45に代えて、3つの個別の負荷5−1〜5−3を備える。負荷5−1〜5−3は、実施形態1〜3に係る電力伝送システムの負荷と同様に、直流又は単相交流で動作する。
図26のコントローラ10Bは、図18のコントローラ10Bと同様に、符号変調器2A−1〜2A−3に変調符号を設定し、符号復調器4A−1〜4A−3に復調符号を設定する。
図26の電力伝送システムにおいて、負荷5−1〜5−3のうちの少なくとも1つは、他の負荷から地理的に離れた場所に設けられてもよい。負荷5−1〜5−3の位置に応じて、符号復調器4A−1〜4A−3もまた、互いに地理的に離れた場所に設けられてもよい。この場合、各符号復調器4A−1〜4A−3は電力受信装置としてそれぞれ動作する。
図26の電力伝送システムによれば、三相発電機41で発電された各相の電力を個別の負荷5−1〜5−3に供給することができ、柔軟な電力伝送システムを構築できるという効果がある。
図27は、実施形態4の第3の変形例に係る電力伝送システムの構成を示すブロック図である。図27の電力伝送システムは、図18の三相発電機41に代えて、3つの個別の発電機1−1〜1−3を備え、コントローラ10Bに代えてコントローラ10Cを備える。発電機1−1〜1−3は、実施形態1〜3に係る電力伝送システムの発電機と同様に、直流又は単相交流を発生する。
図27のコントローラ10Cは、互いに低相関又は互いに直交する変調符号を符号変調器2A−1〜2A−3にそれぞれ設定し、各変調符号に対応する復調符号を符号復調器4A−1〜4A−3にそれぞれ設定する。三相負荷45は互いに120度の位相差を有する三相交流電力が入力されることを必要とするが、各発電機1−1〜1−3の発電電流は互いに120度の位相差を有する交流であるとは限らない。従って、三相負荷45に三相交流電力を供給するために、コントローラ10Cは、符号復調器4A−1〜4A−3により符号復調された復調電流が互いに120度の位相差を有するように、復調電流の波形及び位相を表す符号を変調符号又は復調符号に予め乗算する。三相負荷45に三相交流電力を供給するために、復調電流の波形及び位相を表す符号を用いることに代えて、発電電流又は変調電流の位相を変化させる位相変換器を符号変調器2A−1〜2A−3に設けてもよく、変調電流又は復調電流の位相を変化させる位相変換器を又は符号復調器4A−1〜4A−3に設けてもよい。
図27の電力伝送システムにおいて、発電機1−1〜1−3のうちの少なくとも1つは、他の発電機から地理的に離れた場所に設けられてもよい。発電機1−1〜1−3の位置に応じて、符号変調器2A−1〜2A−3もまた、互いに地理的に離れた場所に設けられてもよい。この場合、各符号変調器2A−1〜2A−3は電力送信装置としてそれぞれ動作する。
これにより、三相交流電力を必要とする三相負荷45に対して、三相発電機を用いることなく、任意の3つの単相発電機から電力を供給することが可能となり、柔軟な電力伝送システムを構築できるという効果がある。
図28は、実施形態4の第4の変形例に係る電力伝送システムの構成を示すブロック図である。図28の電力伝送システムは、発電機1A−1〜1A−3、符号変調器2A−1〜2A−3、伝送路43、符号復調器4A−1〜4A−3、負荷5−1〜5−3、及びコントローラ10Dを備える。図28の電力伝送システムにおいて、符号変調器2A−1〜2A−3は電力送信装置として動作し、符号復調器4A−1〜4A−3は電力受信装置として動作する。
発電機1A−1は、ある三相発電機又は多相発電機の第1相の巻線であり、発電機1A−2は、他の三相発電機又は多相発電機の第1相の巻線であり、発電機1A−3は、さらに他の三相発電機又は多相発電機の第1相の巻線である。符号変調器2A−1〜2A−3、伝送路43、符号復調器4A−1〜4A−3、及び負荷5−1〜5−3は、図26の対応する構成要素と同様に構成される。
コントローラ10Dは、符号変調器2A−1〜2A−3のうち、電力を送信すべき符号変調器に対して変調符号を設定する一方、符号復調器4A−1〜4A−3のうち、電力を受信すべき符号復調器に対して復調符号を設定する。例えば、符号変調器2A−1から符号復調器4A−1に電力を伝送する場合、コントローラ10Dは、1つの符号系列に基づいて、変調符号を符号変調器2A−1に設定し、復調符号を符号復調器4A−1に設定する。それと同時に符号変調器2A−2から符号復調器4A−2に電力を伝送する場合、コントローラ10Dは、異なるもう1つの符号系列に基づいて、変調符号を符号変調器2A−2に設定し、復調符号を符号復調器4A−2に設定する。それと同時に符号変調器2A−3から符号復調器4A−3に電力を伝送する場合、コントローラ10Dは、さらに異なるもう1つの符号系列に基づいて、変調符号を符号変調器2A−3に設定し、復調符号を符号復調器4A−3に設定する。複数の符号変調器2A−1〜2A−3から複数の符号復調器4A−1〜4A−3に同時に電力を伝送する場合、互いに低相関である(例えば、互いに直交する)複数の符号系列を用いてもよい。
発電機1A−1〜1A−3を含む三相発電機又は多相発電機の他相の電力もまた、他の符号変調器によって符号変調し、伝送路43を介して他の符号復調器に伝送し、他の負荷に供給してもよい。
図28の電力伝送システムによれば、三相発電機又は他相発電機で発電された各相の電力を個別の負荷5−1〜5−3に供給することができ、柔軟な電力伝送システムを構築できるという効果がある。
実施形態5.
図29は、実施形態5に係る電力伝送システムの構成を示すブロック図である。図29において、実施形態5に係る電力伝送システムは、N相の多相発電機41A、符号変調サブシステム42A、伝送路43A、符号復調サブシステム44A、N相の多相負荷45A、及びコントローラ10Eを備える。Nは2以上の整数であるとする。図29の電力伝送システムにおいて、符号変調サブシステム42Aは電力送信装置として動作し、符号復調サブシステム44Aは電力受信装置として動作する。
多相発電機41Aは、互いに360/N度の位相差を有する第1相〜第N相の位相成分の電力を含む多相交流電力を発生する。図29では、多相発電機41Aの第1相〜第N相の巻線を発電機41−1〜41−Nとしてそれぞれ示す。多相発電機41Aは、各相の発電電力の周波数及び各相の位相関係を測定する電力測定器を備える。
符号変調サブシステム42Aは、図15の符号変調器2A−1,2A−2と同様に構成された符号変調器2A−1〜2A−Nを含む。符号変調器2A−1〜2A−Nは、図10の符号変調回路23Aをそれぞれ備え、実施形態2に係る符号復調器と同様にそれぞれ動作する。符号変調器2A−1〜2A−Nは、互いに異なる所定の符号系列に基づく変調符号をそれぞれ用いて、多相交流電力の第1相〜第N相の位相成分の電力を符号変調して符号変調波をそれぞれ生成し、伝送路43Aを介して符号変調波を符号復調サブシステム44Aにそれぞれ送信する。
伝送路43Aは、符号変調器2A−1〜2A−Nによってそれぞれ生成された変調電流を互いに重畳した変調電流を符号変調サブシステム42Aから符号復調サブシステム44Aに伝送する。伝送路43Aは、図19と同様に例えば2本の電力線を含んでもよく、図20と同様にN本の電力線と接地線とを含んでもよく、図21と同様にN本の電力線を含んでもよい。
符号復調サブシステム44Aは、図15の符号復調器4A−1,4A−2と同様に構成された符号復調器4A−1〜4A−Nを含む。符号復調器4A−1〜4A−Nは、図11の符号復調回路33Aをそれぞれ備え、実施形態2に係る符号復調器と同様にそれぞれ動作する。符号復調器4A−1〜4A−Nは、互いに重畳して受信した符号変調波のうちの1つの符号変調波を符号変調したときに用いた変調符号の符号系列と同じ符号系列に基づく復調符号を用いて1つの符号変調波をそれぞれ符号復調する。これにより、符号復調器4A−1〜4A−Nは、符号復調された電力を、多相交流電力の第1相〜第N相のうちの1つの位相成分の電力としてそれぞれ生成する。
多相負荷45Aは、符号復調サブシステム44Aによって生成された多相交流電力によって動作する。多相負荷45Aは、例えばN相モータである。図29では、多相負荷45Aの第1相〜第N相の巻線を負荷45A−1〜45A−Nとしてそれぞれ示す。
図30は、図29のコントローラ10Eの構成を示すブロック図である。コントローラ10Eは、制御回路11E、通信回路12E、及び位相変換器13E−1−1〜13E−1−(N−1),13E−2−1〜13E−2−(N−1)を備える。
制御回路11Eは、通信回路12Eを介して符号変調サブシステム42Aの各符号変調器2A−1〜2A−N及び符号復調サブシステム44Aの各符号復調器4A−1〜4A−Nと通信し、それらの動作を制御する。図30では、図示の簡単化のため、変調符号及び復調符号を設定するための構成のみを示す。
コントローラ10Eは、符号変調サブシステム42Aの各符号変調器2A−1〜2A−Nに変調符号の符号系列又はその指定情報を設定し、符号復調サブシステム44Aの各符号復調器4A−1〜4A−Nに復調符号の符号系列又はその指定情報を設定する。コントローラ10Eは、多相交流電力の対応する相を送受信する符号変調器及び符号復調器のペアに対して、同じ符号系列に基づいて変調符号及び復調符号をそれぞれ設定する。コントローラ10Eは、変調符号m11〜m14を符号変調器2A−1に設定し、変調符号m11〜m14と同じ復調符号d11〜d14を符号復調器4A−1に設定する。コントローラ10Eは、変調符号m21〜m24を符号変調器2A−2に設定し、変調符号m21〜m24と同じ復調符号d21〜d24を符号復調器4A−2に設定する。コントローラ10Eは、以下同様に設定し、変調符号mN1〜mN4の変調符号を符号変調器2A−Nに設定し、変調符号mN1〜mN4と同じ復調符号dN1〜dN4の復調符号を符号復調器4A−Nに設定する。変調符号m11〜m14、変調符号m21〜m24、…、及び変調符号mN1〜mN4(及び対応する復調符号)は、互いに低相関であり、例えば互いに直交する。
コントローラ10Eは、互いに低相関又は互いに直交する変調符号及び復調符号を生成するために、図30に示すように位相変換器13E−1−1〜13E−1−(N−1),13E−2−1〜13E−2−(N−1)を用いてもよい。位相変換器13E−1−1〜13E−1−(N−1)は、変調符号m11〜m14の位相を予め決められた移相量だけ変化させることにより、変調符号m21〜m24、…、変調符号mN1〜mN4の各変調符号を生成する。位相変換器13E−2−1〜13E−2−(N−1)は、復調符号d11〜d14の位相を予め決められた移相量だけ変化させることにより、復調符号d21〜d24、…、復調符号dN1〜dN4の各復調符号を生成する。
ここで、kが1からNの任意の整数であるとき、第k相の発電機41A−kから第k相の負荷45A−kへの電力を供給するために、符号変調器2A−kに変調符号mk1〜mk4を設定し、符号複調器4A−kに変調符号dk1〜dk4を設定する場合を考える。この場合、コントローラ10Eは、変調符号m11〜m14の位相を、次式で定義されるphase(k)の移相量だけ変化させることにより、変調符号mk1〜mk4を生成する。同様に、コントローラ10Eは、復調符号d11〜d14の位相を、次式で定義されるphase(k)の移相量だけ変化させることにより、復調符号dk1〜dk4の復調符号を生成する。
これにより、符号変調器2A−kの変調符号と符号変調器2A−1の変調符号の位相関係は、多相発電機41Aの第k相の発電電流と第1相の発電電流との位相関係と等しくなる。同様に、符号復調器4A−kの復調符号と符号復調器4A−1の復調符号の位相関係は、多相発電機41の第k相の発電電流と第1相の発電電流との位相関係と等しくなる。
以上説明したように、本実施形態によれば、符号変調サブシステム42A及び符号復調サブシステム44Aを用いることで、多相発電機41Aの各相の発電電流を、1つの伝送路43A上に多重して伝送し、そして、各相の復調電流を分離することができる。このように、多相発電機41Aの各相の電流を多相負荷45Aに同時に伝送可能な優れた電力伝送システムを実現できる。これにより、単相発電機及び三相発電機に限らず、多相発電機から得た電力を用いたより柔軟な電力伝送システムを構築できるという効果がある。
特に、従来技術で多相電力を伝送するには、伝送路において、発電機の相数以上の本数の電力線が必要となるので、その敷設が困難であった。一方、本実施形態によれば、例えば2本の電力線を含む伝送路を用いて電力を伝送することもできる。従って、既存の電力供給網を利用しながらも、より柔軟な電力伝送システムを構築できるという効果がある。
なお、図29では、1つの多相発電機41Aと1つの多相負荷45Aとを含む電力伝送システムについて説明したが、これに限定されない。図26と同様に、1つの多相発電機41Aから1つの伝送路を介して合計でN相の複数の負荷に電力を伝送してもよい。また、図27と同様に、合計でN相の複数の発電機から1つの伝送路を介して1つの多相負荷45Aに電力を伝送してもよい。また、1つの電力伝送システムにおいて、複数の多相発電機から1つの伝送路を介して複数の多相負荷に電力を伝送してもよい。この場合には、上記の効果に加えてさらに、1つの伝送路において多数の電力伝送が可能となるという効果がある。
本実施形態によれば、簡単な構成でありながら、多相交流の電源及び/又は負荷を含む電力伝送システムにおいて電力を送信することができ、電力伝送システム内に異なる種類の電源及び/又は負荷が混在していても電力を送信することができる。
実施形態6.
図31は、実施形態6に係る電力伝送システムの構成を示すブロック図である。図31において、実施形態6に係る電力伝送システムは、図18の三相発電機41及びコントローラ10Bに代えて、三相発電機41B及びコントローラ10Fを備える。三相発電機41Bは、各相の電流が正から負に切り替わり、また、負から正に切り替わるゼロクロスを検出するゼロクロス検出器41m−1〜41m−3をそれぞれ備える発電機41B−1〜41B−3を備える。発電機41B−1〜41B−3は、図18の発電機41−1〜41−3と同様に、三相発電機41の第1相〜第3相の巻線を示す。コントローラ10Fは、後述のように、ゼロクロスに基づいて変調符号及び復調符号を符号変調器2A−1〜2A−3及び符号復調器4A−1〜4A−3にそれぞれ設定する。図31の電力伝送システムの他の構成要素は、図18の対応する構成要素と同様に構成される。
図32は、図31のコントローラ10Fの構成を示すブロック図である。コントローラ10Fは、図18の位相変換器13Ba〜13Bdをもたず、制御回路11F及び通信回路12Fを備える。
ゼロクロス検出器41m−1により、三相発電機の第1相の発電電流の1周期のうち、前半の正の期間と、後半の負の期間とを正確に検出することができる。前半の正の期間において、非ゼロの変調符号m11,m12が符号変調器2A−1に設定され、符号変調器2A−1の符号変調回路23Aのスイッチ素子S1〜S4(図10)が制御される。このとき、常にゼロの変調符号m13,m14が符号変調器2A−1に設定され、符号変調器2A−1の符号変調回路23Aのスイッチ素子S21〜S24(図10)は電流が流れないように切断される。同様に、後半の負の期間において、常にゼロの変調符号m11,m12が符号変調器2A−1に設定され、符号変調器2A−1の符号変調回路23Aのスイッチ素子S1〜S4(図10)は電流が流れないように切断される。このとき、非ゼロの変調符号m13,m14が符号変調器2A−1に設定され、符号変調器2A−1の符号変調回路23Aのスイッチ素子S21〜S24(図10)が制御される。
同様にして、三相発電機の第2相及び第3相の発電電流に関しても、それぞれゼロクロス検出器41m−2,41m−3により、発電電流の1周期のうち、前半の正の期間と、後半の負の期間とを正確に検出することができる。その正負に応じた変調符号を符号変調器2A−2,2A−3に与えることができる。
これにより、符号変調器2A−2の変調符号と符号変調器2A−1の変調符号の位相関係は、三相発電機41Bの第2相の発電電流と第1相の発電電流との位相関係と等しくなる。さらに、符号変調器2A−3の変調符号と符号変調器2A−1の変調符号の位相関係は、三相発電機41Bの第3相の発電電流と第1相の発電電流との位相関係と等しくなる。
コントローラ10Fは、ゼロクロス検出器41m−1〜41m−3によって検出された発電電流の位相に基づいて、復調符号を符号復調器4A−1〜4A−3にそれぞれ設定する。
以上説明したように、本実施形態によれば、ゼロクロス検出器41m−1〜41m−3を用いることで、図22に示すような位相変換器13Ba〜13Bdを用いることなく、変調符号及び復調符号を符号変調器2A−1〜2A−3及び符号復調器4A−1〜4A−3にそれぞれ設定することができる。これにより、コントローラ10Fは、三相交流電力の対応する位相成分に同期した変調符号及び復調符号を容易に生成することができる。これにより、三相発電機41Bの各相の発電電流を、1つの伝送路43上に多重して伝送し、そして、各相の復調電流を分離することができる。このように、三相発電機41Bの各相の電流を三相負荷45に同時に伝送可能な優れた電力伝送システムを実現できる。
本実施形態によれば、上記の効果に加えてさらに、三相発電機41Bの各相間の位相が変動した場合でも安定して電力を伝送することができる。
実施形態のまとめ.
本開示の一態様に係る電力伝送システムは、1つ以上の発電機から伝送路を介して、1つ以上の負荷となる電気設備に電力を送る電力伝送システムであって、発電機により発電された電力を符号変調する符号変調サブシステムと、符号変調器により変調された電力を符号復調する符号復調サブシステムとを備え、電力を送受信する符号変調サブシステムと符号復調サブシステムとのペアで、同一の符号系列からなる変調符号と復調符号とをそれぞれ用いる。
本開示の一態様に係る電力伝送システムは、少なくとも1つの発電機が多相交流の出力端子を有し、符号変調サブシステムが多相発電機の出力端子数と同数の符号変調器を備え、各符号変調器の変調符号は多相交流の位相関係と同期している。
本開示の一態様に係る電力伝送システムは、負荷となる電気設備の少なくとも1つが多相交流の入力端子を有し、符号復調サブシステムが多相交流の入力端子数と同数の符号復調器を備え、各符号復調器の復調符号は多相交流の位相関係と同期している。
以上に説明したように、実施形態1〜6に係る電力伝送システムにおいて、電力の符号変調及び符号復調を正確に実現する電力伝送に加え、複数の電力伝送を任意の伝送路で多重することで同時に電力伝送を可能にする優れた電力伝送システムを提供することができる。
他の実施形態.
実施形態2〜6において、発電機が交流電力を生成する場合には、発電された電力の周波数を測定してコントローラに通知してもよい
実施形態3〜6において、複数の符号変調器が同じ変調符号を用いてもよく、複数の符号復調器が同じ復調符号を用いてもよい。これにより、1つの符号変調器から複数の符号復調器へ電力を伝送してもよく、複数の符号変調器から1つの符号復調器へ電力を伝送してもよく、複数の符号変調器から複数の符号復調器へ電力を伝送してもよい。
実施形態1〜6において、一例として電流を符号変調及び符号復調して電力を伝送する例を示したが、これに限られるものではない。直流又は交流の電圧を符号変調及び符号復調して電力を伝送することも可能であり、同様の効果が得られる。
図7の符号変調回路23においては、スイッチ素子S1,S4がオンされるとき、スイッチ素子S2,S3がオフされ、スイッチ素子S1,S4がオフされるとき、スイッチ素子S2,S3がオンされる。これにより、スイッチ素子S1,S4がオンされかつスイッチ素子S2,S3がオフされるとき、伝送路3には正の向きに、すなわち実線矢印の向きに変調電流I2が流れる。一方、スイッチ素子S1,S4がオフされかつスイッチ素子S2,S3がオンされるとき、伝送路3には負の向きに、すなわち点線矢印の向きに変調電流I2が流れる。これにより、図4に示すように、符号変調器2に直流の発電電流I1が入力されたとき、交流に変調した変調電流I2を伝送路3に伝送することができる。
図7の符号復調回路33においては、符号変調回路23と同期して復調符号d1,d2に応答してスイッチ素子S11〜S14がオン又はオフされる。ここで、変調符号m1と同じ復調符号d1によりスイッチ素子S12,S13がオン又はオフされ、変調符号m2と同じ復調符号d2によりスイッチ素子S11,S14がオン又はオフされる。これにより、変調符号m1の符号値が「1」であり、かつ変調符号m2の符号値が「0」であるとき、すなわち伝送路3に正の向きの変調電流I2が流れるときは、復調符号d1の符号値が「1」となり、かつ復調符号d2の符号値が「0」となる。従って、スイッチ素子S13,S12がオンされかつスイッチ素子S11,S14がオフされることにより、符号復調回路33の出力端子T13,T14に正の向きに、すなわち実線矢印の向きに復調電流I3が流れる。また、変調符号m1の符号値が「0」であり、かつ変調符号m2の符号値が「1」であるとき、すなわち伝送路3に負の向きの変調電流I2が流れるときは、復調符号d1の符号値が「0」となり、かつ復調符号d2の符号値が「1」となる。従って、スイッチ素子S11,S14がオンされかつスイッチ素子S12,S13がオフされることにより、この場合も、符号復調回路33の出力端子T13,T14に正の向きに、すなわち実線矢印の向きに復調電流I3が流れる。
図15の電力伝送システムにおいて、符号変調器2A−1,2A−2は電力送信装置としてそれぞれ動作し、符号復調器4A−1,4A−2は電力受信装置としてそれぞれ動作する。符号変調器2A−1,2A−2のうちの各1つの符号変調器は、第1の電力を、所定の符号系列に基づく変調符号を用いて符号変調して符号変調波を生成し、符号変調波を、伝送路3を介して符号復調器4A−1,4A−2のうちの1つの符号復調器に送信する。符号復調器4A−1,4A−2のうちの各1つの符号復調器は、符号変調器2A−1,2A−2のうちの1つの符号変調器から伝送路3を介して符号変調波を受信し、受信した符号変調波を、符号変調したときに用いた変調符号の符号系列と同じ符号系列に基づく復調符号を用いて符号復調して第2の電力を生成する。第1の電力は、例えば、発電機1−1,1−2で発電された電力であり、図15では発電電流I11,I12として示す。符号変調波は、符号変調された交流電力であり、図15では変調電流I2として示す。第2の電力は、例えば、負荷5−1,5−2に供給される電力であり、図15では復調電流I31,I32として示す。
ここで、kが1からNの任意の整数であるとき、第k相の発電機41A−kから第k相の負荷45A−kへの電力を供給するために、符号変調器2A−kに変調符号mk1〜mk4を設定し、符号復調器4A−kに復調符号dk1〜dk4を設定する場合を考える。この場合、コントローラ10Eは、変調符号m11〜m14の位相を、次式で定義されるphase(k)の移相量だけ変化させることにより、変調符号mk1〜mk4を生成する。同様に、コントローラ10Eは、復調符号d11〜d14の位相を、次式で定義されるphase(k)の移相量だけ変化させることにより、復調符号dk1〜dk4の復調符号を生成する。
これにより、符号変調器2A−kの変調符号と符号変調器2A−1の変調符号の位相関係は、多相発電機41Aの第k相の発電電流と第1相の発電電流との位相関係と等しくなる。同様に、符号復調器4A−kの復調符号と符号復調器4A−1の復調符号の位相関係は、多相発電機41Aの第k相の発電電流と第1相の発電電流との位相関係と等しくなる。