JPWO2018116940A1 - マグネシウム合金 - Google Patents
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Abstract
Alを9.0質量%以上12.0質量%以下、希土類元素を1.7質量%以上2.6質量%以下、Caを0.7質量%以上1.5質量%以下、Srを0.2質量%以上0.5質量%以下、Mnを0.2質量%以上0.5質量%以下含み、残部がMg及び不可避不純物であるマグネシウム合金。
Description
本発明は、マグネシウム合金に関する。
本出願は、2016年12月21日出願の日本出願第2016−248502号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
本出願は、2016年12月21日出願の日本出願第2016−248502号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
マグネシウム合金は、構造材用金属で最も比重が小さく、比強度、比剛性に優れるので、軽量素材として注目されている。そのマグネシウム合金は、各種の添加元素を含有することで、各種の特性を有する(例えば、特許文献1や特許文献2)。
本開示に係るマグネシウム合金は、
Alを9.0質量%以上12.0質量%以下、
希土類元素を1.7質量%以上2.6質量%以下、
Caを0.7質量%以上1.5質量%以下、
Srを0.2質量%以上0.5質量%以下、
Mnを0.2質量%以上0.5質量%以下含み、
残部がMg及び不可避不純物である。
Alを9.0質量%以上12.0質量%以下、
希土類元素を1.7質量%以上2.6質量%以下、
Caを0.7質量%以上1.5質量%以下、
Srを0.2質量%以上0.5質量%以下、
Mnを0.2質量%以上0.5質量%以下含み、
残部がMg及び不可避不純物である。
[本開示が解決しようとする課題]
耐熱性に優れるマグネシウム合金の開発が望まれている。自動車部品や航空機部品などの部品は、その使用環境温度が常温よりも高い場合がある。例えば、エンジンルームの近くに配置される部品は、その使用環境温度が100℃〜180℃程度である場合があり、耐熱性に優れることが望まれる。
耐熱性に優れるマグネシウム合金の開発が望まれている。自動車部品や航空機部品などの部品は、その使用環境温度が常温よりも高い場合がある。例えば、エンジンルームの近くに配置される部品は、その使用環境温度が100℃〜180℃程度である場合があり、耐熱性に優れることが望まれる。
また、自動車や航空機などの用途では、部品の形状が複雑な形状のダイカスト材となることが多い。そのため、鋳造性に優れることが望まれている。ここでいう『鋳造性が優れる』とは、湯流れが良好で複雑な金型内に溶湯が行き渡り易く、また鋳造部材に皺や割れなどの欠陥が生じ難いことを言う。
本開示は、耐熱性及び鋳造性に優れるマグネシウム合金を提供することを目的の一つとする。
[本開示の効果]
本開示のマグネシウム合金は、耐熱性および鋳造性に優れる。
本開示のマグネシウム合金は、耐熱性および鋳造性に優れる。
[本発明の実施形態の説明]
本発明者らは、耐熱性に優れる上、鋳造性にも優れるマグネシウム合金を製造するべく、添加元素の種類及び含有量を鋭意検討した。一般的に、マグネシウム合金の耐熱性の指標として引張りクリープ試験による高温耐クリープ性を用いることが多い。また、マグネシウム合金における鋳造性はAlの含有量を多くすれば向上する傾向にあるものの、引張りクリープ試験による高温耐クリープ性は低下する傾向にある。つまり、耐熱性と鋳造性は、トレードオフの関係にあり、高いレベルで両立させることが難しいと考えられている。しかし、本発明者らの検討によれば、引張クリープ試験による高温耐クリープ性は、実製品の使用態様を考慮した場合、耐熱性の指標として適切でない場合があることが分かった。さらに、本発明者らの検討によれば、実製品の使用態様を考慮した場合、マグネシウム合金に特定の添加元素を特定量含有させることで、実製品の耐熱性と鋳造性を高いレベルで両立させることができるとの知見を得た。本発明は、上記知見に基づくものである。
最初に本発明の実施態様の内容を列記して説明する。
本発明者らは、耐熱性に優れる上、鋳造性にも優れるマグネシウム合金を製造するべく、添加元素の種類及び含有量を鋭意検討した。一般的に、マグネシウム合金の耐熱性の指標として引張りクリープ試験による高温耐クリープ性を用いることが多い。また、マグネシウム合金における鋳造性はAlの含有量を多くすれば向上する傾向にあるものの、引張りクリープ試験による高温耐クリープ性は低下する傾向にある。つまり、耐熱性と鋳造性は、トレードオフの関係にあり、高いレベルで両立させることが難しいと考えられている。しかし、本発明者らの検討によれば、引張クリープ試験による高温耐クリープ性は、実製品の使用態様を考慮した場合、耐熱性の指標として適切でない場合があることが分かった。さらに、本発明者らの検討によれば、実製品の使用態様を考慮した場合、マグネシウム合金に特定の添加元素を特定量含有させることで、実製品の耐熱性と鋳造性を高いレベルで両立させることができるとの知見を得た。本発明は、上記知見に基づくものである。
最初に本発明の実施態様の内容を列記して説明する。
(1)本発明の一態様に係るマグネシウム合金は、
Alを9.0質量%以上12.0質量%以下、
希土類元素を1.7質量%以上2.6質量%以下、
Caを0.7質量%以上1.5質量%以下、
Srを0.2質量%以上0.5質量%以下、
Mnを0.2質量%以上0.5質量%以下含み、
残部がMg及び不可避不純物である。
Alを9.0質量%以上12.0質量%以下、
希土類元素を1.7質量%以上2.6質量%以下、
Caを0.7質量%以上1.5質量%以下、
Srを0.2質量%以上0.5質量%以下、
Mnを0.2質量%以上0.5質量%以下含み、
残部がMg及び不可避不純物である。
通常、マグネシウム合金で作製される鋳造部材(ダイカスト材)は、他の部材に固定された状態で使用される。その固定には、コストなどの点から鉄系合金のボルトなどが用いられることが多い。その場合、鋳造部材が高温に曝されると、マグネシウム合金の熱膨張率の方が、鉄系合金のボルトの熱膨張率よりも大きいため、大きな圧縮応力がマグネシウム合金に作用する。このとき、マグネシウム合金の鋳造部材の強度が十分でないと、圧縮応力に負けて鋳造部材が変形し、ボルトが弛んでしまう恐れがある。つまり、実際の使用態様を考慮した場合、耐熱性としては、高温環境下での引張応力に対する耐性よりも、高温環境下での圧縮応力に対する耐性が重要である。本発明者らは、この点に鑑み、鋳造部材をボルト止めした後、高温環境下に曝し、その後常温環境に戻した時に、ボルトの締結力(本開示では、残留軸力とする。)がどの程度維持されるかといった観点で、マグネシウム合金の耐熱性を評価した。その結果、引張りクリープ試験による高温耐クリープ性とは異なる傾向が見出された。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
上述の点を踏まえ、上記組成のマグネシウム合金は、比較的多くのAlを含んでおり、それによりマグネシウム合金中でAl化合物が分散され、マグネシウム母相の結晶粒が微細化する。微細な結晶粒により、上記組成のマグネシウム合金の圧縮応力に対する機械的強度は非常に高くなる。そのため、上述した熱膨張差に起因する圧縮応力が鋳造部材に作用しても、鋳造部材が変形し難くなる。しかし、過度にAlを含むと耐熱性が低下する。
Alが過剰だと、組織中にMg−Al化合物(代表的にはβ相であるMg17Al12)が多く晶出する。Mg17Al12は低融点化合物であるため、引張クリープ試験による高温耐クリープ性が下がる。また、所定量含まれるRE,Ca,Sr,Mnは、Alと化合物を形成し、それら化合物が高温環境下におけるマグネシウム合金の変形を抑制する。
これら各添加元素によって得られる効果が複合的に働き、上記組成のマグネシウム合金で作製された鋳造部材は、高温環境下に曝されてもボルトが緩み難いという特性、即ち残留軸力が高いという観点から評価した耐熱性に優れる。
Alが過剰だと、組織中にMg−Al化合物(代表的にはβ相であるMg17Al12)が多く晶出する。Mg17Al12は低融点化合物であるため、引張クリープ試験による高温耐クリープ性が下がる。また、所定量含まれるRE,Ca,Sr,Mnは、Alと化合物を形成し、それら化合物が高温環境下におけるマグネシウム合金の変形を抑制する。
これら各添加元素によって得られる効果が複合的に働き、上記組成のマグネシウム合金で作製された鋳造部材は、高温環境下に曝されてもボルトが緩み難いという特性、即ち残留軸力が高いという観点から評価した耐熱性に優れる。
また、上記組成のマグネシウム合金は鋳造性に優れる。これは、Alの含有量が比較的多いため、マグネシウム合金の融点が下がり、溶湯の湯流れが良好となるためと考えられる。湯流れが良好な溶湯は、複雑な形状の金型内に行き渡り易く、また鋳造部材に皺や割れなどの欠陥を生じさせ難い。
(2)上記マグネシウム合金の一形態として、
断面におけるMgとAlとを含む化合物の面積割合が10%以下である形態を挙げることができる。
断面におけるMgとAlとを含む化合物の面積割合が10%以下である形態を挙げることができる。
MgとAlとを含む化合物は比較的低融点であるため、その化合物の面積割合を10%以下とすれば、残留軸力で評価するマグネシウム合金の耐熱性の低下を抑制し易い。
(3)上記マグネシウム合金の一形態として、
Alの含有量が10.0質量%以上11.5質量%以下である形態を挙げることができる。
Alの含有量が10.0質量%以上11.5質量%以下である形態を挙げることができる。
マグネシウム合金中のAlの含有量を上記範囲に絞ることで、より一層、マグネシウム合金の耐熱性を向上させることができる。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態の詳細を以下に説明する。
本発明の実施形態の詳細を以下に説明する。
<マグネシウム合金>
実施形態に係るマグネシウム合金は、添加元素としてAl、希土類元素、Ca、Sr、Mnをそれぞれ特定量含有し、残部がMg及び不可避不純物である。具体的には、Alを9.0質量%以上12.0質量%以下、希土類元素を1.7質量%以上2.6質量%以下、Caを0.7質量%以上1.5質量%以下、Srを0.2質量%以上0.5質量%以下、Mnを0.2質量%以上0.5質量%以下含み、残部がMg及び不可避不純物であるマグネシウム合金である。このMg合金の特徴の一つは、上記組成に示すように、各元素の含有量が比較的狭い範囲に絞られている点にある。
実施形態に係るマグネシウム合金は、添加元素としてAl、希土類元素、Ca、Sr、Mnをそれぞれ特定量含有し、残部がMg及び不可避不純物である。具体的には、Alを9.0質量%以上12.0質量%以下、希土類元素を1.7質量%以上2.6質量%以下、Caを0.7質量%以上1.5質量%以下、Srを0.2質量%以上0.5質量%以下、Mnを0.2質量%以上0.5質量%以下含み、残部がMg及び不可避不純物であるマグネシウム合金である。このMg合金の特徴の一つは、上記組成に示すように、各元素の含有量が比較的狭い範囲に絞られている点にある。
[アルミニウム(Al)]
Alは、Mg合金の耐食性、強度、耐塑性変形性といった機械的特性を向上させ、ボルトなどによる圧縮に対する耐力をマグネシウム合金に付与する。Alは、Srを含む化合物(Al−Sr化合物)やCaを含む化合物(Al−Ca化合物)などを形成して合金組織中に存在する。各化合物の詳細は後述する。
Alは、Mg合金の耐食性、強度、耐塑性変形性といった機械的特性を向上させ、ボルトなどによる圧縮に対する耐力をマグネシウム合金に付与する。Alは、Srを含む化合物(Al−Sr化合物)やCaを含む化合物(Al−Ca化合物)などを形成して合金組織中に存在する。各化合物の詳細は後述する。
Alの含有量は、9.0質量%以上12.0質量%以下とする。Alの含有量を9.0質量%以上とすることで、Al−Sr化合物やAl−Ca化合物を十分に形成し易い。それらの化合物は、マグネシウム合金の粒内や粒界に晶出し、高温環境下におけるマグネシウム合金の変形を抑制する。Alの含有量を12.0質量%以下とすることで、マグネシウム合金に適度な靭性を持たせることができる。また、Alの含有量を12.0質量%以下とすることで、マグネシウム合金中に、低融点化合物であって引張クリープ試験による高温耐クリープ性を低下させるMgを含む化合物(Mg−Al化合物)が過度に形成(晶出)されることを抑制でき、残留軸力の低下を抑制し易い。Alの含有量は、更に10.0質量%以上11.5質量%以下が好ましい。Alの含有量を10.0質量%以上とすれば、マグネシウム合金の融点が低下することで湯流れ性が良くなるため鋳造性を向上し易い。Alの含有量を11.5質量%以下とすれば、過剰なMg−Al化合物の形成を抑制し易く、耐熱性を更に向上し易い。
[希土類元素(RE)]
REは、残留軸力で評価するマグネシウム合金の耐熱性を向上させる。REは、Alを含む化合物(Al−RE化合物)を形成して合金組織中に存在する。このAl−RE化合物の形成により、過剰なMg−Al化合物の形成(晶出)が抑制される。REは、周期表3族の元素、即ちスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド、アクチノイドの中から選択される少なくとも1種の希土類元素であって、複数種の希土類元素を含む合金であるミッシュメタルも含む。
REは、残留軸力で評価するマグネシウム合金の耐熱性を向上させる。REは、Alを含む化合物(Al−RE化合物)を形成して合金組織中に存在する。このAl−RE化合物の形成により、過剰なMg−Al化合物の形成(晶出)が抑制される。REは、周期表3族の元素、即ちスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド、アクチノイドの中から選択される少なくとも1種の希土類元素であって、複数種の希土類元素を含む合金であるミッシュメタルも含む。
REの含有量は、1.7質量%以上2.6質量%以下とする。REの含有量を1.7質量%以上とすることで、十分な量のAl−RE化合物が粒内や粒界に形成される。粒内に形成される化合物は、結晶粒の変形を抑制し、粒界に形成される化合物は、粒界すべりなどを抑制することで、高温環境下におけるマグネシウム合金の変形を抑制する。REの含有量を2.6質量%以下とすることで、Al−RE化合物が過度に存在して熱間割れなどの欠陥の原因になることを抑制し易い。また、REの添加による耐熱性の向上効果は、1.7質量%程度から飽和し始めるので、REの含有量を2.6質量%以下とすることで、高価な希土類元素の使用量を低減できて合金コストを低減できる。REの含有量は、更に1.8質量%以上2.2質量%以下、特に1.9質量%以上2.1質量%以下が好ましい。
[カルシウム(Ca)]
Caは、残留軸力で評価するマグネシウム合金の耐熱性を向上させる。また、Caは、マグネシウム合金を作製する際に溶湯の防燃性を向上させることに寄与する。マグネシウム合金の溶湯は発火し易く、一般的に溶湯の作製時に防燃ガスを用いている。しかし、防燃ガスの使用はマグネシウム合金の製造コストを上昇させる上、その扱いが煩雑である。
Caを溶湯に所定量添加することで、溶湯の防燃性を向上させることができ、防燃ガスの使用を低減または無くすことができる。Caは、Al−Ca化合物を形成して合金組織中に存在する。このAl−Ca化合物の形成により、過剰なMg−Al化合物の形成(晶出)が抑制される。
Caは、残留軸力で評価するマグネシウム合金の耐熱性を向上させる。また、Caは、マグネシウム合金を作製する際に溶湯の防燃性を向上させることに寄与する。マグネシウム合金の溶湯は発火し易く、一般的に溶湯の作製時に防燃ガスを用いている。しかし、防燃ガスの使用はマグネシウム合金の製造コストを上昇させる上、その扱いが煩雑である。
Caを溶湯に所定量添加することで、溶湯の防燃性を向上させることができ、防燃ガスの使用を低減または無くすことができる。Caは、Al−Ca化合物を形成して合金組織中に存在する。このAl−Ca化合物の形成により、過剰なMg−Al化合物の形成(晶出)が抑制される。
Caの含有量は、0.7質量%以上1.5質量%以下とする。Caの含有量を0.7質量%以上とすることで、Al−Ca化合物を十分に形成し、過剰なMg−Al化合物の形成を抑制する。Caの含有量が多いほど、十分な量のAl−Ca化合物が粒内や粒界に形成され、その化合物が高温環境下におけるマグネシウム合金の変形を抑制する。Caの含有量を1.5質量%以下とすることで、Al−Ca化合物が過度に存在して熱間割れなどの欠陥の原因になることを抑制し易い。Caの含有量は、更に0.8質量%以上1.2質量%以下、特に0.9質量%以上1.1質量%以下が好ましい。
[ストロンチウム(Sr)]
Srは、残留軸力で評価するマグネシウム合金の耐熱性を向上させると共に、溶湯の防燃性を向上させる。また、Srは、マグネシウム合金の融点を下げて、マグネシウム合金の鋳造性を向上させることにも寄与する。Srは、Al−Sr化合物を形成して合金組織中に存在する。このAl−Sr化合物の形成により、過剰なMg−Al化合物の形成(晶出)が抑制される。
Srは、残留軸力で評価するマグネシウム合金の耐熱性を向上させると共に、溶湯の防燃性を向上させる。また、Srは、マグネシウム合金の融点を下げて、マグネシウム合金の鋳造性を向上させることにも寄与する。Srは、Al−Sr化合物を形成して合金組織中に存在する。このAl−Sr化合物の形成により、過剰なMg−Al化合物の形成(晶出)が抑制される。
Srの含有量は、0.2質量%以上0.5質量%以下とする。Srの含有量を0.2質量%以上とすることで、十分な量のAl−Sr化合物が粒内や粒界に形成され、その化合物が高温環境下におけるマグネシウム合金の変形を抑制する。Srの含有量を0.5質量%以下とすることで、鋳造金型への溶湯の焼付きを抑制させ易い。Srの含有量は、更に0.3質量%以上0.5質量%以下、特に0.4質量%以上0.5質量%以下が好ましい。
[マンガン(Mn)]
Mnは、残留軸力で評価するマグネシウム合金の耐熱性を向上させる。また、Mnは、マグネシウム合金中に不純物として存在し得るFeを低減させ、マグネシウム合金の耐食性を向上させる。Mnは、Alを含む化合物(Al−Mn化合物)を形成して、過剰なMg−Al化合物の形成(晶出)を抑制する。
Mnは、残留軸力で評価するマグネシウム合金の耐熱性を向上させる。また、Mnは、マグネシウム合金中に不純物として存在し得るFeを低減させ、マグネシウム合金の耐食性を向上させる。Mnは、Alを含む化合物(Al−Mn化合物)を形成して、過剰なMg−Al化合物の形成(晶出)を抑制する。
Mnの含有量は、0.2質量%以上0.5質量%以下が挙げられる。Mnの含有量を0.2質量%以上とすることで、十分な量のAl−Mn化合物が粒内や粒界に形成され、その化合物が高温環境下におけるマグネシウム合金の変形を抑制する。その上、Mnの含有量を0.2質量%以上とすることで、マグネシウム合金の耐食性を向上させ易い。また、Mnの含有量を0.5質量%以下とすることで、粗大なAl−Mn化合物の形成を抑制できる。Mnの含有量は、更に0.3質量%以上0.5質量%以下、特に0.4質量%以上0.5質量%以下が好ましい。
[組織]
マグネシウム合金は、上述のMg−Al化合物(β相)、Al−RE化合物、Al−Ca化合物、Al−Mn化合物、及びAl−Sr化合物が結晶粒内や粒界に分散した組織を有する。このマグネシウム合金では、マグネシウム母相の平均結晶粒径が小さく、Mg−Al化合物が比較的少ない。
マグネシウム合金は、上述のMg−Al化合物(β相)、Al−RE化合物、Al−Ca化合物、Al−Mn化合物、及びAl−Sr化合物が結晶粒内や粒界に分散した組織を有する。このマグネシウム合金では、マグネシウム母相の平均結晶粒径が小さく、Mg−Al化合物が比較的少ない。
マグネシウム母相の結晶粒径が小さい組織とは、定量的には、マグネシウム合金の断面におけるマグネシウム母相の平均結晶粒径が30μm以下である組織である。平均結晶粒径が小さくなるほどマグネシウム合金の機械的強度は上昇するので、マグネシウム母相の平均結晶粒径は30μm以下が好ましく、更に20μm以下が好ましい。また、Mg−Al化合物が少ない組織とは、定量的には、マグネシウム合金の断面におけるMg−Al化合物の面積割合が10%以下である組織である。上記面積割合が大きくなるほど鋳造部材の引張クリープ試験による高温耐クリープ特性の低下が顕著となる。
これらAl−Sr化合物、Al−Ca化合物、Al−Mn化合物、及びAl−RE化合物は、代表的には晶出物である。Al−Sr化合物、及びAl−Ca化合物の融点は1000℃以上であり、Al−RE化合物の融点は1100℃以上であり、Mg−Al化合物の融点(462℃)よりも十分に高い。これらAl−Sr化合物、Al−Ca化合物、Al−Mn化合物、及びAl−RE化合物のような高融点化合物が粒内や粒界に分散して存在することで、高温に保持された場合でも結晶粒の変形や粒界すべりなどが抑制され、マグネシウム合金の変形が抑制されると考えられる。
Al−Sr化合物としては、例えば、Al2Sr、Al4Sr、Mg13Al3Sr、Mg11Al3Sr、Mg9Al3Srなどが挙げられる。Al−Ca化合物としては、例えば、Al2Ca、Al4Ca、(MgAl)2Caなどが挙げられる。Al−Mn化合物としては、例えばAl2Mnなどが挙げられる。Al−RE化合物としては、例えば、Al2RE、Al11RE3などが挙げられる。Mg−Al化合物としては、例えば、Mg17Al12が挙げられる。これら化合物の組成は、例えば、エネルギー分散型X線分析法(EDX)や、オージェ電子分光法(AES)などによって成分分析を行うことで確認できる。
上記平均結晶粒径の測定は、以下のように行なうことができる。マグネシウム合金の断面の顕微鏡写真を用いて、観察視野Sf(160μm×120μm)中に直線(長さ100〜140μm程度)を引く。直線は、晶出物などの化合物を跨いでいても良い。次いで、(直線長さL)/(直線で横切ったマグネシウム母相の結晶粒個数n)を結晶粒径として求める。但し、視野の端で途切れている結晶粒、およびその結晶粒を横切っている部分の直線は無効とする。また、視野に対して直線が短く、直線が結晶粒の輪郭を跨がずに直線の端点が結晶粒の内部に位置する場合、直線の端点が内部に位置する結晶粒、およびその結晶粒内に配置される部分の直線も無効とする。1視野につき互いに独立した直線10本、10個の観察視野における結晶粒径の平均を平均結晶粒径(μm)とする。各直線は平行でも良いし交差していても良い。
上記面積割合の測定は以下のように行なうことができる。マグネシウム合金の断面の顕微鏡写真を用いて、観察視野Sf(160μm×120μm)中に存在するMg−Al化合物(主としてMg17Al12)を抽出してその面積を求め、更にその合計面積Smを求める。そして、(Sm/Sf)×100%をその断面におけるMg−Al化合物の面積割合として求め、10個の観察視野における面積割合の平均を面積割合(%)とする。断面の採取は、市販のクロスセクションポリッシャ(CP)加工装置を用いて行える。Mg−Al化合物の断面積は、画像処理装置によって顕微鏡写真(SEM像)を二値化処理した二値化像などを利用すると容易に測定できる。二値化処理は、Mg−Al化合物と、母相及びそれ以外の化合物とを色調の違いで区別することで行える。このとき、EDXによる点分析を行うことで、母相及び各化合物の種類を確認できる。
[用途]
実施形態に係るマグネシウム合金は、各種鋳造部材の素材に好適に利用できる。用途としては、例えば、自動車や航空機などの輸送機器類、各種の電子・電気機器類(パーソナルコンピュータ(PC)、タブレット型PC、スマートフォンや折り畳み式携帯電話などの携帯電話、デジタルカメラなど)の筐体やカバーなどの外装部材、補強部材、骨格部材などが挙げられる。特に、高温環境下に配置される内燃機関の部品、より具体的には、アルミニウム合金製のシリンダブロックに対して鋼製のボルトで取り付けられるオイルパンなどに、実施形態に係るマグネシウム合金を用いることが挙げられる。
実施形態に係るマグネシウム合金は、各種鋳造部材の素材に好適に利用できる。用途としては、例えば、自動車や航空機などの輸送機器類、各種の電子・電気機器類(パーソナルコンピュータ(PC)、タブレット型PC、スマートフォンや折り畳み式携帯電話などの携帯電話、デジタルカメラなど)の筐体やカバーなどの外装部材、補強部材、骨格部材などが挙げられる。特に、高温環境下に配置される内燃機関の部品、より具体的には、アルミニウム合金製のシリンダブロックに対して鋼製のボルトで取り付けられるオイルパンなどに、実施形態に係るマグネシウム合金を用いることが挙げられる。
実施形態に係るマグネシウム合金は鋳造性に優れるため、実製品などの複雑形状の鋳造部材を作製することに好適である。例えば、図1に示すように内部空間を形成する形状を有し、角部を備えるものであって、角部3と角部3以外の部分とでは厚みが異なるものとすることができる。ここでの角部3とは、複数の面が交差する稜線部分である。例えば、図1に示すように内部空間を形成する容器状の本体10を備える場合、天面部や、開口縁がつくる仮想平面に直交する平面で切断した縦断面における隣り合う二つの面が交差する部分が角部3に相当する。角部3は、外方に突出するもの(例、後述の角部30など)、内側に窪んだもの(例、後述の角部31〜36)のいずれでもよい。
図1は、天面部と側壁部とを備え、一方が開口した容器状の本体10を備える鋳造部材1を模式的に示す。図1の右半分は本体10の天面部を上側に、開口部を下側に配置した状態の正面図、左半分はその断面図である。図1に示す鋳造部材1は、上述の割れなどの生じ易い複雑な形状の鋳造部材を概念的に示す。
図1に示す鋳造部材1は、本体10の開口縁から外方に延設されるフランジ12と、本体10の内天面から開口側に向かって突出する少なくとも一つのボス13と、本体10の天面部から外方に突出する筒部15と、天面部の外面と筒部15の外面との交差部分に設けられる少なくとも一つのリブ14と、側壁部の内側に設けられた凹部16とを備える場合を例示する。フランジ12、ボス13、リブ14、筒部15、及び凹部16から選択される少なくとも一つを備えていれば、その他を省略することができる。また、外方に突出する筒部15に代えて、内部空間に突出する筒部を有することもできる。容器状に代えて、フランジ付きパイプなどとすることができる。
代表的には、フランジ12は、ボルト孔が設けられて、他の部品や設置対象にボルトによって締結される部分として機能する。フランジ12は、開口縁や側壁部の外周面に連続して設けられる環状の形態、開口縁や側壁部の外周面に沿って所定の間隔をあけて複数設けられる形態などが挙げられる。ボス13は天面部などに他の部品を固定や連結などするためにボルトやねじ用の雌ねじを形成したり、ピンなどを圧入する挿入孔などを形成したりするものであり、代表的には筒状である。リブ14は、貫通孔15hが設けられた筒部15を補強するものであり、代表的には板状である。また、代表的には、筒部15の外周に放射状に複数のリブ14が設けられる。ボス13及びリブ14の個数、大きさ、形状などは適宜選択できる。これらの個数が多いほど角部3が多くなり、上述の割れなどが生じ易い複雑な形状といえる。
鋳造部材1には、天面部の外面と側壁部の外面とが交差する外側の角部30、外側の角部30に対応する内側の角部31といった本体10自体に設けられる角部、本体10とフランジ12とが交差する角部32、本体10とボス13とが交差する角部33、本体10とリブ14とが交差する角部34、本体10と筒部15とが交差する角部35、凹部16を形成する内底面と内壁面とが交差する角部36などの複数の角部3が存在し得る。そして、この例の鋳造部材1では、各角部3とそれ以外の部分とは厚みが異なる。角部3の厚さtとは、例えば、角部31に示すように上記縦断面において角部30をつくる天面部の外面と側面部の外面との角の二等分線上にとることが挙げられる。図1に示す例では、本体10の角部30,31やボス13近傍の角部33、リブ14近傍の角部34などでは、その周囲の厚さよりも厚く、凹部16における角部36ではその周囲の厚さよりも薄い。
また、図1に示す例では、各角部3は実質的に直角である。このような各角部3は、厚さの変化(肉厚変動)、形状の変化が大きい箇所といえ、割れなどが生じ易い箇所と考えられる。定量的には、上記縦断面における隣り合う二つの面が交差する角部3における交差角度が0°超120°以下程度、特に直角及びその近傍であり、角部3における厚さの変化量(その周囲の厚さを基準としたときの変化量)が10%以上、更に25%以上、50%以上である箇所は、割れなどが生じ易い箇所と考えられる。実施形態のマグネシウム合金は、このような割れなどが生じ易い箇所を複数備える複雑な形状の鋳造部材1、特に上述の角部3を1個以上、更に5個以上備える鋳造部材1の製造に供する素材、又は鋳造部材1自体の構成材料に好適である。
また、図1に示す例では、各角部3は実質的に直角である。このような各角部3は、厚さの変化(肉厚変動)、形状の変化が大きい箇所といえ、割れなどが生じ易い箇所と考えられる。定量的には、上記縦断面における隣り合う二つの面が交差する角部3における交差角度が0°超120°以下程度、特に直角及びその近傍であり、角部3における厚さの変化量(その周囲の厚さを基準としたときの変化量)が10%以上、更に25%以上、50%以上である箇所は、割れなどが生じ易い箇所と考えられる。実施形態のマグネシウム合金は、このような割れなどが生じ易い箇所を複数備える複雑な形状の鋳造部材1、特に上述の角部3を1個以上、更に5個以上備える鋳造部材1の製造に供する素材、又は鋳造部材1自体の構成材料に好適である。
<作用効果>
実施形態に係るマグネシウム合金によれば、以下の効果を奏することができる。
[1]高温での耐変形特性、特に圧縮応力に対する耐変形特性に優れる。そのため、マグネシウム合金の各種鋳造部材の素材に好適に利用できる。
[2]鋳造性に優れる。つまり、皺や熱間割れなどの欠陥が生じ難い。そのため、優れた外観を有するマグネシウム合金の各種鋳造部材の素材に好適に利用できる。特に、図1に例示したような複雑形状の鋳造部材(ダイカスト材)1を作製し易い。
[3]難燃性に優れる。そのため、大気中で溶解しても溶湯の発火を抑制できるので、防燃ガスを不要にできてマグネシウム合金の各種鋳造部材の製造作業性を向上できる。
[4]鋳造金型への焼付きが生じ難い。そのため、マグネシウム合金の各種鋳造部材の製造作業性を向上できる。
[5]リサイクル性に優れる。本実施形態のマグネシウム合金は、上記[1]〜[4]の特性を得るにあたり、再溶解時にマグネシウム合金中から消失し易いBe(ベリリウム)などの微量添加元素を必須としていない。そのため、本実施形態のマグネシウム合金で構成される鋳造部材をリサイクルする際、当該鋳造部材を再溶解するだけで、新たな鋳造部材の原料となる溶湯を作製することができる。
実施形態に係るマグネシウム合金によれば、以下の効果を奏することができる。
[1]高温での耐変形特性、特に圧縮応力に対する耐変形特性に優れる。そのため、マグネシウム合金の各種鋳造部材の素材に好適に利用できる。
[2]鋳造性に優れる。つまり、皺や熱間割れなどの欠陥が生じ難い。そのため、優れた外観を有するマグネシウム合金の各種鋳造部材の素材に好適に利用できる。特に、図1に例示したような複雑形状の鋳造部材(ダイカスト材)1を作製し易い。
[3]難燃性に優れる。そのため、大気中で溶解しても溶湯の発火を抑制できるので、防燃ガスを不要にできてマグネシウム合金の各種鋳造部材の製造作業性を向上できる。
[4]鋳造金型への焼付きが生じ難い。そのため、マグネシウム合金の各種鋳造部材の製造作業性を向上できる。
[5]リサイクル性に優れる。本実施形態のマグネシウム合金は、上記[1]〜[4]の特性を得るにあたり、再溶解時にマグネシウム合金中から消失し易いBe(ベリリウム)などの微量添加元素を必須としていない。そのため、本実施形態のマグネシウム合金で構成される鋳造部材をリサイクルする際、当該鋳造部材を再溶解するだけで、新たな鋳造部材の原料となる溶湯を作製することができる。
<試験例1>
マグネシウム合金を用いてダイカスト材を作製し、そのダイカスト材の耐熱性と鋳造性とを評価した。本発明のマグネシウム合金は、その製造条件が以下のダイカスト材の製造条件に限定されるわけではない。
マグネシウム合金を用いてダイカスト材を作製し、そのダイカスト材の耐熱性と鋳造性とを評価した。本発明のマグネシウム合金は、その製造条件が以下のダイカスト材の製造条件に限定されるわけではない。
マグネシウム合金の溶湯を作製した。まず、純度99.9質量%のマグネシウムの塊を50kg用意し、Ar雰囲気の溶解炉を用いて690℃で溶解し純マグネシウムの溶湯を作製した。続いて、完全に溶解した純マグネシウムの溶湯中に、以下の1〜5の添加元素の塊を添加して、表1に示す組成のマグネシウム合金の溶湯を作製した。添加元素の添加及び溶解は、湯温は690℃に保持した状態で棒状の治具によって10分間撹拌して行った。
1.純度99.9質量%の純アルミニウム塊
2.純度99質量%のミッシュメタル塊
3.純度99.5質量%のCa塊
4.純度99質量%のSr塊
5.アルミニウム母合金(Al−10質量%Mn)
ミッシュメタルの含有元素及びその含有量は、Laが28質量%、Ceが51質量%、Ndが16質量%、Prが質量5%である。
2.純度99質量%のミッシュメタル塊
3.純度99.5質量%のCa塊
4.純度99質量%のSr塊
5.アルミニウム母合金(Al−10質量%Mn)
ミッシュメタルの含有元素及びその含有量は、Laが28質量%、Ceが51質量%、Ndが16質量%、Prが質量5%である。
作製した各試料のマグネシウム合金溶湯を用いて、ダイカスト材を作製した。ダイカスト材の作製には、コールドチャンバーダイカストマシン(宇部興産機械株式会社製、型番UB530iS2)を用いた。この試験では、ダイカスト材として、図1に示す鋳造部材1を作製した。角部3を除く箇所の平均厚さは4mm、上記角部3における厚さの変化量(上記平均厚さ4mmに対する変化量)の最大値は500%(最大厚さ20mm)である。鋳造部材1のサイズは、幅200mm×奥行150mm×最大高さ150mm(筒部を含む)程度であり、使用するマグネシウム合金の体積は450cm3〜500cm3程度である。鋳造時の溶湯温度は690℃、射出速度は2.5m/秒、鋳造圧力は60MPaに設定して。また、鋳造過程の冷却速度は、50℃/秒以上とした。
[断面観察]
作製した各試料のダイカスト材の断面におけるマグネシウム母相の平均結晶粒径を求めた。断面の採取は、市販のクロスセクションポリッシャ(CP)加工装置を用いて行った。断面の観察は、SEMを用いた。結晶粒径は、次のようにして求めた。SEM写真を用いて、観察視野Sf(160μm×120μm)中に直線(長さ100〜140μm程度)を引き、(直線長さL)/(直線で横切ったマグネシウム母相の結晶粒個数n)を結晶粒径として求める。そして、視野内に互いに独立した直線10本引き、L/nの平均をその断面の結晶粒径とする。観察視野数は10個とし、その10個の観察視野における結晶粒径の平均を各試料における平均結晶粒径(μm)とした。
作製した各試料のダイカスト材の断面におけるマグネシウム母相の平均結晶粒径を求めた。断面の採取は、市販のクロスセクションポリッシャ(CP)加工装置を用いて行った。断面の観察は、SEMを用いた。結晶粒径は、次のようにして求めた。SEM写真を用いて、観察視野Sf(160μm×120μm)中に直線(長さ100〜140μm程度)を引き、(直線長さL)/(直線で横切ったマグネシウム母相の結晶粒個数n)を結晶粒径として求める。そして、視野内に互いに独立した直線10本引き、L/nの平均をその断面の結晶粒径とする。観察視野数は10個とし、その10個の観察視野における結晶粒径の平均を各試料における平均結晶粒径(μm)とした。
作製した各試料のダイカスト材の断面におけるMg−Al化合物(主としてMg17Al12)の面積割合を求めた。断面の採取は、市販のクロスセクションポリッシャ(CP)加工装置を用いて行った。断面の観察は、SEMを用いた。Mg−Al化合物の面積割合は、次のようにして求めた。SEM写真を用いて、観察視野Sf(160μm×120μm)中に存在するMg−Al化合物(主としてMg17Al12)を抽出し、その合計断面積Smを求める。そして、(Sm/Sf)×100%をその断面におけるMg−Al化合物の面積割合とする。観察視野数は10個とし、その10個の観察視野における面積割合の平均を各試料におけるMg−Al化合物の面積割合(%)とした。その結果を表1に示す。Mg−Al化合物の断面積は、画像処理装置によって顕微鏡写真(SEM像)を二値化処理した二値化像などを利用すると容易に測定できる。
一例として、試料1−2の顕微鏡写真を図2に示す。図2に示されるように、Al,RE,Ca,Sr,Mnを所定量含むMg合金からなる試料No.1−2では、濃い灰色で示されるマグネシウム合金の母相中に、Mg−Al化合物、Al−RE化合物、Al−Ca化合物、およびAl−Sr化合物が結晶粒界に分散した状態で存在していることが分かる。
[耐熱性の評価]
各試料の鋳造部材(ダイカスト材)1について、以下のようにして耐熱性を評価した。
ここでは、アルミニウム製のブロック材の適宜な位置にボルト孔を設け、ブロック材におけるボルト孔を備える取付面と、各試料の鋳造部材1に備わるフランジ12の締付座面とを合わせて、両者のボルト孔に鉄製のボルトを配置し、このボルトによって各試料の鋳造部材1と上記ブロック材とを締結した試験部材を作製した。この試験部材を150℃で170時間保持した後、ボルトの締結力(残留軸力)を調べた。ボルトに市販の歪ゲージを配置し、締結直後であって150℃に加熱する前の歪量S0(ここでは初期締付軸力を9Nとして締め付けた際の歪量)と150℃×170時間の熱履歴を与えた後の歪量Stとを調べ、[(St−S0)/S0]×100(%)を残留軸力(%)とした。その結果を表1に示す。また、横軸にAlの含有量を、縦軸に残留軸力を設定した残留軸力のグラフを図3に示す。
各試料の鋳造部材(ダイカスト材)1について、以下のようにして耐熱性を評価した。
ここでは、アルミニウム製のブロック材の適宜な位置にボルト孔を設け、ブロック材におけるボルト孔を備える取付面と、各試料の鋳造部材1に備わるフランジ12の締付座面とを合わせて、両者のボルト孔に鉄製のボルトを配置し、このボルトによって各試料の鋳造部材1と上記ブロック材とを締結した試験部材を作製した。この試験部材を150℃で170時間保持した後、ボルトの締結力(残留軸力)を調べた。ボルトに市販の歪ゲージを配置し、締結直後であって150℃に加熱する前の歪量S0(ここでは初期締付軸力を9Nとして締め付けた際の歪量)と150℃×170時間の熱履歴を与えた後の歪量Stとを調べ、[(St−S0)/S0]×100(%)を残留軸力(%)とした。その結果を表1に示す。また、横軸にAlの含有量を、縦軸に残留軸力を設定した残留軸力のグラフを図3に示す。
[鋳造性の評価]
各試料のダイカスト材の表面を目視で確認して亀裂発生頻度を調べることで、各試料の鋳造性の評価を行った。亀裂発生頻度は、各試料について10台のダイカスト材を用意し、10台のダイカスト材における亀裂数の平均(個/台)とした。
各試料のダイカスト材の表面を目視で確認して亀裂発生頻度を調べることで、各試料の鋳造性の評価を行った。亀裂発生頻度は、各試料について10台のダイカスト材を用意し、10台のダイカスト材における亀裂数の平均(個/台)とした。
表1および図3に示すように、試料1−2,1−3,1−4,1−5の残留軸力は、他の試料の残留軸力に比べて、有意に高かった。特に、図3を参照すれば、試料1−3,1−4の部分に残留軸力のピークがあることが分かった。試料1−2,1−3,1−4,1−5は、Alを9.0質量%以上12.0質量%以下、希土類元素を1.7質量%以上2.6質量%以下、Caを0.7質量%以上1.5質量%以下、Srを0.2質量%以上0.5質量%以下、Mnを0.2質量%以上0.5質量%以下含み、残部がMg及び不可避不純物であるマグネシウム合金である。このように、マグネシウム合金にAlと添加元素を所定量含有させることで、マグネシウム合金のダイカスト材の耐熱性を向上できることが明らかになった。
また、表1に示すように、試料1−1〜1−6のマグネシウム母相の平均結晶粒径が30μm以下であり、Alの含有量が多いほど、上記平均結晶粒径が小さくなっていた。また、Alの含有量が多くなるほど、Mg−Al化合物(主としてMg17Al12)の晶出量が多くなっていた。表1に示す試料1−3,1−4の残留軸力が最も高くなっていることから、Alの含有量が多すぎると、Mg−Al化合物が過剰に晶出し、残留軸力が低下したと推察される。
各試料の割れの個数の平均値は、試料1−1で0.5個/台、試料1−2で0.1個/台、試料1−3〜1−6で0.0個/台であった。Alの含有量が9質量%以上であれば、マグネシウム合金の鋳造性を劇的に改善できることが明らかになった。
<試験例2>
試験例2では、REの含有量を変化させた試料2−1〜2−8を作製し、各試料の残留軸力を測定した。試料の製造方法、形状、残留軸力の測定方法は実施形態1と同じである。試料2−1〜2−8の組成および残留軸力を表2に示す。また、横軸にREの含有量を、縦軸に残留軸力を設定した残留軸力のグラフを図4に示す。
試験例2では、REの含有量を変化させた試料2−1〜2−8を作製し、各試料の残留軸力を測定した。試料の製造方法、形状、残留軸力の測定方法は実施形態1と同じである。試料2−1〜2−8の組成および残留軸力を表2に示す。また、横軸にREの含有量を、縦軸に残留軸力を設定した残留軸力のグラフを図4に示す。
表2、図4に示すように、REの含有量が多くなるに従い、残留軸力の値を向上させる効果が大きくなっていき、REの含有量が1.7質量%(試料2−4)前後から当該効果が飽和し始める。試料2−1〜2−8のAlの含有量は全て9.5質量%前後であるので、残留軸力の値を向上させる効果は、Alの含有量だけで決定されるものでないことが明らかになった。また、REを含有させた効果は、REの含有量が1.7質量%前後から飽和し始めることから、REの含有量は、1.7質量%(試料2−4)以上、2.6質量%(試料2−7)以下とすることが好ましいことも明らかになった。
<試験例3>
試験例3では、Caの含有量を変化させた試料3−1〜3−9を作製し、各試料の残留軸力を測定した。試料の製造方法、形状、残留軸力の測定方法は実施形態1と同じである。試料3−1〜3−9の組成および残留軸力を表3に示す。また、横軸にCaの含有量を、縦軸に残留軸力を設定した残留軸力のグラフを図5に示す。
試験例3では、Caの含有量を変化させた試料3−1〜3−9を作製し、各試料の残留軸力を測定した。試料の製造方法、形状、残留軸力の測定方法は実施形態1と同じである。試料3−1〜3−9の組成および残留軸力を表3に示す。また、横軸にCaの含有量を、縦軸に残留軸力を設定した残留軸力のグラフを図5に示す。
表3、図5に示すように、Caの含有量が多くなるに従い、残留軸力の値を向上させる効果が大きくなっていき、Caの含有量が0.7質量%(試料3−4)前後から当該効果が飽和し始める。試料3−1〜3−9のAlの含有量は全て9.5質量%前後であるので、残留軸力の値を向上させる効果は、Alの含有量だけで決定されるものでないことが明らかになった。また、Caを含有させた効果は、Caの含有量が0.7質量%前後から飽和し始めることから、Caの含有量は、0.7質量%(試料3−4)以上、1.5質量%(試料3−7)以下とすることが好ましいことも明らかになった。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 鋳造部材(ダイカスト材) 10 本体
12 フランジ 13 ボス 14 リブ
15 筒部 15h 貫通孔 16 凹部
3,30,31,32,33,34,35,36 角部
12 フランジ 13 ボス 14 リブ
15 筒部 15h 貫通孔 16 凹部
3,30,31,32,33,34,35,36 角部
Claims (3)
- Alを9.0質量%以上12.0質量%以下、
希土類元素を1.7質量%以上2.6質量%以下、
Caを0.7質量%以上1.5質量%以下、
Srを0.2質量%以上0.5質量%以下、
Mnを0.2質量%以上0.5質量%以下含み、
残部がMg及び不可避不純物であるマグネシウム合金。 - 断面におけるMgとAlとを含む化合物の面積割合が10%以下である請求項1に記載のマグネシウム合金。
- Alの含有量が10.0質量%以上11.5質量%以下である請求項1または請求項2に記載のマグネシウム合金。
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