JP2018062702A - マグネシウム合金 - Google Patents

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Shinya HAKAMATA
真矢 袴田
水谷 学
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学 水谷
修義 山本
Nobuyoshi Yamamoto
修義 山本
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百合 城野
克仁 吉田
Katsuto Yoshida
克仁 吉田
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望 河部
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Abstract

【課題】耐熱性および靱性に優れるマグネシウム合金を提供する。
【解決手段】Alを6.5質量%以上7.5質量%以下、希土類元素を1.5質量%以上2.5質量%以下、Caを0.5質量%以上1.5質量%以下、Srを0.1質量%以上0.4質量%以下、Mnを0.1質量%以上0.5質量%以下含み、残部がMg及び不可避不純物であるマグネシウム合金。
【選択図】なし

Description

本発明は、マグネシウム合金に関する。
マグネシウム合金は、実用金属で最も比重が小さく、比強度、比剛性に優れるので、軽量素材として注目されている。そのマグネシウム合金は、各種の添加元素を含有することで、各種の特性を有する(例えば、特許文献1や特許文献2)。
特開2012−136727号公報 特開2010−242146号公報
耐熱性に優れるマグネシウム合金の開発が望まれている。自動車部品や航空機部品などの部品は、その使用環境温度が常温よりも高い場合がある。例えば、エンジンルームの近くに配置される部品は、その使用環境温度が100℃〜180℃程度である場合があり、耐熱性に優れることが望まれる。
また、マグネシウム合金で構成される部材には、靱性に優れることも望まれている。特に、自動車部品や航空機部品では、靱性に優れ、破損し難いことが重要であるからである。
本開示は、耐熱性および靱性に優れるマグネシウム合金を提供することを目的の一つとする。
本開示に係るマグネシウム合金は、
Alを6.5質量%以上7.5質量%以下、
希土類元素を1.5質量%以上2.5質量%以下、
Caを0.5質量%以上1.5質量%以下、
Srを0.1質量%以上0.4質量%以下、
Mnを0.1質量%以上0.5質量%以下含み、
残部がMg及び不可避不純物である。
本開示のマグネシウム合金は、耐熱性および靱性に優れる。
実施形態に示す鋳造部材の概略構成図である。 試験例1に示すAlの含有量と残留軸力との関係を示すグラフである。 試験例1に示すAlの含有量とシャルピー衝撃値との関係を示すグラフである。 試験例2に示すCaの含有量と残留軸力との関係を示すグラフである。
[本発明の実施形態の説明]
本発明者らは、耐熱性に優れる上に、靱性にも優れるマグネシウム合金を製造するべく、添加元素の種類及び含有量を鋭意検討した。その検討過程で、板材などの単純形状の部材において良好な耐熱性・靱性を発揮するマグネシウム合金であっても、自動車部品や航空機部品などで用いる複雑形状の部材を作製したときに、良好な耐熱性・靱性を得られない場合があるとの知見を得た。一般的に、マグネシウム合金の耐熱性の指標として引張りクリープ試験による高温耐クリープ性を用いることが多い。しかし、マグネシウム合金で作製される鋳造部材(ダイカスト材)は、ボルトなどで他の部材に固定された状態で使用される。そのため、マグネシウム合金に求められる耐熱性としては、高温環境下での引張応力に対する耐性よりも、高温環境下での圧縮応力に対する耐性が重要である。この点に鑑み、本発明者らは、鋳造部材をボルト止めした後、高温環境下に曝し、その後常温環境に戻した時に、ボルトの締結力(残留軸力)がどの程度維持されるかといった観点で、マグネシウム合金の耐熱性を評価した。その結果、残留軸力による評価では、引張りクリープ試験による高温耐クリープ性とは異なる傾向が見いだされた。そこで、複雑形状の部材であっても、残留軸力で評価する耐熱性及び靱性を向上させることができるマグネシウム合金の組成を検討した。その結果、アルミニウム(Al)、希土類元素(RE)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、及びマンガン(Mn)を添加元素とし、それら添加元素の添加量が比較的狭い範囲に絞られたときに、複雑形状の部材の耐熱性及び靱性を向上できるとの知見を得た。本発明は、上記知見に基づくものである。最初に本発明の実施態様の内容を列記して説明する。
(1)本発明の一態様に係るマグネシウム合金は、
Alを6.5質量%以上7.5質量%以下、
希土類元素を1.5質量%以上2.5質量%以下、
Caを0.5質量%以上1.5質量%以下、
Srを0.1質量%以上0.4質量%以下、
Mnを0.1質量%以上0.5質量%以下含み、
残部がMg及び不可避不純物である。
上記範囲の添加元素を含むマグネシウム合金は、残留軸力で評価する耐熱性に優れる上に、靱性にも優れる。一般に、マグネシウム合金にAlを含有させていくと、マグネシウム合金の高温耐クリープ特性は低下する。同様に、Alの含有量が増加していくと残留軸力で評価するマグネシウム合金の耐熱性も低下していく傾向にある。しかし、Alの含有量が7.5質量%以下で、かつ特定の添加元素を所定量含むマグネシウム合金であれば、汎用合金であるAE44以上の残留軸力を備えることが分かった。
Alの含有量が多くなるに従い、マグネシウム合金の融点が下がるので、マグネシウム合金の鋳造性が向上する。『鋳造性が良い』とは、鋳造時にダイカスト材(鋳造部材)に皺や割れなどの欠陥が生じ難いことであり、鋳造部材の形状が複雑になるほど鋳造性の善し悪しが、鋳造部材の品質に影響する。品質の良い鋳造部材には、皺や割れなどの欠陥が少ないため、欠陥に起因する耐熱性の低下や靱性の低下が抑制され、結果的に鋳造部材の耐熱性と靱性が向上する。また、一般にマグネシウム合金の靭性は、Alが多くなると低下すると思われているが、Alの含有量をごく狭い範囲に規定すると共に、他の添加元素の含有量をも併せて規定することで、靭性がピーク状に向上することが判明した。
(2)上記マグネシウム合金の一形態として、
Caの含有量が0.8質量%以上1.2質量%以下である形態を挙げることができる。
マグネシウム合金中のCaの含有量を上記範囲に絞ることで、より一層、マグネシウム合金の残留軸力を向上させることができる。
(3)上記マグネシウム合金の一形態として、
Srの含有量が0.2質量%以上0.4質量%以下である形態を挙げることができる。
マグネシウム合金にSrを含有させることで、マグネシウム合金の鋳造性を向上させることができる。その鋳造性の向上効果は、Srの含有量が0.4質量%前後で飽和する。そのため、Srの含有量を上記範囲に絞ることで、鋳造性の向上効果を得つつ、過剰なSrの添加を抑制できる。
(4)上記マグネシウム合金の一形態として、
Mnの含有量が0.2質量%以上0.4質量%以下である形態を挙げることができる。
マグネシウム合金中のMnの含有量を上記範囲に絞ることで、マグネシウム合金中に粗大なAl−Mn化合物が形成され難く、その粗大なAl−Mn化合物によるマグネシウム合金の靱性の低下を抑制できる。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態の詳細を以下に説明する。
<マグネシウム合金>
実施形態に係るマグネシウム合金は、添加元素としてAl、希土類元素、Ca、Sr、Mnをそれぞれ特定量含有し、残部がMg及び不可避不純物である。具体的には、Alを6.5質量%以上7.5質量%以下、希土類元素を1.5質量%以上2.5質量%以下、Caを0.5質量%以上1.5質量%以下、Srを0.1質量%以上0.4質量%以下、Mnを0.1質量%以上0.5質量%以下含み、残部がMg及び不可避不純物であるマグネシウム合金である。このMg合金の特徴の一つは、上記組成に示すように、各元素の含有量が比較的狭い範囲に絞られている点にある。
[アルミニウム(Al)]
Alは、マグネシウム合金は鋳造性を向上させ、鋳造部材の品質を向上させ、その結果として、残留軸力で評価するマグネシウム合金の耐熱性を向上させる。Alの含有量が多いほど高温耐クリープ性は下がるが、本規定範囲のAlの含有量によって、一定の残留軸力が確保でき、その結果として、相当程度の耐熱性が確保できる。さらに、Alの含有量を本規定範囲とすることで、ピーク状の靱性の向上効果を得ることができる。その他、Alは、Mg合金の耐食性、強度、耐塑性変形性といった機械的特性を向上させる。Alは、Srを含む化合物(Al−Sr化合物)やCaを含む化合物(Al−Ca化合物)などを形成して合金組織中に存在する。各化合物の詳細は後述する。
Alの含有量は、6.5質量%以上7.5質量%以下とする。Alの含有量を6.5質量%以上とすることで、Al−Sr化合物やAl−Ca化合物を十分に形成し易い。それらの化合物は、マグネシウム合金の粒内や粒界に析出し、高温環境下におけるマグネシウム合金の変形を抑制する。Alの含有量を7.5質量%以下とすることで、マグネシウム合金に適度な靭性を持たせることができる。また、Alの含有量を7.5質量%以下とすることで、マグネシウム合金中に、Mgを含む化合物(Mg−Al化合物)が過度に形成(析出)されることを抑制でき、マグネシウム合金の残留軸力の低下を抑制し易い。
[希土類元素(RE)]
REは、残留軸力で評価するマグネシウム合金の耐熱性を向上させる。また、REは、引っ張りに対する高温耐クリープ性の向上にも寄与する。REは、Alを含む化合物(Al−RE化合物)を形成して合金組織中に存在する。このAl−RE化合物の形成により、過剰なMg−Al化合物の過剰な形成(析出)が抑制される。REは、周期表3族の元素、即ちスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド、アクチノイドの中から選択される少なくとも1種の希土類元素であって、複数種の希土類元素を含む合金であるミッシュメタルも含む。
REの含有量は、1.5質量%以上2.5質量%以下とする。REの含有量を1.5質量%以上とすることで、十分な量のAl−RE化合物が粒内や粒界に形成される。粒内に形成される化合物は、結晶粒の変形を抑制し、粒界に形成される化合物は、粒界すべりなどを抑制することで、高温環境下におけるマグネシウム合金の変形を抑制する。REの含有量を2.5質量%以下とすることで、Al−RE化合物が過度に存在して熱間割れなどの欠陥の原因になることを抑制し易い。また、REの添加による耐熱性の向上効果は、1.5質量%程度から飽和し始めるので、REの含有量を2.5質量%以下とすることで、高価な希土類元素の使用量を低減できて合金コストを低減できる。REの含有量は、更に1.8質量%以上2.2質量%以下、特に1.9質量%以上2.1質量%以下が好ましい。
[カルシウム(Ca)]
Caは、残留軸力で評価するマグネシウム合金の耐熱性を向上させる。また、Caは、引っ張りに対する高温耐クリープ性の向上にも寄与する。さらに、Caは、マグネシウム合金を作製する際に溶湯の防然性を向上させることに寄与する。マグネシウム合金の溶湯は発火し易く、一般的に溶湯の作製時に防然ガスを用いている。しかし、防然ガスの使用はマグネシウム合金の製造コストを上昇させる上、その扱いが煩雑である。Caを溶湯に所定量添加することで、溶湯の防然性を向上させることができ、防然ガスの使用を低減または無くすことができる。Caは、Al−Ca化合物を形成して合金組織中に存在する。このAl−Ca化合物の形成により、過剰なMg−Al化合物の形成(析出)が抑制される。
Caの含有量は、0.5質量%以上1.5質量%以下とする。Caの含有量を0.5質量%以上とすることで、Al−Ca化合物を十分に形成し、過剰なMg−Al化合物の形成を抑制する。Caの含有量が多いほど、十分な量のAl−Ca化合物が粒内や粒界に形成され、その化合物が高温環境下におけるマグネシウム合金の変形を抑制する。Caの含有量を1.5質量%以下とすることで、Al−Ca化合物が過度に存在して熱間割れなどの欠陥の原因になることを抑制し易い。Caの含有量は、更に0.8質量%以上1.2質量%以下、特に0.9質量%以上1.1質量%以下が好ましい。
[ストロンチウム(Sr)]
Srは、残留軸力で評価するマグネシウム合金の鋳造性を向上させる。鋳造性の向上により、Srは引っ張りに対する高温耐クリープ性の向上にも寄与する。さらに、Srは、マグネシウム合金の融点を下げて、マグネシウム合金の鋳造性を向上させることにも寄与する。Srは、Al−Sr化合物を形成して合金組織中に存在する。このAl−Sr化合物の形成により、過剰なMg−Al化合物の形成(析出)が抑制される。
Srの含有量は、0.1質量%以上0.4質量%以下とする。Srの含有量を0.1質量%以上とすることで、十分な量のAl−Sr化合物が粒内や粒界に形成され、その化合物が高温環境下におけるマグネシウム合金の変形を抑制する。Srの含有量を0.4質量%以下とすることで、鋳造金型への溶湯の焼付きを抑制させ易い。Srの含有量は、更に0.2質量%以上0.4質量%以下が好ましい。
[マンガン(Mn)]
Mnは、残留軸力で評価するマグネシウム合金の耐熱性を向上させる。また、Mnは、引っ張りに対する高温耐クリープ性の向上にも寄与する。さらに、Mnは、マグネシウム合金中に不純物として存在し得るFeを低減させ、マグネシウム合金の耐食性を向上させる。Mnは、Alを含む化合物(Al−Mn化合物)を形成して、過剰なMg−Al化合物の形成(析出)を抑制する。
Mnの含有量は、0.1質量%以上0.5質量%以下が挙げられる。Mnの含有量を0.1質量%以上とすることで、十分な量のAl−Mn化合物が粒内や粒界に形成され、その化合物が高温環境下におけるマグネシウム合金の変形を抑制する。その上、Mnの含有量を0.1質量%以上とすることで、マグネシウム合金の耐食性を向上させ易い。また、Mnの含有量を0.5質量%以下とすることで、粗大なAl−Mn化合物の形成を抑制できる。Mnの含有量は、更に0.2質量%以上0.4質量%以下、特に0.2質量%以上0.3質量%以下が好ましい。
[組織]
マグネシウム合金は、上述のMg−Al化合物(β相)、Al−RE化合物、Al−Ca化合物、Al−Mn化合物、及びAl−Sr化合物が結晶粒内や粒界に分散した組織を有する。
これらAl−Sr化合物、Al−Ca化合物、Al−Mn化合物、及びAl−RE化合物は、代表的には晶出物である。Al−Sr化合物、及びAl−Ca化合物の融点は1000℃以上であり、Al−RE化合物の融点は1100℃以上であり、Mg−Al化合物の融点(462℃)よりも十分に高い。これらAl−Sr化合物、Al−Ca化合物、Al−Mn化合物、及びAl−RE化合物のような高融点化合物が粒内や粒界に分散して存在することで、高温に保持された場合でも結晶粒の変形や粒界すべりなどを抑制し、高温環境下におけるマグネシウム合金の変形を抑制することができると考えられる。
Al−Sr化合物としては、例えば、AlSr、AlSr、Mg13AlSr、Mg11AlSr、MgAlSrなどが挙げられる。Al−Ca化合物としては、例えば、AlCa、AlCa、(MgAl)Caなどが挙げられる。Al−Mn化合物としては、例えばAlMnなどが挙げられる。Al−RE化合物としては、例えば、AlRE、Al11REなどが挙げられる。Mg−Al化合物としては、例えば、Mg17Al12が挙げられる。これら化合物の組成は、例えば、エネルギー分散型X線分析法(EDX)や、オージェ電子分光法(AES)などによって成分分析を行うことで確認できる。
[用途]
実施形態に係るマグネシウム合金は、各種鋳造部材の素材に好適に利用できる。用途としては、例えば、自動車や航空機などの輸送機器類、各種の電子・電気機器類(パーソナルコンピュータ(PC)、タブレット型PC、スマートフォンや折り畳み式携帯電話などの携帯電話、デジタルカメラなど)の筐体やカバーなどの外装部材、補強部材、骨格部材などが挙げられる。特に、高温環境下に配置される内燃機関の部品、より具体的には、アルミニウム合金製のシリンダブロックに対して鋼製のボルトで取り付けられるオイルパンなどに、実施形態に係るマグネシウム合金を用いることが挙げられる。
実施形態に係るマグネシウム合金は特に、板材などの単純形状ではなく、実製品などの複雑形状としたときに、優れた耐熱性と靱性を発揮する。例えば、図1に示すように内部空間を形成する形状を有し、角部を備えるものであって、角部3と角部3以外の部分とでは厚みが異なるものとすることができる。ここでの角部3とは、複数の面が交差する稜線部分である。例えば、図1に示すように内部空間を形成する容器状の本体10を備える場合、天面部や、開口縁がつくる仮想平面に直交する平面で切断した縦断面における隣り合う二つの面が交差する部分が角部3に相当する。角部3は、外方に突出するもの(例、後述の角部30など)、内側に窪んだもの(例、後述の角部31〜36)のいずれでもよい。
図1は、天面部と側壁部とを備え、一方が開口した容器状の本体10を備える鋳造部材1を模式的に示す。図1の右半分は本体10の天面部を上側に、開口部を下側に配置した状態の正面図、左半分はその断面図である。図1に示す鋳造部材1は、上述の割れなどの生じ易い複雑な形状の鋳造部材を概念的に示す。
図1に示す鋳造部材1は、本体10の開口縁から外方に延設されるフランジ12と、本体10の内天面から開口側に向かって突出する少なくとも一つのボス13と、本体10の天面部から外方に突出する筒部15と、天面部の外面と筒部15の外面との交差部分に設けられる少なくとも一つのリブ14と、側壁部の内側に設けられた凹部16とを備える場合を例示する。フランジ12、ボス13、リブ14、筒部15、及び凹部16から選択される少なくとも一つを備えていれば、その他を省略することができる。また、外方に突出する筒部15に代えて、内部空間に突出する筒部を有することもできる。容器状に代えて、フランジ付きパイプなどとすることができる。
代表的には、フランジ12は、ボルト孔が設けられて、他の部品や設置対象にボルトによって締結される部分として機能する。フランジ12は、開口縁や側壁部の外周面に連続して設けられる環状の形態、開口縁や側壁部の外周面に沿って所定の間隔をあけて複数設けられる形態などが挙げられる。ボス13は天面部などに他の部品を固定や連結などするためにボルトやねじ用の雌ねじを形成したり、ピンなどを圧入する挿入孔などを形成したりするものであり、代表的には筒状である。リブ14は、貫通孔15hが設けられた筒部15を補強するものであり、代表的には板状である。また、代表的には、筒部15の外周に放射状に複数のリブ14が設けられる。ボス13及びリブ14の個数、大きさ、形状などは適宜選択できる。これらの個数が多いほど角部3が多くなり、上述の割れなどが生じ易い複雑な形状といえる。
鋳造部材1には、天面部の外面と側壁部の外面とが交差する外側の角部30、外側の角部30に対応する内側の角部31といった本体10自体に設けられる角部、本体10とフランジ12とが交差する角部32、本体10とボス13とが交差する角部33、本体10とリブ14とが交差する角部34、本体10と筒部15とが交差する角部35、凹部16を形成する内底面と内壁面とが交差する角部36などの複数の角部3が存在し得る。そして、この例の鋳造部材1では、各角部3とそれ以外の部分とは厚みが異なる。角部3の厚さtとは、例えば、角部31に示すように上記縦断面において角部30をつくる天面部の外面と側面部の外面との角の二等分線上にとることが挙げられる。図1に示す例では、本体10の角部30,31やボス13近傍の角部33、リブ14近傍の角部34などでは、その周囲の厚さよりも厚く、凹部16における角部36ではその周囲の厚さよりも薄い。また、図1に示す例では、各角部3は実質的に直角である。このような各角部3は、厚さの変化(肉厚変動)、形状の変化が大きい箇所といえ、割れなどが生じ易い箇所と考えられる。定量的には、上記縦断面における隣り合う二つの面が交差する角部3における交差角度が0°超120°以下程度、特に直角及びその近傍であり、角部3における厚さの変化量(その周囲の厚さを基準としたときの変化量)が10%以上、更に25%以上、50%以上である箇所は、割れなどが生じ易い箇所と考えられる。実施形態のマグネシウム合金は、このような割れなどが生じ易い箇所を複数備える複雑な形状の鋳造部材1、特に上述の角部3を1個以上、更に5個以上備える鋳造部材1の製造に供する素材、又は鋳造部材1自体の構成材料に好適である。
<作用効果>
実施形態に係るマグネシウム合金によれば、以下の効果を奏することができる。
[1]高温における耐熱性に優れる。具体的には、圧縮応力に対する耐変形特性と、引張り応力に対する耐変形特性にバランス良く優れる。そのため、マグネシウム合金の各種鋳造部材の素材に好適に利用できる。
[2]靱性に優れる。特に、図1に例示したような複雑形状の鋳造部材(ダイカスト材)1を作製したときに、優れた靱性を発揮する。
[3]難燃性に優れる。そのため、大気中で溶解しても溶湯の発火を抑制できるので、防燃ガスを不要にできてマグネシウム合金の各種鋳造部材の製造作業性を向上できる。
[4]鋳造金型への焼付きが生じ難い。そのため、マグネシウム合金の各種鋳造部材の製造作業性を向上できる。
[5]熱間割れなどの欠陥が生じ難い。そのため、優れた外観を有するマグネシウム合金の各種鋳造部材の素材に好適に利用できる。
[6]リサイクル性に優れる。本実施形態のマグネシウム合金は、上記[1]〜[5]の特性を得るにあたり、再溶解時にマグネシウム合金中から消失し易いBe(ベリリウム)などの微量添加元素を必須としていない。そのため、本実施形態のマグネシウム合金で構成される鋳造部材をリサイクルする際、当該鋳造部材を再溶解するだけで、新たな鋳造部材の原料となる溶湯を作製することができる。
<試験例1>
マグネシウム合金を用いてダイカスト材を作製し、そのダイカスト材の耐熱性と靱性とを評価した。本発明のマグネシウム合金は、その製造条件が以下のダイカスト材の製造条件に限定されるわけではない。
マグネシウム合金の溶湯を作製した。まず、純度99.9質量%のマグネシウムの塊を50kg用意し、Ar雰囲気の溶解炉を用いて690℃で溶解し純マグネシウムの溶湯を作製した。続いて、完全に溶解した純マグネシウムの溶湯中に、以下の1〜5の添加元素の塊を添加して、表1の試料1−1〜1−5に示す組成のマグネシウム合金の溶湯を作製した。表1中の「−」は、添加元素を含有していないことを示す。添加元素の添加及び溶解は、湯温は690℃に保持した状態で棒状の治具によって10分間撹拌して行った。なお、試料1−6は、汎用の耐熱マグネシウム合金(AE44)であって、市販品である。
1.純度99.9質量%の純アルミニウム塊
2.純度99質量%のミッシュメタル塊
3.純度99.5質量%のCa塊
4.純度99質量%のSr塊
5.アルミニウム母合金(Al−10質量%Mn)
ミッシュメタルの含有元素及びその含有量は、Laが28質量%、Ceが51質量%、Ndが16質量%、Prが質量5%である。
作製した各試料のマグネシウム合金溶湯を用いて、ダイカスト材を作製した。ダイカスト材の作製には、コールドチャンバーダイカストマシン(宇部興産機械株式会社製、型番UB530iS2)を用いた。この試験では、ダイカスト材として、図1に示す鋳造部材1を作製した。角部3を除く箇所の平均厚さは4mm、上記角部3における厚さの変化量(上記平均厚さ4mmに対する変化量)の最大値は500%(最大厚さ20mm)である。鋳造部材1のサイズは、幅200mm×奥行150mm×最大高さ150mm(筒部を含む)程度であり、使用するマグネシウム合金の体積は450cm〜500cm程度である。鋳造時の溶湯温度は690℃、射出速度は2.5m/秒、鋳造圧力は60MPaに設定した。また、鋳造過程の冷却速度は、50℃/秒以上とした。
[耐熱性の評価]
各試料の鋳造部材1について、以下のようにして耐熱性を評価した。ここでは、アルミニウム製のブロック材の適宜な位置にボルト孔を設け、ブロック材におけるボルト孔を備える取付面と、各試料の鋳造部材1に備わるフランジ12の締付座面とを合わせて、両者のボルト孔に鉄製のボルトを配置し、このボルトによって各試料の鋳造部材1と上記ブロック材とを締結した試験部材を作製した。この試験部材を150℃で170時間保持した後、ボルトの締結力(残留軸力)を調べた。残留軸力は、ボルトに市販の歪ゲージを配置し、締結直後であって150℃に加熱する前の歪量S(ここでは初期締付軸力を9Nとして締め付けた際の歪量)、150℃×170時間の熱履歴を与えた後の歪量Stとを調べ、[(St−S)/S]×100(%)を残留軸力(%)として表1に示す。また、横軸にAlの含有量を、縦軸に残留軸力を設定した残留軸力のグラフを図2に示す。図2において、AE44の試料1−6は四角でプロットしている。
[靱性の評価]
各試料の靱性をシャルピー衝撃試験によって評価した。具体的には、各試料の鋳造部材1(図1)から長方形の板状試験片を切り出し、その板状試験片を市販のシャルピー衝撃試験機にセットして、各試料の破壊に至る衝撃値(J/cm)を測定した。測定値が大きいほど、靱性が高いと言える。衝撃値の測定結果を表1に示すと共に、横軸にAlの含有量を、縦軸に衝撃値を設定した衝撃値のグラフを図3に示す。なお、試料1−6(AE44)の衝撃値の結果は、表1には示しているが、図3には示していない。
Figure 2018062702
表1および図2に示すように、Alの含有量が大きくなるに従って残留軸力は徐々に低下する傾向にあることが分かった。しかし、Alに加えてRE,Ca,Sr,Mnを所定量含有させることで、Alの含有量の増加に伴って低下する残留軸力を、AE44(試料1−6)の残留軸力と同等程度にできることが分かった。さらに、表1および図3に示すように、試料1−2,1−3,1−4の衝撃値は、その他の試料の衝撃値よりも有意に高かった。特に、図3を参照すれば、試料1−2,1−3,1−4の部分に衝撃値のピークがあることが分かる。試料1−2,1−3,1−4は、Alを6.5質量%以上7.5質量%以下、希土類元素を1.5質量%以上2.5質量%以下、Caを0.5質量%以上1.5質量%以下、Srを0.1質量%以上0.4質量%以下、Mnを0.1質量%以上0.5質量%以下含み、残部がMg及び不可避不純物であるマグネシウム合金である。
以上の結果から、試料1−2,1−3,1−4のようにマグネシウム合金に所定量の添加元素を含有させることで、図1に示すような複雑形状の鋳造部材1に対して、AE44と同等程度の耐熱性と、優れた靱性を付与できることが分かった。この耐熱性と靱性の向上効果は、所定量の添加元素の存在だけでなく、Alの含有量を6.5質量%以上7.5質量%以下とすることでマグネシウム合金の鋳造性が向上したことも要因の一つと推察される。マグネシウム合金の鋳造性が高いと、皺や割れなどの欠陥が少ない高品質の鋳造部材1を鋳造できるため、欠陥に起因する耐熱性の低下、および靱性の低下を抑制できると考えられる。
また、試料1−2,1−3,1−4のマグネシウム合金に含まれるREの含有量はAE44よりもかなり少なく、コスト面でもAE44よりも有利である
<試験例2>
試験例2では、Caの含有量を変化させた試料2−1〜2−9を作製し、各試料の残留軸力を測定した。試料の製造方法、形状、残留軸力の測定方法は実施形態1と同じである。試料2−1〜2−9の組成および残留軸力を表2に示す。また、横軸にCaの含有量を、縦軸に残留軸力を設定した残留軸力のグラフを図4に示す。なお、図4における残留軸力の最低値を50%としているため、残留軸力が50%を下回る試料2−1,2−2の残留軸力は図4にプロットしていない。
Figure 2018062702
表2、図4に示すように、Caの含有量が多くなるに従い、残留軸力の値を向上させる効果が大きくなっていき、Caの含有量が0.8質量%(試料2−4)前後から当該効果が飽和し始める。試料2−1〜2−9のAlの含有量は全て7質量%前後であるので、残留軸力の値を向上させる効果は、Alの含有量だけで決定されるものでないことが明らかになった。また、Caを含有させた効果は、Caの含有量が0.8質量%前後から飽和し始めることから、Caの含有量は、0.8質量%(試料2−4)以上、1.2質量%(試料2−6)以下とすることが好ましいことも明らかになった。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 鋳造部材 10 本体
12 フランジ 13 ボス 14 リブ
15 筒部 15h 貫通孔 16 凹部
3,30,31,32,33,34,35,36 角部

Claims (4)

  1. Alを6.5質量%以上7.5質量%以下、
    希土類元素を1.5質量%以上2.5質量%以下、
    Caを0.5質量%以上1.5質量%以下、
    Srを0.1質量%以上0.4質量%以下、
    Mnを0.1質量%以上0.5質量%以下含み、
    残部がMg及び不可避不純物であるマグネシウム合金。
  2. Caの含有量が0.8質量%以上1.2質量%以下である請求項1に記載のマグネシウム合金。
  3. Srの含有量が0.2質量%以上0.4質量%以下である請求項1または請求項2に記載のマグネシウム合金。
  4. Mnの含有量が0.2質量%以上0.4質量%以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のマグネシウム合金。
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