JPWO2018061226A1 - ポインティング機構 - Google Patents

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Abstract

人工衛星(100)は2台のポインティング機構(110、120)を備える。各ポインティング機構は、本体側ジンバル(111、121)と展開ブーム(112、122)とスラスタ側ジンバル(113、114)とスラスタ群(115、125)とを備える。本体側ジンバルは、展開ブームを衛星本体(130)に連結して展開ブームの向きを調整する。スラスタ側ジンバルは、スラスタを展開ブームに連結してスラスタの向きを調整する。各ジンバルは2軸ジンバルである。

Description

本発明は、人工衛星に電気推進スラスタを搭載するための機構に関するものである。
近年、姿勢制御のために人工衛星に搭載される推進システムは、従来の化学推進システムから電気推進システムに移行しつつある。
電気推進システムには、化学推進システムと比較して次のようなメリットおよびデメリットがある。
電気推進システムのメリットは以下の通りである。
(1)比推力が高い。いわゆる燃費が良い。そのため、人工衛星に搭載される推進薬を少なくできる。すなわち、同じ推進重量ならば、化学推進システムに比べて電気推進システムの方が寿命が長い。
(2)推進薬が可燃性でないため、安全性が高い。
(3)オービットレイジング(orbit−raising)とステーションキーピング(Station Keeping)とを同一のスラスタを使用して行うことが可能である。
(4)電気推進システムは展開機構に搭載することが可能である。すなわち、人工衛星から離れた位置にスラスタを配置できる。
電気推進システムのデメリットは以下の通りである。
(1)電気推進スラスタは、本体のサイズが大きく、質量が重い。
(2)消費電力が大きいため、専用の電源が必要である。
(3)噴射プルームの広がる角度が大きい。
(4)噴射プルームが搭載機器に当たると搭載機器が劣化する。
(5)コストが高い。
(6)推力が弱いため、オービットレイジングに時間が掛かる。
上記のデメリット(6)を補うために、オービットレイジングにおいて電気推進システムは化学推進システムと併用される場合がある。
また、上記のデメリット(1)〜(5)を補うために、電気推進スラスタの搭載台数を削減することが最重要課題となっている。
そのため、各々の電気推進スラスタが複数方向に噴射することを可能にする必要がある。
特許文献1に開示された技術は、人工衛星の軌道制御に用いる電気推進システムの冗長性を向上させることを目的としている。
具体的には、ジンバル機構とピボット機構とが両端に実装された展開ブームを用いて、電気推進スラスタが人工衛星に取付けられている。これにより、電気推進スラスタの噴射方向の自由度が増大するため、1台の電気推進スラスタによって南北制御を行うことが可能となる。
また、別の電気推進スラスタが配置されている場合、その電気推進スラスタが故障しても、展開ブームに搭載された電気推進スラスタを代用することが可能である。結果として、冗長性および信頼度を維持したまま、人工衛星に搭載する電気推進スラスタの台数を削減することが可能となる。
しかし、特許文献1に開示された技術には以下のような課題がある。
(1)南北制御以外に東西制御をどのように実施するかが不明である。すなわち、東西制御を実施することが可能であるか不明である。
(2)南北制御を1台の電気推進スラスタによって実施するために、その電気推進スラスタが反地球指向面に搭載される。しかし、化学推進システムと電気推進システムとが併用される人工衛星において電気推進スラスタが反地球指向面に搭載されると、その電気推進スラスタが化学推進エンジンと競合してしまう。そのため、化学推進システムと電気推進システムとが併用される人工衛星に特許文献1に開示された技術を適用することはできないと考えられる。
(3)ピボット機構について自由度の詳細が不明である。そのため、電気推進スラスタの可動領域および噴射プルームの噴射領域が不明である。
(4)人工衛星を載せたロケットの打上げ時に展開ブームがどのような状態で収納されるか不明である。すなわち、展開ブームをロケットフェアリングに収納する方法が不明である。
(5)オービットレイジング等において、奇数台の電気推進スラスタを噴射させる場合に対応できるかが不明である。すなわち、人工衛星の重心周りにモーメントが発生しないように奇数台の電気推進スラスタを噴射させることが可能であるか不明である。
米国特許6565043号公報
本発明は、人工衛星の東西南北制御を可能にすることを目的とする。
本発明のポインティング機構は、
棒状を成す展開ブームと、
前記展開ブームを衛星本体に連結して前記展開ブームの向きを調整する本体側ジンバルと、
スラスタを前記展開ブームに連結して前記スラスタの向きを調整するスラスタ側ジンバルとを備える。
前記ポインティング機構は、2台1組で人工衛星に搭載される。
本発明によれば、2台のポインティング機構のそれぞれが展開ブームの向きを調整するジンバルとスラスタの向きを調整するジンバルとを備えるため、人工衛星の東西南北制御を行うことが可能となる。
実施の形態1における人工衛星100の概要図。 実施の形態1における人工衛星100の構成図。 実施の形態1における人工衛星100の構成図。 実施の形態1における収納時の人工衛星100を示す斜視図。 実施の形態1における収納時の人工衛星100を示す底面図。 実施の形態1におけるポインティング機構の動作を示す図。 実施の形態1におけるステーションキーピング時の人工衛星100を示す図。 実施の形態1におけるオービットレイジング時の人工衛星100を示す図。
実施の形態および図面において、同じ要素または互いに相当する要素には同じ符号を付している。同じ符号が付された要素の説明は適宜に省略または簡略化する。
実施の形態1.
2台のポインティング機構を備える人工衛星について、図1から図8に基づいて説明する。
特に指定しない場合、スラスタは電気推進スラスタを意味する。
***構成の説明***
図1に基づいて、人工衛星100の概要を説明する。
人工衛星100は、地球201を周回する人工衛星である。
人工衛星100が周回する軌道を衛星軌道202という。具体的には、衛星軌道202は静止軌道である。
人工衛星100の静止軌道において地球201を向く面を地球指向面133といい、人工衛星100の静止軌道において地球201と反対を向く面を反地球指向面134という。
第1の太陽電池パドル141が設けられた面を第1のパドル面131Pといい、第2の太陽電池パドル142が設けられた面を第2のパドル面132Pという。
第1のパドル面131Pは、人工衛星100が地球201を周回するときに北側を向く北面131Nである。
第2のパドル面132Pは、人工衛星100が地球201を周回するときに南側を向く南面132Sである。
静止軌道におけるステーションキーピング時の人工衛星100の進行方向(東西方向)をX軸で表し、南北方向をY軸で表し、静止軌道において人工衛星100から見て地球201が位置する方向をZ軸で表す。なお、Z軸はオービットレイジング時には人工衛星100の進行方向となる。
図2および図3に基づいて、人工衛星100の構成を説明する。
人工衛星100は図2に示すように第1の太陽電池パドル141と第2の太陽電池パドル142とを備えるが、図3において第1の太陽電池パドル141と第2の太陽電池パドル142との図示を省略する。
人工衛星100は、衛星本体130と、2台のポインティング機構(110、120)と、2つのスラスタ群(115、125)とを備える。
衛星本体130は、北面131Nと南面132Sと地球指向面133と反地球指向面134とを有する。衛星本体130は人工衛星100の本体である。すなわち、衛星本体130は人工衛星100の構体である。
第1のポインティング機構110は、北面131Nに設けられるポインティング機構である。
ポインティング機構は、スラスタ群が取付けられてスラスタ群の配置を調整する物である。
第1のポインティング機構110は、第1のスラスタ群115が取付けられて第1のスラスタ群115の配置を調整する。
第1のポインティング機構110は、第1の本体側ジンバル111と、第1の展開ブーム112と、第1のスラスタ側ジンバル113と、第1のスラスタ台114とを備える。
第1の本体側ジンバル111は、第1の展開ブーム112を衛星本体130に連結して第1の展開ブーム112の向きを変えるジンバル(Gimbal)である。具体的には、第1の本体側ジンバル111は2軸ジンバルである。2軸ジンバルにおいて、回転体が、直交2軸および斜交2軸の各回転軸の周りに回転可能に、軸受を介して支持されている。軸受は、例えば1軸周りに回転可能な転がり軸受、すべり軸受等で構成される。なお、図3の点線方向は回転方向を表している。
第1の展開ブーム112は、棒状を成すブームである。
第1のスラスタ側ジンバル113は、第1のスラスタ台114を第1の展開ブーム112に連結して第1のスラスタ台114の向きを変えるジンバルである。具体的には、第1のスラスタ側ジンバル113は2軸ジンバルである。2軸ジンバルにおいて、回転体が、直交2軸および斜交2軸の各回転軸の周りに回転可能に、軸受を介して支持されている。軸受は、例えば1軸周りに回転可能な転がり軸受、すべり軸受等で構成される。なお、図3の点線矢印は回転方向を表している。
第1のスラスタ台114は、第1のスラスタ群115が取付けられる台である。第1のスラスタ台114の向きによって第1のスラスタ群115の噴射方向が決まる。
第1のスラスタ群115は、複数台のスラスタから成る。実施の形態1では、第1のスラスタ群115は2台のスラスタから成る。
第2のポインティング機構120は、南面132Sに設けられるポインティング機構である。
第2のポインティング機構120は、第2のスラスタ群125が取付けられて第2のスラスタ群125の配置を調整する。
第2のポインティング機構120は、第2の本体側ジンバル121と、第2の展開ブーム122と、第2のスラスタ側ジンバル123と、第2のスラスタ台124とを備える。
第2の本体側ジンバル121は、第2の展開ブーム122を衛星本体130に連結して第2の展開ブーム122の向きを変えるジンバルである。具体的には、第2の本体側ジンバル121は2軸ジンバルである。
第2の展開ブーム122は、棒状を成すブームである。
第2のスラスタ側ジンバル123は、第2のスラスタ台124を第2の展開ブーム122に連結して第2のスラスタ台124の向きを変えるジンバルである。具体的には、第2のスラスタ側ジンバル123は2軸ジンバルである。
第2のスラスタ台124は、第2のスラスタ群125が取付けられる台である。第2のスラスタ台124の向きによって第2のスラスタ群125の噴射方向が決まる。
第2のスラスタ群125は、複数台のスラスタから成る。実施の形態1では、第2のスラスタ群125は2台のスラスタから成る。
第1の本体側ジンバル111が取付けられる第1の取付け部分と、第2の本体側ジンバル121が取付けられる第2の取付け部分とは、以下のような位置関係にある。
第1の取付け部分は、第2の取付け部分と対称となる位置にある。
第1の取付け部分は北面131Nに位置し、第2の取付け部分は南面132Sに位置する。
第1の取付け部分は北面131Nのうち反地球指向面側の端に位置し、第2の取付け部分は南面132Sのうち反地球指向面側の端に位置する。
第1の取付け部分は反地球指向面側の角のうち一方の角に位置し、第2の取付け部分は反地球指向面側の角のうち第1の取付け部分の斜向かいの角に位置する。
つまり、第1の取付け部分と第2の取付け部分とは、地球指向面側から見て衛星重心101を中心とした回転対称の位置にある。
***動作の説明***
図4および図5に基づいて、人工衛星100がロケットフェアリングに収納されるときの第1のポインティング機構110および第2のポインティング機構120を説明する。
図4は斜視図であり、図5は上面図である。
ロケットフェアリングとは、人工衛星100を宇宙に運ぶロケットのフェアリングである。
第1のポインティング機構110において、第1の本体側ジンバル111によって、第1の展開ブーム112の向きが北面131Nと平行に調整される。さらに、第1のスラスタ側ジンバル113によって、第1のスラスタ台114の底面が北面131Nと平行になるように、第1のスラスタ台114の向きが調整される。
第2のポインティング機構120において、第2の本体側ジンバル121によって、第2の展開ブーム122の向きが南面132Sと平行に調整される。さらに、第2のスラスタ側ジンバル123によって、第2のスラスタ台124の底面が南面132Sと平行になるように、第2のスラスタ台124の向きが調整される。
その結果、第1のポインティング機構110と第2のポインティング機構120とがフェアリング包絡域203に収まる。
フェアリング包絡域203とは、ロケットフェアリングにおいて人工衛星100が収納される領域である。
展開ブーム(112、122)は、長さ許容範囲における最長の長さを有する。
長さ許容範囲は、展開ブームの向きが図5に示すように調整された状態でポインティング機構(110、120)の全体がフェアリング包絡域203に収まるために展開ブームの長さが満たすべき範囲である。
図5において、第1の本体側ジンバル111から第1のスラスタ台114の端までの長さは、北面131Nの幅と同程度である。同じく、第2の本体側ジンバル121から第2のスラスタ台124の端までの長さは、南面132Sの幅と同程度である。
図4および図5に示すように、ポインティング機構(110、120)を衛星本体130に対して平行にすることができる。これにより、重量物であるスラスタを衛星本体130に近づけることが可能となる。そのため、収納時の剛性設計が容易となる。すなわち、ポインティング機構(110、120)の収納時の固有振動数(固有値)を上げつつ、軽量化を図ることができる。
図6に基づいて、XY平面における第1のポインティング機構110および第2のポインティング機構120の動作を説明する。
地球指向面133の中央に記されたマークは、XY平面における衛星重心101を表している。衛星重心101は人工衛星100の重心である。
XY平面は、東西南北に沿った平面に相当する。
第1のポインティング機構110において、第1の本体側ジンバル111によって第1の展開ブーム112の向きを調整し、第1のスラスタ側ジンバル113によって第1のスラスタ台114の向きを調整することができる。
そのため、角度αをプラスとマイナスとのいずれにも調整することが可能である。角度αは、一点鎖線で表したYZ平面と白矢印で表した噴射ベクトルとが成す角度である。噴射ベクトルの向きはスラスタ群の噴射方向を表す。
したがって、人工衛星100の進行方向を東西南北のいずれの方向にも制御することが可能である。すなわち、東西南北制御が可能である。
また、第1の展開ブーム112と北面131Nとが成す角度θは、90度以下に抑えることができる。つまり、第1の本体側ジンバル111が回転する2軸方向のいずれにおいても、第1の本体側ジンバル111の駆動量を90度以下に抑えることができる。さらに、第1のスラスタ側ジンバル113が回転する2軸方向のいずれにおいても、第1のスラスタ側ジンバル113の駆動量を90度以下に抑えることができる。
そのため、各ジンバル(111、113)の可動部を通過する電気配線と推進薬配管とのそれぞれの実装を簡素にすることができる。
なお、噴射ベクトルの向きは衛星重心101と合致する必要がある。つまり、噴射ベクトルの延長線上に衛星重心101が位置する必要がある。
図6に基づく上記の説明は、第2のポインティング機構120にも当てはまる。
図7に基づいて、ステーションキーピング時の第1のポインティング機構110および第2のポインティング機構120を説明する。
網掛け部分は、スラスタの噴射範囲、すなわち、スラスタから噴射される噴射プルームの範囲を表している。
第1のポインティング機構110において、第1の本体側ジンバル111によって第1の展開ブーム112の向きが調整されて、第1のスラスタ側ジンバル113によって第1のスラスタ台114の向きが調整される。第2のポインティング機構120も同様に調整される。
これにより、角度βを角度許容範囲における最小の角度にすることが可能である。
角度βは、一点鎖線で表したXY平面と白矢印で表した噴射ベクトルとが成す噴射指向角度である。
角度許容範囲は、噴射プルームの範囲に第1の太陽電池パドル141が入らないために角度βが満たすべき範囲である。
すなわち、噴射プルームが太陽電池パドルに当たるのを回避しつつ、噴射ベクトルをY軸方向に近づけることができる。その結果、噴射効率が向上する。
また、第1のポインティング機構110の第1の本体側ジンバル111および第1のスラスタ側ジンバル113、並びに第2のポインティング機構120の第2の本体側ジンバル121および第2のスラスタ側ジンバル123の回転角度が調整される。これにより、衛星重心101に対して噴射ベクトルの向きが合致したり、ずれたりする。そのため、人工衛星100の重心周りにモーメントを発生させてアンローディングを実施することが可能である。
図8に基づいて、オービットレイジング時の第1のポインティング機構110および第2のポインティング機構120を説明する。
第1のスラスタ群115のうちの稼働されるスラスタの台数を第1の稼働台数という。また、第2のスラスタ群125のうちの稼働されるスラスタの台数を第2の稼働台数という。なお、稼働されるスラスタとは、噴射するスラスタを意味する。
第1の距離Dおよび第2の距離Dは、オービットレイジング時の進行方向(+Z)を法線とするXY平面における距離である。
第1の稼働台数と第2の稼働台数とが異なる場合に、第1の距離Dと第2の距離Dとの比が、第1の稼働台数と第2の稼働台数との逆比にとなるように、第1のスラスタ群115および第2のスラスタ群125は配置される。
第1の距離Dは、オービットレイジング時の進行方向(+Z)を法線とするXY平面に衛星重心101と第1のスラスタ群115とを投影したときの衛星重心101と第1のスラスタ群115との直線距離である。具体的には、第1の距離Dは、前述のXY平面において、衛星重心101から第1のスラスタ群115のうちの稼働しているスラスタの中心までの直線距離である。
第2の距離Dは、前述のXY平面に衛星重心101と第2のスラスタ群125とを投影したときの衛星重心101と第2のスラスタ群125との直線距離である。具体的には、第2の距離Dは、前述のXY平面において、衛星重心101から第2のスラスタ群125のうちの稼働しているスラスタの中心までの直線距離である。
第1の稼働台数が1台であり、第2の稼働台数が2台である場合、第1の稼働台数と第2の稼働台数との比は1対2となる。
この場合、第1の距離Dと第2の距離Dとの比は2対1となる。すなわち、第2の距離DがLである場合、第1の距離Dは2Lである。
このとき、第1のポインティング機構110と第2のポインティング機構120との少なくともいずれかが調整される。
第1のポインティング機構110が調整される場合、第1の本体側ジンバル111によって第1の展開ブーム112の向きが調整され、第1のスラスタ側ジンバル113によって第1のスラスタ台114の向きが調整される。
第1の距離Dと第2の距離Dとの比が第1の稼働台数と第2の稼働台数との逆比であり、かつ前述のXY平面に投影した衛星重心101と第1のスラスタ群115と第2のスラスタ群125とが一直線に存在すれば、人工衛星100の重心周りのモーメントが発生しない。
これにより、オービットレイジングが可能となる。
例えば、奇数台(3台)のスラスタが噴射する場合であっても、人工衛星100の重心周りにモーメントが発生しないため、オービットレイジングを行うことができる。
なお、オービットレイジング時には、噴射ベクトルの向きを衛星重心101に合致させる必要はない。
***実施の形態1の効果***
実施の形態1では、2台のポインティング機構(第1のポインティング機構110、第2のポインティング機構120)が人工衛星に搭載される。各ポインティング機構は、第1の2軸ジンバルと展開ブームと第2の2軸ジンバルとを衛星本体側から順に並べて構成され、スラスタを衛星本体に連結する。
各2軸ジンバルは、アジマス/エレベーション方式の自由度を有している。第1の2軸ジンバルは、衛星本体側でアジマス方向に回転し、展開ブーム側でエレベーション方向に回転する。第2の2軸ジンバルは、展開ブーム側でアジマス方向に回転し、スラスタ側でエレベーション方向に回転する。
各2軸ジンバルは、XY方向の自由度を有するユニバーサルジョイントで構成することもできる。
2軸ジンバルを用いた展開ブーム付ポインティング機構(第1のポインティング機構110、第2のポインティング機構120)が人工衛星に2台搭載されることにより、以下の効果が得られる。
図4および図5で説明したように、収納時においてポインティング機構(第1のポインティング機構110、第2のポインティング機構120)の姿勢の自由度が増大する。
図6で説明したように、東西南北制御が可能となる。
図7で説明したように、展開時においてポインティング機構(第1のポインティング機構110、第2のポインティング機構120)の姿勢の自由度が増大する。
図8で説明したように、奇数台数のスラスタを噴射させてオービットレイジングを行うことが可能となる。
実施の形態1は、上記の効果を含めて以下のような効果を奏する。
静止軌道での姿勢制御において東西南北制御を行うためには、駆動範囲が狭い従来のポインティング機構を用いた場合では、電気推進スラスタが4台または4群必要であった。
実施の形態1では、2台または2群の電気推進スラスタで実現することが可能となる。
人工衛星の東西南北制御においては、主に南北方向に電気推進スラスタを指向させて噴射を行う必要がある。
実施の形態1では、ポインティング機構(第1のポインティング機構110、第2のポインティング機構120)が南面および北面に設けられるため、2軸ジンバルの運用駆動量を最小にすることが可能となる。
人工衛星の東西南北制御においては、展開ブームの長さが長ければ長い程、電気推進スラスタの噴射効率が高くなる。このため、フェアリング包絡域が許容可能な範囲で展開ブームの長さを長くすることが必要となる。2本の展開ブームのいずれも最大の長さにすれば、2本の展開ブームは必然的に同一の長さとなる。
一方、奇数台(例えば3台)の電気推進スラスタを同時に噴射するためには、人工衛星の重心周りにモーメントが発生しないようにしなければならない。具体的には、電気推進スラスタと衛星重心との距離の比が電気推進スラスタの稼働台数の逆比にならなければならない。そのためには、各展開ブームを伸縮構造にして各展開ブームを伸縮する、又は、各展開ブームの中央に関節を設けて各展開ブームを曲げる等によって、各展開ブームの長さを変える必要があった。
しかし、2軸ジンバルに適切な自由度を持たせれば展開ブームの長さが同一でも上記の条件を満たす姿勢をとることができる。そのため、短い展開ブームを使用して噴射効率を低下させてしまうことがなく、また、伸縮構造または関節を動作させるモータのようなリソースが不要となる。
展開ブームを用いることにより、電気推進スラスタを衛星本体から離れた位置に配置することができる。そして、太陽電池などの衛星機器に噴射プルームが当たることを回避しつつ、噴射ベクトルを希望の方向に近づけることができる。その結果、噴射効率が向上するため、推進薬の節約が一層期待できる。
さらに、スラスタ群(115、125)において、特定の奇数台(例えば3台)の電気推進スラスタを同時に噴射してもオービットレイジングが可能となる。
そのため、特定の奇数台より多い偶数台(例えば4台)の電気推進スラスタを同時に噴射する場合に比べて推進の所要電力が少なく、かつ特定の奇数台より少ない偶数台(例えば2台)の電気推進スラスタを同時に噴射する場合に比べてより大きな推進力を得ることができる。したがって、より柔軟な推進制御が可能となる。
加えて、例えば4台の電気推進スラスタのうち1台が故障した場合であっても、残りの3台の電気推進スラスタの推進動作によってオービットレイジングが可能となる。したがって、より柔軟な冗長系を構成することも可能となる。
***他の構成***
2台のポインティング機構(第1のポインティング機構110、第2のポインティング機構120)は、鏡面対称に配置してもよい。
具体的には、図3において、第2のポインティング機構120の第2の本体側ジンバル121を、第1のポインティング機構110の第1の本体側ジンバル111と同じく手前側の角に設けてもよい。また、第1のポインティング機構110の第1の本体側ジンバル111と第2のポインティング機構120の第2の本体側ジンバル121との両方を、奥側または手前側の角ではなく、奥側の角と手前側の角との中間に設けてもよい。
各スラスタ群を構成するスラスタの台数は3台以上であってもよい。
***実施の形態の補足***
実施の形態は、好ましい形態の例示であり、本発明の技術的範囲を制限することを意図するものではない。実施の形態は、部分的に実施してもよいし、他の形態と組み合わせて実施してもよい。
100 人工衛星、101 衛星重心、110 第1のポインティング機構、111 第1の本体側ジンバル、112 第1の展開ブーム、113 第1のスラスタ側ジンバル、114 第1のスラスタ台、115 第1のスラスタ群、120 第2のポインティング機構、121 第2の本体側ジンバル、122 第2の展開ブーム、123 第2のスラスタ側ジンバル、124 第2のスラスタ台、125 第2のスラスタ群、130 衛星本体、131N 北面、131P 第1のパドル面、132P 第2のパドル面、132S 南面、133 地球指向面、134 反地球指向面、141 第1の太陽電池パドル、142 第2の太陽電池パドル、201 地球、202 衛星軌道、203 フェアリング包絡域。

Claims (10)

  1. 棒状を成す展開ブームと、
    前記展開ブームを衛星本体に連結して前記展開ブームの向きを調整する本体側ジンバルと、
    スラスタを前記展開ブームに連結して前記スラスタの向きを調整するスラスタ側ジンバルとを備えるポインティング機構であって、
    2台1組で人工衛星に搭載されるポインティング機構。
  2. 前記本体側ジンバルと前記スラスタ側ジンバルとのそれぞれが2軸ジンバルである
    請求項1に記載のポインティング機構。
  3. 前記本体側ジンバルが取り付けられる第1の取付け部分と他方のポインティング機構の本体側ジンバルが取り付けられる第2の取付け部分とが、地球指向面側から見て衛星重心を中心とした回転対称の位置にある
    請求項1または請求項2に記載のポインティング機構。
  4. 前記第1の取付け部分は、前記人工衛星が地球を周回するときに南側を向く南面と前記人工衛星が地球を周回するときに北側を向く北面とのうちの一方の面に位置し、
    前記第2の取付け部分は、前記南面と前記北面とのうちの他方の面に位置する
    請求項3に記載のポインティング機構。
  5. 前記第1の取付け部分は、前記一方の面のうち反地球指向面側の端に位置し、
    前記第2の取付け部分は、前記他方の面のうち反地球指向面側の端に位置する
    請求項4に記載のポインティング機構。
  6. 前記第1の取付け部分は、進行方向と逆側の角のうち一方の角に位置し、
    前記第2の取付け部分は、進行方向と逆側の角のうち前記第1の取付け部分の斜向かいの角に位置する
    請求項5に記載のポインティング機構。
  7. 前記スラスタ側ジンバルは、複数台のスラスタから成る第1のスラスタ群を前記展開ブームに連結し、
    オービットレイジングが行われるときに、前記第1のスラスタ群のうちの稼働されるスラスタの台数である第1の稼働台数と、他方のポインティング機構の展開ブームに連結された第2のスラスタ群のうちの稼働されるスラスタの台数である第2の稼働台数とが異なる場合、前記第1のスラスタ群が連結された前記展開ブームの向きと前記第2のスラスタ群が連結された前記展開ブームの向きとを調整して、オービットレイジング時の進行方向を法線とする平面に衛星重心と前記第1のスラスタ群と前記第2のスラスタ群とを投影し、衛星重心と前記第1のスラスタ群と前記第2のスラスタ群とを同一直線上に配置し、前記平面において衛星重心から前記第1のスラスタ群までの第1の距離と衛星重心から前記第2のスラスタ群までの第2の距離との比が、前記第1の稼働台数と前記第2の稼働台数との逆比になる
    請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のポインティング機構。
  8. 前記人工衛星がロケットフェアリングに収納されるときに、前記展開ブームの向きが前記本体側ジンバルが取付けられた面と平行に調整される
    請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のポインティング機構。
  9. 前記展開ブームは、長さ許容範囲における最長の長さを有し、
    前記長さ許容範囲は、前記展開ブームの向きが前記本体側ジンバルが取付けられた面と平行に調整された状態で全体がフェアリング包絡域に収まるために前記展開ブームの長さが満たすべき範囲である
    請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のポインティング機構。
  10. ステーションキーピングが行われるときに、前記展開ブームの向きと前記スラスタの向きとが調整されて、前記スラスタの噴射方向と前記人工衛星の南北方向とが成す噴射指向角度が角度許容範囲における最小の角度になり、
    前記角度許容範囲は、前記スラスタの噴射範囲に太陽電池パドルが入らないために前記噴射指向角度が満たすべき範囲である
    請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のポインティング機構。
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