JPWO2018061201A1 - 光治療システム - Google Patents

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Abstract

光治療システムは、生体の病変部位に選択的に集積する光増感剤、および光治療装置を含む。光治療装置(10)は、光増感剤を励起させるための励起光を生体に照射するための光照射部(3)と、生体の光照射部位の温度を測定する温度測定部(4)とを備える。光照射装置は、光増感剤からの蛍光または光音響信号を撮影する撮像部(5)、および撮像部で得られた信号に基づいて画像データを生成する画像処理部(6)をさらに備えていてもよい。

Description

本発明は、光増感剤を投与した生体に光照射を行う光治療方法、およびそれに用いられる光治療システムに関する。
悪性腫瘍の外科的摘出は、安全な切除縁で拡大摘出することを基本としている。しかし、びまん性に浸潤することの多いがん(肺がん、胃がん、神経膠腫等)では、組織間に腫瘍が入り込んでいることに起因して、外科的摘出が困難な症例が多い。また、転移性脊椎腫瘍のように神経や血管の近傍に位置する腫瘍は、十分な切除縁がとれない場合が多く、局所再発の一因となりうる。
外科的摘出が困難な悪性腫瘍にも適用可能な低侵襲性の治療方法として、光線力学療法(Photodynamic therapy: PDT)が注目されている。PDTは、光増感剤と呼ばれる感光色素を体内に投与して標的となる生体組織に集積させた後に、特定波長のレーザ光を照射して光増感剤を励起させ、標的組織の細胞を死に至らせる治療方法である。
腫瘍部位への選択的集積性の高い光増感剤を用いることにより、PDTの治療効果を高める試みがなされており、ポルフィリン誘導体やポルフィリンナノ粒子を用いる例(特許文献1)、ポリマーミセル内にインドシアニングリーン(ICG)を含むナノ粒子を用いる例(特許文献2)等が報告されている。
分子イメージングによる診断(Therapeutics)と治療(Diagnostics)とを融合させたセラノスティックス(Theranostics)は、低侵襲性かつ高効率の医療システムとしてその応用が期待されている。上記特許文献2では、生体内に投与されたICG含有ナノ粒子へのレーザ照射により発せられる近赤外蛍光をイメージングすることにより病変部位を確定し、病変部位にレーザの焦点を合わせてPDTを行う方法およびシステムが開示されている。特許文献3では、光増感剤からの蛍光をモニタしながらPDTを実施するための光治療装置が開示されている。
WO2005/037928号パンフレット WO2012/128326号パンフレット 特開2014−113232号公報
PDTによる治療効果は、光増感剤の光励起に伴って発生する高反応性の酸素(一重項酸素)による細胞死であると考えられている。しかし、その治療メカニズムの詳細は未だ解明されておらず、十分な治療効果を上げるためのPDT施行条件や治療指針は見出されていない。
生体の深部の腫瘍に対して光治療を行うためには、生体透過性の高い近赤外光を用いることが効果的である。しかし、赤外光は熱線であるため、過剰に照射した際には、正常組織のタンパク質変性や火傷等の副作用を生じる場合がある。一方、照射量が不十分な場合は腫瘍の増殖抑制効果が得られない。そのため、正常組織への副作用を最小限に抑制しつつ、高い治療効果を発揮可能な光治療方法の開発が求められている。
本発明は、腫瘍の除去効率が高く、かつ生体への安全性の高い光治療方法、およびそれに用いる光治療システムの提供を目的とする。
本発明者らは、光治療時の照射部位の温度と腫瘍増殖抑制効果との間に、極めて高い相関関係があることを見出し、本発明に至った。
本発明の光治療方法では、病変部位に選択的に集積する光増感剤を生体に投与し、その集積部位に、光増感剤を励起させるための励起光を照射する。光照射の際に、生体の光照射部位の温度を測定する。好ましい形態では、光照射部位の温度測定結果に基づいて、励起光の照射強度を調整する。光照射部位の温度が、43℃〜50℃となるように、励起光の照射強度が調整されることが好ましい。
光増感剤を生体に投与した後、光照射による治療を実施する前に、蛍光イメージングや光音響イメージング等により、光増感剤の集積部位を確認することが好ましい。光増感剤の集積部位を確認した上で、その集積部位、すなわち病変部位に、選択的に光照射を行うことにより、光治療効率を向上できるとともに、正常部位への光照射量を低減できる。
本発明の光治療システムは、生体の病変部位に選択的に集積する光増感剤、および光治療装置を含む。光治療装置は、光増感剤を励起させるための励起光を生体に照射するための光照射部と、生体の光照射部位の温度を測定する温度測定部とを備える。光治療装置は、温度測定部で得られた温度データに基づいて、光照射部から生体に照射する光強度を調整可能に構成されていることが好ましい。
好ましい形態において、光治療装置は、光増感剤からの蛍光または光音響信号を撮影する撮像部、および撮像部で得られた信号に基づいて画像データを生成する画像処理部をさらに備える。この形態では、光照射による治療前に、蛍光イメージングや光音響イメージング等により、光増感剤の集積部位を確認できる。近赤外蛍光イメージングを行う場合、撮像部は、光増感剤からの近赤外蛍光を撮像するように構成されている。
生体に投与される光増感剤は、波長700〜1000nmの近赤外線を吸収する近赤外線吸収官能基を有する近赤外線吸収有機分子を含むものが好ましい。近赤外線吸収官能基の好ましい例としては、インドシアニングリーンに由来する基が挙げられる。
光増感剤は、例えば、粒子径が20〜200nmのナノ粒子である。ナノ粒子は、例えば、10個以上のサルコシン単位を有する親水性ブロック鎖と10個以上の乳酸単位を有する疎水性ブロック鎖を有する両親媒性ブロックポリマーを含む分子集合体からなる。近赤外線吸収有機分子は、10個以上の乳酸単位を含むポリマー鎖に近赤外線吸収官能基が結合した疎水性ポリマーとして、上記両親媒性ブロックポリマーとともに分子集合体中に含まれていてもよい。
本発明の光治療システムは、病変部位を視覚化することによって正確に確定するとともに、確定した部位を効果的に治療することが可能である。
光治療装置の構成ブロック図である。 レーザ照射時の腫瘍表面温度の経時変化を表すグラフである。 レーザ照射後の腫瘍体積を経日変化を表すグラフである。 レーザ照射前後での腫瘍部位の写真である。 レーザ照射時の腫瘍表面の最高温度を、腫瘍体積減群と腫瘍体積増大群に分けてプロットした図である。 レーザ照射時の腫瘍表面温度の経時変化を腫瘍体積減少群と腫瘍体積増大群に分けてプロットしたものである。 レーザ照射強度750mW/cmの試験群の蛍光放射強度と、レーザ照射時の腫瘍表面の最高温度をプロットしたグラフである。 担癌マウスの腫瘍部にレーザ光を照射した場合および非腫瘍部にレーザ光を照射した場合のサーモグラムである。
本発明の光治療方法では、生体の病変部位に選択的に集積する光増感剤を生体に投与し、光増感剤の集積部位に励起光を照射して光増感剤を励起するとともに、励起光照射部位の温度測定を実施する。光治療システムは、生体の病変部位に選択的に集積する光増感剤、および光治療装置を含む。光治療装置は、光増感剤を励起させるための励起光を生体に照射するための光照射部と、生体の光照射部位の温度を測定する温度測定部とを備える。
[光増感剤]
本発明に用いられる光増感剤は特に限定されず、光線力学治療に適用可能な各種の増感剤を使用できる。中でも、癌病変や血管病変等の病変部位に選択的に集積する光増感剤が好ましく用いられる。病変部位に選択的に集積する光増感剤としては、病変部位に特異的に結合する抗体にフタロシアニン等の近赤外蛍光色素を結合させたもの(WO2013/9475号参照)や、粒子径が20〜200nmのナノ粒子が挙げられる。ナノ粒子は、腫瘍部位、炎症部位、動脈硬化部位、血管新生部位等の血管病変部位に集積しやすいという性質(enhanced permeability and retention; EPR効果)を有する。これらの光増感剤は、蛍光イメージングや光音響イメージング等の分子イメージングによる病変部位の診断と、体内の集積箇所への光照射による治療の両方に寄与する。
光増感剤として使用可能なナノ粒子としては、ポルフィリンナノ粒子(WO2011/44671号)、近赤外線吸収有機分子を内包したナノ粒子(WO2013/51732号、WO2012/128326号)等が挙げられる。中でも、波長700〜1000nmの近赤外線を吸収する近赤外線吸収官能基を有する近赤外線吸収有機分子を含むナノ粒子が好ましい。
(近赤外線吸収剤)
近赤外線吸収有機分子は、近赤外線(波長700〜1000nm)を吸収する官能基を含む。可視光(400〜700nm)はヘモグロビンやそのほかの生体構成物質の吸収が大きく,1000nmよりも長波長では水の吸収が大きく生体内を光が進むことができない。これに対して近赤外線の波長領域は生体を透過しやすいため,「生体の窓」とも呼ばれている。そのため、生体組織の光計測には、波長700〜1000nmの近赤外光が使用される。近赤外蛍光による分子イメージングは、深部の腫瘍や転移リンパ節、局所の微少腫瘍の診断が可能である。また、近赤外線吸収有機分子を含む光増感剤は、光音響イメージングのコントラスト剤としても作用し得るため、光音響イメージングによる病変部位の診断が可能となる。近赤外線を吸収して蛍光や熱エネルギーを放出する近赤外線吸収有機分子を含む光増感剤を生体に投与して分子イメージングを行えば、光増感剤が集積している病変部位の情報を正確に得ることが可能となる。
光増感剤に含まれる近赤外線吸収有機分子としては、ポリマーに近赤外線吸収基が結合した態様を有するもの(近赤外線吸収ポリマー)および近赤外線吸収有機分子そのもの(近赤外線吸収剤)が挙げられる。
近赤外線吸収剤としては、共役系を介して複数の芳香環が結合していることにより、長大な共役π電子系を構成しているものが用いられる。具体的には、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ナフトキノン系色素、ジインモニウム系色素、アゾ系色素等が挙げられる。中でも、近赤外の吸光係数が高く、蛍光強度や光音響信号強度が高められやすいことから、シアニン系が好ましい。シアニン系色素の一例は、以下の一般式(I)で表される。
上記式(I)中、RおよびRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基である。RおよびR’は、水素原子、または互いに連結して環状構造を形成する基である。Xは水素またはハロゲンである。環Bおよび環Dは、それぞれ同一または異なっていてもよい含窒素縮合芳香族複素環である。Aは陰イオンであり、mは0または1である。環Bおよび環Dは、同一でも異なっていてもよい含窒素縮合芳香族複素環である。
およびRは、炭素数が1〜20であり、好ましくは炭素数が2〜5である。RおよびRが置換基を有している場合、当該置換基はアニオン性であってもよい。置換基としては、カルボキシル基、そのエステルおよび金属塩;スルホニル基、そのエステルおよび金属塩;ならびに水酸基等が挙げられる。前記金属塩は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩でありうる。
Xがハロゲンである場合、ハロゲンは、Cl、BrおよびIでありうる。mが0の場合、RおよびRのいずれか一方がアニオン性基であり、分子全体としてベタイン構造をとる。mが1の場合、Aは、Cl、Br、I等のハロゲンイオン、CIO 、BF 、PF 、SbF 、SCN等でありうる。
環Bおよび環Dは、それぞれ独立に、含窒素二環式や三環式芳香族複素環でありうる。好ましくは、環Bと環Dは同一である。環Bの好ましい態様としては、以下に示す構造が挙げられる。
環Dの好ましい態様としては、以下に示す構造が挙げられる。
上記式において、RおよびRは、いずれも水素でありうる。または、RおよびRは、それらが互いに連結してアリール環を形成していてもよい。前記アリール環は、置換されてよいベンゼン環でありうる。
好ましい近赤外線吸収剤は、下記構造式(II)で示される、インドシアニン化合物である。
好ましい近赤外線吸収剤の具体例としては、環Bおよび環Dがいずれも含窒素三環式芳香族複素環であるICG(下記式III)、IC7−1(下記式IV)およびIR820(下記式V);環Bおよび環Dがいずれも含窒素二環式芳香族複素環であるIR783(下記式VI)およびIR806(下記式VII);ならびに、環Bが含窒素三環式芳香族複素環、環Cが含窒素二環式芳香族複素環であるIC7−2(下記式VIII)が挙げられる。
近赤外線吸収有機分子は、近赤外線吸収剤として光増感剤中に内包されていてもよく、赤外線吸収基が他の分子に結合した近赤外線吸収有機分子が光増感剤中に含まれていてもよい。例えば、光増感剤は、両親媒性ブロックポリマーを含む分子集合体からなるナノ粒子中に、近赤外線吸収有機分子を含んでいてもよい。分子集合体中に近赤外線吸収有機分子を含む形態としては、両親媒性ブロックポリマーが、近赤外線吸収ポリマーとともに分子集合体を形成したもの;近赤外線吸収基が結合した両親媒性ブロックポリマーが分子集合体を形成したもの;両親媒性ブロックポリマーの分子集合体内に、近赤外線吸収剤が内包されたもの;および両親媒性ブロックポリマーと疎水性ポリマーとの分子集合体に、近赤外線吸収剤が内包されたものを含む。
(両親媒性ブロックポリマー)
両親媒性ブロックポリマーは、親水性ブロック鎖と疎水性ブロック鎖を有する。EPR効果を示すナノ粒子を形成可能なポリマーとして、20個以上のサルコシン単位を有する親水性ブロック鎖と10個以上の乳酸単位を有する疎水性ブロック鎖を有する両親媒性ブロックポリマーが挙げられる。
両親媒性ブロックポリマーの親水性ブロック鎖は、サルコシン(N−メチルグリシン)に由来する単位(サルコシン単位)を20個以上有する親水性分子鎖である。サルコシンは、水溶性が高い。また、ポリサルコシンはN置換アミドを有することからシス−トランス異性化が可能であり、かつ、α炭素まわりの立体障害が少ないことから、高い柔軟性を有する。そのため、ポリサルコシン鎖を構成単位として用いることにより、高い親水性と柔軟性とを併せ持つ親水性ブロック鎖が形成される。
親水性ブロック鎖のサルコシン単位が20個以上であれば、隣接して存在するブロックポリマーの親水性ブロック同士が凝集しやすく、自己凝集性が高められるため、分子集合体が形成されやすくなる。親水性ブロック鎖中のサルコシン単位の数の上限は特に制限されないが、分子集合体の構造を安定化させる観点からは500個以下が好ましい。サルコシン単位の数が過度に大きいと、分子集合体が安定性を欠く傾向がある。親水性ブロック鎖のサルコシン単位の数は、30〜300個がより好ましく、50〜200個がさらに好ましい。
親水性ブロック鎖は、全てのサルコシン単位が連続していてもよく、上記のポリサルコシンの特性を損なわない限りにおいてサルコシン単位が非連続であってもよい。親水性ブロック鎖がサルコシン以外のモノマー単位を有する場合、サルコシン以外のモノマー単位は特に限定されないが、例えば親水性アミノ酸あるいはアミノ酸誘導体が挙げられる。アミノ酸は、α−アミノ酸、β−アミノ酸、γ−アミノ酸を含み、好ましくは、α−アミノ酸である。親水性のα−アミノ酸としては、セリン、スレオニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。また、親水性ブロックは、糖鎖やポリエーテル等を有していてもよい。親水性ブロックは、末端(疎水性ブロックとのリンカー部と反対側の末端)に、水酸基等の親水性基を有することが好ましい。
親水性ブロック鎖は、直鎖状でもよく、分枝構造を有していてもよい。親水性ブロック鎖が分枝構造を有する場合、各分枝鎖に2以上のサルコシン単位が含まれることが好ましい。
疎水性ブロック鎖は、10個以上の乳酸単位を有する(本明細書においては、乳酸単位を基本単位とするこの疎水性ブロック鎖を、単にポリ乳酸と記載することがある)。ポリ乳酸は、優れた生体適合性および安定性を有する。そのため、ポリ乳酸を構成ブロックとして含むポリマーから得られる分子集合体は、生体、特に人体への応用において有用である。また、ポリ乳酸は、優れた生分解性を有することから、代謝が早く、生体内において病変部位以外の組織への集積性が低い。そのため、ポリ乳酸を構成ブロックとした両親媒性物質から得られる分子集合体は、血管病変等への特異的な集積性という点で非常に有用である。
疎水性ブロック鎖が10個以上の乳酸単位を有していれば、疎水コアが形成されやすく、自己凝集性が高められるため、分子集合体が形成されやすくなる。疎水性ブロック鎖中の乳酸単位の数の上限は特に制限されないが、分子集合体の構造を安定化させる観点からは100個以下が好ましい。疎水性ブロックにおける乳酸単位の数は、20〜80個がより好ましく、30〜50個がさらに好ましい。
ポリ乳酸の鎖長を調整することは、ポリ乳酸を構成ブロックとした両親媒性物質から得られる分子集合体の形状制御および大きさ制御の一要因として寄与する点においても好ましい。疎水性ブロック鎖は、乳酸単位のすべてが連続していてもよいし、非連続であってもかまわない。
疎水性ブロック鎖を構成する乳酸単位は、L−乳酸でもD−乳酸でもよい。また、L−乳酸とD−乳酸が混在していてもよい。疎水性ブロック鎖は、全ての乳酸単位が連続していてもよく、乳酸単位が非連続であってもよい。疎水性ブロック鎖に含まれる乳酸以外のモノマー単位は特に限定されないが、例えば、グリコール酸、ヒドロキシイソ酪酸等のヒドロキシ酸や、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、メチオニン、チロシン、トリプトファン、グルタミン酸メチルエステル、グルタミン酸ベンジルエステル、アスパラギン酸メチルエステル、アスパラギン酸エチルエステル、アスパラギン酸ベンジルエステル等の疎水性アミノ酸あるいはアミノ酸誘導体が挙げられる。
疎水性ブロック鎖は、直鎖状でもよく、分枝構造を有していてもよい。疎水性ブロック鎖が分枝していない方が、分子集合体形成時に、コンパクトな疎水コアが形成されやすく、親水性ブロック鎖の稠密度が増大する傾向がある。そのため、粒子径が小さく、構造安定性の高いコア/シェル型分子集合体を形成するためには、疎水性ブロック鎖は直鎖状であることが好ましい。
(両親媒性ブロックポリマーの構造および合成方法)
両親媒性ブロックポリマーは、親水性ブロック鎖と疎水性ブロック鎖とを結合させたものである。親水性ブロック鎖と疎水性ブロック鎖とは、リンカーを介して結合していてもよい。リンカーとしては、疎水性ブロック鎖の構成単位である乳酸モノマー(乳酸やラクチド)またはポリ乳酸鎖と結合可能な官能基(例えば、水酸基、アミノ基等)と、親水性ブロックの構成単位であるサルコシンモノマー(例えばサルコシンやN−カルボキシサルコシン無水物)またはポリサルコシンと結合可能な官能基(例えばアミノ基)とを有するものが好ましく用いられる。リンカーを適宜に選択することにより、親水性ブロック鎖や疎水性ブロック鎖の分枝構造を制御できる。
両親媒性ブロックポリマーの合成法は、特に限定されず、公知のペプチド合成法、ポリエステル合成法、デプシペプチド合成法等を用いることができる。詳細には、WO2009/148121号等を参照して、両親媒性ブロックポリマーを合成できる。
(近赤外線吸収ポリマー)
近赤外線吸収ポリマーは、ポリマー鎖に近赤外線吸収基が結合したものである。上記の両親媒性ブロックポリマーに近赤外線吸収基が結合したものを近赤外線吸収ポリマーとしてもよく、両親媒性ブロックポリマーとともに自己集合により分子集合体を形成可能なポリマーに近赤外線吸収基が結合したものを、近赤外線吸収ポリマーとして用いてもよい。分子集合体の疎水コアに近赤外線吸収有機分子を複数存在させ、赤外蛍光強度や光音響信号強度を高める観点からは、疎水性ポリマーに近赤外線吸収基が結合したものが好ましく用いられる。
近赤外線吸収基としては、共役系を介して複数の芳香環が結合していることにより、長大な共役π電子系を構成しているものが用いられる。具体的には、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ナフトキノン系色素、ジインモニウム系色素、アゾ系色素等の色素に由来する官能基が挙げられる。前述のように、近赤外の吸光係数が高いことから、以下の一般式(I’)で表されるシアニン系色素に由来する基が特に好ましい。
上記式(I’)中、R,R,R’X,環B,環D,Aおよびmは、式(I)と同一である。R は、式(I)のRから1個の水素原子を除去したアルキレン基である。
好ましい近赤外線吸収基は、上記式(II)のアルキル基Rをアルキレン基R’に置き換えたものが好ましく、その具体例としては、上記式(III)のアルキル基Rをアルキレン基R’に置き換えたもの、すなわち、ICG基、IC7−1基、IR820基、IR783基、IR806基、およびIC7−2基等が挙げられる。
近赤外線吸収ポリマーのポリマー鎖部分の構造は特に限定されない。ポリマー鎖は、好ましくは疎水性である。近赤外線吸収ポリマーが疎水性であれば、分子集合体の疎水コアに凝集しやすく、近赤外の励起光による蛍光強度や光音響信号強度の高いナノ粒子が得られる。
疎水性ポリマー鎖は、好ましくは、複数の乳酸単位を有する。例えば、乳酸単位を主たる構成成分とするもの(すなわちポリ乳酸鎖)でもよく、複数の乳酸単位の疎水性ブロックに加えて親水性ブロックを有するもの(すなわち両親媒性ブロックポリマー鎖)でもよい。近赤外線吸収ポリマーの疎水性ポリマー鎖は、好ましくは5個以上の乳酸単位を有する。疎水性ポリマー鎖の乳酸単位の数は、5〜50がより好ましく、15〜35がさらに好ましい。乳酸単位はすべてが連続していてもよいし、非連続でもよい。
分子集合体が、両親媒性ブロックポリマーと近赤外線吸収ポリマーを含む場合、近赤外線吸収ポリマーの疎水性ポリマー鎖の構成単位や鎖長は、基本的に、上記の両親媒性ブロックポリマーにおける疎水性ブロック鎖の分子設計と同様の観点で決定できる。このようにすれば、近赤外線吸収ポリマーと両親媒性ブロックポリマーの疎水性ブロック鎖との親和性が高いため、疎水コア部分に近赤外線吸収ポリマーを含む分子集合体が得られ易くなる。
近赤外線吸収ポリマーのポリマー鎖は、両親媒性ブロックポリマーの長さを超えないことが好ましい。また、近赤外線吸収ポリマーのポリマー鎖は、両親媒性ブロックポリマーにおける疎水性ブロックの2倍の長さを超えないことが好ましい。上記の近赤外線吸収基は、ポリマー鎖の末端構成単位に結合していることが好ましい。
疎水性ポリマー鎖に近赤外線吸収基としてインドシアニングリーンに由来するICG基が結合した近赤外線吸収ポリマーの具体例としては、下記式のポリマーが挙げられる。下記式において、nは整数であり、好ましくは5〜50である。
(ナノ粒子の形成)
ナノ粒子は、上記の近赤外線吸収有機分子を含むように形成された上記両親媒性ブロックポリマーの分子集合体からなる。近赤外線吸収基が結合した両親媒性ブロックポリマーを用いる場合は、両親媒性ブロックポリマーの分子集合体を形成することにより、近赤外線吸収有機分子を含むナノ粒子が得られる。ナノ粒子の作製法は特に限定されず、ナノ粒子の大きさ、特性、担持させる近赤外線吸収有機分子の種類、性質、含有量等に応じて、適宜選択できる。ナノ粒子が形成されたことは、電子顕微鏡観察により確認できる。
ナノ粒子の形成方法の具体例としては、両親媒性ブロックポリマーと近赤外線吸収有機分子とを含む溶液を乾固させて得られたフィルムと水系液体とを接触させ、水系液体中にナノ粒子が分散した分散液を得る方法(フィルム法)や、当該溶液を水系液体と接触させて分散液を得る方法(インジェクション法)等が挙げられる。
フィルム法およびインジェクション法のいずれにおいても、両親媒性ブロックポリマーや近赤外線吸収有機分子等の分子集合体の構成成分および溶媒を含む溶液が用いられる。溶媒は、分子集合体の構成成分を溶解し得るものであれば特に限定されない。フィルム法には、低沸点溶媒が好ましく用いられる。低沸点溶媒とは、1気圧における沸点が100℃以下、好ましくは90℃以下のものをいう。具体的には、クロロホルム、ジエチルエーテル、アセトニトリル、エタノール、トリフルオロエタノール、イソプロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、アセトン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ヘキサン等が挙げられる。インジェクション法では、上記の低沸点溶媒の他、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の高沸点溶媒も制限なく用いることができる。
ナノ粒子の形成に用いられる溶液は、両親媒性ブロックポリマー、近赤外線吸収有機分子、および溶媒以外の成分を含んでいてもよい。例えば、両親媒性ブロックポリマーや近赤外線吸収ポリマー以外のポリマーを、分子集合体の構成成分として含んでいてもよい。親媒性ブロックポリマーや近赤外線吸収ポリマー以外のポリマーとしては、疎水性ポリマーが挙げられる。疎水性ポリマーを加えることにより、分子集合体の疎水コアの形成促進や、疎水コアの体積制御等を行いうる。疎水性ポリマーとしては、上記の近赤外線吸収ポリマーのポリマー鎖(近赤外線吸収基を含まないもの)と同等のものを用いることができる。
フィルム法やインジェクション法により得られたナノ粒子の分散液は、そのまま光増感剤として、生体に投与できる。また、得られた分散液を凍結乾燥処理しても良い。凍結乾燥処理の方法としては公知の方法を採用できる。例えば、ナノ粒子の分散液を液体窒素等によって凍結させ、減圧下で昇華させることにより、ナノ粒子の凍結乾燥処理物が得られる。これにより、ナノ粒子を凍結乾燥処理物として保存することが可能になる。必要に応じ、この凍結乾燥物に水系液体を加えて、ナノ粒子の分散液を得ることにより、ナノ粒子を使用に供することができる。
(近赤外線吸収有機分子の濃度)
ナノ粒子における近赤外線吸収有機分子の濃度(mol%)は、0.1〜50mol%程度が好ましい。近赤外線吸収有機分子の濃度を高くすることにより、ナノ粒子を生体に投与した場合の蛍光強度や光音響信号強度が高められる傾向がある。そのため、近赤外線吸収有機分子の濃度は、0.5mol%以上がより好ましく、5mol%以上がさらに好ましい。近赤外線吸収有機分子の濃度が高すぎると、分子集合体の構造が不安定となる傾向がある。そのため、ナノ粒子における近赤外線吸収有機分子の濃度は、40mol%以下がより好ましく、35mol%以下がさらに好ましい
上記と同様の観点から、ナノ粒子における単位質量あたりの近赤外線吸収有機分子の濃度は、1〜100μmol/gが好ましく、5〜70μmol/gがより好ましく、10〜50μmol/gがさらに好ましい。蛍光により分子イメージングを行う場合、近赤外線吸収有機分子の濃度が過度に高くなると、蛍光の濃度消光が起こり、蛍光強度が小さくなる場合がある。そのため、蛍光による診断を行う場合は、ナノ粒子における近赤外線吸収有機分子の濃度は、40μmol/g以下が好ましく、30μmol/g以下がより好ましい。なお、蛍光の濃度消光が生じる場合は、蛍光イメージングによる検出・診断の精度が低下する場合があるが、濃度消光が生じても光治療効果は特段低下しない。
(ナノ粒子の大きさ)
光増感剤として用いられるナノ粒子の粒子径は、好ましくは20〜200nmである。「粒子径」とは、粒子分布で最も出現頻度の高い粒子径、すなわち中心粒子径をいう。粒子径が20nmより小さいものは、分子集合体内に近赤外線吸収有機分子を高濃度に内包することが困難であり、200nmより大きいものは、特に生体内へ注射により投与する場合に、注射剤として好ましくない場合がある。ナノ粒子の大きさは、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)による観察法や、動的光散乱(Dynamic Light Scattering;DLS)法により測定できる。
ナノ粒子の大きさを制御する方法としては、両親媒性ブロックポリマーや疎水性ポリマーの鎖長を調整する方法や、疎水性ポリマーの配合量を調整する方法が挙げられる。疎水性ポリマーの配合量の増大に伴って、分子集合体の疎水コアの体積が増大するため、ナノ粒子が大きくなる傾向がある。
[生体への光増感剤の投与]
光増感剤の投与対象の生体は特に限定されず、ヒトまたは非ヒト動物でありうる。非ヒト動物としては、ヒト以外の哺乳類、より具体的には、霊長類、齧歯類(マウス、ラット等)、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ等が挙げられる。生体内への光増感剤の投与方法は特に限定されず、全身投与および局所投与のいずれでもよい。すなわち、光増感剤の投与は、注射、内服、外用のいずれの方法によっても行うことができる。投与液中における光増感剤の濃度は、0.5〜100mg/mL程度であり、好ましくは0.8〜50mg/mL、より好ましくは1〜20mg/mLである。
光増感剤の投与から撮像および光治療を実施するまでの時間は、光増感剤の種類や投与ターゲットの種類等に応じて、適宜決定でき、例えば、投与後3〜48時間、或いは1〜24時間とすることができる。上記範囲を下回ると、癌病変部位等の標的への光増感剤の集積が不十分であったり、シグナルが強すぎるために投与ターゲットと他の部位(バックグラウンド)とを明確に分けることができない場合がある。上記範囲を上回ると、ナノ粒子が投与ターゲットから排泄されてしまう場合がある。
[光治療装置]
本発明の光治療システムに用いられる光治療装置は、光照射部と温度測定部とを備える。光照射部は、光増感剤を励起させるための励起光(例えば近赤外光)を生体に照射する。温度測定部は、生体の光照射部位の温度を測定する。光増感剤が集積している病変部位(治療対象部位)に光照射を行うと、光増感剤の光励起に伴って生体の温度が上昇する。光照射部位の温度変化をモニタすることにより、光治療の効果を高精度に予測できる。また、光照射部位が所定の温度範囲となるように、光照射部からの照射光の出力を調整することにより、腫瘍除去等の治療効果が高く、かつ過度の温度上昇による副作用が生じ難い低侵襲性の光治療が可能となる。
光治療装置は、光照射部および温度測定部に加えて、光増感剤からの蛍光や光音響信号を撮影する撮像部、および撮像部で得られた信号に基づいて画像データを生成する画像生成部を備えることが好ましい。生体内での光増感剤の分布を画像化することにより、光増感剤が集積している病変部位を確認しながら、光照射位置を調整できるため、光治療を効率化できる。
図1は、光治療装置の構成例の概略ブロック図である。図1の光治療装置10は、操作部2、光照射部3、温度測定部4、撮像部5、画像処理部6、表示部7および制御部8から構成される。
操作部2は、医師等の操作者が光治療装置10の各種設定を行うものである。操作部2は、観察領域の中から治療対象となる病変領域を特定するモード(診断モード)と、診断モードで特定した治療対象部位に光を照射して治療するモード(治療モード)とを操作者が切替え可能な構成となっている。操作部は、光照射部3からの光照射のON/OFFや照射強度を調整するためのスイッチや、光照射部3から生体への光照射位置を調整するための位置調整手段を備えていてもよい。光照射位置の調整手段は、ハンドピース等の手動操作であってもよく、制御部8と連動して、表示部7に表示された画像にポインタをあわせるように構成されていてもよい。
(診断モードを実施するための構成)
撮像部5は、生体に投与された光増感剤からの蛍光や光音響信号を受像する。画像処理部6は、撮像部で得られた信号に基づいて画像データを生成する。赤外蛍光イメージングでは、生体に投与された光増感剤に由来する近赤外光を撮像部により検出し、画像処理部で生成された画像に基づいて、光増感剤が存在する組織の位置や大きさを観測できるものであればよい。
好ましい形態では、撮像部5は近赤外蛍光に加えてその周辺組織の可視光像を撮影する。画像処理部は、病変部位の可視光像と、光増感剤からの近赤外光像との合成画像を生成する。近赤外蛍光イメージングと可視光イメージングの合成画像を生成可能な蛍光イメージング装置の具体例として、島津製作所製の近赤外光カメラシステムLIGHTVISION等が挙げられる。
蛍光イメージングのための励起光源としては、光増感剤の近赤外蛍光色素の励起波長(例えばICGの場合は780nm)にピーク波長を有するLEDやレーザ光源等が用いられる。光治療のための光照射部3が、蛍光イメージングのための励起光源を兼ねていてもよい。
診断モードにおける蛍光イメージングのための励起光は、治療モードにおける励起光に比べて低出力である。すなわち、診断モードでは光増感剤の近赤外蛍光色素を励起し、蛍光を発する相対的に弱い出力の光を照射し、治療モードでは近赤外蛍光色素を励起し、光照射部位の温度が所定温度まで上昇するように相対的に強い出力の光を照射する。診断モードでは、一度に広範囲の観察領域を確認できることが好ましい。そのため、診断モードにおける生体への光照射範囲は、治療モードにおける光照射範囲よりも大きいことが好ましい。
(治療モードを実施するための構成)
治療モードでは、診断モードで光増感剤の集積が確認された部位に、光照射部3から光照射を行うことにより治療が行われる。光照射部3は、光増感剤の近赤外蛍光色素を励起させるための励起光を生体光増感剤の集積部位に照射する。励起光はレーザ光が好ましい。光照射部は、レーザを生じさせる励起用光源に加えて、レーザ導光手段(光ファイバー等)やレーザ集光手段(レンズ等)を含んでいてもよい。レーザ光を照射する手段の具体的な例としては、各種の医用半導体レーザ装置が挙げられる。
励起用光源は、励起光の照射位置を病変部位に合わせるための位置調整手段を備えていてもよい。例えば、励起用光源で生じたレーザ光を光ファイバー等でハンドピースに導光し、ハンドピース内で集光し、ターゲットに向けて照射可能な状態とすることができる。前述のように、制御部や表示部との連動により、照射位置を調整してもよい。
光照射強度は、例えば100〜2000mW/cmの範囲で調整される。光照射強度が強いほど、光増感剤の光励起による光熱反応が惹起され、高い治療効果が得られる傾向がある。一方、光照射強度が過度に大きいと、照射部位およびその周辺の生体の温度が上昇し、正常組織のタンパク質変性や火傷等の副作用を生じる場合がある。
本発明においては、光治療装置が温度測定部4を備え、治療モードにおける光照射の間、温度測定部4が光照射部位の温度を測定する。温度測定部4による温度測定方法は接触式でも非接触式でもよいが、非接触式が好ましい。非接触式の温度測定方法としては、遠赤外線の放射量を測定する方法が一般的である。レーザ光照射領域の温度イメージングが可能であることから、サーモグラフィーを用いることが好ましい。サーモグラフィーにより得られた温度イメージと、可視光イメージや、事前に測定した増感剤からの近赤外光イメージとの合成画像を生成してもよい。可視光イメージと近赤外光イメージと温度イメージとを合成することにより、光照射位置における光増感剤の有無および集積量を確認しながら、温度上昇のモニタによる治療効果を同時に確認できる。そのため、病変部位への選択的な光照射が可能になるとともに、高い治療効果を期待できる。
後の実施例に示すように、光照射部位の温度が43℃以上に加熱されると、腫瘍体積が減少する傾向が顕著にみられる。そのため、優れた抗腫瘍効果を発揮させるには、温度測定を実施しながら、光照射部位の温度が43℃以上となるように、照射光強度を調整すればよい。光治療効果を高めかつ過度の温度上昇による副作用を抑制する観点から、光照射部位の温度は43〜50℃の範囲で調整することが好ましい。
照射光強度の調整は、温度を確認しながら手動でおこなってもよく、光照射部位の温度が所定範囲となるように光照射強度を自動調整してもよい。光照射部位の温度を自動調整する場合は、温度測定部4で測定された温度と、光照射部3からの照射光強度に基づいて、制御部8によりフィードバック制御をおこなえばよい。光照射強度のフィードバック制御を行うことにより、一定の温度で病変部位を加温し続けることが可能となり、光治療効果を確実なものにすることができる。
本発明の光治療システムは、腫瘍増殖を確実に抑制できる新しい方法論となり得るものであり、標準的な治療法である外科手術、化学療法、放射線治療等では治癒できない癌病変の治療も可能となる。本発明の治療方法は、これら標準的な治療と併用することもできる。例えば、外科手術では完全切除できずに辺縁に残存した浸潤巣や転移巣を低侵襲な方法で診断、治療することが可能であり、再発のリスクを低減し、集学的治療効果と患者の予後を劇的に改善させる。また、本発明の光治療方法は繰り返し施行することも可能である。
以下に、光増感剤としてナノ粒子を投与した担癌マウスの光治療例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実験例1:光増感ナノ粒子投与担癌マウスの光治療効果の検証]
(光増感ナノ粒子(ICGラクトソーム)の作製)
WO2012/128326号の実験例2にしたがって、ポリサルコシン‐ポリ乳酸両親媒性ブロックポリマー(PSar70−PLLA30)と、インドシアニングリーンが結合したポリ乳酸(ICG−PLLA30)とから構成される蛍光色素内包ナノ粒子(ICGラクトソーム)を作製した。得られたICGラクトソームは、ICG−PLLA30の含有量が20mol%(27μmol/g)、動的光散乱測定(Malvern Instruments社製、Zetasizer Nano)により測定した粒子径が約30nmであった。
(担癌マウスへのICGラクトソームの投与)
塩酸ケタミン+塩酸キシラジン混合麻酔下の6週齢雄性BALB/cマウスの右背部を除毛し、Nano−lanternを安定発現するマウス大腸がん細胞colon26(5×10細胞/100μL)を、右大腿根部周辺の皮内に注射して、担癌マウスを作製した。がん細胞注射の4〜5日後に、100mg/kgのICGラクトソームを尾静脈から投与した。
ICGラクトソーム投与マウス(計33匹)のそれぞれについて、デジタルノギスを用いて腫瘍の長径(2a)、短径(2b)および高さ(2c)を測定し、腫瘍形状を楕円体と仮定して、下記式により腫瘍体積Vを求めた。
V=4π/3×abc
蛍光イメージングシステム(PerkinElmer製IVIS system)を用い、露光時間0.5秒、励起光波長780nm、蛍光波長845nmの条件で、ICGラクトソーム投与マウスの腫瘍からのICG由来の蛍光を撮影し、腫瘍部位にICGラクトソームが選択的に集積していることを確認した。
(レーザ照射)
デジタル放射温度センサ(キーエンス製、FT−H10)により、腫瘍表面の温度を計測しながら、腫瘍部位にレーザ光を照射した。レーザ照射径は10〜15mm、レーザ照射強度は250mW/cm,500mW/cm,750mW/cm,および1000mW/cm、照射時間は100〜1000秒とした。それぞれのマウスのレーザ照射時の腫瘍表面温度の経時変化を図2に示す。
(腫瘍体積変化)
レーザ照射後の腫瘍体積を経日測定した。結果を図3に示す。レーザ照射を行わなかった試験群およびレーザ照射強度が250mW/cmの試験群では、いずれのマウスも腫瘍体積が増大していた。レーザ照射強度が1000mW/cmの試験群では、いずれのマウスも腫瘍体積が減少していた。照射強度500mW/cmの試験群および750mW/cmの試験群では、腫瘍体積が増大したものと、腫瘍体積が減少したものが混在していた(図4参照)。これらの結果から、レーザ照射強度が高いほど、光照射による腫瘍治療効果が高い傾向がみられるものの、照射強度が同一でも効果の有無に差異が生じていることが分かる。
図5は、レーザ照射時の腫瘍表面の最高温度を、腫瘍体積が増大した試験群と腫瘍体積が減少した試験群に分けてプロットしたものである。図6は、図2の温度変化のグラフを、腫瘍体積減少群(実線)と腫瘍体積増大群(点線)に分けてプロットしたものである。図5および図6に示すように、腫瘍体積減少群は、いずれもレーザ照射時の最高到達温度が43℃以上であり、腫瘍体積増大群は、いずれもレーザ照射時の最高到達温度が43℃未満であることが分かる。
以上の結果から、光照射部位の温度を測定しながらレーザ光照射を実施することにより、腫瘍治療効果を予測可能であることが分かる。また、光増感剤が集積した病変部位が所定温度範囲となるように励起光の照射強度を調整することにより、過度の温度上昇による生体への悪影響を抑制しつつ、効率的に治療効果が得られることが分かる。
(蛍光イメージング時の蛍光強度と光治療時の温度上昇との関係)
図7は、レーザ照射強度750mW/cmの試験群のレーザ照射前の蛍光イメージングで測定されたICG由来蛍光の放射強度と、レーザ照射時の腫瘍表面の最高温度をプロットしたものである。最小二乗法により直線近似したところ、相関係数は0.79であり、蛍光放射効率が高いものほど、最高到達温度が高くなる傾向があることが分かる。この結果から、腫瘍部位への光増感剤としてのICGラクトソームの集積量が多いほど、レーザ照射により温度が上昇しやすく、高い治療効果が得られると考えられる。
[実験例2:腫瘍の有無による温熱量の差異の検証]
デジタル放射温度センサにより表面温度を計測しながら、担癌マウスの非腫瘍部位に750mW/cmの強度のレーザ光を照射した。腫瘍部にレーザ光を照射した場合と非腫瘍部にレーザ光を照射した場合のサーモグラムを図8に示す。実験例1で示したように、腫瘍部位ではレーザ照射により温度が43℃以上に上昇したのに対して、非腫瘍部位ではレーザ光照射による温度上昇がみられたものの、43℃以上に上昇することはなかった。
以上の結果から、腫瘍部位へのレーザ照射により、光増感剤としてのICGラクトソームが光励起され、これに伴って温度が上昇し、光治療効果が発揮されることがわかる。

Claims (11)

  1. 生体の病変部位に選択的に集積する光増感剤、および光治療装置を含み、
    前記光治療装置が、前記光増感剤を励起させるための励起光を生体に照射するための光照射部と、生体の光照射部位の温度を測定する温度測定部とを備える、光治療システム。
  2. 前記光治療装置は、前記温度測定部で測定された温度に基づいて、前記光照射部から生体に照射する光強度を調整可能に構成されている、請求項1に記載の光治療システム。
  3. 前記光治療装置は、前記光増感剤からの蛍光または光音響信号を撮影する撮像部、および撮像部で得られた信号に基づいて画像データを生成する画像処理部をさらに備える、請求項1に記載の光治療システム。
  4. 前記撮像部は、光増感剤からの近赤外蛍光を撮像するように構成されている、請求項3に記載の光治療システム。
  5. 前記光増感剤が、波長700〜1000nmの近赤外線を吸収する近赤外線吸収官能基を有する近赤外線吸収有機分子を含む、請求項1に記載の光治療システム。
  6. 前記前記近赤外線吸収官能基が、下記式(I’)で表される官能基である、請求項5に記載の光治療システム。
    式中、Rは、置換されていてもよいアルキル基であり;R’は、置換されていてもよいアルキレン基であり;RおよびR’は、水素原子、または互いに連結して環状構造を形成する基であり;Xは水素またはハロゲンであり;環Bおよび環Dは、それぞれ同一または異なっていてもよい含窒素縮合芳香族複素環であり;Aは陰イオンであり、mは0または1である。
  7. 前記近赤外線吸収官能基が、インドシアニングリーンに由来する基である、請求項5に記載の光治療システム。
  8. 前記光増感剤は、20個以上のサルコシン単位を有する親水性ブロック鎖と10個以上の乳酸単位を有する疎水性ブロック鎖を有する両親媒性ブロックポリマーを含む分子集合体からなるナノ粒子であり、
    前記分子集合体中に、近赤外線吸収有機分子を含む、請求項5に記載の光治療システム。
  9. 前記近赤外線吸収有機分子は、10個以上の乳酸単位を含むポリマー鎖に近赤外線吸収官能基が結合した疎水性ポリマーである、請求項8に記載の光治療システム。
  10. 前記光増感剤は、粒子径が20〜200nmのナノ粒子である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の光治療システム。
  11. 癌病変の検出および治療に用いられる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の光治療システム。
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