JPWO2018052145A1 - 慢性疼痛関連疾患およびそれと鑑別を要する疾患の診断システム - Google Patents

慢性疼痛関連疾患およびそれと鑑別を要する疾患の診断システム Download PDF

Info

Publication number
JPWO2018052145A1
JPWO2018052145A1 JP2018539206A JP2018539206A JPWO2018052145A1 JP WO2018052145 A1 JPWO2018052145 A1 JP WO2018052145A1 JP 2018539206 A JP2018539206 A JP 2018539206A JP 2018539206 A JP2018539206 A JP 2018539206A JP WO2018052145 A1 JPWO2018052145 A1 JP WO2018052145A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
pain
temperature
disease
chronic
chronic pain
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2018539206A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6952701B2 (ja
Inventor
賢一 長田
賢一 長田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Individual
Original Assignee
Individual
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Individual filed Critical Individual
Publication of JPWO2018052145A1 publication Critical patent/JPWO2018052145A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6952701B2 publication Critical patent/JP6952701B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61BDIAGNOSIS; SURGERY; IDENTIFICATION
    • A61B5/00Measuring for diagnostic purposes; Identification of persons
    • A61B5/48Other medical applications
    • A61B5/4824Touch or pain perception evaluation
    • A61B5/4827Touch or pain perception evaluation assessing touch sensitivity, e.g. for evaluation of pain threshold
    • A61B5/483Touch or pain perception evaluation assessing touch sensitivity, e.g. for evaluation of pain threshold by thermal stimulation
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61BDIAGNOSIS; SURGERY; IDENTIFICATION
    • A61B5/00Measuring for diagnostic purposes; Identification of persons
    • A61B5/48Other medical applications
    • A61B5/4824Touch or pain perception evaluation
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61BDIAGNOSIS; SURGERY; IDENTIFICATION
    • A61B10/00Other methods or instruments for diagnosis, e.g. instruments for taking a cell sample, for biopsy, for vaccination diagnosis; Sex determination; Ovulation-period determination; Throat striking implements
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61BDIAGNOSIS; SURGERY; IDENTIFICATION
    • A61B5/00Measuring for diagnostic purposes; Identification of persons
    • A61B5/16Devices for psychotechnics; Testing reaction times ; Devices for evaluating the psychological state
    • A61B5/165Evaluating the state of mind, e.g. depression, anxiety
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61BDIAGNOSIS; SURGERY; IDENTIFICATION
    • A61B5/00Measuring for diagnostic purposes; Identification of persons
    • A61B5/48Other medical applications
    • A61B5/4824Touch or pain perception evaluation
    • A61B5/4827Touch or pain perception evaluation assessing touch sensitivity, e.g. for evaluation of pain threshold
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61BDIAGNOSIS; SURGERY; IDENTIFICATION
    • A61B5/00Measuring for diagnostic purposes; Identification of persons
    • A61B5/72Signal processing specially adapted for physiological signals or for diagnostic purposes
    • A61B5/7235Details of waveform analysis
    • A61B5/7246Details of waveform analysis using correlation, e.g. template matching or determination of similarity
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61BDIAGNOSIS; SURGERY; IDENTIFICATION
    • A61B5/00Measuring for diagnostic purposes; Identification of persons
    • A61B5/72Signal processing specially adapted for physiological signals or for diagnostic purposes
    • A61B5/7271Specific aspects of physiological measurement analysis
    • A61B5/7275Determining trends in physiological measurement data; Predicting development of a medical condition based on physiological measurements, e.g. determining a risk factor

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Surgery (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Heart & Thoracic Surgery (AREA)
  • Medical Informatics (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Psychiatry (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Pain & Pain Management (AREA)
  • Hospice & Palliative Care (AREA)
  • Artificial Intelligence (AREA)
  • Signal Processing (AREA)
  • Physiology (AREA)
  • Computer Vision & Pattern Recognition (AREA)
  • Developmental Disabilities (AREA)
  • Social Psychology (AREA)
  • Psychology (AREA)
  • Educational Technology (AREA)
  • Child & Adolescent Psychology (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)

Abstract

本発明は、診断が困難な慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患を、非侵襲的および簡便に診断するためのシステムおよび方法を提供することを目的とする。神経障害を有しない対象において、(a)対象に対し、痛みのオフセット測定試験を行うこと、(b)(a)の試験で得られた結果を解析すること、および(c)(b)で得られた解析結果を、基準値と比較すること、を含む、慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患の有無および/または種類を判定するための指標を得る方法を提供することにより、上記課題が解決された。

Description

本発明は、慢性疼痛関連疾患および慢性疼痛疾患と鑑別を要する疾患を非侵襲的かつ簡便に診断するためのシステムおよび、該システムを用いた診断方法に関する。
線維筋痛症は、広範囲に亘って慢性疼痛が持続することを特徴とする疾患であり、有病率は総人口の約2%、日本でも約200万人が罹患していると考えられている。現在線維筋痛症の診断基準としては、1990年にアメリカリュウマチ学会により作成されたものが専ら用いられている。これによれば、広範囲に及ぶ痛みが3ヶ月以上続いていること、および全身にある18箇所の圧痛点を4kg/cmの力で押したときに11箇所以上で痛みを感じる場合に、線維筋痛症であると診断される。
特に線維筋痛症の場合、上記以外の明確な診断基準が存在しない上、血液検査等でもその他の異常所見が見出せないこと、疾患自体の知名度の低さも相俟って、線維筋痛症であると診断されるまで平均6〜8か所の病院を回ってしまい、ドクターショッピングをする代表的疾患とも言われている
線維筋痛症は、筋骨格筋の痛みを主体とした多様な慢性疼痛に加え、不眠や抑うつ状態など種々の精神的苦痛も伴う。疼痛は主に体幹部や肩関節に始まり徐々に全身の筋や関節などの結合組織に広範囲に広がり、それに対応して疼痛の程度も激しくなる。疼痛の進行に伴ってQOLの低下のみならず生活機能障害をも引き起こす。
最近提唱されるようになった機能的身体症候群(FSS)とは、明らかな器質的原因によって説明できるものではなく、身体的訴えがあり、それを苦痛と感じており、日常生活に支障をきたすことによって特徴づけられるものであり、線維筋痛症はこの機能的身体症候群に含まれる疾患である。線維筋痛症の疼痛はうつ病や心因性疼痛などとの疼痛と比較して非常に激しく、次第に日常生活まで障害されることが多く、疼痛のため睡眠障害や着座不能となることもある。
また、「疼痛」と「うつ状態」の関係が螺旋状に悪化する病像は"painful-depression"とよばれている。すなわち、痛みが意欲の低下をもたらし、うつ状態を引き起こし、それがさらに強い痛みとなる、といったいわゆる「痛みとうつ状態の悪循環」という状態である。線維筋痛症では、この「うつ状態」が病態に強く関与すると考えられる。
このように、「うつ」と「線維筋痛症」は相互に密接に関連しており、症状や治療法も似ており、これらを鑑別することは難しい。特に線維筋痛症は上記診断基準以外の診断基準や、コンセンサスを得られている診断指標が存在しないため、そもそも診断そのものが困難であるのが現状である。
最近温度刺激や振動刺激による痛覚刺激を与えることにより、神経障害を評価する試みが為されている。例えば非特許文献1および2には、それぞれ神経障害性疼痛の患者および線維筋痛症の患者に対して温度刺激を与え、これらの患者において痛みのオフセットがどのように生じているのかを観察したことが記載されている。
Niesters et al., Anesthesiology. 2011 Nov;115(5):1063-71 Oudejans et al., Pain. 2015 Dec;156(12):2521-7
本発明は、診断が困難な慢性疼痛に関連する疾患を、非侵襲的および簡便に診断するためのシステムおよび方法を提供することを目的とする。
本発明者は、慢性的な疼痛を生じる疾患及びそのメカニズムについて研究する中で、神経障害が見られないにも拘わらず、ひどい痛みを全身的に訴え、患者のQOLを著しく低下させ、しかも診断が非常に困難である線維筋痛症に注目し、そのメカニズムについて研究を進めたところ、線維筋痛症に罹患する対象においては、痛覚刺激の伝達、とくに痛覚刺激のオフセットに異常が生じていることを見出した。そしてさらに鋭意研究を続ける中で、慢性的な疼痛に関連する疾患を有する対象においては、痛覚刺激のオフセットを含む痛覚刺激に対する反応が、健常者を含むそれぞれの疾患の罹患対象集団において異なり、かかる反応の差異に基づいて罹患している疾患を鑑別できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に下記に掲げるものに関する:
[1]神経障害を有しない対象において、慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患の有無および/または種類を判定するための指標を得る方法であって、
(a)対象に対し、痛みのオフセット測定試験を行うこと
(b)(a)の試験で得られた結果を解析すること
(c)(b)で得られた解析結果を、基準値と比較すること
を含む、前記方法。
[2]慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患が、線維筋痛症、うつ病、リウマチおよび慢性疲労症候群からなる群から選択される、[1]の方法。[3]慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患が、線維筋痛症および/または慢性疲労症候群であり、(b)において解析したオフセット後の疼痛の程度が基準値と比較して有意に高い場合、対象が線維筋痛症および/または慢性疲労症候群を有すると判定するための指標が得られたとする、[1]または[2]の方法。
[4]慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患が、線維筋痛症であり、(b)において解析したオフセット後の疼痛の程度が基準値と比較して有意に高い、および/または痛みを感じなくなるまでの時間が基準値と比較して有意に長い場合、対象が線維筋痛症を有すると判定するための指標が得られたとする、[1]〜[3]の方法。 [5]慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患が、慢性疲労症候群であり、(b)において解析した疼痛のピークの程度およびオフセット後の疼痛の程度が共に有意に高い場合、対象が慢性疲労症候群を有すると判定するための指標が得られたとする、[1]〜[3]の方法。
[6]慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患が、うつ病であり、(b)において解析した疼痛のピークの程度が、基準値と比較して有意に低い場合、対象がうつ病を有すると判定するため指標が得られたとする、[1]または[2]の方法。
[7]慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患が、リウマチであり、(b)において解析した疼痛のピークの程度が有意に低い、およびオフセット後の疼痛の程度が有意に低い場合、対象がリウマチを有すると判定するための指標が得られたとする、[1]または[2]の方法。
[8]痛みのオフセット測定試験が、
(1)刺激発生部分の温度を、室温から第1の温度まで変化させる工程、
(2)刺激発生部分の温度を、第1の温度でしばらく保つ工程、
(3)刺激発生部分の温度を、第2の温度まで変化させた後、しばらく保つ工程
(4)刺激発生部分の温度を、第1の温度まで変化させた後、しばらく保つ工程
(5)刺激発生部分の温度を、室温に戻す工程を含み、ここで第1の温度および第2の温度はともに、温度刺激が痛みとして認識される温度であり、第1の温度と第2の温度の差は、工程(4)において痛みのオフセットが生じるのに十分な差である、[1]〜[7]の方法。
[9]温度刺激発生部分、該温度刺激発生部分で発生した温度刺激に関連する情報を入力するための入力部分および入力された情報を解析するための解析部分を含む、慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患の診断システムであって、前記温度刺激発生部分が、温度変化制御プログラムに基づいて温感刺激を発生させるものであり、解析部分が、入力された情報と基準情報との比較により慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患の診断を行う、前記診断システム。
[10]慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患が、線維筋痛症、リウマチ、うつ病および慢性疲労症候群からなる群から選択される、[9]の診断システム。
本発明によれば、簡便な試験により、短時間で、低侵襲的に、慢性疼痛に関連する疾患を鑑別することが可能になる。特に今まで診断のための特定のバイオマーカーとなる指標が見つかっておらず、診断が困難であった線維筋痛症および慢性疲労症候群を鑑別し、線維筋痛症、慢性疲労症候群、うつ病およびリウマチならびに健常者の間に明らかな差異を見出すことが可能となったことで、線維筋痛症および慢性疲労症候群という疾患の理解を深め、確定診断を受けられていない潜在的患者を含め、慢性的な疼痛に苦しむ患者に対して適切な診断を与え、最適な処置を施すことが可能となる。
図1は、健常対照群と線維筋痛症に罹患している対象群との、試験中の痛みの強度の推移を表すグラフである。46℃から45℃に温度を低下させた辺りで痛みのオフセットが生じ、健常対照群においては感じる痛みの強度が格段に低下しているのに対し、線維筋痛症対象群ではオフセットの程度が低く、またオフセット後時間とともに痛みの程度が健常対照と比較して再度増加しているのがわかる。 図2は、健常対照群とうつ病に罹患している対象群との、試験中の痛みの強度の推移を表すグラフである。グラフの形状としては大きな差がなく、オフセットも同程度生じているものの、うつ病対象群では、全体的に痛みの程度が健常対照群と比較して明らかに低いことがわかる。 図3は、健常対照群と小児の線維筋痛症に罹患している対象群、試験中の痛みの強度の推移を表すグラフである。成人の線維筋痛症と同様に、小児の線維筋痛症においてもまた、オフセットの程度が低いのがわかる。 図4は、健常対照群と関節リウマチに罹患している対象群との、試験中の痛みの強度の推移を表すグラフである。関節リウマチ対象群においては、試験中のどの区間においても、健常対象群と比較して顕著に痛みの程度が低いことがわかる。
図5は、線維筋痛症に罹患している対象群と関節リウマチに罹患している対象群との、試験中の痛みの強度の推移を表すグラフである。青い線(FM mean)は線維筋痛症対象群を表し、黒い線(RM mean)は関節リウマチ対象群を表す。健常対照との比較と同様、線維筋痛症対象群と比較しても、関節リウマチ対象群は顕著に痛みの程度が低いことがわかる。 図6は、健常対照群と慢性疲労症候群に罹患している対象群、試験中の痛みの強度の推移を表すグラフである。オレンジの線(Chronic fatigue mean)は慢性疲労症候群対象群を表し、黒い線(Control mean)は健常対照群を表す。健常対照と比較して、慢性疲労症候群対象群は全体的に痛みの程度が高いことがわかる。 図7は、線維筋痛症に罹患している対象群と慢性疲労症候群に罹患している対象群、試験中の痛みの強度の推移を表すグラフである。青い線(Chronic fatigue mean)は慢性疲労症候群対象群を表し、黒い線(FM mean)は線維筋痛症対象群を表す。線維筋痛症対象群と比較して、慢性疲労症候群対象群は痛みのピーク強度が有意に高いことがわかる。
以下本発明について詳細に説明する。
本発明において、「慢性的な疼痛」または「慢性疼痛」とは、一般的には「治療を要すると期待される時間の枠組みを超えて持続する痛み、あるいは進行性の非がん性疾患に関連する痛み」と定義され、さらに(1)侵害受容性疼痛、(2)神経障害性疼痛、(3)侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛が混在する複合性慢性疼痛、(4)自発性慢性疼痛および(5)心因性疼痛の5つに分類される。また、その病態機序により、大きく神経障害性疼痛、機能的疾患による疼痛およびその他の疼痛に分類することもできる。
本発明において「慢性疼痛に関連する疾患」または「慢性疼痛関連疾患」という語は、全身または局所的に、慢性疼痛を生じることを主たる症状の1つとする疾患をいう。かかる疾患の例としては、これに限定するものではないが、例えば線維筋痛症や、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性ニューロパチー、幻肢痛などの末梢性の神経障害性疼痛、脳卒中後疼痛などの中枢性神経障害性疼痛などが挙げられる。「慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患」は、上記慢性疼痛疾患と類似の症状を呈する疾患であるが、慢性疼痛関連疾患には分類されない疾患であって、慢性疼痛疾患とは治療法が異なる疾患を意味する。慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患としては、これに限定するものではないが、例えばうつ病、慢性疲労症候群、統合失調症、身体症状症、変性関節炎、関節リウマチなどの膠原病などが挙げられる。本発明は、特段の神経障害を有しない対象に対して実施するのが好ましく、例えば線維筋痛症等、侵害受容性疼痛や自発性疼痛、心因性疼痛に分類される慢性疼痛に関連する疾患群の他、うつ病、慢性疲労症候群、リウマチ、変性関節炎、統合失調症、身体症状症など、慢性疼痛関連疾患との鑑別を要する疾患への罹患が疑われる対象が挙げられる。中でも線維筋痛症、うつ病、リウマチおよび慢性疲労症候群は、それぞれ治療法が異なるが鑑別が困難な疾患であるため、好ましい。
本発明において「痛みのオフセット」とは「オフセット鎮痛(offset analgesia)」と同義であり、わずかな侵害刺激の減少により、実際に感じる痛みが大幅に減少される現象を意味する。かかる現象については当該技術分野において知られている(例えばHermans et al., Pain Physician 2016; 19:307-326参照、同文献は参照により本願明細書に組み込まれる)。したがって「痛みのオフセット測定試験」とは、このオフセット現象を定性的または定量的に測定する試験を意味する。典型的には、VASやNRSなど当該技術分野において知られた痛みの評価方法を用いて、侵害刺激を変化させたときに対象が感じる痛みを評価することで行う。「痛みのオフセット測定試験」の方法は、当該技術分野において知られており(例えばNiesters et al., Anesthesiology. 2011 Nov;115(5):1063-71参照)、これに限定するものではないが、例えば小径線維ニューロパチー評価装置などを用いて行うことができる。
疼痛を含む痛覚を緩和するメカニズムとしては、他に条件痛覚調整(conditioned pain modulation:CPM)が知られている。CPMも痛みのオフセットと同様、感じる痛みを実際の刺激の大きさと比較して低減するメカニズムであるが、以下の点においてCPMと痛みのオフセットとは異なることが知られている(例えばNahman-Averbuch et al., Pain 2014 December ; 155(12): 2491-2501など):
(1)ケタミン、タペンタドールなどのオピオイドおよびNMDA受容体作動薬は、CPMに対しては作用し疼痛を減少させるが、痛みのオフセットに対しては作用せず疼痛に変化はない。
(2)脳の活動をfMRIで観察すると、CPMにおいては、視床、島(insula)、第二知覚野(S2)の活性が低下するが、痛みのオフセットでは第一知覚野(S1)の活性が低下し、前島部、背外側前頭前野、内頭頂溝、下頭頂野がCPMと比較して顕著に活動が亢進する。また、CPMでは脳幹の活動が持続的に低下するのに対し、痛みのオフセットでは持続的に亢進する。
したがって本発明の「痛みのオフセット」には、CPMは含まれない。
本発明において「小径線維ニューロパチー」とは、末梢神経の小径線維に障害を有する疾患を意味する。小径線維ニューロパチーにおいては痛覚伝達に関連するAδ線維やC線維が障害されるため、温痛覚の低下や疼痛などの症状が見られる。「小径線維ニューロパチー評価装置」とは、温度刺激や振動刺激などにより小径線維を刺激し、その障害を評価可能な装置を意味する。かかる装置は当該技術分野において知られており、商業的に入手可能である。
<1>本発明の検査方法および診断方法
本発明の一側面において、慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患への罹患の有無および罹患している場合にはその種類を簡便、非侵襲的および短時間に検査するための方法が提供される。
本発明の検査方法は、対象における痛みのオフセットを測定し、その応答の違いにより、対象が慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患を有しているか否か、また有していると判断される場合にはいかなる疾患を有しているのかを診断するための判断指標を提供し、また該判断指標に基づいて診断する方法を提供するものである。
本発明の検査方法の対象としては、痛みの程度を表現する必要があるため、典型的にはヒトである。検査対象は健常であると推測される対象であっても、何らかの疾患に罹患していると推測される対象であっても構わないが、好ましくは慢性的な疼痛を訴えている対象である。また、本発明の検査方法は、原因不明の疼痛を訴える対象においても、その原因についての判断基準を提供することが可能なものであるため、より好ましくは神経障害、典型的には解剖学的な神経障害性疼痛を有しない対象に対して実施される。通常、小径線維ニューロパチー評価装置による試験は、慢性疼痛を有する対象に対してその程度を評価するために行われるものであるが、同装置により痛みのオフセット計測試験を行った場合、とくに解剖学的な神経障害を有しない対象において疾患への罹患の有無または罹患した疾患の種類によりその応答に差異が生じることは驚くべき発見である。
本発明の特定の態様は、次の(a)および(b)、ならびに任意に(c)の工程を含むものである:
(a)対象に対し、痛みのオフセット測定試験を行うこと
(b)(a)の試験で得られた結果を解析すること
(c)(b)で得られた解析結果を、基準値と比較すること。
本発明の診断方法としては、上記に加え、任意に以下の(d)の工程を含む:
(d)(c)の結果をもとに、慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患の有無および/またはその種類を判断すること。
工程(a)における「痛みのオフセット測定試験」において対象に与えられる侵害刺激としては、その強度を任意に変化し得る刺激であれば特に制限されず、例えば温度刺激や振動刺激などが挙げられる。刺激の強度のコントロールが簡便であるという点で、好ましくは温度刺激である。
上述のとおり、本発明の「痛みのオフセット測定試験」は、定性的におよび/または定量的に測定するものであるが、得られる情報の多さから、好ましくは定量的に測定する。痛みを定量的に評価する方法については、当該技術分野においてよく知られており、これに限定するものではないが、例えばVisual Analogue Scale(VAS)、Numerical Rating Scale(NRS)、Verbal Rating Scale(VRS)、Face Scaleなどが挙げられる。
痛みの定量評価における課題としては、評価におけるスケールが対象に依存するものであることが挙げられる。例えばVASやNRSにおいては、最大限の痛みを「自分が今までに経験した最高の痛み」とする主観的な評価に頼るものであるため、対象によって評価の基準にばらつきが生じ得る。本発明者は、これら従来の定量的試験方法に改良を加えることにより、より客観的に定量評価を行うことを可能とした。すなわち、試験前に基準となる刺激(例えば一定の温度の温度刺激)を与え、それを基準(例えば、10段階評価の5)として、試験時に感じる痛みを定量的に評価してもらうことにより、対象の経験や感度などの個体差による評価のばらつきを低減することに成功した。したがって本発明は一側面において、かかる改良された痛みの定量評価方法も提供するものである。
工程(b)において、上記試験において得られた結果が、様々な項目について、当該技術分野において知られた任意の方法により解析される。評価項目としては、これに限定するものではないが、例えば、痛みのピークとピーク後のオフセット状態における値の差、ピークそのものの値、所定の時点(例えば試験開始時またはオフセット開始時など)から痛みを感じなくなるまでの時間、オフセット後痛みが消失後に再度増加する疼痛の程度などが挙げられる。試験の結果をグラフなどにより可視化してもよい。
工程(c)において、上記で解析された結果と比較される基準値としては、典型的には健常な対象における同一の項目の値が挙げられる。かかる項目は、検査対象に対する試験と同時に、健常であることがわかっている対象に対して同一の試験を行って得られた結果であってもよいし、事前に均一な条件で計測した健常な対象の集団における平均値または統計的中間値などであってもよい。また、試験の結果を可視化したグラフと基準値を可視化したグラフとを用いて、両グラフの形状を比較することにより、視覚的に比較してもよい。
また基準値として、所定の慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患に罹患していることがわかっている対象における同一の項目の値を用いてもよい。かかる項目は、検査対象に対する試験と同時に、所定の慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患に罹患していることがわかっている対象に対して同一の試験を行って得られた結果であってもよいし、事前に均一な条件で計測した所定の慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患に罹患していることがわかっている対象の集団における平均値または統計的中間値などであってもよい。また、試験の結果を可視化したグラフを用いて、グラフの形状を比較することにより、視覚的に比較してもよい。所定の慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患に罹患していることがわかっている対象を基準値とすることにより、検査対象が罹患している慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患の鑑別を簡易に行うことができる。例えば、検査対象の検査結果を可視化したグラフの形状が、線維筋痛症に罹患している対象の同一検査における結果のグラフと類似する場合、検査対象が線維筋痛症に罹患していると判断することが可能である。
本発明者により初めて、解剖学的な神経障害を有しない対象においても、痛みのオフセット試験の結果が健常な対象の結果と異なる対象が存在すること、どの項目がどのように異なるかを判断基準として、かかる対象が有する慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患の種類を鑑別できることが見出された。例えば、ピークの強度やピークに至るまでの時間は健常対照の値と同程度であるが、その後のオフセットの程度が健常対照の値と比較して有意に低い(すなわちオフセット時に感じる痛みが顕著に強い)および/または痛みを感じなくなるまでの時間が健常対照の値と比較して有意に長い場合、かかる対象は線維筋痛症に罹患していると判断することができる。またオフセット後痛みが消失後に再度増加する疼痛の程度が、健常対照やその他の神経障害疼痛と分類されている疾患に罹患している対象と比較して線維筋痛症に罹患している対象では有意に増加していることが本発明者により見出された。したがってかかる再度増加する疼痛の程度が健常対照の値と比較して有意に大きい場合もまた、線維筋痛症に罹患していると判断することができ、これによりその他の神経障害疼痛と分類されている疾患と鑑別が可能である。
また痛みを感じる時間やオフセット後の痛みの程度自体は健常対照の値と同程度であるが、感じる痛みのピーク値の程度が健常対照の値と比較して有意に低い場合、かかる対象はうつ病に罹患していると判断することができる。
また、痛みを感じる時間は健常対照の値と同程度であるが、感じる痛みのピーク値の程度およびオフセット後の痛みの程度の両方が健常対照の値と比較して有意に低い場合、かかる対象はリウマチに罹患していると判断することができる。
さらにまた、痛みを感じる時間は健常対照の値と同程度であるが、感じる痛みのピーク値の程度およびオフセット後の痛みの程度の両方が健常対照の値と比較して有意に高い場合、かかる対象は慢性疲労症候群に罹患していると判断することができる。
上述のとおり、オフセット後の痛みの程度が健常対照と比較して有意に高い場合、すなわちオフセットの程度が低く、オフセット時に有意に強い痛みを感じる対象は、線維筋痛症および/または慢性疲労症候群に罹患していると考えることができる。したがって別の一態様において、オフセット後の痛みの程度が健常対照と比較して有意に高い場合、かかる対象は線維筋痛症および/または慢性疲労症候群に罹患していると判断することができる。
線維筋痛症は、現在診断基準が一つしかなく、またバイオマーカーとしてコンセンサスが得られている指標がない。そして上記判断基準も3ヶ月という長期に亘る慢性疼痛があることが必要であるため、線維筋痛症の確定診断まで少なくとも3ヶ月以上の時間を要することになる。しかしながら本発明の方法によれば、簡便かつ非侵襲的に、短時間で診断を下すことが可能となる。
慢性疲労症候群もまた、症状として疼痛を伴う群を有する疾患であり、現在まで慢性疲労症候群を客観的に診断できるバイオロジカルなマーカーは見いだされていない。しかしながら本発明者により、痛みのオフセットを測定し、解析すると、健常対照や線維筋痛症など他の慢性疼痛関連疾患を罹患する対象と比較して特徴的な結果を示すことが初めて見いだされた。したがって本発明の方法によれば、慢性疲労症候群もまた、簡便かつ非侵襲的に、短時間で的確な診断を下すことが可能となる。また慢性疲労症候群は20〜50%が線維筋痛症との合併症であると考えられている。したがって一態様において、慢性疲労症候群に罹患しているか、または罹患していることが疑われる対象は、線維筋痛症を併発していない。
線維筋痛症の処置においては、一般に非ステロイド抗炎症薬やオピオイドといった通常の鎮痛薬はあまり効果的ではなく、疼痛に効果を認める特定の抗うつ薬であるアミトリプチリン(三環系抗うつ薬)やデュロキセチン(セロトニン再取込阻害剤:SNRI)などが有効である。その他、プレガバリンが効果的であることが知られている。現在では線維筋痛症とうつ病を鑑別することは非常に困難であるため、臨床現場では、線維筋痛症をうつ病と誤診され、疼痛に効果がない抗うつ薬で治療され、疼痛が改善しないことが頻回に認められている。しかしながら本発明の方法によれば、痛みのオフセット評価試験への応答の際により簡単に両疾患を鑑別することが可能となり、患者に対して適切な処置を施すことが可能となる。
また、線維筋痛症とよく似た症状を呈し、鑑別が困難な他の疾患として、リウマチおよび慢性疲労症候群が挙げられる。これらの疾患もまた有効な処置がそれぞれ異なるため、誤診によって症状が長引くことが多い。しかしながら本発明の方法によれば、線維筋痛症、リウマチ、慢性疲労症候群および上記うつ病を全て1つの試験により鑑別することが可能となる。したがって本発明により、慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患に罹患したと考えられる患者に対して適切な診断および処置を迅速に施すことが可能となる。
本発明の痛みのオフセット試験について、特定の態様を例として以下に詳説するが、本発明はかかる態様に限定されるものではない。本発明の好ましい一態様において、痛みのオフセット測定試験に用いる侵害刺激として、温度刺激を用いる。かかる態様において、痛みのオフセット測定試験は以下の(a−1)〜(a−4)の工程および任意に(a−5)の工程を含む:
(a−1)刺激発生部分の温度を、室温から第1の温度まで変化させる工程、
(a−2)刺激発生部分の温度を、第1の温度でしばらく保つ工程、
(a−3)刺激発生部分の温度を、第2の温度まで変化させた後、しばらく保つ工程
(a−4)刺激発生部分の温度を、第1の温度まで変化させた後、しばらく保つ工程
(a−5)刺激発生部分の温度を、室温に戻す工程。
工程(a−1)において、刺激発生部分(典型的には小径線維ニューロパチー評価装置のプローブ)の温度を、室温から第1の温度まで変化させる。第1の温度は室温より高くても低くてもよい。室温より高い場合、発生する侵害刺激は温感刺激となり、低い場合は冷感刺激となる。第1の温度は、人体に傷害を与えないが刺激を与える程度の温度であれば特に限定されず、これに限定するものではないが、例えば室温より高い場合は約40〜45℃、好ましくは約43〜45℃、より好ましくは約45℃が挙げられ、室温より低い場合は、約5〜15℃、好ましくは約5〜10℃、より好ましくは約5℃などが挙げられる。続いて工程(a−2)において、第1の温度にしばらく保たれる。
工程(a−3)において、刺激発生部分の温度は、第1の温度から第2の温度に変化される。第2の温度は、第1の温度よりも強い侵害刺激を生じる温度である。すなわち侵害刺激が温感刺激の場合、第2の温度は第1の温度より高い温度となり、冷感刺激の場合は第2の温度は第1の温度より低い温度となる。第1の温度と第2の温度との差は、次の工程(a−3)において痛みのオフセットが生じるのに十分な程度に、侵害刺激の強度に差が生じれば何℃であってもよいが、好ましくは約1〜5℃、より好ましくは約1〜3℃、さらに好ましくは約1℃である。
工程(a−4)において、刺激発生部分の温度は、第2の温度から第1の温度に変化される。かかる工程において、侵害刺激がわずかに減少し、健常な対象においては痛みのオフセット現象が観察される。
工程(a−5)において、刺激発生部分の温度は、第1の温度から室温に変化される。かかる工程において、侵害刺激が徐々に低下し、それに伴って感じる痛みも徐々に低減していく。
各工程の所要時間は、特に制限されず、当業者であれば適切な時間を設定することができる。あまり短すぎると各工程における痛みの検出ができなくなり、あまり長すぎると試験が長時間に及ぶことになるため、好ましくない。これに限定するものではないが、典型的には例えば工程(a−1)に約10秒、工程(a−2)に約5秒、工程(a−3)に約5秒、工程(a−4)に約20秒、工程(a−5)に約10秒などが挙げられる。
<2>本発明の診断システム
本発明は一側面において、慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患の罹患の有無およびその種類を簡便、非侵襲的および短時間に検査するための診断システムを提供するものである。
本発明の診断システムは、(1)温度刺激発生部分、(2)(1)の温度刺激発生部分で発生した温度刺激に関連する情報を入力するための入力部分および(3)(2)で入力された情報を解析するための解析部分を具備する。
温度刺激発生部分は、同部分を対象の皮膚に密着させ、温度を変化させることにより、対象に様々な温度刺激を与える部分である。したがって、対象の皮膚に接触可能な面を有し、当該面が温度変化可能な構造であれ場いかなるものを用いてもよい。温度刺激は温感刺激であっても冷感刺激であってもよい。温度刺激発生部分において生じる温度刺激は、同部分の温度変化により生じ、かかる温度変化は温度変化制御プログラムによって管理されてよい。本発明の一態様において、対象は、かかる温度刺激を痛覚刺激として認識する。したがってかかる態様においては、温度変化制御プログラムは、温度刺激発生部分の温度変化を制御することにより、対象に与える痛覚刺激を制御することになる。温度刺激発生部分には、任意に皮膚表面温度を計測するセンサーなどを有していてもよい。
温度変化制御プログラムは、温度刺激発生部分の時間経過による温度変化を制御するプログラムである。本発明の一態様において、温度変化制御プログラムは、上記検査・診断方法における痛みのオフセット試験の開始から終了までの温度刺激発生部分の温度変化を秒単位で管理可能なものである。したがって本発明の好ましい一態様において、温度制御プログラムは、上記痛みのオフセット試験における温度刺激を適切に与えるように制御するためのプログラムである。
本態様の温度制御プログラムについて以下に例を挙げてさらに詳しく説明するが、本発明はかかる例示の態様に限定されるものではない。当業者であれば、自身の目的に適合するように、温度および時間を適宜選択することができる。
上記痛みのオフセット試験の一態様において、温度刺激発生部分は、試験の開始とともに第1の温度、例えば45℃まで、例えば10秒程度で徐々に温度を変化させる。その後所定の時間、例えば5秒、第1の温度に保たれる。次に温度刺激発生部分は、第2の温度、例えば46℃まで加温され、そこでさらに所定の時間、例えば5秒、第2の温度に保たれる。次に温度刺激発生部分は、再度第1の温度に低下され、そこでさらに所定の時間、例えば20秒保たれる。その後、例えば10秒の時間をかけて、温度刺激発生部分の温度が室温まで低下させられる。
したがって本発明の好ましい一態様の例として、温度制御プログラムは、試験開始と同時に温度刺激発生部分の温度を、10秒後に45℃となるように加温し、その後5秒間45℃に保ち、さらにその後46℃まで加温し、46℃に5秒間保ち、その後45℃まで低下させ、45℃に20秒間保った後、10秒かけて室温まで低下させて試験を終了するように動作する。
入力部分は、温度刺激発生部分で発生した温度刺激に関連する情報を入力するための部分である。「温度刺激に関連する情報」としては、例えば対象が感じた温感刺激または冷感刺激の程度のみならず、例えば温度刺激を痛覚刺激として認識した場合の痛覚刺激の程度なども含まれる。情報の入力は、診断対象が直接行ってもよいし、診断を行うものが行ってもよいし、他の計測機により自動で入力されてもよい。温度刺激発生部分から対象に与えられる刺激は、基本的に感覚刺激であるため、入力は診断対象が直接行うことが好ましい。入力装置としては、当該技術分野において用いられる通常の入力装置であってよく、これに限定するものではないが、例えばキーボード、バーコードリーダー、タッチパネルなどの他、ボタンやスイッチ、スライダーレバーなどであってもよい。
解析部分は、入力部分から入力された情報を解析し、基準情報と比較するための部分である。かかる比較の結果により、診断対象が慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患に罹患しているか、しているならばその種類は何か、について診断することが可能となる。本発明の一態様において、解析は、上記診断方法における工程(b)の解析と同一であってよい。したがって、解析の例としては、これに限定するものではないが、例えば、痛みのピークとピーク後のオフセット状態における値の差、ピークそのものの値、所定の時点(例えば試験開始時またはオフセット開始時など)から痛みを感じなくなるまでの時間などが挙げられる。試験の結果をグラフなどにより可視化してもよい。解析部分としては、当該技術分野において知られた演算処理装置であってよく、例えばプロセッサ、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
本発明のシステムは、上記以外にさらに他の部分、例えば解析結果および/または比較結果を出力するための出力部分、必要なデータやプログラムを記録しておくための記録部分、温度制御プログラム、データ解析プログラム、データ比較プログラムなどを含んでもよい様々なプログラムを実行処理するなど、本発明のシステムを稼働させるための演算処理を行う演算部分などを含んでもよい。また、これら本発明のシステムを構成する各部分は一体となって一つの部分を構成していてもよい。例えば出力部と入力部、解析部分と演算部分などは同一であってもよい。
出力部分としては、解析結果および/または比較結果を外部に出力することができれば何でもよく、例えばディスプレイ、プロジェクターなど電子的に出力するものの他、プリンタなど紙等に出力するものであってもよい。
本発明のシステムによれば、診断対象が慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患に罹患しているか、罹患している場合はそれがどのような疾患であるかを非侵襲的かつ簡便に診断することが可能となる。とくに慢性疼痛関連疾患やそれと鑑別を要する疾患の中には、原因がわかりづらいかまたは不明であるものもあり、明確なバイオロジカルマーカーも存在せず、それでいて治療上鑑別が必要な疾患も存在するが、本発明のシステムによれば、このような疾患をそれぞれ正確に診断し、鑑別することが可能となる。上述のとおり、線維筋痛症、うつ病、リウマチおよび慢性疲労症候群は、治療上鑑別が必要な疾患であるにも関わらず鑑別そのものが困難であり、また線維筋痛症および慢性疲労症候群に至っては、コンセンサスの得られているバイオロジカルマーカーすら存在しないのが現状である。しかしながら本発明のシステムは、これらの疾患も全て簡便に鑑別可能である。したがって本発明のシステムは、好ましくは対象が線維筋痛症、うつ病、リウマチおよび慢性疲労症候群から選択される少なくとも1種に罹患している。
本明細書中で言及する全ての特許、出願および他の出版物は、その全体を参照により本明細書に援用する。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
以下の実施例において、「COVAS」とは、痛みのオフセット測定試験において、現在までに経験した最も強い痛みを100として痛みの程度を数値化したものを意味する。また、以下の解析において、16000msec〜30000msecの期間は、最初に45℃に昇温してからさらに46℃に昇温し、その後45℃に降温した後までの期間であり、この間のCOVASの解析は主に「痛みのピーク強度」の解析を意味する。また、30000msec〜60000msecの期間は、46℃から45℃に降温し、しばらく45℃で維持した後、室温まで降温し始めた辺りまでの期間であり、この間のCOVASの解析は主に「オフセット後の疼痛の強度」の解析を意味する。
例1.痛みのオフセット測定および解析
(1)試験対象
試験対象として、健常対照17名、1990年にアメリカリュウマチ学会により作成された基準に基づいて線維筋痛症に罹患していると診断された対象133名、症状の一つとして慢性的に強い疼痛を訴えているうつ病の対象9名を選抜し、各対象に対して痛みのオフセット測定試験を実施した。
(2)痛みのオフセット測定試験
試験開始前に、対象の前腕部に、小径線維ニューロパチー評価装置の温度刺激発生部分(以下プローブという)を当て、一度46℃まで上昇させ、5秒間刺激した。室温に戻し、しばらく待った後、対象の前腕部に再びプローブを当て、プローブの温度を直線的に45℃まで上昇させた。45℃で5秒間刺激し、すぐに46℃まで上昇させ、さらに5秒間刺激し、その後再度45℃に戻して20秒間刺激した。その後プローブの温度を室温まで直線的に下げた。現在までに経験した最も強い痛みを100として、試験中の痛みの程度を対象に0〜100で評価させた。
(3)結果の解析
試験中の各時点における、各対象群の痛みの程度の平均値の推移をグラフにした。グラフを図1および図2に示す。
試験開始後30000msecの時点から60000msecまでの時点を10000msecごとに区切り、各区間における線維筋痛症の対象群の痛み強度と健常対照群の痛み強度との間で、t検定による比較を行った。その結果、50000〜60000msecの区間において、最も顕著に有意差(p<0.01)が生じていた(図1)。また、刺激発生部分周囲の血流について、健常対照群においては変化が認められなかったが、線維筋痛症対象群においては疼痛時に血流の低下が認められた。
また、試験開始後30000msec〜45000msec、45000msec〜60000msec、および30000msec〜60000msecの各区間における線維筋痛症の対象群の痛み強度と健常対照群の痛み強度との間で、t検定による比較を行った。結果を表1に示す。
表1に示したとおり、全ての期間において統計的に有意に健常対照群より線維筋痛症群がオフセット後の疼痛が増加していた。従って、オフセット後の疼痛は健常対照群より線維筋痛症が高く、両群の鑑別が可能であった。
また、同様に健常対照群とうつ病対象群において、ピーク時における痛み強度の比較を行った。その結果、うつ病対象群において有意なピーク強度の低下(健常対照と比較して5〜6割程度)が確認された(図2)。
また、試験開始後16000msec〜30000msec、30000msec〜45000msec、45000msec〜60000msec、および30000msec〜60000msecの各区間におけるうつ病の対象群の痛み強度と健常対照群の痛み強度との間で、t検定による比較を行った。結果を表2に示す。
表2に示したとおり、16000msec〜30000msecにおいて、うつ病群のCOVAS値は有意に健常対照群と比較して低下していた。従って、オフセット時のピークの疼痛が健常対照より低下していることから両者の鑑別が可能であった。
さらに、試験開始後30000msec〜45000msec、45000msec〜60000msec、および30000msec〜60000msecの各区間における線維筋痛症の対象群の痛み強度とうつ病対象群の痛み強度との間で、t検定による比較を行った。結果を表3に示す。
表3に示したとおり、全ての期間において、COVAS値はうつ病群と比較して線維筋痛症群では統計的に有意に高値を示した。従って、オフセット後の疼痛はうつ病より線維筋痛症が高く、両群の鑑別が可能であった。
例2.線維筋痛症対象における痛みのオフセットの詳細解析
(1)試験対象
現在線維筋痛症の評価尺度として用いられている日本語版線維筋痛症質問票(J−FIQ)を用いて線維筋痛症であると評価された対象117名に対し、例1と同様に痛みのオフセット測定試験を行い、その結果を解析した。
(2)J−FIQの評価値と痛みのオフセット試験における35000〜40000msecの区間の数値との相関解析
J−FIQの評価値と35000〜40000msecの区間のオフセット後の疼痛値(COVAS)の平均値の相関をみるために相関分析を行ったところ、r=0.319(p<0.001)より弱い相関が見られた。即ち、J−FIQの値が高ければ、オフセット後の疼痛値(COVAS)の35000〜40000msecの区間における平均値も高いということが示唆される。
(3)J−FIQの評価値と45000〜55000msecの区間のオフセット後の疼痛値(COVAS)との相関解析
J−FIQの評価値とオフセット後の疼痛値(COVAS)の45000〜55000msecの区間における平均値の相関をみるために相関分析を行ったところ、 r=0.343(p<0.001)より弱い相関が見られた。即ち、J−FIQの値が高ければ、オフセット後の疼痛値(COVAS)の45000〜55000msecの区間における平均値も高いということが示唆される。
(4)J−FIQの評価値とオフセット後の疼痛(COVAS)との項目ごとの相関分析
J−FIQとオフセット後の疼痛値(COVAS)の30000〜45000msec、45000〜60000msec、30000〜60000msecの各値との相関を項目ごとに相関分析を行った。合計値との相関もみられ、オフセット後の疼痛値(COVAS)が高いほど、J−FIQの値も高いということが示唆された。J−FIQの各項目とオフセット後の疼痛値(COVAS)と相関が認められた相関係数は、下表にまとめて記載した。一方、特性不安尺度(STAI)やベック抑うつ尺度(BDI)の値は、オフセット後の疼痛値(COVAS)との相関は認められなかった。
これらの結果から、全ての区間のオフセット後の疼痛(COVAS)の値と線維筋痛症の臨床症状とは相関することが明らかとなった。現在まで、線維筋痛症において、臨床症状が相関する疼痛の客観的な指標は見つかっていないため、COVASは、線維筋痛症の症状のバイオロジカルマーカーとして非常に有用に用いることができる初めての指標であることが見いだされたことになる。したがって痛みのオフセットの測定により定量化されたCOVAS値を解析することにより、線維筋痛症を正確に診断可能であると考えられる。
例3.小児の線維筋痛症に対する痛みのオフセット測定試験
小児の線維筋痛症は、成人の線維筋痛症と比較してさらに診断が困難であることが知られている。そこで例2において見出されたバイオロジカルマーカーが、小児の線維筋痛症の評価においても機能し得るか否かを試験した。
(1)試験対象
横浜市立大学附属病院小児科において線維筋痛症と診断された5名および健常対照として17名を選択し、例1と同様に痛みのオフセット測定試験を行い、その結果を解析した。
(2)結果
結果を図3に示す。健常対照と比較して、線維筋痛症群では、全体的に痛み強度が明らかに大きかった。
次に30000〜60000msecの区間における、健常対照と小児の線維筋痛症群のCOVASの平均値をt検定により解析した。結果を下表に示す。
これらの結果から、小児においては、健常対照と比較して、線維筋痛症群のCOVASが、30000〜60000msecの区間において有意に大きいことが確認された。したがって、COVASは、小児の線維筋痛症においても有用なバイオロジカルマーカーであることが確認された。すなわち、痛みのオフセット測定試験を解析することにより、小児の線維筋痛症を診断可能であると考えられる。
例5.関節リウマチに対する痛みのオフセット測定試験
線維筋痛症とよく似た症状を呈し、鑑別を要する疾患である関節リウマチの対象に対してオフセット疼痛の評価試験を行い、線維筋痛症群の評価試験結果と比較した。
(1)試験対象
線維筋痛症群133名、関節リウマチ群10名および健常対照群17名を選抜し、例1と同様に痛みのオフセット測定試験を行い、その結果を解析した。
(2)健常対照群との比較
結果を図4に示す。健常対照群と比較して、関節リウマチ群では、全体的に痛み強度が明らかに小さかった。
次に16000msec〜30000msec、30000〜45000msec、45000〜60000msecおよび30000〜60000msecの各区間における、健常対照群と関節リウマチ群のCOVASの平均値をt検定により解析した。結果を下表に示す。
16000〜30000msec、30000〜45000msec、45000〜60000msecおよび30000〜60000msecのいずれの区間においても健常対照群のCOVAS値と比較して、関節リウマチ群の対象のCOVASが有意に小さいことが確認された。したがって、COVASの測定により、関節リウマチを容易に診断することが可能である。
(3)線維筋痛症群との比較
結果を図5に示す。線維筋痛症群と比較して、関節リウマチ群では、全体的に痛み強度が明らかに小さかった。
次に30000〜45000msec、45000〜60000msecおよび30000〜60000msecの各区間における、線維筋痛症群と関節リウマチ群のCOVASの平均値をwelchのt検定により解析した。結果を下表に示す。
30000〜45000msec、45000〜60000msecおよび30000〜60000msecのいずれの区間においても線維筋痛症群の対象のCOVAS値と比較して、関節リウマチ群の対象のCOVAS値が有意に小さいことが確認された。したがって、COVASの測定により、線維筋痛症と関節リウマチとを容易に鑑別することが可能である。
例6.慢性疲労症候群に対する痛みのオフセット測定試験
線維筋痛症およびうつ病との鑑別を要する疾患である慢性疲労症候群の対象に対してオフセット疼痛の評価試験を行い、健常対照および線維筋痛症群の評価試験結果と比較した。
(1)試験対象
大阪市立大学疲労センターにおいて慢性疲労症候群と診断された対象90名を選抜し、線維筋痛症対象133名、健常対照17名とともに、例1と同様に痛みのオフセット測定試験を行い、結果を解析した。
(2)健常対照との比較
結果を図6に示す。健常対照と比較して、慢性疲労症候群対象は全体的に高い痛み強度を示した。
次に30000〜45000msec、45000〜60000msecおよび30000〜60000msecの各区間における、健常対照と慢性疲労症候群対象のCOVASの平均値をwelchのt検定により解析した。結果をそれぞれ下表に示す。
30000〜45000msec、45000〜60000msecおよび30000〜60000msecのいずれの区間においても、慢性疲労症候群対象のCOVAS値は、健常対照のCOVAS値と比較して有意に大きいことが確認された。したがって、COVASは慢性疲労症候群においても有用なバイオロジカルマーカーとなり得る可能性が示唆された。
さらに、例1と同様に痛みのオフセット測定試験を健常対照群50名、慢性疲労症候群対象91名として、16000msec〜30000msecの区間における、健常対照と慢性疲労症候群対象のCOVASの平均値をt検定により解析した。結果を下表に示す。
16000〜30000msecの区間においても、慢性疲労症候群対象のCOVAS値は、健常対照のCOVAS値と比較して有意に大きいことが確認された。したがって、COVASの測定により、健常対照と慢性疲労症候群とを容易に鑑別することが可能である。
(3)線維筋痛症群との比較
結果を図7に示す。慢性疲労症候群対象は、線維筋痛症対象と類似の波形を示した一方で、高い痛みのピーク強度を示した。
次に30000〜45000msec、45000〜60000msecおよび30000〜60000msecの各区間における、健常対照と慢性疲労症候群対象のCOVASの平均値をwelchのt検定により解析した。結果を下表に示す。
30000〜45000msecの区間において若干慢性疲労症候群対象のCOVAS値が大きくなる傾向が見られたものの、45000〜60000msecおよび30000〜60000msecの区間においてはCOVAS値に有意な差が認められなかった。
さらに、16000〜30000msecの区間において、慢性疲労症候群(N=91)のCOVASの平均値と線維筋痛症群(N=115)のCOVASの平均値とをt検定により解析した。結果を下表に示す。
16000〜30000msecの区間においては、慢性疲労症候群のCOVAS値が有意に大きかった。したがって、痛みのピーク強度を比較することにより、線維筋痛症と慢性疲労症候群を容易に鑑別可能であることが示された。
また、J−FIQ、特性不安尺度(STAI)、ベック抑うつ尺度(BDI)の値と、慢性疲労症候群のCOVAS値(30000msec〜60000msec、N=90)との間には有意な相関は見られなかった。
本発明により、今まで鑑別が困難であった神経障害性疼痛以外の疼痛を有する患者を、簡便かつ非侵襲的な1つの試験によって、短時間で鑑別可能となる。とくに本発明の方法およびシステムは、線維筋痛症とうつ病など、今まで鑑別することが困難であり、時には同一視や誤診されてきた疾患に対し、明確な判断基準を与えることが可能となり、より効果的な治療を提供することが可能となる。また本発明は線維筋痛症や慢性疲労症候群など、今まで確立されたバイオロジカルマーカーが存在しなかった疾患に新たな診断基準を提供するものであり、本発明の方法およびシステムにより、従来診断が困難であった原因不明の疼痛を、簡便かつ正確に診断できる可能性が高められる。

Claims (10)

  1. 神経障害を有しない対象において、慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患の有無および/または種類を判定するための指標を得る方法であって、
    (a)対象に対し、痛みのオフセット測定試験を行うこと
    (b)(a)の試験で得られた結果を解析すること
    (c)(b)で得られた解析結果を、基準値と比較すること
    を含む、前記方法。
  2. 慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患が、線維筋痛症、うつ病、リウマチおよび慢性疲労症候群からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患が、線維筋痛症および/または慢性疲労症候群であり、(b)において解析したオフセット後の疼痛の程度が基準値と比較して有意に高い場合、対象が線維筋痛症および/または慢性疲労症候群を有すると判定するための指標が得られたとする、請求項1または2に記載の方法。
  4. 慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患が、線維筋痛症であり、(b)において解析したオフセット後の疼痛の程度が基準値と比較して有意に高い、および/または痛みを感じなくなるまでの時間が基準値と比較して有意に長い場合、対象が線維筋痛症を有すると判定するための指標が得られたとする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患が、慢性疲労症候群であり、(b)において解析した疼痛のピークの程度およびオフセット後の疼痛の程度が共に有意に高い場合、対象が慢性疲労症候群を有すると判定するための指標が得られたとする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  6. 慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患が、うつ病であり、(b)において解析した疼痛のピークの程度が、基準値と比較して有意に低い場合、対象がうつ病を有すると判定するため指標が得られたとする、請求項1または2に記載の方法。
  7. 慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患が、リウマチであり、(b)において解析した疼痛のピークの程度が有意に低い、およびオフセット後の疼痛の程度が有意に低い場合、対象がリウマチを有すると判定するための指標が得られたとする、請求項1または2に記載の方法。
  8. 痛みのオフセット測定試験が、
    (1)刺激発生部分の温度を、室温から第1の温度まで変化させる工程、
    (2)刺激発生部分の温度を、第1の温度でしばらく保つ工程、
    (3)刺激発生部分の温度を、第2の温度まで変化させた後、しばらく保つ工程
    (4)刺激発生部分の温度を、第1の温度まで変化させた後、しばらく保つ工程
    (5)刺激発生部分の温度を、室温に戻す工程を含み、ここで第1の温度および第2の温度はともに、温度刺激が痛みとして認識される温度であり、第1の温度と第2の温度の差は、工程(4)において痛みのオフセットが生じるのに十分な差である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 温度刺激発生部分、該温度刺激発生部分で発生した温度刺激に関連する情報を入力するための入力部分および入力された情報を解析するための解析部分を含む、慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患の診断システムであって、前記温度刺激発生部分が、温度変化制御プログラムに基づいて温感刺激を発生させるものであり、解析部分が、入力された情報と基準情報との比較により慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患の診断を行う、前記診断システム。
  10. 慢性疼痛関連疾患および/または慢性疼痛関連疾患と鑑別を要する疾患が、線維筋痛症、リウマチ、うつ病および慢性疲労症候群からなる群から選択される、請求項9に記載の診断システム。


JP2018539206A 2016-09-16 2017-09-15 慢性疼痛関連疾患およびそれと鑑別を要する疾患の診断システム Active JP6952701B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016181883 2016-09-16
JP2016181883 2016-09-16
PCT/JP2017/033610 WO2018052145A1 (ja) 2016-09-16 2017-09-15 慢性疼痛関連疾患およびそれと鑑別を要する疾患の診断システム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2018052145A1 true JPWO2018052145A1 (ja) 2019-07-25
JP6952701B2 JP6952701B2 (ja) 2021-10-20

Family

ID=61619608

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018539206A Active JP6952701B2 (ja) 2016-09-16 2017-09-15 慢性疼痛関連疾患およびそれと鑑別を要する疾患の診断システム

Country Status (5)

Country Link
US (1) US20190209081A1 (ja)
EP (1) EP3513739B1 (ja)
JP (1) JP6952701B2 (ja)
KR (1) KR102434420B1 (ja)
WO (1) WO2018052145A1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20210260989A1 (en) 2018-09-28 2021-08-26 3M Innovative Properties Company Hydrogen fueling system

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2013125518A1 (ja) * 2012-02-20 2013-08-29 学校法人 慶應義塾 中枢感作診断装置及びその動作方法

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4763666A (en) * 1986-04-22 1988-08-16 Max-Planck-Gesellschaft Zur Foerderung Der Wissenschaften E.V. Method and apparatus for determining the thermal sensitivity of the human peripheral nervous system
US6757558B2 (en) * 2000-07-06 2004-06-29 Algodyne, Ltd. Objective pain measurement system and method
KR20040108098A (ko) * 2003-06-16 2004-12-23 주식회사 현대메드인 개인의 건강정보를 이용한 건강리듬 관리시스템 및 검진방법
US20060052720A1 (en) * 2004-09-03 2006-03-09 Ross David B Evaluation of pain in humans
US8512240B1 (en) * 2007-11-14 2013-08-20 Medasense Biometrics Ltd. System and method for pain monitoring using a multidimensional analysis of physiological signals
WO2010017591A1 (en) * 2008-08-13 2010-02-18 Algometron Pty Ltd Method and device for determining the severity of a pain disorder
US9579457B2 (en) * 2013-03-15 2017-02-28 Flint Hills Scientific, L.L.C. Method, apparatus and system for automatic treatment of pain
EP3116379A2 (de) * 2014-03-14 2017-01-18 Bernhard Brinkhaus Vorrichtung und verfahren zur nichtinvasiven überwachung eines sedierten oder anästhesierten menschen

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2013125518A1 (ja) * 2012-02-20 2013-08-29 学校法人 慶應義塾 中枢感作診断装置及びその動作方法

Also Published As

Publication number Publication date
EP3513739A4 (en) 2020-05-06
JP6952701B2 (ja) 2021-10-20
KR102434420B1 (ko) 2022-08-18
EP3513739B1 (en) 2023-06-07
WO2018052145A1 (ja) 2018-03-22
EP3513739A1 (en) 2019-07-24
EP3513739C0 (en) 2023-06-07
US20190209081A1 (en) 2019-07-11
KR20190050833A (ko) 2019-05-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Selvarajah et al. SUDOSCAN: a simple, rapid, and objective method with potential for screening for diabetic peripheral neuropathy
Khalsa et al. Bolus isoproterenol infusions provide a reliable method for assessing interoceptive awareness
Sep et al. The power of clinicians’ affective communication: how reassurance about non-abandonment can reduce patients’ physiological arousal and increase information recall in bad news consultations. An experimental study using analogue patients
Shy et al. Quantitative sensory testing: report of the Therapeutics and Technology Assessment Subcommittee of the American Academy of Neurology
Kruse et al. Effect of brain-computer interface training based on non-invasive electroencephalography using motor imagery on functional recovery after stroke-a systematic review and meta-analysis
Pud et al. The tridimensional personality theory and pain: harm avoidance and reward dependence traits correlate with pain perception in healthy volunteers
Mo et al. Thermal and mechanical quantitative sensory testing in Chinese patients with burning mouth syndrome–a probable neuropathic pain condition?
Reimer et al. Sensitization of the nociceptive system in complex regional pain syndrome
Qi et al. Abnormal amygdala resting-state functional connectivity in irritable bowel syndrome
de la Coba et al. Slowly repeated evoked pain as a marker of central sensitization in fibromyalgia: diagnostic accuracy and reliability in comparison with temporal summation of pain
Więckiewicz et al. The diagnostic value of pressure algometry for temporomandibular disorders
Kelly et al. Pain ratings at the thresholds are necessary for interpretation of quantitative sensory testing
Bernstein et al. Intra-individual variability in women with breast cancer
Plastaras et al. The electrodiagnostic evaluation of radiculopathy
Ekman et al. Normative values of the vibration perception thresholds at finger pulps and metatarsal heads in healthy adults
Bleustein et al. Quantitative somatosensory testing of the penis: optimizing the clinical neurological examination
Yoshida et al. The relationship between evaluation methods for chemotherapy-induced peripheral neuropathy
Immanuel et al. Heart rate variability for evaluating psychological stress changes in healthy adults: a scoping review
Stevens et al. Startle during threat longitudinally predicts functional impairment independent of DSM diagnoses
Kim et al. Proxy and patients ratings on quality of life in patients with schizophrenia and bipolar disorder in Korea
Jillapalli et al. Single motor unit variability with threshold stimulation in patients with amyotrophic lateral sclerosis and normal subjects
ZHANG et al. Abnormalities in pain sensitivity among individuals with autism spectrum disorder: evidence from meta-analysis
Haynes et al. The current state of spinal cord functional magnetic resonance imaging and its application in clinical research
Bigalke et al. Blood pressure and muscle sympathetic nerve activity are associated with trait anxiety in humans
JPWO2018052145A1 (ja) 慢性疼痛関連疾患およびそれと鑑別を要する疾患の診断システム

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20190220

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190528

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200825

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210210

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210408

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210914

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210928

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6952701

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150