JPWO2017209270A1 - 25−ヒドロキシコレステロール又はその類縁体コレステロールを有効成分として含有してなる、活性化されたt細胞及び/又はb細胞に選択的な細胞死誘導剤又は細胞死促進剤 - Google Patents
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Abstract
Description
免疫反応の減弱若しくは亢進、自己免疫反応、又はアレルギー反応を病態とする疾患は極めて多岐にわたっており、そのそれぞれが治療の対象となっている。移植片に対する宿主の免疫反応もまた治療の対象となる。例えば、免疫反応の重要な機能を司る細胞であるT細胞やB細胞の機能に関連する疾患は多く知られている。具体的には、活性化したT細胞及び活性化したB細胞が関連する疾患として、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、皮膚筋炎、多発性筋炎、動脈炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、気管支喘息、強皮症、IgG4関連疾患、及び原発性胆汁性肝硬変等を挙げることができる。また、活性化したT細胞が関連する疾患として、乾癬、接触皮膚炎、中毒性表皮壊死症、スティーヴンス・ジョンソン症候群、多形紅斑、固定薬疹、扁平苔癬、移植片対宿主病、特発性間質性肺炎、閉塞性汎細気管支炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、及び自己免疫性肝炎等、活性化したB細胞が関連する疾患として天疱瘡、類天疱瘡、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、甲状腺機能亢進症、慢性甲状腺炎、及び抗リン脂質抗体症候群等を挙げることができる。
免疫反応の異常又はアレルギー反応を病態とする疾患は、その種類が多いばかりでなく、それに罹患した患者数が極めて膨大であることもその大きな特徴である。上記に挙げた一疾患であるアトピー性皮膚炎に限っても、患者数は日本国内だけで約35万人、世界中では約2000万人と推定されている。これらの疾患の有病者数は極めて多く、その対策が強く望まれることは言うまでもない。しかし、治療においては異物を排除するという生体にとって必須の機能(反応)を適切に維持しつつ、疾患の原因となる異常又は不要な反応を除去又は減弱させることが必要となるが、このような条件を満たしてそれぞれの疾患を治療することは容易でなかった。
(1)25−ヒドロキシコレステロール又はその類縁体コレステロールを有効成分として含有してなる、T細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
(2)25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロールが、20α−ヒドロキシコレステロール、又は24(R/S), 25−エポキシコレステロールである、(1)に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
(3)活性化T細胞及び/又は活性化B細胞による免疫機能の亢進又は異常を示す疾患の予防又は治療用である、(1)又は(2)に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
(4)活性化T細胞及び/又は活性化B細胞による免疫機能の亢進又は異常を示す疾患が、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、皮膚筋炎、多発性筋炎、動脈炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、接触皮膚炎、気管支喘息、強皮症、IgG4関連疾患、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、円板状エリテマトーデス、モルフィア、混合性結合組織病、急速進行性糸球体腎炎、乾癬、中毒性表皮壊死症、スティーヴンス・ジョンソン症候群、多形紅斑、薬疹、固定薬疹、扁平苔癬、移植片対宿主病、特発性間質性肺炎、閉塞性汎細気管支炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、自己免疫性肝炎、虫刺症、好酸球性食道炎、好酸球性筋膜炎、ベーチェット病、シェーグレン症候群、自己免疫性膵炎、I型糖尿病、円形脱毛症、尋常性白斑、原田病、天疱瘡、類天疱瘡、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、甲状腺機能亢進症、慢性甲状腺炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性胃炎、グッドパスチャー症候群、悪性貧血、及び自己免疫性溶血性貧血から選択されるものである、(3)に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
(5)活性化T細胞及び/又は活性化B細胞による免疫機能の亢進又は異常を示す疾患が、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、皮膚筋炎、多発性筋炎、動脈炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、気管支喘息、強皮症、IgG4関連疾患、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、円板状エリテマトーデス、モルフィア、混合性結合組織病、及び急速進行性糸球体腎炎から選択されるものであって、T細胞及びB細胞の活性化が関与する疾患である、(3)又は(4)に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
(6)活性化T細胞及び/又は活性化B細胞による免疫機能の亢進又は異常を示す疾患が、乾癬、接触皮膚炎、中毒性表皮壊死症、スティーヴンス・ジョンソン症候群、多形紅斑、薬疹、固定薬疹、扁平苔癬、移植片対宿主病、特発性間質性肺炎、閉塞性汎細気管支炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、自己免疫性肝炎、虫刺症、好酸球性食道炎、好酸球性筋膜炎、ベーチェット病、シェーグレン症候群、自己免疫性膵炎、I型糖尿病、円形脱毛症、尋常性白斑、及び原田病から選択されるものであって、T細胞の活性化が関与する疾患である、(3)又は(4)に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
(7)活性化T細胞及び/又は活性化B細胞による免疫機能の亢進又は異常を示す疾患が、乾癬、及び接触皮膚炎から選択されるものである、(3)、(4)及び(6)のいずれかに記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
(8)活性化T細胞及び/又は活性化B細胞による免疫機能の亢進又は異常を示す疾患が、天疱瘡、類天疱瘡、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、甲状腺機能亢進症、慢性甲状腺炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性胃炎、グッドパスチャー症候群、悪性貧血、及び自己免疫性溶血性貧血から選択されるものであって、B細胞の活性化が関与する疾患である、(3)又は(4)に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
(9)活性化T細胞及び/又は活性化B細胞による免疫機能の亢進又は異常を示す疾患が、天疱瘡、及び類天疱瘡から選択されるものである、(8)に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
(10)天疱瘡又は類天疱瘡における皮膚のびらんを予防するものである、(9)に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
(11)移植片に対する拒絶反応の予防又は治療用である、(1)又は(2)に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
(12)免疫抑制剤と組み合わせて使用されるものである、(11)に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤であって、当該免疫抑制剤は25−ヒドロキシコレステロールまたは20α−ヒドロキシコレステロール、及び24(R/S), 25−エポキシコレステロールからなる群から選択される25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロールを有効成分とするものでない、細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
(13)経口投与剤である、(1)乃至(12)のいずれかに記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
(14)非経口投与剤である、(1)乃至(12)のいずれかに記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
(15)経皮吸収剤又は注射剤である、(14)に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
(16)25−ヒドロキシコレステロール−7α−ヒドロキシラーゼ(CYP7B1)阻害剤をさらに含有するものである、(1)乃至(15)のいずれかに記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
(17)CYP7B1阻害剤がClotrimazoleである、(16)に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
(19)T細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞を選択的に失わせる方法であって、前記細胞を含む試料に対して25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロール又は25−ヒドロキシコレステロール類縁体コレステロールを含む組成物を投与することを特徴とする、in vitro又はex vivoの方法。
(20)T細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に対して選択的に細胞死を誘導又は促進する方法であって、前記細胞を含む試料に対して25−ヒドロキシコレステロール又は25−ヒドロキシコレステロールを含む組成物を投与することを特徴とする、in vitro又はex vivoの方法。
(21)T細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に対して選択的に細胞死を誘導又は促進する方法であって、前記細胞を含む試料に対して25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロール又は25−ヒドロキシコレステロール類縁体コレステロールを含む組成物を投与することを特徴とする、in vitro又はex vivoの方法。
(22)25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロールが、20α−ヒドロキシコレステロール、又は24(R/S), 25−エポキシコレステロールである、(19)又は(21)に記載の方法。
(23)試料が生体由来の体液である、(18)乃至(22)のいずれかに記載の方法。
(24)体液が末梢血である、(23)に記載の方法。
(25)CYP7B1阻害剤を同時又は別工程として投与する工程を含むものである、(18)乃至(24)のいずれかに記載の方法。
(26)CYP7B1阻害剤がClotrimazoleである、(25)に記載の方法。
(28)25−ヒドロキシコレステロール合成活性を25−ヒドロキシコレステロールの含有量により評価するものである、(27)に記載の方法。
(29)25−ヒドロキシコレステロール合成活性をコレステロール 25−ヒドロキシラーゼ蛋白質の蓄積量により評価するものである、(27)に記載の方法。
(30)25−ヒドロキシコレステロール合成活性をコレステロール 25−ヒドロキシラーゼ遺伝子のmRNA蓄積量により評価するものである、(27)に記載の方法。
(31)被検化合物に代えてIL−27を投与する試験をポジティブコントロールとして同時又は並行して行うものである、(27)乃至(30)のいずれかに記載の方法。
(32)選抜において
[1]被検化合物添加の効果を無添加コントロールと比較する工程であって、被検化合物添加時の25−ヒドロキシコレステロール合成活性が無添加コントロールの場合と比して10以上、15以上、又は20以上を示した被検化合物を選抜する工程、
[2]被検化合物添加の効果をポジティブコントロールの効果と比較する工程であって、10ng/mL〜200ng/mLの範囲から予め選択された所定濃度(最終濃度)のIL−27を投与した場合の25−ヒドロキシコレステロール合成活性を1とした場合に、1.0以上、1.5以上、又は2.0以上の値を示した被検化合物を選抜する工程、又は[3] 上記[1]及び[2]の選抜工程
のいずれかの工程を含むものである、(31)に記載の方法。
(34)25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロール又は25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロールを含む組成物を投与することを特徴とする、T細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導方法又は細胞死促進方法。
(35)25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロールが、20α−ヒドロキシコレステロール、又は24(R/S), 25−エポキシコレステロールである、(34)に記載の細胞死誘導方法又は細胞死促進方法。
(36)25−ヒドロキシコレステロール又は25−ヒドロキシコレステロールを含む組成物を投与することを特徴とする、活性化T細胞及び/又は活性化B細胞による免疫機能の亢進又は異常を示す疾患の予防又は治療方法。
(37)25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロール又は25−ヒドロキシコレステロール類縁体コレステロールを含む組成物を投与することを特徴とする、活性化T細胞及び/又は活性化B細胞による免疫機能の亢進又は異常を示す疾患の予防又は治療方法。
(38)25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロールが、20α−ヒドロキシコレステロール、又は24(R/S), 25−エポキシコレステロールである、(37)に記載の活性化T細胞及び/又は活性化B細胞による免疫機能の亢進又は異常を示す疾患の予防又は治療方法。
(39)25−ヒドロキシコレステロール又は25−ヒドロキシコレステロールを含む組成物を投与することを特徴とする、移植片に対する拒絶反応の予防又は治療方法。
(40)25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロール又は25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロールを含む組成物を投与することを特徴とする、移植片に対する拒絶反応の予防又は治療方法。
(41)25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロールが、20α−ヒドロキシコレステロール、又は24(R/S), 25−エポキシコレステロールである、(40)に記載の、移植片に対する拒絶反応の予防又は治療方法。
(42)組織移植又は臓器移植を受けた対象に対して実施するものである、(36)乃至(41)のいずれかに記載の方法。
(43)他の免疫抑制剤を同時又は独立の工程として投与するものである、(36)乃至(42)のいずれかに記載の方法であって、前記他の免疫抑制剤は25−ヒドロキシコレステロールまたは20α−ヒドロキシコレステロール、及び24(R/S), 25−エポキシコレステロールからなる群から選択される25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロールを有効成分とするものでない、方法。
(44)CYP7B1阻害剤を同時又は別に投与する工程を含むことを特徴とする、(33)乃至(43)のいずれかに記載の方法。
(46)T細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導剤又は細胞死促進剤の製造のための、25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロール使用。
(47)25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロールが、20α−ヒドロキシコレステロール、又は24(R/S), 25−エポキシコレステロールである、(46)に記載の使用。
(48)活性化T細胞及び/又は活性化B細胞による免疫機能の亢進又は異常を示す疾患の予防又は治療用組成物の製造のための、25−ヒドロキシコレステロールの使用。
(49)活性化T細胞及び/又は活性化B細胞による免疫機能の亢進又は異常を示す疾患の予防又は治療用組成物の製造のための、25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロール使用。
(50)25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロールが、20α−ヒドロキシコレステロール、又は24(R/S), 25−エポキシコレステロールである、(49)に記載の使用。
(51)移植片に対する拒絶反応の予防又は治療用組成物の製造のための、25−ヒドロキシコレステロールの使用。
(52)移植片に対する拒絶反応の予防又は治療用組成物の製造のための、25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロールの使用。
(53)25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロールが、20α−ヒドロキシコレステロール、又は24(R/S), 25−エポキシコレステロールである、(52)に記載の使用。
(54)前記移植片に対する拒絶反応の予防又は治療用組成物が、他の免疫抑制剤と同時又は独立して併用投与するためのものであって、前記他の免疫抑制剤は25−ヒドロキシコレステロールまたは20α−ヒドロキシコレステロール、及び24(R/S), 25−エポキシコレステロールからなる群から選択される25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロールを有効成分とするものでない、(51)乃至(53)のいずれかに記載の使用。
(55)前記細胞死誘導剤又は細胞死促進剤がCYP7B1阻害剤と組合せて投与されるものである、(45)乃至(47)のいずれかに記載の使用。
(56)前記予防又は治療用組成物がCYP7B1阻害剤と組合せて投与されるものである、(48)乃至(54)のいずれかに記載の使用。
(58)T細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導方法又は細胞死促進方法における使用のための、20α−ヒドロキシコレステロール、及び24(R/S), 25−エポキシコレステロールからなる群から選択される25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロール。
(59)活性化T細胞及び/又は活性化B細胞による免疫機能の亢進又は異常を示す疾患の予防又は治療方法における使用のための、25−ヒドロキシコレステロール。
(60)活性化T細胞及び/又は活性化B細胞による免疫機能の亢進又は異常を示す疾患の予防又は治療方法における使用のための、20α−ヒドロキシコレステロール、及び24(R/S), 25−エポキシコレステロールからなる群から選択される25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロール。
(61)移植片に対する拒絶反応の予防方法又は治療方法における使用のための、25−ヒドロキシコレステロール。
(62)移植片に対する拒絶反応の予防方法又は治療方法における使用のための、20α−ヒドロキシコレステロール、及び24(R/S), 25−エポキシコレステロールからなる群から選択される25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロール。
(63)他の免疫抑制剤と同時又は独立して使用するための、(61)に記載の25−ヒドロキシコレステロールであって、前記他の免疫抑制剤は25−ヒドロキシコレステロールまたは20α−ヒドロキシコレステロール、及び24(R/S), 25−エポキシコレステロールからなる群から選択される25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロールを有効成分とするものでない、25−ヒドロキシコレステロール。
(64)他の免疫抑制剤と同時又は独立して使用するための、(62)に記載の25−ヒドロキシコレステロール類縁体コレステロールであって、前記他の免疫抑制剤は25−ヒドロキシコレステロールまたは20α−ヒドロキシコレステロール、及び24(R/S), 25−エポキシコレステロールからなる群から選択される25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロールを有効成分とするものでない、25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロール。
(65)CYP7B1阻害剤と組合せて使用するための、(57)、(59)、(61)及び(63)いずれかに記載の25−ヒドロキシコレステロール。
(66)CYP7B1阻害剤と組合せて使用するための、(58)、(60)、(62)及び(64)いずれかに記載の25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロール。
25OHC(別名:5-Cholestene-3beta,25-diol; Cholest-5-ene-3beta,25-diol; 25-Hydroxy-5-cholestene-3β-ol)は、CAS登録番号2140−46−7、分子式C27H46O2で示される公知物質であり、適宜入手可能な物質である。例えば、Sigma-Aldrich社やSanta Cruz Biotechnology社から販売される製品を購入することで入手できる。
また、コレステロール 25−ヒドロキシラーゼを用いてコレステロールから生化学的に製造することもできる。その他、25OHCの調製は、EP0021235A1、特開平9−249691号公報、特開昭61−189294号公報、特開平7−206893号公報、特開昭49−102661号公報、US3846455A、US3856780A、US4183852A、又はUS3822254Aに記載の方法などを参考にして調製することもできる。25OHCはエタノール、クロロホルム、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の有機溶媒にまず溶解させ、次いで水、緩衝液、生理食塩水、培地等で希釈して所望の濃度に調製し使用することができる。また、25OHCの水性溶媒中に可溶な塩を調製するなどして、これを有機溶媒に溶解させることなく、直接水や緩衝液などの水性溶媒に直接溶解させて調製しても良い。また、シクロデキストリン類に包接させてから水性溶媒に直接溶解させても良い。
25−ヒドロキシコレステロールは、分子内に8個の不斉炭素原子を含み、複数の立体異性体が存在する。いずれの立体異性体も、立体異性体の単独か混合物かにかかわらず、T細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導又は細胞死促進という効果を有する点で本発明で意図される範囲内である。生体内から得られる天然の25−ヒドロキシコレステロール分子種である (3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-17-[(2R)-6-hydroxy-6-methylheptan-2-yl]-10,13-dimethyl-2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17-dodecahydro-1H-cyclopenta[a]phenanthren-3-ol が好ましく使用される。当該分子種は構造式で次のように示されるものである。
なお、本発明では、T細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導剤又は細胞死促進剤の有効成分として25OHCを使用するものであるが、25OHCの代替物として25OHCの3位のヒドロキシル基がエステル化又はエーテル化により修飾された誘導体も用いることもできる。また、後記の25OHCの類縁体コレステロールを、25OHCに代えて、又は25OHCの補助成分として使用することができる。
T細胞及びB細胞は、生体から採取した末梢血を使用して、各種マーカーの発現を指標として抗体やフローサイトメーター等を利用して公知の手法により単離することができる。また、マウスやラットについては、脾臓やリンパ節から採取した細胞を使用して単離をすることができる。
ナイーブCD4+T細胞は、CD4陽性であること、及び、CD4+CD25−CD62LhighCD44lowなど、CD25、CD62L及びCD44に関する発現レベルを単独又は組み合わせた指標により単離をすることができる。
CD8陽性T細胞はCD8+を指標に、B220陽性B細胞はB220+を指標に、ナイーブCD4+T細胞の単離における材料や手法と同様の材料や手法を適用して単離することができる。
生体から単離したナイーブT細胞は、抗CD3モノクローナル抗体、及び/又は抗CD28モノクローナル抗体で刺激することにより活性化させることができる。また、これらの抗体に代えてコンカナバリンA(ConA)で処理することによっても活性化させることができる。前記抗体による刺激は、前記抗体で被覆した培養プレートに単離したナイーブT細胞を播種し、一定期間培養することで実施できる。培養プレートや培地は通常の細胞培養に適用される種類のものであれば任意に選択し、使用することができる。
抗CD3モノクローナル抗体、抗CD28モノクローナル抗体、ConAはいずれも市販されており、Bio X Cell社、Sigma社等が提供する商品を適宜選択して使用できる。
生体から単離したB細胞は、リポポリサッカライド(LPS)で処理することによって活性化させることができる。LPSによる刺激は、単離したB細胞をLPSを含む培地に懸濁し、培養プレートで一定期間培養することで実施できる。T細胞の活性化の場合と同様、培養プレートや培地は通常の細胞培養に適用される種類のものであれば任意に選択し、使用することができる。
本発明のT細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導剤又は細胞死促進剤の有効成分である25OHCの活性化T細胞及び/又は活性化B細胞に選択的な細胞死誘導、又は選択的な細胞死促進効果は、インビトロの実験により確認することができる。
T細胞及びB細胞は、上記の手順に沿って単離し、さらに上記の手段により活性化刺激を与えられながら培養することができる。培養期間中、経時的に生存細胞数が減少してくる。ここで、該活性化細胞の培養用培地に本発明の有効成分である25OHCを添加すると、生存細胞数の減少が加速化し、25OHC無添加の対照と比較して、有意な生存細胞数の減少が認められる。代表的なものとして、下記の実施例1乃至3及び5に開示される具体的な手法が例示される。
T細胞やB細胞に細胞死を誘導する25OHCの作用が活性化されたT細胞やB細胞に対して選択的であることは、活性化されていないT細胞又はB細胞を用いた実験を行うことにより確認することができる。
前記の実験において、T細胞又はB細胞に対する活性化刺激を与えないことでのみ条件が相違するインビトロの実験系を構築する。単離されたT細胞やB細胞の生存細胞数は、細胞培養を通じて経時的に減少する。このような条件の細胞培養において、本発明の有効成分である25OHCが添加された場合、無添加の対照と比較しても、生存細胞数に有意な差異は認められない。代表的なものとして、下記の実施例2に開示される具体的な手法が例示される。
本発明のT細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導剤又は細胞死促進剤において有効成分である25OHCは、25OHCそれ自体はもちろんのこと、その塩若しくは溶媒和物の形態の化合物を用いることもできる。塩及び溶媒和物形態の化合物は常法により製造することができる。
前記の塩としては、薬学的に許容できるものであれば特に制限はないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、トリアルキルアミン塩等の有機塩基塩;塩酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩;酢酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
前記の溶媒和物としては、水和物、アルコール和物(例えば、エタノール和物)等が挙げられる。
本発明のT細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導剤又は細胞死促進剤は、注射剤、座剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末剤等の剤型とすることができる。これらの製剤は、公知の方法で製造することができる。例えば、経口投与用製剤とする場合には、トラガントガム、アラビアガム、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、オリーブ油、大豆油、PEG400等の溶解剤;澱粉、マンニトール、乳糖等の賦形剤;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤;結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤;タルク、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、軽質無水ケイ酸等の流動性向上剤等を適宜組み合わせて処方することにより製造することができる。また、注射用の製剤とする場合は、例えば、無菌的に保存した25OHCの乾燥物又は保存溶液を、静脈注射用の生理食塩水又は緩衝液によって溶解又は希釈して調製することができる。25OHCは水性溶媒への溶解度が低いので、水や生理食塩水など水性溶媒中へ直接溶解させたい場合は、予め水性溶媒中へ可溶な塩を調製することが望ましい。あるいは、25OHCをシクロデキストリン類に包接させることにより水溶性を高めることも可能である。また、貼付剤のような皮膚外用剤として調製する場合には、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水−油二層系、水−油−粉末三層系など任意の形態で調製できる。前記のとおり25OHCは水溶性が低いので、調製において油層に溶解させるか、油層に溶解させてから乳化することで好ましく配合させることができるが、調製方法はこれに限定されない。皮膚外用剤は、本発明の効果を損なわない範囲で通常の医薬組成物に配合される成分、例えばアルコール、油分、界面活性剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤、無機粉末、有機粉末、香料等を任意に配合することができる。また、軟膏のような皮膚外用剤として調製する場合には、親油性、水溶性又はエマルジョンタイプの基剤に25OHCを溶解又は分散させることにより調製できる。基剤としては、ワセリン、ラノリン、及びポリエチレングリコールを例として挙げられるが、特に限定されない。
前記のとおり、本発明のT細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導剤又は細胞死促進剤の有効成分は25OHCである。ここで、細胞死誘導剤又は細胞死促進剤としての組成物において、25OHC以外にもコレステロール類を含んでいても良い。例えば、(1)で記載されるように、25OHCの立体異性体や、25−ヒドロキシコレステロールの3位のヒドロキシル基がエステル化又はエーテル化により修飾された誘導体を用いることができる。これらは、25OHCに代えて、又は25OHCと共に使用することができる。また、コレステロール、又は25OHC以外の酸化コレステロール(好ましい例としては、下記(7)の25OHCの類縁体コレステロール)を、第二、第三のコレステロール類成分として25OHCと共に使用することができる。しかしながら、本発明において、コレステロール類としては唯一の成分として25OHCを含有する組成物が最も好ましい例として挙げられる。
前記のとおり、本発明のT細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導剤又は細胞死促進剤の有効成分は25OHCである。ここで、本発明のT細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導剤又は細胞死促進剤を移植片に対する拒絶反応を予防又は治療する目的で使用する場合において、25OHCの代替成分として、25OHCの類縁体であるコレステロール分子種を用いることができる。この場合、使用する25OHC類縁体コレステロールとは、細胞集団から活性化されたT細胞を選択的に失わせる活性、活性化されたT細胞に対して細胞死を選択的に誘導する活性、及び活性化されたT細胞の細胞死を誘導する活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有するものであり、当該活性を有する点において25OHCと性質を共有するものである。そして、安全性の観点からヒトの生体内に天然に存在する化合物が望ましい。望ましい25OHC類縁体コレステロールとして、20α−ヒドロキシコレステロール、及び24(R/S),25−エポキシコレステロールを挙げることができる。これらの25OHC類縁体コレステロールを25OHCと共に使用する場合は、25OHCを含む剤と同時に投与するものでも、独立して投与するものでも良い。また、同時投与を意図する場合、25OHCと25OHC類縁体コレステロールとを共に含む剤として調製して使用することもできる。24(R/S),25−エポキシコレステロールはラセミ体であるが、当該ラセミ体化合物を使用することに代えて、24(S),25−エポキシコレステロールなど、当該ラセミ体化合物に対応するいずれか一の光学異性体を使用しても良い。
20α−ヒドロキシコレステロール(別名:5-Cholestene-3beta,20alpha-diol; (20S)-Cholest-5-ene-3beta,20-diol)は、CAS登録番号516−72−3、分子式C27H46O2で示される公知物質であり、適宜入手可能な物質である。例えば、Sigma-Aldrich社、Avanti Polar Lipids, Inc.社やSanta Cruz Biotechnology社から販売される製品を購入することで入手できる。
24(R/S),25−エポキシコレステロールは、CAS登録番号72542−49−5、分子式C27H44O2で示される公知物質であり、適宜入手可能な物質である。例えば、Santa Cruz Biotechnology社やAvanti Polar Lipids, Inc.社から販売される製品を購入することで入手できる。
前記のとおり、本発明のT細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導剤又は細胞死促進剤の有効成分は25OHCである。生体内などにおいて、25OHCは、CYP7B1の触媒作用によって7α,25OHCへと代謝される。当該代謝が行われた場合、有効成分である25OHCの生体内での濃度が低下することになる。それゆえ、25OHCの効果を維持させる目的で、CYP7B1阻害剤を第二の有効成分として用いることができる。CYP7B1阻害剤の具体的な例としてはClotrimazole、Ketoconazole、Bifonazole、Miconazole、Voriconazole、Econazole、Tioconazole、Fluconazole、及びMetyraponeなどが挙げられるが、これに限定されない。
また、本発明のT細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導剤又は細胞死促進剤を移植片に対する拒絶反応を予防又は治療する目的で使用する場合は、25−ヒドロキシコレステロールを有効成分とするものでない他の免疫抑制剤と組み合わせて使用することができる。この場合、前記他の免疫抑制剤は本発明の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤と同時に投与するものでも、独立して投与するものでも良い。また、同時投与を意図する場合、前記他の免疫抑制剤と本発明の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤との合剤を調製して使用することもできる。前記他の免疫抑制剤は、公知の免疫抑制剤から任意に選択することができる。
本発明のT細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導剤又は細胞死促進剤は、活性化したT細胞及び/又は活性化したB細胞が関連する免疫機能の亢進又は異常を示す疾患の予防又は治療に使用することができる。ここで治療とは、対象疾患を完全に治癒させることのみならず、対象疾患の症状を緩和させることや、対象疾患の症状や病態の進展を抑制することも包含している。それゆえ、本発明において治療という用語は、対象疾患の症状の改善を広く意図したものと解釈されるべきである。
活性化したT細胞及び/又は活性化したB細胞が関連する免疫機能の亢進又は異常を示す疾患であって、本発明が予防又は治療の対象として意図する疾患は、次のように例示することができる。
全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、皮膚筋炎、多発性筋炎、動脈炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、接触皮膚炎、気管支喘息、強皮症、IgG4関連疾患、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、円板状エリテマトーデス、モルフィア、混合性結合組織病、急速進行性糸球体腎炎、乾癬、中毒性表皮壊死症、スティーヴンス・ジョンソン症候群、多形紅斑、薬疹、固定薬疹、扁平苔癬、移植片対宿主病、特発性間質性肺炎、閉塞性汎細気管支炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、自己免疫性肝炎、虫刺症、好酸球性食道炎、好酸球性筋膜炎、ベーチェット病、シェーグレン症候群、自己免疫性膵炎、I型糖尿病、円形脱毛症、尋常性白斑、原田病、天疱瘡、類天疱瘡、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、甲状腺機能亢進症、慢性甲状腺炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性胃炎、グッドパスチャー症候群、悪性貧血、及び自己免疫性溶血性貧血。
これらのうち、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、皮膚筋炎、多発性筋炎、動脈炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、気管支喘息、強皮症、IgG4関連疾患、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、円板状エリテマトーデス、モルフィア、混合性結合組織病、及び急速進行性糸球体腎炎は、活性化したT細胞及び活性化したB細胞が関連する免疫機能の亢進又は異常を示す疾患として例示することができる。
また、乾癬、接触皮膚炎、中毒性表皮壊死症、スティーヴンス・ジョンソン症候群、多形紅斑、薬疹、固定薬疹、扁平苔癬、移植片対宿主病、特発性間質性肺炎、閉塞性汎細気管支炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、自己免疫性肝炎、虫刺症、好酸球性食道炎、好酸球性筋膜炎、ベーチェット病、シェーグレン症候群、自己免疫性膵炎、I型糖尿病、円形脱毛症、尋常性白斑、及び原田病は、主として活性化したT細胞が関連する免疫機能の亢進又は異常を示す疾患として例示することができる。
とりわけ、乾癬、薬疹、潰瘍性大腸炎、及びクローン病は、本発明における予防又は治療対象疾患として好ましく例示される。
また、天疱瘡、類天疱瘡、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、甲状腺機能亢進症、慢性甲状腺炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性胃炎、グッドパスチャー症候群、悪性貧血、及び自己免疫性溶血性貧血は、主として活性化したB細胞が関連する免疫機能の亢進又は異常を示す疾患として例示することができる。
とりわけ、天疱瘡及び類天疱瘡は、本発明における予防又は治療対象疾患として好ましく例示される。
さらに、本発明のT細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導剤又は細胞死促進剤は、移植片に対する拒絶反応を予防又は治療に使用することができる。投与対象としては、他者由来の組織又は臓器の移植を受けた患者を挙げることができる。
本発明の活性化したT細胞及び/又は活性化したB細胞が関連する免疫機能の亢進又は異常を示す疾患を対象としたT細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導剤又は細胞死促進剤としての有効成分となる25OHCの有効投与量は、患者の状態、症状など諸事情により適宜変更される。経口又は非経口の経路で全身投与される場合の1日分の投与量として、1mg〜10000mgの投与量が例示される。より好ましい例として、10mg〜1000mgの投与量が挙げられる。経口投与する場合における25OHCの1日分の投与量は、これを1日1回投与するか、又は数回に分けて投与することができる。逆に数日分の用量を1回に投与することにより2日以上毎に1度の投与ペースとすることもできる。注射剤として全身投与する場合における25OHCの投与量も、1日1回投与するか、又は1日分を数回に分けて投与することができる。逆に数日分の用量を1回に注射することにより2日以上毎の投与ペースとすることもできる。また、点滴等により継続的に投与することでも良い。皮膚へ局所投与をする場合も、外用薬としての医薬組成物中の25OHCの配合量、局所投与の頻度、及び塗布範囲などは適宜調整できる。例えば、外用薬は、有効成分である25OHCが外用薬全量中の0.001〜20重量%配合されたものを利用することができる。いずれの場合も、投与は必ずしも継続的又は定期的に行う必要はなく、症状の変化などに応じて適宜間隔を空けて行うことが可能である。もちろん、単回の投与で治癒又は寛解すれば、複数回投与を行う必要はない。症状が再発乃至増悪した場合に投与を再開することでも良い。
本発明のT細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導剤又は細胞死促進剤の投与方法としては、特に限定されるものではなく、経口投与、非経口投与のいずれもが好適に用いられる。投与量や投与ペースの目安は前記と同様である。非経口の投与方法としては皮下注射、筋肉注射、又は静脈投与等の注射や経皮吸収剤(貼付剤)や軟膏、ローション、ペースト、ゼリー又はスプレーなどの皮膚外用剤による経皮投与が好ましいが、これに限定されるものでは無い。経皮吸収剤や皮膚外用剤は、有効成分である25OHCが皮膚外用剤全量中の0.001〜20重量%配合された剤を利用することができる。皮膚に病変部を有する疾患を治療対象とする場合には、皮膚外用剤を当該病変部へ塗布等することにより、有効成分である25OHCを局所的に投与することが可能である。例えば、皮膚表面積1cm2当たり、1日に10μg〜100mgの25OHCが適用されるよう、経皮吸収剤や皮膚外用剤が使用され得る。また、本発明のT細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導剤又は細胞死促進剤は、前記した投与形態に応じて、公知の各種の手法により製剤化方法を最適化することができる。
上記の投与形態は、25OHCを投与する場合のみならず、前記の25OHC異性体、25OHC誘導体、及び25OHCの類縁体コレステロールを投与する場合にも、25OHCの場合と同様に適用することができる。
投与期間は、患者の病状に応じて適宜調整できる。投与期間中の投与用量は適宜調整できるが、継続的に一定量を投与するか、又は投与当初のみ比較的高用量で投与した後により少ない維持量の一定投与に移行する投与形態とすることが好ましい。
本発明のT細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導剤又は細胞死促進剤は、T細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞を選択的に失わせる方法であって、前記細胞を含む試料に対して25OHC又は25OHCを含む組成物を投与することを特徴とする、in vitro又はex vivoの方法に用いることができる。ここで、活性化された細胞を選択的に失わせる方法とは、細胞集団中の活性化された生細胞の数を減少させることを意味し、集団内での活性化された細胞の生存率が低下することによって活性化された細胞が選択的に失われることになる。
また、本発明のT細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導剤又は細胞死促進剤は、T細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に対して選択的に細胞死を誘導又は促進する方法であって、前記細胞を含む試料に対して25OHC又は25OHCを含む組成物を投与することを特徴とする、in vitro又はex vivoの方法に用いることができる。
これらいずれかの方法によって、生体外の環境において、T細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導又は細胞死促進を引き起こすことが可能となる。結果として、当該方法の実施前と比較して、T細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞の割合が特異的に低減した組成を有する細胞群を得ることができる。
活性化したT細胞及び/又は活性化したB細胞が関連する免疫機能の亢進又は異常を示す疾患を有する患者から末梢血等の体液を採取し、当該方法をex vivoの方法として実施した場合、処理後の末梢血を生体へと還元することを通じて活性化したT細胞及び/又は活性化したB細胞が関連する免疫機能の亢進又は異常を示す疾患の治療を行うことも可能である。他者由来の組織又は臓器の移植を受けた患者であって、移植片に対する拒絶反応を示す患者又は拒絶反応が懸念される患者から末梢血等の体液を採取し、当該方法をex vivoの方法として実施した場合、処理後の末梢血を生体へと還元することを通じて拒絶反応の予防又は治療を行うことも可能である。これらin vitro又はex vivoの方法において、有効成分である25OHCは、終濃度として30nM〜100μM、より好ましくは100nM〜10μMの濃度で使用することができる。
また、必要に応じて、25OHCの効果を維持させる目的で、CYP7B1阻害剤を第二の有効成分として用いることができる。また、CYP7B1阻害剤の投与は、第二の有効成分として25OHCと同時に投与することによる場合のみならず、25OHCとは別工程での投与によってなされても良い。
CYP7B1阻害剤の具体的な例としてはClotrimazoleが挙げられるが、これに限定されない。
第二又は第三のの有効成分として、25OHCとは別異の免疫抑制性物質を用いることもできる。前記のCYP7B1阻害剤と同様の態様で使用することができる。免疫抑制性物質は、公知の免疫抑制剤の有効成分から適宜選択することができる。
必要に応じて、25OHCの細胞死誘導又は細胞死促進効果を維持及び/又は増強させる目的で、25OHCの類縁体であるコレステロールを補助的な有効成分として用いることができる。また、前記類縁体コレステロールの投与は、第二、第三又は第四の有効成分として25OHCと同時に投与することによる場合のみならず、25OHCとは別工程での投与によってなされても良い。
前記類縁体コレステロールの具体的な例として、20α−ヒドロキシコレステロール、及び24(R/S),25−エポキシコレステロールが挙げられるが、これに限定されない。
本発明のスクリーニング方法は、25OHCの産生をT細胞において誘導又は促進する化合物の探索を目指すものである。
ヒト又は非ヒト動物の体液から単離したナイーブCD4+T細胞を本方法において使用する。ヒトT細胞において25OHCの産生を効率的に誘導又は促進する化合物を見出すことが最先の目的であるので、本方法において使用するナイーブCD4+T細胞はヒト由来の単離細胞であることが好ましい。また、非ヒト動物は任意の動物種が利用できるが、哺乳動物が好ましく、入手の容易性や取り扱い技術の蓄積を考慮するとマウスやラットなどの齧歯目動物がより好ましく、特にマウスが好ましい。体液はT細胞を含むものであれば任意のものが利用できるが、血液が好ましく、脾臓、リンパ節、又は血管から採取した末梢血がより好ましい。採取したT細胞を含む体液から公知の方法でナイーブCD4+T細胞を単離する。例えば、フローサイトメーターを用いてマウスのCD4+CD25−CD62LhighCD44lowのナイーブCD4+T細胞を単離することができる。単離したCD4陽性のT細胞は、抗CD3モノクローナル抗体及び抗CD28モノクローナル抗体でコーティングした培養プレートに播種し、細胞培養を通じて活性化させる。プレートは任意の種類が利用できる。以下は代表的な例として、96穴平底プレートを使用するものとして実施態様を記載する。播種する細胞密度は任意であるが、好ましくは5x103/ウェル〜5x105/ウェル、より好ましく1x104/ウェル〜1x105/ウェル、さらに好ましくは2x104/ウェル〜5x104/ウェル、最も好ましくは5x104/ウェルである。培養において試料は複数の群に分け、少なくとも一つの群は被検化合物を添加しない無添加コントロール、又は被検化合物無添加かつIL−27を添加したポジティブコントロールとする。IL−27の添加量は10ng/mL〜200ng/mL、好ましくは20ng/mL(いずれも最終濃度)である。残りの群には培養液に被検化合物を添加する。被検化合物、及びIL−27は培養開始から一定時間後に添加しても良いが、好ましくは培養開始時から添加する。培養期間は任意であるが、短すぎると25OHC産生誘導が十分に起こらず、誘導活性を検出しにくくなる恐れがあり、一方長すぎると細胞の生存能が低下して25OHCの産生能が低下する恐れがあるので、0.5日〜5日、好ましくは1日〜3日とする。所定の期間の培養後、サンプリングを行う。サンプリングした試料における25OHC産生能は25OHC自体の濃度の測定、25OHC合成酵素であるCh25hの蛋白質蓄積量の測定、又はCh25hのmRNA蓄積量の測定を通じて評価を行う。ガスクロマトグラフ法、ウエスタンブロット法、定量的RT−PCR法など、いずれの測定も当該技術分野で周知の技術が適用でき、当業者は適宜実施をすることができる。例えば、Ch25h遺伝子の発現量(mRNA蓄積量)は、RT−qPCR法により測定できる。
また、Ch25h遺伝子プロモーターにレポーター遺伝子を機能的に連結させたキメラ遺伝子を有する形質転換細胞(又は当該形質転換細胞を含む形質転換動物や組織)を利用することによって、Ch25hの蛋白質蓄積量の測定、又はCh25hのmRNA蓄積量の測定を、レポーター遺伝子産物の蓄積量の測定やレポーター遺伝子のmRNA蓄積量の測定に代替することができる。レポーター遺伝子を利用することは、当該方法の好ましい実施態様の一つとして挙げられる。レポーターとしては、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質など当業者に公知のものであれば、任意に用いることができる。また、形質転換細胞や形質転換動物は、周知慣用の手法によって当業者であれば適宜調製することができる。レポーター遺伝子を本方法で採用した場合、レポーター遺伝子産物の物理化学的な性質や生化学的な性質などを利用することにより、レポーター遺伝子の発現量の定量的な測定を化学発光や蛍光などの測定を通じて行うことも可能である。
そして、25OHC自体の濃度の測定、25OHC合成酵素であるCh25hの蛋白質蓄積量の測定、若しくはCh25hのmRNA蓄積量の測定、又はCh25h遺伝子プロモーターの制御下にあるレポーター遺伝子の発現の定量的な測定を通じて評価される被検化合物のT細胞における25OHC産生の誘導能又は促進能を、被検化合物を使用しない無添加コントロール時及び/又は被検化合物無添加かつIL−27添加時(ポジティブコントロール時)の25OHC産生の誘導能又は促進能と比較することにより所望の化合物の候補が選抜される。選抜の閾値は適宜決定することができるが、例えば無添加コントロールの誘導能/促進能を1とした場合に5以上、より好ましくは10以上、さらにより好ましくは15以上、最も好ましくは20以上の値を示した被検化合物を候補化合物として選抜する。別の例では、IL−27を添加したポジティブコントロールの誘導能/促進能を1とした場合に、0.5以上、より好ましくは1.0以上、さらにより好ましくは1.5以上、最も好ましくは2.0以上の値を示した被検化合物を候補化合物として選抜する。前記2つの例の選抜を両方行い、被検化合物の選抜を行っても良い。
選抜において閾値を変化させ、より高次の選抜段階でより厳しい閾値の設定を行うことにより、その選抜を多段階で行うこともできる。
当該選抜を行うことで、より25OHCの生産誘導又は促進のためにより効果的な化合物を入手ことができる。
なお、IL−27をポジティブコントロール用に使用する例で記載したが、IL−27の使用は必須の要件ではない。IL−27のポジティブコントロールを使用しないことも可能であるし、IL−27に代えてIL−27受容体アゴニストをポジティブコントロール用に使用して同様のスクリーニング方法を構築することもできる。このような実施態様による物質の探索もまた本願の目的とするところであり、その探索は実施可能である。
8週齢のC57BL/6野生型マウス(三共ラボから購入)を使用して、ナイーブCD4+T細胞(CD4+CD25−CD62LhighCD44low)を単離した。T細胞の活性化のために、抗CD3モノクローナル抗体(クローン2C11:Bio X Cell社)及び抗CD28モノクローナル抗体(クローン37.51:Bio X Cell社)それぞれ3μg/mLでコーティングした培養プレート(96ウェル平底プレート)を調製した。当該プレートに単離したナイーブCD4+T細胞を5x104Cells/ウェルで播種し、3日間培養した。培養液にはペニシリンストレプトマイシン(Gibco)、ピルビン酸(Gibco)、FBS(BOVOGEN)、NEAA(Gibco)、2−ME(シグマ)を添加したRPMI−1640(Gibco)を使用した。培養は、25OHC(Sigma)、コレステロール(Sigma)、若しくは7α,25−ジヒドロキシコレステロール(7α,25OHC)(Avanti Polar Lipids, Inc.)の添加(いずれも終濃度200nM)、又はコレステロール類無添加(None)で行った。培養後の細胞は、7−アミノアクチノマイシンD(7−AAD:BD社)で染色し、フローサイトメーター(CantoII:Becton Dickinson社)を用いて解析した。7−AADのシグナル強度とFSCのシグナル強度とに基づいてゲーティングし、生細胞数を測定すると共に、各培養系における生細胞の割合を算出した(n=3)。生細胞の割合は、25OHC添加では5.6±1.4%、コレステロール添加では56.4±1.9%、7α,25OHC添加では55.2±1.5%、コレステロール類無添加では57.8±2.1%だった(図1A)。コレステロール類無添加(None)の場合と比して、25OHC添加の場合に有意な生存率の低下が認められた(p<0.0001)。一方、コレステロール又は7α,25OHC添加の場合にコレステロール類無添加(None)の場合と比して、有意差が認められなかった。
図1Bに示されるように、生体内において25OHCはコレステロールからCh25hの触媒作用により生成し、CYP7B1の触媒作用により7α,25OHCへと代謝される。図1Aに示されるように、活性化されたCD4陽性T細胞の培養中の生存率は25OHCにより顕著に低下し、25OHCには活性化T細胞の細胞死誘導又は細胞死促進機能が備わることが認められる。一方、25OHCと代謝経路中で前後するコレステロールや7α,25OHCには活性化T細胞の細胞死誘導又は細胞死促進機能が認められなかった。
25OHCによる細胞培養中のT細胞の生存率の低下がT細胞に対する活性化刺激の有無に影響を受けるかどうか、試験を行った。
実施例1と同様にナイーブCD4+T細胞を単離した。実施例1と同じく抗CD3抗体及び抗CD28抗体でコーティングした培養プレートを用いる場合を「刺激あり」とし、一方、前記両抗体でのコーティングのない培養プレートを用いる場合を「刺激なし」とした。両条件とも培養液中に25OHCを含む(終濃度1000nM)条件及び含まない条件を用意し、3日間の培養を行った。培養1日目、2日目及び3日目のそれぞれで一部の培養液をサンプリングし、実施例1と同様の方法で生細胞を測定し、T細胞の生存率を算出した。
「刺激あり」で25OHC無添加の場合、T細胞の生存率は、培養1日目、2日目及び3日目でそれぞれ61.8%、51.9%、及び45.3%だった。
「刺激あり」で25OHC添加の場合、T細胞の生存率は、培養1日目、2日目及び3日目でそれぞれ49.6%、14.0%、及び6.93%だった。
「刺激なし」で25OHC無添加の場合、T細胞の生存率は、培養1日目、及び2日目でそれぞれ53.0%、及び26.4%だった。
「刺激あり」で25OHC添加の場合、T細胞の生存率は、培養1日目、及び2日目でそれぞれ55.7%、及び30.4%だった。
なお、培養開始前(0日目)の生存率は97.5%だった。
上記の結果について、培養2日目の生存率を棒グラフで示した(図2)。図2の左図は「刺激あり」、右図は「刺激なし」における結果をそれぞれ示す。
「刺激あり」の場合のT細胞の生存率は25OHCの添加によって顕著に低下していることが認められる。一方、「刺激なし」の場合は25OHCの有無でT細胞の生存率に明確な相違が認められなかった。この結果から、25OHCによるT細胞に対する細胞死誘導又は細胞死促進機能はT細胞受容体刺激依存的であって、T細胞のうち活性化された細胞に対してのみ発揮される機能であることが示された。
25OHCによる細胞死誘導又は細胞死促進作用について、CD8陽性T細胞及びB220陽性B細胞を使用して試験した。
25OHCによる細胞培養中のT細胞の生存率の低下がT細胞又はB細胞に対する活性化刺激の有無に影響を受けるかどうか、試験を行った。
実施例1と同様、C57BL/6野生型マウスを使用した。野生型マウスからCD8陽性T細胞及びB220陽性B細胞を単離し、細胞培養に供した(ただし、本実施例において単離された細胞は8x104Cells/ウェルの密度で播種された。)。
CD8陽性T細胞は、実施例1でCD4陽性T細胞を扱った場合と同様の手法で、抗CD3モノクローナル抗体、及び抗CD28抗体によりコーティングした培養プレートを用いる場合を「刺激あり」とし、一方、前記両抗体でのコーティングのない培養プレートを用いる場合を「刺激なし」とした。両条件とも培養液中に25OHCを含む(終濃度300nM)条件及び含まない条件を用意し、3日間の培養を行った。培養1日目、2日目及び3日目のそれぞれで一部の培養液をサンプリングし、実施例1と同様の方法で生細胞を測定し、T細胞の生存率を算出した。
「刺激あり」で25OHC無添加の場合、T細胞の生存率は、培養3日目で57.4%だった。
「刺激あり」で25OHC添加の場合、T細胞の生存率は、培養3日目で7.9%だった。
「刺激なし」で25OHC無添加の場合、T細胞の生存率は、培養3日目で13.4%だった。
「刺激なし」で25OHC添加の場合、T細胞の生存率は、培養3日目14.3%だった。
上記の結果について、培養3日目の生存率を棒グラフで示した(図3)。図3の左図は「刺激あり」、右図は「刺激なし」における結果をそれぞれ示す。
「刺激あり」の場合のT細胞の生存率は25OHCの添加によって顕著に低下していることが認められる。一方、「刺激なし」の場合は25OHCの有無でT細胞の生存率に明確な相違が認められなかった。この結果から、25OHCによるT細胞に対する細胞死誘導又は細胞死促進機能はT細胞受容体刺激依存的であって、T細胞のうち活性化された細胞に対してのみ発揮される機能であることが示された。
B220陽性B細胞は、1μg/mLのLPS刺激で活性化させた場合を「刺激あり」とし、一方、LPSによる活性化を行わなかった場合を「刺激なし」とした。両条件とも培養液中に25OHCを含む(終濃度300nM)条件及び含まない条件を用意し、3日間の培養を行った。培養1日目、2日目及び3日目のそれぞれで一部の培養液をサンプリングし、実施例1と同様の方法で生細胞を測定し、B細胞の生存率を算出した。
「刺激あり」で25OHC無添加の場合、B細胞の生存率は、培養3日目で76.4%だった。
「刺激あり」で25OHC添加の場合、B細胞の生存率は、培養3日目で37.3%だった。
「刺激なし」で25OHC無添加の場合、B細胞の生存率は、培養3日目で13.3%だった。
「刺激なし」で25OHC添加の場合、B細胞の生存率は、培養3日目14.0%だった。
上記の結果について、培養3日目の生存率を棒グラフで示した(図4)。図4の左図は「刺激あり」、右図は「刺激なし」における結果をそれぞれ示す。
「刺激あり」の場合のB細胞の生存率は25OHCの添加によって顕著に低下していることが認められる。一方、「刺激なし」の場合は25OHCの有無でB細胞の生存率に明確な相違が認められなかった。この結果から、25OHCによるB細胞に対する細胞死誘導又は細胞死促進機能はB細胞受容体刺激依存的であって、B細胞のうち活性化された細胞に対してのみ発揮される機能であることが示された。
25OHCによる細胞培養中のT細胞の生存率の低下が25OHC添加量に対して濃度依存的な応答を示すか、試験を行った。また、前記試験においてT細胞の生存率の低下がT細胞に対する活性化刺激の程度に影響を受けるかどうか、併せて試験を行った。
実施例1と同様にナイーブCD4+T細胞を単離した。実施例1と同じく抗CD3抗体及び抗CD28抗体でコーティングした培養プレートを用意し、25OHCを2nM、20nM、100nM、200nM又は1000nMの終濃度で添加した培地、又無添加の培地を加え、単離したT細胞を実施例1と同じ条件で播種して培養した。3日間の培養後、実施例1と同様の方法で生細胞を測定し、T細胞の生存率を算出した(n=2)。
また、同様の培養系において、さらに中和抗体である抗IL−2モノクローナル抗体(クローンS4B6:BD社)を添加した場合のT細胞の生存細胞数も調べ、前記と同様の手法でT細胞の生細胞を測定し、T細胞の生存率(%)を算出した。
その結果、25OHC無添加では56.1%の生存率だったのに対し、2nM、10nM、20nM、100nM、200nM及び1000nMの25OHC添加時に、それぞれ59.9%、57.1%、23.8%、11.1%及び5.19%の生存率を示し(図5)、100nM以上の25OHC添加の場合においてT細胞の生存率に顕著な低下が認められた。この生存率の低下は25OHCの濃度に依存的して著しくなった。
一方、抗CD3抗体及び抗CD28抗体によりT細胞を刺激しても、添加された抗IL−2抗体の中和活性によりT細胞の活性化が不十分となった場合には、25OHCによるT細胞の生存数の減少(相対的な生存率の低下)は2nMから1000nMのいずれの濃度でも認められなかった(データは示さず)。
本実施例の結果からも、25OHCによるT細胞に対する細胞死誘導又は細胞死促進機能はT細胞受容体刺激依存的であって、T細胞のうち活性化された細胞に対してのみ発揮される機能であることが示された。
25OHCによる細胞死誘導又は細胞死促進作用について、CD8陽性T細胞及びB220陽性B細胞を使用して試験した。
実施例1と同様、C57BL/6野生型マウスを使用した。野生型マウスからCD8陽性T細胞及びB220陽性B細胞を単離し、細胞培養に供した。CD8陽性T細胞は、実施例1でCD4陽性T細胞を扱った場合と同様の手法で、抗CD3モノクローナル抗体、及び抗CD28抗体による共刺激で活性化させた。25OHCを1nM、10nM、100nM若しくは1000nMの終濃度で添加した培養、又は無添加の培養とした。細胞培養は3日間行い、3日後の培養細胞について実施例1と同様に生細胞の測定、及び生存率の算出を行った。その結果、25OHC無添加では41%の生存率だったのに対し、1nM、10nM、100nM及び1000nMの25OHC添加時に、それぞれ42.7%、46.4%、7.06%、及び1.29%の生存率を示した(図6 上パネル)。
活性化CD4陽性T細胞の場合と同様、活性化CD8陽性T細胞でも25OHCによる細胞死誘導又は細胞死促進機能が認められた。実施例4と同様、25OHCによるT細胞の生存細胞数の減少が濃度依存的に認められた。1nM又は10nMの25OHC添加時には有意な生存細胞数の減少が認められないが、100nM又はそれ以上の添加で生存細胞数は顕著に減少し、濃度上昇に伴って生存細胞数の減少はより著しくなった。
B220陽性B細胞は、1μg/mLのLPS刺激で活性化させた。25OHCを1nM、10nM、100nM若しくは1000nMの終濃度で添加した培養、又は無添加の培養とした。細胞培養は3日間行い、3日後の培養細胞について実施例1と同様に生細胞の測定、及び生存率の算出を行った。その結果、25OHC無添加では63.2%の生存率だったのに対し、1nM、10nM、100nM及び1000nMの25OHC添加時に、それぞれ55.3%、44.5%、15.3%、及び1.54%の生存率を示した(図6 下パネル)。
活性化CD4陽性T細胞の場合と同様、活性化B細胞でも25OHCによる細胞死誘導又は細胞死促進機能が認められた。また、25OHCによるB細胞の生存細胞数の減少は濃度依存的に見られた。1nM又は10nMの25OHC添加時には有意な生存細胞数の減少が認められないが、100nM又はそれ以上の添加で生存細胞数は顕著に減少し、濃度上昇に伴って生存細胞数の減少はより著しくなった。
上記のとおり、活性化T細胞(CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞)のみならず、活性化B細胞においても25OHCによる細胞死誘導又は細胞死促進機能が認められたことから、活性化T細胞及び活性化B細胞の共存する環境下において、25OHC又は25OHCを含む組成物を投与することにより、T細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞の生存率を選択的に低下させる(活性化された細胞を選択的に失わせる)ことができ、亢進した免疫機能を抑制できることが強く示唆された。
なお、単離されたB220陽性B細胞をLPSによる活性化刺激無しに培養した対照実験においては、25OHC添加(1000nM)条件と無添加条件との間でB細胞の生存細胞数に実質的な差異は認められなかった(データは示さず)。
25OHCの生理的機能(例えば、コレステロール生合成阻害作用)は種々検討されてきているが、その大部分では10μMなど、μMオーダーの終濃度で添加した場合に機能が確認されている。一方、本発明で注目するT細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導又は細胞死促進作用は100nMなど、nMオーダーという比較的低濃度で効果を発揮している。したがって、T細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導又は細胞死促進作用を利用した本発明による疾患の予防や治療は、コレステロール合成阻害など従来公知の作用を発現させるための方法とは異質な低用量の投与により実現可能となるものである。
ハプテン(ジニトロフルオロベンゼン;DNFB)の反復塗布により、モデル動物において接触皮膚炎を惹起することができる。接触皮膚炎の炎症には活性化T細胞やB細胞が関与することが知られている。
C57BL/6野生型マウス(WT)、又はCh25h遺伝子ノックアウトマウス(Ch25hKO)に対して、それぞれDNFB反復塗布による接触皮膚炎を惹起した(n=4)。皮膚炎(炎症)が生じた耳の厚みを継続的に測定し、その経時的な変化を図7Aとして示した。横軸を接触皮膚炎惹起後の時間(hour)、縦軸を耳の厚み(mm)として、Ch25hKOにおける測定結果の平均値を●印でプロットした。また、プロット間を黒線で結んで示した。他方、WTにおける測定結果の平均値を○印でプロットした。また、プロット間を灰色線で結んで示した。図中、*はCh25hKOとWTとの間でp<0.001の有意差があることを示す。さらに、図7Aのカーブ下の総面積(AUC値)を算出し、Ch25hKO及びWTのそれぞれについて図7Bの棒グラフに示した。図中、*はCh25hKOとWTとの間でAUC値にp=0.0025の有意差があることを示す。
図7Aによって、Ch25h遺伝子を欠損すると接触皮膚炎の炎症が増悪し、野生型と比して炎症のスムーズな収束が損なわれることが示された。図1Bに示されるように、Ch25hは25OHC生合成経路においてコレステロールから25OHCを生成する反応を触媒する。Ch25hKOマウスでは25OHC生合成の直前のステップの酵素が失われるので、25OHCの供給とその機能に重大な欠損が生じる蓋然性が高い。よって、接触皮膚炎における活性化T細胞及び/又は活性化B細胞の機能亢進又は異常による炎症が25OHCの投与により治療又は改善できる。
C57BL/6野生型マウスの腹部に対して、0.5%のDNFB溶液を25μL塗布することで感作し(Day −5)、感作開始5日後のマウスの片耳に0.15%のDNFB溶液を20μL塗布(チャレンジ)することで接触皮膚炎を惹起した(Day 0)。25OHCの効果を調べる目的で、25OHCi.p.群のマウス(n=5)には、Day −5から連日、1μmol(0.33mMの25OHC溶液を3mL)の25OHCが腹腔内へ投与された。一方、対照となるControl群のマウス(n=3)には、溶媒であるDMSOが3mL、Day −5から連日腹腔内へ投与された。
皮膚炎(炎症)が生じた耳の厚みを継続的に測定し、その経時的な変化を図8Aとして示した。横軸を惹起後の時間(hour)、縦軸を耳の厚み(mm)として、25OHCi.p.群における測定結果の平均値を■でプロットし、併せて標準誤差を示した。また、プロット間を灰色線で結んで示した。他方、Control群における測定結果の平均値を●でプロットし、併せて標準誤差を示した。また、プロット間を黒線で結んで示した。
なお、ここで耳の厚み(mm)とは、測定時におけるチャレンジした側の耳介とチャレンジしていない側の耳介との厚みの差分を意味する。図中、P<0.0001(2−way ANOVA)は、25OHCi.p.群とControl群との間でp<0.001の有意差があることを示す。さらに、図8Aに示す結果のうち、惹起後96時間における耳の厚みの測定結果を図8Bとして示した。バーの高さで(平均値)を示し、併せて標準誤差を示す。図中、p<0.005は25OHCi.p.群がControl群に対してp<0.005の有意差があることを示す。
図8Aによって、25OHC投与群では対照と比較して、接触皮膚炎の有意な早期改善効果が認められた。また、投与開始後96時間後の時点では、25OHC投与群の炎症(耳の厚みを指標とする)は、同時点での対照と比して約6割程度にまで改善していることが認められた(図8B)。よって、接触皮膚炎における炎症が25OHCの投与により治療又は改善できる。
生体内において、樹状細胞やマクロファージがCh25h遺伝子を発現し、25OHCを生産すると報告されている。また、当該発現はIFN−α又はIFN−βによって誘導又は活性化されることが知られている。
25OHCの効率的な生産のために、Ch25h遺伝子の発現細胞や、発現誘導物質について検討した。その結果、全く意外なことに、活性化T細胞においてIL−27投与によってCh25h遺伝子発現が顕著に活性化することが見いだされた。
実施例1と同様、マウスから単離したナイーブCD4+T細胞を10μg/mLの抗CD3モノクローナル抗体(2C11)及び10μg/mLの抗CD28モノクローナル抗体(37.51)で共刺激する培養系を構築した(培養プレートは96ウェル平底)。ただし、播種する細胞密度は5x104/ウェル、1x105/ウェル、又は2x105/ウェルとした。TGF−β(20ng/mL)、IL−27(20ng/mL)添加時、又はいずれも無添加(No)の場合における、培養2日目のCh25hのmRNA発現量をRT−qPCRで測定した相対的な発現量として評価した。Ch25hの増幅に用いたプライマーセット、及びコントロールに使用したβ−アクチンの増幅に用いたプライマーセットの配列は、それぞれ次のとおりである。
Ch25h
FW 5'- GCGACGCTACAAGATCCA (配列番号1)
RV 5'- CACGAACACCAGGTGCTG (配列番号2)
beta-actin
FW 5'- CGATGCCCTGAGGCTCTTT (配列番号3)
RV 5'- TGGATGCCACAGGATTCCA (配列番号4)
単離したナイーブCD4+細胞を5x104/ウェルで播種した場合の結果を図9に示す(n=2)。図中、相対発現量は標準誤差と共にバーの高さで示される。**は、TGF−β添加時とIL−27添加時との間でp<0.0001の有意差があることを示す。
活性化T細胞においては、IL−27によるCh25h遺伝子発現の顕著な増強が認められたが、TGF−βによる増強はほとんど認められなかった。CD4陽性の活性化T細胞では、IFN−αやIFN−βではなくIL−27が25OHC生産の調節を担い、25OHCの供給を通じて活性化T細胞や活性化B細胞の生存能を制御することが示された。
C57BL/6野生型マウスの片耳の背側面(左耳)にイミキモド含有クリーム(ベセルナクリーム5%;持田製薬社製)250mg(イミキモド12.5mg)を1日置きに3回(Day 0,2,4)塗布して乾癬モデルとなる炎症を惹起した。25OHCの効果を調べる目的で、25OHCi.p.群のマウス(n=3)には、Day 0からDay 5まで連日、1μmol(0.33mMの25OHC溶液を3mL)の25OHCを腹腔内へ投与した。一方、対照となるDMSOi.p.群のマウス(n=4)には、溶媒であるDMSOが3mL、腹腔内に連日投与された。
Day 0及びDay 5において、左耳(イミキモドクリーム塗布側)及び右耳(非塗布側)の耳の厚みを測定した。そして、左右耳の厚さの差を炎症の指標とし、Day 0からDay 5までの変化量を各群で統計的に解析した。
図10は、Day 5における耳の厚みをDay 0における耳の厚みと比較した耳の厚みの変化量(mm)の測定結果を示している。バーの高さで耳の厚みの変化量(mm)を示し、併せて標準誤差を示している。図中、p=0.04は25OHCi.p.が対照(DMSOi.p.)に対してp=0.04の有意差があることを示す。
なお、ここで耳の厚み(mm)とは、測定時における乾癬を惹起した側の耳介と、惹起していない側の耳介との厚みの差分を意味する。
25OHC投与群では対照と比較して、乾癬による炎症の有意な改善効果が認められた。また、Day 5の時点では、25OHC投与群の炎症(耳の厚みを指標とする)は、同時点での対照と比して約5割程度にまで改善していることが認められた(図10)。よって、乾癬における炎症が25OHCの投与により治療又は改善できる。
細胞培養中の活性化T細胞の25OHCによる濃度依存的な生存率の低下が、コレステロールや7α,25−ジヒドロキシコレステロールとは異なるコレステロール分子種によっても引き起こされるか調べる目的で試験を行った。
実施例1と同様にナイーブCD4+T細胞を単離した。実施例1と同じく抗CD3抗体及び抗CD28抗体でコーティングした培養プレートを用意した。当該培養プレートに、25OHCの類縁体コレステロールを1nM、10nM、100nM、又は1000nMの終濃度で添加した培地、又無添加の培地を加え、単離したT細胞を実施例1と同じ条件で培養した(ただし、96ウェル平底プレートに単離したナイーブCD4+T細胞を8x104Cells/ウェルで播種した。)。25OHCの類縁体コレステロールとして、である20α−ヒドロキシコレステロール(Avanti Polar Lipids, Inc.)、又は24(R/S),25−エポキシコレステロール(Avanti Polar Lipids, Inc.)を使用した結果が以下に示される。3日間の培養後、実施例1と同様の方法で生細胞を測定し、T細胞の生存率を算出した(それぞれ、n=3)。
その結果、20α−ヒドロキシコレステロール無添加では61.3%の生存率だったのに対し、1nM、10nM、100nM、及び1000nMの20α−ヒドロキシコレステロール添加時に、それぞれ61.9%、59.6%、53.3%及び1.6%の生存率を示し(図11A)、1000nMの20α−ヒドロキシコレステロール添加の場合においてT細胞の生存率に顕著な低下が認められた。
また、24(R/S),25−エポキシコレステロール無添加では60.0%の生存率だったのに対し、1nM、10nM、100nM、及び1000nMの24(R/S),25−エポキシコレステロール添加時に、それぞれ58.3%、58.2%、11.3%及び1.4%の生存率を示し(図11B)、100nM以上の24(R/S),25−エポキシコレステロール添加の場合においてT細胞の生存率に顕著な低下が認められた。
本実施例の結果から、少なくとも20α−ヒドロキシコレステロール、及び24(R/S),25−エポキシコレステロールからなる群から選択される25OHC類縁体コレステロールには、25OHCと同様に、活性化T細胞に対して濃度依存的な生存率の低下をもたらす作用があることが示された。
一方、上記と同様の手法で試験したところ、7α−ヒドロキシコレステロール、7β−ヒドロキシコレステロール、22(R)−ヒドロキシコレステロール、22(S)−ヒドロキシコレステロール、及び7−ケトコレステロールの各コレステロール分子種においては、25OHCと同様の有意な活性は認められなかった。
これらの結果を総合すると、活性化T細胞に対して濃度依存的な生存率の低下をもたらす作用を有するコレステロール分子種について、構造上の共通性を見い出すことはできなかった。
動物の体液から単離したナイーブCD4+T細胞を使用する。動物は任意の動物種が利用できるが、入手の容易性や取り扱い技術の蓄積を考慮するとマウスやラットなどの齧歯目動物、特にマウスが好ましい。体液はT細胞を含むものであれば任意のものが利用できるが、血液が好ましく、脾臓、リンパ節、又は血管から採取した末梢血がより好ましい。
採取したT細胞を含む体液から公知の方法でナイーブCD4+T細胞を単離する。例えば、フローサイトメーターを用いて実施例1のようにCD4+CD25−CD62LhighCD44lowのナイーブCD4+T細胞を単離することができる。単離したCD4陽性のT細胞は、実施例6と同様、抗CD3モノクローナル抗体及び抗CD28モノクローナル抗体でコーティングした培養プレートに播種し、細胞培養を通じて活性化させる。プレートは任意の種類が利用できる。以下は代表的な例として、96穴平底プレートを使用するものとして実施態様を記載する。播種する細胞密度は任意であるが、好ましくは5x103/ウェル〜5x105/ウェル、より好ましく1x104/ウェル〜1x105/ウェル、さらに好ましくは2x104/ウェル〜5x104/ウェル、最も好ましくは5x104/ウェルである。培養において試料は複数の群に分け、一つはポジティブコントロール用にIL−27を添加する。添加量は5ng/mL〜100ng/mL、好ましくは20ng/mLである。残りの群には培養液に被検化合物を添加する。被検化合物、及びIL−27は培養開始から一定時間後に添加しても良いが、好ましくは培養開始時から添加する。培養期間は任意であるが、短すぎると25OHC産生誘導が十分に起こらず、誘導活性を検出しにくくなる恐れがあり、一方長すぎると細胞の生存能が低下して25OHCの産生能が低下する恐れがあるので、0.5日〜5日、好ましくは1日〜3日とする。所定の期間の培養後、サンプリングを行う。サンプリングした試料における25OHC産生能は25OHC自体の濃度の測定、25OHC合成酵素であるCh25hの蛋白質蓄積量の測定、又はCh25hのmRNA蓄積量の測定を通じて評価を行う。ガスクロマトグラフ法、ウエスタンブロット法、定量的RT−PCR法など、いずれの測定も当該技術分野で周知の技術が適用でき、当業者は適宜実施をすることができる。例えば、Ch25h遺伝子の発現量(mRNA蓄積量)は、RT−qPCR法により測定できる。
また、Ch25h遺伝子プロモーターにレポーター遺伝子を機能的に連結させたキメラ遺伝子を有する形質転換細胞(又は当該形質転換細胞を含む形質転換動物や組織)を利用することによって、Ch25hの蛋白質蓄積量の測定、又はCh25hのmRNA蓄積量の測定を、レポーター遺伝子産物の蓄積量の測定やレポーター遺伝子のmRNA蓄積量の測定に代替することができる。
そして、被検化合物の示す25OHCの誘導能又は促進能(ここで、当該誘導能又は促進能は、前記レポーター遺伝子の発現量の定量的な測定を通じて評価されたものでも良い)を、無添加時と比較することによって所望の化合物の候補が選抜される。選抜の閾値は適宜設定することができるが、例えば無添加時と比較して10倍以上、15倍以上、又は20倍以上となる能力を示したものを候補化合物として選抜する。あるいは、被検化合物の示す誘導能又は促進能をIL−27添加時の誘導能又は促進能と比較することにより所望の化合物の候補が選抜される。選抜の閾値は適宜決定することができるが、例えばIL−27を添加したポジティブコントロールの誘導能/促進能を1とした場合に、1.0以上、1.5以上、又は2.0以上のものを候補化合物として選抜する。前記2通りの選抜を組み合わせて行っても良い。
選抜において閾値を変化させ、より高次の選抜段階でより厳しい閾値の設定を行うことにより、その選抜を多段階で行うこともできる。
当該選抜を行うことで、より25OHCの生産誘導又は促進のためにより効果的な化合物を入手ことができる。
なお、本実施例はIL−27をポジティブコントロール用に使用しているが、IL−27に代えてIL−27アゴニストを使用して同様のスクリーニング方法を構築することもできる。このような物質の探索もまた本願の目的とするところであり、当該実施例の手法に沿ってその探索は実施可能である。
Claims (27)
- 25−ヒドロキシコレステロール又はその類縁体コレステロールを有効成分として含有してなる、T細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
- 25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロールが、20α−ヒドロキシコレステロール、又は24(R/S), 25−エポキシコレステロールである、請求項1に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
- 活性化T細胞及び/又は活性化B細胞による免疫機能の亢進又は異常を示す疾患の予防又は治療用である、請求項1又は2に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
- 活性化T細胞及び/又は活性化B細胞による免疫機能の亢進又は異常を示す疾患が、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、皮膚筋炎、多発性筋炎、動脈炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、接触皮膚炎、気管支喘息、強皮症、IgG4関連疾患、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、円板状エリテマトーデス、モルフィア、混合性結合組織病、急速進行性糸球体腎炎、乾癬、中毒性表皮壊死症、スティーヴンス・ジョンソン症候群、多形紅斑、薬疹、固定薬疹、扁平苔癬、移植片対宿主病、特発性間質性肺炎、閉塞性汎細気管支炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、自己免疫性肝炎、虫刺症、好酸球性食道炎、好酸球性筋膜炎、ベーチェット病、シェーグレン症候群、自己免疫性膵炎、I型糖尿病、円形脱毛症、尋常性白斑、原田病、天疱瘡、類天疱瘡、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、甲状腺機能亢進症、慢性甲状腺炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性胃炎、グッドパスチャー症候群、悪性貧血、及び自己免疫性溶血性貧血から選択されるものである、請求項3に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
- 活性化T細胞及び/又は活性化B細胞による免疫機能の亢進又は異常を示す疾患が、乾癬、接触皮膚炎、中毒性表皮壊死症、スティーヴンス・ジョンソン症候群、多形紅斑、薬疹、固定薬疹、扁平苔癬、移植片対宿主病、特発性間質性肺炎、閉塞性汎細気管支炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、自己免疫性肝炎、虫刺症、好酸球性食道炎、好酸球性筋膜炎、ベーチェット病、シェーグレン症候群、自己免疫性膵炎、I型糖尿病、円形脱毛症、尋常性白斑、及び原田病から選択されるものであって、T細胞の活性化が関与する疾患である、請求項3又は4に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
- 活性化T細胞及び/又は活性化B細胞による免疫機能の亢進又は異常を示す疾患が、乾癬、及び接触皮膚炎から選択されるものである、請求項3乃至5のいずれか一項に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
- 活性化T細胞及び/又は活性化B細胞による免疫機能の亢進又は異常を示す疾患が、天疱瘡、及び類天疱瘡から選択されるものである、請求項3又は4に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
- 天疱瘡又は類天疱瘡における皮膚のびらんを予防するものである、請求項7に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
- 移植片に対する拒絶反応の予防又は治療用である、請求項1又は2に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
- 免疫抑制剤と組み合わせて使用されるものである、請求項9に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤であって、当該免疫抑制剤は25−ヒドロキシコレステロールまたは20α−ヒドロキシコレステロール、及び24(R/S), 25−エポキシコレステロールからなる群から選択される25−ヒドロキシコレステロールの類縁体コレステロールを有効成分とするものでない、細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
- 経口投与剤である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
- 非経口投与剤である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
- 経皮吸収剤又は注射剤である、請求項12に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
- 25−ヒドロキシコレステロール−7α−ヒドロキシラーゼ(CYP7B1)阻害剤をさらに含有するものである、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
- 25−ヒドロキシコレステロール−7α−ヒドロキシラーゼ(CYP7B1)阻害剤がClotrimazoleである、請求項14に記載の細胞死誘導剤又は細胞死促進剤。
- T細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞を選択的に失わせる方法であって、前記細胞を含む試料に対して25−ヒドロキシコレステロール又は25−ヒドロキシコレステロールを含む組成物を投与することを特徴とする、in vitro又はex vivoの方法。
- T細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に対して選択的に細胞死を誘導又は促進する方法であって、前記細胞を含む試料に対して25−ヒドロキシコレステロール又は25−ヒドロキシコレステロールを含む組成物を投与することを特徴とする、in vitro又はex vivoの方法。
- 試料が生体由来の体液である、請求項16又は17に記載の方法。
- 体液が末梢血である、請求項18に記載の方法。
- CYP7B1阻害剤の投与を同時又は別工程で行うものである、請求項16乃至19のいずれか一項に記載の方法。
- CYP7B1阻害剤がClotrimazoleである、請求項20に記載の方法。
- T細胞及び/又はB細胞のうち活性化された細胞に選択的な細胞死誘導活性又は細胞死促進活性を有する化合物をスクリーニングするin vitroの方法であって、CD4陽性T細胞に対して被検化合物を投与する工程を含み、25−ヒドロキシコレステロール合成活性を指標とした選抜を行うものである、方法。
- 25−ヒドロキシコレステロール合成活性を25−ヒドロキシコレステロールの含有量により評価するものである、請求項22に記載の方法。
- 25−ヒドロキシコレステロール合成活性をコレステロール 25−ヒドロキシラーゼ蛋白質蓄積量により評価するものである、請求項22に記載の方法。
- 25−ヒドロキシコレステロール合成活性をコレステロール 25−ヒドロキシラーゼ遺伝子のmRNA蓄積量により評価するものである、請求項22に記載の方法。
- 被検化合物に代えてIL−27を投与する試験をポジティブコントロールとして同時又は並行して行うものである、請求項22乃至25のいずれか一項に記載の方法。
- 選抜において、
[1]被検化合物添加の効果を無添加コントロールと比較する工程であって、被検化合物添加時の25−ヒドロキシコレステロール合成活性が無添加コントロールの場合と比して10以上、15以上、又は20以上を示した被検化合物を選抜する工程、
[2]被検化合物添加の効果をポジティブコントロールの効果と比較する工程であって、10ng/mL〜200ng/mLの範囲から予め選択された所定濃度(最終濃度)のIL−27を投与した場合の25−ヒドロキシコレステロール合成活性を1とした場合に、1.0以上、1.5以上、又は2.0以上の値を示した被検化合物を選抜する工程、又は[3] 上記[1]及び[2]の選抜工程
のいずれかの工程を含むものである、請求項26に記載の方法。
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