この種の眼科検査装置として、従来、例えば特許文献1に開示されたものがある。この従来技術によれば、被検眼に呈示される検査用の映像のうち視標を形成するための視標光を生成する視標光生成手段と、当該映像のうち視標以外の領域である背景を形成するための背景光を生成する背景光生成手段と、これら視標光および背景光を合成して被検眼に投射する合成手段と、が具備されている。なお、視標光および背景光のそれぞれは、無偏光の光である。そして、合成手段は、この無偏光の状態を維持したまま、視標光および背景光を合成する。
具体的には、視標呈示用の光源と、この光源から発せられた無偏光の光を平行光に補正する視標呈示用のコリメータレンズと、このコリメータレンズによって平行光に補正された光が入射される入射面を有する視標呈示用の液晶シャッタと、が設けられている。視標呈示用の液晶シャッタは、その入射面に、液晶コントローラから与えられる視標呈示用のシャッタ制御信号に従うシャッタパターンを形成し、詳しくは当該入射面のうちの一部の領域のみを透過領域とし、それ以外の領域を遮断領域とする。これとは別に、背景呈示用の光源と、この光源から発せられた無偏光の光を平行光に補正する背景呈示用のコリメータレンズと、このコリメータレンズによって平行光に補正された光が入射される入射面を有する背景呈示用の液晶シャッタと、が設けられている。背景呈示用の液晶シャッタは、液晶コントローラから与えられる背景呈示用のシャッタ制御信号に従って、その入射面に、視標呈示用の液晶シャッタのものとは全く正反対のシャッタパターンを形成する。その上で、各液晶シャッタ(透過領域)を透過した光が合成手段としての例えばハーフプリズムによって合成されて、その合成光が被検眼に投射される。ここで、背景呈示用の光源は、一定の明るさで発光する。一方、視標呈示用の光源は、背景呈示用の光源と同じ明るさで発光する第1の状態と、非発光の第2の状態と、に交互に遷移し、つまり点滅する。この結果、被検眼には、その視野の全体にわたって一様な明るさの映像と、一部の領域のみが暗く言わば抜け落ちたような映像と、が交互に呈示される。言い換えれば、当該一部の領域に対応すると共に点滅する視標と、この視標以外の領域であって当該視標が最も明るいときと同じ一定の明るさの背景と、から成る映像が、被検眼に呈示される。
即ち、視標は、背景と同じ明るさか、それよりも低い(暗い)明るさで、つまり背景以下の明るさで、被検眼に呈示される。従って、この視標が呈示されることによる被検眼への入射光量の増大が抑制され、ひいては当該被検眼(網膜)への刺激が抑制される。このことは特に、視野検査等の自覚的検査(被検者の自覚に基づく検査)において、その信頼性の向上を図る上で極めて有効である。例えば、視野検査においては、被検者(被検眼)の視野の様々な位置に視標が呈示される。被検者は、一定の(一般には被検眼の正面に呈示される)固視点を注視した状態で、この視標を実際に視認し得たときに、応答ボタンを操作する等の所定の意思表示をする。ここで例えば、被検者の視野の一部が欠損しており、この欠損部分に視標が呈示される、とする。このときもし、背景が真っ暗であり、この真っ暗な背景に明るい視標が重なって呈示されるような構成である、つまり視標の明るさが背景の明るさよりも高い(明るい)構成である、とすると、被検者は、この視標を実際に視認し得ていないにも拘らず、背景よりも高い明るさの視標が呈示されることによる刺激を受けて、あたかも当該視標を実際に視認し得ているものと勘違いする、言わば誤認識する、虞がある。この誤認識は、言うまでもなく検査の信頼性の低下を招く。これに対して、従来技術によれば、視標が背景以下の明るさで被検眼に呈示されるので、この視標が呈示されることによる被検眼への刺激が抑制され、ひいては誤認識が防止される。これにより、信頼性の高い検査が実現される。
加えて、被検眼に投射される合成光は、自然光と同じ無偏光の光である。従って例えば、被検眼に呈示される合成光が偏光光である場合に比べて、信頼性の高い検査が実現される。即ち、被検眼に呈示される合成光が偏光光である場合には、この合成光の被検眼に対する入射角度によって、当該被検眼による検査用の映像(特に視標)の見え方が変わる。従来技術によれば、このような偏光の影響がない。このこともまた、信頼性の高い検査の実現に大きく貢献する。
さらに、従来技術によれば、上述の如く視標呈示用の光源が点滅することによって、視標が点滅するが、より詳細には、視標呈示用の光源が正弦波状(sinカーブ的)に言わば緩やかに点滅することによって、視標もまた正弦波状に緩やかに点滅する。このように視標が緩やかに点滅することによって、つまり当該視標の明るさが緩やかに変化することによって、例えば視標が単に矩形波状(言わばON/OFF的)に点滅する場合に比べて、つまり当該視標の明るさが急激に変化する場合に比べて、視標が呈示されることによる被検眼への刺激がさらに抑制される。この結果、より信頼性の高い検査の実現が期待され、特に緑内障の早期発見に大きく寄与することが期待される。なお、視標の点滅周波数は、被検者の個人差等の様々な状況に適宜に対応し得るように、例えば1Hz〜120Hzの範囲で任意に制御可能とされている。
ところで上述したように、この従来技術では、被検眼に呈示される検査用の映像は、視標とそれ以外の領域である背景とから成る。そして、これら視標と背景とは、視標光生成手段と背景光生成手段という互いに別個の手段によって形成される。このため、視標光生成手段と背景光生成手段との相互の位置関係が適切であることが必要とされるが、その調整が極めて面倒である。具体的には、視標呈示用の光源から視標呈示用のコリメータレンズおよび視標呈示用の液晶シャッタを介して合成手段としてのハーフプリズムに至るまでの言わば視標光の経路(光路)と、背景呈示用の光源から背景呈示用のコリメータレンズおよび背景呈示用の液晶シャッタを介して当該ハーフプリズムに至るまでの言わば背景光の経路と、の相互の位置関係が適切であることが必要とされるが、特に各液晶シャッタの相互の位置関係の調整が極めて面倒である。また、視標光の経路と背景光の経路との互いの光学的特性等の不均衡に起因して、視標と背景とに互いの明るさや色等の差異が生じることがあり、これを是正するための調整も極めて面倒である。加えて、装置全体の構成として、視標光生成手段と背景光生成手段との他にハーフプリズム等の合成手段も必要であることから、当該装置全体の構成のさらなる簡素化を実現したい、という希望もある。
そこで、別の従来技術として、例えば特許文献2に開示されたものがある。この特許文献2に開示された言わば第2の従来技術によれば、1つの光源手段と、この光源手段から発せられた光が入射される入射面を有するライトバルブ手段と、このライトバルブ手段を制御するライトバルブ制御手段と、が具備されている。ライトバルブ手段は、例えば液晶シャッタであり、その入射面に入射された光を変調して被検眼に投射することで、視標を含む検査用の映像を被検眼に呈示する。ライトバルブ制御手段は、ライトバルブ手段の入射面の一部に入射された光によって検査用の映像のうちの視標が形成され、併せて、ライトバルブ手段の入射面の当該一部以外の部分に入射された光によって検査用の映像のうちの視標以外の領域である背景が形成されるように、ライトバルブ手段を制御する。
より具体的には、光源手段は、例えば白色発光ダイオードであり、一定の明るさで発光する。この光源手段としての白色発光ダイオードから発せられた光は、コリメータレンズによって平行光に補正された後、ライトバルブ手段としての液晶シャッタの入射面に入射される。液晶シャッタは、その入射面に、ライトバルブ制御手段としての液晶コントローラから与えられるシャッタ制御信号に従うシャッタパターンを形成し、詳しくは当該入射面全体が透過状態となる第1パターンと、当該入射面の一部の領域のみが遮断状態となる第2パターンとを、交互に形成する。言い換えれば、液晶シャッタの入射面の当該一部の領域については、透過状態と遮断状態とに交互に遷移し、液晶シャッタの入射面のそれ以外の領域については、透過状態を維持する。この液晶シャッタの入射面を透過した光は、拡大光学系を介して、被検眼に投射される。この結果、液晶シャッタの入射面の当該一部の領域に対応すると共に点滅する視標と、液晶シャッタの入射面のそれ以外の領域に対応すると共に視標が最も明るいときと同じ一定の明るさの背景と、から成る映像が、被検眼に呈示される。
即ち、この第2従来技術においても、上述の特許文献1に開示された言わば第1の従来技術におけるのと同様の検査用の映像が、被検眼に呈示される。ただし、第1従来技術においては、この検査用の映像の呈示のために、視標光生成手段と背景光生成手段と合成手段とが用いられ、特に視標の形成を担う視標光生成手段と背景の形成を担う背景光生成手段との互いに別個の手段が用いられるが、第2従来技術によれば、当該映像の呈示のために、1つの光源手段とライトバルブ手段とライトバルブ制御手段とが用いられ、つまり視標と背景とに共通の手段が用いられる。従って、第1従来技術では、視標光生成手段と背景光生成手段との相互の位置関係の調整が必要であるが、第2従来技術によれば、そのような調整は不要である。また、第1従来技術では、視標光の経路と背景光の経路との互いの光学的特性等の不均衡に起因して、視標と背景とに互いの明るさや色等の差異が生じることがあるが、第2従来技術によれば、そのような差異は生じず、ゆえに、これを是正するための調整も不要である。加えて、第2従来技術によれば、第1従来技術におけるような合成手段が不要であることを含め、装置全体の構成のさらなる簡素化が図られる。
なお、第2従来技術においても、第1従来技術と同様、視標が正弦波状(概略正弦曲線的)に点滅する。そのために、第2従来技術においては、液晶シャッタの入射面に形成されるシャッタパターンが上述の第1パターンと第2パターンとに交互に遷移する際の態様が正弦波状とされ、つまり液晶シャッタの入射面のうちの視標に対応する領域の透過率が正弦波状に緩やかに変化する。この視標の点滅周期は、例えば5ms〜1sの範囲で任意に制御可能とされている。言い換えれば、当該視標の点滅周波数は、1Hz〜200Hzの範囲で任意に制御可能とされている。
ところで、この第2従来技術におけるライトバルブ手段としての液晶シャッタは、例えばその入射面の水平方向の画素数(解像度)が1920であり、垂直方向の画素数が1080である、いわゆるFHD(Full High Definition)と呼ばれる仕様の画面解像度を有するものであり、より詳しくは(特許文献2には明記されていないが)液晶プロジェクタ用の透過型のモノクローム液晶パネルを利用したものである。ここで周知のように、液晶プロジェクタ用のものを含む表示装置用の液晶パネルにおいては、その画面の書き換え速度、いわゆるリフレッシュレート、が決まっている。このリフレッシュレートは、一般に60Hz前後であり、最高でも240Hz程度である。従って例えば、この第2従来技術における液晶シャッタとして、リフレッシュレートが240Hzである液晶パネルが採用される、とすると、当該液晶シャッタの入射面に形成されるシャッタパターンの更新周波数は、240Hzとなる。これは即ち、視標が例えば単に矩形波状に点滅する場合には、当該視標の点滅周波数が最高で120Hz(=240Hz/2)となることを、意味する。そうすると、視標が例えば上述の如く正弦波状に緩やかに点滅する場合には、当該視標の点滅周波数の上限はこの120Hzという周波数よりも遥かに低くなる。これでは、緑内障の早期発見に寄与し得るようなより信頼性の高い検査の実現は不可能である。
本発明の一実施形態について、視野計を例に挙げて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る視野計10は、発光手段としてのマトリクス型発光ダイオードユニット(以下、「LEDユニット」と言う。)12を具備している。このLEDユニット12は、図2に示すように、概略四角形状の発光面12aを有しており、この発光面12aは、マトリクス状に配置された互いに同一仕様(規格)の複数の発光素子としての複数の発光ダイオード素子(以下、「LED素子」という。)12b,12b,…によって形成されている。なお、LEDユニット12(発光面12a)の水平方向におけるLED素子12bの配置個数Hは、例えばH=1920である。そして、LEDユニット12の垂直方向におけるLED素子12bの配置個数Vは、例えばV=1080である。また、それぞれのLED素子12bは、特にその発光部は、例えばこれを正面(図2の紙面の表面側)から見たときの形状が円形状のものであるが、当該発光部の形状が概略楕円形状のものや概略四角形状のものであってもよい。
図1に戻って、LEDユニット12は、その発光面12aを後述する主光学系14に向けた状態で、当該主光学系14の光軸14a上に配置されている。より具体的には、LEDユニット12は、主光学系14の光軸14aが当該LEDユニット12の発光面12aと直交し、かつ、当該光軸14aが発光面12aの中心を通るように、配置されている。そして、主光学系14の光軸14a上であって、LEDユニット12と当該主光学系14との間に、光弁手段としての液晶シャッタ14が配置されている。
液晶シャッタ16は、例えば液晶プロジェクタ用の透過型のモノクローム液晶パネルを利用したものであり、上述したFHD仕様の画面解像度を有するものである。即ち、液晶シャッタ16は、図3に示すように、概略四角形状の画面、詳しくは入射面から液晶等の各層を介して出射面に至る言わば光弁面16a、を有しており、この光弁面16aは、マトリクス状に配置された複数の概略四角形状の光弁画素(以下、単に「画素」と言う。)16b,16b,…に区画されている。この液晶シャッタ16(光弁面16a)の水平方向における画素16bの数H’は、H’=1920であり、つまりLEDユニット12の同方向におけるLED素子12bの配置個数Hと同じ(H’=H)である。そして、当該液晶シャッタ16の垂直方向における画素数V’は、V’=1080であり、つまりLEDユニット12の同方向におけるLED素子12bの配置個数Vと同じ(V’=V)である。なお、この液晶シャッタ16のリフレッシュレートは、例えば60Hzである。
改めて図1に戻って、液晶シャッタ16は、主光学系14の光軸14が当該液晶シャッタ16の光弁面16aと直交し、かつ、当該光軸14aが光弁面16aの中心を通るように、上述の如くLEDユニット12と主光学系14との間に、配置されている。なお、LEDユニット12と液晶シャッタ16とは、互いに比較的に近接して配置されており、例えば当該LEDユニット12の発光面12aと液晶シャッタ16の光弁面16aとが主光学系14の被写界深度内に入るように配置されている。また、これらLEDユニット12と液晶シャッタ16とは、図4に示すように、当該LEDユニット12の各LED素子12b,12b,…と液晶シャッタ16の各画素16b,16b,…とが互いに1対1で対応するように配置されている。なお、図4は、液晶シャッタ16を介してLEDユニット12を見た図である。
再び図1に戻って、LEDユニット12は、それ専用の駆動手段としてのLED駆動回路18に接続されている。ここで詳しい図示は省略するが、LEDユニット12の各LED素子12b,12b,…は、個別の被制御端子を備えており、つまり個別の陽極端子と個別の陰極端子とを備えている。なお、各LED素子12b,12b,…の各陽極端子と当該各LED素子12b,12b,…の各陰極端子とのいずれかは、互いに共通の端子によって一纏めに接続されていてもよく、つまり互いに共通化されていてもよい。そして、これら各LED素子12b,12b,…の各被制御端子は、LED駆動回路18と個別に接続されている。言い換えれば、LED駆動回路18は、各LED素子12b,12b,…の各被制御端子と個別に接続される複数の制御端子を備えている。そして、LED駆動回路18は、制御手段としての制御回路20から与えられるLED制御信号Saに従って、各LED素子12b,12b,…を個別に駆動するためのLED駆動信号Sa’を生成する。このLED駆動信号Sa’は、各LED素子12b,12b,…に対して個別に、詳しくは互いに並行して個別に、与えられる。これにより、各LED素子12b,12b,…は、互いに並行して個別に動作し、つまり互いに独立して動作する。
一方、液晶シャッタ16は、それ専用の駆動手段としての液晶駆動回路22に接続されている。液晶駆動回路22は、制御回路20から与えられる液晶制御信号Sbに従って、液晶シャッタ16を駆動するための液晶駆動信号Sb’を生成する。この液晶駆動信号Sb’は、液晶シャッタ16に与えられる。これにより、液晶シャッタ16が動作し、詳しくは当該液晶シャッタ16の各画素16b,16b,…それぞれの透過率が個別に制御される。なお、この各画素16b,16b,…それぞれの透過率は、上述した60Hzというリフレッシュレートに従う周波数で更新される。
そして、主光学系14は、その被写界深度内にあるLEDユニット12の発光面12aと液晶シャッタ16の光弁面16aとを含む仮想的な平面、つまりは次に説明する検査用の映像100を形成する言わば映像形成面と、図示しない被検者の被検眼(網膜)とが、互いに共役になるように、これら両者間に、配置されている。また、この主光学系14は、その焦点を調整するための図示しない焦点調整用レンズを備えている。
検査用の映像100は、上述の映像形成面によって形成され、主にLEDユニット12の各LED素子12b,12b,…によって形成される。具体的には、図5に示すように、各LED素子12b,12b,…の一部によって、概略円形状の視標100aが形成され、当該各LED素子12b,12b,…のそれ以外によって、視標100a以外の領域である後述する背景100bが形成される。なお、視標100aのサイズは、公知のゴールドマン視野計のものに準ずる。また、図5においては、視標100aの周縁を示す2点鎖線上にあるそれぞれのLED素子12bについては、その半分以上が当該2点鎖線内にある場合に、視標100aを形成するものとされ、そうでない場合には、背景100bを形成するものとされている。この2点鎖線上にあるそれぞれのLED素子12bの取り扱いについては、これに限らず、視標100aのサイズを含む諸状況に応じて、適宜に定められる。
視標100aを形成するそれぞれのLED素子12bは、上述したLED駆動信号Sa’に従って、例えば図6に示すように、その明るさ(発光強度)が概略正弦波状に変化するように動作し、言わば緩やかに明滅する。なお、図6においては、LED素子12bの明るさの最低値はゼロであり、ゆえに厳密に言えば、当該LED素子12bは点滅する。このLED素子12bの点滅周期T、換言すれば当該点滅周期Tの逆数(1/T)である点滅周波数fは、例えば1Hz〜200Hzの範囲で任意に設定可能とされている。このような比較的に高い周波数fでLED素子12bが概略正弦波状に点滅し得るのは、当該LED素子12bが上述の如く独立して動作可能とされていること、つまりはそのような態様とされていること、による。また、このLED素子12bの明るさの最高値と最低値とについても、所定の範囲内で任意に設定可能とされている。
一方、背景100bを形成するそれぞれのLED素子12bについては、視標100aを形成するそれぞれのLED素子12bの明るさの最高値と同等の一定の明るさで点灯する。つまりはそうなるように、背景100bを形成するそれぞれのLED素子12bに上述のLED駆動信号Sa’が個別に与えられ、そのためのLED制御信号Saが生成される。
なお、液晶シャッタ16については、その光弁面16aの全ての画素16b,16b,…の透過率が最高となるように、言わば当該全ての画素16b,16b,…が開口状態となるように、動作する。つまりはそうなるように、液晶シャッタ16に上述の液晶駆動信号Sb’が与えられ、そのための液晶制御信号Sbが生成される。
この構成によれば、LEDユニット12の各LED素子12b,12b,…から発せられた光は、液晶シャッタ16の各画素16b,16b,…と主光学系14とを介して、被検眼に入射される。因みに、各LED素子12b,12b,…の発光光は、例えば概略白色の無偏光の光である。この結果、被検眼には、図7に示すような検査用の映像100が呈示される。この検査用の映像100は、視標100aと当該視標100a以外の背景100bとから成る。そして、視標100aについては、正弦波状に緩やかに点滅し、背景100bについては、当該視標100aが最も明るいときと同じ一定の明るさを維持する。なお、図7(a)は、視標100aが最も明るいときの状態を示し、図7(b)は、視標100aが最も暗いときの状態を示し、図7(c)は、図7(a)の状態と図7(b)の状態との一方から他方に遷移する途中の或る時点の状態を示す。また、視標100aの点滅周波数fは、1Hz〜200Hzの範囲で任意に設定可能とされている。
このように本実施形態によれば、視標100aと背景100bとから成る検査用の映像100が被検眼に呈示される。そして、視標100aについては、正弦波状に緩やかに点滅し、その点滅周波数fは、1Hz〜200Hzの範囲で任意に設定可能とされている。この点は、上述した第1従来技術と概ね(視標100aの点滅周波数fの上限を除いて)同様である。従って、本実施形態によれば、第1従来技術と同様、特に緑内障の早期発見に寄与し得るようなより信頼性の高い検査を実現することができる。その上で、第1従来技術では、視標と背景とが互いに別個の手段によって形成されるがゆえに、これら互いに別個の手段の相互の位置関係の調整が必要とされるが、本実施形態によれば、予めマトリクス状に配置された複数のLED素子12b,12b,…の一部によって視標100aが形成され、当該複数のLED素子12b,12b,…のそれ以外によって背景100bが形成されるので、当該第1従来技術におけるような調整は全く不要である。また、第1従来技術では、視標光の経路と背景光の経路との互いの光学的特性等の不均衡に起因して、視標と背景とに互いの明るさや色等の差異が生じることがあるが、本実施形態によれば、視標100aと背景100bとの形成を担う複数のLED素子12b,12b,…は、互いに同一仕様のものであり、つまり互いに同一の性状を有するので、当該第1従来技術におけるような差異は生じず、ゆえに、これを是正するための調整も不要である。加えて、本実施形態によれば、第1従来技術におけるような合成手段が不要であることを含め、視野計10全体の構成のさらなる簡素化が図られる。なお上述したように、第2従来技術によれば、第1従来技術におけるような調整が不要であり、また、当該第1従来技術よりも装置全体の構成のさらなる簡素化が図られるが、緑内障の早期発見に寄与し得るようなより信頼性の高い検査を実現することができない、という問題がある。これに対して、本実施形態によれば、上述の如く緑内障の早期発見に寄与し得るようなより信頼性の高い検査を実現することができる。
即ち、本実施形態によれば、面倒な調整が不要であり、また、視野計10全体の構成のさらなる簡素化が図られ、しかも、緑内障の早期発見に寄与し得るようなより信頼性の高い検査を実現することができる。言い換えれば、第1従来技術および第2従来技術それぞれの問題を解決しつつ、当該第1従来技術および第2従来技術それぞれの利点を奏することができる。
ところで、本実施形態においては、視標100aの点滅周波数fや被検眼の応答性等によっては、当該被検眼にとって、例えば図8に示すように、視標100aが点滅しているのではなく、当該視標100aが背景100bよりも少し暗い一定の明るさで呈示されるように見受けられることがある。この現象を別の観点で図示すると、例えば図9のようになる。即ち、図9(a)に示す如く視標100aが背景100bと同等のAという最高の明るさで呈示されている状態と、図9(b)に示す如く視標100aが背景100bよりも遥かに暗いゼロという最低の明るさで呈示されている状態とが、被検眼に交互に現れることによって、当該被検眼にとって、図9(c)に示す如く視標100aが背景100bよりも少し暗いB(<A)という一定の明るさで呈示されているように見受けられることがある。なお、図9(a)は、図7(a)に示した状態に対応し、図9(b)は、図7(b)に示した状態に対応する。そして、図9(c)は、図8に示した状態に対応する。このような現象が生じると、検査の信頼性(精度)に支障を来たす虞がある。
この不都合を解消するべく、本実施形態においては、図10に示すように、被検眼によって見受けられる映像100上で、背景100bの明るさが視標100aの明るさと同等になるように、当該背景100bの明るさが抑制される。この背景100の明るさの抑制は、上述の液晶シャッタ16によって行われる。即ち、液晶シャッタ16の各画素16b,16b,…のうちの背景100bに対応するものの透過率が適当に下げられ、それ以外の(視標100aに対応する)ものは開放状態を維持する。つまりはそうなるように、上述の液晶制御信号Sbが生成され、これに応じた液晶駆動信号Sb’が液晶シャッタ16に与えられる。これにより、図8に示したような不都合な現象は生じず、検査の信頼性が保たれる。
ただし、図10に示した状態では、視標100aと背景100bとを含む映像100全体の明るさが低下し、つまりAという本来の明るさからBという明るさに低下し、これもまた、不都合である。この一種の副次的な不都合を解消するべく、本実施形態においてはさらに、図11に示すように、視標100aと背景100bとを含む映像100全体の明るさが増大され、言わば底上げされる。この映像100全体の明るさの底上げは、LEDユニット12によって行われる。即ち、LEDユニット12の全てのLED素子12a,12a,…の明るさが、Aという本来の明るさとBという低下した明るさとの差分相当分Δ(=A−B)だけ底上げされる。つまりはそうなるように、上述のLED制御信号Saが生成され、これに応じたLED駆動信号Sa’が各LED素子12a,12a,…に個別に与えられる。これにより、検査用の映像100全体の明るさが本来のAという明るさに補償され、本来の検査の信頼性が保たれる。
なお、図11に示した如く映像100全体の明るさが補償された場合には、例えば図12(a)に示すように、視標100aが最高の明るさで呈示されているときに、当該視標100aの明るさが背景100bの明るさよりも高くなり、単純にはAという本来の明るさに上述の底上げ分Δが足し合わされたC(=A+Δ)という明るさになる。そして、図12(b)に示すように、視標100aが最低の明るさで呈示されているときにも、当該視標100aの明るさが本来のゼロという明るさよりも高くなり、単純には底上げ分Δに相当するD(=Δ)という明るさになる。従って、このことによる何らかの不都合が懸念される。しかしながら、図12(a)における視標100aの明るさCと、図12(b)における当該視標100aの明るさDとには、相当の差があり、また、ここで言う底上げ分Δは、映像100全体の明るさに比べて、特に背景100bの明るさに比べて、相当に小さいことから、そのような懸念はない。
本実施形態は、本発明の1つの具体例であり、本発明の範囲を限定するものではない。
例えば、LEDユニット16に注目すると、上述したように、LEDユニット16の各LED素子16b,16b,…は、個別の被制御端子を備えており、つまり当該LED素子16b,16b,…の総数(=1920×1080)に応じた膨大な数の被制御端子を備えている。このようなLEDユニット16は、例えば集積回路の積層技術を応用することで実現することはできるが、たとえそうであるとしても、当該被制御端子の数は膨大である。そして、LED駆動回路18についても、各LED素子16b,16b,…の各被制御端子と個別に接続される複数の制御端子を備えており、つまり当該被制御端子と同数の制御端子を備えている。このため、これら各LED素子16b,16b,…の各被制御端子とLED駆動回路18の各制御端子とを含む視野計10全体の構成が極めて複雑になる。この不都合を抑制するべく、次のような構成が採用されてもよい。
即ち、図13に示すように、各LED素子16b,16b,…が複数のブロック16c,16c,…に分割されてもよい。好ましくは、それぞれのブロック16cごとに、当該ブロック16cに属する各LED素子16b,16b,…がマトリクスを成すように、つまり複数の行と複数の列とを形成するように、分割されてもよい。なお、図13(a)は、LEDユニット16の垂直方向においてm(m:2以上の整数)分割され、当該LEDユニット16の水平方向においてn(n:2以上の整数)分割された状態を示す。その上で、図13(b)に示すように、それぞれのブロック16cごとに、互いに同じ行に属する各LED素子16b,16b,…の例えば各陽極端子は、互いに共通の行側被接続端子16dによって一纏めに接続され、併せて、互いに同じ列に属する各LED素子16b,16b,…の各陰極端子は、互いに共通の列側被接続端子16eによって一纏めに接続されるものとする。因みに、互いに同じ行に属する各LED素子16b,16b,…の各陰極端子が、互いに共通の行側被接続端子16dによって一纏めに接続され、併せて、互いに同じ列に属する各LED素子16b,16b,…の各陽極端子が、互いに共通の列側被接続端子16eによって一纏めに接続されてもよい。これに対して、LED駆動回路18は、詳しい図示は省略するが、各行側被接続端子16d,16d,…に個別に接続される複数の行側制御端子と、各列側被接続端子16e,16e,…に個別に接続される複数の列側接続端子と、を備えるものとする。そして、LED駆動回路18は、それぞれのブロック16cごとに、各LED素子16b,16b,…を公知のダイナミック方式で制御するものとする。この構成によれば、各LED素子16b,16b,…とLED駆動回路18とを接続する端子の数が削減され、これらの端子を含む視野計10全体の構成の簡素化が図られる。
ただし、この構成では、それぞれのブロック16cごとに、各LED素子16b,16b,…が上述の如くダイナミック方式で制御されることから、2以上の(特に全ての)LED素子16b,16b,…を同時に点灯させることができない場合があり、この場合は、当該2以上のLED素子16b,16b,…があたかも同時に点灯しているように見せ掛けるための適宜の設計が成される。また、それぞれのブロック16cごとのLED素子16bの数が過多であると、当該LED素子16bの明るさが不足することがある。これらのことを考慮して、それぞれのブロック16cごとのLED素子16bの数、換言すれば当該ブロック16cの数(m×n)は、適宜に定められる。
また、LEDユニット12のLED素子12bの数と、液晶シャッタ16の画素16bの数とは、互いに同一であり、併せて、図4に示したように、LEDユニット12の各LED素子12b,12b,…と、液晶シャッタ16の各画素16b,16b,…とは、互いに1対1で対応付けられるものとされたが、これに限らない。例えば、LEDユニット12のそれぞれのLED素子12bのサイズと、液晶シャッタ16のそれぞれの画素16bのサイズと、を比較すると、一般には、前者の方が後者よりも大きい。そこで、図14に示すように、1個のLED素子12bに対して複数個の画素16b,16b,…が対応付けられてもよい。即ち、LEDユニット12のLED素子12bの数が、液晶シャッタ16の画素16bの数よりも少ないものとされてもよい。なお、図14(a)は、1個のLED素子12bに対して4(2×2)個の画素16b,16b,…が対応付けられている状態を示し、図14(b)は、1個のLED素子12bに対して16(4×4)個の画素16b,16b,…が対応付けられている状態を示し、図14(c)は、1個のLED素子12bに対して64(8×8)個の画素16b,16b,…が対応付けられている状態を示す。勿論、これとは反対に、液晶シャッタ16の画素16bの数の方が、LEDユニット12のLED素子12bの数よりも多くてもよい。
さらに、液晶シャッタ16については、例えばその光弁面(画面)16aのサイズ(対角寸法)が1インチ前後の比較的に小さいものが採用される場合がある。この場合は大抵、LEDユニット12の発光面12aのサイズの方が、液晶シャッタ16の光弁面16aのサイズよりも大きくなる。そこで例えば、図15に示すように、LEDユニット12と液晶シャッタ16との間に、当該LEDユニット12の発光面12aから発せられた光を液晶シャッタ16の光弁面16aのサイズに整合させるための適宜の整合手段30が設けられてもよい。なお、図15は、整合手段16として、収束レンズ群32と発散レンズ群34とから成る無焦点系のコンバージョンレンズが設けられた例を示す。
また、液晶シャッタ16として、例えばその光弁面16aのサイズが10インチ以上の比較的に大きいものが採用され、併せて、LEDユニット12として、その発光面12aのサイズが当該液晶シャッタ16の光弁面16aのサイズと同等のものが採用されてもよい。そして、これらLEDユニット12と液晶シャッタ12とは、互いに比較的に近接して設けられ、極端には互いに密着されてもよい。この構成によれば、上述した主光学系14が設けられなくとも、当該LEDユニット12と液晶シャッタ12と(による上述の映像形成面)を直接的に見ることによる視野の検査が実現される。即ち、装置全体の構成から主光学系14が排除され、当該装置全体の構成のさらなる簡素化が実現される。
本実施形態においては、発光手段として、複数のLED素子12b,12b,…がマトリクス状に配置されたマトリクス型のLEDユニット12が採用されたが、これに限らない。例えば、各LED素子12b,12b,…が概略ハニカム状に配置されたものが採用されてもよい。また、各LED素子12b,12b,…は、白色のものに限らず、カラーのものであってもよい。さらに、EL(Electroluminescence)ディスプレイ、とりわけ有機ELディスプレイや、それ以外のものが、発光手段として採用されてもよい。
そして、視標100aについては、概略円形状とされたが、これに限らない。例えば、三角形状や四角形状等の多角形状であってもよいし、棒状や環状等であってもよく、つまり適宜の形状とされてもよい。また、複数の視標100a,100a,…が同時に呈示されてもよい。さらに、視標100aは、概略正弦波状に明滅(点滅)するものとしたが、これに限らず、概略鋸歯状や概略三角形状等の当該概略正弦波状以外の態様で明滅するものとしてもよい。
加えて、背景100bについては、(図12に示した場合を除いて)視標100aが最も明るいときと同等の一定の明るさとされたが、これに限らない。例えば、背景100bの形成を担う各LED素子12b,12b,…が常に消灯状態とされることで、当該背景100bが真っ暗な状態で呈示され、つまり当該背景100bが視標100a以下の明るさで呈示されてもよい。ただし、本実施形態で説明したように、背景100bについては、視標100aが最も明るいときと同等の一定の明るさとされることで、当該視標100aが呈示されることによる被検眼への刺激の抑制が図られ、ひいては信頼性の高い検査の実現が図られる。
さらに、光弁手段としての液晶シャッタ16については、上述の如く背景100bの明るさを抑制する機能、換言すれば当該背景100bの明るさを微調整する機能、を発揮する。そして、この液晶シャッタ16は、背景100bの明るさのみ成らず、視標100aの明るさをも微調整することができる。即ち、液晶シャッタ16は、視標100aの明るさと背景100bの明るさとを個別に微調整する機能を発揮する。ここで、視標100aの明るさと背景100bの明るさとは、これらの形成を担うLEDユニット12の各LED素子12b,12b,…それぞれの発光強度によって制御できることを鑑みると、これとは別個に、液晶シャッタ16によっても個別に微調整できることは、より信頼性の高い検査の実現に大きく貢献する。
また、液晶シャッタ16は、視標100aと背景100bとを含む検査用の映像100の画質の向上にも、大きく貢献する。例えば、LEDユニット12の各LED素子12b,12b,…の性状等の相違によって、検査用の映像100の明るさに斑が生じた場合、この液晶シャッタ16によって、当該斑を解消することができる。つまりはそうなるように、液晶シャッタ16の各画素16b,16b,…の透過率が個別に制御されることで、検査用の映像100の画質の向上が図られる。このような用途であれば、リフレッシュレートに起因して動作速度が制限される液晶シャッタ16であっても、本発明における光弁手段として十分に適用することができる。
加えて、光源手段としては、透過型の液晶シャッタ16に限らず、例えば反射型の液晶シャッタが採用されてもよい。この場合、LEDユニット12から発せられた光は、当該反射型の液晶シャッタによって反射される。そして、この反射型の液晶シャッタによる反射光が、主光学系14を介して被検眼に呈示される。また、多数の微小ミラーが2次元状に配置されたマイクロミラーデバイスという電子光学部品が知られているが、このマイクロミラーデバイスが、光弁手段として採用されてもよい。この場合も、LEDユニット12から発せられた光は、当該マイクロミラーデバイスによって反射され、この反射光が、主光学系14を介して被検眼に呈示される。
なお、本実施形態で説明した視野計10は、静的視野測定に供されるものであるが、これに限らず、動的視野測定に供されるものにも、本発明を適用することができる。また、本発明は、視野計10に限らず、それ以外の眼科検査装置にも適用することができる。