JPWO2017179726A1 - 中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するデングワクチン抗原 - Google Patents

中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するデングワクチン抗原 Download PDF

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Abstract

中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するデングワクチン抗原であって、デングウイルスエンベロープ蛋白質のアミノ酸配列の第107位または第87位のアミノ酸に変異を有するエンベロープ蛋白質を含むことを特徴とするデングワクチン抗原。本発明のデングワクチン抗原は、中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制しないことから、低いワクチンドーズであっても高い防御効力が期待でき、高い安全性で、デング熱またはデング出血熱を治療または予防するために好適に用いられる。

Description

本発明は、中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するデングワクチン抗原、該抗原を含有または発現するデングワクチン、および該抗原または該抗原を発現するデングウイルスの取得方法に関するものである。
デングウイルスはフラビウイルス科、フラビウイルス属に属するウイルスである。フラビウイルス属には、デングウイルスの他に日本脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、ウエストナイルウイルスなどが含まれる。デングウイルスに感染した場合、多くは不顕性感染にとどまるが、発症した場合は軽い一過性の熱性疾患から死に至るまで幅広い症状を呈する。デング熱は、頭痛、筋肉痛、関節痛、眼窩痛などの痛みを伴う高熱が1週間ほど続く病気である。この症状にさらに血管透過性亢進、出血傾向を呈する重症型はデング出血熱と称される。
デングウイルスには生物学的分類上の「種(species)」として、1型から4型の4種(これらを血清型と称している)が存在し、いずれもデング熱またはデング出血熱を引き起こす。疫学的には、初感染ではデング熱を発症することが多い。しかし、初回の感染からある程度の期間を経て2回目の感染が起こった場合、それが初感染と同じ血清型であれば防御されるが、異なる血清型のデングウイルスに感染すると重症化する場合があることが知られている。
デング熱およびデング出血熱は、その制圧に世界が取り組む最重要の蚊媒介感染症であるが、未だにWHOが認定したデングワクチンは存在しない。現在、弱毒ワクチン、不活化ワクチン、サブユニットワクチンなど、種々の戦略で開発が進行中であり、6種の候補ワクチンがライセンス化あるいは臨床試験段階にある。フラビウイルスが引き起こす病気の中で、黄熱、日本脳炎やダニ媒介性脳炎に対しては既にワクチンが市場化されており、いずれも中和抗体を誘導するタイプのワクチンである。中和抗体が防御の主要因子であり、血中のウイルス量を効果的に低下させることにより、ウイルスの病原性や体内移動、そして媒介蚊への伝播効率を抑制し、個人や社会を病気から守る。
デングワクチンについても同様の考え方で、中和抗体誘導型ワクチンの開発が進められてきた。しかし、他のフラビウイルスとは異なり、デングウイルスに対する中和抗体は低濃度で感染増強活性を示す。抗体依存性感染増強現象は、デング重症化を説明する最も有力な仮説である(非特許文献1)。したがって、デングワクチンの安全性に疑問を投ずる研究者も多く、一例としてワクチンにより誘導された中和抗体のレベルが時間の経過とともに低下した時に感染増強抗体となり、ワクチン接種が原因で重症化することが懸念される(非特許文献2)。
デングワクチンとして最も開発が進んでいるのは、サノフィパスツール社の組換えキメラワクチンである。既に第3相臨床試験が終了し、3か国でライセンスを受けた。デング熱にはヒトの病態を表す適切な動物モデルがなく、また防御の免疫学的指標が定まっていないため、候補ワクチンの正確な防御効力は多数のヒトを対象としなければ求めることはできない。したがって、この第3相臨床試験は世界初のデングワクチン効力データを提供することとなった。しかも、アジアやアメリカの10か国で3万人を対象とした大規模試験であったため、このデータは個人差や環境の違いを凌駕した信頼のできるデータである。一方、他社の候補ワクチンは第2相臨床試験中であり、これが現在のところ世界で唯一の効力試験である。このワクチンは前臨床試験が良好な成績であったため、臨床試験への期待が大きかったが、防御効力は全体で約60%と意外な低さであった(非特許文献3、4)。全例で高い中和抗体の誘導が認められたにもかかわらず、実際の防御効力が低いことは驚くべき結果であった。この成績はワクチン3回接種後から2年間の観察データであったが、接種後3〜4年目のデータが最近発表され、それによると9歳以下の集団では、防御効力は全体で約45%に低下していた(非特許文献5)。さらに、一部の集団ではワクチン接種により病気になるリスクが高まった。
効力の低い理由が論議されてきたが、1つの因子として感染増強抗体の誘導が挙げられる。認可ワクチンが現存する上記のフラビウイルス疾患では感染増強現象が自然界では見られず、そのワクチンの効力は80〜90%を超える。一方、デング熱では感染増強現象が認められ、また流行地ではデング抗体陽性者のすべてが感染増強抗体を保有していることから(非特許文献6)、自然感染により感染増強抗体が誘導されることは明らかである。したがって、自然感染後と同様、ワクチン接種後に中和抗体とともに感染増強抗体も誘導されたため、これが高い中和抗体誘導にもかかわらず効力を低下させたと考えられる。
ワクチン抗原として使用されるのは、通常は自然界から分離された株である。ジェンナーやパスツールの時代から、その技術は受け継がれてきた。しかし、デングワクチンの場合、自然界の株自体が感染増強抗体を誘導するため、そのままワクチン抗原として使用することは適切ではない。人為的なエンベロープ抗原エピトープの改変により、中和抗体誘導能を残して感染増強抗体誘導の低下を導いた成功例は、これまでに2例報告されている(非特許文献7、8)。したがって、エピトープ改変により感染増強抗体の誘導をコントロールすることは可能である。しかし、いずれも構造生物学や蛋白質計算科学の手法にバイオインフォーマティクスの助けを借りて、変異アミノ酸を推定する戦略であり、推定されたアミノ酸が実際に生きた蛋白質であるか否かの証明はない。ウイルス粒子構造の中で、調和のとれたエンベロープ(E)蛋白質でなければ、免疫原性や収量が低い等のワクチン製造上の問題が生じる。具体的には、例えば不活化ワクチンを製造する際には、感染性のあるウイルス粒子を細胞内で大量に増殖させる必要がある。
Halstead SB.: Neutralization and antibody-dependent enhancement of dengue viruses. Adv Virus Res. 2003;60:421-67. Huisman W, Martina BE, Rimmelzwaan GF, Gruters RA, Osterhaus AD.: Vaccine-induced enhancement of viral infections. Vaccine. 2009 Jan 22;27(4):505-12. Capeding MR, Tran NH, Hadinegoro SR, Ismail HI, Chotpitayasunondh T, Chua MN, et al. Clinical efficacy and safety of a novel tetravalent dengue vaccine in healthy children in Asia: a phase 3, randomised, observer-masked, placebo-controlled trial. Lancet 2014;384:1358-65. Villar L, Dayan GH, Arredondo-Garcia JL, Rivera DM, Cunha R, Deseda C, et al. Efficacy of a tetravalent dengue vaccine in children in Latin America. N Engl J Med 2015;372:113-23. Hadinegoro SR, Arredondo-Garcia JL, Capeding MR, Deseda C, Chotpitayasunondh T, Dietze R, Ismail HI, Reynales H, Limkittikul K, Rivera-Medina DM, Tran HN, Bouckenooghe A, Chansinghakul D, Cortes M, Fanouillere K, Forrat R, Frago C, Gailhardou S, Jackson N, Noriega F, Plennevaux E, Wartel TA, Zambrano B, Saville M; CYD-TDV Dengue Vaccine Working Group.: Efficacy and Long-Term Safety of a Dengue Vaccine in Regions of Endemic Disease. N Engl J Med. 2015 Jul 27. Yamanaka A, Tabuchi Y, Mulyatno KC, Susilowati H, Hendrianto E, Soegijanto S, Konishi E.: Dengue virus infection-enhancing and neutralizing antibody balance in children of the Philippines and Indonesia. Microbes Infect. 2012 Nov;14(13):1152-9. Crill WD, Hughes HR, Trainor NB, Davis BS, Whitney MT, Chang GJ. Sculpting humoral immunity through dengue vaccination to enhance protective immunity. Front Immunol. 2012 Nov 8;3:334. Tang CT, Li PC, Liu IJ, Liao MY, Chiu CY, Chao DY, Wu HC. An Epitope-Substituted DNA Vaccine Improves Safety and Immunogenicity against Dengue Virus Type 2. PLoS Negl Trop Dis. 2015 Jul 2;9(7):e0003903.
本発明は、中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するデングワクチン抗原、および該抗原を含有または発現するデングワクチンを提供することを課題とする。また、本発明は、中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するデングワクチン抗原または該抗原を発現するデングウイルスを取得する方法を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の各発明を包含する。
[1]中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するデングワクチン抗原であって、デングウイルスエンベロープ蛋白質のアミノ酸配列の第107位または第87位のアミノ酸に変異を有するエンベロープ蛋白質を含むことを特徴とするデングワクチン抗原。
[2]第107位のロイシンが、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、プロリン、アラニン、バリンおよびイソロイシンから選択される1種に置換されていることを特徴とする前記[1]に記載のデングワクチン抗原。
[3]第107位のロイシンが、フェニルアラニンに置換されていることを特徴とする前記[2]に記載のデングワクチン抗原。
[4]第107位のアミノ酸に変異を有するエンベロープ蛋白質が、配列番号4で示されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列からなることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載のデングワクチン抗原。
[5]第87位のアスパラギン酸が、グルタミン酸、チロシン、システイン、アルギニン、ヒスチジン、リジン、セリン、トレオニン、グルタミン、アスパラギンおよびグリシンから選択される1種に置換されていることを特徴とする前記[1]に記載のデングワクチン抗原。
[6]第87位のアスパラギン酸が、アスパラギンに置換されていることを特徴とする前記[5]に記載のデングワクチン抗原。
[7]第87位のアミノ酸に変異を有するエンベロープ蛋白質が、配列番号5で示されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列からなることを特徴とする前記[1]、[5]または[6]に記載のデングワクチン抗原。
[8]前記[1]〜[7]のいずれかに記載のデングワクチン抗原を含有または発現することを特徴とするデングワクチン。
[9]デングウイルスエンベロープ蛋白質のアミノ酸配列の第107位または第87位のアミノ酸に変異を有するエンベロープ蛋白質、該エンベロープ蛋白質をコードする核酸、該エンベロープ蛋白質をコードする核酸を含むベクター、または該エンベロープ蛋白質を発現するデングウイルスを含有することを特徴とする前記[8]に記載のデングワクチン。
[10]デングウイルス以外の病原体に対するワクチン成分を含むことを特徴とする前記[8]または[9]に記載のデングワクチン。
[11]中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するデングワクチン抗原または該抗原を発現するデングウイルスを取得する方法であって、以下の工程(1)〜(5)を含むことを特徴とする方法:
(1)デングウイルスのエンベロープ蛋白質を抗原として、感染増強活性を有するが中和活性を有しないモノクローナル抗体を取得する工程、
(2)(1)で得られたモノクローナル抗体のクラスまたはサブクラスを変更することにより、中和活性を有するモノクローナル抗体を取得する工程、
(3)(2)で得られた中和活性を有するモノクローナル抗体の存在下でデングウイルス感染細胞を培養することにより、該モノクローナル抗体により中和されない変異デングウイルスを取得する工程、
(4)(3)で得られた変異デングウイルスのエンベロープ蛋白質に生じた変異を確認する工程、および
(5)(3)で得られた変異デングウイルスのエンベロープ蛋白質が感染増強抗体の誘導を抑制することを確認する工程。
[12]中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するデングワクチン抗原であって、アミノ酸配列の第107位および第87位のアミノ酸に変異を有するデングウイルスエンベロープ蛋白質と2位のアミノ酸に変異を有さないデングウイルス前駆膜蛋白質を含むことを特徴とするデングワクチン抗原。
[13]前記[12]に記載のデングワクチン抗原を含有または発現することを特徴とするデングワクチン。
本発明はまた、以下の各発明も包含する。
[14]前記[1]〜[7]、[12]のいずれかに記載のデングワクチン抗原または前記[8]〜[10]、[13]のいずれかに記載のデングワクチンを含有してなる、デング熱またはデング出血熱の予防または治療用医薬組成物。
[15]前記[1]〜[7]、[12]のいずれかに記載のデングワクチン抗原または前記[8]〜[10]、[13]のいずれかに記載のデングワクチンを投与することを特徴とする、デング熱またはデング出血熱の予防または治療方法。
[16]デング熱またはデング出血熱を予防および/または治療するための、前記[1]〜[7]、[12]のいずれかに記載のデングワクチン抗原または前記[8]〜[10]、[13]のいずれかに記載のデングワクチンの使用。
[17]デング熱またはデング出血熱の予防および/または治療に用いるための、前記[1]〜[7]、[12]のいずれかに記載のデングワクチン抗原または前記[8]〜[10]、[13]のいずれかに記載のデングワクチン。
[18]デング熱またはデング出血熱の予防および/または治療用医薬を製造するための、前記[1]〜[7]、[12]のいずれかに記載のデングワクチン抗原または前記[8]〜[10]、[13]のいずれかに記載のデングワクチンの使用。
本発明により、中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するデングワクチン抗原、および該抗原を含有または発現するデングワクチンを提供することができる。また、中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するデングワクチン抗原または該抗原を発現するデングウイルスを取得する方法を提供することができる。本発明のデングワクチンは、感染増強抗体の誘導を抑制することができるので、感染増強抗体存在下において阻害される中和抗体活性の効果を高めて防御効力を発揮できる点で、また懸念される重症化を防止できる点で非常に有用である。
図1は、デング1型ウイルス望月株に対するモノクローナル抗体の感染増強活性および中和活性を確認した結果を示す図であり、左は高濃度で中和活性を示し低濃度で感染増強活性を示したモノクローナル抗体の代表例(D1-I-15C12)の結果、中央は中和活性のみを示したモノクローナル抗体の代表例(D1-IV-7F4)の結果、右は感染増強活性のみを示したモノクローナル抗体の代表例(D1-V-3H12)の結果である。 図2は、感染増強活性のみを示した3H12抗体のサブクラスを置換した抗体(3H12-IgG2aおよび3H12-IgG2b)のデング1型ウイルス望月株に対する中和活性を確認した結果を示す図である。 図3は、中和活性を示した抗体(3H12-IgG2b)の存在下で、デング1型ウイルス望月株に感染したVero細胞を継代培養して得られたエスケープミュータントウイルスに対する3H12抗体の感染増強活性を確認した結果を示す図である。 図4は、エスケープミュータントウイルスに見出されたエンベロープ蛋白質の87位(E87)および107位(E107)の両方またはいずれか一方に変異を持つ1回感染型粒子(SRIP)に対する3H12抗体の感染増強活性を確認した結果を示す図である。 図5は、E87およびE107の両方またはいずれか一方に変異を持つデング1型ウイルス望月株のエンベロープ蛋白質をコードするDNAを含むプラスミドDNAを用いてマウスを免疫し、得られた血清中の抗体のデング1型ウイルス望月株に対する中和活性および感染増強活性を確認した結果を示す図であり、Aは中和活性の結果、Bは感染増強活性の結果である。 図6は、E87およびE107の両方またはいずれか一方に変異を持つデング1型ウイルス望月株のエンベロープ蛋白質をコードするDNAを含むプラスミドDNAを用いてマウスを免疫し、得られた血清中の抗体のデング2型ウイルス(New Guinea C株)、デング3型ウイルス(H87株)またはデング4型ウイルス(H241株)に対する中和活性および感染増強活性を確認した結果を示す図であり、Aは中和活性の結果、Bは感染増強活性の結果である。 図7は、デング2型ウイルス(New Guinea C株)、デング3型ウイルス(H87株)、デング4型ウイルス(H241株)のエンベロープ蛋白質(E抗原)のE87またはE107に変異を導入した1回感染型粒子(SRIP)に対する3H12抗体の感染増強活性を確認した結果を示す図である。 図8は、デング2型ウイルス(New Guinea C株)、デング3型ウイルス(H87株)、デング4型ウイルス(H241株)のエンベロープ蛋白質の各E87またはE107に変異を導入したエンベロープ蛋白質(E抗原)を発現するプラスミドDNAを用いてマウスを免疫し、得られた血清中の抗体の対応する血清型ウイルスに対する感染増強活性を確認した結果を示す図である。 図9は、デング1型ウイルス望月株のE領域のE107またはE87のアミノ酸に種々のアミノ酸への1点変異を導入した蛋白質を発現するプラスミドDNAを用いてマウスを免疫し、得られた血清中の抗体の全ての血清型ウイルスに対する感染増強活性の結果を示す図である。 図10は、3H12抗体の感染増強活性を、株が異なるデングウイルスのエンベロープ蛋白質のE87またはE107に変異を導入したSRIPに対して確認した結果を示す図である。 図11は、デング1型ウイルス(遺伝子型I、BDV-1)、デング2型ウイルス(遺伝子型American、BDV-2)、デング3型ウイルス(遺伝子型I、BDV-3)、デング4型ウイルス(遺伝子型III、BDV-4)の各エンベロープ蛋白質のE87またはE107に変異を導入したエンベロープ蛋白質を発現するプラスミドDNAを用いてマウスを免疫し、得られた血清中の抗体の全ての血清型ウイルスに対する中和活性の結果を示す図である。 図12は、デング1型ウイルス(遺伝子型I、BDV-1)、デング2型ウイルス(遺伝子型American、BDV-2)、デング3型ウイルス(遺伝子型I、BDV-3)、デング4型ウイルス(遺伝子型III、BDV-4)の各エンベロープ蛋白質のE87またはE107に変異を導入したエンベロープ蛋白質を発現するプラスミドDNAを用いてマウスを免疫し、得られた血清中の抗体の全ての血清型ウイルスに対する感染増強活性の結果を示す図である。 図13は、デング1型ウイルス(遺伝子型I、BDV-1)、デング2型ウイルス(遺伝子型American、BDV-2)、デング3型ウイルス(遺伝子型I、BDV-3)、デング4型ウイルス(遺伝子型III、BDV-4)の各エンベロープ蛋白質のE87またはE107に変異を持つエンベロープ蛋白質を発現するプラスミドDNAを混合したデング4価ワクチンを用いてマウスを免疫し、得られた血清中の抗体の全ての血清型ウイルスに対する中和活性の結果を示す図である。 図14は、デング1型ウイルス(遺伝子型I、BDV-1)、デング2型ウイルス(遺伝子型American、BDV-2)、デング3型ウイルス(遺伝子型I、BDV-3)、デング4型ウイルス(遺伝子型III、BDV-4)の各エンベロープ蛋白質のE87またはE107に変異を持つエンベロープ蛋白質を発現するプラスミドDNAを混合したデング4価ワクチンを用いてマウスを免疫し、得られた血清中の抗体の全ての全ての血清型ウイルスに対する感染増強活性の結果を示す図である。 図15は、デング1型ウイルス(望月株)の前駆膜(prM)蛋白質の2位アミノ酸および/またはエンベロープ蛋白質のE87とE107の両方に変異を導入した蛋白質を発現するプラスミドDNAを用いてマウスを免疫し、得られた血清中の抗体の全ての血清型ウイルスに対する中和活性の結果を示す図である。 図16は、デング1型ウイルス(望月株)の前駆膜(prM)蛋白質の2位アミノ酸および/またはエンベロープ蛋白質のE87とE107の両方に変異を導入した蛋白質を発現するプラスミドDNAを用いてマウスを免疫し、得られた血清中の抗体の全ての血清型ウイルスに対する感染増強活性の結果を示す図である。 図17は、デング1型ウイルス(望月株)の前駆膜(prM)蛋白質の2位アミノ酸および/またはエンベロープ蛋白質のE87とE107の両方に変異を持つ1回感染型粒子(SRIP)に対する3H12抗体の感染増強活性を確認した結果を示す図である。
〔デングワクチン抗原〕
本発明は、中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するデングワクチン抗原を提供する。本明細書において、「中和抗体」はデングウイルスの細胞への感染を阻害する活性を有する抗体を意味し、「感染増強抗体」はデングウイルスの細胞への感染を増強する活性を有する抗体を意味する。ここで、「中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制する」とは、本発明のデングワクチン抗原が、デングウイルスに対する中和活性を有し、かつ、感染増強活性が抑制された抗体を誘導するものであって、以降、単に「ワクチン抗原」あるいは「デングウイルス抗原」と記載することもある。
本発明のワクチン抗原は、デングウイルスエンベロープ蛋白質のアミノ酸配列の第107位または第87位のアミノ酸が変異したエンベロープ蛋白質を含むものであればよい(以降、便宜上、前記ワクチン抗原のことを、態様Aのワクチン抗原と記載することもある)。即ち、本発明の態様Aのワクチン抗原としては、デングウイルスエンベロープ蛋白質のアミノ酸配列の第107位のアミノ酸が変異したエンベロープ蛋白質を含むものと、デングウイルスエンベロープ蛋白質のアミノ酸配列の第87位のアミノ酸が変異したエンベロープ蛋白質を含むものが挙げられる。基礎となる野生型デングウイルスエンベロープ蛋白質(第107位および第87位のアミノ酸に変異がないデングウイルスエンベロープ蛋白質)のアミノ酸配列は、デングウイルスエンベロープ蛋白質のアミノ酸配列である限りどのようなアミノ酸配列でもよい。また、本発明のワクチン抗原は、1型、2型、3型および4型のいずれの血清型のデングウイルス由来のエンベロープ蛋白質を含むものであってもよい。即ち、本発明において、単に「デングウイルス」と総称する場合は、血清型は特に限定されず全ての血清型を含むものである。一例として、デング1型ウイルス望月株のエンベロープ蛋白質のアミノ酸配列を配列番号1に示す。
デングウイルスはフラビウイルス属に属するウイルス(フラビウイルス)であり、全長約11kbの+鎖RNAをゲノムとして有している。このゲノム上には一つの読み取り枠があり、3種の構造タンパク(C, prM, E)と7種の非構造タンパク(NS1, NS2A, NS2B, NS3, NS4A, NS4B, NS5)が、この順にコードされている。上流(5’側)から3番目のE蛋白質がエンベロープ蛋白質である。デング1型ウイルス望月株のゲノムの塩基配列を配列番号2に、当該ゲノムにコードされる全長蛋白質のアミノ酸配列を配列番号3にそれぞれ示す。望月株の全長蛋白質のアミノ酸配列(配列番号3)において、エンベロープ蛋白質は第281位〜第775位に該当し、エンベロープ蛋白質をコードする塩基配列は配列番号2で示される塩基配列の第935位〜第2419位に該当する。したがって、配列番号1で示されるアミノ酸配列の第107位は、配列番号3で示されるアミノ酸配列の第387位に該当する。prM蛋白質とエンベロープ蛋白質(E蛋白質)の境界、およびエンベロープ蛋白質(E蛋白質)とNS1蛋白質の境界はいずれも宿主細胞のシグナラーゼ(signalase)で切断される。
以下の表1に、各血清型の代表的なデングウイルス株とその配列情報(アクセッション番号)を示す。また、表2に、表1に示す株について、検出国、分離年、遺伝子型の情報を含めたものも示す。
本発明の態様Aのワクチン抗原は、中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するものである限り、エンベロープ蛋白質の第107位の変異はどのような変異でもよいが、第107位のアミノ酸が他のアミノ酸に置換された変異であることが好ましい。中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するワクチン抗原である限り、置換前のアミノ酸と置換後のアミノ酸の組み合わせは限定されない。好ましくは、エンベロープ蛋白質の第107位のロイシンが、他のアミノ酸に置換されているワクチン抗原であり、より好ましくはエンベロープ蛋白質の第107位のロイシンが、他の疎水性アミノ酸に置換されているワクチン抗原である。他の疎水性アミノ酸としては、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、プロリン、アラニン、バリンおよびイソロイシンが挙げられる。したがって、本発明の態様Aのワクチン抗原は、第107位のロイシンが、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、プロリン、アラニン、バリンおよびイソロイシンから選択される1種に置換されていることがより好ましい。さらに好ましくは、エンベロープ蛋白質の第107位のロイシンがフェニルアラニンに置換された変異を有するワクチン抗原である。また、エンベロープ蛋白質の第107位のロイシンが親水性アミノ酸に置換されているワクチン抗原であってもよく、例えば、グルタミン酸、チロシン、システイン、アルギニン、ヒスチジン、リジン、セリン、トレオニン、グルタミン、アスパラギン等に置換されたワクチン抗原が例示される。
本発明の態様Aのワクチン抗原は、中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するものである限り、エンベロープ蛋白質の第87位の変異はどのような変異でもよいが、第87位のアミノ酸が他のアミノ酸に置換された変異であることが好ましい。中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するワクチン抗原である限り、置換前のアミノ酸と置換後のアミノ酸の組み合わせは限定されない。好ましくは、エンベロープ蛋白質の第87位のアスパラギン酸が、他の極性アミノ酸を含むアミノ酸に置換されているワクチン抗原であり、エンベロープ蛋白質の第87位のアスパラギン酸が、グルタミン酸、チロシン、システイン、アルギニン、ヒスチジン、リジン、セリン、トレオニン、グルタミン、アスパラギンおよびグリシンから選択される1種に置換されていることがより好ましい。また、エンベロープ蛋白質の第87位のアスパラギン酸が、疎水性アミノ酸、例えば、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン等に置換されているものもより好ましい。さらに好ましくは、エンベロープ蛋白質の第87位のアスパラギン酸がアスパラギンに置換された変異を有するワクチン抗原である。
本発明の態様Aのワクチン抗原は、中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制することができる限り、第107位または第87位以外の位置のアミノ酸変異を有するエンベロープ蛋白質を含むものであってもよい。第107位または第87位以外の位置は特に限定されず、置換されるアミノ酸の種類も特に限定されない。また、第107位または第87位以外の位置のアミノ酸変異の数も限定されず、1個、2個、3個、4個または5個であってもよい。変異の数の上限は特に限定されないが、第107位または第87位のアミノ酸変異を含めて50個以下が好ましく、40個以下がより好ましく、30個以下がさらに好ましく、20個以下がさらに好ましく、10個以下がさらに好ましい。
本発明の態様Aのワクチン抗原の一態様としては、デング1型ウイルス望月株のエンベロープ蛋白質のアミノ酸配列の第107位または第87位のアミノ酸が変異したエンベロープ蛋白質を含むものであることが好ましい。このようなワクチン抗原としては、配列番号4または配列番号5で示されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列からなるエンベロープ蛋白質を含むワクチン抗原が挙げられる。配列番号4で示されるアミノ酸配列は、配列番号1で示されるデング1型ウイルス望月株のエンベロープ蛋白質のアミノ酸配列において、第107位のロイシンがフェニルアラニンに置換したアミノ酸配列であり、配列番号5で示されるアミノ酸配列は、配列番号1で示されるデング1型ウイルス望月株のエンベロープ蛋白質のアミノ酸配列において、第87位のアスパラギン酸がアスパラギンに置換したアミノ酸配列である。これらのアミノ酸配列からなるエンベロープ蛋白質は、中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制することができるエンベロープ蛋白質であることが確認されている。
配列番号4で示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、例えば、望月株以外のデング1型ウイルスのアミノ酸配列において第107位のロイシンがフェニルアラニンに置換したアミノ酸配列が挙げられる。また、例えば、配列番号4で示されるアミノ酸配列において、第87位と第107位以外の部位に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列が挙げられる。配列番号5で示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、例えば、望月株以外のデング1型ウイルスのアミノ酸配列において第87位のアスパラギン酸がアスパラギンに置換したアミノ酸配列が挙げられる。また、例えば、配列番号5で示されるアミノ酸配列において、第87位と第107位以外の部位に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列が挙げられる。「1〜数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ポリペプチド作製法により欠失、置換もしくは付加できる程度の数(好ましくは20個以下、より好ましくは10個以下、さらに好ましくは7個以下、さらに好ましくは5個以下、さらに好ましくは3個以下、さらに好ましくは2個以下、さらに好ましくは1個)のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されることを意味する。このような変異蛋白質は、公知の変異ポリペプチド作製法により人為的に導入された変異を有する蛋白質に限定されるものではなく、天然に存在する変異蛋白質を単離精製したものであってもよい。実質的に同一のアミノ酸配列は、配列番号4または配列番号5で示されるアミノ酸配列と少なくとも60%同一、好ましくは少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%または99.5%同一であるアミノ酸配列(ただし、配列番号4と実質的に同一のアミノ酸配列は第107位がフェニルアラニンであり、配列番号5と実質的に同一のアミノ酸配列は第87位がアスパラギンである)が挙げられる。なお、配列の同一性は、公知の方法に従って決定することができる。
配列番号4または配列番号5で示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列からなるエンベロープ蛋白質は、配列番号4または配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるエンベロープ蛋白質と同様に、中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制することができるエンベロープ蛋白質であることを要する。配列番号4または配列番号5で示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列からなるエンベロープ蛋白質が中和抗体を誘導すること、および感染増強抗体の誘導を抑制することは、例えば実施例に記載の実験を行うことにより、確認することができる。
本発明はまた、デングワクチン抗原の別の態様として、デングウイルスエンベロープ蛋白質以外に、該エンベロープ蛋白質の上流に隣接する前駆膜(prM)蛋白質を含み、中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するものを提供する。以降、便宜上、前記ワクチン抗原のことを、態様Bのワクチン抗原と記載することもある。なお、基礎となる野生型デングウイルスの前駆膜(prM)蛋白質とエンベロープ蛋白質のアミノ酸配列は、デングウイルス由来のアミノ酸配列である限りどのようなアミノ酸配列でもよく、1型、2型、3型および4型のいずれの血清型のデングウイルス由来のものであってもよく、血清型の組み合わせも特に限定されない。好ましくは、prM蛋白質とエンベロープ蛋白質は同じ血清型である。
態様Bのワクチン抗原においては、エンベロープ蛋白質の第107位および第87位のアミノ酸が共に変異し、かつ、prM蛋白質の第2位のアミノ酸が変異しないことを特徴とする。ここで、第107位の変異および第87位の変異は、いずれもどのような変異でもよく、前記態様Aのワクチン抗原における変異をそれぞれ参照することができる。態様Bのワクチン抗原としては、具体的には、例えば、第107位のロイシンが、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、プロリン、アラニン、バリンおよびイソロイシンから選択される1種に置換され、第87位のアスパラギン酸が、グルタミン酸、チロシン、システイン、アルギニン、ヒスチジン、リジン、セリン、トレオニン、グルタミン、アスパラギンおよびグリシンから選択される1種に置換され、かつ、prM蛋白質の第2位のアミノ酸が変異しないデングワクチン抗原が好ましく、第107位のロイシンがフェニルアラニンに置換され、第87位のアスパラギン酸がアスパラギンに置換され、かつ、prM蛋白質の第2位のアミノ酸が変異しないデングワクチン抗原がより好ましい。
態様Bのワクチン抗原におけるエンベロープ蛋白質は、第107位および第87位のアミノ酸変異以外に、その他の位置においてアミノ酸変異を有するものであってもよい。位置は特に限定されず、置換されるアミノ酸の種類も特に限定されない。また、アミノ酸変異の数も態様Aと同程度であれば特に限定されない。
態様Bのワクチン抗原におけるprM蛋白質は、第2位のアミノ酸が変異しない以外は、その他の位置においてアミノ酸変異を有するものであってもよい。位置は特に限定されず、置換されるアミノ酸の種類も特に限定されない。また、アミノ酸変異の数も特に限定されず、例えば、1個、2個、3個、4個または5個であってもよく、上限は50個以下が好ましく、40個以下がより好ましく、30個以下がさらに好ましく、20個以下がさらに好ましく、10個以下がさらに好ましい。
態様Bのワクチン抗原の一態様としては、デング1型ウイルス望月株のprM蛋白質のアミノ酸配列の第2位に変異がないprM蛋白質とエンベロープ蛋白質のアミノ酸配列の第107位および第87位のアミノ酸が変異したエンベロープ蛋白質を含むものが挙げられる。望月株の全長蛋白質のアミノ酸配列(配列番号3)において、prM蛋白質は第115位〜第280位に該当し、エンベロープ蛋白質は第281位〜第775位に該当する。また、prM蛋白質をコードする塩基配列は配列番号2で示される塩基配列の第437位〜第934位に、エンベロープ蛋白質をコードする塩基配列は配列番号2で示される塩基配列の第935位〜第2419位に該当する。このようなワクチン抗原としては、配列番号6で示されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列からなる蛋白質を含むワクチン抗原が挙げられる。
配列番号6で示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、例えば、望月株以外のデング1型ウイルスのアミノ酸配列において、prM蛋白質のアミノ酸配列の第2位に変異がなく、かつ、エンベロープ蛋白質のアミノ酸配列の第107位のロイシンがフェニルアラニンに、第87位のアスパラギン酸がアスパラギンにそれぞれ置換したアミノ酸配列が挙げられる。また、例えば、配列番号6で示されるアミノ酸配列において、prM蛋白質の第2位、エンベロープ蛋白質の第107位および第87位以外のその他の位置に1〜数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列が挙げられる。「1〜数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ポリペプチド作製法により欠失、置換もしくは付加できる程度の数(好ましくは20個以下、より好ましくは10個以下、さらに好ましくは7個以下、さらに好ましくは5個以下、さらに好ましくは3個以下、さらに好ましくは2個以下、さらに好ましくは1個)のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されることを意味する。このような変異蛋白質は、公知の変異ポリペプチド作製法により人為的に導入された変異を有する蛋白質に限定されるものではなく、天然に存在する変異蛋白質を単離精製したものであってもよい。実質的に同一のアミノ酸配列は、配列番号6で示されるアミノ酸配列と少なくとも60%同一、好ましくは少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%または99.5%同一であるアミノ酸配列(ただし、prM蛋白質の第2位が変異なく、エンベロープ蛋白質の第107位がフェニルアラニン、第87位がアスパラギンである配列)が挙げられる。なお、配列の同一性は、公知の方法に従って決定することができる。また、配列番号6で示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列からなる蛋白質は、配列番号6で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質と同様に、中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制する作用を有することが要求される。かかる作用は、例えば実施例に記載の実験を行うことにより、確認することができる。
〔デングワクチン〕
本発明は、上記本発明のデングワクチン抗原を含有または発現するデングワクチンを提供する。ここで、デングワクチン抗原としては、態様Aのデングワクチン抗原であっても、態様Bのデングワクチン抗原であってもよい。本発明のデングワクチンは、デングウイルスに対する中和抗体を誘導するが、感染増強抗体の誘導は抑制されているので、デング熱の発症を効果的に予防できると共に、懸念されている重症化を抑えることができる点で非常に有用性が高い。これまでに開発されてきたデングワクチンは、自然界から分離された株のエンベロープ蛋白質を基本的に改変することなくワクチン抗原としているため、自然感染と同様に中和抗体とともに感染増強抗体を誘導する。これがワクチン効力の低い原因と考えられ、またワクチン接種に由来する重症化が懸念されている所以である。したがって、本発明は、デングワクチンの防御効力や安全性を格段に高めることに貢献する。また、中和抗体活性は感染増強活性と拮抗するため、感染増強活性の抑制により中和抗体活性は上昇する。このことから、低いワクチンドーズであっても高い防御効力が期待でき、コストを下げ得る点でも有用性が高い。
本発明のデングワクチンの一つの態様としては、ワクチン成分として、例えばデングウイルスエンベロープ蛋白質のアミノ酸配列の第107位または第87位のアミノ酸に変異を有するエンベロープ蛋白質(以下「変異エンベロープ蛋白質A」と記す。)、変異エンベロープ蛋白質Aをコードする核酸、変異エンベロープ蛋白質Aをコードする核酸を含むベクター、変異エンベロープ蛋白質Aを発現するデングウイルスなどを好適に含有することができる。
変異エンベロープ蛋白質Aとしては、エンベロープ蛋白質の全長を用いてもよく、そのフラグメントを用いてもよい。変異エンベロープ蛋白質Aのフラグメントを用いる場合は、エンベロープ蛋白質のアミノ酸配列において第107位の非変異アミノ酸と第87位の変異アミノ酸を含み、あるいは、第107位の変異アミノ酸と第87位の非変異アミノ酸を含み、かつ、エンベロープ蛋白質の立体構造が維持される長さを有するフラグメントを用いることが好ましい。例えばアミノ酸残基数が300以上、好ましくは350以上、より好ましくは400以上、さらに好ましくは450以上のフラグメントを好適に用いることができる。また、変異エンベロープ蛋白質Aは、エンベロープ蛋白質以外のアミノ酸配列を含んでいてもよい。エンベロープ蛋白質以外のアミノ酸配列としては、例えば、マーカー配列、タグ配列、デングウイルスゲノムにコードされている他の蛋白質のアミノ酸配列などが挙げられる。
変異エンベロープ蛋白質Aは、公知の遺伝子工学的手法により、変異エンベロープ蛋白質Aをコードする遺伝子を発現可能に挿入した組み換え発現ベクターを構築し、これを適当な宿主細胞に導入して組み換え蛋白質として発現させ、精製することにより製造することができる。また、本発明の変異エンベロープ蛋白質Aは、本発明の変異エンベロープ蛋白質Aをコードする遺伝子と公知のIn vitro転写・翻訳系(例えば、ウサギ網状赤血球、コムギ胚芽または大腸菌由来の無細胞蛋白質合成系等)を用いて、製造することができる。変異エンベロープ蛋白質Aをコードする遺伝子の塩基配列は、公知のデータベース(NCBI等)からデングウイルスゲノムの塩基配列を取得し、得られた塩基配列に基づいて、エンベロープ蛋白質の第107位のアミノ酸が変異を有するように、あるいは、エンベロープ蛋白質の第87位のアミノ酸が変異を有するように設計することができる。
変異エンベロープ蛋白質Aをコードする核酸は、上記のように設計した変異エンベロープ蛋白質Aをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて、PCR法、部位特異的突然変異誘発法等の公知の遺伝子工学的手法を用いることにより取得することができる。核酸は、RNA(例えば、ゲノムRNA、mRNA)の形態、またはDNAの形態(例えば、ゲノムDNA、cDNA)で存在することができる。核酸は、二本鎖でもよく一本鎖でもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNAとRNAとのハイブリッドのいずれであってもよい。一本鎖の場合は、コード鎖(センス鎖)または非コード鎖(アンチセンス鎖)のいずれであってもよい。また、本発明の核酸を構成するポリヌクレオチドは、その5’側または3’側でタグ標識(タグ配列またはマーカー配列)をコードするポリヌクレオチドに融合されていてもよい。本発明のデングワクチンは、変異エンベロープ蛋白質Aをコードする核酸が挿入されたプラスミドをワクチン成分とする核酸ワクチンとして実施することができる。また、本発明のデングワクチンは、変異エンベロープ蛋白質Aをコードする核酸を挿入した細菌ベクターやウイルスベクターをワクチン成分とするベクターワクチン(組換え細菌ワクチン、組換えウイルスワクチン)として実施することができる。
本発明のデングワクチンの別の態様としては、ワクチン成分として、例えばデングウイルスprM蛋白質のアミノ酸配列の第2位のアミノ酸に変異がないprM蛋白質とエンベロープ蛋白質のアミノ酸配列の第107位および第87位のアミノ酸に変異を有するエンベロープ蛋白質を含む変異蛋白質(以下「変異蛋白質B」と記す。)、変異蛋白質Bをコードする核酸、変異蛋白質Bをコードする核酸を含むベクター、変異蛋白質Bを発現するデングウイルスなどを好適に含有することができる。
変異蛋白質Bとしては、prM蛋白質とエンベロープ蛋白質の全長を用いてもよく、そのフラグメントを用いてもよい。フラグメントを用いる場合は、prM蛋白質のアミノ酸配列において第2位のアミノ酸が変異せず、かつ、エンベロープ蛋白質のアミノ酸配列において第107位のアミノ酸と第87位の両アミノ酸が変異アミノ酸である、蛋白質の立体構造が維持される長さを有するフラグメントを用いることが好ましい。例えばアミノ酸残基数が300以上、好ましくは350以上、より好ましくは400以上、さらに好ましくは450以上のフラグメントを好適に用いることができる。また、変異蛋白質Bは、prM蛋白質とエンベロープ蛋白質以外のその他のアミノ酸配列を含んでいてもよい。その他のアミノ酸配列としては、例えば、マーカー配列、タグ配列、デングウイルスゲノムにコードされている他の蛋白質のアミノ酸配列などが挙げられる。
変異蛋白質Bは、変異エンベロープ蛋白質Aと同様にして製造することができ、例えば、公知の遺伝子工学的手法により製造することができる。変異蛋白質Bをコードする遺伝子の塩基配列は、公知のデータベース(NCBI等)からデングウイルスゲノムの塩基配列を取得し、得られた塩基配列に基づいて、エンベロープ蛋白質の第107位と第87位のアミノ酸がいずれも変異を有するように設計することができる。
変異蛋白質Bをコードする核酸は、上記のように設計した変異蛋白質Bをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて、PCR法、部位特異的突然変異誘発法等の公知の遺伝子工学的手法を用いることにより取得することができる。核酸は、RNA(例えば、ゲノムRNA、mRNA)の形態、またはDNAの形態(例えば、ゲノムDNA、cDNA)で存在することができる。核酸は、二本鎖でもよく一本鎖でもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNAとRNAとのハイブリッドのいずれであってもよい。一本鎖の場合は、コード鎖(センス鎖)または非コード鎖(アンチセンス鎖)のいずれであってもよい。また、本発明の核酸を構成するポリヌクレオチドは、その5’側または3’側でタグ標識(タグ配列またはマーカー配列)をコードするポリヌクレオチドに融合されていてもよい。本発明のデングワクチンは、変異蛋白質Bをコードする核酸が挿入されたプラスミドをワクチン成分とする核酸ワクチンとして実施することができる。また、本発明のデングワクチンは、変異蛋白質Bをコードする核酸を挿入した細菌ベクターやウイルスベクターをワクチン成分とするベクターワクチン(組換え細菌ワクチン、組換えウイルスワクチン)として実施することができる。
本発明のデングワクチンは、変異エンベロープ蛋白質Aまたは変異蛋白質Bを発現するデングウイルスをワクチン成分とするデングワクチンとして実施することができる。変異エンベロープ蛋白質Aまたは変異蛋白質Bを発現するデングウイルスは、後述する「中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するデングワクチン抗原または該抗原を発現するデングウイルスを取得する方法」を用いて取得することができる。
本発明のデングワクチンは、1種以上のアジュバントを含んでいてもよい。本発明のデングワクチンがアジュバントを含む場合、公知のアジュバントの中から適宜選択して用いることができる。具体的には、例えば、アルミニウムアジュバント(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等のアルミニウム塩またはその組み合わせ)、フロイントアジュバント(完全または不完全)、TLRリガンド(例えば、CpG、Poly(I:C)、Pam3CSK4など)、BAY、DC−chol、pcpp、モノホスホリル脂質A、QS−21、コレラ毒素、ホルミルメチオニルペプチドなどが挙げられる。好ましくは、アルミニウムアジュバント、TLRリガンドまたはこれらの組み合わせである。本発明のワクチンがアジュバントを含む場合、アジュバントの配合量は特に限定されず、アジュバントの種類等により適宜選択すればよい。例えば、アルミニウムアジュバント(水酸化アルミニウム)およびCpGを併用する場合、本発明のデングワクチンに対して質量比でアルミニウムアジュバントが約1〜100倍量、CpGが約1〜50倍量を配合することが好ましい。
本発明のデングワクチンは、さらにデングウイルス以外の病原体に対するワクチン成分を含んでいてもよい。デングウイルス以外の病原体ワクチン成分は特に限定されず、例えば既に混合ワクチンとして使用実績のあるワクチン成分が挙げられる。具体的には、例えば、ジフテリアトキソイド、百日咳トキソイド、百日咳菌抗原、破傷風トキソイド、不活化ポリオウイルス、弱毒麻疹ウイルス、弱毒風疹ウイルス、弱毒ムンプスウイルス、インフルエンザ菌b型ポリサッカライド抗原、B型肝炎ウイルスHBs抗原、不活化A型肝炎ウイルス抗原などが挙げられる。
本発明のデングワクチンは、経口投与または非経口投与により投与することができる。非経口投与としては、例えば腹腔内投与、皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、静脈内投与、鼻腔内投与、経皮投与、経粘膜投与、舌下投与、吸入投与などが挙げられる。好ましくは、非経口投与であり、より好ましくは、皮内投与、皮下投与または筋肉内投与である。
本発明のデングワクチンは、変異エンベロープ蛋白質Aまたは変異蛋白質Bあるいは変異エンベロープ蛋白質Aまたは変異蛋白質Bをコードする核酸と薬学的に許容される担体、さらに添加剤を適宜配合して製剤化し、医薬組成物(医薬)とすることができる。具体的には錠剤、被覆錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤等の経口投与用製剤;注射剤、輸液、坐剤、軟膏、パッチ剤等の非経口投与用製剤とすることができる。担体または添加剤の配合割合については、医薬品分野において通常採用されている範囲に基づいて適宜設定すればよい。配合できる担体または添加剤は特に制限されないが、例えば、水、生理食塩水、その他の水性溶媒、水性または油性基剤等の各種担体;賦形剤、結合剤、pH調整剤、崩壊剤、吸収促進剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、香料等の各種添加剤が挙げられる。
経口投与用の固形製剤に用いられる添加剤としては、例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、トウモロコシデンプン等の賦形剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の結合剤;トウモロコシデンプン等の分散剤;繊維素グリコール酸カルシウム等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;グルタミン酸、アスパラギン酸等の溶解補助剤;安定剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の合成高分子類等の水溶性高分子;白糖、粉糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖、乳糖、還元麦芽糖水アメ、粉末還元麦芽糖水アメ、ブドウ糖果糖液糖、ハチミツ、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム等の甘味剤;白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等のコーティング剤等が挙げられる。
経口投与用の液体製剤は、一般的に用いられる希釈剤に溶解、懸濁または乳化されて製剤化される。希釈剤としては、例えば、精製水、エタノール、それらの混液等が挙げられる。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を含有していてもよい。
非経口投与用の注射剤に用いられる添加剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、ホウ砂、ブドウ糖、プロピレングリコール等の等張化剤;リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、グルタミン酸緩衝液、イプシロンアミノカプロン酸緩衝液等の緩衝剤;パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、クロロブタノール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂等の保存剤;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の増粘剤;亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン等の安定化剤;塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸、酢酸等のpH調整剤等が挙げられる。また注射剤には、適当な溶解補助剤、例えば、エタノール等のアルコール;プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のポリアルコール;ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、リゾレシチン、プルロニックポリオール等の非イオン界面活性剤等をさらに配合してもよい。注射剤等の液状製剤は、凍結保存または凍結乾燥等により水分を除去して保存することもできる。凍結乾燥製剤は、用時に注射用蒸留水等を加え、再溶解して使用される。
本発明のデングワクチンは、免疫系を有するあらゆる動物(ヒト、非ヒト)を投与対象とすることができるが、デングウイルスの自然宿主は、ヒトおよび非ヒト霊長類(サル)であることが知られていることから、ヒトおよび非ヒト霊長類(サル)を投与対象とすることが好ましい。なかでも、本発明のデングワクチンはヒトの小児(新生児を含む)および成人を対象とすることが好ましい。
本発明のデングワクチンの投与回数および投与間隔は特に限定されない。例えば、単回投与でもよく、約2日〜約8週間の間隔で複数回投与してもよい。本発明のデングワクチンが蛋白質ワクチンまたは核酸ワクチンである場合、ワクチン投与量は、投与対象、投与方法などにより異なるが、1回投与量を約0.01μg〜約100mgとすることが好ましく、約0.1μg〜約10mgとすることがより好ましく、約1μg〜約1mgとすることがさらに好ましい。本発明のデングワクチンがウイルスワクチンである場合、ワクチン投与量は、投与対象、投与方法などにより異なるが、1回投与量を約1×10PFU〜約1×10PFUとすることが好ましく、約1×10PFU〜約1×10PFUとすることがより好ましく、約1×10PFU〜約1×10PFUとすることがさらに好ましい。
本発明には、本発明のデングワクチンの有効量を動物に投与することを含む、デング熱またはデング出血熱の予防または治療方法が含まれる。
〔中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するデングワクチン抗原または該抗原を発現するデングウイルスの取得方法〕
本発明は、中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するデングワクチン抗原または該抗原を発現するデングウイルスの取得方法を提供する。本発明の中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するデングワクチン抗原または該抗原を発現するデングウイルスの取得方法(以下「本発明の方法」と記す。)は、以下の工程(1)〜(5)を含むものであればよい。
工程(1):デングウイルスのエンベロープ蛋白質を抗原として、感染増強活性を有するが中和活性を有しないモノクローナル抗体を取得する工程
工程(2):工程(1)で得られたモノクローナル抗体のクラスまたはサブクラスを変更することにより、中和活性を有するモノクローナル抗体を取得する工程
工程(3):工程(2)で得られた中和活性を有するモノクローナル抗体の存在下でデングウイルス感染細胞を培養することにより、該モノクローナル抗体により中和されない変異デングウイルスを取得する工程
工程(4):工程(3)で得られた変異デングウイルスのエンベロープ蛋白質に生じた変異を確認する工程
工程(5):工程(3)で得られた変異デングウイルスのエンベロープ蛋白質が感染増強抗体の誘導を抑制することを確認する工程
工程(1)ではデングウイルスのエンベロープ蛋白質を抗原として、感染増強活性を有するが中和活性を有しないモノクローナル抗体を取得する。本工程においては、変異を有していないエンベロープ蛋白質を抗原として使用する。モノクローナル抗体は、デングウイルスのエンベロープ蛋白質を抗原として、通常の免疫方法に従って哺乳動物(例えばマウス)を免疫し、得られる免疫細胞(例えば脾細胞)を通常の細胞融合法(例えばポリエチレングリコール(PEG)法)によって公知の親細胞(例えばマウスミエローマ細胞株のSP2、NA1など)と融合させ、通常のスクリーニング法によりモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを選択し、当該ハイブリドーマの培養上清から公知の方法で精製することにより取得することができる。モノクローナル抗体が、感染増強活性を有し、かつ中和活性を有しないことは、例えば本明細書の実施例1(1)に記載の方法で確認することができる。なお、モノクローナル抗体の取得に用いる抗原としては、エンベロープ蛋白質とprM蛋白質を含むものであってもよい。
工程(2)では、工程(1)で得られたモノクローナル抗体のクラスまたはサブクラスを変更することにより、中和活性を有するモノクローナル抗体を取得する。抗体のクラスまたはサブクラスの変更は、例えばInvivogen社のマウス用pFUSE−CHIgシリーズ(H鎖)およびpFUSE−CLIgシリーズ(L鎖)を使用する方法で行うことができる。具体的には、工程(1)で得られたモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞からFab部分の遺伝子を抽出し、上記pFUSEプラスミドベクターに組み込む。この時、目的のサブクラスになるようにH鎖のpFUSEを選択する。例えば、目的のサブクラスがIgG2aであれば、H鎖は「pFUSE−CHIg−mG2a」を使用する。L鎖用のプラスミドも同様にして作製し、2種類のプラスミドを培養細胞(例えば293T、CHO等)にコトランスフェクトして、培養液上清を回収することによりサブクラスを変更した抗体を取得することができる。クラスまたはサブクラスを変更したモノクローナル抗体が中和活性を有することは、例えば本明細書の実施例1(2)に記載の方法で確認することができる。
工程(3)では、工程(2)で得られた中和活性を有するモノクローナル抗体の存在下でデングウイルス感染細胞を培養することにより、該モノクローナル抗体により中和されない変異デングウイルスを取得する。具体的には、例えば、6穴の細胞培養マイクロプレートにVero細胞を播種し(約0.3×10個/ウェル)、1〜2日後にMOI=0.1の条件でデングウイルスを細胞に感染させる。1時間の吸着作業の後、工程(2)で得られた中和活性を有するモノクローナル抗体の最終濃度が1μg/mLになるように調整した培養液で培養する。1週間後に培養液上清を、新たに準備したVero細胞に感染させ、同様に該モノクローナル抗体存在下で培養を続ける。継代は5代以上続けることが好ましい。エスケープミュータント出現の確認方法としては、エスケープミュータント候補ウイルス株を抗原として、該モノクローナル抗体の中和試験を行う方法を挙げることができる。中和活性が消失している場合に、候補ウイルス株は目的のエスケープミュータント株であると判断する。別のエスケープミュータント出現の確認方法としては、例えば、エスケープミュータント候補ウイルス株を抗原として、該モノクローナル抗体の感染増強試験を行う方法を挙げることができる。感染増強活性が消失している場合に、候補ウイルス株は目的のエスケープミュータント株であると判断する。
工程(4)では、工程(3)で得られた変異デングウイルスのエンベロープ蛋白質に生じた変異を確認する。具体的には、例えば、変異デングウイルスのエンベロープ領域の遺伝子をRT−PCRで増幅し、DNAシーケンサー(例えばApplied Biosystems 3730xl DNA analyzer等)を用いて、塩基配列を解析する。判明した塩基配列に基づいてアミノ酸配列に翻訳し、変異部位およびその位置のアミノ酸の種類を特定することができる。
工程(5)では、工程(3)で得られた変異デングウイルスのエンベロープ蛋白質が感染増強抗体の誘導を抑制することを確認する。具体的には、例えば、以下の方法が挙げられる。すなわち、工程(4)で確認されたアミノ酸変異を導入したE抗原を発現するプラスミドDNAを作製し、日本脳炎ウイルスレプリコンプラスミドDNAと共に293T細胞にコトランスフェクションして、1回感染型粒子(Single-round infectious particle、以下「SRIP」)を作製する。このSRIPを抗原として、工程(1)で得られた感染増強活性を有し、かつ中和活性を有しないモノクローナル抗体の感染増強活性を確認する。その結果、感染増強活性が検知されなければ、工程(4)で確認されたアミノ酸変異を有するデングウイルスエンベロープ蛋白質は感染増強活性を抑制することができると判断する。
本発明の方法により取得される変異デングウイルスおよび変異デングウイルスのエンベロープ蛋白質またはエンベロープ蛋白質とprM蛋白質を含むものは、上記本発明のデングワクチンのワクチン成分として使用することができる。本発明の方法により取得される変異デングウイルスおよび変異デングウイルスのエンベロープ蛋白質またはエンベロープ蛋白質とprM蛋白質を含むものは、中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制することができるので、デングワクチンのワクチン成分として非常に有用である。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1:D1−V−3H12抗体のエピトープ部位決定〕
(1)デング1型ウイルス望月株に対するモノクローナル抗体の感染増強活性および中和活性の確認
デング1型ウイルス望月株に対するモノクローナル抗体をYamanakaら(Yamanaka et al., J Virol. 2008 Jan;82(2):927-937)に記載の方法に従って作製し、デングウイルスのエンベロープ(E)蛋白質に対する血清型交差性を有する複数のモノクローナル抗体を取得した(Yamanaka et al., J Virol. 2013 Dec;87(23):12828-37)。得られたモノクローナル抗体の感染増強活性および中和活性について、以下の方法で確認した。
10倍階段希釈したモノクローナル抗体とデング1型ウイルス望月株を混合し2時間37℃で保温した後、ヒト由来Fcγ保有単球系細胞であるK562細胞を加えて、さらに2日培養した。抗体とウイルスの混合液に最終濃度5%の補体を添加する系と、補体を添加しない系の2つの系を設けた。細胞を固定後にデングウイルス特異抗体を用いた免疫染色を施し、陽性細胞(感染細胞)を計数した。モノクローナル抗体を添加していない陰性対照を6点設置し、その陽性細胞(感染細胞)数の平均−3SDより少ない場合、当該モノクローナル抗体は中和活性を持つと判断し、陰性対照の陽性細胞(感染細胞)数の平均+3SDより多い場合、当該モノクローナル抗体は感染増強活性を持つと判定した。
結果を図1に示した。図中C(−)は補体を添加しない系、C(+)は補体を添加した系を表す。図1の左は高濃度で中和活性を示し低濃度で感染増強活性を示したモノクローナル抗体の代表例(D1−I−15C12)の結果、中央は中和活性のみを示したモノクローナル抗体の代表例(D1−IV−7F4)の結果、右は感染増強活性のみを示したモノクローナル抗体の代表例(D1−V−3H12)の結果である。
得られたモノクローナル抗体の多数は、高濃度で中和活性を示し低濃度で感染増強活性を示すものであった(図1左と同様)が、中和活性のみを示す抗体(図1中央と同様)、感染増強活性のみを示す抗体(図1右と同様)も少数存在した。以後の実験には、感染増強活性のみを示したD1−V−3H12抗体(以下、「3H12抗体」という。)を使用し、補体を添加する系で実験を行った。
(2)3H12抗体のサブクラス置換
市販のアイソタイピングキットを用いて調べたところ、3H12抗体のサブクラスはIgG1であった。3H12抗体のFab部分の遺伝子を市販のpFUSEベクターに挿入することにより、抗体結合部位を変化させることなく、サブクラスをIgG2aまたはIgG2bに置換した抗体を得た(それぞれ3H12−IgG2a、3H12−IgG2bと記す。)。これらの抗体の中和活性を、Konishiら(Konishi et al., Vaccine 2006 24:2200-2207)に記載の方法に従って、Vero細胞(アフリカミドリザル腎臓由来株化細胞)を用いて測定した。具体的には、2倍階段希釈した抗体とデング1型ウイルス望月株を混合し、4℃で一夜保温したものを単層Vero細胞に感染させ、3〜4日培養後に形成されたプラーク数を計数した。抗体を添加しない対照で得られたプラーク数を100%として、それに対する減少率(% Plaque reduction)で中和活性を表した。
結果を図2に示した。サブクラスを置換した3H12−IgG2aおよび3H12−IgG2bは、どちらも中和活性を有していた。そこで、エスケープミュータントウイルスを取得するための抗体として、3H12−IgG2bを選択した。
(3)エスケープミュータントウイルスの取得
3H12−IgG2bを3μg/mLの濃度で添加した培養液中でデング1型ウイルス望月株に感染したVero細胞を継代培養した結果、11代目の培養液に親株と同等の増殖力を有し、3H12−IgG2bで中和されないウイルスが含まれた。得られたエスケープミュータントウイルスに対する3H12抗体の10μg/mLの濃度における感染増強活性を、上記(1)と同じ方法で調べた。
結果を図3に示した。図3中、P#0は継代培養前の親株ウイルス、P#11は得られたエスケープミュータントウイルス、P#11Contは3H12−IgG2bを添加しない培養液中で11代にわたり継代して得られたデングウイルスである。図3の縦軸は、抗体を添加しない対照に対する感染細胞数を倍数(Fold enhancement)で表している。図3から明らかなように、P#0およびP#11Contは3H12抗体によって感染が約100倍に増強されたが、P#11は3H12抗体によって感染がほとんど増強されなかった。
(4)エスケープミュータントウイルスの変異の確認
得られたエスケープミュータントウイルスのエンベロープ領域のアミノ酸配列を定法に従って確認したところ、エンベロープ領域の87位(E87)および107位(E107)に変異が認められた(それぞれD87NおよびL107F)。すなわち、3H12抗体はE87とE107を含むエピトープを標的にすることが示唆された。
次に、このエピトープ部位を逆遺伝学的に確認するために、E87とE107の両方に、またはいずれか1つの変異を入れたE遺伝子を発現するプラスミドDNAを作製し、既に確立した日本脳炎ウイルスレプリコンプラスミド(Suzuki et al., J. Gen. Virol, 2014 Jan;95(Pt 1):60-5.)とともに293T細胞にコトランスフェクションして、SRIPを作製した。E87の変異はD87N、E107の変異はL107Fとした。SRIP抗原に対する3H12抗体の感染増強活性を上記(1)と同じ方法で調べ、変異を持たないSRIP抗原に対する3H12抗体の感染増強活性と比較した。
結果を図4に示した。図中点線は、抗体を加えない陰性対照の6ウェルから求めた平均値±3SDを示す。変異を持たないSRIP抗原(Control)に対して3H12抗体は高い感染増強活性を示したが、E87とE107の両方に変異を持つSRIP抗原、およびE107に変異を持つSRIP抗原に対して3H12抗体は感染増強活性を示さなかった。一方、E87に変異を持つSRIP抗原に対しては、3H12抗体はControlと同様の高い感染増強活性を示した。この結果は、エスケープミュータントウイルスが生成される過程でE87とE107に変異が入ったが、中和抗体から逃れる実質的なエピトープの変化はE107変異によってなされていると考えられ、E87はエピトープと関係しないが、E107変異によって生じたウイルス増殖力の低下を補うために入った変異と考えられた。
〔実施例2:変異導入抗原の免疫原性〕
E87とE107の両方、またはいずれか1つの変異(D87Nおよび/またはL107F)を入れたデング1型ウイルス望月株のE遺伝子を発現するプラスミドDNAを用いて、6週齢の雄BALB/cマウス(1群3匹)を免疫した。免疫は100μgの用量で3回行い、2回目の免疫後2週目と、3回目の免疫後1週目に採血した。対照として変異のないE遺伝子を発現するプラスミドDNAを用いた。得られたプール血清を用いて、これらの免疫原に対して誘導される抗体の、デング1型ウイルス望月株に対する中和活性を実施例1(2)に記載の方法で調べ、感染増強活性を実施例1(1)に記載の方法で調べた。
結果を図5に示した。Aは中和活性を調べた結果、Bは感染増強活性を調べた結果である。また、2dosesは2回目の免疫後に採血した血清の結果、3dosesは3回目の免疫後に採血した血清の結果である。Bの点線は、抗体を加えない陰性対照の6ウェルから求めた平均値±3SDを示す。Aから明らかなように、いずれのプラスミドも同等の中和活性レベルを有する抗体を誘導した。一方、感染増強活性レベルには大きな差が認められた。すなわち、E87とE107のいずれか一方に変異を持つプラスミドで誘導された抗体は対照と比べて感染増強活性を示さなかったが、E87とE107の両方に変異を持つプラスミドで誘導された抗体は、対照より低いものの、感染増強活性を示した。この結果は、in vitroで得られる抗原エピトープと抗体との反応は、必ずしもin vivoにおける抗原の免疫原性と一致するわけではないが、E107を含むエピトープに関しては一致することを示すものである。
〔実施例3:他の血清型に対する中和活性および感染増強活性〕
実施例2では、デング1型ウイルス由来の変異抗原で2回または3回免疫したマウスから採血した血清を用いて、誘導された抗体のデング1型ウイルスに対する中和活性および感染増強活性を調べたが、実施例3では、デング1型ウイルス由来の変異抗原で3回免疫したマウスから採血した血清を用いて、誘導された抗体のデング2型ウイルス(New Guinea C株)、3型ウイルス(H87株)または4型ウイルス(H241株)に対する中和活性を実施例1(2)に記載の方法で調べ、感染増強活性を実施例1(1)に記載の方法で調べた。
結果を図6に示した。Aは中和活性を調べた結果、Bは感染増強活性を調べた結果である。Bの点線は、抗体を加えない陰性対照の6ウェルから求めた平均値±3SDを示す。Aから明らかなように、デング4型ウイルスに対する交差性中和抗体の誘導は、2型ウイルスまたは3型ウイルスに比べて低いものであったが、いずれの血清型に対しても、3種の変異導入抗原は対照抗原と同等の交差性中和抗体を誘導した。一方、感染増強活性レベルには大きな差が認められた。すなわち、対照抗原はすべての血清型に対して感染増強活性を有する抗体を誘導したが、E107変異抗原はすべての血清型に対して感染増強活性を有する抗体を誘導しなかった。E87とE107の両方に変異を持つ抗原はすべての血清型に対して感染増強活性を有する抗体を誘導したが、対照抗原が誘導したものよりは低かった。E87のみに変異を持つ抗原も対照抗原より低く、特に2型ウイルスに対して感染増強活性を有する抗体を誘導しなかった。この結果から、E107に変異を導入したデング1型ウイルス抗原が誘導する抗体は、デング1型ウイルスに対してのみならず、他の血清型に対しても増強活性を示さないことが明らかになった。また、E87の変異でも若干の効果があることが示された。
〔実施例4:変異導入した他の血清型E抗原に対する3H12抗体の感染増強活性〕
E87およびE107付近のアミノ酸配列は、すべての血清型で比較的保存されている。また、3H12抗体は、デング1型ウイルス望月株を抗原として作製された抗体であるが、他のすべての血清型に対して交差反応性を有している。そこで、実施例3で用いたデング2型ウイルス、デング3型ウイルス、デング4型ウイルスについて、各E抗原のE87またはE107に変異(D87NまたはL107F)を導入したSRIPを作製し、変異導入SRIP抗原に対する3H12抗体の感染増強活性を実施例1(1)に記載の方法で調べ、変異を持たないSRIP抗原に対する3H12抗体の感染増強活性と比較した。
結果を図7に示した。いずれの血清型においても、3H12抗体は変異を持たない対照抗原に対して感染増強活性を示したが、E107変異抗原に対しては感染増強活性を示さなかった。E87変異抗原に対する3H12抗体の感染増強活性は血清型により異なり、2型ウイルスに対しては感染増強活性を示さなかったが、3型および4型ウイルスに対しては感染増強活性を示した。この結果は、デング2型ウイルス、デング3型ウイルス、デング4型ウイルスのE抗原においても、E107が3H12のエピトープ部位であることを示すものである。
〔実施例5:変異導入した他の血清型E抗原の免疫原性〕
デング1型ウイルス以外の血清型でも、in vitroで得られるE107に変異を誘導した抗原エピトープと抗体との反応が、in vivoにおける抗原の免疫原性と一致するかどうかを調べるために、E87またはE107のアミノ酸に変異(D87NまたはL107F)を導入した他の血清型(2型、3型または4型)のE抗原を発現するプラスミドDNAを用いて6週齢の雌BALB/cマウス(1群3匹)を免疫した。免疫は100μgの用量で3回行い、3回目の免疫後1週目に採血した。対照として変異のないE遺伝子を持つプラスミドDNAを用いた。得られたプール血清を用いて、これらの免疫原に対して誘導される抗体の、対応する血清型ウイルスに対する感染増強活性を、実施例1(1)と同じ方法で調べた。
結果を図8に示した。図中の点線は、抗体を加えない陰性対照の6ウェルから求めた平均値±3SDを示す。また、C(+)は補体を添加した系、C(−)は補体を添加しない系を表す。補体を添加した系(左列)において、デング3型ウイルスでは、対照抗原で誘導された抗体は感染増強活性を示したが、E107変異抗原で誘導された抗体は、感染増強活性を示さなかった。デング2型ウイルスおよびデング4型ウイルスでは、今回の条件では対照抗原も増強活性を示さなかったため、アッセイ系に補体を添加せずに実験を行った(右列)。その結果、デング2型ウイルスおよびデング4型ウイルスとも、対照抗原で誘導された抗体は高い感染増強活性を示したが、E107変異抗原で誘導された抗体は感染増強活性が低下した。デング3型ウイルスも、補体を添加しない系では、E107変異抗原で誘導された抗体は感染増強活性の低下傾向が認められた。一方、E87変異抗原についても、補体を添加した系のデング3型ウイルスにおいて感染増強活性を抑える効果が認められた。また、補体を添加しない系のデング2型ウイルスおよびデング4型ウイルスでも、感染増強活性を抑える効果が認められた。この結果は、デング2型ウイルス、デング3型ウイルス、デング4型ウイルスにおいても、E107への変異導入は、感染増強活性を有する抗体の誘導を抑制することを示すものである。またE107への変異導入よりは弱い効果であるがE87への変異導入にも同様の効果があることを示すものである。
〔実施例6:変異導入抗原における変異アミノ酸による免疫原性〕
デング1型ウイルス由来のE蛋白質をコードするプラスミドにおいて、E107のアミノ酸を種々のアミノ酸(フェニルアラニン、イソロイシン、プロリン、リジン、グルタミンまたはトリプトファン)に、あるいはE87のアミノ酸を種々のアミノ酸(アスパラギン、アルギニン、グルタミン酸、グルタミン、フェニルアラニンまたはバリン)に、それぞれ1点変異させたプラスミドを作製し、得られたプラスミドを用いて6週齢の雄BALB/cマウス(1群3匹)を免疫した。免疫は100μgの用量で3回行い、3回目の免疫後2週目に採血した。得られたプール血清を用いて、これらの免疫原に対して誘導される抗体の、デング1型、2型、3型または4型ウイルスに対する感染増強活性を実施例1(1)に記載の方法で調べた。血清の希釈条件は、1:160希釈が用いられた。なお、コントロールとして、E蛋白質に変異を導入しないプラスミドを用いて免疫したものについても評価した。
結果を図9に示した。陰性対照に対する感染増強の程度からFold Enhancementを算出してグラフに表した。この結果によると、E107のロイシンがいずれのアミノ酸に置換しても、血清型の種類によって程度の差は認められるが、感染増強活性の誘導を抑制できることが分かる。同様に、E87のアスパラギン酸がいずれのアミノ酸に置換しても、血清型の種類によって程度の差は認められるが、感染増強活性の誘導を抑制できることが分かる。
〔実施例7:異なるデングウイルス株の変異抗原に対する3H12抗体の感染増強活性〕
以上はプロトタイプを用いた検討であったが、次に比較的新しく分離された4血清型の株を用いて検討を行った(下記表3参照)。まず、各血清型から1株ずつ選択し、そのE領域をコードしたプラスミドを作製した。次に、変異のない各血清型のControlプラスミドをテンプレートにして、E87またはE107に変異(D87NまたはL107F)を導入し、それぞれのSRIPを作製した。SRIP抗原に対する3H12抗体の感染増強活性を実施例1(1)に記載の方法で調べ、変異を持たないSRIP抗原に対する3H12抗体の感染増強活性と比較した。
結果を図10に示した。陰性対照よりも何倍感染細胞数が増加したかを示すFold enhancementを用いて評価した。図10より、3H12抗体は、E87に変異を持つSRIP抗原や変異を持たないSRIP抗原(Control)に対して感染増強活性の抑制を示さなかったが、E107に変異を持つSRIP抗原に対しては感染増強活性を顕著に抑制することが分かった。このことから、3H12抗体の標的部位は株の種類に関係なく、全血清型ウイルスに対してE107位であることが示唆される。
〔実施例8:異なるデングウイルス株の変異抗原の免疫原性(その1)〕
次に、実施例7を参考にして作製したE87またはE107のいずれか1つに変異(D87NまたはL107F)を入れたプラスミドDNAを用いて、6週齢の雄BALB/cマウス(1群6匹)を免疫した(BDV−1〜BDV−4)。免疫は100μgの用量で3回行い、3回目の免疫後2週目に採血した。対照として変異のないE遺伝子を発現するプラスミドDNAを用いた。得られたプール血清を用いて、これらの免疫原に対して誘導される抗体の、デング1型、2型、3型または4型ウイルスに対する中和活性を実施例1(2)に記載の方法で調べ、感染増強活性を実施例1(1)に記載の方法で調べた。
結果を図11および図12に示した。図11は中和活性を調べた結果、図12は感染増強活性を調べた結果である。図12中の点線は、抗体を加えない陰性対照の6ウェルから求めた平均値±3SDを示す。図11から明らかなように、デング2型ウイルス(遺伝子型American、BDV-2)を用いて作製したプラスミド以外は、いずれのプラスミドも同等の中和活性レベルを有する抗体を誘導した。一方、感染増強活性レベルには大きな差が認められた。すなわち、いずれの株を用いても、E87またはE107のいずれか一方に変異を持つプラスミドで誘導された抗体は全血清型ウイルスに感染増強活性を示さなかったが、対照のプラスミドDNAは感染増強活性を示した。このことから、株が異なるものであっても、E87またはE107における変異が感染増強抗体の誘導に関与することが示唆される。
〔実施例9:異なるデングウイルス株の変異抗原の免疫原性(その2)〕
実施例8で用いた4種のプラスミドを混合し、4価ワクチンとして6週齢の雄BALB/cマウス(1群6匹)に免疫した。4価ワクチンは、以下の3グループを設定した;E107変異導入したBDV−1〜BDV−4、E87変異導入したBDV−1〜BDV−4、変異のないBDV−1〜BDV−4。1回あたり、各プラスミド25μgずつを4種類混合した合計100μgの用量で、3回免疫を行い、3回目の免疫後2週目に採血した。得られたプール血清を用いて、これらの免疫原に対して誘導される抗体の、デング1型、2型、3型または4型ウイルスに対する中和活性を実施例1(2)に記載の方法で調べ、感染増強活性を実施例1(1)に記載の方法で調べた。
結果を図13および図14に示した。図13は中和活性を調べた結果、図14は感染増強活性を調べた結果である。図14中の点線は、抗体を加えない陰性対照の6ウェルから求めた平均値±3SDを示す。図13から明らかなように、いずれのグループも同等の中和活性レベルを有する抗体を誘導した。一方、感染増強活性レベルには大きな差が認められた。すなわち、E87またはE107のいずれか一方に変異を持つプラスミドで誘導された抗体は感染増強活性を示さなかったが、対照のプラスミドDNAは感染増強活性を示した。このことから、4価の混合ワクチンにおいても各々のワクチンが有する感染増強抗体の誘導を抑制する作用が維持されることが示唆される。
〔実施例10:prM2変異が免疫原性に及ぼす影響〕
実施例1(3)で得られたエスケープミュータントウイルスのprM領域の塩基配列を解析したところ、prM領域の2番目のヒスチジン(H)がアスパラギン(N)へと置換されていることが分かった。つまり、獲得されたエスケープミュータントのprM/E領域には合計3点(prM2、E87、E107)の変異が挿入されていたことになる。そこで、今回新たにprM2、E87、E107の各3点について、変異ありと変異なしを組み合わせたプラスミドを合計4種類作製し、6週齢の雄BALB/cマウス(1群6匹)を免疫した。免疫は100μgの用量で3回行い、3回目の免疫後2週目に採血した。得られたプール血清を用いて、これらの免疫原に対して誘導される抗体の、デング1型、2型、3型または4型ウイルスに対する中和活性を実施例1(2)に記載の方法で、感染増強活性を実施例1(1)に記載の方法で調べた。表4に、プラスミドの詳細を示す。
結果を図15および図16に示した。図15は中和活性を調べた結果、図16は感染増強活性を調べた結果である。図16中の点線は、抗体を加えない陰性対照の6ウェルから求めた平均値±3SDを示す。図15から明らかなように、いずれのプラスミドも同等の中和活性レベルを有する抗体を誘導した。一方、図16からは感染増強活性レベルには大きな差が認められた。すなわち、E87とE107に変異を持つプラスミドでprM2に変異がないもの(E87+E107)は感染増強活性を示さないことが分かった。実施例2(図5)および実施例3(図6)では、E87とE107の両方変異を導入したプラスミドを用いた場合に感染増強活性が幾分か認められていたが、当該実施例で用いたプラスミドは、実施例1で得られたエスケープミュータントウイルス株のprM/E領域を直接クローニングして作製されたものであり、その時点で、E87とE107の両方変異に加えてprM2にも変異が導入されていたものが含まれていたと考えられる。
また、図16の右列からは、prM2に変異が挿入されると、E87とE107の両方変異を導入しても感染増強活性が誘導されており(prM2+E87+E107)、また、3点全てに変異のないコントロールDNAプラスミドも全ての血清型に対しても感染増強活性を示している(Control)ことから、prM2に変異がなくE87とE107の双方に変異が導入される場合には感染増強活性が誘導されないことが示唆される。prM2は感染増強抗体の誘導に関与する部位であることが推測される。
〔実施例11:prM2変異抗原に対する3H12抗体の感染増強活性〕
デング1型ウイルス(望月株)のprM蛋白質の2位アミノ酸および/またはエンベロープ蛋白質のE87とE107の両方に変異を持つ1回感染型粒子(SRIP)に対する3H12抗体の結合性を感染増強活性を指標にして再度確認し、実施例1(図4)を検証した。なお、図中の記号は、実施例10と同じである。
結果を図17に示した。図17から、prM2変異の有無に拘わらず、E87とE107に変異を持つSRIPに対して、3H12抗体は感染増強活性を示さず(prM2+E87+E107、E87+E107)、一方、E87とE107に変異を持たないSRIPに対して、3H12抗体は感染増強活性を示すことが判明した(Control、prM2)。このことから、図4の結果がサポートされ、3H12抗体の認識エピトープはprM2の変異とは全く関係ないものであることが示唆された。
なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。

Claims (12)

  1. 中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するデングワクチン抗原であって、デングウイルスエンベロープ蛋白質のアミノ酸配列の第107位または第87位のアミノ酸に変異を有するエンベロープ蛋白質を含むことを特徴とするデングワクチン抗原。
  2. 第107位のロイシンが、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、プロリン、アラニン、バリンおよびイソロイシンから選択される1種に置換されていることを特徴とする請求項1に記載のデングワクチン抗原。
  3. 第107位のロイシンが、フェニルアラニンに置換されていることを特徴とする請求項2に記載のデングワクチン抗原。
  4. 第107位のアミノ酸に変異を有するエンベロープ蛋白質が、配列番号4で示されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のデングワクチン抗原。
  5. 第87位のアスパラギン酸が、グルタミン酸、チロシン、システイン、アルギニン、ヒスチジン、リジン、セリン、トレオニン、グルタミン、アスパラギンおよびグリシンから選択される1種に置換されていることを特徴とする請求項1に記載のデングワクチン抗原。
  6. 第87位のアスパラギン酸が、アスパラギンに置換されていることを特徴とする請求項5に記載のデングワクチン抗原。
  7. 第87位のアミノ酸に変異を有するエンベロープ蛋白質が、配列番号5で示されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列からなることを特徴とする請求項1、5または6に記載のデングワクチン抗原。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のデングワクチン抗原を含有または発現することを特徴とするデングワクチン。
  9. デングウイルスエンベロープ蛋白質のアミノ酸配列の第107位または第87位のアミノ酸に変異を有するエンベロープ蛋白質、該エンベロープ蛋白質をコードする核酸、該エンベロープ蛋白質をコードする核酸を含むベクター、または該エンベロープ蛋白質を発現するデングウイルスを含有することを特徴とする請求項8に記載のデングワクチン。
  10. デングウイルス以外の病原体に対するワクチン成分を含むことを特徴とする請求項8または9に記載のデングワクチン。
  11. 中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するデングワクチン抗原または該抗原を発現するデングウイルスを取得する方法であって、以下の工程(1)〜(5)を含むことを特徴とする方法:
    (1)デングウイルスのエンベロープ蛋白質を抗原として、感染増強活性を有するが中和活性を有しないモノクローナル抗体を取得する工程、
    (2)(1)で得られたモノクローナル抗体のクラスまたはサブクラスを変更することにより、中和活性を有するモノクローナル抗体を取得する工程、
    (3)(2)で得られた中和活性を有するモノクローナル抗体の存在下でデングウイルス感染細胞を培養することにより、該モノクローナル抗体により中和されない変異デングウイルスを取得する工程、
    (4)(3)で得られた変異デングウイルスのエンベロープ蛋白質に生じた変異を確認する工程、および
    (5)(3)で得られた変異デングウイルスのエンベロープ蛋白質が感染増強抗体の誘導を抑制することを確認する工程。
  12. 中和抗体を誘導するが感染増強抗体の誘導を抑制するデングワクチン抗原であって、アミノ酸配列の第107位および第87位のアミノ酸に変異を有するデングウイルスエンベロープ蛋白質と2位のアミノ酸に変異を有さないデングウイルス前駆膜蛋白質を含むことを特徴とするデングワクチン抗原。
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