本発明のゴム組成物は、ゴム成分、白色充填剤、および下記式(1)で表される化合物を含有する。
(式(1)中、Xは−CONH−又は−COO−を表す。R
1は炭素数7〜23のアルキル基又は炭素数7〜23のアルケニル基を表す。R
2は炭素数1〜3のアルキレン基を表す。R
3とR
4はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を表し、少なくとも1つは前記ヒドロキシアルキル基である。)
前述のとおり、白色充填剤を含有するゴム組成物に、白色充填剤への吸着性が高い上記式(1)で表される化合物を配合することにより、混練り中のゴム粘度を低減して加工性を改善でき、低燃費性および耐摩耗性も改善できる。
これは、以下のように推測される。上記式(1)で表される化合物は、分子末端に位置するR3および/またはR4のヒドロキシ基、並びに分子中央付近に位置するXのCONH基又はCOO基の2箇所で適度な極性を発現し、白色充填剤表面(特に、白色充填剤表面のヒドロキシ基)と適度に吸着(相互作用)することが可能である。そのため、白色充填剤の表面がこの化合物により覆われ、該化合物が白色充填剤の表面を疎水化することにより、白色充填剤同士の凝集を抑制すること、および配合物の粘度を低減させることができるため、ゴム中での白色充填剤の分散性を効率的に向上させることができる。その結果、ゴム組成物の加工性、ウェットグリップ性能、低燃費性および耐摩耗性をも向上させることができる。
分子中央付近のXは、分子中央部分の極性(電子吸引性)を高め、製造が容易であるという理由から、−CONH−又は−COO−である。
更に、以下のように推測される。上記式(1)で表される化合物は、従来から白色充填剤の分散性改善剤として使用されている脂肪酸モノエタノールアミドおよび脂肪酸ジエタノールアミドと比べ、−CONH−又は−COO−とアルカノール基との間にアミノ基を有することを特徴とする。分子鎖中に上記アミノ基及びヒドロキシ基を有することにより、白色充填剤表面(特に、白色充填剤表面のヒドロキシ基)への吸着性が向上し、配合物の粘度の低減効果に優れ、ゴム中の白色充填剤の分散性をより向上させることができる。さらには、分子鎖中に上記アミノ基及びヒドロキシ基を有し、シリカへの吸着性が高いため、シランカップリング剤や変性ポリマーの変性基とシリカとの相互作用、シリカの分散性を相乗的に向上できる。
前記ゴム成分としては特に限定されず、天然ゴム(NR)およびポリイソプレンゴム(IR)を含むイソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)などのジエン系ゴム成分やブチル系ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴムが挙げられる。これらのゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、低燃費性や耐摩耗性、耐久性、ウェットグリップ性能のバランスの観点からSBRおよびBRを含有することが好ましい。
スチレンブタジエンゴム(SBR)としては、特に限定されず、乳化重合SBR(E−SBR)、溶液重合SBR(S−SBR)などが挙げられ、油展されていても、油展されていなくてもよい。なかでも、グリップ性能の観点から、油展かつ高分子量のSBRが好ましい。また、フィラーとの相互作用力を高めた末端変性S−SBRや、主鎖変性S−SBRも使用可能である。これらSBRは、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
SBRのスチレン含量は、グリップ性能の観点から、16質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上が特に好ましい。また、スチレン含量が多すぎると、スチレン基が隣接し、ポリマーが硬くなりすぎ、架橋が不均一となりやすく、高温走行時のブロー性が悪化するおそれがあり、また、温度依存性が増大し、温度変化に対する性能変化が大きくなってしまい、走行中・後期の安定したグリップ性能が良好に得られない傾向があることから、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、45質量%以下がさらに好ましい。
なお、本明細書において、SBRのスチレン含量は、1H−NMR測定により算出される。
SBRのビニル含量は、ゴム組成物のHs、グリップ性能の観点から10%以上が好ましく、15%以上がより好ましい。また、グリップ性能、EB(耐久性)、耐摩耗性の観点から、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、70%以下がさらに好ましく、60%以下が特に好ましい。
なお、本明細書において、SBRのビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
SBRはまた、ガラス転移温度(Tg)が−45℃以上であることが好ましく、−40℃以上であることがより好ましい。該Tgは、10℃以下であることが好ましく、温帯冬期での脆化クラック防止の観点から5℃以下であることがより好ましい。
なお、本明細書において、SBRのガラス転移温度は、JIS K 7121に従い、昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量測定(DSC)を行って測定される値である。
SBRの重量平均分子量(Mw)は、低燃費性や耐摩耗性の観点から、20万以上が好ましく、25万以上がより好ましく、30万以上がさらに好ましい。また、フィラーの分散性、すなわち、低燃費性、耐摩耗性の観点から、重量平均分子量は200万以下が好ましく、180万以下がより好ましい。
なお、本明細書において、SBRの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
SBRを含有する場合の、SBRのゴム成分100質量%中の含有量は、十分なグリップ性能が得られるという理由から、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、グリップ性能の観点からは100質量%が好ましい。
BRとしては、特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含有量のBR、日本ゼオン(株)製のBR1250H等の低シス含有量の変性BR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、ランクセス(株)製のBUNA−CB25等の希土類元素系触媒を用いて合成される高シス含有量のBR等を使用できる。これらBRは、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
BRのシス1,4結合含有率(シス含量)は、耐久性や耐摩耗性の観点から、90質量%以上が好ましく、93質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
BRのビニル含量は、耐久性や耐摩耗性の観点から、1.8質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましく、0.8質量%以下が特に好ましい。
なお、本明細書において、BRのビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)およびシス含量(シス1,4結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
BRを含有する場合の、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、耐摩耗性、低燃費性の観点から、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。また該含有量は、耐摩耗性、グリップ性能、低燃費性の観点から、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、グリップ性能が必要なタイヤでは40質量%以下が好ましい。
本発明のゴム組成物では、SBR及びBRの合計含有量がゴム成分100質量%中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。80質量%未満では、本発明の効果が充分に得られないおそれがある。
前記白色充填剤としては、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、タルクなどが挙げられ、これらの白色充填剤を単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、COO基を有する白色充填剤が好ましく、そのなかでも、耐摩耗性、耐久性、ウェットグリップ性能および低燃費性に優れるという理由から、シリカおよび/または水酸化アルミニウムを含有することが好ましい。
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
シリカのBET比表面積(窒素吸着比表面積、N2SA)は、分散性、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能および加工性の観点から、70〜300m2/gが好ましく、80〜280m2/gがより好ましく、90〜250m2/gがさらに好ましい。
なお、本明細書におけるシリカのN2SAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
シリカを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、40質量部以上がさらに好ましい。また、シリカの含有量は、加工性、加硫後の冷却に伴うシュリンクを抑制する、破断抗力(TB)を確保するという理由から、150質量部以下が好ましく、140質量部以下がより好ましい。
水酸化アルミニウムのBET比表面積(窒素吸着比表面積、N2SA)は、ウェットグリップ性能の観点から、5m2/g以上が好ましく、10m2/g以上がより好ましく、12m2/g以上がさらに好ましい。また、水酸化アルミニウムのBET比表面積は、水酸化アルミニウムの分散性、再凝集防止、耐摩耗性の観点から、60m2/g以下が好ましく、50m2/g以下がより好ましく、40m2/g以下がさらに好ましい。
なお、本明細書における水酸化アルミニウムのBET比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
水酸化アルミニウムの平均粒子径(D50)は、水酸化アルミニウムの分散性、再凝集防止、耐摩耗性の観点から、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。また、水酸化アルミニウムの平均粒子径(D50)は、耐摩耗性の観点から、3.0μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましい。
なお、本明細書における平均粒子径(D50)とは、粒子径分布測定装置により求めた粒子径分布曲線の積算質量値50%の粒子径である。
水酸化アルミニウムを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、グリップ性能の観点から、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましい。また、水酸化アルミニウムの含有量は、耐摩耗性の観点から、60質量部以下が好ましく、55質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましい。
ゴム成分100質量部に対する白色充填剤の含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、40質量部以上がさらに好ましい。また、白色充填剤の含有量は、加工性、加硫後の冷却に伴うシュリンクを抑制する、破断抗力(TB)を確保するという理由から、150質量部以下が好ましく、140質量部以下がより好ましい。
本発明では、式(1)で表される化合物を配合するため、白色充填剤の含有量を増量しても(80質量部以上としても)白色充填剤を好適にゴム組成物中で分散させることができ、より良好な加工性、低燃費性および耐摩耗性が得られる。
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、Momentive社製のNXT−Z100、NXT−Z45、NXTなどのメルカプト系(メルカプト基を有するシランカップリング剤)、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、スルフィド系、メルカプト系がシリカとの結合力が強く、低燃費特性に優れるという点から好ましい。また、メルカプト系を使用すると、低燃費特性および耐摩耗性を好適に向上できるという点からも好ましい。
シランカップリング剤を含有する場合のシリカ100質量部に対する含有量は、十分なフィラー分散性の改善効果や、粘度低減等の効果が得られるという理由から、4.0質量部以上であることが好ましく、6.0質量部以上であることがより好ましい。また、十分なカップリング効果、シリカ分散効果が得られず、補強性が低下するという理由から、シランカップリング剤の含有量は、12質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。
本発明のゴム組成物は、下記式(1)で表される化合物を含有する。
(式(1)中、Xは−CONH−又は−COO−を表す。R
1は炭素数7〜23のアルキル基又は炭素数7〜23のアルケニル基を表す。R
2は炭素数1〜3のアルキレン基を表す。R
3とR
4はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を表し、少なくとも1つは前記ヒドロキシアルキル基である。)
式(1)中、Xは、分子中央部分の極性(電子吸引性)を高め、製造が容易であるという観点から、−CONH−又は−COO−を表す。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、Xは−CONH−が好ましい。
式(1)中のR1は、白色充填剤への吸着性、式(1)で表される化合物自身の疎水化力の観点から、炭素数7〜23のアルキル基又は炭素数7〜23のアルケニル基であり、該アルキル基およびアルケニル基は、直鎖状、分枝鎖状および環状の何れでもよいが、直鎖状が好ましい。例えば、オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、ヘンイコシル基、トリコシル基などのアルキル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ヘプタデセニル基などのアルケニル基が挙げられる。また、該化合物の原料としては、好ましくは、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、パーム油脂肪酸、水添パーム油脂肪酸、牛脂脂肪酸、水添牛脂脂肪酸などの脂肪酸、それら脂肪酸のメチルエステル、及びヤシ油、パーム核油、パーム油、水添パーム油、牛脂、水添牛脂等の油脂等が挙げられる。
式(1)におけるR1の炭素数が23を超える場合は、アミノ基やCOO基などの極性基の密度が低くなり、極性が下がるため白色充填剤の表面への吸着性能が低下する傾向がある。一方、R1の炭素数が6以下の場合は、上記吸着性能が過大となり、シランカップリング剤と白色充填剤(特に、シリカ)の結合を阻害する傾向がある。
本発明の効果がより好適に得られるという理由から、R1のアルキル基及びアルケニル基の炭素数は、好ましくは9〜21、より好ましくは11〜19、更に好ましくは15〜19である。
R1としては、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、アルキル基が好ましい。
式(1)中のR2は、適度な疎水・親水の両性界面活性機能を上記式(1)で表される化合物に付与する観点から、炭素数1〜3のアルキレン基であり、該アルキレン基は、直鎖状および分枝鎖状の何れでもよいが、直鎖状が好ましい。
炭素数1〜3のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が挙げられる。
式(1)におけるR2の炭素数が3を超える場合は、適度な疎水・親水の両性界面活性機能を上記式(1)で表される化合物に付与できなくなり、白色充填剤の表面への吸着性能が低下する傾向がある。
式(1)中のR3及びR4は、式(1)で表される化合物の末端部における白色充填剤への吸着性の観点から、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を表し、少なくとも1つは前記ヒドロキシアルキル基である。
炭素数1〜3のアルキル基は、直鎖状、分枝鎖状および環状の何れでもよいが、直鎖状が好ましい。炭素数1〜3のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。
アルキル基の炭素数が3を超える場合は、アミノ基やヒドロキシ基などの極性基の密度が低くなり、極性が下がるため白色充填剤の表面への吸着性能が低下する傾向がある。
炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基は、直鎖状、分枝鎖状および環状の何れでもよいが、直鎖状が好ましい。炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基のアルキル基(すなわち、炭素数1〜3のアルキル基)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。
ヒドロキシアルキル基の炭素数が3を超える場合は、アミノ基やヒドロキシ基などの極性基の密度が低くなり、極性が下がるため白色充填剤の表面への吸着性能が低下する傾向がある。
R3及びR4としては、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、一方が水素原子、もう一方がヒドロキシアルキル基であることが好ましい。これにより、分子鎖中のアミノ基が末端のヒドロキシ基と同じく白色充填剤表面(特に、白色充填剤表面のヒドロキシ基)に吸着しやすくなり、白色充填剤表面が生じさせる酸性を中和しやすくなるためと推測される。
式(1)で表される具体的な化合物としては、例えば、ラウリン酸アミドエチルアミノエタノール、ステアリン酸アミドエチルアミノエタノール等の脂肪酸アミドエチルアミノエタノール;ラウリン酸エステルエチルアミノエタノール、ステアリン酸エステルエチルアミノエタノール等の脂肪酸エステルエチルアミノエタノール;ステアリン酸アミド(Nメチル)エチルアミノエタノール、ステアリン酸アミド(Nエタノール)エチルアミノエタノール、ラウリン酸アミドメチルアミノエタノール、ステアリン酸アミドメチルアミノエタノール、ラウリン酸アミドプロピルアミノエタノール、ステアリン酸アミドプロピルアミノエタノール、ラウリン酸アミドエチルアミノメタノール、ステアリン酸アミドエチルアミノメタノール、ラウリン酸アミドエチルアミノプロパノール、ステアリン酸アミドエチルアミノプロパノール、ステアリン酸エステル(Nメチル)エチルアミノエタノール、ステアリン酸エステル(Nエタノール)エチルアミノエタノール、ラウリン酸エステルメチルアミノエタノール、ステアリン酸エステルメチルアミノエタノール、ラウリン酸エステルプロピルアミノエタノール、ステアリン酸エステルプロピルアミノエタノール、ラウリン酸エステルエチルアミノメタノール、ステアリン酸エステルエチルアミノメタノール、ラウリン酸エステルエチルアミノプロパノール、ステアリン酸エステルエチルアミノプロパノールなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、脂肪酸アミドエチルアミノエタノールが好ましく、ラウリン酸アミドエチルアミノエタノール、ステアリン酸アミドエチルアミノエタノールがより好ましく、ステアリン酸アミドエチルアミノエタノールがさらに好ましい。これらの化合物は、分子鎖中のアミノ基が末端のヒドロキシ基と同じく白色充填剤表面(特に、白色充填剤表面のヒドロキシ基)に吸着しやすく、白色充填剤表面が生じさせる酸性を中和しやすいためと推測される。
式(1)で表される化合物は公知の方法により合成でき、例えば、脂肪酸又は脂肪酸メチルエステルと2−(2−アミノエチルアミノ)エタノールを混合し、120℃〜180℃で加熱し、生成した水又はメタノールを留去することで、脂肪酸アミドエチルアミノエタノールを得ることができる。
式(1)で表される化合物のゴム成分100質量部に対する含有量は、白色充填剤と適度に相互作用し、シランカップリング剤が配合されている場合はシランカップリング剤と白色充填剤(特に、シリカ)の反応を阻害することなく、すなわち、白色充填剤の表面に過度な滑性を与えることなく、粘度低減効果および白色充填剤の分散性向上効果を発現するという理由から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上がさらに好ましい。また、該化合物の含有量は、白色充填剤の表面に過度な滑性を与えることなく、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性を向上させるという理由から、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、6質量部以下がさらに好ましい。
本発明に係るゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般的に使用される配合剤、例えば、カーボンブラック、樹脂成分、オイル、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、グリップ性能、耐摩耗性の観点から、80m2/g以上が好ましく、100m2/g以上がより好ましく、120m2/g以上が更に好ましい。また、N2SAは、良好なフィラー分散性を確保するという観点から、600m2/g以下が好ましく、450m2/g以下がより好ましく、200m2/g以下が更に好ましい。
なお、カーボンブラックのN2SAは、JIS K 6217−2:2001に準拠してBET法で求められる。
カーボンブラックを含有する場合の、カーボンブラックのゴム成分100質量部に対する含有量は、耐摩耗性、紫外線クラック防止性能を確保するという理由から3質量部以上である。好ましいカーボンブラックの含有量は、使用されるタイヤ部材や、タイヤに期待されるグリップ性能、耐摩耗性、低燃費性により異なる。汎用タイヤのトレッド部など、シリカによりウェットグリップ性能を確保するタイヤの場合は、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量は5〜30質量部が好ましい。また、レース用タイヤのトレッド部など、カーボンブラックによりドライグリップ性能や耐摩耗性を確保するタイヤの場合は、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量は、40〜140質量部が好ましい。
本発明のゴム組成物は加硫促進剤を含むことが好ましい。加硫促進剤の種類は特に制限はなく、通常用いられているものを用いることができる。加硫促進剤としては、例えば、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系若しくはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、又はキサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。これら加硫促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、チアゾール系加硫促進剤が好ましく、チアゾール系加硫促進剤とグアニジン系加硫促進剤を併用することがより好ましい。
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等のスルフェンアミド系加硫促進剤;N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンイミド(TBSI)、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド(DM)、2-メルカプトベンゾチアゾール(M)等が挙げられる。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。また、グアニジン系加硫促進剤としては、ジフェニルグアニジン、ジオルトトリグアニジン、トリフェニルグアニジンなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ゴム組成物が加硫促進剤を含有する場合、加硫促進剤の含有量は特に制限はなく、要望する加硫速度や架橋密度に合わせて自由に決めることが出来る。加硫促進剤を含有する場合の、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部である。
本発明では、式(1)で表される化合物を配合するため、ゴム組成物の酸性度をアルカリ側にシフトさせることができる。その結果、グアニジン系加硫促進剤の配合量を低減できる。グアニジン系加硫促進剤は、ゴム組成物をアルカリ性へシフトさせ、スルフェンアミド系加硫促進剤と硫黄の反応を促進する一方、混練で生成したシリカとシランカップリング剤の結合を切断してしまうおそれがある。また、過剰なグアニジン系加硫促進剤は、単独で又はスルフェンアミド系加硫促進剤と結合して不溶性の白色ブルーム物となり、タイヤ外観を汚く汚染する場合が有る。一方、本願発明では、グアニジン系加硫促進剤の配合量を低減できるため、より良好なタイヤ性能(例えば、低燃費性、耐摩耗性)が得られ、またタイヤの外観も向上する。
グアニジン系加硫促進剤を含有する場合の、グアニジン系加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0〜3質量部、より好ましくは0.1〜1.5質量部である。これにより、より良好なタイヤ性能(例えば、低燃費性、耐摩耗性)が得られ、またタイヤの外観も向上する。
本発明のゴム組成物は樹脂成分(樹脂)を含むことが好ましい。これにより、本発明の効果がより好適に得られる。
樹脂としては、タイヤ工業において一般的に用いられているものであれば特に限定されないが、例えば、クマロンインデン樹脂、αメチルスチレン系樹脂、テルペン系樹脂、p−t−ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという点から、テルペン系樹脂が好ましい。
テルペン系樹脂としては、テルペン化合物に由来する単位を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリテルペン(テルペン化合物を重合して得られる樹脂)、テルペン芳香族樹脂(テルペン化合物と芳香族化合物とを共重合して得られる樹脂)、芳香族変性テルペン樹脂(テルペン樹脂を芳香族化合物で変性して得られる樹脂)などが挙げられる。なかでも、テルペン芳香族樹脂が好ましい。
上記テルペン化合物は、(C5H8)nの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C10H16)、セスキテルペン(C15H24)、ジテルペン(C20H32)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオールなどが挙げられる。上記テルペン化合物としてはまた、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸、ピマール酸、イソピマール酸などの樹脂酸(ロジン酸)なども挙げられる。すなわち、上記テルペン系樹脂には、松脂を加工することにより得られるロジン酸を主成分とするロジン系樹脂も含まれる。なお、ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの天然産のロジン樹脂(重合ロジン)の他、マレイン酸変性ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂などの変性ロジン樹脂、ロジングリセリンエステルなどのロジンエステル、ロジン樹脂を不均化することによって得られる不均化ロジン樹脂などが挙げられる。
上記芳香族化合物としては、芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどのフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトールなどのナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレンなどのスチレン誘導体などが挙げられる。これらのなかでも、スチレンが好ましい。
樹脂の軟化点は、30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましく、100℃以上が特に好ましい。また、上記軟化点は、160℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。上記数値範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
なお、本発明において、上記樹脂の軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
樹脂は、水素添加されたものであってもよく、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、樹脂は、水素添加された水素添加樹脂であることが好ましい。該水素添加は、公知の方法により行うことができ、例えば、金属触媒による接触水素添加、ヒドラジンを用いる方法などをいずれも好適に使用することができる(特開昭59−161415号公報など)。例えば、金属触媒による接触水素添加は、有機溶媒中、金属触媒の存在下、水素を加圧添加することにより実施することができ、該有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール等をいずれも好適に使用することができる。これら有機溶媒は、1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。また、金属触媒としては、例えば、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、ニッケルなどをいずれも好適に使用することができる、これら金属触媒は1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。加圧する際の圧力としては、例えば、1〜300kg重/cm2であることが好ましい。
上記樹脂において、二重結合の水素添加率は、1〜100%であり、とりわけ、2%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、8%以上であることが更に好ましい。また、二重結合の水素添加率の上限は、水素添加反応における、加圧加熱条件、触媒等の製造技術の進歩や、生産性の向上などによりその好ましい範囲が変更され得る可能性があり、現時点では正確には確認できていないが、現状では、例えば、80%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、40%以下が更に好ましく、30%以下がより更に好ましく、25%以下が特に好ましい。
なお、該水素添加率(水添率)は、1H−NMR(プロトンNMR)による二重結合由来ピークの各積分値から、下記式により、算出される値である。本明細書において、水素添加率(水添率)とは、二重結合の水素添加率を意味する。
(水添率〔%〕)={(A−B)/A}×100
A:水素添加前の二重結合のピークの積分値
B:水素添加後の二重結合のピークの積分値
樹脂を含有する場合の、樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造できる。例えば、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどの一般的なゴム工業で使用される公知の混練機で、前記各成分のうち、架橋剤および加硫促進剤以外の成分を混練りした後、これに、架橋剤および加硫促進剤を加えてさらに混練りし、その後加硫する方法などにより製造できる。
本発明のゴム組成物は、タイヤのトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード等のタイヤ部材を始め、靴底ゴム、防振ゴム、ベルト、ホース、その他のゴム製工業製品等にも用いることができる。特に、ウェットグリップ性および耐摩耗性が改善できることから、タイヤ用ゴム組成物、靴底ゴム用ゴム組成物として用いることが好ましく、本発明のゴム組成物で構成されるトレッドを有するタイヤ、本発明のゴム組成物で構成される靴底ゴムを有する靴(スポーツ靴)とすることがより好ましい。
本発明の空気入りタイヤは、前記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造できる。すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッド等の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成できる。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤが得られる。
本発明の空気入りタイヤは、たとえば乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、高性能タイヤ等として用いられる。なお、本明細書における高性能タイヤとは、グリップ性能に特に優れたタイヤであり、競技車両に使用する競技用タイヤをも含む概念である。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
<SBR1>:後述のSBRの製造方法により調製(S−SBR、油展37.5部、スチレン量:41質量%、ビニル含量:40%、Tg:−29℃、重量平均分子量:119万)
<SBR2>:日本ゼオン社製N9548(E−SBR、油展37.5部、スチレン量:35質量%、ビニル含量:18%、Tg:−40℃、重量平均分子量:109万)
<BR>:ランクセス(株)製のCB24(Nd系触媒を用いて合成したハイシスBR、Tg:−110℃、シス含量:96質量%、ビニル含量:0.7質量%)
<カーボンブラック>:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN110(N
2SA:142m
2/g)
<シリカ1>:エボニックデグサ社製のULTRASIL VN3(N
2SA:175m
2/g)
<シリカ2>:エボニックデグサ社製のULTRASIL U9000Gr(N
2SA:235m
2/g)
<シランカップリング剤1>:エボニックデグサ社製のSi75(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
<シランカップリング剤2>:Momentive社製のNXT(8−メルカプトオクタノイルトリエトキシシラン)
<シランカップリング剤3>:Momentive社製のNXT−Z45(メルカプト系シランカップリング剤)
<水酸化アルミニウム>:住友化学(株)製のAth#B(平均粒子径:0.6μm、N
2SA:15m
2/g)
<ワックス>:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
<老化防止剤1>:住友化学(株)製のアンチゲン6C(6PPD、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
<老化防止剤2>:大内新興化学工業(株)製のノクラック224(TMQ、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)
<化合物1>:三洋化成工業(株)製の試作品1(ラウリン酸アミドエチルアミノエタノール、下記式で表される化合物(式(1)で表される化合物))
<化合物2>:三洋化成工業(株)製の試作品2(ステアリン酸アミドエチルアミノエタノール、下記式で表される化合物(式(1)で表される化合物))
<化合物3>:三洋化成工業(株)製の試作品3(ステアリン酸アミド(Nメチル)エチルアミノエタノール、下記式で表される化合物(式(1)で表される化合物))
<化合物4>:三洋化成工業(株)製の試作品4(ステアリン酸アミド(Nエタノール)エチルアミノエタノール、下記式で表される化合物(式(1)で表される化合物))
<化合物5>:三洋化成工業(株)製の試作品5(ステアリン酸エステルエチルアミノエタノール、下記式で表される化合物)
<化合物6>:三洋化成工業(株)製のプロファンSME(ステアリン酸モノエタノールアミド、下記式で表される化合物)
<化合物7>:三洋化成工業(株)製のプロファンAB−20(ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、下記式で表される化合物)
<化合物8>:ストラクトール社製のEF44(脂肪酸亜鉛)
<プロセスオイル>:H&R社製のVivatec500(TDAEオイル、Tg:−58℃)
<樹脂>:ヤスハラケミカル(株)製のM125(水素添加テルペンスチレン樹脂、水添率:11%、軟化点:123℃、Tg:69℃、水酸基価:0mgKOH/g、SP値:8.52)
<酸化亜鉛>:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
<ステアリン酸>:日油(株)製のステアリン酸「椿」
<硫黄>:細井化学工業(株)製のHK−200−5(オイル分5質量%)
<加硫促進剤1>:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS−G(TBBS、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
<加硫促進剤2>:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(DPG、1,3−ジフェニルグアニジン)
SBR1の製造方法
(1)末端変性剤の作製
窒素雰囲気化、250mLメスフラスコに3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(アヅマックス(株)製)を20.8g入れ、さらに無水ヘキサン(関東化学(株)製)を加え、全量を250mLにして作製した。
(2)SBR1の調製
十分に窒素置換した30L耐圧容器にn−ヘキサンを18L、スチレン(関東化学(株)製)を800g、ブタジエンを1200g、テトラメチルエチレンジアミンを1.1mmol加え、40℃に昇温した。次に、1.6Mブチルリチウム(関東化学(株)製)を1.8mL加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌した。次に前記末端変性剤を4.1mL追加し、30分間撹拌を行った。反応溶液にメタノール15mLおよび2,6−tert−ブチル−p−クレゾール(大内新興化学(株)製)0.1gを添加後、TDAE1200gを添加し10分間撹拌を行った。その後、スチームストリッピング処理によって重合体溶液から凝集体を回収した。得られた凝集体を24時間減圧乾燥させ、SBR1を得た。結合スチレン量は41質量%、ビニル含量は40%、Tg:−29℃、Mwは119万であった。
実施例および比較例
表1および2に示す配合処方にしたがい、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を排出温度170℃で5分間混練りし、混練物を得た。さらに、得られた混練物を前記バンバリーミキサーにより、排出温度150℃で4分間混練りした(リミル)。次に、2軸オープンロールを用いて、得られた混練物に硫黄および加硫促進剤を添加し、4分間、105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃、12分間、25kgf/cm2の圧力で加硫成型することで、試験用ゴム組成物を作製した。
また、前記未加硫ゴム組成物を所定の形状の口金を備えた押し出し機で押し出し成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で12分間プレス加硫することにより、試験用タイヤを製造した。得られた試験用ゴム組成物および試験用タイヤについて下記の評価を行った。結果を表1および2に示す。
<粘度指数>
各未加硫ゴム組成物について、JIS K 6300−1の「未加硫ゴム−物理特性−第1部:ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方」に準じたムーニー粘度の測定方法に従い、130℃の温度条件にて、ムーニー粘度(ML1+4)を測定した。結果は比較例1のムーニー粘度の逆数を100として指数表示した。粘度指数が大きいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れることを示す。なお、108以上を性能目標値とする。
<低燃費指数>
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータVESを用いて、温度50℃、周波数10Hz、初期歪10%および動歪2%の条件下で、各試験用ゴム組成物の損失正接tanδを測定した。tanδが小さいほど発熱性が低く、低燃費性が優れることを示す。比較例1のtanδの逆数を100として指数表示した。指数が大きいほど、低燃費性に優れることを示す。なお、低燃費指数は100以上を性能目標値とする。
<耐摩耗性指数>
各試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、岡山国際サーキット、ロングラン500km走行を行った。
走行モード:8の字急旋回を含む、20km走行でトレッド主溝が1mm削れる程度のシビアハンドリング。
走行後に、タイヤトレッドゴムの残溝量を計測し(新品時8.0mm)、耐摩耗性として評価した。主溝の平均残溝量が多いほど、耐摩耗性に優れる。比較例1の残溝量を100として指数表示した。指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。なお、耐摩耗性指数は100以上を性能目標値とする。
ゴム成分、白色充填剤、および上記式(1)で表される化合物を含有する実施例では、白色充填剤を含有するゴム組成物であるにもかかわらず、混練り中のゴム粘度が低く加工性に優れ、低燃費性および耐摩耗性に優れていた。